P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL 前編

258: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:34:32.51 ID:XXli+SaoO

巨人3『……そんなに簡単には行きませんか』

巨人3『まあ、適当に頑張ってみますか……』

巨人3『……ほっ!』ブンッ



貴音「っ……ぷろてす!」


パキーン!



ドゴォォン!



あずさ「貴音ちゃんっ!?」

貴音「……だ、大丈夫です、この程度なら……」



巨人3『さすがは月の民最強、といったところですねぇ。巨人の攻撃をまともに受けて無事でいられる人間は、あなたくらいでしょう』

巨人3『はぁ、面倒だなぁ……』



貴音(この巨人は、先ほどの塔で襲撃してきた2体の巨人とはまた別の様ですね)

貴音(月から来た魔物は4体。おそらく、巨人も4体いる、と見て良いでしょう)

貴音(塔に残して来た響や他の皆の安否が気になるところですが、まずは今この状況をどうにかしないと……)

貴音(わたくしの記憶が確かならば、律子嬢は泳ぎが得意ではなかったはず)

貴音(ならば……)



貴音「……時にあずさ。泳ぎは得意ですか?」

あずさ「ご、ごめんなさい……私、泳ぎはあんまり……」

貴音「……わかりました。ならば、わたくしが律子嬢を助けに参りましょう」

貴音「ですから、あずさは少しの間彼奴の相手をお願いします!」

あずさ「わ、わかったわ!」グッ



貴音「頼みましたよっ!」


ブワッ…


…ザパァン!



あずさ「………」グッ

あずさ(私も、しっかりしなきゃ!)



引用元: P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL 



ファイナルファンタジー: メインテーマ
X5 Music Group (2011-11-15)
売り上げランキング: 12,040
259: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:41:23.40 ID:XXli+SaoO

巨人3『仲間を助けに行っちゃいましたか』

巨人3『復活されると面倒なので、先に水中の人間達から殺しますかねぇ』


…ピカッ!



ドドドドドドッ!



巨人3『………うん?』



あずさ「そうはいきませんよ〜?」ポゥ



巨人3『おやまあ、レーザーを魔法で防ぐとは……』

巨人3『揃いも揃って、面倒な人達です……』



あずさ「あの〜、巨人さん?」



巨人3『はい、何でしょう?』



あずさ「……ちょっと、お仕置きしちゃいますね〜?」ゴゴゴゴ



巨人3『……怒っちゃいましたか?』

巨人3『おお恐い。私も本気で行かないといけませんねぇ』



あずさ「うふふ。反省してくださいね〜」バリッ



巨人3『それは無理な相談ですねぇ……』


ブゥン…



ドドドドドドッ!



あずさ「……サンダガ!」



ズガガピシャァーン!



ザッパァァァン!!




巨人3『むむ、なかなかやりますねぇ……』

巨人3『………あれ?いない?』



260: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:46:07.92 ID:XXli+SaoO

「後ろですよ〜」



巨人3『えっ?』



あずさ「………ファイガ!」



ゴオオォォオ!!


ドカァァァン!



巨人3『びっくりした……』

巨人3(今、この人が消えた様に見えましたけど、気のせいですかねぇ?)



あずさ「あらあら、やっぱりタフなんですね〜」



巨人3『そりゃあそうですよ。なんたって巨人なんですからねぇ』



あずさ「これは、地道にやるしかなさそうねぇ」

あずさ「……テレポ!」

…シュンッ!



巨人3『また消えた!?』

巨人3『後ろですか?』クルッ



「うふふ、上ですよ〜」



巨人3『なっ!?』



あずさ「ブリザガっ!」バッ


コオォォ…シャキーン!



巨人3『むぅ、ちょこまかと忙しい人だ……』


バキッ!


巨人3『えっ?巨人の装甲が、破られた……?』



あずさ「私も詳しくは知らないんですが、確か、熱膨張……だったかしら?熱した物を急に冷やすと、壊れやすくなるそうですよ〜」



巨人3『……へぇ、博学なんですねぇ』



あずさ「うふふ、これでも一応短大は出ているんですよ〜?」



261: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:54:31.69 ID:XXli+SaoO

巨人3『まさか、巨人の装甲を破壊するとは……』ボロッ

巨人3『造りが適当過ぎましたかねぇ……』



あずさ「あらあら、それ、手造りだったんですか?」

あずさ「ちょっと悪い事しちゃったわねぇ……」



巨人3『あなたを甘く見ていました。なかなかお強いみたいだ』

巨人3『こちらものんびりしている場合ではないみたいですねぇ』



あずさ「もう悪い事はしないって誓っていただければ、私もこんな事をしないで済むんですけどね〜」



巨人3『うーん、それは無理ですねぇ」



あずさ「あら、残念ねぇ」

あずさ「それはそうと、ちょっとよろしいですか?」



巨人3『はい、なんでしょうか?』



あずさ「え〜と、とても言いにくいんですけど〜」



巨人3『はぁ』



あずさ「その、後ろに……」



巨人3『後ろ?』クルッ



…ドゴオオォォォン!!



巨人3『ぎゃあっ!?』ヨロッ



あずさ「貴音ちゃんがいますよ〜……って、ちょっと遅かったみたいねぇ」



262: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 22:57:29.85 ID:XXli+SaoO

貴音「今の一撃は、先ほどのお礼です」フワフワ

貴音「あずさ、無事ですか?」

あずさ「ええ。貴音ちゃん、律子さん達は?」

貴音「大丈夫。2人とも無事ですよ」チラ



律子「……っはぁ、はぁ、貴音、助かったわ……」フワフワ

家老「すまん。老いぼれは足手まといだったようじゃ……」フワフワ

律子「お爺さんは後ろに。ここは私達に任せてください!」チャキッ

貴音「さあ、物の怪よ。観念するのです」ビシッ

あずさ「謝るなら今のウチですよ〜?」



巨人3『………』



巨人3『……あ〜あ、やっぱり「こんなもの」必要なかったなぁ』



貴音「………?」



巨人3『実は、最初からずっと動きにくかったんですよねぇ』

巨人3『「こんなもの」に乗ってるから』



律子「……何をする気?」



263: ◆bjtPFp8neU 2015/06/03(水) 23:03:05.57 ID:XXli+SaoO



ニュルニュル…



あずさ「あらあら……」



ニュルニュル…



貴音「!」



ニュルニュル…



タイダリアサン「……ふぅ。ようやく楽になりましたねぇ」



律子「魔物が、巨人から出て来た……!」

律子(巨人の力無しで、私達に対抗するつもりなのね……!)

律子「あずささん、貴音!気をつけて!」

あずさ「は〜い」

貴音「………」



タイダリアサン「水がたくさんあると、力が漲りますねぇ」ニュルニュル



貴音「にゅ、にゅるにゅるの、にょろにょろ……」フラッ

律子「……た、貴音?どうしたの?」ガシッ

貴音「……わ、わたくし、にょろにょろは少々苦手でして……」

あずさ「貴音ちゃん、大丈夫?」

律子「にょろにょろ……?」

律子(……あ、確か、貴音の苦手なものって……)



律子「貴音、お爺さんをお願い!ここは私とあずささんで何とかするわ!」

貴音「す、すみません、律子嬢……」



律子「あずささん、行きますよっ!」チャキッ

あずさ「わかりました〜」



266: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 20:07:52.19 ID:afI1wjSXO

ー トロイア南の海岸 ー


ババババババ…



亜美「……ふぃー。うまいこと逃げれたかな?」

響「………」

亜美「あの巨人、大っきいクセになかなかキビンだったよねー?」

響「………」

亜美「まったく、ホンモノの巨人に出会っちゃうなんて、ついてなさ過ぎっしょ」

響「………」

亜美「ニセモノだったら、カッコよくバシーッ!ってやっつけたのになぁ……」

響「………」

亜美「………」



亜美「もーっ!なんで返事してくんないのさーっ!」ギュッ

響「ふぇっ!?」

亜美「さっきからひびきん、暗過ぎだYo!」

響「あ、ああ……ごめん、ちょっと考え事してたんだ」

亜美「考え事って?」

響「………」



響「……自分、やっぱり嫌だぞ。逃げ回るだけなんて」

亜美「ひびきん、だからそれは……」

響「わかってるさー」

響「亜美はこのゲームに詳しいんだよね?それで、あの巨人は自分達だけじゃ手に負えないって判断したから逃げてるんだよね?」

亜美「いちおー作戦の内なんだけど、まあ、そだね。亜美達は逃げ回ってるだけだよね」

響「みんな頑張ってるのに、自分達だけ敵わないから逃げる、なんてカッコ悪くて嫌なんだ」

響「自分も、みんなと同じ様に戦いたいんだ!」

亜美「ひびきん……」

亜美(亜美達がホンモノを引きつけといて、みんなにニセモノを倒してもらう作戦なんだケドなぁ)

亜美(……でも、ひびきんのゆーとーりかもしんない)

亜美(亜美だって、あの巨人にいっし報いたいモンねっ!)



267: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 20:49:02.19 ID:afI1wjSXO

亜美「わかったよひびきん。亜美達も戦おっか!」

響「亜美!」パァァ

亜美「んでも、さすがにムテッポーに突っ込むのはヤバいんだかんね?」

響「そ、そんな事わかってるぞ!」

亜美「いや〜、ひびきんならやりそうかと」

響「う……」

亜美「それにさ、あの巨人は、中に入って『せーぎょシステム』ってのを壊さないといけないんだよね」

響「そうなのか?じゃあ、自分達だけじゃ……」

亜美「うん。亜美達だけじゃ、ちょっと倒すのはキツいかもだね」

亜美「だから、亜美達は巨人の中に入るタメの『入口』を作ろうよ!」

響「うーん……なんか地味だけど、仕方ないか」

亜美「そこで、亜美の作戦パート2なんだけどさ」

響「なんか、嫌な予感がするぞ……」

亜美「だ、ダイジョーブだって!ちょっと耳かして?」

亜美「ごにょごにょ……」

響「……ふんふん」



響「なるほどなー」

響「なんか、意外と普通な作戦で安心したぞ」

亜美「もう!ひびきんは亜美を信用しなさ過ぎだYo!」

響「ごめんごめん、頼りにしてるぞ!」



…ズシィィン!…ズシィィン!



亜美「……やっと来たっぽいね」

響「……うん」



巨人2『鬼ごっこはもう終わりかな?』

巨人2『遅かれ早かれ、君達は死ぬんだよ』

巨人2『だから、いくら足掻いても無駄なんだっ!』ゴゴゴゴ



亜美「……んじゃ、ヨロシク頼んだよ、ひびきん!」

響「了解だぞっ!」



響「よーし、行っくぞーっ!!」



ビューーン!



268: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 20:53:18.71 ID:afI1wjSXO
ー 巨人内部 ー


ズシィィン!…ズシィィン!



やよい「はわわっ!本当に動いてます!」

やよい「カメさんの言った通りでした!」

やよい「すごいなー!こーんなに大っきなロボが動いてるなんて」

やよい「なんだか、テレビで見るアニメみたいかなーって」

やよい「長介たちにも見せてあげたいなぁ」

やよい「………」



やよい(長介たち、ちゃんとご飯食べてるかな……?)

やよい(仲良くやってるかな……?)

やよい(長介たちに、会いたいな……)



やよい「……………グスッ」



千早「………!」ピクッ

千早「んっ……」

千早「…………」ムクッ

千早「ここは……?」



やよい「あっ……」ゴシゴシ

やよい「千早さん、おはよーございまーす!」



千早「高槻さん……?」

千早「なぜここに?というか、ここはどこなのかしら……」

やよい「ここは、巨大ロボの中ですよー!」

千早「巨大……ロボ?」

千早「………」キョロキョロ

千早(春香、美希、水瀬さんもいる……。寝ているみたいだけど)

千早(まさか、高槻さんが一人で運んだの?)



千早「あの、高槻さん。何があったのか、話してもらえない?」

やよい「えっと……はい、わかりました!」



269: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 21:01:08.92 ID:afI1wjSXO
…………

……



やよい「……と、ゆーわけなんです」

千早「そうだったの……」



千早(高槻さんの話を整理すると……)

千早(美希、水瀬さん、高槻さんの3人は、春香より少し遅れてあの塔に到着した)

千早(高槻さんが言う『カメさん』とは、もしかしたら律子の部下だったあのカメの魔物の事かもしれないわね)

千早(ともかく、3人は四天王の協力を得て私のいる次元エレベータを目指したみたいだけど、それぞれが時間差で到達したみたいね)

千早(現に、私は美希にしか会っていない)

千早(おそらく、私が気を失った後に水瀬さんが到着して……)

千早(最後に高槻さんが到着した時には、全員気絶していた……?)



千早(じゃあ、誰があの魔物を倒したの?)

千早(私はてっきり、春香が倒したのだと思っていたのだけど……)チラ

春香「………」

千早(でも、春香も気絶してしまっているみたい)


270: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 21:08:32.29 ID:afI1wjSXO

千早(塔で見た『あの』春香は、私の知っている春香とはまるで別人だった。本人も、『目覚め』だとか『初めまして』とか、よくわからない事を言っていたわね)

千早(そういえば……)

スタスタ…


春香「………」

千早(このリボン。これを身につけてから、春香が変わってしまった気がする)

千早「………」スッ

シュルッ…


やよい「あの、千早さん?なんで春香さんのリボンを取っちゃうんですか?」

千早「………」

千早「高槻さんは、今まで春香が黒いリボンを付けているのを見た事ある?」

やよい「うーんと……」

やよい「そーいえば、見たことないかなーって」

千早「私も見た事ないわ」

やよい「でも、春香さんが黒いリボンって、なんだかふいんきがかわりますよねー」

千早「ええ」

千早「……雰囲気どころか、性格まで変わってしまったみたいね」

やよい「……えっ?」



千早(ともかく、この黒いリボンを身につけていなければ、元の春香に戻るかもしれない)

千早(『あの』春香は……とても強かったけど、あまり良くない予感がする)

千早(とりあえず、リボンは私が預かっておきましょう)スッ


271: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 21:14:47.91 ID:afI1wjSXO

千早「……それで高槻さん。今はどこへ向かっているの?」

やよい「それが、わからないんです……」

やよい「わたし、ロボを動かすのがやっとで……」

千早「そ、そう……」

やよい「うー……すみません」シュン

千早「気にしないで。こうして私達があの塔から脱出できたのは、高槻さんのおかげよ。むしろ感謝しているの」

やよい「千早さん!」

やよい「えへへっ、お役に立ててうれしいですー!」



千早(そういえば、いつの間にか私にかけられた小鳥さんの術が解けている)

千早(気を失う前に、春香に何かされた様な気がするけれど……)

千早(春香には……ううん、美希にも、水瀬さんにも、高槻さんにも感謝しても、し足りないわ)

千早(危険を省みず、私を心配してあの塔まで来てくれたんだもの)

千早(私も、何かみんなの役に……)



千早(……そうだ。魔物たちの話によれば、巨人はあと3体いる)

千早(しかも、本物の巨人に乗っている魔物は、とんでもない攻撃手段を持っていたはず)

千早(聞いた相手を、一撃で死に至らしめる言葉、とか……)

千早(………)

千早(なんとしても、みんなを守らなければ……!)

千早(おそらくみんなを守れるのは、私だけだもの)


272: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 21:27:16.29 ID:afI1wjSXO

やよい「あの、千早さん?」

千早「……どうしたの?高槻さん」

やよい「千早さん、なんだかとってもむずかしい顔をしてます」

千早「あ……」

千早「ごめんなさい。少し、考え事をしてて」

やよい「わたし、すごくうれしかったんですよ?」

千早「……え?」

やよい「千早さんも春香さんもぶじだったから!」

千早「………」

やよい「わたしには、むずかしいことはよくわかりません」

やよい「だけど、これだけはわかります」

やよい「いつも笑顔でいれば、ぜーったいいつかはハッピーになれるって!」

やよい「だから、元気出していきましょー!」

千早「高槻さん……」

千早「………ふふ」

千早「そうね。暗くなっていても、仕方ないわね」ニコッ

やよい「えへへっ♪ 」ニコッ



やよい「あの、千早さん。手を上げてもらえますか?」

千早「手を……?」

千早(あっ……これは、もしかして)

千早「こ、こう、かしら?」スッ

やよい「じゃあ、行きますよー?」

千早「え、ええ」ドキドキ



やよい「はい、たーっち!」パンッ

やよい「いぇいっ!」

千早「い、いぇいっ!」カァァ



やよい「うっうー!さあ、がんばってみなさんのところへ帰りましょー!」



273: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 21:40:46.21 ID:afI1wjSXO

ズシィィン!…ズシィィン!



やよい「……しまうま〜のしまがとれたらっ♪ 」

やよい「ただのうま〜になるらしい〜♪ 」

やよい「しろのほ〜とっ♪ くろのほ〜とっ♪ 」

やよい「……まよってるゆめっ♪ 」



千早(白と、黒……)

千早(今の春香は、果たしてどちらなのかしら)

千早(………)



千早(それにしても……)



やよい「かなしみ〜のしみがとれたらっ♪ 」

やよい「ただのかな〜になるのかな〜……♪ 」



千早(巨人を操縦しながら鼻歌を歌う高槻さん)

千早「ふふ……可愛い」ホッコリ



「……な〜ににやけてんのよっ?」ツン



千早「ひゃっ!?」ビクン

伊織「にひひっ♪ 驚いた?」

千早「み、水瀬さん?」

千早「も、もう、おどかさないで……!」ドキドキ

伊織「元気そうで安心したわ」

千早「起きてたのね」

伊織「あんたとやよいのツーショットなんて、なかなかないでしょ?」

伊織「気をきかせてあげたのよっ」

千早「そ、そう……」



千早「あの……」

千早「ありがとう。その……助けに来てくれて」

伊織「……私は大した事してないわよ」

伊織「あんたが魔物に連れていかれて、真っ先に動いたのは春香だもの」チラ

春香「………」

千早(春香……)


274: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 21:46:10.78 ID:afI1wjSXO

伊織「それで、具合はどうなの?バカ小鳥が悪さしたみたいだけど」

千早「ええ。もう、音無さんの術は解けたと思う。身体の違和感もなくなったわ」

千早「これも、春香やみんなのおかげね」

伊織「……なら良かったわ」



伊織「そういえば千早。あの塔で春香に何かあった?」

伊織「あの塔での春香、明らかに様子がおかしかった気がするんだけど」

千早「………」

千早(水瀬さんも、同じ事を思っていたのね)

千早「水瀬さんが到着したのは、美希の後だったわよね?」

伊織「そうよ。赤い悪魔ってば、思ったほど役に立たなかったのよねぇ……」

千早「……これ」スッ

伊織「……何よこれ。リボン?」

千早「付けてたでしょう?春香が」

伊織「……どうだったかしら。そう言われると、付けてたような気も……」

伊織「……あんまり覚えてないわね」

千早「春香が変わってしまったのは、おそらくこのリボンのせいだと思う」

伊織「はぁ?こんなリボンで?」

千早「断言はできないけれど」

伊織「こんな黒いリボンでねぇ……」じーっ

伊織「ん……?」

伊織(黒い……暗黒……)

伊織(まさか……)



伊織「千早。ちょっと聞いてほしい事があるんだけど」

千早「何かしら?」


275: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 21:54:09.44 ID:afI1wjSXO

千早「……春香が、暗黒剣を?」

伊織「赤い悪魔が言ってたから、間違いないわ。あの魔物を倒したのは、多分春香の暗黒剣とやらだと私は思ってる」

千早「暗黒剣って、あの真っ黒なオーラを出す技の事よね?」

伊織「ええ。私、あの塔で春香が暗黒剣を使うのを実際に見たわ」

千早「確かに、この世界での春香は、最初、暗黒騎士?だった。でも途中から、聖騎士……というものに変わったはず」

千早「聖騎士になってからは、暗黒剣は使えなくなったと思っていたのだけど……」

伊織「でも、このリボンがきっかけで、また暗黒剣が使えるようになった……?」

千早「………」

伊織「………」



千早「……私ね。春香に何者かが乗り移ったんじゃないかって思っているの」

伊織「乗り移ったって、いったい誰が……」

千早「わからない。でも、あの時の春香のおかしな言動を考えると、誰かが春香に乗り移った、という考えがしっくりくる気がする」

伊織「まあ、確かに私も別人なんじゃないかって思ったけど……」

伊織「じゃあ、春香に乗り移ったヤツが暗黒騎士って事?」

千早「そういう考え方もできると思う」

伊織「………」

千早「………」


276: ◆bjtPFp8neU 2015/06/14(日) 21:58:09.14 ID:afI1wjSXO

伊織「……なんにせよ、これ以上の推測は無理ね。情報が足りなさ過ぎるわ」

千早「……そうね」

伊織「春香が起きるのを待って、直接聞くしかないわね……」チラ

春香「………」



やよい「……あれっ?伊織ちゃん、起きてたの?」



伊織「……あら、おはよう、やよい」

やよい「えへへっ、おはよう!」

伊織「悪いわね、あんたにばかり働かせちゃって」

伊織「少し休みなさい。私が代わるわ」

やよい「あ、だいじょーぶだよ!わたし、けっこう楽しいし!」

伊織「そう?無茶はしちゃダメよ?」

やよい「うん!」



千早「素朴な疑問なのだけど」

伊織「何よ?」

千早「高槻さん、どうして巨人を動かせるのかしら?」

伊織「……こんなヘンテコな世界だもの。何が起きてもおかしくないわよ」

伊織「今までツッコみたい事は山ほどあったけど、私ももういちいち驚くのはやめたわ」

千早「意外と順応しているのね」



やよい「……きりんや〜かっぱのめり〜ご〜らんっ♪ 」

やよい「どせい〜のうえ〜まっわるよ〜♪ 」

やよい「ねつもっ、かぜもっ、かんじないね〜♪ 」

やよい「のどもかわかないね〜……♪ 」



279: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 21:31:03.21 ID:0X456cNIO
ー エブラーナ近海 ー


タイダリアサン「……仕方ありません」

タイダリアサン「じゃあ、久しぶりに真面目にやってみましょうかねぇ」

タイダリアサン「……ここなら、水を集める必要もありませんし」



ザァァ…



律子「な、何?海が……」

あずさ「まあ、なんだか波が高いみたいですねぇ」



ザァァァァ…



タイダリアサン「行きますよ?」

タイダリアサン「タイダるウェーブ!」



ザァァァァ…



あずさ「……律子さん、手を!」

律子「え?は、はい」スッ



…ザッパァァァァン!



280: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 21:34:57.79 ID:0X456cNIO

タイダリアサン「…………あれ?」

タイダリアサン「また、いない……?」



「……はあああっ!暗黒剣っ!」



ズドドドドドドッ!!



タイダリアサン「あ痛っ!?」ヨロッ



あずさ「うふっ♪ うまく行きましたね〜」フワフワ

律子「ワープする魔法だなんて……」フワフワ

律子「今回はうまく行きましたけど、あまり乱用しないでくださいよ?」

律子「ただでさえあなたは、迷いやすいんだから」

あずさ「は〜い。わかりました〜」



タイダリアサン「痛たた……」

タイダリアサン「また、在らぬところから出て来た……?」

タイダリアサン「ワープの魔法か。これは厄介だなぁ」

タイダリアサン(でも、所詮は人間。水中まではついて来れないでしょう)



ニュルニュル…



ザパァン!



律子「!」

律子「海の中へ……?」

律子「そうか。さすがにあずささんでも、水中へワープはできない」

律子「あの魔物、水棲だったのね……」

あずさ「これは困りましたね〜」

律子「あずささん、どこから来るかわかりません。気をつけて!」

あずさ「はい、わかりました〜」


281: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 21:38:02.35 ID:0X456cNIO

スイー…

タイダリアサン(……ふふふ。私を探しているようですねぇ)

タイダリアサン(あなた方からこちらの位置がわからなくても、こちらからはあなた方の位置が手に取るようにわかりますよ)

タイダリアサン(……ま、私、手は無いんですがねぇ)

タイダリアサン(さて、これだけ水があれば、多少の無茶ができそうです)

タイダリアサン(あの方々には、時化でも味わってもらいましょうか)

タイダリアサン(そして、やる気も生きる気力も無くしてもらいましょう……)



タイダリアサン(タイダるウェーブ・ストーム……!)



ゴオォォ…



…ザァァァ!



律子「来た!津波よ!」

あずさ「律子さん、もう一度行きますよ」スッ

律子「はい!」ギュッ



ザァァァ…!



貴音「……む?波が、あちこちから生まれている……?」

貴音「気をつけてください、2人とも!複数の津波が起きているようです!」



律子・あずさ「えっ?」



ザァァ…!



律子「あ、あちこちから津波が……!」

律子「どうしよう!逃げ場が無いわ……!」


ザァァァァ…!


あずさ「律子さん、危ないっ!」ドンッ

律子「きゃっ……!」



ザッパァァァァン!



282: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 21:43:25.02 ID:0X456cNIO

律子「っ……」

律子「…………あれ?」

律子「あずささん……?」

あずさ「はぁ、はぁ……」

あずさ「り、律子さん。無事なんですね?良かった……」ヨロッ

律子「だ、大丈夫ですか?ひょっとして、私をかばって……?」

あずさ「だ、大丈夫ですよ〜?」

律子「あずささん……」

あずさ「それはそうと、私、ちょっと休ませてもらってもいいですか?」

律子「どうかしたんですか?もしかして、怪我でも?」

あずさ「いえ。あんまり気を張り過ぎるのも良くないかな〜って。のんびりするのも、たまにはいいですよ〜?」

律子「今はそんな場合じゃないですよ!しっかりしてください!」ガシッ

あずさ「すみません。でも私、やる気が起きなくて……」

律子「ど、どうしちゃったんですか、いったい……」

律子(のんびり家のあずささんだけど、今までTPOは弁えてたわよね?)

律子(なんでいきなり……)



…ザパァ!



タイダリアサン「ふふ、これで一人、戦意喪失ですね〜」

タイダリアサン「これでワープの魔法はもう使えませんよ〜?」



律子「ど、どういう事?」



タイダリアサン「その方の『やる気』を、削がせてもらいました」



律子「やる気を……?」



貴音「…………はっ!」

貴音「……まさか、たいだるうぇーぶとは、怠惰るうぇーぶ、なのでは……?」



タイダリアサン「おや、気づきましたか」



律子「………」

律子「口で言うと同じ音だからわかりにくいけど、言いたい事は私にもわかったわ……」


283: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 21:48:23.20 ID:0X456cNIO

タイダリアサン「そう。私の『タイダるウェーブ』を受けた者は、気力が無くなって脱力してしまうんですよ〜」



貴音「肉体的にも精神的にもだめーじがあるとは……」

貴音「なんと恐ろしい攻撃なのでしょうか……!」



律子「…………らない」



タイダリアサン「えっ?」



律子「ほんっっっとーに、くだらないわよっ!」



タイダリアサン「」ガーン



律子「何かすごい事をしたのかと思えば、単なるダジャレじゃない!」

貴音「律子嬢……?」

律子「まさか、ウケでも狙ったわけ?」

律子「そんなのね、ウチの千早ぐらいにしかウケないわよっ!」



タイダリアサン「うぐ……!な、なかなか言いますね……」

タイダリアサン「しかし、くだらなくとも、あなた方に防ぐ事はできないはずです」

タイダリアサン「あなたも、無気力人間にしてあげますよ!」


ザァァァ…



律子「こんなくだらないダジャレ、ツッコむ価値も無いわ、まったく!」プンスカ

貴音(いや、さっきから充分つっこみまくっているのでは?)

律子「真面目にやってるこっちがバカみたいよ、まったく!」ゴゴゴゴ…

貴音「!」

貴音(これは……なんと禍々しい気でしょうか……)



タイダリアサン「さあ、飲まれてください!」

タイダリアサン「タイダるウェーブ!」



ザァァァァァ!!



律子「……暗黒剣っ!」



ズドドドドドドドッ!!



ザッパァァァァァァ…ン!




284: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 21:53:39.18 ID:0X456cNIO

タイダリアサン「………」

タイダリアサン「た、タイダるウェーブが、負けた……」ボロッ



律子「もう、観念しなさい。言っておきますけど、私の本気はまだまだこんなものじゃないわよ?」

貴音(やはり、純粋な強さなら律子嬢を凌ぐ者はいない様です)

貴音(頼もしくもありますが……)

貴音(何とも邪悪な力なのが気にかかります)



タイダリアサン「………」

タイダリアサン(私はちょっと本気だったんですけどねぇ)

タイダリアサン(う〜ん、まずいなぁ。あの暗黒騎士には敵う気がしない……)



…ズシィィン



タイダリアサン「!」

タイダリアサン(今のは、もしや……?)



律子「さあ、どうするの?」


貴音「……もはやあなたなど、恐れるに足りません!」

貴音「必ずや滅ぼしてくれましょう!」ビシッ


律子「貴音……そんな遠くから言っても説得力無いわよ」

あずさ「あらあら、貴音ちゃんはお茶目さんねぇ」


貴音「い、いえ、わたくしはここからさぽーとに徹しますので」


律子「……まあ、いいけど」


285: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 21:57:45.08 ID:0X456cNIO

タイダリアサン(人間の方々はまだ『足音』に気づいてないみたいですね)

タイダリアサン(ならば……)


タイダリアサン「……ふむ、そうですね。それもいいかもしれません」

タイダリアサン「私では敵わないみたいですし」



律子(ふぅん、潔いわね)

律子(本当なら、この魔物は人間にとっても酷い事をしたんだし、もっと懲らしめた方がいいんだろうけど……)

律子(でも、負けを認めたなら、これ以上の深追いは可哀想よね)



…ズシィィン



タイダリアサン「………」

タイダリアサン(やはり、巨人は真っ直ぐここへ向かっているようです。……おそらくルナでしょう)

タイダリアサン(この暗黒騎士は強い)

タイダリアサン(ここは一旦、ルナと合流するのがいいですね。それまで時間を稼がないと)


タイダリアサン「いやあ、あなた方の強さに恐れ入りましたよ〜」

タイダリアサン「さすがは青き星の人間ですね〜」

タイダリアサン「というわけで、私は白旗を上げる事にします」



貴音「………」

貴音(律子嬢、簡単に信用するのは危険かと)

律子(まあ、それは私も同感だけど……)

律子(でも、この状況は簡単に覆せないんじゃない?)

貴音(しかし……奴は魔物。どんな攻撃手段を持っているかわかりません)

律子(結構用心深いのね、貴音って)

貴音(いえ……蛇が死ぬほど嫌いなだけです)

律子(あ、そう)


286: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:02:51.87 ID:0X456cNIO

あずさ「魔物さんもああ言ってる事だし、ここはそろそろお開きにしましょう?律子さん」

律子「そうですねぇ……」



…ズシィィン



タイダリアサン(着々と近づいています。もうすぐ……)

タイダリアサン「話のわかるお方だ!では、お近づきの印にこの刀を差し上げましょう」スッ


キラーン!


律子「何?あの物騒な刀は……」

貴音(わたくしとしては、律子嬢の携えている剣も大概だとは思いますが……)

貴音(何やら面妖な気を放つ刀ですね……)

家老「あ、あの刀は……!」

貴音「家老殿、ご存知なのですか?」

家老「うむ。あれは恐らく、この世に斬れぬものは無いとまで謳われた、伝説の妖刀『マサムネ』じゃ」

家老「まさか、この目にする事ができるとは……」

律子「伝説の……」

貴音「妖刀……?」

あずさ「あらあら、なんだかすごそうな刀なのねぇ」

律子「その刀を、降伏の印に差し出すって事でいいの?」



…ズシィィン



タイダリアサン「ええ、そうです。悪い話ではないでしょう?」

タイダリアサン(もう少し……)


287: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:07:40.47 ID:0X456cNIO

律子「なんかあっさりし過ぎてる気もするけど……」

あずさ「律子さん。せっかくの魔物さんの厚意を無にするのも悪いんじゃないですか?」

律子「うーん……」

あずさ「じゃあ、私がもらって来ますね〜」フワフワ

律子「あ、ちょっとあずささんっ!」



…ズシィィン!



貴音「……ん?」

貴音(この音は、まさか……?)



タイダリアサン「さあ、こちらです」スッ


あずさ「うふふ、ありがとうございます〜」



…ズシィィン!



律子「えっ?あれって……」



…ズシィィン!



貴音「やはり……!」



ズシィィン!



あずさ「あらあら……」



288: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:11:31.41 ID:0X456cNIO

巨人4『………』ドーン



律子「そんな……!」

あずさ「また、巨人さんが……」

貴音「………」



タイダリアサン「ふっふっふ。これで形成逆転ですね〜?」

タイダリアサン「それでは、さっきの白旗は撤回させてもらいましょうか」



律子「あなた、始めからこれが狙いだったの!?」



タイダリアサン「いえ、狙ったわけではありません」

タイダリアサン「ただ、私は『運が良かった』だけですよ」



あずさ「律子さん、どうしましょう?」

律子「く……また巨人を相手にしなきゃいけないなんて……!」

貴音「………」

貴音「……いえ、律子嬢、あずさ。心配は無用です」

律子「……え?」

貴音「あの魔物、どうやら『運が悪かった』様ですね」

あずさ「貴音ちゃん、どういう……?」


290: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:15:42.64 ID:0X456cNIO

タイダリアサン「さあ、ルナ。2人で人間を殺しましょう?」



巨人4『………』



タイダリアサン「…………ルナ?」

タイダリアサン(あれ?おかしいな)

タイダリアサン「お〜い!」



巨人4『……ゴソゴソ』

巨人4『……なんですかぁ?』



タイダリアサン「…………えっ?」

タイダリアサン(……あれ?ルナってこんな声だったっけ?)



律子「何か様子がおかしいわね」

あずさ「今の声、どこかで聞いたような……」

貴音「ふふ……」


291: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:19:45.86 ID:0X456cNIO

タイダリアサン「だ、だから、2人で人間を殺しましょうって……」



巨人4『そんなっ!こ、ころすなんて、そんな悪いことしちゃ、めっ!ですよっ!』



タイダリアサン「え?え?」



律子「まさか……?」

あずさ「あらあら〜」ニコニコ

貴音「相変わらず、元気いっぱいですね」ニコッ



巨人4『ガタッ……』

巨人4『高槻さん、相手は魔物よ?律儀に返事しなくても……』

巨人4『で、でも、こーいうのって、なんか本物のパイロットみたいでかっこいいかなーって』

巨人4『そ、そうね。高槻さんがそう言うなら……』

巨人4『ちょっと千早!何やよいに流されてんのよ!』

巨人4『だ、だって、高槻さんがあまりにも可愛らしいから……』

巨人4『うっうー!こちら高槻やよい、おうとーせよ!』



タイダリアサン(いったい何が起きているんだろう……)


293: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:26:27.37 ID:0X456cNIO

律子「プッ……!」

律子「あははは!まったく、あの子達ったら……!」

あずさ「うふふ、みんな楽しそうね〜♪ 」

貴音「この様な巨人なら、何体いても良い気がします」



巨人4『2人とも、そんな事より先にやる事があるでしょうが!』

巨人4『そーだよ!まずは律子達を助けるのが先決って思うな!』

巨人4『こら美希!私のセリフを取らないでよ!』

巨人4『というか美希、いつの間に起きたの?』

巨人4『うっうー!高槻レスキュー隊、ただいまとーちゃくしました!』シュタッ



巨人4『……おけがはありませんか?どーぞ!』



294: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:30:24.06 ID:0X456cNIO

律子「やよい……っ!」ウルッ

あずさ「私達はみんな無事よ〜?」

貴音「そちらこそ、皆無事ですか?」



巨人4『ミキ、元気だよ?』

巨人4『あんたはずっと寝てたからでしょうが』

巨人4『こっちも大丈夫です。ちゃんと春香もいます』

巨人4『えへへっ♪ 』

巨人4『それじゃー、きゅうじょを開始しまーすっ!』



律子「あ、待って。その前に……」チラ

あずさ「………」コクリ

貴音「………」コクリ



タイダリアサン「………」ソローリ



律子「逃がさないわよ!」



あずさ「……サンダガ!」

貴音「……ほーりー!」

律子「……暗黒剣!」



タイダリアサン「あ……」



ドッゴオオオオォォン!!




295: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:36:39.55 ID:0X456cNIO
ー 巨人内部 ー



律子「……本当、みんなよく無事でいてくれたわ……!」

伊織「にひひっ♪ 私を誰だと思ってんのよっ?」

美希「えー?デコちゃんはデコちゃんでしょ?」

伊織「そ、そういう意味じゃなくて!」

やよい「律子さんたちをきゅうじょできて、ほんとーによかったです!」

あずさ「うふふっ♪ やよいちゃん、カッコよかったわよ〜?」

やよい「はわわっ、はずかしいですー……///」

貴音「しかし、お互いにいろいろあった様ですね」

千早「ええ。本当に……」

貴音「春香は、まだ目を覚まさないのですか?」

千早「そうですね……」チラ

春香「………」



伊織「……でも、まさかジイまでいるとは思わなかったわね」

家老「なあに、お嬢を守る為ならばこのジイ、火の中水の中、ですぞ?」

伊織「……よく言うわよ、まったく」

律子「私達、ここへ来るまでにこちらのお爺さんにお世話になったのよ」

伊織「ふーん、そうだったの」

家老「お嬢のご友人とあれば、力をお貸ししない訳にはいきますまい」

家老「まあ、逆に迷惑をかけてしまったみたいですが……」

貴音「お気になさらず。家老殿がいなければ、わたくしの空腹は満たされなかったのですから」

律子「いや、感謝するところがそこだけって…………まあ、いいか」


296: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:42:26.13 ID:0X456cNIO

伊織「……で?国のみんなは元気?」

家老「それはもう!皆が一丸となって、エブラーナの復興に力を注いでおりますじゃ」

伊織「それを聞いて安心したわ」ニコッ



家老「……あとは、お嬢があの憎き仇、ルビカンテの奴めを討ち取ってくれれば、何も言う事はないんじゃ」



伊織「……っ!」

律子「………」

貴音「……?」



伊織「そ、そうね!別に忘れてたわけじゃないのよ?」

伊織「ただ、ずっとあの赤い悪魔を探してただけなんだからっ!」

律子(伊織……)

家老「そうだったのですか……」

家老「ならば、このジイも共に行きましょう!」

伊織「はぁ!?な、何言って……」

家老「やはり、お嬢ひとりに背負わせて良い荷ではないと思いましてな」

伊織「い、いいわよ別に!私ひとりで充分よ!」

家老「いいえ、こればかりは譲れません。成長されたとはいえ、まだまだお嬢は忍者として未熟」

家老「このジイめが教える事もまだあると思っております」

伊織「で、でも……!」


297: ◆bjtPFp8neU 2015/06/15(月) 22:52:55.08 ID:0X456cNIO

家老「……そうじゃ。アズサ殿、先ほどの刀を……」

あずさ「は〜い。これですか〜?」スッ


キラーン!


伊織「何、これ……?」

家老「妖刀マサムネ。伝説の忍者が使ったと言われる刀のひと振りですじゃ」

家老「これを、お嬢に」スッ

伊織「………」

伊織(別に必要ないんだけど……)



美希「デコちゃん、持ってみれば?」

伊織「え?」

美希「ミキ、その刀はデコちゃんにピッタリって思うな」

やよい「わたしも、伊織ちゃんににあってると思うよ?」

千早「そうね。他に刀なんて使う人もいないし、水瀬さんが使うのが一番いいんじゃないかしら」

貴音「伊織も忍者ならば、やはり忍者に相応しい得物が必要かと」

伊織「わ、わかったわよ……」スッ


伊織「……!」

伊織(手に、吸い付く……)

伊織(まるで私を待っててくれたみたいな……)

伊織(……変な感じね)



家老「どうですかな?お嬢」

伊織「……そうね。ま、悪くはないわね」チャキッ

家老「その刀で、どうかルビカンテを討ち取ってくだされ!」

伊織「………」



伊織(いったい、どうすればいいっていうのよ……)



律子(伊織……)



301: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:15:01.12 ID:kakjUajNO

ー トロイア南の森 ー



ドドドドドッ!!



…ビューーン!



巨人2『ああもう、また避けられちゃった……』


響「ふふーん!もうレーザーは見切ったぞ!」

響「くらえ!ハイサイビーム!」


ビュイィィィィン! ドカァン!!


巨人2『……だから効かないってばー……』


亜美(うーん……このやり取りも、もうあきちゃったなぁ)


響「そんなふうに余裕でいられるのも、今だけだぞ!」ビシッ

響「『雨垂れ石を穿つ』ってことわざがあるの、知ってるか?」


巨人2『わあ、なんかカッコ良さげな言葉だね!』

巨人2『どういう意味なの?』


響「え?えーと……」

響「確か……雨だって、たくさん降ればいつか石にも穴を空けちゃう、とか、そんな意味だったはずだぞ」

響「だから、自分達の事をバカにしてると、きっと痛い目をみるんだぞ!」


巨人2『へぇ……。君って物知りなんだね!』


響「自分、完璧だからな!」

響「最後に勝つのは、ぜーったいに自分達なんだからねっ!」ビシッ


巨人2『ボクだって、負けないもんね!』



亜美(……なんかこの2人、似たもの同士な気がしてきたよ)



302: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:17:24.48 ID:kakjUajNO

ドドドドドッ!!


響「うわあっ!」

響「……大丈夫か、エン太郎!」

響「よーし、今度はこっちの番だぞっ!」



亜美(こーしてカンサツしてると……)

亜美(ひびきんって、いつでも全力ってカンジだよねー)

亜美(まったく、ガンバりやさんですなー)



響「…………亜美!亜美ってば!」



亜美「……うぇっ?な、何なに?なんかあった?」

響「今、ボーっとしてただろ……」

亜美「し、してないよ!シツレーな!」アセアセ

響「ホントかなぁ……」ジト

亜美「だ、だいじょーぶだいじょーぶ。ちゃんとやってるからさ!」

響「『亜美の超魔法を巨人に食らわすから、ひびきんは時間かせぎしといてYo!』とか言い出したのは、亜美なんだからね?」

亜美「わ、わかってるってば。今ちょうど魔力がたまってきたトコだから」

響「え?そうだったのか?」

亜美「あとちょっとだけガンバってよ、ひびきん」

響「わかった!自分に任せろっ!」ニコッ



亜美(……ゴメンねひびきん)

亜美(実はもう、とっくに亜美の魔法は発動できるじょーたいなんだよ……)

亜美(でも、フツーにやってもおもしろくないしー)

亜美(なんかこう、インパクトのあるコトしたいよね!)

亜美(んー、なんかいいアイディアはないかなー)


303: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:23:44.41 ID:kakjUajNO

亜美(………)

亜美(………)

亜美(………)

亜美(やっぱ真美がいないと変なカンジだね)

亜美(ひとりでこうしてても、チョーたいくつだもん)

亜美(そういえば、真美といっしょに魔法使った時は『ふたりがけ』だったけど、亜美ひとりだと『ひとりがけ』とかになるのかな?)

亜美(………)

亜美(ふむ、われながらくだらないギモンですなぁ)

亜美(………)

亜美(…………真美、だいじょーぶかな)

亜美(まあ、あっちにはゆきぴょんとマコちんと、おまけに兄ちゃんもいるから問題ないか)

亜美(……問題は、あずさお姉ちゃんだよね)

亜美(すでにゾンビだから、死んじゃったりする事はないと思うけど)

亜美(どこに飛んだんですかねぇ、あのお方は……)

亜美(誰かいい人に拾われてるといいけど……)

亜美(……って、あずさお姉ちゃんは捨てネコかーい!)ビシッ

亜美(………)

亜美(……ヒマすぎてノリツッコミしちゃった)

亜美(これじゃ、まるで亜美がイタい子みたいじゃんか)

亜美(………)

亜美(………)

亜美(………)

亜美(あー、そういえばあの巨人に穴をあけて入口を作らないとだね)

亜美(さて、どうしてくれようか……)

亜美(………)

亜美(………)

亜美(………)

亜美(………………ああっ!!)ティン



亜美(亜美、ちょっとおもしろいコト思いついちった……!)ニヤリ



304: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:27:58.25 ID:kakjUajNO

亜美「……ひびきん、ちょっといい?」

響「亜美?準備できたのか?」

亜美「うん!オッケーだよ!」

響「よーし、じゃあさっそく……」

亜美「あ、その前にさ」



亜美「どーにかして、巨人の後ろに回りこめないかな?」



響「後ろに?……不意打ちって事か?」

亜美「うーんと、まあ不意打ちは不意打ちなんだけど……」

亜美「どうしても後ろからじゃないとダメな理由があるんだよねー」

響「ふーん……わかった。なんとかやってみるぞ!」



響(……とは言ったものの)


ドゴォン! ドカァン!


響「……おっと!」グイッ


ビューーン!


響(あいつ、スキなんてなさそうだぞ)

響(自分とエン太郎のスピードなら、強引に巨人の後ろに回り込めない事もないけど、きっとそれじゃダメなんだろうなー……)

響(………)

響(だったら、無理やりスキを作るしかないか)

響(よし、じゃああの手で行くぞ!)


305: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:30:43.39 ID:kakjUajNO

響「おーい!デカ太郎ー!」

亜美(……いやいやいや)



巨人2『………』



響「こらぁ!無視するなー!」プンスカ

亜美(そりゃーわからんでしょうよ)



巨人2『……え?ひょっとしてボクの事?』



響「決まってるさー!他に誰がいるっていうんだ?」

亜美(この世界にそんな名前の人はたぶんひとりもいないよ、ひびきん)



巨人2『あ、ごめんね。あだ名とかで呼ばれるの、初めてだったから……』



響「ねえ、あっちに何か見えないか?」スッ



巨人2『えっ?』



響「ほら、あそこだぞ。もっとあっちの方!」


亜美(こ、これは……)

亜美(……まさかひびきん、巨人の注意を引こうとしてるつもりなのかなぁ……?)


306: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:33:07.62 ID:kakjUajNO

響「あー、あそこになんかおいしそうなものが見えるなー」チラ

響「アレ、とってもおいしいんだろうなー」チラ


亜美(うわぁ……)

亜美(注意を引くにしても、ヘタクソすぎ!『あれ』とか『あそこ』しか言ってないじゃん!)

亜美(あとおいしそうなものって何さ!全体的に言葉が足りなさすぎだよ!)

亜美(不器用にもほどがあるっしょ!)

亜美(こんなんで引っかかるわけ……)



巨人2『……ええっ?どこどこー?』キョロキョロ



亜美(……って、引っかかってるー!)ズコー



響「ほら、もっともっとあっちの方だぞ!あー、自分、あれを食べたいなー」チラ



巨人2『えー、ボクも食べたいよぉ!』



響「やった、引っかかったぞ!」

亜美「う、うん……そだね……」

亜美(……ツッコミつかれた。もう、なんでもいいや)



響「今のウチに!」


ビューーン!



307: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:38:49.62 ID:kakjUajNO

ババババババ…


響「……とりあえず巨人の後ろに来たけど、どうするんだ?」

亜美「んーと……」キョロキョロ

亜美「ひびきん、もうちょい下行ける?」

響「わかったぞ!」グイッ


…ブワッ


亜美「………」

亜美「……あ、ストップ!」


…ピタ


響「ここでいいのか?」

亜美「うん。バッチシだよ!」

亜美「さーてとっ……」


亜美「………」ゴゴゴゴ


響「!」

響「なんか、亜美からすごい力を感じるぞ……!」

亜美「まあ見ててよ!」


亜美「……空の彼方の、無数なる……」

亜美「……星の欠片の輝きよ、悪しきに降りそそげっ!」


亜美「いっけぇーー!プチメテオ!」


キラキラキラ…!


ヒュー…


ドドドドドドッ!!



308: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:41:26.10 ID:kakjUajNO

響「うわ……!」

響「すごい!ホントに巨人に穴が空いたぞ……!」

亜美「ま、ざっとこんなモンよ!」

亜美(……ホントはメテオとか使ってみたかったけど、亜美ひとりじゃムリっぽいし、ちかたないね)



巨人2『わわっ……!?』ヨロッ

巨人2『な、なんなの?』

巨人2『……あっ!君達、いつの間に後ろに!?』


亜美「んっふっふ〜!入口は作らせてもらったよ!」


巨人2『あああっ!?巨人のお尻のところに穴が空いてる〜!?』


響「……あ、言われてみればあの辺りって、確かにおしりだぞ」

亜美「何をおどろいているのさ?おしりに穴が空いているのは当たり前の事じゃんか!」

響「ま、まさか亜美、ひょっとして最初からこれが目的で……?」

亜美「うん!ウケるっしょ?おしりから巨人にしんにゅーするなんてさ!」

響「………」

響(自分、絶対に巨人に侵入したくないぞ……)


309: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:45:29.03 ID:kakjUajNO

巨人2『……!』ピクッ

巨人2(えっ……!?)

巨人2(ウソだよ、そんなの……!)



巨人2『………』



響「……あれ?なんか黙っちゃったぞ?」

亜美「ちょっとやりすぎちゃったかなぁ?」


巨人2『ルナが……ボクの仲間が、やられちゃった……!』


響「仲間……って事は、他の巨人か?」

亜美「そーだよきっと!誰かが魔物を倒したんだYo!」

亜美「んっふっふ〜!こりゃ〜、亜美たちの作戦がソウをコウしたってカンジかもねっ!」

響「……功を奏した、だぞ」



巨人2『……そっか。君たちの仲間にやられちゃったのか……』

巨人2『やっぱり人間は、早く滅ぼさないとっ!』


亜美「またまた〜、いきなりそんなシリアスぶっちゃって……」


巨人2『……!』ゴオォォ


響「な、なんか雰囲気がヤバいぞ……!」


巨人2『まだ使わないでおこうと思ってたけど、もういいや!』

巨人2『みんな……死んじゃえっ!』

巨人2『……波動砲!!』


キュイィィィン…!


亜美「や、やばっ……ひびきん!」

響「ま、間に合わ……!」



ドゴオォォォォン!!



響・亜美「うわああぁぁぁああーーーっ!!」



310: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:51:02.91 ID:kakjUajNO
ー トロイア付近の森 ー



ドガガガッ!



真美「うわわわっ!」ヒョイッ



巨人1『どうしました?反撃して来ないのですか?』



真美「………」



巨人1『お前は白魔道士。反撃したくとも、攻撃手段に乏しい』

巨人1『か弱き者が強者に牙をむくなど、もはやそれだけで罪です』



ドガァン!



パシュンッ…



真美「あっ、分身が……」



巨人2『うるさい分身は消しました。これでお前は、丸裸も同然っ!』



真美「ま、丸裸とか、セクハラ発言っしょー!///」

真美「この○○○!変態っ!兄ちゃん!」

P「お、おい真美。最後のはおかしいだろ?」

真美「おかしくないっしょ?だって兄ちゃん、今は真美の服の中にいるじゃん」

真美「んっふっふ〜!中学生の女の子の服の中とか、兄ちゃんもロリコンさんなんだね〜?」

P「そ、それはお前が無理やり……」

真美「いーから、兄ちゃんはジッとしててっ!」ギュッ

P「んぐっ!」


311: ◆bjtPFp8neU 2015/06/30(火) 23:53:12.26 ID:kakjUajNO

P(今まで俺は、いろんなアイドルたちの胸に抱かれてきたわけだけど……)

P(その中でも、この胸には一番夢と希望が詰まっているっ……!)

P(…………)

P(……現実に戻ったら、本気で自首した方がいいかもな、俺)



巨人2『お前は一体、誰と話しているのです?』



真美「へ?あ、あー……妖精?」



巨人2『妖精……?』



真美「真美達にはね、心苦しいカエルの守り神が付いてるんだよっ!」

P「……一応聞くけど、心強いの間違いだよな?」

真美「あ、そーだった」



巨人2『よくわかりませんが……お前の顔も、そろそろ見飽きました』

巨人2『もう、終わりにしましょう!』ゴゴゴゴ



P「真美、もう充分だ。そろそろ戻ろう!」

真美「……そだね。このままだと、真美もヤバいかもしんない!」



真美「ってコトで、さいなら〜!」


ビューーーン!



巨人2『逃がしませんよ!』



ズシィィン!ズシィィン!



312: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 00:00:12.50 ID:gwgKx4a0O

…ビューーーン!


P「……ところで真美、さっきの、将を射んと欲すれば……ってやつなんだけど」

真美「あー、アレね」

真美「真美達のトコに来たのは、ホンモノの巨人じゃないっしょ?」

真美「だから、巨人達が合流する前にザコ巨人から1体ずつ倒すんだYo!」

P「それはいいけど、もし本物の巨人が攻めて来たらどうするんだ?」

真美「ん〜、それなら多分ダイジョーブっぽいよ?」

P「えっ?」

真美「真美ね、ホンモノの巨人とは、亜美達が戦う気がするんだ」

真美「ついでに言うと、亜美もきっと真美と同じコト考えてると思うから、時間かせぎしてくれると思うんだよねー」

P「わかるのか?」

真美「まあ、縦に双子やってないってとこかな?」

P「………」

真美「兄ちゃん、どしたの?」

P「いや、頼もしくなったなって」

P「俺の知らないところで、みんな成長していくんだな」

真美「兄ちゃんってば、何ジジくさいコト言ってんのさ?」

真美「誰だってせーちょーするのは当たり前っしょ?」

真美「真美なんてせーちょーきだから、あっとゆーまにチョーせくち〜ギャルになっちゃうんだかんね?」

真美(だから、今のウチに真美をヨヤクしといた方が……)

真美(……な〜んて、はずかしくて言えないや)


313: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 00:02:49.79 ID:gwgKx4a0O

P「……ああ、そうだな」

P「真美はきっと素敵な女性になる。俺が保証するよ」

真美「な、何言ってんのさ、いきなり……!」

真美「そんなコト言われたら、はずいじゃんかぁ……///」

P「真美が自分で言い出したんじゃないか。……変なやつだな」

真美「自分でゆ〜のと誰かに言われるのじゃ違うんだよ〜!」



P(この世界に来て、良かったのかもしれない)

P(冒険を通じて、みんなどんどん成長してる。前より頼もしくなっている)

P(……じゃあ、俺は?)

P(俺は……)



真美「……っとと」

真美「確か、この辺だったよね?」キョロキョロ



真美「……さて」クルッ



…ズシィィン!ズシィィン!



巨人2『……おや、とうとう観念しましたか?』



真美「んっふっふ〜!そっちこそ、年貢の作り置きってヤツなんだかんねっ!」ビシッ

P(……納め時、な)



巨人2『何を企んでいる……?』



真美「ゆきぴょーん、カモーン!」



314: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 00:06:37.16 ID:gwgKx4a0O

雪歩「き、来ちゃいましたぁ……!」ドキドキ

雪歩「ど、どうしよう……!」

雪歩「ええと、こんな時は確か……」

雪歩「手のひらに『ほる』って3回書いて飲み込むんだっけ?」

雪歩「………」カキカキ

雪歩「……あ、あれ?『ほる』って、手へんだっけ?土へんだっけ?」



巨人1『死ぬがいいっ!』ブォン



真美「わああっ!」

真美「ゆ、ゆきぴょん早くー!」



雪歩「あわわ!真美ちゃんが!」

雪歩「ま、迷ってる場合じゃなかったよ!」

雪歩「い、行きますぅ!」チャキッ

雪歩「えいっ!」

サクッ



ズズッ…



雪歩「……超特大の、落とし穴ですぅ!」



ズズズッ…



ボコボコッ!!



巨人1『なっ!?あ、足場が……!』ヨロッ



グラッ…



ズシィィン…!



雪歩「や……やりましたぁ!」



315: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 00:09:20.03 ID:gwgKx4a0O

…フワフワ

スタッ

真美「……もー、ギリギリだったよゆきぴょんってば〜」

雪歩「あ、あうぅ……ご、ごめんなさいぃ……」

真美「ウソウソ。信じてたよ、ゆきぴょん!」ギュッ

雪歩「真美ちゃん……」

P「……それにしても雪歩。巨人すら収まるほど大きな穴を、よくこんな短時間で用意できたなぁ」

雪歩「それは……」

雪歩「多分、このスコップのおかげだと思いますぅ」チャキッ

…キラーン!

真美「さっすが伝説のスコップってカンジだね!」

P(……考えてみれば、雪歩が1番いい装備なんだな)



巨人1『く……!小癪な……!』

巨人1『この程度で勝ったつもりですか!』



真美「……さって、あとはトドメだね!」

雪歩「うん、そうだね!」

雪歩「……真ちゃん、お願いっ!」


316: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 00:12:07.13 ID:gwgKx4a0O

真「………」

真「よしっ!」グッ

真「行くよ、シルフ!」

シルフ「了解です〜」フワフワ

真「はっ!」タンッ


フワッ…


真「!」

真「身体が、軽い……!」

シルフ「一応私、風を司ってますので、これくらいの事なら〜」

真「ありがと、シルフ!」

真「……はああぁぁあっ!!」ゴゴゴゴ



真美「まこちんファイトー!」

雪歩「真ちゃん、頑張ってー!」



真「……食らえっ!」



真「覇王……翔吼拳っ!!」バッ



ゴオオオォォオオ…!



巨人1『な、なんですかあのデカい気の塊は……!』



真「行っけえぇぇっ!!」



ゴオオォォオオ…!



巨人1『よ、避け……!』



ドッゴオオオォォン!!!



317: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 00:16:36.64 ID:gwgKx4a0O

…スタッ

真「……ふぅ」


雪歩「真ちゃーん、カッコ良かったよぉ〜!」ダキッ

真美「うんうん、さすがまこちん、真美達の最終兵器だよ〜!」ダキッ

真「わっ……とと」

真「ちょ、ちょっと、2人とも苦しいって……」

シルフ「むぅ……」



P「真、強くなったな」

P(前から強かったけど)

真「へへ、そんな事ないですよー!ボクなんてまだまだです」

真「それに、油断はできませんよ。あれだけで倒せるとは、ボクも思ってないし」

P「それは、まあそうかもしれないな」

真美「え〜、でも、アレ見てよ」スッ



巨人1『』グシャア



雪歩「わあ……巨人がグチャグチャですぅ」

真「まあ、雪歩の掘った穴のおかげで直撃だったからね」

真美「真美達の作戦勝ちってヤツだねっ!」

P(まさか、こんなにあっさり巨人を破壊してしまうとはな。3人の連携も、見事だった)

P(本当に、みんな頼もしくなった……)

P(………)



真美「そういやゆきぴょん、とろ姉ちゃんとゆきぴょん2は?」

雪歩「あ、2人なら、トロイアに戻ってもらったんだよ」

雪歩「巨人が攻めて来る、って、アンさんやトロイアの人達に教えてあげなきゃだし」

真美「あー、そっか」

真美「でも、とりあえず1体は倒したから、これで少しは時間かせぎできるよね?」

真「……いや、あれって、魔物が乗ってたんでしょ?巨人を動かしてた魔物を倒さなきゃ、安心はできないんじゃないかな?」

真美「そーかなぁ?まこちんのあんなはげしい技をくらったら、さすがに……」



…ビュンッ!



真美「…………え?」



ドゴオッ!



雪歩「あ……ぅ……」ヨロッ

ドサッ


320: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 22:52:14.05 ID:gwgKx4a0O
真「ゆ、雪歩っ!?」

真美「ゆきぴょん!」

P(真の言う通り、魔物がまだいるんだ……!)

P「2人とも、気をつけろっ!」



「…………まず、一人」



真「魔物かっ!?」

真美「ゆきぴょん、待ってて!今真美が回復して……」



「……させません!」



ビュンッ…バキッ!



真美「うあっ!?」

ドサッ


真「真美っ!」

真「どこだっ!!」キョロキョロ

シルフ「マコトさん、上ですっ!」

真「えっ?」チラ



白龍「まさか、巨人を一撃で破壊する人間がいるとは思いませんでした……」クネクネ

白龍「……が、お前達は油断が過ぎたようですね」


真(……確かに。クソ、ボクがもっとしっかりしていれば……!)


321: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 22:55:17.09 ID:gwgKx4a0O

白龍「コトリ様が配下、この白龍が、お前も殺してあげましょう!」


ビュンッ!


真「ふっ!」ガッ


白龍「くっ!」ブンッ


真「おっと!」ヒョイッ


真「っせいっ!!」ドゴォ


白龍「ぬう……!」




真(雪歩と真美が心配だけど、とりあえずこいつを倒さないと!)

真(でも、あんな蛇みたいな体じゃ、的が狭くて芯を捉えにくいな……)

真(クネクネ動くから、衝撃を受け流されちゃうみたいだし……)

真(あれ、蛇じゃなくて龍って言ってたっけ?)

真(……って、そんな事はどうでもいいんだ)

真(突きや蹴りじゃ、まともにダメージを与えられそうにない)

真(だったら……)



真「……はあぁぁ!」バリッ

真「くらえっ!」ダッ



真「雷煌拳っ!!」

ズガガガガッ!!



白龍「………愚かな」ブンッ


ドゴオッ!


真「うわぁっ!」

ズザザッ!


真「……な、なんで?雷煌拳が、まるで効かない……?」


白龍「妙な技を使うようですね。ですが、私に属性のある攻撃は通用しません!」ブンッ


真「クソッ!」ガッ


真(さすがに手強いな)

真(でも……)


真「絶対に負けないぞっ!」ダッ



322: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 23:07:04.72 ID:gwgKx4a0O

ー ??? ー


春香(………)

春香(ここ、どこだろ……)

春香(なーんにもないね)

春香(明るくもない、暗くもない。音も、匂いも、何もない)

春香(不思議なところ……)

春香(あれ?でも……)

春香(私、さっきまで魔物と戦ってたはず……)



春香(……ううん、違うね)

春香(正確には、魔物と戦ってたのは、もうひとりのわたし)

春香(私は、ただそれを見てるだけだった)



「…………ねえ」



春香(…………ん?)



「…………ねえってば!」



春香(あ……)

春香(ヤミちゃん……)


闇春香「ヤミちゃんって、私の事?」


春香(うん。……可愛いかな、って思ったんだけど)


闇春香「ふーん……まあ、好きに呼んでいいよ」


闇春香「それより、まだ気にしてるの?」


闇春香「結果的にみんなも救えたんだから良かったでしょ?」


闇春香「ちゃーんと『わたし』の言う通りにしてあげたんだから、そんなに怒る事ないじゃない」


春香(……ううん、怒ってるわけじゃないよ)


闇春香「じゃあ、どうしてそんなに沈んでるの?」


春香(……だって、みんなを救ったのは、結局ヤミちゃんひとりの力だし)


春香(私、何にも出来なかったなって)


闇春香「まあ、私はみんなの事なんて、別にどうでも良かったんだけどねー?」


春香(そ、そんなっ!)


闇春香「あはは、怒らないでよー」



323: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 23:11:49.20 ID:gwgKx4a0O

闇春香「大丈夫だよ。私は『わたし』には逆らえないから」


闇春香「本体であるあなたには、ね」


春香(本体?どういう、事……?)


闇春香「もう、忘れちゃったの?試練の山でお父さんが説明してくれたじゃない」


春香(お父さんが……?)


春香(ええと……ああ、そうだ。ヤミちゃんは、私の闇の部分、だったっけ?)


闇春香「そ。本来なら、私はあの時切り捨てられて消滅していたはずなの」


闇春香「でも、あの時『わたし』は、私を受け入れてくれた」


闇春香「つまり、私を生かすも殺すも『わたし』次第ってわけ」


春香(そう……なんだ)


闇春香「それに、さっき『わたし』は、私ひとりの力で〜って言ってたけど、それは違うよ」


春香(え……?)


闇春香「あの時、魔物を倒したのは……私達2人の力なんだよ」


闇春香「あのリボンのおかげで、私は『表』に出てくる事ができた」


闇春香「でも、身体はもともと『わたし』のものだから、私ひとりであの力を出せたわけじゃない」


春香(で、でも、私はもう暗黒騎士じゃないし、暗黒剣は使えなくなったんじゃないの?)


闇春香「『わたし』は、ね。でも、私は暗黒騎士だもん。何も不思議な事はないんだよ」


春香(えーっと……ごめん、よくわからないよ)


324: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 23:14:52.54 ID:gwgKx4a0O

闇春香「うーん……じゃあ、もっとわかりやすく言うね」


闇春香「あの黒いリボンは、どうやら私と『わたし』を結び付けるものみたい」


闇春香「2人がひとつになるって言えばわかるかな?」


闇春香「ひとつになった私達は、聖騎士である『わたし』と暗黒騎士である私が合わさったわけだから、聖剣技も暗黒剣も使えるんだよ」


春香(本当に、そんな事が?)


闇春香「うん。でも、それだけじゃないよ?」


闇春香「技を使う時も、2人の力で使うから、威力はひとりで技を使った時の2倍になるの」


春香(………)


春香(なんか、ビックリする事ばっかりだよ……)


春香(そんなにすごい事になってたなんて……)


…グニャ


闇春香「……ん、意識が戻りかけてる。そろそろ『わたし』の目が覚めるみたい」


闇春香「それじゃ、また必要になったら呼んでね」


闇春香「あのリボンがあれば、私はいつでも力になるから」


闇春香「プロデューサーさんによろしくねっ!」


春香(いろいろありがとう、ヤミちゃん!)


闇春香「またね!」



スゥゥ…



春香(消えちゃった……)

春香(何だかよくわからない事になったけど……)

春香(とにかく今は、みんなに会いたい)



春香(千早ちゃんに、会いたい……!)



325: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 23:21:11.90 ID:gwgKx4a0O

ー 巨人内部 ー


春香「………」

春香「………んっ」ピクッ

春香「………」ムクッ

春香「あれ、私……」



春香(私、寝てたんだ)

春香(じゃあ、さっきのは夢……?)

春香(ただの夢……にしては、すごく具体的な話をしたよね)

春香(なんか、千早ちゃんと戦ってた辺りから、夢なのか現実なのかわからないみたいな……)

春香(ずーっとふわふわした感覚だったな)

春香(でも、今までの事が全部夢だったとは、とても思えないよ)

春香(だって私、さっきの夢の話をちゃんと覚えてるもん)

春香(あれ……?)ペタペタ

春香(さっきから、どうも何か足りないと思ったら……)

春香(……私、リボン付けてない!)

春香(ど、どうしよう!?ヤミちゃんに怒られちゃう……!)



あずさ「……あら?春香ちゃん、起きたのね?」

春香「あっ……あずささん!」

あずさ「うふふ、良かったわ〜」

あずさ「春香ちゃん、ず〜っと目を覚まさないんだもの」

あずさ「身体は大丈夫?どこか痛いところはない?」

春香「はい。大丈夫だと思います」グッ

春香「あずささん、ひょっとしてずっと私についててくれたんですか?」

あずさ「途中から、ね。さっきまではずっと千早ちゃんがついていたのよ?」

春香「千早ちゃんが……?」チラ


326: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 23:24:36.04 ID:gwgKx4a0O

律子「……多分、トロイアはここから北の方角のはずだから……」

貴音「ならば、太陽を背にして進めば良いでしょうか」

伊織「そうね。他に当てにするものも無いし」

千早「無事に辿り着けるといいけど……」



やよい「……のんすとっぷで♪ いってみ〜ましょ♪ 」

やよい「っておも〜ったらまたあかしんごう♪ 」

美希「そんなと〜きは♪ へこまな〜いで♪ 」

美希「ハイウェイがあ〜るっ♪ 」

やよい・美希「ファイット♪ 」



春香(みんな……律子さん達も、千早ちゃんも、いる)

春香(あれ?でも、響ちゃんがいない……?)

春香(何がどうなってるのかわからないけど……)

春香(とりあえず……)


327: ◆bjtPFp8neU 2015/07/01(水) 23:40:02.77 ID:gwgKx4a0O

春香「……みんな!」



千早「春香……!」

伊織「まったく……」

律子「もう、やっと起きたのね?」

貴音「皆、心配していたのですよ?」

やよい「春香さん!」

美希「あは☆なんだか久しぶりなの!」


春香「あの……心配かけて、ごめんなさい」ペコリ


あずさ「あらあら、謝る必要なんてないのよ?」

あずさ「それよりも。ずっと心配だったんでしょう?千早ちゃんの事」

春香「あ……」チラ


千早「春香……」


春香「……おかえり、千早ちゃんっ!」ダキッ

千早「え、ええ……」

春香「私、ずっと千早ちゃんの事が心配で……!」グスッ

千早「………」

千早(……どうやら、私の知っている春香みたいね)

千早「春香……ありがとう」ギュッ

千早「私は、あなたのおかげで帰って来れたわ」

春香「ううん。私の方こそ、帰ってきてくれて、ありがとう!」



伊織(いつも通りの春香よね……)

伊織(千早が言ってた通り、やっぱりあのリボンに何かあるって事なのかしら)

美希「ねえデコちゃん、コワイ顔してどうかしたの?」

伊織「……ううん、なんでもないわ」

美希「?」



律子「よし!これでみんな揃ったわね」

律子「さあ、早くみんながいるトロイアへ帰りましょう」

律子「やよい、巨人の操縦よろしくね?」

やよい「はーい!」


329: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 20:44:50.71 ID:3TN6x1uAO
ー 飛空艇 エンタープライズ ー


響「………」



響「………」ピクッ

響「ううっ……」

響「あれ……?自分、どうしたんだっけ……」キョロキョロ



亜美「………」グッタリ



響「あっ!」

タタタタ…

響「亜美!大丈夫か?」ガシッ

亜美「………」

響「あ、亜美?起きてってば!」ユサユサ

亜美「………」

響「う、ウソでしょ!?亜美!亜美っ!起きてよぉ!」ユサユサ

亜美「………」



亜美「………ん〜、もうちょい寝かせてよ〜……」モゾモゾ



響「な、なんだ、寝てたのか……」ホッ

響「自分、亜美が死んじゃったのかと思ってビックリしたぞ……」

亜美「……んん……大魔道士亜美様がそうカンタンにやられるわけないじゃんか〜」ムクッ



ドゴオォン!



響「うわぁっ!」ヨロッ

亜美「へぶっ!?」ドテッ

亜美「いったぁ……はるるんみたくコケちったよ……」

亜美「ねえひびきん。エンたろ、大丈夫なの?メチャ攻撃くらってるよ?」

響「そ、そうだ!エン太郎、大丈夫か!?」


330: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 20:49:34.85 ID:3TN6x1uAO

ーーーヒビキちゃん。アミちゃんも、目を覚ましたんだね。良かった。


響「うん!自分、あんな攻撃じゃやられないさー!」

亜美「あり?亜美にもエンたろの声が聞こえるんだけど……?」

響「えっ、ホントか?じゃあ、亜美もこれからエン太郎とお話できるんだな!」

亜美「マジで!?それってチョーすごいじゃんか!」


ーーーそうだね……。


響「……エン太郎?」

響「どうしたんだ?あんまり嬉しそうじゃないみたいだけど……」


ーーーもちろん、嬉しいよ。でも、今はこの状況をどうにかしないと。


亜美「あ、そっか。まだ巨人がいるんだったよ」

響「なんくるないさー!自分と亜美とエン太郎がいれば、巨人なんて……」


ーーーヒビキちゃん、ゴメンね。ボクはもう、飛べそうにないんだ。


響「…………え?」

亜美「な、なんでさ?」


331: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 20:52:42.05 ID:3TN6x1uAO

ーーー寿命、かもしれないね。ヒビキちゃんに何回も修理してもらったけれど、もう、あちこちにガタが来てるんだ。


響「だ、だったら、自分がまた直してあげるぞ!」

響「今までだってそうやってきたでしょ?だから、絶対また飛べるようになるさー!」


ーーー多分、それは無理だと思う。あの巨人はもう、ボクらに逃げる隙を与えてはくれないよ。


響「じゃ、じゃあ、自分が巨人を倒してくるぞ!亜美、手伝ってくれる?」

亜美「も、モチロンだよ、ひびきん!」


ーーーゴメンね……。


響「え、エン太郎?なんで謝るのさ!じ、自分は……!」ウルッ

亜美「エンたろ……」ウルッ


ーーーヒビキちゃん、アミちゃん。時間がないんだ。よく聞いて。


ーーー妹が、すぐそこまで来てる。君たちは、妹の方に乗り移るんだ。


亜美「えっ、妹?」

響「妹って…………もしかして、ファル子か?」

響「だ、だったら、エン太郎も一緒に行くさー!自分、エン太郎と一緒じゃなきゃ嫌だぞっ!」


ーーー今のボクはもう、こうして浮いているだけで精一杯。きっと君たちの足でまといになってしまう。


ーーーだから、ボクは一緒には行けない。



332: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 20:55:43.46 ID:3TN6x1uAO

亜美「………」

亜美「ねえ、エンたろ。ひょっとして、亜美たちがキゼツしてる間も、ずっと巨人から亜美たちを守ってくれてたの……?」


ーーーそれは……。


ーーーお礼、だから。


響「え、エン太郎、お礼ってどういう事……?」


ーーーボクをたくさん可愛がってくれたヒビキちゃんたちへの、ありがとうの気持ち。




ババババババ…


「親方ーーーっ!」

「ご無事ですかーーーっ!」




ーーー妹が到着したみたいだね。


響「え、エン太郎っ……!」ポロポロ

亜美「………」グスッ


ーーーさあ、時間がないよ。ファル子に飛び移って!


響「いやだっ!自分、エン太郎ともっと一緒にいたいぞっ!」ポロポロ

響「こ、これで……ひぐっ……お、お別れ、なんてっ……!」ポロポロ

響「絶対に、いやだぞっ!」

亜美「ひびきんっ……」ギュッ


ーーーヒビキちゃん……。


ーーーボク、ちゃんとヒビキちゃんに恩返しがしたい。


ーーーボクをとても大切にしてくれたヒビキちゃんを、守りたい。


ーーーボクの大好きな、太陽みたいな君の笑顔を、守りたいんだ。


ーーーダメ、かな?


響「エン…太郎……っ!」ポロポロ

亜美「………」



333: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 21:02:16.16 ID:3TN6x1uAO

亜美「……ねえ、ひびきん」

響「な、何……?」グスッ

亜美「亜美ね……エンたろをあんまり困らせるのはかわいそうって思う」

響「亜美……?」

亜美「そりゃ、亜美はまだほんのちょびっとしかエンたろといっしょにいないけどさ」

亜美「ふたりの気持ちってヤツ?は伝わってくるんだ」

響「………」

亜美「ひびきんが、エンたろを大切に思うキモチ。エンたろが、ひびきんを大切に思うキモチ」

亜美「それってさ、チョーすっごいコトだよね?」

亜美「もう、ソウシソウアイってヤツっしょ?」



亜美「……ひびきん。大切なひとを悲しませちゃ、ダメなんだよ?」



響「……っ!」

響「エン……太郎……」



響(………)

響(亜美の言う通りかも……)

響(自分がここでワガママ言ってたら、困るのはエン太郎だぞ)

響(ホントに辛いのは、エン太郎の方なのに……)


334: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 21:04:39.98 ID:3TN6x1uAO

響(………)

響(エン太郎が好きって言ってくれたんだ)ゴシゴシ



響(だったら、自分は……!)グッ






響「……もう、泣かない。自分、最後まで笑顔でいるぞ!」






響「だから、エン太郎……」

響「笑って、お別れしようっ……」ニコッ



ーーーヒビキちゃん……!




335: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 21:09:26.98 ID:3TN6x1uAO

響「……ありがとね、亜美」

響「自分、亜美のおかげで大切な事に気づけたぞ」

亜美「んっふっふ〜!ひびきんのダンナの意思はそんちょーしないとね!」

響「うがー!だっ、旦那とか、そうゆうんじゃないってばぁ!」アセアセ

亜美「おっ?やっと普段のひびきんに戻りましたな〜?」

響「っ……///」


ーーーさあ、2人とも。もうファル子はすぐそこにいるよ。


ーーーここはボクが食い止める。行って!


亜美「……そだね!」

響「……うん」



響「エン太郎。自分、絶対にエン太郎の事、忘れないからな!」

響「離ればなれになっても、自分達はずっと一緒だぞ!」

響「だって、自分たちは……」


ーーー家族、だもんね!


響「エン太郎っ……!」パァァ



…ドゴオォン!



響「………」

響「またね、エン太郎!」ニコッ


ーーーうん。また、ね。


ーーーアミちゃん、ヒビキちゃんをよろしくね。


亜美「任せんしゃい!」ニコッ




ババババババ…


技師1「親方ーー!」




亜美「行くよ、ひびきん!」

響「わかったぞ!」

…タンッ!

ヒュー…




響(………さよなら、エン太郎っ……!)





336: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 21:13:30.68 ID:3TN6x1uAO

巨人2『また飛空艇が…………。人間が増えたんだね』

巨人2『ルナも、タイちゃんもやられちゃった……』

巨人2『ボクは……』

巨人2『ボクの友達を傷つけた君達を、許さない……!』


キュイィィィン…



ババババババ…


ーーー仲間を失ってしまった君の悲しみ、よくわかるよ。


巨人2『ウソだ!船なんかに、機械なんかにボクの気持ちはわからないよっ!』

巨人2『さあ、粉々に破壊してあげる。残念だったね、君はここで死ぬんだよ!』


ーーー船にだって……ううん、どんなモノにだって、感情はある。語りかければ、答えるよ。


ーーーボクはここで終わりかもしれないけれど、ボクが『いた』っていう証は、きっとヒビキちゃんの……みんなの中で生き続けるんだ。


ーーーだから、さみしくなんかない!


巨人2『う、ウソだよ!』


ーーー君も気づいているんじゃないかな。死んじゃった君の仲間は、君の中にちゃんと『いる』って。


巨人2『うるさいうるさいっ!』

巨人2『ああぁぁああああっ!!』


ゴオォォオオオッ…!!



ーーーボクは、しあわせだったよ



ピカッ…!



ーーーさよなら、ヒビキちゃん



ドゴオオォォオオン…!!




巨人2『えっ!?自爆……!?』


ゴオオォォ…!


巨人2『は、波動砲が、爆風でこっちに……!』



巨人2『うわああぁぁああーーっ!!』



ドゴオオォォォン!!




337: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 21:21:12.37 ID:3TN6x1uAO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー



…ドゴオオォォォン…!



響「……エン太郎……」

亜美「ひびきん……」ギュッ



技師1「親方……」

技師2「お気持ち、お察しします……」

長老「人を救った飛空艇、か……」

長老「やはり兵器とは、使う者の心次第で変わるものなのじゃな……」

店主「ちくしょうっ!なんであんな気のいいヤツが死ななきゃならねえんだよっ!」グスッ

ものまね士「うぅっ……!」ポロポロ

響「………」



響「……みんな、泣いちゃダメだぞ」

技師1「えっ……?」

響「エン太郎は、自分に言ったんだ。自分の笑顔を守りたい、って」

響「それはきっと、自分の事だけじゃなくて……」

響「世界中のみんなの事を言ってたと思うんだ」

技師2「親方……」



響「自分は、これからも笑うんだ!」

響「……エン太郎の為に!」

響「だからみんなも、ちゃーんと笑顔でいないとダメなんだからなっ!」ニコッ



亜美「………」ウルッ

亜美「うわあぁぁぁあん!」ポロポロ

亜美「ひびきんがかっこよすぎるよぉ〜〜!」

ものまね士「ヒビギざぁぁん!」ポロポロ

響「ちょ、ちょっと!今、笑顔でいないとダメって言ったばっかでしょ!?」

響「亜美もものまね士も、泣いちゃダメだぞ!」

亜美・ものまね士「だっでぇ〜〜!」ポロポロ

店主「ヒビキ。お前、ホントに健気なヤツなんだなぁ……」グスッ


338: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 21:25:09.64 ID:3TN6x1uAO

長老「……感動してるところ悪いが、そろそろ巨人について対策を練らんと」

亜美「ううっ……も〜、長老っちは空気読まなすぎだYo!」

ものまね士「そうですよぉ!ヒビキさんとエン太郎さんの絆に心を打たれないなんて、人としてどうかしてます!」

長老「む、むぅ……」

店主「……爺さん、すまん」ペコリ

長老「ま、まあ、よい。確かに、大往生じゃったからのう……」



響「……でも、みんなよくここがわかったな?」

亜美「あ、そーいえばそーだよね」

長老「ふむ、それはな……」



「……導かれたんだよ。この船に、ね」



亜美「えっ?誰、今の……」キョロキョロ

響「あっ……!」

響「ミニ助にピョン吉、ブタ美も!久しぶりだなー!」

ミニ助「君は相変わらず元気だな」

ピョン吉「ヒビキさん、久しぶりー!」

ブタ美「ご、ご無沙汰してます……」

亜美「……この人(?)たち、ひびきんの知り合いなの?」

響「うん!ミスリルを取りに行った時に友達になったんだ!」

響「ミニ助たちのおかげで、エン太郎を強化できたんだぞ!」

亜美「へ、へぇ〜……」

亜美(そういや、ミスリルの村って小人とかがいるんだよね、確か)

亜美(ひびきん、ホント誰とでもトモダチになっちゃうんだなぁ)


339: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 21:29:55.34 ID:3TN6x1uAO

長老「……で、本題じゃが」

長老「さっきそこの彼が申した通り、ワシらはこの飛空艇に導かれてここまで辿り着いたんじゃ」

響「そうなのか!ファル子はえらいなぁ!」ナデナデ

技師1「我々がもっと早くここへ来ていれば、エン太郎も助かったかもしれないのに……すみません、親方!」

響「………」

響「……いくら後悔したって、過去は戻らないし、エン太郎だってそんなのは望んでないと思うんだ」

響「もう、その話はやめだぞ」

技師1「そ、そうですね。すみません……」



亜美「んで、これからどーする?」

長老「決まっておる」

ミニ助「ボクらで巨人を倒すんだ!」

店主「だな!巨人だかなんだか知らないが、みんなでかかりゃきっと勝てるさ」

ものまね士「私も、できる事はお手伝いしますよ!」

響「みんな……!」



響「あれ、でもさ……」

響「あの巨人って、中から破壊しなきゃいけないんじゃなかったっけ?」

店主「え?そうなのか?」

亜美「うん。巨人のしんぞーの部分にね、鮮魚システムっていうのがあって、それをこわさないかぎりずっと巨人は動き続けるんだYo!」

技師2「なるほど。それが巨人の動力部、というわけですね」

長老「鮮魚システムか……」

ものまね士「なんだか、活きの良さそうな名前ですねぇ」

ミニ助「だったら、早く破壊しに行こう。巨人は今怯んでいる。今がチャンスじゃないかな?」

響「……どうする、亜美?」

亜美「………」


340: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 21:33:38.50 ID:3TN6x1uAO

亜美「亜美達だけじゃ、まだダメだよ」

技師1「……あの、我々だけでは戦力不足、って事ですか?」

亜美「んーと、そーじゃなくて」

亜美「あの巨人は、みんなの力で倒すんだよ!ここが、物語の最大のヤマンバってヤツなんだからさっ!」

長老「そうか……!じきにジオット殿の戦車もここへ到着する」

長老「我らの総力を尽くす、という事か」

亜美「うん。あとね、巨人を中から壊すって事は、せんにゅー部隊が必要だよね?」

ミニ助「確かに。巨人を引きつける部隊と、巨人に潜入する部隊に別れる必要があるのか……」

響「じゃあ、誰が巨人に潜入するんだ?」

響(おしりから入るなんて、自分は絶対にいやだけど……)

亜美「そんなの、はるるん達に決まってるっしょー!」

響「え?でも、春香達はまだ地底にいるんじゃ……」

亜美「んーん。きっと来るよ」

亜美「亜美は、信じてるもん!」

響「亜美……」

響「……ホッ。自分じゃなくて、良かったぞ……」

響(……そうだな!自分も、春香達を信じるぞ!)

亜美「ひびきん、ホンネとタテマエが逆だYo……」



ドゴオォン!



響「うわっ……!」ヨロッ



技師2「親方!巨人が動き出しました!」



響「!」

響「……わかったぞ!自分に任せろ!」

響「ファル子!いきなりで悪いけど、よろしく頼むぞっ!」



ブワッ…!



ババババババ…




342: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 22:38:48.42 ID:3TN6x1uAO
ー トロイア付近の森 ー


P「真美!……真美っ!しっかりしろ!」

真美「………」

P「真美!返事をしてくれ!」

真美「………」

P「くそっ……!」

P(何をやってるんだ、俺は……!)

P(こんなカエルの姿じゃ、みんなを助ける事もできない……!)

P(俺は……)

P「大切なアイドルが死にかけているのを、指を咥えて見てる事しかできないのかっ……!」



P「俺は、何の為にこの世界に来たんだ!!」

P「くそおぉぉぉっ!!」



ポワ…



P「……えっ?」

P「な、なんだ?今、俺の身体が……べろちょろが光って……?」


シャララーン!キラキラキラ…


真美「……っ」ピクッ

P「!」

P「ま、真美、しっかりしろ!」

P「真美!」

真美「………」

P(真美の顔色が少し良くなった気がする。……気のせいか?)

P(それに、今の光)

P(なんか回復魔法の光に似てたような……)


343: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 22:40:34.11 ID:3TN6x1uAO

P(俺は、回復魔法を使ったのか……?)チラ

真美「………」

P(わからないけど、もう一度さっきみたいにできれば……)

P「頼むっ……!」


ポワ…ン


シャララーン!キラキラキラ…


真美「……んっ……」

真美「……あ…れ……?真美、まだ生きてる……?」

P「真美!よ、良かった……」

真美「にい……ちゃん?」

真美「ひょっとして、兄ちゃんが真美を助けてくれたの……?」

P「わからない。……でも、そんな事はどうだっていいんだ」

P「真美が無事でいてくれれば……」

真美「……ありがと、兄ちゃん」ギュッ

真美(…………ん?兄ちゃんって今、べろちょろだよね?)

真美(べろちょろの姿じゃ、『いやしの杖』とかも使えないよね……?)

真美(どゆこと?)

真美(…………)

真美(…………ま、いっか。兄ちゃんも魔法が使えるようになったんだよね、きっと)



雪歩「……真美ちゃん、平気……?」ヨロッ



344: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 22:43:58.79 ID:3TN6x1uAO

真美「ゆきぴょん!」

P「雪歩!無事なのか!?」

雪歩「は、はい」

雪歩「……すみません。私、ダメージは全く無いんですぅ。ただ、さっきはちょっとビックリしちゃって……」

真美「あ、そっか!ゆきぴょん、アダマンアーマー装備してるもん。そりゃあんな攻撃、きかないよね」

雪歩「うぅ……でもこの鎧、とっても動きにくいんだけどね……」

P(魔物の攻撃をしっかり防いでくれたのか。さすが最強の鎧だけあるな)



P「……とにかく、真が心配だ。早く合流しよう」



キュルキュルキュル…



雪歩「……あれ?何の音だろう?」

真美「ゆきぴょん、あれ……!」スッ

雪歩「な……何、あれ……?」

P(あれは……)



キュルキュルキュル…



トロア「……ユキホ王女、マミ殿!ご無事でしたか!」



雪歩「と、トロアさん?トロイアに戻ったんじゃなかったんですか?」



トロア「はい。ですが……」

トロア「やはり、我々もあなた方と共に戦います!」



雪歩「えっ……?」

真美「兄ちゃん、これってひょっとして……」

P「戦車、だろうな。多分ドワーフの」

真美「だよね。……やっと物語のヤマンバっぽくなってきたカンジだね!」

P「山場、な」



345: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 22:55:33.14 ID:3TN6x1uAO
白龍「………」



真「………」



白龍(あれだけ動いて、息ひとつ乱さない)

白龍(ここまでやる人間がいるとは……)

白龍(私と同等の実力……いや、私の方が押されている……?)

白龍(そんなバカな事が、許されるはずがありません!)



真(強いなぁ。あれだけ修行したのに、押し切れないや)

真(なんかクネクネしてて動きも読みにくいし、スキもなかなかな見せてくれない)

真(うーん、どうするかな)



白龍「人間にしてはなかなかやりますね」



真「そうかな?ボクより強い人なんて、他にもたくさんいると思うけど」



白龍「どうです?こちら側につく気はありませんか?それだけの力をみすみす潰してしまうのは惜しい」

白龍「コトリ様は、懐の広いお方。きっとお前なら歓迎するでしょう」



真「誰が悪者の味方になんかなるかっ!」

真「それに、小鳥さんはボクらの大切な仲間だっ!」

真「必ずみんなで小鳥さんの目を覚まさせてみせるっ!」



白龍「目を、覚まさせる……?」

白龍「バカな事を。あのお方は、私達に役目を与えてくれました」

白龍「人間を滅ぼす、という大切な役目を」



真「そんな事はさせないぞっ!」



白龍「いずれここへ、本物の巨人がやってくるでしょう。お前達は滅びる。これは運命なのです」



真「………」

真(本物の巨人……)

真(響が言ってた、すごく大きい巨人ってやつかな)

真(きっと、強いんだろうな)

真(律子と貴音を探しに行った響達や、地底にいる春香達は大丈夫だろうか)

真(………)


346: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 22:59:49.42 ID:3TN6x1uAO

真「……わかった。じゃあ、ボクもちょっと本気でやらなきゃね!」ポキポキッ

真「早く君を倒して、みんなを助けなきゃ!」



白龍「愚かな……!」



「真ちゃあーーんっ!」

「おーーい、まこちーん!」



真「えっ?」クルッ



キュルキュルキュル…



真美「大丈夫?ケガはないー?」



真「平気だよ!それよりどうしたのさ2人とも!」

真(あれって確か、ドワーフの……)



雪歩「みんなが……来てくれたんだよっ!」



トロア「マコト殿!助太刀しますっ!」

ファブール王「マコトよ!ワシも戦うぞ!」

ジオット「そなたらが、我々ドワーフを救ってくれた。その恩を返す時が来たのだ!」

ルカ「みんなの力を合わせれば、恐いものなんてありません!」

ユキコ「わ、私も、マコトさんの妻として頑張りますぅ!」

老婆「世界を、あんた達だけに背負わせたりはしないよ!」

アン「あなた方と共に戦う事。それは、今やこの世界の総意なのです!」



真「みんな……!」



白龍「ちっ!ぞろぞろと……」



真「………」チラ



347: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 23:05:01.26 ID:3TN6x1uAO

真「みんな、ごめん!悪いけど、先に行っててくれないかな?」

真「もっと強い巨人が近くまで来てるみたいなんだ!だから、みんなはそっちへ向かってほしい!」



雪歩「で、でも……」



真「心配いらないよ。こいつは、ボクひとりで倒す!」

シルフ「マコトさん、私を忘れてますよ〜?」ヒョコッ

真「シルフ、君もみんなと一緒に行ってあげてよ」

シルフ「な、なんでですか?私は、マコトさんと一緒がいいです〜!」

真「ごめん。でも、君の力はきっとみんなの役に立つと思うんだ。だから……」

真「ボクの大切な人達を、君の力で守ってあげてくれないかな?」キリッ

シルフ「……///」ボッ

シルフ「わ、わかりました。マコトさんがそう言うなら……」

シルフ「でも、絶対に無事でいてくださいね?」

真「もちろんっ!」ニコッ



真「雪歩!シルフの事、お願いできる?」



雪歩「真ちゃん……!わかった、任せて!」

真美「まこちん、やりすぎちゃダメだよ?」



真「うん、わかってる!」



P「真……何もしてやれなくて、すまん!」

P「お前がウチのNO.1だ。頼んだぞ!」


真「はい、プロデューサー!」



348: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 23:18:28.22 ID:3TN6x1uAO

真「…………ふぅ」



白龍「………」



真「……みんなが行くまで、待っててくれたんだ」

真「君って、意外と優しいんだね」



白龍「ふん。あんなか弱き人間どもなど、放っておいても何も問題ありません」



白龍(それよりも危険なのは、この少年。およそ人間とは思えない身体能力、精神力……)



真(まだまだずいぶん余裕がありそうだな、あいつ……)



真・白龍(こいつだけは、ここで倒しておかないと……!)



白龍「……そろそろ始めましょうか」クネクネ



真「そうだね。ボクも、早くみんなを追いかけないといけないし」グッ



白龍「その強がりも、いつまで続くか見ものです……」

ユラ…



真「はああぁぁああっ!」ダッ



真「…………っせい!!」


白龍「はあっ!!」



ドゴオオォォン…!!




349: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 23:25:11.87 ID:3TN6x1uAO
ー 巨人内部 ー


春香「……そういえば千早ちゃん。ちょっと聞きたい事があるんだけどさ」

千早「なに?」

春香「私のリボン、知らない?」

千早「……っ!」ドキッ

千早(……落ち着いて。冷静に対応しないと)

千早「リボン?知らな……」

やよい「あっ、わたし知ってますよー?」

千早「えっ……?」

千早(た、高槻さん……?)

春香「やよい、ホントに?」

やよい「はい!これ、みなさんを運んでる時に見つけたんです!」スッ

春香「わあ、ありがとう…………って、あれ?」

春香(これ、私がもともと付けてた、ルカさんのリボンだ……)

春香(ヤミちゃんのリボンじゃ、ない)

やよい「どうかしたんですか?これ、春香さんのですよね?」

やよい「どわーふの王女さまと、こうかんしたんだーって言ってたの、わたし、おぼえてたんです!」

千早(ああ、そっちのリボンの事ね。……びっくりした)

やよい「……春香さん?」キョトン

春香「あ……」

春香「そ、そうそう、これだよぉ!やよい、ありがとね!」

やよい「やっぱり、リボンがないと春香さんらしくないですもんねー!」ニコッ

春香「うっ……!」グサッ

春香「だ、だよねー?」

春香(やよいの事だから、悪気はないんだろうなー、きっと)

春香(でも、どうしよう……。やっぱりあの塔に置いて来ちゃったのかなぁ……)

春香(今さら、『ちょっと戻りませんか?』なんて言えないしなぁ……)



千早(今の反応……)

千早(理由はわからないけど、春香は黒いリボンの方を探していたみたい)

千早(やっぱり返した方がいいのかしら。なんだか困っているみたい)

千早(……ううん)

千早(もう少しだけ、様子を見ましょう)

千早(春香に嘘をつくなんて、いい気はしないけれど)



やよい「………」



350: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 23:36:05.02 ID:3TN6x1uAO

春香「……えっ?あずささん、亜美と響ちゃんとはぐれちゃったんですか?」

あずさ「そうなのよ〜。途中まで2人と一緒だったんだけど、いつの間にかひとりに……」

律子「例のワープの魔法ですね。まったく、無茶するんだから……」

律子「まあ、そのおかげで私達はあずささんと合流できたんだけど」

貴音「それにしても、あずさが見たという、大きな巨人が気になりますね」

千早「月から来た魔物は、1体は春香が、もう1体は律子達が倒した」

春香(私だけの力じゃないけど……まあ、今はいいか)

千早「残る魔物は、あと2体。巨人も、あと2体のはず」

千早「あずささんが見た巨人が、恐らく本物の巨人だと思います」

あずさ「あの巨人さんが……」



やよい「うー……みなさんの話についていけませんー……」

美希「大丈夫なの、やよい。きっと律子や春香達がガンバってくれるから」

美希「……あふぅ」

やよい「で、でも……」



律子「……で、その2体の巨人は、ずいぶん前にバブイルの塔を出発しているのよね?」

千早「ええ」

律子「だったら、時間的にもうトロイアに着いててもおかしくないわね」

伊織「でも、そのトロイアってところには、プロデューサー達がいるんでしょ?」

あずさ「そうよ〜。真美ちゃん、雪歩ちゃん、真ちゃんもね」

伊織「プロデューサーはともかく、真がいるなら心配いらないんじゃないの?」

千早「水瀬さんは、真をとても信頼しているのね」

伊織「そっ……そんなんじゃないわよっ!」

伊織「あいつの化け物じみた強さは、あんた達もわかってるでしょ!?」

春香「ま、まあまあ、落ち着いて……」



律子「……とにかく、真達は、まあ大丈夫として、問題は……」

千早「……我那覇さんと亜美のコンビね」

貴音「2人だけ、というのも心配ですが……」

伊織「亜美に振り回されてる響が、簡単に想像できるわね」

律子「もし、亜美と響が本物の巨人と当たっていたら……」

貴音「本物の巨人、とやらがどの程度の強さなのかわかりかねますが、2人が危険ですね」

春香「………」



351: ◆bjtPFp8neU 2015/07/04(土) 23:38:43.94 ID:3TN6x1uAO

春香「きっと大丈夫ですよ!」

律子「春香……」

春香「響ちゃんも亜美も、きっと頑張ってくれてるはずです」

春香「2人を、信じましょう」

千早「そうね。春香の言う通りだわ」

律子「ええ。私達は、今自分にできる事をやるしかないみたいね」

伊織「にひひっ♪ 今ごろ、亜美の悪知恵が巨人に炸裂してるかもね?」

貴音「ああ見えて、響も根性のある子です。きっと巨人を消耗させてくれている事でしょう」

やよい「じゃあ、ちょっといそいだ方がいいですねー」

春香「ふふっ♪ やよい、安全運転でお願いね?」


美希「…………あっ!!」ピクッ


春香「美希……?どうかしたの?」

美希「ハニーの気が……」



美希「……弱くなっちゃったの」



春香「…………え?」




354: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 20:22:44.89 ID:dM7GjD1sO

ー ドワーフ戦車内 ー


キュルキュルキュル…


アン「ユキホさん、マミさん。よくぞご無事で……!」

雪歩「アンさん……」

雪歩「あの、この車は……?」

ジオット「我が国自慢の戦車だよ、英雄殿」

雪歩「戦車、ですか?」

雪歩「私、戦車なんて生まれて初めてですぅ」ドキドキ

雪歩(……気のせいかな。私、今、英雄って呼ばれたような……)



ルカ「聞くところによると、戦車は地上には無いそうですね?」

真美「えっ?は、はるるん!?」

雪歩「春香ちゃん、なんでここに!?」

ルカ「あー……」

ルカ「失礼しました。ご挨拶がまだでしたね」

ルカ「お初にお目にかかります。私はドワーフ国の王女、ルカと申します」ペコリ

雪歩「は、はぁ……初めまして……」ペコリ

真美「ふえぇ〜……なんか、デキるはるるんってカンジ〜」



ユキコ「でも、私も驚きましたぁ。私とユキホさんみたいに、ハルカさんにこんなにそっくりな人がいるなんて……」

ルカ「それは私もびっくりだよ〜。こうして見ると、2人ともホントそっくりだね!」

真美「あり?はるるん……じゃなかった、ルカちん、さっきとフインキちがくない?」

ルカ「ああ、さっきのは王女としてのご挨拶」

ルカ「でも、今の私はみんなと同じただの女の子だから、仲良くして欲しいなー、なんて」ニコッ

雪歩「わあ、なんだか春香ちゃんとお喋りしてるみたい……!」

ユキコ「ルカさん、とっても親しみやすい人なんだよ?」

真美「みたいだねー!」

雪歩「こちらこそ、仲良くしてね、ルカさん」

ルカ「えへへ……」

雪歩「ふふっ」ニコッ



真美「あっ……」

真美「今度さ、このメンバーで双子会でもやろーよ!亜美とはるるんも呼んでさ!」

ユキコ「ふ、双子会?」

ルカ「それはいい考えだね!」

雪歩「うふふっ♪ なんだか楽しそうかも」


355: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 20:26:15.21 ID:dM7GjD1sO

ジオット「……ルカ。そのような口のきき方、はしたないぞ」

ルカ「もー、いいじゃないですかお父様。今は公務というわけでもないんですし」

ジオット「まったく、世界の危機だというのに……」

ファブール王「まあまあ。良いではないか、ジオット殿」

ファブール王「やはり、若い娘がいると華がある。ワシも娘が欲しかったのう」

ジオット「手がかかりますぞ?」

ファブール王「なあに、息子であれ娘であれ、子供とは手のかかるものじゃよ」

ジオット「ふむ……そうかもしれませんな」



老婆「………む」ピクッ

老婆「そろそろ近いみたいだよ。バカ息子、準備はできてるんだろうね?」

ジオット「抜かりありません、母上。ドワーフ戦車の力を、巨人に見せてやりますよ」

真美「なになに?ひょっとして大砲でドカーン! てカンジ?」

ジオット「ああ。我が戦車は飛空艇にも巨人にも遅れは取らん」

真美「ふーん」

真美(んでも、せっかくの決戦なのに戦車1台だけってのも、なーんかシマらないよねぇ)

真美(だったら……)



真美「じゃあさ、ちょびっとだけ真美に指揮やらせてよ!」

ジオット「戦の指揮をか? ……子供にできるのか?」

真美「もう! 真美は子どもじゃないYo!」プンスカ

老婆「………」

老婆「いいじゃないか。やらせておやりよ」

ジオット「しかし、母上……」

老婆「あんたからは、なんだか面白そうな予感がする」ニヤリ

老婆「あたしら大人には思いつかない、子供ならではの何かをやらかしてくれるかもねぇ」

ジオット「ふむ、母上がそう言うならば」

真美「だから子供じゃないってば〜!」


356: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 20:30:46.44 ID:dM7GjD1sO

雪歩「………」チラ

シルフ「………」オドオド



雪歩「シルフちゃん、どうしたの?」

シルフ「べ、別に、なんでもないです……」

シルフ「人間なんか、恐くないですから!」

シルフ「襲ってきたら、返り討ちにしてあげるんです!」

雪歩「………」



雪歩「……大丈夫だよ」ギュッ

シルフ「ちょ、ちょっと!?いきなり何をするんですかっ!」ジタバタ

雪歩「真ちゃんから聞いたよ。シルフちゃんの家族は、人間にヒドい事されたって……」

雪歩「だからシルフちゃんは、人間が苦手なんだ、って」

シルフ「………」

雪歩「でもね?そんなに恐がらないでほしいな」ニコッ

雪歩「シルフちゃんはもうわかってるって思うけど……」

雪歩「人間の中にもね、真ちゃんみたいにとってもステキな人間も、たくさんいるから」

シルフ「ふ、ふん!そんなのわかってます!マコトさんの側室のクセに、生意気ですよ!」

雪歩「…………そう、かもね」

シルフ「……?」

雪歩「……私ね、ホントにすっごくダメダメで、苦手なものもたくさんあるから……」

雪歩「シルフちゃんの気持ち、少しだけわかるんだ」

シルフ「苦手なものが、たくさん……?」

雪歩「うん、たくさん」


357: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 20:34:41.80 ID:dM7GjD1sO

雪歩「苦手なものに出会う度に、私はいつも逃げ出してた」

雪歩「自分には敵わないものだから仕方ないって、自分に都合のいい言い訳して、いつも目を逸らしてたの」

シルフ「………」

雪歩「……でも、それじゃダメだって」

雪歩「ちゃんと向き合わないと、一生苦手なままだよ、って。大切な人が、教えてくれたんだ」

雪歩「苦手なものに立ち向かう……勇気、っていうものを」

シルフ「勇気……」

雪歩「今はもう、その人はいないけど……私、少しずつ頑張って……」ウルッ

雪歩(……アンナさんっ……)



シルフ「ちょっと!?なんであなたが泣いてるんですか!?私を慰めてたんじゃなかったんですか!?」

雪歩「っ……あ、ご、ごめんなさいっ」グスッ

雪歩「ああ、もう、何を言おうとしてたのかわからなくなっちゃいましたぁ……」ゴシゴシ

シルフ「………」



シルフ「……はぁ」

シルフ「仕方ないですね。側室の落ち度は、本妻の落ち度。ひいては、マコトさんの沽券にも関わってきます」

雪歩「えっ?」

シルフ「マコトさんの本妻である私が、あなたを教育してあげるって言ってるんですっ!」

雪歩「そ、それって……?」

シルフ「いいですか?巨人をぶっ壊したら、私があなたにいろいろ叩き込んであげますから、覚悟してください!」

雪歩「えっ…と、お友達になってくれるって事でいいのかな……?」

シルフ「ち、違いますっ!あなたと私は主従関係なんです!勘違いしないように!」カァァ

雪歩「……雪歩、だよ」ニコッ

シルフ「……えっ?」

雪歩「私の名前。できれば覚えてくれると、嬉しいな」

シルフ「……ふんっ」プイッ

雪歩「……頑張ろうね、シルフちゃん」

シルフ「当たり前です!マコトさんと、約束したんですから!」



358: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 20:44:26.24 ID:dM7GjD1sO
ー 巨人内部 ー


美希「やよい、急ぐの!ハニーに何かあったかもしれないの!」ユサユサ

やよい「は、はいっ!」フラフラ

やよい「み、美希さん、わかりましたから……ゆらさないでくださいー!」クラクラ

美希「あっ……」パッ

美希「やよい、ごめんね? ミキ、ちょっと焦ってて……」

やよい「あ、いえ……気にしないでください! わたしはへーきですから」


やよい「えーっと……」ポパピプペ


…ズン!


春香「わっ……!」ヨロッ

春香「やよい、何かしたの?」

やよい「はい!今、このロボは……」

やよい「走ってます!」

春香「走ってるんだ……」

やよい「ちょっとゆれると思いますから、気をつけてくださいねー?」

春香「う、うん、わかった!」

美希「………」ソワソワ



千早「プロデューサーに何かあったみたいですね」

貴音「千早、その事で聞きたいのですが……」

貴音「本当に美希は、ぷろでゅうさぁの気配を感じられるのですか?」

千早「はい。ある程度離れていても、だいたいの居場所はわかるみたいです」

千早「前に、美希の力でプロデューサーを見つけてもらった事があります」

貴音「なるほど。実証済みですか」

貴音「わたくしも何者かの気配をおぼろげに感じ取る事はありますが、遠く離れた場所となると難しいですね」

貴音「さすがは美希です」

千早「私が思うに、美希の場合はプロデューサー限定だと思いますよ?」

千早「おそらく、四条さんのそれとは似て非なるものではないでしょうか」

あずさ「うふふ、愛の力ね〜♪ 」

千早「あ、愛の力?」

貴音「ふふ。あずさの言う通りですね」ニコッ

千早「……とにかく、美希の感覚に従って進めば、プロデューサーたちと合流する事はできそうですね」

貴音「ええ」

あずさ「あっ……!」ティン


359: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 20:48:18.59 ID:dM7GjD1sO

あずさ「美希ちゃんにプロデューサーさんのだいたいの位置を教えてもらって、私の魔法でプロデューサーさんのところまでみんなで飛ぶっていうのはどうかしら〜?」

千早「あ、あずささん、それは……」

貴音「なかなか良い案だとは思いますが……」

貴音「今は、時間はかかっても確実な方法を取るべきかと。だいたいの位置は美希によって特定できます。このまま巨人で向かうのが良いでしょう」

あずさ「あら〜、残念ねぇ」


千早(あずささんに任せたら……)

貴音(どこへ連れて行かれるか、予測できませんからね)




家老「……いいですか、お嬢。ルビカンテは火の化身。水の力があれば、必ずヤツを滅ぼす事ができるはずです」

伊織「わかってるわよ。そのために水遁を覚えたんだもの」

伊織(……嫌な思い出がフラッシュバックするわね)

家老「……やはり、ワシもお嬢と共に……」

伊織「はぁ……しつこいわよ」

伊織「私を心配してくれてるのはわかるけど、なんとかの冷や水になるのが目に見えてるわ」

家老「む……」

伊織「ジイはみんなと一緒に待ってなさい。私が必ず、赤い悪魔を倒すから」

家老「………」

家老「わかりました。ご無事をお祈り申しておりますじゃ」ペコリ

伊織「それでいいのよ」



伊織(……これでもう、あいつを倒すしかなくなった)

伊織(ううん、私はもともとそれが目的でエブラーナを出たんだもの。今さら迷う事なんかないじゃない)

伊織(迷う事なんか……)



律子「………」



律子「ねえ、伊織。ちょっと話があるの」

伊織「律子……」

律子「………」

律子「あのね、伊織。ルビカンテがあなたの国を滅ぼしたのは……」

伊織「言わないで、律子」

律子「でも……」

伊織「そんな事、最初にあんたに会った時から気づいていたわよ。あんたの様子がおかしかったのも含めてね」

律子「………」

伊織「それに、あんたの意思じゃないんでしょ?」

伊織「あのアホ事務員のせいなのよね?」

律子「でも、私はあなたひとりに重荷を……!」

伊織「今さら何を言っても覆せないわ」

伊織「私はもう、覚悟を決めた。この手で、赤い悪魔を……!」グッ

律子「伊織……」


360: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 20:57:20.93 ID:dM7GjD1sO

美希「………」ソワソワ

春香「ねえ美希。ホントに、プロデューサーさんの……気?が小さくなったの?」

美希「うん……」

美希「何があったんだろ。大丈夫かな、ハニー……」

美希「ああもう、心配で何も手につかないの」ソワソワ

春香「うーん……」

春香(プロデューサーさんに関しては、今は美希の言う事が正しいのかな)

春香(『気』が小さくなったって、どういう事だろう)

春香(怪我しちゃった、とか?)

春香(それなら一緒にいる誰かに魔法で治してもらえばいいはずだよね)

春香(でも……)

春香(もし、プロデューサーさんに起きてる異変が怪我とかじゃなくて、もっと別の何かだとしたら?)

春香(………)

春香(……どうしよう。私もプロデューサーさんの事が心配になってきちゃったよ……)



美希「………」ソワソワ

春香「………」ソワソワ



春香「ねえ、やよい。この巨人、空とか飛べたりしないの?」

やよい「えっと、どーでしょーか」

やよい「カメさんからはそーいうことは聞いてないんですけど……」

春香「そっか……」

美希「………」

美希「…………ダメ。もう我慢できないの!」

やよい「えっ?」

美希「やよい、ゴメンなの!ちょっとミキにやらせて!」グイッ

やよい「み、美希さん!?」

美希「えーっと……」

美希「早くハニーのところへ連れてってなの!」ポパピプペ

やよい「あっ、美希さん、そんなにたくさんボタンを押したら……!」


…ズン!


春香「な、何?」

やよい「はわわっ、ロボがおこっちゃったんでしょーか?」


ズドォン!


春香「ひゃっ!?」ビクッ

やよい「す、すごい音が……」


ドドドドドドッ! ドゴォン!


春香「な、なんなの?なんなのいったい!?」キョロキョロ



361: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:01:15.03 ID:dM7GjD1sO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


ドゴオォン!


…ビューーン!


響「くそー、あの波動砲ってヤツのせいで、なかなか巨人に近づけないぞ……」

技師2「やはり手ごわいですね……」

技師1「でも、さすが親方です!」

技師1「エン太郎よりさらに操縦が複雑になったファルコン号を、初見でこうも簡単に操ってしまうとは!」

響「自分だけの力じゃないさー! ファル子もいい子だから、とっても扱いやすいんだ!」ナデナデ

響(それに……エン太郎が、自分に力を貸してくれてる)

響(……そんな気がするんだ)

技師2「ふふ。相変わらずですね、親方は」




巨人2『しつこいんだよ、君達……』

巨人2『弱いくせに、ぞろぞろと集まってさ!』

巨人2『こうなったら、こっちも仲間を増やすもんね!』


ズズズ…


ワラワラ…


鉄機兵たち「………」

機械兵たち「………」

巨人兵たち「………」


362: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:03:31.63 ID:dM7GjD1sO

響「な、なんだ? 巨人のおしりから、魔物がたくさん出てきたぞ!」

亜美「だね。あれじゃまるで、うん……」

響「わああ、待った!」ガバッ

響「亜美もアイドルなんだから、そういう事言っちゃダメなんだぞ?」

亜美「ん?そーゆー事って?」キョトン

響「だから、今、亜美は○○○って言いそうに……」

響「………あっ」



店主「お、おいヒビキ……」

ものまね士「ヒビキさん、もう少しオブラートに包んだ方が……」

ミニ助「……はぁ。君には失望したよ」

ピョン吉「ど、ドンマイ、ヒビキさん……」

ブタ美「ちょ、ちょっとはしたないかと……」



響「うがー! い、今のは違うの!」ジタバタ

響「亜美が○○○って言いそうになったから自分が止めようとしだけで、決して自分が○○○って言おうとしたわけじゃないんだからな!? っていうか、そもそもアレは○○○じゃなくて魔物だし!」

亜美「あはははは!ひ、ひびきん、言っちゃいけない言葉を連呼しすぎっしょー!」ゲラゲラ

響「うわーん!!亜美のバカー!!」プンスカ


363: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:06:22.48 ID:dM7GjD1sO

長老「いい加減にせんかっ!」ゴンッ

亜美「いったぁ!」

長老「まったく!少しは成長したかと思えば……」

長老「変わっとらんのう!そういうところは」

亜美「うぅ……」

亜美「そーいう長老っちこそ、怒りっぽいとこはゼンゼン変わんないじゃんかー!」

長老「この歳になってまで変わってたまるか!」

店主「お、おい、仲がいいのはわかったけどさ」

店主「すぐそこまで魔物が来てるんだが」スッ



機械兵「………」ゴォォ



亜美「げっ!ケンカしてる場合じゃないよ、長老っち!」

長老「むぅ、ワシとした事が……」

長老「アミ、成長したところを見せてもらうぞ!」

亜美「りょーかい、長老っち!目ん玉かっぽじってよーく見ててよね!」

ものまね士(そんな事したら、目が見えなくなっちゃうんじゃ……)


364: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:14:37.34 ID:dM7GjD1sO

亜美「……サンダガっ!」バッ


ズガガピシャアーン!


機械兵「」


亜美「どんなもんよ!」ドヤッ

ものまね士「サンダー系の最上級魔法!すごい、アミさん!」

長老(アミもマミも、才能はあると思ってはいたが……この歳でここまでとは)



鉄機兵「………」チャキッ



ものまね士「……あっ!アミさん、危ない!」ダッ

亜美「……へっ?」



ものまね士「……ちぇすとぉっ!」ブンッ


ドガッ!!


鉄機兵「」



亜美「うひゃー……やるねえ、ものま姉ちゃん。まこちんみたい」

ものまね士「うふふ、伊達に白魔道士やってませんよ!」

店主「いや、だからそんな腕っぷしの強い白魔道士いないだろ……」



響「みんな、まだまだ来るぞ!」



巨人兵「………」ズゥゥン



店主「うわっ、なんかデカいのが来たぞ!」



巨人兵「………」ブンッ


店主「うわぁっ!」



長老「……プロテス!」バッ


パキーン!


長老「アミ!」

亜美「らじゃ!」

亜美「んじゃいっちょ、アレを試してみよっかな〜」


365: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:18:37.94 ID:dM7GjD1sO

亜美「……肉体の棺に宿りし、病める魂を」ゴゴゴゴ

亜美「永劫の闇へ還したまえっ!」バッ




亜美「……ブレイクっ!」




ゴゴゴゴ…バキーン!


巨人兵「」



店主「す、すげぇ、魔物が石になっちまった……!」

ものまね士「ブレイクまで……!」

ものまね士「アミさんって、すごい魔道士だったんですねぇ……」

長老「アミ、お主……」

亜美「へへっ!トラウマなんてなかった、ってヤツだYo!」

長老「………」

長老(3日会わざれば……というヤツか)

長老(……お前はワシの誇りじゃ、アミ)


366: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:21:20.16 ID:dM7GjD1sO

ブタ美「…………こっ、来ないでくださいっ!」ビクビク

ピョン吉「ぼ、ボクだって戦うぞ!」


鉄機兵「………」ジリ

機械兵「………」ジリ

巨人兵「………」ジリ



響「あっ、ブタ美達が!」

響「待ってろ、今助けるぞ!」

ミニ助「待ちたまえ、ヒビキ君。彼女達なら心配いらないさ」

響「えっ?」



ブタ美「ご、ごめんなさいっ!」

ブタ美「……ポーキー!」


…ボンッ


ブタ「フゴッ」



ピョン吉「……トード!」


…ボンッ


カエル「ゲロゲロっ」



ミニ助「……ミニマム!」


…ボンッ


小人「………」




響「魔物が、ブタとカエルと小人になっちゃった……?」

ミニ助「ボクらだって戦える。ヒビキ君は操縦に集中してくれたまえ!」

響「やるなぁ、みんな!」



店主「おりゃっ!とりゃっ!」


ヒュンッ…カツン

ヒュンッ…コン


機械兵「………?」キョロキョロ



響「…………で、店主は何をしてるんだ?」

ものまね士「投石……ですかね。ダメージどころか、気づかれもしないみたいですけど」

響「……ま、まあ、店主も頑張れ」



367: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:30:25.51 ID:dM7GjD1sO

巨人2『ふぅん。まだ粘るんだ』

巨人2『でも、こっちにはまだまだ味方がたくさんいるもんね!』

巨人2『君たちはいつまで耐えられるかなぁ?』


ズズズ…


ワラワラ…


機械兵たち「………」

鉄機兵たち「………」

巨人兵たち「………」




響「また、うん……じゃなかった、巨人のおしりから魔物が出て来たぞ!」

亜美「どーやら巨人君は、おなかの調子がよくないようですな〜」

長老「まずいぞ。さっきの倍、いや、それ以上はいる」

店主「くそ、あんなにいるんじゃ石もそんなに持たないぞ!」

ものまね士「いや……投石はもういいですって」

響「よし、ここは自分が……!」




…ドガァン!! ドゴォン!!




響「な、なんだ?いきなり砲撃が……?」

亜美「あっ……!」




「……んっふっふ〜!ヒーローはおくれてあらわれるっ!」ビシッ

「真美ちゃん、ヒーローじゃ男の子になっちゃうよぅ」

「あ、そっか」


368: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:34:04.52 ID:dM7GjD1sO

亜美「真美!ゆきぴょん!」




真美「亜美、ひびきん!お待たー!」

雪歩「みんな、大丈夫?」

真美「今から真美の戦車隊も助太刀するよん!」

ジオット「いや、戦車はウチのなんだが……」

アン「まあまあ、この際堅い事は言いっこなしですわ!」

トロア「マミ殿のおかげで、こちらの戦力も充分です!」

老婆「………」

老婆(もともと1台しかなかった戦車を魔法で増やすとはね)

老婆(『ブリンク』をモノに使ったヤツは、初めて見たよ、まったく……)




響「2人とも!来てくれたのか!」

長老「マミ……!」

亜美「ようやく来たか、我が同志よ。キミの実力、見せてもらうぞ!」




真美「オーケー、ボス。目ん玉かっぽじってよーく見ててよね!」




巨人2『また余計な虫が増えちゃった』

巨人2『いいよ。じゃあ、君達から潰してあげる!』

巨人2『みんな、やっちゃえ!』


魔物たち「………」ワラワラ



369: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:38:29.95 ID:dM7GjD1sO
ー ドワーフ戦車 ー


真美「……来た!」

真美「おっちゃん、準備はいーい?」

ジオット「いつでも良いぞ」

真美「できるだけ引きつけて……」



魔物たち「………」ワラワラ



真美「……今だよ!全門はっしゃー!」ビシッ



ドゴォン! ドゴォン!


ドドドドドドッ!!



魔物たち「」



真美「……よっしゃあ!」グッ

ジオット「ふむ。なかなか指揮官の才能があるな、娘よ。我が国に欲しいくらいだ」

真美「当たり前っしょ〜!こーいうゲームも何回もやったコトあるもんね!」ブイッ

老婆「安心するのはまだ早いよ。……今度はデカいのが来た!」



巨人兵たち「………」ゾロゾロ



真美「お次は敵さんのターンってわけだね」



巨人兵たち「………」ゴゴゴゴ



真美「よーし、こんな時は……」



真美「行け!ゆきぴょんバリアー!」グイグイ

雪歩「こ、恐いですぅぅ!!」

真美「へーきへーき。ゆきぴょんならよゆーだって!」グイグイ

雪歩「ちょ、真美ちゃん、押さないで……」

雪歩「いやあぁぁぁあああっ!!」


巨人兵たち「………」ブンッ



ドゴォ! バキィ! グシャア!



雪歩「っ……!」



雪歩「…………あ、あれ?」キョロキョロ

雪歩「…………ご、ごめんなさい。効かないですぅ」ペコリ


370: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:43:10.46 ID:dM7GjD1sO

真美「……からのー」

真美「第二部隊、しゅつげきー!」ビシッ


トロア「はあっ!」ザシュッ

ユキコ「えいっ!」バキッ


巨人兵1「」


ユキコ「や、やりましたぁ!」

トロア「ふぅ……」チャキッ



アン「ファブール王、お願いします!ヘイスト!」

カタカタ…シャキーン!


ファブール王「ふふふ。まだまだ若い者には負けてられんっ!」ダッ


ファブール王「ずえぇぇいっ!!」ブンッ


ドガァ!


巨人兵2「」


ファブール王「痛たた、腰が……」

ファブール王「ワシも衰えたのう……」



真美「うんうん。みんなやるねぇ!」

真美「よーし、真美も……」



巨人兵3「……!」ブンッ



雪歩「真美ちゃん、危ないっ!」ダッ


バキィン!



雪歩「っ……くぅ……!」グッ

真美「ゆきぴょん!」


371: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 21:48:07.45 ID:dM7GjD1sO

シルフ「……まったく、無茶しますねぇ」ヒョコッ

雪歩「シルフちゃん!」


シルフ「風よ……!」バッ


ヒュウゥゥ…


シルフ「……暴れなさいっ!」


ビュオォォオ!


巨人兵3「……!」ヨロッ


シルフ「さあ、今ですよ!」

真美「りょーかい、シルシル!」

真美「そんじゃ、とっておきのヤツ、いきますか!」


真美「汚れ無き、天空の光よ……」バッ

真美「血にまみれし、不浄を照らし出せっ!」




真美「ホーリー!」




キラキラキラ…


ドドドドドドドドッ!!



巨人兵3「」



真美「……ぃよし!ミッションコンプリート!」グッ

雪歩「恐かったですぅ……」



老婆(あの若さでホーリーだって……?)

老婆(……そうか。あの娘もリボンの仲間だって言ってたね)

老婆(まったく、つくづく底の知れない連中だよ)



老婆「あんたたち、まだ来るよ!気を引き締めな!」

真美「えっ?」



魔物たち「………」ワラワラ



雪歩「ほ、ホントだ、たくさん来ますぅ!」

真美「よし、返り咲きにしてやるかんね!」ビシッ

雪歩「か、返り咲いたらダメだよ、真美ちゃん!」チャキッ



372: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 22:01:53.62 ID:dM7GjD1sO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


響「おー!あっちのみんなもやるなー!」

長老「マミ……」

店主「こりゃあ、こっちも負けてられないな!」

ものまね士「そうですね!」

亜美「でも、まこちんがいないよね?」

響「あ、そーいえばそうだな。真はこういうの1番張り切りそうなのに」

亜美「ちょっと聞いてみるよ」



亜美「おーーい、真美ーー!!まこちんはどうしたのさーー!!」




真美「まこちんなら、今、魔物とタイマンはってるよーー!!」




亜美「りょーーかーい!!」



亜美「……だってさ」

響「だったら何も心配ないな」

亜美「うん、心配ないね」

店主「えっ?おいおい。いくら強いったって、マコトは女の子だろ?ひとりは危険じゃないのか?」

響「店主は優しいんだな。その言葉、真に聞かせてあげたいぞ」ニコッ

亜美「おっちゃんはまこちんの強さを知らないモンね。ちかたないね」

亜美「だいじょーぶ。まこちんは人類最強だもん!ゼッタイやられちゃう事はないよ!」

店主「そ、そうなのか?」

ものまね士(人類最強……)



亜美(真美たちもぶじにとーちゃくしたし、これで対巨人フォーメーションはととのったっぽいね)

亜美(あとは、はるるんたちを待つだけなんだけど……)

亜美(ゲームだと魔導船で巨人のとこに来るんだよね、確か)

亜美(でも、ひびきんたちの話じゃ、この世界の魔導船はこわれちゃったっぽいし……)

亜美(どーやってここまで来るのかなー)



亜美(…………ん?)

亜美(魔導船がこわれた……?)

亜美(今まで忘れてたけど、魔導船がないと月に行けないじゃん)

亜美(……あれ?ヤバくない?)



373: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 22:05:12.30 ID:dM7GjD1sO
ー ドワーフ戦車 ー


真美「……あれ?そーいえば、亜美たちと一緒にあずさお姉ちゃんがいたはずだけど……」

雪歩「いないみたいだね。どうしたんだろう?」

真美「ちょっと聞いてみるよ」



真美「おーーい、亜美ーー!! あずさお姉ちゃんはどーしたのさーー!!」




亜美「あずさお姉ちゃんなら、旅に出たよーー!!」




真美「わかったーー!!」




真美「……だってさ」

雪歩「た、旅ってもしかして……うぅ、心配ですぅ」

真美「うん、すっごく心配だよね……」

アン「大丈夫ですよ。きっとアズサさんも無事ですわ」

雪歩「アンさん、でも……」

真美「アン姉ちゃんはあずさお姉ちゃんの迷子っぷりを知らないからね。ちかたないね」

真美「あの亜空間なお方なら、もしかしたら今ごろ、次元のはざまとかに行っちゃってるかも……」

アン「そ、それはさすがに言いすぎでは?」

トロア(亜空間……)



真美(亜美たちにぶじ追いついたし、これで対巨人フォーメーションはととのったっしょ!)

真美(あとは、はるるんたちを待つだけなんだけど……)

真美(問題は、巨人にせんにゅーするのは、はるるんたちだけでヘーキなのか、ってとこだよね)

真美(巨人のコアの選挙システムってヤツ、確か倒すじゅんばんがあったはず)

真美(でも、何もヒントがなかったら、きっとわからないよねー)

真美(真美や亜美がはるるんたちについて行くワケにはいかないし、他に誰か知ってる人は……)



真美「…………あ、いた!」ガバッ

P「ど、どうしたんだ、真美?」



374: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 22:22:21.47 ID:dM7GjD1sO
ー トロイア南の森 ー


巨人2『……まさか、こんなにしぶといなんてね……』

巨人2『こうなったら、もう一度、波動砲で壊してあげるよ!』

巨人2『死んじゃえーっ!』


キュイィィィィン…!




響「あれは、さっきの……!」

ミニ助「ヒビキ君、ここは一旦引くべきじゃないか?」

響「………」チラ

響「いや、ダメだぞ」

響「今、自分たちが逃げたら、ドワーフの戦車が危ない」

響「ファル子と違って、戦車には逃げ道なんかないんだ。あれが直撃したら……」

長老「では、この船で耐える、というのか?」

響「……うん」

店主「だ、大丈夫なのか?」

響「わからない。けど……」

響「絶対に耐えてみせるさー!」

亜美「亜美にできることがあったら、手伝うかんね!」

響「うん! 頼むぞ、亜美!」


技師1「親方、来ます!」


響「わかった!」

響「いくぞ、ファル子!」ガシッ


375: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 22:26:35.02 ID:dM7GjD1sO

響「……新生・ナンクル砲!!」グイッ



コオォォ…!



巨人2『あははは!死ね死ね死ねぇー!』



ゴオォォォォ…!



響「負けないぞっ!」



ゴオォォォォ…!



巨人2『ほらほら、押し返しちゃうよ?』



ゴオォォォォ…!



響「くそっ、押されてる!」グッ

響「ファル子、頑張れ!」ナデナデ



ゴオォォォォ…!



巨人2『勝つのは、ボクだっ……!』



ゴオォォォォ…!



響「だ、ダメだ! 押し返せない! 」

響「自分たちじゃ勝てないっていうのかっ!?」



ゴオォォォォ…!



巨人2『あと、ちょっと……!』



ヒュー…

ドドドドドドッ!!



巨人2『…………えっ?』ヨロッ



ヒュー…

ドドドドドドッ!!



巨人2『な、なんで!? 後ろから砲撃が……?』



376: ◆bjtPFp8neU 2015/07/15(水) 22:29:26.17 ID:dM7GjD1sO

響「あれ? なんか急に巨人の攻撃が弱くなったぞ……?」



店主「なあ。巨人のヤツ、様子がおかしくないか?」

長老「ふむ。何か、後ろを気にしているような……」

技師2「あれは……おそらく、我々以外に巨人に攻撃を加えている者がいます!」

ミニ助「しかし、戦車隊は魔物に手いっぱいで巨人に攻撃する余裕はないはずだ。一体誰が?」

ものまね士「あのー、さっきから大きな音がしません?」



…ズシィン! ズシィン!



響「確かに、地震みたいな音がするぞ!」

亜美「 ……まさか!」




ズシィン! ズシィン!




亜美「ね、ねえ! 巨人がもう1体、ミサイルを発射しながらものすごいいきおいで走ってきてるよ!」




巨人4『………』ズシィン! ズシィン!



ヒュー…

ドドドドドドッ!!




響「まさか、仲間を呼んだのか!?」




巨人4『……ハーーニーーーっ!!』

巨人4『どこなのーーーっ!!』

ズシィン! ズシィン!




響「」

亜美「」



380: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:03:13.54 ID:SXoZLIS9O

亜美「うーむ、そーきたか……」

響「ね、ねえ亜美、あれ美希だよね?あんな事言うの絶対美希だよね?」

亜美「うん。ミキミキ以外に考えられないよね」

ものまね士「ミキさんが巨人に乗ってるって事は……」

店主「あの巨人は味方って事か!」

長老「これは、形成逆転じゃな」

ミニ助「どうやら、勝利は目前のようだね」

亜美「ん〜……そーでもないと思うよ?」

長老「なぜじゃ?」

亜美「まず第一に、見たカンジ、ミキミキは軽くボーソーしてるっぽいんだよね」

亜美「ミキミキは巨人せんにゅー部隊のキーパーソンなんだけど、はたしてあのじょーたいで話を聞いてくれるかどうか……」

ものまね士「……言われてみれば、そう見えなくもないですねぇ」

亜美「第二に、あの巨人はまだノーダメなんだよ。亜美たちは巨人から出てきた魔物を倒しただけでしょ?」

亜美「まったくダメージを与えてないのに勝った気になるのはまだ早いっしょ」

ミニ助「むぅ……君の言う通りだ」

亜美「第三に、これはさっきも言ったけど、巨人を破壊するには……」

長老「鮮魚システム、か?」

亜美「うん。それを破壊しなきゃいけないんだけど、巨人を操縦してる魔物も倒さなきゃだよね?」

長老「そうじゃな。……つまり、潜入してからの方がやる事は多い、という事か」

亜美「まずは、ミキミキをセットクしないとだねー」




真美「……おーーい!!亜美ーー!!」




亜美「……ん?」チラ



381: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:08:27.14 ID:SXoZLIS9O

真美「受け取れーーい!!」



ヒューーー…



「うわぁぁぁあああああっ………!」



亜美「わあっ!」パシッ



亜美「な、何が飛んできたと思ったら……」

亜美「兄ちゃんじゃんか!」

響「プロデューサー!無事だったんだな!」

P「はぁ、はぁ……」

P「あ、亜美と響か?久しぶりだな……」ドキドキ

亜美「もー!こんな大事な時に、なに遊んでんのさ!」

P「い、いや、遊んでるわけじゃなくてだな……」

亜美「亜美たちはシンケンに遊んでるのに、ふざけないでよね!」

P「そ、そうじゃなくて、えっと……俺は真美に言われて、春香たちと……」

響「大丈夫か?ゆっくりでいいからね?」ナデナデ

P「あ、ああ。……ちょっと深呼吸させてくれ」

P「すーーー……」

P「はーーー……」

亜美「もう、空を飛んで来たくらいでだらしないなぁ、兄ちゃんは」

P「そうは言っても、命綱も何もないんだぞ?」

P「……ふぅ、落ち着いてきた。響、ありがとう」


382: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:13:15.00 ID:SXoZLIS9O

響「それで、どうしてプロデューサーは空を飛んで来たんだ?」

P「巨人に潜入する春香たちの助けになるために、俺はここまで来たんだよ」

響「あ、そっか。プロデューサー、このゲームやった事あるって言ってたもんな」

亜美「はは〜ん、そゆことか〜。真美のヤツめ、なかなか味なことをしてくれる」

亜美(……ミキミキも、兄ちゃんの言うことなら聞いてくれるっしょ!)

P「まったく、いきなり真美に空にぶん投げられるし、生きた心地がしなかったよ……」

響「あはは!大変だな、プロデューサーも」

亜美「んっふっふ〜、悪いけど兄ちゃん。もっかい空の旅を楽しんでもらうよ?」

P「えっ?」



亜美「……おーーい、ミキミキーー!!」




巨人4『…………あれ?亜美なの』

巨人4『やっほー!久しぶりー!』ブンブン




亜美「うん、久しぶりー!」

亜美「……って、それは今はいいんだよ」

亜美「ミキミキに、いいものあげるよーー!!」




巨人4『ミキに何かくれるの?』キョトン




P「あ、亜美、待て!心の準備がまだ……」

亜美「カクゴ決めなよ、兄ちゃん。この世界のめーうんは、兄ちゃんにかかってるんだから!」

P「いや、で、でも……」

亜美「もんどーむよー!」ガシッ

亜美「…………そいやっ!」ブンッ



ヒューーー…



P「うわああぁぁぁああああぁぁ……!」




響「…………行っちゃった」

亜美「兄ちゃん…………グッドラック!」b



383: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:19:36.67 ID:SXoZLIS9O
ー 巨人内部 ー


P「…………と、いうわけで、俺はここまで飛ばされてきたんだ」

P(美希のナイスキャッチがなけりゃ、危なかったな……)



春香「そ、そうだったんですか……」

あずさ「まあ、大変だったんですねぇ」

千早「でもプロデューサー。よく無事にここまで辿り着けましたね。もし、勢いが足りなかったら……」

P「お、おい千早、滅多な事は言わないでくれよ。ただでさえトラウマになりそうなんだから」

千早「あ……すみません」

美希「ミキ的には、今までの事なんてどうでもいいの」

美希「だって、ハニーがこうして無事でいてくれたんだもんっ!」ギュッ

P「うぷっ!」

やよい「うっうー!プロデューサーがまたべろちょろになってて、ちょっとうれしいかなーって」

律子「まったく、亜美と真美ったら、無茶するんだから……」

律子「あとで、叱っておきます」

P「……いや、それはいいよ」

律子「プロデューサー……?」

P「きっとあの子たちなりに、今の状況を考えての事なんだ。俺としてはむしろ、そこを褒めてやりたいかな」

律子「もう。相変わらず甘いですねぇ、あなたは」


384: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:24:27.43 ID:SXoZLIS9O

貴音「……それで、ぷろでゅうさぁ殿。巨人に潜入する、との事ですが……」

P「ああ。今は巨人を倒すのが先決だったな。再会を喜ぶのは、全て終わってからにしよう」

P「まず、今のメンバーを潜入部隊と待機部隊に分ける」

春香「えっ?みんなで行くんじゃないんですか?」

P「そうしてもいいんだけど、この位置は、巨人を牽制するのにうってつけだと思うんだ」

P「亜美、響の飛空艇。真美、雪歩の戦車隊。そして今みんなが乗ってるこの巨人」

P「三方向から攻撃した方が、あの魔物も対応しづらいだろ?」

春香「あ……確かにそうですね」

千早「それで、潜入部隊は誰になるんですか?」

P「春香、千早、やよい、伊織、美希。この5人に頼みたいと思う」

P「みんな、やってくれるか?」

美希「もちろんなの!ハニーと一緒なら、ミキはどんな事だってガンバれるの!」ギュッ

P「むぐっ!」

やよい「わたしも、みなさんといっしょにがんばりまーっす!」

千早「私も、異論はありません」


385: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:29:27.15 ID:SXoZLIS9O

春香(もー、美希ってばプロデューサーさんを独り占めして……)

春香(私だって、久しぶりにプロデューサーさんを抱きしめたいのになぁ……)

春香(……でも、この状況って……)

春香(この世界に来てすぐの頃の、バロンのものまね士さんの研究所の時と似てるよね)

春香(ふふっ。あの時の私ってば、美希に嫉妬しちゃってすっごくイヤな子だったっけ)

春香(でも、今は……)



春香(みんながいて、みんなと一緒に笑い合える。それが、とっても嬉しい)

春香(不思議だね……。こんな当たり前の事に、あの時の私は気づかなかったんだ)



P「春香。……春香!」

春香「…………は、はいっ!」ガタッ

春香「あ、天海春香、頑張りますっ!」グッ

律子「もう、落ち着きなさいよ春香……」

P「ははっ。春香は立ち上がるほど気合が入ってるんだな。さすがはリーダーだ!」

春香「あっ……えへへ……///」モジモジ

美希「むー!ミキ、春香にだけは負けないの!」

春香「ええぇっ!?一緒に頑張ろうよぉ」

美希「どーしよっかなー?」

春香「み、美希〜」


「あはははは……」



伊織「………」



伊織「……行くならさっさと行きましょう。時間が惜しいわ」スクッ



P「伊織……?」

伊織「あ…………」

伊織「ほ、ほら、今みんなは巨人を牽制してくれてるんでしょ?」

伊織「だったら時間は無駄にはできないじゃない」

P「ああ、そうだな」

律子「………」


386: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:39:17.54 ID:SXoZLIS9O

あずさ「美希ちゃん、プロデューサーさんをよろしくね?」

美希「もちろんなの!ミキ、もう一生ハニーと離れないって決めたの!」

P「いや、一生ってな……」

あずさ「うふふ。ちょっぴり羨ましいわ〜」

美希「いくらあずさでも、ハニーは渡さないからね?」ギュッ

あずさ「あら、残念ね〜」

あずさ「……でもね、美希ちゃん」

あずさ「プロデューサーさんだけじゃなくて、ちゃ〜んとみんなの事も見てあげてね?」

あずさ「美希ちゃんには、みんなを守る力があるんだから」

美希「あずさ……?」

あずさ「みんな仲良く、ね?」

P(あずささん……)

美希「ん〜…………あずさには負けっぱなしだもんね」

美希「わかったの。勝者の命令には従うの」

あずさ「ありがとう、美希ちゃん」ニコッ

美希「その代わり、帰って来たらまた勝負なの、あずさ!」ビシッ

あずさ「うふふ、私で良ければ、相手になるわ〜」




やよい「……それで、ここを押すと、ばばーん!ってなるんです!」

律子「ば、ばばーん?」

やよい「はい!あと、このボタンは、しゃきーん!ってなって……」

律子「あー……うん。ま、まあ、なんとなくわかった……ような気がするわ」

律子「ありがとう、やよい」

やよい「律子さん。ロボの事、よろしくおねがいしますね!」ペコリ

律子「ええ!やよいもしっかりね」

やよい「はいっ!」


387: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:45:07.80 ID:SXoZLIS9O

貴音「千早、少し話が……」

千早「……はい」



貴音「あの巨人に乗っている魔物は、とんでもない攻撃を仕掛けて来ます」

貴音「対策を練らないと、取り返しのつかない事になるでしょう」

千早「………」

千早「ええ、わかっています」

千早「確か、聞いただけで相手を死に至らしめる言葉を操るとか」

貴音「知っていたのですか?」

千早「私は、少しの間魔物の近くにいましたから、その時に」

貴音「そうですか。……ならば話は早いです」

貴音「その言葉を聞いてから死が訪れるまで、数十秒ほど時間があります」

貴音「しかし、その言葉……『死の宣告』を聞いてしまうと、どうやら死を逃れる術はないようです」

千早「死の、宣告。それが……」

貴音「ええ。命を弄ぶ、悪魔の囁きです」

千早「あの、四条さんはなぜそんなに詳しいんですか?」

貴音「………」

貴音「それは、とっぷしぃくれっとです」

貴音「……と、言いたいところですが……」

貴音「千早、あなたには話しましょう」

貴音「わたくしは以前、死の宣告によって命を落としました」

千早「!」

貴音「ですが、こうして生きています」

貴音「それは、美希のおかげなのです」

千早「美希の……?」

貴音「おそらく、生命を呼び戻す類の魔法も存在するのでしょう」

貴音「ですから、何があっても諦めないでください。希望とは、諦めた時点で潰えてしまうものですから」

千早「………」

千早「……安心してください、四条さん」ニコッ

千早「私は、諦めません」

千早「必ずみんなで、目的を果たして戻って来ます」

千早「それに、実はその、死の宣告の対策もすでに考えてあるんです」

貴音「なんと、そうでしたか」

貴音「…………ふふ」

貴音「変わりましたね、千早」

千早「そ、そう……ですか?」

貴音「ええ。とても喜ばしい変化です」

貴音「あなたの笑顔を見て、わたくしも安心しました」ニコッ

千早「か、からかわないでください……///」


388: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:49:43.80 ID:SXoZLIS9O


ドゴォン! ドカァン!

ドドドドドドッ!


律子「……これ以上近づくのは厳しいわね。砲撃も激しいし、さすがにあの巨人に気づかれてしまうわ」

春香「ここまでで充分です。ありがとうございます、律子さん!」

律子「………」

律子「春香。伊織の事、よろしくお願いね?」

春香「え……?」

律子「あの子は今、とても重いものを背負っているの。強がってるけど、とても辛いはず」

律子「本当なら、私もついて行きたいところだけど……」

春香「………」

春香「任せてください、律子さん!伊織も、大切な仲間ですから!」ニコッ

律子「……頼むわね」



P「……よし、みんな。準備はいいか?」

美希「バッチリなの!」

やよい「わたしも、だいじょーぶです!」

伊織「さっさと終わらせるわよ」

千早「行きましょう、プロデューサー」

春香「この世界のみんなを守る戦いへ!」

P「……ああ!」

P「美希、頼む」

美希「はいなの!」

美希「みんな、行くよ?」

美希「……レビテト!」バッ

…フワッ

ビューーーン…





あずさ「……行っちゃいましたねぇ」

律子「そうですね」

貴音「春香たちなら、必ず成し遂げてくれるでしょう」

貴音「律子嬢、あずさ。今はわたくしたちに与えられた使命を全うしましょう」

あずさ「ええ、そうね」

律子「それじゃ、行くわよ!」ガシッ



律子「巨大ロボ、発進!」



ズズズ…


ゴオォォ…!



389: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:55:56.92 ID:SXoZLIS9O
ー トロイア付近の森 ー


真「だあぁぁっ!!」ブンッ


ドゴォ!


白龍「ぐっ……!」

白龍「……むんっ!」ブォンッ


バキィ!


真「うわあっ!」


…ズザザ!



真「…………ふぅ。読めないなぁ、君の攻撃は」

真(まるで、ムチみたいに不規則な動きだ……)


白龍「ふふふ。負けを認めますか?」クネクネ


真「冗談!ボク、負けるつもりなんて無いからね!」


白龍「強情ですね……」


真「へへっ!でも、楽しいなぁ!」


白龍「……?」


真「こうやって本気で戦える相手がいるのって、いいよね!」ニコッ

真「そこだけは、君に感謝しないといけないな、うん」


白龍「………」

白龍「油断を誘う作戦ですか?そんなものにかかるとでも?」


真「いや、そういうつもりはないんだけどな」

真「……ま、いいや。そろそろ続きをやろっか!」ゴゴゴゴ


白龍「む!」


真「……はっ!」タンッ


白龍「……バカめ。空中で私が負けるはずがありません!」ユラ…


390: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 22:59:19.96 ID:SXoZLIS9O

真「……飛燕、龍神脚っ!」


ビュンッ…


白龍「ふんっ!」ヒョイッ


白龍「お前のスピードは見切りました。そのまま地面に激突しなさい!」


真「……君が避けるのは、想定済みだよ!」


白龍「何……?」


…ドゴォォン!


真「動きが読めないなら……!」ガシッ


白龍「!……砕けた岩を!」


真「まとめて潰すだけだあっ!」タンッ


真「うおりゃあああぁぁっ!」ブンッ


ヒュー…グシャア!


白龍「ぐぁ……!」ヨロッ


…スタッ

真「とどめだっ!」


真「はあぁぁぁぁぁ……!」ゴゴゴゴ


真「覇王……!」バッ


ビュンッ…ドゴォ!


真「ぐ……ぁ……っ!」ヨロッ


白龍「っ……今のは、少々効きました……」

白龍「ですが、甘く見られたようです」

白龍「むんっ!」ブンッ


ドサドサドサッ!


真「く……木が、なぎ倒されて……?」


白龍「さあ、とどめです!」ガシッ

白龍「串刺しになりなさい!」ブンッ


真「まずい、避けなきゃ……!」

真「……はあっ!」ダッ


ヒュー…


ドスドスドスッ!


391: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 23:12:37.54 ID:SXoZLIS9O

真「はぁ、はぁ……」



白龍「ちっ、うまく避けたか……」


真「へ、へへっ……」ニコッ

…ズキッ

真(痛っ……!)

真(さっきので、足が……)

真(ちょっと調子に乗りすぎたかも……)



白龍「………」

白龍「ここへきて、ようやく力の差が出てきたみたいですね」

白龍「そろそろ余裕がなくなってきたのでは?」


真「そんな事はないさ。そっちこそ、調子に乗りすぎると痛い目見るよ?」


白龍「強がっても無駄です。お前の顔色が変わったのは、火を見るよりも明らか」


真(うわ、バレてる……)


白龍「……最後に、もう一度聞きます」

白龍「私と共に来ませんか?」


真「………」


392: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 23:24:26.48 ID:SXoZLIS9O

白龍「お前の力は、やはりここで終わらせるには惜しい。その力は、きっとコトリ様のお役に立つ事でしょう」


真「……しつこいなぁ、君も」

真「何度聞かれても、ボクの答えは変わらない」

真「悪者の手助けなんてゴメンだ!」


白龍「………」

白龍「私の仲間達が、人間にやられたようです」


真(仲間……そうか、きっとみんなが……)


白龍「もう、手加減はしません」ユラ…

白龍「……少年よ。私の誘いを断った事、後悔させて……」


真「……ちょっと待った!」


白龍「え?」


真「……今、なんて言った?」


白龍「だから、私の誘いを断った事を……」


真「その前!」


白龍「少年よ……?」


真「………」ゴゴゴゴ

真「君は今……言ってはいけない事を言った……」ゴゴゴゴ


白龍「な、なんだこの気は?さっきと段違いの……!」


真「ボクは……」グッ


真「ボクは…………!」ゴォォ!




真「…………女の子だああああっ!!」バーン




白龍「ば、バカな……!?」



真「覇王……!」バッ

真「………至高拳っ!!」


ゴオォォォオオォ…!!


白龍「あ…………」



ドッゴオォォォン!!




393: ◆bjtPFp8neU 2015/07/19(日) 23:32:05.68 ID:SXoZLIS9O

真「………」チラ



白龍「」



真「……押忍っ!」




真「……まったく、失礼だよね!魔物までボクを男の子と間違えるなんてさ!」プンスカ


真「……痛っ!」ズキッ

真(……大丈夫。ちょっと痛いけど、歩けないってほどじゃない)

真「魔物も倒したし、早くみんなのところへ行かないとね」



…キラーン!



真「……ん?なんだろ、あれ」

スタスタ…



真「これって……刀?」スッ

真「ふーん……」チャキッ

真(ボクはこういうの使わないな)

真(でも、刀っていえば伊織が使ってたっけ……)

真(お土産に、伊織に持って行ってあげようかな)



真「……よし、行こう!」

スタスタ…



395: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:08:57.09 ID:N7nACHdlO

白龍「……ま、待って、ください……」



真「……ん?」クルッ

真「げっ!?君、まだ動けるの?」

真「タフだなぁ、ホント……」



白龍「トドメを、刺さないのですか……?」



真「えっ?なんで?」



白龍「私は……あなた方の敵です。敵を根絶やしにするのは、当然の事ではないですか?」

白龍「ましてや、我々は、あなた方人間を滅ぼそうとしたのですよ?」



真「んー……」ポリポリ

真「確かに、君たちのした事は許せないよ」

真「たくさんの人が死んだし、生きてる人だって、住むところがなくなって困ってる人もいる」



白龍「………」



真「……でもさ、ここで君を殺すのは、ちょっと違うかなって」



白龍「なぜです……?」



真「うーんと、うまく言えないんだけど……」

真「こんな事を続けてもさ、誰も幸せになれないと思うんだよね」



白龍「………」



真「君たち魔物がなんで人間を襲うのか知らないけど……」

真「襲われるから、人間は抵抗する。抵抗されれば、魔物はさらに人間を襲う」

真「こんな事を繰り返すのも、なんか不毛だなーと思ってさ」

真「そんな事するヒマがあるなら、スポーツとかジョギングとか、そういう事をした方が身体にもいいし、すごく健康的だよ?」

真「……って、君は足がないから、ジョギングはできないね」

真「あはは……」



白龍「………」


396: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:16:53.53 ID:N7nACHdlO

真「えーっと、つまり……」

真「罪を憎んで人を憎まず、って事」

真「犯してしまった罪は、消す事はできないけど、人は、またやり直す事ができる」

真「同じ間違いを繰り返さないように、努力する事ができるって事さ」

真「君たちにだって、やり直すチャンスはあるんじゃないかな」

真「まあ、また襲って来る気なら、今度は手加減はしないけどね?」



白龍「………」



真「さて……そろそろボク、行かなきゃ。きっとみんな待ってるし」



白龍「……もうひとつだけ、聞かせてください」

白龍「あなた方『あいどる』とは、いったい何者なのですか?」



真「アイドルかぁ……」

真「そんなの、ボクの方が聞きたいくらいなんだけど……」

真「しいて言えば、見てくれる人たちに元気や幸せをあげる人、かなぁ」



白龍「………」



真「それでボクも、もっと色んなカワイイ服を着て、きゃぴぴぴぴーーん!!って感じの女の子になりたいなぁ!」



白龍「ふっ……」

白龍「そのような振る舞いをしていては、難しいのでは?あなたはどう見ても、少年にしか見えません」



真「ぐっ……!」グサッ

真「失礼だなぁ、もう!」プンスカ

真「ボクは、まだまだこれからなんだもんね!」

真「絶対いつかは、超カワイイ女の子になってやるんだからねっ!」


397: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:21:24.41 ID:N7nACHdlO

真「……っと、もうホントに行かなきゃ」

真「あ、そうだ。この刀、もらっちゃっていいのかな?」チャキッ



白龍「その刀……妖刀ムラサメは、コトリ様からお預かりした、とても大切なもの」

白龍「ですが、コトリ様は『こう』なる事を望んでいたような節もあります」

白龍「持って行きなさい。きっと、あなた方の助けになるでしょう」



真「ありがと!」

真「じゃあボク、行くね?」


タタタタ…


…ピタッ

真「……ああ、そうだ」

真「君と戦えて、楽しかったよ!」ニコッ

真「じゃあね!」


タタタタ…



白龍「………」

白龍(不思議ですね。人間とは、もっと脆弱でずる賢いものだと思っていました)

白龍(あいどる……か)

白龍(コトリ様……)



白龍(あいどるは…………あなたの敵になり得るかもしれません)



398: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:29:29.37 ID:N7nACHdlO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


亜美「……ふぅ」

亜美「これであとは、はるるんたちにガンバッてもらうだけだねー」

響「プロデューサー、大丈夫かなぁ」

亜美「へーきっしょ!向こうにはミキミキがいるんだし」

響「テキトーだな、亜美……」



技師1「……あのー、親方?」

響「ん?どうしたんだ?」

技師1「親方とアミさんは、さっき誰と話していたんです?」

響「誰って……」

響「さっきのは、自分たちのプロデューサーで、あんな姿だけど本当は人間なんだぞ!」

技師1「ぷろでゅーさー……?」

技師2「あんな姿と言われても、我々には何も見えませんでしたけど?」

響「えっ?」

亜美「ひびきん、兄ちゃんはみんなには見えないんだって!忘れちったの?」ヒソヒソ

響「あ、そうだった……」



亜美「ねえ、長老っちは見えたよね?」

長老「……いや、ワシにも何も見えんかったが」

亜美「えっ?」

亜美「そんなコトないっしょ?だって、長老っちは兄ちゃんの事見えるって言ってたじゃんか」

長老「彼がここにいたのか?」

長老「しかし、姿どころか気配すら感じ取れなかったぞ?」

亜美「え……」

亜美「マジ?なんでだろ……」

亜美(べろちょろだと、長老っちにも気づいてもらえないのかなー)


399: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:32:14.76 ID:N7nACHdlO

ものまね士「あの、ぷろでゅーさーっていう方は、みなさんにとって大切な方なんですよね?」

響「ものまね士、プロデューサーの事知ってるのか?」

ものまね士「いえ、直接お会いした事はないんですけど、前にハルカさんたちが話していたのを覚えていたので」

響「うん。プロデューサーも、自分たちの大切な仲間なんだ!」



長老「……で、今、彼はどこへ?」

亜美「兄ちゃんなら、今ごろミキミキたちの乗ってる巨人にいると思うよー」

亜美「せんにゅー部隊のサンバイザーとして、ガンバッてもらうためにね!」

響(アドバイザーの間違いじゃないか……?)

長老「ふむ……」

長老「確かに、彼には、未来が見える不思議な力があるようじゃった」

長老「彼がいれば、百人力じゃな」

亜美「そゆこと!」

響「巨人の破壊は春香たちに任せて、自分たちは、巨人を足止めするぞ!」

技師1「はい、親方!」


400: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:38:15.82 ID:N7nACHdlO

巨人2『………』

巨人2『君たちは……』

巨人2『寄ってたかって、ボクの事をイジメるんだね……!』

巨人2『人間なんて……嫌いだっ!』




響「ヒドい事したのは、そっちだろ!?」

響「人間たちが住んでた城や町を、めちゃくちゃにして!」




巨人2『それがなんだっていうの?』

巨人2『人間は、このキレイな青き星を独り占めする、ズルいヤツらなんだ!』

巨人2『そんなヤツら、滅んで当然だよっ!』




響「ひとのモノを壊すのは、悪い事なんだぞっ!」




巨人2『誰が決めたの?この青き星が人間のモノだって、いったい誰が決めたの?』

巨人2『そんなのは、君たち人間が勝手に決めた事だよ。ボクたちにだって、手に入れる権利はあるっ!』

巨人2『この青き星を手に入れる、権利はあるんだっ!』




響「だったら、みんなで分け合えばいいさー!」

響「平和に暮らしてた人間たちを殺す事は、なかったはずだぞ!」




巨人2『………』


401: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:40:40.95 ID:N7nACHdlO

巨人2『……何を言っても無駄だね』

巨人2『全て……壊す!』

巨人2『ボクにはもう、それしかないから!』



キュイィィィィン…!



響「!……また、波動砲か!?」

響「ファル子、行くぞ!」




巨人2『さっきは邪魔が入ったけど、今度はフルパワーだよ!』

巨人2『あのガラクタみたいに、君たちも粉々にしてあげるっ……!』



ゴオオォォオオ…!!



響「ガラ……クタ……?」ピクッ



亜美「ひびきん、何してんのさ!来るよ!」



響「エン太郎の事か…………?」ゴゴゴゴ






響「エン太郎の事かぁぁーーーーーっっ!!!」




ゴオオォォオオ…!!





亜美「」


402: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:43:25.66 ID:N7nACHdlO

亜美「ひ、ひびきんが……」

亜美「おだやかな心を持ちながら、はげしー怒りによって目覚めたデンセツの戦士っぽくなっちゃったYo!」




響「しなさりんどぉぉぉーーー!!」ゴゴゴゴ



ゴオオォォオオ…!!



巨人2『負けるかぁぁーーっ!!』



ゴオオォォオオ…!!



響「うがあああぁぁーーーっ!!」



ゴオオォォオオ…!!



巨人4『響!手伝うわ!』



ヒュー…ドドドドドドッ!!



亜美「あの声って、りっちゃん!?」




巨人4『リッチェーンの真の力を見なさいっ!』




亜美「りっちゃん、何気にノリノリだし!」

亜美(しかもあの巨人、全然リッチェーンじゃないし!)




巨人2『うわあああぁぁっ!!』





ドゴオオォォォン…!!



403: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:47:19.52 ID:N7nACHdlO
ー ドワーフ戦車 ー


真美「いいな〜、りっちゃん」

真美「真美も巨人に乗ってオーバーマスターしたいYo!」


トロア「マミ殿、今はそんな事言ってる場合では……!」



鉄機兵「……!」ブンッ



トロア「くっ!」


ガキィン!


真美「………」チラ

真美「……コンフュ」スッ


…ボンッ!


鉄機兵「???」キョロキョロ


トロア「え……?」



鉄機兵「???」クルッ


タタタタ…



トロア「行ってしまった……」

真美「なーんかもう、ザコと戦うのもあきちゃったなー」

トロア「しかしマミ殿、魔物はあとから湧いて来ますよ?」

真美「まあ、そうなんだけどさ」

真美「こんなことなら、真美も兄ちゃんと一緒に行けばよかったな〜」

老婆「まったく、名軍師殿の飽きっぽさには呆れたもんだね」

ジオット「だが、彼女のおかげで我々の戦力はずいぶん上がりました」

ファブール王「若い世代が頑張ってくれるのは、嬉しい事じゃのう」チラ



ルカ「ドワーフ戦車隊、斉射っ!」

ルカ「行け行けーーっ!」

シルフ「殲滅ですよ〜!」

雪歩「やっちゃえですぅ!」

ユキコ「粉々ですぅ!」



ヒュー…ドドドドドドッ!



魔物たち「」



アン(私も混ざりたいけど、2×歳は若いって言ってもいいのかしら……?)



404: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:50:55.47 ID:N7nACHdlO
ー 巨人内部 ー


律子「まだよ!リッチェーンの力はこんなものじゃないわ!」

律子「おりゃー!」ガチャガチャ



あずさ「うふふ。律子さん、楽しそうね〜?」

貴音「我を忘れて楽しんでいますね……」

家老「あのおなごは、バッカスの酒でも飲んだのか?」

貴音「いえ。律子嬢はまだ未成年。飲酒はできません」

家老「そうか……。じゃがあの調子では、味方に攻撃してしまうのではないか?」

あずさ「大丈夫です。そうならないように、ちゃ〜んと私たちが律子さんをフォローしますから」

家老「それなら良いのじゃが」

あずさ「律子さ〜ん、私にもやらせてくださ〜い」

タタタタ…


律子「あずささん。いいですよ。じゃあ次は、アズサイズの番ですね!」

律子「私がフォローしますから、こっちに」

あずさ「は〜い」スッ

あずさ「うふふ、アズサイズ、行きま〜す♪ 」



貴音(もしやあの2人、声だけの出演だったのを根に持っているのでは……?)



あずさ「えいっ!」ポチッ

律子「あずささん、どこに向かって撃ってるんですか!空に撃っても意味ないですよ!」

あずさ「あら〜、結構難しいんですねぇ」

律子「大丈夫。私がちゃんと教えてあげますよ!」



貴音(本当に、楽しそうですね)



律子「……ほら、貴音も来なさい。やってみると、意外と楽しいわよ?」


貴音「良いのですか?」パァァ


律子「当たり前でしょ?」

律子「さあ、みんなでハルシュタイン閣下を倒すわよ!」

あずさ「は〜い♪ 」



貴音(何やら色々間違っている気もしますが、せっかく楽しんでいるのに水を差すのも無粋でしょうか)



405: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:57:05.77 ID:N7nACHdlO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


響「うがぁーーっ!」



ドゴォン!ドカァン!



亜美「ひびきん、ちょっと落ち着いてよー!」

店主「お、おい!このままじゃ、味方の巨人に当たっちまうんじゃないか!?」

ミニ助「ヒビキ君、目を覚ますんだ!」



長老「……おい、そなた。エスナは使えるか?」

ものまね士「え?は、はい。一応……」

長老「今、彼女は狂戦士と変わらん状態じゃ。頼む」

ものまね士「わ、わかりました!」


ものまね士「……エスナっ!」バッ


シャララーン!


響「っ……!」ピクッ


ドサッ


響「………」グッタリ


亜美「ひびきんっ!」ガシッ


406: ◆bjtPFp8neU 2015/07/28(火) 23:59:22.75 ID:N7nACHdlO

ものまね士「あ、あれ……?意識を失っちゃった……?」

ものまね士「私、そんなつもりじゃなかったんですけど……?」

長老「そなたのせいではない」

長老「おそらく、精神に相当な負担がかかっていたんじゃろう」

長老「無理もない。長い間連れ添った相棒を、失ってしまったんじゃからな……」


響「………」


店主「ヒビキ……」

ミニ助「………」

ピョン吉「………」

ブタ美「………」

技師2「飛空艇の操縦は、我々にお任せください!」

技師1「自分たちも、親方の役に立ってみせます!」

長老「よろしく頼むぞ」

長老「アミ。まだまだ魔物が来る」

長老「そなたはこちらの攻撃の要じゃ。しっかりするんじゃ」

亜美「………」

亜美「うん、わかったよ」

亜美「ものま姉ちゃん、ひびきんのこと、お願いね?」

ものまね士「はい。安心してください、アミさん!」ニコッ



亜美「よーし、ひびきんのカタキうちだー!」



長老「いや、まだ死んどらんからな?」



408: ◆bjtPFp8neU 2015/07/29(水) 00:10:34.92 ID:9AKD5aBKO
ー バブイルの巨人 下腹部 ー


スタスタ…


春香「………」

春香「さっきからずーっと一本道だね」

千早「ええ、そうね」

春香「一本道なら、道を間違えようがないよね」

千早「多分……」

春香「………」

春香(このクネクネ続く一本道って、ひょっとして……)



春香「あの、プロデューサーさん」

春香「私たち、今どの辺りにいるんですかね?」

P「そうだなぁ……」

P「まだそんなに進んでないし、小腸とか、その辺りじゃないか?」

春香「ああ、聞くんじゃなかった……。ウソでもいいから、もっとごまかしてほしかったです!」

美希「うぅ……ハニーが変な事言うから、ミキ、なんだか気分悪くなってきちゃったの……」グッタリ

千早「最低です、プロデューサー」ジロ

P「す、すまん。ただ、ルートを考えればその辺りだと思ったから……」

春香「る、ルートとか言わないでください!」


409: ◆bjtPFp8neU 2015/07/29(水) 00:13:48.71 ID:9AKD5aBKO

春香(はぁ……。まさか、巨人のおしりから入る事になるなんて)

春香(サナダムシにでもなった気分だよ……)

春香(……って、ダメダメ!)

春香(これ以上自分がいる場所について考えるのはよそう。余計ドツボにはまる気がするよ……)



伊織「………」

やよい「………」チラ

やよい「……伊織ちゃん、どうかしたの?」

伊織「……な、何でもないわ」

春香「伊織、元気ないね?」

春香「プロデューサーさんの悪質なボケにもツッコまなかったし……」

P「い、いや、真面目に答えただけなんだが……」

伊織「大丈夫よ」

やよい「ほんとに?」

伊織「………」

伊織「私が大丈夫って言ってるんだから、大丈夫なの!ほら、さっさと行くわよ!」


スタスタ…


春香「あ、ちょっと待ってよ伊織〜!」


タタタタ…


美希「……デコちゃん、何かあったのかなー」

千早「ええ」

千早「少し様子がおかしい気もするけれど……」

やよい「伊織ちゃん……」


410: ◆bjtPFp8neU 2015/07/29(水) 00:17:21.97 ID:9AKD5aBKO

春香「………」キョロキョロ



春香「……それにしても、中は意外と機械っぽいんだねぇ」

千早「これだけ大きいものを動かすんだもの。機械的になるのも仕方ないんじゃないかしら」

春香「あ……ううん、そういう事じゃなくてさ」

千早「?」

春香「あの、プロデューサーさん。この巨人って、月の民の人たちが造ったモノなんですよね?」

P「ん?ああ……一応そういう事になるのかな」

千早「確かに、この巨人はクリスタルの力で月から地球に呼び寄せたもの、だったわね」

やよい「月の人がつくったものだと、何かあるんですかー?」

春香「別に、大した事じゃないんだけどね」

春香「なんていうか、イメージと違うなーって」

千早「イメージと、違う?」

春香「うん。なんとなく、私の中での月の民ってもっと神秘的っていうか……」

春香「こういう科学的なモノとはほど遠い存在っていうか……」

春香「まあ、これは私の勝手な想像なんだけどね」

千早「………」

美希「ミキ、なんとなく春香の言いたい事がわかる気がするの」

美希「だって、この世界では貴音は月の人なんでしょ?」

美希「きっと月には、貴音みたいにフシギな人がたっくさんいるって思うな!」

春香「あー、そういえば貴音さんも月の民だったね」

千早「でも、四条さんみたいな人がたくさんいるとなると……」

やよい「食費がたいへんそうですねー!」

P「あはは、そうかもな」


411: ◆bjtPFp8neU 2015/07/29(水) 00:21:31.76 ID:9AKD5aBKO

P「……で、そんな神秘的な民族が、なぜこんな科学的なものを造ったのか、って事か?」

春香「はい。ちょっと不自然だな、って思ったんです」

伊織「……侵略のため、でしょ?」

春香「伊織……?」

伊織「この世界の月……二つあるみたいだけど、見た限りは、私たちの世界の月とあまり変わりはないみたいね」

伊織「つまり、この世界でも、月に無いものが地球にはたくさんあるって事よ」

伊織「月に住んでたら、地球が羨ましくなるのも仕方ないわね」

春香「だから、侵略?」

伊織「こんな物騒なモノを造るんだもの。そう考えるのが妥当だと思うけど」

P「……うん。伊織の言う事にも一理あるな」

千早「やはり、どこの世界でも戦争はつきものなんですね……」

やよい「まものさんたちと仲良くすることはできないんでしょーか?」

P「まあ、難しいだろうなぁ」

美希「やよいの意見が1番理想的だって思うけどー……」

美希「ミキは、デコちゃんに賛成かな」

P「どうしてだ?」

美希「ミキ的には、欲しいモノがあるなら、自分の力で勝ち取るべきだって思うな」

春香「美希、でも……」

美希「あ、別に戦争がいいって言ってるわけじゃないよ?」

美希「でもミキ、思うんだ」

美希「自分が欲しいモノを手に入れるっていう事は、他の誰かがそれを手に入れられないって事だって」

美希「それが大きいモノでも小さいモノでも、本人に自覚があろうと無かろうと、そこにはいつでも競争があるんじゃないかな?」

美希「だから、やり方は賛成できないけど……その、月の人たちが地球をうらやましいって思った気持ちは、ちょっとわかるの」

P「なるほど、美希らしい考えだな」

春香「うーん……」

P「なんだ?春香はまだ納得いかないのか?」

春香「だって、お父さんもミシディアの長老さんも、とっても優しいですし、そんな人たちが侵略なんて恐い事を考えるのかなって」

P「まあ、わからなくもないけど……みんながみんな平和主義ってわけじゃなかったって事だろ?」

P(そもそも、言い方は悪いけど全ての元凶は音無さんなわけだし)

P(……いや、元凶は俺か)


412: ◆bjtPFp8neU 2015/07/29(水) 00:24:14.41 ID:9AKD5aBKO

春香「………」

春香「どんな気持ちだったんですかね?」

P「……え?」

春香「この巨人を造った人たち、どんな気持ちだったのかな……」

千早「………」

春香「美希が言うように、最初は、地球がうらやましいな、って思っただけなのかもしれない」

春香「でも、結局こんな風に傷つけ合う事になっちゃってる」

美希「………」

春香「すっごく、悲しい事だよね……」

春香「こういうのって、誰かが終わらせないと、きっと終わらないんじゃないかな?」

やよい「………」

春香「奪って、奪い返して、また奪い返して……」

春香「憎しみが憎しみを呼ぶなんて……悲しすぎるよ」

伊織「………」



P「戦争って、そういうもんだと思うよ」

P「月から来た魔物たちが何を考えてるのかはわからないけどな」

P「ま、とにかく、この星の破壊を止められるのは、お前たちアイドルだけだ」

P「みんな、よろしく頼む」



春香「……はいっ!」

千早「わかりました」

やよい「がんばりまーす!」

美希「ミキも、やるの!」

伊織「………」



伊織(憎しみが、憎しみを呼ぶ……)

伊織(私がやろうとしている事は……)

伊織(形は違えど、地球を侵略しようとしたヤツらと変わらない……?)

伊織(私は、間違っているっていうの……?)


414: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:09:14.08 ID:gTdDh0ebO
ー バブイルの巨人 胴体吹き抜け部 ー


ヒュゥゥ…


春香「わぁ……!」



春香「なーんか開けたところに出たねぇ」

千早「ええ」

千早「今までは一本道だったけど……ここは、すごい広さね」キョロキョロ

やよい「てんじょうも、ぜーんぜん見えないですねー……」キョロキョロ

春香「外からはわからなかったけど、中は結構がらんどうなんだねー」



美希「ねえハニー。ここからはどう進めばいいの?」

P「えーっと……」

P「制御システムがあるのは、おそらく巨人の心臓部分だと思うんだ」

P「とりあえずは、上に行ける階段があればいいんだけど……」

春香「けど?」

P「巨人を動かしてる魔物も、探し出して倒さないといけないし、どうするかな……」

やよい「あっ!」

やよい「プロデューサー!そーじゅうせきは、あたまにありますよ!」

P「えっ?」

やよい「わたしたちがのってきたロボもそうでした!きっとこのロボも同じなんじゃないかなーって!」

春香「あ、言われてみればそうだね」

P「じゃあ、魔物は頭部にいるのかもしれないな」

P「やよいは賢いなぁ!」

やよい「えへへっ……///」モジモジ

千早(褒められて照れてる高槻さん、かわいいわ)ニコニコ


415: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:17:59.19 ID:D5VWuiMeO

P「心臓と頭、どっちを目指すにしろ、ここより上にあるのは間違いないな」

P「とりあえず、階段を探そう」

美希「わかったの!」

美希「……春香!」

春香「えっと、じゃあ……」キョロキョロ

春香「とりあえず、壁沿いに進んでみよっか?」

千早「迷子にならないための、基本ね」


416: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:20:09.38 ID:D5VWuiMeO
スタスタ…


千早「あの、プロデューサー」

千早「ちょっと聞きたい事あるんですが」

P「ん?どうした?」

千早「『死の宣告』って、どうしても逃れられないものなのでしょうか?」

P「!」

P「千早、死の宣告なんてどこで知ったんだ?」

千早「私は、少しの間ですけど魔物と一緒にいたので」

P「そうか……そうだったな」

千早「その時に、魔物から聞きました。魔物は、死の宣告からは逃れられない、とも言っていたので……」

P「……うん。ゲームでも、回避はできない攻撃だし、死の宣告を受けたら……」

千早「やはり、死んでしまう、という事ですか」

P「…………ああ」

美希「………」



伊織(死の宣告……?)

伊織(厄介な攻撃があるのね。気をつけないと)


417: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:22:47.97 ID:D5VWuiMeO

春香「おーーーい!みんなーー!」

やよい「かいだん、みつかりましたよーー!」




P「春香たちが呼んでる。俺たちも行こう」



美希「っ……!」ピクッ



美希「…………あれ?」キョロキョロ

千早「美希、どうかしたの?」

美希「うーん……」

美希「今、誰かに見られてる気がしたんだけど……」

P「見られてる……?」

千早「誰もいないみたいだけど……」キョロキョロ

美希「気のせい……かな?」






サーチャー「………」ジジッ



サーチャー「……侵入者発見。情報ヲ転送シマス」ピー



418: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:31:03.21 ID:D5VWuiMeO
ー バブイルの巨人 腹部 螺旋階段 ー


カンカンカン…


伊織「………」

伊織(憎しみ……か)

伊織(私は、赤い悪魔が憎いのかしら……)

伊織(そりゃあ、最初の頃はムカついてたけど……)



伊織(魔物とはいえ、アイツは私たちに協力してくれた。助けてくれた)

伊織(本当は、いいヤツなんじゃないかって思った事もある)

伊織(エブラーナを滅ぼしたのだって、ただ、命令に従っただけで……)



伊織(…………ううん)

伊織(この世界に来たばかりの頃の恐怖を、忘れたの?)

伊織(死んでいったエブラーナのみんなや、王と王妃の無念を、忘れたの?)

伊織(エブラーナの民たちのためにも、私は……)



伊織(…………そうよ)

伊織(私は、みんなの憎しみを背負って戦わなきゃならない)

伊織(恨みを晴らすための戦いなんて、ただのエゴだけど)

伊織(『私がどう思うか』なんて、関係ないんだわ)

伊織(それが……王女。王族たる者の宿命)

伊織(たったひとり、国の人柱となって、民を守っていかなきゃいけない)

伊織(仲間がいるように見えて、私は……)





伊織(孤独だったのね…………)






419: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:37:12.23 ID:D5VWuiMeO

機械兵「………」ゴオォォ

鉄機兵「………」ゴオォォ



春香「わわっ!ま、魔物が!」

春香「……っとと!」ヨロッ

千早「春香!」ガシッ

美希「こんな階段で出会うなんて、ついてないの」

P「この場所からの近接攻撃は危険だな。……美希、やよい、頼む!」

やよい「わ、わかりましたっ!」

美希「任せてなのっ!」ギリッ



…ズバッ! ジャキィン!



機械兵「」

鉄機兵「」



P「…………えっ!?」

春香「ま、魔物が、真っ二つに……?」

やよい「あっ……」




伊織「………」チャキッ




美希「デコちゃん……?今の、デコちゃんがやったの?」

千早「一瞬だったわね……」

春香「う、うん。何も見えなかったよ……」

P(あんなに離れた場所へ、一瞬で、正確に斬りつけるなんて……)

P(タイダリアサンから『マサムネ』を手に入れたとは聞いていたけど……)

P(すごい威力だな)



春香「伊織、すごいっ!」ニコッ


伊織「………」クルッ

伊織「……さっさと行くわよ」

カンカンカン…



春香「伊織……?」




420: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:40:57.73 ID:D5VWuiMeO

ー バブイルの巨人 右胸部 ー


P「……よし、頂上についたな」

P「次は、あのつり橋を渡るみたいだけど……」



アイドル達「………」



P「みんな、どうかしたのか?」

春香「い、いえ、ちょっと……」

千早「つり橋には、良い思い出がないんです」

やよい「うぅ……また、かべがおいかけてくるんでしょーか?」

美希「今回も、落ちたらシャレにならないカンジなの」チラ

P「壁って…………ああ、もしかして、封印の洞窟の事を言っているのか?」

春香「はい。恐かったんですよ?ホントに……」

P「大丈夫。ここにはそんな罠は無いはずだ」

春香「そうですか……」ホッ

P「でも、何があるかわからない。一応気をつけて行かないとな」

千早「そうですね」



伊織「………」

スタスタ…



やよい「……あっ、伊織ちゃん!」

春香「伊織、ちょっと待ってよ!」


421: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:47:10.51 ID:D5VWuiMeO

伊織「……なによ。先へ進むんでしょ?」

伊織「ほら、さっさと行くわよ」

春香「………」

春香「ねえ、伊織。……本当に何かあった?」

伊織「……別に。何もないわよ」プイッ



春香(伊織……)

春香(律子さんが、伊織は重いものを背負ってるって言ってたっけ……)

春香(…………よし!)



春香「待って、伊織!」ガシッ

春香「私に、何か力になれる事はないかな?」

春香「私、伊織の力になりたいよ!」

春香「お願い、何か困ってる事があるなら、話して?」



伊織「うるさいわね!何もないって言ってるでしょ!?」バッ



春香「っ……!」ビクッ

P「お、おい、伊織……」

やよい「伊織ちゃん!」

伊織「………」

伊織「…………ごめんなさい」

伊織「ちょっと疲れてて、気が立っているだけよ」

春香「そ、そっか」


422: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 22:55:25.87 ID:D5VWuiMeO

春香「でも、何かあるなら言ってね?私達は、仲間なんだからさ!」



伊織「………」ピクッ

伊織「何か、あるなら……?」



伊織「何かあるのは、あんたの方じゃないの?」

春香「えっ……?」

伊織「あんただって、私達に隠し事してるじゃない」

春香「そ、それは……」

千早「………」

伊織「私が気づかないとでも思ったの?」

春香「い、伊織、聞いて!」

伊織「そんなんで、よく『リーダー』なんて言えるわね。よく『仲間』なんて言えるわねっ!」

春香「う……」

千早「水瀬さん、落ち着いて。今、そんな事を言っても仕方ないわ」



やよい「……あ、あのっ」

やよい「千早さんも……春香さんに言ってないこと、ありますよね?」

千早「た、高槻さん……?」ドキッ

やよい「わたし、ずーっと気になってたんです」

やよい「あのまっ黒なリボン、春香さんに返さなくていーのかなーって」

春香「ち、千早ちゃん……?」

千早「くっ……!」



美希「……みーんな、隠し事ばっかりなの」

P(どうなってるんだ、これは?みんな、気持ちがバラバラじゃないか)

P(こんなんじゃ力を合わせるどころか……)



423: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 23:02:06.67 ID:D5VWuiMeO

P「みんな、ちょっと落ち着こう」

P「ここは敵陣の真ん中だ。こんなところで言い争っててもしょうがないよ」

P「とりあえず、話は事が終わってからにしよう」

春香「………」

伊織「………」

やよい「………」

千早「………」

美希「……あふぅ」



伊織「……あんたはいいわよね、お気楽で」

P「え……?」

伊織「そうやって誰かに抱っこされて、指示を出しているだけでいいんだもの」

伊織「実際に魔物と戦うのは、私達だっていうのに」

春香「伊織、それは……」



美希「デコちゃん、それは言い過ぎだって思うな!」



伊織「………」

美希「ハニーは、こんなに不自由な身体になっちゃっても、ミキ達の事、たっくさん考えてくれてるんだよ?」

美希「それをわかってあげないのは、ちょっとヒドいって思うな!」

伊織「………」

春香「美希……」

P「美希、いいんだ」

美希「でも……!」



424: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 23:06:35.70 ID:D5VWuiMeO

P「……伊織の言う通りだ」

P「俺は、はっきり言って何の役にも立っていないし、みんなのお荷物になってしまっている」

P「みんなにばかり辛い思いをさせて……」

P「すまない。これじゃ、プロデューサー失格だよな」

美希「ハニー!」

やよい「そ、そんなことっ!」

P「……でも、例え足手まといでも」

P「俺は、お前達のプロデューサーでいたい」

P「この姿でできる事なんて限られてるけど、お前達に何かしてやりたいって思うんだ」

春香「プロデューサーさん……」

千早「プロデューサー……」

P「……ダメか?」

伊織「………」



伊織「…………遅いのよ」

P「……え?」

伊織「遅すぎるのよ、バカっ!!」

伊織「なんでもっと早く、私を迎えに来ないのよ!」

P「伊織……」


425: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 23:12:29.74 ID:D5VWuiMeO

伊織「私は、国を背負ってる」

伊織「魔物に家族や住むところを奪われたみんなの、想いを託されてるわ」

伊織「私は……この手で復讐を遂げなきゃならない!」グッ

伊織「……たとえ、ひとりでも」

P(復讐って、まさか……)



伊織「お気楽に過ごせるあんた達とは、立場が違うのよっ!」ダッ


タタタタ…


やよい「ま、待って、伊織ちゃん!」

春香「伊織!」

千早「水瀬さん……」

美希「ふくしゅーって、どーいう事……?」

P「伊織……」

P「まさか、ひとりでルビカンテと戦うつもりなのか……?」

春香「えっ……?」

春香「あの、プロデューサーさん」

春香「今の言葉、どういう意味ですか?」

P「ああ、ルビカンテっていうのは、律子の配下の四天王で……」

春香「それは知ってます!伊織がルビカンテさんと戦うって……」

千早「2人とも、今は水瀬さんを追うのが先だと思うわ」

美希「そーだよ!早くしないと、デコちゃん見失っちゃうの!」

やよい「行きましょう、プロデューサー!」

P「そ、そうだな」

P「みんな、行こう!」

4人「………」コクッ


タタタタ…



426: ◆bjtPFp8neU 2015/08/02(日) 23:23:47.89 ID:D5VWuiMeO
ー バブイルの巨人 胸部 つり橋 ー


タタタタ…


春香「…………ええっ!?」

春香「ルビカンテさんが、伊織のご両親の仇なんですか!?」

P「それだけじゃない。エブラーナ……伊織の国を滅ぼしたのも、ルビカンテなんだ」

P「さっき伊織が言ってた『復讐』っていうのは、多分……」

春香「そんな……!」

春香(伊織とルビカンテさんに、そんな因縁があったなんて、全然知らなかったよ……)

春香(伊織、今までひとりで抱えてたんだよね、きっと)



美希「でも、おかしいの」

美希「こないだはデコちゃん、あの赤い人と仲良さそうにしてたよ?」

美希「ね、やよい?」

やよい「はい。わたしも、あの人は伊織ちゃんのおともだちの方だと思ってましたー」

やよい「してんのーのみなさんにはよくしてもらいましたし、とってもいい人たちだと思いますけど……」

P「そうなのか」

P「じゃあ、その時点では仇討ちなんて考えてなかったのか……」

美希「あんなに仲良しだったのに……」

やよい「伊織ちゃん……」

P(っていうかみんな、いつの間にか四天王とずいぶん仲がいいんだな)



千早「きっと水瀬さん、苦しんでいると思う」

春香「私たちが、側にいて話を聞いてあげないと!」

美希「うん!」

やよい「はいっ!」



春香(伊織……!)



タタタタ…



429: ◆bjtPFp8neU 2015/08/13(木) 16:22:41.61 ID:kGNxwjohO
ー バブイルの巨人 左胸部 ー


タタタタ…

春香「待って、伊織っ!」




伊織「………」チラ

伊織「………」クルッ

タタタタ…




春香「伊織っ!」

美希「デコちゃん、上に向かったみたいなの!ミキたちも早く……」



機械竜「………」ヌッ



やよい「はわわっ!ま、まものさんが……!」

春香「も〜、こんな時に……!」チャキッ



機械竜「…………侵入者、排除スル」カパッ



P「みんな!攻撃が来るぞ!」



ゴオオォォオオッ!!



春香「わわっ!なんか来た!」

美希「すっごく熱いの!」

P「炎か!……やよい!」

やよい「は、はいっ!」

やよい「しばさんっ!」バッ


スゥーー…



シヴァ「……ヤヨイさん、任せて」

シヴァ「……絶対零度!」



コオォォ…シャキーン!



ゴオオォォ…


春香「火が……!」


ジュゥゥ…


美希「消えたの!」


430: ◆bjtPFp8neU 2015/08/13(木) 16:26:30.00 ID:kGNxwjohO

春香「やよい、助かったよ!」

やよい「…………あれ?千早さんがいませんよ?」キョロキョロ

春香「えっ?」



千早「…………はっ!」


ヒューー…ザシュッ!


機械竜「………!」ヨロッ



…スタッ

千早「………」チャキッ

美希「千早さんっ!」

P(千早、いつの間にジャンプしてたんだ……?)



千早「……みんな、先に行って!」

千早「ここは、私が引き受ける!」チャキッ

春香「千早ちゃん!でも……」

やよい「千早さん……」

千早「早く水瀬さんを追いかけないと、見失ってしまう。今は、時間が惜しいわ」

P「千早……本気なのか?」

千早「はい」

P「………」

P(別行動になってしまうのは、はっきり言って危険だが……)

P(ここで足止めを食らうのはよくない)

P(今、伊織をひとりにしてしまうのは、もっと危険だからな)

P(千早なら、任せても大丈夫か……?)


431: ◆bjtPFp8neU 2015/08/13(木) 16:29:21.65 ID:kGNxwjohO

P「……春香!」

春香「………」

春香(千早ちゃん……)

P「……春香?」



機械竜「……侵入者、排除スル」



美希「あっ!また攻撃が来るの!」



P「おい、春香!」

春香「っ……は、はい!」

千早「春香、行って!私も、すぐに追いつくわ」

春香「………」

春香(千早ちゃん、なんで私にウソを……?)

春香(……ダメ。今は、リボンの事は忘れよう)ブンブン

春香(今は、伊織をつかまえないとだよね!)グッ



春香「うん……わかった!」

春香「みんな、行こう!」

美希・やよい「………」コクッ


タタタタ…



千早「………」チラ



機械竜「………」カパッ



千早「……こっちよ!」

タタタタ…


機械竜「………」チラ


ゴオオォォ…!



千早(みんな、水瀬さんをお願いね……!)



432: ◆bjtPFp8neU 2015/08/13(木) 16:39:47.82 ID:7cWgvS2yO
ー ドワーフ戦車 ー


ルカ「撃て撃てーー!」


ドゴォン! ドカァン!


シルフ「嬲り殺しですよ〜!」


ドドドドドドッ!


雪歩「破壊ですぅ!」


ドゴォン! ドカァン!


ユキコ「殺戮ですぅ!」


ドドドドドドッ!



アン(よし、私もっ……)


アン「……魔物よ、人間の力を見なさい!」ビシッ



…シーン…



アン「…………あ、あら?」



ジオット「すまん、アン殿。弾切れだ」

アン「えっ?弾切れ……?」

アン(そんな……せっかく、セリフも考えたのに……)



ルカ「お、お父様、弾切れって!これからがいいところでしたのに!」

ジオット「仕方ないだろう。もともとは『会合』のために戦車を出しただけなのだ」

ジオット「戦になるとわかっていれば、それなりの準備をしたのだが……」

ルカ「そ、そうですけど……!」

老婆「まずいね。まだ魔物どもは後から溢れてくるってのに……」

ファブール王「ファルコン号も、おそらくは巨人の相手で手一杯。こちらへの救援は難しいじゃろうな」

真美「ちかたないね。真美たちだけでガンバるしかないっぽいよ」

真美「ね、ゆきぴょん?」

雪歩「う、うん……」

雪歩(また私、盾にされるのかなぁ……)



433: ◆bjtPFp8neU 2015/08/13(木) 16:46:20.58 ID:T9qjH1/8O




魔物たち「………」ワラワラ




真美「……よし、行くよ!みんな!」




「…………うおおぉぉぉぉおおお!!」


ダダダダ…




真美「…………んん?」チラ




「…………くらえ、魔物!」




「覇王……翔吼拳ーー!!」



ドゴオォォォン!!


434: ◆bjtPFp8neU 2015/08/13(木) 16:49:43.62 ID:T9qjH1/8O


真美「…………まこちん!」




真「やーっと追いついたよー!」

真「みんな、平気?」



雪歩「真ちゃんっ!!」パァァ

ユキコ・シルフ「マコトさん!!」



トロア「なんと凄まじい技……!」

トロア「魔物どもが、跡形もなく消し飛んだ……」

老婆「それだけじゃないみたいだよ」

トロア「えっ?」

老婆「ご覧。巨人の片腕が吹っ飛んじまってる」スッ




巨人2『………』ボロッ




トロア「ほ、本当だ……!」

トロア「戦車や飛空艇の砲撃でもビクともしなかった巨人に、傷をつけるとは……!」

トロア「マコト殿……私は、感服致しました!」

老婆「あたしゃ、ヤツが自分と同じ人間とは、とても信じられなくなってきたよ」

老婆(もうあのボーイッシュに全部任せてもいいんじゃないかね……)



真「うーん……やっぱ、一撃じゃあのデカいのは倒せないかー」

真「結構本気出したんだけどなぁ」


435: ◆bjtPFp8neU 2015/08/13(木) 16:53:27.24 ID:T9qjH1/8O

真美「まこちん、巨人を倒すつもりだったの!?」

真「え?そうだけど……なんかダメだった?」

真美「あ、いや、ダメじゃないんだけど、ダメっていうか……」

真「でも、あれが悪いヤツのボスじゃないの?」

真美「そ、そーなんだけどさ!」

真美「今、真美たちの作戦ではるるんたちが巨人の中にいるんだよ〜!」

真「そ、そうだったの?」

真「うわ……春香たち、大丈夫かな」

真美「ゴメンねまこちん。真美、まさかまこちんがここまで強いとは思わなくて……」

真「いや〜、ボクの方こそ、空気読まなくてごめん」



真「……でも、そっか。春香たちが、頑張ってくれてるんだね」

真「ふぅ……」ストッ

真美「まこちん……?疲れたなら、真美が回復してあげよっか?」

真「ああ……」

真「ううん、平気。ちょっと休んだら、ボクも戦うからさ」

真「だから、少しだけ……」

真「休ませ……て……」コテン


真「……zzz」


真美「ありゃ…………寝ちゃった」

雪歩「……休ませてあげよう?」

真美「ゆきぴょん……」

真美「でも、まこちんがいた方が……」

雪歩「……ううん」フルフル

雪歩「真ちゃんは、私たちのためにひとりで魔物と戦った」

雪歩「今度は、私たちが真ちゃんのために頑張る番だよ、真美ちゃん!」

真美「………」

真美「そっか…………そだね!」ニコッ

真美「よしっ!行こう、ゆきぴょん!」スッ

雪歩「うんっ!」ギュッ


雪歩(真ちゃん……お疲れ様。あとは、私たちに任せてね!)



438: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 21:36:43.72 ID:pcHH/+aRO
ー 幻獣界 ー



…パチッ



冬馬「……だーっ!また負けたぁ!」



イフリート「だはははっ!トウマ、おせろ弱いぞぉっっ!!」

北斗「だから4角に囚われるなって言ったのに……」

冬馬「う、うるせぇ!オセロは角取った方が強いに決まってんだろーが!」

翔太「でも負けちゃったよねー」

冬馬「ぐ……」

冬馬「よし、もう一回やるぞ!勝ち逃げは許さねえからな、イフリート!」

イフリート「何回でも負かしてやるぜぇぇっっ!!」ジャラジャラ



シヴァ「………」じーっ



北斗「……エンジェルちゃん、君はやらないのかい?」

シヴァ「イフリートにすら勝てない様では、やっても無駄だわ」

シヴァ「あなたたちなんて、目を瞑ってても勝てる」

翔太「わ〜、見た目通り冷たいんだね、お姉さんって」

シヴァ「あなたたちと馴れ合うつもりは、ないわ」

北斗「うーん、この素っ気なさがまた……」

シヴァ「………」プイッ

翔太「……前から思ってたんだけどさ、北斗君って女の子に関してはMだよね」

北斗「ふっ……翔太にはまだわからないさ」

翔太「ふ〜ん」

北斗「エンジェルちゃん、もっと君の事が知りたいな。俺と話をしないかい?」

シヴァ「話しかけないで。気持ち悪い」

北斗「はは、つれないなぁ」

翔太「………」

翔太(ボク、北斗君みたいな大人にだけはなりたくないなぁ……)


439: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 21:39:21.48 ID:pcHH/+aRO

高木「…………自発的に、戦えない?」



ラムウ「この幻獣界の掟なんじゃ」

ラムウ「我々幻獣は、人間やドワーフに比べて強大な力を持っておる」

ラムウ「我々が力を使って争いを起こさぬよう、先代の幻獣王がお決めになったんじゃ」

ラムウ「『無闇に力を使うべからず』とな」

高木「……なるほど」

黒井「フン!とんだ臆病者だな、そいつは」

黒井「力とは、行使するためにある」

黒井「持てる者は、持たざる者を力によって導く務めがあるのだ!」

ラムウ「………」

高木「ふふふ、お前らしい考えだ」

高木「……だが、少々疑問に思う部分もある」

高木「力を使うのが禁じられている、というが、あなた方は高槻君に呼び出され、その力を使っている」

高木「それは、掟とやらを破る事にはならないのかね?」

ラムウ「すまん。説明不足じゃったの」

ラムウ「特殊な契約を交わした召喚士のために力を使うのは、問題ないんじゃ」

ラムウ「寧ろ、『正しき心を持った召喚士を見つけ、力を貸すために我々は存在する』と先代は言っておった」

高木「正しき心、か」


440: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 21:43:42.42 ID:pcHH/+aRO

ラムウ「ヤヨイさんは、召喚士」

ラムウ「しかもあの子は、全く穢れを知らない……いや、近づいてきた穢れを浄化してしまうほど清い心の持ち主じゃ」

ラムウ「『正義』とは、彼女のためにある言葉、と言っても、過言ではないじゃろう」

高木「だから、力を貸したと?」

ラムウ「…………実のところ、我々は彼女の健気さに惹かれただけなんじゃがな」

黒井「……じゃあ、何か?私たちは、高槻やよいに呼び出されるまで力を使えないという事か?」

黒井「ヤツがいつ私たちを呼び出すともわからないのにか?」

黒井「冗談じゃない!いつまでも待っていられるか!」

黒井「私には、すぐにでもやらなければならない事があるのだ!」

高木「黒井……」

ラムウ「………」

ラムウ「今はもう、先代もおらん」

ラムウ「決めるのは、あなただ。王よ」

黒井「!」

黒井「……ふふふ!そうだ、私が王なのだったな」ニヤリ

黒井「だったら、いつまでもこんなところで燻っている場合ではない」

黒井「すぐにでも旅立つぞ、高木!」

高木「そうだな。彼女達が心配だ」

ラムウ「……行かれるのか?」

高木「なあに、心配いらないよ、ラムウ殿」

高木「ああ見えて黒井は、とても純粋な魂の持ち主だ」

高木「自分の本当の気持ちを表現するのが、人より少しだけ苦手なんだ」

高木「ただ、それだけなんだよ……」

ラムウ「ふむ……」チラ


441: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 21:46:12.58 ID:pcHH/+aRO

黒井「……いつまで遊んでいるつもりだ、お前たち!さっさと行くぞ!」

冬馬「え?で、でも、オセロが……」

黒井「オセロなんていつでもできるだろう!もっと大事な事があるのを忘れたのか?」

冬馬「おっさん……?」

黒井「クックック……高槻やよいに、私の力を見せつけてやるのだ!」

黒井「待っていろ、高槻やよい……!」

翔太「なーんか黒ちゃん、やる気だねぇ」

北斗「イジけてるよりはいいじゃないか」

翔太「まあ、そうだね」



イフリート「トウマーー!!またおせろやろうなーー!!」



冬馬「おう!首洗って待ってやがれ!」ビシッ

翔太「結局一回も勝てなかったね、冬馬君」

冬馬「うっせぇ!あいつが強すぎんだよ!」

翔太「う〜ん、確かに……」

翔太「でも、なんで幻獣がオセロなんて知ってるんだろ……」



北斗「エンジェルちゃん、またね!」

北斗「俺は、君との思い出を胸に生きていくよ」



シヴァ「……思い出なんて、何もないわ。気でも触れたの?」



北斗「ははっ、最後までつれないなぁ」

冬馬「北斗……お前、それでいいのか……」



高木「……では、我々は行きます。世話になりましたな、ラムウ殿」

ラムウ「あなた方は、不思議じゃの」

ラムウ「こんなに自由な幻獣は、初めて見た」

高木「まあ、我々はラムウ殿たちとは少し違う存在なのかもしれないね」

高木(……全く別の世界から来たんだから、当たり前だが)

ラムウ「タカギ殿。人間界では、何やら良くない事が起きているようじゃ」

ラムウ「くれぐれも気をつけて行かれよ」

高木「ご忠告、有難く受け取るとしよう」



冬馬「……お〜い、高木のおっさ〜ん!置いて行っちまうぞ〜!」



高木「……それでは」ペコリ

ラムウ「さらばじゃ、騎士殿」


442: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 21:49:45.92 ID:pcHH/+aRO

シヴァ「…………行ったわね」

ラムウ「うむ」

イフリート「でもラムウ、良かったのか?いくらオレたちの王様ったって、決まり事を破るのはいけないんじゃないのか?」

ラムウ「……いや、彼の言う事にも一理ある」

ラムウ「『持てる者は、持たざる者を力で導く務めがある』……か」

ラムウ「ふふ、頼もしい言葉じゃの」

シヴァ「すっかり丸くなってしまったわね。先代の幻獣王も」

ラムウ「……昔の話じゃ」

イフリート「なんだラムウ、また王様やりたくなったのか?」

ラムウ「いや、そんな事はない」

ラムウ「この世界は、変わろうとしておる」

ラムウ「ならば、新しい世代に託すのが、道理じゃろうて……」

イフリート「よくわからんけど、変わるのはいい事なのか?」

ラムウ「……さあのぅ」

ラムウ「それは、誰にもわからんのじゃ」

シヴァ「………」



ラムウ「……さ、ワシらも、できる事をするんじゃ」

ラムウ「ヤヨイさんのために、この世界のために、できる事を」

イフリート「特訓か!?」

イフリート「ぃよおおおおし!!燃えてきたぜえぇぇっっ!!」ボッ

シヴァ「ヤヨイさんは、私が守る……!」コォォ



ラムウ「ふふふ。……やはり、若い力とは良いものじゃ」ニッコリ



443: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 21:54:01.77 ID:pcHH/+aRO
ー 地底世界 トメラの村 ー



高木「……それで、君はオレンジの髪の少女を見たんだね?」

村人「は、はぁ。なんでもその娘さん、人を探してるとかで……」

村人「こーんな田舎村より、ドワーフ城の方が人はたくさんいるべーって教えたっけ、あっちゅー間にかけて行ってしまっただ」

村人「だども、この村は島にあるべさ。島を囲む『海』には、普通のドワーフでは近づけねえ」

村人「そのうち諦めて帰ってくるべーつって茶ー飲んでたんだけんど……」

村人「待てども待てども、戻って来る気配はねぇし、こりゃあ、『海』に落ちてしまったんでねぇかって思って……」

村人「オラ、あの娘さんに悪い事してもうただ……」

高木「ふむ……」

高木「わかった。ありがとう」

村人「あ、あのー」

高木「ん?何かね?」

村人「あんた方、ひょっとして幻獣様でねぇか?」

冬馬「へっ!聞いて驚け!俺たちがあの有名な、ジュピターだ!」ドヤッ

村人「あ、お供の方には聞いてねぇべさ」

冬馬「えっ?」

村人「いんやぁ〜!オラ、幻獣様って初めて見ただ〜!」

村人「ご先祖様から、『この村の近くには幻獣様の住む世界へ続く洞窟がある』って聞いてたけんど、まさか本当にこの目で拝める日が来るとはな〜」

村人「オラ、一生の宝物にするべさ!」

高木「大げさだと思うがねぇ……」



冬馬「あのジジイ、バカにしやがって〜〜!」

北斗「まあまあ冬馬、熱くなるなよ」

翔太「ま、仕方ないよね。ボクたちだけ、こんな姿だもん」



黒井「……情報は得られただろう?早く行くぞ」

高木「そうだな」

高木「君、ありがとう。助かったよ」

村人「はは〜、ありがたきお言葉だべ〜」

高木「行こうか、みんな」

北斗「はい」

冬馬「くそっ。絶対この世界にも、ジュピターの名前を轟かせてやるからな!」

翔太「ホント、冬馬君は負けず嫌いだよね〜」


高木「行こう、スレイプニル」

スレイプニル「ヒヒーン!」


パカラッ パカラッ…



村人「ひゃあ〜!馬が宙に浮いただ〜!」

村人「さっすが、幻獣様だべ〜!」


444: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 21:57:55.40 ID:pcHH/+aRO
ー 地底世界 ドワーフ城 ー


ドワーフ兵士1「……その娘たちなら、だいぶ前に王様と一緒にバブイルの塔に向かったー!」

ドワーフ兵士2「バブイルの塔、ここから北西にある魔物たちの巣ー!」

ドワーフ兵士1「でも、戦いはすでに終わってるー!」

ドワーフ兵士2「今から行ってもきっと誰もいないラリー!」



高木「……どうやら高槻君たちは、ずいぶん前に魔物の巣へ向かったようだ」

黒井「ちっ!私を差し置いてそんな面白そうな事をしていたとは」

高木「どうする?」

黒井「今は情報がない。その、魔物の巣とやらに向かうぞ!」

高木「わかった」

高木「………」チラ



ドワーフ兵士3「ラリホー!」

ドワーフ兵士4「ラリホー!」

冬馬「くっ!こいつら、呪文を!?」

翔太「だから冬馬君、ドラクエじゃないってば」

冬馬「ま、まずい、眠くなって…き……た……」ガクッ

北斗「俺は、冬馬が将来変な宗教にハマらないか心配だよ」



高木「待たせたね。行こうか、君たち」

翔太「あ、社長さん。次の目的地は決まったの?」

高木「ああ。とりあえずはね」

高木「黒井、他にやるべき事は……」



ドワーフ兵士3「ラリホー!」

ドワーフ兵士4「ラリホー!」

黒井「ば、バカな!呪文……だと!?」

黒井「くそ、眠気が……」ガクッ

冬馬「黒井のおっさん、しっかりしろー!」



高木「……彼らは何をやってるんだ?」

北斗「さあ、新しい遊びじゃないでしょうか?」

北斗(黒井社長もドラクエ派だったのか)



445: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:01:49.27 ID:pcHH/+aRO
ー バブイルの塔 入口 ー


翔太「うわ〜……」

翔太「すっごい高いんだね〜……!」

北斗「俺も実物を見るのは初めてだよ。当たり前だけど」

北斗「確かこの塔は、地上世界と繋がっているはずだから、ひょっとしたらやよいちゃん達はもう、地上にいるのかも」

高木「そうなのか」

冬馬(天空の塔とどっちが高いんだろうな……)



高木「しかし、ボロボロだねぇ」キョロキョロ

高木「よほど酷い戦いがあったようだ」

黒井(高槻やよい……勇敢に戦ったのか?)



高木「……さ、行こう」



スタスタ…



446: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:07:32.41 ID:pcHH/+aRO
ー バブイルの塔 B13F ー


スタスタ…


高木「外だけでなく、中も酷い有様だ……」

高木「高槻君たちは、大丈夫だろうか?」

黒井「……ついこの間、ジュピターが召喚されたばかりではないか」

黒井「それは、高槻やよいが無事であるという証拠だ。違うか?」

高木「まあ、そうなんだが……」

高木(肉体的には、そうだろう)

高木(だが、彼女たちの精神は、果たして……)

高木(……いやいや、私が彼女たちを信じなくてどうする)

高木(それに、彼女たちには『彼』がついていてくれてる)

高木(それが、彼女たちの何よりの心の支えになるはずだ)



魔物「………」ヌッ



翔太「あっ、魔物だ!」

冬馬「よし、ここは俺が……」

翔太「えー、冬馬君どうせまたドラクエの技やるんでしょー?」

翔太「せっかくだから、FFの技やろうよ〜」

冬馬「知らん!」


447: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:13:28.09 ID:pcHH/+aRO

冬馬「………」スッ


冬馬「ギガスラーッシュ!!」ブンッ


ドゴォ!! メリメリッ!!


魔物「」


北斗「……今回も、ただブン殴っただけだったな」

冬馬「うるせ!俺の拳はギガスラッシュなんだよ!」

翔太「あーあ、ボクも冬馬君みたいに戦ってみたいなぁ……」

北斗「仕方ないだろ?俺たちジュピターには、それぞれ役割が振り分けられているみたいなんだから」

翔太「ちぇ〜」

北斗「翔太。お前の役割は、とても重要なんだ。ここぞという時にお前の力が……」

翔太「……はいはい。それ、もう何回も聞いたってば」

翔太「大丈夫だよ。ちゃ〜んと役に立ってみせるって!」



黒井「……何をしている。行くぞ」



冬馬「おー」

タタタタ…



高木「なかなかやるじゃないか、鬼ヶ島君も」

冬馬「へっ、高木のおっさんや黒井のおっさんほどじゃねえけど、俺だって高槻たちの役に立ったんだぜ?」

高木「ああ。その節は、ウチの子たちがお世話になったね」

冬馬「……まあ、こんな状況だしな。協力してやるよ」

黒井「高槻やよいに惚れているんだろう?下心が丸見えだぞ、冬馬」

高木「はっはっは、そうだったのか」

冬馬「ち、違えよ!」

冬馬「ったく、黒井のおっさんまで!」

冬馬「俺はただ……あんたら765プロの、絆……ってやつを見習っただけだ」

高木「鬼ヶ島君……」

黒井「フン……」


448: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:18:18.46 ID:pcHH/+aRO
ー バブイルの塔 B6F ー

スタスタ…


冬馬「……しっかし、なんだな」

冬馬「魔物がいるくらいで、あとはホント何もねーとこだな」

北斗「いや、何もない事はないぞ」

北斗「この塔では確か、四天王と戦う事になってたはず」

翔太「おお〜、四天王!なんか、RPGっぽいイベントだね!」

冬馬「高槻たちはもうここにはいない……って事は、その四天王ってヤツを倒したのか?」

北斗「『ゲーム通りなら』そうなっていただろうな」

冬馬「ん?どういう事だ?」

翔太「ゲーム通りに進んでないかもしれないって事?」

北斗「わからない」

北斗「でも、こんな風に幻獣である俺たちが旅に出るなんてシナリオは、ゲームには無いんだよ」


北斗(いや、それ以前に……)

北斗(何日か前に、765プロのプロデューサーとアイドルたちが、オレたちを訪ねて来た)

北斗(その中には、本来来るはずの、召喚士であるやよいちゃんの姿はなかった)

北斗(もしかしたらもうすでに、全然違うストーリーになっているんじゃないか?)


北斗(ゲームなんて、ただキャラを操作して、予め定められたストーリーを辿るだけだけど……)

北斗(こうして実際にゲームの世界に来てみるとわかる。定められたストーリーに沿って行動するなんて方が、不自然だ)

北斗(だって俺たちは、誰かに操作されているわけじゃないし、設定された行動しかできないわけでもない)

北斗(一人ひとりが、ちゃんと自分の意志を持った人間なんだから)

北斗(……まあ、今はここには『人間』はひとりもいないわけだけど)


449: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:22:02.99 ID:pcHH/+aRO

高木「……ん?なんだ、あれは」

冬馬「高木のおっさん、どうかしたのか?」

高木「いや、なんだか奇妙な箱があるんだよ」

冬馬「箱……?」チラ

翔太「あっ……!」

翔太「ねえねえ、あれって、宝箱じゃない?」

冬馬「宝箱……そうか!」

冬馬「ダンジョンなら、宝箱くらいあっても不思議じゃねーな」

翔太「何が入ってるんだろうね〜」ワクワク

高木「開けるかい?」

翔太「もちろん!」


…カパッ


高木「これは……飲み物、かな?」スッ

高木「ずいぶん洒落た容器に入っているが……」

翔太「社長さん、それってきっとポーションだよ!」

高木「ポーション?」

翔太「こういうゲームに付き物の、回復アイテムだよ!」

翔太「傷ついた身体を治す事ができる薬なんだよ」

高木「ふむ……便利なものがあるんだねぇ」

黒井「落ちているものを拾うなど、乞食じゃあるまいし。みっともないとは思わないのか?」

冬馬「いや、そう言うけどよ。RPGってこういうアイテム集めが結構大切なんだぜ?黒井のおっさん」

黒井「……フン。セレブな私の肌には合わんな」

翔太「ねえ、他にもあるかもしれないよ?探そうよ、冬馬君!」

冬馬「そうだな。俺らには必要ないかもしれないけど、高槻たちには必要だろうしな!」

北斗「あ、そうか……」

北斗「冬馬……お前、なかなか考えてるんだな」

高木「私も、鬼ヶ島君の意見に賛成だ」

黒井「ちっ……勝手にしろ」

翔太「よーし、じゃんじゃん集めよう!」


450: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:30:07.28 ID:pcHH/+aRO
ー バブイルの塔 1F ー


冬馬「…………ふう。だいぶ集まったな」

翔太「うん。ていうか、宝箱は全部手付かずだったね」

翔太「765プロのお姉さんたち、気づいてなかったんじゃない?」

北斗「まあ、エンジェルちゃんたちは、こういうゲームとかあまりやらなそうだしな」

高木「しかし、なかなか時間がかかってしまったね」

高木「わざわざ遠回りしなければ行けないところに置いてあるとは」

翔太「そりゃそうだよ。いいモノが簡単に手に入ったら、つまんないでしょ?」

翔太「苦労して手に入れたからこそ、価値があるんだよ」

高木「なるほど、奥が深いんだねぇ」

黒井「……もう充分だろう。さっさとここを出るぞ」

冬馬「だな。当たり前だけど、ここには高槻たちはいなかったし」




「…………う……ぅ……」




冬馬「…………ん?」




「…………い…たい……」




翔太「あれ?誰かの声がする……?」

北斗「こんなイベントも終わったダンジョンに、いったい誰が……?」

高木「……確かめてみるかね?」

黒井「放っておけばいい。今はそれよりも、高槻やよいを追う事の方が重要だ」

冬馬「いや、おっさん。こういう事から情報が手に入ったりするんだ。一応覗いとこうぜ?」

高木「黒井、私も少し気になるんだ。もしかしたら、重要な人物がいるのかもしれない」

黒井「ちっ……」

黒井「ゲームの世界とは、面倒事が多いのだな」

黒井「……わかった。好きにしろ」




「…………じ…ぶん…が、まける……なん…て……」




北斗「この扉の奥から聞こえるみたいだな」

冬馬「よし、開けるぞ」


…ガチャ



451: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:31:39.26 ID:pcHH/+aRO
ー バブイルの塔 1F ー


冬馬「…………ふう。だいぶ集まったな」

翔太「うん。ていうか、宝箱は全部手付かずだったね」

翔太「765プロのお姉さんたち、気づいてなかったんじゃない?」

北斗「まあ、エンジェルちゃんたちは、こういうゲームとかあまりやらなそうだしな」

高木「しかし、なかなか時間がかかってしまったね」

高木「わざわざ遠回りしなければ行けないところに置いてあるとは」

翔太「そりゃそうだよ。いいモノが簡単に手に入ったら、つまんないでしょ?」

翔太「苦労して手に入れたからこそ、価値があるんだよ」

高木「なるほど、奥が深いんだねぇ」

黒井「……もう充分だろう。さっさとここを出るぞ」

冬馬「だな。当たり前だけど、ここには高槻たちはいなかったし」




「…………う……ぅ……」




冬馬「…………ん?」




「…………い…たい……」




翔太「あれ?誰かの声がする……?」

北斗「こんなイベントも終わったダンジョンに、いったい誰が……?」

高木「……確かめてみるかね?」

黒井「放っておけばいい。今はそれよりも、高槻やよいを追う事の方が重要だ」

冬馬「いや、おっさん。こういう事から情報が手に入ったりするんだ。一応覗いとこうぜ?」

高木「黒井、私も少し気になるんだ。もしかしたら、重要な人物がいるのかもしれない」

黒井「ちっ……」

黒井「ゲームの世界とは、面倒事が多いのだな」

黒井「……わかった。好きにしろ」




「…………じ…ぶん…が、まける……なん…て……」




北斗「この扉の奥から聞こえるみたいだな」

冬馬「よし、開けるぞ」


…ガチャ



452: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:34:19.92 ID:pcHH/+aRO
ー バブイルの塔 1F 次元エレベータ ー



ルナザウルス「……うぅ…………」




冬馬「……なんだ、あいつ?」

翔太「魔物だよね、きっと」

北斗(どこかで見た事あるような気がするな)

高木「それにしても、虫の息じゃないか。いったい誰にやられたんだ……?」

黒井「……お前のところのアイドルたちじゃないのか?状況的に見て、それしか考えられんだろう」

高木「ふむ……確かにそうだな」

翔太「あ、じゃあ、あの魔物が北斗君が言ってた四天王?」

北斗「いや、俺が知ってる四天王には、あんなのはいなかったはずなんだけど……」

冬馬「ここで話してるより、本人に聞くのが一番早いだろ」



冬馬「……おい!お前は、誰だ?」



ルナザウルス「……に、人間……?」

ルナザウルス「いや、違う……」

ルナザウルス「お前たち、まさか幻獣ッスか……?」

ルナザウルス「じ、自分にトドメを刺しに来たッスか?」



黒井「お望みなら、そうしてやってもいいが?」

冬馬「おっさん、ややこしくなるから余計な事言うなよ」

高木「私たちは、君に危害を加えるつもりはない。ただ、何があったのか知りたいだけなのだよ」



ルナザウルス「………」

ルナザウルス「どの道、自分にはもうあんたたちと戦う力は残ってないッス」

ルナザウルス「わかったッス。話してあげるッス」



453: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:37:38.21 ID:pcHH/+aRO
…………

……



高木「君が、音無君の部下だって?」

ルナザウルス「コトリ様は、青き星を滅ぼして来いって、自分たちを送り込んだッス」

ルナザウルス「その方が、盛り上がるからって」

高木「………」

翔太「ずいぶんラスボスを楽しんでるみたいだね。765プロの事務員さんは」

北斗「やっぱり、全然話が違う。月の魔物がここにいるなんて……」

ルナザウルス「だけど、どうやらそれも失敗ッスね。自分たちは、あの娘たちに敵わなかった」

ルナザウルス「タイちゃんもハクさんも、やられちゃったみたいッス。自分たちコトリ様の四天王も、あとはプーちゃんだけ……」

ルナザウルス「プーちゃん、大丈夫かな……」

冬馬「………」



冬馬「お前、仲間が心配なのか?」

ルナザウルス「当たり前ッス。自分たちは、小さい頃からずっと一緒だったんスから」

翔太「ねえ、北斗君……」

北斗「ああ。魔物にも、仲間意識があったんだな」



冬馬「……なあ、みんな」

冬馬「こいつを、仲間のところまで連れて行ってやらないか?」

ルナザウルス「えっ……?」

高木「鬼ヶ島君?」

黒井「なぜそんな事を?こいつは敵なのだろう?」

冬馬「そうだけどさ。このまま放っておくのも、後味わりーっていうか」

冬馬「姿や立場は違うけど、こいつも俺たちと変わらねーんだな、と思ってさ」

黒井「また面倒事を……」


454: ◆bjtPFp8neU 2015/09/08(火) 22:40:18.06 ID:pcHH/+aRO

北斗(……そうだ。自分の意志を持っているのは、何も俺たちだけに限った事じゃない)

北斗(魔物だって……いや、このゲームの世界に生きる全ての生命に、意志があるはずなんだ)

北斗(いろいろな思惑が交錯する中で、何が正しいかを自分で考え、取捨選択しなきゃならない)

北斗(きっとエンジェルちゃんたちも、そうしてここまで進んで来たはずだ)

北斗(冬馬。お前の出した答えは『そう』なんだな)



北斗「俺も、冬馬に賛成です」



黒井「北斗、お前まで……?」

北斗「彼らは敵です。それは変わらない」

北斗「俺にも、エンジェルちゃんたちに危機が迫ればどんなやつだろうと戦うつもりはあります」

北斗「でも、戦意の無い敵まで見殺しにするのは、どうかと思いました」

黒井「敵に塩を送るなど、くだらん」

黒井「だが、まあいいだろう。確かに、高槻やよいは簡単にやられるタマではない」

黒井「それに、もしお前が高槻やよいに危害を加える事があれば……」チラ

黒井「遠慮なくお前を葬ってやる」ギロリ

ルナザウルス「……っ!」ゾクッ

高木「私も、概ね黒井と同じ考えだね」

北斗「黒井社長、高木社長、ありがとうございます」ペコリ

翔太「ボクは、楽しければなんでもいいよ〜」

北斗「そうか」



北斗「冬馬」

冬馬「サンキュー、北斗」

冬馬「おい、お前。立てるか?」スッ

ルナザウルス「………」

ルナザウルス「あり、がとう……」



冬馬「……さて、こいつの仲間を見つけながら、高槻たちを追うか」



459: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 15:41:14.73 ID:tUGfDI8GO
ー バブイルの巨人 左肩部 ー


トボトボ…


春香(……結局、伊織を見失っちゃった)

春香(………)

春香(千早ちゃん、なんでリボンの事、言ってくれなかったんだろう?)

春香(……でも、私も同じか)

春香(ヤミちゃんの事、みんなに言ってないもんね)

春香(伊織の言う通りだ)

春香(もっと早くみんなに打ち明ければ良かったよ……)

春香(全部、私のせいだ……)

春香(うぅ、私の……バカ)



やよい(千早さん、怒ってるかな……?)

やよい(わたし、なんであんなこと言っちゃったんだろう?)

やよい(千早さんには千早さんの考えがあって、春香さんにだまってたのかもしれないのに……)

やよい(伊織ちゃんも見失っちゃうし……)

やよい(全部、わたしのせいだ……)

やよい(うぅ、わたしの……バカ)



春香・やよい「………」ドヨーン



美希「なんだか、春香もやよいも暗いの」

P「2人とも、さっきの言い合いの事を気にしてるのかもな」

美希「もー、そんなの気にする事ないのに」


460: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 15:43:31.25 ID:tUGfDI8GO

美希「ねえ2人とも。なんでそんなに暗いの?」

美希「2人を見てたら、ミキまで暗ーい気持ちになっちゃうの」

春香「だって、私がちゃんと伊織に話さなかったから……」

やよい「は、春香さんのせいじゃありません!わたしのせいなんです!」

やよい「わたしが、千早さんにあんなこと言っちゃったから……」

春香「ち、違うよ!やよいは悪くない!私が……!」

やよい「いいえ、わたしが……!」

美希「………」




美希「ねえ……」

美希「春香とやよいは、千早さんやデコちゃんの事、信じてないの?」



春香・やよい「!!」


461: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 15:45:25.49 ID:tUGfDI8GO

春香「そ、そういうわけじゃないよ!」

やよい「そ、そうです!伊織ちゃんも千早さんも、大切なおともだちですから!」

美希「だったら、何も心配いらないの」

美希「千早さんもデコちゃんも、とっても強いもん!」

美希「きっと、だいじょーぶなの!」

美希「でしょ?ハニー?」ギュッ

P「ああ!」

P「2人とも、美希の言う通りだ。伊織と千早を信じよう」



春香「………」

春香「そう……ですよね」

やよい「美希さん、すみませんでした!わたし……!」

美希「んーん。わかってもらえればいいの」

美希「まったく、こーいうのは、ホントは春香の仕事なんだからね?」

春香「美希……」

春香「うん。ごめんね。ありがとう、美希!」



P「……よし。みんな、急ごう!」



美希「……待って、ハニー!」

P「どうした?」

美希「また誰かに見られてるの。今度は、間違いないの!」

春香「もしかして、魔物?」

やよい「…………あっ!」

やよい「みなさん、見てください!」スッ





サーチャー「………」ジジッ



462: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 15:56:21.83 ID:D3/qWRZoO

美希「……何、あれ?」

やよい「まものさんじゃないでしょーか?」

春香「うん。多分そうだよね」



サーチャー「………」ジー



春香「大っきな目だねぇ」

やよい「大っきな目ですねー」

美希「なんか、すっごい見られてて気持ち悪いの」


P(あれは……『サーチャー』だったっけか?)

P(あの魔物って確か……)



サーチャー「………」ジー



春香「………」

やよい「………」

美希「……あふぅ」



春香「……何もしてこないね」

やよい「そうですねー」

美希「ふーん……」

美希「だったら、やられる前にやっつけるの!」ギリッ


463: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 15:58:57.83 ID:D3/qWRZoO

P「美希、ちょっと待ってくれ」

美希「ハニー?なんで?」

P「あの魔物は、こちらから攻撃しない限りは、何もしてこないはずだ」

春香「え?そうなんですか?」

やよい「じゃあ、いいまものさんなんですね!」

P「いい魔物かどうかはわからないけど……」

P「このまま何もしないでやり過ごした方が、いいと思うんだ」

美希「ちぇっ、ハニーにミキのカッコいいところ、見てもらおうと思ったのになー」プクー

P「それはまたの機会に、な?」

P「それより、早く先に進もう」

P(確かサーチャーに攻撃すると、仲間を……)



…ドゴオォォォン…!!


グラグラ…


464: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:01:33.55 ID:D3/qWRZoO

春香「うわっ……ととっ!」ヨロッ

春香「な、何?すっごい音がしたけど……」

美希「地震……?」

やよい「ゆ、ゆれてますー!」



ガラガラ…


ドサドサッ!



春香「な、なんか、崩れてませんか?」

P「何があったんだ……?」

P「とにかく、ここはヤバいかもしれない。みんな、早く……」



ヒュー…


ドゴッ!


サーチャー「………」ピシッ



春香「あっ、崩れたガレキが魔物に……」



サーチャー「…………侵入者ノ攻撃意志ヲ確認」

サーチャー「緊急迎撃体制。機械竜招集」


ビーッ! ビーッ!



やよい「はわわっ!すごい音が……!」

美希「とってもうるさいのー!」

春香「こ、攻撃意志って……私たち、何もしてませんよぅ!」



機械竜「………」ヌッ



P「まずい……!」

P「みんな、また魔物が現れた!戦闘準備だ!」

春香「は、はいっ!」チャキッ

やよい「わかりましたっ!」

美希「あは☆今度こそ、ミキのカッコいいところをハニーに見てもらうの!」


465: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:09:08.60 ID:D3/qWRZoO
タタタタ…


春香「たあぁぁーーっ!」


機械竜「……!」ブォンッ


春香「わわっ!」ガキィン

春香「ぐっ……!す、すごい力……!」ググッ



美希「ミキの矢を、くらえなの!」ギリッ

美希「…………えいっ!」ビュンッ


…ザクッ!


機械竜「……!」ヨロッ



P「今だ、やよい!」

やよい「はい!」

やよい「じゅぴたーさん、お願いしまーす!」バッ



スゥーー…




冬馬「モグモグ……」

冬馬「んめー!なかなかイケるじゃねーかこれ」

翔太「あっ……」

翔太「と、冬馬君!」

冬馬「あん?交代ならちょっと待ってろよ。……おっさん、これおかわりいいか?」

北斗「冬馬、周りをよく見ろよ……」

冬馬「えっ?」チラ




機械竜「……!」ブォンッ


春香「うわぁっ!」ヨロッ


…ドサッ


466: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:10:24.22 ID:D3/qWRZoO

美希「春香!」

美希「……ちょっとジュピターの人!空気読んで欲しいって思うな!」プンプン

やよい「あぅ……じゅぴたーさぁん……」

P(なんか食ってるし)



冬馬「わ、悪い、高槻!戦闘中だったのか!」

冬馬「テメエ!高槻の前で恥かかせやがってー!」ダッ



冬馬「うおおおおっ!!」

冬馬「マダンテー!」


バキッ! ドゴッ! ベキッ! グシャッ!


機械竜「」



美希「やっぱり強いねー、ジュピターの人」

やよい「そうですねー」

P(技名はともかく、頼りになるなぁ)


467: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:13:19.10 ID:D3/qWRZoO

春香「……痛つつ」ヨロッ

北斗「回復してあげるよ、リボンちゃん」

北斗「ケアルダ!」


シャララーン! キラキラキラ…


春香「……ふぅ」

春香「ありがとうございました!」ペコリ

北斗「礼には及ばないよ。俺たちは、いつだって君たちの味方だ」

北斗「冬馬も、翔太も……もちろん、黒井社長も高木社長もね」

春香「伊集院さん……!」

北斗「回復が必要なら、俺に任せてくれ」キリッ

翔太「あ、もし死んじゃったりしたら、ボクが生き返らせてあげるからね〜」

春香「あ、あはは……なるべくそうならないように、頑張ります」



冬馬「……あ、そうだ、高槻」

やよい「はい?」

冬馬「黒井のおっさんも高木のおっさんも、寂しがってたぞ」

冬馬「たまにはおっさんたちも呼び出してやれよな?」

やよい「でも……」

やよい「わたしなんかがよびだしても、いいんでしょーか?」

冬馬「バーカ。俺たちは、仲間だろ?くだらねー気を使ってんじゃねーよ」

冬馬「みんな、お前たちの力になりたいって思ってるんだからさ!」

やよい「鬼ヶ島さん……!」



冬馬「……っと、忘れるとこだった」ゴソゴソ

冬馬「ほら、これ持ってけよ」スッ

やよい「これって、たしか……」

春香「ポーションじゃないですか!しかもすごいたくさん!」

春香「どうしたんです?こんなに」

冬馬「どうしたって、普通に宝箱開けてっただけだぞ」

やよい「たからばこ……?」

P(そういや俺、肝心な事を春香達に説明してなかったな)

P(まあ、今更言っても遅いけど)



北斗「……それじゃ、俺たちは行くよ」

翔太「頑張ってね、お姉さんたち!」

冬馬「……じゃあな!」ビシッ



スゥーー…



468: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:17:35.29 ID:D3/qWRZoO

春香「…………さて」チラ




サーチャー「………」




春香「プロデューサーさん、どうしましょう?逃げた方がいいですかね?」

P「ヤツを一撃で仕留められるならいいんだけど、中途半端な攻撃はさっきみたいに仲間を呼ばれるからなぁ」

春香「まあ、私達はさっき何もしてないんですけどね」

やよい「じゃあ、どうしましょーか?」

美希「だったら、ミキに任せるの!」

P「美希?」

美希「一撃で倒せばいーんでしょ?今度こそ、ミキのカッコいいところ、ハニーに見てもらうの!」

P「あんまり無茶するなよ?」

美希「うん!」

美希「…………!」ゴゴゴゴ

美希「ミキのキラキラ魔法、くらえなのっ!」スッ



美希「……ホーリー!」バッ


P(えっ!?)



キラキラキラキラ…



ドゴゴゴオォォォォン!!



サーチャー「」


469: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:19:14.02 ID:D3/qWRZoO

美希「あは☆楽勝なの!」

春香「やっぱすごいね、美希の魔法は」

やよい「美希さん、さすがです!」

美希「ねえねえハニー、ちゃんと見ててくれた?」

P「うん。すごいな、美希!」

美希「ミキ的にはこれは、愛の成せる技だって思うな!」

春香「むむ……」

P「でも、いつの間にホーリーなんか使えるようになったんだ?」

美希「んー、よくわかんないけど……確か、ファンの人がくれた本を読んだら使えるようになったの」

P「それって、ほぼ最初から使えたって事じゃないか?」



P(思えば俺、美希ややよいが戦っているところを見たのは、この巨人戦が初めてだよな)

P(2人とも、自分の能力をちゃんと理解して戦っているんだな)

P(いや、2人だけじゃない。春香や千早、伊織もとても頼もしい)

P(なんだかんだ言っていいパーティだよな。この5人って)


470: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:22:06.42 ID:D3/qWRZoO

春香「あっ!」

P「どうした、春香?」

春香「また魔物が!」スッ



サーチャー「………」



美希「ふーん、いいよ。またミキのキラキラ魔法のエジキにしてあげるの」スッ

春香「待って、美希。今度は私が!」チャキッ

美希「春香はリーダーだから、力を温存しとくの!ここはミキひとりに任せればいいって思うな!」グイッ

春香「いやいや、美希の力こそ温存すべきじゃないかな?ほら、いざという時のタメにさ」ググッ

美希「そんな事言って、ハニーにいいところ見せようってコンタンが見え見えなの!」グイグイ

春香「そ、それは美希だって同じでしょ?私だって、強くなったところをプロデューサーさんに見てもらいたいもん!」ググッ

美希「春香はずるいの!」

春香「美希だって!」

美希「むむむ〜!」グイグイ

春香「ぐぬぬ〜!」ググッ


P(なぜ感心したそばからケンカするのか。この子達はまったく……)



やよい「あの〜……春香さん、美希さん。まものさん、増えちゃいましたよー?」スッ



ワラワラ…

サーチャー1「………」

サーチャー2「………」

サーチャー3「………」

サーチャー4「………」

サーチャー5「………」




春香・美希「」



471: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:33:31.74 ID:D3/qWRZoO

美希「こーなったら、ミキが1番多く倒して実力の差を見せつけてやるの!」


美希「汚れ無き天空の光よ……」ゴゴゴゴ

美希「血にまみれし不浄を照らし出せ!なの!」


美希「ホーリー!」バッ


キラキラキラキラ…


ドゴゴゴオォォォォン!!



サーチャー1「」



春香「私だって負けないもん!」


春香「命脈は無常にして、惜しむるべからず……」

春香「……葬るっ!」チャキッ


春香「不動……無明剣!」ブンッ


ズドォォン!!



サーチャー1「」



やよい「わたしもがんばりまーっす!!」


やよい「いふりとさん、お願いしますっ!」バッ


スゥゥ…


イフリート「任せろヤヨイぃぃぃぃっっ!!」

イフリート「地獄の火炎んんんん!!」



ゴオオォォォオオ!!



サーチャー3「」

サーチャー4「」

サーチャー5「」




P(春香の技、ゲーム違う気が…………まあ、いいか)


472: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:37:41.00 ID:D3/qWRZoO

美希「む〜、やよいが1番多く倒してるの」

P「まあ、召喚魔法は基本全体攻撃だからな」




ワラワラ…

サーチャー6「………」

サーチャー7「………」

サーチャー8「………」

サーチャー9「………」

サーチャー10「………」

……




やよい「はわっ!?まだまだたくさんいますよ!」

春香「しつこいなぁ、もう!」チャキッ





ビュオォォ…


春香「……あれ?風が……」



「こんなところで手こずってるなんて、あなた達らしくないわね」



「…………ミールストーム!!」




ブオオォォォオオ!!




サーチャー6「」

サーチャー7「」

サーチャー8「」

サーチャー9「」



「……い、1体残った…ぞ……?」



サーチャー10「侵入者ノ攻撃意識ヲ確認。機械竜召シュ」

ザシュッ!!


サーチャー10「」



「……よ、呼ばせな…い……」


473: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:45:05.98 ID:D3/qWRZoO

美希「シアちゃんにスーちゃん!どうしてここに?」

バルバリシア「ふふ、助太刀に来たわ、ミキ!」ニコッ

美希「わあ、それはうれしいの!」

春香「あれ?でも、スーさんとバルバリシアさんだけ、ですか?」

スカルミリョーネ「……ほ、他の2人とは、はぐれ…た……」

春香「そうだったんですか」

バルバリシア「あの2人、移動速度が遅いのよね、まったく」

春香「いや、それってバルバリシアさんが速すぎるんじゃ……?」


P(四天王が助っ人に来るとか、ホントみんな仲良いんだなぁ)



やよい「うー……」

バルバリシア「ああ、あなたとは初めましてだったかしら?」チラ

バルバリシア「元四天王、風のバルバリシアよ。よろしくね、お嬢ちゃん?」ファサッ

スカルミリョーネ「……つ、土のスカルミリョーネ…だ……」

やよい「えーっとー……」

やよい「ばりばりしあさんにすかりみょーねさんですね?」

バルバリシア「いえ、あの、バリバリじゃなくて……」

スカルミリョーネ「………」

やよい「うっうー!わたしは高槻やよいです!よろしくおねがいしまーす!」ペコリ

バルバリシア(……まあ、いいか。なんか可愛いし)

春香(2人の名前言えてないやよい可愛い)

美希(やよい、可愛いの)



スカルミリョーネ「……そ、そういえば、忍者と竜騎士はどうし…た……?」

春香「千早ちゃんと伊織とは、はぐれちゃいまして……」

バルバリシア「あら。あなた達もなのね」

美希「そうだ!早くデコちゃん追いかけないと!ねえ春香、やよい!」

春香「あ、そうだね!」

やよい「そうですね!」グッ

バルバリシア「私達も一緒に行ってあげるわ。……急ぎましょう」

スカルミリョーネ「……せ、背中、乗っ…て……」

美希「2人とも、ありがとうなの!」



P(よくわからないけど、四天王が2人も一緒とは心強いな)

P(他の四天王も来てるみたいだし……)

P(…………あれ?これってもしかして……)



474: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:56:43.98 ID:D3/qWRZoO
ー バブイルの巨人 左胸部 ー


ブォンッ…!


千早「くっ!」ガキィン


千早「はぁっ!」


ザシュッ!


…スタッ



機械竜「………」



千早(……意外と硬いわね)

千早(私の槍では、あまりダメージを与えられないみたい)

千早(対して魔物の攻撃は、火を吹くか尻尾を振り回すかの2通り)

千早(単調だから、やられる事はなさそうだけど……)

千早(地道にやって行くしか、なさそうね)



機械竜「……!」ブォンッ



千早「!」

千早(尻尾が、来るっ!)



千早「……くっ!」タンッ


フワッ…



機械竜「………」チラ

機械竜「……!」カパッ



ゴオオォォオ!!



千早「……え!?」

千早(炎……!)

千早(一撃目は、フェイント!?)

千早(ダメ、空中では、躱しきれない……!)


ゴオオォォオ!!


千早「ああっ!」



…ドサッ


475: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 16:58:51.60 ID:D3/qWRZoO

千早「…………くっ」ヨロッ


千早「………」

千早(油断した……)

千早(行動パターンが決まっているものだと思っていたわ)

千早(落ち着いて、相手の行動を見極めないと……)



千早「………」チャキッ



機械竜「………」



機械竜「………」カパッ



千早(……来る!)ジリ

千早(フェイント?それとも……)

千早(ギリギリまで引きつけて……)



機械竜「……!」


ゴオオォォ…!



千早(…………このタイミング!)





「………ロォォォリングゥゥゥゥ…………!」


ゴロゴロゴロ…



千早「えっ!?」ビクッ




「アタァァーーーック!!」




ドゴォッ!!




機械竜「」プスン



ドカァァァン!!




千早「魔物が、爆発した!?」

千早「な、何なの、今のは……?」


476: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:03:58.04 ID:D3/qWRZoO
カイナッツォ「……ぬぅ。目が、回る……」フラフラ



千早(また、魔物?)



カイナッツォ「……く、ふふふ!」

カイナッツォ「どうだ、人間よ!見たか、私の力を!」クルッ

カイナッツォ「……ん?」

カイナッツォ「お前は確か、リツコ様の……」

千早「あの……どちら様?」

カイナッツォ「この、リツコ様の四天王、水のカイナッツォ様の事を忘れただとっ!?」

カイナッツォ「ほら、前にバロンで会っただろう!?」

千早「バロンで……?」

千早(こんな魔物いたかしら……?)

千早「……ごめんなさい、覚えてないわ」

カイナッツォ「ぐぬぬ……!私の事を忘れるとは、なんと失礼な娘だ!」

千早「あの、助けていただいて、ありがとうございます」ペコリ

千早「でも私、先を急ぐので、失礼します」クルッ

カイナッツォ「お、おい、ちょっと待てっ!」



千早「…………まだ、何か?」チラ



カイナッツォ「私も行ってやろう」

千早「…………は?」

カイナッツォ「このカイナッツォ様が、お前たち人間に協力してやろうというんだ。感謝するがいい!」

カイナッツォ「ふははははは!」



千早「………」

千早(面倒な事になったわ)

千早(こんな魔物の相手をしている場合じゃないのに……)

千早(でも、私の槍も、あまり魔物に通用しなくなってきてる)

千早(あの魔物、なかなか強いみたいだし、連れて行っても損はないのかしら……)

千早(……迷っている場合じゃないわね)

千早(早く、みんなを追いかけなければ)



千早「……わかったわ。行きましょう」

千早「えーと……」

千早「……ゴンザレスさん?」


カイナッツォ「カイナッツォだっ!変な名前を付けるなっ!」


千早「そうですか……」シュン


477: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:08:47.65 ID:D3/qWRZoO
ー バブイルの巨人 左肩部 ー


スタスタ…


千早「……律子の四天王?あなたが?」

カイナッツォ「最初からそう言っているだろうがっ!ひとの話を聞かんヤツだな!」

千早(あ……この方が高槻さんが言っていた『カメさん』なのね)



カイナッツォ「……もっとも、当のリツコ様は今は人間側に回ってしまったがな」

千早「元から律子は、こちら側の人間よ」

千早(そう。音無さんに操られていただけで、本当は……)

カイナッツォ「……ふんっ」

カイナッツォ「リツコ様といい、ルビカンテといい……どうして人間たちの肩を持ちたがるのだ」

カイナッツォ「付き合わされる身にもなってほしいものだ、まったく!」プンスカ

千早「えっ……?」

千早(ルビカンテ……って、確かさっき、プロデューサーが……)



千早「あの、ルビカンテってもしかして……」

カイナッツォ「我々四天王のリーダーだ」

カイナッツォ「ヤツの命令で、不本意ながらお前たち人間に力を貸してやるのだ。感謝するがいい!」

千早「じゃあ、四天王はみんなここに?」

カイナッツォ「ああ、来ている。ルビカンテは相当お前たちがお気に入りらしいな」

カイナッツォ「まったく、気に入らん!」

千早「………」

千早(確かさっき、ルビカンテは水瀬さんのご両親の仇だって……)

千早(今の水瀬さんが、ルビカンテと鉢合わせたら……きっと、戦いになってしまう)

千早(それだけは、止めないと!)



千早「急ぐわよ、ゴンザレス!2人を止めないと!」

タタタタ…


カイナッツォ「お、おいっ!ちょっと待て!私を置いて行くな!」

カイナッツォ「というか、私はゴンザレスとやらではないぞっ!」



478: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:23:34.43 ID:D3/qWRZoO
ー バブイルの巨人 頸部 ー


トボトボ…


伊織「………」

伊織「…………はぁ」



伊織(……何やってるのよ、私)

伊織(心配してくれたみんなを突き放して、こんなワケわかんないところで、ひとりで……)

伊織(でも……関係ない春香たちを巻き込むワケにはいかない)

伊織(だってこれは、私の問題だもの)

伊織(私が、ひとりで……)

伊織(覚悟は決めたはずなのに、不安も猜疑心も消えてはくれない)

伊織(こうする事が正解だって、自分に言い聞かせたはずなのに……)



巨人兵「………」ヌッ



伊織(……正解?本当に?)

伊織(疑問を抱えて、自分を押し殺してまでやるべき事が、正しいの?)

伊織(『我が道を行く』が私の信条じゃなかった……?)



巨人兵「………」チラ



伊織(何が、正しいの……?)

伊織(何が、正解だっていうの……?)

伊織(……わからない。わからないけど……)

伊織(これだけは言えるわ)



巨人兵「……!」ブンッ



伊織(周りには強がっているけど、私は本当は……)



…ドガッ!!



伊織「ぐっ……ぁ……っ!」ヨロッ


479: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:25:30.58 ID:D3/qWRZoO

巨人兵「……!」ブンッ


伊織「く……!」タンッ


クルンッ…スタッ


巨人兵「………」チラ



伊織(魔物……!)

伊織(完全に油断してたわ……)

伊織(この伊織ちゃんが、あんなトロそうなヤツに一撃をもらうなんて……!)

伊織「っ……!」ズキン

伊織(腕を、やられた……!)



巨人兵「………」ジリ



伊織(忘れてたわ)

伊織(赤い悪魔を探して倒すにしても、先に巨人を破壊しなきゃいけないのよね)

伊織(まずは、目の前の敵に集中しないと!)

伊織(確か、機械の魔物は雷に弱いって真が言ってた気がするわね)



伊織「っ………!」バリッ

伊織「消えちゃいなさいっ!」

伊織「……雷迅っ!」バッ


ズガガガァァーーン!!


巨人兵「………」ヨロッ


巨人兵「……!」ズサッ


伊織「ち……!倒しきれない!」


巨人兵「………」ザッ


伊織「!……来るっ!」


巨人兵「……!」ブンッ


伊織「っ……!」ダッ




「…………火炎流!」



…ゴオオォォオオ!!



伊織「…………え?」


480: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:29:23.78 ID:D3/qWRZoO

「…………こんな雑魚に遅れをとるとは、お前らしくないな」



伊織「あんた……!」



ルビカンテ「……イオリよ」



伊織「…………赤い悪魔っ…………!」グッ



ルビカンテ「いつもの威勢はどうした?」



伊織「……ふ、ふふ……」

伊織「笑えるわ……」

伊織「……なんでこのタイミングで現れるのよ、あんた……!」

伊織(ホント、最低のタイミング……)

伊織(……でも、考えようによっては、最高のタイミングね)

伊織「ぐっ……!」ズキッ



ルビカンテ「お前……腕をやられたか」

ルビカンテ「見せてみろ。オレが回復してやろう」



伊織「よ、余計なお世話よ!」



ルビカンテ「……やれやれ。相変わらず面倒だな、お前は」

ルビカンテ「確かスカルが言っていた。つんでれ……というヤツか?」



伊織「う、うるさいっ!違うわよっ!」

伊織「ていうかあのゾンビ、なんでそんな言葉知ってるのよ!」

伊織(……って、これじゃいつも通りじゃない)

伊織(ダメよ。私は今から、赤い悪魔を倒すんだから)

伊織(馴れ合いは、ダメ)

伊織(憎まないと……!)


481: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:31:19.87 ID:D3/qWRZoO

…シャララーン!キラキラキラ…


伊織「!」


ルビカンテ「もう大丈夫だ。さ、行くぞ」

ルビカンテ「巨人を操っている魔物は、おそらく頭部にいる。ここから目と鼻の先だ」

ルビカンテ「連れて行ってやる。さあ、おぶされ」スッ



伊織「………」



ルビカンテ「…………どうした?まだ腕が痛むのか?」

ルビカンテ「骨に異常はないみたいだったが……」



伊織「……なん…でっ……」ウルッ

伊織(私はこれから、あんたを……)



ルビカンテ「イオリ……?」



伊織「なんで……?」ポロポロ

伊織(倒さなきゃいけないのに……)



ルビカンテ「なぜ、泣く?」



伊織(なんで、優しくするのよっ………!)



伊織「あんたの……!」

伊織「あんたのせいよっ……!」ポロポロ



ルビカンテ「……?」



伊織「あんたなんて……!」

伊織(これ以上、優しくされたら)



伊織「あんたなんてっ……!」

伊織(自分を見失いそうだから)



伊織「大っっっっっっっ嫌い!!!」ポロポロ



伊織(もう、激情に身を任せるしかない)



伊織「っ……!」チャキッ



ルビカンテ「………」


482: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:37:04.14 ID:D3/qWRZoO

ルビカンテ「…………そうか」



ルビカンテ「忘れていたよ、イオリ」

ルビカンテ「お前の故郷、両親を奪ったのは、他でもないオレだったな」

ルビカンテ「こんなオレがお前の事を仲間と思うのは不自然……か」


伊織「………」ピクッ


ルビカンテ「……いや、在るべき関係に戻っただけだな」

ルビカンテ「お前は復讐を果たす者。そして……オレはその仇敵」

ルビカンテ「互いが交わる事など、あり得ない」



伊織「そ、そうよっ……!」ゴシゴシ

伊織(声が、震える……!)



伊織「私はっ……!」グッ

伊織(……飲まれるな!)



伊織「エブラーナのみんなと……!」

伊織(前を、見なさいっ!)



伊織「王と王妃の仇を討つためにっ!」

伊織(スーパー忍者アイドル伊織ちゃんの、底力……!)









伊織「あんたを………………倒すっ!!」ビシッ

伊織(見せてやるんだからっ!)





483: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:45:09.13 ID:D3/qWRZoO

ルビカンテ「……いいだろう」スッ


ルビカンテ「イオリ……いや、亡国エブラーナの王女よ。火のルビカンテが相手になろう!」

ルビカンテ「さあ、持てる力全てでかかって来い!」バッ


伊織「……!」スッ

伊織「あんたの弱点は、わかってるわ!」

伊織「はあぁぁっ……!」ゴゴゴゴ


ルビカンテ「む……?」


伊織「……水遁っ!」バッ

ズバシャァァーー!!


ルビカンテ「!」


伊織「はっ!」ダッ


ルビカンテ「甘いっ!」ブンッ

ドゴッ!

伊織「ぐっ!?」ヨロッ


ルビカンテ「ふんっ!」ブンッ


伊織「っ……!」タンッ


…スタッ


ルビカンテ「避けたか。身のこなしはさすがだ」


伊織「なんで?水遁が効いてない……?」


ルビカンテ「なるほど、少しは頭を使ったみたいだな」

ルビカンテ「確かに、炎の化身であるオレは水が弱点だ」

ルビカンテ「だが……」バサッ

ルビカンテ「このマントがある限り、水ですら受け付けん」

ルビカンテ「どう戦う?エブラーナの王女よ」


伊織「ちっ……ただの変質者じゃなかったのね……!」

伊織「だったら……」

伊織「この妖刀マサムネの威力、思い知りなさいっ!」チャキッ


ルビカンテ「ふ……」ニヤリ

ルビカンテ「さあ、エブラーナの王女よ。オレを楽しませてくれ……!」スッ




ルビカンテ(…………そして、オレを超えてみせろ。…………イオリよ!)



484: ◆bjtPFp8neU 2015/09/13(日) 17:51:29.37 ID:D3/qWRZoO
一旦ここまでです

久々に読み返したら、矛盾してるとこがたくさんあって軽く凹んだ

487: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:25:47.97 ID:+qGkE/eeO

伊織「………」シャキン

伊織「………」ジリッ



ルビカンテ「………」

ルビカンテ(刀を鞘に収めた……?いったい何をするつもりだ?)

ルビカンテ(……まあいい。イオリが何をしようがオレはオレの戦いをするだけだ)



ルビカンテ「王女よ、来ないのか?ならば、こちらから行くぞっ!」ダッ

ルビカンテ「はああっ!!」



ビュッ…ザシュッ!!



ルビカンテ「ぐっ!?」

ルビカンテ「斬撃……!?あんなに離れたところから……!?」ポタッ



伊織「……いい反応してるじゃない。とっさに躱すなんて」

伊織「せっかく真っ二つにしてあげようと思ってたのに……」カチャ



ルビカンテ(ふっ……冗談に聞こえんな)

ルビカンテ(太刀筋が全く見えなかった。あれが妖刀マサムネとやらの威力か)

ルビカンテ(だが……)



伊織「次は外さないわ。必ずあんたを仕留めてみせる!」ビシッ

伊織「……!」ジリッ



ルビカンテ「………」


488: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:29:55.74 ID:+qGkE/eeO

ルビカンテ「……王女よ。気づかないのか?」



伊織「? ……何がよ?」



ルビカンテ「鞘に刀を収めた状態から凄まじい速度で刀を抜き、勢いそのままに初太刀で相手を斬り捨てる」

ルビカンテ「なかなかの抜刀術だ。さすがにオレも戦慄が走ったよ」



伊織「あ、あったり前じゃない!私を誰だと思ってるのよ!」

伊織(さっきの、抜刀術っていうのね。……知らなかったわ)



ルビカンテ「しかし、ずっとそこから動かないつもりか?」



伊織「…………えっ?」



ルビカンテ「……ファイガ!」バッ


ゴオオォォォオオ!!


伊織「きゃっ!!」ダッ


…スタッ


ルビカンテ「確かに、射程距離は普通の斬撃とは比べものにならないほど広い」

ルビカンテ「……が、所詮は刀だ。魔法や飛び道具の比ではないな」



伊織「く……」

伊織(なんでいちいち赤い悪魔にダメ出しされなきゃならないのよ!)

伊織(でも、まあ……あいつの言う通りよね。構えている時は忍術を使う事もできないし、スキだらけだし)

伊織(やっぱ、咄嗟に思い付いた付け焼き刃じゃダメね)

伊織(…………あ、でも、だったら……)チャキッ


489: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:34:25.50 ID:+qGkE/eeO

伊織「………」ジリッ



ルビカンテ「………」

ルビカンテ「凝りずにまた抜刀術か。やはり頑固だな、お前は」

ルビカンテ「だが、その強情さは嫌いじゃないぞ?」



伊織「ばっ……///」カァァ

伊織「な、何バカな事言ってんのよこの変態っ!!」



ルビカンテ「……何を赤くなっているんだ?」



伊織「あっ……あんたのせいよ!バカっ!!」

伊織「せっかくのシリアスな雰囲気が台無しじゃないのっ!!」



ルビカンテ「思った事を言っただけなのだが……」



伊織「……ったく、ちょっとは考えなさいよね!私達は今、殺し合いをしてるのよ!?」



ルビカンテ「妙な事を言う。殺し合おうが愛し合おうが、良いものは良い、悪いものは悪い。……違うか?」



伊織「〜〜〜っ!」

伊織(なんなのよあいつの自由さは……。やりにくいったらないわ)

伊織(……って、ダメよ。また慣れ合ってる)

伊織(非情にならなくちゃ……!)



伊織「さあ来なさい、赤い悪魔!この伊織ちゃんがやられっぱなしだと思ったら大間違いなんだから!」

伊織「今度こそ、斬り捨ててやるわ!」



ルビカンテ「ふ……それは楽しみだ……!」


490: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:38:55.25 ID:+qGkE/eeO

ルビカンテ「行くぞ!」スッ

ルビカンテ「……ファイ」



ヒュッ…ドスッ!



ルビカンテ「ぐっ……!?刀を、投げただと……!?」ザッ



伊織「私、今まで忘れてたのよね。自分が二刀流だって事を!」ダッ


伊織「くらいなさい!妖刀マサムネの抜刀術っ!!」チャキッ


ビュンッ…ザシュッ!!


ルビカンテ「ぐっ…がぁぁ……!」ヨロッ



伊織「やった……!一矢報いた!」



ルビカンテ「……ぐ…ふふふ……!」ポタポタ

ルビカンテ「良い一撃だ……!」ニヤリ


伊織「!?」


ルビカンテ「ふんっ!」ブンッ


ドゴオォ!!


伊織「っ……ぐ…ぁ……!」ヨロッ


ルビカンテ「はあっ!!」ブンッ


バキィッ!!


伊織「ぅ……あ……!」フラッ



伊織(重い……!さっきの雑魚とは比べものにならない一撃……!)

伊織(でも、私の攻撃だって綺麗に決まった。……あいつの方が傷は深いはず……)