1: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:33:25 ID:rAA
緒方智絵里さんのとっても短い短編です。
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2: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:37:21 ID:rAA
太陽がくすんだ雲に顔を隠した日も、彼女はいつものクローバー畑にいた
穏やかな陽射しだった昼間に比べると、少し肌寒くなってきていた。
――ゲコゲコゲコゲコゲコ
早く雨が降れと言わんばかりに盛大な合唱が聞こえる。
少々耳障りだが、彼女は意に介さない。
3: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:39:05 ID:rAA
一心不乱にクローバーをかき分けていると、彼女の首筋にヒヤリとした感触が舞い降りた。
「ひゃあっ…!……雨?びっくりした…」
突然の雨に日課は中断。結局、お目当てのものが手に入ることはなかった。
「はぁ…見つからないな…なんでだろう…」
かなりがっかりした様子が伺える。
「最近調子もよくないし、幸運が逃げていっちゃってるのかな…」
彼女にとってはジンクスなのだ。
「とりあえず、中に入らなきゃ…」
4: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:41:26 ID:rAA
彼女は立ち上がり、事務所へと足を進めた。
その時、なにかを踏んだ。
独特な感触に彼女は気づいていたようだが、雨に濡れないようにするのが先決だった。
足早に屋内へと避難していく彼女の姿を、潰れたそれは見届けていた。
5: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:42:09 ID:rAA
―――――――――――――――――――――
6: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:43:50 ID:rAA
緒方智絵里は不思議な気持ちでいた。
幸運のアイテムは手に入らなかった。
それでもなぜか、物事がうまく進んでいた。
クローバー畑で雨が首筋に落ちたあの日からすこぶる調子が良いのだった。
「きっと、首に落ちた雨粒は天使さんからおすそ分けされた幸運だったんだ…!…なんて」
7: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:48:49 ID:rAA
ふふふっとあどけなく笑う彼女にはこの出来事がまるで本当に天使がくれたもののように感じていた。
「トレーナーさんも『飛び跳ねてるようないい動きだ』なんて言われて…!」
それから彼女は、雨の日を待つようになった。
そして雨が降ると決まってクローバー畑の上で小躍りをする。
全身で天からの恵みを受け取り、飛び跳ねるように舞う姿は、評判になった。
『まるで、天使が水浴びをしているようだ。』、と。
8: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:50:55 ID:rAA
「天使さん、私、これからも、がんばるね…!」
――………………………
今日も太陽はくすんだ雲に顔を隠していた。
草むらでは天使が静かに恵みの雨を待っている。
9: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)18:51:04 ID:rAA
おわり
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