1: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:38:51 ID:tjf
某所に投下していたSSから。

これは、幸せを探す少女達のおはなし。

引用元: 緒方智絵里「小さな幸せ、見つけたみたい。」 



2: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:39:18 ID:tjf
智絵里「うーんと……見つからないなあ…」

加蓮「智絵里?」

智絵里「あ、加蓮ちゃん…お疲れ様ですっ」

加蓮「うん、お疲れー。何してるの?」

加蓮「って、見れば大体予想はつくんだけどさ」

智絵里「四つ葉のクローバーを探してるんです」

加蓮「やっぱり。」

智絵里「でも、なかなか見付からなくて…加蓮ちゃんは今、帰るところですか?」

加蓮「ううん、上の方でゆっくりしてたら、中庭に可愛い子がいるなーって思って。ちょっと様子見に?」

3: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:39:46 ID:tjf
智絵里「へっ?可愛い子…中庭には、誰もいませんけど…?」

加蓮「あー、無自覚かー。きょとんとしてるとこも可愛いけど。ふふっ」

智絵里「?」

加蓮「で、クローバー探しだっけ。私も時間空いてるしさ、一緒に探してもいい?」

智絵里「え…?でも、特に面白くはないっていうか、その…退屈かも…ですし」

加蓮「なら、探す手が増えた方が短い時間で済むかも知れないし。こんなとこでずーっと風に当たってると、風邪ひいちゃうよ?」

智絵里「それは…そうかも、です…でも」

加蓮「うん、決まり。私が先に見つけて、智絵里にプレゼントしてあげる」

智絵里「な、なら私も頑張って探しますっ。見付けたら、加蓮ちゃんにプレゼント、します」

加蓮「おっ。じゃあ競争だね。」

智絵里「は、はいっ。頑張りますっ」

加蓮「負けないよー。ふふっ」

4: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:40:01 ID:tjf
こうして、秋の昼下がり。
二人で、広い中庭のクローバー探しが始まりました。
見つかるといいなあ…。

5: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:40:22 ID:tjf
加蓮「あ、これ…は違うか、三つ葉だ」

加蓮「こっち……これも違う…」

加蓮「意外と見付からないね…智絵里はいつもどうやって探してるの?」

智絵里「えっと…最初の一枚を見つけると、そのまわりに何枚か生えてたりするんですよ」

智絵里「四つ葉のクローバーは、仲良しなので」

加蓮「へーえ…じゃあ、まずは最初の幸せを見つけなくちゃね。」

智絵里「最初の幸せ…」

加蓮「智絵里?」

6: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:40:43 ID:tjf
智絵里「あ、ううん、えっと、あと、四つ葉のクローバーは日陰とか、水辺とかに生えてることが多いので、そのあたりを探したら…もしかして」

加蓮「日陰とか水辺…じゃあこの辺りはダメかな、日当たり良さそうだし。木の影とか、どうかな」

智絵里「うーん…こっちより…向こうの木の方が、見つかるかも…?」

加蓮「どう違うの?」

智絵里「あっちは人がよく通るところなんです」

智絵里「四つ葉のクローバーは、踏まれたり、傷付いたりして出来ることがあるので…」

加蓮「流石に詳しいね、クローバー博士だ」

智絵里「は、博士だなんて…えへへ、照れちゃいます」

7: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:41:12 ID:tjf
加蓮「けど、それなら何でこっちで探してたの?最初からあの辺りを探せば早く見付かるのに」

智絵里「それは…えっと」

智絵里「さっきも言いましたけど、四つ葉のクローバーは仲良しなので…たくさんとっちゃうと、お友達が減っちゃってかわいそうかな、って…」

加蓮「智絵里…」

智絵里「結局摘み取っちゃうから同じかもしれないんですけど…どうせ見つけてあげるなら、一人ぼっちで寂しそうな子を、探してあげたくて」

加蓮「そっか。…じゃあ、私もやっぱりこの辺りを探してみるよ。一人ぼっちでいるの、辛いしね」

加蓮「私達がその四つ葉のクローバーを見付けたら、もう一人ぼっちじゃなくなるもんね」

智絵里「加蓮ちゃん…あ、ありがとうございますっ」

加蓮「お礼は早いでしょ、ほら、頑張って見つけてあげなくちゃ」

智絵里「あ、そうですね…頑張らなくちゃ」グッ

8: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:41:34 ID:tjf
加蓮「うん、その調子。…けど、そろそろ冷えてくるし、あまり遅くならないうちに切り上げなくちゃね…」

智絵里「あ、ポットに暖かいお茶、入ってますよ」

加蓮「本当?わー、実は結構喉からからでさ…」

智絵里「今、準備しますね。えっと、紙コップですけど」

加蓮「大丈夫だよ。気を使わないで…って、遣わせちゃってるの、私か」

智絵里「そんなことないですよ?加蓮ちゃんがいてくれると、お話できるので…はい、どうぞっ」

加蓮「ありがとー。…あ、いい香り」ゴクッ

加蓮「…ふう…何だか落ち着く感じ。ハーブティーかな、烏龍茶?」

智絵里「レッドクローバーのお茶なんです。お肌にいいんですよ」

9: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:41:56 ID:tjf
加蓮「お、お茶までクローバーなんだ…レッドクローバー、か…検索…っと」

加蓮「あ、出てきた。…ふーん、アカツメクサって言うんだ…美容や健康にいいみたいだね」

智絵里「クローバーのお茶、って言うので興味がわいて、ちょっと試してるんです。最近飲み始めたんですよ」

加蓮「なるほどね…。ほんのり甘い烏龍茶って感じだし、言われなきゃクローバーだなんて気付かなかったかも」

智絵里「私も、あ、烏龍茶だ…って思いました」

加蓮「智絵里もか~。ふふっ、そこはひと口飲んで、これは…クローバーの味がします…って」

智絵里「ふふっ、ふふふふ、加蓮ちゃんは私を何だと思ってるんですか」

加蓮「ん~、クローバーの妖精さん、とか」

智絵里「も~。からかわないでくださいっ。ふふふ。」

10: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:42:14 ID:tjf
加蓮「いやいや、そんなに嬉しそうだとからかいたくなっちゃうな~。私、悪い子だから♪」

智絵里「あ、いたずらはめっ、ですよ。チョップですっ」

加蓮「おお、久しぶりに見た。ちえりんチョップ」

智絵里「私も久しぶりに言いました…チョップ…」

加蓮「ぷっ」

智絵里「…ふふふふ。」

あはははははは………

11: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:42:46 ID:tjf
夕暮れ。風も冷たくなってきて。

加蓮「智絵里、そろそろ切り上げないと。」

智絵里「うーん…でも、多分この辺りに…」

加蓮「勘ってやつ?そう簡単には…」

四つ葉「………」ソヨソヨ

二人「「あっ」」

智絵里「あった…」

加蓮「四つ葉のクローバー…本当に…」

智絵里「…………」

加蓮「智絵里?」

智絵里「………加蓮ちゃん、あの…」

12: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:43:16 ID:tjf
加蓮「…智絵里が思ってること、あててあげよっか」

智絵里「えっ?」

加蓮「この四つ葉のクローバーは、摘まないでそのままにしていこう……でしょ」

智絵里「あ……」

加蓮「私もね、今さら摘んじゃうの、かわいそうかなって。それに…」

智絵里「楽しい時間なら、もう二人でいっぱい過ごしましたし、ね。」

加蓮「うん。そういうこと。やっぱり同じだったか」

智絵里「きっと、このクローバーが小さな幸せをわけてくれたんだと思います。それに、ほら。」

智絵里「お友達が、ここにも。あそこにも。たくさん隠れてます」

加蓮「本当だ…あー、何で気が付かなかったんだろ」

13: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:43:39 ID:tjf
智絵里「きっと、これでよかったんですよ。」

加蓮「…だね。んーっ…!」ノビー

智絵里「今度、またここで四つ葉のクローバーを探しませんか?たくさん、お友達を見つけてあげなくっちゃ」

加蓮「お、いいね。じゃあその時は、ユニットの皆も呼んでこよっか」

智絵里「いいですね。それじゃあ、お茶をたっぷり用意しておかなきゃ」

加蓮「李衣菜あたりに、これ、何のお茶でしょうか?なんてクイズ出してみるの、どう?」

智絵里「加蓮ちゃん、いじわるな顔しちゃってますよ?」

加蓮「智絵里もね。ふふふっ」

14: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:44:15 ID:tjf
P「おーい、二人ともそろそろ中に入りなさい、風邪引くぞ」

加蓮「プロデューサー。」

智絵里「お疲れ様ですっ」

P「お疲れ様。二人してクローバー探しかな」

P「四つ葉、見つかったのか?」

加蓮「ううん、それよりもっといいもの」

智絵里「見つけちゃいましたっ」

P「お、なんだなんだ、いたずらっ子の顔して」

智絵里「ふふっ。」 加蓮「なーいしょ。」

P「うん?何だよ、気になるなあ」

加蓮「今度はプロデューサーも混ぜてあげるから♪」

15: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:44:33 ID:tjf
加蓮「ーーー。」

P「ーーー。」

遠ざかる二人。
追いかける前に、私はもう一度だけ。

智絵里「またくるね、四つ葉のクローバーさん達。」コソッ

四つ葉「………」ソヨソヨ

加蓮「智絵里~~っ」

智絵里「あ、はーいっ!」

16: ◆6RLd267PvQ 2018/08/22(水)17:44:59 ID:tjf


小さな幸せ、見つけたみたい。





おしまい。