2: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:13:52.93 ID:A0SFk9G+0

QB「―――これで、契約は完了だ」

織莉子「ぅあ、あ、ああ......」

QB「どうかしたのかい?」

織莉子(いけない、彼らを解き放ってはいけない。彼らはこの世界を崩壊へと導く!)

QB「顔が真っ青だよ。具合でも悪いのかい?」

織莉子(どうすれば阻止できる!?)



織莉子(最強の魔女と...サングラスの男...!)

引用元: まどか「世界を縮めたい」【スクライド×まどか☆マギカ】 




魔法少女まどか☆マギカ Blu-ray Disc BOX(完全生産限定版)
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3: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:14:37.97 ID:A0SFk9G+0
―――――――――――――――

第一話『邂逅』


ほむら「こんな時に使い魔が出るなんて...」

ほむら「とにかく、まどかを守らないと」タタタッ



使い魔「キャッキャッ」ワラワラワラ

さやか「じょ冗談よね、コレ!」

まどか「」

ほむら(いた!ひとまず時を止めて...)

「衝撃のォォォーーーファーストブリットォォォォォ!」ズガァァァン

ほむら(え?)

4: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:16:31.09 ID:A0SFk9G+0

クーガー「お怪我はありませんでしたか、お嬢さん方!
このような気味の悪い空間に迷いこんでしまうなんてさぞかし恐ろしい体験だったでしょう。
しかしもう大丈夫です。最速を信条としているこの私、ストレイト・クーガーにかかればこの程度の障害など、即急即時即座即納排除してご覧にいれましょう!ハハハッ、いくぞ!」

ほむら(な、なんなの、あの男...早口・髪型・猫背・黒サングラス...怪しすぎる!)

クーガー「ハッハッハ、遅い!遅すぎる!俺の前ではなにもかもがスロウリイィィィィィ!!」ドカッ!バキィ!

まどか「す、すごい...」

さやか「あの変なヒゲ達を蹴りだけで...」

クーガー「あぁ...また世界を縮めてしまったぁ...」

まどか「あ、また景色が...」




マミ「な、なにが起こってるの...?」

5: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:18:18.84 ID:A0SFk9G+0
マミ「えっと...あなた達、けがは無い?」

まどか「え?あ、は、はい...」

クーガー「ハハッ、心配せずとも、俺に追いつける者など存在しませんよ」

マミ「そ、そうですか。あなた達がキュゥべえを助けてくれたのね」

まどか「あの、あなたは...?」

クーガー「私の名は、ストレイト・クーガー。なによりも速さを求める男です。年齢は...」

まどか「いえ、あなたじゃなくて...」

クーガー「あぁ、すみません」

マミ「私は巴マミ。あなた達と同じ見滝原中の3年生。そして、キュゥべえと契約した魔法少女よ」

さやか「魔法少女?」

マミ「色々と聞きたいことはあるかもしれないけれど...その前に」



ほむら「......」


6: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:19:02.45 ID:A0SFk9G+0
クーガー「彼女は?」

まどか「えっと、暁美ほむらちゃんって名前で、私のクラスの転校生なんですけど...」

さやか「コスプレして、この生き物とまどかを襲ってたんですよ!」

クーガー「...なるほどねえ」

マミ「魔女は逃げたわ。仕留めたいのなら、今すぐ追いかけなさい」

ほむら「...私が用があるのは」

マミ「消えろと言っているの。キュゥべえを傷付けられたとあっては、いくら穏やかさを信条としている私でも、いささか語気が荒くなるわ」

ほむら「......」クルッ

7: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:20:02.22 ID:A0SFk9G+0
クーガー「ちょっと待った、転校生さん」

ほむら「...何かしら」

クーガー「用事があったのでしょう?この中の4人...いや、そこのピンクのお嬢さんか猫に」

マミ「ちょ、ちょっとあなた、何を...」

クーガー「転校生さんが用があるのは、あなたではなく、彼女たちだ。ならば、彼女が拒否さえしなければ、用件を伝える権利くらいある筈です」

マミ「得体のしれない上に、キュゥべえを傷付けた人の言うことに耳を貸せと?」

クーガー「そういった先入観で、得られる情報を減らしてしまうのは勿体ないと思いませんか?情報の真偽は聞いた後で決めればいい」

マミ「......」

クーガー「なあに、会話するだけならこの位置でも出来ます。危害を加えそうになったら、その時に止めればいい。それで構いませんか、お嬢さん?」

まどか「え?あ、あの...どうして、この子を傷付けてたのかは教えてほしいかな...」

クーガー「だ、そうですよ」


8: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:21:09.33 ID:A0SFk9G+0
ほむら「...鹿目まどか。それに、美樹さやか」

さやか「...なんだよ」

ほむら「そいつと契約だけは絶対にしないで。さもなくば、全てを失うことになる...」

まどか「!」

まどか(今日言ってた言葉...)

さやか「どういうことよ、それ」

ほむら「......」

タッ

さやか「あっ!...行っちゃった。答えになってないし」



ほむら(キュゥべぇが見える上に、使い魔をモノともしないあの強さ...あの男、ただのイレギュラーでは無さそうね)

ほむら(少し、様子を見ておくべきね。イレギュラーが必ずしも私の利になるとは限らないし)

9: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:21:45.80 ID:A0SFk9G+0
―――――――――――――――――

マミホーム


マミ「キュウべえに選ばれた以上、あなた達も無関係じゃないものね。ある程度の説明は必要かと思って」

さやか「うんうん、何でも聞いてくれたまえ~」

まどか「さやかちゃん、それ逆...」

マミ「フフッ」

クーガー「しかし、俺もお邪魔してよかったんですか?」

マミ「この子たちを助けてくれた上、キュウべえが見えるのなら、無関係じゃありませんから」


10: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:22:18.50 ID:A0SFk9G+0
マミ「これがソウルジェム」

まどか「うわぁ~綺麗...」

マミ「キュウべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ。魔力の源であり、魔法少女の証でもあるの」

さやか「契約って?」

QB「僕は、君たちの願い事を何でも一つ叶えてあげる」

さやか「えっ、ホント!?」

まどか「願い事って...」

QB「なんだって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

クーガー「奇跡...ねえ...」

11: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:23:48.01 ID:A0SFk9G+0
マミ「どうかしました?」

クーガー「いやあ、願い事を叶えてくれるなんて、中々太っ腹な奴だと思いまして」

QB「もちろん、ただというワケではないんだけどね。契約と引き換えにできあがるのがソウルジェム。この石を手にした者は、魔女と戦う使命を課されるんだ」

まどか「魔女...?」

さやか「魔女ってなんなの?魔法少女とは違うの?」

QB「願いから産まれるのは魔法少女だとしたら、魔女は呪いから産まれた存在なんだ。魔法少女が希望を振り撒くように、魔女は絶望をまき散らす。
しかも、その姿は普通の人間には見えないからタチが悪い。不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ...そういう災いのタネを世界にもたらしているんだ」

マミ「理由がハッキリしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なの。形のない悪意となって、人間を内側から蝕んでいくの」

QB「普段は結界に隠れ潜み、人前には姿を現さないから、誰も気づくことができない。さっき君たちが迷いこんだ、迷路のような場所がそうだよ」

クーガー「キュゥべえ、俺は見えてたんだが、そこのところはどうなんだ?」

QB「君はまた特別だね。何故か僕を知覚でき、使い魔たちにも触れることができる...君は、一体何者なんだい?」

クーガー「なぁに、ただの速さを求める文化人さ」

QB「わけがわからないよ」

12: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:24:35.73 ID:A0SFk9G+0
さやか「そういえば、なんでクーガーさんはあたしたちを助けてくれたの?」

クーガー「実は俺、こう見えても人と違うことをするのが大好きで!愛車に乗って気ままに一人旅をしたいなぁ~とか思って初めて来たこの町をぶらついてたら、何やら不穏な気配がしたのでそちらに向かったところ、
変なひび割れみたいなところからあ~れ~な悲鳴が聞こえたので、これは事件に違いないと予感した俺は即座にひび割れの中へダイブしたところ、いかにもヤラレ役な奴らに襲われているあなた方を発見したので、
俺の中の正義感がフツフツと湧いてきたし、か弱い女性を助けることは精神的にも他のことでもお礼があるかなと思った俺は最速であなた方のもとへと参上したというわけです!おわかり頂けましたか、あやかさん?」

さやか「え、えっと...一応わかったかな...あと、あやかじゃなくてさやかね」

クーガー「ああっと、すみませぇん。人の名前を覚えるのが苦手で」

まどか(やっぱり...変な人なのかな)

13: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:25:19.00 ID:A0SFk9G+0
マミ「...とにかく、キュゥべえに選ばれたあなた達には、どんな願いでも叶えられるチャンスがある。でもそれは、死と隣り合わせなの」

さやか「悩むなぁ...」

まどか「うぅ...」

クーガー「ためらっているうちは、ならない方がいい。ですよね、マキさん」

マミ「マミです。そうね、強制ではないから、生半可な覚悟では契約しないほうがいいわ」

まどか「...そういわれても、まだ魔法少女がどんなものなのか、よくわかってなくて...」

マミ「...なら、二人ともしばらく、私の魔女退治に付き合ってみない?」

まどさや「えっ?」

マミ「魔女との戦いがどのようなものなのか、その目で確かめてみればいいわ」


14: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:26:26.65 ID:A0SFk9G+0
――――――――――――――


さやか「願い事か...まどか、何か見つかった?」

まどか「ううん。いざ探してみると全然見つからなくて」

さやか「だよねぇ。中々、命と釣り合う願いなんてねぇ?...でも、正義の味方、かぁ...」

クーガー「俺は、あまりオススメしませんがねえ」

まどか「クーガーさん?」

クーガー「こんな可愛らしいお嬢さんを危険な戦場に送り込むなんて、俺には考えられませんから」

まどか「か、可愛らしい!?///」

さやか「おっ、このさやかちゃんの嫁の愛くるしさが分かるとは、見どころあるねぇクーガーさん!」

クーガー「ハハッ。当然の事を言っただけさ、あやか」

さやか「さやかね」

クーガー「スマンスマン」

15: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:27:26.89 ID:A0SFk9G+0
まどか「クーガーさんは、どこに住んでるんですか?」

クーガー「実は、こちらには来たばかりでね。まだ、この町のことを把握しきれてないんですよ」

さやか「来たばかりって...引っ越してきたの?」

クーガー「いや、この町に長居する予定はないな。用事が済んだら、引き上げるつもりさ」

さやか「用事って?」

クーガー「まあ...派遣社員みたいなものだからな。仕事の一つだよ」

さやか「ふーん...なんだか、大変そうだね。おっと、あたしたちはこっちだけど...クーガーさんは?」

クーガー「この辺りだな」つ地図

さやか「逆方向だね。ちょっと遠いし...」

クーガー「なぁに、この程度の距離、俺にかかれば大したものじゃあないさ。なんたって、俺は最速の男だからな!」

まどか「あ、あはは...」

16: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:28:28.31 ID:A0SFk9G+0
クーガー「さて、俺としては、お二方とも安全安心最速確実にご自宅に送り届けたいのですが、実は大切な用事をまだ済ましていないんです。
あまり時間がないので、名残惜しいですがここでお別れです」

さやか「うん、また会おうね、クーガーさん」

まどか「さようなら、クーガーさん」

クーガー「それではごきげんようっ!のどかさん、それとあやか!」タタタッ

さやか「さ・や・か!...何遍言ったらいいんだろ」

まどか「ウェヒヒ。でも、キュゥべえの名前だけは一回も間違えてないよね」

さやか「そういやそうだったね。って、もうこんな時間!?よし、急ぐぞまどかぁ~!」タタタッ

まどか「い、いきなり走らないでよぉ~!」タタタッ

17: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:30:51.54 ID:A0SFk9G+0

ビルの屋上

ほむら(多少は流れが変わったようだけれども...マミの魔女退治を見学するという本筋は変わらなかった)

ほむら(キュゥべえと会わせてしまった時点で手遅れなのかもしれないけれど...どうしたものかしら)

「オー!ジャマジャマ!」

ほむら「!?」クルッ 

クーガー「これ今度流行らそうと思うんですよ。つまらないですか寒いですか引きましたか痛かったですか?」

ほむら(なぜここにこの男が!?今まどか達と別れたばかりの筈!いや、それより)

ほむら「なぜここが分かったの!?」ジャキッ

クーガー「やだなぁ、そんなに身構えないで下さいよぉ。いえね、俺達がマキさんの家へお邪魔してから妙に熱い視線を感じていたものですから、
ひょっとして俺のファンでもいるのかなと思って、ここに最速で参上したわけです。暁美のむらさん」

ほむら「...のむらじゃなくてほむらよ」

クーガー「おっと、失礼」

18: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:32:02.30 ID:A0SFk9G+0
ほむら「それで、用件は?それが終わったら今すぐ消えなさい」

クーガー「こいつぁ手厳しい。俺はただ、あの二人の言う謎の転校生がどういう人物かを見に来ただけです。あなたに危害を加えようなんて考えはこれっぽっちもありませんから」

ほむら「......」

クーガー「ん~。どうすれば信用してくれますかねぇ」

ほむら「...まずはあなたが何者かを教えなさい。話はそれからよ」

クーガー「先程の説明では物足りなかったですか?ああ、あの盗聴器なら気付かれないよう回収しておきましたから」

ほむら(盗聴器も見抜かれていた...!?)

ほむら「ええ。あなたが隠していることを全て話しなさい」

クーガー「構いませんよ。今ならキュゥべえの奴もいませんし」

ほむら「キュゥべえ?」

クーガー「あなたはキュゥべえを敵視しているようですから。それに、俺も奴はなんとなく気に入らないんでね」


19: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:33:00.33 ID:A0SFk9G+0
マミホーム

マミ「お父さん、お母さん。今日ね、二人も後輩ができたの」

マミ「それでね、私のことを話しても、怖がったりしなかったの。...とっても嬉しかった」

マミ「...もし、魔法少女になりたくないって思っても、一緒にいてくれるかな?」

QB「あまり他人を信用しすぎない方がいいんじゃないかな。佐倉杏子のことを忘れたわけじゃないだろう?」

QB「それに、ストレイト・クーガーや、暁美ほむらのようなイレギュラーはどんな行動をとるかは分からない」

マミ「クーガーさん、か...」

マミ(正直、彼が一番得体のしれない人なのよね。あんな身体能力、普通では有り得ないわ)


20: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:34:01.63 ID:A0SFk9G+0
―――――――――――――


クーガー「以上が、俺の身の上話です」

ほむら「...その話自体は信用するわ」

クーガー「おや、以外ですね。てっきり笑われるものかと」

ほむら「でも、あなたが敵ではない証拠にはならない」

クーガー「まあ、そうでしょうなあ。信頼なんてものは、一朝一夕で得られるものじゃあない」

ほむら「そうよ。だから、今後魔法少女には関わらない方がいいわ。...あなた自身のためにも」

クーガー「?それはどういう」

カチッ

21: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:34:42.00 ID:A0SFk9G+0
クーガー「ことで...って、あらら?」キョロキョロ

クーガー「消えた?...俺が遅い?俺がスロウリィ!?」

クーガー(...いや、違うな。俺は瞬きすらしていない。だが、音もなく視界から消えたんだ。数コンマの間も無く)

クーガー(仮に速さだってんなら、移動する際に風や音は必ず生じる。ましてや、こんな狭い屋上でまともに動けるわけがない...おそらく、彼女の魔法ってやつだな)

クーガー「魔法少女...か。マミさんといいほむらさんといい、ガードのお堅い人達だ」


22: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:36:03.19 ID:A0SFk9G+0
ほむら(あの男、隙だらけに見えて全く隙がない。...おかげで時間停止を使わざるを得なかった)

ほむら(それにしても、『アルター能力』に、『ロストグラウンド』や『大隆起現象』...どれも、聞いたことのない単語ばかり)

ほむら(住んでる世界が違うとしか思えない。イレギュラーにしても程があるわ)

ほむら(でも、簡単に信用はできない...安易に信用すれば、後の憂いに繋がる)

ほむら「...今度こそ、まどかを救ってみせる...!」


23: ◆do4ng07cO. 2014/03/10(月) 02:36:47.45 ID:A0SFk9G+0
次回予告

第2話『巴マミ』

魔法少女 その甘美な響きとは裏腹に、情念渦巻く戦場の徒

切り開かれるのは希望か絶望か、巴マミの弾丸が、今放たれる

人は、運命には抗えないのか


29: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:01:32.56 ID:DKU/9yCB0
第二話
『巴マミ』

**********************

クーガー「精製...ですか」

ジグマール「ああ。君は能力不足だと判定された。そのため、その能力不足を補うために一度本土に行ってもらう」

クーガー「成る程、俺達ネイティブアルターは実験台というわけですか」

ジグマール「...すまない。だが、こうでもしなければ...」

クーガー「『本土の奴らにアルター使いを根こそぎ狩られてしまう』、でしょう。なあに、俺は本土に行くことをちっとも気にしちゃいませんよ。
なにより、【向こう側の世界】とやらにも個人的な興味がありますしね」

ジグマール「どこでその言葉を...!?」

クーガー「この前、ネイティブ狩りに来てた本土のアルター使いと遭遇しましてね。その時に聞き出しました」

ジグマール「本土のアルター使いを倒しただと!?...では、能力検査で君はわざわざ力を抑えていたというのか?」

クーガー「ありゃ、失言だったかなあ...ま、そういうことになりますね」

ジグマール(何故ネイティブでも有名な男が能力検査にかかるか疑問に思っていたが...全てを知ったうえでの行動か。全く、この男は...)

クーガー「それじゃ、行ってきます。俺自身の文化の真髄を見つけにね」

**********************

30: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:02:57.99 ID:DKU/9yCB0
学校

さやか「ねー、まどかぁ。...願い事、何か考えた?」

まどか「ううん、さやかちゃんは?」

さやか「あたしも全然。なんだかなぁ...いくらでも思いつくと思ったんだけどなぁ...。欲しいものもやりたいこともいっぱいあるけどさ」

さやか「命懸けってところでやっぱ引っかかっちゃうよね。そうまでする程のもんじゃねえよなぁーって」

まどか「うん...」

QB「意外だなぁ。大抵の子は、二つ返事なんだけど」

さやか「マミさんやクーガーさんにも、よく考えろって言われてるのもあるけど...きっと、あたし達がバカだからだよね」

まどか「え~...そうかなぁ?」

さやか「そう、幸せバカ。別に珍しくなんかない筈だよ。命と引き換えにしてでも叶えたい望みって」

さやか「そういうの抱えてる人は、世の中に大勢いるんじゃないのかな」

さやか「願いが思いつかないってことは、その程度の不幸しかしらないってことじゃん。恵まれすぎてバカになっちゃってるんだよ」

まどか「......」

さやか「...なんで、あたし達なのかな?こういうチャンスが欲しいと思っている人は、他にもっといる筈なのに...」

まどか「さやかちゃん...」

31: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:04:01.96 ID:DKU/9yCB0
コツコツ

ほむら「......」

まどか「あっ...!」

さやか「き、昨日の続きかよ...!?」

ほむら「いいえ、そのつもりはないわ」

ほむら「そいつが、鹿目まどかと接触する前にケリをつけたかったけれど...今さら、それも手遅れだし」

まどか「......」

ほむら「で、どうするの?あなた達も、魔法少女になるつもり?」

さやか「あんたにとやかく言われる筋合いはないわよ!」

ほむら「昨日の話...憶えてる?」

まどか「うん...」

ほむら「なら、いいわ。忠告が無駄にならないよう、祈ってる...」

まどか「待ってほむらちゃん!」

ほむら「......?」

まどか「ほむらちゃんはその...どんな願い事をして魔法少女になったの?」

ほむら「......っ!」

タッ

さやか「行っちゃった...なんなんだろう、あいつ」

32: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:05:17.73 ID:DKU/9yCB0
――――――――――――――――――

マミ「それじゃあ、魔法少女体験コース第一弾いってみましょうか」

さやか「へっへへ、あたしは準備万端ですよ」ゴソゴソ

さやか「じゃん!伝家の宝刀金属バット!倉庫から引っ張り出してきた!」

マミ「い、意気込みはいいわね...鹿目さんは?」

まどか「えっと、わたしはこんなの考えてみました」

マミ「これは...魔法少女の衣装かしら?」

まどか「はい!」

さやか「...プッ!あははは!あんたには敵わないや!」ゲラゲラ

マミ「そっ...それじゃ行きましょうか」クスクス

まどか「そ、そんなに笑わないでよぉ!」


33: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:05:51.58 ID:DKU/9yCB0
―――――――――
結界の奥

マミ「あれがこの結界の魔女ね」

さやか「うわあ、グロ...」

マミ「二人とも、危ないからここで見ててね」

クーガー「ご安心下さい、彼女たちは俺がお守りしますから!」

一同「!?」

34: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:06:42.03 ID:DKU/9yCB0
クーガー「どうも、お嬢さん方。まさか、またお会いすることができるとは」

マミ「...どうしてあなたがここに?」

クーガー「いえね、たまたまこの辺りをうろついていたら、
道中なにやら不穏な気配がしたのでそちらに向かってみたらなんとそこには変な空間ができていて!
事前にあなたの話を聞いていてコイツは危険だと即座に理解した俺だが、もし誰かが巻き込まれていたりしたら大変だと思い
最速で確認しに来たところ、偶然にもあなた達を発見したというわけです」

マミ「...本当かしら?」

クーガー「おや、信用できませんか?なら、あの魔女とは俺が闘いましょうか?」

マミ「い、一般人にそんなことをさせるわけにはいかないわ!...この子達をお願いします」

QB(......)

35: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:07:09.78 ID:DKU/9yCB0
―――――――――――

マミ「ティロ・フィナーレ!」カッ

魔女「」シュウウウ

さやか「マミさんカッコイー!」

マミ「もう、見世物じゃないのよ。ちゃんと今後の参考にしてくれてる?」

さやか「い、一応は...」

マミ「困った後輩ね」

まどか「でも...やっぱり迷っちゃいますよね。中々願いなんて思いつきませんし」

クーガー「無いなら、無理に作る必要なんてありません。ですよね、マキさん」

マミ「マミです。...ええ、そんな願いで契約したら絶対後悔するから、焦る必要は無いわ」


36: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:09:12.14 ID:DKU/9yCB0
まどか「マミさんはどんな願いを...?」

マミ「私は...生きること、かしらね」

マミ「数年前になるわ。家族でドライブに行った時、大規模な交通事故に巻き込まれてね。そこでキュゥべえと出会って...考える余裕もなかったってだけ」

まどか「......」

マミ「あなた達には選択肢がある。だから、きちんと考えてほしいの。それは、私にはできなかったことだから」

さやか「...あのさ、マミさん。願い事って、自分のことじゃないと駄目なのかな?」

マミ「というと?」

さやか「例えば、あたしなんかよりずっと困ってる人がいて、その人のために願い事をするとかできるのかなって...」

QB「前例が無いわけではないよ。珍しくはあるけれどね」

マミ「あまり関心はしないわ。...あなたは、その人の夢を叶えたいの?それともその人の夢を叶えた恩人になりたいの?」

さやか「!」

マミ「他人の願いを叶えるのなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせておくべきだわ。同じようでも、全然違うことよ、これ」

マミ「...キツイ言い方でごめんね。でもそこをはき違えたまま進んだら、きっとあなた後悔することになるから」

さやか「...うん、そうだね。あたしの考えが甘かった。ごめん」


37: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:10:42.11 ID:DKU/9yCB0
マミ「それと、クーガーさん」

クーガー「はい?」

マミ「あなたは、無闇に魔女の結界に入らないでください。あなたには、契約する選択肢すらないんですから」

クーガー「俺は邪魔者ってわけですか?」

マミ「そういうわけじゃありません!ただ、危ないから...!」

クーガー「わかってます。あなたのアドバイス、肝に銘じておきますよ」

マミ「......」

38: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:11:45.96 ID:DKU/9yCB0
―――――――――――――
翌日、病院外

まどか「上条君のお見舞いに行ってたの?」

さやか「ん、まあね。なんか今日は会えなかったけど」

QB「二人とも、随分迷っているようだね」

まどか「ごめんね、QB。マミさんが言ってたように、ちゃんと考えて決めたいんだ。
それに、クーガーさんみたいに心配してくれる人もいるし...」

QB「そうかい。まあ、出来るだけ早い方が僕としては助かるんだけどね」

さやか「あんまり女の子を急かすもんじゃ...あれ?」

まどか「どうしたの?さやかちゃん」

さやか「あそこの壁に刺さってるのって、魔女の出てくる卵じゃ...!」

まどか「!」

QB「危険だ!早く逃げないと!」

さやか「...マミさんの携番知ってる!?」

まどか「き、聞くの忘れてた...」

さやか「...なら、マミさんを呼んできて。私はこれを見張ってる!」

まどか「そんな!無茶だよ!」

さやか「もしこれが魔女になったら大変なことになる...そんなの見過ごせない!」

さやか(それに...この病院には恭介が...)

39: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:12:26.95 ID:DKU/9yCB0
QB「...なら、僕も残るよ。最悪の事態が起きたら、さやかを魔法少女にしてあげられる」

まどか「キュゥべえ...」

さやか「...できればそうなって欲しくないけどね」

QB「さあ、早く行くんだ!」

まどか「う、うん!気をつけてねさやかちゃん!」ダッ


40: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:13:12.11 ID:DKU/9yCB0
―――――――――
数分後

マミ「あの子ったら無茶して...キュゥべえ、状況は?」

QB『大丈夫、まだ羽化する気配はないよ』

QB『ただ、あまり刺激するのはよくないから、魔力は極力抑えて来てくれ』

マミ『了解、ありがとうね』

まどか「さやかちゃん達...大丈夫かな」

マミ「今のところ大丈夫みたいよ。さあ、行きましょ」

41: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:13:58.25 ID:DKU/9yCB0
―――――――

まどか「うぅ......」

マミ「大丈夫?鹿目さん」

まどか「ごめんなさい...やっぱり、この空間に慣れなくて...」

マミ「怖くて当然よ。...むしろ、この空間に全く怖気づかないクーガーさんのような人の方が特殊なのよ。でも、大丈夫。私がついているから」

ほむら「待って」

まどか「ほむら...ちゃん?」

マミ「何の用かしら。言った筈よね、姿を現すなって」

42: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:14:31.90 ID:DKU/9yCB0
ほむら「今回の魔女は私が仕留める。あなた達は下がっていて」

マミ「そうもいかないわ。美樹さんとキュウべえが待ってるもの」

ほむら「彼女達の安全なら保障するわ」

マミ「信用すると思って?」シュルル

ほむら(しまっ...!)

マミが手をかざすと共に、抵抗する間もなくほむらはリボンにより縛りあげられた

マミ「ちゃんと帰りに解いてあげるから、心配しないで」

マミ「行きましょう、鹿目さん」

まどか「は、はい...」

ほむら「待って...ぐっ...」ギチリ

43: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:16:56.72 ID:DKU/9yCB0
まどか「ほむらちゃん、私達を心配してくれたんじゃ...」

マミ「そうかもしれない。でも、万が一のこともあるわ」

マミ「...彼女は信用できない」

まどか「で、でも...」

マミ「あなたは、私が負けると思う?」クスッ

まどか「い、いえ...そういうわけじゃ...」

マミ(...大丈夫よ。一人でも、ちゃんと戦える...)

44: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:17:41.86 ID:DKU/9yCB0
まどか「...マミさん、なんだか無理してませんか?」

マミ「え...?」

まどか「あの...マミさんが望むなら、私、いつでも契約しますからね」

マミ「で、でもあなたは願いがまだ無いんじゃ...」

まどか「私、ずっと自分が嫌いだったんです。気が弱くて何にもできない自分が...
でも、そんな私を変えることのできるチャンスがあることをマミさんは教えてくれた...
だから、そんなマミさんの手助けが出来たら、凄く嬉しいなって...」

マミ「...私と一緒に戦ってくれるって言うの?」

まどか「はい!」

マミ「...ありがとう。その気持ちはとっても嬉しいわ。でも、願い事はちゃんと決めなきゃ駄目よ?」

45: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:18:12.67 ID:DKU/9yCB0
―――――――――

マミ「お待たせ、美樹さん」

まどか「大丈夫だった!?」

さやか「平気平気。なんの変化もなかったからね」

QB「気をつけて、出てくるよ!」

シャルロッテ(人形)「......」

マミ「せっかくのところ悪いけど...一気に決めさせて貰うわよ!」

46: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:19:10.07 ID:DKU/9yCB0
――――――――――

ほむら(まずい...早く解かないと、巴マミが...)

クーガー「どうしたんですかぁ?こんなところで」

ほむら「ストレイト・クーガー...!?」

ほむら(何故ここに...?)

クーガー「そういうプレイも文化的でそそられますが、何もこんな所でやらなくても...」

ほむら「じょ、冗談言ってないで、早く解いて...お願い...」

クーガー「分かりました。...このリボンはどうすれば?」

ほむら「好きにしていいから...早く...」

バァンバァンバァン

ほむら「...え?」トスッ

47: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:20:49.32 ID:DKU/9yCB0
クーガー「どうやら、人為的なもののようでしたが...この先に彼女達が?」

ほむら「え、ええ...」

ほむら(リボンが粒子状に分解されて、脚にブーツのような物が...?これが、アルター能力...)

クーガー「では、道案内をお願いしますよ、のむらさん!」ヨイショ

ほむら「ほ、ほむらよ。というより、なんでお姫様抱っこ?」ワタワタ

クーガー「彼女達に最速で追いつくためですよ!では、とくとご堪能下さい、のむらさん!私の能力、ラディカル・グッドスピードをぉぉぉぉ!!」

ほむら「だ、だから、私はほむ...らぁぁぁぁ~~!!?」

48: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:21:37.33 ID:DKU/9yCB0
――――――――――

マミ「ティロ・フィナーレ!」

さやか「やったあ、決まったぁ!」

シャルロッテ(恵方巻き)「―――――――――」ニュルン

マミ「!?」

マミの全身は死による恐怖に支配された。

眼前にまで迫りくる魔女の牙に、身動き一つとれない。

食べられる―――そう脳裏によぎった。






――――――――――瞬間、一陣の風が吹いた、気がした


49: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:22:23.83 ID:DKU/9yCB0
シャルロッテ「~♪」モグモグ

さやか「マミさん...?」

まどか「うそ...そんな...」

QB「...まどか、さやか、今すぐ僕と契約を!」

「その必要はないわ」

さやか「っ...転校せ...!?」クルッ

50: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:23:38.34 ID:DKU/9yCB0
ほむら「......ぅぷっ...」フラフラ

まどか「ほ、ほむらちゃん......?」

さやか「...なんで、そんなにフラついてるの?ってそんなことより、マミさん!」

ほむら「心配しないで...」ウプッ

シャルロッテ「???」ポカン




マミ「...え?」

クーガー「40秒ジャスト...また世界を縮めてしまった...」

51: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:25:47.09 ID:DKU/9yCB0
さやか「ク、クーガーさん!?」

まどか「ほむらちゃん、どういう事なの!?」

ほむら「そんなの...私に聞かれても...困るわよ...あぁ、気持ち悪い」フラフラ

まどか「...ほむらちゃん、本当にどうしたの?」

ほむら「ただ言えることは...あの男が速すぎたってことよ...」

****************************
回想

クーガー「この世の理はすなわち速さだと思いませんか?物事を早く成し遂げればその分時間が有効に使えます。
遅いことなら誰でもできる20年かければバカでも傑作小説が書ける。有能なのは月刊より週刊、週刊よりも日刊です。
そう、速さこそ有能なのが文化の基本法則、そして俺の持論です!聞いてますかのむらさぁ~~ん!!」

ほむら「あ...余り跳び回らないで...」グッタリ

クーガー「おおっと、マキさんがピンチのようだ!これからあなたをのどかさん達の元へ無事着地させ
そのまま俺は地面を蹴り最速で彼女を助けだします。準備はよろしいですね!?」

ほむら(早く...降ろして...)
*****************************

ほむら(今思い返すだけでも、また酔いが...)ウッ

さやか「ギャー!こんなとこで吐くなぁ!」

まどか「ふ、袋、袋...そうだキュゥべえ、背中の丸いやつ開けて!」

QB「ちょっ」

ほむら「...だ、大丈夫...大分マシになったから、吐きはしないわ...」フゥー


52: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:26:27.70 ID:DKU/9yCB0
クーガー「お怪我はありませんか?マキさん」

マミ「マ、マミです...あ、あの...」

クーガー「聞きたいことは色々あるかもしれませんが、一先ずあれを倒してからにしましょう」

シャルロッテ「」ガパァ

マミ「ひっ...!」ビクッ

フッ ガチン

シャルロッテ「?」キョロキョロ


53: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:27:43.87 ID:DKU/9yCB0
クーガー「マキさんをお願いします」

さやか「い、いつの間に!?」

マミ「あ...あ...」ガタガタ

まどか「マ、マミさん、大丈夫ですから、落ち着いてください...」ギュッ

ほむら「あなたはどうするつもりなの?」

クーガー「奴の相手をします。この中で一番動けるのは俺のようですから。あなたはここで彼女達を守ってあげて下さい」

ほむら「...分かったわ。あの魔女は手強い。決して油断しないことね」

クーガー「了解しました。それでは行ってきます」タッ

さやか「あんたは行かなくていいの?」

ほむら「私はこっちを任されたから。それに...ね?」フラフラ

さやか「ご、ゴメン。...ホントに何があったのさ?」

ほむら(それに、あの男の実力を測るのにいい機会だものね)

QB(...これで少しは分かるかな、あの男が何なのか...)

54: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:28:15.66 ID:DKU/9yCB0
クーガー「よう、恵方巻き。次の相手は俺だ」

シャルロッテ「」ガパァ

クーガー「確かに、パワーは中々のもんだ。噛みつかれたらひとたまりもないくらいにな。だが!」

ドゴォ

シャルロッテ「!!?」

さやか「たった一蹴りで魔女の顎をカチ上げた!?」

クーガー「俺を喰うにはまだまだ足りない!足ぁりないぞぉ!」

55: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:32:25.19 ID:DKU/9yCB0
クーガー「お前に足りないものは...それは!」

そのままクーガーは、魔女の背中へと跳び移り、目にも止まらぬ速さで駆け抜ける

クーガー「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!そして何よりもぉぉぉ―――!」

それだけに留まらず、高台にある人形の形をした魔女を踏みつけ、クーガーは空高くへと跳び、天井に足をつける。

魔女がクーガーを喰らいつこうとするがもう遅い。

クーガー「速さが足りない!」

足のギミックが展開し、足裏からパイルが打ちだされる。

更に、パイルのピストン運動により天井を蹴り、口を開けた魔女の中へと向かって足を突き出した格好そのままに高速で突き進む!

クーガー「衝撃の...ファーストブリットォォォ!!」

研ぎ澄まされたその速さは、魔女の体内においても失われることなく突き進み続け、ついには魔女の身体を貫いた



56: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:33:49.52 ID:DKU/9yCB0
―――――――
病院外

マミ「ごめんなさい...暁美さん...クーガーさん...」ポロポロ

クーガー「いえいえ、命があってなによりです」

ほむら「わかったかしら、鹿目まどか、美樹さやか。一瞬でも気を緩めれば死ぬことになる...
これが魔法少女になるということよ」

さやか「転校生...」

ほむら「魔法少女になんて、絶対にならない事ね。それと、ストレイト・クーガー」

クーガー「はい?」

ほむら「明日、改めて会えるかしら」

クーガー「構いませんが...もしかして、デートのお誘いですか?」

ほむら「あなたには色々と聞きたいことがあるだけよ。学校が終わってからでお願いするわ」

クーガー「あらら...相変わらずツレないお人だ」


57: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:34:35.83 ID:DKU/9yCB0
QB(やれやれ、この分じゃ契約はさらに難しくなっただろうね。マミのストレイト・クーガーと暁美ほむらに対する認識も随分変わるだろうし)

QB(...ただ、あの男の能力がどうやって発生しているかはなんとなくわかったかな)

QB(もし、僕の仮説通りならその時は...)

QB(まぁ、もう少し様子を見させてもらうよ、ストレイト・クーガー...)

58: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:36:04.13 ID:DKU/9yCB0
―――――――――――――

グチャ グチャ

「パパ...ママ...?」

魔女「foaff@flfpふぉぱ」ガパァ

「いや...いやぁ...!」

ガガガ

魔女「!?」

「え...?」

織莉子「危なかったわね。でも、もう大丈夫よ」

「おねえちゃんは、だれ?」

織莉子「私の名は、美国織莉子。世界を救う魔法少女よ」

59: ◆do4ng07cO. 2014/03/11(火) 01:40:43.31 ID:DKU/9yCB0
第3話 『スーパーピンチ』

窮地!追い詰められたものはみな、生き延びたいと強く願う。生を渇望する。
崖っぷちに追い込まれた者の救いを求める声が響く時、天空から来訪するは、神か悪魔か、スーパーピンチか

66: ◆do4ng07cO. 2014/03/15(土) 23:56:09.20 ID:iDuT/Luc0
マミホーム

マミ「ごめんなさい、家まで送ってもらっちゃって...」

さやか「あ、あの、マミさん。よかったら今晩は一緒に」

マミ「...ありがとう、私なんかのために気を使ってくれて。でも、今日は一人にしてほしいの...」

まどか「...わかりました」

パタン

67: ◆do4ng07cO. 2014/03/15(土) 23:57:00.85 ID:iDuT/Luc0
さやか「...ねえ、キュゥべえ。マミさんはさ、今まで何度もあんな目に遭ってきたの?」

QB「そうだね。あそこまで、とは言わないけど、命の危険には晒されてきているね」

さやか「...戦える人が増えれば、少しはマミさんの助けになるよね?」

QB「そうだね。一人では苦戦する魔女も、二人で戦えば簡単に倒せると思うよ」

さやか「だったら...!」

クーガー「契約して、魔法少女になる...か?」


68: ◆do4ng07cO. 2014/03/15(土) 23:58:57.00 ID:iDuT/Luc0
クーガー「以前も言ったが...俺はオススメはしないな。特に、何不自由なく暮らせるお前たちが自ら平穏を捨てる必要なんてない。手助けしたければ、何か他の方法を探せばいい。契約が全てじゃないんだからな」

まどか「クーガーさん...」

さやか「......」

クーガー「それに、彼女も言っていただろう?他人のために願いを使うのはあまり関心しないって」

さやか「...クーガーさんはいいよね、力があってさ」ボソ

まどか「さやかちゃん...?」

さやか「だってそうじゃんか!クーガーさんは強いからそんなことが言えるんだ!
あたしには何もないんだよ、なにも!」

まどか「さ、さやかちゃん...」

さやか「...ゴメン。こんなの、八つ当たりだってわかってる。筋違いだってことも。でも...あたしにはもうどうしたらいいかわからないんだよ...!」

クーガー「......」

69: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:00:33.11 ID:a+wRVs/F0
第三話『スーパーピンチ』

放課後 校門

ほむら(今回は、巴マミを救出できた。...その要因となったのは、ストレイト・クーガー。...彼は私の味方?それとも...)

ザワザワ

「おい誰だよ、あのちょっと世紀末っぽい服装の黒サングラス」

「見ろよあの車...すげえピンク色だ」

「ここで待ってるってことは、誰かの知り合いかな?」

和子(あら、ちょっと好みかも)

クーガー「おっ、いたいた。どうものむらさぁん!待ちきれなくて迎えに来てしまいましたよ」

ほむら「」

70: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:01:36.38 ID:a+wRVs/F0
病院付近の建物


ほむら「昨日は助かったわ。ただ...学校にまで来るのは止めて。あなたは目立つのよ」

クーガー「すみません。どうにも俺の地元とは勝手が違って。それより、なぜ質問するだけでわざわざ今日に?」

ほむら「キュゥべえもいたからよ。それに、まだ巴マミが私を警戒していないとも限らなかったから、あなた達には巴マミを頼みたかった。...私の質問をしてもいいかしら」

クーガー「ええ、どうぞ」

71: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:02:30.89 ID:a+wRVs/F0
ほむら「なぜ、あなたは魔女の結界の位置が分かるの?」

クーガー「なぜって...なんとなく、ですかね」

ほむら「真面目に答えて」

クーガー「ふざけてなんかいませんよ。育ち柄、危険な場所というのに鼻が利きまして」

ほむら「証拠は?」

クーガー「これからの俺の行動を見てってことでお願いします」

ほむら「...そうさせてもらうわ。次の質問、いいかしら」

クーガー「その前にこちらからも一ついいですか?」

ほむら「...なに?」

クーガー「あなたの本当の目的ですよ」

ほむら「!」

72: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:04:00.07 ID:a+wRVs/F0
クーガー「始めは単にキュゥべえが嫌いだとか、魔法少女を増やしたくないからだとか思っていたが...どうも行動が噛み合っていない。不自然です」

ほむら「......」

クーガー「のどかさんから聞いたのですが」

ほむら「まどかよ」

クーガー「おっと、すみません。昨日の結界での件、わざわざマキさんに忠告しにいったらしいですね。放っておけば、図らずとも一人の魔法少女が消えたってのに」

ほむら「...それは、あの魔女のグリーフシードを」

クーガー「だったら、もっと方法はあったでしょう。例えば...そう、声をかけることもなく彼女を闇討ちするとかね。それをしなかったのは、彼女を味方に引き入れたかったから...ってところでしょうか」

ほむら「......」

クーガー「あそこまで敵対していた相手の手を借りてまでしたいこととは」

ほむら「随分とよくまわる口ね」

73: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:05:34.09 ID:a+wRVs/F0
空気が変わる。

ほむらは、既に変身できる準備を終えていた。

―――これ以上、余計なことを口にすれば容赦はしない。

ほむらの目は、静かにクーガーに告げていた。

クーガー「やだなぁ、そんなに怖い顔しないで。気に障ったのなら謝ります」

そんな彼女の視線を知ってか知らずか、クーガーの調子は変わらない。

そんな彼の態度に、ふぅと一息つく。

ほむら「いずれ話すわ。でも、今は駄目。これでいい?」

クーガー「...わかりました。今はこれ以上追及はしません。ですが、一つだけ」

クーガー「相手からの信用を得たいのなら、自分のことを早めに知ってもらうことが大切ですよ」

ほむら「......」

74: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:06:06.94 ID:a+wRVs/F0
クーガー「さて、それでは次の質問を...おや?」

ほむら「どうしたの?」

クーガー「いえ、今病院にあやからしき人影が」

ほむら「さやかよ。...ちょっと待って。今、美樹さやかが病院に?」

クーガー「青い髪の中学生でしたから、そうではないかと」

ほむら「...悪いけれどクーガー。話は後にしてもらえるかしら」

クーガー「ええ。構いませんよ」

75: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:07:43.21 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――

上条の病室

さやか(やっぱり心配だな、マミさん...どうにかして力になってあげたいよ...)

恭介「...ねえ、さやか」

さやか「な、なに?」

恭介「さやかはさぁ...僕を苛めてるのかい?」

さやか「え...?」

恭介「なんで今でもまだ僕に音楽なんて聞かせるんだ。嫌がらせのつもりなのか?」

さやか「だ、だって恭介、音楽すきだから」

恭介「もう聞きたくなんかないんだよ!自分で弾けもしない曲、ただ聞いてるだけなんて!」

さやか「だ、大丈夫だよ、諦めなければそのうち」

恭介「諦めろって言われたんだよ!もう指なんて動かないんだ...!」

さやか「!」

恭介「もう治らないんだよ...奇跡か魔法でもない限り...」

さやか「...あるよ」

恭介「......?」

さやか「奇跡も魔法も、あ」

ガララ

クーガー「オー!ジャマジャマ!」

76: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:08:22.12 ID:a+wRVs/F0
恭介「」

さやか「」

クーガー「...ん~、どうにもイマイチ受けが悪いみたいだな。これも文化の違いってやつか」

恭介「あ...あなたは...?」

さやか「え、えっと...」

クーガー「彼女のちょっとした知り合いだよ」

さやか「...うん、あたしの知り合い。悪い人じゃないから大丈夫だよ」

恭介「はあ...」

77: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:09:17.20 ID:a+wRVs/F0
さやか「クーガーさん、なんでここに?」

クーガー「病院に入っていくお前がちょっと気になってな。そしたらなにやら修羅場に遭遇しちまったわけさ」

恭介「......」

さやか「しゅ、修羅場っていうかその...」

クーガー「俺の名前はストレイト・クーガーだ。坊主、名前は?」

恭介「...上条恭介です」

クーガー「恭介か。...あやか、悪いがちょっと席を外してくれないか?」

さやか「えっ?」

クーガー「頼む」

さやか「...わかった」

ガララ

クーガー「そういうわけですから、二人で時間でも潰していてくださいのむらさん」

ほむら「......」

さやか「......」

さやほむ「「えっ」」

78: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:10:06.00 ID:a+wRVs/F0
クーガー「さて、ここで会ったのもなにかの縁だ。男同士、腹割って話そうじゃねえか」

恭介「...あなたに話すことなんて」

クーガー「別に説教しようってわけじゃない。不満も本音も、全てぶちまければいい」

恭介「で、でも...」

クーガー「心配すんな。ここで聞いたことは誰にも言わないさ」

恭介「......」

79: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:10:43.39 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――
マミホーム

まどか「あの、マミさん。体調は...?」

マミ「大分よくなったわ。...と、いいたいところだけど...」ブルブル

まどか「......」

マミ「...ごめんなさい。こんな情けない姿を見せちゃって」

80: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:11:40.61 ID:a+wRVs/F0
まどか「...マミさん。ごめんなさい」

マミ「鹿目さん?」

まどか「わたし、まだ願い事が決まってなくて...魔法少女にはなれなくて...」

マミ「...そう。でも、良かったわ。これであなた達を危険な目に...」

まどか「だから、マミさんの傍に居させてください」

マミ「え?」

まどか「魔法少女にはなれなくても、マミさんの力になりたいんです」

マミ「...いいの?私、あなたたちを守れなかったのよ?」

まどか「いいんです。わたし、マミさんともっと関わりたいんです。守られるとか守るじゃなくて、一人の人間として関わりたいんです。だから、その...迷惑じゃなかったら...」

マミ「迷惑なんて...とんでもないわ。ありがとう、鹿目さん...」ニコリ

まどか(笑ってくれた...!)

81: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:13:01.16 ID:a+wRVs/F0
**********************************


まどか「あの...前から思ってたんですけど...」

クーガー「?」

まどか「なんで、クーガーさんはそんなに契約に否定的なんですか...?」

クーガー「以前に言った通りです。こんな可愛らしいお嬢さん達を戦場に送り込むなんて考えられないからですよ」チラッ

QB「僕は無理に送り込んでいるわけではないんだけど」

クーガー「そこのところは分かってる。
...選ぶのはあなた達自身だ。だからこそ、今の生活を大切にして欲しいんです。魔法にも戦場にも能力にも縛られない、普通の人間としての日常をね」

まどか「で、でも...さやかちゃんが言ったみたいに、特別な力がないとできないことも...」

クーガー「彼女の戦闘のフォローには俺が入ります。なんなら、のむらさんもいますしね。これでは、あなた方が契約しなくてもいい理由にはなりませんか?」

まどか「ほむらちゃんです。...でも、わたしもさやかちゃんも、マミさんの力になりたいんです」

クーガー「...たしかにその気持ちは素晴らしい。しかし、あなた方の言う特別な力が無い人にしかできないこともあると思いませんか?」

まどか「えっ...?」

クーガー「魔法少女は魔法少女としか関わりあえない、助け合えない...そんなの、寂しいでしょう?」



**********************************

82: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:15:16.76 ID:a+wRVs/F0
確かに、誰かのために戦えるマミさんは凄くかっこよくて素敵だって思っていました。

でも、もしこのまま戦えなくなっても、マミさんを嫌いになるなんてことはありえません。

だって...

マミ「ご、ごめんなさい...なんだか、安心したら気がぬけちゃって...やっぱり私、ダメな子だ」グスッ

まどか「ダメなんかじゃないですよ」

マミさんは、優しくて、でも少し寂しがりな普通の女の子なんですから。

そんなマミさんとこれからも一緒にいられたら、それはとっても嬉しいなって思ってしまうのでした。

83: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:16:12.35 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――――――

クーガー「...そうか。辛かったな」

恭介「......」

クーガー「...なあ、これからどうしたい?」

恭介「?」

クーガー「音楽のことだよ」

恭介「...僕の腕は治らないんですよ?」

クーガー「治る治らないの問題じゃない。お前がやりたいかどうかさ」


84: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:18:25.85 ID:a+wRVs/F0
恭介「諦めきれるわけ...ないじゃないですか」

恭介「他の人から見たらちっぽけでも、僕にとってはやっと手に入れたものなんだ!それをこんな形で諦めるなんて...!」

クーガー「ならそうすればいい。諦めたくないなら、その道を突っ走ればいいのさ」

恭介「...でも、医者からは諦めろって...」

クーガー「それはあくまでも選択肢の一つさ。どの道を選ぼうが恥ずかしいことじゃない。大切なのはお前の人生をお前の意思で決めることだ」

恭介「......」

85: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:20:24.89 ID:a+wRVs/F0
恭介「...本当に、僕の腕は治らないんでしょうか?」

クーガー「さあな...そこまではわからん。ただ、気休め程度にしかならんと思うが、お前の腕が治る可能性もゼロじゃないんだ」

恭介「え...?」

クーガー「医療ってのは『知る』ことから発展してきたんだ。お前の腕のような壁にぶち当たった時、それを乗り越えるために進化していく...それが医療、すなわち文化ってやつさ」

クーガー「勿論、そんな可能性を信じて頑張り続けるなんざ馬鹿に見えるだろうな。その過程には、他人からの嘲笑や侮辱もあるだろう。だが、男が譲れない道を駆け抜ける時は、どんなに醜く映ろうが、自分にできることを見つけ出し徹底的にもがいてみせる。...そういうのもありだと、俺は思う」

恭介「......」

クーガー「俺だってそうだ。俺が見つけた、速さという文化を極めるためなら、どれだけ馬鹿にされようとも笑われようとも構わねえ。お前と同じで、自分の道を追い求めなきゃ生きていけない男さ」


86: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:21:43.10 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――――

病院 屋上

さやか「......」

ほむら「......」

さやか(き、気まずい...)

さやか「あっ、あのさ、昨日はクーガーさんを連れてマミさんを救けにきてくれたんでしょ?その、ありがとうね!」

ほむら「......」

さやか(...なんか反応してよ)

ほむら「...美樹さやか」

さやか「なっ、なに?」ビクッ

ほむら「契約しようだなんて、決して思わないで」 

88: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:24:30.36 ID:a+wRVs/F0
さやか「...やっと口開いたと思ったらそれかよ」

ほむら「契約なんてしても、彼は振り向いてくれないわよ」

さやか「...なんだよ、それ。まるであたしが見返りを求めてるみたいじゃんか」

ほむら「ええ、そうよ」

さやか「ふざけんな!あんたに、なにが」

ほむら「巴マミの言っていたこと、覚えてる?」

さやか「マミさんの言ったこと...?」

ほむら「『あなたは、その人の夢を叶えたいの?それとも、その人の夢を叶えた恩人になりたいの?』」

さやか「......!」

ほむら「あなたは、自分が彼にとってどうなることを望んでいるか、はっきりとわかっているの?」

さやか「それは...」

ほむら「...言いよどむくらいなら、契約してはいけない。そう、彼女も言っていたでしょう?それに、そんな状態で彼女と組んだところで足を引っ張るだけよ」

さやか「......」

ほむら「もう、契約のことなんて忘れて、普通に彼を助けてあげなさい。巴マミが心配なら、私が彼女に協力するから」

89: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:25:20.80 ID:a+wRVs/F0
さやか「...転校生、その、ごめん」

ほむら「...?」

さやか「あたしさ、正直自分でいっぱいいっぱいになっちゃってて...あたしが契約すれば恭介もマミさんも喜んでくれると思ってた」

さやか「でも、違うんだよね。もしこんな中途半端な気持ちで契約しても、きっとマミさんは喜ばない」

ほむら「......」

さやか「それでも、恭介やマミさんの力になりたいのは本心だと思う。だから、契約のことはもっと考えることにする」

ほむら「っ...!」

さやか「わ、わかってるって。できれば契約はしないし、するとしても絶対皆に相談するから!」

ほむら「...そう」

90: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:26:43.83 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――――

まどか(マミさん...少しでも元気になってくれてよかったな...)

「~♪」

まどか「あれ...あそこにいるのは仁美ちゃん?」

まどか(今は習い事の時間じゃ...?」

まどか「仁美ちゃんどうしたの?こんなところで...」

仁美「あら、まどかさんごきげんよう...私...これから素敵なところへまいりますの~」

まどか「す、素敵なところ?」

仁美「鹿目さんも行きますか~?」

まどか「!」

まどか(仁美ちゃんの首に魔女の口付けが!?)

仁美「行きましょうよ~」グイグイ

まどか(ど、どうしよう...誰かに連絡しなくちゃ...)

まどか「あの、ほむらちゃんも呼んでいいかな?」

仁美「駄目ですわ~彼女は特別な人ですもの~私たちには似つかわしくありませんわ~」

まどか「と、特別...?」

まどか(それって、魔法少女のことなのかな?でも、なんで仁美ちゃんが...)

まどか「じゃあ、さやかちゃんは?」

仁美「美樹さんもいらっしゃるのですか~?嬉しいですわ楽しみですわ~♪」

まどか(さやかちゃんはいいんだ...)

91: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:27:40.07 ID:a+wRVs/F0
プルルル

さやか「どうしたの、まどか?」

まどか『えっとね、仁美ちゃんがこれから楽しいところに行くみたいなんだけど、さやかちゃんも来る?』

さやか「へっ?仁美は今は習い事じゃ...」

まどか『で、できれば、クーガーさんたちも一緒ならいいかなぁ~って』

仁美『もうよろしいですか~?』

まどか『じゃ、じゃあよろしくね!場所はこうじょ』

ピッ

さやか「......?」

ほむら「どうしたの?」

さやか「いや、なんかまどかがさ、仁美と楽しいところに行くから、クーガーさんたち...多分、あんたかマミさんのことだと思うけど、工場にきてって...」

92: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:28:29.02 ID:a+wRVs/F0
―――キィン

ほむら(!魔力の反応...!)

QB「どうやら、近くに魔女か使い魔がいるみたいだね」ヒョコッ

さやか「のわっ!?急に出てこないでよ、ビックリするじゃん」

QB「ごめんね、驚かすつもりはなかったんだけど...」

ほむら(理由はわからないけれど、まどかからの遠回しな呼びかけと、魔力の反応...志筑仁美が魔女にやられている可能性は高い)

ほむら(でも、工場は二つある。もしこれがまどかたちを襲っている魔女の反応ではなかったら?)

ほむら「......」

93: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:31:10.99 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――――


クーガー「...とはいえ、だ。彼女に当たっちまったのはマズかったな。男としてはナンセンスだ」

恭介「...わかっています。さやかには後で謝らないと」

クーガー「なに言ってんだ。謝罪もお礼も、今すぐに決まってんだろ」

恭介「い、いまですか!?」

クーガー「そうだ。人に何かをしでかしたなら謝り何かをしてもらったらお礼を言うのは至極当然であり文化の基本法則だ。ごめんなさいありがとう助かりました等の言葉だけで済ませていい問題じゃない。一方的なしこりを残しておくと相手に言葉をかける機会を逃してしまう。そう謝罪もお礼もすぐに済ませることが重要なのだ!遅いことなら誰でもできる猫でもできる。金メシ愛なんでもいいから最速で行動することこそ人間関係を物理的に円滑にする有効な手段であり俺の信条でもあるんだ!故にだな!」

ほむら『ストレイト・クーガー、今すぐ屋上に来なさい!』

クーガー「っとと...今いいところだったんだけどなぁ...」

恭介「?」

クーガー「こっちの話だ、気にするな」

94: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:32:26.33 ID:a+wRVs/F0
クーガー「どうしたんです?なにやら慌ててる様でしたが」

ほむら「まどかとクラスメイトが魔女に目を付けられたわ。急いで向かうわよ」

クーガー「場所は?」

ほむら「工場よ。でも、ここから東と西に一つずつあるから...二手に別れるわ。クーガー、あなたは西に向かって」

クーガー「それは構いませんが...いくら俺の勘が冴えているとはいえ、正確性には欠けますよ」

ほむら「それなら問題ないわ。多分、魔女がいたら他にも大勢人がいると思うから」

クーガー「わかりました。最速で終わらせてきますよ」ダッ

ほむら(私も急がないと...)タッ

さやか「あっ、待ってよ!...行っちゃった。どうしよう...」

ピロン

さやか「恭介から...?」



『さやか、今は時間あるかい?』



さやか「......」



『ごめん、今はちょっと忙しい。明日でいいかな?』



さやか「...まどかを放っておくわけにはいかないからね」

95: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:33:55.07 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――――――――

「...現実の女なんて大嫌いだ...今行くよ...僕の理想の女の子たち...」ブツブツ

「所詮私の脚本など誰も評価してくれんのだ...才能がないんだ」

「細いんだよ...ヤワいんだよ...縮こまりっぱなしなんだよ...」

「もう崖っぷちは嫌だ...早く楽にさせて...」

「なんだよ、絶対無敵破壊光線って...適当な上にかませ以下って救いようがねえよ...」

ガスマスク×20「シュコー、シュコー」

まどか(...どうしよう、変な人達ばっかり集まってるよ...)

仁美「さあ...儀式を始めましょう...」

96: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:34:58.85 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――――――
結界内


杏子「マミの奴がヘタこいたって聞いたから来たが...」

魔女「...」ノソノソ

杏子「へへっ、いたいた!それじゃあ早速「見つけたァ!!」」


キキィ ブロロロロ

クーガー「大は小を兼ねるのか?速さは質量に勝てないのか?いやいやそんなことはない速さを一点に集中させて突破すればどんな分厚い塊であろうと砕け散る!ハッハッハッハッ、ハー!」

ズガァァァァン


クーガー「ドラマチーック!エステティーック!ファンタスティーック、ラーンディーング! 」

97: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:35:49.83 ID:a+wRVs/F0
魔女「」シュウウウ

クーガー「5分ジャスト...また世界を縮めてしまったぁ...」

杏子「な、なんだあんた...」

クーガー「ん?その恰好...そこのお嬢ちゃん、ひょっとして魔法少女なのか?」

杏子「魔法少女のこと知ってんのか!?あんた一体何者だ!?」

クーガー「なぁに、通りすがりの文化人さ」

杏子「わけわかんねえよ」

98: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:37:31.57 ID:a+wRVs/F0
クーガー「時にお嬢ちゃん。ここらでのどかさんを見なかったか?ピンク色の髪をした可愛らしい娘なんだが」

杏子「...いや、あたしも来たばっかだから...」

クーガー「そうか...なら、のむらさんの方が当たりってことか。情報提供感謝するぜ、お嬢ちゃん。こいつは情報料だ」ヒュッ

杏子「っと...まあ、こいつを倒す手間が省けたのはいいとしてだ...あんたにはまだ聞きたいことが」

クーガー「悪いがこっちにゃ時間がないんでな!質問はまた会えた時にいくらでも聞いてやるさ!」バァン バァン

杏子「車!?一体どこから...」

クーガー「ラディカル・グッドスピィィィド!待っててくださいのどかさん、のむらさぁぁぁ~ん!」

ギュワン


杏子「...なんなんだ、ありゃあ」

99: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:38:46.48 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――


ドボドボ

まどか(あ、あれ...確か、混ぜたら危ないやつじゃ!止めないと!)ダッ

仁美「どうしたのですか~?」ガシッ

まどか「どいて仁美ちゃん!あれ止めないと!」

仁美「いけませんわ~これは神聖な儀式ですのよ~。肉体から魂を解き放つのです~」

まどか(駄目だ...話しも通じなくなってる...早く...誰か...!)

ガシャァァァン!

100: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:40:02.15 ID:a+wRVs/F0
ほむら「どうやらこっちが当たりだったようね。間に合ってよかったわ」

まどか「あ、ありがとうほむらちゃん」

「よくも僕達の神聖なる儀式を!これだから現実の女は嫌いなんだ!」

「ときめいて死ね!」

「俺様のマグナムをじっくりたっぷり味わわせてやらぁ!」

まどか「わわっ、いっぱい来た!」

ほむら「まどか、さがってて」

まどか「う、うん」

ほむら(ひとまず、彼らを気絶させて...)

―――カチリ


101: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:40:36.31 ID:a+wRVs/F0
バタッ

バタバタッ

まどか「あ、あれ...?みんな、倒れちゃった...」

ほむら「大丈夫。気絶させただけよ」

―――キィン

ほむら「あの扉の奥に魔女が潜んでいる...まどか、あそこに隠れていて」

まどか「う、うん!」

102: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:42:19.93 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――

結界内

ほむら(この魔女は...!)

ハコの魔女「」フワフワ

ほむら(この魔女と私は相性が悪いから、できれば、クーガーが来るまで待っておきたいのだけれど...)

クーガーの速さを持ってしても、魔女の結界が広がりきる前に間に合うかは分からない。

ならば、とる手段は一つ。

ほむら(魔力の温存なんて言ってられないわ。速攻でケリをつける...!)

―――カチリ

103: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:43:11.74 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――

まどか「ほ、ほむらちゃん大丈夫!?」

ほむら「ええ。怪我はしてないわ。魔女は倒したから、彼女たちの魔女の口付けも消えている筈よ」

まどか「よかった...」ホッ

ほむら「とりあえず、救急車でも...」

「うぅ...」

まどか「誰か目を覚ますよ」

「こ、ここは一体...?」キョロキョロ

ほむら「...面倒なことになりそうね。もう一度気絶させておきましょう」

まどか「だ、ダメだよほむらちゃん!」

「ひいっ!?」ビクッ

105: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:44:00.83 ID:a+wRVs/F0
「あ、あわわわわわわ...またイジメられる...崖っぷちだ...が、がけがきぐげ、がけ、がけ」

まどか「へ?」

「アドレナリンが交感神経から噴出してどうにも止まりそうにもない!あぁ~イク~逝ってしまうぅ―!」

まどか「こ、これも魔女の口付けのせいなの?」

ほむら「そんな筈は...」

ほむら「!...微かだけど、さっきの魔女とは違う魔力を感じる...!」

まどか「えっ!?」

「誰か助けて...誰かぁぁぁ!!」

まどか「な、なにもしませんから、落ち着いてください!」

「助けて僕のピンチクラッシャーぁぁぁ!!」

カッ

まどか「えっ!?」

106: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:45:45.52 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――
結界


【逆転の魔女】

その性質は救出。ピンチな場面に現れる魔女。常日頃ピンチを感じている人間に魔女の口付けを憑りつけ、宿主がピンチに陥ると、結界と共に天空より来訪する。
かつて憧れていたアニメのスーパーロボットのように、ピンチな人間を救っているが、救出が終わるころには、生気を吸われ続けた宿主が力尽きていることには気付かない。
アニメの影響が強く、自分のシナリオを完全に再現するため、一対一のシナリオ上では無敵。逆に、イレギュラーには弱く、脆い。また、宿主の意識が途絶えると、その存在意義を見失い、自問自答の時間に陥ってしまう。



まどか「ま...じょ...?」

まどか(なんだか、前にタツヤが見てたロボットアニメに似ているような...)

「た、助けに来てくれた!僕のスーパーピンチクラッシャー!」

逆転「」ウイイィィン

「お願いピンチクラッシャー!僕をイジめようとする奴をやっつけて!」

ほむら「どんな魔女かは分からないけれど...」



―――カチリ

107: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:47:21.06 ID:a+wRVs/F0
時が止まる。

ほむら(あれほど巨大だと、拳銃では効果が薄そうね。なら...)

バズーカ砲を構え、魔女へ放つ。

それを5回程行い、加えて爆弾も投げつける。

その全てが、魔女の眼前で静止し

―――カチリ

時が動きだす。

108: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:48:27.98 ID:a+wRVs/F0
ドゴオオォォン

まどか「わわっ!?」

ほむら「これなら、倒せるはず...」

「知らないのですか?ピンチクラッシャーは、危機に陥れば陥るほど強くなると!」

―――キラッ

ほむら「!?」

「きたっ、大いなる翼、ピンチバードだ!」

まどか「姿が変形していく...!」

「超!ピンチ合体!」

翼が、魔女よりも二回りは巨大な巨体に変形する。

魔女が、その巨体の胸部の空洞にスッポリと納まり、開いていた部分が全て塞がった

魔女は、まさしく『合体』に相応しい姿となって降臨した。

「グレートピンチ...クラッシャァァァ――!」

109: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:48:57.72 ID:a+wRVs/F0
ほむら(破損していた部分が修復して...!)

「今度はきみの反撃だよ、ピンチクラッシャー」

逆転「」キュイイィィン

ほむら(マズイ...時間停s)

「いけえ、デンジャーハザード!」


ドドドドド

ほむら「くっ...!」

110: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:50:47.56 ID:a+wRVs/F0
結界の外

さやか(とりあえずついてきちゃったけど...大丈夫かな、まどかたち)

QB「気になるかい?」

さやか「そりゃあね。つい昨日にあんなことがあったばかりだし」

QB「...ちなみに、今、暁美ほむらは危険な状態だ」

さやか「えっ!?」

QB「ほむらの魔力が弱まっているのがわかる。僕は彼女の能力が分からないけれど、どうやら相性が悪かったみたいだね」

さやか「な、ならキュゥべえ!」



ほむら『契約しようだなんて、決して思わないで』



さやか「!」


マミ『あなたは、その人の夢を叶えたいの?それとも、その人の夢を叶えた恩人になりたいの?』


QB「どうしたんだい?」

さやか「あ...あたし...は...」

111: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:52:15.59 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――

ほむら「うああっ!」

まどか「ほむらちゃん!」

「やったぁ、悪の怪人は弱ってるよ!今がチャンスだ!」

魔女が上空に飛び、大剣を構える。

対するほむらは、右腕と両脚に酷い火傷を負っている。

まどか(こ、このままじゃほむらちゃんが!どうすれば...)

QB「契約するしか手段はないよまどか!」

まどか「キュ、キュゥべえ!?」

QB「魔法少女でしか魔女は倒せない!あ、ストレイト・クーガーみたいなのは別だけどね。でも、彼はおそらく間に合わない...だから僕と契約するんだ!」

まどか(...私が契約しないとほむらちゃんが...)

「逆転閃光カットォォ―――!!」

大剣がほむらに振り下ろされる。

マミの時とは事情が違う。今必要なのは...単純に『力』だ。それが、まどかの心を揺さぶった

まどか「私...魔法少女に」

「その必要はないよ」

112: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:53:24.43 ID:a+wRVs/F0
まどか「え...?」

まどかは己の目を疑った

大剣からほむらを救ったのは、マミでもなく、クーガーでもなく、

――――魔法少女の姿をした美樹さやかだったから

さやか「......」ニッ

ほむら「美樹...さやか...?」

「そ、そんな...逆転閃光カットが外れたなんて...」

さやか「...色々と言いたいことはあると思うけど、先にあれをなんとかしちゃおうか」

「ももももう駄目だ崖っぷちだ。助けてファイナルピンチクラッシャー!!」

逆転「」シュイイイン

さやか「いっ!?」

ほむら「ま...まだ強くなるの...!?」

「あぁ~とうとう達してしまう!私のピンチの極限へ~!!」

113: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:54:35.91 ID:a+wRVs/F0
クーガー「ふんっ!」ドゴォ

「あふんっ!」

まどか「く、クーガーさん!?」

逆転「」ブルブル

男が気絶すると共に、魔女がブルブルと震えだす。そして、地に膝をつけ、そのまま動かなくなってしまった。

さやか「あ、あれ...?」

ほむら「いったいどういうことかしら...」

クーガー(エマージーの能力に似ていたからもしやと思って試してみたが...予想通りだったらしい)

クーガー「早いとこ倒してしまおう。また動きだされたら厄介だしな」

さやか「じゃ、じゃあ...えいっ」

さやかが斬りつけると、魔女はあっけなく四散し、グリーフシードを残して消え去った。

114: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:55:56.75 ID:a+wRVs/F0
さやか「はぁ...助かったぁ。いやぁ~危機一髪ってやつだったかな?」

ほむら「あなた...どうして...!?」

さやか「死にかけてる奴を放っておけるほど、あたしは薄情なやつじゃないっての」

まどか「さやかちゃん...わたしの所為で...」

さやか「なんで謝る必要があるのさ。あんたが仁美を追いかけてったから、仁美もその他大勢の人も助けられたんだし」

まどか「でも...」

さやか「大丈夫。ちゃんと、悩んで出した答えなんだ。後悔なんてないよ。...そういえばキュゥべえ!」グイッ

QB「なんだい?耳を掴まないでくれないかな」

さやか「あんた、まどかと契約しようとしたでしょ!?あたしと契約したばっかなのに!」

QB「保険のつもりだったんだよ。さやかは初めてだからどうなるかわからなかったからね」

さやか「そんなにあたしは信用なかったか」ポイッ

115: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 00:59:40.10 ID:a+wRVs/F0
クーガー「契約...したんだな」

さやか「...ごめんね、クーガーさん。転校生も...」

クーガー「謝る必要なんてないさ。それが、お前の選んだ道なんだろう?」

さやか「うん。友達を助けれたんだ。後悔なんてない...あるもんか」

ほむら「......」

116: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 01:00:17.91 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――――

恭介「どの道を選ぶ、か...」

恭介(...僕にできることって、なんなのかな)

恭介(この役立たずな腕でも、諦めなければなにかを掴めるのかな...?)

ピク

恭介「あれ...?」

恭介「腕が...動く...?」

117: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 01:01:07.29 ID:a+wRVs/F0



???「くふふっ...わざわざ魔女を操って投入した甲斐がありました」

???「これで、準備は整った...後は、機を待つのみです」

???「くふっ、クフフっ...!」



118: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 01:03:07.87 ID:a+wRVs/F0
次回予告

第4話 『魔法少女』


契約した美樹さやかの前に現れる魔法少女、佐倉杏子。

他者のために闘うさやかと、それを否定する杏子

互いに譲れぬ戦いに、ほくそ笑むのはキュゥべえか

全ての真実は、己の宝石の中に

123: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:25:44.52 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――――
第4話『魔法少女』



恭介「さやか...この前はゴメンよ。僕はどうかしてたようだった」

さやか「気にしてないよ。人間、誰でもイラつく時はあるからさ。それより恭介、腕の具合はどう?」

恭介「...動くようになったよ。何事もなかったかのようにね」

さやか「そうなの!?よかったじゃん!」

恭介「そうだね...うん」

さやか「?なんでそんなに元気がないの?」

124: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:26:38.99 ID:a+wRVs/F0
恭介「...昨日さ、クーガーさんと色々話し合ったんだ」

恭介「それで、この先どうしたいかは自分でよく考えろって言われた。それで、もう一度頑張ってみようかなって思った。...でも、その矢先にあっさりと治ったものだからさ」

さやか「きょ、恭介...その...ごめん、何も考えずに喜んじゃって...」

恭介「い、いや、違うんだ。嬉しいんだけど、実感が沸いてないだけなんだ。だから謝らないでよ。むしろ僕はお礼が言いたいんだからさ」

さやか「え?」

恭介「今までありがとう、さやか。こんな僕を見捨てないでいてくれて」

さやか「な、なんか改まって言われると照れるな...///」

恭介「だから...これからも今まで通りに付き合ってくれるかい?」

さやか「もちろんだよ!なんたってあたしの大切な幼馴染だからね」

125: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:27:09.49 ID:a+wRVs/F0
喫茶店

ほむら「...話って?」

まどか「あのね、ちょっと気になったんだけど...」

ほむら「?」

まどか「ほむらちゃんは、誰かに魔法少女のことを話したことがある?」

ほむら「いいえ、ないわ。知っているのはあなたたちとクーガーだけよ」

まどか「そうだよね...じゃあ、アレはなんだったのかなぁ?」

ほむら「アレ?」

まどか「うん。昨日、さやかちゃんに電話をかける前に、ほむらちゃんにかけようとしたの。そしたら、仁美ちゃんが『ほむらちゃんは特別な人』だから駄目だって...」

ほむら「あの遠回しな呼び出しは、そういう事情だったのね」

まどか「うん...」

126: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:28:52.29 ID:a+wRVs/F0
ほむら(志筑仁美を操っていたのは魔女...でも、私のことを魔法少女だと魔女が知っているのは解せない)

ほむら(なら、志筑仁美が知っていた可能性は?私が認識している内では、知っているのはまどかと美樹さやか。それにクーガーに、巴マミとキュゥべえだけ...)

ほむら(前者二人は論外。巴マミも、素質がないものには魔法少女のことは話さない筈。キュゥべえも、素質がない志筑仁美と関わる可能性は極めて低いし、そもそも彼女から認識されることもない。となると、クーガーが一番可能性が高い...)

ほむら(...でも、仮にも信頼を得たいと言っている男がこんな消去法で特定できるような手段を選ぶかしら?...もし、クーガーでもなければ...)

まどか「...らちゃん?」

ほむら(まだ、私が知らない敵がいる...?)

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「な、なんでもないわ。...それより、話はそれだけじゃないでしょう?」

まどか「う、うん。さやかちゃんのことなんだけど...」

ほむら「...彼女が契約してしまったのは、私の責任。だから、出来る限りは手助けするわ」

まどか「じゃ、じゃあ!」

ほむら「でも、あくまでも彼女は自分で道を選んだだけ。だから、あなたまで背負おうとはしないで」

まどか「...うん」

127: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:30:59.11 ID:a+wRVs/F0
――――――――
展望台

QB「...本当に彼女達と事を構える気かい?」

杏子「何度も言わせんなっての。あんな奴らには負けねえよ」

QB「全てが君の思い通りにいくとは限らないよ。この町には、まだ二人もイレギュラーがいるからね」

杏子「イレギュラー?」

QB「僕と契約した覚えのない魔法少女が一人と、ストレイト・クーガーという男がいるよ」

杏子「男?...そのクーガーってのは、やたら速くて、車とか出せる奴か?」

QB「知っているのかい?」

杏子「まぁ...一回会っただけだけどね。忘れようと思っても無理だろあんなの。何者なんだあいつ」

QB「僕にも分からない」

杏子「まあいいさ。要はぶっ潰しちゃえばいいんでしょ?そいつら全員」

128: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:32:44.66 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――――

クーガー「よう、上条。なにやら腕が治ったらしいな」

恭介「クーガーさん!...はい。何故だかわからないけど...」

クーガー「その割には浮かない顔だが」

恭介「あまり実感が湧かなくて」

クーガー「こういう時はな、素直に喜んでおけばいいのさ」

恭介「いや、わかってはいるんですけど、どうにも...」

クーガー「そうか...だったら、今までできなかったことをしてみたらどうだ?」

恭介「できなかったこと、ですか?」

クーガー「ああ、そうだ。その治った腕でできることをやり続ければ嫌でも実感できるだろ」

恭介「できなかったこと、かぁ...」


129: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:33:58.85 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――――

ほむら(美樹さやかが契約してしまった...もう、彼女を止めることはできない。彼女が絶望すれば、まどかの契約する確率も格段に上がってしまう)

ほむら(かといって、彼女たちに時間を割きすぎて準備を怠れば、ワルプルギスの夜に間に合わなくなる)

ほむら(でも、私の身体は一つ...どちらかに絞らなければならない)

マミ「あ、暁美さん」

ほむら「巴さん...?もう、身体は大丈夫なの?」

マミ「ええ。その、この前のこと謝ろうと思って...ごめんなさい、暁美さん」

ほむら「謝る必要なんてないわ」

マミ「でも、あなたたちがいなかったら、私は死んでいたんだもの。あんなことをした人を信用できないかもしれないけれど、なにか力になれることがあったら、なんでも言って」

ほむら(...これまでの統計上、このような状況で巴マミがまどかを勧誘する確率は低い。だったら...)

ほむら「ありがとう。なら、早速ひとつ頼まれてくれるかしら?」


130: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:35:20.05 ID:a+wRVs/F0

――――――――――――――


さやか宅 

さやか「よっし...これで準備OK」

QB「緊張してるのかい?」

さやか「そりゃあね...正直言うと怖いよ。でも、マミさんばっかりに任せるわけにもいかないし、転校生とクーガーさんの忠告も無視しちゃったし...
だから、その分あたしが頑張らなきゃね」



さやか宅 玄関前

さやか「あれ、まどか...?」

まどか「あ、あの...私も付いて行っていいかな?じゃ、邪魔にならないようにはするから...」

さやか「...邪魔になんてならないよ。ありがと、まどか。すごく心強いよ」

QB『危険を承知の上なんだね?』

まどか『キュゥべえ...』

QB『君にも君の考えがあるのだろう。僕は口出しなんてしないさ』

まどか『うん...ありがとう』

131: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:36:38.67 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――――

マミ「クーガーさんと美樹さんを見張ってほしい?」

ほむら「ええ。私はやらなければならないことがあるから、お願いしてもいいかしら」

マミ「構わないけど...でも、いいの?」

ほむら「...戦闘力を考慮した時に、あの二人と戦えるのはあなただと思うから」

マミ「そうじゃなくて、その...クーガーさんよりも、私なんかを信頼するようなことをして」

ほむら「あの結界でのことなら気にしないで。得体のしれない相手なら、警戒するのは当然のことだもの。むしろ、殺されなかっただけでも感謝したいわ。ストレイト・クーガーに関しては、保険よ」

マミ「保険...かぁ。私が言うのもなんだけど、もう少し信用してもいいんじゃないかしら」

ほむら「?」

マミ「彼、あなたに害のある行動をしているわけじゃないんでしょう?」

ほむら「...でも、人がいつ裏切るかなんてわからない」

マミ「...まあいいわ。頑張ってみる。でも、そのクーガーさんはどこにいるのか...」

ほむら「ちょっと待ってて」

ピッ

クーガー『どうも、のむらさん!今日はまた一段といい天気ですねぇ!それにしてもこの携帯電話というやつは随分と文化的だと思いませんか!?屋内でしか使用できなかった電話ですが、今こうして俺たちが話しているようにいつでも電話をかけることができる。しかし使い方を誤れば己の脚で相手のもとへと赴くという文化を失いがちになってしまいます。故に俺は長電話という行為を好まな』

ほむら「今すぐ巴マミの家に来て」

ピッ

マミ「信用していない、ねぇ...」

ほむら「?」

マミ「なんでもないわよ、なんでも」

132: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:38:10.25 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――

某所

さやか「ここだね...行くよ、まどか!」

さやかが幾多も剣を生成し、それを使い魔に投げつける

マミのように、小技で牽制し、動きを封じる戦法だ

何本かを放ったところで、しかしそれを何者かの武器により阻まれた

さやか「!?」

杏子「ちょっとちょっと、なにやってんのさ。あれ使い魔だよ?倒してもなんの得もないって」

さやか「でも、あれほっとくと誰かが襲われるんだよ!?」

杏子「だからさあ、あと四、五人食って魔女になるまでほっとけって。そうすりゃグリーフシードを孕むんだからさあ」ギロッ

さやか「ッ!」

杏子「まさかとは思うけどさぁ、人助けだの正義のためだとかのおちゃらけた冗談かますために、あいつと契約したんじゃないだろうねえ?」

さやか「だったら...なんだっていうのよ!」

さやかが眼の前の敵に向かって切りかかる

いくらさやかが素人とはいえ、それは常人では反応できない程の速さだ

しかし、それは手に持つ槍で防がれてしまった

さやか「なっ...!」

さやか(こいつ...あっさりと躱しやがった...あっさりと...!)

杏子「...ぬるいなあ、甘くてぬるい...そんなんじゃあこのあたしは倒せねえなあ!」

133: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:39:09.95 ID:a+wRVs/F0
杏子の言葉と共に、槍によって剣ごとさやかの身体が弾かれる。

そして、隙だらけのさやかの腹に、杏子の槍の柄がめり込んだ。

さやか「がっ...はぁっ...!」

まどか「さやかちゃん!」

杏子「ふん。トーシロが。ちったぁ頭冷やせっての」

さやか「げほっ...あんたなんかに...」

杏子「あぁ?」

さやか「あんたなんかに負けてたまるかぁ――!!」

134: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:40:47.13 ID:a+wRVs/F0

―――――――――――――――

クーガー「こんにちわマキさん!もうお身体の方は大丈夫ですか?」

マミ「ま、マミです。その説はお世話になりました」

クーガー「いえいえ。それに、あの時お代代わりに目の保養をさせていただきましたから」

マミ「目の保養って...まさか!?」

クーガー「それくらいの役得があってもいいでしょう?」

マミ「は、はやく美樹さんを探しにいきますよ!」

クーガー「携帯電話で居場所を聞けばいいのでは?」

マミ「それが、美樹さんも鹿目さんも電波が繋がらないんです。まだ学校が終わってそんなに時間がたってないし、山になんて行くことはないと思いますから...」

クーガー「二人揃って電源を切っている可能性は低い...と、なると、もしかして魔女の結界に...」

マミ「いるかもしれませんね。もし戦っているのなら、魔力の波動でわかると思います」

クーガー「わかりました、それではお送りしますよ。もちろん、最速でね」


135: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:41:39.04 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――

眼前で繰り広げられる魔法少女同士の戦い

まどかにはそれをどうすることもできなかった

まどか「さやかちゃん、やめて!こんなのおかしいよ!」

QB「だめだ、さやかも彼女...佐倉杏子も闘いに集中しすぎて、君の声が届いていない」

まどか「キュゥべえ、なんとかしてよ!」

QB「親友である君の声が届いていないなら...僕には到底無理だ」

まどか(どうして...?どうして魔法少女同士で戦わなきゃいけないの?)

QB「今の二人に割って入れるのは、同じ魔法少女だけだ」

まどか(そうだ...私が契約すれば...)

136: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:42:26.43 ID:a+wRVs/F0
まどか(―――ダメッ!力が全てじゃないってクーガーさんは教えてくれた!なんとか二人を止め―――)

QB「本当に止められるのかい?」

始めは杏子が有利に戦いをすすめていたが、さやかが慣れてきたのか、徐々に戦況は拮抗しはじめる

QB「本当にストレイト・クーガーの言っていたことは正しいのかい?」

すると杏子は加減をやめ、さやかもそれに対抗しようと食らいつく

二人の闘いはもはやケンカなどではなく、殺し合いに変わりつつあった。

QB「本当は...彼の言葉を理由にして、自分が闘うのを避けてるだけなんじゃないのかい?」

まどか「!?」

137: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:43:38.00 ID:a+wRVs/F0
まどか(私は...ただ、怯えてただけなの?)

杏子の槍とさやかの剣が打ちあう音が鳴り響く

まどか(自分が傷つくのが怖いから...クーガーさんの言葉を都合のいいように捉えていただけなの...!?)

QB「まどか...君の望みは、『何もできない自分を変える』ことだったよね」

杏子の槍がさやかの身体に巻きつき、さやかはそのまま投げ飛ばされ、あまりの衝撃に剣も手放してしまった

QB「ここで、君がほんの少しだけ勇気を出せばその望みは叶えられるんだ。
その少しの勇気を持つことができなかったら、さやかは取り返しのつかないことになる。
君はそれでいいのかい?」

まどか「キュゥべえ...」

QB「それに、クーガーはいつも言っているだろう?行動は素早く的確にしろって」

まどか「素早く...的確に...」

杏子がさやかにトドメをささんと駆けだす

まどか「さやかちゃん!」

QB「答えてごらん、まどか。君の下すべき判断を」

まどか「―――私、魔法少女に」


――パァン

まどかの意志を、一発の銃声が遮った

138: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:44:20.91 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――
軍事基地

ほむら(とりあえずは、武器を調達しないと...)

???「おや、誰かいるのですか?」

ほむら「ッ!」

ほむら(しまった...見つかった...)

???「こんなところになんの御用で?」

ほむら「......」

???「そんなに固くならなくてもいいですよ。迷いこんでしまったと、私から説明して」

――――カチリ

139: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:44:54.44 ID:a+wRVs/F0
???「おきま...!?消えた...?」

???「......」

???「なるほど...彼女が例の、『イレギュラー』ですか...」

???「まぁ、精々頑張ってください。私の渇きを埋めるためにねェ」ンフッ


140: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:45:38.05 ID:a+wRVs/F0
―――――――――――

クーガー「よう。中々面白いことやってるなぁ、あやか」

マミ「......」

さやか「く、クーガーさん...それにマミさんも!?」

杏子「...また会ったね、ストレイト・クーガー。それに...マミ」

マミ「......」

まどか「ま、マミさんの知り合いなの?」

QB「...彼女は以前マミと組んでいた魔法少女なのさ。意見の衝突により、解消したけれどね」



141: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:46:42.58 ID:a+wRVs/F0
杏子「キュゥべえから聞いたけど、あんたヘマこいてから、ビビって魔女と戦えてないんだってなぁ」

マミ「......」

杏子「そんなヘタレがあたしの闘いを邪魔するなんて、どういうつもりだ?」

マミ「......」

杏子「それとも、何も言えない程腑抜けになっちまったのか?答えろよ、マミ!」

さやか「あんた、いい加減に」

マミ「...ぅぷっ」

まどさや杏「「「!?」」」


~~~しばらくお待ちください~~~





まどか「マミさん、大丈夫ですか?」サスリサスリ

クーガー「そんなに体調が優れなかったのなら、無理しなくてもよかったのに」

マミ「あ、あなたのせいでしょ...うっ」

杏子「ほんと、なにしに来たんだよあんたら...」

142: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:47:44.23 ID:a+wRVs/F0
クーガー「なんだ、もうケンカは終わったのか?」

さや杏「「えっ」」

クーガー「俺はこのことで彼女が契約するのを防ぎたかっただけであって、お前さんたちがいくら闘おうが知ったこっちゃないんでな。別に、止めようとは思わんさ」

まどか「く、クーガーさん...?」

クーガー「ほら、はやく続けろよ。やるんなら思いっきりやれ。そっちの方がスッキリするしな」

さやか「......」

杏子「......」

まどか(あ、あれ?二人とも、黙ったまま動かなくなっちゃった...)

クーガー「今なら、マキさんは動けないし、のどかさんには俺が契約させない。誰も邪魔する奴はいないんだぞ?」

まどか「まどかです」

マミ「マミです...」

クーガー「あぁっと、すみませえん」


143: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:48:43.93 ID:a+wRVs/F0
さやか「え、えっと...」

杏子「...興ざめだ。帰る」

まどか「えっ」

杏子「あんだけ言われて、戦う気が起きるかっつーの。もう今日はいいや」

マミ「ま、待ちなさい佐倉さ...うぷっ!」

杏子「あんたはまず吐くのを止めろ」

杏子「この件に関してはあたしはグチグチと言わねーよ。精々死なねーよう頑張りな」

さやか「ま、待てっ!」

杏子「なんだよ、まだやるつもりか?あんたが死にたいんなら別に構わないんだぜ」

さやか「くっ...」

杏子「じゃーな、ボンクラ共。あんたらはバカみてえに使い魔狩ってな。
そうすりゃあんたらの考えがどんだけ甘いか身にしみてわかるからよ」ザッ


144: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:49:41.44 ID:a+wRVs/F0
さやか「くそっ!」ダンッ

マミ「落ち着きなさい、美樹さん。あぁ...やっと治まってきたわ」

さやか「でも、マミさんもあんなに言われてたでしょ!?」

マミ「あなたに何を言ったのかは知らないけれど...彼女が私に言ったことは間違っていないわ」

さやか「な、なにを...」

マミ「ううん。本当は、最初から怖かったのよ。魔女...いいえ、戦いそのものが」

マミ「ずっと怯えながら戦ってた。後どれくらい生きられるんだろう。明日は生きていられるのかな。今日は生きていられるのかなって」

マミ「それをずっとごまかしていた。私の闘いは、誰かを救っているんだって。そうすれば、少しは怖いのも和らぐから...」

マミ「私なんてそんなものなのよ。...失望したかしら、美樹さん」

さやか「...そんなことないよ。むしろ、怖くても立ち向かえるのは、凄いことだと思う」

マミ「...ありがとう、美樹さん」

145: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:50:45.67 ID:a+wRVs/F0
まどか「......」

クーガー「どうしました?」

まどか「...クーガーさん。本当に、わたしが契約しないことは正しいんですか?」

クーガー「と、いうと?」

まどか「わたしは、さやかちゃん達の戦いを止めることができなかった。でも、クーガーさんとマミさんは止めることができた。やっぱり、こういうことは、魔法少女でしか出来ないことなんじゃないかなって...」

クーガー「まあ、一理はありますね。もし、俺たちがここに来なかったとして、あいつらのケンカを止める手っ取り早い方法ではある」

まどか「なら、やっぱり契約しなくちゃ...」

クーガー「ですが、その後はどうするんです?」

まどか「その後...?」

クーガー「あなたが、力で無理矢理あの二人を抑え込んだとしましょう。確かにその場は治まる。けれど、その後はどうなるか...。簡単なことです。あいつらの標的があなたに変わり、結局争いは止まらない。むしろ火種は増えるだけ。あなたはあの二人を敵にまわす覚悟がありますか?」

まどか「そ、それは...」

クーガー「俺たちだって止めきれたわけじゃない。ただあいつらの衝突を先送りにしただけですよ」

まどか「......」

クーガー「あなたの気持ちは間違っていません。大切な人に傷ついてほしくないのは当然です。しかし...」

クーガー「ぶつかりあったからには、なにかしらの形で決着を着けなければならない。人間とはそういうものですよ」


146: ◆do4ng07cO. 2014/03/16(日) 23:51:25.58 ID:a+wRVs/F0
――――――――――――――――――

ほむら「...それで、どうだった?」

マミ「ええ。一悶着はあったけれど、なんとか収まったわ」

ほむら「一悶着?」

マミ「それは後で話すけど...でも、その前に一ついいかしら?」

ほむら「なに?」

マミ「クーガーさんについては、一言くらい欲しかったわ...」

ほむら「...ごめんなさい」

152: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:03:02.65 ID:UPdrI7vF0
夕方

教会

杏子(ここに帰って来るのは、いつぶりだっけ...)

杏子「ほんとは、あまり来たくはないんだけどな...」

杏子(かといって、あいつらと決着着けるのにいちいち風見野に戻るわけにもいかねえし...)

杏子(それに、あたしがしでかしたことを忘れるわけにはいかないんだ...)

ギイイイィィィ

クーガー「ん?」

杏子「」

153: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:04:00.72 ID:UPdrI7vF0
クーガー「おお、奇遇だなぁお嬢ちゃ」

杏子「なにしてやがるてめえ!」ブンッ

クーガー「のわっ!?馬鹿な、俺が挨拶をする暇もなく槍を抜かせることになるとは...この俺がスロウリイだと!?」

杏子「人様の家を荒らしやがって...容赦しねえからな!」

クーガー「ここはお嬢ちゃんの家なのか?」

杏子「そうだよ、文句あるのか!?」

クーガー「すまなかった」

杏子「えっ...う、うん...」

154: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:15:21.73 ID:UPdrI7vF0

杏子「ふーん、あまり金持ってねえから、ここを宿代わりにしてたんだ」モグモグ

クーガー「まあな。それにこういうところは慣れているからな」

杏子「...でもさ、いいのかよ」

クーガー「?」

杏子「あんたはあいつらの仲間だろ?だったら、こうしてあたしの家なんかに居ていいのかって聞いてんの」

クーガー「別に問題ないだろう?」

杏子「言っておくが、あたしはあいつらと仲良くやろうなんざ思ってないからね」

クーガー「んー、それでいいんじゃないか?」

杏子「はぁ?」

クーガー「誰とツルむかどうかなんて、人の勝手だろ。だから自分のやりたいようにやればいいさ」

杏子「へえ、甘ちゃんの集まりだと思ってたけど、あんたは違うみたいだねえ」

クーガー「...まあ、育ち柄な」

杏子「...?まあ、いいさ。さっきはああ言ったけどさ、ここは教会だ。来る者拒まずってのを忘れて襲いかかったのはあたしが悪かったよ」

クーガー「気にするな。勝手に使ってた俺にも非はあるんだ。あんこ...だったか?」

杏子「杏子だ。この前のグリーフシードのこともあるし、こうしてメシも奢って貰えたんだ。派手に荒らさなければ、追い出しはしないよ」

クーガー「ほう、中々太っ腹じゃないか!礼を言うぞ、あんこ!」

杏子「杏子だっつってんだろ!?...そういえばさ、あんたこの前言ってたよな、聞きたいことがあればいくらでも答えるって」

クーガー「確かに言ったなぁ」

杏子「なら、聞かせてもらおうじゃねえか。あんたのこと、それにあいつらのこともな」


155: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:16:47.74 ID:UPdrI7vF0
――――――――――――――――――
翌日 ゲームセンター


ほむら「...佐倉杏子」

杏子「誰だあんた?...ああ、そうか。あんたがイレギュラーってやつだな?」

ほむら「私のことを知っているの?」

杏子「キュゥべえが言ってたぜ。一人わけがわらない魔法少女がいるってな」

ほむら「...知っているのなら、話が早いわ」

杏子「んで、そのイレギュラー様がなんの用だよ?」

ほむら「...私たちに、協力してほしい」

杏子「協力だぁ?」

ほむら「ええ。二週間後、この街にワルプルギスの夜がやってくる」

杏子「根拠は?」

ほむら「秘密。でも、報酬はちゃんと用意するわ」

杏子「言ってみろ」

ほむら「この街の縄張りをあなたに渡す。グリーフシードも提供するわ」

杏子「へえ。中々いい案じゃん」

ほむら「二人には、私から納得するように話をつける。どうかしら?」

156: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:18:10.23 ID:UPdrI7vF0
杏子「お断りだね。あいつらと馴れ合うのなんざ、ごめんだ」

ほむら「......」

杏子「でも、まあ...そうだな。あいつらを二度とあたしに逆らわないようにしてくれたら、考えてやるよ」

ほむら「...わかったわ」

杏子「おいおい、意外にあっさりと決めるんだな」

ほむら「私は、ワルプルギスの夜さえ超えられれば、後はどうでもいいのよ」

杏子「...あっそ」

157: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:20:42.20 ID:UPdrI7vF0
――――――――――――――――――

翌日 恭介の家の前

さやか(恭介...退院したなら、連絡くらいくれてもいいのに。でも...)

~♪

さやか(早速練習してる...これで、いいんだよね。あたしの願いは、間違ってないんだよね)

さやか「さぁて、練習の邪魔しちゃ悪いし、あたしはもう帰らなくっちゃ」

杏子「おいおい、それでいいのか」

さやか「!?」

杏子「ここまで来といて、会いもしないで帰るのかよ?」

さやか「あんた...!」

杏子「......」

158: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:22:19.21 ID:UPdrI7vF0
**************************

杏子「はぁ?美樹さやかは、他人のために願いを使ったってのか!?」

クーガー「そういうことになるな」

杏子「チッ...あの馬鹿ヤロウが...!」

クーガー「...まあ、そう頭ごなしに否定してやるな」

クーガー「言い方を変えれば、ダチと自分の人生を天秤にかけた時、あいつはダチを選んだってことだからな」

杏子「...ますます気に入らねえ」

クーガー「そうか。...喧嘩するなとは言わないが、あんまり無茶しないでくれよ?」

杏子「ケッ、なんであんたの言うことを聞かなきゃいけないんだ」

クーガー「知り合いだから、お願いしてるんだよ」

杏子「...ふんッ」


***************************

159: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:24:03.52 ID:UPdrI7vF0
杏子(とは、言われたものの...)

杏子は、今さら素直になることなんてできなかった。素直になるには、一人で戦ってきた年月が経ちすぎていた。

杏子「あんた、他人のために祈ったクチなんだってな?」

さやか「...だからなによ」

だから、自分と同じ間違いをしそうな彼女に、どうしてもイラついてしまう。

杏子「ったく、たった一度の奇跡をくだらねえことに使いやがって。魔法ってのは、自分だけの望みを叶えるためのもんだ。巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい?」

さやか「......!」

杏子「惚れた男モノにするんなら、もっと冴えた手があんじゃん?せっかく魔法を手に入れたんだ。だったら、やることは一つだろ?」

さやか「...?」

杏子「今すぐ家に乗り込んで、坊やの手足潰してやんな。もう一度あんた無しでは何もできない身体にしてやるんだ」

さやか「!」

杏子「なんだったら、あたしが代わりに...」

もちろん、そんな杏子の態度の果てには

さやか「...許さない」

杏子「?」

さやか「あんただけは絶対に許さない...!」

杏子「へえ、やるってのかい...場所、変えるよ」

さやか「好きにしなよ」

160: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:24:59.87 ID:UPdrI7vF0
鉄橋の上

杏子「ここなら遠慮はいらないよね。いっちょ派手にいこうじゃない」

さやか「......」

魔法少女に変身する両者。

杏子「さぁて、アレの続きをやろうぜ、アレの続きを...!」

再び、戦いの火蓋は切って落とされた。

161: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:26:09.93 ID:UPdrI7vF0
―――――――――――――――


マミ(美樹さん...遅いなぁ。この時間に待ち合わせたはずなのに...)

キキィ

クーガー「こんにちわ、マキさん!」

マミ「マミです」

クーガー「あぁ、すみません」

マミ「どうしたんですか?こんな時間に」

クーガー「いえね、貴女とドライブでもしながら色々と語り尽くしたいと思いまして!よかったら行きませんか?」

マミ「ご、ごめんなさい。これから美樹さんと一緒にリハビリを兼ねた特訓をするつもりなので...」

クーガー「そうですかぁ。残念ですが、ドライブはまたの機会に...」

マミ(助かった...)ホッ

162: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:26:39.67 ID:UPdrI7vF0
プルルル

クーガー「はい、クーガーです...了解しました」ピッ

マミ「どうしたんですか?」

クーガー「のむらさんから連絡がありました。あやかとあんこがまたケンカをおっ始めるようです」

マミ「そんな!...早く向かわないと!」

マミ(...というか、あんこってだれ?もしかして佐倉さん?)


163: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:29:27.45 ID:UPdrI7vF0
―――――――――――――――――

ゆま「さやかとキョーコっていうおねえちゃん達が戦うみたいだよ」

キリカ「確認ご苦労さん。偉いなぁ、ゆまは」ナデナデ

ゆま「エヘヘ、オリコとキリカのためならなんでもやるよ!ゆまは、オリコたちが大好きだから!」

キリカ「私もゆまは大好きだぞ。まあ、愛してるのは織莉子だけだけどね」

ゆま「好きと愛してるは違うの?」

キリカ「全然違う!いいかい?そもそも好意と愛をゴッチャにしていること自体、愛の本質を侮辱しているんだ。好きには大好きなどの単位が存在しているが愛にはそれがない。なぜなら愛はすべて、即ちゼロかイチしかないものだからさ。そう、つまり愛は無限に有限なんだ!」

ゆま「???」

織莉子「キリカ、あまり難しいこと言わないの。ゆまちゃんが困ってるでしょう」

キリカ「おっとごめんよ、ゆま。お子様には早かったかな?」

ゆま「ゆまはお子様じゃないよ!キリカの言ってることはわからないけど...」


164: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:30:32.16 ID:UPdrI7vF0
キリカ「それはそうと、織莉子...本当にあいつと手を組むつもりなの?」

織莉子「あら、不安かしら?」

キリカ「うーん...織莉子には悪いけどさ、私はアイツが気に入らないんだよね。だったら、あんなの放っておいて...」

織莉子「私の予知はそんなに信用できないかしら」

キリカ「ち、違うよ!?織莉子を疑ってるわけじゃないからね!」

織莉子「ううん、いいのよ。それだけあなたは私を心配してくれているのだから。ごめんなさいね、不安にさせちゃって」

キリカ「不安なんかじゃない!どんな道でも、私は織莉子についていくよ!」

織莉子「ありがとう。私の味方は、あなただけだわ」

ゆま「ゆまもいるよ!」ピョン ピョン

織莉子「そうね。あなたたち二人よね」クスッ

織莉子(そう...破滅と滅びしかない運命はわずかに。でも、確実に変わってきている。だから、機を見誤ってはいけない。今は、まだ...)


165: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:31:27.58 ID:UPdrI7vF0
―――――――――――――

さやか「がっ...!」

吹き飛ばされ、手すりに叩き付けられるさやか。

既に、服はボロボロになり、痛々しい切り傷もつけられている。

対する杏子は、ほぼ無傷。せいぜい、かすり傷がある程度だ。

杏子「はんっ、やっぱり弱いじゃねえか。もうさ、止めといた方がいいんじゃない?」

さやか「...何言ってんのよ。まだ、でしょ」ハァ ハァ

杏子「そうかい。だったら、ここらでスッパリ終わらせちまうとするか!」

166: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:33:01.52 ID:UPdrI7vF0
杏子の突撃の構えに対して、さやかも剣の切っ先を向ける。

杏子「へえ、同じ土俵でやろうってわけ?」

さやか「......」

杏子が一気に駆けるが、さやかは微動だにしない。

杏子「ハッ!もう反応もできねえか!」

だが、杏子はさやかの異変に気付いた。

満身創痍のはずのさやかには、笑みが浮かんでいた。

カチッ

それに気づくのとほぼ同時に、刀身が杏子目掛けて放たれた。

167: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:34:06.14 ID:UPdrI7vF0
違和感に気付いたのが功を制し、剣は顔の横ギリギリを通過していった。

だが、次に迫るさやかの頭突きを躱す術はなく

ガンッ

杏子「ぐっ...!」

倒れはしなかったものの、衝撃により杏子はのけ反り、その隙に槍を叩き落とされた。

さやか「...卑怯かな?」

杏子「へっ、底が見えるね!」

互いの距離は、一歩踏み出せば手が届くほど近い。

この距離では、武器を作る暇もない。

故に、二人は拳を固め、睨み合う。

だが、戦いは再び幕を下ろす。


168: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:35:14.77 ID:UPdrI7vF0
ほむら「佐倉杏子...あなた...!」

杏子「うわっ!?いきなり出てくるなよ。心臓に悪い」

ほむら「...どうして、あなたは彼女と戦っているの?」

杏子「別に。戦わねーとは言ってないだろ」

まどか「止めてさやかちゃん!もうボロボロだよ!」

さやか「まどか...わるいけど、邪魔しないで」

まどか「駄目だよ。こんなの、絶対おかしいよ!」

杏子「チッ、ぞろぞろうっとうしいのが来やがって...」

ほむら(もう少し待てば、クーガーと巴マミもやって来る。だから...この場は、私が...!)

ほむら「ふたりとも。今すぐ戦いを止めなさい!」チャキッ

さや杏「!」

まどか「ほ、ほむらちゃん...」

杏子「てめえ...」

ほむら「...戦力が二つ減るくらいなら、私は一つを消すわよ」

さやか「くっ...」

杏子(チッ。このぶんだと、どうせマミやクーガーまで来るんだろうな...ああ、うざってぇ...)

169: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:36:12.36 ID:UPdrI7vF0
何度も戦いを止められた上、命をも握られている現状。

加えて、ほむらの冷めた目は、杏子を苛立たせるには十分すぎた。

それこそ、杏子に魔法少女同士の戦いでのタブーを犯させるほどに。

杏子「わかった。こいつとは戦わねえよ。だから、あんたらも変身を解きな」シュイン

ほむら「......」シュイン

さやか「...ふんっ」シュイン

杏子「...美樹さやか、この決着はまた今度だ」

さやか「......」

杏子「今日はもう帰るとするよ。腹も減ってきたし。...最後にやること済ませてからなぁ!」バッ

ほむら「ッ!?」

170: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:37:14.87 ID:UPdrI7vF0
パシッ

杏子「へっ。イレギュラーだかなんだか知らねえが、こいつさえなけりゃあんたはただの女だ」

ほむら(しまった...ソウルジェムを!)

杏子「温い馴れ合いもそうだが、あんたみてえな人を駒としか考えてねえ奴も信用できねえんだ。そんなのに後ろに立たれちゃ安心して寝ることもできやしねえ」

ほむら「止めなさい!」

杏子「ハッ!あんたは、ワルプルギスさえ倒せればいいんだろ!?心配すんな、あたしがキッチリ片しておくから、よ!」ブンッ

まどか「ほむらちゃんのソウルジェムを、橋の下に...!」

ポスッ

杏子「トラックの上に落ちたか...でも、あれなら追いつけやしないな」

ほむら「......」

ドサッ

まどか「ほむらちゃん...?」

さやか「転校生...?」

杏子「な、なんだよ...なんの冗談だ?...どういうことだ、おい。こいつ、死んでんじゃねーかよ!」

まどか「...えっ?」

171: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:38:18.63 ID:UPdrI7vF0
タタタ

クーガー「のむらさん!こいつはいったい...!?」

まどか「クーガーさん...ほむらちゃんが!」

杏子「あ、あたしは、ソウルジェムを投げただけなんだ。そしたら、こいつが...」

キュゥべえ「いやはや、思い切った手を使ったものだね杏子。でも、安心して。ほむらの本体は無事だから」

杏子「なにを...言ってやがる?」

クーガー「本体...ソウルジェム...!」

クーガー(そういうことか、チクショウ!)

クーガー「あんこ!のむらさんのソウルジェムはどこへ投げた!?」

杏子「杏子だ!...トラックの上だ。でも...」

クーガー「そいつさえわかりゃあ十分だ!ラディカル・グッドスピード脚部限定!風力・温度・湿度一気に確認、GO!!」バァン バァン ダッ

さやか「...どういうことなのよ、キュゥべえ!」

QB「仕方ないね」

172: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:45:53.15 ID:UPdrI7vF0
~QB。ソウルジェムについて説明中~

杏子「てめえ...それじゃアタシ達、ゾンビにされたようなものじゃないか!」

QB「むしろ便利だろう?心臓が破れても血をありったけ抜かれても、魔力で修復すればまた動くようになるんだから。ソウルジェムさえ無事であれば君たちは無敵だよ。弱点だらけの人体よりはよっぽど有利じゃないか」

さやか「......!」

まどか「...ひどすぎるよ!」

QB「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに話すと決まって同じ反応をする。どうして魂の在り処なんかに拘るんだい?」

QB「わけがわからないよ」

173: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:47:28.16 ID:UPdrI7vF0
クーガー「『魂の宝石』...随分と安直な名前をつけたもんだな」ハァ ハァ

まどか「クーガーさん!ほ、ほむらちゃんのソウルジェムは...!?」

クーガー「ええ、この通り。...キュゥべえ。どうすれば彼女は息を吹き返す?」

QB「大丈夫。ソウルジェムさえ無事なら、手に握らせれば肉体とのリンクは復活するよ」

さやか「...クーガーさん。ちょっとそれ貸して」

クーガー「何故だ?」

さやか「...もしなにか傷でもあったら、困るでしょ?これが壊れたら、あたしたち死ぬんだし...」

「......」





マミ「あ、あと少し...待ってて佐倉さん、美樹さん」フラフラ

マミ「うぷっ!?」

174: ◆do4ng07cO. 2014/03/20(木) 01:52:04.94 ID:UPdrI7vF0
第5話 『美樹さやか』

真実を知ることが悲しみであれば、騙されていることが幸せなときもある。

真実を知った彼女の魂が黒に染まる時、雷鳴が見滝原の大気を震わす。

嗚呼、さやかよ。その虚ろな目は、どこへ向かう?

178: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:34:38.19 ID:owjRaIfF0
第5話 『美樹さやか』


さやか「...騙してたんだね、あたしたちのこと」

QB「騙していたなんて人聞きの悪いね。聞かれなかったから答えなかっただけなのに」

QB「それに、僕はちゃんとお願いした筈だよね?『魔法少女になってくれ』って。実際の姿がどんなものかは省略したけれど」

さやか「あんた...なにが目的なんだよ。なにがしたくて、あたし達をこんなのにしたのさ!?」

QB「やれやれ。何が不満なんだい?戦いの運命を受け入れてまで叶えたい望みがあったんだろう?それは間違いなく実現したじゃないか」

179: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:35:59.06 ID:owjRaIfF0
――――――――――――――――
翌朝

杏子「100メートルっていってたか...もう少し...もう少しくらいなら...」ソロソロ

マミ「なにしてるの、佐倉さん?」

杏子「...マミか。あたしの本体がコレってあまり実感ができないからさ、色々試してみてんだ」

マミ「思ったより余裕があるのね、あなた」

杏子「...なんだかんだで、魔法で好き勝手やらせてもらってるしね。それに、人様に胸張れないなんてのは今更だし。それより、あたしにとって一番意外だったのはあんただけどな」

マミ「別に、ショックを受けてないわけじゃないのよ。ただ、契約してなくても私は死んでいたのだし、それ以上にキュゥべえに裏切られたショックの方が大きすぎるってだけ」

マミ「...でも、美樹さんは違う。契約しなければ友達を失い、契約すれば自分を殺すことになる...どっちを選んでも、後悔のない道は存在しなかった。こんなの...酷過ぎるわ」

杏子「......」

180: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:36:56.43 ID:owjRaIfF0
―――――――――――――――――


クーガー「あなたは、知っていたので?」

ほむら「...ええ」

クーガー「どうりで、投げられた本人の割りには動揺しなかったわけだ」

ほむら「『何故話さなかった』...とでもいいたいの?」

クーガー「まあ、そういう気持ちがないとは言い切れませんねえ。俺だって赤裸々に語ったんです。せめて俺くらいには教えてくれてもよかったんじゃないですかね」

ほむら「いきなりソウルジェムが本体だと告げて信用するの?仮に信用してもこの有り様よ。こうなる確率は、少しでも減らしたかったの」

まどか「もしかして、ほむらちゃんは何度も...?」

ほむら「...ええ。何度か伝えたけれど、その度に罵られ、傷つけられてきたわ」

ほむら「これでわかったでしょう?魔法少女が、どれほど残酷で愚かなものかを」

まどか「ほむらちゃん...」

ほむら「クーガー。もうすぐ学校に着くから、この辺りで別れましょう」

クーガー「わかりました。では、また放課後に」

181: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:38:15.39 ID:owjRaIfF0
教室

和子「あら、今日は美樹さんはお休みかしら?連絡は入ってなかったけど...」

まどか(さやかちゃん、やっぱり...)

仁美「珍しいですわね、さやかさんが無断欠席だなんて...なにかあったんでしょうか?」

まどか「そ、そういえば昨日風邪ひいたかもしれないって言ってたよ!」

仁美「まあ...早く良くなってくれるといいのですけど...」

ほむら「......」

182: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:38:52.99 ID:owjRaIfF0
――――――――――――

さやかの家

さやか(これが...あたしの魂)

ついこの間までは確かに自分の中にあったはずなのに、今ではこんな石ころになってしまった。

...どうして、こんなことになってしまったんだろう。

あたしは、ただ恭介や友達を助けたいだけだった。その代償がこれだ。

こんなことなら、契約なんて―――

さやか「...なに考えてんのよ、あたし」

183: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:39:58.58 ID:owjRaIfF0
杏子『いつまでもショボくれてんじゃねーぞ、ボンクラ』

さやか「!?」

杏子『外だよ、外』

シャッ

さやか「あ...」

杏子『ちょいと面貸しな。話がある』

184: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:40:35.97 ID:owjRaIfF0
杏子「あんたさ、後悔してるの?こんな身体にされちゃったこと」

さやか「......」

杏子「あたしはね、まーいいかって思ってるんだ。なんだかんだでこの力で好き勝手できてるわけだしね」

さやか「...自業自得でしょ、あんたのは」

杏子「そうさ、自業自得にしちゃえばいいんだよ。自分の為だけに生きてれば、全部自分のせいだ。他人を恨むこともないし後悔することもない。そう思えば大抵のことは背負えるもんさ」

さやか「あんた...?」

杏子「着いたぞ。あいつは...いねえな」キョロキョロ

さやか「あいつ...?」

杏子「なんでもねえよ。...ここはね、あたしの親父の教会だった」

さやか「え...」

杏子「ちょっとばかり長い話になるが...付き合ってくれるかい?」

さやか「......」コクリ

185: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:41:23.85 ID:owjRaIfF0
―――――――――――――――

マミ「そう...やっぱり、美樹さんは休んだのね」

ほむら「ええ。でも、あなたが登校してきたのは意外だったわ」

マミ「佐倉さんにも似たようなことを言われたわ」

ほむら「それで、その佐倉杏子は?」

マミ「美樹さんのところ」

まどか「そんな!それじゃあ、また...!」

マミ「大丈夫よ。彼女、ああ見えて根は優しい子だから。それに、暁美さんを殺しかけたこと、まだ気にしているみたいだし」

まどか「でも...」

QB「そんなに彼女たちが心配かい?」

186: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:42:15.29 ID:owjRaIfF0
マミ「キュゥべえ!...何しにきたのかしら?」

QB「なぜそんなに怒っているんだい?」

マミ「当たり前でしょう。今までよくも騙してくれたわね」

QB「騙していたわけじゃないよ。ただ、君たちが聞かないから答えなかっただけさ。それに、知らなくても何も問題はないだろう?」

QB「仮にこの事実を伝えたとして、君は契約をしなかったかい?あの場で自らの運命を受け入れて死ぬことができたかい?」

マミ「そ、それは...」

QB「仮にも人智を超えた奇跡を起こそうというんだ。それ相応の対価があるに決まっているじゃないか。ストレイト・クーガー...君のアルター能力もそうだろう?」

クーガー「...まあな。アルター能力は、物質を再構成する能力だ。分解した物は、どうやったって元には戻らない」

QB「それと同様に、僕たちも君たちの起こした奇跡を無かったことになんてできない。理解したかい?」

まどか「でも、こんなの酷過ぎるよ!」

QB「可哀想だと思うかい?でも大丈夫。確かに僕にはどうすることもできないけど、戻す方法が無いワケじゃないんだよ」

まどか「ほ、本当!?」

QB「簡単なことさ。僕と契約しt」

ヒュッ グシャッ

QB「ブフゥ!」

クーガー「......」

ほむら「まどか、コイツの言うことに耳を貸しては駄目よ。...いいわね?」

まどか「でも、でも...!」

クーガー「のどかさん。あなたの気持ちは分かります。...しかし、皆それなりの覚悟をして契約したんです。その辺りも、ちゃんと考えてやってください」

まどか「じゃあ、どうすればいいんですか!?皆辛い目にあってるのに、私だけ...!」

187: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:44:37.42 ID:owjRaIfF0
マミ「...鹿目さん。あなたがお見舞いに来てくれた時のこと、憶えてる?」

まどか「...はい」

マミ「あの時ね、凄く勇気を貰えたの。魔法少女だとか関係無しに私と関わっていきたいって言ってくれたあなたの言葉にね」

マミ「その時にね、思ったの。例え自分とは違う人でも、自分の存在を認めてくれる人がいることがどれほど素晴らしいことかってね」

マミ「だから、もし本当に美樹さんたちの力になりたいのなら、できれば契約じゃなくて...もっと近くにいてあげて。他でもない、魔法少女じゃないあなたが」

マミ「...少なくとも、私は、戦闘よりもそっちの方が救われた気持ちになるわ」

まどか「......」

188: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:45:37.55 ID:owjRaIfF0
―――――――――――――――――――――

杏子「―――って話だ。まあ、だからなんだって思うかもしれないけどさ」

さやか「...どうして、あたしに?」

杏子「...なんでかな。ただ、見てられなかったんだよ。あんたもあたしも同じ間違いから始まった。もう、後悔を重ねるような生き方はするべきじゃない。対価としては高すぎるモノ支払っちまったんだから、これからはつり銭を取り戻すことを考えなよ」

さやか「...あたし、あんたについては色々と誤解してた。その事はごめん。謝るよ」

さやか「...でもね、あたしは高すぎるものを支払ったとは思ってない。この力は使い方次第でいくらでも素晴らしいものになるはずだから」

杏子「...なんで、あんたは...!」

さやか「これだけは譲れないよ。でないと、あたし...ううん、なんでもない」

さやか「あたしは自分のやり方で戦い続けるよ。それがあんたの邪魔になるなら、また殺しに来ればいい。あたしは負けないし、恨んだりもしないよ」

そう告げて、さやかは教会から去っていく。

その真っ直ぐにあろうとする背中を睨みつけながら

杏子「バカ野郎が...無理してんの、丸わかりだっつの」

杏子は、盗んできた林檎に噛り付いた。

189: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:46:14.47 ID:owjRaIfF0
――――――――――――――――

翌日

さやか「おはよー、まどか、仁美!」

まどか「おはよう」

仁美「もう体調はよろしいのですか?」

さやか「へっ?」

まどか「え、えっと...」

さやか「...ああ、うん!心配かけてごめんね。でもこの通りピンピンしてるから!」

まどか(よかった...さやかちゃん、元気を取り戻してくれたみたい)

仁美「あら?上条くん...もう退院なさったんですの?」

さやか「!」

まどか「あっ、本当だ。さやかちゃんも行ってきなよ。まだ声かけてないんでしょ?」

さやか「あたしは...いいよ」

仁美「......」

190: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:46:54.56 ID:owjRaIfF0
放課後

さやか「よーし、終わり!それじゃあさっさと帰って...」

仁美「さやかさん。少し時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

さやか「へっ?」

仁美「お願いします」

さやか「別にいいけど...」

まどか「どうしたの、仁美ちゃん?相談なら、私もなにか...」

仁美「すみません、まどかさん。今回はさやかさんとだけでお願いします」

さやか「じゃあ、先に帰っててまどか」

まどか「う、うん...」

191: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:47:36.99 ID:owjRaIfF0
――――――――――――――――



さやか「......」

重い足取りで、魔女退治へと向かう。

初めての魔女退治の時は、単に怖いだけだった。先輩の姿を直に見て、死と隣り合わせの世界へ足を踏み入れてしまったことを怖がっていた。

だが、今は違う。そんなことはどうでもよくなっている。

そんなつい数日前のことと現在を比べて、苦笑する。

随分と変わり果てたものだと、自分を卑下してしまう。

それでも...

まどか「さやかちゃん...魔女退治、ついていってもいいかな?」

彼女は、変わらず傍にいてくれた。

192: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:49:20.35 ID:owjRaIfF0
さやか「まどか...」

まどか「さやかちゃんに一人ぼっちになってほしくなくて、だから...」

さやか「...なんであんたはそんなに優しいのかなぁ...」

まどかに遅れて、車のクラクションの音がした。

クーガー「乗ってくか?安くて速い」

さやか「クーガーさん...」

その言葉が何を意味するか...それを汲み取ったさやかは、首を横に振った。

さやか「ありがとう...でも、いいよ。あたしには、それに乗る資格なんてないから...」

クーガー「人間...いや、生物の恋は先手必勝。資格や権利なんざ存在しないさ。それを、志筑お嬢さんは譲ってくれたんだろ?」

さやか「...それでも、だよ」

193: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:51:06.96 ID:owjRaIfF0
さやか「あたしね...後悔しそうになっちゃったんだ。あの時仁美を助けなければ...ううん、契約なんてしなければって一瞬だけ思っちゃったんだ」

さやか「だから、まどかとクーガーさんもあたしなんて―――」

『放っておけばいい』。そう言葉を紡ぐよりも先に、まどかに身体を抱きしめられた。

そのまどかの優しさに、温もりに、今まで溜め込んでいたものがポロポロと溢れだしてきた。

さやか「...仁美に、恭介取られちゃうよ...」

さやか「でも、あたしはなんにもできない!だってもう死んでるんだもん。ゾンビなんだもん...」

さやか「こんな身体で抱きしめてなんて言えない。キスしてなんて言えないよ...」

そのさやかの告白も、まどかはただ黙って聞いていた。

ただ、さやかを抱きしめていた。

194: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:51:56.44 ID:owjRaIfF0
さやか「...ありがとう。もう大丈夫」

無理に作った笑顔でそう言って、涙を拭き、さやかはまどかから離れた。

さやか「それじゃ、いこっか」

クーガー「おいおい、俺を忘れるなよ」

クーガーは、アルター能力を解除し、車を消し去った。

クーガー「こんな夜道だ。女の子二人じゃ色々と危ないからな」

さやか「...ありがとう、まどか。クーガーさん。それじゃあ、行こっか」

195: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:53:22.55 ID:owjRaIfF0
――――――――――――――

マミ「はっ!」パァン

魔女「ぎっ...」シュウウ

ほむら「駄目ね、また外れよ」

マミ「...グリーフシードのことよりも、美樹さんの方はいいの?」

ほむら「...私が行ったところで、なにもできないわ。だったら、なるべく彼女の分までグリーフシードを補充しておいたほうがいい」

マミ「...ねえ、あまり考えたくないのだけれど...ソウルジェムは私たちの魂よね?なら、これが濁りきったら...」

ほむら「...ええ。死ぬわ」

マミ「だから、美樹さんよりもグリーフシードを優先してるわけね」

ほむら「そう考えてもらって構わないわ」

ほむら(でも、このぶんだと私たちだけでも危ないかもしれない...もし、美樹さやかが絶望に負けるのなら、その時は...)

196: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:54:26.16 ID:owjRaIfF0
――――――――――――――

杏子「なにやってんだか、あのバカは...」

魔女の結界の中で、さやかが戦っている。

戦況は一方的。近づいては魔女が発する影に押し返され、近づいては全身を切り付けられ、さやかは未だに一太刀も浴びせれていない。

杏子(けど、なんか妙だ...)

さやかと戦った時のことを思い出す。

最初こそは、あの魔女と同じように手も足も出せなかったものの、さやかは次第にあたしの動きについてこれていた。

だが、今はそんな面影などなく、単調な攻撃に単調な反応で戦っているだけだ。

杏子(あいつ、まさか...)

躱す気配もない。かといって、作戦を立てているわけでもない。

だとすれば、答えは一つ。

杏子「避ける気がねえのか...?」

197: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:55:10.79 ID:owjRaIfF0
結界内

魔女が、影を手の形に変える。

さやかは、それに構わず魔女へ向かって駆けるが、しかし影にとらわれてしまった。

まどか「さやかちゃん!」

ギシギシと、骨がきしむ音がする。このまま影にとらわれていれば、間違いなく身体が潰されてしまう。

だというのに、さやかは悲鳴をあげない。声すらあげない。

それが、よりまどかとクーガーを不安にさせた。

クーガー「...のどかさん。少し、あけます」

クーガーは、使い魔を蹴散らしながら、まどかを守ることに専念していた。

それがさやかの意思であり、クーガーはそれを尊重したからだ。

だが、ここまできてしまっては、話は別。さやかが死んでしまえば元も子もない。

クーガーがアルター能力を発動させようとするが、しかし直前でさやかを包んでいた影が切り裂かれた。

198: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:55:44.91 ID:owjRaIfF0
杏子「...ったく、見てらんないっつーの」

さやか「......」

杏子「もう引っ込んでおきなよ。手本見せてやるからさ」

さやか「...邪魔しないで。一人でやれる」

言うが早いか、さやかは一直線に魔女へと突撃する。

地面から生えた蛇の形をした影が、無防備なさやかの腹部を貫く。

杏子「あのバカッ!」

杏子が駆け寄ろうとするが、しかしさやかは止まらない。

そのまま魔女にとびかかり、魔女の首を切り裂いた。

199: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:56:34.81 ID:owjRaIfF0
魔女の首から血のようなものが噴き出るが、切り口は浅く、さやかは魔女の反撃をその身に受ける。

腕、脚、肩、胸部...身体の至るところを貫かれる。

それでも、さやかは止まらない。ただ、魔女へと剣を降りおろし、ただ切り裂いていく。

さやか「...ふふっ」

さやかは笑っていた。

さやか「あははははは!!」

狂ったように笑っていた。

さやか「あいつの言った通りだ。痛みなんて、簡単に消せちゃうんだ!!」

壊れた玩具のように、剣を打ちおろしていた。

まどか「さやかちゃん...もうやめて...!」

まどかが悲痛な声をあげるが、さやかには届かない。

さやかと同じ魔法少女にも、さやかの親友にも、彼女の凶行を止めることができなかった。

200: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:58:52.05 ID:owjRaIfF0
クーガー「...そこまでだ」

クーガーが、さやかの腕を掴む。

魔女は、既に原型を留めないほどに破壊されつくしていた。

そこには、彼女が抱いていた『正義』も『守るための力』も見られない。ただ破壊があるだけだった。

クーガー「これが、お前の選んだ道なのか?」

さやか「......」

さやか「もう、やりなおすことなんてできないよ...」

201: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 00:59:19.25 ID:owjRaIfF0
結界が崩壊していく。

白と黒の世界が一変し、元の街並みの風景へと変わる。

さやかは、魔女が落としたグリーフシードを拾い、杏子に投げ渡した。

さやか「あげるよ、それが目当てなんでしょ」

杏子「おい...」

杏子が呼び止めようとするが、さやかはそれに構わずふらふらと暗闇の中へと去っていった。

202: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:00:57.05 ID:owjRaIfF0
まどか「待ってさやかちゃん!」

クーガー「おっと」

クーガー「...たまには、一人にさせてやったらどうです?あいつも混乱している。確かに、側にいてやるのも大切ですが、あいつにだって、そっとしておいてほしい時も...」

まどか「でも...わたし、さやかちゃんを放っておけない!」タッ

クーガー「......」

杏子「...いいのかよ?行っちまったぞ」

クーガー「のどかさんが選んだんだ。俺には、それを止めることなんてできやしない」

杏子「...あいつはどうするんだ?」

クーガー「いざとなったら止めるさ。力づくでもな」

クーガーは、さやかとまどかが消えていった暗闇をただジッと見詰めていた。

暗闇の先は、何も見えない。

203: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:01:50.61 ID:owjRaIfF0
―――――――――――――

雨が降っている。

まどかは、濡れるのも構わずふらふらと歩き続けるさやかを引っ張るようにバス停へ連れ込んだ。

まどか「さやかちゃん...あんな戦い方ないよ...」

まどかの声は、雨音にさえかき消されそうなほどか細かった。

まどか「痛みを感じないから傷ついていいなんて、そんなの駄目だよ...さやかちゃん、いつか本当に壊れちゃうよ」

さやか「...仕方ないでしょ。ああでもしなきゃ勝てないんだもん。あたし、才能無いから」

まどか「あんなやり方、勝ててもさやかちゃんのためにならないよ」

さやか「...あたしのためってなによ」

さやか「こんな姿にされた後で、なにがあたしのためになるっていうのよ!?」

まどか「......!」

さやか「今のあたしはね、魔女を殺すためだけの石ころなの。死んだ身体を動かして、生きているふりをしてるだけ。そんなあたしなんかに誰がなにをしてくれるっていうの?考えるだけ無駄じゃない」

まどか「...わ、わたしは、どうすればさやかちゃんが幸せになれるかって...」

さやか「...だったら、あんたが戦ってよ」

204: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:03:39.48 ID:owjRaIfF0
まどか「えっ...」

さやか「...キュゥべえから聞いたよ。あんた、誰よりも才能があるんでしょ?」

さやかの言葉が、まどかの心を抉るように突き刺さる。

さやか「あたしのために何かしようって言うなら、まずあたしと同じ立場になってみなさいよ!」

さやかが一言叫ぶ度に、ソウルジェムが濁りを見せる。

さやか「無理でしょ?当然だよね!同情なんかで人間やめられるわけないもんね!」

さやか「なんでもできるくせになにもしようとしないあんたの代わりにあたしがこんな目に遭ってるの!あの時仁美たちを守ろうとしなかったあんたが、それを棚にあげて知ったようなこと言わないで!」

さやかのドス黒い感情の嵐に、まどかはどうすることもできなかった。

さやかは、未だにふらつく足取りで、雨の中へと歩みを進める。

待って、と言いかけるまどかを、さやかは冷たい視線で睨みつけた。

さやか「ついてこないで」

その一言は、まどかを動けなくするのには十分だった。

冷たい雨の中を駆けていく友を、まどかは追うことができなかった。

205: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:04:53.34 ID:owjRaIfF0
まどかの胸中で、様々な感情が渦巻く。

魔法少女になるなと忠告してくれたほむら。

そばにいてくれるだけでいいと諭してくれたマミ。

契約だけが全てじゃないと教えてくれたクーガー。

...でも、それらが全て正しいこととは誰も証明できない。

だって、現実には親友一人の力にさえなれていないのだから。

『本当に止められるのかい?』

いつかのキュゥべえの声がまどかの中で木霊する

『本当にストレイト・クーガーの言っていたことは正しいのかい?』

これは、クーガーのことだけではない。

ほむらの忠告だって

マミの言葉だって

『本当は...彼の言葉を理由にして、自分が闘うのを避けてるだけなんじゃないのかい?』

自分に都合の良いように解釈しているだけかもしれないのだから

なにもできないまどかには、さやかの後を追うことすら許されていなかった。

206: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:05:48.52 ID:owjRaIfF0
雨の中をさやかが駆ける。

さやか「バカだよあたし...なんてこと言ってんの...!」

何度も忠告をしてくれたほむらとマミ。

こんな身体になっても心配してくれたまどかとクーガー。

そして、あれだけ敵対していたにも関わらず、不器用ながらも手を差し伸べてくれた杏子。

その全てを振り払ってまで真っ直ぐにあろうとしたのに。

その結果がこのザマだ。

自分勝手に憧れて、自分勝手に嫉妬して、自分勝手に親友を傷付けた。

さやか「もう救いようがないよ...!」

そんな醜い自分を、さやかはただただ許せなかった。

207: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:06:19.17 ID:owjRaIfF0
――――――――――――――――

翌日

さやかは、家にも帰らず、学校にも行かなかった。

さやか「......」

公園のベンチに、少年と少女が並んで座っている。

二人とも、さやかにとってかけがえのない大切な者たちだ。

それなのに、恨めしくて仕方ない。胸の中にドス黒い感情が芽生えてくる。

自身のそれに気づいたさやかは、二人に気付かれる前に立ち去った。

二人は、さやかに気付くこともなく、互いに笑い合っていた。

208: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:08:00.77 ID:owjRaIfF0
恭介「おっと...そろそろ行かなくちゃ」

仁美「バイオリンのお稽古ですの?」

恭介「うん。やっと調子が戻ってきた気がするんだ。これなら、あの曲も弾けると思う」

仁美「...その曲は、私には教えていただけないのですね」

恭介「ごめんよ。なるべく、誰にも知られたくない曲だからさ」

仁美「構いませんわ。それほど大切な曲なのでしょう?」

恭介「うん。この曲ならきっと...」

まどか「上条くん!」

恭介「鹿目さん?どうしたんだい」

まどか「お願いがあるの...!」

209: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:08:54.49 ID:owjRaIfF0
数日後 学校

さやかはこの数日間行方をくらましていた。

さやかの両親や警察も動いているが、未だに探し出せていなかった。

まどか(さやかちゃん...)

仁美「......」

ほむら(...そろそろ決断すべきね)

さやかのことをクーガーやまどかに任せ、ほむらとマミはグリーフシードの補充に努めた。

だが、結果としてさやかを引き留めることには失敗してしまった。

グリーフシードも、ほむらたちの成果に見合わず、杏子の持っている分を合わせても余裕があるわけではない。

四人で使えば、すぐに無くなってしまうだろう。

ほむら(もう、美樹さやかを連れ戻すことは不可能に近い。なら、面倒なことになる前に...)


210: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:12:52.74 ID:owjRaIfF0
――――――――――――――――――――


ほむら(...いた)

魔力の乱れを感じ取り、向かった先は廃墟。そこには、消耗しきった美樹さやかがいた。

これが、最後のチャンスだ。

おそらく、今日中にはソウルジェムが濁りきってしまうだろう。

もし、ほむらが手にしているグリーフシードを受け取らなければ、もう彼女を殺すしかない。

それがこれからの、ひいてはまどかのためになるのだから。

ほむら「......」

グリーフシードをギュッと握り絞める。

痛みも裏切りも、何度も通ってきた道だ。覚悟を決めなさい、暁美ほむら。

そう自分に言い聞かせて、微かな震えをごまかす。

ほむらが、さやかに歩みよった時だった。





ソウルジェムが、カタカタと震え、虹色に発光し始めた。

211: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:15:42.98 ID:owjRaIfF0
―――――――――――――――
ロストグラウンド HOLY本部

ジグマール「本土からクーガーが消えたとの報告を受けてからしばらく経つ...あれから何も音沙汰が無いが...」

ジグマール(精製は失敗したのか?いや、失敗だとしても、本人が消え失せるなどという事例は無い筈...だとしたら、いったい...)

ジジジ

ジグマール「イーリャンか。何があった?」

イーリャン『アルターの森付近に、突如落雷が発生。それに、【向こう側】への扉がかすかに...』

ジグマール「なんだと!?」

ジグマール(雷に、【向こう側】への扉...まさか!)

212: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:17:06.78 ID:owjRaIfF0

――――――――――――――――――

さやかの周りの壁がじわじわと削り取られ、虹色の粒子に変わっていく。

ほむら(これは...クーガーのアルター能力...?)

周りを見回しても、彼はいない。

この場にいるのは、ほむらとさやかだけだ。

やがて、漂っていた粒子が一箇所に集束していく。

粒子が集まった先には、一つの巨大な影。二人が気づかぬ内に現れていた巨大な影。

その影は、人のようで人ではない、異質なものだった。

やがて、影がゆっくりと両腕を掲げる。

そして、それはあまりにも突然で、ほむらとさやかにはどうすることもできなかった。



廃墟が、落雷と共に消え去った。


213: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:18:48.58 ID:owjRaIfF0
――――――――――――――――

ゆま「か、かみなり~!」ブルブル

キリカ「なんだい、ゆまは雷が苦手なのか?」

ゆま「こ、こわくなんてないよ!ただ、おへそをとられたくないから...」

キリカ「そうかそうか。...わるいけど、ちょっと静かにしててくれないか」

ゆま「どうしたの?」

キリカ「ねえ、織莉子。この反応って、まさか...!」

織莉子「いいえ、違うわ。反応こそは異質だけど、ワルプルギスの夜じゃない」

織莉子(だとしたら...これはなに!?まさか、あの時私が予知した...!?)

214: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:20:08.95 ID:owjRaIfF0
ほむら「うっ...」

ほむらは、数十秒ほど気を失っていた。

数十秒。ただそれだけで、状況は一変していた。

廃墟は綺麗さっぱり消え去り、代わりにできた巨大なクレーター。

さやかは、その中心を睨みつけたまま動かない。

さやかの視線の先には、あの巨大な影。

やがて、その影はその姿を露わにした。

215: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:20:50.47 ID:owjRaIfF0
それは、正に異質だった。

燃え盛る炎のように揺れる頭部。

鎧のようなラインをところどころに見せる黒い体。

白の装甲に包まれた左腕と、黒の装甲に包まれた右腕。

そして、人の形でありながら人ではない顔。

"それ"は、確かにここに存在していた。

216: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:23:10.79 ID:owjRaIfF0
さやか「なんなのよ...あんたはなんなのよ!?」

さやかの問いに、"それ"は答えない。

"それ"は、ただそこに存在しているだけだ。

さやか(なに...?毛穴って毛穴が開いちゃってる...この感覚はなんなの...!?なんにせよわかってるのは、この状況がとてつもなくヤバイってことだ!)

だが、決して目を逸らすことのできない"それ"の存在に、彼女の本能は恐怖していた。

さやか「...いいさ、こんなにソウルジェムが反応してるんだ。魔女は...」

さやかは、それを誤魔化すように吼え、"それ"に向かって一気に駆け出した。

さやか「あたしがぶった切る!」

さやかの剣が、"それ"に振り下ろされる。

"それ"は微塵も動かない。ただ立っているだけだ。

だが、さやかの剣は、"それ"を切り裂くことはなかった。

さやかの剣は、"それ"に触れた瞬間、跡形もなく消え去ってしまった。

217: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:24:50.38 ID:owjRaIfF0
さやか「手応えが...ない!?」

"それ"は、さやかの頭を掴み、そのまま投げ捨て、追い打ちをかけるように、五指から光弾を放った。

さやか(痛い...!?)

意識がとびかけるほどの激痛が、さやかの意識を支配する。

感覚を遮断しているにも関わらずだ。

それでも、さやかは"それ"に向かって駆けだした。

魔女を殺すことでしか己を保つことができなかった彼女には、それが一番の原動力となる。

だが、そんなさやかの意思などお構いなしに、"それ"は左腕でさやかの顔を掴み上げた。

218: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:26:33.38 ID:owjRaIfF0

"それ"の左腕に電流が走り、先程の光弾とは比較にならない程の激痛がさやかを襲う。

さやか「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛―――――――――――――!!」

さやかの悲鳴が響き渡る。

やがて、さやかの意識は完全に途絶えた。

それでも、"それ"は電流を流すのを止めない。

さやかを助けたいという僅かな良心からか、無感情に、機械的に行われるその行為からの恐怖のためかは分からないが、ほむらは拳銃を抜き、放つ。

弾は、"それ"の右腕に被弾するが、しかし"それ"はなにも変わらない。

やがて、"それ"は顔をほむらに向け、右の五指に光弾を溜め込む。

さやかと違い、ほむらとの距離は遠い。避けることは難しくはないだろう。

だが、動けなかった。"それ"に抗ってはいけないと、細胞という細胞から訴えかけられているかのようだった。

"それ"の光弾は、身動きのとれないほむらへと放たれ

220: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:28:34.61 ID:owjRaIfF0
「衝撃の―――」

風と共に声が響き渡る。

クーガー「ファーストブリットォォォ―――!!」

風は、疾風へと変わり、質量を伴ってさやかを掴む左腕に襲いかかる。

―――が

クーガー(手応えがない...!?)

"それ"は、さやかに流していた電流を止め、クーガーを振り払うと共に、さやかを投げつけた。

弾かれたクーガーは、巧な足さばきで受け身をとり、ほむらの隣に着地。そして、投げられたさやかを優しく受け止めた。

クーガー「お怪我はありませんか?のむらさん」

ほむら「...ほむらよ」

クーガー「あぁ、すみません。でも、それは些細なことです。特に今はね」

"それ"と向き合う二人。

"それ"はただただ二人を見つめていた。

"それ"からは、一切の感情が感じ取れず、一切の意味すら感じ取れなかった。

やがて、"それ"は何もすることなく、何も発することもなく、粒子となって消え去った。


221: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:29:44.13 ID:owjRaIfF0
クーガー「...ひとまずは落ち着いたか。いったいあれはなんなんです?」

ほむら「...私にもわからないわ。突如現れたと思ったら、雷で廃墟を壊して...」

クーガー「雷...」

クーガー「...まあ、過ぎたことは後で考えましょう。グリーフシードは持ってますか?」

ほむら「ええ。ここに」スッ

クーガー「では、早速あやかのソウルジェムを...おや?」

ほむら「どうしたの?」

クーガー「いえ、あれだけ無茶な戦いを続けていた割りには、あまり濁っていない気がしまして...」

ほむら「...本当ね」

クーガー「ひょっとして、さっき浄化したばかりなんでしょうかねえ?」

ほむら「そう...なのかしら?」

ほむら(それにしては、彼女は消耗しきっていたような...)

クーガー(雷に、白の左腕と黒の右腕...まさか、な...)

222: ◆do4ng07cO. 2014/03/23(日) 01:31:23.76 ID:owjRaIfF0
―――――――――――――――

キリカ「おさまった...どうする?反応のあった場所へ向かうかい?」

織莉子「いいえ。今は、暁美ほむら達がいる。彼女と今遭遇するわけにはいかないわ」

キリカ「ワルプルギスでもなければ、織莉子が予知した魔女ってわけでもないんだよね?」

織莉子「ええ。あの魔女は、姿を現した瞬間全てを壊してしまった。さっきのとは規模が違いすぎる」

織莉子(...それだけに恐ろしい。そもそも、ソウルジェムが反応したとはいえ、魔女だとすら限定はできない。もし、あれが完全なるイレギュラーなら、私に対抗する術なんて...)

ゆま「オリコ、悩み過ぎちゃ駄目だよ。オリコは独りじゃないから...ね?」

織莉子「...ありがとう、ゆまちゃん」

織莉子(そうだ...今は、不安に思っていても仕方ない。とにかく、進もう。私には、それだけしかできないから)

231: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:21:46.33 ID:fVoCqD8X0
―――――――――――――――

静かな演奏会場で、バイオリンの音が流れている。

いるのは、幼いさやかとその幼馴染の少年だけ。

少年が奏でる音色が、さやかは大好きだった。

今まで音楽に興味なんてほとんどなかったのに、不思議とあの音色には心が惹かれた。

言葉に表せないし、理由なんてわからない。とにかく大好きだった。

演奏が終わり、静寂が会場を包む。

さやかが拍手をすると、彼は困ったように微笑みながら礼儀正しくお辞儀をした。

照明が落ちると、周りは暗闇に包まれ、彼の姿どころか自分の姿さえ見えなくなった。

それでも、さやかは待ち続けた。

次にどんな曲を弾くか、もう一度聞けるかすら分からなくても、いくらでも待つことができた。

やがて、照明がステ-ジに当たり、待ち望んでいたコンサートが始まろうとする。

―――そして、幕が上がると共に彼女の目は覚める。

232: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:22:58.61 ID:fVoCqD8X0
さやか「あれ...?」

さやか(さっきまで、あたし...恭介のバイオリンを聞いていたような...)

先程演奏を聴いていた会場に似ているが、照明なんて当たってないし、恭介もいない。

それを把握して、やっとあれが夢だったことを自覚する。

「目が覚めたか?ボンクラ」

不意に隣からかけられる声。そこには、かつて敵対した魔法少女が座っていた。

233: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:23:59.44 ID:fVoCqD8X0

さやか「杏子...?なんであんたが...?」

杏子「...あの時言っただろ、放っておけねえってさ」

さやか「...でも、あたしはあんたの力は...」

杏子「そんなことはどうでもいいんだよ。んなことよりさ―――」スッ

杏子が指さした先に、照明が当たる。

照らし出されたのは、正装に身を包み、愛用のバイオリンを手にした上条恭介。

234: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:24:29.85 ID:fVoCqD8X0
さやか「き、恭介...!?なんで恭介が!?まさか...!」

杏子「あたしは何にも知らねーよ。あいつと会ったの、今日が初めてだし」

さやか「じゃあ、なんで...」

杏子は、さやかの問いに答えない。

代わりにさやかに届くのは、バイオリンの音色。

杏子「ちゃんと向き合いな。お前が願った奇跡って奴とさ」

235: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:25:19.65 ID:fVoCqD8X0

恭介の奏でる音色がさやかの身体に染みわたる。

どの曲も、さやかがお見舞いに持っていったCDのものだった。

杏子がそっと席を離れるが、さやかは気づかない。

それほどまでに、彼女は演奏に聞き入っていた。

さやか「あっ...」

さやか(この曲...)

やがて、奏でられるのは、アヴェ・マリア。

それは、恭介が最も得意とする曲だった。

演奏が終わり、会場が静寂に包まれると、さやかは自然と拍手をしていた。

だが、恭介の演奏はこれで終わりではなかった。

236: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:26:09.59 ID:fVoCqD8X0
恭介「どうだったかい、さやか?」

さやか「前と同じ...ううん、もっと良くなってる」

恭介「よかった。久しぶりに二人きりの時に弾くから、緊張してたんだ」

さやか「...あの、恭介」

恭介「それじゃあ、最後に一曲だけ」

さやか「えっ?」

恭介「さやか、昔僕が適当に作って弾いてた曲、憶えてる?」

さやか「...うん。なんでか知らないけど、あたしその曲が大好きだった」

恭介「あれさ、僕も気に入ってたんだけど...いつからか、弾かなくなっちゃって。それで、思い出すのに苦労したんだ」

さやか「...?」

恭介「アヴェ・マリアみたいないい曲じゃないけど...聞いてくれるかい?」

237: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:26:49.45 ID:fVoCqD8X0
恭介が弾いた曲。

それは、名前もなく、プロを目指す少年が弾くにしては何もかもが大雑把な曲だった。

それでも、さやかはあの夢の中ですら待ち望んでいた。

誰にも評価なんてされなくても、二人にとって大切な曲だった。







そうだった。

いつから忘れてたんだろう。

魔法少女になってから?ううん、きっと、もっと前から...

あたしは、恭介の演奏を聴きたかっただけなんだ。

命を賭けてもいいくらい好きなだけだったんだ。




この演奏の前では、魔法少女も何も関係ない。

かつての、上条恭介の演奏が大好きだった『美樹さやか』がそこにはいた。


238: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:27:40.68 ID:fVoCqD8X0
―――――――――――――――
会場外


仁美「これでよろしかったのですか?」

まどか「...うん、ありがとう仁美ちゃん」

仁美「...私には、これくらいしかできませんから」

まどか「今まで、隠しててごめん」

仁美「仕方ありませんわ。私も、逆の立場なら同じことをするでしょうから」


239: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:28:17.02 ID:fVoCqD8X0
ほむら「まどか、何故彼にあんな頼みごとを?」

まどか「わたしじゃ、さやかちゃんを止めることはできなくて...でも、さやかちゃんの祈りが間違ってるだなんて思いたくなくて、それで...」

ほむら「......」

ほむら(...私では、彼を信用することなんてできなかった。美樹さやかが魔法少女であることがバレた時、いつだってロクな結果にならなかった)

ほむら(杏子や巴マミでもそう。魔法少女のことを知らない者を信用することなんてできない筈)

ほむら(でも、まどかは...さやかのために演奏をしてほしいと上条恭介に頼んだ。魔法少女であることを話さずに、だ。彼がさやかのために動いてくれることを信じ、実際に彼は動いた。さやかと向き合うことから逃げなかった。でも、そんな時間軸は一度も...)

ほむら「そういえばクーガー...あなた、何度も上条恭介に会いにいっていたそうね。もしかしてこうなることを見越して...」

クーガー「考えすぎですよ。彼女があいつにきちんと言葉で伝えた。ただそれだけのことです」

240: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:28:43.01 ID:fVoCqD8X0
マミ「...羨ましいんじゃないかしら?」

杏子「...別に」

マミ「そう。私は羨ましいわ。嬉しくて、羨ましい」

杏子「......」

マミ「契約してよかった...とまでは言えなくても、契約したことが、全部が全部間違いじゃなかったって思えるんだもの。それって素敵なことじゃない」

杏子「...ロマンチストが」

マミ「昔はそうだったでしょ?あなたも」

杏子「...ふんっ」プイッ

クーガー「照れるなって。人はロマンを抱えて生きる生物だからな、あんこ」

杏子「杏子だ!...おっと、出てきた」

241: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:29:22.96 ID:fVoCqD8X0
さやか「......」

杏子「よう、どうだったよ。あんたの願った奇跡は」

さやか「...うん。聞けてよかった。思い出せたんだ、あたしの最初の気持ち...」

杏子「へっ、そいつはよかったな」

さやか「ありがとうね、杏子。ここまでしてくれて...」

杏子「あたしは何にもしてねーよ。坊やに演奏頼んだのも、あんたを一番心配してたのもあいつだ」クイッ

さやか「ま、まどか...?あんたなんで...」

まどか「......」

さやか「あ...あたし...その...」

ギュッ

さやか「!」

まどか「お帰り、さやかちゃん」

さやか「ただいま...」グスッ

242: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:30:12.04 ID:fVoCqD8X0
それから、美樹さやかは全員に何度も謝っていた。

上条恭介にも事情を話していたが、意外にもあっさり受け入れられていた。むしろ、不気味なくらいテンションが上がっていて、話した本人がひきぎみだった。

まどかは契約していなくて、巴マミも美樹さやかも佐倉杏子も生存...加えて、ストレイト・クーガーという強力なイレギュラーもいる。

まだ、不安要素は多い。ワルプルギスの夜に、あの謎の魔女...

それでも、今度こそいけるのではないかという希望が、私の中に芽生えつつあった。

243: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:30:47.68 ID:fVoCqD8X0
――――――――――――――――――

???「―――以上が、現在報告です」

???「ご苦労様です。『友情』『絆』...全くもって下らない。こんなものでは私の渇きは癒えませんねえ」

織莉子「......」

???「まあいいです。とにかく、これで準備は整ったのでしょう?」

織莉子「はい。『向こう側』への鍵はこれで揃いました」

???「にわかには信じがたいが...私を見つけたあなたが言うのなら、間違いではないでしょう」

???「では、計画を始めますか?」

???「はい。ようやく訪れました。私が全てを手に入れる時が...」

無常「無常矜侍の渇きを埋める時がねえ!」

244: ◆do4ng07cO. 2014/04/05(土) 00:31:27.51 ID:fVoCqD8X0
第6話 『無常矜侍』

欲望が不和を呼び、不和が戦いを呼び、戦いが悲しみを呼ぶ。

その中で芽生えた友情も、希望も、絶望の中に溶け込むしかないのか。

行くは破壊。来るは破壊。全て、破壊!

247: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:14:51.44 ID:F7jk5g2o0
―――――――――――――――
ロストグラウンド

イーリャン『向こう側への扉が消えていく...どうやら、一時的なものだったみたい』

ジグマール「そうか...」

イーリャン『一応、ダース部隊だけでも手配しておく?』

ジグマール「いや、いい...余計な混乱は避けたい。このことは、私と君の胸中に留めておいてくれ。特に、劉鳳には知られないようにな」

イーリャン『了解』

プツン

ジグマール(片鱗とはいえ、あの市街での惨劇以降、何年も開かなかった【向こう側】への扉がなぜ...姿を消したクーガーに関係があるのか?)

ジグマール「ストレイト・クーガー...きみは今、いったい何をしている?」

248: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:15:37.04 ID:F7jk5g2o0
第6話 『無常矜侍』


さやか「行くよ...杏子」

杏子「きな」クイッ

さやか「そうやって余裕こいてられるのも、今の内だから...ねっ!」ダッ

杏子(こいつ、速くなってやがる...けど)

杏子「丸見えだよ!」

杏子に躱され、さやかの突撃は空を切る。

杏子「さあて、次はこっちの...ッ!」クルッ


249: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:16:14.92 ID:F7jk5g2o0
杏子は目を疑った。

今しがた攻撃を躱した筈の相手が、既に自分の目の前まで迫っていた。

さやか「どりゃあ!」

杏子「っと!」サッ

さやか「まだまだぁ!」

杏子「!...なるほどね」

突撃するさやかの視線は、杏子ではなく、その後ろにある魔法陣。

杏子(プロレスのリングにあるゴムの反動みたいに、魔法陣を足場にして加速するってわけか)

250: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:17:51.07 ID:F7jk5g2o0
さやか(あたしの動きについてこれないみたいだね、杏子...一度言ってみたかったんだよね、こういうの)

杏子(でも、それなら...)

さやか「あんたに足りないものは...それは!」

杏子(こうすりゃいい)

杏子が、魔法陣の下に槍を伸ばす。

さやか「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!そして何よりもぉぉぉ―――!」

高速で動くさやかはそれに気付けず、躱す術もない。

ガッ

さやか「速さが足りなばぶぅ!!」ズザザザ

杏子「あたしになにが足りねえって?」

251: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:18:35.92 ID:F7jk5g2o0
杏子「お前なあ、いくら速く動けたって、制御できなきゃ意味ないだろ。動きも直線的で丸見えだしな」

さやか「くそ~、なかなか良いアイディアだと思ったんだけどなぁ」

クーガー「まあ、アイディア自体は悪くはないが...まだまだ経験不足ってことだな」

クーガー「攻撃する時に、躱されることを前提として相手を見てなかっただろ?今回は練習だからいいが、本番ではそいつが命取りになる」

クーガー「勝負は一撃で決めるつもりで挑む。それがスピーディに勝利を収めるコツだ」

さやか「なるほど...」

杏子「さあて、腹も減ってきたことだし、マミの家にいこーぜ」

さやか「そうじゃないでしょ。今日はほむらの家に集まる約束があるでしょうが」

252: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:19:23.39 ID:F7jk5g2o0
――――――――――――――――
ほむホーム

仁美「お茶ですわ」

さやか「あ、ありがとう」

仁美「こちらは巴さんの分で、こちらは...」

まどか『な、なんで仁美ちゃんもいるの?』

ほむら『ごめんなさい。どこからか、私の家に集まることが漏れてたみたいで...「また私だけ除け者にするのですか!?」ってキレられて...』

杏子「まあいいよ。一応、魔法少女のことは知ってるんだろ?だったら、完全に無関係ってわけじゃないし」

ほむら「...そうね。なら、本題に入りましょう」

ほむら「もうすぐ、この街にワルプルギスの夜がやってくるわ」

253: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:22:27.51 ID:F7jk5g2o0
マミ「...!」

さやか「ピルプル...なにそれ?皆知ってるの?」

ほむら「『ワルプルギスの夜』...巴さんと杏子以外は知らないと思うけれど、最大にして最強の魔女よ。大規模な自然災害は、こいつが原因とまで言われているわ」

まどか「そ、そんなのがやって来るの...!?」

ほむら「ええ。私は、そいつを倒すためにここまで準備してきた...」

杏子「ちょっと待て。前からきになってたんだが、あたしとマミだって噂でしか聞いたことがない奴だぞ?そんなやつが来ることを、あんたは何故知ってる?」

ほむら「それは...」

ほむら(言うべきかしら...?でも、信じてくれるわけが...)

クーガー「深く考えすぎですよ、のむらさん」

ほむら「ほむらよ」

クーガー「ああ、すみません。...俺がここにいるんです。だったら、どんなことであろうと不思議ではないでしょう?」

ほむら「......」

ほむら(確かに、この男は私以上のイレギュラー。普通では存在し得ない彼がいるのだから...)

ほむら「わかった、話すわ。私が戦う理由を」

ほむら(全てを話すことはできないけれど...可能な範囲で伝えよう。そうしなければ、先には進めないから)


254: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:23:14.85 ID:F7jk5g2o0
私は話した。まどかとの出逢いから今までを。

―――勿論、ソウルジェムの最後の真実は隠して

まどか「ほむらちゃん...わたしのせいで...」ポロポロ

ほむら「...泣かないで、まどか」

まどか「わたし、何も知らなかった...ほむらちゃんがずっと苦しんでいたのに...!」

ほむら「これは、私が望んで始めた戦い。だから、あなたは悪くなんてない」

まどか「でも...!」

マミ「はい、そこまでよ」

255: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:24:52.92 ID:F7jk5g2o0

ほむら「巴さん...」

マミ「要は、鹿目さんとこの街を守るために協力してほしいってことでしょ?」

ほむら「...ええ」

マミ「それならそうと最初から言ってくれればいいじゃない」

ほむら「じゃあ...!」

マミ「可愛い後輩と、私が育ってきた街だもの。協力するに決まってるじゃない」

さやか「あたしもだよ。...色々迷惑かけちゃったけどさ、やっぱり、あたしはみんなが大好きだから...戦うよ。ねえ、杏子」

杏子「まあ、このまま風見野に帰ってもつまんないし、せっかく伝説の魔女を拝めるんだ。こんなチャンス逃すのは勿体ないよな」

さやか「素直に協力するって言えばいいのに。杏子ちゃんは照れ屋さんだなあ」

杏子「喧嘩売ってんのかてめえ」

256: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:25:44.73 ID:F7jk5g2o0
オラァァ! ジョウトウダコノヤロー! ヤ、ヤメテフタリトモー!

ほむら「それで、クーガー。あなたはどうするの?」

クーガー「はい?」

シカタアリマセンワネ ココハワタクシガ ヒトミチャン、ナニヲ!?

ほむら「あなたの目的は、ここには無い筈...なら、私たちに付き合う必要なんて...」

クーガー「そいつは愚問ですよ、のむらさん」

ハッ! グハァ! ミ、ミキサントサクラサンガイチゲキデ... シリアイノダイガクキョウジュカラオソワッタツウシンカラテノタマモノデスワ

クーガー「ここまで首突っ込んできたんです。今更帰れなんて言われても、気になって読書もできやしない」

ほむら「...ありがとう。あと、ほむらよ」

クーガー「ああ、すみません」

クーガー(それに、個人的に気になることもできたしね)

257: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:27:21.46 ID:F7jk5g2o0
ほむら「では、ここにいる者は全て、ワルプルギスとの戦いに協力するという提で話を進めるわ」

マミ「ええ」

ほむら「決戦は2週間後...それまでに備えてほしいことがあるの。まずはこれ」

杏子「...グリーフシードか」

ほむら「ええ。どういうわけか、今回のこの街には、グリーフシードを落とす魔女があまりいない。そのため、現在の数では心もとないわ」

杏子「っつーことは、風見野に帰れってか?」

ほむら「いいえ。そもそも、あなたは風見野に魔女が少ないからこの街を狙っていたのでしょう?」

杏子「それもそうだな...じゃあ、他のところから探してこいって?」

ほむら「本来なら、相当な時間を要してしまうことだけど...幸いにも、その問題は」

クーガー「俺の出番ということですね!?」

ほむら「ええ。杏子とクーガー。あなたたちを中心に、別の街からグリーフシードを集めてほしい」

さやか「あたしたちは?」

ほむら「あなたは駄目よ。行方不明になっていたこと、忘れていないでしょう?」

さやか「そ、そうでした...」

ほむら「それに、私と巴さんにしたって、いきなり2週間も学校を休めば、必ず不審に思われる。...だから、授業には出るしかない」

ほむら「あなたは、この2週間で徹底的に叩きあげるわ。覚悟しておきなさい」

さやか「オッケー!」

258: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:28:13.70 ID:F7jk5g2o0
仁美「私とまどかさんはどうすれば...」

ほむら「あなたたちは、あまり動じず、いつも通りにしていてちょうだい。下手に気を張ると、ボロがでそうだから」

ほむら「特にあなたには、まどかを守ってほしい。ワルプルギスの夜と戦っている時に、インキュベーターがまどかになにを吹き込むかもわからない」ボソッ

仁美「!...わかりました」

杏子「これで話は終わりか?」

ほむら「いいえ。...むしろ、こっちが本命だと思うわ」

さやか「...アレだよね」

クーガー「......」

259: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:29:29.00 ID:F7jk5g2o0
ほむら「もし、ソウルジェムが異様な反応をしたら、すぐにその場から離れてちょうだい」

マミ「なぜ?ソウルジェムが反応するなら、魔女じゃ...」

さやか「ただの強い魔女ならどれだけよかったか...」

ほむら「アレには絶対に勝てないわ。強さとかの次元じゃなかった...」

杏子「...よくわかんねーな。特徴とかはねえのかよ?」

ほむら「特徴は、雷を纏い、左腕が白く、右腕が黒い"モノ"よ。それ以外は何もわからないわ。...とにかく、そいつとは戦ってはだめ。いいわね?」

マミ「...わかった。あなた達がそこまで念を押すんだもの。それほどの相手なのでしょうね」

ほむら「わかってくれて嬉しいわ。何か質問は?」

ほむら「...ないわね。じゃあ、明日からお願いするわ」





QB「......」

スウッ

260: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:30:54.65 ID:F7jk5g2o0
――――――――――――――――――

それから、私たちは出来得る限りの備えをした。



ブロロロ

クーガー「俺はこう思うんだ。旅は素晴らしいものだと!その土地にある遺跡、名産、暮らしている人々との触れ合い!新しい体験が人生の経験になり、得がたい知識へと昇華する!しかし目的地までの移動時間は正直面倒だ。その行程を俺なら破壊的なまでに短縮できる!だからオレは旅が大好きだ!聞いてるかあんこぉ!?」

杏子「ぅぷ...」

杏子とクーガーは、私たちが授業に出ている間にグリーフシードを探しまわり





シュルルル

さやか「ぬわー!」

マミ「反応が遅い!」

ほむら(そういえば、彼女、戦いに関しては超スパルタだったわね)

まどか「頑張って、さやかちゃん!」

マミとさやかは授業が終わればすぐに特訓をして



仁美「信頼できる情報ですと、おそらく...この辺りが穴場かと」

ほむら「こんなところに...盲点だったわね」

私は...武器の調達を主に行った。

261: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:32:50.42 ID:F7jk5g2o0
その過程では、色々なことがあった。



杏子「だーかーら、今のはあんたが邪魔になったんだっての!」

さやか「あたしの方が先に動いてたじゃんか!あんたがどうにかしなさいよ!」

マミ「まだ戦いは終わってないでしょうが!」ドンッ

使い魔「キャウ!」シュウウ

ちょっとしたことで言い合いになったり




ブロロロ

クーガー「俺はこう思うんですよ運転するなら助手席に女性を乗せるべきだと。密閉された空間、物理的に近づく距離、美しく流れるBGM。体だけでなく二人の心の距離まで縮まっていくナイスなドライブ!早く目的地に行きたい、でもずっとこうしていたいこの甘美なる矛盾、簡単には答えは出てこない、しかしそれにうもれていたいと思う自分がいるのもまた事実!」

ほむら(か、感覚を消せば...いや、我慢する力も無くなって、むしろ逆効果...!)

マミ(何度も乗ったから、少しは...あ、やっぱだめ)ウプ

ガタン

マミ「きゃあ!」

クーガー「ウヒョーーー!ファンタスティーーーーック!!」

休日に遠征の役を変わったら、これまでにない吐き気に襲われたり






更には、こんなこともあった

ほむら「お泊り会?私の家で?」

さやか「うん。もうすぐ決戦だし、作戦会議の復習ついでに結束を固めようかなぁ、と」

仁美「決戦への準備は整っているのでしょう?」

ほむら「それはそうだけど...」

さやか「それじゃあ、マミさんと杏子とクーガーさんと...恭介も呼ぶか」

ほむら「そんな勝手に進められても...」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん。実はわたしもしたいかなって...」

ほむら「し、仕方ないわね...」

さやか(やっぱまどかには弱いなー)

262: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:33:49.86 ID:F7jk5g2o0
台所

ジュウウ

マミ「クーガーさん、料理ができたんですね」

クーガー「料理は文化の一つですから、少しかじってみたんですよ。よかったら、後で美味い紅茶の淹れ方を教えてくれませんか?」

マミ「ええ。喜んで」ニコッ


居間

さやか「本当に意外だよねえ。てっきり、クーガーさんのことだから『飯を調理する時間すら惜しい!』ってな感じでレトルト系ばっかだと思ってたんだけど」

杏子「なんでも、食事に関してはポリシーがある見たいだぜ。確か...」

クーガー『食事は人の心を豊かにし、エネルギーと明日への活力を生み出してくれます。ここに速さは必要ありません。味を堪能しながら歯で噛み砕いて食べ物を胃へと流し込むそして―――』

杏子「途中までしか覚えてないけど、確かこんなこと言ってた。そんで、作っている時間も文化の一つなんだとさ」

仁美「でも、確かに一理ありますね。料理は作ること自体にも意味はありますし、よく噛めば消化にもいいですから、ちょっとの量で満腹感を得られます」

杏子「ああ、道理で最近あまり多くは食ってねえわけだ」

まどか「料理かぁ...やっぱり、出来る人ってカッコイイよね」

ほむら「大丈夫よ、まどか。私も出来ないから」


263: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:35:06.32 ID:F7jk5g2o0
就寝前

ほむら「女6人に男2人...結構ギリギリね」

さやか「恭介、いくら美少女揃いだからって寝込みを襲っちゃ駄目だぞ~!」

恭介「しないよ、そんなこと」

さやか「あらら...全く動じずにこの男は...たまには音楽以外のことにも興味を持ちなさいよ」

杏子「何でもいいから早くねよーぜ。今日は色々やって疲れたんだ」

マミ「あらあら、相変わらず寝るのが早いわね」

仁美「でしたら、その前に」ゴソゴソ

パシャッ

まどか「カメラ?」

仁美「携帯より雰囲気が出ると思いまして」

クーガー「写真ですか、そいつはいい!そもそも写真に限らず記録に残すということは記憶のみで構成される思い出をより鮮明に」

仁美「さあさ、ほむらさんはこちらの椅子に」

ほむら「あ、ありがとう」

クーガー「ああ、ちょっと!?」

264: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:35:45.80 ID:F7jk5g2o0
仁美「では、押してから3秒後に撮りますよ」

さやか「ほらほら、二人はもっと詰めて」グイグイ

ほむら「こ、これはちょっと...」

まどか「近すぎない?」

マミ「いいのいいの。こうしないと皆が写らないでしょう?」ウフフ

杏子(マミの奴、楽しんでるなぁ...)

恭介「僕は志筑さんのスペースを空けて、と」

クーガー「準備オーケーです、ひろみさん!」



仁美「仁美ですわ。ではいきますよ」

ジー

パシャリ

265: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:37:01.50 ID:F7jk5g2o0
――――――――――――――

グーグー

クーガー「......」パラリ

QB「こんな暗いところで読書をしていると、視力が悪くなるよ」

クーガー「悪くなる前に読み終える...俺は最速で走る男だ。...というより、そんなことを言うために来たわけじゃないだろう?」

QB「まあね。ストレイト・クーガー、君はあのイレギュラー..."なにかの結晶体"とでもいうべきアレについて知っているかい?」

クーガー「何故俺に聞く?」

QB「時間遡航者である暁美ほむらも、アレのことについては知らないようだからね。一番有り得ない存在である君に関係がある可能性が一番高いからだよ」

クーガー「知ってるといえば知っているが、噂だけだ。アレがそうだとも限らないし、俺も直に見たのはあの時が初めてだ」

QB「それは本当かい?」

クーガー「嘘をついてどうなる」

266: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:37:55.47 ID:F7jk5g2o0
QB「...そうかい。だとすれば、僕の考えは外れではないかもしれないね」

クーガー「...どういう意味だ?」

QB「知りたいかい?」

クーガー「ああ、知りたい」

QB「それなら、暁美ほむらが君たちに隠していることから話さないとね」

クーガー「だったら話さなくていい。その仮説とやらも、彼女が隠していることもな」

QB「興味はないのかい?」

クーガー「興味はある...が、聞きたくはない。彼女がここまで隠し通してきたんだ。だったら彼女が話してくれるまで待つさ」

267: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 01:38:32.28 ID:F7jk5g2o0
QB「そうかい...まあいいさ。どうあがこうとも、ワルプルギスの夜はやってくる。君たちがどう立ち向かうのか、それを見届けるのも僕の役目だ」

クーガー「俺たちが倒しちまったとしてもか?」

QB「僕は君たちと敵対してるわけではないからね。どのような結果になろうともそれを受け入れるだけだ」

クーガー「意外だな。てっきり、お前さんのことだから、『君たちが勝てる確率はゼロだ』とかいって気持ちを萎えさせてくると思ったんだがな」

QB「仮にそう言ったとして、君たちは戦うのを止めるかい?」

クーガー「止めないな」

QB「だろうね。それくらいは僕にもわかるよ。でも、一つだけ不可解だね。君はなぜそこまで彼女の肩を持つんだい?ワルプルギスの討伐なんて、君の目的にはなんら関係ないじゃないか」

クーガー「いずれ分かるとは言わん。俺とお前じゃ文化が違うからな」

QB「やれやれ、本当に君たち人間は理解に苦しむね」


269: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:46:26.33 ID:F7jk5g2o0
――――――――――

ワルプルギスの夜襲来3日前


まどか「もうすぐ...だね」

ほむら「...ええ」

まどか「やっぱり、怖いよね」

ほむら「怖くないと言えば、嘘になるわ。でも大丈夫。私たちが、あなたとこの街を守る」

まどか「!...えへへ」

ほむら「どうしたの?」

まどか「ほむらちゃん、ちょっと変わったね」

ほむら「え?...あっ」

まどか「前までのほむらちゃんなら、『私たち』なんて言わなかったもん」

さやか「うんうん、ようやくほむらもあたし達のことを認められるようになったか」

まどか「さ、さやかちゃんいつの間に...」

さやか「最初から。一緒に帰ってるのに、惚気話に夢中であたしに全然構ってくれないんだもん」

ほむら「惚気話って...」

270: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:47:05.06 ID:F7jk5g2o0
まどか「じゃあね、ほむらちゃん、さやかちゃん」

さやか「じゃーね!」

ほむら「ええ。また明日」

パタン

さやか「また明日、か...不思議だよね。あと三日後にはどうなってるかわからないっていうのに、妙に落ち着いて、いつも通りに過ごして...」

ほむら「......」

271: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:47:44.20 ID:F7jk5g2o0
さやか「...ねえ、あたしたちがクーガーさんに2人きりにされた時のこと、憶えてる?」

ほむら「...ええ」

さやか「あの時のあたしたちさ、お互い黙っちゃって、凄く気まずかったよね」

ほむら「...そうね」

さやか「その時と比べたら、あたしたちも随分と変わったよね。特にあんたは」

ほむら「そうかしら?」

さやか「うん。少なくとも、会話してない時でも気まずさはあまりないかな」

ほむら「...そう」


――――キィン

さやか「おっと...この反応は普通の魔女だね」

ほむら「ええ。すぐ近くのようだし...向かいましょう」

272: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:48:23.63 ID:F7jk5g2o0

結界

鉄槌の魔女
その性質は粉砕。ただ壊すことだけに執念を抱いたその力はかなり強力。その反面、攻撃を受けるのは苦手である。



鉄槌「ハーンマァァァァァ!!」

さやか「ノロそうなやつ」

ほむら「大した魔力もない見たいだし...見かけ倒しの魔女ね。早く倒しましょう」

さやか「オーケー!それじゃ、あたしが引き付けて...っ!」

ゆま「オリコ~キリカ~、どこぉ?」キョロキョロ

鉄槌「ハンマ」ギョロッ

ゆま「ふえっ!?」ビクッ

273: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:50:09.12 ID:F7jk5g2o0
さやか「ヤバイ!」ダッ

ほむら「さやか!?」

鉄槌「ハンマァァァ!!」グワッ

ゆま「えっ?」

さやか「ぬおりゃあああ!」ガシッ

ゆま「わっ」

ドゴォォン

274: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:51:08.96 ID:F7jk5g2o0
ほむら「さやか!」

ほむら(私が時間停止を使うよりも早く、あの子のもとへ...!)

さやか「...大丈夫、破片が当たっただけ。怪我はない?お嬢さん」

ゆま「う、うん。お姉ちゃんは...?」

さやか「へーきへーき。こう見えても、結構頑丈だからさ」

鉄槌「ウウゥゥゥ...!」

さやか「やいこらデカブツ。この子に手を出したいってんなら、まずはあたしからやってみな」

鉄槌「ハーーンマァァァァァ!!」グワッ

275: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:51:47.36 ID:F7jk5g2o0
さやか「遅い!」ヒラリ

鉄槌「ハンマ!?」

さやか「ほら、こっちこっち!」

鉄槌「ハンマ!」クルッ

ほむら『さやか、私が合図したら跳びなさい』

さやか『OK!』

276: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:52:27.64 ID:F7jk5g2o0
さやか「せやあっ!」ガキン

鉄槌「ハン...マ...!」グググ

ほむら(魔女の動きは止まった。距離は...この位置なら)

ほむら『さやか、行くわよ!』ジャキン

さやか「おうっ!」バッ

ほむら「全弾持っていきなさい...!」

ガルルル

鉄槌「ハン!?」

さやか「貰ったぁ!スパークエッジ!!」ザシュ

鉄槌「マアアアアァァァァ―――!!」

シュウウウ

277: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:54:20.01 ID:F7jk5g2o0
さやか「よっしゃあ、決まった!近距離のあたしが相手を釘づけにしておいて、遠距離のほむらが射撃。そんで最後のダメ押しにあたしの新技...これぞ作戦名『ガン×ソード』!」

ほむら「...もう少し、いい名前はないのかしら」

さやか「言いやすいじゃん。覚えやすいし」

ほむら「...そうかしら」

さやか「そうだよ。それより、大丈夫だった?」

ゆま「う、うん。ありがとうおねえちゃん達」

さやか「いいのいいの。もうすぐこの怖いところも消えるから、おとなしくしててね」

ほむら「......」




さやか『あたしこの子と組むの反対だわ。目の前で爆発とか、たまったもんじゃないんだよね』




ほむら(なんてこともあったけど...)

さやか「あっ、ついでにほむら。あんたも怪我とか...」

ほむら(あの時、クーガーが言った通りだった。まずは自分のことをよく知って貰う事から始めるべきだったのね)




さやか「ほむら、上!」



ザシュッ

ほむら「...えっ?」

278: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:55:42.19 ID:F7jk5g2o0
左腕が宙を舞う。

目の前に黒衣の魔法少女が降り立ち、遅れて左腕が少女の手中に収まる。

さやか「あ、あんた...!?」

キリカ「フリーズ(動くな)!!」

さやか「」ビクッ

キリカ「動けばどうなるか...わかるだろう?」

黒衣の魔法少女が、掴んだ左腕のソウルジェムに舌を這わせる。

やがて、じわじわと湧き上がってくる激痛を通じて、切り落とされたのが自分の腕であることを理解した。

それは、あまりにも唐突で、理不尽な奇襲だった。


279: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:57:32.91 ID:F7jk5g2o0
ゆま「き、キリカ...?」

さやか(あいつ...この子の知り合い?じゃあ、まさか―――)

トンッ

ゆま「うっ...」ドサッ

織莉子「...この子は無関係よ。ただ、私たちが利用しただけ。あなた達に隙を作るためにね」

さやか(新手!?...しかも、いつ現れたのかわからなかった...どうすれば...!?)

ほむら「さやか、私に構わず逃げなさい!クーガーの次に速いあなたなら逃げきれる筈!」

さやか「で、でも...」

ほむら「私がいなくてもワルプルギスの夜は倒せる!だから、このことをみんなに伝えて!」

キリカ「イレギュラー。おまえの判断は間違ってないよ。私と織莉子の二人を相手にできるわけなんてないからね。でも、おまえは一つ間違っている。それは...」トントン

クラウチングスタートの構えをとって、キリカが駆け出す。

さやかが反射的に剣を振り下ろすが、しかし、剣は空を切った。

キリカ「私、この子より速いよ」

キリカが通り過ぎた後に、さやかの背から鮮血が舞った。

280: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 10:58:51.45 ID:F7jk5g2o0
さやか「がっ...!」

とびそうな意識をどうにか保ち、背中の傷を即座に治し、さやかはキリカから距離をとった。

キリカ「凄い回復力だね。今の、気絶くらいはいってもおかしくなかったんだけど...なるほど、確かに私一人じゃ逃げられるかもしれない」

さやか「くっ...!」

ほむらは魔法を使えない。どころか、その命を相手に握られている。

敵は二人。しかも、どちらにも、まだまだ新米の自分では勝てそうにない。

キリカ「さあ、どうする?どうする?どうする?君ならどうする!?」

さやかの心を読みとったかのように挑発をするキリカ。

その問いに、さやかは

さやか「......」グッ

キリカのように、クラウチングスタートの姿勢をとる。

キリカ「最速でイレギュラーのソウルジェムを取りにくる...まあ、それしかないだろうね」

キリカが爪を構え、さやかが足に力と魔力を込める。

そして、空間が静寂に包まれると同時に、彼女たちが衝突



ドスッ

ほむら「あっ...」

することはなかった。

281: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 11:01:34.44 ID:F7jk5g2o0
ほむらの胸部から、刃が生える。

???「遊びすぎですよ、呉キリカ」

キリカ「...邪魔しないでよね、異納サン」

異納と呼ばれた男が、刀を引き抜くと共に、ほむらが前のめりに倒れていく。

しかし、さやかには何もできない。ゆっくりと倒れていくほむらを、見ていることしかできなかった。

異納「失敬。ですが、これ以上は時間の無駄ですので...」

さやかの手が震える。歯がガチガチと鳴る。

それは、恐怖や悲しみではない。言うまでも無く、怒りだ。

その感情の赴くままに、さやかは叫んだ。

異納のアルター『ブレードダンス』の刃と、さやかの刃が交錯した。


282: ◆do4ng07cO. 2014/04/13(日) 11:02:14.79 ID:F7jk5g2o0
―――――――――――――

まどか宅 夕方

まどか「あと三日...」

あと三日で全てが終わる。

まどか(マミさん...杏子ちゃん...さやかちゃん...クーガーさん...ほむらちゃん)

彼らが負けるとは思っていない。

それでも、嫌な予感がまどかの胸中から消えなかった。

ワルプルギスの夜とはまた別の胸騒ぎが...

まどか(...テレビでも見て、気を紛らわそう)

ピッ



『本日未明、見滝原市××通りで、身元不明の左腕と見滝原中学の学生一人が意識不明の重態で発見されました。発見された被害者は美樹さやかさん。現場の状況から、警察は傷害及び殺人事件の可能性が高いとみて捜査を続けています』

288: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:15:40.90 ID:075AHUKy0
病院

タタタ

まどか「マミさん...さやかちゃんは...?」ハァ ハァ

マミ「大丈夫よ。確かに、傷は酷かったけど、ソウルジェムも浄化したし、命に別状はないわ。でも...」

まどか「でも?」

マミ「しばらく意識は戻りそうにないわ。戻ったとしても、当分は動くことすら...」

仁美「どうして...どうしてこんな...」

恭介「さやか...」

杏子「...腕の方はどうなんだ」

クーガー「のむらさんだろうな。ソウルジェムは無かったが、一向に連絡がつかないところを見ると...」

マミ「誰がこんなことを...」

QB「魔法少女さ。それ以外は考えにくい」

289: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:16:55.77 ID:075AHUKy0
まどか「キュゥべえ...あなた、何か知ってるの...!?」

QB「いいや、何も知らないよ。ただ、僕の知る限りでは、魔法少女が一番確率が高いんだ」

マミ「どういうこと?」

QB「魔法少女である二人を倒せる可能性があるのは、魔女か魔法少女だけ。だが、魔女がトドメも刺さずに彼女を逃がすとは考えづらいし、ほむらがさやかを逃がしたという考えもあるけれど、さやかがソウルジェムのないほむらの左腕を持ち帰る理由も少ない。まあ、クーガーのようなイレギュラーがまだいれば話は別だけど」

杏子「...おい、キュゥべえ。教えろ、誰がさやか達をやったかを」

QB「それは無理だ」

杏子「このごに及んでまだ僕は中立ですとか言うのか、おい!?」

QB「そうじゃない。わからないんだ」

杏子「てめえ、ふざけるのもいい加減に...!」

クーガー「落ち着け、あんこ。こいつは嘘はつかない。それだけは確かだろ」

杏子「杏子だ!」

290: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:17:45.33 ID:075AHUKy0
QB「確かに、僕らは無限の個体を持っている。でも、常に全ての情報を管理しているわけじゃない」

QB「例えば、どこか別の場所で魔法少女が死に、それを別の個体が確認したとしよう。それを知ることができるのは、その個体から直接聞くか、その個体が潰された時だけだ」

クーガー「なら、のむらさんたちをやった奴は、その個体を殺しも逃がしもしていない...ってことだな」

杏子「...チッ」クルッ

まどか「杏子ちゃん...?」

杏子「便所だよ」

クーガー「......」

291: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:18:59.54 ID:075AHUKy0
――――――――――――――

織莉子「はい...あなたは、そこで準備していてください。彼女たちの相手は私がしますので。では...」ピッ

キリカ「もういいかい?」

織莉子「ええ。待たせたわね。では、始めましょう」

織莉子の手に握られているのは、紫色のソウルジェム。

床に転がっている暁美ほむらは、死んでいるかのように動かない。

292: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:22:11.81 ID:075AHUKy0
路地裏

ザッザッ

杏子「......」

クーガー「敵が誰かもわからないってのに、どこに行こうってんだ」

杏子「決まってんだろ。どうせこの街のどっかにいるんだ。片っ端から探し出して...」

そのままクーガーの前を通りすぎようとする杏子だが、彼の伸ばした足に引っかかり、あえなく転倒してしまった。

クーガー「少しは落ち着けって」

杏子「この野郎、なにしやがる...!」

クーガー「お前がちゃんと俺の話を聞かないからだろ。一人になれば敵の思うツボだろうが」

杏子「それであたしを狙ってくるなら好都合じゃねえか!それに、どの道時間もねーんだ!作戦なんざ考えてる余裕もねえだろうが!...もう行くぞ」

クーガー「人の話を聞けぇ!」

杏子「聞けねーなぁ。どうしても止めるつもりなら、いくらあんたでも...」

クーガー「ちっ」

杏子「ぶっ潰してやる!」

クーガー「上等ォ!」

293: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:24:01.82 ID:075AHUKy0
―――――――――――――――

無常「中々の手際でしたよ、異納くん」

異納「光栄です、無常様」

無常「向こう側への扉、その奥に在るもの...期待と興奮で胸が張り裂けそうです!」

異納「...お言葉ですが、無常様。私はあの魔法少女...美国織莉子の語る言葉が全て真実とは思えないのですが」

無常「ええ。わかっています。彼女は私に忠誠など誓ってはいないでしょう」

異納「ならば、なぜ...?」

無常「放っておけばいいのですよ。自分の思い通りに人を動かせると信じている者ほど、扱いには困りませんからねえ。さあ、君も行ってあげなさい」

異納「...かしこまりました」

294: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:24:41.85 ID:075AHUKy0
無常「...ですが、その前に」ギョロッ

QB「!」

無常「あなたに恨みがあるわけではありませんが...彼らに余計なことを吹き込まれたくはないですからねえ」ガシッ

QB「きゅ...」

無常「ついでにあなたの知識も頂きます。『アブソープション』」

295: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:26:05.15 ID:075AHUKy0
――――――――――――――――――
教会

ギリリリ

クーガー「ええ。こいつを落ち着かせたら向かいますから、あなた達はそこにいてください。流石に病院では手を出さないでしょうから」ピッ

クーガー「ったく、ここに来れば少しは落ち着くと思って連れてきたが...目を覚ました途端にこれか」ギリギリ

杏子「うぎぎ...てめえ、放せ、この...!」

クーガー「放したらどうする」

杏子「決まってんだろ...ぐあっ!」

クーガー「バカが...」

カタン

クーガー「うん?」

クーガー(ポストに何か入れた音...妙だな、新聞も出前もとった覚えは無いが...)

296: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:26:48.90 ID:075AHUKy0
マミ「...やっぱり、佐倉さんは一人で探しにいこうとしてたみたい」

まどか「......」

マミ「...ええ、わかってるわ。私だって、今すぐにでも暁美さんと美樹さんを倒した相手を探し出したい。でも、私たちがバラバラになってしまってはそれこそ敵の思うツボ。今は耐えるのよ」

まどか「...はい」

ガララ

クーガー「どうやら、その必要はないようです」

マミ「クーガーさん、佐倉さん...どういう意味ですか、それは?」

杏子「...置手紙だ。3時にマミの家のパソコン立ち上げろってな」

297: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:27:35.13 ID:075AHUKy0
マミ宅

杏子「...時間だ」

マミ「わかってるわ」

ポチッ

『初めまして、皆さん。私の名は美国織莉子』

まどか「う、映った...!」

仁美「いったいどうやって...?」

『ちょっとした知識と魔法があれば簡単ですよ』

杏子「そんなことはどうでもいい!てめえがさやかたちをやったんだな!?」

『ええ。全ては世界を救うために...』

マミ「世界を救うため...?それが二人を傷付けたことになんの関係があるの!?」

『話したところで、あなたたちには理解できないでしょう。それに...救世はまだ終わっていませんよ』

クーガー「なに...?」

『あなた達がいるじゃないですか。巴マミ、佐倉杏子、ストレイト・クーガー...そして、鹿目まどか』

まどか「!」

298: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:28:29.72 ID:075AHUKy0
『あなた達がいる限り、真の平和は訪れません。だから...今日で全てを終わらせます』

『今から5時間後...つまり20時に、××通りの廃工場で待っています。あなたたちの大切なお友達はお預かりしていますから...』スッ

まどか「ほむらちゃんのソウルジェム...!」

『もしこの時間キッカリに来なければ...彼女がどうなるかわかりますね?』

杏子「...ハッ、上等だ。その喧嘩、買ってやるよ」

『...では、ごきげんよう』

プツン

杏子「...ぶっ潰してやる」

299: ◆do4ng07cO. 2014/04/19(土) 02:30:02.27 ID:075AHUKy0
病室

恭介「...なんだか、大変なことになったね」

恭介「みんな行っちゃったよ。僕以外はね」

恭介「クーガーさん達だけじゃない。志筑さんすら、鹿目さんを守るって行っちゃったよ」

恭介「...男として、情けないよね」

いくら語りかけても、さやかの目は覚めない。

恭介「...先生に無理言って、持って来たんだ。僕にはこれしかできないから...」

持ち込んだバイオリンを弾いてみせる。

彼女が命を賭けて手にした奇跡。

それを聞いても、さやかの目は覚めない。

静かな病室で、バイオリンの音色がただただ寂しく奏でられていた。

304: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:30:06.80 ID:kvPPAARi0
杏子「...で、本当に付いてくるのかよ?」

仁美「あなた達が戦っている間、まどかさんは私がお守りしますわ」

杏子「つってもなぁ...」

仁美「心配いりません。足手まといになるようでしたら、放っておいて構いませんから」

クーガー「こりゃ、俺たちが折れるしかないな。どの道、のどかさんを守る役は必要だからな」

杏子「...わかったよ」

マミ「みんな、そろそろ向かうわよ。準備はいい?」

305: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:31:24.80 ID:kvPPAARi0
廃工場

杏子「さあ、来てやったぞ。でてきやがれぇ!」

マミ「鹿目さん、志筑さん。絶対に私から離れないでね」

まどか「は、はい」

クーガー「......」

仁美「どうしたのですか?」

クーガー「...いえ、嫌な気配が妙に多い気がして」

マミ「魔女の反応はありませんよ」

杏子「そんなことはどうでもいいだろ。あいつを潰すのが先だ」

306: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:32:08.35 ID:kvPPAARi0
織莉子「ようこそいらっしゃいました」

マミ「美国織莉子...!」

織莉子「あら...そちらの緑髪のお嬢さんは?」

仁美「...さやかさんの友達ですわ」

織莉子「そうですか...残念です。大人しくしていれば命を散らすことは無かったというのに...」

マミ「用件を言いなさい。わざわざこんな回りくどい真似をして、いったい何が目的なの?」

織莉子「言った筈ですよ、世界を救うと」

杏子「...マミ、クーガー。こいつと話し合うだけ無駄みてえだ。さっさと潰して、ほむら探しにいくぞ」

織莉子「ええ、どうぞ」

まどか「えっ...!?」

307: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:33:53.04 ID:kvPPAARi0
織莉子「でも、今は駄目です。私にはやらなければならないことがある。その使命を果たすまでは、死ぬわけにはいきませんから」

杏子「そーかい...だったら、力づくで押し通る!」

マミ「多勢に無勢になるかもしれないけど...卑怯だとは思わないでね」

織莉子「ええ、思いませんよ。戦いに卑怯もなにもありませんから。もっとも...」スッ

織莉子が取り出したのは、無数のグリーフシード。

織莉子「その『多勢』は私の方になりますが」

グリーフシードが、織莉子のソウルジェムの濁りを吸収し、その穢れを溜める。

そして、穢れが溜まりきったグリーフシードは

―――パリン

308: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:34:48.81 ID:kvPPAARi0
結界内

クーガー「...まあ、単独犯じゃないとは思っていたが、こいつは予想外だったな」

5人の前に立ちはだかるのは、10体の魔女。

それぞれの結界が混ざり合って、不可思議な空間を形成している。

クーガー「のむらさんが、いつもより魔女が少ないと言っていたが...こういうことか」

織莉子「ええ。あなたたちにグリーフシードが渡らぬよう、片っ端から狩っていました」

マミ「でも、こんなことをすれば、あなたも危ないはず...!」

織莉子「かもしれませんね。しかし、先に狙われるのは、未契約者が二人もいるあなた達でしょうから。それよりも...ほら」

織莉子が、ソウルジェムの濁りを吸わせ、また魔女が一体呼び出される。

織莉子「呆けていると取り返しがつかなくなりますよ」

クーガー「...どうやら、迷っている暇はないようだな。行くぞ!」

マミ「はい!」

杏子「おう!」

309: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:38:17.76 ID:kvPPAARi0
―――――――――――――――――――――

病院

排泄行為。

それは魔法少女にも、天才バイオリニストにも起こる生理的現象だ。

生物である以上、排泄行為は防げないし、防ぐ必要もない。

そして、公共施設でそれをするためには必ずトイレへ行くのがマナーだ。

ある文化人曰く、トイレとは排泄行為をするだけでなく、物事をゆっくりと考えられる偉大なる個室空間であり、友達のようなものだ。

だが、この非常事態で上条恭介は、隣の個室を覗きたいというサディスティックな要求も誰かから覗かれているかもしれないというマゾヒスティックな要求も一切考慮せず、即座に用をたし、即座に病室へと戻った。

この時間、わずか5分。

病室からトイレまでの距離と、治りきっていない彼の足を考慮すれば十分な速さだろう。

恭介「あれ...さやか...?」

だが、それだけでも、彼女が病室から姿を消すには十分すぎる時間だった。


310: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:40:22.76 ID:kvPPAARi0
―――――――――――――――

結界内

杏子「どんだけいるんだよ、こいつらは!?」ザシュッ

クーガー「文句を垂れる暇があるなら足を動かせ!手を動かせ!」

マミ「...そこっ!」パァン

織莉子「当たりませんよ」ヒラリ

近接型の杏子とクーガーは直接魔女の相手を、遠距離型のマミは、まどか達を守りつつクーガー達の援護と織莉子への攻撃をこなしていた。

まどか「えいっ、えいっ!」ポコッ

仁美「危ない、まどかさん!」ゴシャッ

まどかと仁美は、マミの魔法で強化されたバットで使い魔を殴り、その身を守っていた。

杏子「クソッ...マジでキリないっての!」

片や、歴戦の魔法少女とアルター使い。片や、何十体もの魔女と魔法少女。

戦況は変わらず、一進一退の攻防が続いていた。

織莉子(そろそろね...)

だが、その膠着状態は一瞬にして崩壊する。

311: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:42:46.80 ID:kvPPAARi0
最初に気付いたのは、援護に徹していたマミ。

上空からの魔力の乱れを察知し、空へと目を向ける。

が、時既に遅し。

鉄槌「ハンマァァァァァァ!!」

魔女の雄叫びと共に、床に鉄槌が打ちこまれ、崩れ落ちていく。

マミがリボンを張り巡らせ、まどかと仁美の落下を防ぎ、自身もリボンに掴まり落下を防ぐ。

クーガーも、杏子を担ぎ上げリボンの上へと着地する。

魔女たちは、リボンに掴まることもできず、床と共に下層へと吞み込まれていった。

だが、ホッと一息を着くのも束の間。



ザンッ

何者かがリボンが切り裂いていく。

ザンッ ザンッ

マミが修復するよりも早く、目にも止まらぬ速さでリボンを切り裂いていく。

ザンッ

そして、マミが掴まっていたリボンが切り裂かれると同時に、他のリボンも一斉に解けてしまった。

312: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:43:45.77 ID:kvPPAARi0
杏子「チッ!」ジャララ

クーガー「マキさん!」タッ

杏子が、槍をまどかと仁美に絡ませて二人を支え、クーガーは即座に地を蹴り、マミのもとへと飛び込んだ。

落下するクーガーが手を伸ばし、マミがそれに応えて伸ばし返す。

そして、クーガーの胸にとびこんでくるのは、引き寄せられたマミの身体

―――ではなく

クーガー「がっ...!」

後数センチといったところで割ってはいるのは、先程リボンを切り裂いた黒い影。

黒い影は、マミとクーガーを引きはがし、その身と共にクーガーを壁に叩き付けた。

313: ◆do4ng07cO. 2014/04/26(土) 01:46:08.17 ID:kvPPAARi0
杏子「マミ、クーガー!」

杏子が落ちていく二人のもとへと駆けつけようとする。

キリカ「―――行かせないよ」

しかし、それを阻むのは、先程クーガーに攻撃をした黒衣の魔法少女。

不意をつかれ、迫る爪を避けきれなかった杏子の頬に爪痕が残される。

杏子「邪魔するんじゃねえ...!」

キリカ「それはできない相談だ」

杏子「いいからどきy「この俺を止めさせたなぁぁぁ!?」

雄叫びをあげながら這い上がってきたクーガーの蹴りとキリカの爪が交叉する。

キリカ「おかしいな...それなりに効いてると思ったんだけど」

クーガー「いかなるダメージからも最速で復活する。それが俺だ!」



次回 まどか「世界を縮めたい」【スクライド×まどか☆マギカ】後編