1: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:31:33.93 ID:ZmzBDoQ+0

春香「千早ちゃん!千早ちゃん!」

千早「えっ?何?」

春香「大丈夫?千早ちゃん?話しかけても全然反応してくれないんだもん・・・最近疲れてるみたいだね?」

千早「ええ・・・、ごめんなさい。最近夜眠れなくて・・・」

春香「そうなんだ・・・最近忙しいから、体には気を付けてよね。」

千早「分かってるわ。ありがとう春香。」

春香「えへへ、お茶入れてくるね」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1395286293

引用元: 千早「変わるモノ、変わらないモノ」 



2: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:35:49.28 ID:ZmzBDoQ+0
千早「ありがとう、春香。」

最近夜眠れない日々が続いている。どうしてだろう・・・

正確には眠っているのだが、悪夢で目が覚めてしまう。

おかげで、春香にまたいらない心配をさせてしまう。それはいやだ。

春香「千早ちゃんお待たせ」

千早「ありがとう。春香、これは・・・?」

3: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:37:09.74 ID:ZmzBDoQ+0
春香「お茶にしようと思ったんだけど・・・カフェインが入っているからやめてこれにしたんだ」

そう言った春香はホットミルクを出してくれた。ありがたいわ

千早「でも、ここで飲んだらここで眠っちゃうんじゃ・・・?」

春香「大丈夫だよ。今日はみんな出かけて、小鳥さんは買い出しに出てるし。来ているのは私たちだけだから」

千早「そう・・・じゃあ、少しだけ横になるわ」

春香「お休み千早ちゃん」

4: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:39:07.56 ID:ZmzBDoQ+0
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・


ここは・・・どこ?

あたり一面が真っ暗で見えない。

自分の腕の先すら見えない。

助けて、誰か!

パシッ!

えっ?誰かが腕を掴んで引っ張っている!?

やめて、離して!

どうして、掴んで離さないの?

あ・・・あれ?急に光が・・・?眩しい!

「助けて!だれか!」

5: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:40:41.32 ID:ZmzBDoQ+0
春香「千早ちゃん!起きて!大丈夫だよ!」

小鳥「大丈夫よ千早ちゃん!」

千早「はっ!?」

胸がものすごくドキドキしている。苦しい。息が上がっている。

また・・・あの夢・・・

小鳥「大丈夫?」

春香「はい、お水・・・これ飲んで。」

6: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:43:22.97 ID:ZmzBDoQ+0
冷たい水が、喉を潤わせてくれる。

千早「ありがとう、落ち着いたわ」

春香「良かった・・・」

小鳥「びっくりしたわ・・・買い出しから戻ってきたら、千早ちゃんが泣きながらうなされてて・・・」

えっ?嘘?

春香「どうしたら、いいのか分からなかったけど・・・起こした方がいいかなって思ったんだ」

そうなんだ・・・

7: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:45:41.56 ID:ZmzBDoQ+0
千早「ごめんなさい・・・迷惑掛けてしまって・・・」

春香「いいんだよ、別に・・・私たちはみんな仲間なんだから。」

小鳥「そうよ、悩み事があったらすぐに相談してね」

悩み事・・・自分の中じゃないと思っているんだけど・・・

小鳥「・・・今日は早めに帰ったらどう?明日とあさってはめったにないオフだから、ゆっくりした方がいいわよ」

春香「そうだよ、無理しちゃだめだよ」

そうね・・・ここにいてもみんなに心配されるだけだものね・・・

8: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:47:02.48 ID:ZmzBDoQ+0
千早「そうね、ごめんなさい。先に帰るわね・・・」

小鳥「お疲れ様・・・」

春香「じゃあね・・・千早ちゃん」

9: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:50:58.68 ID:ZmzBDoQ+0

私は事務所を後にし、家を目指して歩いている。

家に帰っても、やることは無いわ・・・

久々にcdを聞こうかしら・・・最近全く聞いてなかったわね・・・

それに、しても・・・うなされてたとは・・・

何が理由なの?

自問自答しようにも、答えは出ない。

ふと気がつくともう、マンションの玄関に着いていた。

10: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 12:55:01.17 ID:ZmzBDoQ+0
ガチャ

千早「ただいま」

・・・・

返事は無いわ・・・あたりまえだけど・・・

バックも何もかも放り出し、ベッドに横になる。

身体は重く、やる気が出ない・・・

いつ頃だろうか?

眠れなくなってしまったのは?

分からない・・・

11: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:03:23.48 ID:ZmzBDoQ+0
千早「・・・考えても何も浮かばないなら、音楽でも聞こうかしら」

cdは・・・どこにやったかしら?思い出せないわ・・・

ここの引き出しかしら?いや、違う。

じゃあ?ここ?

ガタン!

あっ!

バタバタバタ!

引き出しを引っ張り出してる際に、上に置いてあったものを全部落としてしまった。

12: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:15:18.36 ID:ZmzBDoQ+0
はあ・・・ついてないわ・・・

本や、ペン、あの写真、あのスケッチブックが全部転がり落ちてしまった。拾わなければ・・・

これは・・・

少し、触った時にほこりが指についた

優・・・

あの時二人で取った写真・・・。

いつも飾ってあるのに、見向きもしない日々が続いていたわね・・・

13: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:16:02.99 ID:ZmzBDoQ+0
「ごめんね・・・」

気がつくと、私はぽろぽろと涙をこぼしながら、つぶやいていた。

「・・・どうしてだろう」

あんなに、大事にしていたのに、

このスケッチブックだって、ときどき開いていたのに、

見向きもしなくなってしまったんだろう?

14: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:16:56.07 ID:ZmzBDoQ+0
ここで、ほこりかぶっているなら最初から持っていた母に戻してやろうか?

そんな時にふと、母のことを思い出した。

「お母さん・・・」

私は、母のことは好きじゃない。父親もそうだ。

優が居なくなってしまってから二人は些細なことで喧嘩を始め、物を投げつけ、激しい罵り合いの毎日だ。

幼いころから、ずっと続けば誰だって嫌になるはずだ。

15: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:17:42.76 ID:ZmzBDoQ+0
いや、むしろ好きな人はいないだろう。

でも・・・

私の前で離婚届を押した日は、悲しかった。

離婚するのは、はっきり言って時間の問題だと思っていた。

だからといって・・・

16: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:18:54.35 ID:ZmzBDoQ+0



何も私の前で判を押す必要はあるのか?



17: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:19:32.49 ID:ZmzBDoQ+0
そして、わずかにも期待していた・・・

あのころの二人に戻ることはできなかったのか?

そんな希望の光を消す必要はあったのか?

その時から、悲しみと怒りが交りあった気持ちが消えなくなり、

家から出て行き一人暮らしを始めた。

この時初めて思った。

18: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:21:35.06 ID:ZmzBDoQ+0



母や父親はどんな気持ちだったのだろう?



19: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:22:33.70 ID:ZmzBDoQ+0
わずかな考えが頭をよぎった。

いつも、二人で笑い合い私達と楽しく過ごしていた。

そんな二人が笑わなくなってしまっていた・・・

いつも眉間にしわをよせて、

目を鬼のように開かせ、

時には目から涙を流しながら、

口からは、汚い言葉、

20: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:53:21.62 ID:ZmzBDoQ+0
そんな二人は一体どんな気持ちだったのだろう?

わずかな考えは、疑問から確信へと変わっていた。

22: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 13:59:15.39 ID:ZmzBDoQ+0
優を失って苦しい思いをしたのは私だけじゃない。

あの時、苦しい思いをしたのは家族全員だったのだ。

23: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:04:31.84 ID:ZmzBDoQ+0
怒鳴ってでもいないと、悲しみが紛らわせることができなかったのだろう。

そして・・・

あの時に・・・声が出なくなったとき支えてくれたのは765プロのみんなだった。

でも・・・

24: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:05:23.33 ID:ZmzBDoQ+0



それ以前に大事な人を忘れていた。



25: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:06:30.33 ID:ZmzBDoQ+0
あの時、私にスケッチブックを春香に届けてくれたのは、

「お母さん」

どうして・・・大事な人の存在を忘れてしまっていたのだろう?

26: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:08:11.10 ID:ZmzBDoQ+0



どうして・・・気がつけなかったのだろう?



27: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:08:50.18 ID:ZmzBDoQ+0



どうして・・・憎んだりしたのだろう?




28: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:09:31.54 ID:ZmzBDoQ+0

そして・・・どんな気持ちで・・・

春香に大事にしていたスケッチブックを託したのだろう?

29: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:10:02.11 ID:ZmzBDoQ+0

私には・・・分からない。


30: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:13:07.13 ID:ZmzBDoQ+0
・・・
・・


真っ暗な中。

私は手探りで探す。

真っ暗闇から抜け出す道を。

パシッ

誰かが私の手をつかみ私をひっぱってゆく

そして、眩しい光の場所へと。

31: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:15:04.27 ID:ZmzBDoQ+0
「ありがとう」

私がそうつぶやくと、

その手は驚いたといわんばかりの反応をして引っ張るのをやめた。

「あなた・・・優なんでしょう?」

32: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:15:47.54 ID:ZmzBDoQ+0

その手はぎゅっと力を込めて来る

「ごめんね・・・あなたのことを思い出してあげられなくて・・・」

・・・反応は無い

33: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:16:24.90 ID:ZmzBDoQ+0

「私、お母さんともう一度、やり直してみる」

「あの時の憎い思いは変わらないけど、変わることができる」

「約束するわ・・・」

34: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:18:56.30 ID:ZmzBDoQ+0

「変わるモノ、変わらないモノ」

「この二つを・・・」

「大事にしてゆきたいの!」

言いきったときに、その手は私の腕をゆっくりと離した。

35: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:21:16.68 ID:ZmzBDoQ+0

「もうだいじょうぶだね」

どこか嬉しそうな声が聞こえる。

「ええ、もちろんよ」

これには自信はあるわ。

36: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:21:52.21 ID:ZmzBDoQ+0

「おねえちゃんはやっぱりすごいね!」

「あたりまえじゃない」

私を誰だと思っているのよ?

あなたには世界で一人しかいない姉で。

私には世界で一人しかいない弟なのよ?

37: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 14:22:57.56 ID:ZmzBDoQ+0
ちょっとしばらく出かけるから、抜けるよ。

38: 再開するよ 2014/03/20(木) 18:31:44.01 ID:ZmzBDoQ+0
そう考えると、目から暑い涙がポタポタこぼれおちてゆく。

「じゃあ、またね!」

その瞬間眩しい光が、キラキラと金色の輝きを放った。

39: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 18:42:36.57 ID:ZmzBDoQ+0

はっ!

気がつくと私は、床の上で眠っていたようだ。

まくら代わりにしていたクッションは濡れていた。

あれ?私、いつの間に落としたものをかたずけたのだろう?

でも・・・そんなことに、気を足られている場合じゃないわ

41: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:11:25.05 ID:ZmzBDoQ+0

約束・・・守らなければ・・・

携帯電話を手に取る。

ディスプレイに懐かしい電話番号を並ばせる。

緊張するこの気持ちを押しこめて。

発信ボタンを押して・・・よしっ!

42: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:13:42.55 ID:ZmzBDoQ+0

プルルルル

千早「もしもし?お母さん?」

千早「ううん、べつに、久しぶりね。こうして話すのも」

千早「・・・ごめんなさい。」

千早「・・・お願い、これだけは黙って聞いて!そして・・・言わせてちょうだい。」

千早「あの時つらかった。ものすごく。自分の殻に閉じこもって自分のことしか考えてなかった。」

千早「どうして、私のことをわかってくれないの!?ってずっと思っていた。」

千早「でも、分かったの。」


44: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:15:14.28 ID:ZmzBDoQ+0

千早「私よりも、あなたたち。そう、お母さんとお父さんが一番つらかったんだって」

千早「そんなことにも気がつかないで、憎んでひどく傷つけてしまった・・・」

千早「こんな私を許してくれる?」

千早「・・・」

千早「・・・ありがとう」

涙がほうを伝って落ちてゆく。

45: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:17:40.33 ID:ZmzBDoQ+0

千早「ありがとう・・・お母さん・・・」

滝のようにとめどなくこぼれ、目の前が見えない。

千早「今度一緒に優のお墓に行こうね」

千早「約束よ」

千早「じゃあ、またね」ピッ

電話を切り、床に座り込む。


46: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:18:07.52 ID:ZmzBDoQ+0

千早「ありがとう・・・お母さん・・・」

滝のようにとめどなくこぼれ、目の前が見えない。

千早「今度一緒に優のお墓に行こうね」

千早「約束よ」

千早「じゃあ、またね」ピッ

電話を切り、床に座り込む。


47: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:18:52.31 ID:ZmzBDoQ+0

最後の方は、強引に電話を切ってしまったが・・・

切らなければ、嗚咽が出てきてしゃべれなくなってしまう。

テッシュで涙を拭き、一人考えた。

母は、こんな私を快く許してくれた。

あの時、苦しんで悲しんだことは変わらない。

でも、優が気がつかせてくれたこの思いは・・・


48: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:19:29.61 ID:ZmzBDoQ+0

大事にして行きたい。

ありがとう。優。


49: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:20:22.75 ID:ZmzBDoQ+0

―数日後―

ガチャ

千早「おはようございます」

春香・小鳥「おはよう千早ちゃん」

春香「ねえねえ、久々の休みどうだった・・・?」


51: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:21:38.71 ID:ZmzBDoQ+0

春香は、明るくふるまいながらもどこか心配な様子で聞いてきた。

千早「久々に羽が伸ばすことができてよかったわ」

春香「そう、良かった・・・」

春香は、安心したといわんばかりの表情を見せた。

同じく小鳥さんも事務作業をしながらも、同じような表情を見せている。

千早「ごめんなさいね。二人に心配ばかりさせてしまって」


52: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:22:47.19 ID:ZmzBDoQ+0

春香・小鳥「えっ?」

二人が驚いた表情を見せる。どこまで、同じ表情を見せるのだろうか?

ここに来るまでに二人は何を話していたのだろう?

そんなことは今どうでもいい。

千早「でも、私はもう大丈夫よ。だから心配性ないでね」

そう言って私は笑って見せた。


53: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:24:46.76 ID:ZmzBDoQ+0

二人の少しの沈黙の後に、

春香「あれ?なんだか・・・」

小鳥「雰囲気が変わった?」

千早「いいえ。変わっていませんよ?」

春香「うそだー!絶対変わってるよ!」

千早「だから変えてないってば」クスクス


54: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 19:25:52.97 ID:ZmzBDoQ+0

春香の楽しそうな顔見て、

私は、おどけながら思った。

雰囲気は変えていないわ。

ただ・・・「思い」を変えたのよって。
                      Fin