1: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:00:58 ID:t9g

引用元: 【デレマスSS】七海「先にシャワー浴びてこいよ、なのれす」P「……」 



41: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:24:34 ID:t9g

七海「その気持ちは今も変わりません。前よりも強いくらいれす。
七海は回遊魚で回帰魚れす。
アイドルの海を泳ぎ切り、川を遡行し、Pの元へ戻ってくる、その時まで……」

P「…………」

七海「待っていて欲しいのれす。いえ、待っていて……下さい」

P「……!」

七海「大好きれす。
絶対にあなたの元へ帰ってくるのれ、その時にこの言葉にお返事を下さい」

P「……七海」

七海「…………」

P「…………」

七海「……そういうわけなのれ、今日お返事はいりません!
小っ恥ずかしい告白も誰得シリアスも、ここまれれす!」

P「誰得て」

七海「水族館、残りの展示内容も端から端まで楽しむれすよ~。そいや! そいやっ!」

42: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:24:55 ID:t9g

P「…………」

P「……おう。……そうだな」

七海「そうなのれす! ここ一週間以上企んでた目標を達成したら気分がスッキリしたのれす!
さぁ、いきましょ~~!」

P「ちょ、おいおい。引っ張るなって……」

七海「ちなみに近くに海鮮丼のお店があるそうなのれす~。
そこにも行ってみたいれすね~。
久々のお魚なのれす~」

P「はいはい。あとでなー」

七海「あ! 向こうにクラゲコーナー!
特別展示で変な顔の海洋生物展もあるみたいれすよ~」

P「…………」

P「……ちゃんと考えなきゃな」

七海「えっ? なんだって?れす~?」

P「……なんでもないよ」

※ ※ ※ ※ ※

43: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:25:33 ID:t9g


乃々「……あれ?」

芽衣子「どうしたの乃々ちゃん?」

雪美「くらげ……きらきら……」

乃々「れ」

芽衣子「れ?」

乃々「レーダーが……Pさん追跡レーダーがないんですけど!」

芽衣子「えっ!?」

雪美「くらげ……うにょうにょ……」

乃々・芽衣子「お、落としたっ!?」

雪美「……そして……P……いつの間にか……いない……」

乃々・芽衣子「嘘ぉっ!?」

44: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:25:58 ID:t9g

※ ※ ※ ※ ※

むつみ「あれ? 何か落ちてる……」

むつみ「……これ、何だろう? 時計……地図?」

むつみ「何か真ん中で光って点滅して……」

むつみ「た、宝物を探すレーダーとか?」

むつみ「昔の漫画で見たかも! 確か願い事を叶えてくれる金色の玉が……!」

むつみ「……ぼ、冒険の……摩訶不思議な冒険の香り……!」

※ ※ ※ ※ ※

45: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:26:54 ID:t9g


館内 触れ合いプールにて

七海「かたーい。おおきーい。ぐにぐにー」

P「サメと触れ合いコーナーなんてあるのか…そしてでっかいプール……っていうか生け簀?の中のサメに迷わず手を伸ばすその度胸よ……!」

七海「ざらざらー。サメは本当に鮫肌なんれすね~」

P「マジでか……。ちょっと気になる」

七海「Pも触るといいのれす~。周りの小ちゃな子ども達でも触ってるのれす~。
エイも沢山居るのれすよ~。えいえいっ!」

P「突くな突くな。
ちょっと抵抗あるんだけどな……噛まない?」

七海「噛まない噛まない、れす~。
あんまり怯えてると監視員のお姉さんに笑われるのれすよ~。
ささ、どうぞどうぞ~。
あ、先に手を洗うのれすよ」

P「分かってるよ……」

七海「よし……ステイステイ」ポソ

P「うん?」

七海「うん? 何かありましたか~?」

P「今何か……」

七海「うーん?」

P「……気のせいか?」

46: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:27:35 ID:t9g

七海「気のせい気のせい♪」

七海(…………)

P「手を洗って……っと。エイは尻尾を触らないようにしなきゃならんのか……」

七海「…………」

P「落ちないようにも気をつけないとな……。
そーっと手を伸ばして……」

七海「…………」ピュイッ♪

P「え? 七海? 指くわえて……口笛?
何を……まるで何かの合図みたい……にっ!?」

ビチビチビチッ!

P「わぷっ!? なんだっ!? 急にサメ達が暴れ出したぞっ!
全身で水を弾き飛ばして……こっちにっ……ていうか、俺にっ!?」

七海「…………」

監視員「えっ? えっ!?」

子ども達「わー。すっごい……!」

P「なんで俺だけっ!? 俺なんかしたっ!?」

七海「…………」

P「さり気なく無表情で見てる七海も怖いっ!
えっ? これ、七海の仕業?
七海がけしかけてるの!?」

47: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:28:13 ID:t9g

七海「そんな超常的なこと、七海にはできないれすよー(迫真)」

P「棒読みなんだけどっ!? 全然真に迫ってないんだけど!?
つか、もうやめーや! 水かけんな! サメ!」

七海「ピュイッ!」

P「また合図したっ!」

ピタリッ…。

P「サメ止まったっ!?」

七海「ふしぎなこともあるものれすねー。
ああ! Pがびしょ濡れで大変なことに!れす~」

P「わざとらしっ! 何っ? そこまで俺のこと憎いっ!?」

七海「愛してるのれすよ?」

P「重いっ!」

監視員「…………」

子ども達「…………」

七海「そもそもいくら七海でも、初対面のお魚達を好きに操れるわけがないのれす。
そんなオカルティックなセブンシーは存在しないのれすよ」

P「茄子さんや芳乃やサンタクロースがいる世界だしなー」

七海「ともあれ! Pがつゆだくで大変なのれす。すぐに着替えないと!」

P「つゆだくゆーなや。食う気か」

七海「メインの展示はあらかた見ましたし、帰りましょう~?」

48: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:28:36 ID:t9g

P「えーっ…、これで電車のるの? たぶん宿まで30分くらい掛かるんだけど……」

七海「七海に名案があるのれす!」

P「あ。そっか、お土産屋さんに行ったら何か適当な……」

七海「そんなことより! 七海に任せるのれす!」

P「いや、そんなことって……」

七海「はい。タオルを頭から被って! 七海に任せてついてくるのれす~」

P「妙に用意いいな!?
やっぱり計算尽くだったんじゃあ……っと手を引くな手を引くな、めっちゃ見られてる!」

七海「顔はそのまま隠しておくのれす~」

P「俺が隠しても仕方ないだろう!」

七海「おじゃましました~。楽しかったのれす~!
容疑者連行中なのれ道をあけてくらさーい!」

P「誰がだっ! だから引くなって!
うわっ。靴もぐちょぐちょで気持ち悪ぃ…!
あ、あと、出る前に受付にちょっと寄らせてくれ」

七海「受付のお姉さんは20超えで、Pさんの守備範囲外っぽかったれすよ~?」

P「違うからっ! スカウトでもないし、ロリコンでもないからっ!」

ギャーギャー

監視員「…………」

子ども達「…………」

監視員「…………」

子ども達「…………」

監視員・子ども達『な、何だ……今の……』

49: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:29:15 ID:t9g

※ ※ ※ ※ ※

お好み焼き屋 『つくも』にて

おばちゃん(店主)「嬢ちゃんテレビで見たことあるね。芸能人かい?」

芽衣子「えっ? 分かるぅー? 変装してるのに困っちゃうな~」

おばちゃん「やっぱりかい!
それならトッピングおまけしちゃうよ。宣伝よろしくねー!」

芽衣子「今度柑奈ちゃんのラジオに出ないかって誘われてるから、その時にでも宣伝しておくよ!」

おばちゃん「ありがとね! 追加のトッピングは何がいい?」

芽衣子「シラス! シラスある? 山盛りのシラスで!」

おばちゃん「ほう。嬢ちゃん……通だね! あるよ!」

芽衣子「お好み焼き和歌山風すぺしゃる!
初めて会った時、折角バスツアーの解散地が大阪だったのに、結局案内できなかったからねー。
今日は乃々ちゃんに本場関西の」

乃々「なんで私たちお好み焼き屋さんにいるんですかっ!?」

芽衣子「今さらっ!?」

雪美「……乃々……ツッコミ遅い……」

乃々「いえ、芽衣子さんが暴走した時は心を無にして従うことにしているので……気付くのが遅れました……」

50: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:29:48 ID:t9g

芽衣子「おばちゃん! ウドンある? ウドン!」

おばちゃん「……あるよ(低音)」ニヤリ

乃々「違うんですけど!? 別にウドンが食べたくて騒いでるわけじゃないんですけどっ!?」

雪美「……焼けてきた……自分の分は……自分で……」カッカッカッ

乃々「雪美ちゃんの手捌きが尋常じゃないんですけど!?」

雪美「……ほっ」チャキッ

乃々「軽やかに裏返したっ!?」

雪美「……ソースぺたぺた……マヨ編み編み……」

乃々「玄人のワザなんですけど!?」

雪美「ピザ切りは……邪道やでー……」

乃々「面倒なこだわりと、取って付けたような関西弁!」

芽衣子「レーダーがないと夜の街を探すのはほぼ不可能だからねー。
水族館の外に出られたっぽいから、もう、お手上げっさ!」

乃々「急に本題に戻らないで欲しいんですけどっ!?
って諦めた結果がここですかっ!」

51: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:30:13 ID:t9g

芽衣子「なんか周りがお好み焼き屋さんとたこ焼き屋さんばかりだと、つい入りたくなるよねー」

雪美「……ねー……」

乃々「……えーっ」

芽衣子「まぁ、なんだかんだでPさんも紳士だし、大丈夫でしょ。
私と同居して数ヶ月何もなかったんだし。
変なことにはなってないと思うよー」

乃々「う、うーん。それは確かに……。
でも、七海さんは芽衣子さんと違って、ヘタレじゃないですし……」

芽衣子「ヘタレは失礼じゃないかな!?
否定できないけどっ!」

おばちゃん「へい。ウドンおまちっ!」

乃々「早っ! しかもおつゆが透明な本場の関西風なんですけどっ!?」

雪美「P達……変なことに……なってない……?
芽衣子……変なことって……どんなこと?」

芽衣子「うえっ!?
う、うーん。うーん。
そうだなー。たとえば……」

※ ※ ※ ※ ※

52: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:30:45 ID:t9g

七海「先にシャワー浴びてこいよ、なのれす」

P「…………」

七海「P? どうしたのれすか? 風邪引いちゃうのれすよ?」

P「……ここ……どこよ?」

七海「水族館から徒歩で来れる距離の簡易宿泊施設れすね。
車での利用前提の所が多かったのれ探すのに苦労しました~。
事前に調べておいたのれす。えらい? えらい?」

P「えらいことなんですけどっ!?
建物と内装がなんかピンク色っ!」

七海「『ご休憩』っていう珍しい料金システムもあるのれ、とっても便利!」

P「別に珍しくないよっ!?
どこまで分かってやってる。なぁ、七海っ!?」

七海「『宿泊』の方でいいれすかね?」

P「活用すらしない!? いや、よくないよ!」

七海「宿泊ならモーニングが無料でついてくるのれすよ~。お得!」

P「得るもの以上に失うものが多いんだよなぁ!」

七海「Pがシャワー浴びてるうちに色々調べておきますね~。
あ。この衣装、頼んでみますか?」

P「コスプレメニュー確認すんなっ!」

七海「ナースと巫女服、学生服とチャイナ服だと、どれがいいれすか?」

P「巫女服で! …いや、そうじゃないそうじゃない。流されるな、俺!」

七海「えーっと、裁縫用具裁縫用具……マチ針は……と」

P「何に穴を空ける気だ七海ィ!」

53: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:31:30 ID:t9g

七海「あ。浴槽にお湯貯めてきますね~? 七海はできる女なのれ!できる女なのれ!」

P「なんで2回言った!?」

タタタッ…

P「ちょ待」

七海「わ~。意外と広いし、きれいなのれす~」

ザザーッ

七海「こんにちはっ♪ ふんふんふーん♪ わったしがママよっ♪」

P「何か不穏な歌が聞こえてくるんだけどぉ!?」

七海「もう少しかかりそうれすが、貯めながら入りますか~?」

P「いや、あのなぁ……」

『ひとめぼれからはじまった~♪』

P「!?」

P「っ!? えっ? 着メロ? 俺のスマホからっ?
こんな曲設定した記憶ないんだけど……?」

ピッ

P「はい?」

佐久間まゆ『はぁい♪』

プツッ

P「…………」

54: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:32:00 ID:t9g

P「…………」

『ひとめぼれからはじまった~♪』

P「…………」

P「…………」

ピッ

P「……はい」

まゆ『どうして切ったんですかぁ?』

P「手が…手が滑った……」

まゆ『それなら仕方ないですねぇ……』

P「そ、それよりも急にどうしたんだ? そ、そっちは大丈夫か? 俺が居ない間に何か問題でもあったか?」

まゆ『問題ですかぁ……』

P「お、おう」

まゆ『お仕事では……特にないですねぇ……』

P「それは良かっ」

55: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:33:29 ID:t9g

まゆ『けど強いて言うなら、Pさんに仕掛けてあるGPSの反応が今歓楽街の裏路地辺りで止まっているのが、ちょっと気になって……』

P「仕掛けてあるって何!? GPSって何っ!?」

まゆ『気のせいだとは思うんですけど、地図上、その辺りには……』

P「故障っ!」

まゆ『……はい?』

P「たぶん故障だよ! 実はさっき仕事終わりに寄った水族館で水被っちゃってさ!
その時その機械が故障しちゃったんじゃないかなっ!」

まゆ『…………』

まゆ『……なるほど』

P「いやぁ、急にサメやエイが暴れ出してさ!
なんだったんだろうね、あれ。災難災難!」

まゆ『……それは大変でしたねぇ。
ごめんなさい。まゆ、てっきりPさんが…』

七海「P~。もうすぐお湯貯まるのれすよ~。
いっしょに入りますか~?
ちひろさんもいないのれ、チャンスれす。
おもちゃもあるのれすよ~♪」

まゆ『…………』

P「…………」

56: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:34:00 ID:t9g

まゆ『…………』

P「…………」

まゆ『……Pさん』

P「いや違う。違うぞ。予約してたビジネスホテルでな。
七海がちょっと遊びに来て冗談言ってるだけだから……!」

七海「ちなみにおもちゃは七海の愛用のお魚さんじゃなくて、レンタルで貸し出してたアダルティ」

プツッ

七海「ーナなヤツなのれす~♪」

P「…………」

P「……危ない所だった。セーフセーフ。
ギリ、切るの間に合ったよな?
うん。セーフセーフ……きっとセーフ」

P「…………」

P「電源も切っとこ……」(現実逃避)

P「……はぁ」

P「……お家……帰りたくないなぁ」

七海「まさかの逃避行れすか? 急にノリノリなのれす!」

P「…………」ツー

七海「な、涙!? Pの頬に一筋の涙が!」

P「……シャワー……浴びてくりゅ……」

七海「うーん。今日はもうゴム要らないれすかね~」

P「聞こえない! 何も聞こえないっ!」

七海「……髪留めの話れすよ?」

58: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:35:10 ID:t9g

※ ※ ※ ※ ※

おばちゃん「これ、生中。あっちのお客さんから奢りだってさ」

芽衣子「えっ、ほんとー? ありがと、おじさまー♪」

おじさま「おーう!」

乃々「ああ……ああ……!」

雪美「……あるこーる……入りまーす……」

乃々「確か新幹線に飛び乗った時……宿はまだ決めてないって言ってたはずなんですけど……。
お酒が入って……まともに探せるんでしょうか……」

雪美「……大丈夫……私が……すでに手は……打って……ある。
……まかせて……?」

乃々「お、男前なんですけどっ!」

雪美「……ぶい」

※ ※ ※ ※ ※

59: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:35:37 ID:t9g

P「……なぁ、シャワー浴びて出てきたら……俺の服が一式無くなってるんだけど……」

七海「乾燥中れす~。乾くまでベッドの上に置いてあるガウンを着てるといいのれすよ~」

P「そんなもんあるのか……。てか持ってきてくれよ。
なんでタオル巻いて取り行かにゃならんのだ……」

七海「七海は今動けないのれ~」

P「なんでやねん……。うわっ。部屋の電気、ほとんど消えてんじゃん……」

七海「…………」

P「ベッドの上、ベッドの上……。
うん? ないぞ。どこにあるんだ七海…」

七海「うりゃっ!」ぼすっ!

P「うおっ!? 布団の中から飛び出してっ!?」

七海「捕まえたのれすっ!」

P「ちょっ!? は、離せっ!
何を急に……って七海は下着姿っ!?」

七海「逃さないのれす! ここまで来たら後には引けないのれすよ~?」

P「く、くそっ。地味に力……つよっ!
引きずり込まれそうなんですけどっ!?」

七海「良いではないか良いではないか~」

P「良くねぇ! く、くそっ。こらっ! 七海っ!」

七海「!?」

60: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:36:09 ID:t9g

P「こ、こんなことしたらダメだろう!
少し前に自分でした話を忘れたのか!」

七海「!」

P「アイドルとして……ちゃんと活躍して……成功して……俺の元に戻ってくるんだろう!
なのにこんな……なんでこんな……一体何を焦ってるんだよ!」

七海「…………」

P「…………」

七海「…………」

P「…………」

七海「…………」

P「……七海?」

七海「このままじゃ……勝てないかられすよ」

P「えっ? か、勝てない?」

七海「七海はPを見ているのれ……ずっと見ているのれ、今、その気持ちがどこにあるのか……誰にあるのかも……知っているのれす」

P「!!」

七海「だからこのままでは勝てないと……。
今からでは勝てないと……知っているのれす……!」

P「そ、それは……」

61: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:36:31 ID:t9g

七海「Pが『ちゃんと考えなきゃ』と言ったのも、きっと、どうするかを考えるのれはなく、どうやって『ちゃんと断る』かを考えるつもりなんらって……七海は気づいているのれす……」

P「なっ……!」

七海「だから……逆転するには……。
一発逆転するには……一発するしかないのれす!」

P「ここにきてオヤジギャグ!?」

七海「幸いPもちゃんとセイコウしろって言ってくれましたし!」

P「言ってねぇ! お、落ち着け! 気持ちは分かったから落ち着けっ!」

七海「大丈夫れすよ。こう見えても知識には自信があるのれす!」

P「だいじょぶくねー! 掴むな!タオルを掴むなって!」

七海「だいしょうぶだいしょうぶ。基本的には誰にも言わないのれすよ~」

P「応用発展的には誰に言うんですかねぇ……!」

七海「Pに気のありそうな娘……れすかねぇ?」

P「致命的っ!」

七海「とりあえず! ご開帳れす~!」

P「やーめーれー!」

62: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:37:08 ID:t9g

※ ※ ※ ※ ※

乃々「……まさか雪美さんのご両親が車でお迎えに来るとは思わなかったんですけど……」

雪美「……京都……道路混んでなければ……意外と近い……」

芽衣子「ひゃー。すごいお家だね。意外と和風なんだー。
お屋敷……っていうかお城みたいっ!
佐城城! おっきい!」

乃々「確かに……雪美ちゃんの服の趣味的に意外かも?
あと芽衣子さん、お酒くさいです」

芽衣子「えーっ。そんなこと言うなよぉ~」

乃々「ひぃっ!? い、言いませんから、抱きつかないで、抱きしめないでぇ……」

雪美「……仲……いい。お部屋……一緒でいい?」

芽衣子「もちろん! なんならお布団も一緒でいいよ~」

乃々「本気で身の危険を感じるんですけどっ!?」

雪美「……私も……いっしょに……3人で……寝る?」

芽衣子「いいねー!」

乃々「良くないんですけどっ!?」

雪美「……皮の字で……」

乃々「どんな状態っ!?
いや、もうほんとに、本当に……」

芽衣子「えへへぇ~」

雪美「……わくわく」

乃々「むぅーりぃー……」

63: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:37:35 ID:t9g

※ ※ ※ ※ ※


迷いはあった。そして既に後悔もあった。

だから、それゆえの冒険であり、誤ちだったのだろう。

周りが見えなくなっていた。ちょっとしたお遊び。あるいは火遊び。

後悔を拭うための……迷走。

守るべきものを忘れての……暴走。

火照る身体、震える手でその重みを支え、持ち上げ、抱き寄せる。

今の自分にはこれしかない。
他の何も見えやしない。

手に入れたいもの。探し求めているもの。

それが本当は何であるのかも分からないまま、自分は鼓動を押し殺し、その先へと進む。

禁断の先へと進む。

未知への扉を押し開く。

すると、そこには……。


64: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:37:51 ID:t9g


※ ※ ※ ※ ※

七海「とりあえず! ご開帳れす~!」

P「やーめーれー!」

※ ※ ※ ※ ※


65: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:38:18 ID:t9g


宙を舞うバスタオルと……

ベッドからの逆光に浮かび上がる、仁王立ち成人男性の尻があった。

むつみは抱きかかえていた重いレーダーをその場に落とし、硬直する。

レーダーを頼りにクラスの集団から抜け出し、やって来た怪しい建物。

守るべきルールを逸脱してまでやって来たそこで……。

その奥で見つけたのは、ベッドの上、半裸で目を丸くする少女と、全裸でこちらを振り返る成人男性。

水族館で見かけた男女2人組だったのだ。

レーダーが導いてくれたのは願い事を叶えてくれる金色の球のありかなどではなく……。

むつみは薄れゆく意識の中、勇ましく駆け寄って来るその男性自身を確かに目にし、そしてそれを忘却の彼方へと押しやった。

66: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:38:37 ID:t9g

※ ※ ※ ※ ※


七海「レビューにあった『オートロックがたまに仕事を放棄する』っていうのはこれのことれすか~」


※ ※ ※ ※ ※

67: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:39:10 ID:t9g

翌々日 事務所にて

芽衣子「ここにしよ。ここ! 次の仕事はここで!」

P「観光ガイドブックで仕事の交渉すんな!
あと俺にゼロから仕事を決定する権限はねぇよっ!」

芽衣子「そこをなんとか! 辣腕プロデューサーの企画力と交渉力で!
仕事が無理ならプライベートでもいいよ? もち二人で!」

P「それもう、ただのお忍び旅行じゃねーか! 危険過ぎるわ!」

芽衣子「七海ちゃんばっかり、ずーるーいー!」

P「こどもかっ!」

芽衣子「大人ですー!」

P「大人だったら余計マズいだろう!」

芽衣子「なるほどっ!」

千川ちひろ「……楽しそうですねぇ」

芽衣子「午前中はP独占できますからねっ♪」

バンッ!

七海「おっはよーございまーす! お昼れすが!」

68: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:39:47 ID:t9g

ちひろ「はい。おはようございます」

P「おはよう」

芽衣子「ちっ。来たか……」

七海「あーっ! 芽衣子おねーさんが何か酷いこと言ったのれす~!」

芽衣子「言ってないよー」

七海「Pには見えない角度で、もの凄い悪い顔をして言ってたのれす~」

芽衣子「それは本当にないよっ!?」

P「悪い芽衣子か……」

芽衣子「ちょっと!?」

七海「この前も芽衣子さん、七海を女子トイレに呼び出して…」

芽衣子「性格の悪い女の子にありそうな捏造エピソードやめてっ!?」

七海「…台本の漢字が読めないって七海に聞いてきたんれすよ~」

芽衣子「頭の悪い子だ! アホの子だ私っ!」

ちひろ「……楽しそうですねぇ」

七海「ここに来たら優しくてキレイなお姉さんが遊んでくれるのれ~」

芽衣子「お、怒りにくいっ……! どちらかと言うと遊ばれてるような気もするよ!」

ガチャ

69: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:40:20 ID:t9g

乃々「お、おはようございます……」

雪美「……おはよう……ございます……」

ちひろ「はい。おは……あら?」

P「どうかし……おっ?」

乃々「そ、そこで会ったんですけど……」

雪美「……連れてきた……後輩……」

芽衣子「えっ?」

ヒョコ

むつみ「う、氏家むつみです! おはようございます!」

芽衣子「あっ!」

P「おっ。来たかー。まぁ、気楽に見ていってくれ」

ちひろ「ああ、そういえば見学、今日でしたね。ようこそー♪」

芽衣子「見学? そうなのっ!?」

P「おう。色々細かいことは省くが、七海との遠征先で出会った娘でなー。
本人の希望もあって、ウチに来てもらうことになったんだ。
入社はほぼ確定してるんだが、一応最終判断前の見学って感じだな」

芽衣子「へ、へー。ソウナンダー」(そっか、初対面のフリしなきゃ……)

P「? 学校への謝罪やら親父さんの説得やらで骨は折れたが……、まぁどうにかなー」

芽衣子「……ナ、ナルホドー」

P「人見知りで大人しい娘だから色々気にしてやってく」

むつみ「お姉様っ!」

P「!?」

70: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:40:54 ID:t9g

むつみ「芽衣子お姉様っ! 会いたかったですっ!」

芽衣子「ふぁっ!?」

七海・ちひろ「!?」

乃々・雪美「……あー」

むつみ「芽衣子お姉様から叱咤激励を受けて、私、決心したんです!
アイドルを目指してみようって!」

芽衣子「ちょっ! しー、しーっ!」

むつみ「? お姉様?」

芽衣子「お姉様呼びもやめて! 普通に芽衣子で!」

むつみ「芽衣子さん!」

芽衣子「よし!」

むつみ「芽衣子さんの言葉で目覚めました!
勇気!直感!度胸!
私、旅行アイドル芽衣子さんに負けない、冒険アイドル氏家むつみになりたいです!
いえ、なりますっ!」

芽衣子「冒険アイドルって何っ!?」

七海「イロモノれすね~」

芽衣子「その筆頭にだけは言われたくないと思うんだけどっ!?」

71: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:41:21 ID:t9g

P「……なんか……初対面の時とだいぶ印象が違うんだけど……。
もっとこう……文香や頼子みたいな物静かな……。
なぁ……芽衣子?」

芽衣子「私は何も知りませんっ!」

P「いやでも、さっきお姉様って……」

芽衣子「アイ、ドントノウッ!」

むつみ「私、芽衣子さんに熱心に口説かれて、ここに来る事を決めたんです!」

P・ちひろ「口説かれたっ?」

芽衣子「言い方っ! もうちょっと言い方ない!?」

P・ちひろ「…………」

芽衣子「Pとちひろさんからの疑惑の視線が痛いっ!」

むつみ「それはもう、熱烈に! 軽く脅迫入るくらいに!」

芽衣子「少し黙ろうかむつみちゃん!」

ちひろ「…………」

P「…………」

ちひろ「……そういえば……話は変わりますが、芽衣子ちゃん?」

芽衣子「は、はい?」

72: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:41:52 ID:t9g

ちひろ「一昨日、乃々ちゃん達とお出掛けした時はどこにお泊りしたんですか?
場合によっては会社から多少の補助金が出なくもないんですが……」

P「お出掛け?」

芽衣子「そ、その件はお気になさらずに。ほぼプライベートの旅だったので、自腹で大丈夫ですよー」

乃々「…………」

雪美「……お城……」

ちひろ「えっ?」

雪美「……お城みたいな……(私の)家で……お泊り……」

P「お、お城みたいな建物っ!?」

芽衣子「端折り方おかしくない!?」

雪美「……そこで……乃々と3人で……同じ布団で……寝た」

ちひろ「……乃々ちゃんと雪美ちゃんを……お、お城みたいな建物に連れ込んで……寝た!?」

芽衣子「おかしいおかしい!」

乃々「お酒を飲んだ芽衣子さんは……恥ずかしがるもりくぼを……無理やり……」

芽衣子「絶対悪意あるでしょ!?
違うから! 違うからねPさん!」

P「芽衣子……やっぱりお前……」

芽衣子「やっぱりって何っ!?」

73: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:42:41 ID:t9g

P「……これが●●●ってやつか……」

芽衣子「違うよ!」

雪美「……無理矢理……ちゅーしてた……」

芽衣子「そこ拾うのっ!? ソフトクリームで間接のねっ!」

P「……今度のラジオの仕事は南極で公開録音な」

芽衣子「私怨だっ! 誰に公開するのそれっ! ペンギン!?」

ギャーギャー!

七海「賑やかれすね~」

むつみ「ですね~」

七海「…………」

むつみ「…………」

七海「…………」

むつみ「……願いごとを叶えてくれる金色の球は見つからなかったけど……。
ここにいれば……Pさん達と一緒にいれば、叶うかもしれないな……」ポソ

七海「玉? 急に下ネタれすか?」

むつみ「違うよっ!?」

74: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:43:24 ID:t9g

七海「出社初日に下ネタとは、また濃ゆい新人が入ってきたのれすね~」

むつみ「だから違いますって!」

七海「駄洒落の楓。下ネタのむつみ」

むつみ「やめて下さい! もう!」

七海「ふふ。冗談れすよ~」

むつみ「ぷーっ!」

七海「ふふふ…」

むつみ「…………」

七海「…………」

ギャーギャー!

むつみ「ほんと、賑やかな事務所だなー……」

七海「…………」

むつみ「…………」

七海「そういえば……マンボウが」

むつみ「えっ?」

75: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:43:57 ID:t9g

七海「初めて会った時、むつみちゃん、マンボウが何も考えてなさそうで、羨ましいって言っていたのれす……」

むつみ「あ。はい。
水槽の中でプカプカと……あののんびりとした平和そうな風貌を見て、幸せそうだな、と……」

七海「……そうれすね。水族館のマンボウを見てるとそうとしか見えないかもしれません」

むつみ「?」

七海「けど、マンボウは3億個もの卵を産み、その大半が育つことなく死にたえる……そんな生き物なのれす……」

むつみ「へぇー」

七海「そして育ったマンボウも、人間が手で触れただけで型が付き跡が残るほど、柔らかく、脆く……」

むつみ「…………」

七海「つまりはどんなに気楽に見えても……楽しそうに見えても、本当は常に死と隣り合わせの過酷な人生を生きているのれす……」

むつみ「…………」

七海「そしてそれは……アイドル同じれす」

むつみ「!」

七海「どんなに華やかで楽しそうに見えても、その実は、過酷で……残酷で……消えゆく運命と隣り合わせの職業なのれす……」

むつみ「……!」

七海「何も考えてなくても生きていける、幸せな世界れはないのれす。
そんな世界に……そんな非情な世界に……それでもむつみちゃんは……挑めますか?」

むつみ「もちろんです!」

七海「……即答れすか。
……これは頼もしくもあり、手強そうれもあり、れすね~」

むつみ「えへへ…。これからよろしくお願いしますね。先輩!」

76: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:44:27 ID:t9g

七海「……七海って呼んでくれていいのれすよ~」

むつみ「よろしくねっ七海ちゃん!」

七海「はい~。むつみちゃん!」

ギャーギャー

七海「……で、あっちは相変わらず修羅場ってますね~」

むつみ「ね~」

七海「ふむ」

むつみ「?」

七海「Pっ!」

P「ん? おお、なんだ七海?」

七海「約束してた海鮮丼のお店、結局行けてないのれす!」

P「あー。そういえばそんな話もしてたなー」

七海「だからまた一緒に行きましょうね。今度は約束破っちゃらめれすよ~!」

P「食事については別に構わないが……。
いや、そもそも行けなかったのは七海のせいだろうに……」

七海「あー。そうれしたね~。
夜は早々に七海と二人でしけ込んだかられしたね~。あのラ」

P「わー!わーっ! そうだなー!
行こうなー! 海鮮丼の美味しい専門店っ!
Pさん幾らでも奢っちゃうぞーっ!」

乃々・雪美・むつみ・芽衣子「!?」

77: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:44:57 ID:t9g

七海「別にそこまでムキになって隠さなくても~。ただ二人で近場のラ」

P「おーねーがいー! しーずかにしてーっ!」

七海「くふふ」

P「……くっそ。これはヤバイ娘にヤバイ弱みを握られたかもな……」

ちひろ「……そんなに気にしなくても、今さらだと思いますよ?」

P「えっ?」

ちひろ「そもそも『そこ』でまゆちゃんと電話のやりとりをしたんでしょう?」

P「あっ。……えっ? なんで知って…」

ちひろ「それなのに、まゆちゃんや私が『元々泊まる予定だったビジネスホテル』に何の確認もとらないと思いますか?」

P「いや……あの。……えっ?」

七海(むつみちゃんを送り届けた後、時間も遅かったのれ、普通に近場のホテルに泊まったのれすが……)

七海「……ホウレンソウは大事れすねー」
( ※ 報告連絡相談 )

むつみ「ホウ?」

七海「いえいえ~。ホオジロザメって言ったのれす~。
むつみちゃんご存知れすか~?」

78: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:45:24 ID:t9g

むつみ「えーっと。映画に出てくるやつかな?」

七海「そうれすね~。映画『ジョーズ』のモデルにもなった、小型だけど獰猛で攻撃力の高い……侮れないサメなのれす~」

むつみ「はぁ……?」

七海「先程はアイドルをマンボウなどに例えましたが、この事務所にはちっちゃなホオジロザメもいるのれすよ~」

むつみ「え、えーっと……」

七海「近づかなければ愛らしくてカッコいい、そんなサメなのれすが……敵に回すとそれはもう~」

むつみ「…………」

P「な、七海さん? 何のお話かな?」

七海「七海はお魚の知識だけれなく、聴覚にも自信があるのれ~」

乃々・雪美・芽衣子・ちひろ「…………」

七海「……来るのれすよ。
きちんと本日の学業を終えて……P大好きなあの娘が……なぜかスキップをしながら……ね」

P「…………」

P「……えっ?」

ガチャ バンッ!

まゆ「Pさぁん、お帰りなさい♪ うふっ♪」

P「……あっ」


終わる。


79: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:46:14 ID:t9g


蛇足

P宅にて



P「なー。なんでいつまでも拗ねてるんだよ。
いい加減機嫌直せって乃々~」

乃々「別に拗ねてないんですけど……。
たとえPさんが七海さんと旅行先でよろしくやってても……もりくぼには関係ありませんし……」

P「よろしくってなんだ、よろしくって。
仕事で遠征してその後、ご褒美で水族館に連れて行っただけだぞ?
別に浮気したわけでもあるまいし……」

乃々「……浮気自体はさほど問題じゃないんですけど……●●●興奮しますし」

P「すんな」

乃々「それよりももりくぼは……もりくぼは……う~」

P「なんだよ。何が言いたいんだよ」

乃々「……別に何でもないです」

P「……ふっ。分かってる分かってる」

乃々「えっ?」

P「乃々も……水族館に行きたかったんだろ?」

乃々「…………」

80: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:46:42 ID:t9g

P「そう言うと思って買ってきたぞ。……じゃん!」

乃々「!? ……なんですかこの……カード?」

P「ふふふ。水族館の年間フリーパスだ。
入館時に購入手続きしたら退館時に受け取れるシステム!
本当は本人がいないと作れないんだけどな。
偉い人と交渉して特別に作ってもらった」

乃々「……あ、あんな遠い所にある水族館……フリーパス貰っても使えないんですけど……」

P「そこは抜かりない。交渉と同時に七海と乃々を館のPRキャラクターに推してきたからな。 仕事もゲット!
そもそもそれがなくても、年に数回は向こうで仕事してるしな。
使おうと思えば結構使える。
2、3回使えば元は取れる。どや!」

乃々「……あ、あと……このフリーパスに使われてる私の顔写真は……」

P「あ。それは俺が普段から財布に入れてあるヤツを使った」

乃々「……! ……!」////

P「痛い! 殴るな殴るな」

乃々「他の女と行った場所のフリーパスをプレゼントするデリカシーのなさとか、立場的に写真を忍ばせるのはどうなの?とか、言いたいことはありますけど!
色々ありますけど!
……Pさんはなんかズルイです!」

P「お、おう。すまん?」

乃々「怒ってたことが、もうどうでも良くなってくるんですけど!」

P「やっぱり拗ねてたんじゃねーか」

乃々「拗ねてません!」

81: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:47:31 ID:t9g

P「まぁ、落ち着け。ほら、ケーキも用意してあるぞ。
乃々が好きなナッツも入ったマロンケーキだ。
食後に食おうなー」

乃々「……はい」

P「んじゃ、あらためて……誕生日おめでとう。乃々」

乃々「……ありがとぅ……ございます」

P「ケーキと料理は一応手作りだ。
フリーパスとそれが俺からの誕生日プレゼント。いいだろう?」

乃々「…………」

P「乃々?」

乃々「……す」

P「す?」

乃々「す、少し……足りません」

P「えっ?」

乃々「少し……足りないので……目を瞑って……下さい……」

P「別にいいけど……それはどういう」

ちゅ。

P「!?」

乃々「……う、上書き……なんですけど」

P「う、上書きって……。
あ……っ! もしかして……七海とのあれ、見てたのか!?
つーか、ひょっとして、つけてきてた?
あんな遠方までっ!?」

乃々「………」

82: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:48:03 ID:t9g

P「ああ! だから芽衣子とむつみが……!
それにさっき『あんな遠い所にある水族館』とも言ってたな。
ちひろさんの言ってたお出掛けってそれのことか!」

乃々「……浮気自体よりも、それを隠して飄々としてる所が不満でしたが……今回はこれで良しとします」

P「うっ……」

乃々「黙って家を空け、後をつけたもりくぼにも非がありますしね……」

P「……だから帰宅した時、イヴが干からびて泣いてたんだな」

イヴ「酷いですよね~。
あと、さっきから乃々ちゃんを膝に乗せてちゅっちゅしてますが、その態勢、ご飯食べにくくありません?」



84: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:48:58 ID:t9g

乃々「……ねぇ。Pさん」

P「……なんだ?」

乃々「Pさんのお膝……あったかいです……」

P「……そうか」

乃々「ここに座っていると……今みたいに向かい合って座っていると……特に……Pさんのことがよく分かります……」

P「………」

乃々「今日は芽衣子さんの帰りも遅くなるみたいですし……」

P「…………」

乃々「…………」

P「…………」

乃々「……い……いいんですよ?」

P「……っ! ……の、乃々っ!」ガバッ

『香川新潟大阪宮城~♪』

P「着メロ……この曲は芽衣子からか……」

乃々「あとちょっとだったんですけど……」

イヴ「あー。唐揚げうめぇ!」

ブリッツェン「ブモッ」(口調口調!)

85: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:49:30 ID:t9g

ピッ

P「はい。俺だけど」

芽衣子『はろー。わたしわたし。元気? 乃々ちゃんに酷いことしてない?』

P「シ、シテナイアルヨ」

芽衣子『なんでエセ中国人風? まぁ、いいや。
ともあれ私は今、Pの実家に来ていまーす!』

P「なんでっ!?」

芽衣子『雪美ちゃんに場所教えてもらった!』

P「どうやってじゃなくて、なんでって聞いたんですけどっ!?」

芽衣子『……ご、ご挨拶?』

P「なんのや!」

乃々「なぜ急に関西弁……」

芽衣子『えっ? 雪美ちゃん電話代わりたい? もうちょっと待ってね~』

P「一緒にいるのか……」

芽衣子『うん。一緒に晩御飯にカレー作ったよー。Pも食べたい?』

P「いやほんと何してんだ……」

86: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:50:12 ID:t9g

芽衣子『あと、Pが子どもの頃のアルバム見たよ。
かっわいいねー!』

P「だからっ!」

芽衣子『ちなみに向こうでまゆちゃんと時子様と桃華ちゃんが仁王立ちで睨み合ってるけど、それはどうでもいいから伏せておくね』

P「何その地獄絵図。なんでいるの?」

芽衣子『さらについでに、その3人のまわりを、はっぴを着て大きなうちわを持った七海ちゃんが「そいやそいやっ」って言いながら回ってるけど、それも関係ないから伏せておくね』

P「煽るな煽るな」

芽衣子『ちなみにゆかりちゃんはお義母さんに肩叩きをしてあげてるよ。いい子だねっ!』

P「ソウダネ」

芽衣子『あとライラちゃんがひたすらカレーを飲んでたり……』

P「思う存分食い溜めさせてやってくれ……!」

88: 名無しさん@おーぷん 2017/08/27(日)05:52:39 ID:t9g

芽衣子『うん? 何、むつみちゃん?』

P「むつみまでいるのか」

芽衣子『えっ? なんでPさんには七海ちゃんっていう恋人がいるのに、みんな争ってるんですか…って?』

P「!?」

芽衣子『あはは。何言ってるのむつみちゃん。
別にPと七海ちゃんは付き合ってなんか……えっ!?
「水族館で2人がキスしてるところを見た」…って。 えええっ!?』

P「…………」

芽衣子『…………』

P「…………」

芽衣子『……あっ。七海ちゃん捕まった』

P「な、七海ぃーーっ!?」


絶体絶命れす…!エンド。