1: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 19:30:24.78 ID:1rsYJd3A0
知っていますか?こんな話……




この学園都市……いや、今や世界中で生きている人達の中には、極ホンの一部、実は死んでいる人達が居るんです……



そして、その死んでいる人間達で、構成された謎の軍団があってですね……



この学園都市の中でも、夜な夜な都市内に住んでいる宇宙人を相手に、命懸けの戦争を行っていると言う噂があるんですよ……




何でもその人達は、それぞれが死ぬ寸前に選ばれ、どこにでもありそうなマンションの一室に強制的に集められ、そこから宇宙人との戦いへと送り込まれるのだそうです……





そして、そのマンションの一室には、集められた参加者を支配する、謎の黒い球体があるんだとか……





誰が最初に名付けたのかはわからない。





しかし、部屋に集められた参加者達は、その黒い球体への畏怖を込めてこう呼んでいるそうです……






その名を






『GANTZ』と……









SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370773824

引用元: 上条「答えろよ……GANTZ!!」御坂「私の前に立つのなら……アンタも潰すわよ?」 



新約 とある魔術の禁書目録(21) (電撃文庫)
鎌池 和馬
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3: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 19:32:33.17 ID:1rsYJd3A0
●『めもりーろーどさゅう……めもりーろーどさゅう……』










●『めにゅーを選んでくだちい』





1.上条「……GANTZ?」御坂「黒い球体の部屋?」





4: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 19:35:01.84 ID:1rsYJd3A0
●『7がつ24にちのがんつメンバーでち』









上条 当麻


運悪過ぎ。
頭切れ過ぎ。
ステゴロ強過ぎ。
右手便利過ぎ。
1人で行動し過ぎ。




インデックス守り過ぎ。


『生存確定』







御坂 美琴


ビリビリし過ぎ。
能力応用あり過ぎ。
上条心配しすぎ。
とーま連呼し過ぎ。
回想し過ぎ。




妹多過ぎ。


『生存確定』








浜面 仕上


何だかんだでいいとこ取り過ぎ。
GANTZ武器使いこなし過ぎ。
フレメア守り過ぎ。
田中自力で倒し過ぎ。




関係ねぇよ!!カァンケイねェェんだよォォォ!!

田中何匹殺ったところで、無能力者なんざ指一本動かさずに100回ブチ殺せんだよぉぉぉぉぉ!!!



『生死不明』


5: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 19:37:42.83 ID:1rsYJd3A0
天井 亜雄


原作原型なさ過ぎ。
強過ぎ。
生存率高過ぎ。
容赦なさ過ぎ。
前回ラスト、全部持っていき過ぎ。



西くん枠からはみ出過ぎ。


『生存確定』





偏光能力


原作原型なさ過ぎ。
根性あり過ぎ。
脇役極め過ぎ。



『生死不明』



9900号


御坂に似過ぎ。
口調めんどくさ過ぎ。
銃使いこなし過ぎ。
途中から9980号に変わり過ぎ。
>>1間違え過ぎ。


『生死不明』




珍走団グループ


天井くん舐め過ぎ。


『死亡確定』



お婆さん


原作カッコよ過ぎ。


『死亡確定』




フレメア・セイヴェルン



口調めんどくさ過ぎ。
田中と仲良くなり過ぎ。
浜面に守られ過ぎ。



『生死不明』

11: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 20:21:12.16 ID:CPHYEA3O0
●『前スレはこいつらを倒ちまちた』



人間(高校生レベル3)


攻撃力 G
防御力 G
素早さ F
賢さ B

能力 D





ねぎ星人(子供)


攻撃力 F
防御力 F
素早さ F
賢さ E

能力 G



ねぎ星人(大人)


攻撃力 D
防御力 D
素早さ E
賢さ E

能力 G




田中星人(ロボ)


攻撃力 E
防御力 D
素早さ C
賢さ E

能力 C



田中星人(大鴉)


攻撃力 C
防御力 D
素早さ A
賢さ D

能力 G




田中星人(鳥人)


攻撃力 B
防御力 C
素早さ S
賢さ A

能力 A



13: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 21:55:35.74 ID:CPHYEA3O0
…………





7月27日 昼 ファミレス




初春「」ポケー


白井「」ポケー


御坂「」ダラダラダラッ……



佐天「あ……あれ?皆何か反応が薄いなー?てか御坂さん!?どうしたんですかその汗!?凄い勢いで流れていってますよ!?」



御坂「へ!?い、いや、何でも無いわよ!?いやー、しっかし暑いわねこの店!!」パタパタ



佐天「えー?そうですかー?ちょっと寒いくらい冷房効いてるんですけど」ブルブル



御坂は、手でパタパタと自分を仰ぎながら。


佐天は自分の身体を震わせながら、どこか噛み合わない会話を行う。

14: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 21:56:48.51 ID:CPHYEA3O0
初春「ハァッ……佐天さん、その話はこの間もしたばかりじゃないですかー。
何か死者の軍団と、宇宙人が闘ってて、その痕跡が学園都市にも世界中にもあるって話ですよね?」



白井「流石に、この間と殆ど同じ話題の振り方ですと、リアクションに困りますの」



佐天と同じクラスの初春と、学校は違えど同じ学年の白井は、またその話かと言わんばかりに、佐天に対して冷めたリアクションをとる。



佐天「まぁまぁ、そんな事言わずに聞いてくださいよー。初春も白井さんも御坂さんも。
今日はアレから色々と調べて、新情報を持ってきたんですからー」ガサゴソガサゴソ



佐天はカバンの中から、パソコンから入手し、印刷してきた様々な写真や資料を取り出し、机の上に並べた。

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/09(日) 21:57:56.33 ID:CPHYEA3O0
佐天「ホラホラ、これがこの一週間の内に、この日本で行われたと思われる死者と宇宙人の戦いの痕跡です。

西は九州の長崎グラバー邸半壊事件!!北は北海道、あの名作『北の国から』の資料館敷地内での破壊事件!!

そして何より!!この学園都市でも新たに戦いの跡が見つかったんですよ!!」バンッ、バンッ!!





佐天が、机の上の資料の一部を、見ろと言わんばかりに叩く。

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/09(日) 22:00:19.33 ID:CPHYEA3O0
佐天「24日から25日にかける深夜にあった、第19地区旧商店街での大規模な火災、爆発、及び建物の崩壊事故!!」ダンッ!!



御坂「!?」ビクゥッ!!



佐天「それと、その旧商店街から、1kmほど離れた場所にある橋の不自然な崩落事故!!更に、反対側に1.5kmほど離れたアパート周辺の建造物の破壊や、放置車両の不自然な破壊!!」ダンッ!!



御坂「!?」ビクゥッ!!



佐天「これらは、全て1時間ほどの短時間で起きた事件に関わらず、全く関連性の無い事件として、別々に処理されていますが、あたしの目は誤魔化せません!!

このVS宇宙人戦争説を信じる様々な人達が、この現場に検証しに行った写真の中には、ところどころ、今の科学や能力では立証出来ないであろう破壊の痕跡が見られたのです!!

特に、この橋の崩落写真と、旧商店街の崩壊現場の一部。何か、ゴッソリ円柱状にくり抜いたのか、または押し潰したような跡がありませんか!?
少なくとも、この二つの事件は繋がっていると、私達噂検証部隊は断言します!!」ダンッ!!



御坂「ヒィッ!?」ビクビクゥッ!!!



自称、噂検証部隊である、佐天の熱く鋭い考察に、御坂の心臓が毎回飛び出しそうになるほど焦る。

17: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 22:05:31.14 ID:CPHYEA3O0
御坂「(ヤッ……ヤバイ……全部バレとるやんけ!!)」ダラダラダラッ……



佐天「ん?み、御坂さん!?ちょっと大丈夫ですか!?ハーフマラソン完走したと思うくらい、汗ダラッダラッに流れていってますけど!?」



御坂「へ!?う、うん!!大丈夫大丈夫!!や、やっぱりこの店ちょっと熱いわね!!ちょっと脱いじゃおうかしら!!」ヌギッ……



佐天「御坂さん!?何でブラウスのボタンに手をかけるんですか!?何でボタン外すんですか!?ちょっと御坂さん!?」

18: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 22:07:24.69 ID:CPHYEA3O0
白井「佐天さん!!ちょっと話に熱が入り過ぎですわよ!?お姉様が混乱して、木山先生化したではありませんの!!」



初春「佐天さん落ち着いてください!!大体、何でそんなに詳しいんですか!?
『幻想籠手』事件が解決して、昨日病院から退院したばっかりじゃないですか!!」


佐天「ふっふっふ……あたしを舐めてはいけないよ?初春……私の噂収集能力を持ってすれば、これくらいの資料一日で集められるのさ!!」


初春「幻想籠手事件の事、全然反省してないじゃないですか!!また変な事に巻き込まれても知りませんよ!?」

19: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 22:08:21.08 ID:CPHYEA3O0
佐天「アレはアレ。コレはコレなんだよ初春!!大丈夫だって、もうあんな事はしないし、十分反省してる。
だけど、やっぱりこの噂は気になるんだよねー。未知の技術を持った軍団と宇宙人!!ク~ッ!!ワクワクするねー!!」



白井「やっぱり懲りてませんの!!幻想籠手の時も、こんな感じでしたの!!」



ギャーギャー

ワーワー



御坂「……ハァッ……疲れた……」クテー……



3人の少女達が言い争う中、御坂は1人くたびれていた。

20: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 22:16:00.91 ID:CPHYEA3O0
御坂「(まさか、あの夜の事がそこまで調べられてるなんてね……流石に誰がその軍団のメンバーとかまではわからないみたいだけど……こりゃあ、その辺も考えて行動しないといけないのかなぁ……)」ズズズッ……


テーブルのジュースをストローで飲みながら、御坂はあの夜。






7月24日に起きた、惨劇の夜を思い出し始めた。






御坂「(……思い出したくもないんだけどね……大量のロボットに囲まれるは、ラスボスには焼き殺されかけるわ。それに……)」コトッ……





御坂が、コップを机の上に置き、ソファーにもたれ掛かる。

21: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/09(日) 22:21:43.22 ID:CPHYEA3O0















『……もう二度と会えないんだよね……。……に……』







そして、ゆっくりと目を閉じ、あの夜を思い出す。


炎に包まれ、凄惨な戦いを演じたあの地獄のような夜の続きを。




31: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 17:37:46.52 ID:iO6qi9UU0
7月24日 深夜





…………





『……か……坂……』




御坂「…………ん……」




意識を無くしていた御坂が、誰かの声に呼ばれるように、意識を取り戻していく。



霞んだ目の前には、自分が今最も信頼している人間のシルエットが見える。



『……坂……オイ、御坂……』




御坂「あぁ……よかった当麻……私達、生きて帰ってこれたのね……」スッ……



御坂が、思い人のシルエットへと手を伸ばし、触れようとする。

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/11(火) 17:39:21.24 ID:iO6qi9UU0
ボゥッ!!



ゴォォォォォォォオオオオオッ!!!!




御坂「!?や……嫌ァァァアッ!!!当麻!!当麻!!!」




御坂がシルエットに触れた瞬間、そのシルエットの人物が突如発火し、全身を炎に焼き尽くされる。




御坂「当麻!!当麻ァァァアッ!!!!……!?や……ヤダ……」ボゥッ……




そして、その炎は御坂にも飛び火し、御坂をも焼き尽くそうと燃えていく。




御坂「ヤダッ!!嫌だよ!!死にたくない!!ママ!!パパ!!助けて!!当麻!!黒子!!誰か!!誰か助けてよ!!」ゴォォォォォォォオオオオオッ!!!

33: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 17:40:28.63 ID:iO6qi9UU0
御坂の全身が炎に包まれる。



不思議と、熱いという感覚はない。



しかし、恐怖だけはある。死への恐怖だけは。




そして御坂の目の前に、暗くて顔はよく見えないが、1人の少女が現れる。




御坂「誰か……お願い……助けて……」ゴォォォォォォォオオオオオッ!!!!



炎に包まれながら、御坂がその少女へと救いを求める手を伸ばす。







『助けて?』





炎に包まれた手が灯りとなって、少女の顔が照らし出された。

34: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 17:41:45.47 ID:iO6qi9UU0
御坂「!?あ、貴女は……私?」ゴォォォォォォォオオオオオッ……




御坂の目の前にいる少女は、御坂と同じ顔・背格好をしていた。




そして、少女はゆっくりと口を開く。









『お姉様は、ミサカ達を助けてくれないのにですか?と、ミサカはお姉様へと問いかけます』グラァッ……





ドサァッ!!!






そう呟くと、御坂に似た少女から血が流れ出し、少女はゆっくりと地面に倒れこんだ。

35: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 17:43:18.28 ID:iO6qi9UU0
御坂「!?……ヒッ……」ズズッ……



御坂はその光景に思わず後ずさりする。



いつの間にか、自身を燃やしていた炎は消えている。



しかしその代わりに、辺り一面に現れたモノが。












「お姉様」


「お姉様」


「お姉様」



「お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様」








それは、自分と同じ顔をした少女達。



自分を姉と呼ぶ少女達によって、埋め尽くされた空間であった。





全員血塗れの。







御坂「ヒッ!?イ…イヤァァァァァァァァアアアッ!!!!!」





少女達に囲まれた御坂の絶叫が、空間内をこだまする。

36: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 17:44:45.07 ID:iO6qi9UU0
『御坂っ!!!』










御坂「ハッ!?」パチッ!!



不意に自分の名を叫ぶ声によって、御坂の目が開く。




上条「御坂……よかった。気がついたみたいだな」ホッ……




目の前には、先ほど燃え尽きたシルエットではなくハッキリと、自身が今最も信頼する人間の姿があった。



そして、辺りを見回すと、今までいた第19学区では無く、何の変哲もないマンションの一室に居る事がわかった。

37: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 17:46:52.87 ID:iO6qi9UU0
御坂「私……生きてる……」キョロキョロ





第19学区で、ラスボスである鳥人に大火傷を負わされたハズの身体は、傷一つない元の身体へと戻っている。





星人を全て倒し、戻ってこれたのだ。








●『ちいてんさゅう……ちいてんさゅう……』








この不気味な黒い玉の置かれた、マンションの一室へと。

38: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:06:41.83 ID:iO6qi9UU0
天井「流石レベル5と言ったところか。あれだけの炎に包まれながらもまだ生きていたとは。
無意識に生体電気を調節して、身体の生命維持に尽くしたのかな?
まぁGANTZに死んだと判断されない限りは、例え植物状態だろうが心臓が一時止まろうが元通りだからな」




上条「大丈夫か?身体は元通りみたいだけど、天井が言うには精神的なモノは対象外らしいからな」




御坂「う……うん……大丈夫と思う……。それで、誰が倒したの?あのラスボスは。やっぱりアンタが?」

39: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:11:32.37 ID:iO6qi9UU0
上条「いや、俺も途中で意識が飛んでいたからな……偏光能力がアイツの背に飛びついていたのは覚えてるけど」




上条が、ラスボスである鳥人との戦いを思い出そうとするが、瀕死だったせいか、ところどころ記憶が抜けているようだ。




天井「君とあのスキルアウトの男が、あと一歩のところまで追い詰めていたよ。いや、アレは実に惜しかった。
まぁ、君たちが力尽きたところで、私がトドメを刺させてもらったのだが。悪いな、上条君」ニィッ……




天井が、事の結末を簡潔に説明する。

40: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:13:04.65 ID:iO6qi9UU0
上条「そうか……。いや、アンタが居なかったら俺達は全滅だったんだ。素直に礼を言うよ。ありがとな」




天井「礼には及ばないさ。君には不本意ながら命を助けられたからな。この借りは必ず返させてもらう。あぁ、君にも世話になったな。超電磁砲」




御坂「いえ……大した事はしてませんから……それより……」キョロキョロ




御坂は、部屋をキョロキョロと見回す。




部屋には、上条と、五体復活している天井の姿が見られる。





御坂「あれ?浜面さんは?フレメアちゃんは?偏光能力は?それに……」







『お姉様……』






御坂「……私の妹は?」






御坂が、上条と天井へと問いかける。

41: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:21:59.24 ID:iO6qi9UU0
上条「……まだ皆転送されて来てない……大丈夫さ、皆生きてるハズだ」



天井「アレコレと考えても仕方ない。言っただろ?死んだと判断されない限りは、『採点結果が出る前』に戻ってくる。私達はただ待ってればいいんだよ」




上条と天井は、それぞれの性質に合った答えを御坂に返す。





ジジジジッ……




天井「ん?……ホラッ、噂をすれば早速戻ってきたぞ?」



御坂「!?」バッ!!



天井が指差す方向には、GANTZによる転送が始まっているのが見える。

42: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:24:53.69 ID:iO6qi9UU0
ジジジジジジジジッ…………







転送されてくるのは


浜面か?


フレメアか?


偏光能力か?


9900号か?






ジジジジジジジジジジジジッ…………






上条「……戻ってきたか……」


御坂「……よかった……」


天井「ほう。君は確実に死んだと思ったんだがね。中々の強運の持ち主だ」










偏光能力「……ンだよ……またこの部屋なのかよ……」ジジジジジジジジッ……






生存者第一号は、ラスボスの鳥人撃退への重要な一手を、凄まじい精神力で無理矢理作り出した男、偏光能力(トリックアート)であった。

43: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:30:02.11 ID:iO6qi9UU0
上条「ていうか……天井の言うとおり、お前よく生きてたな。俺の記憶じゃ、あの鳥人に炭クズ寸前まで燃やされてたハズなのに」




天井「寸前どころでは無かったよ。私ですら目を背けたくなる程酷い状態だった。……まさに強運だな」ククッ……





偏光能力「うっせぇ!!運も実力の内だろうが!!……あー……もう二度とあんな目には会いたくねーや。マジで死ぬかと思ったぜ……」ハァッ……




偏光能力が溜息をつきながら座り込む。


恐らく、今回のミッションで一番、苦痛と死の恐怖を味わったのは、この男だろう。

44: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:38:50.84 ID:iO6qi9UU0
ジジジジッ…………




御坂「ッ!?見て!!また転送されてくる!!」



上条「ッ!?て事は、浜面達か!?よかった……アイツ等も無事だったんだな……」



偏光能力「超電磁砲の妹が救援に行ったんだ。そりゃ生き残るだろうさ」








ジジジジジジジジジジジジッ…………




GANTZから転送されて来た、生存者第二号は……

45: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:44:07.17 ID:iO6qi9UU0










フレメア「…………」ガタガタッ……ガタガタッ……













心底怯え、顔面を泣きじゃくった顔でめちゃくちゃにした、フレメアであった。

46: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:45:34.56 ID:iO6qi9UU0
上条「!?フレメア!!」



御坂「フレメアちゃん!!よかった!!貴女も無事だったのね!!」ダッ!!



御坂が、震えるフレメアへと歩み寄る。



フレメア「お……姉……ちゃん?」ガタガタッ……ガタガタッ……



御坂「うん、そうよ。もう大丈夫、怖い人やお化けは皆居なくなったからね?
もうすぐ、浜面さんやお姉ちゃんの妹も帰ってくるわよ」ギュッ……




御坂が震えるフレメアを抱きしめる。





フレメア「!?……ウッ……ウゥッ……ウワァァァァアンッ!!!」


御坂「!?ど、どうしたの?どこか痛いのフレメアちゃん」




突如泣き出したフレメアに、御坂は慌てふためく。

47: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/11(火) 18:47:06.16 ID:iO6qi9UU0
●『』ザザッ……ザザザザッ……






フレメア「ウゥッ……お兄ちゃんと……浜面のお兄ちゃんともう1人のお姉ちゃんは……」グスッ……グスッ……


























「……死んじゃった……」







●『それでは、ちいてんを始めます』

65: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 19:33:06.11 ID:LAHaGwAD0
…………




●『00:09:40』




第19学区

旧商店街西エリア 古びた倉庫





フレメア「お兄ちゃん……」ガタガタッ……


浜面「大丈夫……大丈夫だから隠れてろ……」チャキッ……






ドォンッ!!!


ドォンッ!!!



「グルォォォォォアアアアアッ!!!!!」





御坂が上条の元へと救援に行った数分後。



施錠された倉庫の頑丈な扉をブチ破ろうと、外から何かが体当たりしていた。




浜面は、怯えるフレメアを物陰に隠し、残った左手で、Xガンを構えている。

66: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 19:34:08.34 ID:LAHaGwAD0
ドォンッ!!!


ドォンッ!!!



浜面「シャレになんねぇな……田中以外にも、別の星人がいたのか?」



ドォンッ!!!


ドォンッ!!!



しばらく気を失っていた浜面は、人形のようなスーツを着た田中星人の他にも、大鴉タイプと鳥人タイプの田中星人がいることを知らない。




ドォンッ!!!


ドォンッ!!!




そして、出来の悪いパニック映画やホラー映画のように、倉庫内に立て篭もる浜面達を、外にいる化物が襲おうとしている。

67: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 19:35:44.64 ID:LAHaGwAD0
浜面「来るな……頼むから入って来んなよ……こっちはもう限界なんだ……」



度重なる田中星人との戦いにより、浜面のスーツは壊れ、右腕は無くなっている。



御坂に強がったのはいいが、正直もう体力、気力共に限界を超えているのだ。






…………




ふいに、静寂が訪れる。





浜面「…………行ったか?ようやく諦め」









「グルォォォォォアアアアアッ!!!!!!」



ドォォォォォォォォオオオオッ!!!!!!



浜面が安堵した瞬間、けたたましい鳴き声と共に、頑丈な扉が破壊された。

68: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:04:40.90 ID:LAHaGwAD0
大鴉「グルルルルルッ…………」




浜面「……る訳ねぇか……しかも何だよコイツ……モノホンの化物じゃねぇか……」チャキッ!!




ギョーンッ!!!

ギョーンッ!!!



浜面が、有無を言わさず、倉庫内に侵入してきた大鴉へとXガンを撃つ。



大鴉は、撃たれまいと素早く移動し、徐々に浜面との距離を詰めていく。




浜面「ウォォォォォォォオオオオオッ!!!」ギョーンッ!!ギョーンッ!!ギョーンッ!!ギョーンッ!!



大鴉「グルォォォォォォアアアアアッ!!!!




ドォンッ!!!

ドォンッ!!!

69: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:06:55.17 ID:LAHaGwAD0
Xガンが発射され、3秒たった箇所から、順番に爆発していく。


素早い大鴉を浜面は中々捉えることが出来ない。


ましてや、片腕。しかも利き腕では無いほうだ。


それでも浜面は、必死で抵抗する。






大鴉「ギャゥッ!!!」グシャァッ!!!


浜面「当たった!?ヨシッ!!」ギョーンッ!!ギョーンッ!!



不意に、大鴉の右翼の先辺りが弾け飛び、大鴉が悲鳴をあげる。




大鴉の動きが鈍り、勝機を掴んだかと思ったその瞬間





大鴉「グルァァァアアアッ!!!!」ブンッ!!


浜面「!?やっ……」


ドゴォォォォォォォォォォォオオオッ!!!!



大鴉は浜面へと思いっきり体当たりし、浜面は倉庫の棚に衝突しながら、壁まで吹き飛ばされた。

70: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:08:39.21 ID:LAHaGwAD0
浜面「グッ……ガハッ……」グググッ……



スーツの防御が無い浜面は、生身のまま攻撃を受けた事で、大きなダメージを負っている。


それでもなお、浜面は銃を大鴉へと向けようとする。






ゴキィッ!!!!



その瞬間、大鴉が浜面の左腕を蹴り飛ばし、浜面の左腕が折れた。





浜面「ッァァァァァァアアアア"ア"ア"ッ!!!!」



ズンッ!!!



浜面「ガッ!!ハァ"ッ……」



そして、そのまま大鴉の大きな脚が、浜面を踏み、地面へと縛り付ける。

71: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:28:50.23 ID:LAHaGwAD0
フレメア「!?お兄」


浜面「出"る"な"ァ"ァ"ア"ア"ア"ッ!!!」




隠れて見ていたフレメアが、浜面へと駆け寄ろうとするが、浜面がそれを止める。




浜面「出"る"な"……出"て"く"る"な"よ"……頼"む"か"ら"……」ゴポォッ……



内臓にダメージがあったのだろう。浜面は吐血しながらも、必死でフレメアを制する。




大鴉「グルルルルルッ……」



大鴉が足元の浜面を見下ろす。


大鴉にとっては、多くの同胞を殺された仇なのだ。

容赦無く浜面を殺すだろう。

72: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:33:03.23 ID:LAHaGwAD0

大鴉「グルルッ……」スッ……




大鴉は、浜面を踏み殺そうと、大きく脚を上げる。



浜面「グ……ゾ……ゴゴ……マ"デガ……」ゲホッ……



スーツを壊され、右腕を失い、左腕さえも折られた浜面に、この絶望的な状況を覆す術は無かった。




大鴉「グルァァァァアアッ!!!」グッ!!



大鴉の大きく上げた脚が、浜面へと襲いかかる。










バキィィィィィィイイイッ!!!!



大鴉「ガァァァァァアアッ!!!!」ドゴォォォォォォォォォォォオオオッ!!!!



浜面「ゲホッ!!ゲホッ!!な"っ……」



次の瞬間、大鴉が何かに蹴り飛ばされたように、壁に激突した。


大鴉から解放された浜面が、ろくに動かない身体で側を見る。

73: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:33:51.56 ID:LAHaGwAD0
9900号「……やはりミサカが来て正解でしたね……と、ミサカはあの人では、この状況を覆すのは無理だろうと、偏光能力を鼻で笑います」ハッ




そこには、大鴉を思いっきり蹴飛ばした御坂の妹を名乗る少女。




9900号が立っていた。





●『00:07:10』

74: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:36:01.96 ID:LAHaGwAD0
浜面「お"前"……どう"じで……ゲホッ!!ゴホッ!!どうしてココに……」



9900号「喋らないで下さい。いい加減、いつ死んでもおかしくない傷なのですから。と、ミサカは貴方のしぶとさに感銘をうけます」ズルズルッ……




9900号は、浜面を倉庫の端へと引きずると、先ほど大鴉を蹴り飛ばした方を見る。



9900号「……居ませんね……いつの間に……と、ミサカは倉庫内を見回します」キョロキョロ



おおよそ20m四方程のそこそこの大きさの倉庫内を、9900号は見回す。



辺りは、棚や荷物に遮られ見えづらい為、慎重に辺りを警戒する。

75: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:48:13.48 ID:LAHaGwAD0
ガタッ!!



9900号「!?」バッ!!



突如鳴り響いた物音に、9900号が警戒するが、どうやら何かが落ちた音らしい。





9900号「……気のせいですか。と、ミサカは銃を下ろします。……と見せかけて、ミサカはホラー映画にありがちな流れに警戒しつつ、更なる哨戒を行います」チャキッ!!




9900号に油断はない。




感情に乏しい彼女には、人間にとってプラスとなる喜びなどの感情も無きに等しいが、マイナスとなる油断や慢心という感情も無きに等しい。





したがって不意を突かれるという事も無く、常に冷静に行動出来るのだ。





しかしただ一つ、誤算があったとすれば

76: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:49:21.29 ID:LAHaGwAD0
ガタガタッ……




星人というのは、人間の予想を遥かに超える身体能力や、とんでも無い力を有している事を、9900号はまだ、深く理解していなかった事だ。





ガバァァァアッ!!!



大鴉「グルァァァァアアッ!!!」ダンッ!!!



9900号「なっ!?速っ……」チャキッ!!


ギョーンッ!!
ギョーンッ!!



ドォォォォォォォォオオオオッ!!!!!!





先ほど9900号が異常無しと判断した、彼女の正面。



そこに気配を殺して潜んでいた大鴉は、彼女の警戒がそこからホンの少し周りへと移った瞬間、堂々と正面から襲いかかってきた。

77: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 20:50:56.50 ID:LAHaGwAD0
通常ならば、9900号の迎撃により勝負は決まっていただろう。



しかし、予想を遥かに超えるスピードで突撃してきた大鴉により、迎撃の2発のXガンは外れ。

9900号は大鴉の嘴による刺突をモロに喰らい、そのまま共に壁へと激突した。








ガラガラッ……



9900号「グッ……そういえば、偏光能力も同じ方法でやられていましたね……と、ミサカはこのカラスのトップスピードが尋常では無かったことを思い出します……」グググッ……



生身ならば即死級の攻撃を受けるも、比較的耐久に余裕があるスーツの防御により、9900号にダメージは無かった。




そして、9900号が立ち上がろうとしたその時。

78: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:18:33.97 ID:LAHaGwAD0
ガラガラッ……



大鴉「グルルッ……」ギョロッ!!



すぐ側で、大鴉が起き上がり、9900号の方をジッと睨んでいるのが見えた。




9900号「おや……貴方も一緒に壁に突っ込んでたのですか?と、ミサカは未だ過ぎ去らぬ自身の危機に、少し焦ります」チャキッ!!



大鴉「グルァァァァアアッ!!!」ガパァァアッ!!!



ドォォォォォォォォオオオオッ!!!!!!



図らずとも、大鴉との接近戦を強制された9900号が、銃をXガンに持ち替え、自身に喰らいつこうとする大鴉に、必死で抵抗する。

79: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:23:35.43 ID:LAHaGwAD0
ドォォォオンッ!!!


ドォォォオンッ!!!




浜面「グッ……ゲホッ!!ゴホッ!!……クソッ、やっぱ折れてるか。左腕に力が入んねぇ……」ガシャンッ……



浜面は、激しく攻められている9900号への援護を行おうとするも、折られた左腕では銃を構えることが出来ないようだ。



ガシッ!!



浜面「うぉっ!?何だ?ってフレメア!?」


フレメア「んしょ!!んしょ!!」ズルズルッ!!ズルズルッ!!


大きすぎるダメージを負い、既に動くことすらままならない浜面を、隠れていたフレメアが引きずっていく。

80: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:33:27.74 ID:LAHaGwAD0
浜面「フレメア!!出てくるなって言ってんだろ!!隠れて……ゴホッ!!ゴホッ!!!」



フレメア「嫌だ!!大体、お兄ちゃんが死ぬのなんて嫌だ!!」ズルズルッ!!ズルズルッ!!



フレメアは、半ベソかきながらも浜面を必死で引きずる。






大鴉「!?グルルルッ……」ボタボタッ……ボタボタッ……


9900号「うっ…………」ドロドロッ……ドロドロッ……


Xガンでの抵抗により、所々から出血しながらも、9900号へと激しく攻めていた大鴉が、フレメアの存在に気づく。


大鴉の側には、スーツが壊され、Xガンを遠くに弾き飛ばされ、血だらけになりグッタリとしている9900号の姿があった。

81: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:35:56.34 ID:LAHaGwAD0
浜面「!?気づかれた……フレメア!!俺を置いて早くここから逃げろ!!逃げろって!!」


フレメア「嫌だ!!絶対嫌だ!!」ズルズルッ!!ズルズルッ!!



大鴉の視線に気付いた浜面が、フレメアに倉庫からの脱出を促すも、フレメアは断固として譲らない。



大鴉「グルルルッ……」スッ……



大鴉が、フレメアの方へと動き出そうとしたその時











バチバチッ……バチバチッ……


9900号「……ミサカを目の前に……よそ見してるんじゃないですよ……と、ミサカは……」


バチバチッ……バチバチッ……




バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!!!







姉である御坂美琴と同じ系統の電撃系能力。


それによって生まれた青白い電撃の閃光が、大鴉を包み、襲いかかる。

82: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:37:35.08 ID:LAHaGwAD0
シュゥゥゥゥウ……



9900号「ハァッ……ハァッ……お姉様には遠く及びませんが、レベル3相当の電撃。
それ相応のダメージはあったでしょう?と、ミサカは勝負はこれからだと……」ピクッ……



表情はあまり変わらないが、してやったりといった9900号の言葉が途中で止まった。







大鴉「…………」コキッ、コキッ……



目の前にそびえ立ち、首を鳴らしている大鴉は、特にダメージを負ったようには見えなかった。



レベル5である御坂の能力ですら、この田中星人達には、単なる電撃では致命傷を与えることが出来ない。



レベル3など、その御坂の1%にも満たない威力だ。



大鴉にとっては、少しビリッときた程度なのだろう。

83: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:39:54.08 ID:LAHaGwAD0
大鴉「…………」スッ……



大鴉が、9900号の側へと近づき、獲物を狙う猛禽類のような目で見下ろす。




9900号「……な、何故でしょうか……ミサカの身体が勝手に震えて……」ガタガタッ……




9900号は、この夜、様々な感情をホンの少しだが学んだ。




人の優しさ。

守る者の強さ。

他人と関わる事の楽しさ。



今まで感情というモノが無かった彼女にとって、何よりも忘れ難い経験となったであろう。




そして、彼女が最後に学んだ感情。





それは、生前あの『男』を前にしても味わえなかった、未知なる力を持つ者に対する恐れ。






『恐怖』という感情である。

84: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:41:12.61 ID:LAHaGwAD0
大鴉「グルァァァァアアッッ!!!!」ガパァァアッ!!!




ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!!





9900号「…………アッ…………」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!



大鴉は、その鋭い嘴で9900号の左肩へと噛みつく。




スーツの無い生身の身体など、簡単に噛みちぎられたのだろう。
9900号から、凄まじい勢いで血が噴射し、9900号と大鴉の身を赤く染める。

85: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:42:51.06 ID:LAHaGwAD0
9900号「お……お姉様……ミサカは……」バチバチッ……バチバチッ……



大鴉「!?」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!




急激に薄れゆく意識の中で、9900号は何かを呟きながら、バチバチと帯電していく。

それに大鴉が気付くが、時既に遅かった。










『ミサカは、1人の人間として、新しい命を生きる事が出来たでしょうか?』









バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!!!





己の身をも焼き尽くさんとする高電圧の電撃が、9900号と大鴉を包み、再び倉庫内は青白い閃光に包まれた。








●『00:04:50』

86: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:54:34.68 ID:LAHaGwAD0
フレメア「お……お姉……ちゃ……」ガタガタッ……



9900号の壮絶な最期を目の当たりにしたフレメアは、その場で膝をつき、ガタガタと震えていた。



その足元には水たまりが出来ている。




今宵、立て続けに起きた凄惨な光景に、とうとう限界を超えてしまったのだろう。



むしろ、このような年端も無い少女が未だ生存してる時点で偉業なのだ。





9900号「……………」


大鴉「グルルッ…………」シュゥゥゥゥウッ……



フレメアの目の前には、電撃で焼けたのか、嘴の呼吸器に繋がるホースから気体が多少漏れつつも、特に電撃のダメージは負っていない大鴉。



そして、その命を燃やし尽くし、力尽きた9900号の横たわる姿があった。




大鴉は、フレメアをじっと見ている。

87: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:56:02.99 ID:LAHaGwAD0
浜面「逃げろ……フレメア……頼むから……」グググッ……





フレメアと大鴉の間に、満身創痍の浜面が立ち塞がる。


もはや、立っているのもやっとで、右腕は無く左腕も折れて使い物にならない。



それでも浜面は、大鴉の前に立ち塞がる。




全てはフレメアを守り抜く為。

88: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 21:57:51.57 ID:LAHaGwAD0
フレメア「どうして……どうしてお兄ちゃんは私を……」ガタガタッ……



浜面「……お前を守った婆さんに頼まれたんだ。お前を姉の元に帰してやってくれってな……それに……」



浜面は、大鴉をジッと見る。



大鴉「グルルッ……」シュゥゥゥゥウッ……


その視線の先には、9900号の電撃によって、呼吸器から気体が漏れているのがわかる。


あの呼吸器をどうにかすれば……




浜面「……それに俺は、この学園都市じゃ最底辺の負け犬だ。
能力が身につかなかったばかりか、そこから成り上がることからも逃げ出したスキルアウトだ」


「だけど……だけどそんな俺が……たった1人でも人の命を救う事が……守る事ができるかもしれないんだ……こんなクソみてぇな地獄から……」ザッ!!




フレメアは、目の前に立ち塞がる浜面の背中を見る。

89: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:01:47.49 ID:LAHaGwAD0
その背中はあまりにもボロボロ過ぎて、誇れるモノなのかはわからない。

そして、背中の傷を無様な逃げ傷と笑うモノもいるかもしれない。



しかし、この傷は全て、フレメアを守り抜いた証なのだ。


例え敵に背中を見せようと、戦いから逃げようと。


フレメアを守る為だけに戦った男の証。




浜面は、フレメアを守る為、最後の戦いに望む。







浜面「かかってこいよデカカラス……負け犬の牙を見せてやるからよ……」クイッ、クイッ






上がらない左手の指で、浜面は大鴉へと挑発する。

90: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:11:20.00 ID:LAHaGwAD0
大鴉「グルルッ……グルァァァァアアッ!!!!」ガパァァアッ!!!


ダンッ!!!!





大鴉が、凄まじい勢いで浜面へと向かっていく。


そして、一瞬で距離を詰めた後、その鋭い嘴で浜面の左肩へと喰らいつく。








ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!




浜面「ガッ……アッ……」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!




大鴉「グルルッ!!!」ガブゥゥウウッ!!!!




満身創痍の浜面は、なす術も無く大鴉に、左肩へと喰らいつかれ、抉られた。

91: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:14:14.25 ID:LAHaGwAD0
ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!



浜面「……テ……テメェの……」グググッ……




浜面が、大鴉の嘴に装着されている呼吸器へと目の照準を合わせる。






呼吸器が無ければコイツは呼吸出来ない。


出なければ、わざわざこんなところにこんな装置を付けない。



9900号の最後の電撃により、呼吸器のホースは少しだけ焼き千切れている。



あれなら、思いっきり引っ張れば完全に千切れるハズ。

しかし、浜面には呼吸器のホースを引きちぎる為の腕が無い。






ならば、やる事は一つ。

92: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:17:07.01 ID:LAHaGwAD0
浜面「テメェの………負けだ…………」ガパッ……




ガブッ!!!



ブチブチブチブチィッ!!!!





大鴉「!?グォッ!!グルォォォッ!!!?」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!!!






やる事は一つ。




呼吸器のホースを、噛みちぎるだけである。




その為に、己の身を喰いちぎられようとも。







浜面「……言っただろ……負け犬の牙を……見せてやるって……」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!



ドサァッ!!!




大鴉の呼吸器のホースを噛み締めたまま、浜面はその場に倒れる。






●『00:03:20』

93: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:20:14.67 ID:LAHaGwAD0
大鴉「グルォォォォオオオオッ!!!!!グルァァァアアアアッ!!!!!」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!




嘴の呼吸器のホースが、完全に千切れた大鴉は、ホースから出る煙のような気体に包まれ、そこら中で暴れまわっている。




息が出来ないのだろう。浜面の目論見通りに。






フレメア「お兄ちゃん!!!」ダッ!!!



倒れ込んだ浜面に、フレメアが駆け寄る。


フレメア「お兄ちゃん!!血が!!血が止まらないよ!?」ググッ!!



フレメアは必死で浜面の左肩の出血を止めようと押さえるが、止血方法を知らない彼女では、止められない。

94: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:21:38.50 ID:LAHaGwAD0
いや……例えブラックジャックがこの場にいようと、『冥土返し』と呼ばれる医者がいようと、もはや浜面を助ける事は不可能だろう。









浜面「………………」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!









既に浜面仕上は死んでいるのだから。

95: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:23:06.11 ID:LAHaGwAD0
フレメア「死んじゃダメ……死んじゃダメ!!」グググッ!!



浜面「………………」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!




フレメアは必死で血を止めようとするが止まらない。





フレメア「大体、頼んでも無いのに勝手に私を守ってくれたのに!!勝手に死ぬなんて勝手過ぎる!!にゃあ!!」グググッ!!



浜面「…………………」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!





フレメアは浜面へと必死で叫ぶが、浜面は全く反応しない。

96: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:25:22.35 ID:LAHaGwAD0
大鴉「グルァァァアアアアア"ア"ア"ッ!!!!ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!!!!」ブシュゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!!!





フレメア「治るんだよね?あの変な黒いボールのある部屋に行けば、大体治るんだよね!?私が連れていくからまだ死んじゃダメだよ!?」ズルズルッ!!!




浜面「………………」ドクドクッ……ドクドクッ……




倉庫の端で、大鴉が苦しみ喘いでいる中。



フレメアは、血だらけの手で浜面を掴み、GANTZの部屋へ連れて行こうと引きずっていく。

97: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:27:50.45 ID:LAHaGwAD0
フレメア「そうだ!!お兄ちゃんに私のお姉ちゃん紹介してあげるから!!お兄ちゃん大体○○○そうだもんね!?お姉ちゃん可愛いからお兄ちゃん喜ぶよ!?」ズルズルッ!!




浜面「………………」ドクドクッ……





フレメアは小さい身体で、必死に浜面を引きずるが、中々進まない。




フレメア「お姉ちゃんがダメだったら……しょうがないから私がお兄ちゃんのお嫁さんになってあげるから……起きて……死なないで……」ズルズルッ……




浜面「……………」





フレメアが呼びかけるも、浜面はもう、二度と目覚めない。

98: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:29:06.53 ID:LAHaGwAD0
大鴉「ア"ア"ア"ア"……アッ……ァ……」ズルゥッ……



ドサァッ!!!



大鴉が、倉庫の端で倒れる。
もはや動き事も、叫ぶ事も出来ないのだろう。






フレメア「……………グスッ……………グスッ……」




9900号「…………」



浜面「…………」




大鴉「ァ………………」




とうとう、大鴉も全く動かなくなり、倉庫の中は、フレメアの泣き声のみが響き渡る。





99: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:30:51.28 ID:LAHaGwAD0
●『00:00:01』





ドォォォォォォォオオオッ…………




フレメア「…………」グスッ……


浜面「…………」




遠くで、何か巨大なモノが落ちたかのような地鳴りが響き渡る。



しかし、フレメアにはそんな事はどうでもいい事。




フレメアは、ずっと浜面の側で座り込んでいた。





ジジジジッ……



フレメア「!?」ジジジジッ……




ふと、フレメアは身体が少しずつ消えていくのが見えた。



戻れるのだ。



あの部屋に。

100: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/14(金) 22:33:41.06 ID:LAHaGwAD0
フレメア「帰れる……帰れるよ?お兄ちゃん……」ユサユサッ……



浜面「………………」




気のせいか、眠っている浜面の顔が、穏やかな表情になったような気がした。



浜面は守り抜いたのだ。



この小さな少女の命を。



己の命と引き換えに。




フレメア「あれ……おかしいな……大体、何でお兄ちゃんは私みたいにならないの?」ジジジジジジジジッ……!!



浜面「……………」





『生きている者のみ』が、元の部屋に戻れる。




フレメアと浜面の別れの時間が来たのだ。




フレメア「ヤダ……行きたくない……一緒に行こうよぉ……お兄ちゃん……」ジジジジッ!!!




ジジジジッ…………





浜面「………………」




そしてフレメアは、浜面を残したまま、GANTZの部屋へと完全に転送された。

149: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 15:26:42.90 ID:SsRSGMva0
……………





7月25日 02:00 黒い球体の部屋






上条「……嘘……だろ……」



偏光能力「……マジかよ……あの馬鹿……」



天井「……フム……スキルアウトにしては見どころはあったが……惜しいな……」








フレメア「グスッ……エグッ……」



御坂「…………え?」





フレメアの発した、浜面と9900号が死んだと言う事実に、生き残ったメンバーは戸惑いを隠せなかった。

150: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 15:35:12.99 ID:SsRSGMva0
御坂「死んだ……の?……浜面さんと……私の……妹……」



フレメア「グスッ……ゴメンナサイ……皆私を守ってくれて……ゴメンナサイ……」




フレメアは泣いて許しを請う。



2人が死んだ事は、別にフレメアに責任があるわけではない。



どうしよも無かった。運が無かっただけのこと。




しかし、フレメアはただただ謝ることしか出来なかった。2人は自分のせいで死んだのだと思っていたから。




御坂「…………フレメアちゃん?」ギュッ……



御坂は、フレメアを抱きしめながらフレメアに尋ねる。

151: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 15:38:25.41 ID:SsRSGMva0
御坂「あの子は……お姉ちゃんの妹は、貴女が助けてと言ったから助けに来たの?」


フレメア「ウウン……お兄ちゃんが危ない時に、助けに来てくれて……最後まで私とお兄ちゃんを守ってくれた……」グスッ……



御坂「……そう……」スッ……



御坂はフレメアの目をジッと見ながら呟く。



御坂「……だったらそれは、あの子が自分で選んだ道……フレメアちゃんのせいで死んだわけじゃないわ。だからもう自分を攻めちゃダメ……」

152: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 15:46:36.62 ID:SsRSGMva0
フレメア「グスッ……でも……お兄ちゃんも……私を……」



御坂「浜面さんもそう……命を賭けてフレメアちゃんを守り抜いたの。自分の意志で。
貴女がやらなきゃいけない事は、2人の分も生き抜く事よ?これから先、ずっと……わかる?」



御坂は、フレメアに自分を責めるのをやめるように伝える。



フレメア「グスッ……うん……大体わかった……」


御坂「そう……ならいいわ……おかえりフレメアちゃん」ギュッ!!


そして、もう一度御坂はフレメアを抱きしめる。


その目には、同じ境遇の仲間と、自称ながらも自分を姉と呼ぶ少女の死を悼み、涙が浮かんでいるが、フレメアにそれを悟られぬように。













●『それでは、ちいてんをはじめます』

153: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 15:47:41.14 ID:SsRSGMva0
『そげぶ』




15点


そげぶやり過ぎ。
全生物平等過ぎ。
いいところ取られ過ぎ。




あと85点




上条「15点……確かロボ田中星人を3体上に送ったから……田中星人1体で5点か……」



御坂「そういえば、この点数って100点までいったらどうなるの?何かもらえるの?」



天井「その話は後々教えるとしよう。実際に見せたほうが早いからな」

154: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 15:49:38.66 ID:SsRSGMva0
『ビリビリ』



0点



上条探し過ぎ。
上条心配し過ぎ。
当麻連呼し過ぎ。
ビリビリし過ぎ。


もっとがんばりましょう。






御坂「なっ///」カーッ!!!


偏光能力「……上条関連ばっかだな……」


天井「若いな……私も昔は……いや、特に無かったか……」



上条「御坂……そこまで俺を自分の手で倒したいのか?」



御坂「ち、違……ってホントに違うわよ!!何でそうなんのよアンタは!!」




フレメア「なるほど……大体、お姉ちゃんはあのツンツンのお兄ちゃんが好」フガッ!!


御坂「フレメアちゃん?ちょっとだけお口閉じてよーねー?」ニコリ……

155: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 15:56:29.24 ID:SsRSGMva0
『歯抜け』





0点


根性あり過ぎ。


その根性で何故実生活が荒れるのか……



もっと熱くなれよ!!
熱い血燃やしていけよ!!

人間熱くなったときが、ホントの自分に出会えるんだ!!






御坂「…………もしかして修造さんが入ってるの?この玉」



上条「……人間熱くなった時が……成る程……」メモメモ……



天井「何故説教の部分をメモしてるんだ君は?」



偏光能力「つーか熱いとか燃えろとかやめてくれねぇか?さっき死ぬ寸前まで味わってんだよ……」







『舶来』



0点



星人と遊び過ぎ。
皆に守られ過ぎ。






フレメア「……大体、守られっぱなしはもう嫌……」


御坂「大丈夫よ……これから頑張りましょ?」ナデナデ

156: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:00:58.43 ID:SsRSGMva0
天井「さて……先ほど100点を取ればどうなるのかと言ったな……その答えを今から見せるとしようか」









『天さん』




110点




頑張り過ぎ。
いいところ持って行き過ぎ。



4周目クリアおめでとう。





トータル205点

157: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:08:00.61 ID:SsRSGMva0
上条「110点!?……しかもトータル205点ってことは……」



御坂「100点2回分?しかも、4周目クリアって……」




天井「そういうことだ。私は既に200点……今回合わせて400点か。つまり、4回クリアしていることになる」




偏光能力「4回……ちょっとまて。この点数は一回の戦いで毎回100近く取れるモンなのか?」



上条「いや……今回は俺が15点だし、前回は1体3点だった。それにメンバーの人数が多ければ点も分かれるだろうし……」



御坂「天井さん……貴方、一体何回この戦いを……」




天井「さぁな。いちいち数えてはいないさ。とりあえず1年ほど生き延びているだけだ。さ、100点メニューが出るぞ?」






●『』ザザッ……ザザザッ……

159: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:30:24.18 ID:SsRSGMva0
●『100点めにゅー』





次の中から選んでくだちい







1.この中の誰か1人の記憶を消して解放する



2.強い武器を入手する




3.めもりーから誰か1人再生する

160: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:35:31.98 ID:SsRSGMva0
上条「解放……武器……再生……」



御坂「あ、天井さん……これって……」



天井「見ての通りだ。100点を取った者は、自分を含めて部屋のメンバーを解放するか。


新しい強力な武器を得るか。


この部屋で死んだ人間を再生するかを選ぶことが出来る。私は今まで武器を選んでるがね」





天井を除く全員の表情が固まった。





上条「じゃあ……浜面や御坂の妹を生き返らせることも……」



天井「もちろん出来るさ。100点を取った者のみがね」スッ……



天井が黒い玉の側に近づく。

161: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:38:28.35 ID:SsRSGMva0
天井「さて……ここで一つ提案だ。私は今回、君達がいなければ間違いなく死んでいただろう。あのラスボスによってな……まぁ、私がいなければ君達も死んでいただろうが」




全員が天井の言葉をジッと聞いている。




天井「私としては、借りは今の内に返しておきたい。そこでだ……2回使えるこの100点の権利。その一つを君達に譲ろう」





上条「!?」


御坂「え!?」


偏光能力「何だと!?」


フレメア「?」




各々が天井の言葉に衝撃を受ける。
フレメアはイマイチわかってないようだが。

162: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:42:05.79 ID:SsRSGMva0
天井「浜面くんや、超電磁砲の妹さんを生き返らせることも出来る。
誰かこの中から1人、自由になることも出来る。新しい武器を得ることも出来る。
好きにするがいい。私は一足先に、武器をもらうがね。GANTZ、武器をくれ。3回目のクリア武器だ」




天井はそう黒い玉に告げると、今まで上条達が入った事のない、黒い玉の側にある部屋に入り、何やら『靴』のようなモノを取ってきた。




天井「あぁ、言い忘れていた。そういえばこの部屋には、GANTZの中に入りきらなかった武器や道具が何種類か置いてある。よかったら見ておくといい」

163: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:46:09.65 ID:SsRSGMva0
上条「!?武器や道具って……お前もっと早く言えよ!!まさかまた俺らに隠して」


天井「いや。これは本当に失念していたよ。中にある武器は、私は全くと言っていいほど使わなくてね。
君達にこの部屋について伝えていない事は、もう殆どないハズだ。多分ね」



御坂「だからと言って忘れてたで済む話じゃないわよ……もしかしたら生き残れた人がいたかもしれないのに」



天井「それはあくまで、『もしかしたら』の話だ。不確定な可能性によって責められるいわれはないな。
それに、中の武器は少々技術や経験が必要になる。もし教えていたところで、すぐに使いこなせるとは思えないがね」スッ……



そう言うと、天井は黒い玉の部屋へと上条達を誘う。

164: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:47:42.12 ID:SsRSGMva0
上条「御坂……天井の100点の使い道の件だが……」



御坂「え?う、うん。アンタが決めていいわよ?天井さんはアンタが助けたんだし」



上条「いや……お前が決めてくれ。浜面を蘇らせるか、妹を蘇らせるか……あるいは……」チラッ……




フレメア「?」



上条がふと、フレメアの方を見る。




上条「……いや、何でもない。とりあえず選択はお前に任せる。俺よりもお前の方が正しい選択が出来ると思うからな」




御坂「……うん……わかった……」




御坂の了承を得た上条は、新しく開かれた武器部屋へと入っていった。

165: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:49:32.88 ID:SsRSGMva0
御坂「選択か……武器は外すとして、誰かを解放するか蘇らせるか……やっぱりどう考えても、死んだ人が生き返る方がいいわよね。問題はどちらを生き返らせるか……」




初めてこの部屋に来た時から一緒に闘ってきた浜面を選ぶか。



自分にそっくりな自称妹を選ぶか。




御坂「……私は、あの子に悔いの無い生き方をしろと言った。……そして、あの子はそれを実行し、最後まで他人の為に戦い続けた……だったら……」




だったら、その守ろうとした浜面を選ぶべきなのだろう。



しかし、自分を姉と呼んだ、自分にそっくりな少女を見捨てる事になる。




御坂「……選べるのは1人……一体誰にすれば……」



御坂は究極の二択を迫られていた。

166: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:51:36.57 ID:SsRSGMva0
フレメア「お姉ちゃん……大体、大丈夫?にゃあ」



考え事をしている御坂へと、フレメアが話しかける。



御坂「ん?う、うん、大丈夫よ?大丈夫。……ねぇ、フレメアちゃん」



フレメア「?」



御坂「もし……浜面さんと、私の妹のどちらかにもう一度会えるとしたら、どちらがいい?やっぱり浜面さん?」



御坂は、参考の為か、フレメアに選択を聞いてみる。




フレメア「んー……お姉ちゃんの妹かな?」




御坂「え?ど、どうして?」



予想外の答えに、御坂がフレメアに聞き返す。

167: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/24(月) 16:56:45.73 ID:SsRSGMva0
フレメア「だって……大体、お姉ちゃんの家族なんだよね?
家族と会えなくて寂しいのは私もわかるから……だからお姉ちゃんの妹に戻って来てもらう。にゃあ」




御坂「!?……そう……ありがとね?でも、フレメアちゃんは、浜面さんに会えなくていいの?」




フレメア「お兄ちゃんは……大体、私が自分で戻す!!ずっとお兄ちゃんに私は守ってもらったんだから、今度は私の番!!」





御坂の問いに、フレメアは再び答えた。

それはそれは、とても強い意志を持って。




御坂「……そっか……そうよね……自分で100点取れば……」





フレメアの言葉により、御坂は選択を決めたようだ。



誰を救うのかを。

183: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 20:41:07.12 ID:Yg4THdb40
武器保管部屋





上条「な……なんだよコレ……」



偏光能力「スゲぇな……中々イカすバイクじゃねぇか……」



天井に誘われ、入った部屋の中で上条達の目にまず飛び込んだのは、見た事も無い形状の、バイクのような乗り物であった。


まるで、SF映画にでも出て来そうなソレは、通常バイクの二輪車では無く、大きな一輪のホイールの中に、ハンドルや操作機器が設置されているような形状だ。



ハンドルの周りには、様々なコンピュータが搭載されており、ハイテク感がにじみ出て居る。



正直、高校生の彼らには、中々魅力を感じるデザインである。

184: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:06:57.32 ID:Yg4THdb40
続いて、上条達は下に転がっている棒状のモノを見る。



偏光能力「ん?何だぁ?この棒は。何か刀の柄みてぇな……」チャキッ……



偏光能力が棒状のモノを持ち、軽く構える。




シュンッ!!



上条「へ?」


ドスゥッ!!!





偏光能力「うぉっ!?……つ、柄から刀が出てきやがった……」

偏光能力は、突如伸びた刀の刃に驚く。



しかし、最も驚いたのは……



上条「トッ……偏光能力サン……?上条さんに、何か恨みでもあるんでせうか?」ガタガタッ……



偏光能力「あー……その、なんだ……悪い……」


突如、自分の顔を掠め、壁に突き刺さった刃を見つめる上条であった。



上条さんは今日も全開バリバリ、平常運転で不幸である。

185: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:15:08.41 ID:Yg4THdb40
上条「あー……ビビった……えーと、あとあるのは……とりあえずあの壁に掛けられてるパンチグローブみたいなヤツとブーツみたいなのと……弓と矢か?コレ」



上条の視線の先には、指先の空いた手袋のようなモノが掛けられている。
組み技系の格闘家等がよく使う、オープンフィンガーグローブというモノに類似したモノのようだ。


恐らくコレは、パンチ力を増強するモノだろう。


そしてその側には、先ほど天井の持って来た靴とは、かなり形状の違うモノが置いてある。こちらは脚力等を増強するモノだろうか?

186: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:16:09.69 ID:Yg4THdb40
更に、壁に立て掛けられていたモノの中に、アーチェリーの弓のようなモノと、金属の矢が何本も入った矢筒のようなモノが見受けられた。


ただしこの矢筒、どう見てもタダの矢の入れ物には見えない。恐らく、ただの矢が入っている訳ではなさそうだ。

弓に関しても、何か仕掛けがあるのだろう。




上条「バイクに刀に格闘用のグローブやブーツみたいなモノ。更には機械弓矢か……天井の言ってた意味はそういう事か」






『教えたところで、すぐには使いこなせない』





天井の言う通り、この部屋にあるモノはXガン等に比べると、比較的扱いの難しい武器ばかりのようだ。

187: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:17:05.43 ID:Yg4THdb40
バイクに乗った事が無ければこのイカしたデザインのバイクは乗りこなせない。



剣術に縁が無ければ刀は使いこなせない。



格闘のセンスが無ければ、グローブとブーツは意味が無い。



弓術を学んで無ければ、矢を放とうが当たらない。





上条「チクショウ……やっぱりどうやっても浜面達は救えなかったのか……俺たちは……」



偏光能力「今更グダグダ言ってもしょうがねぇだろうが。どうやらこの部屋にあるモノはこれで全部みてぇだな。戻ろうぜ」スッ……




偏光能力は、御坂や天井の待つ部屋へと戻っていった。





上条「あぁ……そうだな……」チラッ……



上条は、ふと壁に掛けられているグローブと側にあるブーツ。更に、床に置いてある刀の柄を見る。



そして、それを部屋から持ち出していった。

188: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:24:43.77 ID:Yg4THdb40
天井「さて……決めたかな?この100点の使い道を……」




●『早く選んでくだちい』





黒い玉の部屋では、天井が黒い玉の前で待ちわびている。





100点の使い道。解放か新たな武器か再生か。






偏光能力「さぁ……レベル5のお嬢様は、どういう決断を下すんだろうなぁ……」



上条「御坂……何だったら、お前がこの部屋から解放されてもいいんだぞ?」



御坂「馬鹿言わないでよ。私が居なくなったら、アンタ達もれなく次のミッションで全滅よ?特にアンタ。私に今回2回も助けられてんのよ?」



上条「め、面目ない……不幸だ……」

189: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:30:29.59 ID:Yg4THdb40
御坂「……天井さん……一つ聞きたいんだけど……この100点メニューってのは、私達が100点取っても使えるのよね?もちろん何回でも」




天井「あぁ。使えるさ。100点毎に1回ね」




御坂「そう……わかった……なら私が選ぶのは……」スッ……



御坂が黒い玉の前に立つ。



















御坂「……1番を……フレメアちゃんを、この部屋から解放して頂戴」












190: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:35:26.94 ID:Yg4THdb40
フレメア「え!?」



偏光能力「ハァァアッ!?」



天井「……ほぅ……」



上条「……御坂……選んだか……」




御坂の選択に、他の4人はそれぞれの反応を見せる。






偏光能力「お前……いいのか?浜面もお前の妹も見捨てて、この嬢ちゃんを……」


フレメア「お姉ちゃん……大体、何で?」




御坂「簡単な話よ……2人が死んだのは、フレメアちゃんを守る為……。だったら、2人の願いを叶える事が最優先でしょ?
次のミッションで、私達全員が生きている保障なんてないんだから」

191: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:39:14.13 ID:Yg4THdb40
9900号と浜面。


2人は共に、年端もいかぬ小さな少女であるフレメアを守り抜いて死んでいった。


御坂は、何よりも先に、その2人の意志を尊重したのだ。



この地獄からフレメアを抜け出させるという事で。





天井「では……そのお嬢さんを助け、君の妹や、浜面くんは見捨てると言う事でいいのかな?」クスッ……



天井は、悪意のある笑顔で御坂に確認する。



御坂「誰が見捨てるなんて言ったのよ……」




御坂は、天井を睨みつけて言い放つ。

192: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:42:50.95 ID:Yg4THdb40
御坂「私の妹は……私が生き返らせる!!どれだけ時間がかかっても、必ず……そして、2人でこの部屋から解放されるわ」




天井「…………そうか」ニィッ……



御坂の決意に、天井は1人微かに笑みを浮かべる。



まるで、舞台で無様に踊る、道化師を見るかのように。






上条「そんで……この上条さんが、浜面を生き返らせる……それで全部解決だよな?御坂」ポンッ……




上条は、後ろから御坂の頭に手を置き、浜面を生き返らせる事を約束する。




御坂「……ゴメンね……アンタならそう言うと思って、この道を選んだの……」




上条「俺は御坂に選択を任せたんだ。それに対して文句つける気は無い。俺も同じ事を考えてたからな」



御坂「うん……ありがとう……」

193: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:48:37.71 ID:Yg4THdb40
ジジジジジッ……




フレメア「わ!?な、何!?」



突然、フレメアが驚いたように叫ぶ。


天井を除いた全員がフレメアに注目すると、フレメアの身体が何処かへとゆっくり転送されていくのが見えた。





上条「おい、天井!?これは一体」



天井「彼女はこの部屋から自由になるのさ。頭の中の爆弾も取り除かれ、この部屋に呼ばれる事は無い。……もう一度死んで転送されない限り、二度とな」




偏光能力「成る程な……こうやって終わるのか……この部屋の闘いは……」




フレメアの身体は、ゆっくりと転送されていく。

194: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:53:08.87 ID:Yg4THdb40
フレメア「お姉ちゃん……」ジジジジジッ……



御坂「……お別れね、フレメアちゃん……大丈夫、浜面さんもお姉ちゃんの妹も、必ず私達が生き返らせるから。

その時は、フレメアちゃんに会いに行かせるから待っててね?」ニコッ……



フレメア「うん……ありがとう、お姉ちゃん……」ジジジジジッ……





偏光能力「おい……確か黒い玉には記憶を消して解放って……」


上条「あぁ……多分、次にフレメアと会っても俺達の事は……」

195: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:54:30.59 ID:Yg4THdb40
100点メニューに書かれていた文字。




『記憶を消して、この部屋から解放される』



つまり、この部屋から解放される時は、この部屋に関わる全ての記憶を消されるのだ。



解放されたフレメアは今夜の事を何一つ覚えていないだろう。



自分が一度死んだ事も。


お婆さんが死んだ事も。


9900号や浜面に命を救われた事も。




少女ながらも、最後まで守ってくれた浜面に、特別な感情を抱いた事も。

196: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:58:26.57 ID:Yg4THdb40
フレメア「皆……大体……ありがとう……また会ったらよろしく。にゃあ」ジジジジジッ……




フレメアの身体は、既に肩の辺りまで消えている。




上条「……あぁ……またな、フレメア……」


偏光能力「ハッ……今度浜面に会ったら思いっきり甘えてやれよ?」



フレメア「うん。ずっと待ってる。お兄ちゃんの事……ずっと……」ジジジジジジジジジジジジジジジッ……






ジジジジジッ…………





197: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 21:59:54.01 ID:Yg4THdb40
…………






上条「……行っちまったな……案外呆気ないモンだ」



御坂「うん……フレメアちゃんまたねって……浜面さんにまた会えるのをずっと待ってるって……」



上条「……全部忘れちまうのかな……怖い思いをした事も……浜面や御坂の妹に守られた事も……浜面を守ろうとした事も……」




天井「人間忘れた方がいい事もある。ココでの記憶は、あの少女には少々ツライだろう。コレが一番の選択だったんだ。

そして、君は見事に正解を選んだな。おめでとう、超電磁砲」パチパチッ……




天井は、御坂へと称賛の拍手を贈る。




嫌な笑みを浮かべて。

198: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 22:02:00.03 ID:Yg4THdb40
御坂「…………」




天井「さ、そろそろ私は帰るとするよ。今日は少し疲れたからな」スッ……



天井が部屋から出て行こうと、扉に手を伸ばす。








上条「天井……そろそろ教えてくれよ……」


そんな天井へと、唐突に上条が問いかける。


天井「ん?何をだい?私がこの部屋について知ってる事ならば、殆ど話したつもりだが」



天井は飄々と上条の問いに答える。




上条「殆どだろ?まだ残っているハズだ。例えば……お前がこの一年間で、4回もクリアしておきながらこの部屋に残り続けている理由とかな」

199: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 22:07:12.99 ID:Yg4THdb40
天井「!?…………ホントに……君はやりづらいな……上条くん……」



上条の更なる問いかけに、天井の顔色が変わる。



御坂「ど、どういうこと!?まだコイツ、何か隠してるの?」




上条「おかしいんだ……コイツの行動は全て……。
コイツは、星人との闘いで、ひたすら生き残り、点数を稼ぐ事のみに専念している。他の人間を囮にしてでもな。
ネギ星人といい、今回といい……生き残る事への執着が半端じゃねぇんだよ」


200: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 22:09:23.64 ID:Yg4THdb40
天井「フッ……そりゃあ誰でも死ぬのは怖いモノさ。どれだけ強がってもね。だから他の人間を利用・犠牲にしてでも自分が生き残る。
別になんら不自然なところは無いかと思うがね?」



上条「なら何でまだこの部屋から抜け出さないんだ?最初にクリアした時点で、とっとと逃げればよかったんだ。

それをしない理由……あるんだろ?天井。命懸けの闘いを続けてでもこの部屋から抜け出さない理由……例えば……」




上条が追撃をかける。










上条「…………この部屋で得た知識に関する記憶が消える事を恐れている…………あのラスボスが言ってた『神の存在』……とかな」

201: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 22:16:02.25 ID:Yg4THdb40
天井「!?…………」



御坂「神……?何それ?あの星人、そんな事言ってたの?」



上条「俺がラスボスにこの闘いの意味を聞いた時……天井は明らかに焦っていた。そんな事より早く殺せ……とな。知られたくない事があるんだろ?『神』の正体とかなぁ……」




天井の表情が一瞬で険しくなる。そして、溜め息をつきながら口を開いた。





天井「敵わないな……君には……あの鳥人と共に、消してしまえばよかったよ……」





御坂「!?アンタ……」バチッ……



偏光能力「図星か……」



上条「教えろよ天井……お前がこの部屋で得た知識を……『神の存在』ってのを!!」



上条が、天井を完全に追い詰める。

202: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/25(火) 22:19:42.17 ID:Yg4THdb40
天井「…………といっても、私も殆ど知らないんだ。『神』とやらの正体はな……」



御坂「アンタ……本当なんでしょうねソレは……」バチバチッ……




御坂が、天井に対して牽制する。




天井「本当だ。しかしただ一つ……君達より知っている事がある」




上条「……それは何だ?」



上条が、天井に問いかける。



天井は、今までに見せた事の無い、真剣な顔つきで語る。

















天井「もうすぐ……近い内に、この世界は滅びる。恐らく、その『神』の手によってな……」











自身が知った、この世界の終末を。

210: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 18:56:47.21 ID:rF8JRm4x0
天井回想の前に……





…………






学園都市 とある小学校




フレメア「ん……あれ……ここは……」ムクッ……



真夜中のとある小学校の敷地内。



金髪の幼い少女、フレメア・セイヴェルンは、そこで目覚めた。



フレメア「大体……何でこんなところに……あれ?何でだっけ?」キョロキョロ




フレメアは辺りを見回すが、何故自分がここにいるのか覚えていない。




思い出せない。



思い出す事は無い。

211: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 19:02:18.09 ID:rF8JRm4x0
フレメア「……とりあえず、お姉ちゃんのところに帰ろうかな……あれ?そういえばお姉ちゃん、しばらく会えないからって私を誰かに預けたような……誰にだっけ?」テクテク



フレメアは、校内を歩きながら、今までの事を思い出そうとするが、思い出せない。







「あれー?こんな時間のこんな所に女の子がいるぞー?」チャキッ!!



バシュッ!!



フレメア「へ?ッ痛!!」ビッ!!





突如、フレメアの背後から下卑た声が聞こえてきた。そして、フレメアの小さな腕に、痛みが走る。


腕には、何かが掠めた傷があり、血が流れている。

212: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 19:03:35.46 ID:rF8JRm4x0
「あちゃー、外しちゃったかー。流石ゴキブリはすばしっこいなー」




背後の暗闇からは、ボウガンを持った高校生くらいの男が現れる。





フレメア「!?な、何?誰なの?」




男「あ?ゴキブリが俺に口聞いてんじゃねぇよ。こんな時間にうろついて……こんな小さいのに、もうスキルアウトの真似事か?おチビちゃん」ガチャガチャ……



男は、ボウガンに矢をセットしながら、フレメアにゆっくりと近づいていく。

213: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 19:05:04.63 ID:rF8JRm4x0
男「今日は全然駄目だなぁ。獲物が見つからねぇや。やっと見つけたのがこんなおチビだしな。ヤリがいねぇや」




フレメア「え、獲物!?」




男「そうだよ。おチビちゃんは無能力者だろ?能力者なら、とっくに能力使ってるハズだもんなぁ。
おチビちゃんみたいな、いずれスキルアウトになっちゃう無能力者は、この学園都市には必要ないの。ゴミなの!害虫なの!!わかるか?おチビちゃん」チャキッ!!




男は、矢をセットしたボウガンをフレメアへと向ける。

214: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 19:08:40.10 ID:rF8JRm4x0
フレメア「ご、ゴミって……」



男「そんな学園都市のゴミを、俺ら優秀な能力者様が、こうして夜な夜なボランティアで少しずつ掃除してるってわけよ。
くー!!我ながら、自分の行いに感心するねー」




男が言った言葉の意味が、フレメアにもようやく理解できた。




フレメア「や、ヤダ!!」ダッ!!



フレメアは、全力で男から逃げ出す。



バシュッ!!



フレメア「きゃっ!?」ビシィッ!!



ドサァッ!!!




しかし、男が撃ったボウガンの矢が、フレメアの足を掠め、そのまま転倒する。

217: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 20:21:21.36 ID:rF8JRm4x0
男「逃げんなよー。追いかけんのがめんどくせーだろー」テクテク



フレメア「や、ヤダ……来ないで……」ガタガタッ……




男「心配しなくていいさ。殺しなんてしないから。






ちょっと何発かブン殴って、服ひん剥いて校門の所に括り付けて置くだけだから。『私は無能力者の害虫です』って書かれたタスキでもつけてさー」ニコッ



男はにこやかに、フレメアへとそう言い放つ。





フレメア「た……助けて……誰か……」ガタガタッ……

218: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 20:24:15.36 ID:rF8JRm4x0
男「じゃ、早速校門まで行こうか。オラ、立てよゴミ!!能力者様の手を煩わせんじゃねぇ!!」ブンッ!!!



フレメア「ヤッ!?」バッ!!



殴りかかる男に、フレメアは目を瞑り、叫ぶ。










フレメア「助けてお兄ちゃん!!!」









ザッ!!


ガシィッ!!!




次の瞬間、フレメアと男の間に、一つの大きな影が割り込む。






男「なっ!?ス、スキルアウトかお前!?」ググッ……



男は、自分の拳を受け止めたその影に驚く。

219: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 20:28:13.35 ID:rF8JRm4x0
「…………こんな小さな子供にまで……貴様ら能力者は一体、何様のつもりだ」グググッ……




メキメキメキッ!!!




男「ガァァアッ!!!離せ!!離せよテメェ!!折れる!!手が折れるって!!」メキメキメキッ!!!




スッ……




叫ぶ男の背後から、更に別の影が現れる。





「んじゃ、手より先に首の骨をへし折ってやろうか?それとも鉛弾の方がお好きかな?」チャキッ!!




男の後頭部には、拳銃が突きつけられている。




同じ日本とはいえ、他の都市とは独立しているこの学園都市では、こうして銃を持った者も珍しくはない。





まぁ大概は、無能力者の集団『スキルアウト』と呼ばれる者達が持っているのだが。

220: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 20:35:09.84 ID:rF8JRm4x0
男「クッ……図に乗ってんじゃねぇぞこの無能力者が!!テメェらなんざ、このレベル3の俺の能力で」コォォオッ!!!




バキィッ!!!




男「あぶっ!!!」ズザァァァアッ!!!




男が能力を発動させようとした瞬間、男の拳を掴んでいた影によって、男は思いっきり殴り飛ばされた。




「…………他愛ない。半蔵、コイツの始末を頼む」




半蔵「了解。えーと……お、学生証見っけ。結構ここから近いな。
んじゃ、浜面探すついでに、コイツの学校の校門に、全裸で括り付けてくるぜ駒場の旦那。
『私は少女にイタズラしようとした変態です』って壁にペイントしてな」





駒場「…………程々にな」





半蔵と呼ばれた男は、そのまま近くに止めてあった車に乗り込み、男を運んでいった。

221: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 20:38:12.24 ID:rF8JRm4x0
フレメア「ゥゥッ……」グスッ……




半泣きのフレメアの前には、駒場と呼ばれた大男が座り込む。



駒場「…………大丈夫か?こんな時間に、何故こんなところに」



フレメア「グスッ……わからない……気がついたらここにいて……いきなり今のヤツに襲われて……おじちゃんありがとう……」




駒場「……おじ……まぁいい。半蔵が戻って来たら家まで送ろう。どの辺りだ?」



フレメア「……お姉ちゃんと住んでたんだけど、お姉ちゃんがしばらく会えないからって……それで大体、誰かに預けられたんだけど……それも覚えてない……にゃあ」

222: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 20:42:11.97 ID:rF8JRm4x0
駒場「…………そうか。他にいく宛が無いのなら、俺たちと一緒に来るか?俺たちのメンバーには女も大勢いる。…………きっと歓迎してやれるハズだ」




フレメア「……信じていいの?」




駒場「…………それはお前が決める事だ。信じられると思うなら……来るがいい。無理ならば、お前はアンチスキルのところまで、俺達が責任持って届ける」





フレメア「……わかった……ついて行く」スッ……




フレメアは立ち上がり、駒場と共に小学校を後にする。

223: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 20:45:17.43 ID:rF8JRm4x0
フレメア「そういえば、なんでおじちゃん達はこんな時間にこの辺にいたの?」




フレメアは、歩きながら駒場に尋ねる。




駒場「…………俺達の仲間の1人が突然居なくなったんでな。連絡もつかないから手分けして探していたんだ。
この写真の浜面と言う男なのだが……流石にわからないか?」



駒場が、駒場と半蔵と浜面で写った写真を取り出す。




フレメア「うん。聞いたことも見た事も無い……ん?いや、あるような……にゃあ」ハテ?

224: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 20:48:32.98 ID:rF8JRm4x0
駒場「…………そうか。そういえばさっき……お兄ちゃん、と叫んでいたな。姉の他にも兄がいるのか?」



フレメア「え?いないけど……そんな事言ったかな?言ったような……にゃあ」ハテ?




フレメアと駒場は、ゆっくりと歩いていく。







こうしてフレメアは、しばらくの間、危険に晒される事も無く、スキルアウトのメンバーに可愛がられ、健やかに過ごす。








この夜、フレメアを命を賭して守り抜いた男。





フレメアがお兄ちゃんと叫び、本当に助けを求めた男を思い出す事は、もう二度と無い。













2人がもう一度出会う、その時までは。

230: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 22:54:34.60 ID:rF8JRm4x0
…………




およそ1年前



学園都市の何処かの施設 体育館内にて





天井「な……何故だ……何故私達はこんな事をしなければならないんだ!?教えてくれ!!殺さないでくれぇ!!!」




スーツが壊れ、ボロボロになった、まだ部屋に転送されたての天井は、泣きながら目の前の星人に懇願する。






その星人は、幾つもの細い腕を持ち、人体模型のような姿をしていた。


その星人の周りには、同じくスーツを着た人間達が十数名、いずれもバラバラに解体され死んでいる。






星人は、黒い玉に『ひょうほん星人』と名付けられていた。

231: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 22:56:21.88 ID:rF8JRm4x0
ひょうほん星人『……知りたいのかい?真実を』



ひょうほん星人が、天井の問いに答える。




天井「!?あ、あぁ!!知りたいんだ!!何故こんな訳のわからない闘いをさせられているのか!!あの部屋は何なのか!!」




正直天井は、そんな事はどうでもよかった。



ただ、死にたくなかったのだ。ひたすら生にしがみついていた。なりふり構わず。




ひょうほん星人『だったらいいモノを見せてあげるよ。君がどんな存在か。『神』にとって、どれだけゴミみたいな存在なのか』スッ……




ひょうほん星人が、天井の頭に手を乗せる。

232: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/26(水) 22:58:32.60 ID:rF8JRm4x0
天井「か、神?何だ?どういう事……ガッ!?」ドンッ!!





その瞬間、天井の頭に凄まじい量のイメージが流れ込む。







ザッ……ザザッ……


『……対能…進化実験……私の……型能力者計画をそれに……』



ザッ……ザザッ……





『……君が……方…行……よろ……』






ザッ……ザザッ……






『……化け物め……これが……位の能力……』

235: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 03:22:35.28 ID:i2GRLbjU0
天井「な、何だ!?何だこの映像は!?」



ひょうほん星人『これが君の未来さ。決して逃れられない未来……運命と言うヤツだ。そしてこれが……』




流れ込む映像は更に続いていく。






天井「!?……な、何だ?この光景は……一体何が起きてこんな……」




天井に流れ込む映像。




まるで、今目の前で、実際に体験しているかのようなソレは、天井の頭に強く植え付けられた。

236: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 03:28:59.43 ID:i2GRLbjU0
それは、美しい聖歌のようなメロディーが鳴り響く世界の光景。






それは、破壊され尽くした学園都市の光景。







それは、破壊され尽くした世界中の大都市の光景。






空は黄金に輝き、神々しく、禍々しい『何か』が降って来て、そこら中を蔓延っている。








その『何か』と戦う、見慣れた異能の力や、それとはまた違う、見慣れない力を持つ人々。








そして、それらに混じって戦う、見覚えのある黒いスーツを着て、見覚えのある銃を構える人間達。











ひょうほん星人『これが、この世界の未来……そしてこの闘いの結末さ。これは必ず訪れる』

237: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 03:35:21.77 ID:i2GRLbjU0

















『審判の日』からは、誰も逃れる事は出来ないのさ。





君達も。






そして、僕達も。


















238: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 03:39:26.51 ID:i2GRLbjU0
天井「『審判の日』……私達は、いつかこいつ等と戦うのか?この……化け物達と……」ガタガタッ……






天井は、いつか必ず来ると言う、映像の『何か』に、心底怯えている。







ひょうほん星人『……いいや。一つ訂正しよう。残念だが君はそこには立てない。いないんだよ』







天井「!?いない?どういう事だそれは!!」


天井は、ひょうほん星人にくってかかる。





ひょうほん星人『教えてあげるよ……君はこうなるんだ』スッ……






ひょうほん星人が、再び天井にイメージを送り込む。

239: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 03:47:05.57 ID:i2GRLbjU0
ザッ……ザザッ……ザザザッ……












『……ihbf殺wq……』












ザザザッ……ザザッ……

240: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 03:50:43.52 ID:i2GRLbjU0
天井「ガッ……!?な、何だ……何だコレはァァァァアアアアアアア"ア"ア"ッ!!!!!!」







イメージを認識した瞬間。




天井は狂ったように叫び出した。





この時、天井が自身の未来に何を見たのかは、その時の天井とひょうほん星人にしかわからない。






















ひょうほん星人『君は、自分自身の罪に裁かれるのさ』

241: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 03:53:33.35 ID:i2GRLbjU0
…………







天井「その後、気がついたら私はこの部屋に戻っていたよ。どうやら、他のメンバーがその星人を倒したらしくてね。
それでも、その時生き残ったのは、20人近くいたメンバーの内、わずか4人だった」ガタガタッ……




天井は、ホンの少し震えながら上条達へと語り終える。




天井「……これが私の知るこの部屋についての全てだ。もう隠している事は何もない」




上条「……『神』……それがこの闘いの終着点なのか?<審判の日>って何なんだ?いつ起こるんだ?」

242: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 04:01:14.14 ID:i2GRLbjU0
天井「言っただろ?私が知ることはもう無い。<審判の日>が何時なのか。『神』の正体。それらは全くわからないのさ」スッ……




天井は、話し終えると、フラフラと部屋から立ち去ろうとする。
余程、過去を思い出した事で精神が疲労したのだろう。





御坂「待って、天井さん」



天井「ん?……まだ何かあるのか?そろそろ私は休みたいのだが」







御坂「……天井さんは最後に……何を見たの?」





御坂は、語られなかった天井の最後の映像に何を見たのかを問う。

243: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 04:05:02.40 ID:i2GRLbjU0
天井「……わからないんだ……何か恐ろしいモノを見た記憶はあるんだが、どんなモノなのかは思い出せない。



……だから、私はこの部屋で闘い続けるのさ。自分の死期から逃れる為に、他の人間を犠牲にし、強力な武器を手に入れ続ける。



もし、この部屋から解放されれば、自分の死期を見た記憶すら無い私は、すぐに死ぬかもしれない。
そして例え、何事も無くても、スーツも武器も無ければ、<審判の日>になす術も無く、確実に死んでしまう」





天井は、心底怯えた目で、上条達に語る。





上条「天井……<審判の日>は……必ず来るのか?」





上条は、天井に再度問いかける。






天井「……これだけはハッキリ言える……あの映像……あの光景を見て、私は確信している……」スッ……




天井は、部屋の扉に手をかけ、外に出る瞬間、最後にこう呟いた。

244: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/27(木) 04:06:39.69 ID:i2GRLbjU0












「未来を変える事は出来るかもしれないが……<審判の日>は必ず訪れる。それもそう遠くない日に。わかるんだ……それだけは……」






そうして天井は、姿を消した。













264: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 22:04:28.53 ID:d1DfHnJH0
<1時間後>





常盤台女子寮 御坂・白井部屋




ガチャッ……




御坂「あぁ……疲れた……でも何とか今日も生きて帰れたわね……」グッタリ……



天井が部屋を出て行った後、残っていた3人はそれぞれの帰路に着いた。


御坂は、鬼の寮監の目を掻い潜り、どうにか無事に部屋に辿り着いたようだ。





白井「ァ……ハァアッ……///……お姉様ァ……そこォ……///……ンァアッ!!」ビクンッビクンッ!!




御坂「…………もうツッコむ気力も無いわ……うわ!?もう3時じゃない……シャワーは朝に浴びようかな……」バサァッ……




隣でビクンビクンしている変態を他所に、御坂はベットに飛び込む。




御坂「……私の妹……いるハズの無い……でも、何故か全くの他人には思えない……待っててね……必ず……生き……返……」スゥッ……





そのまま御坂は、意識を閉じた。

265: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 22:07:25.89 ID:d1DfHnJH0
第7学区 とある高校男子学生寮前






上条「やべぇ……そういえば、インデックスの事忘れてた……」ダラダラダラッ……




ホンの数時間前まで、凄まじい死闘を繰り広げていた上条は、一緒に銭湯に向かっていたインデックスの事を今思い出す。



上条は道中、神裂と名乗る刀を持った女魔術師によって襲撃され、瀕死の重傷を負うも、GANTZに転送された事で、現在は無傷での帰還となっている。




しかし、GANTZに呼び出されていた数時間の間、完全にインデックスの事は放ったらかしになっていたのだ。

266: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 22:10:29.34 ID:d1DfHnJH0
上条「部屋の電気は……ついてるな。切って出て行ったから、一旦インデックスが一度帰ってきたのは間違いない。問題は……」ゴクッ……





問題は、あの刀を持った女魔術師が、部屋にいるインデックスを襲っていないか。




GANTZに呼ばれるという、決して逃れられない事とはいえ、現状インデックスを1人にするという事は、上条にとって、最大の失点であった。




上条「……一応、このグローブをつけておくか……見た目は普通の格闘技用のグローブだし……」スッ……




部屋に魔術師が居る事を想定して、上条が武器部屋で手に入れたグローブを装着し、自室の扉の前に立つ。

267: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 22:48:14.54 ID:d1DfHnJH0
上条「フゥッ……フゥッ……よし……行くぞ!!」ガチャッ!!





上条は、意を決して扉を開く。





そこで目にした光景とは……

268: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 22:50:08.95 ID:d1DfHnJH0
小萌「あー!!やっと帰ってきましたねー上条ちゃん!!
シスターちゃん!!ステイルちゃん!!神裂ちゃん!!上条ちゃんが帰ってきましたよ!?」




インデックス「ムゥ……遅いんだよーとうまー!!こんな時間まで一体何処に行ってたのかも!!」ウトウト……




上条「……こ、小萌先生!?……何でこの部屋に?それにインデックス……よかった……」ガクッ……




部屋に入った上条を迎えたのは、上条の高校のクラス担任であり、永遠の少女と名高い小萌先生。
そして、眠そうに目を擦りながら、上条の帰宅を待っていたインデックスであった。



気が抜けた上条は、一気に床へと崩れ落ちる。

269: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 22:56:24.72 ID:d1DfHnJH0
小萌「もー。完全下校時刻をとっくに過ぎてるのに、銭湯周辺でウロウロしてるシスターちゃん達をたまたま見つけて、一緒に待ってたんですよー?上条ちゃんが帰ってくるのを!!
一体こんな遅くまで何処行ってたのですかー?電話も出ませんし!!」




上条は、小萌に言われて携帯を開く。


3時間前程から、定期的に小萌から電話があったようだ。



上条「す、すいません小萌先生!!ちょっとどうしても外せない用事がありまして……」ピクッ……



ここで上条は、ようやく小萌の言葉に異変を感じとる。

270: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 22:58:44.58 ID:d1DfHnJH0
上条「ちょっと待ってください……さっき小萌先生……シスターちゃん『達』って言いましたよね?それに……」



上条は更に思い出す。




小萌が一番最初に言った言葉。



小萌が知るはずの無い名前。











『あー!!やっと帰ってきましたねー上条ちゃん!!
シスターちゃん!!ステイルちゃん!!神裂ちゃん!!上条ちゃんが帰ってきましたよ!?』









『ステイルちゃん!!神裂ちゃん!!』

271: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 23:04:24.77 ID:d1DfHnJH0
ドクンッ……ドクンッ……




上条の背筋に、冷たい汗が流れる。




小萌「えぇ。何でも、シスターちゃんの昔からの知り合いだそうで。……色々お話聞かせて頂きましたよー上条ちゃん」




インデックス「とうま……ちょっとお話があるんだよ……この2人からも……」




上条「2人……まさか……」ドクンッ……ドクンッ……




上条の心臓が静かに高鳴っていく。




いるハズの無い人間がいるのだ。




決してこの部屋にいるハズの無い人間が。






ステイル「……また会ったね……」スッ……


神裂「先程はどうも……御身体の方は大丈夫ですか?」スッ……






目の前には、自分が数日前完膚無きまでに殴り倒した赤髪の魔術師と、自分が先程完膚無きまでに敗北した女魔術師の姿があった。

272: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 23:07:01.14 ID:d1DfHnJH0
…………




第7学区 とある路地裏




偏光能力「…………」カッ……カッ……カッ……




偏光能力は、黒い玉の部屋があるマンションから出て行き、特に行く宛も無く、気だるそうに路地裏を歩いていた。





偏光能力「……そういや、俺ってアンチスキルに捕まってたんだよなぁ……今頃脱走騒ぎにでもなってんのか?
……手配とかされてんのかねぇ?めんどくせぇ……」カッ……カッ……カッ……

273: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 23:14:11.70 ID:d1DfHnJH0
偏光能力「当分のメシと宿はどうすっかなぁ……あとクスリは……何かそんな気分じゃねぇな。
やけに身体は軽いし、ヤク抜きでもされたのか?」カッ……カッ……カッ……




偏光能力は、知ることは無いが、GANTZによって死んだと判断され部屋に転送される際、その死因となった原因のモノは、無かった事にされるのだ。



病気にしろ、大怪我にしろ。



偏光能力の場合、薬の影響で病んだ身体は、薬を始める前の健康体に戻っている。
歯だけは何故か、所々欠けたままなのだが。

274: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 23:15:37.55 ID:d1DfHnJH0
偏光能力「……で……いつまでついて来てんだ?天井さんよぉ……」ザッ!!




突如、偏光能力が振り返り、立ち止まる。




その視線の先には、先に部屋を出たハズの天井が立っていた。




天井「ようやく気付いたか。このまま気付いてくれなければどうしようかと思ったよ」クスクスッ……




偏光能力「とっくに気づいてたっつーんだよ馬鹿。で?俺に何か用か?」




偏光能力が、自分を追ってきた天井に、その真意を問う。

276: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 23:20:59.28 ID:d1DfHnJH0
天井「いや、君はどうやらあの部屋に来る前に、色々と騒動を起こしてるみたいだしね……行く宛が無いだろうと思ったんだよ」


偏光能力「ハッ、そりゃあご心配どうも。で?何だ?お前が温かいメシと風呂とベットでも与えてくれんのか?
見返りに、星人達の囮にでもされちゃあたまんねぇんだけどなぁ」



天井「いいや。そんなつもりは無いさ。ただ、君が温かい食べ物と豪華な風呂とベットを得る手段を教えることは出来る。
それも、学園都市のお墨付きでね……」




偏光能力「……んな魅力的で素晴らしい話を信じると思うか?」

277: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/28(金) 23:22:28.46 ID:d1DfHnJH0
天井「信じるも何も、私はただ君に道を示しているだけさ。
真っ暗で、日の当たらない道をね……進むか退くかは、君の自由だ」ニィッ……




天井は、いかにも悪役の笑みをこぼしながら、偏光能力へと語りかける。




偏光能力「……所詮、このままじゃあのたれ死ぬだけか……進んでやろうじゃねぇか……案内しろよ、その真っ暗で日の当たらない道をよぉ……」




偏光能力は、天井の提案を呑む。




他に選択肢は無いのだから。





天井「了承したよ、それでは行こうか。学園都市の闇へと」スッ……




天井がエスコートするように、偏光能力を暗闇へと導く。






天井「ようこそ『暗部』へ。そして我が『ガンツ』へ。歓迎するよ、偏光能力クン」ニィッ……






こうして、各々にとって途轍も無く長い長い、7月24日が終わりを告げた。



288: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:12:23.14 ID:fPr2zmAe0
………………





時は戻り


7月27日 昼 ファミレスにて




ワーワーガヤガヤ




御坂「(アレから結局夜遅くに帰ってきた事がバレて、寮監にプール掃除させられるわ、黒子にあの夜何をしてたのか問い詰められるわ、黒子が発情して下着テレポートさせるわ、夜中には黒子のルパンダイブに襲われて貞操の危機に陥るわ……アレ?私、あの子と同じ部屋にいるのヤバくない?)」ハッ!?




白井「あら?どうなされましたのお姉様。物憂げに考え事など」

289: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:14:02.72 ID:fPr2zmAe0
御坂「……黒子……寮監に言って部屋変えてもらおっか?……大丈夫。アンタはこれからも、私の大事な後輩だからさ」ニコリッ……



白井「!?と、突然何ですの!?その死刑宣告に等しい言葉は!!」ガタガタッ……




突拍子の無い御坂の宣告に、白井はこの世の終わりのような顔で叫び出す。




初春「白井さん、ここファミレスなんですからもう少し静かにしてください。ほら、他のお客さんが見てますよ?」



白井「そんな悠長な事言ってられませんの!!黒子が何かいたしましたかお姉様!?ハッ……もしやこないだお姉様のお召したあのカエル柄のパンツを拝借して思う存分お姉様の香り」



バチバチィッ!!!

291: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:15:17.41 ID:fPr2zmAe0
御坂「あ、気にしないでくださーい。この子ちょっと病気なもんで。こうすると具合が良くなるんですよー」アハハー




白井「」シュゥゥゥウウッ……




黒焦げになった白井を他所に、御坂は周りの客に対して笑顔を振りまく。




佐天「……何で御坂さん、白井さんと同じ部屋のまま何ですか?このままじゃ、女の子の大事なモノを色々と失いますよ?」



御坂「そうねぇ……本気で部屋変え考えておこうかしら……」ハァッ……




御坂が、深い深い溜め息をつく。

292: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:17:32.16 ID:fPr2zmAe0
佐天「えーと……ゴホンッ!!まぁ、恒例の私の噂話はこれでお終いとしましょう!!
そういえば、新しいクレープ屋が出来たみたいなので、今から皆で行きませんか?中々評判いいみたいですよ?」




初春「いいですねー、クレープ。今日はとことん甘味を貪っちゃいましょー」



佐天「初春……アンタ既にあのデカイパフェ食ってんだから……太るよ?最近体重計乗った?」



初春「う……そ、その分動けばいいんです!!風紀委員は多忙ですか!!」





御坂「フフッ……仲いいなーあの2人」ズルズルッ……


白井「」ズルズルッ……

293: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:19:17.90 ID:fPr2zmAe0
御坂は、気絶している白井を雑に引きずりながら、クレープ屋へと移動する佐天と初春のやりとりを見ていた。




御坂「新しいクレープ屋か……そういえば、最近あの部屋以外ではアイツと会ってないな……あ、新しい店をダシに……誘ってみようかな……///」ズルズルッ……



白井「あ、あの部屋!?部屋!?お、お姉様から殿方とのメイクラブの匂いがぁぁぁあああ!!!どこのどいつが奪ったのですの!?お姉様の世界遺産級の処」




バチバチィッ!!!!




御坂「そんでクレープを2人で食べて……公園でもブラブラ歩いて……そんで帰り際に……わー、これが青春ってヤツ?甘酸っぱいー///でも絶対無理ー///」イヤンイヤン




白井?「」プスプス……

294: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:20:57.28 ID:fPr2zmAe0
佐天「……仲いい……のかな?一応……」



初春「白井さん、頭が雷様みたいになってますね。こないだストレートパーマあてたばかりなのに……」



御坂「ハッ!?……ま、まぁ、そんな事は置いといて……ホント、今何やってんのかしらね。アイツ……」



我に帰った御坂は、晴れ渡った空を見上げながら、あのツンツン頭の少年を思い浮かべる。

295: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:32:57.90 ID:fPr2zmAe0
………………




第7学区 ボロアパート 小萌宅



インデックス「ゥ……ウゥ……」


小萌「シスターちゃん……」ナデナデ……



近代的な建物が数多く並ぶ学園都市にて、昭和の香りがするこのボロアパートは、19学区以外では珍しいモノである。


そんなアパートの一室にある、小萌の部屋では、インデックスが床に伏せており、小萌が心配そうに看病していた。




上条「インデックス……おい、神裂。例の、アイツを蝕んでいる魔術とかいうのは、まだどんなモノかわかんねぇのか?」

296: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:48:47.99 ID:fPr2zmAe0
部屋の玄関口で、インデックスを心配そうに見ながら、上条はかつて敵対していた神裂への問いかける。



神裂「えぇ……インデックスと共に様々な術式を調べていたのですが……」



ステイル「あの子は倒れてしまったし、作業は更に難航している……正直お手上げさ」





赤髪の魔術師ステイルが、上条へと返答する。



敵対していた同士が、何故このようなことになっているのか。


話は24日深夜まで遡る。

297: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 16:51:25.68 ID:fPr2zmAe0
7月24日 23時頃


銭湯



カポーンッ……




インデックス小萌「ほぇ~………」ダラ~



上条と逸れたインデックスは、途中、同じく銭湯へ向かっていた小萌と会い、無事に銭湯に着き、ゆったりしていた。



小萌「それにしても、シスターちゃん。こんな夜中に1人で銭湯に向かってたのですか?上条ちゃんは一緒じゃあ?」



インデックス「知らないんだよ!!いつの間にか居なくなって、おかげで小萌と会えなかったら行き倒れるところだったんだよ!!
帰ってきたら、全身まるかじりの刑に処するかも!!」



本人は、ただいま生死をかけた戦い真っ只中なのだが、それを知らないインデックスは、上条への怒りを露わにする。

298: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 17:19:46.84 ID:fPr2zmAe0
小萌「むー。無責任に放り出す子じゃないですからねー上条ちゃんは。何かあったのでしょうか?事故にでもあってなければ良いのですが」



インデックス「とーまの不幸体質は、もはや神の域に達してるんだよ!!神に仕えるシスターである私を存外に扱う時点で、更に神罰が下るかも!!」ザバァッ!!!




上条の心配をする小萌を他所に、インデックスのヒートアップが止まらない。
余程、突然1人にされた事に憤慨しているのだろう。

突然、思い立ったように湯船の中から立ち上がる。

299: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 17:21:02.99 ID:fPr2zmAe0
インデックス「大体とーまは、初対面で私の大事な修道服を破くわ、ここ数日のご飯は全部OKAYUだわ、少し私に対する対応が酷いかも!!
せめて、ドロドロしてない普通のお米ご飯が食べたい……ん……だよ……」フラァッ……



ザバァァァァアンッ!!!!




小萌「!?し、シスターちゃん!?」




食に対する改善を声高々に発するインデックスが突然、フラフラと湯船の中に倒れ、水柱が立つ。



















神裂「い、インデックスゥゥゥゥゥウウッ!!!!!」ガララララッ!!!バンッ!!!


小萌「ヒャアッ!?」ビクゥッ!!!

300: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 17:34:18.40 ID:fPr2zmAe0
インデックスが湯船に沈んだ瞬間。





突如、小萌が決して手に入れる事の出来ない、凄まじいスタイルを誇る黒髪長髪の女性が、隠すところも隠さず、慌てて銭湯の中へと入って来る。




神裂「インデックス!!しっかりして下さい!!クッ!!期限まではまだ時間があると思ってましたが!!まさかこんなにも早く進行しているとは……。
ステイル!!何してるんですか!?早く来て下さい!!インデックスを運びますよ!?」




女性は、何やら手に持つ札のようなモノへと叫ぶ。誰かを呼んでいるようだ。

301: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 17:35:49.44 ID:fPr2zmAe0
ステイル『…………これでも僕はイギリス紳士なのでね……女性の入浴しているところへ入り込むなど、そんな無粋な真似が出来るハズないだろう』




神裂「何を言ってるんですか!!緊急事態なんですよ!?すぐに術式を組んで、インデックスの記憶を除去しなければ!!
貴方はインデックスを守り続けるのだと誓ったのでしょう!?」




ステイル『!?クッ……しかし、僕は……クソォッ!!』ブッ……











小萌「あ……あのぉ……ちょっといいですか?」オソルオソル……




神裂「うっせぇんだよド素人がぁぁぁああっ!!!!」




小萌「ヒィッ!?」ビクゥッ!!!




取り乱す女性に、小萌が声をかけようとするが、凄まじい剣幕で追い立てられる。

302: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 17:54:03.43 ID:fPr2zmAe0

小萌「え……えっとですね!?……多分シスターちゃん……その……のぼせちゃったんじゃないかなぁ?……て、先生は思ってるんですが……」ガタガタガタッ……




神裂「へっ!?」バッ!?



怯える小萌の言葉に、神裂がふと我に帰り、インデックスを再度見る。





インデックス「うぅ……あ、頭がボォー……て……世界がグルグル回ってるんだよぉ……」ピヨピヨピヨッ……





熱い湯船に浸かり、突然立ち上がり、声高々に叫ぶ。



インデックスがのぼせる要素は、フルコースで揃っていた。

303: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 18:10:32.43 ID:fPr2zmAe0
小萌「し、シスターちゃんって外国人だから……熱いお風呂にゆっくり浸かる習慣は無いんじゃないかなぁ……って、先生は思ってるんですが……」ガタガタガタッ……




神裂「…………し……」スッ……




女性は、ゆっくりと立ち上がる。





神裂「失礼致しましたぁぁぁぁあああ!!!」ダッ、ダッ、ダッ、ダッ!!




そして、逃げるように走り出す。





小萌「あ!?せ、銭湯で走ったり何かしたら……」





神裂「ヒャアッ!?」ズルゥッ!!


ドサァッ!!!





案の定、水浸しの床に滑り、女性は派手に転ぶ。

304: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 18:11:48.12 ID:fPr2zmAe0
ステイル「だ、大丈夫かインデックス!!!」ガララララッ!!!バンッ!!!




その直後、今度は赤髪の背の高い男が、中に慌てて入ってくる。




神裂「……アッ……」




ステイル「ん?……ッ!?」バッ!!



ガララララッ!!!ピシャンッ!!!





その瞬間、全裸で派手に転び、色々と丸出し無防備になっている女性と、男の目が合い、入って来た男は即、その場から離れていった。





神裂「ス……ステイルゥゥゥゥゥウウッ!!!!!」ダッ!!!





女性は、凄まじい殺気を放ちながら、男の跡を追う。

305: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/06/30(日) 18:12:45.48 ID:fPr2zmAe0
『み、見てない!!僕は何も見てないぞ!!』




『黙りなさい!!インデックスより先に、貴方の記憶を消して差し上げます!!オラァッ!!頭出せやぁぁあ!!!』





『何故刀を……物理的に消すつもりなのか!?大体、僕は断ったのに君が来いと』





『関係ねぇよ!!かぁんけぇいないンだよぉぉぉぉぉおおっ!!!!』




扉の外では、凄まじい攻防が繰り広げられているだろう。



小萌「え……と……と、とりあえず、シスターちゃんはお風呂から上げましょうか……」ザバァッ……

314: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 19:42:10.25 ID:cczMHgpB0
ステイル「…………」



神裂「…………」




上条「で……のぼせたインデックスを神裂達が担いで、小萌先生と共に、俺の部屋へと運んだと……。
まぁ、鍵はインデックスも持ってたから入れたんだろうが、何でそのまま先生や神裂達が残ってるのでせうか?」



小萌「細かい事は、言いっこ無しなのです。元はと言えば、上条ちゃんがシスターちゃんを放ったらかして何処かへ行くのが悪いのですから!!」



インデックス「そうなんだよ!!全くこんな時間までどこをほっつき歩いていたのかも!!」

315: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 19:50:13.64 ID:cczMHgpB0
上条「ハハッ……上条さん結構頑張ってたんだけどな……不幸だ……」ハァッ……





GANTZの部屋の事は、誰にも言うことは出来ない。


もし、GANTZの存在が、他の人間にバレる事があれば、頭の中に埋め込まれた爆弾により、GANTZに殺される。



今宵、田中星人達との死闘を繰り広げた上条の苦労は、誰にも労ってもらうことは出来ないのだ。





小萌「ふぅ……さて、上条ちゃん?本題に入りますよ?」


上条「!?ほ、本題とは、一体何の話でせうか?」ダラダラッ……

316: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 19:59:00.22 ID:cczMHgpB0
上条は、もう一つの隠し事。



インデックスや魔術師の存在についての発覚を、恐れていた。


先日、インデックスが負傷した際、学園都市の能力開発を受けていない小萌に、回復魔術を使用してもらったが、小萌は魔術の存在をまだ知らない。



知った事で、いらぬ心配をかけさせぬようにと、上条は配慮していたのだが、神裂達がいる以上、これ以上ごまかす事は出来そうにない。





小萌「ハァッ……上条ちゃん。先生はガッカリです。上条ちゃんが、こんな事をするなんて……」



上条「す、すいません……ちょっと色々事情があったモノで……」スッ……



上条が、怒られる前に先に謝ろうかと、土下座の準備を行う。

317: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:10:05.85 ID:cczMHgpB0
小萌「どんな理由があっても、暴力では何も解決出来ないのです!!先生は、教育者として、上条ちゃんをしっかりと正しい道へと進ませる義務があるのです!!」



上条「ハイ……ん?暴力?」



上条は、何の話かと首を傾げる。






小萌「そうです!!ステイルちゃんに聞きましたよ?上条ちゃんに全力でぶん殴られたと」









ステイル「…………」ニヤリ……


上条「!?(あ、あの野郎……小萌先生にチクりやがった!!)」



小萌が上条へと愛の指導を行うその背後で、ステイルはほくそ笑んでいた。

318: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:12:54.51 ID:cczMHgpB0
上条「せ、先生?実はその話、先にステイルが」



小萌「先生は上条ちゃんの言い訳なんて聞きたくありません!!上条ちゃんには真っ直ぐに生きる大人になってほしいのです!!」



上条の言い分も、小萌は聞こうとしない。


どうやら、自分の居ぬ間に、色々とある事ない事吹き込まれたようだ。



その後も、小萌の愛の指導が、上条へと襲いかかる。




神裂「えっと……申し訳ありませんが、我々はそろそろ……この子の身体の事もありますし……」



インデックス「!?あ、そうそう!!とーま、私どうやら一回、定期検診ってのを受けないといけないみたいなんだよ!!」




上条「ハァッ!?て、定期検診?」




今まで敵と思っていた神裂の側で、インデックスが突拍子もない事を言い出す。

319: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:14:58.69 ID:cczMHgpB0
インデックス「うん。こもえが間に入って、この二人と色々話をしたんだけどね。
どうやら私の所属する『必要悪の教会』では、年に一回の健康診断ってのがあって、この二人は私を呼びに来たってことみたいなんだよ!!
『必要悪の教会』のメンバーである事の証明もあったし、とりあえずこの二人は敵ではないかも!!」




上条「定期検診って……そんなんでわざわざ……」



小萌「上条ちゃん?定期検診は大事な事なのですよ?お医者さんの診断を定期的に受ける事で、病気の早期発見にも繋がるのです」




上条は、明らかにおかしいこの話に疑問を持っていた。





たかが定期検診の為に、あんな力づくで呼び戻そうとするモノなのか?



大体、インデックスの記憶がない事の説明がつかない。




神裂「……ちょっと席を外して貰えませんか?お話が……」ボソッ……



上条「!?……わかった……」ボソッ……




神裂の要望により、上条と神裂・ステイルが、部屋の外へと出る。

320: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:25:35.06 ID:cczMHgpB0
…………






上条「ハァッ!?インデックスの記憶の消去!?どういう事だよそりゃあ!!」」




部屋の外で、上条が神裂へと問い詰める。




神裂「……定期検診と言うのは、もちろん嘘です。インデックスと共に、月読小萌という一般人がいた為、そのように話しました。
本来の目的と、そうかけ離れたモノではないので、基本的にインデックスが一般人と接触した場合、そう説明しています」



上条「だったら何で俺にはその説明が」



神裂「貴方が人の話を全く聞こうとしなかったからでしょう!!全く……まぁ、こちら側も私やステイルの落ち度があったのですが」



上条「そうだよ!!大体、帰って来たらいきなり血だらけのインデックスと、そこのいかにも悪そうな赤髪がいたんだ!!
そんなもん見たら、即敵として認識すんだろ普通!!」




どうやら、互いに落ち度があった為に、無駄なすれ違いがあったようだ。

最も、そんな事で殺されかけた側としては、たまったモノではないが。

321: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:41:33.47 ID:cczMHgpB0
上条「ハァッ……わかった。わかったよ。とりあえず、お前等はインデックスの敵じゃない。それは信じていいんだな?」


神裂「はい。それだけは、神に誓って言えます。そして、味方とあの子にわかってもらえた以上、あの子に危害を加える気は欠片もありません」



上条「それで、お前等の目的……インデックスの記憶の消去ってのは……何でそんな事を?」




神裂「それについてもお話します。全ては、あの子の『完全記憶能力』が原因なのですが……」



神裂が、上条へと全てを語り出した。

322: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:44:29.20 ID:cczMHgpB0
…………




上条「……なるほど……要するに、10万3000冊の魔道書を記憶した情報量が多すぎて、インデックスの脳がパンクするからと……」



神裂「そうです。残念ながら、魔道書の情報を消すことは出来ない……。
ならば、一年毎の記憶を消すことで、脳の容量を確保するしかない。だから、私達は一年毎にインデックスを回収しているんです。全てはあの子を救う為に」




神裂から、全てを聞いた上条は、一つ疑問を感じていた。











上条「…………完全記憶能力者って、普通に前TVに出てた気がするんだが……確か、60過ぎた外人の爺さんだっけな……」




神裂「………え?」

323: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:46:43.13 ID:cczMHgpB0
上条は過去に、TVで見た完全記憶能力者の事を思い出す。



それは何百冊とある百科事典の、ページを言っただけで、そのページの内容を全て答えると言う企画であった。



上条「そりゃあ、10万3000冊っていうと、凄い情報量とは思うけど……あの爺さんも負けないくらいのモノは記憶してると思うけどな。まぁ、TVだからヤラセの可能性もあるけど」




神裂「ちょ、ちょっと待ってください!!完全記憶能力者って、インデックス以外にもいるのですか?」




上条「そりゃあ、いるに決まってんだろ。俺はTVくらいでしか見たことないけど……あ!?そうだ!!」ガチャッ!!




上条は、思い立った様に自分の部屋の扉を開け、中にいる小萌へと呼びかける。

324: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:48:43.46 ID:cczMHgpB0
上条「小萌センセー。突然なんですけど、インデックスみたいな完全記憶能力者って、寿命が短いとかそういうのあるんですかねー?」(棒)




小萌「いきなりなんですかー?上条ちゃん」



インデックス「え!?私の寿命って短いの!?」ガーン!?




小萌の声と共に、インデックスのショックを受けたような声が聞こえてくる。




上条「いやー、定期検診の話で、インデックスって人より脳を酷使するから、やっぱりそのせいで病気になったりするのかなー?って、今神裂達と話してたんですよー」(棒)




インデックス「こ、こもえー、どうなのかな!?」オロオロ

325: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:50:39.80 ID:cczMHgpB0
小萌「心配いりませんよーシスターちゃん。人間の脳は、そんなにヤワな構造じゃありませんからー。百数十年分の知識や記憶を貯め込む事が出来るのですー」





神裂「!?」



ステイル「なっ!?」



小萌の言葉に、神裂やステイルは驚きを隠せない。


完全記憶能力が原因で、人が死ぬという事は無いというのだ。



ならば、自分達が今までやってきた事は何だったのかと。






小萌「上条ちゃんには、脳の基本から教えなきゃダメですねー。そもそも人間の脳というのは」



上条「あ、もう大丈夫です。ありがとうございまーす」キィッ……




バタンッ!!



小萌「…………」グスッ……




インデックス「こもえ……私がこもえの話を聞くんだよ!!」



小萌「し、シスターちゃん……ありがとうございますー」グスッ……

326: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:52:30.50 ID:cczMHgpB0
上条「……まぁ、こういう事だ。インデックスは、少なくとも完全記憶能力が原因で死ぬ事は無いみたいだな」



扉の外では、小萌の話を聞いた神裂達が青い顔色を浮かべている。

よほど、彼女らにとって衝撃的な話だったのだろう。





ステイル「……あの女性の言葉は……信用出来るのか?」



上条「能力開発の為に、脳の構造を解析する学園都市の教師だぜ?外の脳科学の先生並には詳しいと思うけどな」



神裂「そんな……だとしたら……今まで我々は……」



確定した事実に、神裂達は落胆する。


自分達が今までやっていた事は、ただ単に、インデックスから様々な思い出を奪っていたに過ぎなかったのだ。

327: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 20:58:28.87 ID:cczMHgpB0
上条「落ち込むのはまだ早いぜ?2人共」




神裂ステイル「?」




そんな神裂達に、上条が問う。




上条「問題は、一年毎にインデックスを蝕むモノは何か?って事だ。
完全記憶能力以外に原因があるにも関わらず、お前等は何故それに気づかなかった?」




ステイル「それは……我々の上の人間が……!?」




神裂「……そういう事ですか……」






神裂とステイルが、何かに気づいたようだ。







ステイル「…………あの女狐がッ…………」ギリッ!!

328: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 21:00:32.77 ID:cczMHgpB0
同時刻




イギリス 某所





??「あら。どうやら気づかれたようね」ズズッ……




夜の星明かりに照らされたテラスにて、金髪の若々しい見た目の女性が、紅茶を飲んでいる。




??「そのようだね。今のところ、プランは正常に動いている。あとは、3日後……次のゲームまでに、幻想殺しが禁書目録の首輪を、破壊出来るかどうか……」




その目の前には、1人の男が。……いや、女が。少年か少女か。老人か老婆か。

とにかく、コレだ!!と、断定出来ない、不思議な雰囲気を醸し出す人物が座っていた。






2人は互いに、英語で喋っている。

329: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 21:06:03.62 ID:cczMHgpB0
??「あの悪趣味なゲームに関しては、貴方に一存しているわ。
決して悟られず、確実に……全てはあくまで偶発的な事で、彼が自らその道を選んだかのように誘導する事。
これが出来なければ、『向こう』に悟られ、今まで積み上げてきたモノが一気に崩れ落ちる可能性もある。責任重大よ?」



??「問題無い。ここまでプランが進行していれば、例え彼がどの選択肢に進む事になっても、一つの結末にしか辿り着かない。
『審判の日』への準備は、ほぼ仕上げの段階に入っているのだよ」





??「『審判の日』……とある貧しい飢えた○○が、2000年以上前に『知恵の実』を食し、その○○から生まれた『神の子』によって予言され、徹底して秘匿された人類滅亡へのカウントダウン……。
ホント、迷惑な予言を遺してくれたモノね。知らなければ、無駄に抗いもせず、楽に死ねたモノを」

330: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/03(水) 21:11:33.28 ID:cczMHgpB0
??「フフッ……自分が仕えるべき主に対しての言葉ではないな……」




??「フフッ……あら、大丈夫よ。我が主は、その広い心で全てを許してくださるわ。
あ、そうそう。話は変わるけど、部下から教わって、最近また新しい日本語を覚えたの。聞かせてあげましょうか?」




??「……いや、遠慮するよ。私もこれから色々と忙しいのでな。それにキミの日本語は、正直聞くに絶えない」シュンッ!!



そう言うと、金髪の女性の前に座っていた人物は、瞬きほどの時間で姿を消した。




??「…………そんなに変なのかしら?ヤツからは、日本の伝統的な喋り方と聞いたのだけど」

363: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 20:20:55.23 ID:9+oH+P/k0
時は再び、7月27日へ。







……………




7月27日 23:40 小萌宅






小萌「それでは、先生はシスターちゃんへの食べ物と飲み物を買ってきますね。皆で看病お願いします」バタンッ……





上条「…………インデックス…………」




インデックス「……ゥウッ……とうま……ゴメンね……また寝込んじゃって……」ハァッ……ハァッ……




上条「気にすんなって。今小萌先生が食い物買ってくるから……ちょっと寝とけよ」




インデックス「……ウン……ありがと……」スゥッ……





数分後、寝息をたて始めたインデックスを確認し、上条は部屋から出て行った。

364: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 20:54:45.71 ID:9+oH+P/k0
上条「……なぁ……このままアイツの脳を蝕む魔術が見つからなかったら……」



ステイル「……残念だが、彼女の記憶を消す事になるね。彼女に死なれる訳にはいかない。例え一時的な処置だとしてもね……」



うな垂れる上条をよそ目に、ステイルはやけに落ち着いているようだ。




一見、冷たく落ち着いた態度をとっているように見えるが、一番この中で腑煮え繰り返っているのは、この男だろう。



過去にインデックスのパートナーを務め、それからインデックスの為に全てを捧げて生きていくことを選んだ程の男なのだから。

365: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 20:55:37.63 ID:9+oH+P/k0
上条「なぁ、神裂。ホントにアイツの身体には、魔術の痕跡みたいなのは無かったのか?」


神裂「えぇ。全身くまなく探して見ましたが、それらしきモノは何も……ただ……」



上条「ただ?」



神裂「もしも……インデックスの身体の内部に、直接魔術を施されているとしたら……私達には手の施しようがありません。それに解呪しようにも、場所がわからなければ」




上条「それって、例えば心臓とかにあるなら、身体を掻っ捌かなきゃならないってことか?
だったら、インデックスの身体に切創痕や手術痕が残ってんだろ?」

366: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 20:57:45.98 ID:9+oH+P/k0
神裂「それが無かったから、今も考えてるのです!!全く何処にあるのやら……ある程度強力な魔術ならば、直接手を触れなければならないのですが……」




神裂は、頭を抱えて悩んでいる。




上条「なぁ……直接手が触れて、身体の中……だよな?怪しいのは……」




神裂「えぇ……そうですが?」









上条「…………口の中とか……鼻とか……耳とか……そういう所って見たのか?あとは……女の子なら……その……。
だ、ダメだ!!健全な男子高校生である上条さんには刺激が強すぎる!!」ガンッ!!ガンッ!!





女性特有の穴を思い浮かべた上条は、某魔法使い映画の某屋敷しもべのように、壁に頭を打ち付ける。







『うっせーぞクソガキィィィィイイイッ!!!!』




上条「す、スイマセン!?」ビクゥッ!?




そして、隣の部屋の住人に怒られる。

367: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 21:05:52.79 ID:9+oH+P/k0
神裂「……ま、まぁ、貴方の言いたい事はわかりました。
確かに、身体の外側しか見れてませんでしたので、見れる範囲だけでも体内を見た方がよいかも知れません」




上条「だろ?とにかく、場所さえ分かれば俺の右手で、インデックスを蝕んでいるモノを取り除く事が出来るハズなんだ。それが異能の力ならな」スッ……





上条が、インデックスの顔に右手を添える。




インデックスは、静かに寝息をたてている。





上条「とりあえず、上から順番にいくぞ。…………待ってろよ……インデックス……すぐに助けてやるから……」スッ……




インデックス「……ン……」ピクッ……






上条の右手の指が、インデックスの口内へと侵入する。

369: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 21:09:47.78 ID:9+oH+P/k0
ステイル「…………勝算はあるのかい?」



ステイルが、タバコを咥えながらインデックスを見守っている。




神裂「……わかりません。ですが、インデックスを本当の意味で助ける可能性がまだ残っているのなら……賭けてみましょう。その素敵な悪足掻きに……祈りましょう……『神』に……」








上条「ゆっくり……触れ残しの無いように……」クチュッ……




上条がインデックスの口内を、ゆっくりと指を這わしていく。






右手に宿る、あらゆる異能の力を砕く『幻想殺し』




その力に例外はない。





異能の力ならば、触れるだけで必ず砕く事が出来る。

370: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 21:12:08.58 ID:9+oH+P/k0
スッ……






インデックス「……ン……ンン"ッ"!?」ビクンッ!!




上条「ッ!?」





突如、インデックスの意識が覚醒し、目の前の上条を、真っ直ぐに見つめる。








そして、その瞬間は訪れた。












パキィィィィィィィイイインッ…………










神裂「!?」



ステイル「なっ!?」




小萌の部屋内に、何かが砕けたような渇いた音が鳴り響く。







上条「…………ビンゴだ」スッ……






幻想殺しが何かを砕いたのを感じた上条は、勝利を確信し、インデックスの口内から右手を引き抜いた。

371: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 21:15:40.10 ID:9+oH+P/k0
インデックス「…………」スッ……




神裂「!?い、インデックス!!」




ステイル「馬鹿な……本当に……本当にやったのか?」






床に伏せていたインデックスが、その上体をゆっくりと起こした。
その様子を見て、ステイルと神裂は驚愕の表情を浮かべている。




無理もない。



自分達が数年モノ間、何の解決も出来なかった事を、この少年はやり遂げたのだ。




こんなにもアッサリと。

372: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 21:27:59.62 ID:9+oH+P/k0
上条「よかった……ホントにギリギリだったけど……なんとかなったな……」ヘタリッ……




緊張が解けたせいか、上条がその場に座りこむ。




インデックス「……と……うま……」ガタガタッ……




上条「あぁ……何だ?インデックス……もう大丈夫だぞ?」





顔はよく見えないが、インデックスが上条の名を呼ぶ。




上条は、その呼びかけに応じるように、インデックスへと近づく。





そして、インデックスの顔を覗き込む。

373: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 21:39:14.78 ID:9+oH+P/k0
インデックス「……逃……げ……」ギギギギッ……




上条「……へ?」ゾクッ……












ぎこちなく振り向いた、インデックスの綺麗な緑眼『だった』瞳からは












血のような真っ赤な輝きが放たれていた。









ガシィッ!!!






上条「ガッ!?……なっ……」







インデックス『逃がさない』グググッ……





次の瞬間、インデックスの左手が上条の首を掴み、そのまま持ち上げる。

374: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 21:54:36.02 ID:9+oH+P/k0
とても、少女が出せる力ではない。






上条「グッ……インデックス……お前……」グググッ……





上条が、インデックスの左手を解こうとするが、ビクともしない。






『スーツを制服の下に着ている』にも関わらず。








神裂「インデックス!?一体何を!!」



ステイル「これは!?……何故だ……何故あの子から……魔力が!!」




神裂とステイルは、突如変貌したインデックスの姿に大きく動揺する。

375: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 22:04:49.16 ID:9+oH+P/k0

















インデックス『首輪の損傷を確認。同時に、第一の門<聖霊門>の封印破損を確認……再生不完全……亀裂発生……侵入者を排除…………逃がさない…………侵入者は逃がさない…………』グググッ……
















376: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 22:17:09.48 ID:9+oH+P/k0
同時刻




学園都市 路地裏





白い少年「……ンだァ?真夜中だってのにあの空の光は……」




学園都市の何処かの路地裏。




白い髪、白い顔をした少年は、足元に転がる、複数の人型の『何か』を踏みしめながら、真夜中に空から射し込む、黄金の光を見上げている。







常盤台中学寮



白井「スー……スー……」zzZ


御坂「何よ……あの光……何が起こってるの?」ガタガタッ……



御坂は自室から、明らかに異常な空の様子を見ている。




所々射し込む黄金の光は、まるで夜の空に『亀裂が入った』かのように、射し込まれている。

377: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 22:32:50.13 ID:9+oH+P/k0
とある研究所 屋外






天井「こ……この光は……あの時に見た……まさか……始まるのか?『審判の日』が。……私は死の運命を乗り越えたのか?」






一年前に見た光景に類似した、空から射し込む光が、天井の目に映る。





自分は『審判の日』を迎えられないという予言。




それを乗り越えたのか。それともこれはあの未来とは別の光景なのか。





どちらにせよ、天井は理解する。




自分が今まで感じていた、曖昧な予感では無く、確実に人類滅亡へのカウントダウンは始まったのだと。

378: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/18(木) 22:53:26.67 ID:9+oH+P/k0
学園都市 窓の無いビル







???「ついに最初の<門>の閂が砕けたか……」






学園都市第7学区にそびえ立つ、中の様子を覗く窓どころか、入り口すら見当たらない、通称『窓の無いビル』




そのビルの中、中枢部にて、大きな試験管のような装着に逆さに入っている人物は、不敵な笑みを浮かべている。



???「さて……『知恵の実』を食し、英知を身につけた人間が、理に逆らい、『神』の支配から解放されるか……。


ただただ純粋に、圧倒的な力を持つ『神』に粛清されるのか……。


それとも予言にも無い、『招かざる異邦人』に、全て奪われてしまうのか……。



この三つ巴の戦い……ようやく物語の序章だ。君には期待しているよ?上条当麻……」ニコッ……

388: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 20:39:36.43 ID:DUuy3tJv0
7月28日 0:10



小萌宅






インデックス『……………』ォォォォオオッ……



上条「グッ……何なんだよ……一体どうなってやがる!?」グググッ……




インデックスの左手に掴まれた上条は、必死で振りほどこうとするも、全くビクともしない。




ガンツスーツを着込んでいるにも関わらず、その手はほどけず、インデックスは上条を人外としか言えない力で掴み続ける。





ステイル「あり得ない……何なんだコレは……」




神裂「上条当麻!!貴方……貴方一体、彼女に何をしたのです!?」

389: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 20:41:23.06 ID:DUuy3tJv0
上条「俺は……俺はただ、インデックスの喉辺りにあった『何か』をぶっ壊しただけだ!!その後ちゃんと意識を取り戻したハズなのに……」スッ……




上条は、インデックスに首を掴まれながらも、ズボンのポケットの中から、黒いグローブを取り出し、装着する。







上条「グッ……ォォォォオオオオオオッ!!!!」グググッ!!!



インデックス『!?』グググッ……



バッ!!!




上条「ブハァッ!!!ハァッ……ハァッ……何て力だ……あのグローブをつけて、ようやく引き剥がせるなんざ……人間の力じゃねぇぞ!?」




グローブの効果により、ガンツスーツの力に更に上乗せされた力によって、ようやくインデックスから上条は離れることが出来た。

390: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 20:42:37.14 ID:DUuy3tJv0
インデックス『…………』ォォォォオオッ……





赤く、何処か虚ろな瞳を上条達に向け、インデックスはこちらを見ている。





その瞳には、一切の感情すら宿っては居ない。






ステイル「あれは最上級レベルの身体能力強化魔術だ……一時的に身体に高位の天使の力を宿し、それを行使する。
その力は聖人に匹敵するという……教会の上役が、僕達に隠していた事はコレか……」スッ……



ステイルは、手にルーン文字の描かれた紙を持ち、臨戦態勢に入る。

391: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 20:45:04.72 ID:DUuy3tJv0
上条「あぁ!?お前等インデックスは、魔術を使えないって言ってたじゃねーかよ!!」



神裂「それも上の嘘だった、という事です。高位の天使を身に宿した今の彼女は、身体能力に関しては聖人と同等。

更に、彼女は10万3000冊の魔道書をその頭に記憶しています。すなわち……」チャキッ……




神裂は刀を手に取り、臨戦態勢に入る。









インデックス『対象を確認。以後、上条当麻。神裂火織。ステイル・マグヌスを攻撃対象とする。
10万3000冊の魔道書から、最も効果的な魔術を選択。複数の魔術該当。その全てを混ぜ合わせた新しい術式を構築』ォォォォオオッ……







392: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 20:47:41.40 ID:DUuy3tJv0
インデックスの背に、光の線によって魔法陣が描かれていく。
その光は、神々しい黄金の光と、禍々しい赤黒い光が、交互に発せられている。





神裂「……どうやら私達はこれから、聖人以上の力を持った彼女を相手にしなければならないようです。余所見してると、簡単に殺されてしまいますよ?」



上条「なっ……」ゾクゥッ……















インデックス『新しい術式の構築完了。命名。









<父よ。彼らを赦してください。何故なら、彼らは自身が何をしているのかわからないのです>








完全発動まで3、2、1。発動』カッ!!








バサァァァァァァアアアアッ!!!!





394: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 20:51:38.03 ID:DUuy3tJv0
上条「インデックスの背から……翼が……これは……天使……なのか?」




インデックス『術式成功。目標の殲滅を開始。3』



インデックスのカウントダウンが終わった瞬間、その背に描かれた魔法陣から、純白の翼が創り出された。




インデックス『2』




その姿は、正に『神』の使いである、『天使』を容易く連想させ、上条はその姿に見入っている。






インデックス『1』





ステイル「ッ!?何をボサッとしている能力者!!死にたいのか!?」






上条「ハッ!?」




ステイルが、上条へと喝を飛ばし、上条がふと我に帰る。










インデックス『0』









ズンッ!!!!

395: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 20:56:13.79 ID:DUuy3tJv0
上条「……ガァ"ッ……ア"ッ……」メキメキィッ……




インデックス『…………』ググググッ……




次の瞬間、上条の懐にいつの間にか入り込んだインデックスの右拳が、上条の腹へと捻じ込まれる。



耐久度MAXのガンツスーツを着込んでいるにも関わらず、上条の肋骨や内臓が、悲鳴をあげた。





上条「マジで……見え……ねぇ……」ゲホォッ!!



ビチャビチャッ!!!




インデックス『…………』ビチャッ!!!




上条の吐いた血が、インデックスの『歩く教会』と呼ばれる白い修道服にかかり、修道服が朱に染まるが、インデックスは瞬き一つしない。

396: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 21:03:31.45 ID:DUuy3tJv0
上条「グッ……目を覚ませ!!インデックス!!」ブンッ!!



上条は、右手の幻想殺しを真っ直ぐ、インデックスの顔へと持って行く。


インデックスの纏う術式を破壊する為。


そして、インデックスを操る『何か』を止める為に。





インデックス『…………』ガシッ!!




右手が届く前に、その右腕をインデックスが難なく掴む。





ブンッ!!


バキィッ!!!



上条「ガァァァアッ!!!」ドォォオンッ!!!




更にインデックスから放たれた蹴りよって、上条は吹き飛ばされる。

397: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 21:09:32.41 ID:DUuy3tJv0
神裂「Salvere000ッ!!!」シュンッ!!




ドドドドドドドドドッ!!!!!




魔法名を名乗った神裂が、全力で魔力を注ぎ込んだ7本のワイヤーを、インデックスへと放つ。




シュルシュルッ!!




インデックス『…………』グッ!!ググッ!!




先日、上条に放った『七閃』とは比べ物にならない強度のワイヤーが、インデックスへと絡みつき、その動きを止める。










インデックス『…………ッ!!』ギョロッ!!




カッ!!!







次の瞬間、インデックスが神裂の方を、赤い目でギョロりと見つめると、その目の前に直径1m程の魔法陣が、一瞬で形成される。

398: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 21:20:58.28 ID:DUuy3tJv0
神裂「なっ!?速っ……クッ!!」グイッ!!




インデックス『』グラァッ!!





魔法陣から、何かが発射される瞬間、神裂はインデックスの身体を絡めるワイヤーを、数本引っ張り、インデックスの体勢を崩す。





カッ!!



ギュォォォォォォォォォォオオオオオオオッ!!!!!!!





その魔法陣から放たれた、極太のレーザー砲のような光の柱は、インデックスが体勢を崩した事により、頭上へと向けられ、部屋の屋根を突き破り、夜空へと発射された。






上条「ゲホッ……クソッ、スーツ着ててもこの様かよ……ん?何だ……あの空の光……」




インデックスに蹴り飛ばされた上条が、夜空の光に気づく。

399: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 21:30:21.22 ID:DUuy3tJv0
神裂「…………な、何なのですか……あの空の光は……」ゾクゥッ……




インデックスの放った光の柱によって、穴の空いた屋根から覗く夜の空には、空に亀裂が走ったかのように黄金の光が射し込まれており、それを見た神裂の背筋が凍る。






その光は、全てを包み込むような温かな光。






反面、何か人の心にある原初の恐怖心を、凄まじく駆り立てるようなモノがあった。








神裂「まさか……インデックスの身体を蝕む術式を砕いたから……?しかし、何故このような事が……ッ!?」チャキッ!!





インデックス『』バサァァァァァァアアアアッ!!!!






ガキィィィィィィィイイイイッ!!!!!

400: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 21:32:05.65 ID:DUuy3tJv0
夜空の光を見上げる神裂に、隙ありと言わんばかりに、インデックスが翼を神裂に叩きつける。


神裂は咄嗟に刀で受け止めるが、その際、金属音がした事から、翼を受けていれば、タダでは済まなかっただろう。






インデックス『…………』ググググッ…………



神裂「クッ……一体あの子に何故こんな力が……」ググググッ…………





何しろ、聖人である神裂が、押し返せない程の威力なのだから。

401: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 22:02:27.81 ID:DUuy3tJv0
神裂「ステイルッ!!術式の構築を!!インデックスの記憶を消してください!!今すぐ!!」




ステイル「ッ!?……あぁ……わかったよッ!!!」ブンッ!!!





バザバサバサァァァァァァアアアアアッ!!!!




ステイルが腕を振るった瞬間、何千枚ものルーン文字が書かれた紙が、小萌の部屋中に貼り付けられる。



インデックスの記憶を消し去る為の力を生み出す、聖域を作る為だ。





上条「なっ!?何でだ!?インデックスはもう、記憶を消さなくても」





グイッ!!!




ステイル「消さなくても何だ!?君は目の前の彼女を見ても何も思わないのか!?あの空を見ても何も思わないのか!?」




ステイルが、上条の襟元を掴み、インデックスと空の光に指を差す。

402: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 22:05:36.99 ID:DUuy3tJv0
ステイル「見ろ……見るんだ今のあの子をッ!!純白の修道服を君の血で赤く染めッ!!
かつての仲間であった神裂を殺そうとするあの子をッ!!

君はあの子に……あの子に自分の仲間を殺させたいのか!?
例え何かに操られていたとしても!!あの子にその罪を背負わせたいのか!?」




上条「…………インデックス…………」








インデックス『逃がさない……侵入者は逃がさない……』ググググッ!!!


神裂「グッ……インデックス……」ググググッ……




上条の目の前には、感情の無い目で神裂へと襲いかかっているインデックスが見える。

404: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 22:13:33.85 ID:DUuy3tJv0
ステイル「そしてあの空。どう考えても異常だ。このタイミング、確実にあの子に何か関係がある。

君にいくら恨まれようが構わない。僕は全てのモノからあの子を守る。
そして、イギリス聖教の魔術師としても、魔術に関する脅威から人々を守る。

君にその覚悟があるかい?あの子もあの子の世界も守り抜く覚悟が!!」





そして、夜空に亀裂のように射し込む黄金の光。



タイミングからいって、インデックスを蝕む『何か』を上条が壊した事に、関係があるのは間違いないだろう。





上条「……守れてねぇよ……」





ステイル「何だ!?言いたい事があるならハッキリ言え!!こっちは時間も余裕も無いんだ!!」

405: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 22:32:54.45 ID:DUuy3tJv0
上条「全然守れてねぇっつってんだよ!!結局インデックスの記憶は、一年毎に消さなきゃならねぇんじゃねぇか!!

どうせ守るんだったらなぁ……完璧に!!文句のつけようが無いくらいに!!インデックスを守ってみせろよ!!」




ステイル「君に何が出来る!!あの子は、聖人である神裂すら上回る『魔人』となった!!
その右手以外、ただの人間である君に、あの子を救えると思っているのか!!」




上条「救える救えないの問題じゃねぇ……救うんだッ!!例え地獄の底からでもインデックスをッ!!俺達全員で!!」ダンッ!!




上条が、深傷を負いながらも、勢いよくインデックスの元へと向かう。

406: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 22:36:06.95 ID:DUuy3tJv0
インデックス『ッ!?』バサァァァァァァアアアアッ!!!





神裂と競り合いつつも、上条に気づいたインデックスが、もう片翼を上条へと、思いきり叩きつける。






上条「ウォォォォォオオオッ!!!!」ブンッ!!




パキィィィィイイインッ!!!!




しかしその翼は、上条の右手『幻想殺し』によって、粉々に砕け散る。





神裂「ウァァァアアアアアアッ!!!!!」ギィンッ!!!




同時に、神裂が自身を押し潰そうとしていたもう片方の翼を、刀で思い切り弾き飛ばす。

407: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 22:37:36.70 ID:DUuy3tJv0
神裂「……唯閃ッ!!!」シュンッ!!!





ザンッ!!!!!!





返す刀で、神裂の一撃の居合『唯閃』が、インデックスの翼を一閃の元、斬り裂いた。






インデックス『ッ!?両翼の破損を確認。再発動を開始』キィィィイインッ!!!




上条「させるかァァァアアッ!!!」ブンッ!!!





パキィィィィイイインッ!!!!





インデックスが再度、背中の魔法陣から翼を出現させようとするも、後ろに回り込んでいた上条によって、魔法陣ごと破壊される。

408: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 22:42:04.18 ID:DUuy3tJv0
ヒラッ……ヒラッ……







その瞬間、インデックスの頭上高く、天から、部屋の屋根に空いた穴へと向かって、真っ白に輝く羽根がゆっくりと落ちてきた。







まだ誰も、この羽根には気づいていない。

409: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 22:57:12.92 ID:DUuy3tJv0
インデックス『』ブォンッ!!!




上条「グッ!!」ガシィッ!!!




背後にいる上条へと、インデックスが身を翻し、裏拳を放つ。
その拳を、上条がグローブを着けた左手で受け止める。
それでも、相当の衝撃が襲う。







上条「なぁ?ずっと待ち焦がれてたんだろ!?こんな展開を!!英雄がやってくるまでの場つなぎじゃねえ!!主人公が登場するまでの時間稼ぎじゃねえ!!

他の何者でもなく!他の何物でもなく!!テメェのその手で、たった一人の女の子を助けてみせるって誓ったんじゃねえのかよ!?あぁ!?」ググググッ……





ステイル「…………」

410: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 23:10:49.80 ID:DUuy3tJv0
インデックス『』ギョロッ!!




ブォンッ!!!




インデックスが目を見開いた瞬間、先ほど神裂へと放った、光の柱と同じ魔法陣が、インデックスの背後に一瞬で構築される。





上条「ッ!?やべっ……」バッ!!





上条が、その瞬間インデックスから離れ、魔法陣に向けて右手を素早く向ける。







カッ!!!



ギュォォォォォォォォォォオオオオオオオッ!!!!!






上条「ォォォォォォォオオオオッ!!!!」バチバチバチバチッ!!!!




光の柱は、真っ直ぐ上条へと直撃するが、上条はそれを右手で防ぐ。

411: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 23:14:08.06 ID:DUuy3tJv0
どういう原理か上条にはわからないが、この極太レーザー砲のような魔術は、幻想殺しで触れていても消えないのだ。




防ぐ事は出来ているが、圧倒的な威力により、少しずつ押されている。




そして既に、上条が右手につけているガンツのグローブは、インデックスの魔術によりボロボロになっていた。







上条「…………ずっとずっと主人公になりたかったんだろ?…… 絵本みてえに……映画みてえに……命を賭けてたった一人の女の子を守る、魔術師になりたかったんだろ!?」バチバチバチバチッ!!!!!




上条は、光の柱を食い止めながらも、ステイルへと訴え続けている。



上条のズタズタに引き裂かれた右手からは、止めど無く血が流れているが、上条は決して退かない。

412: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 23:22:10.36 ID:DUuy3tJv0
上条「だったらそれは全然終わってねぇ…… それどころか始まってすらいねぇ!!
ちっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ!!


あと少しなんだ……ゴールはもう目の前にあるんだ!!手を伸ばせば届くんだ!!いい加減に始めようぜ、魔術師ッ!!」バチバチバチバチッ!!!!!





ミシミシミシッ……




上条の右手の指が、インデックスの攻撃の圧によって、曲がってはいけない方向へと向かおうとしている。




もう長くは持たないだろう。

413: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 23:24:45.91 ID:DUuy3tJv0
ステイル「『イノケンティウス』ッ!!」



ボゥッ……



イノケンティウス『ォォォォォォォオオオオ"オ"オ"ッ!!!』ゴォォォォォォォォォォォオオオオオオオオッ!!!!!





インデックス『ッ!?』ギュォォォォォォォォォォオオオオオオオッ!!!!





ステイルが、手に持っていたルーンの描かれた札を燃やした瞬間、上条とインデックスの間に入るように、巨大な炎の魔術『イノケンティウス』を発動させる。


インデックスの放つ光の柱は、イノケンティウスが防ぎ、上条がようやくインデックスの猛攻から解放された。

414: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/20(土) 23:31:19.39 ID:DUuy3tJv0
ステイル「…………必ずあの子を救え!!でなければ、僕が君を殺す!!わかったら行けぇ!!能力者ァァアッ!!!」




上条「ウォォォォォオオオッ!!!!」ダンッ!!!






ステイルのイノケンティウスを盾に、上条が最後の力を振り絞り、インデックスへと走り出した。

425: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:09:12.49 ID:4NMm+jau0













『俺はただ……守りたかっただけなんだ……』












426: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:10:43.67 ID:4NMm+jau0
上条「ウォォォォォオオオッ!!!!」ダンッ!!




上条が、残された力を振り絞り、インデックスへと走り出す。




インデックス『優先順位変更。最も難易度の高い標的、上条当麻の殲滅を第一目標に。
盾となる魔術の術式逆算に成功。対十字教魔術の術式再構築完了。発動』










『神よ。何故わたしを見捨てたのですか』









カッ!!



ギュォォォォォォォォォォオオオオオオオッ!!!!!





ステイル「なっ!?イノケンティウスが!!」




インデックスが、新たな魔術を発動させた瞬間、上条の盾となっていた、炎の巨人『イノケンティウス』が、凄まじい勢いで無力化されていく。




再び、上条とインデックスとの間を塞ぐモノは無くなる。

427: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:12:13.75 ID:4NMm+jau0










『誰かに助けを求めたくても。誰も巻き込むまいと、たった1人で逃げ続けてきたこの少女を……』












428: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:13:50.32 ID:4NMm+jau0
インデックス『障害排除。再び目標を、上条当麻へと移します』ギョロッ!!




ブォンッ!!



再びインデックスは、その赤く光る眼を上条へと向け、魔法陣を出現させる。




今の上条に、再びあの光の柱を防ぐほどの力は残っていない。




なんとしても先に、インデックスを操る『何か』を破壊しなければ、インデックスは永遠に救う事が出来ないのだ。





インデックス『最大の脅威である右手の対処を検索。該当。上条当麻自身の反応速度を上回る魔術を再現』ブォンッ!!

429: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:18:25.26 ID:4NMm+jau0
上条「ハァッ!?刀!?」ダッ、ダッ



光の柱が発射されるかと思われた魔法陣からは、魔力で創られた日本刀のようなモノが現れた。




インデックス『…………』チャキッ……




インデックスは、その刀を手に取り、腰に構える。














『神様……この世界がアンタの作ったシステムの通りに動いてるってのなら……俺達を、盤上の駒としか見ていないのなら……』











上条「ォォォォォォォオオオオッ!!!!」ブンッ!!!



インデックスまで、あとホンの少しの距離。
上条は、右手を前に突き出し、インデックスの顔へと触れようとする。






『右手』で触る事さえ出来れば、全ては終わるのだ。







神裂「あの構え……まさか……逃げなさい!!上条当麻ッ!!」


神裂は、インデックスのその姿を見て、咄嗟に叫ぶ。

430: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:26:24.76 ID:4NMm+jau0











『この少女を、これ以上アンタの玩具にするってのなら!!』
















インデックス『……唯閃……』キィンッ!!





ズシャァァァァァァアアアアッ!!!!





上条「ガッ…………」ブシュゥゥゥゥウウッ!!!!





刀を鞘から取り出す音と、刀を鞘へと戻す音が、同時に聞こえてきた瞬間。




上条の右腕は、文字通り一瞬で斬られ、宙へと舞い上がった。

431: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:41:00.51 ID:4NMm+jau0
神裂「まさか……私の唯閃まで扱えるとは……」



ステイル「クソッ……万事休すか……」




希望が一閃の元に断ち切られ、2人の魔術師の表情に、絶望が走る。




インデックスを完全に救うには、上条の右手に宿る、幻想殺ししか方法が無いのだ。



そう。



『右手』に。











ガシィッ!!!



インデックス『ッ!?』




一閃の元、上条の右腕を断ち斬ったインデックスが、目の前の光景に絶句する。

432: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:42:26.23 ID:4NMm+jau0















『まずは……そのふざけた幻想をぶち殺すッ
!!!』
















433: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:44:22.11 ID:4NMm+jau0
宙に断ち斬られた右腕の行方。







上条「インデックスゥゥゥゥゥゥウウウウウッ!!!!」ブンッ!!!








それは、右腕を斬られた上条の、左手の中にあった。






そして、インデックスが気づいた時には、既にその斬られた右手は、上条によって、自身の頬へと指が触れられていた。










パキィィィィィィィィイイイイインッ!!!!!!








その瞬間、何かが砕け散るような音が、部屋に鳴り響く。






同時に、真夜中の学園都市の夜空を、黄金の光が照らし出した。

434: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:46:37.47 ID:4NMm+jau0
インデックス『…………首輪に致命的な破壊……及び、<精霊門>の完全解放を……確認……再生……不可……』キュゥゥゥゥンッ……






ドサァッ……







音が鳴り響いた瞬間、インデックスから機械的な声が途切れ、その場へと倒れ込む。






上条「ハァッ……ハァッ……フンッ!!」ググッ!!!




上条は、斬られた腕に、制服の切れ端で作った止血帯を巻き、応急処置を行う。






神裂「や……やったのですか?」


ステイル「インデックスから魔力は感じない……空も元に戻っている……終わったのか?」




インデックスの首輪破壊と共に、一瞬だけ空が黄金の光に完全に包まれたが、その後元の夜空に戻っている。

435: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:47:44.76 ID:4NMm+jau0
上条「ハァッ……ハァッ……終わったよ……インデックス……ようやくお前を、地獄の底から助け出す事が出来たんだ……」スッ……




インデックス「……スー……スー……」zzZ





上条が、左手をインデックスの頬に添えると、インデックスは静かに寝息をたてはじめた。




どうやら、終わったようだ。



全てが。

















ヒラッ……


ヒラッ……




そして、新しい始まりを告げる、白い羽根達が、天から舞い降りてきた。

436: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:54:05.03 ID:4NMm+jau0
上条「……ん?何だ……この羽根……」




上条は、屋根に空いた穴から舞い降りてくる、白い羽根に気づく。






ステイル「あの羽根……まさか!?」


神裂「離れてッ!!その羽根に一枚でも触れたら、大変な事になります!!」





神裂が、上条へと叫びつける。






上条「触れんなって……と、とにかくインデックスを担いで……ッ!?う、動けねぇ!!」ピタッ!!





倒れているインデックスを担ごうとした上条の身体が、突然金縛りにあったようにピタリと止まる。






上条「この感覚……嘘だろ!?まさか……このタイミングで……」グググッ……

437: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 09:56:34.36 ID:4NMm+jau0
上条がインデックスの身を守ろうと、必死で動こうとするも、その身体は動いてくれない。










再び呼ばれているのだ。






ォォォォォォォオオオオッ…………


●『』


ォォォォォォォオオオオッ…………





あの黒い球の部屋に。






もう一つの地獄の底に。

438: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 10:14:28.44 ID:4NMm+jau0
ヒラリッ……





インデックス「スー……スー……」zzZ





その瞬間、インデックスの身体へと、一枚の白い羽根が舞い降りようとしているのが見えた。






上条「!?グッ!!オァァァァァァァアアアアッ!!!!」グググッ!!!





上条が、必死で身体を動かそうとする。










『冗談じゃねぇ!!やっと掴んだんだ!!インデックスを地獄の底から引きずり出したんだ!!』







『それをこんな……こんな結末で……』









インデックスの身体に白い羽根が今、触れようと

439: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 10:24:14.44 ID:4NMm+jau0
上条「終わらせてたまるかァァァァァァァアアアアッ!!!!」ググググググッ!!!!





バッ!!!





次の瞬間、上条の身体が一瞬動き、上条がインデックスへと倒れ込む。






上条の身体は……その頭は、白い羽根へと真っ直ぐ向かっていく。





このままでは、インデックスよりも先に、上条の方が白い羽根へと接触するだろう。

440: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 10:25:27.42 ID:4NMm+jau0
『神様……アンタが本当に存在するのなら……どうか……』





















『どうかインデックスを幸せにし』


ブツンッ!!!


















……………











そこで、上条当麻の意識は、完全に途切れた。

441: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 10:34:13.84 ID:4NMm+jau0

同時刻


第7学区 とある高層マンション


黒い球体の部屋








●『上条 当麻 ろーどさゅう……』












●『えらー』






●『えらー』






















●『えらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらーえらー』








442: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 10:53:30.22 ID:4NMm+jau0
●『データに破損あり。システム正常化の為、現時刻を持って上条当麻オリジナルを破棄。
機密保持の為、脳内の爆弾を排除。スーツ回収。全て完了。




最新データを検索……コピー……ろーどさゅう……ろーどさゅう……』
















ジジジジジッ…………

443: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 11:13:06.72 ID:4NMm+jau0
同時刻


窓の無いビル 中枢部




???『ふぅ……転送のタイミング。強制拘束の一時的な解除のタイミング。……完璧だな。これ以上ない程に。これでキーとなる駒の1つを確保した。いや、2つか……。



さて……禁書目録の首輪の破壊と共に、この世界と『神』の世界を繋ぐ門の封印も壊れた。あくまでまだ表層に過ぎぬがね。
これから先、黒球に縛られた者達は、今までの異邦人との戦いを越える、更なる地獄を味わうだろうが……まぁ、既に一度は死んだ、『存在しないハズ』の人間だ。
新たな命と、『審判の日』を生き抜く可能性が出来るだけマシだろう』




窓の無いビル中枢部の、大きな試験管のような容器の中で、1人の人物が無数のモニターを確認している。

444: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/23(火) 11:14:19.38 ID:4NMm+jau0
???『門が開いた今、もう後に戻る事は出来ない。



大多数の異邦人を越える存在である『神』の眷属。


そして、それすらを凌駕する異邦人の存在。


『知恵の実』によって、古来よりそれらの存在を理解し、魔術としてその力を行使してきた人類……そして……』クックッ……






その人物の口元が歪む。







???『その全ての生態、テクノロジーを解析・利用し、『神』を打ち破る為に生み出された黒球。そしてこの『学園都市』。



もうすぐ始まるのだ……人が『神』を打ち破るその時が……』

457: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 19:43:58.00 ID:Y1Yh3BqF0
…………





7月28日 0:30



黒い球体の部屋





●『ろーどちゅう……』




ジジジジジッ…………










上条「…………生きてる……のか?……俺……」ジジジジジッ……





GANTZと呼ばれる黒い球から、上条の身体が転送されてくる。



戦いによりボロボロになっていた身体は、転送時に万全の状態へと復元されたようだ。







上条「……御坂や浜面達は……まだ戻ってきてねぇのか?無事だといいが……」キョロキョロッ……




上条は、まだ部屋に転送されていないメンバーの安否を案じている。







御坂や、『浜面』達の安否を。

458: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 19:52:59.25 ID:Y1Yh3BqF0
ジジジジジッ…………





上条「ッ!?ようやく転送されてきたか……あれ?」





転送されてくる人物の全身が見えてくるにつれて、上条は一つの疑問を覚える。






御坂「……あ。今日はアンタのが早かったのね……ってアンタ、こんな時間までスーツと制服着てたの?全く日頃からアンタは何やってんのよ……」



目の前には、カエルのキャラクター『ゲコ太』のパジャマを着た、御坂が現れる。



0:30という時間から、当然もう就寝しようとしていたのだろう。



別に、何らおかしい事ではない。



しかし、今の上条には、あまりにもおかしな光景だった。

459: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 19:57:02.41 ID:Y1Yh3BqF0
上条「御坂……お前……何でパジャマ姿なんかで転送されてきてんだ?」




上条が、御坂へと不思議そうに尋ねる。




御坂「……は?アンタ今何時だかわかってんの?0時越えてんのよ?別にパジャマくらい着替えてても可笑しくないでしょうに」




上条「いや……いやいや!!おかしいだろいくらなんでも!!だって……だってお前、俺達は……」





上条が、御坂へと疑問をぶつける。





上条からすれば、あり得ないのだ。今の状況は。

460: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 20:06:19.78 ID:Y1Yh3BqF0






上条「俺達は……今の今まで闘ってただろ?『田中星人』や、ラスボスの『鳥人』と!!」






御坂「…………は?」




上条の言葉に、御坂の思考が一瞬止まる。






461: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 20:07:18.23 ID:Y1Yh3BqF0
御坂「な……何言ってんの?アンタ。……田中星人は、もうとっくに倒したじゃない……3日前の夜に……」






上条「…………は?」







思わぬ返答に、今度は上条の思考が止まる。








ジジジジジッ…………






そうこうしている内に、次々とメンバーが転送されてきた。

462: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 20:12:44.82 ID:Y1Yh3BqF0
天井「ん?何やら騒がしいな?一体どうしたんだい?」ジジジジジッ……




偏光能力「……クソッ……またこの部屋かよ……嫌になるぜ……」ジジジジジッ……





前回の戦い。


……そう。田中星人戦で生き残ったメンバーが揃った。





上条「天井!!偏光能力!!よかった……お前らも無事だったんだな。
……あとは浜面と御坂の妹とフレメアだけか……無事だといいが……」





天井「!?」


偏光能力「ハァッ?何寝言言ってんだお前」










『こないだので……3日前の時に、フレメアの嬢ちゃんは解放されて、浜面と第三位の妹は死んじまっただろうが』







偏光能力は、訳のわからないことを言っている上条に対し、3日前の事を簡潔に話す。

463: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 20:21:58.36 ID:Y1Yh3BqF0
上条「…………ちょ、ちょっと待て……御坂もお前も何言ってんだ?3日前って……しかも浜面達が死んだって……ハァッ?」




御坂「アンタ……もしかして、冗談ってわけじゃなく、本当に今、田中星人戦が終わったと思ってんの?……ねぇ、今日は何月何日よ!?」





御坂は、上条に今日の日付を問う。




この話の食い違いを理解するのに、簡単かつ、確実な方法だ。









上条「何日って……確か『7月24日』じゃあ……いや、もう25日かな?」




上条がその御坂の問いに答える。

464: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 20:33:34.52 ID:Y1Yh3BqF0
偏光能力「……おい……お前日にちすら数えられねぇのか?今日は『7月27日』……いや、もう28日だろうが!!」





上条「ハァッ?何言ってんだよ偏光能力。冗談にも程があるぞ?…………冗談だよな?」




御坂「…………」ブンブンッ……





上条の問いに、御坂は無言で首を横に振る。








ジジジジジッ……





そうこうしている内に、再び誰かが転送されてくる。




前回の生き残りは、解放されたフレメアを除いて全て揃っている。




すなわち、新たなメンバーが、転送されて来ているのだ。

465: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 20:39:31.08 ID:Y1Yh3BqF0
???「…………」ジジジジジッ…………




まず転送されて来たのは、自衛隊のような迷彩服を着た、短髪のガタイのいい男。


そして、格好もあってかいかにも、歴戦の兵士を感じさせる雰囲気を漂わせていた。






御坂「わぁ……何か凄い頼りになりそうな人ね……只者じゃない事は確かだわ」




偏光能力「凄えガタイだな……よほど鍛えこまれてんなオイッ……」



天井「能力者では無いだろうが…………中々優秀そうだな…………」






兵士「…………」





男は、転送されてきても、少し周りを見渡しただけで、特に取り乱すような事もない。

466: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 20:57:02.76 ID:Y1Yh3BqF0
上条「……な……なぁアンタ……ちょっと聞いていいか?」スッ……




兵士「ッ!?」バッ!!




上条が、その男の背後から、声をかけると、男はすぐさま身を翻す。





ガシィッ!!


グルンッ!!!




上条「オワッ!?痛っ!!!」ビタンッ!!!



兵士「……自分の後ろに立たない事だ……」グググッ……





男は、上条の腕を握ると、素早く上条の足を引っ掛け、床に這いつくばらせる。

468: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 21:07:07.02 ID:Y1Yh3BqF0
御坂「え、えぇ!?ちょっと!!」




上条「ちょ、ちょっと待てって!!アレ?スーツ着てんのに振りほどけねぇ!!」グググッ……




転倒後、腕を捕られている上条は、それを振りほどこうとするも、全く力が入らない。




天井「凄いなあの男……完全に肩・肘・手首の関節を極めている。アレではスーツを着てようが、上体の力を入れる事すら出来ない」




御坂「関心してる場合じゃないでしょ!!お願い!!ソイツを離してやってください!!私達は、貴方に危害を加える事は無いですから!!」






兵士「……失礼した。つい反射的にな……」スッ……



男は、上条の腕を離す。

469: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 21:12:34.68 ID:Y1Yh3BqF0
上条「痛てて……い、いや、大丈夫です事よ……それより、ちょっと聞きたい事があるのですが……」オソルオソル



不意をつかれたとはいえ、スーツを着てても完全に圧倒された上条は、男にビビりながら質問する。






上条「今日って……何月何日でしたっけ?」




上条は、男に日付を聞く。




御坂達が嘘を言っているとは考えにくいが、どうしても信じられない。



そこで、事情を知らない、この部屋に来たばかりの者ならば、真実を聞けると思ったのだ。




そして、真実が上条へと突き刺さる。







兵士「今日は……7月28日だ。もうすぐ1時になろうとしている」チラッ……



男は、腕に着けた時計を見ながら上条へと答えた。

471: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 21:29:15.45 ID:Y1Yh3BqF0
その後も、空手の道着を着た外国人。






真面目そうな風貌だが、ボウガンを片手に、傲慢な態度を取る高校生。






普通のサラリーマンの2人組と、数人に日付を聞いたが、皆答えは同じだった。






上条「……そう……ですか……」ヨロッ……





上条は、ショックを受けたようによろめきながら下がる。






上条「なぁ……御坂……俺の記憶じゃあ、今の今まで鳥人と闘ってて殺されかけてたんだが……どうなってんだ?」



御坂「わ……わかんないわよ……そんなのわかるわけないでしょ!!」




困惑する上条と御坂に、天井が横から口を挟む。

472: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 21:38:51.57 ID:Y1Yh3BqF0
天井「おそらく…………GANTZがここに転送させる際、君に何かあったんだろ。
転送が失敗した為に、GANTZは一番最新の転送データを呼び出し、君を再生した。前回のミッション終了後のデータだな。


死んだ人間を生き返らせる際、GANTZはそうやって再生しているのだが……すなわち、今の君は本体のコピーだ。

最も皆、最初に死んだ時点で、コピーなのかもしれないがね」





上条「……は?コピー?……コピーってお前……」




上条の顔が、みるみる青くなっていく。

473: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 21:47:31.88 ID:Y1Yh3BqF0
上条「じゃあ……じゃあもし、何かあったっていう、俺の本体?が生きていたら……俺はどうなるんだ?」




天井「……君は2人存在する事になる。最初に転送される時、GANTZに死んだと勘違いされて、2人同じ人間が存在する。稀にあるんだよ。そういう事がね」





上条「そん……な……」ドサッ……




上条は、失意の表情を浮かべながら、力無く膝をつく。





上条「俺が……コピー……!?おい……おいGANTZ!!」





上条は、黒い球体へと叫びつける。

474: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 21:48:34.15 ID:Y1Yh3BqF0
上条「俺は……本当の俺に何があったんだ?この3日間に何があった?」




上条は、黒い球体にくってかかる。



●『』




黒い球体は、全く反応しない。







上条「インデックスは今どうなっている?あの神裂とかいうヤツは、あの後どうなった!?」



御坂「ちょ、ちょっとアンタ。落ち着いて……」



●『』



黒い球体は反応しない。











上条「答えてくれよ……なぁ……大事な事なんだよ……答えろ」




●『』



黒い球体は反応し





上条「答えろよ……GANTZ!!!」




御坂「ッ!?」ビクゥッ!!




鬼気迫る上条に、御坂は思わず怯える。

476: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 21:59:26.27 ID:Y1Yh3BqF0
天井「無駄だよ……GANTZは特定の問いかけにしか答えない。君や君の周囲がどうなったかなどは、君自身で確かめる事だ。


…………最も……今、この時を生き延びる事が出来ればの話だがね。今回は一筋縄ではいかないようだ」チラッ……



天井は、GANTZをチラりと見る。







●『』






GANTZは、まだ特に動きを見せない。



先ほどから転送される者が居なくなった事から、そろそろ開始を告げる音楽がなるハズなのだが。






天井「(……本当にどうなっている……前回のミッションからまだ3日しか経っていないのにもう次のミッションとは……それに、あの黄金の空といい……あまりにもタイミングがよすぎる。
どう考えても、今回のミッション……今までとは違うモノになるだろうな……)」






●<デーデンデーデン>






天井が、不安を募らせる中、遂に始まりの音が鳴り響く。






477: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 22:01:07.05 ID:Y1Yh3BqF0
●<Freude, schoner Gotterfunken,

Tochter aus Elysium Wir betreten feuertrunken.

Himmlische, dein Heiligtum!>~♪





『歓喜よ、神々の麗しき霊感よ

天上の楽園の乙女よ

我々は火のように酔いしれて

崇高な汝(歓喜)の聖所に入る』







●<Deine Zauber binden wieder,

Was die Mode streng geteilt;

Alle Menschen werden Bruder,>~♪





『汝が魔力は再び結び合わせる

時流が強く切り離したものを

すべての人々は兄弟となる

汝の柔らかな翼が留まる所で』

478: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 22:07:29.88 ID:Y1Yh3BqF0
いつもなら、メンバーの転送終了を告げる為に、GANTZからラジオ体操の音楽が流れるこの瞬間。






何故か今回は、誰もが一度は聞いたことのある






ベートーヴェンの『歓喜の歌』が流れてきた。







オーケストラ合唱ver.で。

479: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 22:13:16.76 ID:Y1Yh3BqF0
●<Froh, wie seine Sonnen fliegen

Durch des Himmels pracht'gen Plan,

Laufet, Bruder, eure Bahn,

Freudig, wie ein Held zum Siegen>~♪




『神の計画により

太陽が喜ばしく天空を駆け巡るように

兄弟たちよ、自らの道を進め

英雄のように喜ばしく勝利を目指せ』







御坂「な……何?何か音楽がいつもと……これってベートーヴェン?」



偏光能力「不気味だな……何なんだ?一体」






●<Ihr sturzt nieder, Millionen?

Ahnest du den Schopfer, Welt?

Such' ihn uber'm Sternenzelt!

Uber Sternen mu? er wohnen>~♪





『諸人よ、ひざまついたか

世界よ、創造主を予感するか

星空の彼方に神を求めよ

星々の上に、神は必ず住みたもう』







上条「……おい天井。これは、何か意味があんのか?」


天井「わからない……私はこの1年、あのラジオ体操の曲しか聞いたことがない。……あの黄金に光った空といい、何なんだ今日は……まさか、これが『審判の日』とでも言うのか?」





480: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/25(木) 22:15:06.37 ID:Y1Yh3BqF0
各自、ミッション経験者は、不安を覚える。




そして、思った。











●『こいつらを たおしてくだちい』





<画像なし>




『下位三隊 てんJ』





『特徴』



つよい


おおい


しつこい







『口癖』



『お前たちは危険だ』


『排除する』











ただでさえ、地獄となるこの戦いに、更なる地獄が訪れるのかと。

499: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 21:03:04.26 ID:16yDD92o0
御坂「とりあえず、今日初めてこの部屋に来た皆さん。何が起こってるのかわからないかもしれませんが、詳しく話す時間も、今はあまりありません!!


今開いたその黒い球体の中に、自分の名前かあだ名みたいなのが書かれたケースがあると思うので、それを……」ペラペラ




前回と同じように、御坂はとりあえず、新しいメンバーにスーツだけでも着させようと、全員に説明している。





学生「いきなりそんな事を言われても訳わかんねぇよ!!大体、ココはどこなんだ!?」



ボウガンを持っていた学生は、御坂にくってかかる。

500: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 21:06:05.39 ID:16yDD92o0
御坂「行ったでしょ?説明は後。とにかく、今はスーツだけでも着るか、最悪向こうで着替えられるように持っててちょうだい」



学生「んだよ……ったく、意味がわかんねぇ……何でこの俺がこんな事を……」ブツブツ……



学生は、文句を垂れながらも、黒い球体からスーツケースを探し、取り出す。







外人『…………』


御坂「何でこの人空手着を……えっと、『すいません。よく状況がわからないかもしれませんが、あの球の中から自分のスーツケースを取っておいてくれませんか?』」



御坂は、とりあえず英語で空手着の白人外人に、話かける。



学園都市の名門、常盤台のお嬢様だ。英語などは、朝飯前である。

501: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 21:35:03.38 ID:16yDD92o0
外人『…………』



御坂「あれ?通じてない?んじゃ次は……『すいません。よく状況が……』」


英語が通じないのか、次はフランス語で話しかけてみる。




外人『すまない。英語で通じるよお嬢さん。ちょっとこの状況に混乱しててね』


御坂『ッ!?よかった、通じてたんですね。それでは、スーツケースだけでも確保しててください。事情は後で話しますから。えっと……』



外人『名前かい?私は『JJ』と呼んでくれ。とりあえず、君の言う通りにするよお嬢さん』



空手着を着た外人『JJ』は、御坂の言葉に従い、スーツケースを取りに行った。

502: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 21:55:34.99 ID:16yDD92o0
御坂「よし、これで残るは……あの人か。流石にちょっと怖いわね……」ゴクリッ……






兵士「…………」チャキッ……





プロの兵士のような風貌の男は、Xショットガンを手に取り、ジッと観察している。




御坂「えっと……その銃、無闇に人に向けないでくださいね?前回、それでとんでもない事になったので……」オソルオソル……



御坂は、恐る恐る男に話しかける。



いくら学園都市第三位とはいえ、まだ中学2年の少女。



得体のしれない人間は、恐ろしいモノなのだ。

503: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 21:56:55.92 ID:16yDD92o0
兵士「…………」



御坂「えっと……それの使い方はですね?トリガーが二つあるのでそれを」




兵士「必要無い。自分で確かめる」



御坂「は……はい……ごめんなさい……」



何とか話しかけようとした御坂を、兵士は一蹴する。





御坂「え、えっと……スーツケース……お願いですから持っててくださいね。とても重要なので……あと、よかったら名前だけでも……」ビクビクッ……



完全にビビってしまっている御坂に、男が答える。

504: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 21:58:03.04 ID:16yDD92o0
兵士「……東郷……自分は東郷十三だ」




御坂「と、東郷さんですね?わかりました……」スッ……





御坂は、名前を聞くと、東郷から離れる。



御坂「(ふぅ……凄い威圧感のある人ね……やっぱ只者じゃないわ……)……ん?」



ふと御坂は、開いていたGANTZの武器部屋を覗く。



上条「…………」



そこには、上条が1人、部屋の中で立っていた。

505: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 22:07:23.86 ID:16yDD92o0
御坂「へぇー、この部屋こんな風になってのね。前はアンタと偏光能力しか入らなかったからわからなかったわ」スッ……



上条「御坂か。……まぁ、上条さんもココに入るのは初めてなんですがね。前の上条さんは入ってても」



御坂「前のって……ったく、しっかりしなさいよアンタ!!たかがこの3日間の記憶が無いってだけでしょ?全部無くなった訳じゃないんだし、ウジウジしないの!!」バシッ!!






御坂が上条の背中を叩く。

506: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 22:09:16.22 ID:16yDD92o0
上条「いてっ……とは言ってもよぉ……やっぱり気になるモンだぞ?自分が知らない3日間ってのは。放っておくとマズイ問題もあるしな」


御坂「ん?何よ、問題って」


上条「……御坂さんに関係ない事ですよ。さ、そろそろ転送されそうだしな。この部屋にあったグローブとブーツも装備したし、御坂も用意しとけよ?」スッ……



そう言い残し、上条は武器部屋を後にする。





御坂「ハイハイ……何よ、関係無いって。腹立つわね……ん?何これ?弓?アーチェリー?」カチャッ……




御坂はふと、壁に立てかけられていた機械式の弓と矢筒に目を向ける。




御坂「……やっぱりただの弓じゃないんでしょうね……矢も……うん、授業でやった事あるし、矢も金属製っぽいから色々と使えそうね。持っていこっと」ガシャッ……




御坂は、弓と矢筒を背負う。

507: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 22:12:40.56 ID:16yDD92o0
御坂「あとは……これってバイク……よね?タイヤ一つしかないけど乗れるのかしら?」ヨッ


御坂は、近未来的な一輪バイクに乗り込む。



そして、あちこちの機械を弄っていると、システムが起動し、走行可能モードとなった。


どうやら、動力部から何まで、既存するバイクとは一線を画すモノのようだ。




御坂「えっと……ウン、どうやら普通に運転できるみたいね。転送される場所が何処かはわからないけど……持っていってみようかな」


御坂はバイクに跨り、ジッと転送の時を待つ。

508: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 22:14:26.31 ID:16yDD92o0
黒い球体の部屋






上条「そういえば偏光能力。お前、その首につけられたチョーカーみたいなのは何だ?」



偏光能力「あ?あぁ、これか。……コレは、俺の能力のレベルを上げる為の機械だ。

何でも、レベルアッパーの原理からヒントを得て、脳波をコントロールして、演算の効率化や、『自分だけの現実』を、より確かなモノにすることが出来るんだとよ。

といっても、レベル4辺りより上には効果はないらしいけどな。元々それが出来ている奴等だから」トントン



偏光能力は、首につけられたチョーカーを指で叩きながら、説明する。

509: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 22:17:40.61 ID:16yDD92o0
偏光能力「まぁ、レベルアッパーの効果が切れた今、これを着けることで、インスタントだが前以上の能力を使うことが出来るってわけだ。試作品だけどな。

大体3から4くらいのレベルらしいぜ?今の俺は」




上条「へぇー、そんな便利なモンが。で、何でお前がそんな便利なモンを持ってんだ?市販なんざしてないだろ?流石に」




偏光能力「……お前の知らない3日間の間に、色々あったのさ。それに試作品だからな。俺は実験体みたいなもんだ」チラッ



天井「…………」ニィッ……




偏光能力が、チラリと天井を見ると、天井は口元を僅かに緩ませる。

510: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 22:19:32.76 ID:16yDD92o0
ジジジジジジッ…………





「わぁぁぁああ!!何だ?何だコレは!!」ジジジジジジッ……





突如、サラリーマンの1人が、悲鳴をあげる。




転送が始まったのだ。


ゲーム会場へと運ぶ転送が。





上条「始まったか……皆!!向こうについても絶対に離れるなよ!?特にスーツをまだ着てないヤツ!!離れるなよ!!マジで死ぬぞ!?」ジジジジジジッ…………





次々と、部屋にいた人々が転送されていく。





天井「GANTZ。私の集めた武器を、全部一緒に転送しておいてくれ。他の武器も一通り全てな。
どうやら今回は、私1人では生き残れそうにもない。たまには集団行動もいいだろう」ニヤッ……






ジジジジジジッ…………







そして、部屋には誰も居なくなった。

511: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/29(月) 22:20:28.61 ID:16yDD92o0









●『いってくだちい』



















●『99:99:99:99』ピッ




520: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 18:51:09.51 ID:wEDDj9II0
7月28日 01:00





学園都市 第11学区




工業製品搬出用貨物列車 駅ホーム内






ジジジジジジッ……




上条「ここは……全然わかんねぇな。どっかの学区の駅なんだろうけど……貨物列車が多いな」ジジジジジジッ…………






上条達が今回、転送された先。




それは、静まり返った貨物列車用の駅の、荷物積み込み用プラットホームであった。




上条「あ、看板みっけ。……11学区か。外への壁の灯りもかなり遠くだけど見えるし、間違いなさそうだな」

521: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 19:01:04.45 ID:wEDDj9II0
『第11学区』



学園都市と外部の物資の搬入・搬出における、陸路最大の玄関口。



学園都市と言えど、資源には勿論限りがある為、日本以外にも様々な国との貿易を行っている。




多くの倉庫が建ち並ぶ第11学区は、物資の一時保管倉庫といったところであろうか。



物資の運搬手段としては、高速道路を使った車両輸送もあるが、幾つも線路を外部まで引く事で、通常の電車以外にも貨物列車を運用する事が出来、日々外部との交易に使われている。






上条「何でこんな所に……天使だか何だか知らねーけど、こんな所にいんのかよ……」

522: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 19:03:29.51 ID:wEDDj9II0
御坂「おーい!!こっちコッチ!!皆集まってるわよ!!」




上条が辺りを見回していると、御坂が上条を呼び寄せる。

どうやら、転送されたメンバーを全員集めているようだ。






リーマンA「とりあえず、言うとおりコレ着たけどよぉ……何なんだ?一体何が始まんだよ」


リーマンB「たまたま学園都市に出張して、車に轢かれちまったと思ったら、この年になってコスプレかよー。恥ずかしいんだけど」



30前後のサラリーマン風の男二人が、御坂に尋ねる。

523: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 19:08:28.36 ID:wEDDj9II0
学生「ていうか、マジでそろそろ説明してくんねーか?どういう状況なんだよコレ?」



JJ『そう女の子にカッカするなよ少年』ポンポンッ




学生「あぁ?んだよこの空手外人!!俺英語わかんねぇっつーの」



ボウガンを持っていた学生を、GANTZのスーツの上に空手着を着た外人『JJ』がなだめる。




東郷「…………」スッ……



プロの兵士のオーラを纏う男、東郷は、Xショットガンのスコープを覗きこんでいる。

ちなみにこの男のみ、今回スーツを着ていない。





御坂「わかりました。わかりましたから、あまり大きな声を出さないで!!今から説明しますから……」





御坂は、新しいメンバーをなだめ、説明を始める。

524: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 19:13:50.18 ID:wEDDj9II0
~御坂説明中~




御坂達から300mほど離れた駅の線路内





上条「しっかし静かだなぁ……こういうところって、夜中に積み込み作業とかやるんじゃねぇのか?」


偏光能力「もう今日の分は終わったんじゃねーか?それでも確かに、人っ子1人見えねぇのは変だなぁ……まぁ、そっちのが好都合だが」



ミッションは基本、一般の人間には、星人やGANTZメンバーを視認・音などを聞き取る事ができない。



とはいえ、お互いに触れる事などは出来る為、攻撃に巻き込まれてもおかしくはない。

525: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 19:21:54.67 ID:wEDDj9II0
上条「ところで、この列車……何積んでんだろうな?」


偏光能力「さぁな。んなコト知ったこっちゃねぇ」







天井「フム……この列車は……どうやら、学園都市で製造された次世代人型汎用ロボット『NS-5型』


通称『サニー』の搬出用貨物列車のようだ。数はおよそ500体。



そういえば来週、国内外の学園都市デモンストレーションに、このロボットを使うとTVでやっていたな」





天井は、駅のホームに登り、何やらファイルを読んでいる。

どうやらそのファイルに、詳しい事が書いてあったのだろう。

526: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 19:25:23.92 ID:wEDDj9II0
上条「へぇー、人型ロボットかー。学園都市もついにそういうのを作れるようになったんだな。映画みてぇだ」




天井「いや。ロボットの運動能力に関しては人間レベルにまで成功しているハズだが、まだ中身の人工知能の開発には手を焼いているハズだ。
恐らくアレは、デモンストレーション用に作られた、遠隔操作のロボットだろう。

学園都市の技術を持ってしても、革命的な発見がない限り、あと10年はかかるだろうな」




上条「なるほどなぁー。一家に一台ロボットの時代か。ワクワクするなぁー。


……ん?ちょっと待て天井。……何でお前、そんなに詳しいんだ?」




上条が、あまりにも物知りな天井に尋ねる。

527: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 19:30:18.42 ID:wEDDj9II0
天井「まぁ、私もこの都市の科学者の端くれだしね。それに、ここにこのファイルが落ちてたんだ。
恐らく、荷物は全て積み終わっているハズだよ?」




上条「そのファイルが?何でそんなところにファイルが……」スッ……



上条が不審に思い、線路からホームへと上がって天井の元へと向かう。





上条「ッ!?なっ……天井……コレは……」ゾクッ……



天井「……私ではないぞ?『コレ』は私が見つけた時には、すでにこうなっていたんだ」



天井の側まで来た上条の目に、信じられない光景が飛び込んできた。

528: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 19:45:45.49 ID:dYK5hQIa0
ホームの上。









恐らくはココでつい先ほどまで、働いていた作業員だろう。













およそ14、5人分の『ソレ』が、何やらチェーンソーのようなモノで、ズタズタに引き裂かれた状態で山積みになっていたのだ。


529: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:12:35.63 ID:dYK5hQIa0
偏光能力「何だぁ?一体何が……んだぁ!?コレは……」




後から来た偏光能力が、その山を見て、思わず顔をしかめる。






上条「何だよ……何でこの人達が……」ガタガタッ……




天井「恐らく、今回の標的にやられたんだろう。どうやら、相手は無差別に人間を殺すタイプだ。

本来、星人は基本的に人間やその周囲に紛れこんで、危害を加える事なく生活している。星人の仕業とは考えにくいな」



上条「だったら……誰がこんな惨い事をやったって言うんだよ!!」




上条が、堪らず天井に叫びつける。

530: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:14:22.83 ID:dYK5hQIa0
天井「さぁな……星人とはまた違う……『周囲に紛れ込む必要の無い』新たな敵なのだろう。それが『天使』……」ピッ




天井は、デバイスを取り出し、敵の情報を探そうとしている。




上条「そういや、敵の名前……いつもなら『~星人』って出るのに、さっきは『下位三隊 天使』って……天使ってのは……敵は星人じゃないのか?」




上条は、GANTZの情報を思い出す。





開始時の音楽。


敵の情報。



それらが今までのミッションとは違う。

531: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:18:39.29 ID:dYK5hQIa0
上条「じゃあ天使ってのは一体……天使って言えばやっぱ……『神様』?……『神』!?」




天井「……どうやら噂の『神』が、とうとう攻めてきたみたいだな……これが『審判の日』かどうかはわからんが……」スッ……





天井は、デバイスを上条と偏光能力に見せる。




上条「敵は……一体だけ?」



上条がデバイスを見ると、ここら一帯の広い範囲に、青い反応は一つしかなかった。




ちなみに、その反応はここからそう離れていない。
せいぜい300mほどだろう。

532: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:29:30.93 ID:dYK5hQIa0
偏光能力「たった一体……何だ?『神様』ってのは人間を舐めてんのかぁ?」



天井「それよりも、気になる事が……残り時間を見てみろ」




上条「残り時間?時間っていつも通り1時間くらいじゃ……何だよコレ……」









『99:99:99:99』









偏光能力「オイ……時間カンストしちまってんじゃねぇか……しかも、全く減ってねぇし……」



上条「どういう事だよ天井……」

533: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:31:43.18 ID:dYK5hQIa0
天井「恐らく……星人との戦いでの残り時間……アレを過ぎたとしても、即死というペナルティーでは無かったんだろう。
強力すぎる星人への、GANTZからの心許ない救済措置といったところか。


ただ、今回は……私達か奴等か……どちらかが全滅するまで、確実に戦いは終わらないと言う事だ……」ゴクリッ……





上条の問いに、いつも冷静沈着な天井が、少しばかり顔を強張らせながらそう答える。













チュィィィィィィイイイイイイッ!!!!!










上条偏光天井「ッ!?」バッ!!


チャキッ!!!



突然聞こえてきた謎の金属音に、3人が一斉に振り向き、それぞれ銃を構える。

534: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:33:31.38 ID:dYK5hQIa0
上条「何だ!?何だよ今の音!!」




天井「わからん……ただ、恐らくヤツの仕業だろうが……」




偏光能力「今の音……工場とかで、機械で金属を切る時の音みてぇだったんだが……何が目的だぁ?」




偏光能力が、今の音について考えを述べる。





上条「金属を切る音?んな事言っても、あの方向には貨物列車や、列車のコンテナくらいしか金属なんてねーだろ!!切ってどうすんだよ!!」





ズンッ…………





天井「列車のコンテナ……まさか……」バッ!!




天井が、再度デバイスを確認する。

535: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:35:45.74 ID:dYK5hQIa0
天井「……なるほど……コイツは厄介だ……今までの星人なんかよりもずっとな……」





ズゥウウンッ……





先ほど、天井達がデバイスで確認した敵の数は1。





しかし今確認したところ、デバイスの地図には、青い点が何十にも重なり、真っ青になっている場所が出来ていた。





上条「なっ……まさかコレって……」















ズゥゥゥゥゥウウンッ……





536: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:37:50.16 ID:dYK5hQIa0
偏光能力「おい……何かこの列車の後ろらへんのコンテナ……めちゃくちゃ揺れてねぇか?」






ズゥゥゥゥゥウウンッ!!






上条「あぁ……しかも、どんどんこっちに……前に近づいてくる……順番に……」






ズゥゥゥゥゥゥゥウウンッ!!!






天井「……音と共に、敵の反応はドンドン増えている……既に200以上……分裂したのか増殖したはわからんが……恐らくそういう事だろう……」







ズゥゥゥゥゥゥゥウウウウンッ!!!!!!






上条「来るぞ……次は目の前のコンテナだ……」スッ……



上条は、GANTZのブーツとグローブをしっかりと装着されているか確認する。

537: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:39:38.03 ID:dYK5hQIa0
偏光能力「あぁ……んな事はわかってる……」チャキッ……



偏光能力は、GANTZの刀とXガンを片手ずつ持つ。




天井「……互いの位置には注意するんだな。私の銃は、少しばかり強力すぎて、君達を巻き込みかねない。
……今は少しでも、使える戦力は多い方がいいんだ……」チャキッ……



天井は、Zガンと呼ばれる一回り大きな銃を構える。




















ドォォォォォォォォォォォオオオオオオンッ!!!!!!





538: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:46:05.93 ID:dYK5hQIa0
上条「くっ!?」


偏光能力「いぃっ!?」


天井「……まるでホラー映画だな……何が『天使』なのやら……」








次の瞬間、コンテナを中から突き破り、真っ白なボディと、黒い人工筋肉が剥き出しになったロボットの腕が、何十体分も出てきた。











ギギギギギギギギィィィィイイイッ!!!!!!










そして、その腕達はコンテナを無理矢理引き裂き、中から人間を模した、無表情で真っ白なロボットが姿を表す。








そのロボットの名称は、『NS-5型』



通称『サニー』







まだ人工知能は備わっておらず、決して自分の意志では動くことの出来ないロボットが、凄まじい殺気と狂気を振り撒きながら、コンテナから上条達を見下ろす。









その白い胸部からは、攻撃的な真っ赤な光を放ちながら。

539: ◆fz1M8ohQ8Y 2013/07/30(火) 20:47:16.89 ID:dYK5hQIa0









『『『『『お前達は危険だ』』』』』












『『『『『排除する』』』』』






次回 上条「答えろよ……GANTZ!!」御坂「私の前に立つのなら……アンタも潰すわよ?」 後編