1: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:28:18.03 ID:H60w1bG30

今日はオフの日。せっかくの良い天気なのでお散歩をしていると、公園のブランコに乗っている小学生くらいの女の子に目が止まりました。

その子はとても悲しそうな表情で、小さくゆっくりブランコを前後に揺らしていました。

私は口下手ですので、知らない子に話しかけるなんて普段ならとてもできません。

でも、心からその子が心配になって、なんだか放っておけなくて、話しかけずにはいられませんでした。

 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1523780897

引用元: 【デレマスSS】綾瀬穂乃香「つなげること、楽しむこと」 



2: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:29:27.40 ID:H60w1bG30

穂乃香「こんにちは、あの、何か悩み事でしょうか?とても辛そうな顔をしているので」

女の子は驚いたように目をパッと開きます。どうやら警戒されてしまっているようです。

なんとかまずは警戒をとかないとと思うのですが、良い案が浮かびません。うぅ、未央ちゃんならきっと上手くやれるんでしょうね...。



とにかく、彼女の目を見てお話しすれば心が通じ合うはずです。里奈さんに以前そう教わりました。

女の子の顔に視線を戻すと、彼女の視線が私の鞄の方に向いているのに気がつきました。

女の子の頬の筋肉が少しこわばっています。笑うのをこらえているようですが、私の鞄に笑わせるようなものは...。あっ、もしかして。

私は鞄にぶら下がってる彼女を手にし、ふるふると揺らしながらお話しします。

穂乃香「ぴにゃー♩」

すると、女の子は堪えきれずに声を出して笑い始めました。

女の子「あははははなにそれーぶさいくー」

ぶっ、ぶさいく!?いつもみんなに言われていることですが、小さな子に言われてしまうとなんだかダメージが...。

でも、女の子の警戒は少しとかれたようでホッとしました。ありがとうぴにゃ。大丈夫ですよ、ぴにゃの可愛さはいつかきっとみんなに伝わるから。

 

3: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:30:30.28 ID:H60w1bG30

警戒をといてくれた女の子は、ゆっくりゆっくりお話をしてくれました。

女の子「ピアノのレッスンいきたくないの」

穂乃香「どうしてですか?」

女の子「れんしゅうたくさんやってもね。うまくならないの」

女の子「でも、レッスンにいかないといけないから」

穂乃香「ピアノを弾くの、嫌いになりましたか?」

そうたずねると、女の子は大きく首を横に振りました。

女の子「ううん。だいすき。コンクールでいちばんも取ったことあるし...」

女の子「きらいになってないの。でもレッスンいやなの。なんでだろ...?」

女の子のその言葉に、私がなぜ彼女に声をかけずにいられなかったのか気がつきました。

ですので私は大丈夫です。何をすれば良いか知っています。

 

4: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:32:06.38 ID:H60w1bG30

穂乃香「わかりました。じゃあ、今日はレッスンをお休みして私と一緒に遊びませんか?」

女の子は体をビクッとして反応しました。驚いたみたいです。きっとこの子は真面目な子で、レッスンを休むなんて発想はなかったのでしょう。

恐る恐る女の子は答えます。

女の子「でも、おさぼりしたらだめだよ。おかあさんにもおこられちゃう...」

穂乃香「大丈夫。私に任せてください」

もちろん初めからレッスンをサボらせる気などありません。だから、キチンとお休みさせてもらえばいいのです。

それに、女の子を勝手に連れ回したりなんてしたら誘拐になってしまいます。

拓海さんが言ってました。いつでもスジを通さねばならないと。私も同感です。

彼女にそっとスマートフォンを手渡してお願いします。

穂乃香「あなたのお家にお電話してください。親御さんが電話に出たら、お姉ちゃんに替わるって言ってお電話を返してくださいね」

 

5: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:33:01.81 ID:H60w1bG30

さて、名づけて『お願い大作戦』です。お母さんに直接電話をして許可を貰うだけの大作戦。はぁ...あずきちゃんならもっと良い大作戦を考えそうです。

女の子「はい、おねーちゃん」

電話がつながったらしく、スマートフォンを返してもらいました。さて、ここからが勝負です。

穂乃香「お電話変わりました私綾s 母親「あなたなんなんですか!?ウチの子を誘拐しようとしてるんですか!?!?うちの子は大丈夫なんですか!?」

......どうやら大作戦は失敗みたいです。誘拐犯に間違われてしまいました。

たまらずにもう一度女の子にスマートフォンを渡します。

穂乃香「ごめんなさい。お母さんに直接お話ししたほうが良いみたいです。公園に来てってお願いしてくれますか?」

女の子は電話先で狼狽しているお母さんにおっかなびっくりしながら、なんとか用件を伝えてくれました。

 

6: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:34:19.61 ID:H60w1bG30

############
数十分後
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母親「よかった。もぅ、心配したんだから」

息を切らして走ってきて、女の子を見るや否やお母さんは女の子を抱きしめました。

あぁ、私が至らないせいでご迷惑をかけてしまったなぁという罪悪感とともに、心があったかくなります。

今日寮に帰ったら、久しぶりに両親に電話をしてみようかな?

そんなことをぼんやり考えていると、キッと睨みつけられている視線に気がつきます。その方に目をやると、鬼のようなお母さんの顔が見えました。

母親「なんなんですかあなた!?うちの子に何の用ですか?」

また誤解を招いてはいけないので、ゆっくりゆっくり話します。女の子がレッスンに行きたくないと悩んでいて、私が一緒に遊んであげようとしたと。

説明しながら思い直すと、なんだか私ただの誘拐犯のような気がしました。その証拠に、お母さんは警戒心を隠しもせずに私に言います。

母親「なんであなたがウチの子と遊ばないといけないんですか?」

きっと私はその答えを持ち合わせているのでしょうけど、キチンと伝わるでしょうか?

伝わるかな?ではなく伝えなければ。心の持ちようです。そうですよね?キャシーさん。

 

7: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:35:28.17 ID:H60w1bG30

穂乃香「私、綾瀬穂乃香といいます。おそらくご存知ないとは思うのですが、昔バレエをやっていました。それで、この子と同じスランプに陥ったことがあるんです」

お母さんは警戒をとかないままですが、私の話に耳を傾けてくれています。

穂乃香「私にはバレエしかなかったので、毎日が苦しくて、辛くて。でも、そんな時にバレエ以外の世界を教えてもらって。それで、私は救われました」

穂乃香「だからこの子のことがちょっと心配になって。お節介だって思うんですけど」

お母さんは何か考え事をしているようでした。お母さんの手を握りながら、女の子がモゾモゾと所在無げにしています。

私の思い伝わったかなとドキドキしていると、思いがけない言葉が返って来ました。

 

8: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:36:21.93 ID:H60w1bG30

母親「綾瀬穂乃香さん。中学のバレエの全国大会で優勝した子ですよね?私バレエを見るのが趣味で、ご存知ないなんてとんでもない。知っていますよ」

母親「でも、気がつきませんでした。大会やネットで見たあなたの表情と、今の表情が全然違ったから」

人から指摘されると恥ずかしい話ですが、その変化は私も自覚しています。

お母さんは女の子の方に向きなおって、彼女に尋ねます。

母親「ごめんね。レッスン辛いこと気づいてあげられなくて。どうしたい?お姉ちゃんと遊びたい?」

私の気持ち伝わったみたいです。よかった。

女の子は首を縦に振ります。それを見た後、お母さんは私に頭をぺこりと下げます。

母親「ウチの子をよろしくお願いします。17時に公園に連れてきてもらえますか?」

頭を下げられるとちょっと恐縮してしまいます。私も頭を下げ返します。

穂乃香「こちらこそ、ありがとうございます。ご安心ください。17時にはお子さんをお連れします」

女の子は私と手を繋いで、空いている手でお母さんに手を振ります。

女の子「いってきます!」

お母さんも小さく手を振り返しています。ペコっと小さくお辞儀をして、私たちは公園を後にしました。


 

9: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:38:03.52 ID:H60w1bG30

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とあるカフェ
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遊びに行けることとなりましたが、どこに行けば良いか決めなくてはですね。

というわけで、まず二人でカフェに来ました。以前に藍子さんが教えてくださった、静かで穏やかなカフェです。

女の子「わー、すごいおしゃれだねここ!ほのかちゃんすごい!おとなだ!!」

ブランブランと床に着かない足を振って女の子ははしゃぎます。すっかり呼び方も変わって、だいぶ心を開いてくれたようです。

穂乃香「いえいえ、私は友達に教えてもらっただけですよ。ふふっ、でも気に入ってくれたなら良かった」

女の子は高いテンションのまま私に尋ねます。

女の子「ほのかちゃんバレエやってるの?すごいバレリーナさんなんでしょ?すごいすごい!」

どうやら、お母さんのお話をしっかりと聞いていたみたいですね。私はありのまま彼女に答えます。

穂乃香「いえ、今はやっていませんよ。ちょっと前までやってたんです」

彼女は私の答えに驚いたようで、少しトーンを下げて答えます。

女の子「バレエやめちゃったの?すごいひとなのに?」

ドキッと瞬間鼓動が高まります。それは、棚の上に置いておいて、ずっと見ないようにしていた問題。

 

10: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:39:01.77 ID:H60w1bG30

すーっと息を吸って吐いて呼吸を整えます。呼吸のリズムに心臓を呼応させて、気持ちを整えます。

自分の気持ちを確認するように、しっかりと言葉にして答えます。

穂乃香「私もね、バレエが好きで、でもレッスンが嫌になってしまった時があったんです。あなたと一緒です」

穂乃香「だからバレエはいったんお休みしてるんです。今は違うことを頑張ってます」

女の子は私の言葉を聞いて、うーんと考える仕草をとります。難しかったかな?もっとわかりやすい言葉を考えていると、彼女はニコッと笑って答えました。

女の子「わたしといっしょなんだ。そっか、またがんばれるようになれたらいいね」

その言葉はじわっと私の胸に染み込みました。

うん、また以前のようにきちんと正面から向かい合えたらいいな。私もそう思います。

 

11: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:48:36.06 ID:H60w1bG30

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とあるショップ
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カフェを出て私たちはあるところに向かいました。女の子のリクエストです。私も行きたい場所だったので嬉しいです。

女の子「わー!ぴにゃがたくさん!」

そう、ここはぴにゃショップ。期間限定ですが、ぴにゃのグッズだけを取り扱っている夢のような空間ができたのです。

喫茶店で女の子に行きたい場所はないか聞いたところ、私とお揃いのぴにゃグッズが欲しいというのでここに一緒に来たというわけです。

女の子「うわー、しろいぴにゃもくろいぴにゃもいるんだ。ぶさいくー」

あぅ...ぴにゃの可愛さが伝わったからグッズが欲しくなったわけではないんですね...。

負けじと私はぴにゃの可愛さを伝えます。

穂乃香「これはどうでしょう?ピニャエルといって天使のぴにゃなんですよ」

女の子「あははーこれもぶさいくだー」

なんてことを...ピニャエルは国一つくらいなら簡単に潰せてしまうんですよ...。


12: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:49:41.05 ID:H60w1bG30

穂乃香「でも驚きました。ぴにゃのこと、その、あまり可愛くないって言ってたので、お揃いのぴにゃのグッズ欲しいって言ってくれるなんて」

女の子はあははと笑ったテンションのまま答えます。

女の子「うーんとね、ぶさいくだけど、なんかほのかちゃんがかわいいってにこにこしていってるのみたら、わたしもすきになっちゃった」

この言葉、前にも柚ちゃんにも言われた気がします。楽しさは伝播するというものでしょうか?

わたしのぴにゃ好きがもっとみんなにうつればいいな、なんてふふっ。

女の子「あーーーー!!!なんでなんで?」

突然女の子がびっくりして、壁の方を指差していました。

何かと思って指先の延長線上を見ると、満面の笑みでぴにゃのぬいぐるみを抱っこしている私のポスターがありました。

女の子「ほのかちゃん、ぴにゃのセールスマンさんなの?」

小首を傾げて不思議そうに尋ねる彼女。

確かあのポスターの写真は、何かの雑誌の撮影の時のものだった気がします。

笑顔が固かった私に、プロデューサーさんがぴにゃと一緒に撮ることを勧めてくれたときの写真です。

穂乃香「実は私、今はバレエじゃなくてアイドルをやってるんです」

そう答えると、女の子の顔がぱあっと明るくなりました。

女の子「アイドルって、キラキラしてかわいくてわーってしてるひと?」

穂乃香「はい、キラキラでわーって人です」

私がそうなれていないのでそう言っていいか分からないのですが...例えば忍ちゃんは...うんそうですね。キラキラでわーってしています。

女の子「ほのかちゃんもてれびでるの?」

穂乃香「あまり多くはないですが、ごくたまに」

そう答えると女の子はもっとキラキラした顔になりました。

女の子「てれびでるときはおしえてね!おうちでおうえんするから!」

彼女に期待されては頑張らないわけにはいきません。とても強いパワーをもらったみたいで嬉しくなりました。

穂乃香「はい。絶対に連絡しますね」


13: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:50:40.22 ID:H60w1bG30

############
路上
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女の子「えへへーぴにゃー、どうしてあなたはぶさいくなのーつんつん」

お揃いで買ったぴにゃのキーホルダーを、女の子が嬉しそうに指でつんつんします。

喜んでくれているのは嬉しいのですが、やっぱり可愛さは伝わらないのですね。

でもぴにゃは心が広いですから、そんな女の子の姿を見て微笑ましく思ってるに違いありません。



次の目的地に歩いている最中、ふとエレクトーンやギターの音がしました。どうやら路上でライブをやっているようです。

女の子「うわー!すごい!!お外でピアノ弾いてる!!」

私には見慣れた光景ですが、彼女は初めて見たようでぴょんぴょん跳ねて喜んでいます。ふふっ、そんな彼女を見ていると、私も楽しい気持ちになってしまいます。

パフォーマーの人たちは互いに目を合わせたり、時には背中と背中をぶつけ合ったりノビノビと演奏をしています。

お客さんも指だけでリズムを合わせたり手を叩いてみたりと、思い思いの方法で音に満たされた空間を楽しんでいます。

女の子の方を見ると、音に合わせて両手の指を動かしていました。きっと空中でピアノを弾いているのでしょう。

穂乃香「楽しいですね」

女の子に尋ねてみると、今日一番の笑顔で答えてくれました。

女の子「うん!!!」



14: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:51:47.63 ID:H60w1bG30

ひととおり演奏を聴き終えて目的地へと再び歩き始めます。さっきの光景を思い返して、ほっと安堵します。

本当のピアノはそこになかったですが、ピアノと向き合うのを嫌がっていた彼女が再びピアノを求めたのだと思います。

良かった。きっと彼女はまた、きちんとピアノと向かい会えるようになるでしょう。

きっと後ひと押し、それは私の言葉で伝えたいです。

穂乃香「さっきは楽しかったですね」

女の子「うん、あのひとたちのきょくきいたら、からだがかってにうごいちゃった」

穂乃香「頑張るために一番大事なものってなんだと思います?」

突然な私の問いかけに彼女はうーんと考えます。ひととおり考えた後で、きっぱり答えました。

女の子「わかんない!」

ふふっ、良かった。ここで彼女に正解されると、何年も回り道した私の立場がありません。


15: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:53:06.85 ID:H60w1bG30

穂乃香「答えを教えてあげますね。それは楽しむことです」

なーんだそんなことかと、女の子の表情が拍子抜けしたというよう変わります。

いえいえそれが難しいんですよと、かしこまって私は続けます。

穂乃香「全部を楽しむんです。楽しい時、嬉しい時は当然ですけど、上手くいかない時も、悲しくなった時も、辛い時も、きちんと楽しむんです」

女の子はむーっと眉をひそめて答えます。

女の子「つまんないことはつまんないのに、たのしいの?それへんだよ」

そうですね。きっと以前の私もそうでした。不甲斐ない自分、欠点、そういうものは完璧な演技のための足かせだから、ひとつひとつ潰していかないといけないと思ってました。

だから、一度も楽しいなんて思ったことはありませんでした。踊るたびに現れるミスに辟易して、自分に満足できない餓えに苦しむ毎日でした。

そんな暗闇の世界を照らしてくれたのが、周りのみんなの楽しいって気持ちでした。夢に向かって頑張るみんなの姿に照らされて、真っ暗だった私の世界は変わったんです。

 

16: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:53:55.74 ID:H60w1bG30

穂乃香「そうですね。私もまだまだ上手く楽しめているわけではありません。でも、一つだけ心がけていることがあるんです」

穂乃香「誰かと心をつなげること。誰かに想いを届けて、そして返ってきたものをきちんと受け取ること」

穂乃香「独りきりで頑張ってるなんてありえません。隣で一緒に走ってたり、後ろから背中を押してくれたり、前を走って導いてくれたり、よろけたときは支えてくれたり、そんな人たちが必ずいるはずです」

穂乃香「それをきちんと理解していれば、きっと大丈夫です。どんな時も楽しく進めます」

ひととおり喋ってみたものの、女の子はうーんと考え込む顔。あぁ、言葉で伝えることはとても難しいですね...。

言葉で考えるより実際にやってみた方が分かりやすいかなと思い、私は彼女に提案します。

穂乃香「私と一緒に頑張りませんか?お互いを応援し合うんです」

女の子「えっ?ほのかちゃんと?わたしが?」

穂乃香「はい。お互い目指す場所は違いますが、頑張っているというとこは同じです。だから、お互いの頑張ってる気持ちを交換して、応援し合いましょう」

女の子はむんっと力強く答えてくれました。

女の子「うん!やる!」


 

17: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:54:41.57 ID:H60w1bG30

############
数日後
事務所
############

レッスンも終わり、着替えをしようとしたときスマートフォンの着信音が鳴りました。

ひとつタップをして、表示される画面をみるとメッセージが届いていました。

送り主は以前一緒に遊んだ女の子から。お母さんのスマートフォンから、レッスンの様子を時々報告してくれます。

今日は前に何度もつっかえていた箇所が、スムーズに弾けるようになったようです。

ブイッとピアノの前でピースサインをしている彼女の画像が一緒に送られています。とても良い笑顔です。

穂乃香「ふふふっ、嬉しそう。私も負けないように頑張らなきゃですね」

 

18: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:55:30.20 ID:H60w1bG30

忍「...」

柚「...」

あずき「...」

忍(最近、穂乃香ちゃんスマホ見てニヤニヤすること多くなったよね)ヒソヒソ

柚(もしかして、彼氏でもできたとか?)ヒソヒソ

あずき(まさかとは思うけど、ここはパパラッチ大作戦?)ヒソヒソ

忍(うん。穂乃香ちゃんのことだから、悪い男に騙されたりしてないか心配だよ)ヒソヒソ

柚(おっ、マムシの忍チャンの聞き込み捜査の始まりカナ?)ヒソヒソ

忍(ちょっ、そのあだ名やめてよ)ヒソヒソ

あずき(じゃあ、あずきがとつげきー)ヒソヒソ

あずき「穂乃香ちゃん?ニコニコして何見てるのかな...って子供の画像!?」

柚「えっ!?なに!?穂乃香チャン子供できたの!?」

忍「ええええええええええええ!!相手は誰!?今から殴り込みに行くから教えて!!!」


 

19: ◆uYNNmHkuwIgM 2018/04/15(日) 17:56:52.93 ID:H60w1bG30

スマートフォンを見ていると、急に3人が騒ぎ出しました。子供ができた?殴り込み?えっと、よくわかりません。

ただひとつわかることは、やっぱりみんなといると毎日が楽しいです。

私にこんなにも暖かな世界をくれた人たち。この人たちと一緒に沢山の人達に暖かさを届けられるよう、明日からも頑張っていきたいと思います。



みんなの喧騒に耳を傾けながらダンスシューズを脱ぎます。

いつしか私の足はトゥシューズからダンスシューズに慣れてしまったみたいです。

この足でステージ衣装のブーツも履いてみたいです。

そしてゆくゆくは...。



E N D