31匹目:猫の歯に蚤
猫が歯で蚤を取ろうとしてもなかなか上手くいかない、という事から、不確実な事、めったに上手くいかないこと、まぐれ当たりの事を指す。
しかしいくら猫でも繰り返していけば上手くなるものだ。
いつまでも無様な醜態を晒しているわけにもいくまい。
猫が歯で蚤を取ろうとしてもなかなか上手くいかない、という事から、不確実な事、めったに上手くいかないこと、まぐれ当たりの事を指す。
しかしいくら猫でも繰り返していけば上手くなるものだ。
いつまでも無様な醜態を晒しているわけにもいくまい。
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引用元: ・北上「我輩は猫である」
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416: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:03:21.03 ID:gRCyU1r30
北上「いやー緊張するねこりゃ」
大井「すぐに終わりますよ。初めは体の感覚に違和感を覚えますけれど、じきに慣れます」
北上「おぉ流石に経験者の余裕だね」
工房前。
お互い練度は十分。
改造の日だった。
大井「すぐに終わりますよ。初めは体の感覚に違和感を覚えますけれど、じきに慣れます」
北上「おぉ流石に経験者の余裕だね」
工房前。
お互い練度は十分。
改造の日だった。
417: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:04:04.11 ID:gRCyU1r30
提督室にて、
提督「色々と予定にズレはあったが、まご苦労さん。北上は改で晴れて雷巡、大井は改二でパワーアップだ」
北上「うんうん。いいねぇ痺れるねぇ」
大井「ハァァァァァ…ついにこの日が…」
提督「まだ納得してなかったのかよ」
大井「当たり前でしょ!って、まあいいです…北上さんの晴れ舞台を邪魔する気はありませんから」
ダシに使われた。
提督「いいじゃねえか強くなるんだし」
大井「私はあんな露出の多い服を着るキャラじゃありません」
提督「えーカワイイじゃん」
大井「提督の好みなんて知りません!」
素直に喜べばいいのにねぇ。
提督「色々と予定にズレはあったが、まご苦労さん。北上は改で晴れて雷巡、大井は改二でパワーアップだ」
北上「うんうん。いいねぇ痺れるねぇ」
大井「ハァァァァァ…ついにこの日が…」
提督「まだ納得してなかったのかよ」
大井「当たり前でしょ!って、まあいいです…北上さんの晴れ舞台を邪魔する気はありませんから」
ダシに使われた。
提督「いいじゃねえか強くなるんだし」
大井「私はあんな露出の多い服を着るキャラじゃありません」
提督「えーカワイイじゃん」
大井「提督の好みなんて知りません!」
素直に喜べばいいのにねぇ。
418: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:04:45.78 ID:gRCyU1r30
まあそんなこんなで工房へやって来たわけだ。
夕張「ハローハローお待ちしておりました~」
大井「なんですかのそカッコ…」
北上「闇医者の世話になる気は無いよ」
夕張「お、分かってるぅ!○○ックジャックと迷ったんだけどアッチはベタすぎるし用意が面倒なのよね~」
北上「普通に迎えりゃいいじゃん」
夕張「つまらないじゃん」
そう言いながら頭に嵌めた茶色の紙袋を取る。流石にあの高身長を再現はできなかったようだ。
夕張「ハローハローお待ちしておりました~」
大井「なんですかのそカッコ…」
北上「闇医者の世話になる気は無いよ」
夕張「お、分かってるぅ!○○ックジャックと迷ったんだけどアッチはベタすぎるし用意が面倒なのよね~」
北上「普通に迎えりゃいいじゃん」
夕張「つまらないじゃん」
そう言いながら頭に嵌めた茶色の紙袋を取る。流石にあの高身長を再現はできなかったようだ。
419: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:05:28.15 ID:gRCyU1r30
夕張「あ、先に言っとくけど結構、いやかなーりあっさり終わるからそんなに構えなくてもいいわよ」
北上「え、ほんと?」
大井「はい。5分くらいで」
ウソだろ!
夕張「殆ど妖精さん任せですからねえ。ひみつ道具でいう小人ばこね。寝てたら終わるわよ」
北上「小人?」
大井「ばこ?」
内容から察するに「小人の靴屋」の小人か?
夕張「次はドラえもんね…」
北上「え、ほんと?」
大井「はい。5分くらいで」
ウソだろ!
夕張「殆ど妖精さん任せですからねえ。ひみつ道具でいう小人ばこね。寝てたら終わるわよ」
北上「小人?」
大井「ばこ?」
内容から察するに「小人の靴屋」の小人か?
夕張「次はドラえもんね…」
420: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:05:59.94 ID:gRCyU1r30
夕張「そうそう、そこに座って。あと詳しくは言えないけど目は開けない方がいいと思う」
北上「なにそれこわい」
大井「体に不可はかからないので昼寝でもする感じにリラックスで大丈夫ですよ」
北上「そぉ?」
散髪とかの感覚だろうか。もっとも本や漫画で得た知識なので実際に理髪店に行ったことなどないのだが。
夕張「はいはーい、目ぇつぶってー。では妖精さんよろしくぅ」
何かが、始まった。
北上「なにそれこわい」
大井「体に不可はかからないので昼寝でもする感じにリラックスで大丈夫ですよ」
北上「そぉ?」
散髪とかの感覚だろうか。もっとも本や漫画で得た知識なので実際に理髪店に行ったことなどないのだが。
夕張「はいはーい、目ぇつぶってー。では妖精さんよろしくぅ」
何かが、始まった。
421: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:06:42.39 ID:gRCyU1r30
不思議な感覚だった。
自分で自分を見つめているような、自分で自分を触っているような、自分で自分を包み込んでいるような。
あらゆる「自分」を認識する刺激を脳が感じているにも関わらず、同じくらい自分が触れているという感覚がある。
触れているのが自分なのか、触れられているのが自分なのか。
それはさておき何だか妙に気持ちいい。
昼寝、とはいかないまでも脳以外の体の機能を切り離し、リラックスしてみる。
自分で自分を見つめているような、自分で自分を触っているような、自分で自分を包み込んでいるような。
あらゆる「自分」を認識する刺激を脳が感じているにも関わらず、同じくらい自分が触れているという感覚がある。
触れているのが自分なのか、触れられているのが自分なのか。
それはさておき何だか妙に気持ちいい。
昼寝、とはいかないまでも脳以外の体の機能を切り離し、リラックスしてみる。
422: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:07:14.00 ID:gRCyU1r30
さてお立会い。衝撃の真実。
私には生前兄弟、兄妹?姉妹、まあ家族のような者がいたらしい。
者というか猫。
はてさてそれは一体誰なのか!
北上(まあ多摩姉ちゃんだよね)
ウミネコさんの言う事を全面的に正しいと仮定すれば。
思えばこれでもかと伏線は貼られていたように思う。
これで多摩姉ちゃんじゃないのならばそれはいささかミスリードが過ぎるというものだ。
私には生前兄弟、兄妹?姉妹、まあ家族のような者がいたらしい。
者というか猫。
はてさてそれは一体誰なのか!
北上(まあ多摩姉ちゃんだよね)
ウミネコさんの言う事を全面的に正しいと仮定すれば。
思えばこれでもかと伏線は貼られていたように思う。
これで多摩姉ちゃんじゃないのならばそれはいささかミスリードが過ぎるというものだ。
423: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:07:40.80 ID:gRCyU1r30
推理小説をいくつか読んだ事がある人には分かると思う。
意外な犯人。奇をてらったトリック。思わぬ真相。そういうのを見たくて本を読む。
でも本当にそうだろうか。
例えば、吹雪の山荘に6人。
被害者1人、探偵1人、容疑者4人。
でもある程度推理小説に触れた事があるなら、当然読み手からしたら容疑者は六人全員だ。
実は殺害されたと思ってた彼女が犯人でした。なんと探偵こそが犯人だった。
それは意外で奇っ怪なオチだし読み手としても満足だが、思わぬ真相ではない。
なんだかんだで読み手は最初の段階で無意識にそれらも犯人たり得ると考えるものだ。
故に本当の意味で予想外な犯人なんてそうそういない。
ある程度決められたルールの範囲内でトリックを組みミスリードを誘う。
ここで実は山の幽霊の仕業でしたって言われても萎えるだけだ。
それで面白いのもあるけどね?
意外な犯人。奇をてらったトリック。思わぬ真相。そういうのを見たくて本を読む。
でも本当にそうだろうか。
例えば、吹雪の山荘に6人。
被害者1人、探偵1人、容疑者4人。
でもある程度推理小説に触れた事があるなら、当然読み手からしたら容疑者は六人全員だ。
実は殺害されたと思ってた彼女が犯人でした。なんと探偵こそが犯人だった。
それは意外で奇っ怪なオチだし読み手としても満足だが、思わぬ真相ではない。
なんだかんだで読み手は最初の段階で無意識にそれらも犯人たり得ると考えるものだ。
故に本当の意味で予想外な犯人なんてそうそういない。
ある程度決められたルールの範囲内でトリックを組みミスリードを誘う。
ここで実は山の幽霊の仕業でしたって言われても萎えるだけだ。
それで面白いのもあるけどね?
424: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:08:12.71 ID:gRCyU1r30
えーっと、だからつまり何が言いたいんだっけ。
夕張「わっ!」
北上「うわっ!?」
夕張「ありゃ、ホントに寝てた?改造終わりでーす」
北上「え、もう?」
あっという間だ。
大井「北上さん北上さん!どうどうどうですかこの衣装!」
北上「おーー、お?」
大井っちの改二衣装。白い、白くて、
北上「○○○ね」
夕張「○○○ですね」
大井「はぁぁぁぁぁ……」
隅っこでいじけだした。
北上「ゴメンゴメン冗談だって~」
夕張「わっ!」
北上「うわっ!?」
夕張「ありゃ、ホントに寝てた?改造終わりでーす」
北上「え、もう?」
あっという間だ。
大井「北上さん北上さん!どうどうどうですかこの衣装!」
北上「おーー、お?」
大井っちの改二衣装。白い、白くて、
北上「○○○ね」
夕張「○○○ですね」
大井「はぁぁぁぁぁ……」
隅っこでいじけだした。
北上「ゴメンゴメン冗談だって~」
425: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:08:50.01 ID:gRCyU1r30
北上「先制雷撃ねえ」
夕張「習うより慣れろ、ね」
北上「大体は分かるよ。よく大井っちの見てたし」
大井「いやん北上さんいつもそんなに私のこと見ていてくれたんですか~」
北上「うんうん見てた見てた」
夕張「慣れてるわね~。というわけでこちらが甲標的よ。使ってみる?」
北上「いいの?」
大井「提督から、というか吹雪から許可が降りてるわ。なので!一緒に練習しま「あ~大井さんはこの後近代化改修なので工房で待機です」あ゛?」
夕張「いやいや、あ゛、じゃないですよ…」
大井「チッ…まあ仕方ないわ」
夕張「習うより慣れろ、ね」
北上「大体は分かるよ。よく大井っちの見てたし」
大井「いやん北上さんいつもそんなに私のこと見ていてくれたんですか~」
北上「うんうん見てた見てた」
夕張「慣れてるわね~。というわけでこちらが甲標的よ。使ってみる?」
北上「いいの?」
大井「提督から、というか吹雪から許可が降りてるわ。なので!一緒に練習しま「あ~大井さんはこの後近代化改修なので工房で待機です」あ゛?」
夕張「いやいや、あ゛、じゃないですよ…」
大井「チッ…まあ仕方ないわ」
426: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:09:29.00 ID:gRCyU1r30
夕張「それじゃ北上さんは向こうでアブちゃんと「はあ!?」何ですか!今度は何なんですか!?」
大井「今阿武隈って言いましたよね!なんで私じゃなくてあの娘なんですか!」
北上「そういや阿武隈も雷撃出来るんだっけ」
夕張「そりゃあできるできないで言えばお二人共同じですけど、練度が違うじゃないですか…」
大井「ぐっ…」
大井っちは練度50。
阿武隈はたしか80以上だとか。
大井「すぐに、すぐに、抜いてやるわ…」
怪しげなオーラを出しながら工房に戻っていく大井っち。
夕張「ちなみにこれが提督の狙いです」
北上「マジで?」
夕張「多分」
北上「多分かぁ」
大井「今阿武隈って言いましたよね!なんで私じゃなくてあの娘なんですか!」
北上「そういや阿武隈も雷撃出来るんだっけ」
夕張「そりゃあできるできないで言えばお二人共同じですけど、練度が違うじゃないですか…」
大井「ぐっ…」
大井っちは練度50。
阿武隈はたしか80以上だとか。
大井「すぐに、すぐに、抜いてやるわ…」
怪しげなオーラを出しながら工房に戻っていく大井っち。
夕張「ちなみにこれが提督の狙いです」
北上「マジで?」
夕張「多分」
北上「多分かぁ」
427: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:10:00.63 ID:gRCyU1r30
提督「改造、改二おめでとぉおう!!」パァン
北上「お、おう」
大井「はぁ…」
夜。風呂に入ってご飯も食べた後。提督室に呼ばれた。
前に言ってたお祝いだろうとは分かってたけど、まさかこんなテンションでクラッカーまで鳴らされるとは思わなんだ。
大井「はいはい、今度はどんなお酒ですか」
北上「大井っち冷静だねぇ」
大井「前にも一度あったので」
前にも、つまり大井っちが改造で雷巡になった時か。
北上「お、おう」
大井「はぁ…」
夜。風呂に入ってご飯も食べた後。提督室に呼ばれた。
前に言ってたお祝いだろうとは分かってたけど、まさかこんなテンションでクラッカーまで鳴らされるとは思わなんだ。
大井「はいはい、今度はどんなお酒ですか」
北上「大井っち冷静だねぇ」
大井「前にも一度あったので」
前にも、つまり大井っちが改造で雷巡になった時か。
428: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:10:30.08 ID:gRCyU1r30
提督「今回のは取っておきだぞ。ほれ」
机の上にどんと置かれた一升瓶は、前に私が見たものとは異なっていた。
北上「それって?」
大井「魔王?」
提督「芋焼酎ってやつだ」
北上「変えたの?」
提督「サプライズになったろ?」
なったけど、それじゃ飲めるか確認した意味ないんじゃ…
大井「それで、どうして今回は芋焼酎を?」
提督「二人にぴったりだと思ってな」
大井「え?」
何故に芋。
机の上にどんと置かれた一升瓶は、前に私が見たものとは異なっていた。
北上「それって?」
大井「魔王?」
提督「芋焼酎ってやつだ」
北上「変えたの?」
提督「サプライズになったろ?」
なったけど、それじゃ飲めるか確認した意味ないんじゃ…
大井「それで、どうして今回は芋焼酎を?」
提督「二人にぴったりだと思ってな」
大井「え?」
何故に芋。
429: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:10:58.58 ID:gRCyU1r30
提督「よしみんな、グラスは持ったか?」
大井「あらおいしい。いい意味で芋焼酎って感じがしないわね」
提督「はえーよ!飲むのはえーよ!」
北上「生か~、流石大井っち。私ゃお湯割りかねぇ」
大井「北上さんなら4:6位で丁度いいと思います」
北上「そお?」
提督「えーい勝手に飲め飲め、おら乾杯」
大井「乾杯」
北上「かんぱ~い」
大井「あらおいしい。いい意味で芋焼酎って感じがしないわね」
提督「はえーよ!飲むのはえーよ!」
北上「生か~、流石大井っち。私ゃお湯割りかねぇ」
大井「北上さんなら4:6位で丁度いいと思います」
北上「そお?」
提督「えーい勝手に飲め飲め、おら乾杯」
大井「乾杯」
北上「かんぱ~い」
430: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:11:26.29 ID:gRCyU1r30
北上「あっ、意外と美味しい」
提督「意外とってなんだ意外とって」
大井「聞かない名前ですけど、何処でこれを?」
提督「ここに来る前にいた鎮守府の近くにな、いや近くってほどじゃないけど。そこの地元の人から送ってもらったんだよ」
北上「へ~、意外な人脈が。というか提督ってほかの鎮守府に居たんだ」
提督「おうよ。2代目にして二つ目の鎮守府さ」
大井「私はこの鎮守府で生まれたので、提督の以前を知らないんですよね」
北上「ほほう。こりゃいい肴になりそうだね」
提督「そんなに気になるか?」
提督「意外とってなんだ意外とって」
大井「聞かない名前ですけど、何処でこれを?」
提督「ここに来る前にいた鎮守府の近くにな、いや近くってほどじゃないけど。そこの地元の人から送ってもらったんだよ」
北上「へ~、意外な人脈が。というか提督ってほかの鎮守府に居たんだ」
提督「おうよ。2代目にして二つ目の鎮守府さ」
大井「私はこの鎮守府で生まれたので、提督の以前を知らないんですよね」
北上「ほほう。こりゃいい肴になりそうだね」
提督「そんなに気になるか?」
431: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:11:55.13 ID:gRCyU1r30
北上「そりゃその若さで鎮守府移転って珍しい事じゃん?」
大井「一体どんな問題起こしたんですか…?」
提督「何もしてねえよ。ここの前任者が引退した、それだけだよ」
大井「引退、ですか。珍しいですね」
提督「全くだ」
北上「…提督飲まないの?」
提督「俺これ苦手だわ」
北大「「えぇ…」」
子供か。
大井「一体どんな問題起こしたんですか…?」
提督「何もしてねえよ。ここの前任者が引退した、それだけだよ」
大井「引退、ですか。珍しいですね」
提督「全くだ」
北上「…提督飲まないの?」
提督「俺これ苦手だわ」
北大「「えぇ…」」
子供か。
432: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:12:27.92 ID:gRCyU1r30
お酒って、なぜ飲むのだろう。
酔う酔わないで言えば私は強いほうだ。
でもあんな苦い、というかなんというか。妙な刺激だけのわけわからん飲み物をわざわざ飲もうとは思わない。
大井「ほ~ら、まだありますよぉ~」
提督「バッカおめぇ入れ過ぎだよそりゃよ。割れ割れお湯だお湯」
大井「こんなものお茶ですよお茶あ!」グビ
提督「バッカおめぇバッカお酒はそんな楽しみ方するもんじゃねえんだよ」クイッ
顔真っ赤で底なしの笑顔を浮かべる大井っちと、少し体制がふらつき呂律も回らない提督。
完全に出来上がってる。
北上「元気だね」ボソッ
お湯割りに少し口をつける。
酔う酔わないで言えば私は強いほうだ。
でもあんな苦い、というかなんというか。妙な刺激だけのわけわからん飲み物をわざわざ飲もうとは思わない。
大井「ほ~ら、まだありますよぉ~」
提督「バッカおめぇ入れ過ぎだよそりゃよ。割れ割れお湯だお湯」
大井「こんなものお茶ですよお茶あ!」グビ
提督「バッカおめぇバッカお酒はそんな楽しみ方するもんじゃねえんだよ」クイッ
顔真っ赤で底なしの笑顔を浮かべる大井っちと、少し体制がふらつき呂律も回らない提督。
完全に出来上がってる。
北上「元気だね」ボソッ
お湯割りに少し口をつける。
433: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:13:05.30 ID:gRCyU1r30
北上「ついて行かなくてよかったの?」
大井「アレくらいの酔いなら1人で用くらいたせますよぉ。というか、なんで私がついて行かにゃならないんですかあの人に」
北上「それもそうだね~」
提督室で2人っきり。
しかしあの人ねぇ。いつもと違って随分柔らかい言い方をするじゃあないさ。
大井「ふぅ…」
北上「…」
またか。
改造してから何故か唐突に溜息をつき悲しげな表情をする時がちらほら。
まさかそこまで服の事を気にしてるのか?
大井「アレくらいの酔いなら1人で用くらいたせますよぉ。というか、なんで私がついて行かにゃならないんですかあの人に」
北上「それもそうだね~」
提督室で2人っきり。
しかしあの人ねぇ。いつもと違って随分柔らかい言い方をするじゃあないさ。
大井「ふぅ…」
北上「…」
またか。
改造してから何故か唐突に溜息をつき悲しげな表情をする時がちらほら。
まさかそこまで服の事を気にしてるのか?
434: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:14:49.82 ID:gRCyU1r30
北上「そういや大井っち、夕飯前にどこ行ってたの?」
大井「ああ、えと。明石さんのところへ」
北上「…服は変えられないと思うよ」
大井「へ?…ああ、そうですよね…北上さんこそ。雷撃訓練はどうでしたあ?」
北上「良かったって。目がいいからね私。あとは慣れって言われたよ」
提督「ただいま諸君!」ガチャ
北上「お~おかえうわっ提督!下下!」
提督「どうしたぁ北上!」
幸いにもフルチンじゃなかったが、○○○一丁とは…
大井「提督」
提督「なんだぁ!」
大井「お酒に、強くなりましょう」
提督「よしこいぃ!」
大井「ああ、えと。明石さんのところへ」
北上「…服は変えられないと思うよ」
大井「へ?…ああ、そうですよね…北上さんこそ。雷撃訓練はどうでしたあ?」
北上「良かったって。目がいいからね私。あとは慣れって言われたよ」
提督「ただいま諸君!」ガチャ
北上「お~おかえうわっ提督!下下!」
提督「どうしたぁ北上!」
幸いにもフルチンじゃなかったが、○○○一丁とは…
大井「提督」
提督「なんだぁ!」
大井「お酒に、強くなりましょう」
提督「よしこいぃ!」
435: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:17:56.14 ID:gRCyU1r30
大井っちの特訓によりぶっ潰れた提督をベットに放って私達は部屋に戻った。
大井「いいんですか?提督を介抱しなくて」
なぜ私に聞くのか。
あ、そうか。私をダシに自分も介抱するつもりか。
別に残ってもいいのにさ。
でも、まあ。
北上「いいよいいよ。戻ろ」
なんとなく、阻止してみる。邪魔してみる。なんとなく。
大井「いいんですか?提督を介抱しなくて」
なぜ私に聞くのか。
あ、そうか。私をダシに自分も介抱するつもりか。
別に残ってもいいのにさ。
でも、まあ。
北上「いいよいいよ。戻ろ」
なんとなく、阻止してみる。邪魔してみる。なんとなく。
436: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:18:29.81 ID:gRCyU1r30
部屋までの道のりはなんだかいつもより遠く感じられる。
大井っちは全然平気そうだけど、私はちょっとふらつく。
大井「大丈夫ですか?」
そう言って肩を持つ大井っちはすごく嬉しそうだ。なんというか勝ち誇った感じの笑顔。
北上「ただま~」
流石にみんな寝てるか。
寝支度は終わってるし私達もさっさと寝よう。
大井っちは全然平気そうだけど、私はちょっとふらつく。
大井「大丈夫ですか?」
そう言って肩を持つ大井っちはすごく嬉しそうだ。なんというか勝ち誇った感じの笑顔。
北上「ただま~」
流石にみんな寝てるか。
寝支度は終わってるし私達もさっさと寝よう。
437: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:19:07.68 ID:gRCyU1r30
多摩「おかえりにゃ」
大井「多摩姉さん。起きてたんですか」
いつも思うけどこういう時のひそひそ声って寝てても普通に聞こえる音量よね。
多摩「今起きたにゃ。多摩は耳がいいにゃ」
北上「そっか」
耳がいい、ね。
多摩「どうせ酒臭いんだろうにゃ。端で寝るにゃ」
北上「分かってるよ」
大井「ヨシッ」
端、ではなく私の隣という事実に食いつく大井っち。
大井「多摩姉さん。起きてたんですか」
いつも思うけどこういう時のひそひそ声って寝てても普通に聞こえる音量よね。
多摩「今起きたにゃ。多摩は耳がいいにゃ」
北上「そっか」
耳がいい、ね。
多摩「どうせ酒臭いんだろうにゃ。端で寝るにゃ」
北上「分かってるよ」
大井「ヨシッ」
端、ではなく私の隣という事実に食いつく大井っち。
438: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/03(日) 03:19:33.99 ID:gRCyU1r30
大井「おやすみなさい」
北上「おやすみ~」
多摩「おやすみにゃ」
聞けばいい、聞けばいいんだ。
ひょっとして生前猫だったりしない?なんて。
でも、なんだろうね。
ちょっと怖い。
とはいえいつまでも放置しておくわけにもいくまい。
少し、歩き出さないと。
北上「おやすみ~」
多摩「おやすみにゃ」
聞けばいい、聞けばいいんだ。
ひょっとして生前猫だったりしない?なんて。
でも、なんだろうね。
ちょっと怖い。
とはいえいつまでも放置しておくわけにもいくまい。
少し、歩き出さないと。
444: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/04(月) 03:28:29.66 ID:ZEMrep6Q0
天気、曇り。
この時期には珍しく気温は30度を下回っているらしい。
誰も通らない道路を1人で歩く。
左手には海。右手には草木が。
心地よい風が頬を撫でる。
過ごしやすいのは私だけじゃないのか、蝉たちの声もいつもより元気なように思える。
北上「あ」
と、思わず声が漏れた。
私の視線は、道路の脇に横たわっているそれに釘付けになる。
見てはいけないものを見てしまったような。何か見慣れたものを見たような。不思議な感覚を覚える。
蝉の声が一瞬、止まった気がした。
この時期には珍しく気温は30度を下回っているらしい。
誰も通らない道路を1人で歩く。
左手には海。右手には草木が。
心地よい風が頬を撫でる。
過ごしやすいのは私だけじゃないのか、蝉たちの声もいつもより元気なように思える。
北上「あ」
と、思わず声が漏れた。
私の視線は、道路の脇に横たわっているそれに釘付けになる。
見てはいけないものを見てしまったような。何か見慣れたものを見たような。不思議な感覚を覚える。
蝉の声が一瞬、止まった気がした。
445: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/04(月) 03:29:06.96 ID:ZEMrep6Q0
腕時計を見る。
予定の時間まであと10分。提督が貸してくれたものだ、ズレているということはあるまい。
早めの行動を心掛けて得た貴重な時間だ。
具体的に何をするかはまったく決まって無かったけれど、何もしないという事だけはしないだろう。
私は少しづつそれに近づいていった。
足取りは軽くも重くもなく、先程と変わらぬ速度で。
予定の時間まであと10分。提督が貸してくれたものだ、ズレているということはあるまい。
早めの行動を心掛けて得た貴重な時間だ。
具体的に何をするかはまったく決まって無かったけれど、何もしないという事だけはしないだろう。
私は少しづつそれに近づいていった。
足取りは軽くも重くもなく、先程と変わらぬ速度で。
446: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/04(月) 03:29:55.40 ID:ZEMrep6Q0
それに私の影が重なった。
不思議な事にそれと私の影は形が違った。
北上「よりにもよって、こんな日にね」
今日はお盆。なんて、そんな事気にするのはこちらの勝手で、この子にはなんの関係もないことなのだけれど。
改めてマジマジとそれを見つめる。
思っていたよりも綺麗だった。
この場合の思っていたはつまり轢かれてグチャグチャになってはいないかという話だ。
そうではないという事は撥ねられたのだろうか。
少しほっとする。
おかしな話だよね。
もうそこにはいない本人ではなく全く関係の無い私がそんな事を思うなんて。
不思議な事にそれと私の影は形が違った。
北上「よりにもよって、こんな日にね」
今日はお盆。なんて、そんな事気にするのはこちらの勝手で、この子にはなんの関係もないことなのだけれど。
改めてマジマジとそれを見つめる。
思っていたよりも綺麗だった。
この場合の思っていたはつまり轢かれてグチャグチャになってはいないかという話だ。
そうではないという事は撥ねられたのだろうか。
少しほっとする。
おかしな話だよね。
もうそこにはいない本人ではなく全く関係の無い私がそんな事を思うなんて。
447: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/04(月) 03:30:58.95 ID:ZEMrep6Q0
北上「さてと」
肩にかけていた大井っちから借りたカバンを漁る。
念のためにと大井っちと提督から持たされたあれやこれやが七つ道具もかくやと言った感じに入っている。
実際役に立ちそうだ。
ビニール袋を二つ取り出して手にはめる。
別に艦娘は細菌とかなんやらには強いから問題ないけど普通の人間はそうはいかない。
これから人里に降りるのだしそこら辺は配慮しなきゃ。
北上「人里に降りるって、我ながらどうなんだろうね」
なんとはなく話しかけてしまう。
なんだろうか、この感じは。親近感?だとしたら何処に?
肩にかけていた大井っちから借りたカバンを漁る。
念のためにと大井っちと提督から持たされたあれやこれやが七つ道具もかくやと言った感じに入っている。
実際役に立ちそうだ。
ビニール袋を二つ取り出して手にはめる。
別に艦娘は細菌とかなんやらには強いから問題ないけど普通の人間はそうはいかない。
これから人里に降りるのだしそこら辺は配慮しなきゃ。
北上「人里に降りるって、我ながらどうなんだろうね」
なんとはなく話しかけてしまう。
なんだろうか、この感じは。親近感?だとしたら何処に?
448: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/04(月) 03:34:48.47 ID:ZEMrep6Q0
そっと、包み込むようにそれを持ち上げる。
暖かくは、なかった。
ビニール越しに伝わってくる感覚はおよそ生命の尊さを宿しているものとは言い難いものだった。
どがつかない程度の田舎だ。まして鎮守府のすぐ近く。舗装された道路以外は自然そのものだ。
道路脇の草むらにそっと死体を置く。
夏色の草木が私の手なんかよりも優しく、広く包み込む。
彼、彼女かな?確率でいえばまあ彼だろう。
その彼は最早人の目の届かない空間に置かれた。
時計を見ると残り時間は五分を切っていた。
貴重な10分は、決して長い時間ではないようだ。
もっとも時間がもういくらかあったとしても、私はこれ以上の事はしなかったろうし、出来なかっただろう。
暖かくは、なかった。
ビニール越しに伝わってくる感覚はおよそ生命の尊さを宿しているものとは言い難いものだった。
どがつかない程度の田舎だ。まして鎮守府のすぐ近く。舗装された道路以外は自然そのものだ。
道路脇の草むらにそっと死体を置く。
夏色の草木が私の手なんかよりも優しく、広く包み込む。
彼、彼女かな?確率でいえばまあ彼だろう。
その彼は最早人の目の届かない空間に置かれた。
時計を見ると残り時間は五分を切っていた。
貴重な10分は、決して長い時間ではないようだ。
もっとも時間がもういくらかあったとしても、私はこれ以上の事はしなかったろうし、出来なかっただろう。
449: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/04(月) 03:35:23.35 ID:ZEMrep6Q0
北上「…」
両手にはめたビニール袋を慎重に裏返しながら考える。
こういう時はどう締めればいいのかな。
日本人ならやはり両手を合わせて南無阿弥陀仏?
それで言うと私はキリスト教かもしれないのだが、元。
まあ誰が見ているわけでもないし、そんな事をしても一銭の得にもなるまい。
せっかく会えた、なんて言い方もどうかと思うが、同胞にねぎらいの言葉でもかけてやろう。
北上「お疲れ様」
裏返して外したビニール袋を更にビニール袋で包んでカバンにしまう。
さてそろそろ時間だ。バス停に向かおう。
両手にはめたビニール袋を慎重に裏返しながら考える。
こういう時はどう締めればいいのかな。
日本人ならやはり両手を合わせて南無阿弥陀仏?
それで言うと私はキリスト教かもしれないのだが、元。
まあ誰が見ているわけでもないし、そんな事をしても一銭の得にもなるまい。
せっかく会えた、なんて言い方もどうかと思うが、同胞にねぎらいの言葉でもかけてやろう。
北上「お疲れ様」
裏返して外したビニール袋を更にビニール袋で包んでカバンにしまう。
さてそろそろ時間だ。バス停に向かおう。
450: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/04(月) 03:35:50.90 ID:ZEMrep6Q0
北上「それじゃね」
三毛猫の死体は、当然ながら、残念ながら、返事をしなかった。
33匹目:猫に小判
価値のわからない者にそれを与えても何の意味もない、という意味。
豚に真珠もそう。
ところでなんで人は動物に無理難題ふっかけてそれをことわざにするのか。
価値を知らないってそんなの当たり前じゃん。というか分かっても使えないじゃん。
勝手に並べ立てられて比べられる動物の方はいい迷惑だ。
だからこれは、そういった動物達の代表として、私から人類へのささやかな仕返しである。
三毛猫の死体は、当然ながら、残念ながら、返事をしなかった。
33匹目:猫に小判
価値のわからない者にそれを与えても何の意味もない、という意味。
豚に真珠もそう。
ところでなんで人は動物に無理難題ふっかけてそれをことわざにするのか。
価値を知らないってそんなの当たり前じゃん。というか分かっても使えないじゃん。
勝手に並べ立てられて比べられる動物の方はいい迷惑だ。
だからこれは、そういった動物達の代表として、私から人類へのささやかな仕返しである。
455: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/05(火) 02:10:19.38 ID:xL8gPs6W0
北上「お、きたきた」
毎日海に出ている私達よりもよほど日焼けしている古びたバスが坂を登ってくるのが見える。
予定表の時刻との差は10分。
これ程の正確さで毎日巡回しているとは、交通機関というのは実に素晴らしい。
初めてのバス乗車。大井っちの言いつけ通り確認をとる。
北上「〇〇行きであってますか?」
「ん?合ってる合ってる。ここじゃ他に行くバスは通ってないよ」
運転手のおじちゃんが優しく笑う。
毎日海に出ている私達よりもよほど日焼けしている古びたバスが坂を登ってくるのが見える。
予定表の時刻との差は10分。
これ程の正確さで毎日巡回しているとは、交通機関というのは実に素晴らしい。
初めてのバス乗車。大井っちの言いつけ通り確認をとる。
北上「〇〇行きであってますか?」
「ん?合ってる合ってる。ここじゃ他に行くバスは通ってないよ」
運転手のおじちゃんが優しく笑う。
456: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/05(火) 02:11:07.86 ID:xL8gPs6W0
入ってすぐの少しだけ位置の高い席に座る。
うむ、なかなか良い眺めだ。
「お嬢ちゃん、鎮守府の人かい?もしかして艦娘ってやつなのか」
運転中に、しかもバスの運転手が話しかけてきた。そういうものなのか?
いやこの際それはどうでもいい。
問題は鎮守府、つまり軍の関係者にあっさりと話しかけている事だ。
艦娘もいわば国家機密というか、軍の兵器。一般人がおいそれと触れていいものじゃない。
だから私もお忍びという事で変装してきているのだ。
だというのにいきなり艦娘とは。
北上「違いますよ。学生です。〇〇中学の」
「んー聞いたことねえな」
北上「隣の県から来たんですよ」
うむ、なかなか良い眺めだ。
「お嬢ちゃん、鎮守府の人かい?もしかして艦娘ってやつなのか」
運転中に、しかもバスの運転手が話しかけてきた。そういうものなのか?
いやこの際それはどうでもいい。
問題は鎮守府、つまり軍の関係者にあっさりと話しかけている事だ。
艦娘もいわば国家機密というか、軍の兵器。一般人がおいそれと触れていいものじゃない。
だから私もお忍びという事で変装してきているのだ。
だというのにいきなり艦娘とは。
北上「違いますよ。学生です。〇〇中学の」
「んー聞いたことねえな」
北上「隣の県から来たんですよ」
457: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/05(火) 02:11:57.10 ID:xL8gPs6W0
どうやら艦娘とバレてるわけじゃないようだ。乗ったバス停から適当に言ってみただけなのかな。
確かにあそこは鎮守府を除けば民家は数える程しかない。
北上「兄に会いに来たんです。鎮守府で働いてて」
「おー軍人さんかあ。すごいねぇ」
北上「ええ、まあ」
会話はそこで打ち止めとなった。流石に運転に集中してくれたのだろう。
これ以上聞かれたらどうしようかと思ったがどうにか誤魔化せたようだ。
ちょっとした緊張が切れ、背もたれに体重を預ける。
北上「ありゃ」
ポニーテールを結わえたところが後ろにあたる。
やはり不便だなこれは。慣れないことをするものじゃない。
変装目的なので解くわけにはいかないのだが。
窓を見る。
鎮守府は随分と遠くなっていた。
確かにあそこは鎮守府を除けば民家は数える程しかない。
北上「兄に会いに来たんです。鎮守府で働いてて」
「おー軍人さんかあ。すごいねぇ」
北上「ええ、まあ」
会話はそこで打ち止めとなった。流石に運転に集中してくれたのだろう。
これ以上聞かれたらどうしようかと思ったがどうにか誤魔化せたようだ。
ちょっとした緊張が切れ、背もたれに体重を預ける。
北上「ありゃ」
ポニーテールを結わえたところが後ろにあたる。
やはり不便だなこれは。慣れないことをするものじゃない。
変装目的なので解くわけにはいかないのだが。
窓を見る。
鎮守府は随分と遠くなっていた。
458: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/05(火) 02:14:13.75 ID:xL8gPs6W0
提督「外に行きたい?」
北上「そ。改造祝と、前の貸しとで。いいでしょ?」
提督「まあそりゃ止める理由は無いけどよ」
大井「でもどうして急に?」
北上「これだよこれ」
大井「えーと…サイン会?」
提督「あーこの本最近話題になってるやつだ。テレビで見たことあるぜ」
北上「私のお気に入りなんだけどね、その作者がここの近くの街でサイン会やるんだって」
大井「それで外に」
提督「なるほどね。理由は把握した」
北上「そ。改造祝と、前の貸しとで。いいでしょ?」
提督「まあそりゃ止める理由は無いけどよ」
大井「でもどうして急に?」
北上「これだよこれ」
大井「えーと…サイン会?」
提督「あーこの本最近話題になってるやつだ。テレビで見たことあるぜ」
北上「私のお気に入りなんだけどね、その作者がここの近くの街でサイン会やるんだって」
大井「それで外に」
提督「なるほどね。理由は把握した」
459: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/05(火) 02:15:08.29 ID:xL8gPs6W0
大井「では提督、今度の日曜にでも私と北上さんで行ってきますね」
北上「え、私1人がいいんだけど」
大井「な゛っ!いやなんですか!私と2人はいやなんですか!?」
提督「落ち着け落ち着け…でも誰かとはともかく北上は外に行くの初めてだろ?1人は流石に危ないだろ」
北上「大井っちは行ったことあるの?」
大井「え、あぁはい。何回かは。服とかは実際に見て買いたいですからね」
提督「行ったことあるなしに関わらず基本は複数人でいくんだよ。何があるかわからないからな」
北上「そっかぁ…」
大井「何かひとりで行きたい理由があるんですか?」
北上「うん、ある」
北上「え、私1人がいいんだけど」
大井「な゛っ!いやなんですか!私と2人はいやなんですか!?」
提督「落ち着け落ち着け…でも誰かとはともかく北上は外に行くの初めてだろ?1人は流石に危ないだろ」
北上「大井っちは行ったことあるの?」
大井「え、あぁはい。何回かは。服とかは実際に見て買いたいですからね」
提督「行ったことあるなしに関わらず基本は複数人でいくんだよ。何があるかわからないからな」
北上「そっかぁ…」
大井「何かひとりで行きたい理由があるんですか?」
北上「うん、ある」
460: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/05(火) 02:15:39.98 ID:xL8gPs6W0
北上「おっと」
バスが揺れる。
何か石か段差でも乗り越えたらしい。
車内を見るといつの間にか人がチラホラと乗っていた。
「次は〇〇。〇〇です」
メモ帳を確認する。
大分町に近づいてきたようだ。
渡りの景色も人工的なものに変わってきている。
カバンの中のカードを確認する。
私のこれまでの働きに対する報酬が入っているカードだ。
バスが揺れる。
何か石か段差でも乗り越えたらしい。
車内を見るといつの間にか人がチラホラと乗っていた。
「次は〇〇。〇〇です」
メモ帳を確認する。
大分町に近づいてきたようだ。
渡りの景色も人工的なものに変わってきている。
カバンの中のカードを確認する。
私のこれまでの働きに対する報酬が入っているカードだ。
461: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/05(火) 02:16:27.61 ID:xL8gPs6W0
バスがトンネルに入った。
黒い窓に自分の顔が写る。
口元が少し歪んで、ニヤッという音が聞こえそうな顔をしている。
実物の硬貨でないのは少し残念だがまあいいだろう。
そう、これは私の復讐なのだ。仕返しなのだ。
私にはこの小判の価値がわかっている。
誰も知ることはないだろう。
今日を世界で初、猫が小判を使った記念日にしてやるんだ。
他の誰でもない。私が、私だけの力で成し遂げるんだ。
バスがトンネルを抜ける。
北上「おお」
そこには大きな、いや決して大きくはないのかもしれないが、しかし私が衝撃と感動を覚えるには十分な程に活気に溢れる人里があった。
黒い窓に自分の顔が写る。
口元が少し歪んで、ニヤッという音が聞こえそうな顔をしている。
実物の硬貨でないのは少し残念だがまあいいだろう。
そう、これは私の復讐なのだ。仕返しなのだ。
私にはこの小判の価値がわかっている。
誰も知ることはないだろう。
今日を世界で初、猫が小判を使った記念日にしてやるんだ。
他の誰でもない。私が、私だけの力で成し遂げるんだ。
バスがトンネルを抜ける。
北上「おお」
そこには大きな、いや決して大きくはないのかもしれないが、しかし私が衝撃と感動を覚えるには十分な程に活気に溢れる人里があった。
467: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 03:15:43.63 ID:3MbIRneq0
北上「変、じゃないよね?」
終点。なんでも新幹線も通っているという一番大きな駅で降りる。
周りには鎮守府の何倍も大きな建物が立ち並んでいる。
駅の建物にある服やカバンが飾られているケースの前に行き、自分の姿を映す。
ポニーテールにセーラー服、学校指定といった感じのカバン。
「それでさー思わず買っちゃったんだあ」
「えーマジで?」
ガラスに、私の後ろを通る2人の女子学生が映る。恐らく中学生だろう。
北上「うん、違和感なし」
私も傍から見れば中学生に相違ないだろう。
話し相手がいないのは少々寂しいが、目的のためには仕方ない。
サイン会まではまだ時間がある。
今日はこのカバンに教科書の変わりに本を詰めて帰るんだ。
さて、本屋はどことどこにあるのだっけな。
終点。なんでも新幹線も通っているという一番大きな駅で降りる。
周りには鎮守府の何倍も大きな建物が立ち並んでいる。
駅の建物にある服やカバンが飾られているケースの前に行き、自分の姿を映す。
ポニーテールにセーラー服、学校指定といった感じのカバン。
「それでさー思わず買っちゃったんだあ」
「えーマジで?」
ガラスに、私の後ろを通る2人の女子学生が映る。恐らく中学生だろう。
北上「うん、違和感なし」
私も傍から見れば中学生に相違ないだろう。
話し相手がいないのは少々寂しいが、目的のためには仕方ない。
サイン会まではまだ時間がある。
今日はこのカバンに教科書の変わりに本を詰めて帰るんだ。
さて、本屋はどことどこにあるのだっけな。
468: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 03:16:20.55 ID:3MbIRneq0
北上「変装?」
提督「そそ。ほら、お前ら顔割れてるだろ?」
北上「まあクローンみたいなものだしねぇ」
基本的に一般人と接触する機会はないが、大都市なんかじゃパフォーマンスとして人々の前に出ることもあるらしい。
何せ北上というだけで皆顔が同じなのだ。どこかの北上がそうやって人々の前に出た時点で私の顔も割ることになる。
大井「だから変装するんですよ」
北上「いやでもそんなルパンみたいな事簡単にできるものなの?」
それとも何か変装用の装備とかあるのかな。
提督「そそ。ほら、お前ら顔割れてるだろ?」
北上「まあクローンみたいなものだしねぇ」
基本的に一般人と接触する機会はないが、大都市なんかじゃパフォーマンスとして人々の前に出ることもあるらしい。
何せ北上というだけで皆顔が同じなのだ。どこかの北上がそうやって人々の前に出た時点で私の顔も割ることになる。
大井「だから変装するんですよ」
北上「いやでもそんなルパンみたいな事簡単にできるものなの?」
それとも何か変装用の装備とかあるのかな。
469: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 03:17:09.15 ID:3MbIRneq0
提督「そう難しい事はしねえよ。確かに顔は割れている。でも皆、艦娘ってのはあの服を着てあの装備をしてあの髪型をしてって固定されたイメージしかもってない」
大井「私達も基本的には人間と何ら変わらないんですから、少し工夫すれば変装としては十分なんですよ」
北上「工夫?」
北上「工夫ねえ」
読んでいた本を棚に戻す。
これは自論だが読むかどうかは粗筋や評判、作者などで決まるがその場でこれを買おう!となる本は大抵最初の3ページで決まる。
とまあそれはどうでもいいんだけど。
隣の棚に移動するとそこは漫画コーナーだった。
学校帰りの男子学生が3人立ち読みをしていた。
面白いものだ。普段は戦場で血に濡れている私達が、こうも簡単に日常に溶け込めるとは。
大井「私達も基本的には人間と何ら変わらないんですから、少し工夫すれば変装としては十分なんですよ」
北上「工夫?」
北上「工夫ねえ」
読んでいた本を棚に戻す。
これは自論だが読むかどうかは粗筋や評判、作者などで決まるがその場でこれを買おう!となる本は大抵最初の3ページで決まる。
とまあそれはどうでもいいんだけど。
隣の棚に移動するとそこは漫画コーナーだった。
学校帰りの男子学生が3人立ち読みをしていた。
面白いものだ。普段は戦場で血に濡れている私達が、こうも簡単に日常に溶け込めるとは。
470: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 03:17:53.06 ID:3MbIRneq0
髪型も服装も大井っちから借りた。
球磨型で外に出る時は皆で同じ制服を着ていくらしい。
重巡や戦艦などとなるともっと大人な服装をするとか。
興味はなかったのでスルーしたけど。
というか話を聞く限りお洒落をして街に出る人はそこそこいるようだがホントに大丈夫なのかな、それ。
今こうして本を立ち読みしている時でさえいきなり「お前艦娘だな」とか黒服のやばそうな巨漢に話しかけられやしないかとビクビクなのだが。
変装の意味もその効果もよくわかっているけれど、そんな芸能人みたいな話と国の極秘情報を一緒にしないでもらいたい。
球磨型で外に出る時は皆で同じ制服を着ていくらしい。
重巡や戦艦などとなるともっと大人な服装をするとか。
興味はなかったのでスルーしたけど。
というか話を聞く限りお洒落をして街に出る人はそこそこいるようだがホントに大丈夫なのかな、それ。
今こうして本を立ち読みしている時でさえいきなり「お前艦娘だな」とか黒服のやばそうな巨漢に話しかけられやしないかとビクビクなのだが。
変装の意味もその効果もよくわかっているけれど、そんな芸能人みたいな話と国の極秘情報を一緒にしないでもらいたい。
471: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 03:18:48.90 ID:3MbIRneq0
北上「よし」
買えた。
カバンに文庫本11冊+サイン付き単行本1冊。
本来教科書やらがギッシリ詰められ毎日通学時にウンザリさせられるであろうその重さは、今の私にとってイコール幸せと言っても過言ではない。
迷いに迷ったがその場で買うか否か決めるというのは中々機会が無さそうなので今回は文庫本で質より量作戦をとった。
猫の初めての買い物が文庫本11冊というのは如何なものかと思わなくもないけれど。
加えて言うとそれをカードで払いほぼ空っぽのカバンに詰めて帰る中学生を見る定員の顔が今日一番の思い出かもしれなかった。
しかしこのカードどうなってるんだろう?
個人情報とかあるんだろうし私のことバレるんじゃ…偽造カード?それはマズイか。
世の中案外ガバガバという事なのだろうか。
さて、では帰ろう。
買えた。
カバンに文庫本11冊+サイン付き単行本1冊。
本来教科書やらがギッシリ詰められ毎日通学時にウンザリさせられるであろうその重さは、今の私にとってイコール幸せと言っても過言ではない。
迷いに迷ったがその場で買うか否か決めるというのは中々機会が無さそうなので今回は文庫本で質より量作戦をとった。
猫の初めての買い物が文庫本11冊というのは如何なものかと思わなくもないけれど。
加えて言うとそれをカードで払いほぼ空っぽのカバンに詰めて帰る中学生を見る定員の顔が今日一番の思い出かもしれなかった。
しかしこのカードどうなってるんだろう?
個人情報とかあるんだろうし私のことバレるんじゃ…偽造カード?それはマズイか。
世の中案外ガバガバという事なのだろうか。
さて、では帰ろう。
475: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 14:12:55.36 ID:630WyN9t0
北上「あ、そろそろかな」
帰らなきゃ、と思ったのは本屋を出てさあ帰ろうと言ってからかなり経ってからだ。
辺りに鳴り響くこの良い子は帰ろう的な放送がなければさらに遅くなっていたことだろう。
そういやこの曲なんて題名なんだろう。
多分知らない人はいないレベルで有名なんだと思うけど、カラス何故鳴くのってとこ以外正直知らない。
カラスの子とかでいいか。
読みかけの本に栞を挟んでしまい、席を立つ。
久々の過ごしやすい気候に思わず公園のベンチでの読書というなんだか洒落た行動をとってみたけど、これは大当たりだった。
陽の光と潮を感じないそよ風は私を日常から切り離してこうした非日常を感じさせるのに十二分な効果があった。
帰らなきゃ、と思ったのは本屋を出てさあ帰ろうと言ってからかなり経ってからだ。
辺りに鳴り響くこの良い子は帰ろう的な放送がなければさらに遅くなっていたことだろう。
そういやこの曲なんて題名なんだろう。
多分知らない人はいないレベルで有名なんだと思うけど、カラス何故鳴くのってとこ以外正直知らない。
カラスの子とかでいいか。
読みかけの本に栞を挟んでしまい、席を立つ。
久々の過ごしやすい気候に思わず公園のベンチでの読書というなんだか洒落た行動をとってみたけど、これは大当たりだった。
陽の光と潮を感じないそよ風は私を日常から切り離してこうした非日常を感じさせるのに十二分な効果があった。
476: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 14:13:56.99 ID:630WyN9t0
公園前のバス停に丁度バスが停車する。
急ぎ足で乗車口に向かうと前に若い男性の会社員と女子、高校生かな?がいた。
彼ら、彼女らは帰るべき場所に帰るのだろう。
日常から日常へ。
居るべき場所に。
ICカードを読み込むピッという音が2回。
私も同じようにステップに足をかける。
でも、私は違う。
非日常から日常へ帰る。
忌むべき場所に。
小銭の落下音が妙に耳に残った。
急ぎ足で乗車口に向かうと前に若い男性の会社員と女子、高校生かな?がいた。
彼ら、彼女らは帰るべき場所に帰るのだろう。
日常から日常へ。
居るべき場所に。
ICカードを読み込むピッという音が2回。
私も同じようにステップに足をかける。
でも、私は違う。
非日常から日常へ帰る。
忌むべき場所に。
小銭の落下音が妙に耳に残った。
477: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 14:14:33.94 ID:630WyN9t0
窓から外を見るとちょうど日が沈むところだった。
茜色。
茜って響きなんかいいよね、私は好き。
ふと最近読んだ本を思い出した。
確かに映画の小説版。
そこに書いてあった。
夕暮れ時。昼と夜が入れ替わる。暗いのでもなく明るいのでもない。
明るくなくなる、暗くなる。ぼやけて移ろいであやふやになる。
境界が揺らぐ。
すぐ近くにいる相手の顔が見えなくなる。
アナタは誰?
彼は誰?
誰ぞ彼
黄昏時。
日本語って適当なもんだ。
茜色。
茜って響きなんかいいよね、私は好き。
ふと最近読んだ本を思い出した。
確かに映画の小説版。
そこに書いてあった。
夕暮れ時。昼と夜が入れ替わる。暗いのでもなく明るいのでもない。
明るくなくなる、暗くなる。ぼやけて移ろいであやふやになる。
境界が揺らぐ。
すぐ近くにいる相手の顔が見えなくなる。
アナタは誰?
彼は誰?
誰ぞ彼
黄昏時。
日本語って適当なもんだ。
478: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 14:15:20.96 ID:630WyN9t0
北上「君は誰?」
バスの窓に映る黒い影に問う。
この人の形をした影は、果たしてなんなのだろうか。
元々艦娘も人と船があやふやに有耶無耶にくっついている存在だ。
私なんかは輪をかけてあやふやだ。
そういやみんなはこの戦争についてどう思っているのだろう。
私は忌むべき場所と言ったが、あそここそ艦娘にとって居るべき場所のはずでは?
「〇〇〇~」
バスが停車し、人が降りる。もう残りは私だけのようだ。
な~におセンチになってるんだか。一人旅は思いの外堪えたらしい。
次はみんなで来よう。変にいじはらず寂しいと擦り寄ればいいのだ。
北上「ふ、あぁ~」
ねむ…
バスの窓に映る黒い影に問う。
この人の形をした影は、果たしてなんなのだろうか。
元々艦娘も人と船があやふやに有耶無耶にくっついている存在だ。
私なんかは輪をかけてあやふやだ。
そういやみんなはこの戦争についてどう思っているのだろう。
私は忌むべき場所と言ったが、あそここそ艦娘にとって居るべき場所のはずでは?
「〇〇〇~」
バスが停車し、人が降りる。もう残りは私だけのようだ。
な~におセンチになってるんだか。一人旅は思いの外堪えたらしい。
次はみんなで来よう。変にいじはらず寂しいと擦り寄ればいいのだ。
北上「ふ、あぁ~」
ねむ…
479: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/09(土) 14:16:30.62 ID:630WyN9t0
私は古い民家に囲まれた路地に一人立っていた。
北上「あれ?」
いやおかしくない?それ。
帰路についたんだし鎮守府に着いていて然るべきなのでは?
だというのに私は日が沈み真っ暗になった田舎の路地に一つだけポツンと立っている街灯の下に、同じくポツンと立っている。
不思議な事に周りの家々はこんな時間だというのに灯りの一つも灯っていない。
ふむ、なんだろう。夢か?
こういう時猫ならば暗闇だろうと自由に動けるのだが今はそうはいかない。
光源ゼロでウロウロしたらどうなるか。
猫と人間の体を自由に変えられたらなあとくだらない現実逃避を始めたあたりで、遠くからドォンと音がした。
北上「あれ?」
いやおかしくない?それ。
帰路についたんだし鎮守府に着いていて然るべきなのでは?
だというのに私は日が沈み真っ暗になった田舎の路地に一つだけポツンと立っている街灯の下に、同じくポツンと立っている。
不思議な事に周りの家々はこんな時間だというのに灯りの一つも灯っていない。
ふむ、なんだろう。夢か?
こういう時猫ならば暗闇だろうと自由に動けるのだが今はそうはいかない。
光源ゼロでウロウロしたらどうなるか。
猫と人間の体を自由に変えられたらなあとくだらない現実逃避を始めたあたりで、遠くからドォンと音がした。
481: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/10(日) 04:31:20.63 ID:CxjiehoL0
最初は砲撃音かと思い身構えたがそれが同じところからリズムを取りつつ激しさを増して聞こえてきたあたりでようやく太鼓の音だと気づいた。
太鼓ねえ。
何にせよ太鼓の音がするということはそれを叩く者が少なくとも1名はいるはずだ。ならばそこに向かうとしよう。
ようやく闇に慣れてきた目を必死に使い、少々急ぎ足で音の方向へ向かう。
路地を抜け音の方を見て、理解した。
北上「おお」
それほど大きくもない山に光の列が見える。恐らく階段に提灯か何かが飾られているのだろう。
太鼓の音とともに次第に人の気配も大きくなっていく。
つまりこれは
北上「お祭りか」
太鼓ねえ。
何にせよ太鼓の音がするということはそれを叩く者が少なくとも1名はいるはずだ。ならばそこに向かうとしよう。
ようやく闇に慣れてきた目を必死に使い、少々急ぎ足で音の方向へ向かう。
路地を抜け音の方を見て、理解した。
北上「おお」
それほど大きくもない山に光の列が見える。恐らく階段に提灯か何かが飾られているのだろう。
太鼓の音とともに次第に人の気配も大きくなっていく。
つまりこれは
北上「お祭りか」
482: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/10(日) 04:32:26.99 ID:CxjiehoL0
ボンヤリと暖かい光に包まれた石段を登っていくと華やかに飾られた鳥居が見えてきた。
鳥居ってあんなにごちゃごちゃと着飾ってもいいものなのかな。クリスマスツリーじゃあるまいし。
しかし鳥居があるということはここは神社か。名前は山の入口の石に掘ってあったがとても読める状態じゃなかった。
鳥居を潜るとそこはもうこの世のものではないような光景が広がっていた。
それほど広くもないであろう境内に所狭しと屋台が並んでいる。
人も芋洗い状態だ。
その慣れない雰囲気に一瞬面食らったが、すぐに好奇心に背中を押され人の波に流されていった。
鳥居ってあんなにごちゃごちゃと着飾ってもいいものなのかな。クリスマスツリーじゃあるまいし。
しかし鳥居があるということはここは神社か。名前は山の入口の石に掘ってあったがとても読める状態じゃなかった。
鳥居を潜るとそこはもうこの世のものではないような光景が広がっていた。
それほど広くもないであろう境内に所狭しと屋台が並んでいる。
人も芋洗い状態だ。
その慣れない雰囲気に一瞬面食らったが、すぐに好奇心に背中を押され人の波に流されていった。
483: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/10(日) 04:33:17.22 ID:CxjiehoL0
北上「はあ…」
やられた。いやまあ客観的に言って完全に私が悪いのだが、それでも私はしてやられたと言おう。
当然ながら、残念ながら、祭りでカードは使えない。
さて何を買おうと小銭を用意しようとした時に気がついた。
何たることか。折角の貴重な機会だというのに猫が小判を忘れるとは。
祭りの流れから出た私にはこうして神社の建物に腰掛けて項垂れることしか出来なかった。
そういや夕張が「神社の裏ってもうそれだけでなんか変な想像しちゃうよね」とか言ってたけど、あれどういう意味だったんだろ。
確かに少し不気味な感じはするけれど、丁度暇だし覗いてみようか。
やられた。いやまあ客観的に言って完全に私が悪いのだが、それでも私はしてやられたと言おう。
当然ながら、残念ながら、祭りでカードは使えない。
さて何を買おうと小銭を用意しようとした時に気がついた。
何たることか。折角の貴重な機会だというのに猫が小判を忘れるとは。
祭りの流れから出た私にはこうして神社の建物に腰掛けて項垂れることしか出来なかった。
そういや夕張が「神社の裏ってもうそれだけでなんか変な想像しちゃうよね」とか言ってたけど、あれどういう意味だったんだろ。
確かに少し不気味な感じはするけれど、丁度暇だし覗いてみようか。
484: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/10(日) 04:33:49.44 ID:CxjiehoL0
重たい体を持ち上げ建物、本殿って言うんだっけな、を時計回りで裏に回ろうとした時だった。
「また会ったねお嬢さん」
北上「ん?」
声がした。
しかし後ろを振り向いても誰もいない。
「下だよ下」
下?足元には何も無い。いやまさか。
本殿の下、縁の下を見る。
三毛猫「お困りの様だし力を貸そう」
そこには不思議な縁があった。
33+1匹目:三毛猫ラビリンス
「また会ったねお嬢さん」
北上「ん?」
声がした。
しかし後ろを振り向いても誰もいない。
「下だよ下」
下?足元には何も無い。いやまさか。
本殿の下、縁の下を見る。
三毛猫「お困りの様だし力を貸そう」
そこには不思議な縁があった。
33+1匹目:三毛猫ラビリンス
492: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/12(火) 03:24:43.21 ID:dtojEZ7a0
先程と同じく本殿に座る。
先程と違うのは隣に話し相手がいることだ。
三毛猫「僕も祭りに参加したいのだが、この体ではどうしようもなくてな」
北上「そりゃあ猫だもんね」
三毛猫「そこでだ。お前に僕を運んでほしいんだ。その代わりに僕がここを案内しよう」
北上「知ってるの?」
三毛猫「お前よりは」
北上「私は北上っていうんだ」
三毛猫「そうか。僕は、野良だからな。名前はない」
北上「じゃあホームズはどう?ミーコでもいいけど」
三毛猫「…ならばホームズだ」
先程と違うのは隣に話し相手がいることだ。
三毛猫「僕も祭りに参加したいのだが、この体ではどうしようもなくてな」
北上「そりゃあ猫だもんね」
三毛猫「そこでだ。お前に僕を運んでほしいんだ。その代わりに僕がここを案内しよう」
北上「知ってるの?」
三毛猫「お前よりは」
北上「私は北上っていうんだ」
三毛猫「そうか。僕は、野良だからな。名前はない」
北上「じゃあホームズはどう?ミーコでもいいけど」
三毛猫「…ならばホームズだ」
493: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/12(火) 03:25:31.37 ID:dtojEZ7a0
北上「でもさ、私お金持ってないんだ。案内されてもさ」
ホームズ「知ってるさ。なあに、ここは任せろ、心配するな」
北上「はあ…」
この妙な自信はどこから来るのか。
とりあえず私は三毛猫ホームズを抱えて祭りの流れに戻った。
ホームズ「そうだな、アレだ。アレが飲みたい。行くぞ!」
北上「はいはい、って行くの私なんだけどな~」
アレとは。え、お酒?
北上「酒って…」
ホームズ「人間の食べ物は猫にはきついからな。これなら大丈夫だ」
北上「酒も人間の飲み物だよ」
もしくは神の。
ホームズ「知ってるさ。なあに、ここは任せろ、心配するな」
北上「はあ…」
この妙な自信はどこから来るのか。
とりあえず私は三毛猫ホームズを抱えて祭りの流れに戻った。
ホームズ「そうだな、アレだ。アレが飲みたい。行くぞ!」
北上「はいはい、って行くの私なんだけどな~」
アレとは。え、お酒?
北上「酒って…」
ホームズ「人間の食べ物は猫にはきついからな。これなら大丈夫だ」
北上「酒も人間の飲み物だよ」
もしくは神の。
494: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/12(火) 03:26:05.35 ID:dtojEZ7a0
北上「で、どうやってお金を用意するの?盗むとか言わないよね」
ホームズ「そんな事はしない。簡単な事さ、1杯下さいと言えばいい」
北上「ええ?」
くださいって…なんかもうめんどくなってきた。
北上「1杯くださいな~」
「はいよ~」
貰えた。コップに1杯並々と。
屋台のおばちゃんを見る。
柔らかい笑顔でこちらを見ている。
抱えたホームズを見る。
ホームズ「ふっ」
うわ凄いドヤ顔。
ホームズ「そんな事はしない。簡単な事さ、1杯下さいと言えばいい」
北上「ええ?」
くださいって…なんかもうめんどくなってきた。
北上「1杯くださいな~」
「はいよ~」
貰えた。コップに1杯並々と。
屋台のおばちゃんを見る。
柔らかい笑顔でこちらを見ている。
抱えたホームズを見る。
ホームズ「ふっ」
うわ凄いドヤ顔。
495: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/12(火) 03:29:38.19 ID:dtojEZ7a0
北上「結構貰ってきちゃったね」
ホームズ「残さず食べるなら問題ないさ。さて、一緒に食べよう」
最初の本殿に戻って戦利品を広げる。
饅頭に煎餅にようかんに型菓子エトセトラエトセトラ。
素晴らしく祭りらしくないラインナップだな。
ホームズ「ふむ、悪くないな。うん」
三毛猫の方はピチャピチャとお酒を飲んでいる。いける口らしい。何故だ。
北上「タダってなんか気が引けるな~」
ホームズ「構うな。どうせ彼らも貰い物なんだ」
貰い物?どういう事だ。まあいいか。
北上「それじゃ私も」
これは…東京バナナ?東京ってバナナを栽培していたのか。知らなかった。
しかしなんてネーミングセンスだ。いやそれを言ったら夕張メロンもそうか。
北上「はむ」
ん~…
バナナ、の味?
ホームズ「残さず食べるなら問題ないさ。さて、一緒に食べよう」
最初の本殿に戻って戦利品を広げる。
饅頭に煎餅にようかんに型菓子エトセトラエトセトラ。
素晴らしく祭りらしくないラインナップだな。
ホームズ「ふむ、悪くないな。うん」
三毛猫の方はピチャピチャとお酒を飲んでいる。いける口らしい。何故だ。
北上「タダってなんか気が引けるな~」
ホームズ「構うな。どうせ彼らも貰い物なんだ」
貰い物?どういう事だ。まあいいか。
北上「それじゃ私も」
これは…東京バナナ?東京ってバナナを栽培していたのか。知らなかった。
しかしなんてネーミングセンスだ。いやそれを言ったら夕張メロンもそうか。
北上「はむ」
ん~…
バナナ、の味?
496: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/12(火) 03:30:23.41 ID:dtojEZ7a0
北上「なんだか変わったお祭りだね」
ホームズ「そうだな。変わったと言うならお前から見てこれほど奇妙な祭りはないだろう」
北上「あとなんかさ、年寄り臭いよね」
食べ物も飲み物もジジ臭いというかババ臭いというかさ。
唯一あったオモチャがこのキュウリに棒を刺した謎の物体だ。
ホームズ「若い者もいないわけではない。居るべきではないのだがな」
よく見れば1人2人くらいは確かに若者もいるようだ。
なんという高齢祭りだ。
ホームズ「…」
ホームズ「そうだな。変わったと言うならお前から見てこれほど奇妙な祭りはないだろう」
北上「あとなんかさ、年寄り臭いよね」
食べ物も飲み物もジジ臭いというかババ臭いというかさ。
唯一あったオモチャがこのキュウリに棒を刺した謎の物体だ。
ホームズ「若い者もいないわけではない。居るべきではないのだがな」
よく見れば1人2人くらいは確かに若者もいるようだ。
なんという高齢祭りだ。
ホームズ「…」
502: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/13(水) 03:22:33.95 ID:hOWSotFH0
太鼓が激しくなってきた。
北上「おお。いよいよ大詰めだね」
ホームズ「そうだね」
北上「あの太鼓の乗ってる台。お神輿なんだね。初めて見たよ」
ホームズ「そうだね」
北上「キレイだねえ」
ホームズ「…お前はまだ夢を見ているつもりなのか?」
北上「夢?なんで急に」
ホームズ「…僕の事を覚えていないのか?」
北上「えと、ホームズでしょ?」
ホームズ「ああそうだ」
北上「だよね」
ホームズ「そうだ。今朝会った、三毛猫だ」
ん、今朝?
北上「おお。いよいよ大詰めだね」
ホームズ「そうだね」
北上「あの太鼓の乗ってる台。お神輿なんだね。初めて見たよ」
ホームズ「そうだね」
北上「キレイだねえ」
ホームズ「…お前はまだ夢を見ているつもりなのか?」
北上「夢?なんで急に」
ホームズ「…僕の事を覚えていないのか?」
北上「えと、ホームズでしょ?」
ホームズ「ああそうだ」
北上「だよね」
ホームズ「そうだ。今朝会った、三毛猫だ」
ん、今朝?
503: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/13(水) 03:23:09.82 ID:hOWSotFH0
急にきゅうりがモ~と鳴いたかと思うと祭りの流れに向けて歩き出した。
ホームズ「いよいよ大詰めだよ」
神輿が持ち上げられ、屋台の間を不規則に揺れていた人の波が一斉に同じ方向を向く。
1歩1歩ゆっくりと、鳥居へ向かってゆく。
北上「みんな、どこへ行くの?」
ホームズ「帰るのさ」
北上「家に?」
ホームズ「家にはもう帰った後だよ」
北上「…」
ホームズ「帰るっていうのは、あの世にさ」
急に辺が暗くなった。
ホームズ「いよいよ大詰めだよ」
神輿が持ち上げられ、屋台の間を不規則に揺れていた人の波が一斉に同じ方向を向く。
1歩1歩ゆっくりと、鳥居へ向かってゆく。
北上「みんな、どこへ行くの?」
ホームズ「帰るのさ」
北上「家に?」
ホームズ「家にはもう帰った後だよ」
北上「…」
ホームズ「帰るっていうのは、あの世にさ」
急に辺が暗くなった。
504: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/13(水) 03:23:37.44 ID:hOWSotFH0
ホームズ「お前は、艦娘というヤツみたいだな」
うん。
ホームズ「だがそれだけではないだろ?僕がお前を見つけられたのはそれが原因のはずだ」
猫、だったんだ。昔ね。
ホームズ「昔、か。なるほど。そういう事もあるのか。面白いな」
艦娘を知ってるの?
ホームズ「知ってはいないがお前と出会ってどんなものかは理解したよ。お前達は魂ではなく思い出を宿してるんだ。だから本来僕らには関わらないはずなんだ」
僕ら。
ホームズ「そう。だけどお前には魂があった。それも少々特殊なね」
そうかも。
うん。
ホームズ「だがそれだけではないだろ?僕がお前を見つけられたのはそれが原因のはずだ」
猫、だったんだ。昔ね。
ホームズ「昔、か。なるほど。そういう事もあるのか。面白いな」
艦娘を知ってるの?
ホームズ「知ってはいないがお前と出会ってどんなものかは理解したよ。お前達は魂ではなく思い出を宿してるんだ。だから本来僕らには関わらないはずなんだ」
僕ら。
ホームズ「そう。だけどお前には魂があった。それも少々特殊なね」
そうかも。
505: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/13(水) 03:24:16.09 ID:hOWSotFH0
ホームズ「お前は、僕達に近い存在なのかもな」
近い、ねぇ。
ホームズ君はどうしてここに?
ホームズ「不運にもこんな日に事故に遭ってしまったのさ。もっともホントに不運だとは思っていないが」
あの流れには混ざらないの?
ホームズ「言ったろ?アレは帰る人達だと。僕は帰るんじゃないし、人でもないから」
迷い猫か。
ホームズ「それはお前にこそふさわしい」
はは、そりゃそうか。
近い、ねぇ。
ホームズ君はどうしてここに?
ホームズ「不運にもこんな日に事故に遭ってしまったのさ。もっともホントに不運だとは思っていないが」
あの流れには混ざらないの?
ホームズ「言ったろ?アレは帰る人達だと。僕は帰るんじゃないし、人でもないから」
迷い猫か。
ホームズ「それはお前にこそふさわしい」
はは、そりゃそうか。
506: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/13(水) 03:24:48.57 ID:hOWSotFH0
お盆も終わりか。
ホームズ「覆水盆に返らずと言うけれど、こうしてお盆には帰ってくるのだから面白い」
お、その言い回しいいね。
ホームズ「そうかい?」
でも結局、残された人から見れば帰ってきたかなんてわからないんだよね。
ホームズ「だからこそ覆水盆に返らず、さ」
零れた水は戻らない。
取り返しなんてつかない。
ホームズ「覆水盆に返らずと言うけれど、こうしてお盆には帰ってくるのだから面白い」
お、その言い回しいいね。
ホームズ「そうかい?」
でも結局、残された人から見れば帰ってきたかなんてわからないんだよね。
ホームズ「だからこそ覆水盆に返らず、さ」
零れた水は戻らない。
取り返しなんてつかない。
507: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/13(水) 03:29:13.23 ID:hOWSotFH0
祭りの波はもう半分以上が鳥居をくぐり上へ登っていっていた。
石段ではない階段を、上へ。
私の目に映るそれに先程の華やかさはなく、まるでぼんやりとしか覚えていない昔の記憶のような虚ろとなっていた。
ホームズ「さてと。僕もやるべき事をやろう」
北上「何かあるの?」
ホームズ「猫の恩返しというやつさ」
恩返しか。
そういえば私は恩を返せていないんだよね。
私を抱いてくれた毛むくじゃらの腕を思い出す。
麦畑よりも輝いていたあの金髪を思い浮かべる。
そう、丁度あんな感じの。
北上「あれ?」
ホームズ「どうした」
北上「いや、あそこに今」
懐かしい匂いを感じた。
石段ではない階段を、上へ。
私の目に映るそれに先程の華やかさはなく、まるでぼんやりとしか覚えていない昔の記憶のような虚ろとなっていた。
ホームズ「さてと。僕もやるべき事をやろう」
北上「何かあるの?」
ホームズ「猫の恩返しというやつさ」
恩返しか。
そういえば私は恩を返せていないんだよね。
私を抱いてくれた毛むくじゃらの腕を思い出す。
麦畑よりも輝いていたあの金髪を思い浮かべる。
そう、丁度あんな感じの。
北上「あれ?」
ホームズ「どうした」
北上「いや、あそこに今」
懐かしい匂いを感じた。
508: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/13(水) 03:30:48.89 ID:hOWSotFH0
祭りの最後尾。
そこに確かにいた。
私は四本の足で駆け出していた。
「行くな!!」
あの金髪を目指して。
あの腕を目標にして。
あの記憶を頼りにして。
私も、そこに行きたい!
ボヤけていた視界がハッキリしてきた。
だが私の目に映ったのは、長い金髪の女性と毛むくじゃらの腕の大男の、2人だった。
そこに確かにいた。
私は四本の足で駆け出していた。
「行くな!!」
あの金髪を目指して。
あの腕を目標にして。
あの記憶を頼りにして。
私も、そこに行きたい!
ボヤけていた視界がハッキリしてきた。
だが私の目に映ったのは、長い金髪の女性と毛むくじゃらの腕の大男の、2人だった。
512: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:15:16.56 ID:4oCXpnXN0
え?
今にも鳥居を潜らんとするその2人に、後少しで追いつくところで私は一瞬怯んだ。
なんで2人?
「うらあぁぁぁ!!」
その一瞬に首根っこを銜えられた私は彼と2匹で鳥居を潜り、石段を転げ落ちていった。
1人、ではない。2人が離れていく。
分からない。
でも確かに私は2人を知っているように思えた。
今にも鳥居を潜らんとするその2人に、後少しで追いつくところで私は一瞬怯んだ。
なんで2人?
「うらあぁぁぁ!!」
その一瞬に首根っこを銜えられた私は彼と2匹で鳥居を潜り、石段を転げ落ちていった。
1人、ではない。2人が離れていく。
分からない。
でも確かに私は2人を知っているように思えた。
513: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:15:55.27 ID:4oCXpnXN0
北上「…ありがと」
石段の一番下で私は仰向けに倒れている。
ホームズ「お礼を言われるとは、正直思わなかったよ」
猫様の方はちゃっかり私の上に着地している。このやろう。
北上「ありがと…」
ホームズ「言っただろ。猫の恩返しって」
北上「ふふ。迷い猫オーバーランだね」
ホームズ「なんだいそれは?」
北上「君が知らないものだよ」
ホームズ「どうやらそのようだ」
ホームズ越しに鳥居の方を見上げる。
そこには先程の喧騒が嘘のように静まり返った暗い山があるだけだった。
石段の一番下で私は仰向けに倒れている。
ホームズ「お礼を言われるとは、正直思わなかったよ」
猫様の方はちゃっかり私の上に着地している。このやろう。
北上「ありがと…」
ホームズ「言っただろ。猫の恩返しって」
北上「ふふ。迷い猫オーバーランだね」
ホームズ「なんだいそれは?」
北上「君が知らないものだよ」
ホームズ「どうやらそのようだ」
ホームズ越しに鳥居の方を見上げる。
そこには先程の喧騒が嘘のように静まり返った暗い山があるだけだった。
514: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:16:23.05 ID:4oCXpnXN0
北上「これからどうするの?」
ホームズ「お前はこの道を真っ直ぐ進むといい。そこまでは僕が送ろう。でもその先はお前次第だ」
北上「ホームズは、どうするのさ」
ホームズ「僕が何処へゆくかは、君自身で確かめてくれ。なあに焦る必要は無いさ。いずれその時は訪れる」
北上「そっか」
ホームズ「では行こう。あまり長居する場所ではない」
北上「うん」
ホームズ「立てるかい?」
北上「大丈夫だよっと」
私は、二本の足で立ち上がった。
ホームズ「お前はこの道を真っ直ぐ進むといい。そこまでは僕が送ろう。でもその先はお前次第だ」
北上「ホームズは、どうするのさ」
ホームズ「僕が何処へゆくかは、君自身で確かめてくれ。なあに焦る必要は無いさ。いずれその時は訪れる」
北上「そっか」
ホームズ「では行こう。あまり長居する場所ではない」
北上「うん」
ホームズ「立てるかい?」
北上「大丈夫だよっと」
私は、二本の足で立ち上がった。
515: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:17:45.78 ID:4oCXpnXN0
北上「もう会えない?」
ホームズ「実際のところ、僕らは会ってすらいないからね」
北上「それもそうだ」
ホームズ「色々とイレギュラーだっただけさ」
北上「お墓でも作ろっか?」
ホームズ「よしてくれ。死んだ後まで場所を取りたくはない」
北上「世の中歴史的建造物になるような墓を立てる人もいるんだよ」
ホームズ「そいつらはきっと生きているという感覚が麻痺しているんだろう」
北上「君にとって生きているという事とは?」
ホームズ「そうだな。それで言うなら、僕今生きているのかもしれない」
北上「生きているんだ」
ホームズ「死に意味は無い。だから君がまだ生きている。また生きているのにはきっと意味があるよ」
北上「哲学的だなあ」
ホームズが足を止めた。
私は止まらなかった。
別れの言葉はない。
だからつまり、私達は実際のところ別れてはないのかもしれない。
ホームズ「実際のところ、僕らは会ってすらいないからね」
北上「それもそうだ」
ホームズ「色々とイレギュラーだっただけさ」
北上「お墓でも作ろっか?」
ホームズ「よしてくれ。死んだ後まで場所を取りたくはない」
北上「世の中歴史的建造物になるような墓を立てる人もいるんだよ」
ホームズ「そいつらはきっと生きているという感覚が麻痺しているんだろう」
北上「君にとって生きているという事とは?」
ホームズ「そうだな。それで言うなら、僕今生きているのかもしれない」
北上「生きているんだ」
ホームズ「死に意味は無い。だから君がまだ生きている。また生きているのにはきっと意味があるよ」
北上「哲学的だなあ」
ホームズが足を止めた。
私は止まらなかった。
別れの言葉はない。
だからつまり、私達は実際のところ別れてはないのかもしれない。
516: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:18:16.05 ID:4oCXpnXN0
谷風「また随分と奇妙な体験をしたものだねえ。そういう期待はあったとはいえ、これはあまりにも予想外だよ。ほいで今回の件に関する感想を一言欲しいんだけど」
北上「痛い」
谷風「どこが?」
北上「耳が」
帰るなり提督と大井っちに大声で色々と言われた。心配しただの何があっただの。
私は特に何も答えなかった。
2人の方も答えを期待していたわけではなく、単にそれまでの心配が爆発してそれを私で発散したというだけのようだ。
これに関しては私に原因があるので甘んじて受け止めた。
北上「痛い」
谷風「どこが?」
北上「耳が」
帰るなり提督と大井っちに大声で色々と言われた。心配しただの何があっただの。
私は特に何も答えなかった。
2人の方も答えを期待していたわけではなく、単にそれまでの心配が爆発してそれを私で発散したというだけのようだ。
これに関しては私に原因があるので甘んじて受け止めた。
517: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:18:46.08 ID:4oCXpnXN0
吹雪曰くもう少しで提督としての権限を限界以上に行使してあらゆる手段で私の捜索に出るところだったとか。
物凄い呆れ顔で語る秘書官殿からは苦労が滲み出ていた。
吹雪の事を問題児と提督は言っていたが、どうやらお互い様という事らしい。
ちなみに、ここまで聞くと私が数時間ほど帰るのが遅くなったかのように思えるかもしれないけど、実際のところ遅れたのはバス1本分。
はっきり言って過保護なバカ親が2人も騒いでいただけというのが正しい。
そう。気づいたら私は1本後のバスに乗っていた。
普通に降りて、普通に鎮守府に戻り、普通にお小言を大声で聞かされ、普通にご飯を食べて、こうして普通に夜の屋根上で真っ黒な空を見上げているだけだ。
物凄い呆れ顔で語る秘書官殿からは苦労が滲み出ていた。
吹雪の事を問題児と提督は言っていたが、どうやらお互い様という事らしい。
ちなみに、ここまで聞くと私が数時間ほど帰るのが遅くなったかのように思えるかもしれないけど、実際のところ遅れたのはバス1本分。
はっきり言って過保護なバカ親が2人も騒いでいただけというのが正しい。
そう。気づいたら私は1本後のバスに乗っていた。
普通に降りて、普通に鎮守府に戻り、普通にお小言を大声で聞かされ、普通にご飯を食べて、こうして普通に夜の屋根上で真っ黒な空を見上げているだけだ。
518: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:20:01.75 ID:4oCXpnXN0
谷風「私達はとても人に近いけど、裏を返せば決定的に人と違うという事になる。ホームズ君も言っていたんだろ?そりゃあその通りだろうね。
私達は所謂八百万の神。付喪神というやつだ。船に込められた想いや思い出を模倣し人の形にしたものだ。
それはどこまでも模倣でしかなくコピーにしかなれなく贋作としか生きられない。
でもそれって本物とどう違う?三つ子の魂百までとはよく言ったものだよね。
人の心とはそれまで出来事や出会い、周りの事象や人間から少しずつ寄せ集めて出来るものだ。子供なら家族。少年なら友達や先生。まあ大体そこらで人格は出来上がるかね。
一方私達はどうだい?思い出の寄せ集め。様々な思いの集合体。それは人とどう違う?
それにクローン的な存在とはいえ私達はその環境において様々な個性を会得するじゃあないか。
確かに世の中にはたくさんの谷風(わたし)がいるだろう。私と寸分違わぬ谷風が。でも住む鎮守府は違う。提督を主軸に鎮守府事に様々な個性がある。
私達にも個性がある」
私達は所謂八百万の神。付喪神というやつだ。船に込められた想いや思い出を模倣し人の形にしたものだ。
それはどこまでも模倣でしかなくコピーにしかなれなく贋作としか生きられない。
でもそれって本物とどう違う?三つ子の魂百までとはよく言ったものだよね。
人の心とはそれまで出来事や出会い、周りの事象や人間から少しずつ寄せ集めて出来るものだ。子供なら家族。少年なら友達や先生。まあ大体そこらで人格は出来上がるかね。
一方私達はどうだい?思い出の寄せ集め。様々な思いの集合体。それは人とどう違う?
それにクローン的な存在とはいえ私達はその環境において様々な個性を会得するじゃあないか。
確かに世の中にはたくさんの谷風(わたし)がいるだろう。私と寸分違わぬ谷風が。でも住む鎮守府は違う。提督を主軸に鎮守府事に様々な個性がある。
私達にも個性がある」
519: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:20:48.03 ID:4oCXpnXN0
谷風「人の模倣でコピーで贋作だが人とそう相違はなく、でもやはり決定的に違う。
それは繋がりだ、と私は考えるね。
魂とは繋がりだ。
親兄弟、親の親、親の親の親。血ではなく連なる思いの問題だ。
艦娘にそれはない。思い出は残るが続かない。思いはその時点で繋がらないんだ。
だからこそ君が出会ったそれは君の魂、猫の魂が間違いなく繋げた何がだろう。
私はそう考えるね」
北上「…これ以上私に長いセリフを聞かせないで。ホントに耳が死にそう」
谷風「かぁーなっさけない。耳耳ってどんだけ敏感なのさ。猫かってんだ」
北上「だから猫なんだってば。元ね」
谷風「そういやそうか」
北上「そうだよ」
それは繋がりだ、と私は考えるね。
魂とは繋がりだ。
親兄弟、親の親、親の親の親。血ではなく連なる思いの問題だ。
艦娘にそれはない。思い出は残るが続かない。思いはその時点で繋がらないんだ。
だからこそ君が出会ったそれは君の魂、猫の魂が間違いなく繋げた何がだろう。
私はそう考えるね」
北上「…これ以上私に長いセリフを聞かせないで。ホントに耳が死にそう」
谷風「かぁーなっさけない。耳耳ってどんだけ敏感なのさ。猫かってんだ」
北上「だから猫なんだってば。元ね」
谷風「そういやそうか」
北上「そうだよ」
520: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:21:18.60 ID:4oCXpnXN0
谷風「今夜は、三日月のはずなんだけどね。生憎の曇り空だ。こうも暗いと慣れ親しんだ鎮守府もなんだか不気味に見えちまうねぇ」
北上「いつだってここは変わらないよ。人が変わるんだ」
谷風「およ?なんだか含みのある言い方だねえ」
北上「別に大した意味は無いよ」
谷風「そうかい。でもそのセリフに則って言うなら、君は変わったよ。今日を境に」
北上「かもね」
谷風「その2人組が気になるのかい」
北上「うん…」
谷風「安易に考えれば既に君の飼い主は覆水となっている、となるね」
北上「だとしても妙だよ。ここは日本だし。見た目も少し違った。あの女の人を私は知らないよ」
谷風「でも知っていた。そうだろう?」
北上「まあ、ね」
北上「いつだってここは変わらないよ。人が変わるんだ」
谷風「およ?なんだか含みのある言い方だねえ」
北上「別に大した意味は無いよ」
谷風「そうかい。でもそのセリフに則って言うなら、君は変わったよ。今日を境に」
北上「かもね」
谷風「その2人組が気になるのかい」
北上「うん…」
谷風「安易に考えれば既に君の飼い主は覆水となっている、となるね」
北上「だとしても妙だよ。ここは日本だし。見た目も少し違った。あの女の人を私は知らないよ」
谷風「でも知っていた。そうだろう?」
北上「まあ、ね」
521: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:21:52.87 ID:4oCXpnXN0
北上「でも一つわかった事があるんだ」
谷風「ほうほう。そいつは?」
北上「今までなんとなく探してたけど、これからは違う。前に言ってたじゃん。こうして生まれ変わったのには意味があるって。だから私は私の恩人たる飼い主を探す。探して恩返しする」
谷風「猫の恩返しかあ。ベタだけど、それってつまり素敵って事だよね」
北上「どうだろうね。でもこうして日本にいる意味は、やっぱりちゃんとあるんだと思う」
谷風「そうかい。まっ、頑張る事だね。ちなみにだけどさ、参考までにその2人ってどんな見た目だったんだい?」
北上「内緒。これは私の問題だもん」
谷風「そりゃ残念。でも相談にはいつでも乗るからね」
北上「ありがと」
谷風「どうも~」
谷風「ほうほう。そいつは?」
北上「今までなんとなく探してたけど、これからは違う。前に言ってたじゃん。こうして生まれ変わったのには意味があるって。だから私は私の恩人たる飼い主を探す。探して恩返しする」
谷風「猫の恩返しかあ。ベタだけど、それってつまり素敵って事だよね」
北上「どうだろうね。でもこうして日本にいる意味は、やっぱりちゃんとあるんだと思う」
谷風「そうかい。まっ、頑張る事だね。ちなみにだけどさ、参考までにその2人ってどんな見た目だったんだい?」
北上「内緒。これは私の問題だもん」
谷風「そりゃ残念。でも相談にはいつでも乗るからね」
北上「ありがと」
谷風「どうも~」
522: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/14(木) 02:22:39.17 ID:4oCXpnXN0
北上「あ、それなら早速相談が」
谷風「早速過ぎるね。いいよ、なんだい?」
北上「お墓に添える花って何がいいかな」
谷風「お墓?いったい誰のだい」
北上「会ったこともない友達に」
谷風「…なら、花じゃないけどエノコログサなんていいんじゃないかな」
北上「あ~。ははっ、そりゃいいね」
谷風「早速過ぎるね。いいよ、なんだい?」
北上「お墓に添える花って何がいいかな」
谷風「お墓?いったい誰のだい」
北上「会ったこともない友達に」
谷風「…なら、花じゃないけどエノコログサなんていいんじゃないかな」
北上「あ~。ははっ、そりゃいいね」
529: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:09:55.64 ID:i3ZTT8gu0
36匹目:猫なで声
北上「ね?お願い球磨ね~ちゃん」
球磨「…ダメクマ」
北上「ちっ」
多摩「諦め早いにゃ」
北上「球磨姉一度ダメって言ったら絶対変えないじゃん」
球磨「球磨をそんな意見をコロコロ変える様な軟弱者と一緒にするなクマ」
北上「柔軟な対応ができないとも言う」
球磨「うるせークマ。無理なものは無理クマ」
多摩「こればっかりは北上が悪いにゃ」
北上「えー多摩姉ちゃんまで…」
北上「ね?お願い球磨ね~ちゃん」
球磨「…ダメクマ」
北上「ちっ」
多摩「諦め早いにゃ」
北上「球磨姉一度ダメって言ったら絶対変えないじゃん」
球磨「球磨をそんな意見をコロコロ変える様な軟弱者と一緒にするなクマ」
北上「柔軟な対応ができないとも言う」
球磨「うるせークマ。無理なものは無理クマ」
多摩「こればっかりは北上が悪いにゃ」
北上「えー多摩姉ちゃんまで…」
530: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:10:42.15 ID:i3ZTT8gu0
北上「お願い多摩えも~ん。あのジャイアントパンダにガツンと言ってやってよ~」
多摩「何うまい事言ってんだにゃ。そんな猫なで声出してもダメにゃ」
球磨「借りてくりゃいいのに何でそんなに買うんだクマ」
北上「手元に欲しいものってあるじゃん」
球磨「自分のキャパシティを超えて買う方が悪いクマ」
多摩「とりあえず
その本をどけるにゃ」
北上「いや他に置く場所ないから本棚置かせてって言ってるんだよ」
球磨「これ以上この部屋狭く出来るわけないクマ!」
北上「そこはほら~共有すべき知的財産として」
多摩「半分近く外国語にゃ…」
北上「だってそういうの貴重なんだもん」
球磨「読ませる気ないクマ…」
多摩「何うまい事言ってんだにゃ。そんな猫なで声出してもダメにゃ」
球磨「借りてくりゃいいのに何でそんなに買うんだクマ」
北上「手元に欲しいものってあるじゃん」
球磨「自分のキャパシティを超えて買う方が悪いクマ」
多摩「とりあえず
その本をどけるにゃ」
北上「いや他に置く場所ないから本棚置かせてって言ってるんだよ」
球磨「これ以上この部屋狭く出来るわけないクマ!」
北上「そこはほら~共有すべき知的財産として」
多摩「半分近く外国語にゃ…」
北上「だってそういうの貴重なんだもん」
球磨「読ませる気ないクマ…」
531: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:11:13.67 ID:i3ZTT8gu0
北上「お~ね~が~~い球磨姉さまぁ」
球磨「まったく。都合のいい時だけそうやって、そんなとこまで猫っぽくなくていいクマ」
ううむ、人間の体では猫なで声の効果は半減か。そりゃそうか。
しかし部屋が狭いのは事実だ。
何せ元々四人部屋のところに五人いるのだから。
球磨「まったく。都合のいい時だけそうやって、そんなとこまで猫っぽくなくていいクマ」
ううむ、人間の体では猫なで声の効果は半減か。そりゃそうか。
しかし部屋が狭いのは事実だ。
何せ元々四人部屋のところに五人いるのだから。
532: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:11:59.20 ID:i3ZTT8gu0
鎮守府の部屋の大きさは全部屋同じ。違うのは部屋に寝泊まりしている人数。
駆逐艦は6。毎日が修学旅行状態。半端な数なので姉妹艦で綺麗に別れないため、寝る時は日毎に部屋のメンバーを変えているらしい。マジ修学旅行。
軽巡3~4。5なウチはちょっと特殊。逆に3は広い。
重巡は4。軽空母も。
正規空母、戦艦となると二人部屋だったり二部屋ぶち抜いて四人部屋だったり。
大まかにいえばこんな感じ。
駆逐艦は6。毎日が修学旅行状態。半端な数なので姉妹艦で綺麗に別れないため、寝る時は日毎に部屋のメンバーを変えているらしい。マジ修学旅行。
軽巡3~4。5なウチはちょっと特殊。逆に3は広い。
重巡は4。軽空母も。
正規空母、戦艦となると二人部屋だったり二部屋ぶち抜いて四人部屋だったり。
大まかにいえばこんな感じ。
533: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:13:04.41 ID:i3ZTT8gu0
多摩「とりあえずいくつか手放すしかないにゃ」
北上「そんな!」
球磨「取捨選択クマ。何かを得るには何かを失う必要があるクマ」
北上「むむ…」
しかしこの部屋をこれ以上圧縮出来ないのも事実。
はてさて
北上「どうしたものか」
日向「どうしたとはどうした?」
北上「いやちょっと深刻な悩みが」
提督と球磨型を除けば実はこの鎮守府でもっとも古い付き合いである日向さん。
要するに読書仲間である。
北上「そんな!」
球磨「取捨選択クマ。何かを得るには何かを失う必要があるクマ」
北上「むむ…」
しかしこの部屋をこれ以上圧縮出来ないのも事実。
はてさて
北上「どうしたものか」
日向「どうしたとはどうした?」
北上「いやちょっと深刻な悩みが」
提督と球磨型を除けば実はこの鎮守府でもっとも古い付き合いである日向さん。
要するに読書仲間である。
534: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:13:57.91 ID:i3ZTT8gu0
日向「なるほどな。コレクターにおける最大の悩みはその収納場所である、と言うやつだな」
お昼前に倉庫にいた日向さんに話を聞いてみた。
北上「誰の言葉ですかそれ」
日向「さあ。でもどこかの偉人が何か言ってそうな感じはしないか?」
北上「確かに」
日向「まあそれはともかくとしてだ。本の収納に関しては私も他人事ではいられないな」
北上「日向さんも?」
この人は2人で一つの部屋を使ってるからスペースはそれなりに確保出来てるはずだが。
日向「収集に際限などないからな。極端な話自分の図書館が欲しい」
北上「あー」
すごく納得。
お昼前に倉庫にいた日向さんに話を聞いてみた。
北上「誰の言葉ですかそれ」
日向「さあ。でもどこかの偉人が何か言ってそうな感じはしないか?」
北上「確かに」
日向「まあそれはともかくとしてだ。本の収納に関しては私も他人事ではいられないな」
北上「日向さんも?」
この人は2人で一つの部屋を使ってるからスペースはそれなりに確保出来てるはずだが。
日向「収集に際限などないからな。極端な話自分の図書館が欲しい」
北上「あー」
すごく納得。
535: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:14:27.90 ID:i3ZTT8gu0
神風「それで私に?」
北上「そそ、どーしてるのかなって」
神風「どうと言われても、普通に本棚ですよ」
日向「足りてるのか?」
神風「いやもう全然全く微塵に皆無にこれっぽっちも足りてません」
ここに鎮守府読書家三人衆の意見が揃ったのであった。
ランチタイムと洒落こもう。
北上「そそ、どーしてるのかなって」
神風「どうと言われても、普通に本棚ですよ」
日向「足りてるのか?」
神風「いやもう全然全く微塵に皆無にこれっぽっちも足りてません」
ここに鎮守府読書家三人衆の意見が揃ったのであった。
ランチタイムと洒落こもう。
536: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:15:00.53 ID:i3ZTT8gu0
神風「電子書籍とやらを試したりもしましたね」
北上「あースマホで見れるやつだ」
鎮守府では基本的に連絡目的でスマホを1人1台持っている。
軍事機密的なあれやこれやで制限は多いけど基本的には一般的なスマホと同じである。
日向「タブレット端末なら私も使っているが、資料などを読む際に拡大で小さい文字が見やすいのは確かに便利だった」
北上「電子書籍かぁ。確かに収納スペースの問題は一気に片付くね」
北上「あースマホで見れるやつだ」
鎮守府では基本的に連絡目的でスマホを1人1台持っている。
軍事機密的なあれやこれやで制限は多いけど基本的には一般的なスマホと同じである。
日向「タブレット端末なら私も使っているが、資料などを読む際に拡大で小さい文字が見やすいのは確かに便利だった」
北上「電子書籍かぁ。確かに収納スペースの問題は一気に片付くね」
537: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:15:38.29 ID:i3ZTT8gu0
神風「いえでもやっぱり紙媒体がいいなぁって…」
日向「まあそうなるな」
北上「そっかあ…だよねぇ…」
神風「1枚1枚手でめくるのがいいんです…」
日向「ざっとめくってこの辺りにあのシーンが見たいな事が出来ないからな…」
北上「読みながら自分が今物語のどの辺にいるかわからないもんね…」
神風「挿絵のページが本を開かなくても黒い線で分かったり」
日向「栞を挟む楽しみがな」
北上「あれ?これってさっきの!とかでページ戻す時の感覚とかさ」
以下、紙媒体の良さ。は流石に割愛。
日向「まあそうなるな」
北上「そっかあ…だよねぇ…」
神風「1枚1枚手でめくるのがいいんです…」
日向「ざっとめくってこの辺りにあのシーンが見たいな事が出来ないからな…」
北上「読みながら自分が今物語のどの辺にいるかわからないもんね…」
神風「挿絵のページが本を開かなくても黒い線で分かったり」
日向「栞を挟む楽しみがな」
北上「あれ?これってさっきの!とかでページ戻す時の感覚とかさ」
以下、紙媒体の良さ。は流石に割愛。
538: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:16:19.38 ID:i3ZTT8gu0
北上「提督に頼んでみよっかな~」
神風「頼むって、何をどうするんですか」
北上「んー…床下収納できるようにとか?」
神風「私達はみんな1階より上ですし…」
北上「工事にお金も時間もかかるからねえ」
日向「…ふむ、提督に頼むか」
北上「え、なにか妙案が?」
日向「2人とも。付いてきてくれ」
神風「頼むって、何をどうするんですか」
北上「んー…床下収納できるようにとか?」
神風「私達はみんな1階より上ですし…」
北上「工事にお金も時間もかかるからねえ」
日向「…ふむ、提督に頼むか」
北上「え、なにか妙案が?」
日向「2人とも。付いてきてくれ」
539: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:17:04.05 ID:i3ZTT8gu0
鎮守府の建物の中でも端っこの端っこ。恐らく訪れた事が無いどころか多くの者が存在すら知らないであろう空き部屋。
日向「ここを図書室とする」
神風「え?」
北上「そんな急に」
日向「まあ聞いてくれ。私も以前に1度、本の置き場に悩んだことがある。その時に提督に提案したんだ。図書室を作ろうと」
北上「本置き場じゃなく図書室?」
日向「私的な理由で部屋を一つ使うわけにもいくまい。あくまで皆が利用できるようにという建前だ」
神風「なるほど。でも以前提案した事があるってことは、無理だったってことじゃ」
日向「その通り。だが私は諦めなかった。副秘書艦という立場を利用しこの部屋を何にも使われないように守ってきたのさ」
この鎮守府、ろくな権力者がいない。
日向「ここを図書室とする」
神風「え?」
北上「そんな急に」
日向「まあ聞いてくれ。私も以前に1度、本の置き場に悩んだことがある。その時に提督に提案したんだ。図書室を作ろうと」
北上「本置き場じゃなく図書室?」
日向「私的な理由で部屋を一つ使うわけにもいくまい。あくまで皆が利用できるようにという建前だ」
神風「なるほど。でも以前提案した事があるってことは、無理だったってことじゃ」
日向「その通り。だが私は諦めなかった。副秘書艦という立場を利用しこの部屋を何にも使われないように守ってきたのさ」
この鎮守府、ろくな権力者がいない。
540: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:17:43.11 ID:i3ZTT8gu0
日向「さて。今回は私が勝算があると思う理由は三つある。一つは最近の鎮守府でのスマホ事情だ」
北上「最近?」
神風「ここ2.3年で一気に鎮守府での利用が広まったんですよ」
日向「連絡手段として便利なのは確かだからな。セキリュティと法律関連が整備され鎮守府でも利用されるようになった」
北上「へえ」
生まれたての私には当たり前のものだと思っていたが。これが世代の差というわけか。
日向「ところがだ。今では多くのものがスマホに夢中になり日がな一日画面とにらめっこという状況も珍しくない」
それは艦種によっては本当にただただ暇でやる事が無いからというのもあるので、一概に言えるものではない。一応。
北上「最近?」
神風「ここ2.3年で一気に鎮守府での利用が広まったんですよ」
日向「連絡手段として便利なのは確かだからな。セキリュティと法律関連が整備され鎮守府でも利用されるようになった」
北上「へえ」
生まれたての私には当たり前のものだと思っていたが。これが世代の差というわけか。
日向「ところがだ。今では多くのものがスマホに夢中になり日がな一日画面とにらめっこという状況も珍しくない」
それは艦種によっては本当にただただ暇でやる事が無いからというのもあるので、一概に言えるものではない。一応。
541: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:18:28.12 ID:i3ZTT8gu0
スマホのアプリ。つまりゲーム。セキリュティのなんちゃらかんちゃらで監視はされてるけど利用は可能となっている。
妙な事をしたり情報を漏らさなければ普通の人と同じようにスマホを使えるのだ。
一応そこら辺は鎮守府事に提督が使用の是非を決めていい事になっているが、ほとんどOKを出しているとか。
何故か。暇つぶしのためというのもあるが一番はお金の使い所らしい。
外にはなかなか出れず、物を買っても置く場所は限られる。なのに命懸けの仕事でお金だけがふえていく。
そんな私達が経済にしっかり貢献できる手段が所謂ソシャゲ。有り体に言ってガチャである。
言ってて悲しくなるよねこれ。
妙な事をしたり情報を漏らさなければ普通の人と同じようにスマホを使えるのだ。
一応そこら辺は鎮守府事に提督が使用の是非を決めていい事になっているが、ほとんどOKを出しているとか。
何故か。暇つぶしのためというのもあるが一番はお金の使い所らしい。
外にはなかなか出れず、物を買っても置く場所は限られる。なのに命懸けの仕事でお金だけがふえていく。
そんな私達が経済にしっかり貢献できる手段が所謂ソシャゲ。有り体に言ってガチャである。
言ってて悲しくなるよねこれ。
542: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:19:04.73 ID:i3ZTT8gu0
日向「提督もダメとは言わないが決してよくも思っていないからな」
神風「それで図書室を作って読書を勧めようと?」
北上「理由としては、うん、問題はなさそうだね」
日向「提督は割と古い型の人間だからな。スマホは悪だと適当に言い含めておけば大丈夫さ」
何故こうも提督の周りには一癖も二癖もある者が多いのか。
日向「二つ目はラノベだ。最近夕張の熱心な布教活動で随分流行っている」
北上「スマホゲームのおかげでキャラは知ってるみたいだからね。原作を勧めやすいって聞いたよ」
神風「それで図書室を作って読書を勧めようと?」
北上「理由としては、うん、問題はなさそうだね」
日向「提督は割と古い型の人間だからな。スマホは悪だと適当に言い含めておけば大丈夫さ」
何故こうも提督の周りには一癖も二癖もある者が多いのか。
日向「二つ目はラノベだ。最近夕張の熱心な布教活動で随分流行っている」
北上「スマホゲームのおかげでキャラは知ってるみたいだからね。原作を勧めやすいって聞いたよ」
543: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:19:33.85 ID:i3ZTT8gu0
日向「うむ。なのでラノベなんか読まずにちゃんとした本を広めようとか説いてやればいい」
神風「うわぁ…」
北上「えぇ…」
普段なら聞いた瞬間「あ゛?」とか言いたくなるセリフをこうもサラリと使うとは。
しかも分かって言ってるだけにタチが悪い。
神風「でも図書室にもラノベ置くつもりなんですよね?」
日向「部屋の使用許可さえ降りればこっちのものさ」
神風「デスヨネー」
神風「うわぁ…」
北上「えぇ…」
普段なら聞いた瞬間「あ゛?」とか言いたくなるセリフをこうもサラリと使うとは。
しかも分かって言ってるだけにタチが悪い。
神風「でも図書室にもラノベ置くつもりなんですよね?」
日向「部屋の使用許可さえ降りればこっちのものさ」
神風「デスヨネー」
545: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/19(火) 01:22:23.19 ID:i3ZTT8gu0
北上「なりふり構わずって感じですね」
日向「ない袖だって振ってやるさ」
神風「それで最後は?」
日向「君だよ。北上」
北上「え?」
神風「北上さんが?」
私がなんだというのか。
日向「ない袖だって振ってやるさ」
神風「それで最後は?」
日向「君だよ。北上」
北上「え?」
神風「北上さんが?」
私がなんだというのか。
546: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:46:36.25 ID:ffvQcam00
北上「ってさ。私にお国よりも大事な本を捨てろって言うんだよ?」
所変わって提督室。
提督「おおよそ在りし日の船の魂が言うとは思えない発言だな。それにその件に関しては全面的にお前が悪い」
北上「え~提督からもなんか言ってよ~」
提督「言ってもいいが俺は球磨達に付くぞ。第1部屋の問題は部屋の者で解決しろ。そういうルールだろ」
北上「まあそうだけどさあ。じゃあじゃあ、床下に倉庫とか作ってよ!」
提督「お前の部屋2階じゃねえか!」
北上「ん~提督はなんかアイディアない?」
所変わって提督室。
提督「おおよそ在りし日の船の魂が言うとは思えない発言だな。それにその件に関しては全面的にお前が悪い」
北上「え~提督からもなんか言ってよ~」
提督「言ってもいいが俺は球磨達に付くぞ。第1部屋の問題は部屋の者で解決しろ。そういうルールだろ」
北上「まあそうだけどさあ。じゃあじゃあ、床下に倉庫とか作ってよ!」
提督「お前の部屋2階じゃねえか!」
北上「ん~提督はなんかアイディアない?」
547: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:47:11.75 ID:ffvQcam00
提督「そうだな。他の部屋に置いてもらうとかはどうだ?」
北上「他の部屋、夕張とかか」
提督「後日向も結構本を置いてるぞ」
北上「へ~そりゃ知らなかった」
大嘘である。
猫を被る、ではなく皮を被るである。
しかし驚く程スムーズな流れ。逆に怖い。
北上「でもさ、私英語の本とか多いからあんまり他の娘に預けるのはね」
提督「なんで?」
北上「読めない物渡されても困るじゃん」
提督「それもそうか」
北上「他の部屋、夕張とかか」
提督「後日向も結構本を置いてるぞ」
北上「へ~そりゃ知らなかった」
大嘘である。
猫を被る、ではなく皮を被るである。
しかし驚く程スムーズな流れ。逆に怖い。
北上「でもさ、私英語の本とか多いからあんまり他の娘に預けるのはね」
提督「なんで?」
北上「読めない物渡されても困るじゃん」
提督「それもそうか」
548: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:47:46.26 ID:ffvQcam00
北上「他にしまえるところないの~」
提督「…本ねぇ」
北上「おや?何か心当たりがある様子」
提督「いやあ違う違う。あっそうだ!部屋ってんならいくつか空きがあるぜ」
北上「ああ三階の奥のヤツとか?」
提督「そうそう。なんだかんだで使わずじまいでな」
北上「じゃあさ、あそこ図書室にするのはどう?」
提督「図書室?」
提督「…本ねぇ」
北上「おや?何か心当たりがある様子」
提督「いやあ違う違う。あっそうだ!部屋ってんならいくつか空きがあるぜ」
北上「ああ三階の奥のヤツとか?」
提督「そうそう。なんだかんだで使わずじまいでな」
北上「じゃあさ、あそこ図書室にするのはどう?」
提督「図書室?」
549: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:48:26.29 ID:ffvQcam00
そう、図書室。全てはそのための布石。
あくまで自然な流れで、さも今しがた思いついたかのように図書室計画を進めるのだ。
私が。
理由の三つ目。私、というか大井っち。
提督は私に甘いのだ。
その甘さを素直に大井っちに向けてればいいのに、というのはこの際どうでもいい。
意中の人の大親友という立場を今日は存分に使おう。
日向さんから言われた通り。ここからは一つ目、二つ目の理由をさりげなく会話に盛り込み図書室計画を楽しげに語っていく。
もちろん要所要所で大井っちの名前を出すのは忘れないようにしなくては。
我ながら悪い事してるなあと思いつつもちょっと楽しんでたり?
あくまで自然な流れで、さも今しがた思いついたかのように図書室計画を進めるのだ。
私が。
理由の三つ目。私、というか大井っち。
提督は私に甘いのだ。
その甘さを素直に大井っちに向けてればいいのに、というのはこの際どうでもいい。
意中の人の大親友という立場を今日は存分に使おう。
日向さんから言われた通り。ここからは一つ目、二つ目の理由をさりげなく会話に盛り込み図書室計画を楽しげに語っていく。
もちろん要所要所で大井っちの名前を出すのは忘れないようにしなくては。
我ながら悪い事してるなあと思いつつもちょっと楽しんでたり?
550: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:48:59.36 ID:ffvQcam00
北上「そそ。学校みたいに、って私学校なんて知らないんだけど。まあそんな感じでさ」
提督「いいんじゃね」
北上「ほら、最近みんなスマホとか…え?いいの?」
提督「あそこどうせ使ってないしな。ただしやるなら自分でやれよ。部屋は貸す。だがそれ以外は一切関与しない」
北上「…」
提督「なんだよその顔は…」
いやこの人私に甘すぎでしょ。日向さんに何されても知らないよ。
提督「いいんじゃね」
北上「ほら、最近みんなスマホとか…え?いいの?」
提督「あそこどうせ使ってないしな。ただしやるなら自分でやれよ。部屋は貸す。だがそれ以外は一切関与しない」
北上「…」
提督「なんだよその顔は…」
いやこの人私に甘すぎでしょ。日向さんに何されても知らないよ。
551: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:49:39.23 ID:ffvQcam00
提督「お前駆逐艦や軽巡にやたら好かれてるしな。人は集めやすいだろ」
北上「別に好きで好かれてるわけじゃないしー」
提督「いーじゃねえか。どちらにせよ嫌じゃないんだろ?」
北上「まあね…」
駆逐艦は神風を中心に、軽巡は阿武隈繋がりだが最近は妙に寄ってこられる。何故だ。
提督「さて話は決まりだな」
日向「よしでは」ガチャ
吹雪「細かいところを詰めてきましょう」ガチャ
提督「は?」
今回の仕掛け人たちが入室してきた。
扉の前で待ってただけなんだけどね。
北上「別に好きで好かれてるわけじゃないしー」
提督「いーじゃねえか。どちらにせよ嫌じゃないんだろ?」
北上「まあね…」
駆逐艦は神風を中心に、軽巡は阿武隈繋がりだが最近は妙に寄ってこられる。何故だ。
提督「さて話は決まりだな」
日向「よしでは」ガチャ
吹雪「細かいところを詰めてきましょう」ガチャ
提督「は?」
今回の仕掛け人たちが入室してきた。
扉の前で待ってただけなんだけどね。
552: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:50:18.04 ID:ffvQcam00
日向「部屋の採寸は終わっている。必要な棚、机、椅子等はこれから調達する。詳細はこの資料を見てくれ」
吹雪「本の管理システムですが夕張さんがスマホのアプリを使った物を開発してくれるそうなのでそれを使います」
日向「予算は私と北上、神風、夕張で出す。腐らせていた金だ、たっぷり使うさ」
吹雪「業者の人を入れるのは許可とか申請が面倒なんで人手がある日に鎮守府に届けてもらって私達で設置します。スケジュールの方はこっちの資料に候補をあげといたんで目を通しておいてください」
提督「え、いや、あの、ごめん、もっかい言って」
日向「それじゃ」
吹雪「それでは」
バタン。
台風一過のような静けさが訪れた。
吹雪「本の管理システムですが夕張さんがスマホのアプリを使った物を開発してくれるそうなのでそれを使います」
日向「予算は私と北上、神風、夕張で出す。腐らせていた金だ、たっぷり使うさ」
吹雪「業者の人を入れるのは許可とか申請が面倒なんで人手がある日に鎮守府に届けてもらって私達で設置します。スケジュールの方はこっちの資料に候補をあげといたんで目を通しておいてください」
提督「え、いや、あの、ごめん、もっかい言って」
日向「それじゃ」
吹雪「それでは」
バタン。
台風一過のような静けさが訪れた。
553: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:50:54.37 ID:ffvQcam00
提督「北上…」
うわぁ、すごく恨みがまし~い目で見られた。
北上「提督」
提督「なんだ」
北上「ありがとね」
提督「はぁ…」
北上「えーため息つかないでよぉ。いや悪い事したとは思ってるけどさあ」
提督「素直に言ってくれよだったら…というか怖いからあいつら巻き込むな」
そっちが本音か。
うわぁ、すごく恨みがまし~い目で見られた。
北上「提督」
提督「なんだ」
北上「ありがとね」
提督「はぁ…」
北上「えーため息つかないでよぉ。いや悪い事したとは思ってるけどさあ」
提督「素直に言ってくれよだったら…というか怖いからあいつら巻き込むな」
そっちが本音か。
554: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:51:22.17 ID:ffvQcam00
北上「感謝してる。ホントだよ?」
提督「知ってるよ。で、さ。図書室出来たらそこに入り浸りか?」
北上「あーどうだろ。入り浸りって事はないんじゃないかなぁ」
提督「そうか。そっか」
北上「?」
提督「ま、アイツらがいるから大丈夫だろうか、頑張れよ」
北上「うん」
提督「知ってるよ。で、さ。図書室出来たらそこに入り浸りか?」
北上「あーどうだろ。入り浸りって事はないんじゃないかなぁ」
提督「そうか。そっか」
北上「?」
提督「ま、アイツらがいるから大丈夫だろうか、頑張れよ」
北上「うん」
555: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:52:01.77 ID:ffvQcam00
北上「いいねぇ、痺れるねえ」
神風「出来てしまった」
日向「まあ、そうなるな」
計画開始から僅かに1週間。
私達の牙城が出来上がった。
四方を取り囲む本棚はまだ半分ほどしか埋まっていないがそれはこれから増えていくから問題ない。
部屋の中央には背の低いテーブルが二つ。座布団や椅子が周りに置かれている。基本は床に引いたマットに座る想定だ。
もちろん寝転んで読むことも出来る。
神風「出来てしまった」
日向「まあ、そうなるな」
計画開始から僅かに1週間。
私達の牙城が出来上がった。
四方を取り囲む本棚はまだ半分ほどしか埋まっていないがそれはこれから増えていくから問題ない。
部屋の中央には背の低いテーブルが二つ。座布団や椅子が周りに置かれている。基本は床に引いたマットに座る想定だ。
もちろん寝転んで読むことも出来る。
556: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:52:29.09 ID:ffvQcam00
北上「受付とかってやる?」
日向「それは私がやろう」
神風「え?でもお仕事があるんじゃ」
日向「ここに持ち込めばいいさ。持ち込めないものはさっさと終わらせるか他に回せばいい」
優秀だもんね、この人。
北上「では」
日向「お楽しみと」
神風「いきましょう!」
日向「それは私がやろう」
神風「え?でもお仕事があるんじゃ」
日向「ここに持ち込めばいいさ。持ち込めないものはさっさと終わらせるか他に回せばいい」
優秀だもんね、この人。
北上「では」
日向「お楽しみと」
神風「いきましょう!」
557: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:53:03.68 ID:ffvQcam00
ゴロンと寝転ぶ。場所は窓から入る陽の光で暖められている場所の隣。
隣というのがポイントでつまり直射日光ではなく陽の光を吸った干したての布団の温もりの上ということである。
よく寝ながら読書は読みにくいという話を聞くが私はこの方が落ち着く。何故だろう。猫だったから?
神風「んっと」
神風は人をダメにするというクッションチェアに深々と腰掛け、お臍の上辺りに本を広げている。いつもの姿勢だ。
この時いつも足を伸ばすのではなく膝を折り曲げるため行燈袴から太ももが、というかもう○○○まで見える時は見える。
隣というのがポイントでつまり直射日光ではなく陽の光を吸った干したての布団の温もりの上ということである。
よく寝ながら読書は読みにくいという話を聞くが私はこの方が落ち着く。何故だろう。猫だったから?
神風「んっと」
神風は人をダメにするというクッションチェアに深々と腰掛け、お臍の上辺りに本を広げている。いつもの姿勢だ。
この時いつも足を伸ばすのではなく膝を折り曲げるため行燈袴から太ももが、というかもう○○○まで見える時は見える。
558: ◆rbbm4ODkU. 2017/09/20(水) 02:53:44.04 ID:ffvQcam00
ブーツを脱ぐとだらしなくなるのが彼女の特徴である。意外とふとましいというかむちむちとした太ももには是非とも膝枕をして欲しいのだが一向に首を縦に降ってくれない。
ちなみに一番は大井っち。阿武隈は細いのでダメ。
まあこのだらけ具合は完全にプライベート空間だし周りも女だけ、本人も気にしていないようなので特に何も言わないけど。
日向さんは入口に設置されたカウンターで椅子に座って読んでいる。
なんでもゲーミングチェアと言って角度や姿勢が色々調節できるらしい。
5万円もしたというがホントか嘘か。
ちなみに一番は大井っち。阿武隈は細いのでダメ。
まあこのだらけ具合は完全にプライベート空間だし周りも女だけ、本人も気にしていないようなので特に何も言わないけど。
日向さんは入口に設置されたカウンターで椅子に座って読んでいる。
なんでもゲーミングチェアと言って角度や姿勢が色々調節できるらしい。
5万円もしたというがホントか嘘か。
562: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:37:25.80 ID:hlST7fwS0
壁にかけられた時計の針の音だけが響き渡る空間。なんとも素晴らしい。
本の収納に留まらずこんな癒し空間まで手に入るとは、いやほんとに素晴らしい。
大井「お邪魔しまーす」
多摩「うわ、マジにダラダラしてるだけにゃ」
北上「やほ~」
神風と日向さんは本にのめり込んでいるのか2人の来訪者に眉毛一つ動かさない。
いや受付は受付しなよ…
本の収納に留まらずこんな癒し空間まで手に入るとは、いやほんとに素晴らしい。
大井「お邪魔しまーす」
多摩「うわ、マジにダラダラしてるだけにゃ」
北上「やほ~」
神風と日向さんは本にのめり込んでいるのか2人の来訪者に眉毛一つ動かさない。
いや受付は受付しなよ…
563: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:37:56.88 ID:hlST7fwS0
大井「ここが北上さんの牙城ですか」
あっ、発想が同じだ。
多摩「本関係なく過ごしやすそうな場所にゃ」
北上「2人は何しに?」
大井「夕張さんにこれを渡すようにと」
日向「お、端末か。これで正式に本の貸し借りができるな」
多摩「ビックリしたにゃ。急に会話に入るんじゃないにゃ」
日向「酷いことを言う。私が受け取らねばそちらも困るだろ」
多摩「なら最初から反応するにゃ」
日向「善処しよう」
多摩「した試しがないけどにゃ」
あれ?この2人なんか知り合いというか、気の置けない仲って感じが。
あんまりそういうイメージないけど、私みたいになにか趣味とかで繋がりがあるのかな。
あっ、発想が同じだ。
多摩「本関係なく過ごしやすそうな場所にゃ」
北上「2人は何しに?」
大井「夕張さんにこれを渡すようにと」
日向「お、端末か。これで正式に本の貸し借りができるな」
多摩「ビックリしたにゃ。急に会話に入るんじゃないにゃ」
日向「酷いことを言う。私が受け取らねばそちらも困るだろ」
多摩「なら最初から反応するにゃ」
日向「善処しよう」
多摩「した試しがないけどにゃ」
あれ?この2人なんか知り合いというか、気の置けない仲って感じが。
あんまりそういうイメージないけど、私みたいになにか趣味とかで繋がりがあるのかな。
564: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:39:50.77 ID:hlST7fwS0
日向「さてそろそろ行くか」
北上「いずこへ?」
日向「仕事さ。ついでに神風も起こしてくれ」
起こしてとは決して神風が寝ているという意味ではない。ようは目を覚まさせろという事だ。
というわけで、
北上「おりゃあ~」
神風「ひゃあっ!?」
袴を思いっきり捲ってやる。慌てて抑えてるけどさっきから丸見えなんだよねえ…
大井「桃色」
多摩「桃色にゃ」
神風「北上さん゛!」
くりんとした目を僅かに潤わせながら睨みつけてくる様はなんというかこう加虐心を擽られる。
北上「あーほらほら呼んでるから」
神風「呼んでる?」
北上「いずこへ?」
日向「仕事さ。ついでに神風も起こしてくれ」
起こしてとは決して神風が寝ているという意味ではない。ようは目を覚まさせろという事だ。
というわけで、
北上「おりゃあ~」
神風「ひゃあっ!?」
袴を思いっきり捲ってやる。慌てて抑えてるけどさっきから丸見えなんだよねえ…
大井「桃色」
多摩「桃色にゃ」
神風「北上さん゛!」
くりんとした目を僅かに潤わせながら睨みつけてくる様はなんというかこう加虐心を擽られる。
北上「あーほらほら呼んでるから」
神風「呼んでる?」
565: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:40:27.67 ID:hlST7fwS0
日向「これから遠征だろ?そろそろ向かうべきだ」
神風「はっ!忘れてた!」
慌てて本を棚に戻す。神風はリアクションが大きくて面白い。
神風「では皆さん、ごゆっくり!」
日向「ごゆっくり?ごゆっくり…うん。ごゆっくり」
走り去る緋色とぬらりと消える白。
大井「と言われても、届けに来ただけなのよね」
多摩「せっかくだしゆっくりしてくにゃ」ゴロン
北上「いらっしゃ~い」
大井「も、もう。しょうがないですね」
とか言いつつ顔がにやけてる大井っち。
神風「はっ!忘れてた!」
慌てて本を棚に戻す。神風はリアクションが大きくて面白い。
神風「では皆さん、ごゆっくり!」
日向「ごゆっくり?ごゆっくり…うん。ごゆっくり」
走り去る緋色とぬらりと消える白。
大井「と言われても、届けに来ただけなのよね」
多摩「せっかくだしゆっくりしてくにゃ」ゴロン
北上「いらっしゃ~い」
大井「も、もう。しょうがないですね」
とか言いつつ顔がにやけてる大井っち。
566: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:41:02.54 ID:hlST7fwS0
多摩「結構ふかふかにゃ」
大井「流石です北上さん!」
選んだのは神風とは言わない。
しかしこれは、チャンスだ。
読みかけの本を閉じ棚に戻す。変わりにある本を手に取る。
多摩「これ部屋にもひくにゃ」
大井「テーブルありますよ?」
多摩「畳めるようにしとくんだにゃ」
大井「それなら、いやめんどくさそうです」
多摩「えーそんな事ないにゃきっと」
大井「いえ、多摩姉さんが面倒くさがります絶対確実に間違いなく」
多摩「むぅ」
大井「流石です北上さん!」
選んだのは神風とは言わない。
しかしこれは、チャンスだ。
読みかけの本を閉じ棚に戻す。変わりにある本を手に取る。
多摩「これ部屋にもひくにゃ」
大井「テーブルありますよ?」
多摩「畳めるようにしとくんだにゃ」
大井「それなら、いやめんどくさそうです」
多摩「えーそんな事ないにゃきっと」
大井「いえ、多摩姉さんが面倒くさがります絶対確実に間違いなく」
多摩「むぅ」
567: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:41:39.26 ID:hlST7fwS0
あくまで自然な形で本を開き、しばらく読み進め、ふと思いついたかのように口を開く。
北上「ねえねえ、ライ麦畑って見た事ある?」
大井「麦、 畑?」
多摩「どうしたんだにゃ急に」
大井「あぁCatcher in the Ryeですか」
北上「うん。実際麦畑ってどんな感じなのかーって」
多摩「見た事はないにゃ~。第1日本じゃ、無いこともないのかにゃ?でもほとんど無いはずにゃ」
大井「それこそアメリカみたいな広い国でないと」
北上「ねえねえ、ライ麦畑って見た事ある?」
大井「麦、 畑?」
多摩「どうしたんだにゃ急に」
大井「あぁCatcher in the Ryeですか」
北上「うん。実際麦畑ってどんな感じなのかーって」
多摩「見た事はないにゃ~。第1日本じゃ、無いこともないのかにゃ?でもほとんど無いはずにゃ」
大井「それこそアメリカみたいな広い国でないと」
568: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:42:07.40 ID:hlST7fwS0
多摩「知識というかイメージなら分からなくもないにゃ」
大井「そうですね。ともかく広くて大きくて」
多摩「ん、麦畑、にゃあ」
大井「日本語訳は確かライ麦畑でつかまえて、でしたよね」
北上「そうそう」
実はそっちはまだ読んでなかったり。
大井「でも実際麦畑で追いかけっこなんかしたら絶対捕まえられませんよね。お互いに全身スッポリ覆われてしまいますから」
北上「それもそうだねぇ」
ん?
多摩「…」
北上「多摩姉?」
大井「そうですね。ともかく広くて大きくて」
多摩「ん、麦畑、にゃあ」
大井「日本語訳は確かライ麦畑でつかまえて、でしたよね」
北上「そうそう」
実はそっちはまだ読んでなかったり。
大井「でも実際麦畑で追いかけっこなんかしたら絶対捕まえられませんよね。お互いに全身スッポリ覆われてしまいますから」
北上「それもそうだねぇ」
ん?
多摩「…」
北上「多摩姉?」
569: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:42:48.98 ID:hlST7fwS0
多摩「見た事あるにゃ」
北上「え!?」
多摩「いや、ハッキリとは覚えてないにゃ。ただこう、まるで一枚の写真みたいな感じにぼんやりと絵が浮かぶにゃ」
大井「ど、どういう事ですか!?」
北上「何か他に思い出せないの!」
多摩「お、おうにゃ。ただ小麦色の背景に、人にゃ。えーと、なんだろにゃ、金色の…どこで見たんだったかにゃ」
北上「…まあうろ覚えじゃしょうがないか」
多摩「そんなに麦畑見たいのかにゃ?」
北上「いや、そんなんじゃないよ。まさかホントに見た事あるとは思わなかったから驚いただけ」
多摩「なんか悪いにゃ。変な期待させて」
北上「気にしないでよ。そう大した事じゃないからさ」
北上「え!?」
多摩「いや、ハッキリとは覚えてないにゃ。ただこう、まるで一枚の写真みたいな感じにぼんやりと絵が浮かぶにゃ」
大井「ど、どういう事ですか!?」
北上「何か他に思い出せないの!」
多摩「お、おうにゃ。ただ小麦色の背景に、人にゃ。えーと、なんだろにゃ、金色の…どこで見たんだったかにゃ」
北上「…まあうろ覚えじゃしょうがないか」
多摩「そんなに麦畑見たいのかにゃ?」
北上「いや、そんなんじゃないよ。まさかホントに見た事あるとは思わなかったから驚いただけ」
多摩「なんか悪いにゃ。変な期待させて」
北上「気にしないでよ。そう大した事じゃないからさ」
570: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:43:29.17 ID:hlST7fwS0
多摩「あ、そろそろ風呂の時間にゃ」
北上「じゃあ先行っててよ。私ちょっと夕張んとこ寄ってくから」
多摩「おっけーにゃ。大井ーいくにゃー」
大井「へ?あぁはい。行きましょうか」
図書室を出て別れる。
少し1人で考える必要がある。
北上「じゃあ先行っててよ。私ちょっと夕張んとこ寄ってくから」
多摩「おっけーにゃ。大井ーいくにゃー」
大井「へ?あぁはい。行きましょうか」
図書室を出て別れる。
少し1人で考える必要がある。
571: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:43:58.48 ID:hlST7fwS0
一つ可能性を忘れていた。
多摩姉に記憶が全部あるとは限らないのだ。
それは生まれ変わる過程で失われたのか、それとも今はまだ思い出せていないだけなのか。そこら辺ら判然としないけど、ともかくあまり根掘り葉掘り聞いても仕方ない。
とは思うのだけど、焦る気持ちはやはりある。
自分の記憶だけだと現状私の飼い主を見つけるのはほぼ不可能だ。あまりに情報が少ない。
多摩姉の記憶にヒントになるものがあるという保証はないけど、それでも現状は唯一の突破口だ。
北上「一回頭冷やすか」
冷たい水でもかぶりたい気分だった。
多摩姉に記憶が全部あるとは限らないのだ。
それは生まれ変わる過程で失われたのか、それとも今はまだ思い出せていないだけなのか。そこら辺ら判然としないけど、ともかくあまり根掘り葉掘り聞いても仕方ない。
とは思うのだけど、焦る気持ちはやはりある。
自分の記憶だけだと現状私の飼い主を見つけるのはほぼ不可能だ。あまりに情報が少ない。
多摩姉の記憶にヒントになるものがあるという保証はないけど、それでも現状は唯一の突破口だ。
北上「一回頭冷やすか」
冷たい水でもかぶりたい気分だった。
572: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:45:09.49 ID:hlST7fwS0
多摩「そういや図書室って鍵かけたりしなくてもいいのかにゃ?」
隣でシャンプーのついた頭を洗い流す多摩姉が聞いてくる。
多摩姉も含めて多くの艦娘がそうなのだが頭を流す際、目をつぶって頭の上からドバっとシャワーをかける。
私はこれが苦手である。目に水が入るのがいや、というわけではなく目に水が入るような感覚がダメなのだ。
あと髪が長いからそれが顔にひっついたりそこを水が伝ったりというのも嫌だ。
例えゴーグルをしていても顔の上から水が垂れてくるのがどうにも気持ち悪い。ので頭を後ろに少し倒しオデコから後ろにお湯を流すように洗っている。
北上「鎮守府内ならどうせ取るやつもいないしいいんだって日向さんが」
多摩「まあそれもそうだにゃ」
蛇口を捻り、シャワーでお湯をかぶる。
隣でシャンプーのついた頭を洗い流す多摩姉が聞いてくる。
多摩姉も含めて多くの艦娘がそうなのだが頭を流す際、目をつぶって頭の上からドバっとシャワーをかける。
私はこれが苦手である。目に水が入るのがいや、というわけではなく目に水が入るような感覚がダメなのだ。
あと髪が長いからそれが顔にひっついたりそこを水が伝ったりというのも嫌だ。
例えゴーグルをしていても顔の上から水が垂れてくるのがどうにも気持ち悪い。ので頭を後ろに少し倒しオデコから後ろにお湯を流すように洗っている。
北上「鎮守府内ならどうせ取るやつもいないしいいんだって日向さんが」
多摩「まあそれもそうだにゃ」
蛇口を捻り、シャワーでお湯をかぶる。
573: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:45:50.60 ID:hlST7fwS0
北上「ねー大井っち~」
大井「なんですか~」
いつものように髪を乾かしてくれる大井っち。
いつものように腰に手を当てて風呂上がりの牛乳を飲む木曾。
いつものように謎のストレッチを開始する多摩姉ちゃん。
北上「球磨姉どこいったの?」
大井「あー、それがですねえ…」
気まずそうに目を伏せる。
何かあったのか?
大井「なんですか~」
いつものように髪を乾かしてくれる大井っち。
いつものように腰に手を当てて風呂上がりの牛乳を飲む木曾。
いつものように謎のストレッチを開始する多摩姉ちゃん。
北上「球磨姉どこいったの?」
大井「あー、それがですねえ…」
気まずそうに目を伏せる。
何かあったのか?
574: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:46:29.43 ID:hlST7fwS0
北上「うわっ!」
球磨「 」
部屋に戻ると球磨姉ちゃんが死んでいた。
いや生きてはいるけど、なんいというか死んでいた。うつ伏せに。
北上「いつから?」
多摩「今日の午後からにゃ」
木曾「具体的に言うと図書室完成の連絡が回ってきた時からだな」
北上「図書室?」
なぜ図書室。
球磨「 」
部屋に戻ると球磨姉ちゃんが死んでいた。
いや生きてはいるけど、なんいというか死んでいた。うつ伏せに。
北上「いつから?」
多摩「今日の午後からにゃ」
木曾「具体的に言うと図書室完成の連絡が回ってきた時からだな」
北上「図書室?」
なぜ図書室。
575: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:47:20.14 ID:hlST7fwS0
大井「北上さん北上さん」
北上「な、なにさ」
大井「アレです、アレ」
北上「アレ」
大井っちが部屋のある場所を指さす。
そこは私の買った本が積んであった場所だ。
なのだが。
北上「本棚?」
部屋の邪魔にならない細くて長い本棚が床から天井まで伸びていた。
棚は1/4ほどしか埋まっていないが、きっとこれなら私が図書室に運んだ分も合わせて全部収納出来ただろう。
北上「な、なにさ」
大井「アレです、アレ」
北上「アレ」
大井っちが部屋のある場所を指さす。
そこは私の買った本が積んであった場所だ。
なのだが。
北上「本棚?」
部屋の邪魔にならない細くて長い本棚が床から天井まで伸びていた。
棚は1/4ほどしか埋まっていないが、きっとこれなら私が図書室に運んだ分も合わせて全部収納出来ただろう。
576: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:47:50.34 ID:hlST7fwS0
北上「でも何でこんなのが」
球磨「クマガカッタクマ」
北上「え゛」
うつ伏せのまま妖怪球磨雑巾が喋る。
球磨「オトトイノアサトドイタクマ」
一昨日の朝、というと図書室の家具が届いた時と一緒か。その時一緒に届いたのだろう。
球磨「ケサクミオワッタクマ」
北上「う、うん…」
流石に読めてきた。非常にわかりたくない真実が。
球磨「図書室なんて聞いてないグマ゛アァァ!!」ガバッ
北上「えぇ~…」
球磨「クマガカッタクマ」
北上「え゛」
うつ伏せのまま妖怪球磨雑巾が喋る。
球磨「オトトイノアサトドイタクマ」
一昨日の朝、というと図書室の家具が届いた時と一緒か。その時一緒に届いたのだろう。
球磨「ケサクミオワッタクマ」
北上「う、うん…」
流石に読めてきた。非常にわかりたくない真実が。
球磨「図書室なんて聞いてないグマ゛アァァ!!」ガバッ
北上「えぇ~…」
577: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:48:21.89 ID:hlST7fwS0
つまるところ私達が図書室なんて用意してるとは知らずに私の為に本棚を、しかも完成まで見つからないように1人で作っていたという事だ。
確かにサプライズ的な意味も込めて私達も図書室の件はあまり触れ回らなかったけどさあ。
球磨「 」チーン
多摩「うむ、球磨はよくやったにゃ」ヨシヨシ
木曾「なんだろうな。この誰も悪くない感じは」
大井「不運としか」
北上「嫌な事件だったね…」
確かにサプライズ的な意味も込めて私達も図書室の件はあまり触れ回らなかったけどさあ。
球磨「 」チーン
多摩「うむ、球磨はよくやったにゃ」ヨシヨシ
木曾「なんだろうな。この誰も悪くない感じは」
大井「不運としか」
北上「嫌な事件だったね…」
578: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:48:53.30 ID:hlST7fwS0
球磨「」
球磨姉は後ろから見ると良くわかるが、本当に髪が長い。それでいてフワフワとしていて触り心地がよい。それこそ毛皮のように。
なので
北上「とうっ!」
球磨「ぐえ゛っ!」
その毛皮に思いっきり飛び込んでみた。
球磨「何すんだクマ!死ぬところだったクマ!」
北上「う~ん、やっぱ球磨姉の毛皮気持ち~」
球磨「球磨は熊じゃないクマ!毛皮にしないで欲しいクマ!」
球磨姉は後ろから見ると良くわかるが、本当に髪が長い。それでいてフワフワとしていて触り心地がよい。それこそ毛皮のように。
なので
北上「とうっ!」
球磨「ぐえ゛っ!」
その毛皮に思いっきり飛び込んでみた。
球磨「何すんだクマ!死ぬところだったクマ!」
北上「う~ん、やっぱ球磨姉の毛皮気持ち~」
球磨「球磨は熊じゃないクマ!毛皮にしないで欲しいクマ!」
579: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:49:26.01 ID:hlST7fwS0
北上「まあまあ良いではないか~」
球磨「良くねえクマぁ!」
チラとほかの3人にアイコンタクトを取る。
木曾と大井っちは一瞬2人で顔を見合わせたが直ぐに察したのかニヤっと笑うと、
木曾「おらっ!」
大井「よっと!」
球磨「ギャーー!!」
さらに覆いかぶさってきた。
球磨「や、ヤメロクマー!ちょそこは違うクマ!くすあはははは、くすぐったいクマァ!」
球磨「良くねえクマぁ!」
チラとほかの3人にアイコンタクトを取る。
木曾と大井っちは一瞬2人で顔を見合わせたが直ぐに察したのかニヤっと笑うと、
木曾「おらっ!」
大井「よっと!」
球磨「ギャーー!!」
さらに覆いかぶさってきた。
球磨「や、ヤメロクマー!ちょそこは違うクマ!くすあはははは、くすぐったいクマァ!」
580: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:50:00.98 ID:hlST7fwS0
実際のところ球磨姉の上に3人なんて乗れるはずもなく、私が頭らへん、大井っちが背中、木曾は下半身となった。
でも、なんだか包み込まれているような気分だった。
北上「ありがとね」
球磨「へ?って木曾!何靴下取ってあはははは足!足裏はダメクマァ!」
大井「…」パチッ
北上「え、何外したの」
大井「ホックです」
球磨「何とんでもねえ技披露してんだクマ!」
北上「よし、球磨姉のを○○○大きくしてあげよう」
大井「承知。木曾、足をお願い」
木曾「え、マジで?」
球磨「クマアァ!!多摩あ!助けろぉ!」
多摩「いい○○方を知ってるにゃ」
球磨「多摩ああああ!!??」
でも、なんだか包み込まれているような気分だった。
北上「ありがとね」
球磨「へ?って木曾!何靴下取ってあはははは足!足裏はダメクマァ!」
大井「…」パチッ
北上「え、何外したの」
大井「ホックです」
球磨「何とんでもねえ技披露してんだクマ!」
北上「よし、球磨姉のを○○○大きくしてあげよう」
大井「承知。木曾、足をお願い」
木曾「え、マジで?」
球磨「クマアァ!!多摩あ!助けろぉ!」
多摩「いい○○方を知ってるにゃ」
球磨「多摩ああああ!!??」
581: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/01(日) 16:50:48.56 ID:hlST7fwS0
突如、バタン!と扉が叩き開かれる音が部屋の時を止める。
各々○○のや抑える、脱がす暴れるなどを辞め一斉に扉に向く。
彼女は扉からぬらりと部屋に入ってきてこう言った。
神通「皆さん…もう少し静かに。下の子達から苦情が来てます」
「「「「「アッハイ」」」」にゃ」
棚の余った段には現在、球磨型の写真が飾られていて、日に日にその数を増やしている。
各々○○のや抑える、脱がす暴れるなどを辞め一斉に扉に向く。
彼女は扉からぬらりと部屋に入ってきてこう言った。
神通「皆さん…もう少し静かに。下の子達から苦情が来てます」
「「「「「アッハイ」」」」にゃ」
棚の余った段には現在、球磨型の写真が飾られていて、日に日にその数を増やしている。
585: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:32:52.75 ID:fUizg0w/0
37匹目:本の猫
本の虫とは、本が好きな人のことを指す。
しかしこれよく考えなくても害虫呼ばわりである。
物好きなって意味合いもあるんだろうけどもう少し言い呼び方はなかったもんかね。
まあいいけど。
趣味に熱中しすぎる人間は往々にして奇怪な目で見られがちである。
実際異質な行動をとりがちだし。
例えば鎮守府にも、
本の虫とは、本が好きな人のことを指す。
しかしこれよく考えなくても害虫呼ばわりである。
物好きなって意味合いもあるんだろうけどもう少し言い呼び方はなかったもんかね。
まあいいけど。
趣味に熱中しすぎる人間は往々にして奇怪な目で見られがちである。
実際異質な行動をとりがちだし。
例えば鎮守府にも、
586: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:33:48.87 ID:fUizg0w/0
明石「記憶が蘇る方法?」
北上「そうそう。何かきっかけとかタイミングってあるのかなーって」
明石「もしかして記憶結構思い出したり?」
北上「あーうんまあ」
明石「ほほ~う、それはそれは中々興味深いわねえ」
明石の目が怪しく光る。
大丈夫と分かっていてもこの手の人種の知的好奇心溢れる目はなんというか身構えてしまう気迫がある。
明石「あはは、何もしないってば。本人の許可なく」
北上「だよねー」
許可したら何するつもりだおい。
北上「そうそう。何かきっかけとかタイミングってあるのかなーって」
明石「もしかして記憶結構思い出したり?」
北上「あーうんまあ」
明石「ほほ~う、それはそれは中々興味深いわねえ」
明石の目が怪しく光る。
大丈夫と分かっていてもこの手の人種の知的好奇心溢れる目はなんというか身構えてしまう気迫がある。
明石「あはは、何もしないってば。本人の許可なく」
北上「だよねー」
許可したら何するつもりだおい。
587: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:34:43.53 ID:fUizg0w/0
場所は工房。明石とはお仕事中にも関わらずこうして相談に乗ってくれるくらいの仲だ。
消して私という存在への好奇心じゃなく。多分。
明石「そーね。きっかけと言えば、変わる時、ね」
くるりとイスごと回転して作業に戻る。
私と話しながら行える程度の作業という事らしい。
何となく私もイスで回ってみる。
北上「変わる?」
明石「そうそう」
ちなみに彼女の服装はツナギにタンクトップ。
危ないだろと思ったが防護服とかで防げるようなものなら艦娘には何の影響もないという話である。
彼女曰く「この長ったらしい髪の方がよほど危険」だとか。自分で言っちゃあおしまいでしょ。
消して私という存在への好奇心じゃなく。多分。
明石「そーね。きっかけと言えば、変わる時、ね」
くるりとイスごと回転して作業に戻る。
私と話しながら行える程度の作業という事らしい。
何となく私もイスで回ってみる。
北上「変わる?」
明石「そうそう」
ちなみに彼女の服装はツナギにタンクトップ。
危ないだろと思ったが防護服とかで防げるようなものなら艦娘には何の影響もないという話である。
彼女曰く「この長ったらしい髪の方がよほど危険」だとか。自分で言っちゃあおしまいでしょ。
588: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:36:16.16 ID:fUizg0w/0
明石「一つは生まれ変わる時。これはまあ私達が生まれる時ね」
北上「船から艦娘へってことか」
明石「前にも言ったけど、艦娘って色々なものが混ざって交わって合わさって出来てるのよ。だから生まれる過程で異物、って言い方はアレだけどそういったものが入る事はまれによくあるのよ」
どっちだよ。
明石「もう一つは改造で変わる時」
北上「改造も?」
明石「ええ。私達の力の源は基本的に船の記憶。船としての機能の模倣。ありし日の戦いの投影なの。ほら!艤装もこうフワッて出せるでしょ!トレースオンって感じ!」
北上「お、おう」
急に振り向いたかと思うと凄く楽しそうに喋る。
わざわざ書く事でもないけど彼女は既に夕張によって染められている。何とは言わないが、色々と。
北上「船から艦娘へってことか」
明石「前にも言ったけど、艦娘って色々なものが混ざって交わって合わさって出来てるのよ。だから生まれる過程で異物、って言い方はアレだけどそういったものが入る事はまれによくあるのよ」
どっちだよ。
明石「もう一つは改造で変わる時」
北上「改造も?」
明石「ええ。私達の力の源は基本的に船の記憶。船としての機能の模倣。ありし日の戦いの投影なの。ほら!艤装もこうフワッて出せるでしょ!トレースオンって感じ!」
北上「お、おう」
急に振り向いたかと思うと凄く楽しそうに喋る。
わざわざ書く事でもないけど彼女は既に夕張によって染められている。何とは言わないが、色々と。
589: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:36:50.93 ID:fUizg0w/0
明石「改造による強化や艦種の変更はその船の記憶をより定着させたり、違う記憶を入れたりするものなんだけど。それもきっかけになったりはするわね」
何事も無かったかのように作業に戻る明石。切り替えが早い。
北上「そっか~、改造かぁ…」
多摩姉は球磨型でも最高練度だ。当然改造済。う~んまいった。頭でもどつきゃいいのかな。
明石「何か不備があるならとりあえず叩いてみる?」
そう言ってスパナ(?)を右手でヒラヒラとさせる。技術者がまず第1にそれを言ってどうする。
北上「遠慮しとくよ。でもありがと」
明石「お役に立てたかしら?」
北上「いやもう全然まったく」
明石「ひどい!」
北上「んじゃね」
軽口を叩きつつ席を立つ。
何事も無かったかのように作業に戻る明石。切り替えが早い。
北上「そっか~、改造かぁ…」
多摩姉は球磨型でも最高練度だ。当然改造済。う~んまいった。頭でもどつきゃいいのかな。
明石「何か不備があるならとりあえず叩いてみる?」
そう言ってスパナ(?)を右手でヒラヒラとさせる。技術者がまず第1にそれを言ってどうする。
北上「遠慮しとくよ。でもありがと」
明石「お役に立てたかしら?」
北上「いやもう全然まったく」
明石「ひどい!」
北上「んじゃね」
軽口を叩きつつ席を立つ。
590: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:37:27.90 ID:fUizg0w/0
明石「あー待って待って」
北上「どったの?」
明石「さっき夕張が呼んでたの忘れてた」
北上「夕張が?なんだろ」
明石「アレでしょアレ」
明石が、多分スパナじゃなさそうな何かの工具を拳銃のように持ちパァンと効果音をつける。
北上「あーアレね」
明石「アレよ」
思わずニヤついてしまった。
北上「どったの?」
明石「さっき夕張が呼んでたの忘れてた」
北上「夕張が?なんだろ」
明石「アレでしょアレ」
明石が、多分スパナじゃなさそうな何かの工具を拳銃のように持ちパァンと効果音をつける。
北上「あーアレね」
明石「アレよ」
思わずニヤついてしまった。
591: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:38:37.15 ID:fUizg0w/0
パァン、と言うのが一般的に銃が弾丸を放つ時の効果音として用いられる。
がこれは猫がにゃあと鳴くと言われるのと同じで実際にそう聞こえなくてもそう言う意味、状況を表す一つの記号として存在するものだ。
つまり何が言いたいかというと私は発砲音はタァン派という事だ。
とか何とか考えながら4発を的に撃ち込む。悪くない命中率だ。
右人差し指でセミオートからフルオートに切り替える。
子気味いい音とともに数十発の弾丸が発射される。
うん、これはたまらん。
北上「パーフェクトだ夕張」b
夕張「感謝の極み」b
がこれは猫がにゃあと鳴くと言われるのと同じで実際にそう聞こえなくてもそう言う意味、状況を表す一つの記号として存在するものだ。
つまり何が言いたいかというと私は発砲音はタァン派という事だ。
とか何とか考えながら4発を的に撃ち込む。悪くない命中率だ。
右人差し指でセミオートからフルオートに切り替える。
子気味いい音とともに数十発の弾丸が発射される。
うん、これはたまらん。
北上「パーフェクトだ夕張」b
夕張「感謝の極み」b
592: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:39:29.07 ID:fUizg0w/0
P-90もどきを棚に戻す。名前はまだ決めてないらしい。
北上「やっぱこのくらいの大きさのが好きだなあ私は」
夕張「えーアサルトライフルとか機関銃とかもいいじゃ~ん。ヒャッハーって弾丸ばら撒くの!」
北上「トリガーハッピーめ」
夕張「化物狩るのが日常の艦娘が何を今更」
北上「そりゃそうだ」
以前に言ったが工房でちょくちょく消える改修資材ことネジ。え、逆?
まあともかくそのネジの行方がこれである。
ズラリと並んだ銃火器。
アメリカンな映画のような風景だ。
北上「やっぱこのくらいの大きさのが好きだなあ私は」
夕張「えーアサルトライフルとか機関銃とかもいいじゃ~ん。ヒャッハーって弾丸ばら撒くの!」
北上「トリガーハッピーめ」
夕張「化物狩るのが日常の艦娘が何を今更」
北上「そりゃそうだ」
以前に言ったが工房でちょくちょく消える改修資材ことネジ。え、逆?
まあともかくそのネジの行方がこれである。
ズラリと並んだ銃火器。
アメリカンな映画のような風景だ。
593: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:40:00.25 ID:fUizg0w/0
自身が軍所属の兵士であり軍所有の兵器であり化物を倒す生きた軍艦でありながら、意外にもこうした銃火器に触れた事がないのが艦娘である。
理由は反乱とかを恐れてだとか。
いやいや見た目が小学生低学年の駆逐艦ですら戦車とやり合えるというのに何を今更という話だが、実はちゃんと効果がある。
それは私達の燃費の悪さだ。
この大きさで軍艦同様の力を発揮するというのは末恐ろしい話だが、残念ながら自身で持てる燃料弾薬は人の大きさ基準なのだ。
便宜上「燃料」「弾薬」と呼ばれるそれは実に特殊なもので艦娘が身体に保有する以外での持ち運びが非常に難しい。
大規模な海域戦でこちらがジリ貧になったりするのはそれが原因だ。
補給艦なる者もいるが相応のリスクを伴う。
理由は反乱とかを恐れてだとか。
いやいや見た目が小学生低学年の駆逐艦ですら戦車とやり合えるというのに何を今更という話だが、実はちゃんと効果がある。
それは私達の燃費の悪さだ。
この大きさで軍艦同様の力を発揮するというのは末恐ろしい話だが、残念ながら自身で持てる燃料弾薬は人の大きさ基準なのだ。
便宜上「燃料」「弾薬」と呼ばれるそれは実に特殊なもので艦娘が身体に保有する以外での持ち運びが非常に難しい。
大規模な海域戦でこちらがジリ貧になったりするのはそれが原因だ。
補給艦なる者もいるが相応のリスクを伴う。
594: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:40:32.96 ID:fUizg0w/0
鎮守府に立て篭もるならともかく、私達は長期的な外部戦闘が難しいのだ。
簡単に言えば私達が人類を滅ぼしてやるーと意気込んでも守りに徹していれば勝手に息切れするのである。
弾丸がきれれば砲塔は飾りだし燃料がきれれば艤装は動かない。
残るのは身体能力のやたらと高いだけの少女である。
銃火器以外にも反乱等の対策は色々されているらしいがそこまでは夕張は教えてくれなかった。
なんて知ってるのとは聞かない。怖いし。
簡単に言えば私達が人類を滅ぼしてやるーと意気込んでも守りに徹していれば勝手に息切れするのである。
弾丸がきれれば砲塔は飾りだし燃料がきれれば艤装は動かない。
残るのは身体能力のやたらと高いだけの少女である。
銃火器以外にも反乱等の対策は色々されているらしいがそこまでは夕張は教えてくれなかった。
なんて知ってるのとは聞かない。怖いし。
595: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:41:10.56 ID:fUizg0w/0
夕張「それじゃ今度はこいつね」
北上「うわごっつ。何それ」
夕張「名付けて、バレットY35!」
Yは夕張のYかな。35はなんの数字だろう。
北上「私の身長とあんま変わんないし…」
夕張「スナイパーだしね~対物だしね~」
北上「もどきならそこは私用にコンパクトにしてもいいじゃん」
夕張「そこにロマンはない」キリッ
北上「アッハイ」
銃を手に持つ。重い長いデカい。
こんな所までHELLSINGリスペクトしなくていい。
まあ実際は艤装の方が対化物用であり、こんなものは今の時代無用の長物なのだが。
北上「うわごっつ。何それ」
夕張「名付けて、バレットY35!」
Yは夕張のYかな。35はなんの数字だろう。
北上「私の身長とあんま変わんないし…」
夕張「スナイパーだしね~対物だしね~」
北上「もどきならそこは私用にコンパクトにしてもいいじゃん」
夕張「そこにロマンはない」キリッ
北上「アッハイ」
銃を手に持つ。重い長いデカい。
こんな所までHELLSINGリスペクトしなくていい。
まあ実際は艤装の方が対化物用であり、こんなものは今の時代無用の長物なのだが。
596: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/05(木) 02:41:46.06 ID:fUizg0w/0
北上「撃っていい?」
夕張「ちゃーんと海の方に的を浮かべといたから。音は作業音って言っときゃ大丈夫大丈夫」
北上「ならいいけど」
いいのかな。フラグにも聞こえるが。
艤装と銃をリンクさせ弾薬を装填する。
これがもどきの理由。
艦娘専用の銃。
作者、明張コンビ。
弾も艤装からなので深海棲艦にも効く、と言うと偉大な発明のようだがだったら戦艦が砲撃した方が手っ取り早いのでやはり趣味の範囲。
ちなみに先に述べたようにれっきとした銃なのでバレたら、どうなるのかね。
夕張「一応踏ん張っといてね。一般の女子中学生が撃ったら肩イくから」
北上「そこは流石に艦娘だし」
何せ普段は軍艦の砲撃を体で受け止めているのだから。
夕張「ちゃーんと海の方に的を浮かべといたから。音は作業音って言っときゃ大丈夫大丈夫」
北上「ならいいけど」
いいのかな。フラグにも聞こえるが。
艤装と銃をリンクさせ弾薬を装填する。
これがもどきの理由。
艦娘専用の銃。
作者、明張コンビ。
弾も艤装からなので深海棲艦にも効く、と言うと偉大な発明のようだがだったら戦艦が砲撃した方が手っ取り早いのでやはり趣味の範囲。
ちなみに先に述べたようにれっきとした銃なのでバレたら、どうなるのかね。
夕張「一応踏ん張っといてね。一般の女子中学生が撃ったら肩イくから」
北上「そこは流石に艦娘だし」
何せ普段は軍艦の砲撃を体で受け止めているのだから。
600: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:26:47.85 ID:SYfXOo7I0
以上が工房で消えるネジと資源の理由である。
無駄遣いどころの騒ぎじゃない。
元々は夕張と明石でコソコソやってらしい。
私が夕張に借りた本に影響され銃に興味を持ったのを切っ掛けに色々とはっちゃけだした。
そこへいくともしバレた時私も責任がなくはないのだが。
止めた方がいいかな。
とかなんとか考えながら自室へ戻る途中、提督に出くわした。
提督「おーいたいた。探したぜ」
北上「んー?どったの提督」
提督「いや、そのな。工房の、というか夕張と明石の話でな」
北上「うんうん」
あれ、何か嫌な流れが。
提督「ここ最近資材の減りが妙に増えてんだよ。お前アイツらと仲いいだろ?なんか知らないか」
OH…
無駄遣いどころの騒ぎじゃない。
元々は夕張と明石でコソコソやってらしい。
私が夕張に借りた本に影響され銃に興味を持ったのを切っ掛けに色々とはっちゃけだした。
そこへいくともしバレた時私も責任がなくはないのだが。
止めた方がいいかな。
とかなんとか考えながら自室へ戻る途中、提督に出くわした。
提督「おーいたいた。探したぜ」
北上「んー?どったの提督」
提督「いや、そのな。工房の、というか夕張と明石の話でな」
北上「うんうん」
あれ、何か嫌な流れが。
提督「ここ最近資材の減りが妙に増えてんだよ。お前アイツらと仲いいだろ?なんか知らないか」
OH…
601: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:27:30.26 ID:SYfXOo7I0
夕張「燃やそうか」
明石「事故装って爆破しよう」
北上「落ち着いて落ち着いて」
提督からの頼みをとりあえずは引き受け工房へとんぼ返りしてきた。
私にも責任の一端はあるからと対策を一緒に練ろうと思っていたのだが、二人がまず出したのは後処理だった。
北上「きっぱり切り捨てるんだねそこは」
明石「そりゃあ、まあねえ」
夕張「内容が内容だし」
自覚があるからなおタチが悪い。
明石「これが未来ガジェットとかなら誤魔化すとこなんだけどねぇ」
夕張「流石にこれはバレたら死ぬ」
北上「今更でしょそれは…」
明石「事故装って爆破しよう」
北上「落ち着いて落ち着いて」
提督からの頼みをとりあえずは引き受け工房へとんぼ返りしてきた。
私にも責任の一端はあるからと対策を一緒に練ろうと思っていたのだが、二人がまず出したのは後処理だった。
北上「きっぱり切り捨てるんだねそこは」
明石「そりゃあ、まあねえ」
夕張「内容が内容だし」
自覚があるからなおタチが悪い。
明石「これが未来ガジェットとかなら誤魔化すとこなんだけどねぇ」
夕張「流石にこれはバレたら死ぬ」
北上「今更でしょそれは…」
602: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:27:57.63 ID:SYfXOo7I0
とは言え冷静な判断ではある。爆破焼却はともかく無かった事にはすべきだろう、とりあえずは。
明石「いやでも拳銃とかなら隠せるか」
夕張「あズルい!私だって1丁くらいなら」
北上「はいはいストーップ」
まあそうなるな。
ちなみに明石はリボルバー拳銃大好きっ子。
ファニングショットも出来る。
手先器用だからとの事。いやそういう話じゃないでしょ。
明石「いやでも拳銃とかなら隠せるか」
夕張「あズルい!私だって1丁くらいなら」
北上「はいはいストーップ」
まあそうなるな。
ちなみに明石はリボルバー拳銃大好きっ子。
ファニングショットも出来る。
手先器用だからとの事。いやそういう話じゃないでしょ。
603: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:28:23.50 ID:SYfXOo7I0
北上「とにかく、早いとこ決めないとホントにバレるよこれ」
夕張「と言っても、ねえ」
明石「感情を殺したとしても後処理、フェイクの理由、色々と用意しなきゃだし…」
吹雪「あまり時間はないですよね~」
んーと黙り込む4人。
4人?
北上「吹雪?」
夕張「アイエエエ!」
明石「ブッキー!?ブッキーナンデ!?」
吹雪「その呼び方やめて下さい…」
夕張「と言っても、ねえ」
明石「感情を殺したとしても後処理、フェイクの理由、色々と用意しなきゃだし…」
吹雪「あまり時間はないですよね~」
んーと黙り込む4人。
4人?
北上「吹雪?」
夕張「アイエエエ!」
明石「ブッキー!?ブッキーナンデ!?」
吹雪「その呼び方やめて下さい…」
604: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:29:11.16 ID:SYfXOo7I0
吹雪「皆でしかめっ面して、もしかしてチャカの事バレました?」
北上「チャカって…」
夕張「まあそんな感じかなあ…相変わらず鋭いね」
吹雪「司令官が資料と睨めっこしてましたから。内容から予想しただけです」
明石「さすふぶ」
吹雪「なんですかそれ」
北上「アレ、ブッキーってこの事知ってたの?」
吹雪「その呼び方やめて下さい」
夕張「ブッキーにバレると怖いので早めに打ち明けて交渉しました」
明石「やり過ぎない限りは不干渉という事に」
吹雪「…まあそんなところです」
北上「ほう」
これはやり過ぎに入らないというのか。
北上「チャカって…」
夕張「まあそんな感じかなあ…相変わらず鋭いね」
吹雪「司令官が資料と睨めっこしてましたから。内容から予想しただけです」
明石「さすふぶ」
吹雪「なんですかそれ」
北上「アレ、ブッキーってこの事知ってたの?」
吹雪「その呼び方やめて下さい」
夕張「ブッキーにバレると怖いので早めに打ち明けて交渉しました」
明石「やり過ぎない限りは不干渉という事に」
吹雪「…まあそんなところです」
北上「ほう」
これはやり過ぎに入らないというのか。
605: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:29:51.85 ID:SYfXOo7I0
吹雪「私がしたいのはこの鎮守府の維持ですから。多少の無駄遣いや違法な武器製造に興味はありません。でも司令官の方は戦力の増強や施設の拡張など色々とやりたいらしくて。だからこそこの件も無視出来なくなったんでしょうね」
真面目な話をする時の彼女はおおよそその稚い容姿からはは想像もつかないような独特の雰囲気を発する。
駆逐艦といえど、何十年とここで秘書艦をやってきているのだ。年季が違う。
吹雪「とはいえこれがバレるのは私としても避けたいですね」
夕張「沈めよう」
明石「魚雷に詰めて深海に届けよう」
北上「堂々巡りだこれ」
真面目な話をする時の彼女はおおよそその稚い容姿からはは想像もつかないような独特の雰囲気を発する。
駆逐艦といえど、何十年とここで秘書艦をやってきているのだ。年季が違う。
吹雪「とはいえこれがバレるのは私としても避けたいですね」
夕張「沈めよう」
明石「魚雷に詰めて深海に届けよう」
北上「堂々巡りだこれ」
606: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:30:18.83 ID:SYfXOo7I0
夕張「えー秘書艦さまなんとかしてよ~得意の書類偽装とかなんとかでさ~」
吹雪「そんな特技ないですよやった事も無いですよ。欲しいとは思いますけど」
明石「提督が北上に頼んだ以上あまり時間もないのよねぇ」
夕張「もうだめぽ」
吹雪「仕方ないですね。ここは助っ人を呼びましょう」
夕張「助っ人?」
明石「ダンス?」
北上「あ」
察しがついた。
吹雪「そんな特技ないですよやった事も無いですよ。欲しいとは思いますけど」
明石「提督が北上に頼んだ以上あまり時間もないのよねぇ」
夕張「もうだめぽ」
吹雪「仕方ないですね。ここは助っ人を呼びましょう」
夕張「助っ人?」
明石「ダンス?」
北上「あ」
察しがついた。
607: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:31:01.86 ID:SYfXOo7I0
吹雪「……あ、むらむら、くもくも? うわっ!」
もしもし感覚で妙な事を言ったかと思うとさっと携帯を耳から遠ざける。
電話の相手、なんて言うまでもなく叢雲なんだろうけど、彼女が大声で何を言ったのかは想像に難くない。
吹雪「ゴメンゴメンそんなにムラム、イライラしないでよっ」
言い終わると同時に今度は予め携帯を離しておく。
なんで息をするように妹を煽るのだろうか…
吹雪「いやいやちょっと真面目な話でね。そう!さっすが分かってるじゃん。うんお願い。工房のとこ。うん、うん。じゃね」
携帯を切る。
吹雪「オッケー」b
夕張「ナイスゥ」b
明石「おk」b
誰かいたわって上げて…
もしもし感覚で妙な事を言ったかと思うとさっと携帯を耳から遠ざける。
電話の相手、なんて言うまでもなく叢雲なんだろうけど、彼女が大声で何を言ったのかは想像に難くない。
吹雪「ゴメンゴメンそんなにムラム、イライラしないでよっ」
言い終わると同時に今度は予め携帯を離しておく。
なんで息をするように妹を煽るのだろうか…
吹雪「いやいやちょっと真面目な話でね。そう!さっすが分かってるじゃん。うんお願い。工房のとこ。うん、うん。じゃね」
携帯を切る。
吹雪「オッケー」b
夕張「ナイスゥ」b
明石「おk」b
誰かいたわって上げて…
608: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:31:53.15 ID:SYfXOo7I0
叢雲「で、私に頼ってきたわけ?」
夕張「このと~り」
明石「何卒何卒」
ジャパニーズ土下座。この2人に物作り以外のプライドはない。
吹雪「やっぱこの手の事は叢雲が1番頼りになるから。貸一つって事で、ね?」
叢雲「はぁ…まあいいわ。やったげる」
不承不承、という感じを醸し出しているが口元が僅かに緩んでいる事を誤魔化しきれていない。
あー吹雪が凄く、こう、生暖かい目というか、可愛いなコイツみたいな目で見てる。もう少し普通に可愛がって上げればいいのに。
叢雲「それで、その「趣味で作ったオモチャ」は隠し通せる前提でいいのよね」
夕張「イェスマム!」
明石「ノープロブレム!」
嫌味な言い方をするあたりこの件に賛成はしていないようだ。
夕張「このと~り」
明石「何卒何卒」
ジャパニーズ土下座。この2人に物作り以外のプライドはない。
吹雪「やっぱこの手の事は叢雲が1番頼りになるから。貸一つって事で、ね?」
叢雲「はぁ…まあいいわ。やったげる」
不承不承、という感じを醸し出しているが口元が僅かに緩んでいる事を誤魔化しきれていない。
あー吹雪が凄く、こう、生暖かい目というか、可愛いなコイツみたいな目で見てる。もう少し普通に可愛がって上げればいいのに。
叢雲「それで、その「趣味で作ったオモチャ」は隠し通せる前提でいいのよね」
夕張「イェスマム!」
明石「ノープロブレム!」
嫌味な言い方をするあたりこの件に賛成はしていないようだ。
609: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:32:38.94 ID:SYfXOo7I0
叢雲「となると必要なのはカバーストーリーね。「 無 駄 遣 い 」が増えたのはいつから?」
夕張「に、2ヶ月ほど前ですサー!」
明石「北上が来た辺りですサー!」
サー、は男性に対するものである。と言う場面ではないか。
叢雲「二ヶ月前ねぇ。えっと…」
スマホを弄り始める。カレンダーとか予定表などを参照しているのだろう。
叢雲「あっ」
夕張「い」
明石「う」
吹雪「え」
叢雲「お゛!」ダンッ
夕明吹「」ビクッ
怒りのこもった足で工房の床を踏み鳴らす。
北上「ビビるならやらなきゃいいのに…」
夕張「に、2ヶ月ほど前ですサー!」
明石「北上が来た辺りですサー!」
サー、は男性に対するものである。と言う場面ではないか。
叢雲「二ヶ月前ねぇ。えっと…」
スマホを弄り始める。カレンダーとか予定表などを参照しているのだろう。
叢雲「あっ」
夕張「い」
明石「う」
吹雪「え」
叢雲「お゛!」ダンッ
夕明吹「」ビクッ
怒りのこもった足で工房の床を踏み鳴らす。
北上「ビビるならやらなきゃいいのに…」
610: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/10(火) 17:33:11.08 ID:SYfXOo7I0
吹雪「何か思いついた?」
叢雲「これよこれ、これでいいじゃない」
夕張「これって?」
明石「端末何も写ってないけど」
叢雲「中身もそうだけれど、これ自体よ」
吹雪「あーなるほど」
夕張「ワケワカメ」
明石「二ヶ月前?スマホ…?」
叢雲「だからー
叢雲「これよこれ、これでいいじゃない」
夕張「これって?」
明石「端末何も写ってないけど」
叢雲「中身もそうだけれど、これ自体よ」
吹雪「あーなるほど」
夕張「ワケワカメ」
明石「二ヶ月前?スマホ…?」
叢雲「だからー
612: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/13(金) 02:17:59.65 ID:5HydsKiY0
提督「端末の開発に?」
北上「うん。図書室のもそうらしいんだけど、勝手に色々と開発してたんだって」
提督室で作業中だった提督に今回の件の報告(偽)をする。
提督「でも資源はともかくネジは使うか?」
北上「いくらあの二人でも携帯は専門外でしょ?分からないところはネジと妖精パワーで無理やり作ってたんだって」
提督「妖精さんも共犯か…まったく、科学の結晶かと思ってたのにオカルトが混じってたとは」
やれやれとスマホを眺める提督。大丈夫、ちゃんと化学の力100%だから。
北上「本の貸出のアプリとかも前から作ってたらしくてさ。私が図書室欲しいって言ってたのに聞いてたみたい」
提督「それでここ最近消費が増えたのか」
北上「その通り」
ではない。こうして嘘を並べるのは2度目だけど、上官に対してそれってどうよ。
北上「うん。図書室のもそうらしいんだけど、勝手に色々と開発してたんだって」
提督室で作業中だった提督に今回の件の報告(偽)をする。
提督「でも資源はともかくネジは使うか?」
北上「いくらあの二人でも携帯は専門外でしょ?分からないところはネジと妖精パワーで無理やり作ってたんだって」
提督「妖精さんも共犯か…まったく、科学の結晶かと思ってたのにオカルトが混じってたとは」
やれやれとスマホを眺める提督。大丈夫、ちゃんと化学の力100%だから。
北上「本の貸出のアプリとかも前から作ってたらしくてさ。私が図書室欲しいって言ってたのに聞いてたみたい」
提督「それでここ最近消費が増えたのか」
北上「その通り」
ではない。こうして嘘を並べるのは2度目だけど、上官に対してそれってどうよ。
613: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/13(金) 02:18:36.15 ID:5HydsKiY0
北上「今回の事話したら暫くは自重するってさ」
これは本当。
提督「暫くかよおい。まあいいかぁ、結果役に立ってるんだし」
北上「あははーソダネー」
提督「何はともあれこれでようやく計画通りに進める」
北上「何か目標とかあるの?」
提督「そりゃあるさ。その為にやってんだから」
北上「何目指してんのさ」
提督「内緒だ」
北上「ちぇー」
これは本当。
提督「暫くかよおい。まあいいかぁ、結果役に立ってるんだし」
北上「あははーソダネー」
提督「何はともあれこれでようやく計画通りに進める」
北上「何か目標とかあるの?」
提督「そりゃあるさ。その為にやってんだから」
北上「何目指してんのさ」
提督「内緒だ」
北上「ちぇー」
614: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/13(金) 02:19:08.51 ID:5HydsKiY0
ふと机の上の書類を見る。
北上「ん?これが無駄遣いってやつ?」
提督「そ。大した量じゃないんだけどな。うちはまだまだ小さいから貴重なんだよ」
北上「へー」
おかしい。こんなに少ないわけがない。どういう事だ?
北上「それじゃ、北上撤退しま~す」
提督「おう、ありがとな」
藪蛇な気がしたので無視して部屋を出る。
夕張に聞いてみようかな一応。
吹雪「その様子だとバッチリ見たみたいですね」
北上「うおっ、びっくりさせないでよ…」
吹雪「北上さん、取引です。夕張さんや明石さんと同じく」
北上「え」
同じく?
吹雪「他言無用、ですよ」
北上「…イエスサー」
北上「ん?これが無駄遣いってやつ?」
提督「そ。大した量じゃないんだけどな。うちはまだまだ小さいから貴重なんだよ」
北上「へー」
おかしい。こんなに少ないわけがない。どういう事だ?
北上「それじゃ、北上撤退しま~す」
提督「おう、ありがとな」
藪蛇な気がしたので無視して部屋を出る。
夕張に聞いてみようかな一応。
吹雪「その様子だとバッチリ見たみたいですね」
北上「うおっ、びっくりさせないでよ…」
吹雪「北上さん、取引です。夕張さんや明石さんと同じく」
北上「え」
同じく?
吹雪「他言無用、ですよ」
北上「…イエスサー」
615: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/13(金) 02:20:00.23 ID:5HydsKiY0
吹雪「鎮守府にある資材。それは司令官も把握してます。なのに計算が合わない。司令官の知らない所から消費されている。さてどうしてか」
北上「…」
10あるものから2使われた。と思ってたら実際は4だった。なのに残りの8という計算は合ってる。2はどこから来たのか。
いやそもそも10はどこから来ているのか。
北上「抜いたな…」
つまり任務の報酬から、という事か。
10ではなく12あったのだ。
吹雪「ええ、提督に届く前に」
北上「書類の偽装はやったことないんじゃなかったの」
吹雪「得意じゃないだけです」
いけしゃあしゃあと。たいした秘書艦だこりゃ。
北上「…」
10あるものから2使われた。と思ってたら実際は4だった。なのに残りの8という計算は合ってる。2はどこから来たのか。
いやそもそも10はどこから来ているのか。
北上「抜いたな…」
つまり任務の報酬から、という事か。
10ではなく12あったのだ。
吹雪「ええ、提督に届く前に」
北上「書類の偽装はやったことないんじゃなかったの」
吹雪「得意じゃないだけです」
いけしゃあしゃあと。たいした秘書艦だこりゃ。
616: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/13(金) 02:20:39.20 ID:5HydsKiY0
北上「そこまで夕張達に協力するのはなんでさ」
吹雪「協力はついでです。私の目的は取ったものの活用ではなく取ることで提督に届かなくさせる事」
北上「…」
吹雪「…」
野生の勘、と言うやつかもしれない。
北上「他言無用ね」
吹雪「はい」
私は引いた。
吹雪「協力はついでです。私の目的は取ったものの活用ではなく取ることで提督に届かなくさせる事」
北上「…」
吹雪「…」
野生の勘、と言うやつかもしれない。
北上「他言無用ね」
吹雪「はい」
私は引いた。
617: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/13(金) 02:21:06.38 ID:5HydsKiY0
現状が維持できれば鎮守府の拡大は不要。
そう言っていたが実際は
現状を維持するには鎮守府の拡大の阻止が必要、という事らしい。
一体吹雪と提督はどんな関係なのか。
鬼嫁?どっちかというと怖い小姑みたいな。
前任者、提督の前の提督ってどんな人だったんだろう。
自分にはあまり関係のない話だが、段々と頭の中でその事が少しずつ、確実に忘れられなくなってきていた。
そう言っていたが実際は
現状を維持するには鎮守府の拡大の阻止が必要、という事らしい。
一体吹雪と提督はどんな関係なのか。
鬼嫁?どっちかというと怖い小姑みたいな。
前任者、提督の前の提督ってどんな人だったんだろう。
自分にはあまり関係のない話だが、段々と頭の中でその事が少しずつ、確実に忘れられなくなってきていた。
618: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/13(金) 02:21:41.82 ID:5HydsKiY0
北上「ん」
ポケットから○○○の振動が伝わってきた。
スマホを取り出すと夕張からのメッセージが表示されていた。
『パイルバンカーって、いいと思わない?』
北上「懲りてない…」
どころか味を占めてる。
やれやれ、流石にこれは一言言ってやらねばなるまい。
『ヒートパイル好き』
とりあえず返信。
さて工房へ向かおう
ポケットから○○○の振動が伝わってきた。
スマホを取り出すと夕張からのメッセージが表示されていた。
『パイルバンカーって、いいと思わない?』
北上「懲りてない…」
どころか味を占めてる。
やれやれ、流石にこれは一言言ってやらねばなるまい。
『ヒートパイル好き』
とりあえず返信。
さて工房へ向かおう
623: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:51:41.88 ID:AMpF4EnN0
39匹目:猫と提督
提督室というのは本来上司の、というか職場におけるトップの部屋という意味なのだが、
30いくつの人間と生きた年数や生まれた年を考えれば三桁すらいる艦娘、人と兵器、人と船に一般的な上下関係やらが当てはまるはずもなく、
だからこの扉も一応ノックしろというあってないようなルールのみが辛うじて残る程度の薄いものなのだ。
北上「おじゃましま~す」ガチャ
提督「お~う」
適当な挨拶に適当な返事。
こんなもんだし、そんなもん。
提督室というのは本来上司の、というか職場におけるトップの部屋という意味なのだが、
30いくつの人間と生きた年数や生まれた年を考えれば三桁すらいる艦娘、人と兵器、人と船に一般的な上下関係やらが当てはまるはずもなく、
だからこの扉も一応ノックしろというあってないようなルールのみが辛うじて残る程度の薄いものなのだ。
北上「おじゃましま~す」ガチャ
提督「お~う」
適当な挨拶に適当な返事。
こんなもんだし、そんなもん。
624: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:52:53.36 ID:AMpF4EnN0
北上「うわ、すごい書類」
提督「紙一枚分の情報を3枚分に増やすのが上の仕事なんだよ」
北上「それを紙半分にまとめるのが提督仕事ってわけか」
提督「そゆこと。あー座るならこっちのソファーにしとけ」
北上「ん?なんでよ」
提督「れでぃーがお茶をこぼした」
北上「あ~」
言われた通り机を挟んで反対側のソファーに移り仰向けに体を倒す。
おっと靴をソファーに付けないようにしなきゃ。
持ってきた本を開く。
ページと資料をめくる音だけが部屋を支配する。
提督「紙一枚分の情報を3枚分に増やすのが上の仕事なんだよ」
北上「それを紙半分にまとめるのが提督仕事ってわけか」
提督「そゆこと。あー座るならこっちのソファーにしとけ」
北上「ん?なんでよ」
提督「れでぃーがお茶をこぼした」
北上「あ~」
言われた通り机を挟んで反対側のソファーに移り仰向けに体を倒す。
おっと靴をソファーに付けないようにしなきゃ。
持ってきた本を開く。
ページと資料をめくる音だけが部屋を支配する。
625: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:53:31.70 ID:AMpF4EnN0
鎮守府はともかく人が多い。
そりゃ田舎のそれほど大きくもない建物に百人以上もの人間がいればそうなるわって話。
別に皆でわいわいやるのが嫌いなわけじゃないけどやはり一人になりたい時ってのがある。
そういう機会はあるにはあるけれど、出撃や遠征の関係で偶然訪れるものでなりたい時になれるわけじゃない。
だからこそ、そういう場所を探す必要がある。
そして見つけたのがここ。
図書室とは少し違う。
少し特別。
お昼ご飯の後、おやつの時間の前の提督室。
予定がある者は出撃し、そうでなければお昼寝など。
ティータイムや間宮に提督を誘う人達はまだこない。
この時間こそが、至福の時となるのだ。
そりゃ田舎のそれほど大きくもない建物に百人以上もの人間がいればそうなるわって話。
別に皆でわいわいやるのが嫌いなわけじゃないけどやはり一人になりたい時ってのがある。
そういう機会はあるにはあるけれど、出撃や遠征の関係で偶然訪れるものでなりたい時になれるわけじゃない。
だからこそ、そういう場所を探す必要がある。
そして見つけたのがここ。
図書室とは少し違う。
少し特別。
お昼ご飯の後、おやつの時間の前の提督室。
予定がある者は出撃し、そうでなければお昼寝など。
ティータイムや間宮に提督を誘う人達はまだこない。
この時間こそが、至福の時となるのだ。
626: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:54:04.55 ID:AMpF4EnN0
北上「ふう」
パタンと本を閉じる。
本というのは基本的に章などで区切られているのだが、私には章を読み終える毎に本を閉じそれまでの内容を頭で反復するという癖がある。
いつ何故ついた癖なのかサッパリだが、癖とはそういうものだろう。
提督「今日はなんの本だ?」
北上「えと、ふしぎの国のアリスって知ってる?」
提督「大体は。読んだことはないけどな」
北上「それを元にした殺人事件」
提督「えらく物騒だな。しかし元にしたってどういう事だ」
北上「アリスの夢ってやつだよ」
パタンと本を閉じる。
本というのは基本的に章などで区切られているのだが、私には章を読み終える毎に本を閉じそれまでの内容を頭で反復するという癖がある。
いつ何故ついた癖なのかサッパリだが、癖とはそういうものだろう。
提督「今日はなんの本だ?」
北上「えと、ふしぎの国のアリスって知ってる?」
提督「大体は。読んだことはないけどな」
北上「それを元にした殺人事件」
提督「えらく物騒だな。しかし元にしたってどういう事だ」
北上「アリスの夢ってやつだよ」
627: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:54:43.74 ID:AMpF4EnN0
提督「夢?」
提督が作業をやめて椅子に深々と座りリラックスモードに入る。
つまり休憩という事だ。
北上「まず主人公がね」
今しがた読みえた所までの粗筋を話す。
いつも通り。
提督は本が苦手というわけじゃ無いらしいけど、仕事人間なのか読む事はないらしい。
最初は単にどんな本を読んでるんだって質問だった。
そのうち内容や感想等を色々聞いてくるようになって、私の方も提督に分かりやすいように伝えたり感想をまとめるのが好きになっていた。
人に教えるにはその三倍理解してなくてはならない、という言葉があるけど、こうして人に話すことによって新たに気付く事や自分の思っていた事がハッキリしたりと思わぬ収穫もあった。
提督が作業をやめて椅子に深々と座りリラックスモードに入る。
つまり休憩という事だ。
北上「まず主人公がね」
今しがた読みえた所までの粗筋を話す。
いつも通り。
提督は本が苦手というわけじゃ無いらしいけど、仕事人間なのか読む事はないらしい。
最初は単にどんな本を読んでるんだって質問だった。
そのうち内容や感想等を色々聞いてくるようになって、私の方も提督に分かりやすいように伝えたり感想をまとめるのが好きになっていた。
人に教えるにはその三倍理解してなくてはならない、という言葉があるけど、こうして人に話すことによって新たに気付く事や自分の思っていた事がハッキリしたりと思わぬ収穫もあった。
628: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:55:23.37 ID:AMpF4EnN0
北上「この夢の中の会話が好きなんだ~。アリス風の独特の言い回し」
提督「独特っていうとアレか、和訳する際に出る違和感みたい話か?アリスって海外の作品だし」
北上「それもあるけど…相手に伝える事を前提にしてない会話っていうのかな~。そんな感じ」
提督「あとは読んでみろってか」
北上「そゆこと」
提督「そうだなあ、戦争終わったらのんびり田舎で読書三昧とかいいな」
北上「あ、それいいね~。ベランダとかにあの、なんだっけ、揺れる椅子」
提督「ロッキングチェア?」
北上「それそれ。あれに座って本読むとかよくない?」
提督「俺はあれだ、ハンモックとかやってみたいな」
提督「独特っていうとアレか、和訳する際に出る違和感みたい話か?アリスって海外の作品だし」
北上「それもあるけど…相手に伝える事を前提にしてない会話っていうのかな~。そんな感じ」
提督「あとは読んでみろってか」
北上「そゆこと」
提督「そうだなあ、戦争終わったらのんびり田舎で読書三昧とかいいな」
北上「あ、それいいね~。ベランダとかにあの、なんだっけ、揺れる椅子」
提督「ロッキングチェア?」
北上「それそれ。あれに座って本読むとかよくない?」
提督「俺はあれだ、ハンモックとかやってみたいな」
629: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:55:53.24 ID:AMpF4EnN0
北上「どっちも元は海外のだよね」
提督「畳にチェアは合わないし、ハンモックするような木もないからな」
北上「いいよね~。外国の本とか読んでるとさ、一度行ってみたいなっておもうんだ」
提督「ん?お前外国語読めんの?」
北上「え、あー、うん。英語なら」
しまった口が滑った。別に問題は無いのだけど。
提督「そうか、なんか意外だな」
北上「あはは、だよね~」
提督「畳にチェアは合わないし、ハンモックするような木もないからな」
北上「いいよね~。外国の本とか読んでるとさ、一度行ってみたいなっておもうんだ」
提督「ん?お前外国語読めんの?」
北上「え、あー、うん。英語なら」
しまった口が滑った。別に問題は無いのだけど。
提督「そうか、なんか意外だな」
北上「あはは、だよね~」
630: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:56:33.26 ID:AMpF4EnN0
とりあえず話題を変えなくては。
慌てて本を開きページをめくる。
北上「あ、これこれこれだよ」
提督「どれどれどれだよ」
北上「んしょっと」
ソファーから体を起こし提督の隣に移動する。
北上「おりゃ」
提督「おいおい、書類の上に本置くなよ」
北上「こいつのせいで机に張り付いてるんでしょ?なんなら北上様が焼き払ってあげようか」
提督「机傷つけたら弁償な」
北上「そーゆーとこ細かいよね~提督。モテないぞー」
提督「え、マジでか」
北上「マジマジ。彼女の体重が五キロくらい増えても気にしないくらいの器量がなきゃ」
提督「いや五キロはやべぇだろ」
北上「そうかな…?そうかも…」
慌てて本を開きページをめくる。
北上「あ、これこれこれだよ」
提督「どれどれどれだよ」
北上「んしょっと」
ソファーから体を起こし提督の隣に移動する。
北上「おりゃ」
提督「おいおい、書類の上に本置くなよ」
北上「こいつのせいで机に張り付いてるんでしょ?なんなら北上様が焼き払ってあげようか」
提督「机傷つけたら弁償な」
北上「そーゆーとこ細かいよね~提督。モテないぞー」
提督「え、マジでか」
北上「マジマジ。彼女の体重が五キロくらい増えても気にしないくらいの器量がなきゃ」
提督「いや五キロはやべぇだろ」
北上「そうかな…?そうかも…」
631: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:57:22.02 ID:AMpF4EnN0
北上「じゃなくてー、ここここ。ここ見て」
提督「どれだよ」
北上「ほらここの会話のところ」
少々強引なやり方だが提督を本に集中させる。
立っているのも疲れるので提督の座る椅子の肘掛に体を半分乗せる。
提督「あーうん。なんとなくさっき言ってた意味が分かった」
北上「読むの早っ」
提督「書類仕事で鍛えられたのさ」
北上「無駄なもん持ってるね~」
提督「うっせ。というかそこに座るなよ。狭いし壊れるかもわからん」
北上「大丈夫っしょ、この椅子デカいし」
提督「何一つ大丈夫な要素がないんだが」
提督「どれだよ」
北上「ほらここの会話のところ」
少々強引なやり方だが提督を本に集中させる。
立っているのも疲れるので提督の座る椅子の肘掛に体を半分乗せる。
提督「あーうん。なんとなくさっき言ってた意味が分かった」
北上「読むの早っ」
提督「書類仕事で鍛えられたのさ」
北上「無駄なもん持ってるね~」
提督「うっせ。というかそこに座るなよ。狭いし壊れるかもわからん」
北上「大丈夫っしょ、この椅子デカいし」
提督「何一つ大丈夫な要素がないんだが」
632: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:59:12.63 ID:AMpF4EnN0
北上「あっそうだ。提督速読できる?」
提督「資料ならできるし、本もできると思う」
北上「ねえやってやって。ここで見てるからさ」
提督「なんでそうなんだよ。見てどうする」
北上「えーどんな感じでページが進むか見てみたいの」
提督「速読っつっても早めに読めるってだけで、ページパラパラめくって内容把握するとかは無理だぞ」
北上「なんだぁつまんないの。北上さんはもう少し面白いオチを求めていたのですよ~」
提督「お前なぁ」
ガチャ
ガチャ?
提督「資料ならできるし、本もできると思う」
北上「ねえやってやって。ここで見てるからさ」
提督「なんでそうなんだよ。見てどうする」
北上「えーどんな感じでページが進むか見てみたいの」
提督「速読っつっても早めに読めるってだけで、ページパラパラめくって内容把握するとかは無理だぞ」
北上「なんだぁつまんないの。北上さんはもう少し面白いオチを求めていたのですよ~」
提督「お前なぁ」
ガチャ
ガチャ?
633: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/16(月) 02:59:47.12 ID:AMpF4EnN0
大井「失礼しまー……あ」
提督「げ」
北上「あ」
扉を開けて大井っちの目に飛び込んで来た光景。
同じ椅子に腰掛け(?)体を密着させて話している想い人と親友。
うーん修羅場。
提督「北上、ちょっと大井と話がある」
大井「北上さん、少し提督と話があります」
北上「アッハイ」
本をさっと回収し流れるように部屋を出る。
提督「げ」
北上「あ」
扉を開けて大井っちの目に飛び込んで来た光景。
同じ椅子に腰掛け(?)体を密着させて話している想い人と親友。
うーん修羅場。
提督「北上、ちょっと大井と話がある」
大井「北上さん、少し提督と話があります」
北上「アッハイ」
本をさっと回収し流れるように部屋を出る。
641: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/19(木) 03:02:29.18 ID:J3X0E7kt0
部屋を出てしばらくすると提督室から賑やかで騒がしい声が溢れてきた。
提督のところへ大井っちが来るのは少し久しぶりだったが相変わらずの仲なようで一安心だ。
前は私があそこで本読んでると遅かれ早かれ必ず来てたのに、最近はめっきりだった。
やっぱあれか、改造後の服装が原因か。
恥ずかしがることもなかろうに。
何はともあれ久々に2人でゆっくりしていただこう。
提督に釈明の余地があればいいけど。
提督のところへ大井っちが来るのは少し久しぶりだったが相変わらずの仲なようで一安心だ。
前は私があそこで本読んでると遅かれ早かれ必ず来てたのに、最近はめっきりだった。
やっぱあれか、改造後の服装が原因か。
恥ずかしがることもなかろうに。
何はともあれ久々に2人でゆっくりしていただこう。
提督に釈明の余地があればいいけど。
642: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/19(木) 03:03:08.82 ID:J3X0E7kt0
北上「ん」
右腕を触る。
提督と触れ合っていたせいか少し温い。
流石に馴れ馴れしくしすぎたかね私も。
どうにも球磨型内での距離感で接してしまいがちな所がある。
まあ悪い気はしないんだけど。
北上「ん?」
悪い気はしないってなんだ。
北上「~♪」
でも、いい気分だ。
右腕を触る。
提督と触れ合っていたせいか少し温い。
流石に馴れ馴れしくしすぎたかね私も。
どうにも球磨型内での距離感で接してしまいがちな所がある。
まあ悪い気はしないんだけど。
北上「ん?」
悪い気はしないってなんだ。
北上「~♪」
でも、いい気分だ。
643: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/19(木) 03:03:40.02 ID:J3X0E7kt0
41匹目:猫と多摩
北上「よし」
深夜。
消灯時間をすぎ皆が寝静まった頃。
私は部屋で、バケツを抱えていた。
北上「よし」
深夜。
消灯時間をすぎ皆が寝静まった頃。
私は部屋で、バケツを抱えていた。
644: ◆rbbm4ODkU. 2017/10/19(木) 03:05:57.41 ID:J3X0E7kt0
今日の皆の寝る位置。いや、多摩姉の寝る位置は丁度本棚のすぐ近くに頭がくる所だ。
棚の空いてる位置にバケツをセットする。
うん、これで落ちたら多摩姉の頭にクリーンヒットするはずだ。
仕掛けは目覚ましと連動してバケツが落ちるだけのシンプルなもの。
さあ目覚めるのだ。
内に秘めた猫の記憶よ!
棚の空いてる位置にバケツをセットする。
うん、これで落ちたら多摩姉の頭にクリーンヒットするはずだ。
仕掛けは目覚ましと連動してバケツが落ちるだけのシンプルなもの。
さあ目覚めるのだ。
内に秘めた猫の記憶よ!
648: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:50:52.26 ID:8TRS/tjI0
木曾「いってぇ…」
多摩「そんなに痛むにゃ?」
木曾「いや痛さとしては全然気にならないレベルなんだけどさ。地味ーにジワジワくる感じが凄くイラッとくる」
球磨「鼻真っ赤クマ」
大井「北上さん、納豆いります?」
北上「あ、貰う貰う~」
朝食は納豆派である。
多摩「そんなに痛むにゃ?」
木曾「いや痛さとしては全然気にならないレベルなんだけどさ。地味ーにジワジワくる感じが凄くイラッとくる」
球磨「鼻真っ赤クマ」
大井「北上さん、納豆いります?」
北上「あ、貰う貰う~」
朝食は納豆派である。
649: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:51:31.51 ID:8TRS/tjI0
さて作戦はどうなったかというと、語るに落ちると言った感じで。
明け方トイレに起きた木曾が寝ぼけ眼でバケツに顔面から直撃したという運びだ。
上手くいかないもんだね~。
北上「ゴメンね、変なとこに置いちゃって」
木曾「いやいいよ。こっちも寝ぼけてたしな」
球磨「せいっ!」グシャ
多摩「…なんで卵が出るたびに片手で割ろうとするにゃ」
球磨「で、できたらカッコイイと思ったクマ」
大井「拭くものもらってきますね」
球磨「スマンクマ…」
明け方トイレに起きた木曾が寝ぼけ眼でバケツに顔面から直撃したという運びだ。
上手くいかないもんだね~。
北上「ゴメンね、変なとこに置いちゃって」
木曾「いやいいよ。こっちも寝ぼけてたしな」
球磨「せいっ!」グシャ
多摩「…なんで卵が出るたびに片手で割ろうとするにゃ」
球磨「で、できたらカッコイイと思ったクマ」
大井「拭くものもらってきますね」
球磨「スマンクマ…」
650: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:52:15.70 ID:8TRS/tjI0
北上「球磨姉球磨姉」
球磨「クマ?」
北上「ほっ」タマゴカパッ
球磨「なぁっ!?」
多摩「北上煽るんじゃないにゃ」
球磨「木曾!それ寄越すクマ!」
木曾「やだよ!絶対失敗するだろ!」
球磨「貰いぃ!」
木曾「あぁ!」
球磨「てやぁ!」ゴシャ
木曾「あぁ…」
北上「うわぁ…」
多摩「にゃぁ…」
大井「球磨姉さん…?」スッ
球磨「ヒッ」
球磨「クマ?」
北上「ほっ」タマゴカパッ
球磨「なぁっ!?」
多摩「北上煽るんじゃないにゃ」
球磨「木曾!それ寄越すクマ!」
木曾「やだよ!絶対失敗するだろ!」
球磨「貰いぃ!」
木曾「あぁ!」
球磨「てやぁ!」ゴシャ
木曾「あぁ…」
北上「うわぁ…」
多摩「にゃぁ…」
大井「球磨姉さん…?」スッ
球磨「ヒッ」
651: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:52:53.01 ID:8TRS/tjI0
北上「よいしょっと」
昼前。
自慢の魚雷を担いで出撃の準備をする。
と、勿論担ぐ必要はないのだが。
今度はこれで、
昼前。
自慢の魚雷を担いで出撃の準備をする。
と、勿論担ぐ必要はないのだが。
今度はこれで、
652: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:53:45.02 ID:8TRS/tjI0
北上「出撃めんどくさいな~」
多摩「それを言ったら終わりにゃ」
北上「ただのパトロールじゃん?いらないじゃん?」
谷風「こういった所を怠らない事が大切なのさ。提督はそこんとこよぉ~く分かってるからねえ」
伊勢「ほらほら、みんな準備して~」
北上「魚雷重いなぁ…軽巡の頃は軽くてよかったよ」
多摩「まあ確かに量は増えたにゃ」
谷風「かぁーなっさけない。それでも軍艦かい?」
北上「ちぇー、皮かぶっちゃって」
谷風「そっちは猫被りだろ?お、リベが来たね」
多摩「北上お昼はどうするにゃ?」
北上「ん~そだねー。うどんとか?」
多摩「それを言ったら終わりにゃ」
北上「ただのパトロールじゃん?いらないじゃん?」
谷風「こういった所を怠らない事が大切なのさ。提督はそこんとこよぉ~く分かってるからねえ」
伊勢「ほらほら、みんな準備して~」
北上「魚雷重いなぁ…軽巡の頃は軽くてよかったよ」
多摩「まあ確かに量は増えたにゃ」
谷風「かぁーなっさけない。それでも軍艦かい?」
北上「ちぇー、皮かぶっちゃって」
谷風「そっちは猫被りだろ?お、リベが来たね」
多摩「北上お昼はどうするにゃ?」
北上「ん~そだねー。うどんとか?」
653: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:54:20.17 ID:8TRS/tjI0
取り留めのない会話をしつつ多摩姉に近づく。
よし、ここなら当たるはず。
多摩「うどんはやっぱりオクラだと思うんだにゃ」
北上「私はとろろかな~。あっ、蝶々だー」ブン
上半身を右に思い切り振る。
担いだ魚雷が勢いよく、多摩姉の後頭部めがけて振られる。
唸れ!黄金の魚雷!
リベッチオ「ヘブンッ!!」ゴチン
北上「えっ」
多摩「にゃ!?」
谷風「うわー…」
よし、ここなら当たるはず。
多摩「うどんはやっぱりオクラだと思うんだにゃ」
北上「私はとろろかな~。あっ、蝶々だー」ブン
上半身を右に思い切り振る。
担いだ魚雷が勢いよく、多摩姉の後頭部めがけて振られる。
唸れ!黄金の魚雷!
リベッチオ「ヘブンッ!!」ゴチン
北上「えっ」
多摩「にゃ!?」
谷風「うわー…」
654: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:54:52.87 ID:8TRS/tjI0
どうなったかといえば、
何を思ったか思いっきり助走を付けて多摩姉に飛びついていったリベの顔面に魚雷が思いっきり当たった次第である。
飛びつかれる側の負担を一切考慮しない飛びつきと遠心力を加えた魚雷のスイングが見事にジャストミートした結果、場外ホームランが生まれたのだった。
飛んでったのはボールではなく意識なのだけど。
幸いにも出撃前の艤装装備時のことなので鼻血すら出ず、まるでギャグ漫画の如く仰向けで倒れるだけですんではいるが。
伊勢「え、何今の音?」
リベ「」チーン
北上「あはは…いやちょっとね」
多摩「ふ、不幸な事後がにゃ…」
谷風「おぉー白だねえ」ピラッ
多摩「こらっ」ペシッ
谷風「あいたっ」
何を思ったか思いっきり助走を付けて多摩姉に飛びついていったリベの顔面に魚雷が思いっきり当たった次第である。
飛びつかれる側の負担を一切考慮しない飛びつきと遠心力を加えた魚雷のスイングが見事にジャストミートした結果、場外ホームランが生まれたのだった。
飛んでったのはボールではなく意識なのだけど。
幸いにも出撃前の艤装装備時のことなので鼻血すら出ず、まるでギャグ漫画の如く仰向けで倒れるだけですんではいるが。
伊勢「え、何今の音?」
リベ「」チーン
北上「あはは…いやちょっとね」
多摩「ふ、不幸な事後がにゃ…」
谷風「おぉー白だねえ」ピラッ
多摩「こらっ」ペシッ
谷風「あいたっ」
655: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:55:29.30 ID:8TRS/tjI0
多摩「リベちゃんの部屋ってどこだったかにゃ」
北上「海外組だし4階だよ」
お昼の後。
私達は階段登っていた。
最早手段を選ぶ余裕はない。今までも大概だったけど。
やるしかない。
北上「海外組だし4階だよ」
お昼の後。
私達は階段登っていた。
最早手段を選ぶ余裕はない。今までも大概だったけど。
やるしかない。
656: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:56:06.57 ID:8TRS/tjI0
3階と4階の間。
周りに人気はない。
私が前、後ろに多摩姉。
ええいままよ!
北上「うわっ」ズリッ
多摩「にゃ!?」
足を滑らしたていで多摩姉の体に体当りする。
転げ落ちるというより踊り場にすっ飛ぶ形になるはずだ。
大丈夫!艦娘だし!大丈夫、大丈夫?
飛んだ反動をそのまま回転に利用し、にゃんぱらりんと着地する。
北上「ほっ」スタッ
多摩「にゃ」スタッ
あれ?
周りに人気はない。
私が前、後ろに多摩姉。
ええいままよ!
北上「うわっ」ズリッ
多摩「にゃ!?」
足を滑らしたていで多摩姉の体に体当りする。
転げ落ちるというより踊り場にすっ飛ぶ形になるはずだ。
大丈夫!艦娘だし!大丈夫、大丈夫?
飛んだ反動をそのまま回転に利用し、にゃんぱらりんと着地する。
北上「ほっ」スタッ
多摩「にゃ」スタッ
あれ?
657: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:56:38.33 ID:8TRS/tjI0
多摩「大丈夫かにゃ?」
北上「う、うん。多摩姉こそ、大丈夫、みたいだね」
多摩「気をつけるにゃ。艦娘とはいえ何があるかわからんにゃ」
北上「ごめんごめん。怪我人のお見舞いに行くのに怪我してちゃ世話ないよねー」
多摩「まったくにゃ。まあ周りに誰もいなくてよかったにゃ」
北上「だねー」
忘れてた。
いや忘れてるのは多摩姉で今まさに思い出させようとしているのだけれど、
私達は猫だったのだ。
この程度で怪我をするドンくささは持ち合わせていない。
北上「う、うん。多摩姉こそ、大丈夫、みたいだね」
多摩「気をつけるにゃ。艦娘とはいえ何があるかわからんにゃ」
北上「ごめんごめん。怪我人のお見舞いに行くのに怪我してちゃ世話ないよねー」
多摩「まったくにゃ。まあ周りに誰もいなくてよかったにゃ」
北上「だねー」
忘れてた。
いや忘れてるのは多摩姉で今まさに思い出させようとしているのだけれど、
私達は猫だったのだ。
この程度で怪我をするドンくささは持ち合わせていない。
658: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/03(金) 02:57:04.78 ID:8TRS/tjI0
北上「もうだめぽ」
神風「何かよっぽどの事とお察ししますがだからと言って私の袴に顔を突っ込まないでください」
北上「え~」
黙々と、淡々と言われた。
神風「話しなら聞きますから後数ページ待っててください」
北上「うい」
助けを求めに図書室に来ると神風が本棚に背を預ける形で座り本を読んでいた。
ので袴に芋虫の要領で顔を突っ込んでみた。
ところで猫は狭いところが落ち着くものだが私はそうでもない。
それでも袴の中はなんというか心地よかった。
神風「何かよっぽどの事とお察ししますがだからと言って私の袴に顔を突っ込まないでください」
北上「え~」
黙々と、淡々と言われた。
神風「話しなら聞きますから後数ページ待っててください」
北上「うい」
助けを求めに図書室に来ると神風が本棚に背を預ける形で座り本を読んでいた。
ので袴に芋虫の要領で顔を突っ込んでみた。
ところで猫は狭いところが落ち着くものだが私はそうでもない。
それでも袴の中はなんというか心地よかった。
665: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/13(月) 02:44:34.14 ID:ZyLHAVHx0
北上「寝そう」
神風「って何してるんですか!?」ゲシッ
北上「ぐぇ」
文字の世界から現実に戻った神風がようやく現状を理解したらしく容赦のない蹴りをかましてきた。
北上「ぐおー…なんの本読んでたの~」
神風「もりのくまさん。処刑人の方の」
北上「あーあれね」
羞恥心からか若干涙ぐむその幼い容姿からは想像もつかないくらいエグいもの読んでやがる。
神風「って何してるんですか!?」ゲシッ
北上「ぐぇ」
文字の世界から現実に戻った神風がようやく現状を理解したらしく容赦のない蹴りをかましてきた。
北上「ぐおー…なんの本読んでたの~」
神風「もりのくまさん。処刑人の方の」
北上「あーあれね」
羞恥心からか若干涙ぐむその幼い容姿からは想像もつかないくらいエグいもの読んでやがる。
666: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/13(月) 02:45:15.70 ID:ZyLHAVHx0
神風「記憶を戻す方法?」
北上「はい」
現在の姿勢。正座。
神風「北上さん記憶喪失なんですか!?」
北上「あーいや、私じゃなくて。でも同じようなものなのかな~」
神風「んー、イマイチ要領を得ませんね」
北上「まああんまり深く考えずにさ、物語上でよくある記憶喪失って感じに考えて」
神風「方法ねぇ。定番なのは頭に衝撃を与えるやつですよね」
北上「だよね~」
もうやり尽くした、とは言えないな。
北上「はい」
現在の姿勢。正座。
神風「北上さん記憶喪失なんですか!?」
北上「あーいや、私じゃなくて。でも同じようなものなのかな~」
神風「んー、イマイチ要領を得ませんね」
北上「まああんまり深く考えずにさ、物語上でよくある記憶喪失って感じに考えて」
神風「方法ねぇ。定番なのは頭に衝撃を与えるやつですよね」
北上「だよね~」
もうやり尽くした、とは言えないな。
667: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/13(月) 02:46:19.03 ID:ZyLHAVHx0
神風「科学の発達した今だからなにか馬鹿馬鹿しい方法に聞こえますけど、記憶や意志が魂に宿ると言った考えの名残って感じで私は好きですね」
北上「確かに今じゃあまりに危険な方法だよね。壊れた家電製品を叩いて治すようなもんだし」
神風「昔みたいな簡単な作りならともかく、今の家電は精密機械ですからね。そこへいくと人間の脳も精密機械、もしくはそれ以上ですから」
叩くなんて以ての外、と言ったふうに語る。
めっちゃ叩こうとしちゃってたよ私。
神風「後は入れ替わりなんかも同じですね」
北上「入れ替わり?」
神風「ほら、角で男女がごっんつんこして入れ替わっちゃった!ってアレですよ」
ザ・少女漫画。どうでもいいけどごっつんこって言う神風カワイイ。
北上「確かに今じゃあまりに危険な方法だよね。壊れた家電製品を叩いて治すようなもんだし」
神風「昔みたいな簡単な作りならともかく、今の家電は精密機械ですからね。そこへいくと人間の脳も精密機械、もしくはそれ以上ですから」
叩くなんて以ての外、と言ったふうに語る。
めっちゃ叩こうとしちゃってたよ私。
神風「後は入れ替わりなんかも同じですね」
北上「入れ替わり?」
神風「ほら、角で男女がごっんつんこして入れ替わっちゃった!ってアレですよ」
ザ・少女漫画。どうでもいいけどごっつんこって言う神風カワイイ。
668: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/13(月) 02:47:05.25 ID:ZyLHAVHx0
北上「改めて言われると凄い発想だよね。メモリーとメモリーを叩き合わせたら中身が入れ替わるなんて」
神風「だからやっぱり魂こそが人の根幹であり、体は入れ物という考えから来たものなんでしょうね」
北上「なるほどねぇ」
確かに、私にとってこの体は入れ物だ。
神風「荒っぽいのはなしだとして、後はキーワードですよね」
北上「定番だね」
事実、多摩姉が思い出しかけたきっかけも麦畑というキーワードだ。
残念ながらきっかけ以上の効果はあれ以降見られていないけれど。
神風「だからやっぱり魂こそが人の根幹であり、体は入れ物という考えから来たものなんでしょうね」
北上「なるほどねぇ」
確かに、私にとってこの体は入れ物だ。
神風「荒っぽいのはなしだとして、後はキーワードですよね」
北上「定番だね」
事実、多摩姉が思い出しかけたきっかけも麦畑というキーワードだ。
残念ながらきっかけ以上の効果はあれ以降見られていないけれど。
669: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/13(月) 02:47:56.41 ID:ZyLHAVHx0
北上「ところでさ」
神風「はい?」
北上「足が痺れてきた」
神風「ダメです」
北上「はい」
神風「後はー、五感に訴えるですかね」
北上「五感?」
視覚聴覚味覚…嗅覚!後は~ああ触覚か。
神風「物語上でいうなら、例えば思い出の場所に連れて行ったり、写真を見せたり音楽を聞かせたりとか。臭いや触覚はあまり出てこないですけど」
北上「五感かぁ」
視覚と嗅覚。とくに嗅覚は結構効果あるかもしれないな。猫だったし。でも何を使えばよいのやら。
神風「はい?」
北上「足が痺れてきた」
神風「ダメです」
北上「はい」
神風「後はー、五感に訴えるですかね」
北上「五感?」
視覚聴覚味覚…嗅覚!後は~ああ触覚か。
神風「物語上でいうなら、例えば思い出の場所に連れて行ったり、写真を見せたり音楽を聞かせたりとか。臭いや触覚はあまり出てこないですけど」
北上「五感かぁ」
視覚と嗅覚。とくに嗅覚は結構効果あるかもしれないな。猫だったし。でも何を使えばよいのやら。
670: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/13(月) 02:48:34.78 ID:ZyLHAVHx0
神風「思いつくのはこれくらいですね」
北上「ありがとね。やっぱこういうのは自分以外に聞いてみると意外な発見があるもんだよ」
神風「お役に立てたようで何よりです」
北上「さてでは」
神風「私が読み終えるまではそこに正座です」
北上「そんなにっ!?」
神風「日頃の分も含めてですよ」ジトー
北上「うっ」
それを言われると弱い。
北上「仕方ない。代わりに私の○○○を見せてやろう」ピラッ
神風「キャーー!何してるんですか!」
キャーが似合う系女子。顔を背けつつしっかりとチラ見してる当たりが高得点。
北上「ありがとね。やっぱこういうのは自分以外に聞いてみると意外な発見があるもんだよ」
神風「お役に立てたようで何よりです」
北上「さてでは」
神風「私が読み終えるまではそこに正座です」
北上「そんなにっ!?」
神風「日頃の分も含めてですよ」ジトー
北上「うっ」
それを言われると弱い。
北上「仕方ない。代わりに私の○○○を見せてやろう」ピラッ
神風「キャーー!何してるんですか!」
キャーが似合う系女子。顔を背けつつしっかりとチラ見してる当たりが高得点。
671: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/13(月) 02:49:20.96 ID:ZyLHAVHx0
北上「普段から見慣れてるし見られ慣れてるからねえ」
神風「ま、まあ確かに…」
艦娘の常である。
北上「大井っちなんかも露出度上がってがっかり来てたみたいだし」
神風「そうなんですか?」
北上「直接聞いたわけじゃないけど、最近少し元気ないからさ」
神風「意外です。なんていうか、そのー、北上さんさえいればって感じに思えたので」
北上「ふふ、結構大井っちは乙女なところあるよ」
それじゃ、と図書室を出る。
よし!脱出成功!!
神風「ま、まあ確かに…」
艦娘の常である。
北上「大井っちなんかも露出度上がってがっかり来てたみたいだし」
神風「そうなんですか?」
北上「直接聞いたわけじゃないけど、最近少し元気ないからさ」
神風「意外です。なんていうか、そのー、北上さんさえいればって感じに思えたので」
北上「ふふ、結構大井っちは乙女なところあるよ」
それじゃ、と図書室を出る。
よし!脱出成功!!
675: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:49:40.69 ID:RbKvlfqg0
北上「うーむ」
しかし困った。
五感に訴えるとして、使えそうなのは嗅覚とか視覚かな。
嗅覚ってどうすんだ?
麦の匂いと言われてもねえ。
日向「おっと」
北上「むぐっ」
おお、ちょうど目の前に柔らかいクッションが。
日向「いや離れてくれないか」
北上「ごめんごめん」
曲がり角でごっつんこ、とはならなかった。
しかし困った。
五感に訴えるとして、使えそうなのは嗅覚とか視覚かな。
嗅覚ってどうすんだ?
麦の匂いと言われてもねえ。
日向「おっと」
北上「むぐっ」
おお、ちょうど目の前に柔らかいクッションが。
日向「いや離れてくれないか」
北上「ごめんごめん」
曲がり角でごっつんこ、とはならなかった。
676: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:50:48.25 ID:RbKvlfqg0
日向「五感、匂い、ね。一体何がどうしてそういう話になったんだ?」
北上「まあまあそこら辺は気にせず」
相談がある、と言ったら日向さん(と伊勢さん)の部屋に招かれた。
以前は部屋の半分が本棚、もう半分が船や飛行機の模型となっていたが図書室の完成により99%模型になっていた。
日向「何か案はあったのかい?」
北上「ん~、とりあえず小麦粉でも嗅がせようかと」
部屋の中央のテーブルを挟み向かい合うように椅子に座る。
肘掛に手を置きいつもと同じ朴訥とした表情で話す日向さんはなんという貫禄を感じる。
日向「それは小麦粉の匂いだよ。麦畑というのならきっと、その土地の匂いであって麦自体の匂いではないだろう。私も詳しくは知らないけれど、麦はそうわかり易い匂いを放つ植物ではないはずだ」
北上「言われてみれば」
流石に安直すぎたようだ。
北上「まあまあそこら辺は気にせず」
相談がある、と言ったら日向さん(と伊勢さん)の部屋に招かれた。
以前は部屋の半分が本棚、もう半分が船や飛行機の模型となっていたが図書室の完成により99%模型になっていた。
日向「何か案はあったのかい?」
北上「ん~、とりあえず小麦粉でも嗅がせようかと」
部屋の中央のテーブルを挟み向かい合うように椅子に座る。
肘掛に手を置きいつもと同じ朴訥とした表情で話す日向さんはなんという貫禄を感じる。
日向「それは小麦粉の匂いだよ。麦畑というのならきっと、その土地の匂いであって麦自体の匂いではないだろう。私も詳しくは知らないけれど、麦はそうわかり易い匂いを放つ植物ではないはずだ」
北上「言われてみれば」
流石に安直すぎたようだ。
677: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:51:26.14 ID:RbKvlfqg0
日向「そもそも私達は五感、というか人間的な感覚が鈍いからね」
北上「鈍い?」
日向「砲撃音や被弾、至近弾による爆音に晒されても鼓膜はおろか精神に影響すらない。血や硝煙の臭いを嫌がる事もなく、彼方まで続く海からの照り返しに目を痛めたりもしない」
北上「そりゃあまあ船だしね、私達」
そんなんに一々反応してたら三日と持たずに海の藻屑だろう。
日向「私達は人に近い形をとっているが、それはつまり人とは決定的に違うということさ」
北上「人とは、違うね確かに」
船だったり猫だったり鳥だったりだ。
思えば猫の時に感じた匂いを今再現するのって中々無茶だよね。
何を迷走してるんだか。
北上「鈍い?」
日向「砲撃音や被弾、至近弾による爆音に晒されても鼓膜はおろか精神に影響すらない。血や硝煙の臭いを嫌がる事もなく、彼方まで続く海からの照り返しに目を痛めたりもしない」
北上「そりゃあまあ船だしね、私達」
そんなんに一々反応してたら三日と持たずに海の藻屑だろう。
日向「私達は人に近い形をとっているが、それはつまり人とは決定的に違うということさ」
北上「人とは、違うね確かに」
船だったり猫だったり鳥だったりだ。
思えば猫の時に感じた匂いを今再現するのって中々無茶だよね。
何を迷走してるんだか。
678: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:52:07.32 ID:RbKvlfqg0
日向「『艦娘を殺すなら砲弾や魚雷ではなくナイフで動脈を切れ』なんて言葉がある。これは、なんだったかな。元ネタがあるらしいが。海外だったかな」
北上「なにそりゃ。初耳だよ」
日向「1種のブラックジョークってやつなんだろう。我々は怪我に鈍いからね。艤装が壊れても服が破けても体から煙が出ていてもバケツを被れば治る」
ここだけ聞くと爆発で髪の毛アフロになる世界の住人みたいだよね。
日向「逆に切り傷のような、艤装を付けていない生身の時の怪我に弱い。バケツじゃ治らないからね。そしてその事にひどく無自覚だ」
北上「でも実際そんな事あるかね。そりゃ本能的にヤバイと思えなくとも血が出るのがヤバイって知識はあるじゃん?」
北上「なにそりゃ。初耳だよ」
日向「1種のブラックジョークってやつなんだろう。我々は怪我に鈍いからね。艤装が壊れても服が破けても体から煙が出ていてもバケツを被れば治る」
ここだけ聞くと爆発で髪の毛アフロになる世界の住人みたいだよね。
日向「逆に切り傷のような、艤装を付けていない生身の時の怪我に弱い。バケツじゃ治らないからね。そしてその事にひどく無自覚だ」
北上「でも実際そんな事あるかね。そりゃ本能的にヤバイと思えなくとも血が出るのがヤバイって知識はあるじゃん?」
679: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:52:50.41 ID:RbKvlfqg0
日向「以前に、誰とは言わないけれど駆逐艦の1人が包丁で指を切った事がある。本人はうわ血が出たという程度の反応だった様だが、他の者が一乙止血やら消毒やらの知識があってな。だから水で指を洗って清潔なタオルで傷口を抑えた」
北上「正しい、かどうかイマイチ私にゃ分からないけど。でも問題なさそうに思えるね」
日向「その場にいた1人が提督室に来たんだ。何せ艦娘相手に包帯やらなんやらを使う事はあまり無いからな。その手の道具は提督室にある」
北上「へー。そりゃ知らなかったよ」
以前に提督窓から落ちたのを思い出す。
なぜ提督室で看病してたのかと思ったがそれが理由か。
北上「正しい、かどうかイマイチ私にゃ分からないけど。でも問題なさそうに思えるね」
日向「その場にいた1人が提督室に来たんだ。何せ艦娘相手に包帯やらなんやらを使う事はあまり無いからな。その手の道具は提督室にある」
北上「へー。そりゃ知らなかったよ」
以前に提督窓から落ちたのを思い出す。
なぜ提督室で看病してたのかと思ったがそれが理由か。
680: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:53:36.83 ID:RbKvlfqg0
日向「その時は私と提督が部屋にいた。そして部屋に来た駆逐艦は苦笑いしながらこう言った。妹が料理中に指を切ったから絆創膏が欲しい、と」
そういえば私は包丁を握った事がないな。
料理に興味はないからいいけれど。
日向「その顔を見て提督は何をやってんだ気をつけろと言いながら絆創膏を渡したんだ。そして少し気になるから一応私に付いていくように言った」
北上「なんだかオチが見えてきた気がする」
日向「まあそうなるな。ともかく私も台所についた。そこで見たのが、ケロッとした顔でこれどうしたらいいの?と問いかけてくる駆逐艦と、文字通り真っ赤に染まったタオルだった」
あれ、予想よりヤバそうなんだけど。
そういえば私は包丁を握った事がないな。
料理に興味はないからいいけれど。
日向「その顔を見て提督は何をやってんだ気をつけろと言いながら絆創膏を渡したんだ。そして少し気になるから一応私に付いていくように言った」
北上「なんだかオチが見えてきた気がする」
日向「まあそうなるな。ともかく私も台所についた。そこで見たのが、ケロッとした顔でこれどうしたらいいの?と問いかけてくる駆逐艦と、文字通り真っ赤に染まったタオルだった」
あれ、予想よりヤバそうなんだけど。
681: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:54:35.65 ID:RbKvlfqg0
日向「それほど大きくないとはいえタオルが一色に染まり、それでも吸いきれなかった血が滴り落ちるというのが本来どれほど危険な状況か。キミには説明する必要はないだろう?」
北上「別に詳しいわけじゃないけどね。でも普通なら救急車案件だよね」
人によっては痛みや、その惨状を見て気絶、なんて事も考えられる。
勿論医学的にとかじゃなく推理小説とかの展開的に、なのだが。まあ見当はずれな予想でもあるまい。
日向「文字通り痛感というやつだね。いかに人に近いと言っても、根本的に人間らしさが足りないのさ。私達はね」
北上「うーん。そりゃ確かに艦娘として人とはズレているところは多いとは思うけどさ。そこまでじゃないと思う」
日向「ほう」
相変わらずぶっ飛んだというか、極端な意見を言う日向さんに反論してみる。
北上「別に詳しいわけじゃないけどね。でも普通なら救急車案件だよね」
人によっては痛みや、その惨状を見て気絶、なんて事も考えられる。
勿論医学的にとかじゃなく推理小説とかの展開的に、なのだが。まあ見当はずれな予想でもあるまい。
日向「文字通り痛感というやつだね。いかに人に近いと言っても、根本的に人間らしさが足りないのさ。私達はね」
北上「うーん。そりゃ確かに艦娘として人とはズレているところは多いとは思うけどさ。そこまでじゃないと思う」
日向「ほう」
相変わらずぶっ飛んだというか、極端な意見を言う日向さんに反論してみる。
682: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:55:09.72 ID:RbKvlfqg0
北上「痛みとかは人間らしさともいうより生物らしさでしょ?五感が鈍いのはその通りみたいだけど、文学的な人間らしさなら私達は十二分にそれがあると思うけど」
日向「例えば?」
北上「姉妹とか」
私の家族とも言える球磨型の皆を思い出す。
北上「恋しちゃったりとか」
恋する乙女な大井っちを思い浮かべる。
北上「そういうの」
提督の事を、思い返す。
日向「なるほどな」
といいつつ急に前のめりになって碇司令のあのポーズみたいな格好をする。
なんだかこちらも身構えてしまう。
日向「例えば?」
北上「姉妹とか」
私の家族とも言える球磨型の皆を思い出す。
北上「恋しちゃったりとか」
恋する乙女な大井っちを思い浮かべる。
北上「そういうの」
提督の事を、思い返す。
日向「なるほどな」
といいつつ急に前のめりになって碇司令のあのポーズみたいな格好をする。
なんだかこちらも身構えてしまう。
683: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:55:47.60 ID:RbKvlfqg0
日向「確かにそうだ。それは人間らしさであり、私達はそれを持ち合わせている」
あ、これは否定されるパターンだ。
日向「だがそれは私達が持って生まれたものでは無い」
北上「ん?でもそういうものじゃないの?人間は幼い時に親や近しいものから受けた、色々で、人間らしさを会得するわけじゃん」
愛情、とは言えなかった。世の中がそれほどドラマチック出ない事は知っている。
日向「そうだな。例えば狼に育てられた人間という話を聞いたことがあるが、おおよそ人間らしさと言えるものはなかったらしい」
北上「へー」
ヤバイ。もののけ姫しか浮かばない。
あれはかなり人間らしかったよね。
あ、育ての親が人語を喋れるから別か。
あ、これは否定されるパターンだ。
日向「だがそれは私達が持って生まれたものでは無い」
北上「ん?でもそういうものじゃないの?人間は幼い時に親や近しいものから受けた、色々で、人間らしさを会得するわけじゃん」
愛情、とは言えなかった。世の中がそれほどドラマチック出ない事は知っている。
日向「そうだな。例えば狼に育てられた人間という話を聞いたことがあるが、おおよそ人間らしさと言えるものはなかったらしい」
北上「へー」
ヤバイ。もののけ姫しか浮かばない。
あれはかなり人間らしかったよね。
あ、育ての親が人語を喋れるから別か。
684: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:56:20.19 ID:RbKvlfqg0
日向「でも私達に親はいないだろう」
北上「強いて言うなら、妖精さん?」
親、親かあ。アレは生みの親ではあるかもだが、親ではないなぁ。
北上「でもほら、姉妹艦とか。そうでなくとも色んな艦娘がいるじゃん。親代わりみたいな」
日向「ではこう考えよう。誰もいない鎮守府に1人の提督と、生まれたばかりの駆逐艦が1人やってくる」
北上「提督が親か」
日向「親どころではないさ。唯一の人間だ」
人間、という言葉を強調する。
北上「強いて言うなら、妖精さん?」
親、親かあ。アレは生みの親ではあるかもだが、親ではないなぁ。
北上「でもほら、姉妹艦とか。そうでなくとも色んな艦娘がいるじゃん。親代わりみたいな」
日向「ではこう考えよう。誰もいない鎮守府に1人の提督と、生まれたばかりの駆逐艦が1人やってくる」
北上「提督が親か」
日向「親どころではないさ。唯一の人間だ」
人間、という言葉を強調する。
685: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:56:48.07 ID:RbKvlfqg0
日向「今現在でも提督はこの鎮守府における唯一の人間だよ。それこそが提督であり、だからこそ私達に必要なんだ」
北上「ちょっとタンマタンマ。話がぶっ飛び過ぎだって」
流石についていけなくなる。この人いつもこんな事考えてるのかな。
この人、か。
北上「確かに提督が大元なのはまあ分かるけどさ。それってこう、なんだろ」
上手い例えが出てこないな。
北上「うーん、言い方は悪いけどウイルスの発生源みたいな話でしょ?大元なのはそうだけど、1度感染してそこからまた広がっていったらもう発生源はあまり関係ないじゃん」
日向「提督はウイルスか」
北上「なんでそこだけ真に受けるのさ」
北上「ちょっとタンマタンマ。話がぶっ飛び過ぎだって」
流石についていけなくなる。この人いつもこんな事考えてるのかな。
この人、か。
北上「確かに提督が大元なのはまあ分かるけどさ。それってこう、なんだろ」
上手い例えが出てこないな。
北上「うーん、言い方は悪いけどウイルスの発生源みたいな話でしょ?大元なのはそうだけど、1度感染してそこからまた広がっていったらもう発生源はあまり関係ないじゃん」
日向「提督はウイルスか」
北上「なんでそこだけ真に受けるのさ」
686: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:57:29.83 ID:RbKvlfqg0
日向「元、というなら女王蜂と言った方が正しいだろうね。男女比は正反対だがね」
北上「女王蜂って…」
あれ、思い返してみると確かに私達のやっている事って働き蜂のそれと同じじゃあないか。
なんか釈然としないな。
日向「人と違って私達には生まれた時から人格がある。だがそれは型に過ぎない。言わばまだ白紙の塗り絵だ」
なんだがロマンチックな言い回し。
日向「考えた事はないかい?世の中には私と同じ日向が沢山いる。それは確かに同じだったろうけれど、実際会ってみるとその性格には差異がある」
北上「他の鎮守府の自分かあ。私は会ったことないや」
私はなにせ中身がアレなもんだから他所の北上を自分だというふうにあまり見れない。
北上「女王蜂って…」
あれ、思い返してみると確かに私達のやっている事って働き蜂のそれと同じじゃあないか。
なんか釈然としないな。
日向「人と違って私達には生まれた時から人格がある。だがそれは型に過ぎない。言わばまだ白紙の塗り絵だ」
なんだがロマンチックな言い回し。
日向「考えた事はないかい?世の中には私と同じ日向が沢山いる。それは確かに同じだったろうけれど、実際会ってみるとその性格には差異がある」
北上「他の鎮守府の自分かあ。私は会ったことないや」
私はなにせ中身がアレなもんだから他所の北上を自分だというふうにあまり見れない。
687: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:58:09.76 ID:RbKvlfqg0
日向「常に帯刀してる危ない私や妙にイケメンな私や一言も喋らない私や、瑞雲狂の私なんかもいたな」
北上「瑞雲?」
何故に。
日向「同じ日向なのにこうも違いが出る。何故か。それは提督の影響だ」
提督と言い切る。すごい自信だ。
日向「鎮守府の最高責任者は提督だ。運営方針もその提督次第で異なる。極端な話、ルールに厳格で根っからの軍人基質な提督の鎮守府であれば、私や皆もそれに沿った性格になっていただろう。ウチの提督は、まあそれの真反対だな」
北上「確かに。うん、そうだね」
うんうんと頷いてしまう。
トップの意向にそうというのは一般社会でも同じかもしれないが、私達にとって鎮守府こそが生活であり全てだ。その影響はもろに出る。
なんたる社畜。
北上「瑞雲?」
何故に。
日向「同じ日向なのにこうも違いが出る。何故か。それは提督の影響だ」
提督と言い切る。すごい自信だ。
日向「鎮守府の最高責任者は提督だ。運営方針もその提督次第で異なる。極端な話、ルールに厳格で根っからの軍人基質な提督の鎮守府であれば、私や皆もそれに沿った性格になっていただろう。ウチの提督は、まあそれの真反対だな」
北上「確かに。うん、そうだね」
うんうんと頷いてしまう。
トップの意向にそうというのは一般社会でも同じかもしれないが、私達にとって鎮守府こそが生活であり全てだ。その影響はもろに出る。
なんたる社畜。
688: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:58:42.21 ID:RbKvlfqg0
北上「そういや何処ぞの鎮守府じゃ毎日艦娘と○○で○○な生活を送ってるなんて話を聞いたことがあるよ」
日向「つまりそういう提督であり、そういう艦娘になったという事だ」
北上「…なんか洗脳じみてて怖いね」
日向「何をもって洗脳というか、だな。穿った言い方をすれば親が子供を躾るのを洗脳ととることも出来る」
北上「それは穿ちすぎでは…」
日向「私達の場合は刷り込みと言うべきだろう。元々染まりやすく出来ているのさ。提督色にね」
北上「刷り込みって…ああ鳥が最初に見たものを親と思うってやつか」
日向「それだ」
日向「つまりそういう提督であり、そういう艦娘になったという事だ」
北上「…なんか洗脳じみてて怖いね」
日向「何をもって洗脳というか、だな。穿った言い方をすれば親が子供を躾るのを洗脳ととることも出来る」
北上「それは穿ちすぎでは…」
日向「私達の場合は刷り込みと言うべきだろう。元々染まりやすく出来ているのさ。提督色にね」
北上「刷り込みって…ああ鳥が最初に見たものを親と思うってやつか」
日向「それだ」
689: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:59:09.03 ID:RbKvlfqg0
日向「私達は無意識に色々と刷り込まれてるのさ。例えば姉妹。当たり前のように姉妹とされているが、それは誰が言い出した?
元来船の姉妹というのは同型艦の呼び方の1種であり、それだけでしかない。実際作戦などで姉妹艦と行動する機会は殆どないことが多いし、生まれの時期に差があれば一度も合わずに終わる事すらある。
それを人の姉妹のように受け取り、そうあれと願っているのは提督だ。部屋割りや作戦時の編成にもその意識は現れる。そしてそれが私達の意志になる。
勿論姉妹として扱わない提督もいる。その場合その艦娘もそれ相応の者になっていたが。
他には、そうだな。鎮守府の上下関係かな。
軍艦としての年齢、艦娘としての年齢。戦績、実力。ふっ、提督のお気に入りかどうか、なんて。鎮守府によって異なるがそれはそこでは当たり前の常識となる。
また… 」
上下関係か。ウチは、上から戦艦や空母、重巡、軽巡、駆逐艦、みたいな感じかな。あらためて考えると潜水艦だけ特別枠な感じだ。
しかしいつまで話すつもりだこの人。段々話が頭をすり抜けてきた。谷風を彷彿とさせるがこっちは内容が濃いのでついていけない。
元来船の姉妹というのは同型艦の呼び方の1種であり、それだけでしかない。実際作戦などで姉妹艦と行動する機会は殆どないことが多いし、生まれの時期に差があれば一度も合わずに終わる事すらある。
それを人の姉妹のように受け取り、そうあれと願っているのは提督だ。部屋割りや作戦時の編成にもその意識は現れる。そしてそれが私達の意志になる。
勿論姉妹として扱わない提督もいる。その場合その艦娘もそれ相応の者になっていたが。
他には、そうだな。鎮守府の上下関係かな。
軍艦としての年齢、艦娘としての年齢。戦績、実力。ふっ、提督のお気に入りかどうか、なんて。鎮守府によって異なるがそれはそこでは当たり前の常識となる。
また… 」
上下関係か。ウチは、上から戦艦や空母、重巡、軽巡、駆逐艦、みたいな感じかな。あらためて考えると潜水艦だけ特別枠な感じだ。
しかしいつまで話すつもりだこの人。段々話が頭をすり抜けてきた。谷風を彷彿とさせるがこっちは内容が濃いのでついていけない。
690: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 02:59:43.54 ID:RbKvlfqg0
日向「
そして提督が居なくなると崩壊する
」
北上「え?」
不意に飛び込んできた言葉に意識を戻された。
日向「戦闘の結果鎮守府が壊滅するという例はいくらかあるが提督が居なくなるという例は少ないからな。あまり意識することもないだろう」
提督が、提督だけが居なくなる。
日向「この戦争が始まってまだ四半世紀もたっていない。寿命や病気でこの先そういった問題は増えていくとは思うが」
そういえば、提督は2代目だと言っていた。
だとしたらその数少ない例がここなのでは。
そして提督が居なくなると崩壊する
」
北上「え?」
不意に飛び込んできた言葉に意識を戻された。
日向「戦闘の結果鎮守府が壊滅するという例はいくらかあるが提督が居なくなるという例は少ないからな。あまり意識することもないだろう」
提督が、提督だけが居なくなる。
日向「この戦争が始まってまだ四半世紀もたっていない。寿命や病気でこの先そういった問題は増えていくとは思うが」
そういえば、提督は2代目だと言っていた。
だとしたらその数少ない例がここなのでは。
691: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 03:00:59.02 ID:RbKvlfqg0
北上「問題、なんだ」
日向「そう問題だ。染まりやすい。だが一度染まればその色は中々変わらないのさ。適応ができない」
北上「…つまり次の提督に、適応できないと」
日向「多くの場合はな。人は大勢の他人から自己を形成するが艦娘は提督1人からなる。女王蜂がいなくなった巣は、どうなるだろうな」
例えば提督の事を嫌いな艦娘はいない。likeではなくloveのほうで提督の事が好きな艦娘も多い。
その提督が消えたら、どうなるか。
日向「五感や人らしさも全て、提督からもらった仮初のものなのさ。結局のところ」
北上「なんというか、ぞっとしないね」
日向「好き好んで考える話題ではないかもな」
なら話すなよと目で訴える。
日向「そう問題だ。染まりやすい。だが一度染まればその色は中々変わらないのさ。適応ができない」
北上「…つまり次の提督に、適応できないと」
日向「多くの場合はな。人は大勢の他人から自己を形成するが艦娘は提督1人からなる。女王蜂がいなくなった巣は、どうなるだろうな」
例えば提督の事を嫌いな艦娘はいない。likeではなくloveのほうで提督の事が好きな艦娘も多い。
その提督が消えたら、どうなるか。
日向「五感や人らしさも全て、提督からもらった仮初のものなのさ。結局のところ」
北上「なんというか、ぞっとしないね」
日向「好き好んで考える話題ではないかもな」
なら話すなよと目で訴える。
692: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 03:01:49.47 ID:RbKvlfqg0
日向「だから私は本を読むんだ」
北上「だから?」
日向「提督以外の好きな物であり、私が自身で見つけた趣味であり、私の個性であり、私の証明だからだ」
北上「なんでわざわざ」
日向「…提督を失った鎮守府を、知ってるからさ」
それってつまり…
北上「だから?」
日向「提督以外の好きな物であり、私が自身で見つけた趣味であり、私の個性であり、私の証明だからだ」
北上「なんでわざわざ」
日向「…提督を失った鎮守府を、知ってるからさ」
それってつまり…
693: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 03:03:55.86 ID:RbKvlfqg0
北上「はぁ…」
提督室に向かう途中、思わずため息が出た。
日向さん。吹雪に負けず劣らずの変人だ。
個性が光りすぎてる。
年長者は変人しかいないのだろうか。
いや色々と年を重ねるうちに変人になるのか?
あまり考えたくないなそれは。
少なくともあんなアドバイスの仕方をするようにはなりたくない。
提督室に向かう途中、思わずため息が出た。
日向さん。吹雪に負けず劣らずの変人だ。
個性が光りすぎてる。
年長者は変人しかいないのだろうか。
いや色々と年を重ねるうちに変人になるのか?
あまり考えたくないなそれは。
少なくともあんなアドバイスの仕方をするようにはなりたくない。
694: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 03:04:26.07 ID:RbKvlfqg0
日向「つまり提督に相談してはどうかという事だ」
北上「え、今の壮大な話からそんなありふれた結論に帰結するの?」
日向「意外な回答は見ていて面白いが解決を望むならあまりオススメはしないぞ」
北上「いやそういう話ではなく」
日向「なに簡単な話さ。その手の人間らしさならば人間である提督に聞くべきというだけの事。まああまり期待できる相手でもないか」
さりげなくディスって行くスタイル。
北上「え、今の壮大な話からそんなありふれた結論に帰結するの?」
日向「意外な回答は見ていて面白いが解決を望むならあまりオススメはしないぞ」
北上「いやそういう話ではなく」
日向「なに簡単な話さ。その手の人間らしさならば人間である提督に聞くべきというだけの事。まああまり期待できる相手でもないか」
さりげなくディスって行くスタイル。
695: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/17(金) 03:05:57.11 ID:RbKvlfqg0
目的地周辺、回想を終了いたします。
北上「結局ここか」
2代目の、提督の部屋。
その事を頭の片隅に押しやる。
朝から色々あって身体も脳もへとへとだ。
ここらで休憩が必要だろう。
さて安らぎの空間へ、
北上「お邪魔しま~す」
北上「結局ここか」
2代目の、提督の部屋。
その事を頭の片隅に押しやる。
朝から色々あって身体も脳もへとへとだ。
ここらで休憩が必要だろう。
さて安らぎの空間へ、
北上「お邪魔しま~す」
699: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:13:53.86 ID:hFvFWQV80
提督「珍しいな。お前が本も持たずにここに来るなんて」
北上「別に本が目的じゃないもん。静けさを求めてここに来るのであって、読書はあくまでその静けさの中で最もやりたい事なだけ」
提督「んーよくわからん」
北上「まーつまりここが好きなのさ」
提督「ここがねえ。でも今は図書室もあるんだろ?」
北上「そりゃあ…まあ、そうねぇ。なんだろ、ここに慣れたというか、落ち着いちゃった?」
提督「いや俺に聞かれてもな。落ち着くなら、別にいいんだけどな」
そういって椅子ごとくるりと回りそっぽを向く。
なんか邪魔しちゃったかな?
北上「別に本が目的じゃないもん。静けさを求めてここに来るのであって、読書はあくまでその静けさの中で最もやりたい事なだけ」
提督「んーよくわからん」
北上「まーつまりここが好きなのさ」
提督「ここがねえ。でも今は図書室もあるんだろ?」
北上「そりゃあ…まあ、そうねぇ。なんだろ、ここに慣れたというか、落ち着いちゃった?」
提督「いや俺に聞かれてもな。落ち着くなら、別にいいんだけどな」
そういって椅子ごとくるりと回りそっぽを向く。
なんか邪魔しちゃったかな?
700: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:14:46.36 ID:hFvFWQV80
北上「ん~~…ッ!」
とか思いつつくつろいじゃうんだけどね~。
ソファーに寝転び猫のように思い切り伸びを1回。
提督「猫かお前は」
北上「え」
提督「あぁいや、その気持ちよさそうな伸びがさ」
北上「あはは」
ちょっとドキッとした。
とか思いつつくつろいじゃうんだけどね~。
ソファーに寝転び猫のように思い切り伸びを1回。
提督「猫かお前は」
北上「え」
提督「あぁいや、その気持ちよさそうな伸びがさ」
北上「あはは」
ちょっとドキッとした。
701: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:16:24.63 ID:hFvFWQV80
北上「提督はさ、何か思い出したいのに思い出せない時とかってどうしてる?」パタパタ
提督「ソファーの上で足を揺らすな。思い出したいのに思い出せない?忘れてるってことか」
北上「そうそう。絶対記憶のどっかにはあるのにそれが見つからない~みたいな時」
提督「んーなんか難しいな」
北上「テキトーでいいよテキトーで」
提督「そーだなぁ。まだ覚えてる時の自分が残したものを探すかな」
北上「残し、え?何それ」
提督「メモとかなんか残してるかもしれないだろ?それすら忘れてるだけで」
北上「おー…おー!」
提督「おー?どしたどした」
思わず声が出た。それくらいには意外な回答だった。
提督「ソファーの上で足を揺らすな。思い出したいのに思い出せない?忘れてるってことか」
北上「そうそう。絶対記憶のどっかにはあるのにそれが見つからない~みたいな時」
提督「んーなんか難しいな」
北上「テキトーでいいよテキトーで」
提督「そーだなぁ。まだ覚えてる時の自分が残したものを探すかな」
北上「残し、え?何それ」
提督「メモとかなんか残してるかもしれないだろ?それすら忘れてるだけで」
北上「おー…おー!」
提督「おー?どしたどした」
思わず声が出た。それくらいには意外な回答だった。
702: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:17:08.17 ID:hFvFWQV80
北上「目からウロコとはこの事だね。まさか提督なんかからこんな答えが出るとは」
提督「さり気にディスってないかおい」
北上「自分の○に手を当てて考えてみるとよい」
提督「あ言ったな、後悔するぜ」
そう言うと机の横に立て掛けられていた板を持ち出した。
あ、ホワイトボードか。
提督「じゃん」
北上「わお、こりゃ凄いや」
ボードの上にはメモ用紙や文字がびっしり並んでいた。
提督「さり気にディスってないかおい」
北上「自分の○に手を当てて考えてみるとよい」
提督「あ言ったな、後悔するぜ」
そう言うと机の横に立て掛けられていた板を持ち出した。
あ、ホワイトボードか。
提督「じゃん」
北上「わお、こりゃ凄いや」
ボードの上にはメモ用紙や文字がびっしり並んでいた。
703: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:18:04.84 ID:hFvFWQV80
提督「これでも提督の業務ってのは色々と忙しくてな。こうして書いてわかりやすくしてるのさ」
北上「へーなるほどねー。いやはや見損なったよ提督」
提督「それを言うなら見直しただろ~」
北上「いやいや合ってる合ってる」
提督「え」
北上「これ殆ど吹雪の字じゃん」
提督「あ」スッ
さり気なく戻そうとするホワイトボードの端を掴んでぐっと引き寄せる。
北上「へーなるほどねー。いやはや見損なったよ提督」
提督「それを言うなら見直しただろ~」
北上「いやいや合ってる合ってる」
提督「え」
北上「これ殆ど吹雪の字じゃん」
提督「あ」スッ
さり気なく戻そうとするホワイトボードの端を掴んでぐっと引き寄せる。
704: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:18:44.52 ID:hFvFWQV80
北上「一人称に私とかあるし」
提督「いや」
北上「提督って二人称あるし」
提督「その」
北上「これってさ」
提督「あのね」
北上「提督がすぐ仕事忘れるからわざわざメモ残してくれてるだけだよね」
提督「ハイ」
蚊の鳴くような声で返事を返す。
鳴くというか泣きそうな声で。
提督「いや」
北上「提督って二人称あるし」
提督「その」
北上「これってさ」
提督「あのね」
北上「提督がすぐ仕事忘れるからわざわざメモ残してくれてるだけだよね」
提督「ハイ」
蚊の鳴くような声で返事を返す。
鳴くというか泣きそうな声で。
705: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:19:40.44 ID:hFvFWQV80
提督「いやあのね、提督も男なんですよ」
北上「ほう」
提督「見栄を、張るんです」
北上「ほう」
提督「良く、見られたいんです…」
北上「何故私に張ったし」
提督「いやぁ…」
北上「…」
男ってめんどくさいなー。
北上「ほう」
提督「見栄を、張るんです」
北上「ほう」
提督「良く、見られたいんです…」
北上「何故私に張ったし」
提督「いやぁ…」
北上「…」
男ってめんどくさいなー。
706: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:20:49.96 ID:hFvFWQV80
提督「実際さ、これだけの人数を動かして資材資源の管理や食費やら電気代やらなんやらとはっきり言って一人でやる事じゃないと思う」
北上「うん、実際一人でやる人はいないと思う」
何のために秘書艦がいると。
提督「だから仕方ない」
北上「いや提督はもうちょっと、かなり働こう」
私が特になにかしているわけじゃないけど、流石に吹雪の負担が大きいのでは。
提督「人間大切なこと以外は中々覚えられないものじゃん?」
北上「提督業務は大切じゃないというのか…」
いったい何が大切なんだろう。まさか大井っち?
もしくっついたらサクッと引退しちゃいそうだなこの人。
人間かあ。それともやはり私達と提督とじゃ何か根本的に違うのかね。
北上「うん、実際一人でやる人はいないと思う」
何のために秘書艦がいると。
提督「だから仕方ない」
北上「いや提督はもうちょっと、かなり働こう」
私が特になにかしているわけじゃないけど、流石に吹雪の負担が大きいのでは。
提督「人間大切なこと以外は中々覚えられないものじゃん?」
北上「提督業務は大切じゃないというのか…」
いったい何が大切なんだろう。まさか大井っち?
もしくっついたらサクッと引退しちゃいそうだなこの人。
人間かあ。それともやはり私達と提督とじゃ何か根本的に違うのかね。
707: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:21:38.58 ID:hFvFWQV80
提督「そういや北上って英語読めるんだよな」
北上「へ?うん、まあね」
それは覚えてるのか。
提督「丁度いいや。見せたいものがあってさ」
北上「見せたいもの?何何、サプライズ?」
提督「んな大層なもんじゃないけどさ、丁度お互いに暇だし」
北上「暇なの?」
吹雪「暇じゃねー!!」ドガッ
豪快な蹴りによるドアの開閉。いい加減なれてきた。
というかあのドアよく持つね。
北上「へ?うん、まあね」
それは覚えてるのか。
提督「丁度いいや。見せたいものがあってさ」
北上「見せたいもの?何何、サプライズ?」
提督「んな大層なもんじゃないけどさ、丁度お互いに暇だし」
北上「暇なの?」
吹雪「暇じゃねー!!」ドガッ
豪快な蹴りによるドアの開閉。いい加減なれてきた。
というかあのドアよく持つね。
708: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:22:24.01 ID:hFvFWQV80
吹雪「何のためにメモ残してると思ってんですか!」
提督「何を言う。次の出撃までは何も無いはずだぞ」
吹雪「あーりーまーすぅーちゃんと書きましたー」
提督「ああ?何処にもねーだろんなもん、ほら見ろよ」
吹雪「何言ってんですかほらここ、に、ない!なんで!?」
提督「書いたかどうかも忘れてちゃ世話ないぜ。指示がないなら俺は動かん!」
吹雪「いやトップが指示待ち人間誇ってどうすんですか!少しは自分で考えて動いてくださいよ小学生ですかあなた!」
提督「ちーがーいーまーすー力を蓄えてるんですぅー三年寝太郎なんですぅー」
吹雪「能無しの鳩が爪のあるふりしてどーすんですかいっそ永遠寝てろ」
提督「何を言う。次の出撃までは何も無いはずだぞ」
吹雪「あーりーまーすぅーちゃんと書きましたー」
提督「ああ?何処にもねーだろんなもん、ほら見ろよ」
吹雪「何言ってんですかほらここ、に、ない!なんで!?」
提督「書いたかどうかも忘れてちゃ世話ないぜ。指示がないなら俺は動かん!」
吹雪「いやトップが指示待ち人間誇ってどうすんですか!少しは自分で考えて動いてくださいよ小学生ですかあなた!」
提督「ちーがーいーまーすー力を蓄えてるんですぅー三年寝太郎なんですぅー」
吹雪「能無しの鳩が爪のあるふりしてどーすんですかいっそ永遠寝てろ」
709: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:23:07.90 ID:hFvFWQV80
提督「なにぃ?」
吹雪「なんですかあ?」
北上「おっとゴミ箱に何やらメモガー」
提督「おっと仕事を思い出したそれでワッ」ガクン
吹雪「おっと年貢の納め時ですよ寝太郎さ~ん。もちろん3年分」グワシッ
提督「いやあ年貢より怒りを収めて欲しいかなあなんて」
吹雪「あはは」
提督「ははは」
吹雪「ふんっ!」ドス
提督「ごぉっ!?」
うわ入った、鳩尾入ったよぉ…
吹雪「なんですかあ?」
北上「おっとゴミ箱に何やらメモガー」
提督「おっと仕事を思い出したそれでワッ」ガクン
吹雪「おっと年貢の納め時ですよ寝太郎さ~ん。もちろん3年分」グワシッ
提督「いやあ年貢より怒りを収めて欲しいかなあなんて」
吹雪「あはは」
提督「ははは」
吹雪「ふんっ!」ドス
提督「ごぉっ!?」
うわ入った、鳩尾入ったよぉ…
710: ◆rbbm4ODkU. 2017/11/20(月) 03:23:49.72 ID:hFvFWQV80
吹雪「あとは私が始末しとくんで」
満面の笑みで。笑顔とは本来攻撃的な意味があるというがなるほど、その通りだろう。
北上「ほ、ほどほどにね~」
始末とは仕事の事だろうか、提督の事だろうか。私には知る由もない。
気にはなるけどタイミングもいいし部屋に戻ろう。
今の時間なら丁度、部屋には誰もいないはずだ。
満面の笑みで。笑顔とは本来攻撃的な意味があるというがなるほど、その通りだろう。
北上「ほ、ほどほどにね~」
始末とは仕事の事だろうか、提督の事だろうか。私には知る由もない。
気にはなるけどタイミングもいいし部屋に戻ろう。
今の時間なら丁度、部屋には誰もいないはずだ。
715: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:14:16.98 ID:1YbTad+m0
43匹目:cat burglar
意味:泥棒、空き巣
二階から侵入する空き巣とかを指してそう言う。
泥棒猫、猫泥棒。
最も私は入口から堂々と侵入しているのだけれど。
いや自分の部屋なんだから侵入とは言わないか。
強いて言うなら、プライベートに侵入する。
意味:泥棒、空き巣
二階から侵入する空き巣とかを指してそう言う。
泥棒猫、猫泥棒。
最も私は入口から堂々と侵入しているのだけれど。
いや自分の部屋なんだから侵入とは言わないか。
強いて言うなら、プライベートに侵入する。
716: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:15:22.66 ID:1YbTad+m0
日本には
例えば兄弟や友人、彼氏の家に遊びに来た時などにとりあえずその部屋に○○本がないかを探す文化があるらしい。(夕張談)
艦娘である私にとってそれが果たして一般的にどれほど行われている行為なのかは皆目見当がつかないが、
そういった秘匿しているもの。秘密にしている何かを見つけるというのは実に背徳的で興味をそそられるというのは分かる。
気になる。
気になるけれどこれまで気にならないふりをしていたが、せっかくの機会だ。
存分に探索しよう。
例えば兄弟や友人、彼氏の家に遊びに来た時などにとりあえずその部屋に○○本がないかを探す文化があるらしい。(夕張談)
艦娘である私にとってそれが果たして一般的にどれほど行われている行為なのかは皆目見当がつかないが、
そういった秘匿しているもの。秘密にしている何かを見つけるというのは実に背徳的で興味をそそられるというのは分かる。
気になる。
気になるけれどこれまで気にならないふりをしていたが、せっかくの機会だ。
存分に探索しよう。
717: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:16:17.59 ID:1YbTad+m0
北上「よし」
場所、球磨型の部屋。
皆は今のところ出払ってる。
時間制限、最低でも1時間。
がっつり皆の私物を漁っていこう。
全員分漁るとなるとなかなかの量に思えるかもしれないけど、実のところ個々の私物の量はかなり少ない。
理由は単純部屋が狭いから。
私達が下手なだけという可能性は否定出来ないが四人部屋を5人で分けて使うというのはなかなか難しいのだ。
図書室の完成で私の荷物がかなり減ったのだけどその代わり球磨姉の作った棚が共用として置かれたので結局私物の量はあまり変わっていない。
場所、球磨型の部屋。
皆は今のところ出払ってる。
時間制限、最低でも1時間。
がっつり皆の私物を漁っていこう。
全員分漁るとなるとなかなかの量に思えるかもしれないけど、実のところ個々の私物の量はかなり少ない。
理由は単純部屋が狭いから。
私達が下手なだけという可能性は否定出来ないが四人部屋を5人で分けて使うというのはなかなか難しいのだ。
図書室の完成で私の荷物がかなり減ったのだけどその代わり球磨姉の作った棚が共用として置かれたので結局私物の量はあまり変わっていない。
718: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:16:57.28 ID:1YbTad+m0
北上「まあ最初はやっぱ球磨姉だよね」
球磨姉の机に向かう。
仕事用というよりは勉強机と言った感じの木製の机。ほかも似たり寄ったりだ。
北上「さてと」
あまり躊躇せず上から棚を開いていく。
左棚右棚、横についてるタンスの上からひいふうみい最後に大きめの棚。
内容は釣り雑誌情報誌、何かの作戦の書類、誰かからもらったのか封の空いてない手鏡etc
北上「これは…」
様々な種類の熊のボタン。
集めてるのかな?それとも駆逐艦から貰ったとか。
しかしまあやはりこれといったものは何も無い。
球磨姉の机に向かう。
仕事用というよりは勉強机と言った感じの木製の机。ほかも似たり寄ったりだ。
北上「さてと」
あまり躊躇せず上から棚を開いていく。
左棚右棚、横についてるタンスの上からひいふうみい最後に大きめの棚。
内容は釣り雑誌情報誌、何かの作戦の書類、誰かからもらったのか封の空いてない手鏡etc
北上「これは…」
様々な種類の熊のボタン。
集めてるのかな?それとも駆逐艦から貰ったとか。
しかしまあやはりこれといったものは何も無い。
719: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:17:38.92 ID:1YbTad+m0
球磨姉は、はっきり言って何も無い。
いやこの表現は少し違うな。
表裏がない。
360度どこからみても球磨姉ちゃんであり微分しようが積分しようが球磨姉ちゃんなのだ。
私達の頼れるお姉ちゃんなのだ。
北上「ん?」
これは、料理本!?料理なんてしないはずだが…
唯一付箋が貼ってあるページを開いてみる。
北上「そんなに片手で卵割れるようになりたいのか…」
なんとも球磨姉らしい。
いやこの表現は少し違うな。
表裏がない。
360度どこからみても球磨姉ちゃんであり微分しようが積分しようが球磨姉ちゃんなのだ。
私達の頼れるお姉ちゃんなのだ。
北上「ん?」
これは、料理本!?料理なんてしないはずだが…
唯一付箋が貼ってあるページを開いてみる。
北上「そんなに片手で卵割れるようになりたいのか…」
なんとも球磨姉らしい。
720: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:18:19.27 ID:1YbTad+m0
2番手、木曾。
なのだが、正直躊躇するものがある。
木曾はまず、絶対に何かある。その上でなんというか、見るのが怖い。
こう、痛々しいというか、見てるこっちが恥ずかしくなるようなものがありそうで。
具体的にいえば黒歴史的なにかである。
偏見かもしれないが。
まあ見るけど。
なのだが、正直躊躇するものがある。
木曾はまず、絶対に何かある。その上でなんというか、見るのが怖い。
こう、痛々しいというか、見てるこっちが恥ずかしくなるようなものがありそうで。
具体的にいえば黒歴史的なにかである。
偏見かもしれないが。
まあ見るけど。
721: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:19:23.37 ID:1YbTad+m0
まず出てきたのは剣道の本。
これはまあ普通。やってるし。
上から初級中級上級。
おや最後のこれは普通の本だ。
北上「どれどれ」
パラパラと流し見してみる。
うん。所謂ラノベ、勧善懲悪ものだ。
主に刀を持った主人公が活躍するやつ。
これはまあ普通。やってるし。
上から初級中級上級。
おや最後のこれは普通の本だ。
北上「どれどれ」
パラパラと流し見してみる。
うん。所謂ラノベ、勧善懲悪ものだ。
主に刀を持った主人公が活躍するやつ。
722: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:20:24.30 ID:1YbTad+m0
いやいやこれくらいは普通だよ憧れるよ。
やってんだもん剣道。
私だって猫ってだけで猫の本読みたくなるもん。
さて二段目の棚に。
また剣道の本と雑誌。
そして最後に、刀雑誌。
北上「ワンパターン過ぎでしょ!!」
思わず声が出た。
それほど隠す気がないながらもなんとな~く見られたくない的な気持ちが漂う配置。
なんだろうこのこっちまで心の隅っこ当たりをくすぐられる感じ。
世の母親は息子の○○本を見つけるたびにこんな感じになってたりするのだろうか。
やってんだもん剣道。
私だって猫ってだけで猫の本読みたくなるもん。
さて二段目の棚に。
また剣道の本と雑誌。
そして最後に、刀雑誌。
北上「ワンパターン過ぎでしょ!!」
思わず声が出た。
それほど隠す気がないながらもなんとな~く見られたくない的な気持ちが漂う配置。
なんだろうこのこっちまで心の隅っこ当たりをくすぐられる感じ。
世の母親は息子の○○本を見つけるたびにこんな感じになってたりするのだろうか。
723: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/03(日) 04:21:09.37 ID:1YbTad+m0
いやいやいやでもね、剣道やってるしさ、本人も元から刀、軍刀?刃物さしてるしさ。
趣味がこうじてこういったものに興味を示すのも自然な流れだようん。
さあラスト行ってみよう。
北上「お」
ファッション誌?これは意外な。
そういえば皆で街に行く時はお洒落してくーなんて大井っちが言ってたっけ。
木曾も乙女なんだなあ。
その下もファッション誌ファッション誌ファッション誌ファ
北上「じゃなーい!」
一番下のファッション誌(表紙)を取り出し不自然に凹んでるカバーをつまんではずす。
タイトル:イケてる眼帯
北上「…」
そっちか
趣味がこうじてこういったものに興味を示すのも自然な流れだようん。
さあラスト行ってみよう。
北上「お」
ファッション誌?これは意外な。
そういえば皆で街に行く時はお洒落してくーなんて大井っちが言ってたっけ。
木曾も乙女なんだなあ。
その下もファッション誌ファッション誌ファッション誌ファ
北上「じゃなーい!」
一番下のファッション誌(表紙)を取り出し不自然に凹んでるカバーをつまんではずす。
タイトル:イケてる眼帯
北上「…」
そっちか
729: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:52:27.43 ID:RF25deVt0
大井っちの机は他のみんなとは違って色々なものが置いてある。
そもそも私も含めて机を使う事が皆少ないのだ。
何かを書くための最低限の文房具と小物を除けばあとは雑誌や本が仕舞ってあるだけ。
基本的に外か海にいるし今は大抵の事がスマホで出来るのが原因だろう。
球磨型には机を使うような趣味を持つ人がいないし。
そんな中大井っちの机には、例えば裁縫道具やアクセサリー、色々な色のペンやヘアピン櫛髪留め。
雑誌や本も裁縫料理ファッションなどなど沢山ある。
マヂ女子力ちょぉ高い。球磨型の女子力は全て大井っちに集約されていると言っても過言ではない。
そもそも私も含めて机を使う事が皆少ないのだ。
何かを書くための最低限の文房具と小物を除けばあとは雑誌や本が仕舞ってあるだけ。
基本的に外か海にいるし今は大抵の事がスマホで出来るのが原因だろう。
球磨型には机を使うような趣味を持つ人がいないし。
そんな中大井っちの机には、例えば裁縫道具やアクセサリー、色々な色のペンやヘアピン櫛髪留め。
雑誌や本も裁縫料理ファッションなどなど沢山ある。
マヂ女子力ちょぉ高い。球磨型の女子力は全て大井っちに集約されていると言っても過言ではない。
730: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:53:16.20 ID:RF25deVt0
私の髪を梳いてくれるのも、結んでくれるのも大井っちだ。
今使っている髪留めも大井っちの自作だとか。
改めて考えると大井っちに色々やってもらい過ぎである。
向こうが好きでやってくれているとはいえ。
北上「ありがとね」
流石になにか覗くようなものもないし、本命に行くとしよう。
今使っている髪留めも大井っちの自作だとか。
改めて考えると大井っちに色々やってもらい過ぎである。
向こうが好きでやってくれているとはいえ。
北上「ありがとね」
流石になにか覗くようなものもないし、本命に行くとしよう。
731: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:53:52.54 ID:RF25deVt0
北上「ゴクリ」
と口に出してみる。
いよいよ大本命。
あるかどうかは分からないけど。
さて中身は、
まずは猫関係の本。
いちいち反応してたらキリがないな。
次だ次。
と口に出してみる。
いよいよ大本命。
あるかどうかは分からないけど。
さて中身は、
まずは猫関係の本。
いちいち反応してたらキリがないな。
次だ次。
732: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:55:31.96 ID:RF25deVt0
北上「あ」
トランプゲーム攻略本だと?この前からやたらとトランプゲームを推してくると思ったら…これか。
しかも戦績は特に良くはない。
これは、CDか。随分古いものだ。
タイトルは『カレーライス』。なんで?
んー他も大したものはないなあ。
これは、メモ帳かな?
〇月〇日、皆で海に行った。
北上「うおっ!」
つい手を離してしまう。
まさか日記帳かこれ!
多摩姉がこんなもの付けてるとは…
トランプゲーム攻略本だと?この前からやたらとトランプゲームを推してくると思ったら…これか。
しかも戦績は特に良くはない。
これは、CDか。随分古いものだ。
タイトルは『カレーライス』。なんで?
んー他も大したものはないなあ。
これは、メモ帳かな?
〇月〇日、皆で海に行った。
北上「うおっ!」
つい手を離してしまう。
まさか日記帳かこれ!
多摩姉がこんなもの付けてるとは…
733: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:56:13.05 ID:RF25deVt0
日記帳の下には同じ日記帳がビッシリ詰まっていた。これだけの量。着任当時からつけていたに違いない。
大当たりを引いてしまった。
恐る恐る一番下の日記帳を取り出して、開く。
北上「って、ありゃ。やぶけてら」
前半のページがごっそり無くなってる。
残ってるのは…四年前の日付か。
〇月〇日、全部回収された。今日からここが最初のページになる。でも忘れるわけにはいかない。他の娘もきっとそうだ。
大当たりを引いてしまった。
恐る恐る一番下の日記帳を取り出して、開く。
北上「って、ありゃ。やぶけてら」
前半のページがごっそり無くなってる。
残ってるのは…四年前の日付か。
〇月〇日、全部回収された。今日からここが最初のページになる。でも忘れるわけにはいかない。他の娘もきっとそうだ。
734: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:57:01.02 ID:RF25deVt0
四年前?
というと、提督がここに着任した時期か?
でも回収ってなんだ回収って。
あれ、というか
北上「多摩姉っていつからここにいるんだ」
ここの艦娘は基本的に提督が来たあとに、つまりここ4年の間に着任している。
後は提督着任前からここにいるという吹雪、谷風。
でもだとしたら着任前からここにいるのは吹雪だけじゃないのか?
多摩姉も、それにあの口ぶりからして日向さんも。
他にもいるのか?
だとしたら何故。
というと、提督がここに着任した時期か?
でも回収ってなんだ回収って。
あれ、というか
北上「多摩姉っていつからここにいるんだ」
ここの艦娘は基本的に提督が来たあとに、つまりここ4年の間に着任している。
後は提督着任前からここにいるという吹雪、谷風。
でもだとしたら着任前からここにいるのは吹雪だけじゃないのか?
多摩姉も、それにあの口ぶりからして日向さんも。
他にもいるのか?
だとしたら何故。
735: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:57:35.41 ID:RF25deVt0
日向さん言ってたよね。提督が居なくなった鎮守府がどうなるか。そしてそれを知っているとも。
どうなったんだ?そもそもなんで前任者はいなくなった。
北上「…」
可能な限り綺麗に日記帳を元の状態に戻し引き出しを戻す。
さて面倒くさくなってきたぞお…
どうなったんだ?そもそもなんで前任者はいなくなった。
北上「…」
可能な限り綺麗に日記帳を元の状態に戻し引き出しを戻す。
さて面倒くさくなってきたぞお…
736: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:58:34.91 ID:RF25deVt0
阿武隈「北上さ~ん。いますうわっ!?」
北上「」
阿武隈「あの、何やってるんですか…」
北上「」
阿武隈「そのままうつ伏せてると鼻潰れますよ…」
北上「頭痛い」
阿武隈「エッ!?な、何か病気とかですか!」
北上「そうじゃないけど」
阿武隈「私に出来ることありますか?」
北上「ん~」
阿武隈「?」
北上「あぶぅの膝枕あんまり気持ちよくないしなあ」
阿武隈「おりゃ」ゲシッ
北上「ぐえ」
北上「」
阿武隈「あの、何やってるんですか…」
北上「」
阿武隈「そのままうつ伏せてると鼻潰れますよ…」
北上「頭痛い」
阿武隈「エッ!?な、何か病気とかですか!」
北上「そうじゃないけど」
阿武隈「私に出来ることありますか?」
北上「ん~」
阿武隈「?」
北上「あぶぅの膝枕あんまり気持ちよくないしなあ」
阿武隈「おりゃ」ゲシッ
北上「ぐえ」
737: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 02:59:25.79 ID:RF25deVt0
阿武隈「もう!変な心配させないでください」
北上「ごめんごめん。ちょっと疲れただけ」
阿武隈「…でも、顔色はあんまり良くなさそうですよ」
北上「そう、かな」
阿武隈「そうですよ」
流石にきつくなって仰向けになった私の横に座る阿武隈が、シュンと頭を下げる。
力になれない事を気にしているのだろうか?
そういえば
北上「おりゃ」ワシャ
阿武隈「ヒャァッ!ななななんですか急に!」
北上「いやさ、提督が阿武隈の前髪ワシャワシャやってたの思い出して。嫌だった?」
阿武隈「いや、じゃあないです、けど」
あれ、提督の時と反応が違う。もっとプンプンと怒るのを想像してたんだけど。
なんだか複雑そうな顔をされた。
北上「ごめんごめん。ちょっと疲れただけ」
阿武隈「…でも、顔色はあんまり良くなさそうですよ」
北上「そう、かな」
阿武隈「そうですよ」
流石にきつくなって仰向けになった私の横に座る阿武隈が、シュンと頭を下げる。
力になれない事を気にしているのだろうか?
そういえば
北上「おりゃ」ワシャ
阿武隈「ヒャァッ!ななななんですか急に!」
北上「いやさ、提督が阿武隈の前髪ワシャワシャやってたの思い出して。嫌だった?」
阿武隈「いや、じゃあないです、けど」
あれ、提督の時と反応が違う。もっとプンプンと怒るのを想像してたんだけど。
なんだか複雑そうな顔をされた。
738: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 03:02:34.21 ID:RF25deVt0
ちょいとばかり顔を赤くしてコチラを睨みつけてくるその表情は、しかし残念ながら余計に弄りたくさせるものでしかない。
北上「いやじゃないならないいよねー」ワシャワシャ
阿武隈「エェッ!続けちゃうんですかあ!やーめーてー」
北上「あ、じゃあやめる」
阿武隈「え」
北上「ほらそうやって物欲しそうな顔をする~」ワシャワシャ
阿武隈「キャー!!」
北上「いやじゃないならないいよねー」ワシャワシャ
阿武隈「エェッ!続けちゃうんですかあ!やーめーてー」
北上「あ、じゃあやめる」
阿武隈「え」
北上「ほらそうやって物欲しそうな顔をする~」ワシャワシャ
阿武隈「キャー!!」
739: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/11(月) 03:03:09.81 ID:RF25deVt0
ガラッ
北上「ん?」
阿武隈「?」
大井「この泥棒猫」
阿武隈「大井さん!?」
またこれか
ちなみにこの場合の泥棒猫は英語でhome wreckerとなる。
直接的な表現だよね。
阿武隈「北上さん現実逃避してないで何か言ってくださいよ!!」
北上「私ファンタならグレープがいいかなあ」
阿武隈「きーたーかーみーさーん!」
北上「ん?」
阿武隈「?」
大井「この泥棒猫」
阿武隈「大井さん!?」
またこれか
ちなみにこの場合の泥棒猫は英語でhome wreckerとなる。
直接的な表現だよね。
阿武隈「北上さん現実逃避してないで何か言ってくださいよ!!」
北上「私ファンタならグレープがいいかなあ」
阿武隈「きーたーかーみーさーん!」
745: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:41:57.45 ID:NNSlpbDu0
45匹目:猫と友人
一言で友人と言っても様々な種類がある、なんて言い方だとややもすればなんだか嫌な意味に取られるかもしれない。
親友とか友達とか腐れ縁とか、
立場上仕方なく付き合ってるとか便利だから友達やってるとか、
別にそんな友人にランクがあるなんて話じゃない。
例えば私も同じ球磨型姉妹でも一対一で話す時はそれぞれ違う対応をする。
他の艦娘や提督でも、それぞれ違った接し方になる。
ランクとかじゃなく、つまり距離感なのだろう。
近ければいいわけでも遠ければ悪いわけでもない。
その相手との最も適した距離が違うのだ。
一言で友人と言っても様々な種類がある、なんて言い方だとややもすればなんだか嫌な意味に取られるかもしれない。
親友とか友達とか腐れ縁とか、
立場上仕方なく付き合ってるとか便利だから友達やってるとか、
別にそんな友人にランクがあるなんて話じゃない。
例えば私も同じ球磨型姉妹でも一対一で話す時はそれぞれ違う対応をする。
他の艦娘や提督でも、それぞれ違った接し方になる。
ランクとかじゃなく、つまり距離感なのだろう。
近ければいいわけでも遠ければ悪いわけでもない。
その相手との最も適した距離が違うのだ。
746: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:43:03.37 ID:NNSlpbDu0
だからつまりこういった少し気分が落ち込んだ、
なんだかパァっと気晴らしをしたい時に適した、
ちょっと不思議な距離感の二人の友人を訪ねて
夕飯や風呂を終え少しずつ眠っていく鎮守府の中で昼間と変わらない明るさを漏らす工房の扉を開けて中へ入る
なんだかパァっと気晴らしをしたい時に適した、
ちょっと不思議な距離感の二人の友人を訪ねて
夕飯や風呂を終え少しずつ眠っていく鎮守府の中で昼間と変わらない明るさを漏らす工房の扉を開けて中へ入る
747: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:44:16.08 ID:NNSlpbDu0
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」
夕張「っていうネタ」
明石「あるじゃん?」
北上「ネタという言い方はアレだけど、まああるね」
夕張「こう、愛し合う二人がさ」
明石「色々なんやかんやすったもんだあって」
夕張「最終的にキスをするシーンとかで」
明石「エンダァァァァァァ!!!」
夕張「イヤァァァァ!!」
明石「ってコメントがつくノリ」
夕張「あるじゃん?」
北上「あるね」
明石「イヤァァァァ!!」
夕張「っていうネタ」
明石「あるじゃん?」
北上「ネタという言い方はアレだけど、まああるね」
夕張「こう、愛し合う二人がさ」
明石「色々なんやかんやすったもんだあって」
夕張「最終的にキスをするシーンとかで」
明石「エンダァァァァァァ!!!」
夕張「イヤァァァァ!!」
明石「ってコメントがつくノリ」
夕張「あるじゃん?」
北上「あるね」
748: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:45:13.87 ID:NNSlpbDu0
明石「アレのね」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」
夕張「の元ネタ」
明石「実は見たことがない」
北上「そだね」
北上「えそりだけ?」
明夕「「ソリダケ」
北上「ふz「エンダァァァァァァ!!!」「イヤァァァァ!!」誤魔化すなっ!!」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」
夕張「の元ネタ」
明石「実は見たことがない」
北上「そだね」
北上「えそりだけ?」
明夕「「ソリダケ」
北上「ふz「エンダァァァァァァ!!!」「イヤァァァァ!!」誤魔化すなっ!!」
749: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:46:33.71 ID:NNSlpbDu0
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」
夕張「ってほら、あの有名な」
明石「船沈むやつの主題歌」
北上「え?」
夕張「タイトル何だっけ」
明石「タイタニック!」
夕張「それだ」
北上「ボディーガードだよ」
夕張「え」
明石「え」
北上「え」
明石「イヤァァァァ!!」
夕張「ってほら、あの有名な」
明石「船沈むやつの主題歌」
北上「え?」
夕張「タイトル何だっけ」
明石「タイタニック!」
夕張「それだ」
北上「ボディーガードだよ」
夕張「え」
明石「え」
北上「え」
750: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:47:04.88 ID:NNSlpbDu0
北上「いやタイタニックはほら、We'll stay forever this way~♪って」
夕張「え、何それ」
明石「知らない」
北上「うっそでしょ。My Heart Will Go Onて曲」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」
夕張「じゃないの?」
北上「じゃないよ…」
夕張「え、何それ」
明石「知らない」
北上「うっそでしょ。My Heart Will Go Onて曲」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」
夕張「じゃないの?」
北上「じゃないよ…」
751: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:47:40.64 ID:NNSlpbDu0
夕張「イメージって怖いなって」
北上「ホントだよ…」
明石「タイタニックって船の先端でのあのシーンと」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァ…ァ…ヴッ」
夕張「だけで出来てると思ってた」
北上「ファンに刺されても知らないよ…というか明石もう限界じゃん」
明石「水水…」
夕張「はいはい」
明石「んっ…ッハー!夕張よく喉持つね」
夕張「えっへん」
北上「いやそんじゃなくてさ」
北上「ホントだよ…」
明石「タイタニックって船の先端でのあのシーンと」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァ…ァ…ヴッ」
夕張「だけで出来てると思ってた」
北上「ファンに刺されても知らないよ…というか明石もう限界じゃん」
明石「水水…」
夕張「はいはい」
明石「んっ…ッハー!夕張よく喉持つね」
夕張「えっへん」
北上「いやそんじゃなくてさ」
752: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:49:10.61 ID:NNSlpbDu0
明石「よく考えるとタイタニックって私達にとっては中々えぐい話よねー」
夕張「流石に氷山を見る機会は無かったけど、ああいった事故でいつ沈むかわからないものね」
北上「あ、もうその話題で行くんだ。タイタニック路線なんだ」
明石「砲弾とか魚雷で穴あけられるのもいやだけど、浅瀬とか氷山とかで底をえぐられるのも怖いわよね」
夕張「今で言ったらお腹を岩でえぐられるみたいな感じでしょ?ゾッとするわね」
北上「…船の底ってお腹なの?」
明石「お腹、でしょ?」
夕張「艦首が顔で」
北上「つまり腹ばいになって進んでいると」
明石「うーん…」
夕張「なんかそう言われると」
明石「キモい」
北上「だよね」
夕張「流石に氷山を見る機会は無かったけど、ああいった事故でいつ沈むかわからないものね」
北上「あ、もうその話題で行くんだ。タイタニック路線なんだ」
明石「砲弾とか魚雷で穴あけられるのもいやだけど、浅瀬とか氷山とかで底をえぐられるのも怖いわよね」
夕張「今で言ったらお腹を岩でえぐられるみたいな感じでしょ?ゾッとするわね」
北上「…船の底ってお腹なの?」
明石「お腹、でしょ?」
夕張「艦首が顔で」
北上「つまり腹ばいになって進んでいると」
明石「うーん…」
夕張「なんかそう言われると」
明石「キモい」
北上「だよね」
753: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:50:12.50 ID:NNSlpbDu0
夕張「そこへいくと今の私達みたいに立って進むって1番しっくりくるわよね」
明石「確かに。となるとタイタニックは画鋲を踏んでスっ転んだイメージか」
北上「イメージかな…」
夕張「それで沈むってのも、ねえ」
明石「でも元来船ってちょっとバランス崩したら海の藻屑だものね」
北上「私達がそこら辺異常なだけだもんね。水上で逆立ちする奴もいるし」
夕張「画鋲ってのも言い得て妙かもね」
明石「本当に些細なことでも沈むものね」
北上「どんな感覚なんだろうね」
明石「確かに。となるとタイタニックは画鋲を踏んでスっ転んだイメージか」
北上「イメージかな…」
夕張「それで沈むってのも、ねえ」
明石「でも元来船ってちょっとバランス崩したら海の藻屑だものね」
北上「私達がそこら辺異常なだけだもんね。水上で逆立ちする奴もいるし」
夕張「画鋲ってのも言い得て妙かもね」
明石「本当に些細なことでも沈むものね」
北上「どんな感覚なんだろうね」
754: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:50:57.22 ID:NNSlpbDu0
夕張「…」
明石「…」
北上「…ん?」
夕張「」スッ
画鋲「ヨロシクニキー」
明石「」スッ
北上「待て待て靴を脱ぐな裸足になるな」
夕張「そこは誰かを実験体にせずまずは自分達で試す私達を褒めて欲しい」
北上「それは当たり前の事であって褒められることではない」
明石「押さないでよ!絶対押さn「そおい!」プスッ ギャァァァァァ!!!」
北上「楽しそうだね…」
明石「…」
北上「…ん?」
夕張「」スッ
画鋲「ヨロシクニキー」
明石「」スッ
北上「待て待て靴を脱ぐな裸足になるな」
夕張「そこは誰かを実験体にせずまずは自分達で試す私達を褒めて欲しい」
北上「それは当たり前の事であって褒められることではない」
明石「押さないでよ!絶対押さn「そおい!」プスッ ギャァァァァァ!!!」
北上「楽しそうだね…」
755: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:51:35.16 ID:NNSlpbDu0
明石「条件反射的に叫んではみたけど意外と痛くはなかった」
夕張「はいバンソーコー」
明石「サンキュ」
北上「足の裏ってそんなに神経通ってるわけでもないのかな」
夕張「かもねー。そこら辺は人間と一緒なのかも」
明石「指しどころが悪かったか」
夕張「増やす?」
明石「おっきくする?」
北上「そこじゃないでしょおよ」
夕張「はいバンソーコー」
明石「サンキュ」
北上「足の裏ってそんなに神経通ってるわけでもないのかな」
夕張「かもねー。そこら辺は人間と一緒なのかも」
明石「指しどころが悪かったか」
夕張「増やす?」
明石「おっきくする?」
北上「そこじゃないでしょおよ」
756: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:52:10.21 ID:NNSlpbDu0
明石「バケツかぶりゃ治るしさ」
夕張「戦艦の砲撃でワンパン大破されるよかマシよマシ」
北上「そーだけどさ。いやそうじゃなくてね」
明石「まあここら辺はまた次の機会にやろっか」
夕張「そうね」
北上「持ち越したまま墓まで持ってって欲しい…」
夕張「戦艦の砲撃でワンパン大破されるよかマシよマシ」
北上「そーだけどさ。いやそうじゃなくてね」
明石「まあここら辺はまた次の機会にやろっか」
夕張「そうね」
北上「持ち越したまま墓まで持ってって欲しい…」
757: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:53:05.31 ID:NNSlpbDu0
明石「あれ、なんの話してたんだっけ」
夕張「装備改修における確実化はどの段階からやるのが最も効率的かみたいな話だった気がする」
北上「そんな難しくて答えのでにくい上にまともな会話をした覚えはない」
明石「何故ピンクは○○扱いされるのか」
夕張「おうおうおう。そんな○○○なスカート穿いて牛丼から瑞雲まで仕事を選ばない姿勢、さらには夏に○○○エプロンまで着ておいて○○を否定とはやりますなあ」
北上「言い方言い方」
明石「夏のアレはもう触れないで…」
夕張「あゴメン。マジごめん。まって、ちょっまち、いやほら似合ってたから、ね。ああいかないでいかないで待って待てえ!」
北上「えぇ…」
夕張「装備改修における確実化はどの段階からやるのが最も効率的かみたいな話だった気がする」
北上「そんな難しくて答えのでにくい上にまともな会話をした覚えはない」
明石「何故ピンクは○○扱いされるのか」
夕張「おうおうおう。そんな○○○なスカート穿いて牛丼から瑞雲まで仕事を選ばない姿勢、さらには夏に○○○エプロンまで着ておいて○○を否定とはやりますなあ」
北上「言い方言い方」
明石「夏のアレはもう触れないで…」
夕張「あゴメン。マジごめん。まって、ちょっまち、いやほら似合ってたから、ね。ああいかないでいかないで待って待てえ!」
北上「えぇ…」
758: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:53:49.38 ID:NNSlpbDu0
明石「見た目はともかくこのスカートは実は気に入ってる」
夕張「工房熱いもんねぇ」
北上「立ち直り早い」
明石「まあ結局普段はタンクトップとツナギなんだけどね」
夕張「軽い洗いやすい脱ぎやすい、比較的涼しい汚れやすいけど気にならない。臭いは、うん…」
北上「○○も付けないってどうなのよ」
明石「むしろ食らったら破ける戦闘時に○○付けてく方がおかしいと思う」
北上「いやそっちも十分おかしいのは重々承知だけどだからと言ってこっちがおかしくない訳では無い」
夕張「たまに○○○も履いてない時がある」
北上「え」
明石「え」
夕張「え」
夕張「工房熱いもんねぇ」
北上「立ち直り早い」
明石「まあ結局普段はタンクトップとツナギなんだけどね」
夕張「軽い洗いやすい脱ぎやすい、比較的涼しい汚れやすいけど気にならない。臭いは、うん…」
北上「○○も付けないってどうなのよ」
明石「むしろ食らったら破ける戦闘時に○○付けてく方がおかしいと思う」
北上「いやそっちも十分おかしいのは重々承知だけどだからと言ってこっちがおかしくない訳では無い」
夕張「たまに○○○も履いてない時がある」
北上「え」
明石「え」
夕張「え」
759: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:54:38.06 ID:NNSlpbDu0
北上「それは引くよ流石に引くよ」
明石「え、いや、嘘でしょ?ねえ」
夕張「いや違、というかえ?明石?明石も?言ってなかったっけ?」
明石「言ってないって聞いてないって聞いてたらその時点でドン引きしてるって」
夕張「ほら!だってツナギなら透けないし!スカートと違って見られることないじゃん!いらないじゃん!」
北上「叫ばなくても」
明石「バリちゃん」
夕張「な、何よ。あか、あかしん?あかー、あかちん…赤チン?赤チン!ブフッww」
北上「自分で言って自分で笑ってどうするよ」
明石「オラァ」スパナ
夕張「ヴェアァァッ!?」
明石「え、いや、嘘でしょ?ねえ」
夕張「いや違、というかえ?明石?明石も?言ってなかったっけ?」
明石「言ってないって聞いてないって聞いてたらその時点でドン引きしてるって」
夕張「ほら!だってツナギなら透けないし!スカートと違って見られることないじゃん!いらないじゃん!」
北上「叫ばなくても」
明石「バリちゃん」
夕張「な、何よ。あか、あかしん?あかー、あかちん…赤チン?赤チン!ブフッww」
北上「自分で言って自分で笑ってどうするよ」
明石「オラァ」スパナ
夕張「ヴェアァァッ!?」
760: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:55:21.32 ID:NNSlpbDu0
明石「夕張」
夕張「な、何よ。あか、しw」プルプル
北上「肩で笑うな肩で」
明石「私達女の子なのよ」
夕張「う、うん」
明石「ノー○○はまあいいわ」
北上「いいのだろうか」
明石「○○○○はダメよ」
夕張「ゴメン…私が間違ってた」
明石「分かればいいのよ、分かれば」
夕張「明石!」
明石「夕張!」
夕明「「グワシッ」」
北上「口で言いよった…」
夕張「な、何よ。あか、しw」プルプル
北上「肩で笑うな肩で」
明石「私達女の子なのよ」
夕張「う、うん」
明石「ノー○○はまあいいわ」
北上「いいのだろうか」
明石「○○○○はダメよ」
夕張「ゴメン…私が間違ってた」
明石「分かればいいのよ、分かれば」
夕張「明石!」
明石「夕張!」
夕明「「グワシッ」」
北上「口で言いよった…」
761: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:55:55.09 ID:NNSlpbDu0
北上「というか今こそアレじゃないの」
夕張「え?何が」
明石「アレ?」
北上「いや、ほら。ってまあ忘れたならその方がいいんだけどさ」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「わっビックリした」
夕張「え」
北上「え」
明石「え」
明石「いやぁぁぁぁダメダメいたたたたおさげはダメェェ!!」
夕張「ええいこの肝心な時に○○めこれでもか!これでもか!」
北上「元気だねえー」
夕張「え?何が」
明石「アレ?」
北上「いや、ほら。ってまあ忘れたならその方がいいんだけどさ」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「わっビックリした」
夕張「え」
北上「え」
明石「え」
明石「いやぁぁぁぁダメダメいたたたたおさげはダメェェ!!」
夕張「ええいこの肝心な時に○○めこれでもか!これでもか!」
北上「元気だねえー」
762: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:56:38.18 ID:NNSlpbDu0
明石「で、何の゛話ずる゛」
夕張「そうねえ」
北上「まず涙拭きなよ。というかもう話戻す気はないんだね」
明石「じゃ服装の話で」
北上「戻ってるし」
夕張「ハイ!」
明石「はい夕張さん」
夕張「お腹が寒い」
北上「あー」
明石「私も結構ギリギリだけど、夕張はモロよね」
夕張「別に人間みたくヤワじゃないから寒さでお腹壊すってことはないんだけど、たまにヒヤッとくるのはなんともいただけない」
夕張「そうねえ」
北上「まず涙拭きなよ。というかもう話戻す気はないんだね」
明石「じゃ服装の話で」
北上「戻ってるし」
夕張「ハイ!」
明石「はい夕張さん」
夕張「お腹が寒い」
北上「あー」
明石「私も結構ギリギリだけど、夕張はモロよね」
夕張「別に人間みたくヤワじゃないから寒さでお腹壊すってことはないんだけど、たまにヒヤッとくるのはなんともいただけない」
763: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:57:29.82 ID:NNSlpbDu0
北上「私もさ、今はいいんだけどね。雷巡になるとアレだよアレ」
明石「色はまあいいけどね」
夕張「何故ヘソ出しだしって感じよね」
北上「大井っちもだいぶ応えてるみたいでさ」
明石「そうなの?」
北上「ちょっと元気ないというか、テンションが低い」
夕張「大丈夫?修理する?」
北上「そんな○○○○ ○○みたいな感覚で人体改造申し出られても」
明石「安くしとくわよ」
北上「金を取る気だったかこのマッドサイエンティストズ」
夕張「ハッ、ハッ、ハッ!」
明石「フーーン!!」
北上「何故よりによって逆再生の方を」
明石「色はまあいいけどね」
夕張「何故ヘソ出しだしって感じよね」
北上「大井っちもだいぶ応えてるみたいでさ」
明石「そうなの?」
北上「ちょっと元気ないというか、テンションが低い」
夕張「大丈夫?修理する?」
北上「そんな○○○○ ○○みたいな感覚で人体改造申し出られても」
明石「安くしとくわよ」
北上「金を取る気だったかこのマッドサイエンティストズ」
夕張「ハッ、ハッ、ハッ!」
明石「フーーン!!」
北上「何故よりによって逆再生の方を」
764: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:58:08.10 ID:NNSlpbDu0
夕張「服装自由なら良かったのにね」
明石「着なきゃいけない機会が多いもんね~」
北上「二人は比較的楽なんじゃない?ツナギとかで」
夕張「いやいや、私は意外と出撃あったりで制服着なきゃだし」
北上「あー対潜番長か」
夕張「あと兵装実験で」
北上「なるなる」
明石「私は出撃はほぼないんだけど」
夕張「ほぼ?」
北上「ほぼ…」
明石Lv37「私の練度を聞きたいかね、え?」
明石「着なきゃいけない機会が多いもんね~」
北上「二人は比較的楽なんじゃない?ツナギとかで」
夕張「いやいや、私は意外と出撃あったりで制服着なきゃだし」
北上「あー対潜番長か」
夕張「あと兵装実験で」
北上「なるなる」
明石「私は出撃はほぼないんだけど」
夕張「ほぼ?」
北上「ほぼ…」
明石Lv37「私の練度を聞きたいかね、え?」
765: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:58:41.31 ID:NNSlpbDu0
明石「売店あるでしょ?」
夕張「あー制服か」
北上「そこは別に服装自由なんじゃないの?艤装使うわけじゃないし」
明石「上の意向なので…」
夕張「あー…」
北上「別にバレないじゃん」
明石「あとやっぱ工房以外もツナギってのは流石に女子力が…」
夕張「そんなんの気にしてどーするの」
明石「○○○○にはわからないでしょーね」
夕張「ぐっ…」
夕張「あー制服か」
北上「そこは別に服装自由なんじゃないの?艤装使うわけじゃないし」
明石「上の意向なので…」
夕張「あー…」
北上「別にバレないじゃん」
明石「あとやっぱ工房以外もツナギってのは流石に女子力が…」
夕張「そんなんの気にしてどーするの」
明石「○○○○にはわからないでしょーね」
夕張「ぐっ…」
766: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 02:59:43.37 ID:NNSlpbDu0
北上「でも殆ど周りは女性だしいいんじゃない?○○○○はともかく」
明石「そりゃまあそういう気持ちもあるけど、○○○○はともかく」
夕張「あれよ、私はもう泣く一歩手前よ」
北上「やっぱ提督か」
明石「え、いや~別にそんな///」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
北上「イヤ~ウィルオ~ルウェイズラ~ヴュ~ウ~~ウ~」
明石「お~」パチパチ
夕張「さっすがぁ」パチパチ
北上「ツッコんでよ」
明石「そりゃまあそういう気持ちもあるけど、○○○○はともかく」
夕張「あれよ、私はもう泣く一歩手前よ」
北上「やっぱ提督か」
明石「え、いや~別にそんな///」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
北上「イヤ~ウィルオ~ルウェイズラ~ヴュ~ウ~~ウ~」
明石「お~」パチパチ
夕張「さっすがぁ」パチパチ
北上「ツッコんでよ」
767: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:00:15.92 ID:NNSlpbDu0
明石「逆になんで夕張は提督の目が気にならないの」
夕張「普段工房でのだらしなさをあれ程見せつけておいて今更外面よくしてもよ」
北上「忘れかけてたけどツナギタンクトップノー○○も相当だからね」
明石「流石に店員の時くらいはしっかりしたいじゃない」
夕張「今更でしょ」
北上「今更だよ、二人とも」
夕張「普段工房でのだらしなさをあれ程見せつけておいて今更外面よくしてもよ」
北上「忘れかけてたけどツナギタンクトップノー○○も相当だからね」
明石「流石に店員の時くらいはしっかりしたいじゃない」
夕張「今更でしょ」
北上「今更だよ、二人とも」
768: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:00:42.44 ID:NNSlpbDu0
明石「正直ツナギは癖になる」
夕張「分かりあじがある」
北上「ないないありません」
明石「というわけで用意した洗いたてのツナギ」
夕張「私のならサイズ的に履ける」
北上「よし、私が履こう」
夕明「「どうぞどうぞ」」
北上「ノれよ」
夕張「分かりあじがある」
北上「ないないありません」
明石「というわけで用意した洗いたてのツナギ」
夕張「私のならサイズ的に履ける」
北上「よし、私が履こう」
夕明「「どうぞどうぞ」」
北上「ノれよ」
769: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:03:10.54 ID:NNSlpbDu0
北上「意外とぶかぶかじゃないんだね」ゴソゴソ
明石「ゴムできゅっとするタイプなの」
夕張「艦娘は熱とか衝撃には強いから役割としては破片や汚れがつかないようにってのが主なんだ」
北上「へ~、このまま着てファスナー?」ゴソゴソ
明石「そうそう。耐熱とかあるともっと太くてゴワゴワしてたりするのよ」
夕張「おーいい感じ~」
北上「うん。だいぶ暑さも引いたこの時期のこの時間帯でもわかるこの暑さ」
明石「不思議なものでね、1度中で汗まみれになると逆にどうでもよくなるのよ」
夕張「どれくらい汗貯められるかな~とか考え出すくらい」
北上「怖っ
明石「ゴムできゅっとするタイプなの」
夕張「艦娘は熱とか衝撃には強いから役割としては破片や汚れがつかないようにってのが主なんだ」
北上「へ~、このまま着てファスナー?」ゴソゴソ
明石「そうそう。耐熱とかあるともっと太くてゴワゴワしてたりするのよ」
夕張「おーいい感じ~」
北上「うん。だいぶ暑さも引いたこの時期のこの時間帯でもわかるこの暑さ」
明石「不思議なものでね、1度中で汗まみれになると逆にどうでもよくなるのよ」
夕張「どれくらい汗貯められるかな~とか考え出すくらい」
北上「怖っ
770: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:03:43.30 ID:NNSlpbDu0
北上「やっぱこれ○○はともかく○○は必須でしょ。汗伝ってくのすっごい気持ち悪そう」
明石「そうだそうだー」
夕張「えー逆に何も無い方がいいってならない?」
北上「いやならんでしょ。今私○○○とシャツだけどもう1枚汗吸収用になにか着たいなって思ってるもん」
明石「…オムツ?」
夕張「ハッ!?」
北上「ハッ!じゃないでしょ。はぁ?でしょそこは」
明石「そうだそうだー」
夕張「えー逆に何も無い方がいいってならない?」
北上「いやならんでしょ。今私○○○とシャツだけどもう1枚汗吸収用になにか着たいなって思ってるもん」
明石「…オムツ?」
夕張「ハッ!?」
北上「ハッ!じゃないでしょ。はぁ?でしょそこは」
771: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:04:27.46 ID:NNSlpbDu0
明石「こうも変わった服装の多い環境だと感覚が麻痺っちゃうじゃん?」
北上「麻痺というか神経死んでるレベルだよね」
夕張「島風ちゃんを見て何も思わなくなってからが本番」
明石「確かに」
北上「同意せざるを得ない」
夕張「脱げるという性質上ただ露出が多いだけなのはあまり気にならなくなる」
明石「他人事だからだけどね」
北上「着てる本人はどう思ってるのかな」
夕張「慣れだって」
北上「慣れかー」
明石「慣れよねー」
夕張「慣れなのよね」
北上「いや○○○○はない」
明石「慣れない、成れない」
夕張「それはもういいでしょ」
北上「麻痺というか神経死んでるレベルだよね」
夕張「島風ちゃんを見て何も思わなくなってからが本番」
明石「確かに」
北上「同意せざるを得ない」
夕張「脱げるという性質上ただ露出が多いだけなのはあまり気にならなくなる」
明石「他人事だからだけどね」
北上「着てる本人はどう思ってるのかな」
夕張「慣れだって」
北上「慣れかー」
明石「慣れよねー」
夕張「慣れなのよね」
北上「いや○○○○はない」
明石「慣れない、成れない」
夕張「それはもういいでしょ」
772: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:05:11.80 ID:NNSlpbDu0
明石「第3回チキチキマシン猛レース。最強の服装は誰か!選手権」
夕張「k~hッhッhッhッhッhッ」
北上「ケンケンの声真似の完成度の高さが怖い」
夕張「喉にきつい」
北上「というか私もうツナギ脱いでいい?」
夕張「残念ながら制服はこちらが預かっている」
明石「そしてツナギを脱いだら○○のみ。つまり、分かるね?」
北上「分からん。分かりたくない」
夕張「ところでチキチキってどういう意味?」
明石「さあ?元ネタあるのかな。チキチキマシンが最初だと思ってたけど」
北上「どうだろ。なんか海外に元ネタあるんじゃない?」
夕張「あれだ!チキンレースのような命の駆け引きからとってチキチキだ!」
明石「レースならカツカツじゃないの?」
夕張「k~hッhッhッhッhッhッ」
北上「ケンケンの声真似の完成度の高さが怖い」
夕張「喉にきつい」
北上「というか私もうツナギ脱いでいい?」
夕張「残念ながら制服はこちらが預かっている」
明石「そしてツナギを脱いだら○○のみ。つまり、分かるね?」
北上「分からん。分かりたくない」
夕張「ところでチキチキってどういう意味?」
明石「さあ?元ネタあるのかな。チキチキマシンが最初だと思ってたけど」
北上「どうだろ。なんか海外に元ネタあるんじゃない?」
夕張「あれだ!チキンレースのような命の駆け引きからとってチキチキだ!」
明石「レースならカツカツじゃないの?」
773: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:05:41.09 ID:NNSlpbDu0
北上「で、私の制服なんだけどさ」
夕張「さあ始まりましたチキチキなんとか選手権!」
北上「記憶力」
明石「はい!一番明石!」
北上「主催者から挑んでいくスタイル」
明石「武蔵さん」
北上「あー」
夕張「あー」
夕張「さあ始まりましたチキチキなんとか選手権!」
北上「記憶力」
明石「はい!一番明石!」
北上「主催者から挑んでいくスタイル」
明石「武蔵さん」
北上「あー」
夕張「あー」
774: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:06:22.94 ID:NNSlpbDu0
北上「アレは、服なのだろうか」
明石「もう布よね。○○ですらない」
夕張「本人が脳筋よりで色気とかないからなんとなく誤魔化されてるけどほぼ裸よね」
北上「武人的なキャラや褐色肌、ゴッツイ艤装で誤魔化されてる感は否めない」
明石「艤装で偽装ってね」
明石「艤装でg「エンダァァァァァァ!!!」「イヤ~」ゴメンナサイ」
夕張「次!私!アイオワ!」
北上「あー」
明石「あー」
明石「もう布よね。○○ですらない」
夕張「本人が脳筋よりで色気とかないからなんとなく誤魔化されてるけどほぼ裸よね」
北上「武人的なキャラや褐色肌、ゴッツイ艤装で誤魔化されてる感は否めない」
明石「艤装で偽装ってね」
明石「艤装でg「エンダァァァァァァ!!!」「イヤ~」ゴメンナサイ」
夕張「次!私!アイオワ!」
北上「あー」
明石「あー」
775: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:06:55.19 ID:NNSlpbDu0
北上「サラ姉にあんな呼ばわりされるという」
明石「服装自体は割と長門型よりというか、私達基準ではそれほど変でもないのよね」
夕張「配色も、まああっちの文化という事で納得はできるわね」
北上「○だよね○」
明石「長門さんも陸奥さんもそこはしっかり守ってるというのに」
夕張「零れ落ちそうな○という表現が最も似合う艦娘」
明石「激しく同意」
明石「服装自体は割と長門型よりというか、私達基準ではそれほど変でもないのよね」
夕張「配色も、まああっちの文化という事で納得はできるわね」
北上「○だよね○」
明石「長門さんも陸奥さんもそこはしっかり守ってるというのに」
夕張「零れ落ちそうな○という表現が最も似合う艦娘」
明石「激しく同意」
776: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:07:40.95 ID:NNSlpbDu0
北上「武蔵さんのあとだとアレだけど祥鳳さん」
明石「服を着ると誰かわからない人」
夕張「今思ったんだけどさ」
北上「ん?」
夕張「祥鳳って一応弓の邪魔だから副半脱ぎでサラシもキッと巻いてるわけじゃん?」
明石「まあそうよね。一応」
北上「一応」
夕張「逆に武蔵さんって一応隠しておこうみたいな感じで普通に巻いてるわけだよね」
明石「多分ね。一応」
北上「一応」
夕張「つまり祥鳳は意外と○が大きい説」
明石「ある」
北上「あ、そっちに話がいくのか」
明石「服を着ると誰かわからない人」
夕張「今思ったんだけどさ」
北上「ん?」
夕張「祥鳳って一応弓の邪魔だから副半脱ぎでサラシもキッと巻いてるわけじゃん?」
明石「まあそうよね。一応」
北上「一応」
夕張「逆に武蔵さんって一応隠しておこうみたいな感じで普通に巻いてるわけだよね」
明石「多分ね。一応」
北上「一応」
夕張「つまり祥鳳は意外と○が大きい説」
明石「ある」
北上「あ、そっちに話がいくのか」
777: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:08:11.69 ID:NNSlpbDu0
明石「私が一番でかい」ドヤァ
夕張「モゲればいいのに」チッ
明石「似非メロンw」
夕張「お?やる?やっちゃう?私は最後まで抵抗するわよ」
明石「もちろん?」
夕明「「拳で」」ガシッ
北上「仲良しか」
夕張「GGかストファーどっちがいー?」
明石「ストファー」
北上「うわしかもスーファミ版」
夕張「モゲればいいのに」チッ
明石「似非メロンw」
夕張「お?やる?やっちゃう?私は最後まで抵抗するわよ」
明石「もちろん?」
夕明「「拳で」」ガシッ
北上「仲良しか」
夕張「GGかストファーどっちがいー?」
明石「ストファー」
北上「うわしかもスーファミ版」
778: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:08:43.06 ID:NNSlpbDu0
夕張「ザンギ禁止ね」
明石「投げハメ禁止が許されるのは小学生まで」
夕張「核抑止論みたいな事になるけどよろしいか」
明石「禁止で」
夕張「うい」
北上「…」
こうなるともう周りは見えちゃいないだろう。
こちらから押しかけたとはいえ勝手に対戦始めるとは相変わらず自由だ。
明石「投げハメ禁止が許されるのは小学生まで」
夕張「核抑止論みたいな事になるけどよろしいか」
明石「禁止で」
夕張「うい」
北上「…」
こうなるともう周りは見えちゃいないだろう。
こちらから押しかけたとはいえ勝手に対戦始めるとは相変わらず自由だ。
779: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:09:19.74 ID:NNSlpbDu0
北上「今のうちに服探そう」
さっきツナギを持ってきた時に置いてきたのだろう。なら向こうにあるはずだ。
提督「おーい穀潰しどもー」ガチャ
北上「ありゃ、提督?どったの」
提督「お前こそ、というかなんだその格好」
北上「色々ありましてな~。提督はどったの?」
提督「作業してるわけでもないのに工房の明かり全部つけっぱにしてるアホ共に一言言いに」
北上「ご苦労さまで~す」
提督「お前からも言ってやってくれよ…」
北上「言ってもねえ…」
さっきツナギを持ってきた時に置いてきたのだろう。なら向こうにあるはずだ。
提督「おーい穀潰しどもー」ガチャ
北上「ありゃ、提督?どったの」
提督「お前こそ、というかなんだその格好」
北上「色々ありましてな~。提督はどったの?」
提督「作業してるわけでもないのに工房の明かり全部つけっぱにしてるアホ共に一言言いに」
北上「ご苦労さまで~す」
提督「お前からも言ってやってくれよ…」
北上「言ってもねえ…」
780: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:09:58.71 ID:NNSlpbDu0
あったあった。
制服は驚くほど綺麗に畳まれていた。変なところキッチリしてるんだから…
北上「んしょっと」
提督「だぁっちょ!なんで脱いでんの!」
北上「いやいつまでもこれはイヤだし。下はシャツだから大丈夫大丈夫」
提督「そうか、そうか?」
北上「私はシャツ1枚で事足りるスタイルだしさ。ところでさっき話してたんだけど武蔵さんの服装どう思う?」
提督「武蔵?あー、大和と逆だったらめちゃくちゃ○○かったと思う」
北上「おー…おー!流石に男の意見は違うねえ」
提督「褒められてんのか俺」
北上「褒めてる褒めてる。ほっ」
提督「ブッ!?」
おっと、下は○○○だけだった。
制服は驚くほど綺麗に畳まれていた。変なところキッチリしてるんだから…
北上「んしょっと」
提督「だぁっちょ!なんで脱いでんの!」
北上「いやいつまでもこれはイヤだし。下はシャツだから大丈夫大丈夫」
提督「そうか、そうか?」
北上「私はシャツ1枚で事足りるスタイルだしさ。ところでさっき話してたんだけど武蔵さんの服装どう思う?」
提督「武蔵?あー、大和と逆だったらめちゃくちゃ○○かったと思う」
北上「おー…おー!流石に男の意見は違うねえ」
提督「褒められてんのか俺」
北上「褒めてる褒めてる。ほっ」
提督「ブッ!?」
おっと、下は○○○だけだった。
781: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:10:40.97 ID:NNSlpbDu0
提督「恥じらい持てよお前らは…」
北上「破けるし脱げるししょうがない」
提督「そりゃまあ、そうだな。俺も見慣れてるところあるし…」
北上「ありがたみ薄れる?」
提督「ほんとそれ」
北上「ならなんで私の見て驚いたのさ」
提督「北上は見慣れてない」
北上「あんまり露出多くないもんねこれ」
提督「一応そのスカートは一般的には短い部類だと言っておこう」
北上「そうかあ。提督には見慣れた○○○と見慣れない○○○があるのかあ」
提督「やめてマジやめてホントやめて」
北上「破けるし脱げるししょうがない」
提督「そりゃまあ、そうだな。俺も見慣れてるところあるし…」
北上「ありがたみ薄れる?」
提督「ほんとそれ」
北上「ならなんで私の見て驚いたのさ」
提督「北上は見慣れてない」
北上「あんまり露出多くないもんねこれ」
提督「一応そのスカートは一般的には短い部類だと言っておこう」
北上「そうかあ。提督には見慣れた○○○と見慣れない○○○があるのかあ」
提督「やめてマジやめてホントやめて」
782: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:11:09.66 ID:NNSlpbDu0
北上「見たいなら見せてもいいんだよ?」
提督「ばっかおめえこういうのは見えちゃうからいいんだよ!」
北上「力説されてもよ」
提督「大事なとこだから」
北上「そんな私でも重雷装艦になると露出が一気に」
提督「確かに、な」
北上「肌見せるのはあまりいいとは言えないけど、提督を誘惑するのは面白そうだねぇ」
提督「物騒な事考えるな」
提督「ばっかおめえこういうのは見えちゃうからいいんだよ!」
北上「力説されてもよ」
提督「大事なとこだから」
北上「そんな私でも重雷装艦になると露出が一気に」
提督「確かに、な」
北上「肌見せるのはあまりいいとは言えないけど、提督を誘惑するのは面白そうだねぇ」
提督「物騒な事考えるな」
783: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:11:44.52 ID:NNSlpbDu0
とはいえやはりあれは恥ずかしそうだ。
大井っちが落ち込むのもまあ分かる。
北上「服だけこのままならなあ」
提督「…お、俺はその服が一番似合うと思うぞ!」
北上「そう?そかなぁ。そっかー」
提督「そうそう」
北上「ほらほら、どう?可愛い?」
提督「可愛い可愛い」
北上「○はないんだけどねえ」
提督「男が○だけ見てると思うなよ。目に付くだけだ」
北上「訂正されたのにむしろ酷くなった気がする」
大井っちが落ち込むのもまあ分かる。
北上「服だけこのままならなあ」
提督「…お、俺はその服が一番似合うと思うぞ!」
北上「そう?そかなぁ。そっかー」
提督「そうそう」
北上「ほらほら、どう?可愛い?」
提督「可愛い可愛い」
北上「○はないんだけどねえ」
提督「男が○だけ見てると思うなよ。目に付くだけだ」
北上「訂正されたのにむしろ酷くなった気がする」
784: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:13:01.87 ID:NNSlpbDu0
北上「○○○ー」
提督「シャツしか見えない」
北上「悲しいね」
提督「現実だよ」
北上「萌え袖、はできないね。セーターでも買うかな」
提督「じきに寒くなるからな」
北上「ヘソ出し~」
提督「改造したらそんな感じだな」
北上「スースーしてやな感じ。摩耶さんとかよくあんなので動けるよね」
提督「へそどころか○○だぞ○○」
提督「シャツしか見えない」
北上「悲しいね」
提督「現実だよ」
北上「萌え袖、はできないね。セーターでも買うかな」
提督「じきに寒くなるからな」
北上「ヘソ出し~」
提督「改造したらそんな感じだな」
北上「スースーしてやな感じ。摩耶さんとかよくあんなので動けるよね」
提督「へそどころか○○だぞ○○」
785: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:13:39.14 ID:NNSlpbDu0
北上「○○○○~」
提督「やめろたくしあげるなおっさんが女子中学生に○○○晒さしてるみたいな感じで罪悪感がやばい」
北上「おっさんじゃないでしょ」
提督「世の中30超えたらおっさんだよ」
北上「それに常日頃女性の○○見てるくせに今更でしょ」
提督「不可抗力!不可抗力ですぅ」
北上「可能でしょ」
提督「男には無理です」
提督「やめろたくしあげるなおっさんが女子中学生に○○○晒さしてるみたいな感じで罪悪感がやばい」
北上「おっさんじゃないでしょ」
提督「世の中30超えたらおっさんだよ」
北上「それに常日頃女性の○○見てるくせに今更でしょ」
提督「不可抗力!不可抗力ですぅ」
北上「可能でしょ」
提督「男には無理です」
786: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:14:06.76 ID:NNSlpbDu0
北上「○○、も私はあんまりなあ」
提督「そだなぁ」
北上「あ、うなじとか?」
提督「なあ北上」
北上「ん?」
提督「どうしんだよさっきから。何か変なテンションっつーかさ」
北上「…へ?」
テンション?テンションが何か変だろうか。
私は何か変だろうか。
私?
提督「そだなぁ」
北上「あ、うなじとか?」
提督「なあ北上」
北上「ん?」
提督「どうしんだよさっきから。何か変なテンションっつーかさ」
北上「…へ?」
テンション?テンションが何か変だろうか。
私は何か変だろうか。
私?
787: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:14:52.80 ID:NNSlpbDu0
北上「ムグゥ」
提督「き、北上さん?」
何かに吸い寄せられるように、提督の体に泣きつくような形で顔をうずめた。
北上「提督」
提督「はい」
北上「私変だ」
提督「…みたいだな」
北上「どうしよう」
提督「どうしよって言われてもな」
北上「提督は提督なんだからなんとかしてよ」
提督「提督は提督だけどなんともできません」
提督「き、北上さん?」
何かに吸い寄せられるように、提督の体に泣きつくような形で顔をうずめた。
北上「提督」
提督「はい」
北上「私変だ」
提督「…みたいだな」
北上「どうしよう」
提督「どうしよって言われてもな」
北上「提督は提督なんだからなんとかしてよ」
提督「提督は提督だけどなんともできません」
788: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:15:32.29 ID:NNSlpbDu0
北上「なんかもう頭ん中ぐちゃぐちゃなんだ」
提督「いつからだよ」
北上「…さっきから?でも気づかなかっただけで前からずっとぐちゃぐちゃだった気がする」
提督「ぐちゃぐちゃってどんな感じだよ」
北上「んー。灰色の画用紙に黒い筆で書き殴ったみたいな」
提督「なんか悪夢みたいな話だな」
北上「悪いかどうかは分からないけど、なんだか夢みたいなのは確かだよ」
提督「そっか」ポン
北上「」ビクッ
提督「うおっ、わりぃわりぃ。いやだったか?」
北上「いや、別に」
提督は、あの何だか懐かしい手でそのまま私を撫でてくれた。
提督「いつからだよ」
北上「…さっきから?でも気づかなかっただけで前からずっとぐちゃぐちゃだった気がする」
提督「ぐちゃぐちゃってどんな感じだよ」
北上「んー。灰色の画用紙に黒い筆で書き殴ったみたいな」
提督「なんか悪夢みたいな話だな」
北上「悪いかどうかは分からないけど、なんだか夢みたいなのは確かだよ」
提督「そっか」ポン
北上「」ビクッ
提督「うおっ、わりぃわりぃ。いやだったか?」
北上「いや、別に」
提督は、あの何だか懐かしい手でそのまま私を撫でてくれた。
789: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:16:12.75 ID:NNSlpbDu0
提督「今もぐちゃぐちゃか?」
北上「ぐちゃぐちゃー、だね」
提督「同じ感じ?」
北上「んーちょっと違う。だいぶ違う」
提督「違うのか」
北上「うん。なんだろ。沸騰したお湯みたいな」
提督「なんだそりゃ」
北上「分かんない。暖かいんだけど熱くて、でも悪い感じはしないかも」
提督「ふーん。よくわからんな」ナデナデ
北上「私もー」
北上「ぐちゃぐちゃー、だね」
提督「同じ感じ?」
北上「んーちょっと違う。だいぶ違う」
提督「違うのか」
北上「うん。なんだろ。沸騰したお湯みたいな」
提督「なんだそりゃ」
北上「分かんない。暖かいんだけど熱くて、でも悪い感じはしないかも」
提督「ふーん。よくわからんな」ナデナデ
北上「私もー」
790: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:16:57.12 ID:NNSlpbDu0
提督「こうしてるとさ」ナデナデ
北上「ん?」スリスリ
提督「やっぱお前猫だなって」ナデナデ
北上「そう?そうかな」
提督「そうだ」
北上「ふふふ、実は私前世が猫なのだよ」
提督「船はどこいった船は」
北上「船の前が猫だったのさ。真っ黒な黒猫~」
提督「船の付喪神なのに船の前があるのかよ」
北上「じゃあ船のあとに猫になったんだ。兄弟もいたんだよ。アレ?姉妹かも」
提督「球磨猫に多摩猫に大井猫、木曾猫か」
北上「球磨姉ちゃんは熊だよ熊」
北上「ん?」スリスリ
提督「やっぱお前猫だなって」ナデナデ
北上「そう?そうかな」
提督「そうだ」
北上「ふふふ、実は私前世が猫なのだよ」
提督「船はどこいった船は」
北上「船の前が猫だったのさ。真っ黒な黒猫~」
提督「船の付喪神なのに船の前があるのかよ」
北上「じゃあ船のあとに猫になったんだ。兄弟もいたんだよ。アレ?姉妹かも」
提督「球磨猫に多摩猫に大井猫、木曾猫か」
北上「球磨姉ちゃんは熊だよ熊」
791: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:17:24.92 ID:NNSlpbDu0
北上「ていとーグエッ」
提督「上向くの禁止」ギュッ
北上「なんでさー」
撫でていた手でやんわりと頭を抑えられた。
提督「いやほら、そのさ。女子中学生程度の身体とはいえ人一人の体重でそう大胆に今以上に寄りかかられるときついので」
北上「提督なんだからそれくらい支えなよ~」
提督「提督なんだけどそこまでは支えられん」
提督「上向くの禁止」ギュッ
北上「なんでさー」
撫でていた手でやんわりと頭を抑えられた。
提督「いやほら、そのさ。女子中学生程度の身体とはいえ人一人の体重でそう大胆に今以上に寄りかかられるときついので」
北上「提督なんだからそれくらい支えなよ~」
提督「提督なんだけどそこまでは支えられん」
792: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:18:00.71 ID:NNSlpbDu0
大井「北上さーーん。あら提督?こんな時間に何やってるんですかって、ああいつも通りサボりですか」
うわお。また大井っちだ。
今現在私は提督の体に隠れて見えないはずだがさてどうしようこれ。
提督「間髪をいれずサボりと断定すな弁解させろ」
大井「…その腕は?」
提督「これか?ほれ」クルリ
北上「うわった」
北上「はろー」
大井「もうすぐ寝る時間ですよ北上さん」
北上「あいあいさー」
提督「俺はあれだぞ。夕張と明石に用があってな」
大井「はいはいそうですかー」
提督「ホントだって!」
ありゃ?意外と大井っちの反応が薄い
うわお。また大井っちだ。
今現在私は提督の体に隠れて見えないはずだがさてどうしようこれ。
提督「間髪をいれずサボりと断定すな弁解させろ」
大井「…その腕は?」
提督「これか?ほれ」クルリ
北上「うわった」
北上「はろー」
大井「もうすぐ寝る時間ですよ北上さん」
北上「あいあいさー」
提督「俺はあれだぞ。夕張と明石に用があってな」
大井「はいはいそうですかー」
提督「ホントだって!」
ありゃ?意外と大井っちの反応が薄い
793: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:18:30.94 ID:NNSlpbDu0
北上「んじゃありがとねてーとく」
提督「おうおう」
大井っちの前でこれ以上くっつくわけにはいかん。
北上「おやすみ~」
提督「おやすみ~」
せっかく落ち着いたしこのまま布団に潜っていい夢を見るとしよう。
北上「行こっか大井っち」
大井「ごめんなさい北上さん」
北上「ん?」
大井「私、少し提督とお話があります」
提督「おうおう」
大井っちの前でこれ以上くっつくわけにはいかん。
北上「おやすみ~」
提督「おやすみ~」
せっかく落ち着いたしこのまま布団に潜っていい夢を見るとしよう。
北上「行こっか大井っち」
大井「ごめんなさい北上さん」
北上「ん?」
大井「私、少し提督とお話があります」
794: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:18:59.73 ID:NNSlpbDu0
いつになく真剣な目だった。
いったい何だというのだろう。
北上「イテッ」ゴン
曲がり角で壁に頭をぶつけてしまった。
いかんいかん。とりあえずは部屋に戻らねば。
思考を中断しようとするけど、考えないようにと思うほどまた深みにハマっていく。
先程の状況。大井っちの目。二人きりで話。
まさかまさか
北上「こ、告白!」
ついにか!ついに言うのかまさか!
いったい何だというのだろう。
北上「イテッ」ゴン
曲がり角で壁に頭をぶつけてしまった。
いかんいかん。とりあえずは部屋に戻らねば。
思考を中断しようとするけど、考えないようにと思うほどまた深みにハマっていく。
先程の状況。大井っちの目。二人きりで話。
まさかまさか
北上「こ、告白!」
ついにか!ついに言うのかまさか!
795: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:19:52.24 ID:NNSlpbDu0
はっきり言って今更感が凄いのだが。
そうなると私が普段提督と一緒にいたりする時なんかも実は大井っちの背中を押すきっかけになってたりしたのだろう。
北上「これは使えるかもね」
私が提督に近づくことで二人の仲かより親密になる。完璧な作戦じゃないか。
さて具体的に何をすれば効果的だろうか。
あの二人にとって。
そうなると私が普段提督と一緒にいたりする時なんかも実は大井っちの背中を押すきっかけになってたりしたのだろう。
北上「これは使えるかもね」
私が提督に近づくことで二人の仲かより親密になる。完璧な作戦じゃないか。
さて具体的に何をすれば効果的だろうか。
あの二人にとって。
796: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:20:31.06 ID:NNSlpbDu0
二人に。
北上「あれ?」ピタ
球磨型の部屋の扉に手をかけたところで思考が止まった。
またぐちゃぐちゃになっている。
元のぐちゃぐちゃに。
先程までの温もりはすっかり冷めきっていた。
むしろ元よりも冷たくて、
少しだけ
寂しい。
北上「あれ?」ピタ
球磨型の部屋の扉に手をかけたところで思考が止まった。
またぐちゃぐちゃになっている。
元のぐちゃぐちゃに。
先程までの温もりはすっかり冷めきっていた。
むしろ元よりも冷たくて、
少しだけ
寂しい。
797: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:21:05.68 ID:NNSlpbDu0
多摩「何してるにゃ?」ガラ
北上「多摩姉」
多摩「入口で突っ立って何してるにゃ。大井は一緒じゃないにゃ?」
北上「なんか、提督と、話があるって」
多摩「ふーん。ならしょうがないにゃ。とりあえずそんな顔してないで早く入るにゃ」
北上「そんな顔って?どんな顔?」
多摩「どんなって、うーん。捨て猫みたいにゃ?」
北上「捨て猫?」
北上「多摩姉」
多摩「入口で突っ立って何してるにゃ。大井は一緒じゃないにゃ?」
北上「なんか、提督と、話があるって」
多摩「ふーん。ならしょうがないにゃ。とりあえずそんな顔してないで早く入るにゃ」
北上「そんな顔って?どんな顔?」
多摩「どんなって、うーん。捨て猫みたいにゃ?」
北上「捨て猫?」
798: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:21:51.55 ID:NNSlpbDu0
球磨「多摩ー早く戻るクマ。多摩の番クマ」
多摩「急かすにゃ急かすにやあ゛!?誰にゃ赤に変えたのは!?」
木曾「フッ」ドヤァ
多摩「木曾ぉぉぉぉ…」
球磨「ほれ1枚引くクマ」
多摩「己ぇぇ、パスにゃぁぁ…」
木曾「はいUNO」
多摩「にゃぁぁああ!」
球磨「ドロー2」
多摩「にゃ…」パタン
木曾「あ、死んだ」
多摩「急かすにゃ急かすにやあ゛!?誰にゃ赤に変えたのは!?」
木曾「フッ」ドヤァ
多摩「木曾ぉぉぉぉ…」
球磨「ほれ1枚引くクマ」
多摩「己ぇぇ、パスにゃぁぁ…」
木曾「はいUNO」
多摩「にゃぁぁああ!」
球磨「ドロー2」
多摩「にゃ…」パタン
木曾「あ、死んだ」
799: ◆rbbm4ODkU. 2017/12/19(火) 03:22:58.19 ID:NNSlpbDu0
捨て猫か。
いったい誰に捨てられたというのか。
北上「私もいーれてー」
木曾「もうちょい待ってくれ。今多摩姉にとどめ指すから」
球磨「おらさっさとドローしろクマ」
多摩「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
木曾「うるさい」
多摩「ニャ」
いやいい。
今はいいや。
疲れた。
思考を捨てよう。
いったい誰に捨てられたというのか。
北上「私もいーれてー」
木曾「もうちょい待ってくれ。今多摩姉にとどめ指すから」
球磨「おらさっさとドローしろクマ」
多摩「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
木曾「うるさい」
多摩「ニャ」
いやいい。
今はいいや。
疲れた。
思考を捨てよう。
803: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 02:57:04.59 ID:V4sVfJuP0
47匹目:猫と朝
私は朝に弱い、なんて言うと本当に朝に弱い人達に怒られる。
阿武隈なんかもそうだけどともかく寝起きの機嫌が最悪だったり朝食を食べる気がしなかったりと生活に支障が出るレベルらしい。
それを言われると私なんかは単に布団の魔力から逃れる意志の強さを持たない軟弱者でしかないわけだ。
でも逆に朝に強い人ってめちゃくちゃレアだよね。
羨ましいとまではいかなくとも、一体どうしたら朝からそんなに元気なのか是非ともコツを教えてほしいものだ。
私は朝に弱い、なんて言うと本当に朝に弱い人達に怒られる。
阿武隈なんかもそうだけどともかく寝起きの機嫌が最悪だったり朝食を食べる気がしなかったりと生活に支障が出るレベルらしい。
それを言われると私なんかは単に布団の魔力から逃れる意志の強さを持たない軟弱者でしかないわけだ。
でも逆に朝に強い人ってめちゃくちゃレアだよね。
羨ましいとまではいかなくとも、一体どうしたら朝からそんなに元気なのか是非ともコツを教えてほしいものだ。
804: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 02:57:37.59 ID:V4sVfJuP0
大井「…さん…北上さん、きーたーかーみーさん」ユサユサ
北上「…おはヨ」
大井「はい、おはようございます」ニコ
そういつも通りに100万ドルの笑顔で答えるとタンスの方へ向かう。
いやいつも通りじゃないな。
今日はなんか1億ドルくらいの笑顔に見えた。
北上「ふ…あぁぁぁぁ……ぁ…っ」ノビー
ん?
両手を伸ばして思い切り伸びをすると何かが手に当たった。
北上「…おはヨ」
大井「はい、おはようございます」ニコ
そういつも通りに100万ドルの笑顔で答えるとタンスの方へ向かう。
いやいつも通りじゃないな。
今日はなんか1億ドルくらいの笑顔に見えた。
北上「ふ…あぁぁぁぁ……ぁ…っ」ノビー
ん?
両手を伸ばして思い切り伸びをすると何かが手に当たった。
805: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 02:58:07.73 ID:V4sVfJuP0
北上「…UNOか」
布団の近くに雑に置かれていた。
そういえばあの後半ば寝落ちみたいな感じで終わったんだっけ。
北上「んしょっと」ムクリ
球磨「北上、おはよう」
北上「おはよ。制服?」
多摩「私達これから遠征にゃ」
北上「なる」
球磨「くそねみぃクマ」
多摩「まったくだにゃ」
大井「自業自得ですよ」
布団の近くに雑に置かれていた。
そういえばあの後半ば寝落ちみたいな感じで終わったんだっけ。
北上「んしょっと」ムクリ
球磨「北上、おはよう」
北上「おはよ。制服?」
多摩「私達これから遠征にゃ」
北上「なる」
球磨「くそねみぃクマ」
多摩「まったくだにゃ」
大井「自業自得ですよ」
806: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 02:58:35.20 ID:V4sVfJuP0
北上「で、球磨姉その髪は?」
球磨「治まらなかったクマ」ボサッ
膨れ上がった髪のせいで本当に熊見たくなっている。
球磨の髪は特に何もせず自然な状態に見えるが実は朝必死に膨張を抑えているのだ。
多摩「これじゃまた駆逐艦達のぬいぐるみにされるにゃ」
球磨「うげー疲れるクマァ…」
大井「自業自得ですよ」
多摩「自業自得だにゃ」
球磨「治まらなかったクマ」ボサッ
膨れ上がった髪のせいで本当に熊見たくなっている。
球磨の髪は特に何もせず自然な状態に見えるが実は朝必死に膨張を抑えているのだ。
多摩「これじゃまた駆逐艦達のぬいぐるみにされるにゃ」
球磨「うげー疲れるクマァ…」
大井「自業自得ですよ」
多摩「自業自得だにゃ」
807: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 02:59:11.24 ID:V4sVfJuP0
球磨「多摩はずるいクマ。短髪は長髪の苦労を知らないクマ」
多摩「知らんにゃ。知りたくもないにゃ」
北上「髪整える時間を他に使えるのはずるい」
球磨「そうだそうだー」
多摩「そんな事言われてもにゃぁ」
北上「手入れいらず~」
球磨「○○ピンク~」
多摩「アホ毛ぶち抜くぞ」
球磨「え」
北上「え」
多摩「にゃ」
多摩「知らんにゃ。知りたくもないにゃ」
北上「髪整える時間を他に使えるのはずるい」
球磨「そうだそうだー」
多摩「そんな事言われてもにゃぁ」
北上「手入れいらず~」
球磨「○○ピンク~」
多摩「アホ毛ぶち抜くぞ」
球磨「え」
北上「え」
多摩「にゃ」
808: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 02:59:37.53 ID:V4sVfJuP0
球磨「行ってくるクマ」
多摩「にゃ~」
北上「いってら~」
大井「行ってらっしゃい」
木曾「ただいま~」
球磨「おお木曾。おかえり」
木曾「語尾、あと髪はそれなんだ」
球磨「時間なかったクマ」
木曾「早く起きりゃいいだろ」
多摩「早く寝りゃいいにゃ」
球磨「なんで二人はピンピンしてるんだクマ…」
多摩「にゃ~」
北上「いってら~」
大井「行ってらっしゃい」
木曾「ただいま~」
球磨「おお木曾。おかえり」
木曾「語尾、あと髪はそれなんだ」
球磨「時間なかったクマ」
木曾「早く起きりゃいいだろ」
多摩「早く寝りゃいいにゃ」
球磨「なんで二人はピンピンしてるんだクマ…」
809: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 03:00:27.18 ID:V4sVfJuP0
北上「木曾は朝練?」
木曾「うん。ついでにシャワー」
北上「いいなあ朝強くて。辛くないの?」
木曾「好きでやってるからな」
大井「北上さんもどうですか?早起きは三文の徳と言いますし」
北上「え~なんで急に。三文程度なら寝ていた方がお得だよ」
大井「朝練でなくとも散歩とか。私も付き合いますし!」
北上「いいっていいって」
木曾「うん。ついでにシャワー」
北上「いいなあ朝強くて。辛くないの?」
木曾「好きでやってるからな」
大井「北上さんもどうですか?早起きは三文の徳と言いますし」
北上「え~なんで急に。三文程度なら寝ていた方がお得だよ」
大井「朝練でなくとも散歩とか。私も付き合いますし!」
北上「いいっていいって」
810: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 03:00:53.49 ID:V4sVfJuP0
木曾「おい姉は基本早起きだもんな」
北上「凄いよね~」
大井「それほどでも~」
そういえば昨晩は結局私達が寝落ちるまで大井っちは帰ってこなかったっけ。
大井「髪結びますから顔洗ってきてください」
北上「あいあい」
今にもスキップしそうな軽い足取りで先に洗面所へ向かう大井っち。
やけに上機嫌だ。
これってやっぱりつまるところそういうアレがアレなんじゃなかろうか?
北上「凄いよね~」
大井「それほどでも~」
そういえば昨晩は結局私達が寝落ちるまで大井っちは帰ってこなかったっけ。
大井「髪結びますから顔洗ってきてください」
北上「あいあい」
今にもスキップしそうな軽い足取りで先に洗面所へ向かう大井っち。
やけに上機嫌だ。
これってやっぱりつまるところそういうアレがアレなんじゃなかろうか?
811: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/03(水) 03:01:59.61 ID:V4sVfJuP0
一番端の布団でストレッチをしている木曾に目をやる。
木曾「…」
黙々と身体を伸ばしながらもその目はじいっと大井っちを追っていた。
木曾「!」
あ、目が合った。
木曾「」クイックイッ
顎で大井っちを指す。
頷き返してみた。
木曾「…」ス
手を伸ばしながら右手の小指をスっと立てる。
いわゆる愛人のサイン。
北上「」スン
肩を竦めてさあ?と伝える。
ことの真相を大井っちからどうにかして聞き出さなくては。
眠気はすっかり吹き飛んだ。
木曾「…」
黙々と身体を伸ばしながらもその目はじいっと大井っちを追っていた。
木曾「!」
あ、目が合った。
木曾「」クイックイッ
顎で大井っちを指す。
頷き返してみた。
木曾「…」ス
手を伸ばしながら右手の小指をスっと立てる。
いわゆる愛人のサイン。
北上「」スン
肩を竦めてさあ?と伝える。
ことの真相を大井っちからどうにかして聞き出さなくては。
眠気はすっかり吹き飛んだ。
815: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:30:22.00 ID:uJGQU72d0
49匹目:猫と髪型
大井「さてお客様、今日はどうなさいますか?」
北上「ん~いつも通りで~」
鏡の前に座る私とその後で私の髪をとく大井っち。
日課である。
大井「どうですかたまには違う髪型とか」
北上「違うってどんな?」
大井「金剛さんみたいなのはどうですか!」
北上「また極端にややっこい方面に行くね」
大井「では浦風で」
北上「あれ、大差なくない?ポンデリングじゃない?」
大井「北上さんの三つ編みというトレードマークを残しつつ最大限に生かそうかと」
北上「トレードマークだっけこれ。というかそんなに色々考慮した上での提案だったんだね」
ちなみにあの髪型。
やろうとすると貞子もビックリの長髪が必要である。
大井「さてお客様、今日はどうなさいますか?」
北上「ん~いつも通りで~」
鏡の前に座る私とその後で私の髪をとく大井っち。
日課である。
大井「どうですかたまには違う髪型とか」
北上「違うってどんな?」
大井「金剛さんみたいなのはどうですか!」
北上「また極端にややっこい方面に行くね」
大井「では浦風で」
北上「あれ、大差なくない?ポンデリングじゃない?」
大井「北上さんの三つ編みというトレードマークを残しつつ最大限に生かそうかと」
北上「トレードマークだっけこれ。というかそんなに色々考慮した上での提案だったんだね」
ちなみにあの髪型。
やろうとすると貞子もビックリの長髪が必要である。
816: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:30:57.94 ID:uJGQU72d0
大井「安心してください!物理的に無理なものでなければどんな髪型もいけます」
北上「不思議な説得力がある」
大井「北上さんは何か要望はありますか?」
北上「いつも通りはなしの方向か。だったら…バッサリと短髪に」
大井「散髪は却下で」
北上「おぉ…そんなバッサリと…」
大井「どうせバケツかぶるか入渠したら生えるじゃないですか」
北上「でもこれやっぱ邪魔だよ」
大井「オシャレは我慢です」
北上「オシャレのつもりはないんだけどねえ」
北上「不思議な説得力がある」
大井「北上さんは何か要望はありますか?」
北上「いつも通りはなしの方向か。だったら…バッサリと短髪に」
大井「散髪は却下で」
北上「おぉ…そんなバッサリと…」
大井「どうせバケツかぶるか入渠したら生えるじゃないですか」
北上「でもこれやっぱ邪魔だよ」
大井「オシャレは我慢です」
北上「オシャレのつもりはないんだけどねえ」
817: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:31:30.45 ID:uJGQU72d0
大井「短髪と北上さんはこう、イメージが違います」
北上「言わんとすることは分からなくもないけど」
大井「そういえば提督は長髪の方が好きらしいですよ」
北上「いや聞いてないし」
大井「ポニーテールでうなじを見せるとか!」
北上「あれは座る時とかに邪魔だからやだ」
大井「三つ編みお下げも割とそうなのでは?」
北上「だからバッサリといきたいんだよ…」
大井「すみません…」
北上「大井っちは楽そうでいいなー」
大井「スミマセン」
北上「言わんとすることは分からなくもないけど」
大井「そういえば提督は長髪の方が好きらしいですよ」
北上「いや聞いてないし」
大井「ポニーテールでうなじを見せるとか!」
北上「あれは座る時とかに邪魔だからやだ」
大井「三つ編みお下げも割とそうなのでは?」
北上「だからバッサリといきたいんだよ…」
大井「すみません…」
北上「大井っちは楽そうでいいなー」
大井「スミマセン」
818: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:32:10.33 ID:uJGQU72d0
北上「汁物とか食べる時髪の毛入りそうで大変なんだよね」
大井「いつも苦労してますものね」
北上「私なんかまだマシな方ってのがね」
大井「駆逐艦は何人か凄いのがいますから」
北上「早霜と清霜はあれ何を思って生活してるんだろうね」
大井「聞くに聞けない空気があります」
北上「耳に引っ掛けられないくらいの中途半端な長さが一番めんどくさかったりすると思う」
大井「鎮守府ないではヘアバンドやピンで抑えてる人が多いですものね」
北上「邪魔だししゃあない」
大井「いつも苦労してますものね」
北上「私なんかまだマシな方ってのがね」
大井「駆逐艦は何人か凄いのがいますから」
北上「早霜と清霜はあれ何を思って生活してるんだろうね」
大井「聞くに聞けない空気があります」
北上「耳に引っ掛けられないくらいの中途半端な長さが一番めんどくさかったりすると思う」
大井「鎮守府ないではヘアバンドやピンで抑えてる人が多いですものね」
北上「邪魔だししゃあない」
819: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:33:07.52 ID:uJGQU72d0
北上「で、何があったの?」
大井「何がですか?」
北上「やたらテンション高いじゃん」
大井「え、いつも通りじゃありません?」
北上「ありません」
髪型を変えようなんて初めてだ。
それがいつも通りなら流石に私も辛い。
北上「提督と何話してたの」
大井「いえっ、なにも」
いえ、で声が上ずってる。
隠し事はできないタイプか。
大井「何がですか?」
北上「やたらテンション高いじゃん」
大井「え、いつも通りじゃありません?」
北上「ありません」
髪型を変えようなんて初めてだ。
それがいつも通りなら流石に私も辛い。
北上「提督と何話してたの」
大井「いえっ、なにも」
いえ、で声が上ずってる。
隠し事はできないタイプか。
820: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:33:34.59 ID:uJGQU72d0
北上「結構遅くまで提督と話してたじゃん」
大井「そんな遅くはないですよ。すぐですすぐ」
北上「昨日はUNOで遅くまで起きてたんだよ」
大井「…実はあの後夕張さんたちと」
北上「ダウト」
大井「UNOじゃないんですね」
北上「じゃあUSOで」
大井「上手い!座布団1枚」
北上「UNOだけに?」
UNOはどこかの国の言葉で「1」だそうだ。
大井「そんな遅くはないですよ。すぐですすぐ」
北上「昨日はUNOで遅くまで起きてたんだよ」
大井「…実はあの後夕張さんたちと」
北上「ダウト」
大井「UNOじゃないんですね」
北上「じゃあUSOで」
大井「上手い!座布団1枚」
北上「UNOだけに?」
UNOはどこかの国の言葉で「1」だそうだ。
821: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:34:03.50 ID:uJGQU72d0
北上「で!なんなのさ」クルッ
身体を180度回転させ鏡越しではなく真正面から大井っちを見つめる。
大井「にゃんにもありません!」
噛んだ。動揺が隠しきれていなさすぎる…
北上「なら夜遅くまで何を、ナニをしていた?」
大井「なっ、それはありません!絶対に!」クワッ
北上「うおっ」
物凄い剣幕。
まあ確かに、このツンデレカップルがそんないきなり進展するのは流石にないか。
身体を180度回転させ鏡越しではなく真正面から大井っちを見つめる。
大井「にゃんにもありません!」
噛んだ。動揺が隠しきれていなさすぎる…
北上「なら夜遅くまで何を、ナニをしていた?」
大井「なっ、それはありません!絶対に!」クワッ
北上「うおっ」
物凄い剣幕。
まあ確かに、このツンデレカップルがそんないきなり進展するのは流石にないか。
822: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:34:30.98 ID:uJGQU72d0
北上「ならいいけどさ。何にせよ髪はいつも通りね」クルッ
大井「仰せの通りに」ホッ
○をなでおろす仕草は鏡越しにしっかり見えているのだが…
しかしなるほど。
このようだと告っただけとかかな?キスができるとは思えないし。
とはいえ時間の問題かなあ。
親友としてしっかり見守っていかねば!
大井「仰せの通りに」ホッ
○をなでおろす仕草は鏡越しにしっかり見えているのだが…
しかしなるほど。
このようだと告っただけとかかな?キスができるとは思えないし。
とはいえ時間の問題かなあ。
親友としてしっかり見守っていかねば!
823: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:35:18.86 ID:uJGQU72d0
大井「北上さん?」
北上「どったの~」
大井「いえ、その。不機嫌そうな表情をしていたので」
北上「ん~?寝不足なだけだよ」
大井「睡眠はしっかりとってください」
北上「UNOが悪い」
大井「球磨姉さん達は無視して寝てください」
北上「それはそれで難易度が高いね」
北上「どったの~」
大井「いえ、その。不機嫌そうな表情をしていたので」
北上「ん~?寝不足なだけだよ」
大井「睡眠はしっかりとってください」
北上「UNOが悪い」
大井「球磨姉さん達は無視して寝てください」
北上「それはそれで難易度が高いね」
824: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/08(月) 02:36:00.19 ID:uJGQU72d0
大井「はい完成です」
北上「バッチリだね~」
いつもと同じ髪型。
大井っちなら三つ編みの編み方まで寸分違わず編んでいても不思議ではない。
大井「私布団を片付けてきますね」
北上「えぇ、いいよ。私も行く」
大井「その前に着替えてください。そこに置いてあるので」
北上「はーい」
布団まで畳むのは今日が初めてだ。どんだけテンションあげあげなのよバカップルめ。
…
北上「ホントだ。ひっどい顔」
鏡の中の私は確かに不満げな表情だった。
なんでだろ?
寝不足か。
北上「しっかりしろ私」
北上「バッチリだね~」
いつもと同じ髪型。
大井っちなら三つ編みの編み方まで寸分違わず編んでいても不思議ではない。
大井「私布団を片付けてきますね」
北上「えぇ、いいよ。私も行く」
大井「その前に着替えてください。そこに置いてあるので」
北上「はーい」
布団まで畳むのは今日が初めてだ。どんだけテンションあげあげなのよバカップルめ。
…
北上「ホントだ。ひっどい顔」
鏡の中の私は確かに不満げな表情だった。
なんでだろ?
寝不足か。
北上「しっかりしろ私」
830: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:37:44.57 ID:fbNs0xK70
50匹目:猫と球
川内「ヘイヘイヘイ!ピッチャービビってるよ!ブッ!?」バチン
ドッヂボールを知らない人というのは、少なくとも日本にはいないと言っても過言ではないのではなかろうか。
清霜「うわぁ…顔面だぁ」
小学生から大人まで幅広い層でかつ多くの地域で遊ばれている球技だ。
江風「顔面セーフ?」
漢字だと避球とか飛球と書く。
球磨「アウトの方向で」
この遊びが多くの人間、特に子供達にとってサッカーや野球をも凌ぐほどに人気なのはそのルールの単純さが主な要因だと思う。
神通「姉さんの仇…」スッ
サッカーも野球もチームプレイがメインの球技だ。楽しく遊ぶには最低でも4.5人は必要だろう。
川内「ヘイヘイヘイ!ピッチャービビってるよ!ブッ!?」バチン
ドッヂボールを知らない人というのは、少なくとも日本にはいないと言っても過言ではないのではなかろうか。
清霜「うわぁ…顔面だぁ」
小学生から大人まで幅広い層でかつ多くの地域で遊ばれている球技だ。
江風「顔面セーフ?」
漢字だと避球とか飛球と書く。
球磨「アウトの方向で」
この遊びが多くの人間、特に子供達にとってサッカーや野球をも凌ぐほどに人気なのはそのルールの単純さが主な要因だと思う。
神通「姉さんの仇…」スッ
サッカーも野球もチームプレイがメインの球技だ。楽しく遊ぶには最低でも4.5人は必要だろう。
831: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:38:36.39 ID:fbNs0xK70
多摩「やれるもんならやってみろにゃ!」
対してドッヂボールは二人からでも十分に楽しむ事ができる。
那珂「ギャンッ!」バン
それでいて30.40人などの大人数でも十二分に機能する。
響「そっちか」
また当てたらアウト、という究極的にはその1点のみを守ればいいような競技なのでルールの加筆修正はいくらでも可能だ。
神通「姉さんと那珂ちゃん。これで差し引きゼロです」
残基性、キャッチで回復、復活etc…
川那「「どんな計算!?」」
子供特有の自由な発想と勝ちたい一心で捻り出す幼稚な悪知恵は無限の可能性を秘めている。
対してドッヂボールは二人からでも十分に楽しむ事ができる。
那珂「ギャンッ!」バン
それでいて30.40人などの大人数でも十二分に機能する。
響「そっちか」
また当てたらアウト、という究極的にはその1点のみを守ればいいような競技なのでルールの加筆修正はいくらでも可能だ。
神通「姉さんと那珂ちゃん。これで差し引きゼロです」
残基性、キャッチで回復、復活etc…
川那「「どんな計算!?」」
子供特有の自由な発想と勝ちたい一心で捻り出す幼稚な悪知恵は無限の可能性を秘めている。
832: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:39:27.08 ID:fbNs0xK70
響「やぁ!」ブン
もちろん子供だけの遊びではない。
神通「く!」
きちんとしたルールの元行われる公式の大会も存在する。
長波「うまい!足に当てた!」
どんな遊びも本気でやれば戦いとなる。
球磨「まだだあ!キヨシー!」
顔面アウト上等。
清霜「任せニャッ!」バシ
バレーボールを彷彿とさせる形状の球を時速100km超で投げ合う様はまさに戦争だろう。
長波「また顔面だ…」
内野外野の駆け引きや試合スピードもお遊びのそれとは次元が違う。
響「ダブルアウトだね」
本気と書いてマジ。
浦風「さぁてウチの番じゃ!」ブン
つまり何が言いたいのかというと、
多摩「甘いにゃあ!」バシィ
もちろん子供だけの遊びではない。
神通「く!」
きちんとしたルールの元行われる公式の大会も存在する。
長波「うまい!足に当てた!」
どんな遊びも本気でやれば戦いとなる。
球磨「まだだあ!キヨシー!」
顔面アウト上等。
清霜「任せニャッ!」バシ
バレーボールを彷彿とさせる形状の球を時速100km超で投げ合う様はまさに戦争だろう。
長波「また顔面だ…」
内野外野の駆け引きや試合スピードもお遊びのそれとは次元が違う。
響「ダブルアウトだね」
本気と書いてマジ。
浦風「さぁてウチの番じゃ!」ブン
つまり何が言いたいのかというと、
多摩「甘いにゃあ!」バシィ
833: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:40:26.92 ID:fbNs0xK70
ビッ!と空を切り裂くような音とともに放たれた球が私の左耳を掠める。
フェイントで重心を左に寄せたのが功を奏したためギリギリで躱せたが、いやはやとんでもないコントロールだ。
バチンと弾けるような音が後ろからした。
どうやら球磨姉が無事にキャッチしてくれたようだ。
多摩「上手く避けるもんにゃ」
北上「あれ?今のはサービスじゃなかったの?」
多摩「言ったにゃあ」
球磨「ふふん、悪いが今度は球磨の番だクマアッ!」ブン
文字通り熊のような腕力から繰り出される球はちゃちな拳銃の弾速ならば凌駕しているのではなかろうか。
フェイントで重心を左に寄せたのが功を奏したためギリギリで躱せたが、いやはやとんでもないコントロールだ。
バチンと弾けるような音が後ろからした。
どうやら球磨姉が無事にキャッチしてくれたようだ。
多摩「上手く避けるもんにゃ」
北上「あれ?今のはサービスじゃなかったの?」
多摩「言ったにゃあ」
球磨「ふふん、悪いが今度は球磨の番だクマアッ!」ブン
文字通り熊のような腕力から繰り出される球はちゃちな拳銃の弾速ならば凌駕しているのではなかろうか。
834: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:41:03.46 ID:fbNs0xK70
長波「おりゃ!」バン
多摩「ナイスキャッチにゃ」
北上「うわズルいや。私達にはあんなにキャッチ力ないのにさ」
球磨「ふこーへーだクマ。包容力(物理)だクマ」
多摩「ふふん、負け惜しみは見苦しいだけにゃ」
長波「いやこれ運動においては邪魔でしかないんだけどね…」
響「…」ペタペタ
浦風「大丈夫じゃよお二人さん。ウチが二人分の包容力持っとるけん!」
球北「「嬉しくない!」」
多摩「ナイスキャッチにゃ」
北上「うわズルいや。私達にはあんなにキャッチ力ないのにさ」
球磨「ふこーへーだクマ。包容力(物理)だクマ」
多摩「ふふん、負け惜しみは見苦しいだけにゃ」
長波「いやこれ運動においては邪魔でしかないんだけどね…」
響「…」ペタペタ
浦風「大丈夫じゃよお二人さん。ウチが二人分の包容力持っとるけん!」
球北「「嬉しくない!」」
835: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:41:51.86 ID:fbNs0xK70
10人対9人で始まったドッヂボールは現在、両チームとも内野に3人を残すのみとなった。
もうすぐお昼なので当てての外野復活はなし。
こちらは球磨姉と私と浦風。向こうは長波と多摩姉と響だ。
長波「暁ぃ!」
外野へのパス。
通常ドッヂボールの外野は内野から見て三方向を使えるがここでは一つだけ。お互いのチームが相手を内野外野縦でで挟む形になっている。
暁「っと。よーしいっくわよぉ!」
これにより外野から内野へのボールが外れると相手チームの外野へボールが渡る危険性が出る。
投げる方も投げられる方も細心の注意が必要となる。
もうすぐお昼なので当てての外野復活はなし。
こちらは球磨姉と私と浦風。向こうは長波と多摩姉と響だ。
長波「暁ぃ!」
外野へのパス。
通常ドッヂボールの外野は内野から見て三方向を使えるがここでは一つだけ。お互いのチームが相手を内野外野縦でで挟む形になっている。
暁「っと。よーしいっくわよぉ!」
これにより外野から内野へのボールが外れると相手チームの外野へボールが渡る危険性が出る。
投げる方も投げられる方も細心の注意が必要となる。
836: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:42:29.44 ID:fbNs0xK70
球磨「二人とも、しっかり取れ」
浦風「承知くま」
北上「えーやだくまー」
外野の暁から出来るだけ離れて、しかし暁の球が内野の多摩姉などに渡ると近距離で当てられる可能性もあるので一番後ろに下がるわけにもいかない。
躱したら即反対側へダッシュ。
取ったら即振り向いてカウンター。
判断は刹那に行わなければならない。
腰を落とし重心を低くする。
暁が振りかぶったのを見て呼吸を止める。
さあてどこに来るかな。
バァン!
と破裂音がした。
浦風「承知くま」
北上「えーやだくまー」
外野の暁から出来るだけ離れて、しかし暁の球が内野の多摩姉などに渡ると近距離で当てられる可能性もあるので一番後ろに下がるわけにもいかない。
躱したら即反対側へダッシュ。
取ったら即振り向いてカウンター。
判断は刹那に行わなければならない。
腰を落とし重心を低くする。
暁が振りかぶったのを見て呼吸を止める。
さあてどこに来るかな。
バァン!
と破裂音がした。
837: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:43:06.37 ID:fbNs0xK70
北上「いや破裂音というか破裂したんだけどね」
神風「え?それってどういう」
北上「思いっきり地面にボール叩きつけてさ。衝撃に耐えられずボールがバン」
神風「ありゃりゃ。それで試合終了ですか」
北上「そ、予備ないしね」
終了というか中断。断念。残念無念また来年。
キリもいいので今はコート周辺で各自自由時間となった。
神風「え?それってどういう」
北上「思いっきり地面にボール叩きつけてさ。衝撃に耐えられずボールがバン」
神風「ありゃりゃ。それで試合終了ですか」
北上「そ、予備ないしね」
終了というか中断。断念。残念無念また来年。
キリもいいので今はコート周辺で各自自由時間となった。
838: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:43:55.39 ID:fbNs0xK70
響「暁はまだ艤装の繊細な動作は慣れてないからね」
北上「まあ仕方ないよね~。そのための訓練なんだしさ」
神風「私もやりたかったなあ」
遠征帰りの神風がそうボヤく。
ちなみにその暁はコートで球磨姉と多摩姉に色々と教わっている。雷電も一緒だ。
響「本人はとても熱心にやってるからね。今は下手だけど、そのうち化けるかもしれないよ」
北上「そりゃこわい」
響「まあ下手なままだとは思うけど」
神風「響は身内に厳しいよね…」
響「そうかな」
神風「そうよ」
私は知っている。響は暁が姉妹でなければ超絶スパルタ訓練でもって鍛えあげようとするタイプだ。
こうして姉の努力を見守っているのは身内への甘さという事だろう。
北上「まあ仕方ないよね~。そのための訓練なんだしさ」
神風「私もやりたかったなあ」
遠征帰りの神風がそうボヤく。
ちなみにその暁はコートで球磨姉と多摩姉に色々と教わっている。雷電も一緒だ。
響「本人はとても熱心にやってるからね。今は下手だけど、そのうち化けるかもしれないよ」
北上「そりゃこわい」
響「まあ下手なままだとは思うけど」
神風「響は身内に厳しいよね…」
響「そうかな」
神風「そうよ」
私は知っている。響は暁が姉妹でなければ超絶スパルタ訓練でもって鍛えあげようとするタイプだ。
こうして姉の努力を見守っているのは身内への甘さという事だろう。
839: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:44:47.40 ID:fbNs0xK70
ドッヂボール。鎮守府での訓練の1種だ。
目的は艤装の繊細なコントロールを磨く事。
艦娘は砲や魚雷を装備してなくても艤装により人ならざる力を発揮することが出来る。
が、これは単に力持ちと言うだけではダメなのだ。
戦場。つまり水上において私達はうねる波や荒れ狂う風の中砲撃を当て魚雷を躱し敵陣へと進む必要がある。
これがとても難しい。
初めて海に出た時は綱渡りとスケートとドッヂボールを同時にやっている気分だった。
目的は艤装の繊細なコントロールを磨く事。
艦娘は砲や魚雷を装備してなくても艤装により人ならざる力を発揮することが出来る。
が、これは単に力持ちと言うだけではダメなのだ。
戦場。つまり水上において私達はうねる波や荒れ狂う風の中砲撃を当て魚雷を躱し敵陣へと進む必要がある。
これがとても難しい。
初めて海に出た時は綱渡りとスケートとドッヂボールを同時にやっている気分だった。
840: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:46:56.25 ID:fbNs0xK70
艦娘の練度とはすなわちそのコントロール能力の高さである。
戦闘経験を多く積むほど練度は上がり回避や攻撃能力は上がる。
攻撃を受ける際の姿勢やどこで受けるか、受けた後どうするかでダメージも大きく変わるので耐久も上がる。
もっとも練度はあくまで強さの指標の1つでありそれだけでは測れないものなのだが。
ともかく海の上だけでなくこうした訓練も私達にとっては大事なのだ。
ちなみに暁は艤装のコントロールというよりは単純に球技が苦手なだけであり練度は私より上だ。
戦闘経験を多く積むほど練度は上がり回避や攻撃能力は上がる。
攻撃を受ける際の姿勢やどこで受けるか、受けた後どうするかでダメージも大きく変わるので耐久も上がる。
もっとも練度はあくまで強さの指標の1つでありそれだけでは測れないものなのだが。
ともかく海の上だけでなくこうした訓練も私達にとっては大事なのだ。
ちなみに暁は艤装のコントロールというよりは単純に球技が苦手なだけであり練度は私より上だ。
841: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:47:35.70 ID:fbNs0xK70
神風「北上さんの勇姿、見たかったな~」
北上「勇姿って…私ゃただ避けてるだけだよ」
響「北上さんはホントにボール取らないよね。しかも取れないんじゃなくて取ろうとしてない」
北上「いやだってあんなの飛んできたら普通は避けようと考えるでしょ」
響「それは人間の感覚だよ」
北上「まあ、そうか」
人間というか、生き物の。
北上「勇姿って…私ゃただ避けてるだけだよ」
響「北上さんはホントにボール取らないよね。しかも取れないんじゃなくて取ろうとしてない」
北上「いやだってあんなの飛んできたら普通は避けようと考えるでしょ」
響「それは人間の感覚だよ」
北上「まあ、そうか」
人間というか、生き物の。
842: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:48:12.37 ID:fbNs0xK70
北上「どうせ見るなら私より向こうの試合を見た方がいいんじゃない?」
神風「向こうって、ああ。いや確かに迫力はありますけど、なんども見るほどじゃ」
響「結構面白いよ。相撲みたいなものさ。単純な力の押し合いに見えて、実は色々な工夫や戦略が見える」
神風「んーじゃあ行ってみよっかな」
北上「わったしも~。どうせ暇だしね」
響「私はここにいるよ」
北上「暁いるもんね」
響「…そんなんじゃない」
神風「はいはい照れない照れない」
響「むー…」
神風「向こうって、ああ。いや確かに迫力はありますけど、なんども見るほどじゃ」
響「結構面白いよ。相撲みたいなものさ。単純な力の押し合いに見えて、実は色々な工夫や戦略が見える」
神風「んーじゃあ行ってみよっかな」
北上「わったしも~。どうせ暇だしね」
響「私はここにいるよ」
北上「暁いるもんね」
響「…そんなんじゃない」
神風「はいはい照れない照れない」
響「むー…」
843: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:48:42.81 ID:fbNs0xK70
膨れっ面の響を残し鎮守府の建物を挟んで反対側のコートへ向かう。
既におおよそドッヂボールとは思えない破裂音、いや爆裂、爆発音がする。
神風「こっちはまだ続いている見たいですね」
北上「こっちは最後からが長いから」
角を曲がる。
さて今日の最後は誰と誰かな。
既におおよそドッヂボールとは思えない破裂音、いや爆裂、爆発音がする。
神風「こっちはまだ続いている見たいですね」
北上「こっちは最後からが長いから」
角を曲がる。
さて今日の最後は誰と誰かな。
844: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:49:28.55 ID:fbNs0xK70
Гангут「だらァァァァ!!」
武蔵「ふっ!」
球、いやもう砲弾でいいや。砲弾が武蔵さんのお腹に直撃する。
対する武蔵さんもそれを真正面から受け止めてみせる。
グワンと音こそ低く小さいが、衝撃で大気が震えるのがここまで伝わってくる。
神風「かんぐーとさんの貴重な手袋非着用シーンですね」
北上「そだねー」
ドラゴンボールか何かの世界ですかといった光景だが、ここでは日常の一コマである。
武蔵「ふっ!」
球、いやもう砲弾でいいや。砲弾が武蔵さんのお腹に直撃する。
対する武蔵さんもそれを真正面から受け止めてみせる。
グワンと音こそ低く小さいが、衝撃で大気が震えるのがここまで伝わってくる。
神風「かんぐーとさんの貴重な手袋非着用シーンですね」
北上「そだねー」
ドラゴンボールか何かの世界ですかといった光景だが、ここでは日常の一コマである。
845: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:49:57.85 ID:fbNs0xK70
軽巡や駆逐と違って撃って撃たれての殴り合い砲撃戦となる戦艦でなどは小細工なしの一騎打ちになりやすい。
この場合の小細工というのは外野内野のパス回しやカウンターである。
神風「それで、工夫とか戦略って?」
北上「んー例えばあれとか?」
Гангутさんと武蔵さんでは馬力が違う。文字通りに。
それでも彼女達がああして渡り合えるのはГангутさんの技量だ。
この場合の小細工というのは外野内野のパス回しやカウンターである。
神風「それで、工夫とか戦略って?」
北上「んー例えばあれとか?」
Гангутさんと武蔵さんでは馬力が違う。文字通りに。
それでも彼女達がああして渡り合えるのはГангутさんの技量だ。
846: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:50:25.52 ID:fbNs0xK70
武蔵「ッアアァ!!」ブン
Гангут「ハァッ…ッ!!」バシィ
北上「ほら飛んだ」
神風「飛んだ?」
北上「自分で少し後ろに飛んで勢いを逃がすのさ。まあそれでもあのパワーだし、Гангутさんの馬鹿力あっての技だけど」
神風「戦闘民族か何かなんですかねあの人」
北上「そういう意味じゃ私らみんな戦闘民族みたいなもんだよ」
神風「確かに」
Гангут「ハァッ…ッ!!」バシィ
北上「ほら飛んだ」
神風「飛んだ?」
北上「自分で少し後ろに飛んで勢いを逃がすのさ。まあそれでもあのパワーだし、Гангутさんの馬鹿力あっての技だけど」
神風「戦闘民族か何かなんですかねあの人」
北上「そういう意味じゃ私らみんな戦闘民族みたいなもんだよ」
神風「確かに」
847: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:51:06.49 ID:fbNs0xK70
飛龍「おや?二人とも~何してんの?」
神風「飛龍さん」
北上「殴り合いの見学に」
飛龍「あぁあれかー。迫力あるよね~」
私の横に並んで座る。出撃帰りかな。
神風「戦場じゃないからこそ余計に怖いです」
北上「というかよくボール無事だよね。特注品とはいえ」
飛龍「工房タッグの自信作だしね!」
神風「あ、ちなみにこっちのはさっき破裂しました」
飛龍「え、マジ?」
北上「マジマジ」
飛龍「マジかぁ…」
今殴りあってる二人の物とは別物なのでそこまで高くはつかない、はず。
神風「飛龍さん」
北上「殴り合いの見学に」
飛龍「あぁあれかー。迫力あるよね~」
私の横に並んで座る。出撃帰りかな。
神風「戦場じゃないからこそ余計に怖いです」
北上「というかよくボール無事だよね。特注品とはいえ」
飛龍「工房タッグの自信作だしね!」
神風「あ、ちなみにこっちのはさっき破裂しました」
飛龍「え、マジ?」
北上「マジマジ」
飛龍「マジかぁ…」
今殴りあってる二人の物とは別物なのでそこまで高くはつかない、はず。
848: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/14(日) 03:51:44.19 ID:fbNs0xK70
飛龍「やっぱさ、駆逐艦もいるとはいえもう少し頑丈にしてもいと思わない?」
神風「でもそうしたら流石に痛いですよ」
北上「私らは真正面にあまり投げないから流れ弾による事故とかあるもんね」
飛龍「そっかー、難しいところだねぇ。こっちは流れ弾とかはほとんどないし」
北上「そりゃあんな風に投げ「あ」え?」
最後まで言い終えることはできなかった。
飛龍さんがコートを見ながらあ、と言ったのでそちらに目をやった時には全てが遅かった。
流れ弾。
文字通りのあの球が、私の目の前にあった。
神風「でもそうしたら流石に痛いですよ」
北上「私らは真正面にあまり投げないから流れ弾による事故とかあるもんね」
飛龍「そっかー、難しいところだねぇ。こっちは流れ弾とかはほとんどないし」
北上「そりゃあんな風に投げ「あ」え?」
最後まで言い終えることはできなかった。
飛龍さんがコートを見ながらあ、と言ったのでそちらに目をやった時には全てが遅かった。
流れ弾。
文字通りのあの球が、私の目の前にあった。
851: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:14:34.44 ID:8hN5TkSb0
この時の事は恐ろしく鮮明に覚えている。
それこそこの瞬間スローモーションになったと錯覚する程に。
人智を超えた速度のボールは真っ直ぐ私の顔面を目掛けて飛んできた。
わーホントに近づくほどにボールがおっきくなってるーとか思うくらいには混乱してた。
艤装も付けずに体育座りという無防備すぎる体制。
無理だコレ。
と思った次の瞬間、
脳を揺さぶるほどの音と衝撃とともにボールが停止した。
目の前にはボールと、それを防いだ手袋をした手があった。
ゆっくりと左を向く。
そこには先程までのコロコロと笑うどこか幼さを感じさせる先輩の顔はなく、そのギラギラとした鋭い眼光は確かに飛龍という名が相応しかった。
それこそこの瞬間スローモーションになったと錯覚する程に。
人智を超えた速度のボールは真っ直ぐ私の顔面を目掛けて飛んできた。
わーホントに近づくほどにボールがおっきくなってるーとか思うくらいには混乱してた。
艤装も付けずに体育座りという無防備すぎる体制。
無理だコレ。
と思った次の瞬間、
脳を揺さぶるほどの音と衝撃とともにボールが停止した。
目の前にはボールと、それを防いだ手袋をした手があった。
ゆっくりと左を向く。
そこには先程までのコロコロと笑うどこか幼さを感じさせる先輩の顔はなく、そのギラギラとした鋭い眼光は確かに飛龍という名が相応しかった。
852: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:15:22.94 ID:8hN5TkSb0
鍛えているとはとても思えない華奢な腕は完全にボールの勢いを殺してしまった。
ボールが地面に落ちる。
コートに居た誰もが飛龍さんを見ていた。
神風「…」ブルブル
神風は耳と目を塞いで縮こまってた。
飛龍「まったくもー。みんなヒートアップし過ぎ!めっ!」
右手を払いながらいつもの調子で話す。
武蔵「すまなかった。つい力んでしまって…」
Гангут「け、怪我はないか!」
戦艦達が慌てて駆け寄ってくる。
座ってる目の前に並ばれるとすごい威圧感だ。
北上「あー大丈夫大丈夫。むしろこっちの方が問題かも」
神風「」ブルブル
ボールが地面に落ちる。
コートに居た誰もが飛龍さんを見ていた。
神風「…」ブルブル
神風は耳と目を塞いで縮こまってた。
飛龍「まったくもー。みんなヒートアップし過ぎ!めっ!」
右手を払いながらいつもの調子で話す。
武蔵「すまなかった。つい力んでしまって…」
Гангут「け、怪我はないか!」
戦艦達が慌てて駆け寄ってくる。
座ってる目の前に並ばれるとすごい威圧感だ。
北上「あー大丈夫大丈夫。むしろこっちの方が問題かも」
神風「」ブルブル
853: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:15:49.32 ID:8hN5TkSb0
飛龍「はぁ…じゃ、神ちゃんは私が連れてくから、二人は吹雪に報告すること。いい?」
Гангут「う、アイツに言うのか…」
武蔵「仕方あるまい。了解した」
北上「神風ー、おーい。かーみーかーぜー」
神風「?」
北上「神風?あれ、聞こえてない?」
神風「耳が、こう、キーンとしてて」
飛龍「一応明石っちゃう?」
北上「そうしますかね~、ほら神風」
背中を差し出す。いわゆるおんぶというやつだ。
Гангут「う、アイツに言うのか…」
武蔵「仕方あるまい。了解した」
北上「神風ー、おーい。かーみーかーぜー」
神風「?」
北上「神風?あれ、聞こえてない?」
神風「耳が、こう、キーンとしてて」
飛龍「一応明石っちゃう?」
北上「そうしますかね~、ほら神風」
背中を差し出す。いわゆるおんぶというやつだ。
854: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:16:38.36 ID:8hN5TkSb0
神風「いや流石にそこまでじゃ」
飛龍「ならばこうだー!」
神風「キャッ!ひ、飛龍さん?」
おんぶじゃなくてだっこ。しかもお姫様だっこ。
北上「凄い様になるねえお姫様。いやお嬢様かな」
飛龍「スカート短い娘多からねえ。これ出来る娘ほとんどいないのよ」
神風「うーまったく聞こえない…」
飛龍「それではでっぱーつ」
北上「おー」
神風を抱き抱える右手に、もう手袋はなかった。
飛龍「ならばこうだー!」
神風「キャッ!ひ、飛龍さん?」
おんぶじゃなくてだっこ。しかもお姫様だっこ。
北上「凄い様になるねえお姫様。いやお嬢様かな」
飛龍「スカート短い娘多からねえ。これ出来る娘ほとんどいないのよ」
神風「うーまったく聞こえない…」
飛龍「それではでっぱーつ」
北上「おー」
神風を抱き抱える右手に、もう手袋はなかった。
855: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:17:06.26 ID:8hN5TkSb0
明石「え?」
武蔵「ん?」
飛龍「ありゃ?」
工房にて、集結。
明石「三人はどういう集まりなんだっけ」
飛龍「私は神風の診察に」
武蔵「私はボールの修理に」
明石「え?」
武蔵「ん?」
飛龍「およ?」
武蔵「ん?」
飛龍「ありゃ?」
工房にて、集結。
明石「三人はどういう集まりなんだっけ」
飛龍「私は神風の診察に」
武蔵「私はボールの修理に」
明石「え?」
武蔵「ん?」
飛龍「およ?」
856: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:17:43.75 ID:8hN5TkSb0
飛龍「いやちょっと事故がね」
神風「私はもう大丈夫だって言ってるんですけどね…」
北上「抱っこするのが楽しくてやってた節があるよね」
飛龍「気にしない気にしない」
明石「診察します?」
神風「あ、大丈夫です。ホントに」
明石「ではそちらは」
武蔵「ボールが壊れた」
神風「破れたとか割れたとかじゃなくて壊れたってすごい表現ですよね」
北上「確かに」
神風「私はもう大丈夫だって言ってるんですけどね…」
北上「抱っこするのが楽しくてやってた節があるよね」
飛龍「気にしない気にしない」
明石「診察します?」
神風「あ、大丈夫です。ホントに」
明石「ではそちらは」
武蔵「ボールが壊れた」
神風「破れたとか割れたとかじゃなくて壊れたってすごい表現ですよね」
北上「確かに」
857: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:18:23.52 ID:8hN5TkSb0
武蔵「ほら」
明石「んー、ん?何ですかこの痕」
北上「どれどれ?」
飛龍「んー?げっ!」
神風「うわぁ凄い痕」
明石「手形、ですよね」
武蔵「そうだな」
明石「武蔵さんの?」
武蔵「私はもう少し手が大きい」
神風「というかこの痕って」
北上「今そろそろと工房を出ていこうとしている人のものだよね」
飛龍「ギクッ」
明石「んー、ん?何ですかこの痕」
北上「どれどれ?」
飛龍「んー?げっ!」
神風「うわぁ凄い痕」
明石「手形、ですよね」
武蔵「そうだな」
明石「武蔵さんの?」
武蔵「私はもう少し手が大きい」
神風「というかこの痕って」
北上「今そろそろと工房を出ていこうとしている人のものだよね」
飛龍「ギクッ」
858: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:19:01.31 ID:8hN5TkSb0
かくかくしかじか
飛龍「正当防衛です」
明石「なるほど状況は理解しました」
飛龍「守護る為です」
明石「その上でひとつ言いたいことがあります」
飛龍「必要な犠牲でした」
明石「もっと上手くやれたでしょう」
飛龍「だってぇ~!ビビったもん!私もビックリしたもん!ちょっとばっかし力んじゃっても仕方ない!」
明石「仮にもウチの最高練度なんですから力加減考えてくださいよ。怒るつもりは無いですけど実際こうして修理費が数字として出るんですから文句くらい言わせてください」
飛龍「ぶえ~…」
飛龍「正当防衛です」
明石「なるほど状況は理解しました」
飛龍「守護る為です」
明石「その上でひとつ言いたいことがあります」
飛龍「必要な犠牲でした」
明石「もっと上手くやれたでしょう」
飛龍「だってぇ~!ビビったもん!私もビックリしたもん!ちょっとばっかし力んじゃっても仕方ない!」
明石「仮にもウチの最高練度なんですから力加減考えてくださいよ。怒るつもりは無いですけど実際こうして修理費が数字として出るんですから文句くらい言わせてください」
飛龍「ぶえ~…」
859: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:19:40.66 ID:8hN5TkSb0
神風「なんだか申し訳ないですね」
北上「そだね」
結果として私達があそこに居なければ、と思わずにはいられない。
しかし最高練度かあ。
ボールを受け止めた時右手には弓道で使うという手袋がハマっていた。
いわゆる正装。つまり艤装の力。
それをあの緊急事態に瞬時に右手に纏い受け止めた。
右手だけに、一瞬で。
艤装を一部だけ使うというのはとてつもなく難しいのだ。
パワーだけでなく繊細なコントロールも完璧だ。力んでボール潰してたけど。
普通これだけの力をあんなふうにぱっぱと出し入れなんて出来ない。
北上「そだね」
結果として私達があそこに居なければ、と思わずにはいられない。
しかし最高練度かあ。
ボールを受け止めた時右手には弓道で使うという手袋がハマっていた。
いわゆる正装。つまり艤装の力。
それをあの緊急事態に瞬時に右手に纏い受け止めた。
右手だけに、一瞬で。
艤装を一部だけ使うというのはとてつもなく難しいのだ。
パワーだけでなく繊細なコントロールも完璧だ。力んでボール潰してたけど。
普通これだけの力をあんなふうにぱっぱと出し入れなんて出来ない。
860: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:20:10.51 ID:8hN5TkSb0
武蔵「右手の方は大丈夫なのか?」
飛龍「ん?全然へーき」
武蔵「そうか…」
空母は馬力だけなら戦艦をも凌駕している。
さらに力を防御や反動や体制の制御、つまり下半身に力の多くを使う戦艦と違い艦載機を送り出すための腕に多く使うという。
普段弓で訓練する空母組がドッヂに参加するとひどい事になるとかならないとか。
飛龍「ん?全然へーき」
武蔵「そうか…」
空母は馬力だけなら戦艦をも凌駕している。
さらに力を防御や反動や体制の制御、つまり下半身に力の多くを使う戦艦と違い艦載機を送り出すための腕に多く使うという。
普段弓で訓練する空母組がドッヂに参加するとひどい事になるとかならないとか。
861: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/18(木) 03:22:01.60 ID:8hN5TkSb0
明石「はあーまた修理かー、残業かー辛いなー」
飛龍「あーはいはい間宮!間宮で手を打ちましょう!」
明石「何日分?」
飛龍「日!?」
明石「何日分?」
飛龍「よ、3日!三日分なら!」
明石「ばりー聞いてたぁ?」
夕張「チャリできた」ヒョイ
正確にはチャリではなく作業用のあの、なんかスケボーみたいなやつ。
飛龍「え゛」
夕張「一人三日分ならやるしかないね~」
明石「しばらくは一緒に間宮タイムだね~」
飛龍「え、いや、その」
夕明「「何か?」」
飛龍「イエナニモ」
夕明「「ヨッシャ!!」」
飛龍「うぅ…ごめん蒼龍…」
うーん。
流石の最高練度も二人には頭が上がらないようだ。
飛龍「あーはいはい間宮!間宮で手を打ちましょう!」
明石「何日分?」
飛龍「日!?」
明石「何日分?」
飛龍「よ、3日!三日分なら!」
明石「ばりー聞いてたぁ?」
夕張「チャリできた」ヒョイ
正確にはチャリではなく作業用のあの、なんかスケボーみたいなやつ。
飛龍「え゛」
夕張「一人三日分ならやるしかないね~」
明石「しばらくは一緒に間宮タイムだね~」
飛龍「え、いや、その」
夕明「「何か?」」
飛龍「イエナニモ」
夕明「「ヨッシャ!!」」
飛龍「うぅ…ごめん蒼龍…」
うーん。
流石の最高練度も二人には頭が上がらないようだ。
865: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:01:46.95 ID:bfDD7pNk0
51匹目:猫はコタツで丸くなる
雪やこんこん霰やんちゃ…あれ、何か違う?
実際猫は雪だろうと霰だろうとなんだろうとコタツがあれば丸くなるものだ。
でも例えば、それが吹雪だったりすると?
雪やこんこん霰やんちゃ…あれ、何か違う?
実際猫は雪だろうと霰だろうとなんだろうとコタツがあれば丸くなるものだ。
でも例えば、それが吹雪だったりすると?
866: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:02:46.94 ID:bfDD7pNk0
吹雪「っプハー!」
北上「…え」
吹雪「へ?」
この鎮守府。色々な所が後付け工事で構造が変わっていたり建物が増えてたりするらしい。
提督、つまり2代目である今の提督がやったとか。
嘘か真か、秘密の研究室やら禁断の実験室がどこかに隠れてるとか。噂だけどさ。
そんなんだからあまり人気のないところ探してサボってたりする艦娘がいたりする。
するのだが…
北上「…え」
吹雪「へ?」
この鎮守府。色々な所が後付け工事で構造が変わっていたり建物が増えてたりするらしい。
提督、つまり2代目である今の提督がやったとか。
嘘か真か、秘密の研究室やら禁断の実験室がどこかに隠れてるとか。噂だけどさ。
そんなんだからあまり人気のないところ探してサボってたりする艦娘がいたりする。
するのだが…
867: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:04:14.34 ID:bfDD7pNk0
3階。
外階段へと通じる扉を開けた先にあったのは
叢雲「っちゃー…」
右手を額に当て天お仰ぎやっちまったーのポーズを取る叢雲。
吹雪「」
右手に十中八九ビールの類であろう缶を持ち左手は腰に当て今しがた喉越しを味わいましたというポーズを取っている吹雪。
北上「…」
吹雪「…」
北上「…」
吹雪「ノンアルコールですから!」
北上「嘘をつけ」
どうみてもINアルコールである。
外階段へと通じる扉を開けた先にあったのは
叢雲「っちゃー…」
右手を額に当て天お仰ぎやっちまったーのポーズを取る叢雲。
吹雪「」
右手に十中八九ビールの類であろう缶を持ち左手は腰に当て今しがた喉越しを味わいましたというポーズを取っている吹雪。
北上「…」
吹雪「…」
北上「…」
吹雪「ノンアルコールですから!」
北上「嘘をつけ」
どうみてもINアルコールである。
868: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:04:50.38 ID:bfDD7pNk0
叢雲「まあ溜まり場、サボり場なのよここ。私たちしか知らないけど」
吹雪「あ、でもでもサボってるわけじゃないんですよ。ちゃんと休憩時間なんです」
北上「そこは疑ってないけど」
というか普段の働きからしてもっとガンガンサボっても文句は言われないだろう。
北上「でそれは?」
吹雪「マイソウルドリンク」
叢雲「飲む?普通のビールだから」
北上「遠慮しとくよ」
吹雪「えー罪を共有しましょうよ」
罪の自覚はあるのか。
北上「私アルコール好きくないからさ」
吹雪「む、ならしょうがないですね」
飲めない部下に理解があるいい上司。
吹雪「あ、でもでもサボってるわけじゃないんですよ。ちゃんと休憩時間なんです」
北上「そこは疑ってないけど」
というか普段の働きからしてもっとガンガンサボっても文句は言われないだろう。
北上「でそれは?」
吹雪「マイソウルドリンク」
叢雲「飲む?普通のビールだから」
北上「遠慮しとくよ」
吹雪「えー罪を共有しましょうよ」
罪の自覚はあるのか。
北上「私アルコール好きくないからさ」
吹雪「む、ならしょうがないですね」
飲めない部下に理解があるいい上司。
869: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:05:23.94 ID:bfDD7pNk0
叢雲「意外ね。球磨型はアルコールには強いと思ってたけど」
北上「別に飲めなくはないよ。好みの問題。というか皆そんなに強いの?」
吹雪「球磨さんは強いですねえ、飲んでも飲んでも顔に出ないタイプです」
叢雲「木曾は、強いのだけどそれ以上に飲みすぎるから潰れやすいわ」
北上「大井っちは普通に酔うけど潰れはしないタイプだったなあ」
吹雪「多摩さんは、多摩さんはなんといいましょうか」
叢雲「謎よね」
北上「謎?」
すごい表現だ。
北上「別に飲めなくはないよ。好みの問題。というか皆そんなに強いの?」
吹雪「球磨さんは強いですねえ、飲んでも飲んでも顔に出ないタイプです」
叢雲「木曾は、強いのだけどそれ以上に飲みすぎるから潰れやすいわ」
北上「大井っちは普通に酔うけど潰れはしないタイプだったなあ」
吹雪「多摩さんは、多摩さんはなんといいましょうか」
叢雲「謎よね」
北上「謎?」
すごい表現だ。
870: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:06:02.24 ID:bfDD7pNk0
叢雲「飲んだらすぐ寝るのよ」
吹雪「でもちょっと寝たと思ったらいつの間にか起きててまたぐいっと飲むんですよ」
叢雲「そしてまた寝る」
北上「なんだそりゃ」
吹雪「最初の落ち着いてる時も中盤のどんちゃん騒ぎの時も終盤のお通夜モードの時も一切変わらず寝て起きて飲むを繰り返すんです」
叢雲「それで翌朝みんなが吐き気と頭痛に呻いてる中ケロッとした顔で朝ご飯食べるのよね」
吹雪「あれはホント謎だよね」
北上「なんだろう。なんか多摩姉らしい」
叢雲「マイペースの極みよある意味」
吹雪「でもちょっと寝たと思ったらいつの間にか起きててまたぐいっと飲むんですよ」
叢雲「そしてまた寝る」
北上「なんだそりゃ」
吹雪「最初の落ち着いてる時も中盤のどんちゃん騒ぎの時も終盤のお通夜モードの時も一切変わらず寝て起きて飲むを繰り返すんです」
叢雲「それで翌朝みんなが吐き気と頭痛に呻いてる中ケロッとした顔で朝ご飯食べるのよね」
吹雪「あれはホント謎だよね」
北上「なんだろう。なんか多摩姉らしい」
叢雲「マイペースの極みよある意味」
871: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:06:43.86 ID:bfDD7pNk0
北上「今度みんなで飲んでみようかな」
叢雲「いいんじゃない。でもみんなでってなると途端に難しくなるわよ」
吹雪「暇な時は多いですけど予定が会う日となると意外と揃わないんですよね~」
北上「確かに。次の日出撃とかでも辛いしねぇ」
叢雲「ま、そこは最悪艤装を使えばアルコールは抜けるわよ」
吹雪「気持ち悪さは自己負担ですけどね」
北上「遠慮しておきたいところだね」
ちなみに猫にアルコールはダメ絶対。
我々はアルコールを分解する構造を持ち合わせていない。
叢雲「いいんじゃない。でもみんなでってなると途端に難しくなるわよ」
吹雪「暇な時は多いですけど予定が会う日となると意外と揃わないんですよね~」
北上「確かに。次の日出撃とかでも辛いしねぇ」
叢雲「ま、そこは最悪艤装を使えばアルコールは抜けるわよ」
吹雪「気持ち悪さは自己負担ですけどね」
北上「遠慮しておきたいところだね」
ちなみに猫にアルコールはダメ絶対。
我々はアルコールを分解する構造を持ち合わせていない。
872: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:07:19.50 ID:bfDD7pNk0
北上「二人はどうなのさ」
叢雲「私は普通ってとこかしらね。はっちゃけたりはしないわ」
吹雪「この子酔うと色っぽくなるタイプでしてね」
叢雲「ちょっと」
吹雪「特型駆逐艦は全員この子に唇奪われているなんて言われるくらいで。あ、半分くらい事実です」
叢雲「違っ」
吹雪「さらには提督を誘惑した事までありまして」ゴソゴソ
叢雲「なっ!?」
吹雪「こちらが証拠のビデオ映像になグヘェッ!!」
ビールの缶が凄く楽しそうな表情をした吹雪の頬に直撃した。
中身開けてないやつが。
ドッヂボールより痛そうだ…
叢雲「私は普通ってとこかしらね。はっちゃけたりはしないわ」
吹雪「この子酔うと色っぽくなるタイプでしてね」
叢雲「ちょっと」
吹雪「特型駆逐艦は全員この子に唇奪われているなんて言われるくらいで。あ、半分くらい事実です」
叢雲「違っ」
吹雪「さらには提督を誘惑した事までありまして」ゴソゴソ
叢雲「なっ!?」
吹雪「こちらが証拠のビデオ映像になグヘェッ!!」
ビールの缶が凄く楽しそうな表情をした吹雪の頬に直撃した。
中身開けてないやつが。
ドッヂボールより痛そうだ…
873: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:07:53.72 ID:bfDD7pNk0
叢雲「はい!」ポイ
吹雪「あぁ…メモリーが…妹の貴重な映像がぁ…」
スマホにあった映像はしっかり消されたようだ。
バックアップあるんだろうなあ。
叢雲「吹雪はそもそもあまり飲まないわね」
吹雪「私はみんなの介抱する立場ですからねえ。強いとは思いますよ?こうしてビール飲んでますし」
北上「ビールって言っちゃってるし」
吹雪「生いきビールです」
叢雲「駄菓子でしょそれは」グビ
吹雪「あぁ…メモリーが…妹の貴重な映像がぁ…」
スマホにあった映像はしっかり消されたようだ。
バックアップあるんだろうなあ。
叢雲「吹雪はそもそもあまり飲まないわね」
吹雪「私はみんなの介抱する立場ですからねえ。強いとは思いますよ?こうしてビール飲んでますし」
北上「ビールって言っちゃってるし」
吹雪「生いきビールです」
叢雲「駄菓子でしょそれは」グビ
874: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/22(月) 03:08:34.41 ID:bfDD7pNk0
しかし偶然ではあるがいい機会だ。
北上「ねえ吹雪」
吹雪「ん?」グビ
北上「ここの前任者って、どんな人?」
サラッと事も無げに聞いてみる。
吹雪「ブフッ」
北上「ありゃ」
吹き出した。吹雪だけに。
叢雲「吹雪」
吹雪「な、なに?」
叢雲「ヒゲヒゲ」
吹雪「おっと」フキフキ
泡の白いヒゲを手の甲で拭く。
オヤジか。
北上「ねえ吹雪」
吹雪「ん?」グビ
北上「ここの前任者って、どんな人?」
サラッと事も無げに聞いてみる。
吹雪「ブフッ」
北上「ありゃ」
吹き出した。吹雪だけに。
叢雲「吹雪」
吹雪「な、なに?」
叢雲「ヒゲヒゲ」
吹雪「おっと」フキフキ
泡の白いヒゲを手の甲で拭く。
オヤジか。
878: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:08:51.07 ID:7kJBhy8y0
吹雪「前任者って言っても普通の人ですよ。退役したのは、歳でしたからね」
北上「提督ってのは記録を回収してまで引退するものなの?」
酔って口を滑らす、なんて期待しているわけじゃないがこんな機会は滅多にないだろう。
畳み掛けてみる。
吹雪「…」
叢雲「吹雪?」
吹雪「叢雲。ビールお代わり」
叢雲「まだ飲む気?もうないわよ」
吹雪「取ってきて」
叢雲「はあ?」
吹雪「お願い」
叢雲「…また一つ貸しよ」
北上「提督ってのは記録を回収してまで引退するものなの?」
酔って口を滑らす、なんて期待しているわけじゃないがこんな機会は滅多にないだろう。
畳み掛けてみる。
吹雪「…」
叢雲「吹雪?」
吹雪「叢雲。ビールお代わり」
叢雲「まだ飲む気?もうないわよ」
吹雪「取ってきて」
叢雲「はあ?」
吹雪「お願い」
叢雲「…また一つ貸しよ」
879: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:21:43.11 ID:7kJBhy8y0
叢雲「…」
空き缶を持って扉を開ける。
中へ入る時、少し立ち止まったけれどそのまま静かに扉を閉めて室内へ消えていった。
北上「ん?」
叢雲の足音がしない。
扉を隔てた向こう側にいる?
覗いてみようと取手に手をかけたところ
吹雪「静かに」ボソッ
視線を戻すといつの間にか息がかかるくらい近くに吹雪の顔があった。
北上「ふ、吹雪?」ヒソヒソ
吹雪「いいから、このままで」ヒソヒソ
私はそう身長が高いわけではないけれど流石に駆逐艦とは身長差がある。
少し背伸びをしてまるでキスでもするような体制で吹雪が私の耳元で囁く。
吹雪「こうでもしないと話せませんからね」
どっちに対する言葉だろう。
いや、どちらにも当てはまる言葉か。
空き缶を持って扉を開ける。
中へ入る時、少し立ち止まったけれどそのまま静かに扉を閉めて室内へ消えていった。
北上「ん?」
叢雲の足音がしない。
扉を隔てた向こう側にいる?
覗いてみようと取手に手をかけたところ
吹雪「静かに」ボソッ
視線を戻すといつの間にか息がかかるくらい近くに吹雪の顔があった。
北上「ふ、吹雪?」ヒソヒソ
吹雪「いいから、このままで」ヒソヒソ
私はそう身長が高いわけではないけれど流石に駆逐艦とは身長差がある。
少し背伸びをしてまるでキスでもするような体制で吹雪が私の耳元で囁く。
吹雪「こうでもしないと話せませんからね」
どっちに対する言葉だろう。
いや、どちらにも当てはまる言葉か。
880: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:23:57.47 ID:7kJBhy8y0
2.3歩離れて手すりに寄りかかると元の調子で話始める。
吹雪「何処で知ったんですか?前の提督を知る人なんて殆どいないですし。多摩さん、は口は硬いですからねえ。日向さんも」
口は固そうだったけどガードは緩かったよ多摩姉。
吹雪「意外と谷風あたり?それとも、飛龍さんか」
飛龍。あの人も前からここにいるのか。
吹雪「おや、飛龍さんのことは知りませんでしたか」
北上「げっ、引っ掛けか」
顔に出てたか。私も隠し事は得意ではないようだ。
吹雪「まだまだですねえ北上さん」
北上「ぐぬぬ」
吹雪「何処で知ったんですか?前の提督を知る人なんて殆どいないですし。多摩さん、は口は硬いですからねえ。日向さんも」
口は固そうだったけどガードは緩かったよ多摩姉。
吹雪「意外と谷風あたり?それとも、飛龍さんか」
飛龍。あの人も前からここにいるのか。
吹雪「おや、飛龍さんのことは知りませんでしたか」
北上「げっ、引っ掛けか」
顔に出てたか。私も隠し事は得意ではないようだ。
吹雪「まだまだですねえ北上さん」
北上「ぐぬぬ」
881: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:26:25.11 ID:7kJBhy8y0
吹雪「なんで、知りたいんですか?前任者のことなんて」
じっと見つめてくる彼女の目は、酷く冷たく感じる。
北上「普通気になるもんなんじゃない?」
少しおどけて答える。
お互いに探り合いだ。先手は取られたが次はこちらが攻める番だ。
吹雪「まあそうですね。でもそれならさっきの私の答えで満足でしょう?仮にも軍ですから、開示できる情報に限りはあるものです」
北上「同じ鎮守府にいたんだ。身内みたいなものでしょ」
吹雪「身内なんかじゃありませんよ」
食らいつくように答えを返してきた。何か気に触ったのか?
じっと見つめてくる彼女の目は、酷く冷たく感じる。
北上「普通気になるもんなんじゃない?」
少しおどけて答える。
お互いに探り合いだ。先手は取られたが次はこちらが攻める番だ。
吹雪「まあそうですね。でもそれならさっきの私の答えで満足でしょう?仮にも軍ですから、開示できる情報に限りはあるものです」
北上「同じ鎮守府にいたんだ。身内みたいなものでしょ」
吹雪「身内なんかじゃありませんよ」
食らいつくように答えを返してきた。何か気に触ったのか?
882: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:27:15.08 ID:7kJBhy8y0
北上「…理由は言えない。でも興味本位じゃないよ。知らなくちゃいけないんだ」
吹雪「何か提督に縁でもあるんですか?」
「提督」の言い方がいつもと違った。
優しいような、懐かしむような、慈しむような。
多分前の提督を指しての「提督」なんだろう。
北上「分からないよ。でもそうかもしれない」
そうだ。興味本位だった。でも今は違う。
何か縁がある。
そう思ってる。
吹雪「何か提督に縁でもあるんですか?」
「提督」の言い方がいつもと違った。
優しいような、懐かしむような、慈しむような。
多分前の提督を指しての「提督」なんだろう。
北上「分からないよ。でもそうかもしれない」
そうだ。興味本位だった。でも今は違う。
何か縁がある。
そう思ってる。
883: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:38:02.72 ID:7kJBhy8y0
吹雪「日本生まれ日本育ちのごく普通の男性ですよ。まあ提督なんてものになってる辺りは普通ではないかもですが」
北上「国を守る為の、一国一城の主だものね」
吹雪「優秀な人でした。この戦争の始まりが何時からかというのは中々定義が難しいですけど初期から最前線で戦い続けた人ですからね」
北上「随分長いね」
吹雪「今の提督は三年と少しくらいですかね。昔より環境は格段に整っているとはいえ彼も中々優秀ですよ。前任者に似たんですかねぇ」
北上「前任と、後任か」
吹雪「優秀かは実際あまり関係はないんですよね多分。提督の必要性に関して言えば」
北上「必要性?」
北上「国を守る為の、一国一城の主だものね」
吹雪「優秀な人でした。この戦争の始まりが何時からかというのは中々定義が難しいですけど初期から最前線で戦い続けた人ですからね」
北上「随分長いね」
吹雪「今の提督は三年と少しくらいですかね。昔より環境は格段に整っているとはいえ彼も中々優秀ですよ。前任者に似たんですかねぇ」
北上「前任と、後任か」
吹雪「優秀かは実際あまり関係はないんですよね多分。提督の必要性に関して言えば」
北上「必要性?」
884: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:38:38.80 ID:7kJBhy8y0
吹雪「艦娘ってのは提督がいて初めて艦娘なんですよ。この場合の「提督がいる」の意味は色々ありますけど、提督ってのは私達船にとって灯台のような目印であり港のような帰る場所なんです。
ならその提督がいなくなったらどうなるか」
北上「…」
提督のいなくなったら鎮守府。最近よく聞く話だな。
吹雪「あらゆる鎮守府のこれからの課題ですよ。戦争は長期化してきています。今後何らかの理由で鎮守府や艦娘より先に提督が消える事例はどんどん出てくるでしょう。
その場合どうするか。どうなるか。
この鎮守府はその実験というか、試験的な意味合いがあるんですよ。偶然にもね」
提督がいなくなったら、どうなる。
手から離れた風船。飼い主から解き放たれた犬。蒲公英の綿毛。雛の巣立ち。
そのどれかか、そのどれもなのか。
ならその提督がいなくなったらどうなるか」
北上「…」
提督のいなくなったら鎮守府。最近よく聞く話だな。
吹雪「あらゆる鎮守府のこれからの課題ですよ。戦争は長期化してきています。今後何らかの理由で鎮守府や艦娘より先に提督が消える事例はどんどん出てくるでしょう。
その場合どうするか。どうなるか。
この鎮守府はその実験というか、試験的な意味合いがあるんですよ。偶然にもね」
提督がいなくなったら、どうなる。
手から離れた風船。飼い主から解き放たれた犬。蒲公英の綿毛。雛の巣立ち。
そのどれかか、そのどれもなのか。
885: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:40:13.01 ID:7kJBhy8y0
北上「前任者の記録がない。というか末梢されてるのはその問題に気づかせないためってこと?」
吹雪「まあそういう感じでしょうね。結局のところ問題の先延ばしでしかないんですけど」
北上「そうだね」
吹雪「私達艦娘が実戦投入された時も世間はお祭り騒ぎでしたからねー。非人道的だーとかなんとか。
まあ安全地帯で騒いでるだけの暇人共ですから、深海棲艦に砲弾一発ぶち込まれれば泣いてすがりついてきますけど」
北上「危険だ、とかもね」
吹雪「扱い辛いのはその通りですよ。人形なのに戦力としては軍艦相当なんですから。そのくせ人のように振る舞う。縛り付け押さえつけて反乱でもされたら事ですよ。
なのに私達以外に現状を打破できる手段はない。仕方ない」
北上「提督がいなくなれば楔がなくなる、と」
吹雪「その可能性を知られるだけでも反乱の危険がありますから。情報が消されてるのはそのためです。
と言ってもここが初めての例ですし何がきっかけで艦娘が暴れるか分かったもんじゃないですからね。上もおっかなびっくり処理した感じで、こうして気づかれる程度のお粗末なものですよ」
北上「確かに。お粗末なものだったよ」
吹雪「まあそういう感じでしょうね。結局のところ問題の先延ばしでしかないんですけど」
北上「そうだね」
吹雪「私達艦娘が実戦投入された時も世間はお祭り騒ぎでしたからねー。非人道的だーとかなんとか。
まあ安全地帯で騒いでるだけの暇人共ですから、深海棲艦に砲弾一発ぶち込まれれば泣いてすがりついてきますけど」
北上「危険だ、とかもね」
吹雪「扱い辛いのはその通りですよ。人形なのに戦力としては軍艦相当なんですから。そのくせ人のように振る舞う。縛り付け押さえつけて反乱でもされたら事ですよ。
なのに私達以外に現状を打破できる手段はない。仕方ない」
北上「提督がいなくなれば楔がなくなる、と」
吹雪「その可能性を知られるだけでも反乱の危険がありますから。情報が消されてるのはそのためです。
と言ってもここが初めての例ですし何がきっかけで艦娘が暴れるか分かったもんじゃないですからね。上もおっかなびっくり処理した感じで、こうして気づかれる程度のお粗末なものですよ」
北上「確かに。お粗末なものだったよ」
886: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:41:21.51 ID:7kJBhy8y0
吹雪「この鎮守府、昔も結構な人数がいたんですよ?戦力としても上から数えた方が早いくらいには優秀でした。
その結構な人数、どうなったと思いますか?」
変わらない調子で淡々と話す。
でも私は目の前の彼女がまるで宇宙人のように思えてきた。
同じ存在のはずなのに、自分とはあまりにも何かが違う。
吹雪「結果としてこの鎮守府で、新しい提督の元でも機能すると判断され、実際にそうだったのが僅かに数人だったという話なんですよ」
私の背中で、扉越しに僅かだが音がした。
これが聞かせたかった話しか。
自分から伝えるわけにはいかないが、知って欲しかった事実。
扉の向こうの彼女は何を思って聞いているのだろう。
目の前の少女は、他のみんなと同じように見える。
でも誰も経験した事がない何かをきっと知っている。
その結構な人数、どうなったと思いますか?」
変わらない調子で淡々と話す。
でも私は目の前の彼女がまるで宇宙人のように思えてきた。
同じ存在のはずなのに、自分とはあまりにも何かが違う。
吹雪「結果としてこの鎮守府で、新しい提督の元でも機能すると判断され、実際にそうだったのが僅かに数人だったという話なんですよ」
私の背中で、扉越しに僅かだが音がした。
これが聞かせたかった話しか。
自分から伝えるわけにはいかないが、知って欲しかった事実。
扉の向こうの彼女は何を思って聞いているのだろう。
目の前の少女は、他のみんなと同じように見える。
でも誰も経験した事がない何かをきっと知っている。
887: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:42:38.50 ID:7kJBhy8y0
北上「その結構な人数は、どうなったの」
努めて冷酷に、あえて淡々と聞き返す。
吹雪「当たり障りなく書類上の報告で返せば処分、ですかね」
北上「なんでさ」
吹雪「飼い主が消えたペットはどうなると思います?逃げ出すでしょうか。暴れたり、仲間同士で喧嘩したり、誰彼構わず襲うような猛獣だったり?
まあどれにしたって処分ですよね」
北上「そう」
吹雪「ええ」
聞きたいことを押し殺してただ相槌を打つに留める。
もしそうしなかったらと思うと、ゾッとする。
努めて冷酷に、あえて淡々と聞き返す。
吹雪「当たり障りなく書類上の報告で返せば処分、ですかね」
北上「なんでさ」
吹雪「飼い主が消えたペットはどうなると思います?逃げ出すでしょうか。暴れたり、仲間同士で喧嘩したり、誰彼構わず襲うような猛獣だったり?
まあどれにしたって処分ですよね」
北上「そう」
吹雪「ええ」
聞きたいことを押し殺してただ相槌を打つに留める。
もしそうしなかったらと思うと、ゾッとする。
888: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:43:28.18 ID:7kJBhy8y0
北上「じゃあさ、吹雪は、なんで残ったの?」
言葉を慎重に探りながら聞く。
吹雪「頼まれたんですよ」
北上「頼まれた?」
吹雪「提督に、鎮守府を頼むって」
それは、あまりにも重い言葉だ。
北上「鎮守府の維持にこだわるのはそれが理由か」
吹雪「そーゆー事です」
言葉を慎重に探りながら聞く。
吹雪「頼まれたんですよ」
北上「頼まれた?」
吹雪「提督に、鎮守府を頼むって」
それは、あまりにも重い言葉だ。
北上「鎮守府の維持にこだわるのはそれが理由か」
吹雪「そーゆー事です」
889: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:44:03.47 ID:7kJBhy8y0
北上「おや?」
吹雪「行っちゃいましたか?あの子」
北上「みたいだね。そろそろ終わると踏んだか」
吹雪「引き際はホントに上手いんですけどねぇ」ヤレヤレ
北上「聞かせたことには気づいてるのかな」
吹雪「どうでしょう。そこら辺鈍いですから」
北上「信用ないんだね」
吹雪「信頼してますよ。だからこんな危ないやり方したんです」
吹雪「行っちゃいましたか?あの子」
北上「みたいだね。そろそろ終わると踏んだか」
吹雪「引き際はホントに上手いんですけどねぇ」ヤレヤレ
北上「聞かせたことには気づいてるのかな」
吹雪「どうでしょう。そこら辺鈍いですから」
北上「信用ないんだね」
吹雪「信頼してますよ。だからこんな危ないやり方したんです」
890: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:44:49.99 ID:7kJBhy8y0
北上「正直意外だった」
吹雪「何がですか」
北上「一応とは言え話してくれた事が」
吹雪「それはこっちもですよ。まさかそっちから聞いてくるなんて」
北上「そっちからって、自分から言うつもりはあったの?」
吹雪「そうすべきかも、とは思ってたり」
微妙な笑顔で意味深な事を言われた。
北上「提督は、なんでいなくなったの?」
最後にもう一度聞く。
吹雪「…原因は色々あるのかもしれません。でも元凶は1人です。戦争ですからね、奴ら以外にいないでしょ?」
深海棲艦(奴ら)。それも、『1人』、か。
吹雪「何がですか」
北上「一応とは言え話してくれた事が」
吹雪「それはこっちもですよ。まさかそっちから聞いてくるなんて」
北上「そっちからって、自分から言うつもりはあったの?」
吹雪「そうすべきかも、とは思ってたり」
微妙な笑顔で意味深な事を言われた。
北上「提督は、なんでいなくなったの?」
最後にもう一度聞く。
吹雪「…原因は色々あるのかもしれません。でも元凶は1人です。戦争ですからね、奴ら以外にいないでしょ?」
深海棲艦(奴ら)。それも、『1人』、か。
891: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:45:19.89 ID:7kJBhy8y0
吹雪「さてさて、話はおしまいです」
北上「ありがとね。色々話してくれて」
吹雪「叢雲の事があったから、いい機会はいい機会だったんですよ。でもそれ以上に」
喋りならがらゆっくりと扉まで歩いていきノブに手をかける。
北上「それ以上に?」
吹雪「期待してるんですよ」
北上「?」
吹雪「アナタにね」ガチャ
期待とはなんの事だ?
しかし私が何か言うよりも早く吹雪は扉の向こうへ消えていった。
北上「ありがとね。色々話してくれて」
吹雪「叢雲の事があったから、いい機会はいい機会だったんですよ。でもそれ以上に」
喋りならがらゆっくりと扉まで歩いていきノブに手をかける。
北上「それ以上に?」
吹雪「期待してるんですよ」
北上「?」
吹雪「アナタにね」ガチャ
期待とはなんの事だ?
しかし私が何か言うよりも早く吹雪は扉の向こうへ消えていった。
892: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:45:48.60 ID:7kJBhy8y0
と思ったら顔だけが戻ってきた。
吹雪「おっと忘れてた!提督がさっき呼んでましたよ。東棟1階に来いって。それじゃ」シュン
北上「お、おう。りょーかい」
東棟?あそこ何かあったっけ?
やれやれどうやら丸くなってる暇はなさそうだ。
北上「んッ…ー」ノビー
大きく身体を伸ばす。
さて行きますか。
吹雪「おっと忘れてた!提督がさっき呼んでましたよ。東棟1階に来いって。それじゃ」シュン
北上「お、おう。りょーかい」
東棟?あそこ何かあったっけ?
やれやれどうやら丸くなってる暇はなさそうだ。
北上「んッ…ー」ノビー
大きく身体を伸ばす。
さて行きますか。
893: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 02:48:23.91 ID:7kJBhy8y0
第五次タペストリー争奪戦
何としてでも26日前には終わらせる所存。
北上にはひたすらイチャイチャしてもらいます
何としてでも26日前には終わらせる所存。
北上にはひたすらイチャイチャしてもらいます
895: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:07:34.79 ID:7kJBhy8y0
52匹目:猫は三年の恩を三日で忘れる
文字通り、猫は三年の恩を三日で忘れるという意味。
いやふざけるなよと。
そりゃ放し飼いというかエサだけやってる近所の猫なんていつの間にかさっと消えててこの恩知らずなんて思われるかもしれない。
しかしそんな人間の尺度で勝手に猫は恩知らずだとことわざまで残されちゃたまったもんじゃない。
犬と比べるからぱっとしないだけで忠犬ハチ公ならぬ忠猫タマ公みたいな話は昔からある。
家猫が増えている昨今、飼い主と強い絆で結ばれている猫は増えているだろう。
結局のところ恩に報いるかどうかは人それぞれ、猫それぞれだ。
少なくとも私は
報いたい。
文字通り、猫は三年の恩を三日で忘れるという意味。
いやふざけるなよと。
そりゃ放し飼いというかエサだけやってる近所の猫なんていつの間にかさっと消えててこの恩知らずなんて思われるかもしれない。
しかしそんな人間の尺度で勝手に猫は恩知らずだとことわざまで残されちゃたまったもんじゃない。
犬と比べるからぱっとしないだけで忠犬ハチ公ならぬ忠猫タマ公みたいな話は昔からある。
家猫が増えている昨今、飼い主と強い絆で結ばれている猫は増えているだろう。
結局のところ恩に報いるかどうかは人それぞれ、猫それぞれだ。
少なくとも私は
報いたい。
896: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:08:13.01 ID:7kJBhy8y0
私は飼い主を探している。
谷風曰く、こうして生まれ変わっているのには意味がある。
ならばここには何かしら縁があるのだろう。
事実白猫、もとい多摩姉がいた。絶賛記憶喪失中だけど。
しかしこうなるとどん詰まりだ。手がかりがない。
飼い主の情報はゼロ。頼りの相方の記憶は戻りそうもない。
故に私は今ここの鎮守府の前任者を探っている。
何か縁があると信じて。
谷風曰く、こうして生まれ変わっているのには意味がある。
ならばここには何かしら縁があるのだろう。
事実白猫、もとい多摩姉がいた。絶賛記憶喪失中だけど。
しかしこうなるとどん詰まりだ。手がかりがない。
飼い主の情報はゼロ。頼りの相方の記憶は戻りそうもない。
故に私は今ここの鎮守府の前任者を探っている。
何か縁があると信じて。
897: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:10:13.26 ID:7kJBhy8y0
北上「ここか」
鎮守府東棟。
通称物置小屋。
つまりそういうことである。
古いものから最近のものまで要らなくなった物をとりあえず詰め込んだここは半ばパンドラボックス化しているとかなんとか。
外見はそこそこ普通なのだが中はかつて夏に肝試し会場として使われ多数の艦娘が上はモチロン下からも涙を流す羽目になり使用禁止となるくらいには不気味らしい。
北上「おじゃましまーす」ギィ
腐った木製のドアがいかにもな音を立てる。
うん、確かにこれは怖い。
鎮守府東棟。
通称物置小屋。
つまりそういうことである。
古いものから最近のものまで要らなくなった物をとりあえず詰め込んだここは半ばパンドラボックス化しているとかなんとか。
外見はそこそこ普通なのだが中はかつて夏に肝試し会場として使われ多数の艦娘が上はモチロン下からも涙を流す羽目になり使用禁止となるくらいには不気味らしい。
北上「おじゃましまーす」ギィ
腐った木製のドアがいかにもな音を立てる。
うん、確かにこれは怖い。
898: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:11:09.98 ID:7kJBhy8y0
提督「よっ」
北上「…よかった。足はついてるみたいだね」
提督「幽霊なんかいねえよ。少なくとも俺には見えない」
北上「いるいないじゃなくて、いそうってのが幽霊なんだよ」
提督「おおなんかそれっぽい」
北上「でしょ」
提督「さてこっちだこっち」
提督の後について奥へ進む。
まだ明るい時間だというのに中はいやに暗い。
窓の掃除は、まあする人もする必要もないか。
北上「…よかった。足はついてるみたいだね」
提督「幽霊なんかいねえよ。少なくとも俺には見えない」
北上「いるいないじゃなくて、いそうってのが幽霊なんだよ」
提督「おおなんかそれっぽい」
北上「でしょ」
提督「さてこっちだこっち」
提督の後について奥へ進む。
まだ明るい時間だというのに中はいやに暗い。
窓の掃除は、まあする人もする必要もないか。
899: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:11:49.52 ID:7kJBhy8y0
提督「ここだ」
北上「どこだここ」
一階の隅っこ。
古ぼけた建物の中でも一際古臭く見える部屋。
北上「なんの部屋?」
提督「それは見てのお楽しみだ」
そう言うとポッケから鍵を取り出し扉に差し込む。
北上「ふむ」
見たところ古臭い以外は他の部屋と変わらない。
提督「ん?」ガチャガチャ
だとしたらなんで私はなんで呼ばれたんだろ?
提督「ほ!」ガチャン
荷物運びとかなら私である必要は無いし、というかそれなら今すぐ帰る。
提督「ほ?」ガッガッ
北上「どこだここ」
一階の隅っこ。
古ぼけた建物の中でも一際古臭く見える部屋。
北上「なんの部屋?」
提督「それは見てのお楽しみだ」
そう言うとポッケから鍵を取り出し扉に差し込む。
北上「ふむ」
見たところ古臭い以外は他の部屋と変わらない。
提督「ん?」ガチャガチャ
だとしたらなんで私はなんで呼ばれたんだろ?
提督「ほ!」ガチャン
荷物運びとかなら私である必要は無いし、というかそれなら今すぐ帰る。
提督「ほ?」ガッガッ
900: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:12:27.73 ID:7kJBhy8y0
他に私が呼ばれるような理由は…
提督「…」カチカチ
北上「いやいつまでやってるの」
提督「せいっ!」ガチャ
北上「お」
提督「開いた…」
北上「長く苦しい戦いだったね」
提督「見ての通りボロッボロだからな。鍵もサビとかでひでぇんだこれ」
北上「鍵変えたらいいじゃんか」
提督「そうもいかなくてな。さ、入れ入れ」ガッ
北上「あれ?」
提督「…」ガッガッ
北上「…扉事変えたら?」
提督「…検討しよう」
この後もう少し手間がかかった。
提督「…」カチカチ
北上「いやいつまでやってるの」
提督「せいっ!」ガチャ
北上「お」
提督「開いた…」
北上「長く苦しい戦いだったね」
提督「見ての通りボロッボロだからな。鍵もサビとかでひでぇんだこれ」
北上「鍵変えたらいいじゃんか」
提督「そうもいかなくてな。さ、入れ入れ」ガッ
北上「あれ?」
提督「…」ガッガッ
北上「…扉事変えたら?」
提督「…検討しよう」
この後もう少し手間がかかった。
901: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:13:18.66 ID:7kJBhy8y0
北上「おー不気味なほの暗さ」
中はぼんやりと棚やら物が見える程度には光が入っているようだ。
提督「オラァ!」バタン
北上「閉める時も大変なのね」
提督「最初から全力でやるのがコツだな」
扉を変えるのと壊れるのどっちが先だろうか。
提督「えーと、確かこの辺にランプが」
北上「ライトはないの?」
提督「電気通ってるように見えるか?」
北上「んー見えない」
提督「どっちの意味で」
北上「どっちも」
提督「なる」カチッ
北上「おわ眩しっ」
提督「おっと悪い悪い」
形はキャンドルランプのようだ。もっとも中身は電池式の豆電球のようだが。
中はぼんやりと棚やら物が見える程度には光が入っているようだ。
提督「オラァ!」バタン
北上「閉める時も大変なのね」
提督「最初から全力でやるのがコツだな」
扉を変えるのと壊れるのどっちが先だろうか。
提督「えーと、確かこの辺にランプが」
北上「ライトはないの?」
提督「電気通ってるように見えるか?」
北上「んー見えない」
提督「どっちの意味で」
北上「どっちも」
提督「なる」カチッ
北上「おわ眩しっ」
提督「おっと悪い悪い」
形はキャンドルランプのようだ。もっとも中身は電池式の豆電球のようだが。
902: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:14:04.21 ID:7kJBhy8y0
北上「ん?それって」
ランプが置いてあった台。見たことはないが知っている形だ。
提督「これか?昔使ってたプリンターだよ。業務用のでっかいやつだけどな」
北上「でもこれ結構新しいよね?なんで物置小屋に」
提督「2.3年前はフル稼働だったよ。北上は知らないだろうけど、週の予定やその日の出撃、遠征、演習の編成。大規模な作戦がある時なんか資料をしおりみたいにして配ったりしてたんだぜ」
北上「人数分?」
提督「流石に全員ってわけじゃないけどな。掲示板に貼ったり各部屋に一部配るとか艦隊の旗艦に渡したりとか。それでもえらい量だったよ」
北上「なのに今はお払い箱か」
提督「スマホあるからな」
北上「あーなるほどね~」
ランプが置いてあった台。見たことはないが知っている形だ。
提督「これか?昔使ってたプリンターだよ。業務用のでっかいやつだけどな」
北上「でもこれ結構新しいよね?なんで物置小屋に」
提督「2.3年前はフル稼働だったよ。北上は知らないだろうけど、週の予定やその日の出撃、遠征、演習の編成。大規模な作戦がある時なんか資料をしおりみたいにして配ったりしてたんだぜ」
北上「人数分?」
提督「流石に全員ってわけじゃないけどな。掲示板に貼ったり各部屋に一部配るとか艦隊の旗艦に渡したりとか。それでもえらい量だったよ」
北上「なのに今はお払い箱か」
提督「スマホあるからな」
北上「あーなるほどね~」
903: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:14:38.18 ID:7kJBhy8y0
提督「便利なもんさ。ファイルでポンと送ればそれで終わりなんだ。修正も楽だし紙もインクもいらない。掲示板が廃れたのを青葉あたりが残念がってたけどな」
北上「時代の流れだねぇ。侘び寂びだよ」
提督「それって意味あってるのか?」
北上「さあ」
提督「おい」
北上「今はプリンターないの?」
提督「家庭用のちっこいのが代わりを務めてるよ」
北上「時代の流れだねぇ。侘び寂びだよ」
提督「それって意味あってるのか?」
北上「さあ」
提督「おい」
北上「今はプリンターないの?」
提督「家庭用のちっこいのが代わりを務めてるよ」
904: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:15:21.83 ID:7kJBhy8y0
提督「まあこんなのはどうでもいいんだ。そろそろ目は慣れたろ?」
北上「うん。たいぶ」
提督「なら、ほら」
提督がランプを掲げ部屋に明かりを放つ。
北上「おー!」
思わず感嘆の声を上げてしまった。
部屋に広がっていたのは、いくつもの棚に収められた無数の本たちだった。
北上「凄い数!奥も全部そうなの?」
提督「おうよ。お前らの図書室ほどじゃないが結構な量のはずだ」
北上「でもなんでこんなところに」
北上「うん。たいぶ」
提督「なら、ほら」
提督がランプを掲げ部屋に明かりを放つ。
北上「おー!」
思わず感嘆の声を上げてしまった。
部屋に広がっていたのは、いくつもの棚に収められた無数の本たちだった。
北上「凄い数!奥も全部そうなの?」
提督「おうよ。お前らの図書室ほどじゃないが結構な量のはずだ」
北上「でもなんでこんなところに」
905: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:15:59.94 ID:7kJBhy8y0
提督「あーっと、前の、ここの前の提督の忘れ物ってところかな。一応所有権は俺にあるから心配すんな」
北上「…前の提督の」
提督「この部屋もそもそもその人の図書室みたいなもんだったらしい。読書家だったんだろうよ。そんなだから、捨てるに捨てられなくてな。こうして部屋ごと残してあんだ」
北上「これが、全部」
前任者。
これまで一切経歴やその人となりが見えなかった誰かさん。
北上「…読んでもいい?」
提督「モチロン。そのために呼んだんだ」
本棚の適当な1冊に指をかけ手前に抜く。
初めて誰かさんに触れられた気がした。
北上「…前の提督の」
提督「この部屋もそもそもその人の図書室みたいなもんだったらしい。読書家だったんだろうよ。そんなだから、捨てるに捨てられなくてな。こうして部屋ごと残してあんだ」
北上「これが、全部」
前任者。
これまで一切経歴やその人となりが見えなかった誰かさん。
北上「…読んでもいい?」
提督「モチロン。そのために呼んだんだ」
本棚の適当な1冊に指をかけ手前に抜く。
初めて誰かさんに触れられた気がした。
906: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:16:37.55 ID:7kJBhy8y0
北上「ホコリとかはあんまりないんだね」
提督「それくらいの掃除はしてるさ。本のほうはよく分からないから保存状態は保証できないが」
北上「重畳だよ」
日光が入らないのは見た通りだけど、換気の方もそこそこされているようだ。
よれていたりはするけれど古本ならではという程度で素人の保存としては及第点だろう。
手に取ったのは『The Door into Summer』。
北上「英語?」
本棚に並ぶタイトルをざっと眺める。
提督「そ。これ全部海外の本なんだよ」
北上「なるほど。それで私ってわけか」
提督「別に無理に読む事はないぞ。もう北上くらいしか読むやつもいないだろうし、気に入ったのだけでも使ってくれれば御の字だ」
北上「気に入ったのかあ。これ全部をチェックするにはそれだけで長い時間楽しめそうだよ」
提督「それくらいの掃除はしてるさ。本のほうはよく分からないから保存状態は保証できないが」
北上「重畳だよ」
日光が入らないのは見た通りだけど、換気の方もそこそこされているようだ。
よれていたりはするけれど古本ならではという程度で素人の保存としては及第点だろう。
手に取ったのは『The Door into Summer』。
北上「英語?」
本棚に並ぶタイトルをざっと眺める。
提督「そ。これ全部海外の本なんだよ」
北上「なるほど。それで私ってわけか」
提督「別に無理に読む事はないぞ。もう北上くらいしか読むやつもいないだろうし、気に入ったのだけでも使ってくれれば御の字だ」
北上「気に入ったのかあ。これ全部をチェックするにはそれだけで長い時間楽しめそうだよ」
907: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:18:24.81 ID:7kJBhy8y0
提督「そりゃよかった。ほい」
北上「これって、ここの鍵?」
提督「俺はもう戻るから自由に使ってくれれ。あー暗かったら本はバンバン持ち出して構わないぞ。目ぇ悪くなるだろここ」
北上「人間じゃあるまいし、そんなんで悪くならないよ。ここで読む」
提督「そっか、ならいいけど。んじゃ」
北上「はいはーい」
日本人でこれだけ海外の本を集めるって中々だなあ。もしかして読書好きとかが私の飼い主との共通点とか?
さてどこから読んでいこうか。
ガタッ
いやその前にこの本たちがどう並んでいるかをチェックしよう。
提督「あれ?」ガタガタ
北上「これって、ここの鍵?」
提督「俺はもう戻るから自由に使ってくれれ。あー暗かったら本はバンバン持ち出して構わないぞ。目ぇ悪くなるだろここ」
北上「人間じゃあるまいし、そんなんで悪くならないよ。ここで読む」
提督「そっか、ならいいけど。んじゃ」
北上「はいはーい」
日本人でこれだけ海外の本を集めるって中々だなあ。もしかして読書好きとかが私の飼い主との共通点とか?
さてどこから読んでいこうか。
ガタッ
いやその前にこの本たちがどう並んでいるかをチェックしよう。
提督「あれ?」ガタガタ
908: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:19:00.95 ID:7kJBhy8y0
とりあえずアルファベット順ではあるようだけどもっと大まかにジャンルや年代作者別の可能性もある。
提督「フンッ!」ガッ
いやらパッと見作者別はなさそうだ。
提督「ソッ!ハッ!」ガッガッ
…
北上「てーとく~。いつまでやってんの」
提督「いや…」
北上「てーとく?」
提督「なんて言うかその…」
北上「提督?」
提督「微動だにしない」
北上「うそん」
驚きの密室体験。
提督「フンッ!」ガッ
いやらパッと見作者別はなさそうだ。
提督「ソッ!ハッ!」ガッガッ
…
北上「てーとく~。いつまでやってんの」
提督「いや…」
北上「てーとく?」
提督「なんて言うかその…」
北上「提督?」
提督「微動だにしない」
北上「うそん」
驚きの密室体験。
909: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:19:53.78 ID:7kJBhy8y0
北上「艦娘パワーならいけると思うけど」
提督「それだと扉壊れちまうし」
北上「緊急事態じゃない?」
提督「まあそうとも言えるが…」
北上「なんか引っかかってるのかね」
提督「多分さっき閉めた衝撃で鍵が変に閉まっちまってんだと思う」
北上「鍵?あーホントだ。隙間から錠が見える」
提督「鍵でいけるかな」
北上「んー…ダメだ。中途半端に鍵かかってるせいで入らない」
提督「ダメかあ」
北上「ダメだあ」
提督「それだと扉壊れちまうし」
北上「緊急事態じゃない?」
提督「まあそうとも言えるが…」
北上「なんか引っかかってるのかね」
提督「多分さっき閉めた衝撃で鍵が変に閉まっちまってんだと思う」
北上「鍵?あーホントだ。隙間から錠が見える」
提督「鍵でいけるかな」
北上「んー…ダメだ。中途半端に鍵かかってるせいで入らない」
提督「ダメかあ」
北上「ダメだあ」
910: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:20:35.46 ID:7kJBhy8y0
北上「やっぱ壊すしかないんじゃ」
提督「最終手段でお願いします」
北上「最終って…」
提督「そう悲観することもないだろ。鎮守府の誰かに連絡とりゃいいんだし」
北上「あっそうか」
普段スマホなんて持ち歩かないから完全に失念していた。
提督「…」
北上「…」
北上「あれ、連絡は?」
提督「え、いやスマホ部屋に置いてきちった」
北上「私スマホなんて持ち歩かないよ」
提督「マジで」
北上「マジか」
提督「最終手段でお願いします」
北上「最終って…」
提督「そう悲観することもないだろ。鎮守府の誰かに連絡とりゃいいんだし」
北上「あっそうか」
普段スマホなんて持ち歩かないから完全に失念していた。
提督「…」
北上「…」
北上「あれ、連絡は?」
提督「え、いやスマホ部屋に置いてきちった」
北上「私スマホなんて持ち歩かないよ」
提督「マジで」
北上「マジか」
911: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:21:14.71 ID:7kJBhy8y0
提督「つんだ」
北上「最終と言ってもいいのでは」
提督「ん~。ここに行くことは吹雪も知ってるしあんまり遅けりゃ探しに来るだろ」
北上「そんなにこの部屋が大切なの」
提督「まあな」
北上「…仲良かったりしたの?前の提督と」
提督「いや…仲はあんまし良くなかったかな」
凄く難しい顔をする。
北上「最終と言ってもいいのでは」
提督「ん~。ここに行くことは吹雪も知ってるしあんまり遅けりゃ探しに来るだろ」
北上「そんなにこの部屋が大切なの」
提督「まあな」
北上「…仲良かったりしたの?前の提督と」
提督「いや…仲はあんまし良くなかったかな」
凄く難しい顔をする。
912: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:21:46.85 ID:7kJBhy8y0
北上「よく考えたら私は別に急いで外に出る必要ないよね」
提督「俺も別に急いで外に出る必要はないな」
北上「いや提督は仕事しよう」
提督「不可抗力不可抗力」
北上「やはり扉を壊して出よう」
提督「まて落ち着け」
北上「日頃の行いが悪かったと諦めよう」
提督「それとこれとは別問だいたたたた折れる折れる本気出すなおい!」
提督「俺も別に急いで外に出る必要はないな」
北上「いや提督は仕事しよう」
提督「不可抗力不可抗力」
北上「やはり扉を壊して出よう」
提督「まて落ち着け」
北上「日頃の行いが悪かったと諦めよう」
提督「それとこれとは別問だいたたたた折れる折れる本気出すなおい!」
913: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:22:20.10 ID:7kJBhy8y0
提督「どうせ俺がいなくても鎮守府回るし」
北上「これは酷い」
提督「書類とかだってぶっちゃけアレいらないだろ?古臭いしきたりみたいなもんだよ。今時んなもんデータで送れってんだ」
北上「まあまあ。私達のためだと思ってさ」
提督「お前らのためになるかは微妙だぞ?」
北上「なんでよ」
提督「戦争だからな」
北上「そっかー」
提督「俺が仕事をサボれば平和になる」のでは」
北上「それは見て見ぬふりって言うんだよ」
提督「う…」
北上「これは酷い」
提督「書類とかだってぶっちゃけアレいらないだろ?古臭いしきたりみたいなもんだよ。今時んなもんデータで送れってんだ」
北上「まあまあ。私達のためだと思ってさ」
提督「お前らのためになるかは微妙だぞ?」
北上「なんでよ」
提督「戦争だからな」
北上「そっかー」
提督「俺が仕事をサボれば平和になる」のでは」
北上「それは見て見ぬふりって言うんだよ」
提督「う…」
914: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:22:56.28 ID:7kJBhy8y0
北上「後で吹雪に謝っときなよ」
提督「そーするよ」
北上「さてと。じゃ方針も決まったし救援がくるまでゆっくりくつろぎますか~」
提督「くつろぐっても椅子もなんもないんだけどな」
北上「ホコリがないならそれで十分だよ」
一番手前の棚の左上から5冊ほどを抜き取る。とりあえずは片っ端から見ていこう。
本棚を背に床に座る。
北上「うわ」
提督「どした」
北上「妙な湿り気というか感触というか」
年季の入った板の出す独特の柔らかさが○○に直に伝わってくる。
夏も終わり残った暑さと湿気がなんとも言えない生暖かさを演出していた。
スカートをしっかり下に引いた方が良さそうだ。
提督「そーするよ」
北上「さてと。じゃ方針も決まったし救援がくるまでゆっくりくつろぎますか~」
提督「くつろぐっても椅子もなんもないんだけどな」
北上「ホコリがないならそれで十分だよ」
一番手前の棚の左上から5冊ほどを抜き取る。とりあえずは片っ端から見ていこう。
本棚を背に床に座る。
北上「うわ」
提督「どした」
北上「妙な湿り気というか感触というか」
年季の入った板の出す独特の柔らかさが○○に直に伝わってくる。
夏も終わり残った暑さと湿気がなんとも言えない生暖かさを演出していた。
スカートをしっかり下に引いた方が良さそうだ。
915: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:23:32.88 ID:7kJBhy8y0
北上「こういう時男が羨ましいよ」
提督「ズボンだしな」
北上「提督も来なよ」
提督「俺英語は読めねえぞ」
北上「そこは北上さまに任せなさい。それにずっと立ってるわけにもいかないでしょ?」
提督「まあそりゃそうだが」
北上「いつもの提督室みたいな感じでさ」
提督「…」
何やらしばし躊躇した後、
提督「おーけー、お邪魔するよ」
そうっと私の隣に座ってくれた。
提督「ズボンだしな」
北上「提督も来なよ」
提督「俺英語は読めねえぞ」
北上「そこは北上さまに任せなさい。それにずっと立ってるわけにもいかないでしょ?」
提督「まあそりゃそうだが」
北上「いつもの提督室みたいな感じでさ」
提督「…」
何やらしばし躊躇した後、
提督「おーけー、お邪魔するよ」
そうっと私の隣に座ってくれた。
916: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:24:09.02 ID:7kJBhy8y0
やっぱり大井っちの事を考えたりしているのだろうか。
まあ今は緊急事態だししょうがない。
しょうがないよ。
提督「で、それはなんて本だ?」
北上「『The Door into Summer』これくらいは分かるでしょ」
提督「…夏に、夏の、中の扉?」
北上「そんな固く考えなくてもいいって。夏への扉ってやつ。これは和訳のやつを読んだことあるんだ」
提督「青春ものって感じのタイトルだけど」
北上「内容はもっと大人っぽいよ。仲間に裏切られた主人公がね、唯一信頼してた猫ともはぐれて未来に行っちゃうって感じかな」
提督「裏切りかぁ。そりゃ辛いな」
北上「提督も明日は我が身だよ~」
提督「よせやいこんなアットホームな職場で」
北上「うわぁこりゃいつ刺されるかもわからんね」
提督「俺が主人公なら猫は北上かな」
北上「またまたそんなこと言って~。素直になりなよ~」ツンツン
提督「素直な意見だよ素直なぁ」
まあ今は緊急事態だししょうがない。
しょうがないよ。
提督「で、それはなんて本だ?」
北上「『The Door into Summer』これくらいは分かるでしょ」
提督「…夏に、夏の、中の扉?」
北上「そんな固く考えなくてもいいって。夏への扉ってやつ。これは和訳のやつを読んだことあるんだ」
提督「青春ものって感じのタイトルだけど」
北上「内容はもっと大人っぽいよ。仲間に裏切られた主人公がね、唯一信頼してた猫ともはぐれて未来に行っちゃうって感じかな」
提督「裏切りかぁ。そりゃ辛いな」
北上「提督も明日は我が身だよ~」
提督「よせやいこんなアットホームな職場で」
北上「うわぁこりゃいつ刺されるかもわからんね」
提督「俺が主人公なら猫は北上かな」
北上「またまたそんなこと言って~。素直になりなよ~」ツンツン
提督「素直な意見だよ素直なぁ」
917: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:24:42.23 ID:7kJBhy8y0
北上『The Lord of the Rings』」
提督「これは映画を見た気がするな」
北上「見に行ったの?」
提督「いや。鎮守府で上映会みたいなのやって色んな映画を見たりするんだ。正直これは途中から見たからあまり記憶が正確じゃないなあ」
北上「長いからね~これ。よく映画にまとめたよ。ハリーポッターなんかもそうだけど」
提督「海外の映画なら俺はパイレーツ・オブ・カリビアンが好きかな」
北上「いつも安全地帯で指示出すだけなのに前線に出て船長とかに興味あるの?」
提督「グサッとくる。箱に心臓入れたくなるくらいグサッとくる」
北上「あ、結構気にしてた?」
提督「いいもん。これが俺に出来る最善だもん」
北上「でも海賊には憧れる」
提督「というよりは自由ってやつだな。もちろん無責任なほうじゃなくてな」
提督「これは映画を見た気がするな」
北上「見に行ったの?」
提督「いや。鎮守府で上映会みたいなのやって色んな映画を見たりするんだ。正直これは途中から見たからあまり記憶が正確じゃないなあ」
北上「長いからね~これ。よく映画にまとめたよ。ハリーポッターなんかもそうだけど」
提督「海外の映画なら俺はパイレーツ・オブ・カリビアンが好きかな」
北上「いつも安全地帯で指示出すだけなのに前線に出て船長とかに興味あるの?」
提督「グサッとくる。箱に心臓入れたくなるくらいグサッとくる」
北上「あ、結構気にしてた?」
提督「いいもん。これが俺に出来る最善だもん」
北上「でも海賊には憧れる」
提督「というよりは自由ってやつだな。もちろん無責任なほうじゃなくてな」
918: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:25:34.25 ID:7kJBhy8y0
…
……
北上「これもなんかなあ」
提督「二冊連続だぞ」
北上「やっぱ出だしでこう、なんか合わないって本あるんだよねぇ」
提督「俺にはよく分からんな」
北上「アニメとかで出だしでいきなりなっがい独白から始まってえっ…てなる感じ、かなあ」
提督「なんとなく分かった」
北上「こっちは、『Stray』?迷うとかはぐれる」
提督「びっきーアラン。聞いたことはないな」
北上「…これはちょっと読みたくなる感じ」
提督「そりゃよかった」
北上「ちょっと肩かりまーす」
提督「ちょ、おい。北上ー」
北上「やっぱ椅子無しは辛い」
提督「へいへい」
……
北上「これもなんかなあ」
提督「二冊連続だぞ」
北上「やっぱ出だしでこう、なんか合わないって本あるんだよねぇ」
提督「俺にはよく分からんな」
北上「アニメとかで出だしでいきなりなっがい独白から始まってえっ…てなる感じ、かなあ」
提督「なんとなく分かった」
北上「こっちは、『Stray』?迷うとかはぐれる」
提督「びっきーアラン。聞いたことはないな」
北上「…これはちょっと読みたくなる感じ」
提督「そりゃよかった」
北上「ちょっと肩かりまーす」
提督「ちょ、おい。北上ー」
北上「やっぱ椅子無しは辛い」
提督「へいへい」
919: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:26:10.89 ID:7kJBhy8y0
北上「…あー、迷い猫はぐれ猫って意味か」パラパラ
なんだか親近感が。
あれ?
北上「なにやってんの」
提督「こうして座るとあんまり身長差感じねーなーって」
北上「そうじゃなくてなんで私のおさげをいじってるのさ」
提督「なんかフサフサしてて気持ちいい」
北上「猫の○尾じゃないんだからさ」
提督「というかさっきからいじってたけど全然気が付かないのな」
北上「読み込んでたからね」
提督「ところで猫の○尾って気持ちいいのか?」
北上「んー、どうだろう」
なんだか親近感が。
あれ?
北上「なにやってんの」
提督「こうして座るとあんまり身長差感じねーなーって」
北上「そうじゃなくてなんで私のおさげをいじってるのさ」
提督「なんかフサフサしてて気持ちいい」
北上「猫の○尾じゃないんだからさ」
提督「というかさっきからいじってたけど全然気が付かないのな」
北上「読み込んでたからね」
提督「ところで猫の○尾って気持ちいいのか?」
北上「んー、どうだろう」
920: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:26:50.36 ID:7kJBhy8y0
提督「やっぱ長い髪だと筆みたいで気持ちいいな」
北上「そんなに気に入ったの?」
提督「俺なんかつんつん頭だしさ」
北上「提督のは染めてるのもあるでしょ」
提督「確かに」
北上「髪長いってのも色々大変なんだよ?寝転がったら体制変える度に髪に引っ張られたり巻きついたり。こうして座ってるとこから立とうとすると髪を足や手で挟んでピーンってなったり。艤装降ろそうとしたら髪の毛挟まってて頭を引っ張られたり「待て待て、落ち着け。ゴメン俺が悪かった」分かればよろしい」
提督「髪切りたいのか?」
北上「出来ればね~」
提督「ふ~ん。それはそれでもったいねえな」
北上「そう?」
提督「男は髪短いからさ、長髪ってなんか大切な感じがするのかな」
北上「隣の芝生は青いってやつかな」
北上「そんなに気に入ったの?」
提督「俺なんかつんつん頭だしさ」
北上「提督のは染めてるのもあるでしょ」
提督「確かに」
北上「髪長いってのも色々大変なんだよ?寝転がったら体制変える度に髪に引っ張られたり巻きついたり。こうして座ってるとこから立とうとすると髪を足や手で挟んでピーンってなったり。艤装降ろそうとしたら髪の毛挟まってて頭を引っ張られたり「待て待て、落ち着け。ゴメン俺が悪かった」分かればよろしい」
提督「髪切りたいのか?」
北上「出来ればね~」
提督「ふ~ん。それはそれでもったいねえな」
北上「そう?」
提督「男は髪短いからさ、長髪ってなんか大切な感じがするのかな」
北上「隣の芝生は青いってやつかな」
921: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:28:08.97 ID:7kJBhy8y0
北上「あとこそばゆいねこれ」
提督「あ、やっぱ自分でもそうなんだ」
北上「風呂上がりとか特にさ。私の長さだと鎖骨あたりにちょーど刺さって。もうちょい長いと○とかいくんじゃないかな」
提督「あのさ、その生々しぃ体験談を俺に対して女子トークのノリでするのはどうかと思うんですよ」
北上「あ、ごめん」
提督「俺って男だって事意識されてないのかな」
北上「どうだろね。人によるとは思うけど、私としては性別じゃなくて異性って感覚があまり無い気がする」
提督「どゆこと」
北上「提督が異性だと思えない」
提督「同じことだろ?」
北上「いやいや。例えば私が男で提督が女でも、提督がイケメンでも不細工でも、なんであれ差異を感じないって感じ」
提督「友達感覚しかない、ってことか」
北上「ここには仲間しかいないから」
提督「あ、やっぱ自分でもそうなんだ」
北上「風呂上がりとか特にさ。私の長さだと鎖骨あたりにちょーど刺さって。もうちょい長いと○とかいくんじゃないかな」
提督「あのさ、その生々しぃ体験談を俺に対して女子トークのノリでするのはどうかと思うんですよ」
北上「あ、ごめん」
提督「俺って男だって事意識されてないのかな」
北上「どうだろね。人によるとは思うけど、私としては性別じゃなくて異性って感覚があまり無い気がする」
提督「どゆこと」
北上「提督が異性だと思えない」
提督「同じことだろ?」
北上「いやいや。例えば私が男で提督が女でも、提督がイケメンでも不細工でも、なんであれ差異を感じないって感じ」
提督「友達感覚しかない、ってことか」
北上「ここには仲間しかいないから」
922: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:28:46.67 ID:7kJBhy8y0
提督「仲間、ねえ」
北上「家族の方が合ってるかも。ファミリーだよ」
提督「姉妹にとどまらずか」
北上「みんな個○○だからね、私達には海より濃い血が流れてるんだね」
提督「なんだそりゃ」
北上「さあてね。提督、長い髪が好きなんだっけ」
提督「誰から聞いたよそれ」
北上「大井っち」
提督「あんにゃろ」
北上「てことはそうなんだ」
提督「自分にないものって憧れるじゃん」
北上「髪伸ばせば?五年もあれば結構な長さになるんじゃない」
提督「よせやい変人だよそんなん」
北上「今更でしょ」
提督「おい」
北上「家族の方が合ってるかも。ファミリーだよ」
提督「姉妹にとどまらずか」
北上「みんな個○○だからね、私達には海より濃い血が流れてるんだね」
提督「なんだそりゃ」
北上「さあてね。提督、長い髪が好きなんだっけ」
提督「誰から聞いたよそれ」
北上「大井っち」
提督「あんにゃろ」
北上「てことはそうなんだ」
提督「自分にないものって憧れるじゃん」
北上「髪伸ばせば?五年もあれば結構な長さになるんじゃない」
提督「よせやい変人だよそんなん」
北上「今更でしょ」
提督「おい」
923: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:29:37.80 ID:7kJBhy8y0
北上「よっと」
読み終えた本を戻して新たに本を取り出す。
ずっと座っているのでこうして体を定期的に動かさないとあとが怖い。
提督「北上ー○○○見えてんぞー」
北上「やーん○○○ー」
提督「反応が薄い」
北上「見せ慣れてるからねぇ。それを言ったら提督こそ」
提督「見慣れてるからなぁ」
北上「世間的には結構とんでもないこと言ってるよねお互い」
提督「女ばっかの兄弟の中で1人だけ男みたいなもんなんじゃね。一々○○なんかしねえだろ」
北上「んーイマイチわかんないや」
そこら辺は人間の感覚だろう。
読み終えた本を戻して新たに本を取り出す。
ずっと座っているのでこうして体を定期的に動かさないとあとが怖い。
提督「北上ー○○○見えてんぞー」
北上「やーん○○○ー」
提督「反応が薄い」
北上「見せ慣れてるからねぇ。それを言ったら提督こそ」
提督「見慣れてるからなぁ」
北上「世間的には結構とんでもないこと言ってるよねお互い」
提督「女ばっかの兄弟の中で1人だけ男みたいなもんなんじゃね。一々○○なんかしねえだろ」
北上「んーイマイチわかんないや」
そこら辺は人間の感覚だろう。
924: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 21:30:16.84 ID:7kJBhy8y0
北上「提督も立ったら?腰痛めるよ」
提督「いやいいよ。今は」
北上「そお?流石に体育座りのままはキツそうだけど」
提督「フフ、提督を舐めるなよ」
天龍より怖くない。いっそかわいい。
北上「ならいっそ提督を椅子にしよう」
提督「へ?」
北上「ほら足広げて伸ばして」
提督「わっバカやめろ!ストップ!待て!」
北上「猫に待ては効かないよ~」
提督「だあやめやめ!」
提督「いやいいよ。今は」
北上「そお?流石に体育座りのままはキツそうだけど」
提督「フフ、提督を舐めるなよ」
天龍より怖くない。いっそかわいい。
北上「ならいっそ提督を椅子にしよう」
提督「へ?」
北上「ほら足広げて伸ばして」
提督「わっバカやめろ!ストップ!待て!」
北上「猫に待ては効かないよ~」
提督「だあやめやめ!」
926: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:32:49.63 ID:7kJBhy8y0
北上「そんなに嫌だった?」
しばし取っ組みあったが流石に少女と大人、力の差は歴然だ。
ここで艦娘としての力を使うようなことは流石にしない。
提督「嫌ではないんだが…まあ色々とね、男としてと言いますか」
男?
大井っちの事かな。
別にこれくらいはいいじゃないか。
独り占めはよくないぞ。
提督「北上?」
北上「なら膝枕を要求しますよ~」
提督「だ~もわかったわかったやりゃいいんだろ。それならかまわないよ」
しばし取っ組みあったが流石に少女と大人、力の差は歴然だ。
ここで艦娘としての力を使うようなことは流石にしない。
提督「嫌ではないんだが…まあ色々とね、男としてと言いますか」
男?
大井っちの事かな。
別にこれくらいはいいじゃないか。
独り占めはよくないぞ。
提督「北上?」
北上「なら膝枕を要求しますよ~」
提督「だ~もわかったわかったやりゃいいんだろ。それならかまわないよ」
927: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:33:24.14 ID:7kJBhy8y0
北上「えー」
提督「んだよ」
提督、胡座。
北上「正座じゃないのそこは」
提督「木の板の上で長時間正座かつ膝枕とか拷問かよ」
北上「それもそうか。ちぇーひ弱だなあ人間」
提督「繊細だと言ってくれ」
北上「いやその言い方もどうなのさ」
提督「…割れ物注意とか?」
北上「ガラス細工だったとは」
提督「デリケートなんだぜ」
提督「んだよ」
提督、胡座。
北上「正座じゃないのそこは」
提督「木の板の上で長時間正座かつ膝枕とか拷問かよ」
北上「それもそうか。ちぇーひ弱だなあ人間」
提督「繊細だと言ってくれ」
北上「いやその言い方もどうなのさ」
提督「…割れ物注意とか?」
北上「ガラス細工だったとは」
提督「デリケートなんだぜ」
928: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:33:51.67 ID:7kJBhy8y0
北上「よいしょっと」
提督の少し固めの膝枕に頭を預け上を向き本を開く。
提督「お前はホント膝枕好きだな」
北上「知ってたの?あー大井っちか」
提督「私の膝は全然使ってくれないーって言ってたよ」
北上「大井っち余計なことばっかするからゆっくり寝れないんだよね…」
提督「本人に言ったらどうだ」
北上「なまじ悪気がないだけにこちらからは言い難い」
提督「善意って怖いな」
北上「てーとくから言っといてよ」
提督「なんで俺が。んな事言ったら嘘つけーって酸素魚雷が2発ほど飛んでくる」
2発という具体的な数字が出てくるあたり提督も慣れているというかなんというか。
提督の少し固めの膝枕に頭を預け上を向き本を開く。
提督「お前はホント膝枕好きだな」
北上「知ってたの?あー大井っちか」
提督「私の膝は全然使ってくれないーって言ってたよ」
北上「大井っち余計なことばっかするからゆっくり寝れないんだよね…」
提督「本人に言ったらどうだ」
北上「なまじ悪気がないだけにこちらからは言い難い」
提督「善意って怖いな」
北上「てーとくから言っといてよ」
提督「なんで俺が。んな事言ったら嘘つけーって酸素魚雷が2発ほど飛んでくる」
2発という具体的な数字が出てくるあたり提督も慣れているというかなんというか。
929: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:34:19.65 ID:7kJBhy8y0
ふと上を見ると提督の顔が見える。
北上「提督ってなんで髪染めてるのさ」
提督「カッコいいだろ?」
北上「…」
提督「北上?」
北上「…」
提督「…」
北上「…」
提督「きたかみさーん」
北上「鏡って知ってる?」
提督「お前ほんっと容赦ないよな」
北上「提督ってなんで髪染めてるのさ」
提督「カッコいいだろ?」
北上「…」
提督「北上?」
北上「…」
提督「…」
北上「…」
提督「きたかみさーん」
北上「鏡って知ってる?」
提督「お前ほんっと容赦ないよな」
930: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:34:47.80 ID:7kJBhy8y0
提督「そんなに変か?それこそ海外じゃ金髪なんて珍しくないだろ」
北上「国によるけどね。でも天然の髪色を金髪というなら提督のそれはパツキンだよ。塗ってるどころか塗られてるレベルだよ」
提督「マジかよ…そんなに似合ってない?」
北上「見慣れたから特に変とは思はないけど、絶望的に似合ってない」
提督「マジかぁ…似合っててもおかしくないはずなんだがなぁ…」
妙な言い回しをする。なんでそんなに自分に自信を持てていたのか。
北上「国によるけどね。でも天然の髪色を金髪というなら提督のそれはパツキンだよ。塗ってるどころか塗られてるレベルだよ」
提督「マジかよ…そんなに似合ってない?」
北上「見慣れたから特に変とは思はないけど、絶望的に似合ってない」
提督「マジかぁ…似合っててもおかしくないはずなんだがなぁ…」
妙な言い回しをする。なんでそんなに自分に自信を持てていたのか。
931: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:35:23.00 ID:7kJBhy8y0
ハラリとページをめくる。
北上「本のページをめくるのは○○○をめくるのと似ているのかもしれない」
提督「何言ってんの。いやほんとマジで何言ってんの」
北上「普段は目に見えない所を自分の手で顕にしていくというのがたまらないと言いますか」
提督「それ一緒にするのは他の読書家に失礼なんじゃないのか」
北上「中身はこうじゃないかと予想しながらそれが当たっても外れても楽しめる感じがさ」
提督「凄い、俺女子に○○○めくりについて熱く語られてる」
北上「提督はどう思う?」
提督「んー、○○○は見慣れてるしなあ」
北上「…もしかして提督って既に枯れてたりする?」
提督「そんな!ことは、ない…はず」
北上「本のページをめくるのは○○○をめくるのと似ているのかもしれない」
提督「何言ってんの。いやほんとマジで何言ってんの」
北上「普段は目に見えない所を自分の手で顕にしていくというのがたまらないと言いますか」
提督「それ一緒にするのは他の読書家に失礼なんじゃないのか」
北上「中身はこうじゃないかと予想しながらそれが当たっても外れても楽しめる感じがさ」
提督「凄い、俺女子に○○○めくりについて熱く語られてる」
北上「提督はどう思う?」
提督「んー、○○○は見慣れてるしなあ」
北上「…もしかして提督って既に枯れてたりする?」
提督「そんな!ことは、ない…はず」
932: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:35:55.38 ID:7kJBhy8y0
北上「よし、こいつはまた今度読もう」
提督「当たりだったか」
北上「うん」
さて次の本はと。
提督「…」サラッ
北上「うわっ、なにさ提督~」
前髪をサラリとかき分けられた。
提督「改めて見るとまつげ長いなって」
北上「そりゃあ私だってオンナノコですから」
提督「どうせ大井だろ」
北上「マアネー」
提督「大井は結構化粧とかファッションこだわる方だからなあ。鎮守府じゃそういうの気にするやつ少ないし」
北上「戦場だしね。でも大井っちが私にこういうの気にするようにって言い出したのは最近だよ」
提督「そうなのか?」
北上「そだよ」
提督「当たりだったか」
北上「うん」
さて次の本はと。
提督「…」サラッ
北上「うわっ、なにさ提督~」
前髪をサラリとかき分けられた。
提督「改めて見るとまつげ長いなって」
北上「そりゃあ私だってオンナノコですから」
提督「どうせ大井だろ」
北上「マアネー」
提督「大井は結構化粧とかファッションこだわる方だからなあ。鎮守府じゃそういうの気にするやつ少ないし」
北上「戦場だしね。でも大井っちが私にこういうの気にするようにって言い出したのは最近だよ」
提督「そうなのか?」
北上「そだよ」
933: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:36:31.86 ID:7kJBhy8y0
北上「最低限これくらいはしてください、ってさ。めんどくさいけど大井っちがやってくれるならいーかなーって」
提督「めんどくさがりだな」
北上「必要な事はやるよ。でもこれは別に必要じゃないでしょ?」
提督「そうか?オンナノコなんだろ?」
北上「猫が磨くのは爪だけだよ」
提督「毛繕いもしろってことだろ」
北上「えーやだーめんどくさいー」
提督「やっぱめんどくさがりじゃねえか」
北上「提督やってよ」
提督「俺?無茶言うな。三つ編みだってできねぇぞ」
北上「やってみると案外簡単なもんだよ」
提督「なら自分でやるんだな」
北上「ちぇー」
提督「めんどくさがりだな」
北上「必要な事はやるよ。でもこれは別に必要じゃないでしょ?」
提督「そうか?オンナノコなんだろ?」
北上「猫が磨くのは爪だけだよ」
提督「毛繕いもしろってことだろ」
北上「えーやだーめんどくさいー」
提督「やっぱめんどくさがりじゃねえか」
北上「提督やってよ」
提督「俺?無茶言うな。三つ編みだってできねぇぞ」
北上「やってみると案外簡単なもんだよ」
提督「なら自分でやるんだな」
北上「ちぇー」
934: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:37:04.04 ID:7kJBhy8y0
提督「この髪も、海に出たら焼けてしまうんだよな」
北上「バケツかぶりゃ元通りだけどね」
提督「バケツじゃ治らないものもあるよ」
北上「ん?艶とか?」
提督「艶は、どうだろ」
北上「キューティクル」
提督「たまに聞くけどキューティクルって結局なに」
北上「私達で言う艤装みたいなものらしいよ」
提督「武器なのか」
北上「シールドってこと」
提督「そっちか」
北上「どお?私の髪は。キューティクルあるかな」
提督「サラサラだよ。サラサラだとキューティクルあるってことなのか?」
北上「…さあ?」
提督「えぇ…」
北上「バケツかぶりゃ元通りだけどね」
提督「バケツじゃ治らないものもあるよ」
北上「ん?艶とか?」
提督「艶は、どうだろ」
北上「キューティクル」
提督「たまに聞くけどキューティクルって結局なに」
北上「私達で言う艤装みたいなものらしいよ」
提督「武器なのか」
北上「シールドってこと」
提督「そっちか」
北上「どお?私の髪は。キューティクルあるかな」
提督「サラサラだよ。サラサラだとキューティクルあるってことなのか?」
北上「…さあ?」
提督「えぇ…」
935: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:37:38.42 ID:7kJBhy8y0
北上「さっきの話だけど、こうやってさ」
提督「ん?」
北上「膝枕が好きっての。こうやって人に、ひっつくというかー擦り寄る?寄り添う感じが凄く安心するんだ」
提督「ほー。いよいよ猫みたいだな」
北上「アレはマーキングとかの意味もあるんだけどね」
提督「んじゃ今俺はマーキングされてんのか」
北上「…」
広げていた本を少し下にずらし提督の顔を見る。
提督「北上?」
今度は目が合った。
提督「ん?」
北上「膝枕が好きっての。こうやって人に、ひっつくというかー擦り寄る?寄り添う感じが凄く安心するんだ」
提督「ほー。いよいよ猫みたいだな」
北上「アレはマーキングとかの意味もあるんだけどね」
提督「んじゃ今俺はマーキングされてんのか」
北上「…」
広げていた本を少し下にずらし提督の顔を見る。
提督「北上?」
今度は目が合った。
936: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:38:15.47 ID:7kJBhy8y0
北上「マーキングかぁ」
提督「んだよ」
北上「じゃあさてーとくは、私のモノだね」
北上「ぐえ」
一瞬の間の後驚くほど速い仕草で開いていた本を顔に押し付けられた。
提督「バカ言うな。そんなことしたら大井にありったけの魚雷を撃たれちまう」
北上「あはは、そりゃ怖いや」ガバッ
提督「もういいのか?」
北上「上向きで本読むと手が疲れる」
提督「最初に気づけよそれ」
提督「んだよ」
北上「じゃあさてーとくは、私のモノだね」
北上「ぐえ」
一瞬の間の後驚くほど速い仕草で開いていた本を顔に押し付けられた。
提督「バカ言うな。そんなことしたら大井にありったけの魚雷を撃たれちまう」
北上「あはは、そりゃ怖いや」ガバッ
提督「もういいのか?」
北上「上向きで本読むと手が疲れる」
提督「最初に気づけよそれ」
937: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:38:42.64 ID:7kJBhy8y0
さて次の本次の本。
提督「今の本はどうだった?」
北上「これ?あー、えっとねえ」
なんだっけ、どんな内容だった?出だしは?登場人物は?
いやそんなことはいい。次の本だ次の本。
ガタンッ
提督「ん?」
北上「扉。救援かな」
そういえば救援が来たとしてあの扉をどうするか考えてなかったな。
提督「今の本はどうだった?」
北上「これ?あー、えっとねえ」
なんだっけ、どんな内容だった?出だしは?登場人物は?
いやそんなことはいい。次の本だ次の本。
ガタンッ
提督「ん?」
北上「扉。救援かな」
そういえば救援が来たとしてあの扉をどうするか考えてなかったな。
938: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:39:15.42 ID:7kJBhy8y0
吹雪「チェストー!!」バキィッ!
提督「えぇーー!?」
北上「うわぁ…」
吹雪「イチャコラしてるバカップルはここかぁ!」
提督「てめ何してんだよ派手にぶっ壊しやがって!お前だってこの部屋はこのまま残しとこうって言ってたじゃねえか!」
吹雪「まともに機能しなくなったらそんなもの思い出せない思い出と一緒ですよ!朽ちた過去に想い入れなんか持たずに思い出くらい自分の中でしっかり保存しといてください!」
提督「いやでももうちっとなんかこう、あるだろお!」
吹雪「あるのは仕事だけですよ!鍵がぶっ壊れてるあたり状況は察しますがそんなんじゃ仕事は減りません」
提督「んな殺生な!あーまてまて引っ張るないててて北上ー……」
北上「おぉ…」
嵐はあっという間に扉の向こうへ消えていった。
提督「えぇーー!?」
北上「うわぁ…」
吹雪「イチャコラしてるバカップルはここかぁ!」
提督「てめ何してんだよ派手にぶっ壊しやがって!お前だってこの部屋はこのまま残しとこうって言ってたじゃねえか!」
吹雪「まともに機能しなくなったらそんなもの思い出せない思い出と一緒ですよ!朽ちた過去に想い入れなんか持たずに思い出くらい自分の中でしっかり保存しといてください!」
提督「いやでももうちっとなんかこう、あるだろお!」
吹雪「あるのは仕事だけですよ!鍵がぶっ壊れてるあたり状況は察しますがそんなんじゃ仕事は減りません」
提督「んな殺生な!あーまてまて引っ張るないててて北上ー……」
北上「おぉ…」
嵐はあっという間に扉の向こうへ消えていった。
939: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:39:41.04 ID:7kJBhy8y0
北上「せっかく貰った鍵だけど意味なくなっちゃったね」
静かになった事だし読書を再開しよう。
北上「なんだろこれ」
手に取った本に何かが挟まっている。
北上「写真か」
随分古い。
そこには
一面の麦畑と
その中で笑う一人の女性が写っていた。
その金髪の女性を、私は知らない。
知らないけれど、どこかで見た覚えがあった。
あの神社で。
静かになった事だし読書を再開しよう。
北上「なんだろこれ」
手に取った本に何かが挟まっている。
北上「写真か」
随分古い。
そこには
一面の麦畑と
その中で笑う一人の女性が写っていた。
その金髪の女性を、私は知らない。
知らないけれど、どこかで見た覚えがあった。
あの神社で。
940: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:40:33.63 ID:7kJBhy8y0
麦畑と比較して見るに身長はそこそこ高い。
それこそ大男と並んでいても不思議じゃないくらいには。
私ならきっと麦に○くらいまで覆われてしまうだろう。
写真は、ここか。
本の見開き。ここに挟まっていた。
そこには写真と同じ大きさの跡と
M.Hという文字があった。
イニシャルか?
なんだか見覚えが…
それこそ大男と並んでいても不思議じゃないくらいには。
私ならきっと麦に○くらいまで覆われてしまうだろう。
写真は、ここか。
本の見開き。ここに挟まっていた。
そこには写真と同じ大きさの跡と
M.Hという文字があった。
イニシャルか?
なんだか見覚えが…
941: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:41:03.95 ID:7kJBhy8y0
北上「あっ」
本の背表紙を見る。
下の方に、かすれて見えにくくなっているが同じM.Hの文字がある。
やっぱりこれは持ち主の、前の提督のイニシャルだ。
他の本にも書いてある。
M…提督も、今の提督も苗字はMだな。
あーいや、イニシャルだから苗字はHか。
イニシャルだけじゃどうしようもないか。
しかし何故この本に、この…
北上「『The Catcher in the Rye』。またこの本か」
あれ、そういえばあの時。図書室での時。
本の背表紙を見る。
下の方に、かすれて見えにくくなっているが同じM.Hの文字がある。
やっぱりこれは持ち主の、前の提督のイニシャルだ。
他の本にも書いてある。
M…提督も、今の提督も苗字はMだな。
あーいや、イニシャルだから苗字はHか。
イニシャルだけじゃどうしようもないか。
しかし何故この本に、この…
北上「『The Catcher in the Rye』。またこの本か」
あれ、そういえばあの時。図書室での時。
942: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:41:31.47 ID:7kJBhy8y0
多摩姉が言っていた。
まるで一枚の写真のように、
小麦色に、金色で、
一人の女性が。
じゃあ多摩姉が見たのはこれの事か?
でも何故?ここにあったのなら多摩姉が見る機会はなさそうなものだ。
だとしたらここにない時、まだ前任者がここにいた時に見た?
わからない。
わからないから、調べるしかない。
本を片っ端から見て、何か他にもないかを。
まるで一枚の写真のように、
小麦色に、金色で、
一人の女性が。
じゃあ多摩姉が見たのはこれの事か?
でも何故?ここにあったのなら多摩姉が見る機会はなさそうなものだ。
だとしたらここにない時、まだ前任者がここにいた時に見た?
わからない。
わからないから、調べるしかない。
本を片っ端から見て、何か他にもないかを。
943: ◆rbbm4ODkU. 2018/01/25(木) 23:42:09.80 ID:7kJBhy8y0
北上「まだ何か挟まってるな」
こっちは栞か。
この本が好きだったのだろうか。
妙なマークが描かれているが特に情報になるものはなかった。
そんな事はいい、次の本だ。
早く、のんびりしてはいられない。
ここにある本全部だ。
機械的にページをめくっていく。
さっきまで広がっていた本の世界は、ただの文字の羅列になってしまった。
かまわないさ。私には目的があるんだ。
何かの本の前編を閉じ、私は棚に戻した。
っと、ここらでちょっと休憩にしようか。
こっちは栞か。
この本が好きだったのだろうか。
妙なマークが描かれているが特に情報になるものはなかった。
そんな事はいい、次の本だ。
早く、のんびりしてはいられない。
ここにある本全部だ。
機械的にページをめくっていく。
さっきまで広がっていた本の世界は、ただの文字の羅列になってしまった。
かまわないさ。私には目的があるんだ。
何かの本の前編を閉じ、私は棚に戻した。
っと、ここらでちょっと休憩にしようか。
948: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:38:46.82 ID:9A3FF+BK0
谷風「いやあびっくりしたよ。丁度寝るとこだったからよかったものを、こんな時間に部屋に押しかけてくるなんてさ。一応私らの仲はあまり知られないようにしてるんじゃないのかい?」
北上「…」
時間は23時を過ぎたところ。
あれから無我夢中に本を漁った結果寝食を忘れてしまい、夕飯になっても現れない私を大井っちが血眼になって見つけ出してーまあ一悶着あった。
本に夢中になっていたと誤魔化し夕飯をさっさと済ませまた本を漁っていたらこんな時間。
でも明日を待つ余裕はなかった。
お馴染みの屋上。
北上「この写真の女性、誰か知ってる?」
谷風「ん~?血相変えてこの谷風さんを呼び出したと思えば最初の質問がそれかい」
北上「知ってる?」
谷風「知らないね。生憎だけど艦娘以外で女性に会ったことは無いね」
北上「…」
時間は23時を過ぎたところ。
あれから無我夢中に本を漁った結果寝食を忘れてしまい、夕飯になっても現れない私を大井っちが血眼になって見つけ出してーまあ一悶着あった。
本に夢中になっていたと誤魔化し夕飯をさっさと済ませまた本を漁っていたらこんな時間。
でも明日を待つ余裕はなかった。
お馴染みの屋上。
北上「この写真の女性、誰か知ってる?」
谷風「ん~?血相変えてこの谷風さんを呼び出したと思えば最初の質問がそれかい」
北上「知ってる?」
谷風「知らないね。生憎だけど艦娘以外で女性に会ったことは無いね」
949: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:39:42.76 ID:9A3FF+BK0
北上「これがね、物置小屋の本棚にあった本に挟まってたんだ」
谷風「あぁ、あの部屋か」
私が何を見て聞いてきたか察しがついたようだ。
北上「谷風」
谷風「なんだい」
北上「前任者について、話してほしい」
谷風「それはできないね」
即答だった。
常に囀りのやまないその口から飛び出た言葉とは思えないほど完全な否定。
谷風「あぁ、あの部屋か」
私が何を見て聞いてきたか察しがついたようだ。
北上「谷風」
谷風「なんだい」
北上「前任者について、話してほしい」
谷風「それはできないね」
即答だった。
常に囀りのやまないその口から飛び出た言葉とは思えないほど完全な否定。
950: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:40:10.32 ID:9A3FF+BK0
北上「何故」
谷風「あんまし覚えてないからね。なにせ鳥頭だからさ」
北上「…」
そうヘラヘラと笑う。
私が猫なら今頃食ってかかっているだろう。
谷風「そう今にも食いかかるような顔をしないでおくれよ。冗談さジョーダン」
北上「…」
トリはトリでも妖怪サトリの方みたいだ。
谷風「あんまし覚えてないからね。なにせ鳥頭だからさ」
北上「…」
そうヘラヘラと笑う。
私が猫なら今頃食ってかかっているだろう。
谷風「そう今にも食いかかるような顔をしないでおくれよ。冗談さジョーダン」
北上「…」
トリはトリでも妖怪サトリの方みたいだ。
951: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:40:37.50 ID:9A3FF+BK0
谷風「覚えてないってのは嘘じゃないんだ。何せ私は自分の事で頭がいっぱいたったからね。自分の同族を見つけるために艦娘のことしか見てなかったんだ。
こう言っちゃなんだか悪い気もするけれど提督とは決して仲は良くなかったんだ。悪くもないだけで。まあそれは今の提督も同じなんだけどね」
北上「覚えてないから話せないって?そんな理由で」
谷風「それは違う」
北上「?」
谷風「私はね、同じ境遇の仲間を見つけるために止まり木としての鎮守府が必要だった。だからこの鎮守府に残った」
こう言っちゃなんだか悪い気もするけれど提督とは決して仲は良くなかったんだ。悪くもないだけで。まあそれは今の提督も同じなんだけどね」
北上「覚えてないから話せないって?そんな理由で」
谷風「それは違う」
北上「?」
谷風「私はね、同じ境遇の仲間を見つけるために止まり木としての鎮守府が必要だった。だからこの鎮守府に残った」
952: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:41:08.80 ID:9A3FF+BK0
谷風「吹雪から聞いたろ?彼女は、そうだねえ。ある種の呪いみたいなものだね。前任者から受けた言葉でこの鎮守府に残った」
北上「な、なんであの時の話の内容知ってるのさ」
谷風「壁に耳あり障子に目ありってね。最もあの時は扉に耳があったようだけど」
北上「そこまで…」
谷風「内緒話をするには少々場所が開けすぎだよあそこは」
北上「次回から参考にさせてもらうよ」
谷風「そいつぁこまるね。盗み聞きしにくくなっちまう」
北上「悪びれもしないんだね」
それにしても呪いだなんて。
言い得て妙なのかもしれないけれど。
北上「な、なんであの時の話の内容知ってるのさ」
谷風「壁に耳あり障子に目ありってね。最もあの時は扉に耳があったようだけど」
北上「そこまで…」
谷風「内緒話をするには少々場所が開けすぎだよあそこは」
北上「次回から参考にさせてもらうよ」
谷風「そいつぁこまるね。盗み聞きしにくくなっちまう」
北上「悪びれもしないんだね」
それにしても呪いだなんて。
言い得て妙なのかもしれないけれど。
953: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:41:52.25 ID:9A3FF+BK0
谷風「日向さんは読書という提督以外の拠り所があったからこの鎮守府に残った。もっともそれも提督の影響みたいだけどね」
あぁ、そう言えば以前そう言っていたっけ。
谷風「他にも何人か自分なりの理由があってここに残った。でもそれは決して提督の事を大切に思っていなかったわけじゃないんだ。それとは別問題なのさ。
私だってそうさ。大して関わりもなかったけれど、こんな変わり者をここに置いてくれた事に感謝してる」
言葉一つ一つから前任者への思いが伝わってくるようだ。
いつものように軽い口調だが、その一つ一つはとても重い。
あぁ、そう言えば以前そう言っていたっけ。
谷風「他にも何人か自分なりの理由があってここに残った。でもそれは決して提督の事を大切に思っていなかったわけじゃないんだ。それとは別問題なのさ。
私だってそうさ。大して関わりもなかったけれど、こんな変わり者をここに置いてくれた事に感謝してる」
言葉一つ一つから前任者への思いが伝わってくるようだ。
いつものように軽い口調だが、その一つ一つはとても重い。
954: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:42:30.09 ID:9A3FF+BK0
谷風「提督がいなくなっても提督がいたからこそここに残った。そして、だから私達は提督に最も近かった吹雪に付いていくつもりだ」
北上「吹雪に?」
前任者の秘書艦でもあったという吹雪。
谷風「もしかしたら私達も気づかないうちに吹雪を提督の代わりの拠り所としちまってるのかもねえ。ま、そんなんだからさ、吹雪が君に話さなかった以上私達もこれ以上君には話せない。そういうことさ」
北上「義理堅いんだね」
私達とはつまりここに残った艦娘の事か。
吹雪や谷風、飛龍さんに日向さんに、他の人も。
谷風「お堅いだけだよ。ついでに口も硬い。残ったのはみんなそんなやつばかりさ」
北上「どうだかね」
北上「吹雪に?」
前任者の秘書艦でもあったという吹雪。
谷風「もしかしたら私達も気づかないうちに吹雪を提督の代わりの拠り所としちまってるのかもねえ。ま、そんなんだからさ、吹雪が君に話さなかった以上私達もこれ以上君には話せない。そういうことさ」
北上「義理堅いんだね」
私達とはつまりここに残った艦娘の事か。
吹雪や谷風、飛龍さんに日向さんに、他の人も。
谷風「お堅いだけだよ。ついでに口も硬い。残ったのはみんなそんなやつばかりさ」
北上「どうだかね」
955: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:42:58.80 ID:9A3FF+BK0
谷風「ともあれ君の飼い主と前任の提督が何かしら繋がりがあるのは確かだろうね。随分と読書家だったけど海外の物まであったなら外人と繋がりがあってもおかしくない」
北上「無いと困るよ。この糸も繋がってないんじゃ本当に八方塞がりだ」
谷風「そうだねぇ。ならやっぱり提督、今の提督を調べるべきなのかな」
北上「今の?なんで?」
谷風「ここが少々特殊なのは知ってるだろう?ならその後釜になった彼にも何かしらの繋がりがあって然るべきじゃあないかな」
北上「繋がりねえ」
確かに提督は前任者に対して思わせぶりなところがある。
北上「君達が普通に話してくれりゃそれでいいんだけどね」
谷風「そいつは言わないでおくれよ。協力したいのは確かなんだからさ」
北上「無いと困るよ。この糸も繋がってないんじゃ本当に八方塞がりだ」
谷風「そうだねぇ。ならやっぱり提督、今の提督を調べるべきなのかな」
北上「今の?なんで?」
谷風「ここが少々特殊なのは知ってるだろう?ならその後釜になった彼にも何かしらの繋がりがあって然るべきじゃあないかな」
北上「繋がりねえ」
確かに提督は前任者に対して思わせぶりなところがある。
北上「君達が普通に話してくれりゃそれでいいんだけどね」
谷風「そいつは言わないでおくれよ。協力したいのは確かなんだからさ」
956: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:43:32.80 ID:9A3FF+BK0
北上「よし、とりあえずは」
谷風「とりあえずは?」
北上「お風呂に入ろう」
谷風「まだ入ってなかったのかい」
北上「ずっと本読んでた」
谷風「よっしゃ!なら私も付き合おうしゃないか」
北上「え、なんでさ」
谷風「裸の付き合いって言うだろ?」
北上「まあいいけどさ」
谷風「親子水入らずなんて言うけど、裸の付き合いは友人お湯いりようって感じだね」
北上「水を差すとかもそうだけど言葉における水って悪いイメージだよね」
谷風「とりあえずは?」
北上「お風呂に入ろう」
谷風「まだ入ってなかったのかい」
北上「ずっと本読んでた」
谷風「よっしゃ!なら私も付き合おうしゃないか」
北上「え、なんでさ」
谷風「裸の付き合いって言うだろ?」
北上「まあいいけどさ」
谷風「親子水入らずなんて言うけど、裸の付き合いは友人お湯いりようって感じだね」
北上「水を差すとかもそうだけど言葉における水って悪いイメージだよね」
957: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:44:27.24 ID:9A3FF+BK0
廊下を歩く。
私の横にはウミネコがいる。
裸の付き合いねぇ、猫は水は苦手なものだというのに奇妙な話だ。
北上「あ」
谷風「ん、どーしたんだい?」
北上「てーとくに鍵返さなきゃ」
谷風「鍵?鍵ってなんの」
北上「物置小屋の部屋の。まあ扉は吹雪がぶっ飛ばしちゃったから無用の長物なんだけどね」
谷風「ぶっ飛ばしちゃったかー。そこら辺は後で詳しく聞かせてくれるんだろうねえ」
北上「ありゃ、そこは覗き見してなかったんだ」
谷風「あはは、そんな覗き魔じゃあるまいに」
北上「あはは」
いや覗き魔だよお前は。
私の横にはウミネコがいる。
裸の付き合いねぇ、猫は水は苦手なものだというのに奇妙な話だ。
北上「あ」
谷風「ん、どーしたんだい?」
北上「てーとくに鍵返さなきゃ」
谷風「鍵?鍵ってなんの」
北上「物置小屋の部屋の。まあ扉は吹雪がぶっ飛ばしちゃったから無用の長物なんだけどね」
谷風「ぶっ飛ばしちゃったかー。そこら辺は後で詳しく聞かせてくれるんだろうねえ」
北上「ありゃ、そこは覗き見してなかったんだ」
谷風「あはは、そんな覗き魔じゃあるまいに」
北上「あはは」
いや覗き魔だよお前は。
958: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:45:06.92 ID:9A3FF+BK0
「だからなんで急に見せたんですか!!」
「そりゃお前には関係ないだろ!色々と大変だったんだぞ!」
谷風「うわー」
北上「うわー」
提督室、の前、よりももちっと遠く。
廊下にもそこそこ声が漏れていた。
谷風「あのバカップルはいつも元気なもんだねぇ」
北上「これ周りへの騒音はどうなのよ」
谷風「あまり想像したくないね」
北上「鳥さん鳥さん、あの家はいつもあんなに騒がしいのかい?」
谷風「そうさねえ、週に一、二回はああしてピーチクパーチクやってるよ」
「そりゃお前には関係ないだろ!色々と大変だったんだぞ!」
谷風「うわー」
北上「うわー」
提督室、の前、よりももちっと遠く。
廊下にもそこそこ声が漏れていた。
谷風「あのバカップルはいつも元気なもんだねぇ」
北上「これ周りへの騒音はどうなのよ」
谷風「あまり想像したくないね」
北上「鳥さん鳥さん、あの家はいつもあんなに騒がしいのかい?」
谷風「そうさねえ、週に一、二回はああしてピーチクパーチクやってるよ」
959: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:45:37.06 ID:9A3FF+BK0
「そう簡単に言うけどなあこっちも我慢したんだからな!」
「そんなの私だってそうですよ!」
北上「…いてっ」
谷風「ん?」
北上「あーいや、ちょっと鍵を強く握っちゃって」
谷風「なにやってんのさ…」
北上「ははは…さてお風呂行っちゃいましょーかねー」
谷風「鍵はいいのかい」
北上「今入ったら確実に巻き込まれるもん」
谷風「それもそうだね」
「そんなの私だってそうですよ!」
北上「…いてっ」
谷風「ん?」
北上「あーいや、ちょっと鍵を強く握っちゃって」
谷風「なにやってんのさ…」
北上「ははは…さてお風呂行っちゃいましょーかねー」
谷風「鍵はいいのかい」
北上「今入ったら確実に巻き込まれるもん」
谷風「それもそうだね」
960: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:46:13.35 ID:9A3FF+BK0
谷風「お風呂上がりのドライヤーは任せておきなっ」
北上「何故自信満々に」
谷風「浦風や磯風にやったげてんのさ。君の専属スタイリスト程じゃないだろうけど得意ではあるんだ」
専属スタイリストて…いや大井っちはそれくらいやっているか。
北上「ならお言葉に甘えちゃおっかな」
谷風「おうよ」
北上「谷風ってお風呂好きなの?」
谷風「そりゃもう。暇さえありゃ朝風呂に入ってるよ」
北上「そんなにか」
江戸っ子?おっさんっぽいとも言える。
北上「何故自信満々に」
谷風「浦風や磯風にやったげてんのさ。君の専属スタイリスト程じゃないだろうけど得意ではあるんだ」
専属スタイリストて…いや大井っちはそれくらいやっているか。
北上「ならお言葉に甘えちゃおっかな」
谷風「おうよ」
北上「谷風ってお風呂好きなの?」
谷風「そりゃもう。暇さえありゃ朝風呂に入ってるよ」
北上「そんなにか」
江戸っ子?おっさんっぽいとも言える。
961: ◆rbbm4ODkU. 2018/02/24(土) 03:46:45.29 ID:9A3FF+BK0
谷風「最近は風呂が気持ちよくなってきたしね」
北上「それもそうだね」
谷風「湯冷めには気をつけなよ」
北上「大井っちにもう言われたよ」
谷風「流石だね」
北上「私は別にお風呂は好きでも嫌いでもないしね」
谷風「ほーん。嫌いでもないのかい、猫なのに」
北上「そっちこそ、鳥なのに」
お互いにニヤリと笑う。
秘密の友達との秘密の会話。
特別感というか背徳感というか、妙にこそばゆくて心地よい。
季節は、秋に差し掛かっていた。
北上「それもそうだね」
谷風「湯冷めには気をつけなよ」
北上「大井っちにもう言われたよ」
谷風「流石だね」
北上「私は別にお風呂は好きでも嫌いでもないしね」
谷風「ほーん。嫌いでもないのかい、猫なのに」
北上「そっちこそ、鳥なのに」
お互いにニヤリと笑う。
秘密の友達との秘密の会話。
特別感というか背徳感というか、妙にこそばゆくて心地よい。
季節は、秋に差し掛かっていた。
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