1: 名無しさん@おーぷん 2016/06/08(水)17:10:48 ID:si4
奏「高校、卒業したわ…やっと…。」

現在進行中で人気アイドル速水奏と付き合っているP。
付き合っていると言っても、奏が高校を卒業するまでは恋人らしい事は何もしていない。
奏が高校を卒業した今、2人の本当の恋人生活が始まる。

需要ある?安価形式。

引用元: Pが速水奏と付き合ってる話 


3: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)03:10:07 ID:dmp
奏が高校を卒業してから初めてのオフの日。

Pはハチ公前にいた。

P(今日は2人にとって大切な日だ。絶対に奏の思い出に残る日にしよう。)

デートの約束をした日。
奏は「大人のデート、期待してるね。」と、いつもの様に大人っぽく微笑んだ。
Pの前でも基本冷静な彼女だが、心を許してくれているからか自分の前では心情が仕草にでている事がある。
その時も、奏が期待してると言いながら左耳に髪をかけたのを思い出す。彼女が照れている時によくする仕草だ。

本人は無自覚らしいが、Pはその仕草が可愛くて大好きだったりする。とにかく、彼女が今日のデートを心から楽しみにしてくれている事は間違いない。


P「デートプランは完璧!まず>>4にいこう!」

4: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)14:17:22 ID:BdD
鳥取砂丘

5: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)15:46:57 ID:dmp
奏「おはよう、Pさん。」

待ち合わせ場所に奏がきた。
キャスケット帽に伊達メガネをかけた、いつも街を出歩く時の格好だ。服もシンプルな上着にデニムパンツの見慣れた服装。
デートの日も特別お洒落をしてこないのが彼女らしい。
最も、それで十分に綺麗なのだが。

奏「それで、今日はどこに連れてってくれるの?」

P「そうだな、鳥取砂丘にいこうと思う。」



6: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)16:24:28 ID:dmp
車内。

Pは近くの駐車場に停めてあった車で鳥取砂丘を目指す。
東京から鳥取砂丘は車で9時間かかる計算だ。途中休憩を挟むとして、夕方頃には向こうにつく。

奏「ねぇ、Pさん。それにしてもなんで鳥取砂丘なの?」


助手席に座った彼女が困惑した顔で尋ねる。

P「えっと…、夕焼けを見たくて…。」

奏「夕焼け?」

P「奏とはじめて会ったのは、夕焼けが綺麗な日の海岸だっただろ。ちゃんとした恋人になる記念に、出会った日と同じ景色を見れたらなって。」

奏「へぇ……。ロマンチストよね、意外に。」

なるほど、鳥取砂丘はビーチも有名だし、夕焼けも綺麗そうだ。
でも、同じ景色ならそれこそ出会った場所でいい気もする。

P「それに……。」

奏「?」

P「車なら、周りを気にせず2人っきりで話せるだろ。」

奏「………。そう、ね。」

自分がアイドルである以上、普通の恋人同士というわけにはいかない。それを気遣ってくれているPの心遣いに嬉しくなる。
事実、前から仕事の送迎などでPと2人になれる車内の時間は大好きだった。

奏「でもPさん。これって日帰りは無理なんじゃないかしら?」

P「!」

しまった。すっかり忘れていた。鳥取砂丘の事で頭がいっぱいで肝心な事を忘れていた。

P「え、えっと…寮の門限って確か…。」

奏「……大丈夫よ。……外泊届け、出してきてるから。……その、一応……ね。」

P「」

奏「///」

9: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)18:47:58 ID:dmp

P「…………。」

奏「………///。」

先程のお泊まり宣言から車内が気まずい。
奏の性格を考えると、お泊まりとは「そうゆうこと」を意識しているのではなく、友達と外泊するのと近い意味だろう。おそらく、いま奏が照れてるのはPと一緒にいたい自分の本心を伝えたことに対してだ。

だが、良くも悪くも一般的な成人男性であるPはそうもいかない。そもそも、高校を卒業するまで距離をおいた理由は学生にしては色気のありすぎる奏を前に自制する自信がなかったからでもある。

いまも奏の細身の身体に反して意外に◯◯な胸がシートベルトを挟んでいるのをミラー越しにチラチラ見てしまっている。

P(やばい、何か他の話題で気を紛らわせないと。>>10の話をしよう。)

10: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)20:07:55 ID:3Ar
鳥取の特産品

12: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)20:43:29 ID:dmp
P「そ、そういえば、奏は鳥取で知ってる事って何かあるのか?例えば特産品とか!」

奏「特産品かぁ、そうねぇ。確か響子ちゃんが鳥取出身だったかしら。実家も鳥取砂丘に近いんだって。ふふ、海の幸が美味しいのに実家からは送ってもらえないってぼやいてたわ。」

P「海の幸かあ。蟹とか魚とか美味しいんだろうな。そういえば松葉蟹って鳥取だっけか。鳥取ってゆうぐらいだから鳥肉を想像してたなぁ。」

奏「あはは、安直。」

奏「今日泊まる旅館でも、でるといいわね。美味しい料理。」

P「そ、そうだ!旅館!今から予約しなきゃ!」

奏「ふふっ。」

慌てて携帯で宿を検索する。さすが天下に名高い鳥取砂丘。良い宿はほとんど満室だ。

P「あっ……あった!空きのある宿!」

P「…!……空きは1室のみ……って。」

奏「…私はいいわよ?Pさんと同じ部屋でも…。てゆうか、それが普通じゃない?恋人なんだし♪」

P(お、おなじ部屋…。)

Pは風呂上がり、浴衣を着た奏の姿を想像する。

P(だめだ。また変な事を考える方向に……。)

奏「ふふっ。」

奏(Pさんと同じ部屋でお泊まりかぁ♪)

Pの悩み等つゆ知らず奏は上機嫌で窓の外を眺めながら鼻歌を歌い出した。

P(だめだ。とても運転に集中できん。)

奏「Pさんは、私に聞きたい事とかあったりするの?恋人になったんだし、少しは答えてあげるわよ?私のヒ・ミ・ツ。ふふっ。さっきからそわそわして、言いたい事があるなら遠慮なく言っていいのよ?」

P(奏に聞きたい事……そうだ、ずっと気になってた>>13について聞こう。)



13: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)21:20:48 ID:hFn
キス

14: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)21:57:50 ID:dmp

P「今日はまだ、1度もキス…誘ってこないんだな。今までは事あるごとに言ってきたのに。」

奏「あはは、ちょっと心外ね。私がキス魔みたいじゃない。」

P「え、違うのか?」

奏「もぅ…、そうね、自分でも気づいてなかったわ。今日1度も誘惑してないのは、たぶん……本当にして欲しいから、かな。」

P「………っ。」

奏「私ね。本当のキスはした事ないの。あなたの頬にキスをしたのが、男の人にした最大のスキンシップ。今キスを迫ったら、たぶんあなたはしてくれる。でも、はじめては好きな人からして欲しい。ずっと憧れてたの、ふふっ、乙女でしょ?」

P「…よくそんな事言えるな。」

奏「あは、顔赤くなってる。今の顔は事務所の誰も見た事ない顔ね。…嬉しい。」

P「でもな、誘惑したらするってゆうのは間違ってる。これでも大人の男だからな。ちゃんとそうゆうのは自分からするさ。」

奏「うふふ….、ファーストキス…期待してる。」

P「ああ。」

奏と過ごす時間はあっという間だ。気づけばもう昼過ぎだ。

P「ちょっとお腹減ったな。」

奏「ええ。」

お昼ご飯を食べる為にSAによった2人。

そこで予想外の事態に遭遇する。

>>15

15: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)22:10:26 ID:hFn
LiPPSメンバーと遭遇

16: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)23:02:04 ID:dmp

フードコートでお昼ご飯を食べている2人。
店内は閑散としていて、奏も変装をやめている。
店員は彼女に気づいたのかソワソワしているが、奏があまりに堂々としているせいか誰も声はかけてこない。
2人の事も、仕事へ行く途中だと思われているだろう。


すると、フードコートの入り口から騒がしい声が聞こえてきた。


???「ふぅー、お腹ペッコペコだよ~。フレデリカのフレデリカがフレデリカだよ~。略してフレペコ~?」

???「いい匂いがたくさ~ん。でもなんだろお~。なんか嗅ぎ覚えのあるこの匂い~。」

???「ちょっと2人とも自由過ぎだって!あ、志希ちゃんどこいくの?知らない場所で探すの大変なんだからね!?」

???「あはは、美嘉ちゃんお母さんみたいになっとるねぇ。シキちゃんならそのうち戻ってくるって~。いつもの失踪~。」


聞き覚えのある4人の声が聞こえてくる。特に奏には馴染みのある声だ。


P「奏…もしかしてあれって……。」

奏「そうみたいね。もともとLippsでの仕事がキャンセルになってできた休暇だし。みんなで遊びに行こうって話してたわ。とても大事な用があるって、断っちゃったけど。」

P「それなら言ってくれれば」
奏「言ったら、今日デートしてくれなかったでしょ?大丈夫よ、彼女達とはあなたの想像以上に通じ合ってるの。」

もう待ちきれなかったから。その言葉は口に出さず胸にしまった。


???「あ、奏ちゃんはっけ~ん。やっぱりプロデューサーと遊びにいってたんだ~。」

奏「あら。」
P「シ、志希………ん?……やっぱり??」


17: 名無しさん@おーぷん 2016/06/09(木)23:25:00 ID:dmp

志希(クンクン…クンクンクン)

P「ど、どうした志希。」

志希に匂いを嗅がれるのはいつものことだが、妙に念入りに嗅がれている。

志希「んー、やっぱりー、2人とも、いつもと匂いがちょっと違う~?なんてゆうか~……、◯◯~?」

P「ぶっ!」

思わず飲んでいた水を吹き出す。

奏「ええ、してるわ。好きな人といると……ね。」

P「奏!」

志希「それでそれで~?2人はもうチューしたのー?チュー。」

奏「ふふっ、まだよ。これからしてもらう予定だけど。そうでしょ?Pさん♪」

志希「Pってプロデューサーの名前~?呼ばれて少し濃くなった~、プロデューサーのフェロモン~。」

P「もう少し言い方があるびゃぼ!」

奏「あははっ。舌…大丈夫?」

慌てて言い返そうとして舌を噛んでしまった。

奏「それで、志希達は結局どこに遊びにいくことにしたの?」

志希「んー?あたしたちはー、どこだっけー?確か…>>18~?」

18: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)00:29:01 ID:f20
鳥取砂丘

19: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)01:02:38 ID:S43

P「」
奏「あら、奇遇ね。私たちも行くのよ、鳥取砂丘。」

志希「なんかー、周子ちゃんの実家の知り合い?の人のところで安く泊めてもらえることになったみたーい。近くにあるのがー、鳥取砂丘~!」

P(嫌な予感が………。)

奏「私とPさんは『月染亭』って宿に泊まる予定だけど………。」

志希「あはは、一緒だ~!」

奏「あら。」

P(まじか。)

志希「じゃあじゃあ、私は戻るねー。他の子にはまだ内緒にしとく~、向こうで会えたらおもしろそ~!」

奏「うん、また後でね。」

志希が戻るとPは一気に脱力する。
志希がきてから奏もいつもの調子に戻っていた。奏と志希の2人を同時に相手するのは今だにきつい。

P(まあ、志希とフレデリカよりはましか…。)

奏(うふふ、ちょっと意地悪だったかな。)

志希(ふんふんふーん、2人とも、すっごく良い匂いしてたー。今まで嗅いだことのない感じ~、また嗅ぎたいな~♪)

フードコートを出て車に戻る。志希以外の3人は気づいていない様で、夢中で何か話していた。目が合った志希の表情がいつも悪戯……志希に言わせれば研究をする時の顔になっていたのが気にかかるが。





20: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)01:21:31 ID:S43

車内。

奏「ちょっと、安心したかな。」

P「?」

奏「彼女達の顔を見れて…。凄く緊張してたから。今はすこし、落ち着いたかな。この心臓の鼓動も。」

P「……。」

奏「私、自分の意思で何かするのって苦手なのよね。Lippsのリーダーもそう。彼女達をまとめるのは得意だけど、率先して自分から何かをはじめるっていうと、ちょっとね。」

奏「だから、Pさんとのデートも自分が何をすればいいのかわからなくて…。」

P「なんだろうな…甘え下手….ってやつかな。奏は。」

奏「甘え下手……うん、そうかも。そうね、きっとそう…。」


いつも彼女がキスを迫っていたのも彼女なりに自分に甘えていたんだろうか。
だとしたら、なんて不器用なんだろう。


奏は今の会話を噛み締める様に流れていく景色を眺めている。
その横顔を見て、ふと聞きたい事ができた。

>>21

21: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)20:04:14 ID:S5y
楽しい?

22: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)21:28:38 ID:S43

奏「ええ、勿論。どうして?」

P「いや、だいぶ振り回してるっていうか。いきなり鳥取砂丘に行くなんて今思うと変だったかな、なんて。」

奏「あはは、そうね。変♪」

奏「でも、凄いと思わない?こんなに長い距離を移動しているのに、あなたといるとあっという間……ほら、ついたわよ。」

予約した旅館に到着した。
温泉で有名な高級旅館だ。木造をイメージした閑静な佇まいが落ち着いた印象を与える。

奏「わあ、いい部屋。海が見えるのね。素敵。」

P(気に入ってくれたみたいだ。)

少し休んだ後、Pと奏は鳥取砂丘に向かう。
夕焼けに照らされて金色に輝く砂丘が幻想的だ。

奏「素敵……。金色の砂丘に、燃えるようなオレンジ色の海………。本当に素敵…。」

この場所が日本…それも鳥取県にあるなんてとても信じられない。

Pはハッと息をのむ。
夕日に照らされた奏の横顔に見惚れてしまう。
蒼い髪を風に揺らし微笑む姿に胸が高鳴る。

P「奏……。」

そっと奏の肩を抱きよせる。

奏「………。」

奏は何も言わずPに身体をあずける。
Pの胸に手を添えて俯く彼女の表情を見ることはできない。

P「………。」

奏「……………。」

そっと奏の頬を撫でると、彼女がこちらを見上げる。
潤んだ瞳をPに向ける彼女にいつもの余裕はない。

奏「………あっ。」

Pは彼女の背中に手をまわすとゆっくりと顔を近づける。

一方、その頃Lippsは>>23


23: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)21:47:25 ID:S5y
鳥取砂丘でファラオごっこ

24: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)23:00:45 ID:4Gf
Pと奏のいる場所から少し離れたところ。

フレデリカ「いくよいくよー?フレちゃんクーイズ!朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足。これなんでしょーーー!!!!」

フレデリカが3人の前に出て元気よく手を挙げる。

周子「フレちゃん何してんのー?」

フレデリカ「んー?ファラオごっこだよ~♪せっかくの砂漠だしぃ、これははずせないよぉ。」

周子「あはは、面白そうだねえ。答えられなかったら目をとられちゃうんだっけー?フレちゃんこわーい。」

フレデリカ「やだなぁシューコちゃん~、そんなことしないよぉ~?んー、アイスぅ~!答えられなかった人は王様であるフレちゃんにアイスを買ってくること~!さぁ君達の実力見せてもらおうか!!!!」

美嘉(砂丘だし、ていうかそれスフィンクスじゃ……。)

フレデリカ「はいミカちゃん!答えをどうぞー!!」

美嘉「ええ、あたし?えっと……。」

フレデリカ「ぶっぶー!じかんぎれぇ~♪アイスよろしく~!」

美嘉「はやっ!ま、別にいいけどー。私も食べたかったし。みんな何がいい?」

フレデリカ「んっとー、んっとー、決められないからフレちゃんも一緒にいくー♪」

美嘉「あ、そ、そう、いこいこー!」

美嘉、フレデリカ、周子は売店の方に歩き出した。

周子「フレちゃん、さっきの答えって結局なんなんー?」

フレデリカ「なんだろぉー?きっとフレデリカだよぉ~!」

美嘉「………っ。」

美嘉「てゆうかいつの間にか志希ちゃんいなくない!?」

その頃、志希は>>25







26: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)23:13:16 ID:uTm
すなば珈琲へ

27: 名無しさん@おーぷん 2016/06/10(金)23:27:26 ID:4Gf

志希「んー、おいしーい。」

すなば珈琲。JR鳥取駅から徒歩3分。手頃な値段でお腹を満たす事ができ、味も超一流だ。
長年に渡りスターバックスの鳥取県進出を食い止めていた話はあまりにも有名である。

志希「あー、それで~、プロデューサーと奏ちゃんのこと~?」

志希「スクープされたら大変だもんね~。パパラッチを探すのは~、こんなに人が多いと志希ちゃんでも無理~。さすが鳥取砂丘~。」

志希の前に座って話しているのは>>28だ。

28: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)01:49:42 ID:WTC
まゆ

30: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)09:07:35 ID:NSw
志希「てゆうか~、キミってPさんの事好きなんじゃないのー?匂いでわかるよ~?」
まゆ「そ、それはあなただって……。」

カップを持つ手に力が入り志希を見る目に暗い影がさす。

志希「私はぁ~、匂いが好きなだけだから~。」
窓の外に目をやり微笑む志希の本心は誰にもわからない。

志希「それでー?なんで奏ちゃんを応援しようと思ったの~?」
まゆ「………応援……なんて………。」
ギリッ。まゆの表情が歪む。

まゆ「わ、わたしはPさんのために………。だって……だってPさんが1番好きなのは私だから。わたしとPさんは運命で結ばれてるから………。」
まゆ「あの子と恋人になっても……いつか気づくはず……1番はわたしだって。だからちゃんとあの子と付き合って………気づいてくれる。」
まゆ「人を愛するってゆうことがどんなことなのか、1番に愛してくれているのは誰なのか………。Pさんは、ワタシを悲しませたくないから。そ、それで恋愛の練習をしてるの。」
まゆ「だから凄く嬉しい、それに応えるためならPさんのはじめては…が、我慢するから。」
まゆ「だ、だから……、Pさんがワタシの為に愛を学んでいるのを邪魔する人は………。」

まゆ「「「「「許さない」」」」」」」」」

ビキッ。とうとうカップにヒビが入る。印字されたすなば珈琲の文字が裂ける。めちゃくちゃな理屈だ。
その理屈は自分への言い訳の様で、だいいちPのはじめての彼女が奏だという根拠はどこにもない。

志希(これはマズいかもねー。追い詰められた犯罪者と同じにおーい。まぁ、根は悪い子じゃないし、一過性のものだと思うんだけどねー。)
錯乱と興奮。何をしでかすかわからない人間の匂いだ。
外国にいる時は、身を守る時によくこの匂いに助けられた…。
志希はこのまま、まゆと行動を共にする事にした。

志希(……………。)
コーヒーの香りを嗅ぎ目を伏せる。
誰かの匂いを思い返す様に。

志希(ま、奏ちゃん達を応援してるのはたぶんみんなも同じだけどね~。)

鳥取砂丘に遊びに行くのを決めたのはフレデリカだ。
Pのディスクに置いてあったガイドブックをフレデリカが3人の前に持ってきた。すぐに周子が賛同し知り合いの宿を紹介する。美嘉も特に反対することなく、鳥取行きはすぐに決まった。

フレデリカは1度砂漠でファラデリカになりたいと意味不明な事を言っていたが、本当の理由はおそらく…。

志希(ま、志希ちゃんは~、面白ければ何でもいいや~。)
目の前のまゆを一瞥する。そう思いつつ志希の目はいつになく真剣だった。

最後にあと1人登場人物を>>31

32: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)09:52:27 ID:pqf
音無さん

34: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)12:54:06 ID:NSw

小鳥「ふぅ………。」

765プロは今や有名になり、仕事も昔と比べられないほど増えた。
小鳥にもアイドルの送迎の仕事が時折まわってくる。

小鳥(まあ、事務員も増えたし、楽しいからいいんですけどね。)

今日は765プロのアイドルとお笑い芸人をまじえてのトークライブが予定されていた。
しかし、お笑い芸人が事情によりこれなくなったらしく中止にするか責任者が各所と相談しているらしい。

時間が空いたので腹ごしらえにすなば珈琲にきた小鳥。
一緒にきたアイドルも誘ったが、なんとか場を自分が繋ぐと意気込んでいた。彼女もお腹が減っているだろうし。何か買っていってあげよう……。

小鳥「あら?」

店内に入ると、小鳥は異様な雰囲気に気づく。

35: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)13:09:15 ID:NSw

小鳥「もしかして、346プロの一ノ瀬さんと佐久間さん?」

ファンだろうか、志希は少しイラついて話しかけてきた女性を見る。すると…。

志希(わ、いい匂い…。)

女性の匂いがフワっと香ってきた、その匂いで最初に思い浮かべたのはプロデューサーだった。全く同じではないが、信頼できる大人の、安心する匂い。

小鳥「お店……変えた方がいいかも、ちょっといい?」

ふと気づくと、店員や客がチラチラこちらをうかがっている。
志希とまゆに気づいたらしい。

小鳥「うふふ。」

満面の笑みが志希の中で卯月と重なった。

36: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)15:08:17 ID:NSw

一方、鳥取砂丘。

野外ライブの特設会場は大盛り上がりだ。

フレデリカ「フレフレうっうー♪」

???「ちがいますよぉ、うっうー!…ですよぉ?」

フレデリカ「うっうー♪」

???「うっうー♪」

フレデリカと、今やバラエティで見ない日はない人気アイドルの軽快なトークに会場が笑いにつつまれる。

周子(ふぅ………安心安心。)
周子達は当初、なんとか砂丘中の注目を集めPと奏をなるべく2人っきりにしてあげようと計画していた。
いっそゲリラライブでもやってしまおうかとも思っていたし、フレデリカのファラオゲームに賭けてみようかとも思っていたが、
いざ砂丘にきてみるとその広さと人の多さに途方に暮れていたのだが……。

周子「まさか、765プロのアイドルがきてるなんてねー。ラッキーラッキー。」

トラブルがあったのか、壇上で慌てふためく彼女を見てフレデリカが乱入したのは少し前の話。
最初はフレデリカを止めようとしていたスタッフも今は客と一緒になって笑っている。

美嘉「きゃー!きゃー!超かわいいー!!」

彼女の大ファンの美嘉が隣ではしゃいでいる。
周子(ひとまず大丈夫そうやねぇ。)
砂丘の方を見ると、噂をききつけたのか大勢の人が集まってくる最中だ。

フレデリカ「ではでは~、聞いてください!フレちゃんと高槻やよいさんで『今夜もうっうー』です♪」

やよい「そんな曲ないですよぉ~。」

オレンジ色の砂丘に2人の明るい声が響く。




37: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)17:34:44 ID:NSw
小鳥「そっかぁ………。」

三人は公園のベンチに座っていた。
小鳥が買ってくれたクレープを食べながら志希とまゆはプロデューサーのことを話す。といっても、喋っているのはほとんどまゆだ。

まゆ「…それで、プロデューサーが。」

小鳥「うん…うん。」

夢中で話すまゆはまだ一度もクレープに口をつけてない。

小鳥「まゆちゃんは本当にプロデューサーのことが好きなんだねえ。」

小鳥は765プロのアイドルを思い浮かべる。ハニーハニーと呼びかける女の子と、困った顔のちょっと頼りないプロデューサーは、今では恋人になって幸せそうだ。
前に彼女が海外へ仕事に行くたびに電話料金が凄いことになるって嬉しそうに笑ってたっけ。

まゆ「それで、それでプロデューサーは奏さんと…。」
小鳥「そっかぁ……。」

志希は黙って2人を観察する。音無小鳥と名乗ったこの人は765プロで仕事をしているらしい。
この短いやりとりで何かを悟ったのか、まゆの話に静かに相槌をうって微笑むだけだ。
まゆは夢中で話しているだけにみえるが、その心中が穏やかではないのを志希は知っている。

志希が小鳥にそれとなく視線を送ると、目があった小鳥は微笑んで首を横にふった。
志希はその意味がわからず怪訝な顔をする。

38: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)19:03:16 ID:NSw

小鳥「まゆちゃんは……Pさんと速水さんが付き合ってるのは嫌なのかな?」

まゆ「………。」

まゆが俯く、手に力が入りクレープが少し潰れる。
嫌だ、そんなの嫌にきまってる。

小鳥「別れてほしい?」

まゆ「それは………。」

まゆの声が小さくなる。
わからない。別れるっていうのは、Pさんと奏さんが一緒にいられなくなるってこと?
それは……別れてほしいほしくない以前に、あの二人の気持ちが離れるところが想像できない。
二人は本当に幸せそうで……隠しててもわかる。事務所に奏さんが帰ってくると、Pさんは本当に嬉しそうだった。
まゆが帰ってきてもPさんは笑うけど………けど……。

自分なりに、精一杯Pさんにアピールしていたつもりだった。奏さんみたいに大人っぽくからかったり、大胆にキスを迫ったりなんてできないけど……。
まゆはまゆなりに一生懸命……。

バレンタインのチョコも頑張ってつくったのに。
クリスマスに渡そうと思って編んだマフラーは渡せてないけど、まだ部屋に大事にしまってあるのに。
一生懸命、好きだって気持ちをまゆなりに伝えてたのに。

大好きなイチゴがたくさんのったクレープに涙がポロポロと落ちる。

まゆ「なんで………。」

小鳥「うん………。」

まゆ「なんで……まゆじゃないの…。」

彼女が絞り出すようにそう言うと、小鳥がそっとまゆの背中を撫でる。

まゆ「嘘つき……。」

堪えきれず泣き出した彼女は、Pと出会った日の事を思い出していた。

39: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)19:42:57 ID:NSw
小さい頃からまゆは話すのが苦手だった。
いっそ周りの子が意地悪だったら楽だったのにと思うことさえあった。

例えば小学校に入ったばかりの頃、みんなと上手く馴染めないまゆは1人でお絵描きをしていた。
そんな時、女の子がお外で遊ばないか聞いてくれた。
凄く嬉しかったけど、まゆは運動が苦手だから困らせちゃうかなとか、他の子は嫌じゃないかな…とか考えていると、その子はまゆがお絵描きをしたいんだと思ったのか立ち去ってしまった。
その休み時間、まゆは丁寧に描いた自分と友達の絵を一生懸命色鉛筆で塗ってあげた。
青空の下、お外で元気良く遊ぶ友達と自分。

仲良くしようと手を差し伸べてくれる周りの子と、その手をうまくとれない自分。それが凄く凄く嫌だった。

少女マンガで一目惚れというものを知った時、まゆは強烈にそれに憧れた。一目見ただけで好きになる理由は、運命以外まゆには思いつかなかった。
同時に、こんな自分を見ただけで好きになってくれる人なんていないと落ち込んだ。

何年も経って、制服を着るようになると街で声をかけられた。
読者モデル。自分の知らない世界。
そこにいくのは凄く怖くて不安だったけど、自分を変えるきっかけを掴めそうな気がして勇気をだして飛び込んだ。

お母さんに相談すると凄く嬉しそうにして、その日の夕食がやけに豪華だったのを今でも覚えている。

40: 名無しさん@おーぷん 2016/06/11(土)21:47:40 ID:NSw

読者モデルの世界は厳しかった。
街を歩けば綺麗な人はたくさんいる。
自分はたくさんいる中の1人でしかない。

その日の撮影現場でも履き慣れないハイヒールにまゆは手間取っていた。イラつくスタッフ。
撮影ブースに行く途中、つまづいて転んでしまう。
誰も彼女を気遣う人はいない。遠くの方で舌打ちしたスタッフさえいた。
みんなに迷惑をかけてる。そう思うと身体が震えて涙が出そうになる。

???「大丈夫ですか?」
自分が声をかけられているとわかるまで時間がかかった。
顔をあげると男の人と目があう。

まゆ「あ………。」
言葉がでてこない。また、また私は何も言えないまま…。

???「立てますか?」
自分の目の前に手が差し伸べられる。
まゆが驚いていると、その男の人は自分からまゆの手を握って立たせてくれた。

まゆ「あ、ありがとうございます。」
握られた手が暖かい。男の人の顔を見ることができない。見たいのに。自分の胸がドキドキするのがわかった。

すると、彼の後ろからまゆの横を通り過ぎて女の子が歩いていく。
蒼い髪を揺らして、まゆが履き慣れてないハイヒールを綺麗に履きこなして。
彼女がさっき舌打ちしたスタッフに何事かいうと、そのスタッフは気まずそうに自分の作業に戻った。

その後は、撮影中ずっと遠目に彼ら2人を見ていた。
まゆとは違い自信に溢れた顔のその子はとても綺麗だった。
さっき手を差し伸べてくれた男の人の方は恥ずかしくてまだちゃんと見れないけど。周りのスタッフの会話から彼らが346プロの人間だとわかる。

まゆ「アイドル……。」
まゆはポソリと呟いた。彼らと同じ世界へいってみたい。
その日のうちにモデル事務所を辞めた。特に引き止められはしなかった。

346プロのオーディション。あの男の人を見つけた。
(どうしてうちのオーディションをうけにきたのか)
まゆは言葉に詰まる。
顔をあげると真っ直ぐこちらを見る彼の顔に胸がドキドキする。
少し息をすいこんで、まゆは頭に思い浮かんだ言葉を言った。

まゆ「運命です。」

それはまゆの精一杯の勇気だった。

41: 名無しさん@おーぷん 2016/06/12(日)11:40:00 ID:3pP

まゆ「ひぐっ……ぅう…。」

泣きじゃくるまゆの背中を小鳥が優しく撫でる。
運命の相手とは赤い糸で繋がっていて必ず結ばれるって色んな本に書いてあったのに。お母さんもそう言ったのに。

まゆ「嘘つき……。」
小鳥に背中を撫でられぐしゃぐしゃに泣き腫らすまゆを見て、志希の胸がチクリと痛んだ。


まゆが落ち着いてくると、小鳥がゆっくりと立ち上がってこちらを向く。

小鳥「さ、そろそろ会場に戻らないと…。志希ちゃんとまゆちゃんは……どうする?」

志希がまゆを伺う。落ち着いたといっても、まだ彼女は俯いて時折涙を拭っている。
自分でもよくわからないが、志希はまゆをどうにかしてあげたい気持ちになった。
でも、きっと自分にはその方法は思いつかない。
過去に読んだどの論文にも失恋した友達を前に何をしてあげればいいのか、その方法は載ってなかった。
二人は小鳥と共に鳥取砂丘にむかう。

志希(これが……失恋の匂いってやつなのかなぁ?)
まゆから香ってくる匂い。
自分からも同じ匂いがしているのだろうか、ふとそう思った。


42: 名無しさん@おーぷん 2016/06/12(日)16:28:36 ID:3pP
砂丘にくると盛り上がっている特設ステージ、壇上では有名なアイドルとフレデリカが楽しそうに話している。それを見て小鳥が大慌てで関係者席に駆けて行った。

志希(ふーん、周子ちゃん達、うまくやったんだ~。)
砂丘に行く途中きいた計画に自分も協力するつもりだったけど、SAで2人の匂いを嗅いでから胸がざわざわしてとてもそんな気分にはなれなかった。
最初は単にいい匂いだと思った。けど、プロデューサーのあの匂いを今まで自分は嗅いだことがない。後になって考えるとその事実がとても……。
プロデューサーと奏が付き合っているのを観察するのは楽しそうだと思ってた。でも今は……。
志希「つまんない!」
横を見るとまゆはステージに夢中になっている。
プロデューサーのためにアイドルをやっていると言っていたこの子は、これからもアイドルを続けたいと思うのだろうか。

フレデリカ「ではでは~!ここでゲストの登場でーす!シューコちゃーん?カーリースーマー?」
周子「はいはーい♪」
美嘉「……。」
観客達が向いた方向、そこに2人がいるのだろう。

フレデリカ「さらにさらに~!フレちゃん見つけちゃいましたー!シッキちゃーん!!」
今度は観客が一斉にこっちを向く。
志希は少し目を閉じて考える。
自分は、嫌な気分になった時はいつも楽しい事を探した。楽しい事をしてると嫌な気分なんていつのまにか忘れて夢中になっていた。
プロデューサーと初めて会った日もそうだった。
アイドルは凄く楽しい。新しい発見の連続。研究することはたくさんあるし全然飽きない。
……今回もそうしよう。まだ気持ちの整理はつかないけど。
ワクワクする匂いの、プロデューサーと進んできたこの世界が自分は大好きなんだと改めて思う。
ゆっくり目をあける。
こちらを見る大勢の観客の後ろで砂丘がキラキラとステージライトの様に輝いていた。

志希「もう一人いまーーす!」
志希は元気一杯手を挙げる。
反対の手でまゆの手を握った。

志希「いこー?まゆちゃん。あたし達、…アイドルじゃん?」
まゆが目を丸くして志希を見る。
少し間があって、まゆが志希の手を強く握り返した。
まゆ「う、うん!」
ステージへ歩いていく2人の背中を、小鳥の優しい目がそっと見送っていた。

フレデリカ「今日会場に来た人はラッキーだねぇ~♪フレちゃんだけでも可愛いけど~。まさかこんなにたくさん可愛い子が集まるなんて~ファラオもびっくりだよ~。」
フレデリカ「ねぇ、ファラオ~♪」
やよい「わ、わたしですかぁ~?」
フレデリカ「ではでは、あらためて~!聞いてください。フレデリカと愉快な仲間たちで『お願い!シンデレラ』~!」
やよい「その曲ならしってますぅ~!」


そこから少し離れた場所、砂丘を1組の男女が寄り添うように歩いていた。

43: 名無しさん@おーぷん 2016/06/12(日)21:39:32 ID:3pP
「まって、Pさん。」

唇が触れ合う寸前、奏が顔を背ける。
戸惑うPに彼女は少し困ったような顔をすると、ゆっくり歩き出した。
その真意がわからないPは戸惑いながらも隣に並んで一緒に歩く。

2人の手がそっと触れ合う。どちらともなく指を絡め、手を繋ぐ。

「…………。」

「………………。」

海岸沿いをどこともなく歩いていく。頬を撫でる風と静かな波の音が心地いい。

「…………。」

気づけば夕日はほとんど海に沈んでいて、水平線にわずかなオレンジ色を残すのみ。
空を鮮やかな紫色が染めて、砂丘の向こうには綺麗な月が見えた。

不意に彼女が立ち止まる。

「…………。」

奏は帽子を脱ぎ、眼鏡をはずす。蒼い髪の毛がふわりと揺れた。


44: 名無しさん@おーぷん 2016/06/12(日)22:31:36 ID:3pP
「お、おい。」

「大丈夫よ、見て。」

奏の言葉にうながされPはあたりを見渡す。
誰もいない。砂丘にも海岸にも、人が1人もいない。2人だけの世界。息を呑むほどに美しい幻想的な砂丘。

「ど、どうして。」

「さぁ、砂丘の王様が…魔法をかけてくれたのかもね。」

意味がわからずPは目をパチクリさせる。
クスクスと奏が笑う。

「ファーストキスはね。1人の女の子として、ただの速水奏としてしたいの。仮面はいらない。」

目の前の奏が、出会った頃の思い出と重なる。でも、ずっと綺麗だ。あの頃よりも。ずっとずっと。彼女の背中に手をまわしゆっくりと抱き寄せた。

(後でお礼をいわなきゃね。きっとどれだけ言っても、言い足りないけど。)
奏はそっと目を閉じる。

「…………。」
「………………。」

2人の唇が重なった。

夕日はもう海の底に沈んで、夜空にうかんだ月が砂丘と恋人達を静かに照らしていた。

45: 名無しさん@おーぷん 2016/06/12(日)22:31:51 ID:3pP
終わり。