1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:07:51.98 ID:aVwPGM0g0
― 定食屋 ―

ガラガラ…

男「……」キョロキョロ



女店員「いらっしゃいませー!」

女店員(……この人!)

女店員(いつも店の前でうろうろしてた人だけど、やっと入る気になってくれたんだ!)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521029271

引用元: 男「注文こないな……」女店員(あのお客さん、食券制だってまだ気づいてない……?) 



食券
食券
posted with amazlet at 18.03.14
株式会社チャンピオンソフト (2018-02-23)
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:09:34.80 ID:aVwPGM0g0
男「……」ガタッ

男「……?」

男(注文取りに来ないな……)



女店員「……?」

女店員(あれ? どうして食券を買わずに席に座っちゃったんだろう)

女店員(あ、そうか。まだどれを食べるか迷ってるのかも!)

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:10:00.99 ID:aVwPGM0g0
10分後――

男「……」



女店員(まだ迷ってるのかな? しばらく、そっとしておいてあげよう……)

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:12:51.27 ID:aVwPGM0g0
20分後――

客「サバミソ定食よろしく!」サッ

女店員「はーい!」



男「……」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:15:12.51 ID:aVwPGM0g0
30分後――

女店員「お待ちどおさまー!」コトッ

客「ありがとよー」



男「……」



女店員(あの人、まだ待ってる……いくらなんでもおかしいよね)

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:17:08.90 ID:aVwPGM0g0
男「……」



女店員(あ、もしかして!)

女店員(あのお客さん、うちが食券制だってまだ気づいてない……?)

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:19:45.05 ID:aVwPGM0g0
女店員(どうしよう? だったら伝えてあげなきゃいけないけど――)

女店員(今さら伝えたら、『今まで何やってたんだ!』ってものすごく怒られるかも……!)

女店員(怒るような人には見えないけど、大人しそうな人ほど怒ると怖いっていうし……)

女店員(どうしよう、どうしよう……!?)

女店員(私、どうしたらいいの……!?)

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:21:55.27 ID:aVwPGM0g0
客「なぁ」

女店員「は、はいっ!」

客「あそこの兄ちゃん、ひょっとして食券買うことに気づいてないんじゃねえか?」

女店員「――!」ハッ

女店員(そうだわ、私ったら……今いわなきゃ、状況はどんどんひどくなるばかりじゃない!)

女店員「お客さん」

客「ん?」

女店員「ありがとう!!!」

客「!? ……お、おう」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:24:46.72 ID:aVwPGM0g0
女店員「あの、お客さん!」

男「!」ビクッ

男「な、なんでしょう?」

女店員「実はですね……うちの店は食券制なんです!」

男「あ……」

女店員「だからまず、入り口にある券売機で食券を買って下さい!」

女店員「勇気を出せずなかなか言えませんでした! 今まで黙っていてすみませんでしたっ!」ペコッ

男「……」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:27:05.52 ID:aVwPGM0g0
男「そうだったんだ……」

女店員「本当にごめんなさいっ!」

男「いやいや……! 悪いのはあなたに聞こうともしなかったこっちだし……」

男「こちらこそ……すみませんでした」ペコッ

女店員「……」ホッ

女店員(よかった……見た目通りのいい人でよかった……)

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:29:27.32 ID:aVwPGM0g0
男「あの、それじゃ……」

女店員「?」

男「あなたが勇気を振り絞ったんだから、ぼくも勇気を振り絞ろうかな……」

女店員「なんでしょう?」

男「あの、ぼく……ずっと前からあなたのことが好きでした」

男「だから、お友達に……なってもらえませんか!」

女店員「……!」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:32:27.21 ID:aVwPGM0g0
女店員「……はい、喜んで」

男「ホ、ホントですか!」

女店員「私もいつも、あなたともっとおしゃべりしたいな、って思ってたんです!」

女店員「あなたは絶対いい人だと思ったから……」

男「あ、ありがとう……」



客「おおっ! いいねいいね~! 青春だね~!」

ヒューヒューッ!

ワアァァァァァッ!

パチパチパチパチパチ…



女店員「み、皆さん! からかわないで下さい!」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:34:32.34 ID:aVwPGM0g0
客「だったらさ、キスぐらいプレゼントしてあげたらどうだ?」

女店員「キ、キス!?」

男「そ、そんな……」

客「ハハハ、冗談だよ、冗談」

女店員「キスはまだできないですけど……私にだってプレゼントできるものならあります!」

男「え? なんですか?」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/03/14(水) 21:36:05.83 ID:aVwPGM0g0
女店員「うちの店の食券です! さぁ、どうぞ!」ドッサリ

男「ええ……? い、いいの? こんなに……」

女店員「はいっ!」



客「……食券乱用だな」







― おわり ―