1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:14:55.62 ID:JTOMzQD10
側近「一番隊は東に砦と高台を造って下さい」 

側近「他の隊は西側に畑と田を作り続けて下さい」 

側近「このペースで作れれば……ぎりぎり今年の冬に備えられる程度か」 

側近「ああ、くそ、これだから連合部隊は嫌いなんだ! お前達、パンじゃ我慢できないのか!」 

兵士達「米食いてぇ!!」 

側近「じゃあ血反吐吐くまで耕せ!」 

魔王「……で、私は何をしていればいいのだ?」 

側近「一人で鍛錬でも積んだらどうです? 完全に武道派なんですからこちらに首を突っ込まないで下さい」 





2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:18:09.83 ID:JTOMzQD10
魔王「……」ブォンブォン 

魔王「……」ビュビュン ブォン 

魔王「業火魔法!」ズゴァァァ 

魔王「……」 

魔王「一人で出来る鍛錬で伸ばせるほど、伸び代なんてもう無いわ!」 

魔王「誰でもいい! 兵士、手の開いている兵士はいないのか!」 


兵士達(農作業)「……」ザックザック 

魔王「……」 

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:21:18.68 ID:JTOMzQD10
魔王「誰でもいい、私の鍛錬に付き合え」 

兵士「いえ、我々には農作業があるので」 

兵士「魔王様にひもじい思いさせるわけにはいきません」 

魔王「じゃあ手伝わせろ」 

兵士「ま、魔王様に農耕をさせるなどできません!」 

魔王「……一人だけ除け者にされるとか寂しいのだぞ」シュン 

兵士達「」キュン 

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:24:08.84 ID:JTOMzQD10
魔王「いやー! 良い汗をかいた! 勤労とは素晴らしいな!」アセダク 

側近「こちらが我が主、魔王様であられます」 

女勇者「……うーわー」 

魔王「……」 

魔王「え? 誰? 勇者? 早すぎじゃない? ていうかシャワー浴びてきて良い?」 

側近「リミットは一分で。超過分は罰則があるものと思って下さい。ではスt」 

魔王「ふおおおおおお!!」ガチャバタン 

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:27:09.25 ID:JTOMzQD10
魔王「ふう……ふう……待たせたな」ボサボサ 

側近「髪の毛ぼっさぼさでヒヨドリみたいじゃないですか。見っとも無い」 

魔王「じゃあ一分でとか無茶振りしなれけばいいだろう!」 

側近「全くああ言えばこう言う」 

女勇者「えーと、魔王なんだよね」 

魔王「就任し立てだが列記とした魔王だ」フキフキ 

女勇者「単刀直入に聞くと魔物の被害ってあんたの所為?」 

魔王「事実を述べればノー。あれら魔物は別の指揮系統で動いている」 

魔王「というよりも我々魔界には、人間界のような野良の魔物は居ない」 

魔王「魔界から人間界に来るのは我々魔族と、従えている魔物……ドラゴンや魔法生命体のゴーレムだ」 

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:30:08.96 ID:JTOMzQD10
女勇者「あー……やっぱりそうかー」 

魔王「いや、だが我を倒」 

女勇者「何となくそんな気がしたんだよねー。だってここじゃあ人の姿しか見ないし」 

魔王「ああ、まだドラゴン達は到」 

女勇者「ぶっちゃけ帰り道の路銀も無いし、そもそも帰れないし雇ってよ!」 

魔王「……はあ?」 

側近「戦士職として雇用でよろしいでしょうか?」 

女勇者「むしろそれしかできない!」 

魔王「え、ちょ、普通に話が進んでる」 

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:33:23.97 ID:JTOMzQD10
兵士10人「きゅう……」グッタリ 

女勇者「何これ楽勝!」ブンブン 

側近「魔王様直属の騎士という事で」 

女勇者「ヒャッホー! 役職キターー!」 

魔王「待て待て待て! いいのか?! 人間、というか勇者だぞ?!」 

側近「別にいいでしょう。彼女の力なら兵士以上に田畑を広げられるんだし」 

女勇者「と言う訳で魔王もよっろしくなー!」 

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:36:15.99 ID:JTOMzQD10
女勇者「で、あたしは何をすればいい!」 

魔王「私も何をすればいい!」 

側近「はい」つ鍬二本 


女勇者「……」ザックザック 

魔王「……」ザックザック 

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:39:27.66 ID:JTOMzQD10
魔王「ふー! 良い汗だ!」 

女勇者「お風呂に入って出たらエールだ! 素晴らしきかな勤労!」 


側近「はあ? そんな贅沢ができるとでも?」 

側近「ライ麦パンでも齧ったらどうです?」 


魔王「……」ムシムシ 

女勇者「……」ムシムシ 

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:42:33.72 ID:JTOMzQD10
魔王「私は思ったのだ。お前がいるなら二人で手合わせして鍛錬を積む事ができるじゃないか!」 

女勇者「鍛錬!」 

魔王「訓練場に行くぞ!!」 

女勇者「合点承知之助!」 

ウオォォォ トリャアア フットベェ  ナニオォ クラエッ 
ガキィン キィン ギィンギィィン ズゴォン ドゴォォォン 


側近「当面訓練場は使用禁止で」 

魔王「何故だ!!」 

女勇者「横暴だ!」 

側近「敷地丸々クレーターにしておいて何を言っているのです」 

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:45:23.56 ID:JTOMzQD10
女勇者「なんかさー」ムシムシ 

魔王「なんだ?」スス 

女勇者「魔王城の食事って一般家庭よりやや質素だよね」 

魔王「まだ収穫自体が一度もできていないからな」 

魔王「まずは今年の冬が越せるかがピークになる。それを過ぎれば来年から余裕が出てくる。というのが歴代魔王達の記録だ」 

女勇者「魔王なのに来年までこんな食事なの?!」 

魔王「仕方もない話だ。まず食べる物が無い」 

女勇者「というか魔界から兵糧送るとかできないの?」 

魔王「タダじゃないのだよ……」 

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:48:33.88 ID:JTOMzQD10
女勇者「たまには側近も遊ぼうぜー!」ブン 

側近「私は文系魔法特化なので貴女達と身体能力が違うのです」ベシ 

魔王「だが、たまには休養も必要だと思うが」 

女勇者「そうだそうだドッジボールやろうぜー!」ブン 

側近「ですから私は」ベシ 

側近「落雷魔法!」ビシャァッ 


女勇者「反省する」プシュゥゥ ザックザック 

魔王「うむ、反省しろ」ジュゥゥゥ ザックザック 

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:51:29.94 ID:JTOMzQD10
魔王「今日は周辺の水源の調査に立ち合うがお前はどうする?」 

女勇者「なに? 魔王って学問できるの? 土木得意なの?」 

魔王「出来る訳がないだろう」 

女勇者「じゃあ何で立ち会うのさ」 

魔王「周辺の状況とあわせ……水路と言う力仕事ができそうかの判断だ! 可能であればすぐに掘り始める!」 

女勇者「よっしゃあ乗った!」 

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:54:15.25 ID:JTOMzQD10
魔王「……という訳でこの白線に沿って掘り進める」 

女勇者「掘った部分固めたりしないの?」 

魔王「それは私達の仕事ではないさ」 

女勇者「なるほど」 

魔王「では」ジャキ 

女勇者「おうよ」ジャッ 


兵士「魔王様方がスコップを剣の様に掲げている」 

兵士「格好良いな」キュン 

兵士「何言ってんだお前」 

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:57:24.27 ID:JTOMzQD10
女勇者「魔王!」バン 

魔王「ノックくらいしたらどうだ」 

女勇者「別にいいじゃん。そんな事より一緒に寝よう!」 

魔王「何故?」 

女勇者「お泊り会みたいな感じで面白そうじゃん!」 

魔王「お泊り会……」 

女勇者「ダメ?」 

魔王「面白そうだな!」 

女勇者「だろ!」 

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 20:59:59.40 ID:lFs9KymB0
魔王「あたしって、ほんとバカ」 

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:00:17.99 ID:JTOMzQD10
魔王「誰かとこうして眠るのは初めてだ」 

女勇者「なんだ? 友達いないのか」 

魔王「そこら辺の者が魔王になれる訳ではないからな。元々の立場柄としても、こうした友達は居なかったよ」 

女勇者「それはつまらないな」 

魔王「そういうお前はどうだ。帰れないとは言え、帰るべき場所ぐらいあるのだろう」 

女勇者「一人立ち含めて旅に出たからなー。このまま帰っても追い出されるだけだし」 

魔王「いや、だからその件に関しては私をた」 

女勇者「まーこの生活も楽しいからいいけどな! 魔王も良い奴だし!」 

魔王「……そうか。ありがとう」ギュ 

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:03:24.85 ID:JTOMzQD10
女勇者「……。フフ」モゾモゾ 

魔王「んっ、こら何をしている」 

女勇者「魔王って着やせするタイプだよねぇ。こやつめ! こやつめ!」モニュモニュ 

魔王「ふ、んん、そう言うほどの大きさでもないだろう」モニュ 

女勇者「ひにゃあっ! おのれー!」ムニムニモゾ 

魔王「んぁっ! お、お前、流石に下は自重しろ!」 

壁「」ドンッ 

魔勇「」ビクッ 

勇者「……隣、誰?」 

魔王「……側近」 

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:06:20.57 ID:JTOMzQD10
女勇者「いやー良く寝た!」ハハハ 

魔王「色々な意味でお互いスッキリしたしな!」ハハハ 

側近「もう少し防音に気を遣っていただけると有り難いのですがね」 

魔王「そんな事を言って側近にとっても良いネタであったのだろう~」ウリウリ 

女勇者「本当はお姉さん達に混ざりたかったのだろう~誘われたかったのだろう~側近きゅん~」ウリウリ 

側近「」バチバチィ 

女勇者「ちょ、無言で紫電が」 

柱「勇者は側近にごめんなさいをした方がいいと思うな」 

女勇者「あ! 一人で卑怯あひぃぃぃん!」バシィン 

柱「ひぎぃっ!」バリバリィ 

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:09:25.51 ID:JTOMzQD10
女勇者「……お」ザックザック 

女勇者「なんか凄いのがぞろぞろいるぞ!」 

魔王「ああ、小屋ができたからドラゴン達をこちらに連れてきたのだ」 

女勇者「何の為にドラゴンを連れてくるんだ?」 

魔王「資材の運搬や愛でる為だ!」 

女勇者「愛でる?」 

魔王「可愛いだろう」 

女勇者「格好良い、だろ?」 

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:12:10.46 ID:JTOMzQD10
魔王「ふう……今日も充実した一日だった」ホカホカ 

女勇者「毎日毎日鍬振るってるだけだけどな」ホカホカ 

側近「ああ、魔王様丁度いい所に。また勇者が来ました」 

魔王「は? 勇者ならここにいるではないか」 

女勇者「あー初代勇者の血筋は没落したよ。栄誉を盾に悪さして」 

魔王「ならばお前はなんなのだ?」 

女勇者「あたしは武道派勇者の試験に合格したから称号をもらったのさ!」 

魔王「はー……なんだ面倒な。今行くからもう少し待たせてくれ」 

側近「畏まりました」 

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:15:22.27 ID:JTOMzQD10
男勇者A「むう、貴様が魔王か!」ガチムチ 

男勇者A「な、中々めんこいではないかっ!」ギンギン 

魔勇「」 

男勇者A「む、右腕の騎士かと思えば貴様も勇者の紋章を! どういう事だ! 寝返ったか!」ドスドス 

魔王「く、来るなぁ!」 

女勇者「いやああ! ○ませられる!!」 

男勇者A「ぬおおおおお!!」ドスドス 

魔王「いやあああああ! いやあああああああ!!」ブンブン 

女勇者「きゃあああああ! きゃあああああああ!!」ブンブン 

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:18:25.80 ID:JTOMzQD10
魔王「兵士! 男の兵士はいないのか!」 

兵士達「どうかなさいましたか?」 

魔王「助けてくれ! あの醜い巨人に襲われているのだ!!」 

女勇者「○されるーー! 無理やり○ませられちゃう!!」 

男勇者A「魔王ーーー! 覚悟ーーーー!!」ドスドス 

兵士達「」 


兵士「あの無礼者は簀巻きにし、ドラゴンによって火口へ落とさせました」 

兵士「お二人とも、もう危険はありません。ご安心下さい」 

魔勇「「……」」プルプル 

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:21:17.08 ID:JTOMzQD10
魔王「私達の○○は無事守られた」 

女勇者「全くだ。しかもあんなゴリラが相手とかマジないから」 

魔王「……」 

女勇者「……」 

魔王「なんだお前もか」 

女勇者「あんたもかよ」 

魔王「いや、私は立場上おいそれと散らす訳にもいかんからな」 

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:24:27.53 ID:JTOMzQD10
女勇者「だけどこれから先の事を考えると、せめて相手を確保するぐらいの事は必要だと思う!」ビッ 

魔王「一理有り! ここには男が多いからな! 部下の顔と名前は全て覚えているぞ!」 

女勇者「……その中から魔王センスで選ぶとしたら?」 

魔王「……」 

魔王「うーん?」 

女勇者「え、全滅?」 

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:27:24.08 ID:JTOMzQD10
女勇者「側近君とかどうなの? (童顔で)可愛い(魔法がめちゃ)強い(学術的に)頼りになるの三拍子じゃん」 

魔王「ふーむ……基本的に部下全員を異性として見た事がないからな」 

魔王「あーでも側近だったら……うん、最後までできる、かな」カァ 

女勇者「おおぉっとここで魔王選手、側近選手にまさかのカミングアウト!!」 

側近「あーそこの君」 

侍女「はい、なんでしょうか?」 

側近「バケツ持ってきて。吐くから」 

魔王「えっ」 

女勇者「側近選手、まさかのツンデレ! 嫌悪表現でまさかのツンデレ! これはポイントが高い!」 

側近「えれえれぇー」 

魔王「え゛っ」 

女勇者「と思ったらガチだったーーー!!」 

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:30:27.00 ID:JTOMzQD10
女勇者「というかあんたは普通にポイント高いと思うんだけども、どんだけ側近に嫌われてるの」 

魔王「いや……結構ショックだった」 

魔王「まさか……私の異性としての地位は最底辺なのか」フルフル 

女勇者「お、落ち着け魔王! まるで中毒者の様な痙攣だ!」 


侍女「あ、あのー……側近様は本当に魔王様の事が?」 

側近「そんな馬鹿な話がありますか」フキフキ 

側近「古い食材を優先して食べていたのであたってしまっただけですよ」 

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:33:46.96 ID:JTOMzQD10
魔王「勇者よ! これは非常事態だ! 我々は早急に旦那を確保する必要がある!!」 

女勇者「イエーイ! けど魔王が勝手に旦那を捕まえてきていいのかー!」 

魔王「ここは外に出て然るべく相手を見つける他無い!」 

女勇者「ここ人間界だけどいいのかー! あたしは大賛成だーー!!」 

魔王「魔王としての権限の元、遠方への外出許可を求める!!」バン 

女勇者「お忍び! お忍び!」 

側近「はあ? 何を盛っているんですか? 運動でもして発散してて下さい、はい鍬二本」ケッ 


女勇者「あんた、曲がりなりにも上司だよね」ザックザック 

魔王「おかしいな。おかしいな」ザックザック 

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:36:16.10 ID:JTOMzQD10
男勇者B「ではすまないがこちらで待たせてもらおう」キリッ 

側近「今しばらくしたら戻られますのでお寛ぎ下さい」 

側近(女勇者さんは例外にしても、勇者とは武骨者が多いかと思いましたが、随分と好青年な勇者ですね) 

魔王「今日も一日労働終わりだ!」ガチャン 

女勇者「エールが飲みたいが今日もパンで我慢するぅ!」ズケズケ 

側近「ああ、丁度良いところに。また別の勇者がお越しになられ、今正にここに」 

男勇者B「ど、どうも……」キラキラ 

魔王「……」アセダク 

女勇者「……」ムワァ 

魔王「いやああああ!!」ガチャ 

女勇者「やあああああ!」バタンガチャリ 

男勇者B「鍵まで?!」 

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:39:52.00 ID:JTOMzQD10
魔王「は、恥ずかしい所を見られてしまったな」サッパリ 

女勇者「女勇者、一生の不覚」シットリ 

男勇者B「あれ、君は勇者名簿に載っていた……」 

女勇者「魔王直属の騎士、女勇者だ!」バン 

男勇者B「……魔王、二、三尋ねたい事がある」 

魔王「そんな、勿論まだ、穢れ無き身体でございます」テレテレ 

男勇者B「違う」 

女勇者「そんな、二人を妾にしたいだなんて」テレテレ 

男勇者B「違う。なんだ? 二人して打ち合わせしてやっているのか?」 

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:45:15.07 ID:JTOMzQD10
男勇者B「現在発生している魔物による被害、及び魔物そのものに関し、お前達は組しているのか?」 

魔王「していない。我々魔王軍は魔界より魔族並びに使役するドラゴンやゴーレムのみを連れてくる」 

男勇者B「お前達に侵略の意思はあるのか? 見る限り広大な耕作地を持っているが、人間に対し戦争を起こす準備か?」 

魔王「それもない。今現在の耕作地では今年の冬が越せんから更に田畑を作るが、そちらが直接管理している土地まで踏み込む気は無い」 

男勇者B「……最後に魔物とはなんだ。そしてその解決に対して、お前達は手を貸してはくれないだろうか?」 

魔王「……」キョトン 

魔王「……どうしよう?」チラ 

側近「……」ハァ 

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:48:18.14 ID:JTOMzQD10
側近「主が馬鹿なので三つ目に関しては私から」 

男勇者B「彼は部下じゃないのか?」 

女勇者「間違いなく部下だよ」 

側近「魔物とは魔物を司る者、魔物の王が存在する事によって生まれます。この者はいくら倒そうと周期的に生まれてきます」 

側近「私達は魔物の王を討つ事には協力します。が条件があり、それは魔王様を討ち取る事です」 

女勇者「はあ?! なにそれ!」 

魔王「魔王とはそういうものだからな。ああそうか、お前は私の話を聞かずに雇えと言い出したのだったな」 

側近「魔王様を討ち取った暁にはこちらも全軍で魔物の王を殲滅し、全軍及び軍の物資を魔界に引き上げます」 

男勇者B「ちょっと待て……なんだそれは。魔王とはなんなんだ」 

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:53:59.25 ID:JTOMzQD10
魔王「説明してもいいのだろうか?」 

側近「ここで聞いた話を外部に漏らさない事を約束して頂けますか?」 

男勇者B「……心得た」 

魔王「魔物の王は異常なまでに強い。勿論、我々が軍隊として立ち向かえば勝ち戦となる」 

魔王「だがこうした事態において、英雄を立てて少数精鋭で立ち向かわせる人間ではあまりにも分が悪い」 

魔王「その為、その都度明確な悪役として魔王を名乗り人間界で生活するのだ」 

男勇者B「いや、それでもおかしいだろ……なんで貴女が死ななくてはならないんだ」 

魔王「最低限魔王は倒せるくらいに人間に努力してもらいたい。でなければ人間は堕落し、こちらに頼りきりになる」 

女勇者「あーそれは分かるなー」 

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 21:57:29.64 ID:JTOMzQD10
魔王「あと私は死なないよ。というより一度だけ致死ダメージを負っても、全快で復活できる術が施されている」 

側近「術の施行には一ヶ月かかります」 

女勇者「もし、何かの事故で勇者と戦う前に死んじゃったら?」 

魔王「……魔界に帰って何百人かに頭を下げて再度施してもらう」 

女勇者「うわぁ……」 

側近「その間、私が魔王代理として行動します。私にも施行されていますからね」 

男勇者B「それで……魔界には何の利益があるというのだ」 

側近「色々、ですかね」 

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:00:08.61 ID:JTOMzQD10
側近「魔界はあまり土地が良くないのですよ。最近やっと少しだけ安定してきた程度でして」 

側近「農作物の改良などにおいては、こちらで行うほうが効率がいいのです」 

側近「ですがそれを表立ってやってしまうと、当然人間界側から侵略者として睨まれてしまう訳ですので、こうして少しずつ行っているのですよ」 

側近「魔物の王を討つと言っても、ある意味で魔物達を隠れ蓑にしているのですから大きな口は叩けないんですよね」 

女勇者「時折話があるんだけども、いっそ魔王が現れるポイントに防衛線貼るか、て話とかあるけど大丈夫か?」 

魔王「事前に少数の斥候を送ってから移動してきているからな。まだまだ人の手の無い場所などいくらでもある」 

男勇者B「……どうしても貴女を討たないといけないのか」 

魔王「なに、本気は出さないさ。というか本気の私に勝てるくらいなら魔物の王にも勝てるだろうし」 

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:03:44.67 ID:JTOMzQD10
女勇者「……」 

男勇者B「そうか……このような美人に剣を向けるのは主義に反するが……そちらも折れる訳にはいかないのだな」 

魔王「すまないがこれは譲れないな。それと今の君では到底私は倒せまい。一度出直すといい」 

女勇者「あのさー今思ったんだけども」 

側近「どうかなさいましたか?」 

女勇者「その魔物の王の戦力ってあたしで言ったらどれくらいなのさ」 

魔王「5勇者ぐらいかな……」 

女勇者「あんたどんだけ手加減して手合わせしていたんだ」 

魔王「正確には力を封じる術も施行されているのだ」 

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:06:43.96 ID:JTOMzQD10
女勇者「まーそこはいいか」 

女勇者「あたしはここで魔王と戦いながら腕磨いておくからさ、男勇者Bは有望そうな奴捕まえてガチ特訓でもしてよ」 

男勇者B「多対一で魔王に勝ってもいいのか?」 

魔王「十人、二十人と来たら全力を出さざるを得ないが、数名程度なら有りだな」 

女勇者「いやいや何言ってんの」 

女勇者「もうあたし達で魔物の王を倒しちゃえばいいじゃんって話でしょ」 

男勇者B「は?」 

魔王「え?」 

側近「……あーその場合どうしましょうね」 

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:09:27.90 ID:JTOMzQD10
女勇者「え? それって不味いの?」 

魔王「人間には私が諸悪の根源とされているんじゃないのか? 結局私がいたら納得しないだろう」 

女勇者「確定情報は無いよ。それにそうだとしても、魔王がちょっとやらしい服来て国王達を誘惑してすればいいんだ!」 

魔王「国王ってどんな感じだ?」 

女勇者「うちはこの人」ピラ 

男勇者B「俺のとこはこの人だ」ピラ 

魔王「チェンジ!!」 

女勇者「じゃあ王子で!」ピラ 

魔王「もっと酷い!」 

男勇者B「あーそこの国の王族は軒並み残念だからな」 

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:12:25.77 ID:JTOMzQD10
側近「……現状すぐに出せる考えとしては、そちらで魔物の王を倒しましたら」 

側近「飽くまで魔王を倒した、として頂く他ないでしょうかね」 

魔王「で、こちらは魔界に逃げ帰るか」 

魔王「待て! もうちょっと長引いてくれないと作物の改良そのものが!」 

女勇者「それはそれで結構酷い話だな! 魔物に人食われたりしているんだよ?!」 

魔王「このまま成果無く帰ったら……うあああああ!!」ガクガクブルブル 

側近「一年未満は懲罰があるのですよ」 

女勇者「魔王なのに?!」 

男勇者B「魔界の王じゃないって事か」 

側近「そういう事です」 

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:18:10.17 ID:JTOMzQD10
男勇者B「……」 

男勇者B「あ、すまない、やっぱこれを口外しないとか無理そうだ」 

女勇者「はい人間一人求人来ましたー!」 

魔王「募集枠が魔王と女勇者の婿しかないなー! 困ったなー! 仕方が無いなー!」チラッチラッ 

女勇者「はい採用ー! 二人の婿採用されましたー!」チラッチラッ 

側近「……」バリバリィ 

男勇者B「……もしかしてこの二人ってこのテンションが平常なのか」 

側近「割かしそうです」 

魔勇「」ブスブスゥ 

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:21:19.57 ID:JTOMzQD10
側近「申し訳ないですが記憶は消させて頂きますね」 

男勇者B「そんな事ができるのか……いやそれはそれで助かるが」 

側近「一応メモは渡しておきましょう……勇者を集め鍛える・魔物の侵攻を食い止める」 

側近「これを元に行動すれば、しばらく時間はかかるでしょうし魔物の被害を無視して魔王様一直線、という考えもしないでしょう」 

男勇者B「なるほど……何から何まですみません」 

側近「いえ、お気になさらずに。それではいきますね」 

魔王「待て! 止めろ!」 

女勇者「ふざけんな側近きゅん! そんな事したら今日は二人で○○○だかんなぁ!」 

側近「おおっとテレポート」シュン 

男勇者「え? 二人が消えた?」 


魔勇 *いしのなかにいる* 

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:24:38.49 ID:JTOMzQD10
側近「魔王として、までは言いません。一女性として慎みを持って下さい」 

魔勇「はい」 

女勇者「あれ、ちょっと待って! 普通、魔王としては最低限じゃないの?!」 

側近「そこまで期待していませんよ」フゥ 

側近「これからについても考えなくてはならないし忙しくなるので、面倒事は起こさないで下さい」スタスタ 

魔勇「はーい」 

女勇者「……あれ、側近が少し優しくなった?」 

魔王「実はあんな感じなのだよ」 

女勇者「それってそこまで悪く思われてないんじゃない?」 

魔王「そうなのか?! では今晩は突撃してみるか?!」 

女勇者「よっしゃあ! 扉の鍵に細工しておくぜ!」 


兵士「おや……? こんな所に魔王様と勇者さんの石造が。あれ、こんなのあったっけ?」 

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:27:14.11 ID:JTOMzQD10
魔王「夏だ!」 

女勇者「海だ!」 

魔勇「水着回だ!!」 

側近「……」つ鍬二本 


魔王「……」ザックザック 

女勇者「……」ザックザック 

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:30:43.91 ID:JTOMzQD10
女勇者「海行きたい!」 

魔王「海はここから十日以上かかる」 

女勇者「ドラゴンに乗っていけばいいじゃん! あたしあったまいいー!」 

魔王「連れてきた種は騎乗に用いた際、他のドラゴンよりも落竜事故が跳ね上がる暴れドラゴンである」 

女勇者「連れて来た時かなり大人しかったよね?!」 

魔王「あれは背に乗せるのが嫌いなのだよ。だから資材の運搬は左右に垂らしてある袋に詰め込むのだ」 

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:33:21.10 ID:JTOMzQD10
女勇者「というか夏になっても延々と畑耕すとかなに?! そんなに耕作地必要なの?!」 

魔王「これからの時期に主食の小麦を作るのだぞ」 

女勇者「あたし来た当初いっぱいお米作ってたじゃん!」 

魔王「時期的にあそこで米に集中しないと冬場に暴動が発生するぞ」 

女勇者「米一揆とか何時の時代」 

魔王「七百年ほど前の記録では、それによって魔王軍が瓦解したとされる恐ろしい事件が記されている。以来お米を軽視する事は無くなった」 

女勇者「恐るべしお米」 

魔王「一粒に七柱が居ると言われているからな」 


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:36:14.40 ID:JTOMzQD10
女勇者「あーづーいー!」バンバン 

女勇者「そうだ! 水源! 水路があるじゃん!」 

魔王「馬鹿! 田畑に流す水だぞ! 何を考えている!」 

女勇者「水浴びー! ちょっとだけだから!」グググ 

魔王「飛び込む気満々ではないか! 流石に許さんぞ!!」グググ 


兵士「勇者ちゃんのエキスたっぷりのパン!」ゴクリ 

兵士「それだと生地に練り込まれている言い方だな」 

兵士「いっその事、魔王様も水浴びして欲しい」ゴクリ 

兵士「してくれたら今年は豊作間違い無しだというのに」 

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:39:15.13 ID:JTOMzQD10
女勇者「どっか涼しいところ~」フラフラ 

女勇者「お、地下への階段? これは涼しそうな気配!」 

女勇者「いざ!」ズカズカ 

扉「開けないよ!」 

女勇者「なんか凄い鍵のついた扉……何これ! 中に何が?! 浪漫を感じる!!」 

魔王「こらこら、剣を抜いてぶった切ろうとするな」 

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:42:11.23 ID:JTOMzQD10
魔王「ここはあるのは宝物庫だ」 

女勇者「え、なんでそんな物が必要なのさ?」 

魔王「まあ、ちょっとした取引でな」 

魔王「こことは別の世界、というものを信じられるか? 無論、魔界ではない」 

魔王「もっと根本が違う、別の時間の別の世界。例えばそこは魔王が居なく魔物も居なく、人間だけの世界」 

魔王「例えばそこは、魔を討つ王としてある一人の人間に魔王の名を与える世界」 

女勇者「ファンタジーだな。だがそれも夢があっていいな!」 

魔王「夢ではない。我々では見る事も触れる事も叶わないが確かにあるのだ」 


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:45:12.26 ID:JTOMzQD10
魔王「世界を時間を超えて旅する商人がいる。その商人はその世界の珍しい物から当たり前の物まで、何でも取引する」 

魔王「そうして別の世界に持ち出してまた取引する。そういう者がいるのだ」 

女勇者「その商人用の商品がここにあるって事か」 

魔王「その通りだ。実際に四百年ほど前にも来ている。人間の国数箇所とも取引したと言う話が残されているな」 

魔王「そちら側のどっかの国に、この世界には無いと言われる金属、なんてものは無いか?」 

女勇者「あっ、ある! それで作った聖剣が国の宝物庫にあったはず!」 

魔王「この世界に無い、二つと無い、そういった類のものは大抵、彼、もしくは彼らの商品だ」 

女勇者「ほー……あ、複数いるのか知らないのか」 

魔王「あまりに情報が少ないからな」ガチャガチャ 

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:48:29.35 ID:JTOMzQD10
魔王「折角来たのだ。見せておこう」ガチャガチャガチャン 

魔王「魔界に生える巨大樹の黄金のリンゴだ」ギィィィ 

部屋「空っぽだよ!」 

女勇者「……」 

魔王「……」サー 

側近「おや? 魔王様? ああ、そうだ時の行商は今しがた見えられ、今帰られましたよ」 

女勇者「え!?」 

魔王「な! 見たかった!」 


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:52:15.90 ID:JTOMzQD10
側近「私にもよく分からないのですが、今は彼らにとって繁忙期らしいのでとても急がれていました」 

側近「折角、私が彼らの事を記すと言うのに、ろくに話も聞けなかった」ションボリ 

魔王「私は姿すら拝めなかったのだぞ!」 

女勇者「そうだ! そうだ!」 

女勇者「ん? 彼ら? 複数で来たのか?!」 

側近「いえ、聞いてみたらそういう商人はいっぱいいるそうですよ」 

魔王「なんと……くー、生きている内にまたこの世界に来て欲しい!」 

女勇者「全くだ!」 

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 22:57:11.89 ID:JTOMzQD10
魔王「で、一体何と換えたのだ?」 

側近「ふふふ、今の我々にとってこれ以上無い素晴らしい物ですよ」 

女勇者「おお……側近君が不敵に笑ってるっ!」 

魔王「今の我々……は! 我々の婿か!」 

側近「……」パリッ 

女勇者「さあ正解は何か! 魔王の命をかけた挑戦が始まりました!」 

魔王「……ま、魔物の王を消し去る剣」 

側近「……」ニッコリ 

魔王「側近!」キュン 

側近「……」パリパバチ 

魔王「」 

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:00:53.84 ID:JTOMzQD10
側近「とまあ冗談は置いておいて」 

女勇者「途中目がマジだった」 

側近「それも許すくらい上機嫌という事です。手に入れたのは!」ドン 

魔王「種? 苗?」 

側近「別の世界だけどこちらで生えているのとほぼ同種の野菜です!」 

女勇者「えー? 素晴らしい物?」 

側近「なんとこれはですね。とある魔王が収める国で研究されて生まれた、苛酷な環境でも熟成する野菜なのです」フフン 

側近「その世界の話も少し聞く事ができました……ああ、これを私が記せるのだと思うともう!」ウキウキ 

女勇者「そ、側近君が壊れた」 

魔王「私達とは喜ぶカテゴリーが大きく違いすぎて分からん……」 

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:03:22.60 ID:JTOMzQD10
魔王「だが確かにこれは素晴らしいな。これを魔界に持ち帰ればそれだけ大ポイントだ」 

女勇者「こっちで増やしたりしないのか?」 

魔王「こっちの環境で育てて温室化されても困るからな」 

側近「そうそうはないでしょうが、我々にとっては大事な事ですからね。万が一も排除したいのです」 

女勇者「なんか切実だな」 

魔王「割と魔界は切実な環境なのだよ」 

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:06:32.03 ID:JTOMzQD10
10:00 
魔勇「……」ザックザック 

兵士たくさん「……」ザックザック 


13:00 
魔勇「……」ザックザック 

兵士たくさん「……」ザックザック 

兵士いっぱい「」ドサッ 


15:00 
魔勇「……」ザックザック 

兵士たくさん「」ドサッ 


18:00 
魔王「なんだ誰もいないな」ザックザック 

女勇者「全く貧弱だな!」ザックザック 

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:12:56.53 ID:JTOMzQD10
魔王「ふう……今日も良き一日かな」サッパリ 

女勇者「お腹空いた!」ホカホカ 

側近「蓄えはまだまだですが、今食べる分に関してはだいぶ収穫が安定してきましたので、少し奮発しておきましたよ」 

魔王「おお、コーンスープ!」 

女勇者「おお! 冷やっこい! 美味しそう!!」 

側近「メインはカレーです」ホカホカ 

魔王「夏野菜カレーか。堪らないな」 

女勇者「あー良い香り!!」 

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:15:41.99 ID:JTOMzQD10
女勇者「カレーと言えば」モグモグ 

魔王「どうした?」モグモグ 

女勇者「ここでお肉って食べた事無いんだけど」 

魔王「卵なら食べているだろう」 

女勇者「たんぱく質の話じゃないよ! お肉だよ! ミートだよ!」 

魔王「ああ、魚か。どれ、明日は川釣りでもしてみるか」 

女勇者「魚じゃない! 牛! 豚! せめて鶏!」 

魔王「食べられる訳が無いだろう。ただでさえ冬の備えがあれだというのに、鶏卵が食べられるだけマシだと思うべきだ」 

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:18:32.80 ID:JTOMzQD10
側近「そもそも魔王様はベジタリアン気味ですからね」 

女勇者「ベジタリアン気味ってなんだよ! 訳分からないよ!」 

魔王「あまり肉は好きではないなー。あ、魚は大好きだぞ」 

側近「基本、肉は各々が狩猟した物を食すだけですからね」 

側近「それほど食べたいのでしたら、明日は山に行かれてはいかがですか?」 

女勇者「猟かーやった事無いんだけどな」 


女勇者「鹿獲れた!!」ズルズル 

魔側 ――どうやって?!――クワッ 

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:21:00.65 ID:JTOMzQD10
魔王「弓も持たずに……罠でも作ったのか?」 

側近「おまけにそのまま引き摺って持ってくるとは何事ですか」 

女勇者「いや、あたし捌き方知らないし」 

女勇者「それと仕留めたのは剣だよ。走ったら追いついた」 

魔王「……頭が可哀想な子の肉体的ポテンシャルは凄まじいな」 

側近「それ、ブーメランですよ」 

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:24:14.81 ID:JTOMzQD10
女勇者「ヒャッハー! 数ヶ月ぶりの肉だぁ!」 

魔王「それは良かったな」ジリジリ 

女勇者「何焼いてんの?」ムシムシ 

魔王「ホッケの干物。今日、食料調達として遠方に派遣した漁業組の一部が戻ってきたのだ」ハム 

魔王「ほふっほふっ……うん、美味い!」 

側近「新鮮な鹿肉を食べているのですから、そんな物欲しそうな目をしないで下さい」 

女勇者「はっ!」ジュルリ 

90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:27:15.79 ID:JTOMzQD10
女勇者「そういえばこれからの季節、麦を作るとか言っていたけど、収穫まで小麦はもつの?」 

魔王「もつ訳ないだろう」 

側近「相当な備蓄ですよね、それ」 

女勇者「それこそ暴動起きないの?」 

魔王「馬鹿な……冬場はクリームシチューがあれば米でも凌げるだろう」 

女勇者「え? シチューにお米?! 本気?!」 

魔王「えっ」 

側近「ああ、人間界は米があまり浸透していないからそういった方も多いらしいですね」 

側近「最も魔界でもそういった者はいますが」 

魔王「えっ」 

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/19(金) 23:30:39.23 ID:JTOMzQD10
魔王「……知らなかった」 

側近「最も冬場を乗り切る上では死活問題なので、兵士達は全員シチュー+お米は平気な者達だけですがね」 

女勇者「……というかそれ美味しいの?」 

魔王「美味いぞ。冬野菜をふんだんにいれて……ああ堪らん!」 

側近「どうでもいいですが早く食べてもらえませんか? 洗い物を片付けるのにも時間がかかるんですよ」 

魔王「側近が冷たい」モグモグ 

女勇者「冷徹な男だよね」モグモグ 

1 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/19(金) 23:43:13 ID:0y3rMId.
女勇者「あ゛ーあづいー」ザックザック

魔王「一時に比べればまだいいだろう」ザックザック

魔王「あと少しだ。後五枚畑を作れば十分だ」ザックザック

女勇者「おお、本当?!」

魔王「手を休めるなー。後は予定作物以外に収穫したい作物の要望次第だ」ザックザック

女勇者「へー例えばどんな要望が?」ザックザック

魔王「毎日じゃがバター食べたい、とか」ザックザック

女勇者「……なるほど。え、バターどうするの?」ザックザック

魔王「人間に扮して人間の市場で物々交換」ザックザック

女勇者「せ、せこい」ザックザック

2 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/19(金) 23:48:51 ID:0y3rMId.
魔王「ふー良い湯だった」ホカホカ

女勇者「あーさっぱり!」ホカホカ

側近「本日も勇者の方がお見えです」

魔王「全く、どうやってここを突き止めているんだ」

女勇者「そりゃー地図に無い城があるんだから、近くを通れば気付くよ」

男勇者C「久しぶりだな妹よ」

女勇者「ふおぉぉぁぁぁ! お兄ぃぃちゃぁぁん」

魔王「兄上か?」

男勇者C「数ヶ月音沙汰無しで何してやがる!!」ガキィィン

女勇者「おおおおぉぉぉ! 糞兄貴ぃぃぃぃ!!」ギィィィン

魔側「えええぇぇぇぇ!?」 

3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/19(金) 23:52:05 ID:0y3rMId.
男勇者C「何をしているかと思えばこんな所で何をしているんだお前は!!」キィンギィィン

女勇者「うるせーー!! あたしは自立したんだよーーー!!」ギィィィン

男勇者C「何が自立だ! ただの家出だろ! 一族の使命を忘れたか!?」ギィンドカン

女勇者「知るかあんなもん! 古臭いんだよぉ!!」バコンカキィンドカン

側近「……へ、部屋が」

魔王「睡眠魔法」スィ

勇者's「」ドザ

魔王「覚醒魔法超微弱」パン

勇者's「ハッ」ボー 

4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/19(金) 23:55:06 ID:0y3rMId.
魔王「これ以上暴れられても困るから、穏便に話し合ってはもらえんか」

男勇者C「この馬鹿妹は我が一族の役目を放棄して家出したんだ」

魔王「一族一族とお前は一体何処の一族なのだ」

女勇者「くっだらない湖を守る巫女」

側近「ぶふっ!」

魔王「ぶほっ!」

女勇者「あぁん?!」

側近「ですがだってぶっぷぷ」プルプル

魔王「巫女……おま、ぅ、くく」プルプル 

5 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/19(金) 23:58:03 ID:0y3rMId.
男勇者C「男は巫女の補佐を行う者であり、巫女は湖を守る者。しかも私達の母親は族長だ」

魔王「家出しちゃまずいじゃないか」

男勇者C「だからこうして連れ戻しに来たんだ」

男勇者C「だいたいお前がここで何ができるんだ!」

女勇者「はあ?! あたしだって十分に役立っているんだよ!」

男勇者C「嘘をつけ! おい! この(馬鹿な)子が何処で役立つ場面があったんだ!」

魔王「役立つに決まっているだろ! 畑(力)仕事!!」

男勇者C「……お前も立派になったんだ」

女勇者「なにそのテンション差」 

6 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:01:57 ID:nLCv33tg
魔王「無理やり家に連れて行かれなくて良かったじゃないか」

女勇者「全くだ!」

側近「それにしてもそんなに嫌なのですか? その巫女や族長というのが」

女勇者「しきたりばっかで息苦しいし、存分に身体を動かせないし!」

魔王「なるほど、勇者の性格と真逆の世界か」

女勇者「なにその納得の仕方」 

7 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:06:25 ID:nLCv33tg
側近「というか貴女のお兄様、雇い主が魔王である事に一切反応しませんでしたよ」

魔王「というか彼も勇者なのだよな? 雇い主以前に私である事に反応すべきだが」

女勇者「あんの糞兄貴じゃあなぁ……」


族長「魔王?! それであの子は?! お前は何をしてきたんだ!」

男勇者C「そんな事よりあの馬鹿が全うに仕事をしているんだぞ!」

族長「なんと! し、しかしそれでも魔王の下と言うのは」

男勇者C「いや……妹と同じ波長を感じた」

族長「なら大丈夫か……」 

8 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:13:05 ID:nLCv33tg
魔王「実りの秋!」

女勇者「芸術の秋!」

魔勇「温泉の秋!」

側近「……」つ鍬二本


魔王「……」ザックザック

女勇者「……」ザックザック 

9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:15:58 ID:nLCv33tg
女勇者「おかしくない!? まだ耕すとかおかしくない!?」

魔王「急に温野菜の株が上がってな。鰻上りなのだよ」

女勇者「倹約は?! 始めの質素っぷりは何処行ったの?!」

魔王「一度贅沢してしまうと中々戻れんよ!」カレートカ

女勇者「カレーが贅沢なの?!」

魔王「初代から四代くらいまで、じゃがいもスープ(お湯)の時もあったのだぞ!」

女勇者「可哀想! 役職なのにただの煮込んだじゃがいもと出汁可哀想!!」 

10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:20:54 ID:nLCv33tg
魔王「まあなんだ。ここで我々が頑張れば農業組が頑張って作物を作りまくるからな」

女勇者「そう聞くと良いかもしれない!」

魔王「そして辿り着く屈強勇者達」

女勇者「一ヵ月後、そこは更地に」


側近「……凶報です、例の男勇者Bさんとその仲間が魔物の王を討ったそうです」

女勇者「おいこら何でフラグ立てた!! ふざけんなちくしょおぉぉ!!」

魔王「うああぁぁぁ! 冗談でも言わなきゃ良かったああぁぁぁ!!」 

11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:24:41 ID:nLCv33tg
側近「緊急会議です……」

魔王「側近の顔が超真顔だ……」

側近「真顔通り越して顔面神経痛です」

女勇者「引き攣って?」

側近「それはもう……ああ、どうする。どうしたらいいんだ……」

魔王「今すぐ魔界に引き返すか? は、はは……半年の努力は何だと言うのだ」 

12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:27:13 ID:nLCv33tg
女勇者「というか、男勇者Bはここでの記憶ないんでしょ? だったら魔物の王を魔王として討伐報告されてるでしょ」

魔王「そう……なるな」

女勇者「だったら全員、人間として建国しましたって偽ればいいじゃん」

側近「魔王様、この勇者さんは偽者のようです」

魔王「そうなるな!」

女勇者「おいこら!」 

13 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:29:43 ID:nLCv33tg
魔王「とにかく人間の国として扮しよう」

側近「城しかありませんがね」

女勇者「漁業組は村になっていないのか?」

魔王「あーあそこだけか」

側近「あそこだけですね」

女勇者「普通の人間の国に見えない件」

魔王「とりあえずドラゴンとゴーレム達は帰らせよう」

側近「大事ですね」 

14 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:32:53 ID:nLCv33tg
数日後
人間の軍隊 ザワザワ

魔王「どうしてこうなった」

女勇者「なんか向こうはこっちが魔王だと認識しているみたい」

側近「何故……一体何処で情報が漏れて……」

女勇者「糞兄貴」

魔側「あっ」

魔王「どどどうする」

側近「魔法で眠らせて強制転送してその間に逃げるというのは」

女勇者「んん~……魔王達はまだここに居たいの?」

魔王「当たり前だろう!」

側近「時の行商の種と苗があるので今戻っても咎められる事はありませんが、やはり悔しいものがありますね」 

15 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:35:49 ID:nLCv33tg
女勇者「んじゃーちょっくら行ってくる」ガチャ

魔王「は? お、おい!」

側近「ゆ、勇者さん? どちらに?」

魔王「……え? あの子なにするつもり?」

側近「さ、さあ……まさか一人で軍隊を相手取るのでは」

魔王「まさか~そんな馬鹿げた事~」ハハハコヤツメ

側近「ですよねー」ハハハ

魔側 ――やりかねないし勝ってしまいそうで怖い!!――クワッ 

16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:39:13 ID:nLCv33tg
軍隊「」ゾロゾロ

魔王「おお……帰ってゆく」

側近「一体何が?」

女勇者「ただいーまー!」

魔王「一体何をしたんだ?!」

女勇者「まー一族の紋章もあるし、あたしがそこの出だってのも勇者名簿にあるから知られているし」

女勇者「彼らは別の湖を守る一族で、こうして定期的にこっちの湖の近くに来て様子を見てくれている」

女勇者「本家みたいなものなのです。その為、一族の長女である私がこちらにいるのです、て誤魔化した!」

魔王「良くやった!!」

側近「立場上でしょうが、勇者さんが私とか違和感しかないですね」 

17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:43:01 ID:nLCv33tg
魔王「これでしばらくは安泰だな」

側近「ですねー」

女勇者「え?」

魔王「え?」

側近「はい?」

女勇者「こんなんすぐにバレるに決まってるじゃん。どうせ母さんのところに確認しに行くんだろうし」

魔側「えっ」

女勇者「この時間で他所に移るなりなんなりすればイイジャナーイ」 

18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:45:50 ID:nLCv33tg
湖を守りし巫女の一族、その娘がいるとされた城は
とある国の兵士達が見たのを最後に数ヵ月後には何一つ残っていなかった。

広大な田畑も何一つ残っておらず、まるで白昼夢のようであったと後世にまで語り継がれる事となった。

魔界
魔王「懲罰こそ無かったがこっぴどく怒られた」

側近「直接の功績と言えば種を増やしただけですからね」

女勇者「城の石材とかと比べるとどうなのさ」

魔側「大赤字」 

19 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/20(土) 00:48:32 ID:nLCv33tg
魔王「というかお前はここに来て良かったのか?」

側近「というか一族の方が困るのでは?」

女勇者「妹はあたしと違って普通に女の子だからあっちのが適材だし」

女勇者「一族の名を使って嘘語ったからなー。戻ったら母さんにぶっ殺されるし」

女勇者「まー気の合う親友と一緒に居られるからこっちのがいいな!」

魔王「お前がそう言うなら構わんがな。仕事はどうする」

側近「ああそれでしたらお二人にはこちらが」鍬二本


その後、魔王と女勇者もまた後世にまで語り継がれる事となった。
他に類を見ないありとあらゆる地を耕した雷を呼ぶ開拓者として。


魔王「魔王に就任したから人間界で暮らす」   完