1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:01:52.42 ID:mjypWFw50.net
「嘘……。リゼちゃん……っ!? リゼちゃんっ!!!」
ココアは床に横たわるリゼに駆け寄った。
リゼの胸元が赤黒く染まっている。
「リゼちゃん……! リゼちゃん……!」
呻くようにして名前を叫びながらその体を揺さぶるが、
リゼからはなんの反応もない。
だらしなく開いた口からは真っ赤な鮮血が、
驚愕に見開かれた目からは透明な液体が流れたあとが見える。
「そんな……」
ココアは呟くように言って、リゼの胸元に顔をうずめる。
鉄臭いにおいが鼻腔をくすぐった。
ココアは床に横たわるリゼに駆け寄った。
リゼの胸元が赤黒く染まっている。
「リゼちゃん……! リゼちゃん……!」
呻くようにして名前を叫びながらその体を揺さぶるが、
リゼからはなんの反応もない。
だらしなく開いた口からは真っ赤な鮮血が、
驚愕に見開かれた目からは透明な液体が流れたあとが見える。
「そんな……」
ココアは呟くように言って、リゼの胸元に顔をうずめる。
鉄臭いにおいが鼻腔をくすぐった。
引用元: ・チノ「ココアさん。そのリゼさんの死体、どうするんですか?」
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4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:03:53.78 ID:mjypWFw50.net
遡ること約30分前。ラビットハウス。
「お前たちも、銃器の扱いくらいは覚えておいた方がいいぞ」
リゼが得意げな顔で演説をしていた。
チノは真剣な目でそれを眺めている。
「こういうタイプの銃はこう構えて……」
言いながらポーズをとる。
父親仕込みのリゼの所作は、
とても様になっているようにココアの目には映った。
「リゼちゃん、すごい!」
「そ、それほどでもないけどな」
ココアがキラキラとした眼差しを向けると、
照れたように頬を赤く染めたリゼは、視線をそらすようにしてそう言った。
「お前たちも、銃器の扱いくらいは覚えておいた方がいいぞ」
リゼが得意げな顔で演説をしていた。
チノは真剣な目でそれを眺めている。
「こういうタイプの銃はこう構えて……」
言いながらポーズをとる。
父親仕込みのリゼの所作は、
とても様になっているようにココアの目には映った。
「リゼちゃん、すごい!」
「そ、それほどでもないけどな」
ココアがキラキラとした眼差しを向けると、
照れたように頬を赤く染めたリゼは、視線をそらすようにしてそう言った。
12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:08:34.10 ID:mjypWFw50.net
「ちょっと休憩。あとでチノとココアにもやってもらうからな」
リゼはそう言って部屋を出て行こうとした。
「リゼちゃんおトイレ? なら私も行こうっと」
そのあとにココアが続く。
部屋にひとり取り残されたチノの目が、
ふと、机の上の銃をその視界に捉えた。
「これ、モデルガンですよね」
手に取りしげしげと見つめると、そう呟いた。
しばらく手の上で弄んでいたチノだったが、
突然鋭い目つきになると、部屋の隅にある机に向けて歩き出した。
「せっかくだから、本物に変えておいてあげましょう」
机の引き出しを開けると、
そこには同じタイプの拳銃が、黒く鈍い光を放っておさまっていた。
リゼはそう言って部屋を出て行こうとした。
「リゼちゃんおトイレ? なら私も行こうっと」
そのあとにココアが続く。
部屋にひとり取り残されたチノの目が、
ふと、机の上の銃をその視界に捉えた。
「これ、モデルガンですよね」
手に取りしげしげと見つめると、そう呟いた。
しばらく手の上で弄んでいたチノだったが、
突然鋭い目つきになると、部屋の隅にある机に向けて歩き出した。
「せっかくだから、本物に変えておいてあげましょう」
机の引き出しを開けると、
そこには同じタイプの拳銃が、黒く鈍い光を放っておさまっていた。
15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:11:14.03 ID:mjypWFw50.net
「ん?」
休憩を終えて再び拳銃を手にしたリゼが、不思議そうな顔をした。
「リゼさん。どうかしましたか?」
チノが口を開く。
リゼはしばらく黙ったまま拳銃を見つめていたが、
ぱっと顔を上げた。
「いや、なんでもないよ」
なんだか先程より少し重たくなったような気がする。
リゼの頭にそんな考えがよぎったが、ただの気のせいだと思うことにした。
「じゃあ。二人にもやってもらうからな」
軽い調子でそう言うと、リゼはココアに拳銃を手渡した。
休憩を終えて再び拳銃を手にしたリゼが、不思議そうな顔をした。
「リゼさん。どうかしましたか?」
チノが口を開く。
リゼはしばらく黙ったまま拳銃を見つめていたが、
ぱっと顔を上げた。
「いや、なんでもないよ」
なんだか先程より少し重たくなったような気がする。
リゼの頭にそんな考えがよぎったが、ただの気のせいだと思うことにした。
「じゃあ。二人にもやってもらうからな」
軽い調子でそう言うと、リゼはココアに拳銃を手渡した。
20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:13:44.25 ID:mjypWFw50.net
「こ、これで合ってる?」
ぎこちない姿勢でココアが銃を構える。
リゼは腕を組んで、気難しそうな顔でそれを見つめていた。
「別に悪くないんだけど」リゼが表情を変えずに言う。
「脇が甘いし腰も引けてるから、もう少しこうした方がいいかな」
後ろから抱きしめるようにして、ココアの姿勢を正した。
「こうかな?」
「んー。まぁいいんじゃないか」
再度ココアが銃を構えると、リゼはそれに合格点を出した。
「それなら反動も受けづらいしな」
ぎこちない姿勢でココアが銃を構える。
リゼは腕を組んで、気難しそうな顔でそれを見つめていた。
「別に悪くないんだけど」リゼが表情を変えずに言う。
「脇が甘いし腰も引けてるから、もう少しこうした方がいいかな」
後ろから抱きしめるようにして、ココアの姿勢を正した。
「こうかな?」
「んー。まぁいいんじゃないか」
再度ココアが銃を構えると、リゼはそれに合格点を出した。
「それなら反動も受けづらいしな」
23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:16:35.46 ID:mjypWFw50.net
「リゼちゃーん」
ココアが満面の笑みを浮かべながら、リゼに銃口を向ける。
「はぁ」リゼはため息を吐くと、軽い笑顔を見せた。
「冗談でもやめろよ。そういうことは」
笑いながら続ける。
「まぁモデルガンだし、弾は出ないけどな」
そう言って両手を広げた。
ココアは相変わらずの笑みを浮かべている。
「ばーん!」ココアが言いながら、引き金を引いた。
ココアが満面の笑みを浮かべながら、リゼに銃口を向ける。
「はぁ」リゼはため息を吐くと、軽い笑顔を見せた。
「冗談でもやめろよ。そういうことは」
笑いながら続ける。
「まぁモデルガンだし、弾は出ないけどな」
そう言って両手を広げた。
ココアは相変わらずの笑みを浮かべている。
「ばーん!」ココアが言いながら、引き金を引いた。
25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:19:03.57 ID:mjypWFw50.net
「きゃあ!」ココアは反動で、背後のロッカーにしたたか頭をぶつけてしまう。
予想外の衝撃だったので、うまく受け身が取れなかった。
「いたた……」
後頭部をさすりながら視線を上げたココアの目に、
信じられないものが飛び込んできた。
「え……? ええっ!? リゼちゃんっ!?」
リゼの胸元が真っ赤に染まっていた。
呆けたような顔で、胸元に手を当てている。
「あ、ああ……」
何か言おうとしたのか開いたリゼの口から、
真っ赤な血のあぶくがたった。
予想外の衝撃だったので、うまく受け身が取れなかった。
「いたた……」
後頭部をさすりながら視線を上げたココアの目に、
信じられないものが飛び込んできた。
「え……? ええっ!? リゼちゃんっ!?」
リゼの胸元が真っ赤に染まっていた。
呆けたような顔で、胸元に手を当てている。
「あ、ああ……」
何か言おうとしたのか開いたリゼの口から、
真っ赤な血のあぶくがたった。
31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:22:01.36 ID:mjypWFw50.net
何かが弾けるような乾いた音と同時に、
リゼは胸元に熱さを覚えた。
次いで、火薬のにおいが鼻を突く。
「?」
熱さの原因を確かめるように、
無意識のうちに胸元に手が伸びた。
生暖かい液体が、その指先に触れる。
「あ、ああ……」
なんで。ココア。
湧いて出たリゼの疑問は、鮮血の泡となって消えた。
リゼは胸元に熱さを覚えた。
次いで、火薬のにおいが鼻を突く。
「?」
熱さの原因を確かめるように、
無意識のうちに胸元に手が伸びた。
生暖かい液体が、その指先に触れる。
「あ、ああ……」
なんで。ココア。
湧いて出たリゼの疑問は、鮮血の泡となって消えた。
39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:25:08.22 ID:mjypWFw50.net
「リゼちゃん……っ!」
もう動かなくなってしまったリゼの胸元に顔をうずめ、
ココアが慟哭を漏らしていた。
その震える肩に、そっと小さな手が置かれる。
「チノちゃん……」
振り返ると、そこに無表情のチノの顔があった。
チノはココアと目が合うと、黙って首を振る。
「もう、リゼさんはダメです。死んでいますから」
「……そんな」
直視できない現実に、
ココアはその顔を蒼白に染めることしかできなかった。
もう動かなくなってしまったリゼの胸元に顔をうずめ、
ココアが慟哭を漏らしていた。
その震える肩に、そっと小さな手が置かれる。
「チノちゃん……」
振り返ると、そこに無表情のチノの顔があった。
チノはココアと目が合うと、黙って首を振る。
「もう、リゼさんはダメです。死んでいますから」
「……そんな」
直視できない現実に、
ココアはその顔を蒼白に染めることしかできなかった。
45: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:27:58.14 ID:mjypWFw50.net
「……救急車、じゃない。警察を、呼ばないと」
ココアはフラフラと立ち上がった。
服の裾を引っ張られる感触がある。
「お願いだから離して。チノちゃん」
「絶対離しませんよ。ココアさん」
ココアはそのまま電話機に向かって歩き出したが、
ズルズルと服が伸びていく抵抗感に、たまらず歩みを止めた。
そして、ゆっくりと振り返る。
「どうしよう……。チノちゃん……」
その顔はひどく青ざめていた。
「大丈夫です、ココアさん。私の言うとおりにしてください」
ココアはフラフラと立ち上がった。
服の裾を引っ張られる感触がある。
「お願いだから離して。チノちゃん」
「絶対離しませんよ。ココアさん」
ココアはそのまま電話機に向かって歩き出したが、
ズルズルと服が伸びていく抵抗感に、たまらず歩みを止めた。
そして、ゆっくりと振り返る。
「どうしよう……。チノちゃん……」
その顔はひどく青ざめていた。
「大丈夫です、ココアさん。私の言うとおりにしてください」
52: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:30:58.69 ID:mjypWFw50.net
「はぁ……はぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……」
狭い浴室に、二人の喘ぐような吐息が重なる。
リゼの死体の解体は、もう胴体部分を残すだけとなっていた。
「肘と膝の関節は、後回しに、しましょう。
胴体と切り離すだけで、もう精いっぱいです」
荒い息を吐きながら、言葉を区切るようにしてチノが言った。
「……そうね」
そう力なく答えたココアは、
胃袋から何かが上がってくる感覚に耐えきれず、前傾姿勢を取った。
「うぇぇっ……!」
「ぜぇ……ぜぇ……」
狭い浴室に、二人の喘ぐような吐息が重なる。
リゼの死体の解体は、もう胴体部分を残すだけとなっていた。
「肘と膝の関節は、後回しに、しましょう。
胴体と切り離すだけで、もう精いっぱいです」
荒い息を吐きながら、言葉を区切るようにしてチノが言った。
「……そうね」
そう力なく答えたココアは、
胃袋から何かが上がってくる感覚に耐えきれず、前傾姿勢を取った。
「うぇぇっ……!」
59: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:34:54.46 ID:mjypWFw50.net
「げほっ! げほっ!」
ココアは先程からもう何度も嘔吐を繰り返しているので、
その”上がってきた何か”は、胃袋を内側から殴りつけるような衝撃と、
鼻腔をつく酸っぱいにおいをさせただけで、
自分の中に何もかもを押しとどめてしまった。
口の端から垂れた唾液が、粘性を持って床まで伸びている。
胃液とともにこの苦しい思いも排出させたかったのに。
ココアは呻くようにしながら、再び涙をこぼした。
「泣いている暇はありませんよ。
夜が明ける前に終わらせないといけませんから」
相変わらずの無表情でチノが言う。
その言葉でココアは、
今まで自分がギリギリで保っていた現実感というものを、
すべて失ってしまったような気がした。
ココアは先程からもう何度も嘔吐を繰り返しているので、
その”上がってきた何か”は、胃袋を内側から殴りつけるような衝撃と、
鼻腔をつく酸っぱいにおいをさせただけで、
自分の中に何もかもを押しとどめてしまった。
口の端から垂れた唾液が、粘性を持って床まで伸びている。
胃液とともにこの苦しい思いも排出させたかったのに。
ココアは呻くようにしながら、再び涙をこぼした。
「泣いている暇はありませんよ。
夜が明ける前に終わらせないといけませんから」
相変わらずの無表情でチノが言う。
その言葉でココアは、
今まで自分がギリギリで保っていた現実感というものを、
すべて失ってしまったような気がした。
62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:39:48.63 ID:mjypWFw50.net
「これで大丈夫でしょう」
切り刻んだのち、細かく叩き砕いたリゼの死体は、
煮出した紅茶葉とともにゴミ袋にまとめた。
「こうしておけば重さでばれることはありません。
水を含んだ紅茶葉は、ゴミ袋一杯で20~30kgくらいにはなりますし、
不快なにおいもごまかしてくれますからね。
まぁ、生ごみなんで、それほど気にすることもないと思いますが」
およそ20個にも及ぶゴミ袋を前にして、チノがそう言った。
「思ったより時間がかかってしまいました」
あれから丸2日ほど経過している。
ココアは、慚悔の念や、鼻についた腐臭を追い出すかのように、
黙って頭を横に振っていた。
切り刻んだのち、細かく叩き砕いたリゼの死体は、
煮出した紅茶葉とともにゴミ袋にまとめた。
「こうしておけば重さでばれることはありません。
水を含んだ紅茶葉は、ゴミ袋一杯で20~30kgくらいにはなりますし、
不快なにおいもごまかしてくれますからね。
まぁ、生ごみなんで、それほど気にすることもないと思いますが」
およそ20個にも及ぶゴミ袋を前にして、チノがそう言った。
「思ったより時間がかかってしまいました」
あれから丸2日ほど経過している。
ココアは、慚悔の念や、鼻についた腐臭を追い出すかのように、
黙って頭を横に振っていた。
64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:42:46.49 ID:mjypWFw50.net
ココアは何度も自首することを考え、それを口にしたが、
そのたびにチノに強い口調で諭された。
「リゼさんを撃ったときが最後のチャンスでしたよ。
隠ぺい工作を始めた時点で、自首しても罪の重さは変わりません」
「あれはチノちゃんが……」
ココアが言いかけると、チノは深く頷いた。
「そうですね。ココアさんが自首すると、私も捕まります。
私は死体遺棄と死体損壊。最長でも3年の懲役刑です。
まぁ13歳なので実刑は受けないでしょうね。
それに”ココアさんに脅された”って証言すれば、
執行猶予つきか、もしくはほぼ無罪を勝ち取れるんじゃないでしょうか」
「そんな……」
そのたびにチノに強い口調で諭された。
「リゼさんを撃ったときが最後のチャンスでしたよ。
隠ぺい工作を始めた時点で、自首しても罪の重さは変わりません」
「あれはチノちゃんが……」
ココアが言いかけると、チノは深く頷いた。
「そうですね。ココアさんが自首すると、私も捕まります。
私は死体遺棄と死体損壊。最長でも3年の懲役刑です。
まぁ13歳なので実刑は受けないでしょうね。
それに”ココアさんに脅された”って証言すれば、
執行猶予つきか、もしくはほぼ無罪を勝ち取れるんじゃないでしょうか」
「そんな……」
68: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:46:01.01 ID:mjypWFw50.net
「でも。ココアさんの事態は考えている以上に深刻ですよ。
拳銃を使った殺人ですからね。
しかもたまたま居合わせた年端もいかない人間に、
解体作業まで強要しています。
年齢を考慮に入れてみても、死刑、良くて無期懲役でしょう」
チノの言葉を聞いてココアはへたり込んだ。
その目から大粒の涙が零れ落ちる。
「なんでぇ……っ! なんでこんなことにぃ……っ!」
嗚咽を漏らしながら床にうずくまった。
そんなココアの頭上から、冷たい声が降ってくる。
「だからココアさんに自首はお勧めしません。
ここまでやったら最後まで続けるしかないんですよ。
嘘を吐くって言うのはそういうことです」
冷静さを失ったココアの頭は、
もう考えることを拒否してしまっていた。
拳銃を使った殺人ですからね。
しかもたまたま居合わせた年端もいかない人間に、
解体作業まで強要しています。
年齢を考慮に入れてみても、死刑、良くて無期懲役でしょう」
チノの言葉を聞いてココアはへたり込んだ。
その目から大粒の涙が零れ落ちる。
「なんでぇ……っ! なんでこんなことにぃ……っ!」
嗚咽を漏らしながら床にうずくまった。
そんなココアの頭上から、冷たい声が降ってくる。
「だからココアさんに自首はお勧めしません。
ここまでやったら最後まで続けるしかないんですよ。
嘘を吐くって言うのはそういうことです」
冷静さを失ったココアの頭は、
もう考えることを拒否してしまっていた。
71: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:49:27.00 ID:mjypWFw50.net
あれから1か月がたった。
最初こそリゼの失踪を騒いでいたマスコミも、もう飽きてしまったのか、
お昼のワイドショーで申し訳程度に続報を流す程度になっていた。
「ココアさん。そろそろ高校に行ったほうがいいんじゃないですか」
チノは部屋の前でそう声をかけた。
ココアはあれ以来、自室に引きこもってしまっている。
「……チノちゃん。ごめんなさい」
日に日にしゃべる言葉も少なくなっていた。
チノは毎日、毎日。
飽きもせずに、ココアの扉を叩き続ける。
「いい加減、出てきてくださいよ」
呟くようにして言ったチノの口元が、笑みに大きく歪んだ。
最初こそリゼの失踪を騒いでいたマスコミも、もう飽きてしまったのか、
お昼のワイドショーで申し訳程度に続報を流す程度になっていた。
「ココアさん。そろそろ高校に行ったほうがいいんじゃないですか」
チノは部屋の前でそう声をかけた。
ココアはあれ以来、自室に引きこもってしまっている。
「……チノちゃん。ごめんなさい」
日に日にしゃべる言葉も少なくなっていた。
チノは毎日、毎日。
飽きもせずに、ココアの扉を叩き続ける。
「いい加減、出てきてくださいよ」
呟くようにして言ったチノの口元が、笑みに大きく歪んだ。
74: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:52:33.30 ID:mjypWFw50.net
「チノちゃん……。私……、私……っ!」
チノはいつものように、ココアの食事を部屋に運んだ。
ココアもいつものように、チノの姿を認めると泣き叫ぶ。
「大丈夫ですよ。私はずっとここにいますから」
リゼが失踪してから、もう半年の月日が流れている。
ココアは随分とやつれてしまったようだった。
「チノちゃん……っ!」
ココアはチノの胸に顔を押し付けて泣いていた。
チノはその頭を優しくなでてやる。
「大丈夫ですよ。ココアお姉ちゃん」
チノはいつものように、ココアの食事を部屋に運んだ。
ココアもいつものように、チノの姿を認めると泣き叫ぶ。
「大丈夫ですよ。私はずっとここにいますから」
リゼが失踪してから、もう半年の月日が流れている。
ココアは随分とやつれてしまったようだった。
「チノちゃん……っ!」
ココアはチノの胸に顔を押し付けて泣いていた。
チノはその頭を優しくなでてやる。
「大丈夫ですよ。ココアお姉ちゃん」
79: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:56:27.28 ID:mjypWFw50.net
「チノちゃん! ダメじゃない、また散らかして……」
ココアがせっせと部屋を片付けている。
チノはその様子を、満足げに眺めていた。
「えへへ。ごめんね、お姉ちゃん」
「まったくもう」
ココアはぶつくさと文句を言いながらも、手を止めなかった。
「私ね。お姉ちゃんがいないと、ダメだから」
チノが口元を歪めながら言う。
リゼの”失踪”から、もう5年の月日が流れていた。
ココアがせっせと部屋を片付けている。
チノはその様子を、満足げに眺めていた。
「えへへ。ごめんね、お姉ちゃん」
「まったくもう」
ココアはぶつくさと文句を言いながらも、手を止めなかった。
「私ね。お姉ちゃんがいないと、ダメだから」
チノが口元を歪めながら言う。
リゼの”失踪”から、もう5年の月日が流れていた。
80: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 20:59:36.32 ID:mjypWFw50.net
『謎に包まれていた10年前の少女失踪事件。犯人は被害者と友人同士』
そんな一報が流れると、それは瞬時に国中を駆け巡った。
まだ幼さの残る当時16歳の少女が、友人をバラバラにして捨てたというのだ。
「もうそろそろ、私も自立しないとね」
テレビで流れるニュースを見ながら、チノは呟く。
「姉妹ごっこはおしまい」
軽く息を吐きテレビを消すと、ソファから立ち上がった。
そんな一報が流れると、それは瞬時に国中を駆け巡った。
まだ幼さの残る当時16歳の少女が、友人をバラバラにして捨てたというのだ。
「もうそろそろ、私も自立しないとね」
テレビで流れるニュースを見ながら、チノは呟く。
「姉妹ごっこはおしまい」
軽く息を吐きテレビを消すと、ソファから立ち上がった。
85: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 21:02:45.51 ID:mjypWFw50.net
「な、なんで……? チノちゃん……」
チノの話を聞いたココアは、頭が混乱した。
私たちは本物の姉妹じゃなかった……?
そんなことって……。
ココアは必死に当時の記憶をたどった。
「思い出しました? ”ココアさん”?」
ココアは表情を驚愕の色に染めて、黙って首を横に振った。
「嘘だ……。嘘だよ……」
「嘘じゃありませんよ」
呻くようにして言ったココアを、ぴしゃりとはねのける。
「嘘じゃ、ありませんよ」
チノはそう言って、にっこりと笑った。
チノの話を聞いたココアは、頭が混乱した。
私たちは本物の姉妹じゃなかった……?
そんなことって……。
ココアは必死に当時の記憶をたどった。
「思い出しました? ”ココアさん”?」
ココアは表情を驚愕の色に染めて、黙って首を横に振った。
「嘘だ……。嘘だよ……」
「嘘じゃありませんよ」
呻くようにして言ったココアを、ぴしゃりとはねのける。
「嘘じゃ、ありませんよ」
チノはそう言って、にっこりと笑った。
88: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 21:05:47.75 ID:mjypWFw50.net
ピンポーン。
ソファから立ち上がったチノの耳に、
インターフォンの音が飛び込んできた。
誰だろう。こんな時間に。
確認するより早く、玄関がガチャリと音をたてた。
「警察です。ちょっとお話をお聞かせください」
「……なんでしょう」
ココアさんの事件についてだろうか。
私と関わり合うような証拠は残していないはずだけど……。
チノは嫌な胸騒ぎを覚えていた。
ソファから立ち上がったチノの耳に、
インターフォンの音が飛び込んできた。
誰だろう。こんな時間に。
確認するより早く、玄関がガチャリと音をたてた。
「警察です。ちょっとお話をお聞かせください」
「……なんでしょう」
ココアさんの事件についてだろうか。
私と関わり合うような証拠は残していないはずだけど……。
チノは嫌な胸騒ぎを覚えていた。
92: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 21:13:43.20 ID:mjypWFw50.net
「この国にある拳銃は大半が密輸品ですが、
あなたの家にかつてあったものは正規品ですよね」
刑事の問いかけに、チノの体がビクリと跳ねた。
頭がクラクラとするのは、
眩しいほどに自分を照らす卓上ライトのせいだけなのだろうか。
「リゼさん、件の事件の被害者ですが、
彼女の肋骨内にめり込んだ状態で見つかった弾丸は、
あなたの家にある拳銃から発射されたものです。
弾丸についた傷を見れば分かるんですよ」
そんな馬鹿な。
チノは思う。拳銃は確かに処分したはずだ。
「ココアさんを、もちろんご存知ですよね。
彼女が証拠品として提出してくれました。
リゼさんの遺体の一部といっしょにね」
取調室の机の上でゴトリと音をたてたそれは、
透明なビニール袋の中で、10年前と変わらず黒く鈍い光を放っていた。
あなたの家にかつてあったものは正規品ですよね」
刑事の問いかけに、チノの体がビクリと跳ねた。
頭がクラクラとするのは、
眩しいほどに自分を照らす卓上ライトのせいだけなのだろうか。
「リゼさん、件の事件の被害者ですが、
彼女の肋骨内にめり込んだ状態で見つかった弾丸は、
あなたの家にある拳銃から発射されたものです。
弾丸についた傷を見れば分かるんですよ」
そんな馬鹿な。
チノは思う。拳銃は確かに処分したはずだ。
「ココアさんを、もちろんご存知ですよね。
彼女が証拠品として提出してくれました。
リゼさんの遺体の一部といっしょにね」
取調室の机の上でゴトリと音をたてたそれは、
透明なビニール袋の中で、10年前と変わらず黒く鈍い光を放っていた。
93: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 21:16:36.30 ID:mjypWFw50.net
チノは事件当日のことを思い返す。
ココアさんを説得して。
死体の処理。すべてを終えてから。
拳銃はその時に確かに処分したはず。
「あっ……」
チノは気付いた。頭の中で想像を巡らせる。
あのとき。放心したココアさんは、ずっと拳銃を握っていた。
そして事件の隠ぺい工作を……。
必死に証拠品を隠そうとして、机の引き出しを開けた。
そして。
私と同じようにすり替えたのか!?
机の中のモデルガンと。
全てを諦めたように、チノの両腕がだらりと下がった。
「事件の主犯は、あなたですね」
刑事の言葉が、チノの薄ぼんやりとした頭の中に響いた。
ココアさんを説得して。
死体の処理。すべてを終えてから。
拳銃はその時に確かに処分したはず。
「あっ……」
チノは気付いた。頭の中で想像を巡らせる。
あのとき。放心したココアさんは、ずっと拳銃を握っていた。
そして事件の隠ぺい工作を……。
必死に証拠品を隠そうとして、机の引き出しを開けた。
そして。
私と同じようにすり替えたのか!?
机の中のモデルガンと。
全てを諦めたように、チノの両腕がだらりと下がった。
「事件の主犯は、あなたですね」
刑事の言葉が、チノの薄ぼんやりとした頭の中に響いた。
96: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 21:19:52.94 ID:mjypWFw50.net
取調室から留置場に移動しながら、チノは考えていた。
ココアさんはどうして証拠品の拳銃を持ち続けていたんだろう。
いつから私がすり替えた犯人だと気付いていたんだろう。
チノは、自身が自首を咎めた時のココアの様子を思い出した。
ココアさんは、私に罪が被ることを恐れていたのだろうか。
だから私が犯人だと、気付きながらも隠していたのだろうか。
いったいなぜ。
ココアさんは守ろうとしたのか。
”妹である私”を。
それとも”姉である自分”を?
チノの考えは、同じところをグルグルとまわっていた。
ココアさんはどうして証拠品の拳銃を持ち続けていたんだろう。
いつから私がすり替えた犯人だと気付いていたんだろう。
チノは、自身が自首を咎めた時のココアの様子を思い出した。
ココアさんは、私に罪が被ることを恐れていたのだろうか。
だから私が犯人だと、気付きながらも隠していたのだろうか。
いったいなぜ。
ココアさんは守ろうとしたのか。
”妹である私”を。
それとも”姉である自分”を?
チノの考えは、同じところをグルグルとまわっていた。
102: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 21:23:38.03 ID:mjypWFw50.net
”ここまでやったら最後まで続けるしかないんですよ。
嘘を吐くって言うのはそういうことです”
突然チノの頭に声が響いた。
これは誰の言葉だったっけ。
私は嘘を最後まで吐き続けられなかった。
その罰をこれから受けるというのだろうか。
「お姉ちゃん……。ごめんなさい……」
呟くように言ったチノのその言葉は、
コーヒーに入れたミルクのようにその場に留まってはくれずに、
空気中を漂うこともなく、そのまま霧散して消えるのだった。
終わり
嘘を吐くって言うのはそういうことです”
突然チノの頭に声が響いた。
これは誰の言葉だったっけ。
私は嘘を最後まで吐き続けられなかった。
その罰をこれから受けるというのだろうか。
「お姉ちゃん……。ごめんなさい……」
呟くように言ったチノのその言葉は、
コーヒーに入れたミルクのようにその場に留まってはくれずに、
空気中を漂うこともなく、そのまま霧散して消えるのだった。
終わり
108: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/08/04(月) 21:34:31.96 ID:mjypWFw50.net
ここまで読んでくれた方、レスくれた方ありがとうございました。
疑問に思っている人がいるみたいなんで補足をしておきます。
事件直後は、ココアは混乱しているためチノの言いなり。
このときにはすでに銃をすり替えた犯人は分かっている。
そのうちにチノを本物の妹だと思うようになり、
精神的に落ち着いてきても庇うようになる。
姉妹ごっこに飽きたチノがココアを通報。
そのときの告白によりココアの記憶が戻ったため証拠品を提出、チノ逮捕。
チノはココアを騙し続けた良心の呵責により自白。
こんな感じです。
疑問に思っている人がいるみたいなんで補足をしておきます。
事件直後は、ココアは混乱しているためチノの言いなり。
このときにはすでに銃をすり替えた犯人は分かっている。
そのうちにチノを本物の妹だと思うようになり、
精神的に落ち着いてきても庇うようになる。
姉妹ごっこに飽きたチノがココアを通報。
そのときの告白によりココアの記憶が戻ったため証拠品を提出、チノ逮捕。
チノはココアを騙し続けた良心の呵責により自白。
こんな感じです。
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