2: ◆CS7uVfQgX. 2018/10/29(月)18:45:40 ID:9RA
事務所

P「―――では、そろそろ外回りに行ってきます」

小鳥「はい。いってらっしゃい、プロデューサーさん」

P「いくつか営業先に伺ったあと、ちょっと付近の学園祭を覗いてきますね」

小鳥「あら、堂々とおサボり宣言ですか?」

P「おサボり宣言って…。音無さん、分かってますよね?」

小鳥「39プロジェクトのアイドル候補生探し、ですね?」

P「そういうことです」

小鳥「スカウトもいいですけど、最近はいろいろと厳しいのでくれぐれも通報される、なんてことは避けてくださいね?」

P「気を付けますね。では、行ってきます」

小鳥「はい、いってらっしゃい♪」

引用元: 【ミリマス】七尾百合子「例えばこんな出逢い方」 



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3: ◆CS7uVfQgX. 2018/10/29(月)18:46:30 ID:9RA
とある中学校

P「ここか…。受付はあそこかな?」

「こんにちは!父兄の方ですか?」

P「いえ。父兄ではなく、ここの卒業生です」

「そうなんですか!それでは、こちらに名前を書いていただいて…はい、そちらです」

P「―――はい、よろしくお願いします」

「では、こちらの来場者用のホルダーを首からかけていただいて…はい!それでは楽しんでいってください!お帰りの際には、ホルダーはあそこにあるボックスの中に入れていってくださいね!」

P「はい。ありがとうございます」

P(…スカウト活動する内に、自然と嘘をつくのも慣れてきたな)

4: ◆CS7uVfQgX. 2018/10/29(月)18:47:15 ID:9RA
校内

「―――さあ姫、僕と一緒に。希望はすぐそこにあります!」

P(…朗読劇か。ちょっと覗いてみるか)

「―――2人は末永く幸せに暮らしました。以上、朗読劇を終わります。語りは3年、七尾百合子でした」

P(表現力が凄いな…逸材かもしれない)

百合子「あの…お客様?朗読劇は終わりましたけど…?」

P「凄い良かったです。感動しました」

百合子「感動って…、私の朗読劇を聞いて、ですか?」

P「はい。その作品の面白さを伝えよう、って気持ちが込められているように感じました」

百合子「あ、ありがとうございます。今日の作品は、私のお気に入りだったので…」

P「そうなんですか。途中から聞きに入ったので作品名を逃してしまったんですけど、なんていう作品ですか?」

百合子「あ、はいっ。―――というタイトルのお話です」

P「―――ですね。本屋に寄ったらチェックしてみますね」

百合子「はいっ!是非!」

P「…七尾さん、でしたっけ。貴女さえよろしければ――」

P(――いや、学校の敷地内でのスカウトは流石にリスキーか)

百合子「私さえよければ、なんですか?」

P「いえ、なんでも。見られてよかったです。それだけ伝えたくて」

百合子「え、えへへ…そんなに褒められると照れちゃいますね」

P「まだ公演があるんでしたら、頑張ってくださいね」

百合子「はいっ、ありがとうございます!」

P「では、失礼します」

百合子「あっ…文化祭、楽しんでいってくださいね!」

P「ありがとうございます」ペコリ

5: ◆CS7uVfQgX. 2018/10/29(月)18:48:17 ID:9RA
数日後・事務所

小鳥「…で、いろんな学校に行ったものの、スカウトはしてこなかったんですか?」

P「そうですね」

小鳥「…それ、意味ありますか?」

P「俺も行ってて思いました」ハハ

小鳥「もう、真面目なんだか抜けてるんだか分かりませんね…」ハァ

P「ほら、もしかしたら話した子と街中で会って、とかあるかもしれませんよ?」

小鳥「そんな漫画じゃないんですから…」

P「ですよね。一応気になった子の顔と、名前も確認できたら名前も覚えてはいるんですが」

小鳥「街中ですれ違うだけでも分かったりするんですか?」

P「そこまでは流石に」ハハ

小鳥「はぁ…呆れた。まぁ、プロデューサーさんの腕は信頼してますし、いいんですけどね」

P「買いかぶりですよ」

小鳥「そんなことありませんよ。なんでしたっけ、その子がステージで輝いてる姿が見えるんでしたっけ?」

P「そこまでじゃないですけどね。なんとなく、売り出し方が見える感じです」

小鳥「なんとなく、なんですね」

P「えぇ。高木社長に言わせたら、ティンときた!というやつでしょうか」

小鳥「結局、スカウトは直感なんですねぇ」

P「そうですね」

小鳥「ま、かくいうプロデューサーさんのその社長にスカウトされたわけですし、期待してますね♪」

P「…応えられるように頑張りますね」

小鳥「はい、そうしてください」

6: ◆CS7uVfQgX. 2018/10/29(月)18:48:49 ID:9RA
書店

P「えーと、ウチのアイドルが特集されてる雑誌は…と」

「う、うぅーんっ、もう少し…」

P「ん?」

「ん~~っ」

ヒョイッ

「あっ?」

P「すみません、この本で良かったですか?」

「あ、ありがとうございます!って、あっ!」

P「はい?」

「この前のお兄さん!」

P「…あぁ。以前、文化祭でお会いしましたね。七尾さん」

百合子「はい!お久しぶりです!」

7: ◆CS7uVfQgX. 2018/10/29(月)18:49:33 ID:9RA
百合子「ってあれ?私、名前言いましたっけ?」

P「言ってましたよ。『語りは3年、七尾百合子が』って」

百合子「おぉ…よく覚えてますね」

P「まぁ職業柄、人の顔と名前を覚えるのは得意なんです。七尾さんもよく私が分かりましたね」

百合子「あんなに褒めてくれたの、お兄さんだけだったので、嬉しくて…えへへ」

P「そうなんですか?それは他の人が見る目がなかったんですよ、きっと」

百合子「そ、そこまでいいますか?」

P「はい。それだけ素晴らしかったと私は思いましたけどね」

百合子「あぅ…」カァァ

P「あ、そういえば七尾さんが演じてた作品、読みましたよ。面白かったです」

百合子「ホントですか!!!」パァァ

P「は、はい」

百合子「うわぁ~、嬉しいなぁ。おすすめした本読んでもらえるなんてっ。お、お兄さん!どこが面白かったか聞かせてもらってもいいですか!?」

P「わ、分かりました。さすがにここで話すのもなんですし、どこかお店に入りませんか?さっきから、周りから変な目で見られてますし…」

百合子「はっ!!私ったら、また暴走して…すみません」

P「いえ、気にしないでください。行きましょうか」

P(…面白い子だな)

10: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:06:32 ID:T5G
喫茶店

百合子「先ほどはご迷惑をおかけしました…」シュン

P「迷惑なんて、そんなことないですよ」

百合子「いえ、私、ダメなんです。本のことになっちゃうと周りが見えなくなっちゃって…。友達にもいつも注意されてばっかりで…」

P「七尾さん」

百合子「…はい」

P「まだ会ったばかりですし、貴方の苦労や悩みを理解してあげることはできません。でも、一応人生の先輩なので、ちょっとのアドバイスを」

百合子「…はい」

P「そんなに気にしなくてもいいと思いますよ」

百合子「えっ?」

P「自分の評価って自分でもできますが、基本的には他人がするものです。なので、七尾さんが短所だと思ってるところも、周りの人は長所だと感じてる場合もあると思います」

百合子「で、でもっ、友達にも注意されてばっかりですし」

P「そのお友達は注意するときに、本当に怒ってますか?迷惑そうにしていますか?」

百合子「…呆れてるっていうか、苦笑い?」

P「でしょう?断定はできませんけど、多分そのお友達も『しょうがないなぁ』なんて気持ちで楽しく付き合ってるんだと思いますよ」

百合子「そうでしょうか…?」

P「そうですよ。少なくとも私は、迷惑なんて思いませんでしたよ。むしろ、こうやって話す機会ができてラッキーですね」

百合子「私と話せてラッキーですか…?」

P「はい。七尾さんは可愛いですし、もっと自分に自信を持ってもいいと思いますよ」

百合子「か、可愛い…あ、ありがとうございます」カァァ

11: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:09:51 ID:T5G
P「あ、そういえば本の感想の話でしたね」

百合子「あ、はいっ」

P「よくありがちなファンタジーものかと思ったんですけど、冒険に出た王子の葛藤などの心理描写がしっかりと書かれてて。考えさせられる場面もあって、面白かったです」

百合子「そうなんです!あの作者さんはファンタジーな世界観を描くんですけど、しっかりと現実に根を張ってるといいますか!ただ王子や勇者やヒロインが悪役を倒してはいおしまい、って感じじゃなくて、人間味があふれてるんです!」

百合子「特に私が心に残っているシーンは、王子が攫われた姫を助けに行く道中で、魔物に襲われている村を助けた後に、『一を助けるということは、他の九十九を見捨てるのと同じだな…』って呟く場面とか!お兄さんはどこのシーンが心に残ってますか!?」

P「……」

百合子「って、あぁ!また私、1人で盛り上がっちゃって…ごめんなさい」

P「あぁ、いえ。退屈してたとかじゃなくて、本当に楽しそうに話すなぁって感心してたんです。表情豊かで、なんというか、そうですね、魅せられてました」

百合子「そ、そうですか…?なら良かったです」エヘヘ

P「…七尾さん。急な話で驚かれるかもしれませんが、アイドルに興味ありませんか?」

百合子「あ、アイドルですか?」

P「はい。実は私、こういう職業に就いている者です」スッ

百合子「名刺…?『株式会社765プロダクション』…ってあの765プロのプロデューサーさんなんですか!?」

12: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:11:13 ID:T5G
P「はい。私に、貴方をプロデュースさせてくれませんか?」

百合子「なんで、私なんかを…?」

P「なんか、じゃありません。貴方がいいんです」

百合子「あぅ…」カァァ

P「貴方の朗読劇での表現力は素晴らしいものでした。それに加えて、本の話をするときの楽しそうな表情。こっちまで楽しくなるような、そんな魅力が君にはあった」

百合子「ちょ、ちょっと、そのへんで…」カァァァ

P「アイドルの仕事は歌って踊るだけじゃない。演技やイベントで、君が本から感じた面白さや魅力を多くの人に届けることだってできる」

百合子「! 本の面白さを、伝える…」

P「そう。君が物語のヒロインになるんだ。なんて、キザすぎるけど」

百合子「私が…」

P「答えは今じゃなくていい。ゆっくり考えて、決心がついたら渡した名刺にある連絡先にメールか電話してくれ。もちろん、なるつもりがなければ、その名刺は捨ててくれていい」

百合子「わ、分かりました」

P「じゃあ、また会えたら。勘定は済ませておく」

百合子「あっ、払いますっ…って、行っちゃった」

百合子(私が…アイドル)

13: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:11:55 ID:T5G
事務所

小鳥「…で、未来のアイドル候補を見逃してきたと」

P「そうなります」

小鳥「なんでその場で押し切らなかったんですか?」

P「押し切るって…相手は15歳の女の子ですよ?相手はまだ学生ですし、進路がいくらでもあります」

小鳥「社長を見習ってください!社長なんて『ティンときた!』の一言で強引にスカウトを済ませてくるんですよ?」

P「俺のときもそうでしたね」ハハ

小鳥「はぁ…まぁいいです。もしかしたら連絡がくるかも知れませんし」

P「そうですね。来ることを祈りましょう」

小鳥「あーあ、プロデューサーさんがその場で連れてきてくれたら、こうやって待つこともなかったんだけどなー」

P「…今晩空いてますか?飲みに行きましょう」

小鳥「あら♪奢りですか?」

P「俺が誘ってるんですから、もちろん奢りですよ」

小鳥「ごちそうさまです♪」

P(連絡来るといいな…)

14: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:12:41 ID:T5G
数日後・事務所

小鳥「お昼ご飯食べた後って、どうしても眠くなるのよねぇ…コーヒーでもいれようかしら」

ガチャ

小鳥「あら?」

百合子「し、失礼しましゅ!あっ、噛んじゃった…」

小鳥「こんにちは。765プロダクションへようこそ。なにか御用かしら?」

百合子「あ、えっと、お兄さん、じゃなかった、Pさん、いますか?」

小鳥「あぁ、プロデューサーさんに会いに来たのね。プロデューサーさんは今、遅めのお昼休憩に出てるの。少しだけ待ってもらえる?」

百合子「あっ、はい!」

小鳥「じゃあ、こっちのソファへどうぞ。コーヒーかココア、どちらがいいかしら」

百合子「あっ、じゃあココアをお願いします…」

小鳥「はーい、ちょっと待っててね♪」

15: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:13:14 ID:T5G
ガチャ

P「ただいま戻りました」

小鳥「あ、プロデューサーさんお帰りなさい。プロデューサーさんにお客さんですよ」

P「お客さん?」

百合子「お、お久しぶりです!」

P「七尾さん、お久しぶりです。わざわざ事務所まで来てくれたということは…」

百合子「はいっ!私、アイドルになりたいです!もっともっと、本の魅力をいろんな人に伝えたいんです!」

P「ありがとうございます。七尾百合子さん、これから一緒に頑張っていきましょう」

百合子「はいっ!よろしくお願いします、お兄さん!」

16: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:15:47 ID:T5G
――――――――

――――

――

百合子「――という感じでスカウトされたんですよ」

エミリー「仕掛け人様とは、そのような出会い方だったんですね。素敵です!」

可奈「え~、私はオーディションだったからなー!羨ましいかな~♪」

未来「百合子ちゃんいいなー。私もそんなどらまちっくな出会い方したかったなー」

まつり「未来ちゃんの自転車で轢くっていうのも、ある意味ドラマチックだと思うのです…」

ガチャ

P「ただいま戻りました。…なに話してたんだ?」

未来「あっ、プロデューサーさんお疲れ様で~す!今、どうやってアイドルになったかを話し合ってたんですよ~!」

まつり「プロデューサーさん!姫との出会いをやり直すのです!とびきりロマンチックでわんだほ~!なスカウトをお願いするのです!」

P「無理言うなよ…」

可奈「はいはーい!私もスカウトされたいでーす!百合子ちゃんみたいに、可愛いって言われたいでーす!」

P「…百合子、どこまで話したんだ?」

百合子「えへへ…スカウトの経緯、全部話しちゃいました」

P「…マジか。さすがに恥ずかしいな」

17: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:16:27 ID:T5G
エミリー「し、仕掛け人さま」クイクイ

P「ん?エミリーどうした?」

エミリー「わ、私も『なんか、じゃない。貴方がいい』っておっしゃってほしいです…あぅ」カァ

P「恥ずかしがるくらいなら言わなきゃいいのに…俺も恥ずかしくなってきた」

未来「あっ、私も!私も言ってくださーい!」

可奈「私も言ってーほしいっかな~♪」

まつり「姫も、『俺だけの姫になってくれ』ってセリフを所望するのです!」

P「まつりに関しては原型ないぞ!百合子、助けてくれ!」

百合子「……」

P「百合子?」

百合子「…私も、もう1回言ってください!」

P「えっ!?百合子もそっち側なのか!?」


カンネンスルノデス-! シカケニンサマ! ハヤクハヤクー!


百合子(プロデューサーさんとの出逢いは、本当に私の人生を大きく変えるものでした)

百合子(私の物語のハッピーエンドはトップアイドルになることもそうですけど、プロデューサーさんと幸せなキスを…なんてっ)

18: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:16:55 ID:T5G
百合子「これからもよろしくお願いします!お兄さん♪」

19: ◆CS7uVfQgX. 2018/11/06(火)00:18:51 ID:T5G
これにて完結です。

照れてる百合子、至高だと思います。

では、またどこかでお会いすることがあればよろしくお願いします。