1: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:13:50 ID:zm3

引用元: 【デレマスSS】芽衣子「やっちゃった…」乃々「あー…」 




2: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:14:39 ID:zm3

並木芽衣子「気に入ってたんだけどなー。この湯呑み。
つい手が滑っちゃった。つるっと」

森久保乃々「……こっぱみじんこ」

芽衣子「なんか手作りっぽいというか、味があったんだよね。これ。
ゴツゴツ感といい、年季が入ってる感じで」

乃々「…………」

芽衣子「Pが帰ってきたらちゃんと謝らないとなー。
うーん。でも次からどれ使おう…」

乃々「…………」

芽衣子「お茶飲む時の湯呑みやカップって結構重要だよね。
口付けた感じとか、手触りとか……ん?」

乃々「…………」

3: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:15:22 ID:zm3

芽衣子「どうしたの、乃々ちゃん。お饅頭まだ残ってるよ……って、よく見たら顔真っ青!」

乃々「……い、いえ。大したことじゃないんですけど……」

芽衣子「うん?」

乃々「その湯呑み……。
いえ……な、何でもないんですけど……」

芽衣子「途中でやめないで!? すっごい震えてるし、目が泳いでるし、絶対何かあるよね?」

乃々「な、ななななんのことでしょう?」

芽衣子「何!? なんなの? ちょっと怖い!」

乃々「いえいえ……もりくぼは何も知らないんですけど……。
Pさんが子どもの頃にお母さんに作ってもらった大切な……この世に1つしかない湯呑みだったなんてこと、全然知らないんですけど……」

芽衣子「…………」

乃々「…………」

芽衣子「…………」

乃々「…………」

芽衣子「やっちまった!」

4: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:16:15 ID:zm3

乃々「芽衣子さん……夜寝る場所に困ったらいつでも呼んで欲しいんですけど……毛布とか新聞紙とか……こっそり持っていくので……」

芽衣子「私、家から追い出される感じだっ!」

乃々「色々ありましたが……今まで楽しかったです。
もりくぼ……お姉さんができたみたいで……本当に……ほ、本当に……嬉しくて……」

芽衣子「泣かないでっ!
まずい……まずいよまずいよ!
乃々ちゃんの反応見てたら事態の深刻さがひしひしと……!」

乃々「あ……あの……さすがにないとは思いますが……もしPさんが拳を振り上げたら……全力で逃げてくださいね。
もりくぼ、でぃーぶいは……されるのはともかく、見るのはちょっと……」

芽衣子「怖い追い討ちやめてっ。
ていうか、されるのも拒もう! 全力で!」

乃々「むぅーりぃー……」

芽衣子「何でっ!?」

5: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:16:53 ID:zm3

※ ※ ※ ※ ※


芽衣子「でもさー。私、いつもこれ使ってるのにPさん何も言わなかったんだよ?」

乃々「……まぁ、使って減るものでもありませんし……。
ていうか、そうやって接着剤片手に涙目で破片をいじってると……なんか賽の河原っぽいですね……」

芽衣子「比喩が容赦ないよ乃々ちゃん……」

乃々「あと、芳乃さんに頼ろうと思って、電話してみましたけど、繋がりませんね……」

芽衣子「……いくら芳乃ちゃんでも割れた陶器の復元はできないんじゃないかなー」

乃々「そうですか……? でも……こう、パンッと手を合わせて、その後光り輝く掌でぷわぁーっと……」

芽衣子「実写映画化しそう」

6: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:17:55 ID:zm3

乃々「……ちなみに晶葉ちゃんにも……電話を掛けたのですが……繋がりません。
……もしかしてもりくぼ……ハブられくぼ?」

芽衣子「ないない。それはない。
あと晶葉ちゃんもこの前、Pさんのボールペン分解して遊んでたら戻せなくなったってベソかいてたから、万能復元機みたいのは持ってないと思うなー」

乃々「あぁ、なるほど……。それなら仕方ないですね……。
……あっ」

芽衣子「どうしたの?」

乃々「……復元進捗2割くらいのところで申し訳ないんですけど、外からPさんの足音がきこえてきました。……あと2分位で着きます」

芽衣子「足音って……乃々ちゃん犬かな?」

乃々「あと2分で復元は……」

芽衣子「……むぅーりぃー」

7: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:18:58 ID:zm3

乃々「……わかりました。もりくぼが玄関で足止めします。
その間に逃げるなり、武装するなり、復元完了するなり……」

芽衣子「どれもむぅーりぃー!」

乃々「……10分は稼げます。せめてその間に心の準備くらいは……」

芽衣子「うううぅぅ……」

乃々「……ではっ」

チャッチャッチャッ

芽衣子「足音までウッキウキな子犬だ!」


P「うい、ただいまー」

乃々「芽衣子さん!ケーキですよ。Pさんがホールのケーキを……!」

芽衣子「1分っ!」

P「へ?」

乃々「あ」

芽衣子「10分は時間稼ぐって言ったのにほぼ素通り! ザル! 最短! 直通だよっ!」

乃々「Pさん出迎えたら、なんかテンションあがって足止めするの忘れてました……」

芽衣子「完全にワンコっ!」

8: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:19:34 ID:zm3

P「何の話よ。……つーか、さ」

乃々「はい」

芽衣子「…………」

P「なんで芽衣子はテーブルの上でうつ伏せなん?」

乃々「…………」

芽衣子「…………」

P「…………」

芽衣子「……お」

P「お?」

芽衣子「…………」

P「…………」

芽衣子「お祈り……夕食の前の……お祈りを」

乃々「いつものやつですね」

P「マジでか」

芽衣子「…………」

乃々「…………」

P「…………」

芽衣子「な、ナウなヤングに」

乃々「ばかうけのやつなんですけど」

P「マジでか」

9: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:20:20 ID:zm3


※ ※ ※ ※ ※

かくかくしかじか。



芽衣子「…………」

P「あー。なるほどなー。それで土下座か」

芽衣子「…………」

P「………うん。怒ってないからもう顔あげよう?」

芽衣子「で、でも……Pの大切な……」

P「あーうん。お気に入りだったけどな。
割られて怒るくらいなら芽衣子が使ってる時に文句言うって」

芽衣子「…………」

P「…………」

10: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:21:09 ID:zm3

芽衣子「…………」

P「……むしろ俺は嬉しかったくらいなんだぞ」

芽衣子「……えっ?」

P「そりゃそうだろ。いくら俺に思い入れがあったとしても、ぱっと見、ただの地味で無骨な湯呑みだ。
普段ろくに使うこともなかったそれを、大切なアイドルが気に入って、嬉しそうに使ってくれてる。
……そんなの嬉しいに決まってる」

芽衣子「……!」

P「それに……月並みな物言いで申し訳ないけどな。
形あるものはいつか壊れるんだ。
だから謝ってくれたらそれでいい。もう気にすんな。
そうしてくれた方が……やっぱ嬉しいよ」

芽衣子「………P。でも、それじゃあ私の気が……。
せめて何かお詫び……お詫びを……!」

11: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:21:55 ID:zm3
P「うん? お詫び……うーん。お詫びか……。
……ああ、分かった。何か考えとく。芽衣子に詫びで何かしてもらおう」

芽衣子「……うん!」

P「だからほら、頭を上げ…」

乃々「ダメですっ!」タックル

P「ぐはっ!?」

乃々「ダメです! Pさん! アイドルに暴力はダメなんですけど……!
殴るならもりくぼをっ!」

P「ゲホッ。殴らねーよ!
ただ芽衣子がテーブルで土下座しっぱなしだったから頭撫でようとしただけだよ!」

乃々「さぁ! もりくぼを強かに! グーで!」

P「殴らねぇ! お前殴られたいだけだろう!
頭をおしつけーるーなー!」

芽衣子「…………」

P「…………」

芽衣子「…………」

P「…………」

芽衣子「…………」

P「……で、なんで芽衣子は芽衣子で、土下座のまま擦り寄ってきてるん?」

芽衣子「い、いや……頭……撫でてくれるって……」

P「…………」

乃々「…………」

芽衣子「…………」

12: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:22:39 ID:zm3

※ ※ ※ ※ ※

小一時間後。



P「そんな訳でもりくぼ、誕生日おめでとうっ!」

一同『おめでとうっ!』

パンパパパン!

乃々「あうあうあう……」

芽衣子「あー……なるほど。誕生日のケーキだったかー」

P「去年よりもちょっと多めに参加者30名超。そろそろ家の底が抜けそうだぜ!」

輝子「……だぜ! フヒ」

まゆ「それは困りますねぇ」

P「なんでまゆが困るんだよ……」

小梅「何か……床下に凄く大きな思念が……こびり付いてる」

美玲「つまり」

P「みなまで言うな」

まゆ「……ケーキはまゆが切り分けますねぇ」

輝子「まゆさん……包丁似合う」

P「せやな」

乃々「絵になりますね」

P「せやな」

まゆ「うふふ……」

13: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:23:46 ID:zm3

P「あ。そういえば」

まゆ「?」

P「芽衣子~、さっきのお詫びだけど。
思いついたぞ」

芽衣子「えっ。もう? な、何かな!」

P「付き合ってくれないか」

芽衣子「…………」

芽衣子「へあっ!? つ、つつきあっ!?」

まゆ「…………」

乃々「…………」

P「今度俺が仕事で行く予定の場所なー。
ちょっと調べたら、そこで大きな陶器市が催されるらしいんだわ。
で、ちょうどいいから、そこで新しい湯呑みや茶碗を買おうかなって思ってさ。
一緒について来ないか?
俺の分の食器、芽衣子がいくつか選んでくれよ」

芽衣子「あ、あー! あー! なるほど。そっちね。そっちの!」

P「おう?」

まゆ「………うふ」

乃々「…………」

輝子「ま……まゆさんさすがだな……」

美玲「手元も見ずに。切り慣れてるなー」

芽衣子「うん。いいよっ。
旅のお誘いならいつでもオッケー! 知ってる所なら案内もするよっ!」

14: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:24:43 ID:zm3

P「おう。助かるよ。観光地なんだけど、道が結構面倒くさそうでさ」

芽衣子「うんうん。車ならナビも任せて!」

P「前々から俺と旅行に行きたいって言ってたからな。
完全にプライベートとはいかないが、そこはまぁ、我慢してくれ」

芽衣子「う、うん。言ったけど……。
みんなの前で……しかも、まゆちゃんが包丁持ってる時にその話はナシにして欲しいなー、みたいな?」

まゆ「うふふ……」

芽衣子「まゆちゃん、さっきからひたすらコッチを見据えたままケーキを切り分け続けてるし……」

乃々「…………!」

芽衣子「乃々ちゃんは乃々ちゃんで、なぜか悦に入ってるし!」

乃々「いえいえ……この度は……良きもの(NTR)を……ごちそうさまでした」

芽衣子「意味がわからない!」

P「あ。そうだ。部屋はツインがいいんだっけ? それともダブル?」

芽衣子「ワザとだっ! これ絶対ワザとだっ!
P、地味に怒ってるよね!?」

P「怒ってないヨー」

芽衣子「嘘だっ!!」

まゆ「うふ」

乃々「………」

一同「…………」

輝子「フヒ……平和……だな」

美玲「……そうか?」

15: 名無しさん@おーぷん 2018/08/27(月)09:25:30 ID:zm3


※ ※ ※ ※ ※



パン! バチチッ! カチャチャチャチャ。



イヴ「……うーん。これで……直ったかしら~?」

ブリッツェン「ブモ」

イヴ「この季節に力を使うのはちょっとツラいけどね~」

ブリッツェン「ブモ」

イヴ「最年少国家サンタクロースの手にかかれば陶器の再生くらいお茶の子さいさいですよ~」

ブリッツェン「ブモ」

イヴ「なるほど、湯呑みだけに! お茶の子!
ブリッツェンお上手です~」

ブリッツェン「ブモ」

イヴ「……ああ見えてPさん凹んでましたからね~」

ブリッツェン「ブモ」

イヴ「……こっそり枕元に置いておきましょう~」

ブリッツェン「ブモ♪」


おしまい。