1: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:51:51 ID:f3k


「ヒィッ…!!」ビクッ


乗り込もうとした電車内に、彼女の悲鳴が響いた。

「な、なんで…車両にっ…………」

U・ω・U

(犬がいるのーっ………!?)オドオドオドオド

U・ω・U?

しかしわかるだろうか、その車両へ入りかけている、空いている座席があるのにもかかわらず、それを目前にして踵を返す、その気まずさを。
これじゃあ私のせいで電車さんが遅れてしまう………と彼女は嘆く。
結局、その空気に耐えられなかった萩原雪歩は、その車両へ乗り込んだ。

引用元: 【SS】雪歩step 



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2: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:52:11 ID:f3k


〈ツギハーアマミー、アマミー


致し方なく萩原雪歩は犬の佇む対面の座席へ腰を下ろす。
そして、彼女はあることに気づく。


U・ω・U………


(このイヌ…盲導犬だ…)

根拠として、犬の背中に、「盲導犬」という文字が書かれた札が貼られている。
また、犬の隣に目を閉じた老女が座っていた。その人はおそらく盲目の障害者なのだろう。

(そっかぁ。ワンちゃんだってお仕事してるんだなぁ…)


U・ω・Uジッ

(ひぃぃぃ!こっちを見てますぅぅぅ!)


3: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:52:34 ID:f3k


〈ツギハー、フタミーフタミー


U・ω・U………

(大きなわんちゃんだけど…襲いかかったりしてこないよね………?)ドキドキドキドキ


U・ω・U………

(でも、全然吠えたりなんてせずご主人様の隣でじっとしてる…偉いなぁ…)


U―ω―Uスヤァ………

(あ、寝ちゃった。わんちゃんもお疲れなのかな………)


4: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:52:55 ID:f3k


〈ツギハーシジョー、シジョー


U・ω・Uパチッ

(あ、起きちゃった。電車のアナウンスのせいかな………)


U・ω・U………

(うぅ…見てるぅ…ガマン、ガマン………)


U・ω・Uシッポフリフリ

(ひぅっ!?)

5: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:53:15 ID:f3k


〈ツギハータカツキー、タカツキー


U・ω・Uフリフリ

(あ、明らかに私を見てしっぽふってますぅ………)


U・ω・Uスクッ

(ついに立ち上がっちゃった!まだ駅と駅の途中なのに~!)


U・ω・U………

(わんちゃん!ご主人様起きちゃうよ!勝手に立っちゃダメぇ!)

6: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:53:37 ID:f3k


〈ツギハーアキヅキー、アキヅキー


U・ω・Uフリフリフリフリ

(完全にロックオンされてますぅ!私なにか悪いことしちゃったのっ!?)


U・ω・Uフリフリフリフリ

(乗客も増えてきて電車内の全ての視線がわんちゃんと私に………)クラクラ


U・ω・Uフリフリフリフリ

(はぁ………はぁ………私はどうすれば………)


…………
あきらめないことーこわがらないことがーつよさじゃなーい♪
ぜったいなかないなんてちかわなくてもいいー♪




7: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:53:56 ID:f3k
くやしさもよわーさもーいっそまるごとーつれてーゆこー♪
そーのうちじゃーなくーていーまいくんだー♪


(そ、そうよ、萩原雪歩…!こんなところでへこたれてちゃダメ…!)

(相対しているのはただの盲導犬なのよ…!)

(冷静に…クレバーにならなきゃっ…)


U・ω・U

(目はそらさないで考えるのよ…)

U・ω・U

(………………そうだ、こんなときプロデューサーならきっと…)

8: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:54:39 ID:f3k



『盲導犬って、すごい難しい訓練をこなしているんだってな。俺たちも見習って頑張んなきゃいけないな!』



(………なんてコト言いそう。ふふっ)

(あっ………そうだ…私は……)


U・ω・U…

(……………………わんちゃんは、私のこと見てもなにも思わないだろうけど………)

U・ω・U…

(私は、ファンを…人を導けるアイドルにならなくちゃって、今あなたを見て気づいたよっ)


9: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:55:08 ID:f3k
そんなことを考えていたら、いつの間にか電車は終点の菊地駅まで到着した。

萩原雪歩はそこで降車する。

盲目の老女を連れた盲導犬も立ち上がって老女に合図を送る。

急に立ち上がったので雪歩はちょっぴり驚いたが、音を上げることはない。

初めて、自分の力で苦手なイヌを克服し、それに勇気までもらった…そのことが雪歩にとって大きな、最初の一歩となったのだろう。雪歩にとって、おそらくもうイヌは怖いものではないのだ。


電車から降りて、もう一度あのイヌを見ると、先程の様子とはうって変わって、ぎこちなく歩く老女をしっかりと導くために努めている。

邪魔をしてはいけないと思った雪歩は、イヌに対して一瞬微笑みをこぼし、早々に駅を後にした。

10: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:55:30 ID:f3k
(ふぅ…なんだか珍しい体験しちゃったな)

(たった30分ぐらいのことだけど、色々と自分を見つめ直せたような………)

(よしっ!今日もがんばろっ!)



「あっ、ハナコ!ばかっ!」

「ちょっとアッキー!どこ行くのっ!」

「わんこ!勝手に離れちゃダメ!」



(ん?向こうから声が…何だろ?…………)

11: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:55:56 ID:f3k
タッタッタッタッ…



Δ・ω・Δピト

(へっ)

○・ω・○スリスリ

(っっっっっ!)ビクッ

≪・ω・≫ペロッ

「ひっ………………」ビクビク

「……………い、いやぁ~~~っ来ないで~~~っ!!!」ダッ




イヌに触れることができるのにはもうちょっと慣れなきゃいけなかったようです。



12: 名無しさん@おーぷん 2016/07/12(火)16:56:20 ID:f3k
ーーーーー

イーマーハシッテクーハーシイッテルー♪
オーイカゼーニセーナカーオーサーレーナーガラー♪


「いやぁ雪歩ちゃんの歌声はほんといいのう。どんなべっぴんちゃんが歌っているのか、一目見てみたいものだねぇ………」


U・ω・Uわん!





おわり