1: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 10:23:39.49 ID:sNkWvj140
日々の生活において苦痛を感じる状況は人によって異なる。
どうやって気を紛らわすか、どのように受け止めるか。
自分の身を守る為にはどうすれば良いのだろうか。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1533605019
引用元: ・【安価】苦しい事からただ逃げる
「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本
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2: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 10:35:31.13 ID:sNkWvj140
僕は友人が不良に襲われていた所から逃げ出した。
逃げ出す前に見た、友人の縋るような視線が脳裏に焼き付いて消えない。
あの日の事を思い出す度、僕の胸は苦しくなる。
消えさってしまえば良いのに。
3: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 10:42:43.10 ID:sNkWvj140
「〇〇区内で起きた暴行事件について専門家は――」プチッ
「学校行くんでしょ? 早く支度しなさいよー」
「……学校、行きたくない」
「どうしたの急に?」
「体調あんまり……」
「何言ってんの。朝ごはんしっかり食べといてよく言うわね」
「……行ってきます」
「ハイ、行ってらっしゃい」
4: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 10:50:31.22 ID:sNkWvj140
「おはよう」
「……!」
通学路。
ぼんやりと歩いていた僕は、後ろから近づく気配に気づけなかった。
友人が”いつもと同じように”話しかけてきている。
いつも通り、どうして、なぜ?
君は動揺して対応を取る事が出来ない。
どのようにしてこの場面を乗り切る?
①挨拶を返そうとする
②学校まで疾走する
③何も聞こえなかった振りをする
↓1
6: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 18:17:28.61 ID:sNkWvj140
「あ……っ」パクパク
「どうしたの?」
口を開けど音が出ない。
友人に挨拶を返そうとしたが、うまく発声出来なかったようだ。
7: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 18:28:32.64 ID:sNkWvj140
「一緒に行こうよ」
「……」
「もしかしてイヤ?」
「……」ブンブン
以前と違う部分がある。
溌溂とした声、落ち着いた優しい声。
何がどうなればこんな変化が生まれるのだろう。
8: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 18:43:08.88 ID:sNkWvj140
隣で喋っている友人は、おおよそ同年代とは思えない。
顔、声音、仕草。
構成する全てが、僕達とはまるで違うかの様だった。
それは悪意に晒される理由としては十分過ぎる。
学校までの道のりは、やけに長く感じた。
9: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 18:55:07.23 ID:sNkWvj140
馴染みのある音階と共に授業が終った。
昼休みとして振り分けられた1時間が、これほど不安に感じる日は無い。
「よお」
「……あっ」
「何避けてんだよ」
彼は上級性の先輩だ。
少し前までは同じ部活に所属していた。
10: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 19:06:25.90 ID:sNkWvj140
「なぁ」
「………」
「まだ正式に退部した訳でも無いだろ」
「あの……」
「戻って来いよ。また走ろうぜ」
純粋な気持ち、拒む事の罪悪感。
先輩を前にして、二つの気持ちがせめぎあっている。
君はどのようにしてこの場面を乗り切る?
①はぐらかす
②目を逸らす
③その場から走り去る
↓1
12: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 19:25:32.83 ID:sNkWvj140
僕はゆっくりと目を逸らす。
出来るだけ困った表情でそれをした。
「ふぅ、しょうがないか」
「……すみません」
「気が向いたら部室に来てくれ。俺は歓迎するぞ」
それだけ言って先輩は離れて行った。
僕が言うのも何だけど、彼は理解のある人間だと思う。
主張の激しくない、どちらかと言えば無口な僕にも優しいから。
13: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 19:29:33.55 ID:sNkWvj140
お昼はいつも1人になれる場所を選ぶ。
人の出す音が苦手だから僕はそうしている。
今日は何処で済まそうかな。
①4階東トイレ
②手摺の無い屋上
③体育館裏
↓1
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/07(火) 19:34:47.07 ID:FDQho2Wz0
2
15: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 19:40:09.88 ID:sNkWvj140
コンクリートの感触が足から伝わる。
屋上へと続く扉を開けると、僕の目に青い空が浮かんだ。
そよ風が頬を撫でる。
まるで嫌な気分を流してくれているようだ。
16: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 19:48:04.28 ID:sNkWvj140
「おっと……先客か」
「!」バッ
「そう警戒するな。静かな場所を求めて来ただけさ」
とても澄んだ瞳をしている。
彼の瞳は上空に広がる青い空の様だ。
17: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/07(火) 19:51:35.79 ID:sNkWvj140
「………」
「隣、良いか?」
屋上は広いのに、わざわざ隣を選ぶのはどうして?
僕はそう疑問を感じざるを得なかった。
①首を横に振る
②首を縦に振る
③首を右斜め後ろに倒す
↓1
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/07(火) 21:34:43.70 ID:9vL5eNxDO
2
19: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 22:20:21.50 ID:Ndy4wz0F0
唇の端をきゅっと締めて頷く。
彼はにっと笑って僕の隣に座った。
「いつもここに来るのか?」
「……たまに」
「そうか」
「………」
一挙手一投足を観察している気がする。
僕は少しだけ居心地が悪く感じた。
20: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 22:29:36.80 ID:Ndy4wz0F0
「こうやって生きてるとさ」
「……はい」
「見たくも無い嫌な事に触れたりしちまうよな」
「どうして?」
「バイクで事故った、教師が生徒に暴行を加えた」
「……」ビクッ
暴行。
その単語に反応してしまう僕の身体が恨めしい。
21: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 22:41:20.16 ID:Ndy4wz0F0
「俺達は学生だ。閉鎖的な社会で暮らしてると思想が歪む時がある」
「気持ちの整理がつかない奴は、自分や他人を傷つける事だって――」
「止めて……」カタカタ
「どうした? 何か心当たりでもあるのか?」
「~~止めてよっ!」ダッ
こんな話題を振られたら、あの日を鮮明に思い出してしまう。
堪らず僕はその場から走り去った。
あの人ちょっと嫌だな……。
22: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 22:52:03.69 ID:Ndy4wz0F0
ようやく放課後だ。
もう家に帰って休みたい。
「なぁなぁー」
「あの、困ります」
「行こうよ! この前だってOKしてくれたじゃん!」
「あれは無理やり――」
校門の辺りで何やら男女が揉めている。
流石にこの状況で真ん中を通り抜ける自信は無い。
……どうしよう。
①女子生徒の手を取る
②男子生徒の手を取る
③遠回りになるけど裏門から帰る
↓1
24: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 22:59:57.61 ID:Ndy4wz0F0
真っ直ぐ帰るより15分位かかるけど仕方がない。
裏門から帰る事にしよう。
「……」
「大丈夫……だよね」
「嫌がってたけど、大事にはならない筈……」
「……もし何かあっても僕が悪いんじゃない」
「僕が……悪いんじゃない」
自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
25: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 23:13:10.41 ID:Ndy4wz0F0
挙動不審な僕に、友人は以前と変わり無く接してくれた。
どっちつかずな僕の気持ちを、先輩は汲み取ってくれた。
晴れ晴れとした空の下で食事をして、とても気持ちが良かった。
広い屋上で隣を譲り、澄んだ瞳の彼から逃げた。
校門で繰り広げられていた男女の諍いを、見て見ぬ振りをした。
そうして僕は、似たような毎日を過ごした。
26: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 23:23:37.30 ID:Ndy4wz0F0
ある日、友人が転校するという噂が広まった。
学校生活はまだ半分もあるのにどうしてこの時期に。
「あの子転校するって」
「ホント?」
「私も聞いたよ」
「でも実は転校じゃないとか」
「えっ、どういうこと?」
「中退するんじゃないかって」
「コレ?」サスリ
「流石にそれは冗談でしょ」
「だったら良いよね……」
それ以上聞きたくなかったので、僕は耳を塞いで保健室へと向かった。
27: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 23:35:01.46 ID:Ndy4wz0F0
保健室の扉に手をかけると、中から友人に似た声が聞こえてきた。
「んっ……」
「………はぁ」
「…あっ………」
僕は中を確認しようとせず、そのまま家へと帰った。
たぶん気のせいだろう。
友人とは別の誰かが、誰かと保健室を利用していただけだ。
そうに違いない。
28: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 23:41:37.59 ID:Ndy4wz0F0
噂から数日後、友人は何処かへ行ってしまった。
これで僕の心はこれ以上荒れる事は無い。
……無い筈だ。
僕の物語 おしまい
29: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 23:51:28.32 ID:Ndy4wz0F0
俺は母方の祖父母に厳しく育てられた。
両親は5歳の時に蒸発して、今は所在が解らない。
あの日の事を思い出す度、俺の目は涙で滲む。
両親さえ居てくれれば良いのに。
30: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/08(水) 23:56:23.40 ID:Ndy4wz0F0
「〇〇市内で起きた強盗殺人事件は未だ――」プチッ
「……行くか」
「母さん、父さん行ってきます」
「ふん! 居らんモンに言うてもしかたなかろうに」
「………」
「勉強はしっかりやれ。良いな?」
「……はい」
31: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/09(木) 00:09:08.33 ID:6zMvEBov0
「はぁ」
「風が無い日は、こう暑くて敵わないな」ポンッ
「……先輩。おはようございます」
「おはようさん!」
「暑苦しいんで離れて貰えますか?」
舗装された通学路。
暑さに辟易していた俺は、日差しを避ける様に木陰を歩いていた。
先輩が近くに来た事で周囲の気温が上がった気がする。
俺は先輩にどんな対応をしよう。
①両手をべったりと先輩の肩にのせる
②肩に置かれた手を払う
③無視してそのまま行く
↓1
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/09(木) 00:10:00.97 ID:aV1YTEXP0
3
33: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/09(木) 00:16:21.85 ID:6zMvEBov0
「……」スススッ
「あっ、ちょっ」
「先輩ーおはようございまーす」
「あ、ああうん。おはようさん」
面倒だと思った俺は、それ以上会話をしない事にした。
先輩は通りがかった他の後輩と喋っている。
何と言うかあまり気にしない人だから助かった。
34: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/09(木) 00:25:00.90 ID:6zMvEBov0
学校に着いた俺は、教室よりも先に中庭へと直行する。
目的は水やりだ。
巻き取り式のホースを使って花壇に水を撒く。
「……」シャァァァ
「……ふぅ」バシャバシャ
この学校は朝顔の水やりが当番制になっている。
今月は俺のクラスだ。
とは言っても、誰も進んでやろうとはしない。
35: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/09(木) 00:36:46.55 ID:6zMvEBov0
俺はこういった作業が嫌いではない。
自分のやる事が何かの役に立っている気がするから。
「おーおー、つまんねぇ事をよくやるねぇ」
「……」キュッキュッキュッ
「どうせ点数稼ぎだろ?」
「………」カラカラカラ
ガラの悪い生徒に絡まれた。
これで上級生だと言うのだから笑わせる。
①深い溜息を吐いて去る
②背中に向かってを指を差す
③腕と肩の骨を鳴らす
↓1
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/09(木) 00:49:18.37 ID:Vtql4sfnO
2
37: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/10(金) 17:00:27.97 ID:bCfvoVYa0
「……」チラッ
「なんだよ」
「………」クイックイッ
「あ?」
俺は親指で自分の背中を指し示した。
上級生は怪訝そうな顔で、首を後ろに向けて背中を見ている。
38: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/10(金) 17:08:17.88 ID:bCfvoVYa0
「まったく、背中が何だってんだよ」グイグイ
「………」ススッ
「何もねぇじゃねぇか……」パッパッ
付いても無い汚れを、払っている今の内に退散するとしよう。
俺は気付かれない様にその場から立ち去った。
39: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/10(金) 17:15:20.69 ID:bCfvoVYa0
生徒に安らぎを与える時間が来た。
回りくどい言い方だが、要は昼休みが来ただけだ。
「ねね、お昼一緒に食べない?」
「断る」
「クラスメートに対してつれないー」
後ろの席から話しかけてきたコイツは同級生の女子だ。
事あるごとに話しかけて来るので正直めんどくさい。
40: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/10(金) 17:24:29.65 ID:bCfvoVYa0
「今日も購買行くの?」
「ああ」
「栄養偏ったりしない?」
「偏るな」
「もっとバランス良いの食べようよ」
「お前には関係ない事だろう」
「心配してあげてるのにー」
「………」
このままでは平行線だ。
どうやって話を切り上げようか。
①何故購買に行くか理由を説明する
②机に2つ置いてある弁当を指摘する
③溜息を吐いて去る
↓1
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/10(金) 19:55:07.73 ID:9zep8de+O
2
42: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/11(土) 09:49:21.89 ID:2KCYJnbp0
「ところで」
「んーなあにー?」
「お前は大食いなのか?」
「えっ」
「弁当が2つもある」
「これはそのー、えへへ」モジモジ
同級生は顔を赤らめている。
心なしか周囲から視線を感じるし、迂闊な発言だったか。
43: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/11(土) 10:00:29.58 ID:2KCYJnbp0
「その、良かったら……食べない?」
「俺に片方くれるのか?」
「……うん」
「なら貰おう」
「ほんと?」
「ああ」
俺は同級生と食事を摂る事にした。
44: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/11(土) 10:03:47.19 ID:2KCYJnbp0
「私のはこっちー」
「これは……」
よく見ると弁当の中に肉団子が入っている。
俺は小さい頃に持たせてくれた、母手製の弁当を思い出していた。
45: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/11(土) 10:06:56.99 ID:2KCYJnbp0
「ミートボールのトマト煮だよ」
「……うん、美味いな」
「えへへっ、ありがと!」
懐かしい記憶と共に弁当を味わう。
食べ終えた後にお礼を言うと、また作るねと彼女は言った。
これは元々俺の為に作ってくれた物だったのかもしれない。
46: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/11(土) 10:11:34.19 ID:2KCYJnbp0
夕焼け空が広がる放課後。
俺は帰り道にあるコンビニへ寄った。
「ぃらっしゃいませー」ティロロンティロロン
「……」
ここは新しい物ばかりだ。
商品に設備、果ては店員さえも。
47: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/11(土) 10:14:41.75 ID:2KCYJnbp0
「あった」
「………」パラパラパラ
今日はいつも読んでいる週刊誌の発売日だ。
立ち読みは褒められた事では無いが、金が無いのでこうしている。
48: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/11(土) 10:25:50.31 ID:2KCYJnbp0
「ちょっ、放せよ!」
「コラ! 暴れるんじゃない!」
「……?」
半分まで読み終えたところで、店内が騒がしくなった事に気が付いた。
何やら小学生と思わしき小柄な男の子が店員と揉み合っている。
右手に握りしめた駄菓子を見るに、万引きか何かだろう。
①店員に向かってなけなしの小銭を出す
②一部始終を眺めている
③見なかった事にして立ち去る
↓1
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/11(土) 12:22:31.74 ID:ewL4m3GYo
3
51: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/13(月) 16:44:07.75 ID:VoYjQ59F0
傍から見て子供の態度はあまり良いものではない。
俺は店内で起きた事件を見なかったことにした。
「あの子供、似てる気がしたな」
「……家に帰ろう」
家に帰るその足取りは重かった。
52: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/13(月) 16:49:17.74 ID:VoYjQ59F0
「帰って来たか」
「ただいま戻りました」
「飯が出来とる。それを食ったら部屋で勉強しておれ」
「……はい」
帰ってきて一番に祖父と出くわした。
台所から漂う匂いから察するに、今日は芋煮と野菜炒めか。
53: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/13(月) 16:53:42.78 ID:VoYjQ59F0
「……」ズズッ
「学校はどうなの?」
「勉学で躓く事は今の所無いです」
「そう」
「ふん」
「……」モグモグ
食卓における会話がまるで弾まない。
いつもと同じで重たい空気が漂っている。
54: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/13(月) 17:05:20.35 ID:VoYjQ59F0
夕食が終って1時間。
俺は将来を見据えた勉強をしていた。
「……」カリカリ
「………」ペラッ
「……」カリカリカリ
それはどんな勉強だろうか。
①教師
②警察官
③医師
↓1
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 17:10:46.78 ID:Ns0dOUIV0
1
56: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/14(火) 09:09:02.12 ID:7GOgYC8G0
俺は教師になりたかった。
自分に子供が出来れば、勉強を見てやりたいからだ。
「……」ティロリン
「メールか。同級生からだな」
『あんまり根を詰めたら駄目だよ?』
『身体に気を付けて頑張ってね』
「……了解っと」
自分から話した覚えは特に無い。
同級生は恐らくずっと前から俺を見ていたのだろう。
通りで些細な事にも気付く訳だ。
57: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/14(火) 09:21:34.48 ID:7GOgYC8G0
日差しの強い朝、暑苦しい先輩と会話をしなかった。
水やりをした後、上級生を煙に巻いて立ち去った。
昼休みは弁当を貰って、同級生と昼食を共にした。
コンビニで見た少年を、俺は見なかった事にして帰った。
家に戻ってからは、教師を目指して勉強を続けた。
そうして俺は、似たような毎日を過ごした。
58: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/14(火) 09:30:24.63 ID:7GOgYC8G0
あれから月日が経ち、俺は同級生と結婚した。
子供が生まれてもう2年は経つ。
今の俺は地元で小学校の教師として働いていた。
「待って待ってー!」ドタバタ
「……なんだ?」
「お弁当ー忘れ物だよ」
「すまない」
「そこはありがとうって言ってよね」
毎朝弁当を作ってくれる事に感謝している。
この幸せが子供が大きくなった後も続くと良いな。
59: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/14(火) 09:40:28.85 ID:7GOgYC8G0
仕事がようやく終わった。
早く家に帰って、妻と子供に癒して貰おう。
浮かれていた俺は、玄関の鍵が開いていた事に気付かなかった。
「……」グチャァ
「なんだ、これは……」
「そうだ!あいつは――」
「……」ブン
「ぁがっ」
ああ、押し入り強盗が居たのか。
そこまで考えて俺の意識は途切れた。
60: ◆yhsnRYweKL6n 2018/08/14(火) 09:43:24.50 ID:7GOgYC8G0
数時間後、家から立ち去った犯人は捕まえられた。
後に残されたのは幼い子供だけ。
……子もまた親と似た人生を送るのかもしれない。
俺の物語 おしまい
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