1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 16:39:10.50 ID:wW8LsxgS0
従者「魔獣、ですか」
女神「ええ……大昔に魔界より人間界へと流れてしまった凶悪な魔獣です」
女神「その時は人間達が何とか封印しました」
女神「可能であれば天界からも支援を行うべきだったのですが、こちらで事態に気づくのに遅れ」
女神「多くの犠牲者を出した忌まわしき事件です」
女神「それより封印された魔獣の状態を随時確認していましたので、今回は先手を打つことも出来るでしょう」
ギャラリーエルシャダイ 北海の魔獣あざらしさん展 画集
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4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 16:42:12.73 ID:wW8LsxgS0
従者「突如、大陸の四方に現れた魔獣……今でこそ国は五つで安定していますが」
従者「魔獣出現以前はもっと多くの国があったものの、殆どが滅ぶか隣国との合併という形を取らざるを得なかった……」
従者「二百年前の話ですね」
女神「あら……珍しく随分と詳しいのね」
従者「ええ……」
女神「……? あ」
女神「……ごめんなさい」
従者「あ、いえ、そんなお気になさらずに」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 16:45:36.12 ID:wW8LsxgS0
従者「というか、また俺ですか?」
女神「完全に復活するまでにはまだ時間がありますが、それよりも先に大量の魔物が現れるでしょう」
従者「眷属みたいな奴らですね」
女神「多くの従者は人間達の居住箇所で防衛する事になりますが」
女神「貴方は魔獣討伐に向かってもらいます」
従者「それはいいのですが女神様が人間界に降ろせる場所は、中央の国のウェッブリバーだけですよね」
女神「そうよ」
従者「……魔獣が封印されているのはそこ以外の四方の国ですよね?!」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 16:48:28.16 ID:wW8LsxgS0
女神「仕方がないですね……他の神に貴方の人間界への降臨をお願いします」
従者「因みに降臨後、俺はどういった行動をとらせるおつもりだったのですか?」
女神「ウェッブリバーより南下しグリーングランドの魔獣を討伐後、折り返して北上しシルバースノウの魔獣を……」
従者「凄い面倒じゃないですか!」
女神「貴方ならできるわ。そう! 単身、魔物という魔物を倒しながら魔界を横断した時の様に!」
従者「血生臭い過去を例に上げないで下さいよ」
女神「あら、あれ以来一部の従者達からは人気があるじゃないの」
従者「それの所為で女神様の他の従者からは、野蛮だの凶悪だのと今だ避けられているのですが」
女神「まあ……貴方以外はまともに武器も振るえない魔法特化の子ばかりですからね」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 16:51:32.99 ID:wW8LsxgS0
従者「にしても何故その二ヶ国なんです? 遠いです」
女神「東西の国には男神を信仰しているのですよ? 心配する必要など無いではないですか」
従者「あー……」
女神「南北の国……魔法で戦えない事も無いでしょうがあまりにも非力すぎます」
従者「えーと、そうしますと……ああ考えるまでも無く女神様以外の女神に頼めばいい訳ですか」
女神「……何か嫌な言い方ですね」
従者「女神様、以外の、女神にお願いすればいいのですね」
女神「ちょ、ちょっと貴方、まさか他の神に主従するつもりではないでしょうね!」
従者「え?! 男神からはよく持ちかけられますが、女神間でも欲しがられてたんですか?! 胸熱!」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 16:54:12.39 ID:wW8LsxgS0
女神「という訳でして、降臨の方をお願い致します」
従者「おへがいいだじまず」ボッコボコ
月の神「それは構わないが……君は強力なリジェネレーションの力を持っていたのでは?」
女神「一時的に切っておきました」ニコリ
従者「バウンドでヴルボッゴでじだ」
月の神「何かあったかは聞かんが肉体のダメージは持ち越されないから安心するといい」
従者「ばーい」
月の神(いや実際には何があったか知りたいが……)チラ
女神「……」ニコニコ
月の神(止めておこう……)
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 16:57:18.80 ID:wW8LsxgS0
月の神「私なら北でも南でも送ってやれるがどちらでいいのだい?」
女神「復活の進行の早さだとやはり南からでしょうか?」
月の神「まあそうなのだが、個人的な意見としては北を先にすべきではないか?」
月の神「私と水の神を信仰している国だからな……近接戦闘ができる従者が本当に心許ない」
従者「南は風の神……ですか」
女神「彼女は見た目こそ怖いけど、優しいのですからね」
月の神「で……結局どうするんだい?」
従者「では北でお願いします」
月の神「了解した。ではいくぞ」パァァ
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:00:19.12 ID:wW8LsxgS0
従者「……」ビュオォォォ
従者「寒っ! さっぶ!!」ビュオオオ
従者「何処だここ! ああ、王都の傍か!」ビュオオ
従者「うおおおぉぉ! シルバースノウってこんな所だっけ!」ビュオオオ
従者「……」ビュォォォ
従者「うん、間違いなく雪に閉ざされた国だ!」ビュオオオ
従者「ぬあああ!」パアァァ
戦士「良し! これで入国できる! いざ行かん! 暖炉のある宿へ!!」ビュオオオ
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:03:33.43 ID:wW8LsxgS0
店主「何もこんな時に入国しなくても良かったじゃないの」
戦士「ぞうでずね」ガクガク
店主「周囲の岩山を抜ける洞窟で吹雪が止むのを待つとか考えるとおもうんだけどなぁ」カチャカチャ
店主「こんな日だから宿泊客用の料理が無くてすまないね。はい、ミネストローネとパンだ」ホカホカ
戦士「やっだあ」ガクガク
店主「にしても、旅人さんも運が悪いね……なんでこんな時期にこんな国に来ちまったんだい?」
戦士「……?」ズズー
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:06:11.36 ID:wW8LsxgS0
店主「最近じゃ大昔に封印された魔獣が復活しそうだとか恐ろしい話だよ」
店主「おまけにその所為で魔物も現れてきている」
店主「今はまだ落ち着いているけども……これからどうなる事やら」
戦士「国の兵士とかは動いていないのですか?」
店主「まだ魔物狩りのレベルだねぇ……だいたい、魔獣の封印された場所が分からないって話だからね」
戦士(人間側やばいな)ズズー
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:09:32.10 ID:wW8LsxgS0
戦士(さぁてここからどうするか……)
戦士(天界としては飽くまで人間に戦わせたいらしいからなぁ)グビ
戦士(ま、全て俺達で処理する訳にはいかないもんな)
戦士(どうにか戦闘要員掻き集められないかな。無理か)グビリ
戦士(吹雪が止んだら街で情報収集するか……何とか戦う意思のある人が見つかればなぁ)フアァ
戦士(シルバースノウの蒸留酒ウメーー)
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:12:42.26 ID:wW8LsxgS0
――……
「お兄ちゃん! 見て見て! 太陽だよ!」
「えへへ~これなら久しぶりに洗濯が捗るねー!」
「お兄ちゃんはどうするの?」
「うん、分かった! 楽しみにしているね!」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:15:11.97 ID:wW8LsxgS0
戦士「……うーん、何て夢を」
戦士「お、吹雪は止んだな」シンシン
戦士「さーってどっから行ってみるか……お」
戦士「占い屋? 結構でかいな。儲けてるって事は当たるのかな?」
戦士「先行き真っ暗だろうけどやってみるか?」カラン
占い師「おや……見ない顔ですね。旅人さんでしょうか?」
戦士「ああ、見ての通りだ」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:18:35.95 ID:wW8LsxgS0
占い師「それでは、何を占いましょうか?」
戦士「ん? あれ、何を占ってもらえばいいんだろう?」
戦士「うーん、俺のこの先の運勢みたいな。半年とか一年とか長期的に見て」
占い師「ではそちらにお掛けになって下さい」
戦士(こういうの初めてだなぁ……少し緊張してきたなぁ)
占い師「……」ジャラジャラ
占い師「……うん?」ピタ
占い師「……?」ジャラジャラ
占い師「……むぅ」
戦士(やばいフラグがビンビンだ)
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:21:21.12 ID:wW8LsxgS0
占い師「……」ジャラジャラジャラ
占い師「……」ジャラ
戦士「死相しかないですかね」
占い師「いえ……貴方は一体」
占い師「人に限りなく近く、人を限りなく超越した……そんな存在」ブツブツ
戦士「……え?」
占い師「癒しの神の大いなる恩恵……とても人に与えられる恩恵ではない」ブツブツ
戦士「……え、ちょ、え?」ダラダラダラ
占い師「そしてこの体は仮の……まさか神の遣い……そんな」ゴクリ
戦士(Oh...そんな馬鹿な)
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:24:11.91 ID:wW8LsxgS0
占い師「何と言う事……」
戦士「いやー占いだって間違う時はあるんだろ?」
占い師「……何年やってきていると思っているのですか」
占い師「ああ……なんて素晴らしい事なのでしょう。今目の前に……ああ、これはもう」
戦士「もう?」スゥ
占い師「……え!?」ビク
戦士「……参ったな、予定が狂うじゃすまないな」
戦士「確かに我々は陰ながら人間を支援する時はあるが……」
戦士「妄想のうちならまだしも、あまり変な認識を広められと困るんだよ」コォォォ
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:27:15.99 ID:wW8LsxgS0
占い師(す、凄い殺気……ここ殺される)
戦士「勿論、口外しないで頂ければ問題ないのだがね」
占い師「ち、誓います……この件に関しては私の墓まで持っていくと」
戦士「物分りが良くて助かるよ」スゥ
占い師(生きた心地がしなかった……)
占い師「あ、あの……差し支えないようでしたらこちらに来られた理由は?」
戦士「……」
占い師(地雷? 地雷?!)ビクビク
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:30:10.21 ID:wW8LsxgS0
戦士(これなら問題ないかな……)
戦士(どの道戦士として行動していけば、俺の目的はこの子も知る事になるだろうし)
戦士(あーいっその事手伝わせるか……事情が事情だけに仕方が無いよなぁ)
戦士「君も知っての通り魔獣の封印が解けそうだからね」
占い師「あ、ああ……それで」
戦士「飽くまで人間主体で討伐してもらうつもりなんだけど」
戦士「人を集めたりしたいから君も手伝え」
占い師「え? あ! はい喜んでっ!」
戦士「あれー?」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:33:29.02 ID:wW8LsxgS0
戦士「嫌がるかと思った」
占い師「だって神の遣いの方に、一時とは言え仕える事ができるのですよ!!」
占い師「なんて素晴らしい事か! ああ、なんて素晴らしいのでしょう!」
戦士「変わった子だがまあいいか……魔獣討伐するって言ったらどれくらい人集まるかな?」
占い師「結構集まると思いますよ? 兵じゃない人でも好戦的な考えの人が多いですからね」
戦士「でも封印されている場所とか分かっていないんだよね?」
占い師「だから皆さん待機しているんです。今のところ兵士だけで魔物の駆除はできていますからねぇ」
占い師「まあ国としての誇りとかで、安易に民間人に協力を仰げないでいるのが現状なのですが」
戦士「仕方の無い話だな」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:36:30.27 ID:wW8LsxgS0
占い師「民間の方が集まっているのはこちらの方です」
戦士「なあ……本当に店とか大丈夫か? 一日二日じゃ終わらないと思うぞ?」
占い師「資産はある程度余裕がありますからね。ご安心を」
戦士(いや客商売だから長期休業に対する信用問題というか……それだけ信用を勝ち取っているのか?)
戦士(しまったなぁ……最近の人間界の状況ってあまり知らないな)
戦士(今回は軍の中だけじゃないんだ……上手く周囲に合わせられないと後が辛いぞ)
占い師「あの、そんなに悩まれるほど苦しい状況ではないので……」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:39:16.87 ID:wW8LsxgS0
衛生兵「……あ」
弓兵「うん? どうかしたかい?」
戦士「お……」
戦士(うん? 今回何の役割だ?)
占い師「お知り合いですか?」
戦士「ああ、そうだ」
戦士(けど俺から紹介できねーよ)
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:42:22.30 ID:wW8LsxgS0
占い師「ま、まさかこの方達も神がm」ドゴォ
戦士「おっとこんな所に殴り慨のある壁が」シュッシュッ
占い師「」ガタガタブルブル
弓兵(……君の友達って大丈夫なのかい?)
衛生兵(凄い大丈夫)
弓兵「あーコホン。君、そこの女性はまさか知っているのかい?」
戦士「知っているというか……まあそんなところだ」
占い師「ええ?! やっぱりそうなのですか?! じゃあさっきはなんd」
戦士「お前……これで一般人だったらどうする気だ」ゴォォ
占い師「」ガクガクブルブル
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:45:17.52 ID:wW8LsxgS0
弓兵「どういう事だ……?」
戦士「占ってもらったらなんか俺が人間じゃないのがバレた上に、神の遣いの者ではとまで感づかれた」
弓兵「凄いな……ああ、そういえばごくごく稀にそういう人もいるらしいな」
戦士「止めてもらいたい話だな……」
衛生兵「……」クィクィ
戦士「どうかしたか?」
衛生兵「その人親しい?」クビカシゲ
戦士(あれ? なんか嬉しいイベント?)
弓兵(おや珍しい)
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:48:24.23 ID:wW8LsxgS0
戦士「さっき出会ったばっかりだ。事情が事情だから手伝ってもらう事にしたんだよ」ナデナデ
衛生兵「そう」
戦士「で、占い師。こちらは俺の知り合いの」
衛生兵「衛生兵です。よろしく」
戦士(また軍属っ?)
弓兵「私は彼とは面識が無いが、衛生兵とは旧知の仲の弓兵だ」
占い師「わ、私はこの町で占いをやっております占い師と申します」
占い師「お、お二方はどちらの神様のt」ハァハァ
戦士「不必要な情報を集めるな」ゴァ
占い師「」ガクガク
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:51:18.08 ID:wW8LsxgS0
弓兵「……口外しない約束は取り付けたんだろ? 少し厳しくはないかい?」
戦士「俺の首がかかっていますので……物理的に」
衛生兵「癒しの神様、乱暴しない」
戦士「昨日マウント取られてフルボッコにされました」
弓兵「あの方が……君は何をしたんだ?」
占い師「……」ゴクリ
戦士「……忘れろ」ボソ
占い師「サー! イエスッサーー!」
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:54:21.23 ID:wW8LsxgS0
衛生兵「防衛がお仕事」
戦士「そうか。まあ魔獣の事は任せてくれ」
弓兵「と言っても体は飽くまで人に近い作り物だからなぁ……」
衛生兵「死なないでね?」
戦士「まあ死んでも……いや怒られるな」
戦士「人々の事、任せるぞ」
弓兵「結構従者は降りてきているからね。隠密に駆除はしているから大丈夫だろう」
占い師「……」ゴクリ
戦士(俺も大概だがこの子もぶっちゃけ過ぎだろ)
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 17:57:13.49 ID:wW8LsxgS0
……
戦士「……なんか外から見ても凄い賑わっているんだが」
占い師「ええ、そりゃあもう大勢いますから」
戦士「どのくらい?」
占い師「二十人ほどですかねぇ」
戦士「内訳は? 弓が何人とか前衛がどれくらいとか」
占い師「ええぇ? そこまで分かりませんよぉ……情報屋じゃないんですよ?」
戦士「そういえばそうだったな」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:00:21.32 ID:wW8LsxgS0
「俺が魔獣を討ち取ってやるぞーーー!!」
「へってめぇができんのかよ!」
「お前ら甘く見すぎ。昔どんだけ死んだと思ってんの」
「今と比べるとか情弱乙wwwww」
戦士(25人……前衛10の弓が8……魔法使いが7のうち2回復特化っと……)
戦士(まだまだ人間達の魔法面は未熟すぎるからな……あまり戦力には考えられない)
戦士(何より実際魔獣が動き出して、今の状況でその恐怖に勝てるのは半数にも満たないだろうな)
占い師「えっと……あまり状況は芳しくないのでしょうか?」
戦士「圧倒的に数が足りないし、この調子ではなぁ。二百年前、急ごしらえの軍隊でも千単位で死んだからな」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:03:10.27 ID:wW8LsxgS0
戦士(参ったな……もう魔獣の恐怖は完全に風化しているし)
戦士(もっと堅実な……堅実だったら完全にウェッブリバーに避難だよなぁ)
占い師「あのー……集まっていた方とお話していかなくて良かったのでしょうか」
戦士「現状、あそこで何かを話して得られるものは無い……いや現段階では時期早々といったところか」
戦士「何ていうかさ、冷静にもっと魔獣やべぇ……どうにかしたいけどどうにもなんねぇっていう人っていないのか?」
占い師「うーんどうなのでしょう……それでしたらこの国の書物庫で人を探すべきかと」
戦士「書物庫? そんなのがあるのか?」
占い師「かなり古い文献が保管されている場所です。本当に冷静に対応しようとする人であれば、過去の騒動の際を情報が調べているかと……」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:09:21.15 ID:wW8LsxgS0
戦士「意外と人がいるな……」
占い師「あのーすみません」
「はい? あれ? 占い師さん?」
「どうされたのです?」
戦士(やっぱ人望厚そうだな……これは捗るな)
戦士(数は18か……それでも決死の思いがあるなら話は別だ)
戦士(……弓と魔法ばっかだな)
戦士(これだと俺の素性を隠して上手く戦うのって無理じゃ?)
戦士(むしろ俺が最前線で盾にならないと勝てないよなぁ……それでもすぐに蒸発しそう)
占い師「皆さん、かなり本気だそうですよ!」
戦士「あー……うん後は前衛かぁ」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:12:28.33 ID:wW8LsxgS0
「え、この方も魔獣討伐に?」
「見た事の無い方ですね」
占い師「ですが凄い頼りになる方なのですよ!」
「占い師さんがそういうのならきっとそうなのでしょうね」
「前衛が不足していので助かりますねー」
「まあ……もっと大々的に集まってくれないとなんだけどなぁ」
戦士「不足っていうかいないじゃないか……」
「今日は外回りで魔物駆除ですね」
「何人いましたっけ?」
「16人だな」
戦士(あれ、かなり流れが来ているんじゃね?)
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:15:47.30 ID:wW8LsxgS0
戦士(後衛18に前衛16+自分で……酒場の連中含めて……)
戦士(対魔獣の訓練でどれだけついて来れるかだよなぁ)
戦士(うーん……どれだけ人が必要だろう。前衛左右展開で150ずつと魔法、弓部隊合算100は最低ラインだよなぁ)
戦士(今の時代の人間の平均技量次第ではもっと必要か? 過大評価し過ぎか?)
戦士(そもそも民間で100以上集めるのが無理な話か……)
戦士(とすると兵士か? 軍と市民が協力し合って魔獣を? いや、この先の未来を考えるのなら)
戦士(共同戦線を組むというのは良い経験になるかもしれないな)ムーン
占い師(こちらが話しかけないと押し黙る時があるけども……何か機嫌を損ねるようなことでも?)ドキドキ
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:18:12.67 ID:wW8LsxgS0
戦士「なあ、今の状態で市民と軍が手を取り合って戦う事ってありえると思うか?」
占い師「へ? ええーと……難しいと思いますよ」
「今のところ、兵士だけで事足りてますしね」
「何でも魔獣が封印されてるところを探し出して、総攻撃しようという話もあるそうです」
戦士(それは不味いな……勝手に封印解かれて本調子になられたら、従者だけでどうにかしないといけなくなる)
戦士(まともに調練が済んでいない兵士じゃ、足止めにもならないだろうし)
「占い師様……あの方、大丈夫なのでしょうか?」
「なんかさっきから黙ったりしてて……怖い感じが」
占い師「だ、大丈夫です! とても頼りになる方なのですよ!」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:21:39.03 ID:wW8LsxgS0
戦士(衛生兵達に会って状況を確認しないとだな……)スック
占い師「あ、あのどちらに?」
戦士「さっきの二人に会ってくる。やはり兵士もいないと人員が足らなさ過ぎる……」
戦士(待てよ、兵士と合同で行った方が訓練もやり易いな……問題はそれだけ上層へのパイプが無いと難しい事だが)
戦士(うーん……とにかく手回しするしかないのかなぁ)
占い師「あのー私もついていってもいいでしょうか?」
戦士「あー……まあいいか」
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:24:10.30 ID:wW8LsxgS0
戦士「という訳なんだがどう思う?」
弓兵「もうちょっと軍が苦戦してくれればその流れも難しくないが」
衛生兵「今は市民に頼る気なさそう」
戦士「そうかー……」
占い師「私のほうからも掛け合ってみましょうか?」
戦士「うーん……え? 軍にも顔がきくの?」
占い師「常連さんの中に偉い方もいらっしゃいますからね」
弓兵「私達が何かするよりも、その方がいいかもしれないね」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:28:05.16 ID:wW8LsxgS0
……
占い師「市民との共闘を検討してみるとの事です」
戦士「……マジで?」
弓兵「凄いね……一体どう言いくるめたんだい?」
占い師「占いの結果、不吉な相が国に表れている、と言って具申してきましたよ」
戦士「いいペテンだな」
衛生兵「そういう事言っちゃ駄目」
占い師「まあ、私も分かっててやってますしね」
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:33:22.33 ID:wW8LsxgS0
戦士「ああ、そうだ……軍で無理やり魔獣を攻撃しようとしているって話ってマジ?」
衛生兵「場所は特定できたけど、周りに魔物が多くて難航中」
戦士「お、いい流れじゃないか」
弓兵「そ、その発言はどうかと思うよ」
戦士「戦士嬉しそう」
戦士「市民と軍が一致団結して戦う、最高の流れじゃないか」
占い師「そうなのでしょうか……?」
戦士「そうなのさ。良し良し果報は寝て待て。俺は宿屋に帰っておくかな。調練内容も綿密にしないとだし」
占い師「あ、それでしたら私の家で泊まられたらいかがでしょうか?」
弓兵「ほほう」ニヤニヤ
衛生兵「……」ピク
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:36:11.56 ID:wW8LsxgS0
占い師「そんなすぐに状況が動くとも思いませんし、ずっと宿屋にいられては費用のほうもかさむのでは……」
戦士「あー……そういう事なら頼もうかな」
弓兵「おやおや……いいのかい占い師さん。仮にも一つ屋根の下に男と一緒だなんて」
占い師「神々の遣いの方なのですよ? そのような不埒な事は行わないと信じています!」
戦士「……」
『……○○でぇーす……天界に帰ったら○○○しに……神経毒なんてお手の物よぉん』
戦士「……」フッ
衛生兵「死んだ魚の目?」
占い師「仮に押し倒されてもやったああ! 神の遣いの方と○○○○キターー! て喜びます!」
弓兵「たくましい子だね……」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:39:11.77 ID:wW8LsxgS0
……
占い師「夕食出来上がりましたよ~」
戦士「おおっいい香りだ~」スンスン
戦士「パスタかぁ……久しぶりだなぁ」イタダキマス
占い師「天界では人間と同じような食事なのでしょうか?」
戦士「全く同じという訳ではないが、基本はそんなものだな」カチャカチャ
占い師「というか天界はどういった方々がおわすのですか?」
占い師「私達は神様がおり、その僕がおり、そしてその下に精霊など雑務をこなす者がいると思っているのですが」
戦士「少し違うかな。うん、美味い!」モグモグ
戦士「天界は基本的に信仰されている八柱の神とその遣いである俺達従者がいる」
戦士「そして信仰対象というほどでない八柱のご子息ご息女にあられる神々がいる」
戦士「雑務は大抵、俺達が行っているんだ」
占い師(コックさんみたいな遣いの方っているのかなぁ)モグモグ
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:42:04.70 ID:wW8LsxgS0
占い師「戦士さんのような方々って結構いらっしゃるんですか?」
戦士「多いところだと一柱で100人以上はいたような……」
占い師「うわー凄いですね……どうやったらなれるのですか?」
戦士「こればっかりは俺からも上手く説明できないんだが……神々には魂に形や色が見えるらしい」
戦士「勿論便宜的にそう言っているんだと思うし、感覚的な話なんだと思う」
戦士「それで神々の趣味というかそれにそった形や色の魂をもっていればおめでとう、という訳だ」
占い師「ちなみに、戦士様の魂はどんな感じだと言われましたか?」
戦士「くすんでいて無駄の多い形だと」
占い師「……えー?」
戦士「ゆえに磨いて形を整えればきっとイケる、だそうだ」
占い師「ええ?!」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:45:21.78 ID:wW8LsxgS0
占い師「部屋はこちらをお使い下さい」
戦士「すまないな」
占い師「いえいえ、それでは失礼しますね」バタン
戦士「ふーっ」
戦士(今のうちに調練内容を……)
戦士(スノーフィールドに現れた魔獣は氷狼。巨体による突進と氷のブレスが強力だ)
戦士(おまけに並の鎧では前足で薙ぎ払われただけで三枚おろし)
戦士(攻撃の要を何処に置くかだが……)
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:48:30.73 ID:wW8LsxgS0
戦士「……」フォンフォンフォン
占い師「お、お早うございます……」
戦士「おう、お早う」フッー
占い師「こんな朝早くから外で素振りだなんて……寒くないのですか?」
戦士「今日は雪もおだやかだし体も暖まっていいぞー」
占い師「天界でも朝は素振りをなさっていたのですか?」
戦士「まあ、習慣てやつだな」
戦士(って昨晩からべらべら喋り過ぎだ俺っ)
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:51:36.15 ID:wW8LsxgS0
戦士「おお、焼きたてパンか?!」
占い師「さ、流石にそれは無理ですよぉ。元々焼いてあったのを軽く炙っただけですって」
戦士「いやいや、それでも芳醇なパンの香りが……」ゴクリ
占い師「あははは、戦士さんは面白い方ですね」
戦士「ほうかぁ?」ハフハフ
占い師「……」
戦士「どうかしたか?」
占い師「戦士さんも元は人間なのですよね……」
占い師「シルバースノウの方なのですか?」
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/13(金) 18:55:53.49 ID:wW8LsxgS0
戦士「飽くまでこの姿はここで活動する為に肌色とか変えているんだ」
占い師「何と言いますか……本当に漠然とした話なんですけどもそう感じるんです」
戦士(……この子、神様方みたく魂が感じられるのかもしれないな)
戦士(初見で俺が見破られたのも納得だな)
占い師「あのー……もしかして聞いてはならない事だったのでしょうか?」
戦士「いや……俺自身のことだからいいか」
戦士「君の感じた通りだ……俺はこの国で生まれ育った人間だよ」
戦士「これが今のところ、魔獣に対する作戦や訓練の内容だ」パサ
占い師「え? え? ええと……」ペラ
占い師「え……これって……こんな詳しく……」
49 :御飯:2012/07/13(金) 18:58:58.33 ID:wW8LsxgS0
戦士「もう二百年も前の事だもんな……」
占い師「戦士、さん……」
戦士「両親を早くに亡くした俺は妹と二人で生活をしていた」
戦士「俺が山に狩りをしにいった時だ……魔獣が現れ、俺の住んでいた村は壊滅した」
戦士「シルバースノウの首都に逃げ延び討伐軍に加わった。二千人近くの傭兵や兵士、俺みたいな人間で溢れ返った」
戦士「うち前衛を務めたのは千五百人ほどだったが……その中で生き残ったのは数十人だったそうだ」
占い師「戦士さんはその時……」
戦士「……こうして過去の精算ができる日が来るとはな。必ず勝つぞ、この国の平和のためにも」
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