1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 15:51:34.08 ID:POzuiMbe0.net
思った以上の大きな声に、自分でも驚いた。

「私、してませんよ」

改めて言い直す。
唯はスーパーを出たところで、
警備員らしき人に腕を掴まれたのだった。

「そうは言ってもねぇ。こっちは見てるんだよ」

唯の腕を掴んだまま、警備員はそう言った。

引用元: 唯「私、万引きなんてしてません!」 



GO! GO! MANIAC(「けいおん!!」より)
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6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 15:53:49.46 ID:POzuiMbe0.net
唯は地下の事務所まで連れていかれた。
コンクリートが打ちっぱなしの壁で、
空気がひんやりとしている。

「じゃああとはこっちでやっておくから。ご苦労さん」

「お願いします」

この人は店長だろうか。
パイプ椅子に座ったままそう指示を出す。
唯を連れてきた警備員は、また階上の店へ戻っていった。

12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 15:56:10.64 ID:POzuiMbe0.net
「まぁ。君も、そこへ掛けて」

促されて唯はパイプ椅子に座った。

「私はこの店で店長をやらせてもらっているんだけどね、
 こういうことされちゃうと、困っちゃうんだよねぇ」

店長は腕を組んだままそう言った。
中年太りと呼ぶのか、おなかがぽこんと出ていて、
顔は油でギトギトとしていた。
なんだか狸みたいだな。と唯は思う。

「私、万引きなんてしてないんですけど」

真っ直ぐに目を見つめたままそう言った。
店長が「うーん」と唸る。

「みんなそう言うんだよ。最近の子は嘘をつくのがうまくてね。
 カバンの中身をチェックさせてもらっていいかな」

「どうぞ」

こんなおじさんに持ち物をあさられるのは嫌だったが、
身の潔白を証明するため、唯は仕方なくバッグを差し出した。
嘘つき呼ばわりされて、多少なり憤慨していた。

14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 15:58:51.87 ID:POzuiMbe0.net
「ほら、これはうちの商品だよね」

そう言って、店長が机の上にポンと箱を放り投げる。
唯には身に覚えのないお菓子の箱だった。

「そんな」

唯は首を振った。きっと何かの間違いだろう。
どこかで紛れ込んだのかもしれない。
けいおん部の誰かが、間違えて入れたとか。

「それ、ここのじゃありません。多分誰かかが」

バァン!大きな音がして、言いかけた唯は身を竦めた。
店長が机を叩いた音だった。

「ほら、箱にさ。ポップがついてるでしょ?
 これ俺の手書きだからさ、ここの商品以外でありえないんだよね」

そう言って、もう一度机を叩く。
大きな音に唯はまたビクリと反応した。

16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:01:39.44 ID:POzuiMbe0.net
「いるんだよねぇ、君みたいなの。
 罪を暴かれても平気な顔して嘘重ねるやつ。
 最初の言葉が謝罪ならさぁ、こっちも考えるんだけど。
 はっきり言って窃盗犯で嘘つきなんてただのクズだよ。クズ」

強い口調でそう言った。

「違う。違います。私じゃない」

唯は首を振った。

「はぁ!?」

バァン!と大きな音がする。
唯は身を縮こまらせた。

「喋るんじゃねぇよ! このクズ野郎!」

「ひっ」

店長は唯の横の壁を蹴りつけた。
コンクリートの壁がゴスンと重たい音をたてる。
唯はただガタガタと震えていた。

23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:05:00.15 ID:POzuiMbe0.net
「どうして平然と嘘がつけるわけ?
 何を考えて生きてんの?」

店長は呆れたように言った。
唯はただ黙って首を振っている。

「まぁ、いいや。
 とりあえず警察と学校、自宅には連絡入れるからね」

机の奥に置いてあった固定電話を手元に引き寄せた。
そしてジロジロと唯の全身に視線を這わせる。

「その制服さぁ、桜が丘高校のやつでしょ?
 あそこ厳しいから、万引きやったのなんてばれたら一発で退学だろうね。
 自業自得だから、同情なんてしないけど」

受話器を上げてプッシュボタンを押す。
その横から。
手が伸びてきて、受話器を置くフックの上に乗せられた。
店長が視線を上げると、青ざめた顔の唯と目が合う。

「連絡は、やめてください」

唯は懇願した。

27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:08:27.43 ID:POzuiMbe0.net
「あのねぇ」

店長はやおら立ち上がると、唯に歩み寄った。
胸倉を掴み立ち上がらせると、
そのままコンクリートの壁に押し付ける。

「うぐっ」

唯の口から声が漏れた。

「うっ、ひっ」

力を込めて、何度も何度も。
グイグイと壁に押し付けられた。
そのたびに、悲鳴とも呻きとも取れるような声が、
唯の口から発せられる。

「なめてんのか! お前は!」

耳元でそう叫ばれて、唯はギュッと身を固くした。

「ふん」店長は鼻を鳴らすと手を離した。
「うっ」唯は支えを失って、床に崩れ落ちる。
店長はそんな唯を、冷たい目で見下ろしていた。

31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:11:19.62 ID:POzuiMbe0.net
退学。
そんなことになったら。
もうけいおん部として活動ができなくなる。
みんなの笑顔に、会えなくなる。
それだけは、避けなければならない。

「お願いします! なんでもしますから!」

店長の足に縋り付きながら叫んだ。
上目づかいで、瞳を潤ませる。

『なんでもしますから』

その言葉の意味を唯は理解していた。
それだけの覚悟もあった。
唯の決心は、固い。

「お願いします!」

店長の目を見つめ続けながら、もう一度言った。

42: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:14:28.00 ID:POzuiMbe0.net
「なんでも、ねぇ」

店長はぐいっ、と唯を突き放した。
そして踵を返すとパイプ椅子に腰かける。

「あのさぁ」

そう言いながら、膝の上で手を組み体を深くかがめた。

「なんでも、って。何をする気なのよ、お宅は」

呆れたような言い方だった。

「えっ」唯は慌てた。
まさか質問が飛んでくるとは思わなかったからだ。
口元に手を当てて、しばし考え込む。

「なんでも、は。なんでも、です」

やっとそれだけ言う。
「はぁ」と店長はため息をついた。

47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:17:29.83 ID:POzuiMbe0.net
「どうせ、私で満足してください。とか、そんなことだろ?」

相変わらず呆れたように言う。

「そんなのはさ、◯◯とかそういうのだけの話なんだよ。
 何を勘違いしてるのか知らないけど、
 万引きなんかより未成年◯◯、◯◯◯の方が断然罪が重いんだからね。
 犯罪者を許す代わりに、
 なんでわざわざこっちがそんなリスクしょわないといけないのよ」

そこまで言って、店長はまたため息をつく。
図星なだけに、唯は何も言い返せなかった。

「最近の若いやつはさ、自分の体を粗末にしすぎなんだよ。
 お前みたいに自ら差し出すような奴の体に魅力なんて感じないの。
 どうせ毎晩◯◯◯◯ってんだろ?」

パイプ椅子に座ったまま「あーあ」と伸びた。
その様子を見て、唯は悔しそうに体を震わせていた。

51: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:20:48.20 ID:POzuiMbe0.net
「◯◯◯◯ってなんか、いませんよ」

唯はボロボロと涙をこぼした。
店長が本日何度目かのため息をつく。

「はいはい、分かったから。
 もういいよ。帰って彼氏にでも慰めてもらいな。
 今日は厳重注意と言うことで終わらせといてやるから。
 自分の罪を見逃してもらう代わりに体差し出すとか、
 終わってるよ。ホントに」

立ち上がると、事務所の扉を開けた。
唯はまだ床に蹲ったまま体を震わせている。

「はい、ご苦労さん。
 こっちはまだ仕事が残ってんだ。
 早く出ていってくれないかな」

唯はしばらくそうしていたが、
弾かれたように立ち上がると、
バッグを引っ掴んで事務所から出ていった。

58: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:23:52.09 ID:POzuiMbe0.net
唯は家に帰ってからも、悔しさと怒りが収まらなかった。
思い出すと涙が溢れてくる。
ベッドに横になり、枕に顔をうずめたまま、
しばらく今日の出来事を回想していた。
そこでふと、疑問に思うことがあった。

「あのお菓子の箱はなんだったんだろう」

そうだ。
私はもちろんバッグに入れてないし。
でもあのお店の物に間違いないらしい。
警備員はなぜ私を万引き犯だと思ったのか。
入れていないのだから、
入れているところなんて目撃できるはずもない。

「あの人、なんかにおうね」

明日は土曜日だ。
朝一であのお店に行ってみよう。
唯はそう思って眠りについた。

61: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:26:23.25 ID:POzuiMbe0.net
「おはようございます!」

唯は元気よく挨拶をした。

「おはようございます!
 ……あぁ、なんだ。あんたか」

店長は最初気持ち悪いくらいの笑みを見せたが、
唯の姿を認めると顔をしかめた。

「で、なんか用?
 報復にクレーム入れるとかはやめてよ」

店長は呆れたように言う。

「ごめんなさい。クレームと言うか、
 因縁みたいになっちゃうんですけど。
 ちょっと話を聞いてもらっていいですか?」

唯は最初に謝っておいた。
それを受けて「はぁ」と店長がため息をついた。

64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:28:52.30 ID:POzuiMbe0.net
「朝はさぁ、忙しいんだよ。
 客も来るし、納品とか品出しもあるから」

店長は腰に手を当てて、呆れたようにしていた。

「じゃあ、何時なら大丈夫ですか?」

唯はその目をまっすぐ見つめて言った。
「うーん」店長が唸る。

「落ち着くのは、14時くらいかな。
 嫌がらせとかするつもりなら、
 すぐ親御さんに連絡入れるからね」

店長は手を広げた。
唯はにっこりと頷く。

「大丈夫です。そういうことはしません」

「そういうことなら、別にいいけどさぁ」

店長も少し、口元を緩めた。

68: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:31:21.33 ID:POzuiMbe0.net
「こんにちは!」

唯は元気よく挨拶をした。

「はい! どうも!」

店長も笑顔で返す。

「ああ、君ね」

笑顔は消えたが、
朝のように機嫌を悪くはしていないようだった。
声に明るさがある。

「で、話って何なの」

地下の事務所に入るとそう切り出した。
相変わらず空気はひんやりしている。

「ここって、監視カメラありますよね」

パイプ椅子に座ると唯が言った。

「あるけど。それがどうかしたかい」

73: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:34:37.65 ID:POzuiMbe0.net
「見せてもらいたいんです。
 昨日の、私がお店にいる間だけでいいんで」

店長は黙って首を振る。

「ダメだよ。防犯上の理由で、
 他人には見せられないようになっているんだ。
 それこそ事件が無ければ、警察にも見せないよ」

肩をすくめる。
唯は身を乗り出した。

「そこを、なんとか!」

店長の肩を、両手でがっしりと掴む。
呆れた顔で店長はそれを振り払った。

「だから。色仕掛けしてもダメだって。
 じゃあこうしようか。
 僕が見てくるから、ここでちょっと待っていてくれよ。
 映像に何が映っていたのか、君に報告してあげよう」

店長は「それでどうだい」と手を広げた。
唯は笑顔で頷く。

「はい! お願いします!」

76: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:38:39.00 ID:POzuiMbe0.net
店長は事務所を出ていった。
どうやら監視映像を見れるのは、階上の店の奥にある部屋らしい。
手持無沙汰の唯はパイプ椅子に座って、
足をぶらぶらと揺らしていた。
映像さえ見せれば私の潔白は晴らせる。
それと同時に、バッグにお菓子を入れた犯人も見つかるはずだ。

「遅いなぁ」

もう30分ほどたっている。
唯は相変わらず足をぶらぶらとさせていた。

「ちょっと、様子。見てこようかな」

そう言って立ち上がった。
扉に向けて歩き出す。
唯がドアノブに手をかける。
ガチャリ。
唯がノブを回すより早く、ドアが音をたてた。

「あ、店長さん帰ってきた」

唯は踵を返してパイプ椅子へ向かった。

80: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:41:55.75 ID:POzuiMbe0.net
「どうでした? 店長さん」

唯は歩きながら、背後に声を投げた。
しかし、反応はない。

「あれ、店長さん?」

振り返ると、大きな影が唯の視界を覆った。

「んぐっ! んんんーーー!!!!」

叫ぼうとしたが、何かが口をふさいでいて声が出せない。
ベリベリという音が唯の耳に響いた。
後ろ手に固定された自分の腕に、
粘着性の高い紙がグルグルと巻かれる感覚がある。
ガムテープだろうか。
唯は滅茶苦茶に暴れたが、
相手の力はすさまじく、なんの効果も得られない。
両腕と両足を、結局そのまま縛り上げられてしまった。

84: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:45:32.47 ID:POzuiMbe0.net
唯はぐねぐねと体を芋虫のように動かして仰向けになる。
目に飛び込んできた光景に、驚きを隠せなかった。

「んんーっ! んぐぅー!」

もう一度試みたが、ガムテープが口を覆っていて全く声が出ない。
私を縛った犯人。
それは、昨日私を捕まえた警備員だった。
「はぁはぁ」と肩で息をしながらパイプ椅子に座っている。

「んーっ!!! んーっ!!!」

唯はぐねぐねと体を揺らした。
どうにかして抜け出せないだろうか。
しばらくそうしていたが、一向にガムテープは緩んでくれなかった。

「平沢唯ちゃんだよね」

突然声をかけられて体が固まった。
顔を上げると、警備員が見下ろしている。

「平沢唯ちゃんでしょ」

もう一度、声が降ってきた。
声が出せないので返答のしようもない。
何より口を塞がれていなくても、恐怖で声が出せなかったであろう。
唯は冷汗を流しながら、ただただ頭上を見上げていた。

88: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:48:31.94 ID:POzuiMbe0.net
「覚えてない? 中学の時、同級生だったんだけど」

警備員はゆっくりとした動作で帽子を取った。
そこにあった顔に、全く見覚えが無い。

「んー、んー」唯は首を振った。

「そう」警備員の顔から色が消えた。
「まぁ、そうだよね。覚えているわけないか。
 喋ったこともない、同じクラスになったこともない、
 俺みたいなやつのことなんてさ」

語尾が震えていた。
頭をガリガリと掻き毟っている。

「じゃあ、俺の気持ちも知らないよね。
 ずっと、君のことが、好きだったんだけど」

唯は恐怖に目を見開いた。

「ずっと、ずっと。……こうしたかったんだよ!」

そう言って唯にのしかかってきた。

「んんんんーーーーーーっっっ!!!!!!!!!!」

その叫び声は、誰にも届かなかった。

93: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:51:20.03 ID:POzuiMbe0.net
「おかしいな」

監視映像を見ながら、店長は呟いた。

「何回見ても、どこでお菓子を入れているかが分からない」

画面に顔を近づけたり、離れたりする。
時折、一時停止や、巻き戻しのためにボタンを操作していた。

「もう一度最初からか」

唯が入店する。
お菓子コーナーをひたすらウロウロしては、
パッケージを眺めてうっとりとした表情を浮かべていた。
散々物色し、それを3周ほど繰り返したところで、
店の外へ向かって歩き出す。

「ダメだ、わからん」

店長は背もたれに身を預け、背伸びをした。
そして目頭を押さえる。
映像には、お菓子を入れるタイミングどころか、
バッグから現れたそのお菓子を、
手に取るところすら映っていないのだ。

「もう一度、最初からだな」

店長は、巻き戻しボタンを押した。

95: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:54:01.61 ID:POzuiMbe0.net
「唯ちゃん! 唯ちゃん!」

はぁはぁという荒い息遣いが耳元で聞こえる。

「んんんーーっ! んーっ!!!」

唯は必死に逃げようと顔を背けるが、
両手足を縛られた上に、
胸の上あたりに全体重をかけられているのでほとんど身動きが取れない。
胸が、苦しい。
鼻から激しい息遣いが漏れる。

「ふふ、ふぇふぇ。唯ちゃんも、◯◯してるんだね」

警備員は上体を起こすとそう言って、唯の制服の胸元に手をかけた。

「んーっ! んーっ!」

やめて。
そう懇願したいが、唯の叫びが意味を帯びることは無い。
その目からボロボロと涙が零れ落ちた。

99: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 16:57:07.06 ID:POzuiMbe0.net
「ん、待てよ」

店長はふと気づいた。
以前、巧妙な手口で万引きしていたグループがいたのを思い出したのだった。
そいつらは商品をバケツリレーのように渡して、
こっちの目を欺いていた。

「なるほど、そういうことか」

今までは唯が店内にいる映像しか見ていなかったが、
商品の受け渡しは店外で行われていたのかもしれない。
店長は、監視カメラの映像を店外のものに切り替えた。
警備員と唯が接触している。

「これは!」

店長は映像にかぶりついた。
そこには警備員が、唯のバッグにお菓子を入れるところが映っていた。
店長は慌てて立ち上がる。
店内に戻ると、近くにいた店員を捕まえて尋ねた。

「最近雇ったあの警備員は今どこにいる!?」

「あれ?」その店員はきょとんとした。
「店長に呼ばれた、って言って地下の事務所に降りていきましたけど。
 会えなかったんですか?」

店長はその店員の言葉を聞き終える前に、事務所に向かって駆け出した。

104: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 17:00:26.92 ID:POzuiMbe0.net
「くそっ!」

警備員は焦っていた。
唯の両手足を縛ってしまったせいで、服がうまく脱がせないのだった。

「ちっ!」

しばらくそうして荒い息をついていたが、
舌打ちをすると、手つきが先程よりも乱暴になった。
唯のスカートから、ブラウス、ブレザーを一気に上に捲り上げる。
どうやら綺麗に脱がすことを諦めたようだ。

「んんーっ!!!」

唯の吸い込まれるような白い肌が、露わになった。
警備員が荒い息をつきながら、そこへ顔を近づける。

「うへふぇふぇふぇええ、ふぇふぇ」


111: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 17:03:39.90 ID:POzuiMbe0.net
「んーっ! んーっ!」

唯が身悶える。
全身でナメクジが蠢いているような、
おぞましいほどの嫌悪感を覚えた。
反射的に顔を背け、体を仰け反らせた。

「ふぇふぇふぇ。唯ちゃん。◯◯◯るのぉ?」

警備員はその嫌らしい笑みを唯の顔に近づけた。

「んんっ!」

唯は固く目を閉じる。
そうしても気持ちの悪い薄ら笑みは、
瞼の裏に張り付いていて消えてはくれなかった。

「ふぇ。唯ちゃん。チューしたいんだねぇええへへへふぇふぇ」

声が近づいてくる。
やめて。
やめて。
やめて。
もう肌が触れ合いそうな距離にいることは、
その吐息で分かった。
やめて。
やめて。
バァン!
ドアがけたたましい音で鳴った。

116: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 17:06:51.63 ID:POzuiMbe0.net
「何をしているんだ! お前は!」

店長の声が聞こえた。

「んーっ!」

唯が叫ぶ。
警備員はその顔に、驚愕の色を浮かべて黙って首を振っていたが、
やおら口を開いた。

「や、や、あ。違うんですよ。
 万引きをした少女に、ちょっとお仕置きを」

バァン!と音がして、唯の上で警備員が身を竦めた。
店長が蹴り飛ばしたパイプ椅子が中空を舞って、
壁にぶつかり床に落ちた。
ガシャンと音が鳴る。

「早くその子を解放しろ! 今警察呼んでやるからな!」

店長が叫ぶと、警備員はのそりと立ち上がった。

129: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 17:09:44.48 ID:POzuiMbe0.net
「あの、ありがと、ございます」

涙声で唯が言った。
まだ涙が止まらないようで、鼻をスンスンと鳴らしている。
店長は顔を下に向け首を振った。

「いや、お礼を言われるようなことは何もしていないよ。
 すべてこちらのミスだ。すまない」

そう言って床に頭をこすりつけた。

「こいつは責任をもって処分する」

唯は床に伸びている警備員をちらりと見た。
店長に殴りかかって、返り討ちにあったのだった。

「君の心のケアも、全力でサポートしよう。
 あらぬ疑いをかけて、申し訳なかった」

床におでこをくっつけたままそう言った。
唯はきょとんとした顔でそれを見ていた。

133: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 17:12:46.57 ID:POzuiMbe0.net
「いや、いいですよ。そんなの」

唯が胸の前で手を振る。
店長が顔を上げた。

「それだとこちらの気が済まないんだ」

そう言ってまた頭を下げた。
唯は考え込む。

「じゃあ」唯が口を開くと、店長がまたその顔を上げる。
「お菓子ください」

唯は真剣な目をしていた。
「ふふっ」と店長が笑う。

「それくらいならお安い御用だ。
 なんなら、うちの店にあるお菓子全部持って行ったっていいよ」

「えっ!」唯の顔が輝いた。
「ホント!」

その顔に笑みを浮かべた。

「ああ、いいとも」

店長も笑顔でそれを返した。

140: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/06/19(木) 17:16:11.05 ID:POzuiMbe0.net
それからほどなくして到着した警察に、警備員は連れていかれた。
詳しく話を聞くと、唯の同級生でもなんでもなく、
偶然見つけた唯を相手に、
妄想を繰り返していただけのただのストーカーだということが分かった。
道理で見覚えのない顔だったはずだ。
唯はそんなことを思っていた。

「本当に、すまなかったね」

店長が言う。

「いいですよ。またお菓子貰いに来ます」

両手にお菓子を抱えた唯が、にっこりと笑う。
店長に会釈をして、家路についた。
帰り道、家まで我慢しきれなくなって、
抱えたお菓子のうちのひとつを開けた。

「あ、これおいしい」

パクパクと頬張る。
手が止まらなくなった。
唯が手に持ったお菓子の箱には、
店長の手書きのポップが躍っていた。

終わり