3: ◆S92P6wDlb8BQ 2011/04/08(金) 01:02:40.78 ID:Di2/gH5DO
どこかの駅

唯「あっずにゃーん!」ダキッ

梓「ひゃあっ!ゆ、唯先輩!?」

唯「なにしてるのー?」

梓「なにしてるのじゃないですよ!いきなり抱き着いて来ないで下さい!」プンスカ

唯「はーい!でも奇遇だねー駅で会うなんて!」

引用元: 純「情熱的な牡羊座!」 



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4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:05:46.67 ID:Di2/gH5DO
梓「本当、奇遇ですねー。唯先輩どこかに遊びに行くんですか?」

唯「うん!ムギちゃん家!あのねー予約したんだよー!」

梓「へーそれは凄いですね!」

唯「あずにゃんもおいでよー」

梓「行きたいんですけど今日は純と遊ぶ約束してるんですよね」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:09:19.39 ID:Di2/gH5DO
唯「純ちゃんと遊ぶんだ~いいなー。私もいくー」

梓「ムギ先輩と遊ぶ約束はどうするんですか!?」

唯「じょーだんだよー」

梓「も、もう・・・」

唯「それより純ちゃんってかわいーよねー」

梓「はい、そうですよね。私も純と最初に出会った時は可愛いと思いました。

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:12:38.44 ID:Di2/gH5DO
あの、ほら。なんて言うんですかね?

ペット番組で可愛い犬を見た時の感覚。

純を見た時はあの感覚に似てました。

あの髪可愛い!ふもふもしたいって思いましたよ!

純って犬みたいで可愛くないですか?

頭撫でてあげたくなりませんか?

なりますよね。でも、一度も撫でたりふもふもした事ないんですよね。

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:16:37.36 ID:Di2/gH5DO
私、純の頭ふもふもしたいです!

でも、そんな唯先輩みたいな事軽々しく出来ませんよ・・・。

あ、純ってどんな匂いすると思います?

いい匂いすると思いますよね?いい匂いすると思いますよね?

凄くいい匂いするんですよ。

いいリンス使ってるからですかね?

純って天然パーマだから絶対いいリンス使ってますよ。

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:21:05.14 ID:Di2/gH5DO
純の可愛い所はそれだけじゃありませんよ?

性格も可愛いんですよねー!

ちょっといい加減で凄く友達思いな性格。

私、そんな純が好きなんです。

大好きなんですよ!

純は梓の髪日本人形みたいで羨ましい私もそんな髪がよかったなって言ってましたけど、私は今のままが可愛いと思います。

ずっとあの髪のままでいて欲しいと思います!

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:24:32.70 ID:Di2/gH5DO
あ、今日純と何して遊ぼうかなぁ?

この前、唯先輩が修学旅行行った時に私達が唯先輩の家に泊まった時にですね。

明日は動物に行こうって話になったんです。

でも、雨で行けなかったんですよ・・・。

あ、純の髪は何時も以上にわしゃわしゃしてました。

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:28:15.29 ID:Di2/gH5DO
あの時の純の髪をくしでとかしてあげだかったです。ムギ先輩みたいに上手くは出来ませんけど・・・。

あ、純天然パーマだから髪の毛セットする時にお風呂に入ってからセットするんです。

お風呂上がりの純の髪の毛って少しだけストレートになるんですよ。

本当に少しだけ。

ちょっとだけストレートの純もそれはそれで可愛いんですよ。

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:32:36.23 ID:Di2/gH5DO
あとですね。あとですね。純の可愛い所はですね。

ツインテール!

私と同じ髪型ですけど、全然違いますよね!

あの髪のまとまりに鼻を埋めてスーハーってしたいと思いません?

スーハースーハーって!

あ、純って硬貨でベースを弾くって知ってますか?

通でかっこいいですよね!うんかっこいい!

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:36:53.60 ID:Di2/gH5DO
澪先輩に憧れてる所も私と一緒ですし、私と純は共通点が多いですよねー。

純と一緒に演奏がしたいなぁ。

あ、純って意外と頑張り屋さんなんですよね。

ジャズ研でいっぱい練習してるみたいです。

私達もいっぱい練習しましょうね。純みたいに!


13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/04/08(金) 01:39:30.47 ID:Di2/gH5DO
純の事についていっぱい語りましたけど、唯先輩も純の事可愛いって思ってくれてよかったです!」

唯「あぅ・・・あずにゃんごめん。途中から聞いてなかった・・・」

梓「じゃあもう一回言いますね!」


おわり

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) 2011/04/08(金) 04:24:14.60 ID:7tWgZQxGo
憂「じゅーんちゃん」

純「どしたの?」

憂「今日さ、うち来ない?」

純「別に明日休みだから良いけど……」

憂「良かったー、断られるかと」

純「愛しの彼女の頼みなんだからそうそう断らないよ」

憂「えへへ、ありがと」

純「気にしないの。でも何で急に?」

憂「え?いや、だって」

15: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:25:10.77 ID:7tWgZQxGo
純「明日休みだとはいえ憂からうち来ない?なんて言ってくるの珍しいし」

憂「純ちゃん覚えてないの?」

純「何が?」

憂「なるほどなるほど……そういうことなら秘密だよ!」

純「えー、気になるじゃん」

憂「ダメー、教えてあげない」

純「ちぇー」

憂「あはは、じゃあ部活終わって一旦別れてから19時半位に来てね」

純「りょーかいー」

16: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:26:19.72 ID:7tWgZQxGo
憂「あ、ご飯は食べて来なくていいからね」

純「おおー、手料理楽しみー」

憂「私お弁当作って来てるじゃない……」

純「それはそれ!これはこれ!」

憂「まあ純ちゃんらしいよね」

純「む、どういうこと?」

憂「純ちゃん大好きってことだよ」

純「憂さあ、何か付き合いだしてから大胆だよ」

憂「そうかなー?」

純「そうだよ!」

梓「おはよ、2人とも」

17: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:27:13.16 ID:7tWgZQxGo
憂純「おはよー」

梓「でさあ、何2人で朝からイチャついてんの?」

憂「///」

純「イチャついてないよ」

梓「いやいや、隣の方は顔真っ赤ですけど」

純「憂が恥ずかしいこと言い出したのに……」

梓「部活中にイチャつくのだけはやめてね」

純「憂次第としか」

憂「善処するよ……」

梓「私と唯先輩見てた先輩方もこんな気持ちだったんだろうか」

憂「紬さんだけは喜んでただろうけど」

純「澪先輩と律先輩も付き合ってたんだから問題なかったんじゃ?」

梓「結局この気持ちが分かるのは私だけか……」

憂「ドンマイ、梓ちゃん」

梓「誰のせいだと……あ、そういえば純今日誕jモガッ」

18: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:28:20.06 ID:7tWgZQxGo
純「急にどうしたのさ、憂」

憂「な、何でもないよ?」

憂(梓ちゃん言っちゃダメ……純ちゃん今日誕生日だって忘れてるんだから)

梓(なるほど、サプライズやるんだね。しかし純そういうの覚えてそうなのに……)

憂(だよね……正直ビックリしたよ)

純「? 2人とも何こそこそ話してるのさ、感じ悪いぞー」

梓「何でもない何でもない……あ、チャイムもうすぐ鳴るね」

純「それじゃまた後で」

憂「またねー」

19: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:29:19.73 ID:7tWgZQxGo
おんがくしつ!

純「はー、つっかれたー」

梓「まだ短縮授業なのに何言ってんのさ、そんなんじゃ通常授業だと持たないよ?受験生なんだしさ」

純「だーいじょーうぶー、来週から本気出すよ」

梓「来週にも同じこと言ってそうだね」

純「否定できない自分が嫌」

憂「純ちゃんなら大丈夫だよー」

純「そう言ってくれるのは憂だけだよ……」

憂「純ちゃんのこと、信じてるからね」

純「憂……」ジーン

梓「この流れはまずい……早くご飯食べようご飯、そして練習しよう」

純「そうだね、お腹すいたし」

憂「はい、純ちゃんお弁当」

純「おおー、やっぱり憂の料理はおいしそうだね!」

憂「純ちゃんのために頑張ってるからねー」

純「憂……ありがとう」ジーン

梓「しまった、こっちを選んでも結局流れは同じか」

20: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:31:27.95 ID:7tWgZQxGo
純「それじゃ食べよっか」

梓憂純「いただきまーす」

純「うん、やっぱ憂のご飯はおいしいねえ」

憂「ふふ、ありがと」

純「卵焼きとか絶品だよ」パクパク

梓「羨ましい奴め」

憂「梓ちゃんも食べる?はい」

梓「……いいの?」

憂「ダメなわけないよ」

梓「なら貰おうかな、代わりに憂も何か持ってって良いよ」

憂「ホント?じゃあこのウインナー貰うね?」

梓「どうぞどうぞ……うん、やっぱ憂料理上手いねー、おいしい」

憂「えへへ、梓ちゃんありがと」

梓「純にはもったいないね、ホント。私が欲しいくらいだよ」

純「そんなこと言って良いのかなー?唯先輩に言っちゃうぞ?」

梓「それだけは勘弁して……」

憂「『あずにゃん、私を捨てないでくだせぇ~』とか言いそうだね」

純「あはは、言いそうだねー、目うるうるさせながら言ってるの」

梓「容易に想像できるのが凄いね……流石というかなんというか」

21: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:32:29.99 ID:7tWgZQxGo
梓憂純「ごちそうさまでしたー」

純「はぁー、食べた食べた」

憂「お腹一杯だねー」

梓「よし、じゃあ練習しようか」

純「落ちつこう梓、今のままじゃ無理マジで」

梓「まあそう言うとは思ったけどね……じゃあ少し休憩してからね」

憂純「了解ー」

梓「しかし、何事もなく終わって良かった」

憂純「?」

梓「いや、朝とか食べ始める前とか見てたら憂が『あーん』とかやりだしそうだったから」

憂「!?すっかり忘れてた!」

純「忘れてたってやる気満々だったんかい!」

憂「だって、お弁当をお互いに『あーん』ってするの憧れない?」

22: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:33:42.89 ID:7tWgZQxGo
純「いやまあ気持ちは分かるけどさ……」

梓「忘れててくれて良かったよ……空気と化すのは辛い」

憂「うう……やりたかったなあ」

純「そう言うのは2人きりの時に、ね?」

憂「純ちゃんがそう言うなら……」

梓「純が憂を手懐かせている……信じられない」

純「どーいう意味さ」

梓「別にー」

憂「純ちゃんの悪口は私が許さないよ!」

梓「反省してまーす」

純「それ絶対嘘じゃん!」

梓「まあまあ……それじゃそろそろ練習しようか」

憂純「はーい」

23: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:34:37.66 ID:7tWgZQxGo
ぶかつご!

梓「今日はこれくらいで良いかな」

憂純「おつかれさまでしたー」

純「まあそれなりにはなってきたねー」

梓「まだまだだよ」

純「相変わらず厳しいねえ」

梓「そりゃそうだよ、バッチリ良い演奏して新入部員に入ってきてもらわないと!」

憂「3人だと部活存続できないしね……」

純「えっ!?そうなの?初めて知ったんだけど……」

梓「言ってなかったっけ?」

純「聞いてないよー、これは私もマジにならないとまずいなー」

梓「何で?ていうかマジじゃなかったんかい」

純「いや、ある程度気合い入れてやってたけど部活存続の危機と聞いたら流石に、ね。軽音部潰れたらジャズ研の皆にも顔向けできないし」

24: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:35:37.70 ID:7tWgZQxGo
梓「そっか……改めてありがとう、純」

純「何が?」

梓「その、軽音部に入ってくれて。わざわざ転部までしてもらって、ホント……感謝してる」

純「おおー、あの梓が素直にお礼言ってるー!」

梓「茶化さないでよ、もう」

純「気にしなさんなって、私は私が入りたいから入ったの、OK?」

梓「うん、でも、言っとかないとって思ったから。今日ぐらいしか素直に言えそうにないし」

純「? 別に今日じゃなくても私は構わないのにー」

梓「私が構うの。あんまり気にしないで」

純「ふーん……まあいいや、そろそろ帰ろっか」

梓「そうだね」

25: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:36:57.57 ID:7tWgZQxGo
憂「純ちゃん、忘れてないよね?」

純「大丈夫大丈夫、19時半に憂の家でしょ?」

憂「うん!」

梓「まあ楽しんできなよ」

純「梓も来る?」

梓「やめとく、今晩は用事あるし……それに、今日は2人きりの方がいいでしょ?」

憂「ありがとう、梓ちゃん」

純「? 何で今日は2人きりのが良いのさ?ホントに今日何があるのよ」

梓「それは秘密、まあ嫌でも後から分かるよ」

純「2人とも教えてくれてもいいのに……じゃあ私はこっちだから」

26: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:37:47.45 ID:7tWgZQxGo
梓「じゃあ、また月曜にね」

憂「また後でねー!」

純「了解!じゃあねー」

梓「行ったね……」

憂「うん、じゃあ私も行くね、料理とか作らないとだし」

梓「頑張ってね」

憂「ありがと!」

27: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:39:05.73 ID:7tWgZQxGo
ひらさわけ!

純「時間は……19時半ジャスト、流石は私」ピンポーン

憂「はーい」ガチャ

純「やっほー、愛しの純ちゃんだよー」

憂「いらっしゃーい!さ、あがってあがってー」

純「お邪魔しまーす」

憂「もうすぐご飯出来るから座っててね」

純「はーい……しかし大分気合い入ってるな、憂」

純「今日記念日か何かだっけ……いやいや最近終わったばっかのはずだしなあ」

純「うーん、分からん」

28: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:40:18.84 ID:7tWgZQxGo
憂「お待たせー、食べよっか」

純「おおー、私お腹ペコペコだよ、いただきまーす!」

憂「はーい召し上がれ」

純「」パクパク

憂「どう、かな?」

純「おいしー!」

憂「ホント?」

純「嘘なんてつかないよー、いつも美味しいけど今日のはいつも以上だね!」

憂「えへへ、良かったー」

純「それにしてもホント美味しい!」ムシャムシャ

憂「慌てなくても料理は逃げないよ?」

純「逃げないけど冷めちゃうじゃん!」

憂「純ちゃんらしいね」

純「折角なんだしとびきり美味しいまま食べなきゃだからね!」

憂「あはは、ありがと」

純「憂も食べなよ、美味しいよ?」

憂「そうだね、いただきます」

29: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:41:23.75 ID:7tWgZQxGo
純「ふー、食べた食べた。ごちそうさまでしたー」

憂「お粗末さまでした……とはいかないよ。じゃあデザート持ってくるね」

純「え!?デザートまで!?」

憂「むしろ今日はこれがメインだよ!」

純「ほほー、そこまで言うのなら楽しみに待ってましょう」

憂「ふふ、ちょっと待っててね」

純「はーい」

30: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:42:11.45 ID:7tWgZQxGo
憂「とりあえずケーキ出してロウソク点けてっと……」

憂「純ちゃん、電気消すね?」

純「へ?何で?」

憂「良いから良いから」

純「まあ良いけど……」

憂「それじゃ、消すね」パチッ

純「デザートって何なのういー」

憂「これだよー」

純「ケーキ?……あ」

『純ちゃんお誕生日おめでとう』

31: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:43:32.89 ID:7tWgZQxGo
憂「ね?これがメインでしょ?」

純「あああああああ!すっかり忘れてたああああああああああああ!」

憂「じゃあ歌うねー……Happy birthday to you,Happy birthday to you,」

憂「Happy birthday, dear純ちゃーんHappy birthday to you.」

純「ふーっと……よし全部消えた、しかし何でかなあ」

憂「朝ビックリしたよー、まさか純ちゃんが!?って。お陰でサプライズっぽくなったよ」

純「いやホントサプライズだったよ、私としたことがこんな一大イベントを忘れるなんて……」

憂「純ちゃん、改めて誕生日おめでとう、はいプレゼント」

純「何かなー……髪留めかー、ありがと憂!」

憂「大したものじゃないけどね」

純「ううん、すっごく嬉しい!梓に学校で見せびらかそうかなあ」

憂「別に無理して使わなくても良いよ?」

純「無理なんかするわけないよ、大事に使うね」

憂「えへへ、ありがと」

32: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:44:53.30 ID:7tWgZQxGo
純「しっかし誕生日か……今日の料理気合い入ってたのはそれでかー」

憂「そりゃ付き合ってから初めての誕生日だもん、気合いも入るよー」

純「憂にここまで愛されるとは私も幸せ者だねえ、うんうん」

憂「もう、純ちゃんやめてよ。照れるじゃない……」

純「朝の憂も大概照れるようなこと言ってたけどね」

憂「私の気持ちを素直に表しただけだよ」

純「やっぱ憂変わったよ」

憂「こんなこと言う私は嫌?」

純「んーん、むしろ凄く嬉しい」

憂「ならどんどん言葉にしちゃうよ?」

純「TPOだけは弁えるように」

憂「むー……善処します」

純「全く……こういう積極的なキャラはむしろ私のキャラだったはずなんだけど」

憂「純ちゃんのせい、かな?」

33: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:45:48.79 ID:7tWgZQxGo
憂「お姉ちゃんとも、和ちゃんとも違う。相手が純ちゃんだから私はこんな風になるんだよ」

純「それは喜んでいいのか悲しむべきか……」

憂「喜んでいいんだよ!」

純「そっか……ならありがとう」

憂「ううん、こっちこそありがとう……そろそろ食べようか」

純「そうだねー、こっちも気合入ってるんだよね?」

憂「私の全力だよ!……はい、切れたよ純ちゃん」

純「ありがと!それじゃいただきまーす!」モグモグ

純「……おいしー!ケーキも凄く美味しいよ憂!」

憂「よかったー、じゃあ私も……うん、これは最高傑作だよ!」

34: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:47:00.55 ID:7tWgZQxGo
純「今回の勝因は?憂さん」

憂「ズバリ、隠し味ですね」

純「隠し味ですか……ちなみにどのようなものを?」

憂「愛情だよ!」

純「……ノリで始めて、予想通りの返答だったけどやっぱりあれだ、照れる」

憂「純ちゃんから始めといてそれはないよ……」

純「むしろ平然と言い放てる憂は凄いと思うよ?」

憂「そうかなあ……ねえ、純ちゃん」

純「ん、何?」

35: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:48:17.07 ID:7tWgZQxGo
憂「来年も、再来年も、ずっとずっとこういう風にいれたら良いね」

純「いれたら良い、じゃなくていようよ」

憂「……そうだね!」

純「来年の憂の誕生日は私も頑張らないとなー」

憂「ふふ、期待してるね?」

純「任せなさーい!」

憂「そういえばさ、今日は泊まってくよね?」

純「お邪魔じゃなければ」

憂「邪魔なわけないよ!お母さんもお父さんも相変わらず旅行でいないし、寂しかったんだよー」

純「相変わらずのラブラブ夫婦だねえ……じゃあ今晩はお世話になります」ペコリ

憂「うん!」

純「今夜は寝かさないぞっ☆」キランッ

憂「えっ……///」

36: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:49:33.99 ID:7tWgZQxGo
純「いや、冗談だからね、顔赤らめないでね」

憂「えー、私は全然構わないのになあ」

純「いやいや、落ちつこ憂、ね?」

憂「うーん、純ちゃんは意外と奥手なんだね」

純「私はピュアなんだよ、純だけに」

憂「」

純「ごめん、聞かなかったことにして」

憂「そうする」

純「まあ、さ。そういうのはゆっくりで良いじゃん」

憂「そうだね、自分たちのペースで、ね」

純「まあ今夜は一晩中楽しもうよ!」

憂「うん!」

37: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:51:01.76 ID:7tWgZQxGo
やすみあけ!

純「おはよー」

梓「おはよ、純。髪留め変えたんだ」

純「憂からのプレゼントでねー」

梓「誕生日プレゼントだよね、おめでとう」

純「ありがと」

梓「結構似合ってるじゃん」

純「そりゃ憂が私のために選んでくれたんだもん、当然だよ」

梓「はいはいごちそうさま」

憂「おはよー」

梓純「おはよー」

39: ◆EDXn5p99tw 2011/04/08(金) 04:53:47.89 ID:7tWgZQxGo
憂「あ、純ちゃん付けて来てくれたんだ!」

純「そりゃ梓に見せびらかすって言いましたから」

梓「そんなつもりで付けて来たのか……」

憂「やっぱり似合ってるよー、純ちゃん可愛い!」

純「ありがとー、ていうかTPOを……」

憂「気にしない気にしない、ぎゅー」

純「ちょっ、憂!教室はまずいって教室は!」

梓「何か前週より悪化してるんだけど……このまま部活とか死ねる、色々な意味で」

憂「あー、あったかーい」ギュー

純「善処するって言ってたのに……はぁ、もういいや、あったかいねー」ギュー

梓「純も諦めたじゃんどうすんのこれ……新入部員早く来ないかなあ」

おわり

40: 3番手 ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:37:41.20 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「どきどき」

41: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:38:18.53 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「3……」

純「2……」

純「1……」

純「あと2時間!」

42: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:38:44.54 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「どきどき」

43: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:39:11.69 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

母「純ー、あんた風呂入ったー?」

純「入ったー」

44: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:39:40.45 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「あと1時間50分」

45: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:40:21.42 ID:0XPC2vEwo
純「えーっと……」

純「1時間は、60分だから……」

純「60足す50は……」

純「あと110分……」

純「……」

純「……」

純「どきどき」

46: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:41:30.38 ID:0XPC2vEwo
純「1分は、60秒だから……」

純「110分は……」

純「110かける60……」

ガチャッ

兄「まだ起きてるの?」

純「あああっ、もうじゃましないでよー」

兄「? ごめん」

47: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:42:13.77 ID:0XPC2vEwo
純「110かける60は……」

兄「明日まで起きてるの?」

純「うん」

兄「ふうん」

純「110かける60は……6600秒!」

兄「おやすみ」

純「おやすみ」

48: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:42:40.73 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「あと1時間40分」

49: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:43:30.21 ID:0XPC2vEwo
兄「純まだ起きてたよ」

母「明日になるまで起きてるつもりなのかしら」

兄「カウントダウンしてた」

父「せっかちだなあ」

母「このアセロラジュースおいしい」

父「あ、それ飲みかけなのに」

50: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:43:57.44 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「あと1時間30分……」

51: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:44:32.58 ID:0XPC2vEwo
父「純ー」

純「何ー」

父「下でお笑いやってるぞ」

純「いまいそがしいの」

父「おもしろいぞ」

純「わたしの好きなの出てる?」

父「たぶん出てない」

純「じゃあいいや」

父「そっか」

純「あと1時間20分……」

父「おやすみ」

純「おやすみ」

52: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:45:17.80 ID:0XPC2vEwo
父「いそがしいってさ」

兄「時計見てるだけなのに?」

父「いそがしいものはいそがしいんだよ」

兄「ふうん」

父「もう眠たくなってきたな」

兄「明日まで起きてるんでしょ」

父「ああ」

兄「我慢しなよ」

父「母さんは?」

兄「お風呂入ってる」

父「そっか」

53: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:45:44.51 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「3……」

純「2……」

純「1……」

純「あと1時間!!」

54: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:46:29.16 ID:0XPC2vEwo
母「いつも早く寝付くのに、めずらしいわねえ」

父「それだけ楽しみなんだろう」

母「年越しの日も10時には寝てるのに」

父「そうだっけ」

母「あなたと一緒に」

父「そうだったか」

母「明日のために用意してた仮装、もう出そうかしら」

父「よーし、お父さんクラッカー出しちゃうぞ」

兄「はははは、このコンビ面白い」

55: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:46:55.85 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「あと40分」

56: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:47:29.30 ID:0XPC2vEwo
母「これがお父さんのフランケンシュタイン」

父「おい、怖くないかこれ」

母「これが兄のカボチャ」

父「あ、かわいい」

兄「かわいくないよ」

母「そしてこれが私の魔女」

兄「これ去年のハロウィンで着たやつじゃん」

母「口応えするやつは馬車に変えるぞ」

57: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:48:26.05 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「……」

純「あと20分!」

純「どきどき」

58: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:49:01.08 ID:0XPC2vEwo
母「それでは、今から純の部屋に潜入したいと思います」

父「ふふふふ、驚かせちゃうぞ」

兄「しーっ、聞こえるよ」

母「あと何分?」

兄「あ、時計がない」

父「あと10分!」

59: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:49:31.84 ID:0XPC2vEwo
純「……」

純「……」

ヒソヒソ ヒソヒソ

純「……」

純「……」

ヒソヒソ ヒソヒソ

純「む……」

60: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:50:14.44 ID:0XPC2vEwo
父「3秒前、2、1」

ガチャッ

兄「純ー!誕生日おめでとうー!」

母「魔女だぞー!」

父「怪物だぞー!」

純「んがっ」

純「……」

純「ぐー……」

61: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:50:44.94 ID:0XPC2vEwo
兄「寝てるし」

母「あらまあ」

父「つまんないの」

兄「起こす?」

母「寝かせといたら?」

父「起こすのもわるいしな」

兄「つまんねー」

純「ぐー」

62: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:51:19.90 ID:0XPC2vEwo
母「はっぴばーすでー とぅー ゆー」

父「はっぴばーすでー とぅー ゆー」

兄「はっぴばーすでー でぃあ じゅーんー」

純「すぴー」

「はっぴばーすでー とぅー ゆー」

母「誕生日おめでとう」

兄「おめでとう」

父「おめでとう、純」

63: ◆rneOOqEHkM 2011/04/08(金) 06:52:51.68 ID:0XPC2vEwo
父「純は今日で10歳か」

母「寝顔かわいいわね」

父「かわいいな」

兄「もう寝るよ」

母「おやすみ」

父「おやすみ」

兄「おやすみ」

純「ぐー」...zzZ


はっぴばーすでー 純ちゃん!

64: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:36:17.63 ID:KoKC2XO6o

唯「わんこに愛を」

65: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:37:04.98 ID:KoKC2XO6o

私の好きなもの。

アイス。憂の作った料理。

憂。お父さんお母さん。和ちゃん。軽音部のみんな。

ギー太と音楽。


それから

いま一番夢中なもの。

純ちゃん。

66: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:37:40.20 ID:KoKC2XO6o

ふたつにくくった私の髪型、

「犬みたいでかわいいわよ」

って和ちゃんは言ったけど、後で気づいた。

ちょっと純ちゃんに似てる。

純ちゃんの髪型って犬みたいかな。

そう思ったらちょっと気になる、

純ちゃんなんだか犬みたいかも。

67: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:38:13.93 ID:KoKC2XO6o

じっと見たら、しっぽがぱたぱた、お耳がふさふさ、

見えてくる気がしました。

やっぱりにおいも犬に似てるの?

ってあずにゃんに訊いたらへんな顔されました。

私はへんたいさんではありません。

だけどわたし、なんだかへんだね。

ちかごろの私はいつもの私ではないのです。

68: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:38:40.87 ID:KoKC2XO6o

お家に純ちゃんが遊びに来た。

はっと、思いついて、ほふく前進。

目標に気付かれずに近づくのだ。

もしかしたらおしりに尻尾があるかもしれません。

慎重に近づいて、あと少し、というとこで

「何やってるんですか、唯先輩?」

きづかれちゃった。

ごまかさなくちゃ。

「あの、純ちゃんのおしりが気になりまして」

私のばか。へんな人って思われたよ。

かなしいのです。

69: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:39:07.72 ID:KoKC2XO6o

純ちゃんは帰るときまでずっとそわそわしてた。

玄関先でばいばいって言っても、なんだかそわそわ。

おしりを気にしてたみたい。

私はへんたいさんではないのです。

ああ、純ちゃん。信じてください。

かなしいのです。

どうしてあんなことしちゃったんだろう。

70: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:40:18.32 ID:KoKC2XO6o

バレンタインにチョコレート貰った。

純ちゃんから。

なんかうれしい。

皆も貰っていた。

澪ちゃんだけおっきいのを貰っていたので、くやしい。

澪ちゃんはずるいと思う。

でも、りっちゃんのより、私のチョコの方が少し大きい気がして、

勝った!と思いました。

すこし幸せ。私もずるい。

71: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:40:44.47 ID:KoKC2XO6o

高校を卒業しました。

あずにゃんがいっぱい泣いていました。

あずにゃんのために作った曲を聞かせてあげたら、

あずにゃんはよろこんでくれました。

私は、校門を出て、いつもの道をみんなで帰って、

りっちゃんとみおちゃんとムギちゃんと

お別れして、和ちゃんと二人で帰って、

和ちゃんともお別れして、お家に帰って、

お父さんとお母さんと憂がお祝いしてくれて、

うれしくて、

夜、ふとんに入ってから、

さみしくなった。

もう純ちゃんにはあえないのかな。

72: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:41:10.46 ID:KoKC2XO6o

いっぱい泣きました。

73: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:41:36.44 ID:KoKC2XO6o

お散歩に行ったら、近くのお家のわんちゃんが気になる。

ふかふかでっかい大型犬。

なんだか純ちゃんみたい。

って思ってからびっくり。

そんなに純ちゃんに似てるかなあ。

でもやっぱりよく見ても純ちゃんみたい。

さわってみたいな。

74: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:42:03.29 ID:KoKC2XO6o

「ねえ、憂。犬飼いたい」

「お姉ちゃん、ペットを飼うのはたいへんなんだよ」

それから憂は犬のお世話をすることのいかに大変か、

二時間三十分にわたって語りつくしました。

ごめんなさい、もう言いません。

そのかわり。

と言いそうになって、あわててやめた。

純ちゃんを飼ってみたいなんて。

なんだかへんだね。

75: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:42:46.80 ID:KoKC2XO6o

寝ても覚めても純ちゃんばかり。

頭の中がわんちゃんになりました。

またお散歩に出たら、今日は塀の上の猫まで純ちゃんに見える。

道の向こうのおばあさんが、純ちゃんみたい。

小学生も純ちゃんみたい。

目をこすろうと思って、手を顔の前に持ってきたら

手袋まで純ちゃんみたい。

こわい。

76: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:43:57.80 ID:KoKC2XO6o

純ちゃんの顔ちゃんと覚えているかな。

もう何日も見ていないから、忘れちゃったような気がするよ。

目をつぶって思い出してみるけど、これがちゃんと純ちゃんの顔なのか

わからない。

かなしくなりました。

77: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:44:50.36 ID:KoKC2XO6o

憂にアルバムを見せてもらう。

純ちゃんの映ってる写真を見つけて、ハサミで切ろう

と思ったけどやめました。

純ちゃんの写真をください。

正直に言ったら、憂はびっくりしたような顔をして、

にやにやして、すこし笑って、なぜかさびしい顔になって、

それからまた笑って、写真を何枚もくれました。

ありがとう、妹よ。

「お姉ちゃん、大人になったんだね」

私大人になったのかなあ。

78: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:45:21.98 ID:KoKC2XO6o

純ちゃんの写真を財布に入れた。

部屋の壁にこっそり貼った。

右を向けば純ちゃん。左を見れば純ちゃん。

毎日純ちゃんに囲まれて過ごしています。

すてきなせいかつ。

もう猫さんやおばあちゃんが純ちゃんに見えることはなくなりました。

だけど、わんちゃんだけはやっぱりちょっと似てるね。

さわってみたいなあ。純ちゃん。

本物の純ちゃんに会いたい。


ポケットに入れた写真は

くしゃくしゃになってしまい、

泣きました。

会いたい。

79: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:46:13.51 ID:KoKC2XO6o

純ちゃんのくれたチョコの包み、

今も大切に持ってる。

とってもおいしかったけど、中身はもうない。

純ちゃん、おかし作るのが上手いんだな。

まだ少し、甘いにおいがします。

80: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:46:39.54 ID:KoKC2XO6o

今日はデパート。憂と二人でお買い物です。

おいしそうなものがいっぱい。

「お姉ちゃん、勝手に離れちゃダメだよ」

迷子になんてならないよ。


今日はいっぱい買い物をします。

春から私は一人で暮らす。

私大人になれるかな。

81: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:47:06.29 ID:KoKC2XO6o

本屋さんの前を通った時、気になる本を見つけました。

「お菓子の作り方」

そういえば、チョコのお返し、まだしてない。

中をめくって見ていると、写真だけでよだれが出そう。

こんなの私にもできるかな。

「ねえ、うい」

訊こうとしたらどこにも居ない。

こまった子です。

82: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:47:38.46 ID:KoKC2XO6o

携帯の電池が切れていました。

どうしよう。


「あれ、唯先輩。お買い物ですか?」


後ろから声をかけられました。

かわいいピンクのコートを着た

純ちゃんが立っていました。

「えっ、ちょっ、唯先輩!」

走って逃げる。

83: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:48:08.77 ID:KoKC2XO6o

どうしよう、はずかしい。

わたし今日服装へんだよ。

髪型だって決まってない。

あんまりかわいくないバッグ持ってるし。

バッグの中には湿布が入ってる。

「ちょっと、なんで逃げるんですかー!」

「なんで追いかけてくるの!?」

「わけが分かるまで逃しません!」

あっというまに捕まえられた。

足はやい。

84: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:48:35.65 ID:KoKC2XO6o

息が切れる。

きまずい。

「偶然ですね、こんなとこで会うなんて」

「うん」

いまわたしへんなかおしてないかな。

絶対に赤くなってる。

「一人暮らしするから、いろいろ買いに来たんだけど」

「憂は一緒じゃ?」

「迷子になっちゃったみたい」

「唯先輩が?」

「ういが」

なんで笑うの、純ちゃん。

85: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:49:01.67 ID:KoKC2XO6o

「あ。先輩っておかし作るんですか」

「ううん。あ、この本?ぜんぜん作れないんだけど……」

お菓子の本は結局買ってしまいました。

「ほら、もうすぐホワイトデーだから」

「もう過ぎましたけど」

「ええっ、そうなのお!?」

「あはは、もう何日も前ですよー」

そんなあ。

86: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:49:29.65 ID:KoKC2XO6o

ひとつ深呼吸する。

私の声、へんじゃないかな。

「ねえ、純ちゃん……憂の電話番号知ってる?」

「はい、もちろん」

「憂に電話していただきたいのですが……携帯の電池切れちゃって」

「はい、いいですよ」

「……」

純ちゃんは電話をかけるために画面を見つめているから、

私はその間にばれずにじっくりお顔を眺めることができる。

「唯先輩」

「ひゃいっ」

「ごめんなさい、憂の電話つながらなかったです」

こまった子です。……どうしよう。

87: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:49:55.27 ID:KoKC2XO6o

「私も一緒に憂のこと探しますよ」

「純ちゃん、ありがとう」

「だから落ち込まないでください。きっとすぐに見つかりますって」

純ちゃん、やさしい。

「うい、どこかなあ……」

「自動販売機の下には憂はいないと思いますけど」

「ういー」

「あ、ちょちょ、先輩どっち行くんですか!」

手を掴まれた。

「ひゃっ」

「もう、また迷子になりますよ」

「ちがうよ、迷子は憂の方だよう!」

「はいはい」

「あの……それより、手……」

「あっ、勝手につかんじゃってごめんなさい」

「むしろずっと繋いでてください!」

「え?」

「その、つまり、純ちゃんまで迷子になったらダメだから」

「……」

あきれ顔。ちょっと恥ずかしい。

88: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:50:22.71 ID:KoKC2XO6o

「純ちゃんはやさしいね」

「先輩もいい人ですよ」

「ええ?」

「憂やあずさがよく話してますよ、唯先輩のこと」

「照れるなあ…どんなはなし?」

「えっと、それは、本人には言えません」

「ええぇ」

「あはは」

「憂から、純ちゃんの話もよく聞くよ」

「あんま聞きたくないけど……どんなこと言ってます?」

「おもしろい子」

「えー」

89: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:50:49.39 ID:KoKC2XO6o

「ゴールデンチョコパンで野球してたって本当?」

「それはウソです」

「ウソなの?」

「ウソです」

「ウソかあ」

「なんでちょこっと落ち込んでるんですか」

「ねえ、純ちゃん」

「はい」

「純ちゃんは、おかし作るのがうまいんだね」

「へ?なんの話ですか?」

なんの話だろ。

頭がぐるぐるして

私なに考えてるのかな。

90: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:51:16.36 ID:KoKC2XO6o

純ちゃんのことこんなに気になる。

もっとよく知りたい。

仲良くなりたい。

お話したい。

さわりたい。

なんでかな。

純ちゃんがいてくれてうれしいのに、

こんなに胸がいたむの。

「ねえ、純ちゃん。あのね」

「はい」

「あの……あの」


『迷子のお知らせです

市内よりお越しの平沢唯ちゃん……』




ういのばかあ……。

91: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:51:46.33 ID:KoKC2XO6o

引越しが終わって、大学生になった。

みんなはしゃいでる。

私もおとなな格好で、すこしだけ

大人の気分。

おうちに帰ったら、ひとりの部屋です。

好きなだけごろごろしてると、妹の電話。

「お姉ちゃん、入学式どうだった?」

「……」

「こないだのこと、まだ怒ってる?」

心配そうにいうのでかわいそうになって

怒ってないよ、と言いました。

「よかった。ほんとにごめんね、お姉ちゃん」

「いいよお」

92: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:52:14.97 ID:KoKC2XO6o

「あのね、お姉ちゃん。8日の午後って暇?」

「うん」

「その日、うちで純ちゃんのお誕生パーティーやるんだけど、お姉ちゃんも」

「行きます」

「ふふ」

「ぜったいぜったい行くっ!」

「お姉ちゃん。純ちゃんのこと好きでしょ?」

私、純ちゃんのこと好きなのかな。

「そうだよ、きっと」

そうなのかな。

93: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:52:50.24 ID:KoKC2XO6o

「ねえ、うい」

「なあに、お姉ちゃん」

「ケーキの作り方教えてください」

「おやすいごようだよ」

うい大好き。



ケーキをつくるのはむずかしい。

早くその日がくればいいのに。

毎日純ちゃんの誕生日だったらいいな。

そしたら毎日純ちゃんにお祝いできる。

私はおふとんの中で

ふわふわのもこもこの夢を見た。

94: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:53:17.46 ID:KoKC2XO6o

4月8日。いい日。

早く来ないかな、純ちゃん。

まだかな、来ないかな。

来た。

「いらっしゃい!」

扉をあけると、純ちゃんではなくてあずにゃんが

びっくりした顔で立っていました。

「あ、迷子の唯先輩」

あずにゃん、ひどい。

「う、ういー」

「わたし言ってないよ!」

「純から聞きましたよ。デパートで迷子になってたって」

「純ちゃん……」

ひどいのです。


ここまでは記憶がある。

95: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:54:08.12 ID:KoKC2XO6o

そして、純ちゃんが目の前にいる。

「憂と梓おそいですねー」

とつぜん。

「うん」

ええっと。

二人は足りないものを買いに出かけて、私がお留守番。

してる時に純ちゃんが来ちゃったんだ。

たしか。

私と純ちゃんしかいない。

びっくり。

どうしよう。

ねえ、純ちゃん。

「はい」

なんで漫画読んでるの。

96: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:54:34.48 ID:KoKC2XO6o

純ちゃん、それおもしろい?

「はい」

純ちゃん。

「はい」

……う、ぐす。

「!?」

「うええぇ……」

「なんで泣くんですか!?」

「わたしと二人じゃつまんないよね……」

「いや、そういうんじゃないですって!」

「うう、でもぉ」

「もう読むのやめます!はい、やめた!」

「ごめん……」

「こっちこそごめんなさい」


はずかしい。

子供みたいに泣いてしまいました。

大学生なのに。

97: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:55:01.31 ID:KoKC2XO6o

「……」

「憂とあずさ、おそいですね」

「うん」

「そうだ、先にごちそう食べちゃいましょうか!」

「うん」

「……冗談です」

「ううん、食べよう!純ちゃんのための料理だもん」

「そんないくらなんでも」

「おいしいよー、きっと、このケーキ」

「う……たしかにおいしそう」

「ね、一口だけなら大丈夫だよ」

「そう、ですね」

しめしめ。

純ちゃんは、ケーキを一口

食べました。

98: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:55:35.10 ID:KoKC2XO6o

「……どう?」

「甘くて、すっごくおいしいです」

「! よかったー!」

「ありがとうございます」

「ん?」


「このケーキ、唯先輩が作ってくれたんですよね」

「!?」

ひょっとしてエスパー!?


「う、憂から聞いたの?」

「先輩の顔に書いてあります」

「え、え、え?」

「先輩って、なんか子犬みたいですね」

「えええ!?」

「表情がころころ変わって」

へんなの。

犬みたいなのは純ちゃんだと思ってたのに。

へんだな。

99: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:56:09.11 ID:KoKC2XO6o

純ちゃんの頭からお耳が、

おしりからふわふわのしっぽが

見えるみたいなんだけど

ねえ、純ちゃん。

「はい」

これ、あげます。

「わあ……開けていいですか」


純ちゃん、その、それ、キャンディーです。

誕生日プレゼントと、ホワイトデーのお返し含めて。

あのね、憂が言ってたんだけど、

ホワイトデーのお返しって意味があるんだって、

クッキーなら「お友達でいよう」とか

マシュマロは「ごめんなさい」とか……

その、キャンディーは「お付き合いしましょう」って意味で

あ。あずにゃんにもお返しでアメあげちゃったんだけど、

でもそれはそうゆう意味じゃなくて、

つまり、その。純ちゃん、

純ちゃんにキャンディーあげたくて、あの。

100: ◆yqooX3EMuU 2011/04/08(金) 14:57:58.10 ID:KoKC2XO6o

純ちゃん

いまわたしの頭ぐるぐるしてるよ。

おなかがどきどきしてつらいよ。

「ねえ、純ちゃん。だきついても、いい?」

どきどきしてて、きみにふれたいよ。

神さま

もし純ちゃんがうなづいてくれたら

もし純ちゃんがにっこり笑ってくれたら

もし純ちゃんがわたしのこと少しでも好きでいてくれたら

うれしいのです。


「純ちゃん、誕生日おめでとう」



それから、純ちゃんは―

end.

101: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:29:17.78 ID:D1ybGfHoo
純「ふふふーん」

純「今日は機嫌がいいのです、何故でしょう」

純「実は今日は私の誕生日! その上友達が今日遊ぶ約束を取りつけてきた!」

純「これが何を意味するか……」

純母「じゅーん、お友達のところ行くんでしょー? 早く準備しちゃいなさーい!」

純「はーい」

102: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:31:25.83 ID:D1ybGfHoo
純「ふふふ、二人とも私が来たらどんな反応をするやら……」ニシシ

~~~

憂「純ちゃん! お誕生日おめでとー!」

梓「おめでとー」

憂「ケーキは梓ちゃんが買ってきてくれたんだよねー♪」

梓「べ、別に純のために買ってきた訳じゃないんだからっ! 私が食べたくて買ってきたの!」テレテレ

憂「またまた~」ニヤニヤ

梓「もー///」

~~~

純「ふふふ~ん、アリだね!」

103: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:34:18.53 ID:D1ybGfHoo
純「ここが梓のハウスね!」

ピンポーン、ガチャ

純「おじゃましまーす!」

梓「……私が出てから開けなさいよ」トテトテ

純「あはは、ごっめんごめん!」

梓「友達失くすよ」

純「肝に銘じまっす!」

梓「……なんか今日の純テンションたっかいなー」

104: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:36:32.17 ID:D1ybGfHoo
純「憂、おはよー」

憂「純ちゃんおはよー」

梓「二人とも来たし、早速今日の本題に入りますか」

純「おー! いっちゃおー!」

憂(純ちゃんテンション高いなぁ)

梓「純もやる気だね、じゃあ早速新歓の計画を立てます」

純「……え?」

105: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:39:19.26 ID:D1ybGfHoo
憂「私はU&Iがいいです!」ビシッ

梓「アンタは唯先輩の曲がいいだけでしょうが……」

憂「えへへー」ニコー

純「…………」

純(これは……そう、多分ドッキリだ、そうに違いない)

純(きっとこういう流れから「練習しよっか」ってなったらハッピーバースデイが流れるシステムなのよ)

純(そしてクラッカーにケーキ出現の流れ……ふふふ)ニヤニヤ

梓「純、アンタなにニヤニヤしてんの?」

純「おうふ! な、何でもないよ!」アセアセ

純(ふっ……折角向こうがドッキリを仕掛けてるんだ、掛かった振りでもしてあげないとね☆)

106: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:41:20.50 ID:D1ybGfHoo
梓「で、純はどの曲がいいの?」

純「え、あー、私あんまり放課後ティータイムの曲とか分かんないからさ! 前やった奴、あれがいいな!」

憂「ふわふわ時間だね」

純「そう、それ!」

梓「うん、確かにいいかもしれない」

純(そうだ、そしてここから曲練習の……)

憂「ふわふわ時間なら練習いらないかなぁ」

梓「そうだね、1週間くらい前からでも……」

純「!?」

107: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:44:13.58 ID:D1ybGfHoo
純「あー! ふわふわ?じかん……だっけ……あーもう記憶があいまいだー!」テヘペロー

梓憂「……」

純「…………」ゴクリ

梓憂「……」

純(……ダメかっ!)

梓「……全く、純は仕方ないなー」

憂「じゃあ練習しよっか、備えあれば憂いなし、だしね♪」

純「超ありがとー! 恩にきるよー!」

梓「何もそこまで喜ばなくても……」

108: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:46:18.58 ID:D1ybGfHoo
梓「じゃあボーカルとかどうしようか」

憂「そこは梓ちゃんじゃない?」

梓「私は歌ってないから自信ないな……純は?」

純「ん? 私? 別にいいよー」

憂「じゃあ純ちゃんボーカルお願いします」

純(……って、何普通に会議再開してんのよ! しかもボーカル私だったらもはやハッピーバースデイトゥーミーだよ!)

純「あ、やっぱ私ダメ!」

梓「え?」

純「歌詞とかよくわかんないし、ホラ、歌詞分かってる人が歌ったほうがいいでしょ?」

憂「確かに、それで結局お姉ちゃんが歌えなくなった時に澪さんが歌うことになったんだったね」

純(よし! 軌道修正!)ビシッ

109: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:48:20.88 ID:D1ybGfHoo
梓「でも純、カラオケで歌詞覚えるのが上手いことが自慢って言ってたよね

憂「あー、言ってた言ってた」

純「!?」

梓「確か3回聞いたらもう歌詞覚えてるし歌える~、って言ってた」

純「……はい、言ってました」

憂「じゃあやっぱり純ちゃん歌う?」

純(何やってんのよ昔の私ー!)

純(もうタイムマシンが欲しい、そしてカラオケ行った時に自慢した私を殴ってやるんだ!)

純(……あれ? 殴る意味あるかそれ……?)

梓「純?」

純「ん! な、何でもないよっ!」

憂「?」

110: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:50:09.11 ID:D1ybGfHoo
純(結局ボーカルになってしまった……)

梓「憂はこの間はオルガンだったけど、キーボードのほうがいいかな?」

憂「でもキーボード持ってないよ?」

純(もはや意図が理解不能だよ……)

梓「ムギ先輩に頼めば……」

憂「それも悪い気がするよー」

純(いや、きっとこれもドッキリの一環に過ぎないハズ!)

111: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:52:18.48 ID:D1ybGfHoo
梓「まぁいいや、じゃあ練習始めよっか」

憂「うん」

純(……ここですべてが決まる、果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか……!)

梓「~♪」ジャカジャカ

憂「~♪」ポロロン

純「~♪」ベンベン

純「……」ベンベン

純(……はじまんねー! 勝利の女神が私を嘲笑してるよ!)

112: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:54:57.77 ID:D1ybGfHoo
純「キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKI♪」

純(ハッピバースデイトゥーミー!)

純「揺れる思いはマシュマロみたいにふわ☆ふわ♪」

純(ハッピバースデイトーミー!!)

純「いつも頑張るキミの横顔 ずっと見てても気付かないよね♪」

純(ハッピバースデイディア私ー!!!)

純「夢の中なら二人の距離縮められるのになー♪」

純(ハッピバースデイトゥーミー!!!!)

113: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:56:31.61 ID:D1ybGfHoo
憂「すごーい! 純ちゃん完璧に歌えてた!」

梓「ホント、流石歌詞覚えマスターだね」

純「ありがと……」シクシク

憂「?」

純(……練習中ドッキリの夢は潰えた、しかし諦めるのはまだ早い)フルフル

純(練習終わってやったー休憩、の流れではいケーキ、と来るハズ!)グッ

純(ふふふ、私はあきらめが悪いのだけが取り柄なのだ!)ニヤリ

憂「じゃあ練習も終わったし、帰ろうかな」

純「ズコー!」

憂「!?」

114: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 17:58:17.28 ID:D1ybGfHoo
純「ほらさ、もっと遊んでこうよ! 折角集まったんだしさ! 何もないところですが!」

梓「ここ私の家なんだけど……」

憂「でも……」

純「憂も唯先輩いないんだからがっつり遊んじゃえばいいんだよ!」

憂「……」

純「あ……」

憂「……」ジワッ

純「あ、いや、ね、ホラ……その空虚感を埋める、的な? あはは、あははは……」

憂「……うん、ありがとう、純ちゃんは優しいね♪」グスン

純「あー、いやー、あはは……」

梓「今のは全面的に純が悪いじゃん」

115: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:00:20.54 ID:D1ybGfHoo
純(しかしこれはとことんヤバイ状態になってきたぞ……)

純(梓はまだわかんないけど、憂は私の誕生日に気付いていないようだ……)

純(こうなったらアレをやるしかない!)

純「いやー、最近暖かいよねー!」

梓憂「!」

純「春だよねー春、生命の"誕生"の季節だよねー!」

梓憂「……!」

純「季節ってか月? って言うかむしろ日ってゆーか?」

梓憂「……」

純(どうだ!)チラッ

梓「話しは変わるけど、もうちょっといるならおやつにバナナあるよ?」

純「ズコー!」

116: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:02:49.77 ID:D1ybGfHoo
憂「あー、食べる食べるー」

梓「おばあちゃんからたくさん送られてきてね、余してたんだ」

純(バナナなんてそんなのどうでもいいよ……!)

純(そんな……バナナだよ!)ギリリ

憂「おいしー!」モグモグ

梓「純、食べないの?」

純「食べるけど」モグモグ

純(バナナうめー!)

純(……チクショー、バナナなんかに負けるわけにはいかない! 私大なりバナナだ、ということを見せつけてやる!)

117: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:05:02.36 ID:D1ybGfHoo
純「バナナおいしーなー! このバナナ、ケーキにも合いそうだなー!」

梓「!」

純「ケーキ、ケーキと言えばー……なんか引っかかるんだよなー、何かあったかなー!」

純(どうだ!)チラッ

梓「……」モグモグ

憂「……」モグモグ

純(そんなバナナっ!)

純(この子たちさっきまで談笑してたのに一心不乱にバナナ頬張ってるよ!)

梓憂「……」モグモグ

純(あとバナナ多すぎだよ!)ビシッ

118: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:06:31.97 ID:D1ybGfHoo
梓「……そういえばさ純」

純「な、何!?」

梓「バナナっておやつに入るのかな?」

純(このバナナ脳がっ!)

純(開口一番なにテンプレートの質問してんの!)

純(正直……知らねーよ!)

梓「私は丸ごと入ってたらおやつ、切られてたらデザート派なんだけど」

純(その情報はいらないよ! トリビア未満だよ!)

純「へ、へえー、そうなんだー……」

119: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:08:23.26 ID:D1ybGfHoo
純(ちっ、これは作戦2に移るしかなさそうね……)

純(ククク、しかしこの作戦を使うと絶対祝ってもらえちゃうからなー、やりたくなかったんだけど☆)ニシシ

憂「?」

純「いやー暑いね、この部屋暑いね!」

梓憂「!」

純「むしろ熱いね! 情熱的な熱帯夜だね!」

梓憂「……」

純「まるで牡羊座だね!」チラッ

梓「ま、窓開ける?」

純「あきらめちゃダメだよ! もっと熱くなろうよ!」

120: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:10:16.05 ID:D1ybGfHoo
憂「……」オロオロ

純(……やば、ちょっと熱くなりすぎた)

純(ま、でも私のそんなところも、情熱的な牡羊座らしいのかな!)テヘペロッ

純「あはは、ちょっと熱くなりすぎちゃったかなー、私そういうところあるよねー!」

梓「あ、バナナ黒くなってる」

憂「黒い所のほうが栄養あるんだよー」

純(なんてバナナ!)

純(どういう流れでバナナなんだよ! まだ食ってたのかよ!)

純(もう……バナナ星人だよ!)

121: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:11:42.14 ID:D1ybGfHoo
梓「あ、バナナ無くなった」

純(食いすぎバナナ!)

梓「朝から食べてるからね」

純(朝バナナ!)

梓「冷やしてるの取ってこなくちゃ」

純(冷やしバナナ!)

憂「あ、私の分も取ってきてー」

純(ダブルバナナ!)シクシク

梓「じゃあ取ってくバナナ」

純(語尾バナナ!)ウワーン

122: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:13:50.25 ID:D1ybGfHoo
純(……もういいよ、期待した私が馬鹿だった)

純(馬鹿バナナだよ!)ブスー

憂「……純ちゃん? お腹痛いの? バナナで食物繊維取ろ?」

純「……心配してくれてありがとー」

純(憂までバナナバナナバナナ……そんなにバナナが好きかっ)

梓「持ってきたよー」

純(ふん、もうバナナなんて見たくもない……)

123: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/08(金) 18:15:09.38 ID:D1ybGfHoo
梓「私達お手製のバナナケーキ、純誕生日おめでとう!」

憂「おめでとう!」パチパチ

純「……え」

梓「べ、別にバナナが余ったからついでに作っただけなんだけどっ!」

憂「梓ちゃんったら純ちゃんのためにバナナ買いすぎちゃったんだよねー」ニコニコ

純「……」ポカーン

梓「そ、そんなことないもん!///」

憂「またまた~」ニヤニヤ

純「……」

純「ありがとバナナ!」


おわり

124: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:01:05.12 ID:zhK3V8ELo
ひらさわけ!

唯「はーっぴばーすでぃとぅゆー」

澪「はっぴばーすでぃとぅゆー」

紬「はっぴぃーばーすでーとぅーゆぅー

律「はっぴばーすでーとうーゆー」

梓「はっぴぃばーすでぃーとぅーゆー」

憂「はっぴぃーばーすでぃーとぅーゆぅー」

みんな「でぃあーおっしゃかさまー」

純「……なにこれ」

125: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:01:35.17 ID:zhK3V8ELo
和「今日はお釈迦様の誕生日なのよ」

純「はぁ、割とトリビアですね」

和「まあ、うちは仏教徒じゃないけど」

純「じゃないんですか!?」

和「というか、みんな仏教徒じゃないんじゃないかしら」

純「ええ!?」

唯「まあまあ、純ちゃん今日はお祝いだから細かいこといいっこ無しだよ」

純「(細かいことでもないような……)」

梓「純は座って座って、今日の主役なんだから」

純「いや、私も仏教徒じゃないし」

憂「純ちゃんは何となくお釈迦様ぽいよ」

純「初めて言われた!?」

126: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:02:07.78 ID:zhK3V8ELo
唯「というわけで純ちゃんはお釈迦さんってぇーことで」

澪「(ごまかし方が強引じゃないか……?)」

律「(こういうドッキリは本気で驚かすと収拾が付かなくなるもんなんだよ)」

澪「(そうか……?)」

憂「お料理持ってくるね」

和「私も手伝うわ」

梓「じゃあ私も」

純「それで、お釈迦様であるところの私は何をすれば良いんですか」

紬「やっぱりためになる話かしら」

唯「あ、それならうちにごきげんようサイコロがあるよ!」

127: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:03:01.28 ID:zhK3V8ELo
唯「なにがでるかな、なにがでるかな、それはマリア様任せよ♪」

澪「(ごきげんよう違い!?)」

純「何だろう、意外とどきどきする」

律「さってー、サイコロの目は!」

唯「はい! 今日の当たり目です!」

紬「……当たり目って何のお話をするの?」

唯「はい、じゃあ、最近の楽しかった話、略して!」

律「たのばな!」

澪「(ごまかしたー!)」

純「楽しかった話ですか……」

澪「(そして無かったことにしたー!)」

純「じゃあ、ジャズ研の話でもしますか」

唯「ジャズ研って私のクラスでも入ってる人がいるよー」

純「そうなんですか?」

唯「うん、お友達なんだー」

128: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:03:56.29 ID:zhK3V8ELo
純「え、その人、気むずかしい先輩じゃないですか」

唯「そうかな?」

澪「唯は誰とでも友達になれるからな」

律「部活だとどんな先輩なの?」

純「すっごい上手な人ですね、その分練習にも厳しいみたいな」

澪「サバイバルみたいな?」

純「はい、サバイバルなんです、良い表現ですね」

律「サバイバルなのか……」

紬「銃で撃ち合ったりするのかしら」

澪「んなわけないだろ!」

純「ええ、殺伐としています!」

澪「んな!?」

129: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:04:27.30 ID:zhK3V8ELo
唯「なにがでるかな なにがでるかな それはサイコロ任せよ!」

澪「ほのぼのとした話か」

律「6で深夜バスはかた号乗車か」

紬「北海道から博多までバスだけで行くのが夢だったの♪」

澪「どうでしょうじゃない、それとフェリーにも乗るぞ」

純「それで、話すのは私ですか」

唯「そうです、本日の主役ですからね!」

純「(主役が一番厳しい立場のような……)」

憂「はーい、ケーキですよー」

和「オードブルよ」

梓「飲み物ですー」

唯「来た!」

澪「唯が主役じゃないだろ!」

唯「あふん!」

130: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:04:58.12 ID:zhK3V8ELo
純「お釈迦様ってろうそくは17本なんですかね」

和「そうよ」

澪「(何食わぬ顔で嘘ついた!)」

律「(さすがは生徒会長!)」

唯「あ、お部屋暗くしてなかったね」

憂「じゃあ、部屋暗くするね」

紬「こういうのドキドキするわね!」

梓「別の意味でこっちはドキドキしますけどね……」

純「じゃあ、消しますよ、ふぅー!」

ぱちぱちぱちぱちぱち

唯「お誕生日おめでとう!」

澪「お誕生日おめでとう!」

純「(なんだか今日は自分を祝って貰ってる気分になってきた、我ながら単純だ)」

131: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:05:25.43 ID:zhK3V8ELo
純「あ、このケーキ美味しいー」

憂「でしょう、梓ちゃんと作ったんだよ」

純「梓すごいじゃん」

梓「まあ、私はケーキの上にいちご乗せただけだけどね」

純「私の言ったすごいを返しなさい!」

澪「何かデジャブするな」

律「まるで昨年聞いたような反応だな」

唯「なにがー?」

紬「なんでもないのようふふ」

132: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:05:51.85 ID:zhK3V8ELo
唯「宴もたけなわになってきたところで、みんなで一芸します!」

純「え!」

梓「大丈夫だよ純、今日の主役は見てるだけだから」

憂「とっておきの隠し芸みせるからねー」

和「じゃあ私司会するね」

律「逃げるな和」

澪「……」

紬「澪ちゃん?」

澪「ダメだよムギ! やっぱり緊張する!」

紬「今日は純さんのために頑張りましょうね」

澪「むう……」

133: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:06:54.53 ID:zhK3V8ELo
唯「じゃあ、一番はじめは私たち」

憂「唯&憂がお送りします!」

純「おー」

憂「まず私が髪をほどいてヘアピンを付けます」

唯「そして私はそれを見ています」

純「(見てるだけ!?)」

憂「そして純ちゃんには後ろを向いて貰います」

唯「はーい、純ちゃんのもこもこは可愛いですよー、はいー後ろ向きましょうねー」

純「……はあ」

唯「そしてお着替えします!」

純「(音しか聞こえないけど本当に着替えてる……)」

134: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:07:22.75 ID:zhK3V8ELo
唯「じゃあ、純ちゃん振り返ってください!」

純「おお! 唯先輩が二人いる!」

??「さあ、どっちが平沢憂でしょうかー」

??「さあさあ、どっちが平沢唯でしょうかー」

純「むむむ……中学時代からの友人であるところの私としては正解しないとまずいですね」

??「右の平沢唯が平沢唯なのか!」

??「左の平沢唯が平沢唯なのか!」

????「さあ純ちゃん、答えをどうぞ!」

純「ようし! じゃあ、ちょっと胸が大きい右が憂!」

憂「正解! さすが純ちゃん!」

唯「正解だよー」

純「やったぁ!」

唯&憂「じゃあ、次の芸は澪&梓だよ、ちょっと待っててね!」

135: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:07:58.95 ID:zhK3V8ELo
純「……髪をほどいた梓と、澪先輩?」

梓「違うよ、私は秋山澪だぜ」

純「だぜ?」

澪「ち、ちがうぞ、私が本物の秋山澪だぞ!」

純「いや、それは見れば簡単に分かりますけど」

梓「ふふふ、私は小学生時代の秋山澪!」

純「なんと!」

和「まあ、なんということでしょう! 小学校時代はこんなにも胸が小さかった秋山澪が数年後にはここまで成長するなんて」

純「ナレーション!?」

和「この変化について匠はこう語る」

律「はじめはー、私とそう変わらないかなって思ってたんですー」

紬「ですがー、中学に入ったときからどんどん差が付きましてー」

律「腹が立ったんで、揉みまくってたらこんなんになりました」

澪「ねつ造するな!」

律「あふん!」

和「なんということでしょうー、劇的ビフォー智代アフターは制作者の自己満足になってしまいました」

純「ぐだぐだ……あと、梓は元気だそう」

136: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:08:29.67 ID:zhK3V8ELo
和「最後は軽音部による演奏です」

純「え、演奏してくれるんですか!」

和「なお本日は夜に演奏をするとご近所に迷惑なので、ボイパーでお送りします」

憂「近くの家にはおばあちゃんが多いからね」

純「残念なような、そうじゃなかったような」

和「ちなみに、この練習は一ヶ月みっちりやりました」

純「その間軽音部何してたの!?」

唯「どうもー放課後ティータイムでーす」

純「ごまかした!」

唯「まず一番はじめの曲は、私の恋はホッチキス!」

137: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:08:57.06 ID:zhK3V8ELo
和「はい、以上です」

純「何かちょっと感動したのが不思議だ」

唯「いぇーい!」

澪「はぁ、緊張したな」

律「やり遂げた感があるよな」

紬「そうよね!」

梓「……喜んで良いのか悲しんで良いのか」

純「すっごいよかった、さすが放課後ティータイム!」

唯「と、喜んでくれたところで、次が最後の曲」

純「え!?」

澪「純ちゃんに捧げます」

純「(やばい、ちょっと嬉しい)」

澪「私の恋はソルティードッグ!」

律「(本当澪のセンスは独特だよな……)」

138: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:09:23.95 ID:zhK3V8ELo
唯「はい、今度こそ終わりです!」

純「(歌詞に犬とか熊とか出たけど私ってそういうイメージなんだろうか)」

和「今ので、お釈迦さまの誕生日記念は終わりました」

憂「続きまして!」

梓「純の誕生日記念パーティの始まりです!」

純「おー」

澪「反応が薄い!?」

純「わー、わー!」

律「主役にフォローさせてどうする」

139: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:09:52.42 ID:zhK3V8ELo
唯「というわけでこれからひとりずつプレゼントを渡していくよ」

純「皆さん渡して頂けるんですか?」

唯「ちなみに順番はちゃんとくじびきで決めてあるから心配しないでね」

純「話を聞いてもらえない……」

和「司会は僭越ながら私が担当するからよろしくね」

純「少しも僭越だと思ってなさそうな堂々とした態度での登場!?」

和「さて、トップバッターは今流行のゆるふわガール、ことぶきつむぎぃ!」

純「超ハイテンション!」

紬「これ、喜んでくれるかな、私軽音部のみんな以外にプレゼントってあんまりしたことないから緊張してるんだけど」

純「プレゼントは気持ちがこもってれば……なんですか袋」

紬「メッコールとサルミアッキと松の皮のジュースよ」

純「へぇ、何か聞いたことないですけど美味しそうですね」

紬「プレゼントで喜ばせたいんだけどって聞いたら帰ってきた答えがこれだったの~」

純「へぇ、でも量が多いみたいなので家族で頂いてもいいですか」

紬「どうぞどうぞ~」

憂「……」

140: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:10:28.41 ID:zhK3V8ELo
和「それでは本日最後の催しイベント、迷走マインド秋山澪さんの誕生日プレゼントです!」

純「迷走って……」

澪「本当にこんなプレゼントでいいのかって話だけど、梓の言を信じるよ」

純「梓のプレゼントは微妙でしたが」

梓「なんでよ!」

純「ネコミミってこれ、自分で付けてて余ってるのでしょ」

梓「鋭いね純」

純「本当にこの子が友人なのか疑問に思えてきた」

澪「それじゃあ純ちゃん行くよ」

純「行く?」

澪「(だきっ!)」

純「なん…・だと……?」

澪「ちょっと恥ずかしいけど、喜んでくれたかな?」

純「私服過ぎて意識が遠くになりすぎました」

和「それじゃあ、最後はみんなで誕生日おめでとうでしめましょうか」

「おたんじょうびおめでとう! じゅんちゃん!」

141: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:11:01.69 ID:zhK3V8ELo
かえりみち!

憂「どうだった、今日の誕生パーティは」

純「うん、最後のサプライズが嬉しかった」

憂「恋人になった気分?」

純「いや! まあ、それほどでもあるけど……」

憂「あるんだ」

純「ありました」

憂「ああ、それと紬さんから貰ったプレゼントだけど」

純「なんだっけ、他の人からのプレゼントが多すぎてよく覚えてないけど」

憂「自分一人で処理してね?」

純「え?」

憂「大丈夫、純ちゃんなら大丈夫」

純「それ言われると不安になるんだけど」

憂「全部処理できなかったら、喫茶マウンテイン直行だから」

純「まあ、良いけど」

142: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:11:31.99 ID:zhK3V8ELo
よくしゅうのきょうしつ!

純「憂、おはよう」

憂「純ちゃん……あれ? 幻?」

純「なんか酷い言われよう、紬先輩からもらったの全部自分で飲んだよ」

憂「え、え、あの、身体大丈夫なの?」

純「ん? うん」

憂「(純ちゃんの味覚はおかしかった)」

純「ところでさ、最後私のために歌をうたって貰ったじゃん?」

憂「ソルティドッグ?」

純「あれってさ、なんでソルティドッグなの?」

憂「ソルティドッグっていうカクテルがあるんだけどさ」

純「うん」

憂「あれってグラスの上に塩が乗ってるの」

純「塩!?」

憂「その塩が純ちゃんの髪型っぽいって」

純「!?」

143: ◆p7dHgU73Po 2011/04/08(金) 20:12:23.00 ID:zhK3V8ELo
 塩ってどういう事なんだろう?
 でもまあ、憧れの澪先輩に自分に向けて歌ってもらったし、最後には抱きしめてもらったし、何だかよく分からない誕生日パーティだったけど、それも軽音部らしくていいんじゃないかと思った。
 楽しい誕生日会にしてもらって、私はかなり幸せなんじゃないかと思う。もしも、来年梓しか部員がいなくなったとしたら、軽音部に入部してこのときの恩返しをしようかと思う。
 部員同士が結束しているように見えるから、なかなか中に入りづらくて、おそらく私の想像する未来はすぐに訪れるんだろうけど。

 ありがとう放課後ティータイムと生徒会長さんと憂。
 そして、誕生日おめでとう私!


 おわり。

144: 聡「純さん、誕生日おめでとうございます」 ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:06:05.73 ID:AWt+pkbDO
 今日は純さんの誕生日だ。
 純さんの彼氏として、盛大に祝ってあげないと。
 プレゼントは事前に買ってあるし、後は純さんの家に行くだけだ。
 プレゼントをバッグの中に入れ、身だしなみを整えて、俺は家を出た。

145: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:07:27.10 ID:AWt+pkbDO
 純さんの家に着いた。
 俺はインターホンを押す。

 しばらくすると、純さんが出てきた。

純「お、聡くん。待ってたよ」

聡「こんにちは、純さん。誕生日、おめでとうございます」

純「えへへ……ありがと。さ、入ってよ」

 純さんはそう言うと、俺を家の中に招いた。

聡「お邪魔しまーす」

 俺はそう言うと、家の中に入った。

146: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:08:53.02 ID:AWt+pkbDO
 階段を上り、純さんの部屋に入る。
 純さんの部屋には、既に梓さんと憂さんがいた。

梓「あっ、聡くん、こんにちは」

憂「こんにちは、聡くん」

 二人に挨拶される。
 なぜか二人共口元が若干緩んでいる。
 うぅ……意外と彼氏って恥ずかしいんだな……
 しかもそれが年上ならなおさらだ。

純「じゃあ、メンバーも揃ったことだし、始めるよ」

 俺達はケーキのロウソクに火をつけ、カーテンを閉めて部屋を暗くした。

憂「ハッピバースデートゥーユ~♪」

梓「ハッピバースデートゥーユー」

聡「ハッピバースデーディア純さ~ん♪」

三人「ハッピバースデートゥーユー♪」

 俺達が言い終わると、純さんは火を消そうとした、が。

 一本だけ残ってしまった。

 俺は反射的に、その最後の一本を消してしまった。

聡「あっ……」

 俺は純さん達の方を見る。
 純さんは赤くなってるし、梓さんはニヤニヤしてるし、憂さんは悪気の無い満面の笑顔でニコニコしていた。
 俺は顔が赤くなったのが自分でも分かった。

147: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:10:16.78 ID:AWt+pkbDO
 カーテンが開かれ、部屋が明るくなり、お互いの様子がさらに見えやすくなった。

憂「純ちゃんと聡くん、顔真っ赤~」

梓「ホントだ。ラブラブだねぇ~。見てるこっちも恥ずかしくなるよ」

純・聡「……///」

 二人にそう言われて、俺達はさらに顔を赤くする。

梓「初々しいねぇ~」

憂「ホントだよ~」

純「あっ、え~と……うん、乾杯しよう、乾杯!」

聡「そ、そうですね! じゃあケーキ切りましょう!」

憂「あ、ケーキは私が切るよ。」

 俺達は必死に照れ隠しをする。
 もしここに姉ちゃんや鈴木がいたら、もっとヤバかっただろうなぁ……

148: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:11:58.19 ID:AWt+pkbDO
 ケーキが切られる。
 なぜか俺と純さんのだけ大きい。
 憂さん何気にやってくれるなぁ……

憂「それじゃあ改めて……」

三人「純(ちゃん(さん))、誕生日おめでとう(ございます)!」

純「えへへ……ありがと」

 純さん照れてる。
 まぁ、そりゃ照れるわな。

149: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:13:28.72 ID:AWt+pkbDO
 しばらくは皆で楽しくおしゃべりしながら食べていたが、憂さんの一言で場は一気に静まり返った。

憂「そういえば、純ちゃんと聡くんって、どういう経緯で付き合うことになったんだっけ?」

梓「あ、それ私も知りたいな~」

純「え~と、それはちょっと……」

聡「えぇ、恥ずかしいですよね」

憂「え~、言っちゃいなよ~」

梓「そうだよ。こんなんで恥ずかしいとか言ってたら、この先どうするの?」

 この二人は何を言っても聞かなそうだな……
 俺達は負けてしまった。

150: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:15:15.33 ID:AWt+pkbDO
 俺達はこれまでの経緯を話した。

 近くのスーパーで純さんが買い物袋の中身を散らばして、俺が集めるのを手伝って知り合ったこと、その後偶然ゲーセンで会い、遊んだあと連絡先を交換したこと、デートに誘って家まで迎えに行ったとき、俺の親友の鈴木の姉だと判明したことなど、いろいろ話した。

 二人は興味津々な様子で聞いていた。

151: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:16:54.59 ID:AWt+pkbDO
 話し終わった後も、いいなーとか、青春だねぇとか言われたりして、からかわれた。
 その後もしばらくはおしゃべりをしていたが、またしても憂さんの一言で場が静まり返った。

憂「そういえば、二人はもうキスとかしたの?」

純・聡「えっ!?///」

 なんという不意討ち。
 純粋すぎですよ憂さん!

梓「ちょっ!? う、憂!?」

憂「だ、だって~///」

 気になるのはよ~く分かりますけど……これを話すのは恥ずかしすぎる!

憂「二人とも、もう半年近く付き合ってるし、そのくらいはしたのかな~って」

 えぇキスしましたよ!
 付き合って二ヶ月くらいにね!
 まだその先は進んでないけど!
 でもとりあえず、ノーコメントにしておこう。

 さすがにこれは話せない!

152: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:18:40.43 ID:AWt+pkbDO
 二人に話せないと言うと、さすがに納得してくれたようだった。
 その後は、憂さんの爆弾発言も無く、プレゼントも渡して、誕生日会は終わりを告げた。
 姉ちゃんに聞いたかいもあり、純さんは本当に喜んでくれた。
 やっぱり純さんには笑顔が似合うなぁ……可愛い。


梓「じゃあね、純、聡くん」

憂「バイバイ純ちゃん、聡くん」

純「バイバイ、憂、梓」

聡「さようなら~」

純「……今日はありがとね。嬉しかったよ」

聡「いえいえそんな……彼氏だったらこのくらいは当然でしょう」

純「フフッ……そうだね」

聡「……」

純「……」

 会話が無くなる。
 こうなったらやることは……一つしかない。

聡「純さん……」

純「聡くん……」

153: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:20:33.73 ID:AWt+pkbDO






「」









154: ◆7zEX7Ddaxc 2011/04/08(金) 21:22:37.72 ID:AWt+pkbDO
純「……///」

聡「……///」

純「それじゃあ……バイバイ、聡くん」

聡「はい、純さん、さようなら!」

 そう言って、俺は自分の家へと向かう。

 家に帰ったら、姉ちゃんに感謝しないとな……
 俺は先程の純さんの唇の感触を思い出しながら、夕暮れの道を歩いていった――――

         ―END―

155: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:16:14.52 ID:bBMOUJhFo
あるところに純ちゃんひつじさんがいました

純ちゃんひつじさんはひつじなのでモフモフです

純ちゃんひつじさんはモフモフなので、冬でもあったかあったかです

ですが、純ちゃんひつじさんには不満がありました

純「あー、なんで私の毛はモフモフしてんのよー!」

156: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:18:46.65 ID:bBMOUJhFo
憂「純ちゃん、どうしたの?」

彼女は純ちゃんひつじさんの一番のお友達の、おさかな憂ちゃんです

おさかな憂ちゃんはおさかななのでいつも水の中にいます

純ちゃんひつじさんはよくこの池に行っておさかな憂ちゃんと遊びます

純「私もう天パーやだー!」

憂「純ちゃんは全然天パーじゃないよ!」アセアセ

純「その憂の優しさで心が痛いよ……見ただけでわかるでしょ?」

憂「うん……まぁ、天パーって言われれば……天パーかもしれないぐらいだよ!」

おさかな憂ちゃんはできた子です

困った人を放っておけず、いつも他人のフォローを欠かしません

157: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:20:52.97 ID:bBMOUJhFo
憂「どうして純ちゃんはそんなに自分の毛を気にするの?」

純「そろそろ梅雨じゃない、梅雨が来ると上手にセットできないのよ」

憂「でも純ちゃんのモフモフ、可愛いよ?」

純「そんな表面上の可愛いじゃあ日常生活の不満を解消するには至りません!」

憂「うーん、どうやって説得すればいいのかなぁ……?」

梓「何やってんの二人とも」

憂「あ、梓ちゃん!」

彼女はあずさそり、純ちゃんひつじさんとおさかな憂ちゃんの大の友達です

憂「実はかくかくしかじかで……」

梓「ふん、なるほど純は自分が天パーだってことを気にしてんのね」

158: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:22:41.27 ID:bBMOUJhFo
梓「純、ちょっとこっち来て」

純「?」

梓「うしろ向いてー」

純「うん……?」

梓「えい」プス

純「!? ……意識が……」

憂「梓ちゃん!?」

梓「大丈夫、みねうちだから」

憂「そうじゃなくて!」

梓「まぁ見てなって」

159: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:24:17.21 ID:bBMOUJhFo
純「」

梓「うんしょ、うんしょ」ズリズリ

憂「梓ちゃん、純ちゃんをどうするの!?」

梓「そぉい!」バシャーン

純「……はっ! 私は一体!?」ビシャビシャ

梓「純、今アンタの毛はベッタリしてるよね」

純「……? ……うん」

梓「中途半端に湿気が多いから天パーが目立つのよ」

梓「いっそ湿気を増やしてしまえばむしろ天パーが目立たない!」ビシッ

憂純「……」

純「すっごー! 梓って天才じゃん!」

憂「!?」

あずさそりは策士です

特に純ちゃんひつじさんの扱いは人一倍です

160: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:26:25.46 ID:bBMOUJhFo
夏になって、純ちゃんひつじさんは困っていました

純「あーづーいー……」

純ちゃんひつじさんはモフモフなので、夏は暑いのです

紬「しゃらんら~♪」チョキチョキ

そこに、ムギかにさんが偶然通りかかりました

純「紬先輩! 毛を刈ってもらえないですか!」

紬「!? ……なぁんだ、純ちゃんね」

純「いやー、夏は暑くって……」

紬「そうよねー、暑そうだものねー」

紬「わかったわ、王宮で使われてたと言われているこのハサミで刈ってあげるわ♪」

純「わーい、ありがとうございます!」

ムギかにさんはお母さんみたいにやさしいひとです

161: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:28:52.48 ID:bBMOUJhFo
紬「ちょきちょき」

純「あー、そこですそこです!」

紬「ちょきちょき……」

純「スースーして気持ちいいー」

紬「……」

純「どうしたんですか紬先輩?」

紬「なんだか背徳感が///」

純「?」

そしてちょっと不思議な時があります

162: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:30:43.22 ID:bBMOUJhFo
純「ありがとうございましたー」スッキリ

紬「毛を刈る時は、またいつでも言ってね♪」

純「はい、よろしくお願いします、ではー」

紬「……」

紬「もしかして、純ちゃん……今裸?」

紬「斎藤、撮影の準備を」

斎藤「はっ」

権力は恐ろしいですね

163: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:34:23.11 ID:bBMOUJhFo
純「あースッキリしたー」

律「お! 獲物発見!」キラリーン

純「ん? 何か向こうから走ってきてるような……」

律「確保だぜ! がおー!」

純「ぎゃー! 食われる―!」

おやおや、浮かれていたらりっちゃんライオンに見つかってしまったようです

164: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:36:28.80 ID:bBMOUJhFo
純「やめてー、死にたくなーい!」

律「待て待て、食べるつもりじゃないよ」

純「え?」

律「話し相手が欲しかったんだよねー」

純「はぁ」

りっちゃんライオンは見かけによらず寂しがり屋です

律「澪のやつ、勉強しろ練習しろってうるさくてさー、ついつい喧嘩しちゃって……」

純「澪先輩……」

澪やぎさんは純ちゃんひつじさんの憧れのひとです

純「澪先輩とはどういったご関係で!?」

律「あー、澪とは幼馴染だよ」

純「幼馴染!? すごい!」

律「?」

165: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:38:19.75 ID:bBMOUJhFo
律「でさー、アルファがベータをカッパらって……」

純「あははー、面白いですねー!」

どうやら純ちゃんひつじさんとりっちゃんライオンは気があったみたいですね

律「おっともう夕飯の時間だ、聡に飯作ってやんないと!」

純「弟さんですか?」

律「うん、またこれが手間のかかる弟でねー」

純「律先輩が料理できるのは意外です!」

律「くっ、いつも言われるんだよなソレ!」

純「律先輩は男っぽくてカッコいいからですよー」

律「えぇー!? そ、そうかなー? 確かにそんな感じがしなくもないけど!」

りっちゃんライオンは面白いひとです

166: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:40:19.55 ID:bBMOUJhFo
純「それで、今日は何を作るんですか?」

律「ああ、ハンバ―グだよ」

純「!?」

律「私ハンバーグ得意なんだ! 良かったら今度食べにこない?」

純「は、はい……その時は……是非」

草食動物である純ちゃんひつじさんは、ちょっとだけ生命の危機を感じました

167: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:42:20.93 ID:bBMOUJhFo
秋もすぐに過ぎていって、冬も近づいたころ

唯「あずにゃーん!」ギュー

梓「恥ずかしいです離してください、刺しますよ!?」

唯「あずにゃんのいけずー」

唯タウルスとあずさそりがいちゃいちゃしています

純「あ、おはよー梓、と……誰?」

梓「この人は唯先輩、私がよくギター教えてあげてるひと」

純「先輩なのに教えてるの?」

唯「面目ありません」

純「あ、そういう意味じゃ……」

168: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:44:15.47 ID:bBMOUJhFo
唯「それでね、私はあずにゃんにギターを教わってるんだけど」

純「あの、さっきから気になってたんですけど……あずにゃんって何ですか?」

唯「純ちゃんお目が高い! あずにゃんとはあずにゃんが猫っぽいから私がつけたあだ名である!」

梓「意味が分かりません……」

さすがのあずさそりも、唯タウルスの前ではタジタジのようです

唯「話の続きだけどー、冬が来るからその前に一曲歌を作ろうかと思って!」

純「お、なんだかカッコいい!」

唯「秋の終わりに演奏会するから、是非来てね!」

純「はい、わかりました」

169: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:46:31.28 ID:bBMOUJhFo
秋のおわり、予定通り唯タウルスの演奏会は開かれました

唯「本日はお集まりいただきありがとうございまーす!」

「イエーイ!」

唯「この子はギー太って言います! 理由は可愛いからです!」

「ナンジャソリャー!」

唯「では1曲目行きまーす!」

純「どきどき……」

チャラリ~~ララ~~♪

純「何このお腹の減る音楽……」グゥー

その日は屋台が儲かったそうです

170: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:48:58.72 ID:bBMOUJhFo
寒い寒い冬の日、澪やぎさんと和やぎさんが何やら話しています

澪「律が全部食べちゃったって本当か!?」

和「ええ、唯と二人で全部食べちゃったって……」

純「何話してるんですか?」

澪「実は私達が冬を越すために残しておいたケーキを、律と唯が食べてしまったんだ」

和「それでどうしようか、って相談していたのよ」

純「あの二人が……なんだか容易に想像できますね」

澪「そもそも私が律をちゃんと見てなかったのがいけないんだ……」

和「いえ、唯を野放しにした私にも責任はあるわ……」

澪やぎさんと和やぎさんは、とっても責任感が強いです

171: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:50:30.30 ID:bBMOUJhFo
澪「いや、私が……」

和「いいえ、私が……」

純「……この加害妄想のデフレスパイラルをどうにかしないと」

純「そうだ! ……私がケーキを持ってきます!」

和「でもあれはムギの特製ケーキなのよ?」

純「紬先輩には結構お世話になってますから大丈夫ですよ」

澪「で、でも……今ムギは山奥の別荘にいるんだぞ?」

純「……やると言った手前、それでもやるしかない、澪先輩の評価も上がるし……」

純「やります! 私行ってきます!」

172: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:53:26.10 ID:bBMOUJhFo
純「……と、言ってはみたものの」

純「寒いここどこもういやだ……」

結局純ちゃんひつじさんは雪山で迷っていました

純「ん? あれは……?」

唯「りっちゃん、私もう眠いよ……」

律「もう少しだ―! オアシスが見えてきたぞー!」

唯「もうお腹いっぱいだよ……」

律「ラクダだ―! ラクダの大群だ―! 私達は助かったんだ―!」

純「なんだか朦朧としてて近づきがたい二人組が……」

173: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:55:40.36 ID:bBMOUJhFo
紬「あら? どうしたの? 唯ちゃんとりっちゃん大丈夫?」

純「実はケーキを貰いに来る途中二人が倒れてて」

唯「うーん……」

純「あ、意識取り戻した」

律「ここは……?」

紬「ここは私の別荘よ」

唯「良かった、無事着いたんだ! 私達ムギちゃんにケーキ貰いに来たんだよ!」

純「まさか、こっちのケーキも食べつくす気ですか!?」

律「違うよ、澪と和には悪いことしたから、せめてケーキ持っていってあげようと思ってさ」

紬「そうだったの、そういうことならいくらでも持っていって!」

唯「ムギちゃんありがとー!」

純「……いいのかこれで」

こうして無事澪やぎさんと和やぎさんは冬を越せるだけのケーキを取り戻しました

もちろん、唯タウルスとりっちゃんライオンはこっぴどく叱られました

174: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 13:58:02.56 ID:bBMOUJhFo
冬も深まったある日、おさかな憂ちゃんと誰かが話しています

?「でね、その男がまた酷い奴でね!」

憂「はぁ……」

純「憂おはよー」

憂「あ、純ちゃん」

?「この子は?」

憂「私の友達の純ちゃんです」

?「ふーん……」

純「あ、あのー、なんでしょう?」

?「……チャイナ服? いや、あえてのゴスロリ……」

純「あのー……」

?「あ、ごめんね、わたしはさわ子、みんなからは先生って呼ばれてるわ」

さわ子「……別に呼ばれてる理由は年齢じゃないわよ」

純「は、はい!」

175: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 14:00:09.33 ID:bBMOUJhFo
みずがめさわちゃんはみんなの先生です

いつもみんなを見守ってくれています

さわ子「あ、憂ちゃん水お願い」

憂「はい!」

でも、ちょっと人使いは荒いです

純「あのー、ところで先生は何の先生なんですか?」

さわ子「そうね……強いて言うなら人生、かしら」

純「それっておb……」

さわ子「殺されたい?」

純「すみませんでした」

さわ子「実は私音楽の先生なの」

純「音楽ですか、私実はベース弾けるんですよ!」

さわ子「まぁ、ちょっと聞かせて」

176: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 14:02:42.26 ID:bBMOUJhFo
憂「先生、お水用意できまし……」

純「ベベンベン!」

さわ子「いい感じになってきたわ!」

憂「……いつの間にか仲良くなってる、ふふふ」

純「まだまだー!」

さわ子「その調子よ!」

憂「もうちょっと、そっとしておこうかな?」

みずがめさわちゃんと純ちゃんひつじさんは気が合うみたいです

177: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 14:04:16.08 ID:bBMOUJhFo
またある日、おさかな憂ちゃんは悩んでいました

憂「……」

純「どうしたの、憂?」

憂「あ、うん、私おさかなじゃない」

純「うん」

憂「だから冬の間もずっと水の中にいて、実はちょっと寒いんだ……」

純「不便だね」

憂「うん、どうにかならないかなー」

純「うーん……」

純「そうだ! 私の毛を使いなよ!」

憂「純ちゃんの!? 寒くない?」

純「私は大丈夫だよ、だって前刈った毛使えばいいんだもん」

憂「あ、そっか」

純「ちょっと待っててね」

178: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 14:06:37.74 ID:bBMOUJhFo
純「できた! 純ちゃん特製耐寒用憂スーツ!」

憂「何その名前~、ふふっ」

純「カッコいいでしょ!」

憂「うん、面白いね!」

純「……あれ、何かずれてる気がする」

純「まぁいいや、早速着てみてよ!」

憂「うん!」

憂「いそいそ……」

憂「あ、これ……水吸って……」

憂「……」

純「縮んじゃったね……」

179: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 14:08:29.37 ID:bBMOUJhFo
憂「仕方ないよね、ありがとう」

純「まー処理に困ってたし、小さくなって捨てやすくなったかもね」

憂「プラス思考なんだね」

純「それだけが売りだからね」

憂「そんなことないよ」

純「例えば?」

憂「純ちゃんといると、気持ちが明るくなるよ」

純「それってプラス思考と被ってない?」

憂「あ、そうかも」

純「ま、いっか」

憂「さすがプラス思考だね」

純「へへへー」

180: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 14:10:24.56 ID:bBMOUJhFo
冬が過ぎ、季節が春めいてきたころ、純ちゃんにお客さんが来ました

澪「純ちゃん、だったっけ」

純「!? 澪先輩!」

澪「この間は律が迷惑かけたな、ごめん」

純「いえ、いいんですよ、私が勝手に山に登っただけですから!」

澪「実は純ちゃんに手紙が来てるんだ」

澪「……正直運ぶ間に何度食べそうになったことか」

純「え?」

澪「な、なんでもない! 手紙は置いておくからっ!」

純「変な澪先輩……何々?」

181: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 14:12:25.99 ID:bBMOUJhFo
『純ちゃんへ この間の毛、フェルトにして有効活用しました。 良かったら何でも作るよ! 憂』

『純ちゃん、さわ子です。 練習はちゃんとしていますか?
 今度あなたのために特別にあるものを用意したので、期待していてください。』

『和です。 この間は唯がお世話になりました。 あなたとは会う機会はほとんどないけど、次会うときもよろしくお願いします』

『唯です、この間はありがとうね。 純ちゃんのモフモフのおかげで助かったよ!』

『特に手紙を書いてまで話すことなんてないけど、これからもよろしくね 梓』

『この間は助けてくれてありがとな! 今度ハンバーグごちそうするからぜひ来てくれよな! 律』

『純ちゃん、紬です また暑い季節になったら毛を刈りに来ませんか? 今度はお茶も用意して待ってます♪』

純「なんかすごい数の手紙ですね」

182: ◆8Fozx2lbSE 2011/04/09(土) 14:13:58.71 ID:bBMOUJhFo
澪「それと、これは全員から」

澪「純ちゃん、お誕生日おめでとう!」

純「!」

澪「じゃあ私はこれで……」

純「待ってください! みんなにありがとう、って伝えて貰えませんか?」

澪「わかった」

純「……」

今年の春は純ちゃんひつじさんにとって、ちょっぴり自分のことを好きになれた、そんな春でした


おわり

183: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:26:44.92 ID:c/LuKxJAO
次行きます
純「特別な日」



厳しい冬が過ぎ、春が来た。
生き物たちはこの時を待ちわびたかのように歓喜しながら野を、山を駆ける。

「ふぁ…」

思わずウトウトしてしまいそうなポカポカ陽気のお昼、私は日頃の疲れを取るべく、いつもの公園でベンチに座り、くつろいでいた。


「こっちこっち~」

「まってよ~!」

この公園はいつも子供達でいっぱいだ。
子供達のはしゃぎ声がうるさいぐらいに聞こえてくる。

「まったく…ちっちゃい子供はやっぱり元気いっぱいなんだな…」

でも、それだけこの場所が子供達の笑顔で溢れていると考えればそれも悪くはない。

184: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:27:35.78 ID:c/LuKxJAO
この公園は私の小学生の頃からあった。
長い歴史がある公園だ。

「さてと…」

ちょっと、木々の間をぶらぶら。
小鳥たちのさえずりが聞こえてきた。

ホーホケキョ

「ウグイスかぁ…」

木漏れ日が目に差し込んでくる。
一般ピーポーの私が言うのもなんだがこれが素晴らしい昼の情景というものなのだろう。


「あ。」

ふと、広場の方に目をやると、クレープ屋のワゴン屋台があった。

「クレープか…」

今はおやつ時であるため、当然の事ながら屋台にはクレープを求める親子連れの行列ができていた。

185: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:29:06.67 ID:c/LuKxJAO
「おかーさん、クレープたべたい!」

「ダメ。我慢しなさい。」

「たべたいの~!」

「仕方ないわね…」

色とりどり、様々な味が楽しめるクレープは子供達にとって、この上なく魅力的な物なのだろう。

できれば私も食べたかったが、夜のメインイベントを考えて気持ちを抑えた。


私も梓や憂と一緒に食べたことが何回もある。(今のクレープ屋とは違うものだったが)
協力してもらって、期間限定メニューを一回でコンプしたこともあった。
財布が空になって母さんに怒られたっけ。

ホームレスらしい女の子に分けてあげた事もある。
その時の笑顔は今も忘れられない。
そういえばあの子は元気にしてるのだろうか?
願わくばどこかで幸せになっていてもらいたいものである。

186: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:33:01.78 ID:c/LuKxJAO
また少し公園を散歩した。
最近は忙しくて、時間があまりないから、今日ぐらいはこの場所を満喫したかった。

私が小学生の頃によく遊んだ遊具は撤去されてしまっていた。
何でも老朽化と国の安全基準を満たしていない事とで撤去が決まってしまったらしい。
非常に残念な話である。


しばらくして

「あ、もうこんな時間か~」

すっかり日も暮れて、子供達も帰り始めていた。

「帰るか。」

私も我が家に帰る事にした。


程なく愛しの我が家にたどり着く。
何の変哲もない2LDKの一軒家。
私はインターホンを押し、
「ただいま。」
と一声かける。

そして玄関のドアを開けると…

187: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:36:25.68 ID:c/LuKxJAO


「「おかえりー!」」


元気な声とともにしがみついてきた、

「おかーさん!」

「だっこして~」

「はいはい、わかったわかった。」

私の子供達。

5才の男の子と3才の女の子。
やんちゃ盛りの甘えん坊だ。

私は二人を優しく抱きかかえた。

「わーい!」

「きゃっきゃっ!」

「二人ともおっきくなったね~だっこはもう卒業かな?」

子供達はすくすくと成長していた。

「やだ!」

「ずっとだっこがいい!」

まだまだ私に甘えたいようだ。


子供を下ろし、手を洗った後、

「そういえばおとーさんはどこにいるのかな?知ってる?」

と訊いた。

すると子供達は、にっこり笑って

「おとーさんはだいどころ。」

「りょうりつくってる。」

こう答えた。

188: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:37:49.57 ID:c/LuKxJAO
普段は主婦である私が料理担当だが、こういう特別な日などは旦那が料理を作ってくれることがある。
旦那の料理の腕は私以上に良く、子供達にも人気だ。

「そっか。ところで今日が何の日か知ってる?」

すると

「うーん…なんのひだろ?」

「しってるよ!おかーさんのたんじょうびでしょ?」

「あっ、そうだったっけ?」

妹は知らなかったがお兄ちゃんは知っていたようだ。

「正解。今日は私の誕生日だよ。」

「やった~!」

「…ごめんなさい。」

喜ぶお兄ちゃんと落ち込む妹。

「気にしないで。」

「うん…」

「でも来年は覚えていてほしいな。」

「…わかった。」

妹の顔に笑顔が戻る。

189: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:39:31.57 ID:c/LuKxJAO
その時

「おーい。ご飯出来たぞ~」

「あっ、今行く!」

夕食の支度ができたようだ。

「ごはんだ!」

「わたし、たのしみ!」

「じゃあ行こ?」

子供達を連れ、食卓についた。
当然、食前の手洗いは欠かせない。


「「「「いただきます!」」」」

家族4人で食事の時間だ。

「おいしい!」

「おとーさんのおりょうりすごくおいしいよ!」

旦那の料理に喜ぶ子供達。

「ふふっ。それじゃあおとーさんの料理と私の料理はどっちが美味しい?」

子供達に訊いた。
すると子供達はしばらく考え込んだ後、

「どっちも!」

「わたしもどっちもすき!」

「そっか~!」

私も旦那も笑顔になった。

そして旦那の手料理を私達は心ゆくまで堪能した。

190: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:42:08.97 ID:c/LuKxJAO
食後

「「「「ごちそうさま!」」」」

もちろんこれで終わりではない。

「じゃあケーキ持ってくるよ。」

旦那は冷蔵庫からケーキを取り出した。
そして蝋燭を差し、火をつけた。
大きなイチゴのショートケーキでその上にチョコレートでできたプレートが乗っかっている。
「おたんじょうびおめでとう」の文字が書かれている。


「はっぴーばーすでーとぅーゆー」

「はっぴーばーすでーとぅーゆー」

「はっぴーばーすでーでぃあーおかーさん」

「はっぴーばーすでーとぅーゆー」

子供達がお決まりのバースデーソングで私を祝う。
思わず笑顔が綻ぶ。

「それじゃあ蝋燭消すよ。」

それから私はふーっと一息で蝋燭の火を消した。

「すごーい!」

子供達が驚いたみたいだ。

191: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:43:21.17 ID:c/LuKxJAO
ケーキを切り分け、みんなで食べた。

「…」

妹が私のチョコプレートをじっと見つめている。

「ん?これ欲しいの?」

私はそれに気がつく。

「うん。でもがまんする。おかーさんのたんじょうびだからそれはおかーさんのものだから。」

「そっか。ありがとね。」

とても私の子とは思えないほどのいい子である。

イチゴのショートケーキとチョコのプレートはもちろん甘くておいしかった。


ケーキを食べ終わり、食休み。

「おかーさん、これぷれぜんと。」

「わたしたちふたりでえらんだんだ。」

子供達がくれたのは小さな小物入れ。
可愛らしいウサギの刺繍がある。

「ふふっ、ありがと。大事に使うからね。」

子供達の頭をなでてあげる。
子供達もとっても嬉しそうだ。

「それじゃあ俺からはこれ。」

旦那はおしゃれなカバンをくれた。

「ちょうど買い換えようと思っていたんだ。ありがと。」

旦那にも感謝の言葉を。

192: ◆E0x9cdUQmc 2011/04/09(土) 15:44:52.23 ID:c/LuKxJAO
私はどこにでもいるような普通の人間だ。
旧姓の鈴木を捨て、新しい名字になっても、普通過ぎる名前だし、ベースがちょっと出来るだけで後は平均的な能力の持ち主だし。

でも、そんな私にも特別な日がある。

それは誕生日。
私がこの世に生を受けた日だ。

全ての人に訪れる一年に一度の特別な日。

高校生だった頃にはお父さんお母さんに兄貴、梓や憂に祝ってもらったっけ。

今は愛する旦那とお腹を痛めて産んだ大切な子供達が私を祝福してくれる。

私はとっても幸せ者だ。


願わくば私達家族4人、これからもずっとずっと幸せでありたい。



おしまい!

205: ◆ck.hgz/bf6 2011/04/09(土) 20:06:37.57 ID:kYSAC7pto

   純『サプライズ誕生日』




――チュンチュン


 ガラッ


純「んんー、いい朝だ!」

純「……」

純「んふっ、ふふふ……」

純(いよいよ今日は、待ちに待った……)



純「4月8日(仮)、今日はわたしの誕生日!」ワーイ



純(どのくらいもてはやされちゃうかなぁ)

純(楽しみだなぁうふふ)

206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) 2011/04/09(土) 20:07:11.94 ID:kYSAC7pto



――
――――


  午後10時。


「……」

梓「じゅんー?」ドンドン

憂「純ちゃーん」

「……」

梓「出てきてよー」


 ガチャ

純「……」

梓「あ」

憂「誕生日忘れちゃってごめんね純ちゃん……」

純「……」プイ


憂「これプレゼント、純ちゃんに……」

純「プレゼントなんていらないし」ブツブツ

梓「そんなこといわずに、ほら」

純「いらないし」ブツブツ

梓「もー、いつまでいじけてるの!ごめんねって言ってるじゃん!」

憂「あ、梓ちゃん……」

207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) 2011/04/09(土) 20:08:14.20 ID:kYSAC7pto


純「……」

憂「ほんとにごめんね純ちゃん、……その、誕生日が曖昧で……」

梓「純のことはわたしも憂も大事に思ってるよ!」

純「……」

憂「う、うん!そうだよ、純ちゃんは大切な友達だよ!」

梓「今度なにかおごるから、だからもう怒らないでよ、ね?」

純「……」

憂「……」ドキドキ


純「……なか、入ってもいいし」ボソ

憂「!あ、ありがとう純ちゃん!」

梓(その口調は抜けないんだ)

純「……」

憂「お、おじゃましまーす」

208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) 2011/04/09(土) 20:08:39.43 ID:kYSAC7pto



 テクテク

純「……」

梓憂「……」

純「……ドーナツ」ボソッ

梓「わ、わかった!ドーナツね!」

憂「あ、はは、ドーナツ買うの楽しみー」

純「……」


 …バタン

梓憂純「」ワイワイ




             ――おしまい。






「……あっ、忘れてた。誕生日おめでとう純」

「あ、そうだったね。おめでとー」

「……」グスン

「……うわあぁぁん!」ビエー





             ――おしまい!

209: 純「誕生日なのに雨」 ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:30:00.38 ID:RUPlHVe00
純「誕生日なのに朝から雨って凄く気が滅入るのよ」

梓「へぇ」

純「髪も爆発するしさ」

憂「うん」

純「おまけに雷まで鳴ってる」

梓「雷の季節っていつだったっけ」

憂「夏のイメージだよね」

210: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:31:03.02 ID:RUPlHVe00

純「気圧が下がるから弦の張りも悪くなる」

梓「カビるしね」

憂「食材も腐るよね」

純「というかそもそも」

梓「うん」

純「去年も一昨年もその前も私の誕生日には雨が降ったの」

梓「呪われてるね」

憂「その髪質とともに呪われてるね」

純「ああストレートになりたい」

梓「いっそ爆発ヘアーを開き直ってみたらどうかな?」

純「というと?」

梓「ペガサス昇天盛り」

純「却下」

211: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:32:31.76 ID:RUPlHVe00


憂「4月8日豆知識ー」

純「何何?」

憂「本日は降誕会だよ」

純「何それ」

憂「釈迦の誕生日とされている日だよ」

純「へぇ」

憂「日本では花御堂の中の仏像に甘茶をかけてそれを祝ってるんだ」

純「へぇ」

梓「それで?」

憂「今日は甘茶を淹れてみました」

純「これを頭からかぶるの?」

梓「私の部屋が汚れるからやめて」

212: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:33:35.89 ID:RUPlHVe00
[>お昼


純「今日のお昼はズバリ!」

梓「宅配寿司だね」

憂「宅配ピザだね」

純「そして宅配ラーメンだね!」

純「何この出前まみれ」

憂「昼ごはん作る気力が無かった」

梓「仕方ないよね」

純「それは仕方ないね」

213: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:34:47.88 ID:RUPlHVe00
[>午後


純「この漫画の八巻は?」

梓「今読んでる」

純「じゃあこれの十八巻は?」

憂「今読んでる」

純「あ、じゃあこれの三巻は?」

梓「売った」

純「三巻だけ!?」

梓「三巻から面白くなるから布教するために」

純「私に布教する気はないのかあ」

梓「残念ながら御縁が無かったということで」

214: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:36:06.67 ID:RUPlHVe00


憂「まだ雨だね」

梓「爆発具合の調子はどう?」

純「いい具合に成長中」

梓「爆発って成長するの?」

憂「さあ」

梓「じゃあ純ちゃんの頭は成長する爆発なのか」

憂「爆発する成長?」

梓「爆発的成長」

憂「成長的爆発」

梓「生長的暴発」

憂「生長摘発」

梓「生長発」

憂「超発生」

梓「調髪せい」

憂「剃髪せい」

純「まさかの出家」

215: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:37:38.49 ID:RUPlHVe00
[>晩


純「今日の晩御飯は!?」

梓「晩御飯までずっと私の家にいたね」

憂「正直帰る気配が無くてびっくりした」

純「図々しいと思われてましたか私!?」

梓「まぁ、正直」

憂「正直、まぁ」

純「割と心が傷ついた」

憂「はい、アロンアルファ」

純「その強引な療法はどうだろう」

216: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:39:21.69 ID:RUPlHVe00
[>夕食後


純「ごちそう様でした」

梓「なんだかんだで豪勢な料理だったね憂」

憂「だって今日は誕生日だし」

梓「釈迦の?」

憂「うん」

純「誕生日おめでとうって言っていいのかなこれ」

憂「うーん」

梓「とりあえず般若心経唱えれば問題ないんじゃない?」

憂「そうだね」

純「ケーキを前にして般若心経とは」

217: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:40:42.53 ID:RUPlHVe00

純「ろうそくは何本?」

憂「余裕で死後1000年以上経ってるしね」

梓「末法だね」

憂「とりあえず17本」

純「すごく若くなった」

憂「それでは」

憂・梓「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」

純「なんだろうこれ」

218: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:42:40.52 ID:RUPlHVe00
[>しばらくして


憂・梓「羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶。般若心経」

純「この空気に耐えられなかった」

憂「誕生日おめでとう、純ちゃん」

純「えっ」

梓「おめでとう、純」

純「えっ」

憂「実はずっと私達が純の誕生日についてあえて言わないことにしてたの」

梓「ごめんね」

純「待って、隠すにしてもシチュエーションのせいで感動さえできない」

219: ◆pWu1BG/K66 2011/04/09(土) 21:44:01.02 ID:RUPlHVe00


憂「そんなわけで改めておめでとう、純ちゃん」

梓「ハッピーバースデイ」

純「えへへ、ありがとう」

純「じゃあ火を消すよ」

梓「それはいけない」

純「なんでよ」

憂「ここに第二の不滅の法灯を誕生させるの」

純「なんてこったい」


[>完

220: ◆PzM.fg6qMoeY 2011/04/09(土) 21:52:54.72 ID:EvRefRn4o
みすど!

憂「純ちゃん、誕生日おめでとー!」

梓「おめでと純、今日はおごりだから食べて食べて」

純「じゃあさっそくひとつ……なんか悪いね、ありがと二人とも」ヒョイパクッ

梓「ほんとだよ、新入生の勧誘で忙しいのに……」

純「んぐ。新入生かー。けいおん部、新入部員入ってくれるかなー」

梓「勧誘始めたばっかりだし、新歓ライブも来週の月曜日だから、まだ……まだだいじょうぶだよ!」

純「ジャズ研は見学の子たちがたくさん来てるみたいでね、忙しそうだよ」

梓「うぅ、うちのなにがダメなんだろ……」

憂「梓ちゃん、きっとだいじょうぶだよ、お姉ちゃんも応援してくれてるし」

梓「唯先輩が応援してくれてる、って……それなんの根拠にもなってないよ憂……」

純「はい梓、暗い雰囲気出さないの。せっかくのわたしの誕生日なんだから!」

梓「そうだね、ごめんごめん。……"せっかくのわたしの誕生日"って、自分で言うことじゃないよ純!」

純「そうそうその調子、梓はそうじゃなきゃね」

憂「あっ、なんか今の純ちゃん大人っぽいね!」

純「ん、そうかな? ……まぁわたしも今日で18歳だし!」

梓「純ももう18歳かぁ、ていうか誕生日早いよね」

純「クラス替えしたばっかで周りとあんまり仲良くなってないころに誕生日迎えるから、こうやって祝われたりすることって珍しいんだよ」

憂「始業式とかぶってるんだもんねー」

221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:53:26.22 ID:EvRefRn4o

純「あ、大人っぽいといえば……梓、澪先輩の誕生日知ってる?」

梓「え? えーっとたしか一月だったかな?」

純「ふむふむ……。じゃあ澪先輩とも一月まで同い年だ、なんかオトナになった気分!」

梓「たった三ヶ月の差でここまで……」

純「梓ー、うるさいぞー」

憂「そういえばわたしは純ちゃんとはほとんど一年くらい離れてるんだね」

純「憂は222だからー、二月二十二日だったよね! まだまだ憂は子供だねー」なでなでー

憂「えへへ、純お姉ちゃんだね!」

純「ふふーん、梓も今日から半年間は、わたしのほうがお姉さんだから、そういうことでよろしくっ」

梓「お姉さんって……」

純「純お姉さんって呼んでみな? 梓」

梓「じゅ、純お姉さんって…………にあわないよ純」

純「なにー? 年上をもっと敬いなよ」

梓「だって純だし」

純「なにさそれー」ぶすー

222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:54:43.89 ID:EvRefRn4o

憂「まぁまぁ梓ちゃん、今日ぐらいは純ちゃんを敬ってあげようよ」

純「うんうん、憂、いいこと言うね。今日はわたしを敬ってもらいたいね!」

梓「えー? 純を敬う……かぁ……うーん…………」

純「ほら、日ごろの感謝とか、ない?」

梓「日ごろの感謝……」

梓「……純、純は本当にいい友達だよ」

純「え、うん」

梓「けいおん部にだって入ってくれたし、ほんとに感謝してる」

純「ま……、まぁわたしは約束守る女だからね!」

梓「ジャズ研だって、部員ともめたんでしょ? 兼部ってことになってるけど……」

純「……それは、梓のためだから別に……」

梓「ううん、そう簡単にできることじゃないよ」

純「そうでもないって……」

梓「純、いつもありがとね、……純のこと好きだよ」

純「あ、あの…………うん///」

憂「梓ちゃん……」

純「どっ、ドーナツもう一個もらうね!///」ヒョイパクモグモグ

梓「……っ……!」プルプル

純「あっ///」

梓「………ぷっ、あははは! 照れてる純きもーい!」

純「ちょっとー! なにそれ梓ー!//」

223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:55:22.31 ID:EvRefRn4o

憂「梓ちゃん、今のはちょっといじわるだよー」

梓「ごめんごめん、でも純、感謝してるのは本当だよ」

純「素直にいいなよ……ちょっと感動したのに」

憂「あれは梓ちゃんなりの照れ隠しだよ、純ちゃん」

純「あっ、そうか」ポンッ

梓「ちっ、ちがうもんっ!///」ガタッ

純「隠すな隠すなー。いやぁ、梓はかわいいなー。んーほれほれ純お姉さんがいい子いい子してやろう」なでなでー

梓「うぅうう……、憂、余計なこといわないでよ……」

純「墓穴を掘ったね梓、録音しておきたいからもう一回言ってよ」

梓「いわない! もう純のこと褒めない!」

憂「喧嘩になるんだからそろそろやめなよ、ね? 二人とも」

純梓「ごめんなさい」

224: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:56:03.73 ID:EvRefRn4o

純「……しかしわたしも晴れて18歳だよ、夜遊びしても補導されないよ」

憂「だめだよ純ちゃん」

純「いやしないけど、門限あるしね……。あ、あと車の免許も取りにいける」

梓「受験もあるのに……」

純「えー……、じゃあじゃあ……◯◯◯なビデオ借りれるとか?」

憂梓「だめ」

純「なにもできないじゃん!」

梓「純はまだまだ子供だからダメ」

憂「うん、純ちゃんはまだまだ子供だよ」

純「そんな……大人になれたと思ったのに」

梓「純には落ち着きが足りないよね」

憂「そうだね梓ちゃん、もっとおしとやかにならなくちゃ」

純「!……澪先輩のように!」ガタンッ

純「梓、憂……わたし、今年はオトナになろうと思う!」じゅーん!

梓「へー、具体的に何するの?」

純「……例えば、恋愛とか?」

梓「恋愛……、アテあるの?」

純「いやいや、来るべきその時のために準備しておくのが大事でしょ。憂、ちょっと付き合って」

憂「えっ、純ちゃんっ?///」

純「いや、その……、恥ずかしがらないでよ恥ずかしい……///」

憂「だ、だって……///」

純「ちょっと練習に付き合ってもらうだけだって! そういう意味じゃなく!」

憂「なんだ……」シュン

梓「憂、なんでちょっとがっかりしてるの……」

225: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:56:47.38 ID:EvRefRn4o

純「ということで、憂」

憂「は、はい」

純「恋人役お願いね」

憂「恋人役……わかったよ!」


純「……う、ういさん」

憂「は、はいっ……」

純「……え……っと……//」ドキドキ

憂「うん…………//」ドキドキ


純憂「……………………///」


梓「……とりあえず手ぐらいつなぎなよ二人とも……」

純「いや、意識するとはずかしいっていうか……///」

憂「うん……///」

梓「純も憂も、まだまだ子供だね……」

226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:57:22.53 ID:EvRefRn4o

純「……そういう梓はどうなのさ」

梓「さすがに二人みたいにはならないよ」

純「じゃあやってみてよー」

梓「い、いやいや、恋人みたいなことするのはやっぱふたりっきりでじゃないと……、わかってないなぁ純は」

純「じゃあ今度梓とふたりきりになったら、梓お姉さんのお手本を見せてもらおうかな?」

憂「あ、じゃあわたしもー」

梓「……まぁ覚えてたらね」

純「逃げる気だ」

憂「梓ちゃんずるーい」

梓「う……とにかく! 純にはしばらく恋人できなさそうだね」

純「そんなっ」ガーンッ

憂「そ、そんなことないよ純ちゃんっ」

純「ういー……梓がいじめるー……」

憂「だめだよ梓ちゃん、今日は純ちゃんの誕生日なんだから」

梓「あはは、つい。純ってなんかいじめたくなるよね」

純「ひどいっ! 梓の鬼! わたしの味方は憂だけだぁー……」ひしっ

憂「よしよし純ちゃん、落ち込まないで」なでなでー

梓「え、なにこのアウェー感」

227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:57:53.15 ID:EvRefRn4o

憂「梓ちゃん、謝るなら今のうちだよ」

梓「ええー……ごめん純」

純「……ふんっ」ぷいっ

純「……うい…………こしょこしょ」

憂「なになに……? ……梓ちゃん、純ちゃんは心がこもっていないと申しております」

梓「直接言えばいいのに……なにそれ」

純「こしょこしょ」

憂「うん……うん……、梓ちゃん、純ちゃんはいまとても悲しんでいます。梓ちゃんに誠意を見せてもらいたいそうです」

梓「誠意……例えば?」

純「こしょり」

憂「フレンチクルーラーもってきて」

梓「なっ……!」

憂「じゅ、純ちゃんが言ったんだよ?」

純「んふー」モグモグ

梓「こ、この……甘え上手の末っ子上手め……」

純「てへ」

梓「そうやってふざけるところも子供っぽいんだってば」

純「いやむしろそこがわたしのチャームポイントだったりしない?」

憂「こしょこしょ話してきた純ちゃんはすごいかわいかったよー」

梓「わたしにはすごい憎たらしかったけど」

純「可愛さあまって憎さ百倍ってやつ?」

梓「そういうことにしといて」

純「素直じゃないなー、比べて憂は素直で可愛いねー。ほれ純お姉さんがなでなでしてやろうー」なでなでー

憂「えへへー」

梓「それ流行らせたいの……?」

純「純お姉さんだからね」

228: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:58:22.38 ID:EvRefRn4o

純「そういえば」

梓「どうしたの急に」

純「今年から三年生じゃん、だからさ、もしかすると……ゴールデンチョコパンとかも入手難度低くなったりするんじゃないかな!」

憂「三年生教室から購買近いもんね」

梓「ゴールデンチョコパンかぁ、一日限定三本だっけ」

純「よゆーよゆー、もうこれから毎日ゲットするよ!」

梓「太るよ」

純「……やっぱり毎日食べるのはありがたみがなくなるから週イチにしておく」

憂「うふふ、そうしたほうがいいね」

純「一年生の頃は手すら届かなかったゴールデンチョコパンももう……、わたしもやっぱり大人になっちゃったんだなー」

憂「もう高校三年生だもんね」

梓「あっという間だよね、高校生もあと一年しかないんだ……」

純「その分こうやって、いっぱい遊ぼうよ、ね?」

梓「純……」

憂「そうだね純ちゃん!」

梓「そのためにもまずは新入部員を獲得しなくちゃだね!」

梓「……ゴールデンチョコパンのくだりからでちょっとしまりがないけど、新歓ライブ頑張ろう、二人とも!」

純「にひひ、部長らしいじゃん梓」

憂「うん、がんばろー!」

229: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 21:59:11.75 ID:EvRefRn4o

――――――――
――――

純「――と、おしゃべりしてる間にドーナツなくなっちゃったね」

梓「あれ? いつの間にか外真っ暗になってる」

憂「おしゃべりに夢中で全然気づかなかったねー」

純「そろそろお暇しよっか、梓、憂、今日はありがとね、誕生日会開いてくれて」

梓「ううん、ドーナツおごったくらいだし」

憂「誕生日プレゼントも用意してあげられなかったし……」

純「プレゼントなんていらないよ、二人がこうやって祝ってくれるのが一番嬉しいからさ」

梓「あはは、ちょっとクサいよ? 純」

純「こういうことをサラッといえるのもオトナでしょ?」

梓「どうかな」

純「そうだ、このあと時間ある? ちょっと三人で買い物しない?」

憂「買い物?」

梓「そういってプレゼントねだるんじゃ……」

純「違うってば。なんか三人でおそろいのもの買おうよ、新学期も始まったし、新生けいおん部の誕生日でもあるじゃん?」

純「あっ、ほら「けいおんぶ」キーホルダーみたいにさ。あれ、憧れてたんだよねー」

憂「あ、それいい!」

梓「じゃあどこへいこうか、この時間だとー……」

純「考えてる時間がもったいないよ、歩きながら決めよ」

梓「そうだね、じゃあ、でよっか」

230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/04/09(土) 22:00:08.49 ID:EvRefRn4o

―――――
――


純「じゃあー、どこに行こうか、とりあえずそこのデパートはいってみる?」

梓「たしか雑貨屋あったよね」

純「なに買うかは、もうその場で決めちゃおう、ノリで!」

梓「変なもの買おうなんていわないでよ」

純「んー? 猫耳とか?」

梓「猫耳はもういいの!」

純「へへ、あーずにゃーん?」

梓「もう、じゅん!」

純「かかってこーい、18歳と17歳の格の違いを見せてやるっ!」

梓「なにをー!?」

憂「うふふふ」ニコー

純「あれ? どうしたの憂、楽しそうじゃん」

憂「うん。部活って、楽しいなって」

純「ん、そういえば憂はずっと帰宅部だったもんね」

梓「わたしも憂が入ってくれて嬉しいよ」

憂「えへへ、ありがと梓ちゃんっ」だきっ

梓「あはは、街中だよ憂ー」

純「お? ずるいぞそこー、わたしもー!」がばっ

梓「うわっ!? ふたりとも重いってばー!」


おわり。

231: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:22:05.27 ID:qqQjVaFW0
純「私は子供だ!」

232: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:24:12.18 ID:qqQjVaFW0
 『まあ、ちょっと悲しいこと、なのかな』

 彼女の口をついて出たのはそんな言葉だった。それぎり声は続かなくて、待ちぼうけの耳にひゅうひゅうと風の凪ぐ声が流れ込んでくる。春色をした夕焼け空に、まだら雲が小波みたいに揺れた。

 4月もすぐそこに迫っているというのに、雪でも降りそうなほど凍える日だった。かじかんだ指先がひりひりと痛み、音も無い吐息が濡れたアスファルトに染みていく。

「あ……純ちゃんには、関係ないことだった……ね」

 消え入りそうな声で、必死に笑顔を取り繕いながら、瞼には雨が溜まっていた。

233: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:27:46.33 ID:qqQjVaFW0
 徐々に崩れる表情に自制をして、何度も笑顔を作ろうとしている姿に胸が締め付けられた。同時に高鳴りもした。 
 こんな弱い彼女を見たのは初めてだったから。

「憂」

 吸い込まれそうになる綺麗な黒には、いつも見る透明さと優しさなんてどこにも見つからなかった。ただ、震える瞳の中に不安が揺れている。

 愛おしい。助けてあげたい。
 今弱い彼女を救ってあげられるのは私だけなのだ。

234: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:33:33.77 ID:qqQjVaFW0
「駄目……だよ。純ちゃん」

「駄目じゃない」

 私の手が指先に触れると、憂はびくりと震えてそれからうごかなくなった。

 不安気なまばたきが二度三度、私の顔を捉えて、静かに歪んでいく。

 冷たくなった指を手のひらで暖めながら、小作りな口元を丸ごとついばむように唇を重ねた。触れた唇の間から憂の吐息が漏れ出して、湯のように熱く私の頬を暖めていく。息が詰まる。必死だった。必死でキスをした。

 憂は――

235: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:37:32.62 ID:qqQjVaFW0
ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ

「……」

 目が覚めると、視界が壊れたレコードのように回っていた。乱雑な意識の中、びちゃりと滴る水音や炊飯器の唸る声が耳いっぱいに反響している。見慣れた電球から埃が舞い、朝日に照らされきらきらと光っていた。

(……憂)

 容赦ない日差しに肌を焼かれていく感覚に、私は目を細める。
 もう数年と会っていない彼女が、あのときのままで現れたことに驚いた。


 私と憂、そして梓が高校を卒業して二年が過ぎた。

 二人とは卒業以来、会っていないままだ。

236: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:43:52.50 ID:qqQjVaFW0
「今日も暑くなりそうだなあ」

 日焼け止めぐらい塗っておけばよかったか。と後悔しつつ、薄手のカーディガンを引っつかんだまま家を出た。
 店に行く道すがら、桜ヶ丘高校の制服を身に纏った生徒達が三々五々学校へ向かっていく。ついこの間までは、私もその一人だったんだけどなあ。
 いつも遅刻ギリギリに学校まで走って行ったっけ。


 私達が卒業してから、憂と梓は先輩方のいる名門女子大に進学。そして私は訳あって就職という道を選んだ。
 就職した、といっても殆どバイトのようなものだけれど。それでも未だ音楽に携わっている。

237: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:45:38.68 ID:qqQjVaFW0
「鈴木先輩!」

 懐かしい声が聞こえた気がして、首を巡らすと、得意げな顔でこちらを見上げている元後輩。
 変わらないなあ、この子。

「お、おおう。久しぶり。元気だった?」

「元気も元気ですよ! そんなことより聞いてください、私部長になったんです!」

「へー。おめでとうおめでとう」

「冷たっ」

 そんなことはない。盛大に祝っているつもりだ。これでも。

「中野先輩は激励してくれたのに」

「梓は苦労を知ってるからでしょ。がんばれー部長ー」

「先輩からは労いが感じられません!」

「部長、頑張ってね☆」

「それ平沢先輩の真似ですか……似てないにも程があります」

「あ、傷ついた」

238: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:49:51.39 ID:qqQjVaFW0
 というか、さっき何か言ってなかったか、こいつ。

「――ねえ、さっき中野先輩って言ってたけど、梓に会ったの?」

「え? はい。普通に。平沢先輩もいましたけど」

「マジで」

「えらくマジです」

 そりゃあ同じ街に住んでいれば会いますよねー……。
 すれ違ったことさえなかった私は一体。

「二人とも元気だったかあ」

「特に変わりはありませんでしたけど。……先輩、もしかして二人に会ってないんですか?」

 痛いところを突いてきやがる。妙に鋭いし。いつもは無邪気でひたむきで能天気で私と同じ人種だと思っていたのだが、
 唯先輩みたいだね、と梓がぽつりと漏らしたのはあながち間違ってないみたいだった。

「うん、その。連絡とってないっていうか」

「あれだけ仲良かったのに……ですか?」

「私だけ働いてるからかなー」

「そんなもので先輩方の関係が崩れるとは思わないんですけど」

 なんか私の最後の砦があっさりと砕かれた気がする。
 私だって、本当にそうおもっていたわけじゃない。

239: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:52:25.33 ID:qqQjVaFW0
「わかんないなあ。どうしてこうなったのか」

「これが大人になるってことですか」

「そうだとしたら私は子供でいたいね」

「大人になってください、先輩」

 わかってるよ。でも受け入れたくないんだ。変化って、怖いんだよ。
 気づかないうちに私達は変わっている。口調だって、考えだって、行動さえも。

 あの日。
 憂にキスをしたあの日、私は変わってしまった。そして憂を変えてしまった。
 だからもう、変わらなくたっていいのだと、そう思い込むことにしたのだ。

240: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 22:56:08.61 ID:qqQjVaFW0
「はよざいまーす」

「おはよう。あ、鈴木さん。ちょっと表掃いておいてくれる?」

「うーい」

 私の仕事場は実家から二駅ほど離れた小さな楽器店。ああだこうだと御託を並べておきながら、まだ彼女らと近い場所にいる。
 諦めが悪い人は嫌われるって言われたなあ。

「ま、嫌われても仕方ないことしたし」

 箒とちりとりを巧みに操り、散った桜の花びらやらゴミやらを集めていく。
 何とってるんですか?って聞かれたら、夢の欠片を拾ってるとでも応えようか。
 そんなこと聞いてくる人なんていないけどね。

 なんてことを考えながら箒でゴミを集めていると、突然白い手がにゅっと伸びてきて私の手首を掴んでいた。
 冷たすぎるほど冷えた手。私の手で暖めていた指先。
 この感触には覚えがある。

 相手の顔も見れないまま、ひゅうと喉から息が漏れた。

241: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:01:18.98 ID:qqQjVaFW0
「お勤めですか?」

「ま、まあ、その。そんなところです。はは……」

 内心かなり焦っているが、冷静になろうとしてみる。
 いや、ちょっと無理かなこれ。

「じゃあ、終わってから時間ありますよね?」

 憂はニコニコ笑っている。約二年ぶりの再会だった。
 あの日から二年も経ったのに、憂は私と同様変わっていないみたいだ。
 いや、違う。ちょっと大人っぽくなったかな。
 彼氏でもできたのかも。

「あ、まあ。はい」

「じゃあ待ってますから。ここで。終わるのを」

 握られた手首に力が篭る。
 逃げられないのだと、その冷たい手が物語っていた。

「あの、憂。わたし」

「待ってますね」

 あれ。憂ってこんなにしたたかな子だったっけ。
 昔は自分の欲望なんて二の次三の次だったのに…。
 憂もまた、1人暮らしになると言っていたから、強くならざるを得なかったのかもしれない。

242: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:02:38.17 ID:qqQjVaFW0
「じゃあ。また」

 ぱっと右手が開放されて、どこまでも他人行儀な笑みを向けられた。
 憂の姿が見えなくなるまで手を振って、それから一気に脱力する。
 体中の気を吸い取られるような気分だった。

「……はぁー」

 店前でしゃがみ込んだ。かさを増す通行人の目にも気づけない。
 体が火照っている。温い風が頬を叩く。
 口許を手で押さえながら、長細いため息をついた。

「綺麗に、なってたな」

 変わらない私と違って、憂はどんどん大人になっていくみたいだった。

「惚れそう」

 惚れそうじゃなくて、惚れてたんだけど。
 惚れ直すってたぶんこういうことなのだと思う。

「仕事どころじゃないなあ」

 まだ心拍数が跳ね上がったまま戻ってくれない。
 ぺちぺちと頬を叩いて気合を入れる。仕事だ、仕事。社会人だ。仕事せねば。
 仕事しろ、私。

243: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:06:27.88 ID:qqQjVaFW0
 って、意気込んだのはいいものの。
 辺鄙な場所に立てられた店に客足なんて数えるほどしかないわけで。

 早めに上がらせてもらった私は、早足で店を出た。
 待たせるよりは待つほうがマシだ。

 というのは建前。

 遠足の前日みたいに、心が躍って仕方がなかったのだ。
 私だって一人前に人肌恋しくなるときがあるから。
 相手が憂でも、偶然旧友に会えたことに心の奥では喜んでいた。

「お待たせ」

「ううん。今きたとこ。――なーんて」

 にやりと唇を吊り上げて笑う。にっこり笑いかけるつもりだったのに、気づけば口許が緩んでいた。

「純ちゃんったら」

 やんわりと微笑む憂の横顔が春色に温まった夕焼け空に融けていく。

「少し歩こ」

「うん」

244: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:07:28.75 ID:qqQjVaFW0
 憂は笑ったまま私の手を取った。それから指を絡めてくる。吹き込んだ風の隙間を埋めるように、憂の冷たい指先が私の指の間をぬるりと這って、きゅっと締め付けた。

「恋人つなぎ。なんて、ね」

 いたずらっ子みたいに意地悪な笑みを浮かべる憂の瞳は、炯々とした瞳をたたえて、奥に沈んだ勝気な感情がたゆたっていた。
 私は無言のまま憂に手を引かれていく。流れていく風景が映写機のようにカタカタと音をたてて変わっていくだけで。
 私の目は憂の表情を追うのに必死だった。

「ここ、なんだか懐かしい感じがする」

「地元と似てるからかもしれないね」

「だから純ちゃんはここに来たの?」

「そうだとも言えるし、そうじゃないとも言える」

「ヘンなの」

 ふらふらと大した目星もないまま放浪していた私の目に止まったのは。
 やっぱり彼女らと同じ空気を感じる、どこか懐かしいところだった。
 ノスタルジィって、こういうこと?

245: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:10:11.34 ID:qqQjVaFW0
「通学路に、似てるね」

「うん」

「寒くはないけど」

「……うん」

 高校三年生の春。春なのに、その文字すら遠く薄らぼんやりとしていたあの日。
 場所と気温さえ違うけれど、確かに私はここにいて、憂は隣に立っている。

「憂、あのさ。あの日、あの日にさ、」

「?」

「い、いきなり。……しちゃって、ごめん」

「何を?」

「キ……キス、とか」

「とか?」

「とか、抱きしめたり、とか」

 言ってるうちに恥ずかしくなって、柄にもなく赤面した。
 あの熱が舞い戻ってくるような気がしたのは、今繋がっている憂の手が、湿ってしまうほど熱かったから、
 ということにしておく。

246: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:10:47.29 ID:qqQjVaFW0
「憂の気持ちも考えずに、その、私だけが昂っちゃって」

「そんなことないよ」

 憂は表情一つ変えずに、繋いだ手をきつく握り締めた。

「そんなことない。純ちゃんは優しかった。そしてね」

 そして……と繰り返し呟いて、

「好きだったの。純ちゃんのこと」

 えっ。

「…………えっ、マジ?」

「えらくマジだよ」

 嘘だ。という言葉が出てこなくて、池の鯉みたいに口をぱくぱく開閉させるのが精一杯だった。
 好きだった? 憂が、私を?
 んなアホな。

「え、だってそんな女同士だし」

「私のこと好きになった純ちゃんも同じだよね」

「若気の至りだったとしても」

「まだ若いよー」

「その場のノリとか」

247: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:11:13.43 ID:qqQjVaFW0
「そうだったら私、純ちゃんのこと嫌いになるなあ」

「嘘嘘、今のなし」

 否定しようとして振りかぶった手は、憂と繋がったほうの手だった。
 苦笑いしながら憂が言う。

「純ちゃん。顔、近い」

「あっ。ごめ――」

 顔を上げると、憂の顔はすぐそこまで迫っていた。吸い込まれそうになる綺麗な黒。憂の性格とかその優しさが混ぜ込まれた、それでも綺麗な透明が水面でのたりのたり揺れている。

「駄目だよ、純ちゃん」

 くすくす笑いながら、憂が言う。
 私も思わず笑っていた。

「駄目じゃない」

 憂が目を閉じた。ぎゅうと締め付けが強くなる右手を、離さないまま。
 私の心も、締め付けられていくようだった。

 かがみこむようにして、憂の唇に、自分のそれを重ね

248: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:17:19.54 ID:qqQjVaFW0
「私もいるんだけどね」

「――どああああっぱぱああああああ梓!?」

「久しぶり。万年発情期犬」

 ギターケースを肩に引っさげた、不機嫌そうに歪められた顔も変わらない。揺れるツインテールも相変わらずだ。

「ほんとは憂と一緒についてきてたんだけど、なかなか割ってはいるタイミングがつかめないし、もたもたしてたら二人は公衆の面前でキスしようとするし」

 愚痴をおくびもなく出すのも梓らしいや。

「梓変わらないね。胸が」

「よし[ピーーー]」

「梓ちゃん。どうどう」

 私がからかって、梓が怒って、憂が宥める。
 なんにも、変わってなかった。

「ほら、いいから行こう。予約してるんでしょ?」

「……うん」

「え、なに? 予約って」

 置いてけぼりも、変わらず。

249: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:22:58.51 ID:qqQjVaFW0
「純が元気そうだったら、みんなで飲みに行こうって話してたんだけど」

 舐めるように私を見上げて、じっとりした口調の梓はまた不機嫌そうに、

「まあこんな調子だし、意地でも連れてく」

「じゃあ私も意地でも行くわ」

「意地でも着いていくー」

 梓を先頭にするという、ちょっとシュールな光景。
 周りから見たら、面白おかしく見えただろう。

「ほんとはね、梓ちゃん、一番楽しみにしてたんだ。純ちゃんと会うの」

「分かってるよ。わかってるつもり」

「なら、いいんだ」

 あの。そろそろ手を離しませんかね、憂さん。
 手汗がやばい感じになっておるのですが。

「駄目だよ、純ちゃん。今日はこのままだよ」

「んー。うん。ま、いっか」

 やり直そうなんざ思ってないけど。
 ちょっとばかり、今後の展開に期待してみる。

 成就した恋愛ほど記するに値すべきものはない、ってね。

250: ◆idw9QLWNAI 2011/04/09(土) 23:30:40.70 ID:qqQjVaFW0
「ねえ。まだ居座るつもりなの?」

 騒がしかった飲み屋もいつしか人もそぞろになって、酒を飲んではくだを巻くサラリーマンのおっちゃんらが蔓延る時間帯になってしまった。

「まだまだ。あと、最低でも10分」

「なにそれ。というか、未成年は夜出歩いちゃ駄目でしょ。特に梓」

「未成年だからこそだよ、純ちゃん」

「保護者もいないのに、補導されても知らないからねっ」

 19歳で補導もどうかと思ったが、梓ならありえる。

「保護者ならいるじゃん。ねえ、憂」

「うん」

 え。
 どうして二人とも私を見るの。

「「誕生日おめでとう。純」」

 あ。

「ああ、私誕生日か!」

「ほらやっぱり忘れてると思った」

「へへー、梓ちゃん缶ジュース奢りー」

 遊園地にいるみたいな高翌揚感に包まれていく。どうしたって、私はこの二人と縁が切れないらしい。
 ああ、どうも。
 どうしても無理みたいだ。

「ね、ほんとは私純のこと思って純が覚えてるだろうって方に賭けてたから私じゃなくて純が奢るべきだよねってなんで純泣いてるのほら久しぶりに会えて嬉しいのはわかるけどそんな号泣とかじゃなくてその、
 よっしゃーじゃあ元部長の私の胸に飛び込んで来いってなんで憂なのよ、胸か! 胸の差か!」


 明日で私は、二十歳になる。

251: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:37:44.55 ID:w/ypv0+AO
純ちゃんクエスト!
  ~誕生日生誕~

目覚めなさい……純……

純「ここは……?」

今から問う質問に答えるのです、いいですね?

純「……?」

いいですね?

純「まあいいけど」

名前は?

純「鈴木純」

性別は?

純「♀死者蘇生!」

……真面目に答えなさい。

純「はーい(知らない人に怒られた)」

歳は?

純「今年で18!」

何座ですか?

純「情熱の牡羊座!」

では、最後の問いです。

あなたの誕生日はいつですか?

純「誕生日? そんなの決まってるじゃん。私の誕生日は……」

純……

純「え~と誕生日は……」

純……!


────

252: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:39:33.38 ID:w/ypv0+AO
────

トゥトゥットゥルトゥ♪トゥトゥットゥルトゥ♪
トゥトゥトゥトゥットゥートゥトゥトゥットゥルトゥットゥルトゥ♪

純母「純! いつまで寝てるの! 早く起きなさい!」

純「ん……ん?」

純母「ほら、起きて起きて! 今日は王様に会うんでしょ!」

純「王様?」

純母「あんたはまだ寝ぼけて! 早く顔洗ってらっしゃい!」

純「ふぁ~い……」

ズッタタタ……

純「え? なにあの効果音。まあいっか」

洗面台がある、顔を洗いますか?

→はい
 いいえ

純「ねぇ、これ誰が聞いてるの?」

顔を洗いますか?

→はい
 いいえ

純「いやまあ洗うけど」

純「にしても上で流れてるこの軽快な音楽どこかで聞いたことあるような」

253: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:40:57.98 ID:w/ypv0+AO
純母「準備出来たわね」

純「なんで着替えが鎧一式なの? コスプレ? 学校は?」

純母「学校? まだあんたは寝ぼけてんのかい? 全く困った子だね。
途中まで一緒に行ってあげるから。早くついてきな」

純「ふぁーい」

  ドゥンドゥン
おじさんΣ純

純「あ、ごめんなさい」

おじさん「東の塔には恐ろしい怪物がいるらしい。近づかん方がええ」

純「……あ、はい」

純母「早く来な」

純「ふぁーい」


純母「こっから先は一人で行くんだよ。王様に失礼がないようにね」

純「お母さん」

純母「なに?」

純「なんで町内に城があるの?」

純母「当たり前じゃない。城下町なんだから」

純「……そっか」

純母「そうよ」

純「(突っ込むと長くなりそうだからやめとこう)」

純「じゃあ行って来ます」

純母「行ってらっしゃい。頑張って良い誕生日を探すのよ」

純「え?」

純母「え?」

純「誕生日って今日でしょ?」

純母「ええ、誕生日(仮)ね」

純「(仮)?」

純母「そう、(仮)」

純「なんで(仮)? 今日産まれたんでしょ私?」

254: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:41:32.77 ID:w/ypv0+AO
純母「さあ?」

純「えっ?」

純母「あなた捨て子だから」

純「今サラッと凄いダイナミックな発言したよ!?」

純母「牡羊座って言うことはわかってるんだけどね」

純「誕生日わからないのになんでわかったの!?」

純母「あなたが牡羊座~牡羊座~って言いながら捨てられてたか(ry」

純「それ絶対おぎゃーだよ! お母さんちょっと一緒に耳鼻科行こうよ!
すっごい心配になってきた~っ!」

純母「お母さんは大丈夫だから。早く行きなさい。
詳しい話は王様がしてくれるから」

純「本当かな~……」

255: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:43:49.79 ID:w/ypv0+AO
ズッタタタ……。

ズッタタタ……。

ズッタタタ…。

ズッタタタ…。

純「(兵士の人が立ってるだけで私のこと思いっきりスルーしてるけどここの警備大丈夫なのかな……)」

王様「よく来た、誕生日(仮)の純」

純「あ、ども」

王様「お主もようやく18となり、旅立ちの時が来た!」

純「旅立ち?」

王様「そうじゃ! 誕生日を決める旅じゃ!」

純「誕生日を決める旅?」

王様「お主には誕生日がない。捨て子だからの」

純「王様でも言って良い事と悪い事があるよ!」

王様「そこでじゃ、誕生日を定める為に旅に出るのじゃ!」

純「はあ……」

王様「牡羊座と言うことは育ての親から聞いておる」

純「(まさかそれがお母さんの難聴が生んだ誤認だとは王様も思うまい)」

王様「つまり3月21~4月20日のどれかを選んで誕生日にするがよい」

純「決めていいんですか? じゃあ……」

王様「残念ながらここじゃ無理じゃ」

純「え? ここでポンと決めて市役所かなんかで紙書いて決まりじゃないんですか?」

王様「無理じゃ」

純「え~絶対ここでも決められ(ry」

王様「無理じゃ」

純「……。じゃあどうしたら決められるんですか?」

256: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:45:21.16 ID:w/ypv0+AO
王様「仲間と旅に出て誕生日を探すのじゃ!
誕生日は至るところに存在しておる!
その誕生日を捕まえて、仲間に認めてもらえればその日が誕生日じゃ!」

純「(捕まえる?)」

王様「頑張るのじゃぞ!
少ないが旅の役に立ててくれ」

純「あ、ども」

純は500G手に入れた!

純「……王様も大変なんですね」

王様「ワシのヘソクリはどこへ旅立ったのかのぅ……」

257: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:45:55.70 ID:w/ypv0+AO
城下町

純「さて、誕生日を決める為には誕生日を捕まえてそれを仲間に認めてもらわないといけないんだよね。
誕生日を捕まえるってのがよくわからないけど、とりあえずは仲間を集めなきゃだね!」

純「ん? あれは……」


梓「遅かったね、純」

憂「やっほー純ちゃん」

純「梓! 憂!」

梓「純が誕生日を探す旅に出るって聞いてさ。仲間、必要なんでしょ?」

憂「一緒に行くよ純ちゃん!」

純「梓……憂……」

純「持つべきものは友達だね!」

258: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:47:09.01 ID:w/ypv0+AO
平原──

純「いっぱい買い物もしたし準備万端だね!」

憂「気をつけて純ちゃん! もう町の外だから誕生日が溢れてるよ!」

純「なんと! なら簡単に誕生日捕まえれそう……」

梓「来たよ!」


4月4日が現れた
4月4日が現れた
4月4日が現れた

純「なんか全部4月4日だよ!?」

梓「4月4日はやっぱり見た目がちょっとね……」

純「ああ……なんか不吉だもんね。4月4日の人には悪いけど」

憂「ちなみに4月4日は北大西洋条約が締結されたりアポロ6号が打ち上げられたりしたよ!」

純「確か月に行ったのは11号だよね……中途半端だなぁ」

憂「4月4日が誕生日な人はローマ皇帝カラカラ、画家のエドワード・ヒックス、詩人ロートレアモン伯爵……」

純「ちょ、ちょっと憂!」

憂「ふぅ?」

純「わかんないから! というかそんな偉そうな人達の誕生日バカにしてごめんなさい!」

梓「純でもわかる人言ってあげなよ」

純「そうそう」

憂「う~ん……」

憂「照英さん……かな」

純「……」

梓「……」

純「まっ、まあ見た目でちょっとパスかな!
照英さんがどうのじゃなくてだよ!? 本当だよ!?」

259: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:47:51.23 ID:w/ypv0+AO
梓「じゃ、さっさと倒しちゃいますか」

純「あ、倒すんだ」

梓「今回はちょっとだけ手本見せてあげる」

純「一人で大丈夫?」

憂「純ちゃん、梓ちゃんは唯一のフォース誕生日の持ち主なんだよ!
これぐらい大丈夫だよ」

純「なに? フォース誕生日?」

憂「まあ見てて」

梓「我……11月11日を持つものなり……!」

純「おぉ! なんか魔法っぽい」

梓「きたれ! オール1!」

テレテレテレ♪

4月4日に1111ダメージ!
4月4日に1111ダメージ!
4月4日に1111ダメージ!

誕生日を倒した。

260: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:49:01.52 ID:w/ypv0+AO
純「凄いね梓!」

憂「さすが梓ちゃん!」

梓「これぐらいはね」

純「さ~て次の誕生日を探しに……」

4月4日が誕生日にして欲しそうにこちらを見ている。

誕生日にしますか?

→はい
 いいえ

純「……」

 はい
→いいえ ピロン

4月4日は悲しそうに去って行った。

純「ふぅ……」

4月4日Bが誕生日にして欲しそうに(ry

純「しつこいわっ!」

261: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:50:23.14 ID:w/ypv0+AO
こうして私達は次々と誕生日(主に4月4日)をちぎっては投げちぎっては投げしました。

純「なかなかいいのが出ないね~」

梓「大体何月何日がいいとかって決めてるの?」

純「う~ん……。早生まれでお姉さんって言うのもいいんだけど~……やっぱり後々のことを考えたら遅生まれがいいかな~」

憂「でも純ちゃん今年18だよね?」

純「誕生日(仮)だけどね」

憂「年齢は変えられないから誕生日を3月にしちゃうと私達とは違う学年になっちゃうよ?」

純「なに?! それはやだな~」

純「ん? ってことは澪先輩達と同い年ってこと?」

梓「そうなるかな」

純「……悪くないかも!」

憂「いいな~純ちゃん。 私もお姉ちゃんと一緒が良かったよぉ」

純「憂も誕生日決め直したら?」

憂「私はその……捨て子じゃないから無理なの」

純「あ、やっぱりこれ捨て子限定クエストなんだ」

梓「……本当に3月にするつもりなの?」

純「澪先輩達と一緒に軽音部を立ち上げるのも悪くないな~。合宿に学園祭……楽しそうだな~」

梓「」ギリッ

梓「じゃあ勝手にすればいいよ! 純なんて知らないっ!」タタタッ

262: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:51:15.99 ID:w/ypv0+AO
純「梓?」

憂「追いかけてあげて、純ちゃん」

純「でもさ……どれ選んでも私の勝手じゃんか」

憂「そうだね。けど誕生日が変わっても……私達の関係は変えたくない。それは梓ちゃんも一緒だと思うよ」

純「……」

憂「純ちゃんがもし一つ上になっても……私は先輩なんて呼ばない。呼びたくないよ、純ちゃん。
一緒のクラスがいい……」

純「あ~もうっ! わかったわかった! 4月にするから! それでいいんでしょ?」

憂「えへへ。純ちゃん大好き」

純「ま、憂と梓残して行くわけにもいかないしね」

263: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:53:45.87 ID:w/ypv0+AO
塔──

梓「純なんて照英と同じ誕生日になっちゃえばいいんだ……!」

純「結局4月になって欲しいんでしょ?」

梓「……」

純「……梓、ごめんね」

梓「えっ」

純「私と梓と憂で軽音部再建するって約束したもんね」

梓「純……」

純「それにね……私も梓と一緒が……」

梓「ん? なんて?」

純「何でもないよっ!」

憂「ふふっ」

憂「まあ今更誕生日を3月にしてもお姉ちゃん達は大学なんだけどね……」

梓純「そうでした」

純「過去に戻れるわけじゃないもんね……」

純「さて、気を取り直してとっとと誕生日決めるとしますか!」

憂「塔には4月の誕生日がいっぱいいるらしいからちょうどいいね!」

純「ん、塔?(塔には恐ろしい怪物がとか言ってたような……)」

純「ま、いっか」

264: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:55:31.19 ID:w/ypv0+AO
憂「あ! 純ちゃん! レア誕生日がいるよ!」

純「なにー!? どこだどこだー!?」

4月1日が現れた

純「おぉ! 4月1日! どうしよっかな~う~ん……」

4月1日はにげだした

純「はやっ! 逃げるのはやっ!」

梓「生まれるのが早いからね」

純「逃げるのも早いと……」

憂「ちなみに4月1日は広島平和記念公園が出来たりJRが発足したりだよっ!」

純「ふむふむ。なるほどねー」

憂「その日が誕生日の人は(ry」

純「それはもういいから! 申し訳なくなっちゃうから!」

憂「う~ん、後は……」

4月1日チラッ

純「あっ」

4月1日ジー

純「誕生日になりたいんじゃないのあれ!」

4月1日ジー

梓「……どうするの?」

純「何か行事の皮切りだし区切りでもあるから……4月1日にしよっと!
おいで! 4月1日!」

4月1日 だが断る

4月1日はにげだした

純「……は?」

純「何あの思わせ振り態度ムキィーッ!」

憂「4月1日はエイプリルフールだから……ね」

純「ああ……なるほど」

梓「4月1日は自分から誕生日になりには来ないよ」

純「知ってるなら先に言ってよ!!!」

265: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:56:31.34 ID:w/ypv0+AO
それからも私達は誕生日を追いかけながら塔を登りました。

──

4月1日はにげだした

純「ぬわーっ! またかァっー!」

梓「もう4月1日は諦めなよ」

──


憂「純ちゃん4月3日はね~……」

純「憂は博識だね~」

──

純「宝箱発見!」

4月20日を手に入れた!

純「もうこれでいいや!」

誕生日にしますか?

→はい
 いいえ

純「はいっと」

ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥドゥン

純は呪われてしまった! この誕生日では祝われない!

純「ちょ」

憂「4月20日はフランス革命が」

純「それより早くなんとかしてー!」

266: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:57:49.91 ID:w/ypv0+AO
そして……

純「いよいよ最上階か……」

憂「うわ~真っ暗だね~」

梓「下からじゃ見えなかったけどここだけ空が黒く曇ってる……」

純「最上階だから凄いレアな誕生日期待したんだけどな~」

『誕生日……だと?』

純「うわっ! なんか声がした!」

梓「空から……?」

『誕生日など探して何になる? 所詮はただの平日に過ぎない……』

純「そんなことない! とっても大事な日なんだ!」

梓憂「そうだそうだー!」

『……ぬううううううううううううううう』

純「な、なにっ!?」

『許さん……許さんんんんんんんんんんんん』

『誕生日を持たずして死ぬがよい!!!
捨て子よ!!!』

純「捨て子言うな!」

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィスが現れた!

純「なんかボスっぽいの来たんですけど!」

梓「多分これは……」

憂「うん。きっと誕生日を持たずして死んでいった人達や、ずっと一人で祝われなかった人の残留思念の集合体……!」

純「ど、ど、どうすんのさ!?」

梓「倒すしかないよ」

憂「だね」

純「もう! 何この展開!」

267: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/09(土) 23:59:15.81 ID:w/ypv0+AO
憂「梓ちゃん、ちょっと時間稼いでくれる?」

梓「オッケー。憂のあれは時間かかるからね」

純「何そのカッコいいやりとり! 私も混じりたいんですけど!」

梓「はあああっ!」

テレテレテレ♪

梓はタイタニックを唱えた

ゴスッ

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィスに880のダメージ!

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス『ほう……11月11日生まれか』

梓「くっ……効いてない?!」

憂「……」シュウウウウ……

純「(私誕生日(仮)だからああいうの使えないのかな……?)」

268: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/10(日) 00:00:46.91 ID:KB7k8LrAO
オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス『次はこちらから行くぞ!』

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィスは一人きりの誕生会を唱えた!

ハッピーバースデートゥーミー……
ハッピーバースデートゥーミー……

梓に360の精神ダメージ!
憂は耳を塞いでいる!
純は捨て子だ!

純「ちょっと!」

梓「ぐっ……一人きり……一人きりの誕生日……」

梓「誰にも祝ってもらえず……認められず……ただ一人で……」

純「梓!」

梓「純……?」

純「梓が誕生日の時は絶対私が祝ってあげるから! 何があっても! この先ずっと!」

梓「純……」

純「憂もだよ! 絶対絶対……祝ってあげるから!
二十歳になっても……三十路になっても……おばあちゃんになっても!」

憂「ありがとう、純ちゃん!」

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス『うおおおおおおおやめろおおおおおおおおおおお』

梓「もしかして弱ってる?!」

純「憂! チャンスだよ!」

憂「うんっ!」

憂の手のひらに魔力が集中する!

憂「いっけええええ!!!」

憂は初代アメリカ合衆国大統領、ジョージ・ワシントンを呼び寄せた!

激しい演説が始まる!!!

269: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/10(日) 00:03:12.40 ID:KB7k8LrAO
30分後──

ジョージ・ワシントン『Good bye』

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス『ぐほおおおおああっ』

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィスにありがたい言葉が刻み込まれた!

梓「やった!?」

憂「はあ……はあ……ま、まだみたい」

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス『誕生日など消滅してしまええええええええええええ』

梓「くっ……もうTP(誕生日ポイント)が残ってないよ!」

憂「私も……ここまでなの?」

諦めるのはまだ早いよ!

純「どぅりゃああああああああああああ!!!!!」

疾走する──

梓「純!?」
憂「純ちゃん!?」

梓「無茶だよ純!!! 誕生日(仮)であいつに敵うわけないよ!」

ただがむしゃらに、前へ──

憂「純ちゃん戻って!」

純「私さ、わかったんだよね……!」

梓「なにが!」

純「誕生日ってさ……当たり前に祝ってもらって……それが普通だって思ってた。
けどこうしてそうじゃない人もいて……誰かに祝ってもらえるってとっても幸せなんだってことが!」

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス『故に我らは貴様らを憎む!!!』

純『だからって祝ってもらえる権利のある誕生日を憎むなんて間違ってる!!!』

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス『ぐっ……!』

270: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/10(日) 00:08:01.70 ID:KB7k8LrAO
純「あんた達は祝ってもらえないからって拗ねてるだけだ!
本当に祝って欲しかったのなら……!」

更に加速する──

純の右腕が真っ赤に燃え上がり、その炎は牡羊を描いている

純「自分が誰かを祝う人になればよかったんだ!!!
そうしたらみんな一人にならずに済んだのに!!!」

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス「なっ……!」

純「確かに私には誕生日はないけど……さァ!」

純は情熱的な牡羊座を唱えた!

純「祝ってくれる友達も祝ってあげられる自分もいるんだっ!!!!!!!!」

その猛々しく燃え上がった炎が闇夜の空へ

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィスに9999のダメージ!

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィス「バカなあああああああああ」

純「あんたもこれぐらい情熱的になりなよ……!」

オルゴ・マラ・エラゴール・ラヴィスは倒れた

271: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/10(日) 00:09:32.96 ID:KB7k8LrAO
──

憂「今度こそ……終わった?」

梓「見てよ……あれだけ曇ってた空が……青空に変わってく……」

純「お~い!」


梓「純! 無事だったんだ!」
憂「純ちゃん! 心配したよ!」


純「そんなことより宝箱発見したよっ!」

梓「」ガクッ
憂「」ガクッ

──

純「開けるよ?」

梓憂「」コクリ

テテテテテン♪

純は金雀枝を手に入れた

純「なにこれ? 花?」

梓「そう……みたいだね」

憂「だねー」

純「はあ……あんだけ苦労して手に入れたのが花って……」

憂「誕生日どうする?」

梓「また戻って4月1日捕まえる?」

純「ん~……あのさ、ずっと思ってたんだけど」

梓「ん?」

純「今日を誕生日に出来ないの?」

梓「……」

純「あ~でもやっぱり捕まえなきゃ駄目なのかな?
というか今日って何日だっけ?」

憂「出来るよ、今日を誕生日に。そしてそれは一番簡単なの」

梓「私と憂が純を祝う、ただそれだけで純の誕生日は今日になる」

純「梓? 憂? なんか変だよ?」

憂「純ちゃん、本当に今日でいいの?」

純「……」

272: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/10(日) 00:10:20.48 ID:KB7k8LrAO
純「今日二人と旅して思ったんだよね」

純「二人に祝ってもらえるなら……いつだっていいかなって」

憂「そっか」ニコッ
梓「純らしいね」ニコッ

梓「じゃあ祝おう! 純の誕生日を!」

梓「うんっ!」

純「えへへ。なんだか照れ臭いな」

青空の下──

二つの笑顔が──

梓「誕生日」
憂「誕生日」

一つの笑顔を──

梓「おめでとう」
憂「おめでとう」

祝福する──

梓「じゅ……」
憂「じゅ……」

あれ……後一言なのに……なんか……真っ暗に……


──

273: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/10(日) 00:12:06.59 ID:KB7k8LrAO
──

純「あれ……ここは」

あなたの誕生日、わかりましたか?

純「あ、最初の人! やっぱり夢だったか~まあ何となくわかってたけどね」

誕生日、わかりましたか?

純「……」
純「……!」

純「……?」

純「何日か聞くの忘れたぁっ!」

……金雀枝ですね、その花

純「ん? あれ? なんでこれがここに?」

金雀枝……4月8日の誕生花です

純「へ~そうなんだ。あっ、ちょうど4月だし4月8日でいいや」

……そうですか。

あなたの誕生日は4月8日なんですね。

純「でもやっぱり(仮)だけどね」

……あなたは知ってたんですか?

純「ううん、何にも。
でもね……もし4月8日が本当の誕生日じゃなくったってみんなが祝ってくれるその日が私にとっては誕生日なんだ」

純「私っていう存在におめでとうって言ってくれてると思うから」

純「生まれて来てくれてありがとうって!」

純「私も他の人を祝う時、そう…思ってるから」

それがあなたの答えですね

純「うん!」

では行きなさい。
4月8日、あなたの誕生日へ……

純「うわまぶしっ」

誕生日がいつだってあなたは祝福されますよ、きっと

──

274: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/10(日) 00:13:13.44 ID:KB7k8LrAO
────

純……

純…

純!

純「ふわっ!!!」

梓「っーくりしたっ!」

純「梓!? あ、学生服! スタイリッシュ鎧じゃない!」

梓「もー何言ってんの純」

憂「ホームルームの時に寝ちゃってたんだよ純ちゃん」

梓「さわ子先生怒ってたよ?」

純「そんなことより今日何月何日っ!?」くわっ

憂「え?」

梓「そんなタイムトラベルしてきた人みたいに聞かないでよ。4月8日だけど」

純「4月8日!?」

純「やった!!! 私の誕生日!!!」

梓「そんな大きい声出さなくても知ってるよ」

憂「ふふっ」

275: ◆BE9iRsPpocut 2011/04/10(日) 00:17:11.26 ID:KB7k8LrAO
梓「今からその純の誕生日パーティーを憂の家でやるから早く帰る支度しなよ」

憂「純ちゃんの為に美味しいケーキ焼いたげるね!」

純「ケーキ! ケーキ! じゃなくて!」

梓「なに?」

純「祝ってぇっ! 今ここで今すぐ! お願いだからぁ! 寸止めやだよぉ!」

梓「? ……しょうがないなぁ」

憂「誕生日だもんね! いっぱい祝ってあげないと」ニコニコ

梓「誕生日おめでとう、純」
憂「誕生日おめでとう純ちゃん!」
クラスのみんな「誕生日おめでとう純ちゃん!」

純「ありがとうぉ~っ! みんなぁ!」

忘れないよ

祝ってくれる人がいるからこそ、誕生日は輝けるんだ

主役は誕生日の人だけじゃない

だから祝ってもらったら……いっぱい、いっ~~~ぱい!!!

純「ありがとうぉ!!! みんなぁ!!!」

ありがとうって言うよっ!


おしまい

276: ◆jHeoxAFEWg 2011/04/10(日) 00:22:16.46 ID:uLQLuMQE0
私と純ちゃんが出会ったのは小学生の頃

3年生の時のクラス分けで同じクラスになって、しかも席も隣同士だったんだ

教室で初めて会った時、純ちゃんは私に「よろしくね」って声を掛けてくれたんだけど

その頃の私は恥ずかしがり屋で、うまく返事ができなかったんだっけ


純ちゃんは小学生の時から元気いっぱいで、とっても明るくて、いつもまわりにはいっぱい友達がいて

だけど隣の席の私の事もいつも気にかけてくれて……

だから明るくて優しい純ちゃんは私の憧れだったんだ

277: ◆jHeoxAFEWg 2011/04/10(日) 00:25:09.24 ID:uLQLuMQE0
そんな時にクラスの友達が「明日は純ちゃんの誕生日らしいよ」って教えてくれたの

私も純ちゃんのお誕生日をお祝いをしたくって、家に帰って早速ケーキを作ったんだ

私は料理が得意だから、やっぱりお菓子とかをあげるのが一番かな、って思って

純ちゃんに優しくしてもらったお礼がしたくて、純ちゃんともっと仲良くなりたくて

喜んでくれるかどうかちょっとだけ心配しながら、一生懸命作ったチョコレートケーキ

味見してくれたお姉ちゃんも褒めてくれたし、結構上手に出来たんじゃないかな?

でもいざ渡すとなるとなんだか恥ずかしくって、いつまでたっても渡せなくって……

そしたら純ちゃんの方から「どうしたの?」って声をかけてくれたの

小学校で一番緊張したのってたぶんこの時なんじゃないかな?たった一言「お誕生日おめでとう」って言うだけなのにね

278: ◆jHeoxAFEWg 2011/04/10(日) 00:31:12.27 ID:uLQLuMQE0
でもね、大事に大事に持ってきたはずなのに、箱の中のケーキはいつの間にかぼろぼろになってたんだ

きっと学校に持っていくときにもう倒れてたんだと思う

箱の中がチョコクリームだらけになってったしね

でもそれを見た時はちょっとだけ泣いちゃった

せっかく純ちゃんの為に作ったのに、せっかく純ちゃんと友達になれると思ったのに

そんな気持ちを込めて作った大切なケーキなのに、って

279: ◆jHeoxAFEWg 2011/04/10(日) 00:34:12.45 ID:uLQLuMQE0
そんな私を純ちゃんが慰めてくれて、その後で一緒に私の作ったケーキを食べたんだ

純ちゃんは「おいしい!このケーキ今まで食べた中で一番おいしいよ!」って褒めてくれて、嬉しかったけどちょっと悪い気もしちゃった

だって本当はもっときれいな、上手にできたケーキを食べてもらうはずだったから

そのことを謝ったら純ちゃんは「謝らなくていいってば。崩れててもケーキは食べれるし、それに私達友達でしょ?」って言ってくれたの

純ちゃんは私のことを最初から友達だと思ってくれてて……そのことがうれしくってまた泣いちゃった。きっと純ちゃんも困っただろうね

それから2人でいっぱいいっぱいお話をして、最後に純ちゃんが「ねえ、来年は一緒にお誕生会をしない?」って誘ってくれたんだ

「もちろんだよ!私も何か手伝えることないかな?」

私がそう尋ねたら、純ちゃんはこう答えてくれたんだ

「じゃあ来年もこのケーキ作ってくれないかな?ううん、来年だけじゃなくって再来年も、そのまた来年もずーっとずっと!」

280: ◆jHeoxAFEWg 2011/04/10(日) 00:35:43.63 ID:uLQLuMQE0
……

憂「多分それからかな、純ちゃんと仲良くなったのは」

梓「へえー、昔は純もいい子だったんだね」

純「むっ、誰かが私の話をしている気がする!」ガチャ

梓「もう、明日は新歓ライブの日なのに遅刻なんてしないでよ」

純「掃除当番なんだからしょうがないじゃん」

憂「まあまあ…」

梓「さて、と……それじゃあ純も来たことだし」

純「早速練……」

憂「お茶にしよっか」

純「…習はしなくていいの?私が言うのもなんだけど」

梓「まあ、今日は特別な日だからね」

憂「うんうん、せっかくお菓子も持ってきたんだしね」

純「特別な日……今日って何かあったっけ……?まあいいや。憂、今日のお菓子ってなあに?」

憂「今日はね……」

憂「チョコレートケーキを持ってきたんだよ」

おしまい