18: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 19:30:14.13 ID:MKGKZHF00


 男が意識を得たのは、暗い、夜道だった。砂利と、雑草に埋め尽くされている。 


 男「・・・あ?」 


 不思議と目は慣れていた。浮かび上がる山の影と、太陽のように明るい月がくっきりと見えていて―― 


 男「・・・ん?」 


 前方に人影を見た。ような気がした・・・と思ったのは一瞬で、すぐさま克明な女の姿に変わって―― 


 紫「あなたは強力すぎるの!」ギュアン 


 男「え!?は!?」 


 誰だこの女、と思っていたら、突如周囲が光り輝いて―― 


 男は再び意識を失った。 



引用元: 【東方】?「平和な安価東方SSが流行っている風潮をぶっ壊す!」【SS】 


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19: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 19:53:05.09 ID:MKGKZHF00


 数十年後。


 ついでにその数時間後。


 そのすぐ近くの場所に――


 家があった。


 丸木を組み上げて作られていて、明るい林の中に静かに佇んでいた。


 しかしそこに、この先起こる事件の予兆のように、鈍い羽音が響いた。


 柵で囲まれた菜園に通じる道。先ほどした音とは対照的に、一見華奢な少女が立っていた。


 山伏のような服、帽子に、スカートというなんとも矛盾した服装。それに――


 羽が生えていた。そう、彼女は「風を操る程度の能力」を持つ天狗、射命丸文である。


 射命丸「まずは一枚!」パチリ

 射命丸「まさか妖怪が自分で自分を祓うなんて大事件が起こるとは思わなかった!それも、こんなところで!」

 射命丸「『文々。新聞』の記者として!放って置けるわけがないでしょう!ノッカーはこれかな?」コンコン


 洒落たデザインのノッカーを叩くと、しばらくして、女の姿をした妖怪が出てきた。黒っぽい和服を着ている。


 女「はい、どなたでしょう」

 射命丸「私、射命丸文と申しますが!この度は、ご愁傷様でした」

 女「・・・はあ、どうも・・・」

 射命丸「今回はとんでもないことになってしまいました、塩を塗るようで申し訳ありませんが・・・」

 女「・・・新聞の取材ですか?」

 射命丸「ご存知でしたか!それは話が早い、この事件は幻想郷中で話題になっています」

 射命丸「妖怪になってまで自決する変わり者は見たことがないと」

 女「ええ、私もまさかあんなことになるなんて・・・思いもしなかったんですけど」グスッ

 射命丸「あー、無理にとは言いませんが、話を聞かせていただきたく・・・」

 女「いえ、私としても好都合です。こちらへ」

 射命丸「(好都合?)」

 疑問を感じつつも、促されて家の中へ入った。

21: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 22:39:04.40 ID:XFCz2aAr0


 女「あったことは簡単です。朝起きたら、母が短刀で自分の胸を刺して動かなくなっていました」


 小屋の中には畳が敷かれていて、丸太小屋の中に卓が置かれているのにギャップを感じた。

 射命丸「短刀というと?」

 女「鞘と持ち手が一体の木で出来ている、あれです。持ち手の中に伸びている刀身に札が巻きついていました」

 射命丸「札?退魔のアレですか?」

 女「はい。母が消滅したのはおそらくその働きによるものだろうと思います」

 射命丸「はあ・・・お母さんはどんな人で?」

 女「・・・私、半人半妖なんです。母は妖怪のようでしたから、父が人間なのだろうと思っていましたが・・・今となっては確かめる方法もありません」

 射命丸「成程・・・というとお父さんの顔は知らないと?」

 女「はい。勉強も、全部母が教えてくれました。物静かでしたが、いい母親だったように思います」

 射命丸「ではなぜそんなことをしたんでしょう?」

 女「・・・実は、新聞なんです。」

 射命丸「新聞?」

 女「無表情ですからわかりにくかったけど、間違いなく目を剥いていました。自決する前日の、『文々。新聞』です」

 射命丸「ええ?自決したのはいつです?」

 女「一昨日です」

 射命丸「というと・・・」


 射命丸は手を顎に当てて、どんな記事だったか思い出そうとした。


 そうだ、外来非科学存在による人妖連続襲撃事件。

 どこかの地域に残る古の呪いの具現みたいなものがどういうわけかやってきて、人間や低中級妖怪は勿論、上級の妖怪や神すら襲って吸収している事件だったか。

 上級妖怪や神による掃討作戦が行われたが、追っ手をも吸収して、未だ犯人は潜伏中だった。


 射命丸は女をちらと見た。


 なかなかの力を持っている。父親が霊感持ちだったにしても、人間との間の子でこれほどの力を持つということは母親は上級妖怪だ。

 まさか怯えてこんな行為に走ったわけではあるまい。


 女「あと、もう一つ。私がすごく小さい頃なんですけど、母が一つだけ私に秘密にしていたことがあるんです」

 射命丸「!なんと、それはどういう?」

 女「物心付いた頃です。真夜中に、男が訪ねてきました。どう見ても妖怪でした、それもすごく、すごく強力な!」


 女はそう言って身を震わせた。これが印象深くて覚えていたのだろう。

 しかし、男でそんなに強力な妖怪なんて知らない。それほどの妖怪が居たのに、なぜ私は気がつかなかったんだ?


 女「母と話をしているふうでした。私は後で母を問い詰めましたが、上手く話をすり替えられてしまって・・・」

 射命丸「ああ・・・どういう話をしていたんです?」

 女「襖の向こうの話だったので、よく聞こえなかったんですが・・・一つだけ、聞こえた言葉があって」

 射命丸「ほう?」


 女「『双月異変』と・・・」


22: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 23:47:30.72 ID:XFCz2aAr0

 射命丸「双月異変!?」


 射命丸は飛び上がらんばかりに驚いた。なぜなら、双月異変―――


 それは幻想郷史上、最大、最悪、最凶の異変なのだ。


 射命丸は職務上も、経験上もよく知っていた。


 数人の外来妖怪により引き起こされた異変だが、幻想郷は完全に壊滅した。


 自ら手を下すこともなく、幻想郷の住人自身に弾幕ごっこのルールを犯させるとともに住み慣れた場所を破壊させる、卑劣なものだ。あの時のことは思い出すだけでも、身震いがする。

 
 今ではその話題を出すことすらタブーになり、今では全くそんな話は聞かない。十年前というと、ようやくそれが落ち着いて、その風潮がピークになっていたあたりだ。


 親しくったって絶対に話さないようなことについて、何を話していたと言うんだ?


 女「母がそういう態度をとったのは、この時だけです。きっと、その異変に何かあるに違いありません」

 射命丸「ううん・・・」

 女「射命丸さん、記者ですよね?きっと、詳しく知っているだろうと思いまして」

 射命丸「(都合がいいっていうのはこのことか・・・)いや、私も人並みの情報しか知らないんですよ」

 女「!?何故です!?」


 よっぽど当てにしていたのか、女は声を荒らげて聞き返した。


 射命丸「私もその時手一杯でして、取材している暇がなかったというか・・・」


 女「何があったんです、双月異変って!?」


 射命丸「後になって生き残りに事情を聞こうとしても、皆さん貝のように口をつぐまれてしまってですね・・・」


 女「・・・っ!」


 射命丸「情報を手に入れようにも殆ど・・・あ、そのあとのカネモリ事件や創世事件なら・・・」


 女「私が知りたいのは双月異変なんです、一体何があったんですか!?」


 射命丸「・・・えっと・・・」


 女「・・・もういいです、自分で調べます!」


 女は卓から離れると、背を向けたままこういった。


 女「ジャーナリズムになんて期待した私が馬鹿でした!」

 射命丸「・・・・・・ちょっと待ってください!」

 女はピクリとしたきり、動きを止めた。

23: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 00:37:52.45 ID:mK0S/OHM0


 射命丸「そこまで言われちゃ仕方ありません、教えることはできませんが、一緒に調べることはできますよ。」


 女「・・・・・・」


 射命丸「取材に行く人も、資料のある場所も知ってます。どうです?」


 射命丸「・・・それに、いまだ未解決の襲撃事件に関連があるなら、スクープですよスクープ。」


 女「・・・分かりました、お願いします。射命丸、なんと言いましたっけ?」

 射命丸「文です。あなたは?」

 女「・・・源エイカ、影に香りと書いて影香です。あ、母は源真影と言いました、変わった名前ですよね」

 射命丸「いえいえ、影香さん、早速行きましょう、そう遠くないところに図書館があります」

 影香「図書館?聞いたことがありませんが」

 射命丸「吸血鬼の館ですよ、紅魔館!そこの図書室はあらゆる書物が収納されてますから、下手な聞き込みよりそこに行ったほうが早いんですよ。」

 影香「吸血鬼・・・」

 射命丸「やたらめったら人を襲うような奴じゃありませんから、大丈夫ですよ。行きましょう、準備は?」

 影香「ああ、大丈夫です。」

 射命丸「飛べます?」

 影香「飛べます」


 二人はそのまま外に出た。射命丸は速度が出すぎないよう加減してやらなければならなかったが、道中は話していった。


 射命丸「お母さんはどんな人だったんです?」

 影香「・・・ううん、無口で、無表情で・・・妖怪の中でも強いほうじゃないんですかね」

 射命丸「強い?」

 影香「ええ、そのおかげで私もこうやって飛べているわけですし。」

 射命丸「能力とか持っていたんですかね?」

 影香「ううん、いや、話していませんでしたねえ・・・」

 射命丸「じゃあいよいよ誰なんでしょう、名前も知りませんし・・・」

 影香「幻想郷では新参者らしいです。カネモリ事件の日に生まれたとか。」

 射命丸「へえ、なんの因果ですかねえ」

 影香「まったくです。」


 などと話しているうちに、湖の上空を抜け、赤い洋館が見えてきた。


 射命丸「あああれです、入ってしまいましょう。」

 影香「え?いいんですか?ほら、門のところに人が・・・あれ?寝て・・・」

 射命丸「いいんです、入っちまいましょう。」


 二人は門をするっと抜け、中に入ってしまった。

24: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 01:19:09.60 ID:mK0S/OHM0

 図書室

 射命丸「・・・ええい、全然ない!タブーったって1冊くらい本があったっていいじゃない!」

 影香「・・・ううん・・・あ、年表!この年表、載ってます!」

 射命丸「え!?どれ!?」

 影香「これ、『幻想郷異変・事件年表』。索引でカネモリ事件を引いて、見てみたら、双月異変って!」

 射命丸「え・・・?あ、本当だ!」



 第四旧幻想世紀 鉄櫂事件 地形大幅変化 首謀者自爆

 第五旧幻想世紀 惣流異変 博麗の巫女により解決 首謀者改悛

 第五旧幻想世紀 紫光事件 博麗の巫女により解決 

 第七旧幻想世紀 双月異変

 第一幻想世紀(第八旧幻想世紀) カネモリ事件 強力悪霊による地獄襲撃 致命的な被害(現在は再建)

 第ニ幻想世紀(第九旧幻想世紀) 創世事件 天狗による異変発生未遂 首謀者霊力暴発により行方不明

 第三幻想世紀 高櫓異変 一般人により解決 首謀者改悛

 第三幻想世紀 犬神事件 博麗の巫女により解決 首謀者改悛

 第四幻想世紀 紅霧異変 博麗の巫女により解決




 影香「・・・こんな年号の数え方があったなんて、知りませんでした」

 射命丸「今回の調べ物に関係があるのは双月異変、カネモリ事件、創世事件かな。」

 影香「あれ?創世事件の首謀者天狗なんですか?」

 射命丸「なんて言ったかな、名前・・・ちょと忘れちゃったけど」

 影香「あれ、双月異変の説明が載ってない・・・大切なとこなのに!」


 ?「双月異変の本ならここにはないわよ」


 影香「!?」

 射命丸「ああ、貸してもらってるよ、それより双月異変がどうしたって?」

 パチュリー「奥の部屋。そういう危ない本はあっちの部屋にあるわ」

 射命丸「サンキューです、影香さん、いきましょー」

 影香「ど、どうも・・・」

 パチュリー「・・・異変関係の本なら左奥よ」スタスタ


 パチュリーと呼ばれた少女は放るようにそう言うと、戻っていってしまった。


 射命丸「ううん、おりゃあああ!」ゴゴゴ ガチャン

 影香「!あ、すごい扉!」


 鉄の扉が、物々しい音を立てて開く。奥にも、本が並んでいるのが見えた。


 射命丸「ええと・・・」

 影香「左奥らしいですよ」

 二人は書庫に入った。

25: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 16:24:40.37 ID:4sQG/dmM0

 創世事件とは、妖怪山の天狗、柳 久駆により引き起こされた騒動である。

 柳は幻想郷中の光を集めて、地獄奥の地下空間に幻の幻想郷を作り出そうとしたが、光の力が大きすぎ、本人の存在を消滅させるほどの力で大爆発を起こした。

 地上で起こっていれば鉄櫂事件以来最大の地形改変現象になり得たが、地盤の硬い地下で起こったため、被害は光が一瞬失われ、少々の落盤程度である。

 柳 久駆はもとは柳についた悪霊であった。幻想郷の出来る前、盗賊に襲撃された貴族の別荘から逃げ出し、柳の下で追いつかれて暴行を受けた末死んだとされている。

 以後「光を操作する能力」で旅人に幻覚を見せるなどしていたが、山の支配者たる天狗である筆者に敗れる。本来とるべき措置ではないが、筆者の気まぐれで天狗とする。

 非常に愛らしい顔立ちだが、生前の記憶が残っているためか無口で無表情。非常に読書好きで、眼鏡を着用。。少々世の中を嫌っている節があり、今思えばそれ以後の行動の兆候だったのかもしれない。

 前述のとおり読書好きで、文才があったため、筆者が半分道楽としてだが勤しんでいた物書きについて教えてみたところ、非常に興味を持った。天狗という生き物に、書記という行為はなかなかあっているのかもしれない。

 それだけに、このような事件を起こすとは思えなかった。ほぼ世界に嫌気が差して自分だけの世界を作ろうとしたのだろうが、そのために地上の光を奪おうとするとは驚きだ。

 しかし、彼女は非常に頭が良かった。結果自爆するような方法をなぜ選んだのだろう?もうひとつの世界を創ることが彼女にとって魅力的だったとしても、その方法をなぜ思いついたのだろうか。

 もしかしたら、双月異変が関係しているのかもしれない。彼女は異変についての情報収集に非常に精力的だった。私の掴んでいない情報も掴んでいたようだ。詰まるところ、私も一般人程度の情報しか知らない。

 事件により行方不明となったが、地獄地下の洞窟が近いことから、結界の外へ出たことも否定できない。もしかしたら、いつか幻想郷に戻ってきて、また幻の世界を作ろうとするかも知れない。


 
 

26: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 16:58:21.38 ID:4sQG/dmM0

 射命丸「そうだ、柳久駆!すっかりど忘れしてた」

 影香「・・・この本の著者もあまり多くのことは知らないようですね」

 射命丸「天狗に物書きを広めた伝道師の最後の作品ですねえ、実力者でもその時は自分の事で手一杯だったんです」

 影香「双月異変が関係しているんじゃ、って書いてありますよ。何だったんです?手一杯って?」

 射命丸「ああいや、そりゃあ大変な・・・」


 影香「何があったんです!?」


 射命丸「・・・・・・・・・」


 影香「お願いします。教えてください、母はなぜ死んだのかには、この異変が関係しているんです!」


 射命丸「・・・私も思い出したくないんです。あれは、あの日は・・・悪夢でした」


 射命丸は苦虫を噛み潰したような顔で、渋々語り始めた。








 「それ」と遭遇したのは、妖怪の山山中だった。


 射命丸「・・・ん?」

 射命丸?「・・・」


 「それ」は、完全に「私」だった。無表情に、虚ろな目でこちらを見つめていた。どうせ、また誰かのいたずらだろうと思っていた・・・


 射命丸「・・・おおい、誰だか知らないが冗談が過ぎますよ、ハハハ・・・」

 射命丸?「・・・・・・・・・」

 射命丸「・・・ちょっと?」

 射命丸?「・・・・・・・・・」ゴッ!

 射命丸「う、わあ!?」


 それは―――完全に―――私の弾幕だった。

 それも、本気で殺しに来ている!違和感を感じていなければ、絶対に殺られていた!



27: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 18:00:30.18 ID:4sQG/dmM0


 射命丸「ど、どういうこと・・・余所者?」

 射命丸?「・・・」ゴウッ!ゴゴゴゴゴ

 射命丸「わ、もう、許さない!」ビュウッ!ゴゴゴッ!


 スペルカードルールになれていた私は、腕が落ちていたように思う。だが、相手も殺し合いに慣れていないようだった。


 しかし相手は自分そっくりではあったが、意識は全くないようだった。ひたすらに、こちらを攻撃してきている。


 生き死にはもちろん、周囲のことも気にせずに。こちらとしてはそれも始末が悪い。


 風は草木を砕き、地面をえぐった。


 周囲に気をかけている暇などない。気を抜いたら、即刻お陀仏だ。


 後になって周囲からも同じような音が聞こえていたとしったが、全く記憶がない。


 ひどい戦いは、「それ」が消えるまで続いた。


 それこそ霧でも消えるように、いつの間にか消えていたのだ。


 疲れきっていて、そのうえピリピリしていたから、その時の細かい心情はほとんど覚えていない。


 ふと空を見上げたら、その瞬間二つ目の月が掻き消えるように姿を消したのを覚えている。


 ぼうっとしていたせいで、その不自然さにも気付かなかった。ただ、周囲の風景は荒れていて―――






 影香「・・・それで・・・どうしたんです?」

 射命丸「それだけ。それから頑張ってここまで山を取り戻したんだと、思う」

 影香「『思う』?」

 射命丸「実を言うと、あまり覚えていないんです。」

 影香「ええ?」


 射命丸「壊滅した妖怪の山にいた自分と、もとどおりの妖怪の山にいた自分を感じたその『間』の、記憶が―――」


 影香「記憶が・・・ですか」

 射命丸「聞いてみたことはあるけど、ほかの人も覚えていないって。何があったんだろう、私が知りたいくらいです。」

 影香「きっと、あんまり絶望して・・・」

 射命丸「おそらく。多分誰かが能力で戻したんじゃないかと思いますけどねえ・・・」

 影香「・・・すいません、嫌なこと聞いて」

 射命丸「いんや、すっきりしましたよ。誰もこんなこと聞きたがらなかったですから」

 影香「話を聞く限り、それこそ別の世界から凶暴な自分が出てきたみたいな・・・」

 射命丸「凶暴というより、意識がなかった。私を[ピーーー]ことしか考えてなかった、おそらく霊体製造能力の類」

 影香「それが消えた時、月も戻ったんですね。不思議な話です」

 射命丸「それが、創世事件にどう関わっているのか・・・『創世事件記』を信じるなら、ですけど」

28: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 18:16:01.97 ID:4sQG/dmM0


 二人は、カネモリ事件の資料も探した。しかし、年表にあった以上の情報はなかった。


 それこそ、何者かが地獄を襲撃し、地獄が壊れた、ということだけである。


 地獄が少々の罪人引受料変化でスマート化を必要とするほど無駄な部分が多く、無計画だった原因はこの事件らしい。


 この事件で完全に壊滅してしまったので、とにかく作れ作れと、構造もでたらめになってしまったのである。


 カネモリとは誰か、そもそも人名か?ともわからない。


 二人の議論はきっと関係者から漏れたものとして決着した。


 影香「地獄の人に聞けませんかね?」

 射命丸「当時の人はもう引退してるんじゃないですかね」

 影香「ああ、流石に初対面の小娘に引退した職員の住所まで教えちゃくれませんよね・・・誰かもわからないのに」

 射命丸「私に信用があったらよかったんですけどねえ」

 影香「無いんですか?」

 射命丸「無いです」

 影香「ああ・・・そうですか。」ガックリ


 影香の肩の落とし様は凄まじかった。二人は意気消沈したまま、屋敷を出ようとした。


29: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/22(土) 18:15:41.01 ID:qM4yayRE0

 数十年前

 男はさっきまでの一連の出来事が、夢のように思えて仕方が無かった。


 飛び起きて、時計を見ると、ああもう部の朝練の時間じゃあないか、と慌てて起き出すような予感が駆け抜けた。


 部―――俺は何部だったか?


 部―――部?学生の部活動―――?


 俺、学生だったか?


 馬鹿な、そうに決まってる。


 だって俺は―――


 俺は―――


 俺は誰だ?


 俺ってなんだ?


 頭の中に、むくむくと霧が生じる。どんどん物が思い出せなくなっていく。


 一瞬、森の奥に佇む苔むした祠が見えた気がした。そこに自分もいた気がした。それすらぼやけていく。


 思い出せなくなってゆく何かが、愛おしく思えた。


 相対的に、あの暗闇の道と女のビジョンが鮮明になってくる。


 視界はあの女に埋め尽くされたあと、白くなっていって―――



 男「・・・っあ」


 目を覚ますと、5畳と少しくらいの和室だった。箪笥と卓が置かれているせいで、より狭く感じる。


 男「・・・・・・」


 卓の上に設けられた窓から入る光が、チラリと目を突き刺した。手をかざす。朝日?いや、夕日―――?


 男「・・・朝、か・・・」


 男は半分勘だったが、とりあえずそういうことで決着をつけた。ここはどこだ。俺は誰だ?


 男「あ?」


 頭に自然に浮かんだ問が、非常に馬鹿らしく思えた。しかし、本当にわからなかった。


 俺は誰だ?ジェットコースターのように、その問が駆け巡る。


 これはもしかして―――記憶喪失?


 男の頭からは、あるのが当然だと思っていたものが、ぽっかりと抜け落ちていた。

30: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/22(土) 19:29:29.79 ID:qM4yayRE0

 時間は数十年後に戻り、場所は紅魔館から程近い、小さな村。

 控えめな桟橋に所狭しと並ぶボートは、人々が湖の魚を獲って暮らしていることを物語っていた。

 村のメインストリートの奥の奥、村よりか森に近いような場所に、ぽつんと食堂があった。

 周囲には小さな小屋がいくつかあるだけで、なぜこんなところに立てたのか、通常の人間であれば想像もつくまい。

 この食堂は人間だけでなく、もっと非科学的な客も相手にしているのである。

 今まさに、その食堂の中で食事をしている客がいた。


 影香「あーああ、どうするんですこれから・・・」

 射命丸「うう、・・・この上は、駄目でもともと地獄に行ってみるしか・・・」

 影香「それができたら苦労しませんよ」


 客A「おい、聞いたか?」

 客B「なんだい、連続通り魔事件のことか?」

 客A「そうそう、あの呪いの化身、この辺にいるらしい。」


 影香「!?射命丸さん!」

 射命丸「フフ、風説がこんなところで・・・」


 客B「なんでそう思うんだい?」

 客A「森の北で、討伐隊に会ったんだよ。話したのは盾を担いだ、犬耳と尻尾が生えた女の天狗だけだが」


 射命丸「ぶっ、椛用事があるとは言ってたけど・・・」

 影香「知り合いなんですか」


 客B「なにそれ!可愛かった!?ズリぃ!」

 客A「笑えば可愛いと思うが、やけに事務的でな、『危険な奴がいるから下がってください』としか・・・」

 客B「はあん、そういうもんだよな。それにしても恐ろしい話だ、奴、見境無しって言うじゃねえか。」

 客A「でも、もう追い詰めたみたいだぜ。随分範囲が狭かったからな、包囲網の。」

 客B「そりゃあよかった、でも倒せるのかねえ、そんなやつ」

 客A「それなりに強力なやつだが、あれだけの数を相手にしちゃ勝ち目がないだろう。」

 客B「ああ、ならいいがね。おっさん、お勘定!」


 射命丸「よし、影香さん、森行きますよ!」

 影香「わかりました!」


 二人は店から駆け出してゆく!


 店員「・・・何しに来たんだあの人たち」


31: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 22:05:21.76 ID:bjEJUEpX0


 そこから数十キロの地点。


 低い山に挟まれた谷道。雨が降ると流れができるそこは、砂利が堆積している。


 砂利の下に眠る湿った泥に根を張る力強い雑草が、その隙間から吹き出している。


 今は太陽が真上を少々過ぎたあたりで、余りにも印象が違うので両方を見比べた人がいてもそうだとわかったかどうか疑問だが・・・


 そう、ここはあの男が意識を得た地点なのである。


 林の影となったここは、結界に囲まれた幻想郷への数少ない平坦な入口となっている。


 そのなかでも、外の世界の宗教場重要な地点に近いここは少々力の強い妖怪なら軽々と入ることが可能だった。


 しかしその状況を長く保っている訳もなく、結界の主はそこに神社を立てることで防御を強化した。


 そこでこの道は結界内の状況を表すかのように、風に揺れる木漏れ日のほかは動くものもないほど平和だったのだが―――


 ?「フン、こんな結界で俺を止められると思っているのかぁ!?蛇だかタコだか知らねえが小賢しい真似を!」


 ?「アトミックファイヤアアアアアアアアァァァァァァァァッッッ!!!」


 男が放った爆煙が、道にあった「何か」を貫いた!そう、それは今まで中の平穏を保っていた結界――――




 平和は一転して、動乱となる。


 ?「フハハハハハハハハハァ!思い知ったか●●●●●野郎がアアアッ!!」


 そこに立っていたのは、仮面をつけた男――――


 それ以外は背が高い、若そうな体であることしか特徴はない。黒いハーフコートに、黒いズボン。その中で、仮面は異彩を放っていた。


 目尻は頬までたれ、逆三角形の歯を剥き出しにした口は耳の下まで伸びている、気味の悪い仮面。


 その仮面の下から、男は高笑いを漏らしていた。







 

32: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 22:13:13.66 ID:bjEJUEpX0


 見かねたように背後からいくつか人影が現れ、口を利く。


 貴族風の男「あーあー、ゲンさん派手にやらかしましたねぇ。あんたの能力なら消滅させられるものをー」

 和服の男「カカカ、よっぽど頭に血が上っているなあ。まあ、この一団丸々そんなような奴らばかりだが、カカカ」

 帯剣した女「私は違う・・・のか?まあいい、それにしても、どうしたことだここは。霊気に満ちてる」

 コートの女「・・・・・・寒い」


 仮面「野郎本気で許さん、こんなところに逃げ込むことも気に食わん。もういい、ここごと消す。本気で消す。」




 仮面「平和な安価東方SSが流行っている風潮をぶっ壊す!」




33: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 17:11:53.10 ID:MTOXLLDd0


 数十年前


 男「・・・」


 男は布団から立ち上がる。立ちくらみはない。

 障子を開けると、狭い廊下があった。向こうにはガラス戸があって、石畳が見える。

 それと同時に、奥に箱や大きな鈴、入母屋屋根を持った建築が見えた。瞬時に心当たりが浮かぶ。


 男「・・・ここは・・・神社?」

 ?「そのとおりよ。全く、面倒を持ち込んでくれたものね」

 男「!?」


 狭い廊下に、女が現れた。若い、背の高い女。目が大きく、彫りの浅い整った顔。美人の域か。

 印象的なのは服。胴体と腕の生地が分かれており、脇が露出した変わった構造だった。


 男「(堂々と上がり込んでいるということは、関係者か?そう思えば巫女に見えないこともなく・・・)」

 巫女「無愛想ね、礼の一つも言ったらどうなの?まったく、神社の近くじゃなかったら人命救助なんて・・・」

 男「じゃあ俺は殺されかかってたってわけか、礼はいらんな」

 巫女「これだからするつもりないのよ。あなた、なんであんなところにいたの?」

 男「・・・・・・残念ながら、さっぱりだ」


 途端、彼女は人を馬鹿にした顔になる。そうして、吐き捨てるように言う。


 巫女「・・・はぁ?何ふざけてるのかしら」

 男「俺としてもそうだったらよかったんだがな」

 巫女「・・・ふうん」


 彼女は懐から銀色のライターを取り出した。反対側も探り、くしゃくしゃの煙草の箱を取り出す。


 巫女「ラスト一本・・・」カチッ シュバッ


 空き箱を無造作に懐に放り込み、子気味良い音を立ててジッポで火をつけた。


 巫女「・・・幻想入り・・・の反動かしらね」フー

 男「・・・・・・どうやらここは俺のホームではないようだな」

 巫女「そのようね。面倒だけど、説明してあげてもいいわ。私、そういう立場だから」

 男「・・・どういう立場だ」

 巫女「博麗の巫女・・・って言ってもわからないわね。説明してください、って言ってごらんなさい」フー

 男「・・・・・・説明してください」

 巫女「・・・・・・いいわ、教えてあげる。私、霊幻。博麗霊幻。まあ、覚えてくれなくてもいいけど」

 男「・・・霊幻、か。よろしく頼む」

 霊幻「・・・じゃあ、まずはこの神社の存在意義かしらね」


 霊幻は障子を開けて、卓の上の灰皿に煙草をこすりつけた。


34: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 18:04:38.06 ID:MTOXLLDd0


 数十年後


 食堂裏の森 獣道


 射命丸「・・・っと、ちょっとすいません!」

 瀬戸大将「なんですかいの」

 射命丸「これ、あの呪いの討伐隊ですよね?」

 瀬戸大将「え?あ、ああ、そうです、そうです。ようやく逝きましたわい、あのニョロ公・・・」

 射命丸「そうですか・・・それはよかった」

 瀬戸大将「ひどい戦いでした、何人もニョロ公にあてられて・・・こんな老いぼれが無傷とは何の因果ですかいのお」

 射命丸「・・・あの、天狗がいませんでしたか、盾を背負った」

 瀬戸大将「ああ、あの女子ですかい、この道の先にいましたですよ」

 射命丸「そうですか、ありがとうございました!影香さん!」


 影香「ま、待ってください・・・」ゼエゼエ

 射命丸「ああ、すいません!ちょっと早すぎました」


 犬走「またなにか面倒事に首突っ込んでるんですか?」

 射命丸「ああ!そっちから来てくれるとはな、手間が省けたぜぇ!」

 犬走「・・・何か用ですか」

 射命丸「もうあの呪いは・・・」

 犬走「ええ、さっき。何かに怯えていて後先考えてなくて、始末が悪かったですけど」

 影香「何かに怯えて―――?」

 射命丸「なんて言ってた?」

 犬走「え・・・?『仮面が来る、仮面が・・・仮面が・・・』・・・みたいな」


 影香「仮面・・・?ああっ!」

 射命丸「ど、どうしたんです?」




 影香「仮面・・・!あの、訪ねてきた男!仮面を付けていた!」



 射命丸「仮面・・・?男・・・もしかして、同一人物・・・?」

 犬走「・・・え、ええ?ちょっと、どういう・・・」

 紫「仮面の男なら今、入ってきたわよ」




 一同「出たな!?」

 紫「やあねえ、人をお化けみたいに。お化けだけど。」

36: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 18:13:39.84 ID:a8NxVp240

 射命丸「それより、仮面の男が入ってきたって!?」

 紫「結界を吹き飛ばして入ってきたわ、仲間と一緒に。ここから離れた場所だからわからなくても無理はないけど」

 犬走「吹き飛ば・・・!?」


 結界は、そう簡単に壊れるものではない。それを、正攻法で破壊するとなると、とんでもない奴だ。


 紫「もう大概の有力者は行動を起こし始めてる・・・でも、ここに戦力を割いたせいでまだ誰も手が出せずにいるわ」


 影香「な、何が目的でしょう・・・」


 紫「・・・・・・おそらく、幻想郷の破壊」


 射命丸「な!?」


 犬走「にぃ!?」


 紫「今度こそ、幻想郷を破壊する気ね・・・何故そんなことをするかは、分からないけれど」


 影香「今度こそ?前にも来たんですか、彼!」


 紫「・・・・・・・・・力は比べ物にならないけれど、霊波の波長が双月異変の首謀者に酷似しているわ」


 影香「双月異変・・・!」


 ここで、仮面の男と双月異変、影香の母が繋がった―――!


 紫「首謀者は行方不明のままだったから、有り得ない話ではない。偶然にしては、状況が一致しすぎているわ」


 射命丸「・・・外来者たちによる幻想郷壊滅計画、それとその首謀者・・・」


 犬走「そんな!またあの悪夢が・・・!!」


 影香「・・・・・・母さん、貴女に何があったって言うんですか・・・!?」


 紫「さあどうする?ここから逃げ出すという手もあるわ。おそらく、彼を倒すことは不可能に近い」


 射命丸「・・・フ、やけに冷静じゃない?」


 紫「私はもう、腹をくくっているもの。奇跡に縋りたくはないけれど、やることはやってみるつもり」クスッ




 幻想郷中の気持ちと相対するように、太陽が光り輝いている。




37: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 18:47:48.55 ID:a8NxVp240


 数十年前


 男「・・・成程。要するに非科学的な者たちの隠れ家なわけだな」

 霊幻「そうよ。そしてこの博麗神社は、その結界の要・・・みたいなものかしらね。」

 男「・・・・・・俺はそういうものに関わりがあったのだろうか」

 霊幻「どうでしょう。霊感はあるようだけど、弱い霊が取り付くのはちと難しいわねー」

 男「取り付く―――」


 少し、心に引っかかる気がした。俺は、何かにとりつかれている?いや、俺が取り付いているのか―――?


 霊幻「今は何も取り付いてないみたいね、霊的な力を纏ってたにしても今は付いてない。何でこんな所に居るのやら」

 男「もし俺が外の人間だとしたらだが、他にも外から入る人間はいるのだろう?」

 霊幻「ええ。ほとんど偶然だけど、あなたのように霊感が弱いのは珍しいわ」

 男「・・・ふうむ。何かに引き寄せられたとか?」

 霊幻「それはないわ。あの道を通る糸だったら、流石に気づくわ」

 男「しかし、ただの人間が入ることはできないのだろう?」

 霊幻「ええ、保証するわ。科学的なエネルギーがホイホイ入ってきたら力が弱い妖怪は全滅よ」

 男「・・・ふうむ」

 霊幻「でも―――」

 男「?」

 霊幻「あなたはどうやら入ってきたみたいね。ほら」


 そう言うと霊幻は、枕元の鞄から、札のようなものを取り出した。


 男「・・・なんだそれは?」

 霊幻「惚けているのか、本当に忘れているのかは知らないけれど―――これは、結界を無力化する札。」

 男「・・・俺が使ったというのか?」

 霊幻「でしょうね、これはあなたの鞄だもの。」

 男「俺の鞄・・・」

 緑色の鞄を見るが、全く心当たりがない。とり憑く、と聞いた時の妙な感覚すら―――

 霊幻「まあ、そういうことだから―――」


 男「!?」


 その時、男の横に紫色の空間が現れて―――


 男を、ひとのみにした。






 霊幻「・・・悪く、思わないでよね。」


 霊幻はポツリと言うと、立ち上がった。


38: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 21:45:25.18 ID:a8NxVp240

 仮面「オラアアア!!逃げんなゴラアアア!!」ブンッ

 豆腐小僧「ウギャアッ!」バシッ

 仮面「死に晒せ畜生がアアアアア!!」ビカーッ!

 うわん「う(ry」ジュワアアア!


 仮面の男が逃げる妖怪たちに追いつくやいなや、1秒に1人のペースで彼らが消えてゆく。

 貴族風の男が、それを背後から見て笑った。


 貴族風の男「あーあー、荒れてますねえ・・・」

 和服の男「カカカ、ここまで逃げられたのが初めてにしても、ひどいな・・・カカカ」

 帯剣した女「むやみに殺生しおって」

 コートの女「・・・・・・」


 その時、仮面の男の前に一人―――もとい、二人の少女が立ちはだかった。


 仮面「ああ!?なんだテメエら!」

 秋静葉「待ちなさい!よくも、こんなことを!」

 秋穣子「だ、ダメだよ!逃げようよ!」

 仮面「今頃気づいたって遅いんじゃ!」

 秋静葉「!?」

 秋穣子「お姉ちゃん!」


 仮面の男の手が光り輝く!


 仮面「俺のこの手が光って唸る!お前をt・・・もとい!皆殺しだと輝き叫ぶ!」クアアア

 秋静葉「くっ!」ギュイイン

 秋穣子「お姉ちゃんっ!!」


 仮面「シャイニングフィンガーァアッ!!」


 仮面の男の掌から放たれる光。


 秋静葉「・・・・・・あ?」

 秋穣子「お姉ちゃぁんっ!!」


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 一瞬真っ白になった視界は、次の瞬間黄土色になる。

 かつての景色は見る影もなく、土埃ばかり飛んでいる。




 秋穣子「・・・うう・・・」

 仮面「命乞いでもしてみるか?」

 秋穣子「・・・・・・ゆ」

 仮面「遅いっ!」ビカアアアッ!


39: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 19:31:48.63 ID:avGZCEkP0


 森―――


 紫「あなたはいいの?」


 影香「・・・」


 紫は、飛び去った天狗たちに取り残された彼女、源影香にそう問いかけた。


 影香「・・・私、死んだ母が唯一の身内でしたから」


 紫「・・・双月異変に興味があるようね?あんな事件を調べたって、何にも・・・」


 影香「母は、自殺したんです。その動機に関係していると思われるのは、仮面の男と、双月異変しかないんです」


 紫「・・・・・・それは、一枚のコインの裏表。一人の怨霊の、光と影―――」


 影香「・・・・・・教えてください、何が、あったんです?」


 紫「・・・・・・とても、全ては知らないけれど・・・」


 紫は、噛み締めるように一旦振り返って、空を仰ぎ見た。


 紫「・・・さて、もう行きましょうか。道すがら、話すのも一興でしょう」


 影香「・・・どこにです?」


 紫「博麗神社。有力者たちの、緊急会議。まあ、説明するには少々遠回りするしかないけれど」


 影香「・・・わかりました、会合にはとても参加できませんけど」


 無言のまま、紫は獣道へと歩き出した。神社への道には見えない、「遠回り」とはこのことか。




 紫「・・・私はあの日、偽物をまいて、独力で動き回った。式神たちも、使い物にならなかったから」


 紫「おそらく博麗大結界計画以来、あそこまで動いたのはあの時だけ。幻想郷そのものの危機だったから」


 紫「犯人の名前も、後で調べた。」


 紫「元博麗の巫女である博麗霊幻」


 紫「惣流異変を引き起こして追放されたミノタウロス・・・パンテオン・スラッガー」


 紫「どうしても、特定できなかった女の妖怪。すごい能力を持っていた」


 紫「そして・・・」




 紫「首謀者である平安時代の怨霊、『源義真』。おそらく仮面の男と、同一人物」


 影香「・・・!」

40: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 19:59:12.29 ID:avGZCEkP0


 紫「ええ、あなたの苗字と同じ・・・」


 紫「でも、記録では生前、彼に子供なんていなかった。それに死後も、とてもそんな暇なんてなかった。」


 紫「彼は生前、武士だった。しかし強い恨みを抱いて死に、大きな存在だった手鏡にとり憑いて怨霊となった・・・」


 紫「ただの怨霊だったけど、恨みが強かったから、能力も持ったようね。まあそれはそうとして・・・」


 紫「平兼盛という武士に妻を殺されたのね。しかし敵を打てないまま、熱病で亡くなった。」


 紫「でも、妻の形見だった手鏡の怨霊となったときには、兼盛は既に地獄にいた。」


 紫「でもその時はただの怨霊、とても幻想郷に入るなんて知恵はない。その時、どうするか?」


 紫「兼盛の身内―――平清盛、って知っているかしら?彼を祟り殺したのよ。なんの因果か、同じ熱病で―――」


 紫「その時代には優れた呪術師が一人、居たわ。彼は平の一族に仕え、当主である清盛の御所にも結界を張っていた。」


 紫「どうやって入ったのか?全く不明よ。力も乏しかった彼に、そんな真似できるはずがない・・・」


 紫「でもとにかく彼は、祟り殺した。怒りはまだ収まらなかったけれど、その呪術師に封印されてしまった。」


 紫「一族の敵対勢力に利用されることを恐れて、秘密裏に。最初は祓おうとしたけれど、無理だったみたい。」


 紫「恨みが強かったから、流石に現世から引き剥がすことができなかったのね。」


 紫「仕方なく森の奥に祠を作って、鏡を安置した。眠らせた上で、しめ縄を張ってそれを固定した。」


 紫「そこから異変のその日まで、彼はこんこんと祠の中で眠り続けた。」


 彼女は神妙な顔をしたが、足は止めない。


 紫「何十年―――」


 紫「何百年と―――実に一千年近く。」


 紫「その中で無駄なものは削ぎ落とされ、知性を持った。能力も研ぎ澄まされていった。」


 紫「でも―――何故か、彼は目覚めた。」


 紫「そして、おそらく得た知性が果たせなかった敵討ちを果たそうと、結論したのでしょうね。」


 紫「森を抜けて、博麗大結界に到着した。その間に、例の女性妖怪とパンテオンが一向に参加したようね。」


 紫「そして、結界を無力化した。」


 影香「どうやって・・・です?」


 紫「彼の能力―――『あらゆるものを複製する程度の能力』ってところかしらね、それを使って・・・よ。」


 彼女は足を止めてこちらへ振り向き、クスリと笑った。


41: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 20:57:47.31 ID:avGZCEkP0


 紫「鏡に憑いてるから、にしても笑えなすぎるわね・・・」


 紫「創世事件の犯人の天狗も似たような能力を持っていたけれど、彼は本当に、なんでも複製できる。」


 紫「タチが悪いのは、存在の仕方を反転させられること。」


 紫「いくら弾幕を放っても片っ端から向きを反転させたコピーで相殺して、全く歯が立たない。」


 紫「能力で消滅させようにも、彼、自分も複製できるのよ」


 紫「意識を移せるようにしたバックアップの体に意識を移して、能力を自分にコピーして・・・」


 紫「自分の能力で殺される、なんて愉快なことになるわ」


 ちっとも愉快ではない。


 紫「とにかくその能力で結界から私の能力を抽出して、反転させたコピーを結界にぶつけて局地的に相殺した。」


 紫「でも、幻想郷と外との非科学的、科学的なエネルギーの違いは彼に激突したようね」




 紫「・・・それにしても、所詮タダの怨霊である彼がなぜそこまで移動できたんだと思う?」


 紫「それは、おそらく目覚めた要因にも直結すること・・・」


 紫「人間にとり憑いて来たのよ。おそらく、彼の兄の子孫、血縁。」


 紫「無用心に墓参りでもして、しめ縄を切ってしまったんじゃないかしら。それでまんまととり憑かれて・・・」


 紫「移動に利用された、というわけね。それが、ここでいよいよ問題になってくる・・・」




 紫「・・・フフ、私の失態を晒すことにしかならないんだけど・・・」


 紫「エネルギーに激突した彼は、人間にとり憑いているという幻想郷ではありえない状況から弾き出された・・・」


 紫「要するに、人間体と霊体に分離してしまったのよ。」


 紫「とり憑いている期間が長かったから、人間体はそれまでの記憶を失い・・・」


 紫「霊体はショックで―――何と言ったらいいかしら―――まあ、ネジがずれたのよ。」


 紫「その後よ、私はそこに駆けつけた。すっかり相殺された結界、私が慌てたのは予想がつくでしょう?」


 紫「しかしそこに霊体は居なかった・・・この怨霊、時々テレポートみたいな真似をするのよ・・・」


 紫「私は残された人間体が大きな力を持っていると勘違いして、襲いかかった・・・『あなたは強力すぎるの!』って」


 そして彼女はさも可笑しそうに笑う。しかし直後には怒りに肩を震わせた。


 紫「フフ、その後誤解だってわかったはずだったのに、人間風情に騙されてまた誤解しちゃうのよ・・・博麗、霊幻に!」

42: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 18:52:52.34 ID:7merReHP0


 数十年前


 仮設会議場


 妖怪「ガヤガヤ」


 地神「ヒソヒソ」


 霊魂「ガヤガヤ」


 霊幻「あーあー、お静かに皆さん!」


 博麗霊幻がちゃちな壇上に登り、そう叫ぶ。すると、先程までの喧騒が嘘のように静まり返った。


 霊幻「えー、おほん!この度、結界が一部破損した件についてですが!」


 霊幻「引き起こしたと思われる人間を拘束したため!」


 霊幻「これ以上の治安悪化は免れると結論づけられます!どなたか質問は!?」


 妖怪「ガヤガヤ」


 地神「ヒソヒソ」


 霊魂「ガヤガヤ」


 ?「すいません!」


 霊幻「はいそこの天狗!」


 柳「スキマ妖怪はどこにいるんです?」


 霊幻「結界修復作業にあたってます!地域ぐるみで破損しましたので、少々始末が面倒でして!」


 柳「あと、『引き起こしたと思われる人間』とは?」


 霊幻「記憶を失ってましたが、結界を破壊しうる札を所持していました!こいつです!」


 霊幻は、壇の向こうから手を縛った男を突き出した。


 男「・・・・・・」


 柳「記憶を失っていた、とはどういう・・・?」


 霊幻「今回!スペシャルゲストをお呼びしましたっ!」


 続いて向こうから、二人組の女性を引きずり出した。


 小町「やれやれ、人使いが荒いねえ・・・」


 映姫「・・・霊幻、終わったら面貸しなさい」


43: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 19:11:11.31 ID:7merReHP0


 霊幻「さあさあ!四季映姫様!白黒つけちゃってくださいよ!こいつが犯人ですよねえ!」


 映姫「・・・・・・」




 男「・・・閻魔、といったところか・・・全く、ここは夢がありすぎるな・・・」ボソッ




 映姫「・・・本当に覚えていない?」




 霊幻「なんと!これは、どうしようもないですねえ!まあ、そういうことで!はい解散解散!」パンパン


 小町「まあ待ちなさんなって」


 霊幻「・・・はああ?」




 男「・・・・・・」


 映姫「(・・・結界を壊したのはこの男か?)」


 映姫「(・・・・・・馬鹿な、白黒つかない?どういうこと・・・)」


 映姫「本当にこの男がやったかどうか、白黒つかない・・・」


 一同「何ィ!?」


 霊幻「(・・・え?この男がやったんじゃないのか?)」


 映姫「馬鹿な・・・」


 映姫「幻想郷の、危機は去った?」


 霊幻「ちょ、ま!ストップ!」




 映姫「黒?」




 一同「!?・・・霊幻!?」


 霊幻「え?あ!?」




 その時、木の陰がゆらりと地上に伸びたかと思うと、3つの人型を成して―――




44: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 19:23:10.11 ID:7merReHP0
*おすすめBGM:dtb外伝第一話冒頭戦闘シーン*




 ?「ウラアアアッ!!」ビュウン!


 ズゴンッ!メキメキイッ!


 妖怪「うわあああ!?」


 霊魂「ひいいいい!?」




 瞬間、現れた大柄な男が斧を振り下ろす!




 運の悪い数人の頭が、ザクロのようにはじける。




 それとともに頼りない石畳が持ち上がって軋んだ。




 霊幻「!?妖怪!?なんで気配が!?」


 柳「パンテオン・スラッガー!?追放されたはずじゃ・・・!?」


 パンテオンは続いて斧を横殴りに一閃する!


 これまた数人の体がホイホイと飛ぶ!


 パンテオン「ヘハハアッ!俺様を舐めた罰と思えッ!!追放なぞッ!!」ビュウン


 小町「野郎!」


 地神「くっ、なんて力・・・!」




 映姫「っ!?」バチイッ!


 ?「・・・」シュッ


 映姫「くっ!?お前か、仲間共々隠れていたのは!せえいっ!」ブン


 女妖怪「・・・」シュルッ


 影に吸い込まれるように消える妖怪。次の瞬間、映姫の背後に現れて刀を振り下ろす!


 映姫「チィッ!」ズザザッ


 女妖怪「・・・」チャキッ


45: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 19:36:09.02 ID:7merReHP0


 ?「待てシンエイ!」


 シンエイと呼ばれた女「・・・」ピクッ


 映姫「・・・!?」




 木の陰から、男が出てきた。


 黒い、ボロボロの大鎧に身を包んでいた。甲の下から、うすら笑いが見て取れる。


 しかし、先ほどの妖怪より力は弱いように思えるが―――



 ?「ククク、ちょうどいいウォーミングアップだ。お前は手を出すな」


 シンエイ「・・・御意」シュルッ


 映姫「・・・貴方、怨霊?なぜこんなところに・・・!?」


 男の顔が見えた瞬間、映姫は全てを理解した。




 その顔は、先ほど見た結界を破壊したという男の顔だった。




 そう、あの人間は操られ、おそらくはこの怨霊の能力で結界を破壊した―――




 となると、札という話は霊幻が犯人に仕立て用として仕込んだのか・・・




 ?「行くぞ、我が名は源の・・・おっと、これだから癖というのは怖い。まあいい、冥土の土産に聞かせてやろう」


 映姫「馬鹿な、それだけの力で何を・・・」


 ?「俺の名は、源・・・義真だッ!」ガッ


 義真と名乗った男は、掛け声とともに強く地面を蹴る!


 飛散する礫、防御せんと手をかざしたとき―――


 義真「クイック反転!増えろッ!」キイン


 映姫「!?」


 一瞬目を疑った。


 男の声とともに、礫は十倍にも増えた!


 その灰色の蜂は、信じられないほど加速してこちらに突っ込んでくる!

46: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/31(月) 19:10:16.61 ID:Br1mqRZe0


 映姫「くっ!」ビギュギュンッ!


 咄嗟に弾幕を貼って爆風で防ぐ!


 映姫「・・・!?」


 義真「オラァッ!」ビュッ!


 映姫「!」


 爆風をものともせず突っ込んでくる具足姿!その手には、鈍く光る刀―――


 な、スペルカードルールは―――?


 映姫「っく!?」ブン


 義真「せえい!はっ!とぉア!!」ビュビュン ブウン!


 映姫「く、あ・・・が!!」バシュ ガキイン!


 手の甲に赤い線が走る―――


 切っ先が冠にあたって、鈍い音を立てた。


 義真「!?チッ、折れたか!面白くない・・・」


 映姫「・・・今度はこちらの番ッ!」ビギュウンッ!


 遠慮なしに飛ぶ弾幕!


 閻魔である彼女は、先程の斬撃に殺意を感じ一瞬で殺しにかかった!


 義真「生意気なァ、お前のターンなんてねえよっ!!」


 しかし義真は顔色一つ変えないどころかうすら笑いすら浮かべ、つと手をかざして―――




 一瞬目の前が瞬いて、巨大な鏡があるように思えた。


 しかしそこに映った弾幕が本物の弾幕と重なった時、さらに強い光を発して―――


 映姫「・・・あ?」




 爆発。その狭い範囲に冷たい光を振りまいて、彼女の攻撃は消えた。




47: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/31(月) 19:31:54.87 ID:Br1mqRZe0


 映姫「そんな!どうして・・・どうしてッ!」ビギュウウン!


 義真「クヒャハハハッ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄アアアッ!!」ビギュギュン!


 撃てば撃つほど、煌きとともに像が現れ相殺してゆく。




 馬鹿な、こんな弱小霊に―――!




 こんな―――!




 義真「無駄m・・・ゲホゲホ!飽きた、お前コイツと遊んでろよ・・・」


 映姫「!?」




 最初は気がつかなかった、煌きがひとつ増えただけ―――




 でも、明らかに影の向きが今までとは違って―――




 映姫「・・・私?」


 映姫?「・・・・・・」ビギュンッ!




 見慣れた弾幕の、見慣れない方向の光に視界を奪われて、気づいたら何も見えなくて―――
















 義真「クヒャハハハハハハハ!こりゃあいい、自分に攻撃されるとはな・・・!」


 義真「シンエイ!お前の能力と俺の能力で、今の現象をこの辺り一帯に引き起こしてやるとしよう!」


 義真「清盛を討った時にも使った・・・『影を伝う程度の能力』でな!」


48: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/31(月) 20:31:50.63 ID:Br1mqRZe0


 数十年後


 紫「フフフ・・・おかしいでしょ?妖怪が人間のことをこれほど恨むなんてね」


 紫「ただ結界をなしたという達成感とプライドから、そのことに関して騙されたことが悔しいだけだったのかも」


 紫「・・・でも、危機に対して何もできなかった割に、後に解決する人間を疑うなんて・・・」


 紫「予想もしていなかったし、恨む相手を[ピーーー]こともできなかった自分への怒りをも混同して・・・」


 紫「・・・・・・時々、あの服を着ているだけで殺したくなる・・・」


 紫「・・・・・・・・・その度、新しい巫女を見つけなきゃならない・・・」


 紫「まさか、あの霊幻の子孫が巫女になった途端、またアイツが・・・義真が来るなんて」


 そう言うと、彼女はやれやれといったように手を頭につけた。


 紫「なんの因果かしら・・・ね・・・」


 影香「・・・・・・なぜ、霊幻は擦り付けてまで犯人を見つけようとしたんでしょうか」


 すると、紫はまたクスリと笑った。


 紫「幻想郷は能天気な連中ばかりだけど、流石に生活に関わってくる結界に関しては、敏感なのよ」


 紫「博麗の巫女が、『犯人分かりませんでした』じゃあ、済まされないでしょう?」


 影香「・・・なるほど」


 紫「まあ、結果的に、彼女も義真の一味に加わることは言ったとおりよ。」


 紫「敏感な連中だから、一応記者会見のような真似をした・・・のだけれど」


 紫「一味はテレポート状態・・・その見つからない状態から解かれて、そこをまっさきに襲撃した・・・」


 紫「その時、四季映姫・・・まあ、閻魔翌様もいたのだけれど、唯一義真と戦闘に発展した人物ね。」


 影香「唯一・・・え、どうやって解決したんです?」


 紫「ん、あとで説明するわ。とにかく、戦闘になった時、弱い妖怪にしか見えなかった彼なんだけど・・・」


 紫「石ころ増やすわ、その閻魔翌様も増やすわで・・・結局、閻魔翌様は瀕死の重傷を負った」


 影香「え、閻魔翌様を!?」


 紫「『オリジナルを襲おうとしない』性質を反転して、本物を襲う偽物を作り出したんでしょうね・・・」


 影香「・・・!それは!」




 

52: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 17:10:41.28 ID:RLoFr32+0


 紫「そう、あの日幻想今日中に起こった悪夢・・・・・・」


 紫「誰が、自分に殺されるなんて想像したでしょう?」


 影香「・・・義真は、一人一人コピーして当たったんでしょうか?」


 紫「そんなはずないわ、彼、面倒くさがりの快楽主義者だもの。」


 紫「方法については・・・確信は持てないけど、辻褄が合う方法があるのよ。」


 紫「月が増えたことにも、清盛の御殿への侵入手段にも通ずる・・・」


 影香には心当たりがあった。


 影香「ただ一人、天国にも地獄にも全く資料の残っていない女妖怪・・・彼女ですね」


 紫「ええ、話が早くて助かるわ。彼女は生前からの義真の部下、おそらくは忍・・・」


 影香「忍・・・忍者ですか?」


 紫「壇ノ浦決戦の際も、平方の天皇を服部一族が保護したという説があるわ。その時代には既に存在していた。」


 紫「怨霊が能力を持つ場合、生前の生活・職業が強く影響するのよ。」


 紫「彼女が持っていたであろう能力は、その職業から影響されたもの」


 紫「『影を伝う程度の能力』」


 影香「・・・!」


 紫「月の光はおそらく義真が増やしたのでしょう・・・能力が夜間でもよく使えるように」


 影香「でも、それだけでどうやって・・・?他の仲間は能力は持っていなかったんでしょう?」


 紫「・・・さぁ、着いたわ。ここよ。」


 そう言って、紫はボロボロになったしめ縄をはね上げた。




 不自然に隆起して、露出した地層を地上の木の根がおおっている。


 その中に、ポッカリと穴が口を開けていた。


 普通、多少陽の光が入り込んでいて、中の地形が見えるはずなのだが、そこは全くの闇だった。




 紫「ここが、双月異変の引き起こされた場所・・・」


 紫は静かに言った。


 穴はとてもそんなスケールを秘めているようには見えなかったが、異様な雰囲気を放っていることには違いなかった。

54: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 17:34:59.38 ID:RLoFr32+0


 紫「彼女の能力は、単体では結界を突破したり・・・まあ、所詮テレポート程度でしかない。」


 紫「本来諜報員である忍者にはピッタリの能力だけどね。」


 紫「しかし、地表・・・影の世界と光の世界の境界を自由に行き来する類稀な存在であることには違いない。」


 紫「実際、能力に『影』の字が入る妖怪さえ見たことがないわ。」


 紫「要するに彼女は影の世界へ干渉する資格・・・『アカウント』持ちなわけね。」


 影香「アカ・・・?」


 紫「義真はわざわざ一人ひとりコピーして回るなんて真似考えもしなかったでしょうね。」


 紫「部下のアカウントで影の世界に干渉して、幻想郷のデータを上書きしてしまえばいい・・・」


 紫「もちろん、住人の性質を反転させて、凶暴化させてから。こうして幻想郷丸々コピーが出来上がる」


 影香「・・・!まさか、そこから!」


 紫「ええ、月を二つにして増やした影から、部下のアカウントで偽物を取り出せばいい。」


 紫「あの日、住人たちを襲った偽物は偽物ではない―――正真正銘のコピーよ。」


 影香「なるほど、だから弾幕ごっこの腕前まで・・・」


 紫「でも、自分たちまで二人にしてはシャレにならないでしょう?そこで、この洞窟に入った・・・」


 影香「ここは、なんなんです?暗い・・・」


 紫「双月異変の前、鉄櫂事件による地殻変動により現れた虚無の空間・・・ああ、この事件の前は海があったんだけど」


 影香「海?話に聞く、あの塩水の池―――」


 紫「ああごめんなさい、それより、鏡には鏡は映らないでしょう?光がなければ影はできないでしょう?」


 影香「ええ?」


 ・・・哲学的なことか?


 紫「何、簡単なことよ。まあ、この洞窟の生い立ちは説明すると長いけど・・・」


 紫「この洞窟には光がない。すると影もない。すると今回の計画で『鏡』の役割を果たす影はここにはない・・・」


 影香「・・・ああ!この中のものは増えなくて済むんですね!」


 紫「一味にとっては便利な場所でしかなかったけど、歴史上の汚点である鉄櫂事件によって出来た洞窟・・・」


 紫「今の双月異変の箝口令には及ぶべきもないけど、幻想郷では滅多に口にしない話題・・・」


 紫「それでも有名だったから、義真の耳にも入ったんでしょうね。」


55: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 17:47:28.95 ID:RLoFr32+0


 影香「創世事件の柳は、このことをどこかで知って・・・」


 紫「創世事件?ええ、あれも同じような洞窟で引き起こされた事件ね、でもその洞窟は崩れて、今じゃここだけね」




 謎が解けた、世界に絶望した柳は、この異変を参考に新しい世界を作ろうとしたのだ!




 その時、信じられない―――ある意味どこかで察していたのかもしれないが―――単語が発せられた。




 紫「おそらく、シンエイの事前諜報・・・あ、これはその閻魔様が聞いた、女妖怪の名前らしいんだけど・・・」


 影香「・・・!?え!?今なんて!?」


 紫「え・・・いや、シンエイて・・・」




 シンエイ―――?




 真影―――?




 影香「・・・・・・その女妖怪・・・・・・・」


 紫「・・・・・・どうかしたの?」


 影香「・・・・・・同じなんです、お母さんの、名前と・・・」


 紫「!?ちょっと、どういうこと!?こんな名前、ざらにあるもんじゃないのに―――」


 影香「・・・母が自殺したんです。手がかりは、仮面の男と話していた時に聞いた、双月異変のことだけで―――」


 紫「―――!」




 紫は穴の横にもたれて、ううん、とうなった。




 紫「・・・おそらく決まりね、関係者で、同名となれば―――」


 影香「・・・・・・」




 お母さん、あなたはいったい誰―――?




56: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 18:02:36.28 ID:RLoFr32+0


 数十年前


 仮説集会場跡地(現死体置き場)




 はくれいれいげん はなかまになりそうなめで こちらをみている!


 義真「どないしよっかなあ」


 霊幻「なあたのんますわ旦那、私もう居場所ないんですわー」


 義真「でもなあ、俺あんま人多いの好きじゃないねん」


 霊幻「そこを何とかお願いしますよ、邪魔にはなりゃしませんて―――」




 義真「・・・なんで関西弁なんだ?」


 霊幻「始めたのあんたじゃない」


 義真「まあいいわ、着いてきな」


 霊幻「ありがと、じゃあせいぜい精進するとするわ」


 義真「ま、そういう集団じゃないがな・・・いつでも離れてくれていいぜ、俺も裏切り者は嫌いだ」


 霊幻「・・・・・・」




 パンテオン「ふぅはぁはははははァアーっ!この!この!てめえらの骸なんざぶつ切りにしてやらー!」ズダンズダン


 シンエイ「・・・・・・その辺にしておいたほうがいい」


 パンテオン「だまれええいッ!正論に用はないッ!」ズダンズダン


 シンエイ「・・・・・・!義真様、何か」


 義真「おい真影・・・じゃない臣影、この辺に真っ暗闇の空間がないか、調べてこい」


 臣影「御意」シュルッ




 義真「ククク、パーティの始まりだ・・・」






 男「・・・・・・俺、だと?」


57: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 18:30:26.25 ID:RLoFr32+0


 数十年後


 仮設集会場


 天狗「ヒソヒソ」


 河童「ガヤガヤ」


 付喪神「ワイワイ」


 霊夢「あー、お静かに・・・ていうかなんか、デジャヴュなんだけど・・・」


 天狗「」シーン


 河童「」シーン


 付喪神「」ヒソヒソ


 霊夢「えーと、侵入した怨霊一味のことだけど・・・スキマババアと連携とってどうにかしますから!そういうことで!」


 射命丸「ちょ、ちょい待てい!侵入した怨霊、以前にも異変を起こしたことがある怨霊だという情報が・・・」


 霊夢「ちょっとよくわかりません!じゃあそういうことで!」


 現博麗の巫女が後ろを向いた時である。


 紫「ババアとは失礼ね、誰のことかしら・・・?」


 霊夢「どおぉう!?」


 影香「・・・・・・あ、どうも・・・」


 仮面「どうも!」


 貴族風の男「いい天気ですねェ」


 和服の男「邪魔するぜ」


 帯剣した女「こんにちは~」


 コートの女「・・・」




 一同「・・・・・・」


 一同「・・・・・・!」


 一同「うわあああああああ!?」


 仮面「やぁって参りましたアアアアアッ!!懲りずにッ!」


 

59: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 18:55:07.87 ID:RLoFr32+0


 霊夢「そっちから来てくれるとは手間が省け・・・」


 仮面「太陽拳ッ!!」ピカア


 まばゆい光を放つ仮面の男!


 一同「うわあああ!?」


 霊夢「っく、目が・・・」


 仮面「お?天丼で行くか、『目が』だけに!」


 続いて両手を合わせて前に出す!


 仮面「バルス!」




 その瞬間、集会場がまばゆい光とともに土煙を上げて吹き飛んだ!


 天狗「ぎゃああ!?」


 河童「ひいい!」


 付喪神「いってえっ!!」


 仮面「む?『いってえっ』だと?明日は筋肉痛か?よし、次はこれだァー!」ガシッ


 霊夢「く・・・えっちょ」


 一人でべらべらと喋りまくり、続いて霊夢の頭を鷲掴みにする!


 仮面「貴様らに笑みなど似合わない・・・!」キイン


 霊夢「何でもアリね、夢想転生!」


 仮面の男の手は、霊夢の頭を通り抜けて―――


 仮面「アリ?」スカッ


 仮面「ざっけんなァァアアッ!決めゼリフどうしてくれんだアアアア!!」


 霊夢「そ、そんなこと知らな」


 仮面「廬山龍飛翔オォーッ!!」ゴウッ!


 霊夢「が、は!?なんで当た―――」


 仮面「その妙な技を反転して適用した、つまり相殺されて役に立たないのさ・・・」フー


 霊夢「・・・む、無茶な・・・」ガクッ


 一同「ひいい!!」

60: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 19:06:11.89 ID:RLoFr32+0




 仮面「・・・ていうか、なんかデジャヴュなんだけど」


 貴族風の男「それよりゲンさん、あれどうするんです?逃げますよ」




 貴族風の男が指す方には、集会場から逃げ出してゆく魑魅魍魎たちの姿があった。




 仮面「いいや、なんか冷めた・・・お前ら好きにしろよ」


 貴族風の男「そうですかぁ、じゃあ私が糧にしちゃいます」


 和服の男「カカカ、俺は鬼が出てこないならどうでもいい」


 帯剣した女「私も修行になるような相手以外は御免・・・ていうかあんた鬼じゃなかったっけ?」


 和服の男「カカカ、それも元は幻想郷のな・・・それより源、後ろ後ろ。」




 仮面「あ?」




 仮面の男が振り向いた先には―――




 仮面「へぶ!?」バキャアッ!




 紫の放った弾幕が飛んできていた。




 もんどりうって倒れる仮面の男。




 白い、仮面の破片が飛んだ。




 紫「・・・・・・源の、義真・・・?」


 影香「か、仮面が・・・!」


 ?「・・・・・・いっててて・・・あ?ああ・・・ご名答よ・・・」


 男は半分飛び上がるようにして起き上がり、素顔を晒した。その顔は、紛れもない―――


 義真「よくわかったなァ!」


 源義真の顔だった。

62: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 19:24:54.65 ID:RLoFr32+0


 仮面の男は、やはり源義真―――!?


 心の中に、ぽつと疑問が浮いた。


 紫も説明してくれなかったこと。それはどんどん心の中で肥大化していって、口に出さずにはいられなくなって―――




 影香「・・・な、何故・・・何故、生きているのに異変が終わったんだ!?」


 義真「ああ~?異変・・・異変ね・・・ああ!俺はねえ、バックアップ!」


 影香「バック・・・!?」


 義真「異変を起こしたのはオリジナル、俺はバックアップだよ・・・わかるか?言葉通りの意味なんだがなァ~?」




 紫「・・・!!・・・まさか貴方、自分までコピーしていたの!?」




 影香「・・・!?まさか!」


 義真「YES!異変を起こすことを決意した俺は、もう一人、俺を作ったのさ・・・」


 紫「・・・バックアップはオリジナルが死んだ時のために、仮面で変装していたってわけね・・・」


 義真「そうさ!幻想郷から脱出した俺は、再び世界放浪の旅に出た・・・そして!再び戻ってきたわけだああああ!」


 紫「呪いを追ってきただけでしょ」


 義真「んぐ、気に入らない奴を追いかけて悪いか!?第一オリジナルの死因がわかっちゃいねーんだ!」


 紫「死因が―――?」


 義真「犯人は幻想郷にいるんだからな、それごと消しに来たというわけだ!」


 影香「・・・」




 じゃああの時訪ねてきたのはバックアップ―――!


 それなら一味だった母と異変について話していても頷ける・・・!




 義真「そうそう、仮面・・・・・・ってかてめえ壊しやがったなァ!許さん!」


 義真は突如怒り狂った表情を示し、両手をこちら側でない方に合わせた!


 義真「食らえ鶴仙流!かー!めー!はー・・・」


 紫「・・・!影香!」

63: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 19:31:13.53 ID:RLoFr32+0


 紫「隠れ家に飛ばすから、式神に実力者を集めるように言って!」


 影香「えええ!?それはどういう・・・」




 義真「めー!」


 義真の両手のひらの間に、光の玉が現れる!




 紫「・・・!集める場所は考えれば分かること!飛ばすわよ!」


 影香「ちょ、ちょっと待って・・・」




 影香の訴えは聞き入れられることなく、足元には紫色の空間が現れて―――




 影香「うわあああ!?」


 落ちた。




 義真「はァァアアッ!!」ドンッ!


 紫「・・・!」ビギュンッ!




 義真の放ったかめはめ波と、紫の弾幕がぶつかり合う!




 義真「さぁ・・・世界中からコピーしてきた技達の的になってくれよ!」


 紫「・・・!」


66: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 19:52:52.80 ID:RLoFr32+0


 数十年前


 シンエイ「義真様・・・ありました、東に2キロの地点です」


 義真「そうか!シンエイ、伝えるか?」


 シンエイ「いけます」


 パンテオン「面白そうじゃん、俺も連れてってくれよ!」


 霊幻「はあ、私もついていくしかないみたいね・・・煙草ない?」


 義真「そらよ」


 霊幻「・・・なにこれ泥?とっくに土に還ってんじゃない・・・」


 義真「ハ、健康に悪いってよ・・・」


 霊幻「時間の流れに注意されるとは思わなんだ・・・」


 シンエイ「・・・行けますか」


 義真「うし行くぞ、コイツに触れろ」タッチ


 パンテオン「」タッチ


 霊幻「」タッチ




 シュルッ









 男「・・・・・・行ったか・・・全く、どういうことなんだ・・・」




 ―――お前は知らなくていい




 男「!?」


 その時、胸の奥から声が響いた―――気がした




 ―――身構えたって無駄だ、俺はお前の心の中にいるのだからな




 男「・・・どういうことだ」

67: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 20:01:24.80 ID:RLoFr32+0




 ―――俺が、源義真―――まあ、あいつもある意味ではそうだが―――




 男「・・・何を言っている?」




 ―――あの腹黒女から聞いただろう?ここは、非科学的存在の巣窟なんだ・・・




 男「それがどうした」




 ―――そこに入った時、ショックで俺は分裂してしまったのさ・・・善と悪、といったところか




 男「・・・!?待て、俺は誰だ!」




 ―――お前は俺の兄の子孫さ、源義真に興味を持って、まんまと祠にやってきて取り憑かれてしまったのさ・・・




 男「・・・!」


 おぼろげな記憶が、つながった気がした。




 ―――前にも言ったとおり、分裂した時に失った力は取り戻した・・・寝床を提供してくれて感謝する




 男「・・・俺は、元の生活に戻れるのか」




 ―――無理だ。取り憑かれた時間が長すぎる




 男「・・・!」




 ―――俺も仇を討ちたいが、無理だ。あの、悪い俺を倒すだけで精一杯だ




 男「・・・・・・」




 ―――お前に一つ、頼みがある。

 男「・・・?」

68: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 20:28:32.86 ID:RLoFr32+0


 数十年後


 スキマ妖怪のアジト


 影香「・・・うぐっ、はあはあ・・・気持ち悪っ!無理無理吐く・・・うっぷ・・・」


 影香「・・・うしOKOK、もう大丈夫・・・えっと、式神は・・・」


 影香は申し訳ないと思いつつも、非常事態なのでと言い訳して縁側に上がった。


 影香「・・・・・・ん?これは・・・」


 卓の上に、紙の束がある。ふと目を奪われ、手でめくった。




 第二次双月異変(仮) 犯行グループ資料




 アダム・ベルトホルト

 生前はドイツ貴族。

 怨霊を経てインキュバスとなり、悪魔へ昇格。

 過度の社会干渉行為を繰り返し資格剥奪となったが未だ人間の虐殺を繰り返しており、

 幻想郷外ではお尋ね者状態。


 山椒 鉄

 鬼。元幻想郷妖怪の山に住む。

 惣流異変に加担したとして(冤罪の説有り)追放処分となったが、これを拒否したため戦闘に発展。

 伊吹萃香ほかの鬼の協力により追放に成功。

 この時山椒は右手を失ったため、義手を装着しているとみられる。


 謂 乙玲

 生前中国の女剣士。死後も剣の腕を磨き続け、大陸一の腕前。

 天上の兵として召抱えられていた時期もあったが、

 軍内の汚職に嫌気をさして脱走。

 現在まで行方不明状態。


 エレーナ・ブラゴヴォリン

 生前ロシア帝国職員の娘。

 革命軍に追われシベリアで命を落とす。

 死後、シベリアの気温が2度下がったのは彼女の力と噂になるほどの有力者。

 シベリアの気温上昇は彼女が現地を離れたため。現在まで行方不明。






 影香「・・・これは・・・いやこんなことしちゃいられない、式神さん!?どこにいるんですかー!?」

70: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 17:59:51.91 ID:dinO7fma0


 藍「はいはい、いますよ~」ヌッ


 影香「うわ!あ、あの!紫さんが・・・」


 藍「わかってる、有力者を集めろって話でしょ?この緊急事態じゃ、することも限られる」




 彼女は障子をさらに開け、廊下に出るように促す。




 全く歩くペースに乱れがないことは少々呑気にも思えたが、彼女の廊下を歩く態度にはどこか緊張感があった。




 影香「・・・・・・あの、さっきの卓の上にあった資料は・・・」


 藍「ええ、今までああいうことを調べてたんだけど・・・」


 藍「全員、結界の保護のない外で生き残っていただけあって、相当の実力者・・・戦いにも慣れた手練ね」


 藍「おそらく、源義真を核とした好き勝手集団・・・お互いの事も仲間とも思っていない」


 藍「調べるだけ無駄だったかもしれないけれど、戦いになった時の手の内がわかっただけいいかしらね」


 影香「手の内・・・」


 藍「乙玲は接近戦、山椒はパワータイプ、エレーナは冷気系統・・・アダムは元悪魔だから、それに応じた戦法ね」


 影香「ああ・・・やっぱり戦いになるんですね」


 藍「残念ながら・・・」


 影香「・・・・・・!?」




 その時、障子の向こうから凄まじい力を感じた―――とともに、酔ったようなドラ声が聞こえてきた。


 ?「おおーい!酒が足りねえぞお!酒がーっ!」




 影香「・・・?」


 藍「・・・・・・こんな時まで・・・」


 どら声の主は幻想郷きっての実力者なのだが、その時の影香には知る由もなかった。


71: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 18:17:53.92 ID:dinO7fma0


 数十年前―――


 影無洞


 シンエイ「・・・到着です」シュルッ


 義真「さぁ!やってまいりました影無洞!」


 パンテオン「その口調、なんのコピーだよ?」


 義真「外界の某タレントだ・・・それよりも、さっさと仕事にかかるぜェェエエッ!!」


 霊幻「ちょ・・・うるさっ・・・」キーン


 義真「俺はまどろっこしいのは嫌いなんだよオオオオオッ!!」


 パンテオン「それとこれとは話が違うんじゃ・・・」


 義真「ほれ、おまいら入れ入れ!さもないと増えるぞ!」ギュウギュウ


 霊幻「は?な・・・増え・・・?」ドサッ


 パンテオン「相変わらず無茶な・・・何するつもりだ?」ドサッ


 シンエイ「幻想郷を丸々コピーします」


 パンテオン「スケールでかっ!ていうか充分まどろっこしいっつーの!」




 義真「よおし!行くぞォ!カウントダウーン!」




 義真「スリー!」




 義真「ツー!」




 義真「ワーン!」




 義真「ゴオオオオッ!」キュイイン!




 その瞬間、幻想郷は影の世界にコピーされ、獰猛な住人は影より解き放たれた。




 双月異変、開始である。



73: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 18:30:43.83 ID:dinO7fma0


 <キャアアアア!


 <ウワアアア!


 <ナンダコイツ!?クソッ!


 <ヒイイイ!




 義真「クッククク、クヒャーハハハハハッ!ハハハ、ククククク・・・クハ、クヒャーハハハ!」




 義真「たまんねえなあ・・・怠惰な平和を貪ってきた奴らが今、野生に解き放たれた!」




 義真「果たして何人生き残るか・・・クヒャーッハハハハハハハハハハハハハハハァ!!」




 悪だ。


 後になって彼を知ったものも、今この場に居合わせたものも、その一文字を頭に浮かべた。




 パンテオン「・・・ヘヘヘヘヘッ・・・」


 霊幻「・・・・・・!」


 シンエイ「・・・・・・4時30分」


 義真「!?早いな・・・」




 飛びかかる黒い影!


 瞬間、黒い具足の男が義真に襲いかかった!刀が組み合わさり、音を立てる―――!


 ?「・・・」ギチギチ


 義真「・・・!?馬鹿な貴様、その顔はバックアップ!?どういうことだ!?」


 その顔は紛れもない自分の顔。


 ?「・・・俺はバックアップではない」


 義真「チッ!」


 義心は距離をとり、性質を反転させたコピーをけしかけようとした。だが―――


 義真「コピーできない・・・だと!?貴様、何者だ!?」


74: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 21:04:01.96 ID:dinO7fma0


 ?「俺はもはやバックアップでもなんでもない・・・ただ、お前を殺すものだ!」ゴウッ!


 義真「っく!?」チイン


 ?「ふっ!はっ!ぜいぁっ!」ブン ブン ビュウン


 シンエイ「・・・!?」


 霊幻「何々、どうなってんの!?」


 パンテオン「一人・・・二人・・・あれ?同じ人が二人もいるわけない、数え直し・・・一人・・・二人・・・あれ?」




 義真「が、か・・・腕前まで、同じかぁっ!」チン キイン パキインッ ビュン!


 ?「はっ!ふんっ」カキイン ビュンッ!


 義真「く!?かぁっ!」ビシッ!


 ?「!?くっ」チュイン




 義真「いい加減にしろよ、俺はお前みたいなやつが・・・嫌いなんだ!」ビュン!


 ?「チッ、俺はキレると強くなるのを忘れていた・・・」キンッ ブンブン


 義真「何をごちゃごちゃと・・・死ねっ!死ねえ!」キイン! ビュン!ブウン


 ?「くっ、はっ!せやァ!」ガキイン! ビュン!ブウン!


 義真「フンッ、せいっ!はぁっ!」ガキン! ピュッ!チイン!


 ?「とうっ!ていっ!ぜやぁ!」ビュン!ビュン!ブウン!


 義真「く、か、ッチ・・・どぇい!」フラッ ブオン!




 ?「はぁっ!」ブイン!




 義真「がぁ!?」バチイッ!




 つばを持ち上げるように攻撃を喰らい、義真の刀が飛んだ。




75: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 21:14:21.46 ID:dinO7fma0


 ?「・・・やはり俺は俺か」


 義真「・・・どういうことだ!?貴様が本物だとでも言うのか!?」


 ?「違う、俺とお前は二人で一人―――」


 義真「何をごちゃごちゃと・・・小癪なっ!」


 映姫?「・・・」


 映姫?「・・・」


 映姫?「・・・」


 映姫?「・・・」


 映姫?「・・・」


 ?「!?チッ!」


 やにわ手を翳したかと思うと、あの閻魔が何人も現れて一斉に手にした棒を向ける!


 義真「やれ」




 ズドドドドドドドドドドドドォンッ!




 義真「・・・・・・!」


 爆風が収まったかと思うと、消えている閻魔!


 義真「チッ、能力まで同じ―――?俺の貼り付けを反転して相殺したのか!」




 ?「そうだ。しかし、既にコピーしていたとは想定外だ・・・」




 土煙の向こうに現れる男。想定外とは言いながらも、ポーカーフェイスを崩してはいない。


 義真「・・・ヘッ、じゃあどうするんだよ・・・?」


 


 ?「こうするんだよ」


 すると男は、刀を逆手に持ち替えて―――


76: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 21:27:13.50 ID:dinO7fma0




 ?「ぐっ」




 鈍い音を立て、自らの胸に突き刺した。




 義真「・・・!?」




 ?「・・・驚いたか?俺の影、よ・・・」グフッ




 義真「なんだ・・・?お前は・・・俺・・・!?」




 ?「違う、お前は自分の言う『俺』ではない・・・」




 義真「俺は俺だろう!?お前は俺のなんだ!」




 ?「幻想郷に入ったショックで人間体にとり憑いていた『俺』は二つに分かれた・・・増えるわけが、なかろう・・・」




 義真「・・・!?俺は、本来の源義真の半分でしかないというのか!」




 ?「・・・そう、さ・・・そして俺はお前の影であり、お前の実体・・・幻想郷に照らされた、実体と影・・・」




 義真「・・・・・・まさか」




 ?「・・・そう・・・光の外ならまだしも・・・・・・・光の中で実体が消えることは、影が消えること・・・」




 義真「影が消えることは実体が消えること・・・・・・まさか貴様!」




 ?「・・・・・・・・・終わりだ・・・・・・光も・・・影も・・・源・・・義真は・・・無に・・・帰る・・・」




 ?「・・・・・・・・・」



77: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 21:38:34.53 ID:dinO7fma0




 義真「・・・・・・!」




 シンエイ「・・・義真、様?」




 霊幻「どうなってんの・・・!?」




 パンテオン「・・・・・・が・・・・・・」




 霊幻「!?」




 パンテオン「げ・・・ば」ゴホッ


 藍「・・・・・・」




 霊幻「チッ、スキマババアの手の者かっ!」ギュイイン バラパパパパパパパ


 藍「・・・・・・」スルッ




 霊幻「!」


 紫「よくも嵌めてくれたわね・・・フフフ、久しぶりよ、人に騙されるなんて」


 霊幻「げ・・・スキマ・・・・・・あ?」




 霊幻の横っ腹から、紫の手だけが突き出していた。




 霊幻「スッ・・・スキマァ・・・!」


 紫「・・・・・・あなたの六道の隙間を弄った、死んでも・・・苦しみ続けろッ!」


 霊幻「・・・ガ、ハッ・・・・・・」


79: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 21:48:56.00 ID:dinO7fma0


 霊幻「(ただで死ぬか・・・貴様の許す心も一緒に連れてゆく!)」


 霊幻「(心焔激油の術!)」キイン


 紫「・・・!?何、をォ!」ズブブ


 霊幻「グフッ」ガクッ




 紫「・・・・・・」


 藍「あ・・・あの・・・紫様・・・・・・」


 紫「何!?」


 藍「!?・・・いや、あの・・・・・・死んでます」


 紫「何が?」


 藍「義真・・・・・・」


 紫「!?」






 紫「・・・自分の胸に、刀を・・・」


 義真「」






 双月異変は、こうして終結した。




 シンエイ―――臣影は主人の死とともに姿をくらまし、二度と姿を現さなかった―――




80: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 22:04:03.90 ID:dinO7fma0


 数十年後


 影香「・・・・・・」


 レミリア「あら、貴女は・・・?随分深刻な顔をしているけど」


 影香「!ははははははははい!?」


 レミリア「ここにいるということは、何かあるんでしょうね・・・ちょっと見てあげようかしら?」


 影香「あ、いや、遠慮しときます・・・」




 ちょっと藍さん、いつまでこの部屋にいるんですか。




 押しつぶされそうなんですけど。




 藍「・・・・・・影香さん、で合っているかしら?」


 影香「はい?」


 藍「あなた、どこに行くか聞いてないの?」


 影香「ええっ?え、いや・・・『考えればわかる』って・・・・・・」


 藍「え、ええ?な・・・」


 影香「わ、私にはわかりませんよ・・・」


 藍「・・・・・・・・・・・・いや、きっと・・・」


 影香「何です?」


 藍「紫様がそう言ったなら、あなたにはわかるはずよ」


 影香「え、ええ?無茶振りもいいとこですよ・・・」


 藍「・・・・・・・・・きっと、有力者を集めたのは義真を迎え撃つため」


 影香「迎え撃つ・・・」


 藍「どこに行くんです、彼らは!」


 影香「!?・・・・・・」


81: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 22:58:55.17 ID:dinO7fma0


 考えればわかる、考えれば―――


 双月異変の時、彼らは集会場に現れた。


 そして次は、影のない洞窟―――








 ―――待てよ、まさか―――


 影香「・・・影のない洞窟・・・」


 藍「!」


 影香「影のない洞窟です!彼らは、双月異変を再現しようとしています!」


 藍「!皆さん!」


 一同「ザワザワザワ」














 義真「外れエエエエッ!」バキャアッ!


 一同「どわぁ!?」


 突如壁が吹き飛び、黒ずくめの義真が躍り込んでくる!


 義真「馬鹿め、不安要因を残したまま仕事にかかるか!ブラゴヴォリン!」


 エレーナ「・・・凍れ・・・」キイン




 ビュオオオオッ!ゴゴオオオッパキパキパキパキパキ・・・




82: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 23:15:52.54 ID:dinO7fma0


 数十年前


 臣影「・・・・・・」シュルッ




 臣影「・・・・・・はは・・・」




 臣影「ははははは・・・・・・義真様・・・」




 臣影「義真様・・・義真様ぁ・・・」ポロポロ




 臣影「・・・・・・あぁ・・・・・・」ポロ・・・




 臣影「・・・・・・」




 臣影「・・・・・・」フラッ




 ?「・・・」トッ




 臣影「・・・・・・あ・・・?」




 ?「・・・臣影・・・」




 臣影「・・・・・・誰・・・なぜ私の名前を・・・」




 ?「・・・そんなことどうだっていいさ、今まで・・・・・・ありがとう」




 臣影「・・・・・・義真、様・・・?・・・・・・う、うぅ・・・」ポロポロ




 ?「ずっとお前はそばにいてくれた、平成から武士、戦の時も・・・俺の眠る祠から、片時も離れることなく・・・」




 ?「・・・・・・お前は、俺の・・・最高の、影だ・・・・・・」



 木漏れ日の落ちる森に、主君に寄り添い続けた従者の―――控えめな泣き声だけが、聞こえていた。

83: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 23:30:37.63 ID:dinO7fma0


 数十年後


 スキマ妖怪の隠れ家―――跡地




 アダム「はっ!はっ!はっ!」シュッシュッシュッ


 レミリア「っく、せいっ!」ビギュギュン


 アダム「やりますねエ・・・女にしてはァ!」シュッ!


 レミリア「そんじょそこらの女と・・・」ガシッ


 レミリア「一緒にしないでくれるかしら・・・」ボキイッ




 山椒「伊吹イイイイッ!」ズガガガガガガガガガ!


 萃香「山椒・・・!」ドチュチュチュチュン!


 山椒「何年ぶりだ・・・待ちわびていたぞ!この時をオオオオ!」ドオン


 萃香「や、やば!」サッ


 ドオン!




 乙玲「・・・・・・」


 妖夢「・・・・・・」




 ヒュウウ―――ー-




 乙玲「・・・・・・!」シュパッ


 妖夢「!」




 エレーナ「・・・・・・」キイン ゴオオオオ


 永琳「くっ!」バッ


 エレーナ「・・・・・・」クルッ


 永琳「今度はこちらの番・・・!」ギュイイン




 義真「おーやってるやってる」

84: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/02(水) 23:46:14.68 ID:dinO7fma0


 義真「ククク、悪かないねこういうことを見るのも・・・まあ、暇だけど・・・フアア」


 藍「・・・貴方、紫様はどうしたの」


 義真「むら・・・?紫・・・色?・・・・・・あ、ああ!あの女のことか!」


 藍「女・・・!?」


 義真「ククク、あいつには技の的になってもらったよ・・・スキマ能力を相殺してしまえば、ただの動く的だ。」


 藍「・・・・・・!」ゴウッ!


 義真「!」




 藍「・・・・・・死ね」ビギュギュギュギュン!


 義真「物騒だなァ、嫌いじゃないぜ、そういうの・・・だが」




 瞬間、義真が体を一瞬横に振ったかと思うと、素早く切り返した。




 攻撃に備えようとした八雲藍は体を左右に揺すられ、姿勢を崩して―――転んだ。



 藍「―――!?」


 義真「頭が高いぞ」


 義真「それに―――少々期待はずれだ、コイツで十分だろう」




 義真が手を翳したかと思うと、9本の尻尾をたなびかせて―――




 藍(コピー)「・・・シネ」


 藍「・・・!」




 しまった、転んでいるせいでかわせな―――




 ズガガガガガガガガッ!




 義真「あーあ、やはり期待はずれだ・・・ほかの連中も、な・・・」


87: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 21:05:34.96 ID:jgtSqvhY0


 アダム「・・・確かに、ただの女ではないようですねェ・・・」ニヤッ


 レミリア「・・・!?(まさかこの攻撃は間合いを詰めるための―――布石!?)」


 アダム「・・・・・・だが」ギュイイイイン


 レミリア「(まずい、踏ん張ったせいで飛びたてな―――)」


 ズ ゴゴゴゴオンッ!




 萃香「あれれぇ?ちょっち、やば・・・」


 山椒「よそ見するなァッ!」ブウン!


 萃香「な!?(あの距離を一瞬で―――)」サッ


 山椒「そこだ」ジャキイン!


 萃香「・・・そんな腕ならもとよりいいんじゃないかい」


 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ・・・




 乙玲「・・・・・・」スッ シャキンッ


 妖夢「・・・・・・」スーッ チャキッ


 乙玲「・・・・・・」


 妖夢「・・・・・・ぐ」ドサッ


 乙玲「・・・まだ青い」




 永琳「!?(あ、足が地面に凍りついて―――)」


 エレーナ「・・・・・・」パキパキパキパキパキ


 永琳「・・・つ、強い・・・」パキパキパキ・・・


 永琳「・・・・・・」パキッ・・・






 義真「フン、これだからな・・・こんなところに来たのも時間の無駄だったようだな」


 ?「それはどうかなァ?」


 義真「!?」

89: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 21:42:58.57 ID:jgtSqvhY0


 その一瞬、飛びかかってきた人影が拳を義真に繰り出す!




 難なく受け止める義真、しかしその手はビリビリと震えて―――




 義真「・・・ほう・・・池で石切りをしているよりはましだったかな」ビリビリ




 勇儀「そうかい、そりゃあ―――っ!?」




 山椒「鬼の相手は俺がするぜッ!?」ブオン!


 勇儀「チッ、ボスとの戦いは後回しだね・・・お前も鬼か、久しぶりに楽しめそうだ!」バシイッ!




 アダム「・・・!?」


 ?「ヘエ・・・オニイチャン、オネエチャンヲ、マカシタンダネ・・・」


 アダム「・・・あなた、誰です?」


 ?「ワタシハ・・・」


 フラン「フラン。ワタシトアソボウヨ」




 山椒「せぇい!」ブンッ!


 勇儀「なんの、どりゃあ!」バシイ ゴッ!


 山椒が廻し蹴りを放つと、勇儀はそれを手で受け止め、もう一方の手で正拳突きを繰り出す!


 山椒「そおいッ!」


 勇儀「!?」


 しかし山椒は抑えられた片足を支点にしてさらに蹴りを繰り出し、その正拳突きを弾く!


 山椒「俺は、負けない・・・あの時負けた俺自身にッ!」


 勇儀「・・・へっ」


 

90: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 22:00:03.87 ID:jgtSqvhY0


 幽々子「剣の腕磨きなら、剣士以外と戦うのもいいんじゃないかしら・・・?」


 乙玲「・・・・・・(こいつ、できる)」




 輝夜「覚悟はいいかしら?」


 エレーナ「・・・・・・凍れ」ゴゴオオオッ!






 義真「・・・・・・チッ」


 義真は舌打ちを一つすると、コートの袖をまくった。腕時計をちらと見ると、途端に笑いが漏れた。


 義真「・・・ククッ、これは誰かに喋らないわけにはいかん!おいそこの!」


 影香「!・・・なんです」


 義真「俺がなんの策もなしにここに飛び込んでくると思ったかァ?」


 影香「・・・!?」




 義真の背後に、夕日が光り輝いた。




 義真「ここの奴らを一掃したら、双月異変をもう一度起こしてやろうと思っていたが・・・」




 義真「残念ながら、無理のようだ。プランBに変更・・・」




 義真「あと数分で洞窟に仕掛けた爆弾が爆発する。すると、影の世界との狭間を塞ぐ岩壁が崩壊する・・・」




 義真「するとどうなるかわかるかァ?影の世界より、得体の知れないエネルギーが流入するのさ・・・」




 義真「クククックククククッ!クヒャアーハハハハハッ!」




 義真「もしかしたら・・・科学的エネルギーの流入により、幻想郷は丸々・・・パアだ」


 影香「・・・!?」


91: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 22:13:32.56 ID:jgtSqvhY0


 義真「俺の十八番・・・相殺というやつだよ!なぜそんなことが起こるか?それはなァ・・・」ガッ


 藍「」


 義真「こいつら・・・正しくはこいつのご主人様がやったことによるものだ・・・」


 紫さんが―――?




 義真「なぜ双月異変で壊滅した幻想郷が元に戻ったか・・・?」




 義真「答えは簡単だ。元に戻っちゃいない、『光』の幻想郷はな」




 義真「ここは『影』の幻想郷だ。壊滅する前の幻想郷の完全なるコピー・・・」




 義真「こいつのご主人様は生き残った住人を影の世界に移住させたのさ。」




 義真「クーックククククッ!クククククッ・・・」




 義真「『光の幻想郷にいた時の記憶』と『影の幻想郷にいた時の記憶』の間をいじって、あやふやにした・・・」




 義真「これは光の幻想郷の空間を異変に使われることを恐れてのことだろうな・・・」




 義真「ククククッ!クヒャーハハハハハハハッ!」




 義真「ご愁傷様だぜ、そこまでしながら俺に利用されるんだからな!クヒャーッハアハアハア!」




 義真「ここまですることからしても明らかだ、光の幻想郷には科学的エネルギーに満ちている」






 義真「つまり・・・生き残りの人間の、文明が栄えているということさ!」






92: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 22:22:44.03 ID:jgtSqvhY0


 義真「ククク、クヒャーハハハハハ!わかっていたんだろうなァ、あの女には!」


 義真「だからこそ記憶を弄り、岩壁で塞いでまで封印した・・・」


 義真「プクククク・・・クヒャーハハハハハッ!遠慮なく使わせてもらうぜ、一番恐れた事態にな!」




 周囲では一味と有力者たちによる戦いが展開されていたが、影香の耳には義真の笑い声しか聞こえなかった。




 義真「あと7秒・・・」


 影香「・・・!」


 義真「あと5秒」


 影香「や、やめろっ!」ガシッ


 義真「無駄だ、今からでは俺も止められん・・・ククックククククッ」


 影香「・・・!」




 影香の目に、あの懐かしい小屋の情景が鮮やかに蘇った。








 義真「あと3秒・・・」








 義新「2・・・」








 義真「1!」








 バアン!





93: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 22:29:47.30 ID:jgtSqvhY0




 影香「・・・!・・・・・・」




 影香「・・・・・・?」




 爆発音が聞こえはしたが、あまりにも高く、小さい―――




 義真「・・・が、はっ・・・」




 影香「!?」




 義真の脇から、ゴポリと音を立てて赤い液体が吹き出した。




 義真「ぐぅっ・・・」ドサッ




 影香「・・・!?」




 ?「・・・貴様がかつて幻想郷に入るのに使った『器』に殺されるとは、なんの因果だろうな・・・」




 影香「!?」




 そこには、男が立っていた。中年のその男の手には、銀色の拳銃が握られている。




 男「久しぶり、義真・・・何年ぶりだろうなァ」




94: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 22:38:10.76 ID:jgtSqvhY0




 義真「ぐぅっ・・・きさ、ま・・・不良、高校生が・・・」




 男「もう高校生じゃないがな、そのおかげで爆弾も解体できたし、こうして貴様を殺すこともできた・・・」




 義真「・・・このまま、済むと・・・思う、な・・・・・・」




 義真「」ガクッ




 影香「・・・・・・!?・・・貴方は!?」




 男「・・・・・・・・・フン、バックアップか・・・」




 影香「バックアップ・・・?」




 男「もう話すこともないだろう、最後にこれだけ言っておく・・・・・・」




 影香「・・・・・・何です」




 男「さようなら、我が娘よ」




 影香「・・・!?」




 その瞬間、男の背後より襲い来る人影!




 影香「!うしろ!」




 男「・・・」ニコッ




 ドシュッ!




95: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 22:46:40.68 ID:jgtSqvhY0




 男「・・・」ドサッ




 義真(バックアップ)「このまま済むと思うなと、言ったはずだ・・・」




 影香「・・・あ、ああ・・・」




 男「・・・・・・このまま済まないのは、お前もだ・・・それと影香、俺の左ポケットだ・・・」




 影香「・・・!?」




 義真「まだ生きていたか・・・」ズブブ




 男「ぐ」ガクッ




 影香「・・・・・・お父、さん・・・?」




 義真「・・・フン、娘だかなんだか知らないが・・・」




 義真は屈んで、男の手から拳銃を奪い取ると―――






 義真「俺を差し置いて主人公ヅラすんじゃね―――!」ジャキン!






 影香「・・・!」






 バアン!バアン!バアン!






96: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 22:58:21.38 ID:jgtSqvhY0




 影香「・・・?」




 銃弾は三発とも影香を逸れて、内一発が枝に当たってぴしりと音を立てた。




 影香「・・・!?」




 義真「が・・・ぐぐぐ・・・」




 明らかに様子が、おかしかった。拳銃は影香の眉間をはるかに逸れて、持っているのもやっとなほど斜めになっている。




 なにより、体中がブルブルと震えている。まるで、だれかの拘束から逃れようとしているかのように―――




 義真「ば・・・馬鹿な、あり・・・えない・・・!」




 影香「これは・・・!」




 男『このまま済まないのは、お前もだ・・・』




 あの男の言葉が蘇る。




 義真「なぜ・・・こん・・・なっ・・・!」




 義真の腕が、誰かに引っ張られているかのように動く。




 銃口が、こめかみに向く。




97: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/03(木) 23:05:00.49 ID:jgtSqvhY0





 義真「・・・そう、か・・・わかったぞ・・・やつが自殺した、理由も・・・っ!」




 影香「自殺・・・!?」




 震える指が、引き金に触れた。






 義真「クク、ク・・・ククーックククククァ――――――――――ッ!」






 バアン!






 発砲音とともに、義真は体中の力が抜けたようになる。


 足も、首も―――


 寸分の狂いもなく真横に倒れて、二度と動くことはなかった。




 影香「・・・・・・し」




 影香「死ん、だ・・・・・・?」






 影香「・・・・・・・・・」






99: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 18:31:20.40 ID:vLGusPGL0




 それから、一味と有力者の戦いにも決着がついた。




 有力者側の勝利だった。




 義真を除き一味は全員捕らえられ、事件は収束を迎えた。




 ただ、隠れ家は相変わらず凍ったままだったし、戦闘により屋敷も全壊していて、周囲にも被害が及ぶかと思われたが、




 隠れ家の周囲には結界があったため、それより先は無傷だった。




 結界を張った本人も、会議場で満身創痍で見つかった。




 しばらくの休養が必要だが、命には別状がないとのことだ。




 しかし私はこれを義真の詰が甘かったからとは思わない。




 きっと、幻想郷計画に携わった彼女に、消える瞬間を見せつけてやりたかったんだと思う。




 しかし何にせよ彼は死んだ。幻想郷にはしばらくして平穏が訪れた。




 あの男は何者だったのか―――




 最後に彼のズボンの左ポケットに入っていた遺書を全文引用することにする。




 その遺書は、残る謎の全てを物語っていた。






100: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 18:48:04.66 ID:vLGusPGL0

このメモを読んでいるということは、俺はもう死んでいるのだろう。


手短に話そう。


体を乗っ取られ、幻想郷に入ってきて以来、俺は記憶を失っていた。

取り戻した時は、「光」の義真が「影」の義真を相殺しに行く時だった。

幻想郷に照らされ分裂した者は、片方が死ぬともう一方も生きてはいない。

俺の体で休んだ「光」はそう言っていた。

俺の体に残れなければ、自分も「影」のようになっていたというが。

そしてこうも言っていた。

もし奴にバックアップが居た時は、奴を殺して欲しいと。

そしてそれを承諾した時、俺は記憶を取り戻した。


俺は両親を亡くし、天涯孤独だったのだ。

そして碌でもない大人に拾われた。

拳銃を持っていたのも、爆弾の知識があったのもそのためだ。

そいつらの考え方に感化された俺は、親類を見つけることを諦め、親父の先祖をたどった。

するとどうだろう、俺の先祖の弟に、悪霊になったなんていう碌でもない奴がいるじゃないか。

共感もあってだろう、俺は封印されている祠を見つけた。


そして―――封印を解いてしまった。

これから先は知っての通りだ。

しかし長く取り憑かれすぎた俺の記憶は、すっかり源義真の記憶と同化してしまった。

そして俺はその中に、生き甲斐を見つけたんだ。


千年以上も前のことだ。

まだ生きていた頃、奴はいつの間にか俺の隣に居た。

敵討ちに力を貸そうと思ったのか(事実彼女は優秀なくノ一だったが)

はたまた妻を殺される前から面識があったのかはわからない。

なんせ、あの時の俺は敵討ちに燃える男だったからな。

しかしある日、かねてより計画していた兼盛襲撃計画を実行に移した日、

奴は俺を庇って背中に矢を10本も浴びて死んだ。

救われない最後だ。義真もその時の矢傷から病気にかかって命を落としたんだが。


俺はこのエピソードを知った時、二度も―――生前と死後だな―――義真に協力して、

二度も失敗して、今度は主君をも失った彼女のことを憐れむとともに、たまらなく愛しくなった。

義真でないからこその感想だな。

まあとにかく、このままでは彼女は死んでしまうかもしれない。

そこで俺は善真の記憶を生かして彼女に近づいた。

きっと子供でもこさえれば、生きる気力が湧いてくるんじゃねえかっていう、今思えば無茶苦茶な発想だ。

だがそれはなんとかうまくいった。俺は仮設会議場で死んでいることになっているから、遠くから静かに見守ったさ。


しかし―――ある日のことだ。

101: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:07:08.30 ID:vLGusPGL0

 仮面の男が小屋を訪ねてきた。

 俺はそれを見た時、ピーンときたね。こいつはバックアップだと。

 俺はいずれ、死にゃなならんと。

 どうせ死ぬならお国のためにとは言うが、俺もただ死ぬのは御免だ。

 しかし義真を倒すには自殺戦法しかない(変な言い方だが・・・)。

 そこで俺は、行動を起こすことにした。


 まず、「光」からペーストしてもらったコピー能力を使って、

 バックアップを作った。

 これが今遺書を書いている俺だな。

 そしてオリジナルはというと―――


 兼盛を探して地獄に特攻をかけた。

 そう、これが兼盛事件だ。

 オリジナルは首尾よくやった、兼盛を地獄もろとも消した。

 しかしただの人間である彼に、天井崩落から逃れる術はなかっただろう。


 これは義真の亡霊が成仏するんじゃないかという少ない可能性に賭けたのもあるが、

 単に兼盛が許せなかったからだ。

 どんなことをしたかというと―――だめだ、書こうとするだけでも吐き気と怒りが湧いてくる。

 とにかく酷い奴だった、奴は地獄に行っても許せない―――こいつを残したまま自殺はできないと思ったね。


 そして―――あの日だ。突如真影は自殺した。あの時は俺もただただ狼狽えるばかりだったが、

 今なら彼女の意図が分かるつもりだ。

 おそらく彼女は幻想郷の光と影について掴んでいて、

 なんらかの手段で義真が来ることを知った時、影である自分が死ねばやつも消えると思ったんではなかろうか。

 しかし影は俺だ、効果なんてなかった。

 それでも俺は、彼女が自分が義真の影だと思ったまま死ねるなら、それはそれで幸せじゃないかと思いもするんだ。

 なんたって影は、光に寄り添う物だからな。


 俺は今爆弾を解除して、洞窟の外の岩に腰掛けてこれを書いている。

 アドリブだし、膝の上だから不安定だ。読みづらかったら済まない。

 でも、俺のお前たち親子への精一杯の愛情を込めたつもりだ。

 母さんは残念だったが、俺はお前だけでも生きていてくれて満足だ。

 ありがとう、さようなら。

 健闘を祈る。


 源 信介


 PS 母さんの名前は臣影の一つしかなかったから、俺が源真影と改させてもらった。

 「臣」の字をとるとともに―――出しゃばりと言われるかもしれないが、俺の苗字をつけさせてもらった。

 彼女は心からの義真の部下だったが、お前を育てているうちに幻想郷の美しさに気がついたはずだ。

 だからこそあんな行動に出たのだと、俺は信じている。

102: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:20:17.29 ID:vLGusPGL0


 双月異変編 キャスト


 源 信介


 源 義真(影)


 源 義真(光)


 臣影


 博麗 霊幻


 パンテオン・スラッガー


103: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:22:00.04 ID:vLGusPGL0


 紅魔館


 咲夜「ほらアダムさん、シーツにシワがありますよ!こうやって伸ばすんです!」


 アダム「(ええい・・・なぜ俺がこんな・・・)」


 フラン「・・・」ニコッ


 アダム「ヒィイ!?」


104: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:23:52.87 ID:vLGusPGL0


 八雲 紫


 八雲 藍


 小野塚 小町


 四季 映姫 ヤマザナドゥ


 柳 久駆




 妖怪・地神ほか


105: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:27:27.16 ID:vLGusPGL0


 旧地獄


 店員「ちょっと星熊さん、本当にツケ払ってもらえるんでしょうね!?」


 勇儀「まぁまぁ、そうカッカしなさんなって・・・」


 店員「カッカしますよ、うちも死活問題なんですよ!はぁ、この杯下げていいですか?」


 勇儀「いんや、置いといてくれ」


 店員「ええ?あなた一人じゃないですか」


 勇儀「壊した義手の詫びさ、来ないかもしれないが・・・」


 店員「?」


106: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:40:29.97 ID:vLGusPGL0


 義真事件編 キャスト


 源 影香


 射命丸 文


 パチュリー ノーレッジ


 秋姉妹


 瀬戸大将


 犬走 椛


 八雲 紫


 八雲 藍


 レミリア スカーレット


 伊吹 萃香


 魂魄 妖夢


 八意 永琳


107: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:42:05.33 ID:vLGusPGL0


 白玉楼


 妖夢「やぁっ!はっ!」ビュンビュン


 乙玲「甘い甘い!そんなこっちゃ剣にハエがとまるぞお!」バシバシ


 幽々子「・・・ふふ」


108: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:45:58.73 ID:vLGusPGL0


 フラン スカーレット


 星熊 勇儀


 西行寺 幽々子


 蓬莱山 輝夜


 アダム ベルトホルト


 山椒 鉄


 謂 乙玲


 エレーナ・ブラゴヴォリン


 源 義真(バックアップ)


 源 義真(バックアップのバックアップ)


 天狗、河童ほか


109: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:47:22.19 ID:vLGusPGL0


 迷いの竹林


 妹紅「・・・・・・」


 妹紅「なんかこの頃、寒いな・・・」


110: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:48:12.43 ID:vLGusPGL0




 >>1




 AND YOU!









 END


111: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/04(金) 19:56:58.56 ID:vLGusPGL0


 旧地獄地下 地下湖




 こいし「・・・?」




 ?A「どうだッ!」シュッ!




 ピッ ピッ ドポン・・・




 ?B「2段!へへへ、俺の勝ちだ」


 ?A「くっそ、同じはずなのに記録が違うってどういうことだよ!」




 こいし「・・・誰?」


 ?B「んああ?嬢ちゃん、こんな時間に何してるんだい」


 ?A「質問の答えになってないぜ」


 ?B「うっせえ、バックアップ!」


 ?A「お前だってバックアップじゃねえか!」


 ?B「あのねえ、お兄ちゃんたちはねえ、源義真っていう人のバックアップなの!」


 ?A「おい、いいのかよ?」


 ?B「どうせもうここには長くいないんだ、」


 義真(光)「バラしたっていいさ」


 義真(影)「そうだな、どうせお前は幻想郷を出れば用済みだ」


 義真(光)「ああ!?用済みなのはお前だろうが!」


 義真(影)「オリジナルが死んだ原因を突き止めたのは俺だろうが!」


 義真(光)「そもそもバックアップを光と影のふたり分用意すれば大丈夫と提案したのは俺だ」


 義真(影)「どうやってだ!」




 こいし「・・・・・・誰?」




 本当に終わり