━━━━━━━━━━
【吉野家】
のあ「ぁっ、モ、持ち帰りで……」
バイト「……」
バイト「は、はい。かしこまりました、少々お待ち下さい……?」
バイト「(つ、つゆだけ……??)」スタスタ
のあ「……」
のあ「(明日は、いよいよプロダクションの見学かぁ)」
のあ「(緊張するなぁ。平服で構いませんと言われたけれど……平服ってスーツよね?)」
のあ「(アイドルに興味はありませんか、と真面目そうな顔のあの人に声を掛けられたけど……)」
のあ「……」
のあ「(……よく考えれば、これって真っ当な就職活動なんだわ)」
引用元: ・高峯のあ「牛丼大盛り……つぇ、つゆだケで……っ!」
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(9) (電撃コミックスEX)
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3: ☆2/2 2016/06/23(木) 21:22:16.36 ID:Txs7ah4c0
のあ「(今まで適当な仕事やバイトでダラダラと食いつないで来たけど……そろそろ安定した収入で生活したいし)」
のあ「(もう24だし、そろそろ結婚とかも視野に入れないと)」
のあ「(ふふっ。芸能界に入って、スターと電撃入籍からの玉の輿……ってのも悪くないかな)」
のあ「(……まあ、夢のまた夢だわ。そもそもあんまり結婚とか興味ないし)」
のあ「(もしこれでダメだったら、実家帰ろうかなぁ)」
のあ「…………」
のあ「(弱気じゃダメよ、高峯のあ)」
のあ「(とにかく明日の見学は、全力で色々と攻めていかないと)」
のあ「(よーし……とにかく気合を入れないと! あぁ、特盛りを頼めばよかった)」
のあ「……」ドキドキ
バイト「お客様…………、申し訳ありませんが……」
のあ「(───ッ!?)」ビクゥ!
バイト「当店では、つゆだけは当店では対応出来かねまして……ハイ」
のあ「ぁっ……」
のあ「ソッ……、そうナンですか……? モ、持ち帰り、不可……?」モゴモゴ
バイト「大変申し訳ありません」
のあ「ソ、そうなんだ……ス……すみません……ま、また来マス……」モゴモゴ
のあ「…………」トボトボ
バイト「……」
のあ「ソウナンダ……」トボトボ
━━━━1分後━━━━
【キッチン】
店員「どうだった? さっきの並弁当、つゆだけの客」
バイト「フツーに帰りましたよ。あっさり」
店員「まあ……いるんだよね、冷やかしでそういうの頼む客。しかもこれが実際、かなりの数」
バイト「そうなんすか?」
店員「牛丼肉抜きとか、ねぎだけとか、つゆだけ、つゆのみとか。深夜帯だと特に」
店員「一連の流れをこっそり録音とか撮影とかしてさ。で、その後大半は面白がってネットに上げたり、武勇伝っぽく報告したりするのね」
店員「まあ実際は肉抜きとかなら提供する店もあるんだけど、つゆだけは流石に……ウチでも無理だから」
店員「一回断わって、すんなり帰るならそれに越したことは無いから」
バイト「ぁーす」
──────
────
──
6: ☆1/2 2016/06/23(木) 21:25:56.21 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【事務室】
愛海「ねえねえ、プロデューサー?」
P「ん?」
P「どうした、愛海。難しい顔して」
愛海「昨日のお昼ごろ、プロデューサーと一緒に歩いてた人……あれ誰?」
P「うん? あぁ……彼女か」
P「新しく所属するかもしれない人だよ。綺麗な人だったろ」
愛海「うん! ってことは、一般人?」
愛海「世の中、まだまだ捨てたもんじゃあないね」
P「だろ。鮮やかに輝く髪に、整った顔立ち、オーストラリアの砂浜を思わせる透き通るような白い肌……!」
愛海「グンバツのスタイル、むしゃぶりつきたくなるような体つき……」
P「あぁ!」
P「……………ア?」
愛海「ぜひとも、色よい返事をいただきたいね。プロデューサー?」
P「……まあそうだが。ただ、愛海が言うとなにかと不穏だな」
────
──────
【事務室】
愛海「ねえねえ、プロデューサー?」
P「ん?」
P「どうした、愛海。難しい顔して」
愛海「昨日のお昼ごろ、プロデューサーと一緒に歩いてた人……あれ誰?」
P「うん? あぁ……彼女か」
P「新しく所属するかもしれない人だよ。綺麗な人だったろ」
愛海「うん! ってことは、一般人?」
愛海「世の中、まだまだ捨てたもんじゃあないね」
P「だろ。鮮やかに輝く髪に、整った顔立ち、オーストラリアの砂浜を思わせる透き通るような白い肌……!」
愛海「グンバツのスタイル、むしゃぶりつきたくなるような体つき……」
P「あぁ!」
P「……………ア?」
愛海「ぜひとも、色よい返事をいただきたいね。プロデューサー?」
P「……まあそうだが。ただ、愛海が言うとなにかと不穏だな」
7: ☆2/2 2016/06/23(木) 21:27:41.47 ID:Txs7ah4c0
愛海「なんっていうのかなー……目に入ったのは一瞬だったけど」
愛海「でも、すごく印象に残る人だったよ。容姿がステキってのも勿論あるけど」
P「お? 愛海も分かるか」
P「ああいうのを、『オーラ』っていうんだよ。オーラ」
P「キリっとした面貌から読み取れる彼女の不敵な性格、容貌やルックスから裏打ちされた自信」
P「張り詰めた空気を纏った荘厳さ、仕草からほの見える品の良さ」
P「体は心を表すというか、生れ持った天性の才覚というか……」
愛海「ふぅん。でもさ、でもさ?」
愛海「ああいう人こそ現状に満足せず、ストイックに自分を磨いてそうじゃない?」
愛海「いろいろ悩みもあったりしてね。あたしにはよく分からないケド」
P「……まあ、な。」
P「類まれなる美貌の裏に隠された、たゆまぬ努力、か……」
愛海「まー、でも一つ確実に言えるのは……!」
P「?」
愛海「か、彼女のお山っ……!」
愛海「実に登り甲斐がありそうだよぉ……うぇへへ♪」
P「……」
愛海「もし所属したら、こりゃあ先輩からのアツい指導が必要ですなー……♪」ワキワキ
P「……ハァ」
━━━━━━━━━━
【高峯宅】
のあ「……っ!!」
のあ「あぁっ! し、しまった!」
のあ「くっ……!」ガクッ
のあ「笑点、見逃したぁ……」
のあ「……まぁいいや。ちびまる子ちゃんから観よう」スクッ
のあ「……」ガサゴソ
のあ「ビールと……あとチー鱈、は……無かったかな……」
──────
────
──
8: ☆1/3 2016/06/23(木) 21:30:16.87 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【事務所 中庭】
のあ「(はー……)」
のあ「(……美しく手入れされた中庭。豪奢な噴水に、道には綺麗な花々を散りばめて……)」
のあ「(いまにでも、どこかの国のお姫様がドレスをなびかせながら、小鳥たちと会話しながら歩いてきそう)」
のあ「(まるで、おとぎの世界に迷い込んだよう)」
のあ「(ここに来れただけでも、所属して良かった)」
のあ「(……)」
のあ「(レッスン費にプロモーション活動費に……正直、かなり出費はかさむ)」
のあ「(……でも、がんばろ)」
のあ「(アイドル……、よく分からないけど、でもきっと、こういう経験は無駄にはならないと思うし)」
のあ「(……あの人がかけてくれた言葉を、信じてみよう)」
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「(……生活、切り詰めよ)」
のあ「(しばらく牛丼は無理かな……よし、うどんにしよう)」
のあ「(これからは吉野屋から丸亀製麺にシフトしていくわ……)」
────
──────
【事務所 中庭】
のあ「(はー……)」
のあ「(……美しく手入れされた中庭。豪奢な噴水に、道には綺麗な花々を散りばめて……)」
のあ「(いまにでも、どこかの国のお姫様がドレスをなびかせながら、小鳥たちと会話しながら歩いてきそう)」
のあ「(まるで、おとぎの世界に迷い込んだよう)」
のあ「(ここに来れただけでも、所属して良かった)」
のあ「(……)」
のあ「(レッスン費にプロモーション活動費に……正直、かなり出費はかさむ)」
のあ「(……でも、がんばろ)」
のあ「(アイドル……、よく分からないけど、でもきっと、こういう経験は無駄にはならないと思うし)」
のあ「(……あの人がかけてくれた言葉を、信じてみよう)」
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「(……生活、切り詰めよ)」
のあ「(しばらく牛丼は無理かな……よし、うどんにしよう)」
のあ「(これからは吉野屋から丸亀製麺にシフトしていくわ……)」
9: ☆2/3 2016/06/23(木) 21:31:47.87 ID:Txs7ah4c0
P「おはようございます、高峯さん。お待たせしました」
のあ「(……っ!)」ビクッ
のあ「ァ……」
P「今日はまずトレーナーさん達への挨拶と、あとは今後の活動展開の、ちょっとした説明です」
P「あっ。あと、これを貴女にお渡ししておきます」スッ
のあ「(───ッ!!)」
【IDカード】
のあ「(こ、これは!)」
のあ「(し、社員証……っ!?)」
のあ「(……ん?)」スッ
のあ「(?? ……変ね、顔写真が入ってない。プロデューサーのは顔写真ついてるのに)」
P「今までは、うしろにピッタリ付いて貰って俺のカードだけで出入りしていましたが、今日からは高峯さんにもコレを預けますね」
P「事務所内の各ドアの前で、カードリーダライタにかざしていただければOKです。それでドアが開きます」
のあ「(……? …………??)」クルッ
P「そうですね……そのカードの事は、電気の錠を開けるためのカギと思って頂ければ分かりやすいかと」
P「ただ注意ですが、入退室の際は必ず一回一回カードをかざして下さいね」
P「もしチェックせずに違うドアに入ろうとすると、セキュリティの認証不可でドアが開きませんから」
のあ「(? …………)」ジー
P「大切に保管して下さい。じゃあ、さっそく行きましょうか」
のあ「(……でもまあ、社員証には変わりないわ。憧れの)」
のあ「(ふ、フフっ。これを首から下げてると、なんか『デキる大人』って感じがする。格好いい……♪)」スチャ
のあ「(ヤバ……っ。このまま外に出てコンビニのコーヒーとか買ってみたい気分♪)」ドキドキ
P「……??」
P「高峯さん? どうしました?」
のあ「!!」
のあ「ナ……何でもないわ。早く行きましょう」
P「はい、そうですね」
のあ「(……♪)」スタスタ
10: ☆3/3 2016/06/23(木) 21:33:08.50 ID:Txs7ah4c0
━━━30分後━━━
【レッスンルーム】
P「……」
P「(高峯さん、遅いなぁ)」
P「(トイレに行ったきり、戻ってこない。そろそろ20分経つぞ………体調不良か?)」
P「…………」
━━━━━━━━━━
【どこかの部屋のドア】
のあ「フゥー、フゥー……っ!」プルプル
のあ「……っ」ピッ
ブブーッ!
*『アンチパスバックエラー発生』
のあ「ヒッ!」ビクッ!
のあ「フゥー……フゥー、フゥー……!」オロオロ
のあ「……っ!」ピッ
ブブーッ!!
*『アンチパスバックエラー発生』
ブブーッ!!
*『アンチパスバックエラー発生』
ブブーッ!!
ブブーッ!! ブブーッ!!
ブブーッ!! ブブーッ!! ブブーッ!!
のあ「ヒグッ……、う、ウゥ……ッ」オロオロ
のあ「(ど、ドアが開かない……た、助けてっ……!)」グスッ
──────
────
──
13: ☆1/3 2016/06/23(木) 22:09:13.98 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【撮影スタジオ】
のあ「……よろしく」ペコリ
P「よろしくお願いします」
カメラマン「はい。どうぞよろしく」
カメラマン「宣材写真の撮影だからと気を張らず、どうか楽に、いつも通りに構えていただいて結構です」
P「じゃあ高峯さん、まずは奥の控室で簡単なメイクと……、あと服も整えて下さい」
のあ「……ええ」
スタスタスタ
───ガチャ バタン
カメラマン「(……)」
P「………どうですか、彼女?」
P「まさに十年に一人の逸材です」
カメラマン「そうさなぁ……」
カメラマン「君は毎回毎回撮影の前にメールで『十年に一人の逸材』と豪語するから、まーた今回もかぁと思ってたけど……」
カメラマン「……ありゃあ十年に一人の逸材だわ」
P「でしょう?」
カメラマン「ははっ、手ェ震えてきたわ……何だあの麗人は。異世界に迷い込んだかと思ったよ」ガクガク
P「あ、あなたプロでしょ。頼みますよ?」
────
──────
【撮影スタジオ】
のあ「……よろしく」ペコリ
P「よろしくお願いします」
カメラマン「はい。どうぞよろしく」
カメラマン「宣材写真の撮影だからと気を張らず、どうか楽に、いつも通りに構えていただいて結構です」
P「じゃあ高峯さん、まずは奥の控室で簡単なメイクと……、あと服も整えて下さい」
のあ「……ええ」
スタスタスタ
───ガチャ バタン
カメラマン「(……)」
P「………どうですか、彼女?」
P「まさに十年に一人の逸材です」
カメラマン「そうさなぁ……」
カメラマン「君は毎回毎回撮影の前にメールで『十年に一人の逸材』と豪語するから、まーた今回もかぁと思ってたけど……」
カメラマン「……ありゃあ十年に一人の逸材だわ」
P「でしょう?」
カメラマン「ははっ、手ェ震えてきたわ……何だあの麗人は。異世界に迷い込んだかと思ったよ」ガクガク
P「あ、あなたプロでしょ。頼みますよ?」
14: ☆2/3 2016/06/23(木) 22:11:00.67 ID:Txs7ah4c0
カメラマン「あれなら加工やレタッチしないでも充分映える。良い素材だよ、彼女」
P「まぁ……ビジュアルレッスンのビの字も知らない素人ですけど、あの容姿は圧巻でしょう」
カメラマン「き、緊張するなぁ。上手く撮れるかな、俺」ドキドキ
P「だ、大丈夫ですか?」
カメラマン「いやはや……、あれほどの抜群の素材をこの手に掛けるのは、去年の高垣楓以来だ」
カメラマン「まさに傾国美人、絶世の美女。しかしあれが素人とは……驚いた」
カメラマン「視界に入れることすら畏れ多い……。本当にいいのか? こ、こんな俺なんぞが、彼女の御身を撮影する栄誉に預かって」ガチガチガチ
P「ちょ、ちょっと……ほんと頼みますよ! 貴方がそんなガチガチに緊張してどうするんですか!」
カメラマン「は、ハァー、ハァー……!」
───ガチャ
のあ「……お待たせ」
P「あっ、高峯さ───」
P「(───!?)」ビクッ!
のあ「こんな具合で、どうかしら」ヒラッ
P「」
カメラマン「(お、おい君ッ! あの衣装……これは、コンセプトは……!?)」
P「(ね、猫耳にフリルスカート……派手なエプロンに、小道具のステッキも……!)」
カメラマン「(これは、まさか……っ!)」
P&カメラマン「(ま、魔法少女!?)」
のあ「(……♪)」ヒラッ
16: ☆3/3 2016/06/23(木) 22:14:00.92 ID:Txs7ah4c0
カメラマン「っ……!」
P「た、高峯さん!?」
カメラマン「ぷっ!」
カメラマン「あははははっ……! いやあ、脱帽ですよ」
P「(……?)」
のあ「……」
カメラマン「……気を遣ってくれて、ありがとうございます」
カメラマン「ですが今回はコンセプトを絞らず、素のままの貴女を表現して欲しいので……ナチュラルなカンジで飾らず行きましょう」
P「そ、そうですね。宣材写真ですので、私服でも大丈夫ですよ」
P「それに貴女のクールなイメージ的に、その……可愛らしいコスチュームはちょっと相応しくないかもしれません」
のあ「……」
のあ「……」クルッ
スタスタスタ
───ガチャ バタン
P「な……何事かと思いましたよ。心臓が止まるかと」
P「まさかクールな彼女が、あんなお遊戯会のような格好で……」
P「まるで友人の結婚式の時に一人だけ作業服で来ちゃった人を見たような、居た堪れない気持ちになりましたよ……」
カメラマン「何言ってるんだ、君は」
カメラマン「24歳の彼女が本気で、あんな幼稚園のお遊戯会みたいな衣装を着てくるハズないだろう。猫耳まで付けて」
P「い、言われてみれば確かにそうですね……」
カメラマン「あれは彼女なりの、激励のサインだよ」
P「激励?」
カメラマン「ああ。おかげで緊張が吹っ飛んだ」
カメラマン「『その光を和らげ、その塵に同じうす』……、これは老子の言葉だよ。才能をひけらかすことなく、謙虚な振る舞いを良しとするという意味合いのね」
カメラマン「彼女は自分の不格好なさまをわざと我々に見せつけて、壁を取っ払ってくれたんだ」
カメラマン「あの似合わないコスチュームをわざと彼女が着た意味は、『どんな要求も応えてみせるから、貴方達こそ気楽に構えなさい』という……」
カメラマン「俺達に向けた優しさと、確かな自信の表明だよ」
P「!! ……なるほど、無為自然ですね」
P「虚飾はせずに、ありのままを……。俺達、勝手に彼女のイメージを高尚にあれこれ想像して、逆に負担を掛けていたのか……」
カメラマン「情けない話だけど、こっちが気を遣われちゃったかな」
P「(……すごいなあ、高峯さん)」
━━━━━━━━━━
【衣装室】
のあ「……」プルプル
のあ「い、イメージに合わない……。か、可愛らしいコスチューム……ふ、相応しくない……っ」
のあ「わ……私の存在を、全否定された気分」
のあ「……」ガクッ
のあ「アイドル、無理かも……」
──────
────
──
17: ☆1/3 2016/06/23(木) 22:15:13.88 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【高峯宅】
のあ「プロデューサーが前に言ってた雑誌モデルの仕事……そう言えばもう少しね」モゾモゾ
のあ「写真撮影、モデル……」
のあ「私ってとりわけそんなスタイルとか良い方じゃないと思うし」
のあ「でも、絞る努力はしたほうがいいかも。最近うどんばっかだし」
のあ「……」モゾモゾ
のあ「どうすれば痩せられるのかな? でも、もうジムも健康器具もジョギングもこりごり」
のあ「……ハァ。疲れずに楽に痩せる方法とかってないかしら……?」
のあ「(……)」モゾモゾ
───ピンポーン!
のあ「っ!」ビクッ!
━━━━━━━━━━
【高峯宅 玄関】
───ガチャ
のあ「……ハイ」
訪販員「こんにちは! わたくし、SS通商の者ですが……」
のあ「……」
のあ「………NHK?」
訪販員「え、NHKではないです。SS通商ヘルス事業部の者です、今お時間よろしいですか?」
のあ「……」コクン
訪販員「奥様、おキレイですね! ひょっとしてモデルなどやっておられますか?」
のあ「……」フルフル
訪販員「なるほど……ならば、普段から化粧品や食生活に気を遣っておられる?」
のあ「……」フルフル
訪販員「それでいて、その美しさ! 素晴らしいっ!」
訪販員「ならば、奥様!」
訪販員「美容や健康、特に……」
訪販員「ダイエット食品などに興味はありませんか? その美しさを保つために」
のあ「(……)」
訪販員「……」
のあ「……」
のあ「……くわしく」
訪販員「はいッ! では恐れ入りますが───」
のあ「(…………)」
────
──────
【高峯宅】
のあ「プロデューサーが前に言ってた雑誌モデルの仕事……そう言えばもう少しね」モゾモゾ
のあ「写真撮影、モデル……」
のあ「私ってとりわけそんなスタイルとか良い方じゃないと思うし」
のあ「でも、絞る努力はしたほうがいいかも。最近うどんばっかだし」
のあ「……」モゾモゾ
のあ「どうすれば痩せられるのかな? でも、もうジムも健康器具もジョギングもこりごり」
のあ「……ハァ。疲れずに楽に痩せる方法とかってないかしら……?」
のあ「(……)」モゾモゾ
───ピンポーン!
のあ「っ!」ビクッ!
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【高峯宅 玄関】
───ガチャ
のあ「……ハイ」
訪販員「こんにちは! わたくし、SS通商の者ですが……」
のあ「……」
のあ「………NHK?」
訪販員「え、NHKではないです。SS通商ヘルス事業部の者です、今お時間よろしいですか?」
のあ「……」コクン
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訪販員「なるほど……ならば、普段から化粧品や食生活に気を遣っておられる?」
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訪販員「美容や健康、特に……」
訪販員「ダイエット食品などに興味はありませんか? その美しさを保つために」
のあ「(……)」
訪販員「……」
のあ「……」
のあ「……くわしく」
訪販員「はいッ! では恐れ入りますが───」
のあ「(…………)」
18: ☆2/3 2016/06/23(木) 22:17:19.38 ID:Txs7ah4c0
━━━1時間後━━━
【高峯宅】
のあ「……♪」モグモグ
のあ「食べながら痩せられる。夢のようだわっ♪」
のあ「一ヶ月8000円を、とりあえず半年契約……」
のあ「少し値は張ったけど、これで美ボディが手に入れられるなら安い先行投資かな……♪」
のあ「……♪」パクパク
のあ「麩菓子。食べやすくて美味しい……サクサクで」
のあ「……♪」シャリ
のあ「林檎、バナナ、グレープフルーツ。甘くておいしい……そう言えばちょっと前にバナナダイエットというのがあったわ」
のあ「……♪」サクサク
のあ「ダイエットクッキー、バームクーヘン、おせんべい。とにかく美味しい……お菓子で痩せられるなんて」
のあ「……♪」モキュモキュ
のあ「激辛カレー、ゆで卵、オオバコ。絶妙に美味しい……おかわりしたい」
のあ「……♪」ゴクゴク
のあ「紅茶きのこ。美味しい……けどニガい」
のあ「……♪」ハムハム
のあ「ヨーグルト、ヨーグルトきのこ。さわやかで美味しい……ケフィアの力を感じる」
のあ「……♪」ポリポリ
のあ「ポッキー、はちみつ。言うまでもなく美味しい……昔ポッキーを使ったダイエットも流行ったわよね」
のあ「……」
のあ「青汁……」
のあ「……」ポイッ
のあ「……♪」ゴクゴク
のあ「玄米茶、ハーブティ、杜仲茶、ウーロン茶、減肥茶、ギムネマ茶、どくだみ茶、鉄観音茶、プーアル茶」
のあ「ぷはぁ……」
のあ「ど、どれもおいしいっ! 健康にも良いし、食べて痩せられるなんてっ!」
のあ「はぁ……食べた食べた。でもこの1箱で1日分は少し多い気もする……もうおなかいっぱい」ゴロン
───ヒラッ
のあ「……??」
のあ「なに、この紙キレ。成分表示かな……?」
のあ「……まあいいわ」ポイッ
のあ「ちょっと休もう……」
のあ「………………」
のあ「……………………すぅ」
━━━━━━━━━━
【SS通商】
【ドリームパック☆単品ダイエット☆フルコースセット】
【あなたにピッタリの食品をお探しください】
【1箱1ヶ月分。1日、1品が適当】
━━━━━━━━━━
19: ☆3/3 2016/06/23(木) 22:18:00.81 ID:Txs7ah4c0
━━━━3日後━━━━
【高峯宅】
のあ「……」
のあ「…………」スッ
───キィ…
キィィ…
のあ「………………」
【48kg】
のあ「…………」
のあ「へ、減ってない……というか、体重変わってない……」
のあ「な、なんで……?」
のあ「…………」
のあ「……ひ、ひょっとして……騙された?」
のあ「っ!! あ、あぁ……っ!!」バタバタ!
のあ「さ、裁判……っ! 訴えれば、きっと勝てる……!」ガタガタ!
──────
────
──
21: ☆1/3 2016/06/23(木) 22:36:13.40 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【事務所 応接室】
真奈美「どうだい、のあ。ダイエットは順調かな?」
のあ「……エっ!?」
真奈美「おや、覚えていないか。この間、事務所で話しただろう」
真奈美「鍋や体型の話。それでその後、君は今ダイエットに励んでいると言っていたが」
のあ「ァ……え、えぇ……」
のあ「モ、問題ないわ。頗る順調よ」
真奈美「ふふふっ。余裕だね」
真奈美「ああ、そうだ」
真奈美「もし君の都合が良ければなんだが、今度、美優の家で……」
のあ「チ……ちょっと用事を思い出したわ」
スタスタスタ
───ガチャ バタン!
真奈美「……?」
━━━━夜━━━━
【高峯宅】
のあ「アー……私、真奈美さんにそんなこと言ってたっけ。緊張してあんまり覚えてない」
のあ「そろそろ他人との会話で緊張して、テキトーな事を言っちゃうクセ直さないと……」
のあ「……でも、まず当面の問題は……」
のあ「ダイエット。これね、そろそろ撮影も近いし」
────
──────
【事務所 応接室】
真奈美「どうだい、のあ。ダイエットは順調かな?」
のあ「……エっ!?」
真奈美「おや、覚えていないか。この間、事務所で話しただろう」
真奈美「鍋や体型の話。それでその後、君は今ダイエットに励んでいると言っていたが」
のあ「ァ……え、えぇ……」
のあ「モ、問題ないわ。頗る順調よ」
真奈美「ふふふっ。余裕だね」
真奈美「ああ、そうだ」
真奈美「もし君の都合が良ければなんだが、今度、美優の家で……」
のあ「チ……ちょっと用事を思い出したわ」
スタスタスタ
───ガチャ バタン!
真奈美「……?」
━━━━夜━━━━
【高峯宅】
のあ「アー……私、真奈美さんにそんなこと言ってたっけ。緊張してあんまり覚えてない」
のあ「そろそろ他人との会話で緊張して、テキトーな事を言っちゃうクセ直さないと……」
のあ「……でも、まず当面の問題は……」
のあ「ダイエット。これね、そろそろ撮影も近いし」
22: ☆2/3 2016/06/23(木) 22:37:13.10 ID:Txs7ah4c0
のあ「でも、もうあのダイエット食品は信用ならないわ。一応美味しかったから満期解約するけど」
のあ「どうしよう……、ジムも健康器具もジョギングも食品もダメ」
のあ「となると、あとは食事制限かしら?」
のあ「ダイエットと言えばこれよね、定番の絶食よ。でもどうなんだろ、絶食とか体に悪いと聞くけど」
のあ「……ッ!!」ピーン!
のあ「『つもりダイエット』……コレだわ!!」
のあ「何かを食べたつもりで、別の事に置き換え空腹を満たす! これっ、この方法で行こう!!」
のあ「たしか節約になるとも聞くわ。絶食より遥かに健康的よ。でも……」
のあ「……でも、どうやるんだっけ……、アレ?」
のあ「えーっと……」
のあ「お肉を料理に使うつもりで、低カロリーのこんにゃくを買う……みたいな? アレ??」
のあ「……」
のあ「節約……。あのインチキっぽいセールスで48000円損したし、ダイエットを兼ねて、そこも埋め合わせていきたいわ」
のあ「うー……、つまり…………??」
のあ「1食500円として、1日3食1500円」
のあ「1食摂った『つもり』で……」
のあ「……1食抜けばいいのかしら?」
のあ「これなら、48000円の損害をたった一ヶ月で埋められる……っ!」
のあ「一ヶ月くらい連続でご飯抜いても大丈夫よね? 世の中には7日間山中でサバイバルして、水だけで凌いだ7歳児童もいるワケだし」
のあ「オマケに食事制限してるからダイエットにもなる! 一石二鳥っ!!」
のあ「ちょっ、コレ……天才の発想だわ」
のあ「つもりダイエット、恐るべしね。ふ、ふふふ……♪」
のあ「そうと決まれば、明日から早速実行しましょう。今日の晩御飯はうどんで……」
23: ☆3/3 2016/06/23(木) 22:38:33.67 ID:Txs7ah4c0
━━━1週間後━━━
【事務所 応接室】
───ガチャ
美優「ま、真奈美さん!」
真奈美「うん?」
美優「今朝、廊下でのあさんとすれ違ったんですけど……」
真奈美「??」
美優「なんだか、とてもやつれてて……肌も美白と言うより、もう蒼白でした」
美優「体調が優れないんでしょうか……それとも、何か心当たりがありますか?」
真奈美「ん……ダイエットをしている、とは言っていた」
美優「ダイエット……?」
美優「ひょっとして、無茶な減量をしてるとか」
真奈美「いや、それはないだろう。以前話した時には、健康面とのバランスに気を遣っていると語っていたし」
真奈美「なにより、彼女のプロ意識は私から見ても十分高いと感じるよ。下手な減量で体調を崩すミスはしないだろうさ」
真奈美「というより実際、私も今日彼女に会ったよ」
美優「あっ、そうなんですか?」
真奈美「うん。私も美優と同じく心配で声を掛けたら……」
~~~~~~~~~~
のあ『ト……特に、何もないわ。これでも3食、ちゃんと食べてるつもり……よ』
~~~~~~~~~~
真奈美「彼女、元から線は細いし肌も透き通る白さだからな。一見、不健康・不調に見えるかもしれないが……」
真奈美「要らぬ心配、と言うやつかもしれないよ」
美優「うぅん……」
美優「……」
美優「(『これでも3食、ちゃんと食べてるつもり』……)」
美優「(な、なんだろう……。普通に聞こえるのに、絶妙に何かが引っ掛かる……)」
──────
────
──
24: ☆1/3 2016/06/23(木) 22:40:02.21 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
━━━━早朝━━━━
【事務所 応接室】
蘭子「(おはようございます、神崎蘭子です)」
蘭子「(私には今、この事務所でどうしても仲良くなりたい人がいます)」
蘭子「(休みの日の朝。その人を待ち構えるために、事務所に一番乗りです)」
蘭子「(……)」ドキドキ
蘭子「(……一目見たときから、すっごく魅力的な人だと思いました)」
蘭子「(澄んだ川の揺らめきのように……、銀色の髪を爽やかになびかせて)」
蘭子「(凛として……、まるでお伽噺のお姫様のようにキレイで、気品に満ちていて)」
蘭子「(彼女の周りには神秘的なオーラが揺らめいてて……、まるでゲームの登場人物のようにミステリアスで、現実離れしたカッコイイ容姿で)」
蘭子「(……とにかく、とにかくスゴイ人なんですっ)」
蘭子「(是非ともお近づきになって、色々お話をしたり、デッサンのモデルになって貰いたいなぁとか思ったり……)」
蘭子「……」ソワソワ
蘭子「(でも……)」
蘭子「(なんか時折、うかつに踏み込めない雰囲気を醸し出すというか、魅力的過ぎて近寄りがたいというか……)」
蘭子「(し、初対面では……え、獲物を狙う鷹のような眼光で睨まれちゃったりして……)」
蘭子「(……っ)」グスッ
────
──────
━━━━早朝━━━━
【事務所 応接室】
蘭子「(おはようございます、神崎蘭子です)」
蘭子「(私には今、この事務所でどうしても仲良くなりたい人がいます)」
蘭子「(休みの日の朝。その人を待ち構えるために、事務所に一番乗りです)」
蘭子「(……)」ドキドキ
蘭子「(……一目見たときから、すっごく魅力的な人だと思いました)」
蘭子「(澄んだ川の揺らめきのように……、銀色の髪を爽やかになびかせて)」
蘭子「(凛として……、まるでお伽噺のお姫様のようにキレイで、気品に満ちていて)」
蘭子「(彼女の周りには神秘的なオーラが揺らめいてて……、まるでゲームの登場人物のようにミステリアスで、現実離れしたカッコイイ容姿で)」
蘭子「(……とにかく、とにかくスゴイ人なんですっ)」
蘭子「(是非ともお近づきになって、色々お話をしたり、デッサンのモデルになって貰いたいなぁとか思ったり……)」
蘭子「……」ソワソワ
蘭子「(でも……)」
蘭子「(なんか時折、うかつに踏み込めない雰囲気を醸し出すというか、魅力的過ぎて近寄りがたいというか……)」
蘭子「(し、初対面では……え、獲物を狙う鷹のような眼光で睨まれちゃったりして……)」
蘭子「(……っ)」グスッ
25: ☆2/3 2016/06/23(木) 22:41:36.33 ID:Txs7ah4c0
蘭子「(でも、でもでもっ……!)」
蘭子「(今日こそは、ちゃんとまずあらためて自己紹介して、それで……!)」
蘭子「……」
蘭子「く、クククッ……!」
蘭子「いざっ、聖戦を! 幾千の呪言を紡ぎ、絆の真言を導かんっ!」【訳:が、頑張ってお話ししようっ!】
蘭子「玲瓏の美姫よっ!!」【訳:高峯のあさんと!!】
───コツッ
蘭子「ぅ!!!」
───コツッ、コツッ
蘭子「(ヒールの靴音。これは……!)」
蘭子「(き、来たっ!)」
蘭子「(この時間、まちがいない! 下調べ通り……!)」ドキドキ
───コツッ、コツッ
蘭子「(……♪)」ドキドキ
───グギュル
蘭子「……」
───グゥゥ
蘭子「(……?)」
グギュルルルルルルル!!
ギュ、グゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
蘭子「(───!?)」
蘭子「ヒッ……」
蘭子「た、た、タナトスの咆哮かっ!?」【訳:じ、地鳴り?】
──コツッ コツッ
ガチャ
蘭子「ぁっ」
26: ☆3/3 2016/06/23(木) 22:43:53.62 ID:Txs7ah4c0
のあ「……」
蘭子「ヒ、ヒエッ……」
グギュルルルルルルル!!
ギュウ! グウウウゥゥ!!
のあ「………………」
蘭子「タ……高峯サ……」
のあ「………………」
グゴゴゴゴゴ!!
ギュルルルルルルル!!
蘭子「ヒグッ!?」
のあ「………………」
蘭子「カ……、顔色が……シ、死人のように……し、白……っ!」ガクガク
蘭子「そ、ソレニ……コ、この猛獣の呻き声ノ、ような音ハ……ッ!?」ガクガク
のあ「………………」
のあ「………………ウッ」
のあ「オエエエェ………ッ」ガクッ
───ビチャビチャ!
蘭子「ァッ」
蘭子「う……、ぅうわあああああぁぁァァーーーーーーーー!!!!」
ダダダダダダダダ!!
───ガチャ! バタン!!
ドテッ!!!
のあ「……」グゥゥ…
のあ「フゥー……ハァー……、ウッ、く……」フラフラ
のあ「(そ、掃除しなきゃ……ま、マズいわ)」フラフラ
のあ「……ウプッ」
のあ「(お、お腹の音が……重機の駆動音みたいに、そこらじゅうに響き渡って……)」
のあ「(つもりダイエットを始めて10日……水だけで生きて来たけど……)」
のあ「(そろそろ、限界。空腹と、嘔気で……い、意識がもうろうと……)」
のあ「ハァー……ハァー……」フキフキ
のあ「……」
のあ「(い、今……誰かこの部屋にいたかしら?)」フキフキ
──────
────
──
27: ☆1/3 2016/06/23(木) 22:45:00.03 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【外部 撮影スタジオ】
P「高峯さん、お疲れ様です!」
のあ「……」グゥゥ
P「初仕事でしたが、仕上がりは完璧でした。うん」
P「OL系ファッション雑誌のモデル……、第一歩としては上出来です。皆さんからも好評でしたよ」
のあ「……ありがとう」
P「いえいえ。それにしても高峯さん、オフィススーツ似合いますね」
のあ「お腹空いた……」ボソッ
P「以前はなにかスーツを着たお仕事でも…………えっ?」
のあ「えっ?」
P「ん?」
のあ「ア……いえ、何でもな───」
ギュルッ!
グウゥゥ~~!!
ググググググッ!!
のあ「───ハウァッ!!」ビクッ!
P「……」
P「高峯さん」
のあ「……」プルプル
P「初仕事も無事に終わりましたし……」
P「記念に、ご飯でも食べに行きましょうか」
のあ「!!」
P「真奈美さんと美優さんから聞きました。節制してたんですよね?」
P「仕事に真剣に向き合ってくれて、ありがとうございます。そのお礼にと言ってはなんですが……」
P「貴方の都合が良ければ、いかがですか?」
P「モチロン、俺が奢りますよ」
のあ「(!!?)」
P「明日はお互いオフですし、パァーっと……」
のあ「ぷ、プロデューサー……っ!」
のあ「ワ、私……っ」
のあ「(最近、食に関しては悪い事ばかりで、変なセールスでお金も無駄に浪費して……)」
のあ「(もう10日もご飯食べて無くて……胃液すらカラカラで……吐いたりして、もう散々で)」
のあ「(そろそろダイエットは限界と感じて来たし、それに……)」
のあ「(……それに、この事務所に入って初めて、誰かに何かを誘われた)」
のあ「……嬉しい」
P「はい! じゃあ着替えが終わったら、俺にメールして下さい」
────
──────
【外部 撮影スタジオ】
P「高峯さん、お疲れ様です!」
のあ「……」グゥゥ
P「初仕事でしたが、仕上がりは完璧でした。うん」
P「OL系ファッション雑誌のモデル……、第一歩としては上出来です。皆さんからも好評でしたよ」
のあ「……ありがとう」
P「いえいえ。それにしても高峯さん、オフィススーツ似合いますね」
のあ「お腹空いた……」ボソッ
P「以前はなにかスーツを着たお仕事でも…………えっ?」
のあ「えっ?」
P「ん?」
のあ「ア……いえ、何でもな───」
ギュルッ!
グウゥゥ~~!!
ググググググッ!!
のあ「───ハウァッ!!」ビクッ!
P「……」
P「高峯さん」
のあ「……」プルプル
P「初仕事も無事に終わりましたし……」
P「記念に、ご飯でも食べに行きましょうか」
のあ「!!」
P「真奈美さんと美優さんから聞きました。節制してたんですよね?」
P「仕事に真剣に向き合ってくれて、ありがとうございます。そのお礼にと言ってはなんですが……」
P「貴方の都合が良ければ、いかがですか?」
P「モチロン、俺が奢りますよ」
のあ「(!!?)」
P「明日はお互いオフですし、パァーっと……」
のあ「ぷ、プロデューサー……っ!」
のあ「ワ、私……っ」
のあ「(最近、食に関しては悪い事ばかりで、変なセールスでお金も無駄に浪費して……)」
のあ「(もう10日もご飯食べて無くて……胃液すらカラカラで……吐いたりして、もう散々で)」
のあ「(そろそろダイエットは限界と感じて来たし、それに……)」
のあ「(……それに、この事務所に入って初めて、誰かに何かを誘われた)」
のあ「……嬉しい」
P「はい! じゃあ着替えが終わったら、俺にメールして下さい」
28: ☆2/3 2016/06/23(木) 22:46:06.58 ID:Txs7ah4c0
P「ちなみに、お店はどこが良いですか?」
のあ「……店?」
P「ええ。予約が必要な高級レストランとかは厳しいですけど……でも、高峯さんのためなら、今日は俺も頑張りますよ」
P「もし今決められないようでしたら、肉や魚や麺類とか、食べたいジャンルでもアバウトに言って下されば───」
のあ「……吉野家」
P「───ん、えっ?」
P「いま、何か言いました?」
のあ「……吉野家」
P「え…………」
P「えっ、はい? な、何て……?」
のあ「……吉野家」
P「よ、よしのや……?」
のあ「……」コクン
P「『吉野家』!?」
のあ「……うん」
P「」
P「(よ、吉野家……。こ、高貴な彼女には似つかわしくない、クソの掃き溜めのような格安ファストフードチェーン店だぞ?!)」
のあ「……」ワクワク
P「(高峯さんもそれは知っている筈だ、知名度だけは高いからな吉野家は。だが何故、敢えてその店を……?)」
29: ☆3/3 2016/06/23(木) 22:48:05.41 ID:Txs7ah4c0
P「(───ハッ! まさ、か……!)」
P「(と、遠回しの拒絶!!)」
P「(俺はまだ、この人に信頼されていないのか……ッ!)」
P「た、高峯さん!!」ガシッ!
のあ「な、何?」
P「俺は確かに高給取りなんかじゃないし、テーブルマナー等の嗜みもありません!」
P「けれど、貴女に相応しいようなプロデューサーになろうという気概はあります! 貴女を高みに導けるように、貴女を納得させられるような仕事を沢山取って……!」
のあ「……えっ??」
P「孤高で崇高で、そして魅力的な貴女の近くに……、いつでも頼れるようなプロデューサーを目指して……」
P「……だ、だからお願いです! 遠慮せず……いえ、俺に情けを掛けないで下さいっ!!」
P「もうこの際、一見さんお断りだろうが要予約だろうが、た、例え最初に出てくる飲料水が800円の超高級レストランだろうが……っ!」
P「どこでも構いませんよ! エェ!! だから……その……っ」
のあ「(プロデューサー、涙目だわ。ひょっとして牛肉はダメなのかな?)」
のあ「……じゃあ……」
P「!! ど、どこですか!? 青山にある正統派の懐石料理ですか? それとも渋谷にあるオシャレなイタリアン……」
━━━1時間後━━━
【サイゼリヤ】
P「えっと……小エビのサラダと、ミックスグリル。あとアイスティラミス。あとはコレとコレで、以上です」
店員「はい、少々お待ち下さい」スッ
のあ「(……)」ソワソワ
P「(……なんだろう、何故かモヤっとする。複雑な気持ちだ)」
P「(やはり高峯さん、まだ俺を認めてくれていないのか……?)」
のあ「……」
店員「お待たせいたしました。コチラお先に、小エビのサラダとミックスグリルになります」
P「そちらで」
店員「はい、他の品もすぐにお持ち致します」
P「高峯さん。先に食べて結構ですよ?」
のあ「……ええ」カチャ
P「……」ジー
のあ「……あむっ」
のあ「ん……♪」モグモグ
P「(…………)」
P「(……まあ、いいか)」
──────
────
──
30: ☆1/3 2016/06/23(木) 22:48:43.56 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【レッスンルーム】
トレーナー「じゃあ、今日はここまでにしましょう」
トレーナー「お疲れ様でした。しっかり汗を拭いてあがってくださいね」
美波「ハイっ、ありがとうございました!」
のあ「……」
───ガチャ
バタン
のあ「……」
美波「高峯さんっ!」
のあ「……なに?」
美波「これからお昼ですよね? もしよければ……い、一緒にどうですかっ?」
のあ「……」
のあ「(…………)」
美波「(す、すごい悩んでる! な、何で……?)」
のあ「(どうしよう……一緒に食べるってことは、必然的に会話が発生するって事よね)」
のあ「(会話、自信無いなぁ……話題が合わなさそう。でも、折角誘ってくれたんだし……)」
のあ「ええ。いいわ」
美波「!!」
美波「や、やった! う、嬉しッげほっ!! ごほっ!!」
のあ「……大丈夫?」
美波「ハ、ハイ! ちょ、ちょっと緊張して……。で、でも光栄です!!」
のあ「……」
────
──────
【レッスンルーム】
トレーナー「じゃあ、今日はここまでにしましょう」
トレーナー「お疲れ様でした。しっかり汗を拭いてあがってくださいね」
美波「ハイっ、ありがとうございました!」
のあ「……」
───ガチャ
バタン
のあ「……」
美波「高峯さんっ!」
のあ「……なに?」
美波「これからお昼ですよね? もしよければ……い、一緒にどうですかっ?」
のあ「……」
のあ「(…………)」
美波「(す、すごい悩んでる! な、何で……?)」
のあ「(どうしよう……一緒に食べるってことは、必然的に会話が発生するって事よね)」
のあ「(会話、自信無いなぁ……話題が合わなさそう。でも、折角誘ってくれたんだし……)」
のあ「ええ。いいわ」
美波「!!」
美波「や、やった! う、嬉しッげほっ!! ごほっ!!」
のあ「……大丈夫?」
美波「ハ、ハイ! ちょ、ちょっと緊張して……。で、でも光栄です!!」
のあ「……」
31: ☆2/3 2016/06/23(木) 22:49:37.04 ID:Txs7ah4c0
━━━10分後━━━
【事務所 休憩室】
美波「あっ! 自前のお弁当ですか?」
のあ「……ええ」
美波「高峯さん、以前私に作ってくれましたよね♪ すごいなぁ」
美波「料理が出来て、スタイルも良くて、それに周りに気も配れて……」
美波「(オマケに外見はクールでミステリアスなのに、こんなに家庭的で、お弁当包みは子猫のドット柄とか……)」
美波「(もう、ギャップが堪らなく可愛らしい。こんな姉が欲しい……)」ドキドキ
美波「き、今日はどんなオカズですか?」
のあ「…………………………」
パカッ
【白米】
美波「い、一面に白いご飯……?」
のあ「……オカズはふりかけよ」カサッ
美波「質素ですね、でも全然良いと思います。炭水化物オンリーなカンジで、とても素敵です」
のあ「ダイエットよ。『つもりダイエット②』」
美波「つもりダイエット……???」
のあ「そう。節約も兼ねて」
のあ「極限の空腹と向き合った結果、私は一つの術を身に付けたわ」
のあ「想像する力よ」
32: ☆3/3 2016/06/23(木) 22:51:18.31 ID:Txs7ah4c0
のあ「貴女の瞳には、この食事は……ただ極貧で無機質な様相に映るかもしれない」
のあ「けれど、この『野菜のふりかけ』を掛けた途端……世界は一変するわ」
のあ「想像力で補うの。実像と虚像のように、表裏一体の世界を。例え野菜が無くても……こうすれば……」サラサラ
美波「…………」
のあ「そこに青々しい野菜が所狭しと現れる。『焼肉のふりかけ』ならば、食欲をそそる匂いと共に色よい肉が姿を見せる」
のあ「苦節の時でも、力が足らずとも……創意工夫と心の在りようで、いくらでも補えるわ」
のあ「……」モグモグ
美波「…………」
のあ「……おいしい」
美波「…………高峯さん」
のあ「…………」パクッ
美波「美波、貴女に一生ついて行きます……っ」グス
のあ「(……??)」モグモグ
━━━━翌日━━━━
【事務所 休憩室】
アーニャ「美波、今日はお弁当ですか?」
美波「うん。今日からね♪」
アーニャ「イズミーチェリヌィ♪ 良いですね♪」
アーニャ「どんなお弁当、ですか??」ヒョイ
アーニャ「……?」
アーニャ「白いご飯……と、フリカケ、だけ?」
美波「うん、ダイエット用なんだけど……」
アーニャ「なるほど。ディエート エノ、効果的なのですか??」
美波「……一種のプラシーボのようなものだと思う」
美波「効果は正直薄い、かも。個人差はあれど、白米は糖質だし栄養面を考えてもあまり良くは無いかもしれない」
アーニャ「……? なのに、何故……」
美波「アーニャちゃん。よくスポーツでも言われるけど、こういうのはね? 結果じゃなくてその過程が大事なの」
アーニャ「や、痩せれなくても、いい……のですか??」
美波「うん」
アーニャ「!?」
美波「やるという行動に価値があるの。あの人と同じ方法でご飯を食べる……このただの生得的本能に依る情緒的結合が、どんなに素晴らしいことか。なんかもうそれだけで満足でひたすら嬉しいというか、幸せな気分になれるというか、オカズがおかずというか……ね?」ブツブツ
アーニャ「み、美波……?」
──────
────
──
33: ☆1/3 2016/06/23(木) 22:52:15.75 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【???】
のあ「(ハァ……)」モグモグ
のあ「(アイドルとして活動を始めて、そろそろ2ヶ月くらいね)」
のあ「(来る日も来る日もレッスンで、たまに写真のモデルと……あと近々エキストラの仕事もあるとか)」パクッ
のあ「(CDデビューの話もあったわね。プロデューサーは喜んでいたけど、正直私に務まるか不安だわ……)」
のあ「……」ムシャムシャ
のあ「(不安と言えば……何より人間関係かな)」
のあ「(今の所、まともに付き合いがあったと言えば真奈美さんと美優さんだけ)」モグモグ
のあ「(色んな子と仲良く友達になりたいのに……ひょっとして私、避けられてる?)」
のあ「(表情が固いせいかしら……でも笑顔は苦手だし)」
のあ「(周囲から話しかけてきてくれたらラッキーなんだけど、でもそれはそれで緊張するなぁ)」
のあ「(私から積極的にアプローチを掛ける? いや、でも、そんなに話題の引き出しは多い方じゃないし……)」
のあ「…………」パクッ
のあ「(……まあ)」
のあ「(『今日』は仕方ないかな。どこも『席』がいっぱいだったし)」
のあ「(1テーブルに4つイスがあるのに、一人で占領するのはやめて欲しいわ……二人くらいなら分かるけど)」
のあ「(でも……そういう時こそ、他人とお近づきになれるチャンスよ。次こそ、なんとか頑張って相席くらいは……!)」ムシャムシャ
のあ「……」
のあ「(ち、違うんだから。『コレ』は、席が無かったからで……)」
のあ「(友達がいないワケじゃないんだから……っ)」モグモグ
────
──────
【???】
のあ「(ハァ……)」モグモグ
のあ「(アイドルとして活動を始めて、そろそろ2ヶ月くらいね)」
のあ「(来る日も来る日もレッスンで、たまに写真のモデルと……あと近々エキストラの仕事もあるとか)」パクッ
のあ「(CDデビューの話もあったわね。プロデューサーは喜んでいたけど、正直私に務まるか不安だわ……)」
のあ「……」ムシャムシャ
のあ「(不安と言えば……何より人間関係かな)」
のあ「(今の所、まともに付き合いがあったと言えば真奈美さんと美優さんだけ)」モグモグ
のあ「(色んな子と仲良く友達になりたいのに……ひょっとして私、避けられてる?)」
のあ「(表情が固いせいかしら……でも笑顔は苦手だし)」
のあ「(周囲から話しかけてきてくれたらラッキーなんだけど、でもそれはそれで緊張するなぁ)」
のあ「(私から積極的にアプローチを掛ける? いや、でも、そんなに話題の引き出しは多い方じゃないし……)」
のあ「…………」パクッ
のあ「(……まあ)」
のあ「(『今日』は仕方ないかな。どこも『席』がいっぱいだったし)」
のあ「(1テーブルに4つイスがあるのに、一人で占領するのはやめて欲しいわ……二人くらいなら分かるけど)」
のあ「(でも……そういう時こそ、他人とお近づきになれるチャンスよ。次こそ、なんとか頑張って相席くらいは……!)」ムシャムシャ
のあ「……」
のあ「(ち、違うんだから。『コレ』は、席が無かったからで……)」
のあ「(友達がいないワケじゃないんだから……っ)」モグモグ
34: ☆2/3 2016/06/23(木) 22:54:10.94 ID:Txs7ah4c0
のあ「(それにしても……)」モグモグ
のあ「(この事務所は仲良くなりたい子が多すぎるわ。猫のようにキュートな前川みくちゃんとお話ししてみたい……まだ会ったことないけど)」
のあ「(それに、神崎蘭子ちゃん)」
のあ「(西洋のお人形さんのように可愛い蘭子ちゃんとお友達になりたい。この前は怖がらせちゃったし)」
のあ「(でも歳はひと回り下なのに、二人とも私より遥かに有名で何もかもが格上)」ムシャムシャ
のあ「(すごいなぁ。そんな子達と一緒の事務所で活動できること自体に感謝しないと)」
のあ「(あぁ……蘭子ちゃん)」パクッ
のあ「……」モグモグ
のあ「……」ゴクン
のあ「(このお弁当にも飽きて来たわね……。それにプロデューサーは、ダイエットの必要はないと言ってくれてたし)」
のあ「(……ダイエット、そろそろやめようかな)」
のあ「……」ムシャムシャ
トコトコトコ…
───キィ…
蘭子「~~…♪」スッ
のあ「!!!!!」
蘭子「ッッッ!?」ビクッ!
のあ「」ピシィッ
蘭子「エッ!? え、えァ……た、高峯サン……!?」
蘭子「(……っ!!?)」クルッ!
【女子トイレ】
蘭子「───ぁっ…」
のあ「ぁっ……」
35: ☆3/3 2016/06/23(木) 22:55:05.36 ID:Txs7ah4c0
蘭子「コ……孤高なる、せ、聖泉の女神……っ」【訳:た、高峯さん……】
のあ「……っ」
蘭子「な、ナンデ……こ、コンナトコロで……」ガクガク
蘭子「オ、お弁当を……オ、オォ……!?」ガクガクガク
のあ「チ……違ッ……、こ、コレは……!」
のあ「ま、マイブーム……」
蘭子「ヒッ!!」
蘭子「アヒッ……、す、すみま………ぁぅうわあああァァーーーーーっっっ!!」ダッ!
ガチャ! バタン!
タタタタタタタタ! ドテッ!
のあ「………………」
のあ「……………………」
のあ「…………………………」
━━━━5分後━━━━
【休憩室】
美優「ぷ、プロデューサーさんっ!」バンッ!
P「ん……?」
P「どうしました、美優さん……そんなに慌てて?」
美優「はぁ、はぁっ……、ら、蘭子ちゃんがっ!」
美優「蘭子ちゃんが女子トイレの近くで、立ったまま気絶してます!!」
美優「天を仰いで、まるで放心したかのように……!」
P「!?」
P「す、すぐ行きますッ! 一体何が……!?」バタバタ
──────
────
──
41: ☆① 2016/06/23(木) 23:33:27.59 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【事務所】
愛海「……うぅん」
P「(……?)」カタカタカタ
愛海「…………」
P「……」カタッ
愛海「ハァ……」
P「(……)」
愛海「………高峯さんのお山を」
愛海「………しこたま●●たい」
愛海「……ハァー」
P「ハァー。じゃない」
P「愛海にしては珍しく、憂鬱で晴れない表情で物思いに耽ってると思えば、当たり前のように不埒な妄想をしやがって」
P「俺の少しの心配と時間を返してくれ」
愛海「そりゃあ、あたしだって悩み事の一つや二つもあるよ」
P「さっきの台詞が無かったらケアの一つでもしてやったよ」
P「この期に及んで何を言うんだ、お前は……」
────
──────
【事務所】
愛海「……うぅん」
P「(……?)」カタカタカタ
愛海「…………」
P「……」カタッ
愛海「ハァ……」
P「(……)」
愛海「………高峯さんのお山を」
愛海「………しこたま●●たい」
愛海「……ハァー」
P「ハァー。じゃない」
P「愛海にしては珍しく、憂鬱で晴れない表情で物思いに耽ってると思えば、当たり前のように不埒な妄想をしやがって」
P「俺の少しの心配と時間を返してくれ」
愛海「そりゃあ、あたしだって悩み事の一つや二つもあるよ」
P「さっきの台詞が無かったらケアの一つでもしてやったよ」
P「この期に及んで何を言うんだ、お前は……」
42: ☆② 2016/06/23(木) 23:35:26.63 ID:Txs7ah4c0
愛海「いや、違うんですよダンナ」
P「何が?」
愛海「この前ね? 高峯さんのエクセレントなお山を求め、彼女にズイっと迫ったわけですよ、実際」
P「……」
P「愛海、大丈夫だったか? ハイキックとかされなかったか?」
愛海「いやだなぁ。そんな暴力的な人じゃないでしょー」
P「ううむ……俺もまだあの人の性格は掴みかねている」
P「そんな無礼な事をした場合、笑ってジョークで許してくれるのか、それとも軽蔑の眼差しを向けられ無視されるのか、それとも問答無用でぶっ飛ばされるのか」
愛海「まあ、正直あたしも後者二つを覚悟してたんだけどね?」
愛海「クールで淡泊な人だから……まあ無言でスルーされるのが関の山と思ったんだけど……」
~~~~~~~~~~
のあ「ヒッ……!」
のあ「や、やめて……っ」
~~~~~~~~~~
P「……」
愛海「彼女の肩をぽんと叩いて、欲望に塗れた表情でワキワキしてたらさ……」
愛海「か細い声で悲鳴を上げて、変質者に壁際に追い込まれたひ弱な女子高生みたいに、プルプルと縮こまっちゃって」
愛海「拍子抜けと言うか……なんか悪い事してるような気持ちになっちゃってねー……」ハァ
P「変質者と言うのは当たらずとも遠からずだけどな」
愛海「こんな罪悪感に苛まれるくらいなら、いっそ一思いにガバッとヤっちゃえばよかった」
愛海「あれは、本当に高峯のあさんだったのかなぁ……?」
43: ☆③ 2016/06/23(木) 23:37:10.21 ID:Txs7ah4c0
愛海「でさ、その後ね?」
愛海「流石にそんな怯える子羊のような人を襲うワケに行かないからさ……」
愛海「土下座して、素直にお願いしたんだよね」
P「何がお前をそこまで駆り立てるんだ……」
P「というか、引き下がれよ素直に。どういう譲歩だよ」
~~~~~~~~~~
『お願いします……っ! 女性のぬくもりが欲しいのです!!』
『後生です、あたしに……生まれた意味を下さいっ!!』
のあ「……っ」
のあ「ご、ご両親は……」
『います!』
のあ「……」
~~~~~~~~~~
愛海「両親の愛情はじゅうぶん受けて育ったけどさ?」
愛海「でも、温かさを求めるのは、人間の性だよね? ね?」
愛海「仕方ないよね?」
P「(両親の愛情をどんな形で受けたら、こんな子に育つんだろうなぁ……)」
P「……というか、違うぞ愛海。それ多分、親の沽券の心配をしてくれているんだと思うぞ」
愛海「それでも、私の事を訝しげにじーっと見てくるから……」
愛海「もう……、とっておきのダメ押しと言わんばかりと、あたしはこう言ったよ」
~~~~~~~~~~
『ひ……!』
『ひと●●で、5千ッ!!』
~~~~~~~~~~
P「(なんか聞いてて情けなくなってきた……)」
愛海「でさ、でさでさ? そしたら高峯さん、何て言ったと思う?」
P「うん?」
44: ☆④ 2016/06/23(木) 23:38:38.38 ID:Txs7ah4c0
~~~~~~~~~~
のあ「ッ……?!」
のあ「~~~っ…………!!」
のあ「よ、48000円なら…………」
『(……!?)』
~~~~~~~~~~
愛海「いやぁ、予想外の返答だったなー」
P「な、何でそんな微妙に手が届きそうな額を……??」
愛海「もうっ、生殺しですよ! ホント!」
愛海「いきなりカウンターを返されたから……戸惑っているうちに、高峯さん行っちゃった」
愛海「でも、正直揺らいだなぁ……」
愛海「今度からは、財布に五万くらい入れとこーっと♪」
P「ご、五万か……」
愛海「おっ? なになに、興味持っちゃった?」
P「ち、違うって!」
P「……ハァ。もういい」
P「暇潰しにはなったよ、その妄想。さぁて、もう一仕事するか」
愛海「もうっ! これは純然たるジジツで、妄想じゃないよ!」
P「あのなぁ、愛海? まだ新人とはいえ、周囲に『寡黙の女王』とまで言わしめる風貌の高峯のあが……」
P「そんな変な言動を取るわけないだろ?」
愛海「ま、まぁ……正直一番あたしが目と耳を疑ったよ。今でも別人だったんじゃないかなぁと思うくらいだし」
愛海「(う~ん……。まあ、いいや)」
愛海「(とりあえず、目標は5万かな。う、うぇへへ……♪ じゅるっ)」
━━━━━━━━━━
【高峯宅】
のあ「……」カシュ
のあ「………………」ゴクゴク
のあ「ぷはぁ」
のあ「……」
のあ「あー……」
のあ「歌丸引退かー……」ボリボリ
のあ「楽……三遊亭圓楽との貶し合いも、もう見納めなのね……」
のあ「……ゲフっ」
☆その①、終わり
──────
────
──
45: ☆1/2 2016/06/23(木) 23:39:16.18 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【すき家】
店員「はい、チーズ牛丼並とサラダですね。お待ち下さい」
のあ「(……)」
のあ「(……)」ゴクゴク
のあ「(あぁ……水が美味しい。きっと美味しい水だわ)」
のあ「……」
のあ「………」
のあ「…………」
のあ「(すき家って、初めて来たけれど……)」
のあ「(…………)」
のあ「(……なんだろう。まるでテンションが上がらない)」
────
──────
【すき家】
店員「はい、チーズ牛丼並とサラダですね。お待ち下さい」
のあ「(……)」
のあ「(……)」ゴクゴク
のあ「(あぁ……水が美味しい。きっと美味しい水だわ)」
のあ「……」
のあ「………」
のあ「…………」
のあ「(すき家って、初めて来たけれど……)」
のあ「(…………)」
のあ「(……なんだろう。まるでテンションが上がらない)」
46: ☆2/2 2016/06/23(木) 23:40:04.39 ID:Txs7ah4c0
のあ「(高菜とかチーズとかオクラとか大根おろしとか、ゴチャゴチャと雑多に乗ってて……メニューを見てもあまり食欲がそそられない)」
のあ「(本当に美味しいの? 胸を張って味に自信があると言えるの?)」
のあ「(広告宣伝で勢いがあるように見えるけど、非情のワンオペや異常な強盗件数など黒い噂は絶えないし)」
のあ「(やっぱり牛丼は牛丼一筋の吉野家が一番かな。ふふふっ)」
のあ「(……)」カラン
店員「おまたせしました、チーズ豚丼並とサラダです」コトッ
店員「ごゆっくりドウゾー」
のあ「(……)」
のあ「(このゴチャゴチャした牛丼……まるで私みたい)」カチャ
のあ「(色々な具材をなりふり構わずテキトーにトッピングするこの無駄な足掻きのような牛丼を売り出し、悪戦苦闘するすき家に異常な親近感を覚える)」
のあ「(人付き合いの下手さを『寡黙』と揶揄されて……。『女王』なんて皮肉なネーミングで弄ばれて……)」
のあ「(でもなんかちょっと周りにウケてるから、変にイメージを崩さないように必死に取り繕って、偽って……)」
のあ「(路線もぶれぶれで、確固たる信念や目標も無く、ダラダラとアイドル活動を続けて……)」
のあ「……フッ」ニヤリ
のあ「(やっぱり私は、吉野家の珠玉の牛丼にはなれないんだわ。あくの強いチーズで味をごまかして騙し騙し売っていくような、すき家の牛丼がお似合いなんだわ……)」モグモグ
のあ「……」モグモグ
のあ「…………」モグモグ
のあ「(……ハッ!?)」
のあ「ぉ、おいし…ぃ……!?」モグモグ
のあ「(美味しいっ! 絶対に合わない取り合わせだと思ったけど、でも食べてみると……!)」
のあ「(こう、なんか…………、こう……)」モグモグ
のあ「(チーズの風味と、牛肉が、こう…………うまい具合に……美味しい感じに…………)」モグモグ
のあ「(………とにかくイケるわ! ゴチャっとした見た目で敬遠してたけど、なかなか美味しいわ、すき家!)」
のあ「(要は見た目じゃない。大切なのは中身なんだ。ひょっとすると、まだ私にも隠れた魅力が……!)」
のあ「(あぁ、美味しい……人生のような味がする……)」モグモグ
店員「(うわ……なんだあの客。泣きながら一心不乱に飯をかき込んでる……)」
店員「(他のお客さんも凝視してるし……。変な客だなぁ)」
──────
────
──
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/23(木) 23:40:31.37 ID:Txs7ah4c0
51: ☆1/2 2016/06/23(木) 23:56:53.63 ID:Txs7ah4c0
──
────
──────
【事務所】
周子「プロデューサーさんやー?」
P「うん?」
周子「あのさ、今事務所でちょっと話題になってるあの」
周子「高峯のあさんについてだけどねー」ゴロン
P「高峯さん?」
周子「どーゆう印象をお持ちで?」
P「印象……そうだなぁ」
P「なんていうか、カリスマ的なオーラを持ってる人だよな」
P「偉才な雰囲気と言うか……。第一印象で『タダ者じゃない!』ってハッキリ伝わるよ」
周子「ほほう?」
P「端正な顔立ちでスタイルも良くて、まさにクールビューティーを体現したような人だけど……」
P「その実、仕事に向かい合う姿勢はいつも勤勉・真摯で、色々な方面から吸収しようというハングリー精神で、努力を怠らない真面目な人だと思う」
周子「ハートは静かに燃えている、ってヤツ?」
P「あの人は絶対、近々大きな波を巻き起こすと思うんだ。俺もその力添えが出来れば……」
周子「大層な褒めっぷりだねー。周子ちゃん、妬いちゃうよ?」
P「周子もな、少し見習ってほしいもんだよ。初心忘るべからず……ってね」
周子「んー……まあ見習うも何も、色々知ってるし」
P「?」
周子「従妹やし」
P「…………」
周子「従妹やし」
P「……なに?」
周子「従妹」
P「誰が?」
周子「ん」クイッ
P「周子が?」
周子「そー」
P「誰の?」
周子「高峯さんの」
P「…………」
周子「ピースピース」
P「………………」
P「ヘ……」
周子「うわっ、面白い顔! ふふふ……」
周子「びっくりしたでしょ? んー?」
────
──────
【事務所】
周子「プロデューサーさんやー?」
P「うん?」
周子「あのさ、今事務所でちょっと話題になってるあの」
周子「高峯のあさんについてだけどねー」ゴロン
P「高峯さん?」
周子「どーゆう印象をお持ちで?」
P「印象……そうだなぁ」
P「なんていうか、カリスマ的なオーラを持ってる人だよな」
P「偉才な雰囲気と言うか……。第一印象で『タダ者じゃない!』ってハッキリ伝わるよ」
周子「ほほう?」
P「端正な顔立ちでスタイルも良くて、まさにクールビューティーを体現したような人だけど……」
P「その実、仕事に向かい合う姿勢はいつも勤勉・真摯で、色々な方面から吸収しようというハングリー精神で、努力を怠らない真面目な人だと思う」
周子「ハートは静かに燃えている、ってヤツ?」
P「あの人は絶対、近々大きな波を巻き起こすと思うんだ。俺もその力添えが出来れば……」
周子「大層な褒めっぷりだねー。周子ちゃん、妬いちゃうよ?」
P「周子もな、少し見習ってほしいもんだよ。初心忘るべからず……ってね」
周子「んー……まあ見習うも何も、色々知ってるし」
P「?」
周子「従妹やし」
P「…………」
周子「従妹やし」
P「……なに?」
周子「従妹」
P「誰が?」
周子「ん」クイッ
P「周子が?」
周子「そー」
P「誰の?」
周子「高峯さんの」
P「…………」
周子「ピースピース」
P「………………」
P「ヘ……」
周子「うわっ、面白い顔! ふふふ……」
周子「びっくりしたでしょ? んー?」
56: ☆2/2 2016/06/24(金) 00:35:13.57 ID:XfYOBRlg0
P「う、嘘だ!!」ガタッ!
周子「似てるでしょ、髪の色とか?」
P「そ、ソレ染めてるんだろ?」
周子「んー……じゃあ目元とか?」
P「ま、まあ……似てると言えば似てる気もしないでもないが……」
周子「父方の叔父のとこの一人娘でね、高峯さん」
周子「でも、高峯さんはね。プロデューサーが考えてるスーコーな像より、遥かにすっごいユルい人だよ」
P「ゆ、ユルい……?」
周子「好きな食べ物はジャンクフードで、インドア派の趣味多数で、性格は極度の人見知りで……」
周子「高校デビューに失敗してボッチになったり、デパートの試食コーナーを同じ向きで10往復とかしたりするし……」
周子「あとは───」
P「ま……、待てッ!」ダッ!
P「も、もういいから! やめたげてっ!!」ガバッ!
周子「───もがッ!」
P「本人のいない所で、黒歴史を公にするのは良くないから! そういうプライベートな部分は第三者が話すとロクなことないから!!」
P「(というか、聞くのが畏れ多い……っ!)」バタバタ!
周子「む───、ぷはぁっ!」ガシッ
周子「あー苦しかった……。冗談だよ、ジョーダン」
P「へっ?」
周子「もー。平気でそーいうの信じちゃあかんよ、全部ウソだから」
P「……い、従妹って所からか?」
周子「……んー……」
周子「ん」コクン
P「な、何でそんな下らない嘘なんか……」
周子「まーね。この間さ、ふと思い立って何の気なしに奏に言ってみたんだよね、もちろん冗談で」
周子「そしたらなんと……ね?? ふふっ♪」
P「……ど、どうなったんだ?」
周子「ふふふ……プロデューサーさんや?」
周子「……おなかすいたーん♪ 話の続きは、シューコちゃんに美味しいものを献上してからねー♪」タタタタ…
P「……」
P「(くっそ……気になる)」スタスタ
━━━━━━━━━━
【高峯宅】
のあ「……」ピッピッ
のあ「…………」
のあ「あっ……ス、すみません……注文を……ハイ」
のあ「厚切テリヤキチキンのMサイズと……はい、コカコーラ・ゼロで……」
のあ「ア……は、はい。初めてです、注文…………はい、住所……?」
──────
────
──
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/24(金) 00:36:03.88 ID:XfYOBRlg0
今日はここまでです。
全体の1/3終了です。
今回はほのぼのとした日常みたいなカンジで書ければ良いなと思ってます。
238: ☆1/3 2016/07/18(月) 05:04:22.96 ID:RKy7ycWI0
──
────
──────
【路上】
のあ「(路上販売かぁ……)」
のあ「……人の波の中にこうして佇むのも……、少し貴重な経験だわ」
P「すみません……」
P「ウチの規模ならこんな路上販売なんてのは稀で、本来ならCDショップにまずは販促を掛けるんですが……」
P「デビューが早かったのもあって、高峯さんの知名度も全くで……」
のあ「……貴方が気に病むことではないわ」
のあ「初めから大成している者などいない。経験を重ね成長するのはどの世界でも、どの生物でも変わらない真理ではないかしら……?」
P「……ええ。頑張りましょう」
P「……と」
P「本当に申し訳ないのですが、ええっと……。さっき連絡があって」
のあ「?」
P「俺、この後スグに別の現場に行かなきゃならなくなって、代わりのちひろさんが来てくれるまで……」
P「少しの間、高峯さん一人でやってて貰えます? 路上販売」
のあ「(!?)」
────
──────
【路上】
のあ「(路上販売かぁ……)」
のあ「……人の波の中にこうして佇むのも……、少し貴重な経験だわ」
P「すみません……」
P「ウチの規模ならこんな路上販売なんてのは稀で、本来ならCDショップにまずは販促を掛けるんですが……」
P「デビューが早かったのもあって、高峯さんの知名度も全くで……」
のあ「……貴方が気に病むことではないわ」
のあ「初めから大成している者などいない。経験を重ね成長するのはどの世界でも、どの生物でも変わらない真理ではないかしら……?」
P「……ええ。頑張りましょう」
P「……と」
P「本当に申し訳ないのですが、ええっと……。さっき連絡があって」
のあ「?」
P「俺、この後スグに別の現場に行かなきゃならなくなって、代わりのちひろさんが来てくれるまで……」
P「少しの間、高峯さん一人でやってて貰えます? 路上販売」
のあ「(!?)」
239: ☆2/3 2016/07/18(月) 05:05:55.46 ID:RKy7ycWI0
のあ「(い、一緒じゃないの!?)」
P「もし不安なら、ちひろさんが来るまで待機して頂いても結構です。彼女なら俺より売り込みも上手そうですし」
のあ「……いいわ。ま、任せて頂戴……」
P「本当にすみません。この埋め合わせは今度、必ず……」
━━━10分後━━━
のあ「フゥー……! ハァー……ッ!」プルプル
のあ「し、シーデー………ど、どうですかー……??」
通行人A「?」ピタッ
のあ「ヘッ……あ、な、ナンでもないです……」
のあ「(こ、好奇の視線に曝されている……帰りたいっ……帰って漫画読みたいっ……!)」
のあ「(い、いやでもこれ仕事だし……プロデューサーと約束したし……頑張らないと……!)」
のあ「……」
のあ「(……でも、初のライブの時の緊張感と嘔気は、こんなものじゃなかった)」
のあ「(本番の記憶は全然ない。洞口のダンプを頭に喰らったみたいにすっぽり記憶が抜け落ちて……)」
のあ「(アイドルとしての初舞台。失敗したらそれはそれで次の励みになるのに、それすらも、何にも経験として獲る物が無かった)」
のあ「……」
のあ「(……あのライブと比べてみたら、何だか少し落ち着いてきたわ。よし)」
のあ「(このままじゃダメよ。勇気を振り絞って、自分を変えないと!)」
のあ「(でも……路上販売ってどうやれば上手に捌けるのかしら? イマイチ要領が……)」
のあ「っ!」ピーン!
のあ「(そうだ! 昔に短期のバイトで、ティッシュ配りやビラ配りをやったことあったっけ)」
のあ「(恥ずかしくて全然声も出せなかったけど、その時に一緒だった人が教えてくれたコツを思い出して……)」
のあ「……」
通行人B「……」スタスタ
のあ「(場所は信号付近で、あまりジロジロ見ずに目線を下げて、歩いてくる人の手元を狙って、……!)」ギュッ
のあ「(すばやく、今っ!!)」スッ
のあ「……どうぞ」
通行人B「……!」
通行人B「ん」ガシッ
のあ「!!」
のあ「(や、やった! 渡せたっ!!)」ドキドキ
のあ「(か、確実に今わたしは何かの階段を一歩上がれた気がする! 成長をこの手で実感した……!)」
のあ「(よしっ。この調子で……)」スッ
通行人B「(……???)」
240: ☆3/3 2016/07/18(月) 05:11:39.56 ID:RKy7ycWI0
━━━1時間後━━━
【別場所 撮影待機所】
小梅「Pさん……ご、ごめんなさい」
P「小梅が謝る必要は無いだろ? お向かいさんのスケジュール調整ミスさ」
小梅「う、うん……」
P「まあ、現場じゃ割と日常茶飯事だからな。にしても、クランクイン初日からこれじゃあ不安だな」
P「心配しなくていいぞ。先方にはそれとなく俺から───」
───ピピピピッ♪
P「───ん!」スッ
P「電話……高峯さんから? 何だ、一体どうしたんだろう」
小梅「高峯、さんって……」
小梅「あっ……、お、同じ事務所で、あの、銀髪で……わ、私の映画にもエキストラで出てくれる人??」
P「ああ。ちょっと今出るから」ピッ
P「ンンっ……。はい、Pです」
『……もしもし』
P「高峯さん? どうしましたか?」
『……取り敢えず、CD……全て捌いたのだけれど』
P「(───!?)」
P「さ、捌いた!? 箱にあった100枚分を……えっ、もうですか!?」
『……ええ』
P「す、すごいですよ高峯さんっ! とりあえずお疲れ様です、ちひろさんも一緒ですか?」
『……いいえ』
P「分かりました。じゃあ彼女が来るまで、お金はなるべく人目にさらさないようにして下さい」
『……………お金?』
P「はい、売上金です。いやー、それにしてもまさか1時間で全部売れるとは……前代未聞と言いますか、流石は高峯さんと言いますか」
『あっ……!』
『ア、アァ-………』
P「? 高峯さん? ………あれ、切れた」
小梅「ど、どうしたの?」
P「安心したよ。一か八かの彼女のデビューシングル、見事に反響があったそうだ」
小梅「路上販売……完売した、の?」
P「ああ、それもこんな短時間でだ。こりゃまた一つ逸話が出来たな、やっぱり見込んだ通り……いや、それ以上に凄い人だよ彼女は」
小梅「す、すごい、ね……。話したことないけど、どんな人なの……?」
P「んー、どんな人と言われると何とも答えづらいな」
P「まあ、撮影の時一緒だから実際に話してみたらいいんじゃないか? 怖い人じゃないし、大丈夫だよ」
小梅「そうなんだ……、うん、そうする」
小梅「え、えへへ……楽しみ……っ」
──────
────
──
【別場所 撮影待機所】
小梅「Pさん……ご、ごめんなさい」
P「小梅が謝る必要は無いだろ? お向かいさんのスケジュール調整ミスさ」
小梅「う、うん……」
P「まあ、現場じゃ割と日常茶飯事だからな。にしても、クランクイン初日からこれじゃあ不安だな」
P「心配しなくていいぞ。先方にはそれとなく俺から───」
───ピピピピッ♪
P「───ん!」スッ
P「電話……高峯さんから? 何だ、一体どうしたんだろう」
小梅「高峯、さんって……」
小梅「あっ……、お、同じ事務所で、あの、銀髪で……わ、私の映画にもエキストラで出てくれる人??」
P「ああ。ちょっと今出るから」ピッ
P「ンンっ……。はい、Pです」
『……もしもし』
P「高峯さん? どうしましたか?」
『……取り敢えず、CD……全て捌いたのだけれど』
P「(───!?)」
P「さ、捌いた!? 箱にあった100枚分を……えっ、もうですか!?」
『……ええ』
P「す、すごいですよ高峯さんっ! とりあえずお疲れ様です、ちひろさんも一緒ですか?」
『……いいえ』
P「分かりました。じゃあ彼女が来るまで、お金はなるべく人目にさらさないようにして下さい」
『……………お金?』
P「はい、売上金です。いやー、それにしてもまさか1時間で全部売れるとは……前代未聞と言いますか、流石は高峯さんと言いますか」
『あっ……!』
『ア、アァ-………』
P「? 高峯さん? ………あれ、切れた」
小梅「ど、どうしたの?」
P「安心したよ。一か八かの彼女のデビューシングル、見事に反響があったそうだ」
小梅「路上販売……完売した、の?」
P「ああ、それもこんな短時間でだ。こりゃまた一つ逸話が出来たな、やっぱり見込んだ通り……いや、それ以上に凄い人だよ彼女は」
小梅「す、すごい、ね……。話したことないけど、どんな人なの……?」
P「んー、どんな人と言われると何とも答えづらいな」
P「まあ、撮影の時一緒だから実際に話してみたらいいんじゃないか? 怖い人じゃないし、大丈夫だよ」
小梅「そうなんだ……、うん、そうする」
小梅「え、えへへ……楽しみ……っ」
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272: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 22:36:52.15 ID:dMEr4UXu0
──
────
──────
【事務所 休憩室】
のあ「………………」ジー
紗南「よーっし! 5回連続いっちばーんっ♪」
美玲「ああぁっ!! もうッ!!」ガタン!
美玲「いま途中までウチが一位だったのにぃーーッ!」
紗枝「美玲はん、またべったこで負けてしもたなぁ」
紗南「美玲ちゃんさ、結構ゲーム苦手なの?」
紗枝「ふふふ……♪ あんまりやったことあらへんけど楽しいなぁ、この『まりおなんとか』とかいうげーむ」
紗南「まさか事務所にゲームが置いてあるなんて思わなかったよね。暇つぶし用かな? 誰かの忘れ物っぽくもないし」
紗枝「そや、周子はんに今度頼んで付き合っても貰お……♪」
美玲「うぅ~……」
美玲「なんかウチばっか負けたり酷い目に遭ったり、オマケに初心者の紗枝より今のところ成績悪いし……!」
美玲「くやしい! くやしいぞッ!!」バシバシ!
紗南「痛っ!? ちょ、爪が地味に痛いからやめ……っ!」
美玲「もう一勝負だ! お願いだからっ!」バシバシ!
紗枝「(涙目でなれあって、かわええなぁ、美玲はん。せやなぁ……)」
紗枝「まぁまぁ美玲はん、仲良おせなね。こら遊びなんやし……」
紗南「……」
美玲「……」
紗枝「……」
のあ「………………」ジー
美玲「(な、なあ……)」オロオロ
美玲「(さっきから、ずっと視線を感じないか……?)」
紗南「(ウン、感じる。なんかロックオンされてるみたいな……妙な緊張感が)」
紗枝「……あ。そや、高峯はん?」
のあ「……」ピクッ
紗南「(う、動いた!?)」ドキドキ
美玲「(こ、怖っ……!)」ドキドキ
紗枝「さきほどからずっと見はってますけど、よかったらうちらと一緒にこのげえむしまへんか??」ニコッ
紗南「(!?)」
紗枝「ふふふっ♪ こうゆうもんは、みんなでやったほうがええと思おりません?」
美玲「(ひ、ひとまわり年上で、更にあの『高峯のあ』に声かけるなんて勇気あるなぁ、紗枝は)」
のあ「…………」
────
──────
【事務所 休憩室】
のあ「………………」ジー
紗南「よーっし! 5回連続いっちばーんっ♪」
美玲「ああぁっ!! もうッ!!」ガタン!
美玲「いま途中までウチが一位だったのにぃーーッ!」
紗枝「美玲はん、またべったこで負けてしもたなぁ」
紗南「美玲ちゃんさ、結構ゲーム苦手なの?」
紗枝「ふふふ……♪ あんまりやったことあらへんけど楽しいなぁ、この『まりおなんとか』とかいうげーむ」
紗南「まさか事務所にゲームが置いてあるなんて思わなかったよね。暇つぶし用かな? 誰かの忘れ物っぽくもないし」
紗枝「そや、周子はんに今度頼んで付き合っても貰お……♪」
美玲「うぅ~……」
美玲「なんかウチばっか負けたり酷い目に遭ったり、オマケに初心者の紗枝より今のところ成績悪いし……!」
美玲「くやしい! くやしいぞッ!!」バシバシ!
紗南「痛っ!? ちょ、爪が地味に痛いからやめ……っ!」
美玲「もう一勝負だ! お願いだからっ!」バシバシ!
紗枝「(涙目でなれあって、かわええなぁ、美玲はん。せやなぁ……)」
紗枝「まぁまぁ美玲はん、仲良おせなね。こら遊びなんやし……」
紗南「……」
美玲「……」
紗枝「……」
のあ「………………」ジー
美玲「(な、なあ……)」オロオロ
美玲「(さっきから、ずっと視線を感じないか……?)」
紗南「(ウン、感じる。なんかロックオンされてるみたいな……妙な緊張感が)」
紗枝「……あ。そや、高峯はん?」
のあ「……」ピクッ
紗南「(う、動いた!?)」ドキドキ
美玲「(こ、怖っ……!)」ドキドキ
紗枝「さきほどからずっと見はってますけど、よかったらうちらと一緒にこのげえむしまへんか??」ニコッ
紗南「(!?)」
紗枝「ふふふっ♪ こうゆうもんは、みんなでやったほうがええと思おりません?」
美玲「(ひ、ひとまわり年上で、更にあの『高峯のあ』に声かけるなんて勇気あるなぁ、紗枝は)」
のあ「…………」
273: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 22:39:31.34 ID:dMEr4UXu0
━━━1時間後━━━
美玲「やったぞっ! またウチが一番だっ♪」
紗南「あぅ……」
紗枝「美玲はん、調子ええなぁ」
のあ「……」
のあ「……、じゃあ……、私はこれで」スッ
紗枝「あっ、なにか用事どすか?」
のあ「……ええ」スタスタ
紗枝「ほな、お疲れ様どす」
美玲&紗南「おつかれさまでーすっ」
のあ「……」
ガチャ バタン
紗南「なぁんか……」
美玲「案外、ヘタだったな。のあ」
紗南「てっきり、あんな不可思議な服で機械的なしゃべり方だし、ターミネーターとかガンダムとか言われてるし、デジタルやゲームには強そうかと思ったけど……」
美玲「ほとんどビリだったぞ。というか、のあが入ってからウチも調子上がったし」
紗南「そりゃあ、高峯さんがゲームを掻き乱してたからね……予想外の方向から妨害アイテムが飛んでくるし。しかもほとんどあたしに被弾する」
紗南「エンターテイナーっていうやつかなぁ?」
紗枝「ちゃいます、紗南はん」
紗南「??」
紗枝「ふふっ……。あーゆうのを、『大人』ってゆうんよ」
紗枝「(……美玲はんが負けてばっかりで駄々こねてた所も見てはったからやろうか……)」
紗枝「(わざと自分が負けて、美玲はんの気を逸らしてあげたんやなぁ)」
紗枝「(はー……ああいうのをしれっとしはるなんて、ちょっとかっこええわぁー……)」
紗南「ねえねえ、もう一回やらない? リベンジで、もっかい!」
美玲「ムキになって、紗南は子供だなぁ。まあ、受けて立つぞ……ふふん♪」
紗枝「……」
━━━━━━━━━━
【女子トイレ】
のあ「ハー、ハァー……」
のあ「く……、くっそ……!」
のあ「マリオカート、自信あったのに……っ、レースでもバトルでも、年下3人にボロ負けっ……」
のあ「はーっ、……ハァ」
のあ「……自信、あったのに……くっそ……」グスン
──────
────
──
274: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 22:42:07.12 ID:dMEr4UXu0
──
────
──────
【撮影所】
のあ「(はー、終わった終わった)」
のあ「(エキストラの仕事、案外楽しかった)」
のあ「(ふふっ。主演の白坂小梅ちゃんとお話しできたし、今度なんかの映画を見る約束もしたし。割と有名な芸能人の写真もこっそり撮ったし)」
のあ「(メイクも落としたし、さあ帰ろう。帰ってビール飲も)」スタスタ
小梅「み、みなさん……あ、あのっ……」スッ
P「(ほら小梅、もっと大きな声で。がんばれ)」
スタッフA「?」
役者A「あっ、小梅ちゃん、なにその箱のお菓子? ケーキ?」
小梅「は、はいっ。フィナンシェ……です、近くのお店で、有名だったので……」
小梅「じ、事務所の先輩に場所を聞いて……、曰く、て、鉄板だそうで……」
小梅「お、おいしいので、よければ……」
役者B「わあっ、ホント? じゃあ一個もらっちゃお♪」
スタッフB「ケータリング用意してくれたんだ、しかもこんなに沢山。なんか悪いことしちゃったな……」
P「いえいえ、彼女のほんの気持ちです。皆さんもどうぞ」
役者A「へぇ、かわいらしい。小梅ちゃんもお菓子とかこういうの好きなの?」
小梅「は、はい。え、えへへ……♪」モジモジ
のあ「(───!!)」
のあ「(あ、あれは……っ!)」
のあ「(ケータリング! ケータリングってやつだわ、たしか噂に聞く……!)」
のあ「(舞台裏で、スタッフや出演者のために用意される食べ物やお菓子……出演者もたまに厚意で持参するという代物)」
のあ「(小梅ちゃんが用意したフィナンシェ……す、すごい食べたい。遠目から見てもすごい美味しそう)」
のあ「(でも、私なんて所詮エキストラだし、ていうかもう帰るし……ていうかあと一歩で出口だし、わざわざ戻るのも意地汚いというか、そことなく気が引ける……)」
のあ「(ぐ、くっ……!)」チラッチラッ
────
──────
【撮影所】
のあ「(はー、終わった終わった)」
のあ「(エキストラの仕事、案外楽しかった)」
のあ「(ふふっ。主演の白坂小梅ちゃんとお話しできたし、今度なんかの映画を見る約束もしたし。割と有名な芸能人の写真もこっそり撮ったし)」
のあ「(メイクも落としたし、さあ帰ろう。帰ってビール飲も)」スタスタ
小梅「み、みなさん……あ、あのっ……」スッ
P「(ほら小梅、もっと大きな声で。がんばれ)」
スタッフA「?」
役者A「あっ、小梅ちゃん、なにその箱のお菓子? ケーキ?」
小梅「は、はいっ。フィナンシェ……です、近くのお店で、有名だったので……」
小梅「じ、事務所の先輩に場所を聞いて……、曰く、て、鉄板だそうで……」
小梅「お、おいしいので、よければ……」
役者B「わあっ、ホント? じゃあ一個もらっちゃお♪」
スタッフB「ケータリング用意してくれたんだ、しかもこんなに沢山。なんか悪いことしちゃったな……」
P「いえいえ、彼女のほんの気持ちです。皆さんもどうぞ」
役者A「へぇ、かわいらしい。小梅ちゃんもお菓子とかこういうの好きなの?」
小梅「は、はい。え、えへへ……♪」モジモジ
のあ「(───!!)」
のあ「(あ、あれは……っ!)」
のあ「(ケータリング! ケータリングってやつだわ、たしか噂に聞く……!)」
のあ「(舞台裏で、スタッフや出演者のために用意される食べ物やお菓子……出演者もたまに厚意で持参するという代物)」
のあ「(小梅ちゃんが用意したフィナンシェ……す、すごい食べたい。遠目から見てもすごい美味しそう)」
のあ「(でも、私なんて所詮エキストラだし、ていうかもう帰るし……ていうかあと一歩で出口だし、わざわざ戻るのも意地汚いというか、そことなく気が引ける……)」
のあ「(ぐ、くっ……!)」チラッチラッ
275: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 22:44:35.98 ID:dMEr4UXu0
小梅「(……!)」
小梅「あっ! ……あの、Pさんっ……!」クイッ
P「どうした小梅? 急に俺の袖引っ張って」
小梅「あ、あの……っ、あっち……」チョイチョイ
P「ん? …………ん! よし、オッケー」
P「……オホン」
P「よければ、エキストラの皆さんもお菓子どうぞーーっ。数箱用意したので、まだまだありますよーーっ」
のあ「(───!!!!)」
エキストラA「えっ、なに?」
エキストラB「なんか差し入れだって。折角だし食べて帰ろ?」
エキストラC「あ、いいねー。さすがは白坂さんの事務所だね」
エキストラD「やっぱ大手はこういうところから違うなぁ。私も今度媚び売ろうっと」
のあ「……(ふふふっ……そうでしょう。かくいう私もあの事務所なのよ)」ニヤッ
───スタスタスタ
のあ「(………!?)」ギクッ
のあ「(し、しまった! エア会話に夢中で、一人取り残された……っ!!)」
のあ「(ひ、一人で行く勇気は微塵も無いの! だ、だれか戻って……っ!!)」
『わっ! すっごい美味しい……!』
『外はカリッっとしてて、中はフワッっと……おいしーこれっ!』
『バターの優しい味がするね。紅茶に合いそう』
『これ、どこで買ったの? 小梅ちゃん』
──ワイワイワイ
───ガヤガヤガヤ
のあ「(…………………………)」
小梅「(……)」
小梅「(……高峯さん、来ない……)」
P「(ど、どうしちゃったんだろ……出口のところに一人でずっと立って、血涙流して細目でこっち睨んでる……)」
P「(こ、怖ェ!)」ガクガク
小梅「(甘い物、嫌いだったのかなぁ……)」
小梅「(……残念)」
──────
────
──
277: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 22:46:39.11 ID:dMEr4UXu0
──
────
──────
【とあるLINE】
伊吹【小松の無茶振りシリーズ、その19】20:01
伊吹【キスを露骨に断られた時の奏の一言】20:02
伊吹【どうぞー】20:02
奏【ひっぱたくわよ】20:05
伊吹【そ、そんなグイグイ行くんスか?】20:07
奏【そういう意味じゃないってば……】20:08
奏【o( ̄^ ̄o)彡プイッ】
松永涼【……もっと生産的な話しようぜ】20:10
伊吹【LINEってこういうもんじゃん】20:15
松永涼【そうかなあ】20:18
奏【生産的な話、ね】20:19
白坂小梅+【じゃあ、映画の話しようよ】20:20
伊吹【じゃあ、恋バナしよう】20:20
白坂小梅+【アッ…(-ω-`;)ゞ】20:26
伊吹【(´・ω・`)ゴメン】20:26
松永涼【恋バナといってもねえ】20:27
松永涼【浮いた話なんてないぞ】20:28
奏【じゃあ、順番にしましょう。映画と恋愛話】20:28
松永涼【え】20:40
伊吹【えっ、乗り気? 奏が恋バナとは珍しい】20:41
伊吹【そして恐ろしい】20:42
奏【伊吹ちゃん】20:43
伊吹【ごめん】20:43
白坂小梅+【ヘ(゚∀゚ヘ) アヒャヒャ】20:45
奏【小梅ちゃん?】20:46
白坂小梅+【ごめんなさい】20:47
松永涼【波乱の予感が】20:49
────
──────
【とあるLINE】
伊吹【小松の無茶振りシリーズ、その19】20:01
伊吹【キスを露骨に断られた時の奏の一言】20:02
伊吹【どうぞー】20:02
奏【ひっぱたくわよ】20:05
伊吹【そ、そんなグイグイ行くんスか?】20:07
奏【そういう意味じゃないってば……】20:08
奏【o( ̄^ ̄o)彡プイッ】
松永涼【……もっと生産的な話しようぜ】20:10
伊吹【LINEってこういうもんじゃん】20:15
松永涼【そうかなあ】20:18
奏【生産的な話、ね】20:19
白坂小梅+【じゃあ、映画の話しようよ】20:20
伊吹【じゃあ、恋バナしよう】20:20
白坂小梅+【アッ…(-ω-`;)ゞ】20:26
伊吹【(´・ω・`)ゴメン】20:26
松永涼【恋バナといってもねえ】20:27
松永涼【浮いた話なんてないぞ】20:28
奏【じゃあ、順番にしましょう。映画と恋愛話】20:28
松永涼【え】20:40
伊吹【えっ、乗り気? 奏が恋バナとは珍しい】20:41
伊吹【そして恐ろしい】20:42
奏【伊吹ちゃん】20:43
伊吹【ごめん】20:43
白坂小梅+【ヘ(゚∀゚ヘ) アヒャヒャ】20:45
奏【小梅ちゃん?】20:46
白坂小梅+【ごめんなさい】20:47
松永涼【波乱の予感が】20:49
289: ☆2/3 死霊の盆踊り……ホラー映画の皮をかぶった何か。一見の価値あり ◆t3L.tyUuwk 2016/07/21(木) 22:53:51.67 ID:dMEr4UXu0
伊吹【映画といえば、このまえ高峯さんを誘った話】21:00
松永涼【前のホラー映画鑑賞会?】21:03
松永涼【まあまあだったな】21:04
松永涼【結構緊張したよ。でもなんか仲良くなれそうというか、良い意味でイメージが変わった気がする】21:07
白坂小梅+【(*゚▽゚)*。_。)ウンウン】21:09
松永涼【ただ、置き土産に『死霊の盆踊り』を置いてった時は目を疑ったぞ】21:14
白坂小梅+【(*≧∀≦)o_彡☆キャッキャッ】21:15
伊吹【結局観なかったね、ソレ。観るまでもないけど】21:18
奏【あの異次元ホラー映画?】21:18
奏【流石のセンスだわ、高峯さん】21:18
奏【彼女がチョイスしてくれたのに、何故観なかったの? 理解に苦しむわ】21:18
奏【たとえ観たことがあっても駄作として有名でも、初参加の彼女が折角選んでくれたのなら絶対観るべきそうするべき】21:18
松永涼【無茶言うなよ奏】21:25
伊吹【徹夜のシメにあの映画は拷問すぎるよ】21:28
松永涼【頭がイッちまうな。完全に】21:29
白坂小梅+【ε≡≡≡┏((┓_д_))┓】21:30
奏【ハァ……まったくこれだから伊吹ちゃんは。何のために普段から体力つけてるのよ】21:32
伊吹【おっと。戦争か?】21:33
松永涼【何事だ一体】21:35
奏【冗談よ、ごめんなさい。ちょっと言い過ぎた】21:37
奏【でも、今度は私も誘ってほしいな……って】21:38
白坂小梅+【じゃあ、次は女子寮で観ようよ、ね?】21:40
松永涼【お、いいね。じゃあ小梅の部屋で】21:43
白坂小梅+【イイヨォ━━(>∀<人)━━♪】21:44
伊吹【小梅ちゃんの部屋って案外はじめてな気がする。期待期待♪】21:47
奏【是非高峯さんも誘いましょう?】21:52
伊吹【さて、次は恋バナかな?】21:53
松永涼【( ̄ヘ ̄)チッ】21:59
伊吹【(# ゚Д゚) ムッカー】22:00
松永涼【浮いた話なんかないって】22:05
伊吹【じゃあ妄想するの!】22:06
松永涼【えー】22:07
奏【いいわよ】22:08
伊吹【(゚д゚ )】22:10
松永涼【(゚д゚ )】22:10
白坂小梅+【((((゚Д゚;)))】22:10
290: ☆2/3 死霊の盆踊り……ホラー映画の皮をかぶった何か。一見の価値あり ◆J6YZ.pnN0k 2016/07/21(木) 22:55:23.91 ID:dMEr4UXu0
伊吹【映画といえば、このまえ高峯さんを誘った話】21:00
松永涼【前のホラー映画鑑賞会?】21:03
松永涼【まあまあだったな】21:04
松永涼【結構緊張したよ。でもなんか仲良くなれそうというか、良い意味でイメージが変わった気がする】21:07
白坂小梅+【(*゚▽゚)*。_。)ウンウン】21:09
松永涼【ただ、置き土産に『死霊の盆踊り』を置いてった時は目を疑ったぞ】21:14
白坂小梅+【(*≧∀≦)o_彡☆キャッキャッ】21:15
伊吹【結局観なかったね、ソレ。観るまでもないけど】21:18
奏【あの異次元ホラー映画?】21:18
奏【流石のセンスだわ、高峯さん】21:18
奏【彼女がチョイスしてくれたのに、何故観なかったの? 理解に苦しむわ】21:18
奏【たとえ観たことがあっても駄作として有名でも、初参加の彼女が折角選んでくれたのなら絶対観るべきそうするべき】21:18
松永涼【無茶言うなよ奏】21:25
伊吹【徹夜のシメにあの映画は拷問すぎるよ】21:28
松永涼【頭がイッちまうな。完全に】21:29
白坂小梅+【ε≡≡≡┏((┓_д_))┓】21:30
奏【ハァ……まったくこれだから伊吹ちゃんは。何のために普段から体力つけてるのよ】21:32
伊吹【おっと。戦争か?】21:33
松永涼【何事だ一体】21:35
奏【冗談よ、ごめんなさい。ちょっと言い過ぎた】21:37
奏【でも、今度は私も誘ってほしいな……って】21:38
白坂小梅+【じゃあ、次は女子寮で観ようよ、ね?】21:40
松永涼【お、いいね。じゃあ小梅の部屋で】21:43
白坂小梅+【イイヨォ━━(>∀<人)━━♪】21:44
伊吹【小梅ちゃんの部屋って案外はじめてな気がする。期待期待♪】21:47
奏【是非高峯さんも誘いましょう?】21:52
伊吹【さて、次は恋バナかな?】21:53
松永涼【( ̄ヘ ̄)チッ】21:59
伊吹【(# ゚Д゚) ムッカー】22:00
松永涼【浮いた話なんかないって】22:05
伊吹【じゃあ妄想するの!】22:06
松永涼【えー】22:07
奏【いいわよ】22:08
伊吹【(゚д゚ )】22:10
松永涼【(゚д゚ )】22:10
白坂小梅+【((((゚Д゚;)))】22:10
298: ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:21:40.32 ID:dMEr4UXu0
伊吹【奏どしたの!?】22:11
奏【ど、どうもしないけど?】22:13
松永涼【恋愛事には興味ないんじゃなかったのか?】22:14
奏【恋愛映画が苦手なだけで、色恋沙汰は人並程度には関心はあるわよ】22:17
白坂小梅+【な、なにかあったの? 最近】22:17
奏【強いて言うなら……一つの出会いが】22:19
伊吹【おっ、一目惚れ的な?】22:20
伊吹【☆(*゚∀゚)=3】22:20
奏【そうね。惚れた、と言われるとちょっと違う気もするし】22:26
奏【恋愛、と言われるとそれも別なのかも】22:26
松永涼【なんだそれ】22:27
奏【敬愛、尊敬……憧れに似た感情というのが一番近いのかもしれない】22:30
伊吹【(・ω・`?)】22:30
白坂小梅+【誰のことだろう……】
奏【あの人の視線が私の心を捕えて離さない……、いいえ、私の網膜に、脳裏に離れないほどその眼はすべてを貫くように鋭く、衝撃的で】22:35
奏【あんな瞳を見たのは初めてだった。冷たく突き放すようで、でも逆に甘く誘うような、どこか蠱惑的な色を帯びて】22:36
伊吹【目と目が逢うー瞬間、ってやつ?】22:37
松永涼【それ歌な。他事務所の方の】22:37
白坂小梅+【視線で捕える……。妖女ゴーゴン?】22:38
松永涼【それC級ホラー映画】22:38
奏【うぅん……目と目が逢う。そうね、まあ確かに一目惚れってやつなのかな】22:42
奏【あの人と視線が合ったとき、高揚というか、思わず……こう……】22:42
奏【「あぁ……私、将来この人の子供を産むんだ」……って気持ちに】22:43
松永涼【…ぅぉぇっぷ
∧ ∧
〃⌒ ヽl|l)
/ rノ ;
Ο Ο_)*** 】22:55
伊吹【う、うわああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー】22:55
白坂小梅+【な、なに……怪談?】22:55
伊吹【かか、奏に悪霊が憑りついたああああぁァァァァァァァァ!!!】22:56
奏【し、失礼ね。あ、あくまで感情のたとえよ……】22:59
松永涼【想像妊娠以外に何があるんだよ】23:00
奏【は……はいはい、せ、生産的な話はおしまい。もう違う話しましょう】23:00
松永涼【いやぁ、ゾッとした。ホラー映画なんか目じゃない寒気だったよ】23:03
松永涼【ナイスジョーク】23:03
白坂小梅+【(´・ω・`)??】23:03
白坂小梅+【よくわかんない。小梅ちゃんに聞いてみよっ】2&:0+
伊吹【えっ!? う、うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!】23:05
奏【伊吹ちゃんうるさい】23:06
──────
────
──
奏【ど、どうもしないけど?】22:13
松永涼【恋愛事には興味ないんじゃなかったのか?】22:14
奏【恋愛映画が苦手なだけで、色恋沙汰は人並程度には関心はあるわよ】22:17
白坂小梅+【な、なにかあったの? 最近】22:17
奏【強いて言うなら……一つの出会いが】22:19
伊吹【おっ、一目惚れ的な?】22:20
伊吹【☆(*゚∀゚)=3】22:20
奏【そうね。惚れた、と言われるとちょっと違う気もするし】22:26
奏【恋愛、と言われるとそれも別なのかも】22:26
松永涼【なんだそれ】22:27
奏【敬愛、尊敬……憧れに似た感情というのが一番近いのかもしれない】22:30
伊吹【(・ω・`?)】22:30
白坂小梅+【誰のことだろう……】
奏【あの人の視線が私の心を捕えて離さない……、いいえ、私の網膜に、脳裏に離れないほどその眼はすべてを貫くように鋭く、衝撃的で】22:35
奏【あんな瞳を見たのは初めてだった。冷たく突き放すようで、でも逆に甘く誘うような、どこか蠱惑的な色を帯びて】22:36
伊吹【目と目が逢うー瞬間、ってやつ?】22:37
松永涼【それ歌な。他事務所の方の】22:37
白坂小梅+【視線で捕える……。妖女ゴーゴン?】22:38
松永涼【それC級ホラー映画】22:38
奏【うぅん……目と目が逢う。そうね、まあ確かに一目惚れってやつなのかな】22:42
奏【あの人と視線が合ったとき、高揚というか、思わず……こう……】22:42
奏【「あぁ……私、将来この人の子供を産むんだ」……って気持ちに】22:43
松永涼【…ぅぉぇっぷ
∧ ∧
〃⌒ ヽl|l)
/ rノ ;
Ο Ο_)*** 】22:55
伊吹【う、うわああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー】22:55
白坂小梅+【な、なに……怪談?】22:55
伊吹【かか、奏に悪霊が憑りついたああああぁァァァァァァァァ!!!】22:56
奏【し、失礼ね。あ、あくまで感情のたとえよ……】22:59
松永涼【想像妊娠以外に何があるんだよ】23:00
奏【は……はいはい、せ、生産的な話はおしまい。もう違う話しましょう】23:00
松永涼【いやぁ、ゾッとした。ホラー映画なんか目じゃない寒気だったよ】23:03
松永涼【ナイスジョーク】23:03
白坂小梅+【(´・ω・`)??】23:03
白坂小梅+【よくわかんない。小梅ちゃんに聞いてみよっ】2&:0+
伊吹【えっ!? う、うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!】23:05
奏【伊吹ちゃんうるさい】23:06
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308: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:23:46.25 ID:dMEr4UXu0
──
────
──────
【北海道 寿司屋】
みく「(ハァー、ハァー…………うぷっ!)」
みく「(まさか、あーにゃんとのあにゃんと一緒の地方お仕事で……最後に寿司屋に連れてかれるとは夢にも思わなかった)」
のあ「(……)」ジー
みく「(か、完全にのあにゃんの厚意だし……断るに断りきれず、この有り様……おぅ、おえっ……)」
みく「(はー、はーっ……、この魚の生臭いニオイも、キッツいぃ……!)」ゼエゼエ
のあ「…………さて」
みく「っ!」
のあ「……そろそろ、会計にしましょうか」
みく「(!!!!)」
みく「ほ、ホント!?」ガタッ
のあ「……」
のあ「ナ……何故嬉しそうなのかしら?」
みく「(!?)」
みく「い、いや……それはまあ……」
みく「……お、美味しかったし、満足感で……その……っ」
みく「(玉子しか食べてないけど)」
のあ「……そう」
のあ「(良かった)」ホッ
みく「(な……なんだろ、この罪悪感)」
────
──────
【北海道 寿司屋】
みく「(ハァー、ハァー…………うぷっ!)」
みく「(まさか、あーにゃんとのあにゃんと一緒の地方お仕事で……最後に寿司屋に連れてかれるとは夢にも思わなかった)」
のあ「(……)」ジー
みく「(か、完全にのあにゃんの厚意だし……断るに断りきれず、この有り様……おぅ、おえっ……)」
みく「(はー、はーっ……、この魚の生臭いニオイも、キッツいぃ……!)」ゼエゼエ
のあ「…………さて」
みく「っ!」
のあ「……そろそろ、会計にしましょうか」
みく「(!!!!)」
みく「ほ、ホント!?」ガタッ
のあ「……」
のあ「ナ……何故嬉しそうなのかしら?」
みく「(!?)」
みく「い、いや……それはまあ……」
みく「……お、美味しかったし、満足感で……その……っ」
みく「(玉子しか食べてないけど)」
のあ「……そう」
のあ「(良かった)」ホッ
みく「(な……なんだろ、この罪悪感)」
320: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:25:51.04 ID:dMEr4UXu0
のあ「(ふふふ……。これでみくちゃんのポイントアップだわ。あとアーニャちゃんも)」
のあ「(お店をリサーチしておいて良かった。これでグッと新密度が増したハズ)」
のあ「(一緒に仕事もできたし、彼女の大好きな魚料理を食べさせてあげて、かつ───)」
店員「ありがとうございます。お会計、5500円になります」
のあ「カードで」ゴソゴソ
店員「はい」
のあ「(───かつ、カードで颯爽とお会計。フフフ……今の私って、滅茶苦茶デキる大人ってカンジだわ♪)」
のあ「……」ゴソゴソ
のあ「……(あ、あれ……?)」ゴソゴソ
みく「(……?)」
店員「(……??)」
のあ「…………っ」ゴソゴソゴソ
みく「の、のあにゃん?」
のあ「(……………)」ガサゴソ
のあ「(ぐ、くっ……、財布がレシートだらけで……っ!)」ガサガサガサ
のあ「(あっ!)」
のあ「あったわ、ハイ。これで」スッ
店員「はい、ありがとうございま───」
【前川みくの写真】
店員「───っ?」
のあ「…………」
のあ「……………………違ったわ」ヒョイ
みく「ちょっと」
のあ「……こっちで」スッ
店員「は、ハイ。ありがとうございます」
みく「いやちょっと。ちょっと待つにゃ」ガシッ
のあ「(……)」
──────
────
──
332: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:30:38.60 ID:dMEr4UXu0
──
────
──────
【喫茶店】
のあ「……」
のあ「ふー……」
のあ「(コーヒー豆の芳ばしい香りがする。はー……落ち着く香り)」
のあ「(勇気を振り絞って入店してみたけど、なぁんだ。周りは年配のお客ばかりだわ)」
のあ「(喫茶店と言えばオシャレを履き違えたリア充の巣窟かと思ってたけど、これなら私も安心かな)」
のあ「フッ……」ニヤリ
のあ「(今度、あの高森藍子ちゃんとお茶に行く約束したし、そのリサーチも兼ねて……っと)」
のあ「(……さぁて、何を頼もうかな? 喫茶店だし、スタンダードに軽くコーヒーでも……)」スッ
【オリジナルブレンドコーヒー……760円】
のあ「(…………)」
【760円】
のあ「(ッッ!?)」ガタッ!
のあ「な……っ!?」
店員「お、お客様? どうされましたか」
のあ「ぁっ……」
のあ「コ……、この、このコーヒーって……」プルプル
店員「はい、ご注文はオリジナルブレンドでよろしいですか?」
のあ「!? ち、違っ……! こ、コレ……」
店員「はい?」
のあ「ぜ、税込?」
店員「は、はい。税込でございます」
のあ「(……っ!!)」
のあ「(ぜ、税込で760円!? コーヒー1杯で牛丼並盛2杯分!?)」フラッ…
のあ「(き、客を馬鹿にしてるにも程があるっ……ていうか財布に今1000円しかないのに……)」
────
──────
【喫茶店】
のあ「……」
のあ「ふー……」
のあ「(コーヒー豆の芳ばしい香りがする。はー……落ち着く香り)」
のあ「(勇気を振り絞って入店してみたけど、なぁんだ。周りは年配のお客ばかりだわ)」
のあ「(喫茶店と言えばオシャレを履き違えたリア充の巣窟かと思ってたけど、これなら私も安心かな)」
のあ「フッ……」ニヤリ
のあ「(今度、あの高森藍子ちゃんとお茶に行く約束したし、そのリサーチも兼ねて……っと)」
のあ「(……さぁて、何を頼もうかな? 喫茶店だし、スタンダードに軽くコーヒーでも……)」スッ
【オリジナルブレンドコーヒー……760円】
のあ「(…………)」
【760円】
のあ「(ッッ!?)」ガタッ!
のあ「な……っ!?」
店員「お、お客様? どうされましたか」
のあ「ぁっ……」
のあ「コ……、この、このコーヒーって……」プルプル
店員「はい、ご注文はオリジナルブレンドでよろしいですか?」
のあ「!? ち、違っ……! こ、コレ……」
店員「はい?」
のあ「ぜ、税込?」
店員「は、はい。税込でございます」
のあ「(……っ!!)」
のあ「(ぜ、税込で760円!? コーヒー1杯で牛丼並盛2杯分!?)」フラッ…
のあ「(き、客を馬鹿にしてるにも程があるっ……ていうか財布に今1000円しかないのに……)」
340: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:36:33.84 ID:dMEr4UXu0
のあ「(いや、待って。でも確か……っ!)」
店員「??」
~~~~~~~~~~
藍子『おいしいコーヒーの違い、ですか?』
藍子『そうですね……お店で飲むとちょっと高いと感じる時もありますけど、でもそれに見合う美味しさは確かにありますよ?』
藍子『うん、やっぱり一番大事なのは製法ですかね? 厳選した豆を使って、手間暇かけているから、そのぶん味も違ってくるんです』
藍子『あざやかな真っ赤な完熟豆を丁寧に手摘みして、そこから、焼きムラがないように火加減や温度を見極め丁寧に焙煎して……』
藍子『……って、これは知り合いの方の受け売りで、私は製法にはあまり詳しくないんですけどね。えへへ……』
藍子『あっ、でも鮮度は一番大事ですよ? 月並みですが、やっぱり挽き立てが一番おいしいですから』
藍子『コーヒー本来の風味を最大限に引き出すように、雑味を少なく透き通るような味わいにするには、鮮度と挽き方はとても大切なんです』
藍子『ふふふっ♪ あと一番大事なのは何と言っても香りです♪』
藍子『本当においしいコーヒーの豆って、特徴的な香りがするんですよ。そうですね、まあ豆によって異なりますけど私が最近飲んだグアテマラなんて、まるで果実やお花みたいな───』
~~~~~~~~~~
のあ「(………………)」
のあ「ス、すみませ……。こ、このオリジナルの……」
店員「はい。かしこまりました」
のあ「…………」
のあ「(……)」
店員「お待たせいたしました。こちらマンデリンブレンドです」カチャ
のあ「(藍子ちゃん……)」スッ
のあ「(貴方の話では一番大事なものが3つもあって、ふわふわ過ぎて可愛すぎて、よく要領を得なかったけど……)」
のあ「(でも、美味しいコーヒーというのは……、やはり値段に見合った価値はあるのよね?)」
のあ「(この悪魔のように黒く地獄のように熱い一杯には……、天使のように純粋で愛のように甘い味わいがあるのよね?)」
のあ「(税込760円のコーヒーには……、牛丼並盛2杯分の満足感があるのよね?)」
のあ「(私は……藍子ちゃんを信じる。貴方を信じるてるから……)」
───グビッ
のあ「(……!!)」
のあ「(ヴっ!)」
のあ「(あっ、……あぁっ……、思い出した……っ)」
のあ「(こ、この味は……、私……っ)」
のあ「ニ…にが……っ、オエエエェェ」ダバァー
───ビチャビチャビチャ!
店員「ッ!?」ビクッ
店員「う、うわああぁ! お客様っ!?」
のあ「(……ぶ、ブラック、飲めないんだった……)」
──────
────
──
341: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:38:31.75 ID:dMEr4UXu0
──
────
──────
【高峯宅】
のあ「……」
のあ「金が、ない」
のあ「…………」
のあ「数か月前は、変なダイエット食品を掴まされてかなり浪費して、さらにこの間の路上販売で……」
のあ「プロデューサーに完売したと自分で報告した手前恥ずかしくて、あの後こっそり自腹切った100枚分のCD代で、更に出費がかさんで」
のあ「……吉野家に行くのもままならない生活。味気がなさすぎる」
のあ「死んじゃう……吉野家食べないと、死んじゃう……っ」グスッ
のあ「……」
のあ「どうしたらいいんだろう……なにかコンスタントにお金を稼ぐ手段は」
のあ「もう『つもりダイエット』で地味に節約するのは嫌だし……」
のあ「(何より、もう空腹で吐くのは嫌だし)」
のあ「手元にあるのは、なんとか回収できた30枚の自分のデビューシングル……」
のあ「……ッ!!」ピーン!
のあ「『転売』……コレだわ!!」
────
──────
【高峯宅】
のあ「……」
のあ「金が、ない」
のあ「…………」
のあ「数か月前は、変なダイエット食品を掴まされてかなり浪費して、さらにこの間の路上販売で……」
のあ「プロデューサーに完売したと自分で報告した手前恥ずかしくて、あの後こっそり自腹切った100枚分のCD代で、更に出費がかさんで」
のあ「……吉野家に行くのもままならない生活。味気がなさすぎる」
のあ「死んじゃう……吉野家食べないと、死んじゃう……っ」グスッ
のあ「……」
のあ「どうしたらいいんだろう……なにかコンスタントにお金を稼ぐ手段は」
のあ「もう『つもりダイエット』で地味に節約するのは嫌だし……」
のあ「(何より、もう空腹で吐くのは嫌だし)」
のあ「手元にあるのは、なんとか回収できた30枚の自分のデビューシングル……」
のあ「……ッ!!」ピーン!
のあ「『転売』……コレだわ!!」
342: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:39:43.99 ID:dMEr4UXu0
のあ「最近流行りの『せどり』ってやつね、これで稼げるっ! Amazonのアカウントは持ってるし」
のあ「このCDを特典付けて少し高値に設定して売り捌いたら……事務所的には『高峯のあ』の宣伝にもなって、お客さんは満足で、私の懐も潤う。これがwin-win-winってやつね」
のあ「ちょっ、コレ……天才の発想だわ」
のあ「そうと決まればっ……!」ガサガサ
のあ「………でも、私のCDなんて欲しがる人いるのかな。ひょっとして全然売れなかったりして……」
のあ「……いいえ、卑屈になったらダメよ。もっとアグレッシブに自分を売り込まなきゃね」
のあ「よ、よーしっ! なら思い切ってケースにサインも書いて……っと」キュッキュッ
のあ「あと特典、特典……」キョロキョロ
のあ「……そうだ、これもっ……、ヴっ! ……ウくッ!」ブチブチッ
のあ「フー、フーっ……グスッ……」
のあ「よ、よーしっ……。これで……」
のあ「……これで、高めに見積もって4000円くらいにはなるかな。よーし……」
のあ「4000円×30枚………ふふっ、路上販売の損益はこれでほとんど埋められそう」
━━━━後日━━━━
【事務所】
ちひろ「……プロデューサーさん、今お時間よろしいですか?」
P「……?」
P「どうしました? そんなに改まって」
ちひろ「高峯のあさんの件で……、とにかくコレを見ていただけますか?」スッ
P「ノートパソコン……Amazon、ですか?」
P「???」チラッ
【高峯のあ デビューシングル(自筆サイン、毛髪入り) 単品】
【価格:\5878 在庫有り】
P「(───!?)」
343: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:43:33.43 ID:dMEr4UXu0
P「ア……、アァ!? なんだこりゃあ!?」ガタッ
ちひろ「お、落ち着いてください。一度本人に確認を取っては如何でしょう?」
P「か、確認!? 取るまでもないでしょうっ!!」バンッ!
P「彼女のような真面目な人が、自分のCDをこんな形で売り出すような性格に見えますか!?」
ちひろ「そ、それはそうですが……」
P「なんだこのっ、ケースに書かれた……か、可愛らしい丸っこい字体のサインは!? あのクールな彼女が書くはずがないッ!!」
ちひろ「(オマケに猫のイラストまで……可愛い)」
P「というより、『毛髪』!? じ、人体の一部って取扱い可能なのか……?」
ちひろ「出品規約としてはぎりぎりアウトですね。自筆サインという文面も怪しいです」
P「アイドルの髪の毛が特典なんて、どこぞのアイドルグループのガセネタじゃあるまいし……発想が昭和のオッサンじゃねえか」
P「そもそも、彼女のCDにサインを入れさせた覚えはありませんし、どうせ本人の知人か何かを騙ったタチの悪い転売屋でしょう。価格設定もいい加減すぎる」
ちひろ「そうですね……。以前の路上販売で、わずか一時間足らずで完売したとのことですが」
ちひろ「おそらく私も、転売屋の買い占めによるものかとは思うんですが……」
P「ちひろさん、通報は?」
ちひろ「いいえ、特には……」
P「なら、俺がしてやります。なにより、プロデューサーとしてこんなデタラメな出品を見過ごすわけにもいきません」
ちひろ「う、うぅん……」
ちひろ「さわらぬ神に祟りなしと言いますし、下手に関わらないほうが良いのではないでしょうか……?」
P「俺が通報しなくても、こんな価格設定だし、そのうち他の人が通報するでしょう。まったく馬鹿にしていますよ、彼女を───」
P「───ん? …………レビューが2件? しかも最高評価で……まるで意味が分からん。自作自演か?」
ちひろ「ですが、コアなファンでしょうかね? デビューして間もない彼女のCDを転売するなんて」
P「……まあ、彼女に目を付けたその先見性と審美眼だけは、褒めてやりたいですがね」カタカタ
━━━━後日━━━━
【高峯宅】
のあ「……」
~~~~~~~~~~
Amazon.co.jpからの重要なお知らせ
平素は、Amazon.co.jp をご利用いただき、誠にありがとうございます。
(中略)
この度、出品者様のお取引履歴を確認しましたところ、Amazonマーケットプレイス参加規約/出品規約など、当サイトの規約に反する行為が見られました。
(中略)
このため誠に残念ながら、総合的な判断により、出品者様の出品用アカウントを閉鎖させていただく判断に至りましたことをご連絡させていただきます。
~~~~~~~~~~
のあ「……」グスッ
のあ「な、なぜ……?」
──────
────
──
344: ☆① ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:45:39.11 ID:dMEr4UXu0
──
────
──────
━━━夜━━━
【カラオケ屋 店前軒下】
紗枝「……」
周子「……」
紗枝「雨、やまへんなぁ」
周子「そやねー」
紗枝「こん時期にこれだけ降るのも、珍しいなぁ。土砂降りやね」
周子「そやねー」
周子「おてんとさん、今日は機嫌悪いなぁ」
周子「愛宕山に雲でもかかったかね?」
紗枝「そんなら今日は25日。東寺の縁日は晴れやったから……」
紗枝「ひょっとして、天神さんがおへそを曲げたのかもわからんねー」
周子「『弘法さんが晴れれば、天神さんは雨』、か」
周子「あー、北野天満宮の宮司さんも嘆いとったわ。道真公がお怒りや、酔った勢いで境内の牛の象でロデオかましたのがあかんかったって」
紗枝「そんなんひゃくぱー宮司さんが悪いわぁ。わややわぁ……」
周子「ねー」
紗枝「ふふっ……」
周子「…………」
紗枝「はー」
周子「……」
周子「……ごめんね、紗枝ちゃん」
紗枝「周子はんが謝ることあらしまへんよ、ほんに」
周子「んー」
紗枝「……」
周子「紗枝ちゃんの学校帰りに、あたしが無理にカラオケ誘っちゃってさ。しかも紗枝ちゃんの女子寮って、たしか門限あるのに……」
周子「でも、まさか外はこんな土砂降りなんてさー。ツイてないねえ」
紗枝「そやなぁ。まー、しょがおへんよ」
紗枝「ほないっそ、『朝までこーす』としゃれこみます?」
周子「紗枝はん、最近アグレッシブどすなー」
紗枝「周子はんと一緒なら、なんでも楽しいから気にせんでええんよ?」
周子「うーむ……複雑な気分」
────
──────
━━━夜━━━
【カラオケ屋 店前軒下】
紗枝「……」
周子「……」
紗枝「雨、やまへんなぁ」
周子「そやねー」
紗枝「こん時期にこれだけ降るのも、珍しいなぁ。土砂降りやね」
周子「そやねー」
周子「おてんとさん、今日は機嫌悪いなぁ」
周子「愛宕山に雲でもかかったかね?」
紗枝「そんなら今日は25日。東寺の縁日は晴れやったから……」
紗枝「ひょっとして、天神さんがおへそを曲げたのかもわからんねー」
周子「『弘法さんが晴れれば、天神さんは雨』、か」
周子「あー、北野天満宮の宮司さんも嘆いとったわ。道真公がお怒りや、酔った勢いで境内の牛の象でロデオかましたのがあかんかったって」
紗枝「そんなんひゃくぱー宮司さんが悪いわぁ。わややわぁ……」
周子「ねー」
紗枝「ふふっ……」
周子「…………」
紗枝「はー」
周子「……」
周子「……ごめんね、紗枝ちゃん」
紗枝「周子はんが謝ることあらしまへんよ、ほんに」
周子「んー」
紗枝「……」
周子「紗枝ちゃんの学校帰りに、あたしが無理にカラオケ誘っちゃってさ。しかも紗枝ちゃんの女子寮って、たしか門限あるのに……」
周子「でも、まさか外はこんな土砂降りなんてさー。ツイてないねえ」
紗枝「そやなぁ。まー、しょがおへんよ」
紗枝「ほないっそ、『朝までこーす』としゃれこみます?」
周子「紗枝はん、最近アグレッシブどすなー」
紗枝「周子はんと一緒なら、なんでも楽しいから気にせんでええんよ?」
周子「うーむ……複雑な気分」
381: ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 01:31:55.45 ID:db/N0lAt0
周子「でも、寮監さんに怒られちゃうよ?」
紗枝「んー……ならいっそ、走っていのか? やみそうにあらへんし」
周子「……そんな無理したら、風邪ひいちゃうよ」
周子「春先の風邪は舐めたらあかんゆいますやんか」
紗枝「そんなら……、周子はんに看病してもらうわ」
周子「おっ、えーよ。暇やし」
周子「リンゴでうさぎさん五千匹作ったげる」
紗枝「ふふふっ……そら楽しみ」
周子「ついでにあたしにも風邪移してくれたら、お仕事休めて助かるよ」
紗枝「そらあかんね。やっぱりナシで」ニコニコ
周子「ほな、いざとなったらタクシー呼ぶよ、あたしが」
周子「だからさ、もうちょっと待ってみよう。あとちょっとだけ」
周子「ね?」
紗枝「まあ、まだ門限まで時間あるし、大丈夫やと思う」
━━━30分後━━━
周子「……」
紗枝「……」
周子「はー……」
紗枝「いったんお店の中、入ろか?」
周子「せや、ねぇ……」
紗枝「あ」
周子「うん?」
紗枝「んー……?」ジー
紗枝「………なあ周子はん? あの向かいの横断歩道のところにおるの……」
紗枝「あれ、高峯はんとちがう?」
紗枝「んー……ならいっそ、走っていのか? やみそうにあらへんし」
周子「……そんな無理したら、風邪ひいちゃうよ」
周子「春先の風邪は舐めたらあかんゆいますやんか」
紗枝「そんなら……、周子はんに看病してもらうわ」
周子「おっ、えーよ。暇やし」
周子「リンゴでうさぎさん五千匹作ったげる」
紗枝「ふふふっ……そら楽しみ」
周子「ついでにあたしにも風邪移してくれたら、お仕事休めて助かるよ」
紗枝「そらあかんね。やっぱりナシで」ニコニコ
周子「ほな、いざとなったらタクシー呼ぶよ、あたしが」
周子「だからさ、もうちょっと待ってみよう。あとちょっとだけ」
周子「ね?」
紗枝「まあ、まだ門限まで時間あるし、大丈夫やと思う」
━━━30分後━━━
周子「……」
紗枝「……」
周子「はー……」
紗枝「いったんお店の中、入ろか?」
周子「せや、ねぇ……」
紗枝「あ」
周子「うん?」
紗枝「んー……?」ジー
紗枝「………なあ周子はん? あの向かいの横断歩道のところにおるの……」
紗枝「あれ、高峯はんとちがう?」
349: ☆③ ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:49:36.13 ID:dMEr4UXu0
周子「ん……、えっ、違うんじゃない?」ジー
周子「ちょっと遠くてわかんない。というか顔が───」
紗枝「顔は隠れて見えへんけど、あの黒い傘と足の長さと脚の線と腰回りは……多分間違いあらへんわ」
周子「紗枝ちゃん、そんな武闘派キャラの索敵スキルみたいなの、どこで身に着けたん?」
紗枝「なりもええし、はんなりしてて……、あないな別嬪さん、そうはおらへんよ」
周子「(……)」
紗枝「あっ……そうや」
紗枝「周子はん、風のうわさで耳にしたんやけど、高峯はんと親戚なん?」
紗枝「前に事務所で言うたはったやろ? 奏はんがそれ聞いて泡吹いて、防衛機制で幼児退行したって」
周子「ん。んー……」
周子「まあ、その場は冗談ってことで事なきを得たけど」
紗枝「ほんまは?」
周子「……プロデューサーに、あんまり広めるなと釘刺されたんだけどね」
紗枝「なんで?」
周子「……だって、のあさんが所属してから、まだあたしと一回も喋ってないんだもん」
紗枝「そら……あかんわ。仕事上、そないな情報は慎重に扱いまへんと」
紗枝「せやかて、なんで話さへんの??」
周子「……ただ、従妹ってのはちょっと違うんよ。なんか6親等くらい離れてた気がする」
周子「面識はあるんだけど、いざ話すとなると……色々あるんよ」
紗枝「はー……! 『はとこ』や!」パン!
紗枝「髪の色もお肌の色もそっくりやし。どおりで……」
周子「いや、あたしのこれはただ色抜いてるだけだよ?」ワシャワシャ
紗枝「似せたん?」
周子「さあ、どーだろね?」
紗枝「ええやん、減るもんじゃあらへんし♪ 教えてや~♪」グイグイ
周子「(えっ、なんで今日の紗枝ちゃんこんなグイグイくるの?)」
350: ☆④ ◆AL0FHjcNlc 2016/07/21(木) 23:54:02.86 ID:dMEr4UXu0
周子「……あっ?」
紗枝「あら?」
のあ「…………」ジー
周子「!」
周子「(か、傘上げて見られてた……首が完全にコッチ向いてる)」
紗枝「ふふふっ♪ 手、ふってみよか??」
周子「い、いや……いいよ別に」
紗枝「……あッ!」
紗枝「あかん! 高峯さ───」
周子「───えっ?」
───ブウウウゥゥゥゥン………!
───バシャーーッ!
紗枝「(あぁ……)」
周子「(うっわ……)」
紗枝「……………」
周子「……………」
周子「あの人……こっち見てる?」
紗枝「……微動だにせえへん」
周子「まじかー」
紗枝「か、髪がちょこれーとみたいに染まってしもておる……」
353: ☆⑤ ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 00:05:55.75 ID:uu+HSTMo0
紗枝&周子「……」
紗枝「……信号変わった。高峯はん、こっちに来はるよ?」
周子「なにこれ? なにこのシチュエーション?」
周子「なんで? なんで軒で雨宿りしてるあたしらより、傘差してるのあさんの方がびしょびしょなの?」
紗枝「み……、水も滴るええおなごや」
周子「滴ってるの泥水だけど」
紗枝「ばばちい水でも高峯はんがまとえば、なんか清らかにみえるわぁ。ありがたや~」
周子「浄水器か」
周子「人間浄水器……なんかびっくり芸人みたい」
紗枝「周子はん! そこは浄水器やのうて水神さん、瀬織津姫どす」
紗枝「人の穢れや罪を清い水で浄める、名のある神様やね。ね、彼女にぴったりやなあ」
周子「あたしの目には、トラックに泥水引っ掛けられた人はどう頑張っても水の神様には映らないよ」
紗枝「そんなら、もっと気張らんと」
周子「ゼンショしまーす」
紗枝「……あっ」
周子「(あー……)」
のあ「…………」ポタポタ…
周子「(……)」
のあ「…………」
紗枝「だ、大丈夫どすか? 高峯さん───」
のあ「……え?」
紗枝「えっ?」
のあ「……いいえ、特に何も無かったわ」
紗枝「(───!?)」
紗枝「ほ、ほんまどすか……そらなにより」
のあ「ありがとう、紗枝。あと……」
周子「……」
のあ「……」
のあ「…………周子ちゃん」
周子「……どーも」
紗枝「(……!?)」
紗枝「(ちゃ……んっ!? ……っ!?)」
354: ☆⑥ ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 00:08:36.85 ID:uu+HSTMo0
周子「お久しぶりです」
のあ「……最後に逢ったの、いつだったっけ?」ポタポタ…
周子「んー……4年前? 法事の時かな」
周子「その時は、まだあたしの髪も黒かったよ」
のあ「……そうね。よく覚えてる」ポタポタ…
のあ「……だから、驚いた。周子ちゃん、まさか本当に髪の色抜いちゃって、別人みたいに」ポタポタ…
周子「まあ、コレは前々から考えてたし。ね?」
のあ「おまけに、アイドルだなんて」ポタポタ…
周子「そりゃあ、あたしのセリフだよ。だってあののあさんが……」
のあ「……」ポタポタ…
周子「のあさんが、人前でこんな……」
のあ「(……)」ポタポタ…
周子「(……)」
周子「……まあ、でも評判は良いみたいだし」
周子「……なにより、お元気そうで」
のあ「……うん」ポタポタ…
周子「帰り?」
のあ「そう。隣のスタジオでレッスンだったけど、全然だめ」ポタポタ…
のあ「特にビジュアルレッスンって、よく分らないわ」ポタポタ…
周子「のあさん、表情硬いからなぁ。もっと気張らんで、楽にな。それが一番大事やさかい」
のあ「うちそないの得意やないのよ……。ちーとばかし気恥ずかしくてな、なんべんも失敗ばかりやって」ポタポタ…
紗枝「」
のあ「きょうび、失敗続きで生活にもいろいろ支障がでとるんよ」ポタポタ…
のあ「吉野家行きたいわぁ……はぁ」
周子「そういや、今一人暮らしだっけ? のあさん」
のあ「……そうよ」ポタポタ…
周子「ほほーう?」
周子「なら、今度遊びに行っていい??」
のあ「……ええ、もちろん。周子ちゃんなら、いつでも歓迎するわ。けど」ポタポタ…
のあ「……2日前に連絡を頂戴。また突然押しかけるのだけは……やめて?」ポタポタ…
周子「うんうん。大丈夫、そのへんは承知してるよ」
周子「昔みたいに、勝手に部屋を物色してアレされたらコレだもん」
のあ「……」ポタポタ…
355: ☆⑦ ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 00:10:50.76 ID:uu+HSTMo0
のあ「(……!)」
のあ「暮らしと言えば……」
のあ「紗枝」
紗枝「」
紗枝「ッッ!!」ビクッ!
紗枝「わっ! はえっ……は、ハイ!!」
のあ「貴方……女子寮に入居しているハズではないかしら。門限は?」
周子「あたしが遊びに連れまわしちゃって、で、この土砂降りときたもんで」
周子「門限まで余裕はあるんだけど、傘もないし、ここで待ちぼうけですよ」
のあ「……」
のあ「なら、この傘を使っていいわ」スッ
紗枝「えっ!?」ドキッ!
紗枝「い、いや……そ、そないも、申し訳あらしまへん、今たくしーを……」
のあ「……貴方はまだ学生でしょう。無駄な出費は避けた方がいいわ」
周子「でも、のあさんはどうするの?」
のあ「……まだレッスンの体が火照っているから、丁度いいシャワーだわ」
紗枝&周子「(……)」
のあ「……じゃあ。暗いから気をつけなさい」
───スタスタスタ
周子「おつかれさまでしたー」ヒラヒラ
紗枝「……」
周子「……」
周子「傘、貰っちゃったね?」
紗枝「……」
周子「のあさん、もう既にびっしょりだったから、関係ないのかな? 毒食らわば皿までってヤツ?」
紗枝「……」
周子「シャワーとか、あれ絶対強がりだよ。本人はバレてないと思ってるかもしれないけど……何でだろうね? 横断歩道でバッチリ目と目が逢ってたのに」
紗枝「……」
周子「……紗枝ちゃん?」
紗枝「まッ!!」
周子「っ!?」ビクッ
紗枝「待って!? 頭の中整理させてやっ!!!」
362: ☆⑧ ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 00:28:28.24 ID:uu+HSTMo0
紗枝「なんで? なんであないな格好ええことできはるの……っ」
紗枝「傘忘れたおなごに、自分のことはいとわず、濡れてもええって……!」
紗枝「しょ、少女マンガみたいに……!」
周子「いや、最初からびしゃびしゃだったけどね? あの人」
紗枝「……えっ?」
周子「(───ん?)」
紗枝「ええと……うちらに傘渡してくれたから、濡れたんやないの?」
周子「……」
周子「(───んんっ??)」
紗枝「それに、周子はんはなんであないな風に、親しげに話してはるの??」
紗枝「なんかコツとかあるん?? なあなあ、こっそり教えてやぁ♪」グイグイ
周子「えっ……?」
紗枝「うん?」
周子「いやだから……えっ? 親戚……」
紗枝「周子はん。髪の色が一緒やからって、そんな安直なてんごはやめておくれやす……ふふっ♪」
紗枝「髪の色、それ色素抜いてはるんやろ?」
紗枝「もー……、あの人のきれいな髪はきっと、お月さんの光をぎょうさん浴びて、染まったに違いあらへんよ」
周子「……」
紗枝「きっと、うちらとはなんか、違う世界を生きとる人なんや。凛々しくて、ほんにきれいやなぁ……はぁー……」
周子「そーすね」
紗枝「はー……かっこええ、高峯はん……」
周子「そーすね」
紗枝「周子はん、これ、この傘な。これ家宝にしてもええかなぁ?」ギュッ
周子「いや、そこは返してあげようよ」
━━━━翌日━━━━
【事務所】
周子「プロデューサーさんやー?」
P「うん?」
周子「あのさ、今事務所でちょっと話題になってるあの」
周子「高峯のあさんについてだけどねー」
P「……高峯さん? また?」
368: ☆⑨ ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 00:56:37.75 ID:uu+HSTMo0
周子「あの人はね、すごいよ。不思議な人だとおもう」
P「……まあ、寡黙でミステリアスで、多くは語らないからな。そこが魅力的さ」
P「だからこそ血縁の件は、彼女の活動方針的に、もう少し慎重に扱いたいんだけどな」
周子「ああ、そゆことかー。なるほどねー、りょーかい」
周子「……というか、あたしが言った『不思議』って意味はそういうことじゃなくて……」
P「ん?」
周子「なんかさ、高峯さんに不都合なことが起きるとさ……なんていうのかな」
周子「たとえば、想定外の事実を叩き付けられたり、不恰好な様子を見ちゃったり」
周子「そんな時、防衛機制みたいなカンジでさ」
周子「幼児退行………近くにいた文香ちゃんをママと呼びつつ腰に1時間纏わりついて彼女のウエストを1㎝縮めたり」
周子「記憶が都合よく吹っ飛んで………あたしとの数分前の会話の内容をところどころ忘れてたり、変な解釈したり」
周子「………なんなんだろう」
P「…………」
周子「うん。とにかく……」
周子「面倒事はごめんだから……あたし、血縁者ってことは極力伏せとくよ」
P「お、おう……なんかスマン」
P「……で」
周子「んー?」
P「その菓子折りみたいのは何だ? 事務所に置いてくれるのか?」
周子「ああ、コレ? これはね、狐の恩返しってやつよ」
周子「個人用。まあ気にせんといてー」
P「(……??)」
━━━━━━━━━━
【高峯宅】
のあ「げっほ! ぐふっ……!」
のあ「(ハァ、ハァ……)」ゼエゼエ
のあ「(か、風邪ひいた……ふふっ、名誉の負傷だわ)」
のあ「(昨日のアレ、まるで少女マンガみたいで少しクサかったけど、それでも絶対に紗枝ちゃんと周子ちゃんのポイントは上がったかな……♪)」
のあ「(トラックに水を引っ掛けられたところは…………うん、大丈夫。見られてない、きっと)」
のあ「(フー……、フー……っ!)」ゼエゼエ
のあ「げほっ!」
───ピンポーン♪
*『高峯さーん。買ってきましたよ、風邪薬と、あといろいろ』
**『お釣りで焼酎も買いましたっ♪ とりあえずこれでウガイを……』
*『な、なに言ってるんですか! 悪化しますよ! …………あの、とりあえず中に入れてください』
のあ「……っ!」
のあ「ヘ……部屋の外に……お、置いておいて頂戴……ありがとう」
のあ「(……周子ちゃんの件もあるし……部屋の掃除しておこう)」
☆その②、終わり
──────
────
──
P「……まあ、寡黙でミステリアスで、多くは語らないからな。そこが魅力的さ」
P「だからこそ血縁の件は、彼女の活動方針的に、もう少し慎重に扱いたいんだけどな」
周子「ああ、そゆことかー。なるほどねー、りょーかい」
周子「……というか、あたしが言った『不思議』って意味はそういうことじゃなくて……」
P「ん?」
周子「なんかさ、高峯さんに不都合なことが起きるとさ……なんていうのかな」
周子「たとえば、想定外の事実を叩き付けられたり、不恰好な様子を見ちゃったり」
周子「そんな時、防衛機制みたいなカンジでさ」
周子「幼児退行………近くにいた文香ちゃんをママと呼びつつ腰に1時間纏わりついて彼女のウエストを1㎝縮めたり」
周子「記憶が都合よく吹っ飛んで………あたしとの数分前の会話の内容をところどころ忘れてたり、変な解釈したり」
周子「………なんなんだろう」
P「…………」
周子「うん。とにかく……」
周子「面倒事はごめんだから……あたし、血縁者ってことは極力伏せとくよ」
P「お、おう……なんかスマン」
P「……で」
周子「んー?」
P「その菓子折りみたいのは何だ? 事務所に置いてくれるのか?」
周子「ああ、コレ? これはね、狐の恩返しってやつよ」
周子「個人用。まあ気にせんといてー」
P「(……??)」
━━━━━━━━━━
【高峯宅】
のあ「げっほ! ぐふっ……!」
のあ「(ハァ、ハァ……)」ゼエゼエ
のあ「(か、風邪ひいた……ふふっ、名誉の負傷だわ)」
のあ「(昨日のアレ、まるで少女マンガみたいで少しクサかったけど、それでも絶対に紗枝ちゃんと周子ちゃんのポイントは上がったかな……♪)」
のあ「(トラックに水を引っ掛けられたところは…………うん、大丈夫。見られてない、きっと)」
のあ「(フー……、フー……っ!)」ゼエゼエ
のあ「げほっ!」
───ピンポーン♪
*『高峯さーん。買ってきましたよ、風邪薬と、あといろいろ』
**『お釣りで焼酎も買いましたっ♪ とりあえずこれでウガイを……』
*『な、なに言ってるんですか! 悪化しますよ! …………あの、とりあえず中に入れてください』
のあ「……っ!」
のあ「ヘ……部屋の外に……お、置いておいて頂戴……ありがとう」
のあ「(……周子ちゃんの件もあるし……部屋の掃除しておこう)」
☆その②、終わり
──────
────
──
369: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 00:57:34.61 ID:uu+HSTMo0
──
────
──────
【事務所】
泰葉「……プロデューサー?」
モバP「ん? なんだ?」
泰葉「ひとつ質問しても良いですか?」
P「どうした泰葉、そんな怪訝な顔つきで……」
泰葉「……」
泰葉「プロデューサーは、高峯のあさんの印象についてどう感じてます?」
P「高峯さんの、印象? いきなりだな」
P「そりゃあ、まあ沢山あるぞ。なんてったって、俺がこの業界に引き込んだ人だからな」
泰葉「聞いても良いですか?」
P「まず、月並みだが本当に綺麗な人だと思う。肌も白く顔立ちも整っていて、スタイルも良い。目を引く鮮やかな銀髪も彼女の美貌をより一層引き立てている」
P「神秘的でミステリアス、クールビューティーの体現、寡黙の女王、サイバネティックビューティー……。どれも雑誌とかの煽りだけど、名に恥じぬ風貌だ」
P「ただ……」
P「難点があるとすれば、無愛想……いや、あの画一的とも言える無表情から感情や意志を読み取りにくい所だが……」
泰葉「……確かに」
P「最近はそんな所も彼女の魅力だと囁かれているから、特に不安には感じていないよ」
P「まあ、そのせいで小さい子達から怖がられなければ良いけどな。変な噂を伊吹から聞いたことがあるし」
泰葉「(何だろう、ソレ気になる……)」」
P「あと、仕事へ臨む姿勢もそうだ。不遜でお堅く我が強い人かと思えば、全くの偏見だった」
P「完璧に仕事をこなしてくれるし、内容の選り好みもしない。雑誌モデル、映画やCMのエキストラ、地方イベントの撮影会、モーターショーのコンパニオンや他いろいろ」
P「現状に満足せず自分の可能性を模索し続ける、しっかりとした大人だと思う。北海道での仕事では、アナスタシアとみくを俺の代わりに引率してくれたしな」
泰葉「……なるほど。しっかりとした、大人……」
────
──────
【事務所】
泰葉「……プロデューサー?」
モバP「ん? なんだ?」
泰葉「ひとつ質問しても良いですか?」
P「どうした泰葉、そんな怪訝な顔つきで……」
泰葉「……」
泰葉「プロデューサーは、高峯のあさんの印象についてどう感じてます?」
P「高峯さんの、印象? いきなりだな」
P「そりゃあ、まあ沢山あるぞ。なんてったって、俺がこの業界に引き込んだ人だからな」
泰葉「聞いても良いですか?」
P「まず、月並みだが本当に綺麗な人だと思う。肌も白く顔立ちも整っていて、スタイルも良い。目を引く鮮やかな銀髪も彼女の美貌をより一層引き立てている」
P「神秘的でミステリアス、クールビューティーの体現、寡黙の女王、サイバネティックビューティー……。どれも雑誌とかの煽りだけど、名に恥じぬ風貌だ」
P「ただ……」
P「難点があるとすれば、無愛想……いや、あの画一的とも言える無表情から感情や意志を読み取りにくい所だが……」
泰葉「……確かに」
P「最近はそんな所も彼女の魅力だと囁かれているから、特に不安には感じていないよ」
P「まあ、そのせいで小さい子達から怖がられなければ良いけどな。変な噂を伊吹から聞いたことがあるし」
泰葉「(何だろう、ソレ気になる……)」」
P「あと、仕事へ臨む姿勢もそうだ。不遜でお堅く我が強い人かと思えば、全くの偏見だった」
P「完璧に仕事をこなしてくれるし、内容の選り好みもしない。雑誌モデル、映画やCMのエキストラ、地方イベントの撮影会、モーターショーのコンパニオンや他いろいろ」
P「現状に満足せず自分の可能性を模索し続ける、しっかりとした大人だと思う。北海道での仕事では、アナスタシアとみくを俺の代わりに引率してくれたしな」
泰葉「……なるほど。しっかりとした、大人……」
370: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 00:58:37.03 ID:uu+HSTMo0
P「体力もあるし、踊りのキレは熟練者顔負け。演技力は……今の所よく分からないが、まだまだポテンシャルを秘めている人だと思う」
P「概ね、周囲の人も俺と同じ認識なんじゃないか? 彼女についての印象は」
泰葉「……うぅん、そうですね…………そうなのかな?」
P「人付き合いでも、最近では事務所で他人と話してるところを良く見かけるぞ。楓さんとか、雪美とか、楓さんとか……、楓さんとか」
P「……あれ?」
泰葉「?」
P「そう言えばあの二人って、何か共通点があったような……何だったか……」
泰葉「(……)」
P「まあ、二人とも同じクールビューティーを売りにしているってトコかな? 『寡黙の女王』に『神秘の女神』! 似た者同士ってやつだな、ハハハハ……!」
泰葉「(…………)」
━━━━夜━━━━
【岡崎宅】
───ガチャ
泰葉「(ふぅ……)」スッ
泰葉「……!」
楓「あ。泰葉ちゃん、おかえりなさい♪」モゾモゾ
のあ「泰葉、食材を買い足しておいたわ。冷蔵庫を開けば、私達が所望する罪源の禊は……自ずと解き明かせる筈よ」モゾモゾ
のあ「……今日も貴女の辣腕から生み出される逸品を期待しているわ」
楓「お腹が空きましたねー。あまりの空腹で幸福じゃなく不服でもう降伏ですよ……ふふっ♪」
泰葉「(プロデューサー……)」
泰葉「(『寡黙の女王』と『神秘の女神』……。この二人に関して事務所の人達が抱いているイメージと、私が最近気付き始めたイメージとは大きく隔たりがあるようです)」
371: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/07/22(金) 00:59:15.76 ID:uu+HSTMo0
泰葉「(プロデューサー曰く、清廉で秀麗なしっかりとしているハズの大人2名が何故か、我が家のような居住まいで、人生ゲームを広げて私の部屋のコタツで丸くなっています)」
のあ「……8」
楓「あっ、またカジノマスに着きましたけど、どうしますか?」
泰葉「(本来は二人とも単なるアパートの隣人、隣々人なのに……本当にどうしてこうなっちゃったんだろう。人生行き詰ったんでしょうか?)」
のあ「……人生は常に全力勝負よ」スッ
楓「成程、全額投資ですね……!」
泰葉「(『非常時に、お互い役に立つハズだから』と押し切られて部屋の合鍵を作られてしまいました。そして二人の部屋の鍵を私は貰っていません)」
のあ「楓。飲み物を注いで頂戴」
楓「あ、はい。あっ、もう無い……」
泰葉「…………」
泰葉「(まあ……食材とか日用品とか沢山買い足してくれるし、洗濯もしてくれるし、実際けっこう助かっている面もあります)」
泰葉「(私が学生の立場ってことを理解してくれて夜遅くまでは居すわらないし、別段迷惑でも無く気にしないんだけど)」
泰葉「(……それに……、賑やかなのは嫌じゃないですし)」
泰葉「(ただ賑やかになりすぎると、隣に住んでいるもう一人の『女王』が容赦なく壁ドンしてくるから注意が必要です)」
泰葉「…………ふぅ」
泰葉「お疲れ様です。すぐ作りますから、待ってて下さいね」スタスタ
楓「わぁい♪ じゃあ私達は人生ゲームの続きでもしてますか♪」
のあ「望むところよ。私は懸賞生活者、楓はコメディアン、泰葉は女優の卵……所得も拮抗しているわ」
泰葉「わ、私の分も作って進めてたんですか……」ガチャ
泰葉「(……うわぁ、肉。肉がいっぱい補充されてる)」
泰葉「(『罪源の禊』……欲求……。あー、夕飯のメニューって意味かな?)」ヒョイヒョイ
のあ「……赤で」
楓「あぁ……残念、黒です。全額没収で」
のあ「……」シュン
──────
────
──
402: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 20:52:42.72 ID:8Yh3FEQO0
──
────
──────
【岡崎家】
泰葉「……」
のあ「泰葉。お茶を注いで頂戴」
泰葉「あ、はい」スッ
のあ「……」サクサク
楓「……」ズズッ
のあ「……」
のあ「……」スッ
泰葉「……」
泰葉「……高峯さん?」
泰葉「今、手についたポテチの油どうしました?」
泰葉「また、こたつの中に手が入った気がしたんですが……」
のあ「っ!」
泰葉「手拭きがありますから、それ使ってください。いや、私も神経質な指摘はあまりしたくないんですけど……」
泰葉「その……油って落ちにくいんですよ?」
のあ「……悪かったわ」
楓「(こたつで拭いてたんだ……)」
泰葉「もー……」
泰葉「(やれやれ……ですね)」ペラッ
のあ&楓「……」
楓「(泰葉ちゃん。最近ちょっとカリカリしてる)」
のあ「(私と楓さんが暇なときに炊事以外の事はしてあげてるから、むしろストレスや疲労は軽減されているはずなのに……)」
のあ「(……何故?)」
楓「(仕事で何かあったのかな……)」
のあ「(生理かしら……)」
泰葉「……ハァ」
泰葉「(この二人、目を離すと何をするか分らないから怖いなぁ……)」
────
──────
【岡崎家】
泰葉「……」
のあ「泰葉。お茶を注いで頂戴」
泰葉「あ、はい」スッ
のあ「……」サクサク
楓「……」ズズッ
のあ「……」
のあ「……」スッ
泰葉「……」
泰葉「……高峯さん?」
泰葉「今、手についたポテチの油どうしました?」
泰葉「また、こたつの中に手が入った気がしたんですが……」
のあ「っ!」
泰葉「手拭きがありますから、それ使ってください。いや、私も神経質な指摘はあまりしたくないんですけど……」
泰葉「その……油って落ちにくいんですよ?」
のあ「……悪かったわ」
楓「(こたつで拭いてたんだ……)」
泰葉「もー……」
泰葉「(やれやれ……ですね)」ペラッ
のあ&楓「……」
楓「(泰葉ちゃん。最近ちょっとカリカリしてる)」
のあ「(私と楓さんが暇なときに炊事以外の事はしてあげてるから、むしろストレスや疲労は軽減されているはずなのに……)」
のあ「(……何故?)」
楓「(仕事で何かあったのかな……)」
のあ「(生理かしら……)」
泰葉「……ハァ」
泰葉「(この二人、目を離すと何をするか分らないから怖いなぁ……)」
403: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 20:54:00.66 ID:8Yh3FEQO0
楓「泰葉ちゃん、さっきからスケジュール帳とにらめっこしてますけど」
楓「お仕事、忙しいんですか?」
泰葉「……えっ?」
のあ「そうね、貴女はこの世界に長い時間身を置いている。年季は遥かに私たちを凌駕しているもの」
のあ「自然と、求められる機会と声も多いはず」
泰葉「い、いえ……そんなことないですよ」
泰葉「今月、仕事の本数が割と多いと思いまして。春休みだからでしょうか……関係ないですかね?」
楓「ほ、本数っ!!」ガタッ
のあ「イ……いくらなの?」パリパリッ
泰葉「(く、喰い付かれた……)……えーっと、レッスン以外だと、そうですね」
泰葉「ひな祭りのイベント、、バラエティ番組のミニコーナーのゲスト、子供向け料理番組の撮影、ホビー系雑誌のミニコラムに……」
のあ「(……ホビー系雑誌?)」
楓「(テレビの仕事……いいなぁ)」
泰葉「数は、えっと……」
泰葉「じゅ───」
のあ&楓「十……!?」ズイッ
泰葉「わッ! な、なんですか……」
のあ&楓「(……)」
のあ「……ふふっ」
楓「うふふ……っ」
泰葉「??」
のあ「私のアドレス帳にある事務所の知り合いの数より、遥かに多いわ……」シュン
泰葉「あ。えーっ……へぇー……(……リアクションに困る)」
楓「先月、私が空けた一升瓶の本数より、遥かに少ないですねっ、へへん」ドヤッ
泰葉「(それで誇らしげに胸を張れる貴女の無邪気さ、素敵だと思います。けど体をいたわって下さいね)」
のあ「ハー……」スッ
泰葉「あ、ああっ!」
泰葉「ま……、またこたつで手を拭きましたね!!」
泰葉「高峯さんっ!!!」
泰葉「!!!」
泰葉「あ…………す、すみません。ちょっと大きな声を………」
泰葉「あっ………ご、ごめんなさい……高峯さん。な、泣かないで……」オロオロ
──────
────
──
404: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 20:55:02.43 ID:8Yh3FEQO0
──
────
──────
【岡崎家】
楓「泰葉ちゃん、すごいですよね。流石はベテランと言いますか……」
のあ「積み上げてきた努力が全て。積水成淵、艱難辛苦」
のあ「……見習いたいものね」
泰葉「な、なんですか……いきなり、その……っ」
楓「はぁー」
楓「泰葉ちゃんの仕事ぶりやスケジュールの濃度を仮に『10』だとしたら」
のあ「私達は、所詮……『0.──」
泰葉「や、やめましょう!! ハイ、この話終わり!!!」パンッ
のあ「泰葉。お茶を注いで頂戴」
泰葉「あ、はい」スッ
のあ「けれど……」
のあ「楓。貴女は前歴はモデルではなかったかしら」
楓「!」
のあ「下地があるにも関わらず……貴女は何故この世界で迷っているの?」
楓「……」
楓「確かにモデルの経歴はありましたし、それを含めればのあさんよりもキャリアがあるように見えるかもしれません」
楓「泰葉ちゃんとも、実はその時代に顔見知りでしたし」
泰葉「はい。確かに」
のあ「(う、羨ましいっ……)」ギリギリ
泰葉「本当に綺麗な女性と思いましたよ。線が細くて端正で、物腰柔らかく優しいクールな大人な女性という『雰囲気』で」
泰葉「……でもまさかアイドルに転向して、お互いこうして顔を合わせるとは思いもよりませんでしたけどね」
楓「ふふっ……、そうですね」
楓「私、そんなに器用ではないんですよ。そもそも人見知りですし」
泰葉「(……)」
楓「でも、折角アイドルとして再スタートするなら……最初からアクセル全開でやろうと思ったんです」
楓「今思えば、それが最初の躓きだったのかも」
楓「ハァー……」
のあ「(と、遠い目をしてる……楓さんが)」
のあ「イ……一体何があったの?」
泰葉「(……)」
楓「(……)」
楓「(そう、あれは初日。自己紹介の時……)」
────
──────
【岡崎家】
楓「泰葉ちゃん、すごいですよね。流石はベテランと言いますか……」
のあ「積み上げてきた努力が全て。積水成淵、艱難辛苦」
のあ「……見習いたいものね」
泰葉「な、なんですか……いきなり、その……っ」
楓「はぁー」
楓「泰葉ちゃんの仕事ぶりやスケジュールの濃度を仮に『10』だとしたら」
のあ「私達は、所詮……『0.──」
泰葉「や、やめましょう!! ハイ、この話終わり!!!」パンッ
のあ「泰葉。お茶を注いで頂戴」
泰葉「あ、はい」スッ
のあ「けれど……」
のあ「楓。貴女は前歴はモデルではなかったかしら」
楓「!」
のあ「下地があるにも関わらず……貴女は何故この世界で迷っているの?」
楓「……」
楓「確かにモデルの経歴はありましたし、それを含めればのあさんよりもキャリアがあるように見えるかもしれません」
楓「泰葉ちゃんとも、実はその時代に顔見知りでしたし」
泰葉「はい。確かに」
のあ「(う、羨ましいっ……)」ギリギリ
泰葉「本当に綺麗な女性と思いましたよ。線が細くて端正で、物腰柔らかく優しいクールな大人な女性という『雰囲気』で」
泰葉「……でもまさかアイドルに転向して、お互いこうして顔を合わせるとは思いもよりませんでしたけどね」
楓「ふふっ……、そうですね」
楓「私、そんなに器用ではないんですよ。そもそも人見知りですし」
泰葉「(……)」
楓「でも、折角アイドルとして再スタートするなら……最初からアクセル全開でやろうと思ったんです」
楓「今思えば、それが最初の躓きだったのかも」
楓「ハァー……」
のあ「(と、遠い目をしてる……楓さんが)」
のあ「イ……一体何があったの?」
泰葉「(……)」
楓「(……)」
楓「(そう、あれは初日。自己紹介の時……)」
406: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 20:58:59.04 ID:8Yh3FEQO0
~~~~1年前~~~~
【事務所】
P「今日からこの事務所でアイドルとして活動をスタートする、高垣楓さんです」
楓「……」
*『わっ、すごい綺麗……』
**『とっても美人ですね! 見惚れちゃいます……』
***『新たなライバル出現ってカンジかな? クールビューティーなカンジの人だねぇ』
??『(あっ。あの人は……)』
P「元モデルという経歴をお持ちで、こと撮影のお仕事に関しては色々とプラスになるお話を伺えるかもしれません」
P「ですから───」
楓「(ハァー、ハァー……ふぅっ……!)」バクンバクン!
楓「(ぐ、くっ……)」ドッドッドッドッ!
楓「(じ、自己紹介っ……!)」
楓「(初手が肝心、最初ですべてが決まる、分岐点、分水嶺、第一印象、今後の人生を左右といっても過言ではないファーストインプレッション……!!!)」ドクンドクン!
楓「(頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるってやれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだそこで諦めるな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る北京だって頑張ってるんだから!!!)」ドッドッドッドッ!
楓「(大丈夫。大丈夫だから楓……)」
楓「(シュミレーションはしたし、策も考えた。準備は万全、これは勝てる戦だから)」
楓「(フゥー、フゥー……)」
楓「……」
楓「(自己紹介とはつまり、自分がどんな人間かということを端的にアピールすること)」
楓「(逆に言えば、周囲にどのように見られたいか。言葉の選び方によっては、印象を操作することも可能)」
楓「(私が抱く、私自身の理想像。本当の“私”デビュー……!)」
楓「(タフで知性的で、クールで綺麗で格好良くって、さらに!)」
楓「(ユーモラスな一面ものぞかせる、デキるお姉さん的なカンジで……!!)」ドキドキ
P「───では高垣さん。何か一言、自己紹介を……」
楓「(き、キタ!!)」
408: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:02:31.44 ID:8Yh3FEQO0
楓「ハ……!」
楓「初めましてっっ!!」
楓「石垣、堀垣、高垣っ! 高垣楓で~すっ♪」
楓「よろしくお願いしまぁすっ☆」
楓「(フー……よし、よーし。つかみはバッチ……)」
楓「(…………リ……)」
*「……」
**「あ……ハハハ……」パチパチ
***「」
楓「(っ!?)」
楓「(リアクションが薄い!? 滑った? 引いて……いや、驚いているだけですよね!?)」
楓「(だ、大丈夫っ………私はか弱い女子だから、滑ってもきっと男性のプロデューサーがなんとかフォローしてくれるはず。後顧の憂いは無いのなら……)」
楓「(よ、よぅし。親しみが出るように、畳み掛けて次弾を……!)」
楓「モデル出身で表紙、も出る、時がありましたが人気、もでる、モテる、秘訣とかはよく分らないので……っ!」
楓「皆さんのスタイルを参考…………に……」
*「…………」
**「…………」
***「…………」
楓「ッッ!?」
楓「(ふ、ふぉ、フォローをッ!!)」バッ!
P「ハ、ハハハ……」
楓「」
楓「(フォローされない!? わ、私女子じゃないの男子なの!?)」ペタペタ
楓「(!! ……じ、女子だわっ!)」モミモミ
楓「ア……」
楓「で……、ですので……ソ、その……」
楓「よ、よろしく……、よ、よろチ………ク……」
シーン……
…
??「(へ、へぇ……)」
泰葉「(高垣楓さん、ギャグ好きだったんだ。意外だなぁ)」
~~~~~~~~~~
楓「……あの後すぐ、逃げるようにトイレに駆け込みました」
楓「人生初の体験でした。泣きながら嘔吐したのは」
泰葉「……」
のあ「(私より下がいた……)」
楓「自己紹介……事故初回……ふ、ふふ……」プルプル
──────
────
──
楓「初めましてっっ!!」
楓「石垣、堀垣、高垣っ! 高垣楓で~すっ♪」
楓「よろしくお願いしまぁすっ☆」
楓「(フー……よし、よーし。つかみはバッチ……)」
楓「(…………リ……)」
*「……」
**「あ……ハハハ……」パチパチ
***「」
楓「(っ!?)」
楓「(リアクションが薄い!? 滑った? 引いて……いや、驚いているだけですよね!?)」
楓「(だ、大丈夫っ………私はか弱い女子だから、滑ってもきっと男性のプロデューサーがなんとかフォローしてくれるはず。後顧の憂いは無いのなら……)」
楓「(よ、よぅし。親しみが出るように、畳み掛けて次弾を……!)」
楓「モデル出身で表紙、も出る、時がありましたが人気、もでる、モテる、秘訣とかはよく分らないので……っ!」
楓「皆さんのスタイルを参考…………に……」
*「…………」
**「…………」
***「…………」
楓「ッッ!?」
楓「(ふ、ふぉ、フォローをッ!!)」バッ!
P「ハ、ハハハ……」
楓「」
楓「(フォローされない!? わ、私女子じゃないの男子なの!?)」ペタペタ
楓「(!! ……じ、女子だわっ!)」モミモミ
楓「ア……」
楓「で……、ですので……ソ、その……」
楓「よ、よろしく……、よ、よろチ………ク……」
シーン……
…
??「(へ、へぇ……)」
泰葉「(高垣楓さん、ギャグ好きだったんだ。意外だなぁ)」
~~~~~~~~~~
楓「……あの後すぐ、逃げるようにトイレに駆け込みました」
楓「人生初の体験でした。泣きながら嘔吐したのは」
泰葉「……」
のあ「(私より下がいた……)」
楓「自己紹介……事故初回……ふ、ふふ……」プルプル
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409: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:03:46.52 ID:8Yh3FEQO0
──
────
──────
━━━━夜━━━━
【高峯家】
のあ「……」ズズーッ
のあ「……」モグモグ
のあ「……はぁ」
のあ「……最近は乾麺のうどんばかりで、味気ないわ。栄養が偏りそう」
のあ「でもお金ないし………はぁ」
のあ「吉野家のニオイが恋しい……」
のあ「……」ズズーッ
のあ「……」モグモグ
『───時は、昭和三十四年』
『───東京築地の一角に、吉野家一号店がありました』
のあ「……あ」
のあ「吉野家のCM……」
のあ「……」モグモグ
のあ「(懐かしいぁ。そういえば少し前、すき家のCMに事務所の子達が出てたっけ)」
のあ「ふふっ……もし私にオファーが来たら、周りに引かれるくらいの全精力で撮影に臨むのに」
────
──────
━━━━夜━━━━
【高峯家】
のあ「……」ズズーッ
のあ「……」モグモグ
のあ「……はぁ」
のあ「……最近は乾麺のうどんばかりで、味気ないわ。栄養が偏りそう」
のあ「でもお金ないし………はぁ」
のあ「吉野家のニオイが恋しい……」
のあ「……」ズズーッ
のあ「……」モグモグ
『───時は、昭和三十四年』
『───東京築地の一角に、吉野家一号店がありました』
のあ「……あ」
のあ「吉野家のCM……」
のあ「……」モグモグ
のあ「(懐かしいぁ。そういえば少し前、すき家のCMに事務所の子達が出てたっけ)」
のあ「ふふっ……もし私にオファーが来たら、周りに引かれるくらいの全精力で撮影に臨むのに」
410: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:06:25.13 ID:8Yh3FEQO0
のあ「……でも、依然オファーは来ないわ」
のあ「何が足りないんだろう? 私自身の知名度? 嗜好のアピール? それとも単に───」
のあ「───ん??」
『───吉野家のチョイ呑み、略して「吉呑み」』
『───旨いつまみでチョイと一杯』
のあ「ッッ!?」ガタッ!
楓『───さあ、今日は吉呑みしましょう♪』
楓『───「吉野家」』
楓『…………でも、呑みすぎはよしなや? ……ふふっ♪』
━━━━2分後━━━━
【高垣家】
ドンッ!!
ドンドンドンドンッ!!
楓「ヒ、ヒエッ……」ガクガク
『か、楓……っ』
『CM……い、良い……、ひ、表情だった……っ』
楓「ア、アリガトウゴザイマス……」
『けれど……っ、何故……』
『貴女の嗜好はお酒……私の嗜好は吉野家なのに……』
『な、何故……っ! と、共に堕ちていくと誓ったのに……っ!』ドンッ
楓「ゴ……ごめんなさい、知らせてなくて……」
泰葉『す、すみません皆さん! この人ちょっと酔ってるだけなんです!!』
───パシャ
泰葉『やめッ……!? と、撮らないで下さい!! 見世物じゃないんですよ!?』
泰葉『時子さん!! お、お願いですから、撮るのやめて引き剥がすのを伝ってください!! このままじゃ近所の人達に迷惑が……!!!』
*『…………』
───パシャ
『ヒグッ……グスッ……』
楓「」
──────
────
──
のあ「何が足りないんだろう? 私自身の知名度? 嗜好のアピール? それとも単に───」
のあ「───ん??」
『───吉野家のチョイ呑み、略して「吉呑み」』
『───旨いつまみでチョイと一杯』
のあ「ッッ!?」ガタッ!
楓『───さあ、今日は吉呑みしましょう♪』
楓『───「吉野家」』
楓『…………でも、呑みすぎはよしなや? ……ふふっ♪』
━━━━2分後━━━━
【高垣家】
ドンッ!!
ドンドンドンドンッ!!
楓「ヒ、ヒエッ……」ガクガク
『か、楓……っ』
『CM……い、良い……、ひ、表情だった……っ』
楓「ア、アリガトウゴザイマス……」
『けれど……っ、何故……』
『貴女の嗜好はお酒……私の嗜好は吉野家なのに……』
『な、何故……っ! と、共に堕ちていくと誓ったのに……っ!』ドンッ
楓「ゴ……ごめんなさい、知らせてなくて……」
泰葉『す、すみません皆さん! この人ちょっと酔ってるだけなんです!!』
───パシャ
泰葉『やめッ……!? と、撮らないで下さい!! 見世物じゃないんですよ!?』
泰葉『時子さん!! お、お願いですから、撮るのやめて引き剥がすのを伝ってください!! このままじゃ近所の人達に迷惑が……!!!』
*『…………』
───パシャ
『ヒグッ……グスッ……』
楓「」
──────
────
──
411: ☆1/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:08:09.00 ID:8Yh3FEQO0
──
────
──────
【岡崎家】
泰葉「へー……」
泰葉「高峯さんって、吉野家が好きだったんですか」ズズッ
のあ「……」
のあ「泰葉。お茶を注いで頂戴」
泰葉「あ、はい」スッ
楓「意外ですよね。事務所の子達も噂してましたけど……」
楓「振る舞いや容姿からして、高峯さんって肉食というよりはハイオクで動いてそうなイメージなのに」
泰葉「(サラッと酷いことを……)」
のあ「……肉は好き。生理的欲求、生ある者の活力となる根源」
のあ「──肉を食せば、幸福が訪れる──………親戚が言っていたわ」
泰葉「(何その親戚)」
泰葉「あれ? じゃあ吉野家が特別好きというワケではないんですか?」
泰葉「だって牛丼チェーンなら他にもありますし」
のあ「……!」ピクッ
楓「(……ハッ!!)」
楓「泰葉ちゃん! それは禁句です!」
泰葉「えっ?」
楓「のあさんは吉野家と他の牛丼チェーン店を同列に語られるのを異常に嫌う……他店に対する対抗意識は尋常じゃありません」
泰葉「へえ……」ズズズッ
のあ「ア……あの店でなければダメ!!」バンッ!
泰葉「わッ! び、びっくりしたぁ……!」
のあ「唯一無二、余所の紛い物では得られない多幸感が……」
楓「……」
泰葉「……」
のあ「……あの店には………」
楓「……」ズズズッ
のあ「……」
のあ「………」
のあ「在る」
泰葉「(タメ長っ)」
楓「(泰葉ちゃん、お茶注いで下さい♪)」スッ
泰葉「(もう無いです)」
楓「(あっ、はい)」
────
──────
【岡崎家】
泰葉「へー……」
泰葉「高峯さんって、吉野家が好きだったんですか」ズズッ
のあ「……」
のあ「泰葉。お茶を注いで頂戴」
泰葉「あ、はい」スッ
楓「意外ですよね。事務所の子達も噂してましたけど……」
楓「振る舞いや容姿からして、高峯さんって肉食というよりはハイオクで動いてそうなイメージなのに」
泰葉「(サラッと酷いことを……)」
のあ「……肉は好き。生理的欲求、生ある者の活力となる根源」
のあ「──肉を食せば、幸福が訪れる──………親戚が言っていたわ」
泰葉「(何その親戚)」
泰葉「あれ? じゃあ吉野家が特別好きというワケではないんですか?」
泰葉「だって牛丼チェーンなら他にもありますし」
のあ「……!」ピクッ
楓「(……ハッ!!)」
楓「泰葉ちゃん! それは禁句です!」
泰葉「えっ?」
楓「のあさんは吉野家と他の牛丼チェーン店を同列に語られるのを異常に嫌う……他店に対する対抗意識は尋常じゃありません」
泰葉「へえ……」ズズズッ
のあ「ア……あの店でなければダメ!!」バンッ!
泰葉「わッ! び、びっくりしたぁ……!」
のあ「唯一無二、余所の紛い物では得られない多幸感が……」
楓「……」
泰葉「……」
のあ「……あの店には………」
楓「……」ズズズッ
のあ「……」
のあ「………」
のあ「在る」
泰葉「(タメ長っ)」
楓「(泰葉ちゃん、お茶注いで下さい♪)」スッ
泰葉「(もう無いです)」
楓「(あっ、はい)」
412: ☆2/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:10:00.44 ID:8Yh3FEQO0
のあ「例えるなら、『松屋』。あの店は……」ズズッ
泰葉「(ちょ、ちょっと……何か言い始めましたよ?)」
楓「(シーっ)」
のあ「肉は薄い割に味付けは中々だけど、米が不味く……トータルで、なんか普通に美味しくない」
泰葉「(ど、ド直球にこき下ろした……!)」
のあ「でも」
のあ「並盛の値段が他店より遥かに安く、バラエティも豊富」
のあ「さらに、細やかな心配りが光る。箸休めのための無料の味噌汁、味の変化を求める際に打って付けの数多く取り揃えたドレッシング」
のあ「……あのような利益度外視の客への奉仕や配慮は、他店も鑑みる余地があるわね」
のあ「質を追求するだけではなく、客に寄り添う姿勢は……私たちアイドルと共鳴する点があるわ」
泰葉「さすがに松屋とアイドルを結びつけるのは無理がありませんか?」
のあ「……でも、正直質を求めて欲しいというのが実際のところかしら」
泰葉「ちょっと」←【松屋派】
楓「私は好きですけどね、松屋。定食とかすごく美味しかったですよ?」←【なか卯派】
泰葉「(……)」
泰葉「(……楓さん)」
楓「(はい?)」
泰葉「(あの高峯さんが、こんなに多弁なところを見るのは初めての気がするんですけど)」
楓「!」
泰葉「(それに、なんか口調も……。いつもなら堅いカンジで『食欲……その渇望は、生ある者ならば抗えぬ宿命』とか言いそうなのに)」
楓「(そうですか? 私と一緒の時はあれくらいですよ?)」
泰葉「(えっ)」
楓「(あまり表情に変化はありませんが……楽しそうですし良いのでは?)」
楓「(私が思うに……あれが素の彼女なのかも。信頼されている証拠ではないでしょうか)」
泰葉「(う、ううん………まあ、貴女がそう言うのであれば)」
泰葉「(……高峯さん、なんかいつもよりイキイキしてるし)」
413: ☆3/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:12:42.71 ID:8Yh3FEQO0
のあ「……」
のあ「続きまして……」
泰葉「(つ、続いた!!)」
のあ「………『すき家』は」
のあ「米の味は普通だけど、肝心の肉の味付けは……」
のあ「……」
泰葉「……」
のあ「……フッ」
泰葉「(鼻で笑った!)」
のあ「肉の量が少なく玉ねぎが多すぎる…………そこからは経営の悲惨な現状が容易に想像できる」
のあ「……哀れ過ぎて、乾いた笑いしか出ない」
のあ「玉ねぎは火が通っていなく固いまま。盛り付けは客の神経を逆撫でするかのような、同じ人間の所業とは思えない醜怪さ」
のあ「…………注文の品が運ばれた時点で、客層の7割はtwitterに拡散するか、箸を折り店を後にする」
泰葉「辛辣すぎですよ!! ていうか9割ぐらいソレ誇張してますよね!?」
のあ「ふふふ。滑稽滑稽、すき家滑稽なり」
泰葉「い、言い過ぎですよ……?」
楓「のあさんは極度の吉野家至上主義……多少の暴言は目を瞑ってあげてください……」
泰葉「いや、私は別にいいんですけど、すき家が好きな人が怒りませんか?」
楓「すき家がすきや?」
泰葉「誰も言ってませんよ」
楓「(……のあさんのあさん。何が嫌いかより何が好きかで自分を語って下さい)」
楓「(そのほうが、きっと好感度も高いですよ)」
のあ「(!! ………そうね)」
のあ「メニューを見た段階で食欲が削がれ意識が混濁するような、邪道も邪道なラインナップばかりだった」
のあ「でも」
のあ「……百聞は一見に如かず、百見は一触に如かず」
のあ「醜い様相からは想像できない、美味とも捉える事が可能な刺激の奔流に、私の味覚神経は抗えず……」
泰葉「そこは素直に美味って言いましょうよ……」
楓「(醜い肉にくらいつく)」フフッ
のあ「……まるで、周囲から見当違いなイメージで持て囃されて、ただ傀儡のように揺れ動く私みたいに……」
泰葉「(……??)」
楓「(のあさん。のあさんは今のままでも素敵ですよ)」
のあ「……ただ、味について一つ言及するならば……」
のあ「ちょっとジンギスカンっぽい味付けだった」
のあ「……ハッ!!」
のあ「……虚偽。偽装、取り繕うための愚かな嘘……!」
のあ「……っ!!」
のあ「……今思えば、ひょっとしてあれはジンギスカンだったのかもしれない」
泰葉「高峯さん、今貴女が相当おかしな事を言っている自覚ってあります?」
415: ☆4/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:13:47.80 ID:8Yh3FEQO0
のあ「『なか卯』は……」
のあ「牛丼ではない、しらたき丼……。牛丼のような何か」
のあ「……あれは牛丼チェーンとは断じて認めない」
泰葉「言い過ぎですよ……」
のあ「無論、味付けは全人類に長期戦を予感させるほど絶望的な仕上がり」
泰葉「い、言い過ぎですよ!?」
のあ「他店とは違い、玉ねぎではなく白ネギを入れているから、その香りとクセが暴走して……肉の風味が圧殺されている」
のあ「失望を通り越し、絶望したわ」ハー
泰葉「(この人何者なんだろ……)」
のあ「ただ……」
のあ「牛丼以外のラインナップが、極めて強力。それこそ、他店の追随を許さない程に」
のあ「もちもちとした舌触り、シコシコした歯応え、つるっとした喉越しが堪らない『うどん』」
のあ「一年を通して様々なバリエーションで売り出され……どれも秀逸で安定感のある美味しさだわ」
のあ「それを少量のサイズで併売する点も、実に巧妙な商品展開」
のあ「そして……夕陽を切り取ったかの如く黄熟し輝く卵をふんだんに使った、甘みのある『親子丼』」
のあ「筆舌に尽くし難し。あれは見事という他無く……賞賛に値する」
のあ「……ちょっと、揺らいだ」
泰葉「な、何がですか……?」
416: ☆5/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:15:40.20 ID:8Yh3FEQO0
のあ「けれど」
のあ「私はあの店を牛丼チェーンとして評価する気はないわ」
のあ「論外。圧倒的論外」
楓「ふむふむ……」
楓「では、やはりのあさんの中では吉野家がいちばんのお気に入りということですね?」
泰葉「それで……」
泰葉「高峯さんが評する、他店を凌駕する吉野家の良さとは?」
のあ「……」
のあ「おいしい」
楓「……」
のあ「やすい」
泰葉「……」
のあ「はやい」
楓「…………」
のあ「つよい」
泰葉「…………」
のあ「…………」
のあ「………………」
のあ「言うことなし」
楓「(し、締めた!!)」
泰葉「(雑っ!!)」
のあ「(あとは食券制度にすれば完璧……フフフ)」
──────
────
──
417: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:16:48.64 ID:8Yh3FEQO0
──
────
──────
━━━3月14日━━━
【事務所】
のあ「……雪美、これを受け取ってもらえるかしら?」
雪美「??」
雪美「……この袋、なに?」キョトン
のあ「覚えていないかしら。貴女が私に与えてくれた、尊い施しを」
のあ「……一月前。うら若き乙女が懸想する男に、その想いを形に変えて送り伝える、儚くも甘き刻を」
雪美「……バレンタインデー?」
雪美「でも……あげたの、ほんのひと欠片……」
雪美「チロルチョコ……」
のあ「その無垢な優しさの一片が、凍てついた私の心を温かく満たしたわ」
のあ「……本当にありがとう、雪美」
のあ「それはお返し。貴女の口に合えば……私は嬉しい」
雪美「うん……、うん」
雪美「……ありがとう、のあ。大切に……、するから……」
雪美「あ」
雪美「じゃあ……これ」スッ
雪美「おかえし……ケーキ」
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「…………えっ?」
雪美「じゃあ、またね? ふふっ……」ヒラヒラ
タタタタタタッ…
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「(え……えっ??)」
────
──────
━━━3月14日━━━
【事務所】
のあ「……雪美、これを受け取ってもらえるかしら?」
雪美「??」
雪美「……この袋、なに?」キョトン
のあ「覚えていないかしら。貴女が私に与えてくれた、尊い施しを」
のあ「……一月前。うら若き乙女が懸想する男に、その想いを形に変えて送り伝える、儚くも甘き刻を」
雪美「……バレンタインデー?」
雪美「でも……あげたの、ほんのひと欠片……」
雪美「チロルチョコ……」
のあ「その無垢な優しさの一片が、凍てついた私の心を温かく満たしたわ」
のあ「……本当にありがとう、雪美」
のあ「それはお返し。貴女の口に合えば……私は嬉しい」
雪美「うん……、うん」
雪美「……ありがとう、のあ。大切に……、するから……」
雪美「あ」
雪美「じゃあ……これ」スッ
雪美「おかえし……ケーキ」
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「…………えっ?」
雪美「じゃあ、またね? ふふっ……」ヒラヒラ
タタタタタタッ…
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「(え……えっ??)」
418: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:18:11.23 ID:8Yh3FEQO0
のあ「(……ケーキをワンホール貰っちゃった。どうしよ)」
のあ「(嬉しいけど……な、なんで……? ……いや、嬉しいのだけれども……なんであるの?)」
のあ「……」
のあ「(……両手が塞がっちゃった)」
のあ「(ホワイトデーのお返しが余っちゃったし、とりあえずテキトーに誰かに渡して処理して、イメージアップでも……)」
のあ「(候補としては……、仲良くなりたい部類の人達としては、蘭子ちゃん、みくちゃん、アーニャちゃん、菜々ちゃん、智絵里ちゃん、伊吹ちゃん、小梅ちゃん、涼ちゃん……)」
のあ「(お世話になっている人達の部類としては……、真奈美さんと美優さんには渡したし、プロデューサー……あと周子ちゃんね)」
のあ「(でもあと一個しかないし、とりあえず……)」
のあ「(とりあえず。次この部屋に入ってきた人に渡そう)」
のあ「……」ドキドキ
───ガチャ
のあ「!」
美波「おはようございます」スッ
のあ「……」
のあ「……ふむ」
美波「!!!」ビクッ!
美波「おっふ……、お、おはようございます高峯さん!!」
のあ「(新田美波ちゃん)」
のあ「(以前ダンスレッスンで一緒だったことがあったわね)」
のあ「(あと、この子は確か女子力に関して、私の良い噂を事務所に広めてくれたことが……)」
のあ「(……まあ、この子でいいわ。広告塔になりなさい)」
のあ「おはよう、美波」
美波「(あぁ、今日も麗しいわ高峯さん……まさか二人っきりで会えるなんて)」
美波「(今日は良い夢を見られそうだわ、ふふふっ♪)」ドキドキ
のあ「……」
419: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/27(土) 21:23:12.30 ID:8Yh3FEQO0
のあ「……これ、あげる」
美波「? このラッピングは……」
のあ「白き日の、贈り物よ。貴女には特別に」
美波「ッ!? でで、でも……私、バレンタインデーには何も……」
のあ「理由は要らないわ。共鳴する者、いわゆる気の置けない仲というのも悪くはない……そう思わないかしら」
のあ「単なる気まぐれと思って、受け取って頂戴」
のあ「……じゃあ」スッ
美波「あ……」
スタスタスタ
───バタン
美波「……」
美波「(特別……特別……)」ドキドキ
───ガチャ
アーニャ「ドーブラエ ウートラ、おはようございます」
アーニャ「……あっ♪」
アーニャ「美波、今日はホワイトデー、ですね♪」
美波「おはよう、アーニャちゃん……うん?」
アーニャ「ダリーチ パダーラク、美波♪ これ、お返しです、受け取ってください♪」
美波「わあっ! ありがとう、アーニャちゃん♪」
アーニャ「もうひとつ、ありますね? それは……どなたから、ですか?」
美波「あっ! こ、これは……」
美波「(…………)」
アーニャ「……美波?」
美波「(これは……開封してもいい物なのかな。むしろ有形文化財として保護申請するべきでは……)」
美波「(いいえ、折角頂いたのだし、せめて中身の確認を……一体何が……)」ガサガサ
美波「(………寡黙の女王と揶揄され、凛としたたたずまいで冷徹無情の空気を纏う彼女だけれど)」
美波「(私は知っているの。彼女は、本当は優しくて温かくて……)」
美波「(可愛いデザインや小物が好きな、外見とギャップのある人間味の溢れる素敵な女性だということを)」ガサガサ
美波「(この幾何学的なデザインのラッピングの中には、きっとダークマターとか根源の渦とかそんな非科学的な物体ではなく、きっと……きっと愛らしい何かが……っ!)」ガサッ
【鳩サブレー】
美波「あウッ!!」ビクン!
美波「ぐ、は、孕っ……」ガクッ
アーニャ「み、美波!?」
美波「う、生まれ……ッ!?」プルプル
アーニャ「!?」
──────
────
──
美波「? このラッピングは……」
のあ「白き日の、贈り物よ。貴女には特別に」
美波「ッ!? でで、でも……私、バレンタインデーには何も……」
のあ「理由は要らないわ。共鳴する者、いわゆる気の置けない仲というのも悪くはない……そう思わないかしら」
のあ「単なる気まぐれと思って、受け取って頂戴」
のあ「……じゃあ」スッ
美波「あ……」
スタスタスタ
───バタン
美波「……」
美波「(特別……特別……)」ドキドキ
───ガチャ
アーニャ「ドーブラエ ウートラ、おはようございます」
アーニャ「……あっ♪」
アーニャ「美波、今日はホワイトデー、ですね♪」
美波「おはよう、アーニャちゃん……うん?」
アーニャ「ダリーチ パダーラク、美波♪ これ、お返しです、受け取ってください♪」
美波「わあっ! ありがとう、アーニャちゃん♪」
アーニャ「もうひとつ、ありますね? それは……どなたから、ですか?」
美波「あっ! こ、これは……」
美波「(…………)」
アーニャ「……美波?」
美波「(これは……開封してもいい物なのかな。むしろ有形文化財として保護申請するべきでは……)」
美波「(いいえ、折角頂いたのだし、せめて中身の確認を……一体何が……)」ガサガサ
美波「(………寡黙の女王と揶揄され、凛としたたたずまいで冷徹無情の空気を纏う彼女だけれど)」
美波「(私は知っているの。彼女は、本当は優しくて温かくて……)」
美波「(可愛いデザインや小物が好きな、外見とギャップのある人間味の溢れる素敵な女性だということを)」ガサガサ
美波「(この幾何学的なデザインのラッピングの中には、きっとダークマターとか根源の渦とかそんな非科学的な物体ではなく、きっと……きっと愛らしい何かが……っ!)」ガサッ
【鳩サブレー】
美波「あウッ!!」ビクン!
美波「ぐ、は、孕っ……」ガクッ
アーニャ「み、美波!?」
美波「う、生まれ……ッ!?」プルプル
アーニャ「!?」
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433: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:31:09.85 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
【岡崎家】
のあ&楓「……料理?」
泰葉「はい」
泰葉「ホワイトデーに向けたもので、子供番組内の料理コーナーで数人が出演するんですが……」
楓「ホワイトデーなのに、女の泰葉ちゃんが腕を振るうというのも妙な話ですねぇ」
泰葉「名目だけで企画をぽんぽん量産しますからね、子供向け番組って」
泰葉「それでまず、レシピを出演者各自で持ち寄ってから本命のレシピを採用する構成なんですよ」
楓「へえ。面白いレシピとかですか?」
のあ「子供番組ならではの独創性を……という魂胆ね」
泰葉「まあ、私は捻らないでシンプルなものを提出しますが。別に選ばれなくても良いですし」
楓「(消極的……)」ズズッ
のあ「(楓、お茶を注いで頂戴)」
楓「(あっ、はい)」
泰葉「……それで、レシピよりまずは前提の部分が悩みの種なんです」
楓「?」
泰葉「私、あまり料理って得意な方ではないんです」
のあ&楓「……」
楓「(以前、のあさんの誕生日に大層な料理をふるまってくれてましたが……)」
のあ「(……幻聴かしら)」
泰葉「まだ撮影まで時間がありますし、しばらく料理の練習をしたいので……」
泰葉「いつもは私が適当に作りますが、もしお二人がよろしければ、なにか食べたいもののリクエストをこのメモに書いてくれれば……」
楓「ふむふむ。メモに……」
楓「でも良いんですか? いつも作って頂いているだけでもありがたいのに」
泰葉「自発的だと現状の実力に合ったもので妥協してしまいがちですが、他人からの要望という形で受けてこそ、力もつくと思うので」
楓「(ストイック……)」
のあ「(……)」
楓「(のあさん、お茶注いで下さい♪)」スッ
のあ「(もう無いわ)」
楓「(あっ、はい)」
────
──────
【岡崎家】
のあ&楓「……料理?」
泰葉「はい」
泰葉「ホワイトデーに向けたもので、子供番組内の料理コーナーで数人が出演するんですが……」
楓「ホワイトデーなのに、女の泰葉ちゃんが腕を振るうというのも妙な話ですねぇ」
泰葉「名目だけで企画をぽんぽん量産しますからね、子供向け番組って」
泰葉「それでまず、レシピを出演者各自で持ち寄ってから本命のレシピを採用する構成なんですよ」
楓「へえ。面白いレシピとかですか?」
のあ「子供番組ならではの独創性を……という魂胆ね」
泰葉「まあ、私は捻らないでシンプルなものを提出しますが。別に選ばれなくても良いですし」
楓「(消極的……)」ズズッ
のあ「(楓、お茶を注いで頂戴)」
楓「(あっ、はい)」
泰葉「……それで、レシピよりまずは前提の部分が悩みの種なんです」
楓「?」
泰葉「私、あまり料理って得意な方ではないんです」
のあ&楓「……」
楓「(以前、のあさんの誕生日に大層な料理をふるまってくれてましたが……)」
のあ「(……幻聴かしら)」
泰葉「まだ撮影まで時間がありますし、しばらく料理の練習をしたいので……」
泰葉「いつもは私が適当に作りますが、もしお二人がよろしければ、なにか食べたいもののリクエストをこのメモに書いてくれれば……」
楓「ふむふむ。メモに……」
楓「でも良いんですか? いつも作って頂いているだけでもありがたいのに」
泰葉「自発的だと現状の実力に合ったもので妥協してしまいがちですが、他人からの要望という形で受けてこそ、力もつくと思うので」
楓「(ストイック……)」
のあ「(……)」
楓「(のあさん、お茶注いで下さい♪)」スッ
のあ「(もう無いわ)」
楓「(あっ、はい)」
434: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:34:41.92 ID:cc9lYL1C0
泰葉「あ、あの……できれば常識の範疇でお願いしますね?」
泰葉「可能な限り頑張りますが、『満漢全席』とかリクエストされてもぜったい無視しますからね」
楓「分かりました、じゃあ普段通り材料は私達がリクエストに沿って揃えましょう。あとは……」
のあ「……泰葉の実力向上に向けて、意表を突く題材を示せばいいのね?」
泰葉「まあ……そんなカンジでお願いします」
楓「ふふっ♪ 折角ですし、無難に食べたいものでもリクエストしておきましょうか♪」
のあ「(食べたいもの……)」
━━━━翌日━━━━
【岡崎家】
───ガチャ
泰葉「ただいまー……」
泰葉「(あれ、電気がついてない)」
泰葉「……あ」
泰葉「(……机の上にメモの束が置いてある。二人とも、ちゃんと書いてくれたんだ)」
泰葉「(あの二人って示し合わせたように一緒に部屋に来るけど、今日は来ないのかな……神出鬼没というか、来るタイミングが分からない)」
泰葉「(材料費は負担してくれてるんだし、出来れば食べてほしかったな……。『調理の腕は誰かのために振るうからこそ磨きがかかる』とか言うし)」
泰葉「(……まあいいか。どれどれ??)」ヒラッ
【カレイの煮つけ】
【牛丼】
【鱈の梅しそチーズ春巻き】
泰葉「(ふんふん……魚料理……)」カサカサ
【茄子のおひたし】
【牛丼】
【からあげ】
【牛丼】
【あさりの酒蒸し】
泰葉「…………」
【カツオのカルパッチョ】
【牛丼】
【メンマと白髪葱のぴり辛炒め】
【牛丼】
【あんきもポン酢】
【牛丼】
【エイヒレ】
【牛丼】
泰葉「…………」
泰葉「(えっ、なにコレ。サブリミナル?)」
────
──
泰葉「可能な限り頑張りますが、『満漢全席』とかリクエストされてもぜったい無視しますからね」
楓「分かりました、じゃあ普段通り材料は私達がリクエストに沿って揃えましょう。あとは……」
のあ「……泰葉の実力向上に向けて、意表を突く題材を示せばいいのね?」
泰葉「まあ……そんなカンジでお願いします」
楓「ふふっ♪ 折角ですし、無難に食べたいものでもリクエストしておきましょうか♪」
のあ「(食べたいもの……)」
━━━━翌日━━━━
【岡崎家】
───ガチャ
泰葉「ただいまー……」
泰葉「(あれ、電気がついてない)」
泰葉「……あ」
泰葉「(……机の上にメモの束が置いてある。二人とも、ちゃんと書いてくれたんだ)」
泰葉「(あの二人って示し合わせたように一緒に部屋に来るけど、今日は来ないのかな……神出鬼没というか、来るタイミングが分からない)」
泰葉「(材料費は負担してくれてるんだし、出来れば食べてほしかったな……。『調理の腕は誰かのために振るうからこそ磨きがかかる』とか言うし)」
泰葉「(……まあいいか。どれどれ??)」ヒラッ
【カレイの煮つけ】
【牛丼】
【鱈の梅しそチーズ春巻き】
泰葉「(ふんふん……魚料理……)」カサカサ
【茄子のおひたし】
【牛丼】
【からあげ】
【牛丼】
【あさりの酒蒸し】
泰葉「…………」
【カツオのカルパッチョ】
【牛丼】
【メンマと白髪葱のぴり辛炒め】
【牛丼】
【あんきもポン酢】
【牛丼】
【エイヒレ】
【牛丼】
泰葉「…………」
泰葉「(えっ、なにコレ。サブリミナル?)」
────
──
436: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:36:07.06 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
【岡崎家】
泰葉「そういえば……お二人はどうなんですか?」
泰葉「料理の、腕前」
のあ&楓「(……)」ピクッ
楓「ド……どうしたんですか、いきなり??」
泰葉「いえ、単純な興味です。だっていつも私が作ってますし」
楓「……」
のあ「……」
楓「か、からっきしです」
楓「命を失う覚悟で臨めば何とか作れますが……」
泰葉「お、重すぎる」
楓「なので、ご飯はいつもコンビニ弁当か居酒屋で一品を」
泰葉「高峯さんは?」
のあ「オムライスなら」
泰葉「あー、分かります。とりあえず一人暮らしになるとまず何故か、真っ先にオムライス練習しますよね」
のあ「……その他の料理は……」
のあ「レシピを見ながらであれば、5回に一度。20%の確率で成功するわ」
泰葉「な……、なんですかその、ゲームキャラの調理スキルみたいな女子力」
泰葉「あれ? でも……」
泰葉「確か……美波さんでしたか? 彼女が以前に事務所で、貴女から頂いた手作りの料理について話していたような……」
のあ「……母の味のおでんならば、成功率は50%」モゾモゾ
泰葉「へ、へえぇ……」
楓「(泰葉ちゃん、お茶注いで下さい♪)」スッ
泰葉「(もう無いです)」
楓「(あっ、はい)」
────
──────
【岡崎家】
泰葉「そういえば……お二人はどうなんですか?」
泰葉「料理の、腕前」
のあ&楓「(……)」ピクッ
楓「ド……どうしたんですか、いきなり??」
泰葉「いえ、単純な興味です。だっていつも私が作ってますし」
楓「……」
のあ「……」
楓「か、からっきしです」
楓「命を失う覚悟で臨めば何とか作れますが……」
泰葉「お、重すぎる」
楓「なので、ご飯はいつもコンビニ弁当か居酒屋で一品を」
泰葉「高峯さんは?」
のあ「オムライスなら」
泰葉「あー、分かります。とりあえず一人暮らしになるとまず何故か、真っ先にオムライス練習しますよね」
のあ「……その他の料理は……」
のあ「レシピを見ながらであれば、5回に一度。20%の確率で成功するわ」
泰葉「な……、なんですかその、ゲームキャラの調理スキルみたいな女子力」
泰葉「あれ? でも……」
泰葉「確か……美波さんでしたか? 彼女が以前に事務所で、貴女から頂いた手作りの料理について話していたような……」
のあ「……母の味のおでんならば、成功率は50%」モゾモゾ
泰葉「へ、へえぇ……」
楓「(泰葉ちゃん、お茶注いで下さい♪)」スッ
泰葉「(もう無いです)」
楓「(あっ、はい)」
437: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:37:20.79 ID:cc9lYL1C0
のあ「ッッ!!」ガタッ
のあ「あ、あああっ……!!」
泰葉「!! ど、どうしたんですか!?」
のあ「料理の話題で思い出した……、わ、私……みくちゃんに……」
楓「(ちゃん……?)」
のあ「お、お弁当を明日作る約束だったのに……! ど、どうしよう、泰葉ちゃん……っ」オロオロ
泰葉「お弁当……? ま、まあ落ち着いて……(ちゃん付け……?)」
のあ「私の技量からして成功率は20%だから、今からやらないと完成するかも危ういのに……ど、どうすれば……」オロオロ
泰葉「……ふむ」
泰葉「じゃあ、私が代わりに作りましょうか?」
のあ「(!?)」
泰葉「以前話しましたが、今ちょうど調理を練習してるんです」
泰葉「幸い、材料とレシピも今ならたくさん揃えていますし……」
のあ「っ……!!」ガシッ
のあ「泰葉……あ、ありがとう……っ!」
のあ「この恩は、必ず……!!」
泰葉「い、いえいえ……いいですよ別に」
━━━━深夜━━━━
【岡崎家 キッチン】
泰葉「(弁当作り。今思えば、初めての体験)」
泰葉「(普段は学食や購買とかコンビニで済ませていたし……)」
泰葉「(……よし、頑張ろう)」ギュッ
【白米】
【鰆の西京焼き】
【鱈の梅しそチーズ春巻き】
【魚肉ソーセージと野菜炒め】
【果物ゼリー】
泰葉「よし。献立はこれで……っと」
泰葉「(……高峯さんのリクエストが『魚全般』なら、これで上等でしょう)」
泰葉「(みくちゃん、喜んでくれるならいいけど)」
439: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:38:48.23 ID:cc9lYL1C0
━━━━翌日━━━━
【事務所 応接室】
のあ「……♪」ドキドキ
のあ「……」コソコソ
のあ「……」ヒョコッ
『オ゛アアアアアァァァッ!!! おろろろろろろろろ……!!!』ビシャビシャ!
のあ「……」
━━━━夜━━━━
【岡崎家】
のあ「………吐いてた」
のあ「……ナイアガラの滝の如く」
泰葉「えっ」
泰葉「そ、そうですか……」
泰葉「(……結構ショック。自信あったんだけどなぁ……)」
──────
────
──
440: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:40:10.91 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
━━━━夜━━━━
【高峯家】
───ピロリン♪
のあ「!」
のあ「メール……? 誰……」カパッ
のあ「(差出人……不明)」
のあ「(件名は……)」
のあ「!!!!!」
【★差出人:no name】
【★件名:片桐早苗だよー】
【こんばんは、アイドル部門で同僚の、片桐早苗です。
楓ちゃんから紹介なんだけど、今度都合が良ければ、どこか大勢で飲みに行かない?
お互い色々忙しいし、キリの良い時期だし。自己紹介も兼ねて、楽しくお話しできればと思って。
返事は遅くても大丈夫だよー♪ 以後よろしくね☆】
のあ「…………」プルプル
のあ「う、ぅ、……っ」
のあ「うわっ、うわ………」
のあ「う、うわ……う、うわあっっ!!!」
のあ「(こ、厚意のお誘い……しかも大人組から!!)」
のあ「(この事務所に入ってから、こういうのって初めてかも♪)」ドキドキ
────
──────
━━━━夜━━━━
【高峯家】
───ピロリン♪
のあ「!」
のあ「メール……? 誰……」カパッ
のあ「(差出人……不明)」
のあ「(件名は……)」
のあ「!!!!!」
【★差出人:no name】
【★件名:片桐早苗だよー】
【こんばんは、アイドル部門で同僚の、片桐早苗です。
楓ちゃんから紹介なんだけど、今度都合が良ければ、どこか大勢で飲みに行かない?
お互い色々忙しいし、キリの良い時期だし。自己紹介も兼ねて、楽しくお話しできればと思って。
返事は遅くても大丈夫だよー♪ 以後よろしくね☆】
のあ「…………」プルプル
のあ「う、ぅ、……っ」
のあ「うわっ、うわ………」
のあ「う、うわ……う、うわあっっ!!!」
のあ「(こ、厚意のお誘い……しかも大人組から!!)」
のあ「(この事務所に入ってから、こういうのって初めてかも♪)」ドキドキ
441: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:43:41.52 ID:cc9lYL1C0
のあ「(嬉しい。でも……)」
のあ「(ちょっと怖いかも……片桐早苗さん? 一度もお会いした事がないわ……不安)」
のあ「(先輩からの指導という名目で、熱いお灸とか言ってシメられたり……。……考えすぎかな)」
のあ「……」
のあ「……」ピッピッ
のあ「行、け、た、ら」
のあ「行、き、ま…………」ピッピッ
のあ「(……っ)」
のあ「(………ダメ……ダメよ。『行けたら行きます』なんて、もう断る前提の常套句みたいなものじゃない……)」ガクッ
のあ「(せっかく初対面の私を誘ってくれたんだし、期待に応えよう)」
のあ「(片桐さん……私、飲み会参加します。必ず飲み会参加します)」
のあ「(とりあえず、一発ギャグとイッキ飲みの練習をしとこう)」
のあ「(ふふっ……よぅし。吹っ切れた。ちょっと楽しみ……♪)」
━━━━翌日━━━━
【事務所】
───ガチャ
アーニャ「おはよう、ございます」
みく「おっはにゃ~♪」
美波「おはようございます……あっ!」
のあ「………………………おはよう」
のあ「………………………………ハァ」
のあ「…………」コキッ
アーニャ「……のあ? どうしたのですか?」
アーニャ「どこか、調子が悪いのですか? 溜め息をついて……肩を落として」
みく「? ……のあにゃん、大丈夫?」
のあ「…………」
のあ「……いいえ」
のあ「滅茶苦茶テンション上がってきたのよ……」
みく「ま、マジで!?」
みく「(今のリアクションで!?)」
アーニャ「杞憂でした、か。でもそれは、なによりですね♪」
美波「(高峯さんが嬉しそう。明日はきっと晴れね、フフっ……♪)」ドキドキ
442: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:45:09.61 ID:cc9lYL1C0
━━━━翌日━━━━
【事務所】
のあ「(フフフ……♪ 例の飲み会は明後日)」
のあ「(緊張もするけど、でもそれ以上に、皆と打ち解けられるかもしれないという、楽しみのほうが勝って…………)」
───ピロリン♪
のあ「(……!)」
のあ「(メールだ。しかも早苗さんから……??)」カパッ
【★差出人:片桐早苗】
【★件名:無題】
【のあちゃん、ごめんなさい!
飲み会のお話だけど、みんなの都合を合わせたいから、ちょっと延期になったの。
詳細は未定だけど、だいたい一か月後くらいの4月下旬か5月上旬に、また連絡するから!
本当に勝手でゴメンね(><)】
───ガチャ
アーニャ「おはよう、ございます」
みく「おっはにゃ~♪」
美波「おはようございます……あっ!」
のあ「………………」カチャ
のあ「…………………………………ハァ」
のあ「…………」ゴキッ
アーニャ「あッ! のあ、のあ??」タタタタッ
アーニャ「今の溜め息は、テンション、が、上がったんですね! のあっ!! そういう事ですね!!」ズイッ!
みく「? ……のあにゃん、また良いコトでもあったの?」
のあ「…………」
のあ「……いいえ」
のあ「滅茶苦茶テンション下がったの……」
アーニャ&みく「……………………」
みく「ま、マジか……」
みく「(もうこの人、よく分かんないにゃあ)」
アーニャ「そう、ですか…………イズヴィニーチェ……」シュン
美波「(高峯さんが悲しみに嘆いてる。明日は、きっと雨かな………)」
──────
────
──
【事務所】
のあ「(フフフ……♪ 例の飲み会は明後日)」
のあ「(緊張もするけど、でもそれ以上に、皆と打ち解けられるかもしれないという、楽しみのほうが勝って…………)」
───ピロリン♪
のあ「(……!)」
のあ「(メールだ。しかも早苗さんから……??)」カパッ
【★差出人:片桐早苗】
【★件名:無題】
【のあちゃん、ごめんなさい!
飲み会のお話だけど、みんなの都合を合わせたいから、ちょっと延期になったの。
詳細は未定だけど、だいたい一か月後くらいの4月下旬か5月上旬に、また連絡するから!
本当に勝手でゴメンね(><)】
───ガチャ
アーニャ「おはよう、ございます」
みく「おっはにゃ~♪」
美波「おはようございます……あっ!」
のあ「………………」カチャ
のあ「…………………………………ハァ」
のあ「…………」ゴキッ
アーニャ「あッ! のあ、のあ??」タタタタッ
アーニャ「今の溜め息は、テンション、が、上がったんですね! のあっ!! そういう事ですね!!」ズイッ!
みく「? ……のあにゃん、また良いコトでもあったの?」
のあ「…………」
のあ「……いいえ」
のあ「滅茶苦茶テンション下がったの……」
アーニャ&みく「……………………」
みく「ま、マジか……」
みく「(もうこの人、よく分かんないにゃあ)」
アーニャ「そう、ですか…………イズヴィニーチェ……」シュン
美波「(高峯さんが悲しみに嘆いてる。明日は、きっと雨かな………)」
──────
────
──
443: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:46:47.17 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
━━━4月16日━━━
【学校】
───ピロン♪
泰葉「……ん」
【★差出人:高垣楓】
【今日お部屋に行っていいですか?? ご飯用意しておきますよ♪】
泰葉「……」
泰葉「(合鍵を使って部屋に来たい時は、必ず前もって確認を取ってくれるんだけど……)」
泰葉「(それにしても、『ご飯を用意する』? 珍しい……何だろう、何か違和感がある。でもまあいいや)」スッ
━━━━夕刻━━━━
【岡崎家】
泰葉「ただいまー……。お二人とも、居るんですか?」
泰葉「……?」スタスタ
のあ「おかえりなさい、泰葉」
楓「お疲れ様です。一息ついたら、ご飯にしましょう」
泰葉「……!!」
泰葉「どうしたんですか? この、食卓に広がる高級そうな出前寿司とオードブルは一体……何かの記念日ですか?」
のあ&楓「(……)」
────
──────
━━━4月16日━━━
【学校】
───ピロン♪
泰葉「……ん」
【★差出人:高垣楓】
【今日お部屋に行っていいですか?? ご飯用意しておきますよ♪】
泰葉「……」
泰葉「(合鍵を使って部屋に来たい時は、必ず前もって確認を取ってくれるんだけど……)」
泰葉「(それにしても、『ご飯を用意する』? 珍しい……何だろう、何か違和感がある。でもまあいいや)」スッ
━━━━夕刻━━━━
【岡崎家】
泰葉「ただいまー……。お二人とも、居るんですか?」
泰葉「……?」スタスタ
のあ「おかえりなさい、泰葉」
楓「お疲れ様です。一息ついたら、ご飯にしましょう」
泰葉「……!!」
泰葉「どうしたんですか? この、食卓に広がる高級そうな出前寿司とオードブルは一体……何かの記念日ですか?」
のあ&楓「(……)」
444: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:51:57.28 ID:cc9lYL1C0
楓「ふふっ……♪」
のあ「……泰葉」
泰葉「??」キョトン
のあ「……今日は貴女の誕生日よ」
泰葉「(───!?)」
楓「(驚いてる。サプライズ大成功ですね!)」
のあ「(フフフ……)」
楓「フンパツしてケーキも買いました♪ 6号サイズの、おっきいイチゴのケーキですよ♪」
泰葉「(ろ、6号って……3人で食べきれる量じゃない)」
のあ「手作りではないけれど、祝福の心を籠めておいたわ」
泰葉「(……)」
のあ「それと、これは私のささやかな贈り物よ……喜んで貰えれば幸いだわ」スッ
泰葉「な、なんですか……??」
楓「じゃーんっ!」カサッ
泰葉「(……えっ!?)」ガバッ!
泰葉「う、わ……っ、これっ……、す、すごいっ! きれい……!」
楓「特注ビクトリアンドールハウスのフルセットっ! ミニチュア製作キット付き、有名キッチンウェア製品社限定コレクションも揃えました!」
のあ「以前仕事の話をした時に、ふと疑問が浮かんだのよ……貴女の趣味について」
のあ「……それまで知らなかったけれど、調べて合わせてみたわ」
泰葉「!! で、でも……」
泰葉「こんな立派なもの、本当にすごく高かったでしょう?」
楓「そうですね。あまり高価な物だと、かえって気を遣わせちゃうから控えようとしたんですけど……」
楓「……泰葉ちゃんには普段からお世話になってますし♪」
泰葉「!」
泰葉「そんな、お世話だなんて……」
のあ「それに」
のあ「私も本当に嬉しかったわ。二週間ほど前の事……覚えているかしら」
泰葉「(……!)」
445: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:53:44.08 ID:cc9lYL1C0
のあ「薄幸だと陶酔するのは性に合わないけれど、生れてこの方、他人から祝われた経験など持ち合わせていなかった私を……」
のあ「貴女と楓は、優しく受け入れてくれた。3月25日の事よ」
泰葉「……高峯さんの誕生日、でしたね」
楓「料理は上手く作れないし、不器用で滅多な時でしか気を配れないけど……」
楓「それでも、今日くらいは精一杯の気持ちを受け取って欲しいと思ったんです。これまでの感謝と、これから共に歩む仲間として友情を籠めて」
のあ「……誕生日おめでとう、泰葉」
楓「ほらほら座って、ケーキ食べましょう♪」
泰葉「(……)」
泰葉「…………高峯さん、楓さん」
泰葉「お気持ちは嬉しいです、本当に。でも……いややっぱり……。いや、でも……」
のあ&楓「(……?)」
泰葉「えっと、そのっ……」
泰葉「私の、誕生日は『4月16日』じゃなくて『7月16日』です……」
のあ「……」ピッピッ
のあ「ア……、も、もしもし……ぁ、あの……商品の返送返金って、カ、可能ですか……?」プルプル
楓「ヤ……泰葉ちゃん、5分だけ目を瞑ってて下さい……ぃ、いま片付けますから……」ガタンガタン!
泰葉「あああぁごめんなさいごめんなさい!! 私も半分お金出しますから捨てずに食べましょうよ!!!」
──────
────
──
高垣楓(食費担当)
☆出費:17000円
高峯のあ(プレゼント費担当)
☆出費:1?????円
(それぞれ独自に計画、算定)
446: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:55:53.75 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
【事務所 応接室】
泰葉「(……??)」ペラッ
泰葉「(……)」
~~~~~~~~~~
『注目のアイドル Vol.29』
【寡黙の女王『高峯のあ』、降臨!!】
某日、某所ライブハウスで一人のアイドルがデビューを迎えた。
ファッション誌などで『寡黙の女王』と囁かれる麗人、高峯のあ。
新人であり露出が少ない彼女の素性は謎に包まれており、そのせいか会場に訪れていた観客も当初はまるで関心を寄せていなかった。
しかし、誰もがノーマークだった高峯のあのパフォーマンスこそが、その日のライブの中で最も興奮を生み、最高潮の盛り上がりを見せる結果となった。
月の光のように神秘的な銀髪を振り立て、星の輝きかと見間違うほどの美女の舞姿。
伸びのある歌声は力強くもどこか悲哀の色を帯び、満ちてくる潮の、あるいは引いていく潮のような抑揚が我々の身を包みこむ。
彼女の全身全霊の律動が会場全体を妖しく揺さぶり、観客の目を釘付けにし、その心を鷲掴みにした。
歌が終わり、時間と空気が凝結したような静寂が訪れたかと思った瞬間、怒涛のような叫びと拍手が場内を震撼させた。
一瞥もくれることなく、まるで他人事のように舞台袖へと消えていく彼女。しかし確かに、この日最大の歓声と拍手は他でもない、この全く無名の新人に送られた。
その後しばらくの間、彼女の名前がSNSのHotワードとトレンドに名を連ねていたのも、その衝撃と熱狂を物語る証拠だろう。
彗星の如くアイドル界に舞い降り、鮮烈なデビューを飾った高峯のあ。今後の動向に目が離せないところだ。
【楽屋でのインタビュー】
『───デビューライブの感触はいかがでしたか?』
高峯:アイドルとは、即ち偶像……集約された声と望みに応えるだけ。結果は慰め、無意味な帰結に過ぎない
高峯:……皆の鼓動は、私にも伝わったわ。けれど、私は振り返らない。孤高の女王は、いつしか孤独の存在に。振り返る意味など無い……全ては露と消えるまやかしなのだから
『───今後の活動については?』
高峯:……開かれた視界、そして仲間とともに……世界は私に語り掛ける。道化に身を窶すことになろうとも。心の赴くままに、全てを委ねるの。
高峯:…………立ち止まる暇など無いわ。この身を這い回る、飽くなき渇望を満たすために……
~~~~~~~~~~
泰葉「……」パサッ
*「やっぱり……次元が違うわね。彼女」
*「私達とは視えている世界そのものが違うんだわ……」
*「はぁぁ……」ギュッ
**「特集じゃないの? なんで、こんな……ページの隅っこの掲載なんだろ。無名の新人だから?」ペラッ
**「奏ちゃん……。これって、訴えたら確実に勝てるんじゃないかな」
***「美波はん? 次、うちにも見しておくれやす♪ なあなあ♪」
***「ふふっ……今度会うたら、さいんでも貰っとこ♪」
泰葉「(……)」
泰葉「(……ふぅん)」ガタッ
泰葉「……」スタスタ
────
──────
【事務所 応接室】
泰葉「(……??)」ペラッ
泰葉「(……)」
~~~~~~~~~~
『注目のアイドル Vol.29』
【寡黙の女王『高峯のあ』、降臨!!】
某日、某所ライブハウスで一人のアイドルがデビューを迎えた。
ファッション誌などで『寡黙の女王』と囁かれる麗人、高峯のあ。
新人であり露出が少ない彼女の素性は謎に包まれており、そのせいか会場に訪れていた観客も当初はまるで関心を寄せていなかった。
しかし、誰もがノーマークだった高峯のあのパフォーマンスこそが、その日のライブの中で最も興奮を生み、最高潮の盛り上がりを見せる結果となった。
月の光のように神秘的な銀髪を振り立て、星の輝きかと見間違うほどの美女の舞姿。
伸びのある歌声は力強くもどこか悲哀の色を帯び、満ちてくる潮の、あるいは引いていく潮のような抑揚が我々の身を包みこむ。
彼女の全身全霊の律動が会場全体を妖しく揺さぶり、観客の目を釘付けにし、その心を鷲掴みにした。
歌が終わり、時間と空気が凝結したような静寂が訪れたかと思った瞬間、怒涛のような叫びと拍手が場内を震撼させた。
一瞥もくれることなく、まるで他人事のように舞台袖へと消えていく彼女。しかし確かに、この日最大の歓声と拍手は他でもない、この全く無名の新人に送られた。
その後しばらくの間、彼女の名前がSNSのHotワードとトレンドに名を連ねていたのも、その衝撃と熱狂を物語る証拠だろう。
彗星の如くアイドル界に舞い降り、鮮烈なデビューを飾った高峯のあ。今後の動向に目が離せないところだ。
【楽屋でのインタビュー】
『───デビューライブの感触はいかがでしたか?』
高峯:アイドルとは、即ち偶像……集約された声と望みに応えるだけ。結果は慰め、無意味な帰結に過ぎない
高峯:……皆の鼓動は、私にも伝わったわ。けれど、私は振り返らない。孤高の女王は、いつしか孤独の存在に。振り返る意味など無い……全ては露と消えるまやかしなのだから
『───今後の活動については?』
高峯:……開かれた視界、そして仲間とともに……世界は私に語り掛ける。道化に身を窶すことになろうとも。心の赴くままに、全てを委ねるの。
高峯:…………立ち止まる暇など無いわ。この身を這い回る、飽くなき渇望を満たすために……
~~~~~~~~~~
泰葉「……」パサッ
*「やっぱり……次元が違うわね。彼女」
*「私達とは視えている世界そのものが違うんだわ……」
*「はぁぁ……」ギュッ
**「特集じゃないの? なんで、こんな……ページの隅っこの掲載なんだろ。無名の新人だから?」ペラッ
**「奏ちゃん……。これって、訴えたら確実に勝てるんじゃないかな」
***「美波はん? 次、うちにも見しておくれやす♪ なあなあ♪」
***「ふふっ……今度会うたら、さいんでも貰っとこ♪」
泰葉「(……)」
泰葉「(……ふぅん)」ガタッ
泰葉「……」スタスタ
447: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 19:57:23.15 ID:cc9lYL1C0
━━━━5分後━━━━
【事務所 給湯室】
───ガチャ
泰葉「……あ」
のあ「……!」チラッ
雪美「…………」ジー
泰葉「お疲れ様です。高峯さん、雪美ちゃん」
泰葉「そういえば、こうして事務所で会うのは珍しい気もしますね」
のあ「……そうね」
雪美「…………」ジー
泰葉「お昼ですか?」
のあ「……ええ」
泰葉「白米に……紅ショウガ?」
泰葉「し、質素ですね」
のあ「ダイエットよ。つもりダイエット②」
泰葉「つもりダイエット?」
のあ「極限の空腹と向き合った結果、私は一つの術を身に付けたわ」
のあ「想像する力よ」
のあ「貴女の瞳には、この食事は……ただ極貧で無機質な様相に映るかもしれない」
のあ「けれど、この『紅ショウガ』を掛けた途端……世界は一変するわ」
のあ「想像力で補うの。実像と虚像のように、表裏一体の世界を。例え肉が無くても……こうすれば……」パラパラ
泰葉「…………」
雪美「…………」ジー
のあ「そこには、さながら吉野家の牛丼が視えてくる。食欲をそそる匂いと共に色よい肉が姿を見せる」
のあ「苦節の時でも、力が足らずとも……創意工夫と心の在りようで、いくらでも補えるわ」
のあ「……」モグモグ
雪美「…………」ジー
泰葉「いや……えっと……」
泰葉「……吉野家に行けば良いだけなのでは?」
のあ「ッ!?」グサッ!
泰葉「ダイエット……いや、ひょっとして金欠なんですか?」
のあ「(……)」
泰葉「少なくとも、あの……私にはちょっと視えないです。肉は」
のあ「ド……どうやら……、貴女とは視えている世界そのものが違うようね」
泰葉「そうですね。事務所の女の子達もまさにそう噂してましたよ」
雪美「…………」ジー
泰葉「ゆ、雪美ちゃんは……さっきから何をじっくり見てるの?」
雪美「……観察。のあを」
泰葉「た、楽しい?」
雪美「……うん」
泰葉「……そう」
雪美「……」コクン
【事務所 給湯室】
───ガチャ
泰葉「……あ」
のあ「……!」チラッ
雪美「…………」ジー
泰葉「お疲れ様です。高峯さん、雪美ちゃん」
泰葉「そういえば、こうして事務所で会うのは珍しい気もしますね」
のあ「……そうね」
雪美「…………」ジー
泰葉「お昼ですか?」
のあ「……ええ」
泰葉「白米に……紅ショウガ?」
泰葉「し、質素ですね」
のあ「ダイエットよ。つもりダイエット②」
泰葉「つもりダイエット?」
のあ「極限の空腹と向き合った結果、私は一つの術を身に付けたわ」
のあ「想像する力よ」
のあ「貴女の瞳には、この食事は……ただ極貧で無機質な様相に映るかもしれない」
のあ「けれど、この『紅ショウガ』を掛けた途端……世界は一変するわ」
のあ「想像力で補うの。実像と虚像のように、表裏一体の世界を。例え肉が無くても……こうすれば……」パラパラ
泰葉「…………」
雪美「…………」ジー
のあ「そこには、さながら吉野家の牛丼が視えてくる。食欲をそそる匂いと共に色よい肉が姿を見せる」
のあ「苦節の時でも、力が足らずとも……創意工夫と心の在りようで、いくらでも補えるわ」
のあ「……」モグモグ
雪美「…………」ジー
泰葉「いや……えっと……」
泰葉「……吉野家に行けば良いだけなのでは?」
のあ「ッ!?」グサッ!
泰葉「ダイエット……いや、ひょっとして金欠なんですか?」
のあ「(……)」
泰葉「少なくとも、あの……私にはちょっと視えないです。肉は」
のあ「ド……どうやら……、貴女とは視えている世界そのものが違うようね」
泰葉「そうですね。事務所の女の子達もまさにそう噂してましたよ」
雪美「…………」ジー
泰葉「ゆ、雪美ちゃんは……さっきから何をじっくり見てるの?」
雪美「……観察。のあを」
泰葉「た、楽しい?」
雪美「……うん」
泰葉「……そう」
雪美「……」コクン
448: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 20:00:56.26 ID:cc9lYL1C0
泰葉「そういえば、高峯さん」
泰葉「見ましたか? 事務所に置いてあった今月号のアイドル雑誌」
泰葉「コラムのスペースに、先月のライブの事が書かれてましたよ。高峯さんの事も」
のあ「ええ、見たわ」
のあ「あの時は……散々な思いだった」
泰葉「えっ?」
~~~~~~~~~~
【楽屋でのインタビュー】
『───デビューライブの感触はいかがでしたか?』
高峯:アイドルとは、即ち偶像……集約された声と望みに応えるだけ。結果は慰め、無意味な帰結に過ぎない
(●翻訳:もう無理……アイドルって分からない。上手く出来たかすら分からない……というか考えたくない……だって……)
高峯:……皆の鼓動は、私にも伝わったわ。けれど、私は振り返らない。孤高の女王は、いつしか孤独の存在に。振り返る意味など無い……全ては露と消えるまやかしなのだから
(●翻訳:いっぱいお客さんがいて……緊張して……。本番のこと、もう何にも覚えてない……思い出したくもない…………。智絵里ちゃんに教わった緊張しないおまじないとか、全然ダメ……)
『───今後の活動については?』
高峯:……開かれた視界、そして仲間とともに……世界は私に語り掛ける。道化に身を窶すことになろうとも。心の赴くままに、全てを委ねるの。
(●翻訳:こ、今後……? そ、そりゃもう心細いし、出来るならユニットとか組みたい……。可愛らしいフリフリのスカート穿いて……、とにかくもう、なんでもいいから仕事が欲しい……)
高峯:…………立ち止まる暇など無いわ。この身を這い回る、飽くなき渇望を満たすために……
(●翻訳:……て、ていうか、あの……も、もうインタビューいいですか? お腹空きすぎて吐きそうなんです………歌う前に5回くらい吐いたのに……)
~~~~~~~~~~
泰葉「……」
泰葉「(ちょっとずつ、この人の事が理解出来てきた気がする)」
泰葉「(……でも、高峯さん………)」
泰葉「(本人の意思とは無関係のところで、きっと多くの人に誤解されているんだろうな……)」
のあ「……」モグモグ
雪美「…………」ジー
──────
────
──
449: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 20:05:35.93 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
【岡崎家】
楓&泰葉「ダイエット?」
のあ「……」
楓「のあさん……、今でも十分スリムなのに、これ以上痩せたら骨だけになっちゃいますよ?」
泰葉「か、皮も残してあげましょうよ。死んじゃってますよソレ」
泰葉「……でも、本当にダイエットなんですか?」
泰葉「えっと、その……何と言いますか、この間の件で……」
泰葉「そのっ……、ちょ、貯金が尽きたとかじゃなくて……?」
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「………………」
のあ「ダイエット」
泰葉「今の間は?」
楓「なるほど。でも絶食や過度な節制はかえって体に悪いですよ?」
泰葉「まあ……効果も薄いですし、むしろリバウンドになりやすいと聞きます」
泰葉「というか、モデル経歴のある楓さんなら、効率のいい方法とかご存じないんですか?」
楓「!!」
楓「ア……ソ、そうですねぇ~……、えっとぉ……」アセアセ
楓「ダイエット……ダイエット…………ぅー……」キョロキョロ
楓「えー……っと……………………」オロオロ
楓「……………………………………………………………………………………………………………お……、お酒で…………………………」
のあ「……」
泰葉「…………」
楓「ソそ、そういうことならあああ、ああアメリカ仕込みの真奈美さんとかの方が詳しいんじゃないですかね!! ねっ!?」
楓「わ、私なんか全然デブの部類ですし……その、さ、参考になりませんよっ……ね?」
泰葉「(あぁ……)」
泰葉「(この人、体質に恵まれてるタイプですね)」
のあ「(きっとそうね)」
━━━━翌日━━━━
【事務所】
泰葉「ん……!」
泰葉「(あそこで立ち話してるのは……真奈美さんと美優さん)」
泰葉「(と、あの二人……?)」
泰葉「(何の話してるんだろ?)」ススッ
────
──────
【岡崎家】
楓&泰葉「ダイエット?」
のあ「……」
楓「のあさん……、今でも十分スリムなのに、これ以上痩せたら骨だけになっちゃいますよ?」
泰葉「か、皮も残してあげましょうよ。死んじゃってますよソレ」
泰葉「……でも、本当にダイエットなんですか?」
泰葉「えっと、その……何と言いますか、この間の件で……」
泰葉「そのっ……、ちょ、貯金が尽きたとかじゃなくて……?」
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「………………」
のあ「ダイエット」
泰葉「今の間は?」
楓「なるほど。でも絶食や過度な節制はかえって体に悪いですよ?」
泰葉「まあ……効果も薄いですし、むしろリバウンドになりやすいと聞きます」
泰葉「というか、モデル経歴のある楓さんなら、効率のいい方法とかご存じないんですか?」
楓「!!」
楓「ア……ソ、そうですねぇ~……、えっとぉ……」アセアセ
楓「ダイエット……ダイエット…………ぅー……」キョロキョロ
楓「えー……っと……………………」オロオロ
楓「……………………………………………………………………………………………………………お……、お酒で…………………………」
のあ「……」
泰葉「…………」
楓「ソそ、そういうことならあああ、ああアメリカ仕込みの真奈美さんとかの方が詳しいんじゃないですかね!! ねっ!?」
楓「わ、私なんか全然デブの部類ですし……その、さ、参考になりませんよっ……ね?」
泰葉「(あぁ……)」
泰葉「(この人、体質に恵まれてるタイプですね)」
のあ「(きっとそうね)」
━━━━翌日━━━━
【事務所】
泰葉「ん……!」
泰葉「(あそこで立ち話してるのは……真奈美さんと美優さん)」
泰葉「(と、あの二人……?)」
泰葉「(何の話してるんだろ?)」ススッ
450: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 20:07:36.11 ID:cc9lYL1C0
のあ「…………」
楓「…………」
真奈美「大事なのは水分補給かな。ランニングのパフォーマンスを維持するには、1時間に4度くらいのペースで摂ると良いさ」
真奈美「あと、スポーツドリンクを水で薄めるのも効果的だよ。水分と汗で失ったナトリウムやマグネシウムなどの電解質を素早く補給することが出来る」
のあ「……」
美優「走るのって気持ち良いですよね。でもゆっくり歩くのも、実はかなり効果的なんですよ?」
真奈美「ああ、スロージョギングというやつもあるな。女性に流行りの」
真奈美「体力が無く運動が苦手な女性や年配者でも気軽に始められる、足腰の負担も小さい健康重視の走り方だ」
楓「……」
泰葉「(……あっ!)」
泰葉「(そうか。昨日の話の『ダイエット』の事を、真奈美さんと美優さんに……)」
真奈美「……しかしこの前、美優と一緒にあれを試したんだが……」
真奈美「やはり、一人より二人の方が楽しいものだな。年甲斐もなく、あっという間に10キロほど没頭してしまったよ」
美優「ふふっ♪ 何だかんだで世代ですし」
美優「その日は休日でしたから、やはり流行りのせいもあってか、女性も大勢試してましたね?」
美優「朝から出発して、お昼にファミレスで一息ついて、更に帰路はずっとまた……」
のあ「へえ……」
楓「ほうほう……!」
真奈美「多くのメディアで紹介されているからな。君たちも是非やってみるといいさ。あれは健康にも確かに効果があるし、アメリカでもブームになっているよ」
真奈美「ただし最近は陽も出て気温も高い。水分補給と、怪我防止のストレッチはしっかりな?」
美優「事務所の中でも結構いますね、やってる子。話とか合わせられるかも…………いや、でも、ち、ちょっと恥ずかしい気も……」
のあ「……いいわね」
楓「そうですね……!」
泰葉「(……『ランニング』、か)」
泰葉「(……二人とも真剣な表情。邪魔しないどこっ)」スッ
泰葉「(ふふっ。泰葉はクールに去りますね……)」
451: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 20:08:21.37 ID:cc9lYL1C0
━━━━翌朝━━━━
【アパート前】
泰葉「ふわぁ……」ゴシゴシ
泰葉「……燃えるゴミは月・水・金、っと……」
泰葉「……」ドサッ
のあ「……」ググッ
楓「いち、に、さん、し……っ」
泰葉「あっ!」
のあ「……おはよう、泰葉」
泰葉「わあっ、本格的なランニングウェアですね、二人とも!」
楓「フフフ……どうですか、このスポーツサングラス。昨日買ったんですよ♪」
泰葉「ええ、似合ってますよ、はいっ!」
のあ「ふふっ……」
泰葉「ちょっと驚きましたよ、行動に移すのが早いですね。でも良いことだと思います」
泰葉「ということは……」
泰葉「昨日事務所で話していたのを聞いてましたけど、二人ともランニングを始めるんですね!」
楓「? ……いいえ?」
泰葉「あぇっ」
のあ「……ポケモンGOよ」
泰葉「あっ。あぁー…………」
泰葉「ソ……、ソウデスネー…………今、それ流行りですもんねー…………」
泰葉「……」
泰葉「(ま、真奈美さん、美優さん……。貴女達は一体何を………?)」
──────
────
──
【アパート前】
泰葉「ふわぁ……」ゴシゴシ
泰葉「……燃えるゴミは月・水・金、っと……」
泰葉「……」ドサッ
のあ「……」ググッ
楓「いち、に、さん、し……っ」
泰葉「あっ!」
のあ「……おはよう、泰葉」
泰葉「わあっ、本格的なランニングウェアですね、二人とも!」
楓「フフフ……どうですか、このスポーツサングラス。昨日買ったんですよ♪」
泰葉「ええ、似合ってますよ、はいっ!」
のあ「ふふっ……」
泰葉「ちょっと驚きましたよ、行動に移すのが早いですね。でも良いことだと思います」
泰葉「ということは……」
泰葉「昨日事務所で話していたのを聞いてましたけど、二人ともランニングを始めるんですね!」
楓「? ……いいえ?」
泰葉「あぇっ」
のあ「……ポケモンGOよ」
泰葉「あっ。あぁー…………」
泰葉「ソ……、ソウデスネー…………今、それ流行りですもんねー…………」
泰葉「……」
泰葉「(ま、真奈美さん、美優さん……。貴女達は一体何を………?)」
──────
────
──
452: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 20:09:15.42 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
【続 アパート前】
楓「泰葉ちゃんも一緒に行きます? お昼ご馳走しますよ♪」
泰葉「い、いえ……ポケモンなんてよく知りませんし、私は別に……」
泰葉「別に……」
泰葉「(…………)」
泰葉「ちょ……、ちょっと待ってて下さい! いまダウンロードして来ますから……!」タタタタ…
のあ「……フッ」
のあ「……まだ子供ね」
楓「そうですねぇ♪」
のあ「……そういえば、私もまだダウンロードしてないのだけれど。方法が……」
楓「あっ、じゃあ私が代わりにやりましょう。貸して下さい」
のあ「……はい」スッ
───カパッ
楓「(───!?)」
━━━2時間後━━━
【フードコート】
楓「はい、泰葉ちゃん。ホットドッグとジュース買ってきましたよ♪」
泰葉「あっ! す、すみません……ありがとうございます」
楓「しばらく歩きましたけど、ようやく一息つけましたね。この後は近くの公園にでも寄りましょうか」
楓「ふぅー……」ノビー
泰葉「……高峯さん、ちょっと心配ですね」
泰葉「スマホ選び、やっぱり私達も付いて行った方が良かったんじゃ……」
泰葉「……ッッ!!!」
泰葉「あ、ああっ! な、なんか出てきましたよっ、う、うわっ……!!」ガタッ
泰葉「にゃ、に、ニャース!? にゃっ、か、かわい……クッ……!」アセアセ
────
──────
【続 アパート前】
楓「泰葉ちゃんも一緒に行きます? お昼ご馳走しますよ♪」
泰葉「い、いえ……ポケモンなんてよく知りませんし、私は別に……」
泰葉「別に……」
泰葉「(…………)」
泰葉「ちょ……、ちょっと待ってて下さい! いまダウンロードして来ますから……!」タタタタ…
のあ「……フッ」
のあ「……まだ子供ね」
楓「そうですねぇ♪」
のあ「……そういえば、私もまだダウンロードしてないのだけれど。方法が……」
楓「あっ、じゃあ私が代わりにやりましょう。貸して下さい」
のあ「……はい」スッ
───カパッ
楓「(───!?)」
━━━2時間後━━━
【フードコート】
楓「はい、泰葉ちゃん。ホットドッグとジュース買ってきましたよ♪」
泰葉「あっ! す、すみません……ありがとうございます」
楓「しばらく歩きましたけど、ようやく一息つけましたね。この後は近くの公園にでも寄りましょうか」
楓「ふぅー……」ノビー
泰葉「……高峯さん、ちょっと心配ですね」
泰葉「スマホ選び、やっぱり私達も付いて行った方が良かったんじゃ……」
泰葉「……ッッ!!!」
泰葉「あ、ああっ! な、なんか出てきましたよっ、う、うわっ……!!」ガタッ
泰葉「にゃ、に、ニャース!? にゃっ、か、かわい……クッ……!」アセアセ
453: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 20:10:13.50 ID:cc9lYL1C0
━━━━その頃━━━━
【大型家電量販店】
のあ「(スマホ、スマホ……っと)」キョロキョロ
のあ「(どこに置いてあるんだろう? 楓さんと泰葉ちゃんも近くで待たせてるし、購入の目処だけでもつけて戻ろう)」
のあ「……」キョロキョロ
のあ「…………」
のあ「(……あぁ、二人に付いて来て貰えばよかった。何でヘンな見得張っちゃったんだろ……)」
のあ「(まとめサイトで事前に情報を確認してくれば…………私そもそもスマホとかあんまり詳しくないし、なにより、なにより……っ)」オロオロ
店員「お客様、何かお探しでしょうか?」
のあ「ッ!?」ビクッ
のあ「……ぁっ」
店員「宜しければご案内致しますが、購入される物はもうお決まりですか?」
のあ「そ、ソウネ……、あの、アレ……」オロオロ
店員「はい」
のあ「す、スマホを……」
店員「スマートフォンですね、こちらになります」
のあ「ア、ハイ……」ビクビク
店員「OSはどちらになりますか?」
のあ「オ……おーえす……??」プルプル
店員「ええ。Android(アンドロイド)でしょうか、iPhone(アイフォン)でしょうか?」
のあ「……い、いやっ……」
のあ「だ、だから…………スマホを……」ビクビク
店員「あ、はい。OSは……」
のあ「だから……スマホを……」
店員「(ッ!! こ、この人まさか……っ!)」プルプル
━━━━その頃━━━━
【フードコード】
泰葉「うわっ!! ま、また変なのが出ましたよ!?」
泰葉「ふぐぅっ……、ど、何処にぃっ……!」グルグル
楓「(泰葉ちゃん、楽しそうですねぇ……)」ニヤニヤ
楓「……」
楓「(……のあさん、遅いですねェ……)」モグモグ
──────
────
──
【大型家電量販店】
のあ「(スマホ、スマホ……っと)」キョロキョロ
のあ「(どこに置いてあるんだろう? 楓さんと泰葉ちゃんも近くで待たせてるし、購入の目処だけでもつけて戻ろう)」
のあ「……」キョロキョロ
のあ「…………」
のあ「(……あぁ、二人に付いて来て貰えばよかった。何でヘンな見得張っちゃったんだろ……)」
のあ「(まとめサイトで事前に情報を確認してくれば…………私そもそもスマホとかあんまり詳しくないし、なにより、なにより……っ)」オロオロ
店員「お客様、何かお探しでしょうか?」
のあ「ッ!?」ビクッ
のあ「……ぁっ」
店員「宜しければご案内致しますが、購入される物はもうお決まりですか?」
のあ「そ、ソウネ……、あの、アレ……」オロオロ
店員「はい」
のあ「す、スマホを……」
店員「スマートフォンですね、こちらになります」
のあ「ア、ハイ……」ビクビク
店員「OSはどちらになりますか?」
のあ「オ……おーえす……??」プルプル
店員「ええ。Android(アンドロイド)でしょうか、iPhone(アイフォン)でしょうか?」
のあ「……い、いやっ……」
のあ「だ、だから…………スマホを……」ビクビク
店員「あ、はい。OSは……」
のあ「だから……スマホを……」
店員「(ッ!! こ、この人まさか……っ!)」プルプル
━━━━その頃━━━━
【フードコード】
泰葉「うわっ!! ま、また変なのが出ましたよ!?」
泰葉「ふぐぅっ……、ど、何処にぃっ……!」グルグル
楓「(泰葉ちゃん、楽しそうですねぇ……)」ニヤニヤ
楓「……」
楓「(……のあさん、遅いですねェ……)」モグモグ
──────
────
──
456: ☆1/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:00:09.05 ID:cc9lYL1C0
【※キャラ崩壊注意※】
──
────
──────
━━━━夜━━━━
【岡崎家】
泰葉「お花見ですか?」
楓「はい、上野公園で。のあさんも、早苗さんに誘われましたよね?」
のあ「……」コクン
楓「ふふっ……結構楽しみにしていたんですよ。事務所内と言えど、スケジュールの関係で顔を合わせる事があまり無い人もいますし」
楓「これを機会に、少しでもお近づきになれたらなぁって」
のあ「…………」
泰葉「良いですね、楽しんで来てください」
泰葉「でも、羽目を外しすぎるのはダメですからね? 特に楓さん」
泰葉「仮にも貴女達、れっきとしたアイドルであり……」
泰葉「節度ある大人なんですからね?」
楓「はぁい♪ 分かってますよっ♪」
のあ「(飲み会……大人組と)」
のあ「(以前、偶然美優さんの家に誘われた事はあったけど……こういう趣向は初めて)」
のあ「(……でも、大丈夫。事前準備は万端よ)」
のあ「(先輩からの理不尽な要求やフリをそつなくこなす応用力と適応量。羽目を外す場だからこそ光るさりげない配慮と控えめな女子力アピール)」
のあ「(まとめサイトで予習済みよ。明日は……完璧に『デキる大人力』を発揮してあげよう……!!)」
のあ「(ふ、フフフ……!)」ニヤリ
━━━━翌日━━━━
【上野公園】
のあ「(…………)」
心「う、うぇぇぇぇー……、ひぐっ、グスッ……」
心「ア゛ア゛ア゛ァ゛~~~~~~っ(汚い低音)」
心「い゛い゛子だぁ……。この子すっごいいい子だぁも゛おぉぉ……っ。はぁ゛とちょっとナミダ出てきたわ゛ぁ……」グズッ
のあ「ソ……、ソッスカ……ア、アザス……」
心「うぅ~……っ」スリスリ
のあ「(……………………)」
──
────
──────
━━━━夜━━━━
【岡崎家】
泰葉「お花見ですか?」
楓「はい、上野公園で。のあさんも、早苗さんに誘われましたよね?」
のあ「……」コクン
楓「ふふっ……結構楽しみにしていたんですよ。事務所内と言えど、スケジュールの関係で顔を合わせる事があまり無い人もいますし」
楓「これを機会に、少しでもお近づきになれたらなぁって」
のあ「…………」
泰葉「良いですね、楽しんで来てください」
泰葉「でも、羽目を外しすぎるのはダメですからね? 特に楓さん」
泰葉「仮にも貴女達、れっきとしたアイドルであり……」
泰葉「節度ある大人なんですからね?」
楓「はぁい♪ 分かってますよっ♪」
のあ「(飲み会……大人組と)」
のあ「(以前、偶然美優さんの家に誘われた事はあったけど……こういう趣向は初めて)」
のあ「(……でも、大丈夫。事前準備は万端よ)」
のあ「(先輩からの理不尽な要求やフリをそつなくこなす応用力と適応量。羽目を外す場だからこそ光るさりげない配慮と控えめな女子力アピール)」
のあ「(まとめサイトで予習済みよ。明日は……完璧に『デキる大人力』を発揮してあげよう……!!)」
のあ「(ふ、フフフ……!)」ニヤリ
━━━━翌日━━━━
【上野公園】
のあ「(…………)」
心「う、うぇぇぇぇー……、ひぐっ、グスッ……」
心「ア゛ア゛ア゛ァ゛~~~~~~っ(汚い低音)」
心「い゛い゛子だぁ……。この子すっごいいい子だぁも゛おぉぉ……っ。はぁ゛とちょっとナミダ出てきたわ゛ぁ……」グズッ
のあ「ソ……、ソッスカ……ア、アザス……」
心「うぅ~……っ」スリスリ
のあ「(……………………)」
457: ☆2/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:01:20.38 ID:cc9lYL1C0
のあ「(…………)」
のあ「……」チラッ
亜季「さあっ!!」バッ!
亜季「『来いよォ清良殿! 銃、いや箸なんて捨ててかかってこい……!』」
亜季「で! ありますッ!!」フラッ
清良「ふふっ……。いいわ亜季ちゃん……、やさしく眠らせてあげましょう」スッ
清良「始めましょうか。貴女には地獄すら生ぬるいわ」
麻理菜「…………ねえねえ、いつきちゃん? あの二人、酔っ払ってなんか楽しそうなコトおっぱじめちゃったけど?」
いつき「えっ! わっ、ほ、ホントだ!?」
いつき「ちょ、ちょっと清良さんまで! まえのツアーの『功夫公演』の悪ノリはやめてくださいよぉ!」
いつき「私も混ぜ…………おほんっ!」
麻理菜「二人とも弁えてるとは思うけど、喧嘩と勘違いされたらヤダわ。助っ人を呼びましょう?」
麻理菜「真奈美ちゃん、早苗さん。ちょっと………………んっ?」
のあ「(…………)」
のあ「……」チラッ
真奈美「ミっ……ッ!!」バッ
真奈美「ミミミン! ミミミン! マーナミンッ!!」
真奈美「歌って闘うアイドル超人目指して、マナミは地球にやってきたんですよォッ!」
真奈美「キャハっ! グぅ゛っ!!」ガクン!
レナ「あはははは!! フ、ふー……、ふぅっ、お、お、お腹痛いわ」
レナ「う、歌って闘うアイドル超人目指して地球にやってきたって何? キン肉星の王子?」
真奈美「も……もういいでしょうレナさん! ほら、罰ゲームは終わり」
美優「ふふっ。こんなに羽目を外している真奈美さんを見るのは新鮮……というより、ちょっと驚きです」
美優「いくらポーカーで負けたからって、そんなコトまでやるなんて」
真奈美「少しムキになったかな……酒が入ってるとは言え、流石に本場で鳴らしたディーラー相手には分が悪かった。私も自信はあったんだが」
レナ「なぁに? そんなにガンつけられると怖いわよ、真奈美ちゃん」
レナ「ほらほら、楽しく和やかに次のゲームに行きましょう? ガンガン行きましょ。ガンガン♪」
真奈美「いや、私はガンなんてつけていませんよ。もう私はポーカーは……」
真奈美「ん? ……ガンつける、……ガンガン? ………………」
レナ「あ、気付いた?」
真奈美「ッ!! …………あぁ、成る程、やられた。油断した」
美優「えっ、何がですか??」
レナ「はーい次美優ちゃんも参加ね? さあて、次は何を賭けようかしら」
のあ「(………………)」
458: ☆3/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:02:51.88 ID:cc9lYL1C0
のあ「(…………)」
のあ「……」チラッ
学生A「な、なんですかアナタ達……!?」
礼「アナタ、学生さんね? じゃあお姉さんがとっておきの問題出してあげるから、ちょっと解いてみてくれる?」
礼「もし解けたら、ご褒美にお姉さんと『それ』、してあげるから……ね?」
学生A「……?」
礼「『せ』から始まる、一緒にくっついたりして、男のコも女のコもみんなソレをしながら大人になっていくモノ……、なーんだ?」
学生A「(……!?)」
早苗「ちょっと! 礼ちゃん!!」
学生B「だ、誰ですか貴女……」
楓「ふふっ、あなたは学生さんですね。じゃあ私がとっておきの問題を出してあげましょう」
楓「もし解けたら、私が『それ』、いただきましょう。いきますよ?」
学生B「は、ハイ……?」
楓「お酒はお酒でも、私が飲みたいお酒はそこにある純米吟醸、八海山なーんだ?」ビシッ
大学生B「(……?!)」
早苗「楓ちゃん!!!」グイッ!
早苗「ほらっ、二人とも学生さんに絡んでないでこっち戻る! ほんと、二人ともお酒が入ったら誰かしらに絡みたがるんだから……!!」グイグイ!
早苗「ちょっと! アナタ達も『あっ……、この人達ちょっとイケるかも』みたいな変な視線で見るんじゃなーいのっ!!」グイグイ!
早苗「あたしにしなさい!!! あたしにっ!!!!」
のあ「(…………)」
のあ「(………………)」
のあ「(20人くらい集まったのかな……みんなそれぞれ思い思いに盛り上が───)」
ギュウッ!!
のあ「ウグッ……!?」
心「ふぇぇ~~~~っ……ぐすっ……」ギュウギュウ
のあ「ヒ、ヒエッ……」
のあ「(うっ、ウエストががが、し、締まっ……!?)」
心「ごめん、ごめんねぇ……ぐすっ。はぁと、めんどくさいよね……っぐしゅっ」
心「初対面なのに、ナイよね? こんな女ナイよね? 引かないで…………」
のあ「イ、イヤ……ソ、ソンナコトナイス……」
のあ「(な、なんだこの人……)」
459: ☆4/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:04:47.96 ID:cc9lYL1C0
心「ちがうの、ちがう……のあちゃん、いつもはこんなんじゃ、な、ないのよはぁとは……」
心「カワイイ、セクスィ、すいーてぃ……ってなはぁともはぁとなんだけどぉ……ぐしゅ。たまには、そういうのじゃないおセンチはぁとも分ってほしいっていうかぁ……」
心「ね? ね? こういう場だからいいよね? ね?」ギュウギュウ
のあ「ソ、ソッスネ……ハイ」
心「ア゛ア゛ア゛ァ゛~~~~~~っ……のあちゃん好きぃー……ぐすっ。はぁとのこと分ってくれてるぅー……」ズリズリ
のあ「ア、アザス……」
ポン…
のあ「……!」バッ
麻理菜「のあちゃん」ニコニコ
のあ「(ま、麻理菜さん……)」
麻理菜「………………………………………………………………」
麻理菜「……………………………………………………面倒くさい?」ボソッ
のあ「イ、いえ……」
心「マリナーール!! 静かにマリナル!! いまはぁとはのあちゃんとお話ししてるのっ!!!」
心「のあちゃんははぁとのアイドルとしての苦労をわかってくれてるんだぞっ、のあちゃんはぁぁっ!!
心「良い人ぶってかわい子ぶって、相手の理想に合わせて、振り回されて弄ばれて捨てられるって……」
麻理菜「あれ、過去に別れた男との話だった?」
のあ「イ、いや……確か活動の話を」
心「のあちゃん、なんていってくれたと思うマリナル?」
麻理菜「…………なんて?」
心「相手が期待する像に合わせてぇ……自分の心を偽って……、ファンのためと言い張るのは、それは『逃げ』だってぇ……っぐすっ」
心「自分を顧みない活動をしても、ファンは悲しいだけだってぇ……」
心「好きな自分のまま、好きな活動をしていれば、自ずとファンもついて来てくれる、喜んでくれるってぇ……ぐじゅる」
麻理菜「……へえ」
心「スウィーティーーーっっ! はぁとははぁとのまま、みんなのはぁとをシュガシュガスウィートにしてやるってのぉ…………ぐすっ」
麻理菜「吹っ切れるのはいいけど、手足バタバタしないで心。ほら、ビールこぼれた……」
心「うぅぅー……」グリグリ
麻理菜「あと、のあちゃんの股間に顔をうずめるのもそろそろやめてあげて」
心「うー……のあちゃん、のあちゃんはなんでそんなにお肌も心もキレイなんだよぅー……ぐすっ、はぁと嫉妬ちちゃうぞ、このぉっ☆」ブニッ
麻理菜「ちょっ」
のあ「フゴッ! ガ、ダイジョブッス……」ブニブニ
のあ「(か、顔がっ……ガッ……)」
460: ☆5/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:07:29.85 ID:cc9lYL1C0
心「はぁとはざんねんな子じゃないもん! もーう、ぷんぷん☆」
心「はぁーい! じゃあはぁと、一発芸やっちゃうぞ☆ 見ろよー?」
のあ「ウ、ウス……」パチパチ
心「このおしぼりをー、ペタリとこうして、ここ折ってー……♪♪」テキパキ
のあ「……」
心「はぁい完成♪ キュートでラブリーなうさぎさん、題して『ナナ先輩』☆」
心「ナナ先輩ナナ先輩っ! ナナ先輩は今日はどうしてお花見に参加しなかったんですかぁ?」ブンブン!
ナナ先輩『な、ナナは17歳ですから、お酒なんてご法度ですよぉ。キャハっ☆』
麻理菜「……」
のあ「……」
心「…………」
心「あー……自己嫌悪。なんか……ごめんね……?」
のあ「(………………………………)」
━━━2時間後━━━
【岡崎家】
泰葉「…………」
のあ「……」
泰葉「ど、どうしたんですか? 突っ伏して落ち込んじゃって……」
泰葉「か、楓さんは?」
のあ「……二次会」
泰葉「ど、どうでしたか? お花見は」
のあ「…………………………」
のあ「………………………………大人って」
泰葉「はい?」
のあ「…………………………………………なんだろ」
泰葉「た、高峯さん……?」
──────
────
──
462: ☆① ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:08:24.35 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
【高峯家】
のあ「ダイエット食品……4万8千円」
のあ「CD自腹100枚分……十万強」
のあ「泰葉ちゃんへのプレゼント……十ウン万」
のあ「……」
のあ「……お金が、ない」
のあ「……貯金が、尽きそう」
のあ「アイドルになったから懐に大金が舞い込むと思ったのに……かさむ出費、すさむ精神」
のあ「……働けど働けど、我が暮らし楽にならず……フフッ」
のあ「…………」
のあ「…………グスッ」
────
──────
【高峯家】
のあ「ダイエット食品……4万8千円」
のあ「CD自腹100枚分……十万強」
のあ「泰葉ちゃんへのプレゼント……十ウン万」
のあ「……」
のあ「……お金が、ない」
のあ「……貯金が、尽きそう」
のあ「アイドルになったから懐に大金が舞い込むと思ったのに……かさむ出費、すさむ精神」
のあ「……働けど働けど、我が暮らし楽にならず……フフッ」
のあ「…………」
のあ「…………グスッ」
463: ☆② ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:09:58.29 ID:cc9lYL1C0
のあ「つもりダイエットをしても、気休め程度にしか節約にならないし」
のあ「アマゾンに出品しても、なんか通報されたし」
のあ「ああ……ふふふっ」
のあ「あーもう……笑うしかないわ。自嘲するしかない」
のあ「あーー…………」ゴロン
のあ「…………」
のあ「ああーー………」ゴロン
のあ「…………」
のあ「ンー………………」ゴロゴロ
のあ「手軽に誰でも始められて……大金を稼ぐ……」
のあ「っ!!!」ピーン!
のあ「ひらめいたっっ!!」
のあ「これっ、『これ』だわ!!」
のあ「これなら、事務所的には『高峯のあ』の宣伝にもなって、私のコミュ障も少しは解消されて、私の懐も潤う。これがwin-win-winってやつね」
のあ「ちょっ、コレ……天才の発想だわ」
のあ「そうと決まれば……」ガバッ
のあ「…………」
のあ「…………まずはまとめサイトで方法を調べて……っと」カタカタ
のあ「そして一人じゃ心細いわ。協力を仰ぎましょう」
━━━10分後━━━
【岡崎家 玄関先】
泰葉「……無理ですよ」
のあ「フッ……!?」
464: ☆③ ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:11:22.94 ID:cc9lYL1C0
泰葉「あ…………す、すみません。ちょっと言い過ぎました………」
泰葉「あっ………ご、ごめんなさい……高峯さん。な、泣かないで……」オロオロ
のあ「ナ……何故?」グスッ
泰葉「いや、何故と言われても……」
泰葉「私達は仮にもアイドルですよ? そんなフリーダムな事やっても大丈夫なんですか?」
のあ「……問題ないわ。まとめサイトで調べたから」
泰葉「はぁ、そうですか(……よく分からない根拠)」
泰葉「(高峯さんって、きっと楓さんと同じく本当は人見知りで奥手のハズなのに、どうしてこういう危うい行動力はあるんだろう……??)」
泰葉「……でも、実際ああいう活動って儲からない気はしますけど。コーラを飲んだらゲップが出るってくらい確実に」
のあ「……大丈夫よ」
泰葉「まあ、高峯さんがそう仰るなら止めはしませんが。では……」キィ…
のあ「っ!?」
のあ「ちょっ……泰葉ッ!?」ガシッ!
泰葉「わッ! ………………えっ、何ですか?」
のあ「……貴女も……」
のあ「その……」
のあ「…………」チラッ
のあ「…………一緒に、やらない?」
泰葉「(!?)」
泰葉「ハ、ハイ!?」
泰葉「無理ですよそんなの! そんな上目づかいで見られても無理ですよ!!」
泰葉「ちょ、ちょっと足怪我しますよ!? 悪徳セールス業者ですか貴女は!! ドアに足を捻じ込まないでください!!」グイグイ
のあ「サ、さきっちょだけ、さきっちょだけだからぁ……!!」ギュウギュウ
泰葉「へ、ヘンなこと言わないで下さい!!!」グイグイグイ
のあ「ふぐぅ……」プルプル
465: ☆④ ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:12:07.61 ID:cc9lYL1C0
のあ「お、お願い泰葉……」
泰葉「だ、だから私は……!」
泰葉「その、確かに貴女の金欠事情の一端は私にも何らかの原因があるかもしれませんが……」
泰葉「でもそんな事、流石に……」
のあ「ナ……何故躊躇するの? 貴女は一体、何を畏れているの?」
泰葉「いや、だって……」
泰葉「どうせ、それ私の部屋でやろうとしてますよね?」
のあ「グッ……!?」ドキッ!
泰葉「ホラやっぱり図星じゃないですか!!」
泰葉「『グッ……!?』ってか細い声で言ったの聞き逃しませんでしたよ!! しかもその神々しくも切なそうに撃墜された天使のような顔!!!」
泰葉「今回ばかりは流石に私も遠慮します! 失礼しま───」
楓「泰葉ちゃーん♪」スタスタ
のあ&泰葉「(……!)」
楓「あれっ、のあさんも。どうしたんですか、こんな玄関先で二人とも?」
のあ「…………」
楓「それよりこれ、このエクレア。いいとこのエクレアっ!」スッ
楓「以前ポーズの取り方を教えたお礼にって、事務所の子がくれたんですよ♪」
楓「よろしければ、3人で食べませんか?」
泰葉「……」
のあ「……」
のあ「……泰葉」
泰葉「……はい」
のあ「……入れて」
泰葉「(……………………)」
466: ☆⑤ ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:13:12.32 ID:cc9lYL1C0
━━━30分後━━━
【岡崎家】
楓「はぁー♪」
楓「美味しかったですね、噂に間違いはありませんでした」
泰葉「ごちそうさまでした」
のあ「……食器は私が洗うわ」スッ
泰葉「あっ、ありがとうございます」
楓「それで……」
楓「さっきは二人とも、玄関先で何を話していたんですか?」
泰葉「っ!」ギクッ!
泰葉「な……何か聞こえました?」
楓「んー……」
楓「『さきっちょだけ、さきっちょだけだからーっ』と」
泰葉「(ある意味いちばん聞かれたくない部分が聞かれてた……)」
泰葉「……何でもありませんよ。ただの世間話の延長です」
楓「あっ、そうだ」
楓「この前のあさんと荒稼ぎの話を事務所でしたんですけど」
泰葉「アナタ達事務所で何やってるんですか? 小さな子もいるんですからね?」
楓「それで、私……いい方法を思いついたんです」
泰葉「いい方法?」
楓「泰葉ちゃん、ちょっとパソコンを拝借してもよろしいですか?」
泰葉「えっ? はい、全然いいですけど」
楓「……『これ』です」
泰葉「…………」
泰葉「………………エ゛ッ」
楓「だから、これですよ、『これ』」
泰葉「あっ、あ、あ………………アァァ……」ガクッ
楓「……泰葉ちゃん?」
泰葉「っっ………………」
楓「どうしたんですか? 『考える人』の像みたいに悩ましげなポーズで……疲れた表情で……」
楓「(……??)」
───パリンッ!
楓&泰葉「…………あっ」
467: ☆⑥ ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:15:49.91 ID:cc9lYL1C0
━━━━翌日━━━━
【事務所】
泰葉「……はぁ」
P「……?」
P「どうしたんだ泰葉、お前らしくもない」
P「疲れた顔してるぞ」
泰葉「えっ! あっ、な、なんでもありません」アセアセ
P「……そういえば、この前のアレどうだった?」
P「ミニチュアハウス定期刊行誌のコラムとインタビュー」
泰葉「あ……、はい。あれは……その……」
P「うん」
泰葉「…………正直、良かったです」
P「そうか、うん」
泰葉「言い方は少し悪いかもしれませんが、その、マイナー誌の仕事でも……嬉しかったです。ありがとうございました」
P「泰葉は、この事務所でも多方面の出演依頼数はトップクラスなんだけどな。ああいうのもたまにはいいだろ?」
P「でも、ドールハウスかぁ。意匠を細部まで凝らした小物もリアルで凄いというか……なんか可愛らしいよな」
泰葉「で、ですよね!」
P「見る分は良いが、作るとなるとなぁ……。流石に俺は無理かな。指太いし」
泰葉「そんなことありませんよ? 男の人でも服飾関係の仕事をしてる人とかで結構いらっしゃいますし」
泰葉「なにより、ジオラマやプラモデルとかと同じ要領です。ひとつひとつ、細部までこだわりぬいて、自分の色に染めるのが楽しいんです」
泰葉「面倒くさい作業かと思うかもしれないですけど、その面倒くさいのが良いんです。手を掛ければ掛ける程、完成したときの喜びが大きいんですよ」
P「……へえ」
泰葉「(……ッ!!)」
泰葉「す、すみません……変なことをベラベラと」
P「いいや。もっと聞きたいくらいだよ」
泰葉「ほ、本当……ですか?」
P「……」
468: ☆⑦ ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:16:55.41 ID:cc9lYL1C0
P「泰葉、最近変わったよな。どこか」
泰葉「……えっ?」
P「うん。疲れてる顔してるけど……それでもどこか楽しげというか、柔らかくなったというか」
泰葉「そ、そうですか?」
P「この前の仕事で、教育番組の料理コーナーの撮影があっただろ? 薫と桃華も一緒のやつ」
泰葉「ああ、先日の」
P「フロアの脇で見ていた時に思ったんだ。二人の世話、ちゃんと見てくれてるなぁって」
P「包丁捌きが危うかった桃華と、調理は得意だけどまだ撮影のペースが掴めない薫を、しっかりフォローしてくれてたよ」
P「……まるで、お母さんみたいだったぞ。泰葉」
泰葉「や、やめてくださいよ。そんな恥ずかしい……」
P「最近、なにか出会いとか、そういう変化があったのか?」
泰葉「いえ、何も………………………………………………」
泰葉「…………………………………………………………………………あっ」
P「??」
~~~~昨日~~~~
『ちょっ……、だ、大丈夫ですか高峯さん!』
『食器が割れた音がしましたけど……』
のあ『ナ……何も問題ないわ……っ』
のあ『カ、形あるものは……イ、いずれ朽ち逝く運命……』
『いいですから別に!! こんな時にまでキャラ守らなくて!!』
『どこか切ったりしてないですか? 足とか……』
『……!?』
『かか、楓さん!? 足の裏に破片が刺さった!?』
『そ、そこで止まって下さい! こっちに来るともっと刺さりますよ貴女の場合!!』
『いま絆創膏持ってきますから!!』
~~~~~~~~~~
泰葉「あー……アァー……」
P「ど、どうしたんだ?」
泰葉「さ、さぁ……特に思い当たる節はないデス……。あ、あはは……」
P「(……??)」
469: ☆⑧ ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:18:48.35 ID:cc9lYL1C0
P「まあ、いいや。何だか知らんが、いい刺激になっているのなら」
泰葉「(まあ確かに、ある意味刺激ではありますけどね)」
P「だから、もっと要望を出していいんだぞ? 受け身じゃなくってさ」
泰葉「?」
P「ドールハウスの取材のように、自分の好きな仕事を。調理のように、チャレンジしたいことを」
P「……気軽に言ってくれ。気軽に」
泰葉「…………」
泰葉「………はい。ありがとうございます」
P「うん、いい笑顔だ。今の笑顔の方が、俺は好きだぞ」
泰葉「そ、そうですか? ふふっ……」
P「(昔なんて、営業スマイルが張り付いているような感じだったのに……今は自然と笑えるようになって)」
P「(……俺の知らないところでも、成長しているんだなぁ。うんうん……)」
泰葉「……あ。じゃあ、その……」
泰葉「プロデューサー、さん。その……ちょっと伺ってもよろしいですか?」
P「ん? なんだ?」
泰葉「その、お仕事? いや、営業外活動……生活、かな……」
泰葉「ちょっと変わった質問なんですけど……」
P「お、さっそくか? いいぞ」
P「やりたい仕事があったら何でも言っていいぞ。かくし芸大会にでも出てみるか? それとも長崎の親善大使にでもなってみるか?」
泰葉「えっと……その…………っ」
泰葉「動画サイトでの生配信とかって………私達でも可能ですか?」
P「……えっ?」
☆その③、終わり
──────
───
──
470: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:19:56.91 ID:cc9lYL1C0
──
────
──────
【おまけ①】
━━━━早朝━━━━
【事務所 応接室】
───ガチャ
のあ「……おはよう」スッ
愛海「フフフフフ……♪」
のあ「(……ッ!?)」ビクゥ!
愛海「でゅふ、ぐふっ……うへへぇ……っ♪」ワキワキ
のあ「ァ、アァ…………」オロオロ
愛海「おはよう、高峯さんっ♪」パアッ
のあ「あ、お、オハ……」
のあ「っ……」
のあ「(この子は、棟方愛海ちゃん……!)」
のあ「(以前、個室で私に襲い掛かって●●●とした子だわ……)」
のあ「(な、なんで……っ。前回もだけど、この子は私が事務所に来る時間帯をリサーチでもしてるのかしら……!?)」プルプル
愛海「高峯さんっ!」
のあ「ヒッ! ………………な、ナニ……!?」
愛海「4万8千円ですっ!!」ズザァー
のあ「…………」
のあ「へっ?」
────
──────
【おまけ①】
━━━━早朝━━━━
【事務所 応接室】
───ガチャ
のあ「……おはよう」スッ
愛海「フフフフフ……♪」
のあ「(……ッ!?)」ビクゥ!
愛海「でゅふ、ぐふっ……うへへぇ……っ♪」ワキワキ
のあ「ァ、アァ…………」オロオロ
愛海「おはよう、高峯さんっ♪」パアッ
のあ「あ、お、オハ……」
のあ「っ……」
のあ「(この子は、棟方愛海ちゃん……!)」
のあ「(以前、個室で私に襲い掛かって●●●とした子だわ……)」
のあ「(な、なんで……っ。前回もだけど、この子は私が事務所に来る時間帯をリサーチでもしてるのかしら……!?)」プルプル
愛海「高峯さんっ!」
のあ「ヒッ! ………………な、ナニ……!?」
愛海「4万8千円ですっ!!」ズザァー
のあ「…………」
のあ「へっ?」
472: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:22:18.38 ID:cc9lYL1C0
のあ「(……あっ!)」
のあ「(そうだ、思い出した)」
のあ「(確かあの時……●●●●を執拗に●●せろとせがんで来て、私はとっさに……)」
のあ「(その少し前の日にダイエット食品の訪問販売で浪費した額を条件として提示したんだっけ)」
のあ「(……この子、律儀ね。いい子だわ……お友達になりたいような、なりたくないような……)ドキドキ
のあ「(…………)」チラッ
愛海「約束のブツですよぉ? 4万8千円ですっ♪」
のあ「(グッ……!)」
愛海「え、えへへっ♪ ど、どうですか……??」ジュルリ
のあ「(……ど、どうしよう。サンタクロースを信じてやまない穢れない少女のように純粋に目を輝かせてる……)」
のあ「(………)」
のあ「(……ここで問題ね。この破廉恥な状況をどうやって乗り切るか)」
【答え① デキる大人高峯のあは突如快刀乱麻のアイデアがひらめく】
【答え② 仲間がきて助けてくれる】
【答え③ しこたま●●れる。現実は非情である】
のあ「(まず前提として、このお金は絶対に受け取ってはいけない。現物を見てちょっと揺らいだけど……)」
のあ「(でも、こんな小さな子からお金を強請るなんて、デキる大人として社会人として当然あってはならないこと)」
のあ「(……けど、●●れるのもちょっと抵抗があるわ。ファーストタッチは……んんっ)」
のあ「(時刻は早朝。いつもこの時間帯にここにいるのはプロデューサー、あとたまに神崎蘭子ちゃん)」
のあ「(でもプロデューサーの姿は見当たらない。おそらく愛海ちゃんが適当な理由で人払いをした可能性が高い。あるいは共犯か。ショックだわ、信じてたのに……)」
のあ「(だとしたら、残る選択肢は……)」
愛海「たーかみーねさぁーーんっ?」
のあ「ヒグッ……!」ビクッ!
のあ「あっ、あの……」
愛海「えへへ♪ なあに?」ニコッ
473: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:24:29.49 ID:cc9lYL1C0
のあ「愛海……」
愛海「はい、愛海ですよぉ♪」ワキワキ
のあ「値上がりしたの」
愛海「…………はへっ?」
のあ「(そう……、そうなの)」
のあ「(ダイエット食品6ヶ月契約、4万8千円。デビューシングル自腹100枚、十数万。泰葉ちゃんへのプレゼント、十数万)」
のあ「(合わせて、色を付けて……っ)」
のあ「一●●、30万」
愛海「(…………っっ!?)」
━━━1時間後━━━
【事務所】
愛海「…………」グスン
P「(…………)」カタカタ
愛海「ぷろでゅーさぁー……」
P「……どうした愛海。元気ないな」
愛海「ぐすっ……ひっぐ……」
P「…………」カタカタ
愛海「あたし……っ」
愛海「あたしぃ……、高峯さんにぃ……」
愛海「高峯さんに、遊ばれてたよぉぅ……う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛……っ」グスッ
P「(な、何だ何だ!? い、一体何が……)」
──────
────
──
474: ◆AL0FHjcNlc 2016/08/28(日) 21:29:22.69 ID:cc9lYL1C0
次回 高峯のあ「牛丼並……4つでいいかしら?」 前編
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