最原「僕らが往くは恩讐の彼方!」 巌窟王「これで終わりだ!」 後編

2: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/23(金) 20:29:14.24 ID:3VPay3A10
ザザッ

??学園跡地


??「……行っちゃったね。二人とも」

??「もうこの学園には、私たち二人だけ」

??「随分減っちゃったなぁ……地味にビックリだよね。これだけの人が死んで、私たちはまだ生きてる」

??「……ねえ。天海くん。約束だよ?」

??「次の学園生活……絶対に私を――」

??「……」

??「うん。安心した」



ザザッ……ザザザザーッ

引用元: 最原「復讐鬼の学級日誌」 巌窟王「俺たちのコロシアイ修了式」 



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4: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/23(金) 20:38:00.27 ID:3VPay3A10
新世界プログラム内 白銀の研究教室

天海「……他になにか目ぼしいものはないっすか?」ガサゴソ

BB「ないですねー。まったくないですよー」ガサゴソ

BB「……いえ。失礼。これは隠さずに正直に言うべきでしょうね」

天海「えっ。なにかあったんすか!?」

BB「山積みにされてあったジャンプを見つけて捜索がまったく進まなくなるというブービートラップに引っかかりまして」ドーンッ

天海「女の人を思い切り引っ叩きたいと思ったのは初めてっす!」ガビーンッ

BB「……ここで何かをしていたという痕跡はあるんですよねー。具体的に何だったのかはわからないのですけど」

天海「この表紙に『学級日誌』と書かれたアーカイブは、破損してて読めたものじゃないっすし」

BB「ああ。それ破損してるんじゃなくって消去されてるんですよ。慌てて処理したせいか不完全ですが」

天海「修繕できるんすか?」

BB「いえ。表紙が判別可能なところを不完全な消去と言っているだけで、中身に関して修繕は不可能ですよ」

BB「でも必要ありませんよ。現実の方に同じものがあるんですから」

天海「!」

5: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/23(金) 20:45:49.03 ID:3VPay3A10
天海「何か知ってるんすね!?」

BB「というより、知らなかったんですか?」

天海「え?」

BB「……」

BB「そうですか。知らないのなら、あなたたちはそのままでいいと思います」

BB「知らないままじゃないといけません」

天海「え。どういうことっすか?」

BB「この学級日誌は、巌窟王さんが書いていたものです」

天海「……は?」

BB「彼の宝具の能力である『情報隠蔽』を最大限フルに使ってしたためられたものですから白銀さんやモノクマには捕捉されてないものだと……」

BB「……思ってましたけど、詰めが甘いですねぇ。彼も」

天海「巌窟王さんが、これを……?」

BB「……白銀さんは彼をこの世界に閉じ込めた後で、コレを見つけたんでしょうね」

天海「詳しい内容は?」

BB「巌窟王さん本人に聞いてください。勝手に話したと知られたら、どんな仕返しされるかわかったもんじゃありません」

BB「陰湿ですよー。彼の嫌がらせ」

天海「……」

6: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/23(金) 20:55:46.42 ID:3VPay3A10
BB「ただ、白銀さんがコレを見たと知ったら、余計に巌窟王さんが怒るだけだと思いますけど」

BB「中身について彼が口を割るとは思えな――」


ズズゥーン……


天海「おわっ……なんすか!?」

BB「おっと。そういえば一つ言い忘れたことが」

天海「今それどころじゃないっすよ! 凄い揺れ……!」

BB「このゲームのエンディングで、この庭園は崩壊するんですよ」

天海「だからそれどころじゃ……はい?」

BB「よくありますよねー。最終的に自爆したり崩壊したりする悪の組織の拠点」

天海「……」

天海「それって最原くんは無事で済むんすか?」

BB「もちろん。そういう設定になってましたから。主人公は死にません」

天海「俺たちは?」








BB「あ」

天海「あ、じゃねーーーっす!」ガビーンッ!

10: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/24(土) 17:20:21.56 ID:PJfDrXVI0
BB「大丈夫です。ゲームのプレイヤーではない人のため、脱出用のタイヤキ型ポッドがあります!」

天海(ゲームのタイトル聞いたときから思ってたけど、なんでタイヤキなんだろう。甘党なんすかね)

BB「ただそこまで誘導はできますが、気を付けてください。この庭園にはNPCが結構な数いますので」

BB「先に使われちゃって脱出ポッドが残ってないという可能性も充分考えられます!」

天海「最原くんのことは放置っす! ひとまず全力でそこまで行くっすよ!」

BB「こっちです!」ダッ





脱出ポッド格納庫

BB「よし! あと二つ残ってますね! 急ぎますよ! 入口を開けてください!」

天海「OKっす! それじゃあ」ガチャリンコ

ガチャピン「!」

ムック「!」

天海「……」



バタムッ


BB「なんで閉めちゃうんですか!?」ガビーンッ

天海「ガチャピンとムックがいた! ガチャピンとムックがいたんす!」アタフタ

BB「最近キャンペーンが終わったんです! そりゃいますよ!」

BB「え? ゲームが違う? 今はそんなこと考えている場合じゃ……」



バシュッ


BB「ああほらーーー! アタフタしている内に脱出されちゃったーーー!」

天海「帰らないでーーー! 俺たちの傍にまだいてーーーッ!」

ガチャピン&ムック「……」バイバイ

12: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/24(土) 17:29:46.95 ID:PJfDrXVI0
BB「まあ、元から脱出ポッドは二人乗りですから、乗れたとしてもギチギチのはずですけどね」

天海「まだポッドは一つ残ってるっす! それに乗って脱出を!」ガチャリンコ

西川貴●「!」

天海「……」


バタムッ


BB「だからなんで閉めちゃうんですかッ!」ガビーンッ

天海「なんか明らかに西川貴●さんっぽい人がいたんす! BrightでBurningなshoutしそうな人が!」アタフタ

BB「知りませんよ! どっちにしろここしかもうないんです!」ガチャリンコ

BB「相乗り失礼しまーす!」

西川貴●「……」イイヨー

天海「ぐ。狭っ……!」

BB「よし! それじゃあ脱出を……ん? 遠くから誰かが走って……」

hyd●「……」マッテー

BB「hyd●っぽい人ーーー!」ガビーンッ

天海「なんかNPC陣がことごとく人選意味不明なんすけどーーーッ!」ガビビーンッ!

BB「あ、このゲームのエンディングとオープニングを唄う人です。それぞれ」

天海(無駄に豪華!)

13: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/24(土) 17:39:04.41 ID:PJfDrXVI0
虚栄の空中庭園 玉座

最原「ふう……思ったより簡単な謎でよかった」

セミラミス「ふむ。人間の割には中々やるか」

セミラミス「……だが、この程度で終わりだと思っているわけではあるまいな?」ニヤァ

最原「え」

セミラミス「クリア後に攻略要素が残るのはゲームのお約束、というヤツであろう?」

最原「ちょ、ちょっと待って! まだ何かあるの!? ついさっきhy●eっぽい人のエンディングを聞いたばっかりなのに!」

セミラミス「セカンドステージへ向かうぞ。それが終わるまでは、まだ貴様は我が駒だ」

最原「そんなバカな!」

セミラミス「なお、途中で逃げようとした場合はこの庭園の崩壊に無抵抗で巻き込まれて死んでもらう」

最原(選択肢がない!)ガビーンッ

セミラミス「さあ。向かうぞ。次のステージへな!」

最原(……天海くんとBBさんに任せるしかないか……!)

15: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/24(土) 22:25:24.30 ID:PJfDrXVI0
ズズゥン……

獄原「ん? 今、何かが向こうで聞こえたような……」

真宮寺「気のせいじゃないの? だって海だヨ?」

獄原「いや。やっぱり建物が崩壊するような音が聞こえる……」

星「……この世界で何が起こってるんだかな」

星「ところで昼ご飯はどうするんだ?」

真宮寺「備え付けてあったからって、朝から焼きそばとか焼いちゃったからネ。昼はさっぱり冷ややっこだヨ」

星「どっちにしろ麺類じゃねーか」

東条「……夜くらいは私が料理を作りたいわ」

真宮寺「怪我もそろそろ治ってきてるしネ。久しぶりにそうしようかな?」

真宮寺(ていうかいつまで水着なんだろう……とはとても聞けないよネ……)

東条(この常夏の島においても制服は脱がないのね……とはとても言えないわ)

16: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/24(土) 22:53:37.64 ID:PJfDrXVI0
獄原「ちょっとゴン太、あっち側に行ってみるね!」ガサゴソ

東条「泳いでいくつもりならここに水着が……」

獄原「エンジン付きゴムボート!」テレレテッテレー!

東条「……」

獄原「行ってきまーす!」ブロロロロロロ!

東条「水着……」

星「まあ流石にアイツも急いでるときはボートくらい使うだろう」

東条「……」

真宮寺(水着仲間欲しがってる……)

星「……ところで東条。俺の水着はあるか?」

東条「!」パァァァァ

真宮寺(凄い気を使ってる……!)

真宮寺「ん?」

獄原「うわああああああああ!」ブロロロロロロ!

真宮寺「あれ。もう帰ってき……!?」





タイヤキ型ポッド「」ビチビチビチビチッ!

獄原「うわあああああああ! こっちに来ないでーーー! 怖いーーー!」ブロロロロロロ!

真宮寺(なんかよくわからないものに追われてる)ガーンッ!

17: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/24(土) 23:07:44.58 ID:PJfDrXVI0
獄原「セーフ! 陸地に辿り着いた! ここまでくれば大丈夫!」

タイヤキ型ポッド「」ビチビチビチビチビターンッ!

星「まあ、魚類? のようだし、陸地に上げちまえば身動きは取れな」

タイヤキ型ポッド「」ブルブルブルッニョキッ

獄原「え?」

タイヤキ?型ポッド「」カサカサカサカサッ

獄原「ええーーーーッ!? 虫みたいな足が側面から出てきて陸地を素早く移動しはじめたーーー!?」ガビーンッ

真宮寺「気持ち悪っ……! ひい! こっちに来てるぅ!」ガビーンッ!

東条「真宮寺くん! 逃げて!」

真宮寺「言われなくとも……ハッ!」

真宮寺(今、ここには仕込み中のタレと刻んだ具材が……!)

真宮寺「逃げるわけにはいかない!」ギンッ

獄原「し、真宮寺くん! ダメだ、間に合わない!」ダッ

タイヤキ?方ポッド「」ピタッ

真宮寺「……と、止まっ……た?」

18: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/24(土) 23:19:33.49 ID:PJfDrXVI0
ブシューッ

真宮寺「ん? あれ。これ、乗り物……みたいだネ。開いた口から誰かが出てくるヨ」

ガチャピン「……」ヌッ

ムック「……」ヌッ

真宮寺「」

ガチャピン&ムック「……」ダッ

東条「……真宮寺くん? この魚類? の陰に隠れてよく見えなかったけど、誰だったのかしら」

真宮寺(ツッコミが追い付かない)

獄原「あれ? あっ」

真宮寺「ま、まあいいや。今のは悪い夢だったと思うことにしよう」

真宮寺「引き続き冷やし中華を……」

獄原「!」バッバッ

星「お?」

東条「きゃっ」






獄原「真宮寺くん! 今すぐ逃げて!」

真宮寺「は?」

獄原「別角度からもう一体突っ込んでくる!」

タイヤキ?型ポッド2「」カサカサカサカサッ

真宮寺「ぎゃああああああああああああ!」グシャッ

星「真宮寺が轢かれた!」

獄原「真宮寺くーーーん!」ガビーンッ!

22: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/25(日) 14:09:02.55 ID:+EawDSKZ0
東条「……いいえ! まだ大丈夫よ! あの虫のような足の隙間に運よく入って潰されてはいないわ!」

星「見れば見るほどに本当にイヤなフォルムしてるな」

獄原「うん! サケビクニンさんの百倍グロテスクだよね!」

東条「どうやらあの乗り物? は停止したようね。下の隙間に入っている真宮寺くんを救出するわ!」ダッ

獄原「あ! ゴン太も……ハッ!」

タイヤキ?型ポッド2「……」ギャーギャー

獄原「ダメだ東条さん! それに迂闊に近づいたら――!」


ガシャンッ


BB「シェイプシフター! その狼藉者をどこかに振っ飛ばしてーーーッ!」

天海「ぐふああああああ!」バシュンッ

東条「がふっ」ドスゥッ

獄原「東条さんの鳩尾に天海くんが激突したーーーッ!」ガビーンッ

星「……ん? 天海?」

獄原「ゴン太の仲間に手出ししないで!」ダッ

BB「あー。まったく。どさくさに紛れて○を○○とかどこのラノベ主人公――え?」

伝説の超獄原ゴン太「消えて無くなれーーーッ!」グンッ ブンッ

BB「きゃーーー……」ヒューッ……

星(魚型の乗り物をどこかに投げ飛ばした……!)ガビーンッ

東条「」チーン

真宮寺「」チーン

天海「」チーン

獄原「……」

獄原「また……守れなかった……!」ガクリッ

星「お前さんはよくやった……」

23: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/25(日) 14:18:07.96 ID:+EawDSKZ0
アンジーの病室の外

巌窟王「……」イライラ

巌窟王(なんということだ。まさかアレを抜き身のまま放置して閉じ込められてしまうとは)

巌窟王(なんとしてでも、アレだけはモノクマないし白銀に見られるわけにはいかない)

巌窟王(入間は外に出ることは外からの助けなしには不可能だと言ったが……真面目に考えなければならないだろうな)

「導けBright Burning Shout! 無情すぎる世界でも!」

巌窟王「む? どこからか歌声が……上からか?」

BB「きゃああああああああああああ!」ヒューッ!

巌窟王「!?!?!?」ガビーンッ





ドグシャッ


☆声に出したその希望を真実に――!

24: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/25(日) 14:24:23.91 ID:+EawDSKZ0
赤松「巌窟王さん? どうしたの? 何か凄い音が聞こえたけど……」

BB「」チーン

巌窟王「」チーン

赤松「!?」ガビーンッ

赤松「な、なにこれ! どういう状況……ん!?」トントンッ

赤松(あれ。誰かに肩を後ろから叩かれた?)

西川貴●「……」ヤッホー

赤松「!?!?」ガビビーンッ

赤松「え? 私の名前が知りたい? 赤松楓ですけど……」

西川貴●「……」サラサラサラッ ピッ




西川貴●のサインを手に入れた!




赤松「え。え?」

西川貴●「……」ダッ

赤松「い、行っちゃった……なにこの状況……」



サインは後で額に飾られた。西川貴●とhyd●はジャバウォック島にて野生化した


26: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/25(日) 18:10:29.96 ID:+EawDSKZ0
真宮寺さんちの今日のごはん 海の家にて

真宮寺「……完成したヨ。冷やし中華。人数増えちゃったから、ちょっと量少なくなっちゃったけど」

赤松「うわあ! 美味しそう!」

獄原「真宮寺くんが必死に食材を守った甲斐があったね!」

巌窟王「アンジーの分は当然用意したのだろうな?」

真宮寺「もちろん。食べられるかどうかは別だけどネ」

巌窟王「後で持っていこう」

真宮寺(信用を回復できたみたいでよかった……!)

巌窟王「もし毒を盛ってたりしたら後で焼いて海に散灰するぞ」

真宮寺(全然回復できてなかった……!)エグエグ

天海「それじゃあ、みんな揃って……」

BB「いっただっきまー……」

巌窟王「待て」

天海&BB「?」

巌窟王「何故貴様らがここにいる?」

27: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/25(日) 18:24:14.75 ID:+EawDSKZ0
天海「助けに来たんすよ。外部からの操作を受け付けない状態になっていたから、中に入るしかなかったんすけど」マグマグ

入間「あー? マジかよ。外からも不可能なのかよ……徹底しすぎだな、オイ」マグマグ

BB「ていうかあなたたちは一体何をしているんですか。外部からの脱出手段がないのなら、内部にスイッチがあるのが道理でしょうに」マグマグ

巌窟王「全員食べながら話すのをやめろ」イラッ

入間「いや。どこを探してもないもんはなかった。これは間違いないぜ」

BB「どこか弄ったんじゃありません? あなたたち、何か壊したりしてないです――」

BB「……あ。もしかしたらアレかな……白銀さんのアルターエゴ……」

真宮寺「彼女がどうかしたの?」

BB「いえ。外に出れないというのなら、あなたたちがこの世界を調べた時点で『壊れた物』が必然的に『脱出の手段』ってことになるかなと思って」

BB「たった一つだけありましたよね? あなたたちが明確にぶっ壊した、この世界の機能」

巌窟王「!」

入間「……ああ、そうか! クソッ! やられた! アイツが出入り口だったのか!」

BB「今となっては確かめようがありませんが……」

BB「でもそれならそれでおかしいですね」

天海「おかしい?」

BB「だって、白銀さんが虚栄の空中庭園の中の一室を改造して、何らかの作業をしていたことは明らかですし」

BB「もしも作業中に出入り口がぶち壊されたら、白銀さんもあのカプセルの中に閉じ込められたままなはずなんですが……」

BB「予備の出入り口がどこかにあると考えるべきですね」

28: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/25(日) 18:37:26.04 ID:+EawDSKZ0
入間「はんぎんぐがーでん……? それって、このなんかブラックボックスな感じになってる……」ブオンッ

BB「ああ、それですそれです。うわぁ。改めて文字列として見てみると本当スパゲッティなクソコードですねー」

BB「しかしあそこに出入り口っぽいものがあったとは記憶してないのですが……」

天海「……」

天海「あの。BBさん。イヤな仮説言っていいっすか?」

BB「はいどうぞ天海さん!」

天海「白銀さんが本当に出入り口だったとしたら、アルターエゴに俺たちを脱出させる権限があったってことっすよね?」

BB「そうですね」

天海「じゃあ、予備の出入り口って、彼女と同じくアルターエゴだったりしないっすか?」

BB「可能性としては充分ありえるかと」

BB「あ」

東条「……どうかしたの? 心当たりがあるのなら言ってちょうだい」

BB「……あの。入間さん。その端末から私たちの人格データって見れます?」

入間「不可能だな。そこまでの権限は俺様たちにない」

BB「じゃあアルターエゴのデータも同じく見れないでしょうね……だから見つからなかったのか……」

入間「あー? テメェ、何を言って」

入間「あっ!」

天海「……てっきりあの女の人はただの時間稼ぎ要因だと思ってたっす。でも実際のところ答えそのものだった……!」








天海&BB「セミラミスさん!」

29: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/25(日) 18:51:08.88 ID:+EawDSKZ0
天海「彼女が出入り口だったんすね! 全然その発想なかったっす!」

BB「……あー。私たちが入るまで、あの空中庭園は無事でした。つまり白銀さんはあのゲームをゲームとしてプレイしていないことになります」

BB「あのときセミラミスさんは問答無用のように振る舞っていましたが……実際、そこまで権限は強くないでしょうね」

BB「『この世界から出してくれ』という明確な意思を伝えれば、彼女は私たちを出さざるを得ない。そういうふうにできているはずです!」

BB「『見逃してくれ』と漠然と言うだけではダメでしょうけどね」

天海「でもそんなこと、会ったとき彼女は一言も……」

BB「自分と遊ばなければならないと思わせるためにチュートリアルを自動でスキップしたのでしょう」

天海「無茶苦茶な!」

巌窟王「……ともかく、そいつに会えばいいのだな?」

東条「脱出手段に当たりがついたのはいいことだけども……その人、今はどこにいるのかしら」

BB「ゲームをクリアした最原さんを拉致ってセカンドステージへと向かったはずですが……」

BB「……」

BB「未実装エリアを開拓して新しいステージを延々と作るくらいはしそうですねぇ。あの土木系アサシン」

入間「ちょっと待ってろ! んな派手なことされたらイヤでも気づく!」カタカタカタカタ

入間「あった! さっきまで絶対になかったオブジェクトが発生してる!」

BB「場所は?」

入間「ここから真っ直ぐ南の方向だ!」ビシィッ






陸地「」ドォォォォォォンッ!

入間「……あ、あれ? さっきまで無かったよな? あんなん」

BB「やりたい放題ですねー」

巌窟王「先に行っている。お前たちは後から来るがいい!」ビュンッ!

30: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/25(日) 18:58:56.73 ID:+EawDSKZ0
最原「……ここは……」

セミラミス「さて。セカンドステージはちょっと難易度が上がるぞ? 内容はただのかくれんぼだがな」

セミラミス「我は全力で貴様から隠れる。それを見つければ貴様の勝ち。それだけの簡単なルールよ」

最原「……見覚えがあるような気がする」

最原(妙だ。忘却補正があるのだから、見覚えがあるのなら忘れてない。なのに……懐かしいと、ただ思うだけだ)

セミラミス「さあ。見事我を探し当ててみせよ。ステージの名前は……」








セミラミス「希望ヶ峰学園、と言ったか?」

33: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/26(月) 19:06:11.48 ID:SPo0SbT30
希望ヶ峰学園内

最原「……今回も早めにクリアして、天海くんたちに合流しないと」

最原「どこに隠れてるんだろう」

最原(というか……才囚学園と趣味がほぼ同じだな。かなり悪趣味な内装だ……)

最原(でもこの既視感はそれとは何か違う気がする)

最原(僕はここを知ってる?)

最原「……進んでみよう」







??「……」ジーッ

34: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/26(月) 19:14:15.36 ID:SPo0SbT30
最原「……いないな。手がかりも見つからない。結構時間がかかりそうだ」

最原「天海くんたちが外に出るのが先かもな……そうだといいけど」

最原「……」

??「……」ジーッ

最原(さっきから誰かに見られてる。でもセミラミスさんじゃないな……)

??「……」クスクスクス

最原(……どうせ手がかりはないんだ。追ってみようかな)

??「……」スッ

最原「気付かれた。でも……本気出して逃げようとしてないな」

最原「僕をどこかに連れて行こうとしてる?」

??「……」ニヤニヤ

最原(悪寒がする。引き返せって、僕の勘が全力で言ってる)

最原(……それでも、あれしか手がかりがない)

35: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/26(月) 19:19:48.35 ID:SPo0SbT30
??「本当に真実を知りたいの?」

最原「!」

最原(……あれ。ここ、どこだろ。真っ暗だ。なのに自分の姿だけはよく見える)

最原(僕の前を行く誰かの背中も……見失ってない)

??「……そんなわけないよね。本当に真実を知りたいのなら、もうキミは既にそれを手にしている」

??「気付いていないフリをしているだけだ」

最原「……何が言いたいの?」

??「……ふふっ」

最原(この声は……聞いたことがある。まさか……!)

最原(セミラミスさんじゃない。白銀さんでもない。でも日常的に聞いたことのある、あの声は!)

最原「……ッ!」ダッ

??「へえ。追ってくるんだ」タッ

36: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/26(月) 19:27:45.68 ID:SPo0SbT30
??「おかしいと思わなかった? なんで忘却補正で思い出せたのが、この学園での記憶だけだったのか」

??「普通に考えれば、思い出しライトでこれから思い出すはずだった『この学園に来る前の記憶』も思い出せなきゃおかしいよね?」

最原(それは……!)

??「さあ。考えてみよう。キミはいつだってそうしてきたはずだ。一体、なぜこの学園に来る前の記憶がないのか」

最原「……」

最原(何故、思い出せたのが学園に来てからの記憶だけだったのか……それは)


1.忘却補正に不備がある。
2.思い出したが、また忘れた。
3.元から学園に来る前の記憶がない。

38: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/26(月) 19:32:11.99 ID:SPo0SbT30
最原「……元から学園に来る前の記憶がないから……?」

??「正解だ」

最原「いや。それはおかしい。だって今までずっと、思い出しライトで記憶を取り戻してきたはずだ」

最原「元から学園に来る前の記憶がないのなら、僕たちが今まで思い出して来たアレはなんだったんだよ!」

??「思い出してみてよ。白銀さんは、キミたちの記憶を改竄するときに何を使った?」

最原「……それは!」



1.思い出しライト
2.マザーモノクマ
3.エグイサル

40: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/26(月) 19:40:44.46 ID:SPo0SbT30
最原「……思い出しライト」

??「ほら。答えはすぐ傍に転がっていたでしょ? 何の才能の個性もない僕でもわかる」

最原「……」

??「ここまで言ったらもうわかるよね? 思い出しライトの本当の機能は『記憶の植え付け』なんだよ」

??「さて……元から思い出すべき記憶がない。思い出しライトの真の機能。この二つを念頭に置いて一から考えよう」

??「キミの正体は、なんだろう」

??「一体どこからどこまでが真実なのかな?」

最原「う……ぐ……!」

??「質問を変えよう」

??「キミが……『最原終一』が始まったのは、どの時点?」

最原「……」





1.学園生活開始時点
2.学園生活開始以前

42: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/26(月) 19:53:31.78 ID:SPo0SbT30
最原「……学園生活が始まったその時点……」

最原(気が付けば歩みは止まっていた)

最原(目の前の人影は、僕に向き直っている)

最原「キミは……誰だ?」

最原「なんでこんなことを知ってる? どうして……!」

最原「誰にも言ってない! 確かに薄々感づいていたけど、そのことを誰にも気取らせてないんだ!」

??「まだ目を逸らすの? 目の前を見ればわかるのに」

??「……巌窟王さんから貰った強さはどこに行ったのかなぁ?」

最原「キミは……!」

??「そう。関係ないんだよ。誰にも言ってない。気取らせてない。でも、だからって誰にも知られないわけじゃない」

??「最原終一を誰よりも知っている人。最原終一の声を誰よりも聞いてきた人。最原終一の気持ちを誰よりも理解できる人」

??「さて。僕は一体、誰でしょう」

最原「……」

最原(僕が追っていたのは……僕を煽る、この聞きなれすぎた、この声の主は……!)




1.最原終一
2.白銀つむぎ
3.モノクマ

44: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/26(月) 20:02:02.25 ID:SPo0SbT30
最原「……僕が……いる」

最原?「……」

最原「なんで。キミは一体……誰?」

最原?「君自身……だけど、厳密には最原終一じゃないなぁ」

最原?「……元の人格のバックアップと呼んだ方が正確かも」

最原「……」

最原(何がなんだかわからない……僕は今、何を見ている……!?)

最原?「キミは僕と違って頭がいい。もう全部わかってるはずだよ?」

最原?「ふふっ……くくくくくく」

最原「ふざけるなっ! こんなものまやかしだ!」

最原「……こんなものが真実なわけ……ないだろ……!」

最原?「いや? 間違いなく真実だよ。そして――」

最原?「ここまで辿り着いたキミに、二つの選択肢をあげよう。初回特典としてね!」

最原「え?」








最原?「『僕』に戻って、外の世界に帰る。または、この世界に残って引き続き地獄を味わい続ける」

最原?「どっちがいい?」

最原「……」

最原「……は?」

48: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 18:34:28.53 ID:YUBq5Fog0
希望ヶ峰学園外周部

巌窟王「……」

セミラミス「むぐ?」モグモグモグモグ

巌窟王「……何をして……いや。マカロンを食べているのか……そうか……」

セミラミス「……」モグモグモグモグモグ

巌窟王「……」

巌窟王「いい加減食べるのをやめろ」

セミラミス「……」ゴクン

セミラミス「くくく。巌窟王か。よもやこんなところで出会うとはな」

巌窟王「会いたかったか?」

セミラミス「まさか。貴様とは趣味がまったく合わんからな。二度と顔を突き合せたくはなかったぞ?」

巌窟王「フン……」

セミラミス「今、この学園の中で我を探している人間……名前は最原だったか」

セミラミス「早めに助けなければまずいかもしれんな?」

巌窟王「!」

セミラミス「この学園の中に我が『いない』ことに気付いて外に出ることができたらセカンドステージはクリア」

セミラミス「……なのだが、我にこのステージを貸したあの女は、この学園の中に一つのデストラップをしかけていたらしい」

セミラミス「強い心があれば問題はなかろうが? アレはおそらくダメだな」

巌窟王「舐めるな。アレはそこまで惰弱ではない」

セミラミス「そうか。なら確かめてみるか? だがその前に、我はこの空間において千里眼に等しい権能を持つ」

セミラミス「これも同じく、あの眼鏡の女に貸し出されたものだが?」

巌窟王「何が言いたい?」ギロリ










セミラミス「冷やし中華をマスターに届けるのではなかったか?」

巌窟王「……!」ハッ!

49: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 18:39:45.46 ID:YUBq5Fog0
海の家近辺

獄原「よし! 人数分のゴムボートは用意したよ!」

赤松「最原くんもこの世界に来てたの!? もっと早くに言ってよ!」アタフタ

天海「いや! 言い忘れてて!」

BB「ていうか私は言いましたよ。サラッと」

赤松「サラッとしすぎてうっかり聞き逃しちゃったんだよ!」

ギュンッ

巌窟王「うおおおおおおお!」ギュンッ

BB「……あれ。今、巌窟王さんが帰ってきたような……?」

星「アイツ『先に行ってる』って言ってたよな? 何があったんだ?」

真宮寺「……あ」

獄原「どうかしたの?」

真宮寺「……夜長さんの昼ご飯……」

赤松「あっ。慌てすぎてて忘れてたね……」

50: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 18:45:10.39 ID:YUBq5Fog0
夜長アンジーの病室

巌窟王「……」ソッ

巌窟王「……」ソソクサソソクサクレラップ

巌窟王「……!」←冷やし中華にかけるラップが手に絡まった

アンジー「……どうしたのー?」

巌窟王「アンジー。起きていたか。いや何。昼食を運んできただけだ。俺はこの後、少し遠出する故な」

巌窟王「食べる気になったらタレをかけて食べるがいい」

アンジー「なにかあったのー?」







巌窟王「最原がこの世界にやってきたらしいのでな。会いに行く」

アンジー「アンジーも行くーーーッ!」ズギャアアアアンッ!

51: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 18:50:27.53 ID:YUBq5Fog0
海の家周辺

真宮寺「……ゴムボートを人数分、急ピッチでこしらえたのはいいけど」

真宮寺「まさか全員があっちに行くわけにもいかないよネ。夜長さんがいるんだから」

東条「彼女の容態は依然として悪いわ。まかり間違っても放置はできない」

獄原「じゃあ東条さんと……あと一人くらい補助で誰かいた方がいいかな?」

赤松「あ。じゃあ私が……」

ギュンッ

巌窟王「クハハハハハハハハ!」ギュンッ

アンジー「終一いいいいいいいいい!」ギュンッ

BB「……今その悩みがすべて無に帰しましたね」

天海「巌窟王さんがアンジーさんを伴って飛んでったーーーッ!?」ガビーンッ

赤松(わあ。この学園に来て以来初めてだなぁ。あんな殺意全開のアンジーさんの怒声聞くの……)

星「……さっさと行った方がいいな。全員で。さもないと最原が灰になっちまうぜ」

天海「え? なんて?」

赤松「急ごう!」

52: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 18:51:21.03 ID:YUBq5Fog0
休憩します!

54: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 20:34:08.87 ID:YUBq5Fog0
希望ヶ峰学園内部

最原「何を言ってるの? まるで意味がわからない」

最原?「わかりたくない、の間違いじゃないかなぁ」

最原?「……そうだなぁ。じゃあ、コレを見てくれればわかるかな?」バサッ

最原「……紙?」

最原?「才囚学園の生徒全員のプロフィール」

最原「こんなもの今更渡されても」

最原?「本当のプロフィールだよ?」

最原「!」

最原?「……読んでみて?」

最原「……」ペラペラ

最原「……これは……これ、は……!?」

最原(全員が高校生、ということ以外はすべてデタラメだ)

最原(所属校。学年。誕生日。好きな物。嫌いな物……)

最原(本名に至るまでが! 全員!)

最原?「もうわかったんじゃないかな。この学園が何のためにあるのか」

最原「……嘘だ」

最原「この学園で起こったすべての出来事が『嘘』」

最原「僕は僕たちの命のために全力で戦ってきたと思ってたけど、全然違う」

最原「本質は……僕たちのためじゃない。顔も知らない、外の世界の……」

最原?「誰かの為の物語」

55: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 20:47:15.65 ID:YUBq5Fog0
最原?「さて。キミの寿命っていつまでかな?」

最原「!」

最原?「キミの存在はすべてがフィクション。『最原終一であること』に特化した結果、外の世界で生きることは絶対に不可能だ」

最原?「もしもキミたちがこの世界から脱出できたとしても……帰る場所はどこにもない」

最原?「だって全部嘘だもん!」

最原「そんな……そん、な……!?」

最原?「でも、そんなキミにも生き残る唯一の術がある。それが僕だよ」

最原?「……真実の自分、取り戻してみたくない?」

最原「!」

最原?「嘘の自分を捨て去って、元の僕に戻るんだ。ついでに外の世界に帰って、元の平穏な生活に戻れるよ?」

最原?「平和。退屈。刺激はないけど面倒ごともない、そんないつも通りの日常にさ」

最原「……そんな都合のいい話があるわけない!」

最原?「あるよ。キミにだけはね」

最原?「……白銀さんが必死に僕を復元して再現したからね。確かに本当は無理なんだけど」

最原?「最原終一の『基』の記憶を完全再現した思い出しライトを一から作ったんだよ」

最原「な……え……!?」

最原?「さあ。どうする? どうする? どうする?」

最原「そんなの決まってる! 思い出しライトの真の機能がわかったのなら、絶対にそれを浴びるわけにはいかない!」

最原?「ならみんなと一緒に死ぬの?」

最原「は……!?」

最原?「……フィクションのキャラクターはフィクションの世界からは出られない」

最原?「キミたちは必死に『死なないように』立ち回ってたけど。無駄だったんだよ」

最原?「だってキミたちは永遠にこの世界から出られないんだからさ」

最原?「一生、この世界の所有物だ。結局のところ、どこにも行けない」

最原「……!?」

56: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 20:55:36.86 ID:YUBq5Fog0
最原?「物語の本質は『生贄』だ。現実で起こってほしくないことを、物語の中で代行させる」

最原?「親が死ぬ。友達が死ぬ。世界が滅びた。死ぬよりひどい目に遭った」

最原?「そういう悪い物が現実にあっちゃいけない。だから物語の中に全部押し込める」

最原?「キミたちは外の世界の人のために、外の世界の悪い物すべてを押し付けられた……いや」

最原?「押し続けられ続けるんだよ」

最原「……」

最原「まさか……天海くんの『超高校級の生存者』の意味って……」

最原「あの動機ビデオの正体は……!」

最原?「あ。あれだけは本物だったろうね。偽りではなく真の意味で成立している動機ビデオだ」

最原?「この世界、ハイスピード推理アクション『ダンガンロンパ』は大人気のシリーズものなんだよ」

最原?「今回で五十三作目なんだ」

最原「ごじゅっ……!?」

最原?「さて。シリーズ物、という言葉の意味、わかるよね」

最原?「今作で生き残ったところで、次回作でどうなるかはわからない」

最原?「キミたちは永遠に、どこにも脱出できないんだよ」

最原?「だって存在自体がそういうふうに作られてるんだからさ!」

最原「……」

最原?「でも……だからこその、この選択肢だ」

最原?「キミは正真正銘、ダンガンロンパの世界から脱出できる」

最原?「そのために僕がここにいるんだからさ」ニヤァ

57: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 21:03:05.99 ID:YUBq5Fog0
最原「これが……真実?」

最原「こんなものが……!?」

最原?「イヤなら僕になるといい」

最原?「その時点でキミはダンガンロンパの世界においては『死んだもの』として扱われる」

最原?「そして、外の世界に戻って、元通りの生活に戻ることができるよ?」

最原?「キミは二度と、こんな残酷で悪趣味な世界と関わることはない」

最原?「逆に言えば……もしも断ったら、キミはこの『ダンガンロンパの世界』で永遠に」

最原?「いつか死ぬまで永久に」

最原?「この出口のない地獄に囚われたままになる」

最原「その程度……なら」

最原?「耐え切れないよ。だってキミは優しすぎるから」

最原「え?」

最原?「……仲間が死にそうになる度に、泣きそうになってたでしょ?」

最原「ッ!」

最原?「……本当に死んだら、あの程度じゃ済まないよ」

最原「……」

58: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 21:12:58.10 ID:YUBq5Fog0
最原「終わらない……永遠に……?」

最原「脱出できないだって?」

最原「嘘だ! こんなの! こんなのが真実なわけ……!」

最原?「まだ認めないんだね。この学園を見てもなお」

最原?「この希望ヶ峰学園は、ダンガンロンパ第一作目の舞台だ」

最原?「……僕がこのゲームに参加したいと思った動機だよ」

最原「!」




ザザッ


最原(頭の中に……何かが流れ込んで来る)

最原(これは僕か……!?)

59: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 21:20:45.88 ID:YUBq5Fog0
最原?「……楽しかったな。ゲームを初めてプレイしたときは」

最原?「そして憧れたんだよ。『個性がある』ってことに。純粋にさ」

最原?「……最初はそれだけだったんだ」

最原「……」

最原?「まさか本当に、こんな目に遭うなんて思わなかったけど」

最原「そうだ。ちょっとだけ思い出した……忘却補正のお陰かな。これが『本当の記憶』ってことはわかるよ」

最原「……退屈だったんだね。死にたくなるほど」

最原?「これと言って親友と呼べる人はいなかった」

最原?「恋人とかも作ったことがない」

最原?「特別に秀でた才能も持ってなかった」

最原?「同じように流れて消費されていく時間がイヤでイヤでたまらなかった……!」

最原?「何者にもなれないまま寿命が尽きてのたれ死ぬ。そんな予定調和の未来がすぐ傍に見えているみたいで怖かった!」

最原?「だから思ったんだよ。こんな毎日をぶち壊せるのなら。終わらせることができたのなら……!」

最原「死んだとしても構わない」

60: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 21:29:06.37 ID:YUBq5Fog0
最原「……バカなことを……そんなことのために、僕は……!」

最原?「でも『僕』は後悔してないよ」

最原?「だって、楽しかったでしょ?」

最原「は……?」

最原?「必死に生きるのは気持ちよかったはずだ。誰かに頼りにされて身が引き締まる思いだった」

最原?「誰かに好きになってもらったり、誰かを好きになったり……」

最原?「この上ないくらい生きる実感があったでしょ?」

最原「……」

最原?「でもまあ、そろそろ充分じゃないかな。流石にそれでも『永遠に続く』っていうのなら話は別なはずだ」

最原?「外に出ても……『僕』に戻っても、最原終一は消えたりしないよ」

最原?「さあ。早く元に……」









最原「知ったふうな口を利くなよ」

最原?「は?」

最原「僕の記憶は僕だけの物だ。お前なんかに渡さない」

最原「……渡すもんか!」

61: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 21:38:16.89 ID:YUBq5Fog0
最原?「何を……言って……」

メラッ

最原?「……!」

最原「今貰った記憶は消すよ。僕には必要のないものだ」ボオオオッ

最原?「その炎は……!」

最原「熱量は流石にないけどね……見た目だけみたいだ。まあ、記憶を消すだけの炎だから物理的な効果がなくって当たり前だけど」

最原?「なっ……!?」

最原「貰った記憶を『元の記憶に関する改竄』と認識すればいい。それだけで全部忘れる」

最原?「正気!? 僕に戻らなきゃ一生、地獄に囚われたままなんだよ!」

最原?「元の世界に戻らなきゃ、いつか死ぬまで永遠に弄ばれるだけだ!」

最原「戻る? ふざけたこと言わないでよ!」

最原「僕は違う。僕はキミなんかじゃない!」

最原「僕の名前は最原終一だ! それ以上でも以下でもない!」

62: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/27(火) 21:48:27.14 ID:YUBq5Fog0
最原「ぐっ……!」グラッ

最原(頭が物凄く痛い。真っ直ぐ立っていられない!)

最原?「なんで!? 死ぬのはイヤだろう? 仲間が死ぬのを目の前で見るのはもっとイヤなはずだ!」

最原?「僕に戻れば全部、傍観者の立場から俯瞰できるのに!」

最原「だからそれがイヤなんだよッ!」

最原「この悲しみも。この後悔も。この絶望の一欠けらだって僕の物だ!」

最原「僕自身の物だ! 誰かに預けて退場なんてマネができるはずがない!」

最原「自分がイヤで……それだけで『自分』をあっさり捨てたキミとはまるで違う!」

最原「後から来て全部総取りとか、させられるわけない!」

最原「だって……この記憶が僕のすべてなんだから!」








「よく言った。やはり快勝だったではないか。最原」

最原「!」

巌窟王「……後は任せろ」ボォゥッ

最原「――」

64: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/28(水) 19:37:09.82 ID:H3zi7ORF0
最原?「……巌窟王さん?」

巌窟王「ああ、そうだ。永遠の復讐鬼たる俺が貴様を滅ぼしにきたぞ」

巌窟王「あの女帝も、貴様も随分とコイツのことを過小評価してくれたな」

巌窟王「前はどうだったかは知らん。だが、この学園に来てコイツは変わった!」

巌窟王「最原はもう弱くはない!」

最原「あの」

巌窟王「肉体的な意味ではない。単純な精神の話でもない」

巌窟王「言うなればそう……魂だ」

最原「あの。巌窟王さん。ちょっと」

巌窟王「コイツはもう迷わない。いつだってコイツの隣には……仲間がいるからだ」

最原「ねえ! 巌窟王さん! ちょっといい!?」








最原「なんでこっち見ながらいいセリフ言ってるの!? 偽物あっちだよ!?」

巌窟王「……」

巌窟王「二人の見分けが付かないだけだ」

最原(本当に?)ズーン

65: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/28(水) 19:52:14.46 ID:H3zi7ORF0
最原?「ここで終わることが彼にとっての幸せなのに! 邪魔するの!?」

巌窟王「……それを決めるのは貴様ではない。随分と腹立たしいことを言ってくれたな」

巌窟王「万死に値する。疾く死ね」ボォゥッ!

最原?「ッ!」



ドカァァァァンッ!



最原「だからこっち本物だってヴァアアアアアアアアアアア!?」

最原?「ええーーーッ!?」ガビーンッ!

巌窟王「……」

巌窟王「手元が狂った」

ダブル最原「嘘だーーーッ!」ガーンッ!

66: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/28(水) 19:58:15.90 ID:H3zi7ORF0
最原「というか仮に僕の方が偽物だったとしても殺しちゃダメだよ! まだ聞いてないことあるんだからさ!」

巌窟王「そうか。それは済まなかった。そして燃えろ」ボォゥッ



ボーーーーンッ!


最原「きゃーーーッ!」

巌窟王「チッ。また避けられたか」イライラ

最原「やっぱり僕の方を明確に狙ってきてるよねぇ!? 僕なんかしたっけ!?」アタフタ

巌窟王「息をしている。鼓動をしている。俺と同じ空の下で生きている」

最原「聞けば聞くほど殺意満載!」ガビーンッ!

巌窟王「ああ。面倒だ。避けるな最原ァ!」ボォウッ

最原「ついに誤魔化しすらしなくなっちゃったよ! なんで!? 心当たりが全然な――」



ドカァァァァンッ!


最原「うわあああああああああ!」ダッ

最原?「あ! ちょっと待って! まだ話は終わってな――!」

巌窟王「どけぇ! 邪魔だ!」バシッ!

最原?「ぎゃんっ」ズササーッ!




ドタドタドターッ



最原?「……」

最原?「い……行っちゃった……なんだったんだアレ……」

アンジー「……終一」

最原?「ん?」

アンジー「会いたかった」

最原?「……ん?」

67: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/28(水) 20:04:40.44 ID:H3zi7ORF0
最原?「ああ。最原終一なら、さっき巌窟王さんに追われてどこかに行っちゃったよ」

最原?「僕はただのそっくりさんなんだ」

アンジー「……」


ダキッ


最原?「えっ」

最原?(抱きしめられた)

アンジー「……そんな見え透いた嘘を吐くなんて。酷いなー」

最原?「いや。だから僕は――」

アンジー「……今の一言で完全にキレちゃった」




ドスゥッ




最原?「え……」

最原?「……ごふっ!?」カハッ

アンジー「ああ。ああ! キレちゃったキレちゃったキレちゃった!」

アンジー「もうダメ! お前に対する黒い感情の奔流が抑えきれない……!」


グサッ グサッ


最原?「ぎ、ぎゃああああ! やめっ……!」

アンジー「ビンタ一発、なんて。アンジーはなんて甘かったんだろう!」

アンジー「その程度で……その程度で終わるわけないのに……!」

最原?「だ、だから人違――!」



ブチッ



アンジー「最高にCOOLなオブジェにしてあげる」

アンジー「大丈夫。殺さない程度にっていうの、慣れてるから。この前まではやられる方だったけどねー」

最原?「あ、あ、ひぎぎゃっ……ごぎぎぎぎががががあああああああああああ!」

77: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/29(木) 21:12:15.67 ID:vWQc+Pkh0
えっ。イベントって月末までじゃないの……?
ショックを受けた。EXTRA_LE的なコラム書いて今日は終了

78: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/29(木) 21:35:01.63 ID:vWQc+Pkh0
最原終一



才囚学園に囚われた生徒。

この学園生活においてアンジーに次ぎ、巌窟王の影響を受けた高校生。
かつて自らの才能によって受けた傷のせいで、人の目もまともに見られなくなっていたが、少しだけ前向きになった。

巌窟王に強い憧れを抱いているが、それと同時に『巌窟王と同じパフォーマンス』ができないということを理解していた。
同時に『巌窟王にできないことが自分にはできる』という事実に辿り着いたのが運の尽きだったのかもしれない。

決して膝を屈しない巌窟王に義理立てするかのように、彼は『せめて自分にできることだけは全力を出す』ことを学園生活の目標と定めた。
問題があったとすれば、この学園生活において彼の才能の持つ責任があまりにも重大すぎたこと。

凡人であれ英雄であれ関係なく『今の自分にできることを』というひたむきな誓いを胸に秘め、極限まで突き進む人間の末路は往々にして決まっている。

赤松や茶柱他、彼のことを心配する人間は、彼に近づく死の臭いを鋭敏に感じ取っていた。おそらく、当の本人よりも。




セミラミスの診断したスキルの副作用に関する診断は、大分甘口に抑えられている。

79: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/30(金) 06:25:27.77 ID:jKZCuNpP0
セミラミス「むぐ? また貴様か」ムグムグムグムグ

天海(今度はマシュマロ食べてる……)

セミラミス「チョコ入りだ」ムグムグムグムグゴクン

入間「んだァ? この○○○からカメムシ臭がしそうなババァは」

セミラミス「社会的に死ね」ジャラジャラジャラッ


バリバリバリッ


全裸の入間「ほげぎゃーーーッ!?」ガビーンッ

獄原「うわあああああああああああ!?」ガーンッ

東条「鎖で一瞬にして入間さんの服を……胸が悪くなるような光景ね。今日眠れるかしら」

全裸の入間「無表情で冷静な分析してんじゃねぇーーーッ!」

赤松「だ、男子は見ちゃダメ! ダメだからね! 相手が入間さんだとは言え!」アタフタ

東条「水着よ。着るといいわ」

入間「おお。上出来だ東条……?」

入間「……なんで俺様の水着を東条が……?」

80: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/30(金) 06:51:07.18 ID:jKZCuNpP0
天海「あれ? 最原くんと巌窟王さんとアンジーさんの姿が見えない……」

赤松「あ。本当だ。どこ行ったんだろう。この島でゲームしてるんだよね?」

BB「セミラミスさん?」

セミラミス「全員が中にいるぞ? 『最原にデストラップをしかけた』と伝えたら大急ぎで中に入っていきおった」

星「急いだほうがよさそうだな」

入間「サイズがぴったり……サイズがぴったり……ダメだ深く考えると頭がおかしくなりそうだ!」

星(そういえば俺の水着も……)ゾワッ

天海「あ、あれ。星くん。急いだ方がいいんすよね?」

星「あ、ああ」

赤松「急ごう!」

セミラミス「……」モグモグモグモグ

BB「あの。ついででいいんで、同行してくれませんか? 確かセカンドステージの内容って……」

セミラミス「ゲームの本筋を変えるような行為は我の本意ではないが、しかし貴様らに逆らう権力も持たん」モグモグモグ

BB「決まり! 一緒に来てください! それでこのゲームは終わりです!」

BB「後で東京土産の東京ばな奈あげますから!」

セミラミス「チョコ菓子ではないのか……」シュン

81: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/30(金) 07:25:40.74 ID:jKZCuNpP0
学園内

天海「よし! それじゃあさっさと最原くんを見つけて全員で脱出っすよ!」

獄原「手分けして探そう!」

入間「た、頼むから単独行動は取るなよ。ていうか俺様を一人にするなよ!」

星「行くぞ!」


スタコラーッ


セミラミス「……全員で脱出? 脱出手段に当たりがついたのか? 白銀は滅多なことでは出られないと言っていた気がするが」

BB「え? いや、あなたが入退室の管理をしているのでは?」

セミラミス「む? そんな権限を我はもっておらぬぞ」

BB「……」

BB「推測間違えちゃった」テヘリンッ

BB「でもだとしたら他に脱出手段なんてどこに……」

セミラミス「もしかしたらアレかもしれんな。しかけられたというデストラップがまさにアルターエゴなのだ」

セミラミス「ちなみに万が一『出口がすべて壊れるようなことがあったら破壊行為と見做すので』と念入りに制限されたが……」

セミラミス「まあ、大丈夫であろうよ。余程の邪気がなければ『人語を話すプログラム』を手にかけようなどとは思わんからな」

BB「そうですよね! 余程の邪気がなければ大丈夫ですよね!」

セミラミス「余程の邪気がなければな」

88: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 09:02:52.62 ID:XjqBreCe0
ズドドォォォンッ!

真宮寺「この衝撃は……!?」

入間「ひええ……何か恐ろしいことが起こってるみたいだぜぇ。さっさと逃げた方がいいんじゃないかなぁ……?」ガタガタ

真宮寺「早速ヘタれないでヨ」


バリンバリンッ ガシャガシャッ


真宮寺「あ。ちょうど上の階みたいだネ。上から窓ガラスが降り注いで……」

真宮寺「!」←これから何が起こるか完璧に理解した

入間「!」←上の階に何かいるという事実がひたすら不安

天井「」ビシィッ……

真宮寺「!」←わかったので全力で逃げる

入間「!?」←いまいちわからないが不安なので逃げる




ドガラガラガラッ



入間「天井が崩れたーーーッ!?」ガビーンッ

真宮寺「いや。この場合は『上の階の床が崩れた』だろうネ」

巌窟王「チィッ! 脆い建物だ! またヤツを見失ったぞ!」ヌゥッ

入間「ぎゃあああああああああ!?」ガビーンッ

真宮寺「……って、なんだ。巌窟王さんじゃない」

89: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 09:11:17.48 ID:XjqBreCe0
入間「どうやらお邪魔みてーだな! じゃあ俺様は外で海水浴でも楽しんでくるから気にせず続けてくれ! アデューッ!」バッ

真宮寺「ほらそこ逃げない」ガシッ

入間「ゴーグル掴んでんじゃねぇーーー! やめ、離して……!」ジタバタ

巌窟王「……今更来たか。いや、もっと遅くてもよかったのだが」

真宮寺「一体何を追ってるの?」

巌窟王「最原……」

入間「あ?」

真宮寺「?」

巌窟王「……の姿をしたアルターエゴ……だ!」

真宮寺(なんで今ちょっと詰まったんだろう)

入間「へぇー。ダサイ原と同じ姿のアルターエゴなんていたのかー。趣味悪ィなー」ケラケラ

真宮寺(なんですぐ信じちゃうんだろう、この人)

巌窟王「見かけたらすぐに俺を呼べ!」ビュンッ

真宮寺「……」

真宮寺「最原くんを生贄にしたら僕の信用が戻ったりしないかなァ?」

入間「ん? なんか言ったか?」

真宮寺「うん。世迷言。すぐに最原くんを保護しよう。なんとなく事情はわかったしネ」

90: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 09:16:52.84 ID:XjqBreCe0
美術室

獄原「……」

赤松「……」

最原「……」ガタガタ

赤松(美術室の机の下で震えている最原くんを発見した……ところどころ服がススだらけだ……)

獄原「最原くん? 大丈夫!」

最原「!」ビクゥッ

最原「あ。ご、ゴン太くん……赤松さんも!? なんでこんなところに……」

獄原「迎えに来たんだよ。キミを。さ、帰ろう」

最原「……」

最原「……うう」ブワッ

獄原「!?」ガビーンッ

赤松(泣いちゃったよ!)

最原「ご、ごめん……安心しちゃって……生きてたんだねゴン太くん……」グスングスン

最原「あと今、巌窟王さんに追われてて……仲間に会えたって事実も相まって凄くホッとして……」エグエグ

赤松(明らかに巌窟王さんに殺されかかってるーーーッ!)ガビーンッ!

91: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 09:26:25.42 ID:XjqBreCe0
最原「なんでだろう。物凄く巌窟王さん怒ってて……」

最原「真宮寺くんとか入間さんに向ける憎悪の十倍くらいなんだけど。なにかしたっけなぁ、僕……」

獄原「ああ! それはきっと最原くんが茶ばっ……」

赤松「なんでだろうねーーー! 全然心当たりないなーーー!」

獄原「えっ」

赤松「……ひとまず巌窟王さんは私たちで説得しよう。アンジーさんとか茶柱さんとかの件は最原くんに自力でなんとかしてもらう」

赤松「だってさ。今この時点で最原くんにそんな情報を与えてみたら余計に状況が悪化しそうだもん」

獄原「え? そ、そうかな。事情を知ったら最原くんも何かしら巌窟王さんにアクションを……」





最原『だから僕ずっとアンジーさんのことフッてたじゃん! 復讐される謂われは――』

巌窟王『死ねェ!』

最原『最高に灰ってヤツだーーーッ!』ボオオオオオッ





獄原「……」

赤松「この冷静さを失った状態で、どんなアクションを取ったところでさ」

獄原「火に油……だね……」ダラダラダラ

92: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 09:27:39.56 ID:XjqBreCe0
休憩します!

96: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 21:13:03.23 ID:XjqBreCe0
赤松「ひとまず私たちがやるべきことは……ゴン太くんは最原くんを守って」

赤松「私はちょっと巌窟王さんを探して来るから。ついでにアンジーさんも」

赤松「巌窟王さんの方は私が説得すれば多分なんとかなるよ」

獄原「う、うん! 頑張ってね!」

最原「……まあ、巌窟王さんってアンジーさんの次くらいに赤松さんに甘いからね……」

赤松「あの人が女子でぞんざいに扱ってるのってせいぜい入間さんくらいじゃないかな。私だけが特別ってわけじゃないよ」

赤松「じゃあ二人ともここにいてね!」タッ

最原「……ねえゴン太くん」

獄原「どうしたの最原くん。お腹空いた?」

最原「なんかさ……この部屋、彫刻刀とかの『美術で使う刃物全般』がゴッソリ消えてるんだけど……」

最原「凄くイヤな予感がするんだ。僕は本当になにしたんだろう」ズーン

獄原「何も悪くない! 最原くんは何も悪くないよ!」アタフタ

97: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 21:19:16.29 ID:XjqBreCe0
赤松「……」

東条「うっかりやりすぎてしまったようね」ポイッ

天海「いややりすぎってモンじゃないっすよ! これ死んでないっすか!?」アタフタ

星「……過呼吸気味になってるがギリギリ生きてるな。意識もあるようだ」

巌窟王「ぜっ……ぜっ……」ビクンビクンッ

東条「止めた方がいいと思ったからやったのだけれども」

天海「だからって消火器で後頭部をズガンッ! は流石にやりすぎっすよ!」

東条「最原くんをターミネートしてた彼が既にやりすぎていたのよ」

天海「いやまあ……そう言われれば彼の自業自得っすけど……」

巌窟王「覚えていろ貴様ら……!」ゼッゼッ

赤松「……」

赤松「うん! 一件落着だよね!」




赤松は考えるのをやめた

98: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 21:35:47.16 ID:XjqBreCe0
東条「あら? アンジーさんの姿が見えないわね」

天海「巌窟王さん? 一緒に来てたっすよね?」

巌窟王「最原を探すなら、手分けした方が効率的とヤツが提案したので別行動だ」

赤松「……は!? ちょっと待って! アンジーさん怪我してるんだよ! そんな提案飲んだの!?」

巌窟王「ヤツはもう子供ではないのだ。自分のことなら自分で責任は取れるだろう」

赤松「だからって……!」

赤松「……」

赤松「はあ。もう。巌窟王さん。サーヴァントだからって、そんな従順にならなくってもいいんじゃない?」

巌窟王「……制限する方が遥かに大人気ないと思うが?」

赤松「いや。実際に巌窟王さんは大人気ないでしょ。だって……少しも納得してないもん」

巌窟王「……」

星「……もう頭は冷えたな?」

東条「それじゃあ、次は夜長さんね。なんとか彼女も宥めないと」

天海「それでやっと全員での脱出っすね! みんな待ってるっすよ!」

99: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/03/31(土) 21:37:54.32 ID:XjqBreCe0
謎の場所

グチャッ バリッ ゴリッ


「ひぎっ……ぎ……ぎ……」

アンジー「……終一……」

アンジー(そういえば初めてかも。誰かに捧げるためではなく、自分のために美術をするなんて)

アンジー「……」

アンジー「愛してる。ずっと……だから……」

106: エイプリルフールの人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 02:09:12.98 ID:4BhFDnHF0
あなたは誰推し?

メドゥーサ「あの十六人の中で誰推しか、ですか……?」

メドゥーサ「……」

メドゥーサ「赤松楓……ですかね」ジュルリ

※当然性的な意味で




太陽王激おこ

オジマンディアス「……」

オジマンディアス「最近ニトクリスの付き合いが悪い……」イライラ


女神系サーヴァント以外にはダンガンロンパの存在は秘密





ブーディカの証言

ブーディカ「ん? あのマントに帽子の怖い顔したお兄さん? そういえば最近見てないな……」

ブーディカ「え? 何作ってるのかって? ポップコーンとかその他ツマミになりそうなものだけど」

ブーディカ「最近女神系のサーヴァントが集まって色々してるらしくってさー」ケラケラ




巌窟王の失踪発覚まで秒読み

107: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 02:21:57.56 ID:4BhFDnHF0
メドゥーサ「無駄に○○とか見せてみましょうか。もう加護残ってませんけど」

イシュタル「サポートいる?」

メドゥーサ「いります。超いります。百万までなら出せます」

イシュタル「おっけー。商談成立ゥ!」

メドゥーサ「わーい」

メドゥーサ「……あれ。全然利きませんね」

イシュタル「そういえばあの子たち、今電脳空間の中だから夢なんて見ないわよ」

メドゥーサ「」

イシュタル「後回しにすれば?」

メドゥーサ「おあずけ……」シクシクシク

108: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 02:22:31.81 ID:4BhFDnHF0
オジマンディアス王の宝具レベルが2になりもうした……メイヴちゃんとか欲しかった……寝ます

109: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 10:40:25.66 ID:4BhFDnHF0
三十連と言ったな? アレは嘘だ

110: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 10:49:24.77 ID:4BhFDnHF0
太陽神殿は何処に?

ケツァルコアトル「……」

ナーサリー「どうかしたのかしら。蛇のお姉さん」

ケツァルコアトル「私のプレゼントした太陽神殿が見つかりまセーン」

ナーサリー「ああ。そういえば通信復活後から病院にもどこにも見当たらなかった気がするのだわ」

ケツァルコアトル「また新しく作ってプレゼントしようかしら……」

ナーサリー「また誰かが潰されるからやめた方が……」

ケツァルコアトル「え?」

ナーサリー「え?」

ケツァルコアトル「……え?」ゲスガオ

ナーサリー「ひええっ!?」ガビーンッ




ミニチュア太陽神殿第二号、制作中。ただし結局転送はできなかった

113: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 20:24:25.23 ID:4BhFDnHF0
赤松「……!?」ゾクッ

東条「どうかしたの?」

赤松「い、いや……なんか寒気が……」

天海「風邪でも引いたんすかね。後で外に出たら東条さんに診てもらった方がいいっすよ」

赤松「そうする」

星「巌窟王。もう暴れたりしねーな?」

巌窟王「拘束された状態でどうやって暴れろと?」ムスッ

赤松(ぶっちゃけ拘束を解こうと思えばいつでも縄を焼き切れると思うんだけど……律儀に捕まってるんだよなぁ。変なところで真面目だ)

東条「ひとまずこの状態の巌窟王さんを最原くんのところにまで運びましょう。彼は美術室だったわね?」

赤松「うん。ん? 運ぶってどうやって?」

東条「……星くん」

星「了解した。引きずっていく」ガシッ

巌窟王「……」ズルズル……ズルズル……

赤松(無抵抗で引きずられてる……)

114: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 20:34:42.14 ID:4BhFDnHF0
美術室

真宮寺「あ」

入間「お」

赤松「あ! 入間さんと真宮寺くん! 二人も合流したんだね!」

赤松「……あとはアンジーさんだけかな?」

真宮寺「うん。一番の危険人物だけが消えてるネ」

赤松「あれ。そうだ。最原くんは? どこに隠れてるの?」

真宮寺「獄原くんの巨体の後ろで震えてるヨ」

最原「……」ガタガタ

赤松「ホントだ……」

巌窟王「……フン」

天海「大丈夫っすよー最原くん。もう解決したっすからねー」

巌窟王「どうだかな。ところで貴様ら、BBとセミラミスのことを自然に忘れているな?」

巌窟王「あの二人がいなければ脱出するにしても話にならんだろう」

赤松「あ。そうだった。今は生徒だけじゃないんだよね」

ピンポンパンポーンッ……

赤松「ん?」

BB『あー! あー! 放送室を乗っ取ってあなたたちにお知らせです!』

入間「この声……あのド○○ブスか」


バタンッ


入間「あー……」ヒューッ

赤松「入間さんのいた床が開いて入間さんが落下したーーーッ!?」ガビーンッ

巌窟王「電脳空間でヤツの悪口を言うのは自殺行為だぞ」

115: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 20:47:02.08 ID:4BhFDnHF0
BB『ええっとですね。セミラミスさんに生徒を外に出す権限はありませんでした! 推測は大外れです!』

天海「ええっ!? 嘘ォ!?」

BB『ですが、予備の出口は確実にどこかに存在します! おそらくそれはセミラミスさんでも白銀さんでもないアルターエゴのはずです!』

BB『巌窟王さん! 最原さん! あなたたち、一度それに会ってるんじゃないですか?』

最原「……あ。もしかして、アレのこと?」

巌窟王「ヤツか。眼中にまったく無かったので忘れていたな……」

BB『それをなんとかして再度見つけてください! あ、一応言っておきますが……絶対に殺しちゃダメですよ!』

BB『それが今残っている最後の出入り口。もしもそれが消滅したら……』

獄原「ゴン太たちは外に出られない?」

BB『だけじゃなくって、それは新世界プログラムに対する重大な破壊行為と認識されます!』

BB『おそらく生徒たち全員は校則違反として裁かれるでしょう!』

真宮寺「ま、大丈夫だヨ。それを今聞いたわけだからネ。間違っても殺したりはしないし、危害を加えたりもしないだろうネ」

赤松「うん! そうだよね! まあそのアルターエゴが万が一最原くんの姿をしていたとしたら完全アウトだけどさ!」

巌窟王「……」ハッ

最原「え? なんで?」

赤松「だってアンジーさんが……おっと。なんでもない。本人に会ってから聞いて? 時間はまだあるだろうし」

最原「?」

巌窟王「……」ブチブチブチッ

東条「あら? 巌窟王さん? 拘束を解いてどうしたの?」

巌窟王「……」






巌窟王「いいことを教えてやろう。アルターエゴはそっくりそのまま最原の姿だったぞ」

赤松「えええええええええええええええッ!?」ガビーンッ

東条「散開よッ! みんなして夜長さんを探して止めるの!」ズバァァァァンッ!

獄原「アンジーさーーーんっ! どこーーー!?」ビュンッ

最原(急に泡食い始めた!?)ガーンッ

116: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 20:49:17.45 ID:4BhFDnHF0
謎の場所

入間「いでー! いでー! 尻もちうった! 尻もちうったー!」ガタガタ

入間「んだよ、ここ。真っ暗……じゃなくて真っ黒? 何も見えねーぞ」キョロキョロ

アンジー「終一……終一……」スリスリ

入間「お? アンジー?」

入間「なんだ? 何に頬ずりして……」

入間「……」

入間「きゅー」バターンッ

121: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/01(日) 23:07:22.44 ID:4BhFDnHF0
新世界プログラム内

最原、天海、アンジー、赤松、入間、東条、星、獄原、真宮寺、巌窟王(とBB、セミラミス)がログイン中。

現実世界から最原と天海とBBが新世界プログラムへと入り込み、セミラミスの仕掛けたゲームを最原に押し付け二人はジャバウォック島へと漂着。閉じ込められていた復讐組の生徒と合流。

その後『セミラミスのようなアルターエゴが出入り口の可能性』に気付き、巌窟王が最原の元へと先行。遅れて天海とBB主導で生徒たちが追随。

セミラミスの仕掛けたセカンドゲームの舞台は、白銀がセミラミスに貸し与えた希望ヶ峰学園となっており、中には(明らかに最原に向けた)デストラップが存在していた。

巌窟王はセミラミスの口車に乗り、島へと急いで帰還。その後アンジーに『最原がこの世界にいる』ことを正直に話し、同行。

巌窟王は怒りのままに最原を追跡。なお、理由を喋っていないので最原は終われる理由に何の心当たりもない。

アンジーは『最原の形をそっくりそのままトレースしたアルターエゴ』を恩讐によって攻撃。




セミラミスに『生徒の出入りに関する権限が一切ない』ということがBBとの何気ない会話で発覚。
この学園に仕掛けられたはずのデストラップがアルターエゴなため、消去法で真の出入り口が判明するが……。

第四章の時点でモノクマが『新世界プログラムへの破壊行為は連帯責任となる』ルールを校則に追加したため、万が一これを生徒が壊そうものなら全員校則違反でエグイサルの処理対象となる。(元から脱出方法が存在しない場合は中からBBが新世界プログラムを破壊する予定ではあったが、これは本当に最後の最後の最後の手段のはずだった)




なお、現実世界で何が起こってるかは今のところ不明である。

122: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/02(月) 18:48:07.18 ID:7SEElVCY0
最原「ええっと……何がなんだかわからないけど、アンジーさんを探せばいいの?」

天海「……」

天海(あ。なんかわかっちゃった。この慌てよう、もしかして……!)

赤松「い、いやっ。その。最原くんはゆっくりしてていいから……」アタフタ

真宮寺「というかもう本当に何もしてほしくないっていうか……」

東条「お願いだからこれ以上口を開かないで。できることなら息もしちゃダメ」

獄原「……」←そっと目を逸らしている

星「人はいつか死ぬ」

最原「なんかみんな変だよ! さっきから!」ガビーンッ

巌窟王「ともかくアンジーのいる場所へは俺が案内しよう。大雑把な方角はわかる。ヤツは今……」

巌窟王「……?」

巌窟王「この美術室の真下だな?」

全員「えっ」

赤松「……ちょうどこの穴の向こう?」

巌窟王「……そういえば入間の声が先ほどから聞こえないが……?」

全員「……」

123: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/02(月) 18:59:14.67 ID:7SEElVCY0
巌窟王「最原と天海はこの教室にいろ! 身体能力に自信のあるヤツはここから飛び降りろ!」

巌窟王「あとは階段で迂回するのだ! 急げ!」

赤松「入間さん! 大丈夫!? 入間さーーーん! ごめん! ちょっとこっちに気を取られてたんだけど何があったのーーー!?」

星「行くぞ!」バッ

獄原「うん! 早く止めなきゃ!」バッ

東条「階段はこっちよ!」

真宮寺「まったく入間さんはどこまでも手間をかけささせてくれるヨ……!」

最原「あ。あれ。僕も行った方がいいんじゃ……」

巌窟王「絶、対、に、来るな」ギンッ

最原「ええーっ」

天海「……う、うん。最原くんのことはちゃんと見てるんで……行ってらっしゃいっす」

巌窟王「ああ。任せた」

最原「……」

最原「疎外感しかない……!」ズーン

赤松「ごめん! 本当にごめん! 最原くんは何も悪くないんだけどさ!」

最原「赤松さん……」

赤松「多分これ以上最原くんが動いても余計に罪深いことになっちゃうだけだから! 本当に動かないで! お願い!」

最原(凄い勢いで懇願された!)ガーンッ

124: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/02(月) 19:06:45.03 ID:7SEElVCY0
巌窟王「さて。そろそろ行くか」

赤松「あ! 巌窟王さん! 私も連れてって!」

巌窟王「いいだろう!」ガシッ



バッ



最原「……」

天海「……」

最原「……感動の再会になると思ったんだけどなぁ。巌窟王さんに追いかけ回された事実が今更ながら物凄く心に痛い」ズーン

天海「悪くない。最原くんは何も悪くないっすよ」

天海「……という前提のもと言わせてもらうっすけど、本当に自分のことが見えてないっすねぇ。最原くん」

最原「!?」ガビーンッ

125: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/02(月) 19:13:58.39 ID:7SEElVCY0
巌窟王「……ついたか。再び見るが本当に真っ黒な空間だ」

赤松「こんなところにアンジーさんが……!?」

巌窟王「ああ。間違いない。この臭いでわかっ……?」

巌窟王「臭い?」

赤松「巌窟王さん。どうし……うぐっ!」

赤松(……直後に気付いた。そこに充満しているのは、胸が悪くなるほどの血の臭い)

赤松「これは……!」

獄原「……」

星「……」

赤松「あ! あそこにいるのは星くんとゴン太くん!」

巌窟王「……」

赤松(……微動だにしていない? なんで?)

赤松(一言も話さずに、ある一点を凝視しているだけだ)

巌窟王「作り物だ」

赤松「え?」

巌窟王「これからお前が見るものは、すべて作り物であるという認識を持て」

巌窟王「それだけで大分違う」

赤松「……!?」

126: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/02(月) 19:24:11.03 ID:7SEElVCY0
赤松「アンジーさん!」

赤松(巌窟王さんから降りてかけよる。ゴン太くんと星くんが、やっとのこと私たちに気付いたようだった)

星「赤松……」

獄原「……ご、ごめん。赤松さん……間に合わなかった、みたい?」

赤松「二人とも。何を見て……!」

赤松「……それ……誰……?」

赤松(私が見たもの。星くんとゴン太くんが見て、固まっていたもの)

赤松(……アンジーさんが『作ったもの』)

赤松(それは――)








赤松(誰かの内臓。顔の皮膚。肋骨。目玉。切り抜いた頭蓋骨。耳。歯。鼻。指。指。指)

赤松(人体のあらゆる部分をバラバラにしてくっつけて組み立てて、折り曲げて、捨てて、刺して加えて縛って絞り出して乱暴に吹き飛ばして――)

赤松(そうやって作った芸術作品だった)

赤松(もう……それを人間だとは、とても認識できなかった)

赤松(……それにアンジーさんが抱き着いていた。静かな寝息を立てながら)



第五章
Cosmos in the lostmemories 非日常編

133: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/02(月) 20:14:10.40 ID:7SEElVCY0
天海「……俺の予測通りなら……この下は惨状っすね」

最原「え? 惨劇?」

天海「いや。アンジーさんが暴走して、アルターエゴをうっかり殺しちゃってたらどうしようって……」

最原「……?」

天海(あ。全然動機に心当たりが無い顔だ。『なんでアンジーさんがそんなことするんだろう』って感じの)

最原「多分、大丈夫だと思うよ。今一なにを心配してるのか知らないけど」

天海「え?」

最原「アンジーさんは誰かを殺すような人じゃないから」

天海「……ん?」




下の階

「ぎ……ぎぎぎぃ……」

赤松「ん? 何この声。ゴン太くん何か言った?」

獄原「ゴン太はなにも。そこで寝かせている入間さんの寝言じゃないの?」

入間「うーん……うーん……アート……アートがぁ……」

赤松「凄いうなされてる……」

赤松「いや。今のは入間さんの声じゃなかったよ。聞こえた場所が違うっていうか……」

赤松「ん? アンジーさんの方から……?」

最高にCOOLなアート「ころ……して……ころし……ころして……」

赤松「……」

獄原「……」

星「……」

巌窟王「……」






巌窟王「生きてるな」

赤松「セーーーーーーーーーッフ!」ズギャアアアアアンッ!

142: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/03(火) 18:36:49.04 ID:N+/CcBa00
最原「……あれ。そういえば」

天海「どうしたんすか? 最原くん」

最原「いや。一つ巌窟王さん、今までの学園生活を省みると『明らかにおかしいこと』を口走ってたなって」

天海「明らかにおかしいこと?」

最原「だってさ。巌窟王さんにアンジーさんのいる方角がわかるはずないじゃない?」

天海「ん……? サーヴァントなんだから、なんとなくわかりそうな気も……」

最原「いや。わかるはずないよ。だってだとしたら『第三の事件』が起こりようがないじゃない」

天海「あっ」

最原「……気になるな。物凄く」

天海「最原くん? そんな覗き込んだら危ないっすよ?」

最原「いきなり背中から押されない限りは大丈夫――」

BB「どーんっ!」ドンッ

最原「わーーー……」ヒューッ

天海「押されたーーーッ!?」ガビーンッ

143: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/03(火) 18:46:43.59 ID:N+/CcBa00
赤松「アンジーさん! 起きて! アンジーさん!」ユサユサ

アンジー「ん……? 何?」

赤松「なに? じゃないよ! こっちの台詞だよ! ナニコレ!」

アンジー「これ……?」

アンジー「……終一のこと?」

星「やはりこれは最原だったのか……顔の皮膚が丸ごと剥がされて残ってたから、まさかとは思ったが……」

獄原「クマさんでも、もうちょっと獲物を上品に食べるんだよ……? 人間のやることじゃないよ」

アンジー「……憎くて」

赤松「!」

アンジー「それだけ。本当に……それだけだよー。何の意味もないことなんて、わかってるって……」

アンジー「わかってるんだって」

赤松「……」

東条「……やはりこうなってしまったのね」

真宮寺「手遅れ?」

巌窟王「来たか。いや? ギリギリのところで生きてはいるようだ」

東条「それならそれで猟奇さが跳ね上がるだけよ」

真宮寺「こんなもの間違っても最原くんには見せられないネ」

アンジー「え? 何言ってるの? これが終一だよー?」

アンジー「大丈夫だよー。大分早い段階で目を使えなくしたからさー」

アンジー「アンジーのやりたいこと、終一に全部見せるわけにはいかなかったしさ……」

赤松「……こんな状態にしてまで張る見栄ってあるのかな……」

赤松「違うんだよアンジーさん。それは最原くんじゃなくって――」








最原「わぎゃぶっ!」ベシャッ

全員「あ」

144: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/03(火) 18:47:20.21 ID:N+/CcBa00
夕ご飯の休憩!

147: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/03(火) 20:08:23.52 ID:N+/CcBa00
最原「痛い……なんだ? 僕は何をされた? BBさんに背中を押されたような……?」ガタガタ

巌窟王「アイツは本当に間が悪いな。何一つとして本人に悪気がないというのが更に罪深い」

赤松「……」アゼン

東条「ふわ~」

獄原「東条さん!? どうしたの東条さん!」ガーンッ!

真宮寺「あまりのタイミングの悪さにもうキャパオーバーみたいだネ。現実逃避してるヨ」

アンジー「……」

アンジー「えっ。終一?」

最原「ん? みんな、そこで何してるの?」

全員「!」ズラッ

最原「……なんでPK時の受けチーム側みたいな整列をしてるの……?」

最原「というかこの臭い、血?」クンクン

最原「あとアンジーさんの声も聞こえたけど……」

赤松(ああもう! 自分に対する好意に関してはクソ鈍感なクセしてッ! やたら鋭い!)

148: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/03(火) 20:27:35.01 ID:N+/CcBa00
最原「……一体なにが……あっ! アンジーさん!?」

赤松(え!? なんで見えてるの!? 視界には私たちが立ちはだかってる……のに……ハッ!?)

星「……すまん」チマーンッ

赤松(星くんの身長じゃ隠しきれるわけがなかった!)ガーンッ

最原「アンジーさん!?」ダッ

アンジー「……!」ビクッ

赤松(きゃー! いやー! 来ないでー! だって今のアンジーさん、遠目じゃわかりにくいだろうけど解体を行った直後だから……!)

アンジー「い、いや。返り血がっ……!」ゴシゴシ

赤松「もう誤魔化せない!」ヒイイイ!

巌窟王(というか返り血なぞ傍証としては可愛い物だろう。ここにはアンジーの芸術品があるのだからな)

最原「ごめん! ちょっと間を通るよ!」スッ

真宮寺「どうぞ。もう誤魔化すだけ無駄みたいだし」

赤松「真宮寺くーーーんっ!」ガビーンッ

最原「アンジーさん!?」

アンジー「あ、しゅ、終一。なんで。どうしてっ……!?」

アンジー「あ、や。見ないで。お願い。見ちゃ……ダメ……!」ガタガタ

最原「……!」ペタペタ

アンジー「あ、きゃっ?」

赤松「ん?」

赤松(一も二もなくアンジーさんの体を調べ始めた……?)

最原「……」

最原「びっ……くりした。アンジーさんが怪我してるものだと」

アンジー「え?」

赤松「ん?」

巌窟王「!」

最原「いや。撃たれた怪我は確かに酷いけどさ……これ全部返り血?」

最原「……よかったぁ……また怪我したのかと……はあ」

アンジー「……え? アンジーのこと、心配してたの?」







最原「心配するに決まってるじゃないか。じゃなかったら助けに来ないよ」

アンジー「……」

アンジー「……」ボンッ

赤松(アンジーさんの顔が一瞬で真っ赤にーーーッ!?)ガビーンッ

真宮寺「これもう有罪じゃないかなぁ。悪気ないで済まされるレベルじゃないヨ」

東条「今の最原くんはおそらく地球上で最も罪深い動物になってるわね」

巌窟王(やはり殺すか)

149: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/03(火) 20:41:19.64 ID:N+/CcBa00
美術室

天海「最原くーーーんっ!? ちょっとBBさん! いきなり現れてなんで最原くんを突き落としたんすか!?」

BB「穴を覗き込む人間がいたら叩き落したくなる持病が……あー、すっきりした」スッキリ

天海「そんなあからさまにスッキリされた顔されても!」

セミラミス「フハハ! いや本当に見事な落ち様よな! このセミラミス、久しぶりに非常に愉快なものを」

BB「持病ーーーッ!」ドーンッ

セミラミス「おのれええええええ……」ヒューッ

天海「セミラミスさんも落としたーーーッ!?」ガビーンッ

BB「これでゲームクリアです。最原さんも連れて全員で外に出ますよ!」スッキリ!

155: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/05(木) 18:53:27.43 ID:9o2g8NhQ0
最原「……」

最高にCOOLなオブジェ「うう……」

最原「酷い。なんでこんなことに……」

赤松「ええと、それは」

巌窟王「クハハ! 聞いて驚け最原! これは――!」

アンジー「襲われたから仕方なくって……」

巌窟王「アンジーが貴様への思いを暴走させ……ム?」

アンジー「ここまで痛めつけないと何度でもやってくる厄介なヤツだったよー。つまるところ正当防衛」ケロリ

巌窟王「!?」ガビーンッ

真宮寺(全力で責任逃れ……いや最原くんから自分への好感度を守ろうとしてる)

赤松(うわー! うわー! 酷い! 言い訳の拙さも相まって凄く醜い悪あがきだ! 気持ちがわかるだけ胸に痛いよ!)

最原「……へえ」

赤松「……」

赤松(最原くんの顔の影が濃くなった。これ絶対にバレてるよ!)アワワ

真宮寺(僕を学級裁判でハメたときと同じ顔になってる……)

巌窟王「アンジー。まだこの男のことが好きなのか?」

アンジー「黙って」

巌窟王「……」ズーン

156: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/05(木) 19:00:30.86 ID:9o2g8NhQ0
最原「僕たちを外の世界に出してくれる?」

最高にCOOLなオブジェ「う、ううう……あうう……」

最原「……!」

赤松(最原くんはそこで、何かに気付いたような顔になった)

最原「……まさか」パチンパチン

最高にCOOLなオブジェ「ああ……」

最原「……すーっ……わっ!」

赤松「!?」ビクッ

星「なんだ? 何故急に大声を出した?」

最原「……反応がない」

星「なに?」







最原「彼、耳が聞こえてない」

157: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/05(木) 19:06:32.41 ID:9o2g8NhQ0
赤松「え、ええと……まあ目がくりぬかれてるわけだから、今更鼓膜がなくなってても驚かないけど……」

最原「赤松さん。目が見えない。耳も聞こえない。これでどうやって外に出るの?」

赤松「え」

最原「どうやって僕たちのリクエストを認識させるの?」

赤松「……」

赤松「あっ!」ガビーンッ

巌窟王「これは……まさか……」

最原「出入り口が無くなる、の定義に当てはまるかどうか……五分五分だけど、かなり危険だよ」

最原「外の世界が危ないかもしれない!」



ヒューッ



セミラミス「えああああああああっ!?」ゴチーンッ

最原「ええっ!? セミラミスさんが落ちて来た!?」ガビーンッ

星「おい。明らかに頭頂部を強打してねぇか? 危なすぎる角度だぞ」

東条「治療……いえ。ごめんなさい。彼に集中したいから彼女の方は他の人に任せるわ」

158: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/05(木) 19:11:20.02 ID:9o2g8NhQ0
チャリンチャリンッ

獄原「ああ! 落ちた衝撃でコインがバラバラに!」アタフタ

最原「うわ。凄い量の金貨……」ヒョイッ

コインチョコ「」キラーンッ

最原「全部コインチョコだコレ……」

セミラミス「くっ。不覚」ムクリ

最原「あ。よかった! ダメージは薄そうだね!」

セミラミス「あ」

最原「ん? どうかし……あっ」




GAME CLEAR!



セミラミス「ちっ。まさかこんな形でクリアされてしまうとは……」

最原「……ええと。まあ不本意だろうけど、それじゃあ完全クリア、だよね?」

最原「あなたにはまだ聞きたいことがあるんだけど……」

セミラミス「よかろう。その程度の不敬は許す。だがその前に」

最原「その前に?」



ズゴゴゴゴゴゴゴゴ



セミラミス「ここも崩壊するぞ」

最原「またァ!?」ガビーンッ

163: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/06(金) 22:03:47.44 ID:bo8T7w2P0
ザザッ

??(せめて笑って送り出した。それくらいしかできる抵抗がなかったから)

??(一緒に犠牲になってくれた『友達』と約束もした。その程度ならできそうだったから)

??(忘れないで、だなんて。本当にバカみたいな約束。忘れられるわけがないのに)

??(私だって忘れられない。死んでいったみんなのこと。生き残った二人のこと)

??(私の隣にいる友達のこと)

??(彼らのことを私は一生涯忘れない。死ぬ直前まで誇りに思い続ける)





??(……そう思ってた。甘かったけど)




ザザザッ


??(……心。思い出。精神。人間が最後の最後に頼るもの。どんなフィクションでも大抵崇高なものだと扱われている綺麗なエネルギー)

??(そんなものはすべて、やっぱり『虚構』に過ぎなかった)

??(もう思い出せない。ああ、思い出せないのならないのも同然)

??(……自分の名前も思い出せない。いや、果たしてあれが自分の名前だったのかも怪しいものだ)

??(誇り? 思い出せないものに、そんなものを抱けるはずがない)

??(記憶ほど不確かなものはなかった。どれほどインパクトがあろうと、時間が過ぎれば消えていく)

??(……私の場合は無理やりだったけど)

??(絶対に消えない記憶なんてどこにもない)

??(どこにも……)





巌窟王『クハハ! 覚えたぞ! この俺には忘却補正というスキルがある!』

巌窟王『恨みを忘れないためのスキルだが……ひとまずこういう応用も可能だ』





??「……」

白銀「あ。あった。消えない記憶」

白銀(皮肉なことだけど、彼だけだった)

白銀(すべてが虚構でできた学園において、唯一の『本物』は……彼だけだったんだ)



ザザーッ

164: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/06(金) 22:15:44.93 ID:bo8T7w2P0
ズゴゴゴゴゴゴゴ……

最原「ぜぇーっ……ぜぇーっ……な、なんとか脱出が間に合った……! 大き目のゴムボートで助かったよ!」

セミラミス「おお。見事な崩れようよな」モグモグモグモグモグ

赤松「あれ? 巌窟王さんとアンジーさんは?」

セミラミス「先に帰るとか言って、あの炎で飛んでいったぞ? ボートの定員的にも限界であったしな?」モグモグモグモグ

赤松「……お腹空いてるの?」

セミラミス「特にそういうわけではない」サクサクサクサクサク

最原(なんかさっきより食べる速度が速いような……イラついてる?)

最原「あ。ところでセミラミスさん。コインチョコは全部集めておいたよ」

セミラミス「大儀である」

最原「ついでに、これ」ピラッ

セミラミス「……?」

セミラミス「……ッ!」ガビーンッ

赤松「ん? なにそれ。写真?」

最原「コインチョコと一緒に散らかってたやつなんだけど。セミラミスさんのだよね」

セミラミス「知らんな」プイッ

最原「いやでもこのくっきり残った指紋は完全にセミラミスさんのだけど」

セミラミス「!?」ガビーンッ

赤松「……確かに指紋は残ってるけど、わかるの?」

最原「ごめん。カマかけただけ」

セミラミス「ふっ。流石に巌窟王のお気に入りよな。ここまで我をイラつかせるとは……刎頸に値するぞ。一族郎党な」

最原「そこまで!?」ガビーンッ

最原(……あ。でも一族って言ったって……)

最原「……はあ」

最原(……最初から僕にはそんなものないんだけど)

165: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/06(金) 22:26:11.49 ID:bo8T7w2P0
セミラミス「……ブラックサンダーをやる。我が写真を持っていたことは誰にも言うな」ヒョイッ

最原(口止め料が微妙だ)

赤松「うん、わかった。口外しない」サクサクサクサクサク

最原「もう食べてる!」ガビーンッ

最原「……アルターエゴはどの船に乗せてるの?」

赤松「あれ。ゴン太くんと東条さんの乗ってるヤツに」

最原(ひとまず安全に連れ帰らないと……彼がいなければ外に出れない)

最原(校則に触れてないことを祈るしかないな)

天海「ところでBBさん。こんな写真拾ったんすけど。これBBさんのっすか?」

BB「えー? BBちゃんは写真とか持ち歩いてませんけど……ん? この白髪の少年は……」

セミラミス「沈めェ!」ジャラジャラグサグサッ

天海&BB「ボートに穴ぎゃああああああああああ!」ブクブクブクブク

最原「何してんの!?」ガビーンッ

セミラミス「ハッ! しまった! 写真も沈む!」ガーンッ

赤松「そっちじゃなくって! 天海くん! BBさーーーんっ!」

166: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/06(金) 22:29:38.73 ID:bo8T7w2P0
ちょっと時間は巻き戻り、才囚学園

春川「……どこ行くの。百田」

百田「ん? まあ……万が一に備えるんだよ」スタスタ

春川「万が一?」

百田「新世界プログラムをぶっ壊さなきゃ外に出てこれないってなったら、さっき終一が言ったみたいにモノクマとの全面戦争ルートだ」

百田「なら……ま、やることは一つだろ」






エグイサルイエロー「」ドーンッ

百田「エグイサルを使うんだよ」

170: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/07(土) 21:03:30.89 ID:1soznJUh0
夢野side

夢野「本当によかったのかのう。デバイスを切り離して」

イシュタル『もういいらしいわ。BBもかなり覚悟キメてたみたいだし』

イシュタル『一切合切平気。少なくともあなたたちが気にすることじゃないわよ』

茶柱「……生徒以外の人間との通信ができる機械、ですか」

夢野「まあウチらにとっての外の世界に通じてるわけじゃないから、助けには一切使えんがのう」

茶柱「歯がゆいですね」

夢野「……もう割と普通に喋れておるのう。大丈夫になったか。よかった!」

茶柱「いえ。よく見てください。転子の目を」

夢野「……あ。白目……」

茶柱「直視できないので……」ブルブル

夢野「なら普通に目を閉じててもかまわんぞ!?」ガビーンッ

イシュタル『地味に辛いのよね。白目を維持するの』

171: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/07(土) 21:16:16.26 ID:1soznJUh0
夢野「さてと。百田と春川は何かしておるようじゃし……ウチは軽く白銀のことを探すとするかの」

茶柱「ッ!」

夢野「……どうかしたか? 転子」

茶柱「……本当にイヤな予感がしただけです。覚えてないはずの記憶が蘇る感覚と言いますか……」

茶柱「夢野さん。白銀さんに近づくの、やめておきませんか?」

夢野「んん……そうか。あっちの世界でのウチは白銀に殺されておったんじゃったの」

夢野「ちょっとだけ覚えておるようじゃの。転子」

茶柱「……」

夢野「……殺されたりせんよ。白銀はそんなことをするようなヤツではない」

夢野「仲間じゃ。今でも。絶対に」

茶柱「それは……」

夢野「ふむ。さて。そんなに不安なら……」

夢野「ウチは最原と違うぞ?」

茶柱「!」

夢野「転子。お主を待たせたりはしない。一緒に行くか」

茶柱「……ええ。喜んで。必ずあなたを守ってみせます!」

172: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/07(土) 21:36:35.92 ID:1soznJUh0
夢野「……ところで、なんじゃが。王馬はどこに行ったのじゃ?」

茶柱「さあ?」




王馬side

王馬「さてと。じゃ、契約成立。キミが約束を守る限りはこちらもキミを裏切りはしないよ」

王馬「……報酬は、次の学園生活における俺の『首謀者』の地位、だよね」

白銀「うん。約束は守るよ!」ニコニコ

王馬「……そっか。それならいいんだ」

王馬「大丈夫! 最善は尽くすからさ! だって俺たち仲間だもんね!」ニコニコ

白銀(……さて。これで私の打てる手は全部、かなぁ?)

白銀(完結は近いよ。楽しみ)ニコニコ

白銀(……キミの性格はよく知ってる。どうせこちらに恭順する気なんてないでしょう)

白銀(裏切ってもらわないと困るんだよね)

173: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/07(土) 21:59:14.21 ID:1soznJUh0
王馬「そういえばさ。モノクマはどうしたの? もうずっと見てないけど」

白銀「ん? 私の潜伏先だけど」

王馬「それ実質答えてないよね。潜伏先ってどこ? あ、まさかまだ解放されてない俺の研究教室とか?」

白銀「んー。ヒントだけ教えてあげようかな」

白銀「キミたちが二度と行かないところだよ。でもちゃんと、この宇宙船の中にある」

王馬「……ふーん」

白銀(……流石にわかっちゃったかな。ま、いいか)

白銀「じゃ、私は先に帰るから。一応言っておくけど後をつけるのはナシだよ?」

王馬「ちぇ」

白銀「……いざとなったら、よろしく」

王馬「……合図を受けたら誰かを人質に取れ、か。随分な汚れ仕事を押し付けてくれるよ」

銃「」ゴトッ

王馬「ま、やるけどね。みんなビックリしてくれそうだし」ニヤァ

177: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/08(日) 20:47:11.33 ID:gZxFBISW0
白銀side

白銀「……計算外があった」

白銀「まあ、前回の学級裁判では元から記憶を弄って全部ひっくり返す気だったけどさ」

白銀「巌窟王さんと最原くんが対立することも、計算通り。もしもあそこまで上手くバッサリ割れなかったら私が煽るつもりだったし」

白銀「問題なのは学級裁判に異議を唱える方法として、最原くんが『投票の放棄』を選んだこと」

白銀「もうちょっと色々あったはずなんだよなー……実は最原くんは惜しいところまで行ってた」

白銀「モノクマに対して交渉を行うってアプローチが実は大正解だったんだよ。ここで首謀者が倒れるのは本意じゃないはずだーって」

白銀「ここも計算外。最原くんなら『ブラフに引っかからないで押し通す』くらいのことはするだろうって思ったのにさ」

白銀「だから、投票の放棄をした人間に関しては殺さないといけなくなった。この点、どうしてもね。ルールだから」

モノクマ「もうちょっとあっさり靡くべきだった?」

白銀「んー。それはそれで話が不自然になっちゃうんだよなー……」

白銀「……でもま、いいよ。あれは流石にやりすぎかなって思ったけど、いい具合にみんな再起しはじめてる」

白銀「……それを私は叩き潰しにかかる。全力で。一切の演技もなく」

白銀「そうすれば……!」

178: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/08(日) 20:52:24.99 ID:gZxFBISW0
モノクマ「ところで悪いニュースが一つあるんだけど」

白銀「なに?」

モノクマ「……あの最原くんのアルターエゴ、壊れちゃったよ?」

白銀「ああ。なんだそんなこと……」

白銀「はあっ!?」ガビーンッ

白銀「い、いや。最後まで話は聞かないと。セミラミスさんがキレてうっかり壊しちゃったとかなら校則に引っかからないし」

白銀「だって彼女は生徒じゃないもん!」

モノクマ「ちなみにそのときの映像がこちら」ポチッ








アンジー『終一……終一……』ブチッ グサッ ゴリッ

最原?『いぎいいいいいいいいっ!?』

白銀「」

179: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/08(日) 20:59:26.79 ID:gZxFBISW0
モノクマ「煽り過ぎたね」

白銀「煽り過ぎちゃったかー……」ズーン

モノクマ「まあギリギリ、判定的には生きているんだよ。死んでない。でも彼に出入り口としての能力を期待するのはちょっと……」

白銀「生徒同士の情念で状況が悪化していくのはダンガンロンパっぽいけどさぁ! 流石にこれ以上追い込みたくないよ!」

白銀「どうしようモノクマ!」オロオロ

モノクマ「今更おろおろしないでよ。さっきまでの首謀者ムーブどこいったのさ」

モノクマ「うーん……まあ校則の判定はギリギリセーフだとボクが判定すればそこまでだとして……」

モノクマ「もう白銀さんはあの中に入れないよねぇ。コールドスリープ装置は見つかっちゃったわけだし?」

白銀「うう」

モノクマ「……じゃ、ちょっとボクがあの中に入ってくるよ。様子見でね!」

モノクマ「それとなくセミラミスさんに協力も取り付けてくるし……」

白銀「え? 本当! ありがとうモノクマ!」キラキラキラ

モノクマ「じゃ、行ってきまーす!」

白銀「行ってらっしゃーい!」

白銀「……さて。じゃあ今のうちに……台本の添削しておかないと……」

白銀「どうやったら歴史に残れるような悪役になれるかなぁ」ワクワク

180: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/08(日) 21:10:13.64 ID:gZxFBISW0
新世界プログラム内

天海「……」ビッショリ

BB「……」ビッショリ

最原「なんとか島まで辿り着けたね……本当どうなることかと……」

セミラミス「写真はどうした?」

赤松「本当に凄い神経だね!?」ガビーンッ

セミラミス「これが女帝の感覚だ」

最原「あえて空気読んでないだけだよね!?」

最原(……しかしこの人……アルターエゴの割に凄いリアリティだな。よく見れば見るほどに)

セミラミス「……む……チョコ菓子が切れた……チョコソースはあるのに……」ゴソゴソ

赤松「もう全部食べちゃったんだ……」

最原(アンジーさんと、アルターエゴの僕はどうなったかな)

181: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/08(日) 21:22:34.08 ID:gZxFBISW0
アンジーの病室周辺

巌窟王「……」ズーン

獄原「ど、どうしたの巌窟王さん」オロオロ

巌窟王「アンジーが……最原に会いたくないと……」

獄原「ん? えーっと、言うのイヤだけど、それって巌窟王さんにとっていいことじゃないの?」

巌窟王「怪我をしてて具合の悪い自分の青い顔色を見せるのがイヤだと……赤い顔で……」ズーン

獄原「……あっ」

巌窟王「明らかに再燃している……しかもヤツが自分の見た目を気にするなど初めてのことだ。前より燃え上がっている」

巌窟王「しかしヤツにアンジーを任せるわけには……」ガタガタ

獄原「元気出して! ほら! ゴン太が話を聞くから! ね?」アワアワ

真宮寺(獄原くんが気を使ってる……)

巌窟王「まさか巌窟王たる俺がまたしても横恋慕に頭を悩ませることになるとは……」ズーン

獄原「ヘラクレスオオカブトの話しようか!?」アワアワ

188: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/09(月) 19:22:18.68 ID:c6hDB/r/0
海の家

入間「ヒャッハー! 三時のおやつの準備だーーーッ!」コネコネ

天海「うわっ……入間さんのクセに本格的なクッキー作ろうとしてる!」

セミラミス「邪魔くさい……」グツグツグツ

BB「え。セミラミスさんも何か作ってるんですか?」

セミラミス「備蓄が無くなったから仕方あるまい」

最原「……脱出手段があるのに使えないって、意味もなく焦る状況……のはずなのに」

最原「うわあ。凄い余裕。みんな」ガーン

赤松「もう慣れちゃったみたい。入間さんは適応遅かった方かな」

赤松「……で。やっと落ち着けたけど。最原くん。何か聞きたいことある?」

最原「ええっと、まずは僕たちと別れてから赤松さんに何があったか聞きたい、かな」

赤松「いいよ。まずは私たちは白銀さんに、自分たちの死の体験を――」



かくかくしかじか

189: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/09(月) 19:27:46.27 ID:c6hDB/r/0
最原「アンジーさんの拷問。巌窟王さんに課せられた理不尽な試練。生徒全員の死の体験。白銀さんのアルターエゴの消滅……」

最原「……辛かったね。助けるの遅くなってごめん」

赤松「いいんだよ。結局巌窟王さんに助けられて無事で済んだし」

赤松「……アンジーさんは無事じゃなかったか」

最原「でも結局、なんで巌窟王さんとアンジーさんはあんなに怒ってたの?」

赤松「……えーっと。最原くん。やっぱりアンジーさんも怒ってたって思うの?」

最原「まあ、流石に。アンジーさんが嘘吐いてることくらいはわかるよ」

赤松「そこまでわかってて何で動機に頭がいかないのかなぁ……」ズーン

最原「ええと……なんかごめん?」

赤松「いいよ。別に。アンジーさんが怒ってたのはさ……」

天海「茶柱さんと付き合い始めたことがアンジーさんにバレたからっすよね」

最原「え」

赤松「正解」

最原「……えっ!?」ガビーンッ

入間「コネて寝かせたものがこちらになりまーす」

セミラミス「チョコは入っておるか? 無ければ足せ」

190: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/09(月) 19:47:11.42 ID:c6hDB/r/0
天海「やっぱり……」

最原「え!? いや。ええっ!? 全然予想外だった! ただそれだけであんなに怒る!?」

赤松「あれを『それだけ』と言ってのける最原くんが予想外すぎるんだけど!」

天海(アンジーさんと最原くんの間にある意識の差がただただ残酷だ……)

最原「あー……うーん。どこから漏れたのかなー、とか色々と聞きたいことはあるけど……」

最原「そうか。一般論としてはとても理解できるよ。痴情のもつれか……! 最悪だ……」

赤松「……最悪、ってほどじゃないと思うけど。結局アンジーさん、あの最原くんも殺してないし」

赤松「憎いだけで殺意は無かった。それにここは現実世界じゃない」

赤松「死んでない限りはあらゆる傷が『取り返しのつくもの』だよ。だって外に出ちゃえば関係ないんだしさ」

天海「取り返しのつく傷オンリーで最大限の復讐を遂げるあたり、彼女の本気さが垣間見えるんすけど……」

赤松「あのときはあえて言ってなかったんだよ。だって気が動転した最原くんが巌窟王さんとかアンジーさんに正論ぶつけたら……」

最原「……状況がひたすら悪化するだけか……確かに」

赤松「後でアンジーさんとちゃんと話してね。冷静に、さ」

最原「……」

入間「あっ! やべっ! ケミカルX入れちゃった!」バリンッ ドロドロ

セミラミス「我のカラメルが!?」ガビーンッ


ドカァァァンッ


アンリマユ「呼んだ?」ヤッホー

入間「誰!?」ガビーンッ

セミラミス「呼んでおらん! 失せよ!」バキィッ

アンリマユ「あー……」シュイイイン……

入間「消えた……」

191: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/09(月) 20:04:42.15 ID:c6hDB/r/0
最原「……ちょっと話してくる。早めに越したことはないでしょ」ハァ

赤松「うん。優しく……ってわけにはいかないか」

最原「……」スタスタ

天海「……決着っすね。これで」

赤松「後は巌窟王さんが暴走しなければ……いやアンジーさん本人が暴走しなければ一件落着だよ」

赤松「問題の内の一つは解決」

天海「大丈夫っすかね」

赤松「……まあ、大丈夫でしょ。さっきは怒りで我を忘れてたけど、巌窟王さんも冷静なら良識的だし」

赤松「アンジーさんも手口の点から見て、殺意はない。だから大丈夫。信じよう?」

天海「……そっすね」





キュオオンッ


ラフムチョコ「byiaf 36ed)4qw@r」カサカサ

入間「ああーっ……失敗しちまった……」

セミラミス「いや。砕けば意外と食える代物になるやも……」

BB「すいませーん。この二人そろそろ止めないと世界が滅びまーす。助けてくださーい」

200: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/10(火) 20:19:54.46 ID:3E3PFHx90
アンジーの病室周辺

巌窟王「……」ズーン

獄原「それでね? ハキリアリさんは人類より遥かに昔からキノコ栽培をしている凄いアリさんでね」キラキラ

真宮寺「……巌窟王さん。獄原くんが延々と虫の話してるけど、聞いてる?」

巌窟王「無意味に虫の知識が増えていく」

真宮寺(聞いてはいるのか……)

巌窟王「今はこの無意味さが癒しとなる……ム」

最原「……」チラッ チラッ

巌窟王「……最原。速めに出てこなければアルマジロを投げつけるぞ」

最原「アルマジロを!? いやそんな都合よくいるわけないよね!?」

獄原「あ。最原くん!」

真宮寺「……実はアニマルセラピーのために島中の動物型NPCをかき集めてきててさ……」

アルマジロ「……」ノソノソ

最原「本当だ! いる!」

獄原「ちなみにアルマジロさんが丈夫なのは外殻だけで内臓は一般的な哺乳類のそれだから」

巌窟王「?」

獄原「……人間でも防弾チョッキを着込んでたところで、衝撃が強すぎれば死ぬよね?」ギンッ

巌窟王「!?」

真宮寺「謝った方がいいヨ。彼の目の前で生き物を粗末にする発言は地雷だからさ」

巌窟王「……謝罪しよう……」

201: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/10(火) 20:30:52.67 ID:3E3PFHx90
最原「ええっと……巌窟王さん。僕はさ……」

巌窟王「……よせ。もういい。後はアンジーと決着を付けろ」

巌窟王「俺の復讐は、お前に対してはもう充分だ。忘れられない恐怖だったろう?」

最原「……」ズーン

巌窟王「ただ果たしてアンジーの方はどうか。お前はアレに引導を渡すことができるのか?」

最原「……」

最原「『できなきゃ殺す』って目でよく言うよ。道は一つしかないじゃないか」

巌窟王「『最初からそのつもり』という目だな。お前は。心底忌々しい」

巌窟王「……」

最原「あのさ。巌窟王さん」

巌窟王「ム?」

最原「『俺がいたせいで上手くいかなかったのではないか』って考えはすぐに捨てた方がいいよ。大間違いだから」

巌窟王「また追い回されたいか?」ギロリ

最原「!?」ガビーンッ

真宮寺「人の神経を逆撫でする天才だヨ。最原くん」

202: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/10(火) 20:43:04.62 ID:3E3PFHx90
真宮寺(ていうか。ああ、なるほどネ。だから異常に怒ってたのか)

真宮寺(あの怒り様は自分への怒りも反映してたからだったんだネ)

真宮寺(……集中すればそこを指摘できるくらい冴えてるのに……)

真宮寺「恋愛観に関してはなんで推理力がザコ以下なのかな……」ハァ

最原「聞こえてる! 聞こえてるから!」

巌窟王「『他人がいいと言っているものの価値がまるでわからない』という点において、確かに歪んでいるな。お前は」

獄原「最原くん、みんなが『好きだ』って言ってるのに首傾げてばっかりだもんね。無茶も多いし」

最原「……もうそろそろ治そうと思ってたんだよ。それ。茶柱さんと約束もしちゃったしさ……」

巌窟王「……何故ああなる前に気付けなかった」

最原(と、言いながら巌窟王さんは、アンジーさんのいるであろう小屋に目を向ける)

最原「……本気だと思ってなかった」

巌窟王「違うな。ヤツが嘘を吐かないということをお前は充分知ってたはずだ」

巌窟王「本気だということは知っていた。『本気の強さ』を見抜けなかっただけだ」

巌窟王「……三流探偵め。お前の見抜く真実は、そこまで薄っぺらなものだったか?」

最原「……僕は……」

巌窟王「もういい。責める気はない。地獄は俺が与えるものではないのだからな」

最原「うん。アンジーさんに謝ってくる!」タッ

獄原「……いいの? 行かせて。アンジーさん、最原くんのアルターエゴにあんなことしてたんだよ?」

巌窟王「俺にマスターを止める権利はない」

巌窟王「なにより、アンジーはそこまで脆弱ではない。もう俺が目をかけなくともヤツは、正しい答えを掴みとれるだろうさ」

獄原「巌窟王さん……」





最原「入るよ! アンジーさん!」ガチャリンコッ

バタムッ

最原「ぎゃあああああああああああああああああああああッ!」






真宮寺「……夜長さんがそこまでなんだって?」

巌窟王「獄原」

獄原「……なに?」

巌窟王「……虫の話を続けろ」

獄原「うん……」

真宮寺(投げた)

207: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/11(水) 20:06:02.61 ID:zSWGjjCv0
病室の中

最原「……」

ジュルッ ジュプッ

最原「……?」

最原(なんだか……熱い……? 体が熱い……)

最原(でも眠すぎて頭が全然働かない。血液が鉛になったみたいだ……)

最原(……動けない……)

ジュルルッ  ジュプッ

アンジー「……んっ……終一……終一っ……!」

最原「……」

最原(声も出せない)

208: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/11(水) 20:24:18.27 ID:zSWGjjCv0
海の家

カオスな鍋「」グツグツグツ

セミラミス「我こういうの見たことある。ふーやーちゃんとやらがコレ使ってるの見たことあるぞ」

入間「やべぇ。どうせ飛ぶだろうと思ってアルコール飲料入れ過ぎた。キツッ……」

天海「うわ。これ蒸気だけでクラクラ来るっすね。臭いも酷いし。赤松さん、場所移しましょうか」

赤松「人間の歯ってなんか鍵盤に似てない?」ボケーッ

天海「もう酔ってる!」ガビーンッ

赤松「アマデウスウウウウウウウウウ!」ガッ

天海「ぎゃあああああああ! 歯を! 前歯を押さないで痛い痛い痛いあああああああああああ!」

セミラミス「……まあ数分もすれば元に戻るであろう。我は賢いのでわかる。とても賢いのでな」

入間「どれくらい賢いんだ?」

セミラミス「……」

セミラミス「とても!」ドヤァ

入間「すげぇーーーッ!」

天海「あれ!? よく見たら全員酔ってないっすか!?」ガビーンッ

セミラミス「む。いかん。少し口が軽くなっておったな」

セミラミス「ところで最原とやらのスキルはあのままにしておいてよいのか? その内に強い眠気に負けて一歩も動けなくなるぞ?」

赤松「今私の頭のことなんてった!?」プッツーン!

天海「誰もそんな話してなかったっすけど前歯ぁぁぁぁぁぁぁ!」

セミラミス「誰も聞いておらぬな。まあいいだろう。我もう知らん。言ったからな。聞かなかった貴様らが悪い」ツーン

入間「ひとまず火を消しとくな」パチンッ

209: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/11(水) 20:34:03.55 ID:zSWGjjCv0
最原「……」

最原(そういえば……セミラミスさんが言ってたな。借り物のスキルは負荷になるって)

最原「ぐ……!」

最原「ダメだ。寝たら。ここで眠ったら起きれなくなるかもしれない……」ググッ

最原「あ、あれ。なんで僕、服着てないんだろ……?」

アンジー「ふっ」フワッ

最原「ん? なんか甘い臭いが」バターンッ

最原「ぐー」スヤァ

アンジー「……」



ジュルッ ジュプッ

210: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/11(水) 20:47:59.15 ID:zSWGjjCv0
ジュプッ ジュプッ 

ビクンッ

アンジー「んあっ!」

アンジー「……全部済んだ。満足ー。後片付けしなきゃ」イソイソ



十数分後



最原「……ハッ!?」ガバリ

最原「……起きれた。大丈夫。生きてる!」

アンジー「やっはー! 終一! 寝覚めはどう?」ニコニコ

最原「あ! アンジーさん!」

最原「……」

最原「あの。アンジーさん。僕さっき服を着てなかった気がするんだけど……」

アンジー「気のせいじゃない?」

最原「……僕が寝てる間になにか」

アンジー「してない」

最原(ここまで縋りたくなる嘘は初めてだ!)ガーンッ

211: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/11(水) 20:55:41.56 ID:zSWGjjCv0
最原「……やっと冷静に話せる場ができたね。アンジーさん」

アンジー「うんうん。仕返しが済んでスッキリしたよー」

最原「アルターエゴの僕に対してやったアレのこと?」

アンジー「あとさっきやったアレも含めて……」ボソッ

最原(怖いよーーーッ!)ガビーンッ

最原「あの! ねえ! 僕、茶柱さんに顔向けできなくなるようなことになるのはちょっと困るんだよ!」

最原「だからさ……!」

アンジー「……アンジーが永遠に口を噤めば、何をしたのかは終一本人にもわからない」

アンジー「だからアンジーは何もしてない」

アンジー「……してないよー」プイッ

最原「……」







最原「アンジーさん。僕はもうアンジーさんの期待に付き合えない」

212: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/11(水) 21:04:27.73 ID:zSWGjjCv0
アンジー「……もう余地はないの?」

最原「うん。ごめん。絶対にないよ」

アンジー「……そっかー」

最原「……これだけ伝えておきたかったんだ」

アンジー「律儀だなー。本当。そんなところがきっと……」

最原「……」

アンジー「終一のことが好きって感情はきっと、本物だったと思う」

アンジー「……やっと、ちょっとだけわかったような気がしたんだけどなー」

最原「アンジーさん、やっぱり巌窟王さんと会って変わったよ」

最原「……僕の伝えたいことはコレだけだ。じゃあ僕はこれで」

アンジー「……」

アンジー(さっきやったこと、転子に見せるよ? ビデオで撮ってあったんだ)

アンジー(……なんて、ね。流石にそこまで悪い子にはなれないよ)

アンジー(あの人から色々教えてもらったけどな。やっぱり肌に合わないや。欲しいものは奪ってでも、とか言いそうだけど)



スタスタスタ バタムッ



アンジー「……背中しか見えないときが一番欲しくなる。厄介だよねー。欲望って」

アンジー「それでもアンジーは終一のことが……」

215: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/11(水) 21:09:49.88 ID:zSWGjjCv0
病室のすぐ外

巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

最原「」

巌窟王「……終わったか」

最原「あ、うん」

巌窟王「そうか」

巌窟王「……」

最原「じゃあ僕はこれで……」スタスタ

巌窟王「……」スッ

巌窟王「……」ピタッ

巌窟王「……」スッ

巌窟王「……」アセッ

最原(うわ。タイミング見計らってる。どの時点で励ましに行ったらいいのかわからない感じだ。放っておくべきかも、とも思ってるな。アレ)

巌窟王「チッ……」

最原(いつ行ってもベストタイミングだと思うけどな……あの二人の絆は独特だけど。真っ直ぐだし)

最原(……後は任せるよ。僕は立場上、励ませないから)

216: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/11(水) 21:15:14.78 ID:zSWGjjCv0
グラッ

最原「ぐ……くそ。眠気が酷い……」

最原「あと何だろう。体の節々が激しい運動をした後か、硬い床で一晩寝た後みたいに痛むんだけど……!?」

最原(あと起きてられるのは、どのくらいなんだろうな……)





巌窟王「……いや。いつ行ってもいいはずだ。俺はサーヴァントだからな。遠慮なぞらしくもない」

巌窟王「ふん。それに、元から励ましなどアイツには……」



――ぐすっ。


巌窟王「――」



――う、うえ……うえええええん……。

――うわあああああああん……!



巌窟王「……」

ガチャリンコ

223: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/12(木) 20:53:27.39 ID:2BT8a6Dg0
海の家

セミラミス「というわけでできたぞ。チョコパスタが」

チョコパスタ「」デェェェェンッ!

入間「わーい! できたー!」

入間「……とか言うわけねぇだろ毛虫ババァ! こんなの豚のエサじゃねぇか!」

シャキィィンッ

セミラミス「愚民の声は小さいな。よく聞こえなかったのだが。この包丁で頬を裂いて口を大きくすれば少しはマシになろうか?」

入間「セミラミスさまばんざーい」ヒャッホウ

入間「……いやテメェに関する悪口は自重するとしても、コレだけはダメだろ! 容認できねぇよ!」

セミラミス「配分こそ違うが、成分的にはチョコパフェとほぼ同じだ。糖分と炭水化物という組み合わせはどんなに形を変えようと合う」

入間「ほ、ホントかぁ……? いやでも……」

セミラミス「食え」ガボフッ

入間「もががががげががが!」ジタバタ

赤松「問答無用だーーーッ!」

天海「あの二人、随分と仲良くなったっすねー」

BB「まあセミラミスさんも好奇心旺盛な研究者気質ですので……思考回路の方向は合致してるんですよね」

入間「う……! う、う、う……」

入間「美味ぇ!?」ガビーンッ

赤松「嘘ォ!?」

東条「……実は餡子とかも合うのよ。パスタって」

天海「あ。東条さん。治療は終わったんすか?」

東条「ひとまずは」

224: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/12(木) 21:11:31.78 ID:2BT8a6Dg0
東条「あれを完治させるのは無理ね。ただ鼓膜の方も徹底的に壊されていて自然回復は見込めない」

東条「手術をするにしても、設備は入間さんがどうにかしても知識と技術がない」

天海「流石に東条さんでも無理なもんは無理っすよね……」

東条「いえ。知識さえどうにかなれば私でなんとかするのだけど……」

天海(なんて自信だ!)

天海「BBさん。なんとかならないっすか?」

BB「んー。アルターエゴの治療とかなら私の専門ですが……あれ本当徹底的に壊されてますからね」

BB「最短で明日の昼になっちゃいますよ。鼓膜を直す『だけ』でもね」

天海「時間がゴリッと削れるわけっすね。でもやらないよりは遥かにマシか……」

東条「選手交代かしら?」

BB「ええ。ちょっとリカバリーさせてきます」

BB「……この場から立ち去る正当な理由ができてよかった。仮に味がよくっても……」

東条「ええ。抵抗感があるのよね。あの料理」

セミラミス「貴様も食らうがいい」ガボフッ

赤松「もがもごごごごご!」ジタバタ!

赤松「美味しいーーーッ! 酷いー! 悔しいー!」エグエグ

入間「こんな味覚に重篤な問題抱えたヤツが作ったみたいなサイコすぎる料理に敗北するなんてぇ……!」グスグス

天海「……俺もBBさんに同行しても……」

セミラミス「逃がさん。正当な理由が無い限り、この場にいる全員な」

天海「くっそーーーッ!」

233: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/13(金) 22:12:18.38 ID:81gZWvK80
現実世界

夢野「さて。モノクマか白銀を押さえればひとまずなんとかなる……と思うんじゃが……」

夢野「やっぱ普通に怖いのう」

茶柱「そりゃそうでしょうね。白銀さんのことは転子にもあまりピンと来てないのですが」

夢野「……赤松の聴力があれば何か進展するかもしれんのじゃが……やっぱりこっちも出て来るまで待つわけにはいかんし……」

夢野「手足徹底的にもがれてるのう」

茶柱「……うーん……例えば意図的に校則違反を犯したら、モノクマの方は出てきたりしないでしょうか」

夢野「ウチらを罰するためにか? 最悪の手段として考えてもいいかもしれんが」

王馬「いや無理だよ。だって校則違反の生徒を裁くのはエグイサルであってモノクマじゃないんだからさ!」

夢野「ぴぎっ!? って王馬か……ビックリさせるでない」

王馬「それよかさ。俺なんとなーく気付いちゃったんだ! モノクマのいる場所!」

夢野「んあ? いきなり何を言っとるんじゃお主」

王馬「多分、俺たちが二度と行かない場所にいるんじゃないかな?」

夢野「……いやだからいきなり現れて何を意味不明なことまくしたてとるんじゃ。ウチらが二度と行かない場所って……」







王馬「裁判場じゃないかな」

234: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/13(金) 22:20:30.01 ID:81gZWvK80
数分後 赤い扉周辺

夢野「……口車にあえて乗ってやったが……本当にここに白銀がいると思っておるのか?」

王馬「さて。どうかな。なんとなーく思いついただけだしさ」ニヤニヤ

茶柱(怪しすぎる……!)

ガチャガチャ

夢野「……やっぱり開かんの。この扉。平時は締め切っておるようじゃ」

茶柱「どうします? 扉の破壊について校則はなかったから壊してもいいと思いますが……」

夢野「うむむ……」

夢野「……あれ。なんじゃろ、アレ」

茶柱「あれ?」

夢野「今、あの草むらに何かあったような……」ガサガサ

茶柱「あ! ちょっと夢野さん! 足元に気を付けてくださいね! そこ結構草がボーボー……」

夢野「んああっ!?」ガサッ

茶柱「夢野さん!? 大丈夫ですか!?」

王馬「あらら。盛大に転んじゃったね! まあ草がクッションになって怪我は多分してないだろうけど……?」

王馬「あれ?」

茶柱「……え?」

茶柱「ゆ、夢野さん?」

王馬「……」








王馬「消えちゃったね?」

茶柱「……ッ!?」

235: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/13(金) 22:36:08.23 ID:81gZWvK80
潜伏場所

白銀「……モノクマがいないと学園の様子わからないんだよなー。マザーモノクマ凍結させちゃったから」

白銀「彼がいないと外出も間々ならないし。夜までには帰ってきてくれるといいんだけど……」

白銀「さてと。ラストスパート。今は亡き巌窟王さんの意思は……ぐすっ! 私がちゃんと継ぐからねっ!」

白銀「……」

白銀「……ツッコミがいないと虚しい……」カタカタ







格納庫

百田「うおおおおおお! 頑張れ頑張れ俺! 負けるな俺! 大丈夫絶対いけるって!」

春川『百田。流石にマニュアル操作は無理があるって。素直にオートマ操作に切り替えなよ』ザザッ

百田「ダメだ! マニュアル操作じゃねぇとモノクマーズに勝てる目が無くなっちまう! ジリ貧になるだけだ!」

春川『でも二足歩行すらままならないんじゃあさ……』ザザッ

百田「俺ファイトーーー! 負けるな解斗ーーー! ああダメだ流石の俺も心が折れそう!」

百田「ハルマキがほっぺにチューとかしてくれたら頑張れるかもしれねぇけど!?」

春川『……えっ?』

春川『……』

百田「……」

百田「あ。悪ィ。疲労がピークに達したのを誤魔化すための冗談だって。俺の心が折れそうのあたりから完全にジョークだ」

春川『頭部を破壊された者は失格となる』ドカァァァッ!

百田「ぎゃああああああああ! エグイサルにエグイサルで蹴り入れてんじゃねぇーーーッ!」グワングワン

236: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/13(金) 22:53:28.76 ID:81gZWvK80
新世界プログラム内

モノクマ「ふう。久しぶりにこの世界にやってきたぞぅ! ああ、なんて眩しい太陽!」キラキラキラ

モノクマ「……ジャバウォック島のテクスチャ使ってるんだ……結構余裕だな……」

モノクマ「さぁてと! じゃあ早速セミラミスさんのところに行って打ち合わせしないと! どうせ一人でチョコ菓子モグモグしてるんだろうし」

モノクマ「合流はきっと楽だよね!」





海の家

セミラミス「完食、だな?」ニヤァ

天海「溢れるB級感に特化したクソスイーツでした……美味しかったっす……」ズーン

入間「キツイー。何もかもー。生きるのが辛いー」エグエグ

赤松「……今日は夕ご飯いらないかも。胃袋に対するダメージが酷い……」

セミラミス「おかわりはいるか?」

全員「いるかァ!」ウガァ

セミラミス「……」

セミラミス「……そうか……」シュン

東条(わずかに落ち込んだわ)




セミラミスは馴染んでいた

237: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/13(金) 22:58:07.51 ID:81gZWvK80
最原「……もうすぐ日が落ちる」

最原「夜が来る、か」

最原「……ちょっとどうかと思うくらい穏やかだな。この島は」

最原「みんなで生き残って外に出れるかな……っと」

最原(……外に出てどうするんだろう)

最原(外に出たところで、僕たちには何もないのに)

最原(……どうしたらいいんだろうな。今まで出ることにだけ必死になってたけど)

最原(そろそろ出た後のことも考えるべき、か)





あと一日と六時間前後

239: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/14(土) 21:37:57.82 ID:Ael2FdsT0
夜 新世界プログラム内 海の家

天海「」チーン

入間「」チーン

赤松「」チーン

真宮寺「……どうしたのみんな」

入間「おお……オカマナメクジ……テメェ今日の夕ご飯は絶対に作れよ……」

入間「もう二度とセミラミスを台所に立たせんじゃねえ……!」

セミラミス「聞いてサングリーアちょっと言いにくいんだーけど」ルンルン

真宮寺「既にサングリア作ってるみたいだけど。アロエリー●のリズムで」

赤松(真宮寺くん何歳?)

セミラミス「漬け置きは良い文明よな」ルンルン

真宮寺「あの。セミラミスさんそれ酒税法違反だから……」

セミラミス「我は女帝ぞ。みなし製造がうんたらかんたらなどと下らない法なぞ知るか」ケラケラ

巌窟王「いい加減にしろ」ガシャーンッ

セミラミス「我の酒ーーーッ!?」ガビーンッ

赤松「あ! 巌窟王さん! アンジーさんの方は……その……」

巌窟王「……心配は無用だ。俺のマスターだぞ」

赤松「……」

巌窟王「とは言え、やはり怪我の方は脱出に間に合うかどうかは五分、と言ったところだが」

巌窟王「ただし、現実的な手段に限定しての話だがな」

入間「あ? なんかアテがあんのかよ?」

巌窟王「最原がセミラミスとのゲームに勝った時点で、一つ」

セミラミス「ぐう。こうなったらこの聖杯で酒税法を改竄してやろうか……」キラキラキラ

赤松「わあ。綺麗なコップ。何それ」

セミラミス「聖杯だが」

赤松「あはは。もう。セミラミスさんったら冗談ばっかり」ケラケラ

240: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/14(土) 21:47:02.27 ID:Ael2FdsT0
巌窟王「アッシリアの女帝よ。そのカップは最原のものだろう」

セミラミス「ふん。確かに我のゲームをクリアした褒章ではある。だがこれをそのままの形でくれてやるとは言っておらぬぞ?」

セミラミス「我はこれを使って世界の酒税法を改竄する!」

巌窟王「ここにロマネコンティがあるのだが」

セミラミス「ふん。腐っても女帝。多少の矜持はある。もちろんそのままの形でヤツにくれてやろうとも」

真宮寺「この人の手の平ぐるんぐるん回転するネ」

真宮寺「……ところでコレってもしかして本物?」

巌窟王「……」←静かに、のポーズ

真宮寺(本物だ!?)ガビーンッ

入間「ヒャハハ! まっさかー! こんな場所に本物の聖杯があるわけねぇだろ!」ケラケラ

入間「もしこれが本物だったら俺様、ダサイ原の目の前でストリップしてやるぜ!」

真宮寺(自爆芸の天才だなぁ、この人)

最原「……あ。みんな。ここにいたんだ」

セミラミス「最原。これをやろう」ポーイッ

最原「え? うわっ……と」キャッチ!

最原「なにこのコップ……ひとりでに光ってて気持ち悪いんだけど……」

最原「まあいいや。みんな。話があるんだ」

241: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/14(土) 22:02:40.27 ID:Ael2FdsT0
巌窟王「まて。獄原がいないぞ」

赤松(ついでにBBさんも)

最原「ついさっきBBさんがアルターエゴを修繕する様子を興味深げに見てたけど」

最原「……ひとまず彼に関しては後でいいよ。僕から伝えるから」

巌窟王「伝える? 最原、お前はまさか……」

最原「……学園の外の真実。これを話さないと、さ」

赤松「!」

最原「……そろそろ、この学園の外に出た後のことも考えないと。そんな段階に来ちゃったから」

巌窟王「……」

巌窟王「獄原に関しては任せるが、アンジーには俺から伝えよう」

最原「わかった」

入間「お、おい。学園の外がなんだって?」

最原「……真相に辿り着いた。だから一緒に考えてほしいんだ」

最原「僕たちがどうするべきなのかを」

巌窟王「……」

セミラミス「おい。ロマネコンティをよこせ。約定は果たしたであろう」チョイチョイ

巌窟王「ふんっ」ブンッ

ガシャーンッ!

セミラミス「!?」ガビーンッ

赤松「ロマネコンティが床に叩きつけられて粉々にーーーッ!?」ガビーンッ

248: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/15(日) 21:18:51.70 ID:FaqzE++j0
数分後

最原「……これが、このコロシアイゲームの真相だよ」

赤松「……」

入間「……はい?」

真宮寺「全部……嘘だって?」ガタガタ

真宮寺「そ、そんなはずないヨ。だって僕は全部覚えて……!」

天海「……ありえるかも……しれないっす」

真宮寺「え」

天海「俺たちは思い出しライトで、一時的にとは言え『記憶を改竄』されてたんすよ?」

天海「しかもそれを本当の記憶だと、思い出すまで完璧に思い込んでた。百田くんたちは未だに巌窟王さんのことを思い出せてない」

天海「どころか他の生徒……キミたちが生きていることに関しては半信半疑だった」

赤松「全部……嘘? 私の家族も、私の友達も、私の学校も、私の経歴も才能も……!?」

赤松「あれもあれもあれもあれもあれもあれもあれも……」

最原「嘘だよ」

赤松「……」

入間「ざ……ざけんなよ。そんなのが本当なわけねぇ! 真実なわきゃねーだろ!」

入間「そうだ! 証拠は!? テメェが思い出したって言ってるだけで、それが本当だという証拠はどこにも……!」

最原「なら入間さんが今まで思い出しライトで獲得した記憶が全部本当だとしたらさ」

最原「……それならそれで外に居場所はないよ?」

入間「ぐ……!?」

真宮寺「話を逸らさないでヨ。最原くんの仮説に証拠があるかって聞いてるんだけど?」

最原「……」

巌窟王「言ってやれ最原。何かあるのだろう?」







最原「いやないけど」ケロリ

巌窟王「」

249: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/15(日) 21:27:52.88 ID:FaqzE++j0
最原「この期に及んでまた白銀さんの用意した嘘かも、という可能性はある」

最原「でもさっきも言った通り『どっちが真相だったとしても僕たちの居場所はない』という点で共通はしてるんだよ」

東条「そうね。どちらの真相にしても私たちは、もう……コロシアイをする理由はない」

東条「脱出する理由も、だけどもね」

入間「……ならもう脱出しなくていいじゃんかよぉ……何も……考えたくねぇ……」エグエグ

星「いや。それは最悪だ。絶対にダメだ」

東条「理由は?」

星「校則で縛ってるから普段は意識もしてねぇが、もし仮にモノクマが『ゲームに飽きた』と言い始めた場合……」

星「俺たちはその時点でエグイサルに殺されるだろうな。結局のところモノクマはこの学園で一番強い権力だ」

星「一番強い権力を裁く者がこの学園の中にはいねーんだからよ」

巌窟王「もっとも、その点に関しては最原の仮説なら説明可能だがな」

巌窟王「今まで律儀すぎるほどにモノクマが校則を守っていたのは『外の世界に見せていたから』……」

巌窟王「これ以上に美しい回答もあるまい。故にモノクマより強い権力は、実は外の世界にいたということになる」

赤松「……」

セミラミス「ふむ……カルーアミルクも悪くない」チビリチビリ

赤松(もう立ち直ってカクテル作ってる……)

250: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/15(日) 21:36:33.60 ID:FaqzE++j0
最原「さて。僕の仮説はあくまでも可能性。だけどこれを念頭に置いて考えてみてくれないかな」

最原「……外の世界にそれでも出たい?」

赤松「それは……」

赤松「……」

セミラミス「む? ほう。ほうほうほう。これはアレだな。我は知っている。この前の金髪先生だかコンパチ先生だかで見たことあるぞ?」

セミラミス「卒業が近づいた生徒たちが行う進路相談……とかいうヤツではないか?」

セミラミス「酒の肴としてはまあまあだな」グビグビ

赤松「セミラミスさん。酔ってるの?」

セミラミス「人類最古の毒殺者がスクリュードライバー程度で酔うわけがなかろう」

入間「さっきカルーアミルクっつってなかったか?」

星「というか実際に持ってるのカルーアミルクだぞ」

赤松「酔ってるよ! しかも症状が重篤だよッ!」

セミラミス「ぐー」バターンッ

赤松「あっと言う間に酔いつぶれた!」ガビーンッ

巌窟王「そのまま海にでも捨てておけ」

赤松「さ、流石にベッドに運ぶよ!」

星「よく考えてみたらコイツが今一番、なんでここにいるのかわかんねーな」

251: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/15(日) 21:44:18.73 ID:FaqzE++j0
天海「……」

天海「前段階っすね。ひとまずは」

巌窟王「!」

天海「白銀さんを捕まえる。モノクマを無力化させる」

天海「外に出る権利を手に入れる。それ以外に道がないかを考える」

赤松「外に出る。モノクマに飽きるまで飼われる、以外の選択肢……?」

天海「探してみないと、あるかどうかもわからないじゃないっすか」

天海「まあ……その第三の道がもしあったとしても、この二つ以上に過酷かもしれないんすけどね……」

天海「俺は……道はすべて開示した上で選びたいっす」

天海「真相が暴けたからって、そこで終わりにしたくない」

最原「……そっか」

天海「お願いっす。最原くん。この話はまだ保留にしておいてくれないっすかね?」

天海「真相のその先を見ないといけない。そんな気がするんすよ。俺」

最原「うん。わかった。僕も気が早かったかな。重要だから話さないわけにもいかなかったけどさ」

巌窟王「……真相のその先、か」

赤松「あの。真宮寺くん。セミラミスさんを運ぶの手伝って?」

セミラミス「……膝枕……である……光栄に思え……」ムニャ

真宮寺(腹立つくらい幸せそうだネ)

252: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/15(日) 22:01:28.45 ID:FaqzE++j0
アルターエゴを修繕するために作ったほったて小屋

BB「……それ。本気で言ってるので? 私に取引を?」

モノクマ「さっきゴン太くんに仕込んだアレを見てさぁ。利害は一致しそうだなって思ったんだよね!」

BB「あれは万が一のために持たせただけなんですけどー」

BB「……でもそれって取引というよりは私の背中を押してるだけですよね」

BB「当初より『最悪の場合は』として設計してた仕掛けですし」

モノクマ「思い切り派手にやっていいよ! やってくれた場合は……ここからがこちらの取引なんだけど」






モノクマ「――」

BB「……」

BB「正気ですか? そんなもの……」

モノクマ「うん。もういらないものだからさ。別に全然いいんだよ」

BB「……なんとなく白銀さんが何を考えてるのかわかっちゃいました」

モノクマ「そう?」

BB「……いいですよ。そんなもの受け取れません。気持ち悪い。ロハでやった方がマシです」

BB「決行はいつにします?」

モノクマ「できるだけ早い方がいいよね。もう時間がなさそうだ」

BB「……さぁって。後腐れなく、ぶっ壊しちゃいましょうか」

257: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/16(月) 18:57:32.30 ID:dLsF8k7q0
アルターエゴの治療室

BB「……さてと。準備はこれで終了。あとは……まあ祈るだけですかね」

最原「治療は順調なの?」

BB「桜ビーム!」ドバァァァッ!

最原「わああああああああ!?」ドカーンッ

最原「あ、あぶ、あぶあぶ……危ない! 死ぬところだったよ!」

BB「こっちはビックリしすぎて心臓が止まるかと思いましたよ! 謝ってください!」

最原「ご、ごめん……?」

最原(……いやここで謝るのはなんか違う気がする……断れないけど)ズーン

BB「こっちは予定以上の成果はなし。代わりに予定外のアクシデントもありません」

BB「セミラミスさんはまだ生徒たちで遊んでますか?」

最原「あ、いや……自分で作ったカクテルで酔いつぶれてたけど」

BB「本物並みですね、本当。気が抜けてるときは異常に役に立たないんですよ。チョコファウンテンの中にずーっと幽閉されてたり」

最原「この状況で気が抜けるのか……」

BB「抜けますよ。だってあなたたちのこと他人事だと思って……っと、彼女のことはもういいでしょう」

BB「最原さん。話が一つ。時間がなさげなので一方的に宣告させてもらいます」

BB「私はちょーっと予定があるので、あなたたちを脱出させるころには、もう協力できません」

最原「え? そうなの?」

BB「ええ。残念ですが、あなたたちの戦いを最後までサポートできなくなりました」

BB「……無念、ですが。でも心配はしていません。あなたたちなら、きっと……」

BB「これ、巌窟王さんには秘密ですよ」

最原「……」

最原「BBさん。キミとはなんだかんだ長い付き合いになっちゃったけどさ……」

最原「ありがとう。キミがいなければ解けなかった謎もあった」

最原「……また会えるかな?」

BB「……さて?」ニコリ

258: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/16(月) 19:09:57.59 ID:dLsF8k7q0
ベッドルーム

セミラミス「……おい。水をよこせ」グッタリ

赤松「凄まじい神経だよセミラミスさん。この状態でなんでそんな態度大きいの」

セミラミス「ククク。何故だと思う? 聞きたいか? 教えないぞ? 泣いて乞えば教えてやるが」ニコニコ

赤松「……」

セミラミス「……」

セミラミス「泣いて乞わぬのか……貴様は強いな……」

赤松「待って。軽口でもなんでもなくって本気で泣くと思ってたの?」

セミラミス「……ム……?」

セミラミス(風向きが変わったか……よくない風だ)

赤松「セミラミスさん?」

セミラミス「……貴様らが思ったより早く嵐が来るぞ。気を付けよ」

赤松「え」

セミラミス「水」

赤松「……ああ、もう。持って来ればいいんでしょ。元から介抱するつもりだったし大丈夫だって」

セミラミス(さて。どうせ紛い物の身。この嵐で消え去ってしまうのも別にいいが……)

セミラミス「……我の料理を口にしたしな……ふむ。よし」

赤松「水持ってきたよ」

セミラミス「水道水か……ペットボトルの天然水とかはなかったのか?」ゲンナリ

赤松「ワガママ放題すぎる!」

259: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/16(月) 19:21:42.88 ID:dLsF8k7q0
アンジーの病室周辺

巌窟王「……」

最原「あ。巌窟王さん」

巌窟王「最原か」

獄原「……」ズーン

最原「……と、ゴン太くんも。その様子だと……」

獄原「うん。ゴン太も……聞いたんだ……アンジーさんと一緒に……」

最原「そう」

最原(……言うことが間違いだったとは思えない。けど……ちょっと心配だな)

最原(でも各自で乗り越えてもらうしかない)

最原「あ。そうだ。巌窟王さん。聞きたいことがあったんだけど」

巌窟王「なんだ?」

最原「いつの間にアンジーさんのいる場所がわかるようになったの? 真宮寺くんの事件のときは、そんな能力なかったよね?」

巌窟王「……それか。さて。どう言ったものか……」

巌窟王「……どの言い方をしても気に食わないな」

最原「え?」

巌窟王「拷問中、俺が這う方向がわかったのは白銀がそれとなく誘導したからであろうが……」

巌窟王「……そう。すべて白銀の拷問のせいであろうな。アンジーの魔力供給が『マイナスの感情の爆発』で活性化することは随分前に述べた」

巌窟王「それがヤツの拷問によって上限を越しただけのこと」

巌窟王「一種の壁を破ったのだ、と考えればいい。と言っても、トドメは俺の負傷した姿を見て心底幻滅したことだろうがな」

巌窟王「ヤツの趣味嗜好が完全に裏目に出た、と言えば少しは気持ちも晴れようというものだが……」

最原「……」

最原(確かに、どこか気持ち悪いな。まるでこうなることがわかってたような……)

最原(アンジーさんの感情の発露が魔力に関わる。これは学園生活で特に隠してなかった)

最原(でも、あの白銀さんが『その点を考慮せずに拷問をした』って事実がなにか変だ。腑に落ちない)

最原「……まさか、彼女――」


ドカァァァァァンッ……!


最原「!」

巌窟王「!」

獄原「えっ……なにこの音?」

最原「爆発? どこから?」キョロキョロ

最原「……あ……ああ、あ!?」







獄原「……BBさんが突貫で組み立てた……アルターエゴ治療室の方……!?」

261: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/17(火) 20:08:21.03 ID:XkpcxpB80
巌窟王「俺はアンジーの傍から離れるわけにはいかん」

最原「わかってる! ゴン太くん! 一緒に来て!」

獄原「う、うん! わかった!」

最原「くそっ! 無事でいてくれよ、二人とも!」ダッ






ベッドルーム

赤松「……ん。なんだろう、今の音」

セミラミス「……さて。我には見当も付かぬが……」

セミラミス「赤松。貴様は運がいいな」

赤松「え?」

セミラミス「少し騒がしくなるぞ。絶対に我の傍から離れるな」

セミラミス「もてなしの返礼はしてやろう」

赤松「?」

262: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/17(火) 20:19:00.85 ID:XkpcxpB80
獄原「ん。あれは……!」

最原(海の家でくつろいでた人たちか。少しの差だけどあっちの方が先に着いたんだな)

最原「……あれ?」

最原(BBさんの作った部屋よりちょっと離れたところに、何か……?)

最原「煙?」

獄原「最原くん?」

最原「……もしかして爆発は爆発でも、爆弾とかじゃないのか?」

最原「ごめん! ゴン太くん! 別行動にしよう! 僕はちょっと調べたいことがある!」

獄原「わかった! じゃあゴン太は先に行くよ!」




アルターエゴの治療室周辺

東条「BBさん! 無事!?」

入間「な、なんじゃこりゃあ! すげぇ土煙……げほっ!」

真宮寺「……部屋の側面に何か強い力がかかって、部屋が破壊されたようだネ」

星「トラックとかか?」

真宮寺「いや……それよりも小さくて、更に速いものだろうネ。例えば……大砲?」

天海「た、大砲って……!?」

真宮寺「……部屋が燃えてないところを見るに徹甲弾かな」

入間「ほ、砲台は……!?」キョロキョロ

星「後回しにしろ。中に入るぜ」


ガチャリンコ


天海「む……ぐ……!?」

真宮寺「これは……」

東条「……血の臭い……ね」

263: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/17(火) 20:26:12.80 ID:XkpcxpB80
BBの治療室の外れ

最原「これは……砲台?」

最原(煙が出てるし、発射直後……みたいだけど)

最原(やたら作りが簡素っていうか……本当に必要最低限の機構しかないみたいだな)

最原(多分、地面に固定されてたんだろうけど、反動でひっくり返ってるし……地面には鉄杭の痕。あと土嚢。これで固定してたみたいだ)

最原「……ん。これ……ところどころ肉球型の泥の痕跡がペタペタ残ってるな」

最原「なんで肉球? まるで猫か何かがこの砲台を設置したみたいな……」




モノクマ『うぷぷぷぷぷ』




最原「猫じゃない! クマだ!」ガビーンッ

最原(まさかモノクマがこの砲台を撃ったのか!?)

最原(……もうちょっと調べてみる必要があるか)

264: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/17(火) 20:37:16.71 ID:XkpcxpB80
最原「……これ……アンテナがついてるな。ひっくり返った拍子に壊れちゃったみたいだけど」

最原「まさか遠隔で発射できるのか?」

最原「……いや。目に見える場所にトリガーがないから『遠隔操作じゃないと起動できない』みたいだな……」

最原「でも変だ。この砲台……元の場所に、鉄杭を痕に重なるように固定して、土嚢を乗せたら……」

最原(関節の駆動を邪魔して、一切身動きが取れなくなる……)

最原(……つまり設置したが最後、そこから標準を動かせない。ただ部屋を破壊するだけなら、これでも問題ないけど……?)

最原「モノクマはコレを使って一体何を……?」




アルターエゴの治療室

天海「……これ。やっぱり死んじゃったっすかね」

東条「見ればわかるでしょう」

天海(俺たちが見た光景。それは……)

天海(……床に倒れ込み、掠り傷だらけのBBさん。そして……首から上が無くなった誰かの死体だった)

天海(これはまず間違いなく、百パーセント)

獄原「最原くんの……アルターエゴ……!?」

天海「あ。ゴン太くん」

星「……これで完璧に、外に出る手段がなくなっちまったな」

入間「どころじゃねぇ! 出入口が一つ残らず無くなっちまったら、それは、つまり!」

入間「あわわわわわわ!」アタフタ

獄原「大丈夫! BBさんが手を打ってたから!」

天海(え?)

入間「BBが……?」

獄原「だから、最原くんのアルターエゴが死んでも……問題は……!」



ピンポンパンポーン


天海「ん……?」

265: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/17(火) 20:39:39.08 ID:XkpcxpB80
モノクマ『あー! あー! オマエラ! お久しぶりです! みんなの愛らしい学園長、モノクマです!』

モノクマ『今日はみんなに、残念なお知らせがあります!』

モノクマ『新世界プログラムに対する重大な破壊行為を関知しました!』

モノクマ『よって、一切の例外なく、連帯責任で! みんな仲良く!』






モノクマ『エグイサルによる処理を開始しまーっす!』ギンッ

267: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/18(水) 19:27:48.78 ID:uxmOnnYd0
天海「……」

天海「それで? ゴン太くん。BBさんの打った手って何っすか?」

獄原「あ、もういいや。全部ない話になったみたいだから」ダラダラダラ

真宮寺「凄い汗」

入間「どっ、どどどどうすんだよォ! 俺様たちの体はまだ外で無防備に晒されてるんだろ!?」

入間「エグイサルなんか来たら一瞬で……!」

東条「どうやら話はそんなにゆっくりしたものではないらしいわよ」


ガシャコーンッ ガシャコーンッ


星「……この音」

入間「お、おい。アイツらは巌窟王が一つ残らず破壊したよな!? そうだよな!?」

東条「校則違反にあわせて復活したと考えるべきでしょうね」

東条「何体かこちらにやってきてるわ。視界に入った途端にグシャッと来るでしょうね」

入間「~~~! ~~~!」パクパク

真宮寺「もう悲鳴が声になってないヨ」

268: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/18(水) 19:39:27.31 ID:uxmOnnYd0
BB「ぐ、む……ぷはぁっ! ビックリした!」ガバリ

天海「起きたっすね」

BB「うわ! アルターエゴが完全破壊されてる!」ガビーンッ

天海(なんかわざとらしいな?)

獄原「BBさん! これどういうこと? さっき言ってたよね!?」

BB「さっき?」

獄原「仮にアルターエゴが壊れたとしても『監視権限』はセミラミスさんから回収した上で破壊したから大丈夫って!」

天海「え? なんすかそれ」

BB「モノクマと白銀さんはセミラミスさんに、この世界を監視する権限を与えていたんです。言っちゃえばこの世界限定の千里眼ですね」

BB「それをさっきセミラミスさんから没収して破壊したから、仮にアルターエゴを破壊したところでモノクマさんがそれを認識できないんですよ」

BB「まあ『外の世界から新世界プログラムを俯瞰して見る場合』は別ですが……それでも『反応の撹乱』にはなりますので……」

入間「あ。そうか。映像を見れても数値を見なきゃ、俺様やBBの偽装工作の可能性も消えないから認識できないも同然なのか」

BB「よって、残る確認手段は一つだけ。モノクマさんが直でここに来て、肉眼でこれを見ない限りは校則違反として処理できないんですよ」

BB「仮に『まあ壊れただろう』という『みなし』で校則違反判定を行って、後から実は壊れてませんでした、となったら……」

BB「この学園生活そのものに対する信用にかかわりますので、絶対にみなしや推測であなたたちを裁いたりはできないはずです」

真宮寺「そう。ところで、この音聞こえる? 段々大きくなってきてるのもわかる?」




ガシャコーンッ ガシャコーンッ



BB「……」

BB「あれれー?」

天海「あれれー? じゃないっすよ!?」

269: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/18(水) 20:01:46.38 ID:uxmOnnYd0
BB「もしかしたら……この中に裏切り者がいるのかもしれないですね」

天海「!」

東条「……この期に及んで? まだ?」

星「ありえなくはない、か?」

真宮寺「まあ……さっき最原くんに聞かされた話を真に受けて、絶望しきった誰かが心中を企てたと考えれば確かに」

天海「ないっすよ! そんなの!」

BB「……」

天海「もう俺たちは、前に進むことをやめたりしないっす! こんなところで終わりたくない! みんなそう思ってたはずっすよ!」

東条「どっちにしても、あの校則違反の放送が鳴り始めたのは『私たちが部屋に入った後』よ」

東条「モノクマがそれを感知する方法がどこかにある、ということじゃないかしら」


ガシャコーンッ ガシャコーンッ


BB「もう時間がなさそうですね」

天海「ど、どうするんす!? 逃げる? 隠れる!?」アタフタ

BB「……私ならアレを一体、二体破壊はできると思いますけど……」

BB「ふむ。『逃げる』の方向で行きましょう。ゴン太さん。アレを」

獄原「え? あ、アレ?」

獄原「……あ、アレを使うの!? 最終手段って言ってたじゃない!?」ガビーンッ

BB「もう大分詰んじゃってるので……仕方ないのでは?」

獄原「ああー……!」

獄原「わ、わかった。ゴン太、頑張るよ……」

天海「……?」

BB「じゃ、道を切り開いてあげます。ひとまず巌窟王さんと合流です!」

獄原「あ! 途中で最原くんも回収してね! 場所はゴン太が教えるから!」

BB「了解!」

東条「正面突破……ね」

星「無茶な作戦になるな」

272: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/19(木) 21:35:08.29 ID:T1+lA3bx0
最原「……」

最原(わかった。標準が動かせないのなら『大きくて動かない標的を狙う』か『標的を動かす』しかない)

最原(なら……この遠隔操作のスイッチを押したのは……!)

最原「BBさんと合流はできないな……」

最原「調査しなきゃ! 真相によっては僕らは外に出られずに終わる!」




ベッドルーム周辺


ガシャコーンッ ガシャコーンッ

赤松「……エグイサルで囲まれてる。それにさっきの放送。どう考えてもまずいよね……」

セミラミス「そうだな。我も流石にマスターなしのはぐれサーヴァント状態では、半分の実力も出せないであろう」

セミラミス「というかそもそも殴り合い用のサーヴァントではないのでな」

赤松「ん……?」

セミラミス「む? なんだ? サーヴァントが戦闘をしないことがそんなに意外か?」

赤松「いや。セミラミスさんってサーヴァントだったの!?」

セミラミス「何を今更。そんなこと最初に……?」

セミラミス「あっ。言ってなかった」ガーンッ

赤松(なんだろう、この感じ。どことなく誰かに似てるような……?)

セミラミス「ひとまず隠れられるだけここに隠れておいて、見つかりそうになったら我が仕掛ける」

セミラミス「安心せよ。巌窟王のところに連れて行く程度、我にとっては造作もない」ギンッ

273: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/19(木) 21:41:53.70 ID:T1+lA3bx0
五分後

スコーンッ

セミラミス「あーれー」クルリラクルリラ

赤松「エグイサルにどつかれて吹っ飛んだーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「ぐはっ」ガンッ

ドサッ

赤松「そして後頭部を木に打ち付けたーーーッ!」

エグイサル「」ガシャコーンッ

赤松「あ! わ! わ!」

赤松(撃たれる!?)



ジャラジャラジャラッ ガチッ


エグイサル「!?」ジタバタ

「ふん。この程度の攻撃で我にダメージを与えられると思うてか?」

赤松「……この鎖! セミラミスさん! 無事だったの――」

血塗れのセミラミス「そよ風のような攻撃だったな」フラフラ

赤松「重傷だーーーッ! 無事じゃない!」

赤松「……あ! 思い出した! この感じ、召喚された直後の巌窟王さんと同じだ!」

セミラミス「あやつと同列に語られるのは不本意だが、それは『頼もしい』という意味か?」ニヤニヤ

赤松「『思ったより役に立たない』って意味だよ!」

セミラミス「!?」ガビーンッ

274: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/19(木) 21:48:57.95 ID:T1+lA3bx0
セミラミス「ふん。まあいい。巌窟王のところまで連れて行く。予定には何の代わりもない。行くぞ」バターンッ

セミラミス「む? 妙だな。何故我の目の前に空が広がっているのか。はて?」

赤松「ぶっ倒れて空を仰いでるからだよ!?」

セミラミス「む。いつの間に倒れたのか……ならば立ち上がらなければな?」ガクガク

セミラミス「さて赤松。一気に走り抜けるぞ。こちらだ」フラフラ

赤松「セミラミスさん! 逆! 方向が逆!」アタフタ

セミラミス「……仕方がない。赤松。貴様に我が手を取る名誉を許す。その間は我が貴様の身の安全を保障してやろう」スッ

エグイサル「……」ハイドーゾ

赤松「セミラミスさーーーん! それ私じゃなくってエグイサルーーーッ!」

スコーンッ

セミラミス「あーれー」クルリラクルリラ

赤松「また吹っ飛ばされたーーーッ!?」ガビーンッ

275: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/19(木) 21:59:13.91 ID:T1+lA3bx0
セミラミス「ククク。楽しくなってきたぞ。存外やるではないか」ビクンビクン

赤松「この期に及んでまだ上から目線だよ! 凄いなこの人!」

セミラミス「それでは我が奥の手を見せてやろう、と言いたいところだが。赤松」

セミラミス「この奥の手は周りに人がいると巻き込んでしまう可能性があり非常に危険だ」

セミラミス「ついでに直視すると失明の危険性があり、音を聞くと呪われる可能性もある」

セミラミス「すぐにこのガラクタどもを片付けて後を追うので、先に行くがいい」

赤松「ねえ流石にそんな嘘に引っかかるほど私、子供じゃないんだけど!? 要約で『ここは私に任せて先に行け』だよね!?」

赤松「肩を貸すから! そこの林を突っ切って行こう! 遠回りになるけど身は隠せるからマシだよ!」

セミラミス「貴様の提案に乗ってやらんこともない」

赤松「もういい加減に本っ当に黙ってて! 無茶しすぎだよ!」

セミラミス「……そこまで無茶でもないのだが……まあいい。速くした方がよいぞ?」

セミラミス「鎖がそろそろ引きちぎれそうだ」

エグイサル「……」ググッ

赤松「うわーーー!?」

276: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/19(木) 22:08:09.27 ID:T1+lA3bx0
セミラミス(しかし妙だな。魔力の籠ってない攻撃でサーヴァントを傷つけるとは……)

セミラミス「……まさかこの空間、固有結界と化しているのか?」

セミラミス「バカな。この規模の固有結界を作るのならそれこそ全人類規模の『願望』が必要になる。気のせいだな」

赤松「口より足を動かして! 今は!」

セミラミス「別にあの程度なら我一人で大丈夫なのだが。置いて行ってもよいのだぞ?」

赤松「セミラミスさん! 美人で料理がおいしくて割と面倒見がいいところは尊敬できるよ!」

セミラミス「そうであろう?」

赤松「でもアホでしょ!」

セミラミス「!?」ガビーンッ

赤松「落ち着けるところまで行ったら止血するから! 頑張って!」

セミラミス「貴様後で覚えていろ」

281: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/20(金) 21:19:26.80 ID:kpYm2A3T0
アンジーの病室周辺

巌窟王「……」ガチャガチャ

巌窟王「ふむ。ブランクの長さの割に、上手くできた方じゃないか」

アンジー「何してるのー?」

巌窟王「罠を仕掛けている。これが上手く行った試しはそこまで多くないがな」

巌窟王「戦車級の重量を持った誰かが仕掛けを踏むか、俺がスイッチを起動させるかすると」


ギャリンッ グサグサグサッ


巌窟王「BBから提供された『鉄杭』が相手に突き刺さる。勢いもそこそこあるので金属程度なら造作もなく破壊可能だ」

アンジー「器用だねー」

巌窟王「なに。むかし取った杵柄だ」

巌窟王(……さて。騙し騙しで魔力を節約。これでどの程度持つものか……)

巌窟王(俺たちの命運は、こうなった以上はBB頼みだな)

282: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/20(金) 21:31:48.86 ID:kpYm2A3T0
BBチーム

BB「……えーっと……ひっくり返った砲台しかありませんが」

獄原「あ、あれ? おかしいな。最原くんは間違いなくこっちに来たはずなんだけど」

星「実際に来たんだろうな。こっちにわずかだが最原の靴の跡があったぜ。追跡できるほどハッキリしてねぇが」

入間「……?」

入間「なんだこの砲台。トリガーがない……? いや、そうか遠隔装置オンリーなのか」

入間「というかこれ、組み立てた後だと標準が……」

東条「標準が動かせなくなるわね。鉄杭や土嚢が邪魔になるわ」

BB(みんな手慣れてますねー。この切羽詰まった状況でも情報拾えるなんて)

BB(でも……もしかしなくっても最原さんは気付いちゃってますね)

BB(まずい。とてもまずい。いっそのこと真相をすべて知られるのならまだしも、中途半端に感付いてるという状況が一番最悪だ)

BB(私を警戒して隠れられたら……後ろからエグイサルにズドン! なんてオチもありうる)

BB(どうしたものか……)

BB「最原さんのことは後回しにしましょう。頭のいい彼のことです。巌窟王さんの元に既に向かってるのかも……」

東条「……そうね。ひとまず巌窟王さんと合流しましょう」

入間「……」

天海「最原くん……!」

285: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/21(土) 22:29:18.16 ID:uxUYU1oE0
最原「……」

最原(ひとまず黙ってついていこう。バレないように遠巻きから尾行する感じで……)

最原(様子を見ないと。BBさんが離れたタイミングでみんなと合流する。妙な動きを見せたら巌窟王さんのところへ先回りして危険を伝える)

最原(当然、そんなことにはならないだろうけど……)

最原「……巌窟王さんや百田くんなら頭から信じるんだろうけどなぁ……」

最原(『人を信じることから始める』ってところは似てるんだよな。あの人たち)

最原(……対して僕はどうしても疑うところから始める)

最原(……やっぱりああいうの見ちゃうとなぁ。春川さんが百田くんを好きになるのは凄く納得できるんだけど……)

最原「おっと。思考が脱線しかけてた」

最原「……巌窟王さんのところに向かうみたいだな。BBさん」

最原「……なんで僕たちを裏切ったの?」

286: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/21(土) 22:44:40.63 ID:uxUYU1oE0
セミラミスチーム

セミラミス「やはり聖杯を譲ったのは間違いだったかもしれぬな。アレがあれば魔力供給くらいは……」

セミラミス「いや、無理だな。アレは我が用意した聖杯故にな。『他人の自由と権利を奪う方向』でしか願いを発揮しない」

セミラミス「しかも効果範囲がせいぜい五メートルそこらだ」

セミラミス「端的に言うと大ピンチだ。アレは破壊できん」

赤松「えっと……今のセミラミスさんじゃ一体のエグイサルを『拘束』する程度が関の山ってこと?」

セミラミス「誰かマスターと契約すれば……仮でもいい。そうすればあんなデカいだけの鉄屑に負けたりはせぬ」

赤松「私じゃダメ?」

セミラミス「ダメ」

赤松「ダメなの!?」ガビーンッ

セミラミス「ダメだな。貴様と我が契約したら、おそらく貴様は十分くらいで枯渇死するぞ」

赤松「こ、枯渇死……」

セミラミス「夜長アンジーは比較的マシな方……というか単純に『タンク』としては平均以上なのだが……」

セミラミス「今は使い物にならない上に、この場におらぬからな」

セミラミス「さて。赤松。ちょっとリュックを漁るぞ」ガサゴソ

赤松「ああ! 許可出す前に漁らないでよ!」

セミラミス「うるさい」ガサゴソ

287: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/21(土) 22:56:53.20 ID:uxUYU1oE0
セミラミス「む。この飲料水は使えるな。押収だ」

セミラミス「次に……この趣味の悪いピンク色のベストも使える。押収する」

セミラミス「さて。他には……む?」

ビキニの水着「」キラキラキラ

セミラミス「……」

セミラミス「ちょっと貴様には大胆すぎるのではないか? ビキニにしても布地が少ないぞ?」

赤松「と、東条さんが選んだヤツだから……私関係ないし……」ダラダラダラ

セミラミス「これは見なかったことにする。リュックに返却だ」ナイナイ

赤松(謎の恥ずかしさだけが残った……!)

赤松「ところで押収したものはどうやって使うの?」

セミラミス「この趣味の悪いベストは我の止血に使う。清潔な布だからな」チョキチョキ

セミラミス「この飲料水はリソースとして分解して使う。即ち……」キュポンッ

セミラミス「んぐんぐ」ゴクゴク

赤松「ああっ! ちょっと! 私も走ってて喉渇いてるのに!」

セミラミス「ぷはっ。よし。ちょっとは魔力が回復した」ジャラジャラッ

セミラミス「どこぞの聖女のモノマネではないがな。ため込んだカロリーを魔力に変える」

セミラミス「残った水は……そうだな。王水にでも変えようか」キィンッ

セミラミス「果たしてこれでアレを溶解できるか疑問だが……」

赤松「私の水……」

288: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/21(土) 23:17:07.27 ID:uxUYU1oE0
赤松「……ねえ。正直な話、セミラミスさんだけなら逃げ切れるんじゃない?」

赤松「なんで私を助けてくれるの?」

セミラミス「……妙なことを聞くな? 考えたこともない」

セミラミス「アジアンカンフージェネレーションのバンド名にどんな意味があるのかと聞いているようなものだぞ」

赤松「特にないってことね……例えになんでアジカン使ったのかわからないけど……」

セミラミス「貴様。よく考えてみるがいい。敵ではなく味方寄りの人間が死ぬのは悪いことであろう?」

赤松「うん」

セミラミス「悪いことは起こらない方がいいに決まっておる」

セミラミス「そら。簡単であろう? 貴様の頭でも理解できるであろう?」ニヤァ

赤松(……要はこの人も巌窟王さんと同じなんだな。『理由がなくとも本気で動ける動機』を持っている。人は多分それを魂って呼ぶんだ)

赤松(これがサーヴァント……英霊の器なんだ)

赤松「羨ましいな……私はさっきからブレブレなのにさ。記憶の全部が偽物かもしれないって言われてから、ずっとそうだよ」

セミラミス「我だって偽物だぞ?」

赤松「え?」

セミラミス「本物のセミラミスのアルターエゴ……いや。我を作ったセミラミスすらサーヴァントである以上、歴史の影法師に過ぎぬ」

セミラミス「それでも我は我だ。我がやりたいと思ったことをやる。偽物であることは我であることと無関係だ」

セミラミス「貴様は『偽物』であることを随分とネガティブに捉えるのだな?」

赤松「ッ!」

セミラミス「……ム? おい。そのような顔をするな。責めているのではなく本気で理解できぬ故だ」

赤松「……」

赤松「……うん。ごめん。ちょっとショック受けただけ」

赤松(偽物だということと、自分であるということは別……)

赤松(……ちょっと吹っ切れたかも)

セミラミス「……」

セミラミス「仕方がないな……」ゴソゴソ

赤松「ん?」

セミラミス「詫びというわけではないが……このホームランバーをやろう。特別だぞ?」プルプルプル

赤松「手! 手が震えてる! ごめん、怒ってるから黙ってたわけじゃないんだよ! 自分で食べていいから!」

赤松「普段は傲慢なくせしてどうして妙なところで生真面目なの!」

293: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/22(日) 20:28:11.84 ID:RiIO2Tc50
BBチーム

BB「……」

BB(詳しい位置はわからない。でも誰かに尾行されてる)

BB(モノクマさんが私たちを尾行する意味はもうないはずだから……消去法で最原さんか)

BB(警戒されてる。どうしたものかなー)

獄原「BBさん。尾行されてる」

BB「ん。気付いてますよ」

天海「えっ!?」

入間「尾行!? ど、どこだ!?」キョロキョロ

獄原「どうする? ゴン太が見てきてもいいけど」

BB「やめた方がいいですよ。大丈夫。今のところ殺意はないみたいですし……」

BB「それに今は私たちがエグイサルに追われる身。余計な身動きはしないが吉です」

獄原「そこら辺の石ころぐらいなら投げれば届くと思うけど」

BB「殺す気ですか! やめてください!」

星「……ラケットとテニスボールがあれば……」

BB「だからやめてくださいって!」

294: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/22(日) 20:42:06.41 ID:RiIO2Tc50
東条「……天海くん。さっきの話、どう思う?」

天海「え?」

東条「この中に裏切り者がいるかもしれない、という話よ」

天海「ありえない。論外。今更そんなことは考えられない。これが俺の答えっすよ」

東条「……それは確かにそうだけど。心情としては私だってわかるわ。でも現実問題、その可能性が高いのは確かよ」

東条「だから考え方を変えるしかないの。その裏切り者は一体、なんで私たちを裏切ったのか」

天海「……モノクマはやりたい放題で、手練手管を駆使して俺たちをハメてきた。だから本当に裏切り者と呼ばれる誰かがいたとしても」

天海「そいつは善意で俺たちを裏切ったはずっすよ。俺はそういうヤツを『裏切り者』だとは呼びたくない」

真宮寺「ククク。さて。真相は一体、どんなものなんだろうネ。最原くんなら何か気付いてるかもだけど……」

真宮寺「いや。案外最原くんが裏切り者という可能性も……」

天海「……」

真宮寺「……わかってるヨ。彼だけはないって。だって彼は部屋の中を見る機会がなかったんだから」

真宮寺「通信機器の類でモノクマにアルターエゴの完全破壊を報告するにしても、実際にその裏切り者が部屋の中に入る必要があるわけだし」

天海「だから裏切り者の可能性はないんすって。だって……」

BB「あ! 着きましたよ! よかった!」

天海「え。あ……」

天海(いつの間にかアンジーさんの病室が視界に入っていた。無事に辿り着けたのか……)

295: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/22(日) 20:55:17.55 ID:RiIO2Tc50
入間「た、助かったー! おーい、巌窟王ー! 俺様が来てやったぜー!」ダッ

BB「あ……いや、いいか」

天海「ん? どうしたんすか?」

BB「エグイサルが茂みから近づいてきてるから、このままだと入間さんが危険かなーって」

天海「入間さーーーんっ! 戻って! 戻ってーーー!」

入間「へ?」

エグイサル「」ガシャコーンッ

入間「……ゑ?」

星「おいおいおい」

東条「死んだわね彼女」

入間「ぎゃああああああああああ!?」ガビーンッ

296: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/22(日) 20:58:38.65 ID:RiIO2Tc50
巌窟王「その位置はよくない。西にあと三歩だ」


ガァンッ!


エグイサル「!?」フラッ

カチッ

グサグサグサッ

巌窟王「ふむ。悪くない。トラップは上手く機能している」スタッ

BB「おー。ただの飛び膝蹴りでエグイサルをふらつかせるなんて。流石巌窟王さんです」

入間「あわ……あわわわわ……が、巌窟王ぉ……!」

巌窟王「……?」キョロキョロ

巌窟王「最原は?」

BB「……すぐに出てきます。ご心配なく」

巌窟王「?」

天海「……」

天海「この鉄杭、どこかで……」

300: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/23(月) 23:04:37.52 ID:nbtjL34N0
東条「巌窟王さん。アンジーさんは無事?」

巌窟王「問題なく。さて。後はセミラミスが赤松を連れてやってくるのを待つだけか」

天海「え」

真宮寺「忘れたの? 僕と赤松さんがさっきベッドルームに酔いつぶれたセミラミスさんを運んだじゃないか」

天海「ああ。そういえば……」

天海「確かベッドルームの位置は……アンジーさんの病室を挟んでBBさんが作った修理室の反対側……」

天海「大丈夫っすかね?」

巌窟王「安心しろ。セミラミスは戦闘そのものには慣れていないが、圧倒的な下準備とそれを的確に運用する知性がある」

巌窟王「虚栄の空中庭園さえ破壊されない限りは、俺でも手こずる」

天海「壊れてたっすよ」

巌窟王「……」ソワソワソワソワソワソワ

天海「露骨に心配しはじめた!」ガビーンッ

東条「ダメそうね」

301: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/23(月) 23:14:46.92 ID:nbtjL34N0
巌窟王「……アンジーを引っ張り出して……いやダメだ。了承はするだろうが……」

星「落ち着け」

獄原「安心して巌窟王さん! ゴン太がひとっ走りして二人とも救出してくるよ!」

BB「ゴン太さん?」ニコリ

獄原「あ……そうだった。ゴン太はやることあるんだった」

天海「……?」

BB「仕方ないですね。私が行ってきますよ。みなさんはここからできる限り離れないでくださいね」

BB「まあ、エグイサルに襲撃されて仕方なくって場合は私を待たずに移動しても構いませんが」

巌窟王「なにを企んでる?」

BB「え? あー……」

BB「少なくともあなたたちに不利益になるようなことは何も」

巌窟王「……そうか」

BB「じゃ、行ってきまーす」タッ

天海(軽やかに行ってしまった……)






最原「軽やかに行っちゃったね」

天海「そっすね……」

天海「……」

天海「ん!?」ガビーンッ

302: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/23(月) 23:28:24.99 ID:nbtjL34N0
天海「最原くん!? いつの間に……!」

東条「いえ。そう。そうなのね。あなただったのね。やっぱりそうだったのね」

天海「え?」

東条「さっきBBさんと獄原くんが言っていたでしょう。尾行されているって」

天海「あ……」

天海「……いや何考えてるんすか!? 今、俺たちはエグイサルに追われる身なんすよ!?」

天海「そんな状況で尾行なんかしたら後ろからエグイサルに撃たれても全然おかしくなかった! 何考えてるんすか!?」

最原「あ! ご、ごめん! みんなを危険に晒す気はなかったんだ!」アタフタ

最原「ただその、最悪の場合はちゃんと僕が全部引き付けてどうにかするつもりだったって!」

天海「」ブチッ

東条「」ブチッ

巌窟王「……お前は……その悪癖は死なない限り治らないらしいな」

最原「え?」

天海「斎藤パンチ!」バキィッ

最原「ぐへお!?」

天海「そういう危険なマネは! 茶柱さんや俺とかが泣くハメになるから! NGっす!」グリグリ

天海「悪い子は俺の手作りの『アマデウス斎藤の良い子スタンプ』を改心するまで顔に張り付けるっすよ!」グリグリ

最原「小学生レベルの嫌がらせーーー!」ガビーンッ

東条「……後でお仕置きよ」

最原「お、お仕置き?」

東条「この私の手作りの『斬美ちゃんのニコニコスタンプ』を首筋に張り付けるわ」グリグリ

最原「流行ってるの!? 手作りハンコ! ていうかもうやってるし!」

最原「じ、地味に痛い! 助けて巌窟王さん!」

巌窟王「自業自得だ」

306: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/24(火) 20:05:59.39 ID:MyL2DbeE0
最原「ち、違うよ! 咄嗟に口ついて出ちゃったけどさ。自分のことを蔑ろにしてたわけじゃない!」

最原「ただ僕は警戒してただけで……」

天海「そういう弁明はもうたくさんっすよ……!」ポロッ

最原「……天海くん? 泣いてるの?」

天海「何べん言えば理解してくれるんすか。みんなキミのことが大好きなんすよ?」

天海「ここまで誰も欠けずに来れたんすよ? 今更一人だって死んだりしちゃダメなんすよ……!」

最原「う……あう……」

入間「……ひっでー顔。エグイサルに後ろから撃たれるかもとわかってても尾行はやるくせによ」

真宮寺「別に誰を悲しませる気はなかったんでしョ。ただあまりにも考えが浅はかだったネ」

最原「……」

星「最原。お前さん、何を欲しがってる?」

最原「僕は……」

星「なんでそこまで必死になってる? あんたが目指している先には一体何があるんだ?」

最原「……よくわからないけど……なんとなくとしか言いようがないけど」

最原「負けたくないんだ」

巌窟王「……張り合いたいと思う相手がいるのか? お前に」

最原「あ、ごめん。なんでこんなに頑張るんだろうって自分でも考えたことなくって」

最原「一番最初に浮かんだ理由が『負けたくないから』ってだけなんだ」

最原「何に負けたくないのかは僕自身もハッキリしないけど……」チラッ

巌窟王「何故こちらを見る?」

最原「……考えるのが怖いんだ。もし巌窟王さんがいなかったらどうなってたんだろうって」

最原「『きっとなんとかなってたはずだ』って思いたかった」

最原「『巌窟王さんがいなくっても、僕ならやれたはずだ。大丈夫さ』って思って……安心したかったんだ」

巌窟王「……」

最原「怖いよ……みんながいなくなる『もしも』を考えるのが……怖い……」

最原「巌窟王さんに負けたら……僕はその『もしも』に押しつぶされそうで……」

巌窟王「……」

307: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/24(火) 20:20:48.42 ID:MyL2DbeE0
東条「私たちだってそうよ。本当に怖い。誰かが死ぬのかと思うと、それだけで鳥肌が立つわ」

東条「でもだからと言って、なんでもかんでも救い上げることは不可能よ」

東条「私たちは英雄でもなんでもない。超高校級と持て囃されようと、結局ただの高校生なのだから」

最原「理屈でわかってはいるんだけどさ……」

東条「好きよ。最原くん」

最原「え」

東条「男性としてあなたのことが好き」

入間「ぶふぉお!?」ブーッ

真宮寺「わお」

巌窟王「!?!?」ガビビーンッ









東条「……というのは当然冗談だけど」フウ

最原「」

天海「……心臓止まった顔してるっすよ」

巌窟王「はぁーーーっ……はぁーーーっ……」ドキドキ

星「あっちは凄い動揺してるぞ」

真宮寺「夜長さんの恋愛事情が更に混沌と化しそうで動揺したんだネ」

308: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/24(火) 20:31:14.28 ID:MyL2DbeE0
東条「でも、どう?」

最原「……ハッ! え、な、何が!?」

東条「恐怖。忘れることができたかしら?」ニコリ

最原「!」

東条「……結局、忘れるしかないのよ。そういう恐怖は他の楽しい出来事や、衝撃的なイベントに意識を向けて、意識しないようにするしかないの」

東条「恐怖にだけ目を向けていては、大事なことが見えなくなるから」

最原「……」

最原(ああ。そうか。忘れることって悪いことばかりじゃなくって……本当は『救い』そのものなんだな)

最原(でも東条さん。僕はもう――)

最原「……あはは」

最原(もう救いはいらないんだ)

最原「ありがとう。東条さん。すっかり『忘れちゃった』よ」

最原(……僕はもう二度と忘れたくない。だから、ごめん)

東条「……そう。よかった。これで少しは……借りが返せたかしら」

最原「え? なんのこと?」

東条「まだ忘れてないのよ。第二の学級裁判で、私に機会をくれた最原くんのこと」

東条「……直接的に助けてくれた巌窟王さんにも、きっと後でお返しするけど」

巌窟王「そうか」ゼヒューッゼヒューッ

真宮寺「ひとまず息を落ち着かせてあげたら?」

東条「巌窟王さん。気をしっかり持って」

309: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/24(火) 20:39:48.13 ID:MyL2DbeE0
巌窟王(忘れた……か)

最原「……」

巌窟王「……そうか」

天海「ん? なんか言ったっすか? 巌窟王さん」

東条「呼吸は落ち着いた?」サスサス

巌窟王「……」

星(背中をさすられている……)

真宮寺(おじいちゃん?)

入間「まるでジジイだな」

巌窟王「後で覚えていろ入間」

入間「!?」ガビーンッ

獄原「……ひとまずこっちは一件落着、かな?」

最原「あ。そうだ。みんな! 頼みたいことがあるんだ!」

天海「なんすか?」

最原「あの部屋で見聞きしたことをできるだけ細かく教えて!」

最原「あと巌窟王さんはこのトラップの鉄杭、どこから調達したのか聞かせて!」

巌窟王「……クハハ。やっと本調子になったな。最原」ニヤァ

東条「巌窟王さんもね」

巌窟王「何のことだ? 俺はなんともゲホゲホゲホッ」

東条「ごめんなさい。本当ごめんなさい」サスサス

天海「全然本調子じゃない!」ガビーンッ

310: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/24(火) 20:46:20.94 ID:MyL2DbeE0
セミラミスチーム

セミラミス「さて……やっとのこと、あの鉄屑どもの思考ルーチンを解析したところだったのだが……」

セミラミス「計算外だな。コレは」

赤松「嘘……でしょ? やっとみんなと合流できるかと思ったのに」





エグイサルピンク「おはっくまー!」ガシャコーンッ

赤松「この声……まさか……!」

セミラミス「下がっていろ赤松。あやつに存分に毒酒をあおらせてやろう」

314: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/25(水) 19:41:36.94 ID:gOfijLRB0
エグイサルピンク『生徒一人見っけ! それじゃあ、早速処理を開始しちゃいましょうかー!』ガシャコンッ

セミラミス「赤松。最後に訊ねるが、あの中に入っているのは貴様の知り合いか?」

赤松「知り合い……かもしれないけど敵だよ」

セミラミス「ならばよし。骨も残らず溶かしてやる」ジャララッ

エグイサルピンク『……あら邪魔ね。アルターエゴごときがわちゃわちゃと』ガシャンッ

セミラミス「近づくな下衆め」ジャラランッ



ガキンッ



セミラミス「む。やはり硬い。貫けぬな?」

エグイサルピンク『粉々にしてあげるわーッ!』ガシャコンガシャコンッ

セミラミス「しかしあの銃のようなものは飾りか? いっこうに撃ってこないぞ?」

セミラミス「せいぜい物理的にどついてくる程度が関のやばびっ」スコーンッ

赤松「また吹っ飛ばされたーーーッ!」

セミラミス「流石に慣れた」スタッ

赤松「あ、綺麗な着地」

セミラミス「……まあだからと言って、あれが致死性のダメージだということに変わりはないぞ?」

セミラミス「命が惜しければ食らうな。人間ならすぐ死ぬ」ブシュッ

赤松「セミラミスさん! 傷口開いちゃってるっぽい!」アタフタ

セミラミス「む。いかん」ヌグイヌグイ

315: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/25(水) 19:49:30.10 ID:gOfijLRB0
セミラミス「しかし自動制御型のエグイサルが頻繁にこちらに銃口を向けようとしていたことを考えるに、アレは飾りではないのだろう」

セミラミス「ヤツがそれをしない理由は……趣味か」

エグイサルピンク『アタイ、グロいのは苦手なの!』

セミラミス「ちっ。厄介な。もし撃ってくれば銃を暴発させる算段は整っていたものを……」

セミラミス「作戦変更だ赤松! 何か武器を持って来い! ハンマーなど物理的かつ現実的な武装で構わぬ!」

赤松「いやそんなすぐに用意できるわけないよ!?」ガビーンッ

セミラミス「なんだと……?」

エグイサルピンク『今度こそハエのように叩き潰してあげるわーッ!』ガシャンガシャンッ

セミラミス「……なにか……なにか無いか……! 近接で使える、そこそこ威力のある武器は! なにか!」ゴソゴソ








セミラミス「あった」ガシャアアアアアンッ

エグイサルピンク『ぎゃああああああああああああ!』

赤松「ツルハシだーーーッ!? なんで!?」ガビーンッ

316: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/25(水) 20:03:03.06 ID:gOfijLRB0
セミラミス「これは我が個人的に持っていたものだ。工事などで使っていたぞ?」

赤松「工事!? アッシリアの女帝だよね!? 工事!?」ガーン! ガーン! ガーン!

エグイサルピンク『ひいいい! 怖いー! やめてー!』ブンッ

カンッ

セミラミス「あ」

赤松「ああ! ツルハシがどこかに吹っ飛んでっちゃった!」

セミラミス「そこまで遠くではない。後で拾おうと思えば拾えるであろう」

セミラミス「さて。筋力に自信はないのだ。次はどのような手で攻めようか」

セミラミス「こうしてやろう」パチンッ



バシャアッ



エグイサルピンク『え? なに? 空から何か振ってきて……』ドジュウウウウウ

エグイサルピンク『きゃああああああ!? 溶けてる! 溶けてるわ外殻がーーーッ!』

セミラミス「先ほど作った王水だ。利いてよかったと言う他ないな」

赤松(……あ、あれ。なんで空から王水が……?)

セミラミス「赤松! ツルハシを取ってこい! 弱った外殻をアレでこじ開ける!」

赤松「あ、う、うん!」タッ

エグイサルピンク『させるものですかー!』ガッ ブワッ

赤松「!」

セミラミス(足で砂利や木片を蹴り上げて……! これはまずい!)バッ


ドドドッ


セミラミス「ぐ、うっ……!」

赤松「せ、セミラミスさん!?」

赤松(私を庇って……!)

セミラミス「止まるな! 走れ!」

317: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/25(水) 20:10:33.16 ID:gOfijLRB0
エグイサルピンク『ふふっ。アーッハッハッハ! アタイの勝ちよ! このまま丸腰のあなたを今度こそ仕留めてあげるわー!』ガシャコーンッ

赤松(まずい! エグイサルがセミラミスさんに、また近づいて……!)

セミラミス「くっ! ツルハシさえ……ツルハシさえあれば、こんな鉄屑ごときに!」

エグイサルピンク『終わりよーーー!』

赤松「やだ。やめて! セミラミスさーーーんっ!」







セミラミス「あった」ガシャアアアアアンッ

エグイサルピンク『ぎゃあああああああああああ!』

赤松「二本目だーーーッ!」ガビーンッ

318: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/25(水) 20:22:10.96 ID:gOfijLRB0
セミラミス「それ。そら。とうっ」ガンッ ガンッ ガンッ

エグイサルピンク『ちょ! 酔う! 酔っちゃうから! そんなに揺らしたらデロデロデロデロデロ』

エグイサルピンク『いい加減にしなさいってー!』パコーンッ

セミラミス「あー」クルリラクルリラ

赤松「ま、またモロに食らった!」

セミラミス「ぐはっ」ベシャッ

赤松「ああ! もう着地する気力も残ってない! 大丈夫!?」

セミラミス「ふむ……目に見える限りでは問題はなさそうだ」ブシュウウウウ!

赤松「だろうね! 出血してるの後頭部だからね!」

セミラミス「……ハッ! しまった! 我としたことが、何故こんな重要なことに気付かなかった……!」

赤松「え? 何? どうかしたの!?」

セミラミス「聞いて驚くな赤松。今の我は……死にかけている!」バァーンッ

赤松「知ってるよぉ! 見ればわかるよぉ! というか気付くの遅いよぉ!」エグエグ

セミラミス「泣くな鬱陶しい」

319: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/25(水) 20:30:51.69 ID:gOfijLRB0
セミラミス「ただまあ、もう大丈夫であろう。間に合ったようだ」

赤松「え?」


パタパタパタッ


エグイサルピンク『……え? あら? カメラに何かが……!? み、見えない! 何も!』アタフタ

赤松「え。なにあれ……白い液体?」

セミラミス「鳩のフンだ」

赤松「……はい?」

セミラミス「カメラは潰した。これでしばらくは大丈夫であろう。巌窟王のところに急ぐぞ」

赤松「あ。う、うん!」



ガシャコーンッ



セミラミス「……!?」

赤松「え?」

エグイサルピンク『……』ブンッ

セミラミス(バカな……カメラは間違いなく潰したは――)




ドォォォォンッ

323: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/26(木) 20:35:42.84 ID:F6o/MMVM0
エグイサルピンク『やったわー! アルターエゴがボロ雑巾のように吹っ飛んだわー!』

エグイサルピンク『さぁて! じゃあ残った赤松さんをさっくり殺して残りの方へ――』

セミラミス「……」アゼン

エグイサルピンク『吹っ飛んでない! 無事!? なんで!?』ガビーンッ

セミラミス「あ……赤松ッ!」ダッ

エグイサルピンク『あ』

エグイサルピンク『……あー……』






赤松「……」グッタリ

セミラミス「阿呆が! 何故我の身代わりなどに……!」

セミラミス(出血が酷い。脈も……!)

赤松「う……」

セミラミス(生きてる。大丈夫だ。我ならなんとかできる!)

324: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/26(木) 20:51:02.77 ID:F6o/MMVM0
エグイサルピンク『予定は変わらないのよ! アタイが止めを刺してあげるわ! 出血が酷いのなら血流を止めればいいじゃない!』ガシャコンッ

セミラミス「ええい邪魔だ! 我は忙しい!」パチンッ



バサバサバサッ



エグイサルピンク『ええっ!? なにこれ、鳩!? どこから……!?』キョロキョロ

セミラミス「よし。撹乱くらいにはなる。離れよう」タッ

セミラミス(……しかしこのままだと、逃げ切れるかどうか……最終的にはやはり破壊せねばなるまい)

セミラミス(少なくともカメラなしでどうやってこちらを認識したかの謎を暴かなければバックアタックの危険性が高すぎる)

セミラミス(治療も最低限かつ乱暴になるな)

赤松「う……ぐ……」

セミラミス「まだ死ぬなよ。辛うじてでも生きてさえいればなんとかできるからな!」

赤松「声が……フンが直撃してからの声が……変……」

セミラミス「?」

325: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/26(木) 21:13:49.28 ID:F6o/MMVM0
二分後

セミラミス「授けてやろう」ブスッ

赤松「痛ァーーーッ!?」ガバリッ

セミラミス「よし。上手く行った!」ガッツポーズ!

赤松「あ、あれ。ここは……私はさっきセミラミスさんを庇って……?」

赤松「うわあ! 私、血塗れだ! 凄い! なんで生きてるの!?」ガビーンッ

セミラミス「止血をした後で強心薬を投与した。我に感謝するがいい。あと三十秒くらい放置していたら死んでいたぞ?」

赤松「あ、ああ。うん。ありがとう」

セミラミス「別に死なせてもよかったのだがな。我のことを見縊っているのか? あんな無茶なマネをしおって……」

セミラミス「まったく不敬にもほどがあろう」

赤松「いや。その……ああいう無茶してる人いると守らなきゃいけない気になって……さ……」

赤松(最原くんとなんとなくダブっちゃうんだよなぁ……全然性格似てないのに。なんでだろ)

セミラミス「時間がない。よく聞け。このままだと貴様は死ぬ」

赤松「いきなり何!?」ガビーンッ

セミラミス「さっき投与した強心薬は『無理やり心臓を動かす薬』だ。要は我は無理やり汝を活かしているに過ぎない」

セミラミス「あと十五分くらいそのまま放置しておくと心臓に負荷がかかり過ぎて徐脈性不整脈を引き起こす」

セミラミス「つまり無理の反動が来て死ぬというわけだ。わかったか」

赤松(あ、あまりわかりたくない……!)

セミラミス「だが、かと言ってあのエグイサルを放置することもできぬであろう」

セミラミス「少なくとも『カメラなしでどうやってこちらを認識したのか』の謎が解けない限りは背後を曝して逃げ回るのは危険だ」

セミラミス「汝には十五分以内に本格的な治療が必要だ。後顧の憂いを絶たねばそれも不可能であろう」

赤松「うん。私もアレを巌窟王さんのところに連れて行きたくはない、かな……あそこにはアンジーさんもいるし」

赤松「それに、なんとなくわかっちゃったしね。本当に単純な謎だったから」

セミラミス「ほう……」

赤松「セミラミスさん。多分、今の内にならあのエグイサルは簡単に倒せると思う」

セミラミス「そうか。ならばよし。やるか。作戦を立てるぞ」

赤松「うん!」

326: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/26(木) 21:30:19.84 ID:F6o/MMVM0
数十秒後

セミラミス「……それが謎の正体か? 拍子抜けすぎるな。『真っ先に思いつく解答そのまま』ではないか」

赤松「でもシンプルすぎて凄く有効なんだよね。結局、謎が解けてもどうやってこれを破るか……だし」

セミラミス「よい。それは追い追い考えよう。今は手数を増やす」バチッ

赤松「何する気?」

セミラミス「神代の力の片鱗を見せてやろう……! あ、ところで汝。名をなんと言ったか」

赤松「赤松だけど……」

セミラミス「違う。下の名だ。下の!」

赤松「楓だよ」

セミラミス「カエデ……カエデ……よし覚えておいてやる。光栄に思え」

セミラミス「残った魔力リソースの大半をつぎ込んでやる!」バチバチッ

セミラミス「掟破りの二体同時召喚だ! いでよバシュム!」



ドシュウウウウッ!



赤松「う……! 凄い風! 一体何が……!」

セミラミス「クッハハハハハハハ! これが女帝たる我の力の象徴たる魔物だ! かの神代の蛇すら我に傅く!」

セミラミス「この威容を見るがいい! そして恐れよ! 我が味方でよかったと心底から震えるがいい!」


べちゃっ


赤松「あ。なんか落ちて来た」








ばしゅむ「ぴぎゃー」

赤松「……」

セミラミス「……」

赤松「……威容?」

セミラミス「やはり魔力が少ないのが仇となったか……幼体だなコレは」

ばしゅむ「ぴぎゃー」

セミラミス「……まあ……普通の蛇よりは大きかろう?」

赤松(使えないーーーッ!)ズーン

328: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/27(金) 18:46:49.35 ID:MtU5pdBs0
セミラミス「使えないだと? よくもまあそんな口が利けたものだな」

赤松「嘘ッ! 声に出てた!?」ガビーンッ

セミラミス「出ておらんかったが思ってはいたようだなタワケめ」パコーンッ

赤松「痛っ!」

セミラミス「よく見ろ。小さいことは悪いことばかりではない。こやつには普通のバシュムにはない二つの利点がある」

セミラミス「まず一つ。小さいからエグイサルに隙間ができればそこから中に侵入できる。侵入した後は中から溶解させ放題だ。金属でもお構いなし」

セミラミス「先ほど王水とツルハシで叩き割った外殻……あれをもう少し広げれば十分か?」

赤松「な、なるほど。二つ目は?」

セミラミス「触ってみればわかる」

赤松「え゛」

セミラミス「……」ワクワク

赤松「なにワクワクしてんの!? イヤだよ触りたくないよ!」

セミラミス「触れ」ワクワク

赤松「ええーっ……じゃあ……」サワッ

赤松「……」

ばしゅむ「ふしゅるるる」

赤松「で? 二つ目の利点って?」

セミラミス「触ると可愛くて癒される。気分的に」

赤松「実質利点一つだコレ!」ガビーンッ!

赤松「セミラミスさんってチョコパスタの件から思ってたけど、やっぱりちょっと趣味が悪いよ!」

セミラミス「……!?」ガーンッ!

329: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/27(金) 18:56:30.82 ID:MtU5pdBs0
セミラミス「……可愛い……可愛い、であろう。そなたは可愛いよな……?」ナデナデ

ばしゅむ「ふしゅるるるる」クネクネ

赤松「光速で拗ねないでよ! ごめん、謝るからさ! いい加減にしないとエグイサル来ちゃうから!」



ガシャコーンッ!



セミラミス&赤松「!」バッ

エグイサルピンク『おはっくまー! テイクツー!』ガシャコーンッ

セミラミス「来たか。それでは作戦を教えておこう」

赤松「え? 今この場で?」

セミラミス「下がっていろ。そして我とバシュムのことをよく見ておけ。後は汝の頑張り次第だ」

赤松「なにその作戦!? 肝心なところが全然説明されてないけど!?」

セミラミス「察するところまでが作戦の内だ。なんとかしろカエデ」

赤松「そんな……ん? 今、私のことなんて?」

セミラミス「短期決戦だ! 手短に済ませるぞ!」

330: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/27(金) 19:02:39.07 ID:MtU5pdBs0
夕ご飯の休憩!
……三蔵ちゃんイベントのナイチンゲール礼装堕ちないっすー

331: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/27(金) 22:13:51.67 ID:MtU5pdBs0
エグイサルピンク『またあなたなの? 無駄な努力をするものねー』

セミラミス「……」

エグイサルピンク『あなたがどんなに頑張っても、あなたが外の世界に生徒たちと出ることは絶対にないのに』

セミラミス「所詮はアルターエゴ……ゲームのキャラクターだからな。当然であろう」

セミラミス「だが、だからと言って無駄ではない」

エグイサルピンク『残るものがあるからとでも?』

セミラミス「いや。楽しい」

エグイサルピンク『は?』

セミラミス「あやつらと一緒にいるのは楽しい。これは我にとって大きな意味がある」

セミラミス「だが、それを脅かす貴様は楽しくない。跡形もなく消す理由としては妥当であろう?」

赤松「セミラミスさん……!」

セミラミス「貴様を消せば後に残るは自立制御のエグイサルのみ。思考ルーチンは解析済みだから突破は容易だ」

セミラミス「貴様は必ず破壊する」

赤松「……」

赤松(考えなきゃ。私はセミラミスさんに何ができる?)

赤松(アンジーさんは巌窟王さんに何をしてた? 思い出して!)





アンジー『神様ー! 神様ー!』キャッキャッ

巌窟王『クハハハハハハ!』ナデナデ






赤松「……」

赤松(甘えたり甘やかしたり撫でたり膝枕したり……)

赤松「参考にならないッ!」ガビーンッ

332: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/27(金) 22:23:48.63 ID:MtU5pdBs0
赤松(今から思い返すと巌窟王さんすら普段はマジカルなことほぼしてなかったなー……)

赤松「……おっと。いけない! 怪我のせいで意識が朦朧としてた! 集中しなきゃ!」

赤松「セミラミスさん! 頑張って!」

赤松「……あれ。セミラミスさんがいない。どこに……?」

セミラミス「ここだ」

赤松「ん? 声が上から……あっ」

セミラミス「捕まった」

エグイサルピンク『このまま絶妙な力加減で握り潰して骨を粉々にしてあげるわー! 中身が出ない程度に!』ギリギリギリ

セミラミス「とても痛いぞ」ミシミシ

赤松「大ピンチだーーーッ!?」ガビーンッ

334: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 15:18:33.47 ID:wX2kbVeb0
セミラミス(……このエグイサルのパワーなら一瞬で我を粉々に握り潰すくらいはできる)

セミラミス(それをしないのは……やはり趣味か。いやこの場合は『できない』と言った方が適切か。本当にグロテスクなのが怖いのであろう)

セミラミス(さてどうやって脱出しようか。この状態が三分続けば圧死してしまう)

セミラミス「……ふむ。無理だな」

セミラミス(こやつ、動かない。我を警戒してのことか、全神経を集中して『中身が出ない程度の圧死』で我を殺そうとしているからかは不明だが)

セミラミス(一歩でも歩いてくれればその隙に指の関節へ色々ねじ込んで脱出してやろうと思ったのだが……)

セミラミス(さっぱり動かんな。つまり現状脱出は不可能だ)

セミラミス(一歩でいい。一歩歩いてくれればあのガシャコーンッて衝撃で手が一瞬緩むのだが)

セミラミス「……」

赤松(セミラミスさん。どうするの?)

セミラミス「……」シラー

赤松(あれ!? どうしたのセミラミスさん!? なにその顔! 『まあ脱出しなくてもいいか』とか考えてないよね!?)アタフタ

セミラミス「まあ脱出しなくともよいか」グデー

赤松「セミラミスさーーーんッ!?」ガビーンッ

335: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 15:35:08.59 ID:wX2kbVeb0
セミラミス(このエグイサルは我を動けなくしているが、それと同時に一歩たりとも動けなくなっている)

セミラミス(ネズミみたいに足元をチョロチョロするのはもう飽きた。このままこやつを倒す術を考える方が我の性に合うというものよ)

セミラミス(あと二分三十秒くらいで死ぬが……まあなんとかなるであろう。うん)

セミラミス(とは言えやっぱり死ぬ可能性も高い。久方ぶりの命の危機だ。ならば)

セミラミス「鳩ども! セミラミスの名において命ず!」

鳩「くるっぽー!」バサバサッ

赤松「鳩……?」

セミラミス「我の逸話を知らぬか? 我は鳩を無条件で使役できる。軽いものなら運搬もお手の物よ」

セミラミス「鳩にはある命令を下した。一分以内に戻ってくるぞ」

赤松「え。一分? その間は?」

セミラミス「……」グデー

赤松「やることなくなったの!? やることなくなったよね!?」ガビーンッ

セミラミス「うるさい。黙れ。今の我は体中が痛くて怠いのだ」

赤松「ならさっさと脱出しようよ!」

セミラミス「めんど……」ハッ

セミラミス「我には我の考えがある。そう心配するな」

赤松(今『面倒くさい』って言おうとしたーーー!?)ガビーンッ

赤松(で、でも一分後に鳩が戻ってくるって……なにを運ばせてるの?)




一分後

セミラミス「うん。美味い」シャクシャク

鳩「くるっぽー」

赤松「ホームランバー運ばせてるーーー! 『あーん』させてるーーー!」ヒエエエエエ!

セミラミス「下手すればここで二人とも死ぬからな。最後の晩餐よ」

赤松(最後の晩餐ショボッ!)




セミラミス死亡まであと一分三十秒

赤松死亡まであと十三分三十秒

336: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 15:51:29.91 ID:wX2kbVeb0
エグイサルピンク『くっ。美味しそうなマネを……いえ。舐めたマネをしてくれるわね……!』

エグイサルピンク『でもアタイの優位はやっぱり変わらないわ! さあ! これからどんな悪あがきを見せてくれるの?』

セミラミス「……」シャクシャクシャクシャクシャク

エグイサルピンク『……』

セミラミス「……」シャクシャクシャク

セミラミス「……」ゴクン

エグイサルピンク『……』

セミラミス「……あーん」パクッ

鳩「くるっぽー」

セミラミス「……」シャクシャクシャクシャク

エグイサルピンク『足掻きなさいよッ!? なに余裕ぶっこいてんの!?』ガビーンッ

セミラミス「……」ゴクン

セミラミス「食事中に話しかけるなーーーッ!」

エグイサルピンク『ええっ!?』ガビーンッ

赤松(この人やりたい放題だーーー!)ガーン!

赤松「……あれ」

赤松(でもなんか、今の声は……)

赤松(……ああ。そうか。やっぱり!)

337: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 16:09:24.36 ID:wX2kbVeb0
セミラミス(赤松の言った通りか? なんとなく我にもわかってきたぞ。謎と言えるような謎ではない)

セミラミス(このエグイサル、単純に――)






セミラミス&赤松(中にパイロットが入ってない!)

セミラミス(パイロットはどこかから遠隔でエグイサルを動かしているのであろう)

セミラミス(そして、外からエグイサルのスピーカーに声を流しているわけだから、エグイサルとは違う場所から声が『漏れている』のだ)

セミラミス(……まあ言ってしまえばそれだけなのだが問題がある)

赤松(今は夜だということ。ここが林だということ。ついでに相手が爪を持ったクマ型のロボットだということ)

赤松(林の上に上って私たちを見下ろしているのだとしたら……私、木登りとかできないんだけど!)

赤松(セミラミスさんみたく遠隔で攻撃する手段がない!)

セミラミス(夜だから隠密には最適な上に、我の鳩どもも夜はそこまで活発に動けん。人間より目はいいが所詮それは『昼に限った話』だ)

セミラミス(……ふむ。いやそれにしても何か変だな。仮にそうだとしても鳩どもに見つからずに隠れられるものか……)

赤松(声はする! 方向はわかる! 私には詳しい位置がきっと特定できる!)

赤松(でも何故か『見えない』! なんで……!?)

赤松「……あ」

赤松(……わかった。なんで位置がわかるのに見えないのか……あれ……)

モノファニー「……」モゾモゾ

赤松(ぎ、ギリースーツ……! ば、バカらしすぎる……こんな手で……!)ワナワナ

338: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 16:18:31.08 ID:wX2kbVeb0
休憩します!
あの……三蔵ちゃんあんまし進んでないんすけど……

339: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 20:38:16.23 ID:wX2kbVeb0
赤松(セミラミスさんに教える? いや。そしたら気付かれて場所を移動されるかも……相手クマだし木を伝って逃げられたら見失うの一瞬だし!)

赤松(鎖なら届く? あの状態で出せる? どうしたら……!)

セミラミス「……さて。そろそろ限界か。それではこちらも仕掛けさせてもらう」

エグイサルピンク『え?』

セミラミス「ええとどこに……ああ。いた。そこか」

セミラミス「『来い』! バシュム二号!」



ズルリッ



ばしゅむ「ふしゅるるるるる!」

エグイサルピンク『うぎゃあっ! なにこれ! 蛇!?』

セミラミス「神代の蛇、バシュムだ。ナリは小さいが毒性は充分!」

セミラミス「さあて。我を潰すことに専念して、その鉄屑は現状動けぬのだろう? 動けたのならカエデを蹴り上げて止めを刺す程度やるだろうからな」

セミラミス「趣味に耽溺した貴様の不覚だ。『吐け』!」

ブシュウウウッ

ドロッ

エグイサルピンク『……え? が、外殻が溶けっ……!?』

セミラミス「穴は広がったな。『行け』!」


ズルウッ


エグイサルピンク『ぎゃあああああああ! 中に! エグイサルの中に……あああああああああ!』

セミラミス「くっ……ははははははは! どうだ! 怖かろう!」

セミラミス「まあ幼体故に毒液はせいぜい一回しか吐けないが……それがどうした! 一回で充分であろう! 中にいる貴様をかみ殺す程度容易い!」

セミラミス「バシュムの使い方さえ間違えなければ、勝利を掴みとる程度問題なく!」

セミラミス「……」チラッ

赤松「!」

赤松(……そうか……ああ、そう! そういうこと!)キョロキョロ

340: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 20:50:16.19 ID:wX2kbVeb0
セミラミス「さあ。さっさと我を離せ! 今なら一瞬で殺して許してやろう」

エグイサルピンク『……』

セミラミス「……む。どうした? 何故離さない? 苦しんで死にたいか?」

エグイサルピンク『……ざーんねんでしたー! このエグイサルの中にアタイはいませーーーんっ!』

セミラミス「……!」

ばしゅむ「……」ヒョコッ

セミラミス「バシュム?」

バシュム「ふしゅるるるる」イナイイナイ

セミラミス「……そうか」

エグイサルピンク『あ、あー。ビックリした。中にいたらと思うと本当にゾッとしないわ。確かにこれに巻き付かれるくらいなら死んだ方がマシかも』

エグイサルピンク『でも……現実はこう。アタイの勝ち! アタイの勝利!』

エグイサルピンク『お父ちゃんに褒めてもらえるわー!』

エグイサルピンク『さあ! このまま綺麗に圧死しなさい!』

セミラミス「……ふむ。ふんふん。よし。大丈夫だな」

エグイサルピンク『……なにを言ってるの?』

セミラミス「我は一応言ったぞ? 今なら一瞬で殺して許してやろうとな」

エグイサルピンク『は?』









セミラミス「苦しんで無残に死ね」

赤松「『行け』!」



ズルズルリッ  ギュルンッ



モノファニー「え」

モノファニー(え。何かに巻き付かれ……!?)

ばしゅむ「ふしゅるるるるるるる!」

モノファニー「」

赤松「『吐け』!」


ブシュウウウウウウ!

341: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 21:02:35.32 ID:wX2kbVeb0
モノファニー「あ、ぎぎ、ぎゃあああああああああああ!?」ヒューッ

ドスンッ

モノファニー「あ、やだ、やだ。体が溶けっ、溶けて、あばばぎぎあああああああああああ!?」ジタバタ

赤松「はあ……はあ……上手く行った! ありがとうバシュム一号!」

ばしゅむ「ふしゅるるるるる」クネクネ

モノファニー「……な……何が……何が起こって……!?」

赤松「バシュムは二匹いたんだよ! 思えば最初からセミラミスさんもそう言ってた! 全然気付かなかったけどね!」



セミラミス『掟破りの二体同時召喚だ! いでよバシュム!』



赤松「ああ。もう! セミラミスさんも最初から言ってくれればいいのに! 最初からこうする気だったでしょ!」

セミラミス「当然だ。現状の我に、そのクマ? の位置を知る術はないのだからな」

セミラミス「汝の聴力と才能に期待しただけのこと。あとは我より正確にパイロットの位置を知覚した汝が……」

赤松「セミラミスさんが『お手本』でやったようにバシュムをけしかけて詰み……か……」ヘタリ

赤松「説明してよ。最初からさぁ……」

セミラミス「言わなくてもわかると思っただけのこと。というより言ったらそこからバレるであろう?」

セミラミス「第一、こう言ったぞ。我は」




セミラミス『下がっていろ。そして我とバシュムのことをよく見ておけ。後は汝の頑張り次第だ』




赤松「言った。言ったけどさぁ……」

モノファニー「そ、そん……そんなぁぁぁ」ドロドロドロ

モノファニー「い、痛い。とても痛い。アタイの体、どどどどうなっててててて」

セミラミス「……む。エグイサルの力が緩んだな。よし」スルリッ

セミラミス「ふう。さて。では止めを刺してやろう。これも鳩に運ばせた」パチンッ



ドスンッ



セミラミス「鏡だ。存分に見ろ。貴様自身がどれだけ『グロい』有様になっているかをな」ニヤァ

モノファニー「」

赤松「精神的に止め刺しにきたーーー!?」ガビーンッ

342: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 21:10:48.77 ID:wX2kbVeb0
赤松「……あ! そうだ! モノファニー! 最後に教えて!」

赤松「ここに来ているのはあなただけ!? 外の世界はどうなってるの!?」

モノファニー「」

モノファニー「ひ」

モノファニー「ど」

モノファニー「い」

モノファニー「」

赤松「……えーと」

セミラミス「なんということだ。精神が崩壊してしまったようだな」

セミラミス「……一体誰がこんな酷いことを」ヒクワー

赤松「……人を本気で殴りたいと思ったのは初めてだよ。ピアニストだから絶対にやらないけど」

セミラミス「ククク」

赤松「……ともかくこれで残ったモノクマーズは一体だけ……」

赤松「急ごう! 巌窟王さんのところに!」

セミラミス「ああ。そうだな。予定は遅れたが……」バキッ

バタリッ

赤松「え。セミラミスさん?」

セミラミス「肋骨が今更折れた。痛みでもう立てん」

赤松「ええっ!?」

セミラミス「……まあここまで来れば関係あるまい? 汝一人だけでも先に行け」

赤松「……」

セミラミス「む? どうした? 何を見ている。人に見降ろされるのはひたすら腹が立つのだ。さっさと先に――」

343: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/28(土) 21:19:19.19 ID:wX2kbVeb0
グイッ

赤松「ほら。肩を貸すから一緒に行こう?」

セミラミス「……何のつもりだ?」

赤松「いや、なんのつもりもないでしょ。ここまで一緒に来たんだし」

セミラミス「我は元からこの世界の住人だぞ。一緒に行ったところで、一緒に外の世界には出れん」

セミラミス「……本格的な治療をしなければ汝は死ぬ。足を遅らせるようなことはするな」

赤松「いやだ。一緒に行く」

セミラミス「……」

赤松「……偽物であることと、これは別だよ。絶対に」

赤松「私はその言葉を信じていたい」

赤松「……私は私がしたいことをするよ。だってこれが私だもん」

セミラミス「……汝はバカだな。本当に……」







モノクマ「おやおや。モノファニー。精神的に死んでしまうとは何事じゃ」

赤松「ッ!」

モノファニー「あ、あ、あ。おとうちゃん、助け……」

モノクマ「……うん。助けるよ」ポチッ


ドカァァァァァンッ


モノクマ「そうら。楽になっただろう?」ニヤァ

赤松「……も、のく……!?」ガタガタ

モノクマ「……うぷぷ」

346: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/29(日) 18:10:07.72 ID:RT1ogTC+0
巌窟王チーム

天海「どうっすか最原くん。なにかわかったりしないっすか?」

最原「十中八九裏切り者はBBさんだよ」

天海「そうっすか……やっぱりそんな早くわかるわけが――」

天海「早ッ!?」ガビーンッ

獄原「……え。最原くん、今なんて?」

最原「BBさんが裏切ってる」

巌窟王「……やはりか。そうだろうな。アイツしかいないだろう」

天海「いやいや! おかしいっすよ! 彼女がモノクマに与する要素が一体どこにあるっていうんすか!?」

巌窟王「……最原。何か思いつくか?」

最原「なんとなく推測は立つよ。『BBさんが裏切りを決意したタイミング』から色々と割り出せる」

東条「……いえ。待って。そもそもそんなものを判断できる材料があるの?」

最原「ゴン太くんだよ」

獄原「え!? ご、ゴン太?」

最原「ゴン太くんはBBさんからあらかじめ『アルターエゴの破壊の定義の穴』について聞いていた」

最原「モノクマが直接見ない限りは大丈夫だって聞いてたんでしょ?」

獄原「う、うん。ちょっとした世間話の中で聞いただけだけどさ……」

最原「そんなこと、僕たちにはわかりようがない。もしもその時点でモノクマに付いてしまおうと考えていたら……」

入間「ああ! ゴン太に馬鹿正直に話すわけがねぇってことか!」

最原「それでもBBさんは話した。なら『この時点でモノクマにつこうだなんて発想自体が存在しなかった』と考えるしかない」

347: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/29(日) 18:21:50.18 ID:RT1ogTC+0
巌窟王「一応聞いておくが、その定義の穴が丸ごとBBのでっち上げだという可能性は?」

最原「入間さん。どうだった?」

入間「……いや。正しい。さっき調べてみたからまず間違いねぇ」

入間「逆に言うと『俺様でも言われるまで気付かなかったような真実』をアイツは気付けたってことだが……」

巌窟王「単純な話だ。お前よりもソフトに関しての理解はアイツの方が上なだけ。気にすることではない」

天海「ん!? ちょっと待ってくれっす!」

天海「その時点でモノクマにつこうって発想がなかったのなら裏切りを決断したタイミングは……」

最原「僕がこの世界の真実を海の家で話してから、爆音が響くまでの間……」

天海「み、短すぎる! ありえねぇーっすよ、それ!」

真宮寺「巌窟王さんに聞きたいんだけど、BBさんってそんなに尻軽なの?」

巌窟王「……難しいところだな。だが決断が早くて極端というヤツの性格上、ありえない話ではないと俺は考える」

天海「いや! 待って! そもそもBBさんが裏切ったという証拠がない!」

天海「証拠がない以上、最原くんの仮説は『不自然なところだらけ』だから通らないっすよ!」

最原「……どうやってモノクマは、あの部屋の中の状況を知ったんだと思う?」

天海「は? それは……」

天海「……」

最原「天海くん。キミならわかるんじゃないかな。さっきから『裏切り者なんているはずがない』と言っていたキミなら」

天海「そ、それは……」

最原「なんでそう思っていたの? その最大の根拠は何?」

天海「……」

天海「『裏切り』を利用して『裏切り返される可能性』をモノクマが考えないはずがないから」

東条「……どういうこと?」

348: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/29(日) 18:31:53.59 ID:RT1ogTC+0
天海「定義の穴の話。覚えてるっすか?」

東条「ええ。一通りは」

天海「その中でBBさんはこう言ってたはずっす」




BB『仮に『まあ壊れただろう』という『みなし』で校則違反判定を行って、後から実は壊れてませんでした、となったら……』

BB『この学園生活そのものに対する信用にかかわりますので、絶対にみなしや推測であなたたちを裁いたりはできないはずです』




真宮寺「それがどうしたの……って、ああ。なるほどネ」

入間「いやわかんねーよ。もっと噛み砕いて口移しで呑み込ませろっての!」

天海「俺がモノクマに裏切りを持ち掛けられたとしたら、俺は確かにその話を受けるっすよ。速攻でね」

獄原「えっ!?」

天海「でもそれはモノクマにつくメリットがあるからではなくって……単純な話っすよ」

天海「この取引はモノクマを嵌め返す絶好の機会になるから」

天海「もし俺なら……あのアルターエゴを破壊しろと言われたら……」

最原「『壊したフリをする』でしょ?」

東条「!」

天海「ついでに、モノクマに『アルターエゴは壊した』という嘘の情報を流して『校則違反』を誘発させる」

天海「その後で『壊れてなかった』ことを明かして……まあ、そうすればモノクマのルール違反だって告発できるっすよね」

天海「ズルいっすけど、まあ俺ならこうするっす。『モノクマに嘘を吐いてはいけない』というルールはないっすし」

天海「ゲームとしてのフェアさを乱したのは、この場合はどう考えてもモノクマっすしね」

天海「そして、モノクマ自身も『こういうことをされたら困る』だろうから、生徒に裏切りを持ち掛けるようなマネは絶対にしない」

天海「俺が裏切り者がいないと主張する理由はここら辺っすよ」

最原「……うん。間違いないと思う」

天海「だったら……!」

最原「だからBBさんしかいないんだよ。裏切り者の正体は」

349: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/29(日) 18:41:41.84 ID:RT1ogTC+0
最原「要は誤報の余地が一切なくなればいい」

天海「は?」

最原「……モノクマが直接、壊れたアルターエゴを確認できれば二重の裏切りの可能性はなくなる」

東条「そうね。直接確認できればそうでしょう」

東条「……あっ」

獄原「あ」

真宮寺「あ」

入間「……ん?」

天海「……あれ? 何人か微妙な反応してる人いるっすけど、どうしたんすか?」

東条「……不覚、だったわね……! なんてこと!」

最原「これがBBさんが犯人だということの証明。だって彼女が気付かないはずがないよね?」







最原「モノクマがあの部屋の中にいたとしたら絶対に!」

天海「あっ!」

353: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/30(月) 20:18:33.35 ID:fNjSkUr60
天海「……」

最原「やっぱり薄々気付いてたんじゃない? 天海くん」

天海「いや……俺は裏切り者が出ない理由だけを確信してただけで……」

天海「でも今から考えるとすべてのタイミングがあまりにも都合が好すぎっす」

東条「私たちがアルターエゴの破壊を確認した直後にモノクマのアナウンス……これのせいで疑心暗鬼になっていた」

真宮寺「いや? 今から考えるとBBさんが発端じゃなかったっけ?」



BB『もしかしたら……この中に裏切り者がいるのかもしれないですね』



星「言い出しっぺはBB……しかもこの後のBBの発案は確か……」



天海『ど、どうするんす!? 逃げる? 隠れる!?』アタフタ

BB『……私ならアレを一体、二体破壊はできると思いますけど……』

BB『ふむ。『逃げる』の方向で行きましょう』



星「これもすべてBBの計算の内。つまりモノクマを俺たちの目から隠すための誘導だったと考えれば……」

入間「気持ち悪ィくらい辻褄が合うじゃねぇか……!」

354: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/30(月) 20:28:57.33 ID:fNjSkUr60
天海「……まだ……まだ状況証拠っすよ……!? BBさんが裏切った決定的な証拠は……」

最原「巌窟王さんのトラップ」

巌窟王「これか?」

最原「……鉄杭の出所、BBさんなんでしょ?」

最原「天海くん。これ、見覚えがない?」

天海「ん……あるっすけど……具体的にどこで見たかは……」

天海「……」

天海「いや、思い出したっす。ああ、もう!」ダンッ

入間「んだよ。地団太踏んで。こんな鉄杭どこにでもあんだろ?」

巌窟王「エグイサルの外殻は恐ろしく硬い。それを貫ける頑丈な鉄杭などそうそう用意できてたまるか」

入間「……ん?」

巌窟王「お前たちがこれと似たようなものを見たというのなら、それは間違いなくBBが出したものだ」

巌窟王「他の出所などありえない」

東条「……砲台の固定に使われていた鉄杭」

入間「あ?」

入間「……」ジーッ

入間「ああっ! まさか『似てる』んじゃなくって『完全に同一のもの』なのか!」

最原「痕跡から見るに設置そのものはモノクマがやったんだろうけどね……BBさんも関わってるのは確かだよ」

355: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/04/30(月) 20:42:39.26 ID:fNjSkUr60
最原「更に言おうか。あの砲台、完全に組みあがった状態だと標準がほぼ動かない」

最原「ついでに発射する前は当然『壁』があるわけだからどの位置にアルターエゴがいるかもわからない」

最原「だから砲台から発射される砲弾をピンポイントで標的に当てるためには『標的の方を動かす』しかない」

最原「……できると思う? BBさんにバレずに標的の位置……つまりアルターエゴを動かすなんて」

天海「不可能……っすけど……」

獄原「つきっきりで看病してたからね。絶対にできないよ……」

獄原「BBさん以外には」

東条「……モノクマのアナウンスはタイミングを見てあらかじめ録音しておいたものを流せばいいだけ」

東条「手間はかからないわ」

最原「……問題が唯一あるとしたら『謎』があまりにも簡単すぎることかな」

最原「隠すつもりも毛頭ないんだろうね」

天海「……まだっすよ! まだ!」

最原「ん?」

天海「彼女は『生徒』じゃない! つまり校則は適用されないはずっす!」

天海「つまり生徒ではない者がアルターエゴを壊したところで、それは『事故』のようなもの!」

天海「校則違反の処理が適用されるのがおかしい……っていうか……」

巌窟王「苦し紛れだな。そんなものはどうとでもなる……というより反証は俺そのものだ」

天海「……」

巌窟王「ヤツは俺と初めて会ったとき、こう言った」






モノクマ『ただ、この学園の中にいる以上は、暫定的に校則を適用するよ』

モノクマ『殺すのも殺されるのも生徒と同じ処理だからね』




巌窟王「言うなれば必要なのはモノクマの『宣言』だ。BBがモノクマと接触しているのならばそれで何一つ問題はない」

天海「……だとしたら……だとしたら……!」

天海「なんで!? なんで俺たちを裏切ったんすか!?」

最原「本人に聞かないとわからないよ。流石に」

最原(でも……さっき天海くんが言っていた予測がそっくりそのまま答えだろうな)

357: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/01(火) 20:20:27.54 ID:tiSteLrn0
最原「……ゴン太くん。ここから先の行動を決めるには、最後に訊ねておかないといけない」

最原「BBさんから何を託されたの?」

獄原「ええっと……」

入間「聞く必要あるか? あいつが裏切ったことはブッ確定なんだろ? だったら訊ねる前に処分した方が後腐れもねぇだろ」

最原「本当にそうかな?」

獄原「……ハッキリ言っちゃうとね、この装置は『新世界プログラムを強制破壊する装置』だよ」

巌窟王「なに?」

獄原「ただし本当になんでもかんでも破壊しちゃうから、最低限この装置の有効範囲に破壊されてはいけないものが入ってちゃダメなんだって」

獄原「破壊した後はプログラムを再構築して、ただ『入ってきた人格をそっくりそのまま元の体に戻すプログラム』に変えちゃうんだってさ」

東条「それは凄い……けども……」

星「それが本当だったらな」

入間「今となっちゃコレの効力が本物かどうか怪しいもんだぜ」

獄原「BBさんはこう言っていた。有効範囲は『この装置の視界に入っているもの全て』だって」

獄原「だから装置を設置する場所は『島の外縁部』がベスト。尚且つ破壊に巻き込まれないように生徒全員が装置の真後ろに立っていなければならない」

最原「赤松さんがいないから使えないね。今は」

最原「島の外縁部がベストなら……海の家で作動させるのがいいんじゃないかな」

入間「お?」

巌窟王「お前は……まさかコレを使おうというのか?」

最原「……」

入間「いやいやいや。流石にそりゃねーだろ。言葉の綾ってヤツだよな?」

入間「だって! BBは明らかに俺様たちを裏切ってんだろ!?」

天海「違う……!」

入間「あ?」

天海「そういうのもうたくさんっすよ! 裏切るとか、裏切られたとか……この局面でそんなこと言いたくないっす!」

358: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/01(火) 20:29:21.93 ID:tiSteLrn0
入間「てんめぇ……まだそんな甘いこと言ってんのか? いい加減胸焼けしそうだぞオイッ!」

天海「いいや。いつまでだって言ってやるっすよ! だってまだ明らかになってない!」

天海「BBさんが何を考えていたのか。最後の最後まで明らかにしないと納得できない!」

入間「……だ、ダサイ原。お前もなんか言ってやれって。コイツもうダメだろ」

最原「天海くん。残念だけどそんなことを言ってられる時間はもうないみたいだ」

最原「……同感だけどさ」

天海「超高校級の探偵が随分と弱気っすね!」

最原「……否定できないけど」

天海「俺は絶対に認めないっすからね! BBさん本人から聞くまでは! 何も!」

最原「……ええと、ごめん。僕にも天海くんの説得は無理だよ」ズーン

入間「推理以外本当に役に立たねぇなぁ!」

天海「俺は仲間を信じることをやめたくない。やめない! BBさんがこの装置の有用性を説くのなら俺はそれを信じるだけっす!」

最原「あ。ごめん天海くん。先に言うべきだったね」

天海「ん?」

最原「BBさんの装置を起動させることに関しては僕も反対しない。というか賛成だよ」

天海「……」







全員「……ゑ?」

359: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/01(火) 20:38:47.60 ID:tiSteLrn0
巌窟王「お前は……裏切られても尚、アイツのことを信じるというのか?」

巌窟王「天海のように『裏切られてない。だから信じる』という信頼からの主張なら理解もできよう」

巌窟王「だが、最原。お前は……!」

最原「裏切られた。でも信じる。だって彼女、僕たちの仲間でしょ?」

巌窟王「……」

巌窟王「ふむ。いいだろう。俺もBBの装置を起動させることに関しては賛成だ」

入間「うぉぉぉぉぉぉぉいっ!?」ガビーンッ

巌窟王「安心しろ。経験則でわかる。その装置の効力は間違いなく本物だろう」

巌窟王「……真意は絶対に口にしないであろうが……アイツがお前たちを助けようとする意志そのものは真実だ」

最原「……」

天海「最原くん……ヤケになってるわけじゃないっすよね?」

最原「うん。色々考えた結果だよ」

最原「BBさんがこちらに向けていた感情は悪意じゃない。それは確信できてる」

最原「……きっと僕と天海くんじゃ『裏切り』の定義が違うだけだ。ただそれだけだよ」

天海「……」

星「どっちにしろ赤松が来ない限りは議論は無駄だな」

東条「……そうね。それまでどうやって生き残るかを考えることにしましょう。残るトラップの数は?」

巌窟王「三つ――」



カチリッ グサグサグサグサッ



巌窟王「今二つになったな」

真宮寺「赤松さん、無事だといいけどネ」

362: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/05/02(水) 20:00:58.37 ID:jRcD40lG0
セミラミスチーム

セミラミス「うーん……うーん……シロウ……助けてシロウ……ハッ! 夢か!」パチリッ

セミラミス「やれやれ。マスターが急に大量増殖して我の鎖を手掴みでブチブチ持っていくとは……凄まじい悪夢だったな」フー

セミラミス「あー。怖かった」

赤松「セミラミスさん! セミラミスさん……!」

セミラミス「ん? カエデ、どうした? 何故泣いている?」

赤松「お腹……お腹に穴が!」

セミラミス「何? 我が寝ている間に凄まじい怪我をしたな? どれ、見せて……穴など開いてないぞ?」ハテ

赤松「違う! セミラミスさんのお腹に穴が開いてるの!」

セミラミス「ん? ……あー……」

セミラミス「しまった。現実も悪夢のようなものだったな? はあ……まったく」

セミラミス(……流石にもう動けんぞ。指一本動かすのも億劫だ)

モノクマ「セミラミスさん。調子に乗り過ぎ。流石にモノファニーを倒すのは出しゃばりすぎだったね」

セミラミス「……そうだな。趣味に走り過ぎたか」

セミラミス(これはもうどうしようもないぞ)

363: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/02(水) 20:21:26.35 ID:jRcD40lG0
セミラミス「カエデ。今のうちに逃げておけ」

赤松「!」

セミラミス「どうもモノクマの殺意は薄い。いや我のことは本気でデリートしようとしているが、それだけだ」

セミラミス「……あやつ、汝を殺す気はないのではないか? 少なくとも乗り気ではなさそうだ」

赤松「セミラミスさんを置いてはいけないよ!」

セミラミス「そうであろうな。我も決して、汝の前で自暴自棄になりたくはないのだが……」

セミラミス「ほら。『我が死んでも本物のセミラミスが死ぬわけではない』とか言ったら『偽物』である汝の価値を貶めることになろう?」ニヤァ

赤松「わかってるんだったら一緒に逃げようよ! 立って! しっかりしてよ!」

セミラミス「我は物凄くしっかりしておるぞ? なにせ女帝であるしな? だが冷静に考えてみろ。一度黙って頭を巡らせてみるがいい」

赤松「……」

セミラミス「なあ? どう考えても無理であろう?」

赤松「……!」

セミラミス「わかったな? わかったらさっさと行け。汝の心臓が持つのはあと……何分だ? 寝ていたから時間間隔も狂って……」

赤松「やだ……やだよぅ……せっかく仲良くなれたのに……友達になれると思ったのに!」

セミラミス「厚かましいな? この島に来てから一番びっくりしたぞ」

セミラミス「まあともかくさっさと行け。いい加減に鬱陶しい」シッシッ

赤松「……」

セミラミス「行けッ! 我のこれまでの奮闘、および存在すべてを無駄にする気か!?」

セミラミス「考え方を変えろ! 助けを呼ぶためにここから去るのだと! 我のことを案じるのはよせ!」

赤松「……うん。わかった……! 誰か連れて来るから。絶対に連れて帰ってくるから。待ってて……絶対に死なないで!」ダッ

セミラミス「程ほどにな」ヒラヒラ

モノクマ「……で。別れの挨拶は済ませた?」

セミラミス「ああ」

モノクマ「何か最後に言い残すことは?」

セミラミス「……それはこちらの台詞だなぁ」ググッ



ボタボタッ



セミラミス「……さて。カエデの背中を撃てると思うなよ。我がいるのだからな」

セミラミス(一分程度足止めできればゲームクリアであろうな)

セミラミス(カエデの治療他、後のことはBB頼みで問題なかろう)

セミラミス「来い。デリートされるのがどちらかしっかり教えてやろう」

モノクマ「うぷぷ……!」

364: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/02(水) 20:41:00.15 ID:jRcD40lG0
ザッザッザッ


赤松「誰か……! 誰か助けて! ここまで誰も死なずに来れたじゃない!」

赤松「死ぬとか殺されるとか[ピーーー]とか、そういうのはもう絶対にダメ!」

コケッ ズサァッ

赤松「あうっ……!」

赤松「い、痛い……凄い擦りむいた……!」

赤松「……」

赤松「誰か……巌窟王さん。アンジーさん。最原くん……! お願い、気付いて。こっちに来てよ……!」

赤松「私たちを助けてッ!」




ザザーッ


赤松「ん?」

赤松(……ノイズ音?)


now hacking...


OK!


「問おう。何故そこに私の名前がないのか」

赤松「ん……?」

赤松「んっ!?」ガビーンッ

BB「まあいいです。応えましょう」

BB「私はみんなのムーンキャンサー、BBちゃん! 巌窟王さんに代わり、あなたの願いを叶えましょう!」

赤松「……BB、さ……!」

BB「真打は遅れて登場ですっ」キャルーンッ

赤松「……」

赤松(そのときの私の驚愕は、とても表現できるものではなかった。何故なら……そう。何故なら……!)







赤松「なんでナース服姿なのーーーッ!?」ガビビーンッ!

369: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/03(木) 19:35:48.32 ID:icrURDoO0
セミラミス(もうまぢ無理)ズーン

モノクマ「し、しぶとい! 攻撃力はまったくないけど恐ろしいくらいしつこい!」

セミラミス「……なんかもう高笑いするのも面倒だな。凄く辛い。死ねるものならさっさと死にたいのだが」フアーア

モノクマ「こっちも殺せるものなら今すぐ殺してあげたいんだけど!? なにアクビしてんの!?」

セミラミス「貴様も難儀よなぁ。あやつを殺す気なんぞ毛頭ないくせに」

モノクマ「……」ピクッ

セミラミス「……最原の言っていたことが真実であることの証左か。なんとなく貴様らのやりたいことがわかってきたぞ」

セミラミス「いや? 逆だな。やりたいことは実際わからんが『やりたくないこと』はわかってくる」

セミラミス「貴様は結局……」

モノクマ「遺言はそれでいいの?」カチャッ

セミラミス「……まだ試してない手がある。それを貴様に試してからだ」

セミラミス「逆転の一手を見せてやろう! ククク……!」ピクッ

セミラミス「……な……何故だ」

モノクマ「?」






セミラミス「何故戻ってきたカエデッ!」

モノクマ「ッ!」バッ

モノクマ「……あ、あれ?」

セミラミス「誰もいないぞ。嘘だからな」ジャララッ

モノクマ「あ」


ガシャンッ!

370: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/03(木) 19:41:29.39 ID:icrURDoO0
セミラミス「捕縛完了! これで十秒は……」

モノクマ「よいしょっ」バキーンッ

セミラミス「持たんか。ままならぬなぁ」ハァ

モノクマ「……じゃあ、さよなら。今度こそ消えてなくなれーーーッ!」カチャリッ

セミラミス「待て。最後に我の願いを聞いてはくれぬか?」

モノクマ「なに?」

セミラミス「……」

セミラミス「今日が誕生日なのでポケモンセンター行ってイーブイ貰ってきたいのだが」

モノクマ「消えてなくなれーーーッ!」ドシュウウウウウウッ

セミラミス「ダメか」

セミラミス(まあ問題はない。一分は経った……経ったよな?)

セミラミス(充分だ。ゲームはクリアしたと前向きに考えよう……)

セミラミス(もう目を開けて……いられな……い……)





ドカァァァァァァァンッ!

371: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/03(木) 19:58:23.27 ID:icrURDoO0
セミラミス(……?)

セミラミス(声が……聞こえる……)



「セミラミスさんっ! 起きて! セミラミスさんっ!」



セミラミス(やっと体の痛みを眠りで誤魔化せるところだったのだ。寝かせておいてくれ……)

「セミラミスさんっ!」

セミラミス「……んん。誰だ……?」パチリッ

セミラミス「ん?」

赤松「よ……よかった。目を開いたよ!」

セミラミス「カエデ? なぜここに? まあよい、汝にこれを授けよう」

赤松「え。なにこれ。ゲーム機?」

セミラミス「これを持ってポケモンセンターに行きイーブイを貰ってくるのだ。我は今日誕生日なのでな」

赤松「多分代理じゃダメだよ!?」


※マナー的にダメです


BB「それ以前に状況考えてくれません? あとあなた誕生日とかそんな概念ないでしょ」

セミラミス「……BB……」

セミラミス「……」ハッ

赤松「ん? セミラミスさん?」

セミラミス「バカ者めがッ!」バチィィィンッ

赤松「痛ァーーーッ!」

セミラミス「何故戻ってきた! アホかッ!」

赤松「じ、自分がどれだけ傷ついても冷静だったくせに変なところでキレるね……」

赤松「だってセミラミスさんを置いてはいけないよ! なんかもう放っておけないし!」

セミラミス「……くっ」

BB「さてと」

BB「モノクマさん。ここからはサシでやりましょう」

モノクマ「ちぇ。邪魔が入っちゃったか」

372: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/03(木) 20:10:18.94 ID:icrURDoO0
セミラミス「……カエデ。治療は?」

赤松「道すがらBBさんがやってくれたよ」

セミラミス「そうか。ならばよい」スゥ

赤松「……セミラミスさん。体が透けて……!」

セミラミス「もう限界だな。助けに来てくれて悪いが無駄足だ。本当に眠い……」

セミラミス「BB……後のことは頼むぞ」

赤松「だ、ダメだよセミラミスさん! 死なないで!」

セミラミス「……こんな手傷負った者にかける言葉としてはこの上なく残酷なのだが……」

セミラミス「……案外くだらないものだったな。だが悪くない……見送られる側というものも……」

セミラミス「……」

赤松「セミラミスさぁぁぁぁぁぁん!」






BB「私が契約して魔力供給するので立ってください」キィンッ

セミラミス「マジか」スンッ

赤松「蘇ったーーーッ!」ガビーンッ

373: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/03(木) 20:19:50.77 ID:icrURDoO0
セミラミス「クッハハハハ! いやぁ、悪くない! 悪くないぞ! 流石に傷が深すぎてすべて回復というわけにはいかんが!」

セミラミス「立って歩けるだけで上等だ! どうする? 二人であのクマを甚振ればよいのか!?」

赤松「急に調子乗り出した! やめようよセミラミスさん! 生きてるだけでいいとしようよ!」

セミラミス「カエデ。一つ教えてやろう。我もそこまで大人というわけではないので……」

セミラミス「我をここまで愚弄したあのクマ親子に対して何も思うところがない、というわけでは決してないのだ」ギンッ

赤松「うわあ! 超怒ってる!」

BB「……あー。そのー。なんですか。こう言ってはなんですけど……」

BB「察してくれません?」

セミラミス「む? 何を……そういえば貴様。巌窟王と違ってレイシフトしてるわけでもないのに、この魔力はどこから――」

BB「……」

セミラミス「――そう、か。ふむ」

セミラミス「いいだろう。行くぞカエデ。巌窟王のところまで送っていく」

赤松「へ? あ、あれ? モノクマは?」

セミラミス「BBだけで充分だ。行くぞ」

セミラミス「……安心しろ。あやつもすぐに来よう。我の二の舞は踏むまいさ」

赤松「う、うん……じゃあBBさん。程ほどにして絶対に来てね! 巌窟王さんにも伝えてくるから!」

BB(元から知ってるんですけどねぇ)

BB「……さて。二人きりですね。モノクマさん」

モノクマ「そうだね」






BB「じゃ、逃げちゃってください」

モノクマ「お疲れさまー」バイバイ

BB「……さてと。後は……どうしましょうかね……私も血迷ったなぁ」

BB「最後まで巌窟王さんを助けられないのが、とっても残念」

377: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/04(金) 19:10:20.81 ID:KTjxuftl0
セミラミス(アルターエゴ)

世界最古の毒殺者にしてアッシリア帝国の女帝。夫であるニノス王を毒殺したことで一躍名をはせた人類最古の毒殺者。
……のアルターエゴ。製作者はカルデアのセミラミス。
嫣然とした笑みを浮かべる退廃的な雰囲気を纏った絶世の美女。

原理的にはセミラミスがかつて作った『チョコのセミラミスのチョコラミス』と同じであり、言うなれば『ゲーム上に再現されたアルターエゴのエゴラミス』である。
本来はサーヴァント専用ゲームである戦慄のファーストタイヤキング・オブ・バビロンのナビゲーターとして作られた仮想人格なのだが、ちょっとした気まぐれでゲームをクリアした最原と、その仲間である才囚学園の生徒に同行。

仲間になったつもりは毛頭ないが暇潰しにちょっと眺めていよう、と思う程度に興味を示す。お気に入りは赤松と入間。

かつて白銀とモノクマによって、新世界プログラムに組み込まれた折に様々な権限へのロックをかけられたが、特に気にしていない。それよりも、おそらく誰も転送するはずがないこのゲームが何故この場にあるのかが気になっている。

カルデアと才囚学園に何らかの『穴』が存在するのではないかと推測はしている(が、それを誰かに話したりはしない。単純に気になるだけなので)。

魔力供給とストレス解消のためにチョコ菓子を大量に食べている他、普段はまったく平気な度数の酒を飲んで酔っているのは気が抜けているせい。白髪の少年の気配がちょっとでもある限りはこうはならない。

378: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/04(金) 19:33:45.74 ID:KTjxuftl0
巌窟王チーム

カチリッ グサグサグサッ


巌窟王「ちぃっ! トラップがついに尽きたぞ! 東条! トラップの修繕は?」

東条「間に合わないわね。全力でやっているのだけれども。巌窟王さんもでしょう?」パッパッ

巌窟王「……こうなったら最後の手段に頼るしかないか。俺が直接エグイサルを叩く」

巌窟王「赤松が帰ってくるまで持てばそれでいい……!」

獄原「だ、ダメだよ! アンジーさんに無理はさせられない!」

巌窟王「ああわかっている! だが他に手はあるか!? ここで手をこまねいていてはアンジー含めた全員の死が待っているのだぞ!」

最原「……」

天海「どうしたんすか? 最原くん」

最原「さっきまで結構余裕だったのに、段々追い詰められてきてる」

天海「それが? 別に変なことじゃないっすよね?」

最原「そうなんだけど、なにかゲーム的っていうか……『最初は易しくて進行につれて難しくなる』ってところとかさ」

天海「……それは俺も気にはなってたっすけど……」

星「焦りを誘発させているのかもしれねぇな。このままここにいたら殺すぞって脅しとも言い換えられるが」

天海「ん? 脅しじゃなくって実際に殺しに来てるのでは?」

最原「……僕たちを追い出そうとしている?」

真宮寺「ありえるかもネ。その証拠に、海の家に行こうと思えば、巌窟王さんの今のスペックでも全員無事に行けるだろうし」

真宮寺「BBさんから聞いた情報から、モノクマも色々と仕込んでたんだろうネ。そう考えると何かしっくりくるヨ」

天海「それが本当だとして、モノクマは一体何をしたいんすか」

最原「……仮説は……あるよ。さっきBBさんが裏切ったタイミングから色々と推測は立つって言ったでしょ?」

天海「ああ。なんか妙に即決即断だなー、おかしいなーって話してたっすよね」

最原「例えばモノクマが何らかの……そう、僕たちを今まで駆り立てていたような動機を持っていたとして」

最原「そんな短時間で突き動かせるかな?」

天海「……えーと」

東条「無理よ。流石にそんな短時間では。私は一晩悩んだもの」カチカチ

天海「……」

最原「そう。人の考えはそうそう簡単に変わらない」

最原「……変わってなかったとしたら?」

379: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/04(金) 19:46:43.22 ID:KTjxuftl0
天海「さっき巌窟王さんが言ってたっすよね。『俺たちを助けようとしている意思そのものは真実だ』って」

天海「だとしたら……BBさんは俺たちを助けようと思って裏切った? そんなことあるんすかね?」

真宮寺「騙された、という可能性はどうかな?」

入間「同じことじゃねーか? モノクマの言うことが本当かどうかわからないのなら、それを疑って決断は鈍るだろ?」

真宮寺「死にたい」ズーン

入間「俺様に指摘されたことがそこまでショックか!?」ガビーンッ

最原「取引……そういう形なら自然じゃないかな。モノクマは何らかのメリットを信用できる形でBBさんに見せたんだ」

最原「BBさんはそれに飛びついた。即断即決で」

天海「俺たちを助けるという意に反しない、どころかその行動理念からするとメリットになるような取引……?」

最原「直接本人に問いたださないとわからない。ここまで割れてるんだから、問い詰めれば絶対に彼女は吐くよ」

最原「……それまで僕たちが生き残っているかどうか、だけど……」

獄原「見損なったよ巌窟王さん! アンジーさんのこと、大事にしてると思ったのに……!」

巌窟王「知った口を利くな獄原ッ! お前にアイツの何がわかる! 何故ヤツのことを信じてやれない!」

獄原「信じてるよ! だからって納得できない!」

エグイサル「……」ガシャコーンッ

東条「二人とも! エグイサルに狙われて――!」







巌窟王「邪魔だァ!」ブンッ

獄原「引っ込んでて!」ブンッ



ドガシャアアアッ


エグイサルだったもの「」

東条「投石で沈黙させたわ」

最原「……」

天海「ピンチはピンチっすけどまだ大丈夫っぽいっすね」

最原「うん。この調子のまま赤松さんが来てくれれば……!」

「みんなー!」

最原「……この声!」

天海「赤松さ――!」

380: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/04(金) 19:54:35.90 ID:KTjxuftl0
赤松「助けてー!」ビエエエエンッ

竜牙兵「……」ワーッショイ ワーッショイ

天海&最原「神輿に乗ってるーーーッ!」

真宮寺「違うヨ。人が乗ってる場合は山車だヨ。神輿に人は乗らない」

赤松「た、助けっ……おち、落ちる……! この人たち一回の『ワッショイ』で凄い持ち上げて体がフワッとする、いやあああああああ!」

竜牙兵「……」ワーッショイ ワーッショイ

最原「ていうかそれ何!? いや、誰!? いや、やっぱり何!?」アタフタ

セミラミス「竜牙兵だ。数を揃えれば便利だぞ?」

最原「あ。セミラミスさ……なんで泥だらけ傷だらけなの?」

真宮寺「……あ。一台、空の山車がある……赤松さんが乗ってるのと同型の……」

最原「落ちたんだね!?」ガビーンッ

セミラミス「はしゃぎすぎて一ワッショイの勢いをつけすぎた」

天海「ワッショイって単位じゃないっすよ!?」


ベシャッ


星「赤松も落ちたぞ」

赤松「いだいー」エグエグ

最原「赤松さーーーんッ!」ガビビーンッ

386: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/05(土) 20:43:23.79 ID:w7DbFISQ0
赤松治療中

巌窟王「貴様。赤松のことをなんだと思ってる?」ゴゴゴゴゴゴゴ

セミラミス「入間と同じ。叩くと音が出る愉快な玩具」

赤松「酷い言い草だ!?」ガビーンッ

入間「あれ!? 俺様も玩具なの!?」ガビビーンッ

星「……おい。BBはどうした?」

セミラミス「会った。しんがりを任せた」

赤松「あ! そ、そうだ! 巌窟王さん! BBさんがモノクマを食い止めるために、置き去りになっちゃって!」

巌窟王「なに?」

最原「!」

赤松「多分、適当に切り上げてBBさんも逃げて来ると思うけど……どうしよう! どうしたらいい? もしものことがあったら!」

巌窟王「……そうか。セミラミス」

セミラミス「チッ。貴様も我頼みか。無能どもが」ウンザリ

最原「……?」

セミラミス「この中に、BBに何かを託された者はいるか?」

獄原「あ、えと。ゴン太が色々と貰ってるけど」

セミラミス「そうか。ならばさっさとそれを使え」

獄原「……え?」

セミラミス「BBに『待っていろ』とでも言われたか? 安心しろ。この状況を想定できないヤツではないからな」

最原(……なんだ? 急に話が進み始めた……っていうか。巌窟王さんが促した感じだな)

387: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/05(土) 20:58:12.39 ID:w7DbFISQ0
赤松「……なに? 何の話?」

星「この世界を破壊する最終兵器の話だ。BB産のな。それを使えば俺たちは外に出られる」

星「今までは校則違反を恐れて使えなかったが、もう校則違反となっているのであれば関係ないという話だ」

赤松「す、凄いじゃん! やっちゃおうよ! アンジーさんの怪我も治せるしさ!」

赤松「予定より早まるのなら、むしろそっちの方がいいくらいだって!」

最原「ッ!」

セミラミス「汝は妙にポジティブだなぁ」

最原(予定より早まる……?)

最原(まさかこの校則違反でBBさんが変えたかったのは……予定?)

最原(いや。でもそれで僕たち全員が危険に晒されるのなら、賭けとしては相当分が悪いような)

最原「……」

最原(分のいい賭け……だとしたら?)

最原(モノクマの動きがおかしい。あの壊れた部屋に隠れていたのだとしたら、何故赤松さんの方に現れる?)

最原(僕たちを始末したいのなら巌窟王さんの方に向かう僕たちを後ろから不意打ちする方が効果的だし……)

最原(なにより手間だ! ベッドルームよりアンジーさんの病室に行く方が近い!)

最原(モノクマは赤松さんの方に何をしに行ったんだ?)

最原「……様子見……?」

最原(そういえばこの状況だと……)

天海「BBさんとモノクマが二人きりっすけど……」

388: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/05(土) 21:16:55.82 ID:w7DbFISQ0
最原「……よし。ゴン太くん。やろう」

獄原「え」

最原「海の家……だよね。そこでこの島全体を壊す装置を発動する。視界に入ってるものはすべて壊れるって算段だよね」

獄原「え? え? ちょっと待ってよ。BBさんが帰ってきたら事情を聞くって話は?」

最原「大丈夫。事情なら海の家で聞くよ」

赤松「……勝手に移動して大丈夫かな?」

巌窟王「書置きを残す」

セミラミス「しゃらくさい。その書置きは我が鳩に運ばせよう」

巌窟王「それよりだ。セミラミス。貴様、この世界を壊した後は……」

セミラミス「……」

天海「あ。そうっすよ! セミラミスさんはどうなるんすか!? なにもかもなくなったら生存できないっすよね!?」

セミラミス「まあなんとかなるであろう」サラリ

天海「軽っ」

セミラミス「早く行くぞ。海の家へ」

東条「……巌窟王さん。本当にこれでいいの?」

巌窟王「……」

セミラミス「……チッ!」

赤松「どうしたのセミラミスさん。急に不機嫌になってるよ?」

セミラミス「なんでもない。我にばかり汚れ仕事を押し付けるカスどもにイライラしているだけだ」

赤松「……何の話?」

セミラミス「そら行くぞ。さっさと乗り込めカエデ」ジャララッ

赤松「ええっ!?」ヒョイッ

竜牙兵「……」ワッショイ! ワッショイ!

赤松「またコレーーーッ!?」ガビーンッ

最原「なんか赤松さん妙にセミラミスさんに気に入られてない!?」

巌窟王「……」ニガニガ

星「すげぇ苦々しい顔になってんぞ」

セミラミス「それでは生徒どもは我が引率するので、巌窟王。貴様は自分のマスターの身支度を整えて、さっさと追随してこい」

セミラミス「『足手纏い』だからゆっくりとな」

巌窟王「……フン」スタスタ

天海「えっと……セミラミスさん。彼が足手纏いになるってことはないんじゃないっすか?」

セミラミス「戦力的なことを言ってるのではない」

セミラミス「……さて。行くぞ。ついてこい」

天海「……んー?」

最原「……」

390: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/06(日) 17:56:46.65 ID:EfUigoNg0
ザッザッザッ


最原「う……これ、破片がそこら中にあるけど……」

セミラミス「気付いたか? そう、竜牙兵だ。あとエグイサルの残骸」

天海「さっき赤松さんを連れて行ったヤツっすよね。なんでこんなに大量に壊れてんすか」

セミラミス「それはだな、カエデを発見して近づいたエグイサルを竜牙兵が取り囲んで滅多打ちにするという『囮&特攻作戦』を実行しているからだ」

入間「バカ松囮かよ! エゲツなっ!」ガビーンッ

最原「これエグイサルもだけど竜牙兵もかなりの頻度で壊れてるよね?」

セミラミス「海の家まで持つか心配か? 計算はした。問題はなかろう。そして我らはその後ろを安全に歩くことができる」

セミラミス「ああ、当然ながらカエデも安全だぞ? 我らより『ちょっと危険』なのは確かだが」

天海(ここまで信用できないちょっとは初めてだ……)

セミラミス「ククク。魔力が満ちているというのは素晴らしい気分だな。これだ。これこそがセミラミスだ」

セミラミス「神代の力を存分に振るう……一応アサシンだぞ?」

真宮寺(あ。サーヴァントだったんだネ)

星(単なる面白NPCかと思ってたぜ……)

最原「ところで、セミラミスさんはそもそもなんでこの世界に?」

セミラミス「知らぬ。気付いたらこの世界に接続されていた。というか外の世界からやってきた貴様らにこっちが訊きたいくらいだぞ」

セミラミス「何故我はこの世界にいるのだ?」

天海(知らんがな、と言いたい……言ったら怒られるかな。怒られるだろうな)

入間「知るかボケ」

セミラミス「竜牙兵! 一人囮追加だ!」キィンッ

竜牙兵「……」ワーッショイ ワーッショイ

入間「ぎゃあああああああ……」

最原「運ばれていったーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「更に安全になったぞ。我らだけ」

天海(やっぱり口答えしちゃいけないタイプの人だ。言わなくてよかった……)

391: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/06(日) 18:24:27.41 ID:EfUigoNg0
海の家周辺

セミラミス「ついたぞ! やはり我はサーヴァントとしても素晴らしいな!」フハハハハ

入間「ううえええええ……うえっぐ……びえええええええ……」エグエグ

赤松「入間さん。元気出して……入間さぁん」エグエグ

天海「二人の少女の心に癒えない傷が刻まれちゃってるようなんすけど!?」

セミラミス「こらてるっ……コラテラルダメージというヤツよ」

真宮寺「今噛んだ?」

セミラミス「おっと。先ほど巌窟王と話したときに忘れ物をしたな。戻るか。竜牙兵!」

竜牙兵「……」ワッショイ?

真宮寺「噛んでなかったヨ! 絶対に噛んでなかった!」

セミラミス「ポケットの中に入ってた。下がれ竜牙兵」

竜牙兵「……」ションボリワッショイ

天海「なんて危ない人だ……!」

最原「……」キョロキョロ

最原(クマの足跡がある……多分モノクマかな)

最原「……」ジーッ

星「どうした? 海になにかあるのか?」

最原「うん。あったらいいなって思ってさ」

星「?」

最原(巌窟王さんたち、早く来ないかな……あまり長居はしたくない)






赤松「セミラミスさん! いくらなんでも私に対する扱いがぞんざい過ぎるんじゃない!? あと入間さん」

入間「俺様はついでかよッ!」

セミラミス「口答えをするな」パチンッ

竜牙兵「……」ガシャガシャガシャ

赤松「え? 何? なんでこっちに来て、きゃあああああああああ!」ビリビリバリッ

天海「リンチが始まったーーー!?」ガビーンッ

入間「バカ松ーーーッ!」

パレオ水着の赤松「う、うう。死ぬかと思っ……水着になってる!?」ガビーンッ

セミラミス「報酬があればよいのだろう?」フンス

パレオ水着の赤松「いや別に報酬欲しさに抗議したわけじゃ……もういいや……」

入間「俺様は!? 俺様に対しての報酬は!?」

セミラミス「貴様はダメだ」

入間「!?」ガビーンッ

392: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/06(日) 18:36:53.85 ID:EfUigoNg0
巌窟王チーム


BB「……」

ザッ

BB「ん。誰です?」

巌窟王「……」

アンジー「アンジーもいるよー!」

BB「あー。ははっ。来ちゃいましたか。バカだなぁ」

巌窟王「BB。聞かせろ。貴様、何をした?」

BB「……なんのことです?」







巌窟王「お前は以前に来たようなBBのアバターじゃない。BB本人だな?」

BB「……」

394: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/06(日) 19:30:18.53 ID:EfUigoNg0
BB「根拠は?」

巌窟王「ほとんどが俺の勘だ。だがそれが決定的になったきっかけはある」

巌窟王「セミラミスが元気すぎる。あまりにも。大量のリソースをネズミのように短期間に摂取していなければ消滅してしまうほど、か細い存在だったはずだ」

巌窟王「それが貴様が救出しに行った途端に元気になったのだぞ? 契約して魔力供給を担ったと考えるのが自然だ」

巌窟王「だが……たかだかアバターにそんな真似ができるか?」

BB「できませんね」

アンジー「……誤魔化す気もないんだね? もう」

BB「ちょっと弁解させてくれません? 別に自己犠牲の精神でここに来たわけじゃありませんよ。ちゃんと勝算もあるし保険もかけてます」

BB「発想の源は……とある人形師でした。その人はね、ここみたいな『一度入ったら勝つまで出られない閉鎖空間』に来たときに策を用意してたんですよ」

BB「『死んでもいい自分を作ってそこに送り込む』……まあ狂ってますけど有効でした。なのでマネしました。遠慮なく」

巌窟王「そうか。獄原が準備している。一緒に出るぞ」

BB「ごめんなさい。最初から『出れない』んですよ。そういうつもりで来たので」

巌窟王「バカな。何故そんな設計にした?」

BB「別にいいじゃないですか。あなたが帰ったらそこに私はいるんですし。この私はここで終わりです」

BB「……まあ残して来た私は三日間くらい起きませんけど。こっちの私にリソース裂いちゃったので」

BB「いわばこっちの私は三日分の私です」

BB「放っておいても三日経ったら全部枯渇して自壊しちゃいますしねー」

アンジー「……頑張ってきたんだよー? 終一も、楓も、みんな。なのにBBだけここでお別れなんてさ」

アンジー「ねえ。そんなのおかしくない?」

BB「さぁて。特には。サービスが終了したら跡形もなく消えるのは、プログラムの宿命ですよ」

アンジー「……ッ!」

アンジー「やめてよ……! そういうの! 今のアンジーたちと被るんだよっ……!」

アンジー「世界が終われば、そこにいる人も終わりだとかさー」

BB「……」

BB「巌窟王さん。よかったですね。これでアンジーさんはほぼ確実に助かりますよ」

アンジー「!」

巌窟王「お前の目的はやはり『予定の変更』か?」

BB「ご名答」

巌窟王「バカめ。それで生徒たちに危険が及べば本末転倒だぞ」

BB「……及ぶ……んですかね? 及んだように見えますか?」

巌窟王「?」

アンジー「モノクマにどんな話をされたの?」

BB「悪いんですけど、その件に関しては私は何も言いませんよ。先方にも都合があるでしょうし」

アンジー「この……!」

395: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/06(日) 19:43:41.98 ID:EfUigoNg0
巌窟王「何故だ。なにがお前をそこまで駆り立てた?」

BB「カルデア側からあなたたちに送れる支援物資がもう『私自身』くらいしか残ってなかったんですよ」

BB「単なるアバターの私なら、新世界プログラムの破壊なんてできなかったでしょうね。少なくとも短時間では」

巌窟王「それだけか?」

BB「……あと一つは責任ですかねぇ」

BB「巌窟王さんはカルデアに帰れますよ。才囚学園でのゲームが終われば確実に」

BB「でも残念なことが一つあります」

巌窟王「残念なこと?」

BB「帰れなくなるって言ったのになぁ……! もう! 本当に! やってくれたなぁ……!」ギッ

アンジー「え」

巌窟王「……何故アンジーを睨む?」

BB「あなたはもう『カルデアのアヴェンジャー』じゃなくなってきてるんですよ」

BB「……『才囚学園のアヴェンジャー』になりつつあるんです」

巌窟王「ふん。何をわけのわからないことを――」

巌窟王「!」

アンジー「……どうしたの?」

BB「巌窟王さん。あなたはもう今の私と同じなんです」

BB「『カルデアのアヴェンジャー』と『才囚学園のアヴェンジャー』は明確な別個体になりつつある」

BB「カルデアには霊基が登録されているから再召喚は容易ですが……」

BB「『ここにいるあなた』はもうどこへも行けない可能性があるんですよ」

巌窟王「……」

アンジー「……え」





アンジー「は……?」

396: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/06(日) 20:03:28.97 ID:EfUigoNg0
BB「詳しく言うなら、すべてが終わってカルデアに再召喚されたときに、あなたは『才囚学園の記憶』がゴッソリ抜け落ちてます」

アンジー「待って。『彼』には忘却補正があったはずじゃ……!」

BB「同一人物でも別個体。そもそも再召喚された彼は『元が同じだけの別人』なんです」

BB「才囚学園に召喚される直前の記憶までしか保持してないでしょうね。だって元から体験してないんですから」

BB「あなたたちと一緒にい過ぎたんですよ。彼は。そのせいでここでの記憶が彼にとって本当に『かけがえのない物』へ変貌してしまった」

BB「最悪の場合、その記憶を忘れてくれれば……記憶が摩耗してくれれば大丈夫だったかもしれないんですが……」

BB「忘却補正パないなぁ! もう!」

アンジー「そんなのって酷いよッ! だって……だって今まで『彼』はなんのために……!」

BB「……あはは。巌窟王さんと一緒にいられるんならラッキー、くらいには考えそうだなと思ったんですけど、結構予想外だったな」

巌窟王「どっちにしろそれはないだろう。俺がこの学園に存在できたのはひとえに『閉じ込められていた』からだ」

巌窟王「才囚学園のゲームが終われば、俺はこの世界から消滅するだろう」

アンジー「!」

巌窟王「……それでもカルデアに戻れるのであれば問題はなかった……のだが」

巌窟王「クハハハハハハ! ああ、そうか。そうか……何度死んでも蘇った巌窟王たるこの身も、ここにて終焉というわけだ!」

アンジー「……!」ゲシッゲシッ

巌窟王「痛い。蹴るな」

BB「……ごめんなさい。巌窟王さん。私は……」

巌窟王「いい。『この俺』にしかないものを、俺はここで沢山手に入れた」

巌窟王「カルデアで『巌窟王』が召喚不可能になるわけでもないらしい」

巌窟王「……中々出来た結末だと思うぞ?」

BB「強がりだなぁ。でもちょっと楽ですね。そう言ってもらえると」

アンジー「イヤだよ。そんなの! だって……そんなの好き勝手に死を飾り付けてるだけだよ!」

アンジー「アンジーは……アンジーはそんな……!」

BB「……おっと。時間はもうなさそうですよ。さっさと海の家……かな? 多分海の家ですよね? そこがやりやすいでしょうし」

BB「早く行ってください。彼も痺れを切らしたようです」

巌窟王「!」

巌窟王「アンジー! 少しだけ飛ばすぞ!」

アンジー「待って! 話はまだ……!」

BB「いいえ。終わりです」

BB「……ふふ。じゃあこれにて。さようなら、ですね。予行演習です」







BB「この世界に『終焉』を。あなたたちに新たな旅立ちを!」

BB「その道行に光あらんことを!」

巌窟王「……さらばだ。BB」



ギュンッ


BB「……先に待ってますよ。地獄でね。ふふっ。ラスボス系後輩として、こんなセリフ一度言ってみたかったんですよね」

401: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/07(月) 19:47:58.86 ID:RyAkT2Oz0
セミラミスチーム

最原「……まだかな。巌窟王さんたち」

天海「ちょっと遅いっすよね。いくら弱体化してるとは言え巌窟王さんっすよ?」

セミラミス「バッハーのせんりつをーよるにきいたせいです」フンフン

赤松「緊張解けるの早いよ! なに砂遊びしてんの!?」ガビーンッ

入間「なあなあ! トンネル作っていい!? トンネル作っていいか!?」ワクワク

セミラミス「許可しよう」

赤松「入間さん?」ギロリ

入間「睨むんじゃねぇよ! テメェ自分より弱いヤツと見るや否や急に強気になるの最低だぞぉ!」ビクビク

天海「こういうときだけ正論吐くのやめてくれません?」

セミラミス「……!」ピクリ

最原「!」バッ

赤松「セミラミスさん?」

セミラミス「……バカな。何故こちらに来る? 行動範囲が変わったのか?」

最原「みんな! 狙われてる!」

天海「えっ!?」

セミラミス「我が盾となれ竜牙兵!」


ズドドドドドドンッ!

402: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/07(月) 20:08:51.21 ID:RyAkT2Oz0
東条「狙撃……! 私たちが来た道から!?」

セミラミス「命中率はそんなでもない。牽制か。遠いぞ!」

天海「命中率が最悪でも数が揃えば関係ないっすよ! 一発でも貰えば骨の盾なんてバラバラに吹き飛ぶっすよ!?」

ドカァァァンッ バラバラバラッ

セミラミス「訂正しろ。『吹き飛んだっす』と」

天海「吹き飛んだっすゥ! ええ!? これで満足っすか!? どうなんすか!?」

星「当たんな。クールに振る舞え天海」

セミラミス「なにか……なにか手はないか……」ゴソゴソ

セミラミス「あ」

入間「な、なにかあったのか!?」

セミラミス「せっかく南の島だからと作ったのだった。すっかり忘れていたぞ。『喋る放水機』だ」

喋る放水機「ハロー」

最原(明らかに南の島に旅行した配管工が背負ってた『アレ』だーーーッ!!)ガビーンッ

赤松「ポンプだ! ポンプだよコレ!?」

セミラミス「断じてポンプではない! 『喋る放水機』だ!」

セミラミス「よし。これを装着してと」ガチャガチャ

天海(ダセェ!)ガーンッ

セミラミス「よし。万が一のために竜牙兵の指揮権はカエデ、貴様にやろう。指示した通りに動くぞ」

赤松「え? え?」オロオロ

セミラミス「行くぞ! 我の力を思い知るがいい!」タッタッタッ

喋る放水機「まりお!」

最原「行っちゃったーーーッ!」ガビーンッ


ズガガガガガガンッ

最原(くそ! 遠くて暗いからよく見えない! マズルフラッシュだけが瞬くだけだ!)

セミラミス「よし! まずは一体だ!」

天海「倒せたんすか!?」

入間「あ、案外行けるか!? 行けるのか!? アレで!」


ボーンッ


セミラミス「ぐああああああああ!」ヒューッ

天海「ダメだったーーーッ!」ガビーンッ

赤松「ああっ! こっちに吹っ飛んで……!」


ボチャーンッ



セミラミス「」プカー

つづく




最原「海に落ちて秒でどざえもんになっちゃったよ!」ガーンッ

赤松「セミラミスさーーーんっ!」

403: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/07(月) 20:20:44.54 ID:RyAkT2Oz0
真宮寺「……もしかして竜牙兵を大量生産した時点でもう魔力的に限界だったのかな」

星「それでも一体仕留めるあたりは間違いなくサーヴァントだったんだろうけどな……」

星「来るぜ。赤松」

赤松「え? あ、そうか! 竜牙兵! 盾になって!」

ガシャンッ


ズドドドドドドンッ


赤松「うう! やっぱり骨の盾じゃちょっと頼りない!」

最原「……あれ。変だな。もうセミラミスさんはどざえもんになっちゃってるのに、なんでこっちに来ないんだろう」

天海「こっちに巌窟王さんがいると思い込んでるんじゃないっすか?」

赤松「それはちょっと考えられないかな。セミラミスさんはエグイサルの行動パターンを完全に読んでた!」

赤松「それが急に変わったってことは、この海の家に私たちが来たことを『誰か』が察知したからだよ!」

最原「その誰かがエグイサルのパターンを変更して僕たちを襲わせてる……うん。タイミングからしてほぼ間違いないかな」

天海「でもどこから!? どうやって!? 俺たちを見てるっていうんすか!?」

最原「……」

赤松「それも大事だけど、誰かセミラミスさん回収してくれない!? 沖にどんどん流されてるみたいだから!」

東条「投げ縄で引っ張るわね」ヒョイッ ガシッ

星「お前さん本当に万能だな」

406: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/08(火) 19:37:33.36 ID:Vdnar4It0
赤松「だ、ダメ。一体減った程度じゃ問題にならないよ……! エグイサルの数が多すぎる!」

入間「もうダメだぁ! おしまいだぁ!」

最原「……いや。大丈夫。理由は不明だけど相手はこっちに近づいてこないから」

最原「一発貰えば即死だけど、こうやって一所に集まって盾まで出していれば、そうそう簡単に死んだりしない」

最原「余程運が悪くなければ」

星「それなら死にそうだな。この場にいる俺たち全員、運が良いとは口が裂けても言えないだろう?」

最原「あっ」

赤松「だ、大丈夫だよ! 私たちの運が悪くとも、セミラミスさんはそうでもないから!」

東条「よい、しょっと……ふう。やっと引き上げることが……?」

赤松「セミラミスさん大分運がいいから、私たちの運の悪さも若干中和してくれると思うな! 多分」

セミラミス「」

東条(息してない……)ガタガタ

最原「巌窟王さんが来るまでだ! なんとか持ちこたえてくれ!」

天海「……ゴン太くん。今のうちにせめて装置の起動準備だけはしておい方がいいんじゃないっすか?」

獄原「うーん。結構コンパクトで操作も簡単だから、準備と言える準備はほとんどないんだけど」

最原「ついでだ。砲撃をやり過ごす以外にやることないし、今のうちに見せてくれるかな?」

407: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/08(火) 20:35:38.20 ID:Vdnar4It0
まるごしリップちゃん「」チマーンッ

最原「……何これ」

獄原「装置だって」

真宮寺「見た目ただのぬいぐるみなんだけど。こころなしかBBさんに似てない?」

獄原「起動スイッチを押すと視界に入ったものをすべて破壊。その後変形してウイルスを流し込み『世界を丸ごと改竄する』って書いてあるよ」

天海「説明書もあるんすか……」

獄原「胸の谷間のセーフティロックを外してから使用。右○○が起動スイッチ。起動後二秒ジャストで破壊を開始。その後オートですべて片付く」

天海「悪趣味っすね……」

最原「……ええと。万が一のために緊急停止スイッチとかないか知りたいんだけど……」

獄原「左○○だって」

入間「執拗に胸なんだな!? 」

セミラミス「ごほっごほっ」

東条(よかった。息を吹き返してくれた……!)




ドカァァァァンッ ガラガラガラッ



赤松「きゃあ!?」

最原「……やっぱり僕たち運が悪かったな。盾が粉々だ」

天海「くそ! こんなところで……!」シャキィィンッ

アマデウス斎藤「こんなところで終われるものかーーーッ!」ドォォォォンッ

最原「え? 何する気?」

アマデウス斎藤「知れたこと! セミラミスさん! ポンプを貸してくれっす!」

セミラミス「いいだろう。ところで貴様、その仮面どこかで見た気が……?」ヒョイッ

アマデウス斎藤「後は頼んだっすよ!」キラーンッ

アマデウス斎藤「行くぞオラああああああああああ!」スタコラーッ

最原「ええっ!?」

入間「アイツ追い詰められると本当何するかわかんねーなー」

真宮寺「アマデウス斎藤……勇敢だったネ……」ホロリ

最原「さっそく過去形で語らないでよ!」

セミラミス「……」






セミラミス「ところでヤツは『壊れた放水機』で一体何をしに行ったのだ? 自殺?」ハテ

赤松「天海くーーーん! カムバーーーーーック!」ガビーンッ

408: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/08(火) 20:43:01.64 ID:Vdnar4It0
アマデウス斎藤「目標発見! 発射ァァァァァァ!」カチッ

喋る放水機「」シーン

アマデウス斎藤「……?」カチッ カチッ

喋る放水機「」シーン

アマデウス斎藤「……」

エグイサル「……」カチリッ

天海(そのとき俺は悟ったのでした。ここで死ぬのだと。まあ囮になれただけマシだと考えよう。みんな俺のこと忘れないといいな……)


ドカァァァァァンッ



天海「……」

天海「う……あれ。死んでない……?」

巌窟王「遅れたな。天海」

天海「!」

巌窟王「帰るぞ。あの学園へ」

412: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/09(水) 21:00:21.96 ID:gHyi1keV0
セミラミス「……ム。来たか。巌窟王の到着だな」

最原「天海くんは!?」

セミラミス「死んではいない。というか無傷だな」

赤松「よ、よかったー! セミラミスさん、壊れてたのなら早く言おうよ!」

セミラミス「言ったぞ。それより早く天海のヤツが駆けて行っただけのこと」

セミラミス「さて。時間はないぞ。セーフティくらいは解除しておいたらどうだ?」

獄原「うんわかった!」ドスッ

最原(どうでもいいけど胸凄くでかいな……)

獄原「セーフティは解除したよ! いつでも行ける!」


ギュンッ



巌窟王「クハハハハハハハハ!」

アンジー「みんなー!」

天海「うおおおおおおおお! 超早ぇーっす!」

赤松「巌窟王さん! こっちこっち! 早く!」

真宮寺「獄原くん! 右○○を!」

獄原「うん!」

入間「え? 俺様の右○○?」

真宮寺「違う!」

最原「ちょっと待って! 巌窟王さんには最後に言いたいことがある!」

獄原「それ今じゃないとダメなの!?」

最原「絶対にダメだッ!」

真宮寺「……?」

413: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/09(水) 21:10:46.51 ID:gHyi1keV0
ザザーッ

巌窟王「よし。無事着地だ!」

アンジー「蘭太郎ー! 無事?」

天海「な、なんとか」ゼェゼェ

最原「巌窟王さん! 時間がない! 今すぐ聞いて欲しいことがある!」

巌窟王「ム?」

最原「これから何があっても絶対に僕を信じてくれ!」

巌窟王「……どういう意味だ? この状況で何を言って――」

最原「お願いだ! ここが『絶好のチャンス』かもしれないんだ!」

巌窟王「……」

巌窟王「いいだろう。意図はわからんが……貴様のこれまでの行動は俺の信頼を預けるに足る」

最原「よし! ゴン太くん! お願い!」

獄原「了解! みんな、ゴン太の後ろへ! 視界に入ったら巻き込まれるよ!」


ポチッ


天海(スイッチが入った! あと二秒……! これでこの世界は終わる!)

赤松(外に出て、白銀さんやモノクマの件を片付けて、今度こそ私たちは学園生活を終わらせる……!)

最原「……」

414: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/09(水) 21:11:18.96 ID:gHyi1keV0
最原「……よっと」クルリッ

天海「ん?」

赤松「え?」

巌窟王「――」

獄原「え。最原くん? なんで人形をこっちに向け――」






最原「ごめんみんな」

全員(ええーーーーーーーッ!?)ガビビーンッ

415: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/09(水) 21:17:27.69 ID:gHyi1keV0
天海「……!? ……!? ……!」

赤松「……」

赤松「あ、あれ……何も……起きない……?」

入間「」

東条「気絶してる……」

最原「ごめん。今のは嘘。直前で緊急停止スイッチを押したよ」

真宮寺「死ぬかと思ったヨ。本気で……」

セミラミス「……」ジャララッ

最原「……あと巌窟王さん。ありがとう。セミラミスさんと、あなたの存在が本当に不安だったんだ」

最原「だってコンマ数秒でも僕の首を刎ねて装置の角度を元に戻す程度、充分に可能だろうからさ。実際セミラミスさん僕を殺そうとしたみたいだし」

巌窟王「コイツの鎖を阻止するのに無駄に魔力を使ったぞ」

巌窟王「それで? 何のつもりだ。最原」

最原「後ろを見て。あなたに見せたいものがそこにある」

巌窟王「……?」クルリッ

巌窟王「……そう、か。最原、お前は――」



ギュンッ



赤松(瞬間、目を見開いた巌窟王さんは海へと跳躍した。なにかに向かって一気に)

416: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/09(水) 21:26:45.49 ID:gHyi1keV0
最原「状況から考えてモノクマがこの世界に来ていることはほぼ確定だ」

最原「でも、モノクマはどうやって外に出るつもりだったんだろう。だって『アルターエゴが出入り口』なんだよ?」

最原「破壊されたら外に出られないよね?」

東条「!」

東条「……そう、か。そういうことね。最原くん、あなた本当に意地が悪いわ」

天海「え? どういうことっすか? 一体なにが……」

天海「――!」

最原「ここに来た時点で、モノクマが想定していた脱出方法は二つ。アルターエゴを修繕することか、新世界プログラムを破壊すること」

最原「モノクマはBBさんと協力して後者の手段を取った……情報も徹底的に共有していたはずだ」

最原「脱出不可能のモノクマ。BBさんの破壊装置。結託した両者。このファクターが示す答えはたった一つしかない」

巌窟王「……自分が消えると思って焦ったか? 『あぶく』が見えたぞ」ボォウッ






最原「モノクマがいるのは僕たちの後ろ――夜の海面の下だ!」



ドカァァァァァァンッ



モノクマ「うおおおおわああああああああ!?」ザパァァァンッ

巌窟王「どこにも行かせはしない。校則ももはや存在しない」

巌窟王「待ちわびたぞ! 貴様をここで、処断する!」

418: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/10(木) 21:57:45.87 ID:GFB2a6SX0
巌窟王「ああ! ああ! 血液が沸騰するかのようだ! 興奮のあまり眩暈がするぞ!」ブンッ

モノクマ「ふん」ガインッ

セミラミス「……やはりこの世界では強いな。あのクマは。こともなげに巌窟王の攻撃を防いだぞ」

巌窟王「覚えているか! いや覚えているだろうとも! 俺は前に間違いなくこう言ったはずだ!」




巌窟王『……ああ。そうだ。言い忘れていたぞ、モノクマ』

巌窟王『先ほど俺が言った許しに必要な痛み云々は、あくまで一般論だ』

モノクマ『?』

巌窟王『俺は何も許さない。復讐者だからな』

巌窟王『だが憎しみの対象を見誤るような蒙昧でもない!』

巌窟王『俺が赤松から受けた痛み……東条から受けた痛み……!』

巌窟王『そのすべてを、何倍にもして貴様に返してやろう! 必ずな?』






巌窟王「今がそのときだ。いや……そのときとは違って、上乗せする痛みがかなり増えたな」

巌窟王「せいぜい楽しめ。いつものように笑ってみせろ! 笑えるものならなァ!」ギンッ

モノクマ「悪いんだけどボクもこんなところで破壊されるわけにはいかないんだよね!」

モノクマ「校則がないのなら結構。ボクもそろそろ、キミを本格排除するよ」ギランッ


ブワッ


ドドドドドドドッ

419: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/10(木) 22:20:00.41 ID:GFB2a6SX0
最原「……何あれ!?」

セミラミス「なんだ。目で追うことすらできんのか。いや流石に我もアレにはついていけんがな」

セミラミス「あのクマやはり我とやっていたときは本気の半分も出していなかったな」

天海(セミラミスさんの言う通り、目にもとまらぬ速さの応酬。どっちが優勢なのかすらも判別できない)

天海(どちらも俺たちにとって人知を超えたものだった。今更それを実感する)

セミラミス「……む。あれは……巌窟王の劣勢だな。分が悪すぎる」

天海「そんな!」

赤松「な、なんとかできない!? モノクマを見つけたせいか、もうエグイサルの砲撃もなくなったみたいだしさ!」

赤松「なんかないの、セミラミスさん! さっきまでは色々出してたじゃない!」

セミラミス「このクラッカーしかないな」ヒョイッ

赤松「どんな効果が?」

セミラミス「糸を引くと『もう無理』と書かれた紙と色鮮やかなテープが飛散する。綺麗だぞ」

クラッカー「お手上げ」パァンッ

赤松「お手上げって書いてあるけど!?」ガビーンッ

セミラミス「似たような意味であろう? これで最後だ。もう我に期待できるものなど何もないぞ」

東条「……ここまでなの?」

420: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/10(木) 22:39:18.23 ID:GFB2a6SX0
セミラミス「ただ……巌窟王の方も本気を出しておらぬな。一体なにを遊んでおる。本気を出せば互角以上に渡り合えようが」

真宮寺「そうか。アンジーさんの身を案じてセーブしてるんだネ」

アンジー「むー」

最原「……くそ! 何か……何かないのか。絶好のチャンスなのに!」

セミラミス「聖杯を使えばよいのではないか?」

東条「聖杯?」

入間「テメェ今なんつった!?」ガバリッ

赤松「きゃあ!? よみがえった!」ガビーンッ

入間「聖杯!? 聖杯がここにあんのか!? 嘘だろ!?」キョロキョロ

最原「あ。そういえば英霊とは切っても切り離せないものって言ってたね……」

セミラミス「左様。あれを使えばモノクマの動きを制限する程度は可能であろうさ」

セミラミス「ただまあ残念ながら、願いを叶えられるのは『所有権』を持つ者だけだがな。我はもう譲渡したから使えんぞ」

入間「譲渡? 誰に?」

セミラミス「それ以前に入間。貴様確か言っておったな?」

入間「ん?」



入間『ヒャハハ! まっさかー! こんな場所に本物の聖杯があるわけねぇだろ!』ケラケラ

入間『もしこれが本物だったら俺様、ダサイ原の目の前でストリップしてやるぜ!』




入間「……」

入間「……ふえ?」

最原「あ……ま、まさか。聖杯って……!」

真宮寺「うん。実は『アレ』なんだよネ……最原くんが気持ち悪いって言ってたあのコップ」ズーン

セミラミス「脱げ。そら脱げ。今すぐ脱げ」ニヤニヤ

入間「くっ……殺せ……」ヌギヌギ

赤松「脱がなくていいよッ! セミラミスさんも意地悪しないの!」

セミラミス「……」ムクー

最原「聖杯って確か、願いが叶うとかいうあの?」

セミラミス「流石にそこまで万能ではないぞ。だとしたら『脱出したい』とでも願えばすぐ終わりだからな」

セミラミス「いいか。よく聞け。ここから先が、逆転の一手だ」

423: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/11(金) 19:18:47.28 ID:xWmovjlF0
セミラミス「まず聖杯の所有権を持った最原がモノクマの半径5mに入る。聖杯に『ヤツを止めてくれ』と願う」

セミラミス「以上」フンス

赤松「以上じゃないよ! あの暴力の嵐に5mまで近づいたらミンチになっちゃうよ!」

入間「いかにも『どうだいい作戦だろう』って顔で話しやがって腹立つなぁ」

最原「というか近づかなきゃダメなの?」

セミラミス「ダメだ。その聖杯の特徴として『かなり身近でかつ他人の権利を侵害する願い』しか実現しないからな」

入間「それ聖杯か? 万能が聞いて呆れるぜ」

セミラミス「『その権能が本物である限りは真贋など些細なこと』が聖杯への暗黙のルール……という節はあるな。我のは流石に粗悪品だが」

セミラミス「で。本当にやらぬのか?」

最原「……天海くん」

天海「ん。なんすか?」

最原「僕に怒った割にはさっきエグイサルに突っ込んで行ったよね」

天海「ああ。あれ。心配させて悪かったっすけど、俺のあれと最原くんのそれは別モンっすよ」

天海「だって俺は100%大丈夫だと思って行ったっすからね!」ズギャァァァァンッ!

真宮寺「バカだヨ。百田くんに匹敵するレベルのポジティブバカがここにいるヨ」

天海「……一度やってみてわかったっすけど。やっぱ怖かったっすね。死ぬかと思ったっす」

天海「全然楽しくなかったし」

最原「だろうね……」

最原「……」







最原「一緒にやる?」

天海「ナイスアイディア!」グッ

426: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/12(土) 22:02:28.70 ID:2UZ95sKV0
巌窟王「……ちっ!」ガインッ

モノクマ「どうしたの? 白銀さんを破壊したときみたいに分身しないの?」ニヤニヤ

巌窟王「クハハ! 貴様相手にあんな大技を使うまでもない!」

巌窟王(嘘だ。できるものならとっくにやっている)

巌窟王(このままだと遠からず返り討ちだな。何か手はないか……)

モノクマ「うぷ?」

巌窟王「!」

最原「5mって割と広いよね。どうにか無傷で近づけたりしないかな……」スタスタ

天海「無理っすね。無傷では」スタスタ

最原「だよね……でも」

天海「ええ。一人きりじゃなく、仲間と一緒なら……きっと!」

巌窟王(天海と最原が近づいてくる。なんのつもりだ?)

アンジー(聞こえるー?)

巌窟王(……アンジーか。念話なぞどこで習った?)

アンジー(このお姉さんがぶっつけ本番でやれ。さもなくば殺すって……)

巌窟王(セミラミスは後で細断するとして、何の用だ?)

アンジー(終一の半径5m以内にモノクマを誘導して。魔力をちょっと多めに持って行ってもいいから)

アンジー(補助は蘭太郎がする手筈になってるよー!)

巌窟王(……信じていいのだな? 最原のことも。天海のことも。アンジー、お前のことも、すべて)

アンジー(うん)

巌窟王「……」

巌窟王「嘘だ」

モノクマ「へ? 今なんか言った?」

巌窟王「モノクマ。貴様にも少しだけ見せてやろう。この俺の宝具を……!」ボォウッ!

モノクマ「!」

427: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/12(土) 22:24:00.45 ID:2UZ95sKV0
巌窟王「宝具、解放……! 虎よ、煌々と燃え盛れ――!」


ドカァァァァァンッ!


入間「出た! 巌窟王の宝具だ! 手負いのアンジーの魔力供給でどこまでやれるか不安だが……!」

セミラミス「ふむ。分身そのものは上手く行ったようだな」

真宮寺「……ん?」

東条「ちょっと待って。セミラミスさん。本当に上手く行ってるの? 何か様子がおかしいわ」

モノクマ「……!」

巌窟王「行くぞモノクマ! 貴様に恩讐の彼方、その片鱗を見せてやろう!」ギンッ

ちいさいがんくつおう「くはははははははは!」ケラケラ

モノクマ「」





セミラミス「分身『は』上手くいっておるぞ。小さいが」

真宮寺「明らかに不完全だーーーッ!」ガビーンッ

428: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/12(土) 22:33:29.96 ID:2UZ95sKV0
モノクマ「うぷ……うぷぷぷぷ……アーッハッハッハ! あー、面白いジョークを見せてもらったよ!」

モノクマ「でも期待外れだったかな。この局面でそんなおふざけをするなんてさ!」バッ

ちいさいがんくつおう「!」

モノクマ「よいこは永遠にねんねしなー!」ギャランッ

赤松「だ、ダメ! 小さい巌窟王さんが危ない!」

東条「巌窟王さんッ!」

モノクマ「食らえーーーッ!」






ちいさいがんくつおう「ふんっ!」バキィッ

モノクマ「ぎゃああああああああああ!」ゲフウッ

赤松「小さい巌窟王さんが撃退したーーーッ!?」ガビーンッ

ちいさいがんくつおう「なめるな。こんななりでも、おれはおれだぞ」ぎんっ

セミラミス「可愛くないガキだ」

真宮寺「でも見た目よりは遥かに頼りになるヨ!」

モノクマ「くっ……でも分身が一人だけなら……」

巌窟王「当然まだいるぞ」ブンッ ブンッ ブンッ

ちいさいがんくつおう2「くはは!」バキィッ

ちいさいがんくつおう3「それでいい」バキィッ

ちいさいがんくつおう4「じひなどいらぬ!」バキィッ

モノクマ「げふっ! ごはっ! うぎゃあーーーッ!」

赤松「巌窟王さんが小さい巌窟王さんを容赦なく投げつけてるーーーッ!」ガビーンッ

アンジー「自分にも厳しい人なんだー」

赤松「厳しすぎだよ! 限度があるよ!」

429: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/12(土) 22:46:42.09 ID:2UZ95sKV0
アンジー「……う、ぐ。やっぱりちょっとキツイ、なー……」

赤松「アンジーさん!」

巌窟王「!」ピクッ

アンジー「止まらないで! もう振り返らなくていいからッ!」

巌窟王「……」

巌窟王「アンジーが命を賭けて作った機会だ。俺はそれを全力で活かすのみ!」ブンッ ブンッ ブンッ

ちいさいがんくつおう5「こっかいすることはあるか!」バキッ

ちいさいがんくつおう6「めるせです!」バキッ

ちいさいがんくつおう7「ぜああっ!」バキッ

モノクマ「うおおおおおおおおおお!」

巌窟王「……!」スカッ

モノクマ「……う、うぷぷ! 弾切れみたいだね! 一度投げつけた巌窟王さんは一発攻撃するのが限度! それ以降はしばらく動けなくなるみたいだし!」

ちいさいがんくつおう2「ばかな……ばかな……」ゼェゼェ

巌窟王「……!」ガシッ

巌窟王「まだ一人残ってたぞ!」ブンッ

星「クールに行くぜ」バキィッ

モノクマ「ぐあああああああああああ!?」

赤松「それ分身じゃなくって星くんーーー!」ガビーンッ!

430: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/05/12(土) 23:16:13.95 ID:2UZ95sKV0
星「結構体に負荷がかかったな」フウ

セミラミス「最原ではなく貴様が聖杯を手にしていたのならば今ので勝負はついていたな」

巌窟王「今度は俺が行くぞ!」ダッ

モノクマ「まだだよ! まだボクが負けるわけには……!」ザッ

巌窟王(よし。いいぞ。後何歩か後ずされば充分だろう!)

巌窟王「分身が疲弊している間は俺が相手になろう!」ズドドドドドドッ

モノクマ「キミ一人だけなら充分対応可能なんだよ! というかボクの方が三割増しで強い!」ドガガガッ!

ブシュウッ!

巌窟王(攻撃する度に腕が爪で引き裂かれる……! 長時間は無理なのは俺も同じか!)

巌窟王(だがあと少しでいい! あと少し追い込む!)

巌窟王(痛みがなんだ? 限界がどうした? それがアイツらへの信頼を捨てる理由となるか!)

巌窟王(そんな小器用なマネができるのなら、俺は復讐鬼などに堕ちてはいないだろう!)

モノクマ「……ちぇ。何を企んでるのかは知らないけどさ。こっちも簡単に負けてあげるわけにはいかないんだよね」

巌窟王「なんだと?」

モノクマ「エグイサル」



ドシュウウウッ!



巌窟王「……?」

巌窟王(何の音……?)

巌窟王「ッ!」ゾワッ



ドドドドドンッ!



巌窟王(エグイサルの砲撃が再開した!?)

モノクマ「御覧の通りお粗末な命中率だけど……キミに当たるときはボクにも当たっちゃうけど」

モノクマ「でもまあいいや。ここまで追い込まれちゃったし」

巌窟王「貴様ァ!」

モノクマ「勝負を降りて逃げちゃえば? 深追いはしないよ」

巌窟王「クハ……クハハハハハハ! そんなマネが、今更できるとでも!? 続行だ!」ギンッ

モノクマ「だろうね」ニヤァ

巌窟王(当たる前にケリを付ける……!)


次回 最原「僕らが往くは恩讐の彼方!」 巌窟王「これで終わりだ!」 後編