------------------------------------------------
朝 路地裏
青白「ひひひひぃーひ。
いやぁ、うまくいきそうで何よりで」
賊「……幸運に助けられたように見えたぜ」
青白「とんでもねぇ。
ちゃんと手は打ってるんですぜ、
こりゃぁ作戦の第一段階、ですからねぃ。ひひ」
賊「こんな作戦で、本当にあの男ってヤツを……
スカした黒いマントのヤツをやれるのか?
あの卑怯な男を」
青白「ええ、保証いたしやす。
例の年寄りは男にとっての右腕、
あの年寄りがいてこそ、
男の船は一隻でも『海賊』の船と呼ばれる、
嘘みてぇな強さを誇れるようになるんでさ」
賊「腕が欠けりゃぁ、
船の扱いがまともにできなくなって当然だなぁ。
腕が、欠けりゃぁ……」
朝 路地裏
青白「ひひひひぃーひ。
いやぁ、うまくいきそうで何よりで」
賊「……幸運に助けられたように見えたぜ」
青白「とんでもねぇ。
ちゃんと手は打ってるんですぜ、
こりゃぁ作戦の第一段階、ですからねぃ。ひひ」
賊「こんな作戦で、本当にあの男ってヤツを……
スカした黒いマントのヤツをやれるのか?
あの卑怯な男を」
青白「ええ、保証いたしやす。
例の年寄りは男にとっての右腕、
あの年寄りがいてこそ、
男の船は一隻でも『海賊』の船と呼ばれる、
嘘みてぇな強さを誇れるようになるんでさ」
賊「腕が欠けりゃぁ、
船の扱いがまともにできなくなって当然だなぁ。
腕が、欠けりゃぁ……」
引用元: ・少女「奴隷はもうやだよ……」
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352: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/09(木) 23:43:18.22 ID:Xu70o61xo
青白「今回のバリウガ制圧が上手くいきさえすれば、
その左腕の痛みも治まりやす。
連中の船の女が、まとめてバリウガに向かったんで、
そいつらを……ひひひぃ」
賊「ああ、治まるか、治まる、オサマらねぇと……
いてぇんだよ、刺された腕が、ぐずぐずに痛むんだ。
あの夜、黒い男に刺された腕がよぉ。
この痛み、苦しみ、憎しみ、
そして味わった辱め!
ああ、何百倍にもして、味合わせてやる。
お前だけじゃねぇ、お前の船の人間にもだ。
女だろうが子供だろうが、
頭の先から足の先まで、
男に関わった不運への恨みと、
男への憎しみで染め上げてやる……」
青白「さ、お仲間の方々も舌なめずりして待ってまさぁ。
いってらっしゃいまし」にこり
賊「ああ。そうだな……
卑怯な隠しナイフなんぞで俺の腕を……腕をよぉ。
男って野郎、簡単には殺さねぇぞ。
てめぇの船の人間を少しずつくびって、
手足をもいだ蟻を水に浮かべるように、
最後は一人海に流してやる……」
どかどか
その左腕の痛みも治まりやす。
連中の船の女が、まとめてバリウガに向かったんで、
そいつらを……ひひひぃ」
賊「ああ、治まるか、治まる、オサマらねぇと……
いてぇんだよ、刺された腕が、ぐずぐずに痛むんだ。
あの夜、黒い男に刺された腕がよぉ。
この痛み、苦しみ、憎しみ、
そして味わった辱め!
ああ、何百倍にもして、味合わせてやる。
お前だけじゃねぇ、お前の船の人間にもだ。
女だろうが子供だろうが、
頭の先から足の先まで、
男に関わった不運への恨みと、
男への憎しみで染め上げてやる……」
青白「さ、お仲間の方々も舌なめずりして待ってまさぁ。
いってらっしゃいまし」にこり
賊「ああ。そうだな……
卑怯な隠しナイフなんぞで俺の腕を……腕をよぉ。
男って野郎、簡単には殺さねぇぞ。
てめぇの船の人間を少しずつくびって、
手足をもいだ蟻を水に浮かべるように、
最後は一人海に流してやる……」
どかどか
353: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/09(木) 23:44:00.12 ID:Xu70o61xo
青白「……はぁ」のびー
青白 ぽき、ぽき
青白「ひひひぃ、しっかしチョロい。
チョロすぎて涙まであふれそうじゃねぇか」
とことこ
?「いよぉう。青白ちゃん、調子はラッキー?」
青白「ひひ、ラッキーでありますぜ。
いつもごひいきにしていただき、
ありがとうごぜぇやす、旦那」
?「いいって事よ。ラッキーだったら何よりだ。
それこそ、ラッキー!
そして今日の俺はぁ、超ラッキーだッ!」
青白「なんか良い事でもありやしたか」
?「ふふん、いつものように部下を相手にした、
イカサマ無しのポーカーで十戦十勝。
でもって、銃の試し打ちをしたら、
その弾の先に偶然鳩がやってきてな、
上手い朝飯になってくれたわけだ。
そして更に!!」
354: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/09(木) 23:44:32.11 ID:Xu70o61xo
青白「ま、まだあるんですかい」
?「先ほど可愛い幼女が船を下りようとしていてな、
梯子を器用に伝っていたんだが、
不意にスカートを引っかけて下着をちらりと――」
青白「はいはい、ラッキーラッキー。
いい加減捕まりますぜ、旦那ぁ」
?「……ごほん。そんでどうだ、俺のプランは」
青白「まるでアッラーフ(神)の加護があるようですぜ。
面白いようにどんどん火薬が増える。ひひひぃ」
?「我が主、紳士海賊ウルグ・アリ様だって、
アンラッキーがなけりゃぁイケるって、
判を押してくれたんだからそこは心配ねぇ」
青白「さすがですねぇ……
あっし以外の情報屋も使って、
イオニアの海は掌の上ってヤツですかい」
?「ふふん、俺なんて所詮、
我が主にとってはまだまだヒヨッコよぉ」
青白「恐ろしい方でやんすねぇ……」
?「先ほど可愛い幼女が船を下りようとしていてな、
梯子を器用に伝っていたんだが、
不意にスカートを引っかけて下着をちらりと――」
青白「はいはい、ラッキーラッキー。
いい加減捕まりますぜ、旦那ぁ」
?「……ごほん。そんでどうだ、俺のプランは」
青白「まるでアッラーフ(神)の加護があるようですぜ。
面白いようにどんどん火薬が増える。ひひひぃ」
?「我が主、紳士海賊ウルグ・アリ様だって、
アンラッキーがなけりゃぁイケるって、
判を押してくれたんだからそこは心配ねぇ」
青白「さすがですねぇ……
あっし以外の情報屋も使って、
イオニアの海は掌の上ってヤツですかい」
?「ふふん、俺なんて所詮、
我が主にとってはまだまだヒヨッコよぉ」
青白「恐ろしい方でやんすねぇ……」
355: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/09(木) 23:45:52.16 ID:Xu70o61xo
?「で、俺が聞いてるのはよ、
ただプランが進行するかじゃねぇんだよ。
俺達がラッキーを叫びたくなるくらい、
ど派手な花火があがるのかって事なのさ」
青白「頼まれた通り、あの町を襲うように、
エサと海賊は配置しやした……ひひひぃ」
?「そうか、ならこの金はお前のモンだ」じゃらっ
青白「わひゃひゃぁ、金だ、金、金ぇええ!」
?「そんなに金が好きか?」
青白「旦那にとってのラッキーみたいなもんでさ。
コイツが逃げないでいてくれれば、
あっしにとっては幸せなんで。ひひひぃ」
?「なら、また遠からず、
俺様の期待に添える仕事をしてくれよ」
青白「へぇ、任せてくだせぇ。
そんじゃ、また何か有ったら連絡しまさぁ」
?「おう、ラッキーニュース、楽しみに待ってるぜ」
ただプランが進行するかじゃねぇんだよ。
俺達がラッキーを叫びたくなるくらい、
ど派手な花火があがるのかって事なのさ」
青白「頼まれた通り、あの町を襲うように、
エサと海賊は配置しやした……ひひひぃ」
?「そうか、ならこの金はお前のモンだ」じゃらっ
青白「わひゃひゃぁ、金だ、金、金ぇええ!」
?「そんなに金が好きか?」
青白「旦那にとってのラッキーみたいなもんでさ。
コイツが逃げないでいてくれれば、
あっしにとっては幸せなんで。ひひひぃ」
?「なら、また遠からず、
俺様の期待に添える仕事をしてくれよ」
青白「へぇ、任せてくだせぇ。
そんじゃ、また何か有ったら連絡しまさぁ」
?「おう、ラッキーニュース、楽しみに待ってるぜ」
356: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/09(木) 23:46:03.59 ID:Xu70o61xo
青白「あ、ちょっと待ってくだせぇ。
ほら、マントをしっかりしめねぇと、
矢尻十字が見えちまいますよ」
?「大丈夫だってよ、これくらい。
俺のラッキーが有れば誰も気づかん!」
青白「そういう話じゃありやせん。
紳士海賊閣下に知られたら恐ろしいですぜぇ。
噂じゃぁ、身だしなみにうるさいとか……」
?「む、そうだな。
あの方は常に、ド紳士、だからな。
俺も部下として見習わねばならんか」きゅきゅ
青白「はい、それで見えやせん。
そんじゃぁあっしも行くとしやす。ひひひぃ」
?「……そういやぁ、一つ聞かせてくれや」
青白「へぇ、なんでしょう」
?「その焚きつけた連中ってのは、
『客』だったんじゃねぇのか?」
ほら、マントをしっかりしめねぇと、
矢尻十字が見えちまいますよ」
?「大丈夫だってよ、これくらい。
俺のラッキーが有れば誰も気づかん!」
青白「そういう話じゃありやせん。
紳士海賊閣下に知られたら恐ろしいですぜぇ。
噂じゃぁ、身だしなみにうるさいとか……」
?「む、そうだな。
あの方は常に、ド紳士、だからな。
俺も部下として見習わねばならんか」きゅきゅ
青白「はい、それで見えやせん。
そんじゃぁあっしも行くとしやす。ひひひぃ」
?「……そういやぁ、一つ聞かせてくれや」
青白「へぇ、なんでしょう」
?「その焚きつけた連中ってのは、
『客』だったんじゃねぇのか?」
357: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/09(木) 23:48:01.89 ID:Xu70o61xo
青白「……まあ、あっしは焚きつけたとは言っても、
欲しがってる情報を『作って』渡しただけでさ。
どうなるにせよ、どうにかなってましたぜ」
?「つまり、裏切ったわけじゃぁねぇって、
そういうわけかい?」
青白「裏切るなんて滅相もネェ。
あっしは誰もが喜ぶ親切を売らせてもらっただけ、
それ以上でもそれ以下でもねぇわけでさ」
?「……そーかそーか、そんならいい。
商売に励めよ」にかっ
とことこ
青白「……裏切るヤツは殺されるってね。
もし裏切ったなんて言ってたら、
旦那があっしを殺したでしょうや。
怖い怖い……ひひひぃ」
青白(しかし、白髪の旦那を追った三人。
あの短髪で胸のねぇ娘っこが、
だーれかに、似てるってーか、
見た気がするってーか……
まあ、いいか……)
欲しがってる情報を『作って』渡しただけでさ。
どうなるにせよ、どうにかなってましたぜ」
?「つまり、裏切ったわけじゃぁねぇって、
そういうわけかい?」
青白「裏切るなんて滅相もネェ。
あっしは誰もが喜ぶ親切を売らせてもらっただけ、
それ以上でもそれ以下でもねぇわけでさ」
?「……そーかそーか、そんならいい。
商売に励めよ」にかっ
とことこ
青白「……裏切るヤツは殺されるってね。
もし裏切ったなんて言ってたら、
旦那があっしを殺したでしょうや。
怖い怖い……ひひひぃ」
青白(しかし、白髪の旦那を追った三人。
あの短髪で胸のねぇ娘っこが、
だーれかに、似てるってーか、
見た気がするってーか……
まあ、いいか……)
367: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:50:16.53 ID:hCoGRWHTo
------------------------------------------------
夕方 バリウガの町中
白髪「まさか、この程度の距離に
六日もかかっちまうとはな……」
白髪(帰って来ちまったな……
まさか生きている内にもう一度、
ここの土を踏むことになるとは思って無かったぜ)
白髪「変わってねぇなぁ、この町も」きょろきょろ
白髪(大きくもなければ、さして賑やかでもない。
港って言っても船が三艘も入ればいっぱいで、
ちょっと離れた小島に小さな砦があって……
よくあの砦に忍び込んで、夕日を眺めたな)
白髪「……これは、パンを焼く臭いか。
多少家の並びは代わったようだが、
こいつはかわらねぇなぁ」
白髪(とりあえず、町についたは良いが、
どうしたものか……宿屋なんか有ったっけか?」)
夕方 バリウガの町中
白髪「まさか、この程度の距離に
六日もかかっちまうとはな……」
白髪(帰って来ちまったな……
まさか生きている内にもう一度、
ここの土を踏むことになるとは思って無かったぜ)
白髪「変わってねぇなぁ、この町も」きょろきょろ
白髪(大きくもなければ、さして賑やかでもない。
港って言っても船が三艘も入ればいっぱいで、
ちょっと離れた小島に小さな砦があって……
よくあの砦に忍び込んで、夕日を眺めたな)
白髪「……これは、パンを焼く臭いか。
多少家の並びは代わったようだが、
こいつはかわらねぇなぁ」
白髪(とりあえず、町についたは良いが、
どうしたものか……宿屋なんか有ったっけか?」)
368: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:51:43.77 ID:hCoGRWHTo
子供1「あはは、鬼さんこちらー♪」
子供2「まてよーっ!
あんまり港の方に向かったらダメって、
お父さんたちから言われてるだろ!」
子供1「そんなのしーらない。
止めたかったら捕まえなさいよー!」
子供2「おいっ、後ろ向いて走ると……」
どったーん
白髪「っ!」ばっ
子供1「いたーいっ」どすん
子供2「大丈夫?」
子供1「ううー、おしり痛いけど、大丈夫。
おじさんが助けてくれたから……」
白髪「いやあ、すまねえな、支えきれなくてよ
いてて……」
子供2「まてよーっ!
あんまり港の方に向かったらダメって、
お父さんたちから言われてるだろ!」
子供1「そんなのしーらない。
止めたかったら捕まえなさいよー!」
子供2「おいっ、後ろ向いて走ると……」
どったーん
白髪「っ!」ばっ
子供1「いたーいっ」どすん
子供2「大丈夫?」
子供1「ううー、おしり痛いけど、大丈夫。
おじさんが助けてくれたから……」
白髪「いやあ、すまねえな、支えきれなくてよ
いてて……」
369: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:52:41.49 ID:hCoGRWHTo
子供2「おじさんも大丈夫?」
子供1「あの、ぶつかってごめんなさい」
白髪「なぁに、俺は大丈夫さ。
子供は元気が一番ってな……よっ、つつ」
子供1「もしかしておじさん、足くじいちゃった?」
白髪「あー、まあ、何ともねぇよ。大丈夫だ。
ほれ、こっちで遊ぶと危ないからな、
あっちに遊びにいけ?」
子供2「でも、痛そうだよ?
薬草貼らない? うちにいっぱいあるよ」
白髪「ほう、坊主の家は医者かなんかか?」
子供2「お医者さんじゃないよ!
お医者さんは山を二つ越えたトコまでいかないと。
うちはちょーちょーなの!」
子供1「あの、ぶつかってごめんなさい」
白髪「なぁに、俺は大丈夫さ。
子供は元気が一番ってな……よっ、つつ」
子供1「もしかしておじさん、足くじいちゃった?」
白髪「あー、まあ、何ともねぇよ。大丈夫だ。
ほれ、こっちで遊ぶと危ないからな、
あっちに遊びにいけ?」
子供2「でも、痛そうだよ?
薬草貼らない? うちにいっぱいあるよ」
白髪「ほう、坊主の家は医者かなんかか?」
子供2「お医者さんじゃないよ!
お医者さんは山を二つ越えたトコまでいかないと。
うちはちょーちょーなの!」
370: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:53:50.65 ID:hCoGRWHTo
白髪「ああ、そういや、町長のトコは薬師だったか。
ん? ……っつーと、赤毛の子供か?」
子供2「おじちゃん、お母さんの事知ってるの?」
白髪「あー、まあ、な。
そうだな、薬草なんざ別になくても大丈夫だが、
あの根暗の顔くらいは、見るか」
子供1「ねくら?」
白髪「何でもねぇよ。
よし、じゃあ坊主、ちょっとおまえさんの家まで、
案内してくれや」
子供2「いいよー」
子供1「じゃ、あたし先に行って、
お客さんだよって伝えてくるね!」
白髪「いや、そこまでするような事ぁ……」
子供1「ばっびゅーん」たたたーっ
子供2「おーい、またぶつかるなよー!」
白髪「……やれやれ。懲りない嬢ちゃんだ」
ん? ……っつーと、赤毛の子供か?」
子供2「おじちゃん、お母さんの事知ってるの?」
白髪「あー、まあ、な。
そうだな、薬草なんざ別になくても大丈夫だが、
あの根暗の顔くらいは、見るか」
子供1「ねくら?」
白髪「何でもねぇよ。
よし、じゃあ坊主、ちょっとおまえさんの家まで、
案内してくれや」
子供2「いいよー」
子供1「じゃ、あたし先に行って、
お客さんだよって伝えてくるね!」
白髪「いや、そこまでするような事ぁ……」
子供1「ばっびゅーん」たたたーっ
子供2「おーい、またぶつかるなよー!」
白髪「……やれやれ。懲りない嬢ちゃんだ」
371: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:54:30.17 ID:hCoGRWHTo
------------------------------------------------
夕方 バリウガ町長宅
赤毛「はい、それじゃ今日もちゃんと、
主の恵みに感謝しましょうね」
子供1「はーい」
子供2「ありがとーございまーす」
赤毛「こらっ、そんな風にいいかげんな事しないのっ。
ほら、ちゃんと手を合わせて、目を閉じて」
子供1「父よ、今日のめぐみのあることに、
感謝の気持ちをささげます」
子供2「土を耕し、野菜や麦を育ててくれる
兄弟達の働きに、感謝の気持ちをささげます」
白髪「……父よ、我らが血と肉になるこの糧に、
祝福を与えたまえ」
赤毛「父と子と、精霊の御名の元に。エイメン」
子供「「エイメン」」
白髪「……エイメン」
夕方 バリウガ町長宅
赤毛「はい、それじゃ今日もちゃんと、
主の恵みに感謝しましょうね」
子供1「はーい」
子供2「ありがとーございまーす」
赤毛「こらっ、そんな風にいいかげんな事しないのっ。
ほら、ちゃんと手を合わせて、目を閉じて」
子供1「父よ、今日のめぐみのあることに、
感謝の気持ちをささげます」
子供2「土を耕し、野菜や麦を育ててくれる
兄弟達の働きに、感謝の気持ちをささげます」
白髪「……父よ、我らが血と肉になるこの糧に、
祝福を与えたまえ」
赤毛「父と子と、精霊の御名の元に。エイメン」
子供「「エイメン」」
白髪「……エイメン」
372: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:55:15.47 ID:hCoGRWHTo
赤毛「さ、食べていいわよー」
子供1「わーい! 今日はごはんいっぱーい!」
子供2「あ、こら、そのニシンは僕が狙ってたのにー」
子供1「へへん、早い者勝ちだよー」
子供2「だったら、こっちは……」
子供1「あーっ! お肉そんなに取っちゃダメーっ」
赤毛「静かになさいっ!」
子供「「はーいっ」」
ばくばく、もぐもぐ
白髪「悪いねぇ、食事に呼んでもらっちまって」
赤毛「いえいえ、かまわないんですよ。
1ちゃんを守って怪我をされたなんて、
むしろこれくらいしかお礼ができない事が、
心苦しいくらいです」
白髪「いやいや、美味い食事に楽しい子供たちがいりゃ、
他には何もいらないってモンで」
子供1「わーい! 今日はごはんいっぱーい!」
子供2「あ、こら、そのニシンは僕が狙ってたのにー」
子供1「へへん、早い者勝ちだよー」
子供2「だったら、こっちは……」
子供1「あーっ! お肉そんなに取っちゃダメーっ」
赤毛「静かになさいっ!」
子供「「はーいっ」」
ばくばく、もぐもぐ
白髪「悪いねぇ、食事に呼んでもらっちまって」
赤毛「いえいえ、かまわないんですよ。
1ちゃんを守って怪我をされたなんて、
むしろこれくらいしかお礼ができない事が、
心苦しいくらいです」
白髪「いやいや、美味い食事に楽しい子供たちがいりゃ、
他には何もいらないってモンで」
373: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:56:07.47 ID:hCoGRWHTo
赤毛「……もしよければ、お酒もいかがですか?
少し待っててくださいね」いそいそ
子供1「ねえねえ、おじちゃん」もっきゅもっきゅ
白髪「ん、なんだ?」
子供1「おじちゃんとお母さんって、
知り合いなんだよね?
どういうお知り合いなの?」
白髪「いやぁ、知り合いっつても、俺は船乗りだからな。
昔この町に来た時に、ちょいと話した程度でよ」
子供1「でも、お母さんちょっといつもより、
おじさんとあってからそわそわしてるよ?」
赤毛「ばかな事言ってんじゃないの。
1ちゃんがこの人に怪我させるから、
申し訳なくて……」
白髪「そんなに気にしねぇでくれよ。
船乗りにゃ、この程度の怪我なんていつもの……」
赤毛 ちらっ
少し待っててくださいね」いそいそ
子供1「ねえねえ、おじちゃん」もっきゅもっきゅ
白髪「ん、なんだ?」
子供1「おじちゃんとお母さんって、
知り合いなんだよね?
どういうお知り合いなの?」
白髪「いやぁ、知り合いっつても、俺は船乗りだからな。
昔この町に来た時に、ちょいと話した程度でよ」
子供1「でも、お母さんちょっといつもより、
おじさんとあってからそわそわしてるよ?」
赤毛「ばかな事言ってんじゃないの。
1ちゃんがこの人に怪我させるから、
申し訳なくて……」
白髪「そんなに気にしねぇでくれよ。
船乗りにゃ、この程度の怪我なんていつもの……」
赤毛 ちらっ
374: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:57:22.18 ID:hCoGRWHTo
白髪「……いや、やっぱりちょっと痛むなぁ」
子供1「え、大丈夫?」
赤毛「1ちゃんが見境なしに走り回るから、
こうやって人に怪我させるのよ?」
子供1「あ、あうぅ」
子供2「だから走るなって言ったのに」
子供1「走るなとは言ってないよー」
子供2「言ったよ!」
子供1「いつのことー?
何時何分、そらが何回まわったころ-?」
子供2「とにかく言ったってば!」
白髪「ほれほれ、あんまり騒がしくすると、
また母ちゃんに怒られるぞ?
子供「「はっ」」じっ
子供1「え、大丈夫?」
赤毛「1ちゃんが見境なしに走り回るから、
こうやって人に怪我させるのよ?」
子供1「あ、あうぅ」
子供2「だから走るなって言ったのに」
子供1「走るなとは言ってないよー」
子供2「言ったよ!」
子供1「いつのことー?
何時何分、そらが何回まわったころ-?」
子供2「とにかく言ったってば!」
白髪「ほれほれ、あんまり騒がしくすると、
また母ちゃんに怒られるぞ?
子供「「はっ」」じっ
375: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:58:20.76 ID:hCoGRWHTo
赤毛「……賑やかなのもいいけど、
食事中はちゃんと味わって、
感謝しながら食べなさいね」苦笑
子供「「はーい」」
赤毛「好き嫌いもしちゃだめよ?」
子供1「えー、でもあたし、お豆がいやー……」
子供2「ぼく、マリネのたまねぎが辛くて……」
赤毛「だーめ! ちゃんと食べないと、
いつまでたっても大人になれないわよ!」
白髪「っ、く」ぴくっ
赤毛「あら、どうしました?」
白髪「いや、白芥子の種がちょっと辛かっただけだ」
子供2「白芥子は大丈夫―♪」
白髪「そうそうか、辛いのも食べられて偉いな」なで
子供2「えへへー」
わいわい、もぐもぐ
食事中はちゃんと味わって、
感謝しながら食べなさいね」苦笑
子供「「はーい」」
赤毛「好き嫌いもしちゃだめよ?」
子供1「えー、でもあたし、お豆がいやー……」
子供2「ぼく、マリネのたまねぎが辛くて……」
赤毛「だーめ! ちゃんと食べないと、
いつまでたっても大人になれないわよ!」
白髪「っ、く」ぴくっ
赤毛「あら、どうしました?」
白髪「いや、白芥子の種がちょっと辛かっただけだ」
子供2「白芥子は大丈夫―♪」
白髪「そうそうか、辛いのも食べられて偉いな」なで
子供2「えへへー」
わいわい、もぐもぐ
376: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/11(土) 23:59:56.29 ID:hCoGRWHTo
------------------------------------------------
夜 バリウガ町長宅
白髪「いやぁ、良い湯だった。
沐浴までさせてもらっちまって、悪い気がするぜ」
赤毛「気にしないでください。
子供を助けてくれたお礼ですから」にこっ
白髪「その子供達は……」
赤毛「はしゃぎ疲れたんでしょうね、
寝てしまっています」
白髪「……くく、寝顔は、可愛いモンだな」
赤毛「普段はやんちゃばかりですけどね。ふふ。
ああ、そうだ、ちょっとそこに座ってください。
薬草を貼りますわ」
白髪「ちょっとひねっただけだ、
この程度ならなんて事ぁねぇよ」
赤毛「きちんとしないと、
後になっても響いてしまいますよ。
ほら、座ってください」
白髪「……強引だなぁ」
夜 バリウガ町長宅
白髪「いやぁ、良い湯だった。
沐浴までさせてもらっちまって、悪い気がするぜ」
赤毛「気にしないでください。
子供を助けてくれたお礼ですから」にこっ
白髪「その子供達は……」
赤毛「はしゃぎ疲れたんでしょうね、
寝てしまっています」
白髪「……くく、寝顔は、可愛いモンだな」
赤毛「普段はやんちゃばかりですけどね。ふふ。
ああ、そうだ、ちょっとそこに座ってください。
薬草を貼りますわ」
白髪「ちょっとひねっただけだ、
この程度ならなんて事ぁねぇよ」
赤毛「きちんとしないと、
後になっても響いてしまいますよ。
ほら、座ってください」
白髪「……強引だなぁ」
377: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/12(日) 00:01:57.60 ID:l0iBYzGfo
ぺた、ぺた
赤毛「……懐かしいですね」
白髪「……なんの事だ?」
赤毛「とぼけないで良いですよ。
白髪さんですよね、あの丘の上の教会にいた。
一緒に遊んでた頃に、私をかばって怪我をして、
こうやって治療したり……
さっきからちょっと他人行儀にしてるから、
不思議な感じね……」
白髪「……しらネェなぁ」
赤毛「嘘をついてもダメですよ。
お父様にお顔がそっくりだから」
白髪「…………」
赤毛「久しぶりね」
白髪「ああ、久しぶりだな」
赤毛「まるで五十年くらい会ってないみたい」
白髪「……俺にとっちゃ、それくらいかもな」
赤毛「……」
赤毛「……懐かしいですね」
白髪「……なんの事だ?」
赤毛「とぼけないで良いですよ。
白髪さんですよね、あの丘の上の教会にいた。
一緒に遊んでた頃に、私をかばって怪我をして、
こうやって治療したり……
さっきからちょっと他人行儀にしてるから、
不思議な感じね……」
白髪「……しらネェなぁ」
赤毛「嘘をついてもダメですよ。
お父様にお顔がそっくりだから」
白髪「…………」
赤毛「久しぶりね」
白髪「ああ、久しぶりだな」
赤毛「まるで五十年くらい会ってないみたい」
白髪「……俺にとっちゃ、それくらいかもな」
赤毛「……」
378: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/12(日) 00:02:08.64 ID:l0iBYzGfo
ぺた、ぺた
赤毛「……懐かしいですね」
白髪「……なんの事だ?」
赤毛「とぼけないで良いですよ。
白髪さんですよね、あの丘の上の教会にいた。
一緒に遊んでた頃に、私をかばって怪我をして、
こうやって治療したり……
さっきからちょっと他人行儀にしてるから、
不思議な感じね……」
白髪「……しらネェなぁ」
赤毛「嘘をついてもダメですよ。
お父様にお顔がそっくりだから」
白髪「…………」
赤毛「久しぶりね」
白髪「ああ、久しぶりだな」
赤毛「まるで五十年くらい会ってないみたい」
白髪「……俺にとっちゃ、それくらいかもな」
赤毛「……」
赤毛「……懐かしいですね」
白髪「……なんの事だ?」
赤毛「とぼけないで良いですよ。
白髪さんですよね、あの丘の上の教会にいた。
一緒に遊んでた頃に、私をかばって怪我をして、
こうやって治療したり……
さっきからちょっと他人行儀にしてるから、
不思議な感じね……」
白髪「……しらネェなぁ」
赤毛「嘘をついてもダメですよ。
お父様にお顔がそっくりだから」
白髪「…………」
赤毛「久しぶりね」
白髪「ああ、久しぶりだな」
赤毛「まるで五十年くらい会ってないみたい」
白髪「……俺にとっちゃ、それくらいかもな」
赤毛「……」
379: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/12(日) 00:02:46.03 ID:l0iBYzGfo
白髪「しかし、驚いたな。
あの陰気でしられた赤毛の娘が、
いまや二児の母か」
赤毛「まだまだ、母親としては未熟だけどね」
白髪「そんなもんか?
立派な母親にみえるぜ」
赤毛「そう言ってもらえると嬉しいわ。
ふふ、昔からそうよね、あなたって」
白髪「何がだよ」
赤毛「私が迷ってたり、困ってたりすると、
それとなく助けてくれるの」
白髪「俺はそんな、王子様みてぇな生き物じゃねぇよ」
赤毛「でも、頼りになる友人だったわ」
白髪「俺にとっちゃ、頼りねぇ友人だったがな」
赤毛「心配してくれてたの?」
白髪「ふん、まさか」
あの陰気でしられた赤毛の娘が、
いまや二児の母か」
赤毛「まだまだ、母親としては未熟だけどね」
白髪「そんなもんか?
立派な母親にみえるぜ」
赤毛「そう言ってもらえると嬉しいわ。
ふふ、昔からそうよね、あなたって」
白髪「何がだよ」
赤毛「私が迷ってたり、困ってたりすると、
それとなく助けてくれるの」
白髪「俺はそんな、王子様みてぇな生き物じゃねぇよ」
赤毛「でも、頼りになる友人だったわ」
白髪「俺にとっちゃ、頼りねぇ友人だったがな」
赤毛「心配してくれてたの?」
白髪「ふん、まさか」
380: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/12(日) 00:03:41.62 ID:l0iBYzGfo
赤毛「私は、ずっと心配してたわよ。
だって、あなたが……
あなたのご家族がこの町から離れる原因は」
白髪「おい」
赤毛「町長だった私の両親が、追い出したから」
白髪「正しい判断だ」
赤毛「独善的な判断だったわ」
白髪「……」
赤毛「ずっとずっと、後悔してたの。
私があなたとよく遊んだりしてなかったら、
きっとまだあなたとご家族は、
この町にいられたんじゃないかって」
白髪「そんな事はねぇよ。
俺は教会に生まれた、呪いの子だからな。
いずれ両親共々追い出されてたさ」
赤毛「でも……」
白髪「くどいぜ」
だって、あなたが……
あなたのご家族がこの町から離れる原因は」
白髪「おい」
赤毛「町長だった私の両親が、追い出したから」
白髪「正しい判断だ」
赤毛「独善的な判断だったわ」
白髪「……」
赤毛「ずっとずっと、後悔してたの。
私があなたとよく遊んだりしてなかったら、
きっとまだあなたとご家族は、
この町にいられたんじゃないかって」
白髪「そんな事はねぇよ。
俺は教会に生まれた、呪いの子だからな。
いずれ両親共々追い出されてたさ」
赤毛「でも……」
白髪「くどいぜ」
381: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/12(日) 00:04:56.85 ID:l0iBYzGfo
赤毛「……ごめんなさい」
白髪「ちなみに、お前の両親はどうしたよ」
赤毛「二年前に海賊が来て、
父は町を守るために戦って、町は守れたけど、海に。
母はその現実に耐えきれなくて……」
白髪「……そうか。
いまの町長は旦那か?」
赤毛「うん。あんまり気が利く人じゃないけど、
町のため、子供のために一生懸命に働く、
とっても優しい人よ。
頑張りすぎて、役場に泊まる事が多いけど」
白髪「なるほど、それで今日も家にいねぇのか」
赤毛「お客様にひきあわせたいから、
できれば帰ってきてって言ったんだけど、
ちょっと急ぎの仕事が入ったって……」
白髪「そうか。大変だな。
しかし、近いうちにちょいと、話がしたいんだが、
中継ぎを頼めるか?」
赤毛「お話って?」
白髪「ちなみに、お前の両親はどうしたよ」
赤毛「二年前に海賊が来て、
父は町を守るために戦って、町は守れたけど、海に。
母はその現実に耐えきれなくて……」
白髪「……そうか。
いまの町長は旦那か?」
赤毛「うん。あんまり気が利く人じゃないけど、
町のため、子供のために一生懸命に働く、
とっても優しい人よ。
頑張りすぎて、役場に泊まる事が多いけど」
白髪「なるほど、それで今日も家にいねぇのか」
赤毛「お客様にひきあわせたいから、
できれば帰ってきてって言ったんだけど、
ちょっと急ぎの仕事が入ったって……」
白髪「そうか。大変だな。
しかし、近いうちにちょいと、話がしたいんだが、
中継ぎを頼めるか?」
赤毛「お話って?」
382: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/12(日) 00:05:40.26 ID:l0iBYzGfo
白髪「まあ、そりゃちょっとな。
お前が実は、マリネのタマネギとか、
マメの水煮が苦手だって事を伝えねぇとな、なんてよ」
赤毛「まぁ、それは伝えられたら困っちゃうわ。
子供に知られたら特にね。
口封じには、明日の朝ご飯に
ニンジンのバターソテーを出すしかないかしら?」
白髪「くく、俺が悪かった、勘弁してくれ。
未だに俺は、あれだけは食えねぇんだ」
赤毛「じゃあ、何を話すのか、
本当の事を教えてくれる?」
白髪「……すまんな。
多分まだ知らん方が良いことだ」
赤毛「……そう。わかったわ。
あなたが何も言わないなら、私も聞かない」
白髪「すまんな」
赤毛「昔のよしみよ」
白髪「助かる」
お前が実は、マリネのタマネギとか、
マメの水煮が苦手だって事を伝えねぇとな、なんてよ」
赤毛「まぁ、それは伝えられたら困っちゃうわ。
子供に知られたら特にね。
口封じには、明日の朝ご飯に
ニンジンのバターソテーを出すしかないかしら?」
白髪「くく、俺が悪かった、勘弁してくれ。
未だに俺は、あれだけは食えねぇんだ」
赤毛「じゃあ、何を話すのか、
本当の事を教えてくれる?」
白髪「……すまんな。
多分まだ知らん方が良いことだ」
赤毛「……そう。わかったわ。
あなたが何も言わないなら、私も聞かない」
白髪「すまんな」
赤毛「昔のよしみよ」
白髪「助かる」
383: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/12(日) 00:06:12.93 ID:l0iBYzGfo
赤毛「それにしても、ずいぶん変わったわね」
白髪「……人の倍以上も歳をとる体だからな」
赤毛「それも有るけど、違うわよ」
白髪「何がだ?」
赤毛 そっ
白髪「……」
赤毛「傷がいっぱい。
激しい生き方をしてきたのね」
白髪「まあ、それなりにな。
だが、子供やなんかがいることに比べりゃ、
大した事じゃあねぇさ」
赤毛「そうかしら?」
白髪「そういうものさ。
幼なじみだったお前の子供を見て、
つくづく思うぜ。
後悔はないが、こんな『形』は残せてねぇなとよ」
赤毛「……」
白髪「……人の倍以上も歳をとる体だからな」
赤毛「それも有るけど、違うわよ」
白髪「何がだ?」
赤毛 そっ
白髪「……」
赤毛「傷がいっぱい。
激しい生き方をしてきたのね」
白髪「まあ、それなりにな。
だが、子供やなんかがいることに比べりゃ、
大した事じゃあねぇさ」
赤毛「そうかしら?」
白髪「そういうものさ。
幼なじみだったお前の子供を見て、
つくづく思うぜ。
後悔はないが、こんな『形』は残せてねぇなとよ」
赤毛「……」
384: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/12(日) 00:06:40.05 ID:l0iBYzGfo
白髪「さて、そんじゃ俺はそろそろ寝るぜ」
赤毛「……おやすみなさい」
白髪「ああ。オヤスミ」なでなで
赤毛「…………もう、子供じゃないのよ?」
白髪「なに、俺みてぇなじいさんからすりゃ、
子供みてぇなもんだろうよ」
赤毛「中身は私と大してかわらないでしょ」
白髪「そうだったかもしれねぇな。
さて、そんじゃ改めて、おやすみだ」
赤毛「 」ぼそっ
白髪「ん、何か言ったか?」
赤毛「いいえ、お休みなさい」にこっ
赤毛「……おやすみなさい」
白髪「ああ。オヤスミ」なでなで
赤毛「…………もう、子供じゃないのよ?」
白髪「なに、俺みてぇなじいさんからすりゃ、
子供みてぇなもんだろうよ」
赤毛「中身は私と大してかわらないでしょ」
白髪「そうだったかもしれねぇな。
さて、そんじゃ改めて、おやすみだ」
赤毛「 」ぼそっ
白髪「ん、何か言ったか?」
赤毛「いいえ、お休みなさい」にこっ
391: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:18:08.35 ID:hovJNFSOo
------------------------------------------------
朝 バリウガ町長宅
子供1「おはよーございますっ」
白髪「おう、おはようさん。
いやぁ、よく眠らせてもらったぜ」
子供2「良い夢みられたました?」
子供1「おかしいっぱいの夢とか!」
白髪「お菓子いっぱい、ってのとは違うが、
まあ悪くない夢だったな。
懐かしい夢だったぜ」
子供1「なつかしいって、どんな感じ?」
白髪「そうさなぁ。
秋の草っぱらで寝転がってる感じか」
子供2「それが、懐かしいなの?」
子供1「秋にそーやって寝転がるのは気持ちいいから、
良い夢なんだねっ」
白髪「まあ、そういうこった。
ところでお二人さんよ、母ちゃんはどうした?」
朝 バリウガ町長宅
子供1「おはよーございますっ」
白髪「おう、おはようさん。
いやぁ、よく眠らせてもらったぜ」
子供2「良い夢みられたました?」
子供1「おかしいっぱいの夢とか!」
白髪「お菓子いっぱい、ってのとは違うが、
まあ悪くない夢だったな。
懐かしい夢だったぜ」
子供1「なつかしいって、どんな感じ?」
白髪「そうさなぁ。
秋の草っぱらで寝転がってる感じか」
子供2「それが、懐かしいなの?」
子供1「秋にそーやって寝転がるのは気持ちいいから、
良い夢なんだねっ」
白髪「まあ、そういうこった。
ところでお二人さんよ、母ちゃんはどうした?」
392: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:19:38.15 ID:hovJNFSOo
子供2「お母さんはお出かけしてるんだ。
お父さんに相談するって。
だから、おじちゃんにはテーブルのご飯食べてって」
白髪「そうか、朝早くからきまじめだな……
早いに超したことはないが。
で、お前らはもう食べたのか?」
子供1「うん、いっぱい食べたよ!」
子供2「1っちゃんったら、白髪のおじちゃんの分も」
子供1「わーっ!! 2ぃくん言っちゃだめだって」
子供2「でも、こっそりチーズ食べようとしたろ。
そういうのはダメなんだぞ」
子供1「う、ううー」じぃっ
白髪「がはは、その程度じゃ怒らねぇって。
ほれ、もっと食うか?
お前らの母ちゃんの飯は美味いから、
腹一杯になるまで食いたいよな」
子供1「わーいっ♪」
子供2「あ、こら、だめだよ!
お客さんのご飯食べちゃっ」
お父さんに相談するって。
だから、おじちゃんにはテーブルのご飯食べてって」
白髪「そうか、朝早くからきまじめだな……
早いに超したことはないが。
で、お前らはもう食べたのか?」
子供1「うん、いっぱい食べたよ!」
子供2「1っちゃんったら、白髪のおじちゃんの分も」
子供1「わーっ!! 2ぃくん言っちゃだめだって」
子供2「でも、こっそりチーズ食べようとしたろ。
そういうのはダメなんだぞ」
子供1「う、ううー」じぃっ
白髪「がはは、その程度じゃ怒らねぇって。
ほれ、もっと食うか?
お前らの母ちゃんの飯は美味いから、
腹一杯になるまで食いたいよな」
子供1「わーいっ♪」
子供2「あ、こら、だめだよ!
お客さんのご飯食べちゃっ」
393: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:20:39.77 ID:hovJNFSOo
白髪「ガキが細かい事を気にするな。
食べ終わったらどうするんだ?」
子供1「今日は午後から、教会でおべんきょー」
白髪「つまり午前中は暇か。
何かして遊んでやろうか?」
子供1「ホントっ? えっと、それなら、それならー」
子供2「それなら、おじさん!
剣の使い方教えてよ!」
白髪「チャンバラか?
まあ、別にかまわねぇけどよ」
子供1「えー。せっかくだから、冒険のお話とか」
子供2「そんなの、また他の時でもできるだろ」
子供1「チャンバラだってそうじゃんー」
子供2「違うよ、僕が習いたいのは……」
白髪「ん? よく聞こえねぇぜ」
子供2「僕が習いたいのは、相手を倒せる剣だよ」
食べ終わったらどうするんだ?」
子供1「今日は午後から、教会でおべんきょー」
白髪「つまり午前中は暇か。
何かして遊んでやろうか?」
子供1「ホントっ? えっと、それなら、それならー」
子供2「それなら、おじさん!
剣の使い方教えてよ!」
白髪「チャンバラか?
まあ、別にかまわねぇけどよ」
子供1「えー。せっかくだから、冒険のお話とか」
子供2「そんなの、また他の時でもできるだろ」
子供1「チャンバラだってそうじゃんー」
子供2「違うよ、僕が習いたいのは……」
白髪「ん? よく聞こえねぇぜ」
子供2「僕が習いたいのは、相手を倒せる剣だよ」
394: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:21:24.44 ID:hovJNFSOo
------------------------------------------------
朝 バリウガ町長宅 庭
白髪「倒すための剣、なぁ……」
子供2「こう、必殺技みたいなの!
シラガストラーッシュみたいな!」
白髪「なんじゃそりゃ……
まあ、とりあえず剣を持ってみるか?」ぽいっ
子供2「わ、わわわ……」よろよろ
子供1「やーい、ふーらふらー」
子供2「うるさいよっ」ちゃきっ
白髪「構えがなってねぇなあ。
もっと胸を張れ。首をさらすな。
腕に力が入りすぎだ。
だからって剣先降ろすな」ぺしぺし
子供2「む、むむ」
白髪「よーし、そのまま素振りだ。
とりあえずもうムリって思うまで振ってみろ」
子供2「ていっ、やーっ!」
朝 バリウガ町長宅 庭
白髪「倒すための剣、なぁ……」
子供2「こう、必殺技みたいなの!
シラガストラーッシュみたいな!」
白髪「なんじゃそりゃ……
まあ、とりあえず剣を持ってみるか?」ぽいっ
子供2「わ、わわわ……」よろよろ
子供1「やーい、ふーらふらー」
子供2「うるさいよっ」ちゃきっ
白髪「構えがなってねぇなあ。
もっと胸を張れ。首をさらすな。
腕に力が入りすぎだ。
だからって剣先降ろすな」ぺしぺし
子供2「む、むむ」
白髪「よーし、そのまま素振りだ。
とりあえずもうムリって思うまで振ってみろ」
子供2「ていっ、やーっ!」
395: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:22:45.56 ID:hovJNFSOo
白髪「……で、なんなんだ、ありゃ」ぼそぼそ
子供1「んにゅ?」
白髪「見るからに細くて、
勉強はできるけどケンカはダメって、
学者肌の典型みたいなヤツが、なんで剣だよ」
子供1「うん、2ぃちゃんよわいよー」
子供2「うるさいよ、1っちゃん!」
白髪「ほれ、また猫背になってるぞ!
肩の後ろの骨で、背骨を両側から押さえる感じで、
ぐっと胸を張れ!
振り下ろしたあとの剣に振り回されるな。
剣に体勢を持っていかれてるぞ。
降ろしたらぴたっと止めろ!」
子供2「はいっ」ぶん、ぶん
子供1「……あのね、2ぃちゃんね。
村の漁師のとこの男の子たちにからかわれたの。
ひょろひょろで弱いーって。
それで、そんな事ないってケンカして、負けて……」
白髪「だから強くなりたい、剣を使えるように、か。
間違っちゃいねぇが……」
子供1「んにゅ?」
白髪「見るからに細くて、
勉強はできるけどケンカはダメって、
学者肌の典型みたいなヤツが、なんで剣だよ」
子供1「うん、2ぃちゃんよわいよー」
子供2「うるさいよ、1っちゃん!」
白髪「ほれ、また猫背になってるぞ!
肩の後ろの骨で、背骨を両側から押さえる感じで、
ぐっと胸を張れ!
振り下ろしたあとの剣に振り回されるな。
剣に体勢を持っていかれてるぞ。
降ろしたらぴたっと止めろ!」
子供2「はいっ」ぶん、ぶん
子供1「……あのね、2ぃちゃんね。
村の漁師のとこの男の子たちにからかわれたの。
ひょろひょろで弱いーって。
それで、そんな事ないってケンカして、負けて……」
白髪「だから強くなりたい、剣を使えるように、か。
間違っちゃいねぇが……」
396: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:24:38.53 ID:hovJNFSOo
子供2「ふ、ふぉぉ」よろよろー
子供1「もうムリみたい?」
子供2「ぜ、はっ。もう、むりー……」ぺたん
白髪「おいおい、誰が座って良いって言った!
罰としてあと十回素振りだ!」
子供2「ええ、も、もう……」
白髪「口答えも禁止だ。十回追加!
それとも、もう剣を教えてもらうのはいいですってか」
子供2「…………う。せ、せいっ。はっ」ぶん、ぶん
子供1「ふらふらだよ?」
白髪「おい、坊主!
へっぴり腰になってるぞ。あと二十回!」
子供2「よけいなこと、いうなよっ!」
子供1「あう、ごめん……」
白髪「なんだ、それだけ元気ならあと十回追加だな」
子供1「もうムリみたい?」
子供2「ぜ、はっ。もう、むりー……」ぺたん
白髪「おいおい、誰が座って良いって言った!
罰としてあと十回素振りだ!」
子供2「ええ、も、もう……」
白髪「口答えも禁止だ。十回追加!
それとも、もう剣を教えてもらうのはいいですってか」
子供2「…………う。せ、せいっ。はっ」ぶん、ぶん
子供1「ふらふらだよ?」
白髪「おい、坊主!
へっぴり腰になってるぞ。あと二十回!」
子供2「よけいなこと、いうなよっ!」
子供1「あう、ごめん……」
白髪「なんだ、それだけ元気ならあと十回追加だな」
397: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:26:44.71 ID:hovJNFSOo
子供2「せ、せいーっ!」
白髪「もっと声だせ! ひょろひょろすんな!
十回追加!」
子供2「はいーっ!」
子供1「……」
白髪「お前は誰を相手にしてるつもりだ。
空なんか見上げたって相手はいねぇぞー。
ちゃんと目の前に相手がいるつもりでやり直せ!
あと二十回だ」
子供2「ひ、ふ、」ふららー
白髪「だぁからよ、胸張ってしっかり剣を支えろ!
脇が開いてるっての。
持ち上げるのも遅すぎるぞ!
そんなんじゃ、持ち上げる前に切られるだろ」
子供2「……っ、っ!」ふららら
子供1「おじちゃん、2ぃちゃんもうムリだよ……
ふらふらでかわいそうだよ」
白髪「もっと声だせ! ひょろひょろすんな!
十回追加!」
子供2「はいーっ!」
子供1「……」
白髪「お前は誰を相手にしてるつもりだ。
空なんか見上げたって相手はいねぇぞー。
ちゃんと目の前に相手がいるつもりでやり直せ!
あと二十回だ」
子供2「ひ、ふ、」ふららー
白髪「だぁからよ、胸張ってしっかり剣を支えろ!
脇が開いてるっての。
持ち上げるのも遅すぎるぞ!
そんなんじゃ、持ち上げる前に切られるだろ」
子供2「……っ、っ!」ふららら
子供1「おじちゃん、2ぃちゃんもうムリだよ……
ふらふらでかわいそうだよ」
398: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:27:30.36 ID:hovJNFSOo
白髪「ほれ坊主、女の嬢ちゃんにまで、
ふらふらとか言われてるぞ!
悔しかったらあと二十回振ってみろ!」
子供2「……ぃ……いっ!」
子供1「そんなつもりじゃ!
ねえ、2ぃちゃんがつらそうだよ!」
子供2「だいじょ、ぶっ、ふぅっ」ぶん、ぶん
子供1「…………」
白髪「ほう、まだ大丈夫ってんなら、
さらに十回追加だ!
それから、素振りの剣先下がってるぞ!
なんだその左右にふらふらの切り下ろし!
お前は本当に相手を倒すつもりはあるのか」
子供2「う、ぐ……ぐ、っっ!」
白髪「ほれ、剣があがってネェぞ。
気合い入れてあげろ!
相手がいたら、待ってはくれねぇからな!」
子供2「うううう、せ、ぃ、っはっ」
子供1「……」
ふらふらとか言われてるぞ!
悔しかったらあと二十回振ってみろ!」
子供2「……ぃ……いっ!」
子供1「そんなつもりじゃ!
ねえ、2ぃちゃんがつらそうだよ!」
子供2「だいじょ、ぶっ、ふぅっ」ぶん、ぶん
子供1「…………」
白髪「ほう、まだ大丈夫ってんなら、
さらに十回追加だ!
それから、素振りの剣先下がってるぞ!
なんだその左右にふらふらの切り下ろし!
お前は本当に相手を倒すつもりはあるのか」
子供2「う、ぐ……ぐ、っっ!」
白髪「ほれ、剣があがってネェぞ。
気合い入れてあげろ!
相手がいたら、待ってはくれねぇからな!」
子供2「うううう、せ、ぃ、っはっ」
子供1「……」
399: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:28:31.18 ID:hovJNFSOo
子供2「はっ、うう……」
からん
白髪「どうした、もう持てないか?
俺のカットラスなんざ剣の中じゃぁ、
かなり軽い獲物だぜ?」
子供1「ねえ、おじちゃんっ」
子供2「ぜ、……はっ」きゅ、からん……
子供1「2ぃちゃん、もうムリだよ。
はじめて剣持ったのに、
そんなにできるわけないよっ!」
白髪「まあ、そうだな。
よーし、休んでいいぜー。
座ってゆっくり深呼吸だ。
それからほれ、塩と水をとれ」
子供2 ごくごくごく……ぷはーっ
子供1「…………おじちゃんは、
あたしたちの事が嫌いなの?」
白髪「あん?」
からん
白髪「どうした、もう持てないか?
俺のカットラスなんざ剣の中じゃぁ、
かなり軽い獲物だぜ?」
子供1「ねえ、おじちゃんっ」
子供2「ぜ、……はっ」きゅ、からん……
子供1「2ぃちゃん、もうムリだよ。
はじめて剣持ったのに、
そんなにできるわけないよっ!」
白髪「まあ、そうだな。
よーし、休んでいいぜー。
座ってゆっくり深呼吸だ。
それからほれ、塩と水をとれ」
子供2 ごくごくごく……ぷはーっ
子供1「…………おじちゃんは、
あたしたちの事が嫌いなの?」
白髪「あん?」
400: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:29:42.89 ID:hovJNFSOo
子供1「だって、2ぃちゃんがムリって言ったのに、
それからいっぱい、追加だーって」
白髪「……」
子供2「はふ、はふ……」
白髪「まあ、ちょっとお前さんの歳にはきつかったが、
別に嫌いだからガツガツやらせたわけじゃねぇぜ?
ムリって言った後に、コイツ何回振ったよ」
子供1「え、えーっと……」
白髪「百七回だな。
最初にムリって言うまでで、八十回くらいか。
最後はもう、振ってるってぇか振られてる形だが、
それでもそんだけ『ムリの先』があったろ」
子供1「あったけど……」
白髪「最初はそんなモンなんだよ。
だいたいのヤツは、できる事とできねぇ事を、
自分でちゃんと知ることもできねぇわけだ。
だから、自分で勝手に、ある程度でムリを作る」
子供1「でも、まだ2ぃちゃんが、ぜはぜはしてるよ」
それからいっぱい、追加だーって」
白髪「……」
子供2「はふ、はふ……」
白髪「まあ、ちょっとお前さんの歳にはきつかったが、
別に嫌いだからガツガツやらせたわけじゃねぇぜ?
ムリって言った後に、コイツ何回振ったよ」
子供1「え、えーっと……」
白髪「百七回だな。
最初にムリって言うまでで、八十回くらいか。
最後はもう、振ってるってぇか振られてる形だが、
それでもそんだけ『ムリの先』があったろ」
子供1「あったけど……」
白髪「最初はそんなモンなんだよ。
だいたいのヤツは、できる事とできねぇ事を、
自分でちゃんと知ることもできねぇわけだ。
だから、自分で勝手に、ある程度でムリを作る」
子供1「でも、まだ2ぃちゃんが、ぜはぜはしてるよ」
401: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:30:33.75 ID:hovJNFSOo
白髪「まあ、二百近く大人用の剣を振り回してりゃ、
しばらく喋れなくもならぁな」
子供1「こんなのじゃ、まともな練習もむりだよ……」
白髪「まともな練習ができる体力もねぇってこった。
正直に言やぁ、剣を振るにゃぁ向いてねぇよ」
子供1「……」
白髪「そう睨むなよ。
別にいじめてるってワケでもねぇ。
なぁ、坊主よ」
子供2「はぁ、はぁ……」
白髪「町のガキにケンカで負けて、
悔しかったから剣を習いたいだって?」
子供2「…………」こくり
白髪「あのなぁ、港で働いてるようなガキ共は、
小さい頃から親を手伝って、
でっかい荷物を持って働いてるんだ。
そんな連中に叶わなくたって、別に良いだろうよ」
子供2「……そんなこと、ないもん」
しばらく喋れなくもならぁな」
子供1「こんなのじゃ、まともな練習もむりだよ……」
白髪「まともな練習ができる体力もねぇってこった。
正直に言やぁ、剣を振るにゃぁ向いてねぇよ」
子供1「……」
白髪「そう睨むなよ。
別にいじめてるってワケでもねぇ。
なぁ、坊主よ」
子供2「はぁ、はぁ……」
白髪「町のガキにケンカで負けて、
悔しかったから剣を習いたいだって?」
子供2「…………」こくり
白髪「あのなぁ、港で働いてるようなガキ共は、
小さい頃から親を手伝って、
でっかい荷物を持って働いてるんだ。
そんな連中に叶わなくたって、別に良いだろうよ」
子供2「……そんなこと、ないもん」
402: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:31:46.65 ID:hovJNFSOo
白髪「お前さんの親は町長で薬屋だろ。
連中は力仕事。お前さんは勉強が仕事。
それぞれに得意な所があるんだ。
自分と相手が互いに得意で、
どうしても譲れないもんだったら話が変わるが、
別にそんなんで勝てなくてもいいだろうよ」
子供2「……そんな事、ないもん。けほっ」ちらっ
白髪「…………。
おい、嬢ちゃんよ」
子供1「ふえ?」
白髪「もうちょっと水持ってきてやってくれや。
まだ水が足りネェみてぇだ」
子供1「わかったよっ!」たたっ
子供2「……」
白髪「なんでぇ、嬢ちゃんのためってか?」
子供2「……だって、あいつら最初、
1っちゃんにケンカ売ってて」
連中は力仕事。お前さんは勉強が仕事。
それぞれに得意な所があるんだ。
自分と相手が互いに得意で、
どうしても譲れないもんだったら話が変わるが、
別にそんなんで勝てなくてもいいだろうよ」
子供2「……そんな事、ないもん。けほっ」ちらっ
白髪「…………。
おい、嬢ちゃんよ」
子供1「ふえ?」
白髪「もうちょっと水持ってきてやってくれや。
まだ水が足りネェみてぇだ」
子供1「わかったよっ!」たたっ
子供2「……」
白髪「なんでぇ、嬢ちゃんのためってか?」
子供2「……だって、あいつら最初、
1っちゃんにケンカ売ってて」
403: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:33:52.76 ID:hovJNFSOo
白髪「女の子にケンカ売るたぁ、
男の風上にもおけネェ連中だな……」
子供2「だから、僕が1っちゃんを守るんだって。
剣も、まともに振れなかったけど」
白髪「そうだな。
剣の一本もまともに振れねぇんじゃ、
ケンカの相手になんざ、まちがってもなれねぇなぁ」
子供2「……」
白髪「それに、そいつらを倒せれば良いって話じゃあ、
間違っても終わりゃしねぇよ。
倒したヤツより強いヤツに狙われたり、
逆恨みした連中に闇討ちされたりな。
そういう相手のメンツに泥をつけりゃ、
付け焼き刃で多少強くなったってどうしようもネェ」
子供2「じゃあ、だまって負ければいいの?
殴られたりしても、我慢すればいいの?」
白髪「真っ向から一対一で殴り合うってのが、
こういう時のお約束で分かり易いがな、
そんなのは、殴り合うしか能がねぇ連中に任せろ。
お前は別に勝ちたいってわけじゃねぇだろ?」
子供2「……でも、負けたら痛いし」
男の風上にもおけネェ連中だな……」
子供2「だから、僕が1っちゃんを守るんだって。
剣も、まともに振れなかったけど」
白髪「そうだな。
剣の一本もまともに振れねぇんじゃ、
ケンカの相手になんざ、まちがってもなれねぇなぁ」
子供2「……」
白髪「それに、そいつらを倒せれば良いって話じゃあ、
間違っても終わりゃしねぇよ。
倒したヤツより強いヤツに狙われたり、
逆恨みした連中に闇討ちされたりな。
そういう相手のメンツに泥をつけりゃ、
付け焼き刃で多少強くなったってどうしようもネェ」
子供2「じゃあ、だまって負ければいいの?
殴られたりしても、我慢すればいいの?」
白髪「真っ向から一対一で殴り合うってのが、
こういう時のお約束で分かり易いがな、
そんなのは、殴り合うしか能がねぇ連中に任せろ。
お前は別に勝ちたいってわけじゃねぇだろ?」
子供2「……でも、負けたら痛いし」
404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:34:36.93 ID:hovJNFSOo
白髪「勝ち負けで割り切ろうとするなよ。
お前はその頭があるんだろ?
だったら、勝ち負けじゃない場所に、
もちこんでやりゃいいじゃねぇか」
子供2「勝ち負けじゃないところに?」
白髪「一番分かり易いのは、逃げるだな」
子供2「負けてるじゃん!」
白髪「誰も勝ってなんかいねぇがな。
怪我もしねぇし、相手も満足おおよそ満足する。
逃げるってのは頭を使えばそう難しくねぇしな」
子供2「……そうなの?」
白髪「さっきも言ったが、
自分は何ができて何ができねぇのか、
それを正しく認識する所から物事ってのは始まりだ。
たとえばお前なら、歳の割に体が小さいよな」
子供2「だから、ケンカも弱くて」
白髪「だからケンカをしなけりゃいい。
体が小さいから、狭い場所を通れるよな。
不安定な場所も通りやすいだろ。
そういう場所は、港があって水路の流れるこの町は、
いくつだってあるだろ?」
お前はその頭があるんだろ?
だったら、勝ち負けじゃない場所に、
もちこんでやりゃいいじゃねぇか」
子供2「勝ち負けじゃないところに?」
白髪「一番分かり易いのは、逃げるだな」
子供2「負けてるじゃん!」
白髪「誰も勝ってなんかいねぇがな。
怪我もしねぇし、相手も満足おおよそ満足する。
逃げるってのは頭を使えばそう難しくねぇしな」
子供2「……そうなの?」
白髪「さっきも言ったが、
自分は何ができて何ができねぇのか、
それを正しく認識する所から物事ってのは始まりだ。
たとえばお前なら、歳の割に体が小さいよな」
子供2「だから、ケンカも弱くて」
白髪「だからケンカをしなけりゃいい。
体が小さいから、狭い場所を通れるよな。
不安定な場所も通りやすいだろ。
そういう場所は、港があって水路の流れるこの町は、
いくつだってあるだろ?」
405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:36:50.83 ID:hovJNFSOo
子供2「でも、そもそも強くなれば……」
白髪「強くなる事も、勝つことも、簡単じゃねぇんだ。
重要なのは、本当の意味で負けないことだな。
大切なモノを守りきることができりゃ、
それが『お前にとっての勝利』だ。
必要な強さがあるとすりゃ、守りたい奴の背中を
後ろで支えながら逃げ切る程度の体力でいい。
ケンカで勝つよりよっぽど効率がいいだろ」
子供2「……」
白髪「あんまり納得できない顔だな」
子供2「だって……」
白髪「ケンカに勝ったって、
良いことなんざ何もねぇんだって言っても、
納得はできねぇってか?
まあ、わかるがな。俺もそうだったしよ」
子供2「おじちゃんは、強いんでしょ……だからだよ。
弱い僕の気持ちはわからいんだ……」
白髪「俺は確かに負けた事がほとんどねぇが、
強いってわけじゃぁねぇんだがな。
いや、騎士団にいた頃は負けっぱなしだったしなぁ」
子供2「……」
白髪「強くなる事も、勝つことも、簡単じゃねぇんだ。
重要なのは、本当の意味で負けないことだな。
大切なモノを守りきることができりゃ、
それが『お前にとっての勝利』だ。
必要な強さがあるとすりゃ、守りたい奴の背中を
後ろで支えながら逃げ切る程度の体力でいい。
ケンカで勝つよりよっぽど効率がいいだろ」
子供2「……」
白髪「あんまり納得できない顔だな」
子供2「だって……」
白髪「ケンカに勝ったって、
良いことなんざ何もねぇんだって言っても、
納得はできねぇってか?
まあ、わかるがな。俺もそうだったしよ」
子供2「おじちゃんは、強いんでしょ……だからだよ。
弱い僕の気持ちはわからいんだ……」
白髪「俺は確かに負けた事がほとんどねぇが、
強いってわけじゃぁねぇんだがな。
いや、騎士団にいた頃は負けっぱなしだったしなぁ」
子供2「……」
406: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:37:34.24 ID:hovJNFSOo
白髪「とりあえずよ。
その素振りとか、走り込みとか、
強くなりたいなら毎日やってみろ。
できるなら港にいって、
大人達の手伝いもさせてもらえ。
まずは満足に剣を振る事ができる体力!
一に体力、二に体力だ!
体力がついたら、すんげぇ技を教えてやるよ」
子供2「ほんとっ?!」
白髪「おうよ。騎士団に伝わる伝説の技だ。
期待して良いぜ?」にやっ
子供2「……が、がんばるよ!」
白髪「おう。
そんじゃ俺はちょいと散歩してくらぁ。
ムリせず休めよ」
子供2「はい、ししょーっ!」
白髪 ひらひら
とことこ
白髪「…………俺が師匠ってガラかよ」
赤毛「あら、ずいぶん格好良かったわよ」
その素振りとか、走り込みとか、
強くなりたいなら毎日やってみろ。
できるなら港にいって、
大人達の手伝いもさせてもらえ。
まずは満足に剣を振る事ができる体力!
一に体力、二に体力だ!
体力がついたら、すんげぇ技を教えてやるよ」
子供2「ほんとっ?!」
白髪「おうよ。騎士団に伝わる伝説の技だ。
期待して良いぜ?」にやっ
子供2「……が、がんばるよ!」
白髪「おう。
そんじゃ俺はちょいと散歩してくらぁ。
ムリせず休めよ」
子供2「はい、ししょーっ!」
白髪 ひらひら
とことこ
白髪「…………俺が師匠ってガラかよ」
赤毛「あら、ずいぶん格好良かったわよ」
407: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:38:25.98 ID:hovJNFSOo
白髪「いつから見てやがった?
坊主がへたり始めた時に木の陰でそわそわしてたよな」
赤毛「あら、ばれてたの?」
白髪「わからいでか。
森に隠れるには、その髪が鮮やかすぎらぁ」
赤毛「……ふふ。
昔のかくれんぼの時と、同じ事を言うのね」
白髪「うぐ。と、とりあえず、悪かったな。
おまえのガキなのに、シゴいちまって」
赤毛「いいのよ。男の子は叩いて伸ばせってね。
それに、最近はちょっと逸ってたところが有るから、
折ってくれて助かったわ」
白髪「下手に剣なんざ持ち出せば、命がないからな。
自分が弱いって事を忘れたヤツほど、
長生きできなくなる……」
赤毛「だから、感謝してるのよ」
白髪「それなら助かるが。
アイツが剣を持とうとしたら、
俺をダシにして止めてやってくれや。
しばらくしたらまた、自分が強くなったって、
きっと誤解するだろうからな」
坊主がへたり始めた時に木の陰でそわそわしてたよな」
赤毛「あら、ばれてたの?」
白髪「わからいでか。
森に隠れるには、その髪が鮮やかすぎらぁ」
赤毛「……ふふ。
昔のかくれんぼの時と、同じ事を言うのね」
白髪「うぐ。と、とりあえず、悪かったな。
おまえのガキなのに、シゴいちまって」
赤毛「いいのよ。男の子は叩いて伸ばせってね。
それに、最近はちょっと逸ってたところが有るから、
折ってくれて助かったわ」
白髪「下手に剣なんざ持ち出せば、命がないからな。
自分が弱いって事を忘れたヤツほど、
長生きできなくなる……」
赤毛「だから、感謝してるのよ」
白髪「それなら助かるが。
アイツが剣を持とうとしたら、
俺をダシにして止めてやってくれや。
しばらくしたらまた、自分が強くなったって、
きっと誤解するだろうからな」
408: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:39:30.64 ID:hovJNFSOo
赤毛「わかったわ。
それじゃ、こんどはこっちの用件ね。
旦那様がアナタに会いたいって」
白髪「ほう、案外早かったな。
早くても夜にはなるだろうって思っていたが」
赤毛「そこはほら、台所とかいろいろ握ってる、
奥様のお願いは聞かざるをえないってね」
白髪「かぁー、そりゃぁ怖いな。
俺はこの町を逃げ出して正解だったかもな」
赤毛「……そんな事言うと、
憲兵さんに突き出しちゃうわよ?」
白髪「せめてお前の旦那に面会してからだな。
どんなに恐ろしい女か告げ口してからじゃねぇと、
断頭台に上っても頭だけで言い続けるぜ」
赤毛「ちょ、ちょっとやめてよっ。
私がそういう怖い話苦手だって、
憶えてて言ってるでしょ……性格悪いんだから」
白髪「どっちもどっちだろ。
なんだ、まだセイレーンのおとぎ話に震えあがって、
夜にトイレに行けないのか?」
それじゃ、こんどはこっちの用件ね。
旦那様がアナタに会いたいって」
白髪「ほう、案外早かったな。
早くても夜にはなるだろうって思っていたが」
赤毛「そこはほら、台所とかいろいろ握ってる、
奥様のお願いは聞かざるをえないってね」
白髪「かぁー、そりゃぁ怖いな。
俺はこの町を逃げ出して正解だったかもな」
赤毛「……そんな事言うと、
憲兵さんに突き出しちゃうわよ?」
白髪「せめてお前の旦那に面会してからだな。
どんなに恐ろしい女か告げ口してからじゃねぇと、
断頭台に上っても頭だけで言い続けるぜ」
赤毛「ちょ、ちょっとやめてよっ。
私がそういう怖い話苦手だって、
憶えてて言ってるでしょ……性格悪いんだから」
白髪「どっちもどっちだろ。
なんだ、まだセイレーンのおとぎ話に震えあがって、
夜にトイレに行けないのか?」
409: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:40:22.03 ID:hovJNFSOo
赤毛「…………むぅっ、ばーかっ!」げしっ
白髪「ってぇぇええっ、いま、お前!
俺のくじいた足を狙ったろ!」
赤毛「そんなの知りません」
白髪「いや、治療して知ってるだろ!」
赤毛「記憶が定かでございません。
専門家に依頼して事実関係の再調査を行い該当問題に
おける対策委員会を設置した上でご回答させていただきますー」
白髪「……息継ぎなしでそんな台詞を言えるほど、
町長職ってのは政治家くさく無かった気がするが……」
赤毛「しらないしらないしらないですー。
ホントにもう、デリカシーがないんだから……
だいたいアレって、十四歳の頃の話じゃない。
それを今さら持ち出すなんて……」ぶつぶつ
白髪「おい、おーい。
役場の前、通りすぎてるぞ?」
赤毛「……っ、もう!」たたっ
白髪「ってぇぇええっ、いま、お前!
俺のくじいた足を狙ったろ!」
赤毛「そんなの知りません」
白髪「いや、治療して知ってるだろ!」
赤毛「記憶が定かでございません。
専門家に依頼して事実関係の再調査を行い該当問題に
おける対策委員会を設置した上でご回答させていただきますー」
白髪「……息継ぎなしでそんな台詞を言えるほど、
町長職ってのは政治家くさく無かった気がするが……」
赤毛「しらないしらないしらないですー。
ホントにもう、デリカシーがないんだから……
だいたいアレって、十四歳の頃の話じゃない。
それを今さら持ち出すなんて……」ぶつぶつ
白髪「おい、おーい。
役場の前、通りすぎてるぞ?」
赤毛「……っ、もう!」たたっ
410: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:41:08.37 ID:hovJNFSOo
------------------------------------------------
昼 バリウガ 役場の町長室
白髪「俺は白髪ってんだ。よろしくな」すっ
町長「どうも初めまして、
この町で代表を任されている町長です。
よろしく」ぎゅっ
白髪(おうおう、随分と険のある表情だなぁ。
年の頃は赤毛より少し上、か。
ハゲかけちゃいるが、それなりに見栄えのいい顔が、
なんでこんなにらみつけて……)
町長「すまないが、赤毛。
しばらく席をはずしてくれないかな?」
赤毛「でも……」
町長「………………」
赤毛「では、後で」
とことこ、ぱたん
白髪「随分と、慎重じゃねぇか」
町長「慎重にもなるというものだ、海賊」
昼 バリウガ 役場の町長室
白髪「俺は白髪ってんだ。よろしくな」すっ
町長「どうも初めまして、
この町で代表を任されている町長です。
よろしく」ぎゅっ
白髪(おうおう、随分と険のある表情だなぁ。
年の頃は赤毛より少し上、か。
ハゲかけちゃいるが、それなりに見栄えのいい顔が、
なんでこんなにらみつけて……)
町長「すまないが、赤毛。
しばらく席をはずしてくれないかな?」
赤毛「でも……」
町長「………………」
赤毛「では、後で」
とことこ、ぱたん
白髪「随分と、慎重じゃねぇか」
町長「慎重にもなるというものだ、海賊」
411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:42:36.91 ID:hovJNFSOo
白髪「……それは誰に聞いたよ」
町長「港の職員の一人が以前、
さきほど、この町に海賊が来ているかもしれないと、
不安げだったが進言してくれてな。
どうやら、別の町で働いていた頃に、
海賊衣装で歩く姿を見ていたらしい。
この小さい町だ。
なじみの商人以外に来たと言えば、
お前ぐらいしかいない……」
白髪「まあ、たしかにそうだろうな」
町長「妻と子供を人質にとったつもりか?
だが、私は町長だ、そんな情に流されるつもりは……」
白髪「おいおい、ちょっと待ってくれよ。
別に、迷惑をかけに来たわけじゃねぇ」
町長「……なら、目的はなんだ」
白髪「この町の防備を、しばらくの間でいい、
いつも以上に厳重にした方がいいって警告をだな」
町長「それは、この町を襲うということか!」
白髪「主語がねぇけど、それ俺が襲うと思ってるだろ。
わざわざ警備を増やすようにいう海賊がいるかよ」
町長「港の職員の一人が以前、
さきほど、この町に海賊が来ているかもしれないと、
不安げだったが進言してくれてな。
どうやら、別の町で働いていた頃に、
海賊衣装で歩く姿を見ていたらしい。
この小さい町だ。
なじみの商人以外に来たと言えば、
お前ぐらいしかいない……」
白髪「まあ、たしかにそうだろうな」
町長「妻と子供を人質にとったつもりか?
だが、私は町長だ、そんな情に流されるつもりは……」
白髪「おいおい、ちょっと待ってくれよ。
別に、迷惑をかけに来たわけじゃねぇ」
町長「……なら、目的はなんだ」
白髪「この町の防備を、しばらくの間でいい、
いつも以上に厳重にした方がいいって警告をだな」
町長「それは、この町を襲うということか!」
白髪「主語がねぇけど、それ俺が襲うと思ってるだろ。
わざわざ警備を増やすようにいう海賊がいるかよ」
412: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:43:50.33 ID:hovJNFSOo
町長「……そう言って、油断させるつもりか?」
白髪「あんた、どんな頭の中身してるんだっつーの。
とりあえずよ、海の防備と……
それから南西の山にもできりゃ一小隊は、
常に置いておくようにしておくといい」
町長「南西の山だと?
隣町とは良好な関係を作っている、
心配される余地はない。
この町はさらに他の方角も周りを山に囲まれ、
正面が海という天然の要塞だ。
湾の中にある小島の砲台と、
せり出した海岸線の砲台の両方が海を守る間は、
何人たりとも陸には近づけんぞ」
白髪「確かに正面の防備は堅牢だな。
船の砲は多く積もうにも重量が問題になるが、
島の砲台にはその制限がねぇ。
さらに、どんなに多くの艦隊が押し寄せても、
入り口が狭くなっている事で、
実質敵には、ニ隻対二砲台の戦いだ。
弾の補充さえ十分にありゃ、負けねぇだろうな」
町長「……詳しいな」
白髪「この町の出身だったんだ。
その程度の知識はある。
だからこそ、南西の山を見張れって言ってるんだ」
白髪「あんた、どんな頭の中身してるんだっつーの。
とりあえずよ、海の防備と……
それから南西の山にもできりゃ一小隊は、
常に置いておくようにしておくといい」
町長「南西の山だと?
隣町とは良好な関係を作っている、
心配される余地はない。
この町はさらに他の方角も周りを山に囲まれ、
正面が海という天然の要塞だ。
湾の中にある小島の砲台と、
せり出した海岸線の砲台の両方が海を守る間は、
何人たりとも陸には近づけんぞ」
白髪「確かに正面の防備は堅牢だな。
船の砲は多く積もうにも重量が問題になるが、
島の砲台にはその制限がねぇ。
さらに、どんなに多くの艦隊が押し寄せても、
入り口が狭くなっている事で、
実質敵には、ニ隻対二砲台の戦いだ。
弾の補充さえ十分にありゃ、負けねぇだろうな」
町長「……詳しいな」
白髪「この町の出身だったんだ。
その程度の知識はある。
だからこそ、南西の山を見張れって言ってるんだ」
413: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:44:48.35 ID:hovJNFSOo
町長「だが、それはできん」
白髪「なんでできないんだ」
町長「我らがベネッタ共和国の式典が近々あり、
そのためにこの町の兵の余剰は、
全てそこに向かわせてしまったのだ」
白髪「呼び戻せばいいじゃねぇかよ」
町長「他の……この町よりも小さな町でさえ、
兵を供出しているんだ。
いまさら、海賊の男から情報が入ったので、
町に兵隊を戻したいなどと云う事はできん」
白髪「……見栄か」
町長「この町の立場を守るという戦争への出兵だ」
白髪「だがよ、人数が足りないまま海賊を迎えれば、
この町は連中にとって良いエサにしかならねぇぞ」
町長「我が町の兵士は勇敢だ。
多少の数くらいはどうとでもする。
むしろはりきって、普段の倍は力を見せるだろう」
白髪「なんでできないんだ」
町長「我らがベネッタ共和国の式典が近々あり、
そのためにこの町の兵の余剰は、
全てそこに向かわせてしまったのだ」
白髪「呼び戻せばいいじゃねぇかよ」
町長「他の……この町よりも小さな町でさえ、
兵を供出しているんだ。
いまさら、海賊の男から情報が入ったので、
町に兵隊を戻したいなどと云う事はできん」
白髪「……見栄か」
町長「この町の立場を守るという戦争への出兵だ」
白髪「だがよ、人数が足りないまま海賊を迎えれば、
この町は連中にとって良いエサにしかならねぇぞ」
町長「我が町の兵士は勇敢だ。
多少の数くらいはどうとでもする。
むしろはりきって、普段の倍は力を見せるだろう」
414: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:46:04.30 ID:hovJNFSOo
白髪「だが、山側の防備に割く人数はねぇんだろ」
町長「山側は隣の都市との関係が友好であれば、
問題など生じる事はない。
そして正面の防備が万全なのだ。
貴様のような海賊の言葉など聞く耳はもたん!」
白髪「俺が言ってるのは、
山を一つ超えた所にある崖に……」
町長「くどいッッ!!
そうしてこの町の防備に穴を開けようとしても、
先祖代々続いてきたこの守備に、
ネズミ一匹通すこともない!
そしてネズミの言葉に耳を傾ける必要もない!」
白髪「ホントに話をきかねぇなぁ……」
町長 りんりんりん
がちゃ
兵士「町長様、いかがされましたか」
町長「こちらの客人がお帰りだ。
丁重に送って差し上げろ」
町長「山側は隣の都市との関係が友好であれば、
問題など生じる事はない。
そして正面の防備が万全なのだ。
貴様のような海賊の言葉など聞く耳はもたん!」
白髪「俺が言ってるのは、
山を一つ超えた所にある崖に……」
町長「くどいッッ!!
そうしてこの町の防備に穴を開けようとしても、
先祖代々続いてきたこの守備に、
ネズミ一匹通すこともない!
そしてネズミの言葉に耳を傾ける必要もない!」
白髪「ホントに話をきかねぇなぁ……」
町長 りんりんりん
がちゃ
兵士「町長様、いかがされましたか」
町長「こちらの客人がお帰りだ。
丁重に送って差し上げろ」
415: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:46:54.52 ID:hovJNFSOo
兵士「はっ! 客人、こちらに」
白髪「……」
町長「我が妻の朋友というから会ったが、
次に顔を見れば、即刻落としてくれる……っ」
とことこ、がちゃり
たたっ
赤毛「どうでした?」
白髪「どうもこうも……
なんだ、あんたの旦那は海賊に恨みでもあるのか?」
赤毛「……私の父と同じように、
彼は両親と兄妹が共に、海賊に殺されたって」
白髪「……そうか、まあそりゃぁ、
仕方ねぇのかもしれねぇけどなぁ……」
赤毛「どうかしたの?」
白髪「いや、なんでもねぇ。……なんでもねぇよ」
赤毛「ねえ」
白髪「…………」
白髪「……」
町長「我が妻の朋友というから会ったが、
次に顔を見れば、即刻落としてくれる……っ」
とことこ、がちゃり
たたっ
赤毛「どうでした?」
白髪「どうもこうも……
なんだ、あんたの旦那は海賊に恨みでもあるのか?」
赤毛「……私の父と同じように、
彼は両親と兄妹が共に、海賊に殺されたって」
白髪「……そうか、まあそりゃぁ、
仕方ねぇのかもしれねぇけどなぁ……」
赤毛「どうかしたの?」
白髪「いや、なんでもねぇ。……なんでもねぇよ」
赤毛「ねえ」
白髪「…………」
416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:47:38.19 ID:hovJNFSOo
------------------------------------------------
夕方 バリウガ 港
白髪「……義理は果たした」
白髪(だが、なぁ……)
とことこ
白髪「呪われた子って理由で話を聞かれないって、
そんな可能性は考えていたが、
海賊だからって理由で切り捨てられるか……
それじゃぁ、どうしようもねぇなぁ」
少女「じゃあ、もし呪いの子って理由だったら、
どうにかできたの?」
白髪「俺の云う事を聞かないと、
俺と同じ呪いにかかっちまうぞー、なんて脅せば、
多少は効果があるかと思ったんだがな」
少女「いやいや、むりでしょそれ。
私だって信じないって!」
狼「アタシだって信じない」
双子姉「あたしもそんなの信じないしっ♪」
夕方 バリウガ 港
白髪「……義理は果たした」
白髪(だが、なぁ……)
とことこ
白髪「呪われた子って理由で話を聞かれないって、
そんな可能性は考えていたが、
海賊だからって理由で切り捨てられるか……
それじゃぁ、どうしようもねぇなぁ」
少女「じゃあ、もし呪いの子って理由だったら、
どうにかできたの?」
白髪「俺の云う事を聞かないと、
俺と同じ呪いにかかっちまうぞー、なんて脅せば、
多少は効果があるかと思ったんだがな」
少女「いやいや、むりでしょそれ。
私だって信じないって!」
狼「アタシだって信じない」
双子姉「あたしもそんなの信じないしっ♪」
417: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:48:36.61 ID:hovJNFSOo
白髪「……で、お前ら、いつの間に来たんだよ」
少女「ついさっきだよ。ほんと疲れたー。
女だけで船旅ってダメだね」
狼「体目当てのくさい男共なんて海に落とせば良いのに、
少女が下手に愛想笑いで距離を取るから、
逆に勘違いして寄ってくるんだって」
白髪「まあ、こんだけ可愛い女が二人で旅してりゃ、
そうならん理由はねぇか」
双子姉「!……!」
白髪「なんでぇ、胸なんざ張ってどうした。
腰がいてぇのか?」
双子姉「ちっがーう!
あたしも! 女! れでぃー!」
白髪「がはは、冗談だっての。
わかってるぜ、双子姉の嬢ちゃんも、
魅力的なレディーってヤツだ。
あと五年したら俺のベッドに招待……ふごぶっ」
狼「元気っ、そうでっ、なによりねっ!!」げし、ずが
少女「あーあ……」
少女「ついさっきだよ。ほんと疲れたー。
女だけで船旅ってダメだね」
狼「体目当てのくさい男共なんて海に落とせば良いのに、
少女が下手に愛想笑いで距離を取るから、
逆に勘違いして寄ってくるんだって」
白髪「まあ、こんだけ可愛い女が二人で旅してりゃ、
そうならん理由はねぇか」
双子姉「!……!」
白髪「なんでぇ、胸なんざ張ってどうした。
腰がいてぇのか?」
双子姉「ちっがーう!
あたしも! 女! れでぃー!」
白髪「がはは、冗談だっての。
わかってるぜ、双子姉の嬢ちゃんも、
魅力的なレディーってヤツだ。
あと五年したら俺のベッドに招待……ふごぶっ」
狼「元気っ、そうでっ、なによりねっ!!」げし、ずが
少女「あーあ……」
418: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:50:18.25 ID:hovJNFSOo
双子姉「それにしても、
到着してすぐに見つかって良かったねー……
大きくない町だから、
最悪は町の広場で延々と名前を叫ぼうとか……」
白髪「そりゃぁ、勘弁して欲しい話だ。
んで、なんでお前らはココにいるんだよ。
俺を追ってきたみてぇだが、なんか有ったか?」
少女「なんか有ったかって、大ありでしょ!
何も言わないで出て行くから、
最後に話したの私だったみたいだし、
なにかヒドイこどでも、ぶいじぎに……」ぐじゅっ
狼「……泣かせた」
双子姉「白髪のおっちゃんが泣かせたーっ♪」
白髪「お、俺のせいかっ?!
いやまあ、俺のせいっぽいが」
少女「……ふだごあねちゃんも、
ごごにぐるまで、いっばいないでだじ……」
双子姉「わーっ、わーっ!
言わなくていいのにー」
白髪「……あー、なんつーか、その。すまん」
到着してすぐに見つかって良かったねー……
大きくない町だから、
最悪は町の広場で延々と名前を叫ぼうとか……」
白髪「そりゃぁ、勘弁して欲しい話だ。
んで、なんでお前らはココにいるんだよ。
俺を追ってきたみてぇだが、なんか有ったか?」
少女「なんか有ったかって、大ありでしょ!
何も言わないで出て行くから、
最後に話したの私だったみたいだし、
なにかヒドイこどでも、ぶいじぎに……」ぐじゅっ
狼「……泣かせた」
双子姉「白髪のおっちゃんが泣かせたーっ♪」
白髪「お、俺のせいかっ?!
いやまあ、俺のせいっぽいが」
少女「……ふだごあねちゃんも、
ごごにぐるまで、いっばいないでだじ……」
双子姉「わーっ、わーっ!
言わなくていいのにー」
白髪「……あー、なんつーか、その。すまん」
419: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:52:11.42 ID:hovJNFSOo
狼「すまんで済んだら断頭台はいらないって言葉、
あたしに教えてくれたのは白髪よね」
白髪「だが、すまんとしか言えなくてよ。
今回のコレは俺の個人的な話だからな、
海賊船で近づくワケにもいかねぇ場所だし、
ちょいと行ってさりげなく戻ろうかーってな」
少女「だったら、なおざら、
ぢゃんと理由、おじえでいっでぐだざい……」
狼「ほら、とりあえず鼻かみなさい……」
少女「ちーんっ」
狼「アタシは少女についてきただけだから、
特に何かを言うつもりはないけど……」
白髪「まあ、だろうな」
狼「……ちょっと、心配した、から」(//////
白髪「……………………」石化
双子姉「……」つんつん
少女 すんっ、すんっ
あたしに教えてくれたのは白髪よね」
白髪「だが、すまんとしか言えなくてよ。
今回のコレは俺の個人的な話だからな、
海賊船で近づくワケにもいかねぇ場所だし、
ちょいと行ってさりげなく戻ろうかーってな」
少女「だったら、なおざら、
ぢゃんと理由、おじえでいっでぐだざい……」
狼「ほら、とりあえず鼻かみなさい……」
少女「ちーんっ」
狼「アタシは少女についてきただけだから、
特に何かを言うつもりはないけど……」
白髪「まあ、だろうな」
狼「……ちょっと、心配した、から」(//////
白髪「……………………」石化
双子姉「……」つんつん
少女 すんっ、すんっ
420: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:53:26.08 ID:hovJNFSOo
狼「な、人がせっかく恥ずかしいの我慢したのに、
なんでぼーっと、空なんか見てるのさっ!」げしっ
白髪「――@;^¥▽*?!」びくんびくん
少女「……なんか、いつもより痛がってない?」
狼「……しらない。アタシ先に宿屋に部屋取るから」
少女「それじゃ、私は……
町の探索に行ってくるから」
双子姉「え、二人ともいっちゃうの?」
狼「そこのゴミ、任せたから」
少女「ゴミって、とりあえず宿屋までは一緒にいこ!」
狼「ちょっと、腕くまないでよ」
少女「そういえばさっきの、心配って……」
狼「……痛いのと痛いの、どっちがいい?」
少女「どっちも遠慮します!」
がやがや、とことこ
なんでぼーっと、空なんか見てるのさっ!」げしっ
白髪「――@;^¥▽*?!」びくんびくん
少女「……なんか、いつもより痛がってない?」
狼「……しらない。アタシ先に宿屋に部屋取るから」
少女「それじゃ、私は……
町の探索に行ってくるから」
双子姉「え、二人ともいっちゃうの?」
狼「そこのゴミ、任せたから」
少女「ゴミって、とりあえず宿屋までは一緒にいこ!」
狼「ちょっと、腕くまないでよ」
少女「そういえばさっきの、心配って……」
狼「……痛いのと痛いの、どっちがいい?」
少女「どっちも遠慮します!」
がやがや、とことこ
421: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:54:06.13 ID:hovJNFSOo
白髪「ってーなー。
あいつ、本気で……くそぉ……」
双子姉「大丈夫なの?」
白髪「……そんなに心配そうな顔なんざするな。
いつものじゃれ合いと同じだろ」
双子姉「でも、いつもは大した事なさそうなのに、
今のは痛そうにしてたよね?」
白髪「そんな事ねぇぜ。
いつだって殴られれば痛ぇからな。
所で、もしかして本当に三人で、
船を置いてこっちに来ちまったのか?」
双子姉「うん……
だって、くろちゃんが何も教えてくれなくて」
白髪「くろちゃん。ああ、男の事か。
まあ、アイツは俺に義理立てしただけだからよ、
恨むんなら、アイツに黙らせた俺を恨んでくれ」
双子姉「……恨まないよ。
あたしだって、知ってたら聞かないもん」
あいつ、本気で……くそぉ……」
双子姉「大丈夫なの?」
白髪「……そんなに心配そうな顔なんざするな。
いつものじゃれ合いと同じだろ」
双子姉「でも、いつもは大した事なさそうなのに、
今のは痛そうにしてたよね?」
白髪「そんな事ねぇぜ。
いつだって殴られれば痛ぇからな。
所で、もしかして本当に三人で、
船を置いてこっちに来ちまったのか?」
双子姉「うん……
だって、くろちゃんが何も教えてくれなくて」
白髪「くろちゃん。ああ、男の事か。
まあ、アイツは俺に義理立てしただけだからよ、
恨むんなら、アイツに黙らせた俺を恨んでくれ」
双子姉「……恨まないよ。
あたしだって、知ってたら聞かないもん」
422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:54:39.82 ID:hovJNFSOo
白髪「知ってたらって、誰かに聞いたのか?」
双子姉「隠れ港の情報屋さんに、
ここが白髪のおっちゃんの故郷で、
故郷を守るために戦いに行ったって」
白髪「口の軽い情報屋だ。もう使わねぇぞ、ったく」
双子姉「でも、おかげでここに来れたよ」
白髪「来させたくなかったんだ。
ヤツの情報が本当なら、形がどうあれ、
この町は近く戦場のようになるぜ」
双子姉「……」
白髪「できるだけ止めようとしたんだがなぁ……
海賊の忠告なんざ聞く耳はねぇってよ」
双子姉「こんなに」
白髪「ん?」
双子姉「こんなに良いにおいがして」
白髪「パンやピザの焼ける臭いだな。
チーズだのバターだのも、そろそろ臭いが混じるぜ。
もう少しすりゃ、仕事を終えた男達が家に帰る頃だ」
双子姉「隠れ港の情報屋さんに、
ここが白髪のおっちゃんの故郷で、
故郷を守るために戦いに行ったって」
白髪「口の軽い情報屋だ。もう使わねぇぞ、ったく」
双子姉「でも、おかげでここに来れたよ」
白髪「来させたくなかったんだ。
ヤツの情報が本当なら、形がどうあれ、
この町は近く戦場のようになるぜ」
双子姉「……」
白髪「できるだけ止めようとしたんだがなぁ……
海賊の忠告なんざ聞く耳はねぇってよ」
双子姉「こんなに」
白髪「ん?」
双子姉「こんなに良いにおいがして」
白髪「パンやピザの焼ける臭いだな。
チーズだのバターだのも、そろそろ臭いが混じるぜ。
もう少しすりゃ、仕事を終えた男達が家に帰る頃だ」
423: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:55:29.97 ID:hovJNFSOo
双子姉「みんなが元気よくて」
白髪「港の連中は活気があるってのが相場だな。
荷物の上げ下ろしで鍛えた、
丸太みてぇにぶっとい腕に、
通りの店でマグにつっこんだエールを掲げて、
女房の悪口でも言いながら家に帰るのさ」
双子姉「くわしいね」
白髪「昔から、変わらねぇからな」
双子姉「みんな、笑顔だね」
白髪「人が笑顔になれねぇ町は死んだ町だ。
ここは、そうじゃねぇからな」
双子姉「子供達も笑ってるね」
白髪「お前だって、子供じゃねぇか」
双子姉「……子供じゃないよ?」
白髪「十二、十三程度でなに言ってやがる」
双子姉「……んー」ぐーっ
白髪「……何の真似だよ」
白髪「港の連中は活気があるってのが相場だな。
荷物の上げ下ろしで鍛えた、
丸太みてぇにぶっとい腕に、
通りの店でマグにつっこんだエールを掲げて、
女房の悪口でも言いながら家に帰るのさ」
双子姉「くわしいね」
白髪「昔から、変わらねぇからな」
双子姉「みんな、笑顔だね」
白髪「人が笑顔になれねぇ町は死んだ町だ。
ここは、そうじゃねぇからな」
双子姉「子供達も笑ってるね」
白髪「お前だって、子供じゃねぇか」
双子姉「……子供じゃないよ?」
白髪「十二、十三程度でなに言ってやがる」
双子姉「……んー」ぐーっ
白髪「……何の真似だよ」
424: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:56:08.00 ID:hovJNFSOo
双子姉「……ちゅぅ、するの」
白髪「誰とだよ」
双子姉「白髪のおっちゃんと」
白髪「しねぇよ、ばか」
双子姉「ばかって言った方がばかなんだよ。
あたしは本気だよ?
本気で白髪のおっちゃんと大人のちゅぅをね」
白髪「いらねぇよ。
五年経ってから出直して来い」
双子姉「知らないモン」ぐいーっ
白髪「だぁーっ、そのおちょぼ口を近づけんな!」ぐー
双子姉「ならちゅぅしてよぉっ」ぐぐいーっ
白髪「仮にもレディーだって言うんだったら、
そんな珍妙な顔を寄せるんじゃねぇよっ」むにーっ
双子姉「がうがうーっ」ぶんぶん
白髪「いや、お前、狼じゃねぇだろ」
白髪「誰とだよ」
双子姉「白髪のおっちゃんと」
白髪「しねぇよ、ばか」
双子姉「ばかって言った方がばかなんだよ。
あたしは本気だよ?
本気で白髪のおっちゃんと大人のちゅぅをね」
白髪「いらねぇよ。
五年経ってから出直して来い」
双子姉「知らないモン」ぐいーっ
白髪「だぁーっ、そのおちょぼ口を近づけんな!」ぐー
双子姉「ならちゅぅしてよぉっ」ぐぐいーっ
白髪「仮にもレディーだって言うんだったら、
そんな珍妙な顔を寄せるんじゃねぇよっ」むにーっ
双子姉「がうがうーっ」ぶんぶん
白髪「いや、お前、狼じゃねぇだろ」
425: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:56:54.21 ID:hovJNFSOo
双子姉「……」むっすー
白髪「なんだなんだ?
いきなりどうしてキスなんざしようとする。
初めての相手は特別って言うじゃねぇか。
そうやって粗末にするもんじゃねぇよ」
双子姉「……もんっ」
白髪「粗末だろ」
双子姉「粗末じゃないもん。
あたし、白髪のおっちゃんのこと、大好きだもんっ」
白髪「ちげぇだろ」
双子姉「そんなことないもんっ」
白髪「そいつは、親とかそういうのに対してだろ。
体を許す相手は、そういう相手じゃねぇのにしな」
双子姉「ちがうもん。
ほんとに、ほんとに、ちがうんだもん」
白髪「……俺にとっては、お前は孫なんだよ」
双子姉「……」ぽろぽろ
白髪「なんだなんだ?
いきなりどうしてキスなんざしようとする。
初めての相手は特別って言うじゃねぇか。
そうやって粗末にするもんじゃねぇよ」
双子姉「……もんっ」
白髪「粗末だろ」
双子姉「粗末じゃないもん。
あたし、白髪のおっちゃんのこと、大好きだもんっ」
白髪「ちげぇだろ」
双子姉「そんなことないもんっ」
白髪「そいつは、親とかそういうのに対してだろ。
体を許す相手は、そういう相手じゃねぇのにしな」
双子姉「ちがうもん。
ほんとに、ほんとに、ちがうんだもん」
白髪「……俺にとっては、お前は孫なんだよ」
双子姉「……」ぽろぽろ
426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:58:49.50 ID:hovJNFSOo
白髪「泣き止んだら、行こうぜ。
はやくしねえと、ハラヘリ少女が皿を鳴らして、
まだかまだかって騒ぎ出すぜ」
双子姉「……ばか」
白髪「ばかって言った方がばかなんだろ?」
双子姉「いま二回言った白髪のおっちゃんは救えないね」
白髪「…………いい度胸じゃねぇか。
まて、こらっ。くすぐってやろうっ!」
双子姉「ひょい、ひょーいってね。
へへん、捕まらないよーだ!」
白髪「やろっ、せいっ」
双子姉「きゃ。つかまっちったー」
白髪「さーて、くすぐってやるから覚悟し……」
双子姉「ちゅ」
白髪「……なにしてんだよ」
双子姉「ちゅぅするって、いったじゃん。
家族だったら、いいでしょ!」
はやくしねえと、ハラヘリ少女が皿を鳴らして、
まだかまだかって騒ぎ出すぜ」
双子姉「……ばか」
白髪「ばかって言った方がばかなんだろ?」
双子姉「いま二回言った白髪のおっちゃんは救えないね」
白髪「…………いい度胸じゃねぇか。
まて、こらっ。くすぐってやろうっ!」
双子姉「ひょい、ひょーいってね。
へへん、捕まらないよーだ!」
白髪「やろっ、せいっ」
双子姉「きゃ。つかまっちったー」
白髪「さーて、くすぐってやるから覚悟し……」
双子姉「ちゅ」
白髪「……なにしてんだよ」
双子姉「ちゅぅするって、いったじゃん。
家族だったら、いいでしょ!」
427: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/16(木) 04:59:33.65 ID:hovJNFSOo
白髪「……ったく、先がおもいやられるな」
双子姉「それはこっちの台詞だもん」
白髪「……」なでなで
双子姉「んー♪」
白髪「……ほれ、少女が待ってる。いくぜ」
双子姉「ハラヘリングおねーちゃんのために、
れっつごー♪」ぎゅっ
白髪「ほれ、暑苦しいから離れろ」
双子姉「えー、やだもーん」
白髪「ったく、しょーがねぇなぁ」
双子姉「へへっ」くるくるっ♪
白髪(時よ、とまれ。お前は美しいってか。
……あと五年。
叶うなら、神様よ。俺の命が流れ落ちるのを……)
双子姉「ふんふふーん」くるくるっ♪
双子姉「それはこっちの台詞だもん」
白髪「……」なでなで
双子姉「んー♪」
白髪「……ほれ、少女が待ってる。いくぜ」
双子姉「ハラヘリングおねーちゃんのために、
れっつごー♪」ぎゅっ
白髪「ほれ、暑苦しいから離れろ」
双子姉「えー、やだもーん」
白髪「ったく、しょーがねぇなぁ」
双子姉「へへっ」くるくるっ♪
白髪(時よ、とまれ。お前は美しいってか。
……あと五年。
叶うなら、神様よ。俺の命が流れ落ちるのを……)
双子姉「ふんふふーん」くるくるっ♪
436: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/19(日) 23:57:52.48 ID:ngVyZ5OLo
------------------------------------------------
夜 バリウガの酒場
がやがや
少女「えーっと、それじゃとりあえず、
改めて再会を祝う感じで、かんぱーい!」
全員「かんぱーい!」
白髪「かーっ、やっぱこの街のエールはいいなぁ!」
双子姉「この鶏料理もおいしー♪」
狼「…………」もぐもぐもぐもぐ
少女「あはは、狼さんもうちょっと落ち着いて。
取ったりしないからさ」
狼「う、うるさい。別に取られるとか思ってないって」
双子姉「じゃー、ミートパイいただきー!」
狼「っ! ちょっと、それアタシが取っておいたの!」
双子姉「へへん。ふぁふぃふぃふぁふぇふぁ……」
夜 バリウガの酒場
がやがや
少女「えーっと、それじゃとりあえず、
改めて再会を祝う感じで、かんぱーい!」
全員「かんぱーい!」
白髪「かーっ、やっぱこの街のエールはいいなぁ!」
双子姉「この鶏料理もおいしー♪」
狼「…………」もぐもぐもぐもぐ
少女「あはは、狼さんもうちょっと落ち着いて。
取ったりしないからさ」
狼「う、うるさい。別に取られるとか思ってないって」
双子姉「じゃー、ミートパイいただきー!」
狼「っ! ちょっと、それアタシが取っておいたの!」
双子姉「へへん。ふぁふぃふぃふぁふぇふぁ……」
437: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:00:24.23 ID:PkwhPbyao
少女「口の中に何かある時はしゃべっちゃだめ!」
双子姉「むぅぅ……もぐもぐ。はぁーい」
白髪「がはは、元気でいいじゃねぇか」
双子姉「だよねーっ。はぐっ。もきゅもきゅ」
少女「ちょっと、白髪さーん……」じろり
狼「……少女って、そういう所で結構云うよね」
白髪「まあ、育ちの良さがうかがえるっつーかな」
双子姉「少女のお姉ちゃんはお嬢様?」
少女「別にそういう理由じゃないと思うけどーって、
ほら、口の周りに食べカスついてるって」ぐしぐし
双子姉「んむぅ……」
白髪「……育ちがどうこうって云うより、
母親気質ってところか」
双子姉「むぅぅ……もぐもぐ。はぁーい」
白髪「がはは、元気でいいじゃねぇか」
双子姉「だよねーっ。はぐっ。もきゅもきゅ」
少女「ちょっと、白髪さーん……」じろり
狼「……少女って、そういう所で結構云うよね」
白髪「まあ、育ちの良さがうかがえるっつーかな」
双子姉「少女のお姉ちゃんはお嬢様?」
少女「別にそういう理由じゃないと思うけどーって、
ほら、口の周りに食べカスついてるって」ぐしぐし
双子姉「んむぅ……」
白髪「……育ちがどうこうって云うより、
母親気質ってところか」
438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:00:59.56 ID:PkwhPbyao
少女「口の中に何かある時はしゃべっちゃだめ!」
双子姉「むぅぅ……もぐもぐ。はぁーい」
白髪「がはは、元気でいいじゃねぇか」
双子姉「だよねーっ。はぐっ。もきゅもきゅ」
少女「ちょっと、白髪さーん……」じろり
狼「……少女って、そういう所で結構云うよね」
白髪「まあ、育ちの良さがうかがえるっつーかな」
双子姉「少女のお姉ちゃんはお嬢様?」
少女「別にそういう理由じゃないと思うけどーって、
ほら、口の周りに食べカスついてるって」ぐしぐし
双子姉「んむぅ……」
白髪「……育ちがどうこうって云うより、
母親気質ってところか」
双子姉「むぅぅ……もぐもぐ。はぁーい」
白髪「がはは、元気でいいじゃねぇか」
双子姉「だよねーっ。はぐっ。もきゅもきゅ」
少女「ちょっと、白髪さーん……」じろり
狼「……少女って、そういう所で結構云うよね」
白髪「まあ、育ちの良さがうかがえるっつーかな」
双子姉「少女のお姉ちゃんはお嬢様?」
少女「別にそういう理由じゃないと思うけどーって、
ほら、口の周りに食べカスついてるって」ぐしぐし
双子姉「んむぅ……」
白髪「……育ちがどうこうって云うより、
母親気質ってところか」
439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:01:44.98 ID:PkwhPbyao
少女「口の中に何かある時はしゃべっちゃだめ!」
双子姉「むぅぅ……もぐもぐ。はぁーい」
白髪「がはは、元気でいいじゃねぇか」
双子姉「だよねーっ。はぐっ。もきゅもきゅ」
少女「ちょっと、白髪さーん……」じろり
狼「……少女って、そういう所で結構云うよね」
白髪「まあ、育ちの良さがうかがえるっつーかな」
双子姉「少女のお姉ちゃんはお嬢様?」
少女「別にそういう理由じゃないと思うけどーって、
ほら、口の周りに食べカスついてるって」ぐしぐし
双子姉「んむぅ……」
白髪「……育ちがどうこうって云うより、
母親気質ってところか」
双子姉「むぅぅ……もぐもぐ。はぁーい」
白髪「がはは、元気でいいじゃねぇか」
双子姉「だよねーっ。はぐっ。もきゅもきゅ」
少女「ちょっと、白髪さーん……」じろり
狼「……少女って、そういう所で結構云うよね」
白髪「まあ、育ちの良さがうかがえるっつーかな」
双子姉「少女のお姉ちゃんはお嬢様?」
少女「別にそういう理由じゃないと思うけどーって、
ほら、口の周りに食べカスついてるって」ぐしぐし
双子姉「んむぅ……」
白髪「……育ちがどうこうって云うより、
母親気質ってところか」
442: サーバとの連携がうまくいかない? ひどい状態(>_<) 2011/06/20(月) 00:05:44.53 ID:PkwhPbyao
狼「とりあえず、少女の事はおいておくとして。白髪」
白髪「あん、なんだ?」
狼「この後はどうするの?
これから隠れ港に戻ってひと月も待てば、
また男たちと合流できるけど」
白髪「それは、大人しく引き下がって待つってことか?」
狼「そういう事。
海賊だから話を聞かないなんて狭量な相手に、
わざわざ何かしなくてもいいじゃない」
白髪「……」
双子姉「狼のお姉ちゃんは、街を守るの反対なの?」
狼「反対、って言うほど強くはないけど。
でも、つまらない」
双子姉「つまらないって、なにが?」
狼「そんな相手のために危険の中に飛び込むのが」
双子姉「でも……」
白髪「あん、なんだ?」
狼「この後はどうするの?
これから隠れ港に戻ってひと月も待てば、
また男たちと合流できるけど」
白髪「それは、大人しく引き下がって待つってことか?」
狼「そういう事。
海賊だから話を聞かないなんて狭量な相手に、
わざわざ何かしなくてもいいじゃない」
白髪「……」
双子姉「狼のお姉ちゃんは、街を守るの反対なの?」
狼「反対、って言うほど強くはないけど。
でも、つまらない」
双子姉「つまらないって、なにが?」
狼「そんな相手のために危険の中に飛び込むのが」
双子姉「でも……」
443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:07:38.22 ID:PkwhPbyao
狼「相手が港を襲う海賊として普通の規模だったら、
兵員は少なく見て千人程度。船は五隻以上ね……」
双子姉「そんなにいるの?」
狼「少なく見積もって、よ。
このイオニア海東岸はほとんど帝国の領土だし、
彼らの勢力なら数倍いてもおかしくないわ。
そんな相手にケンカなんて売らないでいいじゃない」
白髪「いや、その『少なく見積もって』以上は、
想定する必要はないぜ」
狼「なんでよ」
白髪「何のために要衝のレパントがある。
あの近辺がまだ落ちてねぇからな。
大艦隊が動けば、ベネッタが見すごさねぇよ」
狼「……少なくても数十隻で動く事はない、か。
相手の元の数が多すぎて、あんまり変わらないけど」
白髪「そう言うなよ。
少なくとも『最悪』じゃねぇんだからよ」
兵員は少なく見て千人程度。船は五隻以上ね……」
双子姉「そんなにいるの?」
狼「少なく見積もって、よ。
このイオニア海東岸はほとんど帝国の領土だし、
彼らの勢力なら数倍いてもおかしくないわ。
そんな相手にケンカなんて売らないでいいじゃない」
白髪「いや、その『少なく見積もって』以上は、
想定する必要はないぜ」
狼「なんでよ」
白髪「何のために要衝のレパントがある。
あの近辺がまだ落ちてねぇからな。
大艦隊が動けば、ベネッタが見すごさねぇよ」
狼「……少なくても数十隻で動く事はない、か。
相手の元の数が多すぎて、あんまり変わらないけど」
白髪「そう言うなよ。
少なくとも『最悪』じゃねぇんだからよ」
444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:08:48.32 ID:PkwhPbyao
狼「だから、この町に残って、
海賊だからって理由で白髪の話を聞かなかった連中に
手を貸そうっていうの?」
白髪「……まあ、そうだな」
狼「この町で戦闘ができるのはせいぜい500人くらい?
規模からの予想だから、違うかもしれないけど。
地の利が有っても、有利にはならない。
それが501人になって、なにが変わるのよ」
白髪「地の利を生かせれば、
その人数でもこの町の防衛はできるんだ。
今までに何度か似たような事態は有って、
それを防いできたんだからな」
狼「だったら今回だってやらせればいいでしょ。
いまさら首を突っ込まなくていいじゃない。
白髪はこの町から追い出されたから、
自由きままな海賊になったんじゃないの?」
少女「ちょっと、狼さん、言いすぎだって」
白髪「いや、まあ、そう言われたらその通りだ。
けどなぁ。
俺がこの町を守りたいってのは、理屈とは違うのさ」
狼「…………」
海賊だからって理由で白髪の話を聞かなかった連中に
手を貸そうっていうの?」
白髪「……まあ、そうだな」
狼「この町で戦闘ができるのはせいぜい500人くらい?
規模からの予想だから、違うかもしれないけど。
地の利が有っても、有利にはならない。
それが501人になって、なにが変わるのよ」
白髪「地の利を生かせれば、
その人数でもこの町の防衛はできるんだ。
今までに何度か似たような事態は有って、
それを防いできたんだからな」
狼「だったら今回だってやらせればいいでしょ。
いまさら首を突っ込まなくていいじゃない。
白髪はこの町から追い出されたから、
自由きままな海賊になったんじゃないの?」
少女「ちょっと、狼さん、言いすぎだって」
白髪「いや、まあ、そう言われたらその通りだ。
けどなぁ。
俺がこの町を守りたいってのは、理屈とは違うのさ」
狼「…………」
445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:10:05.70 ID:PkwhPbyao
白髪「この町の思い出は、良いモノばかりじゃねぇ
でも、俺にとってはどれも大切なのさ。
それに、一人や二人増えたって、
本来なら大した意味なんかねぇんだがよ、
いまだけは、俺が加わる意味がある」
狼「何かあるの?」
白髪「この町の防備には穴があってな。
海の要衝ってだけあって、
海賊相手の海の防備は万全なんだが、
陸に問題がある」
少女「港から眺めただけだけど、
この町って山に囲まれてるよね。
近くの港からもちょっと離れているし、
陸からは入れないと思うけど……」
白髪「さすが元上等兵か? よく見てるな。
ただ、見えない位置が問題だ」
少女「船から見た限りだと、陸地は崖が多くて、
それなりの傾斜と浅さだったように見えたから、
接岸はできないようにみえたよ」
白髪「その通りだが、町の南西にある山の向こうに、
小さいが遠浅の海岸が有る。
ここだけはガレー船のように浅い船なら、
ある程度近づいて接岸できるのさ」
でも、俺にとってはどれも大切なのさ。
それに、一人や二人増えたって、
本来なら大した意味なんかねぇんだがよ、
いまだけは、俺が加わる意味がある」
狼「何かあるの?」
白髪「この町の防備には穴があってな。
海の要衝ってだけあって、
海賊相手の海の防備は万全なんだが、
陸に問題がある」
少女「港から眺めただけだけど、
この町って山に囲まれてるよね。
近くの港からもちょっと離れているし、
陸からは入れないと思うけど……」
白髪「さすが元上等兵か? よく見てるな。
ただ、見えない位置が問題だ」
少女「船から見た限りだと、陸地は崖が多くて、
それなりの傾斜と浅さだったように見えたから、
接岸はできないようにみえたよ」
白髪「その通りだが、町の南西にある山の向こうに、
小さいが遠浅の海岸が有る。
ここだけはガレー船のように浅い船なら、
ある程度近づいて接岸できるのさ」
446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:10:52.41 ID:PkwhPbyao
狼「それなら、よくそこから襲ってくるって事で、
町の方で防備を固めてるんじゃないの?」
白髪「港じゃねぇし、かなり傾斜の厳しい山道だ。
普通の海賊ならそんな道は使わんと、
防備は想定されてねぇらしい」
少女「町からの距離はどれくらい?」
白髪「昼間に徒歩で最短距離を行けば一時間。
抜けるだけならそこまでかからんが、
余力を残せばその程度だろう。
夜間なら二時間……二時間半くらいかかるか?」
双子姉「それって、そんなに危ないのかな。
この港そのものが目的ってわけでもないんでしょ。
本当にそこまで回りくどいことするかな。
そこまで儲かってる港には、悪いけど見えないし。
手間と、手に入るものが釣り合わないんじゃない?」
白髪「それは相手に言ってやってくれ。
まあ、理由が分からんものの、
ココを狙ってる奴らがいることは確かだ。
連中ははばかりなく、
ココを襲うって言いふらしていたらしい」
少女「……言いふらして?」
町の方で防備を固めてるんじゃないの?」
白髪「港じゃねぇし、かなり傾斜の厳しい山道だ。
普通の海賊ならそんな道は使わんと、
防備は想定されてねぇらしい」
少女「町からの距離はどれくらい?」
白髪「昼間に徒歩で最短距離を行けば一時間。
抜けるだけならそこまでかからんが、
余力を残せばその程度だろう。
夜間なら二時間……二時間半くらいかかるか?」
双子姉「それって、そんなに危ないのかな。
この港そのものが目的ってわけでもないんでしょ。
本当にそこまで回りくどいことするかな。
そこまで儲かってる港には、悪いけど見えないし。
手間と、手に入るものが釣り合わないんじゃない?」
白髪「それは相手に言ってやってくれ。
まあ、理由が分からんものの、
ココを狙ってる奴らがいることは確かだ。
連中ははばかりなく、
ココを襲うって言いふらしていたらしい」
少女「……言いふらして?」
447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:11:48.75 ID:PkwhPbyao
白髪「しかも、実はその連中とは因縁がある。
少女は知ってるだろうが、
先日の隠れ港でいちゃもんをつけてきた、
山賊まがいがいたろ?」
少女「うん、すごく口の臭かった……」
白髪「がはは、そうだったのか?」
少女「ほら、人質にとられた時に、
顔が近かったでしょ?
それがすごく匂ってきて……」
白髪「そりゃ、災難だったな、くく……っ。
まあとにかく、この町を狙ってるのが連中らしい」
少女「げっ」
双子姉「そんなに嫌なの?」
少女「言いたくもなるよ……
息が特に酷かったけど、全体的にすごく臭くてね。
それに、おかしな方向に『プライド』持ってて、
関わるだけ損って感じ……」
少女「そこまでなんだ……」
少女は知ってるだろうが、
先日の隠れ港でいちゃもんをつけてきた、
山賊まがいがいたろ?」
少女「うん、すごく口の臭かった……」
白髪「がはは、そうだったのか?」
少女「ほら、人質にとられた時に、
顔が近かったでしょ?
それがすごく匂ってきて……」
白髪「そりゃ、災難だったな、くく……っ。
まあとにかく、この町を狙ってるのが連中らしい」
少女「げっ」
双子姉「そんなに嫌なの?」
少女「言いたくもなるよ……
息が特に酷かったけど、全体的にすごく臭くてね。
それに、おかしな方向に『プライド』持ってて、
関わるだけ損って感じ……」
少女「そこまでなんだ……」
448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:13:30.10 ID:PkwhPbyao
白髪「普通の海賊なら山側の心配なんざしねえが、
山賊相手となりゃぁ、山から狙う確率は高い。
海賊が面倒がるような厳しい道だって、
連中ならためらわねぇだろうと思ってよ」
少女「体力だけは有りそうだったしね……」
白髪「町の正面は町の連中が守るだろうが、
側面からの攻撃には対応の準備がねぇ。
正面の相手を蹴散らしている間だけ、
時間稼ぎが必要な気がしてならねぇのさ」
少女「二正面作戦で来るってこと?」
白髪「これは単なる俺の予想だが、
正面の本隊が持つ前半の役割は陽動だろう。
距離を保ちつつ、町の防備の意識を引きつける」
双子姉「突っ込んでも、港と入り江の砲台で、
すぐ沈められちゃうだろうからね」
白髪「そういうこった。
で、その間に山側から別働隊が、
入り江の側面にある砲台と港の一部を狙う」
山賊相手となりゃぁ、山から狙う確率は高い。
海賊が面倒がるような厳しい道だって、
連中ならためらわねぇだろうと思ってよ」
少女「体力だけは有りそうだったしね……」
白髪「町の正面は町の連中が守るだろうが、
側面からの攻撃には対応の準備がねぇ。
正面の相手を蹴散らしている間だけ、
時間稼ぎが必要な気がしてならねぇのさ」
少女「二正面作戦で来るってこと?」
白髪「これは単なる俺の予想だが、
正面の本隊が持つ前半の役割は陽動だろう。
距離を保ちつつ、町の防備の意識を引きつける」
双子姉「突っ込んでも、港と入り江の砲台で、
すぐ沈められちゃうだろうからね」
白髪「そういうこった。
で、その間に山側から別働隊が、
入り江の側面にある砲台と港の一部を狙う」
449: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:14:30.73 ID:PkwhPbyao
少女「砲台の占拠ができなくても、
迎撃に集中できなくなればいいんだね。
あとは本隊が入り江の中に入って町を占拠できる」
白髪「町の人間を人質に取られた後は、
やりたい放題されるしかねぇ。
町にはゴミと死体しか残らなくなり、
人間は帝国で奴隷として売りさばかれる。
そこに流れてる小さな川も、真っ赤に染まる」
双子姉「…………」
狼「……何度も云うけど、
でもそんな白髪の警告に対して、
町の連中は話を聞かなかったんでしょ」
白髪「町の代表が、だがな。
こっちだって何度も云うが、
だからって見捨てるわけにはいかねぇのさ」
狼「なんでそんな、人間に……」
白髪「俺たちだって、人間だろ」
狼「……私達を、悪魔とか魔女って呼ぶ連中とは、
一緒の扱いなんてされたくない」
少女「…………」
迎撃に集中できなくなればいいんだね。
あとは本隊が入り江の中に入って町を占拠できる」
白髪「町の人間を人質に取られた後は、
やりたい放題されるしかねぇ。
町にはゴミと死体しか残らなくなり、
人間は帝国で奴隷として売りさばかれる。
そこに流れてる小さな川も、真っ赤に染まる」
双子姉「…………」
狼「……何度も云うけど、
でもそんな白髪の警告に対して、
町の連中は話を聞かなかったんでしょ」
白髪「町の代表が、だがな。
こっちだって何度も云うが、
だからって見捨てるわけにはいかねぇのさ」
狼「なんでそんな、人間に……」
白髪「俺たちだって、人間だろ」
狼「……私達を、悪魔とか魔女って呼ぶ連中とは、
一緒の扱いなんてされたくない」
少女「…………」
450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:16:49.70 ID:PkwhPbyao
白髪「確かに、町長は話をきいてくれなかったがな。
それでも、昔面倒を見てくれた親切な人もいる。
変わっていない、懐かしい街並みがある。
親しかった友人もこの町で生きて、
俺なんぞと子供を遊ばせてくれたんだ」
狼「そんなの……」
白髪「狼にわかってもらえるとは、思わん。
狼は狼で、苦労してきたのは聞いてるからな。
故郷と呼べるような場所がないのは仕方ねぇよ。
ただ、これが俺の生き方なんだ。
何を云われても譲れねぇよ」
狼「べつに、苦労なんて。
ただ、そんな風に、白髪をのけものにする相手に、
何かしなくてもって、それだけで……」
白髪「……お前は優しいな」ぽん。なでなで
狼「……っ、っ」ばっ
白髪「おっと」
狼「……しらない。
白髪なんて、野たれ死んじゃえばいいのよ」
どたどた
それでも、昔面倒を見てくれた親切な人もいる。
変わっていない、懐かしい街並みがある。
親しかった友人もこの町で生きて、
俺なんぞと子供を遊ばせてくれたんだ」
狼「そんなの……」
白髪「狼にわかってもらえるとは、思わん。
狼は狼で、苦労してきたのは聞いてるからな。
故郷と呼べるような場所がないのは仕方ねぇよ。
ただ、これが俺の生き方なんだ。
何を云われても譲れねぇよ」
狼「べつに、苦労なんて。
ただ、そんな風に、白髪をのけものにする相手に、
何かしなくてもって、それだけで……」
白髪「……お前は優しいな」ぽん。なでなで
狼「……っ、っ」ばっ
白髪「おっと」
狼「……しらない。
白髪なんて、野たれ死んじゃえばいいのよ」
どたどた
451: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:17:40.10 ID:PkwhPbyao
白髪「確かに、町長は話をきいてくれなかったがな。
それでも、昔面倒を見てくれた親切な人もいる。
変わっていない、懐かしい街並みがある。
親しかった友人もこの町で生きて、
俺なんぞと子供を遊ばせてくれたんだ」
狼「そんなの……」
白髪「狼にわかってもらえるとは、思わん。
狼は狼で、苦労してきたのは聞いてるからな。
故郷と呼べるような場所がないのは仕方ねぇよ。
ただ、これが俺の生き方なんだ。
何を云われても譲れねぇよ」
狼「べつに、苦労なんて。
ただ、そんな風に、白髪をのけものにする相手に、
何かしなくてもって、それだけで……」
白髪「……お前は優しいな」ぽん。なでなで
狼「……っ、っ」ばっ
白髪「おっと」
狼「……しらない。
白髪なんて、野たれ死んじゃえばいいのよ」
どたどた
それでも、昔面倒を見てくれた親切な人もいる。
変わっていない、懐かしい街並みがある。
親しかった友人もこの町で生きて、
俺なんぞと子供を遊ばせてくれたんだ」
狼「そんなの……」
白髪「狼にわかってもらえるとは、思わん。
狼は狼で、苦労してきたのは聞いてるからな。
故郷と呼べるような場所がないのは仕方ねぇよ。
ただ、これが俺の生き方なんだ。
何を云われても譲れねぇよ」
狼「べつに、苦労なんて。
ただ、そんな風に、白髪をのけものにする相手に、
何かしなくてもって、それだけで……」
白髪「……お前は優しいな」ぽん。なでなで
狼「……っ、っ」ばっ
白髪「おっと」
狼「……しらない。
白髪なんて、野たれ死んじゃえばいいのよ」
どたどた
452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:19:45.43 ID:PkwhPbyao
双子姉「怒らせちゃった?」
白髪「いや、怒ってはいないだろうがな。
わかり合うことはできないってことが、
わかったんだろうさ」
少女「狼さんは、白髪さんに危険に遭って欲しくない。
白髪さんは危険でも町を守りたい……」
双子姉「あたしも、白髪のおっちゃんには、
できれば一緒に逃げて欲しいなーとおもうけど」ちら
白髪「……悪ぃなぁ」
双子姉「だよねー」
白髪「……少女も同じか?」
少女「んー、故郷を守りたいって気持ちは、
私はよくわかるからね。
今はちょっと離れてるけど、大好きだから。
ただ、狼さんの気持ちも分からなくはないからさ」
白髪「俺だって、あいつの気持ちは伝わってるさ。
だが、ゆずれねぇのさ。これは」
白髪「いや、怒ってはいないだろうがな。
わかり合うことはできないってことが、
わかったんだろうさ」
少女「狼さんは、白髪さんに危険に遭って欲しくない。
白髪さんは危険でも町を守りたい……」
双子姉「あたしも、白髪のおっちゃんには、
できれば一緒に逃げて欲しいなーとおもうけど」ちら
白髪「……悪ぃなぁ」
双子姉「だよねー」
白髪「……少女も同じか?」
少女「んー、故郷を守りたいって気持ちは、
私はよくわかるからね。
今はちょっと離れてるけど、大好きだから。
ただ、狼さんの気持ちも分からなくはないからさ」
白髪「俺だって、あいつの気持ちは伝わってるさ。
だが、ゆずれねぇのさ。これは」
453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:21:13.26 ID:PkwhPbyao
深夜 宿屋の屋根の上
とことこ
少女「やーっと見つけた」
狼「……何か用?」
少女「んー、ちょっと寝酒につきあってもらおうかな、
なーんて」
狼「嘘つき」
少女「あはは、……ごめん」
狼「謝らないでよ……」
少女「となり良いかな?」どさっ
狼「答える前に座ってるじゃない」
少女「えへへ」
狼「誉めてないわよ」
とことこ
少女「やーっと見つけた」
狼「……何か用?」
少女「んー、ちょっと寝酒につきあってもらおうかな、
なーんて」
狼「嘘つき」
少女「あはは、……ごめん」
狼「謝らないでよ……」
少女「となり良いかな?」どさっ
狼「答える前に座ってるじゃない」
少女「えへへ」
狼「誉めてないわよ」
454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:23:06.88 ID:PkwhPbyao
少女「とりあえず、おさけ。
シードル好きだったよね?」
狼「……ありがと」
少女「いえいえ、どういたしまして」
狼 ちびり、ちびり
少女「……」じーっ
狼「……なに?」
少女「なんだか、ちょっと寂しそうかなーって」
狼「そんなこと、ないし」ついっ
少女(目をそらしちゃう所が可愛いなぁ……
あれ、でも、年上、じゃ、ない? もしかして。
大質量を誇る二つのアレのせいで、
なんとなく気後れしてたけど、
狼さんって私より少し年下かも?)
狼「……なんで悲しそうな顔してるのよ」
少女「な、泣いてないって」ぐっ
狼「何で泣くのよ……」
シードル好きだったよね?」
狼「……ありがと」
少女「いえいえ、どういたしまして」
狼 ちびり、ちびり
少女「……」じーっ
狼「……なに?」
少女「なんだか、ちょっと寂しそうかなーって」
狼「そんなこと、ないし」ついっ
少女(目をそらしちゃう所が可愛いなぁ……
あれ、でも、年上、じゃ、ない? もしかして。
大質量を誇る二つのアレのせいで、
なんとなく気後れしてたけど、
狼さんって私より少し年下かも?)
狼「……なんで悲しそうな顔してるのよ」
少女「な、泣いてないって」ぐっ
狼「何で泣くのよ……」
455: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:23:32.34 ID:PkwhPbyao
少女「白髪さんが一人いたからって、
大きく変わる事なんてないって?」
狼「そうでしょ。
誰からも認められる事なんかなく、邪険に扱われて、
それなのに危険だけ背負おって、
そんな人間なんかを助けるって、おかしいと思う。
私たちの船なら、
助けてくれたら助かったって気持ちを伝えるし、
そもそも白髪は私たちに必要だし……」
少女「でもね、白髪さんにとっては、
きっとココを見捨てたら、
白髪さんじゃいられなくなる何かが、あるんだよ」
狼「…………」
少女「ほとんど私も狼さんと同じ意見だけどね。
故郷の事になると、ちょっと落ち着けないのは、
わかるからさ」
狼「……わかってる。ホントは、わかってた」
少女「うん」
大きく変わる事なんてないって?」
狼「そうでしょ。
誰からも認められる事なんかなく、邪険に扱われて、
それなのに危険だけ背負おって、
そんな人間なんかを助けるって、おかしいと思う。
私たちの船なら、
助けてくれたら助かったって気持ちを伝えるし、
そもそも白髪は私たちに必要だし……」
少女「でもね、白髪さんにとっては、
きっとココを見捨てたら、
白髪さんじゃいられなくなる何かが、あるんだよ」
狼「…………」
少女「ほとんど私も狼さんと同じ意見だけどね。
故郷の事になると、ちょっと落ち着けないのは、
わかるからさ」
狼「……わかってる。ホントは、わかってた」
少女「うん」
456: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:24:06.72 ID:PkwhPbyao
狼「ききたかっただけ……部屋に戻ろう。
ちょっと、冷えてきたし」
少女「そうだね」
少女(狼さんの背中が小さく震えてるのは、
寒いから? それとも)
少女「……あのね」
狼「なに?」
少女「白髪さんは、私たちのこと、大好きだと思うよ」
狼「……ありがと」
とことこ
少女(こんな言葉しか、云えない……
包帯さんなら、もっと気の利いたことが云えるよね。
ああもう、なんで、なんで)
少女「私は、なんで、こんなに何もできなくて……」
ちょっと、冷えてきたし」
少女「そうだね」
少女(狼さんの背中が小さく震えてるのは、
寒いから? それとも)
少女「……あのね」
狼「なに?」
少女「白髪さんは、私たちのこと、大好きだと思うよ」
狼「……ありがと」
とことこ
少女(こんな言葉しか、云えない……
包帯さんなら、もっと気の利いたことが云えるよね。
ああもう、なんで、なんで)
少女「私は、なんで、こんなに何もできなくて……」
457: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:25:48.20 ID:PkwhPbyao
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夕方 パリウガ南東の山頂の廃墟
白髪「状況を確認するぜ」
双子姉「いえっさー!」
少女「はい!」
白髪「……こちらの動員は三人。
俺と、お前ら二人だ」
双子姉「……やっぱり、帰ってこないね」
少女「私が、もっと何か、云えてたら……
朝になるまでいなくなるのに気づかないとか、
なんでこう……」
白髪「過ぎた事で自分をせめるなよ。
それから、この件はもともと俺の身勝手だ。
ムリしてつきあうこともねぇよ」
双子姉「む、それ、あたしにもいってる?」
白髪「当たり前だ」
双子姉「むううー!」
夕方 パリウガ南東の山頂の廃墟
白髪「状況を確認するぜ」
双子姉「いえっさー!」
少女「はい!」
白髪「……こちらの動員は三人。
俺と、お前ら二人だ」
双子姉「……やっぱり、帰ってこないね」
少女「私が、もっと何か、云えてたら……
朝になるまでいなくなるのに気づかないとか、
なんでこう……」
白髪「過ぎた事で自分をせめるなよ。
それから、この件はもともと俺の身勝手だ。
ムリしてつきあうこともねぇよ」
双子姉「む、それ、あたしにもいってる?」
白髪「当たり前だ」
双子姉「むううー!」
458: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:27:26.28 ID:PkwhPbyao
白髪「狼は特に人間嫌いだからなぁ。
少女も覚えがあるんじゃねぇのか?」
少女「あー、確かに。
最初はナイフで刺されそうになったりしたし……」
白髪「そ、そんな事まであったのか?
よく生きてるな」
少女「あ……」
双子姉「もしかしてお姉ちゃん、
秘密にしてたつもりでうっかり?」
少女「いやー、まぁ、あははは……」
白髪「あいつも無茶しやがるな。
なんにせよ、生きてて良かったぜ」
少女「う、うん……」
白髪「少女も、気がのらなけりゃ、
いまから引き返してもいいんだぜ?」
少女「それは大丈夫。
私も、白髪さんの故郷を守りたいって気持ちは、
よくわかるからさ」
少女も覚えがあるんじゃねぇのか?」
少女「あー、確かに。
最初はナイフで刺されそうになったりしたし……」
白髪「そ、そんな事まであったのか?
よく生きてるな」
少女「あ……」
双子姉「もしかしてお姉ちゃん、
秘密にしてたつもりでうっかり?」
少女「いやー、まぁ、あははは……」
白髪「あいつも無茶しやがるな。
なんにせよ、生きてて良かったぜ」
少女「う、うん……」
白髪「少女も、気がのらなけりゃ、
いまから引き返してもいいんだぜ?」
少女「それは大丈夫。
私も、白髪さんの故郷を守りたいって気持ちは、
よくわかるからさ」
459: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:27:52.38 ID:PkwhPbyao
白髪「……なら、三人で、山賊退治だな」
双子姉「あはは、千人くらい来たらどうしよ……」
白髪「そうしたら仕方ねぇ、大急ぎで町に走って、
大群が来たって伝えるしかねぇよ」
少女「まあ、そんな事態は無いと思うけど」
白髪「そうだな。
俺達が相手にしなくちゃならんのは、
多くても三百人って所だろう。
現実的に考えれば二百人くらいか?」
双子姉「聞くだけでも嫌になるよ……
一人で百人相手にするなんてムリだし。
一対一でも、大人の男の人が相手じゃムリだよ」
白髪「正面から当たるのはムリだな。
まあ、寡兵で事にあたるなら、
正面と正攻法ってのはありえねぇよ。
で、そんな時のために奥の手が!」
双子姉「おお、奥の手が!」
双子姉「あはは、千人くらい来たらどうしよ……」
白髪「そうしたら仕方ねぇ、大急ぎで町に走って、
大群が来たって伝えるしかねぇよ」
少女「まあ、そんな事態は無いと思うけど」
白髪「そうだな。
俺達が相手にしなくちゃならんのは、
多くても三百人って所だろう。
現実的に考えれば二百人くらいか?」
双子姉「聞くだけでも嫌になるよ……
一人で百人相手にするなんてムリだし。
一対一でも、大人の男の人が相手じゃムリだよ」
白髪「正面から当たるのはムリだな。
まあ、寡兵で事にあたるなら、
正面と正攻法ってのはありえねぇよ。
で、そんな時のために奥の手が!」
双子姉「おお、奥の手が!」
460: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:28:19.22 ID:PkwhPbyao
白髪「少女、まかせた」
少女「はーい、まか、さ、え? えええっ?!」
白髪「当たり前の采配だろ」
少女「いや、あたりまえじゃないし!
意味判らないって、あたしそんな経験ないよ」
白髪「軍にいたんだろ?
上等兵だったんじゃないのかよ」
少女「そうだったけど、いったじゃん!
私はずっと後方支援にまわされてたって。
だから直接敵の相手なんてしたことないし、
どんな事すればいいのか……」
白髪「罠と銃は最低限やったんじゃねぇのか?」
少女「罠は、ちょっとだけ。
銃はそれなりにできるかな。
でも、銃はあんまりアテにならないよ?」
双子姉「そうなの?」
少女「はーい、まか、さ、え? えええっ?!」
白髪「当たり前の采配だろ」
少女「いや、あたりまえじゃないし!
意味判らないって、あたしそんな経験ないよ」
白髪「軍にいたんだろ?
上等兵だったんじゃないのかよ」
少女「そうだったけど、いったじゃん!
私はずっと後方支援にまわされてたって。
だから直接敵の相手なんてしたことないし、
どんな事すればいいのか……」
白髪「罠と銃は最低限やったんじゃねぇのか?」
少女「罠は、ちょっとだけ。
銃はそれなりにできるかな。
でも、銃はあんまりアテにならないよ?」
双子姉「そうなの?」
461: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:28:58.50 ID:PkwhPbyao
少女「女ってことでどうしても体力が劣るから、
他の人よりは練習したって自負してるけど、
300フィート(おおよそ100メートル)になれば、
当たるかどうかはまぐれだし……
確実に当てたいなら、200フィート。
再装填が十秒弱で、何丁か使い回しても、
そこから距離が詰められるから、
到底まともに相手はできないよ」
白髪「普通のマスケットでそれだけ撃てりゃ十分だ。
ちょっとコレを見てみろ」
少女「そういえば、さっきから持ってたその鞄、
何かなーって思ってたけど……
銃が入ってたの?」
白髪「まあな。双子妹が作った銃だ。
普通、銃ってのはどうやって再装填して、
どれくらい時間がかかる?」
少女「こめてあった銃弾を撃ったら、
煤引き棒を使って銃身を掃除する。これに三秒くらい。
火薬入れから火薬をいれるのに、二秒くらい。
弾丸と火薬をいれてぎゅっと押し固めるのに二秒かな。
たまに棒がつっかかったりすると、もうちょっと……
それから、狙いを定めて撃つけど」
他の人よりは練習したって自負してるけど、
300フィート(おおよそ100メートル)になれば、
当たるかどうかはまぐれだし……
確実に当てたいなら、200フィート。
再装填が十秒弱で、何丁か使い回しても、
そこから距離が詰められるから、
到底まともに相手はできないよ」
白髪「普通のマスケットでそれだけ撃てりゃ十分だ。
ちょっとコレを見てみろ」
少女「そういえば、さっきから持ってたその鞄、
何かなーって思ってたけど……
銃が入ってたの?」
白髪「まあな。双子妹が作った銃だ。
普通、銃ってのはどうやって再装填して、
どれくらい時間がかかる?」
少女「こめてあった銃弾を撃ったら、
煤引き棒を使って銃身を掃除する。これに三秒くらい。
火薬入れから火薬をいれるのに、二秒くらい。
弾丸と火薬をいれてぎゅっと押し固めるのに二秒かな。
たまに棒がつっかかったりすると、もうちょっと……
それから、狙いを定めて撃つけど」
462: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:31:37.16 ID:PkwhPbyao
白髪「これな、こうやって、こうすると……」
少女「おおー! すごい、おもしろい!
銃の後ろの部分が開いた!」
白髪「でもって、これな。
パピルスで包んだ火薬と銃弾の固めた物だが、
これを、この銃身の後ろからぎゅっと入れる」
少女「で、閉じると……
これでもう撃てるの?」
白髪「理論上は撃てる。
だが、火薬が湿気りやすくなるって、弱点があってな」
少女「そっか。夜気の湿気で撃てなくなるって事は?」
白髪「あり得るかもしれん。気をつけておけ。
だがそれで、再装填の時間はずっと短縮できるな」
少女「うん、これなら普通の銃よりは早くできそう。
でも、弾幕が作れないから、
そこまで期待はできないよ?」
白髪「……わかってはいたが、条件が厳しいな」
少女「おおー! すごい、おもしろい!
銃の後ろの部分が開いた!」
白髪「でもって、これな。
パピルスで包んだ火薬と銃弾の固めた物だが、
これを、この銃身の後ろからぎゅっと入れる」
少女「で、閉じると……
これでもう撃てるの?」
白髪「理論上は撃てる。
だが、火薬が湿気りやすくなるって、弱点があってな」
少女「そっか。夜気の湿気で撃てなくなるって事は?」
白髪「あり得るかもしれん。気をつけておけ。
だがそれで、再装填の時間はずっと短縮できるな」
少女「うん、これなら普通の銃よりは早くできそう。
でも、弾幕が作れないから、
そこまで期待はできないよ?」
白髪「……わかってはいたが、条件が厳しいな」
463: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:33:07.84 ID:PkwhPbyao
双子姉「うーん……
とりあえず、足止めできればいいんだよね?」
白髪「まあそうだな。
相手が動けなければ問題無い。
船に乗って帰ってくれるってなら、万々歳だ」
双子姉「……そっか。
それなら、ちょっとなんとかなるかも」
少女「あ、そういう条件だったら私も!」
白髪「なんだなんだ、
急に二人してイキイキし始めたな。
っていうか、全滅させるつもりだったのか?」
少女「う、だって、また来たら嫌かなーと」
白髪「一度この山側から来たっていう前例があれば、
あとは町長も訴えを聞かざるを得ない状況になる。
だからその前例を耐えきれば、何とかなるだろ」
少女「……かなり楽天的だね」
とりあえず、足止めできればいいんだよね?」
白髪「まあそうだな。
相手が動けなければ問題無い。
船に乗って帰ってくれるってなら、万々歳だ」
双子姉「……そっか。
それなら、ちょっとなんとかなるかも」
少女「あ、そういう条件だったら私も!」
白髪「なんだなんだ、
急に二人してイキイキし始めたな。
っていうか、全滅させるつもりだったのか?」
少女「う、だって、また来たら嫌かなーと」
白髪「一度この山側から来たっていう前例があれば、
あとは町長も訴えを聞かざるを得ない状況になる。
だからその前例を耐えきれば、何とかなるだろ」
少女「……かなり楽天的だね」
464: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:34:29.59 ID:PkwhPbyao
白髪「仕方ねぇだろ。
追い返すだけでも普通は無理なんだ。
それをやってのけたら十分だ。
できる事とできない事の判断がつかなくなった、
なんて状態じゃぁねぇからな」
少女「……三百対三ってだけで、
もう十分正気じゃない気はするけどね」
双子姉「でも、帰りたい気分にさせるだけなら……」
少女「なんとかなりそうな気はするね」
白髪「じゃあその方向で、改めて作戦会議だ」にやり
少女「えへへ、覚悟してればいいんだから……
えへへへ…………」
白髪「おい、おーい…………」
追い返すだけでも普通は無理なんだ。
それをやってのけたら十分だ。
できる事とできない事の判断がつかなくなった、
なんて状態じゃぁねぇからな」
少女「……三百対三ってだけで、
もう十分正気じゃない気はするけどね」
双子姉「でも、帰りたい気分にさせるだけなら……」
少女「なんとかなりそうな気はするね」
白髪「じゃあその方向で、改めて作戦会議だ」にやり
少女「えへへ、覚悟してればいいんだから……
えへへへ…………」
白髪「おい、おーい…………」
465: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/20(月) 00:36:01.46 ID:PkwhPbyao
今日はここまで!
もうちょっとだけ書きためあるけど、
エラーがひどいので、もうちょっとサーバが空いてそうな水曜日に、
ちょっと多めに投下する方向で頑張るよ(つ_<)
待っててくれてありがとうなのだ♪
もうちょっとだけ書きためあるけど、
エラーがひどいので、もうちょっとサーバが空いてそうな水曜日に、
ちょっと多めに投下する方向で頑張るよ(つ_<)
待っててくれてありがとうなのだ♪
470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:46:01.46 ID:cPIlV7OBo
------------------------------------------------
夕方 パリウガ南の海
配下「隠れ港を出てから十日。
もう限界ですぜぇ、旦那ぁ」
賊「あぁん、何が限界だよ」
配下「隠れ港を出るときに、女奴隷を全員売って、
武器とか弾薬、船乗りなんかを買いやしたが」
賊「そんなのはいつもの事だろうが」
配下「いや、あっしは止めたじゃぁねぇですか。
女奴隷を『全員』はマズいって」
賊「うっせぇなぁ、いいだろ、俺の勝手だ」
配下「良かぁありやせんよ。
おいしい思いができるってついてきてる連中、
今にも破裂しそうですぜ?
遠くの村に女の姿が見えるだけで、
ケダモノみてぇに目を血走らせるほどで」
賊「まだ、たった十日じゃねぇか」
配下「たった十日、されど十日ですぜ」
夕方 パリウガ南の海
配下「隠れ港を出てから十日。
もう限界ですぜぇ、旦那ぁ」
賊「あぁん、何が限界だよ」
配下「隠れ港を出るときに、女奴隷を全員売って、
武器とか弾薬、船乗りなんかを買いやしたが」
賊「そんなのはいつもの事だろうが」
配下「いや、あっしは止めたじゃぁねぇですか。
女奴隷を『全員』はマズいって」
賊「うっせぇなぁ、いいだろ、俺の勝手だ」
配下「良かぁありやせんよ。
おいしい思いができるってついてきてる連中、
今にも破裂しそうですぜ?
遠くの村に女の姿が見えるだけで、
ケダモノみてぇに目を血走らせるほどで」
賊「まだ、たった十日じゃねぇか」
配下「たった十日、されど十日ですぜ」
471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:46:40.74 ID:cPIlV7OBo
賊「……つまり、なんだぁ。
俺に文句をつけよぉってぇ連中が、
いるって事かよ、この船に」
配下「へぇ。そういうワケでさぁ」
賊「ったく、こりねぇ連中だ。
女の一匹や二匹、例の村を落とした後にゃ、
好きなだけ○せばいいだろうによ」
どすどす
配下「旦那、どこへ……甲板ですか?」
ばたん
賊「うぉい、てめぇらぁ」
手下1「なんだなんだ?」
手下2「おかしらぁ、まだ晩飯には早いですぜぇ」
手下3「ひひひ、そんな冗談お頭に言うと、
首と体が離れるぜ?」ひそひそ
手下2「げはは、んなわけねぇだろ、
なんせ、いかにも弱そうな町にだって、
今はおそわねぇ、なんて臆病言ってるんだ」ぼそぼそ
俺に文句をつけよぉってぇ連中が、
いるって事かよ、この船に」
配下「へぇ。そういうワケでさぁ」
賊「ったく、こりねぇ連中だ。
女の一匹や二匹、例の村を落とした後にゃ、
好きなだけ○せばいいだろうによ」
どすどす
配下「旦那、どこへ……甲板ですか?」
ばたん
賊「うぉい、てめぇらぁ」
手下1「なんだなんだ?」
手下2「おかしらぁ、まだ晩飯には早いですぜぇ」
手下3「ひひひ、そんな冗談お頭に言うと、
首と体が離れるぜ?」ひそひそ
手下2「げはは、んなわけねぇだろ、
なんせ、いかにも弱そうな町にだって、
今はおそわねぇ、なんて臆病言ってるんだ」ぼそぼそ
472: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:47:25.84 ID:cPIlV7OBo
手下3「ま、確かにありゃ妙だったな。
普段なら誰より自分が先に乗り込むのに、
あの腕の怪我をしてからか?」ぼそぼそ
手下2「痛いのが怖いでちゅーなんてな、げははは」
賊「ほう、痛いのが嫌いか? あぁん?」
手下2「お、おかしら、いや、今のはお頭の事じゃ
ないわけでさ、ほら、モノノ例えっつーか」
手下3「そ、そうそう。だから大した意味は」
賊「知らねぇよ、そんな事ぁ」
ズバッ、ザシュッ
手下2「へ?」
手下3「ぐあぁあ」
手下1「ひ、ひぃ……っ、手下2! 3!!」
配下「首を一刀……首狩りの異名はまだ廃れてやせんね」
賊「そうでもねぇな。
左がこれになってから動きが鈍いせいで、
どうも『スッパリ』とはいかねぇ……
おかげで片方は、かわいそうに、痛そうだったなぁ」
普段なら誰より自分が先に乗り込むのに、
あの腕の怪我をしてからか?」ぼそぼそ
手下2「痛いのが怖いでちゅーなんてな、げははは」
賊「ほう、痛いのが嫌いか? あぁん?」
手下2「お、おかしら、いや、今のはお頭の事じゃ
ないわけでさ、ほら、モノノ例えっつーか」
手下3「そ、そうそう。だから大した意味は」
賊「知らねぇよ、そんな事ぁ」
ズバッ、ザシュッ
手下2「へ?」
手下3「ぐあぁあ」
手下1「ひ、ひぃ……っ、手下2! 3!!」
配下「首を一刀……首狩りの異名はまだ廃れてやせんね」
賊「そうでもねぇな。
左がこれになってから動きが鈍いせいで、
どうも『スッパリ』とはいかねぇ……
おかげで片方は、かわいそうに、痛そうだったなぁ」
473: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:48:10.75 ID:cPIlV7OBo
手下1「あ、あんたらっ!
今殺したのは、味方だぞっ!
ああ、クソッ、2! 3……っ」
賊「なにが味方だ。知ったこっちゃねぇよ。
俺の事を軽く見たヤツは殺す。
そいつらは俺を軽く見た、だからソレを首で購った」
配下「旦那は優しすぎるってぇ、思いやす。
殺しちまったら悲鳴がすぐに終わるじゃねぇですか。
爪を剥いで、皮を剥いて、肉を削いで、骨を砕いて、
海賊の『制裁』ってのはそういうモンでやしょう」
賊「そんな事してたら『満足』しちまうだろ?
これからせっかくの『祭り』なんだ」
配下「……そういう事ですかい。
よぉし、お前ら、甲板で作業してるお前ら!
耳の穴かっぽじって、旦那の話をよぉく聞け」
手下達「……」
手下1「くそ、聞かなきゃ殺されるだろ」
手下5「話すって、言った何を話すんだよ」
手下6「まあ、手を休めていいならいいだろ」
今殺したのは、味方だぞっ!
ああ、クソッ、2! 3……っ」
賊「なにが味方だ。知ったこっちゃねぇよ。
俺の事を軽く見たヤツは殺す。
そいつらは俺を軽く見た、だからソレを首で購った」
配下「旦那は優しすぎるってぇ、思いやす。
殺しちまったら悲鳴がすぐに終わるじゃねぇですか。
爪を剥いで、皮を剥いて、肉を削いで、骨を砕いて、
海賊の『制裁』ってのはそういうモンでやしょう」
賊「そんな事してたら『満足』しちまうだろ?
これからせっかくの『祭り』なんだ」
配下「……そういう事ですかい。
よぉし、お前ら、甲板で作業してるお前ら!
耳の穴かっぽじって、旦那の話をよぉく聞け」
手下達「……」
手下1「くそ、聞かなきゃ殺されるだろ」
手下5「話すって、言った何を話すんだよ」
手下6「まあ、手を休めていいならいいだろ」
474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:48:37.18 ID:cPIlV7OBo
賊「足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「……」」」
賊「○す奴隷が足りネェ。
好き勝手する金が足りネェ。
血湧き肉躍る荒事が足りネェ。
全てを飲み込む赤い炎が足りネェ。
腹をたっぷりと満たす食事が足りネェ」
ごくり
賊「足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「足りネェぞーぉぉぉ!!」」」
賊「そうだ、ソレだぁ。
足りネェ。満たされネェ。もっと欲しい。
もっともっと手に入れてぇ。いくらでも持ってこい。
今のお前達は何を感じてるんだ?
足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「奪わせろぉぉぉッ!!!」」」
賊「それでいい。
俺達は海でも陸でも関係ぇねぇ。
奪って、奪って、奪って奪って奪って……
そしてぇ、奪うッ!」
手下達「「「うぉぉぉおおお!!!」」」
手下達「「「……」」」
賊「○す奴隷が足りネェ。
好き勝手する金が足りネェ。
血湧き肉躍る荒事が足りネェ。
全てを飲み込む赤い炎が足りネェ。
腹をたっぷりと満たす食事が足りネェ」
ごくり
賊「足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「足りネェぞーぉぉぉ!!」」」
賊「そうだ、ソレだぁ。
足りネェ。満たされネェ。もっと欲しい。
もっともっと手に入れてぇ。いくらでも持ってこい。
今のお前達は何を感じてるんだ?
足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「奪わせろぉぉぉッ!!!」」」
賊「それでいい。
俺達は海でも陸でも関係ぇねぇ。
奪って、奪って、奪って奪って奪って……
そしてぇ、奪うッ!」
手下達「「「うぉぉぉおおお!!!」」」
475: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:49:08.15 ID:cPIlV7OBo
賊「こないだの遭難、お前らは憶えてるか。
忘れてるヤツはいねぇよなぁ。
腹が減って仕方無かったろ。
隣のヤツが肉の塊に見えなかったか?」
手下「その通りだ!」「殺して食いたかった!」
賊「あの後、海辺の村を見つけて襲って、
魚も、肉も、麦も、たらふく食ったろ。
どうだ、いつもより『美味』くなかったか?
足りネェ、から、一気に楽園まで飛んだ気分だったろ。
さあ、もう一度確認だ。
お前らは今、何を感じてやがる。
足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「足りネェぞーぉぉぉ!!」」」
賊「そうだろうなぁ。
何もかも足りネェだろ……
俺も、足りねぇよ。
煮えたぎってる。
お前らもだろ?
足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「足りネェぞーぉぉぉ!!」」」
忘れてるヤツはいねぇよなぁ。
腹が減って仕方無かったろ。
隣のヤツが肉の塊に見えなかったか?」
手下「その通りだ!」「殺して食いたかった!」
賊「あの後、海辺の村を見つけて襲って、
魚も、肉も、麦も、たらふく食ったろ。
どうだ、いつもより『美味』くなかったか?
足りネェ、から、一気に楽園まで飛んだ気分だったろ。
さあ、もう一度確認だ。
お前らは今、何を感じてやがる。
足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「足りネェぞーぉぉぉ!!」」」
賊「そうだろうなぁ。
何もかも足りネェだろ……
俺も、足りねぇよ。
煮えたぎってる。
お前らもだろ?
足りネェ、そうは思わねぇか?」
手下達「「「足りネェぞーぉぉぉ!!」」」
476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:50:00.36 ID:cPIlV7OBo
賊「いいぜぇ、明日の夜には、好きなだけ『喰らえ』
逃げ惑う連中を殺せ。
好きなだけ血を浴びろ。
望むままに悲鳴を上げさせろよ。
お前の体が欲しがる分だけ女を抱け。
奪いたければたっぷりと金と宝石を持っていけばいい」
手下達「「「足りネェぞーぉぉぉ!!」」」
賊「炎を広げて、焼き尽くせ、地獄に変えろ。
刈り取った頭を大砲に詰めてたたき込んでやれ。
宴は明日だ。
飢えろ、悶えろ。
宴は明日だ。
夢を見ろ、真っ赤な真っ赤な『楽園』の夢を。
宴は明日だ!」
手下達「うぉぉおおッ!」「ひゃっはー!!」
「ぐふふふふ」「いーっひっひっひ」「ぎゃははあ」
賊「明日は大仕事だからなぁ。栄養が必要だ。
そこで死んでる連中でも挽肉に変えて、
魚のえさにして網をかけろ」にたり
手下5「ひひ、お頭もえげつねぇ! だが気に入った!」
手下6「やっぱりついてくんならこの人だ!」
手下7「ぎゃはは、今から愉しみだぜぇッッ!」
逃げ惑う連中を殺せ。
好きなだけ血を浴びろ。
望むままに悲鳴を上げさせろよ。
お前の体が欲しがる分だけ女を抱け。
奪いたければたっぷりと金と宝石を持っていけばいい」
手下達「「「足りネェぞーぉぉぉ!!」」」
賊「炎を広げて、焼き尽くせ、地獄に変えろ。
刈り取った頭を大砲に詰めてたたき込んでやれ。
宴は明日だ。
飢えろ、悶えろ。
宴は明日だ。
夢を見ろ、真っ赤な真っ赤な『楽園』の夢を。
宴は明日だ!」
手下達「うぉぉおおッ!」「ひゃっはー!!」
「ぐふふふふ」「いーっひっひっひ」「ぎゃははあ」
賊「明日は大仕事だからなぁ。栄養が必要だ。
そこで死んでる連中でも挽肉に変えて、
魚のえさにして網をかけろ」にたり
手下5「ひひ、お頭もえげつねぇ! だが気に入った!」
手下6「やっぱりついてくんならこの人だ!」
手下7「ぎゃはは、今から愉しみだぜぇッッ!」
477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:50:28.23 ID:cPIlV7OBo
どすどす
配下「すばらしい演説。あっしも心が震えやした」
賊「こういうのはガラじゃねぇが、
あの男ってやつを殺すためだと思えば……
悪くネェ」にたぁり
配下「……」ぞくり
賊「足りネェ。あぁ、足りネェよ。
満たされネェのさ、俺の心が。
あの男ってヤツとその仲間に、
徹底的な絶望と無力を味あわせて泣き叫ばせねぇと、
この腕の疼きはとまらねぇ……」
配下「旦那のその腕の痛み、
あっしがきっと、止めてみせやしょう。
例の情報屋が言っていた裏道には、
あっしが行きやす」
賊「……そうだな、お前が行くなら安心か。
それなら船を二隻預ける。
二隻分……三百人いりゃぁ足りるな」
配下「へぇ。旦那達が時間を稼いでる間に、
きっと道をひらきます」
賊「……くく、任せたぜ」
478: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:51:20.09 ID:cPIlV7OBo
------------------------------------------------
夜 パリウガ南東の小海岸
配下「よぉし、全員上陸したな」
手下達「「おうっ!」」
配下「旦那は四隻……千人を連れて、
町の港の正面にまわった」
手下1「奴隷も入れりゃぁ、千三百人以上だな。
俺達と、こっちの船の奴隷も合わせりゃ千七百だ。
周りくどいことしなくたってよ、
すぐにこんな町なんて落とせるだろ」
配下「帝国の連中を相手にしても落ちねえくらいの、
天然の要塞にある町だ。
さすがの旦那でも、すぐには落とせねぇ」
手下5「そんで、俺達が裏から町に進入して、
連中が抵抗できないようにするってぇ、ワケだな」
配下「その通りだ。
俺達の役目は、なるたけ早く山向こうについて、
入り江の端にある砲台と、
浮島の砲台を占拠する事だ」
夜 パリウガ南東の小海岸
配下「よぉし、全員上陸したな」
手下達「「おうっ!」」
配下「旦那は四隻……千人を連れて、
町の港の正面にまわった」
手下1「奴隷も入れりゃぁ、千三百人以上だな。
俺達と、こっちの船の奴隷も合わせりゃ千七百だ。
周りくどいことしなくたってよ、
すぐにこんな町なんて落とせるだろ」
配下「帝国の連中を相手にしても落ちねえくらいの、
天然の要塞にある町だ。
さすがの旦那でも、すぐには落とせねぇ」
手下5「そんで、俺達が裏から町に進入して、
連中が抵抗できないようにするってぇ、ワケだな」
配下「その通りだ。
俺達の役目は、なるたけ早く山向こうについて、
入り江の端にある砲台と、
浮島の砲台を占拠する事だ」
479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:52:02.22 ID:cPIlV7OBo
手下1「まあ、こんだけ人数がいりゃぁ、
まちの兵隊くらいなんて事ねぇ。
一ひねりだな」
配下「おう、しかも情報屋の話が本当なら、
今はこの町の兵隊の一部……
つっても三割くらいか?
ベネッタの方に出てるらしい」
手下4「おいおい、そうしたらやることねぇなぁ。
すぐに終わっちまうだろ」
配下「そうすりゃ後は、なんだってし放題だぜ」
手下6「ひひひ、女だ、俺は女をヤルぜぇ」
手下7「てめぇがサルみてぇにはしゃいでる間、
町の金貨は俺のモノだな」
手下8「ぎゃはは、殺せりゃなんでもかまわねぇよぉ」
ワイワイ、ガヤガヤ
配下「よぉし、お前ら、とっとと山を越えるぞ」
手下達「「「おう!」」」
ザワザワ
まちの兵隊くらいなんて事ねぇ。
一ひねりだな」
配下「おう、しかも情報屋の話が本当なら、
今はこの町の兵隊の一部……
つっても三割くらいか?
ベネッタの方に出てるらしい」
手下4「おいおい、そうしたらやることねぇなぁ。
すぐに終わっちまうだろ」
配下「そうすりゃ後は、なんだってし放題だぜ」
手下6「ひひひ、女だ、俺は女をヤルぜぇ」
手下7「てめぇがサルみてぇにはしゃいでる間、
町の金貨は俺のモノだな」
手下8「ぎゃはは、殺せりゃなんでもかまわねぇよぉ」
ワイワイ、ガヤガヤ
配下「よぉし、お前ら、とっとと山を越えるぞ」
手下達「「「おう!」」」
ザワザワ
480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:52:29.53 ID:cPIlV7OBo
トコトコ
配下(そもそも俺は兵卒だが、
こいつらはただの荒くれ者だ。
うまく俺が統率して、町まで体力を温存させつつ、
この山を越えなきゃならねぇ)
手下8「にしても、ずいぶん急な山だな。
ほとんど崖だぜこりゃ」
手下9「だがまあ、獣道が有るだけ楽だな。
たどっていけば町にはいける」
配下(確かに獣道はありがたい。
道を切り開きながら行くのに比べれば、
随分と体力が温存できる……)
手下4「ん、おい、ありゃぁ」
手下5「男……いや、胸があるから女か?
なんでこんなトコに」
少女「……」
配下「あの顔……どこかで見た覚えがあるが」
配下(そもそも俺は兵卒だが、
こいつらはただの荒くれ者だ。
うまく俺が統率して、町まで体力を温存させつつ、
この山を越えなきゃならねぇ)
手下8「にしても、ずいぶん急な山だな。
ほとんど崖だぜこりゃ」
手下9「だがまあ、獣道が有るだけ楽だな。
たどっていけば町にはいける」
配下(確かに獣道はありがたい。
道を切り開きながら行くのに比べれば、
随分と体力が温存できる……)
手下4「ん、おい、ありゃぁ」
手下5「男……いや、胸があるから女か?
なんでこんなトコに」
少女「……」
配下「あの顔……どこかで見た覚えがあるが」
481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:53:00.36 ID:cPIlV7OBo
手下6「おい、お前、そこの町のヤツか?
運が悪かったなぁ……
俺達の姿を見たからには、明日の朝日は拝めネェぜ」
手下7「おいおい、いきなりヤル気かよ。
まぁ、俺達の事を町に知らされても面倒だ。
逃がしゃしねぇがな」
少女「……」
手下8「おい、何とか言えよ!」
少女「引き返しなさい。
一度は情けをかけてあげる。
大人しく引き下がれば、命だけは取らないわよ」
手下9「っ、だとぉ、てめぇ!
言うに事欠いて、俺達に引き返せだぁ!」
手下4「命はとらねぇって、要するに俺達を殺るって、
そういう意味か?
おいおい、嬢ちゃん一人に何ができるよ」
少女「私一人じゃないわよ。
気づかない?
いま、あんたたちの周りには、
五百人の兵士が息を潜めて隠れてるって」
運が悪かったなぁ……
俺達の姿を見たからには、明日の朝日は拝めネェぜ」
手下7「おいおい、いきなりヤル気かよ。
まぁ、俺達の事を町に知らされても面倒だ。
逃がしゃしねぇがな」
少女「……」
手下8「おい、何とか言えよ!」
少女「引き返しなさい。
一度は情けをかけてあげる。
大人しく引き下がれば、命だけは取らないわよ」
手下9「っ、だとぉ、てめぇ!
言うに事欠いて、俺達に引き返せだぁ!」
手下4「命はとらねぇって、要するに俺達を殺るって、
そういう意味か?
おいおい、嬢ちゃん一人に何ができるよ」
少女「私一人じゃないわよ。
気づかない?
いま、あんたたちの周りには、
五百人の兵士が息を潜めて隠れてるって」
482: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:53:38.44 ID:cPIlV7OBo
配下「バカな女だな。
今の町にいる兵士の総勢と同じ数だと?
町の守りがこんな山中に全員来るはずないだろ。
ふん、自分で墓穴を掘ったな」
少女「……それなら、ためして見る?」
手下6「へへ、いいぜぇ、
おれがたっぷり、ためしてやらぁ。
もちろん、てめぇの体の味をなぁ」にたぁり
のしのし
配下(……ただのハッタリ。
いや、俺達は別に無音で移動してたわけじゃねぇ。
まだ町には距離があるからな、
むしろ騒がしかったくらいだが……
なぜ、そんな俺達の前に、女が、一人で)
少女「……ふっ」にやっ
配下「っ! 罠だ、戻れッッ!!」
手下6「罠ぁ? そんなんドコにも……」
パチンッ、ズドドドドドドッッ
手下達「ひ、ぎゃぁあああああ?!」「ぐぉぉぉ」
「痛ぇ、痛ぇよぉぉ」「な、なにが起ったぁ?!」
今の町にいる兵士の総勢と同じ数だと?
町の守りがこんな山中に全員来るはずないだろ。
ふん、自分で墓穴を掘ったな」
少女「……それなら、ためして見る?」
手下6「へへ、いいぜぇ、
おれがたっぷり、ためしてやらぁ。
もちろん、てめぇの体の味をなぁ」にたぁり
のしのし
配下(……ただのハッタリ。
いや、俺達は別に無音で移動してたわけじゃねぇ。
まだ町には距離があるからな、
むしろ騒がしかったくらいだが……
なぜ、そんな俺達の前に、女が、一人で)
少女「……ふっ」にやっ
配下「っ! 罠だ、戻れッッ!!」
手下6「罠ぁ? そんなんドコにも……」
パチンッ、ズドドドドドドッッ
手下達「ひ、ぎゃぁあああああ?!」「ぐぉぉぉ」
「痛ぇ、痛ぇよぉぉ」「な、なにが起ったぁ?!」
483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:54:24.82 ID:cPIlV7OBo
手下6「うぐぁああ、いてぇ、弾が、いくつもっ」
配下(幸運だ、隣のヤツが壁になって、
俺には一発も当たってねぇ。
こいつらはまとめる俺がいなければ有象無象だが、
俺さえ無事ならなんとでも戦力として立て直せるっ)
手下1「うおぉぉっ!」ガサガサ
配下「バカな、姿も見えない敵の方に
突っ込むヤツがいるか!!」
パンパンッ!
手下1「っ……」ばたり
配下「く、銃撃だ! 右の林から弾幕!
姿勢低くしろ!
右の林に撃ちながら、左か後ろに距離をとれぇっ!」
少女 すっ
配下(く、やはり銃を隠し持っていたか。
だが、私にむけている?
6はあの娘に近づいているが、
私までは300フィートはある。当たるわけが)
ぱぁんっ!!
配下「ぐ、がぁああっ!」
配下(幸運だ、隣のヤツが壁になって、
俺には一発も当たってねぇ。
こいつらはまとめる俺がいなければ有象無象だが、
俺さえ無事ならなんとでも戦力として立て直せるっ)
手下1「うおぉぉっ!」ガサガサ
配下「バカな、姿も見えない敵の方に
突っ込むヤツがいるか!!」
パンパンッ!
手下1「っ……」ばたり
配下「く、銃撃だ! 右の林から弾幕!
姿勢低くしろ!
右の林に撃ちながら、左か後ろに距離をとれぇっ!」
少女 すっ
配下(く、やはり銃を隠し持っていたか。
だが、私にむけている?
6はあの娘に近づいているが、
私までは300フィートはある。当たるわけが)
ぱぁんっ!!
配下「ぐ、がぁああっ!」
484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:54:58.25 ID:cPIlV7OBo
配下(バカな! 300だぞ!
まぐれでもなく、狙って当てるか、この距離を!)
少女 だだっ
手下6「あぐっ、に、げんなぁっ……!」だだっ
少女「しつ、こいっ!」
ずぱっ
手下6「あ、が……」ばたり
少女「っ、……」だだっ
配下「く、俺も身を隠して……
おい、てめぇら、無事か!」
手下達「な、なんとか大丈夫だ!」
「けど、何人も撃たれた! くそ、俺も、いてぇ……」
「こんなに大勢がいるなんて聞いてねぇぞ!!」
配下(大勢、か? 初撃の弾幕はそれなりに有ったが、
それ以降は突っ込んでいったヤツが撃たれただけ)
手下5「ど、どうすんだよぉっ!
お前がお頭の代理だろ! 軍人だったんだろ!」
485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:55:25.38 ID:cPIlV7OBo
配下(実は、相手は少ないんじゃないか?
だが、多かったら……確かめる事はできねぇ。
道に発砲の黒煙が残ってるせいで、
正確な敵の方向も判らねぇしな。
く、案外さっきの銃創が深い……血がとまらねぇ)
手下5「おい! 配下よ、どうすりゃいい!」
配下「前に進むぞ! ただし道に出るのは論外だ。
射線が通れば撃ってくるからな、灯火を消して、
森の中を歩いて抜けるぞ!」
手下達「「おうっ!」」
配下(今の奇襲で三十人は失った。けが人も多い……
くそ、俺が自分から任せろって言った旦那の部隊を。
よくもやったな、あの女ぁ)
手下4「八つ裂きだ、あの男みてぇな女、
いたぶった後に八つ裂きにしてやる……」
配下「あぁ。死ぬより辛い後悔をさせてやる……っ」
ひゅ……ドシュッ
手下4「っぐが……」ぱたり
配下「く、なんだ! 今のは何なんだ!
くそっ、どうなってやがるッ!!」
だが、多かったら……確かめる事はできねぇ。
道に発砲の黒煙が残ってるせいで、
正確な敵の方向も判らねぇしな。
く、案外さっきの銃創が深い……血がとまらねぇ)
手下5「おい! 配下よ、どうすりゃいい!」
配下「前に進むぞ! ただし道に出るのは論外だ。
射線が通れば撃ってくるからな、灯火を消して、
森の中を歩いて抜けるぞ!」
手下達「「おうっ!」」
配下(今の奇襲で三十人は失った。けが人も多い……
くそ、俺が自分から任せろって言った旦那の部隊を。
よくもやったな、あの女ぁ)
手下4「八つ裂きだ、あの男みてぇな女、
いたぶった後に八つ裂きにしてやる……」
配下「あぁ。死ぬより辛い後悔をさせてやる……っ」
ひゅ……ドシュッ
手下4「っぐが……」ぱたり
配下「く、なんだ! 今のは何なんだ!
くそっ、どうなってやがるッ!!」
486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:56:03.28 ID:cPIlV7OBo
------------------------------------------------
夜 パリウガ南東の山頂
少女「何とか戻れたよー」がさがさ
双子姉「お疲れさまっ。
作戦その一、『挑発と側面攻撃』成功だね!
怪我とかしてない?」
少女「怪我は大丈夫……でも、ごめん。
一撃で敵の隊長を仕留めるって、できなかった……」
白髪「そうか、ならまだ相手は『考えて動く』か。
ここで仕留められりゃ早かったが」
少女「ごめん、任せてもらったのに」
白髪「危険な敵の前に出る囮をやったんだ。
それだけで十分、よくやったぜ。
セリフはちゃんと云えたか?」
少女「うん、それはバッチリ!
子供の頃から、緊張する場所でセリフを言うのは、
けっこう慣れてるからね」
夜 パリウガ南東の山頂
少女「何とか戻れたよー」がさがさ
双子姉「お疲れさまっ。
作戦その一、『挑発と側面攻撃』成功だね!
怪我とかしてない?」
少女「怪我は大丈夫……でも、ごめん。
一撃で敵の隊長を仕留めるって、できなかった……」
白髪「そうか、ならまだ相手は『考えて動く』か。
ここで仕留められりゃ早かったが」
少女「ごめん、任せてもらったのに」
白髪「危険な敵の前に出る囮をやったんだ。
それだけで十分、よくやったぜ。
セリフはちゃんと云えたか?」
少女「うん、それはバッチリ!
子供の頃から、緊張する場所でセリフを言うのは、
けっこう慣れてるからね」
487: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:56:48.03 ID:cPIlV7OBo
白髪「なら、相手の頭に『逃げる』って選択肢は、
ちゃんと出るようになったはずだぜ。
ムリに全滅覚悟で突貫されちゃ、
こっちは三人だ、もたねぇからなぁ」
少女「でも、最初の罠の数、
やっぱりちょっと足りてなかったよ。
獣道に沿って上ってくるのは予想通りだったけど、
けっこう無秩序にだらだら上ってきてたから、
列が長すぎて後ろの方は罠が足りてなかったかな」
白髪「そうか……
やっぱり材料の不足が問題だったな。
道に向かって尖った小石を爆発させる罠だけで、
多く仕留められれば良かったが……」
少女「まあ、相手を混乱させて、
敵に自分達がいっぱいいるように見せかけるって、
作戦の目的は達成できたと思うよ!」
白髪「……そうだな。まずはそれを良しとするか」
双子姉「むー、それにしてもさー、
せっかく町を守るって言って、
それなりにお金も出したのに、
火薬あんまり売ってくれなかったよね……」
ちゃんと出るようになったはずだぜ。
ムリに全滅覚悟で突貫されちゃ、
こっちは三人だ、もたねぇからなぁ」
少女「でも、最初の罠の数、
やっぱりちょっと足りてなかったよ。
獣道に沿って上ってくるのは予想通りだったけど、
けっこう無秩序にだらだら上ってきてたから、
列が長すぎて後ろの方は罠が足りてなかったかな」
白髪「そうか……
やっぱり材料の不足が問題だったな。
道に向かって尖った小石を爆発させる罠だけで、
多く仕留められれば良かったが……」
少女「まあ、相手を混乱させて、
敵に自分達がいっぱいいるように見せかけるって、
作戦の目的は達成できたと思うよ!」
白髪「……そうだな。まずはそれを良しとするか」
双子姉「むー、それにしてもさー、
せっかく町を守るって言って、
それなりにお金も出したのに、
火薬あんまり売ってくれなかったよね……」
488: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:57:40.60 ID:cPIlV7OBo
少女「まあ、それはしかたないよ。
町に海賊が来るって言われたら、
その直後に火薬を売ってくれなくなるって。
用心のために余裕を持っていたくなるし」
双子姉「ぶーぶー」
少女「でもほら、弾幕みたいに見える罠はさ、
町の子供達が石集めを手伝ってくれたから、
あれだけの数が用意できたんだし」
双子姉「森に罠作ったりするのも、
なんか楽しそうに手伝ってくれたからね」
少女「まあ、子供にとっては、
大人にやっちゃダメって言われてるイタズラを、
どんどんやってくれって事だったからね」
白髪「……ホントは、そんな事をさせて、
形だけでも関わったりはしてほしくねぇが、な」ぼそ
双子姉「ん? どうしたの?」
白髪「いや、なんでもねぇよ」
少女「……」
町に海賊が来るって言われたら、
その直後に火薬を売ってくれなくなるって。
用心のために余裕を持っていたくなるし」
双子姉「ぶーぶー」
少女「でもほら、弾幕みたいに見える罠はさ、
町の子供達が石集めを手伝ってくれたから、
あれだけの数が用意できたんだし」
双子姉「森に罠作ったりするのも、
なんか楽しそうに手伝ってくれたからね」
少女「まあ、子供にとっては、
大人にやっちゃダメって言われてるイタズラを、
どんどんやってくれって事だったからね」
白髪「……ホントは、そんな事をさせて、
形だけでも関わったりはしてほしくねぇが、な」ぼそ
双子姉「ん? どうしたの?」
白髪「いや、なんでもねぇよ」
少女「……」
489: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:58:39.02 ID:cPIlV7OBo
白髪「ほれ、無駄話はいい。次の作戦行くぞ」
双子姉「あいあーい。
次はなんだっけ?」
白髪「次はお前の出番だろ。
隊長が生きてる場合の、第二作戦」
双子姉「地中海が誇る超絶美少女双子姉ちゃんの、
七つの必殺特技その二だね!」
少女「いや、必殺って、なんか違うと思うけど……
しかも超絶とか自分で言わない!」
双子姉「いいの!
こういうのには景気よく、とりあえず必殺って
つけておかないと偉い人に怒られるんだって」
少女「偉い人って誰さ……」
双子姉「それじゃ、おねーちゃん、
その前に、さっそくだけど、脱いでー♪」わきわき
少女「え、いや、脱ぐ必要はないよね。
作戦ってアレでしょ?
しかもなんか、手つきが○○○○んだけど?!」
双子姉「あいあーい。
次はなんだっけ?」
白髪「次はお前の出番だろ。
隊長が生きてる場合の、第二作戦」
双子姉「地中海が誇る超絶美少女双子姉ちゃんの、
七つの必殺特技その二だね!」
少女「いや、必殺って、なんか違うと思うけど……
しかも超絶とか自分で言わない!」
双子姉「いいの!
こういうのには景気よく、とりあえず必殺って
つけておかないと偉い人に怒られるんだって」
少女「偉い人って誰さ……」
双子姉「それじゃ、おねーちゃん、
その前に、さっそくだけど、脱いでー♪」わきわき
少女「え、いや、脱ぐ必要はないよね。
作戦ってアレでしょ?
しかもなんか、手つきが○○○○んだけど?!」
490: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:59:06.01 ID:cPIlV7OBo
双子姉「ふっふー、白髪のおっちゃん直伝!
女の子を脱がす指の運動―♪」
少女「ちょっ!
白髪さん、いったい何を教えてるのよ!」
白髪「いや、別に教えちゃいねぇが。
まあ、狼相手によくふざけてやるから、
見て盗まれたのか?
双子姉、指はもうちょっとくねくねとだ」
双子姉「あいさーっ! さ、痛くしないからねー♪」
少女「さりげなく助言とかしないでいいから!
や、双子姉ちゃん、 なんで○○のよ……っ
ああ、やだっ、そんなとこさわらないでっ!」
双子姉「よいではないか、よいではないかー♪」
少女「ひゃぁっ、そこ、くすぐったいからっ!
んぅ、ん、やめてよぉ……ぁ」
女の子を脱がす指の運動―♪」
少女「ちょっ!
白髪さん、いったい何を教えてるのよ!」
白髪「いや、別に教えちゃいねぇが。
まあ、狼相手によくふざけてやるから、
見て盗まれたのか?
双子姉、指はもうちょっとくねくねとだ」
双子姉「あいさーっ! さ、痛くしないからねー♪」
少女「さりげなく助言とかしないでいいから!
や、双子姉ちゃん、 なんで○○のよ……っ
ああ、やだっ、そんなとこさわらないでっ!」
双子姉「よいではないか、よいではないかー♪」
少女「ひゃぁっ、そこ、くすぐったいからっ!
んぅ、ん、やめてよぉ……ぁ」
491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 01:59:34.60 ID:cPIlV7OBo
双子姉「ふふーん、さ、コレでおっけー。
まったく、こんな場所に隠すからダメなんだよー?」
少女「は、はふぅ……くすぐったかった……」
双子姉「護身用の爆弾、服の胸の部分に入れて、
大きく見せようとしないでもいいじゃん」
少女「だってさー……」
双子姉「まあ、これ持ってくねっ。
こんど前に出るのあたしだし!」
白髪「気をつけて行けよ。
爆弾つったって、そいつは煙幕だからな。
近づかれて使うハメにならねぇのが一番だ」
双子姉「あいあいさー。
んでは、いってきますっ」しゅばっ
たったかたー
まったく、こんな場所に隠すからダメなんだよー?」
少女「は、はふぅ……くすぐったかった……」
双子姉「護身用の爆弾、服の胸の部分に入れて、
大きく見せようとしないでもいいじゃん」
少女「だってさー……」
双子姉「まあ、これ持ってくねっ。
こんど前に出るのあたしだし!」
白髪「気をつけて行けよ。
爆弾つったって、そいつは煙幕だからな。
近づかれて使うハメにならねぇのが一番だ」
双子姉「あいあいさー。
んでは、いってきますっ」しゅばっ
たったかたー
492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:00:20.37 ID:cPIlV7OBo
白髪「あいつ、遊びか何かと間違えてねぇか?
心配にさせるなよ。ったく。
なあ、少女……少女?」
少女「白髪さぁん。
私も次の作戦に動かないといけないけど、
その前にちょっと話があってね」ぱき、ぱき
白髪「や、ちょっとまて。な?
まだ作戦中で、いつ何が起るかわからん。
だから……おい、大丈夫か?」
少女「え、なにがよ?
あ、そんな簡単にはごまかされないからね!」
白髪「…………うぐ、やっぱり、ダメか?」
少女「この、○○じじぃーっ!!」
ずが、ばきっ、げしぃっ
白髪「し、死ぬぅ……」ぴくぴく
少女「死んだら地獄巡りでもすればいいのよ、ったく」
のしのし……
白髪「…………そうか、そういや、初めてか。
本当に、こんな若いの二人を巻き込んで、
地獄行きは免れネェなぁ……」
心配にさせるなよ。ったく。
なあ、少女……少女?」
少女「白髪さぁん。
私も次の作戦に動かないといけないけど、
その前にちょっと話があってね」ぱき、ぱき
白髪「や、ちょっとまて。な?
まだ作戦中で、いつ何が起るかわからん。
だから……おい、大丈夫か?」
少女「え、なにがよ?
あ、そんな簡単にはごまかされないからね!」
白髪「…………うぐ、やっぱり、ダメか?」
少女「この、○○じじぃーっ!!」
ずが、ばきっ、げしぃっ
白髪「し、死ぬぅ……」ぴくぴく
少女「死んだら地獄巡りでもすればいいのよ、ったく」
のしのし……
白髪「…………そうか、そういや、初めてか。
本当に、こんな若いの二人を巻き込んで、
地獄行きは免れネェなぁ……」
493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:00:46.73 ID:cPIlV7OBo
------------------------------------------------
夜 パリウガ南東の山中
配下「おい、そっちはどうだ!」
手下8「く、ダメだ、ぜんぜんわかんねぇ!
判るのはあたり一面が罠だらけって事だ。
町の奴ら本気で見境ねぇぞ!」
配下(足下に張られた糸……
木や草に結びつけたソレが外れると、
紐で結ばれた木の杭が飛んできて……何人死んだよ)
手下9「おい、うるさいぞ! 泣き叫ぶな!」
手下5「うるせぇっぐ、あぁあ、痛ぇ、痛ぇよぉ……
ひぃぃ、ひっぱるな、千切れるじゃねぇかぁっ。
早くこれ外せよぉ」
手下9「バカ野郎っ、ひっぱらねぇで外せるかよ!」
配下(更に厄介なのは、この金属片を結びつけた網だ。
いったん絡まれば自力じゃ逃げられず、
味方が近くにいてもすぐには助からねぇ)
手下5「さっさとはずせよぉ……痛ぇよぉ」
手下9「く、こんなん、明るければすぐなのに!」
夜 パリウガ南東の山中
配下「おい、そっちはどうだ!」
手下8「く、ダメだ、ぜんぜんわかんねぇ!
判るのはあたり一面が罠だらけって事だ。
町の奴ら本気で見境ねぇぞ!」
配下(足下に張られた糸……
木や草に結びつけたソレが外れると、
紐で結ばれた木の杭が飛んできて……何人死んだよ)
手下9「おい、うるさいぞ! 泣き叫ぶな!」
手下5「うるせぇっぐ、あぁあ、痛ぇ、痛ぇよぉ……
ひぃぃ、ひっぱるな、千切れるじゃねぇかぁっ。
早くこれ外せよぉ」
手下9「バカ野郎っ、ひっぱらねぇで外せるかよ!」
配下(更に厄介なのは、この金属片を結びつけた網だ。
いったん絡まれば自力じゃ逃げられず、
味方が近くにいてもすぐには助からねぇ)
手下5「さっさとはずせよぉ……痛ぇよぉ」
手下9「く、こんなん、明るければすぐなのに!」
494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:01:13.09 ID:cPIlV7OBo
配下(でもって、死ぬわけじゃねぇから、
ずっと悲鳴が聞こえ続ける……
いくら暴力と悲鳴になれた男だって、
仲間のこんな声をずっときかされちゃ、士気が……)
配下?「おい、さっきの女がいたぞ!
野郎共、前に出ろっ! 走って逃げてやがる!!」
手下達「んだと?!」「どっちだっ、くそっ!」
配下?「坂を登る方に向いて左の方向だっ!」
手下達「「うおぉーっ!」」
手下7「捕まえたらただじゃおかねぇぞ!!」だだっ
配下「バカッ、待て! 今のは俺じゃ」
手下達「うわぁあああぁぁ……ぁ…………」
「ひぃいいい……」「おちるぅぅううう」
ずっと悲鳴が聞こえ続ける……
いくら暴力と悲鳴になれた男だって、
仲間のこんな声をずっときかされちゃ、士気が……)
配下?「おい、さっきの女がいたぞ!
野郎共、前に出ろっ! 走って逃げてやがる!!」
手下達「んだと?!」「どっちだっ、くそっ!」
配下?「坂を登る方に向いて左の方向だっ!」
手下達「「うおぉーっ!」」
手下7「捕まえたらただじゃおかねぇぞ!!」だだっ
配下「バカッ、待て! 今のは俺じゃ」
手下達「うわぁあああぁぁ……ぁ…………」
「ひぃいいい……」「おちるぅぅううう」
495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:02:23.06 ID:cPIlV7OBo
配下「く! お前ら行くなっ!
西側は崖だって忘れたかっ!!」
配下?「だが崖際に追い詰めりゃこっちのモンだ!
女を捕まえろ! 捕まえて痛めつけてやれ!」
手下達「どこだ、女はどこに……おい押すなうぁああ」
「違、わざとじゃねぇ! 何かが俺の……ぎゃぁああ」
手下7「く、お前ら、こっちに来るな!
足下に網が有って、それがロープで岩に!
や、やめろお前! その岩を落としたら俺達っ
ぎゃああぁぁぁ……ぁ…………」
配下?「ふふーん、まあこんなトコロか。
しばらく我慢して潜入した甲斐があったなぁ」
手下8「なんだとぉっ!
まさか配下! お前はスパイか!」
配下「ち、違う、そんなわけねぇだろ!!」
配下?「なぁんてな! ははは!
どうだ、見事な演技だろ!」
手下8「ん? 声が、あっちから響いてる?」
配下「そ、そっちの声が偽物だ!
俺が旦那を裏切るわけねぇだろっ」
西側は崖だって忘れたかっ!!」
配下?「だが崖際に追い詰めりゃこっちのモンだ!
女を捕まえろ! 捕まえて痛めつけてやれ!」
手下達「どこだ、女はどこに……おい押すなうぁああ」
「違、わざとじゃねぇ! 何かが俺の……ぎゃぁああ」
手下7「く、お前ら、こっちに来るな!
足下に網が有って、それがロープで岩に!
や、やめろお前! その岩を落としたら俺達っ
ぎゃああぁぁぁ……ぁ…………」
配下?「ふふーん、まあこんなトコロか。
しばらく我慢して潜入した甲斐があったなぁ」
手下8「なんだとぉっ!
まさか配下! お前はスパイか!」
配下「ち、違う、そんなわけねぇだろ!!」
配下?「なぁんてな! ははは!
どうだ、見事な演技だろ!」
手下8「ん? 声が、あっちから響いてる?」
配下「そ、そっちの声が偽物だ!
俺が旦那を裏切るわけねぇだろっ」
496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:03:06.88 ID:cPIlV7OBo
手下8「……そうだ! お頭の好物は?」
配下「ニンニクだ! ニンニク料理が大好きだ!
俺が臭いからやめてくれっつっても、
酒場で毎回頼みやがる!」
手下8「ニンニク嫌いって事はあんたが配下か!
ってことはあっちが偽物だなッ」
双子姉「ああ、だから死ぬほど臭いって言ってたんだ。
なっとくー……」
手下8「おい、お前ら、この声の奴が仲間を殺した!
追っかけて仇をうつぞーっ!」
手下達「「うおおおおーっ」」
双子姉「うわ、やばっ!」だだーっ
手下8「待てぇーっ!!」
配下「俺、ニンニク嫌いで有名だったのか……
って、ちょっと落ち込んでる場合じゃねぇ。
待てーっ!!」
双子姉「へへーん、またないよーん♪」
配下「ニンニクだ! ニンニク料理が大好きだ!
俺が臭いからやめてくれっつっても、
酒場で毎回頼みやがる!」
手下8「ニンニク嫌いって事はあんたが配下か!
ってことはあっちが偽物だなッ」
双子姉「ああ、だから死ぬほど臭いって言ってたんだ。
なっとくー……」
手下8「おい、お前ら、この声の奴が仲間を殺した!
追っかけて仇をうつぞーっ!」
手下達「「うおおおおーっ」」
双子姉「うわ、やばっ!」だだーっ
手下8「待てぇーっ!!」
配下「俺、ニンニク嫌いで有名だったのか……
って、ちょっと落ち込んでる場合じゃねぇ。
待てーっ!!」
双子姉「へへーん、またないよーん♪」
497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:04:12.75 ID:cPIlV7OBo
手下達「くそ、足が速い!」
「俺達じゃ、夜の森は走れねぇからな……」
「……声が可愛いな」
手下8「最後の違うだろ!!」
配下(……しかし、まずいな、さっきからの罠の連続で、
一歩進むだけでもこいつ等ビクビクしてやがる。
しかも三百はいたはずの連中が、
気がつきゃ、この周りにいるだけ……
くそっ! 残りはどこだ!)
ばっ
手下8「辺りが開けた!」
配下「しめた!
これで星明かりで罠が見え……」
少女「ずいぶん遅かったわね」どーんっ
配下 あ、てめぇ、この前の……」
少女「やっと思い出した?」
配下「絶壁女!!」
少女「…………」
「俺達じゃ、夜の森は走れねぇからな……」
「……声が可愛いな」
手下8「最後の違うだろ!!」
配下(……しかし、まずいな、さっきからの罠の連続で、
一歩進むだけでもこいつ等ビクビクしてやがる。
しかも三百はいたはずの連中が、
気がつきゃ、この周りにいるだけ……
くそっ! 残りはどこだ!)
ばっ
手下8「辺りが開けた!」
配下「しめた!
これで星明かりで罠が見え……」
少女「ずいぶん遅かったわね」どーんっ
配下 あ、てめぇ、この前の……」
少女「やっと思い出した?」
配下「絶壁女!!」
少女「…………」
498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:04:41.31 ID:cPIlV7OBo
手下達「くそ、足が速い!」
「俺達じゃ、夜の森は走れねぇからな……」
「……声が可愛いな」
手下8「最後の違うだろ!!」
配下(……しかし、まずいな、さっきからの罠の連続で、
一歩進むだけでもこいつ等ビクビクしてやがる。
しかも三百はいたはずの連中が、
気がつきゃ、この周りにいるだけ……
くそっ! 残りはどこだ!)
ばっ
手下8「辺りが開けた!」
配下「しめた!
これで星明かりで罠が見え……」
少女「ずいぶん遅かったわね」どーんっ
配下 あ、てめぇ、この前の……」
少女「やっと思い出した?」
配下「絶壁女!!」
少女「…………」
「俺達じゃ、夜の森は走れねぇからな……」
「……声が可愛いな」
手下8「最後の違うだろ!!」
配下(……しかし、まずいな、さっきからの罠の連続で、
一歩進むだけでもこいつ等ビクビクしてやがる。
しかも三百はいたはずの連中が、
気がつきゃ、この周りにいるだけ……
くそっ! 残りはどこだ!)
ばっ
手下8「辺りが開けた!」
配下「しめた!
これで星明かりで罠が見え……」
少女「ずいぶん遅かったわね」どーんっ
配下 あ、てめぇ、この前の……」
少女「やっと思い出した?」
配下「絶壁女!!」
少女「…………」
499: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:05:23.58 ID:cPIlV7OBo
------------------------------------------------
夜 パリウガ南東の山頂
双子姉「……っ、はぁ……。
さすがに夜の森走るのなんて……
つかれた……」
白髪「お疲れさん。こっちも片付いたぜ」すっ
双子姉「っ! おっちゃん、真っ赤だよ!
どこか怪我したの?!」
白髪「あぁん、まあ、かすり傷だ。殆ど返り血だな」
双子姉「……」
白髪「……怖いか?」
双子姉「……だって」
白髪「そうだったな、双子姉の前じゃ、
まだそれほどは殺して無かったか……
こんな真っ赤になるほどの殺し合いなんざ、
ワシもずいぶん久しぶり……」
双子姉「そうじゃないよっ! ……そうじゃなくて」
白髪「……」
夜 パリウガ南東の山頂
双子姉「……っ、はぁ……。
さすがに夜の森走るのなんて……
つかれた……」
白髪「お疲れさん。こっちも片付いたぜ」すっ
双子姉「っ! おっちゃん、真っ赤だよ!
どこか怪我したの?!」
白髪「あぁん、まあ、かすり傷だ。殆ど返り血だな」
双子姉「……」
白髪「……怖いか?」
双子姉「……だって」
白髪「そうだったな、双子姉の前じゃ、
まだそれほどは殺して無かったか……
こんな真っ赤になるほどの殺し合いなんざ、
ワシもずいぶん久しぶり……」
双子姉「そうじゃないよっ! ……そうじゃなくて」
白髪「……」
500: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:06:38.29 ID:cPIlV7OBo
双子姉「……そんなに血がついてるって、
ずっと剣で戦ってきたんだよね?
ほんとに怪我してないの?
大丈夫なの?」
白髪「がっはっは、大丈夫だぞ。
いや、まあ、かすり傷はあるがな。
こちとら人生の大半、騎士だったんだぜ。
闇にまぎれて不意打ちまですりゃ、
一対一だの二対一だので負けるかよ」
双子姉 ぎゅっ
白髪「おい、服が汚れるぞ」
双子姉「っ、っ」ふるふる
白髪「……泣くなよ。
ワシは大丈夫だ。こんな連中相手なんざ、
危ない事なんてねぇよ」
双子姉「うそ、うそだもん……」うるっ
白髪「…………」なでなで
双子姉「さっき、追われてすごく怖かったもん。
剣とか銃を持った人が相手じゃ、
いつ、死にそうになってもおかしくないもん」
ずっと剣で戦ってきたんだよね?
ほんとに怪我してないの?
大丈夫なの?」
白髪「がっはっは、大丈夫だぞ。
いや、まあ、かすり傷はあるがな。
こちとら人生の大半、騎士だったんだぜ。
闇にまぎれて不意打ちまですりゃ、
一対一だの二対一だので負けるかよ」
双子姉 ぎゅっ
白髪「おい、服が汚れるぞ」
双子姉「っ、っ」ふるふる
白髪「……泣くなよ。
ワシは大丈夫だ。こんな連中相手なんざ、
危ない事なんてねぇよ」
双子姉「うそ、うそだもん……」うるっ
白髪「…………」なでなで
双子姉「さっき、追われてすごく怖かったもん。
剣とか銃を持った人が相手じゃ、
いつ、死にそうになってもおかしくないもん」
501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:07:35.55 ID:cPIlV7OBo
白髪「がはは、大丈夫だっての。
ワシが怪我でもしたら、包帯も狼も少女も、
双子妹も、……お前も、うるせぇからなぁ」
双子姉 ふるふる
白髪「……安心しろ。
もうすぐこの戦いも終わりだ。
本隊から別れた連中は殺すか、追い返すかしてきた。
これで残りは、少女の所の連中くらいだ」
双子姉「……」
白髪「よし、落ち着いたな。
それじゃ、ワシは行ってくる。
双子姉は罠作りで疲れてるんだろうさ、
後はゆっくりと寝ておけ」ぽんぽん
双子姉「……」
白髪「……」くるっ。
すたすた
ワシが怪我でもしたら、包帯も狼も少女も、
双子妹も、……お前も、うるせぇからなぁ」
双子姉 ふるふる
白髪「……安心しろ。
もうすぐこの戦いも終わりだ。
本隊から別れた連中は殺すか、追い返すかしてきた。
これで残りは、少女の所の連中くらいだ」
双子姉「……」
白髪「よし、落ち着いたな。
それじゃ、ワシは行ってくる。
双子姉は罠作りで疲れてるんだろうさ、
後はゆっくりと寝ておけ」ぽんぽん
双子姉「……」
白髪「……」くるっ。
すたすた
502: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:08:42.45 ID:cPIlV7OBo
------------------------------------------------
夜 パリウガ南東の山頂そば
どぉぉん、どぉぉん
少女「聞こえてるでしょ、
町の正面に来た海賊に、町が応戦してる大砲の音。
もうこれから町に向かっても間に合わないし、
諦めて降参しなさいっ!」
配下「……いいや、間に合う、まだ間に合うぜ」
少女「ここから町まで、昼でも半時はかかるし。
今は夜で、いくつも罠があるわよ。
それを避けてたどりつく頃には、
場所を知らなきゃ朝になるから」
配下「……」
少女「別に私たちは殺したいわけじゃないし、
大人しく帰ってくれればいいだけ。
だから今は退かない?
きっと、はぐれた人たちも、海に落ちた人たちも、
船のところで待ってるから……」
配下「……言いたい事はそれだけかよ」
少女「……なによ」
夜 パリウガ南東の山頂そば
どぉぉん、どぉぉん
少女「聞こえてるでしょ、
町の正面に来た海賊に、町が応戦してる大砲の音。
もうこれから町に向かっても間に合わないし、
諦めて降参しなさいっ!」
配下「……いいや、間に合う、まだ間に合うぜ」
少女「ここから町まで、昼でも半時はかかるし。
今は夜で、いくつも罠があるわよ。
それを避けてたどりつく頃には、
場所を知らなきゃ朝になるから」
配下「……」
少女「別に私たちは殺したいわけじゃないし、
大人しく帰ってくれればいいだけ。
だから今は退かない?
きっと、はぐれた人たちも、海に落ちた人たちも、
船のところで待ってるから……」
配下「……言いたい事はそれだけかよ」
少女「……なによ」
503: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:09:17.68 ID:cPIlV7OBo
配下「俺たちはな、ピクニックに来てるんじゃねぇ!
旦那達が時間を稼いでる間に、
旦那達を助けるためにここに居るんだよ」
手下達 こくこく
配下「悪いが、お前らが少数なのは、
この罠の張り方と、さっきから女が繰り返し、
こっちに来てる事で判ってる。
お前の銃の腕はすごいが、
前線で戦える男達はそう多くないんだろ?
だから、あの場所、俺達が前に進めなくなる場所で、
お前が俺を狙撃したんじゃねぇか?」
少女「……そ、そんなの」
配下「とにかく、もうお前達には踊らされねぇ!
お前らぁ!
とにかく一人でも、旦那の応援に駆け付けるぞ!
罠なんて踏みつぶして乗り越えろ!
俺達はなんだ!」
手下達「賊だぁ!」「山賊だ!」「海賊だ!」
「「「荒くれの掠奪者だ!!」」」
配下「だったらうだうだしてねぇで、
とっとと奪える町まで行くぞッ!!」
手下「「「おうッッ!!」」」
旦那達が時間を稼いでる間に、
旦那達を助けるためにここに居るんだよ」
手下達 こくこく
配下「悪いが、お前らが少数なのは、
この罠の張り方と、さっきから女が繰り返し、
こっちに来てる事で判ってる。
お前の銃の腕はすごいが、
前線で戦える男達はそう多くないんだろ?
だから、あの場所、俺達が前に進めなくなる場所で、
お前が俺を狙撃したんじゃねぇか?」
少女「……そ、そんなの」
配下「とにかく、もうお前達には踊らされねぇ!
お前らぁ!
とにかく一人でも、旦那の応援に駆け付けるぞ!
罠なんて踏みつぶして乗り越えろ!
俺達はなんだ!」
手下達「賊だぁ!」「山賊だ!」「海賊だ!」
「「「荒くれの掠奪者だ!!」」」
配下「だったらうだうだしてねぇで、
とっとと奪える町まで行くぞッ!!」
手下「「「おうッッ!!」」」
504: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:10:21.07 ID:cPIlV7OBo
少女「くっ……」だっ
配下「逃げるかっ、追え!
捕まえて町でさらし首にしてやれ!
俺達の恐怖を思い知らせろ!」
手下達「「「おおおおおおっ!!」
少女(く、まだ心が折れてないなんて!
でも、そこには)
少女「やけになっても大丈夫なように、ちゃんと罠が!」
配下「知った事かぁっ!
踏みつぶせ、野郎ども!!!」
手下達「「「うおりゃぁぁ!!」」」
少女(これを引っ張れば、岩が一気に崩れて……)ぐいっ
…………
手下達「「「うおおおおおっ!!!」」」
少女「え、うそ!!」
配下「は、なんか知らんが、不発だったらしいなぁっ!」
少女「くっ」だっ
配下「逃げるかっ、追え!
捕まえて町でさらし首にしてやれ!
俺達の恐怖を思い知らせろ!」
手下達「「「おおおおおおっ!!」
少女(く、まだ心が折れてないなんて!
でも、そこには)
少女「やけになっても大丈夫なように、ちゃんと罠が!」
配下「知った事かぁっ!
踏みつぶせ、野郎ども!!!」
手下達「「「うおりゃぁぁ!!」」」
少女(これを引っ張れば、岩が一気に崩れて……)ぐいっ
…………
手下達「「「うおおおおおっ!!!」」」
少女「え、うそ!!」
配下「は、なんか知らんが、不発だったらしいなぁっ!」
少女「くっ」だっ
505: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/23(木) 02:11:59.05 ID:cPIlV7OBo
配下「逃がすかよぉっ!!」
がしぃっ
手下達「配下が女を捕まえたっ」「いいぞ、殺せぇ!」
「殺すなっ、拷問だぁ!」「八つ裂きにしろぉ!」
少女「……っ!」ばっ
配下「刀なんか出したって、無駄だってんだよっ!!」
ガキィィンッ
少女「そんな、こないだより、強い?!」
配下「てめぇの剣なんざ、
所詮決まった型の貴族の剣だろ!
どう来るかわかってりゃ、対応なんざ簡単なんだよ!」
少女(こんな状態じゃ、罠のところに走れない……っ。
どうしたら、どうしたら……?
さっきの二つの煙幕、片方でもあれば逃げられたのに。
なんで両方……違う、今はそんな事じゃなくて、)
配下「さぁ、罠の無い道を町まで案内してもらおうか。
これならすぐに、町まで行けるだろ」
少女「――っ!!」
配下 ニヤリ
がしぃっ
手下達「配下が女を捕まえたっ」「いいぞ、殺せぇ!」
「殺すなっ、拷問だぁ!」「八つ裂きにしろぉ!」
少女「……っ!」ばっ
配下「刀なんか出したって、無駄だってんだよっ!!」
ガキィィンッ
少女「そんな、こないだより、強い?!」
配下「てめぇの剣なんざ、
所詮決まった型の貴族の剣だろ!
どう来るかわかってりゃ、対応なんざ簡単なんだよ!」
少女(こんな状態じゃ、罠のところに走れない……っ。
どうしたら、どうしたら……?
さっきの二つの煙幕、片方でもあれば逃げられたのに。
なんで両方……違う、今はそんな事じゃなくて、)
配下「さぁ、罠の無い道を町まで案内してもらおうか。
これならすぐに、町まで行けるだろ」
少女「――っ!!」
配下 ニヤリ
510: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:25:32.96 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 パリウガ南東の山頂そば
少女「なによ、[ピーーー]ならさっさと殺しなさいよ!」
配下「そう焦るなよ。
なぁ、……あー、白髪に、双子妹だったか?」
双子姉「むぅーっ、あたしたちが出てきたんだから、
早くお姉ちゃんを解放してよ!」
手下8「ひゃはは、もうちょっとつきあってもらうぜぇ。
なんだ、よく見りゃまだガキじゃねぇか」
少女「二人とも、ごめん……
私がつかまったから」
配下「仲間思いでいいじゃねぇか。
こいつの命がおしければ、なんて言って、
まさか本当に姿を見せるヤツがいるたぁ、
夢にも思って無かったがよ」
手下8「楽ができていいってもんだ。
またにげまわられちゃぁ、たまらねぇからな」
夜 パリウガ南東の山頂そば
少女「なによ、[ピーーー]ならさっさと殺しなさいよ!」
配下「そう焦るなよ。
なぁ、……あー、白髪に、双子妹だったか?」
双子姉「むぅーっ、あたしたちが出てきたんだから、
早くお姉ちゃんを解放してよ!」
手下8「ひゃはは、もうちょっとつきあってもらうぜぇ。
なんだ、よく見りゃまだガキじゃねぇか」
少女「二人とも、ごめん……
私がつかまったから」
配下「仲間思いでいいじゃねぇか。
こいつの命がおしければ、なんて言って、
まさか本当に姿を見せるヤツがいるたぁ、
夢にも思って無かったがよ」
手下8「楽ができていいってもんだ。
またにげまわられちゃぁ、たまらねぇからな」
511: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:26:07.01 ID:mCLygqSvo
白髪「く、すまんな、二人とも。
ワシが巻き込んじまったばっかりに……」
少女「だ、大丈夫だよ、これくらい」キッ
手下9「はっ、そんな風に縛られたまま睨まれたって、
誰が怖がるってんだよ。
さんざん、俺達をコケにしてくれたなぁっ!!」
どすっ
少女「かは……っ」
配下「いい気味だなぁ、おい。
さんざん俺達をふりまわして、仲間も殺してくれた。
なにか礼が必要か? んん?」
少女 びくっ
白髪「礼なら、縄をほどいてくれよ。
ついでに二人を解放してくれんか?」
配下「ジジイは黙ってろ!」 がっ
白髪「ぐ、げふっ、がっ……」
ワシが巻き込んじまったばっかりに……」
少女「だ、大丈夫だよ、これくらい」キッ
手下9「はっ、そんな風に縛られたまま睨まれたって、
誰が怖がるってんだよ。
さんざん、俺達をコケにしてくれたなぁっ!!」
どすっ
少女「かは……っ」
配下「いい気味だなぁ、おい。
さんざん俺達をふりまわして、仲間も殺してくれた。
なにか礼が必要か? んん?」
少女 びくっ
白髪「礼なら、縄をほどいてくれよ。
ついでに二人を解放してくれんか?」
配下「ジジイは黙ってろ!」 がっ
白髪「ぐ、げふっ、がっ……」
512: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:27:09.99 ID:mCLygqSvo
少女「やめなさいよ、縛った相手に暴力ふるって、
男としてはずかしくないの?」ぎりっ
配下「……いいぜぇ、その表情!
強がりながらおびえる目だ。
俺はそんな目を見るのがだいすきでね。
たまらねぇよ……」
少女「おびえてなんかっ」
配下「おびえてんだろ。
ま、他の音ならともかく、お前じゃぁそそらねぇからなぁ」
少女「な、それはそれで腹が立つーっ!」
手下8「で、配下、こいつらどうするんだよ」
配下「そうさな、とりあえず、こいつら連れて入り江に行くぞ。
こいつらは『通行証』だ」にやり
男としてはずかしくないの?」ぎりっ
配下「……いいぜぇ、その表情!
強がりながらおびえる目だ。
俺はそんな目を見るのがだいすきでね。
たまらねぇよ……」
少女「おびえてなんかっ」
配下「おびえてんだろ。
ま、他の音ならともかく、お前じゃぁそそらねぇからなぁ」
少女「な、それはそれで腹が立つーっ!」
手下8「で、配下、こいつらどうするんだよ」
配下「そうさな、とりあえず、こいつら連れて入り江に行くぞ。
こいつらは『通行証』だ」にやり
513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:27:36.73 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 金色の旗の船
賊「状況はどうなってやがる」
手下A「砲台からの攻撃で正面にまわった四隻の内、
一隻は浸水で沈没。二隻損傷してやす」
賊「被害がでけぇな。
泳いで島に近づいたヤツはいねぇのか」
手下B「ここは丁度潮の通り道でして、
入り江の内側ならまだしも、
この距離じゃ、つくまでにだいぶ流されちまいます」
手下C「夜の海を流されながら泳げば、
夏とは云え冷えるからな、
陸に着く頃にはボロボロだぁ」
賊「ちっ、使えねぇやつらだな。配下の野郎はどうだ。」
手下A「町に襲撃をかける前に、近くの森に火を放って、
町の陽動とこちらへの連絡にすると言ってましたが、
まだそうなってませんね」
夜 金色の旗の船
賊「状況はどうなってやがる」
手下A「砲台からの攻撃で正面にまわった四隻の内、
一隻は浸水で沈没。二隻損傷してやす」
賊「被害がでけぇな。
泳いで島に近づいたヤツはいねぇのか」
手下B「ここは丁度潮の通り道でして、
入り江の内側ならまだしも、
この距離じゃ、つくまでにだいぶ流されちまいます」
手下C「夜の海を流されながら泳げば、
夏とは云え冷えるからな、
陸に着く頃にはボロボロだぁ」
賊「ちっ、使えねぇやつらだな。配下の野郎はどうだ。」
手下A「町に襲撃をかける前に、近くの森に火を放って、
町の陽動とこちらへの連絡にすると言ってましたが、
まだそうなってませんね」
514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:28:13.02 ID:mCLygqSvo
賊「待ち伏せでもされたか……
あの情報屋、今は山を守れる戦力はねぇなんて、
嘘こきやがったな!
次にあったらくびり殺してやるっ」
手下B「どうしやすか? このままじゃ……」
どぉぉぉおおん
ぐらぐら
賊「な、何が起った!」
手下D「大変です、お頭!
南から現れた船が、俺達を攻撃してやす」
賊「ばかな! 町の船は北にあるベネッタに航行中だ!
南からの援軍なんてありえねぇ!
コレは確認済みだったはずだぞ!」
手下D「町の船じゃありやせんっ。
夜闇に紛れる黒い船体で、発見が遅れましたが、
メインマストの上にジョリー・ロジャーを確認。
海賊船です!」
賊「か、海賊だとぉ!!」
どぉぉぉん
あの情報屋、今は山を守れる戦力はねぇなんて、
嘘こきやがったな!
次にあったらくびり殺してやるっ」
手下B「どうしやすか? このままじゃ……」
どぉぉぉおおん
ぐらぐら
賊「な、何が起った!」
手下D「大変です、お頭!
南から現れた船が、俺達を攻撃してやす」
賊「ばかな! 町の船は北にあるベネッタに航行中だ!
南からの援軍なんてありえねぇ!
コレは確認済みだったはずだぞ!」
手下D「町の船じゃありやせんっ。
夜闇に紛れる黒い船体で、発見が遅れましたが、
メインマストの上にジョリー・ロジャーを確認。
海賊船です!」
賊「か、海賊だとぉ!!」
どぉぉぉん
515: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:28:41.72 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 海賊船
双子妹「距離おおよそ半マイル、
風向きは北東から南西で視界良好。
敵艦数は……四でありますかね」
男「いや、戦闘の頭一つ出ている船は死に体だ。
町の射程圏内でもある。無視してかまわん」
双子妹「了解であります。
では目標三っ、全て横っ腹でありますな。
曲射軌道計算終了。
試し撃ちいくであります!」
男「許可する。のろしを上げてやれ」
どぉぉおおおん
双子妹「……外れたか」
双子妹「目視照準から距離の確認を完了。
うう、ごめんなさいであります」
夜 海賊船
双子妹「距離おおよそ半マイル、
風向きは北東から南西で視界良好。
敵艦数は……四でありますかね」
男「いや、戦闘の頭一つ出ている船は死に体だ。
町の射程圏内でもある。無視してかまわん」
双子妹「了解であります。
では目標三っ、全て横っ腹でありますな。
曲射軌道計算終了。
試し撃ちいくであります!」
男「許可する。のろしを上げてやれ」
どぉぉおおおん
双子妹「……外れたか」
双子妹「目視照準から距離の確認を完了。
うう、ごめんなさいであります」
516: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:29:12.43 ID:mCLygqSvo
男「文句を言ったわけではない。
そのための試し撃ちだ。
次に当てれば良い」
包帯「船長はもうちょっとだけ、
愛想が良ければ良いのにね」
男「愛想などいらん」
包帯「そうだから、みんなに逃げられちゃうんだって。
こうやって結局は、助けに来るのにさ」
男「……」
双子妹「家族を助けるのは当然でありますよ」えっへん
男「家族だなんだと、俺を巻き込むな。
俺が寝ている間に方向を変えて、何を言っている。
おかげで、大金を払った輸送情報が空振りになったぞ」
包帯「どうしてもこっちに来るのが嫌だったら、
また舵をとって変えれば良かったと思うんだけど、
それは言わないべきかな?
素直じゃないんだから」にこにこ
そのための試し撃ちだ。
次に当てれば良い」
包帯「船長はもうちょっとだけ、
愛想が良ければ良いのにね」
男「愛想などいらん」
包帯「そうだから、みんなに逃げられちゃうんだって。
こうやって結局は、助けに来るのにさ」
男「……」
双子妹「家族を助けるのは当然でありますよ」えっへん
男「家族だなんだと、俺を巻き込むな。
俺が寝ている間に方向を変えて、何を言っている。
おかげで、大金を払った輸送情報が空振りになったぞ」
包帯「どうしてもこっちに来るのが嫌だったら、
また舵をとって変えれば良かったと思うんだけど、
それは言わないべきかな?
素直じゃないんだから」にこにこ
517: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:29:44.06 ID:mCLygqSvo
男「……うるさい。聞こえよがしに言うな。
それよりも、そろそろ本番だ。
次は当てろよ」
双子妹「誤差は修正完了であります!
もう外さないでありますよ」
男「では答え合わせだ。
本船正面の全砲門を解放っ!」
包帯「準備完了、いつでも撃てるよ!」
男「目標は腹を晒している。
連中の腹の中に直接、
大理石の弾をたっぷり見舞ってやれ!」
双子妹「あいさーっ!」
男「てーっ!!」
どどどどどぉぉぉおおおん
それよりも、そろそろ本番だ。
次は当てろよ」
双子妹「誤差は修正完了であります!
もう外さないでありますよ」
男「では答え合わせだ。
本船正面の全砲門を解放っ!」
包帯「準備完了、いつでも撃てるよ!」
男「目標は腹を晒している。
連中の腹の中に直接、
大理石の弾をたっぷり見舞ってやれ!」
双子妹「あいさーっ!」
男「てーっ!!」
どどどどどぉぉぉおおおん
518: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:30:13.26 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 金色の旗の船
どどどどどぉぉぉおおおん
手下A「おかしらぁーっ、
二隻の側面に敵弾が命中した!
このままじゃアイツラもすぐに沈んじまうぞ!」
手下B「こっちの船も船尾をかすったぞ!
くそ、何人か海に落ちて……」
手下D「誰か、船医を呼べ!
大砲が砕いた床板で、けが人だらけだ!」
手下E「化け物だ、くそ、ありゃぁ化け物だぁっ!!」
手下A「あの『海賊』にケンカをうるなんざ、
間違ってたんだ。
今からでもおそくねぇ、北に逃げよう!」
手下B「ばか、北ったらベネッタの本山じゃねぇか。
逃げるんだったら西だろうがよ!」
手下A「どっちだっていい!
さっさと逃げないと、穴だらけにされるぞ。」
うあぁああああ、もうダメだぁ!
夜 金色の旗の船
どどどどどぉぉぉおおおん
手下A「おかしらぁーっ、
二隻の側面に敵弾が命中した!
このままじゃアイツラもすぐに沈んじまうぞ!」
手下B「こっちの船も船尾をかすったぞ!
くそ、何人か海に落ちて……」
手下D「誰か、船医を呼べ!
大砲が砕いた床板で、けが人だらけだ!」
手下E「化け物だ、くそ、ありゃぁ化け物だぁっ!!」
手下A「あの『海賊』にケンカをうるなんざ、
間違ってたんだ。
今からでもおそくねぇ、北に逃げよう!」
手下B「ばか、北ったらベネッタの本山じゃねぇか。
逃げるんだったら西だろうがよ!」
手下A「どっちだっていい!
さっさと逃げないと、穴だらけにされるぞ。」
うあぁああああ、もうダメだぁ!
519: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:30:41.32 ID:mCLygqSvo
賊「落ち着けてめぇらぁっ!」
きぃーぃん
手下達「「「……」」」
賊「あの二隻は沈むのが判ってるんだな」
手下A「へい!」
賊「だったら簡単だ、ただで沈ませてやる必要はねぇ。
奴隷を残して二隻から船員をこっちに集めろ!」
手下B「そ、そんで何をするんで」
賊「火薬を積んで火を付けた一隻を、
小島の砲台に向かって全速で突撃させるんだ!
運が良ければ小島の連中が助けてくれるって言やぁ、
船の奴隷共もはしゃいで働くだろうさ」
手下C「うっはぁ、さすがお頭だぁ!」
賊「小島をよけるから二隻しか通れねぇ広さになるんだ。
厄介な左右からの同時砲撃も、
この船を挟むようにつっこめば、他が盾になる。
本船だけなら港に入れるはずだ!」
きぃーぃん
手下達「「「……」」」
賊「あの二隻は沈むのが判ってるんだな」
手下A「へい!」
賊「だったら簡単だ、ただで沈ませてやる必要はねぇ。
奴隷を残して二隻から船員をこっちに集めろ!」
手下B「そ、そんで何をするんで」
賊「火薬を積んで火を付けた一隻を、
小島の砲台に向かって全速で突撃させるんだ!
運が良ければ小島の連中が助けてくれるって言やぁ、
船の奴隷共もはしゃいで働くだろうさ」
手下C「うっはぁ、さすがお頭だぁ!」
賊「小島をよけるから二隻しか通れねぇ広さになるんだ。
厄介な左右からの同時砲撃も、
この船を挟むようにつっこめば、他が盾になる。
本船だけなら港に入れるはずだ!」
520: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:31:12.09 ID:mCLygqSvo
手下A「けどよ、一隻だけでつっこんでも、
何も持って帰れねぇぜ?」
賊「ばっきゃろぅ、裏の山に登らせた一隻があるだろ。
それに町にゃ漁船だってある。
いま目の前の町にいる人間を掠って、
ガキを人質に奴隷として帝国に売りゃぁ、
沈んだ船だって新しくなって帰ってくるって寸法よぉ」
手下C「うおおお、さっすが俺らのお頭だぁ!
そこにしびれる憧れるぅッッ」
賊「わかったらお前ら、さっさとやるぞ!」
手下達「「「へいっ!!」」」
賊「……『海賊』よぉぅ、隠しナイフに奇襲たぁ、
随分とせせこましい真似をするじゃねぇか。
だがなぁ、最後に勝つのは、この俺だぁ!
手下D「入り江の山側砲台から煙を確認しやした!」
賊「そんなもん、大砲使えばいくらでも出るだろ!」
何も持って帰れねぇぜ?」
賊「ばっきゃろぅ、裏の山に登らせた一隻があるだろ。
それに町にゃ漁船だってある。
いま目の前の町にいる人間を掠って、
ガキを人質に奴隷として帝国に売りゃぁ、
沈んだ船だって新しくなって帰ってくるって寸法よぉ」
手下C「うおおお、さっすが俺らのお頭だぁ!
そこにしびれる憧れるぅッッ」
賊「わかったらお前ら、さっさとやるぞ!」
手下達「「「へいっ!!」」」
賊「……『海賊』よぉぅ、隠しナイフに奇襲たぁ、
随分とせせこましい真似をするじゃねぇか。
だがなぁ、最後に勝つのは、この俺だぁ!
手下D「入り江の山側砲台から煙を確認しやした!」
賊「そんなもん、大砲使えばいくらでも出るだろ!」
521: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:31:46.02 ID:mCLygqSvo
手下E「違ぇって!
火薬の黒煙じゃねぇ。
火事みてえな灰色の煙だ!」
手下D「よく見えねぇが人が右往左往してやがる」
賊「なんだと……そうか、配下が道を拓いたか!」
手下A「いよっしゃー!
さすが配下さん、いつもは三下くさいのに、
やるときゃぁやってくれる人だ!」
手下B「冷や汗かかせるぜぇ」
賊「なに安心したような顔してやがる。
本番はこれからだぞ!」がつんっ
手下A「ってー……
この分も、後で捕まえた奴隷ぶん殴ってやる」
手下B「八つ当たりかよっ。ひひひ」
賊「船員の乗り換え急がせろ、
いや、終わるまで待つ必要もねぇ。
港に向かって全速前進!
ぶっ壊れてもかまわねぇ、この隙に町に突っ込むぞ!
手下達「まってましたー!」「やったるぜッ」
「URYYYYYY!!」
火薬の黒煙じゃねぇ。
火事みてえな灰色の煙だ!」
手下D「よく見えねぇが人が右往左往してやがる」
賊「なんだと……そうか、配下が道を拓いたか!」
手下A「いよっしゃー!
さすが配下さん、いつもは三下くさいのに、
やるときゃぁやってくれる人だ!」
手下B「冷や汗かかせるぜぇ」
賊「なに安心したような顔してやがる。
本番はこれからだぞ!」がつんっ
手下A「ってー……
この分も、後で捕まえた奴隷ぶん殴ってやる」
手下B「八つ当たりかよっ。ひひひ」
賊「船員の乗り換え急がせろ、
いや、終わるまで待つ必要もねぇ。
港に向かって全速前進!
ぶっ壊れてもかまわねぇ、この隙に町に突っ込むぞ!
手下達「まってましたー!」「やったるぜッ」
「URYYYYYY!!」
522: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:32:22.20 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 パリウガ入り江砲台
少女(積みあがった、死体。
私達人質を助けるために武器を捨てて、
殺されてしまった人たち。
命はとらないという嘘を、信じてしまった人たち)
手下8「ひゃはははぁっ、
子供の命一つがそんなに大事かよ。
代わりに自分達が死んでちゃぁ、意味ねぇだろ」
双子姉「う、あぁう……」ぼろぼろ
白髪「こんな子供を盾にしてせまるなんざ、
それでも男かよ」
少女(そう、私と双子姉ちゃんを盾に立たせて……
だから、私も、双子姉ちゃんも、見せられた。
目の前で、私達の変わりに死んでいく人たちを)
配下「知ったこっちゃねぇな。
目的が果たせりゃ、それで良いんだよ」
白髪「てめぇらみてぇなのを、くずって呼ぶのさ」
夜 パリウガ入り江砲台
少女(積みあがった、死体。
私達人質を助けるために武器を捨てて、
殺されてしまった人たち。
命はとらないという嘘を、信じてしまった人たち)
手下8「ひゃはははぁっ、
子供の命一つがそんなに大事かよ。
代わりに自分達が死んでちゃぁ、意味ねぇだろ」
双子姉「う、あぁう……」ぼろぼろ
白髪「こんな子供を盾にしてせまるなんざ、
それでも男かよ」
少女(そう、私と双子姉ちゃんを盾に立たせて……
だから、私も、双子姉ちゃんも、見せられた。
目の前で、私達の変わりに死んでいく人たちを)
配下「知ったこっちゃねぇな。
目的が果たせりゃ、それで良いんだよ」
白髪「てめぇらみてぇなのを、くずって呼ぶのさ」
523: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:32:54.63 ID:mCLygqSvo
手下9「んだとぉ、お前だけ先死ぬかよ、オラァっ」
どすっ、げしっ、
白髪「く、……っ、は、」
少女「ちょっとやめなさいよ。
ホントに男らしくない!
白髪さん、大丈夫?」
白髪「げほっ、げほっ……
これくらい、何の問題も、ねぇよ……くっ」
少女「やだ、血が……」
配下「おいおい、まだ死ぬなよ?
お前達にはまだやることがあるのさ。
この特等席で、な」にやり
少女(どうしたら、どうしたらいいの?)
どすっ、げしっ、
白髪「く、……っ、は、」
少女「ちょっとやめなさいよ。
ホントに男らしくない!
白髪さん、大丈夫?」
白髪「げほっ、げほっ……
これくらい、何の問題も、ねぇよ……くっ」
少女「やだ、血が……」
配下「おいおい、まだ死ぬなよ?
お前達にはまだやることがあるのさ。
この特等席で、な」にやり
少女(どうしたら、どうしたらいいの?)
524: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:33:36.69 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 海賊船
双子妹「一斉射から三百秒経過。
大砲の火薬で曇っていた視界が戻るでありますよ!」
男「第二波いけるか?」
包帯「難しいね。今すぐなら半分だけ」
双子妹「全門使うなら、あと三百秒くらい。
この距離で狙うには大砲掃除しないと、
中に残った煤で飛距離が変わるであります」
男「……ちっ、やはり手が足らんかッ」
双子妹「煙幕が晴れたであります……」
男「敵船が集結してる……?
密集体型なんぞとっても、
大砲のいい餌食だぞ。何を企んでる」
夜 海賊船
双子妹「一斉射から三百秒経過。
大砲の火薬で曇っていた視界が戻るでありますよ!」
男「第二波いけるか?」
包帯「難しいね。今すぐなら半分だけ」
双子妹「全門使うなら、あと三百秒くらい。
この距離で狙うには大砲掃除しないと、
中に残った煤で飛距離が変わるであります」
男「……ちっ、やはり手が足らんかッ」
双子妹「煙幕が晴れたであります……」
男「敵船が集結してる……?
密集体型なんぞとっても、
大砲のいい餌食だぞ。何を企んでる」
525: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:34:06.53 ID:mCLygqSvo
双子妹「どうやら船に自分達で火を付けて、
奴隷さんたちに特攻させるようであります!!」
男「くそっ、なりふりかまわないかッ。
仕方無い、全速前進だ!
少しでも距離を詰めて、次は直接照準する!」
双子妹・包帯「「了解!!」」
男 だだっ、かちゃ
男「すまん、ムリをさせるが、全力で漕いでくれ!
多少のずれはこちらで修正する。
とにかくまっすぐに全速だ!」
■『――――――――――ッッ!!』
ずぁああああああ
双子妹「お兄様、今は戦力が足りないであります」
包帯「冷静に考えれば接近は命取りだよ」
奴隷さんたちに特攻させるようであります!!」
男「くそっ、なりふりかまわないかッ。
仕方無い、全速前進だ!
少しでも距離を詰めて、次は直接照準する!」
双子妹・包帯「「了解!!」」
男 だだっ、かちゃ
男「すまん、ムリをさせるが、全力で漕いでくれ!
多少のずれはこちらで修正する。
とにかくまっすぐに全速だ!」
■『――――――――――ッッ!!』
ずぁああああああ
双子妹「お兄様、今は戦力が足りないであります」
包帯「冷静に考えれば接近は命取りだよ」
526: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:34:40.02 ID:mCLygqSvo
男「危険など承知だ。
だが、連中が町に乗り込む様をじっと見ていては、
ここまで来た意味がないっ!」
包帯「男さん、ムリをしたら僕たちまで巻き添えって、
それだけ憶えておいて欲しいね」
男「判っている、意味の無い突撃はせん。
だが、その命は預けてもらうしかあるまい。」
包帯「わかったよ。
火薬と弾丸の装填完了、双子妹くん、計算よろしく」
双子妹「了解であります……照準は水平を維持!
船の突撃と弾丸の落下速度を計算して、
喫水線を狙うでありますよ!」
包帯「了解!」
だが、連中が町に乗り込む様をじっと見ていては、
ここまで来た意味がないっ!」
包帯「男さん、ムリをしたら僕たちまで巻き添えって、
それだけ憶えておいて欲しいね」
男「判っている、意味の無い突撃はせん。
だが、その命は預けてもらうしかあるまい。」
包帯「わかったよ。
火薬と弾丸の装填完了、双子妹くん、計算よろしく」
双子妹「了解であります……照準は水平を維持!
船の突撃と弾丸の落下速度を計算して、
喫水線を狙うでありますよ!」
包帯「了解!」
527: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:35:07.23 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 金色の旗の船
賊「さっさとオールを動かせ奴隷どもぉ!
どうせ代わりの奴隷なんざいくらでもいるんだ。
サボってやがるとなますにするぞぉ!!」
奴隷達「「「ハイッ」」」」
手下D「悪魔の魚とマスケットの船、
信じられない速度で接近中です!」
手下C「なんであんな速度で、
このバカでっかいオールが動くんだよ!」
手下D「知るか!
くそ、俺達が街に入るのが先か、
連中が、俺達に接触するのが先か……っ」
賊「てめぇら、舷側の大砲で威嚇しやがれ!
当たらなくてもかまわん!
波を立たせて動きをとめろ!」
手下達「「「おうよっ!」」」
ずっっだぁあああん
夜 金色の旗の船
賊「さっさとオールを動かせ奴隷どもぉ!
どうせ代わりの奴隷なんざいくらでもいるんだ。
サボってやがるとなますにするぞぉ!!」
奴隷達「「「ハイッ」」」」
手下D「悪魔の魚とマスケットの船、
信じられない速度で接近中です!」
手下C「なんであんな速度で、
このバカでっかいオールが動くんだよ!」
手下D「知るか!
くそ、俺達が街に入るのが先か、
連中が、俺達に接触するのが先か……っ」
賊「てめぇら、舷側の大砲で威嚇しやがれ!
当たらなくてもかまわん!
波を立たせて動きをとめろ!」
手下達「「「おうよっ!」」」
ずっっだぁあああん
528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:35:42.98 ID:mCLygqSvo
ずっっだぁああああん
ぐらぐら
手下A「同時に撃って来やがった!」
手下B「側面に被弾!
水が入りこんでいやがる!」
手下C「えぇい、全力で港に突っ込め!」
賊「奴隷共!
足の鎖にヒッパラれて、
船と沈みたくなけりゃぁせいぜい張り切れ!」
奴隷達「「「はいっ」」」
賊「おまえらもどんどん弾を撃て!
沈んだらどうせあの世じゃ金なんて使えねぇ。
全部使いきるつもりでぶちこむんだ!」
手下「「「おうっ!!」」」
ぐらぐら
手下A「同時に撃って来やがった!」
手下B「側面に被弾!
水が入りこんでいやがる!」
手下C「えぇい、全力で港に突っ込め!」
賊「奴隷共!
足の鎖にヒッパラれて、
船と沈みたくなけりゃぁせいぜい張り切れ!」
奴隷達「「「はいっ」」」
賊「おまえらもどんどん弾を撃て!
沈んだらどうせあの世じゃ金なんて使えねぇ。
全部使いきるつもりでぶちこむんだ!」
手下「「「おうっ!!」」」
529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:36:15.82 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 海賊船
どぉおおおおん
男「く、側面をかすったか!」
双子妹「お兄様、船の損傷どうでありますか?」
男「オールの一部が破損した。
速度があがらん!
くそっ、先に沈めておけば……」
双子妹「……」
包帯「どうする?
連中は港に突撃するみたいだけど、
このまま一緒に港にはいるかい?
それとも少し離れて、大砲で対地砲撃するかい?」
男「後者はだめだ。
港の被害ばかり大きくなるが、ほとんど影響はない。
結局、俺達が街を壊す事になる」
双子妹「お兄様……」
夜 海賊船
どぉおおおおん
男「く、側面をかすったか!」
双子妹「お兄様、船の損傷どうでありますか?」
男「オールの一部が破損した。
速度があがらん!
くそっ、先に沈めておけば……」
双子妹「……」
包帯「どうする?
連中は港に突撃するみたいだけど、
このまま一緒に港にはいるかい?
それとも少し離れて、大砲で対地砲撃するかい?」
男「後者はだめだ。
港の被害ばかり大きくなるが、ほとんど影響はない。
結局、俺達が街を壊す事になる」
双子妹「お兄様……」
530: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:36:56.30 ID:mCLygqSvo
男「よし、あの船の後ろにつける。
俺達も突撃するぞ」
双子妹「でも、この船が壊れたら、
みんなのお家も、なくなるであります……」うるっ
包帯「……」ぽん
男「大丈夫だ。港の固めた部分ではなく、
連中の船に対してぶつかるようにすれば、
衝撃は緩和される」
包帯「……運が良ければ出口がふさがって、
船の中に人を閉じ込められるかも。
そうすれば、多少はましになるかな」
男「そううまく行くとはかぎらんがな。
衝角で敵の船を串刺しにする、
全員対衝撃体勢!」
双子妹・包帯「「了解!」」
男「お前も、衝撃にそなえろ!」
■『う゛ぁkAっタ――!」
ずっがぁぁあああああん
俺達も突撃するぞ」
双子妹「でも、この船が壊れたら、
みんなのお家も、なくなるであります……」うるっ
包帯「……」ぽん
男「大丈夫だ。港の固めた部分ではなく、
連中の船に対してぶつかるようにすれば、
衝撃は緩和される」
包帯「……運が良ければ出口がふさがって、
船の中に人を閉じ込められるかも。
そうすれば、多少はましになるかな」
男「そううまく行くとはかぎらんがな。
衝角で敵の船を串刺しにする、
全員対衝撃体勢!」
双子妹・包帯「「了解!」」
男「お前も、衝撃にそなえろ!」
■『う゛ぁkAっタ――!」
ずっがぁぁあああああん
531: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:37:39.27 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 パリウガ入り江砲台
どぉおおおん
手下8「よぉし!」
配下「お頭達は入港した!
俺達も略奪に行くぞ!」
手下達「「「へい!」」」
少女「待ちなさいよ、この縄ほどきなさい!」
手下9「へっ、そこでこの町が滅ぶ瞬間を、
じっと見てろよ。
てめぇらが捕まったから、
滅ぶ街をな」
少女 ぎりっ
どすどす
?「――――――」
少女「えっ……」
夜 パリウガ入り江砲台
どぉおおおん
手下8「よぉし!」
配下「お頭達は入港した!
俺達も略奪に行くぞ!」
手下達「「「へい!」」」
少女「待ちなさいよ、この縄ほどきなさい!」
手下9「へっ、そこでこの町が滅ぶ瞬間を、
じっと見てろよ。
てめぇらが捕まったから、
滅ぶ街をな」
少女 ぎりっ
どすどす
?「――――――」
少女「えっ……」
532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:38:06.99 ID:mCLygqSvo
「――――ぉおおおおおん」
手下8「な、なんだ!」
手下9「あの光、うわあああ、窓に、窓にぃっ!」
「あぉぉぉおおおおん」
「うがああああ」
手下達「「ひぃぃぃ」
「お、狼だ、狼のむれがあああ」
すっ
狼「遅くなったわね」
少女「狼さん!」
狼「ほら、手を出して。
ロープを切るから」
少女「うん!」
白髪「すまねぇな、助かったぜ」
手下8「な、なんだ!」
手下9「あの光、うわあああ、窓に、窓にぃっ!」
「あぉぉぉおおおおん」
「うがああああ」
手下達「「ひぃぃぃ」
「お、狼だ、狼のむれがあああ」
すっ
狼「遅くなったわね」
少女「狼さん!」
狼「ほら、手を出して。
ロープを切るから」
少女「うん!」
白髪「すまねぇな、助かったぜ」
533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:38:35.40 ID:mCLygqSvo
双子姉「お、狼のお姉ちゃんだーっ!!!!
嘘じゃないよね、本物だよねーっ」ばたばた、べちょ
狼「ほら、縛られたままであばれないの。」
双子姉「来てくれたんだ、来てくれたんだぁ!」
狼「まあ、ね。
ちょっと、気が向いた、から……」
少女「……来てくれて、ありがと」
狼「べつにお礼なんかいいわよ。
アタシはべつに、ちょっと友達と散歩してたら、
こっちに行こうかなって気が向いた、だけ」ぷいっ
白髪「かか、顔がまっかじゃね……がぶえ、げはぅっ」
狼「ばかっ、しねっ、
あんただけ助けなけりゃよかった!」
そーっ
少女「うわああ、周りに狼が一杯……
しかも、いつの間にかあの人達の声が、
聞こえなくなってると思ったら。
う、ぷ……」
嘘じゃないよね、本物だよねーっ」ばたばた、べちょ
狼「ほら、縛られたままであばれないの。」
双子姉「来てくれたんだ、来てくれたんだぁ!」
狼「まあ、ね。
ちょっと、気が向いた、から……」
少女「……来てくれて、ありがと」
狼「べつにお礼なんかいいわよ。
アタシはべつに、ちょっと友達と散歩してたら、
こっちに行こうかなって気が向いた、だけ」ぷいっ
白髪「かか、顔がまっかじゃね……がぶえ、げはぅっ」
狼「ばかっ、しねっ、
あんただけ助けなけりゃよかった!」
そーっ
少女「うわああ、周りに狼が一杯……
しかも、いつの間にかあの人達の声が、
聞こえなくなってると思ったら。
う、ぷ……」
534: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:39:10.33 ID:mCLygqSvo
双子姉「狼のお姉ちゃんのお友達って」
片目 すっ
狼「アタシの直接の友達っていったら、
この片目と、あとちょっとくらいだけど。
みんな、一緒に来てくれて……」
片目「がふっ」
双子姉「あの、ありがと、きてくれて」
片目「……」つーん
双子姉「あはは……」
片目「ばふ」
狼「うん、ありがと。
後は自分達でなんとかするわ。
また今度、お礼させてもらうわね
片目「がうっ」くるっ
すたすた
片目 すっ
狼「アタシの直接の友達っていったら、
この片目と、あとちょっとくらいだけど。
みんな、一緒に来てくれて……」
片目「がふっ」
双子姉「あの、ありがと、きてくれて」
片目「……」つーん
双子姉「あはは……」
片目「ばふ」
狼「うん、ありがと。
後は自分達でなんとかするわ。
また今度、お礼させてもらうわね
片目「がうっ」くるっ
すたすた
535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:39:53.92 ID:mCLygqSvo
少女「最後、なんていってたの?」
狼「気にするな、好きで手伝ったんだ、
みたいな事ね」
少女「うわ、すっごいクール……」
双子姉「それにしても、優しそうな狼さんだったね。
狼のお姉ちゃんみたい♪」
狼「……ふん」
少女「あ、そうだ!
狼の群れにびっくりしてた!
町! 町は……っ、炎が!」
狼「一隻だけだけど、進入されたみたいね。
……男のばか」
双子姉「え、あ、ほんとだ、
なんでうちの船がここに?!」
狼「しらないわよ。
私も走ってくる途中に見ただけだから。
ここまで来て港に進入されるなんて、
なにやってるのよ……」
狼「気にするな、好きで手伝ったんだ、
みたいな事ね」
少女「うわ、すっごいクール……」
双子姉「それにしても、優しそうな狼さんだったね。
狼のお姉ちゃんみたい♪」
狼「……ふん」
少女「あ、そうだ!
狼の群れにびっくりしてた!
町! 町は……っ、炎が!」
狼「一隻だけだけど、進入されたみたいね。
……男のばか」
双子姉「え、あ、ほんとだ、
なんでうちの船がここに?!」
狼「しらないわよ。
私も走ってくる途中に見ただけだから。
ここまで来て港に進入されるなんて、
なにやってるのよ……」
536: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:40:30.02 ID:mCLygqSvo
双子姉「とりあえず、町まで急ごうよ。
ほら、白髪さんも!
町の人達助けないと!
白髪「……すまんな、危険な目に遭わせて、
だが、またさらに危険な場所について来なくて良いと、
今のワシには、いえん」
狼「ふん、そんな事言ったら、また蹴飛ばすわよ。
いいから、ここから町までの最短距離を案内しなさい。
ここまでして、町の人達が助からなかったら……」
少女「させない。
そんなのは絶対に許さないから!」
双子姉「そうそう、みんな助けるんだよ!」
白髪「……すまん。それから、ありがとよ。
こっちだ!
多少道は荒いが、
なぁに、駆け抜ければすぐ街に行ける近道だ」
だだだーっ
ほら、白髪さんも!
町の人達助けないと!
白髪「……すまんな、危険な目に遭わせて、
だが、またさらに危険な場所について来なくて良いと、
今のワシには、いえん」
狼「ふん、そんな事言ったら、また蹴飛ばすわよ。
いいから、ここから町までの最短距離を案内しなさい。
ここまでして、町の人達が助からなかったら……」
少女「させない。
そんなのは絶対に許さないから!」
双子姉「そうそう、みんな助けるんだよ!」
白髪「……すまん。それから、ありがとよ。
こっちだ!
多少道は荒いが、
なぁに、駆け抜ければすぐ街に行ける近道だ」
だだだーっ
537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:40:56.72 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 パリウガ
ずばっ、ザシュッ
男「十九人目……ぜ、は……
これで、船に閉じ込められなかった連中は
ほとんどやったか?」
手下C「へっ、後ろががら空きだz」
たーんっ
双子妹「集中力が切れているでありますよ、お兄様」
男「すまん、助かった」
双子妹「こちらも四人ほど倒したであります。
しかし、やはり手が足りなくて……」
包帯「どれくらい散ったのか、
どれくらい残っているのか、
つかめないね」
男「く、こんな時ばかりは、
大所帯でないことがくやまれるな」
夜 パリウガ
ずばっ、ザシュッ
男「十九人目……ぜ、は……
これで、船に閉じ込められなかった連中は
ほとんどやったか?」
手下C「へっ、後ろががら空きだz」
たーんっ
双子妹「集中力が切れているでありますよ、お兄様」
男「すまん、助かった」
双子妹「こちらも四人ほど倒したであります。
しかし、やはり手が足りなくて……」
包帯「どれくらい散ったのか、
どれくらい残っているのか、
つかめないね」
男「く、こんな時ばかりは、
大所帯でないことがくやまれるな」
538: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:41:29.94 ID:mCLygqSvo
双子妹「……お兄様でも、そんな事を言うんですね。」
男「なにがだ」
双子妹「いえ、何でもないでありますよ」ちらっ
男「……なんだ、また、
ロクでもないことを考えていたのか?」
双子妹「ええ、後ろの正面」
男 くるっ
手下D「ひっ」
男 ずばしゅっ
双子妹「だれなのかなーと」
男「……斬る相手は敵とだけ思え」
双子妹「……そうでありますな。
では次の海賊さんを……」
ばんばん、ばん!
男「はっ、こっちだ!」
だだっ
男「なにがだ」
双子妹「いえ、何でもないでありますよ」ちらっ
男「……なんだ、また、
ロクでもないことを考えていたのか?」
双子妹「ええ、後ろの正面」
男 くるっ
手下D「ひっ」
男 ずばしゅっ
双子妹「だれなのかなーと」
男「……斬る相手は敵とだけ思え」
双子妹「……そうでありますな。
では次の海賊さんを……」
ばんばん、ばん!
男「はっ、こっちだ!」
だだっ
539: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:42:02.37 ID:mCLygqSvo
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
手下F「へへ、こんな所に固まってがったか。
いくら探しても殺す相手がいないわけだぜ
すぅっ
男「……」ヒュッ
かきーん!
手下F[あぁん? おう、お前ぇ……
お頭の探してた海賊じゃねぇか」
男「ち、板金鎧か」
手下F「後ろから人に斬りかかるなんざ、
いけねぇやつだなぁ。ぬんっ」
ぶぉんっ
がきぃぃんっ
男「ぐっ」
手下F「げははは、どうだ、俺様の斧は」
男「体がでかいだけ、あるな。くっ」
手下F「へへ、こんな所に固まってがったか。
いくら探しても殺す相手がいないわけだぜ
すぅっ
男「……」ヒュッ
かきーん!
手下F[あぁん? おう、お前ぇ……
お頭の探してた海賊じゃねぇか」
男「ち、板金鎧か」
手下F「後ろから人に斬りかかるなんざ、
いけねぇやつだなぁ。ぬんっ」
ぶぉんっ
がきぃぃんっ
男「ぐっ」
手下F「げははは、どうだ、俺様の斧は」
男「体がでかいだけ、あるな。くっ」
540: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:42:30.74 ID:mCLygqSvo
手下F「並のやつなら、右と左で真っ二つだったんだが、
なに、そうやって受け止めたって、
俺の力にかなうわきゃぁねえっ」
ぐぐぐっ
男「くぅ……っ」
手下F「げはは、どうしたどうしたぁっ!」
双子妹「お兄様、引いてください!
狙えないであります!」
男「離れられたら、離れる、が……っ」
手下F「ふん、せいぜいこのまま、
つぶれるがいいっ!」ぐぐっ
白髪「おいおい、腕がなまったんじゃねぇか?」
すっ、ずばしゅっ。
手下F「げはぁっ、くそ、まだ、味方がいたかっ」
ばたり
なに、そうやって受け止めたって、
俺の力にかなうわきゃぁねえっ」
ぐぐぐっ
男「くぅ……っ」
手下F「げはは、どうしたどうしたぁっ!」
双子妹「お兄様、引いてください!
狙えないであります!」
男「離れられたら、離れる、が……っ」
手下F「ふん、せいぜいこのまま、
つぶれるがいいっ!」ぐぐっ
白髪「おいおい、腕がなまったんじゃねぇか?」
すっ、ずばしゅっ。
手下F「げはぁっ、くそ、まだ、味方がいたかっ」
ばたり
541: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:42:59.41 ID:mCLygqSvo
双子妹「狼のお姉様に、少女のお姉様、
それに、お姉ちゃん……」
少女「遅くなってごめん!」
狼「無事そうで良かった」
双子姉「頑張ってるみたいだねー、妹♪」
白髪「……なあ、ワシは?
男をピンチから救ったのはワシだよな?」
双子妹「あ、いたのでありますか?」
白髪「……」いじいじ
双子妹「じょうだんでありますよー。
ご無事でなによりであります、白髪のおじさま」
白髪「おう……
この扱い、明らかに影響の発信源は狼だよなぁ」
狼「日頃の行いでしょ」
男「……すまん、海上で食い止めきれなかった」
白髪「いや、こっちも完全に仕留め切れていなかった」
それに、お姉ちゃん……」
少女「遅くなってごめん!」
狼「無事そうで良かった」
双子姉「頑張ってるみたいだねー、妹♪」
白髪「……なあ、ワシは?
男をピンチから救ったのはワシだよな?」
双子妹「あ、いたのでありますか?」
白髪「……」いじいじ
双子妹「じょうだんでありますよー。
ご無事でなによりであります、白髪のおじさま」
白髪「おう……
この扱い、明らかに影響の発信源は狼だよなぁ」
狼「日頃の行いでしょ」
男「……すまん、海上で食い止めきれなかった」
白髪「いや、こっちも完全に仕留め切れていなかった」
542: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:43:41.23 ID:mCLygqSvo
よろよろ
赤毛「白髪さん……」
白髪「おお、どうした、
そんなに泣きはらした顔しやがって」
赤毛「二人が、子供たちが!」
白髪「なに、まさか」
赤毛「避難する時には一緒にいたのに、
私が他の避難所に連絡しに走っている間に……」
町民「す、すみません、俺達がしっかりみてりゃ……」
赤毛「いえ、みなさんだって、
ご自分のお子さん達で、精一杯ですから……」
白髪「ちっ、まだ賊はうろついている。
しっかりと扉を閉じて、
町の衛視が安全を言いに来るまで待ってろ」
赤毛「わ、わたしも、あの子達を助けに」
白髪「……」ぐっ
543: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:44:08.79 ID:mCLygqSvo
赤毛「わかったわ。
あなたに、任せます」
白髪「すまねぇ。
俺がもうちょいわかけりゃ、
守ってやるからついてこいって云えたが」
赤毛「いいのよ。ありがとう」
男「子供が行方不明か。
……手分けして探すぞ」
少女「うん。どこか心当たりはない?」
赤毛「えっと、あなたたちは」
白髪「…………みんな、ワシの家族さ」
赤毛「……そう。
助かるわ。
でも、どこに行ったかは判らないの」
少女「なら、ココは私の出番かな!
これでも、迷子捜しは島で一番得意だったよ」
男「…………むしろ迷子になるプロだったろう」
少女「そんなことないって!」
あなたに、任せます」
白髪「すまねぇ。
俺がもうちょいわかけりゃ、
守ってやるからついてこいって云えたが」
赤毛「いいのよ。ありがとう」
男「子供が行方不明か。
……手分けして探すぞ」
少女「うん。どこか心当たりはない?」
赤毛「えっと、あなたたちは」
白髪「…………みんな、ワシの家族さ」
赤毛「……そう。
助かるわ。
でも、どこに行ったかは判らないの」
少女「なら、ココは私の出番かな!
これでも、迷子捜しは島で一番得意だったよ」
男「…………むしろ迷子になるプロだったろう」
少女「そんなことないって!」
544: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:44:41.41 ID:mCLygqSvo
男「なら、白髪と双子妹、狼は少女と共に、
その子供を捜索しろ」
白髪「そっちはどうするんだ」
男「包帯は、賊の船に閉じ込めた連中を見張っている。
俺と双子妹の二人組だが、
なに、それで二十人ほど倒したんだ。問題ない」
双子妹「自分も、男のお兄様も捜し物は得意であります。
なので、これがきっとベストかと思われます」
白髪「……」
男「俺達はずっと船にいたからな、
まだ体力もある。
満身創痍のお前達よりはまだ戦えるつもりだ」
白髪「すまねぇ。まかせた」
少女「それじゃ行こう!
私たちは街の東側に向かうから」
男「なら西側に向かう。
気をつけろ、襲ってきた連中の代表格、
あの賊はまだ倒していない」
少女「りょーかいっ!」
だだーっ
その子供を捜索しろ」
白髪「そっちはどうするんだ」
男「包帯は、賊の船に閉じ込めた連中を見張っている。
俺と双子妹の二人組だが、
なに、それで二十人ほど倒したんだ。問題ない」
双子妹「自分も、男のお兄様も捜し物は得意であります。
なので、これがきっとベストかと思われます」
白髪「……」
男「俺達はずっと船にいたからな、
まだ体力もある。
満身創痍のお前達よりはまだ戦えるつもりだ」
白髪「すまねぇ。まかせた」
少女「それじゃ行こう!
私たちは街の東側に向かうから」
男「なら西側に向かう。
気をつけろ、襲ってきた連中の代表格、
あの賊はまだ倒していない」
少女「りょーかいっ!」
だだーっ
545: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:45:12.31 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 パリウガ
子供2「よし、これで大丈夫か?」
子供1「うん。お母さんが大事にしてたブローチ、
ちゃんともった!」
子供2「それじゃ、いそいで戻ろう。
きっと心配してるよ」
子供1「うう、2ぃちゃんも巻き込んで、ごめんね」
子供2「きにするなよ。
さ、いくぞ
大丈夫、なにかあったら、僕が守ってあげるから」
子供1「うん!」
たたーっ……
どんっ
子供1「い、いったーい」
夜 パリウガ
子供2「よし、これで大丈夫か?」
子供1「うん。お母さんが大事にしてたブローチ、
ちゃんともった!」
子供2「それじゃ、いそいで戻ろう。
きっと心配してるよ」
子供1「うう、2ぃちゃんも巻き込んで、ごめんね」
子供2「きにするなよ。
さ、いくぞ
大丈夫、なにかあったら、僕が守ってあげるから」
子供1「うん!」
たたーっ……
どんっ
子供1「い、いったーい」
546: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:45:44.31 ID:mCLygqSvo
賊「おうおう、どうしたガキ共」
子供2「ひっ」
賊「がはは、町の連中が見つからないと思ったが、
やぁっと見つけたぜ。
この町はよっぽど襲われなれてるのか?
避難が早くて嫌になるぜ」
がしっ
子供1「きゃぁっ!」
子供2「1っちゃん、1っちゃんっ!」
賊「さぁて、最初のエモノだ。
運がいいなぁ、一番早く、絶望できるんだぜ?
他の連中も、すぐそうなるから大してかわらんがな」
子供2「くっ」ちゃきっ
賊「ん? なんだ、一丁前に剣を使えるつもりか?
ぁああん?」
子供2「くぅっ、てやぁっ!!」
ばぎゃんっ!
ずさあああ
子供2「ひっ」
賊「がはは、町の連中が見つからないと思ったが、
やぁっと見つけたぜ。
この町はよっぽど襲われなれてるのか?
避難が早くて嫌になるぜ」
がしっ
子供1「きゃぁっ!」
子供2「1っちゃん、1っちゃんっ!」
賊「さぁて、最初のエモノだ。
運がいいなぁ、一番早く、絶望できるんだぜ?
他の連中も、すぐそうなるから大してかわらんがな」
子供2「くっ」ちゃきっ
賊「ん? なんだ、一丁前に剣を使えるつもりか?
ぁああん?」
子供2「くぅっ、てやぁっ!!」
ばぎゃんっ!
ずさあああ
547: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:46:28.44 ID:mCLygqSvo
子供1「2ぃちゃんっ!」
賊「がはは、軽い、軽すぎるぜぇ。
吹っ飛んじまったなぁ」ガッ
子供2「う、……い、きが」
子供1「やめて、2ぃちゃんを離して!」
賊「うるせぇ!
その耳障りなキンキン声でわめくんじゃねぇ!」
ガッ
子供2「1っちゃん、血が、頭から血が!
賊「あぁん、死んだか?
ったく、小さい女だって、
そりゃそれで売り先があるんだがな。
まあいいか、一匹くらい殺しても」
子供2「よ、く、も……ぐはっ」
賊「なんだよ、粋がるなよ
お前もすぐに送ってやる、よっ!」
ぶんっ
賊「がはは、軽い、軽すぎるぜぇ。
吹っ飛んじまったなぁ」ガッ
子供2「う、……い、きが」
子供1「やめて、2ぃちゃんを離して!」
賊「うるせぇ!
その耳障りなキンキン声でわめくんじゃねぇ!」
ガッ
子供2「1っちゃん、血が、頭から血が!
賊「あぁん、死んだか?
ったく、小さい女だって、
そりゃそれで売り先があるんだがな。
まあいいか、一匹くらい殺しても」
子供2「よ、く、も……ぐはっ」
賊「なんだよ、粋がるなよ
お前もすぐに送ってやる、よっ!」
ぶんっ
548: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:47:00.21 ID:mCLygqSvo
がきん!
白髪「――は、軽い。かるいなぁ」
がきぃぃいん
賊「てめぇは、あの酒場にいた!」
白髪「恨みがあるのは俺達に、だろ。
よそさまに迷惑かえるなんざ、いけねぇ大人だ」
白髪(くっ、まさか、
少女達とちょっと分かれた瞬間に、
まさか狙ってくるとはな。
騒ぎを聞きつけて……間に合うか?)
子供2「しらが、さん」
白髪「よくかんばった。
妹をまもったんだろ?」
子供2「うん、うんっ」ぼろぼろ
白髪「じゃ、今度は俺が守る番だな。
手をつないで、連れて、走りな」
子供2「でも、白髪さん、真っ赤で!」
549: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:47:36.90 ID:mCLygqSvo
白髪「なぁに、かすり傷さ」
子供「嘘だ、だって」
白髪「坊主!」
びくっ
白髪「かあちゃんが心配してるぜ。にかっ」
子供2「…………っ、約束!」
白髪「あん?」
子供2「こんど、必殺技!」
白髪「ああ、いいぜ。今度、な」
子供2「いくよ、1っちゃん……」
子供1「おにい、ちゃん」
子供2「大丈夫だ、僕が、まもるからな!」
とた、とた
子供「嘘だ、だって」
白髪「坊主!」
びくっ
白髪「かあちゃんが心配してるぜ。にかっ」
子供2「…………っ、約束!」
白髪「あん?」
子供2「こんど、必殺技!」
白髪「ああ、いいぜ。今度、な」
子供2「いくよ、1っちゃん……」
子供1「おにい、ちゃん」
子供2「大丈夫だ、僕が、まもるからな!」
とた、とた
550: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:48:05.10 ID:mCLygqSvo
白髪「……待っててくれるたぁ、優しいなぁ」
賊「なに、一度希望を持ってからのほうが、
絶望ってのはより輝くからな。
子供を逃がしたつもりだろ?
俺を倒せば大丈夫だって思ってるんだろ?」
白髪「あたりまえだ」
賊「そんなお前が俺に負けて、
ガキの前で八つ裂きにされる姿をよぉ
想像するだけで、たまらねぇんだ……」
白髪「けっ、この外道が」
賊「外道でけっこう。
そんな言葉で何かを思うような生き方はしてねぇよ」
白髪「そうかい。
そんじゃぁ、後はやるだけ、か」
賊「ぬぅぅううんっ」
がいぃぃん
白髪「ワシが、ココでお前を倒すぜ」
賊「やってみろっ」
賊「なに、一度希望を持ってからのほうが、
絶望ってのはより輝くからな。
子供を逃がしたつもりだろ?
俺を倒せば大丈夫だって思ってるんだろ?」
白髪「あたりまえだ」
賊「そんなお前が俺に負けて、
ガキの前で八つ裂きにされる姿をよぉ
想像するだけで、たまらねぇんだ……」
白髪「けっ、この外道が」
賊「外道でけっこう。
そんな言葉で何かを思うような生き方はしてねぇよ」
白髪「そうかい。
そんじゃぁ、後はやるだけ、か」
賊「ぬぅぅううんっ」
がいぃぃん
白髪「ワシが、ココでお前を倒すぜ」
賊「やってみろっ」
551: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:48:30.93 ID:mCLygqSvo
がきぃぃいいんっ!
がんっ、がきんっ! がっきぃん!
賊「そういやぁ、さっき言ってたなぁ。
必殺技だったか?
おもしれぇ、やってみろよ」にたり
白髪「……あるわきゃねぇだろ」
賊「おいおい、信じてくれるガキをだますほうが、
よっぽど外道じゃねぇのか?」
白髪「外道ってのは、人の道をすてたヤツだろう。
わしはせいぜい、悪党って所さ」
がきぃぃんっ
白髪「勝手気ままに生きてきた――」
がっ
白髪「親は神の愛だのなんだのと説いてくれたがよ、
ワシは多くの人間を殺してきた――」
ぎりぎり
がんっ、がきんっ! がっきぃん!
賊「そういやぁ、さっき言ってたなぁ。
必殺技だったか?
おもしれぇ、やってみろよ」にたり
白髪「……あるわきゃねぇだろ」
賊「おいおい、信じてくれるガキをだますほうが、
よっぽど外道じゃねぇのか?」
白髪「外道ってのは、人の道をすてたヤツだろう。
わしはせいぜい、悪党って所さ」
がきぃぃんっ
白髪「勝手気ままに生きてきた――」
がっ
白髪「親は神の愛だのなんだのと説いてくれたがよ、
ワシは多くの人間を殺してきた――」
ぎりぎり
552: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:49:02.60 ID:mCLygqSvo
白髪「正義だ、悪だ、異教徒だ。
なんだかんだ言って、殺しすぎたしな
地獄行きは免れねぇよ」
ばっ
白髪「だが、悪党の俺だからな、
そんな悪党なりに、子供を笑顔にさせる嘘くらいは、
夢を見させるくらいは、したっていいだろ」
白髪「地獄巡りが百週から百一週になったって、
大してかわりゃしねぇのさ」
賊「で、言いたい事は終わりか、よ!」
ががっ、ぎんぎんぎんぎんっ
白髪「く、てめぇ、手を抜いてやがったか!」
賊「その『かすり傷』、
随分血だまりをつくるじゃねえか」
白髪「……」
なんだかんだ言って、殺しすぎたしな
地獄行きは免れねぇよ」
ばっ
白髪「だが、悪党の俺だからな、
そんな悪党なりに、子供を笑顔にさせる嘘くらいは、
夢を見させるくらいは、したっていいだろ」
白髪「地獄巡りが百週から百一週になったって、
大してかわりゃしねぇのさ」
賊「で、言いたい事は終わりか、よ!」
ががっ、ぎんぎんぎんぎんっ
白髪「く、てめぇ、手を抜いてやがったか!」
賊「その『かすり傷』、
随分血だまりをつくるじゃねえか」
白髪「……」
553: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:49:50.48 ID:mCLygqSvo
賊「それに、踏み込みがあまいぜ。
足にも怪我があるんじゃねぇか?
その傷でをかばおうとして、全体がガタガタだぜ。」
白髪「待ってたのかよ、俺が消耗するのを」
賊「はっは、外道らしくていいだろ?」
白髪「ああ、まったく外道らしい!」
ぎぃんっ、がぁぁんっ!
白髪「ちっ、剣が……」
賊「ははっ、もう手に力が入らないか?
目もみえてねえんじゃねぇかぁ?
……拾う時間はやらねぇがな」
白髪「だからなんだよ……
てめぇ一人殺す程度、素手でも十分ってもんだ」
賊「はっ、だったらせいぜい、見せてみろ!」
ずばしゅ、ガッ
足にも怪我があるんじゃねぇか?
その傷でをかばおうとして、全体がガタガタだぜ。」
白髪「待ってたのかよ、俺が消耗するのを」
賊「はっは、外道らしくていいだろ?」
白髪「ああ、まったく外道らしい!」
ぎぃんっ、がぁぁんっ!
白髪「ちっ、剣が……」
賊「ははっ、もう手に力が入らないか?
目もみえてねえんじゃねぇかぁ?
……拾う時間はやらねぇがな」
白髪「だからなんだよ……
てめぇ一人殺す程度、素手でも十分ってもんだ」
賊「はっ、だったらせいぜい、見せてみろ!」
ずばしゅ、ガッ
554: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:50:24.94 ID:mCLygqSvo
賊「く、てめぇ、自分から前に突っ込んで!」
白髪「剣の威力があるのは先端だけだからなぁ。
近い相手にゃ、骨でとまる……ぜ、はぁ」
賊「だが、それが、どうしたぁ!」
ぐぐっ
ぶしゅぅっ
白髪「……ここで引かなかったのが、お前の敗因だ」
賊「負ける?
俺が負けるだと?!
意味がわからねぇっ!」
白髪「痛みや恐怖で俺が引くとおもったか?
あいにく、俺はもう、引くわけにはいかねぇのさ
それ、顎ががら空きだ!」
がっ
賊「ぐぅっ」くらぁっ
白髪「剣の威力があるのは先端だけだからなぁ。
近い相手にゃ、骨でとまる……ぜ、はぁ」
賊「だが、それが、どうしたぁ!」
ぐぐっ
ぶしゅぅっ
白髪「……ここで引かなかったのが、お前の敗因だ」
賊「負ける?
俺が負けるだと?!
意味がわからねぇっ!」
白髪「痛みや恐怖で俺が引くとおもったか?
あいにく、俺はもう、引くわけにはいかねぇのさ
それ、顎ががら空きだ!」
がっ
賊「ぐぅっ」くらぁっ
555: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:50:55.65 ID:mCLygqSvo
白髪「まだいくぞ、喉!」
がつんっ
賊「ごぶぅっ。げ、げぇええっっ」
白髪「顔を下げちゃいけねぇなぁ……
目が、丁度狙い易い高さだぜ」
ぐっ
賊「ま、まへっ、目は」
白髪「言ってるだろ、俺は悪党だってよ
……大切なモノを守ろうってんなら、
手段なんざ選んでらんねぇ、てな」
がつんっ
賊「ごぶぅっ。げ、げぇええっっ」
白髪「顔を下げちゃいけねぇなぁ……
目が、丁度狙い易い高さだぜ」
ぐっ
賊「ま、まへっ、目は」
白髪「言ってるだろ、俺は悪党だってよ
……大切なモノを守ろうってんなら、
手段なんざ選んでらんねぇ、てな」
556: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:51:56.47 ID:mCLygqSvo
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
たたたっ、
少女「あ、ちょっと、きみ!
もしかして、町長さんのとこの」
子供2「お、お姉ちゃんはだれ、
あの怖い人達の仲間?!」すちゃ
少女「ちがうよ、白髪って人の、家族、かな」
双子姉「家族だよっ!
家族でいいの!」
狼「……まあ、あの野蛮な連中とは、敵」
子供「た、助けて!
白髪のおじちゃんが、おじちゃんが!」
狼「っ、どっち?
どっちにいるの?」がっ
子供2「あっち、案内するよ」
たたたっ、
少女「あ、ちょっと、きみ!
もしかして、町長さんのとこの」
子供2「お、お姉ちゃんはだれ、
あの怖い人達の仲間?!」すちゃ
少女「ちがうよ、白髪って人の、家族、かな」
双子姉「家族だよっ!
家族でいいの!」
狼「……まあ、あの野蛮な連中とは、敵」
子供「た、助けて!
白髪のおじちゃんが、おじちゃんが!」
狼「っ、どっち?
どっちにいるの?」がっ
子供2「あっち、案内するよ」
557: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:53:05.99 ID:mCLygqSvo
双子姉「……だめだよ。君たちはこっち」
子供2「でも、でも!」
双子姉「白髪のおっちゃんが必死で逃がしたのに、
危ない所にもどるなんてダメだよ!」
子供2「……うう」
少女(痛いくらいに、伝わってくる。
強くなりたい。
無力はいやだ。
なにかしたい。
自分に、もっと力があれば。
私にも憶えのある気持ち)
双子姉「お母さんの所に、
連れて行ってあげるから、ね」
子供2「……」
子供1「うぅん……」
子供2「……わかった」
少女「双子姉ちゃん、任せても」
双子姉 こくり
子供2「でも、でも!」
双子姉「白髪のおっちゃんが必死で逃がしたのに、
危ない所にもどるなんてダメだよ!」
子供2「……うう」
少女(痛いくらいに、伝わってくる。
強くなりたい。
無力はいやだ。
なにかしたい。
自分に、もっと力があれば。
私にも憶えのある気持ち)
双子姉「お母さんの所に、
連れて行ってあげるから、ね」
子供2「……」
子供1「うぅん……」
子供2「……わかった」
少女「双子姉ちゃん、任せても」
双子姉 こくり
558: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:53:44.62 ID:mCLygqSvo
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さーん」
「し……さ……」
「白髪さーん」
「……こっちだ」
たたっ
少女「う……っ」
白髪「がはは、わりぃなぁ、
ちょっと、立ちくらみがしてよ。
楽させてもらってるぜ」
少女「た、立ちくらみとか、そんな!
服破くよ! しばるから、痛いけど我慢して!」
白髪「くっ、おいおい、
かまわねぇよぉ、そんなこと」
少女「そんな事じゃないよ!
これじゃ、このままじゃ!
ああ、血が、」
「さーん」
「し……さ……」
「白髪さーん」
「……こっちだ」
たたっ
少女「う……っ」
白髪「がはは、わりぃなぁ、
ちょっと、立ちくらみがしてよ。
楽させてもらってるぜ」
少女「た、立ちくらみとか、そんな!
服破くよ! しばるから、痛いけど我慢して!」
白髪「くっ、おいおい、
かまわねぇよぉ、そんなこと」
少女「そんな事じゃないよ!
これじゃ、このままじゃ!
ああ、血が、」
559: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:54:34.14 ID:mCLygqSvo
白髪「首のそばだしなぁ。
でかい血管が斬られりゃぁ、どうしようもねぇよ」
少女「傷、焼けば血は止まるって……」
狼「……一つや二つ塞いでも、ムリね。
血のにおいが、しすぎてる」
少女「もしかして、ごめん、みるね」
そっ。ばり、ばりばり
少女「あ、あ……」
狼「こんなに傷……」
白髪「いやぁ、いけねぇなあ、
もう若い頃みてぇにはうごけねぇよ」
少女「もしかしてずっと、こんなにたくさんの傷、
山の上にいたときからなの?
あの時からずっと、隠してたの?!」
白髪「まあ、いくつかは、な」
少女「ばか、ばか、ばか……」
でかい血管が斬られりゃぁ、どうしようもねぇよ」
少女「傷、焼けば血は止まるって……」
狼「……一つや二つ塞いでも、ムリね。
血のにおいが、しすぎてる」
少女「もしかして、ごめん、みるね」
そっ。ばり、ばりばり
少女「あ、あ……」
狼「こんなに傷……」
白髪「いやぁ、いけねぇなあ、
もう若い頃みてぇにはうごけねぇよ」
少女「もしかしてずっと、こんなにたくさんの傷、
山の上にいたときからなの?
あの時からずっと、隠してたの?!」
白髪「まあ、いくつかは、な」
少女「ばか、ばか、ばか……」
560: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:55:06.01 ID:mCLygqSvo
白髪「なあ……」
狼「なに?」
白髪「おれよぉ、こないだ作戦会議した、
あの廃墟にあった教会で、うまれたのさ。
俺の灰は、そこから、海に……」
少女「そんな、死ぬみたいな事いわないでよ!」
白髪「わるいが、今回ばかりはなぁ
冗談だ、とは、いえねぇのさ」
少女「勝手だよ、嘘だって、言ってよ」
白髪「もう、げほっ、ながくねぇ」
少女「……う、あ」
白髪「わがままばかりでわりぃが、
さいごに、もう一つ聞いてくれや」
少女「そんなこと、」
白髪「誰にも、街のやつには、
特に、あのガキ共に、
俺が死んだって、内緒に、な」
狼「なに?」
白髪「おれよぉ、こないだ作戦会議した、
あの廃墟にあった教会で、うまれたのさ。
俺の灰は、そこから、海に……」
少女「そんな、死ぬみたいな事いわないでよ!」
白髪「わるいが、今回ばかりはなぁ
冗談だ、とは、いえねぇのさ」
少女「勝手だよ、嘘だって、言ってよ」
白髪「もう、げほっ、ながくねぇ」
少女「……う、あ」
白髪「わがままばかりでわりぃが、
さいごに、もう一つ聞いてくれや」
少女「そんなこと、」
白髪「誰にも、街のやつには、
特に、あのガキ共に、
俺が死んだって、内緒に、な」
561: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:55:32.84 ID:mCLygqSvo
少女「そんな、こと、言わないでよぉ……」ぼろぼろ
白髪「ただ、元気にいきろって、よ」
たたっ
双子姉「白髪のおっちゃ……あ、あ」
狼「……何か言葉をかけるなら、今よ」
白髪「おう、よかった……
最後に、顔、みられてよ」
双子姉「そんな、うそ、うそだ」
少女「ねぇっ」
白髪「おまえらも、元気でな」
双子姉「おねがい、だから」
狼「……二人とも」
双子姉「……」よろよろ、ぎゅっ
白髪「おいおい、よごれっちまうぞ」
双子姉「いいよ、そんなの」
白髪「ただ、元気にいきろって、よ」
たたっ
双子姉「白髪のおっちゃ……あ、あ」
狼「……何か言葉をかけるなら、今よ」
白髪「おう、よかった……
最後に、顔、みられてよ」
双子姉「そんな、うそ、うそだ」
少女「ねぇっ」
白髪「おまえらも、元気でな」
双子姉「おねがい、だから」
狼「……二人とも」
双子姉「……」よろよろ、ぎゅっ
白髪「おいおい、よごれっちまうぞ」
双子姉「いいよ、そんなの」
562: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:56:03.19 ID:mCLygqSvo
白髪「……さむかったから、ちょうどいい、がな」
少女「やだ、やだよ……」
狼「……」そっ。ぎゅっ
少女「う、うぅ……」ぎゅぅっ
双子姉「うん。あのね、あたしもあったかったよ」
白髪「なんの、はなしだよ」
双子姉「出会ったときに、もう大丈夫だって、
抱きしめてくれたよね」
白髪「さぁて……おぼえてねぇなあ」
双子姉「嘘つき。あのね、あたし……」
白髪 なで
双子姉「あだじ……」ぽろぽろ
狼「……」じっ
少女「やだ、やだよ……」
狼「……」そっ。ぎゅっ
少女「う、うぅ……」ぎゅぅっ
双子姉「うん。あのね、あたしもあったかったよ」
白髪「なんの、はなしだよ」
双子姉「出会ったときに、もう大丈夫だって、
抱きしめてくれたよね」
白髪「さぁて……おぼえてねぇなあ」
双子姉「嘘つき。あのね、あたし……」
白髪 なで
双子姉「あだじ……」ぽろぽろ
狼「……」じっ
563: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:56:37.83 ID:mCLygqSvo
白髪「ああくそ、くやしいなぁ、
双子姉が、成長するのを」
狼「大丈夫。
いつかは見せにいくから。
でも、すぐにはムリ。アタシが、守るから」
白髪「そうか?
そんなら、のんびりまってるぜ」
狼「うん。楽しみにまってて」
白髪「……ああ」
双子姉「あのね、あだじ……」
白髪「……ばーか。泣いたら、
可愛い顔が、だいな……し」そぉっ
ぱた……
少女「あ、あぁああ……」
狼「……」ぎゅうっ
少女「あぁああああああっっ」ぎゅぅうっ
双子姉が、成長するのを」
狼「大丈夫。
いつかは見せにいくから。
でも、すぐにはムリ。アタシが、守るから」
白髪「そうか?
そんなら、のんびりまってるぜ」
狼「うん。楽しみにまってて」
白髪「……ああ」
双子姉「あのね、あだじ……」
白髪「……ばーか。泣いたら、
可愛い顔が、だいな……し」そぉっ
ぱた……
少女「あ、あぁああ……」
狼「……」ぎゅうっ
少女「あぁああああああっっ」ぎゅぅうっ
564: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:57:03.28 ID:mCLygqSvo
双子姉「……ちゃんと」
双子姉「ちゃんと、ざいごばで……」
双子姉 ちーんっ
双子姉「いつも、ごまかして」
双子姉「こないだも」
双子姉「……いまも」
双子姉「だから、云えなくて」
双子姉「大好きなんだよ……」
ちゅ
双子姉「大好き、なんだよぉ……」
双子姉「……ばか」
双子姉「ばかばかばかっ」
双子姉「ばか……っ」
狼「……ホントに、バカよ、白髪」ぎゅっ
双子姉「あ、くう、うぅぅぅうううううう」ぎゅぅっ
双子姉「ちゃんと、ざいごばで……」
双子姉 ちーんっ
双子姉「いつも、ごまかして」
双子姉「こないだも」
双子姉「……いまも」
双子姉「だから、云えなくて」
双子姉「大好きなんだよ……」
ちゅ
双子姉「大好き、なんだよぉ……」
双子姉「……ばか」
双子姉「ばかばかばかっ」
双子姉「ばか……っ」
狼「……ホントに、バカよ、白髪」ぎゅっ
双子姉「あ、くう、うぅぅぅうううううう」ぎゅぅっ
565: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/06/26(日) 03:58:08.83 ID:mCLygqSvo
------------------------------------------------
夜 パリウガ
?「ふっはっはっはは!」
?「すばらしい、実に、じぃつにぃ――ラッキィ、だ」
?「邪魔だった港は炎に包まれ、
目障りな賊は始末された。
そして――」
?「あの、憎き白髪もここで屍に」
?「神よ、ああ神よ!
信じる者は救われる!
アナタに全てを預け渡し、祈り続けるこの私こそ!
あなたの愛にふさわしい!」
?「さあ、踊れ踊れ! 幕は上がるぞ!」
?「街を真っ赤に染め上げて、
炎を背景にタイトルコールだ!」
?「アッラーよ、たたえる我はココにあり!!」
?「アッラーフ・アクバル!
ラー・イラーハ・イラーッラー。
ハイヤー・アラー・ハイリ・アアル!!」
夜 パリウガ
?「ふっはっはっはは!」
?「すばらしい、実に、じぃつにぃ――ラッキィ、だ」
?「邪魔だった港は炎に包まれ、
目障りな賊は始末された。
そして――」
?「あの、憎き白髪もここで屍に」
?「神よ、ああ神よ!
信じる者は救われる!
アナタに全てを預け渡し、祈り続けるこの私こそ!
あなたの愛にふさわしい!」
?「さあ、踊れ踊れ! 幕は上がるぞ!」
?「街を真っ赤に染め上げて、
炎を背景にタイトルコールだ!」
?「アッラーよ、たたえる我はココにあり!!」
?「アッラーフ・アクバル!
ラー・イラーハ・イラーッラー。
ハイヤー・アラー・ハイリ・アアル!!」
580: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:21:17.87 ID:KM8wf9O0o
------------------------------------------------
夕刻 海賊船廊下
とことこ、ぱたん
男「……少女の調子はどうだ」
双子妹「昨夜の内に熱も下がり、
今は大人しく休んでいるでありますよ。
傷はもう、軽いモノならある程度なおり始めてるです」
男「頑丈だな。
バカだとは思っていたが、
分類上は体力バカのたぐいか」
双子妹「あはは、あんまり言ったら、
かわいそうでありますよ」
男「もういいと言っているのに、
命を捨てるように敵に突貫する者を、
バカや愚か者と言わずになんという」
双子妹「……実は怒ってます?」
男「知らん。
それにしても、かなり傷を負った様に見えたが、
もう遠からず治るか」
夕刻 海賊船廊下
とことこ、ぱたん
男「……少女の調子はどうだ」
双子妹「昨夜の内に熱も下がり、
今は大人しく休んでいるでありますよ。
傷はもう、軽いモノならある程度なおり始めてるです」
男「頑丈だな。
バカだとは思っていたが、
分類上は体力バカのたぐいか」
双子妹「あはは、あんまり言ったら、
かわいそうでありますよ」
男「もういいと言っているのに、
命を捨てるように敵に突貫する者を、
バカや愚か者と言わずになんという」
双子妹「……実は怒ってます?」
男「知らん。
それにしても、かなり傷を負った様に見えたが、
もう遠からず治るか」
581: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:21:44.27 ID:KM8wf9O0o
双子妹「深い傷はいくつか有って、
痕も……きっと体に刻まれるであります」
男「仕方ない奴だ。
……だが、治るならばいいだろう。
一時は死にかけた身だ」
双子妹「その推測にも疑問が生じているであります」
男「どの部分に疑問がある。」
双子妹「先ほど室内に食事を持ったものの、
未だに手を付けていないかったのであります。」
男「寝込んでいた二日、いや既に三日か。
寝ている間は、水と薄く煮た羊の乳の麦粥を、
少量流し込んだだけだったな」
双子妹「そうであります。
少しずつ含ませてもすぐに咽せてしまうので、
結局諦めざるをえなくて……
吸収が消費に追いついていないと思うであります」
男「ゆれる船では、寝ていても体力を使うからな。
足しにはなっていないというわけか」
双子妹「幸いこの船には、
他の船や、場合によっては中規模の街よりも、
医薬品や滋養を取る事のできるモノには、
恵まれた環境にあるですが……」
痕も……きっと体に刻まれるであります」
男「仕方ない奴だ。
……だが、治るならばいいだろう。
一時は死にかけた身だ」
双子妹「その推測にも疑問が生じているであります」
男「どの部分に疑問がある。」
双子妹「先ほど室内に食事を持ったものの、
未だに手を付けていないかったのであります。」
男「寝込んでいた二日、いや既に三日か。
寝ている間は、水と薄く煮た羊の乳の麦粥を、
少量流し込んだだけだったな」
双子妹「そうであります。
少しずつ含ませてもすぐに咽せてしまうので、
結局諦めざるをえなくて……
吸収が消費に追いついていないと思うであります」
男「ゆれる船では、寝ていても体力を使うからな。
足しにはなっていないというわけか」
双子妹「幸いこの船には、
他の船や、場合によっては中規模の街よりも、
医薬品や滋養を取る事のできるモノには、
恵まれた環境にあるですが……」
582: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:22:12.75 ID:KM8wf9O0o
男「口に入れようとしなければ意味がないな。
どうするつもりだ?」
双子妹「食べてもらう事は、前提であります。
でも、だからといって、
マウスオープナーとかを使うわけには……」
男「食事を拒んで餓死しようとする奴隷に、
流動食を飲ませるために突っ込む道具だったか。」
双子妹「はい。」
男「あんなもの、ウチの船にあったのか?」
双子妹「医療用の道具として、
一応積んでいたであります。」
男「そんなモノは使わなくていい、
と言いたいが、少女が自発的に食べないならば
一つの手段として、検討が必要か。」
双子妹「……」
583: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:22:39.16 ID:KM8wf9O0o
男「難儀をかける。
いざとなれば、嫌われ役は俺がやろう。」
双子妹「まあ、自分は兼任でも船医でありますから。
その時は、お姉様の体を守ってあげてください。」
男「……やはり、少女がモノを食わないのは、
食欲などの問題では無く、
白髪の事が原因だと思うか?」
双子妹「根底にはあると思うであります。」
男「他にもあるのか?」
双子妹「自分は推論は口にしても、
推察には語る言葉を持たないであります。」
男「……自分で向き合えと云う事か。
確かにそうだな。」
双子妹「ついでに、多少なりとも、
料理をお姉様に食べてもらえると、
自分としては無理強いせずにすむであります。」
男「善処しよう。」
いざとなれば、嫌われ役は俺がやろう。」
双子妹「まあ、自分は兼任でも船医でありますから。
その時は、お姉様の体を守ってあげてください。」
男「……やはり、少女がモノを食わないのは、
食欲などの問題では無く、
白髪の事が原因だと思うか?」
双子妹「根底にはあると思うであります。」
男「他にもあるのか?」
双子妹「自分は推論は口にしても、
推察には語る言葉を持たないであります。」
男「……自分で向き合えと云う事か。
確かにそうだな。」
双子妹「ついでに、多少なりとも、
料理をお姉様に食べてもらえると、
自分としては無理強いせずにすむであります。」
男「善処しよう。」
584: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:23:06.12 ID:KM8wf9O0o
双子妹「それでは、自分は今回の戦闘の報告書、
主に在庫の確認などを行うであります。」
男「すまんな。
夜は包帯に、滋養がつく物を作るように言おう。
お前にも、疲れがみえる。」
双子妹「……はい。」
男 ぽん……
こんこんこん
男「俺だ、入るぞ」
かちゃ……ぱたん
双子妹「……船長殿だって、
辛そうでありますよ。
……無理をしすぎないと、いいでありますが」
主に在庫の確認などを行うであります。」
男「すまんな。
夜は包帯に、滋養がつく物を作るように言おう。
お前にも、疲れがみえる。」
双子妹「……はい。」
男 ぽん……
こんこんこん
男「俺だ、入るぞ」
かちゃ……ぱたん
双子妹「……船長殿だって、
辛そうでありますよ。
……無理をしすぎないと、いいでありますが」
585: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:23:31.83 ID:KM8wf9O0o
------------------------------------------------
夕刻 海賊船女子部屋
少女(なんで、だろ……)
少女「……」
少女(ただ、涙が、とまらない――)
男「寝ているワケでは無いようだな」
少女「……」
男「熱は引いたと聞いたが、
気分はどうだ」
少女「……」
男「せっかくの食事、食わんのか。
食欲がないというお前にと、
包帯が作ったリンゴのコンフィなど、うまいぞ。
貴族でもそうそう食べられる味ではない」
少女「……」
夕刻 海賊船女子部屋
少女(なんで、だろ……)
少女「……」
少女(ただ、涙が、とまらない――)
男「寝ているワケでは無いようだな」
少女「……」
男「熱は引いたと聞いたが、
気分はどうだ」
少女「……」
男「せっかくの食事、食わんのか。
食欲がないというお前にと、
包帯が作ったリンゴのコンフィなど、うまいぞ。
貴族でもそうそう食べられる味ではない」
少女「……」
586: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:24:00.39 ID:KM8wf9O0o
男「……ムリをしすぎだ、馬鹿者。
双子姉も狼も置いて、
一人で敵を殺して回るなど。」
少女「……」
男「あと一歩俺達が捕捉するのが遅れていれば、
お前まで白髪の様に倒れていたぞ」
少女「……のに」
男「なんだ?」
少女「その方が、よかったのに……」
男「死にたかったのか」じろっ
少女「……」
男「お前が道連れになったところで、
白髪が喜ぶという事でもない。
何を血迷っている。」
少女「それだけじゃない……私がいなければ、
みんな、街を追われなかったよ。」
双子姉も狼も置いて、
一人で敵を殺して回るなど。」
少女「……」
男「あと一歩俺達が捕捉するのが遅れていれば、
お前まで白髪の様に倒れていたぞ」
少女「……のに」
男「なんだ?」
少女「その方が、よかったのに……」
男「死にたかったのか」じろっ
少女「……」
男「お前が道連れになったところで、
白髪が喜ぶという事でもない。
何を血迷っている。」
少女「それだけじゃない……私がいなければ、
みんな、街を追われなかったよ。」
587: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:24:30.51 ID:KM8wf9O0o
男「あの砲台の生き残りがなにやら言っていたな。
お前が人質にならなければ、
砲台は落ちることなく、海賊も街に入らなかったと。」
少女「私の、せいだから。」
男「だが、お前達がいなければ、
街には無傷な連中が大挙して押し寄せていただろう。」
少女「……」
男「加えて言うならば、
連中の覚悟と意識が足りなかっただけだ。
お前は攻められるために、攻められているに過ぎない。
罪悪官を感じる事はない」
少女「でも……」
男「たった四人で、三百人の敵を倒しきったんだ。
この街の兵力が通常通りであったとしても、
三百の敵に奇襲されれば壊滅的な損害を被っただろう。
それを防いだ」
少女「……できて、なかったよ」
男「海側の敵を防ぎきれなかったのは、
お前の責任ではない
お前はできる限りの事をした。
お前が人質にならなければ、
砲台は落ちることなく、海賊も街に入らなかったと。」
少女「私の、せいだから。」
男「だが、お前達がいなければ、
街には無傷な連中が大挙して押し寄せていただろう。」
少女「……」
男「加えて言うならば、
連中の覚悟と意識が足りなかっただけだ。
お前は攻められるために、攻められているに過ぎない。
罪悪官を感じる事はない」
少女「でも……」
男「たった四人で、三百人の敵を倒しきったんだ。
この街の兵力が通常通りであったとしても、
三百の敵に奇襲されれば壊滅的な損害を被っただろう。
それを防いだ」
少女「……できて、なかったよ」
男「海側の敵を防ぎきれなかったのは、
お前の責任ではない
お前はできる限りの事をした。
588: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:24:59.27 ID:KM8wf9O0o
少女「でも、私のせいで、みんな、
石を投げつけられて、追われて。」
男「そんな態度を取られるのはいつもの事だ。
どの港に行っても、海賊の俺達は……
異形の俺達はなおさら、石をもって追われる。
いつもの事だ」
少女「私のせいで、助けにきた白髪さんまで、
街を、壊した立場にされて」
男「掲げる旗や信じる神が違えば、
認められる行為やその見方が変わる。
ソレがこの世界の理屈だ。結果は変わらん。」
少女「……それなら」
男「なんだ」
少女「それなら白髪さんは……
何のために……」
男「……」
少女「っ……ぐすっ……う……ぅう……っ ぽろぽろ」
石を投げつけられて、追われて。」
男「そんな態度を取られるのはいつもの事だ。
どの港に行っても、海賊の俺達は……
異形の俺達はなおさら、石をもって追われる。
いつもの事だ」
少女「私のせいで、助けにきた白髪さんまで、
街を、壊した立場にされて」
男「掲げる旗や信じる神が違えば、
認められる行為やその見方が変わる。
ソレがこの世界の理屈だ。結果は変わらん。」
少女「……それなら」
男「なんだ」
少女「それなら白髪さんは……
何のために……」
男「……」
少女「っ……ぐすっ……う……ぅう……っ ぽろぽろ」
589: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:25:30.98 ID:KM8wf9O0o
男「ならば、お前は楽園を見れば満足だったのか?
そんな物は、この世にはない。」
少女「そん、なの……そんな、いいかた……」
男「……」
少女「ぅ……っ、ぐすっ……」
男「食事は摂れ。吐かない程度に腹に入れろ。
包帯や双子に心配をかけるな。
迷惑がかかる」
少女「……っ」
男「それ以上の期待はせん。」
少女「…………」
とことこ、ぱたん
少女「……う、あ、ぐ……うぅ…………」
そんな物は、この世にはない。」
少女「そん、なの……そんな、いいかた……」
男「……」
少女「ぅ……っ、ぐすっ……」
男「食事は摂れ。吐かない程度に腹に入れろ。
包帯や双子に心配をかけるな。
迷惑がかかる」
少女「……っ」
男「それ以上の期待はせん。」
少女「…………」
とことこ、ぱたん
少女「……う、あ、ぐ……うぅ…………」
590: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:27:43.47 ID:KM8wf9O0o
------------------------------------------------
夕刻 海賊船女子部屋
狼「大人げないわね」
男「聞いていたのか」
狼「聞こえただけ。
アタシも少女の見舞いに来てさ。」
男「なら見舞えばいい。
俺は船橋に行く。
いつまでも包帯に舵を任せ続けるワケにもいかん」
狼「む、男の尻ぬぐいなんてお断りさ。
そもそも、慰めに行ったはずじゃないの?」
男「……」
狼「アタシね、普段の男は嫌いじゃない。」
男「何だ、唐突に」
狼「無愛想で、やる気も覇気もない」
男「……それは誉めていないな。」
夕刻 海賊船女子部屋
狼「大人げないわね」
男「聞いていたのか」
狼「聞こえただけ。
アタシも少女の見舞いに来てさ。」
男「なら見舞えばいい。
俺は船橋に行く。
いつまでも包帯に舵を任せ続けるワケにもいかん」
狼「む、男の尻ぬぐいなんてお断りさ。
そもそも、慰めに行ったはずじゃないの?」
男「……」
狼「アタシね、普段の男は嫌いじゃない。」
男「何だ、唐突に」
狼「無愛想で、やる気も覇気もない」
男「……それは誉めていないな。」
591: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:28:12.50 ID:KM8wf9O0o
狼「でも、船長としてやるべき事はこなす。
必要以上に干渉してこない、
わきまえている、居心地の悪くならない相手。
そういう意味で、嫌いじゃない」
男「奇遇だな。俺も、お前を同じように思っていた。」
狼「そんなのはどうでもいい。
ただ、今の男は、嫌い。
仲間に対する尊敬が、見えない。」
男「……そうかも知れんな。」
狼「自覚はあるってわけ。
少女の事が嫌いなの?」
男「……なぜだ」
狼「少女が関わると、男の態度が変になるから」
男「そんな事は……」
狼「無いって云えないでしょ」
男「……」
狼「もしかして少女も、あの黒ひげの――」
どかっ
必要以上に干渉してこない、
わきまえている、居心地の悪くならない相手。
そういう意味で、嫌いじゃない」
男「奇遇だな。俺も、お前を同じように思っていた。」
狼「そんなのはどうでもいい。
ただ、今の男は、嫌い。
仲間に対する尊敬が、見えない。」
男「……そうかも知れんな。」
狼「自覚はあるってわけ。
少女の事が嫌いなの?」
男「……なぜだ」
狼「少女が関わると、男の態度が変になるから」
男「そんな事は……」
狼「無いって云えないでしょ」
男「……」
狼「もしかして少女も、あの黒ひげの――」
どかっ
592: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:28:39.65 ID:KM8wf9O0o
男「あの名前を、口にするな」
狼「関係者なの?
男がこんな風に、
普段とは違う態度を取るのって、
アタシが知る限りは、それだけだから。
男「……そのような情報はない。
そして、その可能性もないだろう」
狼「ただ、そこに近い『過去』に彼女がいる?」
男「聞くな。
お前は詮索されるのが嫌いだと思っていたがな」
狼「そうよ。
触られるのも、詮索されるのも嫌い。
でも、触ったり、詮索したりするのは嫌いじゃないわ」
男「……身勝手だな。」
狼「前者は私の感情。
後者は無理強いしなければ問題にならないでしょ。
で、答えるの?」
狼「関係者なの?
男がこんな風に、
普段とは違う態度を取るのって、
アタシが知る限りは、それだけだから。
男「……そのような情報はない。
そして、その可能性もないだろう」
狼「ただ、そこに近い『過去』に彼女がいる?」
男「聞くな。
お前は詮索されるのが嫌いだと思っていたがな」
狼「そうよ。
触られるのも、詮索されるのも嫌い。
でも、触ったり、詮索したりするのは嫌いじゃないわ」
男「……身勝手だな。」
狼「前者は私の感情。
後者は無理強いしなければ問題にならないでしょ。
で、答えるの?」
593: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/03(日) 05:29:15.07 ID:KM8wf9O0o
男「答えん。」
狼「そう、ならアタシにできる事はないわね。
……あと、伝言。
包帯が、矢尻十字について話があるって。」
男「それを早く言え。
マータ騎士団か……
くそっ、こんな時に」
とことこ
狼「……尻ぬぐいは嫌いなんだけど。
食事くらいはさせないと、かな」
狼「なんでアタシがこんな事しないといけないのよ。
こういうのは、白髪の……」
狼「白髪……」
狼「ふん、あんなセクハラ魔神なんて……」
狼「そう、ならアタシにできる事はないわね。
……あと、伝言。
包帯が、矢尻十字について話があるって。」
男「それを早く言え。
マータ騎士団か……
くそっ、こんな時に」
とことこ
狼「……尻ぬぐいは嫌いなんだけど。
食事くらいはさせないと、かな」
狼「なんでアタシがこんな事しないといけないのよ。
こういうのは、白髪の……」
狼「白髪……」
狼「ふん、あんなセクハラ魔神なんて……」
602: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:11:16.19 ID:8Mk/e9+8o
------------------------------------------------
夕刻 海賊船廊下
とこ、とこ……
男「ふん……。判っている」
男(そうだ、誰よりも俺が、自分が判っている。
少女に対する態度が、平静では無いとな)
男「狼の勘も、あなた勝ち外れてはいないしな」
男(確かに少女は、
あの男――家族の仇である黒ひげとは、
直接的に関係はない)
男「だから、嘘はついていない」
男(ただ、俺にとっては無縁ではない。
切り離せない、近しく結びついた存在――)
男「言うなれば、八つ当たり、か」
よろっ
とすっ
男「……いまさら」
夕刻 海賊船廊下
とこ、とこ……
男「ふん……。判っている」
男(そうだ、誰よりも俺が、自分が判っている。
少女に対する態度が、平静では無いとな)
男「狼の勘も、あなた勝ち外れてはいないしな」
男(確かに少女は、
あの男――家族の仇である黒ひげとは、
直接的に関係はない)
男「だから、嘘はついていない」
男(ただ、俺にとっては無縁ではない。
切り離せない、近しく結びついた存在――)
男「言うなれば、八つ当たり、か」
よろっ
とすっ
男「……いまさら」
603: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:11:56.77 ID:8Mk/e9+8o
男(黒ひげに家族を殺されて、
俺自身も傷を負わされ、
荒れ狂う海に突き落とされたあの日、あの時。
俺の人生は、変わった)
男「あの男への復讐だけが」
ぐっ
男「俺の、生きる理由になった」
男(どれだけの時間を、
波にもまれながら、
小さな木片にすがりついて流されたか)
男「今でも、思い出せる」
男(じりじりと、熱した針を突き刺すような陽光に、
体中を焦がされながら、
一面に俺を囲む海によって、
呼吸するたびに割れそうな喉の渇きを抑えながら)
男「あの男を殺す事だけを考えた……あの、時間」
男(少女は、それを、思い出させる)
俺自身も傷を負わされ、
荒れ狂う海に突き落とされたあの日、あの時。
俺の人生は、変わった)
男「あの男への復讐だけが」
ぐっ
男「俺の、生きる理由になった」
男(どれだけの時間を、
波にもまれながら、
小さな木片にすがりついて流されたか)
男「今でも、思い出せる」
男(じりじりと、熱した針を突き刺すような陽光に、
体中を焦がされながら、
一面に俺を囲む海によって、
呼吸するたびに割れそうな喉の渇きを抑えながら)
男「あの男を殺す事だけを考えた……あの、時間」
男(少女は、それを、思い出させる)
604: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:13:44.95 ID:8Mk/e9+8o
男「……八つ当たり、だがな」
男(いまだ俺は生きている。
なのになぜ、あの男は死んだのか)
男「俺は、この振り上げた拳をドコに降ろせばいい……
いや、判っている、少女にではない、
それは、わかって……」
ぐっ
男「……悩んでいても、解決はしないな」よろ、よろ
『ねえ』
男「うるさい」
『あのね、いつかね』
男「だまれ」
『――――――――――――』
男「どうしてだ。
なぜ、死ぬのが俺では無かったんだ……」
『それが、大切なの?』
男「白髪ではなく、俺が、死ぬべきだったんだ……」
男(いまだ俺は生きている。
なのになぜ、あの男は死んだのか)
男「俺は、この振り上げた拳をドコに降ろせばいい……
いや、判っている、少女にではない、
それは、わかって……」
ぐっ
男「……悩んでいても、解決はしないな」よろ、よろ
『ねえ』
男「うるさい」
『あのね、いつかね』
男「だまれ」
『――――――――――――』
男「どうしてだ。
なぜ、死ぬのが俺では無かったんだ……」
『それが、大切なの?』
男「白髪ではなく、俺が、死ぬべきだったんだ……」
605: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:14:22.86 ID:8Mk/e9+8o
------------------------------------------------
夕刻 海賊船談話室
包帯「ああ、船長。
ごめんね、呼び出しちゃって」
男「かまわん」
包帯「……なにか、あった?」
男「何かあったのはこっちだろうが。
矢尻十字についての話だと聞いたが、
騎士団の船でも襲ってきたか」
包帯「近からず、遠からず。
マストの上で見張りをしていたら、
遠くに連中の船が見えてね。
こっちは偽装としてスペインの国旗を出してたから、
まあ問題ないかなーと、
手旗で挨拶だけして追い越させるつもりだったけど」
男「ということは、来たのは後ろからか」
包帯「まあ、後ろって言っても、
水平線の縁をなぞるようなぎりぎりだったけどね」
夕刻 海賊船談話室
包帯「ああ、船長。
ごめんね、呼び出しちゃって」
男「かまわん」
包帯「……なにか、あった?」
男「何かあったのはこっちだろうが。
矢尻十字についての話だと聞いたが、
騎士団の船でも襲ってきたか」
包帯「近からず、遠からず。
マストの上で見張りをしていたら、
遠くに連中の船が見えてね。
こっちは偽装としてスペインの国旗を出してたから、
まあ問題ないかなーと、
手旗で挨拶だけして追い越させるつもりだったけど」
男「ということは、来たのは後ろからか」
包帯「まあ、後ろって言っても、
水平線の縁をなぞるようなぎりぎりだったけどね」
606: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:15:55.51 ID:8Mk/e9+8o
男「そうか。それで、その船がどうした?
確かに騎士団の船がイオニアのこんな奥にいるのは、
多少違和感があるが、
珍しい事ではないだろう」
包帯「それは同意。
でも、なんだか立派な鷹が飛んで来てね。
足にこの手紙がついてたんだ」
男「手紙だと」 がさがさ
包帯「一応、頭の部分だけ開いて、
船長宛って事だけ確かめたよ」
男「それくらいは問題ない……なるほど、青年か」
包帯「青年さんって、知り合いの名前かい?
にしては、あんまり嬉しく為さそうだけど」
男「知り合い、だな。
まさかこのタイミングで会うか……」
包帯「どんな関係か、聞いても?」
男「昔の同僚だ。騎士団時代のな」
包帯「へえ。だから砲弾じゃなくて
手紙が飛んで来たのかな」
確かに騎士団の船がイオニアのこんな奥にいるのは、
多少違和感があるが、
珍しい事ではないだろう」
包帯「それは同意。
でも、なんだか立派な鷹が飛んで来てね。
足にこの手紙がついてたんだ」
男「手紙だと」 がさがさ
包帯「一応、頭の部分だけ開いて、
船長宛って事だけ確かめたよ」
男「それくらいは問題ない……なるほど、青年か」
包帯「青年さんって、知り合いの名前かい?
にしては、あんまり嬉しく為さそうだけど」
男「知り合い、だな。
まさかこのタイミングで会うか……」
包帯「どんな関係か、聞いても?」
男「昔の同僚だ。騎士団時代のな」
包帯「へえ。だから砲弾じゃなくて
手紙が飛んで来たのかな」
607: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:16:50.52 ID:8Mk/e9+8o
男「そういう事だろう。
あまり助かったという気はしないがな」
包帯「手紙にはなんて?
命が惜しければ降伏しろとか
昔なじみのよしみで降伏の機会はやろう、とか」
男「確かに騎士団の主な『任務』は海賊行為だが、
相手をするのはあくまで、トルキア勢力に対してだ。
基本的に、この近辺の船は敵としては扱われん」
包帯「……通行料さえはらえば、だけどね」
男「否定はできんな。
だが、こいつについてだけは違うと言っておこう」
包帯「どういう意味なんだい?」
男「そうだな……『騎士』だからという言葉で通じれば、
分かり易いのだが」
包帯「騎士団なんて、貴族の三男、四男の集まりでしょ。
金と権力と身内での評判以外を気にする人間って、
それ以外のどんな意味が騎士にあるんだい?」
男「……相変わらず貴族に関する事には、手厳しいな。」
包帯「あ……ごめん。
男さんとか白髪さんは、含めてないから」
あまり助かったという気はしないがな」
包帯「手紙にはなんて?
命が惜しければ降伏しろとか
昔なじみのよしみで降伏の機会はやろう、とか」
男「確かに騎士団の主な『任務』は海賊行為だが、
相手をするのはあくまで、トルキア勢力に対してだ。
基本的に、この近辺の船は敵としては扱われん」
包帯「……通行料さえはらえば、だけどね」
男「否定はできんな。
だが、こいつについてだけは違うと言っておこう」
包帯「どういう意味なんだい?」
男「そうだな……『騎士』だからという言葉で通じれば、
分かり易いのだが」
包帯「騎士団なんて、貴族の三男、四男の集まりでしょ。
金と権力と身内での評判以外を気にする人間って、
それ以外のどんな意味が騎士にあるんだい?」
男「……相変わらず貴族に関する事には、手厳しいな。」
包帯「あ……ごめん。
男さんとか白髪さんは、含めてないから」
608: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:17:42.19 ID:8Mk/e9+8o
男「気にするな。
俺も立場は元貴族だった身として、
少し気になっただけだ」
包帯「そっか、貴族だった――って、え?」
男「なぜ、そこまで、驚いた顔をする。」
包帯「貴族らしくないし、
てっきり騎士団にいたっていっても、
小間使いとかかなーと思ってたからね」
男「まあ、白髪は元はそうだったが、俺は違うぞ。
俺が生まれた後に、親が貴族と婚儀を結んだからな、
名目上は貴族として騎士団に入団した身だ」
包帯「でも出身は庶民なんだよね。
だから、あんまり貴族臭くないのかな」
男「それは、そうかも知れんな。
おかげで賤民と言われていたが――
いや、話を戻そう。だいぶズレた気がする」
包帯「手紙についてだね」
男「内容は、近くの港に来いとある」
包帯「罠とかかな?」
俺も立場は元貴族だった身として、
少し気になっただけだ」
包帯「そっか、貴族だった――って、え?」
男「なぜ、そこまで、驚いた顔をする。」
包帯「貴族らしくないし、
てっきり騎士団にいたっていっても、
小間使いとかかなーと思ってたからね」
男「まあ、白髪は元はそうだったが、俺は違うぞ。
俺が生まれた後に、親が貴族と婚儀を結んだからな、
名目上は貴族として騎士団に入団した身だ」
包帯「でも出身は庶民なんだよね。
だから、あんまり貴族臭くないのかな」
男「それは、そうかも知れんな。
おかげで賤民と言われていたが――
いや、話を戻そう。だいぶズレた気がする」
包帯「手紙についてだね」
男「内容は、近くの港に来いとある」
包帯「罠とかかな?」
609: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:18:29.74 ID:8Mk/e9+8o
男「いや、それはないだろう。
先ほど言いかけたが、
こいつは騎士道を重んじる、
まさに理想の『騎士』なんだ」
包帯「みんな大好きトマス・マロリーかい?
ロマンはあるけれど、冗談としては面白くないね」
男「冗談では無い。いや、冗談ではすまない、だな。
トマスを知っているなら話は早いが、
誇りと忠義を何より重んじるという、
理想の騎士を書いた物語を読んで、
そうなりたいと願う者は、
騎士団内部でも実は少なくないんだ。だが……」
包帯「まあ、判らないでもないけど、
現実との違いを知るとか、そういうところでしょ。
『帝国の方が騎士道精神にあふれている』なんて、
言われている始末だからね」
男「……返す言葉も無いな。
だが、中にはそんな幻想を、
現実にしてしまおうという奴もいてな」
先ほど言いかけたが、
こいつは騎士道を重んじる、
まさに理想の『騎士』なんだ」
包帯「みんな大好きトマス・マロリーかい?
ロマンはあるけれど、冗談としては面白くないね」
男「冗談では無い。いや、冗談ではすまない、だな。
トマスを知っているなら話は早いが、
誇りと忠義を何より重んじるという、
理想の騎士を書いた物語を読んで、
そうなりたいと願う者は、
騎士団内部でも実は少なくないんだ。だが……」
包帯「まあ、判らないでもないけど、
現実との違いを知るとか、そういうところでしょ。
『帝国の方が騎士道精神にあふれている』なんて、
言われている始末だからね」
男「……返す言葉も無いな。
だが、中にはそんな幻想を、
現実にしてしまおうという奴もいてな」
610: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:19:19.49 ID:8Mk/e9+8o
包帯「その彼は、今もそれを目指していると?」
男「同僚からすれば『厄介なことに』な。
そんな奴からの誘いだ。
罠という事はない」
包帯「……」
男「白髪の死を伝えるため、
いずれ連絡を取ろうと思っていた所だ。
俺は誘いに乗ろうと思う」
包帯「了解。まあ、船長の意向だからね、従うよ。
むしろ、違う意味で船長に対する罠みたいだから、
見ていて面白くなりそうだしね」
男「どういう意味だ?」
包帯「どういう意味も何も、
そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいんじゃないかい、
って事だよ。ふふ」
男「……苦手なんだ。奴が。」
男「同僚からすれば『厄介なことに』な。
そんな奴からの誘いだ。
罠という事はない」
包帯「……」
男「白髪の死を伝えるため、
いずれ連絡を取ろうと思っていた所だ。
俺は誘いに乗ろうと思う」
包帯「了解。まあ、船長の意向だからね、従うよ。
むしろ、違う意味で船長に対する罠みたいだから、
見ていて面白くなりそうだしね」
男「どういう意味だ?」
包帯「どういう意味も何も、
そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいんじゃないかい、
って事だよ。ふふ」
男「……苦手なんだ。奴が。」
611: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/13(水) 02:19:58.94 ID:8Mk/e9+8o
包帯「みたいだね。
もしかしてアレかな、よく言う、昔の自分を見て――」
男「そうと決まれば! 進路を変える」
包帯「……ふふ、了解。他のみんなにも伝えてくるよ」
男「任せた。
あと、あと今夜の食事は滋養のつくものを頼む。
双子妹を筆頭に、疲れているようだ。」
包帯「うん。任せてもらうよ。
この辺りは港も多いからね、
いざとなれば食材なんかはまたすぐに買えるし」
男「負担をかけてすまんな」
包帯「仕方無いよ、人手がないし」
男「……せめて、双子姉が残っていればな」
包帯「……居ない人の事を言っても、仕方無いよ」
男「そうだな。ひとまず俺は自分の仕事を済ませよう。
晩飯の時間になったら教えてくれ」
包帯「アイアイサー」
とことこ
もしかしてアレかな、よく言う、昔の自分を見て――」
男「そうと決まれば! 進路を変える」
包帯「……ふふ、了解。他のみんなにも伝えてくるよ」
男「任せた。
あと、あと今夜の食事は滋養のつくものを頼む。
双子妹を筆頭に、疲れているようだ。」
包帯「うん。任せてもらうよ。
この辺りは港も多いからね、
いざとなれば食材なんかはまたすぐに買えるし」
男「負担をかけてすまんな」
包帯「仕方無いよ、人手がないし」
男「……せめて、双子姉が残っていればな」
包帯「……居ない人の事を言っても、仕方無いよ」
男「そうだな。ひとまず俺は自分の仕事を済ませよう。
晩飯の時間になったら教えてくれ」
包帯「アイアイサー」
とことこ
618: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:20:06.04 ID:PoO4m/tco
------------------------------------------------
夜 バリウガ町長宅
双子姉「へっくちっ」
赤毛「大丈夫?
ちょっと冷えてきたかしらね」
双子姉「へーきへーき。
多分誰かが噂してるんだよ」
赤毛「あら、どんな噂かしら」
双子姉「港のおっちゃんとかがさ、
『マスター、今日港ですれ違ったあのレディー、
どこの誰かわかるか?
俺はもう一瞬で心を奪われてよ』
『ああ、町長の所に居候してる双子姉って、
何とも不憫な身の上の美少女らしい』
『ああ、それなら俺が、その魂を慰めてやりてぇ』
とかなんとか、そんな噂が!」
赤毛「ふふ、モテモテなのね。
それに、声真似もとっても上手よ」
双子姉「なんたって、れでぃーですから!」きりっ
赤毛「ふふっ」にこっ
夜 バリウガ町長宅
双子姉「へっくちっ」
赤毛「大丈夫?
ちょっと冷えてきたかしらね」
双子姉「へーきへーき。
多分誰かが噂してるんだよ」
赤毛「あら、どんな噂かしら」
双子姉「港のおっちゃんとかがさ、
『マスター、今日港ですれ違ったあのレディー、
どこの誰かわかるか?
俺はもう一瞬で心を奪われてよ』
『ああ、町長の所に居候してる双子姉って、
何とも不憫な身の上の美少女らしい』
『ああ、それなら俺が、その魂を慰めてやりてぇ』
とかなんとか、そんな噂が!」
赤毛「ふふ、モテモテなのね。
それに、声真似もとっても上手よ」
双子姉「なんたって、れでぃーですから!」きりっ
赤毛「ふふっ」にこっ
619: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:20:52.23 ID:PoO4m/tco
双子姉「その……ありがとね」
赤毛「何についてのお礼かしら?」
双子姉「イロイロと気を遣ってくれたり、
こうやってお家に泊めてくれたり」
赤毛「……気にしないで。
あなたはこの街のお客さんで、恩人だもの。
できる事はさせてもらってるけど、
あなた達にしてもらった事を考えれば、
全然足りないわ」
双子姉「おかげで、あたしは白髪のおっちゃんの葬儀に、
ちゃんと参列させてもらえたから。
とっても助かっちゃったよ」
赤毛「そんなのは当然のじゃない……。
あなたしか参列してもらう事ができなくて、
街の一員として、申し訳ないわ」
双子姉「でも……街の復興でみんな大変だし、
海賊に対する風当たりも強いのは当然だよ」
赤毛「街のために一所懸命戦ってくれた人達を、
無理矢理に追い出すなんて恩知らずじゃない。
私の声じゃ、あなたしか迎えられなかったけど……」
赤毛「何についてのお礼かしら?」
双子姉「イロイロと気を遣ってくれたり、
こうやってお家に泊めてくれたり」
赤毛「……気にしないで。
あなたはこの街のお客さんで、恩人だもの。
できる事はさせてもらってるけど、
あなた達にしてもらった事を考えれば、
全然足りないわ」
双子姉「おかげで、あたしは白髪のおっちゃんの葬儀に、
ちゃんと参列させてもらえたから。
とっても助かっちゃったよ」
赤毛「そんなのは当然のじゃない……。
あなたしか参列してもらう事ができなくて、
街の一員として、申し訳ないわ」
双子姉「でも……街の復興でみんな大変だし、
海賊に対する風当たりも強いのは当然だよ」
赤毛「街のために一所懸命戦ってくれた人達を、
無理矢理に追い出すなんて恩知らずじゃない。
私の声じゃ、あなたしか迎えられなかったけど……」
620: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:21:39.50 ID:PoO4m/tco
双子姉「しかたないよ。
海賊だし、ばけもの、だしね。
気持ち悪いし、縁起悪いし。
下手したら、教会からも怒られちゃうし」
赤毛「そんなの、誰かから言われたの?」
双子姉「街の人達は、言ってるよ。
赤毛さんは優しすぎるって」
赤毛「そんな、恥知らずなこと……」
双子姉「でもね、そうだと思うよ。
狼の姿をしてたり、包帯でぐるぐるだったり、
人の何倍も早く歳をとっちゃったりね。
あたしも仲間として知り合わなかったら、
不気味な人達とか、怖い人達って感じたと思う」
赤毛「双子姉ちゃんみたいな子に、
気持ちをくみ取らせるようにさせて、ごめんなさい」
双子姉「謝らないでいいんだよっ!
他の人達と違うからこそ、いろんな場所から、
あんな小さな船に集まった仲間でもあるからね!」
赤毛「そう言ってもらえると、
少しだけ、救われた気がするけど」にこ……
海賊だし、ばけもの、だしね。
気持ち悪いし、縁起悪いし。
下手したら、教会からも怒られちゃうし」
赤毛「そんなの、誰かから言われたの?」
双子姉「街の人達は、言ってるよ。
赤毛さんは優しすぎるって」
赤毛「そんな、恥知らずなこと……」
双子姉「でもね、そうだと思うよ。
狼の姿をしてたり、包帯でぐるぐるだったり、
人の何倍も早く歳をとっちゃったりね。
あたしも仲間として知り合わなかったら、
不気味な人達とか、怖い人達って感じたと思う」
赤毛「双子姉ちゃんみたいな子に、
気持ちをくみ取らせるようにさせて、ごめんなさい」
双子姉「謝らないでいいんだよっ!
他の人達と違うからこそ、いろんな場所から、
あんな小さな船に集まった仲間でもあるからね!」
赤毛「そう言ってもらえると、
少しだけ、救われた気がするけど」にこ……
621: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:24:06.33 ID:PoO4m/tco
双子姉「だーかーらー、赤毛さんは悪くないんだよー。
ま、言いたい人には言わせておけば良いって。
何も知らない人に何を言われても気にしないし」
赤毛「……強いのね、あなたたちは」
双子姉「大切な人に誤解されるのは辛いけど、
自分とかそんな人に恥じるところが無いなら、
胸を張って泰然と構えてろってね、
白髪のおっちゃんに教わったんだよ」にぱっ
『そうすりゃ、お前もちったぁ明るくなれねぇか?
根暗の嬢ちゃんよ』
赤毛「私も同じ事を聞いた事があるわ」
双子姉「そうなの?」
赤毛「ずっと……ずうっと昔にね」
双子姉「まあ、白髪のおっちゃんは、
仲間に対しても気にしなさすぎだと思うけどね。
狼のお姉ちゃんに対してとか……」
赤毛「あらあら……ふふっ」
双子姉「だからね、あたしは平気なの。
……ただ、あたし達じゃなくて、
赤毛さんが立場を悪くしてないかなーとか、心配でね」
ま、言いたい人には言わせておけば良いって。
何も知らない人に何を言われても気にしないし」
赤毛「……強いのね、あなたたちは」
双子姉「大切な人に誤解されるのは辛いけど、
自分とかそんな人に恥じるところが無いなら、
胸を張って泰然と構えてろってね、
白髪のおっちゃんに教わったんだよ」にぱっ
『そうすりゃ、お前もちったぁ明るくなれねぇか?
根暗の嬢ちゃんよ』
赤毛「私も同じ事を聞いた事があるわ」
双子姉「そうなの?」
赤毛「ずっと……ずうっと昔にね」
双子姉「まあ、白髪のおっちゃんは、
仲間に対しても気にしなさすぎだと思うけどね。
狼のお姉ちゃんに対してとか……」
赤毛「あらあら……ふふっ」
双子姉「だからね、あたしは平気なの。
……ただ、あたし達じゃなくて、
赤毛さんが立場を悪くしてないかなーとか、心配でね」
622: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:25:16.30 ID:PoO4m/tco
赤毛「……嘘をついても、
あなたを傷つけるだけだと思うから、
本当の事を言うわよ?」
双子姉「うん」
赤毛「確かにね、一部ではあなたに対してとか、
あなたの仲間に対して、
不満を持っている人はいるみたい」
双子姉「……だよね」
赤毛「でもね。
それ以上に違う声も聞こえるのよ。
双子姉ちゃんが街の復興のお手伝いをしてくれて、
とっても助かってるとか。
あなたの笑顔に励まされた、とか」
双子姉「ふふん、これも双子姉が誇る、
七つの必殺特技のひとつなんだよ!
スマイルはプライスレスっ」にぱっ
赤毛「男の子のハートはイチコロね」にこっ
双子姉「でも、白髪のおっちゃんには、
効果がなかったんだよねー……」しゅん
赤毛「あらあら、まあまあ……」くすっ
あなたを傷つけるだけだと思うから、
本当の事を言うわよ?」
双子姉「うん」
赤毛「確かにね、一部ではあなたに対してとか、
あなたの仲間に対して、
不満を持っている人はいるみたい」
双子姉「……だよね」
赤毛「でもね。
それ以上に違う声も聞こえるのよ。
双子姉ちゃんが街の復興のお手伝いをしてくれて、
とっても助かってるとか。
あなたの笑顔に励まされた、とか」
双子姉「ふふん、これも双子姉が誇る、
七つの必殺特技のひとつなんだよ!
スマイルはプライスレスっ」にぱっ
赤毛「男の子のハートはイチコロね」にこっ
双子姉「でも、白髪のおっちゃんには、
効果がなかったんだよねー……」しゅん
赤毛「あらあら、まあまあ……」くすっ
623: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:28:41.94 ID:PoO4m/tco
双子姉「話を戻すけど、
それじゃ、赤毛さんには迷惑とか」
赤毛「全然かかってないわよ。
むしろとっても助かってるくらい。
子供達の面倒も見てくれるし、ね」
双子姉「面倒なんて、ちょっと気にかけてるくらいだよ。
二人ともあたしと一緒に、
一日中ずーっと、復興のお手伝いしてるから。
……まだ遊びたい頃だと思うんだけど」
赤毛「そうね、今までだったらわがままを言って、
手伝いなんかしなかったと思うんだけど……
あの子たちも、白髪さんから『何か』を、
受け取っていたのかしら」
双子姉「白髪のおっちゃんったら、モテモテだね」
赤毛「ふふ、そうね。
心配をかけるかも知れないけど、
これからもあの二人と仲良くしてくれたら嬉しいわ」
双子姉「ばーんとぉっ、任せちゃってよ♪
あ、でも、そのかわり、ね」
赤毛「なにかしら?」
それじゃ、赤毛さんには迷惑とか」
赤毛「全然かかってないわよ。
むしろとっても助かってるくらい。
子供達の面倒も見てくれるし、ね」
双子姉「面倒なんて、ちょっと気にかけてるくらいだよ。
二人ともあたしと一緒に、
一日中ずーっと、復興のお手伝いしてるから。
……まだ遊びたい頃だと思うんだけど」
赤毛「そうね、今までだったらわがままを言って、
手伝いなんかしなかったと思うんだけど……
あの子たちも、白髪さんから『何か』を、
受け取っていたのかしら」
双子姉「白髪のおっちゃんったら、モテモテだね」
赤毛「ふふ、そうね。
心配をかけるかも知れないけど、
これからもあの二人と仲良くしてくれたら嬉しいわ」
双子姉「ばーんとぉっ、任せちゃってよ♪
あ、でも、そのかわり、ね」
赤毛「なにかしら?」
624: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:29:11.70 ID:PoO4m/tco
双子姉「赤毛さんの時間がある時でいいから、
いろいろ、教えてほしいなーって。
昔の、白髪のおっちゃんの事」
赤毛「……ええ、私の知っていることなら、喜んで。
でも、いいのかしら?」
双子姉「ん、なにが?」
赤毛「あなたにとって、
白髪さんの話は、まだ辛すぎないかしら?」
双子姉「……」
赤毛「私はずっとこの街にいるから、
何年か経って落ち着いてから、
聞きに来てくれても良いと思うの。
今は、無理をしなくていいのよ」
双子姉「そうだね、無理はしない方が良いとおもう」
赤毛「それなら……」
双子姉「でも」
赤毛 じっ
双子姉「そうじゃないんだよ」
いろいろ、教えてほしいなーって。
昔の、白髪のおっちゃんの事」
赤毛「……ええ、私の知っていることなら、喜んで。
でも、いいのかしら?」
双子姉「ん、なにが?」
赤毛「あなたにとって、
白髪さんの話は、まだ辛すぎないかしら?」
双子姉「……」
赤毛「私はずっとこの街にいるから、
何年か経って落ち着いてから、
聞きに来てくれても良いと思うの。
今は、無理をしなくていいのよ」
双子姉「そうだね、無理はしない方が良いとおもう」
赤毛「それなら……」
双子姉「でも」
赤毛 じっ
双子姉「そうじゃないんだよ」
625: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:29:51.12 ID:PoO4m/tco
赤毛「違うの?」
双子姉「白髪のおっちゃんの事をね、
あたしは大好きだったんだ」
赤毛 きゅっ
双子姉「えへへ、赤毛さんの手、あったかいね」
赤毛「……」
双子姉「その気持ちを伝えたらね、
おっちゃんには、家族の好きとか男女のとか、
いろいろ言われたんだけどさ。
正直まだ、あたしにはよくわかんない」
赤毛「難しいわよね、そういうの」
双子姉「うんうん。
でもね、ひとつ言えるのは、
とにかく大好きだったんだよ、ってこと」にへら
赤毛「あなたと話してると、
とっても、伝わってくるわ」
双子姉「たぶん、だから心配してくれたんだよね。
白髪のおっちゃんが天に召されて、
その事で、あたしが無理をしてないかって」
双子姉「白髪のおっちゃんの事をね、
あたしは大好きだったんだ」
赤毛 きゅっ
双子姉「えへへ、赤毛さんの手、あったかいね」
赤毛「……」
双子姉「その気持ちを伝えたらね、
おっちゃんには、家族の好きとか男女のとか、
いろいろ言われたんだけどさ。
正直まだ、あたしにはよくわかんない」
赤毛「難しいわよね、そういうの」
双子姉「うんうん。
でもね、ひとつ言えるのは、
とにかく大好きだったんだよ、ってこと」にへら
赤毛「あなたと話してると、
とっても、伝わってくるわ」
双子姉「たぶん、だから心配してくれたんだよね。
白髪のおっちゃんが天に召されて、
その事で、あたしが無理をしてないかって」
626: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:30:48.27 ID:PoO4m/tco
赤毛「ええ。
神はいたずらに試練をお与えにはならないわ。
でも、自分を壊してしまうほど、
過ぎたがんばりはいけないのよ?」
双子姉「んー、あたし、
白髪のおっちゃんの神学のお話は、
さぼっちゃってたからよく判らないかも」
赤毛「あら、そうなの?
あの人のお説教は、他の神父様や牧師様より、
ずっと興味深く聞けたけど」
双子姉「神様っていうのが、どうしても、
あたしには肌に合わなくて。
妹を魔女って呼んで顔に入れ墨をいれるとか、
ヒドイ事をしたのも一神教の人達だし」
赤毛「……ごめんなさい、
軽率な言葉だったわ」
双子姉「ごめんね、素直に受け取れなくて。
だから、神様とか、そういうのとは関係なく、
あたしは、手を伸ばしたいんだと思う」
赤毛「手を、伸ばす?」
神はいたずらに試練をお与えにはならないわ。
でも、自分を壊してしまうほど、
過ぎたがんばりはいけないのよ?」
双子姉「んー、あたし、
白髪のおっちゃんの神学のお話は、
さぼっちゃってたからよく判らないかも」
赤毛「あら、そうなの?
あの人のお説教は、他の神父様や牧師様より、
ずっと興味深く聞けたけど」
双子姉「神様っていうのが、どうしても、
あたしには肌に合わなくて。
妹を魔女って呼んで顔に入れ墨をいれるとか、
ヒドイ事をしたのも一神教の人達だし」
赤毛「……ごめんなさい、
軽率な言葉だったわ」
双子姉「ごめんね、素直に受け取れなくて。
だから、神様とか、そういうのとは関係なく、
あたしは、手を伸ばしたいんだと思う」
赤毛「手を、伸ばす?」
627: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:31:37.24 ID:PoO4m/tco
双子姉「言葉にしにくいけど、
おっちゃんが死んじゃうときにね、
笑顔だったんだ。
山も街も走り回って疲れ切った上に、
どうしようもないくらい大けがしてて、
とっても辛いはずなのに、笑ってたの」
赤毛「……なんでかしらね」
双子姉「わかんない。
でも、その顔がね、やきついて、るんだよ。
とっても、とっても、
やさしい顔で、やさしい声で、
あたしの事、おいていっちゃうのに、
それでもどこか、誇らしげでね」
赤毛「とっても……勝手な人ね」
双子姉「うん、勝手だとおもう。
でも、なんかね、うらやましかったんだ。
きっと、今のおっちゃんには、
世界が輝いてみえるんだろうなって。
そんな光景を見られるような生き方したいなーって」
おっちゃんが死んじゃうときにね、
笑顔だったんだ。
山も街も走り回って疲れ切った上に、
どうしようもないくらい大けがしてて、
とっても辛いはずなのに、笑ってたの」
赤毛「……なんでかしらね」
双子姉「わかんない。
でも、その顔がね、やきついて、るんだよ。
とっても、とっても、
やさしい顔で、やさしい声で、
あたしの事、おいていっちゃうのに、
それでもどこか、誇らしげでね」
赤毛「とっても……勝手な人ね」
双子姉「うん、勝手だとおもう。
でも、なんかね、うらやましかったんだ。
きっと、今のおっちゃんには、
世界が輝いてみえるんだろうなって。
そんな光景を見られるような生き方したいなーって」
628: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:32:59.74 ID:PoO4m/tco
赤毛「だから、彼の話を聞きたいの?」
双子姉「うん。
おっちゃんがどんな思いで、この街を守ったのか。
おっちゃんにとって、
あたしとか船のみんなはどう見えたのかとか」
赤毛「どう、見えたのか……」
双子姉「今すぐに答え合わせはできないけど、
おっちゃんの事を知れば、
ちょっとはそれもわかるのかなって。
わかりたいな、って」
赤毛「……ホントに、彼の事が好きなのね」
双子姉「えへへ。だからね、心配ないんだよ。
ちょっとだけ、ほんとーにちょっとだけ、
胸がちくんとするんだけど」
赤毛「……」ぎゅっ
双子姉「えへへ、ありがとー」にへらっ
赤毛「これくらいしか、できなくて……」
双子姉「嬉しいけど、大丈夫」すっ
赤毛「本当に?」
双子姉「うん。
おっちゃんがどんな思いで、この街を守ったのか。
おっちゃんにとって、
あたしとか船のみんなはどう見えたのかとか」
赤毛「どう、見えたのか……」
双子姉「今すぐに答え合わせはできないけど、
おっちゃんの事を知れば、
ちょっとはそれもわかるのかなって。
わかりたいな、って」
赤毛「……ホントに、彼の事が好きなのね」
双子姉「えへへ。だからね、心配ないんだよ。
ちょっとだけ、ほんとーにちょっとだけ、
胸がちくんとするんだけど」
赤毛「……」ぎゅっ
双子姉「えへへ、ありがとー」にへらっ
赤毛「これくらいしか、できなくて……」
双子姉「嬉しいけど、大丈夫」すっ
赤毛「本当に?」
629: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:33:28.29 ID:PoO4m/tco
双子姉「コレはきっと、心の成長痛ってやつなんだよ。
おっちゃんならきっとそう言うね」にぱっ
赤毛「……そうね。たしかに彼なら、
そんな事を言いそうな気がするわ」にこ……
双子姉「じゃ、お話を……」
赤毛「でも、今日はダメよ。もう寝る時間でしょ」
双子姉「むー、子供扱いされてるような」
赤毛「まだ成人してないんだから、子供扱いよ」
双子姉「そーゆーところ、
さすが白髪のおっちゃんの幼なじみだよ」ぼそっ
赤毛「ほら、ぶつぶつ言ってないで、
布団に入っておやすみなさい」
双子姉「お客様なのにー」ぶーぶー
赤毛「お客様だから、ちゃんとお世話させてもらいます」
双子姉「はーい…… おやすみなさい」にこ
赤毛「はい、お休みなさい」にこっ
おっちゃんならきっとそう言うね」にぱっ
赤毛「……そうね。たしかに彼なら、
そんな事を言いそうな気がするわ」にこ……
双子姉「じゃ、お話を……」
赤毛「でも、今日はダメよ。もう寝る時間でしょ」
双子姉「むー、子供扱いされてるような」
赤毛「まだ成人してないんだから、子供扱いよ」
双子姉「そーゆーところ、
さすが白髪のおっちゃんの幼なじみだよ」ぼそっ
赤毛「ほら、ぶつぶつ言ってないで、
布団に入っておやすみなさい」
双子姉「お客様なのにー」ぶーぶー
赤毛「お客様だから、ちゃんとお世話させてもらいます」
双子姉「はーい…… おやすみなさい」にこ
赤毛「はい、お休みなさい」にこっ
630: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:33:56.24 ID:PoO4m/tco
------------------------------------------------
夜 海賊船女子部屋
とんとんとん
がちゃ
男「入るぞ」
少女「……もう入ってるし」もぐもぐ
男「返事が期待できないんだ、おざなりにもなる」
少女「そういう問題じゃないし」むぐむぐ
男「文句ばかりは饒舌だな」
少女「む……嫌がらせにきたの?」
男「いや、双子妹に頼まれてな。
お前がちゃんと食事を摂っているか、
確認するために来た」
少女「ちゃんと、食べてるよ」
男「そのようだな。
食が進んでいるとは言いがたいようだが、
自分で食べているだけ、二日前よりはマシか。
顔色も幾分か良くなったようだな。」
夜 海賊船女子部屋
とんとんとん
がちゃ
男「入るぞ」
少女「……もう入ってるし」もぐもぐ
男「返事が期待できないんだ、おざなりにもなる」
少女「そういう問題じゃないし」むぐむぐ
男「文句ばかりは饒舌だな」
少女「む……嫌がらせにきたの?」
男「いや、双子妹に頼まれてな。
お前がちゃんと食事を摂っているか、
確認するために来た」
少女「ちゃんと、食べてるよ」
男「そのようだな。
食が進んでいるとは言いがたいようだが、
自分で食べているだけ、二日前よりはマシか。
顔色も幾分か良くなったようだな。」
631: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:34:26.90 ID:PoO4m/tco
少女「だって……」ぶつぶつ
男「なんだ?」
少女「狼さん、が、…………う、うう」ぷすぷす(///
男「おい、どうした?」
少女「く、くち、く、、く……」
男「く?」
少女「いい。やっぱりいい。
聞かない方がいい」
男「なにやら恐ろしげだな。
とりあえず、ほどほどにしておけと言っておくか」
少女「別に、そういう事じゃ無いから、大丈夫。
……そういう事、言う人だっけ?」
男「何がだ?」
少女「男って、そういう時に、
俺は知らないって無視する人だと思ってた」
男「なんだ?」
少女「狼さん、が、…………う、うう」ぷすぷす(///
男「おい、どうした?」
少女「く、くち、く、、く……」
男「く?」
少女「いい。やっぱりいい。
聞かない方がいい」
男「なにやら恐ろしげだな。
とりあえず、ほどほどにしておけと言っておくか」
少女「別に、そういう事じゃ無いから、大丈夫。
……そういう事、言う人だっけ?」
男「何がだ?」
少女「男って、そういう時に、
俺は知らないって無視する人だと思ってた」
632: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:34:52.77 ID:PoO4m/tco
男「そうしたいがな。
今の船でもめ事がおきれば、命にかかわりかねん。
白髪も双子姉もいないせいで手が足りん。
お前もまだ働けんしな」
少女「……ごめん」
男「会話ができるようになっただけ、進歩と思うが。
体はまだ不調だろう」
少女「体は……大丈夫、明日から働くよ」
男「双子妹は許可したのか?」
少女「許可は、ないけど」
男「なら、船長としても許可できん。
治れば普通に船員として使える者を、
ろくに働けない状態で使って死なれてはかなわん」
少女「……」
男「それともなんだ、遠回りな自殺か」
少女「……それも、いいかもね」
ぎりっ
少女(そういえば、いつかもこんな音を聞いたような)
今の船でもめ事がおきれば、命にかかわりかねん。
白髪も双子姉もいないせいで手が足りん。
お前もまだ働けんしな」
少女「……ごめん」
男「会話ができるようになっただけ、進歩と思うが。
体はまだ不調だろう」
少女「体は……大丈夫、明日から働くよ」
男「双子妹は許可したのか?」
少女「許可は、ないけど」
男「なら、船長としても許可できん。
治れば普通に船員として使える者を、
ろくに働けない状態で使って死なれてはかなわん」
少女「……」
男「それともなんだ、遠回りな自殺か」
少女「……それも、いいかもね」
ぎりっ
少女(そういえば、いつかもこんな音を聞いたような)
633: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:35:24.75 ID:PoO4m/tco
男「…………そうか。わかった」ぐいっ
少女「え、え……?」
ぎしぃっ
少女(おし、たおされて、る?
お腹の辺りに……マウントポジション、だっけ。
体重、ほとんどかけてないみたいだけど、重い)
男「お前は、死にたいんだな」
少女(普段は同じぐらいの身長としか思ってなくて、
もうちょっと背の高い人の方が、
男性としてはイイカナーとか、
ぼーっと思ってたけど、
見上げると、ずっと大きく思えて、怖い)
男「もう一度聞く。
お前は、死にたいんだな」
少女「……うん」
男「ならば、絶食や過労なんて求めるな」すっ
少女(ゆっくりと、男の普段からは想像できないけど、
優しいと感じるほど丁寧にまぶたを閉じられて。)
男「お前も、ある一点では白髪と同じだ」
少女「え、え……?」
ぎしぃっ
少女(おし、たおされて、る?
お腹の辺りに……マウントポジション、だっけ。
体重、ほとんどかけてないみたいだけど、重い)
男「お前は、死にたいんだな」
少女(普段は同じぐらいの身長としか思ってなくて、
もうちょっと背の高い人の方が、
男性としてはイイカナーとか、
ぼーっと思ってたけど、
見上げると、ずっと大きく思えて、怖い)
男「もう一度聞く。
お前は、死にたいんだな」
少女「……うん」
男「ならば、絶食や過労なんて求めるな」すっ
少女(ゆっくりと、男の普段からは想像できないけど、
優しいと感じるほど丁寧にまぶたを閉じられて。)
男「お前も、ある一点では白髪と同じだ」
634: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:36:09.19 ID:PoO4m/tco
少女(船の作業でがさついた指先が、
なんで、こんなに優しく髪の毛を梳くのかな)
男「遺された者の事を考えない、
その傲慢さが、よく似ている」
少女(わからなくなる……
何かを錯覚しそうなくらい優しい動作で、
なんでか優しく聞こえる声で、そんな言葉)
男「だが、お前と白髪は決定的に違う」
少女「……」
男「お前は、領主の娘じゃなかったのか。
数百、数千の人間の命と安全を預かる、
その栄誉と責務も考えない」
少女(領主の娘――
約束された、そして背負うべき未来。
そんなもの、別に欲しく無かった)
男「お前は、お前が居なくなることで守れなくなる、
人々と子供の笑顔の事を、考えるべきだった」
少女(白髪さんがあの賊から守った、二人の子供。
知り合い、なのかな。
最後まであの二人の笑顔を気にしてた)
なんで、こんなに優しく髪の毛を梳くのかな)
男「遺された者の事を考えない、
その傲慢さが、よく似ている」
少女(わからなくなる……
何かを錯覚しそうなくらい優しい動作で、
なんでか優しく聞こえる声で、そんな言葉)
男「だが、お前と白髪は決定的に違う」
少女「……」
男「お前は、領主の娘じゃなかったのか。
数百、数千の人間の命と安全を預かる、
その栄誉と責務も考えない」
少女(領主の娘――
約束された、そして背負うべき未来。
そんなもの、別に欲しく無かった)
男「お前は、お前が居なくなることで守れなくなる、
人々と子供の笑顔の事を、考えるべきだった」
少女(白髪さんがあの賊から守った、二人の子供。
知り合い、なのかな。
最後まであの二人の笑顔を気にしてた)
635: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:36:46.78 ID:PoO4m/tco
男「お前は、最低だ」
少女(頭を撫でていた手がゆっくりと下がって)
ぐうっ
少女「か――はっ」
男「お前は笑顔を守ったアイツとは違う。
守るべき笑顔を見捨てて逝く、
ただ『逃げ』ただけの、臆病者だ」
少女「にげ、……じゃ」
男「逃げだろうさ。死とは、究極の逃避だ。
誰も、何も、そこまで追いかける事は無い。
地獄には落ちるかもしれんがな」
少女「……くる、し」
男「そうだろうな。
動脈を押さえればさほど経たずに、
意識を落とす事もできるが。
そうあっさりと死なせてはやれん」
少女(どんな顔して、私を殺してるの、かな。
目をふさがれてなければ、みたのに)
少女(頭を撫でていた手がゆっくりと下がって)
ぐうっ
少女「か――はっ」
男「お前は笑顔を守ったアイツとは違う。
守るべき笑顔を見捨てて逝く、
ただ『逃げ』ただけの、臆病者だ」
少女「にげ、……じゃ」
男「逃げだろうさ。死とは、究極の逃避だ。
誰も、何も、そこまで追いかける事は無い。
地獄には落ちるかもしれんがな」
少女「……くる、し」
男「そうだろうな。
動脈を押さえればさほど経たずに、
意識を落とす事もできるが。
そうあっさりと死なせてはやれん」
少女(どんな顔して、私を殺してるの、かな。
目をふさがれてなければ、みたのに)
636: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:37:21.14 ID:PoO4m/tco
男「この船にも、お前においていかれる連中がいる。
いつもの事だが、今回の件では特に、
少しでも食欲を持ってもらえるようにと、
料理を工夫していた包帯」
少女(いつも、うん、おいしかった)
男「いつも以上に仕事をこなした上で、
何度も繰り返し俺の部屋まで来て、
少しでも早く良くなるようにと、
騎士団から持ち出してきた医学書を読んだ双子妹」
少女(だから、あんなに目の下に濃いクマを)
男「お前の仕事を丸ごと引き受けた上で、
特別な事はできないが何かしたいと、
お前が傷で熱を持っているときに、
こまめに汗を拭い、寝具を何度も洗っては替えて、
一番手間をかけていたのは狼だろうな」
少女(いっぱい、いっぱい――)
男「そうした思いの上に、お前は」
はたり
男「お前は、白髪と違って生き延びたものを」
いつもの事だが、今回の件では特に、
少しでも食欲を持ってもらえるようにと、
料理を工夫していた包帯」
少女(いつも、うん、おいしかった)
男「いつも以上に仕事をこなした上で、
何度も繰り返し俺の部屋まで来て、
少しでも早く良くなるようにと、
騎士団から持ち出してきた医学書を読んだ双子妹」
少女(だから、あんなに目の下に濃いクマを)
男「お前の仕事を丸ごと引き受けた上で、
特別な事はできないが何かしたいと、
お前が傷で熱を持っているときに、
こまめに汗を拭い、寝具を何度も洗っては替えて、
一番手間をかけていたのは狼だろうな」
少女(いっぱい、いっぱい――)
男「そうした思いの上に、お前は」
はたり
男「お前は、白髪と違って生き延びたものを」
637: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:38:02.22 ID:PoO4m/tco
はたり
少女(ああ――)
男「だが、それでも死にたいと言うなら」
少女(どんな、顔って)
男「俺が」
少女(この人)
男「殺してやろう」
少女(泣いて)
男「殺してやりたくないほど憎いが、殺してやろう」
少女(この人でも、涙、あったかいんだ)
男「これも、業か」
少女(苦しい、空気が足りない。
勝手にもがく体を押さえられる力強さが、
怖くて、頼もしいような)
男「俺は、殺す事しか、してやれん」
少女(ああ――)
男「だが、それでも死にたいと言うなら」
少女(どんな、顔って)
男「俺が」
少女(この人)
男「殺してやろう」
少女(泣いて)
男「殺してやりたくないほど憎いが、殺してやろう」
少女(この人でも、涙、あったかいんだ)
男「これも、業か」
少女(苦しい、空気が足りない。
勝手にもがく体を押さえられる力強さが、
怖くて、頼もしいような)
男「俺は、殺す事しか、してやれん」
638: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:38:34.62 ID:PoO4m/tco
少女( ああ、意識、とび、そ。
視界、あか、い。しろ、い)
男「そろそろ、眠れ。
俺も元は僧籍だ、祈りくらいは、くれてやる」
少女(ああ、もう……なんて、優しい声で、この男)
少女 ぐっ
男「……」
少女 ぐぐっ
男「どうした、死にたいんだろう」
少女「ど、け……」
男「……」すぅっ
少女「げ、げほっ、ぇぐっ、げほっ……」
男「……」
視界、あか、い。しろ、い)
男「そろそろ、眠れ。
俺も元は僧籍だ、祈りくらいは、くれてやる」
少女(ああ、もう……なんて、優しい声で、この男)
少女 ぐっ
男「……」
少女 ぐぐっ
男「どうした、死にたいんだろう」
少女「ど、け……」
男「……」すぅっ
少女「げ、げほっ、ぇぐっ、げほっ……」
男「……」
639: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:40:01.80 ID:PoO4m/tco
少女「ぜ、は……。
い、いつまで、人の上にのってんのよ……」
男「……そうだな」すっ
少女「案外、重いんだ。全然、動かなかった」
男「これでも、騎士だったからな。
連中の中では貧相で身長の無い部類だったが、
必要に足る分はあるつもりだ」
少女「そっか……」
男「……」
少女「……」
男「……なぜだ」
少女「……」
男「なぜ、死ぬのをやめる気になった」
少女「あー……聞くの? それ」
男「言わずに済ませるつもりだったのか、貴様は」
少女「う、怒って、る、よね、うん」
い、いつまで、人の上にのってんのよ……」
男「……そうだな」すっ
少女「案外、重いんだ。全然、動かなかった」
男「これでも、騎士だったからな。
連中の中では貧相で身長の無い部類だったが、
必要に足る分はあるつもりだ」
少女「そっか……」
男「……」
少女「……」
男「……なぜだ」
少女「……」
男「なぜ、死ぬのをやめる気になった」
少女「あー……聞くの? それ」
男「言わずに済ませるつもりだったのか、貴様は」
少女「う、怒って、る、よね、うん」
640: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:40:46.18 ID:PoO4m/tco
男「当たり前だ、バカモノ」
少女(怖い、はずなのに。むしろ、かな、しそ、う?
怒っているような口調なのに、違う?
少しだけ、安心しているようにも見えて、
どうなんだろ)
男「お前が目を覚ましてから二日。
他の連中の前では言わなかったようだが、
俺に対しては三度、死にたいと言ったな」
少女(数えてるとか、几帳面っていうか、うう)
男「また黙りか」
少女「いや、その、なんというか。
言葉にするのが難しくて」
男「……まだ、ましな言い訳だな」
少女「あはは……。
なんていうか、さ。
一度は完全に、殺してくれるのかって、
殺してもらえるなら死にたいなって思ったんだよね」
男「……」
少女(怖い、はずなのに。むしろ、かな、しそ、う?
怒っているような口調なのに、違う?
少しだけ、安心しているようにも見えて、
どうなんだろ)
男「お前が目を覚ましてから二日。
他の連中の前では言わなかったようだが、
俺に対しては三度、死にたいと言ったな」
少女(数えてるとか、几帳面っていうか、うう)
男「また黙りか」
少女「いや、その、なんというか。
言葉にするのが難しくて」
男「……まだ、ましな言い訳だな」
少女「あはは……。
なんていうか、さ。
一度は完全に、殺してくれるのかって、
殺してもらえるなら死にたいなって思ったんだよね」
男「……」
641: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:43:50.55 ID:PoO4m/tco
少女「白髪さんが死んじゃって、
私の心の中にね、ぎゅってする何かができたんだ。
ぐるぐる、ぎゅうぎゅうって、
これを、喪失感っていうのかな」
男「まあ、そうだろうな」
少女「よく、胸にぽっかり穴が開いたっていうけど。
心臓の代わりに大砲の弾がある感じかな。
ずんと重くて、ぎちぎちして、
もう、どうして良いのかわかなんなくて」
男「……落ち着け」そっ
少女「……そうやって、背中に手を当てられてると。
なんだか、安心する」
男「そうか」
少女「昔、誰かにやってもらったのかな」
男「俺が知るか」
少女「あはは、そうだよね」
私の心の中にね、ぎゅってする何かができたんだ。
ぐるぐる、ぎゅうぎゅうって、
これを、喪失感っていうのかな」
男「まあ、そうだろうな」
少女「よく、胸にぽっかり穴が開いたっていうけど。
心臓の代わりに大砲の弾がある感じかな。
ずんと重くて、ぎちぎちして、
もう、どうして良いのかわかなんなくて」
男「……落ち着け」そっ
少女「……そうやって、背中に手を当てられてると。
なんだか、安心する」
男「そうか」
少女「昔、誰かにやってもらったのかな」
男「俺が知るか」
少女「あはは、そうだよね」
642: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:44:27.97 ID:PoO4m/tco
男「それで、話の続きはどうした。
白髪と違って聞き上手ではないが、
話す気があるなら耳には入れてやる」
少女「あー、えー……まあ、いいや。
でもね、その、私の事を殺そうとしながらさ、
泣いた男の顔を見たらさ」
男「……泣いてなどいない」
少女「いや、泣いてたし」
男「気のせいだろう」
少女「いや、顔になんか滴ってきたよ」
男「……お前がバカみたいな力で抵抗するから、
押さえようとして汗をかいたんだろう」
少女「げっ!」ずさっ
男「……嘘だ」
少女「……まあ、汗かいてないしね」
男「……」
少女 すっ
白髪と違って聞き上手ではないが、
話す気があるなら耳には入れてやる」
少女「あー、えー……まあ、いいや。
でもね、その、私の事を殺そうとしながらさ、
泣いた男の顔を見たらさ」
男「……泣いてなどいない」
少女「いや、泣いてたし」
男「気のせいだろう」
少女「いや、顔になんか滴ってきたよ」
男「……お前がバカみたいな力で抵抗するから、
押さえようとして汗をかいたんだろう」
少女「げっ!」ずさっ
男「……嘘だ」
少女「……まあ、汗かいてないしね」
男「……」
少女 すっ
643: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:45:14.32 ID:PoO4m/tco
男「隣に戻るのか」
少女「うるさい。
で、まあ、なんだかさ、『ああ――』って思ったんだ」
男「どういう意味だ?」
少女「いや、だから言葉にできないんだって。
ただ、なんていうか、
うーん、こうしなきゃって感じがしてね」そっ
なでなで
男「……なぜ俺の頭を撫でる」
少女「そうしなきゃって感じがしたから。
どうしてかわかんないけど、
それが胸の奥にあった大きな塊みたいなものを、
少しだけ小さくしてくれて」
男「それで、撫でるのか」
少女「うん」
なでなで
少女「うるさい。
で、まあ、なんだかさ、『ああ――』って思ったんだ」
男「どういう意味だ?」
少女「いや、だから言葉にできないんだって。
ただ、なんていうか、
うーん、こうしなきゃって感じがしてね」そっ
なでなで
男「……なぜ俺の頭を撫でる」
少女「そうしなきゃって感じがしたから。
どうしてかわかんないけど、
それが胸の奥にあった大きな塊みたいなものを、
少しだけ小さくしてくれて」
男「それで、撫でるのか」
少女「うん」
なでなで
644: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:45:40.45 ID:PoO4m/tco
男「……つくづく、ワケのわからん奴だ」
少女「いや、男に言われたくないし」
男「その言い方だと、俺の方が変わっているように、
聞こえるんだが」
少女「その通りでしょ。
ほんと、ぜんぜんわかんない。
まったく、ちっとも」
男「……」
少女「ほとんど何にもしゃべらないし、
船って小さな空間に一緒にいるのにさ、
ずっと一歩離れた所にいるみたいに距離があって」
男「……」
少女「そんな男を泣かせて、私……」
がたっ
少女「いや、男に言われたくないし」
男「その言い方だと、俺の方が変わっているように、
聞こえるんだが」
少女「その通りでしょ。
ほんと、ぜんぜんわかんない。
まったく、ちっとも」
男「……」
少女「ほとんど何にもしゃべらないし、
船って小さな空間に一緒にいるのにさ、
ずっと一歩離れた所にいるみたいに距離があって」
男「……」
少女「そんな男を泣かせて、私……」
がたっ
646: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:49:11.98 ID:PoO4m/tco
男「……落ち着いたなら、さっさと寝ろ」
少女「え、ねえっ、ちょっと」
とことこ、ぱたん
少女「……出てっちゃった」
少女(そんなに恥ずかしかったのかな、泣いたこと。
でも、指摘されてちょっと不快そうだったけど、
出ていくほどには見えなかったし)
少女「むしろ、怖がってた……?」
少女「……そんなまさか、だよね」
少女「え、ねえっ、ちょっと」
とことこ、ぱたん
少女「……出てっちゃった」
少女(そんなに恥ずかしかったのかな、泣いたこと。
でも、指摘されてちょっと不快そうだったけど、
出ていくほどには見えなかったし)
少女「むしろ、怖がってた……?」
少女「……そんなまさか、だよね」
647: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:51:09.75 ID:PoO4m/tco
------------------------------------------------
夜 海賊船 甲板
ざざーん
男「……」
男「泣く、か」
男「意味がわからん」
男「何人も殺してきたというのに」
男「いまさら」
男「そうだ、俺はそのためにいるはずなんだ」
男「殺すために」
ざざーん
とことこ
包帯「お月見かい?」
男「……特に、目的は無い」
包帯「そう」
夜 海賊船 甲板
ざざーん
男「……」
男「泣く、か」
男「意味がわからん」
男「何人も殺してきたというのに」
男「いまさら」
男「そうだ、俺はそのためにいるはずなんだ」
男「殺すために」
ざざーん
とことこ
包帯「お月見かい?」
男「……特に、目的は無い」
包帯「そう」
648: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:51:35.87 ID:PoO4m/tco
男「……少女は食事したぞ」
包帯「ああ、うん。
さっき食器を下げに来たよ。
まだ傷が治ってないのに無茶して。ふふ」
男「一回死んでしまえばいいものを」
包帯「死んでも治らないたぐいの病気じゃない?」
男「……なにげに言うな」
包帯「いやいや、それほどでも」
男「俺は誉めたのか?」
包帯「さあ、どうだろうね」
男「……ふ。お前はどうした」
包帯「何がかな?」
男「月見にでも来たのか?」
包帯「いや、船長が甲板にいるのが見えたから、
コレでもどうかなーと。
前から機会をうかがってたんだ」
包帯「ああ、うん。
さっき食器を下げに来たよ。
まだ傷が治ってないのに無茶して。ふふ」
男「一回死んでしまえばいいものを」
包帯「死んでも治らないたぐいの病気じゃない?」
男「……なにげに言うな」
包帯「いやいや、それほどでも」
男「俺は誉めたのか?」
包帯「さあ、どうだろうね」
男「……ふ。お前はどうした」
包帯「何がかな?」
男「月見にでも来たのか?」
包帯「いや、船長が甲板にいるのが見えたから、
コレでもどうかなーと。
前から機会をうかがってたんだ」
649: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:52:04.30 ID:PoO4m/tco
男「白髪が好んでいた蒸留酒か」
包帯「なんだかんだと慌ただしくて、
バリウガを出てからずっと休めなかったし、
白髪さんを悼む余裕すらなかったからねー」
男「弔い酒ということなら、
そうだな、少しもらうか」
包帯「はい」
とくとくとく……
男「……く、相変わらず強いな」くいっ
包帯「よくこんなのを何でも無いように飲んでたよね」
男「そうだな」
ざざーん
ざざーん
包帯「なんだかんだと慌ただしくて、
バリウガを出てからずっと休めなかったし、
白髪さんを悼む余裕すらなかったからねー」
男「弔い酒ということなら、
そうだな、少しもらうか」
包帯「はい」
とくとくとく……
男「……く、相変わらず強いな」くいっ
包帯「よくこんなのを何でも無いように飲んでたよね」
男「そうだな」
ざざーん
ざざーん
650: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:52:35.95 ID:PoO4m/tco
包帯「大丈夫かい?」くいっ
男「何のことだ?」
包帯「白髪さんが亡くなってから、
船長、ずっと無理してるみたいだから」
男「……無理など」
包帯「してるでしょ。
いいんだよ、白髪さんの代わり、しなくたってさ」
男「……」
包帯「らしくないんじゃないかい?」
男「……少し。昔の話になる」
包帯「昔の話?」
男「十年ほど前に、俺は海賊に襲われたんだ
今ではひとつのおとぎ話にさえなっている、
黒ひげの艦隊にな」
包帯「それでよく、生きてるね」
男「何のことだ?」
包帯「白髪さんが亡くなってから、
船長、ずっと無理してるみたいだから」
男「……無理など」
包帯「してるでしょ。
いいんだよ、白髪さんの代わり、しなくたってさ」
男「……」
包帯「らしくないんじゃないかい?」
男「……少し。昔の話になる」
包帯「昔の話?」
男「十年ほど前に、俺は海賊に襲われたんだ
今ではひとつのおとぎ話にさえなっている、
黒ひげの艦隊にな」
包帯「それでよく、生きてるね」
651: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:53:20.01 ID:PoO4m/tco
男「重傷を負わされたが、
幸い人のいる場所に漂着できてな。
そこの貴族に救われて、良くしてもらった」
包帯「それで、めでたしめでたしとは、
おわらないのかい?」
男「……目の前で家族を殺されて、決めたんだ。
黒ひげを殺すために全てを捨てると。
命も、時間も、全て」
包帯「それで、騎士団にはいったのかい?」
男「そういう事だ。
帝国の私掠船艦隊を預かる黒ひげを相手に、
堂々と敵対し、倒す事ができる組織は多くなかった。
そして組織でなければ狙う事すらできなかった」
包帯「でも、黒ひげが死んだのは」
男「俺が騎士団に入って、しばらくしてからだな。
その死の報が流れる少し前に、
俺と白髪はひとつの契約をして、騎士団を離れた」
幸い人のいる場所に漂着できてな。
そこの貴族に救われて、良くしてもらった」
包帯「それで、めでたしめでたしとは、
おわらないのかい?」
男「……目の前で家族を殺されて、決めたんだ。
黒ひげを殺すために全てを捨てると。
命も、時間も、全て」
包帯「それで、騎士団にはいったのかい?」
男「そういう事だ。
帝国の私掠船艦隊を預かる黒ひげを相手に、
堂々と敵対し、倒す事ができる組織は多くなかった。
そして組織でなければ狙う事すらできなかった」
包帯「でも、黒ひげが死んだのは」
男「俺が騎士団に入って、しばらくしてからだな。
その死の報が流れる少し前に、
俺と白髪はひとつの契約をして、騎士団を離れた」
652: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:53:49.62 ID:PoO4m/tco
包帯「でも、黒ひげに復讐できるのは、
騎士団くらいしかないよね」
男「確かに、純粋な戦力としては騎士団も悪くない。
だが、性質の問題がな……」
包帯「っていうと?」
男「元は純粋な信仰から生まれた騎士団として、
異教……という事になっている帝国と、
理念の面で敵対していた。
表面上では、今もそうだ。
連中は『戦争の家の平定』。
俺達は『預言者を僭称する無礼な相手への武力抗議』。
理由を挙げようと思えば、いくらでもある」
包帯「含むねぇ」
男「きっかけはおそらく、西インド航路の発見だ。
例の黄金大陸が発見されて以来、
地中海以上の『金づる』を手に入れて、
貴族の連中は皮算用に必死になっている」
包帯「なるほど。
地中海は必要な輸送路ではあっても、
そこを守る騎士団の立場が悪化する事は避けられない。
だから弱体化した?」
騎士団くらいしかないよね」
男「確かに、純粋な戦力としては騎士団も悪くない。
だが、性質の問題がな……」
包帯「っていうと?」
男「元は純粋な信仰から生まれた騎士団として、
異教……という事になっている帝国と、
理念の面で敵対していた。
表面上では、今もそうだ。
連中は『戦争の家の平定』。
俺達は『預言者を僭称する無礼な相手への武力抗議』。
理由を挙げようと思えば、いくらでもある」
包帯「含むねぇ」
男「きっかけはおそらく、西インド航路の発見だ。
例の黄金大陸が発見されて以来、
地中海以上の『金づる』を手に入れて、
貴族の連中は皮算用に必死になっている」
包帯「なるほど。
地中海は必要な輸送路ではあっても、
そこを守る騎士団の立場が悪化する事は避けられない。
だから弱体化した?」
653: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:55:08.56 ID:PoO4m/tco
男「さらにルターの影響もある。宗教改革だな」
包帯「騎士団が拠点にしているマータ島が、
神聖リオーマの封領ってことと関係している?
たしか、一番激しくやりあってるよね?」
男「確かにその影響もあるだろう。
騎士団は八つの軍団で構成されていて、
そのウチひとつは神聖リオーマの人間によって、
構成されているんだが……」
包帯「もしかして内部分裂とか?」
男「そこまでではない。
だが、家族が改宗してややこしくなった連中は、
少なくなかったな」
包帯「難しいものだねぇ」
男「騎士団にとっては、それ以上に難しい状況だ。
各国の庇護が薄れた影響から実質的な戦力が低下し、
寄付金が減って慢性的な金欠になっていた。
そこから腐敗が広がったな」
包帯「だから、いまの騎士は海賊同然なんだね」
包帯「騎士団が拠点にしているマータ島が、
神聖リオーマの封領ってことと関係している?
たしか、一番激しくやりあってるよね?」
男「確かにその影響もあるだろう。
騎士団は八つの軍団で構成されていて、
そのウチひとつは神聖リオーマの人間によって、
構成されているんだが……」
包帯「もしかして内部分裂とか?」
男「そこまでではない。
だが、家族が改宗してややこしくなった連中は、
少なくなかったな」
包帯「難しいものだねぇ」
男「騎士団にとっては、それ以上に難しい状況だ。
各国の庇護が薄れた影響から実質的な戦力が低下し、
寄付金が減って慢性的な金欠になっていた。
そこから腐敗が広がったな」
包帯「だから、いまの騎士は海賊同然なんだね」
654: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:55:36.37 ID:PoO4m/tco
男「騎士は強い相手に挑む。
海賊は弱い相手を襲う。
黒ひげなんて化け物退治を行う力は、
当時の騎士団には既になかったんだ。
襲ってくるなら話は別だが、
黒ひげは実に狡猾だからな、その期待は持てなかった」
包帯「だから騎士団を離れた、と。
船倉の『彼』と出会ったから出奔したって聞いたけど」
男「その影響もある。
さっき話した『契約』だが、
白髪は、俺の復讐を手伝う。
その代わりに、復讐を遂げた後には、
白髪や、アイツの居場所を作るのを手伝うというのが、
俺達の交わした契約だった」
包帯「居場所、ね」
男「幸せそうに故郷を語っていたアイツにとって、
その居場所を追われた経験は、
拭いがたいものだったんだろうな。
その結果としてこの船の母体ができたわけだが、
しばらくして黒ひげの処刑が行われた」
包帯「うわ……」
海賊は弱い相手を襲う。
黒ひげなんて化け物退治を行う力は、
当時の騎士団には既になかったんだ。
襲ってくるなら話は別だが、
黒ひげは実に狡猾だからな、その期待は持てなかった」
包帯「だから騎士団を離れた、と。
船倉の『彼』と出会ったから出奔したって聞いたけど」
男「その影響もある。
さっき話した『契約』だが、
白髪は、俺の復讐を手伝う。
その代わりに、復讐を遂げた後には、
白髪や、アイツの居場所を作るのを手伝うというのが、
俺達の交わした契約だった」
包帯「居場所、ね」
男「幸せそうに故郷を語っていたアイツにとって、
その居場所を追われた経験は、
拭いがたいものだったんだろうな。
その結果としてこの船の母体ができたわけだが、
しばらくして黒ひげの処刑が行われた」
包帯「うわ……」
655: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:56:05.29 ID:PoO4m/tco
男「結局、復讐は永遠に果たされなくなった」
包帯「……」
男「だが、討つ相手が居なくなったなら手間が省けたと、
白髪は容赦なく契約の遂行を求めてきたんだ。
この船と船員を『居場所』に届けろと」
包帯「……白髪さんらしいね」
男「ふん、はた迷惑な男だ。
人にはそんな要求をしながら自分は、故郷で……」
包帯「よかったと思うよ」
男「なにがだ?」
包帯「誰にとっても、これが」
男「そう思うのか」
包帯「うん。いろいろと、ね。
ただ、無理はしなくていいと思うんだ。
白髪さんのお願いを聞きたいって気持ちは分かるけど、
このままじゃ、船長がもたないと思うよ?」
ざざーん
包帯「……」
男「だが、討つ相手が居なくなったなら手間が省けたと、
白髪は容赦なく契約の遂行を求めてきたんだ。
この船と船員を『居場所』に届けろと」
包帯「……白髪さんらしいね」
男「ふん、はた迷惑な男だ。
人にはそんな要求をしながら自分は、故郷で……」
包帯「よかったと思うよ」
男「なにがだ?」
包帯「誰にとっても、これが」
男「そう思うのか」
包帯「うん。いろいろと、ね。
ただ、無理はしなくていいと思うんだ。
白髪さんのお願いを聞きたいって気持ちは分かるけど、
このままじゃ、船長がもたないと思うよ?」
ざざーん
656: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:56:43.63 ID:PoO4m/tco
男「……いや、大丈夫だ」うと、
包帯「でも」
男「あいつの、守りたいと願ったものだ。
俺も、この船は、嫌いではない」うとうと
包帯「船長……」
男「我の強い連中が集まった、
どうしようもない、ちぐはぐな船だ、が、
あいつが、最後まで、大切にしていたものだ。
それを守るのは、悪い気分、では、ない」
包帯「うん」
男「……」
包帯「ん? ……おーい」
男 すー、すー
包帯「うわ、酔っ払いさんめ。何が大丈夫なんだか」
ざざーん
包帯「……」
包帯「でも」
男「あいつの、守りたいと願ったものだ。
俺も、この船は、嫌いではない」うとうと
包帯「船長……」
男「我の強い連中が集まった、
どうしようもない、ちぐはぐな船だ、が、
あいつが、最後まで、大切にしていたものだ。
それを守るのは、悪い気分、では、ない」
包帯「うん」
男「……」
包帯「ん? ……おーい」
男 すー、すー
包帯「うわ、酔っ払いさんめ。何が大丈夫なんだか」
ざざーん
包帯「……」
657: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 00:59:49.92 ID:PoO4m/tco
ざざーん
包帯「居場所を守る、か。
確かに、守ってくれるのは嬉しいけど。
今の船長の考えとかって、
たぶん白髪さんの言いたかった事は違うと
思うんだよねー」
包帯 くいっ
包帯「ま、何か言ってどうなるものでもないけどさ」
包帯 ふぅ
包帯「それにしても強いなー、白髪さんって、
よくこんなキツいお酒が飲めるもんだよ……」
ざざーん
包帯「とりあえず、ココにいたら風邪ひかせちゃうし、
連れてくしかないよね……
面倒だなぁ。
愚痴らせるために飲ませたとはいえ、
まさかちょっと舐めた程度で沈むなんて思わないし」
658: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:00:16.15 ID:PoO4m/tco
包帯「よっこい、せ」
包帯「わ、ととと……」ぐらっ
すっ
狼「……無理でしょ、あんた」そっ
包帯「おおっと、びっくりしたなぁ、もう」
狼「白々しいんじゃないの?
さっき、見張りを交代したばっかりで」
包帯「いやまあ、聞いているのは知ってたけどね。
マストを下りてまで、来るとは思わなくて」
狼「……酔っ払いに酔っ払いを任せると、
大変な事になるでしょ」
包帯「ふふ、そうかもね」
狼「そこでなんで、アタシを見るのよ」
包帯「特にそんなつもりはないけど? ふふ」
包帯「わ、ととと……」ぐらっ
すっ
狼「……無理でしょ、あんた」そっ
包帯「おおっと、びっくりしたなぁ、もう」
狼「白々しいんじゃないの?
さっき、見張りを交代したばっかりで」
包帯「いやまあ、聞いているのは知ってたけどね。
マストを下りてまで、来るとは思わなくて」
狼「……酔っ払いに酔っ払いを任せると、
大変な事になるでしょ」
包帯「ふふ、そうかもね」
狼「そこでなんで、アタシを見るのよ」
包帯「特にそんなつもりはないけど? ふふ」
659: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:02:27.86 ID:PoO4m/tco
狼「……あんたのそういうとこ、嫌い」
包帯「僕は好きだよ、狼くんのそういう所」
狼「そういう所はもっと嫌い」
包帯「ごめんね?」
狼「……そういう所も嫌い」
包帯「そうとう嫌われてるみたいだね」
狼「……知らない。男はアタシが部屋に背負っていく。
包帯は自分で戻れるでしょ」
包帯「うん、お気遣いありがと」
狼「……おやすみ。お疲れ」
包帯「うん、おやすみ」にへらっ
とことこ
包帯「……うん。
あの狼くんが可愛くみえるなんて、
僕もそうとう酔ってるかな?
やれやれ……」
包帯「僕は好きだよ、狼くんのそういう所」
狼「そういう所はもっと嫌い」
包帯「ごめんね?」
狼「……そういう所も嫌い」
包帯「そうとう嫌われてるみたいだね」
狼「……知らない。男はアタシが部屋に背負っていく。
包帯は自分で戻れるでしょ」
包帯「うん、お気遣いありがと」
狼「……おやすみ。お疲れ」
包帯「うん、おやすみ」にへらっ
とことこ
包帯「……うん。
あの狼くんが可愛くみえるなんて、
僕もそうとう酔ってるかな?
やれやれ……」
660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:03:31.79 ID:PoO4m/tco
------------------------------------------------
未明 マータ騎士団ディオイツ分隊三番艦
こんこんこん
青年「入れ」
がちゃ
眼帯「失礼します。
まもなくビリンディジ港へと到着しますよ」
青年「そうか。連絡ご苦労」
眼帯「寄港後、本艦は三日間の準待機を行い、
物資の積み込み後、マータ島へ帰還。
そのような予定でよろしいですね?」
青年「それでいい。四日目の朝に出港だ。
それまで船を頼む」
眼帯「それまでお出かけ、との事ですが」
青年「問題があるか?」
眼帯「いえ、必要な息抜きと考えますよ。
アイゼンリッター(鋼鉄の騎士)どの」
青年「……からかうな」
未明 マータ騎士団ディオイツ分隊三番艦
こんこんこん
青年「入れ」
がちゃ
眼帯「失礼します。
まもなくビリンディジ港へと到着しますよ」
青年「そうか。連絡ご苦労」
眼帯「寄港後、本艦は三日間の準待機を行い、
物資の積み込み後、マータ島へ帰還。
そのような予定でよろしいですね?」
青年「それでいい。四日目の朝に出港だ。
それまで船を頼む」
眼帯「それまでお出かけ、との事ですが」
青年「問題があるか?」
眼帯「いえ、必要な息抜きと考えますよ。
アイゼンリッター(鋼鉄の騎士)どの」
青年「……からかうな」
661: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:05:16.79 ID:PoO4m/tco
眼帯「その意思はまさに鋼の如く。
立ちふさがる敵はただその刃を待つばかり。
ドイツ分隊が誇る鉄壁の騎士。
なんて、見習達が謳ってたんですが、
いや、いい詩じゃないですか」
青年「……」じろっ
眼帯「あ、その、すみません」
青年「ふぅ、見習いの戯言にお前が踊らされてどうする」
眼帯「あはは、まあ、母がカスティーリャの出身なんで、
まあラテンの血と思って諦めてください」
青年「何でも血のせいにするな」
眼帯「何でも神のせいにする帝国の連中よりは、
マシじゃありませんかね?」
青年「程度問題にするな。
我がディオイツ分隊にそんな軟弱な人間はいらん。
それとも、今からカスティーリャ分隊に移籍するか?」
眼帯「いえ、気を引き締めます、副分団長」くいっ
青年「……」
立ちふさがる敵はただその刃を待つばかり。
ドイツ分隊が誇る鉄壁の騎士。
なんて、見習達が謳ってたんですが、
いや、いい詩じゃないですか」
青年「……」じろっ
眼帯「あ、その、すみません」
青年「ふぅ、見習いの戯言にお前が踊らされてどうする」
眼帯「あはは、まあ、母がカスティーリャの出身なんで、
まあラテンの血と思って諦めてください」
青年「何でも血のせいにするな」
眼帯「何でも神のせいにする帝国の連中よりは、
マシじゃありませんかね?」
青年「程度問題にするな。
我がディオイツ分隊にそんな軟弱な人間はいらん。
それとも、今からカスティーリャ分隊に移籍するか?」
眼帯「いえ、気を引き締めます、副分団長」くいっ
青年「……」
662: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:09:58.61 ID:PoO4m/tco
眼帯「ごほん。
しかし、どこに向かわれるんですか?
いつもは準待機の間もずっと詰めて、
『働いている船員が居るならば休むワケにはいかん』
なんて言ってらっしゃるのに」
青年「これも一つの任務だ」
眼帯「……こないだの海賊船に関係あります?」
青年「余計な詮索は無用だ」
眼帯「はあ、すみません。
なにぶん副船長なんて重責は初めてなんで、
どうにもこうにも不安が……
なので、緊急の連絡先くらいは知りたいもんでして」
青年「そうか、そういう事情ならば仕方無い。
南南東にて、俺はその海賊と会うことになっている」
眼帯「ふむ、珍しいですね。
普段は海賊なんて、捕まえるか殺すかなのに」
青年「俺を暴力主義者のように言ってくれるな。
投降に応じない相手が多すぎるだけだ」
しかし、どこに向かわれるんですか?
いつもは準待機の間もずっと詰めて、
『働いている船員が居るならば休むワケにはいかん』
なんて言ってらっしゃるのに」
青年「これも一つの任務だ」
眼帯「……こないだの海賊船に関係あります?」
青年「余計な詮索は無用だ」
眼帯「はあ、すみません。
なにぶん副船長なんて重責は初めてなんで、
どうにもこうにも不安が……
なので、緊急の連絡先くらいは知りたいもんでして」
青年「そうか、そういう事情ならば仕方無い。
南南東にて、俺はその海賊と会うことになっている」
眼帯「ふむ、珍しいですね。
普段は海賊なんて、捕まえるか殺すかなのに」
青年「俺を暴力主義者のように言ってくれるな。
投降に応じない相手が多すぎるだけだ」
663: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:11:34.16 ID:PoO4m/tco
眼帯「失礼しました。
しかし、それなら相手は海賊でしょう。
良ければ自分もお供しますよ、
海賊というのは、相手にするとつけあがり、
だまし討ちや手練手管はあたりまえです」
青年「問題ない。
今は海賊などに身を落としているが、
元は俺の知り合いの、騎士だった方だ」
眼帯「騎士団から逃げて、海賊に?」
青年「逃げたというよりも、
追い立てられた、だろうな」
眼帯「何かしたんですか?」
青年「……いや、ここから先は個人の事情だ。
明かす必要がある情報としては、
彼らは恥じるべき行いをしたワケではないという、
その事実だけで十分だろう」
眼帯「よくわかりませんが、
危険な相手じゃないと」
青年「もちろんだ」
しかし、それなら相手は海賊でしょう。
良ければ自分もお供しますよ、
海賊というのは、相手にするとつけあがり、
だまし討ちや手練手管はあたりまえです」
青年「問題ない。
今は海賊などに身を落としているが、
元は俺の知り合いの、騎士だった方だ」
眼帯「騎士団から逃げて、海賊に?」
青年「逃げたというよりも、
追い立てられた、だろうな」
眼帯「何かしたんですか?」
青年「……いや、ここから先は個人の事情だ。
明かす必要がある情報としては、
彼らは恥じるべき行いをしたワケではないという、
その事実だけで十分だろう」
眼帯「よくわかりませんが、
危険な相手じゃないと」
青年「もちろんだ」
664: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:12:12.99 ID:PoO4m/tco
眼帯「しかし、それならこの情報は伏せときましょう。
船長が海賊と会っていたなんて事が知れちゃ、
隊の連中はいぶかしがります」
青年「その通りだ。他言無用に頼む」
眼帯「はい、了解です」
青年「他に問題はあるか」
眼帯「はい、いいえ。ありません」
青年「では、これよりこの艦の全権を委任する。
問題が発生した場合、お前の判断で事にあたれ」
眼帯「はい。では失礼します」
青年「うむ」
ぱたん
とことこ
眼帯「ふぅ、緊張した」
騎士A「よぉ、眼帯」
騎士B「おつかれさまっす。
船長の機嫌はどうだったっすか?」
船長が海賊と会っていたなんて事が知れちゃ、
隊の連中はいぶかしがります」
青年「その通りだ。他言無用に頼む」
眼帯「はい、了解です」
青年「他に問題はあるか」
眼帯「はい、いいえ。ありません」
青年「では、これよりこの艦の全権を委任する。
問題が発生した場合、お前の判断で事にあたれ」
眼帯「はい。では失礼します」
青年「うむ」
ぱたん
とことこ
眼帯「ふぅ、緊張した」
騎士A「よぉ、眼帯」
騎士B「おつかれさまっす。
船長の機嫌はどうだったっすか?」
665: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:21:43.78 ID:PoO4m/tco
眼帯「どうもこうも、
相変わらずの鉄壁で鉄面皮ですよ。
にこりともしないので、背中の冷や汗がとまらない。
さすがアイゼン様」
騎士A「あの人も、もう少し人間的によ、
こう『できて』いりゃ、
今頃は分団長だって夢じゃねぇのになぁ」
騎士B「分団長っ!?
いやぁ、あの人俺達とそう変わらない年齢でしょ。
そりゃぁねぇっすよー」
眼帯「功績としては十分ですよ。
あの銀目も、黒砡王も捕まえて」
騎士A「あれ、たしか銀目は分団長じゃなかったか?」
眼帯「いちおう、名目は」
騎士B「まあ、自分がやったって、
睨まれてちゃいえねぇっすよね」
眼帯「海賊にしても、海軍にしても、
基本的に、船に実際にのるのは三年程度。
船がそれだけ長生きしにくい場所ですからね」
相変わらずの鉄壁で鉄面皮ですよ。
にこりともしないので、背中の冷や汗がとまらない。
さすがアイゼン様」
騎士A「あの人も、もう少し人間的によ、
こう『できて』いりゃ、
今頃は分団長だって夢じゃねぇのになぁ」
騎士B「分団長っ!?
いやぁ、あの人俺達とそう変わらない年齢でしょ。
そりゃぁねぇっすよー」
眼帯「功績としては十分ですよ。
あの銀目も、黒砡王も捕まえて」
騎士A「あれ、たしか銀目は分団長じゃなかったか?」
眼帯「いちおう、名目は」
騎士B「まあ、自分がやったって、
睨まれてちゃいえねぇっすよね」
眼帯「海賊にしても、海軍にしても、
基本的に、船に実際にのるのは三年程度。
船がそれだけ長生きしにくい場所ですからね」
666: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:28:57.01 ID:PoO4m/tco
船員A「それが、今年で船に乗って四年目。
船長に抜擢されて三年か」
船員B[しかもその激務の間に訓練サボらず、
今年で騎士団剣術大会の連続優勝まで……」
眼帯「これで、もうちょっと聞き分けが良ければ」
船員A「団長会議のたびに、
あの人一人で毎度のように大騒ぎってのは、
もう、なにか、一つの名物だよな」
船員B「もったいないお人っすよ」
眼帯「……ま、でも、」
船員A「なんだ、なにかあったのか?」
眼帯「あ、いや、なんでもないですよ、なんでも」
船員A「ホントか? ウソだろー?
ほれ、なんなんだよ」つんつん
眼帯「あはは、やめてくださいよー」
船員B「いや、途中まで言われたら気になりますって」
船長に抜擢されて三年か」
船員B[しかもその激務の間に訓練サボらず、
今年で騎士団剣術大会の連続優勝まで……」
眼帯「これで、もうちょっと聞き分けが良ければ」
船員A「団長会議のたびに、
あの人一人で毎度のように大騒ぎってのは、
もう、なにか、一つの名物だよな」
船員B「もったいないお人っすよ」
眼帯「……ま、でも、」
船員A「なんだ、なにかあったのか?」
眼帯「あ、いや、なんでもないですよ、なんでも」
船員A「ホントか? ウソだろー?
ほれ、なんなんだよ」つんつん
眼帯「あはは、やめてくださいよー」
船員B「いや、途中まで言われたら気になりますって」
667: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/07/22(金) 01:30:16.17 ID:PoO4m/tco
眼帯「いやー、しかし、
口止めされてますからね」
船員A「あやしいなぁ、ほれ、いわねぇと今夜の飯、
気がつけばなくなってるぜー?」
眼帯「がっ、今日の給仕だからって!
職権乱用はないですよ!」
船員A「だったら言ってラクになっちまえ。
大丈夫だ、ディオイツ分隊は口と結束の固さがウリだ」
眼帯「なんだかなぁ。
コレがしられたらラッキーじゃないんで、
絶対に、秘密ですよ?」
船員B「大丈夫っすよー」にへらー
眼帯「実はですね、次の港でどうやら、
船長が海賊と……」 ぼそぼそ
口止めされてますからね」
船員A「あやしいなぁ、ほれ、いわねぇと今夜の飯、
気がつけばなくなってるぜー?」
眼帯「がっ、今日の給仕だからって!
職権乱用はないですよ!」
船員A「だったら言ってラクになっちまえ。
大丈夫だ、ディオイツ分隊は口と結束の固さがウリだ」
眼帯「なんだかなぁ。
コレがしられたらラッキーじゃないんで、
絶対に、秘密ですよ?」
船員B「大丈夫っすよー」にへらー
眼帯「実はですね、次の港でどうやら、
船長が海賊と……」 ぼそぼそ
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