1 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:10:46 ID:WVWJ/3UY

男「すまんなー、友。ガイド頼んじゃって」

友「何言ってんだよ、気にすんなよ」

友「お前らの新婚旅行のガイドできるなんて」

友「俺、こっちに転勤になって良かったって初めて思ったぜ」

女「でも、今日本当はお休みなんでしょう?」

友「そうだけど、観光地見て回った後は…」

男「飲みに?」 


転載元:黒猫 



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2 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:11:05 ID:WVWJ/3UY
友「あったりめぇよ!久々に飲もうぜ!」

友「美味い地ビールの店があるんだよ」

男「お前は本当にビール好きだな」

友「飲み歩きは、今の俺の唯一の楽しみさ」

友「さ、その前に雰囲気たっぷりの古城をご覧頂きます」

友「見えてきたぞ、あそこだ」

男「おぉ…なんか映画みたいだな」 

3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:11:28 ID:WVWJ/3UY
友「日本の城も良いけど、西洋の城も中々良いもんだろ?」

男「そうだなー。思ったより大きくないんだな」

友「あぁ、あの城は小さい方だな」

友「でも、面白い物が展示してあるんだよ」

男「そうなのか?何があるんだ?」

友「それは見てからのお楽しみ」

女「ふふ。相変わらずだね、友君は」

友「褒め言葉だよな?ははは」 

4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:11:58 ID:WVWJ/3UY
友「さ、着いたぞ。ここからは歩きだ」

男「さっき小さいって言ったけど…」

男「間近で見ると、意外と…」

友「へっへっへ。そう言うと思ったぜ」

男「どこが入り口?」

友「こっちだ」 

5 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:12:30 ID:WVWJ/3UY
友「~~~~~~~~~~」

門番「~~~~~~~~~~」

男「すっげー。ともが外国語で会話してる」

友「あったりめぇだろが!こっちきて5年だぜ?」

友「会話出来ねーと、ツアーガイドなんてやれんだろ」

男「お前が頭良く見える…」

友「はっはっは、何だとこの野郎!」 

6 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:13:07 ID:WVWJ/3UY
男「ガイドさん、早く案内してください」

友「お前が変な事言うからだろ…」

友「じゃあ、行くか!」


女「…ね、男」

男「うん?何?」

女「…何か嫌な感じがする」

男「気分悪い?」

女「ちょっとだけ…」

男「車で待ってる?」

女「一人で待つなんて、嫌だよ!」

女「ね、見学は無しで、帰ろうよ…」


友「おーい、二人とも!何してんだよ!早く来いよー!」 

7 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:13:29 ID:WVWJ/3UY
男「一応、行くだけ行こうよ」

男「友が一押しの場所なんだからさ」

女「…うん、わかった」


友「どうかした?」

女「ん、何でもないよ、友君」

ニャーン

女「あ、子猫だ」

友「チッ…またあいつか…」

男「ん?友って猫嫌いだっけ?」

友「あぁ、正直嫌いだな」 

8 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:13:51 ID:WVWJ/3UY
女「ほらほら、おいでー」

ニャーン

女「可愛いー。外国でも猫は猫だねー」

男「当たり前だろー」

女「黒猫くん、キミ可愛いねー」
ナデナデ

ニャーン 

10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:14:23 ID:WVWJ/3UY
友「なぁ、早く行こうぜ?」

女「あ、ごめんね」

女「じゃあね、黒猫くん」

ニャーン

友「黒猫なんて、気味悪いぜ…」

男「何で?可愛いじゃないか、猫」

友「あいつ、ここの広場に住み着いてるんだ」

友「観光客にすり寄れば餌が貰えると思ってやがるんだ」

友「その姿が浅ましくて、俺は猫が嫌いなんだ」 

11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:14:54 ID:WVWJ/3UY
女「な、何か、ごめんね?」

友「あ!こっちこそ、ごめん!」

友「変な空気になっちまったな!」

男「ドンマイ」

友「いやあ、へへっ。本当にすまんすまん」

友「さぁ、この石組みの外階段でてっぺんまで行くぞ」 

12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:15:27 ID:WVWJ/3UY
男「おぅ…手すりもなんもないのか…」

友「まぁ、手すりは無いけど、階段の幅が2メートル近くあるんだ」

友「余裕だろ?」

女「怖いよ、男」

女「手、繋いで良い?」

男「あぁ、俺が外側歩くよ」
ギュッ

女「てっぺんまで行ったら、もう帰るんだよね?」

友「帰りは中の螺旋階段で戻るんだ」

友「この城のてっぺんから見る景色は最高だぜ?」

友「さぁ、行こう」 

13 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:16:18 ID:WVWJ/3UY
友「ここらが中間地点だな」

男「おぉ…確かに良い景色だな…」

女「夕日が綺麗だね」

友「だろ?今から行けば、丁度日没くらいにてっぺんだ」

友「地平線に沈む太陽を見られるぜ」

男「それは綺麗なんだろうな」

友「さ、それじゃ、行くかー」

ニャーオ 

14 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:17:11 ID:WVWJ/3UY
女「あ、さっきの黒猫くん、ついてきちゃったのかな?」

ニャーオ

友「チッ…クソ猫、あっちいけ!しっしっ!」

男「おい、友。そこまでしなくても…」

友「俺は猫が嫌いだって言ったろ?」
ガシッ

男「おい、そのレンガどうするつもりだよ!」

友「あっちに…行けっ!」
ブンッ



ガッ

グシャッ 

15 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:18:07 ID:WVWJ/3UY
女「きゃぁっ!」

男「お、おい、お前、やり過ぎだろ…」

友「あ、当たると思わなくて…」

女「お、男、黒猫ちゃん、大丈夫?」

男「女は見ない方が良い、見ちゃダメだ…」

友「…動かねぇな…死んじまったのか」

男「…」

女「もう嫌だ…男、戻ろうよ」



ニャー… 

16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:18:38 ID:WVWJ/3UY
男「う…、シッポがピクピク動いてる…」

友「大丈夫…なのか?」

男「いや、ダメだろう…」

男「頭に直撃だからな…」

友「…」

女「ねぇ、男、戻ろうよ!私もう嫌だ!」

友「いや、今からこの外階段おりるのは逆に危ないから」

友「いったん屋上まで登って、内階段で降りる方が安全だ…」

友「ごめん、二人とも…」

ニャーゴ

男「!?」

女「ひっ!?」 

17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:19:00 ID:WVWJ/3UY
男「大きな黒猫…?」

友「…さっきのチビの母猫だ」

ニャーゴ

友「くそっ…あっちに行け!」

フーーーーーッ!

男「おい!友!やめろ!それ以上は…」

ガブッ

ピョン 

18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:20:08 ID:WVWJ/3UY
男「子猫を咥えて…、城の外に…飛び降りた?」

友「自殺した…のか?」

女「もう嫌だっ!早く帰りたい!」
ギュッ

男「落ち着いて女、大丈夫だから」
ギュッ

男「友、早く上に行こう…俺も早く戻りたい」

友「お、おう…すまん、二人とも…」 

19 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:20:31 ID:WVWJ/3UY
男「確かに景色は綺麗だな…」

女「うん…でも…」

友「さ、さぁ!帰りは内階段だ!安全に降りられるぜ」

友「完全に日が落ちる前に、車に戻ろうぜ」

男「うん」 

20 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:20:53 ID:WVWJ/3UY
男「ん?どうした友、何で止まる?」

友「3分だけ、つきあってくれ、こっちだ」

男「なんだよ、そっち暗いじゃん」

女「私、行きたくない…」

友「すぐ済むからさ、ほら」

女「私は行かないから」

男「…女、ここで待ってて。すぐ戻ってくるから」

女「…うん」 

21 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:21:18 ID:WVWJ/3UY
友「これが見せたかった物だ」

男「暗くてよく見えない。これ、なんだ?」

友「これは中世の拷問具で、アイゼルネ・ユングフラウ」

友「英語で言うと、アイアンメイデン、鉄の処女って奴だ」

男「…拷問具とか興味ないよ。友、早く降りようぜ」

友「ちょっとだけだから、こっち来て見てみろよ」

友「こんなに保存状態が良いのもめずらしいんだぜ?」
ヒョイッ 

22 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:21:54 ID:WVWJ/3UY
男「友…いいから早く降りよう」

男「まず、柵を乗り越えるのはダメだと思う」

男「それに、そこの看板、読めないけどさ」

男「触れるなーとか、そんな事書いてあるんじゃないの?」

友「この城、別に見回りとかいねーし、平気平気」

男「そういう問題じゃなくてな…」 

23 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:22:24 ID:WVWJ/3UY
友「男、このレバーを思いっきり下ろしてみてくれよ」

男「…気が進まないんだけど」

友「いいから、ほら早く!」

男「…こうか?」

ガコン…ギリギリギリギリ

男「うわ…人形が開いた…中身、棘だらけだ…」

友「すごいだろ?この中に…」
ヒョイ

友「こんな感じで罪人を入れて、レバーを戻すと…」 

24 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:23:17 ID:WVWJ/3UY
男「拷問っていうか、処刑じゃないかそれ」

友「まぁ普通に行くとそうなんだけどさ」

友「実は、この鉄の処女が閉じると、この下の床が開いてさ」
コンコン

男「その床が開くのか?」

友「おう。それで中の人間は無事なんだよ」

友「それでもこれに入れられた人間の恐怖は凄かったろうな」 

25 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:23:45 ID:WVWJ/3UY
男「そりゃそうだろうな」

友「日本人はそうでもないが、他の国からのお客さんには人気あるんだぜ?」

友「間違って、レバー下ろしたアホな客も居たけどさ」

男「大丈夫だったのか?」

友「あぁ、この下の部屋に落ちて、ちょっと腰打ったくらいさ」

友「それ知ったそのアホな客、5回も中に入ったんだぜ」

男「俺には理解出来ん…なぁ、もういいだろう?」 

26 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:24:15 ID:WVWJ/3UY
男「俺の手が滑る前に、早くそこから出ろよ」

友「そうだな…絶対手、離すなよ?」

男「変なフラグ立てるなよ、バカ」

友「ハハ。じゃあ…」

サッ

ガリッ

男「痛っ」
パッ

友「なっ!?」
ギリギリギリ…ガコン… 

27 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:24:42 ID:WVWJ/3UY
男「ね、猫?さっきの…」

男「に、人形が…閉じちまった…」

男「おい!友!下に落ちたんだろう?」

男「…おい!返事しろ、友!」

男「…」

男「お、おい…冗談止めろよ…」

ツーン 

28 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:25:17 ID:WVWJ/3UY
男「これ…この臭い…って…」

男「うっ…げぇっ…」
ビチャビチャッ

男「あ、あぁ…うぁあぁ」

ツツーッ

男「うわぁぁぁあああぁぁぁ!」


女「男!どうしたの?男!」

男「と、友が!友が!」 

29 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:26:20 ID:WVWJ/3UY
女「友君?友君がどうしたの?どこに行ったの?」

男「あ、あれに…」
ガタガタ

女「あれ…?」

女「暗くてよく見えないけど…」

ニャーゴ

女「きゃっ!?え?さっきの…親猫?」

ピチャッピチャッ

女「えっ?な、何を舐めてるの?」

女「ねぇ、男!友君はどこ?」

女「ねぇってば!」 

30 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:27:23 ID:WVWJ/3UY
その後、俺は女と一緒に階段を降り

門番に事故があった事を知らせた

警察が来て、事情聴取を受けた

警官に状況を説明した

警官に状況を説明された

普段はきちんと動作するはずの床が抜ける装置が 

31 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:27:55 ID:WVWJ/3UY
今日は何故か作動しなかったらしい



友は数百の棘に刺されて

死んだ



黒猫は

俺の手に噛み付き、レバーから手を離させた

あの黒猫は

結局見つからなかった 

32 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/24(水) 21:28:24 ID:WVWJ/3UY
おわりです