バチバチバチバチ……ギュォォォォォォォォォォッ
カッ‼
???「……」シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……
???「んーっ、呼ばれたから来てみたけど……へえ~、ここがカルデアなんだ……
あ、ブルース! マシュ! 久しぶり!」
マシュ「……ブーディカ、さん……」
ブルース「……召喚は成功したな。私は行く」スタスタ
ブーディカ「……?」
引用元: ・バットマン「グランド……オーダー?」 マシュ「その2です」
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3: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:29:07.58 ID:dv7Fg3X90
ブーディカ「……ちょっとちょっと、どうしたっての? ブルースってあんな悲痛な感じの面構えだったっけ?」
マシュ「……ごめんなさい」クルッ、スタスタ
ブーディカ「あ、ちょ、ちょっとアンタまで……」
ドクター「ご、ごめんよ。皆に代わって僕が謝るから……ちょっと大変な時期でさ」
ブーディカ「大変な……時期?」
4: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:29:42.97 ID:dv7Fg3X90
………………
ブーディカ「……ははあ、成程ね……」
ドクター「うん……ちょっとね」
ブーディカ(……う~ん、マシュの落ち込みっぷりにはアタシも一枚噛んでそうだな~……安易に自己犠牲を選んだのは不味かったかぁ……)ポリポリ
ドクター「……とと、ごめんよ。カルデアの施設について説明して回るから、来てくれるかな?」
ブーディカ「はいな」
5: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:30:12.53 ID:dv7Fg3X90
職員B「あ、ドクター……に、英霊の方ですよね。連絡は受けてます」
ブーディカ「そそ、アタシはブーディカっての。よろしくね」
職員B「はい。私はここの職員で……え、英雄に対して名乗るほどの名前は無いのですが、働いています。案内しますので、どうぞこちらへ」
ブーディカ「何~? 別にかしこまる事ないのに」ウリウリ
職員B「そ、そんな事……いきますよ、もう!」
ドクター(ああ、このカルデアのムードが明るくなる感じ……何週間ぶりだろう……)ホロリ
6: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:30:41.44 ID:dv7Fg3X90
ドクター(最近のマシュとブルースくん、互いに目が合えば一瞬で視線逸らすし……挨拶すら死にそうな声だし)
ドクター(所長も所長で、ブルースくんが帰って来てからはなんかピリピリしてるし)
ドクター(……レオナルドは、『秘密』を打ち明けちゃったから……ちょっと、今まで通りに接する事ができるか、分からないし)
ドクター(……わりと辛いんだよなぁ、カルデア内の空気……)
ドクター「はあ~……」
レオナルド「溜め息を吐くと幸せが逃げるぞっ!」バンッ
ドクター「うっひゃああああああああ!?」ビクッ
7: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:31:23.14 ID:dv7Fg3X90
レオナルド「……どうしたのさ、辛気臭い顔して」
ドクター「な、なんだレオナルドかぁ……いや……その、さ」
レオナルド「何だよ、言ってみろよ?」
ドクター「……ほら、あの二人がさ。カルデアの雰囲気を支えてた、みたいなところ、あったし……最近、元気ないなって思ってね」
レオナルド「……マシュとブルースか。だなー、あと所長も何だかんだムードメーカーではあったしね」
ドクター「……なんとかしたいなぁ……」
レオナルド「……それには全く同意するよ」
8: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:31:54.54 ID:dv7Fg3X90
レオナルド「……ただ、ロマニ。キミも抱え込みすぎるきらいがあるんだ、私には分かってるんだぜ?」
ドクター「ギクッ……」
レオナルド「……だからまあ、手分けしていこうじゃないか。私はマシュ、キミはブルース」
ドクター「そうなるよなぁ……オッケー、了解。……駄目でも悲観しないようにしないと」
レオナルド「よし。頼むぜ」
9: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:32:22.01 ID:dv7Fg3X90
………………
マシュ「……」カチャカチャ……
レオナルド「や、マシュ。おはよう、隣良いかい?」
マシュ「あ……ダヴィンチちゃん。おはようございます。どうぞ」
レオナルド「ありがとう。豆のスープか、私もそれにしよっと」
10: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:32:48.96 ID:dv7Fg3X90
マシュ「……」モグモグ
レオナルド「……それにしても、ブルースが帰って来て良かった」
マシュ「……」ピタッ
マシュ「……失礼します」ガタッ
レオナルド「お、おいちょっと?」
マシュ「……ごめんなさい」スタスタ
11: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:33:15.50 ID:dv7Fg3X90
レオナルド(ええぇぇぇ……これ重症すぎるだろ……)
ブーディカ「ふんふんふ~ん……♪ あ、噂の天才女史だ。おはよう」
レオナルド「……ブーディカ! 前の特異点で世話になったって話のブーディカじゃないか! ここへ座りたまえよ!!」
ブーディカ「? う、うん……じゃあ失礼するよ」
12: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:33:44.06 ID:dv7Fg3X90
………………
ブーディカ「あ~………やっぱりマシュ、塞ぎ込んでるんだ……」
ブーディカ(でもブルースまで塞ぎ込むなんてちょっと意外かも……)
レオナルド「そうなんだよ。それで、前の特異点を共に制覇したキミなら何か……知っている事とか、無いかと思ってね」
ブーディカ「うーん……無い事は無いんだけどなぁ……」
レオナルド「何でもいい、聞かせてくれ。状況打破の手掛かりにはなるさ」
13: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:34:16.30 ID:dv7Fg3X90
ブーディカ「ほら、あの子……マシュはさ、アタシ達の自己犠牲を間近で見てきちゃったんだ」
レオナルド「ふむ……」
ブーディカ「あの子、特に純粋でね。多分、アタシ達『サーヴァント』が死ぬのも、嫌でたまらないんだと思う」
レオナルド「……それは確かに、本人も言ってたな……」
ブーディカ「……悪い事したかな……」
レオナルド「……どうだろうね。命の価値の話なら、私には少し判じかねる」
ブーディカ「……アタシも……」
14: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:34:47.00 ID:dv7Fg3X90
レオナルド「……ただ、今を生きる人間を、少しでも長く見ていたいというのは分かるけどね」
ブーディカ「……それって、結局価値観の押し付けなのかなぁ」
レオナルド「……陳腐な答えだけど、人によるとしか言えないね」
ブーディカ「……」
レオナルド「……」
ブーディカ「……ごめんね、暗くして! ご飯食べよっと」
レオナルド「いいや、暗くしたのはこっちだ。豆のスープが美味しいよ、試してみるといい」
15: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:35:21.98 ID:dv7Fg3X90
………………
ブルース「…………」カタカタ、カタカタ……
コンピュータ『ハッキング進捗率:58%』
ブルース(……カルデアのデータ最深部へアクセスできれば、職員達の弱点は知れるだろう。情報は集めておいて損はない……)カタカタ……
(((私達は仲間じゃなかったの……? なんでこんな武器が必要なの!?)))
(((嘘はいけませんわ、旦那様)))
(((私を怪物にしないでくれ)))
(((怪物は、自分以上の怪物には勝てん。お前はいつか敗れ去る)))
ブルース(……)カタカタ……
ガチャリ
所長「こんなところに居たの。ブルース」
ブルース「……オルガマリー所長か」ピッピッ、シュゥゥゥゥン……
16: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:35:56.62 ID:dv7Fg3X90
所長「何、してたの」
ブルース「……本を読んでいた」
所長「……そう」
ブルース「……ああ」
所長「……」
ブルース「……」
所長「……なんで」
ブルース「……」
所長「なんで、嘘を吐くの?」
ブルース「……」
17: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:36:32.14 ID:dv7Fg3X90
所長「必要だから?」
ブルース「……慎重な考えと、計算は必要だ。集団のリーダーなら分かるだろう」
所長「じゃあ、私を助けたのも計算? 必要無ければ、見殺しにしてたの?」
ブルース「そうは言ってない……」
所長「言ってるわよ、分からないの? アンタの慎重は『心を許さない事』だし、計算は『命の利用』。前の特異点でだって、そうだったじゃないの」
ブルース「……それは、致し方ない行動だった。世界の存続と個人の命を秤にかけた時、どちらに傾くかなど分かり切っている」
所長「だから死ぬの? そんな……機械みたいな理由で」
ブルース「……」
所長「……そう」
18: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:36:59.02 ID:dv7Fg3X90
所長「けどね、ブルース。これだけは言わせて頂戴。
どれだけ、計算が得意なつもりでも……アンタは人間よ。絶対に」
ブルース「……」
所長「そして、私達も人間なのよ。その人間が……急に、仲間を失ったら、どんな気持ちになるか。考えてほしいわ」
ブルース「…………」
所長「……アンタのやり方、嫌いよ。大嫌い。……それだけ」スタスタ
ブルース「……」
19: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:37:28.86 ID:dv7Fg3X90
………………
ブルース「……」スタスタ
レオナルド「あ、ブルース。やあ、今回のスーツの改造なんだけど、次のレイシフト先に合わせて……ブルース?」
ブルース「……ああ」
レオナルド「おーい、ちょっと。聞いてるー? ここの遮熱機能を……」
ブルース「ああ……スーツは、カラーリングを変えないように頼む」
レオナルド「いや、それは分かってるんだけど……」
ブルース「……すまない」スタスタ
レオナルド「ちょ、ちょっと? ちょっとーーーー???」
20: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:37:58.54 ID:dv7Fg3X90
レオナルド「……なんだよっ、皆して殻に閉じこもっちゃってさ! 全く、私が天才だからって寄っかかり過ぎだ!」プンプン
レオナルド「……なんだよ、もう……」
レオナルド「……」
レオナルド(……分かってる。そりゃ、分かってるけどさ……)
レオナルド「……あーもー!」
21: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:38:30.31 ID:dv7Fg3X90
………………
ブルース「……フッ! ハッ! シッ!」ドッ、ドシュッ、シュドドッ
サンドバッグ「」グォン、グォン……
ブルース「……!」ドッドッドッドッドッドッ‼
サンドバッグ「」グォォォォン……
(((お前は怪物だ)))
(((私を怪物にしないでくれ)))
(((逃げろマーサ、ブルース)))
(((父さんと母さんは何処だ?)))
(((世界は狂っている)))
(((無限の命)))
ブルース「…………」ピタッ
サンドバッグ「」ユラ……
22: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:39:00.30 ID:dv7Fg3X90
(((異常者だ)))
(((あるいは、極めて正常か)))
ブルース(私は狂っているのか?)
ブルース(私は怪物なのか?)
ブルース(私は……本当に、世界を良い方向へ変えようとしているのか?)
ブルース(私には、信念があったハズだ)
(((死は恐ろしい。死は苦しい。死は認めたくない)))
(((命乞いして財布を渡していれば良かったのに、無駄死にだ)))
ブルース(……何処へ行った? 私の、信念は……)
23: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:39:49.72 ID:dv7Fg3X90
ガサッ……
ブルース「……」チラッ
ドクター「やあ、ブルースくん。休憩かな?」
ブルース「……ドクター」
ドクター「全く、このまま夕方までずっとサンドバッグと格闘してそうだったからね。いつ声を掛けようかと」
ブルース「……」
24: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:40:30.88 ID:dv7Fg3X90
ドクター「……ここ、座っていいかな?」
ブルース「……ああ」
ドクター「ん」
ブルース「……」
25: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:41:00.71 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……」
ドクター「……最近、あんまりマシュと、話せてない?」
ブルース「……」
ドクター「……なんて、分かり切ってる質問だったよね。すまない」
ブルース「……」
26: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:41:28.48 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……私は」
ドクター「……」
ブルース「私は、世界を良くしているつもりだった。マシュを助けたのも、その計算の内だった」
ドクター「……うん」
ブルース「……だが、世界は……」
ドクター「……うん」
(((アンタのやり方、嫌いよ。大嫌い)))
ブルース「……思ったように、ならないものだな」
ドクター「そりゃあ、ね。僕たちって、人間だし」
ブルース「……」
27: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:42:02.46 ID:dv7Fg3X90
ドクター「……そうだな。キミの行動も、理解できるんだ。確かに理屈は通ってるし、間違っていない。それどころか、取り得る最高の行動だったとさえ言える。まるで機械みたいな精確さだ」
ブルース「……」
ドクター「……だけど、考えて欲しいんだ。人理を救う者が、人じゃなくなった時……救う事に、どんな意味がある?」
ブルース「……」
ドクター「……」
28: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:42:58.56 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……私には、理解ができない」
ドクター「うん。言ってる僕も、多分あまり理解できてない。ごめんよ。でも……でも、きっと大切な事だ」
ブルース「……そうか」
ドクター「うん」
ブルース「…………考えてみる」
ドクター「……うん。それと、言い忘れてたけど」
ブルース「ああ」
ドクター「おかえり、ブルースくん」
ブルース「……まだ少し、時間はかかる」
ドクター「待ってるさ。僕はドクターで、ロマンチストだからね」
ブルース「……すまないが、私はリアリストだ」
ドクター「あ、何だよ。今僕の事ちょっと馬鹿にした?」
ブルース「まさか。尊敬している」
29: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:43:33.98 ID:dv7Fg3X90
………………
ブルース「ブーディカ」
ブーディカ「あ、ブルース。こんばんは……どうしたの、戦いに赴く前の戦士みたいな顔つきだけど」
ブルース「昼間の礼を欠いた行為を詫びる。すまなかった」
ブーディカ「え……いや、良いよ良いよ。気にしてないって、色々大変だったんでしょ?」
ブルース「その『色々』で相談がある」
ブーディカ「え、ちょっと……どうしたの? 相談?」
30: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:44:00.98 ID:dv7Fg3X90
………………
ブーディカ「……はあはあ、成程ね……カルデアの面々に迷惑をかけた、と……」
ブルース「ああ。どうにかしたい」
ブーディカ「ふむ……どうしたいのさ?」
ブルース「分からない」
ブーディカ「えぇ~……そこ即答なんだ……」
31: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:44:28.16 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……分からない。どうすれば、人理修復へ最も有利に働くのか」
ブーディカ「……はあ?」
ブルース「……いや、すまない。失言だった」
ブーディカ「……う~ん……」
ブルース「……」
32: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:44:55.63 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……」
ブーディカ「……全部、計算を頭から取っ払ってみなよ。残ったものが、今やるべき事でしょ」
ブルース「……計算を……全て?」
ブーディカ「そう。忘れるんだ、全部。キミはどうしたい?」
ブルース「……」
33: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:45:25.52 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……」
ブルース(世界の救済を全て忘れ、カルデアの安全を考えず、自己の保身を無視した時……最後に残るのは何だ?)
ブルース(……マシュ、ドクター、レオナルド、オルガマリー所長、職員達、フォウ……全員の行動パターンを頭から取り去り、後に残るものは何だ?)
ブルース(私には何が残る? 私は……どうしたらいい?)
ブーディカ(これそんなに悩むところ……?)
34: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:45:54.22 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……」
ブーディカ「……あのさ、今にも人を殺しそうな顔になってるけど。もうちょっと気楽に構えなよ」
ブルース「キラク……」
ブーディカ「そうそう、気楽に。キミの決断で人類が滅ぶ、なんて局面でも無いんだしさ」
ブルース「だが、それは……その場面には、直結しうる」
ブーディカ「だったら、尚更だよ。最初から全部分かってる奴なんて居ないんだし、肩の力を抜いて……今の状況をジョークで笑い飛ばすとかさ」
ブルース「……四面楚歌だ」
ブーディカ「……それジョークじゃないし、笑い飛ばせてもないよね?」
ブルース「……」
35: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:46:37.61 ID:dv7Fg3X90
ブーディカ「ま、最初からうまくいくなんて思ってないけど……」
ブルース「……すまない。ジョークはあまり得意な方では無い。ふざけたプレイボーイを演じる時は、アルフレッドと共に台本を用意していたりした」
ブーディカ「よく分かんないけど、諦めちゃ駄目だって。ちょっとずつうまくなるもんだから」
ブルース「……努力はする」
ブーディカ「そうそう、それが大事。……で、どうしたいのさ?」
ブルース「……ジョークを飛ばせる空気を作る」
36: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:47:06.64 ID:dv7Fg3X90
………………
職員B「……うーん、つっかれた……」
職員C「気ィ抜くな、時代特定はまだ終わってないぞ」
職員B「うん……肩がこるな~」
職員A「……照明を少し強くするぞ」パッ
電灯「」パッ
ブルース「……」パッ
職員達「「「!!?!??」」」ビックゥゥゥゥゥ
37: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:47:34.76 ID:dv7Fg3X90
職員B「ぶゅっ、ぶほっ、ブルースさん!? いつからそこに!?」
ブルース「……かなり前から居た」
職員C「かか、かなり前!? 全然気づかなかったんですが!?」
ブルース「部屋が暗かったからだ」
職員A「そっ、それにしては……アサシンみたいな気配の殺し方でしたけど……」
ブルース「……私の癖だ。謝る」
38: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:48:01.14 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……謝らなければならないのは、それだけではない。前の特異点では、迷惑をかけた」
職員C「……! そんな事……無いっすよ! 全然、なあ!?」チラ
職員B「そ、そうです! サポートが私達の仕事ですし!」ブンブン
職員A「はい。気にする事はないですよ」コクリ
ブルース「……だが、少しでも君達に頼るべきだった。私は少し、結論を逸った」
職員C「そ……それは……」
39: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:49:06.54 ID:dv7Fg3X90
職員A「……まだ、そう思ってくれてるんだったら。次は俺達を頼って下さい、ブルースさん」
職員B「そ、そうです! 非力で、前線にも出て行けない私達ですけど……でも、私達はひとつです! ひとりで分からない事も、皆で考えたら解決できます!」
ブルース「……ありがとう。すまない」
職員C「謝らないで下さい! 次は俺達、ブルースさんにも切られないような強力な通信を用意します!」
ブルース「それは……」
(((肩の力を抜いて。ジョーク)))
ブルース「……耳が痛い話だ」
職員C「……は、はは」
職員B「う、うふふ……」
職員A「……ぷっ……」プルプル
ブルース(よし)
職員A(あの黒いスーツの耳って、何処なんだろうな……)プルプル
………………
ブーディカ(あ~……ブルースのジョーク作戦上手く行ってるのかな……すっごい不安……)
40: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:49:40.05 ID:dv7Fg3X90
………………
レオナルド「……」カチッ、キュィィィィィィィン
レオナルド「……ふむ、断熱的な観点から見たら悪くないな。けど、防御力は……」
レオナルド「……う~ん、強化したブレーサーも壊されるくらい激しい戦いだしなぁ……いっそ魔法コーティングの素材で、重くとも断熱と防御に割り振って……」
ブルース「……多少の寒さなら我慢できるが」
レオナルド「ん……そうだね。キミはやせ我慢が大好きなようだから」
ブルース「それに対しては、反論のパターンがいくつかある」
レオナルド「客観的な事実さ。工房へようこそ、ブルース」
41: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:50:12.44 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……昼間は、悪かった」
レオナルド「別に、いいさ。気にしていないからね」
ブルース「それでも」
レオナルド「……はあ、キミも思い込みの激しい……まあ良いか。頑固なのは知ってたし……良いよ、分かった。許すよ」
ブルース「……ありがとう」
42: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:50:46.62 ID:dv7Fg3X90
レオナルド「で、どうしたのさ? 急に来たけど」
ブルース「……」
レオナルド「……?」
ブルース「謝りたかった。前回の特異点での行動を」
レオナルド「……ああ、その事か。まあ、エンジニアとしては言う事はないさ。キミは無事で帰って来たし、スーツもボロボロだけど大方無事。さあ次の仕事にとりかかろう、ってなもんだ」
ブルース「……」
レオナルド「……エンジニアとしては、ね。私個人なら話は別だ」
43: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:51:15.19 ID:dv7Fg3X90
レオナルド「まったく、聖杯持ちサーヴァントの前に立ちはだかるわ、マシュを庇って崩壊に巻き込まれるわ、時流の中から帰って来たと思ったら死ぬほど落ち込んでるわ……」
ブルース「……」
レオナルド「……挙句の果てに、こちらには何の説明もないと来た。別に説明をしろとは言わないが、こちらの気持ちだって考えて欲しいものだ」
ブルース「……すまない」
レオナルド「……いいよ、責めてもどうにもならないからね。元々レイシフトは危険極まりないものだ。まかり間違えば死ぬ、それも理解してた」
ブルース「……」
レオナルド「……でもね、ブルース。犠牲の上に立つのだって、辛いものだよ」
ブルース「……肝に銘じておく」
44: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:51:42.84 ID:dv7Fg3X90
レオナルド「うん。……あーあ、そうは言ってもこれからも死線続きなんだろうなぁ」
ブルース「こちらもやわではない」
レオナルド「だから心配なんだって」
ブルース「……頼りにしているぞ、エンジニア」
レオナルド「私の胃痛が倍増するからやめてくれないかなー!」
45: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:52:13.63 ID:dv7Fg3X90
………………
所長「……」
ブルース「……」
所長「……」
ブルース「……」
所長「……」
ブルース「……」
所長「な に か ? 」
ブルース「……」
ブルース(……かなり怒っている)
46: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:52:52.95 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……昼間は、悪かった」
所長「……」
ブルース「……前の特異点でも」
所長「……」
ブルース「……冬木でも。誰の気持ちも考えない行動をとっていた」
所長「……はぁ……」
47: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:53:20.06 ID:dv7Fg3X90
所長「……こっちこそ、悪かったわね。色々、空気を悪くして……私も、まだまだ甘かったわ」
ブルース「……」
所長「計算と慎重さ。確かにそれは重要ね、ブルース。アンタに言われた事、ずっと考えて……それで、割り切ろうとしてた」
ブルース「……」
所長「……でもね、ブルース。やっぱり無理。私が所長の器じゃないっていうのもあるだろうけど、アンタが……アンタ達が死ぬの、耐えられないわ」
ブルース「……」
48: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:53:58.94 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……必ず、皆を生きたまま連れて帰る。約束する」
所長「……アンタはそう言ったら、絶対にするものね。でも……アンタも、生きて帰って来ないと駄目なのよ?」
ブルース「……ああ、勿論だ。誓う」
所長「…………そう。なら、良いわ」
ブルース「……」
所長「……ブルース」
ブルース「……」
所長「……ごめんなさい」
49: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:54:34.40 ID:dv7Fg3X90
………………
ブルース「マシュ」
マシュ「……すみません、今忙しくて……」タッタッ
ブルース「……」
【キッチン】
ブルース「マシュ」
マシュ「すみません、後で……今忙しくて」タッタッ
ブルース「……」
ブルース(なら、マシュの分の仕事を事前に全て終える)ピッピッ
プルルル、プルルル
ブーディカ『はーい、もしもし?』
ブルース「手伝いが欲しい」
50: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:55:25.19 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……」ズダダダダダダダダダダ……
ブーディカ「うーん……文面が難しいなぁ」サッサッサッ
ブルース(この書類はこちらの棚。このハンコはここへ。あれの関連書類はE-0121の引き出しの赤いフォルダーに挟まっていたハズ。あの事象の参考文献はこの棚)ズダダダダダダダダダダ……
職員A「あの、TP現象についての書類を……」
ブルース「これだ」
職員B「機材の稼働に関しての許可書を……」
ブルース「これを」
職員C「シバのレンズ……」
ブルース「レンズの角度調整は既に終わっている。焦点の調整を」
職員C「あっ、はい」
ブーディカ「うーん……このハンコどこだっけ?」キョロキョロ
ブルース「これだ」
ズダダダダダダダダダダ……
ドクター「……ぶ、ブルースくん、今日はやけに気合が入ってるね?」
レオナルド「やる気があるのは良い事だ。よしよし、これで次のレイシフト先の特定も進みそうだね」
ブルース「……」ズダダダダダダダダダダ……
マシュ「おはようございます」ウィーン
ブルース「……」ズダダダダダダダダダダ……‼
AI『特異点の特定を完了。モニターに表示します』
マシュ「え……」
ドクター「うっそ、はやすぎない……?」
レオナルド「う~ん、三日分の仕事だったはずだが……」
51: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:56:10.64 ID:dv7Fg3X90
所長「……お、終わったみたいね」
ブルース「……」シュゥゥゥゥゥゥ……
所長「ちょ、丁度良いからここでミーティングを開きましょう。全員、居るかしら?」
職員達「「「はい!!」」」
ブーディカ「はいはいっ」
ドクター「はい!」
レオナルド「はいな」
マシュ「……はい」
52: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:57:13.07 ID:dv7Fg3X90
ガガガガガガガガ……ピラッ
所長「……解析結果によると、今回のレイシフト先は16世紀後半。座標は……ヨーロッパ、大西洋辺りの海洋です」ペラッ
ブルース「……」
ブルース(……これで、マシュと少しは落ち着いて話が出来るか?)
マシュ「……」
53: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:58:05.75 ID:dv7Fg3X90
所長「観測結果によると、恐らく今回のレイシフトも過酷なものになります。ロマニ、レイシフト組の健康状態は?」
ドクター「両名ともに良好です。ただ、今回のレイシフト先は……海洋だという事で、湿気と潮風によるブルースくんへの健康状態への影響が懸念されます」
所長「……レオナルド、どうにかできる?」
レオナルド「対策済みだ。スーツの素材は断熱性と保温性に優れたものを採用し、乾燥機能もバッチリ。スーツの構造に圧縮した空気の層を作った事により、海水に浮く事も可能になった」
所長「流石ね。ではレイシフト組は解散とします。十分休んで頂戴」
マシュ「……」スクッ
ブルース(……)
ブルース「……」スクッ
ブーディカ「あっ、ちょっ」スクッ
54: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:58:31.89 ID:dv7Fg3X90
………………
マシュ「……」スタスタ
ブルース「……マシュ、待ってくれ。話がしたい」
マシュ「……」ピタッ……クルッ
マシュ「……はい、なんでしょう?」ニコリ
55: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:59:01.27 ID:dv7Fg3X90
ブルース「……前回の特異点での事を……」
マシュ「はい。大丈夫です」
ブルース「……いや、大丈夫ではなく……」
ブーディカ「やっと追いついた……あ、取込み中だった?」
マシュ「いいえ、話なら終わったところです。失礼しますね、『ブルースさん』」スタスタ
ブルース「……!」
56: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:59:27.86 ID:dv7Fg3X90
ブーディカ「……あちゃあ、アレは相当……」
ブルース「…………」
ブーディカ「……ごめんね、アタシのタイミングも悪かったよね」
ブルース「……いや……責任は、私にある」
57: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/01(木) 23:59:54.22 ID:dv7Fg3X90
ブルース(……私の安易な自己犠牲が、彼女を追い詰めたのか……)
(((貴方をお守りするべきだったのに、私は死んでいた。私はきっと地獄へ堕ちるでしょうな)))
ブルース(……私は、考えられてすらいなかったのか。誰かを守りたいと願う者の、気持ちさえ……)
ブーディカ「……あのさ。仕方ないとは、言えないけど……」
58: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:00:22.93 ID:HOl6uqCb0
ブーディカ「……アンタの気持ち、アタシは分かるよ。守ろうとして、事態が悪くなるってのも理解できる。でも」
ブルース「……」
ブーディカ「でもアンタも、分かるでしょ? 記憶っていうのは、人の心をえぐり続ける一番むごいシロモノなんだ。だから、やっぱりアタシ達、やり方を変えないと駄目なんだ。生きてる人間として……これから先、ずっとあの子の記憶に残る命として」
ブルース「……そうか。いや……そうだな」
ブルース「……命として……」
ブルース(……やはり、計算づくでは……うまく、いかないか)
59: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:02:15.43 ID:HOl6uqCb0
………………
(((まさか。尊敬している)))
(((頼りにしている、エンジニア)))
(((必ず、皆を生きて連れて帰る。約束する)))
ブルース「……」
ブルース(……全て、計算から発した言葉だ。何も反省など出来ていない。何も変われてはいない。人間を計算し尽くし、その結果から出て来た言葉たちだ)
(((お前は怪物だ)))
ブルース(マシュには、計算から出た言葉が通用しない。彼女は……恐らく、私を見抜いている。私の言葉の底を見通している)
(((これは、私が私になるための……必要な、時間だ)))
ブルース(……そして、どうなった? 結果がこれだ。マシュの心はズタズタになり、私の言葉は届かない……)
ブルース(……計算と、理屈から出て来た言葉など……)
ブルース(……怪物には、相応しい末路なのかもしれないな……)
60: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:03:04.08 ID:HOl6uqCb0
ピピピピ‼ ピピピピ‼
ブルース「……」ムクリ
時計『07:00』
ブルース「……」
モゾ。モゾモゾ
フォウ「フォウ」
ブルース「……おはよう」スクッ
ピーンポーンパーンポーン
所長『おはよう、朝の七時よ。これより30分後から、第三回レイシフト前、最後のミーティングを開始します。遅れないように。良いわね』
61: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:04:00.94 ID:HOl6uqCb0
ブルース「……」スタスタ
フォウ「……」テクテク
マシュ「……」スタスタ……ピタッ
ブルース「……おはよう、マシュ」
フォウ「フォウ、フォーウ!」ピコピコ
マシュ「……」スタスタ
ブルース「……」
フォウ「フォウ……」シュン
ブーディカ「おっはよう! ……ってあれ?」
ブルース「……おはよう、ブーディカ」スタスタ
ブーディカ「ちょっと、なんで朝からそんな険しい顔……ちょっと」
62: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:04:34.50 ID:HOl6uqCb0
………………
所長「……以上が、今回のレイシフトにおける概要となります! 何か質問は?」
ブルース「……」
マシュ「……」
ブーディカ「……」ダラダラ
ブーディカ(この二人の間に座るの、キツイなぁ……)ダラダラ
所長「……あの、ブーディカ、大丈夫? 顔色が酷いけど」
ブーディカ「あ、うん……ヘーキ……」
マシュ「……」
ブルース「……」
ドクター(……二人とも、いつもはあんな感じじゃないよね?)ボソボソ
レオナルド(やっぱりうまくいってないみたいだね、これ……)ボソボソ
ドクター(どうしよ……)
レオナルド(私達はどうにも出来ない……けど、せめて見守らなきゃ)
63: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:05:25.75 ID:HOl6uqCb0
所長「それでは、レイシフト要員は九時までに準備を終わらせ、コフィンにスタンバイする事! 良いわね、以上!」
マシュ「……」スクッ、スタスタ……ガチャッ
ブルース「……」ジッ
ブーディカ「さ、さーて! アタシも準備しなきゃなー!」スタスタ
ブルース「……」スクッ
ドクター「……ごほん」カタカタ……
レオナルド「……ふぅ……」カタカタ……
カタカタ、カタ。カタカタ……
64: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:05:55.65 ID:HOl6uqCb0
ブルース「……」ガチャッ、ガチッ。ガキリ
ブルース「……」シュルッ、シュッ。シュバッ
マスク「」
ブルース「……」スッ
バットマン「……」
65: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:06:37.88 ID:HOl6uqCb0
………………
ドクター「時刻、08:58。ブルース・ウェイン、マシュ・キリエライト、ブーディカの三名がコフィンにスタンバイ完了」
職員A「存在証明式始動! 観測は順調!」
職員B「電子機器類に異常は認められません! AIによるウィルス検査もクリア!」
職員C「シバによる時代特定、良好! 16世紀後半の特異点をロック!」
所長「では……海洋へのレイシフト、カウントダウン開始!」
職員達「「「了解、カウントダウン開始!」」」
ドクター「……ああ、不安だ……二人の仲が」
レオナルド「そこはそれさ。割り切る部分はきっちりしなよ、私達はあくまでサポートなんだからね」
ドクター「うん、分かってるけど……うん、そうだね……」
レオナルド「……へたれるなよ、きっとうまくいくさ」
ドクター「……うん。よし、やらなきゃな」
66: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:07:03.15 ID:HOl6uqCb0
(((記憶ってのは、人の心をえぐり続ける、一番むごいシロモノなんだ)))
(((失礼しますね、『ブルースさん』)))
バットマン(……拒絶か)
ドクター『レイシフト10秒前! 9! 8! 7! 6! ……』
バットマン(……いや、諦めるわけにはいかない)
ドクター『3! 2! 1!』
バットマン「……」グッ
『0』
67: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:07:52.96 ID:HOl6uqCb0
………………
ザザァン……ザザァン……
???「ん~、あのBBAめ何処へ行ったのやら……」キョロキョロ
???2「キミがあそこで邪魔しなければ仕留められたんだけど?」
???3「メアリー、無理ですわ。虫には言葉なんて通じませんの」
メアリー「……キミは優し過ぎるよ、アン。銃で撃つとかしても良いのに」
アン「嫌です。銃が汚れます」
???「仮にもキャプテンなのにこの言われよう……でももっと言ってくだちい」デレデレ
メアリー&アン「……」サササ
???「うーん見事なドン引き! むしろ好きですぞ!」
68: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:08:19.05 ID:HOl6uqCb0
???「っとと、風が出て来たな。帆を張れェ、野郎どもォー!!!」
海賊たち「「「ウッス!!!」」」ザッ、ザッ
???「うんうん、やっぱり海の上と海賊が一番! あ、でもチミ達も一番だからね、デュフフフ……」
アン「……見ちゃ駄目ですわよ、目が腐ります」
メアリー「そうだね。早く船の中に戻ろう」
???「ちぇー、つれねえでやんの。……おーい、そこのデカいのも、いつまでも寝てねえで起きろよぅ」
???2「……グルルルル……」
69: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:09:16.11 ID:HOl6uqCb0
???2「……匂い」スンスン
???「あ? 匂いがどうしたってんだよ」
???2「匂いだ。知ってる匂いが来た……あっちだ」
???「……あっち? ほんとにござるかぁ?」
???2「オレを……疑うのか!」ドォッ‼
???「あっいえ、この黒髭の名誉にかけて疑ったりしませんとも。野郎ども、あっちだあっち。あっちに舵を取れ」
???2「……グルルル……」
黒髭「……にしても、疑ってるワケじゃねーけどよぅ。匂いで分かるってホント?」
???2「……嗅ぎ慣れた匂いだ。下水の中にも、散々漂ってきた匂いだ……」
70: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:10:16.14 ID:HOl6uqCb0
黒髭「下水……いよいよ人間離れしてやがるぜ、その見た目も生活も……」
???2「……オレはもう一度、寝る……」ノッシノッシ
黒髭「あ、おい。胸元のペンダント、外して行かねえのか? 潰れっちまうかもよ?」
???2「これは離さない。絶対に離さない」
黒髭「あ、そう……好きにしてちょ。えーと、きら……きらー……キラークラッシュさん?」
キラークロック「……オレは、キラークロックだ」
71: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:10:45.43 ID:HOl6uqCb0
第三章
封鎖終局四海 オケアノス
73: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/02(金) 00:17:50.40 ID:HOl6uqCb0
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%AD%E3%A9%E3%BC%E3%BB%E3%AF%E3%AD%E3%83%E3%AF
今回の悪役の参考資料です。
https://www20.atwiki.jp/nijiame/
以前どなたか紹介して下さったこちらのサイトもとても良い感じです。【DC】の【キャラクターBios】のカ行に紹介が収納されているかと思いますので、読んでいただけるともっと楽しめると思います。
今回の悪役の参考資料です。
https://www20.atwiki.jp/nijiame/
以前どなたか紹介して下さったこちらのサイトもとても良い感じです。【DC】の【キャラクターBios】のカ行に紹介が収納されているかと思いますので、読んでいただけるともっと楽しめると思います。
85: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 20:56:46.02 ID:TnYdpgrB0
海賊「ふんふんふふ~ん♪ 海の上にゃならず者が似合う~……」
女海賊「うるさいよ、ボンベ! 歌ってる暇があったら舵取りに集中しな、さっきから向かってる先がブレブレじゃないのさ!」
ボンベ「うへぇ……でもいい歌でしょ、ドレイクの姉御ォ? こう、海賊の哀愁が漂ってるっつーか……」
ドレイク「フン、陸の詩人にアテられっちまったのかい? 哀愁なんて二の次で良いじゃないのさ、島に戻りゃあ逃げきれた祝いに酒宴だよ!」
ボンベ「アイアイサー! おっしゃあ、向かう先を定めて……おやぁ?」
ドレイク「……今度は何だい?」
ボンベ「いや、姉御。アレ、アレ」
ドレイク「あン?」ジッ……
86: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 20:57:43.75 ID:TnYdpgrB0
ギュ……ギュイ……ギュイィィィィィ……
ボンベ「なんだありゃあ、甲板の上の空気が歪んでるみてえに見えますが」
ドレイク「……総員戦闘態勢! こないだ戦った髭みたいなのが来るかもしれないよ、注意しな!」
海賊達「「「ウッス!!!!」」」ザザザッ
ボンベ「え、ええぇ!? 舵取りはどうします!?」
ドレイク「離すんじゃないよ、アタシ達で片付ける!」
ボンベ「んな無茶な!」
87: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 20:58:24.03 ID:TnYdpgrB0
………………
ギュォォォォォォォォォォッ‼
バットマン「ぐっ」ドサッ
マシュ「うっ」ドササッ
ブーディカ「おっとと……ってアレ? 陸?」スタッ
バットマン(……どういう事だ? 陸? 今回のレイシフトは海洋上に発生する可能性が高かったはず……いや、ここは)ムクリ
海賊達「「「……」」」ズラララララッ
バットマン(……甲板の、上……)
バットマン「……ドクター」
ドクター『……ごめん』
バットマン「構えろ! 海賊船の上にレイシフトしたぞ!」
マシュ「くっ……」スッ
ブーディカ「ええ~……いっつもこんな感じなの……?」スッ
88: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 20:59:02.82 ID:TnYdpgrB0
マシュ「はあっ!」シュドッ‼
海賊A「うぎゃ!?」ドサッ
バットマン「ふっ!」シュッ
海賊B「いっ……うお!?」グルンッ、ドッサァ‼
ブーディカ「そぉらっ!」ガギィィン‼
海賊C「おお! ●●●●でか……」
ブーディカ「フンッ!」ドッシャア‼
海賊C「ひぃ!?」ドサッ
海賊D「な、なんだこいつら!?」
海賊E「ま、またバケモンだ……こんなの勝てねえよ!」
89: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 20:59:49.31 ID:TnYdpgrB0
バットマン(このまま制圧できるか……?)
女海賊「フッ!」シュタッ
バットマン「!!」ズザッ
女海賊「……いきなり乗り込んできて派手に暴れてくれるじゃないのさ。何が目的だい?」
バットマン「……お前達のような小悪党に話す目的など持ち合わせていない」ジリッ
女海賊「へえ! 面白いじゃないか、このフランシス・ドレイクに向かって……小悪党だって?」ギロリ
バットマン(フランシス・ドレイク。世界一周を達成した初のイングランド人であり、スペインの無敵艦隊を破った軍略家でもある……だがその実態は、国家公認の私掠船船長。海賊の頭だ)
バットマン「……」
ブーディカ「……ちょっとブルース、煽ったのは不味かったんじゃない……?」
ドレイク「それじゃあ一発ぶちかましてやるよ! 小悪党の力を思い知りなァ!」カチャッ
90: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:00:40.26 ID:TnYdpgrB0
ドレイク「オラッ!」パァン‼
バットマン「くっ……」バッ
海賊D「ヒャッハー!」ブゥン‼
海賊E「姐さんが戦うなら怖えモンはねえぜ!!」ブォン‼
ブーディカ「ほっ」ガギィィン‼
マシュ「はっ!」ドシュッ
海賊F「んげぇっ!?」ドサッ
ボンベ「とったりぃぃぃぃぃぃ!!」ヒュンッ‼
マシュ「!? しまっ……」
ガギィィィィィィィ‼
バットマン「……無事か、マシュ!」ギリギリギリギリ
マシュ「……!!」
(((さらばだ。マシュ)))
91: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:01:10.50 ID:TnYdpgrB0
マシュ「……やめてくださいっ!!!」バッ
バットマン「っ」ドサッ
ボンベ「……え? あれ?」オロオロ
海賊G「へっ……?」
ドレイク「オラぼさっとすんな! チャンスだよ!」
海賊達「「「お、おお……?」」」
ブーディカ「ちょっと! 仲間割れしてる場合じゃないでしょ!?」ヒュンッ
ドレイク「チィッ、アンタは特別厄介だねえ!」パァンパァン‼
ブーディカ「っ」ギャギィン‼
92: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:01:43.50 ID:TnYdpgrB0
ドレイク「あとボンベェ! アンタ舵から手ェ離すなって言ったのに何やってんだい!!」
ボンベ「すんません! でも我慢できませんっした!」
ドレイク「後で船底掃除だよ! 隅から隅まで掃除しとけ!」
ボンベ「ええ~!? そりゃないっすよぉ!?」
海賊達「「「はははははは!!!」」」
バットマン(……あちら側の戦意、雰囲気は最高に近い。こちらは……)スクッ
マシュ「……」
ブーディカ「……やるよ、反撃する」
バットマン「……ああ」
バットマン(……前の特異点のツケが回ってきたか……)
93: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:02:14.97 ID:TnYdpgrB0
バットマン「ドクター。フランシス・ドレイクと遭遇、交戦中だ。彼女はサーヴァントなのか?」
ドクター『ちょっと待って、解析中……アレ、おかしいな? センサーが故障してる……?』
バットマン「……?」
ドクター『ご、ごめん! 解析が正常にできそうにない、センサーの異常としか思えない……』
バットマン「……了解した」
ドレイク「なんだい、敵を前によそみかい!?」パァン‼
バットマン「フッ!」シュポッガシッ、ギュルギュルギュルギュルッ
94: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:02:43.30 ID:TnYdpgrB0
ドレイク「チッ、マストの上に……任せるよ、アンタ達!」
海賊達「「「ウッス!!」」」ヨジヨジ
バットマン(……跳躍で追って来ないところを見ると、彼女はサーヴァントではない可能性が高い)
ザザァン……ザザァン……
バットマン「……? アレは……」
95: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:03:18.27 ID:TnYdpgrB0
マシュ「やあっ!!」ギャァン‼
海賊J「うぐ……!?」ドシャッ
ドレイク「ったく何なんだい、アンタ達ってのはいきなり出て来て襲い掛かってくるねえ! 髭の奴等と言い、そこらの海賊よりタチが悪いよ!」パァン‼
ブーディカ「くっ……髭のヤツラ?」ギャァン‼
ドレイク「? アンタ達、アイツらの仲間じゃ……」
バットマン「注意しろ! 別の海賊船が来るぞ!」
ドレイク「ああん!?」
海賊K「あ、姉御! マジです、向こうから……『黒髭』の旗が来ます!」
マシュ「……?」
96: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:03:54.17 ID:TnYdpgrB0
ドレイク「ったくこのクソ忙しい時に……ホントじゃないか! ボンベ、面舵一杯! 全速でこの海域から離れるよ!」
ボンベ「アイアイサー!」ガシッ
グラグラッ
ボンベ「……!? あ、姉御、舵がききやせん! そ、それに進められてません!」
ドレイク「なんだって!? なんでまた……」
バットマン「……?」
バットマン(この揺れ……船の下に、何か居る……巨大な力を持つ、何かが)
97: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:04:29.97 ID:TnYdpgrB0
ザザァン……ザザァン……
黒髭「フッフーンwwwwwwキラークロック殿の鼻に間違いは無かったですな、とうとうBBAを追い詰めましたぞwwwww」
???「どうする、俺も出るかい?」
黒髭「あっいえ、先生が出るまでもないですぞ。オラァ野郎ども、全砲門開け! 砲火準備ィ!!」
海賊達「「「ヒャッハー!!」」」ガパリ、ガパパパパパパパ……
98: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:05:10.72 ID:TnYdpgrB0
ドタドタ、ギャリィン‼ ヤベエゾ‼ ヨウイシロー‼
マシュ「フッ!」シュドッ‼
海賊L「おぐっ!?」ドッシャア‼
ドレイク「チッ……手の空いてる奴等は大砲に回りな! 来るよ!」パァン‼
ブーディカ「ブルース! どうすんのさ!?」ギャガァン‼
バットマン「待て……フッ!」ドガッ
海賊K「おわあああああああ!?」ヒュゥゥゥゥ……ドサッ
バットマン「ドクター、センサーはどうだ」
ドクター『……よし、解析完了! あちらの船からはサーヴァント反応が複数!』
バットマン(……という事は、あちらが人理を乱す側なのか?)
ドクター『……ブルースくん、センサーの故障かと思ったが、これも報告する!』
バットマン「何だ」
ドクター『キミ達が乗っている船の下にも、サーヴァント反応がある!! それが船の進行を止めている!!』
バットマン「船を……止めている……?」
99: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:05:53.15 ID:TnYdpgrB0
ドドドォン……
ドッガァァァァァァァ‼
ボンベ「ちくしょう、撃ってきやがった!!」
ドレイク「負けてられるかい、撃ち返しな!」
ドドォン‼‼
ゴン、ボシャァ……
ボンベ「駄目です! 砲弾が装甲に弾かれて海に落ちちまいます!」
ドレイク「チィッ、やっぱり相手にならないねえ! まだ逃げられないのかい!?」
ボンベ「やっぱり駄目です、進めません!」
ドレイク「カーッ、なんてこったい!」
バッ、バサササササササ……スタッ
バットマン「……」ムクリ
ドレイク「……」
100: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:06:41.27 ID:TnYdpgrB0
ドドドドォン……ドッガァァァァァァァ‼ ドッガァァァァァァァ‼
バットマン「今は争っている場合ではない。手を貸せ」
ドレイク「へえ、言うねえ。さっきまで大喧嘩してた相手に手を貸すって?」
バットマン「……我々の間での争いは利にならないぞ」
ドレイク「…………どうだか。少なくともその眉間を撃ち抜きゃ、こっちはちょっとスッキリするかもね」チャキッ
バットマン「……」
ブーディカ「ブルース」
マシュ「…………」
バットマン「……」
(((逃げろマーサ、ブルース)))
バットマン「撃てばいい。それで解決するなら、そうしろ」
マシュ「……!」
ドレイク「……」カチャリ
バッシャァァァァァァァァァァ‼
???「グルルルルルルオアアアア!!」ドドッ‼
ドレイク「ちぃっ!?」ババッ
バットマン「!!」ジリリッ
バットマン(身体を覆う緑のウロコ、ワニじみた鋭い牙、2Mを超える巨体……!)
キラークロック「ヴォォォォォォォォアアアアアアア!! 見つけたぞ、バットマン!!!」ギラギラ
101: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:07:38.41 ID:TnYdpgrB0
バットマン「……船を止めていたのもお前か!」
キラークロック「軽い仕事だ……お前を半分に食い千切るのと同じくらいな!」ブォンッ‼
バットマン「っっ」バッ
シュッ
バットマン「っぐ……!?」ビュォッ、ドガァァァァ‼
バットマン(馬鹿な、掠っただけで……!)ドサッ、ゴロゴロ
マシュ「っ、ます……」
ブーディカ「ブルース!」バッ
ドレイク「ワケが分からないけど、あっちで争う分には勝手にさせとくんだ! それより逃げるんだよ!」
ボンベ「駄目です、もう船が接舷寸前です! じきに乗り込んで来やすぜ!」
ドレイク「……余計なモンは全部船から落とせ! ちょっとでも速力を上げるよ! それと、火薬のタルを全部持ってきな!」
ボンベ「アイアイサー!!」
102: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:09:11.69 ID:TnYdpgrB0
………………
黒髭「デュフフ、必死必死。野郎ども、休まず撃てぇい!」
メアリー「そろそろ乗り込みかい?」
黒髭「ん~……見た事ない猫コスプレのゴツイ男が居るから却下で。キラークロック殿にお任せして一旦様子見、それでも駄目なら我々の出番ですぞ」
アン「随分慎重ですわね?」
黒髭「グフフフ、キミ達を傷付けたくないからねwwwww」
メアリー「……」
黒髭「……それに、キラークロック氏って死なないし。オラ休むな! 撃て撃て撃てェい!!」
ドドォン‼ ドドォン‼
…………………
ブーディカ「っく!?」
キラークロック「退け、邪魔だ!」ドゴォン‼
ブーディカ「あぐっ……!?」ドッサァァァァァ
キラークロック「ウヴォォォォォォォォォォォオ!!! バットマン!!!」ドスドス
バットマン「……!」グ……プルプル、ドサッ
マシュ「……こっちです!」シュドッ
キラークロック「アァァァァァァァグゥゥゥゥゥゥ……」イライラ
海賊L「よっこらせ、よっこらせ……ありったけの火薬ダルですぜ!」ゴロゴロ
ドレイク「よし、左舷後方、下部に吊り下げなァ! いいかい、合図したら一斉に左舷後方の大砲を撃て! ボンベは舵につけ!」
ボンベ「左舷……つって、黒髭の船は右舷ですぜ!? どうするつもりですかい!?」
ドレイク「……イチかバチかだよ!」
ボンベ「……よっしゃあ! よく分かんねえ賭けは大好きだぜェ!」
103: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:10:18.20 ID:TnYdpgrB0
キラークロック「……邪魔だ!」ガガァッ
マシュ「……!」ゴン‼ ゴォン‼
キラークロック「ヴォオオオオオオオオ!」ブォンッ‼
マシュ「っきゃあ……!?」ガガッ、ヨロッ
キラークロック「捕まえたぞ、このまま握り潰してやる……!」ガシ、ギリギリギリギリ
マシュ「あ……あぐ……」ジタバタ
キラークロック「……グルルルルル……」ギリギリギリギリ
マシュ「あ……」ジタ……
キラークロック「……グルルルルゥ……」ギリギリギリギリ……
バットマン「ジョーンズ……やめろ!」ムク……
キラークロック「……! オレをその名で呼ぶな……!」
バットマン「彼女を放せ、ジョーンズ!」スチャッ‼
キラークロック「オレは! キラークロックだ!」
104: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:11:04.15 ID:TnYdpgrB0
マシュ(! 力が弱まって……! これなら!)ググッ‼
バットマン「シッ!」ヒュォンッ‼
バットラング「」ヒュォォォォォンッ
キラークロック「チィッ!」バッ
マシュ「っ」ドサッ
バットマン「無事か!」
マシュ「げほっ、ごほっ……」
キラークロック「……バットマン……!」
105: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:11:43.98 ID:TnYdpgrB0
黒髭「ん~? ……向こうの船の動きが奇妙ですなぁ。オイ、キラークロックは避けて撃てよ?」
海賊達「「「ウッス!!!」」」
黒髭「むむぅ、何か妙な雰囲気ですなぁ……いや~な予感。さっさとケリ付けちゃうか。乗り込み準備を整えろ!」
??「どうする? おじさんも出ようか?」
黒髭「いえいえ、まさか。お手を煩わせるまでもないでござるぞ」
106: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:12:23.63 ID:TnYdpgrB0
ドレイク「今だ! 取り舵いっぱァァァァァァいィ!!!」
ボンベ「アイアイサー!」ガラガラガラガラッ
グォォォォォォォォォォン……!
ドレイク「左舷後方の砲、撃てーーーー!!」
ドドドドォォォォン‼
グラグラッ、グォォォォッ‼
ドレイク「……ここだ!」パァン‼
火薬樽「」ドゴォォォォォォォォォォン‼
グィィィィィィィッ、ザザザザザザァァァァン‼
ドレイク「左舷のイカリ降ろせー!! ターンだ!」
ガギギギギギギギギギ‼
グォンッ
バットマン「うぐっ……!?」ゴロゴロッ
キラークロック「!?」ヨロッ
ドドォン……
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ‼
マシュ「!!」
マシュ(砲弾が……駄目、直撃してくる)
バットマン(マシュが……!)
キラークロック(……!)
107: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:13:16.01 ID:TnYdpgrB0
バッ、ドゴォォォォォォォォッ‼
キラークロック「ガァァァァァァァァァっ……」ボッシャァァァァァン
マシュ「きゃ……!?」バシャァァァァァァン……
バットマン「っ、マシュ!」バッ
バットマン(しまった、マシュが落ちた……いや、キラークロックが砲弾から庇った……!? どういう事だ……!?)
バットマン(……混乱せず、落ち着け。切り替えろ。今すべき事は何だ……!)
バットマン「……」ガバッ
バットマン(……マシュの姿は見えない。海面だけ……飛び込むか? いや、それは……駄目だ、しかし……)
(((怪物め)))
(((お前は怪物だ)))
バットマン「……!!」ギリィ
ブーディカ「ブルース! ブルースってば!」
108: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:14:10.12 ID:TnYdpgrB0
バットマン「……」クル
ブーディカ「ちょっと、不味いよ……」ジリジリ
海賊達「「「……」」」ジリジリジリッ
ドレイク「……さあ、さあ。もう逃亡完遂は目前だけど、アンタ達はどうしてやろうかねえ」
バットマン「……」
ブーディカ「……」
109: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/06(火) 21:14:50.36 ID:TnYdpgrB0
………………
黒髭「ちぇー、完全に勝ったつもりで居たのになァ。あんだけ近寄った状態で強引にUターンとか、ちょっと予想できねーし……」
黒髭「……それに、キラークロック殿には悪い事したでござるなぁ。あの砲弾が当たるとは……」
黒髭(……いや、当たる軌道じゃねえよなァ、アレは。明らかに、キラークロックは庇った……あの少女を)
黒髭「……ちぇー、分かんねえなーもー」
???「……こりゃ、参ったねえ。俺も出るべきだったよなぁ、すまんすまん」ポリポリ
黒髭「あーいえ、先生に出るな出るなっつってたのは拙者ですし。次は確実に仕留める、それだけですぞ」
???「……それ、何度か聞いたけど……」
黒髭「そうでしたかな? ふひひ、なら次こそ本当ですぞ」
???「……ま、次は俺に任せてね」スタスタ
黒髭「デュフフフフ……」
黒髭(……ち、やっぱ誤魔化すのにも限度があるよなァ。流石はギリシャの大英雄、ヘクトール様だぜ)
黒髭「……ふんふふんふふ~んっと」
129: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:15:23.29 ID:U9kyoBCq0
ピチャン……ピチャッ……
「はあ……はあ……くっ……」
「だい、じょうぶ? えう、りゅあれ」
「っ……ええ、私は平気よ。……貴方こそ、平気なの?」
「ぼくは、かいぶつだから。どれだけ、やられても、へいきだから」
「……馬鹿ね」
130: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:15:51.46 ID:U9kyoBCq0
………………
ザザァン……ザザァン……
マシュ「……」ピク
マシュ「う……うぅ……」ムク
マシュ(ここは……砂浜……小さい、島?)
ドス、ドス……
キラークロック「……起きたか、しぶとい奴だ」
131: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:16:20.44 ID:U9kyoBCq0
マシュ「……! 貴方は……!」スクッ
キラークロック「フン、いきなり立ち上がれるなら大丈夫だな。勝手にしてろ」
マシュ「……? まさか、貴方……」
マシュ(助けて、くれた……? そういえば、あの時も、砲弾から……なんで……?)
132: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:17:01.51 ID:U9kyoBCq0
キラークロック「何だ」
マシュ「何で、助けたんですか。私達は敵同士のはずです」
キラークロック「……知るか」
マシュ「し、知るか?」
キラークロック「知るか。いいか、お前はいちいち行動に『ああだ、こうだ』って理由を付けてるのか? 違うだろう」
マシュ「でも……!」
キラークロック「……」イラッ
133: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:17:29.88 ID:U9kyoBCq0
キラークロック「いいか、オレが助けたいと思ったから助けたんだ。だったら……黙って助けられてろ!」
マシュ「な……なんてひどい理由ですか! そんな計画性のない……!」
キラークロック「お前が目の前で死にそうだったのが悪いんだろうが!」
マシュ「それは……放っておけばいいじゃないですか! なんで皆、私なんかを……!」
キラークロック「思い上がるな! 誰がお前なんかのために!」
マシュ「そ、それは矛盾があります!」
キラークロック「オレの気分が悪くなるから、オレのために助けたんだ! 良いから黙ってろ!」
マシュ「なっ、だ、黙りません!」
キラークロック「グルルルルルルルル……!」
マシュ「ぐぬぬぬぬ……!」
134: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:17:56.93 ID:U9kyoBCq0
キラークロック「……」ザリ、ザリ
マシュ「……何をしているんですか」
キラークロック「この線からこっちは、オレの領域だ。入ってくるな」
マシュ「な……横暴です! 広すぎます!」
キラークロック「命の恩人だぞ!」
マシュ「自分のために助けたんでしょう!?」
キラークロック「グルァァァァァァ!! 頭と口ばかり回る小娘め!」
マシュ「く、口だけではありません! なんなら腕っぷしも……!」
キュルルルルルルル……
マシュ「あ……」
キラークロック「……」
マシュ「……///」カァァァァァ
マシュ(お腹、減りました……)
135: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:18:25.74 ID:U9kyoBCq0
キラークロック「……助けない。自分で何とかしろ」
マシュ「元からそのつもりです。余計な心配です」スタスタ
キラークロック「フン……」
キラークロック(……なんでオレは、あんな小娘を助けたんだ……)ジャラリ
ペンダント「」パカッ
キラークロック(……チッ、このペンダントの写真の小娘に似てる、とかなら自分でも納得がいくのに……かけらも面影がねえ……なんで助けたんだ、オレは……)イライラ
キラークロック「……」
キラークロック(……オレは……この写真の小娘の事も、ちゃんと覚えていないのに……なんで助けようと思ったんだ……)
136: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:19:08.62 ID:U9kyoBCq0
………………
ピチャン……ピチャッ……
バットマン「……ブーディカ。起きているか」
ブーディカ「は~い、お姉さんは元気ですよ」ヒラヒラ
バットマン「ドクター、アレから何日経過した?」
ドクター『キミ達が船底に拘束されてから三日。健康状態は……うん、下降気味だな……そろそろ陽光を浴びた方が良い』
バットマン「マシュはどうしている?」
ドクター『……無事だ。いや、あちらの……「黒髭」側の、ワニみたいな人と一緒に居るが、今のところはうまくやっているようだ』
バットマン「……キラークロックと……」
バットマン(……今すぐマシュを迎えに行きたいところだが、拘束されている身ではそうもいかない。……さて、どうしたものか)
ガチャッ
ボンベ「ウーッス、掃除の時間だぜぇー。ブーディカ姉さん元気ぃ?」
ブーディカ「あ、ボンベじゃん。いらっしゃい」
バットマン「……」
137: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:19:35.73 ID:U9kyoBCq0
ボンベ「ったくよォー、ドレイクの姐御も人づかいが荒れえっつうかよー」ゴシゴシ
ブーディカ「大変だねぇ。ほれ、ちょっとモップ貸しなよ。牢屋から手の届くところは手伝うよ?」
ボンベ「えぇ~、ホントに? そんじゃあ頼みますぜ、船底も結構広くてさぁ」
ブーディカ「はいはい、っと。それじゃあやってこうか」ゴシゴシ
ボンベ「あいよーっと」ゴシゴシ
バットマン「……」
138: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:20:15.74 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……訊きたいことがある」
ボンベ「あん? なんだよ」ゴシゴシ
バットマン「……黒髭の、あの船。あの装甲は分厚いのか?」
ボンベ「あ~? あ~……いや、黒髭んとこの船はそうでもねえハズだぜ。だってあれほどの速力を常に維持できるんだ、あんまり分厚いと重くなるしな」ゴシゴシ
バットマン「……」
ボンベ「……うん? でもそうなると、おかしいな。俺達の砲弾を弾くくらいの装甲はあるハズ、なのになぁ……?」ピタッ
バットマン「……」
139: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:20:44.77 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……ドクター。あの時、レーダーに映っていた反応を……故障と思しきものまで、全て報告してほしい」
ドクター『え? ……了解。あの時映っていたのは……』
バットマン「……」
ドクター『……黒髭の「船」全体からの、異常な魔力反応。キミ達の船の下のキラークロック。そしてキャプテン・ドレイクからの魔力反応だ』
バットマン「……」
バットマン(船全体からの魔力反応……いや、しかし、恐らくは……)
バットマン「……ヤツの船そのものが、宝具という可能性が……」
ドクター『……成程、確かにそう考えれば辻褄は合う。異常に強固だった船の装甲、そしてあの速力にも説明がつく』
140: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:22:03.42 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……しかし、ドレイクからの魔力反応? 彼女はサーヴァントでは……」
ドクター『うん、これが故障かと思った一番の原因なんだけど……彼女から聖杯反応があったんだ』
バットマン「聖杯?」
ドクター『うん。でも、彼女以外にも聖杯反応があるから……観測結果が正しければ、この世界には二つの聖杯が存在することになる』
バットマン「……」
ピチャン……ピチャッ……
141: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:22:29.58 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……ボンベ。ドレイクは聖杯を持っているのか?」
ボンベ「聖杯ィ? なんだそりゃ」ゴシゴシ
バットマン「……輝く盃のようなものだ」
ボンベ「ああ、アレか! こないだ『ポセイドン』とかいう髭面のおっさんを倒して手に入れたんだ、すげえ戦利品だぜ!」
バットマン「……という事は……」
バットマン(……という事は、ドレイクが所持している聖杯は……この時代に元々存在するモノか)
142: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:22:55.88 ID:U9kyoBCq0
ボンベ「アレを使えば、たちどころに飯やら酒やらが湧いて出る! どういうカラクリかは知らねえが、楽しけりゃあ問題ナシってモンよぉ!」ゴシゴシ
バットマン「……ふ、道理で牢に運んで来る食事の質も良いわけだ」
ボンベ「へっ、毎日似たようなモンでわりぃなぁ。おっとと、この穴も浸水しそう。釘と板持って来ねえと」バシャバシャ
バットマン「……」
143: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:23:21.29 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……ところで、この船は何処へ向かっている?」
ボンベ「あぁ、今は海賊島っつうトコに向かってんだ。海賊ばっか集まる島で、名前も海賊島! 分かりやすいだろ?」
バットマン「……」
ボンベ「……そんな分かりやすく嫌そうな顔すんなよ。ホラ、海賊っつっても気のいい悪党が多いし。何より資材やら飯やらがいっぱいある! 女も居る! 最高だぜ!」
バットマン「……」
ボンベ「……ご、ごほん。まあ、そういう事だから。下船できねえアンタらには関係ねえかもだけど、ちゃんと土産も持って帰っから安心しろよな」ガチャ、バタン
バットマン「……」
144: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:23:50.96 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……ドクター、マシュの……キラークロックの監視は頼む」
ドクター『ん……了解。何かあったらすぐ連絡する』
バットマン「有難う」
バットマン(……二度も両親を見殺しにしておいて……こうして心配する事も、おこがましいのかもしれないが……)
バットマン「……」
ブーディカ「ふぅっ! 掃除完了……ブルース? また凄い顔付きになってるけど」
バットマン「……問題ない」
ブーディカ「それはどうだろうね」
145: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:24:17.39 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……考えていた。自分が傷つけてしまった者を心配するのは、許されるのだろうかと」
ブーディカ「……キミ、いい加減すさまじい思考してるね。……そんなに難しく考える、普通?」
バットマン「……いや、問題はそれだけではない。私は……私である事によって、少なくない人間の人生を狂わせてきた。それが、今更……戻ろうなどと」
ブーディカ「……」
146: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:24:47.16 ID:U9kyoBCq0
ブーディカ「……アタシ、ローマでキミを裏切って殺そうとしたじゃん」
バットマン「……」
ブーディカ「権利で生きてる人間は居ないよ。大切なモノを守ろうとするから、人間なんだ」
バットマン「……すまない」
ブーディカ「うん……ごめんね。できれば二度と、言わせないでね」
147: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:25:15.92 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……」
バットマン(……権利で生きている人間は居ない、か……)
バットマン(私は、許可が要るのだと思っていた。人は他者の悪意から幸運で逃れ、生かされているのだと思っていた)
(((大人しくしねえから……馬鹿な連中だ!!)))
バットマン(……私は、間違っていたのだろうか。人には……私には、信じるに値する善性が残っているのだろうか)
148: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:25:47.59 ID:U9kyoBCq0
………………
焚火「」パチ、パチパチ……
マシュ「……」モグモグ
キラークロック「……」モグモグ
マシュ「……」モグモグ
キラークロック「……」モグ……ゴクリ。ポイッ
マシュ「……」モグモグ……ゴクリ
キラークロック「……」ザリ、ザリ、ザリ……
マシュ「……あの、聞いても良いですか」
キラークロック「……」ピタッ
149: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:26:24.29 ID:U9kyoBCq0
マシュ「その、ペンダント……」
ペンダント「」ジャラリ……
キラークロック「……」ジャラ……パカリ
少女の写真「」
キラークロック(……)
キラークロック「……知らねえ」
マシュ「……知らない?」
キラークロック「……覚えてねえ。多分、昔の事だ」
150: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:26:52.89 ID:U9kyoBCq0
マシュ「……大事なもの、なんですか?」
キラークロック「なんで気にする? 関係ねえだろうが」
マシュ「……ですが、その……寝ている時も、大切そうに握り締めていたので……少し、気になって……」
キラークロック「……分からねえ。大事なモノだと思う。オレにとっては、多分……」
マシュ「……」
キラークロック「……オレの体質だ。記憶がどんどん抜け落ちて、衝動にすり替わる。人間を忘れて、人間を食いたくなる。このガキの記憶は、オレの食欲と入れ替わっちまった」ジャラリ
キラークロック(……ああ、似てる。オレの外見を気にせず、ものを尋ねて来る、あの目に。だから、オレは助けたのか……おぼろげにしか、覚えてねえのに)
151: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:27:33.11 ID:U9kyoBCq0
(((……だから、いつか貴方が、皆にとってのかいぶつじゃなくなった時に)))
キラークロック「……」ジャラ……
マシュ「……すみません、無遠慮でしたよね」
キラークロック「……構わねえ」
マシュ「……」
152: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:28:15.07 ID:U9kyoBCq0
キラークロック「……お前は」
マシュ「……」
キラークロック「お前は、どう思う。全員に、やり直すチャンスがあると思うか?」
マシュ「……それは……」
キラークロック「人間として、どう生きていくかも忘れて……怪物として暮らして来た奴が、人間に戻れると思うか?」
マシュ「……」
153: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:28:53.28 ID:U9kyoBCq0
マシュ「私は……」
キラークロック「……」
マシュ「……ごめんなさい。分かりません」
キラークロック「……そうか」
マシュ「はい……」
キラークロック「……」
154: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:29:21.80 ID:U9kyoBCq0
マシュ「……でも、信じるのは自由だと思います。たとえ戻れるのが、どれだけ先の話だったとしても。きっと未来は、分からないから」
キラークロック「……」
マシュ「……きっと、そうなんだと思います」
キラークロック「……そうだな」
マシュ「はい」
キラークロック「……すまねえな」
マシュ「……いえ」
155: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:30:01.75 ID:U9kyoBCq0
マシュ「……」
マシュ(……マスターは……)
マシュ(マスターは、どうなんでしょうか……)
マシュ(……ご両親を目の前で二度も殺されて、それでも……戻れるのでしょうか)
キラークロック「……寝る」ノッシノッシ
マシュ「はい……おやすみなさい」
マシュ(私も……すべてを自分一人で抱え込んでいる事が、果たして正解なのでしょうか……)
(((さらばだ。マシュ)))
(((じゃあね、マシュ。元気で、ね)))
マシュ(……失う事を恐れて、誰かを遠ざけてしまう事は、間違っているのでしょうか……)
156: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:30:38.58 ID:U9kyoBCq0
通信機「」ピピー‼ ピピー‼
マシュ「……はい、ドクター」
ドクター『もしもし、マシュ。今日も無事に乗り切れたかい?』
マシュ「はい。今日も、無事でした。……その、マスターは」
ドクター『ああ、ブルースくんも無事だ。何か現状打破の策があるらしくてね、またブーディカと話してるよ』
マシュ「……そう、ですか……」
157: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:31:05.97 ID:U9kyoBCq0
(((……おとう、さん……おかあさん……)))
マシュ「……ドクター。聞いてほしい事が、あるんです」
ドクター『……うん、聞くよ。なんだい?』
158: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:31:57.24 ID:U9kyoBCq0
………………
ザザァン……ザザァン……ユラユラ……ピタッ
バットマン(……船の揺れが止まった。という事は……)
ガチャリッ
ボンベ「あいよー、ただいまこの船は海賊島に停泊中ですよっ、と。ブーディカ姉さん、なんか買って来てほしいモンある?」
ブーディカ「あ、着いたんだ。そうだなー……特には無いから、楽しんで来なよ」
ボンベ「ね、姉さん……なんて無欲ないい人なんだ……おまけに器量良しだし……」
ガチャッ
ドレイク「オラァボンベ! 降りる前なのに船底で何してるかと思ったら……捕虜にほだされてんじゃないよ馬鹿!」ゴツッ
ボンベ「いてー!? こっちの姐さんは粗雑で怖えしよぉ……」ブツブツ
ドレイク「……へえ、遺言はそれでいいかい?」ギロッ
ボンベ「スンマセンっした! 姐さんが一番っす!」
ドレイク「フン……」
159: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:32:50.47 ID:U9kyoBCq0
ドレイク「……アンタ達が逃げ出さないとも限らないからね。見張りをつけるよ」
海賊達「「「……」」」ゾロッ
ドレイク「ま、数日泊まってく予定だからね。陸のと少しずつ交代で見張りゃ、部下の不満も軽減できる」
バットマン「……ドレイク。話がある」
ドレイク「アタシが陸から戻った時に覚えてたら聞いてやるよ。それじゃあね、妙な真似すんじゃないよ!」スタスタ
バットマン「……」
160: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:33:17.06 ID:U9kyoBCq0
海賊A「あー、皆陸に行ってんのになんで見張りなんか……」
海賊B「ちょっとの辛抱だろ。これが終わりゃあ、陸にあがって大騒ぎだ。酒と肉、そんで女!」
海賊C「違いねえ、ふひひひ……」
ブーディカ「……」チラッ
バットマン「……」コクッ
ブーディカ「……」ハァ
161: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:33:54.43 ID:U9kyoBCq0
ブーディカ「……ねえ、皆……ちょっと、タノシイ事、しない?」
海賊A「あ?」クルッ
海賊B「何言ってんだ、ブーディカさん」
海賊C「ふ、ふひ……?」
ブーディカ「ほら、アタシも最近ずっと……楽しめてなかったからさあ。●●ってるんだよね」キュッ
海賊A「……おいおい、海賊相手にそれ言っちゃうのかよ姉さん!」
海賊B「へへへ、そういう事なら早く言えよ。俺達だって陸にあがれずに不満だったんだ、一緒に楽しもうぜ!!」
海賊C「ひひひー!! ふひひひ!!」
162: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:34:36.32 ID:U9kyoBCq0
ガチャガチャ、ガチャリ
海賊A「ほら、てめえらも入れって!」
海賊B「おじゃまするぜぇ、姉さん……」
海賊C「ふひひひひゅっ……」
ブーディカ「ふふ、焦らなくても……」
ブチィッ‼
ブーディカ「……全員相手にしてあげるよ」ハラハラ……
海賊A「……え? あれ?」
海賊B「……う、腕、しばってた、縄……」
海賊C「ふ……ひ?」
ガチャン、ギィィィィ……
スタ、スタ
バットマン「……この錠前はピッキングが容易なようだ。交換をすすめておく」ボキボキ
ブーディカ「だましてごめんね?」
海賊A「……へ?」
海賊B「どういう事?」
海賊C「……?」
ドゴォッ
163: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:35:28.02 ID:U9kyoBCq0
………………
バットマン「これはユーティリティベルト……見つけたぞ。ブーディカ、キミの武装だ」ガチャガチャ
ブーディカ「ありがとう。ふう、やっぱり盾と剣がなくちゃね!」ガチャリ
バットマン「……すこしのあいだとはいえ、先程はいやな役目を押しつけた。すまない」
ブーディカ「ああ、いいのいいの。ああいう視線には慣れてるし」
バットマン「……この後の作戦だが、やはりドレイクを追う」
ブーディカ「ホントに? この船、このまま頂いちゃったほうがいいんじゃない?」
バットマン「人手が足りない。それに、前の特異点と同じだとすると……敵が聖杯を所持している可能性がたかい。それなら、ドレイクの聖杯で対抗できる」
ブーディカ「なるほどね……よし、分かった。彼女を説得、って事になるかな?」
バットマン「……それを試みる」
164: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:36:27.65 ID:U9kyoBCq0
ギャァァァァァァァァァ……
バットマン「……!」
ブーディカ「今の悲鳴、島の方からだ」
バットマン「……いやな予感がする」
ブーディカ「うん、行こう!」
165: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:37:08.75 ID:U9kyoBCq0
………………
海賊D「クソッ、クソぉ! やっと陸にあがれたと思ったのに、なんだこのバケモン!?」
???「あああぁぁぁぁぁぁぁ!! しねっ、しねっ、しねえ!!」ブンブンッ‼
海賊D「うわぁっ!?」ドッサァ
海賊E「チクショウ、この……」
ドレイク「やめな! 危険だ、離れるよ!」
ボンベ「でも姐御ォ! こいつら海賊を……!」
???「フーッ、フーッ……!」ガシッ、ズルズル……
ボンベ「へ……? は、離せぇ! 助けてくれ! あそこには……あの迷宮には行きたくねえよぉ!!」ジタバタ
ドレイク「っ、ボンベ……」
ダダッ、ザザァ‼
バットマン「何が起きている」
ブーディカ「悲鳴が聞こえたよ、船長さん!」
ドレイク「なっ、アンタ達……」
166: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:37:57.41 ID:U9kyoBCq0
ドレイク「……どうもこうも、見ての通りさ。海賊島に寄ってみりゃ、見た事もない怪物が棲み付いてやがる。知らずに上陸して、奇襲を受けたんだ」
バットマン「……先程、誰かが引きずられて行ったな。あの……大きな、人工の建物の中に」
ドレイク「ボンベだ。あの馬鹿、油断しやがって……」
バットマン「……」
ドレイク「……それより、なんで外に居る? どうやって逃げ出したんだい?」
バットマン「……」
167: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:38:53.83 ID:U9kyoBCq0
ブーディカ「どうする、ブルース? あの建物……というか、迷宮。結構、めんどくさそうな雰囲気あるけど」
バットマン「……救出へ向かう」
ドレイク「ハァ? アンタ、何を……」
バットマン「救出へ向かう。ドクター、あの迷宮を解析してくれ」
ドクター『今やってみてる……アレはただの迷宮じゃないね。黒髭の船と同じく、全体からの異様な魔力反応。すなわち……』
バットマン「……迷宮が、宝具?」
バットマン(……迷宮にゆかりのある、史上の……すぐに思い浮かぶのはミノタウロスだが)
ドクター『あそこへ向かうのなら十分に注意してくれ。非常に危険だ。敵の手中へ飛び込むようなものだ』
バットマン「了解した。また連絡する」
168: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:39:26.16 ID:U9kyoBCq0
ドレイク「本気でやる気かい? アタシが言うのもなんだけど、無謀すぎるんじゃないのかい?」
バットマン「お前に恩を売れる」
ドレイク「……ハ、生意気言うねえ。でも、それでも、だ。アンタにはそれ以上の理由があると見るよ」
バットマン「……それは、話す意味がない」
バットマン(……キャプテン・ドレイク。自分では気付いていないかもしれないが、ボンベが攫われたと話す時のお前の表情は沈痛なものだった)
バットマン(……これは良い機会だ。私は自分の善性のためにどこまでやれるのか、それを知るチャンスだ)
169: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:40:00.02 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……行くぞ、ブーディカ」
ブーディカ「はいはい。それじゃ、行こうか」スタスタ
バットマン「……」スタスタ
ドレイク「……」
海賊E「姐御、どうします?」
ドレイク「……馬鹿野郎、まかせっきりにできるか。こっそりつけていくよ」
海賊達「「「あいあいさー!」」」
170: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:40:30.19 ID:U9kyoBCq0
………………
ピチャン……ピチャッ……
バットマン「……」ススス……
ブーディカ「……こりゃ、本当に迷宮だ。暗くて、じめじめしてて、入り組んでて……」コツ、コツ……
バットマン「血痕はこちらへ続いて……待て、止まれ」ピタッ
ブーディカ「……」スッ
ガサガサ、ドスドス……
???「くるな、かえれ!!」ワン、ワン、ワン……
バットマン「……」
171: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:41:03.27 ID:U9kyoBCq0
バットマン(迷宮の中、音が反響して……何処から声が発されている?)
???「かえれ! かえらないと、ころす!」ワン、ワン、ワン……
バットマン「……お前が海賊をさらったのか!」
???「こいつらは、えうりゅあれを、きずつけたから、ころす! この島のやつらは、みんなそうだ!」ワン、ワン、ワン……
バットマン「……エウリュアレ……」
バットマン(エウリュアレ……確か、ギリシャ神話の……前の特異点で会ったステンノの姉妹神だったハズだ。ならば、話が通じるかもしれない)
バットマン「話がしたい! 私達は戦いに来たのでは……」
???「だまれ!」グオッ
バットマン「っ」
ブーディカ「危ないッ!!」ガギィィィィィィン‼
172: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:41:30.63 ID:U9kyoBCq0
???「じゃま、するな!」ブンッ
ブーディカ「うっ!?」ズシャァァァ
バットマン「……!」
バットマン(キラークロックに勝るとも劣らない巨躯。頭から生えた巨大な角。手に持った巨大な斧。やはり、コイツは……)
バットマン「……ミノタウロスか!」
ミノタウロス?「うるさい!」ブンッ
バットマン「くっ!?」ババッ
バットマン(駄目だ、話が通じない……!)
173: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:42:01.01 ID:U9kyoBCq0
ブーディカ「く……なんだか、力が抜けて……」ヨロ
ミノタウロス?「うるぁぁあぁぁぁぁ!!」グオンッ
ブーディカ「あっぐぅ!?」ドッガァァァァァァン‼
バットマン「! ブーディカ!!」
ミノタウロス?「ああっ!!」ブォン‼
バットマン「ぐあっ!?」ギャリィ、ドシャァァァァ……
ドクター『不味いぞブルースくん! その迷宮は内部に迷い込んだ者の力を制限するようだ! このままじゃ、ブーディカもキミも……!』
174: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:42:33.98 ID:U9kyoBCq0
ミノタウロス?「……おまえ、つれていく。奥までつれていって、ころす」ガシ、ズルズル……
バットマン「……ぐ……」ズルズル……
ブーディカ「ぶるー……す……」
バットマン(……いや、むしろ僥倖。このままバットラングで痕跡を残しつつ、奥まで行く……)
バットマン「……」
175: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:43:03.32 ID:U9kyoBCq0
………………
ミノタウロス?「えう、りゅあれ。また、もってきたよ」ズルズル……
バットマン「……」
エウリュアレ「……アステリオス。いくら男とはいえ、そんな生贄は要らないって言ったでしょう。そこらへんに放っておいて」
アステリオス「ごめん。でも、また、おそってきたから」
エウリュアレ「……キリが無いわよ。放っておきなさい……いえ、待って。妙ね、その男……」
バットマン「……」
バットマン(紫の髪。ステンノによく似た見た目。やはり、間違いなさそうだ)
176: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:44:03.89 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……」
エウリュアレ「……ステンノの匂いがするわね。立ちなさい」
バットマン「……」ス
エウリュアレ「……そうね、おかしな話。貴方、見た事あるわ。遠い世界、何処かの島で……また私(ステンノ)に会いに来たの?」
バットマン「……話をしに来た」
エウリュアレ「……ふぅん、ちっとも変わってないのね。……いいえ、少し変わったかしら? 妙な男ね」
アステリオス「……? どういう、事……? しりあい、なの?」
エウリュアレ「違うわ。もう一人の私と知り合いだってだけ。……でも興味深い。そう、それじゃあまだ世界を救う旅を続けてるのね」
バットマン「……力を貸してほしい」
エウリュアレ「残念ながらそれを決めるのは私達よ」
177: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:45:55.83 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……だが、このままでは世界が……」
エウリュアレ「世界。世界ね。それが私達にどう影響するの? 世界が私達に何かしてくれたかしら?」
アステリオス「……」
バットマン「……」
バットマン(……以前と同じ言葉は通用しなさそうだ。いや……自分が、それを言えるだけの精神状態にない……となると、本音を見つけなければならない)
バットマン(……私は、本当に世界を救いたいのか……?)
バットマン「……私は……」
178: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:46:35.98 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……」
バットマン(……だが、それは……)
バットマン(それは、おこがましいのではないのか? 覚悟はあるのか? 世界と一人を秤にかけるつもりなのか?)
バットマン(両親を殺した弾丸は、私の中で未だに進み続ける。いずれそれは、私の大切な者を殺すだろう。その覚悟はあるのか?)
バットマン(失う事を恐れず、大切なものを抱えられるのか?)
バットマン(その権利は、あるのか?)
バットマン「……私は……」
179: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:47:14.25 ID:U9kyoBCq0
バットマン「……助けたい者が居る。そのために、力を貸してほしい」
エウリュアレ「……へえ。面白い目をするのね。でも……」
海賊達「「「オラオラオラァァァ!!!」」」ドドドドドドッ‼
アステリオス「っ」ガシャリ
ブーディカ「ブルース! 無事!?」
エウリュアレ「……少し、遅かったんじゃないかしら?」
バットマン「……!」
180: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:48:02.44 ID:U9kyoBCq0
ドレイク「ほー、ほー。ここが最奥、迷宮の終わりってワケかい。案内ご苦労さん、猫野郎」パラララ……
バットラング「「「」」」バラララッ
アステリオス「やら、れた。ごめん、えうりゅあれ。ごめん、なさい」
エウリュアレ「構わないわ。……さあ、どうしようかしら」
海賊達「「「……」」」ジリッ
バットマン「……待て、待ってくれ。戦う為に呼んだんじゃない」
ドレイク「……あん?」
181: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:48:37.94 ID:U9kyoBCq0
バットマン「彼らに害はない。むしろ、味方になりうる」
ドレイク「はぁ? 何言ってんだい、襲われた海賊が大勢……」
アステリオス「っ、おそわれたのは、こっちだ! ぼくが、水と食料をもらおうとしただけで、銃を向けて来て……いっしょにいるってだけで、えうりゅあれまで!」
ドレイク「……おかしいねえ、この島の連中は怪物が襲ってきたって言ってたけど」
アステリオス「ぼくは、なにもしてない! えうりゅあれを、まもりたかった、だけ!」
エウリュアレ「……口を挟むつもりはなかったけど、アステリオスの言う通りよ。外見だけで襲い掛かって来たのは、そちら側よ」
ドレイク「……なんだいなんだい、旗色が悪いねえ。それじゃあホントに、阿呆共が勘違いして襲っただけかい?」
バットマン「……ドレイク」
182: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:49:16.72 ID:U9kyoBCq0
バットマン「この二人、そして私達も含めて……海に異常が起こっている事は、分かるはずだ」
ドレイク「だから何だい」
バットマン「協力が欲しい。黒髭を倒し、海を元通りにする」
ドレイク「……ったく、畳みかけてきやがるねえ。……ボンベは?」
バットマン「……」チラ
ボンベ「……zzz……」
ドレイク「……カーッ、さらわれといて呑気に居眠りこいてんだから世話無いね。
……分かった。いけ好かないけど、協力してやる」
バットマン「……助かる」
ドレイク「フン、せいぜい感謝しときな。後でがっぽり金を請求するからね」
バットマン「……悪党め」
ドレイク「褒めんじゃないよ」
183: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:50:10.66 ID:U9kyoBCq0
バットマン「エウリュアレ。お前達は」
エウリュアレ「勿論、ついていくわ。ここに居ても面白くなさそうだし、それに貴方に興味もある……悪くないものが見れそうね」
アステリオス「ぼくは、えうりゅあれが、よければ……」
エウリュアレ「何を言っているの。私を守るんでしょう、絶対についてきなさい」
アステリオス「……! はい!」キラキラ
バットマン「……なら、これからよろしく頼む。アステリオス、エウリュアレ」
184: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:50:39.99 ID:U9kyoBCq0
………………
マシュ「……?」パチ、ムクリ
マシュ(声が聞こえたような……でも、まだ夜中……)
マシュ(キラークロックさん……は、まだ寝てるし……誰でしょうか)
……~~~♪ ~~~♪ ~~~~……
マシュ「……?」
マシュ(歌声……? 森の奥から……それに、煙も……誰か、居る?)
185: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:51:05.09 ID:U9kyoBCq0
マシュ「……」ガサ、ガサガサ
~~~♪ ~~~♪
マシュ(声が近くなって……綺麗な歌……それに、これは……竪琴の音でしょうか)
???「~~~♪ ~~~♪」ポロン、ポロン……
マシュ「……」
マシュ(誰でしょうか……開けた場所に、一人……)ガサリ
???「~~……誰だい?」ポロン……ピタッ
マシュ「あ……」
186: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:51:43.32 ID:U9kyoBCq0
焚火「」パチ、パチ……
マシュ「すみません、その……お邪魔をするつもりは無くて」
???「ふぅん……そうか。良い声をしているね。キミ、アビシャグに似てるなぁ。本物だったりする?」
マシュ「あび……え?」
???「失礼、名乗りが遅れたね。僕はダビデ。羊飼いだ」
マシュ「だ、ダビデ!? 羊飼いじゃなくて王様ですよね!? イスラエルの……!」
ダビデ「ははは、リアクションの大きい娘は嫌いじゃないぞ。うーん、でも僕は王ってよりは羊飼いで居たい派だから、あんまり大きく扱わないでくれ」
マシュ「は、はあ……それで、なんでダビデさんがここに?」
ダビデ「それはね。……とある『箱』を守ってたんだ」
マシュ「はこ……?」
187: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:52:24.06 ID:U9kyoBCq0
ダビデ「ああ、世にも恐ろしい死の箱さ。触れるモノすべてに死を運ぶ、凄まじいシロモノ……大げさじゃなく、触ったら本当に死ぬんだ。誰だろうと関係なく、一発でね」
マシュ「そ、そんな恐ろしいものを守っていたんですか!?」
ダビデ「そうなんだよ、僕もひとりでは心細かった。だけど良かった、キミが来てくれたなら心強い。どうか一緒に箱を守ってくれないか?」
マシュ「……それは……そうしたいのはやまやまですが、私にもやるべき事がありまして……」
ダビデ「そうか……残念だけど、しょうがないか。もうちょっと歌を聴いて行くかい?」ポロロン
マシュ「いえ、私は……」
マシュ(そろそろキラークロックさんが起きて来る。居ないと、怪しまれるかもしれない……)
ダビデ「……ん、ちょっと待った。なんだこの音……」
マシュ「え? ……あっ!!」
188: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:53:13.61 ID:U9kyoBCq0
マシュ(船の音だ。マスターが……迎えに来てくれたんだ)
マシュ「み、味方です! 行きましょう、ダビデさん!」
ダビデ「ちょ、ちょっと待って。せめて焚火を消してから」ザッザッ
マシュ「ほら、行きましょう!」
ダビデ「走らないでくれ、頼むから……」
189: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/18(日) 03:53:48.51 ID:U9kyoBCq0
………………
黒髭「……それにしても、明け方の空に煙を上げるなんてナイス判断ですぞ、キラークロック殿!」
キラークロック「……オレじゃねえ」
黒髭「へ? それじゃあ誰が……」
ガサガサ、ガサガサッ‼
マシュ「ますた……あー……」
ダビデ「ぜえ、ぜえ……アレがキミのマスターかい? ずいぶん、その……小汚い外見だな……」
黒髭「おやぁ? おやおやおんやぁ~~??」
キラークロック「……」
マシュ「そん、な……」
ダビデ「え? ナニコレ? どういう状況?」
199: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:09:58.97 ID:UH/q//8r0
………………
ドレイク「休むんじゃないよ、さっさと運べェ!」
海賊A「あいあいさー……重いなあチクショー」ズシズシ
海賊B「釘くれー、釘」コンコン、コンコン
海賊C「げっ、船尾もひでえぞコレ。おーい、木ィもっと切り出せって」
バットマン「……船はもう少し軽量化した方が良い。ここと、ここの……船室を削る」
ドレイク「でもねえ……それしちまうと、野郎どもの寝る所が無くなっちまうからねえ」
バットマン「なら、ここの大砲を船首に移動させて……」
ドレイク「へえ、船首に。面白いねえ……良し、なら船尾と船首にそれぞれ大砲をつけるってのはどうだい?」
バットマン「悪くない。それなら少しウェイトを削れる」
ドレイク「決まりだね!」
200: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:10:24.61 ID:UH/q//8r0
ブーディカ「はいはい、切った木はアタシが運ぶよー」
海賊D「ええ~? 流石のブーディカ姉さんでも無理っしょ!」
海賊E「そうそう、男の俺らが頑張るって!」
ブーディカ「あははは、平気平気」ガシッ、グォンッ
海賊D「……へっ!?」
海賊E「き、木を一本丸々……!」
ブーディカ「軽い軽い!」スタスタ
201: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:11:02.15 ID:UH/q//8r0
バットマン「黒髭の船は恐らくこちらを追跡してくるだろう。海上で接舷させてはならない」
ドレイク「……でも、こっちにもそこそこの戦力が集まって来たんじゃないかい? ほら、この小僧と小娘が居るだろ?」
エウリュアレ「失礼ね! 誰が小娘よ、この牛女!」
アステリオス「うし……ぼくは、おとこだよ?」
エウリュアレ「アステリオスには言ってないわよ!」
ドレイク「あーあー、悪かった悪かった。レディとボーイが居るけど、それでも負けると踏んでるのかい?」
バットマン「……万全を期した時、正面からの戦いだと勝率が少し低い。
あの時、レーダーで確認できただけでも、あちらの船にはキラークロック含め『5人』のサーヴァントが居る。できれば大砲でサーヴァントを一騎倒したい」
通信機『』ピピー‼ ピピー‼
バットマン「……すまない、少し離れる。戻って来たら続きを話そう」スタスタ
202: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:11:43.52 ID:UH/q//8r0
バットマン「もしもし、ドクター。何かあったのか」
ドクター『ブルースくんッ、大変だ! マシュが……』ブツッ
???『もしも~し? 拙者、マシュのカレシなんですけどぉ~~~wwwww ちわーっす、聞こえてますゥ?』
バットマン「誰だ」
???『おおぅ、怒らないでくれよ。俺は海賊、黒髭だ。アンタがマシュちゃんのマスターって事でいい?』
バットマン「マシュはどうした。何をした」
黒髭『だーいじょうぶだって、今のところはな。だからそんな怖え声出すなよ、ビビっちまうぜ。……なあ、大事なマシュちゃん、返してほしいよなあ?』
バットマン「……」
黒髭『今から指定する座標に来てちょ。あ、下手な抵抗や攻撃があったら、このコ容赦なく殺すからそのつもりで。メモ取る用意できてるぅ? それじゃ言いますよ~ん』
203: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:12:09.51 ID:UH/q//8r0
………………
バットマン「……」スタスタ
ドレイク「お、帰って来た。おう、それじゃ続きを……」
バットマン「……作戦を変更する」
ドレイク「は?」
バットマン「黒髭に人質を取られた。作戦を変更し、救出作戦を立てる」
ドレイク「はあ? ちょっと待て、どういう……」
バットマン「とにかく作戦を変更する。絶対に見捨てるわけにはいかない人員だ」
ドレイク「……はー、はいはい。まあ、こっちも船員を助けられた借りがあるからねえ……」
バットマン「今晩には出航する。準備を急がせてくれ」
ドレイク「はいはい、今晩ね。……今晩だってえ!?」
204: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:12:36.03 ID:UH/q//8r0
………………
バットマン「ドクター。マシュは無事なのか」
ドクター『大丈夫だ、今も観測している。ひどい待遇は受けていないよ』
バットマン「状態は。怪我はないか」
ドクター『大丈夫、むしろ好待遇と言っても良い。あちらの……キラークロック? さんが、船長を脅してそうさせてるみたいだ』
バットマン「……海賊の船だ。何があってもおかしくはない」
ドクター『……ブルース、大丈夫だ。彼女だってタフだし、覚悟をしてレイシフトしている。何かあったら必ず連絡を入れる』
バットマン「彼女が死ねば……それは、私のミスだ」ググッ、プル……
ドクター『……』
205: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:13:07.26 ID:UH/q//8r0
バットマン(……私のミスだ、だと? 笑わせる。何もかも私のせいだ。マシュを傷付け、遠ざけ、殺そうとしているのは……結局は、私ではないか)
バットマン(……私の、大切な者になったから、マシュは……)
バットマン(昔からそうだった。私は何ひとつ変わらない。雨が降りしきる闇の中、両親を見殺しにしたあの頃から、なにひとつ……)
ドクター『……ブルース。これは躊躇っていたが、言わせてもらう。前の……キミを救出した特異点で何があったのか、マシュから聞いた』
バットマン「……」
206: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:13:37.99 ID:UH/q//8r0
ドクター『キミの気持ちは分からない。絶対に分からない。ご両親を殺されて、どれだけショックなのかも分からない。キミが人間の善い側面を……可能性を信じなくなってしまったのも、理解はできたって分かる訳もない』
バットマン「……」
ドクター『だけど……でも、これだけは言わせてもらうぞ、ブルース! キミがどれだけ疑っていようと、キミは紛れもない善人だ! 善人で、変人だ! そうでなきゃ、猫の仮装をして世界を救おうとしたり、人を遠ざけておきながら馬鹿みたいに心配したりするもんか!』
バットマン「……違う、私は……」
ドクター『違わない! キミは僕たちが信じるブルース・ウェインで、キミが疑うブルース・ウェインだ! 慎重で、計算高くて、人の気持ちが分からない馬鹿で、でもどんな時だって絶対にあきらめない男だ! だから……』
バットマン「……」
ドクター『……だから、自分だけの責任なんて、言わないでくれ。僕たちは、何があっても仲間だろう』
バットマン「……」
207: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:14:12.77 ID:UH/q//8r0
バットマン「……」
バットマン(……信じる事が怖くなったのは、いつからだったか……)
バットマン「……」
バットマン「……」
バットマン「……ドクター」
ドクター『……ああ』
バットマン「ありがとう」
ドクター『……ああ!』
208: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:14:47.04 ID:UH/q//8r0
………………
ザザァン……ザザァン……
ドレイク「風がきつくなってきたねえ……帆を畳みな! 漕ぐよ!」
海賊A「へええええ~~~っ!? でも姐御ォ……」
ドレイク「なんだい?」
海賊B「疲れますぜ、手で漕ぐのは~」
ドレイク「ぐちゃぐちゃ言うんじゃないよっ、アンタらのために命懸けようとしてた男の一大事なんだよ! 海賊にも矜持ってモンがあるだろ!」グワッ
海賊C「ひええっ、怒らせちゃまずいって。行こうぜ」
バットマン「……」
ドレイク「あん? 何だい」
バットマン「いや……」
209: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:15:18.52 ID:UH/q//8r0
バットマン「私は今まで、海賊というものを少し……誤解していたかもしれないと思ってな」
ドレイク「誤解ィ? どんな風に?」
バットマン「もっと……何も考えず、破壊活動にいそしむ連中かと思っていた。何にも構わず、突っ込んで行くような奴等かと」
ドレイク「ハッ、間違っちゃいないよ。向かう先が破滅でも、お宝があったら突撃するのがアタシら海賊さ」
バットマン「……人生の意味を、考えた事はないのか」
ドレイク「カーッ、辛気臭くて嫌になるね。人生の意味なんて後付けで結構。あとで見返して、自分なりに満足できりゃあそれで良いのさ。ただ、通す筋は通させてもらう。それだけだよ」
バットマン「……」
210: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:15:59.73 ID:UH/q//8r0
ドレイク「……そういうアンタはどうなのさ。人生の意味をグチグチ考える男かい?」
バットマン「どうだろうな。……考えては来たが、見つからない」
ドレイク「ふーん。ま、そんなモンだろうよ。猫のカッコしてうろついてんだし」
バットマン「これはコウモリだ」
ドレイク「はあ? それがかい?」
バットマン「猫は空を飛ばない」
ドレイク「飛ぶ猫も居るよ」
バットマン「それは……今後に期待しておこう」
211: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:16:28.19 ID:UH/q//8r0
バットマン「……少し、飲まないか」
ドレイク「はあ? アンタ、酒飲むのかい?」
バットマン「今日は飲みたい気分なんだ。聖杯で、出せるんだろう」
ドレイク「ふぅ~ん、まあいいや。……サシで飲むのに覆面は無いだろ、脱ぎなよ」
バットマン「……」スッ
ブルース「ああ。飲もう」
212: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:16:55.56 ID:UH/q//8r0
ドレイク「何がいい? 色んな種類があるけど」スッ
ブルース(本当に、何もない空間から酒瓶が……やはり本物の聖杯だったか)
ブルース「そうだな。……オススメはあるか?」
ドレイク「そうだねえ、やっぱりラム酒とか王道だねえ! ほら、一本開けなよ」シュッ
ブルース「フ……有難くいただこう」パシッ
213: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:17:26.23 ID:UH/q//8r0
………………
ブーディカ「ブルース~? 何処に……あ、居た居た! ……ってお酒くさっ!?」
ブルース「ブーディカ。よく来たな、飲むか?」
ブーディカ「……キミ、顔真っ赤なんだけど」
ドレイク「まだまだ飲んだうちにも入らないよ! ほらもっと飲め!」
ブルース「まあ焦るな。こう、栓を開いてだな……」ドバドバドバ
ドレイク「フゥーッ!! ラム酒の滝だー!!」パチパチパチ
ブルース「……ふ、ははは。どうだ、まさに浴びるように飲んでやったぞ」ヨロ
ドレイク「あっはははははは、いいねえ! アンタの事嫌いだったけど今気に入った!」バンバン
ブーディカ「……ちょっとブルース」ガシッ、ズルズル……
ブルース「?」ズルズルズル……
ドレイク「また来いよー!」ヒラヒラ
214: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:17:56.91 ID:UH/q//8r0
ブーディカ「……どうしちゃったのさ、ブルース。アンタってばそんなんじゃなかったでしょ」
ブルース「……酒を飲みたい時くらいあるだろう。私は今夜がそうだっただけだ」
ブーディカ「そういう事を言ってるんじゃないよ! 明日にはマシュを助けなゃ駄目なのに、どうしてキミがこうなの!?」
ブルース「……」
ブーディカ「……私が言いたくないけど、正直がっかりしてるし、見損なったよ。なんで……」
215: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:18:22.28 ID:UH/q//8r0
ブルース「……すまない」
ブーディカ「……もういいよ。ごめんね、私が期待しすぎたよ」スタスタ
ブルース「……」
ブルース(……なんで、か。それは、ブーディカ。理由は決まっている)
ブルース(明日が、32年前のあの日と同じになるかもしれないからだ。だからこそ、私は……)
酒瓶「」コロコロ……
ブルース「……もう、残ってもいないか」
ブルース(……だからこそ、打てる手は全て打つ)
216: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:18:54.11 ID:UH/q//8r0
………………
ザザァン……ザザァン……
マシュ「……」ジャラジャラ
マシュ(……この手錠……力が入りにくい姿勢なのもあって、力んだ程度じゃ外せませんね……こんな事なら、もっと清姫さんの縄抜けを……)
(((清姫は死んだ)))
マシュ(……何を考えていたんでしょうか、私は。戦場で、人の死を悲しんでいる暇なんか……無いのが、普通なのに)
マシュ(マスターの気持ちも考えず……未熟な気持ちのままで、人に悲しみを押し付けて……だから、これはきっと、罰なんだ……)ギュッ
ノシッ、ノシッ
キラークロック「……飯だ。生きてるか」スッ
マシュ「……キラークロックさん」
217: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:19:26.37 ID:UH/q//8r0
キラークロック「フン……捕まって気分が沈むのは分かるが、死にそうなツラはやめろ。こっちも飯が不味くなる」ドシリ
マシュ「すみません……ありがとうございます」カチャ
キラークロック「……」モグモグ
マシュ「……あの、すみません。こっちの羊肉のスープがキラークロックさんのご飯で、そっちのカビたパンが私の食事じゃ……」
キラークロック「お前の勘違いだ。黙って食え」モグモグ
マシュ「は、はあ……」
キラークロック「……食え。明日にはお前をあっちへ引き渡す。この牢屋も、それまでの辛抱だ」
マシュ「……はい」
218: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:19:57.16 ID:UH/q//8r0
???「あ、ワニさん。こんなところに居たんですのね」
???2「おや、囚人と仲良く食事かい? 楽しそうだね」
キラークロック「グルルルルル……何しに来た、アン、メアリー……!」
アン「まあ怖い。私達だって、囚人が年頃の女の子と聞いてお話してみたくなっただけですわ」
メアリー「キミこそ何をしにここへ? ただの囚人に、随分肩入れしてるじゃないか」
キラークロック「……関係ねえ。黙ってろ」
アン「へえ~……」
メアリー「ふ~ん……」
キラークロック「……」
マシュ「……?」
キラークロック「……チッ」
219: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:20:27.23 ID:UH/q//8r0
アン「うふふっ、囚人の貴女にはろくな食事が用意されないだろうと思って……はーいっ、ラム肉のスープを持ってきましたわ!」
メアリー「ふふっ、黒髭から奪ってきたんだ。あの時の間抜け面と言ったら無かったよ……って、あれ?」
マシュ「あ、あの……やっぱりこのスープ、船員用の食事だったんですか?」カラカラ
キラークロック「……」スン
アン「……あら、あらあらまあまあ!」
キラークロック「黙れ」
メアリー「これは興味深いね。コワモテ男の優しい気遣いってところかな?」
キラークロック「黙れ!」
マシュ「す、すみません! 食べてしまって……」
キラークロック「黙れ! お前も!」
ダビデ「あーあー! 僕にも羊肉のスープがもらえればなー!!」カンカンカンカン‼
220: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:20:55.64 ID:UH/q//8r0
<ギャーギャー‼ ワーワー‼
黒髭「……う~む、スープ返してって言いに行ける雰囲気じゃないですなあ。うん、諦めてパンを食べよう……」モシャモシャ
???「あらら、スープ取られちゃったの? オジサンの、良かったらあげるけど?」
黒髭「む、ヘクトール氏。いえいえ、拙者はパンで大丈夫でござる。むしろカビの生命力を受け継いでパワーアップしますぞwwwwwwww」
ヘクトール「へ、へえ……まあ、それで良いなら良いけどよ。腹壊すなよ?」
黒髭「デュフフ、サーヴァントとなったこの身に心配はご無用。ヘクトール氏は明日の人質受け渡しに備え、英気を養ってほしいですぞ」
ヘクトール「……それこそ、心配ご無用ってね。俺の『不毀の槍』(ドゥリンダナ)は伊達じゃないぜ」
黒髭「……むふふ。期待しておきますぞ」
ヘクトール「へっ……」
221: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:21:46.42 ID:UH/q//8r0
………………
ザザァン……ザザァン……
バットマン「……」
バットマン(……そろそろ、指定された海域へ到着するか。……)
バットマン「……頼んだぞ」
海賊A「へ、へえ……努力します」
バットマン「……今は良いが、もっと背筋を伸ばして立て。それと、口元は引き締めろ」
海賊A「へい……」
バットマン「……そろそろ入れ替わるぞ。服を脱げ」
海賊A「へいへい」
222: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:22:22.27 ID:UH/q//8r0
………………
黒髭「……ってな感じに、入れ替わり作戦とかやってくるかも知れないから……その時はキラークロック氏、嗅覚での特定よろしく!」
キラークロック「……フン、任せろ」
黒髭「それで、そろそろ……おっ、見えた見えた。BBAのゴールデンハインド号ですな。よーし、人質受け渡し準備ィ!」
海賊達「「「ウッス!」」」
黒髭「むふふ、もうすぐ思い切り暴れられますぞ」
キラークロック「……フン」
メアリー「今回は」
アン「私達も出ますわ。退屈でしたもの」
ヘクトール「おじさんも暴れ回っちゃおっかなあ~。暇してたしねえ」ゴキゴキ
黒髭「……これ、オーバーキルでは……な~んて油断してると足元をすくわれるのが海賊の世界。敵戦力の確認にうつりまーっす!」
223: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:23:08.65 ID:UH/q//8r0
黒髭「んー、んー……!! 待った待った待ったァ!! あちらの船にエウリュアレたんを確認ンンンンンンンンンンンンンンンンン!!」
キラークロック「えう……何だと?」
ヘクトール「ほォ、あのエウリュアレが……なんだ、素直についていく奴でも見っけたのかねえ」
黒髭「おおっ、あの黒猫のコスプレ筋肉ダルマの傍に居やがる! ナイスですぞキャットマン! ロリをありがとう神よ! ……いや、ロリ女神よありがとう!! 合法万歳!!」
メアリー「キモッ」
アン「吐き気がしますわ」
黒髭「そーと決まったら早速マシュちゃんの引き渡し条件を引き上げますぞー!」
224: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:23:57.74 ID:UH/q//8r0
………………
ザザァン……ザザァン……
ボンベ「接舷しやすぜ!」
ドレイク「……イカリ降ろせー! 帆を畳めー! 船をとめろ!」
海賊達「「「あいあいさー!」」」
黒髭「おーい! 聞こえるー!?」
ドレイク「聞こえてるよ、髭野郎! 何が欲しいんだ、言ってみな!」
黒髭「BBA!! 我々の要求はただ一つ! 聖杯をこっちに寄越す事と、エウリュアレたんをこっちに渡す事! ……二つだコレ!!」
ドレイク「はあ!? エウリュアレを……」
225: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:24:23.06 ID:UH/q//8r0
ドレイク「……どうする、女神サマ。アンタも狙いみたいだ」
エウリュアレ「……どうするの」
アステリオス「だめ、いかないで。ぜったい、だめ」
海賊A「……だが、やるしかない」
アステリオス「きけん、だよ! えうりゅあれが、きずつけられたら……」
海賊A「……奴等には渡さない。約束する」
アステリオス「……っ」
エウリュアレ「信じていいのね?」
海賊A「策はある」
226: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:26:23.03 ID:UH/q//8r0
………………
黒髭「それじゃ、エウリュアレちゃんを頑丈な縄で縛って連れて来てちょ! こっちのマシュちゃんも縛ってそっち連れて行きますからね~ん」
マシュ「……っく……」ジャラジャラ
敵海賊A「オラッ、暴れんじゃねえ!」
キラークロック「グルゥ……」
ドレイク「条件がある!!」
黒髭「なんじゃい!!」
ドレイク「こっちのエウリュアレと聖杯が板を渡る間、マシュも同時にこっちに渡しな! 信用できないんでね!!」
黒髭「……ふむ。オッケー、了解!」
海賊A「……聖杯は持った。エウリュアレ、準備は良いか」
エウリュアレ「やるしかないんでしょう。やるわよ」
227: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:27:04.95 ID:UH/q//8r0
ギィィィィ……バタン‼ バタン‼
黒髭「よしよし、二つの架け橋(板)完了。それじゃ、同時に渡ってもらおうか!」
敵海賊A「オラッ、お前が先に登れ!」
マシュ「う……」ソロソロ
マシュ(船が波で揺れて、バランスが……)
海賊A(……2船の手摺の間に板を架けたか。少しのよろめきで落ちる)
海賊A「エウリュアレ」
エウリュアレ「嘗めないでちょうだい。たとえ手が縛られていたとしても、問題にもならないわ」スッ
228: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:27:33.57 ID:UH/q//8r0
海賊A「……」スタスタ
マシュ「……」ソロソロ
エウリュアレ「……」スルスル
マシュ「……」ソロソロ
海賊A「……」
キラークロック「……?」
キラークロック(なんだ、コイツは……この匂い……クソ、アルコール臭がキツすぎるぞ)
229: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:28:03.19 ID:UH/q//8r0
マシュ「……」ソロソロ
マシュ(……戻った、ところで……どうしたら、マスターと……)
海賊A「マシュ」
マシュ「……え?」
黒髭「へ?」
ヘクトール「んっ?」
キラークロック「……!!」
230: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:28:41.63 ID:UH/q//8r0
ブルース「伏せろ」パシ、ブシュゥゥゥゥゥゥゥ
ヘクトール「煙幕ゥ!?」
キラークロック「撃て!」
黒髭「チィッ」パァン‼
マシュ「きゃっ!?」チュイン‼
エウリュアレ「私は気遣わないの?」スッ
ブルース「弾なら見切れるだろう」
エウリュアレ「……生意気ねえ」
231: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:29:08.96 ID:UH/q//8r0
キラークロック「ヴォオオオオオオオオオオオオオ!!!」ダダッ
黒髭「馬鹿、行くな! テメエが乗れば板が折れる!」ガシッ
ヘクトール「おじさんが行かせてもらおうか」タッ
マシュ「マスター!?」
ブルース「もうブルースさんとは呼んでくれないのか?」ニヤリ
マシュ「何を……なんで!?」
ブルース「助けに来た……ッ!?」ババッ
ガィン‼
ヘクトール「チッ、殺気で気付かれたか。やるねえあんちゃん」ヒュンヒュンッ
ブルース「……お前は……」
232: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:29:37.35 ID:UH/q//8r0
ヘクトール「なあに、ただのしがないオッサンさ。けど交渉決裂とは悲しいねえ、マシュの嬢ちゃんは引き続きこっちで預かるぜ」ヒュンヒュンッ……スッ
マシュ「マスター! くっ……」ジャラジャラ
ブルース「……そうはさせない。絶対に返してもらう」スッ
ブルース(煙幕も晴れ始めた。ここからが本番)
エウリュアレ「私も加勢しようかしら?」
ブルース「……船の制圧へ動け」
233: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:30:12.50 ID:UH/q//8r0
海賊達「「「うおおおおおおおお!!!」」」
ドレイク「飛び移れ飛び移れ! ロープも使って乗り移るんだよ! あっちの船を乗っ取りなァ!」
アステリオス「おおおおおおおおお!!!」ドスドスドス
黒髭「おいおい、結局こうなんのかよ! まーいいや、総員やっちまえ!!」
アン「ふふっ、血が滾りますわっ!!」
メアリー「さあ、誰からやるかな……!」
キラークロック「ヴォオオオオオオオオオオ!!!」ドシドシ
234: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:30:47.36 ID:UH/q//8r0
ブルース「ハッ!」ヒュッ
ヘクトール「うおっ、良い動きするじゃねえの!」タタッ、ヒュォンッ
ブルース「ッ!」バッ
ブルース(驚異的な平衡感覚。加えて槍という長リーチ。二つの板を飛び移りながら攻撃を繰り出してくる……)
ヘクトール「そら、そらそらそらっ!」タッ、タタッ、ヒュンヒュンヒュン‼
ブルース「くっ……」ザザッ、ジリッ、シュッ
ブルース(スーツが無い分も、こちらが遅れを取る……)
ヘクトール「とったァっ!」ブンッ
ブルース「!!」
ブーディカ「はッ!!」ガギィィィン‼
235: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:31:15.13 ID:UH/q//8r0
ブルース「……!」
ブーディカ「……はいはい。どうせキミの言う事だからね、どれもこれも計算の内なんでしょ」
ブルース「……違う。計算ではない」
ブーディカ「じゃ、何さ」
ブルース「信じていた」
ブーディカ「……ふん、ばーか。後で昨晩の乱れっぷりをマシュにも言いつけてやる」チャキッ
ブルース「それはやめろ」
マシュ「なっ、なんですか! 乱れ……とは! 聞き逃せません!」
ブルース「何もない。気にするな」
ヘクトール「あ~あ~、オジサンそっちのけで話すのはやめてくれないかなぁ……」ポリポリ
236: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:31:45.23 ID:UH/q//8r0
ブーディカ「フッ!」ヒュンッ‼
ヘクトール「ッ」ギャリリィン‼
グラ……
ブルース「うっ……」ヨロ
マシュ「あぶ、ない……」ヨロヨロ
ブーディカ「はあっ!」ギャギャ、ガァン‼
ヘクトール「ううぉっ!? ムチャクチャな攻め方してくるねえ!?」タタッ
ブーディカ「今度こそ守りたいモノ守るって誓ったからね! 髭オヤジ一人には負けらんないよ!」タッ、ヒュンッ
ヘクトール「滅茶苦茶に言ってくれるじゃない……のッ!」ヒュンッ、ガガァン‼
グラグラッ
237: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:32:16.07 ID:UH/q//8r0
キラークロック「ウヴォオオオオオオオオオオ!!!」ブンッ
ドッガァァァァァァ‼
海賊B「ひっ!?」
海賊C「怯むな、やっちまえ!!」ダッ
キラークロック「邪魔、だ!」ガシッ、ドゴォ‼
アステリオス「あああああ!!」ブンッ
キラークロック「!!」ガシッ‼
アステリオス「し、ね……しね、しねえ!!」グググググ‼
キラークロック「グルルルルル……!!」グググググ……
238: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:32:47.46 ID:UH/q//8r0
黒髭「にわかに怪獣大戦争じみた様相を呈して来ましたな! ヘクトール殿、さっさとケリをつけてくれたら嬉しいですぞ!」
ヘクトール「無茶言いなさんな! 本気のオンナは怖えんだよ!?」ガガッ、ギャリィ‼
ブーディカ「目ェ逸らしてんじゃないよッ!!」ギャリギャリガガァンッ‼
ヘクトール「ひえ……」タタッ
黒髭「ヘクトール殿、絶対女房の尻にしかれるタイプですよね。そうですよね」
パァン‼
黒髭「あっぶね」バッ
ドレイク「ほらよ、お望みの聖杯だ。アタシと一緒じゃちと不満だろうが、付き合いなよ」カチャリ
黒髭「……ドレイクめ、来やがったか」カチャリ
239: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:33:33.74 ID:UH/q//8r0
エウリュアレ「ほらほらほらッ!」シュパパパパパッ
アン「きゃっ! 全く、鬱陶しい小娘ですこと! 胸も板みたいに!」
メアリー「……アン、後で話し合いが必要だね」ズドンズドン、カチャリ
アン「あら、いやですわ。メアリーの事は言ってません」ズドンズドンズドン‼
エウリュアレ「悠長に談話かしら? のんびりしてるのね」ヒュパパパパパパパ
敵海賊B「ぐわああああ!! か、身体が……!」シュバッ
敵海賊C「があっ!? て、テメエ何しやがる!?」ドサッ
アン「……ちぃっ、あの矢には催眠作用でもあるみたいですわ。射抜かれた連中が同士討ちを……」
メアリー「矢に被弾したヤツは撃ち殺すよ」カチャリ
エウリュアレ「せいぜい手の届く範囲の仲間を殺しなさい。この戦場は掌握しつつあるわ」シュパパパパパッ
240: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:34:04.51 ID:UH/q//8r0
ブーディカ「そぉらっ!」
ヘクトール「うおっ!?」ガギィィィ‼
ヘクトール(ちっ、武器が長物だからなぁ。懐に入られりゃ弱い……!)
ブーディカ「容赦しないよ!」ググッ‼
ヘクトール「そりゃどうも!」ガッギャ‼
ブルース「フッ!」シュパッ
バットラング「」ヒュォォォォォッ
ヘクトール「ッチィ!?」ガガッ‼
ブーディカ「そこっ!!」ズバァッ‼
ヘクトール「うぐっ……」ヨロ、タタッ
ブーディカ「逃がすか……!」ダッ
241: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:34:30.57 ID:UH/q//8r0
ヘクトール(もう少し、もう少し誘い込む……)
ブーディカ「そらそらっ!」ヒュンヒュンッ‼
ヘクトール「っかかったァ!!」ガッ、ズォォッ
ブーディカ「なっ……」
ブーディカ(切っ先が、船の手摺に嵌まった……)グッ
ヘクトール「一瞬の隙が命取りだ、悪く思うなよッ!」グンッ
ブルース「そちらがな!」ヒュンッ‼
ヘクトール「っ!?」ガッ
242: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:35:08.23 ID:UH/q//8r0
ブルース「ハッ!」ヒュゴッ
ヘクトール「ははっ、一瞬ビビったが……嘗めないでほしいもんだ!」ガシッ、グルンッ
ブルース「フンッ!」グルンッ、スタッ
ヘクトール「ああ!?」
ブルース「シッ!」ヒュドッ
ヘクトール「っ……ああそうか、嘗めてたのはこっちって事か! 良いぜ、なら認めて……全力で潰してやろうじゃないの!」チャキ、ヒュンッ
ブルース「くっ」
ブルース(しまった、避けられない……)
243: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:35:37.22 ID:UH/q//8r0
マシュ「ます、たー!」ドンッ
ヘクトール「なっ……」ザシ、ググッ
マシュ「っ」ズルッ
ブルース「……!!」
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ、バッシャァァァァァ……
ブルース「マシュ!」
ブルース(助けなければ。海へ飛び込め。飛び込んで助けろ。彼女を、助けろ)
ブルース「……っ……」
ブルース(……だが。ああ、だが……)
244: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:36:06.96 ID:UH/q//8r0
ブルース(その権利は、あるのか?)
245: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:36:49.34 ID:UH/q//8r0
ブルース(二度も両親を見殺しにした私に、まだ大切な者を守る権利はあるのか?)
『ぼくのせいだ』
ブルース(計算ではここに残り、ブーディカと共に戦うのが最も勝率を上げる行為だ)
『お前は怪物だ』
ブルース(……ああ、そうだ。今更、戻るなど、なんと都合の良い話だったんだ。所詮、私は……)
ドシュッ
246: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:37:27.62 ID:UH/q//8r0
ポタ、ポタ……
ヘクトール「……」
ブーディカ「……」
ブルース「……ブーディカ……」
ブーディカ「……か、はっ……」
247: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:37:56.01 ID:UH/q//8r0
ヘクトール「……弱ってる奴を殺すのは、あんまりやりたくなかったんだが」グ……
ブーディカ「……抜か、せるか。この、槍はもう、アタシの、モノだ……」グググググ……ブシッ、ブシィ……
ヘクトール「……」グググググ……
ブーディカ「……ブルース、最期に、ね。話、聞いて」
ブルース「……令呪を……」
ブーディカ「……お願い、だから、聞いて。命と、引き換えの、呪いをかける」
248: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:38:45.06 ID:UH/q//8r0
ブーディカ「……アンタが、なんで悩んでたのか、分からない。けど、なんで立ち止まったのか、わかる。アンタ、ずっと、気にしてたもんね。権利が、どうとか」シュウシュウシュウシュウ……
ブーディカ「……あの、時は、否定、したけど。分かるんだ、アンタの気持ち。一度、失敗したら、もう戻れないみたいな、気がするの。でも……」
ブーディカ「でも、人には、チャンスがある。アンタにとって、これが、そうなんだ。ブルース」シュウシュウシュウシュウ……
ブルース「……!」
ブーディカ「……だから、お願い。マシュを助けて」シュゥゥゥゥゥゥゥゥ……
249: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:39:35.42 ID:UH/q//8r0
(そうだ。何を躊躇っていた、お前は)
彼は目を見開き、消える彼女に背を向けて板を蹴った。波打つ海がどんどん近付き……その表面を突き破り、ブルースは飛び込んだ。
沈むマシュから、気泡のしるべが昇ってくる。彼は強く水を掻き、深く、深く潜ってゆく。
海の中はまっさらな闇を思わせた。ずっと上で響く潮の音。対して、水深が深くなればなるほど音は遠のき、光は消えてゆく。マシュが、大きな闇へと飲まれて行く。
(((大丈夫、闇の中には何も居ない)))
(違う)
ブルースは過去の残響を否定する。違う。闇の中には恐ろしい魔物が棲んでいる。それは今日まで、幼いブルースの心を捕えたまま、ずっと離していなかった。
(((おとう、さん……おかあさん……)))
(今度こそ)
清姫の涙がよみがえる。アルフレッドの死に顔が浮かび上がる。トーマスが膝から崩れ落ち、マーサが泣きながら倒れ伏すのが見える。頭を振り、幻覚を追い出す。
自分の中にあるのは、両親を殺した弾丸だけではないハズだ。計算だけではないハズだ。疑心だけではないハズだ。不確定な自分を、信じろ。
マシュが目を開き、何かを叫んでいる。気泡が大きく広がり、それを突き抜けてブルースが潜る。
(手を伸ばせ)
どちらへ向けた言葉だったか。ブルースの腕が、マシュをとらえた。
250: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:40:29.33 ID:UH/q//8r0
………………
ヘクトール「……」
ヘクトール(……ったく、アイツらは死んだのやら生きてんのやら。にしてもまあ、ホントに覚悟を決めた女ってのは怖えな……)
ヘクトール「……いや、違うか」
ヘクトール(覚悟を決めた英雄ってのは、なんでこうも……)
黒髭「ちょっとー! ヘクトール殿、終わったならこっち!」
ヘクトール「あー、へいへい……」スタスタ
ヘクトール(……こりゃ、そろそろ潮時だなぁ。あの連中を呼んでおいてよかったぜ)
251: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:40:56.28 ID:UH/q//8r0
………………
バシャアッ‼
マシュ「げほっ、ごほっ、ごほ……」
ブルース「っは……はっ……マシュ……マシュ! 無事か! マシュ!」ジャブジャブ
マシュ「ぶ、じです……」
ブルース「拘束を解くぞ! 良いな!」
マシュ「はい……うぷっ……」ジャバジャバ
ブルース「良し……良し、良かった……!」ジャラジャラ
マシュ「……!」ジャバッ
252: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:41:23.21 ID:UH/q//8r0
マシュ「わたし、は……ごめんなさい、わたし……!」
ブルース「マシュ、聞いてほしい。言いたい事が、山ほどあった」
マシュ「……」
ブルース「……山ほどあった、はずなんだ。分からない。何を言えば良いのか分からないが、とにかく、言わせてくれ」
マシュ「……」
ブルース「私はお前が大切だ」
マシュ「……!」
253: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:41:56.63 ID:UH/q//8r0
ブルース「お前が大切で……恐らく、これからも、お前が目の前で危険だったら、考え無しに庇うかもしれない。それを、伝えておきたかった」
マシュ「……」バシャッ、ドッ
ブルース「……お前が大事なんだ、マシュ。お前を助けさせてくれ」
マシュ「……っ」ドッ、バシャッ
ブルース「……マシュ」
マシュ「っ! っ!」ドッ、ドッ
ブルース「マシュ、私に心臓マッサージは必要無い……」
マシュ「分かってます! 殴ってるんです!」ドッドッ
ブルース「……そうか」
254: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:42:25.10 ID:UH/q//8r0
ザザァン……ザザァン……
マシュ「私……」ドッ
マシュ「そんなの、私……!」ドッ、ドッ
マシュ「わたし、だって……!」ドッ
マシュ「私だって、大切に、決まってるじゃないですか……!」バシャ、バシャ……
ブルース「……すまない。マシュ」
マシュ「謝らないで、ください……」バシャリ……
255: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:42:54.17 ID:UH/q//8r0
マシュ「……私、強くなります」
ブルース「……」
マシュ「……強くなって、マスターを守れるようになります」
ブルース「……」
マシュ「……だから、待っててください」
ブルース「……」
マシュ「……待たずに、庇ったりしたら、ひどいですよ」
ブルース「……善処する」
マシュ「絶対です」
ブルース「ああ、絶対に善処する……方向で、検討する」
マシュ「……知りません」
ブルース「船へ上がるぞ。掴まれ」
マシュ「……」ギュッ
ブルース「……」シュポッガシッ
ギュルギュルギュルギュルッ
256: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:43:38.80 ID:UH/q//8r0
ドレイク「ちいっ、こんだけやっても劣勢か!」
黒髭「フフーン、所詮勢い任せの雑な作戦ですぞwwwwww拙者の敵ではござらんwwwwwwww諦めてエウリュアレ殿と聖杯を……!」
「マスター! 指示を!」
黒髭「ををおおおおお?」
バットマン「私は盾を取り戻す、マシュはエウリュアレを庇いつつ甲板を制圧しろ!」
マシュ「はい!」
黒髭「何だとぅ!? ついこの前までコンビネーション最悪だったのにぃ!?」
キラークロック「……」フッ
257: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:44:10.11 ID:UH/q//8r0
バットマン「ドクター、マシュの盾の位置を特定してくれ」ピッピッ
ドクター『待ってくれ……よし、その足元、直下の船室だ』
バットマン「良し……」プシュー
敵海賊D「やすやすと」ダッ
敵海賊E「行かせるかよォ!」ダダッ
ヘクトール「そういうこった!」バッ
バットマン「だが、行かせてもらう」ポチッ
ドドドドドォ‼
敵海賊D「ぐわあああっ!?」ドシャッ
敵海賊E「ひょえええええ!?」ドサッ
ヘクトール「なっ……」ズサッ
ヘクトール(甲板が円形に爆発しやがった……!?)
258: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:44:36.51 ID:UH/q//8r0
パラパラ……
バットマン「……レオナルド、爆破ジェルの威力を上げたな?」
レオナルド『報告が遅れてすまないね、すっかり忘れてた。上げたよ、爆発半径はそのままで衝撃を底上げした』
バットマン「助かった。……盾は……あった」ガシッ
盾「」ガシャリ
バットマン「よし、後はマシュへこれを届ける……」
「おーい! 僕も助けてくれー!!」
バットマン「……?」
259: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:45:17.01 ID:UH/q//8r0
バットマン「……誰だ」スタスタ
???「良かった、来てくれたのか! 僕はダビデ、お宅のマシュちゃんと一緒に捕まってた羊飼いだよ。ここから出してくれ、頼む!」
バットマン「……ドクター、解析を」
ドクター『うん、完了してる。マシュとのやり取りもある程度見ていたが、彼は一応こちらの味方みたいだ』
バットマン「……牢を開けるぞ。離れろ」
ダビデ「了解、優しく頼むよ!」
ヘクトール「そうはトロイアが許さねえって話だ!」スタッ、ヒュンッ
バットマン「!!」ガキィィィィン‼
260: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:45:53.40 ID:UH/q//8r0
バットマン「……トロイアの戦士か、お前は」ジリッ
ヘクトール「へっ、マイナーなオジサンだから名前なんざ意味ねえぜ。アンタは何処の英雄だ?」
バットマン「……」
バットマン(……槍……トロイア……駄目だ、浮かばない)
ダビデ「やっちゃえ! 負けるな黒猫くん!」
ヘクトール「名乗らねえなら、こっちから行くぞォ!」ヒュンヒュンヒュガガッ‼
バットマン「ッ!」ギギィ、ギャァン‼
261: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:47:14.88 ID:UH/q//8r0
バットマン「シッ!」ヒュンッ
バットラング「」ヒュォォォォォッ
ヘクトール「へっ、玩具だなあ!」バッ
バットマン「そこ……!」シュポッ
ヘクトール「遅いッ!」バッ、ヒュゥン‼
バットマン「!!」シュッ、ギュルギュルギュルギュルッ
ヘクトール「とどめだ……!」グワッ
ヘクトール(いや。不味い)
ヘクトール「ふッ!!」ダダッ
大砲「」ガラガラガラガラッ‼
ヘクトール「……」
ヘクトール(成程。一発目のシュリケンで大砲の固定具を破壊し、二発目のよく分からんロープ発射器具で大砲を引き寄せ……)
バットマン「ここで爆破ジェルだ」プシューッ、ポチッ
ドドォン‼
ヘクトール「大砲発射ってワケかい!!」バッ
ドッガァァァァァァァァァァ‼
ヘクトール「うぐ……!」ギュリィッ、ズシャシャシャシャシャシャシャ……
バギャ、ボッシャァァァァァン……
262: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:48:03.69 ID:UH/q//8r0
………………
マシュ「はあああっ!」ヒュンヒュンッ、タッ、ドドッ
アン「くっ……ただのか弱い女の子、というわけではなかったんですのね……!」ダッ、ババッ、ズドンズドン‼
メアリー「くっ、こんなに体術が……」ズドンズドン、バッ
マシュ「ふッ!」ヒュッ、タタッ
マシュ(盾が無くても、戦える……! それを証明してみせる!)ダッ
キラークロック「……ウォオオオオオオオオオオ!!」ドスドスッ
マシュ「!!」バッ
キラークロック「ナマイキな、小娘め。かかって来い!」ググッ
マシュ「キラークロックさん……!」スッ
263: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:48:33.66 ID:UH/q//8r0
アステリオス「……うぐ……」プルプル……ドサッ
エウリュアレ「アステリオス……!」
マシュ「……!」ヒュッ、ドドドッ
キラークロック「カユいぞ!」ドッガァァァァァァァァァァ‼
マシュ「くっ……」バッ、シュドッ
キラークロック「ウガアアアアアアアア!! ちょこまかと!!」ブォンッ
マシュ「ハッ!」ダッ、シュバッシィィィィン‼
キラークロック「うぐ……! 小娘……!」ガシッ、グググググ……
マスト「」メリ……メリメリメリメリメリ……バキャッ‼
黒髭「ちょっとキラークロック殿ォ!?」
ドレイク「なんだいありゃあ……!」
キラークロック「行くぞ!」ググッ
マシュ「くっ……!」
マシュ(マストの攻撃は素手では受け止められない! ここは……!)
264: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:49:17.71 ID:UH/q//8r0
「マシュ!」
マシュ「!!」
バットマン「盾だ!!」ブンッ
盾「」ヒュゥゥゥゥッ
マシュ「ありがとうございます!!」パシッ
マシュ(これなら……!)
キラークロック「ウオオオオオオオオオオ!!」ブォンッ‼
マシュ「はあああああああっ!」ドギャギャギャギャギャギャギャ‼
マシュ(駄目……これでも、受け止めきれない……!)ズシャシャシャシャシャシャシャ‼
キラークロック「……!!」ピクッ、ババッ
マスト「」ドッサァァァァァァァン
マシュ「え……?」
キラークロック「黒髭!! 奴等だ!!!」
265: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:50:03.53 ID:UH/q//8r0
黒髭「何ィ!? マジで!?」ダダッ
ドレイク「お、おい!?」
黒髭「……マジじゃねーか」
黒髭(ヘクトールは何処だ? 何処に……)
黒髭「……全員警戒しろ! 『アルゴナウタイ』が来やがったぞ!」
バットマン「……?」
バットマン(アルゴナウタイ……アルゴノーツ……確か、ギリシャ神話の、英雄達だったか)
スタスタ
ダビデ「すぅーっ……ふう、久々の美味しい空気だ。
……アレ、皆止まっちゃったな。僕が有名すぎたのが駄目だったか?」ポリポリ
バットマン「違う……アレは」
266: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:50:40.26 ID:UH/q//8r0
ザザァン……ザザァン……
ドレイク「なんだいあの船……バカでかい……」
バットマン「嫌な予感がする。ドレイク、船員の戦闘をやめさせろ」
ドレイク「あ、ああ。野郎ども! 戦闘やめ! 新しい敵に備えな!」
ボンベ「あ、新しい敵って……アレですかい?」
ドレイク「……分からないよ、まだね。でも……アタシも、凄まじく嫌な予感がするよ」タラ……
マシュ「マスター、アレは……」
ダビデ「おいおい、なんだよ。自由になってそうそうにこんな……アレは何だ?」
バットマン「分からない、油断するな。ドクター、解析を」
ドクター『……今やってる。新しく現れた船にはサーヴァント反応が四つ。気を付けてくれ、とても嫌な気配だ』
267: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:51:10.14 ID:UH/q//8r0
ザザァン……ザザァン……
???「ふん、それでおめおめと逃げ帰って来たわけか」
ヘクトール「……イアソン様は厳しいねえ。けど、俺だって孤立無援の中で気ィ張りっぱなしだったんだ、頑張った方だと思うよ」
イアソン「使えんコマの癖をしやがって、口だけは達者な事だな。まあいい、使えない奴は使えないなりに後で働いでもらおう。
……ヘラクレス!」
ヘラクレス「……」ズシ、ズシ
イアソン「黒髭の船へ行け。エウリュアレ以外、皆殺しだ」
ヘラクレス「……■■■■■■■!!」ダッ
268: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:51:38.41 ID:UH/q//8r0
バットマン「!! 何か跳び上がったぞ!」
黒髭「こっちに来やがる……!」
キラークロック「……ウォォォォォォォォオオオオオオ!!!」ブ ォ ン ッ ‼
マスト「」グォォォォッ‼
黒髭「あー!! 拙者の船のマストがーー!!!」
ヘラクレス「……」ズバァッ‼
マスト「」バキャッ……バッシャァァァァァン
黒髭「うおい。マジかよ」
ヘラクレス「……!!」ドシッ‼
キラークロック「……」
マシュ「……」
バットマン「……」
ドレイク「……」
エウリュアレ「……」
269: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:52:06.80 ID:UH/q//8r0
イアソン「聞こえるか! 愚昧な者共!」
ドレイク「否定できないねえ」
ボンベ「まあしょうがねえっすよ」
ドレイク「アンタに言われたかないよ」
イアソン「今、そちらへ送り込んだのはヘラクレス! 最強の英雄だ! ソイツはお前ら全員を殺すまで止まらない! このイアソン様の足を舐めて、部下になると誓える者だけ……生かしておいてやろう!」
ドレイク「……だってさ。どうする?」
バットマン「断る」
ドレイク「だろうねえ。先手必勝!」パァン‼
270: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:52:41.35 ID:UH/q//8r0
ヘラクレス「……」パシ
ドレイク「うへえ……弾を摘み取りやがった」カチャリ
ドクター『……ブルース、あちらの船に聖杯反応だ。この海の異常は、連中によって引き起こされた可能性が高い!』
バットマン「……了解」
イアソン「馬鹿な奴等め! 力の差を分からせてやれ、ヘラクレス!!」
ヘラクレス「■■■■■■■ーーー!!!」ゴォッ
マシュ「敵サーヴァント、来ます……!」
バットマン「構えろ!」
キラークロック「ヴォオオオオオオオオオオオオオ!!!」ダッ
271: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:53:13.75 ID:UH/q//8r0
アン「そこでこそ!」ズドンズドン‼
メアリー「気配を殺してた僕達の出番ってワケさ!」ズドンズドン‼
ヘラクレス「……」ギャギャリィン‼
アン「……うそでしょう」
メアリー「ノールックガード……」
キラークロック「ガアッ!!」ブンッ‼
ヘラクレス「!!」ガシッ‼
キラークロック「……グルルルルルルルルァ!!」グググググ‼‼
ヘラクレス「■■■■■■■!!」グググググ‼
アステリオス「……はあっ!!」ブンッ
ヘラクレス「っ」シュッ、バゴォ‼
アステリオス「あうっ……」ドシャァ
キラークロック「余所見か、余裕だな」ガシ、グイッ
ヘラクレス「……!!」ズバッ
キラークロック「効くかよ!!」ドッシャァァァァァァン‼
272: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:54:05.97 ID:UH/q//8r0
バットマン「……!!」
ヘラクレス「……」グッタリ
バットマン(首の骨が折れている。……死んだか)
キラークロック「フン、雑魚が……」
黒髭「フーッ、無茶をし過ぎですぞキラークロック殿!」
キラークロック「この程度の傷ならすぐに治る……!?」
ヘラクレス「■■■■■■■ーーーーー!!!」ズバアッ‼
アン「え……?」ドシャッ
メアリー「アン!?」
273: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:54:38.16 ID:UH/q//8r0
キラークロック「バカな、確かに……」
ヘラクレス「■■■■■■■!!!」シュバ、ドゴォ‼
メアリー「がっ!?」ゴキャリ
キラークロック「クソがア!!」ブンッ
ヘラクレス「……!!」ガシ、ズバァッ
キラークロック「っがぁぁ……!?」ヨロッ
バットマン「何……!」
マシュ「キラークロックさん!!」ダダッ
バットマン「待てマシュ!」ガシッ
274: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:55:06.41 ID:UH/q//8r0
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ブォンッ
キラークロック「うぐっ……!」ドサッ
イアソン「馬鹿が! ヘラクレスは十二の命を持っているんだぞ、一度死んだくらいでどうにかなるものか!!」
バットマン「十二の命……!?」
バットマン(聞いた事はある。ライオン、暴れ牛、人食い馬、ケルベロス……神から与えられた試練をこなした英雄、ヘラクレス。どれも過酷で、並の者なら死ぬような試練ばかりだったと……)
バットマン(つまり、このヘラクレスは……あと十一回殺さねば、死なないのか?)
バットマン「……無理だ。我々の船へ戻れ、撤退するぞ!」
ドレイク「アタシもそう思ってたよ! 撤退開始!」
ダビデ「大賛成!」
ボンベ「あいあいさー!!」
275: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:55:42.21 ID:UH/q//8r0
ヘラクレス「!!」ババッ
バットマン「……!」ピタッ
ドレイク「そこを退きな!」パァンパァン‼
ヘラクレス「……」ギャギャギャンッ
ドレイク「チィーッ、ただじゃ帰らせてくれないってか!」
ヘラクレス「……ッッ!!」ダダッ
エウリュアレ「え? きゃっ……!」
276: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:56:09.33 ID:UH/q//8r0
アステリオス「えうりゅあれっ!!」ガガァン‼
エウリュアレ「アス、テリオス……」
ヘラクレス「■■■■■■■ーー!!」ゴォッ
アステリオス「ここは、通さない……!」ギャリギャリギャリギャリ
277: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:56:40.58 ID:UH/q//8r0
イアソン「さて、ヘクトール。使えんお前に仕事の時間だ。ドゥリンダナで黒髭を殺せ。そうすれば、クィーンアンズリベンジ号も消え、余計なモノは海の藻屑と化す」
ヘクトール「へいへい……」ガシャリ
ヘクトール「……」スッ
ヘクトール(黒髭サンよ、アンタに恨みはねえ。むしろここまで全く裏切る隙すら見当たらなかった、最高のリーダーとすら言えるが……ったく、こればっかりは立場を呪うぜ)
ヘクトール「『標的確認、方位角固定……』」
黒髭「……っ」ピリピリッ
黒髭(あ、これやべえ)
ヘクトール「『不毀の槍』(ドゥリンダナ)!!」ブォンッ
278: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:57:10.13 ID:UH/q//8r0
黒髭「……チッ」
黒髭(ただで死ぬかよ、クソッタレが)
黒髭「どうせ躱せねえなら……ここで一発、狙い撃ちだァ!」カチャリ
槍「」ヒュォォォォォオォォォォォォ‼
黒髭「……!!」カチッ、パァン‼
槍「」ドシュッ‼
黒髭「っぐ……」
ヘクトール「……っ」ドシュゥ
ヘクトール(へ……最後の弾丸を避けるのは、野暮ってモンだよなぁ……)フラ……
279: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:57:38.75 ID:UH/q//8r0
イアソン「何をしているんだ、本当にお前は使えん奴だな! あの程度の弾丸すら躱せんのか!!」
ヘクトール「……大技の後ってのは硬直するもんですぜ、イアソン様よ」
イアソン「口ごたえするな! ……まだ消えんのか、あの忌々しい船は!」
ヘクトール「だから、宝具の魔力は本人が死んだ後もちょっと残留するから……」
イアソン「ええい、うるさい! お前は次の宝具を放つ準備をしろ!」
ヘクトール「……ダメージも負ったんで、ちょい時間掛かりますよっと」
イアソン「使えん……使えん、使えん使えん使えん!! どいつもこいつも! ヘラクレスは何をもたもたしている!!」
280: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:58:11.42 ID:UH/q//8r0
キラークロック「……」グ、プルプル……
キラークロック(血が足りねえ。起き上がれねえ。クソ、前にもこんな事があった気がする……)
キラークロック(黒髭の野郎は何をして……ああ、やられちまったのか。……チクショウ)
キラークロック(天罰にしちゃあ、タイミングが悪すぎる……せめて……)
キラークロック(せめて、あの小娘を……逃がしてから……)プルプル
キラークロック「ッグゥ……」ドサッ
281: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:58:42.62 ID:UH/q//8r0
ヘラクレス「■■■■■■■……」ギャリィン‼
アステリオス「うあ……」ドサッ
エウリュアレ「そこ!」シュパパッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」グンッ、ドゴォ‼
エウリュアレ「きゃっ……!?」ヒュォッ
マシュ「っあぶない!」ガシッ、ゴロゴロッ
バットマン「フッ!」シュパパパッ
バットラング「「「」」」ヒュォッ
ヘラクレス「……」ギャリリリィ‼
アステリオス「よく、も、えうりゅあれを!!」ガバッ、ブォンッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ガギィ‼
282: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:59:11.92 ID:UH/q//8r0
イアソン「……あの牛の角が生えたバケモノ。さっきから目ざわりだな……ヘクトール! 宝具で殺せ!」
ヘクトール「……へいへい。でもこっから撃つとヘラクレスに当たるかもしれねえけど」
イアソン「構わん! 一度や二度くらいでは奴は死なん!」
ヘクトール「……りょーかい。『標的確認、方位角固定……』」ズォォォォ
ヘクトール(クソ、やっぱ黒髭の弾丸が痛むねえ。だから狙いが甘くなるのも仕方ねえな、うん)
ヘクトール「『不毀の槍』(ドゥリンダナ)!!」ブォンッ‼
283: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 01:59:38.54 ID:UH/q//8r0
ヒュォォォォォオォォォォォォッ
アステリオス「っ」ガバッ
ヘラクレス「!?」
ドシュッ‼
アステリオス「……あぐ……」ジリッ
ヘラクレス「■■……」ヨロッ
エウリュアレ「あっ、アステリオス……!」
バットマン(アステリオスと、ヘラクレスの胴体を……槍が貫通して……)
アステリオス「にげ、て」
284: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:00:06.03 ID:UH/q//8r0
バットマン「……!」
アステリオス「にげ、て。こいつは、くいとめるから」
エウリュアレ「なにを……何を、馬鹿な事を言ってるの! 逃げる訳がないでしょう! 一緒に……」
アステリオス「ます、たあ。おねがい。にげて」
バットマン「……!!」
アステリオス「ぼくは、だいじょうぶ。かいぶつじゃなくなって、しねるから」
キラークロック(……かい、ぶつ……)
バットマン「……すまない、アステリオス」
エウリュアレ「はあ!?」
285: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:00:34.28 ID:UH/q//8r0
バットマン「撤退しろ! ドレイク、船を移るぞ!」
ドレイク「っ、おうよ! 野郎ども、さっさと船を移りな!!」
ボンベ「で、でも姐御ォ! 牛の坊主が……」
ドレイク「さっさとするんだよ! 坊主が稼いだ時間を無駄にするんじゃない!」
エウリュアレ「嫌よ! アステリオス! このまま逃げるわけには……」
バットマン「マシュ、エウリュアレを」
マシュ「っ……はい、失礼します」ガバッ
エウリュアレ「やめて! 離しなさい! アステリオス!」
アステリオス「……」ニコリ
286: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:01:00.75 ID:UH/q//8r0
アステリオス(えうりゅあれ、なかないで。ぼくは、だいじょうぶ)
アステリオス(むかしは、みんなに、かいぶつってよばれてたけど。えうりゅあれに、あすてりおすって、よんでもらえて、うれしかった)
アステリオス(だから……だから、もう、だいじょうぶ。ぼくはもう、しねるよ)
マシュ「……っ」チラッ
キラークロック「……」フッ
キラークロック(行け、小娘。生き延びろ)
マシュ「……」
ゴゴゴゴゴゴ……ズズズズズズズズ……
287: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:01:27.24 ID:UH/q//8r0
イアソン「……フン、ようやく沈み始めたか」
ヘクトール「一応進言しときますと、あのレベルの大船が沈む時は海に大渦潮ができますから離れた方がいいかと……」
イアソン「言われなくても分かっている。おい、方向転換してこの海域を離れるぞ」
ヘクトール「ヘラクレスは?」
イアソン「奴なら後から泳いで追いつく」
288: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:01:54.78 ID:UH/q//8r0
ドレイク「出発ーーーーー!!!! 全速で渦から離れろーー!!」
帆「」バサァッ‼
バットマン「……」
黒髭の船「」ズズズズズズズズ……ズズズズズズズズ……
バットマン「……」
バットマン(あまりにも、失ったものが多い……)
エウリュアレ「アステリオス……」
289: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:02:23.90 ID:UH/q//8r0
バットマン(……だが、得たものもある)
バットマン「……」ツカツカ
ダビデ「へ? え?」
バットマン「……」ガシッ
ダビデ「うっぷ!?」
マシュ「ま、マスター!?」
バットマン「息子の事を洗いざらい吐け。ダビデ王の息子、ソロモン王の事を」グイッ
ダビデ「そ、ソロモン!? なんで今!?」
バットマン「とぼけるつもりか!?」グインッ、ドッ‼
ダビデ「ぐあ……!?」
ドレイク「おいおい! なんだ、やっと面倒が終わったと思ったらもめごとかい!?」
290: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:03:04.44 ID:UH/q//8r0
バットマン「お前の息子が、この事態を……全て引き起こしているんだ。良いか、三つ数えてやる。それまでに吐かなければ、お前もあの海の大渦の中に叩き込んでやる」
渦「」ズォォォォォォォォォオ……
ドクター『ブルースくん!? どういう事だ、なんでそんな……』
ダビデ「は、吐けって言われてもだな……なんだ、身長体重収入とかかい?」
バットマン「……1……」グイッ
ダビデ「うわっ!? 待て待て、本当に何の話か分からないんだ! 僕は息子の事にはあまり関わって来なかったし、これからもあんまり関わりたくないと思ってる! 多分ろくでなしだし!」プラァン……
バットマン「2……」グググググ……
マシュ「待って下さいマスター! 彼は無関係です!」
バットマン「……」チラッ
マシュ「……」
ダビデ「マジだよ、僕は何も知らない……落としたって何の得にもならないぞ」バタバタ
バットマン「……」ジッ……
291: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:03:44.19 ID:UH/q//8r0
バットマン「……悪かった」スッ
ダビデ「ごほっ、ごほ……ああ、全く! いきなり怒気全開で胸倉をつかんで来るんだ、死ぬかと思ったぞ!」
バットマン「少し焦っていた……」
バットマン(……自分で思った以上に、焦燥が……)
(((犠牲の上に立つのだって辛いものだよ)))
バットマン(……)
バットマン「……とにかく、すまない。平気か」
ダビデ「サーヴァントじゃなかったらとっくに心臓がとまってるよ! あーあー、今日は久々に生娘抱き枕が無いと眠れなさそうだ!」
バットマン「それは許さない」ピッピッ
292: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:04:11.75 ID:UH/q//8r0
バットマン(……ヘラクレス目掛けて投擲したバットラングに小型の接着盗聴器を混ぜた。アルゴナウタイの事情も少しは盗み聞きできるはずだ)ピッピッ、チュウィィィィィィィィィ……
ドクター『ブルースくん、さっきの……ソロモンがなんとかっていうのは』
バットマン「……何でもない。気の迷いだ」
ドクター『そうかい? それにしては随分はっきり……』
バットマン「少し疲れていた。……一度に色々な事が起こり過ぎたんだ」
ドクター『……そうか』
バットマン「そうだ。すまないドクター、盗聴器を起動させ、録音を開始してくれ」
ドクター『オッケー、了解した』
293: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:04:40.80 ID:UH/q//8r0
バットマン「……マシュ達は休んでいろ。疲れただろう」
マシュ「は、はい……あの、マスターは?」
ドレイク「おいおい、キリキリ働いてもらわないと困るよ!」
バットマン「私が後で三倍働こう。それより、今はやるべき事がある」
ドレイク「……冗談のつもりだったんだがねえ。このまま続けて何かするつもりかい?」
バットマン「この程度は疲労の内には入らない。それよりも、敵の狙いを探るのが先だ」
チュウィィィィィィィィィ……ザザッ……
バットマン(……よし、電波をとらえたぞ……!)
294: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:05:26.00 ID:UH/q//8r0
『ザザッ……ようやく帰って来たか、ヘラクレス!』
バットマン(早い……もう復活して船へ戻ったのか。これは確か、イアソンの声……)
イアソン『遅すぎるぞ! それで、あの小娘女神はどうした? 箱は?』
ヘクトール『……アイツらは逃げおおせましたよ。沈む寸前に船を移って』
イアソン『なんだと……!? ヘラクレス! 貴様、何も持たずにおめおめと帰って来たのか!』
ヘラクレス『■■……』
???『ふふ……大丈夫です。つまりこれは、「箱」と「女神」があちらの船に一緒に居るという事……襲って略奪すれば、何もかもうまくいきます』
バットマン(……誰だ、この声は……女の声?)
295: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:05:54.02 ID:UH/q//8r0
イアソン『メディア……そもそもだ。そもそも、「箱」に「女神」を触れさせれば無敵になれるというのは、本当なんだろうな?』
メディア『ああ、愛しいイアソン様……私が貴方様に嘘を吐くハズがありません。どうか信じて下さい。箱と女神が接触すれば、貴方様は真に無敵の存在になれるのです』
イアソン『……フン、そうだったな。神の操り人形になったお前が、嘘なぞ吐くはずもない。分かり切っていた事か。
おい、進路を変えろ。あの女神共を追うぞ』
ヘクトール『はあ~あ……ザザッ……ザザザザザザザザ……』
チュウィィィィィィィィィ……ブツッ
バットマン「……」
バットマン(盗聴器の電力が尽きた。が、有益な情報も手に入った)
296: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:06:29.94 ID:UH/q//8r0
バットマン(奴等の狙いは箱、そしてエウリュアレ。……『箱』とは何だ……?)
ドクター『ブルースくん、こちらでも音声を聴いてみた。恐らく、箱に関してはマシュとダビデがよく知っているはずだ』
バットマン「……本当か」
マシュ「は、はい。というか、キラークロックさん達に捕まる直前、ダビデさんから少し聞いただけですが……」
バットマン「……」
ダビデ「……櫃の事か。アレは、だな……なんというか、僕とセットで召喚されて、力を殆ど持って行かれた恐ろしいシロモノなんだが」
297: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:06:57.68 ID:UH/q//8r0
ダビデ「古代イスラエルには言い伝えがあった。アカシヤの木でできた櫃、『アーク』には決して触れてはならないと」
ダビデ「中身も伝承で伝わっているだけだ。マナを納めた壺、アロンの杖、十戒の石板。……なにしろ櫃を開けた者が居ないから、それすら本当かどうかは分からない」
ダビデ「だが、ひとつだけ、その櫃に関する真実がある。それは、触れたら死ぬという事だ。誰が触ろうと、どんな理由があろうと、どんな道具を使おうと死ぬ。災いで守られた櫃だ」
ダビデ「……だから、僕は櫃を守っていた。間違っても誰か触らないように、と」
バットマン「……」
298: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:07:23.88 ID:UH/q//8r0
バットマン「……奴らの狙いは、エウリュアレ。お前を櫃に触れさせる事らしい」
エウリュアレ「私を……? 何故?」
バットマン「そうすれば、奴らの首領……イアソンに、無敵の力が付与されると」
ダビデ「まさか。馬鹿な、そんな事はあり得ない。たとえ女神が触れようと、死んで終わりさ。魔力を全部吸い取られて昇天しちゃうよ」
バットマン「……櫃に、そのような力は無いと?」
ダビデ「無いね。召喚されたのは外面の櫃、災いの部分だけだ」
バットマン「……」
エウリュアレ「……あちらの勢力の誰かが、嘘を吐いているとか?」
バットマン「……だとすれば、何のために……」
299: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:08:37.95 ID:UH/q//8r0
バットマン「……それに、問題はそれだけではない」
マシュ「はい。ヘラクレス……ですよね」
バットマン「……十二回、殺さなければならない。キラークロックが一度、そしてアステリオスが一度。計二回削ったが……単純に計算しても、あと十の命が残っている」
エウリュアレ「……」シュン
バットマン「……」チラ
バットマン(……)フム
バットマン「……この話はまた今度にしよう。とにかく、今日はよくやってくれた……各自ゆっくり休んでくれ。ドレイク、この後少し話し合うぞ」
ドレイク「マジで? アンタ、ホントにどういうスタミナしてんだい……」
300: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:09:15.55 ID:UH/q//8r0
………………
ザザァン……ザザァン……
バットマン「……」
ドレイク「……あの時の航行速度から見て、アルゴナウタイの船がこっちに追いつくのは時間の問題だよ。どうする?」
バットマン「……」
ドレイク「……おーい、アンタ。聴いてるかい?」
バットマン「……ああ、聞いている。打開策は……考え得る限り、25通りある」
ドレイク「へえ、そんなに?」
301: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:09:47.69 ID:UH/q//8r0
バットマン「そこからギャンブルの要素を取り除いた場合、策は5つに減る」
ドレイク「ふむ……?」
バットマン「……そして、より確実な手段を取るなら、策はひとつ。つまり……全戦力で、一気にヘラクレスを潰す」
ドレイク「……まあ、確かにね。でもそれが可能かい?」
バットマン「正直に言うが、他に思いついたのはあまりに非現実的すぎる……これが一番マシだ」
ドレイク「ふぅむ……」
302: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:10:32.41 ID:UH/q//8r0
ダビデ「ヘラクレスを『櫃』に誘導して触れさせるっていうのはどうかな?」
バットマン「駄目だ。間違って我々が触れないとも限らない。それに、敵に櫃のありかを教えるような真似は絶対に出来ない」
ダビデ「まあそうですよね!」
バットマン「…………私も一瞬は考えたが。やはり、リスクが高すぎる。すまない」
ダビデ「うん……いや、そこまで傷付いてないからそんなにフォローしなくて良いよ」
バットマン「そうか」
ダビデ「うん」
303: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:10:59.54 ID:UH/q//8r0
バットマン「……恐らく、あちらの『十二回蘇る』という能力は、聖杯があるからこそ保証されている」
ドレイク「そうなのかい?」
バットマン「十中八九はそうだ。……ならば、こちらも聖杯の力を使うまで」
ドレイク「聖杯……っつうと、アタシの?」
バットマン「……ああ、その通りだ。もしもし、レオナルド」ピッピッ
レオナルド『はいはーい、レオナルド・ダ・ヴィンチちゃんですよー?』
バットマン「頼みがある」
304: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:11:33.15 ID:UH/q//8r0
………………
ザザァン……ザザァン……
エウリュアレ「……」ボー
バットマン「……ここに居たのか。明日の作戦を……」
エウリュアレ「……」
バットマン「……すまない。邪魔をした」
エウリュアレ「良いのよ。……ちょっと、そこに立ってて。聴かなくて良いけど、聞いて」
バットマン「……」
305: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:12:14.65 ID:UH/q//8r0
エウリュアレ「……前、私(ステンノ)が見た世界の中に……月に愛されて、狂った男が居たわよね」
バットマン「……」
エウリュアレ「神はそういう存在なの。誰かを愛したら、その者の人生を狂わせてしまう。だから、私、諦めて……ずっと、目を閉ざして生きてきた」
バットマン「……」
エウリュアレ「でも……でもね。今回、ようやく、見つけられたの。馬鹿で、とろくて、でも純粋で、とても……とても、優しい子を」プル……
(((えう、りゅあれ)))
(((ぼくは、えうりゅあれを、まもりたかった、だけ)))
エウリュアレ「……私、分かってたつもりだったのよ。愛したら、狂わせる。破滅させてしまうって」
バットマン「……」
306: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:12:42.19 ID:UH/q//8r0
エウリュアレ「……本当に、馬鹿よね」
バットマン「……」
バットマン「……理性と、エゴだ」
エウリュアレ「……え?」
307: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:13:10.75 ID:UH/q//8r0
バットマン「理性とエゴだ。お前は理性で愛さず、エゴで愛した。アステリオスも同じだ」
エウリュアレ「……」
バットマン「……恐らくそれは、とても大切な事なのだと思う。誰かを愛する時、人は正常では居られない。愛された者も、恐らくは……変わってしまう。そこに、人間や神といった違いはない」
エウリュアレ「……」
バットマン「……だから、……だから、お前は間違っていない。だから、アステリオスは、最期まで笑っていたのだろう」
エウリュアレ「……っ……」
308: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:13:53.66 ID:UH/q//8r0
エウリュアレ「わたし……私、あの子を、愛しく思ってよかったのかしら」
バットマン「きっと、良いハズだ。権利で生きる者は居ない」
エウリュアレ「……私、間違っていなかったのかしら」
バットマン「少なくとも、私から見れば……」
エウリュアレ「……」
309: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:14:20.66 ID:UH/q//8r0
エウリュアレ「ふ、ふふふ。貴方、変わったわね」
バットマン「……」
エウリュアレ「あはははは……そうよ、そうね。少なくとも、ああ、世界は主観的でしかないのだから……」
ツー……
エウリュアレ「……ああ、だから、アステリオス。さよなら」ポロ……
310: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:15:03.85 ID:UH/q//8r0
バットマン「……エウリュアレ」
エウリュアレ「……ええ、何かしら」クルッ
バットマン「明日、作戦を実行する」
エウリュアレ「ええ。良いわ、奴らを叩きのめしてやりましょう」
バットマン「……頼りにしている」
311: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:15:33.63 ID:UH/q//8r0
………………
ヘクトール「前方に船舶を確認! ありゃあ……あー、ゴールデンハインド号だ」
イアソン「フン、ようやく追いついたか。……ん? アレは……停泊しているのか?」
ヘラクレス「■■……」
ヘクトール「そうですねえ、島に停まってます。……待った。島の沿岸にエウリュアレを確認」
エウリュアレ「……視認されたわよ」
バットマン『了解。そのままそこで待機してくれ』
エウリュアレ「はいはい」
マシュ『今更ですけど、これ本当に上手く行きますか……?』
バットマン『……信じろ。コイツの実績は相当なものだ、改造も済んでいる』
312: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:16:02.49 ID:UH/q//8r0
イアソン「……罠か」
ヘクトール「う~ん……あんまり近寄らん方が良いだろうなあ……」ポリポリ
イアソン「フン、ならばこのヘラクレスで蹴散らすのみだ。どんな罠だろうと、吹き飛ばしてやれ!」
ヘラクレス「■■■■■■■■■■!!」ダンッ
エウリュアレ「ヘラクレスが跳び上がったわ。此方へ来る」
バットマン『了解。始動させる……マシュ、しっかり座れ』
マシュ『は、はい』
313: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:16:31.65 ID:UH/q//8r0
ドッサァァァァァァァン……
ヘラクレス「■■■■■■■……」ムクリ
エウリュアレ「こんにちは、その節は世話になったわね」
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ドスドス
エウリュアレ「ふふっ、良いわよ、もっとこちらへ来なさい……そして……」
……ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……
ヘラクレス「……?」ピタッ
314: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:17:04.32 ID:UH/q//8r0
……ゥゥゥゥゥゥウウウウウ……
ヘクトール「……? なんだこの音は……獣の雄たけびか何かか?」
イアソン「なんだというのだ、ヘラクレス! 止まらず、エウリュアレを……!」
ヘクトール「ちょい待ってくださいな、嫌な予感がビンビン……」
……ゥゥゥゥゥゥゥウウウウウオオオオオオオオオオオ……‼‼‼
ヘラクレス「……?」ジリッ
エウリュアレ「あら、貴方にも聞こえたかしら? そうね、アレは……とてつもなく悪趣味だけど、面白い形をしているわよ?」
ヘラクレス「……」
315: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:17:30.88 ID:UH/q//8r0
イアソン「ヘラクレスッ!! さっさとエウリュアレを連れてこい!!」
ヘラクレス「■■■■■■■■■!!」ドスドス
エウリュアレ「あらあら、クスクス。焦っては駄目。だって……」
グゥウウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオ‼‼‼‼
ドシュッ、ギギギギギギギギギギギギギィィィィィィィィ‼‼
ヘラクレス「!!」バッ
バットマン(遅い……!!)グイッ
ドガガガガガッ‼‼
316: ◆GmHi5G5d.E 2018/02/27(火) 02:17:59.09 ID:UH/q//8r0
ヘラクレス「……」ドシャッ、ドササササァァァ……
バットマン「……よし、これであと9度の命だ」
マシュ「こ、これ、こんなに、揺れるんですか」
バットマン「シートベルトを締めろ。これからもっと揺れるぞ」
ヘラクレス「……■■■■■■■■■!!」ムクリ
イアソン「なんだ、あの、鉄の塊は……」
ヘクトール「ううおぉ……また、なんつー戦車を……」
バットモービル「」ドドッ、ドドッ、ドドドドドドドドド……
バットマン『……覚悟しろ』
326: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:30:33.74 ID:pRO31/Br0
………………
ザザァン……ザザァン……
(化け物め! 殺せ!)
『なん、で。ぼく、なにも、してない』
(あの子が殺されたのも、あの化け物のせいよ!)
『ただ、触れようと、しただけ、なのに。かんたんに、くずれてしまう』
(生贄を捧げます。どうか鎮まり給え)
『ぼくは、いらない。いけにえなんて、いらない』
(やだ! やだあああああ!! 来るな、化け物おおおおおお!!!)
『やめて、いたい、いたい。ころさないで。ぼくは、なにも、しない』
(怪物)
『ちがうよ、ぼくは』
(お前は怪物だ)
『ぼくは、ただ』
(怪物め、死んでしまえ)
『みんなみたいに、みんなとおなじになりたくて』
(あの迷宮には近寄るな。怪物が棲んでいる)
『ただ、かいぶつを、やめたかっただけなのに』
327: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:31:10.61 ID:pRO31/Br0
ザザァン……ザザァン……
(……お前なら治療できるだろうが)
(いやぁ、でも正直拙者のこまやかな愛の対象外って言うか~)
(つべこべ抜かすんじゃねえ。オレがお前を助けたんだぞ)
(ちぇっ、強引でござるなぁ……)
アステリオス「……?」
328: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:31:44.04 ID:pRO31/Br0
アステリオス「う、うぅ」ムクリ
黒髭「あっちょっと! まだ動いたら駄目でござる!」
アステリオス「ここ、は」キョロキョロ
キラークロック「……フン、しぶとい野郎だ。生き返りやがった」
アステリオス「ここ、は……おまえ、たちは!」ザザッ‼
329: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:32:12.14 ID:pRO31/Br0
アステリオス「ここ、は、どこだ! なんで……うっ」ズキッ
キラークロック「……静かにしてろ。面倒な奴め」
黒髭「ったく、なんでキラークロック殿はイチイチこういうのを助けたがるんだか……」
キラークロック「……黙ってろ」
アステリオス「えう、りゅあれは……えうりゅあれは、どこ……」
キラークロック「無事だ。逃げおおせた。……あの偏屈コウモリ野郎のところなら、まだ安全だ」
330: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:33:00.14 ID:pRO31/Br0
アステリオス「……なんで」
キラークロック「ああ?」
アステリオス「なんで、たすけたの。ぼくは、てきだよ?」
キラークロック「……」
黒髭「そーそー! 助ける必要性皆無だったのに、なんで拙者と牛小僧をおぶって泳いできたんでござるか!」
キラークロック「……ムカついたからだ」
331: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:33:45.03 ID:pRO31/Br0
黒髭「え?」
キラークロック「ムカついたからだ。お前が」
アステリオス「……え?」
キラークロック「それだけだ」
アステリオス「……」
黒髭「……え、拙者は? 拙者はなんで?」
キラークロック「お前はついでだ」
黒髭「酷くないですかな!!??」
332: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:34:18.28 ID:pRO31/Br0
キラークロック「理由なんざ、後で考えてやる。お前はとっとと傷を治せ」
アステリオス「なおして、どうする、の」
キラークロック「悔しくないのか。あの連中はお前を見下してたぞ。取るに足らない化け物が数匹片付けられたと喜んでいたぞ」
黒髭「……」
キラークロック「……復讐だ。滅茶苦茶にしやがって。奴らはいつもそうだ……自分達と違うから、見下しやがって……目に物を見せてやる」
アステリオス「……」
キラークロック「……自分と違うモノに何が出来るのか、見せつけてやる」
333: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:34:56.34 ID:pRO31/Br0
………………
黒髭「……」ヌリヌリ
アステリオス「いたっ……」ビク
黒髭「あーあー動くんじゃねえよ、動かねえだけでだいぶマシになんだから」
キラークロック「……」
黒髭「……」チラ
キラークロック「……」
黒髭「……はぁ」
334: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:35:25.06 ID:pRO31/Br0
黒髭「んで、どうして助けたか、そろそろ教えていただけます?」
キラークロック「……何がだ」
黒髭「俺らをだよ。もう何のかかわりもねえだろ、ほっときゃ良かった。テメェだけ生き残っちまえばよかっただろ」
キラークロック「……」
黒髭「俺は船と一緒に沈んだ方が良かったぜ。船長として、船と共に最期を迎えられねえのは恥だ」
キラークロック「……下らねえプライドで死ぬのか。じゃあ今からでも遅くない、そこに海がある。溺死すりゃあいい」
黒髭「……」
キラークロック「……」
アステリオス「……」
335: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:36:03.73 ID:pRO31/Br0
キラークロック「……チャンスだ」
黒髭「ああ?」
キラークロック「チャンスだ。オレは証明がしたかった。全員に、やり直すチャンスがある事を」
アステリオス「……?」
キラークロック「……ムカついたんだよ。どいつもこいつも、満足そうな顔で、自分を誤魔化して死にやがって……」
(((だから、いつか貴方が、皆にとってのかいぶつじゃなくなった時に)))
キラークロック「……」ジャラ……
黒髭「……」
キラークロック「……オレは、まだ、怪物だ」
黒髭「……はあ? はあああ~~~~~???」
336: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:36:42.53 ID:pRO31/Br0
黒髭「何を言うかと思えば……くっだらねえ、見た目の割りに繊細なヤロウだな」
キラークロック「……何だと」
黒髭「取り繕おうとすんじゃねえっつってんだよ! 過去は変えられねえ、俺達はワルだ! この牛の小僧だって、どんだけ取り繕おうが所詮人殺しの怪物だ!」
アステリオス「……」
黒髭「……けど、それがどうしたんだ? ああ? 神サマとかいう大層立派な阿呆から見れば、俺達は皆一緒らしい。なら、あとは俺達のエゴ次第だろうが!」
キラークロック「……」
黒髭「その顔をやめろっつってんだ、ワニ男! 怪物上等、悪党上等! 俺達はどう足掻いてもワルだ、なら……だからこそ、それなりに通す筋ってモンがあるだろうが!」
337: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:37:13.86 ID:pRO31/Br0
キラークロック「……なりたくてなったんじゃねえ」
黒髭「どうせ世界は過程より結果だ、バカヤロー」
キラークロック「クソが……クソが、お前はいつか食い千切ってやる」
黒髭「ああ、俺もお前は嫌いだよ」
キラークロック「フン……」
……ォォォォォォォォオオオオオオン……
キラークロック「今の、聞こえたか」
黒髭「おう、聞こえたぜ」
キラークロック「行くぞ」
黒髭「よっしゃあ!」
340: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:39:37.72 ID:pRO31/Br0
アステリオス「……」
キラークロック「……お前はどうする」
アステリオス「……ぼく」
キラークロック「……」
アステリオス「ぼく、も、いきたい」
キラークロック「……なら、来い。連れて行ってやる」
アステリオス「うん」
341: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:40:11.36 ID:pRO31/Br0
………………
ドドドッ、ドドドッ、ドドドドドドドドド……
コンピューター『ボディ損傷率、10%』
バットマン「マシュ、集中しろ。このモービルの頑丈さはお前にかかっている」
マシュ「は、はいっ! く……」ガシャリ
レオナルド『エンジンの調子はどうだい?』
バットマン「悪くないが、音から察するに前部エンジンが少し損傷している。修理は可能か」
レオナルド『無理だね、使い捨てと割り切ってくれたまえ。一秒の稼働でも甚大な負荷がかかっている、何もしなくても走っているだけで壊れるさ』
バットマン「了解した。早期決着を試みる」カチャカチャ、カチャカチャ……グイッ
バットモービル「」ギュォン、ギュオン……グォォォォォオオオオオオオオッ‼
342: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:40:45.93 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「……■■■■■■■■■!!」ムクリ
バットマン(推察するに、奴が一度死んでから生き返るまでのタイムラグは10秒ほど。できれば反撃する暇もなく潰すのが一番だが、そう上手くもいくまい)
バットマン「……無駄な接触は避ける。ガトリング砲展開」
コンピューター『ガトリング砲、展開します』
砲台「」カパッ、ウィィィィィィ……
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ドスドス
マシュ「きっ、来てますよ!! 敵!!」
バットマン「見えている。ガトリング砲発射開始」ポチッ
コンピューター『ファイア』
ガトリング砲「」ババババババババババババババババババ……‼
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ギャリリリリリリリリリリィ‼
マシュ「ぜ、全部見切って弾いてますよ!?」
バットマン「狙い通りだ」グイッ
バットモービル「」グォォォォォオオオオオオオオッ‼
343: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:41:14.27 ID:pRO31/Br0
マシュ「あああっ、当たります! 轢いちゃいます!」
バットマン「このままだ。コンピューター、轢殺の成功率は」
コンピューター『敵、こちらを目視。体格、技術レベルから計算中……轢殺成功率、55%』
バットマン「轢いた後も射撃を続行するぞ」
バットモービル「」ギュオオオオオオオオオオッ、ガガガッ‼
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ドドッ、ゴロゴロ……
ガトリング砲「」ババババババババババババババババババ……
ヘラクレス「……」チュゥン、ドドッ、グチャチャチャチャ……
バットマン「……」
バットマン(……7、6、5……)
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ガバッ
バットマン(残り8つ)
344: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:41:42.63 ID:pRO31/Br0
イアソン「な、な、な……なんだアレは!」
ヘクトール「いや、俺に訊かれても……分かんねえとしか言えねえっつうか……」
イアソン「なんでもいい、さっさと何とかしろ! 使えん奴だな!」
ヘクトール「あいよ……」カチャリ
ヘクトール(正直、アレを吹き飛ばせる気がしねえんだけど……)
ヘクトール「『標的確認、方位角固定……』」
バットモービル「」ギュオオオオオオオオオオッ‼
ヘクトール(ち、よく動きやがる……)
ヘクトール「『不毀の槍』(ドゥリンダナ)!!」ブォンッ‼
345: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:42:09.04 ID:pRO31/Br0
ガッシャァァァァァァァ‼
バットマン「……! ヘクトールの槍か」
マシュ「きゃっ!? す、すみませんマスター、貫通されました!」
バットマン「問題無い。コンピューター、損傷率を」
コンピューター『損傷率37%。ガトリング砲破損。走行に問題はありません』
バットマン「……ドレイク、エウリュアレ。プランBを開始するぞ」ピッピッ
ドレイク『オッケー、プランBだね。野郎ども、イカリをあげろ、帆を張りな! 大砲の準備だ!』
エウリュアレ『……入るわよ、開けなさい』
346: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:42:38.97 ID:pRO31/Br0
バットマン「第二砲門、開け。ヘラクレスをその場に縫い付けろ」
ガトリング砲「」カパッ、ウィーン……ババババババババババババババババババ‼
ヘラクレス「■■……!!」ギャリギャリギャリギャリィン‼
装甲ハッチ「」プシュー……
エウリュアレ「邪魔するわよ!」ガタッ
マシュ「うわわっ、せまいですね……」ガタガタッ
バットマン「エウリュアレ、何処かへ掴まれ。飛ばすぞ」ガチャ、ガチャリ。ポチッ……グイィィィッ
347: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:43:24.65 ID:pRO31/Br0
エンジン「」ドドォッ、ドドドドドドドドォッ‼
バットモービル「」ギュオオオオオオオオオオッ‼
イアソン「なんだ、奴らめ……逃げる気か! 逃がすな、ヘラクレス! 潰せ!」
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ダッダッダッダッ
バットマン(……瞬間ブーストでも問題なく追尾してくる脚力。つくづくサーヴァントはムチャクチャだ)カチャカチャ、ポチッ
コンピューター『レーダーに飛行体を感知』
バットマン「……」グインッ
槍「」ドサァッ‼
バットマン(……加えて、ヘクトールの槍攻撃の支援は続いている。やはり、これではガトリング砲の照準もブレる……)
バットマン「……ドレイク、準備は良いか」
ドレイク『はいよ、いつでも!』
バットマン「砲撃を開始しろ」
ドレイク『野郎ども! 地獄を見せてやりな!!』
ボンベ『あいあいさー!!』
348: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:44:00.73 ID:pRO31/Br0
ドドォン……ドッサァァァァァァァン‼ ドッサァァァァァァァン‼
イアソン「!? なんだ、奴らは何をやっている!?」
ヘクトール「ありゃあ、船が戦車と並走しながら大砲を撃ってるねえ……やっこさん方、どうあってもここでヘラクレスを潰すつもりらしい」
イアソン「ぐ、ぐぬぬ……どんなに足掻こうと、所詮は猿の浅知恵だ! ヘラクレス! 戦車を潰せ!」
バットマン(……やはり、あのイアソンは自ら戦場に出る、またはヘクトールを此処に参加させて一人になる根性がない。このまま並走し続け、ヘラクレスを潰す)ポチポチッ
コンピューター『アラート。アラート。多数の飛行体を感知』
マシュ「マスター、砲弾が!」
バットマン「……ッ!」グインッ
砲弾「「「」」」ドッサァァァァァァァン‼
エウリュアレ「荒っぽい運転ね!」
バットマン「コンピューター、ヘラクレスは何処だ」
コンピューター『頭上です』
バットマン「……!!」
349: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:44:49.73 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ヒュオオォォォォッ
バットマン「くっ!!」グイインッ
バットモービル「」ギュリリリリリリリリィィィィ‼
ヘラクレス「っ!」ドッサァァァァァァァン‼
バットマン「ガトリング砲撃て!」
コンピューター『第二砲門、射撃再開』
ガトリング砲「」ババババババババババババババババババ‼
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ギャリギャリギャリギャリィン‼
砲弾「」ヒュォォォォォンッ
ヘラクレス「!?」ドグシャァッ‼
バットマン「……」
バットマン(残り、7つ……!)
350: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:45:20.97 ID:pRO31/Br0
槍「」ヒュオオォォォォッガガッ‼
バットマン「なっ……」
コンピューター『ガトリング砲、第二砲門破損。予備武装展開』
エウリュアレ「昨日準備をしたにしては、すごく武装が整ってるのね?」
バットマン「……すまない。予備武装は……」
装甲ハッチ「」プシュー……
エウリュアレ「……なんで出入口が開いたの? なんで私の椅子がせり上がっているの?」
バットマン「予備武装はお前だ。そこから弓を射るんだ」
エウリュアレ「……アナタ、後で覚えておきなさいよね」
バットマン「ムチウチに注意してくれ」ガチャ
351: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:46:04.69 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「……■■■■■■■!!」ガバッ
エウリュアレ「く……!」シュパパパパパ……
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ガキィィィィン‼
エウリュアレ「ナマイキ……!」
バットモービル「」グォォォォォオオオオオオオオッ‼
エウリュアレ「あうっ!?」ガゥンッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ドスドスドスドス‼
砲弾「」ヒュォォォォォンッ
ドッサァァァァァァァン!
エウリュアレ「全く……! 騒がしい戦場ね!」ムクッ
エウリュアレ(狙って……! 狙って、撃つ……)カチャ……
352: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:46:34.02 ID:pRO31/Br0
槍「」ドッサァァァァァァァン!
コンピューター『アラート。アラート。飛行体感知。飛行体感知』
バットマン「くっ……」グインッ、グインッ
マシュ「わ、わわわ、わわわわわ……!」ガックンガックン
エウリュアレ「ちょっと! 狙い撃ちさせる気はあるの!?」
バットマン「お前の腕による!」グインッ
エウリュアレ「……言ってくれるわね!」
バットマン「……マシュ!」
マシュ「はい!」
バットマン「エウリュアレをシールドで守れ! モービルへの加護は今は一旦良い!」
マシュ「了解しました!」
353: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:47:03.85 ID:pRO31/Br0
マシュ「失礼します!」ガバッ
エウリュアレ「……良いわよ、そのまま……」
エウリュアレ(盾のおかげで風圧も無い。砲弾も、槍も降って来ない。あるのはただ、目の前の敵と私)
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ダッダッダッダッ
エウリュアレ(……よくもやってくれたわね、アステリオスを。お返しをたっぷりあげるわ……)ググググググッ
エウリュアレ「シッ!」ヒュパゥンッ
矢「」ギュォォォォォッ、ドシュッ‼
ヘラクレス「……■、■……!?」ドサッ
エウリュアレ「……ごめんなさい、心臓を奪っちゃったかしら」フッ
マシュ「お、おおお……カッコいい……」
354: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:47:37.05 ID:pRO31/Br0
バットマン(あと6回……!)
バットマン「ドレイク、あと6回だ。攻撃の手を緩めるな」
ドレイク『あいよ! 野郎ども、気張りな! ここが正念場だ!』
ボンベ『ウッス! 牛小僧の仇、取ってやろうじゃねえか!!』
海賊達『『『オオオオオオーーーー!!!』』』
イアソン「……こ、この……! カス共が、クズ共が、ゴミ共が……!!」ワナワナ
ヘクトール「……」アチャー
イアソン「ヘラクレスッ!! 手を抜くんじゃないッ!!」
ヘラクレス「……」ピクリ
バットマン「……マシュ、エウリュアレ、戻れ……嫌な予感がする……」カチャ、カチャリ
マシュ「……」ゴクッ
エウリュアレ「……」スチャッ
装甲ハッチ「」プシュー……ガコン
ヘラクレス「……」ムクリ
355: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:48:08.85 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「……」ジリ
ドクター『……ブルースくん、ヤバいぞ。ヘラクレスの魔力が、膨れ上がって来ている……』
バットマン「……」
ドクター『仮説として、考えられるのは……十二の試練も終盤になり、何か……リミッターのようなものが、解放されて……』
バギャンッ‼
ヘラクレス「■■■■■■■■■!!」ガンッ、ガンッ、ガンッ‼
バットマン「何……!?」
バットマン(一瞬で、モービルに取りついて……)
エウリュアレ「何をしてるのっ、さっさと走らせなさい!」
バットマン「ッ!!」グインッ
バットモービル「」ギュオオオオオオオオオオッ‼
356: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:48:48.52 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ガン‼ バキ‼ バキャリ‼
バットマン「ク……振り払うために蛇行するぞ、掴まれ!」カチャッ、ポチポチポチッ、グイッ
エウリュアレ「何処に!?」
マシュ「ハッチが壊されます、壊されます!!」
バットマン「マシュ、盾に意識を集中させろ! モービルの強度を限界まで上げるんだ!」グイグイグイッ‼
マシュ「っはい!」ガシャリ
バットモービル「」ギュオオオオオオオオオオッ、グインッ、グイングイングインッ
バットマン「……!!」グイイイイイイイン……‼
マシュ「あわわわわわ……」ガックンガックン
エウリュアレ「この、ヘタクソ、二度とこんなのに乗らないわよ!」ガクガクガクガク
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ガギン‼ ガギリ‼ ドゴォッ‼
バットマン(振り払えない……!)
357: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:49:25.78 ID:pRO31/Br0
バットマン「マシュ! エウリュアレ!」
マシュ「行けます!」
エウリュアレ「ええ!」
バットマン「頼んだぞ!」
マシュ「はいッ!」
装甲ハッチ「」ゴゴン、プシュー……
マシュ「ハアッ!」ババッ
ヘラクレス「!!」バッ
エウリュアレ「そこッ!」シュパッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ガギィン‼
358: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:50:02.41 ID:pRO31/Br0
マシュ「たあっ!」ヒュンッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」バッ、ブウン
マシュ「っく……!」ガギィ‼
バットマン「……もう少し、もう少しだ……!」
ドレイク『マシュと女神サマが上に乗ってるけど、砲撃は!?』
バットマン「継続しろ! 二人共、砲弾に注意しろ! コンピューター!」
コンピューター『聴いています』
バットマン「ロケットブースターの使用可能回数は!?」
コンピューター『計算中……あと4回です』
バットマン「……燃料はできる限り温存する……!」
359: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:50:50.74 ID:pRO31/Br0
マシュ「やあっ!」ガガッ
ヘラクレス「■■……!」ガギン‼
砲弾「」ヒュオオォォォォッ
ヘラクレス「!! ■■■■■■■!!」ガッギャァァァン‼
マシュ「そこっ!」シュドッ‼
ヘラクレス「■■!?」ヨロッ
エウリュアレ「降りなさい」シュパッ
ヘラクレス「……!!」ドシュゥッ、ドッサァァァ‼
バットモービル「」グインッ、ギュゥゥゥゥン……
バットマン「よし……」
コンピューター『ボディの損傷率をチェック中……損傷率76%。次にまた大きな衝撃が加われば、走行に問題が出る可能性大』
バットマン「二人とも降りろ。次がモービルの最後の一撃だ」
360: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:51:23.29 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「……」
バットモービル「」ドドッ、ドドッ、ドドドドドドドドド……
バットマン(ヘラクレスの命はあと5つ……)カチャ、カチャリ。ポチッ
コンピューター『緊急脱出装置、準備中』
バットマン「ありがとう」
コンピューター『短いお付き合いでした』
バットマン「……悪くない働きだった」
コンピューター『それはどうも』
ヘラクレス「……■■■■■■■■■!!」ムクリ
バットマン「行くぞ、ロケットブースターを作動させろ!」グイン
コンピューター『了解。ロケットブースター作動』
バットモービル「」グォォォォォォオ……ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオッ‼
ヘラクレス「■■■■■■■■■!!」バッ
バットマン「……!!」ポチッ
コンピューター『グッバイ』
バシュゥッ
361: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:51:54.17 ID:pRO31/Br0
バットモービル「」ゴッシャァァァァァァァァァ……ゴアンッ、ゴアン……
バットマン「……」バッ、バサササササササ……スタッ
マシュ「無事ですか、マスター!」
エウリュアレ「ふん、しぶといのね」
バットマン「まだ終わっていない。ヘラクレスの命はあと4つだ」
ゴアン、ゴアン……ガシャリ、ドス、ドス
ヘラクレス「……■■……!!」ドス、ドス
バットマン「……」
エウリュアレ「……」
マシュ「……」
362: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:52:23.19 ID:pRO31/Br0
イアソン「は、はは、ははは……!! カス共が、いくら無い知恵を絞ったところで……ヘラクレスには勝てんッ!! 見ろ!」
イアソン「あの妙な戦車も破壊されたッ!! ヘラクレスの命はあと4つも残っている! あーはははははは!! 楽しませてもらったぞ、ゴミ共!!」
ヘクトール「……一応、俺も加勢に行った方が良いんじゃ……」ポリポリ
イアソン「馬鹿め、お前が居なくては誰がこの俺を守る? メディアのような貧弱な女では無理だ」
メディア「……」ニコニコ
ヘクトール「……」ポリポリ
バットマン(……さて、どう動くか……)
マシュ「マスター、下がってください……危険です」ジリッ
エウリュアレ「……」ググッ
ヘラクレス「……」
363: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:52:56.07 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「■■■■」スッ
エウリュアレ「……?」ジリッ
バットマン(なんだ……? 今まで、片手で構えていた大剣を……両手で、構えた……?)
ヘラクレス「■、■、■」ジッ
マシュ「……!!」
マシュ(本能が警鐘を鳴らす。アレは何度も、自分が体験してきた感覚……それまで力押しだった構えに、明らかな違いが生まれている……!)
マシュ(アレは、技術の、芽吹き……!)ゾワッ
ヘラクレス「……」ダンッ
マシュ「ッエウリュアレさん下がって!!」ババッ‼
ガッギャァァァァァァァァァ‼
364: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:53:37.74 ID:pRO31/Br0
ドクター『ブルース! 危険だ! ヘラクレスの魔力がなおも増大して……』
バットマン「マシュ!」
マシュ「あああああああ!!」ガギィン、ギャリィ、ガガッ‼
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ブン、ブォンッ、ダッ
マシュ「くっ、マスター! エウリュアレさん! 支援をお願いします!」ジリッ、ダダッ
バットマン「シッ!」シュパッ
エウリュアレ「そこ……!」ヒュパパパパパッ‼
矢「「「」」」ギュゥゥゥゥンッ
バットラング「」シュンッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」グルッ、ギリリリリリリィン‼
バットマン(……! たった一閃で弾いた!?)
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ダンッ
バットマン「!!」
マシュ「行かせないッ!!」ガギィ‼
365: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:54:04.99 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「……!!」ググググググッ
マシュ「……!!」ギリギリギリギリ……!
マシュ(猛獣を相手にするのとはわけが違う。これは、命を懸けた戦士のやりとり……!)グググググ……
ヘラクレス「……!」グオッ
マシュ「なっ……」ヨロッ
マシュ(しまった、引き込まれ……!)
ヘラクレス「……」ブンッ
バットマン「させるか……!」シュパッ
ヘラクレス「■■ッ!」ギャリィンッ
エウリュアレ「かかったッ!」シュパパッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ドシュシュゥ、ドサッ
366: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:54:37.76 ID:pRO31/Br0
バットマン(ヘラクレスの命、あと三つ……!)
ヘラクレス「……■■■■■■■■■!!」ムクリ
バットマン「蘇生までの時間も短くなっている……! マシュ、まだいけるか!」
マシュ「はい!」
エウリュアレ「ふぅっ、働かせてくれるわね!」
ヘラクレス「……」グム、グムグムグム
バットマン(……?)
367: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:55:04.91 ID:pRO31/Br0
イアソン「ハーハハハハハ! 馬鹿共め! とうとうヘラクレスを本気にさせたな!」
ヘクトール「こりゃ、やべえな。船をちょっとでも島から離した方がいいんじゃないですかい?」
イアソン「必要ないッ! 虫けら共が潰れる様を見ていてやろう!」
バットマン「不味い、何か来るぞ……!」
ドクター『魔力反応、急激に増大! ヘラクレスの宝具が来るぞ!』
バットマン「……!! マシュ、『令呪を以て命ずる』!! 宝具を解放しろ! エウリュアレ、下がれ!」
エウリュアレ「ええ!」
マシュ「っはい!」
マシュ(ブーディカさんは居ない、私の盾を支えてくれる人は誰一人いない……! それでも、やらなきゃ!)
368: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:55:40.17 ID:pRO31/Br0
マシュ「真名、偽装登録……!」
マシュ(私が、私がやらなきゃ……!)
パシ
マシュ「……?」
バットマン「一緒に支えるぞ、離すな……!」
マシュ「……! はい!」ガシャリ
マシュ(……そうだ、一人じゃない……! 信じて、戦うんだ!)
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ググググッ、ダンッ‼
マシュ「『ロード・カルデアス』!!」ギュオオオオオオオオオオオ‼
369: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:56:10.78 ID:pRO31/Br0
ヘラクレス「■■!」ギャリィ‼
マシュ「っ……」ギギッ
ヘラクレス「■■■■!!」ギャリィ、ガァン‼
マシュ「く……!」ジリジリ
ヘラクレス「■■■■■■■■■■■■■■!!」ギャリィ‼ギュリィ‼ギィン‼ギャガァン‼バギィ‼ドゴォッ‼
マシュ「おも、い……!」グググググ
バットマン「……諦めるな……いつか終わる……!」グググググ……!
ヘラクレス「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ……
バットマン「う……うぐ……」ヨロ
マシュ「……あああああああ!!」ググググググググ‼
370: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:56:48.78 ID:pRO31/Br0
ゴォォォォォォォ……
マシュ「……っはあ、はあ……!」シュゥゥゥゥゥウウウウ……
バットマン「……っぐ……」ドサッ
ヘラクレス「……」ドシ
エウリュアレ「良い余興だったわよ、勇者(ヘラクレス)。そしてよくぞここまでの力に至ったものです」
ヘラクレス「……」
エウリュアレ「ええ、私も閉ざした目を開く時が来た……!」
マシュ「……えうりゅあれ、さん……?」
エウリュアレ「離れていなさい。放つわ……『女神の視線』(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ)!!」ギュドォッ
ヘラクレス「ッ」ギュガガガッ、ドッサァァァァァァ……
371: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:57:19.57 ID:pRO31/Br0
マシュ「や……やった、やりました!」
エウリュアレ「ふっ、こんなものよ」
マシュ「やった……って、そうだマスター! マスター、ご無事ですか!」ガバッ、ユサユサ
バットマン「う……あ、ああ、無事だ、少し気を失っていただけだ……」
マシュ「やりました、私達、ヘラクレスを……!」
バットマン「……っ、マシュ! 伏せろ!」
マシュ「え?」
ドゴォッ‼
372: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:57:49.49 ID:pRO31/Br0
マシュ「あぐっ……」ドササササァァァ
エウリュアレ「なっ……」
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ドッゴォ‼
エウリュアレ「うっ!?」ドシャアッ、ゴロゴロ……
バットマン「マシュ! エウリュアレ!」
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ゴォッ
バットマン(しまった、宝具を防いで油断したか……! 奴にはまだ、二つの命が残っている!)
373: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:58:17.45 ID:pRO31/Br0
マシュ「……」
エウリュアレ「……」
バットマン(……二人共、動かない……)
バットマン「……」ジリッ
バットマン(私も、下手には動けない……動作ひとつが、死に直結する)
ヘラクレス「……」ドス、ドス
ドレイク『……ブルース』
バットマン「撃て!」ダッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ダダン‼
374: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:58:49.04 ID:pRO31/Br0
イアソン「ひゃははははははは!! 虫けらが、一匹になった途端に逃げ始めやがった!」
ヘクトール「……」ジッ
ヘクトール(いや、アレは……)
砲弾「」ヒュォォォォォンッ、ドッサァァァァァァァン……
バットマン「くっ……」ダダダッ
ヘラクレス「■■■■■■■!!」ガシッ、ブォン‼
バットマン「ぐああ!?」ドッサァァァ、ゴロゴロッ
ヘラクレス「……■■!」ドシ、ドシ
バットマン「く……ぐ……」
バットマン(もう少し、もう少しだ……!)
砲弾「」ヒュオオォォォォッ
ドッサァァァァァァァン‼
ドレイク「何やってんだい、しっかり狙いな!」
ダビデ「そうは言ってもだな……!」ゴロゴロ、ガチャリ
375: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 02:59:28.12 ID:pRO31/Br0
砲弾「」ヒュォォォォォンッ、ドッサァァァァァァァン……
バットマン「……もう少し……」ジリ、ジリ……
ヘラクレス「……■■■■■■■■■■■■■!」ドスドス、ガシ
バットマン(ここだ!)
バットマン「コンピューター!」ガバッ
バットモービルの残骸『聴いています』バチチッ
バットマン「燃料も使って自爆しろ!」
バットモービルの残骸『喜んで』バチバチ、ギュィィィィィィィィッ
ドガァァァァァァァァァァァァッ‼
ヘラクレス「■■■■■■■!?」ゴォッ、ドッシャシャシャシャシャシャ……
376: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 03:00:15.17 ID:pRO31/Br0
バットマン「く……」ゴォォォォォ……ピタッ
バットマン(……これで、ヘラクレスの命は、残りひとつ……!)
ドゴッ
バットマン「っぐ……!?」ドサァッ
ヘラクレス「■■■■■……」ユラユラ、ガシッ
バットマン「が……」ギチッ、ギチギチ
バットマン(そんな、馬鹿な……蘇生が早すぎる……!)
通信機『ザザッ……ブルース、ブルース!』
377: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 03:01:04.99 ID:pRO31/Br0
ドレイク「砲手! 何ちんたらやってんだ、アイツが死んじまうよ!」
ダビデ「待て……今撃つ」シュッ、シュゥゥゥゥゥゥゥ……ドドォン‼
砲弾「」ヒュォォォォォンッ、ドッサァァァァァァァン……
ドレイク「馬鹿! 外しっぱなしじゃないか! お前に砲手を任せたブルースがどうかしてたんだ!」
ダビデ「……」
ダビデ「……いいや、彼の計算通りさ」ガチャリ
ドレイク「はあ!?」
ヘラクレス「■■■■■■■……!」ギチギチギチギチギチ……
バットマン「あ……あが……ぐ……」ガシ、グググググ……
バットマン(……視界が、ぼやけ……狭くなって……)
砲弾「」ヒュォォォォォンッ
ヘラクレス「■■■、」ドガァッ、ドササササァァァ
バットマン「っげほっ、ごほ……」ドサッ
378: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 03:01:46.12 ID:pRO31/Br0
ダビデ「いやー当たった当たった! うん、絶好調だな!」
ドレイク「な、何ィーッ!? さ、最後の一発だけ側頭部に大当たりかましやがっただってえ!? どんな手品を……」
ダビデ「いやあ、ゴリアテの逸話、知らない? 僕は石を五個投げて、四個外れたけど最後の一つがゴリアテの急所にクリーンヒットしたっていう話」
ドレイク「……そういや、聞いた事があるような」
ダビデ「うん、今日の僕も逸話通りで大変結構だね!」
バットマン「……っく、ごほ……」ムクリ
バットマン「……マシュ、起きろ。エウリュアレ」ザシザシ
マシュ「う、うぅ……マスター?」
エウリュアレ「くっ……ちょっと動けないわね……」ピクピク
バットマン「負ぶってやる。次はアルゴナウタイの船だ、行くぞ」
ヘラクレス「……」シュウシュウ……シュゥゥゥゥゥゥゥ……
379: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 03:02:13.19 ID:pRO31/Br0
イアソン「ヘラクレスが……うそだ、ヘラクレスが負けるハズがない……」
ヘクトール「どうします? アイツら、こっちに来てますけど」
イアソン「あ……ば、馬鹿共! なにをぼさぼさしている、ここから離れるぞ! 策を練り直す!」
舵手「……? だ、駄目です!? 船が進みません!!」
イアソン「進まないだと!? 何を言っている、何が原因だ!」
舵手「分かりません! これは……船の下で、何かが進行を止めているとしか……」
イアソン「……なんだと……?」
380: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/01(木) 03:03:26.04 ID:pRO31/Br0
ドレイク「ようやく追い詰めたよ、クソ野郎どもめ……」
ボンベ「どうします、姐御?」
ドレイク「接舷させな。……海賊の本領発揮だよ!」
ボンベ「あいあいさー! 野郎どもォ、海賊稼業のお手本を見せてやれェ!」
海賊達「「「ウッス!」」」
イアソン「クソ、クソ、クソ……どれもこれも皆、お前が無能なせいだぞ!」
ヘクトール「ええ、俺? ……いや~まあ、否定はしねえけど……それより、船の下。もっと警戒した方が良いぜ」
イアソン「何を言って……」
バッシャァァァァァ……
ガシ、ガシ、ガシ……ドスッ
キラークロック「……よう、また会えたな……お待ちかねの怪物だぜ」ズ、ズ……
黒髭「呼ばれて飛び出てーってヤツでござるぞ! 槍の返却サービスでござる、今なら弾丸のおまけつき」
アステリオス「……こん、にちは」
イアソン「あ……ああ……ヘクトール! 殺せ!」
ヘクトール(……どう考えても、殺されるのは俺らでしょ……)ポリポリ
メディア「……」ニコニコ
398: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:40:26.56 ID:4nPBd23Q0
………………
所詮、もがいても報われない。
所詮、手を伸ばしても届かない。
大切な記憶は、ウロコの海へ飲まれて行く。思い出せるのは、自分が怪物という事くらい。
鏡を見れば、鋭い牙が映る。身体を見下ろせば、硬いウロコが目に入る。
何を間違ったのだろうか。前世で大罪でも犯したのか、それとも生まれたのがそもそもの間違いだったのか。
何処かで聞こえた声。お前なんか産まれなければ良かった。怪物。悪魔の子。気持ち悪い。早く死ね。
何を間違ったのだろうか。オレも自分を誤魔化して、周りにヘコヘコしていれば良かったのだろうか。牙を折り、ウロコを剥ぎ、痛みを隠して笑みを浮かべれば、それで普通になれたのだろうか。
(((だから、いつかあなたが、皆にとってのかいぶつじゃなくなった時に)))
クソくらえだ、盲目のカス共め。オレを見ろ。オレは……
所詮、もがいても報われない。
所詮、手を伸ばしても届かない。
大切な記憶は、ウロコの海へ飲まれて行く。思い出せるのは、自分が怪物という事くらい。
鏡を見れば、鋭い牙が映る。身体を見下ろせば、硬いウロコが目に入る。
何を間違ったのだろうか。前世で大罪でも犯したのか、それとも生まれたのがそもそもの間違いだったのか。
何処かで聞こえた声。お前なんか産まれなければ良かった。怪物。悪魔の子。気持ち悪い。早く死ね。
何を間違ったのだろうか。オレも自分を誤魔化して、周りにヘコヘコしていれば良かったのだろうか。牙を折り、ウロコを剥ぎ、痛みを隠して笑みを浮かべれば、それで普通になれたのだろうか。
(((だから、いつかあなたが、皆にとってのかいぶつじゃなくなった時に)))
クソくらえだ、盲目のカス共め。オレを見ろ。オレは……
399: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:41:14.54 ID:4nPBd23Q0
………………
ドクター『待った、アルゴナウタイの船の上に新たな反応を確認!』
バットマン「解析を頼む」
ドクター『……これは、黒髭とキラークロック、そしてアステリオスくんのものだ!』
エウリュアレ「……アステリオス?」ピクッ、モゾモゾ
バットマン「まだ動くな、傷は深い」
エウリュアレ「馬鹿ね、もう半分治ったわよ。それで、アステリオスというのはどういう意味かしら?」ヒョコ
ドクター『恐らく彼は生存したんだ。向こうの船に乗って……今、戦っている』
バットマン「……急ごう」スタスタ
マシュ「ま、マスター。休息は……」
バットマン「後で取ろう。今はアルゴナウタイが先だ」
400: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:41:55.55 ID:4nPBd23Q0
………………
ヘクトール「ほっ、そぉらっ!」ダッダッ、シュバッ
ヘクトール(うーん、こりゃ無理だ。いくら防衛戦が得意とはいえ……)
キラークロック「グルルルルルルァ……」ガシッ、ブォンッ
大砲「」ゴゴォッ
ヘクトール「うっお!?」ガギャァ、ドッシャシャ
黒髭「へいへーい! ピッチャービビってるゥ!」パァンパァン
ヘクトール「ぴっ……?」ガキィ、ガガァン
アステリオス「うるあああああっ!!」ドゴシャァッ‼
ヘクトール「うおっち!?」ガッシャァァァ、ゴロゴロッ
イアソン「馬鹿が! 何をしている! 本当にお前は使えん奴だな……」
メディア「……」ニコニコ
イアソン「……メディア、ヘラヘラするな! お前も戦え!」
メディア「はい」ニコニコ
401: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:42:25.41 ID:4nPBd23Q0
バットマン「船へ上がるぞ、掴まれ」シュポッガシッ
マシュ「はい」ギュッ
エウリュアレ「……」グッ
バットマン「フッ!」ギュル、ギュル、ギュル、ギュギュ……
マシュ「……いつもより上昇が遅くありませんか?」
バットマン「総重量がオーバーした。少し遅れる」ギュ、ギュギュ……ギュルギュル
マシュ「へ!? そ、そうですか……」カァァ
バットマン「……?」
エウリュアレ「……貴方ねえ、乙女相手に……言葉を選びなさいよ」
バットマン「? ……三人の上昇は流石に想定されていないだけだ。引き上げサポート付きならもっと速く上がる」
マシュ「い、いえ、気にしていませんので……」
バットマン「……次はアップグレードさせておく」ギュル、ギュル、ギュギュ……
エウリュアレ「……」ハァ
402: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:42:56.47 ID:4nPBd23Q0
メディア「どれほど傷付いても、癒してさしあげます……」ポゥ
ヘクトール「……はいよ、ありがとさん。それじゃあもうちょっと頑張るかね……」ムクリ
キラークロック「なら、一撃で潰す……」ドシドシ、ブォンッ
ヘクトール「っとぉ! 迂闊な一撃だな……貰ったァ!」ズバァッ‼
キラークロック「グルゥ……」ヨロ
黒髭「ホヒョーッ!」ババッ
ヘクトール「おっと、行かせねえぜ!」ガギィン‼
黒髭「そのメディアとかいう女が生命線ですな? ならば最初に潰すべし!」
ヘクトール「できるならヨロシクってとこだな!」グイッ
黒髭「是非とも!」バッ、ドゴォ‼
ヘクトール「ほっ!」バシィ
403: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:43:54.80 ID:4nPBd23Q0
スタッ
バットマン「……」
マシュ「到着です!」
エウリュアレ「……アステリオス、アステリオス!!」
アステリオス「……えう、りゅあれ」
ヘクトール「やべえ奴らまで来やがった……!」
メディア「……」ジッ
メディア(近くで見ればより分かる。油断ならない目付き……やはり間違いない。あの方が警戒するよう仰っていた存在)
イアソン「クソ、クソ、クソがあ!! 何もかも上手く行かん……! 何故だ、何故だああああああああ!!!」ダンダン
404: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:44:38.57 ID:4nPBd23Q0
バットマン「降伏しろ。勝敗は決した」
イアソン「降伏……降伏だと、馬鹿め! こちらにはこれがある!」バッ
聖杯「」カッ
イアソン「貴様らなど! 聖杯の絶大な魔力の前には、ごみ屑同然だ! 塵と消えろ!」
影A「……」ズォォォッ
影B「……」ムクリ
影C「……」ドス、ドス
影D「……」ユラリ
バットマン(シャドウサーヴァント……)
バットマン「マシュ、エウリュアレ。やれるな」
マシュ「はい!」
エウリュアレ「任せてちょうだい!」
405: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:45:04.57 ID:4nPBd23Q0
マシュ「たあっ!」シュドッ
影A「……」ヨロッ
影B「!!」ブゥン‼
マシュ「はっ!」ガキィン‼
影C「……」シュッ
マシュ「……! しまっ」
キラークロック「グルォォォォォォオ!」ガシッ、グッシャァァァァァ‼
影C「……」ドサッ
マシュ「キラークロックさん!」
キラークロック「いつまでたっても甘い小娘だ!」
406: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:45:31.70 ID:4nPBd23Q0
アステリオス「うるああああ!!」ドッシャァァァァ‼
影E「……」ガギィ、ババッ
アステリオス「らあっ!!」ブンブンッ
影E「……」ガシ、シュドッ
アステリオス「っぐう……」ジリッ
エウリュアレ「そこ……!」シュパッ
影E「!?」ドシュウ、バタッ
アステリオス「……えう、りゅあれ」
エウリュアレ「余所見をしない! まだ来てるわよ!」
影F~H「「「ッ!!」」」ババッ
407: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:46:13.63 ID:4nPBd23Q0
イアソン「はは、ふはははははははは!! 下らん、このまま影が制圧しつくして……!」
ドレイク「野郎ども!! 向こうの船を乗っ取りなァ!!」
海賊達「「「あいあいさー!!」」」ドドドドドドドドッ‼
イアソン「なっ……屑以下の連中め、この俺の船に土足で……! クソ、聖杯!」
聖杯「」パァァァァァァ
イアソン「もっとだ、もっと力を出せ! 奴らを殲滅……!」
バットマン「……そうはさせない」バサササササ、スタッ
イアソン「なんだ……! なんだ、貴様は!」
バットマン「私の名など知らなくとも良い。貴様が生み出した影のひとつだ」
イアソン「こ、この……!」ブンッ
408: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:46:57.47 ID:4nPBd23Q0
バットマン「……」スッ、グルリ、パシ
イアソン「なっ」
バットマン「いくら素早かろうと、いくら力があろうと……そこに技術が無ければ、所詮は児戯」ゴキリ
イアソン「ぐああああああああ!?」バッ、フラフラ
バットマン「……ブーディカを殺した報いは受けてもらうぞ」ジリジリ
イアソン「ブーディカだと……!? 知らんぞ! 知った事か! 屑が何人死のうと、俺には関係ない!!」ブォン‼
バットマン「……」スッ、シュルッ、ゴキリ
イアソン「あが……!?」ヨロヨロ
バットマン「……さあ、両肩の骨は外した。まだ使える部位はあるか?」
イアソン「嘗めるな……!」ダン、ズォッ
バットマン「そうだろう、蹴りだ」スルリ、ゴキッ
イアソン「ひっ……」ドシャッ
バットマン「もう片足も残っているな。その骨も外す」シュルシュル、ゴキリ
イアソン「ぐあああああ……や、やめろ! 欲しいモノならやる! 聖杯か! くれてやる!」
バットマン「……責任者には一通りの責任を取らせる。当然だ」ガシッ
イアソン「ひ、ひぃっ……」
メディア「……」ニコニコ
バットマン(……!!)ゾワリ
409: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:47:47.48 ID:4nPBd23Q0
バットマン「ッ!!」ババッ
メディア「あら、終わりですか? もっと痛めつけても良かったんですよ?」ニコニコ
イアソン「め、メディア! 貴様、見ていて助けなかったな!? 愚図め、早く俺を治療しろ!」
メディア「……」ニコニコ
バットマン「……お前は何だ……」
メディア「私はメディア。魔女メディア」
バットマン(メディア。確か、神アフロディテによってイアソンに恋をさせられた、コルキスの姫……だが、肝心のイアソンに裏切られ、離別)
バットマン(……少なくとも、狂気の姫ではなかったハズだが……この目は、明らかにおかしい)
メディア「……」ニコニコ
バットマン(……)
410: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:48:57.41 ID:4nPBd23Q0
メディア「……ふふ、面白い人ですね。本当に笑わない、何一つ感情を表に出さない……」
バットマン「……」
メディア「本当に……まだ、冷たい雨の中に居るみたい」
バットマン「……どういう事だ。何故知っている」
メディア「あの方は何でも知っていますよ? 私の過去、貴方の過去、人類の過去……愚かな軌跡を」
バットマン「あの方だと……」
メディア「貴方はもう知っていますよね? ふふ……そうです。圧倒的な力を持つ、あの方」
イアソン「くそ、何を言っている!? さっさと俺を治せ、でなければ船が制圧されるぞ!」
メディア「もう遅いですよ、イアソン様。見て下さい、甲板に居る8割が敵の海賊達……きっと彼らは、私達を切り刻むでしょうね。痛みを想像するだけで、身の毛がよだちます」
イアソン「クソ、クソ、クソォ! 使えん奴らめ、使えんカスめ……!」
メディア「……ふふ」
411: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:49:37.36 ID:4nPBd23Q0
ヘクトール「チ……限界か」シュウシュウ……
黒髭「ほい、お疲れさん。……次はもっとマシな形で会いたいモンだぜ」
ヘクトール「まーそうだね、おじさんもそう思う……にしても、やっぱり最後に残るのはメディアか。やっぱりオンナは怖いねえ」シュウシュウ……
黒髭「……うーむ、それについては否定できませんな。怖いオンナは多いですぞ」
ヘクトール「ははっ……それじゃ、一足先に失礼しますよ」シュゥゥゥゥゥゥゥ……
黒髭「はいはい。拙者もすぐに行きますぞ」
キラークロック「グルルルルルル……」
影W「……」シュゥゥゥゥゥゥゥ……
マシュ「はあっ、はあ……」
影X「……」ドシャッ
アステリオス「やっ、た……」
エウリュアレ「少し、きついわね……」ヨロ
アステリオス「っ、だいじょうぶ?」ガシ
エウリュアレ「……ええ、平気よ」
412: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:50:06.88 ID:4nPBd23Q0
メディア「……」パシッ
聖杯「」パァァァァァァ……ピタッ
イアソン「は、はやくしろ。死んでしまうぞ」
メディア「……」
イアソン「メディア! 貴様、使えんだけでなく耳まで聞こえなくなったのか! 早く! 俺を! 治せ!」
メディア「……ふふ、ふふふふふ。大丈夫ですよ、イアソン様。どれだけ痛くても、治してあげます」ドシュッ
バットマン「!?」
イアソン「あ……がはっ……なに、を……」プルプル
413: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:50:34.76 ID:4nPBd23Q0
メディア「本当の私はずっと昔に殺されている。イアソン様に恋をする呪いを神々にかけられた時から、私はずっと死んだまま」
メディア「愛しています、イアソン様。心の底から、殺したいほど。心が壊れてしまうほど」
メディア「……だから、復讐します。私を殺した世界に復讐するのなんて、当然ですよね?」
メディア「ああ、イアソン様、痛いですか? 痛いですよね? でも大丈夫です。すぐに治します」
メディア「治して、殺します。私、アナタのために魔女になったんですから」
414: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:52:09.72 ID:4nPBd23Q0
イアソン「き、貴様……初めからそのつもり、だったんだな……!」
メディア「初めから……?」
イアソン「女神を櫃に触れさせれば、無敵になれるというのも……全て嘘っぱち、だったんだろう!」
メディア「ああ、イアソン様……貴方に嘘など吐きません。この不安定な世界の中、女神などという大きな存在が櫃に触れ、消滅すれば……その消滅は、世界を巻き込む。この世界が消える。人類が消える」
メディア「ほら、敵が居なくなるでしょう? 貴方は無敵の存在になれた」
イアソン「こ、この……! 魔女め! お前は嘘つきの魔女だ! 化け物め! 怪物め!」
メディア「……そう呼ばれるのも、初めてではありません」ニコリ
バットマン「……そいつを離せ、メディア」
メディア「ふふ、断ります。敵を気にかけるなんて、本当におかしな人……」
バットマン「離せ。聖杯を渡せ」スッ
メディア「断ります」ニコ
415: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:52:45.63 ID:4nPBd23Q0
メディア「イアソン様を触媒に……もう、召喚しています」
バットマン「……何だと」
イアソン「ひっ……い、いやだ! 助けて、助けてくれ!」
バットマン「……」ジリッ
イアソン「俺はッ、俺はまだ何も成し遂げていない! 俺は今度こそ、誰もが俺を敬い、満ち足りて争いの無い、理想の国を作るハズだったんだ! これは俺の、二度目のチャンスだったはずなんだ!!」
メディア「……それは叶わない夢なのです、イアソン様。だってアナタには為し得ない」
メディア「アナタは理想の王にはなれない。たとえ人々の平和が手に入っても、また自分の手で壊してしまう。アナタの魂は、運命は、絶望的なまでにねじ曲がっているから」グチャッ
イアソン「ひっ……何する、やめろ、やだ、身体、溶ける……!?」グチャ、グチャチャチャ……
メディア「聖杯よ。我が願望をかなえる究極の器よ。
顕現せよ。牢記せよ。これに至るは七十二柱の魔神なり」
バットマン(七十二……魔神……!)
バットマン「全員構えろ! 来るぞ!!」
416: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:53:24.26 ID:4nPBd23Q0
イアソン「が、ぎ、が、あ、ぎいいいいいいいいいいいいいいい!!」グチャチャチャチャチャ
メディア「……戦う力を与えましょう。抗う力を与えましょう。ともに、滅びるために戦いましょう」
メディア「さあ、序列三十。フォルネウス。その力を以て、アナタの旅を終わらせなさい」
イアソン?「あ……が……」グチャチャチャチャチャ……ズオオオオオオッ
マシュ「あ……に、肉が、盛り上がって……柱のように……」
バットマン「……古代ローマで観測したものと同じか……!」
ドクター『魔神……! これで二柱目か……! 本当に居るのか、そんなものが……!』
417: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:53:52.86 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「……」ズォォォォ……
ドレイク「アレ、倒せんのかい?」
バットマン「……以前戦った時は、物理攻撃も通用した。だが、あの時は弱っていたと……」
ドレイク「よっし、それならやるしかないねえ! おい野郎ども! ここが意地の見せ所だ、悪魔なんぞに負けられないよ!」
ボンベ「ひゃっはー! これだから海賊はやめらんねえぜ!」
ドレイク「ほら、ブルース、マシュも! しっかりしな、これをブッ倒すためにやってきたんだろ!?」
バットマン「……ああ、その通りだ。行くぞ、倒す!」
マシュ「はい!」
エウリュアレ「ええ!」
418: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:54:22.67 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「消滅を提案する」ドドドドドッ
マシュ「っあ……ぶない!」ガギャギャギャ‼
キラークロック「ヴォオオオオオオオオオオオオ!!」ドスドス、ガシッ
フォルネウス「無意味なり」ドォッ‼
キラークロック「ッ……」バシィ
エウリュアレ「そこ!」シュパパッ
フォルネウス「動体、発見」ガキィン
マシュ「くっ、歯が立たない……!?」
フォルネウス「聖杯の使い方も知らぬ下等生物。我が力の前にひれ伏すが良い」
バットマン(やはり、前の個体と比べて隙が少ない……あの時のレフの言葉は強がりでは無かったか)
バットマン(……だが、船上に出たのが運の尽きだ)
419: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:54:50.40 ID:4nPBd23Q0
アステリオス「……うるあああっ!!」ガギィ、シュバッ
フォルネウス「無意味である……すべての行為は」ユラ、ドドドドドドドドッ
黒髭「ほれほれぇーい! ホヒョーッ!!」バシッ、ドゴッ
フォルネウス「……」グラッ
メディア「『補修すべき全ての疵』(ペインブレイカー)」ポゥッ
フォルネウス「……無益である」ポゥゥゥゥッ
マシュ「くっ、与えた傷が治っていく……」
キラークロック「なら、先にあの女を殺す」ドシドシ
420: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:55:20.01 ID:4nPBd23Q0
メディア「……」
キラークロック「……」ガシッ
メディア「……」プラァン……
キラークロック「……?」
キラークロック(なんで抵抗しねえ……?)
メディア「殺さないのですか?」
キラークロック「……ナメるな」ギチギチギチ……
フォルネウス「……」ドドドドドドドドッ
キラークロック「チイッ」バシィ
メディア「っ」ドサッ
黒髭「ちょっとキラークロック殿、手ぬるいのでは~!?」
キラークロック「うるさい。次は殺すだけだ」ドスドス
フォルネウス「……無意味、である」ドドドドドドドドッ
キラークロック「クソが……」ババッ
421: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:55:56.39 ID:4nPBd23Q0
黒髭「いまいち火力が足りないでござるな……」
砲弾「」ヒュオオォォォォッドッガァァァァァァァ‼
フォルネウス「ぐ……」グラリ
ドレイク「ハッハー! 喰らいな!」パァンパァン‼
黒髭「って言った途端にこれでござる」
ダビデ「よーし、あんなデカい的は外す方が難しいね。皆、どんどん撃っちゃえ」
海賊達「「「おおーーー!!!」」」ガチャガチャ
フォルネウス「不利……」グラグラ
アステリオス「まよえ……さまよえ……しねえっ!!」ズォォォォォォォッ
アステリオス「『万古不易の迷宮』(ケイオス・ラビュリントス)!!」ゴァッ‼
フォルネウス「ぐ……魔力の、著しい減少……呪いを受けている……」
メディア「治療を……」
キラークロック「おっと、今度こそさせねえぞ」ガシッ
422: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:56:31.07 ID:4nPBd23Q0
キラークロック「……」グイッ
メディア「っ……」
キラークロック「……ッグルァァァァァァァ!!」ドッシャァァァァァァァアン‼
メディア「あぐっ……」ゴシャッ
キラークロック「……けっ、歯ごたえのねえ奴だ」
フォルネウス「不利である……」
黒髭「今更怖気づいたかよ、遅いぜ……行くでござる行くでござる! 『アン女王の復讐』(クイーンアンズ・リベンジ)!」ドドドドドドドドォォォォォォッ‼
フォルネウス「ぐ、わ……」グラグラグラッ
マシュ「ここです……!」ドシュッ、ガガガッ、ドッゴォ‼
エウリュアレ「もらったわよ」シュパパパパッ
ドレイク「オラオラオラァ!」パァンパァン‼
フォルネウス「……」グラグラグラ……
423: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:57:01.15 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「……下等生物共が、足掻くものだ……!」グムグムグム
ドクター『マシュ、注意して! フォルネウスと名乗った柱の中、聖杯反応が急激に増大してる! 反撃が来るよ!』
マシュ「っ、了解! 皆さん、下がって……」
ドッゴォォォォォォォォォォォォン‼ ドガァァァァァァァァァァァン‼
マシュ「ふぇっ!?」グラグラ
キラークロック「……なんだ、船底が……爆発しやがった?」グラグラ
424: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:57:34.54 ID:4nPBd23Q0
………………
バットマン(火薬庫は爆発。さて、次は)
ドクター『ブルース!? 何やってんの!?』
バットマン「この船を沈める」
ドクター『しず……へ!?』
バットマン「沈める。これで少なくとも有利な戦場にはできる」
ドクター『有利な……どういう事だい?』
バットマン「……キラークロックが強いのは水中だ。陸上であれほどの戦闘力なら、戦場を海中へ移せば敵無しになる」
ドクター『成程……で、沈めるのかい?』
バットマン「……聖杯の恐ろしさは知っている。魔神ともなれば使い方も熟知しているだろう。まともにやり合うのは危険だ」ザシザシ
バットマン(よし、このまま……船体へ穴をあける)プシューッ、ポチッ
ドッガァァァァ‼
425: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:58:08.94 ID:4nPBd23Q0
………………
マシュ「あわ、わわわ……」グラグラ
バットマン「……すまないな、今戻った。ドレイク、我々の船へ戻るぞ」
ドレイク「へっ……? 何してたのさ?」
バットマン「船を破壊していた。この船は沈む」
キラークロック「何……?」
バットマン「……行くぞ、マシュ、エウリュアレ。ここにはとどまれない」
ドドォォォォォン……ドッガァァァァ‼ ドッガァァァァ‼
フォルネウス「……無意味である」
バットマン「やはり移動は出来ないようだな。好きにすると良い、船と共に沈むのは実に船長らしい振る舞いだ……元、船長だったか」
フォルネウス「策など、無意味だ」
バットマン「……意味を考えないだけだろう。さらばだ」
426: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:58:36.86 ID:4nPBd23Q0
エウリュアレ「アステリオス! 行くわよ!」
アステリオス「……ご、めん。えうりゅあれ。ぼくは、ワルだから」
エウリュアレ「え……?」
アステリオス「だから、いっしょには、いけない。えう、りゅあれは、ワルじゃ、ないから。ここで、さよなら」
エウリュアレ「……なに? どういう事なの……? さよ、なら?」
マシュ「エウリュアレさん! 急いで!」
エウリュアレ「どういう事なの、アステリオス! なんで……」
アステリオス「……たすけたい、ひとが、できたんだ」
エウリュアレ「……っ……」
427: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:59:02.43 ID:4nPBd23Q0
アステリオス「でも、それは……いままでの、ぼくじゃ、むりだから。だから、行って、えうりゅあれ」
エウリュアレ「……二度も、別れさせるなんて。貴方、最低よ」
アステリオス「ご、めん」
エウリュアレ「……良いのよ。さようなら、アステリオス」
アステリオス「さよなら、えうりゅあれ」
428: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 22:59:30.73 ID:4nPBd23Q0
黒髭「あーあー、沈みますな。どうします?」
キラークロック「……お前の船を出せ。それに乗れば良い」
黒髭「ええー!! アレ、聖杯無しじゃ維持するのキッツイんですぞ!?」
キラークロック「文句言うんじゃねえ。やれるんだろうが」
黒髭「そりゃまあ、やれますけど……」
キラークロック「なら、やれ。どうせ長くはかからねえ」
黒髭「……あいよ」ズォォォォォォォッ
429: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:00:00.97 ID:4nPBd23Q0
バットマン「……」
バットマン(黒髭達も宝具を発動し、自分の船に乗ったか。計算通り)
バットマン(……そして、魔神柱。奴らは動けないというのも、計算通り……だが、一つ心配なのは)
メディア「……」
バットマン(……彼女のとどめを刺し損ねている、という事か)
バットマン「……大砲の準備をしろ。嫌な予感がする」
ドレイク「アタシもだよ。野郎ども、大砲準備!」
430: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:00:34.40 ID:4nPBd23Q0
ズズズズズズズズ……バシャァァァァァン……
メディア(……)コポポポ……
メディア(……)
メディア(……落ちていく)
メディア(闇の中へ、落ちて行く)
メディア(魔女になっても構わないと思っていた私は)
メディア(あの日、愛しい人のために、その汚名すら心地良く感じていた)
メディア(押し付けられた、偽物のエゴのせいで)
431: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:01:00.15 ID:4nPBd23Q0
メディア(あぁ……憎い。憎い。愛に応えないあの方が憎い)
メディア(呪いをかけたこの世界が憎い。私を殺したこの世界が憎い)
メディア(こうして伸ばす手に、たとえ権利が無かろうと……)
メディア(私は、憎んでやる。それが私のエゴ)
メディア(さあ、大きくなれ。海を呑み、空を衝き、嘘で固まる世界を見下ろせ)
メディア(魔神柱、フォルネウス。私と同じ絶望を、世界へ)ポゥッ
432: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:01:32.51 ID:4nPBd23Q0
ゴ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……‼
バットマン「……なんだこれは」グラグラ
マシュ「う、海が……揺れてる……!?」
ドレイク「しっかり掴まりなァ!! 落ちるんじゃないよ!」
キラークロック「……」
黒髭「うーん、やな感じ」
アステリオス「……なにか、くる!」
バッシャァァァァァァァァァァ……‼‼
433: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:02:04.36 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「……」ズォォォォォ……
バットマン「……あのサイズは……想定外だ」
マシュ「う、うそ……あんな、大きな……」
ダビデ「ちょっとヤバイぞ! なんだアレは、大きすぎるんじゃないのか!」
ドレイク「……おー、おー。面白い事になって来たねえ!」
ボンベ「姐さん、ヤバくないっすかアレ!?」
ドレイク「そりゃヤバイさ。分かり切ってた事だろう、やっちまうよ!」
黒髭「えぇ……でっかい」
キラークロック「フン……海中なら敵にもならねえ」
アステリオス「いけ、る。やれる」
フォルネウス「は、はははは……今、私は無限の観測を得たり……今こそ、過去、未来、現在のすべてを見通す目を得たり」
434: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:02:47.60 ID:4nPBd23Q0
ドレイク「帆を張りなァ! 目玉が多いだけの肉塊にビビってられるかってんだ!」
ボンベ「よっしゃぁ! こうなりゃヤケだ、やっちまうぞテメェら!」
海賊達「「「オオオオオオーーーー!!!」」」
帆「」バサァッ‼
ダビデ「砲手もラクじゃないね!」ガチャガチャ
ドレイク「泣き言は後にしな!」
ダビデ「はいはい! 狙って……砲火!」ドドォォォォォン‼
フォルネウス「フハハハハハハハハ! 痒い! なんと痒い砲撃よ!」ゴォン、ゴォン……
フォルネウス「そら、おつりをくれてやろう!」ドドドドドドドドォォォォォォッ‼‼
ドッガァァァァァァァ‼ ドッガァァァァァァァ‼
ドレイク「おわっ!? やりやがった、アイツ……! 沈没しちまうね」
バットマン「船体左側の重荷は全て降ろせ! バランスを取り、少しでも沈没までの時間を延ばすぞ!」
ドレイク「はいよ!」
435: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:03:20.60 ID:4nPBd23Q0
キラークロック「……オレが潜れば、一発でカタがつく」
黒髭「おう、まあせいぜい暴れてこいや。一応ここは守っておいてやるよ」
フォルネウス「フハハハハハハ!! そこのワニは未だに自分の犯した罪すら知らず、のうのうと生きながらえるか!」
キラークロック「……ああ?」
フォルネウス「私は知っている。私は観測した。貴様が忘れた最悪の罪を。そのネックレスに隠された闇を!」
キラークロック「……どういう事だ。何を知っていやがる」
黒髭「キラークロック殿、あんまし聞かない方が……」
キラークロック「黙ってろ! どういう事だ! お前はコイツの何をしってる!!」
436: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:04:16.39 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「忘れたのか! 本当に!?」
キラークロック「……ぐ……」ズキン
(((だから、いつか貴方が、皆にとってのかいぶつじゃなくなった時に)))
キラークロック「…………うぐ……」ドサッ
(((撃て)))
(((撃て! 逃がすな!!)))
(((こちら――地区――ブロック、応援を……)))
フォルネウス「ならば教えてやろう! 貴様は食ったのだ、その少女を! 貴様が自分の巣に非常食じみて置いていたその少女を、食ったのだ!!」
キラークロック「……!!」
437: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:05:43.19 ID:4nPBd23Q0
バットマン(不味い……! キラークロックが麻痺すれば、作戦が機能しなくなる!!)
バットマン「ジョーンズ! 違う! お前はホームレスの夫婦に捨てられた子供をかくまっていた!」
バットマン(アレは、ジョーンズがキラークロックとして世に知られる事になった、最悪の事件……)
バットマン(自分の巣へと帰ろうとしていたキラークロックは、通行人にその異様な風貌から怯えられ……何もしていないのに、警察へ通報された)
バットマン(最悪なのは、警察だった……! 腐敗が進んでいた警官たちは、まるでゲームを楽しむかのように、ジョーンズを攻撃……! 大人数の攻撃に瀕死となったジョーンズは、それでも何とか巣に帰り……)
フォルネウス「笑わせるな! 望まれてもいない善意など、ただの傲慢だ! 世界は過程ではなく、結果! お前は少女を監禁し、食いつくした化け物だ!」
438: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:06:54.33 ID:4nPBd23Q0
キラークロック(……思い出した)
キラークロック(あの日、オレは死にかけて……身体を引きずって、帰ったんだ)
キラークロック(……血が足りなくなったからなのか、死にかけていたからなのか……オレは本能的に、目の前にいたガキに喰らい付いた)
(((あ……)))
キラークロック(思い出した。ああ、クソ、なんで忘れてたんだ、オレは)
(((だいじょうぶ。こわくない。いたくないよ。おんがえしって、いうんだよね)))
キラークロック(血に染まった顔。痛みでひきつった笑み。だが、アイツは笑っていた)
(((これね、今日、渡そうと思ってた、ネックレス)))
(((……だいじょうぶ。貴方は皆と少し違うだけ)))
キラークロック(どうしてどいつもこいつも、自分を誤魔化して笑うんだ。もっと、生きたかったクセしやがって)
(((だから、いつか貴方が、皆にとってのかいぶつじゃなくなった時に)))
フォルネウス「怪物め! 貴様は怪物だ!!」
ネックレス「」ジャラ……パカリ
少女の写真「」
キラークロック「……」
キラークロック(やっぱり、そうなのか?)
キラークロック(オレは所詮、怪物なのか?)
439: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:08:16.24 ID:4nPBd23Q0
黒髭「下らねえ」
フォルネウス「……何?」
黒髭「クソ下らねえ!! おいキラークロック、テメエはなんでそこに膝ついてる!? アホか!? さっさとあの肉の柱をぶっ潰しに行け!」
キラークロック「……」
黒髭「……いい加減女々しい野郎だな、テメエも! 良いか、上等だっつってんだ! おう、確かにテメエはそのガキを食ったんだろうよ! 捨てられてたのを拾ったのだって、あっちは助けて欲しくなかったかもしれねえ! けどな、それがどうした!」
黒髭「俺達はワルだ! エゴが赴くままに、奪って押し付け生かして殺す! 上等だろうが! それ以上に高等なモノなんざ、望むんじゃねえ!」
キラークロック「……」
黒髭「立て! 自分勝手がどうした、傲慢がどうした! 常連だろうが、笑い飛ばせ!」
440: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:09:23.75 ID:4nPBd23Q0
アステリオス「だい、じょうぶ」
キラークロック「……」
アステリオス「過去は、変えられなくても、今は、きっとかわるよ」
キラークロック「……」ムクリ
アステリオス「だから、世界を呪わないで。きっと、かいぶつなんて、どこにでもいるから」
キラークロック「……フン」
キラークロック「知ったようなクチ利きやがって。あとで全員、食い千切ってやる」ドシ、ドシ
黒髭「……へっ」ニヤリ
441: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:10:27.64 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「まだ立ち上がるか。その見た目と同じ、醜悪なまでの執念」
キラークロック「全身が目で出来てるクセに、何も見えてないらしいな! オレを見ろ!」
キラークロック「オレは、美しい!」ダンッ、バッシャァァァァァァァァァァ‼
バットマン「……良し、ようやく始動だ。ダビデ、砲撃を休むな」
ダビデ「はいはい……」
ズズズズズズズズ……
バットマン「……船の水を掻き出す。マシュ、シールドで船の穴を塞げるか」
マシュ「は、はい! 頑張ります!」
ドレイク「掻き出すっつって、どうやって……」
バットマン「大丈夫だ。バット吸水ポンプがある」
ドレイク「バット……は?」
バットマン「……ジョークだ。スーツのポンプ機能を使い、ある程度運んで外へ排出する」
442: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:11:15.25 ID:4nPBd23Q0
キラークロック(……でけえ肉の柱だ。食い甲斐がありそうだぜ)ゴポポ……
フォルネウス『無意味である』
キラークロック(……ソイツはオレが決める。黙って食われろ)ギュォッ、ガブッ
フォルネウス『ぐぅっ……小癪な』
キラークロック(……!!)グイッ、ブチィッ
フォルネウス『おのれ、下等生物の分際で……!!』
キラークロック(不味い肉だ……これをずっと食い千切るってのは、気が滅入るぜ)ペッ
――――――
ドレイク「放てー!!」
海賊達「「「オラオラオラァ!!!」」」ドドドドォン‼
フォルネウス「痒いと、言ったはずだ……ぐぅ!?」ドドドォ……グシャァッ‼
アステリオス「……ぼくの、宝具、きいてるみたいだね」ニヤリ
フォルネウス「貴様……魔力を……」
エウリュアレ「良いわよ、アステリオス。そのまま弱らせておきなさい」シュパパパパッ
フォルネウス「ぐああああああ!?」ドシュシュシュシュッ
443: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:11:49.99 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「おのれ……海の藻屑にしてくれる……!」
フォルネウス「焼却式『フォルネウス』起動!!」ドドドドドドドドドドドドッ‼
ドレイク「っ……ありゃ、耐えられないよ!」
バットマン「……くっ、こちらはまだ復旧が完全ではない! なんとか逸らせないか!」
ドレイク「無茶言うな、ぶち当たる……」
ドッガァァァァァァァ‼
ドレイク「っく……」
ダビデ「わわっ、やばいぞ!」
マシュ「マスター!」
バットマン「……!!」
ボンベ「やべーぞ、船体が真っ二つだ!」
444: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:12:30.10 ID:4nPBd23Q0
バットマン「……いや、まだだ」シュポッガシッ
グラップネルガン「」ギュギ……ギギギギギギギギギギギ……
バットマン「マシュ、手伝ってくれ! 船を戻す……!」
マシュ「は、はい!」ガシッ、グググググ……
ドレイク「よしな、無茶だよ!」
バットマン「知っている! だがここでこの船を守らなければ、ドレイク、ボンベ、お前達皆が海に落ち、フォルネウスに殺されるだろう! そんな事はさせない!」グググググ……
ドレイク「あ、アンタ……」
バットマン「……いつか言ったな。人生の意味など後付けで良いと。私は逆なんだ。納得と理解ができなければ、私の人生ではなくなる……ここで守らなければ、私ではなくなる!」グググググ……‼
マシュ「……マスター……!」グググググ……
ドレイク「……くっ、でも無茶なのには変わりないよ!」
バットマン「ぐっ……もってくれ……!」グググググ……
ロープ「」ブルブルブルブル……ブチィッ‼
バットマン「っぐあ!?」ドッサァ
マシュ「きゃあ!?」ドシャッ
ゴズズズズズズズズズズズ……‼
445: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:13:34.24 ID:4nPBd23Q0
ドレイク「くっ……船を捨てろ! ゴールデンハインド号を捨てろ! 全員海へ飛び込め!」
ボンベ「ご、ゴールデンハインド号を……捨てるだって、姐御!? そんな事はできねえよ! ずっとコイツと旅して来たじゃねえか!」
ドレイク「馬鹿野郎! 命と船のどっちが大事なんだい! 飛び込むんだよ!」ガシッ、ドッ
ボンベ「うわぁぁぁぁぁぁぁ……」ボッシャァァァァン
海賊A「姐御!」
海賊B「姐御ぉ!!」
ドレイク「飛び込みな、さっさとしな! 船は後でいくらでも手に入る……!」
ドレイク(……クソ、この船はひとつきりだよ! チクショウめ!!)ググッ
446: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:14:14.05 ID:4nPBd23Q0
バットマン「ドレイク」タタッ
マシュ「……ドレイクさん」
ドレイク「アンタ達も、急いで海に。アタシは船員が全員居なくなったのを確認して、最後に飛び込むよ」
バットマン「……すまない。フォルネウスの力の増大を予測し切れなかった」
ドレイク「後にしな。さあ、早く!」
ダビデ「え、マジで僕も行くの?」
エウリュアレ「冷たそうね。私は遠慮するわ……」
バットマン「……」ガシッ、グイッ
ダビデ「うわあああああああぁぁぁぁ……」ヒュゥゥゥゥゥゥゥ……
エウリュアレ「貴方本当に覚えてなさいよ!」ヒュオオォォォォ……
447: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:15:02.89 ID:4nPBd23Q0
黒髭「……ドレイク……」
アステリオス「いか、ないの?」
黒髭「……ばーか、あの女があの程度でやられるワケねえよ。太陽を落とした女、フランシス・ドレイク。オレの憧れだぞ」
アステリオス「……」
黒髭「……だから、黙って見てりゃあ良いのさ。聖杯は相応しい奴のところにしか行かねえんだからよ。それよりほら、大砲準備の手を休めては駄目でござる!」
アステリオス「ごめ、ん」ゴロゴロ
黒髭「ほれいっちに、いっちに!」ゴロゴロ
448: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:15:31.94 ID:4nPBd23Q0
ドレイク「……世話になったね」
ドレイク「無茶ばっかり押し付けた。その度に、アンタは期待に応えてくれたよ」
ドレイク「……だがまあ、結局はこうなっちまった。できれば、アンタと最期まで……旅をしたかったんだけどねえ」
ドレイク「……じゃあね」バッ、バッシャァァァァァァァァァァン……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ズズズズズズズズ……
449: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:15:59.97 ID:4nPBd23Q0
ドレイク(……冷たいね、海は……)
ドレイク(ああ、チクショウ。もっと力があれば……全員守れたんだろうけどね)
聖杯「」パァァァァァァ……
『願え。全員を助けたいと願え。暗い海の底から引き上げたいと願え』
ドレイク(……こりゃ、さしずめ悪魔のささやきってところか。いいねえ、これでこそ……)
ドレイク(……けど、アタシは『結果』は願わないよ。過程も無くお宝を手に入れても、何の楽しみも無いからねえ……)
ドレイク(……だから黙って、その分の力だけ寄越せ……!)グググググ……
450: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:16:38.36 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「ハハハハハハハ……あとは海中のワニ男だけだ。実に手応えの無い、弱敵であった……?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
フォルネウス「……?」
黒髭「なー? だから言ったでござるよ」
アステリオス「……う、ん」
バッシャァァァァァァァァァァ‼
黒髭(……光り輝く船体……まさにゴールデンってか)
黒髭「……チッ、流石だぜ」クシャクシャ
451: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:17:22.14 ID:4nPBd23Q0
ドレイク「……っふぅ! 海水浴びてサッパリしたよ、ありがとね!」
フォルネウス「なんだと……貴様も、聖杯を使いこなすというのか!」
ドレイク「使いこなすってのが何なのかは知らないけどねえ、生憎こっちはうまい話には飛びつかないように鍛えられてんだ。ロクな事になった試しが無い!」
フォルネウス「おのれ、無為な虫けら一匹の分際をしおって……! ちっぽけで無意味な人生を送るというのに!」
ドレイク「言っただろ? 人生の意味は、後から誰かが見つけてくれる。なら、こっちは一瞬を全力で生きるだけさ!」
ボンベ「あ、姐御ぉ……一生ついていきやすゥゥゥゥゥゥゥ!」
海賊達「「「うおおおおおおおおお、姐御おぉおおおおおおお!!!」」」
ドレイク「おら、泣いてる暇があったら大砲の準備をしやがれ!」
452: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:18:19.16 ID:4nPBd23Q0
バットマン「げほっ、げほ……」バシャッ
マシュ「っはあ、はあ……」
ダビデ「あ゛~……死んでない……」
エウリュアレ「最悪よ。髪がびしょびしょじゃない」ポタポタ
ドレイク「無事かい、水を飲んじゃいないかい」
バットマン「ああ、無事だ……助かった」
ドレイク「礼なら後でたっぷりもらうよ。立ちな、行くよ」
バットマン「……ああ!」
453: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:18:48.75 ID:4nPBd23Q0
黒髭「よーしアステリオス二等水兵! 帆を張れェい!」
アステリオス「……どうやって張るの?」
黒髭「あっ、拙者が張ります……」ゴソゴソ
ドクロの帆「」バサァッ‼
アステリオス「おおー……ワルだ」
黒髭「にししし、ワルでござる。さあ、BBAと肩を並べて戦うZE!! 大砲よーい!」
アステリオス「はい」ゴロゴロ
黒髭「……撃て!」
ドレイク「まだだよ、もう少し……もう少し、待て……」
ボンベ「……」ゴクリ
海賊A「……」ウズウズ
海賊B「……」ジッ
ドレイク「……撃てェーーーー!!」
ボンベ「撃てェ!!」ドドドドォン‼
454: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:19:17.85 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「ぐ……」ドシュシュ、グラグラ……
キラークロック(フン、ざまぁないぜ……もっと喰らってやる)ブチッ、ブチィ
フォルネウス『やめろ! 無益である!』
キラークロック(生憎だな、怪物には言葉が通じねえんだ)ブチッ、ガシッ、ブチチチチチ……
フォルネウス「ぐわあああああああああ!!!」
ドレイク「……畳みかけるよ! 帆を張りな、面舵一杯!」
ボンベ「どうするんで?」
ドレイク「船首の大砲用意! 突っ込むよ!」
ボンベ「ひゃっほう! 流石姐さん!」
帆「」バサァッ‼
バットマン「マシュ、念のため船へ加護を」
マシュ「はいっ! 真名、偽装登録……行きます! 『ロード・カルデアス』!!」ギュォォォォォォォッ
バットマン「全員しっかり掴まれ!」
455: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:20:45.61 ID:4nPBd23Q0
ドガァァァァァァァァァァァァァァ‼
バットマン「うっ……」グラッ
マシュ「マスター!」ガシッ
フォルネウス「うぐ……」グラ、グラァ……
フォルネウス(負けると言うのか!? 全力の魔神が、このような……連中に……!?)
バットマン「……マシュ! 船首へ駆けのぼれ、トドメだ!」
マシュ「はいっ!」
バットマン「『令呪を以て命ずる』! 全ての魔力をマシュの膂力へ変換しろ!」
マシュ「はあああああああああっ!!」ダダッ
456: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:21:16.62 ID:4nPBd23Q0
フォルネウス「馬鹿な。馬鹿な、あってはならない現象である……!」
ドレイク「撃てェー!!!」
黒髭「撃てェい!!」
バットマン「マシュ!」
キラークロック(やれ、小娘)
マシュ「はあああっ……!」シュッ
ドシュッ‼
457: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:22:07.76 ID:4nPBd23Q0
バットマン「……」
ドレイク「……」
黒髭「……」
マシュ「……」スタッ
フォルネウス「……馬鹿な」ドバッシャァァァァァァァァァ……
聖杯「」プカ……
マシュ「……聖杯、確認。回収します」
ボンベ「……やった」
ドレイク「やった」
黒髭「よおっしゃああああああああああああああ!!」
アステリオス「やっ、た!!」
バットマン「……やったか……!」
458: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:22:38.16 ID:4nPBd23Q0
ドクター『お疲れ様、マシュ、ブルースくん! 聖杯の回収を確認、その特異点もじきに修正される!』
バットマン「……」
マシュ「やりました、マスター!」タタッ
バットマン「……ああ、よくやってくれた」
ドレイク「よくやったね、マシュ、ブルース! お疲れさん!」バシッ
バットマン「ああ、そちらも……世話になった」シュウシュウシュウ……
マシュ「ドレイクさん、ありがとうございました。ダビデさんも、エウリュアレさんも……」シュウシュウ……
ドレイク「……なんだいアンタら、身体が……」
バットマン「……長くは留まれない。礼の話は、悪いが……」シュウシュウ……
ドレイク「……なるほどねえ、踏み倒されちまうってワケか。アンタも相当なワルだねえ」
バットマン「……いつか返すさ」フ
459: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:23:34.21 ID:4nPBd23Q0
エウリュアレ「……」チラ
アステリオス「……」フリフリ
エウリュアレ「……ふふっ」クス
バットマン「……そろそろ消えることになる。会えて良かった、ドレイク」
ドレイク「ああ、こっちも会えて良かったよ。アンタみたいな堅物、博物館に飾りたいくらい貴重だけど……まあ、また会えるさ。じゃあねブルース」ギュッ
バットマン「ああ……またな」
ドレイク「ほら、マシュも。アンタ、最初は根性なしの小娘かと思ってたけど、なかなかやるもんだね。会えて良かったよ、若い頃を思い出した」ギュッ
マシュ「わぷ……は、はい。私も、ドレイクさんのように素敵な女性に出会えて良かったです」
ドレイク「そうかい? そりゃあ……」
ドレイク「海賊やってた甲斐があるってもんだよ」ニィッ
ギュォォォォォォォォォォォォッ
460: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:24:05.96 ID:4nPBd23Q0
………………
バットマン「……」ムクリ
マシュ「……」ムクッ
ドクター「!! ブルースくんとマシュが帰還したぞ!」
レオナルド「お疲れ様、二人とも」
所長「……お帰りなさい!」
フォウ「フォウ、フォーウ!!」ピョコピョコ
マシュ「……マスター」
バットマン「……ああ、ただいま」
461: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:24:38.79 ID:4nPBd23Q0
………………
黒髭「ふー、終わった終わった。キラークロック殿、最後にマシュちゃんに会いに行かなくて良かったのでござるか?」
キラークロック「……良い。オレは満足だ」
黒髭「無欲でござるなぁ……ひとなめくらいは許して貰えたと思いますぞ」
キラークロック「食い千切るぞ」
黒髭「ごめんなちい!」
エウリュアレ「……アステリオス!」タッタッ
アステリオス「エウリュアレ……」
エウリュアレ「ようやく終わったわ! まったく、貴方に言いたい事がたくさんあったのよ? 私を置いて行こうとするし、私を放っておいてむさくるしい男達を優先するし……!」
アステリオス「ごめん、なさい。でも、だいじょうぶ。ぼくは、ぼくだよ」
エウリュアレ「……分かってるわよ! もう、これからは絶対に私から離れない事! 私を護るんでしょう?」
アステリオス「うん、これからはいっしょ……」
エウリュアレ「……それなら許してあげるわ!」
アステリオス「あり、がとう」ニコ
462: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:25:09.90 ID:4nPBd23Q0
黒髭「……チェ―ッ、クソ。リア充末永く爆発しろ!」
キラークロック「うるせえぞ」
黒髭「キラークロック殿はモテ男だから拙者の気持ちわかりません~~~~!!!」
ドレイク「おーい、髭野郎!」
黒髭「はうあっ!?」
ドレイク「悪くない共同戦線だったよ! じゃあね!」
黒髭「ほ、ほああっ!? そ、そんなもんこっちこそ悪くなかったわ! じゃあなBBA! 二度と来るなよ!!」
キラークロック「……」
黒髭「……うぇへへへ、悪くなかったって……」ニマニマ
キラークロック「気色悪い」
黒髭「ひっど!?」
463: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:25:57.60 ID:4nPBd23Q0
エウリュアレ「……ねえ、アステリオス」
アステリオス「うん?」
エウリュアレ「……私も、貴方みたいだったらなって」シュウシュウ……
アステリオス「……えうりゅ、あれは、今のままで、いいよ」シュウシュウ……
エウリュアレ「……そうよ、そうね。貴方も、ね」シュゥゥゥゥゥゥゥ……
アステリオス「う、ん。きっと」シュゥゥゥゥゥゥゥ……
464: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:26:33.02 ID:4nPBd23Q0
………………
ザサァン゙……ザザァン……
ゴポポポポポ……コポポポポ……
メディア(……)
メディア(……私では、及びませんでしたか……)
メディア(……ですが、ブルース。そしてマシュ。貴方達では、あの方には敵わない)
メディア(あの方にとっては、目的の前の障害など、塵にも等しい)
メディア(ああ……どうか、彼らの道が、余計な希望を持たぬものでありますよう……)
ゴポポポ……コポポポポ……
465: ◆GmHi5G5d.E 2018/03/03(土) 23:27:05.20 ID:4nPBd23Q0
第三章
封鎖終局四海 オケアノス
生存者 マシュ・キリエライト ブルース・ウェイン
死者 ブーディカ
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