1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/06(金) 09:47:45.69 ID:V5o+TY2/o
なんやかんやであれこれあってワルプルギスの夜を倒した私達。
マミは生き残り、さやかは魔法少女になりはしたがどろどろ人魚になる事も無く生き残り、杏子も勢いで心中する事無く、みんなが無事に生き残った。
まどかもなんとか魔法少女にならずに済み、時々インキュベーターからのキャッチセールスみたいな勧誘は続いているけど、その気はすっかり失せている。
マミも、魔法少女が魔女になる事実は何とか乗り越えた。
まだ、その事実に時々怯えることがあるけど、それでもみんなで無理心中しようなんて考えることは無くなっている。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1333673265(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
マミは生き残り、さやかは魔法少女になりはしたがどろどろ人魚になる事も無く生き残り、杏子も勢いで心中する事無く、みんなが無事に生き残った。
まどかもなんとか魔法少女にならずに済み、時々インキュベーターからのキャッチセールスみたいな勧誘は続いているけど、その気はすっかり失せている。
マミも、魔法少女が魔女になる事実は何とか乗り越えた。
まだ、その事実に時々怯えることがあるけど、それでもみんなで無理心中しようなんて考えることは無くなっている。
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引用元: ・ほむら「魔法少女の日常」
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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/06(金) 09:55:58.67 ID:V5o+TY2/o
そろそろ豆腐メンタルからところてんメンタルくらいには格上げね。
さやかも、あのバイオリン馬鹿とわかめの事はまだ完全にわだかまりが取れたわけではないけど、それなりに心情を整理できたらしい。
二人の仲をからかっては後で落ち込む、のサイクルを繰り返しつつ、少しずつ本当に吹っ切れ始めているらしい。
放っておけばいいのに、どうしてわざわざからかって自滅を繰り返すのかしら。
杏子は、マミに言われてしぶしぶ復学の準備を始めている。
さやかも、あのバイオリン馬鹿とわかめの事はまだ完全にわだかまりが取れたわけではないけど、それなりに心情を整理できたらしい。
二人の仲をからかっては後で落ち込む、のサイクルを繰り返しつつ、少しずつ本当に吹っ切れ始めているらしい。
放っておけばいいのに、どうしてわざわざからかって自滅を繰り返すのかしら。
杏子は、マミに言われてしぶしぶ復学の準備を始めている。
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/06(金) 10:08:44.82 ID:V5o+TY2/o
お膳立てはマミが用意してくれている。ほんと、世話好きね。
でも、とてもいい事だわ。
年齢が上がったら、知恵だけでは生きていけない。知識はどうしても必要だから。
…魔法少女が、いずれ魔女になる。
その事実は決して変わらない。
でも、とてもいい事だわ。
年齢が上がったら、知恵だけでは生きていけない。知識はどうしても必要だから。
…魔法少女が、いずれ魔女になる。
その事実は決して変わらない。
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/06(金) 23:42:55.56 ID:V5o+TY2/o
でも、今はその事実を、そのシステムを、許せはしないけど、仕方ないと思う。
だって、私は、そのシステムのお陰でこうして今、みんなと一緒に居られるのだから。
インキュベーターは許さないけど。
とりあえず、最大の脅威は去り、全員死亡のリスクがある程の危険は去った。
そして、みんなはそれなりに絆を深め、時々口げんか程度はしながらも仲良くなれている。
みんなは、ワルプルギスの夜の戦いの後、より強くなった。
だって、私は、そのシステムのお陰でこうして今、みんなと一緒に居られるのだから。
インキュベーターは許さないけど。
とりあえず、最大の脅威は去り、全員死亡のリスクがある程の危険は去った。
そして、みんなはそれなりに絆を深め、時々口げんか程度はしながらも仲良くなれている。
みんなは、ワルプルギスの夜の戦いの後、より強くなった。
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/06(金) 23:55:27.24 ID:V5o+TY2/o
心も、力も。
でも。
私は…。
弱くなった。
元々私には、魔法少女としての才能は、テストで言えば赤点ギリギリの水準の能力しかない。
今でも、思うことがある。
でも。
私は…。
弱くなった。
元々私には、魔法少女としての才能は、テストで言えば赤点ギリギリの水準の能力しかない。
今でも、思うことがある。
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 00:11:15.70 ID:e5tvZ+Q3o
他のみんなは何かしら直接攻撃できる武器を持っているのに、私はどうして防御一辺倒の能力しかないのだろう? と。
しかも、防御にしてもそれはマミのリボンが似たようなことを、更に上手く出来る。
あのリボンの性能は誰もが知っている。
攻守一体のそれのほうが、出来はいいに決まっている。
そして、一番平和的な性格であるまどかすら、魔法少女になったあの時は強力な弓矢を持っていた。
しかも、防御にしてもそれはマミのリボンが似たようなことを、更に上手く出来る。
あのリボンの性能は誰もが知っている。
攻守一体のそれのほうが、出来はいいに決まっている。
そして、一番平和的な性格であるまどかすら、魔法少女になったあの時は強力な弓矢を持っていた。
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 00:17:05.39 ID:e5tvZ+Q3o
なのに、この私にはナイフ一本生み出す力は無い。
時を止める力は、使える時はそれなりに便利ではあったけど、それでも単にトリッキーなだけで、それ以上のものでは無い。
事実、タネがばれればさほどの驚異ではないし。
しかも、今の私にはその力すら無い。
今の私に出来るのは、盾にものを無限に収納できる能力だけ。
この事実が、後ろ向きな自分の性格を表している。
時を止める力は、使える時はそれなりに便利ではあったけど、それでも単にトリッキーなだけで、それ以上のものでは無い。
事実、タネがばれればさほどの驚異ではないし。
しかも、今の私にはその力すら無い。
今の私に出来るのは、盾にものを無限に収納できる能力だけ。
この事実が、後ろ向きな自分の性格を表している。
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 00:23:07.00 ID:e5tvZ+Q3o
あの時、自分は心の底から願った。
願った筈。
なのに、どこかで受け身な、後ろ向きな考えを持っていたのだろうか。
だから、自分には前に進むための武器は持たされず、その場に留まって踞るしか出来ない盾が持たされたのだろうか。
本当に、気が滅入る。
願った筈。
なのに、どこかで受け身な、後ろ向きな考えを持っていたのだろうか。
だから、自分には前に進むための武器は持たされず、その場に留まって踞るしか出来ない盾が持たされたのだろうか。
本当に、気が滅入る。
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 09:29:45.43 ID:e5tvZ+Q3o
ワルプルギスの夜を撃破したあの日が最高潮、その日から、私の気分は日に日に下がっていった。
最高だったあの気分が、正に天から地へと堕ちていった。
ここ数日は、学校でもまどか達とろくに会話を交わしていない。
まどかやさやかに悪いと思っていても、だからこそ二人と会話をする気になれなかった。
二人に、こんな私を見られたくないと言うのもある。
最高だったあの気分が、正に天から地へと堕ちていった。
ここ数日は、学校でもまどか達とろくに会話を交わしていない。
まどかやさやかに悪いと思っていても、だからこそ二人と会話をする気になれなかった。
二人に、こんな私を見られたくないと言うのもある。
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 09:35:33.27 ID:e5tvZ+Q3o
きっと二人は勘がいいから、今の私の心根を察してしまう。
そして、気を遣わせてしまう。
やっとあの夜を乗り越えた二人に、そんな気分は味わせたくない。
二人は親友。
二人の間には、私の存在は不要だ。
そして、気を遣わせてしまう。
やっとあの夜を乗り越えた二人に、そんな気分は味わせたくない。
二人は親友。
二人の間には、私の存在は不要だ。
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 10:04:36.19 ID:e5tvZ+Q3o
それを自分の中で認めた時、不思議と悲しみよりも、妙に納得してしまった自分が居た。
そう。
だって、まどかと仲良く慣れたのは、最初の自分だけ。
あの頃の、今よりも更に弱かった自分だけ。
その時以外の自分は、まどかにも、他の子達にも、そもそも好かれてなどいなかった。
それを認めたくなかった。
そう。
だって、まどかと仲良く慣れたのは、最初の自分だけ。
あの頃の、今よりも更に弱かった自分だけ。
その時以外の自分は、まどかにも、他の子達にも、そもそも好かれてなどいなかった。
それを認めたくなかった。
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 10:14:29.41 ID:e5tvZ+Q3o
マミとの紅茶の時間が楽しかったから。
まどかとさやかと、一緒にお喋りした時間が楽しかったから。
私が、何度も何度も時間を繰り返したのは、最初の一回だけのあの楽しい時間が忘れられなかったからなんだ、そう気付いた。
他の時間に、あの楽しかった時は無い、と気付いた。
その時、私の心から何かが落ちた。
私は、きっとみんなの中で一番最初に魔女になる。
まどかとさやかと、一緒にお喋りした時間が楽しかったから。
私が、何度も何度も時間を繰り返したのは、最初の一回だけのあの楽しい時間が忘れられなかったからなんだ、そう気付いた。
他の時間に、あの楽しかった時は無い、と気付いた。
その時、私の心から何かが落ちた。
私は、きっとみんなの中で一番最初に魔女になる。
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 16:33:18.37 ID:e5tvZ+Q3o
魔女になるつもりはない。
でも、それはつまり、結局の所の死を選ぶと言う事。
私が、一番最初に死ぬ。
間違い無く。
それを最初に意識したのはワルプルギスを倒した次の日の夜だった。
明るかったと思っていた未来が、突然墨を被ったような闇に閉ざされた。そんな気がした。
でも、それはつまり、結局の所の死を選ぶと言う事。
私が、一番最初に死ぬ。
間違い無く。
それを最初に意識したのはワルプルギスを倒した次の日の夜だった。
明るかったと思っていた未来が、突然墨を被ったような闇に閉ざされた。そんな気がした。
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 16:48:16.80 ID:e5tvZ+Q3o
あの夜。
ワルプルギスの夜後、初めての魔女が現れた。
私は変身する。
武器は使い尽くしていたから、時を止めてその間に強化した力で攻撃しようと思った。
効率は悪いけど、また武器を調達するまでの間だと思って。
だけど、時は止まらなかった。
ワルプルギスの夜後、初めての魔女が現れた。
私は変身する。
武器は使い尽くしていたから、時を止めてその間に強化した力で攻撃しようと思った。
効率は悪いけど、また武器を調達するまでの間だと思って。
だけど、時は止まらなかった。
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 17:03:41.58 ID:e5tvZ+Q3o
「アカ○ベー!」
コンダラとピエロが合体したような不思議な姿の魔女は、私を踏み潰そうと突進してくる。
必死にそれを避けながら、私は辛うじてその魔女を蹴りで倒した。
消滅したとき、おかしなオモチャは落とした。
だけど、グリーフシードは落とさなかった。
あんなに魔翌力を消費したのに。
コンダラとピエロが合体したような不思議な姿の魔女は、私を踏み潰そうと突進してくる。
必死にそれを避けながら、私は辛うじてその魔女を蹴りで倒した。
消滅したとき、おかしなオモチャは落とした。
だけど、グリーフシードは落とさなかった。
あんなに魔翌力を消費したのに。
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/07(土) 17:14:25.61 ID:e5tvZ+Q3o
これでは完全にマイナス。
結界が解け、世界は元に戻った。
でもその時、私の心は結界の中に閉じ込められたみたいに暗く、重かった。
時が、止められない。
それはもう、死刑宣告も同じだった。
結界が解け、世界は元に戻った。
でもその時、私の心は結界の中に閉じ込められたみたいに暗く、重かった。
時が、止められない。
それはもう、死刑宣告も同じだった。
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/08(日) 10:20:51.78 ID:+Mz14/cFo
深夜。
布団に入っても眠れなかった。
自分の最大の武器である能力が消え去った。
その事実が恐ろしくて。
理由はすぐに理解出来た。
布団に入っても眠れなかった。
自分の最大の武器である能力が消え去った。
その事実が恐ろしくて。
理由はすぐに理解出来た。
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/08(日) 10:30:03.31 ID:+Mz14/cFo
私の願いの、時間の範囲を超えたから。
超えられたから。
だからこそ、願いによって生まれた能力は意味を無くしたのだ、と。
まさか、能力の発動がここまで律儀とは思わなかった。
それにしても、この能力が無ければ、私は…。
超えられたから。
だからこそ、願いによって生まれた能力は意味を無くしたのだ、と。
まさか、能力の発動がここまで律儀とは思わなかった。
それにしても、この能力が無ければ、私は…。
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/08(日) 10:38:11.24 ID:+Mz14/cFo
不安。違う。絶望。
グリーフシードが感情を吸ってじわりと濁ったその時。
暗い天井に宇宙の果てまで繋がっている暗い穴が開いた気がして、自分が何処にも居なくなった気がした。
私は、死ぬんだ。
漠然と、しかし確信を持った。
持ってしまった。
グリーフシードが感情を吸ってじわりと濁ったその時。
暗い天井に宇宙の果てまで繋がっている暗い穴が開いた気がして、自分が何処にも居なくなった気がした。
私は、死ぬんだ。
漠然と、しかし確信を持った。
持ってしまった。
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/08(日) 10:44:22.23 ID:+Mz14/cFo
みんなと、やっとまた仲良くなれたのに。
マミが、紅茶を私にも煎れてくれるのに。紅茶の淹れ方を教えてくれると言ってくれたのに。
杏子が、お菓子を分けてくれるのに。一緒にゲームセンターで遊んでくれたのに。
さやかが、私の手を取ってくれるのに。ほむらも嫁になれ、と抱きついてくれたのに。
まどかが、私の顔を見て、笑ってくれるのに。手を取って、歩いてくれたのに。
マミが、紅茶を私にも煎れてくれるのに。紅茶の淹れ方を教えてくれると言ってくれたのに。
杏子が、お菓子を分けてくれるのに。一緒にゲームセンターで遊んでくれたのに。
さやかが、私の手を取ってくれるのに。ほむらも嫁になれ、と抱きついてくれたのに。
まどかが、私の顔を見て、笑ってくれるのに。手を取って、歩いてくれたのに。
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/08(日) 21:47:58.42 ID:aDor8gHLo
でも、私はずっとみんなと一緒には居られない。
駄目なの。
私は、みんなと一緒に笑えない。
ソウルジェムは、日に日に濁っていく。
あの日、あの魔女以来、私は魔女を倒していない。
駄目なの。
私は、みんなと一緒に笑えない。
ソウルジェムは、日に日に濁っていく。
あの日、あの魔女以来、私は魔女を倒していない。
28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/08(日) 21:55:18.70 ID:aDor8gHLo
倒せないから。
倒せたとしても、効率が悪すぎるから。
それと。
倒したくないから。
この街には、魔法少女が多い。
倒せたとしても、効率が悪すぎるから。
それと。
倒したくないから。
この街には、魔法少女が多い。
29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/08(日) 22:08:14.86 ID:aDor8gHLo
それだけでグリーフシードの需要が逼迫しているのは明白。
杏子は普段、他の街に居る。
だからまだ良かったけど、この街を主に縄張りとしているマミとさやか、二人に必要なグリーフシードの確保には、出現する魔女の数はぎりぎりだろう。
魔女の元が全て魔法少女ではない。
使い魔が魔女になる場合もある。
杏子は普段、他の街に居る。
だからまだ良かったけど、この街を主に縄張りとしているマミとさやか、二人に必要なグリーフシードの確保には、出現する魔女の数はぎりぎりだろう。
魔女の元が全て魔法少女ではない。
使い魔が魔女になる場合もある。
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/08(日) 22:21:56.89 ID:aDor8gHLo
だけど、それはつまりなんの関わりもない人々を生け贄に差し出しているのと同じ。
マミはその事実に特に苦しんだからこそ、集団心中まで試みた。
ただ、あの時は正直、シャルロッテのループの時の事もあって、どこまで勝手なのかと本気でマミにRPGをぶちこみたくなったけど、それは誰にも言わない。
今もどこかで生まれているかも知れない魔女。
魔法少女も、また同じ様にどこかで生まれている。
マミはその事実に特に苦しんだからこそ、集団心中まで試みた。
ただ、あの時は正直、シャルロッテのループの時の事もあって、どこまで勝手なのかと本気でマミにRPGをぶちこみたくなったけど、それは誰にも言わない。
今もどこかで生まれているかも知れない魔女。
魔法少女も、また同じ様にどこかで生まれている。
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/09(月) 21:44:37.81 ID:R8Rt/oR2o
インキュベーターを止める事は出来ない。
あいつは、同時刻にいくらでも別個体が存在出来る。
個々であって個々では無いあの存在。
あいつは、一匹も万匹も変わらない。
それに、全てを知って尚魔法少女になろうという少女がいるのであれば、もう止める手立ては無いのだから。
あいつは、同時刻にいくらでも別個体が存在出来る。
個々であって個々では無いあの存在。
あいつは、一匹も万匹も変わらない。
それに、全てを知って尚魔法少女になろうという少女がいるのであれば、もう止める手立ては無いのだから。
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/09(月) 22:03:22.16 ID:R8Rt/oR2o
いつか魔女になり、狩られる立場になろうとも…。
魔法少女が魔女になり、魔女が使い魔を生み、使い魔もいつか魔女になる。
魔女、使い魔、魔法少女。
これらの存在は全て表裏一体。
魔女が生み出すグリーフシードが無ければ生きていけない魔法少女。
魔法少女が魔女になり、魔女が使い魔を生み、使い魔もいつか魔女になる。
魔女、使い魔、魔法少女。
これらの存在は全て表裏一体。
魔女が生み出すグリーフシードが無ければ生きていけない魔法少女。
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/09(月) 22:17:00.80 ID:R8Rt/oR2o
希望から生まれる魔法少女。
そして希望を黒く塗りつぶした、絶望という糧から生まれる魔女。
魔法少女と魔女、この食物連鎖に上下は…無い。
喰いつ、喰われつの、ある意味対等な関係が私達魔法少女と魔女。
なんて残酷な食物連鎖。
そして希望を黒く塗りつぶした、絶望という糧から生まれる魔女。
魔法少女と魔女、この食物連鎖に上下は…無い。
喰いつ、喰われつの、ある意味対等な関係が私達魔法少女と魔女。
なんて残酷な食物連鎖。
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/09(月) 22:28:18.78 ID:R8Rt/oR2o
この連鎖、断ち切ることは出来ないのか、私は考えに明け暮れたこともある。
でも、答は出ない。
いや、答は知っている。
ただ、その答を出す過程は知っていても、どうしてもそこに行き着けない。
答を出すためには、その為にまた大きな犠牲が必要だから。
でも、答は出ない。
いや、答は知っている。
ただ、その答を出す過程は知っていても、どうしてもそこに行き着けない。
答を出すためには、その為にまた大きな犠牲が必要だから。
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/09(月) 22:36:37.85 ID:R8Rt/oR2o
犠牲。
その答は、『願い』によって、その連鎖を断ち切らねばならないから。
あいつらの都合の為に魂を生け贄にされているのに、その関係を断ち切るためにまた『願い』を叶えて貰わなくてはならない。
本末転倒もいいところ。
願いの大きさは、本人の因果の秘めたる力に寄る。
その答は、『願い』によって、その連鎖を断ち切らねばならないから。
あいつらの都合の為に魂を生け贄にされているのに、その関係を断ち切るためにまた『願い』を叶えて貰わなくてはならない。
本末転倒もいいところ。
願いの大きさは、本人の因果の秘めたる力に寄る。
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/10(火) 22:32:34.34 ID:9hqLrSIZo
どれだけ大きな力を持っていればいいのか、そもそもそんな人が居るのかどうか。
まどかだって、強いらしいけど、きっとそんな事…無論、させやしないけど。
第一、そんな因果の強い子が居たとして、願いを叶えたら、その対価はそれこそワルプルギスの夜とすら比べものにならないだろう。
彼女の嘆きの歯車の音は、今でも耳に残っている。
嘆き…。
まどかだって、強いらしいけど、きっとそんな事…無論、させやしないけど。
第一、そんな因果の強い子が居たとして、願いを叶えたら、その対価はそれこそワルプルギスの夜とすら比べものにならないだろう。
彼女の嘆きの歯車の音は、今でも耳に残っている。
嘆き…。
38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/10(火) 22:46:50.26 ID:9hqLrSIZo
グリーフ。
グリーフシード。
嘆きの種。
正に、あれは嘆きを凝縮したもの。
絶望が、穢れと言う名を借りて私達の中の希望と言う名のエネルギーを奪っていく。
グリーフシード。
嘆きの種。
正に、あれは嘆きを凝縮したもの。
絶望が、穢れと言う名を借りて私達の中の希望と言う名のエネルギーを奪っていく。
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/10(火) 23:02:22.84 ID:9hqLrSIZo
切望にもがき苦しむから、希望を欲する。
魔法少女の頃の、輝いてきた自分を求めているのだろうか。
穢れとは、私達の中の希望が、疲れや絶望によって意味を変えたエネルギーなのかも知れない。
だから、グリーフシードは私達の中の穢れを吸うのではと思う。
本当、あいつらはどうしてこうも悪趣味なネーミングセンスを持っているのかしら。
魔法少女の頃の、輝いてきた自分を求めているのだろうか。
穢れとは、私達の中の希望が、疲れや絶望によって意味を変えたエネルギーなのかも知れない。
だから、グリーフシードは私達の中の穢れを吸うのではと思う。
本当、あいつらはどうしてこうも悪趣味なネーミングセンスを持っているのかしら。
40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/10(火) 23:15:15.35 ID:LJRw3kWSo
とすれば、使い魔はさしずめ絶望からはみ出たエネルギーの塊。
だから、それが成長すれば、同じく絶望のなれの果ての魔女となる。
その存在、魔法少女にとってはつらい事に必要だけど。
でも、私達は、決して、わざと使い魔を泳がせて魔女にさせている訳では無い。
そんな、死の養殖みたいな真似は絶対にしない。
だから、それが成長すれば、同じく絶望のなれの果ての魔女となる。
その存在、魔法少女にとってはつらい事に必要だけど。
でも、私達は、決して、わざと使い魔を泳がせて魔女にさせている訳では無い。
そんな、死の養殖みたいな真似は絶対にしない。
41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/10(火) 23:24:56.69 ID:LJRw3kWSo
私達が倒しきれなかった、見つけられなかった使い魔が、いつしか魔女になっている場合もある。
でも、使い魔が人を殺し、魔女となり、その魔女を倒すことで私達が生きながらえているという事も事実。
これは代え難い、何より非情な事実。
人の命を喰らう魔女から生まれたグリーフシードを喰らって生きる私達魔法少女は、魔女以上に魔女なのではないか。
そう思うと、マミの気持ちは分かる。
でも、使い魔が人を殺し、魔女となり、その魔女を倒すことで私達が生きながらえているという事も事実。
これは代え難い、何より非情な事実。
人の命を喰らう魔女から生まれたグリーフシードを喰らって生きる私達魔法少女は、魔女以上に魔女なのではないか。
そう思うと、マミの気持ちは分かる。
42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/10(火) 23:30:26.60 ID:LJRw3kWSo
ううん、きっと、その事実を知った魔法少女はみんなそう思う。
それでも、魔法少女は自分が生きるために、その残酷な事実から目を背け、耳を塞ぎ、そして、魔女を倒し続ける。
時に、グリーフシードを奪い合って。
…そんな理不尽、とっくの昔に分かっているのに、切ない。苦しい。
どれだけ考えを繰り返したか分からないのに。
それでも、魔法少女は自分が生きるために、その残酷な事実から目を背け、耳を塞ぎ、そして、魔女を倒し続ける。
時に、グリーフシードを奪い合って。
…そんな理不尽、とっくの昔に分かっているのに、切ない。苦しい。
どれだけ考えを繰り返したか分からないのに。
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 00:12:07.08 ID:5XLTKKuno
でも、最近、そんな事ばかり考えている。
私は、弱いから。
一番死に近いところにいるから、だと思う。
ならば、私にグリーフシードは必要無い。
ずっと生きていけるだろうマミやさやか、杏子の為にそれは使われるべき。
私は、弱いから。
一番死に近いところにいるから、だと思う。
ならば、私にグリーフシードは必要無い。
ずっと生きていけるだろうマミやさやか、杏子の為にそれは使われるべき。
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 00:25:07.03 ID:5XLTKKuno
…私はもう、生きるのは、無理なのかな。
そう思った時。
あ。
ソウルジェムが音を立てて黒ずんだ気がした。
なんだかソウルジェムが重くなった気がする。
そう思った時。
あ。
ソウルジェムが音を立てて黒ずんだ気がした。
なんだかソウルジェムが重くなった気がする。
46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 00:31:47.03 ID:5XLTKKuno
まどかが、魔女にならずに生き残る、一番幸せな世界にやっと辿り着いたのに。
みんなと、笑い逢える世界に辿り着いたのに。
そう思うと、涙がこぼれた。
涙腺が壊れたみたいに止めどなく、ぽろぽろと。
最近は本当にこんな風。
みんなと、笑い逢える世界に辿り着いたのに。
そう思うと、涙がこぼれた。
涙腺が壊れたみたいに止めどなく、ぽろぽろと。
最近は本当にこんな風。
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 00:38:40.29 ID:5XLTKKuno
少し胸が詰まると、それだけで涙がこぼれる。
ちい散歩が終わってしまうせいもあるかもしれない。
元から本当は弱い私だったけど、こんなに泣くほどだったかしら。
少しは強くなれたと思っていたのに。
いえ、多分、少し強くなったから。
ちい散歩が終わってしまうせいもあるかもしれない。
元から本当は弱い私だったけど、こんなに泣くほどだったかしら。
少しは強くなれたと思っていたのに。
いえ、多分、少し強くなったから。
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 22:50:00.20 ID:z46nOyP8o
だから、逆にこうしてまた弱くなった今、反動が来たんだ。
最初は本当に嬉し涙だった。
ワルプルギスの夜を倒したあの時は、本当に心の底から泣いた。
みんなが周りに居たけど、そんな事は気にならなかった。
私は、泣いた。
最初は本当に嬉し涙だった。
ワルプルギスの夜を倒したあの時は、本当に心の底から泣いた。
みんなが周りに居たけど、そんな事は気にならなかった。
私は、泣いた。
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 23:17:32.60 ID:z46nOyP8o
顔をぐしゃぐしゃにして、嗚咽を漏らしながら、馬鹿みたいに泣いた。
みんな優しいから言わなかったけど、きっと、呆れていただろうな。
本当はこんなみっともない奴だったんだって。
そう、その通りだから。
もう、仮面を被る必要も無い。
みんな優しいから言わなかったけど、きっと、呆れていただろうな。
本当はこんなみっともない奴だったんだって。
そう、その通りだから。
もう、仮面を被る必要も無い。
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 23:31:10.68 ID:z46nOyP8o
みんなに、いろんな意味で一目置かれる人間のふりをする必要も無い。
私は、あの瞬間に、元の弱くて脆くて情けない暁美ほむらに戻ったのだから。
みんな、あの時は私を見て笑っていた気がする。
そうよね。
こんな人間だったんだ。
虚勢を張っていただけだと知ったのだから。
私は、あの瞬間に、元の弱くて脆くて情けない暁美ほむらに戻ったのだから。
みんな、あの時は私を見て笑っていた気がする。
そうよね。
こんな人間だったんだ。
虚勢を張っていただけだと知ったのだから。
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 23:45:30.32 ID:z46nOyP8o
呆れただろうな。
失望しただろうな。
…いえ、失望も何も、期待などされていないよね。
こういうところ、自惚れてるっていうのかな。
でも、それでも、私は構わなかった。
失望しただろうな。
…いえ、失望も何も、期待などされていないよね。
こういうところ、自惚れてるっていうのかな。
でも、それでも、私は構わなかった。
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/12(木) 23:53:17.27 ID:z46nOyP8o
まどかが生きていてくれたのだから。
それだけ。
自分はどうなってもいい。
生きようが、死のうが。
生きようが。
死のうが。
それだけ。
自分はどうなってもいい。
生きようが、死のうが。
生きようが。
死のうが。
55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 00:08:59.92 ID:J2DeiTsho
……。
…やっぱり、生きていたいな。
あれだけ命を賭して、と思っていたのに。
なのに、そう思ってしまう。
私は弱いから。
…やっぱり、生きていたいな。
あれだけ命を賭して、と思っていたのに。
なのに、そう思ってしまう。
私は弱いから。
56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 22:21:13.03 ID:ZOZpqtydo
恐がりだから。
死ぬのが怖いと、改めてそう思った。
でも、やっと辿り着いたこの世界なのに、私は、生きていけない。
せっかく、目的の世界に辿り着いたのに…。
辿り着いた。
死ぬのが怖いと、改めてそう思った。
でも、やっと辿り着いたこの世界なのに、私は、生きていけない。
せっかく、目的の世界に辿り着いたのに…。
辿り着いた。
57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 22:31:36.10 ID:ZOZpqtydo
……。
そうね。
だからなのね、やっぱり。
だから、私はやる事が無くなった。
だから、私の居る意味が無くなった。
そうね。
だからなのね、やっぱり。
だから、私はやる事が無くなった。
だから、私の居る意味が無くなった。
58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 22:47:33.44 ID:ZOZpqtydo
だから、私は居なくてもいいんだ。
私の命は、まどかを救うためだけに存在したのだから。
ならいっそ、私の命はあの時ワルプルギスの夜と一緒に消えていればよかったのかもしれない。
だって、現にこうして、私はもう、魔法少女として生きる術を失っているのだから。
何かおかしいわけでもないのに、生きる術を失ってしまった魔法少女。
私の命は、まどかを救うためだけに存在したのだから。
ならいっそ、私の命はあの時ワルプルギスの夜と一緒に消えていればよかったのかもしれない。
だって、現にこうして、私はもう、魔法少女として生きる術を失っているのだから。
何かおかしいわけでもないのに、生きる術を失ってしまった魔法少女。
59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 22:56:57.65 ID:ZOZpqtydo
それはどうして?
時間を止められない直接の理由は分かっているけど、どうしてこうなってしまったのだろうと考えたとき、一つの答が浮かんだ。
そうだ。
それは、私自身が役割を終えたからだ。
やることが無くなっただけじゃない。
時間を止められない直接の理由は分かっているけど、どうしてこうなってしまったのだろうと考えたとき、一つの答が浮かんだ。
そうだ。
それは、私自身が役割を終えたからだ。
やることが無くなっただけじゃない。
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 23:02:42.73 ID:ZOZpqtydo
役目が終わったからなんだ。
花が、役割を終えたら枯れるように。
先の減ったGペンが捨てられるように。
私は、願いを叶えた。
自信を持ってそう断言できる。
花が、役割を終えたら枯れるように。
先の減ったGペンが捨てられるように。
私は、願いを叶えた。
自信を持ってそう断言できる。
61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 23:24:24.94 ID:ZOZpqtydo
断言できるけど…。
それはつまり、私の寿命があの時、終わったと言う事になるんだ。
「ああ…」
そうか、そうなんだわ。
私は、私としてやり遂げることを、全部やってしまったのね。
それはつまり、私の寿命があの時、終わったと言う事になるんだ。
「ああ…」
そうか、そうなんだわ。
私は、私としてやり遂げることを、全部やってしまったのね。
62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 23:32:48.69 ID:ZOZpqtydo
…悲しむことなんか、無いんだ。
無いんだね。
そう思うと、なんだか恐怖が和らいだ気がする。
魔法少女になった時、その瞬間から、私の寿命は決まっていた。
まどかを救う。
無いんだね。
そう思うと、なんだか恐怖が和らいだ気がする。
魔法少女になった時、その瞬間から、私の寿命は決まっていた。
まどかを救う。
63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/13(金) 23:40:03.49 ID:ZOZpqtydo
その時が、私の寿命の終わる時だったんだ。
じゃあ、これでも私、大往生って事になるのかな?
「そうか…」
中学生だけど、生きてるうちにやりたい事は、全て果たしちゃったんだね。
「まどかぁ…」
じゃあ、これでも私、大往生って事になるのかな?
「そうか…」
中学生だけど、生きてるうちにやりたい事は、全て果たしちゃったんだね。
「まどかぁ…」
65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/14(土) 22:49:59.88 ID:dFtS4/AJo
今日も今、どこかでまどかは笑っている筈。
親友のさやかや、優しい先輩のマミ、元気な杏子と一緒に。
その場所に、私の居場所はない。
居られない。
居てはいけない。
親友のさやかや、優しい先輩のマミ、元気な杏子と一緒に。
その場所に、私の居場所はない。
居られない。
居てはいけない。
66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/14(土) 23:12:48.35 ID:dFtS4/AJo
それは、悲しい。
本当にそう思う。
でも、それでいいのかも知れない。
それが当然なのかも知れない。
私は、他の時間軸でいっぱい、いっぱい、ほんとうにいっぱい、酷い仕打ちをみんなにしてきたのだから。
本当にそう思う。
でも、それでいいのかも知れない。
それが当然なのかも知れない。
私は、他の時間軸でいっぱい、いっぱい、ほんとうにいっぱい、酷い仕打ちをみんなにしてきたのだから。
67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/14(土) 23:19:06.84 ID:dFtS4/AJo
私は、みんなと一緒に笑ってはいけないんだ。
私は、みんなが幸せな場所に居てはいけないんだ。
何故なら、私は、他の時間軸で苦しんで死んだ、死なせてしまったみんなの分の業を背負わなければならないからだ。
たくさんのまどか。
たくさんのさやか。
私は、みんなが幸せな場所に居てはいけないんだ。
何故なら、私は、他の時間軸で苦しんで死んだ、死なせてしまったみんなの分の業を背負わなければならないからだ。
たくさんのまどか。
たくさんのさやか。
68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/14(土) 23:28:06.85 ID:dFtS4/AJo
たくさんのマミ。
たくさんの杏子。
たくさんのみんなの命を私は奪った。
直接的かどうかなんて関係ない。
私は救えなかった。
たくさんの杏子。
たくさんのみんなの命を私は奪った。
直接的かどうかなんて関係ない。
私は救えなかった。
69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/14(土) 23:39:46.35 ID:dFtS4/AJo
たくさんのみんなを。
たくさんの…。
「……」
…たくさんいるみんなを想像したら、ちょっと怖…可愛かった。
マミさんは、まどかは、私の最初の師匠だったのに。
たくさんの…。
「……」
…たくさんいるみんなを想像したら、ちょっと怖…可愛かった。
マミさんは、まどかは、私の最初の師匠だったのに。
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/14(土) 23:45:21.73 ID:dFtS4/AJo
さやかは、あの直情的な性格さえ出なければ、真っ直ぐな、良い友人なのに。
杏子は、だれよりも純粋だからこその正義感を持っていた、尊敬すべき子なのに。
なのに、いつしか私は救おうとすることすらかまけてしまった。
だから、奪ったと同じなんだ。
私は、私が奪ったみんなの命を、何としても償わなければならない。
杏子は、だれよりも純粋だからこその正義感を持っていた、尊敬すべき子なのに。
なのに、いつしか私は救おうとすることすらかまけてしまった。
だから、奪ったと同じなんだ。
私は、私が奪ったみんなの命を、何としても償わなければならない。
71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/14(土) 23:53:33.10 ID:dFtS4/AJo
「……」
また、じわりとソウルジェムが濁る。
体に、嫌なしびれを感じた。
骨の奥深くから何か重い物が噴き出してくるような、寒気のする痺れ。
僅かに吐き気もする。
また、じわりとソウルジェムが濁る。
体に、嫌なしびれを感じた。
骨の奥深くから何か重い物が噴き出してくるような、寒気のする痺れ。
僅かに吐き気もする。
72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/14(土) 23:58:36.40 ID:dFtS4/AJo
みしりとした頭痛と同時に、ふわりと浮かぶような感覚で一瞬気が遠くなった。
ああ…。
もしかすると私、もう…。
脳裏に、無数の魔女の姿がよぎる。
私も…もうすぐ…彼女たちの…。
ああ…。
もしかすると私、もう…。
脳裏に、無数の魔女の姿がよぎる。
私も…もうすぐ…彼女たちの…。
74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/15(日) 21:05:38.03 ID:+Il1Q2gFo
「……」
私は盾の中から一丁の銃を取りだした。
中には一発だけ弾も入っている。
シルバーに光るデザートイーグル。
頼りになる相棒。
私は盾の中から一丁の銃を取りだした。
中には一発だけ弾も入っている。
シルバーに光るデザートイーグル。
頼りになる相棒。
75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/15(日) 21:12:37.13 ID:+Il1Q2gFo
その名もデザートホームル。
意味は特にない。
初期に作られた次装弾不良に泣かされた357マグナム版ではなく、リムレス薬莢の採用で事実上世界最強のハンドガンとなった50Action-Express版。
50Action-Express版は手に入れるのに苦労した。
デッドコピーではやはり精度が甘く操作性が悪かったので、貴重なループを消費してイスラエルへ飛び、本場の銃を工場から失敬した。
意味は特にない。
初期に作られた次装弾不良に泣かされた357マグナム版ではなく、リムレス薬莢の採用で事実上世界最強のハンドガンとなった50Action-Express版。
50Action-Express版は手に入れるのに苦労した。
デッドコピーではやはり精度が甘く操作性が悪かったので、貴重なループを消費してイスラエルへ飛び、本場の銃を工場から失敬した。
76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/15(日) 21:26:19.82 ID:+Il1Q2gFo
ロールアップされたばかりの、誰も触っていない本物を手に取ったときの感動は今も覚えている。
一度完全に分解してバリを丹念に削り、歪みをミクロン単位で直して油を差し、そして組み立て直した時には、もうこの銃は大量生産品では無い、私だけの一品となって生まれ変わっていた。
弾丸も千発ほどいただき、アヴダトにあった石柱が丁度的にぴったりだったので、一晩に二百発ほど撃って照準を調整した。
何本か石柱が折れたけど、ただの石だし大丈夫よね。
そんなことよりあの試し打ちで、命を預ける銃とはこういうものなのだと実感したのを覚えている。
一度完全に分解してバリを丹念に削り、歪みをミクロン単位で直して油を差し、そして組み立て直した時には、もうこの銃は大量生産品では無い、私だけの一品となって生まれ変わっていた。
弾丸も千発ほどいただき、アヴダトにあった石柱が丁度的にぴったりだったので、一晩に二百発ほど撃って照準を調整した。
何本か石柱が折れたけど、ただの石だし大丈夫よね。
そんなことよりあの試し打ちで、命を預ける銃とはこういうものなのだと実感したのを覚えている。
77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/15(日) 21:33:48.37 ID:+Il1Q2gFo
どんなハイパワーライフルでもこいつの破壊力に比べればパチンコ玉みたいなもの。
このバケモノじみた大きさとずしりとした重さが私の命を守ってくれる保障なの。
葉巻好きのナイスガイもそう言っているから間違い無い。リボルバーではないけど。
ポリゴナルライフリングになってからはクリーニングが楽でいいのだけど、撃てる弾丸が銅系合金皮膜されたものに限られるのが難点。
いざと言うとき使える弾丸に制限があるのは困る。
このバケモノじみた大きさとずしりとした重さが私の命を守ってくれる保障なの。
葉巻好きのナイスガイもそう言っているから間違い無い。リボルバーではないけど。
ポリゴナルライフリングになってからはクリーニングが楽でいいのだけど、撃てる弾丸が銅系合金皮膜されたものに限られるのが難点。
いざと言うとき使える弾丸に制限があるのは困る。
78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/15(日) 21:42:58.29 ID:+Il1Q2gFo
真鍮で弾頭を覆わない、鉛剥き出しのソフトポイント弾は当たったときのダメージが強いから使い勝手がいいのに。
それに、やはり年頃の女子中学生としては誰もが持っているように、ライフリングのあの独特の形状には憧れがあったので、この変更は痛し痒しといったところね。
その前は、両さんが二丁持ちしていたのに惚れたのと、名前の響きがいいので44オートマグを使っていたけど、ジャムりが多くて困った。
オートジャムとは良く言った物だったわ。
あれだってリムレスだったのに。
それに、やはり年頃の女子中学生としては誰もが持っているように、ライフリングのあの独特の形状には憧れがあったので、この変更は痛し痒しといったところね。
その前は、両さんが二丁持ちしていたのに惚れたのと、名前の響きがいいので44オートマグを使っていたけど、ジャムりが多くて困った。
オートジャムとは良く言った物だったわ。
あれだってリムレスだったのに。
79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/15(日) 21:48:19.93 ID:+Il1Q2gFo
動作不良の原因の一つは弾薬の供給の遅れなんだから、きっと先を行きすぎた、生まれるのが早すぎた銃だったのね。
まぁ、8.5インチのロングバレルを構えたときの格好良さは今でもデザートイーグル以上だと思っているけど。
e-bayに純正カスタムの10インチがあったのを見たときは飾りでもいいと本気で落札を考えたし。
話が逸れたわ。
このデザートホ…。
デザートイーグル。
まぁ、8.5インチのロングバレルを構えたときの格好良さは今でもデザートイーグル以上だと思っているけど。
e-bayに純正カスタムの10インチがあったのを見たときは飾りでもいいと本気で落札を考えたし。
話が逸れたわ。
このデザートホ…。
デザートイーグル。
80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/15(日) 21:55:05.44 ID:+Il1Q2gFo
それは、私のソウルジェムを砕くためのもの。
私が、人でいられるうちに人のままで死ぬ為の死刑執行器具。
魔女になる前に、ソウルジェムを砕く。
その為にワルプルギスの夜の時も使わなかった、本当に最後の武器。
でも、今はこのまま身を任せてもいいかと、そう思い始めてきていた。
私が、人でいられるうちに人のままで死ぬ為の死刑執行器具。
魔女になる前に、ソウルジェムを砕く。
その為にワルプルギスの夜の時も使わなかった、本当に最後の武器。
でも、今はこのまま身を任せてもいいかと、そう思い始めてきていた。
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/16(月) 22:11:07.92 ID:HQwWOAUYo
だって、私だけが人のまま命を終えたら、それじゃあ、他の時間軸で魔女になっていったみんなに、死んでいったみんなに、悪いもの。
人のままで死ぬ事は、ある意味魔法少女にとって幸せな最期。
ならば、私にその資格は欠片もない。
私は、魔女になろう。
そしてせめてみんなの為に、自分を本当に散らし、グリーフシードを残そう。
人のままで死ぬ事は、ある意味魔法少女にとって幸せな最期。
ならば、私にその資格は欠片もない。
私は、魔女になろう。
そしてせめてみんなの為に、自分を本当に散らし、グリーフシードを残そう。
86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/16(月) 22:21:49.64 ID:HQwWOAUYo
居てもなんの役に立たない愚図な私の、最後のまともな役目。
みんなに戦わせると言う面倒はかけてしまうけど、彼女たちなら大丈夫。
それに、私はそもそも弱い魔法少女。
因果の強さが魔翌力の強さとなり、それが強いほど強力な魔女になる。
ならば、私は魔女になっても大した事は無いに決まっている。
みんなに戦わせると言う面倒はかけてしまうけど、彼女たちなら大丈夫。
それに、私はそもそも弱い魔法少女。
因果の強さが魔翌力の強さとなり、それが強いほど強力な魔女になる。
ならば、私は魔女になっても大した事は無いに決まっている。
87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/16(月) 22:30:47.33 ID:HQwWOAUYo
魔女なのに、使い魔程度にしかならないかもしれない。
今は武器を持ってないけど、魔女になったら流石に何か攻撃手段くらいは持つのかしら?
でも、それにしてもこんな私だもの。
きっとへなちょこな攻撃方法よね。
泣き虫の私に相応しい、だだっ子パンチとか、そんな程度かしら。
今は武器を持ってないけど、魔女になったら流石に何か攻撃手段くらいは持つのかしら?
でも、それにしてもこんな私だもの。
きっとへなちょこな攻撃方法よね。
泣き虫の私に相応しい、だだっ子パンチとか、そんな程度かしら。
88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/16(月) 22:41:17.26 ID:HQwWOAUYo
槍でも剣でも、矢でも銃でも、ちょっと離れた所から一撃、ね。
勝てるイメージがまるでわかない。
なのに、無様に倒れる自分の姿は容易に想像できる。
魔女のイメージがわかないので、自分の姿のままで。
血を流して倒れる自分。
勝てるイメージがまるでわかない。
なのに、無様に倒れる自分の姿は容易に想像できる。
魔女のイメージがわかないので、自分の姿のままで。
血を流して倒れる自分。
89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/16(月) 22:53:16.87 ID:HQwWOAUYo
怖い事の筈なのに、むしろ滑稽で思わず笑みが漏れた。
積み重ねた罪をようやく精算できるのね、と。
あ。
罪を積み重ねる。
…罪だけに。
遺書代わりにメモしておこう。
積み重ねた罪をようやく精算できるのね、と。
あ。
罪を積み重ねる。
…罪だけに。
遺書代わりにメモしておこう。
90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/16(月) 23:24:41.75 ID:HQwWOAUYo
ただ、一つだけ心配なのは、私がちゃんとグリーフシードになれるのかと言う事。
倒されるのはいいけど、その後必ずグリーフシードに変化する訳ではないから、ただ戦わせるだけになったらそれは本当に申し訳ない。
死んでからも迷惑をかけるだけなんて、それだけは本当に嫌。
私のソウルジェムよ。
どうかお願いだから、彼女たちのために少しでも質の良いグリーフシードを生み出しておくれ。
倒されるのはいいけど、その後必ずグリーフシードに変化する訳ではないから、ただ戦わせるだけになったらそれは本当に申し訳ない。
死んでからも迷惑をかけるだけなんて、それだけは本当に嫌。
私のソウルジェムよ。
どうかお願いだから、彼女たちのために少しでも質の良いグリーフシードを生み出しておくれ。
91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/16(月) 23:31:20.04 ID:HQwWOAUYo
指輪を握りしめ、心から願う。
本当に、心から。
ソウルジェムが、いっそ他の魔法少女の魂のスペアにでもなればいいのに。
じわり。
またソウルジェムが黒ずんだ。
本当に、心から。
ソウルジェムが、いっそ他の魔法少女の魂のスペアにでもなればいいのに。
じわり。
またソウルジェムが黒ずんだ。
92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/16(月) 23:38:11.48 ID:HQwWOAUYo
…そうだ、いけない。
ここで魔女になっちゃ駄目。
みんなが流石に怪しむわ。
最近私が魔女退治に付き合わないのは彼女たちも承知。
なら、私が居なくても不思議には思わないだろうけど、それでも、ここで魔女になっては自分が魔女になりましたと言っているようなもの。
ここで魔女になっちゃ駄目。
みんなが流石に怪しむわ。
最近私が魔女退治に付き合わないのは彼女たちも承知。
なら、私が居なくても不思議には思わないだろうけど、それでも、ここで魔女になっては自分が魔女になりましたと言っているようなもの。
93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 22:39:23.23 ID:p/DsgxdYo
そんな事になったら、彼女たちが私を倒すのを躊躇ってしまう。
みんな優しいから。
それはいけない。
出かけよう。
少し遠い所、人気の無いところ、私とは関係なさそうな所へ移動して、そこで魔女になれば彼女たちはそれが私のなれの果てとは気付かないだろう。
みんな優しいから。
それはいけない。
出かけよう。
少し遠い所、人気の無いところ、私とは関係なさそうな所へ移動して、そこで魔女になれば彼女たちはそれが私のなれの果てとは気付かないだろう。
94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 22:48:47.49 ID:p/DsgxdYo
なれの果て…。
私は、どんな醜い魔女になるのだろう。
我が儘が許されるなら、あんまり汚くないといいな。
魚とか、どろどろなのは、いやだな。
……。
私は、どんな醜い魔女になるのだろう。
我が儘が許されるなら、あんまり汚くないといいな。
魚とか、どろどろなのは、いやだな。
……。
95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 23:06:58.50 ID:p/DsgxdYo
駄目かな。
さあ。
足が重いが、今出なくてはもう、自分の意思で動けなくなるかも知れない。
行かなくちゃ。
その名の通り、死出の旅立ちへ。
これは、とても怖いことの筈。
さあ。
足が重いが、今出なくてはもう、自分の意思で動けなくなるかも知れない。
行かなくちゃ。
その名の通り、死出の旅立ちへ。
これは、とても怖いことの筈。
97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 23:15:50.12 ID:p/DsgxdYo
なのに、そんなに怖い気はしなかった。
ふふ。
人間、腹をくくるとそれなりに落ち着くものね。
ワルプルギスの夜の時みたいな半ばヤケではない、なんだか、今はすがすがしさすら感じるわ。
今なら、まどかからお誘いがあっても、悩まずに断れそう。
…虚勢じゃ無いクールに、なれているかな?
ふふ。
人間、腹をくくるとそれなりに落ち着くものね。
ワルプルギスの夜の時みたいな半ばヤケではない、なんだか、今はすがすがしさすら感じるわ。
今なら、まどかからお誘いがあっても、悩まずに断れそう。
…虚勢じゃ無いクールに、なれているかな?
98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 23:21:05.42 ID:p/DsgxdYo
私みたいな人間でも、覚悟を決めるとこんな気持ちになれるのね。
部屋を出た。
多分、もう帰ってこないであろう部屋から。
……。
あ。
冷蔵庫にハーゲンが残っていた。
部屋を出た。
多分、もう帰ってこないであろう部屋から。
……。
あ。
冷蔵庫にハーゲンが残っていた。
99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 23:28:28.63 ID:p/DsgxdYo
ワルプルギスの夜を倒したらと思ってそのまま忘れていたものだから、カチカチになっているだろうな。
後ろ髪を引かれたけど、今振り向いたら決心が揺らぐ。
私は今、本当にクールなほむらなんだから。
少しだけ、心が揺らいだけど、そのまま部屋を後に出来た。
外は夕方。
陽が落ちている。
後ろ髪を引かれたけど、今振り向いたら決心が揺らぐ。
私は今、本当にクールなほむらなんだから。
少しだけ、心が揺らいだけど、そのまま部屋を後に出来た。
外は夕方。
陽が落ちている。
100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 23:33:04.26 ID:p/DsgxdYo
斜陽。
今の私にこれ程ぴったりな景色はない。
…ううん。
それは違う。
私は、出来る事をやって、全てを終えた。
この濃いオレンジ色の夕焼けは、私への最後のご褒美。
今の私にこれ程ぴったりな景色はない。
…ううん。
それは違う。
私は、出来る事をやって、全てを終えた。
この濃いオレンジ色の夕焼けは、私への最後のご褒美。
101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 23:38:50.20 ID:p/DsgxdYo
役目を終えた太陽が闇に沈むのと、今の私は同じ。
そう思えば、なんだかこの沈み行く太陽にも親しみを覚える。
でも、あなたは沈みつつも優しく、暖かな光を放っている。
…あなたは、明日も昇るしね。
なんだかおかしくなって口元が緩む。
でも、呑気してはいられない。
そう思えば、なんだかこの沈み行く太陽にも親しみを覚える。
でも、あなたは沈みつつも優しく、暖かな光を放っている。
…あなたは、明日も昇るしね。
なんだかおかしくなって口元が緩む。
でも、呑気してはいられない。
102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 23:46:54.45 ID:p/DsgxdYo
遠くへ、遠くへ行かなくちゃいけない。
私の終焉の地へ。
優しく、暖かな光に背を向けて。
優しく…。
……。
そう言えば、冷蔵庫のあれって期間限定のドルチェだった。
私の終焉の地へ。
優しく、暖かな光に背を向けて。
優しく…。
……。
そう言えば、冷蔵庫のあれって期間限定のドルチェだった。
103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/19(木) 23:53:26.62 ID:p/DsgxdYo
……。
えっと…。
…べ、別にアイスクリームなんかのために…。
でも…。
でも、やっぱり思い立ったが吉日って…。
吉な事じゃないけど、でも…。
「ほむらちゃん!」
「ほむっ!」
えっと…。
…べ、別にアイスクリームなんかのために…。
でも…。
でも、やっぱり思い立ったが吉日って…。
吉な事じゃないけど、でも…。
「ほむらちゃん!」
「ほむっ!」
109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 22:35:30.94 ID:n6kqGrZ9o
突然声をかけられた。
その声の主は、他の誰でもない。
まどか。
「ま、まどか? ど、どうしたの? こんな所に」
思わぬところで思わぬ子に会ってしまった。
どうして。
その声の主は、他の誰でもない。
まどか。
「ま、まどか? ど、どうしたの? こんな所に」
思わぬところで思わぬ子に会ってしまった。
どうして。
110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 22:47:59.03 ID:n6kqGrZ9o
何かの用事の途中?
道を選べば良か…って、まだ外へ出たばかりだから選びようが無いわ。
…と、言う事は。
「あのね、突然で悪いかなって思ったんだけど、遊びに来ちゃった」
ああ…。
最近、あなたに冷たくしてしまっていたのに、なのに、あなたは…。
道を選べば良か…って、まだ外へ出たばかりだから選びようが無いわ。
…と、言う事は。
「あのね、突然で悪いかなって思ったんだけど、遊びに来ちゃった」
ああ…。
最近、あなたに冷たくしてしまっていたのに、なのに、あなたは…。
111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 22:58:03.07 ID:n6kqGrZ9o
「…駄目、かな?」
小鳥が首を傾げるような、のぞき込むような仕草で私を見るまどか。
「大したおもてなしも出来ないけど、どうぞ上がって」
「わーい!」
私の馬鹿。
馬鹿。
馬鹿馬鹿馬鹿。
小鳥が首を傾げるような、のぞき込むような仕草で私を見るまどか。
「大したおもてなしも出来ないけど、どうぞ上がって」
「わーい!」
私の馬鹿。
馬鹿。
馬鹿馬鹿馬鹿。
112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 23:05:39.39 ID:n6kqGrZ9o
「ほむらちゃん」
「えっ!?」
まどかが私の手を握ってくれた。
「ウェヒヒ。手が冷たいよ?」
「そ、そうかしら?」
「私が言うのも変だけど、早く入ろう? 体も冷えちゃうよ」
「えっ!?」
まどかが私の手を握ってくれた。
「ウェヒヒ。手が冷たいよ?」
「そ、そうかしら?」
「私が言うのも変だけど、早く入ろう? 体も冷えちゃうよ」
113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 23:14:08.78 ID:n6kqGrZ9o
「そ、そうね。まどかの体が冷えたら大変」
「私じゃ無くってほむらちゃんが、だよ」
まどかがそう言って私の手を引っ張ってくれる。
温かいまどかの手が、泣きたくなるくらい心地よい。
まどかが来てくれたのが嬉しい。
手を握ってくれるのが嬉しい。
「私じゃ無くってほむらちゃんが、だよ」
まどかがそう言って私の手を引っ張ってくれる。
温かいまどかの手が、泣きたくなるくらい心地よい。
まどかが来てくれたのが嬉しい。
手を握ってくれるのが嬉しい。
114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 23:28:55.54 ID:n6kqGrZ9o
笑ってくれるのが嬉しい。
「ほむらちゃん、笑ってくれたね」
「え?」
まどかが笑顔でそういった。
私…笑っているの?
「そんな…」
「ほむらちゃん、笑ってくれたね」
「え?」
まどかが笑顔でそういった。
私…笑っているの?
「そんな…」
115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 23:38:37.80 ID:n6kqGrZ9o
「うん? どうしたの?」
「まどか…」
「やっぱりほむらちゃんの笑顔って素敵だね」
私…笑っていいの?
「あ」
また、目から涙がこぼれる。
「まどか…」
「やっぱりほむらちゃんの笑顔って素敵だね」
私…笑っていいの?
「あ」
また、目から涙がこぼれる。
116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 23:44:20.96 ID:n6kqGrZ9o
さっきまで流していた涙とは違う涙が。
「ほむらちゃん…?」
「な、何でも無いの。目にゴミが入って、それで…」
涙を無理にぬぐおうとしたら、まどかがそっと私の腕を掴む。
「まどか…?」
「…うん。分かった。分かったよ、ほむらちゃん」
「ほむらちゃん…?」
「な、何でも無いの。目にゴミが入って、それで…」
涙を無理にぬぐおうとしたら、まどかがそっと私の腕を掴む。
「まどか…?」
「…うん。分かった。分かったよ、ほむらちゃん」
117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/20(金) 23:56:53.67 ID:n6kqGrZ9o
「あ、あの、手を…」
「ダメだよ。目が腫れちゃう。ちゃんと…」
そう言ってハンカチを取り出し、そっとぬぐってくれた。
「はい。これでおっけー。じゃ、また目にゴミが入らないうちに、お家に入ろう?」
「え、ええ」
「ウェヒヒ。何して遊ぼうかな?」
「ダメだよ。目が腫れちゃう。ちゃんと…」
そう言ってハンカチを取り出し、そっとぬぐってくれた。
「はい。これでおっけー。じゃ、また目にゴミが入らないうちに、お家に入ろう?」
「え、ええ」
「ウェヒヒ。何して遊ぼうかな?」
118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/21(土) 00:04:18.86 ID:5zxIQMGno
「あ、そう言えばDQXのテスターに合格しているからそれで遊びましょう」
「わー! すごーい! ほむらちゃんラッキーだね! やっぱりウェディで?」
「いえ、プクリポよ」
「あ、意外」
「可愛いのよ。子猫みたいで」
「ウェヒヒ。ほむらちゃんの方が可愛いけどね」
「わー! すごーい! ほむらちゃんラッキーだね! やっぱりウェディで?」
「いえ、プクリポよ」
「あ、意外」
「可愛いのよ。子猫みたいで」
「ウェヒヒ。ほむらちゃんの方が可愛いけどね」
119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/21(土) 00:10:14.29 ID:5zxIQMGno
「ほむっ!」
…思わずうれしがってしまったけど。
私ってほんと馬鹿。
どうしよう。
私、これから魔女になろうって…。
そう言えば、それに踏み切れなかったのって、テストが始まる度にキャップいくまでカンストしてたせいもあるのかしら。
…思わずうれしがってしまったけど。
私ってほんと馬鹿。
どうしよう。
私、これから魔女になろうって…。
そう言えば、それに踏み切れなかったのって、テストが始まる度にキャップいくまでカンストしてたせいもあるのかしら。
123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 00:30:10.11 ID:pvYGbGnDo
…どうすれば?
ええと、まどかと遊んで、それから帰るまでくらいなら…保つかしら?
いえ、保たせないと困る。
まどかに、私が魔女になるところなんて…。
でも、どうしてこんなタイミングで。
…いえ、もしかしたら、これこそ最後に一目まどかと会えたんだ、と思えば最高のご褒美だわ。
ええと、まどかと遊んで、それから帰るまでくらいなら…保つかしら?
いえ、保たせないと困る。
まどかに、私が魔女になるところなんて…。
でも、どうしてこんなタイミングで。
…いえ、もしかしたら、これこそ最後に一目まどかと会えたんだ、と思えば最高のご褒美だわ。
124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 00:35:58.03 ID:pvYGbGnDo
神様を信じる気は無いけど、感謝してしまいたくなった。
「おじゃましまー」
まどかが部屋の中に入りかけたとき。
「あ」
ちょ! ちょっと待って!
Wawawawaaaaait!
「おじゃましまー」
まどかが部屋の中に入りかけたとき。
「あ」
ちょ! ちょっと待って!
Wawawawaaaaait!
125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 00:40:00.40 ID:pvYGbGnDo
「……す?」
まどかの表情が固まる。
しまった。
本当にしまった。
「…ほむらちゃん、ちょっと部屋が…散らかってるよ?」
「ほむ…」
まどかの表情が固まる。
しまった。
本当にしまった。
「…ほむらちゃん、ちょっと部屋が…散らかってるよ?」
「ほむ…」
126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 00:46:19.03 ID:pvYGbGnDo
あの日以来全てにおいて気力が萎えていた。
部屋をまともに掃除する気も無くしていた。
食事なんてここ最近食事への欲求なんてろくに無く、あるとすればカロリーメイトやらソイジョイやらの全味をループすることばかりだったし…。
「えーと…」
「ご、ごめんなさい。だらしなくて…」
また、さっきまでの浮かれポンチな気分から一気に地の底へ堕ちた。
部屋をまともに掃除する気も無くしていた。
食事なんてここ最近食事への欲求なんてろくに無く、あるとすればカロリーメイトやらソイジョイやらの全味をループすることばかりだったし…。
「えーと…」
「ご、ごめんなさい。だらしなくて…」
また、さっきまでの浮かれポンチな気分から一気に地の底へ堕ちた。
127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 00:51:29.00 ID:pvYGbGnDo
どうして私はこうもつめが甘いのだろう。
まどかが、わざわざ遊びに来てくれたのに。
「…これだと、ここに後で…。うーん…」
まどかが眉間にしわをよせながら何かぶつぶつと言っている。
私の事を呆れているのだろう。
恥ずかしさより、申し訳ない気持ちで消えてしまいたくなる。
まどかが、わざわざ遊びに来てくれたのに。
「…これだと、ここに後で…。うーん…」
まどかが眉間にしわをよせながら何かぶつぶつと言っている。
私の事を呆れているのだろう。
恥ずかしさより、申し訳ない気持ちで消えてしまいたくなる。
128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 00:55:50.76 ID:pvYGbGnDo
「ほむらちゃん」
「ごめんなさいっ!」
「え?」
「え?」
「ど、どうして謝るの?」
「だ、だって、だらしない私を叱るつもりで…」
「ごめんなさいっ!」
「え?」
「え?」
「ど、どうして謝るの?」
「だ、だって、だらしない私を叱るつもりで…」
129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 01:00:41.60 ID:pvYGbGnDo
いえ、叱られるならまだいい。
叱るの言葉の意味には、まだ相手に対する希望があるから。
怖いのは、諦めの言葉を言われたとき。
諦めには、もう自分への興味が無いと言う意味があるから。
「うーん、それはまた改めて。今日はちょっと…。だからほむらちゃん、ちょっとお出かけしよう?」
「今から?」
叱るの言葉の意味には、まだ相手に対する希望があるから。
怖いのは、諦めの言葉を言われたとき。
諦めには、もう自分への興味が無いと言う意味があるから。
「うーん、それはまた改めて。今日はちょっと…。だからほむらちゃん、ちょっとお出かけしよう?」
「今から?」
130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 01:06:54.06 ID:pvYGbGnDo
「うん。まだ夜って程じゃないし、いいでしょ?」
「え、ええ。それは…」
「じゃあ決まりだね! ウェヒヒ! どこに行こうかな?」
まどかが笑いながら考えている。
どこへ連れていってくれるの?
公園のクレープ屋さん? ウインドウショッピング?
「え、ええ。それは…」
「じゃあ決まりだね! ウェヒヒ! どこに行こうかな?」
まどかが笑いながら考えている。
どこへ連れていってくれるの?
公園のクレープ屋さん? ウインドウショッピング?
131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 01:12:22.92 ID:pvYGbGnDo
どこでもいい。
でも、出来るなら、買い物がいい。
そして、まどかの手元に何か私が居た証を残したい。
ううん。
証、なんてたいそうな物はいいし、まどかの負担になる。
ただ、邪魔にならず、でも捨てられる心配の少ない物を…この先数ヶ月とかだけでもいいから、残したい。
でも、出来るなら、買い物がいい。
そして、まどかの手元に何か私が居た証を残したい。
ううん。
証、なんてたいそうな物はいいし、まどかの負担になる。
ただ、邪魔にならず、でも捨てられる心配の少ない物を…この先数ヶ月とかだけでもいいから、残したい。
132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/22(日) 01:16:05.24 ID:pvYGbGnDo
ずっと残る物は、後々まどかの負担になってしまうかもしれないから。
でも、少しだけ、我が儘をお願いしたい。
まどかの側に私は居られないけど、何か私の代わりを、まどかの側に、少しの間だけでも…。
そうすれば、私は心置きなく居なくなれる。
だから…。
「ほむらちゃん、また泣いてる」
でも、少しだけ、我が儘をお願いしたい。
まどかの側に私は居られないけど、何か私の代わりを、まどかの側に、少しの間だけでも…。
そうすれば、私は心置きなく居なくなれる。
だから…。
「ほむらちゃん、また泣いてる」
139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/23(月) 00:09:57.81 ID:wpVFHqDIo
「えっ…。あ、ごめんなさい…。また…」
「はい」
まどかがそっと私の涙をハンカチでぬぐってくれた。
また、勝手に一人で泣いていた。
まどかにまた余計な心配をかけてしまった。
嬉しいと思っていた心が一気に重くなる。
「はい」
まどかがそっと私の涙をハンカチでぬぐってくれた。
また、勝手に一人で泣いていた。
まどかにまた余計な心配をかけてしまった。
嬉しいと思っていた心が一気に重くなる。
140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/23(月) 00:14:53.87 ID:wpVFHqDIo
どうして私はこう…。
「ねぇ、公園に行こうよ」
まどかが私の手を取り、引っ張る。
「え、あ、そうね…」
「うん! 気分転換になるよ」
まどかの笑顔が眩しい。
「ねぇ、公園に行こうよ」
まどかが私の手を取り、引っ張る。
「え、あ、そうね…」
「うん! 気分転換になるよ」
まどかの笑顔が眩しい。
141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/23(月) 00:21:15.76 ID:wpVFHqDIo
それだけで、ソウルジェムの穢れがどんぶり三杯分くらいは浄化される気がした。
シュウウゥ…
…あれ? …気のせいよね?
サイケデリックな色彩の、そこかしこが歪んだ世界に、三人の少女が居た。
「そりゃあぁっ!」
「コポオォwwww(痛)」
青い衣装の少女が剣を振り回し、異形の魔女を切り裂く。
シュウウゥ…
…あれ? …気のせいよね?
サイケデリックな色彩の、そこかしこが歪んだ世界に、三人の少女が居た。
「そりゃあぁっ!」
「コポオォwwww(痛)」
青い衣装の少女が剣を振り回し、異形の魔女を切り裂く。
142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/23(月) 00:33:09.95 ID:wpVFHqDIo
「とどめっ!」
「フォヌカポォオオオォォォ(哀)」
奇妙としか言いようのない濁った悲鳴を上げ、魔女は消えた。
歪んだ世界が通常の世界に戻り、魔法少女達の舞台は終わる。
「…っと、これで魔女退治おしまい! グリーフシードもみっけ!」
さやかが地面で駒のように立っているグリーフシードを拾う。
「フォヌカポォオオオォォォ(哀)」
奇妙としか言いようのない濁った悲鳴を上げ、魔女は消えた。
歪んだ世界が通常の世界に戻り、魔法少女達の舞台は終わる。
「…っと、これで魔女退治おしまい! グリーフシードもみっけ!」
さやかが地面で駒のように立っているグリーフシードを拾う。
143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/23(月) 00:38:26.53 ID:wpVFHqDIo
「お疲れ様。なんだか奇妙な魔女だったわね」
マミがさやかに微笑んだ。
「ですよねー。草を生やしまくる魔女なんて…。なんか動きとかキモかったし」
「そうね。グリーフシードの模様も『(゚∀゚)』で、なんか倒したのにまだ馬鹿にされているみたいだわ…」
マミが複雑な表情で呟く。
「ま、とりあえず前よりは随分と、危なっかしさが減ったは減ったな」
杏子も、にやりと笑って言う。
マミがさやかに微笑んだ。
「ですよねー。草を生やしまくる魔女なんて…。なんか動きとかキモかったし」
「そうね。グリーフシードの模様も『(゚∀゚)』で、なんか倒したのにまだ馬鹿にされているみたいだわ…」
マミが複雑な表情で呟く。
「ま、とりあえず前よりは随分と、危なっかしさが減ったは減ったな」
杏子も、にやりと笑って言う。
144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/23(月) 00:48:29.36 ID:wpVFHqDIo
「へーんだ、ルーキー扱いも今のうちだよ。これからは頑張って一人前以上にばしばし魔女退治するんだから」
「分かってるって。仮にもワルプルギスを生き抜いたんだからな。ま、みんなの中で一番危なかったけどよ」
「まだ言うか!」
「そうね…」
「マミさんまでっ!」
マミが微笑み、そしてふっと悲しい表情を走らせる。
「分かってるって。仮にもワルプルギスを生き抜いたんだからな。ま、みんなの中で一番危なかったけどよ」
「まだ言うか!」
「そうね…」
「マミさんまでっ!」
マミが微笑み、そしてふっと悲しい表情を走らせる。
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/23(月) 00:55:42.60 ID:wpVFHqDIo
「ふふ。違うわ。そうじゃなくて、魔女の事よ」
ああ、とさやかと杏子が顔を見合わせた。
「魔女は…皮肉な事だけど、これだけ頑張っても、居なくなる気配は無いのよね。私達にとっては、これは、不本意だけど、有り難い事なの…かしら?」
グリーフシードは、例えでは無く、自分達魔法少女にとっての命の糧。
マミは複雑な表情で力なく笑った。
「…マミさん」
ああ、とさやかと杏子が顔を見合わせた。
「魔女は…皮肉な事だけど、これだけ頑張っても、居なくなる気配は無いのよね。私達にとっては、これは、不本意だけど、有り難い事なの…かしら?」
グリーフシードは、例えでは無く、自分達魔法少女にとっての命の糧。
マミは複雑な表情で力なく笑った。
「…マミさん」
146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/23(月) 00:59:53.49 ID:wpVFHqDIo
「有り難いことだよ、マミ。前はさぁ、いつか魔女は居なくなるかも、そうしたら、あたしたちは…なんて思っていたんだけど、なんだかなぁ、全然減らないんだよなぁ」
「だよねー。まぁ、波はあるけど、この街だけであたし達四人分のグリーフシードがなんとか間に合うくらいな状態だもん」
「あたしは別に、隣街の本当の縄張りがあるけどな。やらないぞ」
「って言うわりにはそこで手に入れたグリーフシードも譲ってくれたりするじゃん。もー、ツンデレめ」
「…うぜぇ」
「でも、あなたがこうして協力してくれるようになったのは本当に嬉しいの。この気持ちだは、裏表の無い、本心よ」
「だよねー。まぁ、波はあるけど、この街だけであたし達四人分のグリーフシードがなんとか間に合うくらいな状態だもん」
「あたしは別に、隣街の本当の縄張りがあるけどな。やらないぞ」
「って言うわりにはそこで手に入れたグリーフシードも譲ってくれたりするじゃん。もー、ツンデレめ」
「…うぜぇ」
「でも、あなたがこうして協力してくれるようになったのは本当に嬉しいの。この気持ちだは、裏表の無い、本心よ」
154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 00:18:27.22 ID:Gvc4Gldlo
「…知らねぇよ」
「照れ屋さんだねぇ」
さやかが杏子のほほを指でつつく。
「…マジうぜぇ」
杏子も、言葉では拒否しつつ、特にそれをはらう真似もしない。
「はいはい、そこまでにしましょ。とりあえず今日はもう魔女も使い魔も探せる範囲内では出なさそうだし、それに…そろそろ流石に心配だわ」
「照れ屋さんだねぇ」
さやかが杏子のほほを指でつつく。
「…マジうぜぇ」
杏子も、言葉では拒否しつつ、特にそれをはらう真似もしない。
「はいはい、そこまでにしましょ。とりあえず今日はもう魔女も使い魔も探せる範囲内では出なさそうだし、それに…そろそろ流石に心配だわ」
155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 00:23:28.08 ID:Gvc4Gldlo
マミが夜に近い空を仰ぎ見て呟く。
「あ…。ですよね」
さやかもマミと同じ方角の空を見上げて呟いた。
「なぁマミ、あいつ、あれ以来魔女狩りしてねぇ…って言うか、アレだろ? 無理っぽいんだろ?」
「ええ、そうよ」
「ほむらの時間停止は、極端に頑丈な奴が相手でもなけりゃ無敵レベルだったからなぁ」
「あ…。ですよね」
さやかもマミと同じ方角の空を見上げて呟いた。
「なぁマミ、あいつ、あれ以来魔女狩りしてねぇ…って言うか、アレだろ? 無理っぽいんだろ?」
「ええ、そうよ」
「ほむらの時間停止は、極端に頑丈な奴が相手でもなけりゃ無敵レベルだったからなぁ」
156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 00:28:21.06 ID:Gvc4Gldlo
「予告なしで本気で殺しに来たら、あたしら勝てないし」
「こら、二人とも暁美さんの事どう思ってるの?」
「いやいや、ほむらの能力がそれだけすごいって事ですよ」
「それだけに、無くなったらなぁ」
「暁美さん、物理的な攻撃が効く魔女や使い魔はいくらでもいるからって、そう言ってはいるけど…」
「夜中までずっと何か悩んでいるらしいってキュゥべえも言ってたしな」
「こら、二人とも暁美さんの事どう思ってるの?」
「いやいや、ほむらの能力がそれだけすごいって事ですよ」
「それだけに、無くなったらなぁ」
「暁美さん、物理的な攻撃が効く魔女や使い魔はいくらでもいるからって、そう言ってはいるけど…」
「夜中までずっと何か悩んでいるらしいってキュゥべえも言ってたしな」
157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 00:35:06.59 ID:Gvc4Gldlo
「『よくわからないけど、ほむほむと鳴きながら両手で白い物を何時間も振り回していたよ』とか言っていたけど…。一体何かしら?」
「多分、自分がふがいなくて何かに当たっていたんじゃないですか?」
「かもなぁ。あいつ、プライド高そうだし」
「いえ、それよりもほむほむ、の方が…」
「皮肉なもんですよね。まどかを助けたいが為に色々犠牲にしてきて、それが叶った途端にめぼしい力を失うなんて…」
「…そうだな。これこそ、因果って言うのかねぇ」
「多分、自分がふがいなくて何かに当たっていたんじゃないですか?」
「かもなぁ。あいつ、プライド高そうだし」
「いえ、それよりもほむほむ、の方が…」
「皮肉なもんですよね。まどかを助けたいが為に色々犠牲にしてきて、それが叶った途端にめぼしい力を失うなんて…」
「…そうだな。これこそ、因果って言うのかねぇ」
158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 00:39:17.50 ID:Gvc4Gldlo
「だからこそ、私が暁美さんの分のグリーフシードも確保しなくちゃいけない。…いいえ、違うわね。確保したいの」
「マミ…」
「頑張って頑張って、やっと幸せを掴んだ子が真っ先に絶望しなくちゃいけないなんて、絶対に間違っているわ!」
マミが拳を握り、誓うように呟く。
「義理でも恩義でも無いわ。私は、そうしたくて仕方が無い。私がそうしたいからするの」
「マミさん、私、じゃなくて私達って言ってくださいよ!」
「マミ…」
「頑張って頑張って、やっと幸せを掴んだ子が真っ先に絶望しなくちゃいけないなんて、絶対に間違っているわ!」
マミが拳を握り、誓うように呟く。
「義理でも恩義でも無いわ。私は、そうしたくて仕方が無い。私がそうしたいからするの」
「マミさん、私、じゃなくて私達って言ってくださいよ!」
159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 00:48:13.80 ID:Gvc4Gldlo
さやかがマミの横に立ち、えへん、と胸を張る。
「美樹さん…」
「あたしだってそうです! ほむらとは色々あったけど、今はもうかけがえのない親友! 友達じゃ無くって親友です! ね? 杏子」
「なんであたしに振るんだよ。…まぁ、仲間は仲間だけどな。知り合い以上には…」
杏子は頭を掻きながらそっぽを向いて言う。
「ふふ。暁美さんが聞いたら喜ぶわね」
「美樹さん…」
「あたしだってそうです! ほむらとは色々あったけど、今はもうかけがえのない親友! 友達じゃ無くって親友です! ね? 杏子」
「なんであたしに振るんだよ。…まぁ、仲間は仲間だけどな。知り合い以上には…」
杏子は頭を掻きながらそっぽを向いて言う。
「ふふ。暁美さんが聞いたら喜ぶわね」
165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 22:20:38.43 ID:Gvc4Gldlo
「まどかの事があるからとかでもありませんよ。あたしの気持ちとして、あいつは親友なんですから! あー見えて可愛いところあるって分かったし」
「あら、どんなところ?」
「この前体育の時、なんか、たまたまちらっと見えたうなじが可愛くって何となく舐めたんですけどね」
「…舐めたのかよ」
「さらっと言ったわね」
「そしたら『ひにゃあ!』とか言って飛び上がって。涙目で。で、あ、こいつ可愛いって」
「あら、どんなところ?」
「この前体育の時、なんか、たまたまちらっと見えたうなじが可愛くって何となく舐めたんですけどね」
「…舐めたのかよ」
「さらっと言ったわね」
「そしたら『ひにゃあ!』とか言って飛び上がって。涙目で。で、あ、こいつ可愛いって」
166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 22:31:11.04 ID:Gvc4Gldlo
さやかがけらけらと笑う。
「ま、その後まどかに腰の入ったいいのを脇腹に貰いましたけど」
「あらまぁ」
「へぇ」
「ちなみに脾臓がアレになって、変身して治癒しないと危なかったですハイ」
「あらまぁ…」
「ま、その後まどかに腰の入ったいいのを脇腹に貰いましたけど」
「あらまぁ」
「へぇ」
「ちなみに脾臓がアレになって、変身して治癒しないと危なかったですハイ」
「あらまぁ…」
168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 22:39:16.92 ID:Gvc4Gldlo
「へぇ…」
「二日程、ほむら共々視線も合わせてくれませんでしたハイ」
「あら…まぁ…」
「へ、へぇ…」
「まどかからあんな表情で舌打ちされたのは初めてでした…グス」
「……」
「二日程、ほむら共々視線も合わせてくれませんでしたハイ」
「あら…まぁ…」
「へ、へぇ…」
「まどかからあんな表情で舌打ちされたのは初めてでした…グス」
「……」
169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 22:51:25.68 ID:Gvc4Gldlo
「……」
「と…ま、まぁ、とにかく色々あってですねあたしは元からこの力正義のためにって思って得ましただから今はほむらも救いたいって思う! て言うか救わせてくださいたのんますって感じですマジでリアルで何が辛いってまどかからの感情の籠もってない氷の視線が辛いんですそれだけでソウルジェムがマジでゴボゴボ濁るんですいやホントに! ほむらがむしろ気にしてないからって本気で哀れんでくれるのがうれし切ないんです! あああああああの視線思い出しちゃったあああああああ!」
「…が、がんばりましょ」
「と…ま、まぁ、とにかく色々あってですねあたしは元からこの力正義のためにって思って得ましただから今はほむらも救いたいって思う! て言うか救わせてくださいたのんますって感じですマジでリアルで何が辛いってまどかからの感情の籠もってない氷の視線が辛いんですそれだけでソウルジェムがマジでゴボゴボ濁るんですいやホントに! ほむらがむしろ気にしてないからって本気で哀れんでくれるのがうれし切ないんです! あああああああの視線思い出しちゃったあああああああ!」
「…が、がんばりましょ」
171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 23:01:56.10 ID:Gvc4Gldlo
「もう、ほむらからのお礼も、感謝も、望みません。て言うか疎まれたってやめませんよ! あたしはただ、自分の信念に従うだけです。それがあたしの正義! あははははははは! 痛みなんて消しちゃえば感じないんですよあははははは!」
「聞こえないふりして開き直ってるぞこいつ」
「ええと…み、美樹さん、頼もしいわね」
「へへっ。嫌がったら、無理矢理にでもソウルジェム浄化しちゃる!」
「聞こえないふりして開き直ってるぞこいつ」
「ええと…み、美樹さん、頼もしいわね」
「へへっ。嫌がったら、無理矢理にでもソウルジェム浄化しちゃる!」
172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/24(火) 23:06:11.66 ID:Gvc4Gldlo
さやかは拳をポキポキと鳴らして、にやりとほくそ笑みながら言った。
(どっちかって言うとこいつに浄化が必要そうだな…)
「美樹さん、それはいいけど、鹿目さんに次は骨を砕かれないようにね。脊髄とか」
「…ぜ、善処します」ガクブル
「やれやれ、おせっかいな魔法少女の多い街だな、ここは」
「あんただってその一人のくせに」
(どっちかって言うとこいつに浄化が必要そうだな…)
「美樹さん、それはいいけど、鹿目さんに次は骨を砕かれないようにね。脊髄とか」
「…ぜ、善処します」ガクブル
「やれやれ、おせっかいな魔法少女の多い街だな、ここは」
「あんただってその一人のくせに」
186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/26(木) 23:21:57.31 ID:6p4/ADq9o
「別に…。あたしはただ、そういう気分にさせられたってだけさ」
「ふーん」
「あいつの為じゃ無いよ。自分がそうしたいって…そう、思っただけだ。自分の為の勝手な行動さ」
「それこそ、あたしと一緒じゃん」
「うっさい! とにかく! ワルプルギスを倒したって確認できたあの時…。そうだよ、あの時さ」
不意に杏子が空を仰いで呟く。
「ふーん」
「あいつの為じゃ無いよ。自分がそうしたいって…そう、思っただけだ。自分の為の勝手な行動さ」
「それこそ、あたしと一緒じゃん」
「うっさい! とにかく! ワルプルギスを倒したって確認できたあの時…。そうだよ、あの時さ」
不意に杏子が空を仰いで呟く。
187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/26(木) 23:29:56.10 ID:6p4/ADq9o
「…あの、クールで、時には冷血漢とすら思えていたあいつがさ…」
「ええ…」
「あの時ね」
「あいつが、あんなにみっともなく、顔ぐしゃぐしゃにして、泣きすぎて咽せちまうくらい思い切り、赤ん坊みたいにびーびー大泣きする所、見ちまったらさ…」
「…杏子」
「…っち! へっ。変だな。な…なんか、思い出しただけで…。おかしい…な…」グス…
「ええ…」
「あの時ね」
「あいつが、あんなにみっともなく、顔ぐしゃぐしゃにして、泣きすぎて咽せちまうくらい思い切り、赤ん坊みたいにびーびー大泣きする所、見ちまったらさ…」
「…杏子」
「…っち! へっ。変だな。な…なんか、思い出しただけで…。おかしい…な…」グス…
188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/26(木) 23:44:41.78 ID:6p4/ADq9o
「うん! うん! ほむらが、あたしたちがボロボロになりながらも生きているって分かったあの時、駆け寄ってきて思いっきり抱きしめて、そして、あたしに、さやかさやかって、何度も何度も名前を呼んで…うぅ…」グシュン
「あたしにだって…ありがとうって、何度も何度も、跪くようにして…そんな事…する必要…ないのに…ひっく…」
「私だってそうよ…。私の事、あの時、巴さん、巴さんって…私、やりましたって…。子供が母親に言うみたいに…必死に…必死に…う…うええぇん…」
「…分かる。分かるよ! そうだよなマミ! あれがほむらの、本当の姿…だったんだよ…」グシュン
「ええ…。暁美さんは、ずっとずっと、あんなふうに泣きたくて、仕方なかったのよ…うぅ…」チーン
「あたしにだって…ありがとうって、何度も何度も、跪くようにして…そんな事…する必要…ないのに…ひっく…」
「私だってそうよ…。私の事、あの時、巴さん、巴さんって…私、やりましたって…。子供が母親に言うみたいに…必死に…必死に…う…うええぇん…」
「…分かる。分かるよ! そうだよなマミ! あれがほむらの、本当の姿…だったんだよ…」グシュン
「ええ…。暁美さんは、ずっとずっと、あんなふうに泣きたくて、仕方なかったのよ…うぅ…」チーン
189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/26(木) 23:57:30.18 ID:6p4/ADq9o
「みんなで、必死に笑顔になって、おまえは生きているぞって、みんな生きているぞって励ましたんだよな…」
「うん…。あたしも、励ましているつもりが、逆にほむらがあんなに一生懸命に泣いているのを見て、自分はゾンビなんかじゃない、ちゃんと生きているんだって、そう思えたよ…」
「そうよ! そうよね! ゾンビはあんな風に泣かないわよね!」
「だよな! 腕がもげようが心臓が止まろうがマミろうが、回復さえ出来ればいいんだから、あたしたちは生きているんだよな!」
「……」
「……」
「うん…。あたしも、励ましているつもりが、逆にほむらがあんなに一生懸命に泣いているのを見て、自分はゾンビなんかじゃない、ちゃんと生きているんだって、そう思えたよ…」
「そうよ! そうよね! ゾンビはあんな風に泣かないわよね!」
「だよな! 腕がもげようが心臓が止まろうがマミろうが、回復さえ出来ればいいんだから、あたしたちは生きているんだよな!」
「……」
「……」
191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/27(金) 00:04:05.77 ID:iedlGXi5o
「…ゴメン」
「ごほん。ええと、そ、そうですよ! ほむら、あの時、泣きながら感謝してましたけど…感謝されるどころか、逆にあの時はほむらに感謝しましたよ…ほんとに…」
「あの時、みんなが一つになれた気がするわ…」
「…ですよね…えぐ…。ほむら…。大丈夫かなぁ。今何しているのかなぁ…」
嗚咽が治まり、鼻をすすりながらさやかが呟く。
「そうね。さ、そろそろ行きましょ。暁美さんが心配だわ」
「ごほん。ええと、そ、そうですよ! ほむら、あの時、泣きながら感謝してましたけど…感謝されるどころか、逆にあの時はほむらに感謝しましたよ…ほんとに…」
「あの時、みんなが一つになれた気がするわ…」
「…ですよね…えぐ…。ほむら…。大丈夫かなぁ。今何しているのかなぁ…」
嗚咽が治まり、鼻をすすりながらさやかが呟く。
「そうね。さ、そろそろ行きましょ。暁美さんが心配だわ」
192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/27(金) 00:08:44.76 ID:iedlGXi5o
「はい!」
「でも、今更だけど、素直に受け取るかねぇ、これ…」
「さっきも言ったけど、受け取らなかったら、無理矢理にでも使わせるよ。言っちゃアレだけど今のほむらなら勝てる!」
「そうね。弱くなった自分を認めるのはつらい事だと思うけど…。これからは、強がらないで素直に頼って欲しいわ。命が掛かっているのに、遠慮なんて不要だもの」
「意固地な所は変わらないからなぁ」
「独りで思い詰めてないといいけど…」
「でも、今更だけど、素直に受け取るかねぇ、これ…」
「さっきも言ったけど、受け取らなかったら、無理矢理にでも使わせるよ。言っちゃアレだけど今のほむらなら勝てる!」
「そうね。弱くなった自分を認めるのはつらい事だと思うけど…。これからは、強がらないで素直に頼って欲しいわ。命が掛かっているのに、遠慮なんて不要だもの」
「意固地な所は変わらないからなぁ」
「独りで思い詰めてないといいけど…」
193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/27(金) 00:13:04.15 ID:iedlGXi5o
「あいつ、あんな性格だし、落ち込んじゃって、食事もろくに取ってなさそうですよね」
「ほむらちゃん、クレープおいしいね!」
「ええ。まどか、こっちも食べる?」
「ウェヒヒ。四つもあるから一緒にゆっくり食べよう」
「クレープでお腹いっぱいなんて初めてだわ…」ケプ
「ほむらちゃん、クレープおいしいね!」
「ええ。まどか、こっちも食べる?」
「ウェヒヒ。四つもあるから一緒にゆっくり食べよう」
「クレープでお腹いっぱいなんて初めてだわ…」ケプ
200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/28(土) 23:17:34.60 ID:Vbl/qfwTo
「お夕飯が心配だね」
「…きっと、これが最後の…」
「え?」
「う、ううん! そ、そうね。気をつけましょう」
「うん。それにしてもおいしー!」
「ほんとう、ここのクレープ屋さん、こんなにおいしかったかしら?」
「…きっと、これが最後の…」
「え?」
「う、ううん! そ、そうね。気をつけましょう」
「うん。それにしてもおいしー!」
「ほんとう、ここのクレープ屋さん、こんなにおいしかったかしら?」
201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/28(土) 23:35:54.63 ID:Vbl/qfwTo
「私はどうして美味しいか知っているよ」
「あら、聞かせて欲しいわ」
「分からない? ふふ、ほむらちゃんも美味しいって事は、分かっている筈なんだけどなぁ…」
「もう、意地悪しないで教えて欲しいわ」
「ウェヒヒ。宿題にしちゃおーっと」
「まどかったら…」
「あら、聞かせて欲しいわ」
「分からない? ふふ、ほむらちゃんも美味しいって事は、分かっている筈なんだけどなぁ…」
「もう、意地悪しないで教えて欲しいわ」
「ウェヒヒ。宿題にしちゃおーっと」
「まどかったら…」
202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/28(土) 23:42:27.26 ID:Vbl/qfwTo
「でもね、ほむらちゃん」
「え」
「宿題だから、明日も逢ってくれないと駄目なんだからね」
「毎日宿題出しちゃうよ。だから、ほむらちゃんは次の日に絶対に私に逢って、それから一緒に答合わせをするの」
「まどか…」
「え」
「宿題だから、明日も逢ってくれないと駄目なんだからね」
「毎日宿題出しちゃうよ。だから、ほむらちゃんは次の日に絶対に私に逢って、それから一緒に答合わせをするの」
「まどか…」
203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/28(土) 23:49:36.99 ID:Vbl/qfwTo
「正解ならなでなでして次の問題。間違っていたら追試だからさらに宿題が増えて、そうして毎日毎日、ほむらちゃんは私に逢わなくちゃ駄目なんだよ?」
まどかの瞳から目を離せない。
「私に逢って、さやかちゃん達に会って、みんなに会うの。ずっと、ずっとだよ。たまに遅刻しちゃったりしたら、それは仕方ないけど、でもね、ほむらちゃんは私とずっとずっと逢い続けるんだよ。必ず! 居なくなるなんて…駄目なんだからね」
まどかの柔らかな微笑み。その瞳の中に、真っ直ぐにほむらを見つめる強い決意が見えた。
「……」
まどかの瞳から目を離せない。
「私に逢って、さやかちゃん達に会って、みんなに会うの。ずっと、ずっとだよ。たまに遅刻しちゃったりしたら、それは仕方ないけど、でもね、ほむらちゃんは私とずっとずっと逢い続けるんだよ。必ず! 居なくなるなんて…駄目なんだからね」
まどかの柔らかな微笑み。その瞳の中に、真っ直ぐにほむらを見つめる強い決意が見えた。
「……」
204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/28(土) 23:55:33.11 ID:Vbl/qfwTo
ほむらの顔に思わず緊張が走る。
自分の心を、奥底まで見透かされた気がした。
この大人しくて優しい少女を一瞬怖いとすら思える程の、強さと決意の光がその瞳の中に見えた。
「まどか…」
ああ、どうしてあなたはこんなに強いの。
魔法少女かどうかなんて関係ない。
自分の心を、奥底まで見透かされた気がした。
この大人しくて優しい少女を一瞬怖いとすら思える程の、強さと決意の光がその瞳の中に見えた。
「まどか…」
ああ、どうしてあなたはこんなに強いの。
魔法少女かどうかなんて関係ない。
205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 00:01:27.86 ID:Ml3L5yLVo
この子は、こんなにも強い意思を、自我を、信念を持っている。
これこそが、強さ。
人としての強さなんだ。
それなのに。
それなのに。
それに比べて、この私の弱さは…。
これこそが、強さ。
人としての強さなんだ。
それなのに。
それなのに。
それに比べて、この私の弱さは…。
206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 00:11:28.02 ID:Ml3L5yLVo
敵わない。
ほんとうに。
でも、だからこそ、あなたが生きてくれて良かった。
私は、それを看取れさえすれば後は…。
「ほむらちゃん」
「え…。あ」
ほんとうに。
でも、だからこそ、あなたが生きてくれて良かった。
私は、それを看取れさえすれば後は…。
「ほむらちゃん」
「え…。あ」
207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 00:16:29.43 ID:Ml3L5yLVo
いつの間にか頬に涙がつたっていた。
「もう、どうしてそんなに泣き虫さんになっちゃったの? 前はあんなに凛々しかったのになぁ…。勿論、今のほむらちゃんも保護欲をいい具合にかき立ててくれるけどね」
…後半がなんだか妙な気がしたけど気のせいね。
「…ご、ごめんなさい。また、いつの間にか私ったら…」
「さっきもだったけど…。ほむらちゃん、私が逢うその前から泣いていたんだよね?」
「そ、そんな事は…」
「もう、どうしてそんなに泣き虫さんになっちゃったの? 前はあんなに凛々しかったのになぁ…。勿論、今のほむらちゃんも保護欲をいい具合にかき立ててくれるけどね」
…後半がなんだか妙な気がしたけど気のせいね。
「…ご、ごめんなさい。また、いつの間にか私ったら…」
「さっきもだったけど…。ほむらちゃん、私が逢うその前から泣いていたんだよね?」
「そ、そんな事は…」
215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 23:07:47.26 ID:croYrD5Qo
「逢ったとき、もう目が真っ赤だったよ? でしょ? ほむらちゃんのそんなところ、見逃すわけ無いよ」
「…うん」
ああ。
もう、本当に何も隠せない。
ほむらの口調は弱い頃の自分に戻っていた。
「あのね」
「…うん」
ああ。
もう、本当に何も隠せない。
ほむらの口調は弱い頃の自分に戻っていた。
「あのね」
216: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 23:13:18.58 ID:croYrD5Qo
「…うん」
「私、知ってるよ」
「……」
「最近、ほむらちゃんが魔女退治してないのって…」
「……」
「さやかちゃんたちに、遠慮しているんでしょ」
「私、知ってるよ」
「……」
「最近、ほむらちゃんが魔女退治してないのって…」
「……」
「さやかちゃんたちに、遠慮しているんでしょ」
217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 23:24:20.09 ID:croYrD5Qo
「…うん」
「それって、さやかちゃん達は喜んでないと思うよ」
「…うん」
「それに、学校に最近遅刻ばっかりなのって…」
「……」
「ちい散歩見てから学校に来るからでしょ」
「それって、さやかちゃん達は喜んでないと思うよ」
「…うん」
「それに、学校に最近遅刻ばっかりなのって…」
「……」
「ちい散歩見てから学校に来るからでしょ」
219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 23:31:04.47 ID:croYrD5Qo
「…う、うん」
「若大将じゃあ、いろいろな意味で駄目だって納得出来ないのは分かるけど、今は回復をお祈りしよう」
「うん…」
「それからね」
「うん」
「ずっとクレープを頬張ってるからって、うん、だけだとなんだか良く分かんないよ?」
「若大将じゃあ、いろいろな意味で駄目だって納得出来ないのは分かるけど、今は回復をお祈りしよう」
「うん…」
「それからね」
「うん」
「ずっとクレープを頬張ってるからって、うん、だけだとなんだか良く分かんないよ?」
220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 23:36:41.20 ID:croYrD5Qo
「ほへんなはい」
「食いしん坊さんなんだからぁ、もう。じゃ、食べちゃおっか」マドマド
「…ん…」ホムホム
「ほむらちゃん、はい、あーんして」
「あーん…」
「ほむらちゃんもちょうだい。あーん」
「食いしん坊さんなんだからぁ、もう。じゃ、食べちゃおっか」マドマド
「…ん…」ホムホム
「ほむらちゃん、はい、あーんして」
「あーん…」
「ほむらちゃんもちょうだい。あーん」
221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 23:44:40.61 ID:croYrD5Qo
「うん、はい、あーん」
「あーん。ん、おいしいね」
「うん、美味しいわ。本当に」
「……」
微笑むほむらの表情を、まどかちらりと見つめる。
「あのね…。私、何となく思うの。まどかのおかげなんだって…」
「あーん。ん、おいしいね」
「うん、美味しいわ。本当に」
「……」
微笑むほむらの表情を、まどかちらりと見つめる。
「あのね…。私、何となく思うの。まどかのおかげなんだって…」
222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 23:50:23.48 ID:croYrD5Qo
「ふふ。何が?」
「このクレープが美味しいのは…まどかと食べているから。だから、こんなに美味しいんだって…」
「ほむらちゃん」
まどかが不意に真面目な表情でほむらを見つめる。
「え…。あ、あの…ち、違っ…?」
「明日の宿題の答を先に出しちゃ駄目だよぉ。当たりだけど」
「このクレープが美味しいのは…まどかと食べているから。だから、こんなに美味しいんだって…」
「ほむらちゃん」
まどかが不意に真面目な表情でほむらを見つめる。
「え…。あ、あの…ち、違っ…?」
「明日の宿題の答を先に出しちゃ駄目だよぉ。当たりだけど」
223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/29(日) 23:56:27.01 ID:croYrD5Qo
にっこりと、満足げに微笑んで言うまどか。
「え? あ、そ、そうなの? …いいの?」
「ティヒヒ。大正解だよ。普通に食べて美味しいけど、ほむらちゃんと一緒だからもっともっと美味しくなるの。私がそうなんだよ。ほむらちゃんもちゃあんと、そう思ってくれていたんだね」
「…まどか」
まどか…。そんなに私の事を気にかけてくれて…。
泣いては駄目だけど、また涙が出そうになった。
「え? あ、そ、そうなの? …いいの?」
「ティヒヒ。大正解だよ。普通に食べて美味しいけど、ほむらちゃんと一緒だからもっともっと美味しくなるの。私がそうなんだよ。ほむらちゃんもちゃあんと、そう思ってくれていたんだね」
「…まどか」
まどか…。そんなに私の事を気にかけてくれて…。
泣いては駄目だけど、また涙が出そうになった。
224: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/30(月) 00:01:15.03 ID:yYAJ53pOo
「で、ご褒美をあげたいんだけど…」
そんな私の顔を見ていたまどかが、ふと呟いて眉根を寄せた。
「うーん…ほむらちゃん、食べ方お行儀いいし…」
「え?」
「と言う訳で」
よくわからない、私がそう思っているうちに、まどかがぱくりとクレープを頬張り、自分の口にクリームをはみ出させた。
そんな私の顔を見ていたまどかが、ふと呟いて眉根を寄せた。
「うーん…ほむらちゃん、食べ方お行儀いいし…」
「え?」
「と言う訳で」
よくわからない、私がそう思っているうちに、まどかがぱくりとクレープを頬張り、自分の口にクリームをはみ出させた。
225: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/04/30(月) 00:09:15.36 ID:yYAJ53pOo
「あ、まどか、口に…」
「ほむらちゃん、あっちにキュウべぇ」
「!」
「そいや」
驚いた私が向こうに顔を向けたその瞬間、まどかが突然、私の頬に唇を思い切り押しつけりゅっ!
「ひゃいっ?!」
「ほむらちゃん、あっちにキュウべぇ」
「!」
「そいや」
驚いた私が向こうに顔を向けたその瞬間、まどかが突然、私の頬に唇を思い切り押しつけりゅっ!
「ひゃいっ?!」
235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/02(水) 23:31:43.87 ID:79GFaV8ko
「ウェヒヒ。どう?」
「どっどど…どうって…? そ、その…あの…今、どど、どうして…ほ、ほっぺにちゅって…」
「んーとね、ほむらちゃんのほっぺにクリームがくっついていたのを舌でねぶり取ろうと思って」
「ねぶ?! って言うか…つっ…。つつ、ついて、無かったん…だ…けど…。それに、『そいや』って…」
「まぁまぁ、結果と手段が逆転しただけだから些細な事だよ。ウェヒヒヒヒ。大宇宙のエントロピーの増大に比べればね」
「どっどど…どうって…? そ、その…あの…今、どど、どうして…ほ、ほっぺにちゅって…」
「んーとね、ほむらちゃんのほっぺにクリームがくっついていたのを舌でねぶり取ろうと思って」
「ねぶ?! って言うか…つっ…。つつ、ついて、無かったん…だ…けど…。それに、『そいや』って…」
「まぁまぁ、結果と手段が逆転しただけだから些細な事だよ。ウェヒヒヒヒ。大宇宙のエントロピーの増大に比べればね」
236: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/02(水) 23:47:38.86 ID:79GFaV8ko
「…あ、あの…。でも、今…その、クリームのついた口で…。だ、だから、今、まだ…クリームが私のほっぺにあるんだけど…」
「おっとぉ! ほむらちゃんのほっぺにクリームがべっとりと! これは何と言う僥倖」
「ぎょ?!」
「それじゃ改めて…」
「まま、まどかぁっ! ま、待って! あのあの! ちょっ!」
「大丈夫れろれろ大丈夫れろれろ」
「おっとぉ! ほむらちゃんのほっぺにクリームがべっとりと! これは何と言う僥倖」
「ぎょ?!」
「それじゃ改めて…」
「まま、まどかぁっ! ま、待って! あのあの! ちょっ!」
「大丈夫れろれろ大丈夫れろれろ」
237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/02(水) 23:53:09.61 ID:79GFaV8ko
「ひゃうっ?! なっ! なな…何をっ?! あひ…。まど…あんっ! や…やめ…」
「ここで決めなきゃ女が廃る!」
「それ色々ちが…あひ」
「ほっぺぷにぷにーれるれるれるー」
「だ、だめ…。あっ…。や…。も、もう…ほっぺ、きれいだか…あん」
「それじゃつぎは綺麗にしたごほうびもらおーっと」
「ここで決めなきゃ女が廃る!」
「それ色々ちが…あひ」
「ほっぺぷにぷにーれるれるれるー」
「だ、だめ…。あっ…。や…。も、もう…ほっぺ、きれいだか…あん」
「それじゃつぎは綺麗にしたごほうびもらおーっと」
238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/02(水) 23:59:42.75 ID:79GFaV8ko
「え」
まどかが逃げようとする私に背後からのしかかる。
そして、背中から抱きつき、うなじにかじりついて私の匂いを嗅ぎはじめた。
本当に、言葉通り齧り付きながら。
「うーんいい香りだよほむらちゃんくんかくんかすりすりすりはみはみあむあむ」
「ひああっ!」
まどかが逃げようとする私に背後からのしかかる。
そして、背中から抱きつき、うなじにかじりついて私の匂いを嗅ぎはじめた。
本当に、言葉通り齧り付きながら。
「うーんいい香りだよほむらちゃんくんかくんかすりすりすりはみはみあむあむ」
「ひああっ!」
239: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/03(木) 00:05:16.39 ID:ssp0ut2/o
気持ちい…じゃなくて恥ずかしい…。
そ、それに…。
この格好…。もしかして、傍から見たら犬が…その…ああいうコトしている時の格好に…。
あううううう…。
「ウェヒヒー。ほむらちゃんのうなじは私のものだよー」
「ま、まだ気にしていたの?!」
そ、それに…。
この格好…。もしかして、傍から見たら犬が…その…ああいうコトしている時の格好に…。
あううううう…。
「ウェヒヒー。ほむらちゃんのうなじは私のものだよー」
「ま、まだ気にしていたの?!」
240: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/03(木) 00:10:05.50 ID:ssp0ut2/o
「気にしていたよ。しっかり上書きしておかないとね」
「うわ…って…あひっ!」
ま、まどかの舌が…! わ、私の、うなじを更に…。あ、あのっ! か、髪も咥えてない? 引っ張ってない? き、汚いから! だめっ!
「ウェヒヒヒー。ほむらちゃんの首筋にちっちゃいほくろみっけ。あ、星形だ」
「そっ…それは嘘よね?」
「嘘だけどほくろはあるよ。ここここ。れろれろれー」
「うわ…って…あひっ!」
ま、まどかの舌が…! わ、私の、うなじを更に…。あ、あのっ! か、髪も咥えてない? 引っ張ってない? き、汚いから! だめっ!
「ウェヒヒヒー。ほむらちゃんの首筋にちっちゃいほくろみっけ。あ、星形だ」
「そっ…それは嘘よね?」
「嘘だけどほくろはあるよ。ここここ。れろれろれー」
241: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/03(木) 00:14:46.45 ID:ssp0ut2/o
「ほ、ほくろなめないれえぇ…」
「『らめぇ』、は肯定の意味と見なします。れろれろれろはみはみはみ」
「ちょ…だか…あん…。ほんとに…だめぇ…」
だ…だって…ほら。けはいが…まじょの…けはい…が…。
「……」
!
「『らめぇ』、は肯定の意味と見なします。れろれろれろはみはみはみ」
「ちょ…だか…あん…。ほんとに…だめぇ…」
だ…だって…ほら。けはいが…まじょの…けはい…が…。
「……」
!
249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/04(金) 23:46:57.99 ID:2RE6xVNTo
魔女!?
そう、間違い無い!
これは魔女の気配!
「まど」
もう戯れている暇は無い。
ちょっと惜しいけど。
そう、間違い無い!
これは魔女の気配!
「まど」
もう戯れている暇は無い。
ちょっと惜しいけど。
250: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 00:07:25.39 ID:6dNy5xEZo
まどかを守らなければ。
私は仮にも魔法少女。
人である、か弱きまどかを守らなければならない。
まどかを守…。
振り向いたら次の瞬間私は仰向けに押し倒されていた。
何なの?!
私は仮にも魔法少女。
人である、か弱きまどかを守らなければならない。
まどかを守…。
振り向いたら次の瞬間私は仰向けに押し倒されていた。
何なの?!
251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 00:14:10.06 ID:6dNy5xEZo
何?
まどかのこの、カミソリのような体裁きは?!
「あむあむ」
お願いだから振り向いたからって鎖骨を甘噛みするのをやめて。
その為に向き合ったんじゃ無いの。
も、もしかして今日のまどかがどこかおかしいのは魔女の口づけ?
まどかのこの、カミソリのような体裁きは?!
「あむあむ」
お願いだから振り向いたからって鎖骨を甘噛みするのをやめて。
その為に向き合ったんじゃ無いの。
も、もしかして今日のまどかがどこかおかしいのは魔女の口づけ?
252: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 00:19:58.14 ID:6dNy5xEZo
いえ、最近なんか色々な意味でおかしい気はしていたけど…。
じ、じゃなくて! まどかがおかしいなんてそんな事無い!
で、でも…。
魔女の口づけって身体能力に影響なんてした?
とにかくお願い離れてまどか。
さっきも思ったけど、私達スカートよ?!
じ、じゃなくて! まどかがおかしいなんてそんな事無い!
で、でも…。
魔女の口づけって身体能力に影響なんてした?
とにかくお願い離れてまどか。
さっきも思ったけど、私達スカートよ?!
253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 00:24:14.76 ID:6dNy5xEZo
今、後ろから誰かに見られたら大変なことになるから!
「待っ…待ってまどか! 魔女が現れたの!」
「ウェヒー。ギャラリーが増えちゃ…え?」
まどかのきょとんとした顔。
あ、口づけ受けてないわ、これ。
同時に、周囲の空間が歪みだした。
「待っ…待ってまどか! 魔女が現れたの!」
「ウェヒー。ギャラリーが増えちゃ…え?」
まどかのきょとんとした顔。
あ、口づけ受けてないわ、これ。
同時に、周囲の空間が歪みだした。
254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 00:30:11.55 ID:6dNy5xEZo
間に合わない。
周囲は一瞬で結界へと姿を変えた。
悪趣味な、人を不安と恐怖に陥れるおぞましい結界。
ここもそう。
ほら、どピンクな、おかしな回転するベッドやバスタブ、スポットライトがそぞろ並…。
え?
周囲は一瞬で結界へと姿を変えた。
悪趣味な、人を不安と恐怖に陥れるおぞましい結界。
ここもそう。
ほら、どピンクな、おかしな回転するベッドやバスタブ、スポットライトがそぞろ並…。
え?
255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 00:39:38.87 ID:6dNy5xEZo
「なに…ここ」
思わず呟く。
「○○○?」
よく設定忘れられてるけど中学生がさらりとそう言う事言っちゃ駄目っ!
「と、とにかく! この気配は使い魔じゃ無い! まどか! 離れないで!」
「うん!」
思わず呟く。
「○○○?」
よく設定忘れられてるけど中学生がさらりとそう言う事言っちゃ駄目っ!
「と、とにかく! この気配は使い魔じゃ無い! まどか! 離れないで!」
「うん!」
257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 00:47:30.66 ID:6dNy5xEZo
うん、抱きついてあちこちに手を入れてって意味じゃなかったのだけどそんなの些細な事に思えてきたからもういいわ。
私のグリーフシードはもう限界の筈。
今変身して戦ったら、多分、もう…。
でも、まどかを救えて最期を迎えられるというのなら、それこそ本望。
この気配は強い。
きっとみんなも気付いてくれる。
私のグリーフシードはもう限界の筈。
今変身して戦ったら、多分、もう…。
でも、まどかを救えて最期を迎えられるというのなら、それこそ本望。
この気配は強い。
きっとみんなも気付いてくれる。
263: グリーフシードじゃなくてソウルジェムの間違いがお送りします 2012/05/05(土) 22:22:49.20 ID:mN1DzYcXo
それなら、私がこの後に魔女になっても、きっと…。
みんなも魔法少女の最期は知っている。
その悲しさも。
それなら、きっと私の事をどうすればいいか、分かってくれる筈…。
「ほむらちゃん?」
まどかが私の顔を心配そうにのぞき込む。上着の裾から腕を突っ込んで指をブラの中に差し込みながら。
みんなも魔法少女の最期は知っている。
その悲しさも。
それなら、きっと私の事をどうすればいいか、分かってくれる筈…。
「ほむらちゃん?」
まどかが私の顔を心配そうにのぞき込む。上着の裾から腕を突っ込んで指をブラの中に差し込みながら。
264: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 22:28:54.78 ID:mN1DzYcXo
もうそこらへんは気にしない事にしよう。
大丈夫。
貴方は私が守る。
私はまどかに微笑み、そして指輪に力を込めた。
現れたソウルジェムを見ないようにして握りしめる。
どれだけ穢れているのかを見るのが怖いから。
大丈夫。
貴方は私が守る。
私はまどかに微笑み、そして指輪に力を込めた。
現れたソウルジェムを見ないようにして握りしめる。
どれだけ穢れているのかを見るのが怖いから。
265: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 22:33:44.43 ID:mN1DzYcXo
今魔女にならない事だけを願い、気合いを込める。
ソウルジェムが光を放ち、私の体を包みこんだ。
まどか、この命、あなたの為に…。
「…変身」
ソウルジェムから力が溢れ、私の体を光で包む。
私の唯一の武器、いいえ、防具の盾がずしりと腕に重くのしかかる。
ソウルジェムが光を放ち、私の体を包みこんだ。
まどか、この命、あなたの為に…。
「…変身」
ソウルジェムから力が溢れ、私の体を光で包む。
私の唯一の武器、いいえ、防具の盾がずしりと腕に重くのしかかる。
266: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 22:41:05.72 ID:mN1DzYcXo
この盾に頼ることは…もう無い。
覚悟は出来ている。
これが、最後なのね。
武器があろうと無かろうと、魔女を滅ぼす策は一つだけ。
『わかっているとも!』
『帰ることはないのだな。さらば我々の寝所!』
覚悟は出来ている。
これが、最後なのね。
武器があろうと無かろうと、魔女を滅ぼす策は一つだけ。
『わかっているとも!』
『帰ることはないのだな。さらば我々の寝所!』
267: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 22:49:39.87 ID:mN1DzYcXo
誰っ?! て言うか今の声、どこから聞こえたの?!
とにかく、これが、私の最後の変身。
魔法少女として最後の戦い。
まどか。
「ほむらちゃんの…」
ただ事では無いのを私の表情から悟ってしまったのね。
とにかく、これが、私の最後の変身。
魔法少女として最後の戦い。
まどか。
「ほむらちゃんの…」
ただ事では無いのを私の表情から悟ってしまったのね。
268: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 22:55:08.49 ID:mN1DzYcXo
でも、貴女は何も気にしなくていい。
どうかこれから先、あなたが幸せで…。
「ウェヒー! ほむらちゃんの貴重な変身シーンだぁっ! 体のライン丸見えでウルトラハッピー!」
聞こえなかった!
何も聞こえなかった!
とにかく、私は変身した。
どうかこれから先、あなたが幸せで…。
「ウェヒー! ほむらちゃんの貴重な変身シーンだぁっ! 体のライン丸見えでウルトラハッピー!」
聞こえなかった!
何も聞こえなかった!
とにかく、私は変身した。
270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 23:04:25.11 ID:mN1DzYcXo
この盾に武器は無い。
拳と、脚だけで速攻で決着をつけなくてはならない。
「まどか。私は戦う。でも、あなたを一番に守りたい。だから、今は離れないで」
「うん!」
まどかが腕を絡めてくる。
離れないでの意味も違うんだけどなんだかもう、この程度じゃ動じなくなってきたのが悲しい。
拳と、脚だけで速攻で決着をつけなくてはならない。
「まどか。私は戦う。でも、あなたを一番に守りたい。だから、今は離れないで」
「うん!」
まどかが腕を絡めてくる。
離れないでの意味も違うんだけどなんだかもう、この程度じゃ動じなくなってきたのが悲しい。
271: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 23:09:58.84 ID:mN1DzYcXo
でも…。
まどか…。
私にこれだけ接してくれるのだから、少なくとも嫌われてはいないって…思って、いいの?
道中、ゆらゆらとミラーボールが時折光線を放つが、幸い私の盾で防げる程度。
リア充市ね、とか幻聴も聞こえる。
意味は分からないけど、精神攻撃も持っているの?
まどか…。
私にこれだけ接してくれるのだから、少なくとも嫌われてはいないって…思って、いいの?
道中、ゆらゆらとミラーボールが時折光線を放つが、幸い私の盾で防げる程度。
リア充市ね、とか幻聴も聞こえる。
意味は分からないけど、精神攻撃も持っているの?
272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 23:15:31.59 ID:mN1DzYcXo
「ほむらちゃん」
「何?」
「魔女退治が終わったらね、言いたい事があるんだけど、いい?」
「…そうね、私も貴女に言いたい事があるわ」
「ウェヒヒ。二人一緒だ。嬉しいね」
「…ふふ。そうね」
「何?」
「魔女退治が終わったらね、言いたい事があるんだけど、いい?」
「…そうね、私も貴女に言いたい事があるわ」
「ウェヒヒ。二人一緒だ。嬉しいね」
「…ふふ。そうね」
273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/05(土) 23:19:43.61 ID:mN1DzYcXo
貴女が何を私に言おうとしてくれているのかは分からない。
でも、何を言おうとしても、きっとそれを聞くことは出来ない。
私が貴女に言う言葉は、さよなら。
悪いけど、貴女より先に言わせて貰う事になると思うわ。
そう思っていた私の視線の先に、巨大な部屋が出現した。
「早く魔女を倒して、貴女を外へ出してあげたいわ」
でも、何を言おうとしても、きっとそれを聞くことは出来ない。
私が貴女に言う言葉は、さよなら。
悪いけど、貴女より先に言わせて貰う事になると思うわ。
そう思っていた私の視線の先に、巨大な部屋が出現した。
「早く魔女を倒して、貴女を外へ出してあげたいわ」
280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/07(月) 23:36:00.00 ID:JSSF296Wo
「それは嬉しいけど、ほむらちゃんも、だよ」
真っ直ぐに私を見つめてまどかが言う。
「……」
私は何も返せず、誤魔化すようにして前へ進んだ。
その時、正面からフラッシュのような光が瞬いた。
奥にいるのは魔女。
真っ直ぐに私を見つめてまどかが言う。
「……」
私は何も返せず、誤魔化すようにして前へ進んだ。
その時、正面からフラッシュのような光が瞬いた。
奥にいるのは魔女。
281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/07(月) 23:43:06.31 ID:JSSF296Wo
周囲には、ミラーボールのような使い魔が跳ねている。
でも、それは魔女を照らしてあがめ奉る為では無い。
一枚一枚の無数の鏡が、私とまどかを歪めて映している。
他人を醜く映して自分が悦に入るためのものだろう。
いい趣味ね。
そして、魔女本体の姿も見えてきた。
でも、それは魔女を照らしてあがめ奉る為では無い。
一枚一枚の無数の鏡が、私とまどかを歪めて映している。
他人を醜く映して自分が悦に入るためのものだろう。
いい趣味ね。
そして、魔女本体の姿も見えてきた。
282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/07(月) 23:49:55.02 ID:JSSF296Wo
箱の魔女と呼ばれていた、エリーに似た姿の魔女が。
でも、エリーとは全体的な雰囲気が違う。
エリーよりももっと深い執念。深い嫉妬。深い妬みを肌に刺すみたいに感じる。
空気が粘つくような、異様な気配を纏ってそれは立っていた。
「…ああ。あの魔女はまさか…」
「知っているの雷…ほむらちゃん!」
でも、エリーとは全体的な雰囲気が違う。
エリーよりももっと深い執念。深い嫉妬。深い妬みを肌に刺すみたいに感じる。
空気が粘つくような、異様な気配を纏ってそれは立っていた。
「…ああ。あの魔女はまさか…」
「知っているの雷…ほむらちゃん!」
283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/07(月) 23:55:19.75 ID:JSSF296Wo
「あれは、ウイッチオブオーバーサーティの魔女よ」
ウイッチオブオーバーサーティの魔女。
それは人間界において魔法少女として生き、他人との関わりを極端に断ちながら修行を積み、禁欲に禁欲を重ねた者だけが達することが出来る、純潔の極みに辿り着いた者へと送られる称号。
その、異性に指一本触れたことの無い穢れ無き肉体と蜘蛛の巣の張った○○○によって高みに達した精神が、魔法少女として負の感情をソウルジェムに溜め、その穢れは通常ならばそのまま魔女になるところを無理矢理ポジティブに捉えることでエントロピーをなんやかやして覚醒した姿である。
ウイッチオブオーバーサーティの魔女。
それは人間界において魔法少女として生き、他人との関わりを極端に断ちながら修行を積み、禁欲に禁欲を重ねた者だけが達することが出来る、純潔の極みに辿り着いた者へと送られる称号。
その、異性に指一本触れたことの無い穢れ無き肉体と蜘蛛の巣の張った○○○によって高みに達した精神が、魔法少女として負の感情をソウルジェムに溜め、その穢れは通常ならばそのまま魔女になるところを無理矢理ポジティブに捉えることでエントロピーをなんやかやして覚醒した姿である。
284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 00:00:43.07 ID:NgMIWSK1o
結界がいわゆる少し時代遅れのちぐはぐな○○○みたいになるのは、ししし○○ちゃうわ! 嘘じゃないよ! ○○賭けてもいいよ! と言う見栄を張るためネットで得た知識を精一杯にひけらかした事による影響らしい。
民明書房刊『萌える世界の魔法使い全集』より
「なるほど! 分かんない!」
「簡単に言えば、生涯一度も異性と恋仲になれた事が無いまま三十歳を超えた魔法少女の成れの果てよ」
「ああ、未来のさやかちゃんね」
「本当にお願いだからそれさやかの前で言わないでね」
民明書房刊『萌える世界の魔法使い全集』より
「なるほど! 分かんない!」
「簡単に言えば、生涯一度も異性と恋仲になれた事が無いまま三十歳を超えた魔法少女の成れの果てよ」
「ああ、未来のさやかちゃんね」
「本当にお願いだからそれさやかの前で言わないでね」
285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 00:06:57.38 ID:NgMIWSK1o
「うん。覚えてたら」
覚えてて。お願いだから。
「それより、考えてみるとこの話、まともな魔女がまだ一回も出て来てないね?」
「…それもまた良し、よ」
私はまどかをベッドの後ろに隠れさせ、前に進む。
まどか、ベッドの硬さをそんなに真剣に確かめなくていいの。使わないから。
覚えてて。お願いだから。
「それより、考えてみるとこの話、まともな魔女がまだ一回も出て来てないね?」
「…それもまた良し、よ」
私はまどかをベッドの後ろに隠れさせ、前に進む。
まどか、ベッドの硬さをそんなに真剣に確かめなくていいの。使わないから。
287: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 00:11:37.85 ID:NgMIWSK1o
ウイッチオブ(略)は、複数の腕に持っている一眼レフカメラを構えて私にファインダーを合わせている。
私、と言うよりは私のスカートに向けて。
正直気持ち悪い。
「こらーっ! そこのへそ下三寸は私のだよっ! ほむらちゃん守ってね! がんばって!」
守る、の意味がきっと違うんだろうな。
なんだか応援のベクトルも色々とあっち向いてよく分からなくなっているし。
私、と言うよりは私のスカートに向けて。
正直気持ち悪い。
「こらーっ! そこのへそ下三寸は私のだよっ! ほむらちゃん守ってね! がんばって!」
守る、の意味がきっと違うんだろうな。
なんだか応援のベクトルも色々とあっち向いてよく分からなくなっているし。
294: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 23:18:41.76 ID:viuBfDiHo
でも、まどかを守る。
それだけは何も変わらない。
私は魔女に向かって走った。
人にあらざる者の脚力は並では無い。
私は五十メートル以上あった距離を数秒で駆け、襲い来るミラーボールを盾で弾きながら、地面を蹴って飛び上がる。
七メートル近い体躯の魔女の眼前まで跳び上がり、そして魔女のブラウン管みたいな顔面に踵を叩き込んだ。
それだけは何も変わらない。
私は魔女に向かって走った。
人にあらざる者の脚力は並では無い。
私は五十メートル以上あった距離を数秒で駆け、襲い来るミラーボールを盾で弾きながら、地面を蹴って飛び上がる。
七メートル近い体躯の魔女の眼前まで跳び上がり、そして魔女のブラウン管みたいな顔面に踵を叩き込んだ。
295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 23:24:33.36 ID:viuBfDiHo
その瞬間、私のスカートの真下からフラッシュがものすごい連射で光る。
何を撮られたのかと考えると、ものすごく不快になった。
「ピンぼけなしなら一万っ!」
だから何を言っているのまどかっ! 本当に口づけない?!
戸惑いをかかとに押し込み、反動で宙に飛んだ。
下では魔女が頭を押さえてうごめいている。
何を撮られたのかと考えると、ものすごく不快になった。
「ピンぼけなしなら一万っ!」
だから何を言っているのまどかっ! 本当に口づけない?!
戸惑いをかかとに押し込み、反動で宙に飛んだ。
下では魔女が頭を押さえてうごめいている。
296: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 23:30:33.86 ID:viuBfDiHo
まったく、今時なら液晶にでもすればいいのに。
ほどよい大きさで当てやすいけど。
実物を見た事は無いけど、テレビが出始めの頃にあった木製のテレビみたいな顔。
丁寧にアンテナまで生えているその枠は、中央から折れている。
画面にもひびが入ったけど、あれは魔女の頭。本物のブラウン管な訳も無い。
次の瞬間には木枠もブラウン管も元通りになり、そして私に向けてミイラみたいな細い腕を振り回してきた。
ほどよい大きさで当てやすいけど。
実物を見た事は無いけど、テレビが出始めの頃にあった木製のテレビみたいな顔。
丁寧にアンテナまで生えているその枠は、中央から折れている。
画面にもひびが入ったけど、あれは魔女の頭。本物のブラウン管な訳も無い。
次の瞬間には木枠もブラウン管も元通りになり、そして私に向けてミイラみたいな細い腕を振り回してきた。
297: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 23:35:49.28 ID:viuBfDiHo
その数六本。
ブラウン管がもう二つあったらアシュラマンね。
骨が入っていないみたいに鞭のようにしなう腕が、私を上下左右から襲う。
早い。
けど、単純な動き。
少しだけ早く来た一本の腕に足を載せて蹴り、遅れてきた腕を交わす。
ブラウン管がもう二つあったらアシュラマンね。
骨が入っていないみたいに鞭のようにしなう腕が、私を上下左右から襲う。
早い。
けど、単純な動き。
少しだけ早く来た一本の腕に足を載せて蹴り、遅れてきた腕を交わす。
298: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 23:44:51.07 ID:viuBfDiHo
そのまま一気に懐へ飛び込み、目障りだった三つの一眼レフカメラの一つを蹴り壊した。
金属音と共にフレームが破壊され、中から真っ黒に感光したフィルムが飛び出す。
フィルムカメラなんて随分玄人気取りね。
とりあえず、これで不快な写真が減るわ。
どう? 悔しいかしら?
「ギャ「ウェヒーっ!」」
金属音と共にフレームが破壊され、中から真っ黒に感光したフィルムが飛び出す。
フィルムカメラなんて随分玄人気取りね。
とりあえず、これで不快な写真が減るわ。
どう? 悔しいかしら?
「ギャ「ウェヒーっ!」」
299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 23:50:27.79 ID:viuBfDiHo
「……」
魔女の悲鳴が、それを上回る絶望の叫び声に掻き消された気がする。
でも、私の耳には何にも聞こえなかったわ。
ええ。
何にも。
私は気の迷いを、まどかを疑った自分への怒りを足に込め、もう一つの一眼レフを蹴り壊した。
魔女の悲鳴が、それを上回る絶望の叫び声に掻き消された気がする。
でも、私の耳には何にも聞こえなかったわ。
ええ。
何にも。
私は気の迷いを、まどかを疑った自分への怒りを足に込め、もう一つの一眼レフを蹴り壊した。
300: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/08(火) 23:55:48.01 ID:viuBfDiHo
また、フィルムが宙を舞う。
「ギ「ウェヒーーーーーーーーっ!」」
まどかお願い黙って! 私のパンツなんていくらでも見せてあげるから!
「……」
次の瞬間、まどかがきちんと正座して、天使のような微笑みで私を見ていた。
ものすごい期待を込めた瞳で。
「ギ「ウェヒーーーーーーーーっ!」」
まどかお願い黙って! 私のパンツなんていくらでも見せてあげるから!
「……」
次の瞬間、まどかがきちんと正座して、天使のような微笑みで私を見ていた。
ものすごい期待を込めた瞳で。
301: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 00:00:20.32 ID:v5BV3UEWo
あなた、テレパシーは使えないはずよね?
ペコちゃんみたいな微笑みで親指を指の間に挟んで突き出さないで。
せめてサムズアップにして。
微妙に萎えるから。
気を取り直し、魔女へと振り返る。
ふと、律儀に待っていた魔女の無表情な筈のブラウン管から哀れみを感じた気がして無性に腹が立った。
ペコちゃんみたいな微笑みで親指を指の間に挟んで突き出さないで。
せめてサムズアップにして。
微妙に萎えるから。
気を取り直し、魔女へと振り返る。
ふと、律儀に待っていた魔女の無表情な筈のブラウン管から哀れみを感じた気がして無性に腹が立った。
309: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 22:37:19.75 ID:uf/S4IH7o
でも、負の感情はソウルジェムの穢れの元凶。
なら、今はこの感情を単純な力へと変えよう。
一呼吸し、息を止める。
地面を蹴り、襲い来る腕をいなしながら魔女の眼前へと跳ぶ。
「しぃっ!」
歯を食いしばり、思い切り盾を顔面に叩きつけた。
なら、今はこの感情を単純な力へと変えよう。
一呼吸し、息を止める。
地面を蹴り、襲い来る腕をいなしながら魔女の眼前へと跳ぶ。
「しぃっ!」
歯を食いしばり、思い切り盾を顔面に叩きつけた。
310: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 22:50:26.58 ID:uf/S4IH7o
堅さだけなら折り紙付きよ。
ブラウン管が弾けて割れ、一瞬遅れて破裂音が響いた。
「うっ?!」
しまった。
それはただの破裂ではなかった。
ガラスが割れただけならなんと言う事は無い。
ブラウン管が弾けて割れ、一瞬遅れて破裂音が響いた。
「うっ?!」
しまった。
それはただの破裂ではなかった。
ガラスが割れただけならなんと言う事は無い。
311: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 22:56:58.29 ID:uf/S4IH7o
でも、それは全ての破片がショットガンで撃ったような勢いで私に向かって飛んできた。
薄いブラウン管のそれでは無く、石みたいに大きく厚く、そして鋭いガラス片へと変化して。
盾と、そこから生まれる防御壁で守れるのはせいぜい顔や胴体。
四肢にガラスがくい込み、肉が裂け、血がはじけ飛んだ。
「あっ!」
小さな悲鳴と共に、羽虫みたいにあっさり墜ちる。
薄いブラウン管のそれでは無く、石みたいに大きく厚く、そして鋭いガラス片へと変化して。
盾と、そこから生まれる防御壁で守れるのはせいぜい顔や胴体。
四肢にガラスがくい込み、肉が裂け、血がはじけ飛んだ。
「あっ!」
小さな悲鳴と共に、羽虫みたいにあっさり墜ちる。
312: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 23:07:28.43 ID:uf/S4IH7o
ああ、なんて非力…。
こんな攻撃で撃ち落とされるなんて。
受け身も取れず落下するなんて。
頭から落ちていったたのに、落ちた場所がベッドなのは不幸中の幸い。
ベッドでバウンドして、それから地面に落ちる。
直接落ちていたら骨がめちゃくちゃになっていたかも知れない。
こんな攻撃で撃ち落とされるなんて。
受け身も取れず落下するなんて。
頭から落ちていったたのに、落ちた場所がベッドなのは不幸中の幸い。
ベッドでバウンドして、それから地面に落ちる。
直接落ちていたら骨がめちゃくちゃになっていたかも知れない。
314: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 23:32:42.90 ID:uf/S4IH7o
でも、どのみち四肢はずきずきと痛む。
熱い血が、鼓動を打つ度に溢れる。
何とか身を起こすけど、そのまま痛みを堪えきれず、ぼろぼろと涙をこぼしてしまう。
「…いたい…。いたい…」
…もう、毛先ほどの堪え性も無くなっているのね。
以前なら、何事も無かったかのように立てていたのに。
熱い血が、鼓動を打つ度に溢れる。
何とか身を起こすけど、そのまま痛みを堪えきれず、ぼろぼろと涙をこぼしてしまう。
「…いたい…。いたい…」
…もう、毛先ほどの堪え性も無くなっているのね。
以前なら、何事も無かったかのように立てていたのに。
316: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 23:43:37.17 ID:uf/S4IH7o
痛みと、恐怖で、体が震えていた。
まどかを守らなくちゃいけないのに。
震える体を起こそうとしたとき、ミラーボールみたいな使い魔が光線を撃ってきた。
「あぁっ!」
背中にまともにそれを受け、私は再び転がる。
流れていた血で顔や髪が汚れる。
まどかを守らなくちゃいけないのに。
震える体を起こそうとしたとき、ミラーボールみたいな使い魔が光線を撃ってきた。
「あぁっ!」
背中にまともにそれを受け、私は再び転がる。
流れていた血で顔や髪が汚れる。
317: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 23:49:43.99 ID:uf/S4IH7o
背中が痛い。
腕も足も痛い。
体中が痛い。
痛い。
痛い。
痛いよ。
腕も足も痛い。
体中が痛い。
痛い。
痛い。
痛いよ。
318: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/09(水) 23:56:58.43 ID:uf/S4IH7o
怖いよ。
苦しいよ。
涙が止まらないよ。
私、みっともないよ。
まどかが見ているのに。
「まどかぁ…」
苦しいよ。
涙が止まらないよ。
私、みっともないよ。
まどかが見ているのに。
「まどかぁ…」
319: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 00:02:16.63 ID:aFfl+ds1o
倒れたまま、情けない声でその名を呟く。
まどか。
ごめんなさい。
こんな情けない私でごめんなさい。
体を張ってもあなたを守れない、ぐずな私でごめんなさい。
「ほむらちゃんっ!」
まどか。
ごめんなさい。
こんな情けない私でごめんなさい。
体を張ってもあなたを守れない、ぐずな私でごめんなさい。
「ほむらちゃんっ!」
320: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 00:08:03.57 ID:aFfl+ds1o
まどかの声が聞こえた。
息を呑んで顔を上げる。
「だめっ! 諦めないで! ほむらちゃんっ!」
その瞳はまっすぐに私を見ていた。
弱い私への叱咤?
「まどか…」
息を呑んで顔を上げる。
「だめっ! 諦めないで! ほむらちゃんっ!」
その瞳はまっすぐに私を見ていた。
弱い私への叱咤?
「まどか…」
327: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 22:32:44.97 ID:aFfl+ds1o
そうよ。
私は、まどかを守らなくちゃ…。
でなくちゃ、怒られ…。
まどかの笑顔を守るために…この命…。
「ほむらちゃんがいなくなったら…! 私は、約束だから…生きるけど! でもっ! 一生泣き続けるよ!」
「!」
私は、まどかを守らなくちゃ…。
でなくちゃ、怒られ…。
まどかの笑顔を守るために…この命…。
「ほむらちゃんがいなくなったら…! 私は、約束だから…生きるけど! でもっ! 一生泣き続けるよ!」
「!」
328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 22:47:32.07 ID:aFfl+ds1o
思いがけない言葉。
「私が笑っていられるのは、ほむらちゃんがいるからなのっ! ほむらちゃんがいない世界なんて、私知らないっ!」
貴女が、私なんかの為に…?
まどかの大きな瞳から涙がぼろぼろとこぼれている。
「ほむらちゃんが居なかったら、私、生きていく気力が無くなっちゃうよ! 私には、ほむらちゃんが必要なの! 依存って言われてもいい! 本当だもん!」
「まどか…」
「私が笑っていられるのは、ほむらちゃんがいるからなのっ! ほむらちゃんがいない世界なんて、私知らないっ!」
貴女が、私なんかの為に…?
まどかの大きな瞳から涙がぼろぼろとこぼれている。
「ほむらちゃんが居なかったら、私、生きていく気力が無くなっちゃうよ! 私には、ほむらちゃんが必要なの! 依存って言われてもいい! 本当だもん!」
「まどか…」
329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 22:54:01.96 ID:aFfl+ds1o
私の存在を、そんなに…。
「ライオンにインパラ! 虎に子鹿! 狼に子羊! 狐にネズミ! 猫に小鳥! こまちにかれん! みんな、獲物がそこに居るから生きていけるんだよっ! 追う者、追われる者、どっちもお互いが居るからこそ、生きようと必死だからこそ、輝いているんだよ! どっちも欠けちゃだめなのっ! 獲物が、ほむらちゃんが居ないと私、この無限に沸き上がる劣…愛情を…ぐすっ…どこへっ…! ほむらちゃんを○○○○出来ないなんて…ううっ…。まだ、つまみ食いしかしてないんだよっ…! う…っ。うわあああんっ!」
小鳥のよう声の、しかし必死の叫びが木霊し、水晶のような涙が宙に舞う。
美しい。
美しいん…だけど…。
「…あー…」
「ライオンにインパラ! 虎に子鹿! 狼に子羊! 狐にネズミ! 猫に小鳥! こまちにかれん! みんな、獲物がそこに居るから生きていけるんだよっ! 追う者、追われる者、どっちもお互いが居るからこそ、生きようと必死だからこそ、輝いているんだよ! どっちも欠けちゃだめなのっ! 獲物が、ほむらちゃんが居ないと私、この無限に沸き上がる劣…愛情を…ぐすっ…どこへっ…! ほむらちゃんを○○○○出来ないなんて…ううっ…。まだ、つまみ食いしかしてないんだよっ…! う…っ。うわあああんっ!」
小鳥のよう声の、しかし必死の叫びが木霊し、水晶のような涙が宙に舞う。
美しい。
美しいん…だけど…。
「…あー…」
334: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 23:10:22.25 ID:aFfl+ds1o
ええと…うん。
そうね。
言っている内容自体は…その、そうね。
うん。
そうね…。
どうしよう。
そうね。
言っている内容自体は…その、そうね。
うん。
そうね…。
どうしよう。
335: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 23:17:31.90 ID:aFfl+ds1o
心がいろんな意味でものすごく揺らいでいる。
「ほむらちゃんは私と一緒に帰るんだよ! 私は、ほむらちゃんと一緒じゃなきゃ帰らない! 今は、痛いけど、辛いけど…お願い! 頑張って!」
「…まどか…」
あの後だと、どうにも色々言いたくなるけど、まどかの瞳は真剣以外のなにものでもない。
「私は、ほむらちゃんが生きていてくれるから生きるの! 一緒だから、私も生きようと思うの!」
私の言葉を挟ませない。一気にまどかがせき立てる。
「ほむらちゃんは私と一緒に帰るんだよ! 私は、ほむらちゃんと一緒じゃなきゃ帰らない! 今は、痛いけど、辛いけど…お願い! 頑張って!」
「…まどか…」
あの後だと、どうにも色々言いたくなるけど、まどかの瞳は真剣以外のなにものでもない。
「私は、ほむらちゃんが生きていてくれるから生きるの! 一緒だから、私も生きようと思うの!」
私の言葉を挟ませない。一気にまどかがせき立てる。
336: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 23:23:02.31 ID:aFfl+ds1o
「私の望みは、私が願う未来は、ほむらちゃんと一緒に居る世界なの! ほむらちゃんが守って『くれた』んじゃなくって、守って『くれる』世界なのっ!」
「……」
「私とだけじゃないよ! ほむらちゃんが、さやかちゃん、マミさん、あんこちゃんと一緒に笑っていられる世界なの!」
私を見つめる瞳から大粒の涙がいつまでもこぼれている。声はどんどん大きくなる。
「まどか…」
「そんな、ほむらちゃんが笑っていられる世界に…。そして、そこに…。そんなほむらちゃんの隣に私が居られたら…それは、とってもうれしいなって…!」
「……」
「私とだけじゃないよ! ほむらちゃんが、さやかちゃん、マミさん、あんこちゃんと一緒に笑っていられる世界なの!」
私を見つめる瞳から大粒の涙がいつまでもこぼれている。声はどんどん大きくなる。
「まどか…」
「そんな、ほむらちゃんが笑っていられる世界に…。そして、そこに…。そんなほむらちゃんの隣に私が居られたら…それは、とってもうれしいなって…!」
337: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 23:27:56.72 ID:aFfl+ds1o
「まどか…!」
「私は、私は魔法少女にはならない。この約束を一生守るよ! だから、だからね、ほむらちゃん! ほむらちゃんも、約束して! 私の前から居なくならないって!」
「まどかぁっ!」
「ほむらちゃんが居ない世界なんて…私、考…られ…ない…。居なくなっちゃ、いやだよぉ…。居てくれるだけでもいいの…。だから…生きて…生きて、ほむらちゃん…」
まどかが顔をしかめ、いよいよ大声で泣き出した。
私の名前を、嗚咽を交えながら、何度も何度も呼びながら。
「私は、私は魔法少女にはならない。この約束を一生守るよ! だから、だからね、ほむらちゃん! ほむらちゃんも、約束して! 私の前から居なくならないって!」
「まどかぁっ!」
「ほむらちゃんが居ない世界なんて…私、考…られ…ない…。居なくなっちゃ、いやだよぉ…。居てくれるだけでもいいの…。だから…生きて…生きて、ほむらちゃん…」
まどかが顔をしかめ、いよいよ大声で泣き出した。
私の名前を、嗚咽を交えながら、何度も何度も呼びながら。
339: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/10(木) 23:35:08.37 ID:aFfl+ds1o
まどかのその姿…。
見たことが…ある。
いえ、この光景を、感じたことが…ある。
ああ、そうだ。
この光景。
あそこに立っていたのは…私。
見たことが…ある。
いえ、この光景を、感じたことが…ある。
ああ、そうだ。
この光景。
あそこに立っていたのは…私。
348: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 22:36:26.00 ID:PRApaqmho
ワルプルギスの夜を倒して、みんなの前で全てをさらけ出して泣いていた、あの時の…私。
あのまどかは、私だ…!
「私は…私の為に…生きるんじゃ…ない! ほむらちゃんの為に、私は…生きるの!」
「私はね、ほむらちゃんのもの! ほむらちゃんがいなくなったら、私もいなくなっちゃうんだよ!」
「ほむらちゃんは、私の半身だよっ!」
「まどかぁーっ!」
あのまどかは、私だ…!
「私は…私の為に…生きるんじゃ…ない! ほむらちゃんの為に、私は…生きるの!」
「私はね、ほむらちゃんのもの! ほむらちゃんがいなくなったら、私もいなくなっちゃうんだよ!」
「ほむらちゃんは、私の半身だよっ!」
「まどかぁーっ!」
349: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 22:43:12.05 ID:PRApaqmho
その時、胸の中で何かが光った。
そう思うくらい、胸の奥が熱くなった。
燃え上がるような感情の高ぶりを感じ、深呼吸して立ち上がる。
もう何も怖くない!
そう言いかけたけど、縁起が悪いのでそれはやめておく。
体のあちこちからは、今も血が流れている。
そう思うくらい、胸の奥が熱くなった。
燃え上がるような感情の高ぶりを感じ、深呼吸して立ち上がる。
もう何も怖くない!
そう言いかけたけど、縁起が悪いのでそれはやめておく。
体のあちこちからは、今も血が流れている。
350: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 22:49:10.19 ID:PRApaqmho
でも、こんな痛みなんて、今のまどかの胸の苦しさに比べたら!
「…ほむらちゃん!」
立ち上がった私を見て、まどかが顔をほころばせた。
「まどか。私は大丈夫よ!」
私は、私にできる限り最大の微笑みを返す。
「…うん!」
「…ほむらちゃん!」
立ち上がった私を見て、まどかが顔をほころばせた。
「まどか。私は大丈夫よ!」
私は、私にできる限り最大の微笑みを返す。
「…うん!」
352: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 22:55:30.29 ID:PRApaqmho
まどかも満面の笑みを返してくれた。
「ごめんなさい、三十路の魔女」
不格好な枯れ木みたいな魔女に向き直り、私は呟いた。
今の言葉がカチンときたのか、魔女の顔が割れているブラウン管以外に三つ、にょきりと増えた。
最初に壊れたブラウン管の暗い奥には、一つだけの人間の目玉が、ぎらんと輝いて睨み付ける。
ああ。そうなのね。
「ごめんなさい、三十路の魔女」
不格好な枯れ木みたいな魔女に向き直り、私は呟いた。
今の言葉がカチンときたのか、魔女の顔が割れているブラウン管以外に三つ、にょきりと増えた。
最初に壊れたブラウン管の暗い奥には、一つだけの人間の目玉が、ぎらんと輝いて睨み付ける。
ああ。そうなのね。
353: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 23:01:49.08 ID:PRApaqmho
あれが、貴女の『目』なのね。
そして、ブラウン管のそれぞれに何かが映し出された。
あれは、過去の私。
弱い私。
卑怯な私。
情けない私。
そして、ブラウン管のそれぞれに何かが映し出された。
あれは、過去の私。
弱い私。
卑怯な私。
情けない私。
354: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 23:07:48.41 ID:PRApaqmho
いろんな私が映っている。
でも。
「ごめんなさい。効かないわ」
魔女が、まったく変わらない私を見てぎょっと身をひるませた。
「私には、帰る場所が、帰りたい場所があるの」
「もう一度手を繋ぎたい人がいるの」
でも。
「ごめんなさい。効かないわ」
魔女が、まったく変わらない私を見てぎょっと身をひるませた。
「私には、帰る場所が、帰りたい場所があるの」
「もう一度手を繋ぎたい人がいるの」
355: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 23:13:29.12 ID:PRApaqmho
「一生、その手を離したくない人がいるの」
「そして、その人と同じくらい大切にしたい人達もいるの!」
「みんなと生きる! その為に、そんな過去を引きずる訳にはいかない!」
その時、まどかに向かってミラーボールの使い魔が一体襲いかかる。
私は盾からデザートホームルを取り出し、迷い無く撃った。
ミラーボールは粉々になって砕け散る。
「そして、その人と同じくらい大切にしたい人達もいるの!」
「みんなと生きる! その為に、そんな過去を引きずる訳にはいかない!」
その時、まどかに向かってミラーボールの使い魔が一体襲いかかる。
私は盾からデザートホームルを取り出し、迷い無く撃った。
ミラーボールは粉々になって砕け散る。
356: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 23:19:28.22 ID:PRApaqmho
「あいたたっ!」
と、ガラス片がまどかに降り注いだ。
「ああああっ! ごっごめんなさいまどかあぁっ!」
「ウェヒヒ。全然平気だよほむらちゃんっ!」
まどかが指をぐっと突き出す。
ああ、ちゃんとサムズアップで良かった。
と、ガラス片がまどかに降り注いだ。
「ああああっ! ごっごめんなさいまどかあぁっ!」
「ウェヒヒ。全然平気だよほむらちゃんっ!」
まどかが指をぐっと突き出す。
ああ、ちゃんとサムズアップで良かった。
357: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 23:26:37.38 ID:PRApaqmho
「だから、ほむらちゃん!」
「ええ!」
大丈夫よ、まどか。
私はもう迷わない。
最後の一発を撃ち、空になったデザートホームルはその誓い。
もう使う事は無いだろうそれを盾に仕舞い、もう一度魔女に向き直る。
「ええ!」
大丈夫よ、まどか。
私はもう迷わない。
最後の一発を撃ち、空になったデザートホームルはその誓い。
もう使う事は無いだろうそれを盾に仕舞い、もう一度魔女に向き直る。
358: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 23:33:10.57 ID:PRApaqmho
この力は、貴女を守るために使う。
死ぬためでは無い。
生きるために。
生きていられる最後の最後まで、私は生きる。
「私は…生きる!」
「そうこなくっちゃ!」
死ぬためでは無い。
生きるために。
生きていられる最後の最後まで、私は生きる。
「私は…生きる!」
「そうこなくっちゃ!」
359: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 23:38:57.12 ID:PRApaqmho
突然、背後から声がした。
「さやか?!」
振り向くと、そこには剣を周囲に並べ立てたさやかが仁王立ちしていた。
赤い目に、満面の笑みを添えて私を見ている。
「面白くねぇぜ!」
頭上から声。
「さやか?!」
振り向くと、そこには剣を周囲に並べ立てたさやかが仁王立ちしていた。
赤い目に、満面の笑みを添えて私を見ている。
「面白くねぇぜ!」
頭上から声。
360: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/11(金) 23:52:35.40 ID:PRApaqmho
見上げると、槍を多節棍状に振り回して宙を跳ぶ杏子が居た。
杏子も私を見ている。
魔女が振るう腕を、槍ではじき飛ばしながら。
「わぁっ! あんこちゃんだ!」
「きょうこだ! Kyokoっ!」
それだとキョコだけど黙っていよう。
杏子も私を見ている。
魔女が振るう腕を、槍ではじき飛ばしながら。
「わぁっ! あんこちゃんだ!」
「きょうこだ! Kyokoっ!」
それだとキョコだけど黙っていよう。
368: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 19:47:46.37 ID:OnRiRncHo
突然、周囲にたくさん浮かんでいたミラーボールの使い魔が片っ端から弾けた。
「暁美さん、これが終わったら、みんなでお茶しましょ」
いつの間にか、私の横にマスケット銃を両手持ちしたマミが立ち、そしてやっぱり私を見つめてくれていた。
「…マミ」
ふらついた私をマミが支える。
「無理しないで、暁美さん。私達は、みんな暁美さんの味方、お友達なのよ」
「暁美さん、これが終わったら、みんなでお茶しましょ」
いつの間にか、私の横にマスケット銃を両手持ちしたマミが立ち、そしてやっぱり私を見つめてくれていた。
「…マミ」
ふらついた私をマミが支える。
「無理しないで、暁美さん。私達は、みんな暁美さんの味方、お友達なのよ」
369: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 20:11:31.64 ID:OnRiRncHo
マミの微笑みが眩しい。
「…マミ…さん…」
無意識に昔の呼び方が出る。
マミは、えっ、と言う顔をして、そして、優しく微笑んでくれた。
さっきとは全く違う涙が溢れそうになった。
「さぁ、早くグリーフシー…」
「…マミ…さん…」
無意識に昔の呼び方が出る。
マミは、えっ、と言う顔をして、そして、優しく微笑んでくれた。
さっきとは全く違う涙が溢れそうになった。
「さぁ、早くグリーフシー…」
370: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 20:20:56.01 ID:OnRiRncHo
マミが胸の間からグリーフシードを取り出そうとした。
よりによってなんでそこ?
瞬間、無性にいらっとしたけど我慢。
マミがそれを私に差しだそうとしたその時、魔女が動き出し、先程より素早い動作で私とマミの間に腕を振り下ろす。
そのまま私達は分断された。
「にゃろっ! 空気読めっ!」
さやかが更に剣を出せるだけ出し、魔女に向けてショットガンみたいに飛ばす。
よりによってなんでそこ?
瞬間、無性にいらっとしたけど我慢。
マミがそれを私に差しだそうとしたその時、魔女が動き出し、先程より素早い動作で私とマミの間に腕を振り下ろす。
そのまま私達は分断された。
「にゃろっ! 空気読めっ!」
さやかが更に剣を出せるだけ出し、魔女に向けてショットガンみたいに飛ばす。
371: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 20:26:45.96 ID:OnRiRncHo
だけど、魔女は腕の鞭で剣を全部弾き、そのままさやかに腕を振り下ろした。
やはりまだ精度が、威力が足りてない。
「わぁっ!」
剣を出せるだけ出してしまった為、無防備になっていたさやかが吹き飛ばされる。
「あーあ、しょうがねぇなぁ。りゃっ!」
杏子が槍を伸ばし、魔女の胴体の中心、スポーツカメラマンが持っていそうな望遠レンズを付けた一眼レフ目がけて突き出した。
やはりまだ精度が、威力が足りてない。
「わぁっ!」
剣を出せるだけ出してしまった為、無防備になっていたさやかが吹き飛ばされる。
「あーあ、しょうがねぇなぁ。りゃっ!」
杏子が槍を伸ばし、魔女の胴体の中心、スポーツカメラマンが持っていそうな望遠レンズを付けた一眼レフ目がけて突き出した。
372: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 20:34:29.00 ID:OnRiRncHo
レンズの割れる音。同時にみしり、と胴体に槍がめり込む音を立てて突き刺さる。
カメラは粉砕され、フィルムがまた舞い散った。
「ギャアアアアアッ」
「……!!」
まどかは涙目で唇を噛んで叫ぶのを我慢している。
偉いわ。まどか。
カメラは粉砕され、フィルムがまた舞い散った。
「ギャアアアアアッ」
「……!!」
まどかは涙目で唇を噛んで叫ぶのを我慢している。
偉いわ。まどか。
373: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 20:40:17.45 ID:OnRiRncHo
「へへっ!」
杏子は、予定通りの攻撃成功に余裕の表情で、にやりとする。
でも、次の瞬間眉根を寄せた。
「なっ?!」
槍が、抜けない。
魔女が怒号を上げて体をよじった。
杏子は、予定通りの攻撃成功に余裕の表情で、にやりとする。
でも、次の瞬間眉根を寄せた。
「なっ?!」
槍が、抜けない。
魔女が怒号を上げて体をよじった。
374: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 20:45:31.32 ID:OnRiRncHo
「わあぁっ!」
槍に振り回される形になった杏子が、必死にそれを抜こうと踏ん張る。
その杏子目がけて腕が襲い、抜こうか手を離そうか、一瞬の迷いを見せた杏子を直撃する。
「ぐあっ!」
杏子も吹き飛んだ。
杏子まで!
槍に振り回される形になった杏子が、必死にそれを抜こうと踏ん張る。
その杏子目がけて腕が襲い、抜こうか手を離そうか、一瞬の迷いを見せた杏子を直撃する。
「ぐあっ!」
杏子も吹き飛んだ。
杏子まで!
375: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 20:52:27.57 ID:OnRiRncHo
「はあぁっ!」
マミが構える。
周囲には無数のマスケット銃。
「ダンサデルマジックブレッド!」
さっきの使い魔達ではマックスまでゲージが溜まってなかったらしい。
万能ミキサーみたいな技名と共に全ての銃が一斉に火を噴いた。
ちなみにアップデートで私も出ているので遊んでほむ。Android版では主役ほむぅ!
マミが構える。
周囲には無数のマスケット銃。
「ダンサデルマジックブレッド!」
さっきの使い魔達ではマックスまでゲージが溜まってなかったらしい。
万能ミキサーみたいな技名と共に全ての銃が一斉に火を噴いた。
ちなみにアップデートで私も出ているので遊んでほむ。Android版では主役ほむぅ!
376: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 20:58:12.07 ID:OnRiRncHo
縦横無尽に腕を張り巡らしてガードするけど、マミの銃器の勢いが勝る。
魔女の腕は、六本とも粉々に砕け散った。
本当に、惚れ惚れする破壊力。
「今よっ!」
マミがさやかと杏子に振り向く。
でも、二人の様子がおかしい。
魔女の腕は、六本とも粉々に砕け散った。
本当に、惚れ惚れする破壊力。
「今よっ!」
マミがさやかと杏子に振り向く。
でも、二人の様子がおかしい。
377: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 21:03:17.38 ID:OnRiRncHo
「美樹さん? 佐倉さん?」
二人が、頭を抱えて膝をついていた。
ダメージは大した事ない筈なのに。
「あっ!」
私は気付いた。
「マミ! この魔女は精神攻撃もっ!」
二人が、頭を抱えて膝をついていた。
ダメージは大した事ない筈なのに。
「あっ!」
私は気付いた。
「マミ! この魔女は精神攻撃もっ!」
378: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 21:09:13.06 ID:OnRiRncHo
声と同時に、マミの手からマスケット銃が落ちた。
しまった!
「うああ…! いや…いや…! パパ…ママ…」
「父さん…どうして母さんを…モモを…」
「まどか怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い」
杏子まで精神攻撃に…! この魔女、想像以上に危険だわ。
しまった!
「うああ…! いや…いや…! パパ…ママ…」
「父さん…どうして母さんを…モモを…」
「まどか怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い」
杏子まで精神攻撃に…! この魔女、想像以上に危険だわ。
379: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/12(土) 21:15:28.74 ID:OnRiRncHo
「…みんな…」
腕を失いながらも、勝ち誇ったかのようにそびえ立つ魔女。
伊達に○○じゃない。
そう言って鼻息を荒くしているように見える。
私は、それを睨み付ける。
この魔女に対して、勝ち目は…分からない。
腕を失いながらも、勝ち誇ったかのようにそびえ立つ魔女。
伊達に○○じゃない。
そう言って鼻息を荒くしているように見える。
私は、それを睨み付ける。
この魔女に対して、勝ち目は…分からない。
391: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 16:42:24.04 ID:6i5b5JCXo
私にもう武器は無い。
体も満身創痍でボロボロ。
何より、元より強くないこの私。
でも、まどかを、みんなを守りたい。
その気持ちだけはあふれ出ている。
ふふ。
体も満身創痍でボロボロ。
何より、元より強くないこの私。
でも、まどかを、みんなを守りたい。
その気持ちだけはあふれ出ている。
ふふ。
392: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 16:48:51.63 ID:6i5b5JCXo
昔の私なら、こんな『気持ち』なんて何の役にも立たないって、鼻で笑う対象だったのに。
でも、今は違う。
魔法少女は、奇跡を起こす存在。
そして、奇蹟って、心の強さが原動力。
だから。
私のソウルジェムよ。
でも、今は違う。
魔法少女は、奇跡を起こす存在。
そして、奇蹟って、心の強さが原動力。
だから。
私のソウルジェムよ。
393: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 16:58:22.14 ID:6i5b5JCXo
私の魂よ。
私の事が嫌いで無いなら…どうか、最後にもう一度奇蹟を…!
みんなはまだうずくまっている。
でも、みんなは強い。立ち上がろうともがいている。
少し、特殊な攻撃に戸惑っているだけ。
みんな、負けてなんかいない。すぐに立ち上がる。
私の事が嫌いで無いなら…どうか、最後にもう一度奇蹟を…!
みんなはまだうずくまっている。
でも、みんなは強い。立ち上がろうともがいている。
少し、特殊な攻撃に戸惑っているだけ。
みんな、負けてなんかいない。すぐに立ち上がる。
394: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:06:00.90 ID:6i5b5JCXo
大丈夫。
その間、私が守るわ。
魔女が手を再生し始めている。
いけない!
軋む両足を踏ん張り、思い切り跳躍する。
目指すは胸に生えている杏子の槍。
その間、私が守るわ。
魔女が手を再生し始めている。
いけない!
軋む両足を踏ん張り、思い切り跳躍する。
目指すは胸に生えている杏子の槍。
395: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:13:20.32 ID:6i5b5JCXo
自分の武器が無いなら、あれを使って…!
でも、私の跳躍と同時に、再生してしまった腕が四方から襲いかかってきた。
動きもさっきよりも早い。
二つは避けたけど、三つ目、下から襲ってきた腕をアッパーみたいに喰らってしまった。
「ああっ!」
体が無防備に浮き上がる。
でも、私の跳躍と同時に、再生してしまった腕が四方から襲いかかってきた。
動きもさっきよりも早い。
二つは避けたけど、三つ目、下から襲ってきた腕をアッパーみたいに喰らってしまった。
「ああっ!」
体が無防備に浮き上がる。
396: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:19:12.84 ID:99Zk9V20o
残りの三本が、杭のような指を突き立ててめちゃくちゃに私に迫る。
盾を構えるけど、まともに受け止められない。
背中、お腹、手足、頭、数え切れない打撃が襲う。
私の体はお手玉みたいに宙を舞い、一瞬停滞して落下を始めた。
痛みで意識が飛びかける。
そして、一番鋭い爪が、私を串刺しにしようと飛んで来た。
盾を構えるけど、まともに受け止められない。
背中、お腹、手足、頭、数え切れない打撃が襲う。
私の体はお手玉みたいに宙を舞い、一瞬停滞して落下を始めた。
痛みで意識が飛びかける。
そして、一番鋭い爪が、私を串刺しにしようと飛んで来た。
397: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:24:48.65 ID:99Zk9V20o
だめっ!
まだ、私は終われない!
私は、まだっ!
『ほむらちゃんっ!』
まどかぁっ!
「ギッ?」
魔女がブラウン管の頭を傾げた。
まだ、私は終われない!
私は、まだっ!
『ほむらちゃんっ!』
まどかぁっ!
「ギッ?」
魔女がブラウン管の頭を傾げた。
398: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:31:02.69 ID:99Zk9V20o
三つの頭で捉えていた私が消えたから。
「…ここよ。三十路の魔女」
天を仰いでいた魔女が、はっとして視線を水平にする。
「大丈夫。あなたも別の世界では、誰かと仲良くなれるわ。…恋仲かどうかは知らないけど」
「ギィィィッ?!」
どうしたの? たった今まで空中に居た私がここに居て、驚いたかしら?
「…ここよ。三十路の魔女」
天を仰いでいた魔女が、はっとして視線を水平にする。
「大丈夫。あなたも別の世界では、誰かと仲良くなれるわ。…恋仲かどうかは知らないけど」
「ギィィィッ?!」
どうしたの? たった今まで空中に居た私がここに居て、驚いたかしら?
399: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:37:59.82 ID:99Zk9V20o
魔女の視界の先。
そこに、杏子の槍の先端に乗りながら、大きな弓矢を構えた私が立っている。
握っているだけで力がみなぎる弓。
これは…。
この弓は…。
噛みしめるように呟きながら、目玉のある壊れたブラウン管目がけ、渾身の力を込めて輝く矢を放った。
そこに、杏子の槍の先端に乗りながら、大きな弓矢を構えた私が立っている。
握っているだけで力がみなぎる弓。
これは…。
この弓は…。
噛みしめるように呟きながら、目玉のある壊れたブラウン管目がけ、渾身の力を込めて輝く矢を放った。
400: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:44:20.01 ID:99Zk9V20o
光の矢は腕を貫き、魔女の目玉を貫き、そのまま頭を突き抜け、空を飛びながら光を放って霧散する。
「『まどか』の…弓…」
あの時の世界で見た、まどかの弓。
まともなまど…じゃなくて、アレじゃない…じゃなくて、とりあえず今のまどかと違うまどかの弓。
あの時の貴女を、助けられなかったのに。それなのに、『まどか』は私を助けてくれたのね。
…ありがとう。
「『まどか』の…弓…」
あの時の世界で見た、まどかの弓。
まともなまど…じゃなくて、アレじゃない…じゃなくて、とりあえず今のまどかと違うまどかの弓。
あの時の貴女を、助けられなかったのに。それなのに、『まどか』は私を助けてくれたのね。
…ありがとう。
401: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:51:06.45 ID:99Zk9V20o
意識が遠のき、同時に弓が消えた。
崩壊する魔女の体から槍が抜け、私はそれと一緒に落下する。
力を…使い切ったわ。
もう、このまま…。
そう思った時、私の体にリボンがそっと巻き付きいて、そして降ろしてくれた。
視界の下には、みんなが駆け寄って私を見上げていた。
崩壊する魔女の体から槍が抜け、私はそれと一緒に落下する。
力を…使い切ったわ。
もう、このまま…。
そう思った時、私の体にリボンがそっと巻き付きいて、そして降ろしてくれた。
視界の下には、みんなが駆け寄って私を見上げていた。
402: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 17:56:52.07 ID:99Zk9V20o
ああ、みんな大丈夫なのね。
良かった…。
そのまま結界を抜け、外の世界に戻る。
公園近くの林の中。
私の体が地面に降ろされると、まずまどかが抱きついて来た。
「ほむらちゃんっ! ほむらちゃんっ!」
良かった…。
そのまま結界を抜け、外の世界に戻る。
公園近くの林の中。
私の体が地面に降ろされると、まずまどかが抱きついて来た。
「ほむらちゃんっ! ほむらちゃんっ!」
403: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 18:03:32.41 ID:99Zk9V20o
「か、鹿目さんっ! 今はソウルジェムをっ!」
「あ、は、はいっ!」
まどかが慌てて体を離し、そして私を横たえ、膝枕してくれた。
「暁美さん! ソウルジェムを!」
凄い剣幕だったので思わず素直に出したけど、私はそれを反射的に握りしめた。
だって、きっと、もう…。
「あ、は、はいっ!」
まどかが慌てて体を離し、そして私を横たえ、膝枕してくれた。
「暁美さん! ソウルジェムを!」
凄い剣幕だったので思わず素直に出したけど、私はそれを反射的に握りしめた。
だって、きっと、もう…。
404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/13(日) 18:08:14.47 ID:99Zk9V20o
「ああもう! なにしてんだよほむらっ! ほら、お前が倒した魔女のグリーフシードだ! 早くソウルジェムを浄化しろっ!」
杏子が私の握りしめたソウルジェムに、その手の上から『(´;ω;`)』模様のグリーフシードをくっつける。
でも。
「…あれ?」
さやかが目を丸くした。
ほら、やっぱり…。
杏子が私の握りしめたソウルジェムに、その手の上から『(´;ω;`)』模様のグリーフシードをくっつける。
でも。
「…あれ?」
さやかが目を丸くした。
ほら、やっぱり…。
423: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 22:30:00.36 ID:xJ2jc2bwo
「…どうして? どうして、暁美さんの穢れを吸わないの?」
「くそっ! やっぱこの変なグリーフシード、パチモンか?!」
「こ、こっちは?!」
マミが慌てて他のグリーフシードも出すけど、どれも同じ。
私の手に押しつけられたグリーフシードは、全然私のソウルジェムの穢れを吸おうとしない。
「ど、どうし…て?」
「くそっ! やっぱこの変なグリーフシード、パチモンか?!」
「こ、こっちは?!」
マミが慌てて他のグリーフシードも出すけど、どれも同じ。
私の手に押しつけられたグリーフシードは、全然私のソウルジェムの穢れを吸おうとしない。
「ど、どうし…て?」
426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 22:35:38.24 ID:xJ2jc2bwo
さやかが愕然として膝を折り、私の肩を抱いて声を震わせる。
「…おい! まさ…まさかっ?!」
ええ、そうよ、杏子。
ソウルジェムの穢れを吸うグリーフシード。
でも、グリーフシードが吸うのはあくまでもソウルジェムの穢れ。
では、そこにあるのが、もうソウルジェムではなかったら?
「…おい! まさ…まさかっ?!」
ええ、そうよ、杏子。
ソウルジェムの穢れを吸うグリーフシード。
でも、グリーフシードが吸うのはあくまでもソウルジェムの穢れ。
では、そこにあるのが、もうソウルジェムではなかったら?
427: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 22:41:32.57 ID:xJ2jc2bwo
「みんな…お願いが…あるの」
「ほむら! 駄目だ! 言うなぁっ!」
杏子が私の言葉を遮る。何を言うのか、分かってくれているのね。
「駄目。今、言わないと…」
「ほ、ほむらちゃん…」
私の頭を抱きながら、涙を零し続けるまどか。
「ほむら! 駄目だ! 言うなぁっ!」
杏子が私の言葉を遮る。何を言うのか、分かってくれているのね。
「駄目。今、言わないと…」
「ほ、ほむらちゃん…」
私の頭を抱きながら、涙を零し続けるまどか。
428: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 22:47:12.74 ID:xJ2jc2bwo
目の前にある貴女の顔が眩しくて、愛おしい。
顔にこぼれる涙が心地よい。
涙って、こんなに温かいのね。
でも、だからこそ、言わなくちゃいけない。
「もう、私のソウルジェムは…。だから、お願い…」
「ほ、ほむらぁ…。あたし、そんなのやだ、やだよぉ…」
顔にこぼれる涙が心地よい。
涙って、こんなに温かいのね。
でも、だからこそ、言わなくちゃいけない。
「もう、私のソウルジェムは…。だから、お願い…」
「ほ、ほむらぁ…。あたし、そんなのやだ、やだよぉ…」
429: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 23:01:40.13 ID:xJ2jc2bwo
「馬鹿な事言うなよ。ほむらぁ…」
「暁美さん…。やめてぇ…」
さやか、マミ、杏子も私の手を握ってくれている。
まるで、ソウルジェムを握る私の手を開かせないかのように。
「…あのね、私ね、今、本当に…本当に幸せなの。ワルプルギスの夜を倒したときと同じか、それ以上に」
「ほむらちゃん…ほむらちゃん…いやだよぉ…」
「暁美さん…。やめてぇ…」
さやか、マミ、杏子も私の手を握ってくれている。
まるで、ソウルジェムを握る私の手を開かせないかのように。
「…あのね、私ね、今、本当に…本当に幸せなの。ワルプルギスの夜を倒したときと同じか、それ以上に」
「ほむらちゃん…ほむらちゃん…いやだよぉ…」
430: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 23:07:12.17 ID:xJ2jc2bwo
「…まどか、泣かないで。私ね…今、本当に後悔しない最期を迎えられるんだって…思うの」
まどかの瞳に私が映っている。
顔に落ちる涙が本当に温かくて、心地よい。
「ほんの少し前までの私はね…、みんなに、迷惑をかけたくない、そんな気持ちばかりで、人知れず魔女になってしまおう。そして、グリーフシードになってみんなに…。そんな風に考えていた」
「ばっ! ほむらっ! お前っ!」
杏子が眉をつり上げて睨む。
まどかの瞳に私が映っている。
顔に落ちる涙が本当に温かくて、心地よい。
「ほんの少し前までの私はね…、みんなに、迷惑をかけたくない、そんな気持ちばかりで、人知れず魔女になってしまおう。そして、グリーフシードになってみんなに…。そんな風に考えていた」
「ばっ! ほむらっ! お前っ!」
杏子が眉をつり上げて睨む。
431: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 23:15:46.40 ID:xJ2jc2bwo
「ふふ。少し前まで、よ。杏子。今は、違うの。今はね、生きようって。そう思った。その上で、最期が来たら、魔法少女らしい最期を遂げたいって思ったの。頑張って頑張って、生きようって思って戦った。これは、その結果。だから…だから、許してくれる?」
「暁美さん…」
マミ、美人が台無しよ。
「マミ…。さやか。杏子。辛いお願いだと思うけど…。もし、間に合うなら、私のソウルジェムを…砕いて」
「ほ、ほむらぁ…あたし、そんなの…」
さやか、泣かないで。あなたは、笑顔が素敵なんだから。
「暁美さん…」
マミ、美人が台無しよ。
「マミ…。さやか。杏子。辛いお願いだと思うけど…。もし、間に合うなら、私のソウルジェムを…砕いて」
「ほ、ほむらぁ…あたし、そんなの…」
さやか、泣かないで。あなたは、笑顔が素敵なんだから。
432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 23:21:13.29 ID:xJ2jc2bwo
「そして、もしも、もう、間に合わなかったら…私を倒して、そして、グリーフシードを…使って。貴女達が、生きるために…」
「ほむらちゃんっ!」
「まどか…。ごめんなさい。でも、これは魔法少女の定め…。それに、後ろ向きな気持ちでじゃないの。みんなのお陰で、心から、感謝の気持ちを込められた上での、願いなの」
「…定め。そんなぁ…ほむら…ちゃん…」
まどかの目からまた大粒の涙がこぼれた。
「さぁ…お願い」
「ほむらちゃんっ!」
「まどか…。ごめんなさい。でも、これは魔法少女の定め…。それに、後ろ向きな気持ちでじゃないの。みんなのお陰で、心から、感謝の気持ちを込められた上での、願いなの」
「…定め。そんなぁ…ほむら…ちゃん…」
まどかの目からまた大粒の涙がこぼれた。
「さぁ…お願い」
433: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 23:26:41.38 ID:xJ2jc2bwo
私は握りしめていた手の力を抜き、ソウルジェムをそっと開いた。
「…えっ…」
四人の視線が一斉にそれに注がれ、そして固まる。
…ああ、やっぱり、手遅れなのね。
なら…魔女になった私を…。
「あ、暁美さん…」
「…えっ…」
四人の視線が一斉にそれに注がれ、そして固まる。
…ああ、やっぱり、手遅れなのね。
なら…魔女になった私を…。
「あ、暁美さん…」
434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/14(月) 23:31:28.21 ID:xJ2jc2bwo
「…何? 大丈夫、私なら…」
「いえ…言いにくいんだけど…」
「いいのよ。分かっている。もう、私のソウルジェムは…」
「綺麗…なんだけど」
「…そう、もう、まっく…」
「え?」
「いえ…言いにくいんだけど…」
「いいのよ。分かっている。もう、私のソウルジェムは…」
「綺麗…なんだけど」
「…そう、もう、まっく…」
「え?」
439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/15(火) 23:10:52.78 ID:vwzjPXnyo
私は思わず目を開けて自分のソウルジェムを見た。
「…穢れて…無い?」
そう。
私のソウルジェムは、まるっきり綺麗な状態。
「だから、グリーフシードが穢れを吸わなかったの…かしら?」
「あ。ちゃんと吸うよこれ」
「…穢れて…無い?」
そう。
私のソウルジェムは、まるっきり綺麗な状態。
「だから、グリーフシードが穢れを吸わなかったの…かしら?」
「あ。ちゃんと吸うよこれ」
440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/15(火) 23:17:59.70 ID:vwzjPXnyo
「お、ホントだ」
さやかと杏子が試しに自分のソウルジェムを近づけると、それはいつも通りに穢れを吸っていた。
「なっ!? …ど、どうして?」
思わず体を起こしてソウルジェムをまじまじと見つめる。
本当に穢れは無い。
だから、グリーフシードが反応しなかったんだ。
さやかと杏子が試しに自分のソウルジェムを近づけると、それはいつも通りに穢れを吸っていた。
「なっ!? …ど、どうして?」
思わず体を起こしてソウルジェムをまじまじと見つめる。
本当に穢れは無い。
だから、グリーフシードが反応しなかったんだ。
441: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/15(火) 23:23:16.75 ID:vwzjPXnyo
「…嘘でしょ?! だって私、グリーフシード持ってないのに!?」
「でも…綺麗だぜ」
「うん、あんたのソウルジェム…綺麗」
「…どっ…どうして?」
本当なら喜ぶところなのに、疑問の方が勝ってしまい、素直に喜べない。
幻覚とかじゃ無いわよね?
「でも…綺麗だぜ」
「うん、あんたのソウルジェム…綺麗」
「…どっ…どうして?」
本当なら喜ぶところなのに、疑問の方が勝ってしまい、素直に喜べない。
幻覚とかじゃ無いわよね?
442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/15(火) 23:28:33.41 ID:vwzjPXnyo
杏子を見るとそれを悟ったのか、いやいや、と首をぶんぶん横に振っている。
「…これも、奇蹟?」
さやかが杏子に問う。
「し、知らねえよ! 第一、そ、そこまで都合がいいのは…」
「ほむらちゃん」
その時、まどかが静かに私の名前を呼んだ。
「…これも、奇蹟?」
さやかが杏子に問う。
「し、知らねえよ! 第一、そ、そこまで都合がいいのは…」
「ほむらちゃん」
その時、まどかが静かに私の名前を呼んだ。
444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/15(火) 23:46:48.30 ID:vwzjPXnyo
「まどか…」
「これで…一緒に、帰れるね」
そう言って静かに私を抱きしめる。
「…そうね」
まどかの抱擁が心地いい。
そうね。
「これで…一緒に、帰れるね」
そう言って静かに私を抱きしめる。
「…そうね」
まどかの抱擁が心地いい。
そうね。
445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/15(火) 23:54:19.61 ID:vwzjPXnyo
理由は後で分かればいいわ。
今は、喜ぼう。
みんなと一緒に帰れることを。
みんなと一緒に生きていることを。
私は、もう何度目か分からない涙を流して、みんなと抱き合った。
一人だけ、私のお腹に顔を突っ込んで、おしりを鷲掴みしているまどかの鼻息がものすごく荒いのが気になったけど。
今は、喜ぼう。
みんなと一緒に帰れることを。
みんなと一緒に生きていることを。
私は、もう何度目か分からない涙を流して、みんなと抱き合った。
一人だけ、私のお腹に顔を突っ込んで、おしりを鷲掴みしているまどかの鼻息がものすごく荒いのが気になったけど。
446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 00:01:26.44 ID:nRfph9eBo
数日後。
「ウェヒー!」
「だ、だめぇっ! まどか! 許してぇっ!」
「駄目だよ-。これは必要なコトなんだかられろれろれくちゅくちゅ」
「あひいぃぃっ!」
「ほむらちゃんのここ、こーんなになっちゃったぁ。つまみつまみれろれろー」
「ウェヒー!」
「だ、だめぇっ! まどか! 許してぇっ!」
「駄目だよ-。これは必要なコトなんだかられろれろれくちゅくちゅ」
「あひいぃぃっ!」
「ほむらちゃんのここ、こーんなになっちゃったぁ。つまみつまみれろれろー」
447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 00:06:25.69 ID:nRfph9eBo
「あぐううぅぅっ…………あっ…」
「ウェヒヒヒ。今まで我慢してきた分を取り戻さないとね!」
「が、我慢…してた…の? あれで?」
「うん。本気の10%くらいかな」
「あれで?!」
「ウェヒヒヒ」
「ウェヒヒヒ。今まで我慢してきた分を取り戻さないとね!」
「が、我慢…してた…の? あれで?」
「うん。本気の10%くらいかな」
「あれで?!」
「ウェヒヒヒ」
448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 00:11:16.18 ID:nRfph9eBo
ああ、その無垢な笑みで頷く貴女が愛おしいけど…怖い。リアルで。
「と言う訳であみあみあみー」
「ひぎいいいいいっ! もっ…もう…駄目…まど…あ……あんっ!」
「ぷふぅー。ごちそうさま」
「まろかぁ…しゅきぃ…」
「ウェヒヒ。私もだよ。むちゅー」
「と言う訳であみあみあみー」
「ひぎいいいいいっ! もっ…もう…駄目…まど…あ……あんっ!」
「ぷふぅー。ごちそうさま」
「まろかぁ…しゅきぃ…」
「ウェヒヒ。私もだよ。むちゅー」
449: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 00:16:23.44 ID:nRfph9eBo
「ぷあ…あん…。はぁん…。あ…ん…」
「むむむ! 今のほむらちゃんの表情でムック…じゃなくてまどかは劣情をもよおしましたぞ」
「え」
「と言う訳で、第四ラウンド! レディー、ゴーっ!」
「まっ! まどかあああっ!」
「だいじょうれるれるぶだいれるれるじょうれるれるぶだいれるれるれるれるれるれるじょうぶれるれるれるれるれるれる」
「むむむ! 今のほむらちゃんの表情でムック…じゃなくてまどかは劣情をもよおしましたぞ」
「え」
「と言う訳で、第四ラウンド! レディー、ゴーっ!」
「まっ! まどかあああっ!」
「だいじょうれるれるぶだいれるれるじょうれるれるぶだいれるれるれるれるれるれるじょうぶれるれるれるれるれるれる」
450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 00:21:45.03 ID:nRfph9eBo
「まど…か……あ…ぁあ…ぁあぁ…ぁぁ…」
「れろれろれろれろれろれろれろれろむちゅむちゅむちゅだいじょうぶむちゅむちゅむちゅはみはみはみはみはみはみはみ」
「………………………………あん」
「ティヒヒ。これでソウルジェムは重曹で磨いたのよりぴっかぴかだね!」
「……」ビクビク
「れろれろれろれろれろれろれろれろむちゅむちゅむちゅだいじょうぶむちゅむちゅむちゅはみはみはみはみはみはみはみ」
「………………………………あん」
「ティヒヒ。これでソウルジェムは重曹で磨いたのよりぴっかぴかだね!」
「……」ビクビク
460: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:07:45.74 ID:nRfph9eBo
翌日。
「…で、結局何がどうなっているの?」
マミの部屋。
みんなが机を大きく囲んで座り、その中で私だけが、まどかにしだれかかりながら、肩で大きく息をしていた。
「大丈夫? ほむらちゃん。お疲れ様」ナデナデ
「…なん…とか…」ハーハーゼイゼイゼイ
「…で、結局何がどうなっているの?」
マミの部屋。
みんなが机を大きく囲んで座り、その中で私だけが、まどかにしだれかかりながら、肩で大きく息をしていた。
「大丈夫? ほむらちゃん。お疲れ様」ナデナデ
「…なん…とか…」ハーハーゼイゼイゼイ
461: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:12:36.28 ID:nRfph9eBo
あの日、私に何が起きたのかが自分なりに理解出来、その事をみんなに話すため、マミの部屋でお茶会をしようと言う事になったその日。
その道すがら、魔女の気配を感じた私はまず魔女退治をしてからここに来た。
時間停止を使うと、やっぱり前よりも疲れる。停止出来る時間は前より少ないし。
時間停止。
そう、私は時間停止をまた使えるようになっていた。
あの時、『まどか』が私を助けてくれた。
その道すがら、魔女の気配を感じた私はまず魔女退治をしてからここに来た。
時間停止を使うと、やっぱり前よりも疲れる。停止出来る時間は前より少ないし。
時間停止。
そう、私は時間停止をまた使えるようになっていた。
あの時、『まどか』が私を助けてくれた。
462: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:17:42.44 ID:nRfph9eBo
そう思ったあの瞬間、時が止まった。
三十路の魔女を倒した後、簡単にはできなかったので気のせいだったのかとも思ったけど、その夜のまどかがベッドに入った途端あまりにも禍々しいオーラを放って私ににじり寄って来たので、思わず本気で警戒したら、その時、時が止まった。
今はまだ、昔よりだいぶ少ない時間だし、当然巻き戻しは出来ない。
でも、私はこれでまた生きられる、と安堵した。
これで、みんなに必要以上に迷惑をかけずに済む、とも。
そして何より、みんなと一緒に居られるんだ、と。
三十路の魔女を倒した後、簡単にはできなかったので気のせいだったのかとも思ったけど、その夜のまどかがベッドに入った途端あまりにも禍々しいオーラを放って私ににじり寄って来たので、思わず本気で警戒したら、その時、時が止まった。
今はまだ、昔よりだいぶ少ない時間だし、当然巻き戻しは出来ない。
でも、私はこれでまた生きられる、と安堵した。
これで、みんなに必要以上に迷惑をかけずに済む、とも。
そして何より、みんなと一緒に居られるんだ、と。
463: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:22:54.61 ID:nRfph9eBo
もっとも、時を止めるとものすごく疲れる、と言うかソウルジェムが穢れやすくなったから、昔ほど実用的では無いけど。
それにあの後、時を止めたんだけど、結局それで疲れ果てて動けなくなった私はその後まどかに何も逆らえず、つま先から頭のてっぺんから…その……あそ…と、とにかく…全部…食べられてしまった訳で…。
でも、そのおかげで…その、時を止めて穢れていた私のソウルジェムが…その、まどかの…アレが、アレする度に…じわじわと回復したのを…確認できた。
回復方法は出来るだけやんわりとぼかしつつ、なんとか説明を終えた私を見て、みんなは口々に感嘆の声を上げていた。
さやかは、武器の新調に時間停止なんてずるい、とふくれている。
ほむらまで飛び道具なんてあたし不利じゃん、とか言って。
それにあの後、時を止めたんだけど、結局それで疲れ果てて動けなくなった私はその後まどかに何も逆らえず、つま先から頭のてっぺんから…その……あそ…と、とにかく…全部…食べられてしまった訳で…。
でも、そのおかげで…その、時を止めて穢れていた私のソウルジェムが…その、まどかの…アレが、アレする度に…じわじわと回復したのを…確認できた。
回復方法は出来るだけやんわりとぼかしつつ、なんとか説明を終えた私を見て、みんなは口々に感嘆の声を上げていた。
さやかは、武器の新調に時間停止なんてずるい、とふくれている。
ほむらまで飛び道具なんてあたし不利じゃん、とか言って。
465: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:29:08.60 ID:nRfph9eBo
何を言っているの。この力は、争うためじゃない。守るためにあるのよ。
この弓は、ね。
マミも、その事実に仰天しながらも、いざと言うときはまた守ってね、と微笑む。
こういう事をさらりと言えるあたり、マミは心も強くなっているんだと実感できる。
勿論よ。そして、私こそ、貴女に、先輩に、時々は頼らせてもらいます。
杏子はマイペースでロッキーをぽりぽりと頬張っている。
この弓は、ね。
マミも、その事実に仰天しながらも、いざと言うときはまた守ってね、と微笑む。
こういう事をさらりと言えるあたり、マミは心も強くなっているんだと実感できる。
勿論よ。そして、私こそ、貴女に、先輩に、時々は頼らせてもらいます。
杏子はマイペースでロッキーをぽりぽりと頬張っている。
466: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:35:24.68 ID:nRfph9eBo
あたし達の負担が減るならいいじゃん、とこの子らしい飄々とした態度で。
でも。それでも、困ったときはソウルジェム貸してやるよ。なんて言う辺りが杏子らしいわ。
マミの横でお菓子を食べていたキュウべぇも、珍しく余計な事を言わずに感心していた。
人間は不思議を超えて不可解だ、なんてね。
そして、それに対してまどかが言ってくれた。
「ウェヒヒ。これがキュウべぇが無駄だ、理解出来ないって思っている、愛の力なんだよ」
でも。それでも、困ったときはソウルジェム貸してやるよ。なんて言う辺りが杏子らしいわ。
マミの横でお菓子を食べていたキュウべぇも、珍しく余計な事を言わずに感心していた。
人間は不思議を超えて不可解だ、なんてね。
そして、それに対してまどかが言ってくれた。
「ウェヒヒ。これがキュウべぇが無駄だ、理解出来ないって思っている、愛の力なんだよ」
467: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:41:14.58 ID:nRfph9eBo
…そうね。これは…愛、なのよね。
きっと…。
しだれ掛かった私にまどかが視線を向ける度、お腹の奥がきゅん、となる。
これは…愛なのね。
「…まどかぁ…なんだか…眠いの」
「はい、ほむらちゃん、膝枕」
きっと…。
しだれ掛かった私にまどかが視線を向ける度、お腹の奥がきゅん、となる。
これは…愛なのね。
「…まどかぁ…なんだか…眠いの」
「はい、ほむらちゃん、膝枕」
470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:47:35.18 ID:nRfph9eBo
「ありがとう…」
みんなの前だというのに、私は臆面もなくまどかの膝枕でそのまままぶたを閉じた。
あ…気持ちいい。すぐにでも…眠れそう。
「ウェヒヒ。ほむらちゃんお疲れさま」
「ええと…、それで暁美さんの話だと、つまり…その、鹿目さんが暁美さんに…その、い、色々すると、グリーフシードが無くてもソウルジェムが浄化できちゃうようになった、でいいの?」
「はい。だからあの時、私がほむらちゃんを応援していたから、いつの間にかソウルジェムの穢れが無くなっていたらしいです」
みんなの前だというのに、私は臆面もなくまどかの膝枕でそのまままぶたを閉じた。
あ…気持ちいい。すぐにでも…眠れそう。
「ウェヒヒ。ほむらちゃんお疲れさま」
「ええと…、それで暁美さんの話だと、つまり…その、鹿目さんが暁美さんに…その、い、色々すると、グリーフシードが無くてもソウルジェムが浄化できちゃうようになった、でいいの?」
「はい。だからあの時、私がほむらちゃんを応援していたから、いつの間にかソウルジェムの穢れが無くなっていたらしいです」
471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:52:09.39 ID:nRfph9eBo
「…改めてすげえなソウルジェム。つうかお前が。…いろんな意味で」
「それだけじゃ無いんだよ。なんだかね、よく分からないけど逆も出来るの」
「逆ぅ?」
「うん、さやかちゃん、ソウルジェム見せて」
「え?」
「見せて」
「それだけじゃ無いんだよ。なんだかね、よく分からないけど逆も出来るの」
「逆ぅ?」
「うん、さやかちゃん、ソウルジェム見せて」
「え?」
「見せて」
473: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/16(水) 23:57:22.51 ID:nRfph9eBo
「あ、いや…その…」
「み、せ、て?」
「こ、こう…でしょうか?」
「……」ジロー
SG「」ジワジワ
「やめてえええっ! その視線やめてえええええっ」
「み、せ、て?」
「こ、こう…でしょうか?」
「……」ジロー
SG「」ジワジワ
「やめてえええっ! その視線やめてえええええっ」
474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 00:03:00.05 ID:qyya3rN+o
「さやかああああっ! グ、グリーフシード使えええええっ!」
「鹿目さんストップううっ!」
「っと。こんな風になんだか、視線でソウルジェム濁らせられるんですよ。ほむらちゃん以外で。あ、穢れを取り除くのは逆に当然ほむらちゃん専用ですけど。ウェヒヒー」
「…あたしってあたしってあたしって…」
「さやかぁ…ひとりぼっちはさみしいよなぁ…」
「…鹿目さん…怖い…」
「鹿目さんストップううっ!」
「っと。こんな風になんだか、視線でソウルジェム濁らせられるんですよ。ほむらちゃん以外で。あ、穢れを取り除くのは逆に当然ほむらちゃん専用ですけど。ウェヒヒー」
「…あたしってあたしってあたしって…」
「さやかぁ…ひとりぼっちはさみしいよなぁ…」
「…鹿目さん…怖い…」
476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 00:08:35.23 ID:qyya3rN+o
…なんだか、ものすごく怖い会話が繰り広げられた気がして思わず起き上がった。
「あれ? ほむらちゃんもうおねむはいいの?」
「え、ええ。なんだか…。ええ。もういいわ」
周囲を見ると、みんな怯えているし。
ええと、まどか、何したの?
「と言う訳でぇ、ほむらちゃん、さっきの魔女退治で消耗した分の回復の続き、しないとね?」
「あれ? ほむらちゃんもうおねむはいいの?」
「え、ええ。なんだか…。ええ。もういいわ」
周囲を見ると、みんな怯えているし。
ええと、まどか、何したの?
「と言う訳でぇ、ほむらちゃん、さっきの魔女退治で消耗した分の回復の続き、しないとね?」
482: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:06:46.80 ID:qyya3rN+o
「え? ま、まどか? どこへ? 私、もう充分回復…」ズルズル
「ウェヒヒ。マミさん、あっちの部屋ちょっと借りますね」ズルズル
「…そっちはベッドルームなんだけど…」
「ウェヒヒ。穢れは、注いだ愛の大きさに比例して浄化されるんですよ。物理的な愛だと特に」ズルズル
「ま、まどか! 待って! あのっ! こんな明るいうちに! 人の家でっ!」ズルズルズルズル
「またまたぁ。あの日は隣にパパとママがいるところで○○○じゃない。思いだしちゃったよウェヒヒー。みんな、お邪魔しちゃうとソウルジェム○しちゃうよ?」ズルズルズルズルズルズル
「ウェヒヒ。マミさん、あっちの部屋ちょっと借りますね」ズルズル
「…そっちはベッドルームなんだけど…」
「ウェヒヒ。穢れは、注いだ愛の大きさに比例して浄化されるんですよ。物理的な愛だと特に」ズルズル
「ま、まどか! 待って! あのっ! こんな明るいうちに! 人の家でっ!」ズルズルズルズル
「またまたぁ。あの日は隣にパパとママがいるところで○○○じゃない。思いだしちゃったよウェヒヒー。みんな、お邪魔しちゃうとソウルジェム○しちゃうよ?」ズルズルズルズルズルズル
483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:12:30.99 ID:qyya3rN+o
「ちょ、ちょっと待って! まど…」バタン
「…ありゃ、獲物を巣に運ぶ肉食獣だったな」ゾゾゾ
「あの頃の小さくて可愛いまどかは一体何処へ…」シクシク
「…あ、あのね、佐倉さん、美樹さん、ちょっと、お夕飯のお買い物、一緒に行かない? と、とてもこの後ここに居られる状態じゃ…」
「ももも勿論! 付き合っちゃいますよあたしゃ!」
「とと、当然だぜマミ! おおお、お菓子買ってくれよな!」
「…ありゃ、獲物を巣に運ぶ肉食獣だったな」ゾゾゾ
「あの頃の小さくて可愛いまどかは一体何処へ…」シクシク
「…あ、あのね、佐倉さん、美樹さん、ちょっと、お夕飯のお買い物、一緒に行かない? と、とてもこの後ここに居られる状態じゃ…」
「ももも勿論! 付き合っちゃいますよあたしゃ!」
「とと、当然だぜマミ! おおお、お菓子買ってくれよな!」
484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:17:09.70 ID:qyya3rN+o
「ええええもちろんいいわよ! か、鹿目さん、あのね、私達ちょっと小一時間くらいおでか」ガチャ
「ウェヒーーーーー!」キャストオフアンドルパンダーイブ
「にゃああああああっ!」
「…行ってきます」バタン
その日、結局マミ達は帰ってこなかった。
携帯に探さないでください、と謎のメッセージを残して。
「ウェヒーーーーー!」キャストオフアンドルパンダーイブ
「にゃああああああっ!」
「…行ってきます」バタン
その日、結局マミ達は帰ってこなかった。
携帯に探さないでください、と謎のメッセージを残して。
485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:23:17.20 ID:qyya3rN+o
更に数日後。
こうして、私はまた魔法少女として戦い、生きて行けるようになった。
いろいろな意味で肉体的に大変なところはあるけど…。
でも、正直、嫌じゃ…ない、のが、少し…怖い。
「ほむらちゃん、いいお天気だねー」
「ええ」
こうして、私はまた魔法少女として戦い、生きて行けるようになった。
いろいろな意味で肉体的に大変なところはあるけど…。
でも、正直、嫌じゃ…ない、のが、少し…怖い。
「ほむらちゃん、いいお天気だねー」
「ええ」
487: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:28:19.53 ID:qyya3rN+o
まどかと一緒の帰り道。
その時、ソウルジェムに違和感を感じた。
「…待って。魔女の気配がするわ」
「あ、そうなんだ…。近いの?」
ふと、まどかの寂しそうな顔。
置いてけぼりの子猫を思わせるけど…その、どちらかと言うと本当はおあずけ状態の腹ぺこ猛禽類なのは私だけが知っている秘密。
その時、ソウルジェムに違和感を感じた。
「…待って。魔女の気配がするわ」
「あ、そうなんだ…。近いの?」
ふと、まどかの寂しそうな顔。
置いてけぼりの子猫を思わせるけど…その、どちらかと言うと本当はおあずけ状態の腹ぺこ猛禽類なのは私だけが知っている秘密。
488: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:33:41.99 ID:qyya3rN+o
「ええ。大丈夫。この程度の反応なら、すぐに終わるわ」
それを聞いたまどかの顔が明るくなる。
「じゃあ、待ってる。気をつけて!」
「ふふ。大丈夫。待たせないわよ」
「ウェヒヒ。私がいるから消耗は気にしないで、ガンガンいこうぜ! だよ!」
「い、一応グリーフシードもあるんだけど…」
それを聞いたまどかの顔が明るくなる。
「じゃあ、待ってる。気をつけて!」
「ふふ。大丈夫。待たせないわよ」
「ウェヒヒ。私がいるから消耗は気にしないで、ガンガンいこうぜ! だよ!」
「い、一応グリーフシードもあるんだけど…」
489: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:38:31.09 ID:qyya3rN+o
「それはさやかちゃん達にゆずってあげようよ。ね? ライオンはうさぎを倒すにも全力を出すんだよ? だからおもいっきり暴れちゃって! 疲れた後のお風呂はきもちイイよ。動けなくなったら私がおんぶしてあげるからぁ。それに、その方が色々…ううん、なんでもないyo」ジュルリ
「…ま、まどかがそう言うなら」
出来るだけ体力を温存するようにしよう。
「ウェヒー。待ってるよー」
まどかにこにこと微笑みながら小走りで駆けてゆく。
私が気兼ねなく戦えるように。
「…ま、まどかがそう言うなら」
出来るだけ体力を温存するようにしよう。
「ウェヒー。待ってるよー」
まどかにこにこと微笑みながら小走りで駆けてゆく。
私が気兼ねなく戦えるように。
490: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:38:57.97 ID:qyya3rN+o
「それはさやかちゃん達にゆずってあげようよ。ね? ライオンはうさぎを倒すにも全力を出すんだよ? だからおもいっきり暴れちゃって! 疲れた後のお風呂はきもちイイよ。動けなくなったら私がおんぶしてあげるからぁ。それに、その方が色々…ううん、なんでもないyo」ジュルリ
「…ま、まどかがそう言うなら」
出来るだけ体力を温存するようにしよう。
「ウェヒー。待ってるよー」
まどかにこにこと微笑みながら小走りで駆けてゆく。
私が気兼ねなく戦えるように。
「…ま、まどかがそう言うなら」
出来るだけ体力を温存するようにしよう。
「ウェヒー。待ってるよー」
まどかにこにこと微笑みながら小走りで駆けてゆく。
私が気兼ねなく戦えるように。
491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:43:44.92 ID:qyya3rN+o
色々あるけど、まどかの、あの微笑みは本物。
私に対してのあの笑みは、本物。
まどか、すぐ終わるから、待っていてね。
私も貴女にすぐ会いたいから。
魔女の反応が近い。
私は気を引き締めた。
私に対してのあの笑みは、本物。
まどか、すぐ終わるから、待っていてね。
私も貴女にすぐ会いたいから。
魔女の反応が近い。
私は気を引き締めた。
492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:48:46.52 ID:qyya3rN+o
まどかと、みんなと一緒に時々遊びながら、そして、時々魔女と戦う。
今も、時に命を落とす危険をはらむ事はある。
しかし、時に楽しみもある。
命を賭ける戦いと比べれば些細な楽しみだろうけど。
「…それにしても、やっぱり、若大将だと散歩じゃあないわね。はぁ…ちぃさん…」
でも、これが私達の日常。
今も、時に命を落とす危険をはらむ事はある。
しかし、時に楽しみもある。
命を賭ける戦いと比べれば些細な楽しみだろうけど。
「…それにしても、やっぱり、若大将だと散歩じゃあないわね。はぁ…ちぃさん…」
でも、これが私達の日常。
493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:53:32.59 ID:qyya3rN+o
「あ」
いつか、解放される時が来るのだろうか?
「そう言えば、ドルチェ、まだ食べてなかったわ」
それは分からない。
「今度、まどかと一緒に食べよう」
だからそれまでは、これを平和と呼ぼう。
いつか、解放される時が来るのだろうか?
「そう言えば、ドルチェ、まだ食べてなかったわ」
それは分からない。
「今度、まどかと一緒に食べよう」
だからそれまでは、これを平和と呼ぼう。
494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/17(木) 23:58:26.87 ID:qyya3rN+o
「ふふ。楽しみね」
この日常を、平和と呼ぼう。
「さぁ、さっさと終わらせるわよ」
この世界を、守りたいから。
「変身…!」
まどかを、守りたいから。
この日常を、平和と呼ぼう。
「さぁ、さっさと終わらせるわよ」
この世界を、守りたいから。
「変身…!」
まどかを、守りたいから。
495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/18(金) 00:02:37.33 ID:nWYXdlIWo
「ウェヒー! ボディライン丸見えでウルトラハッピー!」
これが。
「居たのっ?!」
魔法少女の日常。
終わり
これが。
「居たのっ?!」
魔法少女の日常。
終わり
512: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/20(日) 23:33:47.13 ID:gffRrQ/Ao
「そう言えばアッチと違ってすぐにスレが消えないんだったってのに気付いてから書き始めたんで、完全な蛇足なんだけどさぁ」
「なんだよいきなり」
「あたしの嫁がほむらに奪われて早幾月なわけだけど」
「あれからまだ二日だろ。下手な事考えて手ぇ出すなよ」
「出さないよ。戦うどころか近づいただけでゲームオーバー確定なんだから。コイキングで信長とタッグ組んだゼクロムに挑むようなもんだもん。…はぁ」
「なんだよいきなり」
「あたしの嫁がほむらに奪われて早幾月なわけだけど」
「あれからまだ二日だろ。下手な事考えて手ぇ出すなよ」
「出さないよ。戦うどころか近づいただけでゲームオーバー確定なんだから。コイキングで信長とタッグ組んだゼクロムに挑むようなもんだもん。…はぁ」
513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/20(日) 23:38:25.35 ID:gffRrQ/Ao
「…嫌なのか?」
「嫌…じゃないよ。まどかが心底幸せなのは嬉しいし、ほむらの事もそうだよ。ただ…やっぱり、昔からの親友が遠くなったって言う寂しさは…あるけど、さ」
「さやか…」
「ああ、私の可愛いまどかは何処へ…」
「…奪うつもりは無かったんだけど…ごめんなさい」
「嫌…じゃないよ。まどかが心底幸せなのは嬉しいし、ほむらの事もそうだよ。ただ…やっぱり、昔からの親友が遠くなったって言う寂しさは…あるけど、さ」
「さやか…」
「ああ、私の可愛いまどかは何処へ…」
「…奪うつもりは無かったんだけど…ごめんなさい」
514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/20(日) 23:43:17.53 ID:gffRrQ/Ao
「わぁっ!」
「ほむらっ?!」
「そ、そんなに驚かなくても…」
「あ、いや、いつの間にか居たからさ」
「…ごめんなさ」
「ほむらっ?!」
「そ、そんなに驚かなくても…」
「あ、いや、いつの間にか居たからさ」
「…ごめんなさ」
515: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/20(日) 23:48:13.62 ID:gffRrQ/Ao
「いやいやいや! ほむらは悪くないから! あたしが勝手に思っているだけ! 奪われたとかそういうつもりは無いから!」
「でも、貴女達が幼馴染みで親友なのは本当だもの。それに比べて、私はほんの少し前に知り合ったばかりなんだから…」
「まぁ二人とも落ち着けよ。ほら、仲良くなるのは別に時間だけが大切なんじゃないだろ?」
「ぐ…。それはあたしとまどかが過ごした時間が、ほむらの数ヶ月に劣ると…」
「だーかーら! 劣るとかそう言うんじゃねぇっての! それでなきゃあたしがさやかの事マミ以上にす…」
「でも、貴女達が幼馴染みで親友なのは本当だもの。それに比べて、私はほんの少し前に知り合ったばかりなんだから…」
「まぁ二人とも落ち着けよ。ほら、仲良くなるのは別に時間だけが大切なんじゃないだろ?」
「ぐ…。それはあたしとまどかが過ごした時間が、ほむらの数ヶ月に劣ると…」
「だーかーら! 劣るとかそう言うんじゃねぇっての! それでなきゃあたしがさやかの事マミ以上にす…」
516: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/20(日) 23:53:34.29 ID:gffRrQ/Ao
「え」
「え」
「…なんでもねぇ」
「何々? 杏子? 今なんて言ったの? なんて言いかけたの? ねぇねぇ?」
「だーっ! うぜぇよ! にじり寄るな腰にしがみつくな! 上目遣いで見るな! 匂い嗅ぐな!」
「え」
「…なんでもねぇ」
「何々? 杏子? 今なんて言ったの? なんて言いかけたの? ねぇねぇ?」
「だーっ! うぜぇよ! にじり寄るな腰にしがみつくな! 上目遣いで見るな! 匂い嗅ぐな!」
517: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/20(日) 23:58:53.16 ID:gffRrQ/Ao
「…ああ、でもそう言えば、杏子の匂いってなんだか落ち着く…」
「ば、馬鹿! あたしの匂いなんて、さやかのいい匂いに比べたら…」
「え」
「あ」
「…そ、そういう関係だったの貴女達?!」
「「あんたにだけは言われたくない」」
こんな日常。
「ば、馬鹿! あたしの匂いなんて、さやかのいい匂いに比べたら…」
「え」
「あ」
「…そ、そういう関係だったの貴女達?!」
「「あんたにだけは言われたくない」」
こんな日常。
524: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/30(水) 22:28:28.74 ID:2N9E21e3o
「ソロモンよ! さやかちゃんは帰って来た!」
「レスの残りがMOTTTAINAIってだけだけどな」
「まーね。あんたは特にもったいない精神旺盛だよね」
「…別に貧乏とかそう言うのじゃないからな」
「分かってる分かってるよ! 食べ物を大切にするのは当然の事だよ!」
「レスの残りがMOTTTAINAIってだけだけどな」
「まーね。あんたは特にもったいない精神旺盛だよね」
「…別に貧乏とかそう言うのじゃないからな」
「分かってる分かってるよ! 食べ物を大切にするのは当然の事だよ!」
525: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/30(水) 22:37:18.25 ID:2N9E21e3o
「…うん」
「あー、それはさておきだけどさ」
「うん」
「なんかほむらの様子が少しおかしいと思う」
「は? 何が? いや、昨日だって普通に一緒に魔女退治してたぜ?」
「あー、それはさておきだけどさ」
「うん」
「なんかほむらの様子が少しおかしいと思う」
「は? 何が? いや、昨日だって普通に一緒に魔女退治してたぜ?」
526: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/30(水) 22:47:46.31 ID:2N9E21e3o
「その後なの。あんたさっさと帰っちゃったから知らないだろうけど、最近その後ふらっと居なくなる事があるんだよ」
「花摘みじゃね?」
「いやいや。そうじゃなくって、とにかく…ほむらがなんか隠してる」
「聞けばいいじゃん」
「聞いたよ。でも、当然」
「花摘みじゃね?」
「いやいや。そうじゃなくって、とにかく…ほむらがなんか隠してる」
「聞けばいいじゃん」
「聞いたよ。でも、当然」
527: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/30(水) 22:54:24.55 ID:2N9E21e3o
ほむら「何も隠してなんかないわ」
528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/30(水) 23:00:39.12 ID:2N9E21e3o
「ふぁさっで終わり」
なびかない短髪でさやかがほむらの真似をする。
「じゃ、いいじゃん」
「いやいや良くないって。はっきりと何かを見た訳じゃないけど、あたしには分かる!」
さやかが自信満々に胸を張って鼻をふん、と鳴らした。
なびかない短髪でさやかがほむらの真似をする。
「じゃ、いいじゃん」
「いやいや良くないって。はっきりと何かを見た訳じゃないけど、あたしには分かる!」
さやかが自信満々に胸を張って鼻をふん、と鳴らした。
529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/30(水) 23:05:40.80 ID:2N9E21e3o
「要らねぇところでばっかり変に勘がいいもんな。ホントに」
「…地味にへこむ物言いやめて」
「で、何がそんなに引っかかるんだよ。ほむらとは魔女退治も一緒にしているし、時々遊んだりもしてるじゃん。隠し事する暇なんてあるか?」
「そー言われるとそうなんだけどね、でも…なーんか引っかかるんだよ。ほむらの行動がさ」
体のどこかが痒いけどそこがどこか分からない、そんな不満げな表情でさやかが唸る。
「…地味にへこむ物言いやめて」
「で、何がそんなに引っかかるんだよ。ほむらとは魔女退治も一緒にしているし、時々遊んだりもしてるじゃん。隠し事する暇なんてあるか?」
「そー言われるとそうなんだけどね、でも…なーんか引っかかるんだよ。ほむらの行動がさ」
体のどこかが痒いけどそこがどこか分からない、そんな不満げな表情でさやかが唸る。
532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/31(木) 22:59:11.36 ID:rL2YNLPso
(めんどくせぇ奴だな…)
「…だからぁ、あたし馬鹿だから、こういう事、普通は放っておこうってなるんだけど、それが出来ないんだよおおぉ…杏子おおおぉ…」
さやかが杏子にすがりついてはらはらと涙を流す。
「わーったよ! 心を読むな! どうせとことんやらないと夜も眠れねぇとか言うんだろ!」
「そう、お陰で今日は授業に身が入らなかったよ」
「…だからぁ、あたし馬鹿だから、こういう事、普通は放っておこうってなるんだけど、それが出来ないんだよおおぉ…杏子おおおぉ…」
さやかが杏子にすがりついてはらはらと涙を流す。
「わーったよ! 心を読むな! どうせとことんやらないと夜も眠れねぇとか言うんだろ!」
「そう、お陰で今日は授業に身が入らなかったよ」
533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/31(木) 23:07:52.36 ID:rL2YNLPso
「それはいつもの事だ」
「はい」
「で、仮に一応ひょっとしてもしかして万が一何かの間違いで本当にほむらが何か隠し事をしているとして、だ」
「…前提が長いよ」キューン
「るせぇ。犬みたいに鳴くな。とにかくその事、どこから攻める気なんだ? やっぱりまどかか?」
「はい」
「で、仮に一応ひょっとしてもしかして万が一何かの間違いで本当にほむらが何か隠し事をしているとして、だ」
「…前提が長いよ」キューン
「るせぇ。犬みたいに鳴くな。とにかくその事、どこから攻める気なんだ? やっぱりまどかか?」
534: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/31(木) 23:14:36.21 ID:rL2YNLPso
「いやいやいやいやいや! まどかにほむらを疑うような事言ったらソウルジェムが百個有っても秒殺で魔女化するってばおおお恐ろしや怖ろしや…」ガクブル
「あー、そうだな。この前お前、ほむらにふざけて抱きついたら脊髄損傷させられたもんな」
「…マミさんの予言が当たるとは思いませんでした。あれは本当に他意の無いスキンシップだったんだけど…。やっぱりまどかの目の前がまずかったかなぁ…?」
「ほむらは分かっていたんだろ?」
「うん…。でも、まどかがぁ…」
「あー、そうだな。この前お前、ほむらにふざけて抱きついたら脊髄損傷させられたもんな」
「…マミさんの予言が当たるとは思いませんでした。あれは本当に他意の無いスキンシップだったんだけど…。やっぱりまどかの目の前がまずかったかなぁ…?」
「ほむらは分かっていたんだろ?」
「うん…。でも、まどかがぁ…」
535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/31(木) 23:26:05.83 ID:rL2YNLPso
さやかがさめざめと泣きながら腰に手を当てる。
「完璧に治っている筈なのに天気が悪い日は骨が痛むんだよ…。何故か…」
「でも、それはまどかも流石に謝ったんだろ?」
「そう、誤ったの。誤字じゃ無いよ。『誤って脊髄砕いちゃった。ずらすだけのつもりだったのに、ゴメンねテヘペロ♪』って」
「…『謝る』気はないのか。しかし、ちょっとやり過ぎな気はする。ただ抱きつくでなんて…」
「完璧に治っている筈なのに天気が悪い日は骨が痛むんだよ…。何故か…」
「でも、それはまどかも流石に謝ったんだろ?」
「そう、誤ったの。誤字じゃ無いよ。『誤って脊髄砕いちゃった。ずらすだけのつもりだったのに、ゴメンねテヘペロ♪』って」
「…『謝る』気はないのか。しかし、ちょっとやり過ぎな気はする。ただ抱きつくでなんて…」
536: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/31(木) 23:32:08.67 ID:rL2YNLPso
「やっぱり、ついでに耳たぶ噛んだのが良くなかったのかなぁ…?」
「前言撤回。まどかの行動は適当だ。本来の意味での適当、な」
「あたしの味方が減ったぁー!」
「だから余計な事するからだっつぅの! 学習しろよ!」
「だってだって! ほむら可愛いんだもん! あの冷たいところとか気の強いところとかが全部虚勢で、本当はメガほむで弱ほむで鬱ほむで虚弱ほむな自分を押し殺していただけって分かった時から、正直あんだけこんちくしょうって思っていた感情が全部裏返って愛おしくなっちゃったんだもん!」
「前言撤回。まどかの行動は適当だ。本来の意味での適当、な」
「あたしの味方が減ったぁー!」
「だから余計な事するからだっつぅの! 学習しろよ!」
「だってだって! ほむら可愛いんだもん! あの冷たいところとか気の強いところとかが全部虚勢で、本当はメガほむで弱ほむで鬱ほむで虚弱ほむな自分を押し殺していただけって分かった時から、正直あんだけこんちくしょうって思っていた感情が全部裏返って愛おしくなっちゃったんだもん!」
537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/31(木) 23:39:16.50 ID:rL2YNLPso
「シーサーの親父に対する感情の変化と同じだな」
「そうそれ! 憎しみの大きさがそのままが誇りの大きさに変わった、みたいな。だからどうしてもほむらにはちょっかいを出したくなっちゃうんだよぉ…。愛なんだよぉ…」
「…愛はいいから、で?」
「あ、うん。…で、そ、そういうわけでとりあえずまどかは無しで! ただでさえ最近、まどかとほむら、お揃いのリボンなんか付けるようになってるんだもん。…恐れ多くて」
「ああ、この前付けていたアレか。恐れ多い? 何で?」
「そうそれ! 憎しみの大きさがそのままが誇りの大きさに変わった、みたいな。だからどうしてもほむらにはちょっかいを出したくなっちゃうんだよぉ…。愛なんだよぉ…」
「…愛はいいから、で?」
「あ、うん。…で、そ、そういうわけでとりあえずまどかは無しで! ただでさえ最近、まどかとほむら、お揃いのリボンなんか付けるようになってるんだもん。…恐れ多くて」
「ああ、この前付けていたアレか。恐れ多い? 何で?」
538: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/05/31(木) 23:45:23.36 ID:rL2YNLPso
「あれね、単純に二人でおそろにしたいって言う意味と、あとあたしがほむらに手を出そうとすると、嫌でもそれを見る事になるからって、警告の意味もあるみたいで…」
「なんか怖えぇ!」
「そんな訳で、触らぬ神に祟りなしって事で…。いや、普段は仲良しだよ? 全然疎遠とかにはなってないからね? 念のため言っておくけど」
「わーってるっての! んじゃさ、っつーと、後はマミしか居ないじゃん」
「なになに? 呼んだかしら?」
「なんか怖えぇ!」
「そんな訳で、触らぬ神に祟りなしって事で…。いや、普段は仲良しだよ? 全然疎遠とかにはなってないからね? 念のため言っておくけど」
「わーってるっての! んじゃさ、っつーと、後はマミしか居ないじゃん」
「なになに? 呼んだかしら?」
541: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/01(金) 23:35:20.00 ID:8TD5YMwAo
「わお、マミさん」
「うふふ。二人して公園のベンチで何をお話ししているの? お出かけの相談? それとももしかして恋バナ?」
言いつつ、マミが杏子の隣に座る。
「いやいや、そんな色気のある話じゃ無くて…」
「つぅかお前なんで居るんだよ」
「うふふ。二人して公園のベンチで何をお話ししているの? お出かけの相談? それとももしかして恋バナ?」
言いつつ、マミが杏子の隣に座る。
「いやいや、そんな色気のある話じゃ無くて…」
「つぅかお前なんで居るんだよ」
542: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/01(金) 23:40:36.40 ID:8TD5YMwAo
「お夕飯材料を買った帰りよ。良かったら一緒にどう?」
「あー、今日はあたしは遠慮します」
「お、あたしは喰う」
「了解よ。それじゃ佐倉さん、これ持ってね?」
「荷物持ちかよ」
「あー、今日はあたしは遠慮します」
「お、あたしは喰う」
「了解よ。それじゃ佐倉さん、これ持ってね?」
「荷物持ちかよ」
543: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/01(金) 23:45:38.18 ID:8TD5YMwAo
「いーじゃん、それでマミさんのおいしい夕飯ごちになれるんだから」
「へいへい」
「あ、それでマミさん、えーと、ちょっと相談なですけど…」
「何? やっぱり恋バナなの!? 誰と? 何と?」
「そこから離れろっつうの」
「へいへい」
「あ、それでマミさん、えーと、ちょっと相談なですけど…」
「何? やっぱり恋バナなの!? 誰と? 何と?」
「そこから離れろっつうの」
544: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/01(金) 23:51:01.41 ID:8TD5YMwAo
「て言うか何とってなんですか何とって?」
「え? だって、何かにそういう感情をとかって無い? ほら、お人形さんとか、ぬいぐるみとかに…え? 無い?」
「マミさん…」
「マミ…」
「な、なんでそんな切なげな目で見るのっ?!
「え? だって、何かにそういう感情をとかって無い? ほら、お人形さんとか、ぬいぐるみとかに…え? 無い?」
「マミさん…」
「マミ…」
「な、なんでそんな切なげな目で見るのっ?!
545: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/01(金) 23:55:31.62 ID:8TD5YMwAo
「はっ!」
ほむらの小さな息吹と共に淡く輝く矢が飛び、ゆらゆらと陽炎のように揺らめく魔女の体を貫通する。
「…駄目ね。普通の攻撃じゃ」
ゴシック調なモノトーンの結界内。
ジャコビアン様式の柱が遺跡のようにそびえ立ち、妙に豪奢な作りの白黒のレースが、それらからジャングルの蔦のように垂れ下がったり繋がり合っていた。
546: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/01(金) 23:59:07.97 ID:8TD5YMwAo
ほむらは一つの柱の上に立ち、十メートルを超える柱より尚背の高い、陽炎のような魔女を睨み付ける。
「落ち着いて…。あれは、恐らく擬態。本当に霊体然とした魔女は居ない筈…」
多分、体を構成する物質が希薄なだけだ。
だから攻撃が通り抜けているように感じる。
言うなれば蚊柱に向かって矢を放っているようなものなのだろう。
「落ち着いて…。あれは、恐らく擬態。本当に霊体然とした魔女は居ない筈…」
多分、体を構成する物質が希薄なだけだ。
だから攻撃が通り抜けているように感じる。
言うなれば蚊柱に向かって矢を放っているようなものなのだろう。
555: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 16:46:14.22 ID:mzBRQrxVo
「なら」
ほむらは盾の中から厳重に封のされた一斗缶を三つ取りだし、両手に一つずつ。
片足を上げ、つま先にサッカーボールを持つみたいにしてもう一缶を持ち上げた。
何をしているのか。
そんな風に魔女が思った気がする。
ほむらは盾の中から厳重に封のされた一斗缶を三つ取りだし、両手に一つずつ。
片足を上げ、つま先にサッカーボールを持つみたいにしてもう一缶を持ち上げた。
何をしているのか。
そんな風に魔女が思った気がする。
556: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 16:51:22.99 ID:mzBRQrxVo
気持ち、身構えたように見えた。
「…流石に身構えられるとやりにくいわね」
どうしたものか、と頭だけを動かして髪を流す。
一緒にリボンがふわりと揺れた。
その時、魔女が突然動き出す。
「…流石に身構えられるとやりにくいわね」
どうしたものか、と頭だけを動かして髪を流す。
一緒にリボンがふわりと揺れた。
その時、魔女が突然動き出す。
557: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 16:56:08.64 ID:mzBRQrxVo
もやのような両手を突き出しながら、がむしゃらに突進して。
まるでそれは襲いかかると言うより、あがくようにも、何かを求めているかのようにも見えた。
「! まぁ…好都合だわ」
一瞬驚くが、すぐさま冷静に状況を判断してむしろ好機と知る。
ほむらは両手と片足で持っていた一斗缶を右手、左手、そして右足、と体を回転させながら華麗な動作で投げつけた。
まるでそれは襲いかかると言うより、あがくようにも、何かを求めているかのようにも見えた。
「! まぁ…好都合だわ」
一瞬驚くが、すぐさま冷静に状況を判断してむしろ好機と知る。
ほむらは両手と片足で持っていた一斗缶を右手、左手、そして右足、と体を回転させながら華麗な動作で投げつけた。
558: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 17:06:16.66 ID:mzBRQrxVo
放物線を描きつつ、正確に正三角形の頂点となりながら宙を飛ぶ一斗缶。
ただの石つぶてと変わらないと判断した魔女は何する事も無く無視する。
それらはそのまま魔女の体を素通りしかけるが、丁度魔女を取り囲むような位置になったその瞬間。
「はあっ!」
ほむらは精一杯の気合いを込め、そして時を止めた。
ただの石つぶてと変わらないと判断した魔女は何する事も無く無視する。
それらはそのまま魔女の体を素通りしかけるが、丁度魔女を取り囲むような位置になったその瞬間。
「はあっ!」
ほむらは精一杯の気合いを込め、そして時を止めた。
559: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 17:12:45.79 ID:mzBRQrxVo
急な場合はせいぜい五秒程度しか止められないが、それでも強力な能力。
「やっ!」
ほむらは弓を生成し、そして三本の矢を次々と放った。
魔翌力から生まれた矢も物理法則には逆らえず、放たれ、ほむらから離れた瞬間に停止する。
入念に角度を見て、問題無いと確認する。
「やっ!」
ほむらは弓を生成し、そして三本の矢を次々と放った。
魔翌力から生まれた矢も物理法則には逆らえず、放たれ、ほむらから離れた瞬間に停止する。
入念に角度を見て、問題無いと確認する。
560: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 17:19:06.38 ID:mzBRQrxVo
それが丁度五秒後。
「…動け!」
言うまでも無いが時は動きだし、次の瞬間、矢の当たった一斗缶が異常な爆発を起こし、魔女を一瞬で炎に包んだ。
ほむらは柱の陰に身を隠し、吹きすさぶ熱風から身を守る。
この燃え方はガソリンではない。
「…動け!」
言うまでも無いが時は動きだし、次の瞬間、矢の当たった一斗缶が異常な爆発を起こし、魔女を一瞬で炎に包んだ。
ほむらは柱の陰に身を隠し、吹きすさぶ熱風から身を守る。
この燃え方はガソリンではない。
561: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 17:33:09.60 ID:mzBRQrxVo
中に入っていたのは、JP-5。いわゆる軍用ジェット燃料。
極端に疲弊する長時間の時間停止を使って自衛隊から調達した、貴重な切り札。
長時間の時間停止を使うときは極端な疲弊、つまりソウルジェムの穢れが発生する故、まどかの協力が必要不可欠だが、穢れを取り除いて貰う『儀式』に躊躇している自分が心のどこかにまだ居るのは秘密だ。
ばれたら、躊躇いが無くなるまでノンストップオールナイトで調教されるから。
この前はよりによってまどかの家でだった。
極端に疲弊する長時間の時間停止を使って自衛隊から調達した、貴重な切り札。
長時間の時間停止を使うときは極端な疲弊、つまりソウルジェムの穢れが発生する故、まどかの協力が必要不可欠だが、穢れを取り除いて貰う『儀式』に躊躇している自分が心のどこかにまだ居るのは秘密だ。
ばれたら、躊躇いが無くなるまでノンストップオールナイトで調教されるから。
この前はよりによってまどかの家でだった。
562: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 17:39:19.31 ID:mzBRQrxVo
朝、食卓に座ったとき、おじさまとおばさまの目の下にも、なぜか隈があった。
あの時の、自分を責める、と言うより申し訳ない、みたいな憐憫の表情は忘れられない。
ごめんなさい。本当に色々と様々な意味でとにかくごめんなさい。
それでも私を受け入れてくれるお二人が大好きです。まどかの次に。
まどか、貴女もお願いだから声だけは我慢させて。声が聞きたい、は分かるけど。
あの時の、自分を責める、と言うより申し訳ない、みたいな憐憫の表情は忘れられない。
ごめんなさい。本当に色々と様々な意味でとにかくごめんなさい。
それでも私を受け入れてくれるお二人が大好きです。まどかの次に。
まどか、貴女もお願いだから声だけは我慢させて。声が聞きたい、は分かるけど。
563: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 17:48:06.71 ID:mzBRQrxVo
いえ、分かっちゃいけないんだけど。
魔女は炎につつまれ、悲鳴を上げた。
あ、いけない。戦っている最中だったわ。
紅蓮の炎は空気を巻き込みながら燃え上がり続け、千度を超える炎の中で魔女はもがき、そして散り散りになって霧散し、消滅した。
黒煙と油の匂いが周囲に充満し、ほむらはちょっと咽せながら爆煙の中心地を見る。
魔女は炎につつまれ、悲鳴を上げた。
あ、いけない。戦っている最中だったわ。
紅蓮の炎は空気を巻き込みながら燃え上がり続け、千度を超える炎の中で魔女はもがき、そして散り散りになって霧散し、消滅した。
黒煙と油の匂いが周囲に充満し、ほむらはちょっと咽せながら爆煙の中心地を見る。
564: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 17:55:15.44 ID:mzBRQrxVo
まだ熱が残っている爆心地。
そこには、魔女の成れの果て、もしくは生まれる前の状態とも言えるグリーフシードが駒のように立っていた。
:-p
「だからどうして最近のは…」
溜息と共に気を取り直し、ほむらはグリーフシードを拾い上げ、そして両手で持ち、そっと包み込む。
そこには、魔女の成れの果て、もしくは生まれる前の状態とも言えるグリーフシードが駒のように立っていた。
:-p
「だからどうして最近のは…」
溜息と共に気を取り直し、ほむらはグリーフシードを拾い上げ、そして両手で持ち、そっと包み込む。
565: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 18:01:05.48 ID:mzBRQrxVo
溜息と共に気を取り直し、ほむらはグリーフシードを拾い上げ、そして両手で持ち、そっと包み込む。
「…貴女は、何を望んだの? 何を欲しがったの? どうして、絶望したの?」
リボンが揺らめく。
それに合わせて、グリーフシードが微かに輝いた気がした。
「……」
「…貴女は、何を望んだの? 何を欲しがったの? どうして、絶望したの?」
リボンが揺らめく。
それに合わせて、グリーフシードが微かに輝いた気がした。
「……」
566: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 18:06:40.35 ID:mzBRQrxVo
ほむらは、グリーフシードを母が子を抱くようにして抱きしめる。
グリーフシードがほむらのソウルジェムの穢れを吸い始めた。
「めっ」
ほむらはそれを止める。
「駄目。私は…貴女を…」
グリーフシードがほむらのソウルジェムの穢れを吸い始めた。
「めっ」
ほむらはそれを止める。
「駄目。私は…貴女を…」
567: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 18:12:44.70 ID:mzBRQrxVo
結界が消滅する。
ほむらはその場から消えた。
「なる程。確かに…暁美さんって今も時々一人で魔女退治するわよね。でも…それは私達も同じよね? 危険なとき、間に合わないときや、一緒じゃ無いときは個々に動くのが当たり前だから…それは何もおかしい事じゃないと思うけど?」
「んだんだ」
杏子がマミの買ってきたお菓子の中からみたらし団子を食べつつ頷く。
ほむらはその場から消えた。
「なる程。確かに…暁美さんって今も時々一人で魔女退治するわよね。でも…それは私達も同じよね? 危険なとき、間に合わないときや、一緒じゃ無いときは個々に動くのが当たり前だから…それは何もおかしい事じゃないと思うけど?」
「んだんだ」
杏子がマミの買ってきたお菓子の中からみたらし団子を食べつつ頷く。
568: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 18:17:11.00 ID:mzBRQrxVo
「そーなんですけど、でも何かひっかかるんですよ。何かが…」
「美樹さん、変なところで勘が鋭いものね」
「マミさんまでぇ…」
あうー、とさやかが滝のように涙を流す。
「ふふ。それはともかく、あなたの勘を疑うんじゃないけど、暁美さんの事を勘ぐり過ぎても駄目よ。あの子は…かけがえのない仲間なんだから」
「美樹さん、変なところで勘が鋭いものね」
「マミさんまでぇ…」
あうー、とさやかが滝のように涙を流す。
「ふふ。それはともかく、あなたの勘を疑うんじゃないけど、暁美さんの事を勘ぐり過ぎても駄目よ。あの子は…かけがえのない仲間なんだから」
570: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/03(日) 18:30:22.66 ID:mzBRQrxVo
「勿論です! まぁ…あたしも自分の性格が性格だからってのは分かっているつもりなんですけど…」
「それに、あの子は頭のいい子。その行動に何かあるなら、それは必ず納得出来る意味があるはずよ。言えない理由も含めて」
「…ですよね」
「なら、この話はとりあえずおしまいにしようぜ。あたしもそろそろ腹減ってきたんだからさ」
「あら、もうこんな時間ね」
「それに、あの子は頭のいい子。その行動に何かあるなら、それは必ず納得出来る意味があるはずよ。言えない理由も含めて」
「…ですよね」
「なら、この話はとりあえずおしまいにしようぜ。あたしもそろそろ腹減ってきたんだからさ」
「あら、もうこんな時間ね」
577: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:09:24.02 ID:VoYk/OdEo
「あ、はい。分かりました。まぁ、そうですよね。あたしも神経尖りすぎていたんだと思うんで…。もうちょっと気を抜きます。せっかくの街一番の美人が、眉間皺なんてあったら台無しですしね」
さやかがあはは、と屈託無く笑う。
「うん、それがいいわ。魔法少女は心のケアも大切よ。それこそ美樹さん自身、何か悩みがあったら、私にも相談してね? 一応先輩なんだから、相談に乗るわよ。恋バナとか」
「恋バナに拘んなよ、マミ」
「あのー。自分で言っおいて何ですけど…ボケが突っ込まれないと、自分がイタイだけになるんですぅー…」
さやかがあはは、と屈託無く笑う。
「うん、それがいいわ。魔法少女は心のケアも大切よ。それこそ美樹さん自身、何か悩みがあったら、私にも相談してね? 一応先輩なんだから、相談に乗るわよ。恋バナとか」
「恋バナに拘んなよ、マミ」
「あのー。自分で言っおいて何ですけど…ボケが突っ込まれないと、自分がイタイだけになるんですぅー…」
578: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:14:46.78 ID:VoYk/OdEo
「うふふ。そういうところもこれから直していけばいいんじゃない?」
「正論すぎて何も言えないあたし」
かなわないなぁ、とさやかが溜息をつく。
「それじゃまた明日。 佐倉さんはこっちね」
「おう。さやか、また明日な」
「正論すぎて何も言えないあたし」
かなわないなぁ、とさやかが溜息をつく。
「それじゃまた明日。 佐倉さんはこっちね」
「おう。さやか、また明日な」
579: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:19:34.78 ID:VoYk/OdEo
「またねー」
「さて、佐倉さんはせっかく一緒に帰るんだから、勉強の進み具合も見てあげるわね」
「…それが目的か」
杏子はげんなりした顔をしつつも、それでもマミから離れる事無く隣を歩く。
二人と一人になった少女達は、それぞれ反対方向へ歩き出す。
「さて、佐倉さんはせっかく一緒に帰るんだから、勉強の進み具合も見てあげるわね」
「…それが目的か」
杏子はげんなりした顔をしつつも、それでもマミから離れる事無く隣を歩く。
二人と一人になった少女達は、それぞれ反対方向へ歩き出す。
580: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:24:10.64 ID:VoYk/OdEo
橙色の夕日が、三人の影を遠くとへ伸ばしていた。
一人になったさやかは、うん、と背伸びをして、神経質になっていたであろう自分を反省する。
「ほむらの事疑ってなんていないのに…。ただ、なんだかって言うだけなのに…。それだけなんだよなぁ…ホント、損な性格だよ。だから恭介の事も…って! ダメダメ! そういう後ろ向きは無し! 頑張れあたし! なんかよく分からないけど自分がどろどろになりそうな気がするから頑張れ!」
歩きながら、自分のほほをぺちぺちと叩いて気合いを入れる。
その時。
一人になったさやかは、うん、と背伸びをして、神経質になっていたであろう自分を反省する。
「ほむらの事疑ってなんていないのに…。ただ、なんだかって言うだけなのに…。それだけなんだよなぁ…ホント、損な性格だよ。だから恭介の事も…って! ダメダメ! そういう後ろ向きは無し! 頑張れあたし! なんかよく分からないけど自分がどろどろになりそうな気がするから頑張れ!」
歩きながら、自分のほほをぺちぺちと叩いて気合いを入れる。
その時。
581: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:29:14.76 ID:VoYk/OdEo
「ん?」
ふと、さやかが何かを感じて視線を向ける。
「おろ、ほむら」
さやかが通りの向こうにほむらを見つける。
通りの向こう、とは言っても通りの建物の上にだ。
ふと、さやかが何かを感じて視線を向ける。
「おろ、ほむら」
さやかが通りの向こうにほむらを見つける。
通りの向こう、とは言っても通りの建物の上にだ。
582: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:34:45.17 ID:VoYk/OdEo
ほむらは変身していた。
今声をかけられても、多分困るだろうな。
て言うかさ、ほむらも気付かれたくない筈なのにマックの看板の上に立つのやめようよ。
どっかのアイアン社長みたいじゃん。ハゲた眼帯のおっちゃんに怪しいチームに誘われちゃうぞ。
さて、なら、テレパシーで呼びかけようか。
今声をかけられても、多分困るだろうな。
て言うかさ、ほむらも気付かれたくない筈なのにマックの看板の上に立つのやめようよ。
どっかのアイアン社長みたいじゃん。ハゲた眼帯のおっちゃんに怪しいチームに誘われちゃうぞ。
さて、なら、テレパシーで呼びかけようか。
583: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:40:46.36 ID:VoYk/OdEo
そう思った次の瞬間、瞬きと共にほむらは消えた。
「あちゃ、消えちゃった」
多分、時間停止を使ったのだろう。
それは不思議でも何でも無い。
だが、それよりもさやかが感じた違和感がある。
「あちゃ、消えちゃった」
多分、時間停止を使ったのだろう。
それは不思議でも何でも無い。
だが、それよりもさやかが感じた違和感がある。
584: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:47:55.99 ID:VoYk/OdEo
「…使い魔、いや、魔女の気配?」
最初に感じたのは、極微弱だが魔女の気配だったのだ。
その方向を見たらほむらが居た。
ならば、ほむらは魔女退治に向かったのか。
それなら納得はゆく。
最初に感じたのは、極微弱だが魔女の気配だったのだ。
その方向を見たらほむらが居た。
ならば、ほむらは魔女退治に向かったのか。
それなら納得はゆく。
585: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:52:22.70 ID:VoYk/OdEo
「……」
だが、どうにもぬぐいきれない違和感がさやかの心をかき乱した。
「…ほむら」
しばらくの間、さやかはその場所から動けなかった。
…こんなとき、マミさんや杏子なら…。
だが、どうにもぬぐいきれない違和感がさやかの心をかき乱した。
「…ほむら」
しばらくの間、さやかはその場所から動けなかった。
…こんなとき、マミさんや杏子なら…。
586: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/06(水) 23:56:30.91 ID:VoYk/OdEo
そう思うさやか。だが。
「…いや! あたしは、あたしの道をいくんだ! 他の誰でもない! あたしが信じたあたしを信じる! まだ見ない明日に怯えて今を後悔したくないっ!」
さやかが歩き出す。
ほむらの消えたであろう方向へ向かって。
「ほむらちゃん! 魔女退治ご苦労様!」
「…いや! あたしは、あたしの道をいくんだ! 他の誰でもない! あたしが信じたあたしを信じる! まだ見ない明日に怯えて今を後悔したくないっ!」
さやかが歩き出す。
ほむらの消えたであろう方向へ向かって。
「ほむらちゃん! 魔女退治ご苦労様!」
590: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/09(土) 23:29:47.69 ID:VvDCW44go
「ええ。待っていてくれてありがとう」
「ウェヒヒ! いつまでだって待つよ」
少しの後。
広場でほむらとまどかがベンチに座っていた。
夕方でもそれなりに賑やかな広場だが、二人はその中でもどこか目立つ。
「ウェヒヒ! いつまでだって待つよ」
少しの後。
広場でほむらとまどかがベンチに座っていた。
夕方でもそれなりに賑やかな広場だが、二人はその中でもどこか目立つ。
591: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/09(土) 23:34:44.49 ID:VvDCW44go
見た目はおっとりした可愛らしい少女と、クールな美少女の組み合わせが人の目を引くのだろう。
「ほむらちゃーん」
不意にまどかが体を寄せ、腕を絡める。
「…あの、だからまどか…」
「ウェヒ?」
「ほむらちゃーん」
不意にまどかが体を寄せ、腕を絡める。
「…あの、だからまどか…」
「ウェヒ?」
592: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/09(土) 23:40:52.04 ID:VvDCW44go
「く、くっつきす…あう。手、手を…そこは…お…」
「ソウルジェムの為だよ。医療行為医療行為。私だって本意じゃ無いんだよ多分ウェヒヒヒ」
「くぅ…ん。あの…そんなに穢れて…」
「ほむらちゃん、ほら、しっかり持ってないと、クレープがお膝に落ちちゃうよ? 落ちたら舐めちゃおっかなー。落ちたトコロを」
「!」
「ソウルジェムの為だよ。医療行為医療行為。私だって本意じゃ無いんだよ多分ウェヒヒヒ」
「くぅ…ん。あの…そんなに穢れて…」
「ほむらちゃん、ほら、しっかり持ってないと、クレープがお膝に落ちちゃうよ? 落ちたら舐めちゃおっかなー。落ちたトコロを」
「!」
593: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/09(土) 23:46:26.07 ID:VvDCW44go
ほむらが唇を噛みしめて体に力を入れる。
「まぁまぁ。そんなに我慢しないで。リラックスリラックスりらっくまー」
「だ、だから…なでないで…指…が…あ…。お口に入れひゃ…らめ…」
「ウェヒー」
「えーかげんにしなさいっ!」スパーン
「まぁまぁ。そんなに我慢しないで。リラックスリラックスりらっくまー」
「だ、だから…なでないで…指…が…あ…。お口に入れひゃ…らめ…」
「ウェヒー」
「えーかげんにしなさいっ!」スパーン
594: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/09(土) 23:51:10.43 ID:VvDCW44go
「うぇひっ!」
「ほむっ!」
「まったく…天下の往来で何してんだかホントに」
「あ、さやかちゃん」
「さ、さやか…。ど、どうしたの?」
「ほむっ!」
「まったく…天下の往来で何してんだかホントに」
「あ、さやかちゃん」
「さ、さやか…。ど、どうしたの?」
595: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/09(土) 23:56:17.68 ID:VvDCW44go
「どうしたもこうしたもないでしょ! かわいこちゃん二人で人目を引いているかと思いきや、とんでもない光景で人目引いているだけだし…。あんたら補導されるよしまいにゃ。クレープで何高等なプレイしようとしてんだか」
「ご、ごめんなさい。つい、どうしても拒みきれなくて…」
「拒もうよそこは。本心からの訴えだから。二人の為に。いやマジで」
「ティヒヒ。さやかちゃんの突っ込みはいつもながら鋭いね」
「まどかも! ほむらの為にもスキンシップは程ほどにしておきなさいっての」
「ご、ごめんなさい。つい、どうしても拒みきれなくて…」
「拒もうよそこは。本心からの訴えだから。二人の為に。いやマジで」
「ティヒヒ。さやかちゃんの突っ込みはいつもながら鋭いね」
「まどかも! ほむらの為にもスキンシップは程ほどにしておきなさいっての」
596: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/10(日) 00:00:25.88 ID:lHK+JPy/o
「善処します」
「いや、徹底してよ。繰り返すけどマジで」
「はっぷっぷー」
「ふくれても駄目」
「ウェヒー」
「いや、徹底してよ。繰り返すけどマジで」
「はっぷっぷー」
「ふくれても駄目」
「ウェヒー」
597: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/10(日) 00:05:22.61 ID:lHK+JPy/o
「喋ろうよ…」
だんだん疲れてきたさやかが、頭に手を置いて溜息をつく。
「さやか、それで…どうしたの?」
「ああ…。ほむらの普通の応答がなんと心地よい事かぁー」
しみじみと、目尻に何かを光らせながらさやかが呟く。
だんだん疲れてきたさやかが、頭に手を置いて溜息をつく。
「さやか、それで…どうしたの?」
「ああ…。ほむらの普通の応答がなんと心地よい事かぁー」
しみじみと、目尻に何かを光らせながらさやかが呟く。
598: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/10(日) 00:10:07.21 ID:lHK+JPy/o
「お、大げさよ。それより」
「あ、うん。いやね、さっき、ほむらがマックの看板の上で変身していた格好を見かけたから、それでなんか手伝える事あるかなーって、探してみただけなんだ」
「あら、あの時…ああ、見られていたのね」
ほむらは特に慌てる風も無く応える。
「何かやってた?」
「あ、うん。いやね、さっき、ほむらがマックの看板の上で変身していた格好を見かけたから、それでなんか手伝える事あるかなーって、探してみただけなんだ」
「あら、あの時…ああ、見られていたのね」
ほむらは特に慌てる風も無く応える。
「何かやってた?」
599: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/10(日) 00:14:44.09 ID:lHK+JPy/o
「何って…、魔女退治の帰りだっただけよ」
「そうそう、私はほむらちゃんの帰りを待ってたの」
「あー、やっぱそうかぁ」
「……」
ほむらがほんの僅かに瞳を伏せた。
「そうそう、私はほむらちゃんの帰りを待ってたの」
「あー、やっぱそうかぁ」
「……」
ほむらがほんの僅かに瞳を伏せた。
600: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/10(日) 00:19:34.16 ID:lHK+JPy/o
「一時は一人じゃあ使い魔も…。なんて腐っていた頃が嘘みたいに快進撃だよね」
「快進撃、なんて言う程じゃ無いわ」
「いやいや、復活した影のリーサルウェポン、女メル・ギブソンが何を仰るやら。今はまどかのご加護もあるし」
「それは…否定しないけど」
「ウェヒ。私を頼ってくれて…とっても嬉しいよ、ほむらちゃん。はむはむ」
「快進撃、なんて言う程じゃ無いわ」
「いやいや、復活した影のリーサルウェポン、女メル・ギブソンが何を仰るやら。今はまどかのご加護もあるし」
「それは…否定しないけど」
「ウェヒ。私を頼ってくれて…とっても嬉しいよ、ほむらちゃん。はむはむ」
601: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/10(日) 00:23:17.82 ID:lHK+JPy/o
「あぅ…ん…」
「だから人前でいちゃくらしないでっての! ほむらも自重! あんたの理性が一応、最後の砦なんだから! 不安だけど!」
「だ、大丈夫よ。多分…」
「頼むよぉーほむらぁー…」
さやかがお願いだから、とほむらに抱きつく。
「だから人前でいちゃくらしないでっての! ほむらも自重! あんたの理性が一応、最後の砦なんだから! 不安だけど!」
「だ、大丈夫よ。多分…」
「頼むよぉーほむらぁー…」
さやかがお願いだから、とほむらに抱きつく。
608: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:01:16.73 ID:owxkYab5o
「……」
「……」
静かな沈黙。
「あ」
そして、はっと我に返って顔を青ざめさせるさやか。
「……」
静かな沈黙。
「あ」
そして、はっと我に返って顔を青ざめさせるさやか。
609: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:06:55.34 ID:owxkYab5o
「……」
やばい。
私死ぬる?
花も実も実らないうちに死ぬるの?
生涯の最後に感じるのは、ほむらのほんのりしたシャンプーと肌から匂い立つほむら自身の香り?
やばい。
私死ぬる?
花も実も実らないうちに死ぬるの?
生涯の最後に感じるのは、ほむらのほんのりしたシャンプーと肌から匂い立つほむら自身の香り?
611: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:11:02.25 ID:owxkYab5o
悪くないかも。
いやいや困る。悪くないけどそれは困る。
「……」
恐る恐るまどかの方を見ると、意外にもその表情は至って穏やかだった。
「どうしたの? さやかちゃん」
いやいや困る。悪くないけどそれは困る。
「……」
恐る恐るまどかの方を見ると、意外にもその表情は至って穏やかだった。
「どうしたの? さやかちゃん」
612: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:16:55.00 ID:owxkYab5o
まどかの視線にも、『アゴニーア・ベッロ・グワルダトゥーラ』(美しき死の視線 byマミ)は感じられない。
「あ…いや、なんでもないです。ええと…、へ、平気…なの?」
「ウェヒ。今のは邪な気配を感じないからセーフだよ」
「そ、そっか! 今のならいいのか! あたし生きてるうううううぅっ!」
きっと今、あたしの頭上には天から光が差している!
「あ…いや、なんでもないです。ええと…、へ、平気…なの?」
「ウェヒ。今のは邪な気配を感じないからセーフだよ」
「そ、そっか! 今のならいいのか! あたし生きてるうううううぅっ!」
きっと今、あたしの頭上には天から光が差している!
613: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:22:13.78 ID:owxkYab5o
「…で。まどかさん? 邪な気配を…か、感じたら?」
「死の宣告。1ターンでDEATH♪」
「やめてええぇっ! 即死じゃんかああっ!」
慌ててほむらから離れる。
「なんまんだぶなんまんだぶ…。い、今あたしソウルジェムそんな余裕無いからたのんますぅ…」
「死の宣告。1ターンでDEATH♪」
「やめてええぇっ! 即死じゃんかああっ!」
慌ててほむらから離れる。
「なんまんだぶなんまんだぶ…。い、今あたしソウルジェムそんな余裕無いからたのんますぅ…」
614: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:27:07.81 ID:owxkYab5o
「さやか、落ち着いて。今みたいのなら大丈夫ってまどかも言っていたじゃない」
「そ、そうだよね! だよね! あたし生きてるよね! 魚とかになってないよね! いや、なんかそんなビジョンが脳裏に浮かんだ気がしただけだけど! だからほむら、悪いけどグリ」
「魔女になれたらまだいい方かもね…」
「ひいいいいいっ!」
「まどかっ!」
「そ、そうだよね! だよね! あたし生きてるよね! 魚とかになってないよね! いや、なんかそんなビジョンが脳裏に浮かんだ気がしただけだけど! だからほむら、悪いけどグリ」
「魔女になれたらまだいい方かもね…」
「ひいいいいいっ!」
「まどかっ!」
615: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:32:12.98 ID:owxkYab5o
「ウェヒー」
「落ち着いてさやか。まどかの冗談だから。それに…」
「え?」
「私だって、心配してくれたあなたにこうして抱きつかれるのは、何も嫌な事じゃ…ないわ」
ふい、と顔を逸らしながらほむらが呟く。
「落ち着いてさやか。まどかの冗談だから。それに…」
「え?」
「私だって、心配してくれたあなたにこうして抱きつかれるのは、何も嫌な事じゃ…ないわ」
ふい、と顔を逸らしながらほむらが呟く。
617: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:37:37.94 ID:owxkYab5o
「ごはっ!」
嬉しいけどやめてくださいほむらさん。
そのほんのり頬を染めた表情は反則です。あんた美人だからヤバイのマジでその顔は。
別の意味でも本当の意味でも即死death。
まどかが心なし、あたしを見る視線に冷気を込めはじめているんで。
嬉しいけどやめてくださいほむらさん。
そのほんのり頬を染めた表情は反則です。あんた美人だからヤバイのマジでその顔は。
別の意味でも本当の意味でも即死death。
まどかが心なし、あたしを見る視線に冷気を込めはじめているんで。
618: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:44:36.66 ID:owxkYab5o
「ウェヒ。平気だよ。だって、ほむらちゃんの可愛さは誰だってイチコロにしちゃうから、仕方ないよね。まぁ、私だけが本当のそれを受け止められるんですけどー」
「…時々、まどかの言葉だといちころ、が一殺に聞こえる時があるけどね」
「ウェヒ」
そのにっこり、は肯定なの? 否定しないの? ねぇ?
「じゃあ、そろそろ私達は帰るわ」
「…時々、まどかの言葉だといちころ、が一殺に聞こえる時があるけどね」
「ウェヒ」
そのにっこり、は肯定なの? 否定しないの? ねぇ?
「じゃあ、そろそろ私達は帰るわ」
619: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:49:45.96 ID:owxkYab5o
「あ、うん。そうだね。あたしもこれ以上墓穴掘らないうちに。うん」
「まどか、行きましょう」
「ウェヒー」
まどかか一鳴きして手を振っている。
ああ、あれ、バイバイ、なんだ。
「まどか、行きましょう」
「ウェヒー」
まどかか一鳴きして手を振っている。
ああ、あれ、バイバイ、なんだ。
620: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/12(火) 23:55:23.40 ID:owxkYab5o
あたしもバイバイ、と手を振ると、二人は手を繋いで歩いて行った。
後に残るは二人の話し声。
ホムー
ウェヒー
「…なんかだんだん人語を忘れていってない? あの二人」
後に残るは二人の話し声。
ホムー
ウェヒー
「…なんかだんだん人語を忘れていってない? あの二人」
621: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/13(水) 00:00:00.31 ID:2S0Y8PPWo
まぁ、とりあえず今日も生き残れそうです。居るか知らないけど神様ありがとう。
中学生が今日の生存を喜ぶ日常ってのも、実際どうかと思うけどね。
「…ん?」
さやかがふと気付く。
あの時…ほむらは魔女退治の帰りだって言っていたよね。
中学生が今日の生存を喜ぶ日常ってのも、実際どうかと思うけどね。
「…ん?」
さやかがふと気付く。
あの時…ほむらは魔女退治の帰りだって言っていたよね。
622: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/13(水) 00:04:15.89 ID:2S0Y8PPWo
じゃあ、なんであの時に魔女反応を感じた訳?
「ほむら…」
さやかは仲良く一つの影になって帰って行く二人の遠い背中を見つめ、呟いた。
「…ところでそっち、まどかの家なんだけど」
明日は土曜日。
「ほむら…」
さやかは仲良く一つの影になって帰って行く二人の遠い背中を見つめ、呟いた。
「…ところでそっち、まどかの家なんだけど」
明日は土曜日。
623: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/13(水) 00:09:13.70 ID:2S0Y8PPWo
「……」
これ以上は何も言うまい、とさやかはオトナの階段を二段飛ばしどころか屋上までひとっ飛びで昇っていそうな二人を見送った。
夜。
「そりゃっ!」
さやかは単身、魔女と戦っていた。
これ以上は何も言うまい、とさやかはオトナの階段を二段飛ばしどころか屋上までひとっ飛びで昇っていそうな二人を見送った。
夜。
「そりゃっ!」
さやかは単身、魔女と戦っていた。
624: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/13(水) 00:14:32.58 ID:2S0Y8PPWo
最初に発見し、しかも孵化したてだった為、慌てて変身して中に飛び込んだ。
こういうときは一人で戦うのは仕方ないが、しかし、そう言えば何か大事な事を忘れている気がする。
でもまぁ、だからって引っ込むわけにはいかないしね。
さやかは躊躇わず結界を進む。
「あたしだって一人前だよ! …一応!」
こういうときは一人で戦うのは仕方ないが、しかし、そう言えば何か大事な事を忘れている気がする。
でもまぁ、だからって引っ込むわけにはいかないしね。
さやかは躊躇わず結界を進む。
「あたしだって一人前だよ! …一応!」
625: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/13(水) 00:17:12.42 ID:2S0Y8PPWo
結界内は、時代劇を思わせる絵に描いたような江戸時代。
現れる使い魔は、足軽みたいな格好でぞろぞろとやって来る。
「BASARAだったらここで必殺技ぼーん、の100コンボ、なんだけどなぁ」
だが、数が多いだけで苦労するほどでは無い。疲労こそするが、さやかは斬っては避け、斬っては避けを繰り返して奥、この場合の江戸城へと進んでいった。
「斬って斬ってじゃなくって避けも入れているところ、ほむらが見たら感心してくれるかな」
現れる使い魔は、足軽みたいな格好でぞろぞろとやって来る。
「BASARAだったらここで必殺技ぼーん、の100コンボ、なんだけどなぁ」
だが、数が多いだけで苦労するほどでは無い。疲労こそするが、さやかは斬っては避け、斬っては避けを繰り返して奥、この場合の江戸城へと進んでいった。
「斬って斬ってじゃなくって避けも入れているところ、ほむらが見たら感心してくれるかな」
631: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:04:46.02 ID:OVWibogko
いつまでも鉄砲玉扱いはさせないよ、とさやかは進む。
城下町を突き進んでいたその時、不意に使い魔が消え、周囲が普通の江戸の街みたいに町人で賑わう光景になった。
「?」
突然江戸ワンダーランド日光江戸村みたいな雰囲気になった事にさやかは戸惑う。
その時。
城下町を突き進んでいたその時、不意に使い魔が消え、周囲が普通の江戸の街みたいに町人で賑わう光景になった。
「?」
突然江戸ワンダーランド日光江戸村みたいな雰囲気になった事にさやかは戸惑う。
その時。
632: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:10:37.38 ID:OVWibogko
「鰹は渡さねぇ!」
「そりゃ俺が買ったんだっ!」
突然、ふんどしTバッグの若者二人が鰹を奪い合い、喧嘩しながら通りへ飛び出してきた。
「へっ?!」
さやかが呆気にとられていたその時。
「そりゃ俺が買ったんだっ!」
突然、ふんどしTバッグの若者二人が鰹を奪い合い、喧嘩しながら通りへ飛び出してきた。
「へっ?!」
さやかが呆気にとられていたその時。
633: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:19:15.81 ID:OVWibogko
「アブソリュートタイムANZX-9121年83時05分。無事、タイムワープ成功しました」
「誰っ?!」
「当時の人々にとって、私は時空を超えた存在です。彼らにとって私は宇宙人のような存在です。彼らに接触する際には細心の注意が必要です。私自身の介在によって、この歴史が変わることも有り得るからです。彼らに取材を許してもらうためには、特殊な交渉術を用います。それについては極秘事項のためお見せすることは出来ませんが、今回も無事密着取材することに成功しました」
「だから誰?! 取材って何?!」
いつの間にか、さやかの隣に青づくめの長身の男が立っていた。
「誰っ?!」
「当時の人々にとって、私は時空を超えた存在です。彼らにとって私は宇宙人のような存在です。彼らに接触する際には細心の注意が必要です。私自身の介在によって、この歴史が変わることも有り得るからです。彼らに取材を許してもらうためには、特殊な交渉術を用います。それについては極秘事項のためお見せすることは出来ませんが、今回も無事密着取材することに成功しました」
「だから誰?! 取材って何?!」
いつの間にか、さやかの隣に青づくめの長身の男が立っていた。
634: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:27:22.60 ID:OVWibogko
「えー、初鰹を求める商人の欲求はこのように毎年加熱し、時には刃傷沙汰を起こす事もあったと言われています。他にも初なすびなど季節の旬のものが初物として重宝され、初物を食べる事で寿命が七十五日延びるとさえ言われていました」
「ほー…。じゃなくって!」
「苦労して手に入れた初鰹は、場合によっては自分が食べる為と言うより、客人に振るまい、その持て成しによって自分の羽振りの良さを見せつけ、地位を鼓舞する事に利用されていたと言う事です」
「…えーと」
どうしよう、色々。とさやかが頭をかく。
「ほー…。じゃなくって!」
「苦労して手に入れた初鰹は、場合によっては自分が食べる為と言うより、客人に振るまい、その持て成しによって自分の羽振りの良さを見せつけ、地位を鼓舞する事に利用されていたと言う事です」
「…えーと」
どうしよう、色々。とさやかが頭をかく。
635: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:32:38.02 ID:OVWibogko
「主に料理方法としては」
青い男が包丁を振りかぶった。
「刺身にして」
「!」
「腹を切り裂いて」
青い男が包丁を振りかぶった。
「刺身にして」
「!」
「腹を切り裂いて」
636: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:37:15.52 ID:OVWibogko
さやかが体を反らし、寸出のところで包丁を避ける。
「赤い血をまき散らし」
だが、僅かに避けきれず、胸の真ん中に痛みが走り、そして鮮血が散る。
「八つ裂きにしたと言います」
たった今までカナメール王子か二階堂かG3の中身のような顔だった男はぐにゃりと歪み、能面のような、しかし口の裂けた顔の、十二単姿の魔女に姿を変えた。
「赤い血をまき散らし」
だが、僅かに避けきれず、胸の真ん中に痛みが走り、そして鮮血が散る。
「八つ裂きにしたと言います」
たった今までカナメール王子か二階堂かG3の中身のような顔だった男はぐにゃりと歪み、能面のような、しかし口の裂けた顔の、十二単姿の魔女に姿を変えた。
637: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:42:06.31 ID:OVWibogko
「こ、こいつが魔女っ!」
さやかが後ろに跳びながら剣を構える。
「くっ! 不意打ちとはやってくれるじゃん!」
容赦しないよ、とさやかが剣をありったけ精製しようとしたその時。
ソウルジェムがどくん、と濁った。
さやかが後ろに跳びながら剣を構える。
「くっ! 不意打ちとはやってくれるじゃん!」
容赦しないよ、とさやかが剣をありったけ精製しようとしたその時。
ソウルジェムがどくん、と濁った。
638: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:47:43.88 ID:OVWibogko
「…そ、そうだ。忘れて…」
何も出来ないまま、さやかはよろめくようにして地面に降りる。
ソウルジェムは、黒かったのだ。
「そうだよ…。最近、ちょっと頑張りすぎて…。だからほむらに、あの時グリーフシード譲ってって…言うつもりだったんだ…」
夕方の事を思い出す。
何も出来ないまま、さやかはよろめくようにして地面に降りる。
ソウルジェムは、黒かったのだ。
「そうだよ…。最近、ちょっと頑張りすぎて…。だからほむらに、あの時グリーフシード譲ってって…言うつもりだったんだ…」
夕方の事を思い出す。
639: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:52:07.21 ID:OVWibogko
それに少し前もほむらに同じ事を言った時、今は無いから、魔翌力消費は控えめにしてて、と念を押して言われていたんだった。
なのに、ソウルジェムの穢れを今の今まで忘れていた。
今日、言えたのに。
「…でも、だからって逃げられない! 今逃げたら、誰かがこいつの餌食に…。でも、やばいなぁ」
魔女が包丁、と言うには刃が長すぎる、殆ど刀のようなそれを十本以上も飛ばす。
なのに、ソウルジェムの穢れを今の今まで忘れていた。
今日、言えたのに。
「…でも、だからって逃げられない! 今逃げたら、誰かがこいつの餌食に…。でも、やばいなぁ」
魔女が包丁、と言うには刃が長すぎる、殆ど刀のようなそれを十本以上も飛ばす。
640: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 16:58:07.66 ID:OVWibogko
「よりによっておんなじような武器かよっ! でも、遅…あっ」
穢れたソウルジェムは、時々腹の中に鉛でも入れられたかのように体を重くする。
素早さが売りのさやかが足をもたつかせ、そして脇腹に包丁が一本突き刺さった。
「あぐぅっ!」
熱いほどの激痛が脳を揺さぶる。
穢れたソウルジェムは、時々腹の中に鉛でも入れられたかのように体を重くする。
素早さが売りのさやかが足をもたつかせ、そして脇腹に包丁が一本突き刺さった。
「あぐぅっ!」
熱いほどの激痛が脳を揺さぶる。
641: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 17:04:01.44 ID:OVWibogko
包丁は腹から背中まで突き抜け、地面に刺さってさやかを縫い付ける。
「…せ、脊髄は逸れてくれたか」
只でさえ脊髄は今ヤバイんだから、喰らったら正直駄目だったかも。
つうか今のあたし、かなりスプラッタだなこれ。腹からこぼれたら流石にモザイクもんだよね。
ソウルジェムは限界。つまり攻撃はおろか治療も出来ない。だとすれば…あたしは…。
「…せ、脊髄は逸れてくれたか」
只でさえ脊髄は今ヤバイんだから、喰らったら正直駄目だったかも。
つうか今のあたし、かなりスプラッタだなこれ。腹からこぼれたら流石にモザイクもんだよね。
ソウルジェムは限界。つまり攻撃はおろか治療も出来ない。だとすれば…あたしは…。
642: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 17:11:26.12 ID:OVWibogko
あたし…。
…もしかして、本気でビンチ?
さやかが顔を青ざめさせる。
裂けた口を赤々と染めた魔女が、棲羽亜陀のような剣に舌なめずりして振りかぶる。
あー…。あの武器手に入ったんだ。いいなぁ。
…もしかして、本気でビンチ?
さやかが顔を青ざめさせる。
裂けた口を赤々と染めた魔女が、棲羽亜陀のような剣に舌なめずりして振りかぶる。
あー…。あの武器手に入ったんだ。いいなぁ。
643: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 17:16:07.95 ID:OVWibogko
何か、テレビでも見ているかのように現実感が無い。
…これ、詰み?
じゃ、仕方ないなぁ。
ごめんね。みんな。あたし、リタイヤみたい。
神様、あなたの元に行きます。居るか知らないけど。
…これ、詰み?
じゃ、仕方ないなぁ。
ごめんね。みんな。あたし、リタイヤみたい。
神様、あなたの元に行きます。居るか知らないけど。
644: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/16(土) 17:23:24.59 ID:OVWibogko
さやかがうつむき、目を瞑りかけたその時。
耳をつんざく金属音と共に魔女の持つ刀が砕け、魔女が体中に穴を開けながら吹き飛ぶ。
「あなたらしくないわね。さやか」
黒い髪の魔法少女が、ふわりと髪を手で梳きながら声をかけた。
「うぉう! 神様ありがとーっ! まだあんたのトコロにはいかないぞぉっ!」
耳をつんざく金属音と共に魔女の持つ刀が砕け、魔女が体中に穴を開けながら吹き飛ぶ。
「あなたらしくないわね。さやか」
黒い髪の魔法少女が、ふわりと髪を手で梳きながら声をかけた。
「うぉう! 神様ありがとーっ! まだあんたのトコロにはいかないぞぉっ!」
649: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 21:51:53.36 ID:HkZTtKx0o
「何の話?」
「こっちの事っ! そしてほむらぁーっ! 愛して…っ! え?」
さやかが一転満面の笑みで破顔したその先には、屋敷の屋根の上で黒い羽を広げながら機関銃を構えるほむらが居た。
「ちょっ?! 何その羽!? かっこいいじゃん! マミさん見たら絶対また何か名前付けるよそれ! また新しい技? ちょっとチート過ぎるよ! 不公平だあーっ! どうやったのよっ?!」
「気張ったら出た」
「こっちの事っ! そしてほむらぁーっ! 愛して…っ! え?」
さやかが一転満面の笑みで破顔したその先には、屋敷の屋根の上で黒い羽を広げながら機関銃を構えるほむらが居た。
「ちょっ?! 何その羽!? かっこいいじゃん! マミさん見たら絶対また何か名前付けるよそれ! また新しい技? ちょっとチート過ぎるよ! 不公平だあーっ! どうやったのよっ?!」
「気張ったら出た」
650: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 21:56:59.01 ID:HkZTtKx0o
「なにそれ?!」
「主人公補正は自分じゃどうしようも無いのよ。諦めなさい」
ほむらがさやかの前に降り立ち、手に弓矢を生成してして構える。
「ちょ! ちょっと! その前にこれ抜いてこれ! 痛いの! かなり! 乙女のお腹に傷が残っちゃう! いやマジ痛いの!」
「今抜くとこぼ…かえって危ないわ。魔女を倒して消滅させた方がいい。もう少しだけ、我慢して」
「主人公補正は自分じゃどうしようも無いのよ。諦めなさい」
ほむらがさやかの前に降り立ち、手に弓矢を生成してして構える。
「ちょ! ちょっと! その前にこれ抜いてこれ! 痛いの! かなり! 乙女のお腹に傷が残っちゃう! いやマジ痛いの!」
「今抜くとこぼ…かえって危ないわ。魔女を倒して消滅させた方がいい。もう少しだけ、我慢して」
651: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:01:41.00 ID:HkZTtKx0o
「こぼれるの?! やっぱりこぼれそうなの? ほむほむ助けてーっ! あたたたっ!」
「ほむほむはやめな…さいっ!」
ほむらが気合いと共に一撃必殺の矢を放つ。
放たれた矢は、十二単の魔女が新たに構えた刀の防御もものともせず砕き、そのまま胸に大穴を開けた。
絹を裂くような悲鳴を上げながら、魔女は消滅する。
「ほむほむはやめな…さいっ!」
ほむらが気合いと共に一撃必殺の矢を放つ。
放たれた矢は、十二単の魔女が新たに構えた刀の防御もものともせず砕き、そのまま胸に大穴を開けた。
絹を裂くような悲鳴を上げながら、魔女は消滅する。
652: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:06:42.18 ID:HkZTtKx0o
同時にさやかの腹に刺さっていた包丁も消えた。
さやかはほむらに抱きかかえられながら、消滅しつつある結界から脱出した。
「あだだ…血…血がぁ…。スプラッタだよぉ…」
「さやか、さっきの魔女のグリーフシードよ。早く傷を治して。治癒能力は貴女の方が上だから」
ほむらがグリーフシードを渡す。
さやかはほむらに抱きかかえられながら、消滅しつつある結界から脱出した。
「あだだ…血…血がぁ…。スプラッタだよぉ…」
「さやか、さっきの魔女のグリーフシードよ。早く傷を治して。治癒能力は貴女の方が上だから」
ほむらがグリーフシードを渡す。
653: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:11:08.62 ID:HkZTtKx0o
_、_
( ,_ノ` )
「…最近よく思うんだけどさ、これ、本当に本物だよね? さっきの、魔女だよね?」
「多分…」
ほむらも気持ち自信なさげに応える。
「だよね。ありがと…あちち…。しかし…最近普通のグリーフシード見てない気がするんだけど」
( ,_ノ` )
「…最近よく思うんだけどさ、これ、本当に本物だよね? さっきの、魔女だよね?」
「多分…」
ほむらも気持ち自信なさげに応える。
「だよね。ありがと…あちち…。しかし…最近普通のグリーフシード見てない気がするんだけど」
654: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:16:08.87 ID:HkZTtKx0o
「同感だわ。て言うか、とうとう二段になってるし」
「でも…やっぱり刺されるのは慣れないなぁ…」
「当然よ。慣れたら嫌だわ。それよりさやか、どうしてさっきはあんなに危ないところだったの? 普段ならもっと素早く…」
「あー、それは…」
さやかがソウルジェムを見せる。
「でも…やっぱり刺されるのは慣れないなぁ…」
「当然よ。慣れたら嫌だわ。それよりさやか、どうしてさっきはあんなに危ないところだったの? 普段ならもっと素早く…」
「あー、それは…」
さやかがソウルジェムを見せる。
655: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:21:10.31 ID:HkZTtKx0o
「! な、なんでこんなに?!」
真っ黒に穢れたそれをみてほむらが目を丸くした。
「すいません! 浄化忘れてましたっ!」
「ばかーっ!」
ほむらが、ばかばか、とさやかをぽかぽか叩く。
真っ黒に穢れたそれをみてほむらが目を丸くした。
「すいません! 浄化忘れてましたっ!」
「ばかーっ!」
ほむらが、ばかばか、とさやかをぽかぽか叩く。
656: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:29:46.37 ID:HkZTtKx0o
「あた! あた! ゴメン! 地味に痛いから! だからゴメン! あたっ! 心配してくれてありが…あたたっ!」
「ばかっ! 貴女に何かあったら…私…私…っ! ばかばか考え無しすかぽんたん脳筋おぽんちポケカスラッパ恋愛不適合者寝取られ属性不人気青!」
「ちょ! 今なん…」
流石に何か言おうとするさやかを、ほむらが突然強く抱きしめた。
強く、しかし優しく温かい抱擁にさやかの体から力が抜ける。
「ばかっ! 貴女に何かあったら…私…私…っ! ばかばか考え無しすかぽんたん脳筋おぽんちポケカスラッパ恋愛不適合者寝取られ属性不人気青!」
「ちょ! 今なん…」
流石に何か言おうとするさやかを、ほむらが突然強く抱きしめた。
強く、しかし優しく温かい抱擁にさやかの体から力が抜ける。
657: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:34:02.52 ID:HkZTtKx0o
「…うん。なんかごめんね。何か一言言いたい気もするけど…まぁいいや。あたし、やっぱり馬鹿だね」
さやかもそっとほむらを抱き返す。
「…ばか」
「…うん」
ほむらの最後の罵倒は、しかし泣きたくなるくらい温かかった。
「…と言う事がついさっきありまして」
さやかもそっとほむらを抱き返す。
「…ばか」
「…うん」
ほむらの最後の罵倒は、しかし泣きたくなるくらい温かかった。
「…と言う事がついさっきありまして」
658: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:39:06.23 ID:HkZTtKx0o
「一足遅かったわね。ごめんなさい、美樹さん」
あれから少しの後。
駆けつけたマミが、さやかから事の顛末を聞いていた。
「いやいや! これこそ本当の意味での自己責任! 一端のつもりが、やっぱりまだまだだって思い知りました…はい」
「でも…本当に良かったわ。貴女が無事で」
あれから少しの後。
駆けつけたマミが、さやかから事の顛末を聞いていた。
「いやいや! これこそ本当の意味での自己責任! 一端のつもりが、やっぱりまだまだだって思い知りました…はい」
「でも…本当に良かったわ。貴女が無事で」
660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:46:08.88 ID:HkZTtKx0o
マミがさやかを抱きしめる。
「オゥフ。ほむらの女の子特有の骨の細い華奢な抱き心地もいいけど、こちらも浮き世のしがらみを忘れるましゅまろおっぱむぎゅ」
「そ、そう言う事言わないの! それにね、美樹さんは決して弱いんじゃないわよ? 本当に、経験が少ないだけ。センスだって、経験があってこそ活かせるのよ。私だって今でこそみんなに先輩風吹かせているかもしれないけど…」
「いやぁ、マミさんはお世辞でも何でも無く強いですから。その上経験もあるとあっちゃあ、弱い要素が見当たらないってモンです」
「うふふ。ありがとう。で、暁美さんは帰ったの?」
「オゥフ。ほむらの女の子特有の骨の細い華奢な抱き心地もいいけど、こちらも浮き世のしがらみを忘れるましゅまろおっぱむぎゅ」
「そ、そう言う事言わないの! それにね、美樹さんは決して弱いんじゃないわよ? 本当に、経験が少ないだけ。センスだって、経験があってこそ活かせるのよ。私だって今でこそみんなに先輩風吹かせているかもしれないけど…」
「いやぁ、マミさんはお世辞でも何でも無く強いですから。その上経験もあるとあっちゃあ、弱い要素が見当たらないってモンです」
「うふふ。ありがとう。で、暁美さんは帰ったの?」
661: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:50:53.86 ID:HkZTtKx0o
「ええ。あたしの傷もすっかり良くなったんで」
「それで、その暁美さんの新しい技はなんて名付けたらいいのかしら? やっぱりイタリア語でいいかしら? それともフランス語? ちょっと気取ってラテン語? ああでも、ここはあえて漢字で渋く、なんてのも素敵かしら?」
「そ、それはまぁ、今度ほむらにきいてみましょう」
「あ、そうよね。どれがいいかは本人に聞かないとね! うふふ、何語がいいかしら!」
「…名付けるのは決定事項なんすね」
「それで、その暁美さんの新しい技はなんて名付けたらいいのかしら? やっぱりイタリア語でいいかしら? それともフランス語? ちょっと気取ってラテン語? ああでも、ここはあえて漢字で渋く、なんてのも素敵かしら?」
「そ、それはまぁ、今度ほむらにきいてみましょう」
「あ、そうよね。どれがいいかは本人に聞かないとね! うふふ、何語がいいかしら!」
「…名付けるのは決定事項なんすね」
662: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 22:55:18.35 ID:HkZTtKx0o
「え? あ、そう言えば、暁美さんの家はここから遠いわよね? どうして一番早く来られたの?」
「あ、ええ。実は、ほむら、まどかの家にお泊まりだったんですよ。だから、まぁ、今頃はまたまどかと一緒ですかね。あははははははは。いやーあははははははは」
「…あらー。ご両親、今夜は大変ね」
マミが頬を赤らめる。
「まぁ、最初に『被害』にあったのはマミさんでしたからねぇ」
「あ、ええ。実は、ほむら、まどかの家にお泊まりだったんですよ。だから、まぁ、今頃はまたまどかと一緒ですかね。あははははははは。いやーあははははははは」
「…あらー。ご両親、今夜は大変ね」
マミが頬を赤らめる。
「まぁ、最初に『被害』にあったのはマミさんでしたからねぇ」
663: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 23:00:06.78 ID:HkZTtKx0o
「…そ、そうね。あの日の夜の後…寝室が、ちょっとの間…何て言うか、あの匂いが…ちょっと」
マミが顔を真っ赤にして俯く。
「シ、シーツもね、ちょっと…洗ってみたり…」
マミはあの時のシーツの残り香を思い出す。
「それで…あの独特の匂いで…なんだか頭がぼうっとして…つい…。って! 違うのよ! 何でも無いから! ね?」
マミが顔を真っ赤にして俯く。
「シ、シーツもね、ちょっと…洗ってみたり…」
マミはあの時のシーツの残り香を思い出す。
「それで…あの独特の匂いで…なんだか頭がぼうっとして…つい…。って! 違うのよ! 何でも無いから! ね?」
664: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/19(火) 23:05:06.04 ID:HkZTtKx0o
マミが更に真っ赤になって弁解する。
「あ、いやいや。はい、ご愁傷様です。まぁ、その次はあたしの家ででしたけどねー」
遠い目でさやかが呟く。
「あ、そ、そうだったわね…」
「あの夜はあの二人、あたしが隣で寝てるの忘れてるんじゃないかって思いましたよ。家族も居たんですけどそれも。まぁ実際忘れてたと思いますけどねー」
「あ、いやいや。はい、ご愁傷様です。まぁ、その次はあたしの家ででしたけどねー」
遠い目でさやかが呟く。
「あ、そ、そうだったわね…」
「あの夜はあの二人、あたしが隣で寝てるの忘れてるんじゃないかって思いましたよ。家族も居たんですけどそれも。まぁ実際忘れてたと思いますけどねー」
669: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:13:16.29 ID:uGhe8MzMo
「あらー…」
「二人して自分達は下にふとん敷いてくれればいいって言ってましたけど、下手に下の階にナニか響いたらもう目も当てられないんで無理矢理ベッドに寝てもらって、あたしが床にふとん敷いたまでは良かったんですけど…」
「ええ」
「おやすみって言ってほんの数分後にベッドの上からギシギシ音がしはじめるんですよ! なんか色っぽい声と、対照的な獣みたいな息づかいがふんがーって聞こえてくるんですよ! ほむぅーん、とかウェヒヒヒヒヒーハァーー! とか聞こえてくるんですよ! 何ですかアレ? 新種の生き物ですか? 可愛いのに怖いんですよ! 言いたくないけどあの二匹は一体ナニ?! 下の親に気付かれないか、本気ではらはらしましたよあたしゃ! なのにあの二人はお構いなしで! て言うかあたしの事も意に介さないし! もしかしてそういうプレイ?! 気付かれるギリギリを楽しむ高等プレイですか?!」
「そ、そうかも…ね…?」
「二人して自分達は下にふとん敷いてくれればいいって言ってましたけど、下手に下の階にナニか響いたらもう目も当てられないんで無理矢理ベッドに寝てもらって、あたしが床にふとん敷いたまでは良かったんですけど…」
「ええ」
「おやすみって言ってほんの数分後にベッドの上からギシギシ音がしはじめるんですよ! なんか色っぽい声と、対照的な獣みたいな息づかいがふんがーって聞こえてくるんですよ! ほむぅーん、とかウェヒヒヒヒヒーハァーー! とか聞こえてくるんですよ! 何ですかアレ? 新種の生き物ですか? 可愛いのに怖いんですよ! 言いたくないけどあの二匹は一体ナニ?! 下の親に気付かれないか、本気ではらはらしましたよあたしゃ! なのにあの二人はお構いなしで! て言うかあたしの事も意に介さないし! もしかしてそういうプレイ?! 気付かれるギリギリを楽しむ高等プレイですか?!」
「そ、そうかも…ね…?」
670: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:22:21.60 ID:uGhe8MzMo
「三時間近くジェットコースターみたいな行為を繰り返している間、ずっと冷や汗かきっぱなしで、それでやっと静かになって…。それで、恐る恐るベッドの上を覗いてみると、シーツからはみ出した肩はやっぱり露わで鎖骨辺りにお互いキスマークだらけで、そんで何て言うか、雌の匂いがむわっとこう…。思わずつい…じゃなくて! 窓開けようにも、ほむらの熟睡を邪魔したら魔王様が多分ザラキだろうなと思うとどうしようもなくて、でも、寝ている顔は二人とも天使のように無垢なんですよ。悪魔のような所行の後のくせに! 結局明け方にこっそり静かにファブリーズして誤魔化しましたけどねあははははおっとソウルジェムが濁りそう」
さやかがいけない、と先程のグリーフシードで穢れを浄化する。
「…う、うーん…」
「でですね、ファブリーズはしたけど、でもやっぱり何だか匂う気がして…。翌日はまぁ、母さんを部屋に近づけないようにするのに苦労しました。二人が帰るまでやたらお茶を持ってこようとして、そんで、なんか目の下に隈があった気がしますけど気のせいです絶対に断固として」
「…あの二人、知り合いの家を一通り制覇するつもりかしら…?」
さやかがいけない、と先程のグリーフシードで穢れを浄化する。
「…う、うーん…」
「でですね、ファブリーズはしたけど、でもやっぱり何だか匂う気がして…。翌日はまぁ、母さんを部屋に近づけないようにするのに苦労しました。二人が帰るまでやたらお茶を持ってこようとして、そんで、なんか目の下に隈があった気がしますけど気のせいです絶対に断固として」
「…あの二人、知り合いの家を一通り制覇するつもりかしら…?」
671: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:27:13.98 ID:uGhe8MzMo
「ああ…そう言えば、今度仁美んちにも遊びに行きたいとか言っていたような言ってなかったような…」
「鹿目さん…怖ろしい子」
二人が顔を合わせて青ざめさせる。
「…まぁ、それに付き合うほむらも大概心臓ですけどね」
「おまえらなんかまだいいよ!」
「鹿目さん…怖ろしい子」
二人が顔を合わせて青ざめさせる。
「…まぁ、それに付き合うほむらも大概心臓ですけどね」
「おまえらなんかまだいいよ!」
672: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:32:32.51 ID:uGhe8MzMo
「わっ」
「びっくりした」
二人が振り向くと、そこには杏子が肩を振るわせながら立っていた。
「どしたのあんこ? 一緒に来てたんだ」
「杏子だっ! お前らなんか家だから! 一回だけだからいいじゃねぇか! でもなぁ、あたしなんて、泊まりに来ない? なんて誘われた日にだぞ! あの二人! 隣でどったんばったん大暴れなんだぜ! ほむらんちに泊まったとき! まどかんちに泊まったとき! ことごとくだ! ことごとく! 二回もアレ隣でやられたんだぞあたしは! しかもとどめはあたしがホテルに泊まっていた時だ! 泊まらせて貰ったし、まぁここでならとか甘い考えで泊めてやったら、やったら! あの狭い部屋んなかであの二人が…あの二人が…! むしろいつもより雰囲気が違うとか言って行きずりのいけない関係みたいとか言ってめっちゃ燃えていたんだぞ! 何歳だよあいつら! んな感じで三回も見せつけられてんだよあたしは!」
「びっくりした」
二人が振り向くと、そこには杏子が肩を振るわせながら立っていた。
「どしたのあんこ? 一緒に来てたんだ」
「杏子だっ! お前らなんか家だから! 一回だけだからいいじゃねぇか! でもなぁ、あたしなんて、泊まりに来ない? なんて誘われた日にだぞ! あの二人! 隣でどったんばったん大暴れなんだぜ! ほむらんちに泊まったとき! まどかんちに泊まったとき! ことごとくだ! ことごとく! 二回もアレ隣でやられたんだぞあたしは! しかもとどめはあたしがホテルに泊まっていた時だ! 泊まらせて貰ったし、まぁここでならとか甘い考えで泊めてやったら、やったら! あの狭い部屋んなかであの二人が…あの二人が…! むしろいつもより雰囲気が違うとか言って行きずりのいけない関係みたいとか言ってめっちゃ燃えていたんだぞ! 何歳だよあいつら! んな感じで三回も見せつけられてんだよあたしは!」
673: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:37:43.52 ID:uGhe8MzMo
「うわぁ…」
「そ、そうだったの?」
「あいつらが情けだの何だので誘ってくれているんじゃないってのは分かってるけど! それでも宿を借りてる手前何にも言えないし! そのくせパジャマパーティみたいな感じで楽しくわいわいやって、さぁ寝ようかってうとうとしかけると、すぐ隣で二人がほむぅだのウェヒーだの言い出すんだぞ! この寂しさがわかるかお前らっ!」
「佐倉さんもピロートークするのね」
「寂しいって?」
「そ、そうだったの?」
「あいつらが情けだの何だので誘ってくれているんじゃないってのは分かってるけど! それでも宿を借りてる手前何にも言えないし! そのくせパジャマパーティみたいな感じで楽しくわいわいやって、さぁ寝ようかってうとうとしかけると、すぐ隣で二人がほむぅだのウェヒーだの言い出すんだぞ! この寂しさがわかるかお前らっ!」
「佐倉さんもピロートークするのね」
「寂しいって?」
674: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:42:32.47 ID:uGhe8MzMo
「あ」
しまった、と杏子が口をつぐむ」
「…もしかして、混ざりたかったわけ?」
「佐倉さんが…借り物でちょっとだけサイズが合わないぶかぶかパジャマを着て、ポニーテールも解いた髪で、初めてのリンスの香りにどこか落ち着かないけどなんだか気持ちよくって、そんななか、みんなでまくらをだっこしながらのピロートーク…! いいかも! いいじゃない! いいわね!」
「マミさん妄想が具体的すぎます」
しまった、と杏子が口をつぐむ」
「…もしかして、混ざりたかったわけ?」
「佐倉さんが…借り物でちょっとだけサイズが合わないぶかぶかパジャマを着て、ポニーテールも解いた髪で、初めてのリンスの香りにどこか落ち着かないけどなんだか気持ちよくって、そんななか、みんなでまくらをだっこしながらのピロートーク…! いいかも! いいじゃない! いいわね!」
「マミさん妄想が具体的すぎます」
675: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:47:52.69 ID:uGhe8MzMo
「! ち、違うっ! た、ただ! なんだか…あんなに楽しそうなの見てたら…なんか、仲間はずれみたいな感じで…。べ! 別に! あたしはノーマルだぞ!」
「あんこはわんこだねぇ」
「あんこじゃねぇ! わんこでもねぇっ!」
「ずるいずるーい! 私もみんなとパジャマパーティしたぁーい! 暁美さんも鹿目さんもずるーい! 佐倉さんは私が一番仲良しなのにぃーっ! 佐倉さん、うちに泊まっても、夜は魔女狩りの時以外はさっさと寝ちゃうんだもぉん!」
「二人っきりで何をそんなに話すんだっうの!」
「あんこはわんこだねぇ」
「あんこじゃねぇ! わんこでもねぇっ!」
「ずるいずるーい! 私もみんなとパジャマパーティしたぁーい! 暁美さんも鹿目さんもずるーい! 佐倉さんは私が一番仲良しなのにぃーっ! 佐倉さん、うちに泊まっても、夜は魔女狩りの時以外はさっさと寝ちゃうんだもぉん!」
「二人っきりで何をそんなに話すんだっうの!」
676: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:52:09.88 ID:uGhe8MzMo
「やだやだーっ!」
「マミさん、そんな子供みたいにイヤイヤしないで下さい。子供みたいじゃない一部が、ぶるんぶるん荒ぶってますんで」
「あ」
はっと我に返ったマミが胸を手で押させる。
「まぁ、そんなわけであの二人にはあたし達全員、あらかた見せつけられている、と」
「マミさん、そんな子供みたいにイヤイヤしないで下さい。子供みたいじゃない一部が、ぶるんぶるん荒ぶってますんで」
「あ」
はっと我に返ったマミが胸を手で押させる。
「まぁ、そんなわけであの二人にはあたし達全員、あらかた見せつけられている、と」
677: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/23(土) 23:57:15.66 ID:uGhe8MzMo
「って、そういう話だったのかおい?」
「あ! 違うよ違う! そうだ! マミさん! 最近ほむらからグリーフシード譲って貰ってますか?」
「え? ええと…そう言えば、最近は…あんまり?」
「ん、あたしもだな。ま、あたしはそんな足りなくなる事は無いぞ? ちっとやりくりはしてるけどさ」
「…やっぱり、前と比べて逼迫しているんだ」
「あ! 違うよ違う! そうだ! マミさん! 最近ほむらからグリーフシード譲って貰ってますか?」
「え? ええと…そう言えば、最近は…あんまり?」
「ん、あたしもだな。ま、あたしはそんな足りなくなる事は無いぞ? ちっとやりくりはしてるけどさ」
「…やっぱり、前と比べて逼迫しているんだ」
678: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/24(日) 00:03:27.94 ID:CmZNcjWEo
「あら、逼迫って程じゃないわよ?」
「そうそう、お前みたいに前後の見境無く魔翌力使ってしかもその事忘れてなけりゃな」
「…みんなあたしのこと嫌いぃ?」
「落ち着け。またグリーフシードが曇るぞ」
「おっとといけない。ええと、そうじゃなくて、つまりほむらが、最近意図してグリーフシードを譲ってくれてないんじゃないかって言いたいんですよ」
「そうそう、お前みたいに前後の見境無く魔翌力使ってしかもその事忘れてなけりゃな」
「…みんなあたしのこと嫌いぃ?」
「落ち着け。またグリーフシードが曇るぞ」
「おっとといけない。ええと、そうじゃなくて、つまりほむらが、最近意図してグリーフシードを譲ってくれてないんじゃないかって言いたいんですよ」
679: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/24(日) 00:08:09.60 ID:CmZNcjWEo
「…そう、かしら?」
でも、そう言えば、とマミが顎に手を当てて首を傾げる。
「あー、確かに、前よりはそうだな。…ほむら、魔女は倒せているんだよな?」
「そりゃもう。前も特殊能力自体はチートだったけど、今じゃ通常戦闘力までチート化してるんで狩りまくりだよ。サイボーグフリーザをサクサク切り刻むトランクス並に」
「分かるような分かんねぇような喩えだな。でも…だとすると、まぁ確かにもっとグリーフシードは余っている筈なのか」
でも、そう言えば、とマミが顎に手を当てて首を傾げる。
「あー、確かに、前よりはそうだな。…ほむら、魔女は倒せているんだよな?」
「そりゃもう。前も特殊能力自体はチートだったけど、今じゃ通常戦闘力までチート化してるんで狩りまくりだよ。サイボーグフリーザをサクサク切り刻むトランクス並に」
「分かるような分かんねぇような喩えだな。でも…だとすると、まぁ確かにもっとグリーフシードは余っている筈なのか」
680: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/24(日) 00:12:40.64 ID:CmZNcjWEo
「余裕があるからって油断しないように、ストックしてくれているとか?」
「でも、この前はほむら、手持ちは無いって言ってましたよ」
「…そう言えば、私も聞いたけど、同じだったわ」
「あー、あたしもだな」
「……」
「でも、この前はほむら、手持ちは無いって言ってましたよ」
「…そう言えば、私も聞いたけど、同じだったわ」
「あー、あたしもだな」
「……」
681: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/24(日) 00:17:31.84 ID:CmZNcjWEo
三人がうーん、と首を傾げて唸る。
「マミさん。やっぱほむら、何か隠してますよ。絶対に」
確信を持った。そんな瞳でさやかが言う。
「ほむらは、何かを独りで考えている。そして、その何かの為にグリーフシードを溜めているかもしれないです」
「んー…。他の事なら詮索したくはないんだけど…」
「マミさん。やっぱほむら、何か隠してますよ。絶対に」
確信を持った。そんな瞳でさやかが言う。
「ほむらは、何かを独りで考えている。そして、その何かの為にグリーフシードを溜めているかもしれないです」
「んー…。他の事なら詮索したくはないんだけど…」
682: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/24(日) 00:23:37.55 ID:CmZNcjWEo
「グリーフシードが関わっているとなると、話は別だな」
杏子がロッキーを咥えてにやりと笑う。
「それにしても美樹さん…。貴女も変わったわね」
「え?」
「前なら、暁美さんに対してはもうちょっと訝しげな所を隠さなかったけど、今の貴女の口ぶりは、彼女を疑っているんじゃ無くて、心配しているんだって分かるもの」
杏子がロッキーを咥えてにやりと笑う。
「それにしても美樹さん…。貴女も変わったわね」
「え?」
「前なら、暁美さんに対してはもうちょっと訝しげな所を隠さなかったけど、今の貴女の口ぶりは、彼女を疑っているんじゃ無くて、心配しているんだって分かるもの」
691: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/29(金) 23:07:53.63 ID:iB3v17bHo
「…ほむ…。ほむぅ…。ほむうぅ…」
「どうしよう…。ほむらちゃんがあくまで他意の無い喩えだけど、不人気の青いのの妬みから来る陰湿ないじめに堪え忍んでいる薄幸の超絶美少女のようにはらはらと泣いているよ…。輝く涙もダイヤモンドだよ。ナイショだけどちょっと欲情するよ…」
「まどかぁ…。ちいさんが…地井武男さんがあ…。私のちいちいがぁ…」
「あ?」
「訂正します。あくまで一ファンとしての意味であり、恋愛感情は一切抜きのあこがれという、タレントと言うくくりの範囲内と言う位置づけで、Like以上の意味は無い好き、だった地井武男(ちい たけお、本名:同じ。1942年5月5日-2012年6月29日)氏が、です」
「どうしよう…。ほむらちゃんがあくまで他意の無い喩えだけど、不人気の青いのの妬みから来る陰湿ないじめに堪え忍んでいる薄幸の超絶美少女のようにはらはらと泣いているよ…。輝く涙もダイヤモンドだよ。ナイショだけどちょっと欲情するよ…」
「まどかぁ…。ちいさんが…地井武男さんがあ…。私のちいちいがぁ…」
「あ?」
「訂正します。あくまで一ファンとしての意味であり、恋愛感情は一切抜きのあこがれという、タレントと言うくくりの範囲内と言う位置づけで、Like以上の意味は無い好き、だった地井武男(ちい たけお、本名:同じ。1942年5月5日-2012年6月29日)氏が、です」
692: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/29(金) 23:13:07.43 ID:iB3v17bHo
「よろしい♪」
「そのちいちいがぁ…。まどかぁ…」
「本当にびっくりだったよね。うん…本当に」
「さいきんやっと若大将にちょっとくらいは慣れてきたかな、と思っていたけど、でもそれはいずれ、ちいさんが必ず戻って来てくれるという希望の上での妥協の産物だったのに…それなのに…。若すぎるわ。まだ若すぎるわよ…」
「本当に、まさか銀幕復活すらせずになんて…わたしも流石に一報を疑ったもん」
「そのちいちいがぁ…。まどかぁ…」
「本当にびっくりだったよね。うん…本当に」
「さいきんやっと若大将にちょっとくらいは慣れてきたかな、と思っていたけど、でもそれはいずれ、ちいさんが必ず戻って来てくれるという希望の上での妥協の産物だったのに…それなのに…。若すぎるわ。まだ若すぎるわよ…」
「本当に、まさか銀幕復活すらせずになんて…わたしも流石に一報を疑ったもん」
693: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/29(金) 23:20:14.15 ID:iB3v17bHo
「これからは刑事貴族を見る度に涙が溢れそうになるかも知れない」ホムゥ…
「太陽にほえろじゃない辺りがほむらちゃんだね。いろんな意味で」ウェヒ
「と言う訳で…悲しみに明け暮れてもちいさんは喜んでくれないわ」
「こっちのお話ももうちょっとだけ続くんじゃよ」
「…あんたら、あたしのことやっぱり嫌いだろ」
「太陽にほえろじゃない辺りがほむらちゃんだね。いろんな意味で」ウェヒ
「と言う訳で…悲しみに明け暮れてもちいさんは喜んでくれないわ」
「こっちのお話ももうちょっとだけ続くんじゃよ」
「…あんたら、あたしのことやっぱり嫌いだろ」
694: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/29(金) 23:27:04.66 ID:iB3v17bHo
「ほむ?」
「ウェヒ?」
「ごまかすなーっ!」
「と言う訳で、どこかの誰かの科白を代行して、『地井武男氏のご冥福をお祈りします』。きゅっぷい」
「ウェヒ?」
「ごまかすなーっ!」
「と言う訳で、どこかの誰かの科白を代行して、『地井武男氏のご冥福をお祈りします』。きゅっぷい」
695: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/29(金) 23:33:38.52 ID:iB3v17bHo
「え? あ、いや、そ、そっすか? いやー…」
不意に顔を赤らめ、さやかが頭を掻く。
「好きなのね。暁美さんが」
「あー…。まぁ…その…ええ」
「おーい、それはいいけどよ、こんなところで唸ってても何にもなりゃしないぜ。なら、やる事は一つだ! 分かってるだろ?」
696: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/29(金) 23:38:29.71 ID:iB3v17bHo
「もしかして! ここに居る三人でこれからパジャマパーリィ?! ヒーハァーッ!」
「ちげーよ!」
「マミさん、それはまた今度にしましょ?」
「……」マミーン
「う…。い、いえ、ほら、今は…」
「ちげーよ!」
「マミさん、それはまた今度にしましょ?」
「……」マミーン
「う…。い、いえ、ほら、今は…」
697: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/29(金) 23:43:30.37 ID:iB3v17bHo
「美樹さん!」
「はいぃっ!」
「あなた今、今度って言ったわよね?! 今度って事はやるのよね! 絶対よ! 必ずやりましょうね!」
「は、はい! 必ず!」
「…やんのか? なぁ」
「はいぃっ!」
「あなた今、今度って言ったわよね?! 今度って事はやるのよね! 絶対よ! 必ずやりましょうね!」
「は、はい! 必ず!」
「…やんのか? なぁ」
698: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/29(金) 23:54:16.68 ID:iB3v17bHo
「しー! マミさんがあんなに嬉しそうにしているんだから水差さない! あんただって嫌じゃないでしょ!」
「だけどさ、なーんか、予定調和ってのもなぁ…」
「時にはそういうのに流されときなよ。悪い事じゃない場合はね」
「へいへい」
「と言う訳で、今度お邪魔しますんでよろしくお願いします」
「だけどさ、なーんか、予定調和ってのもなぁ…」
「時にはそういうのに流されときなよ。悪い事じゃない場合はね」
「へいへい」
「と言う訳で、今度お邪魔しますんでよろしくお願いします」
699: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/30(土) 00:00:11.25 ID:/VlX9hEeo
「いつでも何時からでもいつまでだっていいわよ! ケーキと紅茶とお菓子毎日用意して正座して待っているわね!」
「いえ、ちゃんと断ってから行きますから…」
「あら、そう?」
満面の笑みのマミに、二人は必ず行こうと誓わずには居られなかった。
「で、本題だけど」
「いえ、ちゃんと断ってから行きますから…」
「あら、そう?」
満面の笑みのマミに、二人は必ず行こうと誓わずには居られなかった。
「で、本題だけど」
700: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/30(土) 00:05:49.32 ID:/VlX9hEeo
「…一応、明日はやめときましょ? 主に私達の身の安全の為に。と言うか命の安全の為に」
「ですね…」
「異存なーし」
二人の蜜月を邪魔した日にはどうなるか。それは火を見るより明らかだ。
「じゃ、詳しくは明日にでも改めて」
「ですね…」
「異存なーし」
二人の蜜月を邪魔した日にはどうなるか。それは火を見るより明らかだ。
「じゃ、詳しくは明日にでも改めて」
701: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/30(土) 00:10:10.65 ID:/VlX9hEeo
「えー? これからうちに寄ってくれないのぉ?」
「もう夜ですマミさん」
「つまんなぁい…」
妙にだだっこになったマミを宥めつつ、その日は解散となった。
「翌日っ!」
「もう夜ですマミさん」
「つまんなぁい…」
妙にだだっこになったマミを宥めつつ、その日は解散となった。
「翌日っ!」
702: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/30(土) 00:15:29.45 ID:/VlX9hEeo
「まどか?」
「あ、こっちの事だよ」
「そう?」
「さ、今日もいい天気だよ。朝ご飯朝ご飯!」
「ふふ。お父様のお食事は美味しいものね」
「あ、こっちの事だよ」
「そう?」
「さ、今日もいい天気だよ。朝ご飯朝ご飯!」
「ふふ。お父様のお食事は美味しいものね」
703: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/30(土) 00:20:16.55 ID:/VlX9hEeo
「お義父様?」
「そ、その当て字は…まだ…」
「まだって事は、そのうち、なんだよね?」
「…そ、そう思っても…いいの?」
「オーケェイオーケェイ! オールゥオーケェイ!」
「そ、その当て字は…まだ…」
「まだって事は、そのうち、なんだよね?」
「…そ、そう思っても…いいの?」
「オーケェイオーケェイ! オールゥオーケェイ!」
704: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/30(土) 00:25:04.28 ID:/VlX9hEeo
「す、素晴らしい巻き舌だわ…」
「じゃあ、そのうち私がほむらちゃんのご飯を全部作れるようにならなくちゃねー」
「まどか…そんなの、私も同じよ。私の作ったご飯を…貴女に、貴女にずっと…食べて欲しいわ」
「ほむらちゃん…嬉しいよ」
「私もよ、まどかぁ…」
「じゃあ、そのうち私がほむらちゃんのご飯を全部作れるようにならなくちゃねー」
「まどか…そんなの、私も同じよ。私の作ったご飯を…貴女に、貴女にずっと…食べて欲しいわ」
「ほむらちゃん…嬉しいよ」
「私もよ、まどかぁ…」
705: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/30(土) 00:30:22.19 ID:/VlX9hEeo
「ウェヒ。これは延長戦のフラグ?」
「あ、ち、ちょっと待って。流石に今からは…。ほ、ほら、もう朝ご飯のいい匂いがしているし。ね?」
「むー。そうだね、あんまり待たせるとパパかママが来ちゃうかもしれないしね。そしたらバレちゃう」
「そ、そうね(…とっくに…だと思うけど)」
二人が着替えて下に降りると、詢子、知久、そしてタツヤが待っていた。
「あ、ち、ちょっと待って。流石に今からは…。ほ、ほら、もう朝ご飯のいい匂いがしているし。ね?」
「むー。そうだね、あんまり待たせるとパパかママが来ちゃうかもしれないしね。そしたらバレちゃう」
「そ、そうね(…とっくに…だと思うけど)」
二人が着替えて下に降りると、詢子、知久、そしてタツヤが待っていた。
706: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/06/30(土) 00:34:36.37 ID:/VlX9hEeo
「おはよー」
「おはようございます。すいません、お待たせしてしまって」
「いやいや、ウチの食事のタイミングに合わせてくれているんだから何にも気にする必要なんて無いよ。あははははははははは」
「そうそう、まどかもいつもよりお寝坊さんじゃなくって助かっているくらいだよ。おほほほほほ。おほほほほほほ」
「……(やっぱり…)」
「おはようございます。すいません、お待たせしてしまって」
「いやいや、ウチの食事のタイミングに合わせてくれているんだから何にも気にする必要なんて無いよ。あははははははははは」
「そうそう、まどかもいつもよりお寝坊さんじゃなくって助かっているくらいだよ。おほほほほほ。おほほほほほほ」
「……(やっぱり…)」
712: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 22:54:13.74 ID:+5nZphDXo
「まろかー、ほむあー、おあおー」
「おはよう、たっくん」
「おはよう、タツヤくん」
半ば定位置となっている席にほむらが座り、改めて両親の顔を見る。
…やっぱり隈が。
「おはよう、たっくん」
「おはよう、タツヤくん」
半ば定位置となっている席にほむらが座り、改めて両親の顔を見る。
…やっぱり隈が。
713: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:00:49.34 ID:+5nZphDXo
それでいてその顔には慈愛と言っても良さそうな微笑み。
何か全てを悟った。そんな悟りの境地を思わせる微笑みだった。
「ほむぅ…」
ほむらは証拠こそ無いが確信を強め、顔をそっと赤らめる。
「うぇひー?」
何か全てを悟った。そんな悟りの境地を思わせる微笑みだった。
「ほむぅ…」
ほむらは証拠こそ無いが確信を強め、顔をそっと赤らめる。
「うぇひー?」
714: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:05:20.47 ID:+5nZphDXo
「ほむ、ほむぅ」
「うぇひひ」
「あー、そこのお二人さん、仲が良いのはいいけど、せめて日本語を話すように」
当日の昼前。
「まどか」
「うぇひひ」
「あー、そこのお二人さん、仲が良いのはいいけど、せめて日本語を話すように」
当日の昼前。
「まどか」
715: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:11:47.29 ID:+5nZphDXo
「なぁに」
庭で水まきの手伝いをしていたまどかにほむらが語りかける。
「…あのね、私…今日は、午後になったら…おいとましようと思うの」
「え? どうして? 週末はずっとって…」
「もちろん! 一緒に居たくない、なんて事は絶対に無いわ! ただ、その、ご両親に…申し訳なくて…。きっと、お二人とも気付いて…いる、し」
庭で水まきの手伝いをしていたまどかにほむらが語りかける。
「…あのね、私…今日は、午後になったら…おいとましようと思うの」
「え? どうして? 週末はずっとって…」
「もちろん! 一緒に居たくない、なんて事は絶対に無いわ! ただ、その、ご両親に…申し訳なくて…。きっと、お二人とも気付いて…いる、し」
716: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:24:09.40 ID:+5nZphDXo
「えっ?」
まどかがうそ、と目を丸める。
手に持っていたホースが不安定な軌道を描いて宙を舞い、二人にさぁっと水しぶきが掛かる。
「…やっぱり、本気で…気付いて、なかった?」
「全然!」
まどかがうそ、と目を丸める。
手に持っていたホースが不安定な軌道を描いて宙を舞い、二人にさぁっと水しぶきが掛かる。
「…やっぱり、本気で…気付いて、なかった?」
「全然!」
717: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:30:12.29 ID:+5nZphDXo
「…あ、そ、そう。私、てっきり…。そう、そういうプレイじゃ無かったのね」
ほむらが胸をなで下ろす。
「そうだよぉ! ギリギリ気付くか気付かれないかの綱渡りが楽しいんだもん! 気付かれる事前提じゃ駄目だよぉ! あーん、もうちょっと声を抑えればよかったのかなぁ」
「…ああ、ばれる事自体は問題じゃないのね」
「ウェヒ。てことは、さやかちゃんやマミさんのお家での逢瀬もばれていたのかな? もしかして」
ほむらが胸をなで下ろす。
「そうだよぉ! ギリギリ気付くか気付かれないかの綱渡りが楽しいんだもん! 気付かれる事前提じゃ駄目だよぉ! あーん、もうちょっと声を抑えればよかったのかなぁ」
「…ああ、ばれる事自体は問題じゃないのね」
「ウェヒ。てことは、さやかちゃんやマミさんのお家での逢瀬もばれていたのかな? もしかして」
718: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:37:33.36 ID:+5nZphDXo
「…一応、そっちもばれないようにと思ってはいたねの」
「ウェヒー。失敗失敗」
まどかはテヘペロ、と舌を出して笑う。
可愛い微笑みだが、しかし底知れぬ何かを感じる。
ほむらはしかし、『ああもうまどかったらどうしてそんなに可愛いの、裏表の無いその純粋な行動はやっぱり貴女が天使だからなのね!』と全てを肯定してあっさりいつも通りに戻った。
「ウェヒー。失敗失敗」
まどかはテヘペロ、と舌を出して笑う。
可愛い微笑みだが、しかし底知れぬ何かを感じる。
ほむらはしかし、『ああもうまどかったらどうしてそんなに可愛いの、裏表の無いその純粋な行動はやっぱり貴女が天使だからなのね!』と全てを肯定してあっさりいつも通りに戻った。
719: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:42:58.18 ID:+5nZphDXo
まどか。私…少しは貴女に相応しい子に近づけているかしら。
ほむらはまどかを見てそっと呟く。
「…でね、さっきの話の続きだけど…それならね、やっぱり…私…帰ろうと…。ほら、家族の団らんも…」
「ほむらちゃん」
「きゃ」
ほむらはまどかを見てそっと呟く。
「…でね、さっきの話の続きだけど…それならね、やっぱり…私…帰ろうと…。ほら、家族の団らんも…」
「ほむらちゃん」
「きゃ」
720: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:47:13.93 ID:+5nZphDXo
いつの間にか目の前に来ていたまどかがほむらを抱きしめる。
「ま、まどか! ここ庭よ! 誰かが…!」
「ほむらちゃん、最近疲れている」
「…まどか」
「あれ、大変なんでしょ?」
「ま、まどか! ここ庭よ! 誰かが…!」
「ほむらちゃん、最近疲れている」
「…まどか」
「あれ、大変なんでしょ?」
721: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:52:46.25 ID:+5nZphDXo
「……。ええ」
「ほむらちゃんの『戦い』は…まだ、終わってないんだよね?」
「…そうね。私の中では…まだ、終わってないわ」
「みんなが生きていても」
「そう、みんなが生きていても…。だからこそ。生き残ってくれたからこそ…私の『戦い』は、まだ、終わっていない。終わらせられない」
「ほむらちゃんの『戦い』は…まだ、終わってないんだよね?」
「…そうね。私の中では…まだ、終わってないわ」
「みんなが生きていても」
「そう、みんなが生きていても…。だからこそ。生き残ってくれたからこそ…私の『戦い』は、まだ、終わっていない。終わらせられない」
722: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/02(月) 23:57:04.59 ID:+5nZphDXo
「また、行くの?」
「ええ。遠くでないと…」
「そう言えば、キュウべぇは何にも言わないの? ちょっかいとか出してこない?」
「出させないわ。それに、癪だけど、これはあいつにとっても興味の対象みたい」
「じゃ、大丈夫かな?」
「ええ。遠くでないと…」
「そう言えば、キュウべぇは何にも言わないの? ちょっかいとか出してこない?」
「出させないわ。それに、癪だけど、これはあいつにとっても興味の対象みたい」
「じゃ、大丈夫かな?」
723: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 00:02:06.51 ID:+UOwQaTFo
「おかしな考えを起こさない限りは、ね」
「『みんな』が、仲良く出来ると…いいね」
まどかが少しだけ切なげに微笑み、そしてほむらを抱きしめる。
「ええ。私が…きっと…。どんなつらい事があっても、私は…」
「ほむらちゃん。あのね、ほむらちゃんは…私の半身だよ」
「『みんな』が、仲良く出来ると…いいね」
まどかが少しだけ切なげに微笑み、そしてほむらを抱きしめる。
「ええ。私が…きっと…。どんなつらい事があっても、私は…」
「ほむらちゃん。あのね、ほむらちゃんは…私の半身だよ」
724: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 00:07:12.04 ID:+UOwQaTFo
まどかがほむらを見つめて、噛みしめるように言う。
「まどか…」
「だからね、私はほむらちゃんが戦い続けるなら、ずっとそれを助けるよ。ほむらちゃんが倒れたら、何度でも手を貸すよ。何度でも起こさせてもらうよ。ほむらちゃんが、立ち上がりたいと、起きたいと思っている限り…! 私は、どんなにつらい事でも、ほむらちゃんが喩え傷つく事だろうと、ほむらちゃんが心から望む事を、するよ。私は、ほむらちゃんのものだから。ほむらちゃんの望むことは、私の望むことだから」
「まどか…」
まどかを抱きしめるほむらの腕に力がこもる。
「まどか…」
「だからね、私はほむらちゃんが戦い続けるなら、ずっとそれを助けるよ。ほむらちゃんが倒れたら、何度でも手を貸すよ。何度でも起こさせてもらうよ。ほむらちゃんが、立ち上がりたいと、起きたいと思っている限り…! 私は、どんなにつらい事でも、ほむらちゃんが喩え傷つく事だろうと、ほむらちゃんが心から望む事を、するよ。私は、ほむらちゃんのものだから。ほむらちゃんの望むことは、私の望むことだから」
「まどか…」
まどかを抱きしめるほむらの腕に力がこもる。
725: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 00:13:07.23 ID:+UOwQaTFo
ホースの水は止められていない。二人はあっという間にびしょ濡れになっていた。
「うん…。うん…。まどか、ありがとう…。私…頑張る。頑張れる! まどかが側に居てくれるから、諦めずに頑張れるよ。私こそ、まどかの半身だよ。私は、貴女のほむらだよ」
「ほむらちゃん…。ウェヒヒ。メガネッ子ほむらちゃんに戻っているよ。かーわいい」
「え? あ…。い、今のはなし! ち、ちょっと気が抜けて…」
「ウェヒ。私の前で気を張る必要なんて、無いんだよ。それにしても、おんなじ私だけど、最初の私はメガネッ子ほむらちゃんの素を普通に見られて羨ましいなぁ」
「うん…。うん…。まどか、ありがとう…。私…頑張る。頑張れる! まどかが側に居てくれるから、諦めずに頑張れるよ。私こそ、まどかの半身だよ。私は、貴女のほむらだよ」
「ほむらちゃん…。ウェヒヒ。メガネッ子ほむらちゃんに戻っているよ。かーわいい」
「え? あ…。い、今のはなし! ち、ちょっと気が抜けて…」
「ウェヒ。私の前で気を張る必要なんて、無いんだよ。それにしても、おんなじ私だけど、最初の私はメガネッ子ほむらちゃんの素を普通に見られて羨ましいなぁ」
731: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 22:25:37.29 ID:yMeMBXQvo
「そ、そんなの…あの頃の私なんて、ただのつまんない子で…」
「つまんない子発言禁止。ほむらちゃんは素敵だよ。ね?」
「…うん。うん、まどかぁ…」
「それから、ほむらちゃんはもう他人じゃ無いの。ここはほむらちゃんのお家だよ。まぁ、決定権は流石にパパとママだけど、でも、パパとママは絶対に拒否なんてしないから。だから、ほむらちゃんのお家はここ。ほむらちゃんのパパとママにも、早く会いたいな」
「…そうね、まだ、電話でだけだものね」
「ウェヒヒ。ほむらちゃんのパパとママも、なんだかとってもいい人そうだったよね。声だけで、ほむらちゃんをどれだけ愛しているか分かったもん」
「…自分で言うと馬鹿みたいだけど、私のパパとママだもの。あ、じゃなくて、お父さんとお母さんだもの」
「ウェヒ。パパとママでいいと思うよ。自分のパパとママが素直に大好きって言えるほむらちゃん萌え。大好き」
「まどかぁ…嬉しい…」
二人はホースの水でびしょ濡れになったまま、そっとキスをした。
「つまんない子発言禁止。ほむらちゃんは素敵だよ。ね?」
「…うん。うん、まどかぁ…」
「それから、ほむらちゃんはもう他人じゃ無いの。ここはほむらちゃんのお家だよ。まぁ、決定権は流石にパパとママだけど、でも、パパとママは絶対に拒否なんてしないから。だから、ほむらちゃんのお家はここ。ほむらちゃんのパパとママにも、早く会いたいな」
「…そうね、まだ、電話でだけだものね」
「ウェヒヒ。ほむらちゃんのパパとママも、なんだかとってもいい人そうだったよね。声だけで、ほむらちゃんをどれだけ愛しているか分かったもん」
「…自分で言うと馬鹿みたいだけど、私のパパとママだもの。あ、じゃなくて、お父さんとお母さんだもの」
「ウェヒ。パパとママでいいと思うよ。自分のパパとママが素直に大好きって言えるほむらちゃん萌え。大好き」
「まどかぁ…嬉しい…」
二人はホースの水でびしょ濡れになったまま、そっとキスをした。
732: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 22:35:43.56 ID:yMeMBXQvo
家の中、窓の影。
「…やっぱ、あれじゃあ孫の顔は無理かねぇ」
「無理だよねぇ。僕から見ても」
「むいー?」
「うん、タッくん、かわりに君が頑張るんだぞ。僕と詢子さんに孫を見せてね。だいぶ先だけど」
「? あいー」
タツヤはよく分からないまま、元気に返事を返した。
「…そ、それにしても」
「ウェヒ?」
「今の季節とは言え…ちょっと濡れちゃうと寒くなって来たわね」
「…やっぱ、あれじゃあ孫の顔は無理かねぇ」
「無理だよねぇ。僕から見ても」
「むいー?」
「うん、タッくん、かわりに君が頑張るんだぞ。僕と詢子さんに孫を見せてね。だいぶ先だけど」
「? あいー」
タツヤはよく分からないまま、元気に返事を返した。
「…そ、それにしても」
「ウェヒ?」
「今の季節とは言え…ちょっと濡れちゃうと寒くなって来たわね」
733: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 22:41:59.70 ID:yMeMBXQvo
「ウェヒヒ。それじゃー、やっぱり今日はお家でゆっくりしていってね!」
「…まどかぁ」
「詢子さん、あの二人は…何か僕達には分からない、とっても純粋な絆で結ばれているんだね」
「…ああ。あんな優しい、無垢な笑顔を見たら、そう思っちゃうね。うん、陳腐な言葉だけど…『天使』って、あの二人みたいなのを言うんだと思うよ。ふふ。我が娘に向って親馬鹿も程がある、かな」
夜。
ウィェーッヒヒヒヒヒヒヒャハハハハァァァッ! ショクノジカンダヨ! ホムラチャアアアアンッ!
ホミュウ…ヌグカラヤブカナイデエェ…。ホミュアアア…ホミュ…ホミュー…。
ウェーーッヒッヒッヒッヒ! ティーツヒッヒッヒッヒーハァー!
ホミュウウンン…マドカァ…ミュゥ…。ミャアアアン…///
ギシギシドッタンバッタントイーンチャラリラリラポイーンチャラリラリラ♪
詢子・知久(キコエナイキコエナイキコエナイキコエナイキコエ…)
「…まどかぁ」
「詢子さん、あの二人は…何か僕達には分からない、とっても純粋な絆で結ばれているんだね」
「…ああ。あんな優しい、無垢な笑顔を見たら、そう思っちゃうね。うん、陳腐な言葉だけど…『天使』って、あの二人みたいなのを言うんだと思うよ。ふふ。我が娘に向って親馬鹿も程がある、かな」
夜。
ウィェーッヒヒヒヒヒヒヒャハハハハァァァッ! ショクノジカンダヨ! ホムラチャアアアアンッ!
ホミュウ…ヌグカラヤブカナイデエェ…。ホミュアアア…ホミュ…ホミュー…。
ウェーーッヒッヒッヒッヒ! ティーツヒッヒッヒッヒーハァー!
ホミュウウンン…マドカァ…ミュゥ…。ミャアアアン…///
ギシギシドッタンバッタントイーンチャラリラリラポイーンチャラリラリラ♪
詢子・知久(キコエナイキコエナイキコエナイキコエナイキコエ…)
734: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 22:48:02.38 ID:yMeMBXQvo
「le lendemain!(翌日っ!)」
「マミさん、無理にフランス語にしなくても…」
「あら、こういう勢いって大切よ」マミン!
「せっかくの日曜日だってのに…ふぁーあ。めんどくせえなぁ」
日曜日。三人は、昼食の時間に喫茶店に集合し、食事しながら話をしていた。
「そんな事言って、佐倉さんもちゃんと集合してくれているじゃない」
「昨日泊まりに来いっつっただろ。んで一緒にここまで来てるのに来れないわけあるか」
「あ、昨日は杏子泊まったんだ」
「飯につられて、ちょっとな」
「じゃあ、今日は暁美さんとお話し隊って事で!」
735: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 22:53:08.60 ID:yMeMBXQvo
「マミさんノリノリだなー」
「楽しそうだよな…」
「そう言えば、ほむらはもう大丈夫なんですよね?」
「ええ。週末一緒に居ても、日曜日には意外に早く別れるらしいの。だから昼過ぎならもうバイバイしているわ」
「午後からが勝負ですね」
「それじゃ、暁美さんにメール送信っと」
「マミさん、なんて?」
「魔女が現れたからヘルプって」
「え」
「おい、マミ、嘘はちょっと…」
「楽しそうだよな…」
「そう言えば、ほむらはもう大丈夫なんですよね?」
「ええ。週末一緒に居ても、日曜日には意外に早く別れるらしいの。だから昼過ぎならもうバイバイしているわ」
「午後からが勝負ですね」
「それじゃ、暁美さんにメール送信っと」
「マミさん、なんて?」
「魔女が現れたからヘルプって」
「え」
「おい、マミ、嘘はちょっと…」
736: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 22:57:55.56 ID:yMeMBXQvo
「あら、本当よ」
「へ?」
さやかと杏子がはっとしてソウルジェムを手に取る。
ソウルジェムは、僅かだが反応していた。
「うわ、気付かなかった」
「あちゃ、ミスったぜ」
「うふふ。痩せても枯れても一応先輩よ。暁美さんは、後で合流してからお話聞きましょ。それに…」
柔らかな微笑みのマミが眉を上げる。
「にしても、これ、かなり遠くないか? よく分かったな」
「そうね、確かにこの反応、恐らくこの街の外からだわ。普段なら分からないわね」
「へ?」
さやかと杏子がはっとしてソウルジェムを手に取る。
ソウルジェムは、僅かだが反応していた。
「うわ、気付かなかった」
「あちゃ、ミスったぜ」
「うふふ。痩せても枯れても一応先輩よ。暁美さんは、後で合流してからお話聞きましょ。それに…」
柔らかな微笑みのマミが眉を上げる。
「にしても、これ、かなり遠くないか? よく分かったな」
「そうね、確かにこの反応、恐らくこの街の外からだわ。普段なら分からないわね」
737: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 23:01:54.31 ID:yMeMBXQvo
「なんで分かった?」
「弱い反応だけど…。気配自体は怖ろしく強いのよ。だから、感じられたの」
「…あー、何か、分かった。あたしも分かったぞ」
「杏子も…うーん、あたしはまだ…もうちょっと近づけば…。あーもう、悔しいなぁ」
「なら、今日のをお手本にしましょう。これが経験、よ」
「了解です」
さやかがびし、と敬礼する。
「あ、返信」
マミがメールを見ると、少し遅れるから先に向かってて、との事だった。
「あら。じゃあ、もしかしたら間に合わないかも」
「弱い反応だけど…。気配自体は怖ろしく強いのよ。だから、感じられたの」
「…あー、何か、分かった。あたしも分かったぞ」
「杏子も…うーん、あたしはまだ…もうちょっと近づけば…。あーもう、悔しいなぁ」
「なら、今日のをお手本にしましょう。これが経験、よ」
「了解です」
さやかがびし、と敬礼する。
「あ、返信」
マミがメールを見ると、少し遅れるから先に向かってて、との事だった。
「あら。じゃあ、もしかしたら間に合わないかも」
738: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 23:04:48.46 ID:yMeMBXQvo
「ま、一緒に魔女退治するのが目的じゃ無いし、その後に会えるならいいだろ」
「それじゃしゅっぱーつ!」
三人は、マミを先頭に街中を走る。
「反応が、どんどん濃く、強くなっているわ」
「ああ」
「…そうですね」
三人の顔に緊張が走る。
気配のする方向は街外れの森の中。
「…遠いな。えらく歩いたぞ」
「ええ。まさかこんな遠くまでとは思わなかったわ…。魔法少女じゃなかったらへばってたわね」
「それじゃしゅっぱーつ!」
三人は、マミを先頭に街中を走る。
「反応が、どんどん濃く、強くなっているわ」
「ああ」
「…そうですね」
三人の顔に緊張が走る。
気配のする方向は街外れの森の中。
「…遠いな。えらく歩いたぞ」
「ええ。まさかこんな遠くまでとは思わなかったわ…。魔法少女じゃなかったらへばってたわね」
739: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/03(火) 23:07:51.65 ID:yMeMBXQvo
「ほむら、ここまで来るかな? もしかしたら、その間に他の場所で現れた魔女反応の方に行ったりしないかな?」
「場所まではまだ分からないからな」
「暁美さんが来ないとしても、魔女退治する事に変わりは無いわ。みんな、気を引き締めて」
普段であれば縄張り外、そもそも魔女が現れることは無い筈の人気の無い場所。だが、今はその方向から、強力な気配が発せられていた。
「おいおい、何だこりゃ? ちょっとびりびり来るぜ」
「う、うん。あたしも分かるよ、これは流石に。久々に、なんかやばそうな気配かも」
「二人とも、言うまでも無いだろうけど、気を抜かないでね」
マミが流石の貫禄で釘を刺す。
二人は、素直に気を引き締めながら歩く。
遠くの木々の間を、何かが走り抜けた。
「場所まではまだ分からないからな」
「暁美さんが来ないとしても、魔女退治する事に変わりは無いわ。みんな、気を引き締めて」
普段であれば縄張り外、そもそも魔女が現れることは無い筈の人気の無い場所。だが、今はその方向から、強力な気配が発せられていた。
「おいおい、何だこりゃ? ちょっとびりびり来るぜ」
「う、うん。あたしも分かるよ、これは流石に。久々に、なんかやばそうな気配かも」
「二人とも、言うまでも無いだろうけど、気を抜かないでね」
マミが流石の貫禄で釘を刺す。
二人は、素直に気を引き締めながら歩く。
遠くの木々の間を、何かが走り抜けた。
745: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:00:48.17 ID:VoelHx2Lo
三人が身構える。
「マミさん、野生動物とかじゃ、なかったですよね」
「熊とかだったらよっぽど可愛げがあるけどな」
「ええ、それに…」
「なんか、反応が、増えているぜ」
「あ、やっぱりそう?」
魔女の気配。
それが、森に入ってから明らかに増えていた。
「…人気の無い場所に…魔女の気配が複数? おかしいわ。佐倉さん、美樹さん、変身しておいた方がいいわ」
マミがソウルジェムを構え、二人も続いた。
「マミさん、野生動物とかじゃ、なかったですよね」
「熊とかだったらよっぽど可愛げがあるけどな」
「ええ、それに…」
「なんか、反応が、増えているぜ」
「あ、やっぱりそう?」
魔女の気配。
それが、森に入ってから明らかに増えていた。
「…人気の無い場所に…魔女の気配が複数? おかしいわ。佐倉さん、美樹さん、変身しておいた方がいいわ」
マミがソウルジェムを構え、二人も続いた。
746: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:04:05.98 ID:VoelHx2Lo
「合点!」ヘンシン!
「承知の助!」ヘンシン!
「変身!」サールティー ロイヤーリー♪
森を光が走り、数秒の後、信号機トリオが立っていた。
「それにしても、マミさんって一人だけBGM付きでずるいよぉ。キュウべぇのえこひいき?」
「…いや、邪魔だろ?」
「みんな、良く聞いて」マミッ!
マスケット銃を一本生成して構えつつ、魔法少女として本気になったマミが二人を諫める。
「ここには、複数の魔女が居る。しかも、反応から見て間違い無く強いわ」
二人は頷く。
「承知の助!」ヘンシン!
「変身!」サールティー ロイヤーリー♪
森を光が走り、数秒の後、信号機トリオが立っていた。
「それにしても、マミさんって一人だけBGM付きでずるいよぉ。キュウべぇのえこひいき?」
「…いや、邪魔だろ?」
「みんな、良く聞いて」マミッ!
マスケット銃を一本生成して構えつつ、魔法少女として本気になったマミが二人を諫める。
「ここには、複数の魔女が居る。しかも、反応から見て間違い無く強いわ」
二人は頷く。
747: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:10:39.67 ID:VoelHx2Lo
「私達三人でなら、とは思うけど…。一つだけ気がかりがあるの」
「ああ、なるほど」
「…もしかすると」
杏子がさやかの顔をちらりと見ると、さやかはやや萎縮して首を引っ込める。
「ええ。美樹さん、佐倉さん、ソウルジェムの状態とグリーフシードは?」
「あたしは…穢れは三分の一くらいか。グリーフシードは一個綺麗なのあるぜ」
「あたしは…ちょっとヤバイですね。グリーフシードはあと半分くらい…よりちょっと下か」
「美樹さん、前のグリーフシードは? 暁美さんにもらったもの」
「ええ、あの時既にけっこうやばかったんで、ちびちび使おうと思って…。で、最近魔女の谷間とでも言うのか、出現が少なかったんで…。でも、使い魔は見つけたら倒してたから…」
グリーフシードの為に効率的に動く真似はやはりできない、とその理念の差がグリーフシードのストックに現れていた。
「ああ、なるほど」
「…もしかすると」
杏子がさやかの顔をちらりと見ると、さやかはやや萎縮して首を引っ込める。
「ええ。美樹さん、佐倉さん、ソウルジェムの状態とグリーフシードは?」
「あたしは…穢れは三分の一くらいか。グリーフシードは一個綺麗なのあるぜ」
「あたしは…ちょっとヤバイですね。グリーフシードはあと半分くらい…よりちょっと下か」
「美樹さん、前のグリーフシードは? 暁美さんにもらったもの」
「ええ、あの時既にけっこうやばかったんで、ちびちび使おうと思って…。で、最近魔女の谷間とでも言うのか、出現が少なかったんで…。でも、使い魔は見つけたら倒してたから…」
グリーフシードの為に効率的に動く真似はやはりできない、とその理念の差がグリーフシードのストックに現れていた。
748: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:13:13.14 ID:VoelHx2Lo
「そう。私は…佐倉さんと同じ様なものね。ちょっと、厳しいかしら」
今複数の魔女と戦うとなると、さやかのコンディションが少々ネックだ。何より、相手がどのような魔女なのか分からないのが痛い。
暁美さんが居れば…。
マミは少し待てば良かったか、と行動を急いたことを後悔する。
その時、森の奥から何かが近づいてきた。
三人が咄嗟に円陣を組む。
それは、人より少し小さい程度の、輪郭のぼんやりしたもの。
木々に隠れてよく見えないが、ごく小型らしい。
だんだんと、輪郭が見え始め、色も見えてくる。
どうやら、近づいてくるそれは森には似つかわしくないピンクをしている色らしい。
今複数の魔女と戦うとなると、さやかのコンディションが少々ネックだ。何より、相手がどのような魔女なのか分からないのが痛い。
暁美さんが居れば…。
マミは少し待てば良かったか、と行動を急いたことを後悔する。
その時、森の奥から何かが近づいてきた。
三人が咄嗟に円陣を組む。
それは、人より少し小さい程度の、輪郭のぼんやりしたもの。
木々に隠れてよく見えないが、ごく小型らしい。
だんだんと、輪郭が見え始め、色も見えてくる。
どうやら、近づいてくるそれは森には似つかわしくないピンクをしている色らしい。
749: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:18:58.87 ID:VoelHx2Lo
「…使い魔?」
さやかが呟く。
「ちょっと待てよ。あたし達、まだ結界に入ってないんだぞ?」
「あっ?!」
さやかがそう言えば、と驚く。
「……」
マミが言葉を失っていた。
「マミさん?」
固まっているマミの視線の先を見る。
「…えっ?!」
さやかが呟く。
「ちょっと待てよ。あたし達、まだ結界に入ってないんだぞ?」
「あっ?!」
さやかがそう言えば、と驚く。
「……」
マミが言葉を失っていた。
「マミさん?」
固まっているマミの視線の先を見る。
「…えっ?!」
750: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:22:53.28 ID:VoelHx2Lo
さやかもそれを見て目を見張る。
視線の先、木々の間に見えたそれ。
近づいてきたそれ。
それは。
「…お菓子の魔女!?」
さやかが驚いて叫ぶ。
あの、魔女にしては見た目だけで言えば異様に愛くるしい姿は、見間違えようが無い。
だが、あの魔女はあの時ほむらが倒した。
「…あり得ない!」
「おい、さやか! 何だよ? 知り合いか? マミが固まってっぞ?!」
視線の先、木々の間に見えたそれ。
近づいてきたそれ。
それは。
「…お菓子の魔女!?」
さやかが驚いて叫ぶ。
あの、魔女にしては見た目だけで言えば異様に愛くるしい姿は、見間違えようが無い。
だが、あの魔女はあの時ほむらが倒した。
「…あり得ない!」
「おい、さやか! 何だよ? 知り合いか? マミが固まってっぞ?!」
752: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:27:32.81 ID:VoelHx2Lo
「嫌な思い出のね。…特に、マミさんにとって。ほら、杏子が見滝原に来た切っ掛け。それがあの魔女だよ」
「あんときの…そうか。にしても、どういう事だ? ほむらが倒したんだろ?」
「グリーフシードになったの…見たよ。間違い無い」
「しかも、結界の外だぜ」
「とにかく、色々おかしいよ! あたしには分かんないよ! なら、考えても無駄!」
さやかが剣を構える。魔女は倒す。それだけだ。
「…直球だな。一応賛成だけど」
杏子も仕方ない、と槍を構えた。
「ほむらがいたら、もうちょい冷静に考えるんだろうけど」
「悪かったね脳筋で! いないんだからしょうがないじゃん! マミさん!」
「あんときの…そうか。にしても、どういう事だ? ほむらが倒したんだろ?」
「グリーフシードになったの…見たよ。間違い無い」
「しかも、結界の外だぜ」
「とにかく、色々おかしいよ! あたしには分かんないよ! なら、考えても無駄!」
さやかが剣を構える。魔女は倒す。それだけだ。
「…直球だな。一応賛成だけど」
杏子も仕方ない、と槍を構えた。
「ほむらがいたら、もうちょい冷静に考えるんだろうけど」
「悪かったね脳筋で! いないんだからしょうがないじゃん! マミさん!」
753: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:32:17.59 ID:VoelHx2Lo
「え? あ、ええ! だ、大丈夫! 私だって二度もマミられかけたりしないから!」
トラウマになりかけた経験だったが、自分は乗り越えた。
みんなが居たから。
あんな失態はもう繰り返さない。自分の為、みんなの為に。
マミは深呼吸で手の震えを打ち消し、迷い無くマスケット銃を構える。
だが、お菓子の魔女、シャルロッテは、彼女達の事など気にしていないかのように周囲をきょろきょろと見回していた。
その様子だけを見れば、森で遊ぶ子供だ。
「…何なの?」
マミが途惑う。
使い魔ならいざ知らず、魔女が目の前に居る魔法少女を無視するなどあり得ない。
トラウマになりかけた経験だったが、自分は乗り越えた。
みんなが居たから。
あんな失態はもう繰り返さない。自分の為、みんなの為に。
マミは深呼吸で手の震えを打ち消し、迷い無くマスケット銃を構える。
だが、お菓子の魔女、シャルロッテは、彼女達の事など気にしていないかのように周囲をきょろきょろと見回していた。
その様子だけを見れば、森で遊ぶ子供だ。
「…何なの?」
マミが途惑う。
使い魔ならいざ知らず、魔女が目の前に居る魔法少女を無視するなどあり得ない。
754: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:36:26.78 ID:VoelHx2Lo
「イレギュラー要素が多すぎるわ」
「イレギュラーって言うとキュウべぇ思い出しますね」
「暁美さんがイレギュラーなのは、あの子にとってって言うだけよ」
「で、どうする? なんか、結界の外だと、いまいち目の前に魔女が居るって実感がねぇんだけどさ」
「油断は駄目よ。気配は増えているわ」
「…ですね」
「ああ、二つ…いや、四つくらいあるみたいだぞ」
匂いで分かるわけでもないが、杏子が鼻をひく、とさせて呟く。
「魔女が…一気に四人以上?」
もしも同時に襲われたら自分達は三人。一対一以下になる。
「イレギュラーって言うとキュウべぇ思い出しますね」
「暁美さんがイレギュラーなのは、あの子にとってって言うだけよ」
「で、どうする? なんか、結界の外だと、いまいち目の前に魔女が居るって実感がねぇんだけどさ」
「油断は駄目よ。気配は増えているわ」
「…ですね」
「ああ、二つ…いや、四つくらいあるみたいだぞ」
匂いで分かるわけでもないが、杏子が鼻をひく、とさせて呟く。
「魔女が…一気に四人以上?」
もしも同時に襲われたら自分達は三人。一対一以下になる。
755: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:39:58.26 ID:VoelHx2Lo
グリーフシードは少ない。
「ここ最近で、一番まずい状況かも知れないわね」
額に冷や汗がつたう。
腐葉土の地面に水滴が一つ、落下して音も無く弾けたその時。
木々の枝葉が生き物のように動き、突然花を開かせ、色とりどりの果実を実らせ、そして裂けるような口が開き、手足が生え、雨粒のように一斉に降ってきた。
三人は一瞬で戦闘態勢に入り、降りかかる口裂け果実をそれぞれの武器で払いのける。
マミがリボンで果実を払いのけながら出来るだけ一箇所に集め、そしてマスケット銃で撃つ。
杏子は槍を分解させ、伸縮自在の鞭のように振り回しながら、遠くはなぎ払い、近くは叩き落として応戦した。
さやかは、近接した果実は直接斬り、遠くの果実へは剣をブーメランのように飛ばして撃ち落とす。
三人は適度に距離を取りながら応戦を続けた。
「ここ最近で、一番まずい状況かも知れないわね」
額に冷や汗がつたう。
腐葉土の地面に水滴が一つ、落下して音も無く弾けたその時。
木々の枝葉が生き物のように動き、突然花を開かせ、色とりどりの果実を実らせ、そして裂けるような口が開き、手足が生え、雨粒のように一斉に降ってきた。
三人は一瞬で戦闘態勢に入り、降りかかる口裂け果実をそれぞれの武器で払いのける。
マミがリボンで果実を払いのけながら出来るだけ一箇所に集め、そしてマスケット銃で撃つ。
杏子は槍を分解させ、伸縮自在の鞭のように振り回しながら、遠くはなぎ払い、近くは叩き落として応戦した。
さやかは、近接した果実は直接斬り、遠くの果実へは剣をブーメランのように飛ばして撃ち落とす。
三人は適度に距離を取りながら応戦を続けた。
756: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:43:46.72 ID:VoelHx2Lo
口裂け果実は、雨あられと延々降り注ぐ。
「何だよこいつら! 斬ると果物っぽいいい匂いするし! って言うかうっとおしいっ!」
「くそ! 食い物粗末にすんな! 使い魔だけど!」
「言うまでも無いけどあまり暴れないでね! 量で来る時は、消耗が目的よ!」
「そうそう! いつの間にかソウルジェムが…って事、あるからな! 分かってるって!」
「えっ?」
さやかがはっとした顔で目を見開く。
「え?」
「え?」
二人がさやかを見た。
「何だよこいつら! 斬ると果物っぽいいい匂いするし! って言うかうっとおしいっ!」
「くそ! 食い物粗末にすんな! 使い魔だけど!」
「言うまでも無いけどあまり暴れないでね! 量で来る時は、消耗が目的よ!」
「そうそう! いつの間にかソウルジェムが…って事、あるからな! 分かってるって!」
「えっ?」
さやかがはっとした顔で目を見開く。
「え?」
「え?」
二人がさやかを見た。
757: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:47:07.16 ID:VoelHx2Lo
さやかが、顔面を蒼白にして頬を引きつらせている。
「…あたしって、ほんとバカ」
さやかがソウルジェムを見る。
それは、殆ど真っ黒に染まっていた。手持ちのグリーフシードでは浄化しきれない驚きの黒さに。
「さやかあああっ! グリーフシード使えええっ!」
杏子が駆け寄ろうとするが、使い魔が邪魔をする。
「くそぉっ! どけええええっ!」
「美樹さんっ! 今行くから!」
さやかが意識を失いかけた。
その時。
「…あたしって、ほんとバカ」
さやかがソウルジェムを見る。
それは、殆ど真っ黒に染まっていた。手持ちのグリーフシードでは浄化しきれない驚きの黒さに。
「さやかあああっ! グリーフシード使えええっ!」
杏子が駆け寄ろうとするが、使い魔が邪魔をする。
「くそぉっ! どけええええっ!」
「美樹さんっ! 今行くから!」
さやかが意識を失いかけた。
その時。
758: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:49:54.12 ID:VoelHx2Lo
森の奥から、更に何かが近づいてくる。
強力な、圧倒的な、濃密な気配が。
それだけで背筋が痺れ、息が止まりそうになる。
さやかも、杏子も、マミも。
「マミ…! こっ…この…気配は…!」
「嘘…でしょう…?!」
さやかも気を失いかけながら顔を上げる。
「…そんなぁ…」
その目を絶望で濁らせながら、夢うつつのように呟いた。
木々の間を通り抜け、じわじわと気配の主のシルエットが浮かび上がってくる。
強力な、圧倒的な、濃密な気配が。
それだけで背筋が痺れ、息が止まりそうになる。
さやかも、杏子も、マミも。
「マミ…! こっ…この…気配は…!」
「嘘…でしょう…?!」
さやかも気を失いかけながら顔を上げる。
「…そんなぁ…」
その目を絶望で濁らせながら、夢うつつのように呟いた。
木々の間を通り抜け、じわじわと気配の主のシルエットが浮かび上がってくる。
759: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/04(水) 23:53:48.59 ID:VoelHx2Lo
あの時見たものより、大きさこそ異なるが、見間違えようのないそれ。
音がする。
歯車の音が。
歯車をキリキリと軋ませながら、天地を逆さまにしてその身を浮かばせるその姿。
それは。
「嘘だろ…」
「そんな…」
杏子とさやかが呟く。
そしてマミも。
「…ワルプルギス」
「キャハッ」
音がする。
歯車の音が。
歯車をキリキリと軋ませながら、天地を逆さまにしてその身を浮かばせるその姿。
それは。
「嘘だろ…」
「そんな…」
杏子とさやかが呟く。
そしてマミも。
「…ワルプルギス」
「キャハッ」
770: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:06:44.69 ID:qlPAsFPEo
その姿は、あの時よりは随分小さい。
しかし聞き間違えようのないその笑い声が脳に突き刺さり、古傷を抉る。爪一つ触っていないのに、それだけで戦意すら喪失しそうになった。
マミも、杏子すらも。
いつの間にか使い魔は消えている。
代わりに視界に居るのは、魔女達だけ。
その数、六人。
シャルロッテ、人魚のような魔女、馬に乗った姿の魔女、ドレス姿のような魔女、細い人型の黒い魔女。
そして、ワルプルギスの夜。
三人は、もう声を出すことも出来なかった。
(…それはともかく、あの人魚)
しかし聞き間違えようのないその笑い声が脳に突き刺さり、古傷を抉る。爪一つ触っていないのに、それだけで戦意すら喪失しそうになった。
マミも、杏子すらも。
いつの間にか使い魔は消えている。
代わりに視界に居るのは、魔女達だけ。
その数、六人。
シャルロッテ、人魚のような魔女、馬に乗った姿の魔女、ドレス姿のような魔女、細い人型の黒い魔女。
そして、ワルプルギスの夜。
三人は、もう声を出すことも出来なかった。
(…それはともかく、あの人魚)
771: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:18:58.35 ID:qlPAsFPEo
(あの馬に乗ってる蝋燭頭…なんで…)
(あのドレス姿…どうして妙に既視感があるの…?)
半ば現実逃避的な事を考えていたとき、ワルプルギスの夜が、ゆっくりとこちらへ向かってきた。
杏子は思わず槍を落とし、マミが膝を折ってうな垂れる。
もう、私達は…。
あれだけ生きようと頑張っていた三人が、目を瞑った。
その時。
「やめなさいっ!」
声が響いた。
黒い羽を羽ばたかせ、空から三人の希望が舞い降りる。
(あのドレス姿…どうして妙に既視感があるの…?)
半ば現実逃避的な事を考えていたとき、ワルプルギスの夜が、ゆっくりとこちらへ向かってきた。
杏子は思わず槍を落とし、マミが膝を折ってうな垂れる。
もう、私達は…。
あれだけ生きようと頑張っていた三人が、目を瞑った。
その時。
「やめなさいっ!」
声が響いた。
黒い羽を羽ばたかせ、空から三人の希望が舞い降りる。
772: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:22:10.28 ID:qlPAsFPEo
「ほむらぁっ!」
「ほむらっ!」
「暁美さんっ!」
地面に降り立ったほむらは背中の黒い羽を雪のように散らしながら消し、黒髪が、遅れてゆっくりと流れ落ちる。
ワルプルギスの前に立ったほむらは、両手を広げた。
まるで、自分をバリケードとするかのように。
「ほむらっ! やめろ! 無理するな!」
「暁美さん! 無茶しないで!」
「ほむらぁ! やめてっ!」
いつの日かの、自らの体をなげうって皆を守ろうとした、あの時のほむらの姿が重なる。
「ほむらっ!」
「暁美さんっ!」
地面に降り立ったほむらは背中の黒い羽を雪のように散らしながら消し、黒髪が、遅れてゆっくりと流れ落ちる。
ワルプルギスの前に立ったほむらは、両手を広げた。
まるで、自分をバリケードとするかのように。
「ほむらっ! やめろ! 無理するな!」
「暁美さん! 無茶しないで!」
「ほむらぁ! やめてっ!」
いつの日かの、自らの体をなげうって皆を守ろうとした、あの時のほむらの姿が重なる。
773: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:30:47.15 ID:qlPAsFPEo
ほむらは自分達を守ろうとしている。
自分達だって同じだ。
三人が立ち上がろうとした。
その時。
ほむらが片手でぽん、とスカートを押して、ワルプルギスの逆さまの姿を正しく戻した。
本来なら最悪、最凶のモードである。
三人の顔が恐怖に歪む。
だが。
「プルプル、めっ」
ほむらは両手でそのままワルプルギスを抱きしめ、だめよ、とおでこをぺち、と叩いた。
自分達だって同じだ。
三人が立ち上がろうとした。
その時。
ほむらが片手でぽん、とスカートを押して、ワルプルギスの逆さまの姿を正しく戻した。
本来なら最悪、最凶のモードである。
三人の顔が恐怖に歪む。
だが。
「プルプル、めっ」
ほむらは両手でそのままワルプルギスを抱きしめ、だめよ、とおでこをぺち、と叩いた。
774: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:34:21.17 ID:qlPAsFPEo
「きゃは」
ワルプルギスは、猫のようにするりとほむらから離れ、くるくると周囲を舞うように回る。
先程のシャルロッテと同じく、森で遊んでいる子供のように。
ほむらの表情には恐怖も絶望も見えない。
それはまるで子を見守る母にも見えていた。
「…プルプル…?」
マミが呆然と呟く。
「さやか」
「…何?」
杏子がさやかに問う。
ワルプルギスは、猫のようにするりとほむらから離れ、くるくると周囲を舞うように回る。
先程のシャルロッテと同じく、森で遊んでいる子供のように。
ほむらの表情には恐怖も絶望も見えない。
それはまるで子を見守る母にも見えていた。
「…プルプル…?」
マミが呆然と呟く。
「さやか」
「…何?」
杏子がさやかに問う。
775: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:36:56.86 ID:qlPAsFPEo
「あたし達って、もしかしてもう死んでたっけ?」
「…分かんない」
「大丈夫。死んでないわ。三人ともね」
振り返ったほむらが優しく呟いた。
「…ほむら、一体、何がどうなってるわけ?」
「話は後よ。まずはさやか、こんどこそちゃんと綺麗に浄化しなさい。まずは変身を解いて」
「…魔女、居るんだけど?」
「大丈夫よ。私も解くから、マミも杏子も言う事を聞いて。私を…信じて。魔法少女が居ると、この子達がやんちゃしちゃうの」
「…え、ええ」
「…ああ。って、この子ぉ?」
「…分かんない」
「大丈夫。死んでないわ。三人ともね」
振り返ったほむらが優しく呟いた。
「…ほむら、一体、何がどうなってるわけ?」
「話は後よ。まずはさやか、こんどこそちゃんと綺麗に浄化しなさい。まずは変身を解いて」
「…魔女、居るんだけど?」
「大丈夫よ。私も解くから、マミも杏子も言う事を聞いて。私を…信じて。魔法少女が居ると、この子達がやんちゃしちゃうの」
「…え、ええ」
「…ああ。って、この子ぉ?」
776: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:39:48.79 ID:qlPAsFPEo
訳が分からないまま、皆が変身を解く。
「さぁ、さやか」
ほむらはスカートのポケットからグリーフシードを二つ取りだし、さやかのソウルジェムに近づけた。
「ふわー…。生き返るぅ…」
ソウルジェムの穢れが久し振りに完全に取り除かれたさやかは、満面の笑みで微笑んだ。
「やれやれ。九死に一生とは正にこの事だぜ」
「ごめんなさい、あの時、もっと渡したかったのだけど…。そうだ、貴女達も危ないわ。これを使って」
ほむらが詫びながら、マミと杏子にも真新しいグリーフシードを二つずつ渡した。
二人は、正直有り難い、と素直に受け取る。
「暁美さん、いつの間にストックを?」
「さぁ、さやか」
ほむらはスカートのポケットからグリーフシードを二つ取りだし、さやかのソウルジェムに近づけた。
「ふわー…。生き返るぅ…」
ソウルジェムの穢れが久し振りに完全に取り除かれたさやかは、満面の笑みで微笑んだ。
「やれやれ。九死に一生とは正にこの事だぜ」
「ごめんなさい、あの時、もっと渡したかったのだけど…。そうだ、貴女達も危ないわ。これを使って」
ほむらが詫びながら、マミと杏子にも真新しいグリーフシードを二つずつ渡した。
二人は、正直有り難い、と素直に受け取る。
「暁美さん、いつの間にストックを?」
777: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:42:57.35 ID:qlPAsFPEo
「それに、このグリーフシード、なんか模様がおんなじだぜ? それって…」
「今は、とりあえず後にさせて。さやか、ごめんね」
「ううん、ほむらのせいじゃないよ。グリーフシード、ありがとう。それより…あたしも聞きたいことがあるんだけど」
さやかがほむらの顔を見る。
至って真面目な瞳で。
ほむらがマミと杏子の顔を見ると、二人も同じだった。
「聞きたいことは…分かっているわ。ただ、順番は決めさせて欲しいから、一度移動しましょう」
「それはいいけど…アレは?」
さやかが魔女達を見る。
「そうね。今日はそろそろ潮時だわ」
「今は、とりあえず後にさせて。さやか、ごめんね」
「ううん、ほむらのせいじゃないよ。グリーフシード、ありがとう。それより…あたしも聞きたいことがあるんだけど」
さやかがほむらの顔を見る。
至って真面目な瞳で。
ほむらがマミと杏子の顔を見ると、二人も同じだった。
「聞きたいことは…分かっているわ。ただ、順番は決めさせて欲しいから、一度移動しましょう」
「それはいいけど…アレは?」
さやかが魔女達を見る。
「そうね。今日はそろそろ潮時だわ」
778: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:50:49.38 ID:qlPAsFPEo
ほむらがもう一度変身する。
そして。
「戻りなさい! プルプル、シャル、オタ、リア、ロロ、リム」
ポケモ○トレーナーのようなかけ声と共に、魔女達はほむらの盾の中に吸い込まれるように消えていく。
「……」
その光景を目の当たりにした三人は、改めて絶句していた。
(なんか、名前にも…)
(なんでか…既知感が…)
(あるのは…なぜかしら?)
「で、魔女の反応は…消えたな」
そして。
「戻りなさい! プルプル、シャル、オタ、リア、ロロ、リム」
ポケモ○トレーナーのようなかけ声と共に、魔女達はほむらの盾の中に吸い込まれるように消えていく。
「……」
その光景を目の当たりにした三人は、改めて絶句していた。
(なんか、名前にも…)
(なんでか…既知感が…)
(あるのは…なぜかしら?)
「で、魔女の反応は…消えたな」
779: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:54:59.99 ID:qlPAsFPEo
杏子が周囲を見渡して言う。
「ええ」
「やっぱり、今ほむらの盾に入っていったのの気配だったんだね」
「…色々あったの。隠していて、ごめんなさい」
うつむくほむらは、消え入りそうな声で小さく呟いた。
「ほむら、教えてよ。ほむらが何かを抱えているの、分かってるよ。一人で悩まないでさ…。あたし達、仲間だよ。親友だよ」
さやかはほむらをそっと抱きしめた。
「ありがとう…」
ほむらも抱きしめ返す。
「暁美さん。後でみんな話してくれるのだと思うけど…。一つだけ」
「ええ」
「やっぱり、今ほむらの盾に入っていったのの気配だったんだね」
「…色々あったの。隠していて、ごめんなさい」
うつむくほむらは、消え入りそうな声で小さく呟いた。
「ほむら、教えてよ。ほむらが何かを抱えているの、分かってるよ。一人で悩まないでさ…。あたし達、仲間だよ。親友だよ」
さやかはほむらをそっと抱きしめた。
「ありがとう…」
ほむらも抱きしめ返す。
「暁美さん。後でみんな話してくれるのだと思うけど…。一つだけ」
780: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/11(水) 23:57:43.46 ID:qlPAsFPEo
「…何?」
「さっきの魔女達は…貴方がグリーフシードから孵化させたの? わざと」
「…そうよ」
マミはその言葉に激高するでもなく、ただ一つだけ溜息をついた。
「…ひっぱたかれるくらいは覚悟していたのだけど」
「前の私なら、ひっぱたくどころか発狂していたかもね」
マミが自嘲気味に笑う。
「今は、貴女を、みんなを、自分を信じられるから…。だから、いいの」
「マミ…」
ほむらは心の底からの笑顔で呟いた。
「さっきの魔女達は…貴方がグリーフシードから孵化させたの? わざと」
「…そうよ」
マミはその言葉に激高するでもなく、ただ一つだけ溜息をついた。
「…ひっぱたかれるくらいは覚悟していたのだけど」
「前の私なら、ひっぱたくどころか発狂していたかもね」
マミが自嘲気味に笑う。
「今は、貴女を、みんなを、自分を信じられるから…。だから、いいの」
「マミ…」
ほむらは心の底からの笑顔で呟いた。
792: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 20:56:01.25 ID:BAlWuoC7o
その後、みんながほむらの部屋に集う。
「…さて、隠す気は無いけど、色々あるからどこから話そうかしら」
口を開いたほむらをみて、皆の顔が真面目になる。
「…あのね、私はね、前にも言ったけど、何度も一定の期間を繰り返して来たの」
ほむらの言葉に三人が頷く。
「私達は、インキュベーターの構築したシステムに囚われたまま。脱却できた訳じゃない。魔法少女が魔女になる現実は、何一つ変わっていない」
「…ええ」
「それはもう、今は承知の上だろ?」
「そうね。でも、これから魔法少女になる子も現れる。何よりこの事実を知っているのはほんの一握り」
「…だよなぁ」
「…さて、隠す気は無いけど、色々あるからどこから話そうかしら」
口を開いたほむらをみて、皆の顔が真面目になる。
「…あのね、私はね、前にも言ったけど、何度も一定の期間を繰り返して来たの」
ほむらの言葉に三人が頷く。
「私達は、インキュベーターの構築したシステムに囚われたまま。脱却できた訳じゃない。魔法少女が魔女になる現実は、何一つ変わっていない」
「…ええ」
「それはもう、今は承知の上だろ?」
「そうね。でも、これから魔法少女になる子も現れる。何よりこの事実を知っているのはほんの一握り」
「…だよなぁ」
793: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 20:59:25.20 ID:BAlWuoC7o
「私ね、こう見えて諦めが悪いの」
(…あんだけ時間逆行してんだから知ってるっていったら…)
(きっと傷つくから言わないでおきましょう)
(だな)
「…今、何か不本意な空気を感じたのだけど?」
「気にすんな! で?」
「…でね、その中で考えた事があるの。…魔女になったら、もう、どうしても意思の疎通は出来ないの? って」
「…それは…私も、事実を知ったときは考えたわ」
「て言うか、事実を知った魔法少女は必ず一回は考えるんじゃねぇか?」
「…あたしも考えた事あるよ。うん。…でも、駄目だって、思った。何より、あたしが…駄目だったんでしょ?」
(…あんだけ時間逆行してんだから知ってるっていったら…)
(きっと傷つくから言わないでおきましょう)
(だな)
「…今、何か不本意な空気を感じたのだけど?」
「気にすんな! で?」
「…でね、その中で考えた事があるの。…魔女になったら、もう、どうしても意思の疎通は出来ないの? って」
「…それは…私も、事実を知ったときは考えたわ」
「て言うか、事実を知った魔法少女は必ず一回は考えるんじゃねぇか?」
「…あたしも考えた事あるよ。うん。…でも、駄目だって、思った。何より、あたしが…駄目だったんでしょ?」
794: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:02:50.41 ID:BAlWuoC7o
「そうね。それが当然。でもね、でも、それでも私は考え続けたの。その中でも、何か特例はないの? 何かないの? また、あの時みたいに仲良くなれないのって…」
「ほむら、あんた、やっぱり優しいんだな。裏切られたり憎まれたりした事もあったのに、それでも、なんて…」
「これもぶっちゃけると、いつの時間軸でもさやかが一番魔女になりやすいから考えるようになったの」
「重ね重ねほんとうにごめんなさいいいっ!」
「いいのよ。それも含めてもう貴女なんだって思えるようになってきたから」
ほむらがさやかの頭をよしよし、と撫でる。
「ふわぁ、このなでなでが最近くせになりつつありゅう…」
「…それで、魔女になったとしても、何とか戦わずに済む方法をって?」
マミが問いかけ、ほむらは頷いた。
「…でも、これは本当に自分勝手な思いよ。結局、せめて身近な人だけでもっていう、それだけの話。他の時間軸で何度やっても駄目だった。何度やっても」
「ほむら、あんた、やっぱり優しいんだな。裏切られたり憎まれたりした事もあったのに、それでも、なんて…」
「これもぶっちゃけると、いつの時間軸でもさやかが一番魔女になりやすいから考えるようになったの」
「重ね重ねほんとうにごめんなさいいいっ!」
「いいのよ。それも含めてもう貴女なんだって思えるようになってきたから」
ほむらがさやかの頭をよしよし、と撫でる。
「ふわぁ、このなでなでが最近くせになりつつありゅう…」
「…それで、魔女になったとしても、何とか戦わずに済む方法をって?」
マミが問いかけ、ほむらは頷いた。
「…でも、これは本当に自分勝手な思いよ。結局、せめて身近な人だけでもっていう、それだけの話。他の時間軸で何度やっても駄目だった。何度やっても」
795: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:05:53.88 ID:BAlWuoC7o
ほむらが唇を噛む。
「でも、今回は違った。みんな生き残って…。こんな事始めてだった。だから、希望が大きかった。でも…その分不安も大きかったの」
「望みが叶ったのに、尚も不安に駆られるなんて、ほむらってほんと苦労性だよな」
「…でも、杏子には何度もその苦悩から助けられた事もあるのよ」
ほむらが微笑む。
「んなの、あたしの知らないあたしだろ」
「あら、今の杏子にだってそうよ? 救われたわ、本当に」
「…からかうなよ」
悪戯っぽく笑うほむらをみて、杏子は思わず顔を背けた。
「でも、今回の私は恵まれていた。ぶっちゃけ、最初にもらうモンスターボールにミュウツーとパルキアとゼクロムが入っていて全部ゲットできたような状態でしょ、今」
「でも、今回は違った。みんな生き残って…。こんな事始めてだった。だから、希望が大きかった。でも…その分不安も大きかったの」
「望みが叶ったのに、尚も不安に駆られるなんて、ほむらってほんと苦労性だよな」
「…でも、杏子には何度もその苦悩から助けられた事もあるのよ」
ほむらが微笑む。
「んなの、あたしの知らないあたしだろ」
「あら、今の杏子にだってそうよ? 救われたわ、本当に」
「…からかうなよ」
悪戯っぽく笑うほむらをみて、杏子は思わず顔を背けた。
「でも、今回の私は恵まれていた。ぶっちゃけ、最初にもらうモンスターボールにミュウツーとパルキアとゼクロムが入っていて全部ゲットできたような状態でしょ、今」
796: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:09:22.11 ID:BAlWuoC7o
「あながち言い過ぎじゃないのが怖いわ」
「だから、なら、と思って今の状態に甘えるだけ甘えて、やれるだけの事をやってみたの」
「…それが、今回の事?」
「ええ」
「ほむら。…つまり、出来たんだな?」
「暁美さんが、今盾に入れているのは…やっぱり本当の魔女なのね」
「…話してくれよ。全部」
「あ、そうだ。ほむら、この前、マクドの看板の上に立っていたときも…やっぱり、そうだったの?」
「ああ…。さやかには見られていたんだったわね」
「あの時は、何していたの?」
「だから、なら、と思って今の状態に甘えるだけ甘えて、やれるだけの事をやってみたの」
「…それが、今回の事?」
「ええ」
「ほむら。…つまり、出来たんだな?」
「暁美さんが、今盾に入れているのは…やっぱり本当の魔女なのね」
「…話してくれよ。全部」
「あ、そうだ。ほむら、この前、マクドの看板の上に立っていたときも…やっぱり、そうだったの?」
「ああ…。さやかには見られていたんだったわね」
「あの時は、何していたの?」
797: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:15:05.64 ID:BAlWuoC7o
「…笑わない? と言うか、変だって思わない?」
「笑わないよ。知りたいんだよ」
「…散歩」
「はい?」
「犬みたいな子が居るの。で、時々外に出ないと、退屈で鳴いちゃうの。それで、盾からちょっとだけ出して、散歩してたのよ」
「ああー…。それであの時、ちょっとだけ魔女の気配が…。犬?」
「犬、と言うより馬だけど」
「…もしかして、さっき居た馬に乗っていたみたいな魔女か?」
「そう、落ち着きのない子なのよ」
ほむらが杏子を見てくすりと笑う。
「笑わないよ。知りたいんだよ」
「…散歩」
「はい?」
「犬みたいな子が居るの。で、時々外に出ないと、退屈で鳴いちゃうの。それで、盾からちょっとだけ出して、散歩してたのよ」
「ああー…。それであの時、ちょっとだけ魔女の気配が…。犬?」
「犬、と言うより馬だけど」
「…もしかして、さっき居た馬に乗っていたみたいな魔女か?」
「そう、落ち着きのない子なのよ」
ほむらが杏子を見てくすりと笑う。
798: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:18:31.95 ID:BAlWuoC7o
「なんであたしを見る?」
「さぁ? それより、これ…。分かるわよね?」
ほむらが盾からグリーフシードを一つ取りだし、みんなの前に置いた。
「勿論。グリーフシードよね? …ん? これって…」
「そう。そしてこれが…私が考えを本気で実行しようと考えるようになった切っ掛け」
「…これ…まさか…」
「…マミ。これは、ワルプルギスの夜のグリーフシードよ」
「ええっ!?」
「えっ?! あ、ほんとだ! この模様って! ちょっと! これ、まだあったの!?」
「おいおい! お前、せっかくあの時代表してって事で譲ってやったグリーフシード、ずっととっておいたのかよ?」
「さぁ? それより、これ…。分かるわよね?」
ほむらが盾からグリーフシードを一つ取りだし、みんなの前に置いた。
「勿論。グリーフシードよね? …ん? これって…」
「そう。そしてこれが…私が考えを本気で実行しようと考えるようになった切っ掛け」
「…これ…まさか…」
「…マミ。これは、ワルプルギスの夜のグリーフシードよ」
「ええっ!?」
「えっ?! あ、ほんとだ! この模様って! ちょっと! これ、まだあったの!?」
「おいおい! お前、せっかくあの時代表してって事で譲ってやったグリーフシード、ずっととっておいたのかよ?」
799: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:20:41.85 ID:BAlWuoC7o
「ええ。これは紛れもなく、あの時みんなが私に譲ってくれたものよ。私は、このグリーフシードをあの後どうしても使う気になれなくって…。そんな時、思ったの」
「じゃあ、さっきのはやっぱり本当に…」
ほむらがグリーフシードを手に持ち、優しく、そっと撫でる。
「ええ。見て」
ほむらがグリーフシードにそっと念を込める。グリーフシードは小さく光り、そして、その頂上から幻灯のようにふわりと、小さなちいさなワルプルギスの夜が現れた。
「…うわぁ」
「さ、さっきよりもっと、ち、ちっちゃいけど…やっぱり、ワルプルギスの夜…よね?」
「ああ、ちげぇねぇぜ…!」
ワルプルギスの夜は、RPGの弾頭くらいの大きさで実体化し、周囲をみて少し驚いたように身を縮めた。
「大丈夫よ。みんな怖くないわ」
「じゃあ、さっきのはやっぱり本当に…」
ほむらがグリーフシードを手に持ち、優しく、そっと撫でる。
「ええ。見て」
ほむらがグリーフシードにそっと念を込める。グリーフシードは小さく光り、そして、その頂上から幻灯のようにふわりと、小さなちいさなワルプルギスの夜が現れた。
「…うわぁ」
「さ、さっきよりもっと、ち、ちっちゃいけど…やっぱり、ワルプルギスの夜…よね?」
「ああ、ちげぇねぇぜ…!」
ワルプルギスの夜は、RPGの弾頭くらいの大きさで実体化し、周囲をみて少し驚いたように身を縮めた。
「大丈夫よ。みんな怖くないわ」
800: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:22:35.81 ID:BAlWuoC7o
ほむらがそっと頭を撫でると、ワルプルギスの夜は安心したのか、机の上をふわふわと浮きながら踊り始めた。時折、逆立ちを織り交ぜながら。
「…飼い慣らしてんな。ほむら」
「ち、ちょっとだけ…可愛い…か、な?」
「魔女が…よりによって超弩級の魔女が…こんなになっちゃうなんて…」
「害…無いの?」
「ええ。魔女が元は魔法少女であり、更に元は人間であるのだから、意思疎通が完全に断ち切られているとは思えなかった。ただ、その手段が問題だった。どうすればわかり合えるのって。ね、プルプル」
ワルプルギスの夜、プルプルはほむらの差しだした指に頬摺りして上機嫌に見える。
「恥ずかしい話だけど、ワルプルギスを倒して、だからこそ絶望していた私に…いつだったか、グリーフシードのままのワルプルギスが話しかけてきた事があった」
「えっ?!」
さやかが目を丸くする。
「…飼い慣らしてんな。ほむら」
「ち、ちょっとだけ…可愛い…か、な?」
「魔女が…よりによって超弩級の魔女が…こんなになっちゃうなんて…」
「害…無いの?」
「ええ。魔女が元は魔法少女であり、更に元は人間であるのだから、意思疎通が完全に断ち切られているとは思えなかった。ただ、その手段が問題だった。どうすればわかり合えるのって。ね、プルプル」
ワルプルギスの夜、プルプルはほむらの差しだした指に頬摺りして上機嫌に見える。
「恥ずかしい話だけど、ワルプルギスを倒して、だからこそ絶望していた私に…いつだったか、グリーフシードのままのワルプルギスが話しかけてきた事があった」
「えっ?!」
さやかが目を丸くする。
801: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:25:11.26 ID:BAlWuoC7o
「言葉は分からなかった。でも…気持ちは、感情は、伝わって来た気がした。痛いほどに。そして、ふと気が付いたら、私はプルプルをグリーフシードから…。きっと、あの時の私は、心が魔女に近かったからかも知れない」
「…で、ど、どうなったの?」
「その先の事は、良く覚えていないの。ただ、気が付いたら満身創痍で夕焼けの海岸に横たわっていて、手にはグリーフシードを握り締めていた。心が、とても晴れ晴れしていたのを覚えている」
「こんな時どんな顔をすればいいのか分からないわ」
「笑えばいいと思うぜ」
「そして、言葉は分からなくても、意思は通じるようになった。それからよ。他のグリーフシードでもそれが出来るようになったのは。こんな風に、魔女と戦わずに通じ合えるようになったのは。私は、魔法少女であり魔女になっていたのかもしれない」
「…あの、ほむら、魔女は、その、今の状態の魔女は…何か問題は無いの?」
「最初にそれを心配したけど、特に無いみたい。一緒に戦ってくれすらするし、グリーフシードが自分の魔翌力消費で黒ずむけど、ソウルジェムの力を吸わせると回復するの」
「逆かよ。ってか、お前自分のソウルジェム大丈夫か? 今ここに六人も居るんだぜ?」
「…私は、大丈夫だから」
「…で、ど、どうなったの?」
「その先の事は、良く覚えていないの。ただ、気が付いたら満身創痍で夕焼けの海岸に横たわっていて、手にはグリーフシードを握り締めていた。心が、とても晴れ晴れしていたのを覚えている」
「こんな時どんな顔をすればいいのか分からないわ」
「笑えばいいと思うぜ」
「そして、言葉は分からなくても、意思は通じるようになった。それからよ。他のグリーフシードでもそれが出来るようになったのは。こんな風に、魔女と戦わずに通じ合えるようになったのは。私は、魔法少女であり魔女になっていたのかもしれない」
「…あの、ほむら、魔女は、その、今の状態の魔女は…何か問題は無いの?」
「最初にそれを心配したけど、特に無いみたい。一緒に戦ってくれすらするし、グリーフシードが自分の魔翌力消費で黒ずむけど、ソウルジェムの力を吸わせると回復するの」
「逆かよ。ってか、お前自分のソウルジェム大丈夫か? 今ここに六人も居るんだぜ?」
「…私は、大丈夫だから」
802: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:27:38.42 ID:BAlWuoC7o
「ああ、ほむらはそうだったな」
ピンクの悪魔を思いだし、三人が頷き合う。
「マミ、さやか、杏子。私のしている事は…今はただの偶然から生まれた自己満足。でも、これが、将来的には魔女は只倒すだけの存在じゃなくなればいい、その切っ掛けになればと思っているの」
「魔女に使い魔ならぬ、魔法少女に魔女のパートナーってか」
杏子が、考えが追いつかないぜ、と溜息をつく。
「そして、他の時間軸で手にれて、でも使う事が出来なかった、思い入れの強いグリーフシードでも、試したの。何度もね。そして…成功した」
ほむらが三人の魔女を出現させる。
「オクタヴィア、オフィーリア、キャンディロロ。みんな、大切な…友達よ」
ほむらが三人を抱き寄せ、愛おしそうに呟いた。
(…なにかしら)
ピンクの悪魔を思いだし、三人が頷き合う。
「マミ、さやか、杏子。私のしている事は…今はただの偶然から生まれた自己満足。でも、これが、将来的には魔女は只倒すだけの存在じゃなくなればいい、その切っ掛けになればと思っているの」
「魔女に使い魔ならぬ、魔法少女に魔女のパートナーってか」
杏子が、考えが追いつかないぜ、と溜息をつく。
「そして、他の時間軸で手にれて、でも使う事が出来なかった、思い入れの強いグリーフシードでも、試したの。何度もね。そして…成功した」
ほむらが三人の魔女を出現させる。
「オクタヴィア、オフィーリア、キャンディロロ。みんな、大切な…友達よ」
ほむらが三人を抱き寄せ、愛おしそうに呟いた。
(…なにかしら)
803: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:30:40.78 ID:BAlWuoC7o
(よく分からないけど…)
(あたし達がむず痒いのは何でだ?)
「成る程ぉ」
さやかがオタをつついて感慨深げに呟く。
「あた! こら! 変な車輪出してつつくな!」
「ふふ。その子はかんしゃく持ちな所があるから気をつけて」
「でも、なんだかこいつらを見てあたしも安心したぜ」
「ん? 何が? 杏子」
「あたしらだって、いつかはおっ死ぬか魔女になる。でも、その時が来ても、こいつらみたいになれたとしたら…まぁ、その可能性があるのなら、いいじゃんって思ってさ」
「そうね。佐倉さんの言うとおりだわ。その時が来ても…絶望のままでは、終わらないって思えれば、希望が…失われなければ」
(あたし達がむず痒いのは何でだ?)
「成る程ぉ」
さやかがオタをつついて感慨深げに呟く。
「あた! こら! 変な車輪出してつつくな!」
「ふふ。その子はかんしゃく持ちな所があるから気をつけて」
「でも、なんだかこいつらを見てあたしも安心したぜ」
「ん? 何が? 杏子」
「あたしらだって、いつかはおっ死ぬか魔女になる。でも、その時が来ても、こいつらみたいになれたとしたら…まぁ、その可能性があるのなら、いいじゃんって思ってさ」
「そうね。佐倉さんの言うとおりだわ。その時が来ても…絶望のままでは、終わらないって思えれば、希望が…失われなければ」
804: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:33:33.66 ID:BAlWuoC7o
「マミさん…うん、そうですよね。ほむら、ありがとう。あたし、本当はずっと魔女になる事、怖くて仕方なかった。でも…今は、まぁ確率的にあの子たちみたいになるのは難しいとは言っても、ゼロじゃないって思えるから…怖さは、全然減ったよ」
「…その笑顔がみられれば、そう思ってもらえれば、私はそれで満足よ」
「魔女化は宿命だもんね。ほむら、もしもの時は、よろしく」
「暁美さん、私もね」
「あたしもだぜ、ほむら!」
「ふふ。任せて。勿論、まずは魔女化しないようにね。三人一度にはモンスターボールには入れられないわ」
みんなが笑った。心から。
少しの間の談笑の後、みなが帰る。
魔女達を前にほむらは、ほう、と一安心の溜息をついた。
「…まどか、ありがとう」
「…その笑顔がみられれば、そう思ってもらえれば、私はそれで満足よ」
「魔女化は宿命だもんね。ほむら、もしもの時は、よろしく」
「暁美さん、私もね」
「あたしもだぜ、ほむら!」
「ふふ。任せて。勿論、まずは魔女化しないようにね。三人一度にはモンスターボールには入れられないわ」
みんなが笑った。心から。
少しの間の談笑の後、みなが帰る。
魔女達を前にほむらは、ほう、と一安心の溜息をついた。
「…まどか、ありがとう」
805: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:35:39.87 ID:BAlWuoC7o
「ウェヒー」
その声と共に、盾の中からクリームヒルトが現れ、そしてピンクの煙と共にまどかの姿になった。
「ほむらちゃん、みんなが納得してくれて、良かったね」
まどかがほむらをそっと抱きしめる。
「うん…まどかのお陰だわ」
「ううん。ほむらちゃんの頑張りの結果だよ」
「そんな事、ない。だって、本当は、最初に孵化させてしまったワルプルギスを大人しくしたのは貴女だもの」
「ウェヒ。ほむらちゃんがピーンチっ! って直感が走って、慌てて気配のする方向に走っていったら、ほむらちゃんとプルプルががっぷりよつで踏ん張りながら何か叫んでいたからびっくりしちゃった」
「…人に見られなくて本当に良かったわ。夕日の海岸で魔女と大相撲している姿なんて…」
「で、その直後、プルプルがほむらちゃんに足払いから馬乗りになって…」
その声と共に、盾の中からクリームヒルトが現れ、そしてピンクの煙と共にまどかの姿になった。
「ほむらちゃん、みんなが納得してくれて、良かったね」
まどかがほむらをそっと抱きしめる。
「うん…まどかのお陰だわ」
「ううん。ほむらちゃんの頑張りの結果だよ」
「そんな事、ない。だって、本当は、最初に孵化させてしまったワルプルギスを大人しくしたのは貴女だもの」
「ウェヒ。ほむらちゃんがピーンチっ! って直感が走って、慌てて気配のする方向に走っていったら、ほむらちゃんとプルプルががっぷりよつで踏ん張りながら何か叫んでいたからびっくりしちゃった」
「…人に見られなくて本当に良かったわ。夕日の海岸で魔女と大相撲している姿なんて…」
「で、その直後、プルプルがほむらちゃんに足払いから馬乗りになって…」
806: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:37:32.03 ID:BAlWuoC7o
「え、ええ」
「ほむらちゃんに乗っていいのは私だけなのに。だから、なんかぷつんってなって」
「え、ええ…」
「で、私がやめてーって叫んだら、プルプル、気持ちが通じて、大人しくなってくれたんだよね?」
「…そ、そうね」
(…本当は、まどかがゴルアアアアッ! って叫びながら、何か真っ赤なアーマーを両腕に纏ってラリアットしてマウントからボコ殴りで轟沈させたんだけど)
「ん?」
「ナンデモナイワ」
「ウェヒ」
「でも…あの後、私、本気で自分の頭がおかしくなったのかと思った。まどかがクリームヒルトの姿になってワルプルギスを正座させて説教していたんだから」
「ほむらちゃんに乗っていいのは私だけなのに。だから、なんかぷつんってなって」
「え、ええ…」
「で、私がやめてーって叫んだら、プルプル、気持ちが通じて、大人しくなってくれたんだよね?」
「…そ、そうね」
(…本当は、まどかがゴルアアアアッ! って叫びながら、何か真っ赤なアーマーを両腕に纏ってラリアットしてマウントからボコ殴りで轟沈させたんだけど)
「ん?」
「ナンデモナイワ」
「ウェヒ」
「でも…あの後、私、本気で自分の頭がおかしくなったのかと思った。まどかがクリームヒルトの姿になってワルプルギスを正座させて説教していたんだから」
807: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:41:06.37 ID:BAlWuoC7o
「ほむらちゃん、人はね、どんな聖人だって心に悪魔を宿しているんだよ。私、ほむらちゃんに危害を加える人がいるなら、いつだって魔女になるよ?」
「…それを実戦できたのは世界で貴女一人でしょうね。でも、おかげで、みんなが魔女になる事は怖いだけじゃない、絶望だけじゃないって、思ってくれた。まどか、ありがとう…」
「私はほむらちゃんの喜ぶ事が出来ればいいんだよ。お礼なんていいの」
「でも…。それでも、まどか、ありがとう」
(そして、もう一人の『まどか』も…)
「ねぇ、ほむらちゃん」
「何?」
「お礼を言ってくれるよりも…もう、みんなにあげるグリーフシードは、『ホムリリー』ちゃんを増やして作るのはやめてほしいな」
「…でも、私に出来るのは…」
「いつかの時間軸で、何かぶれがあって、ほむらちゃんが居るのに、魔女化したほむらちゃんに出合った事があって、その時のグリーフシードを持っていたんだよね」
「…それを実戦できたのは世界で貴女一人でしょうね。でも、おかげで、みんなが魔女になる事は怖いだけじゃない、絶望だけじゃないって、思ってくれた。まどか、ありがとう…」
「私はほむらちゃんの喜ぶ事が出来ればいいんだよ。お礼なんていいの」
「でも…。それでも、まどか、ありがとう」
(そして、もう一人の『まどか』も…)
「ねぇ、ほむらちゃん」
「何?」
「お礼を言ってくれるよりも…もう、みんなにあげるグリーフシードは、『ホムリリー』ちゃんを増やして作るのはやめてほしいな」
「…でも、私に出来るのは…」
「いつかの時間軸で、何かぶれがあって、ほむらちゃんが居るのに、魔女化したほむらちゃんに出合った事があって、その時のグリーフシードを持っていたんだよね」
808: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:43:54.34 ID:BAlWuoC7o
「思うと、この為に『私』と『私』が出合ったんだって思えて…。こんな私でも、みんなの為にって…」
「そんな事無い! お願い。もう、ホムリリーちゃんを休ませてあげて。グリーフシードのためだけに、魔女にさせて、使い魔を生み出させて、そして、魔女にして、グリーフシードを、なんて…。使い魔が魔女になるまでのエネルギーも、ほむらちゃんの身を切ってなんて、そんなのおかしいよ!」
「でも…」
「きっとね、ホムリリーちゃんは、そうすれば安心して『誰か』の所に行けるよ?」
「…まどか、あなた…?」
「ウェヒ?」
まどかが無垢な笑みで微笑む。その笑顔で、私の中の最後の棘が抜けた気がした。
「…そうね、『私』も、ちょっと辛かっただろうし…」
ほむらは、盾からグリーフシードを一つ取り出す。
いつかの時間軸で手に入れてしまった、自分自身のグリーフシード。
「そんな事無い! お願い。もう、ホムリリーちゃんを休ませてあげて。グリーフシードのためだけに、魔女にさせて、使い魔を生み出させて、そして、魔女にして、グリーフシードを、なんて…。使い魔が魔女になるまでのエネルギーも、ほむらちゃんの身を切ってなんて、そんなのおかしいよ!」
「でも…」
「きっとね、ホムリリーちゃんは、そうすれば安心して『誰か』の所に行けるよ?」
「…まどか、あなた…?」
「ウェヒ?」
まどかが無垢な笑みで微笑む。その笑顔で、私の中の最後の棘が抜けた気がした。
「…そうね、『私』も、ちょっと辛かっただろうし…」
ほむらは、盾からグリーフシードを一つ取り出す。
いつかの時間軸で手に入れてしまった、自分自身のグリーフシード。
809: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:45:48.51 ID:BAlWuoC7o
その自分と今の自分は違うけれども、悩み、苦しんでいた自分とは変わりない。
ほむらは、ごめんなさい、ありがとう、とグリーフシードを握り締めた。
「『ほむら』。もう、大丈夫だから…」
「ほむらちゃん。ほむらちゃんの行動こそ、究極の自己犠牲愛だよ。私なんかよりも、ね」
「まどかぁ…」
「それに、キュウべぇも慌てているんでしょ? 一番の稼ぎ口だった筈の私が魔法少女飛ばして魔女化してるって分かって」
「そうね。こんな事がこの先もあるとしたら、エネルギーを搾取する事が出来なくなりかねないって、感情が無いのに慌ててたわ」
「『べべべべつに驚かないねん。かかか感情ないけどっ!』ってね」
「魔法少女のシステムはあいつらからもたらされるもの。でも、そのシステムもいつかは、きっと私達の手で変えられる筈…」
「そうだよ、ほむらちゃん! なんなら私がキュウべぇの星に行ってきてヤキ入れてくるから!」
ほむらは、ごめんなさい、ありがとう、とグリーフシードを握り締めた。
「『ほむら』。もう、大丈夫だから…」
「ほむらちゃん。ほむらちゃんの行動こそ、究極の自己犠牲愛だよ。私なんかよりも、ね」
「まどかぁ…」
「それに、キュウべぇも慌てているんでしょ? 一番の稼ぎ口だった筈の私が魔法少女飛ばして魔女化してるって分かって」
「そうね。こんな事がこの先もあるとしたら、エネルギーを搾取する事が出来なくなりかねないって、感情が無いのに慌ててたわ」
「『べべべべつに驚かないねん。かかか感情ないけどっ!』ってね」
「魔法少女のシステムはあいつらからもたらされるもの。でも、そのシステムもいつかは、きっと私達の手で変えられる筈…」
「そうだよ、ほむらちゃん! なんなら私がキュウべぇの星に行ってきてヤキ入れてくるから!」
810: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:48:36.95 ID:BAlWuoC7o
「そ、それには及ばないわ」
「えー」
(…今のまどかならやれるかも)
「まどか、私はね、今が一番幸せなの。これからも色々あると思うけど、まどかが一緒に居てくれるから、絶対に乗り越えられると思う」
「私もだよ、ほむらちゃん。何より、今の私を受け入れられるのはほむらちゃんだけだもんね。これはもう半身どころか、一心同体だよね」
「ええ」
「あ、それとね」
「ん?」
「ほむらちゃんの幸せは、今が一番じゃ無いよ? これからもっともっと幸せな事、あるよ。だから、今が最高なんて思っちゃダメ。私達、まだ中学生なんだから。ね?」
「まどか…。ええ、そうね、本当に、その通りだわ」
「えー」
(…今のまどかならやれるかも)
「まどか、私はね、今が一番幸せなの。これからも色々あると思うけど、まどかが一緒に居てくれるから、絶対に乗り越えられると思う」
「私もだよ、ほむらちゃん。何より、今の私を受け入れられるのはほむらちゃんだけだもんね。これはもう半身どころか、一心同体だよね」
「ええ」
「あ、それとね」
「ん?」
「ほむらちゃんの幸せは、今が一番じゃ無いよ? これからもっともっと幸せな事、あるよ。だから、今が最高なんて思っちゃダメ。私達、まだ中学生なんだから。ね?」
「まどか…。ええ、そうね、本当に、その通りだわ」
811: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:53:21.44 ID:BAlWuoC7o
ほむらとまどかが笑う。
「…それじゃあ、そろそろこの子達を鍛え始めないとね。魔法少女のパートナーとしてやっていけるように。パワーはあるけど、戦い方はめちゃくちゃだから
「ウェヒ。私も出動する?」
「あ、貴女はもう充分強いから…」
「じゃあ、いつも通り、後で穢れを癒やしてあげるね♪」ジュルリ
「…うん」///
魔女の事は、まだまだ分からない事だらけ。
これからも色々困難はあると思う。
でも、もう魔女は倒すだけの存在じゃない。
これが切っ掛けとなり、将来、魔法少女のシステムに変化が起きてくれれば…。
「…それじゃあ、そろそろこの子達を鍛え始めないとね。魔法少女のパートナーとしてやっていけるように。パワーはあるけど、戦い方はめちゃくちゃだから
「ウェヒ。私も出動する?」
「あ、貴女はもう充分強いから…」
「じゃあ、いつも通り、後で穢れを癒やしてあげるね♪」ジュルリ
「…うん」///
魔女の事は、まだまだ分からない事だらけ。
これからも色々困難はあると思う。
でも、もう魔女は倒すだけの存在じゃない。
これが切っ掛けとなり、将来、魔法少女のシステムに変化が起きてくれれば…。
812: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/07/22(日) 21:58:03.42 ID:BAlWuoC7o
それを信じて、私は今日も戦う。
今の私に、怖いものは何も無いのだから。
「ただいま、まど…」
「ウェヒーっ! お疲れ様&蝕の時間だよほむらちゃあああああんんんっ!」
…訂正。
一つだけ、怖いと言えば怖いものが、あるかもしれない。
「ほむううううううぅっ」///
これも、魔法少女の日常。
おわり
今の私に、怖いものは何も無いのだから。
「ただいま、まど…」
「ウェヒーっ! お疲れ様&蝕の時間だよほむらちゃあああああんんんっ!」
…訂正。
一つだけ、怖いと言えば怖いものが、あるかもしれない。
「ほむううううううぅっ」///
これも、魔法少女の日常。
おわり
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