2: @vip 2011/02/19(土) 18:15:41.30 ID:PbcToQ4f0
短いです。
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必要悪の協会女子寮、深夜。
日付があと少しで変わろうか、といった時、少女はまだ起きていた。
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必要悪の協会女子寮、深夜。
日付があと少しで変わろうか、といった時、少女はまだ起きていた。
新約 とある魔術の禁書目録(20) (電撃文庫)
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鎌池 和馬
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3: @vip 2011/02/19(土) 18:18:24.40 ID:PbcToQ4f0
何であろうか、この激しい焦燥感は。
そもそもこれは何なのだろうか、胸が焼きついた時のような、
それよりも、もっと苦しいような。
闇夜の中で脳裏に蘇るのは、忌々しいあの記憶。
誰もいない路地裏。
食べ物も、寝る場所も、優しさもない。
ただ今のように寒く、飢え、疲れっ切って、何をする気力もない。
暗闇に這い擦り回る「死」の香りに鼻を鳴らして脅えていた。
ただ恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖
恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖
そもそもこれは何なのだろうか、胸が焼きついた時のような、
それよりも、もっと苦しいような。
闇夜の中で脳裏に蘇るのは、忌々しいあの記憶。
誰もいない路地裏。
食べ物も、寝る場所も、優しさもない。
ただ今のように寒く、飢え、疲れっ切って、何をする気力もない。
暗闇に這い擦り回る「死」の香りに鼻を鳴らして脅えていた。
ただ恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖
恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖
4: @vip 2011/02/19(土) 18:20:36.34 ID:PbcToQ4f0
「どうしたのですか?」
投げかけられた、優しい音色に顔をあげると、
そこにはオルソラが心配そうな顔をして立っていた。
「あらあら、お顔が涙でグショグショですよ」
ポケットから取り出したハンカチで優しく涙を拭われる。
「なんで入ってきやがりやがったんですか...」
精一杯、強がってみる。
「部屋の隣から啜り泣きが聞こえてきたら、黙ってるわけにもいかないでしょう?」
そうか、自分は泣いていたのか。涙なんかは、とうに枯れたと思っていたのに。
泣いても、泣いても、二人には逢えないと決めたのに。
やっぱり私は......
「......一人ぼっちだ」
また一筋、涙が頬を伝うのが自覚できた。
「........怖かったのでございますね」
優しく撫でられると、今まで必死に隠してきた何かが、崩壊とともに溢れ始める。
「ウッウッつ...ひとりで...誰も...いないところで.......寒くて..怖くて..寂しくて」
不意に、ぬくもりに包まれた。ただひたすらに温かく、優しいぬくもりだった。
視界が全て埋まり、鼻をくすぐるのはオルソラの甘い香り。
抱きしめられたという感触は、自分を包む優しい暖かさで気づいた。
「こんな..子供みたいな...こと」
「でも、落ち着きましょう?」
そういって、アニャーゼの髪をまるでわが子のように撫でほどく。
聖母のような、微笑みで。
実母のような、優しさで。
「お かあ さん」
久しぶりの涙は、オルソラの胸に吸い込まれていった。
5: @vip 2011/02/19(土) 18:22:58.16 ID:PbcToQ4f0
母はどんな人だったのだろうか。
小さいときの記憶は薄れてしまって、あまりない。
顔、髪型、仕草、何一つ鮮明に覚えているものはなく、記憶の海から何も答えは出なかった。
十年に近い年月は、幼少期のつたない記憶を削るには十分な時間であろう。
でも、きっと今のような暖かさかがある人だったと思う。まるでオルソラのような...
6: @vip 2011/02/19(土) 18:25:07.24 ID:PbcToQ4f0
オルソラは、眠り姫が魔法をかけられた後も、しばらくその体を抱きしめていた。
(すすり泣きを聞いて興奮した、とか、母性本能を刺激された、とかではないんですよ。...本当です、本当ですって!)
思い起こせば、二人の出会いはとんでもなかった。
追う者と、追われる者。
挙げ句の果てにリンチ紛いのことまでされた。
あれから一年と少し。
アニャーゼに対しての恐怖心も薄れ、おなじ-仲間-になっていた。
(しかし、人生とはおもしろいですね。)
(あのとき私を殴った少女が、今は私の胸の中で眠っているとは、)
ドキドキ、ドキドキ
(そして、こんな気持ちになるなんて)
だんだん顔が紅潮してくる、自分でもわかった。
長い睫に僅かに残る涙の色艶や、子ども特有の乳香、 細くか弱いその両手、擦り寄せてくるその体温。
その全てが愛らしかった。
(はっ!、愛らしいなどとイケマセン)
(これはそう、母性愛なのです。つまりまたっく変ではないのです)
(ない……デスョネ)
そうして夜は、更けてゆく。
7: @vip 2011/02/19(土) 18:26:06.10 ID:PbcToQ4f0
アニャーゼが目を覚ましたのは、いつもより少し遅い時間。
昨夜心の中の自分の気持ちにやっと気がついた。
(私は......オルソラと一緒に居たい)
そう思うとベットから抜け出し、今オルソラが居るであろう場所に向かった。
10: @vip 2011/02/19(土) 22:46:05.92 ID:PbcToQ4f0
必要悪の教会女子寮には、少し変わった朝がある。
その日は皆早起きをし、体を動かし、中にはラジオ体操や、ランニングをする者までいるのであ る。
そう、朝食をおいしく食べるために。
(しかし...みなさん朝食を食べにきてくれるのはうれしいのですが.......洗い物が...)
一人で二百人分以上にもなる皿洗いは大変だった。
やっと一段落して、ひと休みしていたら、
「くっそォ...フィアンマぁ...ウゼエぇ...事故処理まじうぜぇんでありけりすぎるゥ...クソ
がァ...[ピーーー]...腐れ...爆発...しろォォォ.」
必要悪の教会《ネセサリウス》のトップである、最大教主《アークビショップ》であった。
「オルソラ コーヒーと、重症のニコチン中毒《ステイル》からの逃げ方がほしけるのよ」/キリッ
「コーヒーですね。少しお待ちください」
「はい、どうぞ」
「うーん、オルソラのコーヒーは、本当においしけるのよ」
ふっと、疲れが一瞬和んだ時、
「アァァクゥビショオォップゥゥゥゥ!!!!!」
いかなる魔術を用いたか解らないが、英国トップテンにも入る炎の魔術師、ステイル=マグヌス
が、炎の翼で空を飛び、窓から突っ込んできた。
「仕ィ事しろオオオォォォォォォォォ!!!」
「ここは、神聖な女子寮なりけるのよーーーー!?!?」
たぶん 低温であろう炎の大剣が、見る間に形作られていく。
「おっオルソラぁー助けてぇぇーーー!!!!」
騒がしい朝であった。
その日は皆早起きをし、体を動かし、中にはラジオ体操や、ランニングをする者までいるのであ る。
そう、朝食をおいしく食べるために。
(しかし...みなさん朝食を食べにきてくれるのはうれしいのですが.......洗い物が...)
一人で二百人分以上にもなる皿洗いは大変だった。
やっと一段落して、ひと休みしていたら、
「くっそォ...フィアンマぁ...ウゼエぇ...事故処理まじうぜぇんでありけりすぎるゥ...クソ
がァ...[ピーーー]...腐れ...爆発...しろォォォ.」
必要悪の教会《ネセサリウス》のトップである、最大教主《アークビショップ》であった。
「オルソラ コーヒーと、重症のニコチン中毒《ステイル》からの逃げ方がほしけるのよ」/キリッ
「コーヒーですね。少しお待ちください」
「はい、どうぞ」
「うーん、オルソラのコーヒーは、本当においしけるのよ」
ふっと、疲れが一瞬和んだ時、
「アァァクゥビショオォップゥゥゥゥ!!!!!」
いかなる魔術を用いたか解らないが、英国トップテンにも入る炎の魔術師、ステイル=マグヌス
が、炎の翼で空を飛び、窓から突っ込んできた。
「仕ィ事しろオオオォォォォォォォォ!!!」
「ここは、神聖な女子寮なりけるのよーーーー!?!?」
たぶん 低温であろう炎の大剣が、見る間に形作られていく。
「おっオルソラぁー助けてぇぇーーー!!!!」
騒がしい朝であった。
11: @vip 2011/02/19(土) 22:47:29.16 ID:PbcToQ4f0
>8さん
大変ありがとうございました。
以下修正させていただきます。
大変ありがとうございました。
以下修正させていただきます。
12: @vip 2011/02/19(土) 23:19:03.52 ID:PbcToQ4f0
「仕事しろォォォォ」
「いやァァァァァ」
食堂からこの場所には居ないはずの二人が飛び出てくる。
気にしない方が良いだろう。
食堂を覗くと、調理スペースにオルソラが一人居るだけだった。
とりあえず食堂の中に入ってみる。
ちょうどのタイミングで、オルソラも振り返る。
「あら、アニェーゼさま」
「オルソラ......」
そこで停止する。 なにを言えばいいのだ? 詫びか? 告白か? 懺悔か?
小首を傾げたままオルソラは見つめ返している。
ぐ~
沈黙を破ったのは、なんとも可愛らしい腹の虫だった。
「...っ~~///~///」
「あらあらまあまあ、お腹が空いていたのでございますね。朝食を一食分残してあるので待っていてください」
「いやァァァァァ」
食堂からこの場所には居ないはずの二人が飛び出てくる。
気にしない方が良いだろう。
食堂を覗くと、調理スペースにオルソラが一人居るだけだった。
とりあえず食堂の中に入ってみる。
ちょうどのタイミングで、オルソラも振り返る。
「あら、アニェーゼさま」
「オルソラ......」
そこで停止する。 なにを言えばいいのだ? 詫びか? 告白か? 懺悔か?
小首を傾げたままオルソラは見つめ返している。
ぐ~
沈黙を破ったのは、なんとも可愛らしい腹の虫だった。
「...っ~~///~///」
「あらあらまあまあ、お腹が空いていたのでございますね。朝食を一食分残してあるので待っていてください」
13: @vip 2011/02/19(土) 23:35:26.70 ID:PbcToQ4f0
目の前にパンとシチューが並べられる。
ほっくりしたシチュー、香ばしいパン。
オルソラの料理はみんな美味しかった。
皿を下げながら、何となく掃除をするオルソラを見てみた。
修道服の袖をまくって、食器を洗っていた。
前かがみになると、その豊かすぎる双美山が強調される。
昨夜の光景が、フラッシュバックした。
大きくて、優しくて、暖かかったオルソラ。
優しく撫でてくれた、オルソラ。
何も無い自分を包んでくれた、オルソラ。
「……オルソラ」
「はい?」
………。
この人は、…あんなこともあったのに、
‥最初から大切な人だったみたいな…
そんな笑顔されたら、………。
甘えたくなっちゃうじゃ…ない‥ですか。
「あらあら 最近のアニェーゼ様は甘えんぼちゃんですねぇ」
甘い唇が交じりあう。
何度も何度も、幾重にも。まるで本当の母娘《かぞく》のように。
昼まではまだ少し。
ステンドガラスの聖母《マリア》と初春を感じさせる麗らかな太陽が、
穏やかに二人を見守っていた。
終わりor安価希望があれば続く
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