P「ゲームの世界に飛ばされた」2  その4

2: ◆bjtPFp8neU 2015/02/01(日) 22:55:29.30 ID:ghZgurP/O

〜〜これまでのあらすじ〜〜



FF4の世界へ飛ばされた春香達。
笑ったり、時には泣いたり、助け合いながら進んでゆく。

…そんな中、小鳥さんの配下の魔物達が、8つの内7つのクリスタルを手にしてしまう。

春香、千早、美希、やよい、伊織は、クリスタルが全て魔物達の手に渡ってしまうのを防ぐために、最後のクリスタルを取りに地底世界の封印の洞窟へ。
しかし、帰還寸前で、魔物達に最後のクリスタルと千早を奪われてしまう。

響、貴音、律子の三人は、魔導船を回収しに地上世界へ。
が、アガルトの村が魔物に滅ぼされているのを見つけ、唯一生き残ったというトロイアの城へ。

亜美、真美、雪歩、あずさ、真、そしてPは、アダマンタイトを持って地底世界の鍛冶屋ククロの家に。
ただいま雪歩のスコップを強化中。



果たして春香達は、無事元の世界へ帰る事ができるのか……?


引用元: P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL 



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3: ◆bjtPFp8neU 2015/02/01(日) 23:09:12.61 ID:ghZgurP/O
〜〜キャラ紹介〜〜

メインキャラ

【春香】
転倒の聖騎士。元暗黒騎士で、試練の山にて自分の闇を受け入れ(決別ではない)、聖騎士へジョブチェンジ。どこかで聞いた様な技、『聖剣技』を父親から受け継ぐ事で無個性を回避。かばいたがり。
よく誰かに刺される。

【千早】
薄幸の竜騎士。春香の親友だが、春香とガチでやり合った経験有り。垂直ジャンプと水平ジャンプという、地味でわかりにくい技を使って戦う。だいたい地下13階から地下7階くらいまで跳べる程度のジャンプ力を持つ。
よく操られる。

【美希】
天才肌の白魔道士。白魔法はだいたい使える。基本マイペースだが、仲間のピンチには髪が短くなったりならなかったり。物語途中から使い始めた弓矢がお気に入り。
よく寝る。

【やよい】
無邪気な召喚士。幻獣達を呼び出して戦う。が、争い事は得意でない。幻獣達(ジュピター含む)とはおともだち。961プロの面々と同棲経験有り。魔物の言葉を理解できる。○ンプ好き。
よく和ませる。

【伊織】
スーパー忍者アイドル。この世界に来て初っ端から一人、ハードな道を歩んで来た。でも挫けない。わかりづらいけど、武器は小太刀の二刀流。人様のものを『ぬすむ』事には抵抗があるらしい。
マジいおりん。

【真】
人類最強のモンク僧。千早に諭され、苦手としていた状態異常魔法を打ち破る事に成功したバランスブレイカー。本当は、もっと女の子っぽい役が良かった(本人談)。極限流空手を使用。爽やかな女たらし。
よく鍛える。

【雪歩】
臆病な吟遊詩人。『うたう』より『くすり』より、『かくれる』が1番得意。土属性。知らぬ間に某国の英雄として崇められる立場に。FF4最強の鎧(欠陥品)を装備。
よく掘る。

【響】
天真爛漫な飛空艇技師。飛空艇は家族。もちろん言葉も理解する。15歳で子持ち、なのに未経験という不思議な経歴を持つ。娘に慰められるのが得意。
よく泣く。



4: ◆bjtPFp8neU 2015/02/01(日) 23:15:06.98 ID:ghZgurP/O

【貴音】
面妖な月の民。幻獣神を友人に持つ。アホみたいな魔翌力の持ち主。最初は月にいたが、魔導船にて予定よりだいぶ早くみんなと合流。魔導船着陸時は、いつも命がけ。律子を呪縛から解放した人だが、月から魔物を連れて来てしまったのもこの人。
よく食べる。

【亜美】
元気な黒魔道士。予定通り?真美と共にカイナッツォ戦後に石化するが、ミシディアの長老とPの活躍により戦線復帰。後方支援と言いつつ、レアアイテム集めに勤しむ。魔法は玩具。趣味はトード。
よくイタズラする。

【真美】
思春期な白魔道士。亜美と同じ道を辿る。自身の固有アビリティ『うそなき』に不満があるらしく、もっと派手でカッコいい技を所望している。思春期。秋の空。
よく落ち込む。

【あずさ】
天然な賢者。とある戦いにより命を落とすが、土のスーさんのおかげで(ゾンビとして)復活。20歳で子持ち、なのに…(以下略)。律子を1番気にかけていた。
よく迷う。

【律子】
常識人な暗黒騎士。小鳥さんのせいで物語前半は春香達の敵として立ちはだかる。貴音により自分を取り戻す。人類最強の人と互角に戦えるスペックを持つ。
よく怒る。

【小鳥】
戦々恐々のラスボス。1番楽しんでいる人。幻獣神を下す程の実力の持ち主。好きな技はメガフレア。やっと出番が増える……はず。
よく妄想する。

【高木社長】
幻獣騎士オーディン。春香達を影から見守る。961の面々と行動を共にする。社長なのにやよいの手下。

【ジュピター】
幻獣アスラ。1つの身体に顔が3つ。次第にやよいに心を開いていく。あまとうはFFよりドラクエ派らしい。やよいの手下。

【黒井社長】
幻獣王リヴァイアサン。765プロは嫌い。ジュピターは……。起こす津波まで黒い。やよいの存在に戸惑う。

【プロデューサー】
べろちょろ。……のはずだったが、亜美の機転により人に進化した。なんとか自分の知識で春香達を助けようとするが……。
ゲーム中の殆どのキャラ(敵含む)はPを認識できないし、干渉もできない。故に参謀的立ち位置。



5: ◆bjtPFp8neU 2015/02/01(日) 23:23:15.86 ID:ghZgurP/O
サブキャラ

【ものまね士】
バロン国の白魔法研究所でミキを研究していた。本職は白魔道士。店主に恋心を抱く。実は、モンク僧の国ファブール出身。

【店主】
カイポの村の宿屋の店主。度々春香達を助ける。料理上手で戦闘はからっきし。

【長老】
魔法の故郷、ミシディアの長老。月の民。Pを認識でき、会話などもできる。亜美と真美の良き理解者。

【技師1、2】
バロン国の飛空艇技師。響を親方と呼ぶ。

【娘】
バロンに住む響の娘……のはずだが、どちらかというと響の保護者。よく転ぶ。

【ユキコ】
ファブールで真と一緒に暮らしていた、真の『妻』。容姿も性格も雪歩そっくり。フライパンを常に持ち歩く。

【アン】
トロイア国の神官8姉妹の長女。実質トロイアのトップ。ちょっと腹黒い。

【トロア】
トロイア国の神官8姉妹の三女。真面目な性格。雪歩の優しさに惹かれ、雪歩を守るために雪歩について行くが……。

【老婆】
ドワーフの子孫達が暮らすアガルトの村に住む老婆。口が悪く、性格もひねくれているが、春香達を気にかけている。

【ジオット】
地底世界唯一の城、ドワーフ城の王。人前で痴話喧嘩してしまう人。

【ルカ】
ジオットの娘。見た目は春香そっくり。王女やってる時と普段では、口調が変わる。幼い頃に母を亡くす。

【ククロ】
地底のはずれにひっそりと住んでいる、腕利きの鍛冶屋。自分が鍛えた武器が戦争に使われるのが嫌で、店を畳もうとしていた。

【イフリート】
幻獣の町に住む、炎を司る幻獣。熱血。うるさい。やよいのおともだち。

【シヴァ】
幻獣の町に住む、氷を司る幻獣。冷静。物静か。やよいのおともだち。

【ラムウ】
幻獣の町に住む、雷を司る幻獣。ボケ老人かと思いきや、実はまだボケてない。幻獣トリオのまとめ役。やよいのおともだち。

【シルフ】
シルフの洞窟でひっそりと暮らしていたエルフの生き残り。真に一目惚れ。真と行動を共にする。したたかな性格。



6: ◆bjtPFp8neU 2015/02/01(日) 23:28:14.12 ID:ghZgurP/O
敵キャラ

【スカルミリョーネ】
元、律子の配下の四天王の一人。土を司る。ゾンビ。マイペース。死ぬと性格が変わる。ゾットの塔で力尽きたあずささんに、ゾンビの力を与えて黄泉返らせる。スーさん。

【カイナッツォ】
元、律子の配下の四天王の一人。水を司る。津波を起こす亀。野心家。

【バルバリシア】
元、律子の配下の四天王の一人。風を司る。長く、良く手入れされた髪は、剣にも鎧にもなる。ちょっと年齢を気にしてる。美希を妹の様に可愛がっていた。シアちゃん。

【ルビカンテ】
元、律子の配下の四天王の一人。火を司る。寡黙。ナルシスト。いおりんの故郷を滅ぼした人。打倒律子に燃えている。相手を回復してから戦う律儀さを持つ。自分にしか興味がなかったが……。赤い悪魔。

【ルナザウルス】
小鳥さんの配下の四天王の一人。恐竜の化石の魔物。お調子者。一度、覚醒した美希に殺されかけた。春香専用装備『リボン』を守る。

【タイダリアサン】
小鳥さんの配下の四天王の一人。巨大な海蛇。面倒くさがり。食らった者を無気力化する『タイダるウェーブ』という技を使う(但し、美希には効かない模様)。伊織専用装備『妖刀マサムネ』を守る。

【プレイグ】
小鳥さんの配下の四天王の一人。巨大な目玉の魔物。怖がり。一度、覚醒した美希に殺されかけた。白龍と2人で、地上世界のほとんどの国を滅ぼした。千早専用装備『ホーリーランス』を守る。

【白龍】
小鳥さんの配下の四天王の一人。名前の通り真っ白な龍。生真面目。属性の有る攻撃は全く通用しない厄介な魔物。プレイグと2人で、地上世界のほとんどの国を滅ぼした。伊織専用装備『妖刀ムラサメ』を守る。



10: ◆bjtPFp8neU 2015/02/03(火) 23:58:32.77 ID:Iy+MykxEO


『……やっとここまで来たのね』

『おめでとう!このゲームを勝ち抜いたのは、春香ちゃん達が初めてよ!』

『……あ、はい。ここって、ゲームの世界ですもんね』

『ええ。これは……』

『私が造った、壮大なストーリーのゲームなのよ!』

『音無さんが造ったって……どういう事なんですか?』

『千早ちゃん、私はね……平和ボケしてる世界に飽き飽きしていたの』

『……そこで、アシュラを呼び出したのよ』

『何言ってんのよ?アシュラなんて魔物、いなかったじゃない』

『伊織ちゃん……細かいとこ突っ込んじゃダメ』

『……アシュラは、世界をめちゃくちゃにしてくれたわ』

『うぅ……小鳥さんが恐い事言ってますぅ……』

『雪歩ちゃん。私、ラスボスだもの。恐くて当たり前よ』

『でもね……』

『慣れって、恐いわね』

『私、アシュラにも退屈するようになっちゃったのよ』

『飽きっぽい人は、あんまり好かれないと思うぞー』

『響ちゃん。私、ホントは凝り性なのよ?』

『話が逸れたわ……』

『……そこで、ゲームよ!』

『悪魔を倒すヒーロー……いえ、ヒロイン!』

『それが、あなた達アイドルなのよ!』

『へへっ、ボクにピッタリの言葉ですね!』

『真ちゃんはどちらかというとヒーロー……い、いえ、なんでもないから、睨まないで、お願い』

『多くの者達が、ヒロインになれずに消えていったわ……』

『ま〜、アイドルって手巻き門だってゆ〜もんね〜』

『亜美ちゃん、それを言うなら「狭き門」じゃないかしら?』



11: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:06:46.22 ID:rHCptczaO

『……死すべき運命を背負ったちっぽけな存在が、必死に生きていく姿は、私さえも感動させてくれたわね……』

『ん〜、ピヨちゃんが言ってる言葉、真美、どっかで聞いた気がするよ〜』

『真美ちゃんが元ネタ知ってるなんて、年齢的におかしいと思うわ』

『私は、この感動を与えてくれたあなた達に、お礼がしたい!』

『どんな望みでも、叶えてあげます!』

『じゃあ、仕事してください』

『り、律子さん、それは今は言いっこ無しですよぉ』

『……自業自得かと』

『た、貴音ちゃんまで、ひどいっ!』

『あなた達という存在ですら、私が造ったモノだっていうのに……』

『うっうー!わたし達はものじゃないですっ!』

『うふふ……神にケンカを売るなんて、どこまでも楽しい子達ね!』

『あらあら、そんなつもりはないんですけどね〜』

『……どうしても、やるつもりなのね?』

『やる気なのは、小鳥だけだって思うな!』

『これも、アイドルのサガか……』

『……いいわ。死ぬ前に、神の力を……』

「……コトリよ」

『えっ?ちょっと、今、決めゼリフ言うとこなんですけど……?』

「いいから戻って来るのだ」

『あ……』


ーーーー

ーー



12: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:12:27.52 ID:rHCptczaO
月の中心核

小鳥「………はっ!」

小鳥「あ〜あ、いいところだったのになぁ……」

ダークバハムート「全く……そなたのその妄想癖、羨ましい限りだな」

小鳥「そ、そうですか……?」

ダークバハムート「妄想とは、知らぬ事、つまり未知へ思いを馳せる事」

ダークバハムート「全知の身である我にとっては、縁遠いものよ」

小鳥「ふーん……そういうものですか」

小鳥(……でも、どこかで見た様なネタはダメね)

小鳥(途中からグダグダになっちゃったし……)

小鳥(やっぱり決めゼリフは、自分で考えないと!)



ダークバハムート「……ところで、そなたの言う通りめぼしい者達を連れて来たぞ」

ダークバハムート「使えるかどうかは、そなた自身が判断するがよい」

小鳥「ありがとうございます!」

小鳥「すみません。バハムートさんにお使いなんてさせちゃって……」

ダークバハムート「よい。今の我は、そなたの下僕であるのだからな」

小鳥「うわぁ、そう言われると、ますます罪悪感が……」

ダークバハムート「妙な事を気にするのだな、コトリよ」

小鳥「それは……バハムートさんは、私にとって特別なんですから、当たり前です」

ダークバハムート「そうか……」

ダークバハムート「ところで、親衛隊を結成すると言っていたが……」

ダークバハムート「そなたには、四天王とやらがいるのではないのか?」

小鳥「彼らは……」

小鳥「いずれ、春香ちゃん達に倒されちゃうと思います」

小鳥(……というか、そうなってくれないと、困るのよ)

ダークバハムート「………」

ダークバハムート「……駒は多い方が良い、という事か」

小鳥「はい。言い方はアレですけど、つまりはそういう事です」

ダークバハムート「ならば、吟味して来るが良い」

ダークバハムート「そこそこの者達ではあるようだぞ?」

小鳥「はい。じゃあ、ちょっと面接してきますね!」

ダークバハムート「うむ」


スタスタ…




ダークバハムート(……さっきはああ言ったが、全知の我にもわからぬものはある)

ダークバハムート(あいどる………果たして、どのような者達なのであろうか)

ダークバハムート(……なあ、タカネよ……)




13: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:19:09.34 ID:rHCptczaO
ドワーフの城 救護室

春香「………」スヤスヤ

伊織「無事にクリスタルを手に入れたと思ったら……」

伊織「……まったく、なんでこんな事になるのよ……!」

美希「魔物達の方が一枚上手だったって事だね」

伊織「卑怯なだけじゃないっ……!」

伊織「春香は、千早に刺されたのよ!?こんなの……酷すぎるわ!」

やよい「……でも、前にもこんな事あったかなーって」

伊織「前にも、って……?やよい、どういう事?」

やよい「えーと……千早さんとあずささんが、わたしたちの敵だった時があって……」

やよい「その時に、春香さんは千早さんとたたかったって……」

伊織「ええっ!?千早とあずさって、敵だったの?」

美希「……そっか。デコちゃんは知らないんだね」

美希「デコちゃん。小鳥が黒幕なのは知ってるよね?」

伊織「ええ。それは前に聞いたわ」

美希「小鳥はね、律子を操って悪い事させてたみたいなの」

美希「で、律子は、千早さんとあずさを操って、味方にしたんだって」

美希「今は、律子も千早さんもあずさも、操られてないみたいだけどね」

伊織「なんかややこしいわね」

やよい「でも、じゃあ……」

やよい「さっき千早さんがおかしくなったのは、なんででしょーか……?」

伊織「………小鳥の仕業、かしら?」

美希「うん。ミキもそう思うな」

伊織「ったく、やってくれるわね、あの事務員は……」



14: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:26:37.29 ID:rHCptczaO

伊織「……さてと」

伊織「私、ちょっと行ってくるわ」

美希「デコちゃん、どうかしたの?」

伊織「魔物にクリスタルを取られちゃった事、報告しておかないとね」

美希「えっ、誰に?」

伊織「この国の王に、よ」

伊織「一応、私達は王に頼まれてクリスタルを取りに行ったわけだし」

美希「あれ?そうだったっけ?……すっかり忘れてたの」

やよい「伊織ちゃん。わたしも行ってもいい?」

伊織「わかったわ。……美希はどうする?」

美希「ミキ、疲れたからお留守番してるの」

伊織「……そう。じゃあ、春香を頼んだわよ?」

美希「あふぅ……りょ〜かいなの」

やよい「美希さん、行ってきます!」

美希「行ってらっしゃいなの〜」


ガチャ…バタン





春香「zzz……」

美希「………」じーっ

美希(春香って、こんな風にやられる事、多いよね)

美希(シアちゃんがいた塔でも、小鳥に乗っ取られた律子…さんに刺されてたし……)

美希(まったく、ミキ達がついてなきゃ、もう何回死んでたかわからないの)

美希「あふぅ……」

美希(……千早さん、大丈夫かな?)

美希(あのガイコツの魔物がいたって事は、やっぱりあの何ちゃらの塔に連れて行かれたんだよね……)

美希(これからどーするのかなぁ……)ウトウト

美希(あの空飛ぶ船……は、律子達が乗って行っちゃったみたいだし……)

美希(面倒なのは、ヤだけど……)

美希(みんながバラバラになっちゃうのは、もっとヤなの……)


…ドクンッ


美希(……あれ?今、なんか……)

美希(ん……もう、眠い……の……)

…バタッ


美希「zzz……」



15: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:32:26.43 ID:rHCptczaO
ドワーフの城 謁見の間

ジオット「……おお!よくぞ戻っ……」

ジオット「む?……そなたら2人だけか?」

伊織「そうよ。ま、いろいろあってね」

やよい「春香さんと美希さんは、きゅーごしつにいます!」

ジオット「そうであったか。ともかく、皆無事で何よりだ」

伊織「………」

ルカ「……あら?では、チハヤさんはどちらに?」

やよい「あっ……ええと、千早さんは……」

伊織「千早はここには来てないわ。ちょっと別行動してるのよ」

ルカ「そうですか……」

やよい(伊織ちゃん……)



ジオット「………して、クリスタルの方は……」

伊織「……奪われたわ」

ジオット「……え?」

伊織「奪われちゃったって言ってるでしょ!耳悪いの?あんた」

やよい「い、伊織ちゃん、おちついて……」オロオロ

ジオット「す、すまん……」

ジオット「しかし、これでクリスタルが全て揃ってしまったか……」

ジオット「もはや、打つ手は……」

伊織「……ねえ」

伊織「クリスタルが集まったら、何が起こるっていうのよ?」

ジオット「それは……」

伊織「それは?」

ジオット「……きっと、何か大変な事だろうな」

伊織「はぁ?」

伊織「……要するに、あんたも何が起こるか知らないわけね」

ジオット「ぜ、前例が無いのだ!だが、悪しき者の手の内にある以上、良からぬ事が起きるに違いない……」




16: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:38:03.28 ID:rHCptczaO

ジオット「……この世界は、もう……」

伊織「ちょっとあんた、諦めるつもり?」

ジオット「………」

伊織「それでも、一国の王様なのっ!?」

伊織「諦めるのは、まだ早いでしょうがっ!」

やよい「い、伊織ちゃんっ!」ギュッ

伊織「………ふん!」



やよい「……あのー、おーさま?」

やよい「わたし、あんまり頭よくないんで、よくわかりませんけど……」

やよい「こーいうのって、うたやダンスのレッスンと、同じだと思います!」

ジオット「………?」

やよい「さいしょから『できない』って思ってあきらめてたら、ずーっとできないままですよ?」

ジオット「!」

やよい「わたしってトロいし、みなさんについて行くのがせーいっぱいですけど……」

やよい「それでも、いっしょーけんめーがんばりますからっ!」

やよい「……だから、おーさまもいっしょにがんばりましょー!」

やよい「……ねっ?」ニコッ

ジオット「………」

伊織「やよい……」



ジオット「………そう、だな」

ジオット「一国の主である私が、民を置いて諦めるわけにはいかないな」

ジオット「そなたらのおかげで、目が覚めたわ。礼を言うぞ!」

やよい「うっうー!さすがおーさまです!」

伊織「……ったく、もう日和るんじゃないわよ?」

ジオット「うむ。肝に命じておこう」




17: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:43:16.60 ID:rHCptczaO
ドワーフ城 救護室

春香「ん……」

春香「う…ん……」モゾモゾ

春香「…………千早ちゃんっ!」ガバッ



春香「痛っ……!」ズキッ

春香「うぅ……痛い……」

春香「あれ、ここは……?」キョロキョロ

春香(……見覚えがある気がする)

春香(確か、ドワーフのお城の……)



美希「zzz……」

春香「美希……」

春香(えっと……私、どうしたんだっけ……?)

春香(洞窟にクリスタルを取りに行って……)

春香(洞窟を出ようとしたら、魔物が待ち伏せしてて……)

春香(クリスタルをよこせって……)

春香(それで……)

美希「……千早さん……」

美希「……ムニャ……」

春香「………」

春香(そうだ。千早ちゃんがおかしくなって……)




春香「私、どのくらい寝てたのかな……?」キョロキョロ

春香「あ、時計がある」スッ

春香「うわ、もうこんな時間……」

春香(伊織とやよいは、どこかへ出かけてるのかな……?)

春香(律子さん達もいないみたいだし……)

春香(美希、ずっと私を看病しててくれたのかな)ナデナデ

美希「……はにぃ……」ムニャ

春香(………)

春香(千早ちゃん……)

春香(私、千早ちゃんを守れなかった……)

春香(千早ちゃんがいなくなったのは、私のせいだ……)

春香(………)






春香(…………千早ちゃんを、助けに行かなきゃっ……!)グッ




18: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:48:04.80 ID:rHCptczaO
バブイルの塔 1F 次元エレベータ

千早「………」

千早(この感覚……律子に操られていた時と同じだわ)

千早(でも、今の律子は私を操る必要がない)

千早(と、いう事は……)

千早(音無さんの仕業……)

千早「………」チラ



千早(私を連れて来た魔物達は、向こうで何か話してるわね)

千早(クリスタルが全て揃ったし、その事について、かしら?)

千早(………)

千早(クリスタルが全て揃ってしまったのは……)

千早(………私のせい)

千早(…………また、私は春香をこの手で……)

千早「………」グッ

千早(……もう、みんなに……春香に合わせる顔がない)

千早(私は、どうしたら……)








ビュオオ…


…フワッ

バルバリシア(ヒマだから、やつらの動きを偵察に来てみれば……)

バルバリシア(あれは、チハヤじゃない……!)

バルバリシア(なぜ、やつらと一緒に?)

バルバリシア(ミキも来ているのかしら……?)



19: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:52:26.75 ID:rHCptczaO

千早(…………いいえ)

千早(諦めてはダメ)

千早(みんなはきっと、私を待ってくれているはず)

千早(それに春香は……)

千早(前に私が操られてしまった時も、全力で、私にぶつかって来てくれた)

千早(私は、春香を……みんなを信じる!)

千早(私は……今、私にできる事をやらなければ!)



千早(とりあえずは……)

千早「………」チラ

千早(魔物達に、話を聞いてみましょうか……)

スタスタ…




千早「あの……」

ルナザウルス「……ん?なんスか?あんたの出番なら、まだッスよ?」

千早「いえ、そうじゃなくて……」

千早「あなた達、これから何をするつもりなの?」

白龍「……そうですね。あなたはすでに『こちら側』の人間となった」

白龍「お教えしても、問題ないでしょう」

タイダリアサン「クリスタルを全て揃えると、この『次元エレベータ』が動くんですよ〜」

プレイグ「月と青き星が、つながるんだよ!」

千早(そういえば、律子が言っていたわね。『次元エレベータを動かして、月へ行く』って)

千早(ここがその『次元エレベータ』なのね……)

千早「……で、その次元エレベータを動かして、あなた達は何をしようとしているの?」

プレイグ「巨人だよ!」

千早「巨人……?」

ルナザウルス「そうッス!今は月にいる巨人を、この青き星に降臨させるッスよ!」




20: ◆bjtPFp8neU 2015/02/04(水) 00:56:18.46 ID:rHCptczaO

千早「そんな事をして……」

千早「………」

千早(……どうするの?というのは、きっと愚問ね)

千早(この魔物達は、その巨人とやらでこの世界を……)

白龍「………」ジロリ

白龍「逆らおうとしても、無駄ですよ?」

白龍「あなたには、コトリ様の術がかかっている」

白龍「あなたは、私達に従うしかないのです」

千早「………」

千早「……そうみたいね」

千早「わかったわ。じゃあ、もう少し詳しく話を聞かせてちょうだい」

タイダリアサン「あなたが協力的なのは、こちらとしても助かりますねぇ」

ルナザウルス「よ〜し、作戦会議ッスよ〜!」

プレイグ「わぁ、なんかかっこいい!」

ルナザウルス「まさに、悪の組織って感じッス!」

千早「あの、真面目にやってもらえないかしら?」

プレイグ・ルナザウルス「ご、ごめんなさい……」

白龍(コトリ様の術を受けたとはいえ、こうも簡単にこちらに協力的になる、というのは……)

白龍(少し、腑に落ちませんね)

白龍(竜騎士……何を考えている……?)

白龍(注意は怠らない方がいい様ですね)








バルバリシア(………ふぅん)

バルバリシア(なんか面白そうな事になってるみたいねぇ)

バルバリシア(ミキがいないのが、少し残念だけど……)

バルバリシア(もうちょっと様子を見てみましょ)




21: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 20:39:34.94 ID:8F+PwLBhO
地底世界 鍛冶屋ククロの家


…カン!カン!カン!




ククロ「………よし!」

ククロ「………完成だっ!」

弟子「ふぅ……」

弟子「さすが師匠!完璧な出来ですね!」

ククロ「ったりめーだろ!痩せても枯れてもこのククロ、『これ』でおまんま食ってんだからよ!」

ククロ「……っと、こんな話してる場合じゃねーな」

ククロ「おい弟子、あのガキ共に『出来たぞ』って伝えて来い!」

弟子「はいっ!」


タタタタ…





ククロ「……しかし、なんだな」

ククロ「久々、充実したな……」

ククロ(ここんとこ、酒飲んで暴れてただけだったからなー)

ククロ(こんなに清々しい気持ち、とんと忘れてたぜ……)



ククロ「へっ……」ゴシゴシ

ククロ「……やっぱりオレは、モノ造りをやめられねえ!」





22: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 20:42:32.20 ID:8F+PwLBhO

亜美「おお〜……これが、デンセツのスコップかぁ……!」チャキッ

真美「う〜む、なんかオーラがにじみ出てますな〜」

真「うん。スキが無いっていうか……」

あずさ「ねえ、雪歩ちゃん。試しに掘ってみたらどうかしら〜?」

雪歩「あ、はい。わかりましたぁ……」

亜美「……はいっ、ゆきぴょん」スッ

雪歩「ありがとう、亜美ちゃん」チャキッ



雪歩「………」じーっ

雪歩(なんだろ……)

雪歩(元々、使い慣れたスコップだったけど……)

雪歩(手に馴染む、とか、そういう感じじゃなくて……)

雪歩(まるで、私の身体の一部みたいに、手に吸い付いてくるよ……!)

雪歩(まずは……)


…サクッ


雪歩「!」

真「雪歩、どう?」

雪歩「感じられない……」

真「え?」

雪歩「土にスコップを入れた時の抵抗が、全く感じられないんだよっ!」

亜美「えっと……それってすごいの?」

雪歩「うん。抵抗が感じられないって事は、掘る時に腕に掛かる負荷がほとんど無いって事だから、掘るのに必要な力が段違いに少なくて済むって事なんだ!」

雪歩「今、少し掘ってみた感覚だと……このスコップなら、今までの1/3くらいの力しかいらないかも」

雪歩「と、いう事は、単純に、今までの3倍は掘れるって事だよ!」

雪歩「すごい、すごいよ!ねえ、真ちゃんっ!」

真「う、うん……良かったね、雪歩」

真美「うあうあ〜、ゆきぴょんが急にジョーゼツに……」

あずさ「雪歩ちゃん、よっぽど嬉しかったのねぇ……」



ククロ「それだけじゃねぇぜっ!」




23: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 20:44:51.16 ID:8F+PwLBhO

雪歩「え……?」

ククロ「おい、お前。この岩を掘ってみ?」ペタペタ

真「いやいや、岩なんて、それこそ、削岩機……だっけ?がないと……」

雪歩「ううん、大丈夫だと思う」

真「雪歩……?」


スタスタ…


雪歩「………」チャキッ


…サクッ


雪歩「!」

亜美「……あり?」

真美「あの岩って、そんなにやわらかいのかな〜?」

あずさ「なんだか、土と同じようにすんなりスコップが入っていったように見えたわね〜?」

雪歩「あずささん、同じように、じゃないです。……全く同じでした」

雪歩「この岩も、土も……」

雪歩「抵抗が、全く感じられませんでした……!」

ククロ「……ちなみにその岩は、まあ、アダマンタイトにゃ劣るが、並の金属の比じゃねえ硬さを持ってんだ」

ククロ「オレもよく繋ぎに使ったりする」

亜美「………」コンコン

亜美「ホントだ。メッチャかたそうだよ〜」

真「すごい……!それもう、スコップじゃなくて、剣って呼んでもいいんじゃない?」

ククロ「バカ言ってんじゃねえっ!」

真「うわっ!」ビクッ

ククロ「誰が武器なんか造るか!オレぁ、スコップを鍛えただけだ!」

真美「でも、かったい岩すらサクッといっちゃうんじゃ、もう刃物と変わらないんじゃ……」

ククロ「そのスコップの掘る部分、触ってみろ」

雪歩「は、はい……」ナデ

雪歩「あっ……!」




24: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 20:47:18.69 ID:8F+PwLBhO

雪歩「普通のスコップと、全然変わらない……!」

ククロ「ああ、あくまでスコップに拘ったからな!」

雪歩「す、すごいですぅ……!」

真「岩すら簡単に掘っちゃうのに、なんで触っても切れちゃったりしないんだろ?」

ククロ「そんなん、企業秘密に決まってんだろーが!」



…………

……



雪歩「あ、あの……」モジモジ

雪歩「ほ、包丁まで直していただいて、ありがとうございましたぁ……」ペコリ

ククロ「いや、礼を言うのはこっちの方だ」

ククロ「おかげで、やる気が戻ってきやがったぜ!」

亜美「んじゃ、亜美達は……」

真美「そろそろ、行きますか?」

真「そうだね!早く、悪者をやっつけに行かないと!」

あずさ「あの〜、ありがとうございました。頑張ってくださいね〜?」

ククロ「な、なあ、あんた!」

あずさ「はい?なんでしょうか?」

ククロ「もう、あんたには会えねえかもしれねえけどさ……」

ククロ「あんたに惚れた、この気持ち……」

ククロ「無駄になったり、しないんだよな?」

あずさ「うふふ。もちろんですよ?」

あずさ「誰かを想う気持ちは、とっても素敵な宝物なんですよ?」

あずさ(……ですよね?プロデューサーさん?)

ククロ「そうか……」





アイドル達「さようならー!!」




ククロ「じゃあなー!死ぬんじゃねーぞーガキ共ー!」

弟子「さよならー!」





25: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 20:49:18.39 ID:8F+PwLBhO
飛空艇 フタミ号

亜美「次は、ミシディアに行けばいいんだっけ?」

P(いよいよ、大詰めだな。確かこの後は、クリスタルによって巨人が召喚されて……)

真美「……兄ちゃん?」

P(いや、でも……すでに次に何が起こるかわからない状況になっている)

P(音無さんが、何を考えているか。それがわからないと……)

P(春香達の事も、気になるし……)

亜美「にーいーちゃーんっ!」

P「うあっ!?」ビクッ

P「な、なんだ?どうした?亜美……」

亜美「も〜!それはこっちのセリフだよ〜!」

真美「そ〜だよ〜!兄ちゃん、さっきから真美達が呼んでも心ここにアラスカってカンジなんだもんっ!」

P「すまん。ちょっと考え事をな……」

亜美「で、ミシディアに行けばいいんだよね?」

P「ああ。春香達と落ち合う約束をしたしな」

亜美「よ〜っし!ほんじゃ、行きますか!」



トロア「……あの、アミ殿」

亜美「ん?どったの?とろ姉ちゃん」

トロア「申し訳ないのですが、トロイアへ向かって頂けないでしょうか?」

真美「え?なんで?」

トロア「私は、ユキホ王女をお守りする為に、この船に乗りました」

トロア「しかし、ユキホ王女は……」

トロア「この様に、素晴らしい仲間達に囲まれています」

雪歩「トロアさん……」

トロア「それに、私の唯一の長所だった戦闘も、マコト殿には到底足元にも及ばない、という事がわかりました」

真「………」

トロア「ユキホ王女をお守りするのはマコト殿にお任せして、私は、国へ帰ろうと思います」

あずさ「あら、まあ……」




26: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 20:51:36.72 ID:8F+PwLBhO

ユキコ「あ、あのっ……」

ユキコ「私も、本当はマコトさんやユキホさんと一緒にいたいんですけど……」

ユキコ「わ、私、結局全然お役に立てませんでしたし……」

ユキコ「そろそろ、お家に帰ろうかと……」

真「ユキコ、そんな事はないよ!」

雪歩「ユキコさん……」




亜美「……だってさ。兄ちゃん、ど〜する?」

P「まあ、元々は巻き込んじゃった形だったし……」

P「それに、俺達の最後の戦いに道連れにする訳にもいかないしな」

P「2人共、送ってあげよう」

真美「ん……そだね。ちょっとさみしいけど」

あずさ「そうですね〜。帰りを待ってる人も、いるだろうし……」

亜美「ま、最後の戦いっていっても、兄ちゃんが戦力になるかはギモンなんだけどね〜?」

P「お、おい亜美、それは言いっこ無しだろ……」

雪歩(せっかく仲良しになれたのに、サヨナラなんだ……)

真「雪歩……」ギュッ





P「みんな、戻ろう。………地上へ!」






27: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 21:29:26.20 ID:8F+PwLBhO
トロイアの町

律子「随分時間食っちゃったわね」

律子「……さ、早いとこ魔導船を回収しに行きましょ」

貴音「ええ。そうですね」

響「春香達、きっと待ってるぞ」




「………お母……さん?」




律子「え……?」

貴音「はて……?」

響「あっ……!」



響「娘ーーっ!」

娘「やっぱり、お母さんだ!」

タタタタ…


娘「あっ……」ズルッ

ドテッ


響「だ、大丈夫か!?」

娘「……えへへ、転んじゃった……」

響「もー、おっちょこちょいだなー」




律子「え、えーと……何が起きているのかしら……?」

律子「私の聞き間違いじゃなければ、響、お母さんって呼ばれてたわよね……?」

貴音「ええ。わたくしにもその様に見えましたが……」



28: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 21:32:24.08 ID:8F+PwLBhO

律子「響。そちらのお嬢さんは……?」

響「ああそっか……」

響「律子と貴音は、まだ会った事なかったよね!」

響「……この子は、自分の娘だぞ!」ナデナデ

娘「初めまして!いつも母がお世話になってます!」ペコリ

貴音「これはご丁寧にどうも」ペコリ

律子「へぇ、ちゃんと挨拶もできるなんて、よくできたお嬢さん……」




律子「………じゃ、ないわよっ!!」



響「うわっ!」ビクッ

律子「響!娘ってどういう事!?」

律子「あんたいったい、この世界で『何』をしてたのよ!?」

響「え?……え?」

貴音「響。お相手の方はどなたですか?ご挨拶に伺わなければ……」

響「あ、いや……」

貴音「さみしくない、と言えば嘘になりますが……」

貴音「女として生を受けたならば、誰もが一度は通る道です」

貴音「わたくしは、祝福致します」ホロリ

響「だ、だからそうじゃなくて……」

律子「祝福なんてできるわけないでしょ!響、あんたはアイドルなのよ!?」

律子「もー、どうするのよぉ!」

律子「帰ったら、すぐに記者会見の準備を……」

律子「いや、響のイメージを考えたら、ここは隠し通した方が……」

貴音「響。あなたが選んだ方ならば、きっと素敵な方なのでしょうね……」ニコッ



29: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 21:35:17.03 ID:8F+PwLBhO

響「あーもうっ!2人とも、いい加減にするさー!」

響「この子は自分の娘だけど、それはこの世界での話だぞ!」

響「だいたい、いきなりこんな大きな子がいるなんて、明らかにおかしいでしょ!」

貴音「確かに、言われてみれば……」

律子「じゃ、じゃああんた、やましい事をしたわけじゃ……」

響「ないない!ぜーったいないぞ!」




響「自分、まだちゃんと○○なんだからなっ!!」ドーン



シーン…



律子「ひ、響……!あんた、何も往来のど真ん中でそんな事叫ばなくてもいいでしょうがっ……!」ヒソヒソ

響「あっ……///」カァァ



ザワザワ…

「おい、あの女の子……」ヒソヒソ

「○○って……」ヒソヒソ

「あんなに堂々と宣言するなんて……」ヒソヒソ

「やあねぇ……」ヒソヒソ




響「うぅ………///」




響「うわああぁぁぁあん!恥ずかしいぞー!!」




貴音(これは、ふぉろーのしようがありません)

貴音(響……強く生きるのです)



30: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 21:39:09.54 ID:8F+PwLBhO

響「うっ…グスッ……ひぐっ!」ポロポロ

律子「なんか、ごめんね……」

貴音「わたくしとした事が、動揺してしまいました……」

響「うぅ……自分、恥ずかしくてもうこの町を歩けないぞ……」グスッ

娘「よしよし……大丈夫だよ、お母さん」ナデナデ

貴音「しかし……これでは、どちらが母親かわかりませんね」

律子「ホントね……」





響「……ところで、なんで娘はここにいるんだ?」

娘「お母さんのお弟子さん達が、私をここまで連れて来てくれたんだよ!」

響「そうだったのか。技師達にはあとでお礼を言わないとなー」

響「で、技師達はどこにいるんだ?」

娘「えーとね、神官様の命令で、えらい人達をむかえに行ってるんだって」

律子「迎えに行くって言っても……飛空艇がないと時間がかかってしまうんじゃないかしら?」

響「うん。確かに律子の言う通りだと思うぞ」

娘「大丈夫だよ!新しくできた飛空艇を使ってるから」

響「新しく……?」

響「あっ!そういえば前に、技師達が言ってたっけ。『新型の飛空艇を造ってる』って」

響「完成したんだな、『ファル子』!」

響「ファル子にも会ってみたいなー」




31: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 21:43:14.33 ID:8F+PwLBhO
ドワーフ城 救護室


…ガチャ


伊織「美希、お待たせ……」


美希「zzz……」


伊織「……って、寝てるし」


スタスタ…


伊織「まったく、しょうがないわね。風邪引いちゃうじゃない……」ファサ

やよい「……あれ?」キョロキョロ

やよい「春香さんがいないね」

伊織「……ホントね。トイレにでも行ってるのかしら?」

やよい「………」

やよい(あんなにヒドいケガだったのに、一人で動けるのかなぁ……?)



やよい「………ん?」

やよい「なんだろ、この紙……?」カサ

やよい「!」

やよい「い、伊織ちゃん、この手紙っ……!」スッ

伊織「……どうしたのよ、やよい?」

伊織「………え!?」





『千早ちゃんを助けに行って来ます。
すぐに戻ります。

勝手に、ごめんね。

春香』





伊織「あのバカっ……!」

やよい「伊織ちゃんっ!春香さんをおいかけよう!」

伊織「ええ!」

伊織「ちょっと美希、起きなさいっ!緊急事態よ!」ユサユサ

やよい「美希さん!おきてくださいっ!」ユサユサ

美希「zzz……」



32: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 21:47:06.11 ID:8F+PwLBhO

伊織「……起きないわね」

やよい「美希さぁん……」

美希「zzz……」

伊織「目を覚まさせる魔法は美希しか使えないのに、当の本人が起きないんじゃ、どうしようもないじゃないっ……」

やよい「こんな時に、『あれ』があればなーって……」

伊織「あれって?」

やよい「えっとね。前に、美希さんを起こすために『めざましどけい』を使ったことがあったんだよっ」

伊織「目覚まし時計ねぇ……」



伊織「………」チラ

伊織「……こんな時計でいいのかしら?」スッ

やよい「あ、うん。それでだいじょーぶかも」

やよい「時間をセットして……」カチ





…ジリリリリリリリリリリリ!





伊織「うるさっ!」

やよい「う、うん。でも、これくらいの音じゃないと……」



美希「ん〜……うるさいの〜……」モゾモゾ

美希「………あふぅ」

美希「……あれ?」

美希「デコちゃんにやよい、お帰りなさいなの〜」

伊織「やっと起きたわね、まったく!」

やよい「美希さん、たいへんなんですよっ!」

美希「ん〜……また何かあったの?」

伊織「これを見ればわかるわっ!」ピラッ

美希「何これ?手紙……?」スッ

美希「!」



美希「春香……」

やよい「美希さん、春香さんをおいかけましょー!」

美希「………」

美希「まったく、春香は世話が焼けるの」プンスカ

伊織「あんたも大概だけどね」




33: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 21:51:06.24 ID:8F+PwLBhO

伊織「………で、調子はどうなのよ、美希」

美希「ん。まだまだ全然寝足りないってカンジなの」

伊織「そうじゃなくて!魔力は?戻ったの?」

美希「……ちょびっとだけ。まだ本調子じゃないの」

伊織「そう……」

伊織「やよいはどう?」

やよい「うーんと、よくわからないけど……」

やよい「わたしも、かんぺきじゃないかなーって」

伊織「………」



伊織(美希の魔法もやよいの力も、この先必要なものなのよね……)

伊織(できれば、万全の状態で春香と千早を助けに行きたいけど……)

伊織(今は、時間が惜しいわ)

伊織(だったら……)




美希「……ねえ、デコちゃん」

美希「春香を追いかけるんでしょ?だったら、早く行くの!」

伊織「待ちなさい」

やよい「伊織ちゃん?」

伊織「その前に、ちょっと買い物してから行くわよ!」

美希・やよい「買い物……?」

伊織「にひひっ!まあ、行けばわかるわ」





34: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 22:00:55.95 ID:8F+PwLBhO
ドワーフ城 道具屋

店員「いらっしゃい!うちでは、いいものを安く扱ってるよ!」

店員「じっくり見て行ってくれ!」



美希「ふーん……」キョロキョロ

やよい「わあ、いろんなものがありますねー」キョロキョロ

伊織「ええと……」キョロキョロ

伊織「………あ、あったわ。これね!」スッ

やよい「あ、それって、春香さんが持ってたおくすりだよね?」

伊織「そうよ。確か、『エーテル』とかいう名前だったはず」

美希「あー、ミキが飲んだやつだね」

美希「デコちゃん、これを買いに来たの?」

伊織「そうなんだけど……」

伊織「これ、値段が書いてないわね」

伊織「ちょっと!これ、いくらよ?」

店員「おっと失礼。じゃあ、値段表を渡そう」スッ

伊織「どれどれ……」





ーーーーーーーーーーーーーーー
ポーション……………… 30ギル
ハイポーション…………150ギル
テント……………………100ギル
小人のパン………………100ギル
ギザールの野菜………… 50ギル
万能薬………………… 5000ギル
エーテル………………10000ギル
エーテルターボ………50000ギル
特製おにぎり……………100ギル
ーーーーーーーーーーーーーーー




35: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 22:04:15.33 ID:8F+PwLBhO

やよい「ええっ!?い、一万円もするんだ、このおくすり……」

やよい「えーてるたーぼっていうおくすりは、一つ5万円……」

やよい(……5万円もあれば、1ヶ月の生活費になるかなーって)

伊織「へぇ、そこそこの値段なのね」

美希「ミキ的には、一番下のやつがすっごく気になるの」

伊織「あんた達、今いくら持ってる?」

美希「えーっとねー……」ゴソゴソ

美希「あ、そういえばミキ、一銭も持ってないの」

伊織「え!?」

美希「ぜーんぶ、おにぎり代に使っちゃった!あはっ☆」

伊織「あんた、よくそれでここまでやってこれたわね……」

伊織「ま、いいわ」

伊織「……やよいは?」

やよい「えっと……」

やよい「………ご、50円しかないよ……」スッ

伊織「やよい……この世界でも苦労してるのねぇ」

伊織「………」ゴソゴソ

伊織(……そういう私も、1000ギルしか持ってないわ)

伊織(これじゃ、エーテルを買えないか)

伊織「しょうがないわね……」



36: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 22:09:25.26 ID:8F+PwLBhO

伊織「じゃあ、これでお願いするわ」スッ

店員「……なんだい、この紙切れは?」

伊織「何って、カードよ、カード!これで支払いするって言ってんの!」

店員「カードって?」

伊織「はあ?あんた、カードも知らないの?言っとくけど私、この店ごと、100や200は買えるお金はあるんだからっ!」

店員「君の言っている事がよくわからないが、お金がないんじゃ売れないなぁ」

美希「……ねえ、デコちゃん。カードなんて、この世界じゃ通用しないんじゃないかな?」

伊織「ぐ………」

やよい「伊織ちゃん、お金が足りないなら、あきらめるしかないかなーって」

伊織「………」

伊織「わ、わかったわよ……」

伊織(欲しい物が手に入らないのが、こんなに悔しいなんて……)

美希「ここは素直に、おにぎりを買うしかないって思うな!」

やよい「そーですね!おにぎりなら買えますもんねっ!」

伊織「おにぎりなんて、腹の足しにしかならないじゃない……」




「……あの、みんな。ここは私に任せてもらえないかな?」




3人「えっ?」

伊織「あ、あんた、春香……?」

やよい「春香さん!」

美希「もー、春香、どこに行ってたの?」

「あ、いや……ハルカさんじゃなくて……」

店員「こ、これは王女様!ご機嫌麗しゅう……」ペコリ

ルカ「うふふ。こんにちは」

伊織「あ、そっちね……」

やよい「王女さまの方だったんですねー」

美希「顔が同じで紛らわしいの」

ルカ「う……なんか、ごめんね……」



ルカ「……店員さん。エーテルターボを3つ、くださいな」

店員「はいっ!毎度ありがとうございます!」スッ



37: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 22:16:26.84 ID:8F+PwLBhO

ルカ「……はい、これ。エーテルターボ。使って?」スッ

やよい「え?で、でも……」

やよい(えーと、一つ5万円のものを3つだから……)

やよい(はわわ、さすが王女さま、お金持ちですー……)

美希「さすがにそんな高い物をもらうのは、ミキでも気が引けるの」

伊織「……あんた、なんのつもりよ?」

ルカ「わ、私はただ、みんなが困ってたみたいだったから……」

伊織「……で、優しい王女様が、貧しい私達に施しを与えてくれるってわけね」

ルカ「そ、そんな……!」

やよい「伊織ちゃん。そんな言い方、ひどいよ。王女さまがかわいそうだよぅ」

伊織「っ………!」

伊織「………悪かったわ。ちょっと言いすぎたわね……」

ルカ「ううん、気にしないでね。慣れてるから……」

伊織「………」

ルカ「ごめんね、いきなり。でも、私もみんなの為に何かできないかな?って思って……」

ルカ「ホントは私も、みんなについて行きたいくらいなんだけど……」

ルカ「私、これからお父様の付き添いで、地上へ行かなきゃいけないから……」

伊織「地上へ……?何か、あるの?」

ルカ「ええと……サミット、だったかな?さっき、地上から使者の方が見えて、ぜひ、お父様に参加して欲しいって……」

やよい「さみっと……?」

やよい「なんか、ニュースとかで聞いたことある言葉かなーって」

美希「うーんと、目つぶしの事じゃなかったっけ?」

伊織「……それはサミングでしょ」



38: ◆bjtPFp8neU 2015/02/08(日) 22:22:13.98 ID:8F+PwLBhO

伊織「サミット……主要国首脳会議の事ね」

やよい「わあ、さすが伊織ちゃん!」

美希「ふーん……地上で何かあったのかな?」

ルカ「それは、行ってみないとわからないかな」

ルカ「……でも、使者の方は、なんだか焦ってるみたいだった」

伊織「ま、各国の首脳を集めるくらいだから、重要な会議なんでしょうけど……」

伊織「私達には関係ないわ。2人とも、さっさと春香を追いかけるわよ!」

ルカ「あ……」

スタスタ…


やよい「伊織ちゃん!」

美希「デコちゃん待ってなのー!」


スタスタ…



…ピタ

伊織「……あんた、ルカ……だったかしら?」

ルカ「……え?」

伊織「エーテルターボ、あ、ありがとっ……」

ルカ「!」

伊織「……が、頑張んなさいよ!あんたも!」

伊織「そ、それだけだから!じゃあねっ!」

スタスタ…



「あはっ☆デコちゃん、顔が真っ赤なのー!」

「やっぱり伊織ちゃんはやさしいんだねっ!」

「う、うるさいわねっ!さっさと行くわよっ!」




ルカ「みんな……頑張ってね!」ギュッ




46: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 20:53:23.68 ID:KQapQVukO

ー月の中心核 面接室ー


小鳥「コホン……では、ただいまから『音無小鳥親衛隊』の入隊面接を始めます」

小鳥「えー、最初の方どうぞー」



…ガチャ



月の女神「は〜い!月の女神ちゃんで〜っす!よろしくお願いしま〜すっ!」

月の女神「私ぃ〜、コトリ様のファンなんです!だから〜、絶対に親衛隊に入りたいんですよぉ〜!」

小鳥「わあ、なんかテンション高いのが来たわねぇ……」

月の女神「えっと〜、特技は〜」

小鳥「あっ、こっちから聞いてないのに語り出した」

月の女神「おしゃべりする事で〜っす!」

小鳥「……でしょうねぇ」

月の女神「あと〜、メールの早打ちとか〜、カラオケとか〜?」

月の女神「あ、コトリ様、あとでメルアド交換しよっ!」

小鳥「え、ええ……」

小鳥(っていうか、この世界にメールなんてあるのかな……?)

小鳥「あの、もっとこう、戦闘での特技みたいなのを教えてほしいんだけど……」

月の女神「え〜!そんな事より、もっと楽しいお話しようよ〜!」

小鳥「で、でも、これって私の親衛隊の入隊面接だから……」

月の女神「あ、そうだ!超おいしいスイーツが食べれるお店、教えてあげるねっ!」

小鳥「あ、あの、話を……」



…………

……




小鳥「……はい、面接は終わりよ。採用の場合だけ通知が行くから、間違えないでね?」

月の女神「は〜い!わっかりましたぁ〜!コトリ様、ばいば〜い!」フリフリ



ガチャ…バタン



小鳥「一人目ですでにどっと疲れたわ……」

小鳥「面接って、結構大変なのねぇ」

小鳥「……気を取り直して、2人目いきましょう」




47: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 20:57:40.48 ID:KQapQVukO

小鳥「次の方、どうぞー」

小鳥(私、なんかお医者さんみたい)



…シーン



小鳥「………あら?おかしいわねぇ。バハムートさんの話だと、何人か魔物を連れて来たって話だったけど……」


…トントン


小鳥「えっ?」クルッ



暗黒魔道士「………」ペコリ



小鳥「うわっ!」ビクッ

小鳥「も、もういたのね。全然気づかなかったわ……」ドキドキ

小鳥「え、えーと……あなたが暗黒魔道士さん、でいいのかな?」

暗黒魔道士「………」コクリ

小鳥「あなたの特技は?」

暗黒魔道士「………」ボッ メラメラ

小鳥「特技は魔法……と」カキカキ

小鳥「あとは……そうね。あなたの事を少し聞かせてもらえるかしら?」

暗黒魔道士「………」ビクッ

小鳥「………」

暗黒魔道士「………」オドオド

小鳥「あの、どうしたの?」

暗黒魔道士「………」アセアセ

暗黒魔道士「………」シュン

小鳥「もしかして、人と話すのが苦手なのかな?」

暗黒魔道士「………」コクコク

小鳥「うーん、仕方ないなぁ……」

小鳥「じゃあ、面接は終わりにしましょうか」

小鳥「もう、帰っていいですよ」



暗黒魔道士「………」ペコリ



ガチャ…バタン



小鳥「結局、一言もしゃべらなかったわね」

小鳥「あの人とコミュニケーション取るのは、大変そうだなぁ……」

小鳥「……さて、次の魔物を呼びましょ」



48: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:01:23.58 ID:KQapQVukO
…………

……



魔人兵「……今まで、面接なんて何回落とされた事か」

魔人兵「もう後がないんだよ」

魔人兵「……30過ぎて定職に就いてないっていうのもあれだしさ。オレ、この仕事に賭けてみたいんだ」

小鳥「そうなんですか……」

魔人兵「……嫁さんの腹ん中にさ、いるんだよ」

小鳥「えっと……赤ちゃんですか?」

魔人兵「そう!今のままじゃ子供に『オレが父ちゃんだよ』って、言えないんだよ」

魔人兵「……だから、よろしくお願いしますっ!」ペコリ

小鳥「大変なんですねぇ……」

小鳥(魔物の世界でも、不景気なのかなぁ……)



…………

……



ベヒーモス「これでもレディースのアタマ張ってた事もあるんだ」

ベヒーモス「きっと戦力になると思うよっ」

小鳥(レディースって事は、この子は雌、いえ……女性なのね……)

小鳥(ベヒーモスがヘッドの暴走族……なんか、いろいろ凄そうね……)

ベヒーモス「何をニヤニヤしてるのさ?そんなにアタイが珍しいってのかい?」

小鳥「あ、いや……えっと、すみません」

小鳥(アタイて………ププッ)



…………

……



金竜「我は金竜!」

銀竜「我は銀竜!」

金竜・銀竜「2人揃って、死角無しっ!!」

小鳥「あの、あなた達は双子なの?」

金竜「そんな生易しいものではないっ!」

銀竜「そうだ!我と兄者は阿吽の呼吸!」

小鳥(いや、兄者って言ってるじゃない……)

金竜・銀竜「我ら正に、一心同体っ!!」

小鳥(確かに、息はピッタリみたいねぇ)

小鳥(ふふふ、亜美ちゃん真美ちゃんみたい……)



49: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:07:11.14 ID:KQapQVukO
…………

……



プリンプリンセス「えーっと、私の特技は……」

小鳥「相手にバーサクかけて踊る事、でしょ?」

小鳥「ふふふ、あなたの事は、よぉぉぉぉっく知っているわ!」

プリンプリンセス「まあっ!それは光栄の至りですわっ!」

小鳥(『ピンクのしっぽ』を手に入れるために、何百……いえ、何万体『あなた』を倒した事か……)

小鳥(やり過ぎて、しばらくはプリンを見ると拒否反応が出る様になっちゃったけどね……)



…………

……



リルマーダー「オイラはゴブリン族の王なんだぜっ!」ドヤァ

小鳥「はあ、そうですか」

リルマーダー「オイラ、雷が弱点なんだぜっ!」

リルマーダー「だけどな、オイラのモットーはやられたら倍返しだからなっ!」

リルマーダー「倍の雷をお見舞いしてやるんだぜっ!」

小鳥「あー……こんなモンスターもいたわねぇ」

小鳥「でも、そのセリフ、旬はとっくに過ぎたのよねぇ……」

リルマーダー「えっ?そ、そうなのか?」

小鳥(頼りなさそうに見えるけど、魔力に関してはトップクラスなのよねぇ、この魔物って)



…………

……



小鳥「……あなたの特技は?」

レッドドラゴン「そうだなぁ……オレは全身が武器みたいなモンだが……」

レッドドラゴン「オレの『熱線』は、触れたものを何でも溶かしちまうぜ!」

小鳥「へぇ、なかなか頼もしいですね」

レッドドラゴン「あ〜早く暴れたいぜっ!」

小鳥(うん。普通に強そうね)

小鳥(でも、ちょっとインパクトに欠けるかなぁ)




50: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:09:55.44 ID:KQapQVukO
…………

……



小鳥「あら?あなたは……レッドドラゴンさんとは兄弟ですか?」

ブルードラゴン「……違う」

ブルードラゴン「ワシはあやつとは犬猿の仲じゃ」

小鳥「そうなんですか」

小鳥(さっきの金さん銀さんとは、逆のパターンなのね……)

ブルードラゴン「ワシは、全ての属性攻撃を吸収する。故に、敵がいないのじゃ」

ブルードラゴン「ワシは……死に場所を求めている」

ブルードラゴン「………わかるな?」

小鳥「な、なるほど……」

小鳥(なんか、今までと違ってシリアスな感じ……)



…………

……




小鳥「…………ふぅ」

小鳥「結構疲れるわね……」

小鳥「でも、魔物にも色々いてちょっと面白いなぁ」

小鳥「……さて、残すところあと一人ね」



小鳥「最後の方、どうぞー」



…ガチャ




51: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:14:07.64 ID:KQapQVukO

「……こんにちは。あなたがコトリさんですか」

「いやぁ、コトリさんがこんなに素敵な女性だとは思わなかったなぁ!」



小鳥「えっ……?」

小鳥「そ、そんなっ!……素敵で可憐で若くて美しいくてまだまだ10代に見えるだなんて……///」モジモジ



「あ、いや、そこまでは言ってな……」



小鳥「あなたの気持ちはとても嬉しい。でも……」

小鳥「でもダメよ……私には、プロデューサーさんという心に決めた人が……」ブンブン

小鳥「ああ、私はなんて罪な女なの……!」



「あ、あのー、大丈夫ですか……?」



小鳥「…………はっ!」

小鳥「いけない。私ったら、また……」

小鳥「ご、ごめんなさい。えーと………」チラ

小鳥「………あら?あなた、人間?」



「……正確には、人間『でした』」

「実は僕、すでにこの世の存在ではないんですよ」



小鳥「そうなんですか……」

小鳥(じゃあ、ゾンビって事なのかな?)

小鳥(綺麗な顔してるのに、もったいないなぁ……)





52: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:17:37.34 ID:KQapQVukO

「あ、自己紹介がまだでしたね」

「僕は、クルーヤ。生きていた頃は月の民でした」



小鳥「へぇ、じゃあ私と同じ……」

小鳥「……え?クルーヤって、どこかで……?」

小鳥「あっ……!ひょっとして、あなたの子供って……」



クルーヤ「ええ。『ハルカ』と『リツコ』ですよ」ニコッ



小鳥「やっぱり!……わあ、すごいなあ!」

小鳥「春香ちゃんに試練を与えたんですよね?どうでした?春香ちゃん、頑張ってましたか?」

クルーヤ「ええ。おかげで春香も無事パラディンに………って、あれ?」

クルーヤ「なぜ、あなたが試練の事を知っているんですか?」

小鳥「あ、そ、それは……その……」

小鳥「そ、そう!精神波ですよ!精神波でパーっと……」

クルーヤ「へぇ、そうなんですか……」

クルーヤ(あの時、精神波なんて微塵も感じられなかったんだけどなぁ)

クルーヤ(さすがは『元凶』だけあって、未知の力を持ってるって事なのか……)



小鳥「……でも、クルーヤさんはなぜここへ来たんですか?」

小鳥「『こちら側』にいたら、娘達とは戦う事になるんですよ?」

クルーヤ「……もちろん、それは承知の上です」

クルーヤ「まあ、強いて言えば、親心ってヤツなのかなぁ……」

小鳥「親心……?」



ダークバハムート「……クルーヤの言う事は鵜呑みにせぬ方が身の為だぞ、コトリよ」



小鳥「あ、バハムートさん……」

クルーヤ「バハムート……相変わらず君はつれないなぁ」

ダークバハムート「クク……今は邪神である故、少々捻くれておるのだ」

クルーヤ「ああ、そうだったね」

クルーヤ「でも、君には感謝しているよ、バハムート。こうして僕がコトリさんに会えるよう取り計らってくれたんだから」



小鳥「あの、もしかして、お2人って、昔からの……」

クルーヤ「うん。友達だよ!」

ダークバハムート「……ただの腐れ縁だ」



小鳥(バハムート×クルーヤ……うん、アリね……ムフフ)



53: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:22:19.07 ID:KQapQVukO

ー地底世界 バブイルの塔への道ー



ザッ……ザッ……


春香「……つかまえてっ♪にげるふり〜をして♪」


ザッ……ザッ……


春香「……そおと、もぐる、わたしマーメイっ♪」



春香「……っ!」ズキッ

春香「痛たた……」

春香「うーん、ダメだね……」

春香「歌でも歌えば、痛みも紛れるかな〜?って思ったんだけどなぁ……」

春香「はぁ……」


春香(こないだは、戦車でバブイルの塔まで行ったんだっけ……?)

春香(やっぱり、歩いて行くのは大変だなぁ……)

春香(一応、魔法を使ってみたけど、私の魔法じゃ傷が治りきらないみたい)

春香(一人で来たのは、失敗だったかな……)

春香(………ううん、ダメダメ、暗くなっちゃ!)

春香(千早ちゃんに会ったら、笑顔で『迎えに来たよ』って言うんだもんっ……)


ザッ……ザッ……


春香(……そういえば、船が沈没した時以来だよね。一人きりになるのは)

春香(今までは、誰かが必ず私のそばにいたもんね)


春香(みんな、怒ってるかな……)

春香(伊織なんか、カンカンだろうなぁ……)

春香(………)


ザッ……ザッ……


春香(……ごめん、みんな)

春香(私、一刻も早く千早ちゃんを助けたいんだ……!)

春香(千早ちゃん、きっと不安がってると思う……)

春香(千早ちゃんは、私が必ず連れて帰るから……)

春香(私、ひとりでなんとかするからっ……)

春香(だから、待ってて!)



春香「……おとめよっ、たいしをいだっけっ♪……」


ザッ……ザッ……



54: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:25:05.94 ID:KQapQVukO

ートロイア城 謁見の間ー


アン「……自分の無力さを痛感して?」

アン「それで、おめおめ帰って来た、と……」

トロア「………はい」

アン「………はぁ。あなたには、ガッカリだわ……」

アン「せめて、手柄のひとつでも立ててくれればよかったんだけどねぇ……」

トロア「……申し訳ありません」ペコリ

ドゥ「………」



アン「まあ、いいわ。今はそれどころではないものね」

トロア「……と、言いますと?」

ドゥ「ここへ帰って来る時に、見なかったのか?」

ドゥ「この国以外の国は……魔物に滅ぼされたようだ」

トロア「な、なんですって!?」

アン「あなたがユキホさん達と旅立つ前に、白い竜の魔物がやって来たでしょう?」

アン「どうやら、あの魔物のせいみたいね」

トロア「そ、そんな……!」

アン「でも、私達はついてたわ!」

アン「ユキホさん達が魔物を追い払ってくれたおかげで、この国は無事だったんだものね」

アン「うふふっ。神は私達を見捨てなかったようね?」

トロア「姉上……?」

ドゥ「……姉上。こんな事態を笑ったりするのは、一国の主としてどうかと思うが……?」

アン「……あら、ごめんなさい。確かに、少し不謹慎だったわね」



55: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:29:13.18 ID:KQapQVukO

アン「でも、これから忙しくなるわね」

アン「すでに、ファブール王は我が国に到着しているわ」

アン「ドワーフの王が着いたら、早速、『話し合い』を始めましょう!」

ドゥ「首脳会議か……」

ドゥ「しかし姉上、バロンとダムシアン、それにエブラーナはどうするんだ?」

アン「バロンは、王が討たれて久しいわ。未だに、王の後継者が見つかっていないらしいじゃない?」

アン「残念だけれど、代表者がいないなら仕方ないわよね?」

アン「ダムシアンは、リツコさんに滅ぼされてしまっているけど……」

アン「ダムシアン王家唯一の生き残りであるユキホさんは、私の『お友達』だもの。ダムシアンがこのトロイアに逆らう訳がないわ!」

アン「エブラーナは……よくわからないわね」

アン「あの国は、謎が多いから……」

アン「そういうわけで、バロンとダムシアン、エブラーナは不参加よ」

トロア「………」

ドゥ「姉上……それは少し強引過ぎやしないか?」

ドゥ「それに、ミシディア、カイポ、アガルト、ミスリル、それぞれの村の代表者にも出席してもらわないと……」

アン「ミシディアの長老様は、すでにご足労いただいているわ」

アン「今、あの方を失ってしまうのは、私達にとってとても痛手だもの」

アン「でも、それ以外の村はねぇ……」

アン「おそらく、大した人材もいないでしょう」

アン「だから、私は『話し合いに呼ぶ必要はない』と判断したわ」

トロア「城だろうと村だろうと、住んでいるのは同じ人間では?」

ドゥ「トロアの言う通りだ」

ドゥ「それに、これではまるで話し合いではなく、単なる出来レースじゃないか?」



アン「……いい?2人とも、よく聞きなさい?」

アン「世界は今、混迷を極めているわ。こんな時こそ、人々は手を取り合い、ひとつにならなければいけないと思うの」

アン「……そしてそれには、人々を導く『先導者』が必要よ」

アン「今こそこのトロイアが……私達が、人々を導く時じゃないかしら?」

アン「お父様とお母様も、きっとそれを望んでいると思うわ」ニコッ

アン「それに……これはもう『決定事項』よ?」

ドゥ「………」

トロア「………」

アン「さ、あなた達も、話し合いの準備を手伝ってもらえるかしら?」

ドゥ「…………わかったよ」

トロア「わかり……ました」



トロア(姉上……)

トロア(私には、姉上のお考えがわかりません……)




56: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:36:45.60 ID:KQapQVukO
ートロイアの町 南側ー


真「さ、トロアさんも無事送った事だし、次は、ユキコを送るためにファブールへ向かいましょうか!」

P「ああ、そうだな……」キョロキョロ

亜美「?」

亜美「……どったの兄ちゃん?」

亜美「お上りさんみたくキョロキョロしちゃってさ〜」

P「いや……この国って、こんなに人が多かったっけか?」

P「前に来た時はこんなに人がいなかった様な……」

雪歩「そう言われてみれば、なんだか人が増えた様な気もしますね……」

真美「今話題のカンコースポットってカンジなんじゃない?」

真美「ホラ、ゆきぴょんの掘った穴が大人気とか?」

雪歩「え?そ、そんな事ないよ、きっと……」

P「うーん……それにしては、誰ひとりとして楽しそうにしてない気がするんだよな」

P「何かあったのかな……?」

亜美「亜美達にはカンケーない気がするけどね〜」

亜美「だって、この国ではもうイベントはないハズじゃん?」

P「ゲームでは、な」

P「だけど、もうストーリーは完全にゲームとは違う道を辿ってるからな」

P「一応、情報を集めてみようか」

真美「ま〜、艦長命令ならちかたないね」

亜美「じゃあ、さっそく手分けして……」

亜美「………あり?」キョロキョロ

真「どうしたの?亜美」

亜美「あずさお姉ちゃんは?」

雪歩「あ、あれ?さっきまで一緒にいたはずなんだけど……」

真美「か、艦長……行方不明者が……」

P「まずいな……」



57: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:45:58.88 ID:KQapQVukO

P「まずはあずささんを探さないと……」

真「プロデューサー、ボクがひとっ走り行って来ます!」

P「真……」

P「そうだな。真の足なら、頼りになりそうだ。頼んでもいいか?」

真「はい!」

雪歩「真ちゃん、気をつけてね?」

シルフ「大丈夫ですよ〜。真さんには私がついてますから〜」

シルフ「『2人の愛の力』で、必ずあの天然さんを見つけて来ますよ〜」

雪歩「し、シルフちゃん……」

ユキコ「うぅ、ちょっと嫉妬しちゃいますぅ……」

真「こら、シルフ。仲良くしないとダメだろ?」

シルフ「……わかりました〜」



真美「じゃあさ、どっか待ち合わせ場所を決めておいたほ〜がいいよね?」

P「ん、そうだな。どこか目立つ建物で……」キョロキョロ

亜美「……兄ちゃん、あそこでいいんじゃない?」スッ

P「………パブ『迷宮』か。よし、じゃあ後であそこに集まろうか」

雪歩「………」

真「わかりました!……行くよ、シルフ」

シルフ「は〜い」


タタタタ…




58: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:48:15.50 ID:KQapQVukO

P「……さて、俺達は情報を……」



「……あっ、おい!あの人……!」

「あ、ああ!まさか、『本物』に会えるなんて、オレはなんてラッキーなんだ!」



P「………ん?」チラ



「あ、あのっ!」

「ユキホ様……ですよね?」



雪歩「ひっ……!お、男の人が……!」

ユキコ「たくさんいますぅ……!」



「あれ?ユキホ様が、2人……?」

「女神様は、双子だったのか!」

「女神様、あなた方のおかげで今日も暮らしていけます。ありがとうございます!」

「さ、サインくださいっ!」

「実物は可愛いなぁー!」



雪歩「えっ?え、ええと……?」

ユキコ「ひぃぃ、恐い……!」



P(女神って、何の事だ……?)




59: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:51:07.72 ID:KQapQVukO
ートロイアの町 西側ー


スタスタ…

あずさ「……困ったわね〜。みんなとはぐれちゃったわ〜」

あずさ「ここ、どこかしら〜?」キョロキョロ

あずさ「とにかく、みんなを探さないと……」





ザワザワ…

「これが、この国を救ったっていう女神様の像かぁ」

「は〜、ありがたや〜」

「どうか、この世界を魔物からお守りください!」





あずさ「……あら?何か、あっちに人が集まっているわね〜」

あずさ「ひょっとしたら、プロデューサーさん達もあそこにいるかもしれないわ〜」

あずさ「行ってみましょ」

スタスタ…




あずさ「……えっ?」ピタ



女神像「………」



あずさ(気のせい……じゃないわよね?)

あずさ(あの像、雪歩ちゃんにそっくりだわ〜)

あずさ(それに、石碑の内容からすると、どうやら雪歩ちゃんはこの国の女神として奉られているみたいね〜)

あずさ(なんだかよくわからないけれど……)

あずさ(うふふ。さすが雪歩ちゃんね〜)




「あれ?あんたは……」




60: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:54:16.18 ID:KQapQVukO

店主「……アズサじゃないか!」

あずさ「あら?あなた方は確か……」

ものまね士「お久しぶりです、アズサさん!」

あずさ「ええと、店主さんにものまね士さん、だったかしら〜?」

店主「一度会っただけなのに、覚えててくれたんだな!」

店主「でも、なんであんたがこんなところにいるんだ?」

あずさ「あ、あの〜、実は……」



…………

……



ものまね士「なるほど、迷子ですか……」

ものまね士(顔もスタイルも性格も完璧でも、弱点はあったのね……)ホッ

店主「……何をホッとしてるんだ?」

ものまね士「な、なんでもないです」

ものまね士「とにかく、アズサさんのお連れの方を探さないとですね」

あずさ「すみません、お手数おかけしてしまって……」

店主「いや、ハルカの仲間をほっとけないしな」

店主「それに、困った時はお互い様だろ?」

あずさ「うふふ、お世話になりますね」

ものまね士「………」

ものまね士(……なんか、店主さん楽しそう……)

ものまね士(そりゃあ私なんかより、アズサさんみたいなキレイな人と一緒にいた方が、店主さんも楽しいわよね……)

ものまね士(うぅ……なんかモヤモヤする……)



店主「おーい、ものまね士!置いてくぞー!」

ものまね士「……あっ!待ってくださいよ〜!」

タタタタ…




61: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 21:58:35.99 ID:KQapQVukO
ートロイアの町 東側ー


スタスタ…

真「うーん、なかなか見つからないなぁ」

真「あずささん、どこ行っちゃったんだろう……?」キョロキョロ

真「青い髪なんて珍しいから、目立つはずなんだけどなぁ」



シルフ「………」ガクガク

真「……シルフ?どうかしたの?」

シルフ「す、すみません……私、こんなにたくさんの人間を見たのは、初めてで……」

真「あっ、そっか……君達エルフは、人間に……」

シルフ「だ、大丈夫ですよ?マコトさんの足手まといになるワケにはいきませんし!す、少しぐらい、我慢……」

真「………」ギュッ

シルフ「ま、マコトさん……?」

真「……ボクがついてる。安心して」

シルフ「………はい。ありがとうございます!」ギュッ

真「とりあえず君は、ボクの服の中に隠れているんだよ?」

シルフ「すみませんです」



真「……この辺りにはいないみたいだなぁ」

真「よし、シルフ。次はあっちの方に行くよ!」

シルフ「は〜い」




「……もし、そこの者よ」




真「……えっ?ボクの事ですか?」クルッ

真「……あっ!!」



真「あなたは……王様!?うわー、久しぶりですねー!」

ファブール王「ふむ。そなたは相変わらず元気そうじゃの」

真「へへっ、それがボクの取り柄ですからね!」

真「でも、王様がなんでここに?ファブールはどうしたんです?」

ファブール王「マコトよ、知らぬのか?」

真「知らぬって……何をですか?」

ファブール王「今、この世界に起きている事じゃ」

真「?……何か、あったんですか?」

ファブール王「………」

ファブール王「マコトよ。心して聞け」

真「はあ……」



62: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 22:02:40.46 ID:KQapQVukO
…………

……



真「そ、そんな……!国が滅びたって、本当なんですか!?」


シルフ(人間が、魔物に……?)

シルフ(……なんか、複雑……)


ファブール王「残念じゃが、事実じゃ」

ファブール王「すまぬ。わしが不甲斐ないばかりに、そなたの帰る所を奪ってしまった……」ペコリ

真「いや、王様のせいじゃないですよ!頭を上げてください!」

真(……あれ?ボクの帰る所がないって事は……)

真(ユキコの帰る家も、ないって事だ……!)

真(ユキコ……)



ファブール王「……すまんな。もう少し話をしていたいところじゃが、わしには時間がない」

真「何か用事ですか?」

ファブール王「うむ。先ほど言った通り、無事だったのはこのトロイアだけじゃ」

ファブール王「そのトロイアの神官に呼ばれてな」

ファブール王「『世界の今後について話し合いたい』と」

ファブール王「わしだけでなく、各国の重要人物が呼ばれているようじゃ」



ファブール王「では、名残惜しいが……わしはもう行くぞ」クルッ

真「あ、はい」



ファブール王「マコトよ。わしより先に逝く事は、許さぬぞ……」

スタスタ…



真「王様……」




63: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 22:07:57.70 ID:KQapQVukO

真「………」

真「ボク達が地底へ行ってる間に、そんな事が起きていたなんて……」グッ

真「………」

真「……一人で考えても仕方ないよね。この事は、プロデューサーに相談しよう」

真「今は、あずささんを見つけないと……」



老婆「……あたしが手伝ってやろうか?」



真「あっ……ドワーフのおばあさん!」

老婆「あんた、ファブール王と知り合いだったんだねぇ」

真「まあ、一応ボク、モンク隊の隊長でしたからね」

老婆「ほう、そうだったのかい」

真「おばあさんも、この国へ避難していたんですね」

老婆「ああ。あんたの友達のポニーテールに世話になってね」

真「ポニーテール?……そうか、響が……」

老婆「それよりあんた、人を探しているんだろ?」

真「あっ、そうだった!」

老婆「こんなに人がうじゃうじゃいたんじゃ、地上から探しても時間ばかりかかっちまうだろう」

真「えっ?」

老婆「人相を教えな。あたしが見つけてやるよ」

真「えーと、髪は青くて、スタイルが良くて……」

老婆「なるほどね。ちょっと待ってな」

老婆「……サイトロ」



…ヒュンッ



真「わ……!おばあさんが千早みたいにジャンプした……?」

真(……あ、そういえばこの魔法、地底で美希も使ってたっけなぁ……)




64: ◆bjtPFp8neU 2015/02/25(水) 22:33:46.50 ID:KQapQVukO
…………

……



…スタッ

老婆「見つけたよ。あっちの方向に、大体500mの所にいるようだ」スッ

老婆「だが、ゆっくり移動しているみたいだから、早いとこ追いかけた方がいいだろうね」

真「わかりました!ありがとうございます!」

真「じゃあ、ボク、行きますね!」

タタタタ…




老婆「………」

老婆(まったく、不思議な子達だよ……)

老婆(何かこう、人を惹きつける力を持っている様だね)

老婆(つい、手を貸したくなっちまう)



老婆「さて、あたしも坊やのところに戻るとするかね」





「……その前に、あなたも『話し合い』に参加するべきではないか?」





老婆「………」チラ

老婆「………ふん。誰かと思ったら、地底へ引き込もった放蕩息子かい」

ジオット「ははは、相変わらず母上は手厳しい」

ルカ(お父様の母上……って事は、この人は、私のおばあ様……)



老婆「いつ這い出て来たんだ?」

ジオット「ここへ着いたのは、ついさっきですよ」

ジオット「それより母上……」

老婆「あたしゃ、あの神官の小娘に呼ばれていない」

老婆「つまり、必要無いって事だろ?」

ジオット「いえ。それは何かの手違いのはずです。母上も、『アガルト』の代表として、是非……」

老婆「こんな老いぼれが役に立つとは思えないけどねぇ……」

老婆「うーん……まあ、ヒマ潰しにはなるかもしれないね」

老婆「いいだろう。付き合ってやるよ、バカ息子」

ジオット「ありがとうございます、母上。……では、参りましょうか」




66: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:16:56.31 ID:/P07CWm0O

ー バブイルの塔 1F 次元エレベータ ー


白龍「……という事なので、巨人のコアである『制御システム』は、最優先で守るべきもの、と言えるでしょう」

千早(なるほど……)

千早(逆に言えば、それさえ破壊してしまえば……)

白龍「この青き星に呼び寄せる巨人は、4体。私達がそれぞれひとりずつ巨人に乗り込むのが良いと思いますが……」

白龍「みんな。何か、意見はありますか?」

ルナザウルス「無いッス!」

プレイグ「ぼくも!ハクさんの意見が正しいと思う」



タイダリアサン「……あの、ひとつ気になったんですが……」

白龍「なんですか?」

タイダリアサン「4体の巨人の内、3体は私達が造ったダミーですよねぇ?」

千早(ダミー……そんなモノまで用意しているのね)

タイダリアサン「『本物』には、誰が乗り込むんです?」

白龍「……そうですね」

白龍「私達の中で1番強い者が乗るのが定石でしょうね」


千早(1番、強い…………誰かしら?やっぱり、あの白龍とかいう魔物?)




67: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:20:30.52 ID:/P07CWm0O

ルナザウルス「……じゃあ、本物に乗るのはプーちゃんッスね!」

タイダリアサン「そういう事になりますねぇ」

プレイグ「ええっ?き、緊張するなぁ……」


千早(え……!?あの目玉の化け物が、1番強いの?)

千早(見た目の迫力と強さは、必ずしも比例するものではない、という事なのかしら……)


白龍「………」じーっ

白龍「ふふふ、驚いているようですね?」

千早「え……?」

白龍「なぜプレイグが1番強いか、気になりますか?」

千早「………」コクリ

ルナザウルス「プーちゃんは、相手を一撃で仕留めてしまう、必殺の言葉を持ってるんッスよ!」

千早「必殺の言葉……?」

タイダリアサン「その言葉を聞いた者は、死を逃れられないんですよね〜」

プレイグ「でも、機械とかゾンビみたいに生命を持たないものには効かないんだけどね」

千早(聞くだけで、死ぬ言葉……?そんなものが……!)

白龍「あなたが何をしようと、あなたの仲間達は、何も出来ずに死んでいくのです……」

千早(くっ……!)

千早(そんな事は、させないわ……!)




68: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:24:02.38 ID:/P07CWm0O

千早「……それで、私はどうしたらいいの?」

ルナザウルス「あ……そうッスね。誰かと一緒に巨人に乗ってもらう事になるッスかねー?」

千早「そう……」

千早「じゃあ、私は本物の巨人、とやらに乗る事にするわ」

千早(多分これは、『私』にしか出来ないと思うから)

プレイグ「あ、じゃあぼくと一緒だね。よろしくね!」

白龍「………」



白龍「ダメです。あなたは囚われの身。あなたに自由など……」

ルナザウルス「まあまあ、いいじゃないッスか。誰と一緒に乗ったって同じッスよ」

タイダリアサン「決める手間が省けたので、私もそれでいいと思いますがねぇ」

白龍「いいえ。ダメです」

白龍「……竜騎士よ。あなたは、プレイグの『死の宣告』の恐ろしさを知った」

白龍「どうにかして、『死の宣告』から仲間達を守ろうと考えている」

白龍「……違いますか?」

千早「………」

白龍「コトリ様の術がかかっているあなたに、大した事はできないとは思いますが……」

白龍「念の為、あなたはプレイグとは別行動してもらいます」

白龍「……そうですね。では、ルナと一緒に乗ってもらいましょうか」

千早(くっ……お見通し、という事なのね……)



ルナザウルス「ハクさん、色々考えているんスねぇ……」

タイダリアサン「こだわり過ぎな気もしますが……」




69: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:27:46.71 ID:/P07CWm0O

白龍「……では、準備はいいですか?」

ルナザウルス「クリスタル、準備オッケーッス!」

プレイグ「うわぁ、ドキドキするなぁ……」

タイダリアサン「さっさと呼び出してしまいましょうか」

千早「………」





白龍「……クリスタルよ。今こそ月と青き星を繋ぐのです!」



……キラーン!



パアァァァァ……



千早(光が……!眩しくて、目を開けていられない……!)



ゴゴゴゴ…



ブォォォーーーン……







70: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:30:10.28 ID:/P07CWm0O

ー 地底世界 バブイルの塔 B13F ー


春香「……ふぅ」

春香「やっと着いたよぉ……」

春香「千早ちゃん、どこにいるんだろう?」キョロキョロ

春香「………とにかく、探そう!」




魔物「ギャアーー!」




春香「ま、魔物っ!?」


魔物「ギャア!」ブンッ


春香「わわっ……!」ガキィン


春香「………っ!」ズキッ

春香「痛たた……!」ポタッ

春香(ああ……傷口が……)

春香(ダメ………)

春香(お願い、もう少しだけ持って……)

春香(千早ちゃんに会えるまでは……!)



春香「………よしっ!」ギリッ

春香「えいっ!」グイッ


魔物「グギャッ!?」ヨロッ


春香「ごめんなさい!私、千早ちゃんのところに行かないといけないんです!」

春香「邪魔………しないでくださいっ!」チャキッ



春香「無双、稲妻突きっ!」ビュンッ


ズガッ!


魔物「」



春香「………」チラ

春香「………」クルッ



タタタタ…




71: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:34:14.17 ID:/P07CWm0O

ー 地上世界 バブイルの塔 上空 ー


ババババババ…



響「………ねえ、あの塔に刺さってる黒い塊って……」スッ

貴音「ええ。あれが、件の魔導船です」

律子「もはや塔のオブジェと化してるわね……」

律子「貴音、何があったのよ、いったい……」

貴音「無いのです。あの船には」

律子「無いって、何が?」



貴音「………ぶれぇきが」



響・律子「」



律子「つ、つまり……あの船で着陸する時は、常に不時着って事?」

貴音「ええ。それはもう、死を覚悟する様な」

響「自分、そんな船に乗りたくないぞ……」

律子「なんかすごそうな名前なのに、意外と使えない船なのかしら……?」



律子「……でも、あの船も良く無事に残ってたわよねぇ」

貴音「宇宙を翔ける程の船です。そう柔な造りでは無い、という事ではないでしょうか?」

響「貴音の身体もね」

律子「そうかもしれないけど……」

律子「魔物達に奪われていなくて良かったわよね、って事」

貴音「それについては心配無用です」

貴音「魔物では、あの船を動かす事はできないそうですから」

響「そうなのか?」

貴音「魔導船は、『人の想い』により動くのです」

律子「人の……想い?」

貴音「はい。想いの強さが、そのまま船の動力となる様です」

律子「へぇ……なんだかメルヘンチックな船なのねぇ」

響「ふーん……じゃあさ」



響「着陸の時も、『着陸してくれー』って想えばいいんじゃないのか?」



貴音「!」




72: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:39:20.54 ID:/P07CWm0O

律子「まあ、理屈ではそういう事になるわよね」

貴音「確かに……」

貴音「船の操舵とは、まこと難しきものなのですね」

貴音「ふふふ。やはり、この世界では、船の事は響に聞くのが一番の様です」ニコッ

響「いや、やってみないとわからないからね?それに、これくらい誰でも思いつくと思うけど……」



律子「……とにかく、今は魔導船を動かすわよ」

律子「貴音は魔導船、響はこの船を頼むわ」

貴音「承知しました」

響「わかったぞ!」

響「律子はどうするんだ?」

律子「私は……」

律子「貴音が心配だから、ついて行くわ」

響「うん。その方がいいかもね」

貴音「……よろしくお願いします、律子嬢」

響「でもさ、ここ、山だから、着陸するところがないぞ?」

律子「そうねぇ……」

律子「響。できるだけあの船に近づいてもらえる?」

律子「近づいたら、私達は魔導船に飛び移るから」

響「わかったぞ!」



響「エン太郎!行っくぞーっ!」グイッ




ビュゥゥゥーン…






73: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:43:00.59 ID:/P07CWm0O

ー バブイルの塔 B6F ー


ルビカンテ「……火炎流!」バッ


ゴオオオォォオオ!


カイナッツォ「……津波よ!」バッ


ザァァァァァ……!




ジュウゥゥ…




スカルミリョーネ「……そ、相殺し…た……」

ルビカンテ「……やはりダメか」

ルビカンテ「難しいものだな。『協力する』という事は」

カイナッツォ「だから言っただろうが。私とお前では、属性の相性が悪いのだ。協力技など出来る訳がなかろう」

カイナッツォ「それにそもそも、私は仕方なく付きあってやっているだけだ」

カイナッツォ「お前達に協力する気など無いからなっ!」



スカルミリョーネ「……ば、バルバリシアがいれ…ば……」

ルビカンテ「ん……そうだな。ヤツの風があれば、オレの炎は勢いを増す」

ルビカンテ「そういえばあの女、偵察へ行くと出て行ったきり戻らないな」



カイナッツォ「コラッ!2人共、私の話を聞けぇっ!!」プンスカ




……ザッ



春香「……はぁ、はぁ……!」ヨロッ



ルビカンテ「………む?」チラ




74: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:48:34.24 ID:/P07CWm0O

ルビカンテ「誰だ、お前は?」



春香「はぁ、はぁ…………ま、また、魔物………っ」ヨロッ



スカルミリョーネ「……お、お前…は……!」

カイナッツォ「いつぞやの聖騎士かっ!」

ルビカンテ「お前ら、知っているのか?」

スカルミリョーネ「……し、試練の山で、戦っ…た……」

カイナッツォ「バロンでの屈辱、忘れた事は無かったぞ!」

ルビカンテ(水と土が戦った……?そうか、この娘がリツコ様の言っていた……)

ルビカンテ(1人……か。確か、リツコ様の仲間は他にもぞろぞろいた気がするが……)

ルビカンテ(しかも、手負いとはな。よくここまで来たものだ)



春香「あっ……!」

春香「スーさんに、バロンの亀さん!」

春香(どうしよう……?今までの魔物とは段違いに強い人達ばっかりだ……)

春香(傷口も開いちゃったし……)



春香(……………ううん)

春香(それでも、私は行かなきゃ!)

春香(千早ちゃんが待ってる!)




75: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 22:54:00.82 ID:/P07CWm0O

春香「ここを、通して……くださいっ……」



カイナッツォ「ククク……バカめっ!通す訳がないだろうが!」

カイナッツォ「ここで会ったが百年目。貴様には、私と同じ屈辱を味わってもらおうか!」ゴゴゴゴ…



春香「お願いしますっ!」ペコリ

春香「私、仲間を……千早ちゃんを助けに行かなきゃいけないんですっ!」



ルビカンテ「………」

ルビカンテ(仲間……。自らの命を賭す程に大切だというのか……?)



カイナッツォ「フン!そんな事は知った事ではない!」

カイナッツォ「あの時の恨み、今ここで晴らしてやるッ!」

カイナッツォ「さあ、私の津波の餌食となるがいい!」バッ


ザァァァ…



春香「……どうしてもダメだっていうんなら……」

春香「……力ずくで通りますっ!」チャキッ




76: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:03:57.58 ID:/P07CWm0O

カイナッツォ「……死ねえっ!」



ザァァァァァ…!



春香(津波……!今あれを受けたらまずいよね……)

春香(確か、まだ試してない技があったはず……)

春香(お願い、もう少しだけ持って、私の身体……!)



春香「……命脈は無常にして、惜しむるべからず……」ゴゴゴゴ…

春香「……葬るっ!」チャキッ



ルビカンテ(……ほう。良い剣気を持っているな)



春香「不動………無明剣っ!」ブンッ



…ズドォォン!


ザパァァン…



カイナッツォ「………なっ!?わ、私の津波を割った、だと!?」

スカルミリョーネ「……つ、強くなってい…る……!」

ルビカンテ(自らは動かずに斬撃を飛ばす技か)

ルビカンテ(凄まじい技だが……)チラ



春香「はぁ、はぁっ……!」ヨロッ

ドサッ

春香「うぅ……」

春香(身体に力が入らないよぅ……!)

春香(こんなところで倒れてる訳にはいかないのにっ……!)グッ



スカルミリョーネ「……ち、力尽き…た……?」

ルビカンテ(だろうな。あの状態であれだけの技を放ったんだ)

ルビカンテ(無事でいられるはずがない)



カイナッツォ「ふ、ふん!驚かせおって!」



77: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:09:07.66 ID:/P07CWm0O

カイナッツォ「ふははは!今度こそ引導を渡してくれるッ!」バッ


ザァァァ…



春香「ぅ……く……!」ヨロッ

春香(………絶対に………!)



ルビカンテ(まだ、立つか)



春香「はぁ、はぁ……!」チャキッ

春香(千早ちゃんを………!)



カイナッツォ「死ねえッ!」


ザパァァァァン!



春香「………連れて帰るんだもんっ!」グッ

春香「………不動、無明剣っ!」ブンッ



ズドォォン!



ザァァァァ…!



春香「あっ………」



ルビカンテ(一度目よりも弱い。津波を割り切れなかったな)



ザパァァァァァン!



春香「……っ……ぷはっ……!」

春香(……だ、ダメ……息が……!)




78: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:12:59.48 ID:/P07CWm0O

春香「………」


ルビカンテ(終わったか……。覚悟は認めるが、やはり力が伴わなければ……)


カイナッツォ「はははは!思い知ったか!この水のカイナッツォ様の津波の恐ろしさを!」



春香「……………」ピクッ



ルビカンテ(………む?)



春香「う…………」

春香「ケホッ、ケホッ……!」



カイナッツォ「ち!まだ息があったか」



春香「………めないっ……!」ググッ



ルビカンテ(また、立ち上がる……!)



春香「私は、諦めないっ……!」

春香「……約束、したんだもん……!」ヨロッ



春香「……みんな揃って、帰るって!」ザッ



スカルミリョーネ「……あ、あの身体のどこに、そんな力…が……!?」

ルビカンテ(もう立っているだけで精一杯のはずだ)

ルビカンテ(自分を捨ててまで……そんなに守りたいのか?)



春香「……通して……くださいっ!」ポタッ

春香「お願い……しますっ!」



カイナッツォ「相変わらずしぶとい奴め!ならばもう一度……」




79: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:17:33.24 ID:/P07CWm0O

ルビカンテ「……………待て、カイナッツォ」





カイナッツォ「……なぜ止める?」

カイナッツォ「ルビカンテ。貴様、何を……」

スカルミリョーネ「………」



スタスタ…

ルビカンテ「………」



春香「………っ!」チャキッ



ルビカンテ「…………見てみたくなった」


春香「………ふぇ?」


ルビカンテ「お前の……いや、お前達の信念の強さが、どれほどなのかを」


春香「え、え……と……?」


ルビカンテ「回復してやろう」バッ


シャララーン!キラキラ…



春香「!!」

春香「き、傷が……!」

春香(美希の魔法と同じくらいすごいよ……!)



カイナッツォ「ルビカンテ!気でも触れたかっ!?」



春香「あ、あの……ありがとうございます」ペコリ



ルビカンテ「リツコ様は、オレにも『仲間』というものが理解できれば、まだ強くなれると言った」

ルビカンテ「オレにはまだ『仲間』というものがわからないが……」

ルビカンテ「お前は………その答えを持っている」

ルビカンテ「そんな気がしたんだ」



春香「………」

春香(この人……)




80: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:29:48.60 ID:/P07CWm0O

カイナッツォ「なぁにが仲間だっ!」

カイナッツォ「私には関係ないぞ!そんなもの!」

スカルミリョーネ「……か、カイナッツォ……なんだかんだ言って付き合いがい…い……」

カイナッツォ「勘違いするなっ!私はお前達を利用して……!」

ルビカンテ「……いや、スカルの言う通りだ。お前にはお前の事情があるだろうに、こうしてオレのわがままを聞いてくれている」

ルビカンテ「……恩に着る」

カイナッツォ「……ふ、ふんっ!お前は腐ってもリーダーだからな!短い付き合いでもないし!仕方あるまい!」

スカルミリョーネ「……で、デレ…た……?」

カイナッツォ「妙な表現を使うな!ゾンビがっ!」



春香「………ふふっ」

春香「みなさん、仲がいいんですね?」ニコッ



ルビカンテ「……そうか?」

カイナッツォ「そんなワケな……モゴッ!」

スカルミリョーネ「……す、少しだけ黙…れ……」



春香「……私も、正直よくわからないです」

春香「でも……」

春香「私には、みなさんはとても仲が良さそうに見えました」

春香「それって、みなさんは仲間って事じゃないんですか?」

ルビカンテ「………」

春香「仲間を、守りたい、一緒にいたいって思える事は、とても素敵な事だと思うんです!」

春香「それに、仲間がいれば……苦しくたって、辛くたって……」

春香「どんな事だって乗り越えられるんです!」

春香「律子さんが言いたかったのは、そういう事なんじゃないかなー……?」

春香「……なーんて、大切な人を守れてない私が言えるセリフじゃないんですけどね……あはは」

ルビカンテ「………」



81: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:32:57.50 ID:/P07CWm0O

春香「………って、そうだ!私、千早ちゃんのところに行かなきゃ!」



……ドゴオォォォォォン!




春香「ひゃっ……!」ヨロッ

春香「な、何……!?」キョロキョロ

ルビカンテ「何の音だ?」

スカルミリョーネ「……う、上の階から聞こえ…た……?」

カイナッツォ「ふん!大方、あの魔物共がクリスタルを使ったんだろう」

春香「クリスタル……!」



…ビュオオ!



バルバリシア「……その通りよ!」



ルビカンテ「バルバリシア!……お前、今までどこに……」

バルバリシア「話は後よ!大変なの!『あれ』はさすがにヤバいわ……!」

バルバリシア「……ん?」チラ



春香「あっ、どうも……」ペコリ



バルバリシア「……へぇ。あなた、チハヤを助けに来たのね?」

春香「は、はい!」

バルバリシア「ミキは………いないのね」シュン

春香「はい、ごめんなさい」

春香(なんか、すっごい残念そう……)




82: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:39:43.99 ID:/P07CWm0O

バルバリシア「うーん……」

バルバリシア「仕方ない、あなたで我慢するわ」

春香「私?え?我慢って……?」

バルバリシア「……ルビカンテ。この娘を連れて行くわ。緊急事態なの。文句は言わせないわよ?」

ルビカンテ「……お前の事だ。何か考えがあるのだろう?文句は言わん。そのかわり、何が起きているのか簡潔に話せ」

バルバリシア「『奴ら』がクリスタルでこのバブイルに『巨人』とやらを召喚したみたい」

バルバリシア「どうやら、『それ』で人間を滅ぼすつもりのようね」

春香「!」

バルバリシア「そうなったら、今のリツコ様は『人間側』につく」

バルバリシア「あなたもそうでしょう?」

春香「それは……もちろんです!」

バルバリシア「………後は、言わなくても分かるわね?」チラ

ルビカンテ「………わかった。好きにしろ」

ルビカンテ「オレ達も、後から行く」

カイナッツォ「ルビカンテ。まさか、私を妙な事に巻き込むつもりじゃあるまいな?」

スカルミリョーネ「……に、人間に、味方す…る……?」



ルビカンテ(あんな魔物共にリツコ様は倒させん)

ルビカンテ(オレがリツコ様に……その仲間達に勝つまでは!)



バルバリシア「……さ、行くわよ。えーと……」

春香「あ……春香です!私、春香っていいます!」

バルバリシア「……ハルカ。時間が惜しいわ。『飛ばす』わよっ!」

春香「飛ばすって……?」


フワッ…


春香「わわっ!う、浮いた!?」


ビュオオオ!



春香「ぅわああああああああぁぁぁぁぁ…………」



ビューーーーーン!





83: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:43:22.34 ID:/P07CWm0O

ー バブイルの塔 B13F ー


やよい「……ねえ伊織ちゃん。春香さんはどっちに行ったのかなぁ?」キョロキョロ

伊織「そんなの簡単よ」

伊織「あそこを見なさい、やよい」スッ

やよい「へ?」



やよい「………あ!なんか、赤くなってる?」

伊織「あれは多分………春香の血よ」

やよい「ええっ!?」

伊織「……無茶をしたんでしょうね。傷口が開いたんだわ、きっと」

やよい「春香さん……!」

やよい「は、早く追いかけなきゃ!」

伊織「そうね。………行くわよ、美希」

美希「……zzz」

伊織「ちょっと!なんでまた寝てんのよ!起きなさいよっ!」ユサユサ

美希「……zzz」



やよい「美希さん、起きてくださいっ!」スッ



ジリリリリリリリリリ!



美希「………ん……」パチッ

美希「………」ムクッ

美希「んん〜……寝起きサイアクなの〜……」グデー

伊織「ほら、ちゃんと立って!」グイッ

美希「………あふぅ」ノソノソ




84: ◆bjtPFp8neU 2015/03/03(火) 23:48:15.75 ID:/P07CWm0O

美希「デコちゃんもやよいも、よく眠くならないね?いつもならもうとっくにお休みの時間だよ?」

やよい「あ、そーいえばもうそんな時間なんですねー」

伊織「ずっと太陽を見てなかったから、気づかなかったわ」

伊織「あんた、よく気づいたわね」

美希「ミキの腹時計ならぬ睡眠時計を甘く見ないでほしいの」

やよい「わー、それってなんだか便利そうかもー!」

伊織「いつも寝てる時間に眠くなるってだけでしょ?誰でもそうだと思うけど」



伊織「……とにかく!先を急ぐわよ!」

伊織「あのバカは、ほっとくととんでもない無茶をしかねないんだから」

やよい「春香さん。千早さん。待ってくださいねっ!」

美希「千早さんは心配だけど、春香の事は心配しなくてもヘーキだって思うな……」


スタスタ…




美希「……ねえ、ところでさ」

美希「その目覚まし時計、これからずっと持って歩くの?」

やよい「はい!ミキさんを起こすのに便利ですから!」

伊織「にひひっ♪あんたにはいい薬じゃないっ」

美希「う〜……とんだ睡眠ボーガイなの……」ガックリ




90: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 20:53:39.21 ID:SH8Xh/CrO

ー 地上世界 魔導船内 ー


律子「……なんとか乗り込めたはいいけど……」チラ


ボロッ…


律子「酷い有様ね……」

律子「こんなんで、本当に飛べるのかしら……」



貴音「………」キョロキョロ



律子「……貴音?どうかしたの?」

貴音「くりすたるを探しているのですが……」キョロキョロ

貴音「………おや、あんなところに」

スタスタ…



貴音「……割れてしまっていますね」スッ

律子「クリスタル?ひょっとして、この船の動力って……」

貴音「ええ。くりすたるに祈る事で動いていたのですが……」

律子「大丈夫かしら、こんなに割れちゃって。ひょっとして動かないんじゃ……?」

貴音「律子嬢。今は、出来る出来ないは二の次です」

貴音「わたくし達は、この船で月へ行かなくてはならないのですから」

律子「そうね。………じゃあ、やってみましょうか」



…ドオォォォォン…



グラッ…



律子「きゃっ!」ヨロッ

貴音「……律子嬢!」ガシッ

律子「あ、ありがと。……なんか、すごい音がしたわねぇ」

貴音「ええ……」

貴音(何やら、邪悪なえねるぎぃが……)

貴音「嫌な予感がします。早くここを離れた方が良いでしょう」

律子「ええと、クリスタルに祈ればいいのよね?」

貴音「ええ。……さあ、いきますよ?」





91: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 20:57:12.84 ID:SH8Xh/CrO

貴音「………」

律子「………」

貴音「………」

律子「………」

貴音「………」



律子「……………ねえ」

貴音「………」

律子「動かないわよ?いつまで祈ればいいの?」

貴音「律子嬢。こういった事は、辛抱が必要なのです。焦っては……」



ドオォォォォン!



ズズズ…



律子「ちょ、ちょっと!この船、傾いてない!?」

貴音「……その様ですね。一体何が……?」




響「貴音ーーー!!律子ーーー!!ヤバいぞーーーーっ!!」




律子「響の声?どうかしたのかしら?」

スタスタ…



ガタッ



巨人「………」



律子「な………!」

律子「何よあのデッカいのはっ!?」

貴音「………巨人………!?」



貴音「まさか、あれは……!」

貴音「国を滅ぼし、町を滅ぼし……地球を『めちゃくちゃ』にする最終段階、という事なのでは……?」

貴音「ならば、あの巨人は恐らく……」



貴音「律子嬢。早急にここを飛び立ちましょう!」

貴音「あの『とろいあ』という国が、危険です!」

律子「え?」



92: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:00:17.64 ID:SH8Xh/CrO

律子「と、飛ぶって言ったって、さっきからちっとも動かないじゃない!」

貴音「落ち着いてください。心を落ち着け、強き想いをぶつけるのです」

律子「わ、わかってるけど……!」




巨人『……人間共よ。その歴史に幕を閉じる時です!』

巨人『……蝿が二匹いますね……。まずは、あなた達から沈めてあげましょう!』




律子「ちょ、ちょっと!巨人がなんか喋ってるわよ!?」

貴音「いえ。恐らくあれは、中に魔物が……」




巨人『消えなさい!』ピカッ




律子「あああ……!なんか光ってる!」

貴音「………!」グッ




ズドオォォォォォォン!!




律子「きゃあああぁぁぁぁぁ!!」




ガラガラッ…



ヒューーー…



…ドオオォォォォォォン…




巨人『ふふ。魔導船は沈んだようです。本物そっくりに造った甲斐がありました。このレーザー光線はなかなかの威力ですよ』

巨人『……さて、あと一匹……』




93: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:05:15.27 ID:SH8Xh/CrO

ー 飛空艇エンタープライズ ー


響「ど、ど、どうしよう!?あのでっかいロボに魔導船が撃ち落とされちゃったぞ……!」オロオロ

響「貴音ぇぇっ!!律子ぉぉっ!!」

響「おーーーーい!2人ともぉーーーー!返事してよぉーーーーーっ!!」




巨人『安心なさい。すぐにお前も後を追う事になるのですから』




響「うぅぅ……グスッ……だがねぇ……りづごぉ……!」ポロポロ



ーーーヒビキちゃん……。



響「ヒック…………え?エン太郎?ど、どうかしたのか?」ゴシゴシ



ーーー『ボク』には武器が付いてる。それを使ってよ。



響「えっ?エン太郎、武器が付いてたのか?」



ーーーうん。ヒビキちゃんや、みんなを守る為の武器。

ーーー大丈夫。ヒビキちゃんなら、きっと使いこなせるよ。



響「わ、わかった!とにかく、あの巨大ロボを粉々にしてやるさー!」

響「その後に……貴音と律子を探さないと……!」ウルッ

響「ううっ……ぐっ……!」ポロポロ



ーーー泣かないで、ヒビキちゃん。きっと2人は無事だから。

ーーーだから、ちゃんと前を向いて?

ーーー君に涙は似合わない。ヒビキちゃんはやっぱり、笑顔でなきゃ。



響「エン太郎……」

響(そうだ……。泣くのは後でいくらでもできるんだ)

響(今は、エン太郎の言う通り、前を見なきゃ!)

響(大丈夫。あの2人がやられるなんて、そんな事あるワケないぞ!)



響「エン太郎、ありがとねっ!自分、ちょっと元気出たぞ!」ニコッ

響「よぉーしっ!やるぞーーっ!」




94: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:13:18.30 ID:SH8Xh/CrO

巨人『喰らいなさい!巨人のレーザー光線を!』ピカッ



ズドオォォォォン!




ブオォォォォォォン…



響「ふふん!そんなレーザー、遅すぎてアクビが出ちゃうさー!」



巨人『ちっ!避けましたか』



響「今度はこっちの番だからな!」ビシッ

響「行っくぞぉーーー!」

響「ナンクル砲っ!」グイッ



ヒュー……ドゴオォンッ!



響「……やったぁっ!当たったぞー!」



巨人『ふん。この程度の攻撃、通用すると思っているのですか?』



響「まだまだ〜!ハイサイビームっ!」グッ



ビュィィィィィィィン!



ドゴオォンッ!




巨人『く、ちょこまかと……!』




響「よーし!次、ガナハボム行くぞー!」



ズシィィン…!


巨人2『ハクさん、手こずってるの?』

巨人『プレイグ……。大丈夫です。こんなちっぽけな船など、一握りで……』




響「な、なんだ!?巨大ロボが、増えた……!?」



95: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:21:14.75 ID:SH8Xh/CrO

巨人2『悪いけど、君には死んでもらうよっ』ピカッ



ズドォォォォン!




グラッ…


響「うわあああっ!」

響「え、エン太郎、大丈夫か?」



ーーーこのくらい大丈夫。ヒビキちゃんがボクを強化してくれたから。



響「良かったぁ……」



ーーーでも、ちょっとマズいね。多勢に無勢……これじゃあ勝ち目は薄いかも。



響「じゃあ、どうするのさー?」



ーーーここは、一旦引いた方がいいかもね。



響「そんなっ!逃げるなんて……!」



ーーーううん。逃げじゃない。これは戦略的撤退ってやつだよ。大丈夫、生きてさえいれば、反撃のチャンスはあるんだ。

ーーーさあ、行こう。ヒビキちゃん。



響「エン太郎……」

響「わ、わかったぞ……」グイッ



ビューーーン!




巨人2『あっ、逃げた!』

巨人『単なる馬鹿という訳ではなさそうですね。まあ、死ぬのが少し遅くなっただけですが』

巨人2『どうする?追いかけようか?』

巨人『ええ。ゆっくり時間をかけて、追い詰めるとしましょう』



ズシィィィン…! ズシィィィン!




96: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:25:56.03 ID:SH8Xh/CrO

ー トロイアの町 南側 ー



「ユキホ様ーー!」

「こっち向いてーー!」

「どうか我らに恵みの穴を!」

ワイワイガヤガヤ…




P「なんで雪歩はこんなに大人気なんだ?……雪歩、何かしたか?」

雪歩「わ、私にも、よくわからないんですぅ……」

P「……とにかくここを離れないと……!」

真美「兄ちゃん、人が多すぎてこれじゃ身動きとれないよ〜!」

亜美「よ〜っし!だったらここは亜美の魔法でドカーンと……」

P「おいおい、それはさすがにダメだろ」

真美「でも、このままじゃゆきぴょんのファンに押しつぶされちゃうっぽいよ〜」

P「くそ……どうする……!?」




「…………ストップ」


ピキーン!


…ピタ




雪歩「あ、あれ?み、みんな……止まっちゃいましたぁ……」

P「誰だ?いったい誰が……?」




「……さ、今の内じゃ。早くここを離れるが良かろう」




P「あ……あなたは……!」



亜美・真美「………長老っち〜!!」



長老「……久しぶりじゃな」

P「あ、ありがとうございます、助けていただいて……」

長老「話は後じゃ。今は人目のつかん場所へ移動するんじゃ」

P「はい!……みんな、行こう!」




97: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:30:09.38 ID:SH8Xh/CrO

ートロイアの町 パブ『迷宮』ー



マスター「……いやあ、ユキホちゃん久しぶりだね〜!またウチで働いてくれる気になったのかな?ユキホちゃんならいつでも大歓迎だよ〜!なんだったら、前の時より賃金アップしちゃうよ〜?」

雪歩「あ、あの、違うんですぅ……」

マスター「……おや?そっちの君、ユキホちゃんそっくりだねぇ!双子なのかな?双子でしかもこんなに可愛い店員がいたら、ウチはもっと賑わうだろうなぁ!どう?ウチで働いてみない?」

ユキコ「い、いえ、そうじゃなくて……」

マスター「双子と言えば……そっちの君達もそっくりだよね?さすがにまだウチで働けるような年齢じゃないだろうけどさ。でも、君達もユキホちゃんと同じくらい可愛いねぇ!」

亜美「な、何なのさ、このおっちゃん……マシンガン過ぎっしょ……」

マスター「君達は将来絶対に素敵な女性になるよ。うんうん。私の目に狂いはないよ!……そうだなぁ、あと5年したらウチに働きに来なよ!君達ならすぐにウチのNO.1になれる!」

真美「うあうあ〜!ウザいよ〜!」

P(よく喋るなぁ……)



長老「……これ。娘達が嫌がっているじゃろう?ほどほどにしておけ」

長老「それに、ワシらは客じゃ」

マスター「あ…………な〜んだ。そうだったんですか〜」

マスター「でも、君達ならウチはいつでも歓迎だから、働きたくなったら言ってね?」

マスター「それでは、ごゆっくり〜」

スタスタ…



長老「…………まったく!」

長老「これだから都会は……」プンスカ

亜美「う〜……やっと嵐が去ったよ〜……」

真美「長老っち、あんがとね〜」

長老「ワシはああいう軽薄な輩は嫌いなんじゃよ」

長老「……ところで、そちらの娘さん方は……?」

亜美「ああ、ゆきぴょんにゆきぴょん2。亜美達のトモダチだよ、長老っち」

真美「真美達といっしょで双子なんだよ〜」

長老「ほう……?」

雪歩「ち、違うよ真美ちゃん……」

ユキコ「でも、似たようなものかもしれないですぅ」

長老「お主ら、どこかで見たような気がせんでもないが……まあいいか」




98: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:34:56.96 ID:SH8Xh/CrO

…バタン



真「……ただいま戻りましたー!」

あずさ「すみません、ご迷惑をおかけしてしまって……」



亜美「お〜、さっすがマコちん!」

真美「頼りになりますな〜!」

雪歩「あずささん。良かった……」

P「お帰り。真、あずささん」



P「真、ありがとな」

真「いえ。お礼なら、この2人に……」



店主「いや、オレ達は何もしてないって」

ものまね士「そうですよ……」



亜美「あ!こないだゆきぴょん達にイジメられてたおっちゃん!」

真美「と、そのカノジョ!」



店主「い、イジメられてたって……まあ、似たようなもんか」

ものまね士(カノジョ……///)



真「店主さんとものまね士さんが、あずささんを保護してくれていたんです」

雪歩「そうだったんだね……」

真「2人が捕まえてくれてなかったら、今頃あずささんはどこまで行ってたかわからないですし」



P・亜美・真美・雪歩(確かに……)



真「……それよりプロデューサー、大変なんですよ!」

P「……やっぱり、何かが起こっているのか?」




99: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:41:14.64 ID:SH8Xh/CrO

真「このお城以外の国は……魔物に滅ぼされちゃったみたいなんです!」



P「………えっ!?」

亜美「ま、マジ……!?」

真美「トンデモシナリオにもほどがあるっしょ……」

P「それは……本当なのか?真」



長老「……その娘の言っとる事は、真実じゃよ」

真「!」

P「長老……」

長老「ミシディアも、魔物の襲撃を受けて……」

P「そんな……!」



P(なんだ……?まるで知らないぞ、こんなストーリー)

P(音無さんがいろいろ手を回しているのか?)



亜美「………」

真美「………」

真「………」

雪歩「………」



あずさ「………悪い事ばかりじゃないと思いますよ?」



真「あずささん……?」

あずさ「私、迷子になってる時にね……」

あずさ「雪歩ちゃんの像が奉られているのを見かけたの」

雪歩「わ、私の……?」

亜美「ゾウ?」

真美「パオーン?」

P「いや、普通に考えて石像とか銅像とかだろ」

あずさ「はい。雪歩ちゃん、『女神』として、とっても凛々しい姿で立っていました」

雪歩「うぅ……なんで、私なんかが……?」

あずさ「あと、石碑を見て思ったんだけど……」

あずさ「雪歩ちゃん。あなたは、世界の人の希望みたいね」

雪歩「わ、私が……?」

あずさ「この国の人達はみんな、雪歩ちゃんの像に祈っていたわ」

亜美「あ〜、だからあんなにゆきぴょんに人が集まったんだね」



100: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:46:35.76 ID:SH8Xh/CrO

長老「……さて。ワシはそろそろ行かねばならん」ガタッ

真美「え?長老っち、どっか行っちゃうの?」

長老「国々の代表者を集めて会議が開かれるそうじゃ」

長老「ワシも、ミシディアの代表として呼ばれておるんじゃよ」

亜美「そっかぁ……せっかく会えたのにな〜」



店主「………」

店主「爺さん。オレも連れてってくれ!」

長老「……む?」

店主「オレの村……カイポも、魔物に潰されて……。生き残ったのは、オレしかいないんだ」

店主「死んじまったみんなの為にも、オレは村の代表として、その会議ってやつに出なきゃいけない気がするんだ」

ものまね士「店主さん……」

長老「そうか。そなたも……」

長老「……わかった。行こう」



長老「……という訳じゃ。ちょっと行って来る」

長老「すまん。そなたに話したい事があるのじゃが、戻ってからにしよう」

P「……はい、わかりました」



ガチャ…バタン



「……あっ、おい!この店にユキホ様がいるみたいだぞ?」

「よし、入ろうぜ!」

「オレ、ユキホ様に穴を掘ってもらうんだ!」

「ユキホ様!ユキホ様!ユキホ様!ウオオォォォォ!」

ザワザワ…



マスター「な、何名様ですか?」

マスター「あっ、ちょっと押さないで……」



真美「まずいよ兄ちゃん!もうバレちったみたい」

P「く……もう少し時間稼ぎできると思ったんだけど……」

P「相手は一般人だから、迂闊に手は出せないよな……」

雪歩「すみません、私のせいで……」

真「雪歩のせいじゃないよ!これも全部、魔物が悪いんだ」

あずさ「雪歩ちゃんの人気、すごいのね〜」

亜美「ど〜する、兄ちゃん?」

P「え、えーと………」

ユキコ「………」グッ



101: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:52:05.50 ID:SH8Xh/CrO

ユキコ「…………あ、あのっ!ここは私に任せてもらえませんかっ?」ガタッ

雪歩「ゆ、ユキコさん?」

真「ユキコ……?」

ユキコ「わ、私、ついて来たはいいけど、何の役にも立ってないし……」

ユキコ「でも、今なら私でも皆さんのお役に立てると思うんですっ!」

亜美「ど〜するのさ?」

ユキコ「私とユキホさんは、そっくりですよね?」

真美「え?まさか……」

ユキコ「私が、ユキホさんになって、注意を引きつけますぅ!」

雪歩「ユキコさん、そんなのダメだよ……!」

ユキコ「ううん。……お願い。ユキホさんならわかるでしょ?誰かの為になりたいっていう気持ち……」

雪歩「!」

真「………」

真「雪歩……ここはユキコに任せよう」

雪歩「ま、真ちゃん……?」

真「プロデューサー、それでいいですか?」

P「あ、ああ……その子がいいならいいんだけど……」

雪歩「ユキコさん、気をつけてね?」

ユキコ「う、うん!」ガクガク

真「ユキコ……」ダキッ

ユキコ「ま、マコトさんっ……!」

真「君には、結局何もしてあげられなかったね」ナデナデ

ユキコ「そ、そんな事ないです……!私……とっても楽しかったです!」ニコッ

真「ユキコ……」



ユキコ「じゃあ、私行きます!」

ユキコ「皆さんも、どうかご無事でっ!」


…ガチャ



「おおお!ユキホ様だ……!」

「ユキホ様!ユキホ様!ユキホ様!」

「オオオォォォォォォォォ!!」




真「……プロデューサー。今のウチに!」

P「よし、みんな行こう!」


タタタタ…



マスター「………あ、あれ?お会計は?」


102: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 21:56:23.57 ID:SH8Xh/CrO

ー 飛空艇 フタミ号 ー


真「プロデューサー、これからどうしますか?」

P「………」

真美「ピヨちゃん、ちょっとやりすぎっしょ……」

亜美「まさかこう来るとは思わなんだ」

亜美「こりゃ〜、この先もあばらの道ってカンジですな〜……」

P「イバラ、な」



P「………もしかしたら、音無さんは焦っているのかもな」

雪歩「どういう事ですか?」

P「本来、ゲームだと、味方キャラは次々に犠牲になっていって、ここまでストーリーを進めると5人に絞られているはずなんだ」

P「だが、今の俺達は、誰1人欠けていない」

亜美「そりゃ〜、兄ちゃんが亜美達を助けてくれたもんね」

P「ああ。ゲームではあり得ない事になってる」

P(そう考えると、ここまでストーリーが違うものになったのも、『俺』というイレギュラーな存在が原因なのかもしれないな)



P「音無さんの立場で考えてみてくれ」

真美「ピヨちゃんの立場で……?」

真美「う〜ん……真美がピヨちゃんだったら、『味方キャラが欠けてないなんて、ズルいっしょ〜!』って思うかな」

P「そう。味方キャラが多ければ多いほど、こちらの戦力が大きいって事だからな」

真「あっ!……もしかして小鳥さんは、ボク達に対抗してこんなひどい事をしたって事ですか?」

P「その辺は、俺も断言はできない」

P「あの人の性格なら、こういう事は率先して楽しむだろうし」

P「度が過ぎてこうなった、とも考えられる」

亜美「うん。ピヨちゃんならあり得るね」



P「俺が言いたいのは、みんなには充分気をつけてもらいたい、って事なんだ」

P「相手は、このゲームを熟知している音無さんだ」

P「何か、とんでもない事をしてきそうな気がするんだよ」



103: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 22:05:03.26 ID:SH8Xh/CrO

あずさ「あの〜……」



P「あずささん?どうしたんですか?」

あずさ「プロデューサーさんが言ってる事が、大切な事なんだろうな〜っていうのはわかるんですけど……」

あずさ「一つだけ、訂正してもらえませんか?」ニコッ

P「えっ……?」ゾクッ

P(な、なんだろう?俺、あずささんを怒らせるような事、言ったかな?)



あずさ「プロデューサーさんはさっき、『相手はこのゲームを熟知している音無さんだ』って言いましたよね?」

P「は、はい……」

あずさ「『相手』ではなくて、『仲間』の間違いじゃありませんか?」

P「あ………」

あずさ「小鳥さんは、敵ではないですよ?」

真美「あずさお姉ちゃん……」

あずさ「ただ、みんなと遊びたかった……きっと、それだけなんだと思うんです」

P「………」



104: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 22:09:33.33 ID:SH8Xh/CrO

雪歩「……あ、あの、私もあずささんと同じ気持ちですぅ」



真「雪歩……でも、小鳥さんはたくさんひどい事してきたんだよ?」

雪歩「うん。真ちゃん達は、きっと大変だったよね……」

雪歩「わ、私は、小鳥さんに直接ひどい事された訳じゃないから、こんな事言える立場じゃないかもだけど……」

雪歩「この世界に来て、私、最初はとっても恐くてさみしかったんだ……」

雪歩「ひとりぼっちだし、周りは知らない人ばかりだし、男の人はたくさんいるし……」

雪歩「だから、真ちゃん達に会えた時は、すごく安心したのを覚えてる」

雪歩「小鳥さんも……」

雪歩「こんな訳のわからない世界でずっとひとりぼっちで、とってもさみしい思いをしているんじゃないかな、って思うんだ……」

亜美「そっか……」

真美「そだね……」

真「………」



あずさ「……プロデューサーさん?」

P「……そうですね。また俺は、間違えるところでした」

P「試練の山で、あずささんに言われたばかりなのに……」

あずさ「いえ……。わかっていただければ、それでいいんですよ?」ニコッ

P「ありがとうございます、あずささん」

P「雪歩も、ありがとな。大事な事に気づかせてくれて」

雪歩「そ、そんな……わ、私なんて全然……」



P「とにかく、春香達と合流して…………ん?」チラ



…ビューーーン!



P「あれは……!」



105: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 22:32:14.13 ID:SH8Xh/CrO

ー バブイルの塔 B6F ー


スタスタ…

伊織「……ったく、相変わらず辛気臭いところねぇ……」

やよい「え?そうかなぁ?別に変なにおいなんてしないけど……」

伊織「……あのね、やよい。そういう『臭い』じゃなくて……」

やよい「??」

美希「………あふぅ」



美希「………ん?」ピクッ

美希「……ねえ、2人とも。あの扉の向こうに何かいるみたいだよ?」

やよい「何か?誰か、じゃなくてですか?」

美希「うん。何か」

伊織「魔物……って事ね」

伊織「上等じゃない。返り討ちにしてあげるわっ」



ガチャ…




ルビカンテ「………今日は客の多い日だ」チラ



伊織「あーーっ!あんたは、赤い悪魔っ!」ビシッ

やよい「うっうー!夜分おそくにおじゃましまーす!」

美希「……あっ、あの人……確か、シアちゃんの友達のゾンビの人!」

美希「久しぶりなのー!」



スカルミリョーネ「……ひ、久しぶ…り…」

カイナッツォ「ちっ!また人間か……」



ルビカンテ「何の用だ………と、言いたいところだが」

ルビカンテ「お前達の目的は、大体想像がつく」

ルビカンテ「お前達は、ハルカという娘を探しているのだろう?」

伊織「!」

伊織「……へぇ。あんたにしては察しがいいじゃない?」

伊織「わかってるんなら、さっさと教えなさい。春香はどこにいるの?」

ルビカンテ「………」



106: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 22:36:03.75 ID:SH8Xh/CrO

カイナッツォ「なんて口の聞き方だ!」

カイナッツォ「貴様には、四天王の恐ろしさを教えてやる必要がある様だな……!」

伊織「ふん!ノロマな亀の分際でこのスーパー忍者アイドル伊織ちゃんに楯突く気なのね」

伊織「いいわ。かかって来なさいっ!」

やよい「伊織ちゃん。そんな言い方、カメさんがかわいそうだよぉ……」

美希「ミキ、こーんなおっきなカメは初めて見たの」



カイナッツォ「ぐぬぬ……!なんて失礼な奴らだ!私の津波で……モゴッ!」

スカルミリョーネ「……は、話が先に進まな…い……」



ルビカンテ「………おい、話を進めていいか?」

伊織「あ………そ、そうだったわね」

やよい「どーもおさわがせしましたー」ペコリ

伊織「で?春香はどこにいるのよ?」

ルビカンテ「……その前に、お前達に聞きたい事がある」

伊織「……何よ?」



107: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 23:02:04.63 ID:p9bJO57SO

ルビカンテ「ハルカ、という娘は、お前達の何だ?」



伊織「何って、そんなの決まってるじゃない」

伊織「仲間よ。……とても、大切な」

美希「ミキにとっては、ライバルってカンジかなー?」

やよい「春香さんは、わたしたちのリーダーなんです!」

ルビカンテ「………」



ルビカンテ「ならば、その娘の為に、自分の命を張れるか?」



伊織「………」

やよい「?……あの、よくわからないですけど、わたしがんばりますっ!」

美希「うーん……」

美希(春香が死ぬ→ハニーが悲しむ→ハニーが悲しいとミキもすっごく悲しい……)

美希(それだけはダメなの!)

美希(ま、春香が死ぬなんてあり得ないけど……)

美希「ミキも、命かけてもいーよ?」

ルビカンテ「………そうか」

ルビカンテ「お前はどうだ、イオリ?」



伊織「……………愚問ね」

伊織「いい?仲間っていうのは、お互いがお互いを大切に想っているものなのよ」

伊織「自分が死んだら、自分の事を大切に想ってくれている人はどうなるの?とても悲しむでしょうね」

ルビカンテ「………」

伊織「だから、私は……簡単に『命をかける』なんて言わない。いえ、言える訳ないわ」

やよい「伊織ちゃん……」

美希「さっすがデコちゃん!模範回答ってカンジ?」

伊織「別に、ただ私の考えを言っただけよ」



ルビカンテ「………」





108: ◆bjtPFp8neU 2015/03/15(日) 23:05:53.66 ID:p9bJO57SO

伊織「……で、そんな事聞いてどうするのよ?……まさか、魔物のあんたもついに友情に目覚めたとか?」

ルビカンテ「………まあ、そんなところだ」

伊織「えっ……?」

ルビカンテ「あの娘なら、この塔の1階を目指して登ってるだろう」

ルビカンテ「……バルバリシアと共に」

美希「!」

美希「ねえ!シアちゃんがいるの!?」ガシッ

ルビカンテ「あ、ああ……なんだ、お前、バルバリシアと顔見知りだったのか?」



美希「そっか……シアちゃん、生きてたんだ……!」

美希「ねえ、デコちゃん、やよい。早く上に行こうよ!」

美希「ミキ、シアちゃんに会いたいの!」

伊織「あんたねぇ……」

伊織「ま、いいわ」

伊織「悪いけど、私達はもう行くわ。教えてくれてありがと。じゃあね」クルッ

ルビカンテ「………待て」

伊織「何よ?まだなんかあるわけ?」



ルビカンテ「オレ達も共に行こう」



伊織「……………はぁ?」



117: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:31:25.17 ID:0IpIr3AGO

ー 地上世界 トロイア城 会議室 ー



アン「……ファブール王!ご無沙汰しておりますわ。ようこそおいでくださいました!」

ファブール王「久しぶりじゃの、アン殿。あの幼子が、ようここまで立派に成長なさった……。ご両親も、さぞかし喜んでいる事じゃろう」

アン「まあ、お恥ずかしいですわ。よしてください、昔の事など……」

ファブール王「しかし、よもやこんな形で再会する事になるとはな」

アン「ファブール王も、お変わり無い様で何よりです」



アン「どうぞ。こちらにおかけになってください」サッ

ファブール王「……かたじけない」



アン「もうじき、地底の王とミシディアの長老殿もいらっしゃると思いますわ」

アン「今しばらくお待ちを」

ファブール王「うむ」


118: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:35:38.93 ID:0IpIr3AGO

ファブール王「………アン殿」

ファブール王「今回の事を、どの様にお考えかな?」

アン「………」

アン「とても……心を痛めております……」

アン「まさか、この様な事が起きるなんて……」

アン「ですが、決して希望が潰えた訳ではありません!我が国には、万夫不当の英雄がおります!」

アン「彼女さえいれば、魔物など恐れる事はありません」

アン「きっと、私達を導いてくれる事と思いますわ!」

ファブール王「うむ、聞いておるよ。強さの中にも優しさを湛えた、まるで聖母の様な少女だと……」

ファブール王「貴公の国は、その少女らに救われたそうだな」

ファブール王「若者が活躍するのは良い事じゃ」

ファブール王「これも時流というものなのか……。ワシの様な老兵は、そろそろ前線を退く時なのかもしれんな……」

アン「何をおっしゃるのですか!ファブールにこの人あり、と謳われたあなたがいたからこそ、この世界はここまで繁栄してこれたのです!」

ファブール王「それは言い過ぎじゃ。ワシは、自分の国すら守れなんだ」

ファブール王「守るべきを守れずして、何が王じゃ……」

アン「ファブール王……」

ファブール王「いや、すまぬ。年をとると、どうも不平が口をついていかん……」



アン(……やはり、王は相当自信を無くされている)

アン(これで、一角は崩れたも同然……)

アン(あとは、地底の王と長老様の出方次第ね……)


119: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:38:29.40 ID:0IpIr3AGO

ー トロイア城 待合室1 ー



長老「ズズッ………」

店主「………」ソワソワ

ものまね士「………」ソワソワ




長老「ふぅ………」

店主「………」ソワソワ

ものまね士「………」ソワソワ




長老「都会の者も、なかなか美味い茶を淹れるもんじゃのう………」

長老「少し見直したわ」

店主「………」ソワソワ

ものまね士「………」ソワソワ




長老「ズズッ………」

店主「………」ソワソワ

ものまね士「………」ソワソワ




長老「………」コトッ

店主「………」ソワソワ

ものまね士「………」ソワソワ





長老「………」





長老「………ええい!少しは落ち着かんかっ!」

店主「うわっ!」ビクッ

ものまね士「ひぃ!」ビクッ


120: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:41:37.12 ID:0IpIr3AGO

長老「まったく、いい大人が情けない……!」

店主「い、いやあ、オレ、こういう所は初めてでさぁ……」

ものまね士「そうそう、なんか居心地悪いって言いますか……」

長老「連れてけと言ったのはお主じゃろうが!」

店主「そ、そうだけどさ……」

店主「オレみたいな庶民が、世界の行く末を決める会議なんかに出ていいのか、って、今になって恐くなってきちまってさ……」




店主「……っていうかものまね士」

店主「あんたはもともとお城勤めだったはずだろ?」

ものまね士「はい、そうなんですけど……」

店主「緊張してんのか?」

ものまね士「店主さんが緊張してたので、なんかつられちゃって………あはは」

店主「なんじゃそりゃ……」

長老「はぁ……」



長老「……ま、気持ちはわからんでもない」

長老「じゃが、お主はカイポの者達を代表して来たのじゃろ?」

長老「男なら、覚悟を決めるんじゃ!」

店主「そ、そうだよな!うん」

店主「………よし!」グッ


121: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:44:43.65 ID:0IpIr3AGO

店主「ごめんな、爺さん。無理言ってついて来た上に、迷惑かけちまって」

長老「まあ、気にするな。お主らとワシは、あながち繋がりがない訳でもないようじゃからの」

店主「うんうん。爺さんがハルカ達の知り合いだったなんて、ビックリしたよ!」

ものまね士「やっぱり、おじいさんもハルカ様達に力を貸したんですか?」

長老「……こんな老いぼれなぞ、大して力にはなれなかったが、な」

店主「そんな事ないさ!ハルカ達は、きっと爺さんに感謝してると思うぞ?あいつら、人の好意は絶対無にしないもんな!」

ものまね士「ええ!ハルカ様達は、とっても優しくてステキな方達ですもの」

長老「……ずいぶん肩入れしとるんじゃのう?」

店主「ああ、まあ……ハルカ達とはいろいろあったからなー」

ものまね士「不思議な人達ですよねぇ……」

店主「なんていうか、あいつらと一緒にいると笑いが絶えないっていうか……」

店主「人を笑顔にする天才なんだよなー」

ものまね士「また、お会いしたいなぁ……」

長老「ふむ……」ズズッ

長老(暗黒騎士ハルカ………)

長老(……いや、今は聖騎士じゃったな。やはり、あの時感じた通りじゃ)

長老(人を惹きつける、不思議な雰囲気を纏っておる)

長老(現に、ここにも惹きつけられた者達が……)



長老(……ま、何を隠そう、このワシもそのひとりなんじゃが)


122: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:47:17.67 ID:0IpIr3AGO

長老「……ところで気になったんじゃが、そなたも会議に出席するのか?」

ものまね士「………へっ?」

店主「あ、そうだよ。ものまね士、あんたはどうするんだ?」

店主「バロン代表として出るのか?」

ものまね士「ち、違います……」

店主「そっか。じゃあ留守番だな」

ものまね士「そ、それも、違いますっ……!」

店主「は?じゃあ、いったいどうするつもりなんだ?」

ものまね士「そ、それは……えっと……」

ものまね士「………」






ものまね士「て、店主さんの妻として、会議に出席するつもりですっ!!」






店主「なーんだ、そっか。オレの妻として………」

店主「って、えええぇぇええっ!!?」ガタッ

店主「なななな、何言ってんだよあんた!?」

ものまね士「に、二度も同じ事を言わせないでくださいよっ!た、ただでさえ、すっっっごい恥ずかしいんですからっ……///」カァァ

長老(若いのう……)


123: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:49:39.56 ID:0IpIr3AGO

店主「だ、だって、オレの妻って………そんな、いきなり言われても……」

ものまね士「あ、あのっ……て、店主さんは、いやですか?わ、私なんかが、つ、妻、だなんて……///」モジモジ

店主「う……」



長老「……おい。女に恥をかかせる気か?」ヒソヒソ

店主「じ、爺さん……!?」ヒソヒソ

店主「いや、えっと、その………」ヒソヒソ

長老「据え膳食わぬは……という言葉もある……」ヒソヒソ

店主「………」



ものまね士「……グスッ!す、すみませんっ……私、こんな事言うつもりじゃっ……」ウルッ

ものまね士「め、迷惑、ですよね……ひぐっ……!」ポロポロ



店主「あー、えーっと……」


124: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:52:37.28 ID:0IpIr3AGO

店主「……そ、そういえば、ちょうど探してたんだよなー」




店主「白魔道士のクセにケアルラとエスナしか使えないし、やたら腕っ節が強くて、ヤキモチ焼きで、ドジで、世間知らずで……」



ものまね士「………っ!?」ポロポロ



店主「……真面目で、何事にも一生懸命で、思いやりがあって……」

店主「『ものまね士』なんて変なアダ名を付けられた、薪割りが得意な……」

店主「そんなヤツが女房になってくれたら、人生楽しいだろうなー」チラ



ものまね士「うっ………ひぐっ!」ウルッ

ものまね士「〜〜〜っ!」ポロポロ

ものまね士「でんじゅざぁぁぁぁんっ!」ダキッ

店主「は、はは……」ナデナデ

店主「……ったく、このタイミングで言うかよ、そんな大切な事……」

ものまね士「だっでぇ〜!はなれだぐながっだんだもんっ……!」ギュッ

店主「あ〜あ……」



店主(ホントは、オレから言おうと思ってたのになぁ……)



125: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:54:54.20 ID:0IpIr3AGO

長老「ふふふ、めでたいのう!」ニコッ

店主「爺さん……」

長老「安心せい。お主らの契は、ワシがしかと見届けた!これで晴れてお主らは夫婦となったのじゃ!」

ものまね士「うわああぁぁぁん!!」ポロポロ

店主「な、なあ、それなんだけどさ。もう一回やり直せないか?」

長老「なぜじゃ?まさか不服でもあるのか?」

店主「いやあ、女にプロポーズさせるなんてカッコつかないなぁって……」

長老「小さい事を気にするでない。プロポーズなぞ、ただのきっかけに過ぎんのじゃから」

長老「大切なのは、これから紡ぐ2人の時間じゃよ」

店主「でも、なんだかなぁ……」

ものまね士「うっく……うふふ〜」グスッ

店主「あんたは、泣くのか笑うのかどっちかにしろよ……」

ものまね士「だって……グスッ……嬉しいんっ……ですもん……!」ニコッ

長老「なかなかお似合いじゃぞ?」

店主「あはは、ありがとな」


126: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 21:58:13.38 ID:0IpIr3AGO

ものまね士「えへへ〜」ギュッ

店主「お、おい、ちょっと離れろって……」

長老「お熱いのう」

店主「ひ、冷やかすなよ爺さん〜!」

長老「いや、すまんすまん」



長老「……じゃが、本当に幸せにな」

長老「こんな世界じゃ。お主らの幸せが周りに少しでも伝わって行けばいいと思ってな」

店主「爺さん……」

ものまね士「もちろん、この幸せはたくさんの人達におすそ分けしたいと思いますよ!」ニコッ

店主「うん……そうだな」



長老「……しかし、迎えが遅いのう」

長老「いったいどれだけ待てば良いのか」



…ガチャ




127: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:01:25.18 ID:0IpIr3AGO

トロア「………大変お待たせしました。会合の席へどうぞ」



長老「ふむ、ようやくか」ガタッ

店主「や、やべ、緊張してきた……」ドキドキ

ものまね士「もう、しっかりしてくださいよ〜」



トロア「失礼ですが、従者の方はこれより先はご遠慮願えますか?」

店主「あ、いや……」

ものまね士「ええと……」

長老「ああ、紹介しとらんかったな」

長老「こちらの御仁らは、砂漠の村カイポの代表と、その奥方なんじゃ」

トロア「なんと、そうでしたか!」

トロア「ご無礼をお詫び致します」ペコリ

店主「い、いや、いいって!頭上げてくれよ!」

トロア「会合にご参加いただける事、心からお礼申し上げます」



トロア「どうか、姉上を止めてください……」ボソッ



店主「………えっ?」

長老「………?」



トロア「こちらです。ご案内致します」スッ


128: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:04:51.66 ID:0IpIr3AGO

ー トロイア城 待合室2 ー



老婆「ふぅむ………」ジロジロ



ルカ「あ、あの、お祖母様?そんなに見つめられると、恥ずかしいのですが……」

老婆「……不思議だねぇ。見れば見る程『あの娘』にそっくりだ。本当にお前の娘なのかい?」

ジオット「ええ。紛れもなく私の血を引いています」

ジオット「……まあ、これの母親は、すでに他界していますが」

老婆「………」

ルカ「……お祖母様、『あの娘』とは?」

老婆「……知り合いに、リボンの似合う娘がいてね。あんまりお前さんにそっくりだったから、驚いたんだよ」

ルカ「リボンって、まさか……」

ルカ「ハルカさんの事ではないでしょうか?」

老婆「ほう、知っているのかい?」

ルカ「ええ。ハルカさんとは……お友達、ですから」ニコッ

ジオット「ハルカ……そうか。バブイルの巨大砲を破壊してくれた娘の事か」

老婆「何やら面白そうな事があったみたいだね。あたしにも話しな」

ジオット「実は……」




129: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:09:04.26 ID:0IpIr3AGO

老婆「……なるほど。あの娘達、地底でも大活躍だったんだねぇ」

老婆「ふふふ、さすがあたしが見込んだ娘達だ!」

ジオット「母上が特定の人間に肩入れするなど、珍しい事もありますね」

老婆「あの娘達はね、そこらの娘とは違うんだよ」

老婆「魔物どもに壊されちまったこの世界を救う事ができる唯一の希望だと、あたしは考えてる」

ルカ「希望……」

ジオット「確かに、不思議な雰囲気を持った娘達でした」



ジオット「……しかし、まさか地上がこれほど魔物どもに侵略されていようとは……」

老婆「………」

ルカ「お父様。今こそ、地上と地底の民が力を合わせる時なのでは?」

ジオット「うむ。そうかもしれんな。母なる大地の為、我々ドワーフも戦おう!」



老婆(力を合わせる、か……)

老婆(果たして、そううまく事が運ぶかねぇ……?)

老婆(こういう非常時には、決まって欲を出す輩が出てくるもんだ)



…ガチャ



ドゥ「……大変お待たせしました。会合の席へご案内致します」

ドゥ「どうぞこちらへ」スッ



ジオット「よし。行くぞ、ルカ」

ルカ「はい、お父様」

ジオット「さ、母上も……」



老婆(……さて、何が起こるか……)



スタスタ…



130: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:16:29.98 ID:0IpIr3AGO

ー 飛空艇 エンタープライズ ー




響「プロデューサー!みんな……!」




亜美・真美「ひびきん!?」

P「響!なんでここに?春香や律子達と一緒にいるんじゃなかったのか?」

響「ううっ……!みんなぁ……。貴音と律子が……っ!」グスッ

あずさ「……とりあえず、落ち着きましょう。ね?」

雪歩「あの、響ちゃん。お茶、飲む?」スッ

響「うぅ、ありがと……」

響「ズズッ……」



響「………」

P「……落ち着いたか?」

響「うん……」

真「響。何があったのか話してよ。ゆっくりでいいからさ」

響「うん……」





響「みんなと別れた後、最後のクリスタルは春香達に任せて、自分と貴音と律子は魔導船を回収しに行ったんだ」

響「そしたら、あのすごく高い塔から、いきなり大っきいロボが出てきて……」

亜美「兄ちゃん、大っきいロボって……」

P「ああ。……多分、バブイルの巨人だろうな」

響「それで、魔導船に乗り込んだ貴音と律子は、その巨大ロボに撃ち落とされちゃって……」

雪歩「そ、そんな……!」ギュッ

真「………」

響「自分も、エン太郎と一緒に応戦したんだけど……ロボがもう1体出てきて……」

P「えっ?」

真美「もう1体って……ど、どゆこと?」

響「自分、2人を置いて、逃げて来ちゃったんだ……」

あずさ「大変だったのねぇ、響ちゃん……」


131: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:20:31.73 ID:0IpIr3AGO

響「……でも、みんなに会えて良かったぞ!」

響「自分、2人を探しに行きたいんだ!一緒に、来てくれないかな?」

真「もちろんだよ!響ひとりで行かせるわけないじゃないか!」

雪歩「わ、私も一緒に行くよ、響ちゃん!」

あずさ「……そうね。みんなで行きましょう?」

響「みんな……!」



亜美「巨人って、1体だけじゃなかったんだ……」

真美「まさか、そんなにいるなんて……」



響「………」

響「……あのさ、亜美、真美。恐かったら、2人はここにいてもいいんだぞ?自分達があの巨大ロボを……」



亜美「……なーに言っちゃってんのさ、ひびきん!」

真美「真美達、コワイなんて一言も言ってないぢゃんか!」



響「えっ?」

真美「んっふっふ〜!むしろ、待ってたんだよ?こーゆーピンチをさっ」ワクワク

亜美「やーっと亜美達の出番ってわけさ!こりゃーもう、ハデにあばれるしかないっしょー!」ワクワク

響「そ、そうなの?」

真「亜美と真美はずっと大人しくしてたもんね。そろそろイタズラしたくなってきたんじゃないかな?」

真「……魔物達にさ!」

亜美・真美「もっちろん!!」

響「……うん!2人のイタズラがあれば、心強いさー!」



P「………」



P「…………響。巨人はどこへ向かうかわかるか?」

響「えっ?いや……どうだろ。自分、逃げるのに必死だったから……」

響「でも、巨大ロボに乗ってた魔物は、『人間を滅ぼす』って言ってたんだ」

響「だとしたら、多分……」

P「もう、地上はこの国しか生き残っていない」

P「恐らく、ここに攻めて来るだろうな」


132: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:26:28.89 ID:0IpIr3AGO

P「みんな、聞いてくれ」

P「巨人と戦うにあたって、パーティを二つに分けたいと思うんだ」



真「二つに……?敵を挟み撃ちするって事ですか?」

P「いや、そういう意味じゃないんだ」

雪歩「じゃあ、どういう……?」

P「うん……」

P「響が見た巨人は、2体だったよな?」

響「うん。最初に出て来たやつも大っきかったけど、後から来たやつは、もっともっと大っきかったぞ!」

P「本来のストーリーなら、巨人は1体しか出てこないはずだが……」

亜美「きっと、ピヨちゃんが増やしたんだろーね」

P「そうだろうな」

P「それに、巨人が響の見た2体だけとも限らない」

響「えっ?」

P「もし俺達が全員で律子と貴音を探しに行って、すれ違いで巨人がこのトロイアに攻めて来たら、どうなる?」

雪歩「この国の人達が………危険ですぅ!」

P「その通りだ」



P「この世界は、ゲームの世界。現実にはあり得ない世界。言ってみれば俺達は今、夢を見てるのと変わらない」

真「………」

P「俺達が現実に帰ったら、普段見る夢と同じ様に、この世界での出来事も忘れてしまうんだろうな」

響「………」

P「でも、この世界の人達は、実際にちゃんと生活してるし、産まれて、死んでゆく。ただ住んでいる世界が違うだけで、俺達と何も違わない」

亜美・真美「………」

P「それにみんなは、この世界の人達と、いろいろ助け合ってここまで来たと思う。もう、この世界の人達はみんなにとって『仲間』って言ってもいいんじゃないかな?」

雪歩「………」

P「だから………守ろう!仲間を!」

あずさ「プロデューサーさん……」



P「この世界は、お前達アイドルが守るんだ!」




アイドル達「はいっ………!」





133: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:30:49.39 ID:0IpIr3AGO

響「……じゃ、行ってくるぞ!」

あずさ「きっと律子さんと貴音ちゃんを見つけて来ますね〜」

亜美「みんな、大魔道士亜美がいなくて不安かもしんないけど、ちゃーんとこの国を守るんだよっ?」

真「大丈夫。こっちは任せてよ!」

真美「白魔法のエキスパート、超大魔道士真美がいれば、なんくるないモンねっ!」

雪歩「わ、私も、頑張りますぅ!」



P「2人を見つけたら、深追いしないで戻って来るんだ」

P「3人とも、よろしく頼んだぞ!」



響・あずさ・亜美「はいっ!!」




ブワッ…



ババババババ…




134: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:35:19.97 ID:0IpIr3AGO

雪歩「大丈夫かな、3人とも……」

真「心配いらないよ。きっと」

真美「そーだよゆきぴょん。不死身のあずさお姉ちゃんもいるんだしさっ!」

雪歩「えっ?ふ、不死身……?」



真「あの、プロデューサー?この振り分けは、何か意味があるんですか?」

P「そんなに深い意味はないよ。バランスを考えて分けただけなんだ」

真「バランス、ですか」

P「ああ。向こうの捜索チームは巨人と空中戦になるかもしれないから、遊撃できるメンツを揃えた」

P「で、トロイアを守るこっちのチームは、守りの雪歩。サポートの真美……」

P「そして、真。お前がこっちの攻撃の要だ」

真「………!」

真「……わかりました!」




P(さて、とりあえず対巨人の布陣は出来たが……)

P(巨人が復活したという事は、クリスタルが揃ってしまったという事)

P(つまり、春香達は、ストーリー通りに……)

P(そうだとしたら、千早は……)

P(心配だが、今は身動き取れない)

P(いや……大丈夫だ、春香達なら)

P(信じてるぞ、みんな!)




135: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 22:41:26.62 ID:0IpIr3AGO
間があいてしまい、すみません
少ししたら後半戦投下します

138: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 23:54:18.26 ID:0IpIr3AGO

ー バブイルの塔 B4F ー




…ビューーンッ!

美希「わあ!早い早い!」

美希「スーちゃん、もっと飛ばすの〜!」

スカルミリョーネ「……わ、わかっ…た……!」

美希(千早さん、シアちゃん、待っててね!)

美希(春香……)

美希(無事でいないと………許さないの!)ギュッ




タタタタ…

伊織「ちょっと、赤い悪魔!もっと急ぎなさいよ!美希に負けてるじゃないっ!」ペチペチ

ルビカンテ「……あのな、スカルは飛べるからオレより早いのは当たり前だ」

ルビカンテ「それに、お前達が走るよりは何倍も早いと思うが?」

伊織「言い訳なんて見苦しいわよ!さあ、急ぎなさい!」ペチペチ

ルビカンテ「……わがままなヤツだ」




ノソノソ…

カイナッツォ「く……お前達、ちょっと待てぇっ!」

やよい「あのー、カメさん?もう少しだけいそいでもらえませんかー?」

カイナッツォ「う、うるさいっ!これでも全速力だっ!」

やよい「そうなんですかー……」

やよい「すみません、わがまま言っちゃって」

カイナッツォ「ちっ!なんで私が人間を乗せて走らねばならんのだっ!」

やよい(これなら、わたしが走った方が早いかなーって)




139: ◆bjtPFp8neU 2015/04/06(月) 23:57:28.94 ID:0IpIr3AGO

ー バブイルの塔 1F 次元エレベータ ー



タイダリアサン「……じゃあ、私もそろそろ出撃しますので」

タイダリアサン「ルナ、それではお先に〜」



ゴゴゴゴ…ズシィン!




ルナザウルス「……さ〜て、自分達もそろそろ行くッスよ〜!準備はいいッスか?」

千早「………」

ルナザウルス「諦めるッスよ。今はあんたはこちら側なんスから」

ルナザウルス「自分達に従うしか道は……」



ヒューーー…



ドゴオォォン!



ルナザウルス「……ん?なんスか?」チラ



春香「……痛たたた……」



千早「!!」



…ビュオオ!スタッ

バルバリシア「……ハルカ。あなたって、意外と鈍臭いのねぇ」

バルバリシア「せっかくの登場シーンなんだから、もっと優雅にできないのかしら?」

春香「そ、そんな事言ったって、こんなの、ジェットコースターから飛び降りるくらい無茶ですよぅ……!」ヨロッ


140: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:00:43.44 ID:XZW441STO

千早「……春香っ!」

千早「……と、バルバリシア?どういう事……?」



春香「千早ちゃんっ!迎えに来たよっ!」

バルバリシア「こっちにもいろいろ事情があってね」



千早(来て……くれた……っ!)

千早(でも………)



ルナザウルス「あれま……。意外に早い到着ッスね」

ルナザウルス「しかも2人だけとか、完全に舐められてるッス」



バルバリシア「2人?勘違いしないで欲しいわね。私はハルカをここまで案内しただけ」

バルバリシア「あなたの相手は、この子ひとりよ!」

春香「ええぇっ!?流れ的に、一緒に戦ってくれるんじゃないんですか!?」

バルバリシア「あらあら、ちょっと考えが甘いんじゃない?もともと私達は敵同士。ここまで連れて来てあげただけ感謝しなさい」

バルバリシア「あなたの勇姿を、ここで見ててあげるわ」ニコッ



バルバリシア(……この魔物達とは、お互いの邪魔をしないという『協定』を結んでいる)

バルバリシア(手を貸してあげたいけど、できないのよ……)


141: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:03:54.57 ID:XZW441STO

春香「そっか………うん、そうだよね……」

春香「………わかりました!」

春香「ありがとうございました、バルバリシアさん!」ペコリ

バルバリシア「お礼を言うのはまだ早いんじゃないかしら?」チラ



ルナザウルス「うーん……」

ルナザウルス「あの金髪娘ならまだしも、なんかトロそうな娘がひとりだけ……」

ルナザウルス「こんなの、自分が出るまでも無いッスね!」

ルナザウルス「さあ、竜騎士。行くッス!」

千早「くっ……!」

千早(ダメ……やっぱり、逆らえない……!)



千早「春香……!」チャキッ

千早「逃げてっ!」タンッ



…フワッ



バルバリシア(ハルカ……今は、あなただけが頼りよ……!)



春香「千早ちゃんっ!」


春香(やっぱり、あの時みたいに自分の意識とは無関係に……)

春香(だったら………!)



春香「……っ!」チャキッ




142: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:07:29.94 ID:XZW441STO

千早「くっ……!」



ヒューー…



ガキィンッ!



千早「なっ……!」

春香「くぅ……っ!」ググッ

春香「さ、さすがは千早ちゃんのジャンプ攻撃だね……!すごい威力……!」ヨロッ

千早「春香……!」ググッ



ルナザウルス「ジャンプ攻撃をまともに受け止めたッスか。そこそこやるッスねぇ」

ルナザウルス「でも、どうするッスか?その竜騎士は命令には逆らえないッス。殺してしまうしか道は無いッスよ〜?」



春香「そんな事、ないですよっ……!」

春香「えいっ!」グイッ



千早「きゃっ……!」ヨロッ



千早「………」チャキッ

千早「春香、逃げて!今の私は、あの時と同じ。あなたを殺すまで……!」



春香「ううん、逃げないよ!」

春香「私はいつだって、千早ちゃんの全てを受け止める」

春香「だって千早ちゃんは……!」



春香「大切な、仲間だもんっ!」



千早「春…香……っ!」



バルバリシア(あの子、鈍臭いと思ってたけど普通に戦えるのね)

バルバリシア(仲間……か)

バルバリシア(………)


143: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:10:59.02 ID:XZW441STO

春香「えいっ!」ブンッ


千早「くっ!」


ガキィン!


春香「やあっ!」ブンッ


千早「甘いわ!」ヒョイッ


千早「はっ!」ブンッ


春香「わわっ……!」


ジャキィン!


春香「あ、危なかったぁ……」ドキドキ



千早「ふぅ……」

千早「春香………強くなったわね」


春香「ううん。千早ちゃんの方こそ!」ニコッ


千早「こんな時に笑うだなんて……。わかっているの?今、私達は……」


春香「わかってるよ。でも、あの時も言ったよね?」

春香「『私は、千早ちゃんに殺されないし、私は、千早ちゃんを殺さない』って……」

春香「絶対に、私は千早ちゃんを無事に連れて帰るから!」


千早「春香……」

千早「でも、このままじゃ……」



春香(うん。それもわかってるよ。まずは千早ちゃんの洗脳をどうにかしないと……!)



144: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:14:32.19 ID:XZW441STO


千早「くっ……!」ダッ


ヒュンッ…



春香「!」ダッ


ザシュッ!



春香「……痛っ……!」ヨロッ

春香(反応し切れなかった……)



千早「………」スタッ

千早(攻撃が、春香に当たってしまった……)



春香「……え、えへへ……」ニコッ

春香「そんなに心配そうな顔をしないで?私は全然平気だよ?」



千早「春香……」グッ

千早(私は、どうすれば……?)



春香「ふぅ……」

春香(さすが千早ちゃん)

春香(あのスピードでまっすぐ飛んで来られたら、反応し切れないよ……)

春香(でも……)



千早「……くっ!」ブンッ


春香「わっ……!」


ガキィン!



春香(絶対に……!)



春香「えいっ!」ブンッ


ガキィン!


春香(……諦めないっ!)



145: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:19:13.60 ID:XZW441STO

ルナザウルス(んー、見たところ、あの2人の実力は同じくらいッスか)

ルナザウルス(ここはあの竜騎士に足止めをお願いして、自分もさっさと出撃するッス)クルッ

スタスタ…



バルバリシア「……待ちなさい!」



ルナザウルス「………」チラ

ルナザウルス「……邪魔するッスか?」

ルナザウルス「あんた達とは、『お互いの邪魔をしない』という協定を結んだって聞いてるッスけど?」

バルバリシア(そんなの、ただの口約束よ)

バルバリシア(でも、だからと言ってそれを簡単に反故にしてしまっては、ウチのリーダーの立つ瀬が無くなってしまうわね)



バルバリシア「……それはわかっているわ。ただ、聞きたい事があるの」

ルナザウルス「聞きたい事?」

バルバリシア「他のヤツらはどうしたの?」

ルナザウルス「あー、他の3人ならとっくに出撃したッスよ!今頃はトロ…なんとかって国へ向かってると思うッス!」

バルバリシア「そう……」

バルバリシア(あんなデカブツが複数相手じゃ、リツコ様でもお手を煩わすでしょう)

バルバリシア(今ここで、一体でも数を減らせれば……)

バルバリシア(かと言って、私が直接手を下すワケにはいかない。頼りのハルカも、チハヤ相手に手一杯………か)

バルバリシア(あまりスマートな手段とは言えないけど、ウチのリーダーの顔を立てつつ私がこいつを引き止めるには、これしかない)



146: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:22:44.97 ID:XZW441STO

バルバリシア「あなた達の目的はなんなの?」


ルナザウルス「目的?そんなの知らないッス!自分達はコトリ様に言われた事を実行しているだけッスから」


バルバリシア(……やっぱり)


バルバリシア「ふぅん……じゃあ、あなた達の意思はそこには無いのね」

バルバリシア「………可哀想に」

バルバリシア「ただ、命令に従うだけ。そこの無駄に大きい木偶人形と、何も変わらないわね」チラ



巨人「………」



ルナザウルス「うん………?」

ルナザウルス「なーんかカチンと来る言い方ッスねぇ?もしかして、ケンカ売ってるッスか?」


バルバリシア「さあね……?」



147: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:25:10.72 ID:XZW441STO

ルナザウルス「言っとくけど、あんたひとり消すくらい、ワケないッスよ?」


バルバリシア「あら?いいのかしら?『協定』はどうしたの?」


ルナザウルス「むむっ……!やっぱりケンカ売ってるッス!」



ルナザウルス「そんなに死にたいんスかぁ……?」ゴゴゴゴ…



バルバリシア「………っ!」ゾクッ

バルバリシア(誘いに乗って来たはいいけど………なんて殺気……!)

バルバリシア(私よりも格上か……)

バルバリシア(……でも、これで私が手を出す口実はできた。あとは、ルビカンテ達を信じるしか……)



バルバリシア「はぁ………」

バルバリシア「月の魔物って、誇りも持っていないのね?なんかガッカリだわ……」



ルナザウルス「!」ブチッ

ルナザウルス「その言葉は聞き捨てならないッス。もう、謝ったって許してやらないッス!」



ルナザウルス「あんた……」

ルナザウルス「………吐いた唾飲み込むんじゃねえッスよ……?」ゴゴゴゴ…



バルバリシア「っ……!」

バルバリシア(もう、戻れない……!)



ルナザウルス「死にさらせあああー!」ダッ



バルバリシア「はああああっ!」ダッ



…ガキィンッ!



148: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:28:00.06 ID:XZW441STO

春香「バルバリシアさんっ!?」



春香(見てるだけって言ってたのに、手伝ってくれるんだ……!)

春香(美希が懐くだけあって、やっぱりいい人なんだなぁ……)



千早「……春香、よそ見してはダメ!」ブンッ


ザシュッ!


春香「うぁ……!」ヨロッ

春香(わ、私の、バカぁ……!)



千早「………」チャキッ


春香「っ……!」ヨロッ


春香「………」チャキッ



千早「私は………全て春香に委ねるわ」


春香「えっ……?」


千早「春香、言ったでしょう?『私の全てを受け止める』って」


春香「千早ちゃん……」


千早「だから、私も……」ジリッ



千早「私の全てを、あなたにぶつけるっ!」ダッ

千早(だからどうか、私を止めて……!)

千早(春香……!)



春香「………うんっ!」ダッ



ガキィンッ! キィン! バキィッ!



春香・千早「やああぁぁぁぁ!!」



ドゴオオォォォォン…!





149: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:36:03.85 ID:XZW441STO

ー 月の地下中心核 ー



クルーヤ「………」

ダークバハムート「………」



クルーヤ「………ねえ、バハムート」

ダークバハムート「……なんだ?」

クルーヤ「ハルカ達光の戦士は、コトリさんと知り合いなんだよね?」

ダークバハムート「………うむ」

ダークバハムート「タカネはコトリの事を知っている風だった。恐らく、光の戦士達は皆コトリの知人………いや、それ以上の関係やもしれん」

クルーヤ「ふーん……」

ダークバハムート「……それがどうかしたのか?」

クルーヤ「………」

クルーヤ「いやぁ、コトリさんも大変だなーって思って」

クルーヤ「知り合いと戦うなんて、さ」

ダークバハムート「他人事の様に申しておるが、お前とて同じような立場ではないか?」

ダークバハムート「戦うのであろう?自分の娘達と」

クルーヤ「あはは、それもそうかー」



150: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:39:59.93 ID:XZW441STO

クルーヤ「……でも、それは君も同じだよね?」

クルーヤ「タカネちゃん……だっけ?コトリさんの話だと、君はその娘とずいぶん懇意の仲みたいじゃないか」

ダークバハムート「む……コトリの奴め、余計な事を……」



クルーヤ「僕、思うんだ」

クルーヤ「これもひとつの試練なんじゃないか、って」

ダークバハムート「試練……?」

クルーヤ「時代の転換期には、いつだって古いものが淘汰されて、新しいものが生まれていく」

クルーヤ「だから、僕ら『旧世代』とハルカ達『新世代』が戦う事は、ある意味逃れる事のできない運命なんだ」

クルーヤ「ハルカ達は……いや、これからを生きようとする全ての生物達は、それを乗り越えなきゃいけない」

クルーヤ「乗り越えなければ、新しい世界へは辿り着けないんだよ」

ダークバハムート「……なるほどな」

ダークバハムート「つまり、我らは咬ませ犬、というわけか」

クルーヤ「うーん、言い方は悪いけど、まあそうだね」


151: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:43:04.26 ID:XZW441STO

ダークバハムート「クク………悪くない……」

ダークバハムート(我が、タカネの糧となれるのならば……!)




クルーヤ「えっ?」

ダークバハムート「独り言だ、気にするな」

ダークバハムート「それよりクルーヤ」

ダークバハムート「タカネとは、我が戦う。これは譲れんぞ」

クルーヤ「はいはい、横取りなんてしないってば」

クルーヤ「相当お気に入りなんだねぇ」

ダークバハムート「まあ、な」



クルーヤ「………さーてとっ!」

クルーヤ「バハムート、久しぶりに飲まないか?コトリさんも誘ってさ」

ダークバハムート「お前の酒癖が………いや、偶には良いかもな」

ダークバハムート「わかった。付き合ってやろうぞ」

クルーヤ「はは〜。ありがたき幸せ〜」

クルーヤ「さ、そうと決まったら早速小鳥さんのところへ行こう!」



スタスタ…



152: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:46:23.84 ID:XZW441STO

ー 月の中心核 コトリの部屋 ー



クルーヤ「おーい、コトリさーん。お酒でも一緒に……」




「……ひとつーうまれたーたねー……」




ダークバハムート「!」

ダークバハムート「クルーヤ、少し黙るのだ」

クルーヤ「えっ?」




「よわくーちーいさいけーれどー……」




クルーヤ「あれ、これは……」

ダークバハムート「歌……」





小鳥「……つよくーいーまをーいーきーてるー♪」

小鳥「やーがーてつーちーをおしあーげてー♪……」






クルーヤ「コトリさん……」

ダークバハムート「………」

ダークバハムート(なんだ、この高揚感は……?)


153: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:50:15.31 ID:XZW441STO

いつか咲こう きっと 諦めないで


葉を広げて うんと 茎を伸ばして


高くたって ゆける まっすぐに芽を




小鳥「かぎりー……ないあしーたーへむけてゆこー♪……」




小鳥「………ふぅ」

小鳥「たまーに歌いたくなっちゃうのよねぇ」

小鳥「まあ、聴いてくれる人なんて、いないんですけどね……」シュン




……パチパチパチパチ!



小鳥「……えっ?」



クルーヤ「コトリさん、すごいよ!」

ダークバハムート「まさか、コトリにこの様な特技があったとはな」



小鳥「ふ、2人とも……!」

小鳥「き、聴いてたんですか!?」



クルーヤ「はい!僕、なんていうか……胸にグッときました!」

ダークバハムート「まあ、悪くなかったのではないか?」



小鳥(うわぁ……は、恥ずかしいところを見られちゃったなぁ……///)


154: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:54:16.35 ID:XZW441STO

クルーヤ「コトリさん、吟遊詩人になれたんじゃないですか?」

小鳥「ぎ、吟遊詩人ですか?」

小鳥(あ……そうか。この世界で歌を歌う人っていったら、吟遊詩人なのね)



ダークバハムート「コトリよ。そなたの歌には、なかなかの魔力が宿っているのだな」

小鳥「えっ?そ、そんな事はないと思いますけど……」

ダークバハムート「いや、そなたの歌を聴いていて、我は、何故か妙な気分になった」

ダークバハムート「きっとそなたの歌には、何か状態異常を付加する効果が……」

小鳥「そ、そうなんですかね……」

クルーヤ「バハムート。状態異常じゃないよ、それは」

ダークバハムート「……何?」

クルーヤ「そりゃあ、聴いた人を混乱させたりする歌とかもあるけどさ」

クルーヤ「コトリさんの歌は、そういうのとは全然違う」

クルーヤ「聴いた人に、感動を与えてくれるんだ」

小鳥「く、クルーヤさん、そんなにヨイショしたって、何も出ませんよ?」

小鳥(その言葉は、飛び上がるほど嬉しいんですけどね!)



ダークバハムート「感動……か。人間の感情とは、やはり難しいものだな」



155: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 00:57:55.00 ID:XZW441STO

ダークバハムート「コトリよ。すまなかった。そなたを貶めるつもりはなかったのだが……」

小鳥「あ、謝らないでくださいよ。私、気にしてませんから」ニコッ

ダークバハムート「そなたの歌を聴いて、悪い気がした訳ではない。寧ろ、礼を言いたいくらいなのだ」

ダークバハムート「理由は分からぬのだが、な」

小鳥「バハムートさん……」

クルーヤ「バハムート。それが『感動』ってヤツだよ」

ダークバハムート「……そうなのか?」

クルーヤ「うん。いやあ、だんだん俗っぽくなってきたねぇ、バハムートも」

クルーヤ「友人としては、嬉しい限りだよ!」

ダークバハムート「ふむ……」



小鳥(うふふ、やっぱり仲良いなぁ、2人とも)

小鳥(今度、この2人を題材にして何か描こうかなぁ)


156: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 01:00:06.81 ID:XZW441STO

小鳥「あ、ところで、お2人はどうしてここへ?私に何か用事ですか?」

クルーヤ「おっと、忘れてた」

クルーヤ「お近づきの印に、ご一緒にお酒でもと思いまして」トンッ

クルーヤ「どうですか?」ニコッ

小鳥「い、いいんですかっ!?」

ダークバハムート「遠慮する事はないぞ、コトリよ」

ダークバハムート「クルーヤは、自分が呑みたいだけなのだからな」

クルーヤ「そ、それは……」



小鳥(まさか、美男子2人(?)とお酒を呑めるなんて……)



小鳥(私……生きてて良かったぁ!)




158: ◆bjtPFp8neU 2015/04/07(火) 01:03:33.44 ID:XZW441STO

ーーーーーー

ーーー



小鳥「……だぁかぁら〜、わらひがせかいをほろぼしちゃうっていってるんれすよぉ〜」ヒック

小鳥「がお〜っ!せかいをたべちゃうぞ〜!」

クルーヤ「あははは!恐い!コトリさん恐いよ〜!」

小鳥「わたひのちから、みせちゃいますよぉ?びっぐばーん!な〜んて……」ヒック

クルーヤ「いよっ、コトリさん!さすが暗黒の化身っ!」

ダークバハムート「………」グビッ



小鳥「あ〜、ばはむーちょさん、なにひとりでさみしくのんでるんれすかぁ!」ガシッ

ダークバハムート「……楽しそうだな、コトリよ」

小鳥「えへへぇ〜、もちろんれすよ〜!」ヒック

小鳥「あっ……!」ガタッ

ダークバハムート「む。どうした?」



小鳥「音無小鳥、歌いまーす!」

クルーヤ「待ってました〜!」パチパチ





小鳥「私は音無小鳥ですっ♪」

クルーヤ「いぇいっ!」

小鳥「口元のホクロがトレードマーク♪」

小鳥「明るく前向き近距離通勤♪」

小鳥「一日三回妄想しますっ♪」

クルーヤ「いぇいっ!」

ダークバハムート「………」グビッ




ダークバハムート(こうなるとは思っていたが……)




小鳥・クルーヤ「一致団結〜♪団結〜♪時に衝突〜♪」

小鳥・クルーヤ「後くされ〜ない〜よに〜♪……」




ダークバハムート(……ま、悪くはないか。偶には、な)






小鳥・クルーヤ「……だって私は♪ラス〜ボスだから〜♪」






168: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:00:19.38 ID:oTGYU754O

ー トロイア城 会議室 ー


アン「……皆様。遠路はるばるお集まりいただき、感謝致しますわ」


ファブール王「………」

ジオット「………」

ルカ「………」

長老「………」



アン「何名かの方は、こちらの招待の是非に関わらず、自力でいらっしゃった様ですけれど……」チラ



ものまね士「えへへ、どうも」

店主「いや、別に褒められた訳じゃないと思うぞ?」

老婆「………ふん」



アン「まずは、皆様のご無事を、心よりお喜び申し上げます」

アン「それぞれの国の指導者を失っては、民は迷子になってしまいますものね」

長老「……じゃが、すでに多くの民の命が、魔物どもにより奪われておる」

長老「もちろん、若い命も……」

ファブール王「……そうですな。我々の様な老い先短い者が生き残るよりは……」

ジオット「………」


169: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:05:00.27 ID:oTGYU754O

アン「いいえ。指導者が生きていれば、再び国を立て直す事もできます」

ルカ「え?でも……」

ルカ「民あってこその国なのでは?」

アン「………」チラ

ルカ「あ……す、すみません、若輩者が、出過ぎた事を……」

アン「良いのですよ」ニコッ

アン「長老様やファブール王が仰る通り、これからの世界はルカ王女の様な若い方が活躍されて行くのでしょう」

老婆「………ふん。あんたも充分小娘だと思うがね」

アン「………」チラ



アン「それにルカ王女。考え方は人それぞれです」

ルカ「それは、はい……」


170: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:06:17.05 ID:oTGYU754O

アン「……ですが、ここにお集まりの方々は、この世界の行く末を案じている」

アン「その点に関しては、共通の想いと信じています」

長老「ふむ………」

ファブール王「確かに、そこを疑っては、話し合いの余地がないな」

老婆「あんたのその言葉が、単なる建前じゃない事を祈っているよ」

アン「………」



ものまね士「ね、ねえ店主さん。私達も何か発言した方がいいんじゃないですかねぇ……?」ヒソヒソ

店主「わ、わかってるんだけどさ。話についていけてないっていうか……」ヒソヒソ


171: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:09:20.32 ID:oTGYU754O

ジオット「……前置きはその辺りでよろしかろう。本題に入ろうではないか、アン殿」



アン「……そうですね。申し訳ありませんでした」



アン「……ではまず、『民』についてです」

アン「すでに多くの民が、この国に避難しています」

アン「バロンの技師の方々のご協力により、空輸での民の輸送も可能ですので、生存者が全て集まるのも、そう遠い話ではないのです」

ジオット「飛空艇、か」

ファブール王「敵としては厄介だったが、味方となると便利なものじゃな」

長老「……しかし、こんな事を言っては失礼じゃが、全ての民を受け入れる広さはこの国には無いように思えるのじゃが」

アン「それについては、ご心配には及びませんわ」

アン「我が国は地上だけでなく、地中にも展開しておりますので」

アン「これも、全てユキホ王女のおかげなのです」

ジオット「貴公の国を救った、という、英雄か?」

ファブール王「おお、英雄とはユキホ殿の事じゃったか!」

老婆「あんた、そのユキホって子を知っているのかい?」

ファブール王「うむ。ユキホ殿とその仲間達に、国を救われた事があってな」

老婆「ふーん……」

ものまね士「ああ、そういえばユキホ王女、何かあるとすぐ『穴掘って埋まってますぅ!』って言ってましたもんねぇ」

店主「はは、懐かしいなぁ。ユキホ、元気にしてるかなぁ」

老婆「おや、あんた達も知り合いなのかい」

店主「うん、まあな」



老婆(英雄、とやら。そこそこの有名人のようだねぇ……)



172: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:11:41.81 ID:oTGYU754O

アン「ユキホ王女は、世界を救う英雄です。呼び捨てとは失礼ではないでしょうか?」

店主「あっ……そ、そうか、すまん」

ものまね士(世界を救うのは、ユキホ王女一人の力じゃないと思うんだけどなぁ……)



アン「……とにかく、我が国は今、建築にも力を入れております。全ての民を受け入れる準備は進んでいるのです」

老婆「必死だねぇ。まるで、全ての民は自分の『モノ』だ、という風に聞こえるんだが……」

老婆「あんたまさか、独裁国家でも作る気じゃないだろうねぇ?」

アン「!」

アン「決して、その様な事は……」


ジオット「母上。少々言葉が過ぎるかと」

老婆「………ふん」



ジオット「すまぬ、アン殿」

アン「いえ、お気になさらず」



ジオット「しかし、私も、全ての民を受け入れるというのは無理があるように思う」

ジオット「我がドワーフ国も、力を貸そうと思うのだが、どうか」

アン「………」



173: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:14:08.98 ID:oTGYU754O

アン「ありがたいお言葉ですが……」

アン「人間とドワーフでは、辿って来た歴史も文化も違います。共存は、難しいかと……」

ファブール王「アン殿……?」

長老「………」

老婆「………」



ジオット「我らドワーフを『異民』と侮辱するつもりかっ!?」ガタッ

ルカ「お、お父様、どうか落ち着いてくださいませっ!」ガシッ

ジオット「わかっておるっ!」



ジオット「……ならばアン殿。なぜドワーフの王である私をここに呼んだのだ?」

アン「決まっていますわ」



アン「あなた方ドワーフの『武力』を、お貸しいただきたいのです!」ニコッ



ジオット「何……!?」

ファブール王「な、なぜその様な事を……?」


174: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:17:13.21 ID:oTGYU754O

アン「勘違いしないでいただきたいのです。私が言った武力とは、魔物に対抗する力」

アン「………トロア。ユキホ王女をここへ」



トロア「は、はい、わかりました」



ガチャ…



ユキコ「……し、失礼しますぅ」ビクビク



アン「紹介します。彼女こそが、この国の英雄、ユキホ王女ですわ!」

ファブール王「おお、ユキホ殿!久しぶりじゃな」

長老(あの娘、先ほど会った娘じゃな。確か、アミとマミの友達で、双子と申していた……)

老婆(ふむ、何も感じない。ホントに英雄なのかねぇ……)



アン「残念ながら、我が国は宗教国家ですので、武力を持つ者はほとんどおりません」

アン「ですから、英雄と、ドワーフで力を合わせて……」

ジオット「アン殿。我らとは共存できぬと申したな」

ジオット「ならば共闘もできる訳なかろう!」

アン「敵の敵は味方。そうはならないと?」

ジオット「ここまで侮辱されては、もはや従う事はできぬ!」

ルカ「お、お父様っ!」

店主「お、おい!なんか知らんけど、ケンカは良くないと思うぞ」

ものまね士「そ、そうですよ!」

ファブール王「アン殿。一体どうされたのじゃ?この様な思慮の浅い事を申すなど……」

アン「申し訳ありません。侮辱するつもりなどは……」



ジオット「この美しい地上が危機と聞いて、我らドワーフも助太刀しようと思っていたが……」

ジオット「集まったのは、弱腰の老獪共に、火事場のどさくさに紛れて世界を意のままにしようと目論む神官……」

ジオット「人間とは、実に自分勝手なものなのだな」



老婆(言うねぇ。だが、間違っちゃいないのかもしれない)


175: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:21:55.69 ID:oTGYU754O



ズゥゥゥゥン…!



グラグラ…



店主「おわっと……!」ヨロッ

ものまね士「だ、大丈夫ですか?店主さん!」

ファブール王「な、なんじゃ……?」

ジオット「地面が、揺れて……?」

ルカ「お、お父様っ!」ギュッ

アン「一体、何が……?」



…バタンッ!



セット「大変だよ、アン姉!」



アン「どうしたのですか?」



セット「森のずっと南の方に、すっごく大っきい影が!もしかしたら、魔物かも!」

セット「このままだと、ここに来るかもしれないよ!」



アン「魔物……!?」

ものまね士「そ、そんな……!」

店主「ま、マジかよ……」

長老(まさか……?)



アン「……トロア。すぐにユキホさんと共にむかってもらえる?」

トロア「わ、わかりました!」

ユキコ「い、行ってきますぅ……!」


タタタタ…



176: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:24:47.83 ID:oTGYU754O

ー トロイアの町 ー


ズゥゥゥゥン…!



「な、なんだよ、この音は……?」

「もしかして、また魔物が攻めて来たんじゃ……?」

「ど、どうしよう?この国まで滅ぼされたら……!」

「……あっ、ユキホ様だ!」



ユキコ「み、みなさん、安心してください!この国は、私達が守りますからっ!」



「おお!さすがユキホ様だ!」

「そうだ、オレ達には、ユキホ様がいるじゃないか!」

「ユキホ様!どうぞお気をつけて!」

「ユキホ様!ユキホ様!ユキホ様!……」





トロア「……ユキコ殿、大丈夫ですか?みんな、あなたがユキホ王女であると信じてしまっています」

トロア「あなたには、戦う義務はない。どこか安全な場所に……」

ユキコ「い、いえ!私も戦います!」

ユキコ「私なんか頼りにならないかもですけど……」

ユキコ「私も、マコトさんやユキホさんみたいに、誰かのお役に立ちたいんですぅ!」

トロア「ユキコ殿……」

トロア「わかりました。あなただけは、命に代えてもお守りします」

トロア「さ、参りましょう!」

ユキコ「は、はいっ!」



タタタタ…





177: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:29:39.40 ID:oTGYU754O

ー トロイア城 南の森 ー



ズシィン…ズシィン…



雪歩「地面が、ゆ、揺れてますぅ……!」

真美「ついにお出ましってワケだね!」

P「2人とも、気をつけろよ!」

雪歩「は、はいっ……!」チャキッ

真美「兄ちゃんは、ちゃ〜んと真美にくっついてるんだよ?」

P「わ、わかってるよ……」



P「でも、なんで俺、べろちょろの姿に戻ってしまったんだろう……」

P「亜美にトードをかけられた訳でもないのに……」

真美「う〜ん……なんでだろね?」

雪歩「あの、私は、プロデューサーがその姿の方が、はぐれる心配が無いから、安心かもです」

真美「あー、確かにそだね」

真美(頭ナデてもらったりはできないケド……)

P「すまない。迷惑をかけてしまって」

雪歩「謝らないでください、プロデューサー」

雪歩「私は、プロデューサーの為に頑張れるの、嬉しいですから」

P「雪歩……」

真美「ま〜ったく、手のかかる兄ちゃんですな〜!」ギュッ

P「うぷ!く、苦しいって、真美!」



178: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:31:50.33 ID:oTGYU754O

真美「……さて、真美はそろそろ行ってくるかな」

雪歩「真美ちゃん、危ない事をお願いして、ゴメンね?」

真美「もう、そ〜ゆ〜のは言いっこなしだよ、ゆきぴょん!」

真美「キケンなのは、みんな同じなんだからさ!」

雪歩「うん……」

真美「だ〜いじょ〜ぶだって!イザとなったら、まこちんがなんとかしてくれるよ、きっと」

雪歩「そう……だよね」

雪歩「が、頑張ろうねっ」

真美「イワシモナカってヤツっしょ!」

P(言わずもがな、な)



真美「……んじゃ、行ってくるよ〜ん!」フリフリ


真美「……レビテト!」


…フワッ



ビューーーーン!




雪歩「………」

雪歩「私は、私にできる事をやるよ……!」チャキッ



179: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:33:27.93 ID:oTGYU754O

ー トロイアの森 木の上 ー



真「………」ゴゴゴゴ



シルフ「あの、マコトさん?」

シルフ「木が燃えちゃいそうですけど、大丈夫ですか〜?」



真「………っとと」シュゥゥ

真「危ない危ない。集中してただけなんだけどなー」

シルフ「さすがですね〜!マコトさんさえいれば、巨人なんて目じゃないです〜!」

真「……それは違うよ、シルフ」

シルフ「えっ?」

真「ボクひとりの力なんて、本当はとってもちっぽけなんだ」

真「……でも」

真「みんながいるから、頑張れる。みんながいるから、もっと強くなれるんだよ」

シルフ「………」

真「もちろん……シルフ、君もボクに力をくれるひとりだよ」ニコッ

シルフ「マコトさんっ……!」

シルフ「よ〜し、2人の愛の力で、巨人をぶっ殺しちゃいましょ〜!」

真「いや、愛っていうか……」

真「……ま、いいか」




180: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:38:19.09 ID:oTGYU754O

ー バブイルの塔 1F 次元エレベータ ー


フワッ…



スタッ



美希「あは☆ミキが一等賞なの」

スカルミリョーネ「……お、オレのおか…げ……」



…キィン! キィン! ガキィン!



春香「はあっ!」ブンッ


千早「くっ!」ギリッ



美希「あっ……!」

美希「春香っ!千早さん!」



春香「えっ?」クルッ

春香「美希!?なんで……?」


千早(美希……!)


美希「なんでって……千早さんを助けに来たに決まってるの!」

美希「あ、あとついでに、春香が無茶をしないようにしっかり見張るためなの」


春香「……ごめん。ありがとう、美希!」


美希「デコちゃんとやよいも後から来るから、早くみんなでハニーのところに帰るの!」


春香「うんっ!」


美希「もちろん、千早さんも一緒に!」


千早「美希……」



181: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:40:27.19 ID:oTGYU754O

ー バブイルの塔 1F 巨人の上 ー


ズバシュッ!


バルバリシア「……ぐっ!」ヨロッ


ルナザウルス「……あれぇ?さっきまでの威勢はどうしたッスか?」

ルナザウルス「ケンカ吹っかけといて無様にやられるなんて、青き星の魔物って、根性ないんスねぇ?」

ルナザウルス「なーんかガッカリッス!」ニヤリ


バルバリシア「ち……!」

バルバリシア「……なめんじゃないわよっ!」ジャキィン



ズババババババッ!



ルナザウルス「手数が多ければいいってものでもないッスよ!」



ガキィン!







美希(シアちゃん……!)



美希「ねえ、春香。千早さんの事はお願いしてもいい?」


春香「うん、わかってる。バルバリシアさんを助けるんでしょ?」

春香「早く行ってあげて!こっちはなんとかするから!」



美希「春香、ありがとうなの!」

美希「……スーちゃん!」クルッ



スカルミリョーネ「……せ、背中に乗…れ……」


美希「シアちゃんのところまで、よろしくお願いしますなの!」スタッ



フワッ…



182: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:45:09.58 ID:oTGYU754O

ー バブイルの塔 1F 巨人の上 ー



ルナザウルス「……バイオ!」


ブニューン!


バルバリシア「……トルネド!」


ゴォォーー!



バシュン…



ルナザウルス「……ほいっ!」ブンッ


バルバリシア「ちっ……バリア!」


シュルルッ


ザシュッ!


バルバリシア「っ……がは……!」

バルバリシア(わ、私のバリアを貫通するなんて……!)




ルナザウルス「あんたの力は、もう見切ったッス」

ルナザウルス「もう飽きちゃったんで、そろそろ終わりにするッスよ!」


バルバリシア「く……!」ヨロッ

バルバリシア(ここまでか……)

バルバリシア(結局、大した時間稼ぎにもならなかったわ……)

バルバリシア(ルビカンテ……みんな……。後は頼んだわよ……)



ルナザウルス「……これで、さよならッス!」ブンッ




バルバリシア(……ミキ………もう一度、あなたに……)




183: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:48:17.46 ID:oTGYU754O



ヒュンッ…ザクッ!



ルナザウルス「……痛っ!」

ルナザウルス「これは……矢?」スッ

ルナザウルス「……誰ッスか!?」





美希「……ミキのお姉ちゃんを傷つける悪いコは、許さないの!」ビシッ




バルバリシア「!?」


ルナザウルス「あ、あんたは……!」


美希「シアちゃん!助けに来たの!」


バルバリシア「み、ミキっ!?」



美希「ケアルガ!」


シャララーン!キラキラ…


バルバリシア「ミキ……!」


美希「シアちゃん、会いたかった!」


バルバリシア「私もよ……!」

バルバリシア「でも、今はまずあいつをどうにかしないと……」

美希「うん!2人でやっつけるの!」

スカルミリョーネ「……お、オレもいる…ぞ……」フワフワ





ルナザウルス「げげっ!あ、あの時の、金髪娘……」

ルナザウルス「こ、これは、やばいかもしれないッス……!」



ルナザウルス(………いや、待てよ?)

ルナザウルス(ヤツはまだ金髪。あの時みたく『茶髪』に変身する前に畳んでしまえば……)

ルナザウルス(……勝機は、あるッス!)



ルナザウルス「さっすが自分!頭いいッス!」



184: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:51:57.10 ID:oTGYU754O

ルナザウルス「……先手必勝ッス!」ダッ



美希「!」

美希「スロウ!」バッ



ルナザウルス「リフレク!」


ブゥーン



美希「あっ……」


カタカタ…シュルン



ルナザウルス「もらったッス!」ブンッ



バルバリシア「ミキっ!」



スカルミリョーネ「……か、回避す…る……っ!」


ブワッ…



ルナザウルス「ち、避けたッスか……」



美希「ふぅ……。スーちゃん、助かったの」ナデナデ

スカルミリョーネ「……ま、巻き添えは喰らいたくな…い……」

美希「それにしても、ズルいの!あれじゃ、ミキの魔法が全部跳ね返ってきちゃうの」



ルナザウルス「ふっふーん!魔法さえ使わせなければ、こっちの勝ちは見えたッス!」



バルバリシア(………)



バルバリシア(あいつ、リフレク使うクセに、知らないのかしら……?)

バルバリシア(『リフレクでも魔法を跳ね返せない事がある』って事を……)

バルバリシア(……ま、いいわ。攻め入るスキがあるって事だもの)



バルバリシア「ミキ、ちょっといい?」

美希「なぁに?シアちゃん」

バルバリシア「あのね……」ごにょごにょ



185: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:53:35.57 ID:oTGYU754O

ルナザウルス「何をしようと無駄ッスよ!」

ルナザウルス「さあ、終わりにするッス!」ダッ



バルバリシア「……来たわ!ミキ!」



美希「えーっと……」

美希「静寂に消えたなんとかの言葉のかんとか達……」



ルナザウルス「へぇ、あんたもリフレクを使えたッスか。でも、こっちはもう、魔法なんて使う気はないッスもんね!」

ルナザウルス「死ねッス〜!」ブンッ



ガキィン!



バルバリシア「……ぐっ!」ギリッ



美希「闇を返す光となれ、なのっ!」

美希「いくよ、シアちゃん!リフレクっ!」


ブゥーン



ルナザウルス「味方にリフレクかけたからどうかしたッスか?」


186: ◆bjtPFp8neU 2015/04/26(日) 23:57:02.48 ID:oTGYU754O

ルナザウルス「ふんっ!」ブンッ


バルバリシア「あっ……」ヨロッ


ルナザウルス「おりゃ〜!」ブンッ


美希「わっ……!」ヒョイ


ルナザウルス「もう一丁!」ブンッ


スカルミリョーネ「……ど、毒ガス、くら…え……!」


ブワッ…


ルナザウルス「うぷっ!く、臭いッス……!」ヨロッ



バルバリシア「喰らいなさいっ!」


ズバババババッ!


ルナザウルス「ちっ!あんたなんかに……!」


バルバリシア「今よ、ミキっ!」



美希「……ホーリー!」バッ



キラキラキラ…



ルナザウルス「えっ?味方に攻撃魔法?」



ブゥーン



ルナザウルス「こ、こっちに跳ね返って……!」

ルナザウルス「ぎゃああああっ!」



ドドドドドドドドッ!




190: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:20:18.69 ID:ot6eQ0tlO

美希「あは☆やったの!」

バルバリシア「どうかしらね。一撃では倒せないと思うけど……」

スカルミリョーネ「……だ、ダメージは、与えたは…ず……」




ルナザウルス「ちぃ……!」ヨロッ

ルナザウルス「結構痛かったッスよ、今のは……」

ルナザウルス「なんで魔法がリフレクを貫通してきたかわかんないッスけど、これはこっちも本気で行かないとッスね」ゴゴゴゴ



美希「も〜、しぶといの!」

美希「だったらもう一回……!」バッ



ルナザウルス「コォォォ……!」



美希「……あれ?なんかくさい……?」クンクン

バルバリシア「まさか、ヤツも毒ガスを?」

スカルミリョーネ「……お、オレのガスより臭…い……」

美希「うぇぇ……なんかミキ、気分悪くなって来ちゃったの……」フラッ

バルバリシア「ミキ、しっかり!」ダキッ

スカルミリョーネ「……ま、まさか、これ…は……?」



ルナザウルス「臭い息、喰らえッス!」ブハッ



モワモワ〜ン…




191: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:27:31.80 ID:ot6eQ0tlO

バルバリシア「くっさ!何よこれ……!」ツマミ

美希「こ、これ……シャレになって……ないの……」

バルバリシア「み、ミキ!?」

美希「も、もぉ、無理……な…の……」バタッ

バルバリシア「ミキ!」

バルバリシア「う……私も、キツい……かも……」グッタリ



ルナザウルス「フッフッフ。たっぷりもがき苦しんだ後にトドメを刺してあげるッスからね!」



スカルミリョーネ「……く、臭いけど、我慢できないほどじゃな…い……」

美希「………」

バルバリシア「………」



ルナザウルス「ひとり生き残ったッスか。なかなかやるッスね」



スカルミリョーネ「……ぞ、ゾンビには、効かな…い……」



ルナザウルス「ふん!自分だってゾンビなんスからね!」

ルナザウルス「ところであんた、2人も抱えて戦う気ッスか?」



スカルミリョーネ「……そ、それは無…理……」



ルナザウルス「そりゃそうッスよね」

ルナザウルス「だったら、今がチャンスッス!」ダッ



…ヒラッ



スカルミリョーネ「……ん?なんか、落ちた…ぞ……?」



ルナザウルス「あっ……」

ルナザウルス「コトリ様に預かった『リボン』が〜!」


スカルミリョーネ「??」



192: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:31:03.64 ID:ot6eQ0tlO

ー バブイルの塔 1F 次元エレベータ ー



春香「はぁ、はぁ……!」


千早「はぁ、はぁ……!」



千早「春香、これ以上は、もう……」


春香「ダメだよ、諦めちゃ!」

春香「大丈夫、きっと大丈夫だから!」

春香「私を信じて、千早ちゃんっ!」


千早「春香……」


春香(……とは言っても、これじゃただお互いの体力を削り合ってるだけだよね)

春香(このままじゃ、千早ちゃんと共倒れになっちゃう)

春香(もう少し……)

春香(もう少しで、何か閃きそうなんだけどなぁ……)



ヒラッ…



春香「……あれ?何か落ちて来た?」

春香「なんだろ、これ?」スッ

春香「リボン……かな」

春香(黒いリボンかぁ。そういえば私、黒は持ってなかったっけ)


千早「春香、どうかしたの?」


春香「なんか、上からリボンが降って来て……」


千早「リボン……?」



193: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:35:51.41 ID:ot6eQ0tlO

ルナザウルス「そのリボン、返せッスー!」ビューン


春香「えっ?これ、あなたのリボンなんですか?」


ルナザウルス「そうッス!だから、返してほしいッス!」


千早(あ、あんな魔物が、リボンを………プッ…くくっ!)プルプル



春香「ええと……じゃあ、はい。どうぞ」スッ



パァァァーーッ!



春香「わっ!!」


千早「な、何!?急に光が……」


ルナザウルス「な、な、何事ッスか!?」

ルナザウルス「リボンが、光って……!」


『……ううん、これも立派な武器よ?」

『この「リボン」を着けた春香ちゃんの力は、きっと計り知れないわ』


ルナザウルス「あ……」

ルナザウルス「ま、まさか……!?」

ルナザウルス「は、早くそのリボンをこっちに渡すッス!」



春香「そ、そんな事言ったって、まぶしくて何にも見えませんよぅ……!」フラフラ



千早「春香、大丈夫!?」



春香「う、うん!平気だけど、視界が……」



春香「……っ!」ドクンッ

春香(な、何?この感覚……)

春香(私の中の、何かが……)

春香(あ、あなたは……!?)



194: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:42:59.19 ID:ot6eQ0tlO

千早「く……!」ヨロッ

千早「なんだったの、今の光は……」

千早「……そうだ、春香!」キョロキョロ

千早「春香!……春香っ!」




「………うるさいなぁ。そんなに大きい声出さなくても聞こえてるよ、千早ちゃん」




千早「春香、無事なのね?良かった……」

千早「それにしても、今のは春香の技か何かなの?あんなの、今まで見た事なかったけど……」



「まあ、それはそうだよね」

「千早ちゃん。技なんかじゃないんだよ。さっきのは、『私達』の目覚めの儀式みたいなものなの」

「……って言っても、千早ちゃんには理解できないかな」



千早「目覚めの、儀式……?」

千早(そういえば春香、いつの間にあのリボンを付けたのかしら……?)



「えーっと、正確には『私』とは初めましてだね。『わたし』の時にしか千早ちゃんに会ってないもんね」



千早「どういう、事……?」

千早「あなたは、私の知っている春香ではないというの?」



「あ、私ってば自己紹介がまだだったね」

「コホン……」



195: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:50:22.57 ID:ot6eQ0tlO

春閣下「天より高く、海深く……」

春閣下「春の嵐の香り舞う……」



春閣下「光と闇の統治者、ハルシュタイン閣下とは私の事!」バッ

春閣下「さあ、愚民共……」




春閣下「……恐れ!」




春閣下「……ひれ伏し!」




春閣下「崇め奉りなさいっ♪」ビシッ




千早「………」





千早「あの、春香?」

千早「それ、いつかの映画の台詞でしょう?」


春閣下「あ、あれ?信じてないの?」


千早「よほどあのキャラが気に入ったのね」


春閣下「い、いや、だから本当に……」


千早「春香。悪いけど、今は遊んでる場合ではないと思うわ」


春閣下「む〜……」



春閣下「ま、いいや」

春閣下「詳しく説明するのもめんどくさいから、千早ちゃんには少し眠っててもらおっかな」ゴゴゴゴ


千早「!」

千早(春香の雰囲気が、変わった……?)



196: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:52:38.70 ID:ot6eQ0tlO

春閣下「それじゃ、行くよっ?」ジリッ


千早(……来るっ!)



パッ…



千早「っ……!?」

千早(き、消えた!?どこに……?)キョロキョロ



春閣下「……えへへ、後ろだよっ♪」



千早「くっ!」クルッ

千早(いつの間に!?)



春閣下「遅いよっ!」ブンッ


千早(やられるっ!)


春閣下「あっ……!」ツルッ


ドテッ


春閣下「……痛たた……」

春閣下「うぅ、転んじゃったよぉ……」


千早(この転び方、いつもの春香の……)

千早(ちょっと驚いたけど、いつもの春香……よね?)


197: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:55:48.45 ID:ot6eQ0tlO

春閣下「………千早ちゃん、今、油断してるでしょ?」


千早「えっ?」


春閣下「……精神波っ!」バッ


ピリリッ!


千早「あぅっ……!」ヨロッ


ドサッ


千早「………」グッタリ




春閣下「……ふぅ。これで千早ちゃんは一安心かな」

春閣下「千早ちゃんを元に戻しておかないと、『わたし』が悲しむもんね」

春閣下「私は、千早ちゃんの事なんて別に興味ないんだけど」



ルナザウルス「あー、まだ目がしぱしぱするッス……」ムクッ



春閣下「あ、忘れてた。そういえば魔物と戦ってたんだっけ」

春閣下「じゃ、ちょっと遊んで来よっかな♪」



スゥゥ…



スカルミリョーネ「……す、助太刀、必要…か……?」


春閣下「スーさん、いたんだね」

春閣下「いらないよ、別に。私ひとりで充分」

春閣下「それよりさ、美希とバルバリシアさんをお願いしてもいいかな?」

春閣下「『わたし』がすごく心配してるからさ」


スカルミリョーネ「……わ、わかった。気をつけ…ろ……」


ブワッ…


春閣下「………」

春閣下「……よし、行こう」


スタスタ…



198: ◆bjtPFp8neU 2015/04/27(月) 23:59:45.12 ID:ot6eQ0tlO

春閣下「やっほー!遊びに来たよっ!」フリフリ


ルナザウルス「あっ!あんた、ひとのリボンを勝手に付けて!」

ルナザウルス「それは自分がコトリ様から預かった、大切なリボンッス!」

ルナザウルス「返してもらうッス!」ダッ



春閣下「……小鳥さん?」ガキィン

春閣下「そっかぁ。あの人の差し金なんだぁ」キィン

春閣下「じゃあ、小鳥さんに感謝しなきゃだね」ジャキィン


ルナザウルス(あれ?自分の攻撃を軽々と受けてる……?)


ルナザウルス「他人のモノを勝手に盗っちゃダメって、教わらなかったッスか〜!」ブンッ


春閣下「あははっ!」ヒョイッ


春閣下「魔物もそういう事言うんだね。なんかおっかしー!」


ルナザウルス「な、何がおかしいんスかっ!?」


春閣下「じゃあ、自分達はどうなの?」


ルナザウルス「えっ?」


春閣下「人間達の命を勝手に奪うのは、許されるのかなぁ?」ニコッ


ルナザウルス「あっ……」


ビュンッ…


スタッ


春閣下「……ねえ?」ガシッ

ルナザウルス「は、早……!」

春閣下「それが許されるなら、私も奪っちゃおっかなー?」チャキッ



春閣下「……あなたの、命♪」ニコッ



ルナザウルス「うっ……!」ゾクッ


199: ◆bjtPFp8neU 2015/04/28(火) 00:02:15.86 ID:tiLfwS2SO

春閣下「実は私も、試してみたいんだよね」

春閣下「『わたし』と融合した私が、どれだけの力を出せるのか」


ルナザウルス(なんなんスか一体……!)

ルナザウルス(この娘は、単なるザコだったはず……!)

ルナザウルス(威圧感が、ハンパないッス……!)




春閣下「あ、そうだ!いい事思いついちゃった♪」

春閣下「小鳥さんに代わって、このまま私が世界を滅ぼしちゃおう!」

春閣下「そうすれば、私はプロデューサーさんと2人っきり……///」

春閣下「えへへ、いい考えだと思わない?」

春閣下「え?……わ、わかってるよぉ!冗談だよ、冗談」

春閣下「ただ言ってみただけだってば!」



ルナザウルス(誰と話してるッスか……?)

ルナザウルス(とにかく、今がチャンスッス!)


ルナザウルス「臭い息、喰らえッス!」


ブワッ…



春閣下「うぷっ……!」

春閣下「な、何コレ!?く、ひゃい……!」ヨロッ


ルナザウルス「や、やった!」

ルナザウルス「調子に乗ってるからそうなるんスよ!」


200: ◆bjtPFp8neU 2015/04/28(火) 00:05:26.69 ID:tiLfwS2SO

春閣下「うぅ……」

春閣下「体が動かないよぉ……」


ルナザウルス「あの世で後悔するといいッス〜!」ブンッ



春閣下「………なーんちゃって♪」ダッ



ルナザウルス「………は?」スカッ



春閣下「えいっ!」ブンッ


ザシュッ!



ルナザウルス「がっ!」

ルナザウルス「な、んで……?」グラッ


ドサッ



春閣下「えへへ、このリボンがある限り、そんな攻撃は通用しないんだよ?」

春閣下「……って、もう聞こえてないか」

春閣下「うーん、ちょっと早まっちゃったかな」

春閣下「使ってみたかったな、フルパワーの暗黒剣……」チャキッ



バタンッ!



伊織「千早っ!春香っ!」

ルビカンテ「………」


201: ◆bjtPFp8neU 2015/04/28(火) 00:08:35.13 ID:tiLfwS2SO

春閣下「あっ、遅いよ伊織〜。私、ずっと待ってたんだからね」


伊織「何言ってんのよ!あんたが勝手にひとりで出て行ったんじゃないっ!」


春閣下「あれ、そうだっけ?」


伊織「……って、そんな事はこの際どうでもいいわ。あんたは無事みたいだし」

伊織「千早は?千早はどこにいるの?」


春閣下「千早ちゃんならあっちで寝てるよ〜」スッ



千早「………」



伊織「千早っ!」

タタタタ…



伊織「千早、しっかりしなさい!」ユサユサ


春閣下「だから寝てるだけだってば。ちゃんと無事だから、安心しなよ」


伊織「良かった……!」ギュッ


ルビカンテ「!」

ルビカンテ「イオリ、来るぞ!」


伊織「えっ?」



ルナザウルス「……ふぅ、ふぅ……!」ヨロッ

ルナザウルス「自分が、負ける訳ないッス……!」

ルナザウルス「人間なんかに……!」



春閣下「わぁ、割と本気でやったのに、結構しぶといんだね」


伊織「あいつ、千早をさらった魔物じゃない?」

伊織「あんたが戦ってたの?」

春閣下「うん。美希も来てくれたんだけど、あんまり役に立たなかったみたいだね。あはは」

春閣下「で、どうする?」

伊織「どうするって、何がよ?」

春閣下「どっちがやる?」

伊織「………は?」



ルビカンテ(あのハルカという娘……?)



202: ◆bjtPFp8neU 2015/04/28(火) 00:16:25.78 ID:tiLfwS2SO

ー 地上世界 バブイルの塔 麓 ー



律子「うーん……」

貴音「やはり、動きませんね……」

律子「動力となるクリスタルも、粉々になっちゃったみたいだし……」

律子「まさか、魔導船が動かないなんて」

律子「まずいわね。一人であの巨人と戦ってる響も心配だし、春香達の事も……」

律子「こんな島に取り残されて、船も動かない」

律子「これじゃ、身動き取れないわね……」

貴音「そうですね……」



ザッ…



「……えらい音がしたから来てみれば、なんじゃ、人間か」



律子「……えっ?」クルッ

律子「あの、あなたは?」



家老「ワシは、エブラーナ王家に仕える家老じゃよ」



貴音「なんと。この様な僻地にも、まだ生存者がいたのですね」

律子(……あれ?エブラーナって、どこかで聞いた様な……)

家老「エブラーナの民を見くびってもらっては困りますな。エブラーナは忍者の国。耐え忍ぶのは、我々の得意とする事なんじゃ」

貴音「忍者、ですか。なかなかに面妖ですね」

律子(忍者って、まさか……)

家老「今もこうして、お嬢……イオリ王女が、あの憎き仇ルビカンテを討ち取ってくれるのを待ちわびておるんですじゃ」

律子(やっぱり……!)


203: ◆bjtPFp8neU 2015/04/28(火) 07:39:40.80 ID:tiLfwS2SO

貴音「伊織?この国の王女は、伊織なのですか?」

家老「そうじゃが、それが何か?」

貴音「伊織は、わたくし達の大切な仲間なのです」

家老「なんと、そうじゃったか……!」

律子「………」

貴音「……律子嬢?どうかされましたか?」

律子「う、ううん、なんでもないわ……」

貴音「………?」



貴音(このご老人と会ってから、明らかに律子嬢の様子がおかしい……)

貴音(もしや……?)



貴音「……律子嬢。あなたの気持ちはわかりました」

律子「えっ?」


204: ◆bjtPFp8neU 2015/04/28(火) 07:42:41.45 ID:tiLfwS2SO

貴音「さぞや辛かったでしょう。ひとりで抱え込んでおられたのですね」

律子「………」

律子(さすが貴音。鋭いわね)

貴音「ですが、何も心配する事はありません」

律子「貴音……」

貴音「お腹が空くのは、人として当たり前の事ですから」

律子「違うわよっ!」スパーン

貴音「なんと!」



律子「はぁ……どうしてそうなるのよもう……」

貴音「しかし、腹が減っては、戦もままなりません。ここは、食べ物を探すべきかと」

律子「それはあなただけでしょうが」



家老「あんたらは、腹が減っておるのか?」

律子「あ、ええと……」

貴音「はい。それはもう!」グゥゥ


家老「お嬢のご友人となれば、もてなさない訳にはいきますまい」

家老「少しばかりなら蓄えもあります。ついて来てくだされ」


スタスタ…



貴音「なんとお優しいお言葉。さ、律子嬢。好意を受けるとしましょう」

律子「………」

貴音「律子嬢……?」

律子「……わかったわよ。行きましょ」


スタスタ…



律子(またもや気まずい事になっちゃったわ……)

律子(はぁ……)


205: ◆bjtPFp8neU 2015/04/28(火) 07:46:25.03 ID:tiLfwS2SO

ー エブラーナの洞窟 ー



貴音「モグモグ……」

律子(この洞窟には、伊織の国の人達が暮らしている……)

貴音「ムシャムシャ……」

律子(知らなかったとはいえ、私がルビカンテを遣って伊織の国を滅ぼしたから……)

貴音「パクパク……」

律子(不可抗力……じゃ、済まされないわ。さすがにコレは……)

貴音「ゴクゴク……」

律子(私自身、『悪役って楽しいかも』なんて思った事もあるし……)

貴音「モグモグ……」

律子(でも、悪い事ばかりでもないのかな……)

貴音「ムシャムシャ……」

律子(あの子達は、辛い事を乗り越えて、とても頼もしくなったもの……)

貴音「パクパク……」

律子(……もしかして小鳥さん、みんなを成長させる為に敢えてこんな事を……?)

貴音「ゴクゴク……」

律子(……なーんて、そこまで考えてないわよね。単純に楽しんでるんだわ、きっと)



貴音「………ふぅ。ご馳走様でした。まこと、美味でした」



家老「なんとまぁ……よう食べましたな、あんた……」

貴音「出されたものを残すなど、わたくしの主義に反しますゆえ」ニコッ

家老「それは結構な事じゃが、お連れの方はよろしかったのか?ほとんど食べていないじゃろ?」

律子「ああ……私はいいんです。そんな資格、ないですから」

家老「?」



律子「……さ、貴音。そろそろ行くわよ」ガタッ

律子「どうにかしてこの島を脱出する方法を見つけないと」

貴音「そうですね」

貴音「ご老人。あなたのお陰で、助かりました。ありがとうございます」ペコリ

家老「………ふむ」



家老「あんた達は、この島を脱出したいんじゃな?」

律子「はい。そうですけど……」

家老「よろしい。ではあんた達に、海を渡る忍術を授けましょうぞ!」



律子・貴音「海を渡る、忍術……?」




209: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 22:31:05.41 ID:4t0kUEQDO

ー 飛空艇 エンタープライズ ー



ババババババ…



響「2人に紹介するぞ!」

響「この子は、飛空艇の『エン太郎』。ここまで、ずっと自分達と一緒に頑張って来たんだ!」

あずさ「うふふ♪ よろしくね、エン太郎ちゃん?」

亜美「よろよろ〜!」



響「……ふんふん。そうかぁ」

亜美「ひびきん、どったの?」

響「エン太郎が、『新しい友達が増えて嬉しい。こちらこそよろしく』だってさ!」

あずさ「響ちゃん、エン太郎ちゃんとお話できるの?」

響「うん!自分達、家族だもんね!」

あずさ「まあ、とってもステキね〜」

亜美「いいな〜ひびきん。亜美もそーいうスキルが欲しかったな〜」

響「でも、亜美もあずささんも、魔法が使えるんでしょ?それはそれでうらやましいけどなー」

亜美「まぁね!自分、カンペキですからさー!」ドヤッ

響「ちょ、ちょっと!真似するなら、ちゃんと真似してよ!」

亜美「あはは、めんごめんご」



亜美「でもさ、亜美の魔法、チョー期待しててよね!巨人なんてボッコボコにしてあげるからさっ!」

あずさ「私も、みんなと一緒に頑張るわ〜」

響「2人とも、頼りにしてるぞ!」



210: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 22:34:40.57 ID:4t0kUEQDO

亜美「……ねえねえひびきん、飛空艇のソージュウってむずかしい?」

響「えっ?なんで?」

亜美「いや〜、亜美も、ちっとだけモノホンの飛空艇をソージュウしてみたいな〜なんて」

響「うーん、自分も覚えるの苦労したし、結構大変だと思うぞ?亜美には無理じゃないかなぁ?」

亜美「え〜!だって、亜美達が乗ってた飛空艇よりこっちのがカッコいいんだもん!」

亜美「ねえねえひびきん。亜美にもソージュウさせてよ〜」グイグイ

響「ちょ、ちょっと亜美!引っ張っちゃダメだぞ!」ヨロッ



グラッ…



あずさ「うふふ、2人とも楽しそうね〜」

響「あずささん、遊んでるんじゃなくて亜美が……」

亜美「あずさお姉ちゃん聞いてよ〜!ひびきんが、亜美にソージュウさせてくれないんだYo〜」

あずさ「あらあら……」

あずさ「響ちゃん。仲良くしなきゃダメよ?」

響「ええっ!?自分が悪いの?」

亜美「ホラ!あずさお姉ちゃんもこう言ってる事だしさぁ!」

響「で、でもなぁ……」

あずさ「じゃ、こうしましょう」

あずさ「間を取って、私が操縦するわ!」

響「そ、それは一番ダメだと思うぞ!」

亜美「う、うんうん。ミイラ取りがミイラになっちゃうYo!」

あずさ「あら〜、残念ねぇ……」



211: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 22:38:41.15 ID:4t0kUEQDO

亜美「……んで、今亜美達は、バブイルの塔に向かってるんだよね?」

響「うん。そこで貴音と律子は行方不明になったからね」

あずさ「魔道船、だったかしら?」

あずさ「その船で、もう脱出してる可能性もあるんじゃない?」

響「うーん、確かにその可能性もなくはないけど……」

亜美「まあ、魔道船に乗ってたとしたら、そのうちすれ違うっしょ!」

あずさ「そうね〜」

響「そうだな!」

響(……あれ?そういえば魔道船って巨人に撃ち落とされたんじゃなかったっけ?)

響(……ま、いいか)



あずさ「……あら?あんなところに、巨人さんがいるわねぇ」




巨人2『………』




亜美「ほ、ホントだ……!」

亜美「うわ〜、マジだ!マジもんの巨人だよ!」

亜美「どうしよひびきん!亜美、コーフンしてきちゃったよ〜!」ユサユサ

響「あ、亜美、ちょっと落ち付いてよ!危ないから!」ヨロッ



212: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 22:43:15.13 ID:4t0kUEQDO

あずさ「……そうだわ!」

あずさ「巨人さんに律子さんと貴音ちゃんの事を聞いてみましょう」

亜美「うんうん。巨人ならきっと、りっちゃんやお姫ちんのコト知ってるかも……」

亜美「……って、えええっ!?」

響「いやいや、あれ、普通に敵でしょ!教えてくれる訳ないでしょ!?」

亜美「そ、そうだよあずさお姉ちゃん!」

あずさ「2人とも。魔物さんも、意外と見かけによらないのよ?タコさんとか、親切な魔物さんもいるの」

亜美「そ、そうなのかなぁ……?」

響(タコってなんの事だ……?)

あずさ「大丈夫。私がちょっと行って帰って来るだけだから」

亜美・響「えっ?」



あずさ「じゃあ2人とも、お留守番、お願いね?」



あずさ「……テレポ!」



シュンッ…



響「き、消えちゃったぞ……?」

亜美「うわー……そうきたかぁ」

亜美(……ヤバいっぽい?)

亜美(あずさお姉ちゃんがテレポとか、シャレになんないかも)



亜美「ひびきん、とりあえずあずさお姉ちゃんを追いかけよーよ!」

響「わ、わかったぞ!」


ビューーン…



213: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 23:32:21.54 ID:IdaHJSynO

ー トロイア南の海上 巨人の上 ー



ヒュン…



スタッ



あずさ「うふふ、うまく来れたわ」

あずさ「……それにしても、巨人っていうだけあって、とても大きいわね〜」

あずさ「これだけ大きいと、食費が大変そうねぇ」



巨人2『……うわっ!に、人間!?なんで急に?』



あずさ「あ、すみませんね、突然お邪魔してしまって」

あずさ「少し、お尋ねしたい事があるんですけど〜」



巨人2『いや、あの、ボク急いでるんで……』



あずさ「この辺りで、銀髪の女性とメガネをかけた女性を見ませんでしたか〜?」



巨人2『……ひとの話、聞いてないし!』

巨人2『えーと、見てないですけど?』



あずさ「そうですか……」



巨人2『あれ?っていうかお姉さん、どこかで会いませんでしたか?』



あずさ「えっ?」

あずさ「あ、あの〜。もしかしてそれは、ナンパですか〜?」



巨人2『そ、そんなわけないでしょ!?』

巨人2『……ほら、こないだ空の上で会ったじゃないですか?』



あずさ「空の上で……?」



214: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 23:35:02.86 ID:IdaHJSynO

巨人2『でも、おかしいなぁ……。お姉さんはあの時殺したハズなんだけどなぁ』



あずさ「………」

あずさ「もしかしてあなた、あの時の……」

あずさ「ええと、確か……ブレイクさん、だったかしら?」



巨人2『プレイグだよっ!』



あずさ「あら〜、私ったら。ごめんなさい」



巨人2『うん、丁度いい機会かもしれない。お姉さん、悪いけど……』



巨人2『今度こそ、殺すね?』ギラッ



あずさ「まあ、それは困ったわねぇ……」

あずさ「あの〜、私、待たせている人がいるので、これでお暇させていただきますね〜」



巨人2『……逃がさないよ!』ブォン



あずさ「ええと、とりあえず、亜美ちゃんと響ちゃんの所へ戻らないと……」

あずさ「それじゃ、お騒がせしました〜」

あずさ「……テレポ!」


シュンッ…



巨人2『あっ、逃げられちゃった……』

巨人2『……まあいいか。そのうちまた、戦う事になるよね』




…ビューーン!




響「あずささ〜ん!」

亜美「大魔道士亜美、参上っ!」



巨人2『この飛空艇……さっきの子か』



215: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 23:36:48.56 ID:IdaHJSynO

巨人2『ひとり逃がしちゃったからね。今度はちゃんと殺さなきゃ!』ゴゴゴゴ



響「く、来るぞ!」

亜美「よ〜っし!ひびきん、フォーメーションBで行くよっ!」

響「わ、わかった!」ガシッ



響「………」



響「…………あれ?」



響「ねえ亜美、フォーメーションBって何?よく考えたら自分、そんなの知らないぞ」

亜美「んもぉ、ひびきんはアドリブが効かないなぁ」

亜美「そんなのノリに決まってるっしょ〜!」

響「ええぇ!?急にそんな事言われても……」




ピカッ!



亜美「来たよ、ひびきんっ!」

響「え、エン太郎、回避だっ!」グイッ



ドゴオォォォォン!




216: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 23:43:14.55 ID:IdaHJSynO


ビューーンッ!



響「ふふーん!そんな遅いビーム、当たらないぞっ!」

響「くらえっ!ナンクル砲っ!」



ヒュー…ドゴオオォォン!



亜美「おー!なんか派手なカンジ!」



巨人2『……残念だったね』



亜美「……あり?ゼンゼン効いてないっぽいよ〜」

響「くそー……」



巨人2『……悪いけど、そんなの効かないよ』

巨人2『だって、ボクが乗ってる巨人がホンモノだもんね!』

巨人2『ホンモノの巨人がそんな簡単にやられる訳ないでしょ?』



響「さすがに手ごわいぞ……」

亜美「ホンモノって……」

亜美(兄ちゃんが言ってた通り、こいつ以外はニセモノなんだね)

亜美(じゃあ、あの巨人だけは、ゲームと同じで中に入って破壊するしかないのかなぁ……)

亜美(ん〜……。亜美達2人だけじゃ、どーにかできそうもないっぽいね)

亜美(でも、他の巨人がニセモノってコトなら……)



響「そういえば、あずささんをどこにやったんだ!」



巨人2『アズサ?……ああ、さっきのお姉さんの事かな?』

巨人2『さっきのお姉さんなら、どこかへ行っちゃったけど』



響「え?そうなのか?」

響「ねえ亜美。どうしよう?」

亜美「うーむ……」

亜美「ひびきん。どーやら亜美達だけじゃアイツに敵わないっぽいよ」

響「じゃあ、どうするんだ?自分、逃げるのはもうイヤだぞ」

亜美「あの巨人が大将ってコトだから……」

亜美「ショーをインとすれば、まず馬をいや〜ん・ 作戦だよっ!」

響「??」




217: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 23:47:21.67 ID:IdaHJSynO

ー エブラーナ近海 ー



バシャバシャ…



貴音「……まさか、海の上を歩く日が来ようとは夢にも思いませんでした」バシャバシャ

律子「………」バシャバシャ

貴音「忍法水蜘蛛の術。まこと不可思議な忍術です」

家老「ふっふっふ。火遁や雷迅などの忍術は、王家の血を引く者しか使えないのじゃが、この様な一般的な忍術なら、全部で108はありますじゃ」

貴音「なるほど。忍者とは奥が深いのですね」

律子(実際は、ちょっと変わった草履みたいなのを履いて歩いているだけなんだけどね)

律子(……まぁ、水に浮く草履っていう点では不思議といえば不思議だけど、こんなのを忍術って言っていいのかしら)



律子「……ところで、なんであなたもついて来てるんですか?」

家老「あんたら、忍術は初心者じゃろ?心配じゃからこうして様子を見てやってるんじゃよ」

律子「それはありがたいんですけど、ずーっと私におぶさってるつもりですか?」

家老「あんた、この老体に歩けと申すのか?冷たいおなごじゃのう」

貴音「律子嬢。お年寄りは大切にするものですよ?」

律子「………もう、わかったわよ」



219: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 23:51:42.75 ID:IdaHJSynO

律子「それより貴音、もう少し急ぐわよ。このペースじゃ、いつみんなと合流できるかわからないわ」

貴音「承知しました」

貴音「へいすと!」


カタカタ…シャキーン!



家老「おお!何やら動きが早くなった?」

貴音「ふふ。魔法も忍術に負けてはいませんよ?」

家老「ふむ。まるで若返ったようじゃ!」グッ

律子「じゃあ、もう自分で歩けますよね?」チラ

家老「……あいたたた!急に持病の腰痛が……」

貴音「なんと!それは一大事です!すぐにわたくしの魔法で……」

律子「………」

律子(たくましいお爺さんね、まったく)



律子「…………ん?」チラ

律子「何かしら、あそこに浮かんでる黒い塊は」

貴音「すみません。遠過ぎてわたくしには良く見えないのですが……」

貴音「海に浮かんでいるならば、船の類ではないでしょうか?」

律子「だとしたら、文字通り渡りに船ね」

律子「行ってみましょう。もしかしたら、乗せてもらえるかも」

貴音「だと、良いのですが……」



バシャバシャ…




220: ◆bjtPFp8neU 2015/05/10(日) 23:55:22.23 ID:IdaHJSynO


巨人3『ふぅ……』プカプカ



巨人3『落ち着きますねぇ……』

巨人3『青き星に、こんなに水が集まっている場所があるなんて……』

巨人3『あ〜、気持ちよくてなんだか眠くなってきちゃったなぁ……』



巨人3『……zzz』






律子「………よい、しょっと」スタッ

律子「うーん……」キョロキョロ

律子「大きい割には、ずいぶん殺風景な船ねぇ……」

貴音「それに、何やら変わった形をしていますね」

貴音「まるで、人の体の様な……」

家老「なんじゃ、忍法水蜘蛛の術はお気に召さなかったかの?」

律子「いえ、そういう訳じゃないですけど……」

律子「あなたのおかげでここまで来れたのは感謝してます。でも、私達は急いでるんです」

律子「船も見つけられましたし、その時に応じて、最善の方法をとらないと」

家老「ふむ。合理主義なんじゃのう」

律子「とにかく、この船の責任者を見つけないといけないわね」

貴音「………おや?」チラ

律子「貴音?どうかしたの?」

貴音「あそこに人影が……」スッ




「………困ったわ〜。ここはどこかしら〜……」




律子「……本当ね」

律子「もしかしたら、この船の乗組員かもしれないわね」

貴音「そうですね。声をかけてみますか?」

律子「ええ」



律子「あのー!すみませーん!!」




「は〜い?何かご用でしょうか〜?」




221: ◆bjtPFp8neU 2015/05/11(月) 00:01:33.41 ID:ZOTAURslO

律子「…………って、あずささん!?」



あずさ「あら〜、律子さんに貴音ちゃん!やっと見つけましたよ〜」

貴音「あずさ、ここで一体何を?」

あずさ「ええ。私、律子さんと貴音ちゃんを探しに来たのよ〜?」

律子「えっ?ひとりで、ですか?」

あずさ「いえ。響ちゃんと亜美ちゃんも一緒だったんですけど……」

あずさ「どうやら、いつの間にかはぐれてしまったみたいですねぇ」

律子「こんな状況でも、やっぱり迷子になっちゃうんですね……」

あずさ「す、すみません……」

家老「どうやら、お仲間と合流できたみたいですな」

律子「ええ。ちょっと予想外でしたけど」

あずさ「あの、律子さん?そちらの方は?」

律子「ああ、この人は、伊織のお世話係りだそうですよ」

家老「お嬢がお世話になっておりますじゃ」ペコリ

あずさ「まあ、これはご丁寧にどうも」ペコリ



貴音「しかし、どうやってこんな海の上まで来たのです?まさか、あずさも水蜘蛛の術を?」

あずさ「ううん、それは魔法で……」



グラッ…



巨人3『……ひとが気持ち良く寝てる隙に、忍び込んで来るとは……』

巨人3『油断ならない人達ですねぇ……』



律子「ふ、船がしゃべった!?」

貴音「………!」

貴音「いえ。どうやら、わたくし達が船だと思っていたのは……」

あずさ「巨人さんだったみたいですねぇ」



巨人3『面倒だけど、あなた方は消えてもらいましょうかねぇ……』



律子「2人とも、来るわよ!」

貴音「ええ!」

あずさ「は〜い」



225: ◆bjtPFp8neU 2015/05/12(火) 00:07:56.14 ID:QtR+zax0O

ー トロイア南の森 ー



ドゴオオォン!ドカァン!


メラメラ…!



トロア「森が……!」

ユキコ「も、燃えてますぅ!」



巨人1『ふふふ……。全てはコトリ様の意のままに……!』



トロア「あんなに巨大な魔物がいるとは……!」

トロア「魔物め!これより先には行かせんっ!」チャキッ

ユキコ「っ……!」チャキッ



巨人1『ほぅ。お前は、あの時の神官ですか……』

巨人1『いいでしょう……』

巨人1『いずれ散りゆく命、輝かせて見せなさい!』



ピカッ…



トロア「むっ!?」

ユキコ「トロアさん、危ないっ!」ダッ



ドドドドドドッ!




トロア「ユキコ殿、助かりました……」

ユキコ「良かった、トロアさん……」

トロア「しかし、何という破壊力だ……」

トロア「これでは、近づく事もできない……」



巨人1『どうしました?逃げ回るだけですか?』

巨人1『それでは勝てませんよ?』


ブォンッ



トロア「くっ……!」ダッ

ユキコ「いやぁっ!」ダッ



ドゴオォン…!



トロア「せめて、動きを鈍らせる事ができれば……!」


226: ◆bjtPFp8neU 2015/05/12(火) 00:13:19.42 ID:QtR+zax0O

「……スロウ×3!」


カタカタ…シュルンッ



巨人1『むっ……魔法!?』

巨人1『誰ですか!?』



真美1「んっふっふ〜!」フワフワ

真美2「美少女白魔道士真美、参上っ!」フワフワ

真美3「悪いコトは許さないんだかんねっ!」フワフワ




トロア「あなた方は、双子の魔道士のアミ殿とマミ殿……?」

トロア「……と、あとひとりは……?」

ユキコ「アミさん達って、三つ子だったんですか……?」



真美1「あー、いろいろ魔法を重ねがけしてるかんねー」

真美1「ま、とりあえずとろ姉ちゃん、ゆきぴょんツー、ここは真美達に任してよ!」

真美2「巨人なんて、真美達がぶっこわしてあげるからさっ!」

真美3「さー、行くよっ!」ビシッ

P「なあ、真美。あんまり無茶はするなよ?」

真美1「わかってるってば!兄ちゃんはちゃんと見ててよね!」

P(レビテト、ヘイスト、ブリンクをかけているとはいえ、ひとりで巨人と正面からやり合うのは無茶だ)

P(真美、お前はあくまで囮なんだからな……?)



巨人1『人間が増えたところで、何ができる?』

巨人1『塵にして、あげましょう!』

ズズズ…

巨人1『くっ!動きが、遅く……!?』



真美1「そりゃあ、スロウを重ねがけしたからねぇ」



227: ◆bjtPFp8neU 2015/05/12(火) 00:16:25.89 ID:QtR+zax0O

トロア「今だっ!」ダッ

ユキコ「わ、私も行きますぅ!」ダッ



トロア「……っせい!」ブンッ


ガキィン!


ユキコ「えいっ!」ブンッ


ゴキィン!



トロア「く……まるで歯が立たない……!」

ユキコ「と、トロアさんっ!」

トロア「えっ?」



巨人2『このまま踏み潰してあげましょう!』



トロア「マズいっ!」



真美1「右手にプロテス……」ポゥ

真美2「左手にシェル……」ポゥ

真美3「合わせて、ウォールっ!」バッ


シャキーン!



巨人2『な、何!?見えない壁だと……!?』ググッ



真美1「今のうちに2人は逃げてっ!」

真美2「ここは真美達がなんとかするから!」

真美3「さあ、早く!」



雪歩「トロアさん、ユキコさん!こっちに!」



トロア「ユキホ王女!」

トロア「……マミ殿、お願いします!」

ユキコ「気を付けてください!」



タタタタ…



228: ◆bjtPFp8neU 2015/05/12(火) 00:21:42.94 ID:QtR+zax0O

巨人1『五月蝿い魔道士ですね……』

巨人1『………お前ひとりで巨人に勝てるとでも?』



真美1「ん?真美ひとりじゃないよ?」

真美2「真美には、たよりになる仲間がたっくさんいるモンねっ!」

真美3「仲間がいれば、なんくるないのさ!」



巨人1『何か企んでいるのですね』

巨人1『ですが、仲間がいるのはこちらとて同じ事』



真美1「あー、それなんだけどさー」

真美2「巨人って、全部で何体いるの?」



巨人1『……?4体ですが……?』



真美3「おお……けっこういるんだね」

真美1「んじゃあ、ホンモノの巨人はどこ?」



巨人1『何……?』



真美2「真美知ってるよ」

真美3「こーゆー時って、一番最初に攻めて来るのは、だいたい下っぱだもんね!」

真美1「んっふっふ〜!だから、君はホンモノそっくりに造られたニセモノなのだよ!」ビシッ



巨人1『……そこまで知っているのなら、もはや教える事はありません』

巨人1『お前はここで、朽ち果てるのですからっ!』バッ



ブゥン…



P「真美!」

真美1「わかってるよ、兄ちゃん!」



真美(兄ちゃんの言ってた通り、ホンモノは1体だけなんだね)

真美(だったらこの巨人は、ゲームと違って中に入らなくても破壊できるってコトっしょ!)



真美「兄ちゃん!ここは、ショーをインとほっすれば、まず馬をいや〜ん!作戦で行くよっ!」

P「……え?」



229: ◆bjtPFp8neU 2015/05/12(火) 00:25:23.39 ID:QtR+zax0O

ー トロイア城 会議室 ー


ファブール王「アン殿。2人だけでは些か荷が重いのではないか?」

アン「ですが、今、我が国には腕の立つ者が……」



店主「………」

店主「よしっ!」ガタッ

店主「オレ、ちょっと行って来るわ」

ファブール王「そなた……本気か?」

店主「うん。何もしないっていうのは、性に合わなくてさ」

ものまね士「もちろん、私も一緒に行きますよ!」

店主「ものまね士……」

ものまね士「もう、離れたくないんです!」

店主「……わかったよ」



アン「待ってください!」



店主「ん?なんだ?」

アン「あなた方、無駄死にするおつもりですか?」

ものまね士「そんな!やってみないとわからないじゃないですか!」

店主「どの道、この国が滅ぼされたらみんなおしまいだしな」

アン「ですが、そんな事をしても、あなた方には何のメリットもないはず」

店主「あー……」

店主「メリット、とか、難しい事はよくわからん」

店主「ただ、困ってるヤツがいるなら、力になる。それがオレの流儀なんだ」

ものまね士「まあ、店主さんじゃ戦力になるか怪しいですけどねぇ?」

店主「う、うるさいなぁ」

アン「………」



230: ◆bjtPFp8neU 2015/05/12(火) 00:29:08.37 ID:QtR+zax0O

ルカ「そ、そうですよ!」

ルカ「みんなで力を合わせれば、何とかなるかもしれません!」

ジオット「………」



ガチャ…




「……そこの娘さんの言う通りだ!」



アン「えっ……?」クルッ

アン「あら?声がしたのに、姿が……」キョロキョロ



「こらこら、もっと下だよ!まったく、君達人間は大き過ぎるんだ」



アン「!」

アン「小人……?」



ミニ助「やあ!お初にお目にかかる」

ピョン吉「わぁ、人間がたくさんいるなぁ!」

ブタ美「ど、どうも……」ペコリ



ファブール王「小人に、ブタに、カエル……?」



技師1「すみません、神官さん。生存者を探すついでに、念の為ミスリルの村にも寄ったんですけど……」

技師2「この方達が、どうしても連れて行けと……」

アン「そうでしたか……」



ミニ助「ボク達がミスリルの代表、ミスリルブラザーズだ!」

ミニ助「世界の危機だという事は彼らから聞いた」

ミニ助「世界の為、ボクらも力を貸そう!」

アン「は、はぁ……」

ジオット「ほう、地上には人間以外の生物もいたのか」

老婆「ふふ、こりゃあ頼りになりそうだねぇ」

長老「ふむ……」



231: ◆bjtPFp8neU 2015/05/12(火) 00:32:13.84 ID:QtR+zax0O

ミニ助「……で?君達はこんなところで何をまごまごしているんだい?世界の危機が迫っているんだろう?」

アン「で、ですからそれは……」

店主「……そうだった。忘れてたぜ」ガタッ

ものまね士「トロアさんとユキコさんが心配ですね」ガタッ

店主「んじゃ、ちょっと行ってくるか!」

ものまね士「はい!」



技師1「あ、お2人とも」

技師2「巨人とやり合うのでしたら、ぜひ、我々と一緒にファルコン号へ!」

店主「ファルコン号?もしかして、飛空艇か?」

技師1「はい!こんな時こそ、我々の出番です!」

店主「そいつぁ心強いや!よろしくな!」



ルカ「お父様、私達も行きましょう!」

ジオット「………」

ルカ「お父様っ!」



ファブール王「アン殿……」

アン「………」



232: ◆bjtPFp8neU 2015/05/12(火) 00:35:51.48 ID:QtR+zax0O

ミニ助「うん?君達は、協力するためにここに集まったんじゃないのかい?」

ジオット「それは……」

アン「そうですが……」

ピョン吉「だったら、早く行こうよ!」

ブタ美「み、みんなで行けば……恐くないですよ、きっと」



長老「彼らの言う通りじゃ。ワシらに何ができるかが問題ではない。大切なのは、心。皆で想いをひとつにする事なんじゃ」

長老「奇しくも、今この場には様々な種族が集うておる」

長老「人間、ドワーフ、小人、動物……」

長老「姿は違えど、想いは皆、同じなはずじゃ」

アン「………」

老婆「あたしもそこのジジイに賛成だね。世界の危機に、人間もドワーフもないさ」

老婆「あんたの国は、人間に助けられたんだろ?バカ息子」

ジオット「………」



アン「……………わかりました。私も、参りましょう」



店主「いいのかい?神官さん。あんた、自分で言ってたじゃないか。無駄死になるかもって」

アン「いいえ。無駄死にになどさせません」



アン「……ジオット殿」

アン「数々のご無礼、申し訳なく思っております」ペコリ

アン「今一度、私達人間の……」

アン「……いえ」

アン「この世界に生きる全ての生命の為に、お力をお借りできませんか?」

ジオット「………」



ジオット「……わかった」

ジオット「母なる大地の為、我々ドワーフも共に戦おう!」

ルカ「お父様っ!」パァァ

アン「ありがとうございます!ジオット殿」



ミニ助「ん。どうやらみんな覚悟は決まったようだね」

ミニ助「さあ、行こう!魔物どもにひと泡吹かせてやろうじゃないか!」

店主「………なんであのちっこいのが仕切ってんだ?」

ものまね士「まあまあ、いいじゃないですか」




237: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:14:33.70 ID:SLm31wfOO

ー バブイルの塔 1F ー


伊織「……はぁっ!」ブンッ


ガキィンッ!


ルナザウルス「ちっ……!」

ルナザウルス「調子に……乗るなッス!」グイッ


クルンッ…


スタッ



伊織「………」



春閣下「伊織〜、手こずってるみたいだねぇ?手を貸してあげようか〜?」



伊織「うるさいわね!いらないわよっ!」



春閣下「そう?あはは、ツンデレも大変だね〜」



伊織(……どういう事?春香ってば、まるで別人みたいじゃない)

伊織(私が来るまでに、春香に何があったっていうの……?)



ルビカンテ「イオリ!ボーっとするな!」



伊織「……へっ?」



ルナザウルス「……うがあああっ!」ブンッ



伊織「きゃっ!」ゴロン



ルナザウルス「ちょこまかと……!」



伊織「……ま、いいわ」

伊織「とにかく!ここはあんたを倒せば終わりみたいだし、さっさとカタをつけるわ!」

伊織「覚悟しなさいっ!」ビシッ


238: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:21:41.40 ID:SLm31wfOO

伊織「悪いけど、速攻で終わらせるわよっ!」メラメラ


ルナザウルス「炎……?」


伊織「はあああああっ!!」ゴオオオ


ルビカンテ(この威力……!)


春閣下「これは、なかなか……」



伊織「骨は骨らしく、焼かれなさい!」

伊織「火遁っ!!」バッ


ゴオオオオォォォオオ!!



ルナザウルス「ぎゃあああああっ!!」



ルビカンテ(オレの火炎流と同等……いや、それ以上の炎……!)

ルビカンテ(これは、オレの出る幕などなかったな)




…ドサッ


ルナザウルス「………」



伊織「……ふぅ」



239: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:24:17.64 ID:SLm31wfOO

春閣下「へー、伊織も結構やるんだね!」

伊織「……もともとあんたが弱らせた魔物なんでしょ?」

伊織「そんなのに勝っても、嬉しくないわよ」

春閣下「もー、素直じゃないなぁ」


ルビカンテ「イオリ、怪我はないか?」

伊織「平気よ。心配いらないわ」



スゥゥ…



スカルミリョーネ「……や、やっと倒し…た……?」

美希「………」

バルバリシア「………」



伊織「美希……!」

伊織「春香、美希と千早を魔法で治しなさい」

春閣下「え?なんで?」

伊織「は?」

春閣下「なんで私がそんな事しなくちゃいけないの?」

伊織「あ、あんた、何言って……?」


ルビカンテ「!」

ルビカンテ「まだ終わってないぞっ!」



ドゴオオオォン!



伊織「きゃっ……!」ヨロッ

伊織「な……何!?」

春閣下「おー、まだ生きてたんだねー」



巨人4『こうなったら……死なば諸共ッス……!』

巨人4『このバブイルごと、ぶち壊してやるッス!』



ルビカンテ「巨人に乗り込んだか……!」

スカルミリョーネ「……ま、マズい…ぞ……?」


240: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:28:03.67 ID:SLm31wfOO

巨人4『死ねッス!』


ピカッ!


ドドドドドドドドッ!



伊織「いやぁーー!!」ダッ

ルビカンテ「くそっ!」

スカルミリョーネ「……しゃ、シャレに、ならな…い……」



巨人4『みんな……滅びるッス!』



伊織「あんなデカいのに暴れられたら、逃げ場なんてないじゃない!」

ルビカンテ「おい、イオリ!オレの後ろに隠れていろ!」バサッ

伊織「えっ?」

伊織「ぎゃーーーっ!!?」

伊織「ちょ、ちょっと赤い悪魔っ!?あんた、ドサクサに紛れてなんてモノ見せつけてんのよっ!?」

ルビカンテ「見せつけているわけではない。オレのマントは全てをふせ……」

伊織「マントの下、パンツしか履いてないじゃないのっ!!」ドスッ

ルビカンテ「ぐっ!!?」

伊織「この変態っ!ド変態っ!変態大人っっ!!」ゲシッゲシッ

ルビカンテ「ぬおおおっ!?」

スカルミリョーネ「……い、痛そ…う……」



巨人4『この期に及んでコントとか、どんだけ舐めてるんスか……!』



ピカッ



ドドドドドドドドドッ!!



伊織「いやあああっ!!」

ルビカンテ「くっ!もう一度オレのマントで……!」

伊織「それだけはやめなさいっ!」スパーン



241: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:30:18.41 ID:SLm31wfOO

グラグラ…


ズゥゥ…ン!



伊織「な、何!?塔が、揺れて……?」

ルビカンテ「まずい……!ここはもうダメかもしれんぞ!」

伊織「ええっ!?」

伊織「……ちょっとゾンビ!美希の事、ちゃんと守りなさいよねっ!」



スカルミリョーネ「……りょ、了解し…た……」


スゥゥ…




春閣下「………んふっ♪」

春閣下「そろそろ私の出番かなぁ?」

春閣下「………」

春閣下「うん、わかってるよ。無茶なんてしないから」

春閣下「あの魔物を倒すだけ。それだけだよ?」



春閣下「さて……」チラ

春閣下「絶対絶命の大ピンチ。部隊は整ったね」

春閣下「実力を試す、絶好のチャンス!」チャキッ



春閣下「………」ゴゴゴゴ



巨人4『この膨大な負のエネルギーは……!?』



伊織「何よ、あの黒いオーラは……!」

ルビカンテ「……暗黒剣か?なぜ、あの娘が……?」


242: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:33:14.37 ID:SLm31wfOO

伊織「ちょっと赤い悪魔、あんこくけん、って何なのよ?」

ルビカンテ「負の力……つまり、暗黒の闘気を剣に纏わせ攻撃する、暗黒騎士の技だ」

伊織「負の、力……」

伊織「なんで春香がそんなものを?」

ルビカンテ「わからん。だが、暗黒剣はリツコ様も得意とされていたはずだぞ」

伊織「律子も?」

ルビカンテ「ああ。リツコ様は暗黒騎士だからな」

伊織「ふーん……」

伊織(あ、そういえば……)



『春香さんはねー、真っ黒だったよ』

『真っ黒……?』

『うん。黒いのが、ばばーん!って』

『意味がわからないわね』



伊織(……あの時やよいが言ってたのは、この事だったのかしら)

伊織「ねえ、赤い悪魔。春香も、律子と同じく、その……暗黒騎士ってヤツなのよね?」

ルビカンテ「……いや。見たところハルカは、暗黒騎士とは対極に位置する、聖騎士のようだ」

伊織「……は?どういう事?」

ルビカンテ「オレにもわからん」

ルビカンテ「……だが、これだけはわかる。あのハルカという娘、只者ではない」

伊織「………」



243: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:35:16.17 ID:SLm31wfOO

伊織(そうよ。考えてみれば、春香は今まであんな禍々しい技は使わなかったわ)

伊織(……少なくとも、私の前では)

伊織(でも、やよいは見たって事よね)

伊織(やよいは確か、この世界に来て最初の頃は、春香と行動を共にしてたって言ってた)

伊織(つまり、その頃の春香は暗黒騎士だった)

伊織(でも、今の春香は聖騎士。なのに、暗黒騎士の技を使う……?)

伊織(……やっぱり、私がここへ来る前に、春香に何かあったみたいね)




春閣下「伊織〜!安心してよ。私がちゃんとケリ付けてあげるからさっ」フリフリ



伊織「春香……」

伊織「あんた、無茶するんじゃないわよ?」



春閣下「大丈夫だよっ」

春閣下「ちょっとだけ、本気出すだけだから!」ゴオォォオ



春閣下「宇宙に散らばる暗黒物質、ダークマターをもって、我が力とせん……」

春閣下「生きとし生ける者よ、必衰の運命を呪えっ!」



春閣下「……暗黒剣っ!!」バッ



ブゥ…ン



巨人4『い、いきなり真っ暗に……!?』



ルビカンテ「これは……危険かもしれん」

伊織「えっ?」



ゴゴゴゴゴゴ…!



ドゴオオオオオォォン!!!




244: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:39:04.84 ID:SLm31wfOO

モクモク…


春閣下「……けほっ、けほっ!」

春閣下「うぅ、すごい粉塵……」



春閣下「………」キョロキョロ

春閣下「………うん。私の力、結構すごいかも?」

春閣下「プロデューサーさんにも見てもらいたいな。私の、この力!」グッ



春閣下「さて、あとは適当にみんなを回収して……」

春閣下「っ……」ガクンッ

春閣下「あ、あれ……?」

春閣下「ちょっと、飛ばし過ぎちゃった……かな……?」フラッ


ドサッ


シュゥゥ…


春香「………」




ガチャ…


カイナッツォ「……や、やっと、辿り着いたぞ……」ヨロッ

やよい「カメさん、どうもありがとうございましたーっ!」ペコリ

カイナッツォ「フンっ」プイッ



カイナッツォ「……ん?」



モクモク…



やよい「はわわっ。けむりがひどくて、何も見えませんー」

やよい「何があったんでしょーか?」

カイナッツォ「私が知るかっ!」

カイナッツォ「それより、ルビカンテ達を探すぞ!」

やよい「はーい!わかりましたー!」


トテトテ…



245: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:44:01.10 ID:SLm31wfOO

やよい「よいしょ、よいしょ……」ズルズル

春香「………」

やよい「………ふぅ」

やよい「よかった。みなさん、きぜつしてるだけみたいですねー」

千早「………」

伊織「………」

美希「………」



カイナッツォ「……こっちも、四天王はみんな無事なようだ」

バルバリシア「………」

ルビカンテ「………」

スカルミリョーネ「………」



カイナッツォ「しかし……」チラ



ルナザウルス「」



カイナッツォ「なぜ、みんな気絶しているのだ?」

カイナッツォ「あの魔物と刺し違えた、という事なのか……?」



やよい「あのー、カメさん?」

カイナッツォ「なんだ?」クルッ

やよい「春香さんたちはぶじだったので、これからわたしたち、みなさんのところへ帰ろうと思うんです!」

カイナッツォ「フン、そうか……」

カイナッツォ「そういえば、今、人間どもは滅ぼされかかっているんだったな」

カイナッツォ「ならば早く行け。私も、お前達人間の顔を見なくて済むと思うと、せいせいする」


246: ◆bjtPFp8neU 2015/06/02(火) 20:46:46.12 ID:SLm31wfOO

やよい「それなんですけど……」

やよい「どうやってみなさんのところへ帰ればいいんでしょーか?」

カイナッツォ「私が知るかっ!」

やよい「あぅ、すみません……」



やよい(しばさんたちの力をかりれば、海だってこえられるけど……)

やよい(さすがに、わたしひとりで4人をかついで行くのはムリかなーって)

やよい(みなさん、グッスリねてるみたいだし……)



やよい「どーしよう……」



カイナッツォ「………」

カイナッツォ「…………ちっ」

カイナッツォ「ならば、アレを使えばどうだ?」スッ



巨人4『………』



やよい「わぁ……とってもおっきいロボですねー……」

やよい「あの、この巨大ロボって動くんでしょーか?」

カイナッツォ「知らん。だが、この巨人は人間を滅ぼす為に造られたんだろう。動くと考える方が自然だ」

やよい「えーっと??」

カイナッツォ「動く、と言ってるんだ!物分かりの悪いヤツだな!」

やよい「そーですか!」パァァ

やよい「うっうー!わたし、がんばりまーっす!」

カイナッツォ「…………フン。ま、せいぜい足掻くんだな!」



251: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:06:03.45 ID:XXli+SaoO

ー トロイア南の海上 ー


…ドドドドドドッ!


響「うわぁっ!」

亜美「うひゃー!」



グラグラッ…



亜美「こんのー!ブリザガっ!」バッ


コォォ…シャキーン!


響「ね、ねえ亜美!さっきの、ショーがどうのこうのって、どういう意味?」



巨人2『えいっ!』ブゥン



ドゴォォン!



響「あ、危ないっ!」



ビューーン…



亜美「だからー!今亜美達が戦ってるのがホンモノの巨人なのっ!」


亜美「ブリザガっ!」


コォォ…シャキーン!



巨人2『君、さっきから魔法当たらないけど、やる気あるの?』



亜美「よけーなお世話だよっ!」

響「……で、ホンモノだったらなんなのさ!?」



巨人2『ほら、今度はレーザーだよっ!』


ピカッ!



響「え、エン太郎っ!」グイッ



ドドドドドドッ!



252: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:09:19.11 ID:XXli+SaoO

亜美「…………ふぅ、あっぶなー!」

亜美「ホンモノはね、亜美達だけじゃ倒せないの!」

亜美「……ブリザガっ!」


コォォ…パキーン!



巨人2『いや、だから当たってないって……』

巨人2『なんかやる気を削がれるなぁ……』



響「じゃあ、どうするんだ?」

亜美「だ・か・ら!」



亜美「亜美達がホンモノを足止めして、みんながニセモノを倒しやすいようにするんだよっ!」

亜美「巨人が合流しちゃったら、倒しにくくなるっしょ?」



響「なっ……!」



巨人2『なっ……!』



響・巨人2「なるほど……!!」



響「亜美、頭いいなー!見直したぞ!」



巨人2『すごい!そんな作戦を考えてたなんて……!』



亜美「んっふっふ〜!もっとホメてもいいんだよ?」ドヤッ



253: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:11:28.22 ID:XXli+SaoO

響「……って、敵に教えちゃったら、意味ないぞ!」

亜美「あっ……」



巨人2『そんな事聞いちゃったら、なおさら君達は早く殺さないとね!』

巨人2『ちょっとホンキだすよ!』ゴゴゴゴ



響「な、なんかやばそうだぞ……?」

亜美「ぐぬぬ……!」

亜美「千早お姉ちゃんに耳ありとは、このコトかぁ……」




亜美「……なーんてねっ」

亜美「安心めされい、ひびきん殿。亜美の作戦は、すでに始まっているのだ!」

亜美「実はさっきの亜美の魔法でもう、足止めはカンリョーしているのだよ!」

響「えっ……?」

響「でも、亜美の魔法は一回も当たってなかったぞ……?」



巨人2『そ、そうだよ!こっちはまだノーダメージなんだよ!』




254: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:14:24.71 ID:XXli+SaoO
亜美「なんで亜美が同じ魔法しか使わなかったと思う?」

響「そういえば、氷の魔法ばっか使ってたな……」



巨人2『しかも、当たりもしない……』



亜美「亜美、最初っから当てる気なんてなかったよ?」

亜美「だって、足ばっかねらってたんだから!」

響「あっ……!」

響「そういえば、下は海だぞ!」



巨人2『!!』

巨人2『そ、そんな!足元が凍りついて、動かないっ!?』



亜美「だから言ったっしょ〜?『足止めカンリョー』って!」

響「亜美っ!すごいぞ!天才っ!」



巨人2『うわぁん!こんな子ども騙しに引っかかるなんて〜!』ジタバタ



亜美「大魔道士と呼びたまへ!」ドヤッ

響「大魔道士亜美、かっこいいぞー!」



巨人2『動けっ!動けっ!動いてよぉ〜〜!!』ジタバタ



亜美「んっふっふ〜。亜美のカリツォーから逃れることなどできぬわっ!」

響(……亜美、カリツォーは使えない技だぞ)




255: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:17:07.35 ID:XXli+SaoO




…メキッ!



亜美「…………あり?」



…メキメキッ!



響「ちょ、ちょっと……」



巨人2『今動かなきゃ、なんにもならないんだああっ!!』



メキメキッ…



パキーンッ!



巨人2『…………あっ、割れた』



亜美「…………げっ」




巨人2『………』



亜美「………」

響「………」



亜美「ひびきん、逃げよ!」

響「もー!結局こうなるのかー!」グイッ



…ビューーン!



巨人2『待てぇぇぇぇっ!』



ズシィィン!ズシィィン!




256: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:28:03.80 ID:XXli+SaoO

ー エブラーナ近海 ー



巨人3『はぁ、まったく……こんなに水がある場所で私が負ける訳ないじゃないですかぁ……』



グラッ…



律子「きゃっ……!」ヨロッ

あずさ「そ、そういえばここ、海の上でした……」

あずさ「ど、どうしましょう……?」

貴音「巨人が立ち上がると、足場が無くなってしまいます……!」



巨人3『あ、そうか。あなた方人間は、水中で自由に身動き取れないんでしたねぇ』

巨人3『ふふ、これは楽に事が終わりそうですね〜』



グラッ…



家老「……むっ!しまっ……!」ズルッ


ヒュー…バッシャーン!


律子「お、お爺さんっ!?」

律子(助けなきゃ!)

律子(でも、私、泳ぎは……)

律子(……ううん。人の命がかかってる。迷ってる場合じゃないわ!)

律子「すぅーーーー」

律子「……ふっ!」ダッ


ヒュー…バッシャーン!


貴音「律子嬢!」

貴音「くっ、足場が……!」ガシッ

あずさ「律子さんとお爺さんを助けないと……!」ガシッ



巨人3『あと、2人……』

巨人3『いつまでへばりついていられますかねぇ……』



257: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:30:31.75 ID:XXli+SaoO

貴音「あずさ、大丈夫ですかっ?」ググッ

あずさ「た、貴音ちゃん、ごめんなさい……。私、もう腕が……」

貴音「く……!」

貴音(魔法で、どうにかならないのでしょうか……?)



巨人3『水中で身動き取れない、空も飛べない。人間って、可哀想な生き物なんですねぇ……』



貴音「空を………?」

貴音「…………そうでした!」

貴音「わたくしとした事が、こんな初歩的な事を忘れているとは……!」



あずさ「もう、ダメっ……」ググッ

貴音「心配無用です、あずさ」

あずさ「えっ?」



貴音「……れびてとっ!」



…フワッ



巨人3『……あらら』



あずさ「………あ」フワフワ

貴音「とりあえず、一時的にはこれで問題無いはずです」フワフワ

あずさ「わ、私も忘れてたわ〜、この魔法」

貴音(律子嬢は、浮いてこない……)

貴音(やはり、魔法が作用する範囲、もしくは条件が決まっているのですね……)

貴音(それに水蜘蛛の術も、あの草履ありき、といったところ。どうやら万能ではない様です)

次回 P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL 中編