マミ「もう何も怖く……」ほむら「勇気とは怖さを知ること!」 前編

238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 21:52:29.75 ID:si+CMYFf0

杏子「ほれ、とっとと行くぞ。おごってくれんだろ?」

さやか「う、うん」

杏子「…………まあ、なんだ」ポリポリ

杏子「あたしに相談したいことでもあれば……聞いてやらんこともない」

さやか「杏子……」

杏子「ま、ほむら達に聞けないようなことをあたしに聞いて貰おうってのも変な話だが」

さやか「やっぱあんたいい子だね!」

杏子「うっせー。そんなことより何食わせてくれるんだい?」

杏子(あたしは必要以上に馴れ合うのは嫌いだが……)

杏子(こいつ、ほっとけねー)





ほむら「………………」






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1343995930

引用元: マミ「もう何も怖く……」ほむら「勇気とは怖さを知ること!」 



239: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 21:56:11.25 ID:si+CMYFf0


ほむら「巴さんへ……美樹さんと佐倉さんは……っと」メルメル

ツェペリ「こんな小さいもんで文通ができるのか。このツェペリが生まれた時代にはイギリスに郵便制度ができたかできないかくらいじゃった」

ほむら「時代は常に変わるんです。変わらないものもありますけどね。人の心とか、何か、そーゆーのが……送信、っと」メルメル

ツェペリ「いいこと言うじゃあないか」



――マミ宅

ティロッ♪

マミ「暁美さんからのメール……」

まどか「ほむらちゃんは何て?」

マミ「…………」

マミ「明日、みんなで話し合いましょう」

まどか「え?」


240: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 21:59:01.50 ID:si+CMYFf0

昼休み

――屋上


ほむら「お腹空いたね」

まどか「うん。今日は体育があったからねー」

さやか「ねぇほむら。走った後に一切息切れしてないってのは正直気味悪いんだけど、何とかならない?」

ほむら「え……」

マミ「気味悪いって……美樹さん……デリカシーのないことを」

まどか「は、波紋の影響だね。無意識だから仕方ないよ」

ほむら「き、気味悪い……」

ほむら「……」クー

まどか「あ」

ほむら「///」

マミ「あらあら」

さやか「腹ぺこほむらもいるし、さっさといただきますしよう」



242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:04:51.32 ID:si+CMYFf0

まどか「ほむらちゃんのお弁当箱って大きいよね」

ほむら「波紋の修行をしてるからか……お腹が減るの」モグモグ

まどか「一人暮らしなんだよね? 手作り?」

ほむら「う、うん……でも私、手際が悪いからこの通り見栄えは……量ばっかりは多いけど」

さやか「格闘技(?)をやってるのに体が華奢で……お弁当が大きくって腹ぺこキャラ」

マミ「守ってあげたくなるようなその性格。そして眼鏡っ子」

まどか「萌えってやつだよね?」

ほむら「………あ、あの、もしかして腹ぺこキャラって」

さやか「クラス公認」

243: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:07:34.21 ID:si+CMYFf0


ほむら「…………ほ、ホントに? ねえ……ホントですか?」

さやか「…………」

ほむら「な、なんで黙ってるんですか?! ねえってばっ!」

マミ「ギャップ萌えって素晴らしいと思うの」

ほむら「!?」

まどか「ほっぺにご飯粒つけちゃう食いしん坊さんのほむらちゃんなまら可愛い」ヒョイパク

ほむら「あっ///」

さやか「食べる割には脂肪が付かないよね。主に胸――」

マミ「それ以上はいけない」


244: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:08:32.04 ID:si+CMYFf0
ほむら「ほむほむ」

まどか「まどまど」



マミ「ねぇ、美樹さん。お話があるのだけど」

さやか「な、何すかマミさん改まって……」

マミ「佐倉さんと仲よさそうよね」

さやか「うぐっ……!」

さやか「す、すいません……敵対してるのに、杏子と遊んで……でも、ほっとけなくて……」

マミ「……私は別に佐倉さんと敵対はしているつもりはないわ」

さやか「そうでしたっけ?」

マミ「あのね……美樹さん。佐倉さんを、何とか私達に引き入れてほしいの」

さやか「え?」

マミ「あの子、乱暴者で一匹狼なんだけど、……何というか、丸くなってるようなの。あなたのおかげで」

245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:09:08.20 ID:si+CMYFf0

マミ「暁美さんと再決闘して勝ってもらうというのが一番てっとりばやいけど、それが嫌なのはわかるわよね?」

さやか「はい」

マミ「美樹さんは、佐倉さんの心の錠前を解いている」

さやか「…………」

マミ「私には……それができないから。あなたなら、佐倉さんは心を開いてくれるわ」

さやか「……わかりました」

マミ「お願いね」

さやか(やれやれ、さやかちゃんは忙しいね。杏子を任されるわ……)

さやか(仁美に呼び出されるわ……)

さやか(仁美があたしを呼び出すなんて何のようかね)


246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:12:16.07 ID:si+CMYFf0



――放課後



仁美「……ずっと前から私、上条くんのこと、お慕いしておりました」

さやか「…………」

仁美「抜け駆けや横取りをするようなことは、したくありません」

仁美「私にはわかっています。上条くんの事、好きなんでしょう?」

さやか「そ、そんな……!」

仁美「丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは後悔なさらないよう決めてください……」

さやか「う……な、何だよ……何なんだよぉ……」

仁美「…………」


247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:18:00.95 ID:si+CMYFf0

杏子「オッス、さやか」



仁美「!?」

さやか「!?」

さやか「きょ、杏子……」

杏子「おい、さやか。今日もあたしと付き合えよ」

仁美「へ?」

仁美(つ、付き……?)

杏子「うん? あんたは……さやかの友達?」

仁美「わ、私は……」

杏子「まあいいか。悪いね割り込んで。すぐ済むから待ってくれよ」


248: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:20:38.06 ID:si+CMYFf0


さやか「おい杏子……」

杏子「なぁいいだろ。さやか~。あ、そうだ、今夜ホテル行こうぜホテル」

仁美「!?」

さやか「あんたねぇ……雰囲気ブチ壊しだよ!」

さやか「ホテルつってもどうせアレでしょ?」

杏子「まぁね」

さやか(仁美の前で忍び込んでるだなんて言えまい)

仁美「……!」

仁美(アレということは……や、やはり……! ラ、ラブ――)

さやか「パス」

杏子「何だよぅ。あんたはいつもあたしを見かけ次第ベタついてくるのに、あたしが見かけたらダメなのか?」

仁美「ベ、ベタつ……!?」

249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:21:20.86 ID:si+CMYFf0

さやか「そうじゃあない。空気を読めと言っているんだよ」

杏子「空気は吸う物だ。ほれ、何か食いに行こうぜ。今度こそあたしがおごってやっからな」

さやか「そういうことじゃあないんだよ……」

杏子「空気で腹が膨れるか? 同じ釜の飯食った仲じゃあねぇか」

仁美「……」

さやか「こないだうちに来てカレー食べた話をしているの? 妙な表現すんなよ」

仁美(お泊まり!?)

さやか「ねぇ、杏子。悪いけど、今は仁美と二人にしてよ? 今大事な話をしてるんだ」

杏子「大事な話? あたしよりもか」

さやか「そりゃそうだよ」

仁美「……既に、だったんですね」

さやか「は?」

250: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:26:09.45 ID:si+CMYFf0


仁美「美樹さんは、既にそこの方を誑かしていたんですね……」

さやか「た、たぶっ!?」

仁美「いけませんわ! 禁断の恋の形ですわ!」

仁美「まさか美樹さんがバイセクシャルだったなんて……」

さやか「あんたは何かとんでもない勘違いをしている」

仁美「美樹さん。ずるいです。上条くんとそこの方を同時に……」

杏子「こいつ、何言ってるの?」

さやか「ちょっと百合を拗らせておりまして」

251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:26:42.76 ID:si+CMYFf0


仁美「……とにかく、明後日、私は上条くんに告白します。それでは……選んでください。そこの方と、上条くんを……」スック

さやか「あ、ちょ、ま、待って! 誤解だって……!」

杏子「なぁ、あたし邪魔した?」

さやか「それはもう見事に」

杏子「そりゃ悪かったな。でもあんたがあたしがホームレスだからって金銭面で気を使ったのが悪いんだぞ。余計な貸し作りたくないんだよ」

さやか「だって……」

杏子「追いかけなくていいのか?」

さやか「言われなくても!」ダッ

253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:29:58.06 ID:si+CMYFf0


まどか「仁美ちゃんがさやかちゃんを呼び出してた」

まどか「何やらただごとではない雰囲気だったから思わずつけてきちゃったわたしはいけない子でしょーかぁーっ?」

まどか「ティヒヒッ、気になっちゃったんだもん。ほむらちゃんもマミさんも用があるって言うし……」

まどか「あ、出てきた」



仁美「…………」スタスタ

さやか「待って! 待ってよ仁美ぃ!」

仁美「話すことなんてありません」

さやか「勘違いだよォ――!」


まどか「……あれ?」


254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:34:06.82 ID:si+CMYFf0

さやか「ねぇ、聞いて。あたしと杏子はあんたが想像しているような仲じゃあないんだ……」

仁美「……私と美樹さんはただの恋敵です。それ以上でもそれ以下でもありません」

さやか「そ、そんな養豚場の豚さんを見るような目で見ないでよ……誤解だってばさァ!」

仁美「聞きません」ツーン



まどか「……ど、どうしたの?」

仁美「あ、鹿目さん」

さやか「まどか?! 丁度良いところに! まどかも弁解手伝ってよ!」

まどか「べ、弁解?」


256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:35:33.52 ID:si+CMYFf0


仁美「美樹さんは……AC/DCでしたわ……」

まどか「え? なに?」

さやか「バイセクシャルの隠語だよ。仁美ったら百合を拗らせたからか……こんなわけわからんことに」

仁美「美樹さんなんて知りません」

まどか「ばいせくしゃる……ってなに?」

仁美「……」

さやか「……」

仁美「鹿目さん。申し訳ございませんでした」

さやか「あたし馬鹿でございました」

まどか「え? え?」

257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:36:08.48 ID:si+CMYFf0


仁美「そして、美樹さん。私、冷静でなかった……ごめんなさい」

さやか「いいんだよ。仁美……誤解が解けてよかった」

まどか「…………?」

仁美「ですが……とにかく、丸一日です。明後日、私は……」

まどか「明後日?」

さやか「わ、わかって――」

さやか「ハッ!」


グニャァ…


258: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:37:38.84 ID:si+CMYFf0


――結界

まどか「え!? こ、これって……」

さやか「結界……! こ、こんな時に……」

まどか「そ、そうだ、仁美ちゃん! こんな状況だけどパニックになっちゃダ……」

仁美「……」

さやか「仁美?」

仁美「」ドサッ

さやか「仁美ッ!? どうして倒れた! 仁美! 仁美ッ!」

さやか「き、気を失ってる……何で? 結界の影響かな……」

まどか「……さやかちゃん? 何をしているの」

さやか「へ?」


259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:40:06.63 ID:si+CMYFf0


さやか「……って、ああ、そうだった。あたしのちょっとした魔法で気を失わせたんだ」

さやか「魔法少女の素質がない仁美には刺激が強すぎるってモンだ」

まどか「う、うん……」

さやか「……あれ?」

まどか「え?」

さやか「……何を、言ってるの? あたしぃ?」 

まどか「何をって……自分で言ったでしょ?」

さやか「待ってよ。あたしが仁美を気絶させるなんてありえないよ。親友だもん。……どうして?」

まどか「どうしてって……さやかちゃん、何を言ってるの?」


260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:40:50.31 ID:si+CMYFf0


さやか「まあギャアギャア騒がれても困るからね」

まどか「え?」

さやか「今あたし何か言った?」

まどか「え?」


ド ド ド ド ド


さやか「待て……。整理しよう……」

まどか「うん……」

さやか「いつ誰が仁美を気絶させた?」

まどか「結界に入った瞬間、さやかちゃんが一瞬で変身して仁美ちゃんを眠らせた」



261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:42:19.30 ID:si+CMYFf0


さやか「あたしがいつ仁美が騒がしくなると言った? そんなこと思ってもないよ」

まどか「さやかちゃん……無意識で言ったの? 今の……」

さやか「今のも何も……」

さやか「こっそりと仁美を消して恭介はあたしの旦那になるのだ」

まどか「え?!」

さやか「何を言ってるだァ――――ッ!」

さやか「ウオォォォォ魔女はドコだァ――ッ! あたしに変なこと言わせやがってェ――ッ!」

まどか「お、お、落ち着いてさやかちゃん! 冷静になって!」

さやか「うぅぅ……と、とにかくまどか! ここは危険だ! 今すぐ離れ……いや、使い魔が現れるか……離れるのは危険!」

さやか「使い魔の餌になってくれた方が都合がいいんだけど」

まどか「さ、さやかちゃ……」

さやか「ンガー! 何なんだよあたしはさっきから!」バタバタ


262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:44:44.25 ID:si+CMYFf0


杏子「おいこら。あたしほっといて何してんだよ」


さやか「杏子!」

まどか「あ……」

杏子「オッス。眼鏡っ子にくっついてたちっこいのじゃあないか」

さやか「杏子! あ……ありのまま今起こった事を話すよ! 『あたしは何も考えていなかったのに謎の行動をしていたし変な事も言っていた』……」

さやか「な、何を言っているのかわからねーと思うが、あたしも何をされたのかわからなかった……。頭がどうにかなりそうだった……」

さやか「催眠術だとか幻聴だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ……」

杏子「意味がわからん」

263: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:46:30.39 ID:si+CMYFf0


さやか「まどかとそこの気絶してる仁美を、この結界から逃がしてくれ!」

杏子「はぁ? 何であたしが……」

さやか「あたしは、既に魔女の結界の影響を受けてしまった! それは無意識に魔法を使っちゃうほどに!」

さやか「早く! 今のあたしじゃ、まどかと仁美に何するかわかったもんじゃない!」

さやか「あんただけが頼りなんだッ!」

杏子「…………そ、そこまで言うなら」

仁美「」

杏子「よいしょっと……。おい、まどか。こっちだ。ついてこい」

まどか「う、うん」

タッ


さやか「頼んだよ……!」


264: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:52:04.25 ID:si+CMYFf0


――結界外


まどか「ほむらちゃんとマミさんに電話したから早く来てくれるよ!」

杏子「そうか。助けは必要ないと思うが……」

杏子(ほむらはともかく、マミは呼ばないでほしいとこだ……)

まどか「だめだよ! 油断大敵! 何があるかわからないんだから……!」

杏子「わかったわかった」


仁美「……うーん」

杏子「お、目覚めたか」

仁美「あら……ここは……あら、鹿目さん。私……どうしてたんですの?」

まどか「う、うたた寝しちゃったんだよ。どう? 立てる?」

仁美「そりゃあまあ……うたた寝? そんなまさか……」スクッ

杏子「おい、あんた。大丈夫か? ほれ、指何本に見える?」

仁美「四本……。あっ、あなたは……」


265: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:53:19.11 ID:si+CMYFf0


杏子「このあたしがそっちの気があるみたいな無礼極まりない勘違いしてくれたよな」

仁美「す、すみませんでした……私、妙な勘違いして……」

まどか「何があったの?」

杏子「気にするな」

杏子「さ、あんたはとっとと帰りな」

仁美「え? あの、美樹さんは……?」

杏子「いいったら。帰れったら」

仁美「で、でも私……」

まどか「だからほら。その……時計を見て」

仁美「時計……?」

266: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 22:58:33.99 ID:si+CMYFf0


仁美「えぇっ!? もうこんな時間!?」

仁美「た、大変! 門限が!」

杏子「五時の鐘が鳴るとかじゃなくてリアル門限?」

まどか「世の中には色々な家庭事情があるんだよ」

杏子「……そりゃそうだ」

仁美「あ、あの! 今日は申し訳ありません! 急いで帰らなくては!」ワタワタ

仁美「鹿目さん! また明日! その……み、美樹さんにもよろしくお伝え下さい」ペコペコペコ

まどか「う、うん」

仁美「あと、見ず知らずの方! ご迷惑おかけしました!」ペコォーッ

ドタバタ

268: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 23:00:21.20 ID:si+CMYFf0

杏子「いったか……馬鹿丁寧な奴だ」

まどか「ゴメンね。余計な魔法使わせちゃって」

杏子「気にすんな。ちょっとした幻覚で時計を見間違えさせただけさ。本当の時間に気付くのは帰路か自宅だぜ」

まどか「……ね、ねぇ杏子ちゃん」

杏子「あん?」

まどか「さやかちゃんの事、どう思う?」

杏子「どうって……ウザったいし、面倒くさい奴だと思う」

まどか「…………」

杏子「でも、好きな男にウジウジしたりさ、ガラにもないとこもあるし……なんつーか、ほっとけねーな」

まどか「やっぱり仲いいんだね」

杏子「やっぱりってなんだよ。監視してたわけでもあるまいし」

まどか「」ギクッ


269: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2012/08/05(日) 23:01:10.68 ID:si+CMYFf0

杏子「ま、いいや。…………なぁ、あたしからも一ついいか?

まどか「な、なにかな?」

杏子「あんたはさ……どっちの人間なんだ?」

まどか「え?」

杏子「例えばさ、あたしは『魔法少女』だ。それはいいな? 仁美は『一般人』だ。……じゃああんたはどっちなんだ?」

まどか「わたしは……どっちなんだろう?」

杏子「素質のある未契約者ってのは、あいまいで気に入らない。アウト・サイド・イン。イン・サイド・アウト。はっきりしろよ」

まどか「そ、そうは言っても……」

杏子「一般人と魔法少女の境界を行き来するのはやめてもらいたいんだがね。……契約しろってんじゃない。むしろしないでほしいよ」


270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 23:01:55.54 ID:si+CMYFf0


杏子「答えはいつか聞かせろよ。……と。あんたも帰りな。魔女狩りの時間だ。答えはまた今度聞かせろ」

まどか「……うん」


杏子(友達……か)

杏子(……あたしとさやかが?)

杏子「…………へっ」

まどか「え?」

杏子「何でもねーよ」


271: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/05(日) 23:02:50.79 ID:si+CMYFf0
TO BE CONTINUED...

279: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:19:59.06 ID:ohQ2hxYs0

――結界


杏子「おい。さやか。ちびっ子とワカメッチを避難させたぞ」

さやか「……ああ、ありがと。恩に着るよ……」

杏子「気にするな。だって……あたしら……」

さやか「?」

杏子「あたしら……そ、その……」

杏子「……と、友達、だもんな」ポリポリ

さやか「…………」

杏子「……な?」

さやか「……プッ」


280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:22:55.53 ID:ohQ2hxYs0

さやか「あっはははははははッ」

杏子「お、おめー! 何笑ってんだよ!」

さやか「ははは……いやいや、ごめんね。なんかちゃんちゃらおかしくって……」

杏子「全く……それで? 魔女はいたか?」

さやか「…………」

杏子「いないのか。何してたんだよ」

さやか「あ、そう言えばさ……杏子。あんた……人間を使い魔や魔女が食い、魔法少女が魔女を食う……そう言ったよね」

杏子「あ? 何だよいきなり」



281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:24:57.71 ID:ohQ2hxYs0


さやか「理科の授業でさぁ……やったんだよね。食物連鎖。そこであたし、思ったんだ」

さやか「あんたは食物連鎖の頂点に立ったつもりなんだろうけど、魔法少女って、魔女に殺されることもあるんだよ」

さやか「あんたは魔法少女同士は競争の関係にあるって言ったけど、それは違う。魔法少女と魔女こそ『競争』の関係なんだ」

杏子「何を言ってるんだ?」

さやか「魔法少女は魔女の高次消費者じゃあないんだよ」

杏子「おい……さやか……?」

杏子「……いや」

杏子「おまえ……」

杏子「……誰だ?」



さやか「……ククッ」

282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:25:39.24 ID:ohQ2hxYs0


さやか「ようやく……気付いた……?」

さやか「ワタシは……この結界の魔女だよ」

杏子「なっ!?」

杏子「どういうことだ! さやかをどこにやった!」

さやか「目の前にいるよ。ワタシがさやかだ」

杏子「ッ!」

さやか「ワタシは……この娘の意識を占領しているんだよ。記憶も共有しているんだ。キョーコちゃん?」

杏子「……き、寄生する魔女……!?」

さやか「そうそう。オマエはワタシの親みたいなもんだヨ」

杏子「なっ……ま、まさかッ! あの時の……」

杏子「さやかに倒されて無様にも逃げ回っているはずだ……」

283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:26:40.04 ID:ohQ2hxYs0

さやか「失礼な。ワタシは一度も負けてはいない」

杏子「……さやかにずっと『取り憑いて』いたのか! あの時既に!」

さやか「Exactly(その通りでございます)」

さやか「そう! ワタシはオマエに救われた使い魔さ! 魔女に、めでたく出世したんだぜ! 祝福しろ!」

さやか「ワタシは人の体内に寄生することができる。憑依の魔女とでも呼んでよ」

さやか「ワタシは逃げたふりをしてこの子の意識の中に入って、生活した!」

さやか「最も宿主を操ることは……わざわざ結界を作るか結界の中でないとできないがね!」

杏子「……なんて奴だ。クソッ」

284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:27:22.02 ID:ohQ2hxYs0


さやか「この子の中で生活して……この子……なんか男子が好きみたいでさー。……かと思えば仁美とかいう女にバイだなんだって言われてさー……」

さやか「そんなワタシの初宿主に肖リ、その仁美の言った『AC/DC』から……エー、スィー、ディー、スィー。エシディシとでも呼んでよ。憑依の魔女エシディシ!」

杏子「ペラペラペラペラと……喋る魔女なんて初めてだ」

さやか「そりゃ~ね、寄生してる間に語学をマスターしたからね」

杏子(たった数日程度だろ……知能は高い……のか?)

杏子「ただこれだけは言える! 寄生虫ごときが偉そうに名乗る名はない!」

杏子「あんパンチ!」

ボコッ

さやか「痛ェ! 殴られた! DVだ! 虐待だ!」

杏子「魔女なら話は別だ! ブッ潰す!」


285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:28:16.35 ID:ohQ2hxYs0

さやか「おいおい待てって! この体はオマエの友達じゃないか! 傷つけていいのかよ!」

杏子「痛いと言ったな……痛みを感じるなら、このままさやかを死なない程度に痛めつけていけば魔女のテメーも音をあげるだろうな」

さやか「ヒドイッ! オニ! アクマッ! マジョ!」

杏子「うっせー! 魔女はテメーだろッ! スカタン! あたしが撒いた種ッ! あたしが始末してくれる!」

さやか「ちくしょー! いくぜ! 剣と槍の対決だッ! 早くしねーと『サシ』の勝負ができねーぜッ!」

さやか「おい! その槍で突いてこい!」

杏子「あ?」

さやか「カモーン! その槍でワタシを串刺しにしてみろォ――ッ!」

杏子「おう」

杏子「うおおおお――ッ」ボッ

グサァ

286: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:29:44.29 ID:ohQ2hxYs0

さやか「」

杏子「普通に刺さったァ――ッ!」ガーン

さやか「ゲホァッ!」

杏子「な、なんなんだァ! かっ、体で槍をもろに喰らったッ!」

さやか「その気になれば痛みなんて消せちゃうんダァ……」

杏子「!?」グッ

さやか「……フェアにいこう。ワタシの宿主、さやかの得意魔法は治癒。体を貫いた瞬間に、その穴を治して槍を固定した」

さやか「ついでに言うと、こいつは痛覚を消すこともできる。だからワタシは痛くない」

杏子「しまった! 刺さった槍が固定されて突けも抜けもしない……!」グググッ


287: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:30:49.88 ID:ohQ2hxYs0

さやか「うおおぉぉぉぉ!」

杏子「来るか!」

杏子(殴るつもりか! だが! この距離……)

さやか(関節をッ! 関節を外して腕を伸ばすッ! その激痛はなんとかするッ!)ゴギン メギッ

ググーン

杏子「ゲ!?」

さやか「ズームパンチッ!」

ドゴッ

杏子「うげっ! う……腕が伸びた!? そんな無茶苦茶な!」

さやか「どうだ! まいったか!」

杏子「早とちりにも程があるぞボケッ!」


288: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:31:30.46 ID:ohQ2hxYs0

さやか「なぁ、オマエ!」

杏子「なんだ」

さやか「『貴様、魔女に成長するまで何人の命を喰らってきた』って聞いてみろ!」

杏子「は? やだよ。……何が言いたいんだ?」

さやか「ワタシがどれだけ一般人を喰らってきたか、もとい、オマエがどれだけ一般人を殺したのかを言いたい」

杏子「……そう、かよ。それがどうしたってんだ」

さやか「自分を魔法少女だって言ってるけど、人を間接的に殺すオマエは、一般的な定義の魔女と同じなんだヨ」

杏子「あっそ。だからなんだよ。あたしには関係ない」

さやか「そんなんだから、マミという奴に嫌われるんだヨ」

杏子「……マミは関係ないだろうが」

さやか「…………」


289: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:32:34.94 ID:ohQ2hxYs0


さやか「ねぇ杏子……あたし、あんたのこと実は嫌いなんだよね……」

さやか「だって、あんたがマミさんの心を裏切ったじゃん」

杏子「ッ!」

さやか「迷惑なんだよね。マミさんにとっても、まどかにとっても、ほむらにとってもさ……空気読めてないっていうか」

杏子「お、おい……なんのつもりだ……」

さやか「あんた、さっきあたしと友達になったつもりになってたよね。馬鹿じゃないの?」

さやか「あたしはね、あんたを馬鹿にして笑ってたんだよ。友達面しないでよ」

杏子「さやかの声で、口調で、仕草で……何を言わせてるんだよ……! やめろよ……!」

さやか「本心だけど? 記憶を共有できるって言ったじゃん。馬鹿」

杏子「なっ……!? う、嘘をつくな! さやかが……そんなこと言うわけ……」

さやか「そんなこと言うわけないって? あんたにあたしの何がわかるの? 別に友達でもなんでもないんだから」

杏子「…………」

杏子(友達でもなんでも……ない)

290: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:34:01.76 ID:ohQ2hxYs0


さやか(……いくら魔女のワタシが人殺しだとか馬鹿だとか罵詈雑言を与えても、何も通じない)

さやか(だが、やつはこの娘に心の錠前を開きかけている。だから……声、姿、仕草、etc...この娘の97%が罵倒すること、それが重要なのダ)

さやか「――」ブツブツ

杏子「や、やめ……」

さやか「――」ボソボソ

さやか(例えそれが嘘でもダ)

杏子「……」

ジワッ…

さやか(計画どーり……だ。イー感じに心が抉れてる)

さやか(傷は、ふさがりかけが一番抉りやすい)


ズルッ


魔女「サテト……逃ゲルトシヨウ……巻キ添エニナリタキャネーカラナ」



291: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:35:38.38 ID:ohQ2hxYs0

さやか「……ハッ!?」

さやか「あれ? あたし、何を……確か……結界が急に現れて……えっと……」

杏子「…………」

杏子(失った……)

さやか「あ、杏子……。いつの間に戻ってたの? 二人は無事?」

さやか「……杏子?」

杏子(……あたしはまた失ってしまった)

杏子(あたしが願ったから……話を聞いて欲しいと……強くなりたいと……友達が欲しいと)

さやか「……杏、子?」

杏子(家族からもマミからもさやかからも拒絶された。……みんな失っちまった)

杏子「あたしにはもう何もない」

パキンッ


ズアッ

さやか「うわぁっ!? なっ!? 何ッ!?」

292: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:37:02.72 ID:ohQ2hxYs0


さやか「……あぁ、ビックリした」

さやか「な……なんだ? 今の」

さやか「あ、あれ……? さっきと結界が違う……?」

さやか「い、いや、結界には変わらないッ! 進化か!? 進化なのか!?」

さやか「あッ?!」

武旦の魔女「――――」

さやか「い、いきなり魔女のご登場か……」


293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:37:49.52 ID:ohQ2hxYs0

さやか「杏子! こいつは何かヤバイ! 共闘するよ!」

さやか「……杏子? ……どこいった?」

さやか「どこいった! 杏子! さっきの風圧みたいなので吹き飛んだか!? 杏子ォッ! どこだ!」

QB「目の前だよ。魔女になってしまったようだね」

さやか「キュゥべえッ?! あんたいつのまに!」

QB「やぁ。さやか。気をつけて。この魔女は――」

さやか「……ちょっと待って。いま、あんた何ていった?」

294: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:39:32.55 ID:ohQ2hxYs0


QB「何って、何がだい?」

さやか「いいから何て言ったか言えッ!」

QB「この魔女は今までにない強さを……」

さやか「そうじゃない!」

QB「魔女になってしまったようだね?」

さやか「どういうこと……?」

QB「そのままの意味さ。杏子が魔女になってしまったんだ」

さやか「杏子が魔女に……? ハぁ? な、何言ってんの?」

魔女「――」


295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:40:23.32 ID:ohQ2hxYs0

QB「絶望したりしてソウルジェムが穢れきると魔法少女は魔女になるんだ」

さやか「ま……魔女……? 魔法少女が……魔女? ……え? え?」

さやか「何よそれ……あんた、何を言ってるの……?」

QB「聞かれたから答えただけだよ」

さやか「あの――あの魔女が――杏子……?」

さやか「う……嘘だよ……そんなのありえない……だって……ぐ、ううぅ……!」

QB「真実だよ」

さやか「……つ、伝えなくては! みんなにこの恐ろしい事実を伝えなくちゃ――」

魔女「――!」

ズアッ

さやか「あ――」


296: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:41:24.09 ID:ohQ2hxYs0

――結界外

ほむら「鹿目さん!」

まどか「ほむらちゃん! ツェペリさんも!」

ツェペリ「待たせたな」

まどか「さやかちゃんと仁美ちゃんの三人でいるところを結界が起きて……」

まどか「結界内で杏子ちゃんと会ってここまで連れてきてもらったの! 仁美ちゃんは帰った! そして杏子ちゃんは戻ってった!」

ほむら「私達も行きましょう」

ツェペリ「ああ、そうじゃな。マミは時間がかかるそうじゃからの」

まどか「わ、わたしは……」

ほむら「危ないから、待っていて。巴さんがもうすぐ来ると思うから……」

まどか「う、うんっ!」

297: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:41:58.99 ID:ohQ2hxYs0

――武旦の魔女の結界


ゴ ゴ ゴ ゴ


ほむら「……そ、そんな」

ツェペリ「なんということじゃ……!」

ほむら「み、美樹さんが……美樹さんが……!」


ほむら「死んでる……!」


ほむら「嘘……そんな……そんなのって……!」

298: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:42:47.72 ID:ohQ2hxYs0

魔女「――」

ツェペリ「あの魔女に……やられてしまったのか」

ツェペリ「武器を持っているな……あの武器でバラバラにされてしまったのか?」

ほむら「う……ウプッ」

ツェペリ「大丈夫か?」

ほむら「ハァ……ハァ……だ、大丈夫……です。……鹿目さんを待たせておいてよかった」

ツェペリ「全くじゃ、親友の惨死体なんて刺激が強すぎるわい」

ほむら「……あなたの遺体は、結界から持って帰ります。ここで、休んでいてください……」

ほむら「……ん?」


ほむら(これは美樹さんの腕……? こんな所まで飛ばされて……。でも、何か不自然な切り傷が……)

ほむら(この太さと深さは……美樹さんの剣でついたものだ)

ほむ「……?」

299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:43:44.64 ID:ohQ2hxYs0

QB「二人とも。気をつけるんだ。この魔女は今までにない強さを持っている」

ほむら「あ、キュゥべえ……!」

ツェペリ「確かに、雰囲気が違うな……」

QB「杏子が魔女になってしまったんだ」

ほむら「ッ!」

ツェペリ「何ッ!?」

ツェペリ「……何があったんだ」

ほむら「……間に合わなかった」

ツェペリ「何がったのかわからんが……自身を追いつめていたのか? ……もっと早く気付いてやれれば……!」

ほむら「仕方、ないです。とにかく、さく……この魔女を止めないと!」

ほむら「ツェペリさん! 使い魔をお願いします! 魔女は私が!」


300: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:44:37.85 ID:ohQ2hxYs0


使い魔「――」

ツェペリ「仙道波蹴!」ドゴォッ

ツェペリ「これが杏子の精神と考えると……青と黄色の使い魔に精神の暗示があるのか?」

ツェペリ「……なってしまったものをあれこれ考えても仕方あるまい」

ツェペリ「問題はあの二人だ。……もし、このことを知ってしまったら……」



ほむら「単独でなら……巻き込む心配はない!」

カチッ

ほむら「時間停止+爆弾!」



魔女「――!」

ほむら「効いていない……!」

ほむら「ならば接近戦! ドライバーに油を塗って波紋を流す! 波紋ドライバー!」

301: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:45:06.60 ID:ohQ2hxYs0


ほむら「吹っ飛ばす程のショットッ!」

ボコォッ

魔女「――」

ほむら「だ、ダメ……っ!」

魔女「――!」

ズアッ

ほむら「しまっ――」


ガァン!

魔女「!」

バシィッ



マミ「大丈夫!? 助太刀に来たわ!」

ほむら「巴さん!」

302: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:47:07.79 ID:ohQ2hxYs0

マミ「ごめんなさい。また遅刻しちゃったわ」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「かっ、鹿目さんッ!?」

まどか「ご、ごめん……いてもたってもいられなくって……」

ツェペリ「……そういう性格じゃ。来てしまったものはしかたない」

マミ「これが例の魔女ね……! 暁美さんとツェペリさんの二人? 美樹さんと……佐倉さんは?」

ほむら「ツェペリさんには使い魔を任せています……」

303: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:48:33.83 ID:ohQ2hxYs0

ツェペリ「だから実質、魔女と戦っておるのは一人……」

マミ「……一人? えっと確か、ふた――」

ほむら(テレパシー)『……美樹さんがこの魔女と遭遇して……負けました』

マミ「ッ!」

ほむら(テレパシー)『酷い状態です。鹿目さんには、見せたくない』

マミ(テレパシー)『そう、ね。………残念だけど……仕方ないわ』

マミ「佐倉さんは……どこ? いるはずよね……?」

304: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:50:06.81 ID:ohQ2hxYs0

ほむら「…………」

マミ「……暁美さん?」

ツェペリ「……今は奴を倒すのが先決」

マミ「そ、そうね……。三人もいれば……」

ほむら「ツェペリさんは使い魔をお願いします」

ツェペリ「あ? あ、ああ……」

ほむら「マミは魔女をお願いします!」

マミ「えぇ。あのときのように油断はしないわ!」チャキッ

ほむら「私は鹿目さんを護衛します。そして余裕があれば援護をします!」

マミ「わかったわ! 行ってくる!」

まどか「ご、ごめんね。ほむらちゃん……! また足手まといに……」


305: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:51:13.42 ID:ohQ2hxYs0


まどか「ねぇ……さやかちゃんはどこなの? それに杏子ちゃんも……」

ほむら「…………」

まどか「どこかに避難してるの? ……きっとそうだよね。ね? ほむらちゃん?」

ほむら「…………」

まどか「ほむらちゃん……わたし怖いよォ……」キュッ

ほむら「あっ、ちょ、ちょっと……腕を掴んだら……」

まどか「怖いから……もう少しこうさせて」キュゥ…

ほむら「……危ないから離して?」

まどか「や……」


306: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:51:52.29 ID:ohQ2hxYs0

ほむら「も、もう……」

まどか「ん~」キュー

ほむら「……鹿目さん」

スッ

まどか「あっ……」

ほむら「…………」

まどか「ほむらちゃん……」



ほむら「離して」

バチィッ


307: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:52:51.90 ID:ohQ2hxYs0

まどか「うあああッ!?」

QB「!?」

まどか「ビリっときたあああああ!」

ツェペリ「ほむら! 何をしているんだ!?」

QB「そうだよ! 君はまどかに好意的なはずだ。こんな乱暴なこと……」

まどか「酷いよほむらちゃん! 何て酷いことするの?! あんまりだよ!」

ほむら「……冷静すぎる」

まどか「え?」

308: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:54:40.42 ID:ohQ2hxYs0


ほむら「ある方向だけ、ピンポイントで、故意に目を背けている。とても不自然だよ」

ほむら「あなたは鹿目さんじゃない」

まどか「え? ……え?」

QB「な、何を言ってるんだい……? 彼女はまどかだ。それは間違いない……」

ほむら「ところでこれ……なんだと思う?」スッ

まどか「!」

ツェペリ「こ、これは!」

ほむら「美樹さんの『腕』……あの魔女に吹き飛ばされたものだよ」



309: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:55:40.21 ID:ohQ2hxYs0

ツェペリ「何を考えているんだほむら! まどかには刺激が強すぎるぞ!」

まどか「…………い、いやあああああ!」

ツェペリ「ハッ!」

ほむら「今! おまえはリアクションを悩んだ! それは、親友の惨死体を見た時のリアクションの仕方、その恐怖がわからないからだッ!」

ツェペリ「まさか……!」

まどか「…………!」

ほむら「この美樹さんの腕に……『Be Oll Aiz』って傷がある。ほら、これ……。ビー、オール、アイズ。スペルはミスっているけど、これは決して目を離すなという最期のメッセージ……」

ほむら「……魔女のことかな、と思った。でも、魔女に目を離さないのは当たり前のこと。だから鹿目さんを目を離すなと言っているのだと思った」

ほむら「使い魔とかの幻影か何かかと思った。でも、実際に抱きつかれて、肌の感触、シャンプーの匂いは……鹿目さんだった。魔女が匂いまで知る由はない」


310: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:57:23.65 ID:ohQ2hxYs0

ほむら「だからこの違和感の正体は、鹿目さんに取り憑くとかしている魔女か使い魔がいて、意識を乗っ取っているものだと推測したッ!」

ツェペリ「なん……だと……!」

まどか「……」

ほむら「それにキュゥべえは本物の鹿目さんだとはっきりと言った。契約をしたい人間を間違えることはそうそうないだろうし、そういうことで嘘はつかない」

まどか「…………」

ツェペリ「そうか……最初から気付いていたのか。だからマミから離れて……」

ほむら「正体を表しなさい!」


312: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 21:58:52.47 ID:ohQ2hxYs0


まどか「…………ジブいねぇ……お嬢ちゃん全くシブいねぇ……」

ツェペリ「既に……だったのか!」

まどか「そのと~りさ……。ワタシは憑依の魔女……名はエシディシ。由来はバイセクシャル!」

QB「まどかが……」

まどか「そしてワタシが嘘と事実を巧みに織り交ぜて、杏子を絶望の淵に追いやってやった~」

ツェペリ「こいつ……!」

ほむら「許せない……! こいつはメチャ許せないッ!」

まどか「ハンッ! ワタシをその波紋とやらで攻撃してみろォ――!」

まどか「波紋が正とすれば魔女は負! 抜群に効くんぜェ――! 知っとるんだぜ――ッ!」

まどか「だが! 間違いなくこの小娘の心臓はタダじゃすまないッ!」


313: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:00:33.92 ID:ohQ2hxYs0



まどか「杏子退治に加勢するならこのワタシを倒してからにしやがらチンボコ野郎!」

ほむら「鹿目さんの口から何て事を……!」ギリギリ

ほむら「女子中学生として恥ずべきことだけど……この暁美ほむらは……」

ほむら「恨みをはらすために! 貴様を殺すのだッ!」

まどか「ティヒヒヒヒッ、ほむらちゃんにわたしを殺せるの?」

ツェペリ「波紋を喰らえば電気のような衝撃が走る。やつの言うとおり、心臓に……」

QB「ほむら! 僕は人に寄生する魔女や使い魔は何度か見たことある。……だがどれも宿主ごと死なすという対処法が取られている!」

QB「まどかを傷つけるのはやめてくれ……契約してないのに……」

ほむら「……ツェペリさん! 例の波紋で行きます!」

ツェペリ「例の?」

ほむら「菓子の魔女で覚えた波紋効果! あの波紋をやるんです!」

314: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:02:25.45 ID:ohQ2hxYs0

ほむら「私とあなたの二つの波紋。二つの……」

ツェペリ「……なるほど。あれなら……大丈夫か?」

ほむら「やるしかない!」

ツェペリ「よし! 呼吸はおまえの方に合わせる。いくぞッ!」

まどか「何をするつもりなのかな? ほむらちゃん? ティヒヒッ」

ほむら「コォォォォ~…」

ツェペリ「コォォォォ~…」

まどか「き、来た!? だが奴等ははったりだ! どうせビビらせて追い出そうと……」

ほむら/ツェペリ「「波紋疾走!」」

ボゴォッ

まどか「グホォッ!?」


315: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:03:43.34 ID:ohQ2hxYs0

ツェペリがまどかの体全体に流したのははじける「正の」波紋! ほむらが心臓に一点集中したのはくっつく「負の」波紋!

つまり心臓は波紋エネルギーがプラスマイナスゼロ! 




まどか「…………う、そ」

まどか「……」ポロポロポロ

ビンビンビン!ビン!

魔女「ギャァァ――ッ!」


ツェペリ「たまらず飛び出てきたぞ!」

QB「こ、こんな方法で……!」


316: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:04:45.39 ID:ohQ2hxYs0

まどか「」ドサッ

ほむら「鹿目さんッ!」

QB「気を失ったようだ」

魔女「RRRRRRRRRRUUUOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHH!!」グッパォン

ツェペリ「来るぞ! だが苦し紛れの攻撃と見た!」

ほむら/ツェペリ「「とどめ! 波紋疾走!」」

魔女「URRYYYYYYYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」




ツェペリが魔女に流したのははじける「正の」波紋! ほむらが魔女に流したのははじける「正の」波紋!

つまり魔女に集中する波紋エネルギーは相乗効果で数倍!

317: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:05:48.81 ID:ohQ2hxYs0


魔女「ト、溶ケルゥ……コノエシディシノ体ガ……知性ガ……マダ若イノニ……」

魔女「……ダガシカシ! テメーラニハアノ魔女ハ倒セナイィ! ツエー魔法少女ガ魔女ニナリ! カツアンタラノ仲間ナノダカラ!」

ほむら「ッ! しまっ――」

ツェペリ「波紋疾走!」ボッ

魔女(セメテ……我ガ同胞ノタメニ……魔法少女ヲ減ラスノダ……)

魔女「タコスッ!」

ドシュゥ…

コツン

QB「グリーフシードを落としたね。これで憑依する方の魔女は倒した」

QB「やってくれたね。二人とも。波紋……つくづく興味が沸いてきた」

318: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:07:19.82 ID:ohQ2hxYs0


ほむら「…………ツェペリさん。鹿目さんをお願いします」

ツェペリ「ああ……わかった」

ほむら「私は巴さんを……」



「……ちょっと、……今、……何て言った?」


ほむら「……」

ツェペリ「……」

マミ「ハァ……ハァ……」スタッ

マミ「今、何て言ったの? ……苦戦はしているけど、何とか聞き取る余裕はあった。でも、聞き違いかもしれない」

マミ「強い魔法少女が魔女になり、かつ、仲間……?」

マミ「魔法少女が魔女にってどういうことなのよ……。ただの物の例えよね。聞き間違えと言ってちょうだい」

ツェペリ「……まずは、魔女のことを考えるんだ」

319: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:08:49.70 ID:ohQ2hxYs0


マミ「キュゥべえッ!」

ほむら「…………」

QB「……言葉通りだよ。マミ。この魔女は魔法少女だったんだ」

マミ「ッ!」

マミ「そ、そんな……魔法少女が……魔女に……」

マミ「う、嘘よ……魔法少女が魔女になるなんて……」

ほむら(いけない! 巴さんが錯乱してしまう!)

QB「嘘じゃないよ。杏子は、絶望してあの魔女になったんだ」

マミ「さ、佐倉……さ……!? わ、悪い冗談はやめて!」


320: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:09:57.98 ID:ohQ2hxYs0

QB「僕が今までマミに嘘をついたことはあるかい? 誤解はさせたことあるようだけど」

ほむら「キュゥべえ! 喋んないでッ!」

マミ「う、嘘! 嘘嘘嘘! 嘘よォッ!」

ツェペリ「落ち着け! 落ち着くんじゃ!」

マミ「ソウルジェムが魔女を生むなら、みんな死ぬしかないじゃないッ!」

ほむら「や、やめてッ!」

マミ「あの魔女が……佐倉さんだなんて!」

魔女「――――」

マミ「…………」


321: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:13:41.19 ID:ohQ2hxYs0

マミ「佐倉さん…………」

魔女「――――」

マミ「……あなたは何に絶望したの?」

ほむら「え?」

マミ「あなたは……私にとって、妹のような存在だった。ちょっと生意気で、反抗的な……」

マミ「負けず嫌いで意地っ張り。素直じゃなくって情熱家。繊細だけど根は優しくてとっても強かった」

マミ「あなたの自由な性格……私、尊敬していた……。そんな佐倉さんが、何に絶望したの? 私のせいかしら?」

マミ「……私はあなたのこと大好きだった。だから、一緒にいたかった。だけど、どうしても、あなたに戻ってきてとは言えなかった……」

マミ「あなたが間違っていて、私が正しいと、確信していたから……」

マミ「私っていつもそう。失って初めて気付くのよ。私ってほんと馬鹿」

322: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:17:20.44 ID:ohQ2hxYs0

魔女「――」

マミ「……私の名前は巴マミ」

マミ「佐倉さんの魂の名誉の為に! 美樹さんの心の安らぎの為に! この私があなたを円環の理へ導いてあげる!」

ツェペリ「マミ……君は、一体何をするつもりだ?」

マミ「…………」

ツェペリ(……目でわかる。あの目は……)

キュゥゥ――

ほむら「と、巴さん……何を……」

QB「マミは魔力を高めているね」

ツェペリ「……自爆するつもりだ!」

ほむら「えぇっ!?」

323: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:17:56.79 ID:ohQ2hxYs0


マミ「……フフッ、お見通しね。年の功ってやつかしら」

ほむら「やめてッ! 巴さん! それだけはッ!」

ツェペリ「……ほむらッ! 退けッ! 巻き込まれるぞ!」

ほむら「巴さん! だめ! あなたがいなくなったら……私……!」

マミ「…………撃つわよ」チャキッ

ほむら「!」

マミ「撃ちたくないし、撃たれたくないなら……行って。暁美さん。これしか、彼女を救う方法はない。私が、救わないといけないの」

マミ「……暁美さん。鹿目さんと一緒に、可能な限り生きて。私の大切な友達だから……生きて欲しい」

マミ「ワルプルギスを倒そうなんて考えずに……幸せにね。……自分勝手な先輩でゴメンね。私、生きていく自信がもうないの」

マミ「……アリーヴェ・デルチ(さようなら)」

バッ


ほむら「巴さぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!」


324: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:18:42.27 ID:ohQ2hxYs0


魔女「――――ッ!」


マミ「佐倉さん……」

マミ「あなたは一人で戦うことを選んだ。結局最期まであなたの気持ちがわからなかったわ」

マミ「でもね? 誰にも頼らないことが強さじゃない……。一人で生きることが強さじゃあない」

マミ「それはだけは言える。このことだけには命を賭けられる。絶対に正しいって」

マミ「……寂しかったでしょ? 私も寂しかった。友達の美樹さんも既に向こうで待っているわよ」

マミ「一人ぼっちは寂しいものね」


カッ




325: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:19:52.17 ID:ohQ2hxYs0

――
――――
――――――


QB「ベテランの魔法少女が一気に二人、そしてさやか。三人の死はとても大きな損失だ……」

ツェペリ「…………」

まどか「いやだあぁぁ……いやだよおぉ……」

まどか「ひどいよ……グスッ、こんなのってないよ……エグ、あんまりだよぉ……ヒック」ポロポロ

ほむら「…………あの人は、ご両親を亡くして、小さい頃から見滝原の魔法少女をしてきた」

ほむら「毎日この街を守るのがあの人の使命だった……今さっきも佐倉さんと自爆しようとした時……」

ほむら「あの人は『全てを救う戦士』の目になっていた」

ほむら「巴さんは……魔法少女が魔女になる真実を知ったら、自暴自棄になるはずだっ……なるなりするものだと思って……いたから」


326: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:21:15.94 ID:ohQ2hxYs0


ツェペリ「マミから……わしは黄金のように輝かしい精神……」

ツェペリ「そして魔法少女という生き方に対する誇りを感じ取った」

ツェペリ「彼女は死の恐怖、絶望よりも……守る勇気、杏子の救済を優先できた。意図してかせずしてか、恐怖を克服しておった……」

まどか「グスッ……」

ほむら(この時間軸は……失敗だ……。折角波紋を覚えたのに、また……。私の力不足で……)

ほむら(……もし、過去に遡行したら……ツェペリさんはどうなるんだろう)

ほむら(波紋にはまだ伸び代がある。次の時間軸で会えない可能性もあるから……今の内にもっと学ばなければならない)

ほむら(それまで……辛い日々を送るハメになる……か……)

まどか「ねえ、ほむらちゃん……」


327: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:23:52.21 ID:ohQ2hxYs0


ほむら「鹿目さん……?」

ツェペリ「…………」

まどか「……みんなでワルプルギスを倒そう?」

ほむら「え?」

まどか「わたし、契約する。願いは……みんなを生き返らせること。……できるよね? キュゥべえ」

QB「可能だよ」

ほむら「!」

ツェペリ「なっ、し、死んだ人間を生き返らせるだと……!」

QB「犬や猫とかならまだしも、人間を生き返らせるとなれば、そうそうできない」

QB「でも、まどかならできる。どんな途方のない願いでも……。そういう素質がある」

QB「彼女がその気になれば、魔法少女三人を生き返らせるくらい造作ない」

ほむら「それだけは……契約だけはダメ……!」


328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:24:42.57 ID:ohQ2hxYs0


ツェペリ「君も理解しているはずだ。杏子の魔女化、マミの心中、そしてさやかの死……魔法少女の残酷な最期を……」

ツェペリ「……それでもか?」

まどか「…………うん」

ほむら「ダメだよ鹿目さん!」

ほむら「下手をすれば、志筑さんだって……あなただって……死んでいた! それは巻き込んでしまったから! それが魔法少女というものなの!」

ほむら「それでも魔法少女のなるのッ?! あの魔女になるかもしれないのに! 死ぬかもしれないのに! 大切な物を失うかもしれないんだよ?!」

まどか「……さやかちゃんはわたしの大切な親友……マミさんは尊敬する先輩。杏子ちゃんはまだそんな仲良くないけど優しい子だったわかっている……」

まどか「既に大切な物を失った……だから、わたしは……」

QB「そうだね」

まどか「わたしは、大切なみんなとまた会いたい! それが叶うなら……その運命も受け入れられる」

まどか「みんなのためなら……わたし……!」

ほむら「う、うぅぅ……どうして……」


329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:28:04.84 ID:ohQ2hxYs0


ほむら「どうして自分を犠牲にしようとしちゃうの……!」

まどか「……」

ツェペリ「ほむら……」

ほむら「どうして……こんなに……こんなに私が必死になってるのにどうして契約しようとするの……!」

ほむら「…………ごめんね。わけわかんないよね。気持ち悪いよね……鹿目さんにとっての私は、出逢ってからまだ1ヶ月も経ってない転校生でしかない。でも私は……私にとってのあなたは……」

まどか「ほむらちゃん……」

QB「……」

ツェペリ「……まどかよ。本当に魔法少女になるつもりか? なれば契約したことのために運命が大きく変わる」

まどか「受け入れます。みんなが戦っているのに、わたしだけ傍観者なのは、嫌なんです……!」

ツェペリ「そうか……」


330: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:30:11.60 ID:ohQ2hxYs0


ツェペリ「……ほむら。話してやれ。おまえの覚悟を。そして過去を」

まどか「……過去?」

ツェペリ「ほむらは、想像を超える程、悲しい過去を持っている」

まどか「そ、そうなの……?」

ツェペリ「彼女の覚悟を、心から受け止めろ」

ほむら「……鹿目さん。私は、何を願って魔法少女になったのかを話すね」

まどか「……うん」

QB「それは僕も知りたいな」

ほむら「……嘘かと思われるかも知れないけど……これは真実。鹿目さん。私はあなたを守るために――」


331: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:31:12.44 ID:ohQ2hxYs0

――
――――

まどか「そ……そんな……わたしなんかの……ために……」

QB「……時間遡行者。なるほど。辻褄は合うね。でも、信憑性は薄いよ」

ツェペリ「わしには真偽を確かめる術はないが……わしは信じた。だからわしは波紋を教えたのだ。取りあえずあんたは黙っとれ」

QB「…………」

ほむら「だから……私、鹿目さんを巻き込みたくない。お願いだから……契約しないで……自分の幸せだけを考えて……」

まどか「……信じるよ。わたし、ほむらちゃんを101%信じる。……わかったよ、ほむらちゃん」

ほむら「鹿目さん……」

まどか「ほむらちゃんの覚悟が『言葉』でなく『心』で理解できたッ!」

ほむら「え……?」

まどか「わたしは……ほむらちゃんの力になる! ほむらちゃんのわたしを救うという誓いも大事だけど、わたしがほむらちゃんに誓う! 絶対に負けないって!」

まどか「わたしはみんなと一緒にいたい! ほむらちゃんと一緒にいたい! だから……一緒に戦いたい! 傷ついて悲しむ様子を傍観なんてできないよ!」


332: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:32:25.57 ID:ohQ2hxYs0


まどか「ほむらちゃん! わたしに契約する許可をちょうだい! わたしに、ほむらちゃんを救わせてください!」

ほむら「わかってない……。あなたは理解もなにもしていない……ッ! あなたの覚悟は間違っている」

ツェペリ(彼女のは……ただの覚悟ではない)

ほむら「鹿目さんが魔女なんかになったら……」

まどか「その前にソウルジェムを砕けばいい! わたし自身の手で砕くッ!」

ほむら「私はそういうことを言ってるんじゃあないのッ! どうして自分を犠牲にするような真似を……!」

ツェペリ(まどかが抱いているのは犠牲の心ではない)

まどか「ほむらちゃんは、わたしの幸せを考えてって言ったよね。わたしは今、わたしの幸せを誰よりも一番に考えている。『みんな』がわたしの『幸福』への道標なの!」

まどか「わたしは……ほむらちゃんに守られるわたしじゃなくて、ほむらちゃんを守るわたしになりたいッ!」

ツェペリ(真の覚悟がある。……かつてジョナサンから感じた、わしが抱いていた……暗闇の荒野に進むべき道を切り開く心が……まどかの心にも「それ」がある!)


333: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:33:12.74 ID:ohQ2hxYs0


ほむら「……やめて、グスッ、……やめてよ! そんな言葉聞きたくない! 私は……私は――」ポロポロ

グイッ

ほむら「……ツェペリさん」

ツェペリ「……彼女には魔法少女になる資格と権利がある」

ツェペリ「ほむら。誰よりも優しく弱い彼女に、失った親友達を諦めろと、命を賭けるその覚悟を蔑ろにすることが我々にできようか?」

まどか「…………ほむらちゃん。お願い。わたしに……許可を」

ほむら「う……うぅぅ……エグッ」

ほむら「……そんな。……それなら、私は何のために戦っているんですか……」ポロポロ

ほむら「鹿目さんは……私の初めての友達……私が憧れた大好きな人……。鹿目さんの幸せこそが、私の全て……。鹿目さんは、私の光……!」

ほむら「私は、鹿目さんのためにこの時間軸を彷徨っている。契約させたら、全てが終わる……!」

QB「ほむら。君が時間遡行者で、僕の目的まで知っている。そんな僕の言うことなんか耳にしないだろうけれども……」


334: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:37:04.08 ID:ohQ2hxYs0


QB「例え今、まどかを契約させないにしても、僕は今後、マミ達を引き合いにして契約させようと思っている」

QB「まどかが契約するのも時間の問題だ。それが後になるか今なのかというだけに過ぎないんだ。どっち道ね」

ほむら「……クッ」

QB「波紋の可能性は計り知れないけれど、ワルプルギスに対してどうせ勝ち目はない」

まどか「ほむらちゃん……お願い。……一緒にワルプルギスを倒そ?」

ほむら「…………」

まどか「みんなで……」

ほむら「……ょ」

まどか「え……?」

ほむら「ずるいよ……」


335: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:38:31.89 ID:ohQ2hxYs0

ほむら「ずるいよそんなの……!」ポロポロ

ほむら「私はただ……巻き込みたくないだけなのに……ずるいよ……!」

ほむら「大切な人を危険な目に遭わせたくないと願うのは……いけないことなの……!?」

まどか「……ほむらちゃん!」

ギュッ

ほむら「……っ」

まどか「わたしは、みんなの笑顔がまた見たい……一緒に、戦いたい」

まどか「お願い……わたしにほむらちゃんを救わせて!」

ほむら「う、ううぅ……うああああああ……ああ……!」ボロボロ

ツェペリ「……」

QB「……」

ほむら「えぐ……うぐ……そんなのって……そんなのってないよ……! ずるいよぉ……!」

まどか「ほむらちゃん……みんなで力を合わせれば……乗り越えられるよ。ワルプルギスを……」

ほむら「はうぅ……エグッ……グスッ」


336: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:45:00.82 ID:ohQ2hxYs0


――
――――

ほむら「う……うぅ……クッ……グスッ……うぅぅ……」

まどか「…………」

さやか「……」

杏子「……」

マミ「契約……したのね……」

まどか「……はい」

マミ「暁美さん……知ってたのね。魔法少女が魔女になるって……」

ほむら「うぅ……うぇぇぅ……ヒック……はぃ……」

マミ「どうせ、ツェペリさんも知ってたんでしょ」

ツェペリ「ああ……」


337: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:49:48.81 ID:ohQ2hxYs0


さやか「あたし……目の前で見ちゃったよ。その瞬間」

杏子「……ソウルジェムは……魔法少女の魂だったんだな。…………そうか」

マミ「……どうして黙ってたの?」

ほむら「…………グスッ」

ツェペリ「前もって言っておこう。ほむらは、何も隠していたわけではない……」

ツェペリ「言えなかったのだ。例えば、マミが動揺で無理心中をするようなことを恐れて」

マミ「…………」

まどか「ほむらちゃん……みんなに話していい? ほむらちゃんのこと……」

さやか「ほむらのこと……?」

ほむら「……」フルフル

杏子「……イヤだ、だってよ」

338: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:53:12.99 ID:ohQ2hxYs0


ツェペリ「……ほむら。マミが錯乱することを恐れているのなら、それはないとわしが保証する」

ツェペリ「目を見ればわかる。彼女は死の恐怖を乗り越えた。魔女になる恐怖を救済する気持ちが上回ったのだ」

ツェペリ「あるいは、信じてもらえないことを恐れているのなら、自信を持て。まどかもわしも、この通り信じたのだから」

ほむら「…………」

まどか「……いい?」

ほむら「…………」コクッ

まどか「……うん」

さやか「…………」

マミ「…………」

杏子「……フン」


まどか「みんな。話すね。ほむらちゃんは、わたしを……みんなを助けるために――」


339: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:54:32.49 ID:ohQ2hxYs0

――
――――


マミ「……そう、だったの……。……もちろん、信じるわ。俄には信じがたいけど……」

マミ「暁美さん……既に、私とあなたは友達だったのね。そして……私は……」

さやか「……なんか、あたし、魔女になったりほむらを否定したり、散々なことしてたんだね」

さやか「ごめん……ほむら。あたしなんかのために……。まどかやマミさん、杏子だけじゃなくて、あたしなんかまで……」

さやか「それなのにあたしは……。……あたしって、ほんと馬鹿。……うぅ」

マミ「鹿目さん……私達を生き返らせてくれてありがとう」

マミ「暁美さん。鹿目さんの契約、決して後悔させないわ! 戦いましょう!」

さやか「あ、あたしだって! 絶対にワルプルギスを超えよう!」

ほむら「…………ぅん」

まどか「みんな……!」

340: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:55:55.12 ID:ohQ2hxYs0

ツェペリ「あと、一人だな」

ほむら「…………佐倉さん」

杏子「…………フンッ」

杏子「……さやかだけでなく、まどかも、そしてほむらまで……馬鹿丸出しだぜ。全く」

杏子「他人のために願いを使うやつは馬鹿がすることだ。出会いをやり直したいだと? その結果、おまえは余計な苦しみを抱えてるだけじゃねーか」

杏子「甘ちゃんだからこーなるんだぜ。なんてザマだ。最高の友達だか何だか知らないが、適当に割り切っておけばよかったものを……」

杏子「誰が生き返らせてくれと頼んだ。おせっかい好きのシャシャリ出なウスノロどもの分際で……」ゴソゴソ

杏子「こういう奴が面倒臭いからあたしは一人でやることを決心したんだよ!」ビリッ

杏子「いつだって死んでもいい覚悟はあったんだよ! あたしには! ……ったく、勝手なことしやがって」パクッ

ほむら「…………」

まどか「そ、そんな言い方……!」


341: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:57:06.28 ID:ohQ2hxYs0

マミ(佐倉さん……あなた……)

さやか「た……助けてもらってなんてヤツだ……こいつ……!」ギリッ

ジャキィッ

さやか「…………」

さやか(……と怒って以前のあたしなら背後からだろうが容赦なく襲いかかっただろうけど……)

さやか「……杏子。ロッキー、逆さだよ」

杏子「……ッ!」

杏子「…………クッ」

342: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:58:00.76 ID:ohQ2hxYs0


ツェペリ(……今一番に泣き叫びたいのは誰よりも杏子の方だ……)

マミ(佐倉さんは今、戸惑っている。絶望して魔女になり、生き返ったということは、魔女になる寸前の自分を覚えているということ……)

さやか(ほむら。すぐに熱くなっちゃうこのあたしが……今、杏子の気持ちを読んで、あろうことが思いやったよ……少しは成長したかな?)

杏子「……迷惑なんだよ」ポロポロ

杏子「あたしは勝手なことして勝手に絶望して魔女になったんだ……」

杏子「そんなヤツを生き返らせてもらってもスゲー迷惑だぜッ! このあたしはッ!」ブワッ

杏子「このあたしを救うだと!? 甘ちゃんのくせに! みんなで倒すだと!? さやかとマミ、あたしはその二人を葬っちまったんぞ!」

杏子「……クソッ!」


343: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 22:59:34.72 ID:ohQ2hxYs0


さやか「……杏子。それは、あんたじゃなくて、魔女だ。気にする必要はないんだよ」

さやか「一緒に戦おう。そして……みんなで幸せになろうよ。また……ケーキ食べようよ」

杏子「……どっちにしても、あたしはあんたらの仲間になる資格はない」

マミ「……そうね。確かに、あなたは『悪』よ」

杏子「……」

さやか「ま、マミさん……!」

マミ「私は……最も忌むべきことは『侮辱』することと考えている。あなたはエゴのために無関係な人の命を侮辱した」

マミ「あなたは間接的に人を殺したのは事実。……だから、あなたは私達の仲間になるのを思いとどまっている」

杏子「うぅ……」

マミ「半歩よ」

マミ「あなたが一歩を踏み出せないと言うのなら、私の方から――半歩だけ近づく」

344: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 23:00:14.41 ID:ohQ2hxYs0


杏子「…………」

マミ「全ては佐倉さんの決断にかかっている。それでも十字架があなたの脚を重くするって言うのなら、私もそれを共に背負っていく」

杏子「マミ……」

マミ「一人ぼっちは寂しいでしょ?」

杏子「……うぅぅ……マミィィ……」ポロポロ

マミ「……ね?」

杏子「…………今まで溜めてきたグリーフシードも全部やる……これから集めたグリーフシードもみんなにあげる……」

杏子「だから……だから……! あたしを許してよ……! 嫌いだなんて言わないでよぉ……!」

マミ「当たり前じゃない。あなたは一人ぼっちなんかじゃない。あなたは、私の妹のような存在なんだから……」


345: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 23:01:12.29 ID:ohQ2hxYs0

ギュッ

杏子「う……うぅ……ごめん……ヒグッ、ごめんなさいぃ……マミィぃ……グスッ」

マミ「いいのよ。これからは仲間なんだから」

杏子「うぅ……まどか……あんた……いいヤツなんだな。ごめん……きついこと言って……」

まどか「ティヒヒ、いいんだよ。杏子ちゃん!」

杏子「しゃやかぁ……グスッ……殺してごめん……」

さやか「だ、だから、それは魔女なんだってば! 何も気にすることはないよ。友達なんだから!」

杏子「……友達。……あたしとさやかって友達? 本心なのか? ほんとに?」

さやか「もち!」

杏子「あうぅ……ありがと……グスッ……」


346: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 23:02:14.70 ID:ohQ2hxYs0


ほむら「…………」

ツェペリ「もし、契約させなかったら、この光景は見ることはなかっただろう」

ツェペリ「とは言え、ワルプルギスを超えて初めて、君の望む幸せになるんだろうがな。……今は一時的なものだ」

ほむら「それが……何になるんですか?」

ほむら「結局、鹿目さんを魔法少女の運命に引き込んでしまったんですよ? 結局……」

ほむら「私がもっと強ければ……こんな状況にそもそもならなかったはずです……」

ツェペリ「…………」


347: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/08(水) 23:03:39.58 ID:ohQ2hxYs0


ツェペリ「全てを敢えて差し出した者が 最後には真の全てを得る」


ほむら「……?」

ツェペリ「これが、わしが前の世界で理解したこと。……おまえはその資格を持っておる」

ほむら「全てを差し出す……? 真の全て……?」

ツェペリ「まぁ……だたの中年の戯言と思ってくれてもいいがね」

ほむら「…………」


360: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:06:47.38 ID:Ez7q17Yh0

――次の日


杏子「なあ! オッサン! ツェペリのオッサン!」


杏子「あたしにもさぁ、『波紋法』とやらは可能か?!」

杏子「実はやってみたかったんだ! おせーて! おせーてくれよォ!」

さやか「あっ! あたしもやりたい! おせーてよぉ!」

ツェペリ「…………」

杏子「……」

さやか「……」

ツェペリ「無理だよ」

さやか「え~~~~ッ! なんでェーッ!?」

杏子「おいテメーッ なんでだよォー! なんでにはあたしらにはできないってんだよー! ズバァーっと言ってみろーッ!」


361: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:08:12.70 ID:Ez7q17Yh0



ツェペリ「ほむらはこうしてる今もわしの教えた『呼吸法』を連続してやっておる。特別な呼吸を意識せず昼も夜も起きている時も眠っている時も……」

ツェペリ「授業を受けている時も使い魔や魔女と戦っている時も続けるというのは大変なことなのだ」

ツェペリ「魔法という力。そして……ほむらは悲しすぎる過去と重すぎる未来への責任を背負っているからできるのだ。年齢を考えるとものすごい精神力なのだよ。これは!」

ツェペリ「波紋の『は』の字も知らなかった少女からここまで波紋を習得できたのは、体力や筋力を魔法で補うとかそういうのではなく、その精神力だからこそ!」

ツェペリ「君達には背負ってるものがいまいち軽いというのが自分自身でもよくわかっていよう」

さやか「う……そうかもしんない」

杏子「そうかもしれねぇ! でもあたしはみんなの力になりてえんだよ! あたしには借りがある! この気持ちわかるかってんだオッサンよぉ! テメ――ッ!」

杏子「それにあたしは人を間接的に殺しちまった十字架を背負っている! いまいち軽いだと? 自業自得だが心外だぜッ!」

さやか「この街のどこかに今も魔女がいると思うと! そいつはメチャ許せんよなァー!?」

杏子「なァー!? そうだそうだ!」

ツェペリ「とは言ってもなぁ」


362: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:09:34.73 ID:Ez7q17Yh0

杏子「頼むよオッサンよぉ!」

さやか「美少女二人からのお願いなんだよぉ? オジサンってばさぁ!」

杏子「びっ、美少女……照れるぜ///」

さやか「馬鹿はほっといて、お願い。オジサン! いや、ミスターツェペリ!」

杏子「馬鹿に馬鹿と言われる程プライドが傷つく瞬間はない」

ツェペリ「ん――……十分戦う力はあるじゃろうて。無理に学ぶこともあるまい」

さやか/杏子「ぐぬぬ……」



さやか「……い、いいもーん! ほむらに教えてもらうもーん!」

杏子「その手があったか!」

ツェペリ「やめておいたほうがいいぞォ~」

杏子「何でだ! あたしはほむらを信頼してるんだぜー!」

さやか「聞く耳持たずに行っちゃうもんねー!」


363: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:13:26.88 ID:Ez7q17Yh0




マミ「佐倉さん……すっかり元気になっちゃって……。子どもみたい」

まどか「ティヒッ、そうですね! なんていうか……隔たりが取れてスッキリしたって感じ!」

ほむら「生き返るだなんて非現実的すぎて……夢だったんじゃないかって思えてきます」

まどか「夢じゃないよ? ほら。わたしのソウルジェム」

ほむら「うん……」

まどか「わたしがワルプルギスで戦線で活躍できるように訓練するには時間がいくらあっても足りないよ!」

マミ「安心して鹿目さん。鹿目さんの武器は『弓と矢』……私と同じ遠距離武器」

マミ「しっかりと鍛えてあげられるわ! 大船に乗ったつもりでね!」

まどか「はい!」


365: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:15:38.38 ID:Ez7q17Yh0


まどか「ほむらちゃん。何度かループしてるってことはほむらちゃんもある意味ベテランだよね?」

ほむら「え? そ、そんなことは……」

まどか「わたしにも、さやかちゃんの時みたいに色々教えてね?」

ほむら「うん。いいけど……私、人に教えるなんて……あの時だって佐倉さんの戦い方の真似だったわけだし……」

マミ「そんなことないわ。暁美さんの教え方は、とっても丁寧だった。私が教わりたいくらい」

ほむら「そ、そんな……///」

まどか「ティヒヒ、照れてるほむらちゃんかわいい~。いや、ほむらちゃん先輩かな?」ギュー

ほむら「も、もう……///」



さやか「へい! ほむほむ!」

ほむら「え? 美樹さん……ほ、ほむほむ?! え、えっと……な、なんでしょう?」

366: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:21:21.52 ID:Ez7q17Yh0


杏子「かくかく」

さやか「しかじか」



ほむら「波紋を学びたい? 私から?」

さやか「オジサンが教えてくれないんだよぉ~」

杏子「頼むよほむら。何なら土下座してやってもいいよ」

マミ「何で土下座する人が上から目線なのよ……」

ほむら「そ、そこまでしなくても……」

さやか「おねがぁい!」

ほむら「うーん……」

まどか「やってあげてもいいんじゃないかな?」

さやか「ほら! まどかも言ってるし!」


367: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:23:08.03 ID:Ez7q17Yh0



マミ「頑張って。暁美さん♪」

ほむら「ン~……」

ほむら「……一時的になら」

杏子「ん?」

ほむら「一時的になら横隔膜を刺激して軽い波紋なら作れるようにできるかも」

杏子「マジすかッ!」

さやか「やってやって!」


368: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:23:48.59 ID:Ez7q17Yh0

ほむら「えと……、初めは少し苦しいでしょうけど……」

まどか「く、苦しいの!? だ、大丈夫なのそれ……?」

さやか「カモォ~ン! ほむほむちゃ~ん!」

ほむら「い、いきますよ!」

さやか「おーっ!」

杏子「wktk」

ほむら「え……えい!」

ドスッ


369: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:24:48.97 ID:Ez7q17Yh0


ほむら「………………」

マミ「あれ? 暁美さん、どうかした?」

ほむら「いえ……そ、その……ちょいとミスりました……。指がスベっちゃって……ごめんなさい! すみません美樹さん……」

まどか(ほむらちゃんがさやかちゃんに腹パンする光景……)

さやか「おおおお……」プルプル

ツェペリ「ほれ見たことか。ほむらはまだ修行中の身。失敗は目に見えとるわい。頼まれたら断れない性格だがのぉ」

マミ「わあ……苦しそう……」

まどか「大丈夫? さやかちゃん」

さやか「あ、あんたねえ~~~~。できないならできないって言ってくれないと……」

ほむら「す、すみません……できないってわけじゃあないのですが」

杏子「よし、次はあたしだ」

マミ「え?」

370: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:25:59.48 ID:Ez7q17Yh0


さやか「マ、マジかよ……正気? ヤバイよ? これ……」

杏子「ここで退いては名が廃るぜ!」

マミ「今の見て、よくやろうと思えるわね……」

ツェペリ「……なかなかいい覚悟だ」

杏子「だろ? さあほむら! 頼んだぞォ!」

ほむら「わかりました。今度こそ……!」

まどか(何か嫌な予感がするなって思ってしまうのでした)

杏子「いいぜーッ! ズバッとやってくれっ! おもいっきりなぁ! どんとこいッ!」

ほむら「行きます!」

杏子「おーっ!」

ほむら「ぱうっ!」


ドスゥッ


371: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:28:06.38 ID:Ez7q17Yh0


マミ「…………」

さやか「…………」

まどか「…………」

ツェペリ「…………」

ほむら「ほんとごめんなさい……」

杏子「おおおお……」プルプル

杏子「おかしいだろ……そこは……成功する流れだろ……」



372: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:31:33.21 ID:Ez7q17Yh0

ほむら「すみません。……少し、自信過剰になってました……」

ツェペリ「自惚れてはならないという良い教訓となったな」

まどか「ええぇ~……」

マミ「自惚れ……」

マミ「……」プルプル

まどか「あ、マミさんのトラウマが」

さやか「結局ほむらに腹パンされただけだったよ……」

ほむら「お腹じゃないです……横隔膜……のつもりだったんです」

さやか「つもりってあんた……」


373: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:35:09.08 ID:Ez7q17Yh0

杏子「あ゙、あ゙だしはあぎらめね゙ーぞ……ぢぎじょお……」

さやか「あたしだって……」

杏子「ぜってぇーに、波紋をマスターしてやるからな!」

ほむら「は、はぁ……」

さやか「ほむらに殴られたからには、意地でもほむらから学んでやる!」

ほむら「えぇっ!?」

杏子「ってことでオッサンはもういいぜェ――?! ……謝れば教わってやるぞ?」

ツェペリ「やれやれ」

ほむら「あ、あはは……」


374: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:36:20.37 ID:Ez7q17Yh0


まどか「あ、そういえばさやかちゃん」

さやか「うん?」

まどか「いいの? 上条くんのこと……」

さやか「え?」

ツェペリ「カミジョー……ああ、名前はほむらから聞いたことがあるが……」

ほむら「はい。美樹さんの好きな男の子です」

さやか「何言ってくれちゃってんの!?」

杏子「仁美って言ったっけ? そいつに宣戦布告されたんだっけ」

マミ「え? どういうこと? 私聞いてないわよ?」

杏子「言ってないもん」

マミ「へぇー、オッたまげたわ」


375: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:37:55.40 ID:Ez7q17Yh0


杏子「あたしあの時盗み聞きしてたんだけど、一日自分の気持ちに向き合えって言われたんだ。そして明日になれば仁美が上条てやつに告る」

さやか「おい盗み聞きってなんだおい」

まどか「それで……さやかちゃんどうするの?」

さやか「ど……どうするったって……あ、あたしは別に……そんな……」

ほむら「ツェペリさん。大人の意見をお願いします」

ツェペリ「そうだなぁ……」

さやか「えー……中年のオジサンに若い子の何がわかるってのさー」


376: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:38:34.00 ID:Ez7q17Yh0


ツェペリ「わしは……若い頃結婚していた。しかしある事情で家族を捨てた。それでも自分の運命には納得していたよ」

マミ「色々事情があったようね……予想外に重い感じの」

ツェペリ「君の一番怖いことは、死ぬことや魔女になることではなく、振られることなんじゃないか?」

ツェペリ「自分の気持ちに素直になれずに後悔するほうが、そのままずるずると生きていくことの方が怖いと思わんのか?」

さやか「…………」

ツェペリ「これは君だけの問題じゃあない。君がその後悔によって絶望し、魔女になることをほむらは案じておったのだ」

さやか「ほ、ほむらが……」



377: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:39:23.20 ID:Ez7q17Yh0



ほむら「私……恋愛したことないからよくわかりませんけど……後悔だけはしないでほしいんです」

まどか「前の時間軸では恋慕がどうこうでさやかちゃんは魔女に……ってほむらちゃん言ってたっけ」

杏子「さやか。魔女になるってすごい気持ち悪い感覚だぞ。あたし実体験したぞ」

マミ「私……佐倉さんが魔女になって、思いを伝えられないままってのは、悲しすぎるってわかったわ」

マミ「生き返ったからよかったものの……ねぇ、佐倉さん」

杏子「…………ふんっ」

さやか「………………」


378: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:40:40.92 ID:Ez7q17Yh0


さやか「……わかったよ」

さやか「実際に死んだからこそ、余計な感傷を与えるのもどうかって気も強くなるけどさ……」

さやか「オジサン。あたし……告白してくる! 明日って今さ!」

ツェペリ「うむ。それがいい」

杏子「昨日の今日なんだから当たり前だろうそれは」

さやか「思い立ったがすぐ行動!」

まどか「い、今から?!」


379: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:42:13.53 ID:Ez7q17Yh0



さやか「今から! そんじゃ!」

杏子「おう。当たって砕けろだ!」

さやか「砕ける前提!? ちょっと期待してもいいんじゃないかな?!」

まどか「がんばってね~」

ほむら「…………」

ほむら(どの時間軸でもウジウジして何も出来なかった美樹さんが……ツェペリさんの説得のおかげか、一度死んだという実感からか……わからないけど)

ほむら(結果はどうであれ、美樹さんはこれで後悔しない……んじゃないかな)

マミ「…………」

マミ(後輩の恋の相談を受けた時の対応のイメトレはしてたんだけどなぁ。ツェペリさんにお株取られちゃった)



380: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:44:31.28 ID:Ez7q17Yh0


さやか「…………まあ、色々ありまして」



さやか「気持ちは嬉しいけどさやかを異性として見ることはできない、だって……あはは……まいったね」ポリポリ

杏子「おまえ男と思われてたのか……!」

さやか「なんでそうなるんだよ! 『友達以上恋人未満』みたいな意味合いだ! あははー! 今度から顔合わせ辛ぇ~!」

ツェペリ「まあ、気を落とすな。君はよくやった」

さやか「あざーっす。そんな落としてないけど」

さやか「フゥ~~~……。初めて……失恋しちゃったぁ~。けど思ってたよりなんてこともないね」

マミ「吹っ切れたの? それとも無理矢理抑えてるの?」

さやか「いえいえ、さっぱりしたって感じです。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーにねっ!」

マミ「女の子が公衆の面前でそーゆーこと言うもんじゃありませんっ」

さやか「さーせん」

381: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:45:45.28 ID:Ez7q17Yh0

さやか「でも、まぁ……振られたら振られたで仕方ない。もういいんだもん! まどかがあたしの嫁になるんだもんっ!」ギュッ

まどか「さ、さやかちゃんってば……も~」

ほむら「…………」ムスッ

マミ「……あら、ヤキモチ?」

ほむら「ふぇっ!? ち、違います!」アタフタ

さやか「ほほ~う……可愛いとこあんじゃん。よし! ほむらもあたしの嫁に……」

杏子「尻軽野郎」

さやか「さやかちゃんは野郎じゃない! 乙女だ!」


382: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:46:39.41 ID:Ez7q17Yh0


杏子「あたしを嫁にしろ!」

さやか「えぇっ!?」

杏子「嘘」

さやか「乙女心を弄ぶなぁっ!」



ツェペリ「さやかは君が思っていた以上に強い精神を育んでいたようだ」

ほむら「そうですね……。うん、安心しました」

ツェペリ「……一番成長したのはほむらだがな」

ほむら「……え?」

ツェペリ「わしと出会う前のおまえが、さやかや杏子の鳩尾を殴れたか?」

ほむら「それは……無理ですね」

ツェペリ「フフ、だろう? 師匠として、弟子の成長を実感できる時ほど嬉しいことはない」

ほむら「……えへ」


383: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:47:59.63 ID:Ez7q17Yh0


さやか「失恋終了! これで心おきなくワルプルギスと戦える!」

さやか「訓練がんばるぞー!」

まどか「じゃあビギナーなわたしはもっと頑張るよ!」

杏子「それじゃああたしはもっともっ……」

マミ「佐倉さんは教える側に立ったら?」

杏子「お、おう。……じゃあさやかを痛めつけるか!」

さやか「痛めつけるメイン!? 鍛えろよ!」



384: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/09(木) 20:48:44.77 ID:Ez7q17Yh0

ツェペリ「……さて、波紋の修行も大詰めってとこだな」

ほむら「はい!」


さやか「ぜってぇーにワルプーを滅ぼしてやるさー! うはははー!」

杏子「はっはっは!」




杏子(……なんかあたし。この前まで自分の事だけ考えて生きてきた……でも今、メラメラとわきのぼってくるこの気持ちは……)

杏子(これが「仁」てものか。ほむらの思いのために戦ってやるさ……)

杏子(ワルプルギスだろうが何だろうが……絶対に倒す!)



393: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/15(水) 23:42:29.67 ID:AK9zKCtm0


――ワルプルギスの夜当日


ほむら(ついに……ついにこの時がきた)

ほむら(波紋を学んでいる時……私は、もしここまで努力してだめだったら……とネガティブな思考を持っていた)

ほむら(けど今は、奴に……とにかく全力を叩き込んでみたくて仕方がない……!)

ほむら(私は……鹿目さんを守る私になる資格を得たと自覚がある! ワルプルギスを超えて初めて、守る私になったと胸を張れる!)

マミ(私は、先輩であるはずなのにいつも迷惑をかけてきた。……名誉を挽回しなくちゃね)

マミ(暁美さん達が本来歩むべきだった幸福の未来。salti reali……真実へ踏み出そう。運命を乗り越えるのよ)

まどか(この日のために……わたしはほむらちゃんを守るわたしになることを願って必死に訓練した)

まどか(そして今……みんなで力を合わせて、幸せを掴む!)


394: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/15(水) 23:43:56.30 ID:AK9zKCtm0

ツェペリ(わしは……わしの全てをほむらに教えた。だからこれから何が起きようと、決して悔いはない)

ツェペリ(ほむら達なら……この先どんな困難でも超えられると信じておる。そう、わし何かがいなくてもな……)


杏子「あたし……これが終わったら学校に行くよ! 頭悪いって他のヤツにバカにされるのもけっこういいかもな……」

さやか「みんなでアツアツのお好み焼きも食べたい! でっかい鉄板で焼いた本場の広島風だ! マヨネーズもたんとかけてもらおう!」

杏子「関西風だろ!」

さやか「広島風がいい!」

さやか/杏子「ぐぬぬ……」



ほむら「……来る!」

395: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/15(水) 23:44:37.19 ID:AK9zKCtm0


ワルプルギス「アハハハハハハハハハハハ」


まどか「で、でかい……!」

マミ「何てこと……ビルが浮いている……!?」

ツェペリ「……ほむらの言った通り、奴を倒すには骨が折れそうじゃわい」

ほむら「それでは……作戦を確認します」

まどか「うん!」


杏子「お好み焼きとコーラって合うよな」

さやか「ゲゲ! お好み焼きにコーラ……気持ち悪いど!」

杏子「何だとテメー。そーゆー否定は試してから言えよ。あと舌噛んでんじゃねー」



396: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/15(水) 23:45:17.74 ID:AK9zKCtm0


ほむら「……佐倉さーん」

杏子「広島風食べたことないからわからんけど、あたしは焼きそばは焼きそばで食いたいんだよ」

さやか「それでも広島風が食べたいんだよあたしは」

ほむら「佐倉さんッ!」

杏子「もんじゃ!」

さやか「その返答はシュールすぎる」

マミ「緊張感がないわね」

杏子「わかってるよ。作戦だろ作戦。まずあたしが――」



405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:38:23.84 ID:z96hxSlG0


――
――――


杏子「ロッソ・ファンタズマッ!」

マミ「じゃあ、これを持って」

杏子s「うい」

杏子s「それじゃあ行ってくる」


~~~~~~~~~~

ほむら「まず、佐倉さんは分身して、巴さんのリボンを持って飛び回ってください」

ほむら「そして、たくさんのリボンが絡み合うように……」

~~~~~~~~~~


406: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:38:55.78 ID:z96hxSlG0


杏子「よし……こんなもんだろ」


――リボン同士が結び合い、蜘蛛の巣のように縦横無尽に伸びている。

ワルプルギスを鳥篭の中のインコのように、リボンで囲んだ。リボンの結界である。


使い魔「――」ズッ

杏子「おいおい。あたしみたいに考えないで飛んでるとリボンに当たるぞ」


バチィッ

使い魔「!」

杏子「ほれ見たことか。痛いだろ」



――多量のリボンその全てに波紋が通っている。そのリボンに触れた使い魔は波紋のダメージを喰らうのだ。

すなわち、波紋の電気柵!


407: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:39:49.33 ID:z96hxSlG0

――地上


使い魔「――」

さやか「そりゃ!」

ザシュッ

さやか「マミさんのリボンには油が染みこませてある!」

ツェペリ「コォォォ……」

ほむら「コォォォ……」

まどか「そこにほむらちゃんとツェペリさんの波紋が高圧電線のように走ってるんだよ!」

マミ「名付けて直径200mバッリエーラ・イル・ソーレ(太陽の結界)ッ!」

さやか「マミさんはブレないね」

ツェペリ「――しかし、魔女を攻撃するためではない」

ツェペリ「よし、ほむら。後を頼む」

ほむら「はい!」



~~~~~~~~~~~~

ほむら「結界が張れたら、佐倉さんとツェペリさん。私達の2:4に分かれます」

ほむら「私は結界に波紋を流し続けて、佐倉さんは待機。鹿目さんと巴さんは遠距離攻撃。美樹さんは私達の護衛をお願いします」

~~~~~~~~~~~~

408: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:40:40.23 ID:z96hxSlG0


ビシィッ


ツェペリ「綱の上で修行した時のことを思い出すなぁ」



――ツェペリは、リボンに流れる波紋に対する波紋を足に流す。

そうすることで、リボンの結界の上を渡ることができるのだ。

空を飛ぶことのできない者へのワルプルギスの夜直通ルートがこのリボンだ!


ツェペリ「ホッ、ホッ、ホッ……」

トットット


さやか「すげぇ……あのオジサン曲芸師みたいだ……」


409: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:41:29.23 ID:z96hxSlG0

~~~~~~~~~~~~~~~~

ほむら「佐倉さん。ツェペリさんが来たら、ワルプルギスの顔面に、攻撃をしかけてください」

ほむら「それを合図として、私達で集中砲火を仕掛けます! そしてツェペリさんの波紋でとどめッ!」

ほむら「私はリボンに波紋を流すお仕事なので攻撃に参加しません。できません」

~~~~~~~~~~~~~~~~


杏子「オッサンが来る……。よし、そろそろだな」

杏子「ロッソ・ファンタズマ一斉攻撃ィィィッ!」

ドグシアァッ


さやか「いったッ!」

ほむら「攻撃開始ッ!」


410: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:42:06.61 ID:z96hxSlG0


マミ「よく狙って。佐倉さんとツェペリさんに誤射しないように……」

まどか「はい!」

マミ「狙撃(シュートヒム)!」

バギュゥ――z_ンッ!

マミ「……魔女だからヒムじゃないわよね」

まどか「発射(シュートァー)ッ!」

バシュゥ――z_ンッ!

さやか「ラストショット!」 

バヒュゥ――z_ンッ!

マミ「え!?」

さやか「マミさんにも秘密の奥の手だよ。この剣身を飛ばすのは……もっとも一本しかないから無くしたら作り直さなくちゃいけないんだけどね」

ポチャン

さやか「あ、ダメだ届かね」

ほむら「…………」


411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:43:19.15 ID:z96hxSlG0

杏子「――と、まぁ色々あってだなぁ」

杏子「あたし達がワルプルギス直通の道を切り開いたのは……」

ツェペリ「わしが直接ワルプルギスに波紋を流し込むためだ!」

杏子「遅いぞオッサン! 使い魔退治もこんな間近で不快な笑い声聞くのも辛いんだぜェ――ッ」


バァ ――――z____ ンッ


杏子「まどかの矢が当たったッ!」

ワルプルギス「アハハハハハハハハハハハ」

杏子「オッサン! やれッ! 追い打ちだッ!」


ツェペリ「コォォォォォォ」

クルッ

ツェペリ「波紋乱渦疾走(トルネーディオーバードライブ)ッ!!」

バァッ


412: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:44:05.91 ID:z96hxSlG0


ドギャンッ !

杏子「むっ! 足が軸になってドリルのように……」

ギャルギャルギャルギャルギャルギャル!

杏子「回転による貫通力でワルプルギスの顔面に穴をブチあけてやれッ!」

ワルプルギス「アハハハハハハハハ…」


キュゥ――ン


杏子「……ッ!」

杏子「マズイ! オッサン! 退けッ!」

グイィッ

ツェペリ「くっ!」

杏子「そこにビルに飛び移れェ――――ッ!」


413: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:45:05.47 ID:z96hxSlG0


ズキュゥ――――z____ ンッ!


ほむら「ワルプルギスの攻撃……炎の矢ッ!」

まどか「うわあぁッ! す、すごいッ!」

ほむら「ツェペリさんと佐倉さんが攻撃の標的。だから矢はそのままどっかへ飛んでいく……だけど……」

さやか「だけど……なんてパワーとスピード……! まともにくらってたらひとたまりもないな……!」

マミ「二人はすんでの所で避けれたようね……!」

まどか「魔女が攻撃したってことは……今の攻撃……」

ほむら「……倒せなかった。ということになる」


414: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:45:43.92 ID:z96hxSlG0




杏子「……ぐっ! ちくしょう!」

杏子「折角張ったリボンの結界が台無しじゃねぇか……。蜘蛛の巣に石を投げ込まれたみてーにぽっかりと穴が空いちまった」

杏子「くそったれ魔女め! 何て攻撃だッ!」

ツェペリ「杏子! 大丈夫か!」

杏子「左の膝から下が吹っ飛んじまったよ。だが大丈夫だ」

ツェペリ「……! すまない。わしを助けるために……」

杏子「礼なんて後で嫌になるほど聞いてやる! それより波紋はどうなんだよッ!」

ツェペリ「……ダメだった」

杏子「なん……だと」


415: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:47:04.91 ID:z96hxSlG0


杏子「どういうことだ! 波紋強ぇーんじゃねぇのかよ!」

ツェペリ「波紋が流れていかないのだ!」

ツェペリ「巨体で頑丈なボディ故に! 体表全てがアースのように、波紋が分散してしまう!」

杏子「おいおい……マジかよ。どうしろってんだよ……」

ツェペリ「ひとまず退却じゃ。策は残されていないわけではない」

杏子「そうか……。早いとこさやかに足を治して貰わないとな……」



416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:49:30.88 ID:z96hxSlG0


さやか「――それで……次はどうするのさほむらッ!」

ほむら「……今度は私が波紋をぶつけに……」

マミ「またリボンの結界を張り直さないといけないわ。まずは小休止よ」

…ォォォ


まどか「あれ……? 何の音?」

ほむら「…………?」

ゴオォォォォォ

まどか「あれは……! ほ、炎の矢だッ!」

マミ「な……ど、どうしてッ!?」



417: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:50:14.85 ID:z96hxSlG0

さやか「軌道を変えやがったッ!?」

ほむら「Uターンしてくる!」




マミ(テレパシー)『二人とも!』

杏子「マミからのテレパシー!?」

ツェペリ「どうかしたのか?」


マミ(テレパシー)『炎の矢が戻ってくるわ! ツェペリさんをつれて逃げて!』

杏子「何だって! あの矢が戻ってくるッ!?」

ツェペリ「何ィッ?! た、確かにこっちに向かってきている……!」

杏子「くっ……だ、だが使い魔が邪魔だ……! 逃げるにも厳しいぜッ」

ツェペリ「いや! 逃げる必要はない! こっちに来るって軌道がわかっていれば避けられる!」


ドゴォンッ!


杏子「!?」

ツェペリ「な、何の音だッ?!」


418: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:51:21.43 ID:z96hxSlG0


さやか「炎の矢が……浮遊しているビルに……!」

まどか「外した……?」

マミ「まさか……あのワルプルギスがそんなこと……」

ほむら「……ッ! いや、狙い通り! 奴はわざとビルを狙ったッ!」

まどか「ビルの瓦礫が……魔女の方へ……いや、杏子ちゃん達に飛んでいく!」

まどか「う、撃ち落と――」

マミ「ま、間に合わないッ!」

ほむら(時を止めても……リボンが切れてしまったから行く術がない! まずい……ッ!)


419: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:52:22.93 ID:z96hxSlG0

使い魔「」ブシャ

使い魔「」メキョッ


ツェペリ「おおおおッ! も、ものすごい破片飛沫の広がりとその爆発さながらのスピード!」

杏子「使い魔が潰されていく! や、やばい! やばいぞこれはッ!」

杏子「飛んで避けるかッ!? 屈んで避けるかッ!?」

ツェペリ「だめだ! どうしても広がり飛んでくる破片のどれかにあたってしまうッ!」

ツェペリ「コォォォォォォォォ!」

杏子「オッサン! 波紋してる場合じゃない! 負傷覚悟で逃げるぞ! 屈め!」

杏子「あ、いや飛ぶんだ! 飛んで避ける方がいい!」

ツェペリ「いいや、これしかない! わしの後ろにつけぃ!」バッ

杏子「お、オッサン何を……!」


420: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:53:21.05 ID:z96hxSlG0

ツェペリ「当たる面積を最大にして波紋防御!」


グォォォン

杏子「オ、オッサン?!」

メメタァッ

杏子「そ、そんな……! あ、あたしの『盾』にッ?!」

バシバシバシバシ

ツェペリ「うがあああッ!」

ドバババ

杏子「んな無茶苦茶なッ! あたしを庇うために……!」


ツェペリ「足を負傷したおまえに……これ以上の負傷……は……グハッ!」

杏子「ち、ちくしょう! ひ、退かなくては!」ガシィッ

杏子「重い……! 瓦礫が肉に食い込んでるからなおさら重い……!」


421: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:54:08.69 ID:z96hxSlG0
――
――――

ほむら「ツェペリさん! ツェペリさんッ!」

ユサユサ

ツェペリ「ゲフッ…」

マミ「な、なんてことを……全身ズタボロじゃない!」

杏子「どうしてあんなこと……!」

ツェペリ「かっこつけたかった……じゃあダメかな」

さやか「喋らないでオジサン! 今、治癒魔法で治してあげ……」

パァッ

さやか「る……?」

まどか「……え?」

さやか「治らない」

まどか「さ、さやかちゃん?」


422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:55:04.98 ID:z96hxSlG0

ほむら「…………」

マミ「……どうして?」

さやか「どうして治らないんだよぉぉぉぉぉっ!」

まどか「お、落ち着いて、ゆっくりやれば……!」

さやか「あたしは腕がもげても足が吹っ飛んでもお腹に穴があいても、絶対に治るのに!」

杏子「おいさやか! 手ェ抜いてんじゃあねーだろォ――なッ! 早く治――」

ツェペリ「その必要はない……」

杏子「!」

ツェペリ「それは、わしが……既に死んでいるからだ。死んでいる者は治らない」

まどか「し、死んでいる!? ど……どういうことなの!?」

杏子「オッサン! おい! 意味わかんねーぞ!?」



ツェペリ「ほむらよ……手を……」

ほむら「…………はい」スッ

ガシィッ


423: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:55:53.64 ID:z96hxSlG0

まどか「ツェペリさん……何を……」

ツェペリ「おまえはよく頑張った。たった一ヶ月で……。後は……この世界のことは……この世界の者が解決するのだ」

マミ「な、何を言ってるの……? この世界? どういうこと……」

ツェペリ「わしが託すのは……この世界の未来に託す魂……人間の魂じゃ!」

ツェペリ「一度失った波紋エネルギーを……何故か生き返ったこの世界で再び蓄えた……その全てをッ!」

ツェペリ「わが……究極の奥義……ほむらに捧げる!」

ほむら「うぅ……ツェペリさん……!」

ギャンッ

ツェペリ(二度目……か。この技を二回目を使うチャンスがくるとは思わんかった)



424: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:56:35.93 ID:z96hxSlG0



ツェペリ「究極! 深仙脈疾走 (ディーパスオーバードライブ)!」

ボッ ゴアァ

ほむら「!」

ゴアッ


ツェペリ「フフ……ほむら。わしの生命エネルギー……」


425: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:57:28.44 ID:z96hxSlG0

ツェペリ「全て……捧げた……ぞ……」

ツェペリ(とは言え……『一度目』の時よりも捧げたエネルギーは少ないがな……これでは究極とは言えん……か)

杏子「オッサン! おい、オッサン! さやか! 手ぇ抜いてんじゃあないのか! さっさと治せよ!」

さやか「あり得ない……どうしてあたしの魔法が……死んでるって……どういうことなんだよ……」

マミ「こ……こんな! こんなこと!」

まどか「そんなのってないよ……! 残酷すぎる!!」ポロポロ

杏子「オ……オッサン!」

さやか「ツェペリのオジサぁ――ン!」

ツェペリ「…………」



426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 11:58:23.46 ID:z96hxSlG0


ほむら「そ、そんな……そんな……!」

ほむら(感じる……ツェペリさんの手から伝わる……波紋が、生命エネルギーなくなった……)

ほむら(冷たい消滅……! 「終わり」の感覚……!)

ほむら「やだよぉ……ツェペリさん……!」

ツェペリ「……気にするな。わしは、そうなるべきだったところに戻るだけじゃ。元に戻るだけ……ただ、元に……」

ほむら「あなたがいなくなったら……エグッ、私達は、どうすれば……グスッ、いいのですか……? ……ウック」ポロポロ

ツェペリ「…………」

ツェペリ「……ほむら……き……きさま……大……バカ者が……悲しんどる場合! 今のおまえは!」

ほむら「……!」


563: 426.5 2012/08/23(木) 20:24:32.45 ID:8VGk3kXs0
ツェペリ「フッ…。おまえには……わしの生前、兄弟子がおったのだ。わしは命を賭して彼に未来を託した。だけれども……自分の運命に満足しておる……全て受け入れておった」

ツェペリ「そして、生き返った今、それがために失った波紋エネルギーを、お前に波紋を教えながら共に波紋を蓄え続け、今再び託すのだ。わかるか?」

ほむら「うぅ……わかりました……。……あとは、任せてください……ッ!」

ツェペリ「フフ……妹と娘を同時に持ったような気持ちだったぞ……。このような気持ちを二度も味わえるとは……神、いや、魔女に感謝するべきことだ」

ほむら「ツェペリさん……。……本当に……本当にお世話になりました……」

スッ……


427: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:01:37.81 ID:z96hxSlG0


まどか「き、消えた……?」

マミ「嘘……幽霊のように……」

杏子「魔女に感謝……とか言ったな。オッサンは……魔女の生まれ変わりか何かだったのか……?」

杏子「理解を超えているが……もしそういう類なら、死んで……消えても納得はする」

さやか「既に死んでたとか……全然わからんなかったけど……そういう、ことだよね」

さやか「……はは、何でこんなに冷静なんだろうね。オジサンが死んだって言うのに」

マミ「……逝ってしまったようね。彼の言う『元』の世界に導かれて……」

まどか「……ううぅ」

ほむら(ツェペリさん……)

ほむら「…………」グシグシ

428: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:02:15.80 ID:z96hxSlG0

ほむら「…………」


ほむら「同じ傷口を狙うッ!」

杏子「うおっ!?」

さやか「な、なんだいきなり!」

ほむら「奴に一斉攻撃を与えた場所に! もう一度! 同じ傷口に叩き込む!」

まどか「お、同じ傷口……?」

マミ(暁美さん……。……そうね。悲しんでいる暇はないわ)

杏子「だが……傷口も何も、あのクソッタレ魔女にまともなダメージを与えられなかったんだぞ? 手応えでわかる」

さやか「それに……同じ箇所を攻撃するってんなら……あたしは今の攻撃に参加してないし、同じも何も、わからない……」

マミ「私と鹿目さんは遠距離攻撃だから、頭とか手先とか部位を狙うならまだしも、せめてわかりやすい目印でもないと……」

まどか「わたしの矢は魔法で作ったものだから……刺さっても、すぐに消えちゃうし……」


429: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:02:44.76 ID:z96hxSlG0

ほむら「……よく見て」

ほむら「双眼鏡」スッ

まどか「え? 覗くの? うん、わかった……」

ほむら「額の辺り、よく見て。目も鼻もないからちょっとわかりにくいかもしれない」

まどか「……あ!」

マミ「どうしたの鹿目さん!?」

まどか「眉間……いや、眉はないけど……その辺りに、よく見たら傷がある……!」

さやか「え、マジで?」


430: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:03:26.39 ID:z96hxSlG0

ほむら「直前に射った鹿目さんの矢は! 一瞬だけ、矢先が界面活性剤のように魔女の顔にくっつきました!」

ほむら「その瞬間に! ツェペリさんの波紋乱渦疾走の回転蹴りで矢を『押し込ん』でもらったのですッ! ドライバーがネジを材木にねじ込むように!」

ほむら「結論から言うと……ワルプルギスの眉間に! 矢尻の分だけくい込み、えぐれた傷があるということ!」

ほむら「人間の皮膚でいう真皮にちょこっとめりこんだ程度に過ぎないけど……とにかくそこをもう一度狙います!」

さやか「よ、よし! わかった! 何にしてももう一度だなッ! 使い魔の行動パターンとかは覚えているッ!」

杏子「グリーフシードで浄化は完了したぜ! あたしはいつでも行けるッ!」

マミ「とにかく眉間を撃てばいいのね! なら大丈夫! 任せて!」


431: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:04:10.99 ID:z96hxSlG0


ほむら「傷が深まった所に波紋をぶつけてみせるッ!」

まどか「…………」

まどか(……いつからだろう)

まどか(ほむらちゃんは……あらゆる他人に恐怖心というか遠慮というか控えめというか……)

まどか(そういうのを持ってて、おどおどした性格だった。小動物のようだった)

まどか(わたしも初対面の印象は「守ってあげたくなる子」だった。実際はずっと守られてきたけど……)



432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:04:46.85 ID:z96hxSlG0

シュルル

マミ「リボンを修復したわ。これでいい? 暁美さん」

ほむら「はい」

ほむら「巴さん。援護射撃と鹿目さんの護衛をお願いします」

マミ「ええ、わかったわ」

ほむら「鹿目さんは、リボンに魔力を流してワイヤーみたいに硬くして。そして、さっきと同様に佐倉さんの攻撃を合図に一斉攻撃!」

まどか「う、うんっ!」

まどか(スポーツをすると性格が変わるとは聞くけど……とにかくほむらちゃんは……この一ヶ月で大きく印象が変わった……!)



433: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:05:19.72 ID:z96hxSlG0


ほむら「佐倉さんは飛んで、私と美樹さんはそのワイヤーを綱渡りの要領で駆け上がって、ワルプルギスに接近します」

杏子「おう!」

さやか「つ、綱渡り!? そ、そんな無茶な……」

ほむら「ツェペリさんは、波紋があったからリボンにくっついてその上を安全に走れました」

ほむら「しかし事情は事情! できなくてもやってください! 途中までなら、落ちそうになっでも時間を止めて助けますから」

さやか「わ、わぁったよ! やってやんよ!」


まどか(転校初日の緊張した顔、臆病な態度、わたしが契約する時の震えた声。その全てが、夢のだったかのよう……)



434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:06:00.97 ID:z96hxSlG0


ほむら「一斉攻撃再開ッ!」

ワルプルギス「アハハハハハハハハハハハハハ」



杏子「行くぞオォォォォッ!」バッ

さやか「うわっ! こ、怖ッ! ちょっと揺れてる! うおわッ! えぇい南無三ッ!」ダッ

ほむら(これで……全てを決める!)ダッ

435: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:06:34.76 ID:z96hxSlG0


マミ「……そろそろね。行くわよ! 鹿目さん!」

まどか「はいっ!」

マミ「ボンバルダメントォッ!」

まどか「スタ――ライトアロォ――ッ!」

ドギャンッ! ドギュウウウゥゥ――z__ン


まどか(マミさんやツェペリさんの後ろを歩いていたほむらちゃんが今、先頭にたってわたし達を引っ張る程に逞しくなった)

まどか(これで……全てが決まる!)



436: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:07:33.56 ID:z96hxSlG0


杏子「最後の審判ッ!」

さやか「スティンガァ――ッ!」

ボムギ! ズギャンッ!



ワルプルギス「アハハハハ」

キュィ――

ほむら「!」

さやか「やばいッ!」

杏子「奴の攻撃がくるッ!」


ズキュゥ――――z____ ンッ!


437: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:08:35.05 ID:z96hxSlG0


杏子「うおおおおおおおッ!」

さやか「うああああああッ!」


ドサッ ドサァッ


まどか「さやかちゃん! 杏子ちゃん!」

マミ「二人とも! 大丈夫!? こ、ここまで吹っ飛んでくるだなんて!」

杏子「ふ――、だ、大丈夫だ。武器とリボンが盾になって何とか……な」ムクリ

さやか「あの炎の矢……そのままの意味で骨が折れるね。指が焼き切れたりとかしたけども」

杏子「スマナイが……また治してくれ。今のままじゃゾンビを名乗っても通っちまうよ」

さやか「あたしの後でね」ズギュンッ


438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:09:13.14 ID:z96hxSlG0


まどか「ほ、ほむらちゃんはッ!?」

マミ「……いるわ。あそこに」

さやか「あいつさァー……あたしらでワルプルギスの注意惹かせてちゃっかりとさぁー」

杏子「敵を騙すなら味方からとは言うが……何で黙ってしちゃうかねぇ」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

ワルプルギス「アハハハハハハハハハハハハハハハ」


ほむら「コォォ……」

ピッタァァ



439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:09:47.35 ID:z96hxSlG0


まどか「ほむらちゃん……! ワルプルギスに張り付いているッ!?」

マミ「くっつく波紋ってやつね……!」

まどか「あっ……! 見て! わ、ワルプルギスの白い顔に……赤い亀裂が……ッ!」

杏子「ワルプルギスは、二度の総攻撃を受けて、人間でいう皮下細胞がむき出しになっている状態になっている!」

マミ「そこから波紋を……! 外部がダメなら内部から! これは賭けになる!」

さやか「でも……ほむらには、オジサンの波紋パワーが受け継がれている! 行ける!」

杏子「行けェ――ッ! ほむらァ――ッ! 波紋を流し込め――ッ!」

まどか(ほむらちゃん……ッ!)



440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:13:38.36 ID:z96hxSlG0

ほむら「人間讃歌は勇気の讃歌……」


ほむら「勇気とは……恐怖を我が物とすること」

ほむら「全てを敢えて差し出した者が真の全てを得る」

ほむら「巴さん、美樹さん、佐倉さん、鹿目さん。そして……ツェペリさん」

ほむら「奴を倒すためなら……私は……『全て』を敢えて差し出せます。……もう、何も怖くない」


ほむら「私の肉体に残された全ての力……。ツェペリさんから託された魂の力……そのすべてを一気に放出する!」

ほむら「みんなから受け継いだ人間の魂……私からみんなに託すのは、未来への遺産……!」

ほむら「夜を明かして……みんなに暁を……陽の光を見せたいから!」


441: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:14:06.64 ID:z96hxSlG0


カチッ

ほむら「時は止まった」

ほむら「時が止まっている間に、体勢を整え――波紋のエネルギーを蓄える!」

ググッ…

ほむら「肉体を強化させる魔法で、呼吸に関わる筋肉……呼吸筋を限界まで強化ッ!」

ほむら「ワルプルギスに波紋を与える際、より深くに流すために、ねじ込む程の腕力をッ! 途中で折れないように骨も強化ッ!」

ほむら「最大の魔力ッ! 最強の波紋ッ! これが、私の最高のパワーッ!」

ほむら「夜を明かすのは太陽の波紋ッ! これが私の全ての力だッ!!」


ほむら「コォォォォォォォォォ!」

ほむら「震えるぞハートッ! 燃え尽きるほどヒートッ! 刻むぞ血液のビートッ!」


――時は動き出す。


442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:14:49.06 ID:z96hxSlG0






ほむら「山 吹 色 の 波 紋 疾 走 (サンライトイエローオーバードライブ) ッ!!」





443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:15:25.64 ID:z96hxSlG0


カッ



まどか「うわっ!? ま、眩しいッ!」

さやか「あの黄色い……太陽のような輝きは!」

杏子「波紋疾走がぶつかってはじける輝きだ!」

ギュキュゥ――ン

マミ「やったッ! この音! ブ厚い鉄の扉に流れ弾丸のあたったような音……いつも聞く『波紋』の流れる音よ!」


444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:17:53.64 ID:z96hxSlG0



ワルプルギス「AAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHh!」

ボゴボゴボゴ


まどか「わ、ワルプルギスの頭が……溶けている……!」

さやか「そのまま……そのまま溶けきれ! 溶けて顔面の中をシェイクされろォ――ッ!」



――人間とて強い直射日光をあびれば火傷で皮フが水ぶくれになる。

ほむらが普段の波紋を与えれば普通の人はしびれて気を失う程度であろう。

しかしほむらが魔女の内部に直接与えたのはその数百倍! 魔女の体が液体化しはじめ気化しはじめた――

445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:18:38.79 ID:z96hxSlG0


ワルプルギス「――――」

ボゴォッ

杏子「魔女の顔面が破壊された!」

マミ「……魔女の体も消えていく……!」

まどか「黒い空も……一緒に……」



446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:19:07.49 ID:z96hxSlG0


パァ――z__ッ!


杏子「空が晴れた……見ろよこの快晴……」

マミ「今にも落ちてきそう……」

まどか「魔女が……消えた……!」

さやか「倒したんだ……魔女を……!」

マミ「勝ったのよッ! ワルプルギスにッ!」

さやか「ついにッ! ついに倒したッ!」

まどか「ほむらちゃん……! やったんだね……! ほむらちゃん!」ウルウル

杏子「あ、あたし! あたし! ほむらを迎えに行ってくる!」




――――パキッ


447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:19:52.17 ID:z96hxSlG0


ほむら(き……切れた)



ほむら(私の体の中で何かが切れた……決定的な何かが――)

ほむら「…………」

ほむら(そっか……私は……死ぬんだ)

ほむら(私の全てを……私の命のエネルギーを使い果たしたから……命にヒビが……)

ほむら(……死、か)

ほむら(死ぬことは別に……恐怖じゃない……)

ほむら(私はついに、鹿目さんを……みんなを救えたんだから……)



448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:20:33.88 ID:z96hxSlG0


ほむら(ありがとう……ツェペリさん)

ほむら(巴さん。美樹さん。佐倉さん……。鹿目さんを……見滝原をよろしくお願いします)

ほむら(お父さん、お母さん。入院や一人暮らしでお金ばかりかけて……親不孝な娘でごめんなさい)


ほむら「そし……て……」


ほむら「――幸……わ、せ……に……まど……」


ほむら「…………」



449: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:21:10.46 ID:z96hxSlG0

ガシッ


杏子「おいおい、変身が解けてやがる」

杏子「おい起きろ。気が抜けたんでマジに寝ちまったのか?」

杏子「へへっ、みんなが待ってるぜ。寝るのは後にしろよ。ほむらっ」

杏子「おーい」

杏子「……」

杏子「……ほむら?」

杏子「…………」


450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:22:48.26 ID:z96hxSlG0




コポコポコポ


カチャ…


マミ「はい、紅茶のおかわり」

ほむら「あっ、ありがとうございます」

杏子「このケーキ、うめぇだろ? あたしのお気に入りさ」

ほむら「はい。苺が甘酸っぱくて……」

さやか「転校生、ほっぺにクリームついてるよ!」

ほむら「え? あ、ほんとだ……」

451: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:23:54.01 ID:z96hxSlG0


マミ「ふふ……慌てなくていいのよ?」

さやか「そうだよ。何たって、マミさんはたくさんのケーキを所有してるんだから!」

杏子「だからどんどんと脂肪が……」

マミ「さ、く、ら、さん?」

杏子「う……。じょ、冗談だよ」

さやか「杏子はお菓子ばっか食べてるのに痩せてるよね」

杏子「食べても太らない体質なんだよね」

マミ「あなたは今、多くの女性を敵にまわしたわ」

ほむら「あはは……」

ほむら「…………」


452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:24:26.96 ID:z96hxSlG0


ほむら「あの……一つ、聞いてもいいですか?」

さやか「?」

ほむら「えっと……ちょっとした好奇心で尋ねるんですが……」

ほむら「もし……もしですよ。もし、タイプリープ系のお話で……」

ほむら「自分自身が主人公に、もとい、時間遡行者になったとすれば……」

ほむら「何度も何度も絶望して、苦しんで、悲しんで」

ほむら「そういう立場になったら……どうします?」

さやか「…………」

マミ「…………」

杏子「…………」


453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:25:20.90 ID:z96hxSlG0

さやか「んー……そうだな。あたしは『結果』だけは求めないかな」

さやか「結果だけを求めると人は近道をしたがる……近道をした時、道標を見失うかもしれない」

さやか「それこそ、友達だったはずなのに友達でなかったり、仲間と敵対したりしてね」

マミ「大切なのは『道標に向かおうとする意志』じゃないかしら」

マミ「向かおうとする意志さえあれば……またやり直さなくてはいけなくなってもいつかは辿り着ける」

マミ「向かっているんだから。……見当違いかしら? ふふ、言うだけなら簡単なんだけどね」

杏子「仲間の無事、戦力、そして成功……全てを祈り続ける。時間遡行は祈りの旅だ」

杏子「急がば回れっていうことわざもあるしさ、色んな道を祈りながら進もうとする意志が大事だと思う」

杏子「あー、なんていうかな? 『まわり道こそが最短の道』だったりすることもある。まるで迷路さ」

454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:25:50.24 ID:z96hxSlG0


ほむら「…………」

ほむら「うらやましい……」

ほむら「私は……大切な人を守りたいと思ってた。鹿目さんと出会ってから……ずっと」

ほむら「かつてはみなさんが言ったような意志を抱いていた……けど、繰り返していくうちに崩れていく……」

ほむら「私という弱い人間は……なにをやっても途中でダメになっちゃう」

ほむら「幾度か諦めちゃってもいいかなって……別に誰かに怒られるわけでもないし」

ほむら「そう、思ったこともあって……」

ほむら「私は……」


455: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:26:31.80 ID:z96hxSlG0


さやか「そんなことはないよ……ほむら」

ほむら「え?」

杏子「あんたは立派にやったんだよ。意志は同じさ」

マミ「あなたが私のお弟子さんになったばかりの時に抱いていたその意志……今、ようやく報われた」

ほむら「な……なんで……巴さん」

ほむら「なったばかりの時って……なんで知っているんですか? 話しましたっけ……?」

ほむら「……? そ、そういえば……私、なんでここにいるの?」

ほむら「鹿目さんは……どうしてここにいないの?」

ほむら「……そ、そうだ。行かなくちゃ……私は行かなくちゃいけないんだ……」


456: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:27:37.28 ID:z96hxSlG0

ほむら「でも……でも……どこへ? 私は……どこへ行かなくちゃいけないの?」

ほむら「わからない……私は……私はどこへ行けば……」

杏子「……全く、しょうがねぇ奴だな。教えてやるよ。……戻るんだ」

ほむら「戻る……?」

杏子「そう。あんたがいるべき場所に、あるべき世界にな」

さやか「さ、外に停まってるバスにちゃっちゃと乗っていきなよ」

さやか「あんたはそれに乗ってここに来たんだ」

ほむら「私が……バスに……?」


458: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:28:18.18 ID:z96hxSlG0

マミ「ここは終点……。誰にも戻ることはできない」

マミ「……ただし」

マミ「あなたは往復の切符を持っている」

ほむら「あ……」

ほむら「あなた達は……! そうだ……! あなたはッ!」

ほむら「巴さん。あなたは私を庇って亡くなった『時間軸』の……!」

マミ「暁美さん……あなたは立派にやったのよ。私が誇りに思うくらい立派にね……」


459: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:28:53.21 ID:z96hxSlG0






杏子「…………」スタッ

まどか「ほむらちゃん!」

さやか「おっとぉ、お疲れかい? ほむらぁ。何寝ちゃってんだよ!」

マミ「お疲れさま! 暁美さん!」

杏子「…………」

さやか「……杏子?」

杏子「ほむらは…………」

マミ「どうかしたの……?」


杏子「死んだ」


まどか「……え」

460: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:29:26.13 ID:z96hxSlG0

まどか「な……何を言ってるのかわからないよ……?」

杏子「見ろ。これを」ゴソ…

マミ「こ……ッ! これって……!」

杏子「ほむらのソウルジェムだ。割れているだろう」

さやか「ッ!?」

まどか「あ……ああ……あああ……」

マミ「…………クッ」

杏子「波紋は生命のエネルギー。ほむらは自分の命を全て、ワルプルギスにぶつけたんだ。そして、命が尽きた。……オッサンと同じようにな」

さやか「そ、そんな……」

まどか「あああああ……! ああうぅ……っ!」

ガクリ

461: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:30:26.20 ID:z96hxSlG0


さやか「そんなことって……せっかくワルプルギスを乗り越えたってのに……!」

杏子「……ほむらはすでに救われていたんだ」

まどか「うぅ……えぐ……うっく……」

まどか「ひどいよ……こんなのあんまりだよ……!」

まどか「ほむらちゃんを守るって……誓ったのに……!」

まどか「折角……! 折角ほむらちゃんが幸せになれるのにッ!」

まどか「いやだ! いやだよそんなのぉ! ほむらちゃん……! ほむらちゃぁん……!」

マミ「鹿目さん……」

杏子「ほむら……ろうそくの炎のように儚い奴だ……」

462: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:31:28.04 ID:z96hxSlG0

まどか「ううぅ……」

QB「犠牲者が二人だけで済んだだけでも、それは異常とさえ言える程だ」

QB「……しかもその内一人が魔法少女じゃないときたものだ」

さやか「キュゥべえ……」

QB「あのワルプルギスが溶けてしまうだなんて……波紋というものに興味が沸いた」

杏子「…………もう、波紋を使える者はいない。誰もな……」

QB「そう。……僕には感情がないからわからないけど、この喪失感が、悲しみなのかな。それとも、勿体ないという気持ちなのかな」

QB(ツェペリという人間、いや、概念は……遺体も残さずに消えた。彼は魔女の影響で生まれた『得体の知れない何か』だ。まぁ彼はともかくとして……)

QB(ほむらには、死んでもらっては困る。かと言って……まどかに「それ」を教えるのも……)

マミ「…………」

463: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:32:06.58 ID:z96hxSlG0


マミ『……キュゥべえ』

QB『……うん? どうしたんだい? わざわざテレパシーで』

マミ『…………』

QB『……気付いていたのかい?』

マミ『確証がないの。でも……鹿目さんは「それ」ができるの? それを聞きたい』

QB『……僕もわからない。……仕方ない。試してみるよ』


464: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:33:09.10 ID:z96hxSlG0


QB「まどか」

まどか「グスッ……なに? キュゥべえ……」

QB「君には素質があるんだ。それはもう、とんでもない……ね」

まどか「えっ……?」

杏子「何言ってんだ? こいつ……」

QB「君の願いは、魔法少女の蘇生だ。幼なじみの怪我を治したいという願いから治癒魔法が得意なさやかと同じように……もし、その願いが反映されるなら……」

まどか「まさか……」

QB「可能性はある」

マミ「……」


465: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:33:50.12 ID:z96hxSlG0


まどか「わたしが……」

さやか「……何? 何の話?」

杏子「ほむらが、あたし達と同じように……?」

さやか「?」

まどか(ほむらちゃんのソウルジェム……)

キュッ

さやか「え……? まどか……?」

パァッ

さやか「なっ……! こ、この光は……まさか、そんな……そんなッ!?」

まどか「お願い……ほむらちゃん……!」


466: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:34:17.35 ID:z96hxSlG0

QB(まどかには……)

QB(まどかには素質がある。この世の概念を覆すことができるような……全ての魔女をなくしてしまうような……)

QB(失った魂を再び繋ぐような……死をなかったことにするような……)

QB(まどかの願い、「魔法少女の蘇生」が反映されて、ほむらのソウルジェムを「直す」……)

QB(ソウルジェムに直接関与する固有魔法を持つ「可能性」はある)


467: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:34:52.95 ID:z96hxSlG0

さやか「…………」

杏子「…………」

マミ「…………」


まどか「…………ほむらちゃん」


QB(実際に、そうだった)

QB(ありえない話だが、本当に直ってしまった。……本当のイレギュラーほむらでもツェペリでもない)

QB(まどか。君だ)




死んだ人間が生き返るなんて、都合がいい話だけど……そこはまぁ、うん。奇跡も魔法も、あるんだよ!

――21世紀日本女子中学生 美樹さやかの言葉

468: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:35:25.61 ID:z96hxSlG0


ほむら(…………)

ほむら(……夢?)

ほむら(私は何を……)

ほむら(確か私は……紅茶を飲んでて……えっと……)

ほむら(往復……切符)

ほむら「…………」

ほむら「空……」

ほむら「…………」

ほむら「私……」

ほむら「生きてる」


469: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:35:57.90 ID:z96hxSlG0


まどか「ほむらちゃん……!」

ほむら「わ、私は……!」

ギュッ

ほむら「鹿目さん……!」

まどか「ほむらちゃんの馬鹿……自分の生命を使い果たすなんて……」

ほむら「…………」

まどか「ほむらちゃんは……ほむらちゃんはわたしに自分を犠牲にしないでと言った……!」

まどか「なのに……何で、勝手に死んじゃうの……!」

ほむら「それは……」

470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:37:23.54 ID:z96hxSlG0


まどか「ほむらちゃんは……」

まどか「……わたしのこと、嫌い?」

ほむら「まさか! 私の願いは鹿目さんの幸せ……。命を賭してまで叶えたかった私の願い。これは所詮、私が勝手にやったこと……!」

まどか「それじゃあ、どうしてわたしの幸せにほむらちゃんが必要だって考えてくれなかったの?」

ほむら「……」

まどか「やっぱり……嫌いなの?」

ほむら「そんなことない! 鹿目さんは、私の最高の友達! 大好きに決まってる……!」

まどか「なら! ずっと一緒にいて! どこかにいかないで……!」


471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:37:53.32 ID:z96hxSlG0

まどか「わたしのために……みんなのために……! ずっと……!」

ほむら「うぅっ……鹿目さん……」ポロポロ

ほむら「ごめんなさい……ごめんなさいぃ……グスッ」

まどか「……ほむらちゃんが初めて会った時の鹿目さんを、超えてみせる」

ほむら「……ん」

まどか「わたしがほむらちゃんを引っ張って、守ってあげるからね」

ほむら「……うん」

まどか「ほむらちゃん……わたしもあなたのこと大好きだよ!」

ほむら「……うん!」

472: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 12:38:28.68 ID:z96hxSlG0


さやか「泣かせてくれるねぇーオロロ~ン」

マミ「これで……みんな一緒ね……グスッ」

杏子「おい、本当に泣いてるぜこいつ」ケタケタ

マミ「な、何よっ! 暁美さんが生き返ったのよ?! 二人ともケロッてしてるけど、なんとも思わないの?!」

杏子「嬉しいから笑ってるんじゃないか」

さやか「あっはっはー」

杏子「はっはっはー」

マミ「……目が赤いわよ」

杏子「な、泣いてないしっ」プイッ

さやか「えへへ…………グスッ」


479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:46:07.62 ID:z96hxSlG0


一週間後


――ほむら宅


ほむら「…………」

「ゃーん……」

ほむら「…………」ポケーッ

「ほむらちゃん!」

ほむら「ふぇっ!? え、あ、はい!」

まどか「もー、ほむらちゃんったら、ボーっとしちゃって~。ティヒヒッ」

杏子「そうだぞー。あたしらは客なんだぞー」

ほむら「ご、ごめんなさい……何だか……ワルプルギスを超えて気が抜けたというか……色々考え事してて」

さやか「あんたねぇ……ワルプルギスから一週間ぶりに顔合わせたってのに……。学校は休校中けどさ。いい加減シャキっとしなよ!」

マミ「シャキっと……と言えば、紅茶よりコーヒーかしらね。まあ紅茶なんだけどね」カチャ

ほむら「あ……巴さん、いつの間に紅茶なんて……」


480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:47:12.68 ID:z96hxSlG0


マミ「暁美さん。あなたが話したいことがあるっていうからあなたの家に集まったのよ?」

ほむら「そうでした……すみません。お客さんなのに淹れさせちゃって……」

マミ「いいのよ。友達の家に遊びに行くの、憧れてたから」

杏子「ぼっちは不憫だよな」ホロリ

マミ「夕飯抜き」

杏子「ごめんなさい。マミさんはこのあたしめを家に置いてくださっている慈愛に満ちあふれた魔法少女の鑑でございます」

マミ「よろしい」

さやか「…………」

まどか「…………」

杏子「そんな目で見るな」


481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:48:19.19 ID:z96hxSlG0


ほむら「……」ボーッ

まどか「ほらまた」

ほむら「あっ、ごめん。じゃあひっくり返します!」

マミ「ちょっ!」

杏子「オッサンか? 液体見るたびにオッサン思い出すのか?」

さやか「……ほむら、ちゃんと生活できてるの?」

ほむら「…………」

杏子「どうした?」


482: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:49:01.00 ID:z96hxSlG0

ほむら「……死人であるツェペリさんと出会って、巴さんが私からプロポーズされると勘違いして、美樹さんが惨死して……」

まどか「プ、プロポ……!」

マミ「ちょ! あ、あの時のことは言わないでって言ったじゃない!」

ほむら「佐倉さんが魔女になって、私が死んで、鹿目さんが生き返らせてくれた……」

杏子「何おさらいしてんだよ」

さやか「ほむら?」

ほむら「嘘みたいなことばっかり続いて……今、こうしているのが現実なのかって……今でも不思議で……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「嬉しいのと同時に、不安で……」

まどか「不安?」


483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:49:30.82 ID:z96hxSlG0

ほむら「私は、鹿目さんとの出会いをやり直すことができた。……だから、時を止める能力は無くなって……」

マミ「えぇ、それは聞いたわ」

ほむら「しかも波紋エネルギーを一度使い果たしたからどうにも回復が遅いというか……」

ほむら「うまく波紋が練れないんです」

さやか「それって……」

杏子「一度死んで感覚が鈍ったってとこか」

ほむら「はい……一時的なものです」

484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:50:19.79 ID:z96hxSlG0


ほむら「それに死んじゃって盾も一時的に失ったから、中身も全部なくなっちゃって……」

まどか「爆弾とか……カラオケのマイクとかも?」

さやか「マイク? ……なんか盾の能力がショボく見えてきた」

ほむら「波紋と爆弾と時を止める能力にずっと頼ってたし……魔法少女としての元々の素質が大したことないわけですし……」

ほむら「だから……全部失った今のままじゃ使い魔さえ倒せない。みんなの足手まといになるんじゃないかって……ずっと考えてて……」

ほむら「なかなか言い辛くって……」



485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:50:54.62 ID:z96hxSlG0


ほむら「……他にも色々悩んでることもあるけど」

まどか「ほむらちゃん……そんなこと考える必要ないよ!」

ほむら「……」

さやか「そうだよほむら! むしろあたしらがあんたを足手まといに思う根拠ってなにさ!」

マミ「暁美さんはずっと私達のために尽くしてくれたんだもの。私達があなたを支える番になっただけよ」

杏子「そうそう。……ま、せいぜい感覚を取り戻すのを頑張れよってこった」

ほむら「みんな……」

ほむら「……うん! 私、頑張る! ワルプルギスを倒した時より強くなる!」

まどか「その意気その意気!」

ほむら「休校が解除されるまでに5分間息を吸い続けて5分間息を吐けるようになる!」

さやか「女子中学生としてその意気込みはどうなの?!」

マミ「あらあら、張り切っちゃって」

486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:51:39.12 ID:z96hxSlG0

杏子「おいほむら」

ほむら「はい」

杏子「ついででいいからあたしにも波紋教えろよ~」

ほむら「えっ」

さやか「あ! そうだった! あたしも波紋やりたい!」

ほむら「う、う~ん……」

さやか「切磋琢磨しよう!」

まどか「さやかちゃんが四字熟語を……!」

さやか「…………」

杏子「頼むほむら! いや、先生!」

ほむら「せ、先生!?」


487: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:54:09.32 ID:z96hxSlG0


さやか「嫌だと言っても無理矢理教わるもんねー!」

マミ「よかったわね。弟子が二人もできたわよ?」クスクス

ほむら「そ、そんな、からかわないでください……」

杏子「あたしはあんたにも恩がある。だから絶対に挫折しないぜ!」

さやか「あたしはその気になれば痛みとか消せるからどうにでもなるよ!」

ほむら「…………」

ほむら「…………丁度いっか」ボソッ

まどか「え? 何か言った?」

ほむら「いえ……鹿目さんもやってみる? 巴さんもどうですか?」

まどか「え?」

マミ「私達も?」

ほむら「よければみんな一緒に……」

488: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 21:57:37.80 ID:z96hxSlG0


さやか「うおおおおお! やったぜ!」

杏子「やったぜホムホム先生!」

ほむら「ほむほむ先生!?」

さやか「ホムホム先生!!」

まどか「……マミさん。どうします?」

マミ「ふふ、しょうがないわね。やりましょう」

まどか「ティヒヒ、そうですね! ほむらちゃん。よろしくお願いしますっ」

ほむら「うんっ!」

マミ「先生♪」

まどか「せんせっ♪」

ほむら「うぅ、先生だなんてやめてよぉ……」

489: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:01:07.11 ID:z96hxSlG0


ほむら「コホン……それでは早速始めましょう!」

杏子「え? 今? ここで?」

ほむら「早い方がいいじゃないですか! それに最初は呼吸をするだけですから屋内でも大丈夫ですよ?」

ほむら「この部屋は防音性も高いしマジカルパワーもあるので多少騒いでも問題ないです!」

まどか「ほむらちゃん……本当に変わりましたよね」

マミ「そうね……笑顔の質が変わったというか、逞しくなったというか」

ほむら「実はですね。私、みんなに波紋を教えたかったんです」

さやか「そうなんだ。ナイスタイミングだったねっ」

マミ「張り切ってるわねぇ」

ほむら「別のことでも悩んでたんですけど、それはまあ後で」



490: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:03:36.77 ID:z96hxSlG0

ほむら「それではみなさん。波紋教室を始めます」スック

ほむら「起立!」

マミ/杏子/まどか/さやか「は、はいっ!」ザッ

ほむら「えへへ……一度やってみたかったんだよねこれ」

マミ「鹿目さん……随分とお茶目になって……」

まどか「かわいいですね」

ほむら「え~っとですね。早速なんですが、この一週間。試行錯誤してあるもの作ったんですよ……」ゴソゴソ

さやか「あんたこの一週間何をしてたんだ」

ほむら「こちらです」

杏子「何それ? すっげーダサいデザインだなぁ」

ほむら「これは呼吸矯正マスク!」バーン



491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:06:32.20 ID:z96hxSlG0

マミ「矯正マスク?」

まどか「まるでガスマスクみたいだね」

ほむら「えーっと……」

マミ「うん?」

まどか「どうしたの?」

ほむら「ん――……」

杏子「何だよ」

さやか(ちょいと小腹空いたかなー)

ほむら「えい!」バッ

さやか「むぐっ!?」

パチン、パチン


492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:07:15.73 ID:z96hxSlG0

まどか「な、何やってるの?!」

杏子「マスクを着けた!」

さやか「ウ、ウググッ!? は、外れない! 外れないィ!?」

マミ「ど、どうしたの!? 美樹さん? 美樹さんっ!」

さやか「こっ、き、う、が……ンパ! ンパッ!」プルプル

ほむら「特定のリズム……則ち波紋の呼吸でないと息ができなくなり酸欠になる仕組みのマスク!」

杏子「なん……だと……」

ほむら「これ作るのに苦労しました」ホムッ

まどか「な、なんて器用なことを……」

さやか「おごごごご……」ピクピク


493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:07:59.51 ID:z96hxSlG0


ほむら「波紋の呼吸をしないと窒息します」

ほむら「これをつけた状態で100km走っても息切れしなくなるのが目標! あなたも! 私も!」

マミ「ひゃ、100km……!」

ほむら「波紋は呼吸を征すること。息切れは呼吸。極めれば息切れしなくなります!」

ほむら「逆を言えば、故意に息切れしないと怪しまれます。ハイ」

杏子「うわぁ……」

さやか「」

まどか「さやかちゃーん!」

495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:09:52.37 ID:z96hxSlG0

杏子「いやいやいや! いきなり着けられたって無理に決まってるだろ!」

ほむら「はい。重々承知です。なので……」

ほむら「パウッ」

ドスゥ

さやか「ンムゥ!?」

杏子「いつぞやの腹パンきたァ――ッ!?」

マミ「踏んだり蹴ったりね……」

さやか「ぃ……ぃ……」プルプル


496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:11:30.37 ID:z96hxSlG0


さやか「いい加減にしやがれェ――ッ!」

まどか「!?」

さやか「……あ、あれ? 息ができる」

ほむら「横隔膜を刺激して一時的に波紋の呼吸ができるようにしました。ちゃんと練習しました」

さやか「お~。すげ~。さやかちゃんのセクスィーな唇が隠れてるという点に目を瞑れば最高ォ~」コォォォ

杏子「何言ってんだおまえ」

ほむら「このリズムを体で覚えてください。慣れれば風邪のマスクくらいに気にならなくなる……と思う」

ほむら「あ、マスク外しますね。美樹さん。どうでした?」

さやか「うん。死にかけた」パチンッ


497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:12:08.25 ID:z96hxSlG0


マミ「……ね、ねぇ、暁美さん」

ほむら「はい?」

マミ「もしかして、そのリズムを覚えるまで腹パンされ続けるの?」

ほむら「お腹じゃないです。横隔膜です」

まどか「……わたしも突かれちゃうの」

ほむら「……ごめんね?」

杏子「あたしは経験済みだ。失敗されたけど」

ほむら「本当はこんなことしたくないんですが……私、それ以外に教え方知らないんです」

さやか「あたしには躊躇なくやったのに……」


498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:12:53.14 ID:z96hxSlG0


杏子「それしか知らないって……まさかほむらもオッサンからそうやって?」

ほむら「はい。私もツェペリさんにこの波紋の呼吸を覚えるまで横隔膜を何度も殴……ツボ押ししてもらいました。そしてそのリズムを体で覚えた次第です」

ほむら「何度もリズムが乱れて5、6回くらいかなぁ、横隔膜突かれました。……何度もツボ押ししたくないしさせたくないし効率的じゃないので、このマスクを作りました」

マミ「暁美さん……あなたって子は……」

ほむら「素質のない私が最も手っ取り早く覚える方法だったんです。他にも方法はあったらしいのですが、今更わかりませんし」

まどか(ほむらちゃんが殴……苦しむ側だったんだ……。ほむらちゃんがさっきのさやかちゃんみたいに……)

まどか(……むぅ、例えツェペリさんと言えど、波紋を学ぶためと言えど……複雑な気持ちになる)


499: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:13:43.64 ID:z96hxSlG0


ほむら「あ、そうそう。マスク一つしかないんで使い回してください。次は誰?」

まどか「…………」

マミ「…………」

杏子「…………」

さやか「おいあんたらその沈黙は割と傷つくぞ」

ほむら「つ、次までにちゃんと人数分作りますね」

さやか「沈黙の意味を悟りやがったな……」


500: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:14:59.01 ID:z96hxSlG0

ほむら「本格的な波紋の修行はまた後日ということで」

さやか「ツーン」

杏子「元気だせよ。何もさやかだから嫌ってわけじゃないんだからな」

まどか「そうだよさやかちゃん。わたし達思春期なんだから」

マミ「スプーンとかの間接キスってならまだしもマスクは○○○○すぎるじゃない」

さやか「……うぅ~」

ほむら「あの……ですね」

まどか「どうしたの? ほむらちゃん」


501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:17:14.10 ID:z96hxSlG0


ほむら「……まだあと二つ、相談したいことが……」

マミ「どうしたの? 改まっちゃって」

さやか「二つでも三つでも四つでも! 何でも言いたまえ」

ほむら「あの……私、実はたくさんの魔法少女に波紋を教えたいんです」

まどか「へ?」

杏子「……? どういうことだよおい」

ほむら「あ、もちろんみんなにあらかた教えるのを優先するけど……その……」

ほむら「……『組織』を作りたい。波紋の後継者を育てるために、居場所を失った魔法少女のために」

まどか「そ、組織……?」

杏子「それってつまり……群れを作ろうってことか?」

ほむら「事情は、まあ後々説明します」

ほむら「…………」


502: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:20:10.07 ID:z96hxSlG0

~~~~~~~~~~


――ワルプルギスの夜を越えた日の夜



QB「僕は君達人間から学んだことがある。それは、人間はすぐに成長するということだ」

QB「僕が君と会った時、自分に自信が持てない、弱さがあった。しかし今は違う。強くなった」

QB「たった一ヶ月で君は、あまりにもね。ほむら」

ほむら「……何か、用?」

ほむら「私はあなたの顔は見たくないんだけど」

QB「そんな冷たい言い方、君には合わないよ」



503: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:21:02.73 ID:z96hxSlG0


ほむら「……」

QB「話を聞いてよ」

QB「君……波紋の能力は衰退したようだけど、それは一時的なものだろう?」

ほむら「……うん。すぐにでも、戻すつもりだよ」

QB「そうかい。それがいい」

QB「ツェペリという人間は、実に不思議なものだった」

QB「魔女の影響で現れたと考えれば、その魔女はお手柄だったというわけだ」

ほむら「……」

QB「呼吸という生物として当たり前の行為であんなエネルギーが放出されるなんて……」

QB「純粋に僕は驚いた。そこで、物は相談なんだけど……」


504: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:23:24.85 ID:z96hxSlG0


QB「波紋エネルギー。僕達に研究させてほしい」

ほむら「……へ?」

QB「魔法少女が絶望する感情のエネルギーは膨大で魅力的だけど……」

QB「はっきり言って効率的じゃあないんだ」

QB「感情の研究はまだまだだけど、上の方では『ワルプルギスの夜を倒した力』ということで、波紋に注目する一派ができた」

QB「だから研究させてほしいんだ。僕は君にその交渉をしにきた」

ほむら「……もう、騙されない」

QB「騙すだなんてとんでもない。そもそも僕は最初から騙してなんか……いや、その話はよそう」

QB「これは、契約とかそういう話ではなく、直々の要望なんだ」


505: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:23:57.94 ID:z96hxSlG0


ほむら「要望?」

QB「まず前置きなんだけど……」

QB「君達やまどかはまだ気付いていないがまどかには特異な能力がある」

ほむら「うん……私は、生き返った。鹿目さんの能力はソウルジェムの復元……」

QB「そう。彼女の願いは魔法少女の蘇生。そして得た能力はソウルジェムの復元……。金属が形状が記憶して元に戻るように」

QB「問題はその復元なんだ」

ほむら「……何が問題なの?」

QB「僕達の目的を理解しているのなら、冷静に考えたらわかるんじゃないかな?」

506: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:24:45.92 ID:z96hxSlG0

QB「結論から言おう」

QB「理論上、まどかはソウルジェムを『穢れた状態』から穢れる『前の状態』に戻すことができる」

ほむら「……それって」

QB「簡単に言えば、まどかはソウルジェムを『浄化できる』……ということだ」

ほむら「……ッ!」

ほむら「そ、それは……かもしれないという話でなく?」

QB「確定的だね」

ほむら「……だとすれば、あなたにとって都合が悪い。何故それを私に話したの?」

QB「どうせいつかわかることだからね」

507: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:29:34.63 ID:z96hxSlG0


QB「それでここからが問題なんだ。……そうだね」

QB「普通、グリーシード一個でソウルジェムを二人分浄化できるとしよう」

QB「穢れの程度やその器量によって燃費が違うからね。例えばの話だ。例えばグリーフシード一個でソウルジェム二個」

QB「まどかの能力の場合……まどかがグリーフシードを一つ使ってその魔力を浄化に使うとすれば」

QB「……グリーフシード一個で恐らく六人分のソウルジェムを浄化できてしまう」

ほむら「なっ……!」

QB「魔法少女全員が集団を結成したとすれば……単純に考えて回収能率は1/6になるね」

QB「感情エネルギーの回収率が悪くなる。魔女にならないからね」


508: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:30:27.43 ID:z96hxSlG0


ほむら「…………」

QB「しかもまどかが成長すればするほど、その能力が強まるほど、その能率は悪くなる」

QB「だったらいっそのこと、新しいエネルギーの研究に手を出してみよう。というのがさっき話した一派の考えの一つだ」

QB「僕は君達と知り合いだから、その一派として研究する命を授かった」

QB「そもそも僕がこの能力を容認させたようなもんだからね。責任がある」

ほむら「…………」

QB「研究させて欲しいんだ。だから要望と言った」


509: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:31:06.40 ID:z96hxSlG0


ほむら「……私は、唯一の波紋後継者。私がいなければ研究もなにもない」

QB「わかってるよ。だから君にとっていい交換条件を考えている」

QB「僕は新しいエネルギー開発の協力を要請する。そして開発に成功した暁には……」

QB「全ての魔法少女を普通の人間に戻す……というのはどうだろう?」

ほむら「!」

QB「感情より効率的なエネルギーができたら、魔法少女の制度と並行って意向もあったんだけど……」

QB「君の性格から推測するにそういうことを望むと思ってね」


510: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:31:41.20 ID:z96hxSlG0


QB「死なないために契約した魔法少女は死の運命をねじ曲げたまま。蘇生を望まれれば生き返った者も存命のまま。君達も死ななきゃ生き続ける」

QB「何なら君の病気もおまけに治しとおいてあげたっていい。しつこいようだけど感情を超えるエネルギーができたらね」

ほむら「そんな……随分と都合のいい……怪しいよ」

QB「本来なら失った命が元に戻ること自体都合がいい話じゃないか」

QB「それくらい僕達は今切羽詰まっているという世界なんだよ。まどかの素質があるのは知っていたが、こんな大ごとになるなんて……」

ほむら「……いいよ。キュゥべえ。その話、乗る」

QB「本当かい? ありがとう」


515: 511=515 2012/08/19(日) 22:38:19.87 ID:z96hxSlG0

QB「そこでお願いがあるんだ。早速協力を要請したい」 

ほむら「…………」 

QB「色んな魔法少女に波紋を使えるようにしてほしいんだ」 

ほむら「……え?」 

QB「データはたくさんあった方がいいし、今後も魔女や使い魔は普通に現れる。つまりいつ君が死んでも、絶望してもおかしくないままなんだ」 

QB「君を死なせないということはできないからね。替えが必要。……当然の欲求だろう?」 

ほむら「……私に、教育しろ、と」 

QB「そうだよ。波紋使いを育てる組織でも集団でもコミュニティでも作ってほしいんだ。僕もできる範囲でなら協力するよ」 

QB「集団を作られては感情エネルギーという視点では困るけど、波紋使いを増やすにはやむを得ない」 

QB「魔法少女同士で争うのを嫌っていただろう? Win-Winな希望だと思うんだけどね」 

ほむら「……」 

512: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:33:23.91 ID:z96hxSlG0


~~~~~~~~~~~

さやか「あのコミュ障なほむらが……組織を作る……だと?」

ほむら「魔法少女同士で争うのは間違ってます。居場所を失った魔法少女に、帰る場所を提供したいです」

まどか「うん……。うん! そうだよね! みんな一緒なら、楽しそうだし!」

杏子「いやいやいや……片方の面だけで物を言うのはよせ」

杏子「グリーフシードの取り合いになるぜ? 人間トラブルも増えるだろうし」

杏子「あたしみたいな奴、うようよいるんだぜ」

さやか「確かに……グリーフシードって限られた資源感あるもんね」



513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:34:33.23 ID:z96hxSlG0

ほむら「……その心配はありません」

杏子「は?」

さやか「どういうこと?」

ほむら「……」チラッ

まどか「……うん?」

ほむら「……」

まどか「?」

まどか「どうかしたの? ほむらちゃん」

ほむら「……ふふ、何でもないよ」

まどか「……?」


514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2012/08/19(日) 22:37:13.59 ID:z96hxSlG0

ほむら「さっき言った通り、みんなに波紋を教えるのを優先するので、組織を作ること自体は追々……後回しです」

杏子「……ま、まあ、ほむらが大丈夫っつーならいいんだけどさ」

杏子「ちゃんと説明はしてもらうぞ」

まどか「魔法少女の組織……波紋の後継者の育成……。どういう事情か気になるなって思ってしまうのでした」

ほむら「しつこいようだけどそれは追々……」

さやか「居場所をなくした魔法少女……か。その辺ちょい重いよね」

杏子「その辺、イメージアップを図る必要があるな。まぁ追々な」

さやか「追々ね」



516: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:39:01.88 ID:z96hxSlG0


マミ「パッショーネ!」

まどか「え?」

マミ「……なんてどうかしら? イタリア語で『情熱』という意味よ」

杏子「あ? 何だよいきなり」

マミ「何って組織の名前よ! 相談ってそういうことでしょ?」

さやか「何聞いてたんスかマミさん」

マミ「重要でしょ?」

まどか「パッショーネ……情熱……燃え上がれーって感じでかっこいいです! 流石マミさん」

さやか「なん……だと……?」


517: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:40:34.04 ID:z96hxSlG0

マミ「あらあら、もうっ、誉めても何も出ませんよ///」

杏子「まどかもそういうタイプだったのか……」

さやか「魔法少女ノート書き溜める子だからねぇ……」

まどか「ほむらちゃん。どう? パッショーネ。わたし、それはとってもイカしてるなって」

ほむら「えーと……」

さやか「あんたは次に『名前もまぁ追々……』と言う」キリッ

ほむら「あの……じ、実は、私も及ばずながら考えてたんです……名前」

マミ「ほほう」

さやか「あれれー?」

518: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:41:24.09 ID:z96hxSlG0


まどか「ほむらちゃんが考えた名前……かぁ。気になるなー」

さやか「ほむらってそういうの決めるタイプじゃないのに……」

杏子「マミのは色々とアレだけど、これはセンスが問われるぜ。クマちゃん団とか言い出すなよ?」

さやか「クマちゃんって……」

マミ「アレってどういう意味? まあいいわ。暁美さん。あなたの考えた名前って?」

ほむら「……コ」

マミ「ん?」

ほむら「……『コチネーレ』……なんて……どうでしょう」

さやか「え? なに? コマネチ?」

マミ「Coccinelle...『てんとう虫』という意味ね」

杏子「結局イタリア語かよ? ……先輩後輩って感性が似るのかな」

さやか「マミさんイタリア語好きだもんね」


519: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:42:23.09 ID:z96hxSlG0


まどか「てんとう虫って……あの? 小さいの?」

ほむら「……///」コクッ

マミ「てんとう虫は『太陽の虫』……生命の象徴。だったわね。暁美さん?」

ほむら「ええ、そのとおりです。『てんとう虫』はお天とう様の虫です……幸運を呼ぶんです」

まどか「幸運かぁ……情熱もいいけど、幸運の象徴というのもいいなぁ……」

さやか「まどか……あんた……」

ほむら「それに波紋は……太陽と同じエネルギー……なので、はい……」

ほむら「それも……名前の候補として検討してください」

ほむら(ああ……言っちゃった……は、恥ずかしい……///)

マミ「成る程……敢えて虫とかありふれた物から取って……」ブツブツ


520: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:44:03.82 ID:z96hxSlG0


ほむら「ま、まあ名前はいいとしてっ」

ほむら「あと一つお願いしたいことがあるんですよ」

マミ「幸運はイタリア語でフォルトゥーナ……同じ幸運なら響きとしてはこっちの方が……」ブツブツ

まどか「幸運と言えば四つ葉のクローバーですよね。どうですかね?」ブツブツ

マミ「なるほど、フォルトゥーナ・フィオーリ……クローバーなら組織のシンボルにしやすいわ……いやでも……」ブツブツ

まどか「そうですね。てんとう虫でも同じことが言えますよね……組織の証にてんとう虫のブローチなんかかわいいと思います」ブツブツ

ほむら「…………」

杏子「聞けよてめーらッ!」

マミ「え、あ! はい!」

まどか「なんでしょうか!」

さやか「続けたまえ」


521: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:44:41.45 ID:z96hxSlG0

ほむら「えーっと……」

ほむら「じ、実は私、ずっと探していた魔女がいるんです」

まどか「魔女?」

ほむら「その魔女を探して、退治するのを手伝って欲しいのですが」

杏子「魔女を? いつ?」

ほむら「近い内に……」

ほむら「ほら、私……波紋力弱体化しましたし、波紋と爆弾に頼ってたから魔法には自信ないし……時間も止められないし」

ほむら「足引っ張っちゃうに決まってるのに魔女を倒したいっていうのもどうかと思ったんで……」モジモジ

さやか「魔女退治ならいつだってオーケーさ!」

まどか「水くさいよほむらちゃん! みんなでほむらちゃんを支えるって言ったじゃないっ」

マミ「そうよ。暁美さん。私達がその魔女を倒してあげる」

杏子「あんたは遠くで見ているだけでいいぜー」

522: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:45:24.56 ID:z96hxSlG0

ほむら「あ……も、もちろん私も一応新しい武器とか用意してるんですよ?」

杏子「武器? へーっ。どんなの?」

ほむら「……えーっとマスクの制作と並行して作ったんですが……」ガサゴソ

杏子「ほんと一週間何してたんだ」

ほむら「鋼鉄球のボーガン!」バーン

ほむら「直径五・八センチ重さ五・五キログラムの鋼鉄球! 美樹さんとてまともにくらえば脳が爆裂して吹っ飛ぶであろう威力のボーガン!」

ほむら「まして油を塗れば波紋をこめて発射もできますっ!」

マミ「ワイルドだわぁ」

さやか「さらっとあたしで例えやがった!」

まどか「得意気に解説するほむらちゃんが親に図工の時間に作った物を見せびらかす子どもみたいでかわいい」

杏子「正気か? おいまどか本気で言ってるのか? 脳が爆裂とか言ってるぞ?」


523: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:47:29.22 ID:z96hxSlG0


ほむら「それと……」スッ

ほむら「特製石鹸液!」バーン

ほむら「これでシャボン玉を作ります!」

まどか「シャボン玉?」

マミ「あらかわいい」

ほむら「波紋を込めることで……触れるとバチンッ! ってスタンガンみたいな衝撃が走る波紋シャボンが……」

杏子「メルヘンの欠片もねぇな」

ほむら「ツェペリさんが使った波紋カッターの応用としてシャボン玉を高速回転させてカッターに……」

マミ「暁美さんはどこへ向かっているのかしら……」

ほむら「それからアメリカンクラッ……」

杏子「もういい」


524: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:48:28.41 ID:z96hxSlG0
杏子「もういいから。武器の紹介はいいよ。もう」

マミ「何か魔法少女というより波紋メインって感じよね」

ほむら「そ、そうですか?」

まどか「どっちかと言えばほむらちゃんのは『技術(ワザ)』だよね」

ほむら「技術……確かに爆弾メインで戦ってた時期もありますし……」

杏子「はよその魔女の話をしろよ」

ほむら「はい……」

まどか「紹介し足りなくてショボンってなるほむらちゃんかわいい」

さやか「シャボンだけに?」

まどか「…………」

さやか「ごめんなさい」

マミ「探していたってことは、どんなのか知ってるのよね?」

ほむら「はい。私はその魔女を、次元の魔女『ルーシー』……と個人的に名付け呼んでいます」

まどか「ルーシー?」

マミ「次元?」


525: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:49:39.39 ID:z96hxSlG0

ほむら「あの……並行世界……『パラレルワールド』という物を聞いたことありますか?」

杏子「パラ……何?」

さやか「漫画とかで聞いたことあるけど……」

マミ「パラレルワールドとは、ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界とする……wehiペディアより」

ほむら「数学の樹形図みたいにたくさん世界が分岐している……という考え方」

ほむら「今、私達がこうしている一方で、まだワルプルギスを超えていないという……別の世界が存在するかもしれないという考え方」

ほむら「例えば、波紋みたいな特別な力を誰かが得る世界。私が未だ希望が見出せず試行錯誤を繰り返している世界」

ほむら「ツェペリさんみたいに、異なる世界からの来訪者がいる世界……」

杏子「えーっと? よくわからん」


526: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:51:05.17 ID:z96hxSlG0


ほむら「ワルプルギスを超えた後……誰かがいない世界。鹿目さんと美樹さんのどっちかあるいは両方が魔法少女になっていない世界」

ほむら「かみじょ……い、色々あるかもしれません」

さやか「恭介の恋愛事情を例えに出そうとして躊躇したな。あたしが恭介と付き合っている世界もあるかもしれないって言いたかったんでしょ」

マミ「美樹さん。元気出して」

さやか「元気ビンビンですけど!」

まどか「今わたし達がこうしているのとは別だけどそっくりな異世界ってことだね!」

ほむら「うん。そしてルーシーが異次元に存在しているツェペリさんの魂をこの次元に呼び寄せたのかな~、と……」


528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:52:43.02 ID:z96hxSlG0


ほむら「ただ、ツェペリさんの場合は時代が違う。ツェペリさんのいた世界の歴史と私達の歴史とは異なっている」

ほむら「だからパラレルワールドがどうこうの次元を超えた『何か』という可能性もあります。つまり、みんな私の推測でしかないわけです」

まどか「ずっと不思議だった……ツェペリさんが何でキュゥべえが見えてたのか……」

杏子「魔女の影響なら合点がいく」

マミ「結局そのルーシーが本当にツェペリさんを連れてきたのかはわからないのね」

さやか「でも現段階ではそうだとしか考えられないね」

まどか「だねっ」


530: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:53:22.20 ID:z96hxSlG0



ほむら「さて、ルーシーの対策を練りましょう。私、この通り今はダメダメですけど……」

まどか「大丈夫だよ! わたしがほむらちゃんを守ってみせる!」

杏子「ま、わけのわからん武器を使わずともあたしらがいるし、そんな気にする必要もないぜ」

マミ「とは言え油断は禁物よ。ちゃんと役割分担とかを決めておかないと」

さやか「あたし達の戦いはこれからだ!」



532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:54:15.10 ID:z96hxSlG0
 




――『ルーシー』撃破から三週間。

魔法少女達のその後。






533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:55:31.76 ID:z96hxSlG0


まどかは――

微弱な波紋は練れるようになったが、「組織(名称未定)」において主にソウルジェムを浄化する能力で多くの魔法少女を救済している。

浄化の能力とその慈悲深い性格から「まど神様」と呼ばれているが、本人はそのことを知らない。

友達と自分の幸福と無事を祈りながら、楽しい日々を暮らしている。



キュゥべえ(インキュベーター)は――

波紋と感情の研究のため、魔法少女達、特にほむらと積極的に接し、暮らしている。

組織のマスコットを自称し、全国各地の魔法少女を組織に勧誘して回っている。

感情に置き換わる新たなエネルギー。彼女達が存命している間に完成するかどうか、未来のことは誰にもわからない。



ほむらは――

魔法少女の組織を設立した。そこでホムホム先生と呼ばれ、組織の代表代理兼波紋の師となる。

波紋の修行、研究。組織へ入団した魔法少女との対応をしている内に、おどおどした性格が直ったつもりでいる。

最高の友達と、大切な仲間達と共に、幸福な生活をしている。


535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:56:40.97 ID:z96hxSlG0


さやかは――

ほむらから波紋を学んでいる。そしてメシアと呼ばれ組織において波紋の師範代となる。

「まど神様」という呼称を組織内に広めてみたりと、基本的にはいつも通りである。

杏子とは勉学と波紋のライバルであり、親友である。



杏子は――

さやかと同じく、ほむらから波紋を学んでいる。そしてロンギヌスと呼ばれ組織において波紋の師範代となる。

宣言通り学校へ通うようになってから、成績は芳しくないがそれなりに楽しく過ごしている。

いつもさやかと行動し「できてるんじゃあないか?」と噂されるくらい仲が良い。



マミは――

街角で大手芸能プロダクションにスカウトされ、アイドルとなった。組織の代表者を掛け持ちしている。

デビューシングルの「恋のティロフィナーレ」は4週間チャートの1位で6百万枚売った。

不思議な少女を歌った希望にあふれる曲だった。また、全国ツアーの合間に魔法少女を探している。


536: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/19(日) 22:58:20.76 ID:z96hxSlG0





バ ァ ――――z____ ン





マミ「もう何も怖く……」ほむら「勇気とは怖さを知ること!」(完)