P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2 その2

461: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:44:04.28 ID:VsHkcvNIO

スタスタ…

千早「………」

春香「綺麗な景色だなぁ……」キョロキョロ

千早「………」

春香「ねえ千早ちゃん、なんだか宝石みたいだよね?」

千早「………」

春香「……千早ちゃん?」

千早「……ねえ春香、訊きたいことがあるの」

春香「うん、なぁに?」

千早「私、春香が時々分からなくなるわ」

春香「私が? なんで?」

千早「昨日は精神的に参っていたみんなを力強く励ましたかと思えば、今日は子どもみたいに甘えてくるなんて」


…ピタッ

千早「どっちが本当の春香なの?」

春香「千早ちゃん……」

春香「えへへっ♪ どっちもありのままの私だよ?」

千早「………」

春香「えっと……まあ、昨日みたいなカッコいいのはちょっと私には似合わないかもしれないけどさ」

千早「あ……ごめんなさい、別にそういうつもりで言ったわけでは……」

春香「うん、気にしてないから平気だよ」


引用元: P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2 



ファイナルファンタジーXV ロイヤルエディション - PS4
スクウェア・エニックス (2018-03-06)
売り上げランキング: 192
462: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:48:14.84 ID:VsHkcvNIO

春香「……私だっていろいろ思うことはあるし、もしかしたら今は、さっき千早ちゃんが言ってたみたいにこんな風に呑気にしてる場合じゃないのかもしれないけど」

春香「でも、これだけははっきりと言えるんだ」

春香「正義よりも正しいことよりも大事なものは、今私の目の前にあるって!」

千早「その言葉って、確か……」

春香「うん。試練の山でお父さんが私にくれた言葉」

春香「考えれば考えるほどいろんな解釈ができる言葉なんだけど……」

春香「でも、なんていうか、どことなく人間味に溢れた言葉だなぁって」

春香「えへへ、私のお気に入りの言葉なんだ♪」

千早「そう……」

千早(正義よりも正しいことよりも大事なもの……)

千早(そんなものがあるとしたら、ただ単にそれはその人のわがままね)

千早(他の全てを犠牲にしてもそれが大事だなんて、とても傲慢で自分勝手な考え方だわ)

千早(一般的な道徳からはかけ離れた思考だといえる)

千早(……でも、春香の言う通りかもしれない)

千早(だって、正しいことを頭で理解していてもつい自分の欲望に走ってしまうのが人間だから)

千早(……ん? 今、春香がわがままを押し通しても手に入れたいものって……)

千早(……もしかして、私?)

千早「……///」カァァ


春香「……あれ? 赤くなってどうしたの? 千早ちゃん」

千早「なっ、なんでもないわ。ほ、ほら、先を急ぎましょう!」グイッ

スタスタ…


春香「ち、千早ちゃん、引っ張らないで~!」ズルズル



463: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:50:34.71 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B8F 東側 ー


律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………………はぁ」


律子「死ぬかと思った……」フワフワ



律子「助かったわ、貴音。レビテトがなかったらどうなってたか……想像したくもないわね」

貴音「ふふっ、礼には及びませんよ」モグモグ

律子「……で、訊きたいんだけど。なんでこのタイミングでお弁当食べてるの? 私たち死にかけたのよ?」

貴音「丁度お腹が空きましたので」モグモグ

律子「だからって落下しながら食べなくてもいいでしょうに……」



ヒューーーー…



律子「あら? また誰か落ちてくるわ。貴音、レビテトを」

貴音「……待ってください。何やら様子がおかしいですね」モグモグ



ヒューーーー…



律子「……なかなか落ちてこないわね」

貴音「あれは……」

貴音「おそらく、『すろう』の魔法で極限まで落下速度を緩めているのでしょう」

律子「なるほど、頭いいわね。誰かしら」



ヒューーーー…



………………



…………



……



…フワリ



美希「……zzz」



律子「」

貴音「おや、美希でしたか。なんとも優雅な登場ですね」ニコッ


465: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:53:40.25 ID:VsHkcvNIO

律子「なんでこの子はこんな時でも緊張感がないのよもー!」

律子「こら美希、起きなさい!」ユサユサ

美希「……んっ……」ムクッ

美希「……あふぅ」

美希「あ、貴音に律子…さん、おはようなの」

貴音「おはようございます、美希。よく眠れましたか?」モグモグ

美希「うん! なかなかにカイテキな空の旅だったの。あは☆」

律子「なんで落下しながら眠れるのよ……」

美希「だって、落ちてる間タイクツだったし、ちょうどいいお昼寝タイムかなって」

貴音「ふふっ、時間を有効に使うのは、まこと大切なことですね」モグモグ

律子(もうやだ、この二人……)



律子「……ねえ、いつまで食べてるのよ。早く先へ行くわよ」

貴音「そう焦っても良い結果は出ませんよ、律子嬢。まずはしっかりとえねるぎぃを補給せねば、大事な時に力を出せません」モグモグ

美希「そーだよ。それにこのお弁当、ホントにおいしーの」モグモグ

美希「律子…さんも食べる?」

律子「私は遠慮しておくわ」

美希「むー、そんなこと言わないでなのー。はい、あーん」スッ

律子「いや、だから……」

貴音「律子嬢、他人の好意は素直に受け取るものですよ?」

律子「わ、分かったわよもう……」

律子「あーん……」



…ザッ

千早「…………律子?」

春香「お姉ちゃん、こんなところでお昼ですか?」



律子「」


466: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:58:24.34 ID:VsHkcvNIO

律子「はっ、はるふぁにひはや!?」モグモグ

春香「お、お姉ちゃん、食べながらしゃべらない方が……」

律子「ほ、ほれほはへはあいふ……ごほっ、ごほっ!」

春香「あーほら、ゆっくり飲み込んでくださいね?」サスサス

律子「ご、ごめ……」

貴音「春香と千早も食べますか?」スッ

美希「おいしーよ?」

千早「い、いえ、私は……」

春香「あはは、貴音さんも美希もマイペースだなぁ……」



律子「…………えー、ゴホン」

律子「見苦しいところを見せたわね、二人とも」

春香「いえ、気にしないでください」

千早「こんな時でも余裕がある、というのはいいことだと思うわ」

律子「そ、それについてはノーコメントで」


律子「それで、春香と千早はここへ来るまでに誰かに会った?」

千早「いえ、会ってないわね」

春香「私たち、ここまでずっと二人っきりでした!」

律子「ちなみに、私たち三人もこの階へ落とされてから誰にも会ってないわ」

律子「つまり、私たち以外のメンバーは他の階に落とされた可能性が高いわね」


467: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 21:01:22.55 ID:VsHkcvNIO

律子「……貴音、ここは地下8階でいいのよね?」

貴音「はい。この地下渓谷は、地下7階までと地下8階以降でがらりと雰囲気が変わります」

貴音「おそらく中心核が近いせいでしょう」

春香「千早ちゃんの言った通りだったね」

千早「ええ。でも、もうすでに半分以上進んだことになるのね」

美希「この調子なら、楽チンなカンジで小鳥のところまで行けるね!」

律子「いえ、おそらくそうはならないと思うわ」

律子「私たちをここまで落としたのは親衛隊のリーダー格よ? たぶん、何か狙いがあるんだと思う」

美希「狙いって?」

律子「これは、あくまで推論だけど」

律子「地下1階、地下2階とそれぞれ一体ずつ親衛隊の魔物がいたわよね?」

春香「はい。今はあずささんと真が戦ってくれてますね」

律子「親衛隊の魔物は10体。それにバハムートを加えて、敵は全部で11体」

千早「……もしかして、ひと階層ごとにそれぞれ魔物が?」

律子「その可能性が高いと思うわ」

律子「あの親衛隊のリーダーの目的は、私たちの戦力を分散させることだったんじゃないかと思うの」

律子「だから、私たちが固まって戦えないように階下へ落としてバラけさせた」

春香「じゃあ、あずささんと真以外の他のみんなも、もう親衛隊と戦っているんでしょうか?」

律子「今はまだ遭遇してない子もいるかもしれないけど、いずれ戦うことになるでしょうね」

律子「一応言っておくけど、他のみんなを助けに戻るっていう選択肢もあるわ」

律子「一対一よりは複数で当たった方が有利に戦えるでしょうし」

春香「……いえ、それでもやっぱり私たちのやることは変わりません」

春香「ただまっすぐに小鳥さんのところへ進むだけです!」

千早「ここまで来て今さら迷っても仕方がないものね」

美希「ミキも、今から戻るのはどうかと思うな。だって小鳥とハニーが待ってるんだもん!」

貴音「進みましょう、律子嬢」


律子(たとえ自分ひとりになっても先に進む覚悟はあるか……)

律子(なんて、今のこの子たちには愚問ね、きっと)


律子「……いい? 何がなんでも小鳥さんのところへ辿り着くわよ!」


四人「……はいっ!!!」



470: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:14:26.01 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B4F 外側 ー


真美「う~む……」


真美「真美は今、高性能な真美レーダーによって、発見! おいしそうな宝箱 じゅるるんっ したわけなんだケド……」



魔物1「………」ウロウロ

魔物2「………」ウロウロ

魔物3「………」ウロウロ



真美「魔物が守ってるっぽいね」

真美「さすがレアアイテム、カンタンにはもらえないかぁ」

真美「ここは真美のチョー必殺技で一気に蹴散らしちゃうか……」

真美「でも、なるべくMPはオンゾンしておきたいし……」

真美「魔法を使わずに、みんなと違ってか弱い乙女の真美がいかにこのジョーキョーを突破するか」

真美「さて、どうしたもんかねぇ」

真美「………」

真美「………」

真美「………」

真美「………」

真美「手段がなくはないんだよねぇ……」

真美「なくはない……けど」

真美「気が進まないなぁ……」

真美「………」

真美「……ちかたない、レア武器、ひいてはかわいい妹のためだもん」

真美「真美、やるよ!」

真美「…………よしっ」


471: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:17:36.81 ID:qM3Qz1F6O

真美「はいちゅうもーく!!」パンパン



魔物たち「!?」ビクッ



真美「ちょっとそこの宝箱の中身がほしいんだけど、いいかな?」



魔物1「ガアア!」

魔物2「グルル!」

魔物3「ゴアア!」



真美「うんうん、いい面構えだ。やはり私の目にくるいはなかったようだ」



魔物1「ガアアアッ!」ガバッ


真美「……とか言ってたらきたー!」


真美「こっちだよっ!」ダッ

タタタタ…


魔物2「グルルルッ!」ブンッ


真美「……おっと!」ヒョイッ


真美「たあああ!」タタタタ


魔物3「ゴアアアッ!」ブンッ


真美「なんのっ!」ヒョイッ


真美「……奪取!」

ガパッ


真美「おー、あったあった」スッ

真美「じゃじゃーん! 真美はレア武器を手に入れた!」


472: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:20:48.86 ID:qM3Qz1F6O

真美「さて……」チラッ



魔物1「ガアア……!」

魔物2「グルル……!」

魔物3「ゴアア……!」



真美(囲まれちゃった……)


真美「だがしかし、真美にはとっておきの切り札があるんだもんね!」

真美(ホンキで使いたくない切り札がね)


真美「くらえーー!!」






















真美「うえ~~ん! 魔物がいぢめるよ~~!」グスン



魔物たち「!!?」



473: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:23:21.18 ID:qM3Qz1F6O
真美「うわぁ~ん! 真美、まだなんも悪いことしてないのに~!」チラッ



魔物たち「……!」オロオロ



真美「ぐすっ……魔物なんかひびきんのカドに頭ぶつけてゴーヤになっちゃえばいいんだぁ~!」ソロ~リ



魔物たち「………」ズーン



真美「そんでゴーヤチャンプルーとしておいしくいただかれちゃえばいいんだぁ~!」ソロ~リ



魔物たち「………」ズズズーン



真美「………」


真美「ってわけで、バイバイキーン!」

タタタタ…





真美「……ふぅ、ここまで来ればもうへーきかな」

真美「あーはずかしかった……///」

真美「誰が見てるわけでもないけど、何回やってもなれないね、『うそなき』は」

真美(もう使わないよーにしとこ。このままじゃ真美のMPじゃなくてSP(羞恥ポイント)がカラになっちゃうYo……)


真美「お待ちかねのレア武器も手に入ったことだし、先へ進むよ!」


真美「とつげきぃ~!」

タタタタ…



474: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:28:41.10 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B5F ー


響「えーっと……」キョロキョロ


響「ダメだ、この部屋にも下り階段はないみたいだ」

響「まだまだ他にたくさん部屋はあったし、地道に探すしかないかー」


…カチッ


響「…………ん? なんか踏んだ?」


ビーーッ!! ビーーッ!!


響「うぇっ!?」ビクッ

響「な、なになにこの音? なんなのさいったい!?」キョロキョロ



「……うふふっ、ようこそいらっしゃいました!」



響「えっ?」クルッ



プリンプリンセス「お会いできて光栄ですわ、あいどるさん!」


響「な……なんだこのなんともいえない物体は」


プリンプリンセス「まあ、ご挨拶ですわね」

プリンプリンセス「私はプリンプリンセス。コトリ様の親衛隊の一員にございます」


響「あ、そうだったんだ」


プリンプリンセス「残念ですが、貴女の足止めをさせて頂きますわっ!」


響(うーん……なんか迫力ないなぁ)


475: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:30:53.95 ID:qM3Qz1F6O

プリンプリンセス「もしかして私を見くびっていらっしゃるのかしら? もしそうだとしたら考えを改めた方がよろしくてよ?」


響「あ、うん」

響(どう見ても強そうに見えないぞ。もしかしてハズレか?)



響「ま、自分もヒマってわけじゃないし、ジャマするっていうなら……」

ビュンッ…


プリンプリンセス「は、速い!」


響「悪いけど、速攻で終わらせるぞ」


プリンプリンセス「い、いつの間に背後に!?」


響「……っせい!!」ブンッ


…ポヨンッ


プリンプリンセス「あら? 今、何かしましたか?」


響「えっ、真直伝の正拳突きが効かない……!?」


プリンプリンセス「うふふっ、私に物理攻撃は効かなくてよ?」


…スタッ

響「……なるほど、ただのキモい物体ってわけじゃないんだな」


プリンプリンセス「見たところ貴女は魔道士ではないようですわね。さあ、どうするおつもりですの?」


響「確かに自分は魔法なんか使えない。でも残念だったな、プリ江」


プリンプリンセス「ぷ、プリ江!?」


響「自分、つい昨日すごい技を覚えたばっかりなんだぞ!」

響「さ、覚悟はいいか?」キュイィィン


プリンプリンセス「手が、光って……?」


響「くらえっ、ナンクル砲っ!!」バッ


…ドゴオオオオォォォオオンッ!!



476: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:34:19.69 ID:qM3Qz1F6O

プリンプリンセス「な……なんですの、その身も蓋もない技は……」フラッ

プリンプリンセス「無念……ですわ……!」


…ドサッ



響「なーんだ、やっぱり見た目通り弱かったなー」

響「いや、もしかして自分が強くなりすぎたのかもな! なんたって自分、完璧だからな!」

響「よーし、この調子で親衛隊をどんどんやっつけるぞー!」



…カチッ



響「あっ、またなんか踏んだ」


ビーーッ!! ビーーッ!!


響「! また警報みたいな音だ!」

響「いったいどこで鳴ってるんだ……?」キョロキョロ



プリンプリンセスたち「うふふふふふ……」

ワラワラ…



響「………………えっ」



プリンプリンセスたち「さあ、私たちと一緒に踊りましょう!!!」



響「なんかたくさんいるけど……もしかしてこれ、自分ひとりで全部倒すのか?」



477: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:38:07.87 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ザクッ ザクッ

雪歩「……ふぅ」

雪歩「ククロさんに鍛えてもらったスコップでもけっこうしんどいなぁ」

雪歩「やっぱりここの地層は相当硬いんだね」

雪歩「でも、頑張らなきゃ!」グッ

ザクッ ザクッ



「……おーーい!!」



雪歩「ふぇっ!?」ビクッ



「ダメじゃないか、こんなところに穴なんて掘ったら」

…グイッ



雪歩「ひゃうっ!?」


…ドサッ



魔人兵「まったく……。こんな穴なんて掘ったら危ないだろう?」


雪歩(ま、魔物さんに引っ張り上げられちゃいましたぁ……)


魔人兵「君はどこの所属の兵器だい?」


雪歩「えっ……」

雪歩(へ、兵器……?)


魔人兵「今はあいどるたちが攻めて来てるからみんなピリピリしているんだ。こんな穴なんて空けたら他の魔物が落ちてしまうかもしれないだろう?」


雪歩「あの、えっと……」


雪歩(……あ、そっか。私、今はこんな格好してるから、きっと魔物さんと間違えられちゃったんだね)

雪歩(このまま何も言わなければ、戦わないで済みそう……かな)


478: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:41:09.54 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「さ、君も早く持ち場へ戻って」


雪歩「………」

雪歩(…………違う)


魔人兵「おや、どうしたんだ?」


雪歩「……そんなの、ダメですぅ」


魔人兵「え? 何がダメなんだい?」


雪歩「みんなが戦ってるのに、私だけ逃げるのは……イヤですぅっ!」チャキッ


魔人兵「……まさか、君……」


雪歩「こ、こここここを、通してくださいませんか?」ビクビク


魔人兵「……驚いた。君みたいなあいどるもいたんだね」

魔人兵「なんだか親近感の湧く姿なんだけど、仕方ない」

…ガコンッ!

魔人兵「……敵なら、排除させてもらうよ」


雪歩「ひぅっ!」


魔人兵「……発射!」

ビュイイイインッ!!


雪歩「ひぃぃーー!!」


ドゴオオオオンッ!!



479: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:44:15.23 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「……さて、ビームじゃ大したダメージにはならないと思うけど」

魔人兵「どうかな……」



モクモク…



雪歩「……うぅ……」



魔人兵「……おや?」


雪歩「す、すみません、全然効かないですぅ」


魔人兵「……無傷、か。相当いい装甲を付けているみたいだね」

魔人兵「だが、オレの武器はビーム砲だけじゃない。君のその堅牢な守りを崩していみせようじゃないか」

ウィーン…ガシャン!


雪歩「っ……!」チャキッ


魔人兵(……武器を構えた? 随分頼りなさそうな武器だけど、いったいどんな武器なんだろう)

魔人兵「……発射!」

チュドドドドッ!!


ヒューー…

ドドドドドドッ!!



480: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:45:58.49 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「よし、今度こそダメージがあっただろう」



モクモク…



魔人兵「……って、いない……?」キョロキョロ



ズズ…


…ザバァッ!


魔人兵「!」

魔人兵(いつの間に地中に……!)


雪歩「えいっ!」ブンッ

ガキィン!!


雪歩「うう……か、硬い……!」


魔人兵「なんだ、ただ殴打するだけの原始的な武器か。そんな武器じゃオレに傷一つ付けられないよ?」

魔人兵「……それっ!」ブンッ

ドゴォ!!


雪歩「あぅ……!」ヨロッ


雪歩「……い、痛くないですぅ!」ザッ


魔人兵「ふむ……」


魔人兵(この子……)


雪歩(この魔物さん……)


雪歩・魔人兵(とにかく硬い……!)



魔人兵「どうやらこの戦いは、どちらが相手の装甲を破ることができるかの争いになりそうだね」


雪歩「ま……負けませんですぅっ!」グッ




481: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:50:26.59 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B4F 内部 ー


亜美「……ふーむ、扉がいっぱいあるね」

亜美「でも、確かこの階にアイテムがあるのはこの辺りじゃなかった気がするんだよねー」

亜美「もっと奥の方かな?」

スタスタ…



亜美「…………うん?」ピタッ

亜美「なんだろアレ。いっこだけメッチャゴージャスに飾りつけられた扉がある……」

タタタタ…



亜美「えっと……『あいどる御一行様歓迎! 宴会場はこちら。ご馳走あります』って書いてあるね」

亜美「……明らかにおかしいっしょコレ。亜美たちがカンゲイされてるワケないじゃん」

亜美「ゼッタイ魔物だよね、これ書いたの。あからさまなワナすぎるよ」

亜美「いくら亜美だってこんな子どもだましには引っかかんないんだかんねっ」

亜美「さーて、レアアイテムレアアイテムっと……」

スタスタ…




…ピタ

亜美(…………んでも、宴会ってぱーちーだよね)

亜美(ごちそーってことは、おいしい料理とかお菓子とか出てくるのかなぁ)

亜美(お菓子かぁ……)

亜美(よく考えたら亜美たち、この世界に来てからずっとお菓子食べてないよね)

亜美「………」

亜美「………」

亜美「………」

亜美「………………ゴクリ」

亜美「ちょっとだけ、チラッと中をのぞくだけならヘーキかな?」


482: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:53:57.63 ID:qM3Qz1F6O

天使亜美『なに言ってんのさー。さっき自分でワナって言ってたじゃん! みすみす自分からワナにはまりに行くとかあり得ないっしょ!』

悪魔亜美『いやいや~、先っちょだけならだいじょーぶかもよ? サッと行ってお菓子だけ取ってくればいーじゃん』

天使亜美『だーかーらー、ワナなんだからお菓子なんかあるワケないっしょ?』

悪魔亜美『……ホントだったらどーすんの?』

天使亜美『えっ……』

悪魔亜美『お菓子、ホントにあったらどーする? 可能性はゼロじゃないよね?』

天使亜美『し、しかしですな……』

悪魔亜美『せっかくのチャンスをのがすのですかな? 甘ーいお菓子、食べたくないの?』

天使亜美『……ゴクリ』

悪魔亜美『さあさあ』

天使亜美『………』

悪魔亜美『殿、ご決断を!』

天使亜美『…………ええい、お菓子に罪はない! 皆の者、出陣じゃあ!』

悪魔亜美『んっふっふ~♪ お主、分かっておるのう!』



亜美「………」

亜美(……今、全亜美会議で可決されちゃったね)

亜美「いざ行かん! 甘ーいお菓子を求めて!」


…ガチャ



483: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:57:17.81 ID:qM3Qz1F6O


金竜「…………馬鹿め、掛かりおったな!」



亜美「うあうあー! やっぱりワナだったー!」


金竜「食らえい!」

ビュンッ!!


亜美「おわあっ!?」ダッ


銀竜「破っ!」

ビュンッ!!

ドガッ!!


亜美「ぎゃんっ!」


ドサッ



銀竜「……本当にこの様な罠に掛かるとは、あいどるとは意外と阿呆なのだな」


亜美「うぅ……ヒドいよ! ひきょーものー!」


金竜「戦いとは常に非情なものである!」

銀竜「いや、兄者よ。先刻の戦いで騙された仕返しをしただけではないのか?」

金竜「こ、こら銀竜、その事をバラすでないっ!」アセアセ


亜美「あー、金ぴょん、あのことまだ根にもってたんだねー」


銀竜「兄者は単純だからな。すぐに騙されてしまうのだ」

金竜「ともかく、これで借りは返したぞ」


亜美「うん、わかったー」


金竜「……それでは、ここからは本物の宴を始めるとするか」ゴゴゴ


亜美「!」


銀竜「こんな幼子相手に二人がかりとは気が引けるが、お前の実力は既に知ってる」

銀竜「手加減はせぬぞっ!」ゴゴゴ 


484: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/15(土) 23:59:37.32 ID:qM3Qz1F6O

亜美「……ふーん、そっか」ザッ

亜美「金ぴょんも銀ぴょんも、そんなに亜美にやられたいんだねー……」

亜美「いいよ、やろっか」

亜美「コーカイさせてあげるよ、亜美にケンカ売ったコト!」バッ


金竜「あいどる、滅してくれる!」ボゥ

金竜「稲妻よ!」

ズガガピシャァァン!!


亜美「うわっ!」ヒョイッ


銀竜「ふんっ!」

ビュンッ!!

バシィン!!

亜美「ぐえっ!」ヨロッ



銀竜「……どうした、あいどるよ」

金竜「貴様の力、見せてみよ!」



亜美「……ちかたないなぁ」ザッ

亜美「右手にファイガ……」ボッ

亜美「左手にファイガ……」ボッ


銀竜「……来たな!」

金竜「その技は既に対策済みだ! 行くぞ銀竜!」

銀竜「応!」

スゥゥーー…


金竜「例え魔法を複数放とうと、距離を取れば直線軌道の魔法など避けることは容易い!」


亜美「……誰が直線軌道なんて言ったのさ?」ニヤリ


金竜「えっ」


亜美「 合 体 !!」

ボウッ!!


亜美「メッされるのは金ぴょんたちの方だよ!」

亜美「……鳳凰の羽ばたきひとつでねっ!」


銀竜「な、なんだこれは……!? 炎が鳥の形を成しているだと……!?」



亜美「くらえぃ! 鳳翼天翔ーーーーッ!!」



ゴオオオオォォオオッ!!



485: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:11:58.04 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


スタスタ…

美希「ねえ、ミキ考えたんだけど」

律子「何を?」

美希「律子…さん、さっき『ひと階層ごとに魔物がいる』って言ったよね?」

律子「ええ。だからきっとこの階にも魔物がいると思うわ」

美希「ここが地下8階でしょ? だから、あと9、10、11……小鳥のところに着くまでに4体の魔物を倒せばいいってことだよね?」

律子「そうだけど、それがどうかしたの?」

美希「残りの魔物が4体でミキたちは5人いるから、ひとりずつ魔物の相手をしていけば、誰かひとりは小鳥のところまで行けるの!」

春香「確かに……美希の言う通りだね」

千早「それに、時間効率を考えるといい方法にも思えるわね」

貴音「………」

律子「本音を言えば、小鳥さんと戦うのはみんな揃ってからにしたい。でも、今の状況じゃそうも言っていられないかもしれないわね」



「……きほーんてきにはいっぽんぎーだけっど♪」

「ときとばあいでうっつっりーぎなっの
♪」



…ピタッ

律子「…………歌?」

春香「ねえ、今聴こえた歌って……」

美希「うん。『わたしはアイドル』なの」

律子「ってことは、他にもこの階に落ちてきた子がいるのかしら」

貴音「いえ、そうではないと思います」

千早「今の、ウチの誰とも違う声だったわ」

春香「じゃあ、いったい誰が歌ってるんだろう?」

美希「そんなの、魔物しかいないの」

律子「そりゃ、私たちじゃなかったら魔物でしょうけど」

律子「でも、なんで魔物がウチの歌を?」

貴音「小鳥嬢が教えた以外に考えられませんね」

貴音「何故彼女が魔物に歌を教えたのか、その理由は定かではありませんが」

律子「何か意図があるのかしら」

美希「小鳥、プロデューサーになりたかったのかな?」

律子「うーん……」

千早「………」

春香「……千早ちゃん、どうかしたの?」

千早「……もしかしたら私、さっきの歌声の主を知っているかもしれない」

春香「えっ?」

千早「行きましょうみんな。行けば分かるわ、きっと」

律子「……そうね。議論するよりも実際に見た方が早そう」

貴音「この地下8階からは最下層までほぼ一本道です。迷うこともないでしょう」

スタスタ…



486: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:20:09.63 ID:YvXj+c6MO

月の女神「きっとわーたしがいちばんっ♪ でもあなーたーもそこそこかもっ♪」

月の女神「でもわったーしーとくーらべーるからっ♪ ちょっとぶ、がわーるいのよー♪」


千早(……やっぱりあの子だったのね)

春香「本当に魔物が歌ってる! しかも上手!」

律子「確かに、そこらへんの素人よりかは上手いかもね」

美希「でも、ミキたちの方がもっとかわいく歌えるよ?」

貴音「その前に、あいどるであるわたくしたちと魔物とを比べるのがそもそもの間違いだと思いますが」


月の女神「……待ってたよ、あいどるの人たち!」ニコッ


春香「わぁ……! なんか、魔物って思えないくらい可愛いなぁ」

律子「確かに、パッと見は魔物には見えないわね」

美希「ううん、そんなことないの。ミキたちの方がゼッタイかわいいの!」

貴音「あの、ですから魔物と張り合うのはどうかと……」

千早「………」


月の女神「一生懸命れっすんしたつもりなんだけど、やっぱり本物のあいどるの評価は厳しいなぁ……」


律子「一応訊いておくわ。ここを通してもらえないかしら?」


月の女神「えっとね、あなたは通っていいよ? あとリボンの人も。きっとおじさんが待ってると思うし」


律子「えっ、いいの? ダメもとで言っただけなのに」

春香「あの子、意外に平和主義なんでしょうかね?」

律子「こないだの戦いを見る限り、そうは思えないけど……」

律子「っていうかおじさんって誰?」

春香「さあ……?」


月の女神「あ、そうだ。そこの銀髪の人は、たぶん先生の相手の人だよね? だから早く行ってあげて?」


貴音「………」

貴音(先生、とはもしや……)


月の女神「そうだなぁ、私の相手は……」

月の女神「うん、やっぱりあなただね!」スッ


千早「………」

千早「……みんな、後で必ず追いつくわ」チャキッ

春香「千早ちゃんっ……!」

美希「千早さん……。千早さんなら、大丈夫だよね?」

千早「ええ、もちろんよ」



月の女神「へぇ、
自信たっぷりだねー。あれから腕を上げたのかな?」



千早「それは、あなた自身で確かめてみたら?」


487: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:22:51.87 ID:YvXj+c6MO

律子「千早……」

貴音「千早、何があるか分かりません。用心してください」

千早「はい」

美希「ミキたち、先に行って待ってるの。遅刻しちゃダメだよ?」

千早「ええ」

春香「千早ちゃん……」

春香「私、千早ちゃんのことが大好きだよっ!!」

千早「ええ、ありが……えっ?」

貴音「なんと……」

美希「いきなりの告白なの」

律子「春香、そういうフラグっぽいことをこのタイミングで言わないのっ!」

春香「あっ……そ、そういうつもりじゃなかったんですけど……」

春香「でも、なんだか今言わなきゃいけないような気がして」

千早「……///」カァァ

美希「……あーあ、さっきまでキリッとしててカッコいい千早さんだったのに、春香のせいでふにゃふにゃの千早さんになっちゃったの」

春香「ご、ごめんね千早ちゃん」

千早「あ、あの、私は別に気にしてないから……じゃなくて、とても気にしてて春香の気持ちはすごく嬉しい……でもなくて……」

千早(ああ……ダメ……。頬が緩む……///)



月の女神「私、知ってるよ。そういうふうに女の子同士でイチャイチャするのって『ゆり』っていうんだよね?」

月の女神「えへへ、コトリ様から教えてもらったんだー!」



貴音「……だ、そうですが」

律子「あの人は……魔物にまで余計な情報を……!」ゴゴゴ

律子「とにかく千早、ここは任せたわ」

千早「え、ええ」

律子「みんな、行くわよ! ほら、春香も!」グイッ

春香「千早ちゃ~ん! 離れててもずっと大好きだよ~~!!」ズルズル

律子「うるさいっ!」ビシッ




月の女神「……あなた、とっても愛されてるんだね?」



千早「そ……そうね」



488: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:27:19.62 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B9Fへの階段 ー


ザッ ザッ

春香「……えーっと、次が地下9階段でしたっけ?」

貴音「ええ。この地下渓谷も残すは四分の一ですね」

春香「そっか、もうそんなに来たんですね。……早いなぁ」

美希「四分の一……かぁ」

春香「美希? どうかしたの?」

美希「あは☆ 早く小鳥に会いたいのー!」

律子「呑気ねぇ……。その前に親衛隊をおそらくあと三体は倒さなきゃいけないのよ?」

貴音「………」

美希「……分かってるの。でも、もう終わっちゃうんだね」

春香「美希……」

春香「……よしっ。みんな、気合い入れて行こうっ!」グッ

律子「それはいいけど春香、あんまりはしゃぐと転ぶわよ?」

春香「えへへっ♪ 大丈夫ですよ!」

春香「こう見えて私、この世界へ来てからまだ83回しか転んでないんですよっ?」

律子「えっと……それってすごいの?」

美希「いまいちピンとこないの」

貴音「わたくしたちがこの世界へ来て二ヶ月ほど経ったと仮定すると、だいたい一日一回強……ですか」

貴音「あまり変わり映えのない数字に思えますが」

春香「うぅ……元の世界よりも一日平均0.2回くらい少ないのに……。みんなヒドい……」

春香「と、とにかく頑張るぞー!」ズルッ

春香「ってうあーーーー!!」ゴロゴロ


…どんがらがっしゃーん!!


律子「……あーあ、言わんこっちゃない」

貴音「注意を受けて即転ぶとは、最早職人の領域ですね」

律子「あの子の体幹ってどうなってるのかしら。ホント謎だわ」

美希「……ねえ、それより貴音?」

貴音「どうしました、美希」

美希「次の階ってあんなに真っ暗なの?」スッ

貴音「真っ暗……?」チラッ

貴音「……ふむ、確かに真っ暗ですね」

貴音「以前は暗闇に包まれた階などなかったはずですが……」

律子「……嫌な予感がするわ。春香を追いかけましょう」

ザッ ザッ


489: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:32:34.51 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


律子「何よこれ……? 本当に何も見えないじゃない!」キョロキョロ

美希「夜みたいに真っ暗だねー……。今までは普通に明るかったのに、なんで?」

貴音「親衛隊、とやらの仕業でしょうか」

律子「春香ーー!! どこーー!!」



「…………こ、ここにいますよ~」



律子「っていっても、こう真っ暗じゃ全然位置が分からないわね」

律子「声を頼りにそっちへ向かうから、そこを動かないのよー?」



「わ、わかりました~……」



スタスタ…





律子「……ふぅ、とりあえず無事で良かったわ」

春香「うぅ……面目ないです……」シュン

貴音「春香、どこか怪我は無いですか?」

春香「あ、ありがとうございます。でも平気ですっ」

律子「焦る気持ちも分かるけど、あなたはもう少し落ち着きなさい」

春香「はい……。足元には十分注意してるつもりだったんですけど、何かにつまづいちゃって」

律子「何かって、さっきの階段に何かが落ちてたの?」

春香「直接見てないから分かりませんけど、石か何かだと思います」

美希「それってもしかして、コレ?」スッ

春香「えーっと……ごめん美希。真っ暗でなんにも見えないや」

美希「あ、そっか」

美希「これ……ミキ、今石ころを持ってるんだけどね? 春香が転んだあとに落ちてたの」

律子「じゃあ、春香はそれにつまづいたのね」

律子「でも美希、なんで石ころなんか持ってきたのよ?」

美希「うん。見たことない石ころだったから持ってきたんだよ?」

美希「真っ黒でキレイで、アクセとかにしたらイイカンジかもって」

貴音「………」

貴音「……何やらその石からは面妖なえねるぎぃを感じます」

美希「え? そうなの?」

律子「貴音がそう言うなら、何か重要なアイテムだったりするのかしら」

貴音「わたくしでは判断出来ませんが、真美か亜美に見せれば何か分かるかもしれません」

美希「そっか。じゃあ、大事に持っていくことにするね?」ゴソゴソ

律子「春香のおかげで思わぬ収穫があったわね」

春香「うーん……素直に喜べないなぁ……」


490: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:37:57.07 ID:YvXj+c6MO

春香「……それにしても、本当にどこを見ても真っ暗ですねー」キョロキョロ

律子「困ったわね、まさかこんな罠を仕掛けてくるなんて……。これじゃ親衛隊がどこにいるか分からないわ」

貴音「ふぁいあを灯り代わりに進みますか?」

律子「うーん、でも、いくらファイアとはいえずっと出しっぱなしじゃかなり魔力を消費しちゃうでしょ? なるべく万全の状態で戦いに臨まないと」

律子「特に貴音、あなたの相手は相当強いんでしょう?」

貴音「……はい」

美希「ねえ、とりあえず進もうよ」

春香「進むっていっても、前どころか自分の足すら見えないのに、どうやって?」

美希「んー……カン、かな?」

スタスタ…


律子「あっ、ちょっと美希、一人で勝手に……」


美希「大丈夫なの。みんなミキの声について来て!」スタスタ


春香「やっぱりすごいなぁ、美希は。こんな場面でも相変わらずっていうか」

貴音「美希の勘ならば信頼出来ます。ここは言う通りにした方が良いのでは?」

律子「……仕方ない、十分気をつけて進みましょう」

スタスタ…


491: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:41:29.49 ID:YvXj+c6MO

美希「えーっと……」じーっ

美希「……こっち!」

スタスタ…



美希(……あと四分の一……)

美希(ホントに、もうすぐ終わっちゃうんだね)

美希(ミキ的には、みんなと過ごせてとっても楽しかったの。なんだか夢みたいで……)

美希(こんなステキな夢なら、まだ覚めなくてもいいかな、なんて……)



春香「……待って、美希」


美希「……春香? どうしたの? コワくなっちゃった?」

春香「うん、正直怖いけど……でもそうじゃなくって」

春香「手、つないで行こう? そうすればみんな離ればなれにならなくてすむでしょう?」

美希「あ……」

春香「……ね?」


492: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:44:28.86 ID:YvXj+c6MO

美希「………」

美希(春香は……)

春香「美希? どうしたの?」

美希(春香は、いつもミキの欲しい言葉をくれる)

春香「おーい、美希ってばー」

美希(いつもミキのしてほしいことをしてくれる)

美希「……うん、聞こえてるの。しょうがないから、つないであげてもいいよ?」

春香「えへへ、ありがとう、美希!」

美希「えっと、春香はここらへんにいるのかなー?」スッ

…ムニュッ

春香「ひゃあっ!? ちょ、ちょっと美希、どこ触ってるのよーう!!」モジモジ

美希「あは☆ ワザとなの」

春香「ワザとなの!?」



美希(……大好きだよ、春香。こちらこそいつもありがとうなの)



律子「……まったく、魔物がいつ襲ってくるかも分からない状況でよく騒げるわね、二人とも」

貴音「ふふっ、それもまた心強いことです」

春香「いや、今のは美希がヘンなとこ触るのがいけないんですよぅ……」



春香「……コホン。それじゃ、気をとりなおして……」


春香「……美希」スッ

美希「はいなの」ギュッ

美希「……貴音」スッ

貴音「ええ、ここに」ギュッ

貴音「……律子嬢」スッ

律子「はいはい」ギュッ

春香「……みんなちゃーんと手をつなぎましたね? それじゃ、改めて出発しましょう!」


493: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:48:12.78 ID:YvXj+c6MO

スタスタ…

春香「……なんか、こうしてみんなで手をつないでると、小学校とか幼稚園に戻った気がしますね!」

律子「もう、恥ずかしいからそういうことは言わないの」

貴音「しかし、互いの姿が見えぬ暗闇の中でも、こうしていれば不安な気持ちなど何処かへ行ってしまいます」

貴音「流石は春香ですね」ニコッ

春香「そ、そんなことないですよぅ」

美希「……ううん、貴音の言う通りなの」

美希「この手の温かさが、みんながここにいるんだってちゃーんと教えてくれるから」

春香「美希……」

春香「人の温もりって、偉大だよね……」


美希「……また、みんなで会えるよね?」

美希「みんなバラバラになっちゃったけど、また笑って会えるよね?」

春香「……うん、もちろんだよ!」ニコッ

美希「……えへへっ」ニコッ



ヒュゥゥ…



律子(……ん?)

貴音(風……?)



ヒュゥゥゥ…



貴音(……いえ、これは……)

美希(何かがミキたちの方に向かってきてる……!)


494: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:51:27.35 ID:YvXj+c6MO

美希「……シェルっ!」バッ

ポワ…

春香「えっ、な、何?」

律子「何か来るわ! みんな、衝撃に備えて!」



…ビュオオオオッ!!



春香「わああっ!?」ヨロッ

律子「春香っ!」

貴音「……ぶりざが」バッ


コオオォ…シャキィィンッ!!




貴音「………」

貴音「……逃げられてしまいましたか」

美希「でも貴音、惜しかったの」

律子「やっぱりこの暗闇でも私たちの位置は向こうに筒抜けなのね」

春香「そ、そうですね」

春香(魔物の攻撃だったんだね。全然分からなかったよ……)

春香(この三人、レベル高いよぉ……)



律子「この真っ暗闇の中、姿の見えない敵を相手に戦えっていうの……?」

美希「律子…さん、ここはミキがやるの」

律子「美希、でも……」

美希「さっきの子が言ってたよね。貴音も春香も律子…さんも、この先に待ってる相手がいるんでしょ?」

美希「だったら、ここはミキがやるしかないって思うな」

春香「美希……」

貴音「………」


496: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/16(日) 00:55:05.85 ID:YvXj+c6MO


…ビュオオオオッ!!



美希「! ……次の攻撃が来るの!」

美希「ミキが少しの間だけ辺りを照らすから、みんな走って!」

律子「分かったわ。……美希、気をつけて!」

美希「あはっ☆ ミキ、ホンキ出したらすごいんだよ?」

律子「……ええ、そうね!」ニコッ

貴音「美希、この階の魔物はおそらく魔道士です。魔力を吸い取る『あすぴる』という魔法には注意してください」

美希「魔力を吸い取る……? そういう魔法もあるんだね。わかった、気をつけるの」

春香「美希!」ギュッ

美希「春香、ありがとうなの。ミキ、春香にたくさん元気もらえたの!」

美希「春香のおかげで、ミキ、ガンバれるの!」ゴゴゴ



美希「……それじゃみんな、行くよ!」



美希「……ホーリー!!」バッ


キラキラキラ…


春香「……まぶしいっ!」

春香(……なんて言ってる場合じゃないよね! お姉ちゃんも貴音さんも視力はそんなに良くなかったはず)

春香(ここは私が道を見極めなきゃ!)

春香「えっと……」キョロキョロ


春香「…………見えた!」

春香「お姉ちゃん、貴音さん、こっちですっ!」

タタタタ…



美希「みんな……また後で会おうね……!」


500: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 19:54:51.71 ID:lU/e7KMhO

美希「………」



美希「………………さて、と」


美希「ねえ、そこにいるんでしょ?」



「………」



美希「ミキが相手になるの。だからもうエンリョしなくてもいーよ?」



「………」



美希「……もー、ムシしちゃヤなの。人の話を聞かないのはイケナイんだよ? 律子が言ってたもん」



「……君は、怖くないの?」



美希「……あは☆ やっとしゃべってくれたの」

美希「あのね? ミキ、今すっごい震えてるんだよ? 真っ暗だからわからないかもしれないけど」



「その言葉は信じられないな」

「君はこの暗闇の中でもただ一人行動に迷いが無かった。とても暗闇に怯えているようには見えない」



美希「……えっとね、ミキがコワいのは真っ暗だからじゃないよ?」

美希「ミキが本当にコワいと思ってるのはーー」


501: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 19:57:35.61 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B9F 階段 ー


ザッ ザッ

春香「……とうとう三人になっちゃいましたね」

律子「そうね。でも、ここまで来たらあとはもうとにかく突っ走るしかないわ」

貴音「ええ。……皆の為にも」

春香「そうですね!」グッ


貴音「……それより春香、気づいていましたか?」

春香「へっ? 何をですか?」

貴音「先ほどの美希の手、僅かに震えていました」

春香「………」

律子「美希の手が?」 

貴音「はい、四人で手を繋いだ時の事です。真っ暗でしたので表情までは分かりませんでしたが」

律子「うーん……でも、あの子に限って今さら怖気づいたってことはないでしょう?」

貴音「ええ、先ほどの美希の行動を鑑みるに、それはあり得ないと思います。戦いを恐れている者があの様に積極的に動けるとは思えません」

律子「じゃあ、美希はいったい何に怯えてるっていうの?」

春香「………」


502: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:00:29.00 ID:lU/e7KMhO

春香「……美希が怖いと思っているのは、みんなに会えなくなる事なんじゃないかって思います」

律子「えっ?」

春香「このゲームが終わって元の世界へ帰ったら、私たちには忙しい日々が待ってますよね?」

春香「そうなるとまたみんなすれ違いの生活が始まって、今みたいに全員が一度に揃う事は難しくなってくる……」

春香「もしかしたら美希は、それを不安に思ったんじゃないかなって」

貴音「……なるほど、この世界での楽しかった記憶が美希の心に迷いを生じさせていると?」

春香「はい……」

春香「でもその気持ちは、私も少なからず持ってます」

春香「もしかしたら他のみんなも……貴音さんやお姉ちゃんもそういう風に思ったことがあるんじゃないですか?」

貴音「………」

律子「………」



律子「……でも、だからっていつまでも元の世界に帰らないわけにはいかないわ。あの子だってそれは分かっているはずよ?」


『……ミキ、春香にたくさん元気もらえたの!』


春香「………」

春香「……きっと大丈夫だと思います、美希なら」

春香「あの子は多分もう、自分で答えを見つけているから」

貴音「………」

律子「………」



律子「……ま、例え美希が駄々をこねたとしても首に縄付けてでも連れ帰るけどね」ニコッ

春香「あ、あはは……」

貴音「ふふっ、美希の膨れた顔が目に浮かぶようです」ニコッ

律子「……さて、進みましょう。早いところ最下層で化け物退治しないといけないし」

春香「お、お姉ちゃん……そんなこと言ったら小鳥さん、泣いちゃいますよ?」


スタスタ…




503: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:03:56.36 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


美希(夢の世界はいつだってミキに優しいけど、いつまでも夢の中にばっかりいられないの)

美希(現実に戻ったらまたみんなとなかなか会えなくなっちゃうかもしれないけど、それでもみんなで目指したい、叶えたい夢があるから)


美希(だから、ミキはーー)



美希「……ゴメンなさいなの」

美希「ミキ、あなたのこと、倒すね?」



「……やっぱり思った通りだ」

「君はボクの一番嫌いなタイプ。才能に恵まれていて、大抵の事は苦労せずに出来てしまう」

「だからなんでも出来る自分に自信を持っているし、限られた事しか出来ない自分以外をどこか見下している」

「それは君の言動や行動によく顕れているよ」



美希「えー? ミキ、そんなにヤな子じゃないよ?」



「……教えてあげる。君という天才でも太刀打ちできないものがあるってことを」ゴゴゴ



美希「君じゃなくてミキなの」



「……えっ」



美希「ミキの名前は星井美希。ちゃーんと覚えてね?」



「ミキ……か。ボクは暗黒魔道士。名前の通り、暗闇でその真価を発揮する」

暗黒魔道士「ミキ。光の射さないこの闇の中で、君は満足に戦えるかい?」



美希「……わかんない。けど、ミキ、ガンバるの」

美希「みんなとの約束だから!」ゴゴゴ



504: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:09:14.64 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


…ビュンッ!!

ガキィン!!

リルマーダー「……っとお!」

リルマーダー「へへ、軽いぜっ!」ブンッ

伊織「ちっ……!」ダッ


…スタッ

伊織「………」チャキッ



リルマーダー「オイラはリルマーダー。泣く子も黙るゴブリン族の王だ! 誰もオイラに勝てやしねえ!」


伊織「王……? アンタが?」


リルマーダー「なあなあ、お前はなんて名前なんだ? せっかくだから殺す前に名前くらい覚えておいてやるよ!」


伊織「……ふん、アンタなんかに名乗る名前はないわ」

伊織「だって……」ユラ…

…ビュンッ!


リルマーダー「!」


伊織「アンタはすぐにこの私にやられる事になるものねっ」チャキッ

リルマーダー(……こいつ、一瞬で距離を詰めて来やがった!)

伊織「はあっ!」ブンッ

ザシュッ!!

リルマーダー「ぐっ……!」ヨロッ

伊織「……ふっ!」ブンッ

リルマーダー「うおっと!」ヒョイッ

伊織「!」

伊織(二撃目は躱された……。まあまあやるようね)


伊織「なら、これはどうかしら?」ボゥッ


伊織「……火遁っ!!」バッ

ゴオオオオォォォオオ!!


リルマーダー「そんなのオイラにゃ効かねえぜっ!!」タタタ


リルマーダー「そりゃっ!!」ブンッ


伊織「!」


ザシュッ!!


伊織「……ち……!」ザッ


505: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:12:43.30 ID:lU/e7KMhO

リルマーダー「お前、人間にしてはなかなかやるじゃねーか。オイラに傷をつけるなんてよ」

リルマーダー「けど、お前の攻撃は速さはあるみたいだけどパワーが足りないぞ? 一撃が軽いぜっ!」


伊織「………」

伊織「……そう。だったら受け止めてみなさい」スチャ


リルマーダー(刀を収めた……? 何をするつもりだ?)


伊織「………」ジリッ


リルマーダー(さっきみたいに忍術を使うつもりか?)


リルマーダー「……ま、いいや。来ないんだったらこっちから行ってやるっ!」ダッ


伊織「っ!」ピクッ


リルマーダー「食らえー!! サンダ……」


リルマーダー「……がふっ!?」ヨロッ


リルマーダー「ぐっ……な、なんで……? 今、何をしたんだ……?」


伊織「別に、普通に刀を振っただけよ?」


リルマーダー「ウソつけ! 今、お前動いてなかっただろ!」ビシッ


伊織「……ああ、アンタには見えてなかったのね。私の太刀が」

伊織「にひひっ♪ ちょっと速すぎちゃったかしら?」


リルマーダー(こいつ……!)


伊織「アンタを見てると、なぜかイラッとするのよね」


リルマーダー「………」

リルマーダー「……そうかよ。だったら……」



リルマーダー「全力で殺してやるよ、王の力でな……!」ゴゴゴ



伊織「………」チャキッ



506: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:16:11.07 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


ブルードラゴン「……さあ、答えを述べよ、小さき召喚士よ」ブォンッ


ブオオッ…!


やよい「はわわっ!」ダッ

ゴロン


ドゴオオンッ!!


やよい「わわ……じめんにあながあいちゃってますー!」


ブルードラゴン「……ふんっ!」ブォンッ


ドガアッ!!


やよい「あぅ……!」ヨロッ

やよい「っ……いふりとさんっ!」バッ


イフリート「……ぬおおおおっ!! 地獄の火炎んんうううっ!!」


ゴオオオオォォォオオ!!


ブルードラゴン「……炎などワシには効かぬ」


やよい「……らむさんっ!」バッ


ラムウ「……裁きの雷!」


ズガガガガドゴオオオオンッ!!


ブルードラゴン「……無駄じゃ、召喚士よ。お前の攻撃はワシには通じぬ」

ブルードラゴン「ふぬっ!」ブンッ


バキィッ!!


やよい「うあっ……!」

…ドサッ

やよい「……うぅ……いたいです……」ヨロッ


507: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:19:35.33 ID:lU/e7KMhO

ブルードラゴン「そうじゃ。生に痛みはつきもの。生きている限り様々な苦しみに耐えなければならない」

ブルードラゴン「生きる苦しみ全てから開放するのは……」



ブルードラゴン「……………死、だ」



やよい「!」


ブルードラゴン「痛み、悩み、悲しみ、苦しみ……。あらゆる苦痛からの開放とは、即ち死ぬことなのじゃ」

ブルードラゴン「そう、真の安らぎとは、『死』」

ブルードラゴン「召喚士よ。お前はワシに安らぎをもたらす者か?」


やよい「あぅ……あ、あの、それってつまり……」


ブルードラゴン「……むんっ」ブンッ


やよい「! ……しばさんっ!」バッ


シヴァ「……永久氷壁」


コオオォ……シャキーーンッ!!


バキッ!!


ブルードラゴン「氷の壁……ワシに攻撃が通じないと知って召喚獣を防御に使ったか」

ブルードラゴン「おもしろき娘じゃ」



ブルードラゴン「既に理解したと思うが、ワシの身体は属性を跳ね除ける」

ブルードラゴン「そのような呪われた身体ゆえ、ワシは長く生きすぎた。家族も友も、全てを失ってなお、苦痛にさらされ続けておる」

ブルードラゴン「もう、疲れたのじゃ」

ブルードラゴン「……さあ、お前の手でワシを永遠の眠りへ就かせておくれ」


やよい「そ、そんなっ……!」


ブルードラゴン「……それが出来ぬと言うのならば、お前に用は無い」

ブルードラゴン「ワシがお前に永遠の安らぎを与えてやろう」ゴゴゴ


やよい「うぅ……」


やよい(ころすのも死んじゃうのもいやです……)

やよい(みんなでもとの世界にかえるって、やくそくしたもんっ)

やよい(でも、あのどらごんさんはころしてほしいって……)

やよい(……ど、どうしよう……!)

やよい(…………)


508: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:26:49.46 ID:lU/e7KMhO

ブルードラゴン「ワシを殺すか、それともワシに殺されるか。お前の選択肢は二つに一つじゃ」

ブルー「……いや、お前の召喚魔法がワシに通じぬ限り、お前に死を逃れる術は無い」


やよい「………」

やよい「……っ!」グッ


やよい「うー……!」ゴゴゴ


ブルードラゴン「無駄と知っても抗うか……」

ブルードラゴン「悲しきことじゃ」ブンッ



やよい(火もかみなりもだめなら……)



やよい「うっうーーーー!!」バッ



…ガシッ!!



ブルードラゴン「……ぬ?」



冬馬「……高槻をいじめる奴は、俺が許さねぇ……!」ゴゴゴ



ブルードラゴン「!」



冬馬「くらいやがれ! 超究武神破斬ッッ!!」

ドゴゴゴゴゴゴッ!!



北斗「……例によって今回もただ殴ってるだけだな」

翔太「あれ? 冬馬君ってドラクエ派じゃなかったっけ?」


509: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:29:56.27 ID:lU/e7KMhO

冬馬「見たか化け物! 俺たちがついてる限り高槻は無敵だぜっ!」ビシッ


北斗「やよいちゃん、回復してあげるよ。……ケアルダ!」

シャララーン! キラキラキラ…!


やよい「ありがとうございますっ!」



ブルードラゴン「……ぬぅ……無属性の召喚魔法か……。今のは効いたわ……」

ブルードラゴン「生に対する執着、これも生きものの性か……」


やよい「……あのっ!」

やよい「わたし、ころすのも死んじゃうのもりょうほういやですっ!」

やよい「それに、死んだら楽になるっていう考え方もなんかちがうと思います!」


ブルードラゴン「……お前は知らぬのだ。何も出来ずに家族が死んでゆくのを見届ける辛さを。傷つき倒れた仲間に何もしてやれぬ無力さを」

ブルードラゴン「……自分だけが生き残る、虚しさを」


やよい「えっと……」

やよい「それは、どらごんさんの言うとおりだと思います」

やよい「わたしの家族はまだまだ元気だし、仲間……みなさんもすごくやさしいですし……」



やよい「……でも!」

やよい「安らぎが死ぬことっていうのは、なんかちがうと思いますっ!」

やよい「安らぎって、もっともっと身近にあるものなんじゃないかなーって!」


ブルードラゴン「……ならば示してみせよ。お前の言う安らぎを……!」ゴゴゴ


やよい「はいっ、がんばりますっ!!」グッ



510: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:39:27.72 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


…キィン!! ガキィン!!

バキッ!! ドガッ!!

ブワッ…



…スタッ

千早「………」


月の女神「……へぇ、さっきの言葉はウソじゃなかったんだね?」

月の女神「あなた、こないだ戦った時よりいい動きしてるよ!」


千早(確かに、身体が軽い……)

千早(不思議ね、何をしたっていうわけではないのに)

千早(私、いつもよりもリラックスしてる……)

千早(別れ際の春香の告白騒動があったからかしら)

千早(……春香には感謝しなきゃいけないわね)



千早「私は、みんなとの約束を果たさなければならない」

千早「……あなたを倒して、先へ進ませてもらうわ」チャキッ


月の女神「……じゃあ、私は……」



月の女神「教えてもらうよ。あいどるってなんなのかを!」チャキッ



千早「!」


511: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:41:45.44 ID:lU/e7KMhO

月の女神「……はあっ!」ダッ


ガキィン!!


千早「くっ……!」ググッ

千早(相変わらずの腕力ね……。今にも押し返されそう)

千早(それに……)


月の女神「はっ!」タンッ

クルンッ

月の女神「……えいっ!」ブンッ


ザシュッ!!


千早「うっ……!」ヨロッ


月の女神「やっ!」ブンッ


キィンッ!!


千早「く……!」ギリッ


千早(なんて軽やかな動き……。まるで踊るような……)



月の女神「私は、あいどるになりたい」

月の女神「あいどるはキラキラ輝いていてとても楽しいものだって、コトリ様に教えてもらったから」

月の女神「……だから、あなたを倒して私があいどるになるッ!!」


千早「………」

千早(これも音無さんの作戦か何かなのかしら)

千早(魔物がアイドルになりたいだなんて……)

千早(……ううん、多分、人間も魔物も関係ない)

千早(何かに対して憧れる気持ちは、きっとみんなが持っているもの)

千早(でも、だからってこの子に付き合う必要はない。私には果たさなければならない約束があるのだから)


千早「悪いけど、あなたの願望には興味はない。無理やりにでも道を開けてもらうわ!」チャキッ


月の女神「えへっ、たくさん遊ぼう!!」チャキッ



512: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:47:36.19 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


春香「……これは……!」ゾクッ


ビリッ…


春香(空気が震えてる……)

春香(この階全体にまんべんなく張り巡らされた殺気……)

春香(まるで、私たちを誘ってるみたい……)


春香「お姉ちゃん……」

律子「ええ……ものすごいわね、これは」

律子「さっきの階とは真逆ね。完全に私たちを挑発してるわ」

律子「……いえ、私たちじゃなくて……」チラッ

律子「この闘気の主は、貴音、あなたを待っているのね」

貴音「………」



春香「貴音さん……」

貴音「……覚悟は出来ております」

貴音「ですから、どうかわたくしの事は心配なさらずに」

春香「………」

春香「……それでも」ギュッ

貴音「春香……?」

春香「貴音さんがどんな想いで戦うのか、私には想像もつきません」

春香「だから、せめて……」

春香「私のパワーを貴音さんに分けてあげます。使ってくださいっ!」ギュッ

貴音「………」

春香「………」

貴音「………」

春香「………」

貴音「………」

貴音「……あの」

春香「あ、えっと、私……」


513: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:50:40.54 ID:lU/e7KMhO

春香「こうして手を握れば、少しでも力を分けてあげられるかなー、なんて……」

春香「あ、あはは……。こんなの、気休めにもなりませんよね……」シュン

貴音「……いえ、ありがとうございます」

貴音「春香、あなたのぱわぁ、確かに貰い受けました」ニコッ

春香「貴音さん!」パァァ

律子「……そういう事なら、私のパワーもあなたに分けてあげなきゃね」ギュッ

貴音「律子嬢……」

律子「この殺気、ここまで出会ったどの魔物よりも確実に格上だわ」

律子「こんな時になんて言葉をかけたらいいのか分からないけど……」

律子「貴音、自分を信じて。あなたならきっと……」

貴音「………」



貴音「わたくしは本当に幸せ者です。こうして一生懸命わたくしの事を想ってくれる友がいるのですから」ニコッ



春香「貴音さん……!」

律子「……しっかりね、貴音!」



「…………よくぞここまで辿り着いた」



三人「!!」


514: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:53:19.47 ID:lU/e7KMhO

…ザッ

ダークバハムート「光の戦士……いや、あいどるたちよ」



律子「あれが、バハムート……」

春香「貴音さんのお友達で……」

貴音「幻獣神……幻獣たちの頂点に立たれるお方です……!」



ダークバハムート「………」ゴゴゴ



貴音「律子嬢、春香、二人は先へ」

貴音「宜しいですね? ばはむーと殿」



ダークバハムート「無論だ。そこの二人にはこの先で試練が待っている」

ダークバハムート「行くがよい、娘たちよ」



春香「貴音さん……」

貴音「もう言葉は要りません。……さ、早く」

春香「……はいっ」コクリ

タタタタ…



…ピタッ

春香「あの、バハムートさん!」



ダークバハムート「……なんだ、娘よ」



春香「貴音さんのこと、よろしくお願いしますっ!」ペコリ

タタタタ…



ダークバハムート「ククッ……!」



515: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 20:59:21.68 ID:lU/e7KMhO

ダークバハムート「さて……漸く二人きりになる事ができたな、タカネよ」

ダークバハムート「会いたかったぞ……!」


貴音「ばはむーと殿……」

貴音(わたくしもずっとお会いしとうございました)

貴音(……ですが、同時にお会いするのが怖くもありました)


貴音「……お久しぶりでございます」ペコリ


ダークバハムート「うむ。お前が変わらず健在で安心したぞ」


貴音「ありがとうございます」

貴音「ばはむーと殿は……」


貴音(……黒き闘気を纏った体躯、おぞましい程鋭く伸びた爪や牙、闇夜の如き漆黒の翼……)

貴音(あの頃の光に満ち溢れた眼差しはもうありません)

貴音(……ばはむーと殿は、大きく変わられてしまったようです)


ダークバハムート「……そう怯えるな。久々の再会なのだ、もっと嬉しそうな顔を見せよ」


貴音「っ……そう、ですね」

貴音「あの、ばはむーと殿」


ダークバハムート「……なんだ?」


貴音「もう、戻られるおつもりはないのですか?」


ダークバハムート「……要領の得ぬ問いだな。それは、我の住処へ、か?」

ダークバハムート「それとも、光に、か?」


貴音「……その両方です」


ダークバハムート「タカネ。まさかお前程の者が理解出来ぬ訳ではなかろう?」

ダークバハムート「『こう』なってしまっては、我の力を以ってしてももはや以前の身体には戻れぬ」

ダークバハムート「それに、単なる眷族の為にわざわざ住処へ戻ってやる義理もない」

ダークバハムート「答えは両方とも否だ」


貴音「………」

貴音(やはり、取り返しのつかないところまで来ていたのですね)

貴音(……戦うしか道は無いのでしょう)


516: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/28(金) 21:02:09.27 ID:lU/e7KMhO

ダークバハムート「それよりも、我の言いつけ通り青き星から光の戦士たちを連れて来たようだな」

ダークバハムート「よくやった。褒めてつかわす」


貴音「……何故、ですか?」


ダークバハムート「む? ……何故、とはどういう事だ?」


貴音「闇へ堕ちたご自分がいずれ光の戦士に倒されると分かっていて、何故わたくしを褒めてくださるのですか?」

貴音「わたくしには、ばはむーと殿の真意は測りかねます」


ダークバハムート「……随分と自信があるようだな。この我を倒すのはあくまで前提、という事か」


貴音「! ……す、すみません、過ぎた事を……」


ダークバハムート「ククッ……良い。それ程の気概が無ければ我を倒してコトリの元へは行けぬ」

ダークバハムート「……否。お前をコトリの元へなど行かせぬ」ゴゴゴ


貴音「!」

貴音(なんと、おぞましい闘気……!)


ダークバハムート「お前は……永久に我のものになるのだ……!」

ゴオオオオッ!!


貴音(……戻ることなどできない)

貴音(散々後悔し、迷いもしましたが……)


貴音「わたくしは引きません、ばはむーと殿」スッ

貴音「貴方を倒し、その先の光を手に入れますっ……!」ゴゴゴ


ダークバハムート「……見せてみよ、お前の力!」



518: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:00:22.66 ID:kgLR5JNJO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



春香「……誰もいませんね」

律子「……そうね」


519: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:02:26.90 ID:kgLR5JNJO

スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



春香「……何も、起こりませんね」

律子「……そうね」


520: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:04:11.75 ID:kgLR5JNJO

スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



…ピタッ

春香「………………」



春香「……………………おかしい!」



521: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:13:49.15 ID:kgLR5JNJO

春香「絶対におかしいですよこれ! 進んでも進んでもずーーっと同じ景色だし、魔物なんてぜーんぜん出てこないし……」

春香「お姉ちゃん、私たちもしかして騙されてるんじゃないですか?」

律子「……あら、春香にしては察しがいいわね」

律子「貴音がいないから断言出来ないけれど、ここまで進んでも下り階段が見つからないのは、きっと罠なんでしょうね」

春香「や、やっぱり!」

春香「ど、どうしましょうお姉ちゃん!」

律子「うーん……さっきから考えてはいるんだけど、結局こういう場合って魔物を見つけないと進めないってパターンだと思うのよ」

春香「じゃあ、まずはこの階を守ってる魔物を探さないといけないんですね」

律子「ええ。でも……」チラッ

春香「……もう、結構進んできましたよね、私たち」

律子「そうね。ここまで進んでも何も無いとなると、このまま先へ進むべきか、いったん戻るべきか……」




「…………おおーーい!!」




春香「……えっ?」クルッ

律子「! あれは……」


522: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:22:56.99 ID:kgLR5JNJO

タタタタ…


P「……はぁっ、はぁっ……!」

P「……よ、良かった、やっと知ってるやつに会えた……」


春香「プロデューサーさん!?」

律子「プロデューサー殿!」

春香「なんでここにプロデューサーさんが? 小鳥さんと一緒じゃなかったんですか?」

P「いやあ、中心核までの道で小鳥さんとはぐれてしまってな」

P「はは……面目ない」ポリポリ

春香「えっ、じゃあもしかして私たちが来るまでずっと迷ってたんですか?」

P「ああ。なぜかこの階には下へ降りる階段が見つからないんだよ。魔物の罠かもしれないんだ」

律子「丁度私たちもこれはきっと罠だ、って話をしていたところです」

P「そうだったのか」



P「それで、今は二人だけか? 他のみんなはどうしたんだ?」

春香「みんなは、親衛隊の魔物と戦ってくれています。だから私たちも早く先へ進まないと」

P「そうか……そうだな」

律子「ところで、プロデューサーはなんで私たちの後ろから現れたんです?」

律子「私たちが来るよりももっと前からこの階にいたんですよね?」

春香「あ……言われてみれば、私たち誰ともすれ違ってないのにおかしいですね」

春香「貴音さんの話だと、この階は一本道らしいですし……」
 
P「それは……」


523: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:26:33.21 ID:kgLR5JNJO

P「うーん、口で説明するよりも実際に見た方が早いかもな」

P「春香、すまないがちょっとこの先へひとっ走り行ってきてくれないか?」

春香「先へ……ですか?」

P「うん。ずっとまっすぐ進んでくれればいいんだ」

春香「えっと……はい、分かりました」

春香「じゃあ、行ってきます!」

タタタタ…



律子「……なるほど、プロデューサーが何をやろうとしているのかがなんとなく分かりました」

P「そうか。流石は律子だな」

律子「また面倒くさそうな罠ですね」

P「俺ひとりじゃどうしていいか分からなくてな。二人が来てくれて助かったよ」

律子「ちなみに、この階を守っている魔物に心当たりは?」

P「すまん、分からないんだ」

律子「……ま、仕方ないですね」



タタタタ…



律子「……あ、来ましたね」

P「ああ」


524: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:29:40.32 ID:kgLR5JNJO

春香「……はぁ、はぁっ……!」

春香「……あれっ? なんでここにプロデューサーさんとお姉ちゃんが……?」

P「俺たちはさっきからここを動いていない。春香は元の場所に戻ってきたんだよ」

春香「えっ? でも私、プロデューサーさんに言われた通りずーっとまっすぐ走ったつもりなんですけど……」

律子「春香、多分これはループする罠よ」

春香「ループ?」

律子「何らかの方法で空間が捻じ曲げられて、入り口と出口が繋がってしまっている」

律子「先へ進んだつもりでも、元の場所へ戻ってきてしまうようになっているんじゃないかしら」

春香「なるほど……だから今までも進んでも進んでもずっと同じ景色だったんですね!」

春香「でも、どうしましょう? これじゃ小鳥さんのところまで行けませんよ」

P「魔物を見つけさえすればなんとかなると思うんだけどなぁ……」

律子「………」

P「……仕方ない、どうすればいいか知恵を出し合おう」

春香「そうですね。三人で考えればきっと何か方法が見つかるはずです!」

P「……というわけで、律子、頼んだぞ」

律子「はい?」

春香「お姉ちゃんが頼りなんです!」ギュッ

律子「二人揃って丸投げとか、文殊の知恵はどこへ行ったんですか……」

律子「……まったく、仕方ないわねぇ」


525: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:33:38.17 ID:kgLR5JNJO

律子「じゃあ、二人のお望み通り私の考えを話すけどいいかしら?」

P「もちろん!」

春香「もう何か思いついたんですか? さっすがお姉ちゃん!」

律子「まあ、考えって言っても魔物がどこにいるかについての考察だけなんだけどね」

P「充分だよ。いやあ、律子は頼りになるなあ!」

春香「それで、魔物はどこにいるんですか?」

律子「その前に……」

律子「春香、今までの会話で何か気づかない?」

春香「えっ? 何がです?」

律子「私たち三人のここまでの会話の中に、明らかにおかしい点があったわ」

春香「えっと……」

春香「……す、すみません、全然わかんないです……」

律子「あなたって結構鈍感なのねぇ。私は真っ先に気づいたっていうのに」

春香「もう、焦らさないでくださいよぅ!」

P「そうだぞ、律子。事態は一刻を争うんだ」

律子「……分かりました。じゃあ言いますけど……」





律子「……あなた、プロデューサーじゃありませんよね?」




P「えっ……?」

526: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:38:31.44 ID:kgLR5JNJO

春香「プロデューサーさんが、プロデューサーさんじゃない……?」

春香「ど、どういう事なんですか?」

律子「そのままの意味よ。そこにいる人はプロデューサーじゃない別の誰かってこと」

律子「もっと言うと、この階を守っている魔物じゃないかと思っているわ」

春香「ええっ!?」

春香「で、でも、どこからどう見てもプロデューサーさんだと思うんですけど……」チラッ

P「律子、今は冗談言ってる場合じゃないんだ。お前も分かっているだろ?」

律子「……ふーん、あくまでシラを切るつもりですか」

P「そもそも、何を根拠に俺を魔物だなんて言うんだよ?」

律子「根拠……根拠ねぇ……」

律子「もちろんあります。あなたがプロデューサーじゃないっていう根拠は」

律子「でないとこんなこと言い出したりしませんって」

P「………」

春香「……あの、お姉ちゃん。本物のプロデューサーさんじゃない根拠って何なんですか?」

律子「ええ、今から説明するわ」

律子「あなたがプロデューサーではないのではと思ったのは、会話の中に三つの違和感を感じたからです」

P「………」


527: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:41:03.68 ID:kgLR5JNJO

律子「まず一つ目。あなたは小鳥さんとはぐれたって言ってましたけど、じゃあなんで小鳥さんは迎えに来ないんですか?」

P「それは……」

P「分からない。小鳥さんにも何か事情があったんじゃないか?」

律子「苦しい言い訳ですね。この地下渓谷は小鳥さんの庭のようなものらしいじゃないですか。それなのにあなたを迎えに来れない事情ってどんな事情なんでしょう?」

P「それが分からないからここにいるんじゃないか」

P「律子、お前はいつから仲間を疑ったりするようになったんだ?」

律子「………」

春香「あ、あの、二人ともケンカはダメですよ?」

律子「……ま、いいです。じゃあ二つ目の違和感」

律子「あなたは私たちよりも先にこの階の罠について知っていたみたいですけど、それはどうやって知ったんですか?」

P「? それは重要なことなのか?」

律子「重要です」

律子「この階の罠は、さっき判明した通り『無限ループの罠』です」

律子「でも、それって一人で気づけることですか?」

春香「どういうことですか?」

律子「私たちはさっき春香を使った実験でこの階の罠を知った」

律子「そして、その実験を提案したのはこの人。つまり、この人は私たちが来る前からこの階の罠を知っていたことになるわ」

春香「はい、そうなりますね」

P「………」

律子「でも、じゃあこの人はどうやって罠の内容に気づいたの?」

律子「さっきの実験みたいに先へ進む人とその場に留まる人に別れれば無限ループだと気づけるけど、果たして一人の時にその事実に気づくことができるかしら?」

春香「……確かに、一人だとさっきみたいな実験は出来ないし……」

P「そんなの簡単だよ。石か何かで壁に印を付けて、しばらく進んで同じ印が見つかれば無限ループしているってことだ。これくらいは誰でも思いつくことだと思うぞ?」

春香「あっ、なるほど」

律子「……ふむ」


528: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:54:26.22 ID:kgLR5JNJO

律子「……じゃあ、三つ目の違和感です」

律子「今までの二つの違和感は、あなたが本物のプロデューサーではないのでは? という疑念を私に抱かせるにすぎない、言わば取っ掛かりのようなもの」

律子「証拠と言うには不十分です」

律子「……が、三つ目の違和感は、それだけであなたが別人であるという証拠になり得る確定的なものです」

P「………」

春香「……!」ゴクリ

律子「……プロデューサー殿、あなたは……」




律子「いつから小鳥さんのことを下の名前で呼ぶようになったんですか?」




P「えっ……?」

春香「あっ……」

春香「そうですよ! 確かにプロデューサーさんはいつも『音無さん』って呼んでます!」

春香「『小鳥さん』って名前で呼んでるのは、聞いたことないです」チラッ

P「………」

律子「あなた、誰ですか?」

P「………」

律子「魔物なんでしょう? 姿を現しなさい!」

P「………」



P「…………いやあ、参った。これは調査不足だったなぁ」


スゥーー…



「……大正解。ボクはプロデューサーさんじゃないよ」



春香「……あ、あなたは……!」



529: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:56:06.03 ID:kgLR5JNJO

クルーヤ「……ハルカ、久しぶりだね。見違えたよ」ニコッ


春香「お父さんっ!」

律子「お父さん……?」

律子(じゃあ、この人が私の……)


クルーヤ「リツコ、見事だった。ボクの幻影を見破るなんて」

クルーヤ「とても賢く成長してくれたんだね。父親として鼻が高いよ!」ニコッ

律子「………」

クルーヤ「……それと、辛い思いをさせてすまない」

クルーヤ「君がコトリさんに操られて青き星を滅ぼそうとしていたのは知っていたんだ」

クルーヤ「でも、ボクはもうこの世の存在ではない。だから、世界に干渉して君を助けるわけにはいかなかった」

律子「………」

春香「お父さん……」


530: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 07:58:31.80 ID:kgLR5JNJO

律子「終わったことはもういいです。私はこうして春香と共にここにいるんですから」

律子「あなたがこの世の存在ではないっていうのも、特に興味は無いですし」

春香「お、お姉ちゃん?」

クルーヤ「………」

律子「それより、この世界へ干渉するのが禁じられているっていうならなぜあなたはここにいるんです?」

律子「禁忌を犯してまで私たちの邪魔がしたかったっていうんですか?」

クルーヤ「………」

春香「お、お姉ちゃん、それはさすがに言いすぎじゃ?」

律子「……ごめんね、春香。この人はあなたにとっては父親かもしれないけど、私にとっては目的の邪魔をしようとしているただの敵でしかないわ」

春香「!」

クルーヤ「……はは、嫌われちゃったなぁ……」

クルーヤ「父親らしいことなんて何一つ出来なかったクセに今さらのこのこと君の前に現れるなんて、虫が良すぎるよな」

春香「お父さん、でもそれは」

律子「私たち、急いでいるんです。ここを通してもらえません?」チャキッ

クルーヤ「……ふむ」

春香「お姉ちゃん、ダメですっ! お父さんは敵じゃありません!」

律子「……いいえ」

律子「こうして私たちの前に立ちはだかっている以上、今まで出会ってきた魔物たちと同じ、排除すべき敵だわ」

春香「そ、そんな!」

クルーヤ「………」



クルーヤ「……自分のいる位置を知っておくのも大事なことだ。いいよ、かかっておいで、リツコ」ニコッ



律子「っ! ……はぁぁぁあああっ!!」

タタタタ…


春香「お姉ちゃんっ!!」



534: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/29(火) 18:04:30.29 ID:17JM/YY8O
ー 月の地下中心核 ー


『……はああああっ!!』

『バキッ!! ドガッ!!』

『ドゴオオオン!!』


P「………」

小鳥「………」


小鳥「みんな、頑張ってますね」

P「はい。もう物語も最終局面ですからね。それぞれが持てる力の全てで戦いに臨んでいると思いますよ」

小鳥「………」

P「……音無さん?」

小鳥「は、はい、何でしょう?」

P「なんだかぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」

小鳥「大丈夫、です」

P「無理はしないでくださいね?」

小鳥「………」

P「あっ……」

P「すみません。音無さんはもう覚悟を決めているんですよね。それなのに俺……」

小鳥「……ありがとうございます、プロデューサーさん」

小鳥「でも心配いりませんよ。私は一人でも戦えますから」ニコッ

P「………」

小鳥「それに、みんなと戦うのが楽しみな気持ちもあるのも確かです」

小鳥「みんながどれだけ強くなったのか。それに対して私はどこまでやれるのか。ちゃんとみんなを楽しませることができるのか」

小鳥「長い間待ってた出番がようやく巡ってきたんですもの。私、張り切っちゃいますからねっ!」

P「音無さん……」


535: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/29(火) 18:12:03.86 ID:17JM/YY8O

P「あの、俺……」

P「この物語が今までゲームの通りに進まなかったのは、俺っていう不純物がこの世界に混ざってしまったからだとずっと思っていました」

P「でも、違ったんです」

P「この世界に呼ばれたみんなは、勝手が分からないながらも試行錯誤してそれぞれが思う通りに行動した」

P「その結果が今なんです」

P「本当は俺の存在なんて関係なくて、本来の筋書きなんかも関係なくて」

P「最初からみんなの想いが同じ方向を向いていた。……ただ、それだけだったんですよ」

小鳥「プロデューサーさん……?」

P「正直、ここまで俺がみんなの役に立てたかどうかは分かりません」

P「でも、俺はあなたも含めて全員のことを応援しています」

小鳥「っ……!」

P「一緒に戦うことはできないけど、ちゃんと最後まで見届けたい」

P「だから、何もしてあげられませんけど、せめて音無さんの側にいたいって思っています」

小鳥「……ありがとうございます、プロデューサーさん」ニコッ

小鳥(あなたがこの世界へ来てくれて、本当に良かったです……)



小鳥「……あの、ところでプロデューサーさん?」

P「はい、何です音無さん?」

小鳥「えっと……」

小鳥(せっかく二人っきりなんだし、もう少しお近づきになりたいなー……なーんて)

小鳥「あ、あの」

小鳥「えっと、その……できれば、名前で……」

P「? 名前がどうしたんです?」

小鳥「……や、やっぱりなんでもないです」

P「?」

小鳥(……ダメ、言えないわ。私のこともみんなみたいに名前で呼んでほしいだなんて)

小鳥(あーあ……私ってなんて弱い女なんだろう)


538: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/30(金) 23:58:32.92 ID:4gchaJZ2O
ー 月の地下渓谷 B5F ー


プリンプリンセスたち「うふふふふ……!」ワラワラ


響「……ほんっとに、倒しても倒しても湧いてくるなぁ」

響「ま、でも、ラストダンジョンの敵があっさり倒せたら確かに物足りないもんな」

響「よーし、こうなったら全部倒してやるさー!」

響「いっくぞー!!」ダッ

ビュンッ…!


響「……ナンクル砲っ!!」バッ


ドゴオオオンッ!!


…ドサッ

プリンプリンセス1「」



響「もういっちょ!!」バッ


ドゴオオオンッ!!


プリンプリンセス2「」


プリンプリンセス3「っ! させませんわっ!」ダッ


響「ふふーん! 遅いぞっ!」ヒョイッ


響「……はっ!!」バッ


ドゴオオオン!!


響「い!!」バッ


ドゴオオオン!!


響「さー!!」バッ


ドゴオオオン!!


響「いっ!!」バッ


ドドドド…!!

ドゴオオオンッ!!!



ドサドサドサッ!!

プリンプリンセス3「」

プリンプリンセス4「」

プリンプリンセス5「」

プリンプリンセス6「」

プリンプリンセス7「」

プリンプリンセス8「」


539: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:01:39.73 ID:1Hr7ym9uO

…スタッ

響「……よし、半分以上は減らしたかな」

響「えへへ、自分、確実に強くなってるぞ!」



プリンプリンセス9「ちぃ……! すばしっこい……!」

プリンプリンセス10「それに、あの人間業とは思えない砲撃が厄介ですわね……」

プリンプリンセス11「ですが、今度はこちらのターンですわよ!」

プリンプリンセス12「覚悟なさいっ!」


響「余裕余裕! どんな攻撃だって避けてやるさー!」タンッ タンッ


プリンプリンセス12「いきますわよっ! ……王女の歌!!」


プリンプリンセスたち「ラララ~~♪」


響「えっ…………歌?」



ーー♪…


響「なーんだ、どんなすごい攻撃がくるかって期待して損したなー」


ーー♪…


響「そんな攻撃、痛くもかゆくもないぞ!」


ーー♪…


響「それじゃ、そろそろ反撃させてもらうからな!」ビシッ



ーードクンッ


響(!? ……な、なんだ?)

響(今、何か……)

響(……あ、あれ!? 身体が動かない……!)グッ


540: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:04:15.89 ID:1Hr7ym9uO

プリンプリンセス9「うふふっ♪ 思うように身動きが取れないでしょう?」

プリンプリンセス10「『王女の歌』を聴いた者は自由と意思を奪われ……」

プリンプリンセス11「死が訪れるまで、ダンスドールとして永遠に踊り続けるのです!」

プリンプリンセス12「形勢逆転、ですわねっ!」



響(う、うそ……でしょ……!)グッ

響(死ぬまでずっとって……!)ググッ

響(……あ……ダメだ、身体が、勝手……に……)



響「うがあああっ!!」タッ

タタンッ



響(うぅ……どうしよう……)

響(このままじゃホントに死ぬまで踊り続けることになっちゃうぞ……)

響(自分、ダンスは大好きだけど、踊り死になんて絶対にいやだっ……!)



響「っ……!」キュッ キュッ



プリンプリンセスたち「ラララ~~♪」



プリンプリンセス9(さあ、舞踏会の始まりですわよ!)

プリンプリンセス10(このドールは果たしていつまで耐えられるのでしょうね)

プリンプリンセス11(でも、焦ることはありませんわ)

プリンプリンセス12(だって、パーティは死ぬまで終わらないのですから!)


541: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:08:06.22 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


ベヒーモス「うおおおおっ!!」

ドドドドッ!!


真「はああああっ!!」ガシッ


ベヒーモス「……ふふっ……! アタイと力比べとは、面白い……!」ジリッ


真「へへっ……!」ググッ


ズザザッ…


ベヒーモス「……どうしたんだい? 本気を出すんじゃなかったのかい?」ズズッ


真「……くぅ~……!」ググッ

真「さすがに純粋な力比べじゃ勝ち目は薄いか……!」

真「……それだったら!」タンッ

…フワッ


ベヒーモス「なっ!? あの態勢から跳んだだと!?」


真「……飛燕、龍神脚!!」

ビュンッ…


ズドオオンッ!!


ベヒーモス「……なんて蹴りだ……! だが、狙いは外れだ!」ダッ


…スタッ

真「……飛燕……」クルッ

真「旋風脚っ!!」

ブオッ…

ドゴォ!! バキィ!!


ベヒーモス「ぐっ……!」ザッ


真「……雷煌拳っ!!」バリッ

ズガガガガッ!!


ベヒーモス「……ぬぅ……!」ヨロッ


542: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:11:32.53 ID:1Hr7ym9uO

…スタッ

真「……ふぅ」


ベヒーモス「………」


真「君はさっき『最後に勝敗を分けるのは圧倒的なパワーだ』って言ったよね?」

真「ボクの故郷には、柔よく剛を制すって言葉があるんだ」

真「君の馬力は確かに滅茶苦茶だけど、普段から響の身のこなしを見ているボクには、君の動きが速いとは感じられない」


ベヒーモス「………」


真「ボクの動きに、ついて来られるかな?」タンッ


ベヒーモス「!」


…ビュンッ!



ベヒーモス「……ふっ!」ダッ


真「……遅いっ!」

…シュタッ


真「……暫烈拳っ!!」

ドゴゴゴゴ…!


真「……破っ!!」ブンッ

ドゴォッ!!


ベヒーモス「っ……ぐ……」ザッ


543: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:14:23.04 ID:1Hr7ym9uO

真「へへっ! どう? 確かに戦いにはパワーも重要だけど、身のこなしだってもちろん無くてはならない要素だ」

真「ボクは、バランスが大切だって思うんだ」


ベヒーモス「……ふふっ」

ベヒーモス「このアタイの身体に傷を付けられる人間なんて今までいなかった」

ベヒーモス「あんたの技は本当に大したもんだよ」

ベヒーモス「……だが、それが全力なのかい?」


真「!」


ベヒーモス「身のこなし……か」

…ザッ


真(ん……? また突進かな?)

真(あいつの突進スピードはもう分かった。響ほどは速く動けないけど、あれくらいボクだって躱せる!)

…ジリッ


ベヒーモス「…………はっ!!」ダッ

ブワッ…


真「えっ、跳ん……!?」


ベヒーモス「はあっ!!」ブンッ

ブオオオオッ!!


真「! 空中から衝撃波!!」

真(予想外で反応が遅れた! 避けられない!)

真「くそっ」グッ


ドゴオオオオオオンッ!!



真「……くっ……!」


ベヒーモス「ふんっ!!」ブンッ

ザシュッ!!


真「うあっ!!」ヨロッ

…ザッ


ベヒーモス「はあっ!!」ブンッ


真「っ……!」タンッ

クルンッ…スタッ


544: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:17:44.79 ID:1Hr7ym9uO

ベヒーモス「何も突進だけがアタイの武器じゃない」

ベヒーモス「この爪も角も、そこいらの剣や槍なんかに遅れは取らないように鍛えてある」


真(……まさかあんな巨体であんなに軽やかに跳ぶなんて思ってなかった)

真(油断しちゃったなぁ)

真(「柔よく剛を制す」なんて偉そうに言った自分が恥ずかしいよ……)


真「でも、確実に以前戦った時より成長してるよね? 君も修行したのかい?」


ベヒーモス「この動きは、コトリ様の『だんすれっすん』で身につけたのさ」


真「だ、ダンスレッスン?」


ベヒーモス「ああ。あいどるには必要不可欠なものなんだろう?」


真「そ、それはまあ、そうだけど……」

真(よく分からないけど、小鳥さんはやっぱりただボクたちを待ってるだけじゃなかったってことか)

真(これもボクたちを楽しませるために考えたこと……なのかな?)

真(……へへっ。小鳥さん、超えてみせますよ。あなたが用意した試練!)


ベヒーモス「さあ、見せてやるよ。れっすんで鍛えたアタイの実力を!」


真「……望むところだっ!」グッ


545: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:23:04.85 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B4F 内部 ー



…ゴオオオォォォオオッ!!


銀竜「……く……!」

金竜「……ぬぅ……!」



亜美「よしっ!」グッ

亜美「んっふっふ~! どうよ、亜美の『鳳翼天翔』は! びっくりしたっしょ?」


金竜「……炎を不死鳥に変えるとは、見事なり……!」

金竜「だが、貴様が不死鳥で戦うというのならば、我は天翔ける竜となりて貴様を喰らってやろうぞ!」

銀竜「しかし兄者、我らは既に竜であるぞ!」

金竜「む、そうであったな!」


亜美(天然さんかな?)



銀竜「しかし……」

銀竜「形が変わったとはいえ、先程の技の中身はファイガ二発分に変わりはない。我ら兄弟が耐えられぬ威力ではないぞ!」


亜美「ん……なかなかスルドイじゃん」

亜美「確かに銀ぴょんの言うとおりだよ。ファイガ二発じゃちょっとハデさが足りなかったかもしんないね」

亜美「だったら……」ザッ

亜美「……もうワンランク上、いっとく?」ニヤリ



銀竜「……なに?」

金竜「更に上だと……?」


546: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:26:42.52 ID:1Hr7ym9uO

亜美「ねえ、その前にちょっとエーテル飲んでもいい?」


銀竜「魔力を回復させるのか。……兄者、どうする?」

金竜「ここで叩いても面白くあるまい。あやつの技を全て受けきった上で倒す。その方が箔が付くというものだ」

銀竜「流石は兄者、格の違いを見せつけるのだな!」

銀竜「……ということだ。子供よ、好きにするが良い」



亜美「んもー、子供じゃなくて亜美だよ! でもオッケーしてくれてありがと!」

亜美「えーっと……」ゴソゴソ

亜美(……あれっ? エーテルもうこれだけしかないじゃん。いつの間に使ったんだっけ?)

亜美(これじゃあと三回……ううん、二回くらいで勝負を決めないとダメっぽいよ)

亜美「んく、んく……」


亜美「……ふぅ。MP回復かんりょー!」

亜美「そんじゃ行っくよー!」


金竜「来い!」



亜美「……ブリザガ!」パリッ…



銀竜「今度は冷気か……!」



亜美「………………×3!!」パリパリパリッ



金竜「! 今度は三つ同時に!」



亜美「マイナス二百……えーと何度だっけ? 忘れたけど、接待零度の世界、タイケンさせてあげるよ!」

亜美「くらえー!! オーロラ・エクスキューションッ!!」バッ

キラキラキラ…



金竜「……冷気が、輝いて……! これが接待零度とやらか!」

銀竜「兄者、絶対零度だ!」



コオオォォ…!!

パリパリッ…シャキィィンッ!!


547: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:32:55.58 ID:1Hr7ym9uO

亜美「……ふぃ~、同時に三つはちょっとしんどかったかも」

亜美「でも……」チラッ



銀竜「」



亜美「銀ぴょんはカチンコチンだね。これで一体ゲキハ!」

亜美「あとは金ぴょんを倒すだけっぽいよ!」



…ビュンッ!! ドガッ!!



亜美「ぐえっ!?」ヨロッ

ドサッ



金竜「……あまり舐めてもらっては困るな。我らとてコトリ親衛隊の端くれ、この程度の子供騙しでやられはせぬっ!」


亜美「な、なんでピンピンしてんのさー!? まさか亜美のオーロラ・エクスキューション、全然効かなかったの?」


金竜「……我が弟が盾になったのだ」チラッ

金竜「……行くぞ!」フワッ


亜美「ぐぬぬ~! ひきょーだよ~!」


金竜「! 卑怯……だと?」ピタッ


548: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:35:51.63 ID:1Hr7ym9uO

亜美「そーだよひきょー者ー! 弟を盾にするなんてカワイソーじゃんか!」

亜美「兄としてはずかしくないのかー!」ビシッ


金竜「ぬ……! た、戦いに情など無用なのだ! それがたとえ血を分けた弟であってもな」


亜美「そんなのおかしーよ!」

亜美「亜美にもきょうだいはいるけど、チョー仲良しだもん」

亜美「たまにケンカしちゃったりもするけど、すぐに仲直りするし」

亜美「もしも亜美がピンチになったとしても、真美を盾にして亜美だけ生きのびるなんてことだけは……ゼッタイにしない。したくない!」

亜美「だって、それがきょうだいの絆ってやつだと思うから!」


金竜「ぐ……ぬぅ……!」

金竜「銀竜……我は……」



亜美「……よし、今がチャンス!」

亜美「サンダガ! ……×3」バリバリバリッ


金竜「あっ、貴様、ズルいぞ!」


亜美「我が光速の拳、受けてみよ!」



亜美「ライトニング・プラズマーー!!」



…キラーンッ!

ズガガガガッ…!



金竜「ぬおおおおーーっ!!」



ドゴオオオォォォオオンッ!!


549: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:39:32.98 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


雪歩「えいっ! えいっ!」ブンッ

バキッ! ガキィン!


魔人兵「無駄だよ。君の得物ではこの装甲を貫くことはできない」

魔人兵「せめてオレのような兵器が無ければね」

魔人兵「……はっ!」

ガコンッ!

キュイィィン…ドゴオオオンッ!!


雪歩「ひぅっ!」

雪歩「……っ、ぜ、全然平気ですぅ!」


魔人兵「うーん……」

魔人兵「ビーム砲もレーザーもミサイルも全て通じない、か」

魔人兵「決め手を打てないのはこちらも同じみたいだね」

魔人兵「君の鎧がこれほどまでに堅牢だとは思わなかったよ」


雪歩「そ、そうです! アダマンアーマーはどんな攻撃だって防いじゃうんですぅ!」

雪歩(……小鳥さんの『メガフレア』だけは防げなかったけど)

雪歩(でも、それはきっと小鳥さんがものすごく強いから、だよね?)

雪歩(だから大丈夫なはず。今はなんとかしてあの魔物さんの装甲を破壊する方法を考えないと)


…パラッ


魔人兵「……うん?」

魔人兵(今の……)


550: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:42:55.30 ID:1Hr7ym9uO

雪歩「い、行きますぅ!」チャキッ

タタタタ…



魔人兵「また懲りずにスコップで殴打か。無駄だっていうのに」


雪歩「はああああっ!」

キラッ…!


魔人兵「! なんだ? スコップが光って……」


雪歩「……えーーいっ!!」ブンッ

バキィンッ!!

ポロッ…


魔人兵「……げっ、オレの装甲に傷が……」


雪歩「……や、やりましたぁ!」グッ

雪歩(成功して良かったぁ……『気』をスコップに纏わせる技)

雪歩(真ちゃんから『気』のことについて少しだけ教えてもらってたけど、実際にちゃんと理論を理解して実践するのは初めてのことだったもんね)

雪歩(これも、ククロさんに鍛えてもらったスコップと真ちゃんの教えがあったからこそだよ)

雪歩(ありがとう、二人とも)


魔人兵「先手を取られちゃったか。この戦い、君が一歩リードってところだね」


雪歩「えへへ……」


魔人兵「でも、喜ぶのはまだ早いんじゃないかな? こちらの装甲に傷が付いたとはいえ、ほんの少し欠けただけだ。かすり傷に過ぎない」

魔人兵(それに引き換え……)チラッ


雪歩「そ、そうでした……。でも、この調子で行っちゃいますぅ!」


魔人兵(気づいていないのか? 自分の鎧にも傷が付いているってことに)

魔人兵(あの傷に合わせてオレの最大の砲撃を加えれば、おそらく……)

魔人兵(……よし、試してみるか)


551: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:47:02.27 ID:1Hr7ym9uO

魔人兵「悪いね、ちょっとだけ本気を出してみることにするよ」

ウイィィン…ガコンッ!


雪歩「!」

雪歩(すごく大きな砲台が……)

雪歩(な、なんだろう、なにか嫌な予感がする……)

雪歩(気をつけなきゃ!)グッ


魔人兵「さあ、行くぞ!」


雪歩「っ!」ビクッ


魔人兵「……っと、その前に」チャキッ

キュイィィン…ドゴオオオンッ!!


雪歩「えっ!? じ、地面が……!」


魔人兵「君は穴掘りが得意みたいだからね。地中に逃げられないように少々地面を抉らせてもらったよ」


雪歩「そ、そんなぁ……」

雪歩(で、でも、大丈夫だよね、きっと。だってアダマンアーマーは今までずっと私を守ってくれたもん)


魔人兵「さて、それじゃ今度こそ」

ゴオオオォォ…


雪歩「あわわわわ……! な、なんだかものすごいエネルギーが集まってますぅ!」


魔人兵「これで君の装甲を突破出来なかったら……オレの負けでいい」



魔人兵「…………波動砲!!」



ゴオオオォォ…


雪歩「ひぃっ!」



………………カッ!!



ドゴオオオオォォォオオォオンッ…!!!


552: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:49:43.48 ID:1Hr7ym9uO

雪歩「………」

雪歩「……うぅ……」

雪歩「けほっ、けほっ……」

雪歩「わ、私……! そ、そうだ、アダマンアーマー!」ゴソゴソ

雪歩「……ほっ、良かったぁ。壊れてないみたい」


魔人兵「……果たして本当にそうかな?」


雪歩「えっ」

…パキッ


雪歩「あ、あれ……?」

パキパキッ…


雪歩「う、ウソ……」

パキパキパキッ…



…………バキィンッ!!

ボロボロ…


雪歩「そ、そんな、アダマンアーマーが……」

雪歩(壊されちゃいましたぁ……)


魔人兵「君は気付かなかったようだけど、オレと戦う前から君の鎧にはすでに傷が付いていた」

魔人兵「よほど強力な攻撃を受けたんだろうね。大きなヒビが入っていたよ」


雪歩「そ、そうだったんですか……?」

雪歩(全然気付かなかったよぅ……)

雪歩(も、もしかして、昨日小鳥さんのメガフレアを受けちゃったからかな……?)


魔人兵「この戦い、どうやらこちらの勝ちが見えてきたようだ」

魔人兵「あいどるの真の実力とやらを見てみたかった気もするけど、まあ、それはコトリ様の過大評価だったのかもしれないしな」

魔人兵「……あとは、仕事を遂行するだけだ」

ウィーン…ガコンッ!


魔人兵「可哀想だけど、覚悟を決めてもらうよ?」


雪歩「ど、ど、どうしようっ……!」ビクビク


553: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:54:04.72 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


レッドドラゴン「熱線っ!!」


ドゴオオンッ!!


…シュンッ


あずさ「ブリザガ~」


コオォォ…シャキーン!!


レッドドラゴン「うおっ!? 後ろかよ!」カチコチーン

レッドドラゴン「……んのやろっ!!」メキメキ


…パリンッ!


あずさ「あ、あらあら……強引に氷を割ってしまうなんて……」


レッドドラゴン「うりゃっ!!」ブンッ


あずさ「きゃっ……」ヨロッ


レッドドラゴン「もらったァ!!」ブンッ


ドゴォン!!


レッドドラゴン「………」


レッドドラゴン「……ちっ、またテレポで逃げやがったな」




あずさ「……ふぅ、危なかったわ~」

あずさ(あの魔物さんはとても熱いから、きっと氷が弱点だと思うのだけど~)

あずさ(ブリザガもあまり効果が無いみたい)

あずさ(やっぱり『あの魔法』を使わないと勝てないような気がするわ~)

あずさ(う~ん、でも……詠唱呪文どころか名前すら思い出せないのよねぇ)

あずさ(確かそんなに長い名前ではなかったような気がしたんだけど……)

あずさ(少し落ち着いて考えてみましょう。そうすれば必ず思い出せるわ、きっと)


554: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 00:56:39.58 ID:1Hr7ym9uO

あずさ(え~っと、最初の文字は~)

あずさ(そう、確か『メ』だったかしら~?)

あずさ(メ、メ……)

あずさ(……メガネ?)

あずさ(……何か違うわねぇ)

あずさ(メ、メ……)

あずさ(……メザシ?)

あずさ(お酒のおつまみに良さそうだけど、これでもない気がするわ~)

あずさ(メ、メ……)

あずさ(…………メオト?)

あずさ(………)

あずさ(う~ん? 少しだけ近いような……)

あずさ(でも……)

あずさ(うふふ、なんだかいい響きねぇ♪)

あずさ(私もいつかはステキな人と……)



…ッドゴオオオン!!!



あずさ「きゃっ……!」ヨロッ


レッドドラゴン「よそ見してんじゃねーぞコラァ! 戦う気あんのかよ!」


あずさ「そ、そうだったわ。今は戦いの最中なのよね」

…ニョキニョキッ


555: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 01:00:06.88 ID:1Hr7ym9uO

レッドドラゴン「……へっ、何事もなかったかのように再生しやがる……」

レッドドラゴン「だが、そんな戦い方がいつまでも続けられると思うなよな!」

レッドドラゴン「あんたが魔道士で魔法を主体として戦う限り、いつかは魔力の底が見えてくるんだ」


あずさ(……確かにそうよね。このまま移動のたびにテレポを使い続けても、魔力の消耗が激しいわ)


レッドドラゴン「なるべく魔力を節約しつつ、さっき撃ちそこなった魔法を思い出す」

レッドドラゴン「あんたはそう考えるんだろうなあ?」


あずさ(あらあら、バレバレなのねぇ)

あずさ(というか、あの魔物さんはなんとなく考えるよりも先に手が出るタイプかなって思っていたけど……結構頭が回るみたいね)


レッドドラゴン「……おい、あんた今失礼なこと考えなかったか?」


あずさ「き、気のせいですよ~」


レッドドラゴン「……とにかく、忘れた魔法を思い出すんならさっさとしろよな!」

レッドドラゴン「オレ様はそこまで気の長い方でもねえ」

レッドドラゴン「早く思い出さねえと、消しちまうぞ!」


あずさ「それは困りますね~」

あずさ(あまり悠長に構えていられないかもしれないわね)

あずさ(なるべく早めに思い出さないと)


556: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 01:03:05.00 ID:1Hr7ym9uO

レッドドラゴン「そんじゃバトル再開すんぞ!」

レッドドラゴン「うおおおお!」

レッドドラゴン「……熱線っ!」


ゴオオオオッ…!


あずさ「!」

あずさ(あれをテレポ無しで反射神経で避けるのは、私じゃほぼ無理だわ)

あずさ(だったら肉を斬らせて……)



…ドゴオオオンッ!!



あずさ「ううっ……」ヨロッ


レッドドラゴン「……お? 避けない? 瞬間移動はもうやめたのか?」

レッドドラゴン「だったら畳み掛けてやんぜっ!!」

ドドドドドド…


あずさ「……スロウ!」

カタカタ…シュルンッ!


レッドドラゴン「ぬおっ!」ノロ~


あずさ「……バイオ!」

ブニューン!!


レッドドラゴン「痛ってえ!! クソっ!」


あずさ(意外に状態異常の魔法が効くみたい。これならテレポ無しでもなんとか戦えそうね)

…ニョキニョキ


レッドドラゴン「やってくれんじゃねーか! さすがはオレ様がライバルと認めただけはあるな!」


あずさ「あらあら、それは光栄です♪」ニコッ


レッドドラゴン「!」ドキッ

レッドドラゴン「……ちっ、だからって手加減なんかしねーからな!」


557: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 01:06:37.34 ID:1Hr7ym9uO

ドゴォン! ドカァン!



あずさ(……そもそも、なぜ私は忘れてしまったのかしら)

あずさ(試練の山で確かに覚えて、一度使ったことだってあるっていうのに)

あずさ(……命と引き換えに、だけれども)

あずさ(やっぱり私、トラウマになってしまっているの?)

あずさ(命を落とす原因となった魔法だから……?)




レッドドラゴン「……なあ、あんた」


あずさ「はい、あの、私、あずさっていいます~」


レッドドラゴン「……アズサ。ひとつ気になったことがあんだけどよ」


あずさ「はい、なんでしょう?」


レッドドラゴン「あんた、本当にゾンビなのか?」


あずさ「え~と……たぶん」

あずさ「私、実は一度死んでいるんです。その時にゾンビのお友達が助けてくれて、それで……」


レッドドラゴン「……ふーん。転生ってやつか? でも、それにしちゃ全然ゾンビらしく見えねーんだよな」


あずさ「あの~、それはどういうことですか?」


レッドドラゴン「ゾンビってのはよ、もっとこう、腐ってて体も崩れかけててグチャ味噌で……」

レッドドラゴン「うまく言えねーけど、あんたみてーにキレイなゾンビなんて今まで見たことねーんだよ」


あずさ「あ、あら~……キレイだなんてそんな~……///」


レッドドラゴン「あっ……///」

レッドドラゴン「い、今のは違うぞ! 別にあんたが美人でオレ様の好みのタイプだとかそういうつもりで言ったんじゃねーからなっ!!」


あずさ「うふふ♪」ニッコリ


レッドドラゴン「くそぉ……余計なことを言っちまったぜ……」

レッドドラゴン「と、とにかくだ! 勝負は勝負、きっちりカタは付けるからなっ!」ビシッ


あずさ「は~い♪」ルンルン


561: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:00:13.55 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


伊織「……ふっ!」ブンッ

ザシュッ!!


リルマーダー「ぐっ……このっ! サンダガっ!!」


ズガガガピシャーン!!


伊織「……遅い!」

伊織「はっ!」ブンッ

ズバッ!!


リルマーダー「ちくしょう……!」ヨロッ


伊織「あら? どうしたのかしら? 私の動きについて来れないみたいだけど」

伊織「私に見せてくれるんじゃなかった? 『王の力』ってやつを」


リルマーダー「………」

リルマーダー「けっ、わかってるよ。今から見せてやる。後悔すんじゃねーぞ!」

リルマーダー「……!」ゴゴゴ


伊織「!」

伊織(空気が変わった……)

伊織(魔力を集中させているってことは、アイツの『王の力』とやらは魔法なのかしら)

伊織(ま、どんな魔法でも当たらなきゃいいことよね)


562: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:02:04.62 ID:2zaNk/pmO

リルマーダー「……汝、真理の囁きにのみ耳を傾けよ」

リルマーダー「万物姿形隠すこと、あたはず!」




リルマーダー「…………ライブラ!」バッ




伊織「!」

伊織(……聞いたことない魔法ね。とにかく魔法が発動するより速く射程圏外へ!)

ダッ…



ピピピッ…

ピコーン!


伊織「……なっ!?」ピタッ

伊織「なによこれ……どういうこと?」



『リルマーダー

7650/12000 弱点:雷』



伊織(アイツの頭の上に文字が……)


563: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:04:29.33 ID:2zaNk/pmO

リルマーダー「げっ、間違えた! これじゃオイラの情報が筒抜けじゃねーか!」


伊織(対象の情報を知る魔法……ってところかしら? そういうのもあるのね)

伊織(アイツはそれを間違えて自分に使ったってこと? 間抜けにもほどがあるわ)

伊織(ま、なんにせよ重要なのは、『アイツの弱点が雷』って部分)



リルマーダー「今度こそっ! ライブラっ!」バッ


ピピピッ…


伊織「! 今度は私に!」

伊織「ちっ!」ダッ

タタタタ


リルマーダー「ムダだぜ! どうやってもライブラからは逃げられやしねー!」


…ピコーン!






『イオリ

誕生日:5月5日 血液型:AB 星座:牡牛座

身長:153cm 体重:40kg

スリーサイズ:B77 W54 H79

趣味:海外旅行、食べ歩き』






伊織「」


564: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:08:14.65 ID:2zaNk/pmO

伊織「こっ……!」

伊織「この変態! de変態! EL変態! 変態大人ー!」カァァ

伊織「なに乙女の秘密を勝手に暴いてくれてんのよっ!」ビシッ



リルマーダー「へー、お前イオリっていうのかー。……変な名前」


伊織「うっさい!! アンタほどじゃないわよこの○○ガキっ!!」


リルマーダー「なんだよー、イオリだってガキじゃんかー。B77ってあんまり大っきくないよな?」


ズガガガガーーンッ!!


リルマーダー「ぐええぇっ!?」ヨロッ



伊織「……アンタ、私を怒らせたわね……!」バリッ

伊織「もう手加減なんてしてあげないんだからっ!」


リルマーダー「ちょ、ちょっと待」


伊織「問答無用! 雷迅っ!!」バッ


ズガガドゴオオオォォオオンッ!!



リルマーダー「いぎゃああーー!!」


565: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:10:32.91 ID:2zaNk/pmO

伊織「……ったく、なんでこの世界は変態ばっかりなのよ! これじゃ現実と大して変わらないじゃない!」

伊織「ま、これでアイツも立ち上がれないでしょ。二回も弱点を突いたんだし」チラッ



リルマーダー「」



伊織「バカバカしい戦いだったわ。さっさとやよいを追いかけないと」クルッ

スタスタ





リルマーダー「……待てよ……。オイラまだ参ったって言ってないぞ……」ヨロッ



伊織「……しぶといわね。さっさとやられちゃいなさいよ!」

伊織「雷迅っ!」バッ


ズガガドゴオオオォォオオンッ!!


リルマーダー「ぐああああっ!!」


リルマーダー「……ぐっ……」フラッ


伊織「ま、まだ倒れないの? アンタの弱点は雷のはずじゃない!」


リルマーダー「……ああ、そうだぜ。確かにオイラの弱点は雷だ」

リルマーダー「でも……」

リルマーダー「同時に雷はオイラの得意とする属性でもあるっ……!」バリッ

リルマーダー「うあぁぁああああっ!!」バリバリッ


伊織「!」

伊織(ウソ……! アイツ、まさか帯電してる……?)


566: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:12:40.83 ID:2zaNk/pmO

リルマーダー「……三発だ」


伊織「……は?」


リルマーダー「お前の放った雷は三発。だからそれを……」バリバリッ


リルマーダー「倍返ししてやるぜっ!!」ビリビリッ

ゴゴゴゴ…!


伊織「な、なによこの魔力……!」

伊織(貴音や美希と同レベル……いえ、今この瞬間に限ってはそれ以上……!)



リルマーダー「くらいやがれ! 6倍サンダガっ!!」バッ


伊織(ま、まずいわ……!)



ゴゴゴゴ…

ズガガガガーーン!!

ドゴゴゴオオォォオオンッッ!!!



伊織「……ぅ……ぁ……!」ヨロッ


ドサッ


567: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:15:56.75 ID:2zaNk/pmO

伊織「ぐ……っ」

伊織(なんてデタラメな威力っ……)

伊織(倍返し……。自分のサンダガに私の雷迅の分も上乗せして返してきたってわけ……?)

伊織(まさか、最初からそれが狙い?)

伊織(ライブラって魔法を自分に使ったのも……)

伊織(……そうよ、考えてみれば自分から弱点をさらけ出すなんて不自然じゃない……)


リルマーダー「へへっ……見たか、これが王の力だっ!」ビシッ

リルマーダー「さーてと、あとはじっくりとどめを刺してやるからなっ!」


伊織(迂闊……だった……!)

伊織(この状況、どうにかしなきゃ……!)



568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:21:38.58 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


ブルードラゴン「……ふぬっ!」ブンッ


やよい「はわっ!」ダッ


ドゴオオンッ!!


…スタッ

やよい「しるふちゃんっ!」バッ



シルフ「……風の囁き!」



ビュオオオ…!!


ブルードラゴン「……ふむ、心地よい風じゃ」


シルフ「わ、私の風が効かないなんて、化け物ですね……!」


やよい「うぅ、さすがどらごんさんです……」



ブルードラゴン「召喚士よ。お前の従える幻獣たちはそのほとんどが属性を持つ。故にほぼ全ての属性攻撃を弾くワシとは相性が悪い」

ブルードラゴン「ワシに傷を負わせる可能性があるのは、さっき喚び出したアスラくらいじゃろう」

ブルードラゴン「はっきり言って状況はお前に不利じゃ。それはお前自身も分かっているはず。ならばなぜ足掻く?」


やよい「………」


ブルードラゴン「最初に言ったな。『このカードはハズレ』だと。つまりそういうことじゃ」

ブルードラゴン「お前は何も出来ず、コトリの元へ辿り着くこともなくここで果てる」

ブルードラゴン「もう無駄なことはするな。子供が苦しむ様は見るに耐えぬ。せめて一撃で楽にしてやろう……」

ブルードラゴン「……ふんっ!」ブンッ



やよい「! 高木社長!」バッ


…ガキィンッ!!



569: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:24:33.81 ID:2zaNk/pmO

高木「……ウチのアイドルを傷付けるのは困るな。しかもこんなに小さな娘を」ググッ


ブルードラゴン「……幻獣騎士オーディンか。お前に何が出来る?」ググッ


高木「私の力はちっぽけかもしれない。だが、ちっぽけだからこそ他の誰かと力を合わせて道を切り開く。そういう生き方もあるとは思わないかね?」


ブルードラゴン「……ふ、知ったような口を」

ブルードラゴン「目の前にある結果こそが全てだ。そこの召喚士の為に力を振るうことの出来ぬお前は、ただの木偶に過ぎぬ!」ブンッ


高木「く……すまない、高槻君。私一人の力では……」


やよい「だいじょーぶです、社長。わたし、社長もみんなも大好きですから!」

やよい「みーんな、いっしょです!」


高木「高槻君……」


570: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:25:46.75 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「何故そのように楽観的に考えられるのだ? お前は今、死の淵に立たされているのだぞ?」

ブルードラゴン「お前には恐怖はないのか?」


やよい「こわくなんてないです。だってわたしには、みんながいてくれますから」

やよい「……黒井社長!」バッ



黒井「高槻やよいに歯向かう馬鹿はお前か。私が引導を渡してやろう!」

黒井「……大海衝!」



ザァァァ…!



ブルードラゴン「無駄だというのが分からんのか……。津波など、ワシにとっては子供の水遊びと変わらぬ」



ザパアアァァァァンッ!!



ブルードラゴン「……気は済んだか?」


黒井「バカな……。この私の津波をものともしないだと……!?」


571: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:28:56.39 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「さあ、もう万策尽きたであろう? 大人しくあの世へと旅立つのじゃ」スッ


やよい「……ごめんなさい、それはできません」ペコリ


ブルードラゴン「……何故じゃ。何故そこまで生に執着する?」

ブルードラゴン「生きることの辛さを知らぬ若さ故か?」


やよい「待ってる人がいるからです」


ブルードラゴン「………」


やよい「わたしには、待っててくれる人がいて、大切な人たちといっしょにめざす夢があるからです」

やよい「そのためには、小鳥さんのところへ行かなくちゃなんですっ!」

やよい「だから、わたしは死ねません」


ブルードラゴン「……現を抜かすのは、やはり若さの成せる業か」

ブルードラゴン「じゃが、その夢もちっぽけだったと気づく時がくる」

ブルードラゴン「その時にお前は、大きな絶望と失望を抱えることになる」

ブルードラゴン「世界とは、生とはなんと虚ろで意味の無いものだったのかと嘆く日が来るのじゃ」


やよい「………」





やよい「もし、そうなったとしても」



やよい「わたしには家族と……春香さんたちがいます!」

やよい「わたしが生きるいみは、それでじゅうぶんかなーって!」




ブルードラゴン「……!」


572: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:32:33.90 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「哀れな娘よ。お前が生の虚しさに気づく前に、ワシが幕を引いてやる……!」ブンッ


やよい「!」

やよい「……お母さんっ!」バッ


ミストドラゴン「……ああ、ヤヨイ。あなたはなんと健気なのでしょうか……」

ミストドラゴン「この子の尊い願い、誰にも邪魔はさせませんっ!」

ミストドラゴン「……ミストブレス!」

シュウゥゥ…! キラキラ…!



ブルードラゴン「! また目くらましか……!」

ブルードラゴン「じゃが、そのような一時しのぎなどなんの意味もない。死を僅かに遅らせただけじゃ」



やよい「いーえ、これでいいんです」

やよい「……これで『ぜんいん』です。じゅんびはととのいました!」



ブルードラゴン「……なんだと?」




やよい「……『みなさん』! 出てきてくださいっ!!」バッ



573: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:36:49.77 ID:2zaNk/pmO
イフリート「うおおおおお!! ヤヨイぃぃ!!!」ボオォ

シヴァ「ヤヨイさん……あなたは必ず守る……!」コォォ

ラムウ「幻獣全てを一度に召喚とは……。ヤヨイさん、やはりお前さんは誰よりも光に選ばれし者なんじゃな……」バリッ

翔太「僕たちもいるよー!」フリフリ

北斗「チャオ☆」シュタッ

冬馬「高槻、俺たちに任せろ!」グッ

高木「幻獣たちが一度に全員集合とは、なんとも壮観だねぇ」

黒井「フン……。同窓会じゃあるまいし、さっさとあの化け物を倒すぞ」

シルフ「きゃっ、なんだかかっこいいおじ様っ」ポッ



やよい「みなさんっ!」



ブルードラゴン(あれだけ続けて召喚魔法を使ったあとで8体もの幻獣を一度に喚び出すとは……なんたる魔力……!)

ブルードラゴン(ヤツの魔力は底なしか……?)


574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:38:30.97 ID:2zaNk/pmO

ミストドラゴン「私のかわいいヤヨイ……。ご覧なさい」

ミストドラゴン「皆あなたを慕い、あなたを案じ、あなたとともに生きることを選んだ」

ミストドラゴン「そこには主従関係を超えた強い絆があります」

ミストドラゴン「これが、これこそが……あなたの進んで来た結果なのです」



やよい「お母さん……」



ミストドラゴン「さあ、ヤヨイ。あなたの選んだ答えを、魔物に見せておあげなさい」



やよい「はいっ!」


575: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:40:57.05 ID:2zaNk/pmO

やよい「どらごんさん」


ブルードラゴン「………」


やよい「わたし、まだまだ子どもで、世界のこととか生きるつらさとかぜんぜんわかりませんけど……」

やよい「わたしにとっての安らぎは、死ぬことなんかじゃなくて、生きることです」

やよい「みーんな笑顔ではっぴーでいられることなんですっ!」


ブルードラゴン「……幻獣たちの力でワシを攻撃せぬのか?」


やよい「こうげきなんてしません。わたしはただ、どらごんさんにも知ってほしいだけですから」

やよい「じぶんを待っててくれる人がいるってことを!」



ブルードラゴン「……そう、か」


やよい「だから、どらごんさんも仲間と生き」







ブルードラゴン「やはり、お前は分かっておらぬようだな」




やよい「…………えっ」


576: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:44:28.02 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「つまらぬ問答に付き合わせてすまなかった。もう、終わりにしよう」


やよい「あ、あのっ!」


ブルードラゴン「……さらばだ」

…ブオオオォォ!!



やよい「!」



翔太「や、やよいちゃんっ!」

北斗「行くぞ、冬馬!」

冬馬「てめぇ化け物っ!」ダッ


イフリート「や、ヤヨイっっ!!」ダッ

ラムウ「我らではジュピター殿の力になれぬ! ヤヨイさんを守るんじゃ!」

シヴァ「ヤヨイさんっ!!」


シルフ「吹雪くらい、私の風で散らしてあげます!」

シルフ「風の囁き!」


ビュオオオ…!!


ミストドラゴン「私にも手伝わせてください!」

ミストドラゴン「ミストブレス!」

シュウゥゥーー…! キラキラ…!


ブオオオォォォッ…!!

やよい「……ぁ……ぅ……」



高木「……ダメだ、向こうの吹雪の方が勢いが強い!」

高木「黒井、私たちも鬼ヶ島君たちに続こう!」

黒井「………」

高木「……おい、黒井!」

黒井「……なんだ、これは……」


577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:47:04.27 ID:2zaNk/pmO

冬馬「てめぇ!! 吹雪を止めやがれ!!」

冬馬「うおおおおおおお!!」

ズドドドドド…!!


ブルードラゴン「ぐ、が……っ!」


高木「……斬鉄剣っ!!」

ズパァンッーー!!



ブルードラゴン「ぬ……ぅ!」



ブルードラゴン「む、無駄だ……。もう、手遅れだ……」



冬馬「あぁ!?」




やよい「ぁ……ぅ……」ガタガタ


イフリート「うおおおおおーーーー!!」ボオォ

シヴァ「イフリート、全然足りないわ! もっと火力を上げなさい!」

イフリート「くそおおおおーーーー!!」ゴオオ

ラムウ「ヤヨイさん、逝くな……!」ダキッ

やよい「……ぅぅ……」ブルブル


高木「高槻君っ! くそっ!」


黒井「………」

黒井(高槻やよい……。死ぬのか……?)


578: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:48:28.71 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「ば、バラバラの、力を持った……お前たちでは……救えまい……」

ブルードラゴン「彼女は……安らぎの国へ旅立つのだ……」


冬馬「ふざけんなっ!!」ブンッ

ドゴオオォ!!

メキメキッ!



ブルードラゴン「……あ、ぐっ……」



ミストドラゴン「ああ、ヤヨイ、なぜ……なぜこのようなことに……!」ダキッ

翔太「北斗君、回復魔法!」

北斗「ケアルダ!」

シャララーン! キラキラキラ…!

やよい「……ぅぅ……」

北斗「くそっ、魔法がきいてないのか!?」

シルフ「気をしっかり持ちなさい! 私のご主人なんでしょう!? マコト様と一緒に無事に青き星へ帰るんでしょう!?」ユサユサ

やよい「……ぁ……」グッタリ


579: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 21:57:00.77 ID:2zaNk/pmO

やよい(わたしのこたえ……まちがってたんでしょうか……)

やよい(どらごんさんには……とどかなかったんでしょうか……)


「ーー! ーーー!」

「ーーーー!」


やよい(……うぅ……さむいです……)

やよい(……わたし……死んじゃうのかな……)


「ーーーー! ーーー!」

「ーーー!」


やよい(みなさんの声が、とおくなって……)

やよい(…………は……さ…ん……)

やよい(……い…りちゃ……)

やよい(………………)


やよい(…………)


やよい(……)



やよい「」カチコチーン



580: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 22:00:48.21 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


月の女神「……やあっ!」ブンッ


千早「ふっ!」ガキィン

千早「……はっ!」ビュッ


月の女神「おっと!」ヒョイッ

月の女神「やあぁぁあああっ!」

ブンブンブンブンッ!!

千早「!?」

千早「くっ!」

ガキィン! キィン! パキィン!


…スタッ


月の女神「……ふぅ」

月の女神「なかなかやるねー、私のぶん回しを防ぎきるなんて」

月の女神「うんうん、いいカンジ。もっともっと楽しもう!」


千早「………」ジリッ


月の女神(…………う~ん)


581: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 22:02:10.56 ID:2zaNk/pmO

月の女神「ねえ、あなたの名前はなんていうの?」


千早「えっ?」


月の女神「ほら、まだ聞いてなかったからさ」


千早「はあ……」

千早(なんでいまさら名前を訊くの? というか魔物相手に名乗る必要なんてある?)

千早(まあ、訊かれたのに答えないのも失礼よね。名前くらいは……いいかしら)



千早「……如月千早、です」


月の女神「ふーん、チハヤっていうんだー。キレイな名前だね」

月の女神「私は月の女神。まあそう堅くならずに楽しくいこうよ!」ニコッ


582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 22:04:10.77 ID:2zaNk/pmO

千早「何回も言ったけれど、私は別にあなたと馴れ合うつもりは……」


月の女神「えー、せっかくだから何事も楽しんだ方がいいと思うけどなー」

月の女神「おしゃべりもバトルも、楽しんだもの勝ちだよ?」


千早「おしゃべりはともかく、私にバトルを楽しむ趣味はないわ」


月の女神「ふーん……チハヤはマジメだねー」

月の女神「じゃあさ、趣味は? 好きな食べものは? 休みの日とか何してるの?」


千早「あの、私、あまり時間は無いのだけど。早くあなたを倒して仲間のところへ向かわないといけないの」


月の女神「ノリ悪いよチハヤー。せっかくこうして出会えたんだから少しくらいおしゃべりしようよー」


千早「…………はぁ」

千早「趣味は歌うこと。好きな食べものはソフトクリーム。オフの日は、美術館に行ったりすることもあるわ」

千早「……これで満足?」


月の女神「わぁ、なんか私の知らない言葉ばっかり!」

月の女神「ねえねえ、そふとくりーむってなーに? ビジュツカンって?」


千早(いちいち説明しなければならないのかしら……)


月の女神「わくわく」じーっ


千早(話さないと戦ってはくれなさそうね)


583: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/12(日) 22:05:57.16 ID:2zaNk/pmO

千早「ソフトクリームというのは……そうね、甘くてふわふわで、食べるととても幸せな気持ちになれる、良いものよ」


月の女神「甘くてふわふわかぁ……。いいなぁ、私も食べてみたい!」

月の女神「それでそれで? ビジュツカンっていうのは?」


千早「絵画や彫刻などの美術品を展示している場所よ。そこでいろいろな作品を見て、アーティストとしての感性を磨いているの。そういうことが、歌の表現力を高めることにも繋がると思うから」


月の女神「えっと、よく分かんないけど、チハヤはあーてぃすとっていうのになりたいの? あいどるじゃなくて?」


千早「それは……」

千早「私にとって、アイドルというのはただの通過点に過ぎないから。いずれはアイドルを辞めて、ひとりの歌い手として活動していきたいと思っているの」


月の女神「あ、知ってる! 歌を歌うのは吟遊詩人っていうんでしょ? 青き星にいるって聞いたことあるよ!」


千早「吟遊詩人とは少し違うかもしれないけれど……」


月の女神「そっかぁ、チハヤは歌が好きなんだねー」

月の女神「なんか、チハヤのことを少し知ることができて嬉しいな!」ニコッ


千早(本当に嬉しそうな顔をするのね)


月の女神「……私ってさ、生まれてからずーっと月で過ごしてきたから、この月以外の世界のことは、なーんにも知らないんだぁ」

月の女神「それに、ここには私と同年代の子なんて全然いないし」

月の女神「だから、チハヤのお話が聞けて、私嬉しかったよ?」

月の女神「えへっ、ありがとう、チハヤ!」ニコッ


千早(……そんな顔をしないで)

千早(今から私はあなたを倒さなければならないのに……)


月の女神「ゴメンね、時間取らせちゃって。続き、しよ?」チャキッ


千早「………」チャキッ


587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:19:22.82 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


暗黒魔道士「……ファイガ」


ボオオオゥッ!!


美希「!」

美希「シェルっ!」バッ


ゴオオオ!! ボウッ!!


美希「きゃっ!」ヨロッ

美希「あつつ……」

美希「……むー、威力が強くてミキのシェルじゃ防ぎきれないの……」


暗黒魔道士「……サンダガ」


ズガガピシャァァン!!
 

美希「……おっとっ!」ヒョイッ

美希「……ふー、危なかったの……」


588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:21:46.93 ID:rmMzSg3nO

暗黒魔道士「……まったく、この暗闇の中でここまでボクの魔法に対応するなんて流石だよ、ミキ」

暗黒魔道士「本当は見えているんじゃないのかい?」


美希「そんなことないの。こーんな真っ暗じゃ、ネコさんでもない限り見えないって思うな」

美希「あっ、もしかしてアンコクさんってネコさんなの?」


暗黒魔道士「ねこ……? なんだい、それは」


美希「えっ、知らないの? すっごくカワイイのに」


暗黒魔道士「知らない……。ボクは知らないことだらけだ」

暗黒魔道士「でも、それでいい。ボクには……この暗闇さえあれば十分だ」

暗黒魔道士「この暗黒がボクの全てで、ボクに力を与えてくれるんだ……!」ゴゴゴゴ


美希「ふーん、暗いところが好きだなんて変わってるんだねー」


暗黒魔道士「ミキ。いつまでも余裕でいられるとは思わないことだ。君は今確実に、死へと向かっている」


美希「………」


589: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:25:05.68 ID:rmMzSg3nO

美希「ミキもやられてばっかりじゃないよ。今度はこっちのターンなの!」

美希「……けがれなき天空の光よ、フジョウを照らし出せなの!」バッ

美希「ホーリー!」


キラキラキラ…!


暗黒魔道士「………」



…ドゴゴゴオオンッ!!




暗黒魔道士「……残念だったね」


美希「…………えっ?」


暗黒魔道士「暗闇でもボクからは君の行動は手に取るように分かる」

暗黒魔道士「君の詠唱をじっくり見てそれを躱すなんて、今のボクにとってはとても簡単なことなんだ」


美希「む~、ちょっとくらい当たってくれてもいいのに~」


暗黒魔道士「君の光はボクには届かない」

暗黒魔道士「君はその輝きを失い、闇に飲み込まれてしまうんだ」


590: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:27:04.73 ID:rmMzSg3nO

暗黒魔道士「……バイオ」


ブニューン


美希「!」ダッ

タタタタ


美希「そんな方向に撃っても当たらないの!」


暗黒魔道士「ブリザガ」


コォォ…!


美希「……こっちなの!」ダッ


シャキィィン!!


美希「うん、なんとなく真っ暗にも慣れてきたってカンジ」

美希「じゃあ、次はミキの番だよ!」


暗黒魔道士「残念だけど君のターンは回ってこない」

暗黒魔道士「……トルネド」


ビュオオオッ!!


美希「なんでー!? アンコクさんばっかりズルいのー!」

美希「にゃーーーーっ!?」フワッ


…ドサッ


591: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:28:39.43 ID:rmMzSg3nO

美希「うぅ、いたた……」


暗黒魔道士「言っただろう、ミキ。君という天才でも敵わないものがあるということを教えてあげるって」


美希「………」

美希(こんなのおかしいの。ミキがひとつのことをする間にアンコクさんは2回も3回も魔法を使えるなんて)

美希(絶対に何かズルしてるって思うな!)


暗黒魔道士「考えても無駄だよ。おそらく君にはたどり着くことはできない」

暗黒魔道士「何も見えないまま、何も分からないまま君はここでボクに負けるんだ」




美希(何か……何かきっとあるはずなの。アンコクさんが何回も続けて魔法を使える理由……)


592: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:30:42.24 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


ダークバハムート「………」ゴゴゴゴ


貴音「………」ゴゴゴゴ





貴音(……動けない……)

貴音(ばはむーと殿の闘気にあてられている、というのもありますが……)

貴音(何より不気味なのは、一見ばはむーと殿は隙だらけのように見受けられるということ)

貴音(『遠慮なく撃って来い』と言わんばかりの挑発)

貴音(かといって安易に動けば、その瞬間にあの方の鋭い爪がわたくしの体を引き裂く光景が容易に想像できます)

貴音(あの方の強さをわたくしは知らない)

貴音(知らないはずなのに、解る)

貴音(こうして対峙しただけで理解してしまう)

貴音(神を前にして、いかに己が無力なのかを)



ダークバハムート「……どうした、タカネよ。そうして立っているだけでは我は倒せぬぞ?」


貴音「……承知しております」


ダークバハムート「為すべきことを理解していても、恐怖に縛られて動けない……」

ダークバハムート「不便なものだな、心とは」


貴音「………」


ダークバハムート「ククッ……!」


593: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:33:05.64 ID:rmMzSg3nO

貴音(ともかく、こうしていても仕方がないのは事実。ここは……)


貴音「………」ザッ


ダークバハムート「……漸く一歩」

ダークバハムート「その一歩を踏み出すのにどれだけ時間を要したのだ?」


貴音「っ……!」ゾクッ

貴音(あの方にほんの一歩近づくだけで、少しずつ精神が削られていくのが分かります)

貴音(よもやこれまで禍々しい闘気とは……)


ダークバハムート「……だが、そう悲観したものでもないぞ? タカネよ」

ダークバハムート「大抵の者は我の殺気を感じたと同時に逃げ出すであろう。動くことすらままならずに気を失う者もいるやもしれぬ」

ダークバハムート「その我の殺気に僅かとはいえ近づいたのだ、誇りに思うがいい」


貴音「……はい」

貴音(しかし……)




ダークバハムート「……それだけでは、足りぬ」ユラ…


ーーフッ…




貴音「!!」


594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:37:02.46 ID:rmMzSg3nO

貴音(消えた!? いえ、考えられない速さで……!)


「……後ろだ」ブォンッ


貴音「! っ……ぶりんく!」バッ


ズシャアッ!!


ダークバハムート「………」

ダークバハムート「…………ふむ。幻影、か」ザシュッ



貴音「っ……はあっ、はあっ……!」ドクンドクン



ダークバハムート「今のは悪くなかったぞ。最良の判断であろう」

ダークバハムート「タカネ、お前は生き延びた」


貴音「っ……!」

貴音(一つ選択を間違えば、即ち、死……!)


ダークバハムート「今更何を抜けたことを。神に刃を向けるとはそういうことだ」


貴音「そう、ですね……」

貴音「!?」

貴音「ばはむーと殿……まさか、先ほどからわたくしの思考を……?」


ダークバハムート「これはすまぬ。申してなかったか」

ダークバハムート「我にはお前の心の声が聴こえる」

ダークバハムート「美しく気高き者が恐怖に怯える声、というのも悪くはないな……」

ダークバハムート「……ククッ!」


貴音「く……!」

貴音(ここにいるのは、もう以前のあの方ではない)

貴音(闇に堕ちた魔の者……)


貴音(……邪神、だーくばはむーと……!)


595: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:40:55.15 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


律子「はあああっ!!」

ブンッ!! ビュンッ!! ブォンッ!!


クルーヤ「ふっふっふ!」ヒョイヒョイ


律子「く……!」ブンッ


クルーヤ「おっと」ヒョイッ



春香「お、お姉ちゃんの剣が……全部かわされてる……!?」



クルーヤ「良い剣捌きだ、リツコ。君は強い」


律子「……完全に見切っておいてよく言うわよ、まったく……」


クルーヤ「いやいや、本当だってば。剣で君に敵う者はもうこの世にはいないんじゃないかなぁ、きっと」


律子「お世辞はいいです。もう理解しましたから」


クルーヤ「え?」


律子「全力でいかないとあなたには勝てない、って……!」ゴゴゴゴ


クルーヤ「……ほー」


春香「あれって確か……!」


律子「……赦されざる者の頭上に星砕け、降りそそげ!」バッ


律子「……メテオッ!!」



ヒュー… ヒューー…

ヒューー… ヒュー… ヒュー…


ドゴゴゴゴゴゴゴッ!!!


596: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:44:25.56 ID:rmMzSg3nO

律子「………」


春香「お姉ちゃんっ!」タタタタ

律子「春香……」

律子「あなたはそこで見ていて。ここは私がやるわ」

春香「で、でもっ! あの人は私たちのお父さんなんですよ!」

律子「…………ふぅ」


律子「いい? 春香、よく聞いて」

律子「あなたがあの人にお世話になったのは知っているし、設定上私たちの父親だということも一応理解したつもり」

春香「だったら!」

律子「私たちはこの世界の人間ではないのよ」

春香「! そ、それは、分かってます……けど……」

律子「小鳥さんを倒さないと元の世界へ帰れない。アイドル活動だって再開できないの」

春香「………」

律子「あの人がわざわざプロデューサーに扮して私たちに近づいたのはなんのため? 小鳥さんの元へ行かせまいと私たちの足止めをするために違いないわ」

律子「それにおそらく、あの人を倒さない限りこの階は突破できない」

春香「う……」



……ザッ


クルーヤ「……うーん、まあ概ねリツコの言うとおりかな?」


律子「!」

春香「お、お父さん!」


597: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:47:42.63 ID:rmMzSg3nO

律子「あんまり期待してなかったけど、やっぱりピンピンしてるわね……」

律子「メテオって最強の魔法じゃなかったの……?」


クルーヤ「最強の魔法には違いないよ。それに僕にだってまったくダメージがなかったわけじゃないさ」

クルーヤ「……ただ、リツコにはメテオを使う心構えがまだ出来ていない」

クルーヤ「その威力を完全に引き出せてはいないんだ」


律子「心構え……? どういうこと?」


クルーヤ「うーん、そうだなぁ……」ポリポリ



クルーヤ「ヒント1、『メテオは封印されし魔法である』」


律子「えっ?」


クルーヤ「ヒント2、『光あるところに闇あり。その逆もまた然り』」


春香「お父さん……?」 


クルーヤ「ヒント3、『天より降りそそぎし隕石、赦されざる者を討ち滅ぼす』」


律子「………」

春香「えっと、なぞなぞ……ですか?」


クルーヤ「まあ、そんなところかな?」


598: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:51:57.11 ID:rmMzSg3nO

律子(メテオの真の力……? あの図書館の蔵書にはそんなこと一言も書いてなかったわよ?)

律子(……そういえば、貴音もメテオを使えたはずよね)

律子(生前あずささんが使ったメテオも、相当の威力だった)

律子(今の私のそれとは比べものにならないくらいの)

律子(もしかして……)

律子(私が魔道士ではないから真の力とやらを発揮できないとか?)

律子(だとしたら、どうしようもないじゃない……)



クルーヤ「悩むのは必要なことだ。悩んで悩んで、人は強くなる」

クルーヤ(……さて、どうしようかな。僕の目的のためには二人に剣を取ってもらわないといけないんだけど……)チラッ


春香「うぅ……」


クルーヤ(リツコがやる気満々なのはいいとして、問題はハルカか)

クルーヤ「………」

クルーヤ(……あの子は優しい子だ)

クルーヤ(多少スパルタになっちゃうけど、ハルカをやる気にさせるには、たぶん……)


599: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:55:07.88 ID:rmMzSg3nO

クルーヤ「……よし、それじゃあそろそろお父さんの方からも行かせてもらおうかなっ?」チャキッ


律子「!」


クルーヤ「……大気満たす力震え……」


…ヴヴヴ…!!


春香「これは……!」


クルーヤ「我が腕をして閃光とならん……」


律子「……来るっ……!」チャキッ



クルーヤ「ーー無双、稲妻突き」ブォンッ



律子(速……!)



律子(ガードが間に合わなーー!)



ーーキィン!!





律子「………………え?」


600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 20:58:46.78 ID:rmMzSg3nO

春香「……間に合って、良かった……!」チャキッ





律子「春香……!」



春香「いくらお父さんでも、私の大事なお姉ちゃんを傷つけることは許せませんっ!!」


律子「春香、あなた……」

律子「私を守ってくれたのね。……ありがとう」

春香「お礼なんてそんな……。私のたった一人のお姉ちゃんですから!」ニコッ

律子(……今の技に反応出来なかった……)

律子(みんな私のことを強いって言うけれど、私には何かが足りないような気がする)

律子(根本的な何かが……)



クルーヤ(僕が授けた技とはいえ、反応したのか、閃光の速度に……)

クルーヤ(試練の山で会った時とは本当に見違えるようだよ、ハルカ)

クルーヤ(新たな世界。それを創るのは君たちだ、ハルカ、リツコ)


クルーヤ「よーし! それじゃあお父さんが少し稽古を付けてあげよう!」



春香「受けて立ちますっ!」チャキッ

律子「やるしかないわね……!」チャキッ


601: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:02:03.05 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


魔人兵「……発射!!」コオォ


雪歩「ひぃぃ~~っ!!」タタタタ


ズドドドドドドドオオンッ!!




魔人兵「ん、今度はあっちか」チャキッ

魔人兵「……発射っ!!」コオォ


雪歩「こ、怖いですぅ~~!!」タタタタ


ドドドドドドカアアン!!




魔人兵「逃さないぞ!」チャキッ

魔人兵「そりゃっ!」コオォ


雪歩「うええぇぇぇぇんっ!!」タタタタ



ズドオンッ!! ドゴオンッ!! ドガアアアンッ!!!



602: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:07:00.89 ID:rmMzSg3nO

…ボロッ


魔人兵「……やれやれ、ちょっと周りを破壊しすぎたかな?」

魔人兵「でも、あの子が面白いほど逃げ回るもんだからつい……」

魔人兵「おーい、生きてるかーい!!」





雪歩「……うぅ……ぐすん……」





魔人兵「うーん……なんだか弱いものイジメみたいでかわいそうになってきたなぁ……」

魔人兵「でも、これも仕事だ。恨まないでくれよ?」ジャキッ



雪歩「ひうっ!?」ビクッ

雪歩(に、逃げ場……!)キョロキョロ

雪歩(……そんなの、もうないよね……。穴を掘って隠れるだけの地面も、盾になりそうな壁も……全部、壊されちゃった……)

雪歩(どうしよう……。アダマンアーマー無しであんな砲撃が当たっちゃったら、きっと私なんて粉々の木っ端微塵だよぅ……!)

雪歩(……ああ、このまま私、殺されちゃうのかな……)

雪歩(せっかく……せっかくみんなみたいに勇気が持てるようになったのに……)

雪歩(……けっきょく私は、アダマンアーマーに守られてないとなんにもできないダメダメさんなんですぅ……)



魔人兵「……さよなら、だ」ドゴォン!

ゴオオオオ…!!





雪歩(みんな、ごめんね……。私はもう……)




…ズドオオオオオンッ!!!




603: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:11:27.02 ID:rmMzSg3nO

雪歩「………」

雪歩「………」

雪歩「………」

雪歩「………」



雪歩「……ぅ……」ピクッ

雪歩「……わ、私……」

雪歩(……まだ……生きてる……?)

雪歩(さっきの砲撃が直撃しちゃったはずなのに……)



…チカッ



雪歩(? 胸元で何か光って……)

雪歩(あ……これ、地下渓谷へ来る前にプロデューサーが作ってくれたネックレスだ……)


…チカッ


雪歩(控えめだけど、不思議な光……)

雪歩(見てるとあったかくなってくるような……)

雪歩(……もしかして、私を守ってくれたの……?)




『…………もう、諦めてしまわれたのですか?』




雪歩(えっ……? ネックレスから声が……)

雪歩(でも、この声って……!)


604: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:14:58.20 ID:rmMzSg3nO

『何かに守られていないと敵に立ち向かうことすらできない……。私がお慕い申したユキホ様は、そんなに弱い方ではなかったはずですわ』


雪歩「あ……あのっ!」


『確かに、ここ最近のあなたは戦いに於いてずっと、魔物の攻撃をものともしない堅固な鎧に守られていました』

『……けれど、思い出してください』

『ファブール城での戦いの時も、磁力の洞窟での戦いの時も……』

『あなたは己の身ひとつで勇敢に敵に立ち向かっていったはずです』


雪歩「あっ……アンナさん……ですよね……?」グスッ


『………』

『どうか、本当の勇気を。……あなたは、本当はとても強いお方』


雪歩「アンナさん、私っ…………!」


『遠く離れた場所から、私はいつでもあなたを見守っていますわ……』


雪歩「ま、待って! 行かないでくださいぃぃ!」



雪歩「私……私っ……!」

雪歩「まだ、あなたに『ごめんなさい』も『ありがとう』も言えてないのに……!」







…ガシャアン!!



雪歩「!」


605: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:22:35.32 ID:rmMzSg3nO

魔人兵「へぇ、今度こそ直撃したと思っていたけど、まだ息があるのか。なかなかタフなんだなぁ」


雪歩「………」



雪歩(本当の、勇気……)ギュッ



雪歩「っ……!」スクッ


魔人兵「……ん?」


雪歩「……!」チャキッ


魔人兵「……おや、反撃する気になったのかい?」


雪歩「私は本当に、ひんそ~でダメダメで……」

雪歩「でも、そんな私にも大切な人たちがいて……」


……ザッ



雪歩「その人の想いに、私は応えたいっ……こんなところで終わりたくないですぅっ!」グッ



魔人兵(……表情が、変わった……?)



雪歩「私は…………『もう』、負けませんっ!!」



魔人兵「何があったのか知らないけど、恐怖に立ち向かおうとするその心構えは立派だ」

魔人兵「でも、君に不利な戦況は変わらない」

魔人兵「どう覆すつもりなのかな?」



雪歩(恐怖に立ち向かうのは、自分。いつだって自分との戦いなんだ……)

雪歩(私は、私にできることをやるだけ……)


606: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:26:14.38 ID:rmMzSg3nO

魔人兵(なんだろう……。今のあの子は何かをやってくれそうな……)

魔人兵(そんな予感がする)

魔人兵(雇われの身として仕事を完璧にこなさなければならない立場なのに、なぜこうもわくわくしてしまうんだろう……)


魔人兵「……オレの砲撃、かわせるものならかわしてみなよ……!」ジャキッ



魔人兵「……発射っ!!」

ズドドドドドドドッ



雪歩(アンナさん、私、やりますっ……!)チャキッ

キラキラ…!



魔人兵(さっきと同じ……また妙な力をスコップに纏わせた……)

魔人兵(それも、さっきの数倍の輝きだ……!)



雪歩「えーーーーいっ!!」ブンッ



ブォンッ!!


…ズドドドドドドドドッ!!!



魔人兵「! 砲撃の軌道を、スコップ一本で逸らしたのか……!」


…ドガアアアンッ!!!



607: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:30:32.62 ID:rmMzSg3nO

雪歩「はぁ、はぁっ……」


『……いいかい雪歩。気っていうのは誰だって自分の体の中に持っているものなんだ』

『大切なのは、どうやってそれを外へ出してやるか』



雪歩(真ちゃん……ううん、お師さん……!)


『頭で考えるんじゃなくて、感じるんだ。自分の中に揺らいでいるエネルギーを解放するイメージを思い描くんだよ』



雪歩「……そのエネルギーを……」チャキッ







雪歩「………………スコップに込めて、撃つッ!!」ブンッ






キラキラ…!


ゴオオオオオオオオッ!!



魔人兵「こ、これは……!」



ドゴオオオオオオオオンッッ!!!




608: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:34:06.47 ID:rmMzSg3nO

魔人兵「………」 

魔人兵「…………くっ」ボロッ



魔人兵(……オレの装甲が、破られた……!?)



魔人兵(今の、ベヒーモスのヤツがこないだ会得した衝撃波に似ていた……)

魔人兵(だが、威力は彼女のそれの比じゃない……)

魔人兵(オレの最大兵器、波動砲にも匹敵する……!)




雪歩「……はぁ、はぁ、はぁっ……!」

雪歩「……な、なんとか、一矢報いましたぁ……!」



魔人兵(一矢報いた? 冗談じゃない……)

魔人兵(オレに残された装甲を合わせて考えても、今ので互角……いや)

魔人兵(あの子のスコップを包むオーラの力は未知数だ)

魔人兵(これはひょっとすると……)



雪歩「……!」チャキッ



魔人兵(かなり危険な状況だ……)

魔人兵(……なのに、「見てみたい」と思ってしまっている自分がいる)



魔人兵(あの子の……あいどるの底力ってやつを……!)


609: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:37:14.60 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B2F ー



ベヒーモス「うおおおおっ!!」ブンッ


ドゴオオオンッ!!


真「うりゃあああっ!!」ブンッ


ドゴオオオンッ!!



ベヒーモス「……ふんっ!」ブワッ


バキィッ!!


真「ぐっ!?」ヨロッ


ベヒーモス「……そらっ!!」ビュッ


真「……っとと!」ザッ

真「虎煌拳ッ!」


ゴオオオオッ!!


ベヒーモス「ちっ……!」バシッ


ズドオオンッ!!



真「やあああああっ!」タタタタ

タンッ…

真「……雷煌拳ッ!!」バリッ


ズガガガガッ!!


ベヒーモス「ぐぅ……っ!」ヨロッ


真「幻影……!」


ベヒーモス「甘いっ!」ガシッ

ベヒーモス「うらっ!」ブンッ



真「うわああぁっ!?」



ヒューー…


クルンッ スタッ


真「…………はぁ、はぁ、危なかった……」


610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:39:52.06 ID:rmMzSg3nO

ベヒーモス「ちっ……しぶといねぇ、マコト」

ベヒーモス「アタイの攻撃にしっかりついてくるその運動量、流石だよ」


真「……ははっ、そっくり言葉を返すよ、ベヒーモス」

真「君の圧倒的なパワーには本当に驚かされる。まさかこんなに苦戦することになるとは思わなかったよ」




真「……でも、こうも思うんだ」

真「『もっとこの時間が続いて欲しい』ってさ」


ベヒーモス「………」


真「もちろん、ずっとここにいるなんてそんなわけにはいかない。ボクは小鳥さんのもとへ行かなくちゃならないから」

真「ただ、君との勝負が思った以上に楽しくってさ。この勝負もいつかは終わっちゃうんだって思うと、少しだけ決着をつけるのが惜しい気がして……」


ベヒーモス「………」

ベヒーモス「……あんたは不思議だね」


真「えっ?」


ベヒーモス「アタイのパワーを見て怖気づくどころか、真っ向から勝負を挑んで来る。それも、アタイのパワーに匹敵するほどの技で」

ベヒーモス「だからアタイはもっと強いパワーをあんたにぶつける。当然マコトも技の威力を更に上げて対応してくる」

ベヒーモス「アタイはこれでも親衛隊の隊長だ。アタマ張ってるからには負けるわけにはいかない」

ベヒーモス「でも……そんな立場なんて関係なく、あんたとのやり取りをアタイも『楽しい』って思っちまってる」

ベヒーモス「……あんたのそのまっすぐな気持ちにそう思わされたんだ、きっと」

ベヒーモス「ふふっ、アタイもまだまだ若いねぇ……」ニヤリ


真「……へへっ」ニコッ


611: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:47:00.89 ID:rmMzSg3nO

ベヒーモス「だが、ここで疑問に思うことがひとつあるんだ」

ベヒーモス「あいどるになるヤツってのはみんなあんたみたいに腕が立つ者ばかりなのかい? アタイがコトリ様から聞いたあいどる像とは随分違うみたいなんだけど……」


真「あー……うーん……」

真「えーっと……ほ、ホラ、修行して強くなったんだよ、きっと!」


ベヒーモス「ふーん……まあ、アタイたちと戦うつもりだったんなら修行もするだろうけどさ」

ベヒーモス「でも、衣装はどうしたんだい? あいどるってのはもっとこう……ふ、フリフリのカワイイ衣装とかを着るもんじゃないのかい?」


真「……そりゃあ、ボクだってフリフリの衣装を着て戦いたいよ」

真「でも、今のボクにはあんまり似合わないかなって」

真「でも、いつかはそういうキャピキャピの衣装が似合う女の子に絶対なるんだ!」


ベヒーモス「………」

ベヒーモス「……最初から思っていたけど、マコト、あんたまさか、女なのに男っぽく見られるのが悩みだったりするのかい?」


真「えっ! どうして分かったの!?」


ベヒーモス「あんまり自分で言うのもなんだけど、実は……アタイもあんたと似たような境遇なんだ」

ベヒーモス「だいたいのヤツはアタイのことをレディとして扱ってくれやしない」


真「そっか……君もそうだったんだね。すっごく分かるよ、その気持ち」


ベヒーモス「あいどるになるためには可愛らしさも必要だって聞いた。そうだろ? マコト」


真「うん。だからこそ、ボクはもっともっと女の子らしくならなきゃいけないんだ!」


ベヒーモス「それはアタイだって同じだ。アタイも一応、その……お、女の子なんだからね!」

ベヒーモス「でも、だとしたらこうも考えられる」

ベヒーモス「アタイたちは似た者同士、つまり……」




ベヒーモス「あんたとアタイの勝負は、女の子らしさを賭けた戦いだ、ってね……!」バーン




真「な……なんだってー!?」ガビーン


612: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:49:56.24 ID:rmMzSg3nO

ベヒーモス「………」


真「………」





ベヒーモス「勝負ってのは常に非情、そして絶対だ」


真「……うん、分かってる。この勝負、勝った方が……」


ベヒーモス「……女子力が高いってことになる……!」


真「………」ゴゴゴゴ


ベヒーモス「………」ゴゴゴゴ



ベヒーモス「出し惜しみは無しだ。アタイの女子力を全てあんたにぶつけてやるよ……!」


真「望むところだ! ボクの方が女の子らしいってこと、証明してやるっ!」グッ


真「うおおおおっ!!」タタタタ






真「……きゅんきゅん☆正拳突きぃッ!!」ブォンッ


ベヒーモス「ラブリー☆ショルダータックルァァ!!」ズドドド



…ドゴオオオオォォオオンッ!!!



613: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:52:22.08 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


レッドドラゴン「おりゃっ!!」ブンッ


あずさ「プロテス~」

パキーン!


レッドドラゴン「うらあああっ!!」


ドゴオッ!!


あずさ「きゃっ……!」ヨロッ


レッドドラゴン「もらったァ! 熱せ」


あずさ「ぶ、ブリザガ~」バッ


コォォォ…シャキィィン!!


レッドドラゴン「モガッ!?」ジタバタ



あずさ「!」

あずさ(今……! 今このチャンスに『あの魔法』が使えれば……!)

あずさ(でも、出てこないのよねぇ……)

あずさ(本当に、なんで思い出せないのかしら~……?)


レッドドラゴン「んにゃろぉ!!」ブンッ


バキィンッ!!


レッドドラゴン「ふぅ……」


614: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:55:11.11 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「……どうした、アズサ?」


あずさ「………」


レッドドラゴン「ブリザガで口を封じられてたオレ様は、あんたからすれば絶好の叩き時だったはずだぜ」

レッドドラゴン「それをしなかったってことは、まだ思い出せないんだな? 例の魔法をよ」


あずさ「………」


レッドドラゴン「言っておくが、勝負ってのは運の要素も強ええ」

レッドドラゴン「あんたが今だに思い出せないってんなら、それはあんたに武運が無かったってことになる」

レッドドラゴン「ここからはもう、手加減はしねーぜ!」



レッドドラゴン「コトリ様の親衛隊、特攻隊長として、オレ様は……全力であんたを撃つ!!」



あずさ「!」


615: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 21:57:29.50 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「逃げ場なんて残さねえ。この階全体を覆い尽くすくれーの、特大の熱線だ……」

レッドドラゴン「はあああああっ……!!」ゴゴゴゴ



あずさ(勝負を決める気なのね、レッドドラゴンさん)

あずさ(思えば、今までだって私を消せる場面は何回もあったはず)

あずさ(ここまで待ってくださったレッドドラゴンさんの期待にも応えられず……)

あずさ(……みんなとの約束も果たせないまま、終わってしまうだなんて……)

あずさ(そんなの……)



レッドドラゴン「足掻いてみせろや! アズサァァァッ!!」

ゴオオオオオォ!!!




あずさ(……そんなの、悔しすぎるわ……!)




あずさ(お願い……!!)



ゴオオオオオォッッ!!!



あずさ(………………私に、力を…………!!)ギュッ











……キラッ




あずさ「…………え?」


616: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:01:58.10 ID:rmMzSg3nO
ー 地球 ファブール城上空 ー


…ビュオオオ


ルビカンテ「………」

バルバリシア「………」

ルビカンテ「………」

バルバリシア「………」



バルバリシア「……なに黄昏れてるのよ、ルビカンテ」

ルビカンテ「……いや、良い風だと思ってな」

バルバリシア「ふふっ、そんなの当たり前じゃない。この『風のバルバリシア』の背中に乗って感じる風なんだから!」

ルビカンテ「風のバルバリシア……か。懐かしい呼び方だ」

バルバリシア「他人事みたいに言わないでくれる? あなたの気まぐれのせいで私のこの二つ名ももう必要なくなっちゃったんだから」

ルビカンテ「平和な世界はお気に召さなかったか?」

バルバリシア「そういう意味じゃないわよ。……意地が悪いわねぇ」




カイナッツォ「あおいぃぃ~~とりいぃぃいいい!!!」




スカルミリョーネ「……だ、黙れカイナッツォ、み、耳が、腐…る……!」フラフラ

カイナッツォ「まっすぐ飛ばんかゾンビめ! 耳どころかお前は全てが腐っているだろうが!」

スカルミリョーネ「……そ、そんなこと言うと、振り落とす…ぞ……?」ブォン

カイナッツォ「なっ!? ちょ、ヤメロ、私を殺す気か!!?」ガシッ

スカルミリョーネ「……し、死してなお恐ろしい土のスカルミリョーネの力、とくと味わうがい…い……!」ブォンブォン

カイナッツォ「ぎゃあああ! ふざけるなあああぁぁああっ!!!」



バルバリシア「……あの二人、あんなに仲が良かったかしら?」

ルビカンテ「ふ、あいどるたちの影響かもな」


617: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:06:45.50 ID:rmMzSg3nO

バルバリシア「それにしてもカイナッツォ、相当酷い歌だったわよ? スカルじゃないけど耳がもげちゃいそうだったわ」

ルビカンテ「あれでもヤツなりの精一杯なのだろうが、確かに聴くに耐えんな」

カイナッツォ「……おい、それは聞き捨てならんぞお前たち! 私の歌を馬鹿にするのはいい。だがあの小娘の歌を馬鹿にするのは許さんっ!!」

バルバリシア「誰もチハヤの歌をバカにしてなんかいないじゃない。あなたが歌うと台無しって言ってるのよ!」

カイナッツォ「くっ……!」

カイナッツォ「だ、だが、歌を聴いて私は一気にヤツのことを気に入ったぞ!」

カイナッツォ「あれだけ歌に魂を込めて歌える者など世界中を探してもいないだろう。チハヤこそが最強のあいどるだ! 間違いない!」

バルバリシア「うーん……まあチハヤもなかなかいいセン行っているとは思うけど、やっぱりミキには敵わないわねぇ」

スカルミリョーネ「……あ、アズサが一番……」

ルビカンテ「バカめ、イオリに勝てるわけがなかろう」



カイナッツォ「………」

バルバリシア「………」

スカルミリョーネ「………」

ルビカンテ「………」



カイナッツォ「……まあ、なんだな。私たちもすっかりあいどるたちに感化されてしまったものだな」

スカルミリョーネ「……そ、それは仕方のないこ…と……」

バルバリシア「当然よ! だってあの子たちは人を惹きつける力を持っているもの」

ルビカンテ「……不思議なヤツらだ」


618: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:12:46.05 ID:rmMzSg3nO

カイナッツォ「ところでルビカンテ。この見回りとやら、いつまで続ける気だ? かれこれ数時間は飛んでいるぞ?」

バルバリシア「まあ、実際に飛んでるのは私とスカルなわけだけど」

スカルミリョーネ「……い、生き延びて迷子になった人間、助け…る……」

ルビカンテ「アン、といったか。あのトロイアの神官の手助けをしているだけだ。世界を一回りしたら休もう」

カイナッツォ「まったく、我々四天王がまさか人間の小間使いに駆り出されることになるとはな……」

ルビカンテ「そう言うな、カイナッツォ。戦いをやめたからといってすぐに平和が訪れるわけではないのだ」

カイナッツォ「ふん、まあいい。こんな風に空を飛ぶのも、たまには悪いものでもないからな」




スカルミリョーネ「ーーっ!」ピクッ




カイナッツォ「……ん? どうしたスカル。手足でも腐り落ちたか?」

スカルミリョーネ「……よ、呼んで…るっ……!」

バルバリシア「呼んでるって、人間でも見つけたの?」

スカルミリョーネ「……み、南だ、ついて来い、バルバリシア……!」

ビュウゥゥゥーーーー!!


カイナッツォ「のわああぁぁあっ!! いきなり飛ばすなぁーーっ!!」



ルビカンテ「ただ事ではなさそうだな。……おい、バルバリシア」

バルバリシア「……はいはい、仰せのままに」


ビュオオオッ…!!



619: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:18:39.07 ID:rmMzSg3nO
ー ミシディア 祈りの館 ー


長老「………」

長老「………」

長老「………」

長老「………」



…ガタンッ

ドタドタドタッ!!



長老「………」

長老「……祈りの最中じゃ、静かにしてくれんかのぅ」



スカルミリョーネ「……お、お邪魔しま…す……」ペコリ

カイナッツォ「……いたたた……!」

カイナッツォ「まったく、いったい何なのだスカル! この辺りはさっき見回っただろう?」


…スタスタ

バルバリシア「相変わらず田舎よねぇ、ミシディアって」キョロキョロ

ルビカンテ「……ほう、あの時の翁か」



長老「誰かと思えば、和平を結んだ魔物たちか。何か用かの?」



スカルミリョーネ「……あ、アズサと話がしたい……」

カイナッツォ「はぁ!? ズルいぞ貴様っ!」



長老「お主が、か?」



スカルミリョーネ「……と、時が、来たのだ……。あ、アズサの本当の力を目覚めさせる時が……!」



長老「……ふむ、そういえばお主らもあいどるたちと関わりがあったんじゃったか」

長老「丁度、ここで共に祈りを捧げていたリヴァイアサン殿たちが喚び出されてしまって、月への祈りの力が弱まっていたところじゃ」

長老「祈りは全ての者に平等。お主の想い、届けるが良い」



スカルミリョーネ「……お、恩に着…る……!」


620: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:22:51.23 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


あずさ(……)

あずさ(……………)

あずさ(…………………)



あずさ(…………私……?)

あずさ(レッドドラゴンさんの全力の熱線を受けて……)

あずさ(……生きて…る……?)



『…………サ……アズサ……!』



あずさ(この声は……)

あずさ(……もしかして、スーさん?)


『……そ、そう…だ……』


あずさ(まあ、お久しぶりねぇ~♪)

あずさ(……あら? でも、スーさんたちは地球でお留守番じゃなかったかしら?)


『……み、ミシディアから、声を届けてる……』


あずさ(ミシディア……って確か、亜美ちゃん真美ちゃんの故郷ね。なぜそんなところから?)


『……あ、あまり時間は無い。必要なことだけ言う…ぞ……?』


あずさ(あらあら、何か焦っているみたいねぇ。スーさんにしては珍しいわ~)


『……あ、アズサ。生き返る時が来た……!』


あずさ(……ええっ!? そ、それはどういうことかしら~?)


621: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:28:19.91 ID:rmMzSg3nO

『……あ、あの時。ゾットでリツコ様と対峙したアズサがーーーを使って力尽きた時。お前の肉体は、正確には生きていた……』


あずさ(あ、あの、今なんて? スーさん、私、なんて魔法を……)


『……だ、だが、お前の魂は肉体を離れて彷徨う寸前だった。その魂を肉体に繋ぎ止めるため、オレの魂を一時的にアズサに貸した……』


あずさ(そうだったの? ということは私、死んでしまったわけではなかったのね……)


『……な、仲間に訊けば分かる。お前の心臓は、あの時点で動いていたはず……』

『……で、でも、オレの魂、返してもらう時が来た……』


あずさ(スーさんに魂を返してしまったら、私は……どうなってしまうの?)


『……し、心配するな、アズサ。今のお前なら、人間の肉体に戻れる。迷えるお前の魂は、お前の強い願いによって再び、その身体に還る……』


あずさ(まあ……!)


『……い、一時的にゾンビとなっていたお前は、ーーーを忘れてしまっただろう。ーーーは光の者にしか扱えない魔法だから……』


あずさ(スーさん、よく聞こえないわ。お願い、もう一度……)


『……つ、強く願え。想いは、必ず……!』


あずさ(……スーさん……)



622: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:31:34.80 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「……はぁ、はぁっ……!」ヨロッ

レッドドラゴン「ど、どうだ、これがオレ様の全力だぜ!」

レッドドラゴン「参ったかアズサ!」



レッドドラゴン「………」



レッドドラゴン「……ちっ、影も形も消えちまいやがったか……」

レッドドラゴン「アズサのやつ、魔法が間に合わなかったんだな……」

レッドドラゴン「…………ちくしょう」

レッドドラゴン「勝ったってのに、なんでこんなに後味が悪いんだ!」



レッドドラゴン「………」



レッドドラゴン(……あばよ、女神様)

レッドドラゴン(初恋、ってやつだったぜ)


623: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:33:48.92 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「……さて、いつまでもつっ立ってても仕方がねぇ。他の連中の様子でも見てくっかな」



……ザッ




レッドドラゴン「……っ!」ビクッ

レッドドラゴン「お、お前……!」



「……うふふ、私、なんとか生きてたみたいです♪」



レッドドラゴン「あ、アズサ!? よ、良かった!!」

レッドドラゴン「じゃねえ、どうやってオレ様の熱線を防ぎやがった!?」



あずさ「さあ……? ごめんなさい、あんまり覚えてないんです~」



レッドドラゴン「くそっ、可愛い!」

レッドドラゴン「け、けど、もう一発くれーなら全力の熱線を撃てないわけでもねぇ」

レッドドラゴン「今度こそジ・エンドだぜ!」



あずさ「あらあら、それじゃあ私も頑張らないといけませんね~」


624: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:35:56.64 ID:rmMzSg3nO

あずさ(……強く、願う)

あずさ(大丈夫。『今の私』なら、きっと出来るわ!)



あずさ(私に……)



あずさ(どうか、力を……!)



…キラッ



あずさ(! また……! さっきと同じね。プロデューサーさんから頂いたネックレスが光ってる……)

あずさ(確かこれって、クリスタルの欠片なのよね?)

あずさ(もしかして何か不思議な力が……)



あずさ「ッ……!」ドクンッ














あずさ「……メ…………テオ……?」


625: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:37:59.50 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「お別れだぜ、アズサ!」

レッドドラゴン「最大出力の熱線だあああっ!!」


ゴオオオオオオオオッッ!!!



あずさ「………」



レッドドラゴン(やっぱり、さっきのはたまたまかよ)

レッドドラゴン(恨むなよ、アズサ……!)



あずさ「……赦されざる者の頭上に……」



レッドドラゴン(……えっ?)



あずさ「星砕け、降りそそげ!」



レッドドラゴン(ま、マジか!? この土壇場で……!) 



あずさ「うふふっ……」ニコッ





あずさ「……メテオ~♪」





ヒュー…



ヒュー… ヒューー… ヒュー…

ヒューー… ヒュー… ヒューー…



ズドドドドドドドドドドドッッ!!!



ドゴオオオオオオオオンッ…!!!



626: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:40:17.12 ID:rmMzSg3nO

あずさ「……はぁ、はぁっ……」ヨロッ



あずさ「ちょ、ちょっとしんどかったわ~」

あずさ「生身の体も久々だもの、仕方ないのかしら」

あずさ「……あつっ!」

あずさ「あらあら、左腕に火傷が……」

あずさ「……ケアルラ~」

シャララーン! キラキラキラ…!


あずさ「……ふぅ。この感覚、ものすごく懐かしい気がするわね」

あずさ「う~ん、やっぱりリハビリとかしないといけないのかしら~?」

あずさ「………」

あずさ(……ありがとうございます、スーさん。本当に、助かりました)



あずさ「……そうだわ、そういえばレッドドラゴンさんは~……」キョロキョロ



「……うぅっ……」



あずさ「!」

あずさ「レッドドラゴンさん……」

タタタタ…


627: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:42:40.30 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「……へ……へへっ……や、やりゃできんじゃねーか、アズサ……」

あずさ「動いてはダメです。今、回復を……」

レッドドラゴン「ば、バカヤロー! 敵に情けなんかかけるんじゃねえ!」

あずさ「で、でも~」

レッドドラゴン「……あんたの勝ちだ。とっとと行け……」

あずさ「あなたをひとり残しては行けません」

レッドドラゴン「ふざけんな……! どこまで優しいんだ、あんたはよォ……!」

あずさ「いいえ、優しいのはレッドドラゴンさんです」

あずさ「私のことなんていつでもやっつけられたのに、わざわざ私がメテオを思い出す時間までくれて」

あずさ「この戦い、本当なら私の負けだったんですよ?」

レッドドラゴン「………」

レッドドラゴン「……本気のあんたとやってみたかっただけだ」

レッドドラゴン「ほ、惚れた……女だからな……///」

あずさ「……あの~、今なんて?」

レッドドラゴン「なっ、なんでもねぇ! もう行っちまえ!!」

あずさ「あらあら……」


628: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/09(木) 22:44:26.54 ID:rmMzSg3nO

あずさ「……分かりました、それじゃあ私、行きますね?」

あずさ「私が言うことじゃないかもしれませんけれど、どうかお体に気をつけて」

レッドドラゴン「……おう」



レッドドラゴン「…………最後に、ひとつだけいいか?」


あずさ「はい……なんでしょう?」



レッドドラゴン「人間に戻ったあんたも、最っ高に可愛いぜ……!」



あずさ「……うふふっ♪ ありがとうございます~♪」ペコリ


タタタタ…




レッドドラゴン「………」


レッドドラゴン「……あーあ、怪我が痛くて涙が出てくらぁ……」ポロッ


635: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 10:55:10.69 ID:Cs5pkJBqO
ー 月の地下中心核 ー


『……メテオ~♪』

『ズドドドドドッ!!!』



P「………」

小鳥「………」

P「………」

小鳥「………」


P「……よし、ナイスあずささん! 流石ですっ!」グッ

P「…………あ」チラッ

小鳥「………」

P「す、すみません、嬉しくってつい……」

小鳥「いいんですよ、別に私のことは気にしなくても」

P「………」



P「あの、小鳥さんとしてはどうなんですか? やっぱり魔物側に勝ってほしかったですか?」

P「……って、なにバカな質問をしてるんですかね、俺ってば。あはは……」

小鳥「うふふ♪」

小鳥「まあ、立場上素直には喜べませんけど、あずささんが負ける姿は想像できませんでしたねー」

P「……やっぱり優しいんですね、音無さんは」

小鳥「えっ? やだなぁ、そんなことないですよぅ、プロデューサーさんったら」

P(……はぁ、なにしてるんだ俺)

P(これじゃ音無さんを救うどころか地雷踏みまくってるじゃないか)

P(しっかりしなきゃ……)


636: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 10:58:40.10 ID:Cs5pkJBqO

小鳥「それよりプロデューサーさん、気付きました?」

P「何がです?」

小鳥「今の戦いであずささんがやられそうになった時、胸元がこう、パーって光りましたよね?」

小鳥「その後のあずささん、なんだか雰囲気が変わった感じでしたし、何か力に目覚めたのかしら」

P「ああ……」

P「月に来る前にアイドルたち全員にクリスタルを持たせたんですよ。といっても、それぞれが持っているのはほんの小さなカケラですけど」

小鳥「クリスタル……」

小鳥「なるほど、私への対策はバッチリってところですか」

P「……そうですね」

P「あの子たちにはお守り代わりとして渡してはいますが、一応音無さんとの決戦のことも見据えています」

小鳥(……そうよね。本来ゼロムスとの最終決戦はクリスタルを使ってからが本番だもの)

小鳥(んー、流石プロデューサーさん、抜け目ないわねぇ)

小鳥(ま、私もそう簡単にやられちゃうわけにはいかないんだけど)

小鳥(でも……)

小鳥(『カケラ』でいいんですか? プロデューサーさん)

小鳥(もしかしたら、ちゃんとしたクリスタルじゃないと私に通用しないかもしれませんよ……?)



637: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:01:41.12 ID:Cs5pkJBqO
ー 月の地下渓谷 B4F ー



亜美「……はぁ、はぁっ……」

亜美「………」



金竜「……ぐ……!」グッタリ



亜美「ど、どうだ! 大魔道士亜美様の力を思い知ったかーっ!」ビシッ


金竜「……ぬぅ……おのれ……!」


亜美「………」チラッ



銀竜「」カチコチーン



亜美(銀ぴょんはカチンコチンに凍らせたし、金ぴょんもダウン……)

亜美(亜美、やれるだけのことはやったよ!)

亜美(もう起き上がってこないでよね! もう亜美のMPはゼロなんだよ……)

亜美(エーテルももうないから回復もできないし、今向かってこられたら……)


金竜「………」





金竜「………………ずえぇぇぇいっ!!」ガバッ



亜美「……げっ!?」


638: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:05:37.86 ID:Cs5pkJBqO

金竜「……我は死なぬ……」

金竜「我が弟、銀竜の為にも……貴様に勝つッ!!」



亜美「な、なんでー!? なんでまだ生きてんのさー!」

亜美「金ぴょん、ゴキブリ並みの生命力だよ~!」



金竜「ふふっ……!」

金竜「ごきぶり……というものは良く分からぬが、さぞや名のある戦士なのだろうな!」



亜美「う、うーん……まあ、ある意味そうとも言えるかも……」



金竜「ともあれ、我はまだ余力を残しているっ……!」

金竜「アミ、覚悟は良いな?」



亜美「ふ、ふん! 亜美だってまだまだ与作を残してるもんねっ!」

亜美(……もう残ってないよ~!)



金竜「くっ、流石はあいどる……あれだけの魔法を使ってまだ力を温存しているか……」



亜美「う、うん。亜美、まだまだチョー元気だから、金ぴょんはそろそろ逃げた方がいいっぽいよ~?」

亜美「さっきよりもすんごい魔法使ってみせちゃうよ~?」

亜美(お願いだからビビって~!)



金竜「………」


639: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:07:47.74 ID:Cs5pkJBqO

金竜(迷うことなどない。我にはもう、前進以外に道は残されておらぬ……!)

金竜(銀竜……)

金竜「……ならば、我はそのさらに上をいく力でお前を迎え撃とうぞ!」



亜美「へ、へぇ、そう。そりゃすごいねー」

亜美(も~、金ぴょんの分からずや~!)




金竜「行くぞっ!」ブワッ



亜美「うあうあ~!」



金竜「……ふんっ!」

ビュンッ…


亜美「うわぁっ!」ヒョイッ


ドゴオンッ!!


亜美「……ふぇぇ、今あんなのくらったらヤバいよ~!」タタタタ


金竜「……そこだっ!!」

ビュン…

バキィッ!!


亜美「ぐえっ!」ヨロッ


…ドサッ


640: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:10:15.57 ID:Cs5pkJBqO

金竜「追い詰めたぞ、アミ……」


亜美「う……うぅ……」


シュルシュルッ…

ガシッ!


亜美「……う……ぁ……」

亜美(体に巻きつかれて……動けないよ……)


金竜「小さくも勇敢なる魔道士アミよ。お前は勇気あふれる立派な戦士であった……」

金竜「時間をやろう。最期に何か遺す言葉はあるか?」



亜美「……ぅ……っ!」

亜美(……はるるん、りっちゃん、兄ちゃん……)

亜美(みんな……どーやら亜美の冒険はここまでっぽいよ……)

亜美(最後まで行けなくて、ゴメンね……)


641: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:12:39.02 ID:Cs5pkJBqO

金竜「………」

金竜「……言葉はないか。沈黙も或いは雄弁に通ずるのかもしれぬ」



亜美(……あーあ、最後まで行きたかったなぁ……)

亜美(せっかく兄ちゃんに助けてもらったのに、こんなトコでやられちゃうなんて……)

亜美(……………………真美……)



金竜「……さらばだ、あいどるよ」










亜美「真美ーーーーーーっ!!!」












「………………ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!





亜美「………………え?」


642: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:15:19.71 ID:Cs5pkJBqO

「こらー! そこの細長いの! かわいい妹になにしてくれてんのさー!! 中学生に手を出したら犯罪なんだかんねっ!!」




金竜「ほ、細……え?」




真美「せくしー美少女白魔道士、真美、見参っ!!」ビシッ



亜美「真美っ……!!」パァァ
 
金竜「同じ顔……だと……!?」



真美「亜美、受け取れぇい!!」ブンッ

ヒュンッ




亜美「えっ?」パシッ

亜美「! これって……!」



金竜「くっ、こやつめ!」

ギチギチッ!

亜美「ぅあっ……!」




真美「亜美っ!!」


643: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:18:16.87 ID:Cs5pkJBqO

金竜「貴様、援軍か!」

金竜「何を渡したか知らんが無駄なことだ!」

金竜「アミを始末したら……次は貴様の番だ!」




真美「んっふっふ~♪ そううまくいくかなー?」

真美「亜美はカンタンにやられちゃったりしない強い子だもんモンねっ! 真美、信じてるもん!」



金竜「何を馬鹿なことを……。アミは我によって身体の自由を奪われ、さらに今となっては言の葉を発することも叶わぬ!」

金竜「この状況で何をしようというのだ?」

金竜「……そうか。貴様、マミといったか。アミの姉だと申したな?」

金竜「妹を助けに来たはいいが、恐怖で身体が動かぬ、といったところか」

金竜「なんとも情けないことだな……!」

金竜(………)



真美「………」


644: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:22:12.45 ID:Cs5pkJBqO

真美「……確かに亜美は今動けないししゃべれないかもしんないけど、手は動くよね?」



金竜「……なにっ?」



真美(亜美……!)クイッ

真美(…………GO!!)p




亜美(……オッケー真美!)



亜美(……暴れちゃえ……!)


 



亜美(………………『ほしくずのロッド』!!)ブンッ





キラキラキラ…!!



金竜「な、何っ!? これは……!」



ヒューーーー…


ズドドドドドドドッ!!


645: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:25:21.25 ID:Cs5pkJBqO

真美「亜美っ!」タタタタ



真美「平気? 立てる?」スッ

亜美「うん……真美のケアルガのおかげだよ」

真美「よかったぁ……。でも、無理しちゃダメだよ?」

真美「亜美、しょっぱなから魔法じゃんじゃん使ってたし、どーせもうMPもゼロでエーテルも切れちゃったんでしょ?」

真美「それを見越して『ほしくずのロッド』を回収する真美マジ有能!」

真美「はい、エーテル」スッ

亜美「うぅ……すまぬ……」ゴクゴク



真美「いやー、それにしてもカンイッパツってカンジだったねー」

真美「妹のピンチにさっそうとかけつける姉」

真美「まさにこれこそが最強の姉っしょ!」

亜美「………」

亜美「……真美っ!」ガバッ

真美「ふぇっ!? あ、亜美?」

亜美「うぅっ……会いたかったよぉ~!」

真美「………」

真美「……うん、真美もだよっ」ギュッ

亜美「うえええぇぇえっ!」ポロポロ


真美(……ひとりでよくガンバったね、亜美……)ナデナデ


646: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:28:08.22 ID:Cs5pkJBqO

亜美「……ま、そんなこんなで真美さんや」

真美「なにかね、亜美さんや」

亜美「亜美の予想だと、展開的に敵はまだ生きてる気がするのだよ」

真美「んー……。確かに、真美が合流したところで『こっからが本当の戦いだ!』ってなりそーだよね」

真美「敵さんのじょーほーについてはどんなカンジなの?」

亜美「んっとね、敵は二体。金竜と銀竜の兄弟……あ、亜美は金ぴょんと銀ぴょんって呼んでるんだけど、亜美が一体倒したから残すはさっきの一体だけだよ」

亜美「でも、真美の持ってきてくれた『ほしくずのロッド』もあるし、亜美たち二人が揃えば敵はいないっしょ!」

真美「兄弟かぁ……」

真美「亜美、あんまりユダンしないほーがいいかも」

亜美「えっ?」

真美「兄弟のキズナ、甘く見ないほーがいいっぽいよ」

亜美「………」

亜美「……うん。だね」





金竜「………………負けぬっ……!」ヨロッ





亜美・真美「!!」


647: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:31:54.52 ID:Cs5pkJBqO

金竜「我は……負けぬ……負けられぬのだ……!」

金竜「ぬおおおおおっ!!」ビュンッ


真美「行くよ、亜美! ヘイスト!」バッ

カタカタ…シャキィン!

亜美「よしきた!」

亜美「ぬおおおおおっ!!」タタタタ



金竜「ぬりゃっ!!」ブンッ


亜美「ふっ、見切った!」シュンッ


ズドォン!!


亜美「くらえー! 『ほしくずのロッド』!」ブンッ



キラキラキラ…!


ヒューーーー…


金竜「おおおおおおおおっ!!」


ズドドドドドドドッ!!
 




金竜「……はぁっ、はぁっ……」

金竜「ま、まだだっ……!」ヨロッ


648: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:34:46.40 ID:Cs5pkJBqO

亜美「うわぁ……もう亜美の魔法何発ブチ込んだかわかんないけど、しぶといなぁ」

真美「真美、まだ全然カツヤクしてないし、むしろ大歓迎だよ!」



金竜「……はぁ、はぁっ……」

金竜(……姉妹、か……)


『もしも亜美がピンチになったとしても、真美を盾にして亜美だけ生きのびるなんてことだけは……ゼッタイにしない。したくない!』

『亜美はカンタンにやられちゃったりしない強い子だもんモンねっ! 真美、信じてるもん!』



金竜(………)

金竜(我は、間違っていた……)

金竜(銀竜……)チラッ

 

銀竜「」カチコチーン



金竜(勝負とは非情なもの……。しかし……) 

金竜(お前を犠牲にして勝利したとしても、そこにはなんの意味も無いのだっ……!)

金竜(何故ならば……)



金竜「我らは、二人で共にあいどるになると誓い合ったのだからっ……!」


649: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:37:30.94 ID:Cs5pkJBqO

真美「ん? なんか金ぴょん、おかしなこと言い出したよ?」

亜美「うーん、よくわかんないけど、金ぴょん銀ぴょんは亜美たちを倒してアイドルになりたいんだってさ」

真美「ふーん、変なのー。ピヨちゃんのオロシガネってヤツかな?」

亜美「たぶんねー。でも、金ぴょんには悪いけど、二人がアイドルになるのはさすがにムリがあるんじゃないかなぁ?」


金竜「出来る出来ないではない……。やるのだ」

金竜「それは、我ら兄弟の悲願なのだからな……!」



亜美・真美「!!」




亜美「……そっか。それは金ぴょんたちの『夢』なんだね」

真美「ひとの『夢』を笑うのは……失礼だよね」



金竜「………」

金竜(良き戦士たちに出会えた)

金竜(最愛の弟よ……我に力を……)



金竜「…………いざッ!!」




亜美・真美「……勝負じゃー!!」


650: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:44:41.57 ID:Cs5pkJBqO

金竜「……稲妻よ!!」



ズガガガドゴォォォンッ!!



亜美「っ……あぶなっ!」

真美「亜美、へーき!?」

亜美「うん!」

真美「行くよ、亜美!」スッ

亜美「おっけー真美っ!」ギュッ



金竜「手を繋いだ……?」

金竜「そうか、それがお前たちの……」

金竜「撃ってみせよ! その力、この稲妻で砕いてみせよう!」バリバリッ



亜美・真美「はぁぁぁぁっ……!!!」ゴゴゴゴ



亜美(久しぶりだね、ふたりがけも)

真美(そだね。でも、きっと前とは威力もぜんぜん違うっぽいよ!)

亜美(うん! モチのロンだよ!)



亜美・真美「赦されざる者の頭上に、星砕け降り注げっ!!」




亜美・真美「…………メテオ!!!」




ヒュー… ヒューー… ヒュー…

ヒュー… ヒュー… 



金竜(封印されし魔法……! よもやこの魔法を使えるとは……)

金竜(我の稲妻だけでは防ぎきれぬ……。もはやこれまでか……!)




「ーー兄者ぁぁぁぁっ!!!」




金竜「!!」


651: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:46:07.18 ID:Cs5pkJBqO

銀竜「我も助太刀するぞっ!!」

銀竜「ブレイズっ!!」

ゴオオオオッ!!


金竜「ぎっ、銀竜!? 生きていたのか!」

銀竜「兄者ひとりに辛い思いをさせてなるものかっ!」

金竜「銀竜……!」




真美「亜美、弟くんが復活しちゃったっぽいよ!?」

亜美「ぬぅ……死んだフリとはひきょーな!」

亜美「でも、亜美たちだって負けてらんないっしょ!」

真美「おうともさ!」



亜美・真美「うおおおおぉぉおおっ!!」




金竜・銀竜「おおおぉぉおおおおっ!!」





…ドッゴオオオオオン!!!




652: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:48:25.62 ID:Cs5pkJBqO

亜美「………」

真美「………」




金竜「………」

銀竜「………」




金竜「ふふふ、残念だったな。お前たちのメテオは凌いだぞ!」

銀竜「我ら兄弟が力を合わせれば、不可能など無いのだっ!」




亜美「………」チラッ

真美「………」チラッ



亜美・真美「………………ふっふっふっふー!」



亜美「亜美たちのメテオを防いだくらいで調子に乗ってもらっちゃあ困りますなー」

真美「まったくですなー」



金竜「……なにっ? さっきのメテオはお前たちの最大の魔法ではなかったとでも言うつもりか!?」

銀竜「馬鹿な……メテオは現存する魔法の中で最強のはず!」


653: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:51:21.56 ID:Cs5pkJBqO

亜美「残念だったね、金ぴょんに銀ぴょん……」

真美「真美たちアイドルは変身するたびに強くなる」

亜美「その変身を、亜美たちはあと2回残している……」

真美「これがどういうことかわかるかね?」



金竜「変身……だと……!?」

銀竜(いや……これは明らかなハッタリだ。いくらあいどるが未知の存在とはいえ、人間が変身するなど聞いたこともない)

銀竜(アミめ、またもや嘘でこちらの戦意を削ぐつもりか。ならばこちらもハッタリで逆に戦意を喪失させてやる……!)


銀竜「……残念だったな、小娘たちよ!」



銀竜「我なんかあと3回変身を残しているのだっ!!」バーン



亜美・真美「な、なんだってぇー!!?」ガビーン



金竜「な、なんだとー!!?」ガビーン





銀竜「兄者ェ……」


654: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 11:54:17.18 ID:Cs5pkJBqO

銀竜「……と、とにかくだ!」

銀竜「二人揃えばもうお前たちを屠るのは容易い。覚悟せよ!」

金竜「我ら兄弟の絆こそ最強だと知れ!」



真美「んっふっふ~♪」

真美「魔物のブンザイで真美たちにはむかうなど、身のほどをわきまえぬ者たちじゃ……!」

亜美「ふたたび生き返らぬよう、そなたたちのハラワタの中で息絶えるがよいっ!」



銀竜「ちょっと言っていることがよく分からぬが……」

金竜「尋常に勝負だっ!!」


658: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 05:59:33.83 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B5F ー



プリンプリンセスたち「ラララ~~♪」



響「……!」タタッ

響「……はぁ、はぁっ……!」タタンッ



プリンプリンセス9(『王女の歌』によってパーティが始まってから、そろそろ一時間……)

プリンプリンセス10(あの方もずっと踊り続けてようやく息が切れはじめたようですわね)

プリンプリンセス11(さあ、終宴へのカウントダウンが始まりましたわ)

プリンプリンセス12(名も無き花が己の短い命を咲き誇るように、美しく舞い……美しく散ってくださいまし!)


659: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:00:43.89 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ~~♪」



響「ぜぇ、ぜぇ……」スタッ

響「はぁっ……うぁ……!」クルンッ



プリンプリンセス9(パーティが始まって約二時間……)

プリンプリンセス10(息は切れているものの、今だに動きに衰えが見られない……。まさかここまで踊り続けることができるとは思いませんでしたわ)

プリンプリンセス11(流石はあいどる……といったところでしょうか。ですが、あの方の命の火が確実に小さく弱くなってきているのは事実)

プリンプリンセス(うふふ……やがて訪れる最期の瞬間まで、その輝きを保っていられるでしょうか?)


660: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:02:15.20 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ~~♪」



響「はぁ、はぁっ……」タンッ スタッ

響「……ぅくっ……」タタンッ



プリンプリンセス9(パーティが始まって三時間……)

プリンプリンセス10(お、おかしい……。常人ならばとっくに力尽きている時間……)

プリンプリンセス11(なんなんですのいったい……? 人間とは思えない体力……)

プリンプリンセス12(……いえ、問題などありませんわ。いつまでも全力で踊り続けていられる者なんて、いるはずありませんもの……!)


661: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:03:24.12 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ~~♪」



響「………」タタッ クルッ

響「………」シュタタッ



プリンプリンセス9(…………すでに、四時間が経過している……)

プリンプリンセス10(こんなの、絶対にあり得ない……あり得るはずがない……!)

プリンプリンセス11(……息が……声が、かすれて……)

プリンプリンセス12(ま、まずいですわ……。歌が……)


662: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:05:05.08 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ~~♪」



響「………」キュッ キュッ

響「………」タンッ スタッ



プリンプリンセス9(…………)

プリンプリンセス10(…………)

プリンプリンセス11(…………)

プリンプリンセス12(…………)





プリンプリンセスたち(……ダメ……もう限界……! 声が持たない……っ!)






プリンプリンセス9「……っぷはぁ!」

プリンプリンセス10「はぁ、はぁ、はぁっ……!」

プリンプリンセス11「ぜぇ、ぜぇ……!」

プリンプリンセス12「……そ、そんな……私たちの歌に、耐えきるなんて……!」




響「………」

響「………」フラッ


…ドサッ



プリンプリンセス9「はぁ、はぁ……彼女も……」

プリンプリンセス10「限界だったようですわね……」


663: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:15:05.02 ID:yKLskMaYO

響「……く、はぁ、はぁっ……!」ヨロッ




プリンプリンセス9「! ま、まだ立ち上がった……!?」

プリンプリンセス10「な、なんて生命力ですの……!」

プリンプリンセス11「あれだけのダンスをした後で……」

プリンプリンセス12「信じられない……!」



響「……はぁ、はぁっ……!」

響「へ……へへんっ……君たちとは……鍛え方が違うからなっ……!」



プリンプリンセス9「強がりがバレバレですわね……!」

プリンプリンセス10「明らかに立っているのがやっとではないですか……!」



響「はぁ、はぁ……そう言うプリ江たちだって、声がガラガラだぞ? もうあの歌、歌えないんじゃないのか……?」



プリンプリンセス11「くぅ……!」



響(……自分、わかってるんだ)

響(きっとプリ江たちの歌に耐えられたのは、プロデューサーがくれたネックレスのおかげだと思う)ギュッ

響(踊ってる間ずっとこのネックレスが小さく光ってて、「頑張れ」「負けるな」って自分を励ましてくれてるみたいだった)

響(ありがとね、プロデューサー。おかげで自分、まだなんとか戦えそうだぞ!)


664: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:23:00.00 ID:yKLskMaYO

プリンプリンセス9「……ならばもう一度!」

プリンプリンセス10「今度こそ私たちの歌で、貴女を倒してみせますわっ!」

プリンプリンセス11「いきますわよっ!」

プリンプリンセス12「王女の歌!」



響「……!」



プリンプリンセスたち「ラララ~~♪」





響「……はぁぁぁあああああっ!!」

タタタタ…




プリンプリンセス9「!?」

プリンプリンセス10「な、なぜ!? なぜ動けますの!?」






響「くらえ、ナンクル砲っ!!」バッ



…ドッゴオオオオオン!!!



プリンプリンセス9「」



プリンプリンセス10「くっ! 止めますわ!」ダッ



響「甘いぞ!!」バッ


…ドッゴオオオオオン!!!



プリンプリンセス10「」



プリンプリンセス11「くっ……!」

プリンプリンセス12「王女の歌が、効かない……!?」


665: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:25:28.80 ID:yKLskMaYO


響「………」スッ



プリンプリンセス11「? それは……?」



響「服を小さくちぎって耳栓代わりにしたんだ。歌を聴かなければきっと操られることもないって思ったからな」



プリンプリンセス12「そこに気づくとは……」

プリンプリンセス11「なかなか頭も切れるようですわね」



響(いや、それくらい誰だって気づくと思うけどなー)



…ビーッ! ビーッ!



響「! またこの音か!」





プリンプリンセス13「うふふふ……」

プリンプリンセス14「あははは……」



プリンプリンセス11「王女の歌を防いだ程度ではこの包囲網を抜け出すことはできません!」

プリンプリンセス12「……さあ、パーティを続けましょうか」



響「くそ~、また増えたー!」



響(このままだと倒してもまた増え続けるっぽいし、やっぱりあの警報みたいな音をどうにかするしかないのか……)

響(音はそう遠くない場所でしてるから、たぶんこの部屋のどこかに仕掛けてあると思うんだけどなー……)キョロキョロ


666: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:28:57.91 ID:yKLskMaYO

プリンプリンセス11「うふふ、何か捜し物ですか?」



響「………」



プリンプリンセス12「どうやら『アラーム』の役割に気づいたようですわね」

プリンプリンセス13「そう、私たちの仲間は『アラーム』の音に呼び寄せられる」

プリンプリンセス14「貴女がいくら私たちを倒しても、永遠に」



響「え、永遠にって、そんなの無茶苦茶だぞ!」



プリンプリンセス11「うふふっ♪」

プリンプリンセス12「『アラーム』を探しても無駄ですわ。貴女には到底見つけられない場所に隠してありますもの」



響(……つまり自分が勝つには、プリ江たちの攻撃を掻い潜りつつ『アラーム』ってやつを探し出して破壊すること……)

響(体力的にしんどいけど、それをやらなきゃ先に進めないならやるしかないんだ)

響(……大丈夫、きっと……)



響「…………なんくるないさー!!」

タタタタ…



プリンプリンセス11「生命は追い詰められた時にこそ、より一層輝きを増す……」

プリンプリンセス12「その一瞬の美しさは、何ものにも替え難いものです」

プリンプリンセス13「私たちに見せてくださるのですね。あいどるの真の輝きを」

プリンプリンセス14「……さあ、一緒に踊りましょうっ!」


667: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:32:23.64 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B6F ー 

やよい「」



冬馬「……高槻……?」



冬馬「おい、なんの冗談だよそれ……」



イフリート「ヤヨイぃぃぃーーっ!!! くそおおお!! 氷が溶けねえええええっ!!」

シヴァ「ヤヨイさん、返事を……返事をしてっ!!」

ラムウ「ワシらは……この子に何もしてやれぬのかっ……!」



冬馬「なんとか言えよ、高槻……。いつもみたいに『うっうー!』とか言ってみろよ……」



やよい「」



ミストドラゴン「ああ……ああ! ヤヨイ、私のかわいいヤヨイ……!」ダキッ

シルフ「起きなさい! ぐすっ……起きないと承知しませんよっ……!」ポロポロ



冬馬「……なんだよ、これ……」



やよい「」



翔太「生命をもたらしたる精霊よ、今一度我がもとに!」

翔太「……レイズ!」バッ

…キラリーン!


やよい「」


翔太「……な、なんで!?」

高木「なんと……いうことだ……! 私はなんのためにここにいるのだっ……!」ギリッ



冬馬「なんだよ、これは! ふざけんなッ!!」ガッ

北斗「くそっ……!」

翔太「やよいちゃん……!」



黒井「………」


669: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:36:35.22 ID:yKLskMaYO

黒井(これが……)

黒井(これこそが、力無き者の末路……?)

黒井(……違う。高槻やよいは決して力を持っていなかったわけではなかった。むしろ強大過ぎる力を秘めていたはずだ)

黒井(事実、ヤツは従えた召喚獣を一度に全て喚び出すという荒業をやってのけた)

黒井(……が、あの化け物を諭すためあえて攻撃は加えず平和主義を貫き……)

黒井(……命を落とす結果になった)

黒井(765プロが掲げていた『絆』とやらは魔物には通用しなかった、ということか)

黒井(呆気ないものだな。高木が765プロにしがみついて作り上げたものが、こんなわけも分からない世界であっさり否定されることになるとは)




黒井(…………いや待てよ)

黒井(この世界で高槻やよいは私たち幻獣を喚び出し、度々仲間との絆を主張していた)

黒井(だが、私たち自身はどうだ?)

黒井(私たちは一人ひとりが高槻やよいに対して忠誠を誓っていたが、ただそれだけで、私たち召喚獣同士の横の繋がりなどは無かった)

黒井(……違う。私『たち』ではない)

黒井(私一人が、それを否定し続けていたのだ……)

黒井(おそらくそれでは駄目なのだろう。ヤツの目指したものは……本当の『絆』とやらは、まだ完成してはいない)


670: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:39:54.12 ID:yKLskMaYO

黒井(私はここで何をしている……? 何をすべきなのだ……?)

黒井(私は……)チラッ



やよい「」



黒井(………)

黒井(ああ、そうか)

黒井(死んではいない)

黒井(お前はまだ、死んではいないのだな)




やよい「」



黒井(………………なあ、やよいちゃん)




…キラッ




671: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:41:53.31 ID:yKLskMaYO

黒井「……高木」

高木「っ……な、なんだね?」ゴシゴシ

黒井「おかしいと思わないか?」

高木「おかしい? いったい何がおかしいというのだね?」

黒井「おい、冬馬、翔太、北斗!」

冬馬「……ざけんなよ! ちくしょうっ!」

翔太「やよいちゃん……うぅっ……!」

北斗「黒井社長、何か?」

黒井「確かお前たちはこのゲームに詳しかったな。お前たちに訊きたいことがある」

北斗「は、はい。でも今は……」

黒井「高槻やよいは本当に死んだのか?」

北斗「……え?」

高木「黒井? お前、何を……」

冬馬「おっさん、今はそんなこと言ってる場合じゃねえだろーが! 氷漬けにされちまった高槻を生き返らせる方法を考えるのが先だ!」

翔太「そうだよ黒ちゃん! やよいちゃんは僕の『レイズ』でも生き返らなかったんだよ? だから、きっと本当に……」

翔太「…………あれ?」

翔太「ねえ北斗君、FFのレイズって失敗はしないはずだよね?」

北斗「ああ、確かそうだったはず」

北斗「………………あっ」


672: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:45:04.94 ID:yKLskMaYO

高木「伊集院君、どうしたんだね?」

北斗「レイズが効かなかったってことは、やよいちゃんは蘇生対象ではなかった……?」

翔太「つまり、やよいちゃんはまだ……」

北斗「死んでないってことだ……!」

黒井「……やはりか」

冬馬「お、おい翔太、北斗、それは本当なのか!?」

翔太「うん。ドラクエのザオラルと違って、FF4の蘇生魔法である『レイズ』は絶対に失敗しないんだよ」

北斗「失敗する場合があるとすれば、それは対象が『まだ生きている場合』だ。生きている者を蘇生しようとしても意味はないからな」

高木「じゃ、じゃあ、高槻君は生きているのだね!?」

翔太「うんっ!」

冬馬「マジかあああああっ……!」グスッ

高木「高槻君……! よかった……!」

黒井「安心するのはまだ早い。おそらく、私たちがこちらに顕現していられるのは高槻やよい次第なのだから」

黒井「そうだな、北斗」

北斗「詳しい理屈はわかりませんが、たぶん黒井社長の仰るとおりだと思います」

北斗「召喚士であるやよいちゃんの魔力が途切れてしまえば、彼女と契約を交わした幻獣である俺たちはきっとこの場所から消えてしまう」

北斗「そうなったらもう、俺たちがここでやよいちゃんを救うことは完全に出来なくなってしまいます」

高木「な、なるほど。時間はあまり無いというわけか……」

高木「それにしても高槻君、あんな状態になってまで私たちのために魔力を放出し続けているとは……」

冬馬「よし! 早いとこ高槻を助けてあのドラゴンを倒そうぜ!」



ラムウ「……その戦い、どうかワシらにも手伝わせてもらえぬか?」



冬馬「じいさん……」


673: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:48:20.74 ID:yKLskMaYO

冬馬「でも、あんたの雷はヤツに通用しなかったじゃねぇか」

ラムウ「ワシら幻獣の魂は召喚士と共にある。今力を発揮せずして何が召喚獣じゃ……」

シヴァ「たとえ無駄だと分かっていても、ヤヨイさんのために力を使いたいの。お願い……!」

北斗「エンジェルちゃん……」

イフリート「トウマ!! 頼むっっ!!」

シルフ「私も、このままじゃマコトさんにあわせる顔がありません!」

ミストドラゴン「お願いしますっ……!」

冬馬「お前ら……」

冬馬「………」

冬馬「それを決めるのも号令をかけるのも、きっと俺の役目じゃねえ」

翔太「えっ、冬馬君……?」

冬馬「だってよ、そーいうのはトップの仕事だろ?」



冬馬「……な、黒井のおっさん!」



黒井「………」



高木「黒井、命令してくれ。高槻君を救うために、私たちの王として!」


674: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:50:31.84 ID:yKLskMaYO

黒井「……私は、勘違いをしていた」

黒井「やよいちゃ……高槻やよいの願いとは、私たちとヤツとの絆だと思っていた」


黒井(私は……)


黒井「だが違う。高槻やよいの本当に望むものは、私たち幻獣同士の繋がりも含めての絆」

黒井「いや、ヤツはおそらく……あの魔物とすら繋がりを持とうとしていたのだ」


黒井(今、私のすべきことは……)


幻獣たち「………」










黒井「力を貸せ。お前たちと私とで、やよいちゃんを救うぞ!」









幻獣たち「……っ!」コクリ


675: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 06:58:49.46 ID:yKLskMaYO
ブルードラゴン「何故じゃ……お前たちは何故消えぬ……?」

ブルードラゴン「あの少女は氷の棺で息絶えたはず……」

ブルードラゴン「お前たちはいったい……?」



冬馬「へっ! 高槻はあんな攻撃でくたばっちまうほどヤワじゃねーってことだぜ!」

翔太「ここからは、ボクたちの反撃だよ!」

北斗「ゲームの世界のルールだとか、そんなものはもうどうでもいい。俺たちは今、本当の絆で結ばれたんだから!」

黒井「覚悟はいいか、化け物め。さっきの様な遅れはとらんぞ!」



ブルードラゴン(絆……懐かしい言葉じゃ)

ブルードラゴン(懐かしく、そして悲しい言葉じゃ)

ブルードラゴン「…………ふ、ふふふ……」

ブルードラゴン「……そうか。ようやく時が来たのじゃな」

ブルードラゴン「殺してみせよ……」

ブルードラゴン「どうかワシを生の呪縛から解き放ってくれ……!」




冬馬「いくぜええぇぇぇっ!!」





黒井(……高木、そちらは任せたぞ!)



676: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:00:35.69 ID:yKLskMaYO

ラムウ「氷漬けになっているヤヨイさんを、お主の斬鉄剣で氷ごと斬るじゃと……?」

高木「ああ。おそらくこれは、懸命にこの世界を生きてきた彼女に何もしてやれなかった、私がやるべきことだと思うのだ」

シヴァ「でも、そんなことをしたらヤヨイさんが!」

高木「安心したまえ。高槻君を傷付けないように上手くやってみせるよ」

イフリート「うおおおおおっ!! よくわかんねえけどヤヨイは助かるのかっ!!」

ミストドラゴン「……あの、私たちにも何か出来ることはないのでしょうか?」

高木「もちろんあるさ。これは私ひとりでは決して成功させることはできない」

高木「『必ず成功する』と君たちが信じてくれれば、きっと想いは届く」

高木「高槻君は、助かる……!」チャキッ

ラムウ「想いか…………そうじゃの」

シヴァ「信じる……ヤヨイさんは絶対に死なせない!」ギュッ

イフリート「ヤヨイぃぃぃぃいいいいいっっ!!」

ミストドラゴン(帰ってきて……。その愛くるしい笑顔を再び私たちに見せてください、ヤヨイ……!)


677: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:01:38.36 ID:yKLskMaYO

高木「………」チャキッ

高木(鉄をも切り裂く剣か……)

高木(そんな技を大切なアイドルに対して使うのは私だって不安だ)

高木(だが、手品とはいつも人々を驚かせ、楽しませるためにある)

高木(それに……幻獣諸君の力をこうして感じることができる。私はひとりではない)

高木(そちらは任せたぞ、黒井!)




高木(……我が剣よ、願わくば正しき者を救う剣となれ……)




高木「ーーーー斬鉄剣!!」ブンッ




ーージャキィィィィンッ!!




678: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:03:52.66 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


千早「……はっ!」ビュンッ


月の女神「おっと!」ヒョイッ

月の女神「えいっ!」ブンッ


千早「くっ!」

ガキィンッ!!


月の女神「うふっ♪」タンッ


…フワッ


千早「!」

千早(ジャンプ……!?)


月の女神「えーーーーいっ!!」ブンッ


千早「くっ……!」ダッ



ズドオオンッ!!



千早(……なんて威力……地面に大穴が……)


679: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:04:58.31 ID:yKLskMaYO

月の女神「これくらいで驚いてちゃダメだよっ?」ダッ

タタタタ…


千早「!」

千早(盾を構えての突進!)

千早「……ふっ!」ヒョイッ


月の女神「……チハヤがよけるのは想定済みだよっ!」ピタッ

月の女神「でえぇぇいっ!!」ブンッ


ザシュッ!!

千早「う……!」ヨロッ


月の女神「えへへっ♪ チハヤのジャンプ、マネしてみたよ」

月の女神「どうかな?」



千早「くっ……」ポタッ

千早(あの子のジャンプに気を取られてしまった……)

千早(ジャンプは私の特技だったはずなのに……)



月の女神「楽しい……楽しいよチハヤ」

月の女神「もっともっと、いっぱい遊ぼう!」



千早「………」


680: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:06:49.52 ID:yKLskMaYO

月の女神「まだまだいくよっ!」チャキッ

月の女神「やああぁぁああっ!」

タタタタ…



千早「………」チャキッ



千早(私は、バトルに興味なんて持ったことはなかった)

千早(今まで避けることのできない戦いはもちろんあったし、自分が強くなるのは、少しでもみんなの役に立てれば……って思ったから)



月の女神「えーーいっ!!」ブンッ

千早「くっ!」

ガキィンッ!!


千早(でも、なぜだろう)

千早(負けたくない。ただ純粋に、自分の方が強いということをこの子に知らしめたい)

千早(心のどこかでそう思っている自分を、否定できない)



千早「……はっ!」グイッ

月の女神「わっ……」ヨロッ


千早「…………くっ!」タンッ

…フワッ




千早(空中戦で負けるわけにはいかない)


千早(…………竜騎士として!)



月の女神「……いいよ、付き合ってあげる!」タンッ

…フワッ




千早「はああああぁぁああっ!!」ブンッ



ーーズザシュッ!!



…スタッ


681: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:08:30.56 ID:yKLskMaYO

月の女神「………」

月の女神「……くぅ……」ヨロッ



千早「……はぁ、はぁ……」

千早(ようやく……あの子にダメージを与えることができた……)



月の女神「さすが空中では強いね、チハヤ……」

月の女神「私、驚いちゃった!」ニコッ



千早(ダメージを与えたとはいえ、あの子の強さは身を持って知っている。決して油断なんてできない)

千早(けれど……)


ドクン…


千早(この高揚感はなに?)

千早(私も、バトルを楽しいと思いはじめているというの……?)



月の女神「楽しいね、チハヤ!」ニコッ



千早「………」

千早(目的は変わらない。最初からひとつだけ)

千早(でも……)



千早「…………ええ、そうね」ニコッ



千早(……勝ちたい……あの子と正々堂々、勝負をして!)


682: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:10:48.91 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


暗黒魔道士「……ファイガ」



ゴオオオオッ!!



美希(……3、2、1……!)

美希「っ……!」ダッ



暗黒魔道士「逃さない……サンダガ」



ズガガガピシャァーーン!!!



美希「…………こっち!」ダッ




暗黒魔道士「もっと逃げるといい……なす術もなく……」



美希「……はぁ、はぁ……」

美希(……えっと、今回のが10時と9時……)

美希(『タイミング』もバッチリつかんだの)

美希(……うん、やっぱりミキのカンはそんなにハズれてないって思うな)


683: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:13:18.49 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「それにしてもよくここまで生き残ったね。視界を奪われた状態で魔法をかわし続けるなんて……」

暗黒魔道士「しかも、ボクが魔法を放つたびに動きが良くなっている」

暗黒魔道士「君には本当に驚かされるよ」



美希「あは☆ ありがとーなの」



暗黒魔道士「でも……気づいているかい? ミキ」



美希「ん?」



暗黒魔道士「君はもう、すでに死の淵に立っているということを」



…ヒュオオォォ…



美希「この風の音……もしかして崖?」

美希(知らないうちに崖っぷちに追い込まれてた……? ちょっとヤバいカンジなの!)



暗黒「……トルネド」



ビュオオオオッ…!!




美希「っ……吹き飛ばされちゃうわけにはいかないのっ!」

美希「レビテト!」

ポワッ…



暗黒「終わりだ……ディスペル」

パシュンッ



美希「あっ…………」



ヒューー…




暗黒魔道士「……落ちたか」


684: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:15:56.00 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「なんだ、意外と呆気ない最期だったね、ミキ。天才の君らしくもない、間抜けな終わり方だ」

暗黒魔道士「でも、君が悪いんだよ。君が……」

暗黒魔道士「君がそんなにも……」

暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「……ボクは……」



…キラッ!


ーーヒュンッ

ドスッ!!



暗黒魔道士「ぐっ……!?」

暗黒魔道士「な……なんだ、これは……? 矢だって……?」

暗黒魔道士「まさか……!」



ーーヒュンッ

ドスッ!!



暗黒魔道士「く……真っ直ぐにボクの方へ……!」

暗黒魔道士「完璧にこちらの位置を認識しているのか……バカな……!」



美希「……カンペキじゃないけど、だいたい捉えたの!」

美希「ミキ、アンコクさんがどこにいるか分かっちゃった☆」


685: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:19:20.80 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「ミキ……! 君は崖から落ちたはずじゃなかったのかい?」



美希「うん、ミキも『落ちちゃう~』って思ったんだけど、なんとか必死に崖にしがみついて助かったの」



暗黒魔道士「なんて運のいい……」

暗黒魔道士「それじゃあもうひとつ質問だ。一体どうやってこの暗闇の中でボクの位置を特定した?」



美希「えーっとね、魔法が飛んで来る方向、詠唱から到達までの時間、その二つの情報からなんとなーく逆算しただけだよ?」



暗黒魔道士「……ふ、ふふ……無茶苦茶だね。ボクが絶えず移動しているかもしれないじゃないか」

暗黒魔道士「その可能性がある限り、魔法が飛んで来る方角から君が正確にこちらの位置を特定するのは不可能だ、絶対に」



美希「んー……その可能性はないって思うな」



暗黒魔道士「!」



美希「アンコクさんの魔法って、飛んで来る方向がだいたい同じだったの」

美希「今までに撃ってきた魔法全部がだよ?」

美希「それって、アンコクさんが同じ位置からずっと動いていないって断定するのに十分な情報なの」



暗黒魔道士「……!」

暗黒魔道士(簡単に言っているけれど、ミキにとって周りは暗闇……視界ゼロの状況だ)

暗黒魔道士(目印も何も無いそんな状況下で『自分も動きまわりながら飛んできた広範囲の魔法を利用して相手のいる方向、位置を特定する』なんて簡単に出来ることじゃない……)

暗黒魔道士(やはり、天才なのか……)


686: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:22:09.87 ID:yKLskMaYO

美希「でもね? ミキ、不思議に思ったの」

美希「だってずっと同じ方から魔法が飛んで来たら、誰だってミキと同じように考えると思うの」

美希「そしたらアンコクさんのいる位置が遅かれ早かれバレちゃうの」

美希「きっと何か『動けない理由』があるんじゃないかな?」

美希「この階が真っ暗なのも、完全に自分の位置を特定されないための煙幕に利用してる……」

美希「……どう?」



暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士(完璧な回答ではないけれど……今までのやり取りでそこまで読むのか……)



暗黒魔道士「……前者については正解。ボクはとある理由から、今いる場所から大きく動くことはできない」

暗黒魔道士「でも、後者についてはハズレだ」



美希「ガーン! ショックなの……」

美希(単なる煙幕じゃないんだ……)

美希(じゃあやっぱり、この階が真っ暗なことと今いる場所から動けないこと。この二つはアンコクさんが何回も連続で魔法を使えるってことと関係してるんじゃないかな)

美希(……なんとなくカクシンに迫ってきたってカンジなの)


687: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:24:10.00 ID:yKLskMaYO

美希「それじゃ……」

美希「……今度こそ、ミキの反撃なの!」スッ

美希(位置はわかった。あとは、きっかけを作って突撃するの!)



暗黒魔道士「弓矢か……さっきは不意を突かれたけど、最初から注意さえすれば問題ない」



美希「汚れなき天空の光よ、フジョウを照らし出せなの!」



暗黒「! 詠唱……!?」



美希「ホーリー……」ギリッ



美希「…………アロー!!」バッ


キラキラ…!

ヒュンッ…



…ドスッ!!




暗黒魔道士「ぐっ……!」

暗黒魔道士「武器に魔法の効果を……!? そんなことが出来るはずが……!」




美希「あは☆ カッコイイでしょ? ミキが考えた技だよっ!」


688: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:26:14.26 ID:yKLskMaYO

美希(うまい具合に怯んでくれたの。このまま勢いに任せて……)

美希「……攻めるのっ!」ダッ

タタタタ…




暗黒魔道士「……ふふ、驚きはしたけれど、君の考えはお見通しだ」

暗黒魔道士「近寄らせないっ……トルネド」


…ビュオオオオッ!!



美希「……きゃっ!」ヨロッ

…ドサッ



暗黒魔道士「……サンダガ」

ズガガガピシャァーーンッ!!



美希「あぅ……!」

美希(ま、マズいの、早く回復しなきゃ次が来る!)




暗黒魔道士「……滅びゆく魂に、暗黒神の名を刻め……」



美希(う……間に合わな……)



暗黒魔道士「…………フレア」



ブゥゥーーーン…


ババババババッ!!


ズドオオオオオオンッ!!


689: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:28:18.18 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


貴音「……ぶりざが!」バッ



コォォ…シャキィィィン!!



ダークバハムート「……遅い」ブンッ

ザシュッ!!


貴音「うっ……!」ヨロッ


ダークバハムート「……休んでいる暇など無いぞ?」ブンッ


貴音「く……!」ダッ


…シュンッ


ダークバハムート「……追いついたぞ」ブンッ


貴音「っ……ぷろてすっ!」


ズバッ!!



貴音「はぐ……ぅ……!」ヨロッ



ダークバハムート「……む、次で終わってしまうか? 加減が難しいな」

ダークバハムート「防いでみよ、タカネ」ダッ



貴音「…………ほーりー!」


ダークバハムート「!」



キラキラキラキラ…


ズドドドドドッ!!!


690: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 07:29:55.63 ID:yKLskMaYO

ダークバハムート「……クク……そう来るか」

ダークバハムート「ホーリーを詠唱無しで放つとはな。並の魔道士では出来ない芸当だ。今のは少々驚いたわ」



貴音「……はぁ、はぁ……」

貴音「……残念ですが、大した効果はなかったようですね……」



ダークバハムート「ふむ……悪くはなかったのだがな」



貴音(闇に墜ちた身ということはホーリーならばよもや、と思いましたが……)

貴音(肉弾戦では敵うはずもない。魔法も効果が薄い)

貴音(わたくしがばはむーと殿に勝てる術は、果たしてあるのでしょうか)



ダークバハムート「ククッ……!」

ダークバハムート「惚けるつもりか? 我は気づいているぞ」


貴音「………」


ダークバハムート「タカネよ。お前からは懐かしい匂いがする。我がこの身に成る前に捨てた、竜族の匂いがな」


貴音「………」


ダークバハムート「覚えて来たのであろう?」



ダークバハムート「…………メガフレアを」



貴音「……現時点でのわたくしの切り札ゆえ、なるべく思考にも出さずにいましたが……」

貴音「やはり、全てお見通しなのですね」


次回 P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2 その4