前回 ハニー・ポッター「『私は、嘘をついてはいけない』……?」

1: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/27(土) 21:41:34.66 ID:B5Kwop720
ハグリッドの小屋

ドンドンドンッ!

ハニー「ハグリッド!開けなさい!私よ!」

ガチャッ!

ハグリッド「おぉハニー!『透明マント』被っちょるんだろうが俺には分かるぞ!お前さんの豚な俺ぁ、お前さんがいるこの空間の空気だけでそりゃもう!ヒンヒン!」

ロン「おいおいいいなハーマイオニーといいそのスキル……お、わ」

ハーマイオニー「今までどこに……きゃぁ!?」

ハニー「っ……ハグリッド!その怪我!」

ハグリッド「あー、あんまり騒がんでくれ、大丈夫だ、大丈夫。なんでもねぇんだ、うん。ほれ、入れや。お前さんたちが来るだろうとおもって茶の用意をしとるんだ」

ハニー「っ、出来る豚のあなたらしいわね、けれど……血まみれじゃないの、あなた」

ハグリッド「なんでもねぇんだ、ほーんとだ。ほれ、ハニー。あー、俺がおめぇさんに命令なんてでき……うぉ!?」

ハニー「……」

ハグリッド「あー、ハニー!?俺ぁ、そりゃぁ、お前さんに腰のあたりに抱きつかれるのは本望っちゅうかそりゃもう天にも昇るっちゅうかあれここ天かあれハニーそうかお前さん天使だったんか知っとったが」

ロン「おいふざけんな!女神だろ!」

ハーマイオニー「茶々いれないの」

ハニー「……えぇ、そうよ。この私の加護があったくせにそんな体たらくはなんてざまなの、ハグリッド!私の豚!私……わたし、心配したんだから」

ハグリッド「……ありがとうよ、ハニー。あぁ、俺なら大丈夫だ。ほれ、そうさ。お前さんらが待ってるってぇのに、俺がどっか行っちまうわけねぇだろうが?え?」

ハニー「……当然よ。あなたは私の、豚さんなんだもの」


ハニー「わたしの大切な人は、誰一人だって、欠けさせないんだから」

ハグリッド「俺ぁ今死んでもいい」

ロン「残念だったねハグリッド!僕らは君より随分と前にハニーからのもっとありがたいあぁそりゃもう」

ハニー「ロン」

ロン「なんだいハニー!」

ハニー「雪の中に蹴とばされるのと、ヒンヒン鳴くの。どっちがいいのかしら」

ロン「どっちもさ!もちのロンでうわっ!?ぶはっ!ありがとうございまヒンヒン!」

ハーマイオニー「文字通り頭冷やしなさいよ、全くもう」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367066494

引用元: ハニー・ポッター「誰一人だって、欠けさせないわ」 




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7: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/27(土) 22:00:48.26 ID:B5Kwop720
ロン「しっかしほんと、ハグリッド。君傷だらけだなぁ。ハニーの顔みればすぐ痛みも引くだろうけど、何せハニーだし」

ハニー「違いないわね。私の言葉を聞いてるうちは幸福感しか感じないはずだもの」

ハグリッド「ほんとだな、あぁ。全然痛くねぇ」

ハーマイオニー「麻酔か何かにしないで頂戴。ねぇハグリッド、そんなわけないわ。その歩き方、あなた、肋骨が折れているんじゃない?」

ハグリッド「な、なんのこっちゃ。俺ぁいつもの通り元気爆発薬だぞ!うん!イテテッ」

ロン「ほらハグリッド、ハニーハニー」

ハーマイオニー「だから薬薬みたいに言わないの」

ハニー「……私に仕えるのは当然至極のことだけれど、ハグリッド。当然、私は嘘をつかれるのだって嫌いよ?」

ハーマイオニー「嘘というか、強がりというか……髪の毛も血でべったりだし、誰が見てもあきらかだわ」

ロン「顔中傷だらけだもんな、手も足も。あぁ、そうだね。なんでもなかったんだろうさハグリッド、君が重症だって言う時はきっとあの蜘蛛の化け物に食われたときくらいのもんなんだろうな、その分じゃ」

ハグリッド「そりゃ本望だがよぉ……あー、そうさな。ちーっと、うん。怪我をした。任務の……おっと!」

ハニー「ハグリッド……?」ツツーッ

ハグリッド「オッホォーヒンヒン!ダンブルドアから受けた任務で、って、いけねぇ!いけねぇ!話しちゃなんねぇんだ!」

ハーマイオニー「もうほとんど言ってしまったようなものだわ、ハグリッド……巨人に襲われたの?」

ハグリッド「!?な、なんのこっちゃ!?巨人!?なんだそりゃ、おいファング、お前さん巨人って知っとるか?え?」

ファング「バウアウッ!」

ハグリッド「シラネーヨー……ほれ!ファングもそう言っとる!」

ロン「去年君自身のことで散々揉めたじゃないか、何言ってんだかまったく」

ハニー「誤魔化すのは下手ね、ハグリッド。それにファングは今、そうね。肯定の意味、だったように思うわ……」

ハーマイオニー「犬語を勉強しているのは分かったから本題の方に目をつけて頂戴、ハニー」

12: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/27(土) 22:16:24.36 ID:B5Kwop720
ハグリッド「ん……まぁな、頭がえぇお前さんたちのことだ、うん。気づくに違いねぇと思っとったわい。ハニーおるし」

ロン「あぁ、ハニーいるからな」

ハニー「全知の女神ね」

ハーマイオニー「拝ませてもらうわ、はいはい」

ハグリッド「巨人、そうだ。俺ぁ夏休みが始まってからずーっと、ダンブルドア先生様の命令で巨人を探しとったんだ」

ロン「奴さんたちって僕らの何倍も大きいんだろ?ハグリッド、君ってそんなに目が悪かったっけ?豚リストにそんな届出はされてないように思うけど」

ハーマイオニー「彼らは海外で隠れて生活してるのよ、ロン……あと何よまたそういうあるんだかないんだか頭が痛くなりそうなそれは」

ハグリッド「そう、連中は山に隠れとる。まぁ、ロンの言うことも間違っちゃいねぇ。探し方を知ってりゃ出くわすのはそう難しくねぇもんだ」

ハーマイオニー「そんなものなの……でも、待って。それならふとした拍子にマグルに見つかることだって」

ハグリッド「あるらしい。んで、遭難事故だとかの扱いになるわけだ」

ハニー「……あなたは帰ってこれてよかったわ、ハグリッド。帰巣本能、というわけね」

ハーマイオニー「だから、ハニー、それは犬だってば」

ロン「ハニーが豚だって言ったら犬だって豚だよ。そうだよな、ファング」

ファング「バウワウッ!バフッ、ブヒンッ!」

ハーマイオニー「……ファングの健気さに泣けてくるわ」

ハニー「……牙豚?」

ハーマイオニー「やめてあげて」

13: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/27(土) 22:31:16.97 ID:B5Kwop720
ロン「なぁハグリッド、ハニーの手とか息とかをわずらわせる前に『屋敷しもべ妖精福祉振興協会』っちまえよ」

ハーマイオニー「あら正式名称でどうもありがとう、だけど『反吐』じゃないって何度言わせるつもりかしら!」

ハグリッド「しかしなぁ、あー」

ハニー「あなたが話さないと言うのなら、私の夏のことも話してあげないわよ、ハグリッド。吸魂鬼に襲われたこと、とかね」

ハグリッド「俺ちょっくらアズカバンに再投獄されてくる……なんだって!?吸魂鬼がハニーんとこに!?なんだそりゃ!あいつぁなーにやっとったんだ!?」

ロン「誰のこと言ってんのさ……でも、なんだったかな。その吸魂鬼は魔法省と関係無いの一点張りだったたしいよ、ハニーの退学がかかった裁判によると」

ハグリッド「!? ハニーが退学!? はに、なっ、そんなもん、それじゃぁこのハニーは……俺達の、夢!?」

ハニー「そして希望ね、えぇ」

ハーマイオニー「集めてやまないでしょうけど実体よ。退学は逃れられたの。そのあたりのハニーの夏休みの、夜の事以外のことを、ハグリッドがやっていたことを教えてくれたら話すわ」

ハグリッド「……仕方ねぇ、うん。あっ、全部話すから夜のそのナニかも教えちゃくんねぇか?え?」

ハーマイオニー「無理ね、これは私だけの……きゃぁ!?」

ハニー「そんなこと言わずに、ハーマイオニー。そうね、あなたと私だけの秘め事でもいいけれど、みんなに幸せを分けるのも悪くない、そう思わない……?」

ハーマイオニー「ちょ、っと、ハニー!やめっ、そんな、分け、あぁ、そんなの、あなたがいればいつだって、周りの人は『三本の箒』の店内みたいに暖かに、決まってるわ……」

ロン「つづけて」

ハグリッド「どうぞ」

牙豚「ヒンヒン!」

16: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/27(土) 22:46:40.56 ID:B5Kwop720
ハグリッド「ハーマイオニー、ほれ、紅茶だ。落ち着いたかい」

ハーマイオニー「フーッ、フーッ、どうも、えぇ……ハニー、覚えてなさい。何が分けるよ、大体いつも誰かがいるからそれこそいつものことじゃないのよ」

ロン「どうぞるのは僕ら豚の役目だからね、あぁ。地球の反対側にいても駆けつけるよ、ハニーの後光届くし」

ハニー「全世界余すことなくね、えぇ。さっ、ハグリッド」

ハグリッド「あー、そうさな。どっから話すか……とにかく俺と、それにマダム・マクシームは学期が終わるとすぐに出発したんだ」

ロン「へーぇ、ハグリッド!やったじゃないか!」

ハグリッド「おぉ、ありが……いやちげぇ!ちげぇぞ、うん!オリンペが来てくれたのはダンブルドアの言いつけだからだ、あぁ、そりゃぁちーっとは期待して」

ロン「本音」

ハグリッド「よっしゃぁ!ルビウスのホグホグがワツワツだ!って、うん」

ロン「処分はおって連絡するよ、会議の後にね」

ハグリッド「言わせといてあんまりじゃねぇか!?」

ハニー「……?」

ハーマイオニー「聞かなかったことにしていいわ、ハニー。ハグリッド、話の続きを。マダム・マクシームもあなたの任務についてきてくれたのね?」

ハグリッド「あぁ、一度も弱音を吐かんかった。男の俺でさえくじけっちまいそうな事が何度もあったのによぉ。あの人は強ぇ、身なりのえぇ、きれいな人だ……ハニーくれぇに」

ハニー「あなたが選んだのなら認めてあげるわ、えぇ。高貴さや可憐さでは私に軍配が上がるでしょうけれど」

ロン「僕にとっちゃ儚さも伝説的さも道徳的さも家庭的さも君のスニッチ・キャッチ勝ちだよハニー!もちのロンで!」

23: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/27(土) 23:01:48.13 ID:B5Kwop720
ハグリッド「一ヶ月かかったな、連中の隠れ家にたどり着くまでに」

ロン「一ヶ月!?なんだいそりゃ、まさか君達、歩いて行ったのかい!?移動キーとか、そんなもんも使わずに!?マーリンの髭!」

ハーマイオニー「ハグリッドたちは見張られていたのよ、きっと。ダンブルドアに信用されている二人が一緒に行動を起こすんだもの、目立たないわけないわ」

ロン「背の高さとか?」

ハーマイオニー「もはやわざとでしょあなた」

ハニー「揉めないの。ダンブルドアに味方している二人が何かするのを、あの人たちが黙って見過ごすわけがない、そういうことよね?あの、魔法省が」

ハグリッド「そうだ、うん。ハニーは賢いなぁ、知っとったが。俺達は魔法省に追跡されてたもんで、表向きは普通に、なんだ。休暇を過ごすふりをしとったんだ、途中まで」

ロン「ふりのつもりが本当に楽しんじまってそのせいで一ヶ月かかったとかはなしだぜ、ハグリッド」

ハグリッド「な、なんのこっちゃ、わかんねぇな、うん。ファングもそう言っちょる、なぁファング!?」

牙豚「ヒンヒン!」

ロン「いや、今のハグリッドは嘘をついてるって言ってるじゃないか、何言ってんのさ」

ハーマイオニー「私からしたらあなたこそ、よ。私というか、世間一般の常識は」

ハニー「私がどうしたの?」

ハーマイオニー「えぇ、あなたこそが最早常識なのよね、分かったわよ、もう」

ロン「ハーマイオニー、諦めも大事だぜ」

ハーマイオニー「金言をどうもありがとう、身に染みるわ」

27: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/27(土) 23:12:54.07 ID:B5Kwop720
ハグリッド「とりあえず、オリンペの学校を目指しとるフリをしてフランスに入った。そのあたりで連中を撒けてな。どこだったか、ディー、あー」

ハニー「私?」

ハグリッド「そう、そこだ。ディー・ハニー。あぁ、お前さんみてぇに綺麗な町だった。ヒンヒン!」

ハーマイオニー「せめて地名には進出しないで」

ロン「ダイアゴンはそろそろだろうけどね」

ハーマイオニー「そんな話あったわねやめなさいってば。ディージョン、のことじゃない?えぇ、あそこって本当にいいところよね!私、一昨年のバカンスで――」

ロン「ハーマイオニー、おいおい。今君のバカンスの話はいいじゃないか。マーリンの髭」

ハーマイオニー「散々話題ブレさせてたのは誰よ」

ハニー「あとでゆっくり聞くわ、ハーマイオニー。後で、ゆっくりね。それで?」

ハグリッド「あぁ、監視の目がなくなったんで、オリンペも、俺もちょいと魔法を使いながら旅が出来た。いい旅だった、うん。途中で狂ったトロール二匹と出くわしたりしたがよぉ」

ロン「バレエでも教え込もうとしてた奴がいたのかい?どっかのバーナバスみたいに」

ハグリッド「いんや、どっちの棍棒がどっちのだったかで喧嘩しとったみてぇだ……オリンペが畳んじまったが。文字通り。素手で」

ハーマイオニー「魔法ってなんだったかしら」

ハニー「私の魅力の一つね」

ハーマイオニー「否定はしないけど、そういうことじゃなくって」

31: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/27(土) 23:32:06.98 ID:B5Kwop720
ハグリッド「んで、ダンブルドアに教えてもらった、奴さんたちが隠れてるっちゅう山のあたりにたどり着いたんだ」

ロン「なんでも知ってるんだなぁ、あの同胞」

ハニー「……少しくらいそれこそ分け与えればいいのだけれどね」

ハーマイオニー「? 随分とお世話になっていると思うわよ、ハニー?」

ハニー「……どうかしら。それで、魔法で巨人を探し出したのね?」

ハグリッド「あー、いんや。連中の近くじゃ魔法を使わなんだ……あいつらは魔法使いを毛嫌いしとるからなぁ」

ハーマイオニー「確執があるからこそ隠れているんだものね……刺激すると何をされるか分からないわ」

ハグリッド「あぁ、そんで、近くに『死喰い人』の奴らもおるんじゃねぇか、ってダンブルドアは考えとってな。そっちの目を引かないようにしなくちゃなんねぇってんで、魔法はお預けだった。俺とオリンペはちっとばっかタフだもんで、魔法がなくともその山ん中を歩き回るのは大変じゃなかったんだ」

ロン「歩くっていうよりは駆け抜けてたんだろうな、って想像つくよ、あぁ。それで?」

ハグリッド「見つけた。ある夜尾根を越えたら、下の方にいくつも焚き火が見えた。その周りにおったんだ……『動く山』が」

ハーマイオニー「あー……あなたも私達から見ればそんなようなものだけど、本物の巨人って……?」

ハグリッド「六メートルくれぇは、あったな。大きい奴だと七、八メートルってとこか……俺よりでけぇのを見るのなんて子供んときぶりだからあれは驚いた。器がでけぇのは何人もおったがな、うん」

ハニー「パパとかママとか、私ね」

ロン「ハニーの器は大きすぎて漏れようがないよなぁ」

ハーマイオニー「それで全力で掬いにくるものね、えぇ。震えてでもね」

34: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 00:04:01.23 ID:Fv7SpWLv0
ハニー「……二人がニヤニヤしているのが気に食わないけれど、後で分からせるわ。ゆっくりね。どのくらいの人数がいたの?」

ハグリッド「ざっと七十、八十、ってところか。うん、八十、それっきりだな。最後の巨人族たちは」

ハーマイオニー「……多くはないだろう、って、本では読んでいたけど。それだけなの……」

ハグリッド「奴さんたちはそもそも集団で暮らすのに向いてねぇ。各地で追われてあの山に何百って種族が集まったはずだが、お互いに殺しあっちまったんだろう。それでもあいつらは塊って生きるしかねぇ、そうして自衛しとかねぇともっと絶滅が早まっちまう……ダンブルドアに言わせれば、俺達魔法使いのせいだ」

ハーマイオニー「……奴隷労働!」

ロン「いやそれ反吐とは違うだろう? 分からなくもないけどさ」

ハグリッド「ともあれ、難しいことはそんくらいでえぇ。俺とオリンペは連中を見つけた。そんで、準備に入ったんだ」

ハニー「私を讃えるための?」

ハグリッド「そりゃ毎朝毎晩やっとるな、うん。連中と話をつけるにゃ、貢物をせにゃなんねぇんだ。ダンブルドアがまた教えてくださった。カーグに尊敬の気持ちを示す、そういうこった」

ロン「誰に何をだって?尊敬?そんなもんハニーにしか注ぐ価値ないと僕ぁ思うね」

ハグリッド「全くだ、俺も何度もそう思っちょった」

ハーマイオニー「……その傷はまさか」

ハグリッド「いや、いやいやちげぇ、そう思っちょってもダンブルドア先生からの言いつけを守らんわけにいかねぇから、そう、一族の頭って意味のカーグに貢物をもってったんだ」

ハニー「私のような存在がいるわけね、彼らにも」

ハグリッド「とんでもねぇ、ハニー。一番でかくて一番醜くて、おまけに一番なまけもんだった。お前さんとは天と地ほどもちげぇよ、うん」

ロン「当たり前だろ比べるのもおこがましいね、マーリンの髭!」

37: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 00:23:41.59 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「カーグはカーカスって名前でな。八メートルちょっと、それに象二頭分の体重ってとこか」

ハニー「そんなものの前に、のこのこと参上したというの……?」

ハグリッド「参上っちゅうか、下ってったんだがな。カーカスは谷底の湖の近くで寝そべっとった。そんで、俺とオリンペは貢物を高くかかげて、近づいてったんだ」

ロン「連中に比べりゃ髭とマーリンの髭くらい差がある君とマダム二人で!?殺されたらどうするつもりだったんだ!?」

ハグリッド「そうならねぇようにダンブルドアがやり方を教えてくれた。貢物をかかげて、まっすぐカーグだけを見つめて進むんだ。そうさな、ヒッポグリフに触りてぇ時と同じだ。他の連中はムシして、カーカスだけをだ。最初掴みかかろうとしてきた奴らもすぐに察して引っ込んだ。俺の肝は冷えっぱなしだったぞ」

ハーマイオニー「それは、そうだわ。そんな大きい相手にすごまれるんだもの……」

ハグリッド「あぁ、それとマダムが『少しでもわたーしたちに手を触れたらただじゃおきませーん』って呟いとったから」

ロン「頼りになるなぁマクシーム、ハニーの次に」

ハグリッド「あぁ、ハニーの次に」

ハーマイオニー「さすがのハニーも巨人相手に関節技なんて無理よ」

ハニー「跪かせるのは、どうかしらね」

ハーマイオニー「想像できてしまいそうだからやめて。えーっと、貢物っていうのは?」

ハグリッド「魔法だ、うん。連中は『魔法』そのものは好きなんだ。ただ連中にとって不利な魔法を使われるのが嫌なだけで。俺とオリンペはその日ダンブルドアに用意してもらった『グブレイシアンの火の枝』を送った」

ロン「いま、クシャミした?」

ハーマイオニー「『グブレイシアンの火の枝』!永遠の火よ、ロン!フリットウィック先生が授業で二回は話に出しているのに、もう!」

ロン「なんだ、そんな火ハニーを想う僕ら豚の心にいつだってあるから気にとめてなかったよ、うん、そうに違いないね。あぁハニー!君の素晴らしさって僕の赤毛なんて目じゃないくらい真っ赤に燃え上がるよね!ヒンヒン!」

39: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 00:41:41.17 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「俺とオリンペはカーカスに『火の枝』をやって、『巨人の頭に、アルバス・ダンブルドアからの貢物です。ダンブルドアがくれぐれもよろしくと』って伝えたわけだ」

ロン「へぇ、その文字通り頭でっかちは、なんて?」

ハグリッド「なーんにも。英語がわからんからな。ヒン語ができちょくれればよかったんだが……」

ハーマイオニー「その事態になっていたら最早何も貢物なんていらないと思うわ」

ハニー「私に跪いた後だものね、えぇ、私の前に万物がひれ伏すのは当然のことだけれど」

ハグリッド「ハニーをあんな危険な連中の前に連れ出すなんて俺ぁ頼まれてもやらんがな。そんでもカーカスの部下には何人か英語の分かる奴がおってな。そいつに通訳してもらった」

ハーマイオニー「喜んだでしょう?」

ハグリッド「そりゃもう、大騒ぎだったな。あんまり喜んで笑うもんで雪崩がおきとった。そんで、とりあえずその日はそれまで。『また明日、ダンブルドアからの贈り物を持ってきます』つって、俺とオリンペは退散した」

ロン「なんだってそんな回りくどいことをするのさ。ハニーが嫌うぜ?」

ハグリッド「そりゃ死ぬほど辛いが、あー、連中に俺達が『約束を守るやつらだ』ってところを見せるんだ。それに渡した『火』が本物か確かめる時間もやれる。次の日降りていったときには連中、みんなで歓迎しとったわい」

ハーマイオニー「接触に成功したのね。それから、話を?」

ハグリッド「おぉ、小鬼製のほれ、絶対壊れねぇ兜をやったら上機嫌でよ。そんで、俺達を近くに座らせてくれて、ダンブルドアのお考えを伝えた」

ロン「で、どうだったのさ。なーんにもなんてなしだぜ?」

ハグリッド「そうさな、だいたいが話を聞いとった。カーカスはダンブルドアがイギリス最後の巨人を殺すのに反対したことを知ってたもんで、先生様が何を伝えたいのか興味をもっとった。それに、英語が分かる連中も特にな。おぉ、俺とオリンペはしめた、と思ったもんだ。このままカーカスを説得して、巨人みんなを、ってよぉ……けどなぁ、あぁ、そう上手くいかんかった。現れたのよ、連中が」

ハニー「……仮面が恥ずかしいバカな集団<死喰い人>ね」

ハグリッド「そう、そいつらだ。うん、ちげぇねぇ」

ロン「シリウスの影響うけやすいなぁ」

ハーマイオニー「今に始まった事じゃないと思うわ」


42: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 01:04:19.09 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「カーカスに前々から対抗心を燃やしとった、ゴルゴマスって巨人がおってな……俺達が手ごたえを感じながら帰ったその日の晩、そいつが戦いを起こしっちまったんだ」

ハーマイオニー「……カーカスは」

ハグリッド「……次の日の朝、湖の底に首が沈んどった。カーカスが寝そべっていた場所にゴルゴマスが陣取っててな。『火の枝』と『小鬼の兜』をもってよぉ」

ロン「あー……そのゴルなんとかを焚きつけたのが、連中ってわけかい?フォイフォイみたいな汚い奴ら」

ハグリッド「どうもそうらしい。俺とオリンペはゴルゴマス達に殺されかけたが、あいつらの贈り物は受け取ってたみてぇだからな」

ハーマイオニー「!? カーカスが殺されたのに、あなたとマダムはまだ貢物をしようとしたの!?」

ハグリッド「そりゃそうだ!たった二日で諦めて帰れるかい!?え!? だがまぁ、うん、間違いだったんだがな。俺はゴルゴマスの仲間二人に脚を掴まれて宙吊りになっちまった……後のオリンペの戦いっぷりったら」

ハニー「……私以外にうっとりするなんて、まったく。ふふっ」

ロン「話してる内容と表情が一致してないぜ、ハグリッド。まったく、マダムってすっげぇってわけだね。わかったよ。それで?」

ハグリッド「あぁ、オリンペが二人に『結膜炎』をかけて逃げおおせた後、見つからないように隠れとったらゴルゴマスに会いに行く『死喰い人』どもをみつけたんだ」

ハニー「……人殺しをするような奴らと、みんなの頭を平気で裏切るような巨人、話が合う、そういうことね」

ハグリッド「……『死喰い人』の一人は、あぁ。確かにそうだったろうな、うん。覚えとるか、マクネアってやつを。ビーキーの首をはねにきたあいつよ……だがなぁ、うん……」

ロン「? なんだよ、ハグリッド。煮え切らないな」

ハーマイオニー「『死喰い人』ども、と言うからには、まだ何人かいたのよね?」

ハグリッド「そう、そうなんだ……二人おった。一人はマクネアだ、あの歩き方に、それに趣味の悪い鎌を持ったままだった……よう考えたらなんだあれ、バカか」

ハニー「私が回りくどいのは嫌いだ、って、あなたにはもう言う必要もないと思うのだけれどね、ハグリッド?」

ハグリッド「ヒンヒン!おうともハニー!   あー、でも……こればっかりは」

ハニー「……ハグリッド」

ハグリッド「……俺の憶測なんだ、あんまり真に受けんでくれなくてもえぇ。あぁ、お前さんは優しいから俺のバカみてぇな意見だって聞いてくれるんだろう、それでもだ。俺の戯言だと思っちょくれ」

ハグリッド「……でもなぁ。俺、俺ぁ奴さんをよーく知ってる……受け持ったのは二年きりだが授業じゃよう手伝ってくれちょったし、それまでもすれ違えば挨拶してくれた。うん……俺ぁ、見間違いだと思いてぇ。でも」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ハグリッド「でも見たんだ、あの趣味の悪い仮面をつけたローブの、胸の辺りに光るバッジをよぉ……あれは」

ハニー「……嘘でしょ」

ハグリッド「……セドリックだった、と、俺は思う。あぁ、ハニー……だから俺ぁ言いたくなかったんだ。ヒン、ヒン」



60: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 13:32:42.82 ID:Fv7SpWLv0
ハニー「……あなたの事は信じたいわ。でもね、ハグリッド」

ハグリッド「あぁ、ハニー。俺はきっと巨人のぼんくらにやられっちまって、目がどうかしとったんだ。忘れてくれ」

ハーマイオニー「……良い点だけ見れば、あー、彼がまだ生きているっていう証明になるわ。そうよね?」

ロン「あぁ、なんでだか趣味の悪い仮面なんかをつけてね」

ハニー「……」

ハーマイオニー「どういうことにせよ、本心のはずがないわ。ねぇハニー、シリウスが言っていた事、覚えてるでしょう?一言一句」

ハニー「……えぇ。操られてる、そういうことね……それとも、バッジが妙に流行っている魔法界だもの。似たようなバッジがどこかで売られてても、不思議じゃないわ」

ロン「ハニーバッジはそろそろ完成だから待っていてほしいなヒンヒン。で、ハグリッド。君達はそいつらに邪魔されて、帰る羽目になっちまったのかい?」

ハグリッド「まさか。たった三日で諦められるはずがねぇ!ゴルゴマスは確かにでけぇし力も強ぇが、全員が全員あいつに賛成してるとは限らねぇ、そういうやつらを探して説得する方向に切り替えたんだ。オリンペは賢い、あぁ、いい人だ。ハニーの次に」

ハーマイオニー「最後のはどうしても必要なのあなたたち」

ハニー「美意識の先頭に私がいるから仕方ないわ。見つけたの?ゴルゴマスの反対派を」

ハグリッド「六人か七人、ってところか。ゴルゴマスに何度も痛い目あわされとった奴らでな。あぁ、話をして、納得してくれとった、そう思う」

ロン「すっげぇや!それじゃ、そいつらが味方になるのかい?え?養豚場を増築しないといけないよな!」

ハーマイオニー「あなた日頃は豚扱いはやめろって言ってるのに……待って、ハグリッド。納得して、くれていた?っていうのは……」

ハグリッド「……その晩、そいつらは襲われた。あぁ、次の日には一人残らずその洞窟から消えとったわ。ひでぇ闇の魔法の跡があったから、きっと……」

ハニー「……」

ロン「……マーリンの髭」

63: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 13:51:13.66 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「俺とオリンペは誰も連れて来ることは出来んかったがな、無駄骨だったとは思ってねぇ。あぁ、そうともさ。ハニーにとびついてもらえただけでも俺ぁこの任務やってよかったと思っちょる」

ハニー「私を寂し、オホン、物足りなくさせたのは重罪だけれどね」

ハグリッド「すまんハニー!ヒンヒン! 生き残ってゴルゴマス側についてる奴の中にも、カーカスに話をした時に聞いていた奴はおったしな。そいつらがダンブルドアが何を考えているか覚えておいてくれれば、ゴルゴマスに本当に反抗したいときに俺達の事を思い出すかもしれん」

ハーマイオニー「ダンブルドアは自分達に友好的で、権利を認めるだろう、ってことを?」

ハグリッド「そうだ。そうすりゃ、なんだ。『例のあの人』のほうじゃなくて、俺達のところに来てくれるだろうさな。いつか、多分」

ロン「あー……えっと。そういやハグリッド。おふくろさんは見つかったかい?」

ハグリッド「死んだそうだ、あぁ。俺の顔を見て気づいた奴が教えてくれた。何年も前に死んだんだとよ」

ロン「……マーリン、いや、ごめん」

ハグリッド「気にすんな、顔も覚えてねぇ相手だ。いい母親だったとも思えねぇ」

ハニー「……身内を大事にできない豚は嫌いよ」

ハグリッド「ヒンヒンすまんハニー!あぁ、一目でいいから会いたかったもんだ!そうすりゃあいつのことをもっと……うぉっほん!それで、ハニーの夏休みのことだけどどういうこった?え?」

ハーマイオニー「待って、ハグリッド。まだこんなに帰るのが遅くなった理由も、それに、その傷だらけのことも説明がないわ」

ロン「そうだよ、ここまでスピューっちまったんだ、吐いっちまえよ」

ハニー「豚の健康状態を把握しておくのも私の役目なの。さっ、ハグリッド……?」フーッ

ハグリッド「お、オッホーォ!実は俺におと――」

ドンドンドンッ!



「ごぉめんあそばせぇ~♪」



ロン「!?うっぷ、『S.P.E.W』が出そうだ!マーリンの髭!」

ハーマイオニー「さっきのはまだ見逃してあげたけどいい加減にしなさいよ……こ、この声、アンブリッジ!?」

ハニー「ハグリッド、出て頂戴。居留守はあなたに不利にしかならないわ。ロン、ハーマイオニー、マントの中に」

ロン「僕は厳密には君の下に、だけどね!ヒンヒン!」

65: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 14:08:18.31 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「あー、っと……?」

アンブリッジ「あらあら随分とボロ雑巾のようですこと。それじゃ、あなたが――」

ハグリッド「なんだ、おめぇさんは……あぁ、なるほど。『森』で生まれた新しい子かい?え? 何との何の合いの子だかなぁ……カエルとデミガイズってぇところか……?」


ロン「ハグリッドさすがだぜ、あのババァの醜面見ても吐き気どころか飼う算段たててやがる」

ハーマイオニー「褒められた癖ではないけどね……ああ、無駄に逆なでする言動はしないでほしいわ」


アンブリッジ「何を勘違いしているのか検討もつきませんけど、私はドローレス・アンブリッジといいますの。あなた、ハグリッドですわね?」

ハグリッド「そうだ。うん?ドローレス・アンブリッジ?そいつはぁたしか魔法省の人だと思ったが……ファッジんとこで仕事をしてなさらんか?え?」

アンブリッジ「えぇ、コーネリウス付きの上級次官でした。あぁコーネリウス……!オホン、それはよろしいんですの。今はこちらで『闇の魔術に対する防衛術』を教えていますわ」

ハグリッド「そりゃ物好きだな。今じゃだれもこの教科は教えたがらねぇ」

アンブリッジ「そして、『ホグワーツ高等尋問官』でもありますの」

ハグリッド「? なんですかい、そりゃ」

アンブリッジ「わたくしも今同じことを言おうとしていましたの。どうしてマグカップが四つも出ているのかしら?」

ハグリッド「どうして、って……あぁ、お前さんには見えねぇかい?そうさな、こいつらはちーっと気難しい」

アンブリッジ「……は?」

ハグリッド「あんまり気を悪くせんでくれ。俺ぁ何もあんたが魔法使いとして劣ってるとかそういうことが言いてぇわけじゃねぇんだ。ただ、こいつらを見るにはほら、素質とかそういうのがねぇと……」

アンブリッジ「……なるほど、授業に使う魔法生物デミガイズ!先ほど言っていたのはこいつらのことでしたのね!えぇ、毛皮が透明マントになるこの生物は訓練を受けた上級魔法使いしか!まぁ!わたくしともなれば容易いわけですの!!!」

ハグリッド「そうだろうなぁ、うん。さすが先生様」


ロン「すげぇぜハグリッド」

ハニー「あとで目一杯褒めてあげないといけないわね」

67: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 14:25:31.25 ID:Fv7SpWLv0
アンブリッジ「てっきりここに誰か来ていたのかと思いましたわ。それも、ついさっき。今しがた。雪の上に、そうですわね、三人分の足跡が残っていましたもの。城からここまで」


ハニー「……迂闊だったわ」

ハーマイオニー「……帰りは足跡を『消失』させながら帰りましょう」

ロン「足跡を消失って、無くすのかそれとも現すのか何かよくわかんないよな。マーリンの髭」


ハグリッド「さぁなぁ、俺自身が帰ってきてまだ一時間と経ってねぇし、あー、入れ違いだったんじゃ?」

アンブリッジ「帰りの足跡はありませんでしたわ。まぁ、よろしい。あなたの帰り、そう、わたくしはそのことを話にきたんですの。一体今学期が始まって二ヶ月も経った今日まで、あなたはどこにいらしたのかしら?」

ハグリッド「あー……ダンブリッジ、じゃねぇ、ダンブルドア先生様には、あー、言ってあるはずなんだが」


ロン「混ざってる混ざってる」

ハーマイオニー「さっきまではなんとか余裕だったのに……ハグリッド、しどろもどろだわ」

ハニー「……手のひらに書いてきてあげようかしら」

ハーマイオニー「犬から離れて、えぇ、意識だけでいいわ。とりあえずは」


ハグリッド「俺は、あー、健康上の理由で休んどった。そんで、休暇を空気の綺麗なとこで過ごしてたんだ、うん。おかげで元気一杯だ」

アンブリッジ「その割にはズタボロのようですわね? 空気の綺麗な……そう、例えば?山、とかですの?フランス経由の?」

ハグリッド「山……いや、いや。ちげぇ、全然ちげぇぞ、うん。山なんて一つもねぇ海におったんだ。日がな一日ほれ、やれ海水浴だ、日光浴だ、ハニーを讃えるために朝日を浴びたりだ……そういうのだ」


ハーマイオニー「最後」

ロン「常識だろ、君だってしてるんじゃないかい?なんだかんだいって」

ハーマイオニー「残念でした、私が朝日と一緒に浴びるのはもっとありがたいものだわ」

69: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 14:42:41.48 ID:Fv7SpWLv0
アンブリッジ「海に、日光浴。なるほど、その割には日焼けをしていないようですが」

ハグリッド「あー、俺は、肌が弱くてな、うん。あんまりほら、肌を見せなんだ、このオーバーをきて、うん」

アンブリッジ「海に行ったのに?」

ハグリッド「あー、ちーっと、たまには海以外にも行ったかもしんねぇ。そうだ、あー、友達の友達が飼育しとるアブラクサン馬に乗ってこけっちまって、それでこんな怪我をよぉ。ハッハ、ハ、ドジでなんねぇって、むかっしから言われとるんだ、俺ぁ」

アンブリッジ「それは大変ですわね。さて、ハグリッド。あなたが遅れて戻った事は大臣に報告させていただきます、よろしいですわね?」

ハグリッド「そりゃあんたの権限だし、俺に止められるもんじゃなかろう?知っとるよ、魔法省さんのやることくれぇは」

アンブリッジ「はいその通り、やめてと言ってもお伝えしますわ。それに加えて高等尋問官の権限として、わたくしは――驚くべき事に――同僚の教師であるあなたの授業を査察しなければなりません。近いうちにまたお目にかかることと思いますわ。こんなボロ小屋でというのはごめんですけど」

ハグリッド「査察……?」

アンブリッジ「えぇ、そうですよ。ハグリッド、肝に銘じておくことですわね。魔法省は教師として不適切な者を取り除く覚悟ですので」

ハグリッド「そうか、そんじゃ俺ぁあんまり気にしなくてよさそうだなぁ」

アンブリッジ「……無駄にでかいのは図体だけでなく態度もでしたのね。それでは」

バタンッ

ハーマイオニー「……出て行ったフリをして、耳傍をたてていないかしら」

ロン「性悪顔も悪なあいつならやりかねないな……あぁ、窓から城に戻るのが見え、オェッ」

ハニー「ハグリッド、少しダメなところもあったけれど、あの女との初対面としては上出来な対応だったわ。出来る豚ね、褒めてあげるっ」フーッ

ハグリッド「オッホォー!そりゃもう俺はお前さんの豚でヒンヒンヒーーーン!」

70: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 14:57:41.89 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「本当なんかい?あのヒトが先生を査察してるっちゅうのは」

ロン「もちのロンさ。トレローニーの奴は早速停職になるらしいよ」

ハーマイオニー「ね、ねぇハグリッド?さっきあなたはあぁ言っていたけど、実際、今後の授業ではどんなものを教えるつもり?」

ハグリッド「そうさな、授業の計画はたっくさんあるぞ、うん!俺も二ヶ月授業ができんかったのと、あと四ヶ月ハニーに会えなくて死にそうだったからな」

ハニー「えぇ、当然でしょうね。悪いのは待たせたあなただけれど、そうよね?」

ハグリッド「違いねぇですヒンヒン!」

ロン「よし、ハグリッド。第一回の授業は『ハニーの素晴らしいところ』についてでどうだい!」

ハーマイオニー「授業でやるようなものでもないし第一回ってあなたと私で週一回以上やってるでしょそれは。ハグリッド、本当に、きちんとした計画をたてないと……」

ハグリッド「大丈夫だ、でーじょうぶ。OWLの学年用にとっといたすげぇもんがある。すっげぇぞ!おったまげるぞ、うん!あぁハニー、お前さんが喜ぶ顔を見んのが楽しみだなぁ!」

ハニー「なぁに?サラザールでもつれてくるのかしら」

ロン「!ハグリッドが秘密の部屋を開いただって!?」

ハーマイオニー「あなたの頭って柔らかくっていいわね。絶対に見習わないし尊敬もしないけど……ねぇ、ハグリッド。これまでみたいに危険な生物を扱ってしまったら、魔法省は……」

ハグリッド「危険?まさか、まさか。おまえたちに危険なもんなんぞ連れてこんぞ、俺は」

ロン「あぁ、そうだね。ビーキーは対マルフォイキラーだっただけだし、それに、スクリュートに至っちゃ同胞だもんな、あぁ。危険なんてマーリンの髭さまったく」

ハグリッド「俺が長いこと育ててきてな。そりゃ、自己防衛くれぇはするが本当に大人しいいい奴らなんだ。すげぇぞ、なんせイギリスでただ一つっちゅう飼育種だ」

ハーマイオニー「つまりはそれまで飼育されていた前例がない、って……危険な要素しかないじゃない!」

ハニー「……ハーマイオニー、諦めましょう。こうなったハグリッドに何をいっても無駄よ」

ハーマイオニー「……えぇ、それに、あなた自身がその生き物をみるのがとっても楽しみなのですもんね?」

ハニー「なんのことかしら」

ハーマイオニー「こっちを見ていいなさいよ、もう。こっちを見て、ほら。私の方……あぁ、ハニー、あなたの目……ハッ!させにないわよ!もう!」

ロン「君割りと墓穴掘るよな、もちのロンでさ」


71: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 15:23:12.71 ID:Fv7SpWLv0
日曜 昼

談話室

ロン「『足跡がつく』という現象の消失、つまりは雪につけた跡を元の状態に戻すのはどちらかといえば『現れ』呪文の意味合いが強いがどちらも正しく理解していた場合その矛盾を、あー……レポートをでっちあげるのは難しいなぁ。マーリンの髭」

ハニー「クィディッチの練習やら何やらで溜まったのだものね、宿題。私の方はDAの方に取り組みすぎていて、だけれど」

ロン「あぁ、僕は君の分まで滅茶苦茶に活躍しなくちゃなんないし、それに君ときたら完璧主義だからって名目で教えるものは完全にみんなの前で披露してもばっちりなくらい練習するしねあぁハニー君のすばらしさはたゆまぬ努力からあらわれ痛い!ありがとう!ヒンヒン!」

ハニー「完璧主義なの、それだけよ。まぁ、私が完璧なのは皆目周知の通りでしょうけれど……あら、ハーマイオニー。お帰りなさい」

ロン「ヒンヒン! どうだったんだい、ハグリッドは君の『これでハニー並に完璧!アンブリッジの査察に通るための授業計画』を聞き入れてくれた?」

ハーマイオニー「てんでダメだったわ……ナールなんかを教えるよりもキメラを使ったほうが俺もみんなも楽しいに違いねぇ、そう言って……あぁ、なにも本当にキメラを教材にする気はないと思うわよ。例えよ、きっと……多分」

ロン「ライオンの頭ヤギの胴体ドラゴンの尾とかいうあれか……あれ、言葉にすればなおの事それじゃハグリッドが手に入れるのは時間の問題だなぁ」

ハニー「ホッグズヘッドのバーテンはどうなのかしら、それ。胴体はヤギだけれど」

ハーマイオニー「その他が凶暴すぎてダメでしょうね、いくらなんでも。でもハグリッドが手に入れる努力をしたことがあるのは間違いなさそうだわ。卵の流通についてやたらと詳しかったし……私の授業計画には少しも耳をかさないくせに」

ロン「痛くて耳が遠くなってるのかもしれないよ、ハニーの声は三千里離れてても耳元の囁きに聞こえるだろうけど」

ハーマイオニー「そう、それよ。最初私が小屋に行った時、ハグリッドはいなくって。しばらくしたら森から出てきたの……昨日よりもさらに血だらけで、新しい傷を作って」

ハニー「……任務で帰ってくるまでにつけた傷、ではなかったのね……あの豚」

ロン「ハニーに隠し事なんてなんてやつだろうねまったく、犬に格下げだな」

ハーマイオニー「ハニーにとっては格上げでしょうし唯一無二でしょうからやめておきなさい」

73: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 15:36:16.71 ID:Fv7SpWLv0
月曜 朝

大広間

ザワザワザワザワ

フレッド「おいおいおいおい!職員テーブルにあるあの小山はなんだい!え!?」

ジョージ「ハーグリッド!おやまぁ、随分とおそーい登場だったじゃないか!?」

ハグリッド「よぉ、フレッジョ!おぉ、ひっさしぶりだなぁ!」

ネビル「戻ってきたんだね!えーっと、傷だらけでひどそうだけど、よかったよ!ヒンヒン!」

ハグリッド「あー、そうだ。色々とあってな!ヒンヒン!」

ワイワイワイワイ

ロン「ハグリッド、歓迎されてるなぁ。主に同胞とかから」

ハーマイオニー「……そうでもない人も、結構いるようだけどね」


ヒソヒソヒソ

ラベンダー「グラブリー=プランク先生の方がよかったわよね」

パーバティ「OWLの試験があるのに……」


ハニー「……危険だけど可愛い生き物と、変哲もない上に可愛くもない生き物ならハグリッドの方がずっといい、私はそう思うけれどね」

ロン「あぁハニー!君がそう言うならそれがスタンダードだよ!うん!豚の僕らにとってもね!」

ハーマイオニー「生き物のセンスに関しては本当、ハニーってハグリッド寄りよね」

ロン「あぁ、何せ君も危険たっぷりだもんな、そう言えるだろうさ。もちのロンで」

ハーマイオニー「石化されたいのなら頼まれなくてもしてさしあげるわよ?」

ハニー「……可愛いの方はかかってるのかしら、どうなのかしらね。ふふっ」

74: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 15:52:00.66 ID:Fv7SpWLv0
火曜日

『魔法生物飼育学』

マルフォイ「やぁポッター、お友達の巨大なでかぶつくんが帰ってきて嬉しいんじゃないか?残念だねぇ、もうすぐお別れになるなんて」

ハニー「話かけないでくれないかしら虫唾がひどいわ」

ロン「お別れってんならお前と永久にお別れできればいいのになもちのロンで」

ハーマイオニー「『巨大なでかぶつ』って何よ『頭痛が痛い』くなるから口閉じてて頂戴」

ネビル「フォイフォイ言ってなよ」

マルフォイ「……ロングボトムはなんだよ!!!!」

ロン「いや君こそなんなんだよ」

ハグリッド「おーい、みんな集まっちょるかー?あぁハニー、今日もお前さんに会えて光栄だヒンヒン!」

ハニー「ハァイ、ハグリッド……あなた、それ、なぁに?」

ハグリッド「おぉ?こいつか、これぁ死んだ牛の半身だなぁ。これから会いにいく連中の好物なんだ」

マルフォイ「おーやおや、また生徒の半身まで晒すような惨事を引き起こさないでくれよな。それともなんだい、君も食われかけたのかな、その様子……おっと、ズタボロで惨めなのはいつものことか」

クラッブ・ゴイル「「ゲラゲラゲラゲラ!!」」

ロン「犠牲者第一号にしてやるぞこんにゃろ……」

ハーマイオニー「放っておきなさい、ロン。どうせ本当に恐ろしい生き物が出てきたら一番びくびくするのはそこのシロイタチよ」

マルフォイ「うるさいぞグレンジャー!」

ハグリッド「マルフォイ、黙るフォイ。授業中だぞ」

マルフォイ「……このでかぶつめっ!」

ハニー「態度だけ大きいあなたよりは立派よ、ハグリッドの方が」

ハグリッド「ヒンヒン!光栄だハニー!」

76: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 16:10:32.42 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「さーてと、そんじゃ俺の最初の授業をおっぱじめることにする!」

ザワザワザワザワ

ラベンダー「……期待はしないわ」

パーバティ「これも私達で自習とかしたほうが……?」


ハニー「私ならば爆発豚だって用意が出来るけれど、ダメよそんなの」

ハーマイオニー「……」

ロン「君、今割りと必要かもって思ってるだろ」

ハーマイオニー「まさか。ハグリッド、続けて。えぇ、私の計画を俄然無視してあなたが選んだという教材のことを、どうぞ」


ハグリッド「おぉう、ハーマイオニーからどうぞられるのは新鮮だな。今日は、『森』に入る!」

ザワザワザワザワザワ
 ガヤガヤガヤガヤガヤ

ネビル「ひっ、うわ、あの『森』に……嫌な思い出しかないなぁ」

マルフォイ「…………」

ハグリッド「でぇーじょうぶだ、今日は俺が先頭におるし、真昼間だからな。あー、でも女の子たちはちゃーんと、俺が連絡したこと守ってきとるかい?え?こればっかりはどうしようもねぇからな、うん」

ハーマイオニー「えぇ、今日はきちんと……スカートではなくパンツルックで来たけど、ハグリッド、これってどういう意味があるの?森で怪我をしないように、とか?」

ハニー「……自称賢人たちに火傷させられないように、よ。何も言わずに信じなさい、ハーマイオニー。あと、ロン。なるべく私達を囲って回りに見られないようにすること。いいわね?」

ロン「もちのロンさハニー!あぁ!いつものスカートから除く健康的な曲線美も素晴らしいけどズボン姿もまた格別だねハニー!君はいつだってみんなの特別だけどね!おら豚ども!フォーメーションIだ!」

ヒンヒン!

ハグリッド「準備できたみてぇだな。そんじゃ、森に入るぞ。着いてこいや!」

ゾロゾロゾロゾロ
ザクッザクッザクッザクッ
 ワイワイワイワイ



「……チッ」

 「クソが」

「スカートじゃないなど許されない、土星がそう言っているというのに……これだからヒトは」


ハニー「今すぐ火をかけるわよ散りなさい茂みの向こうにいる賢者ども」

「……ふぅ。君達なにを言っているんだい、パンツルックの高尚さを穢す背徳感こそまた、ふぅ……」

ハニー「一頭次のステージに行ってるんじゃないわよぶっ飛ばすわよ」

81: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 16:31:35.25 ID:Fv7SpWLv0
『禁じられた森』

ハグリッド「よーし、よし。この辺だ。全員ちゃーんとおるか?え?」

ロン「怖い事言うなよ、何に襲われるってんだよ。蜘蛛はやめろよな」

ハグリッド「こういう課外授業じゃフラフラどこか行っちまう子がつきもんだろうが。それに『森』っていう楽しいとこなら尚更な!」

ハーマイオニー「ここを楽しめるのはあなたくらい知り尽くしている人だけだわ、ハグリッド」

ハグリッド「おぉっとありがとうよ。そうさな、そろそろあいつらはこの肉のにおいに引き寄せられてここに来るはずだ」

ハニー「えぇ、それに私の魅力に魅せられるのね」

ロン「どうりで僕フラフラしちまうわけだよな、もちのロンで」

ハーマイオニー「それはあなたが私達の周りで凄い速さで反復横とびのような動きをしていたからだと思うわ、はいはいご苦労さま」

ハグリッド「さすがロンは一番の豚だなぁ。あいつらにもヒン語を教えてほしいとこだが、こればっかはどうにも、ってぇわけで……ケェエエエッ、ゲェェェエエエエッ!!!」

マルフォイ「っフォ、っ、ごフォん。なんのマネだい、でかぶつ!バカの真似はそのまんまでも優等だろう!?」

ハグリッド「マルフォイ、私語は慎め。授業中だ」

マルフォイ「さっきからなんなんだお前!!」

ハーマイオニー「えーっと、ハグリッド?今の雄たけび?は、その何かを呼び出すための声だったの?」

ハグリッド「その通りだハーマイオニー、さっすが、俺達のハーマイオニーに分からねぇことはねぇな。ハニーのこと含め」

ハニー「そうね、ハーマイオニーは私とお互いに――あっ」

ハーマイオニー「な、ナニのことを言ってるのハグリッド。は、ハニー?ダメよ、今授業中……え?」

ハニー「あれ……!やっぱり!やっぱり、見間違いでも幻でもなかったんだわ!あの可愛い、馬!」

ロン「馬……?ハニー、あー……ちっくしょうなんだって僕はハニーの眼球じゃないんだ!マーリンの髭!」

ハグリッド「さっすがハニー、見えとったか! こいつは天馬の希少種で、セストラルっちゅうんだ」

セストラル「ブルルルッ!」

ネビル「うわぁ……いつみてもコワイなぁ」

ロン「!ネビル、君もかい!?なんだよちくしょう君ばっかりいいとこもってって!」

ハーマイオニー「みんなあなただけには言われたくないと思うわ」

82: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 16:50:36.80 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「さーてと、こいつの姿が見えるのはどのくれぇいる?うん?」

ハニー「わたしっ!」

ハグリッド「あぁ、ハニー!お前さんは元気がいいな、うん!あとネビルと、ほぉ、それに――」

マルフォイ「さっきから何の話をしてるんだい。どこに馬がいるっていうんだ?それともポッターのお得意なでっちあげかい?次はなんだ?吸魂鬼でも現れるのかい?」

ハニー「そうしたらとある眼鏡が黙ってないわよ黙ってなさい」

ハグリッド「あぁ、そうだった。ほーれ、なーんも見えん子たちは俺がさっき地面に投げた牛の肉を見てみろ」

セストラル「ブルルルッ!」ムシャムシャムシャムシャ

ザワザワザワザワザワ

ラベンダー「キャーーーーッ!?」

パーバティ「じゃ、じゃぁ本当にそこにセストラルがいるっていうの!?なんてこと!あんな、縁起の悪い生き物!見た者にありとあらゆる災難が降りかかる、ってトレローニー先生が――」

ハグリッド「うん?だから、見えるもんと見えないもんがおるっちゅうのに何だそりゃ、ひでぇ迷信だな。トレローニー先生は本当にこいつらのことを知ってるのか?」

パーバティ「……」

ラベンダー「し、信じる者は救われるのよ!」

ロン「足元とかね。ハグリッド、つづけなよ」

ハグリッド「おぉ、あんがとよ。それでな、こいつらは何かっつうと色んな意味で良く見られねぇが、どえらく賢いし役にたつんだ。ここでの仕事は馬車引きと、あとダンブルドアが『姿現し』を使わず遠出する時の足代わりくれぇか

ハニー「……ダンブルドアの」

ハグリッド「おぉ、こいつらは力も強ぇしいっくらでも空を飛べる。乗ってみるかい、ハニー……おっと、また来たぞ」

ガサガサッ

フィレンツェ「……」

ハニー「……」

フィレンツェ「女の子が裸馬に乗ると聞い、ふぅ。やぁ、ホグワーツの生徒さんたち。私はフィレンツェ、二つの意味で下半身が――」

ハグリッド「セストラル、ちょっくらそいつ向こうに運んどってくれ。今邪魔にしかならん」

セストラル「ブルルルルッ!」

ハニー「……出来る馬ね、どこかの駄馬たちと違って」

86: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 17:11:40.25 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「さーてと、この広場にもう三頭ほどいるわけだが、安心しろ。どいつも大人しいからお前さんたちを傷つけたりしねぇ。あぁそうだ、ドラコ。頭を下げなくったってな」

マルフォイ「うるさいな」

ロン「君に言われたくないね」

ハグリッド「そんじゃ、誰ぞ知っとるもんはおるかい?こいつらがどうして見える奴と見えない奴がおるか」

ザワザワザワザワ

ハーマイオニー「……はいっ、ハグリッド先生」

ハグリッド「うぉう、なんだかくすぐったいなその呼ばれ方は。よーし、ハーマイオニー。言ってみろ」

ハーマイオニー「セストラルが見えるのは、死に直面した人。それを受け入れることが出来た人のみ、です」

ハグリッド「よーく出来た!グリフィンドールに十点!」

ハニー「……私の場合は……でも、セドリックはきっと……あぁ、パパたちの木霊のおかげで改めて認識したから、かしら」

ロン「細かいことはマーリンの髭だね」

ハグリッド「そういうこった、うん。そんで、こいつらがどうしてここに――」

アンブリッジ「エヘンッ!エヘンッ!」

ハニー「!」

ロン「うげっ」

ハーマイオニー「……おでましね」

ハグリッド「うん?なんだ今のは……テネブルス、おめぇさんか?今の変な気色悪い音を出したんわ。喉の病気かもしんねぇな、どれ」

アンブリッジ「エヘンッ!エヘンッ!!こちらですわこのでかぶつ!」

ハグリッド「お? やぁ、あんたでしたかい」

アンブリッジ「わたくしから今朝送ったメモは目を通しまして?人の文字が分かるのでしたら、今日わたくしがこの授業を査察することはわかっておいでのはずですわね?どうしてわたくしを待たずに、それに『森』に入っていったのかしら?」

ハグリッド「あぁ、そりゃぁあんたのようなのが書いたのでも俺は文字は分かる、うん、中々巧く書けとったし。それにこの場所はあんたならきっと分かると思ってよぉ、すまなんだ」

アンブリッジ「ふんっ、おだてても査察の目は緩めませんわ!」


ハーマイオニー「ハグリッド、随分と、あー……紳士的?」

ロン「いや、ちがうね。どうにもありゃ、ハグリッドのやつ完全にあのばばあを新種の魔法生物扱いしてら。もちの僕で」

90: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 17:28:20.82 ID:Fv7SpWLv0
アンブリッジ「それで?こんな何もないところで何を始めようというのかしら?まさか、隠れて秘密の術でも教えようというのではないでしょうね?」

ハグリッド「あー、あんたには見えんですかい。セストラルっちゅうのを知っとるか?」

アンブリッジ「セス、なんです?」

ハグリッド「セストラル、だ。こう、ほら、こーんな感じで羽があって、バッサバッサと飛ぶ、骸骨みてぇな!こう、こういう風に!」


ロン「ハグリッドのボディーランゲージは危ないよな、近くにいる人が巻き込まれて脳震盪起こしそうって意味で。ハニーの美貌はめまいがするくらい素晴らしいけど」

ハニー「えぇ、そうね。危険すぎて直視もためらうでしょうね」

ハーマイオニー「蛇好きだけにとどまってて頂戴」


アンブリッジ「『原始的な……身振りによる……言語に頼らなければ……ならない』っと」ガリガリガリガリガリ

ハグリッド「そ、そういうわけじゃねぇんだが。あー、それじゃ説明を続け……ん?俺ぁ何の話をしとったかい?」

アンブリッジ「『物忘れが激しく……直前のことも』っと」ガリガリガリガリ

ハグリッド「あー……そうだ!群れだ、群れの話をしとったんだ、うん。そうだ」


マルフォイ「…………」

ロン「マルフォイのやつ、ニヤニヤしやがって……」

ハーマイオニー「あの女カエル、黙って書いていればいいのに……!わざと皆に聞こえるように、あんなこと!」

ハニー「……ハグリッドの良さは私達が分かっていればいいわ。気にしない、っ、ハグリッド、それで、どうしてここに群れがいるのかしら?」



ハグリッド「おぉ、ハニー!いい質問だ!やっぱりお前さんは天使だなぁ!ヒンヒン!」

アンブリッジ「『一人の生徒に対して……とにかく贔屓する兆候……それも要注意人物』」ガリガリガリガリ


ハニー「……私が贔屓されるのは至極当然だわ」

ハーマイオニー「……否定しきれないものね、えぇ」

ロン「なにが要注意人物だよ、ご自分は危険物シールが貼られるような存在のくせに。マーリンの髭」

91: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 17:48:18.63 ID:Fv7SpWLv0
ハグリッド「あー、最初は雄一頭と雌五頭で初めてな。こいつらはハーレムを作る。そんで、その中でいっちばん最初に生まれたのがこのテネブルスだ。俺がいっちばんかわいがっとる奴でなぁ」

テネブルス「ブルルルルッ!」


ハニー「確かに、可愛いわね」

ロン「そうなんだろうねハニー!僕は見えないからね、とりあえず心から言えるよハニー!」

ハーマイオニー「ネビルは複雑そうな表情をしているあたり、察するわ」


アンブリッジ「ご存知かしら?魔法省がセストラルを『危険生物』に分類していることは?」

ハグリッド「こいつらが、危険?そりゃ間違っとる、あぁ、そりゃこいつらはなにかって縁起が悪いと思われとるけどな。それに、こんな見た目だから驚いた犬なんかが噛み付いちまって、黙って噛まれるわけにもいかねぇから自己防衛なんかはするが、間違っても自分から襲ったりなんてしねぇ!ホントだ!」

アンブリッジ「『暴力の行使を楽しむ傾向……』」ガリガリガリガリ

ハグリッド「ちげぇぞ、違うんだ、死っちゅうイメージがあるせいで悪く思われとるだけだ。ほとんどの奴に見えねぇもんで、思い込みで分かったつもりになっちょる、そうだろうが?魔法省でのこいつらの扱いは?」

アンブリッジ「『省に対する……見下したような態度』」ガリガリガリ

ハグリッド「……あっ、なるほど。人語が通じねぇのか、うん」


ロン「ある意味正しいけどね、ハグリッド……解決になっちゃいないぜ」


アンブリッジ「さーて、それでーは。授業をつづけてくださーいね♪」

ハグリッド「お?話せるように……うん?なんでそんなゆっくりだ?え?」

アンブリッジ「わかりませんかー?授業をー、つづけてー、くださーい。こう、こーう、ね?わたしはー、せいとのみなさんを見回りまーすから。よろしいかしらー♪」

マルフォイ「おいおい見ろよみんな、あのデカブツ、まるで保育師に諭される幼稚園児みたいじゃないか?」

スリザリン生徒「ゲラゲラゲラ!」


ハーマイオニー「あの、腹黒鬼ババぁ蛙……!」

ロン「えっ、うわっ、びっくりした。声出してないのに声が出たのかと……お、おぉっと?ハーマイオニー?授業中だし、ハーマイ鬼ー状態はやめとこうぜ?な?」

ハーマイオニー「何を企んでるか分かってる、あの人、混血を毛嫌いして……最初っから正当に評価するつもりなんてないんだわ!」

ハニー「……ハグリッドがまるでダメなように振舞って、その印象を強くさせてるわね」

ロン「……まぁそれ以上にそんな態度が気持ち悪くて木立に吐いてる正常な奴のが多いけどさ」

オェエエエエエエッ オェエエエエエエッ
 あれがおにゃのこなどとわたしはみとめオェェエエエエエエッ!

93: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 18:04:00.40 ID:Fv7SpWLv0
アンブリッジ「あなたはハグリッド先生をどう思う?授業は分かりやすいかしら?」

パンジー「いいえっ、っぷ、だって、あの人いつも唸ってるみたいな声で、何を言ってるか分からないんですもの」

ゲラゲラゲラゲラゲラ!

ハグリッド「あー、そんで、こいつらは頭がすごくえぇ。行き先を言うだけで連れてってくれるし、帰りに迷うこともねぇんだ、うん」

マルフォイ「そりゃいや、でもあんたにゃ無理だろうな。だって、っく、唸ってるみたいで何言ってるか分からないもんな!」

ゲラゲラゲラゲラゲラ!

アンブリッジ「ロングボトム?あなたはあれが見えるんですわね?」

ネビル「えっ、うわっ、こっちきた……うっぷ、はい、アンブうっぷ先生」

アンブリッジ「あらあら、怖くて怯えておいでですのね。大丈夫ですわ、あなたたちの安全は……わたくしが守りますわ♪」パチンッミ☆

ネビル「」

ディーン「ネビルーーーーーーーぅぅぅ!!!」

アンブリッジ「あーらあら、怖さのあまり気絶してしまいましたのね」

ハグリッド「そ、そんなはずぁねぇ!ネビルは俺達豚の中でも、漢で……!」

アンブリッジ「『生徒の印象や体調も省みることができないようだ……』っと!こんなものですわね!それではハグリッド、査察の結果は十日後にお渡ししますわ。それまで、どうぞ、ごゆーっくりと、お馬さんとお戯れなさいな♪」

ザクッザクッザクッザクッザクピョコッ

ロン「……行っちまった」

ハニー「……ハーマイオニー、よく耐えたわ。お互いね」

ハーマイオニー「フーッ、フーッ、あぁ、ハニー、今学期あなたに癇癪を抑えてってしつっこく言ってごめんなさい。何よ、あの、腐れ、嘘つきの、根性まがり……!」


ハグリッド「……可哀想になぁ。あんな見た目で、これまで何度も群れからはじかれっちまって、性根ごと腐っちまったんだろうな、うん。いい仲間がおるといいんだが。あいにく俺ぁカエルは育ててねぇんだ……」

ロン「そんで君は生き物のこととなるとまるで聖人だね、まったくさ。見習いたいね、豚として」

101: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 18:23:26.41 ID:Fv7SpWLv0
昼休み

ハーマイオニー「ほんっとうに、頭にくるわ!もはや魔法省の云々さえ関係ないのよ!ただ!混血が気に食わないだけであの女蛙はハグリッドにあんなまねを!」

ハニー「あんなに優しくて出来た豚に、ほんと、なんなのかしら」

ロン「あぁ、本当に見習いたいよ僕ぁ。君から頭を撫でられるなんてハグリッドの奴めマーリンの髭」

ハーマイオニー「それに今日の授業は全然悪くなかったわ!スクリュートなんかに比べれば――あー、ハニー、危険度という意味で、よ?セストラルは爆発したりしないでしょ?――とってもいい授業だったのに!」

ロン「まったくさ、僕に至っちゃ見えないしね。ハニーしか見えてなくて万々歳だよ、いつものことだけど」

ハーマイオニー「少し早かったかもしれないけど、あれ、NEWT試験では出されるようなとっても高度な魔法生物よ。それを飼いならすなんて、ハグリッドは本当、魔法生物を扱う腕はあるのよ。今日改めて分かったわ。改めてというか、初めて」

ハニー「私の豚だもの、当然だわ。ずーっと前からそうだったけれどね、私にとっては」

ハーマイオニー「あなたの先を見通す目は確かよね、えぇ……見る、と言えば、セストラルを直接見られないのは残念だわ」

ハニー「……そう思う?えぇ、確かにあの子たちはとっても、可愛いけれどね」

ハーマイオニー「あっ……ハニー、ごめんなさい。私、何も考えずになんてこ、きゃぁ!?」

ハニー「えぇ、そうね。可愛いものは他にもたっくさんあるもの。それを見られればあなたもあんなこと言わずに済むのじゃない?ねぇ、ハーマイオニー?こっちを見て?あなたがさっきそう言っていたでしょう?」

ハーマイオニー「あっ、ハニー、そんな、あなたをそんなに見てしまったら、世の中の物全部『アズカバン監獄』以下に、思えてしまうじゃない……」

ロン「つづk」

マルフォイ「やぁウィーズリー!君も誰かくたばるところを見れば少しはクァッフルを見られるんじゃないのかい!」

ロン「いけっ!!僕が背負って医務室に運ぶ予定だったネビル!!!!」

ネビル「うーん、蛙がトレバーを食べうわぁああああああん!?!?」

123: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 22:32:32.40 ID:Fv7SpWLv0
十二月終盤

ロン「年末だなんだって、監督生の仕事とやらが忙しいよまったく……ハニーのこと以外で苦労したくないよ僕ぁ」

ハーマイオニー「選ばれた以上は職務を全うしなさい、ハニーもそう言ってるでしょ」

ハニー「その通りよロン、私の豚ならばそれくらいのことはこなせるに決まってる、そうでしょ?」

ロン「当たり前だぜハニーもちのロンさ! でもさぁ、城の飾りつけとかまでやらされるのは、なんだか違うよなぁ」

ハーマイオニー「生徒の代表だもの、当然よ」

ロン「だってさぁ、僕も君もクリスマスはここにはいないんだぜ?なのに城の飾りつけだなんて、おかしいよまったく。マーリンの髭」

ハニー「……」

ハーマイオニー「それは、そうね。私は家族でスキーに行く事になっているし、そっちは隠れ穴でしょう?」

ロン「ビルやらチャーリーやらも今年は帰ってくるらしくってさ、何かのついでだろうけど。晩餐は楽しみだなぁ」

ハニー「……えぇ、あなたたちの飾りつけを楽しむのは城にいる人なのだから、つまり、私のためにしっかり励みなさい、ロン」

ロン「うん?」

ハーマイオニー「えっ?」

ハニー「……なぁに、その顔は。私のためにって思えばいやな作業も楽しくなるに決まっている、そうでしょ?」

ロン「……? あー、ハニー?君の言うことに間違いなんてほとんどないしたとえ違ってても豚が総力をあげて正解にするんだけどさ……どういうことだい?だって、君も僕んちに来るんだろ?」

ハニー「……えっ」

ロン「何週間も前にママから君を招待するように、ってちゃんと……あれ?僕、君に伝えてなかったっけ…………?」

ハーマイオニー「呆れた……まぁ、あなたもクリスマスに浮かれてたってことね、もう」

ハニー「ロン」

ロン「ヒンヒン!なんだいハニー!」

ハニー「クリスマスにむけて、トナカイたるあなたは第一に自分の鼻に何か飾るべきじゃないのかしら」

125: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 22:50:24.22 ID:Fv7SpWLv0
ロン「トナカイって何て鳴くのかな」

ハーマイオニー「あぁ、どちらにせよあなたはヒンヒンしか言わないんでしょう?」

ロン「もちのロンさ。どうだいハニー!ハーマイオニー監修で一年生次に君からもらった赤い鼻を光る仕様にしてみたよ!ヒンヒン!」

ハニー「出来るトナカイね、あとは空を飛べるよう努力しなさい」

ハーマイオニー「もはや人類にかける言葉じゃないわ……ロンの方は人類の言葉でもないけど」

ロン「ハニ豚類ってね」

ハニー「分類学までも書き換えるわね、えぇ。それで、ロン。あなたのお家でのパーティのこと、だけれど……」

ハーマイオニー「……おばさまはきっと、シリウスは呼ばないと思うわ、ハニー」

ハニー「……」

ロン「ママは何かとシリウスと衝突するからなぁ……あー、でも大丈夫だよハニー。休暇中きっと、騎士団の本部に行くチャンスはあるだろうさ!もちのロンで!」

ハニー「……折角城の外で過ごせるのにクリスマスに会えないと、意味がないわ。今年は……そうね、毎年それどころではないしシリウ、スナッフルは宿無しだったから渡せなかったけれど、用意したのに」

ハーマイオニー「あなたからの贈り物ならどんな渡され方だろうと飛び上がって喜ぶと思うわよ、あの人は

ロン「尻尾も振ってね。うーん、ママにもう一回手紙を出しとくよ、うん。さーてと、それじゃ学期最後の見回りにでも行こうかな……あぁハニー!君を一人にするなんて豚失格だごめんよ!ヒンヒン!」

ハニー「何度も言わせない、与えられた仕事はこなしなさい。私の豚ならば。私は先に『必要の部屋』に行くわ。午後は今年最後のDAだもの。ハーマイオニーをしっかり支えるのよ、私の豚?」

ロン「ヒンヒン!」

ハーマイオニー「私が支えられることなんて皆無ですけどね」

ハニー「どうかしら。寒いもの、手を握ってもらったら?」

ハーマイオニー「あなたじゃあるまいし結構よ、もう」

130: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 23:06:54.34 ID:Fv7SpWLv0
『必要の部屋』

ハニー「……誰の仕業かしら、って、ドビーしかいないわね」

『楽しいハニー・クリスマスを!ヒンヒン!!』

ハニー「……私を讃えるのは当然の行動だけれど、さすがに天井から無数に金の星の飾りを吊るしてそれ全部にチカチカと光らせるのは、やりすぎだわ……『ディフィンド』、『アクシオ』」

ブチブチブチッ サーーーッ

ハニー「壁の飾りは残しておきましょうか……靴下を人数分吊るしているのはステキね。あら、この手編みの靴下、ドビーったら去年から随分と上達したじゃない……ハーマイオニーに教えて、ううん、やめときましょう」

キィィッ

ハニー「? あら……ハァイ、早いのね、ルーナ」

ルーナ「こんばんは。うん、とくにやることもないから。綺麗な飾りだね、あんたがやったの?」

ハニー「違うわ、流石の私でもここまで自己主張はしないわよ」

ルーナ「? あんた遠くから見てもしすぎなくらい主張してみえるけど」

ハニー「あなたに言われたくないったら」

ルーナ「見た目のことじゃなくって――あっ、ヤドリギだ。あんたの真上」

ハニー「? あら、ほんと……あー……離れない?」

ルーナ「その方がいいよ。ヤドリギにはナーグルがいっぱいなことが多いから」

ハニー「そう。ナーグルが何かは、聞かないわ」

133: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 23:19:27.72 ID:Fv7SpWLv0
ザワザワ
 ガヤガヤ

ハニー「それじゃ、私の代役のシーカーは、ジニー?」

アンジェリーナ「あぁ、これが中々上手くってさ。もちろん、君と比べたら雲泥どころの騒ぎじゃないけど……他のボンクラどもに比べれば段違いだったよ」

ケイティ「ほんと」

アリシア「ほんとほんと」

ハニー「そう……あとで褒めてあげないといけないわね。あら、噂をすれば」

ジニー「こんばんはおねぇさま!ねぇ聞いて!私、シーカーになったの!」

マイケル「えっ、僕まだ聞いてない!?」

ジニー「そうだったっけ、そうなのよ、はい聞いたわね。おねぇさまの代わり、立派に務めてみせるわ!」

ハニー「えぇ、大役でしょうけれどしっかりやりなさい。果たせたなら、そうね……ご褒美をしなくっちゃ」

ジニー「あぁ、光栄、光栄だわおねぇさま……ヒンヒン!」

マイケル「……」

ハニー「マイケル、ごめんなさね。お付き合いしてるあなたは複雑でしょうけれ……ど……あなた、ビクトール・クラムは好き?」

マイケル「え?あぁ、去年ちょっと意気投合したよ、うん、ナニかは言わないけどね」

ハニー「……あのむっつり、しっかり根をはっていったのね」

ガチャッ

ハーマイオニー「私達が最後みたいね。おまたせ、ハニー」

ロン「まったく、ネビル。なんでだってあんな時間まで地下牢のあたりをウロウロしてたってぇのさ。フィルチに見つかったらなんにもしてなくても難癖つけられるのは分かるだろ?もちのロンで」

ネビル「いや君が僕のことぶん投げてフォイに当てた罰則を今の時間までくらってたんだよ僕!わぁい!とばっちり!なれっこさ!」

135: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 23:31:40.49 ID:Fv7SpWLv0
ハニー「今日は最後の訓練だし、新しいことを始めても休暇の間に忘れてしまうと思うわ。だから、これまでの復習をして終わりにしようと思うの」

ガヤガヤガヤガヤ

ザガリアス「なんだ、新しいことは何もしないのかい?だったら僕――」

フレッド「そうだなザガリー、それを知ってたらお前さんはもっとマシなことに精を出してたのになぁ」

ジョージ「例えばザガリー、君のベッドの下に忍ばせてるこの秘蔵本に、とかなぁ。ナニを出すのやら」

ザガリアス「!? な、なんで知ってるんだよっていうか持ってるんだよ!返せよこの!こ……なっ」

フレッド「おーやおや?僕らの勘違いだ、すまんねザガリー。それはただの古い教科書だったみたいだぜ」

ジョージ「そんで?君は僕らが何の本を盗んだと思ったんだい?うん?口を開くか?それとも閉じるか?」

ザガリアス「……ナンデモアリマセン」

ハニー「はい、ありがとう。それじゃ、『妨害の呪い』、それに『失神術』をおさらいするわ。モデルになりたい人――」

ロン「ヒン!」

ネビル「ヒンヒン!」

ディーン「ヒンヒンヒン!」

ハニー「は、キリがないからやめておきましょう。二人一組になって頂戴、また私が見回るから」

ザワザワザワガヤガヤ

マイケル「なぁザガリー、どんな本だったんだい?え?」

ジニー「そうよそうよ、このお城でそんな本ってことは、百合の園なのどうなの?」

ザガリアス「……自分で言うのもなんだけど、ここで一番まともなの僕なんじゃないかと思うんだ」

137: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/28(日) 23:44:36.95 ID:Fv7SpWLv0
インペディメンタ!
 妨害せよ! インペディメンタ!

ステューピファイ! 
 ステューピフィー! ステューピファァイ!

ハニー「……みんなかなり上達してるわね。特に……」


ディーン「う、うーん。またやられっちまったのか……ネビル、君、ほんと術をかけるのが上手くなってるよなぁ」

ネビル「そ、そうかな。あはは。えーっとね、コツは相手をフォイの奴だと思うことだよ、うん」

ディーン「イメトレってやつかぁ」


ハニー「……最初は杖を落とすこともできなかったネビルが、あんなに。ふふっ、私の豚だから当然だけれどね……こっちは」


チョウ「あら、ハニー。見て、私マリエッタに『妨害の呪い』かけるの、上手くいったわ!」

ハニー「……なんだか、形容し難い表情で飛び掛っているように見えるけど」

チョウ「そうね、なんでだろ……あっ、誰かの呪文でヤドリギが私の頭に……もう、マリエッタったら。ふふっ」

ハニー「えっ」

チョウ「『ウィンガーディアム・レヴィオーサ』……あそこであっていたかしら、ヤドリギが飾られていたのって」

ハニー「え?あー、そうね。そうだったように思うわ。部屋の、隅……」

チョウ「……今日このあと、大丈夫?」

ハニー「!?」



ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ロン「……つづけt」

ハーマイオニー「ステューピファイ」

ネビル「ハーマイオニー!ハーマイオニーーーー!!!杖!!杖握って!!!魔女だから杖を握って失神させようよ!!!!それもう素手だよそれに失神じゃなくってもはや撲殺だよぉおおおおお!!ロ、ローーーーーーーーーン!!」

146: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/29(月) 00:04:43.63 ID:QwmDwWQl0
一時間後

ハニー「みんな、えーっと、かなり上達したわ」


ガヤガヤガヤガヤ

ロン「あぁ、ハーマイオニーなんて魔法必要じゃなくなっちまったもんな。君、マダム・マクシームと気があうんじゃないか?いててっ」

ハーマイオニー「わ、悪かったわよ、もう。事故よ事故、そう、魔法力の暴走とか、そういうので」

ネビル「……傍から見たら大惨事だったんだけどね」

ディーン「あれが一番豚の耐久力……ゴクリ」


ハニー「この分なら休暇の後に、何か大技に入れるかもしれない。石化とか、それに……『守護霊』とか、ね」

ザワザワザワザワ

ハニー「パパに会うことになるでしょうけれど、あまり驚かないでくれると助かるわ」

……?

ハニー「気にしないで。それじゃ、みんな、いいクリスマスを」

ガヤガヤガヤガヤ

ハニー「……二人とも、あー、私、クッションを片付けておくから。先に戻っていいわ」

ロン「そうかい?それじゃお言葉に甘えようかな」

ハニー「あら、随分と……あなたってほんと」

ロン「なーんにも聞かないよ、もう聞いたしね。ハーマイオニーも納得済みさ、うん。大半は」

ハーマイオニー「……本当なら今すぐ魔法の義眼をはめてでも見張りたいところだけど、ロンに諭されたからやめるわ。でも、あの、ハニー……談話室で、まってるわね。それじゃ」

ハニー「……」

バタンッ

ハニー「……(私自身、どうしたいのか分からないわ)」

ハニー「(憧れだった、周りの人たちと自然体で接する素敵な女の人)」

ハニー「(チョウに誘われて、ここに残って――自分が、何を期待しているのか)」

ハニー「(彼女に感じているのは、ハーマイオニーへの想いとか、ロンへの気持ちとか、そういうのとも違うのに。何をしようと、してるのか)」

ハニー「(でもとにかく――今は)」

ハニー「……チョウ、おまたせ……」

チョウ「っ、ぐすっ、ひっく、ぐすっ……」

ハニー「……えっ?」

152: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/29(月) 00:19:27.02 ID:QwmDwWQl0
ハニー「チョウ……なっ、どうして、泣いて……?」

チョウ「っ!ごめん、ごめんなさい、ハニー。せっかく残ってくれたのに……でも、あぁ……あのね」

チョウ「今日、私があなたから習ったようなことを……彼も知っていたら、あんなことにはならなかったのかな、って、思ったら……」

ハニー「……(あぁ――期待して、何を考えてるのかしら、私――チョウは、ただ)」

ハニー「……セドリックは、みんな知ってたわ。それに、私なんかよりずっと、上手だったもの」

ハニー「(ただ、セドリックの話がしたかった――それだけなのね)」

ハニー「ただ、相手がヴォルデモートだった。彼になかったのは運だけ、よ。それに……」

チョウ「っ……でもあなたは、ハニー……あなたはずっと赤ん坊の時に『あの人』に打ち勝ったわ……?」

ハニー「……えぇ、それは、どうしてなのか誰にも分からないの。この私でさえ、一歳の頃のことなんて流石にね」

ハニー「(そう、私は期待なんてしてなかった。だから、ただ――一言、メリー・クリスマスって、言ってもらえれば、それで)」

チョウ「っ、ごめんなさい、こんな話をして……そう、よね。あなたは間近で彼と戦っていたのに……彼のことは忘れてしまいたい、のよね」

ハニー「……そんなわけ、ないわ」

チョウ「……本当?」

ハニー「……忘れられないじゃない、そうしたくっても。だって彼は……ホグワーツのチャンピオン、そうでしょ?」

チョウ「……えぇ、いつまでだって……ねぇ、ハニー。あなたはとっても、いい先生だわ……本当、それが言いたかったの、私」

ハニー「……そう。じゃぁ、メリー――」

チョウ「本当に、ステキよ……ねぇ、ハニー。あなたくらい、ステキな子なら」

ハニー「――クリスマ、きゃぁ!?」

チョウ「ヤドリギの枝の意味くらいは、知ってるわよね……?」

ハニー「ちょ……チョウ?」


チョウ「ハニー。あなたが、好きよ――――っ」

ハニー「っ――――」





157: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/29(月) 00:29:17.38 ID:QwmDwWQl0
談話室

ロン「だからさぁ、別にハニーは君のことがその、なんだ、表現がみつからないからこう言うけど、遊びだったとかそういうことじゃないんだろうって何度も言ってるじゃないか」

ハーマイオニー「じゃぁなんだって言うのよ、それは、ハニーの決めたことだもの。私が意見することじゃないけど、でも、私は!私はハニーが魔法界に入ってから一番最初に――あっ」

バタンッ

ハニー「――――」

ハーマイオニー「あ……ハニー、おかえりなさ――」

ツカッツカッツカッツカッ

ガバッ!

ロン「!?」

ハーマイオニー「きゃぁ!?ちょっとハ、んっ!?んむっ……ぷはっ、っちょ、んんっ~!?」

ハニー「……っ、っふぅ……そう、よね。こういうことよね」

ロン「あ、あー、えーっと?あまりの急展開に僕ぁどうぞる隙もなかったくらいおったまげっちまってたんだけど、あー、つ、つづけて?」

ハーマイオニー「は、ニー?なに、が、んっ、あの、っ、はな、あっ、ん……っ」

ハニー「(好きよ、って気持ちで。たまらなくなって求める時の気持ちは)」

ハニー「(絶対に、間違っても……さっきのチョウのようにはならない、はずだわ)」

ハニー「(でも、チョウは「好き」って口にして……彼女が嘘なんて、つくわけがない)」

ハニー「(ねぇ、チョウ……あなたはどういうつもりだったの?どういうつもりで、私と――)」

ハニー「(……とりあえず)」

ハニー「んっ……っは……ハーマイオニー?分かるまで、大人しくしてね?」

ハーマイオニー「あっ……えぇ……お願い。つづ、けて」

ロン「どうぞ!!!!!!!!!!!」

163: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/29(月) 00:53:48.07 ID:QwmDwWQl0
女子寮

ハーマイオニー「スーッ、スーーーッ」

ハニー「……結局、こんなに明け方近くになってしまったけれど……チョウがどういうつもりなのか、は……分からなかったわ」

ハニー「……ハーマイオニーのことはもっとよく分かったけれど」

ハニー「……この次のチョウは、ひょっとしたらもっと楽しい顔をしてくれるかもしれないわ。そうしたら、分かるかもしれない。どうしてあんなことを言ったのか……あんなことをした、のか」

ハニー「……そういえば、気になることが聞こえたわね」

ハニー「……ねぇ、ハーマイオニー。わたしの、ハーマイオニー?あなたは遊びなんかじゃないわ……わたしはいつだって本気なの、知ってるでしょ?」

ハーマイオニー「んっ……んん……スーッ、スーッ」

ハニー「……愛情って難しいのね。順番なんてつけたくないけれど、どうしても大事にしたいものも、人もいるもの。まぁ、私にとっての一番はいつだって私自身……一番」

ハニー「……一番星、は」

ハニー「……」

ジャラッ

ハニー「……ちゃんと、渡したいわ。私からも、お母様に頼んでみましょう」

ハニー「さっ、寝なくっちゃ……明日は……早いんだもの」

ハニー「そう、休暇が始まるんだわ――」

ハニー「列車に乗って、まずはキングズ・クロス駅に――」

ハニー「そう、列車――あの、長い」

ハニー「蛇、みたいに――――」


165: ◆GPcj7MxBSM 2013/04/29(月) 01:05:19.27 ID:QwmDwWQl0







シューーーッ、シューーーーーーーッ!

ハニー『あら……いつからわたし……こんなに背が低くなったのかしら。それに、こんなに、しなやかに』

ハニー『……当然よね、そうよ……わたしは、蛇なんだもの……さぁ、やることがあるわ。早く行かなくっちゃ』

シュルシュルシュル シューーーッ、シューーーーッ

ハニー『この狭い石畳の廊下の向こう……わたしがほしいもの……ずっと、求めていたもの』

ズルズルズルッ、ズルッ

ハニー『もうすぐ……もうすぐ、だわ……あら』

「……Zzz」

ハニー『誰か、いるわ……邪魔するなら……いいえ、寝ているのね。それなら無視しましょう。今はもっと大事なものがある、大事な、やるべきことが……あの扉の、向こうに』

「……!――っ!――――!」

ハニー『あぁ、嫌だわ……起きてしまったのね……じゃぁ』

ハニー『かみ殺してしまう、しか……だって今のわたしは、蛇なんだもの……』

「――!?――っ!―!」

ハニー『暴れても、無駄……あぁ、この人は誰だったかしら。知っている気がするわ……蛇だからほとんど見えないけれど……これだけ近づけば』

ハニー『……なぜかしら……額が、とっても……』


「――モ、リー……すまない」








ハニー「あああああああああああああああああああぁあああああああっ!!!」

ハーマイオニー「ハニー!!ハニー!!!しっかりして!!ハニー!! ラベンダー、急いでマクゴナガル先生を呼んできて!ハニー!しっかり、あぁ!なんてこと!」

ハニー「あぁああああっ、あっ、う、っ、ハーマイ、オニー?」

ハーマイオニー「!ハニー、気がついたの!?あなた、突然額を押さえて、あぁ、ハニー!大丈夫、すぐに先生がいらっしゃるわ!だから……!」

ハニー「ダメ、違うわ。すぐに、ロンに!ロン、お父様が、大変あぁ、わたし、わたしのせいだわ、ロン、ロン……!!」

ガシャーーーーーーン!!

ロン「呼ばれて飛び出て窓から登場、箒を手にしてついに飛べる豚になった、僕ことロナルド・ビリウス・ウィーズリーさ!!!」

ハーマイオニー「せめて談話室で待ってなさいなにやってるのよあなた!?」

ハニー「ロン!ロン……!」

ロン「あぁ、なんだいハニー!僕の……ハニー?」

ハニー「あぁ、わたしが。ロン、ロン!巨大な蛇が、わたし、わたしがみて、、襲われて……!酷い出血で、あぁ……!」

ハニー「お父様が……アーサーおじさまが、襲われてしまった、のよ……!ロン、ごめんなさい、ごめん……」

マクゴナガル「にゃにごとですか、こんな夜更けに……ポッター!?そ、それにウィーz」

ロン「先生、罰則なら向こう三年間だって受けます。聞いてください」

マクゴナガル「……なんです、随分と紳士な顔だちにおなりになって」

ロン「ハニーをダンブルドアのところに連れて行きます。僕の父が――どこかで襲われたそうなので」

204: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 10:46:34.00 ID:QnLAatI+0
校長室前

ガーゴイル「おいおい、先生様がジャリ二匹つれてこんな時間に何のようだ?パジャマパーティの予定は聞いていないがね」

マクゴナガル「お黙りなさい、緊急です!『フィフィフィズビー』」

ガーゴイル「緊急、そうかい。そんじゃ俺に拒否権はねぇな」

ピョンッ

ロン「ハニー、平気かいハニー。あぁ、君にとっては愚問に違いないけどね、今日は寒いから。だから震えるのも仕方ないってもんだよ、もちのロンで。だからしっかり僕の背中にひっついておくといいよ、寒いからね」

ハニー「……えぇ、そうね。とっても、心まで寒いもの……あぁ、ロン。わたし……」

ロン「とりあえず、話は校長先生のとこで。そうですよね、マクゴナガル先生」

マクゴナガル「……平時の授業でもそのくらい聞き分けと察しがよければ助かるのですが。さぁ、階段にお乗りなさい」

ロン「もちのロンです先生。自動で動くなんてやるよなぁ……ハッ!さてはこの階段め、豚だなっ!」

マクゴナガル「仕掛けですウィーズリー」

ハニー「……校長室の、扉」

ガヤガヤガヤガヤ

ロン「?なんだろ、こんな時間なのに話し声?……ガーゴイルはあぁ言ってたけどパジャマパーティでもしてるのかな、ダンブルドア」

マクゴナガル「いいえ、おそらく……まぁ、よろしい」

コンコンコンッ

ガヤガヤ……シーン

ダンブルドア「……入っておるよ!」

マクゴナガル「当たり前ですここはあなたの部屋でしょう。失礼」

ガチャッ

ダンブルドア「おぉ、あなたじゃったかマクゴナガル先生。それに――あぁ」

ハニー「……」

ダンブルドア「……こんばんは。どうしたのかね、ミネルバ。その生徒二人が何か重大な違反でも?」

マクゴナガル「そうではありません。ポッターが……悪夢を、見たと――」

ハニー「っ、夢じゃないわ!あれは!」

マクゴナガル「ポッター!教授の言葉を遮るのは――いいでしょう、あなたから校長先生にお話なさい」

ハニー「……えぇ。その……」

ダンブルドア「……」

ハニー「……」

ロン「……おいこの豚!!ハニーと話す時にどこみてんだ!!マーリンの髭!」

マクゴナガル「ウィーズリー!」


206: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 11:02:54.24 ID:QnLAatI+0
ハニー「……わたしも、最初はただのくだらない夢をみていたの」

ダンブルドア「……」

ハニー「でも、それは違ったわ。ただの夢とは全然違う感覚で、それで、わたしは……わたしは、気づいたらどこか狭い、暗い通路にいて……」

ダンブルドア「……」

ロン「……だからなんで組んだ自分の指みてんだよこんにゃろう蹄にするぞこんにゃろう」

マクゴナガル「ウィーズリー、あなたの手こそそうされたくなければつつしみなさい」

ハニー「そこで、わたし……見たのよ……アーサーお父様が、ロンの、お父様が巨大な蛇に……襲われるのを」

ダンブルドア「……」

マクゴナガル「……」

ロン「……巨大なママとかじゃなかった?」

ハニー「それこそ夢でしょ……でも、違う、信じて!これは夢じゃないの!わたしには、っ、私には分かる!あれは、現実に起こったことだ、って!何でかなんて、聞かないで!私を信じられないの!?あなたは――」

ダンブルドア「どんな風に見たのじゃね」

ハニー「――っ、あー……どう、って。分からないわ。私の頭の中で、としか……」

ダンブルドア「私の言ったことが分からなかったようだね。よいか?君はその光景を、どこから見ておったのじゃ?うん?」

ハニー「何よ、その言い方――あっ」

ダンブルドア「どうじゃね?君はその惨劇を、蛇、またはアーサーの横に立って見ておったのか?それとも、神の視点からすべてを把握しておったのか。あるいは――」

ハニー「……蛇、だったわ」

ダンブルドア「……」

ハニー「私……わたしが蛇そのもので……蛇の目で、全部」

ダンブルドア「……」

マクゴナガル「……」

ロン「あぁハニー、それじゃパパは本望だったに違いn」

マクゴナガル「ウィーズリー、それ以上言うと残してきたグレンジャーを呼んできますよ」

207: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 11:21:36.08 ID:QnLAatI+0
ダンブルドア「アーサーは、酷い怪我なのだね?」

ハニー「あぁ、さっきからそう言っているじゃない。どうして分からないの、今もお父様は――」

ダンブルドア「よろしい。エバラード!ディリス!」

エバラード『あぁ、ダンブルドア』

ディリス『聞いていたよ、アルバス』

ロン「? どっから……あっ、歴代校長の肖像画!?おったまげー、いつも眠りこくってる訳じゃなかったんだ」

ダンブルドア「すぐさま行動に移してくれ。警報を。そしてアーサーが然るべき者によって発見されるよう――」

エバラード『了解した。私はあちらに――』

サッ

ディリス『では、私は聖マンゴを――』

サッ

ハニー「……?どういうこと……絵にかかれた人が隣の絵に入ったりするのは見たことがあるけれど……二人は、消えてしまったわ」

ダンブルドア「あの二人はホグワーツ歴代校長の中でも最も有名な二人での。わし除いて。高名故、他の重要魔法施設にも多くの肖像画が残されておる。自分の肖像画であればその間を自由に行き来できるのじゃ」

マクゴナガル「あのお二人が外で起こっていることに、警告と、それに報せを持ってきてくれるでしょう。さぁ、ポッター、ウィーズリー。おかけなさい」

ハニー「でも、でも、お父様がどこで襲われたかなんて――!」

ダンブルドア「あぁ、数分かかるじゃろう。じゃが、教授の言うことは聞くべきではないかね?」

ハニー「っ……そうして、あげるわ。ロン」

ロン「うん、ハニー。さっ、僕の背中の用意はバッチリだよ」

208: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 11:38:56.16 ID:QnLAatI+0
ダンブルドア「フォークス、見張りをしておってくれるかの」

フォークス「……フィ~♪」

パッ

ハニー「……赤豚まで、私になんの断りもなく……まったく」

ロン「あぁ、定例会議もんだよな、うん。ダンブルドアもだけど……今度はなんだか変な道具を取り出してるし全く、ハニーを愛でる精神はどこにいったんだか」

ハニー「……壁に並んだ銀細工の一つね……何を始めるのかしら」

ダンブルドア「……」

チリンチリン カタカタカタカタ

ポッポッポッ

ハニー「……緑色の煙……蛇……?あれが、何か夢について……?」

ロン「あっ、二つに裂けた。ハニーに可愛がられる前にそんな風になるなんて蛇豚の風上にもおけないな」

ダンブルドア「なるほど、なるほど……本質的に分離しておる、そういうことじゃな?」

マクゴナガル「……ダンブルドア?」

ダンブルドア「おぉ、すまんのう。あー、なーに……ちょっとした時間つぶしじゃ。ほったらかしてすまんかったの、諸君。レモンキャンデーでもいるかね?」

ハニー「……もらってあげ――」

ダンブルドア「エバラード!戻ったのかね!」

ハニー「……なによ」

エバラード『あぁ、ダンブルドア!誰かが駆けつけてくれるまで叫び続けた!あの陽気なアメリカン崩れめ、ピザ片手に肩をすくめてばかりで一向に――だが、半信半疑で確かめに行ってくれた。地下には肖像画が一つもないので追いかけられませんでしたがね、しばらくしたら運ばれてきましたよ、彼が――血だらけだった。あれはいけない』

ダンブルドア「ご苦労じゃった。さすれば、今にディリスが――」

ディリス『えぇ、ダンブルドア。みんなが彼を病院に連れ込みました。酷い状態のようですが、あそこの癒者にかかれば――』

ダンブルドア「それは朗報じゃ。二人とも、間違ってもこの子の名前は出しておらんの?」

エバラード『まさか。その子が関わってるとなれば聞く耳を持たない連中ばかりでしょう』

ハニー「……」

ディリス『当然、その子のおかげではありますけどね。さぁ、ダンブルドア。次はどうします?』

ダンブルドア「そうじゃの、ねぼすけを起こすこととしよう。フィニアス、どうかご起床願えるかのう?」

フィニアス『……あと五十年』

ダンブルドア「引き裂いてもいいんじゃぞ」

フィニアス『やってみろ、高貴なる知恵と由緒ある肖像を損失する気があるのならば』

ハニー「……なんだか、見覚えある人、だわ」

209: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 12:02:23.80 ID:QnLAatI+0
ダンブルドア「フィニアス、あなたの別の肖像画を再び訪ねてほしいのじゃが」

フィニアス『ふぁ~、あ。私の別な肖像?ふむ、どれのことだね。何せ私は由緒ある高貴な』

ダンブルドア「人望なさすぎでほとんどないじゃろ他に肖像画」

フィニアス『……で、グリモールド・プレイスに何の伝言だね。あの愚か者が私の肖像画を処分してなければ、伝えてやろうか』

ダンブルドア「シリウスはあなたの肖像画は処分するべきではない、と理解しておるよ」

ハニー「! 思い出したわ……フィニアス・ナイジェラス!シリウスの曽々祖父!あぁ、っ、はじめ――」

ダンブルドア「それは今重要ではない。それで、伝言なのじゃが」

ハニー「……」

ロン「おいいい加減にしろよこの豚このやろ、ハニーになんて口を」

マクゴナガル「ウィーズリー、おさえなさい。ポッター、今は緊急なのです、分かりますね?」

ハニー「……えぇ。でも……校長?」

ダンブルドア「アーサー・ウィーズリーの負傷、と。それからすぐにウィーズリー兄弟と、この子がそちらに向かうと伝えておくれ」

ハニー「……校長先生」

フィニアス『……ふんっ、随分とその子に入れ込むな、ダンブルドア』

ダンブルドア「何を言っておるのじゃ。この子の報せは正しかった、じゃから正等に扱うまでじゃ」

ハニー「……このっ、っ、」

ダンブルドア「シリウスにとってはよい報せじゃろう。新学期まで、この子を――」


ハニー「わたしを見て!!!!」

ダンブルドア「!」

ハニー「わたしを、見てよ!!!わたしは、『その子』じゃない!!『この子』じゃない!!!」

ダンブルドア「……」

ハニー「わたし、わたしは……あなたの」

ダンブルドア「ハニー・ポッター。そうじゃな、生徒に対してとはいえ無礼な物言いじゃった。すまんかったの」

ハニー「っ、この……!」

ダンブルドア「さぁ、この『移動キー』に触れるのじゃ。あちらでシリウスが待っておることじゃろう。ミスター・ウィーズリー、兄妹もすぐにむかわせる。ハニー・ポッターとともにあちらに待機じゃ、よいな?」

ロン「……そりゃ、僕がハニーと一緒なのはもちのロンだけど」

ダンブルドア「よい返事じゃ」

ハニー「待って、待ちなさいこの」

ダンブルドア「それでは、わしは忙しいのでな。これを――」

ハニー「いい加減に……いい加減にしなさいよ!!ダンブルドア……ダンブルドア!!!!」

ダンブルドア「――よいクリスマスを」

ハニー「っっっ、呪ってやる!!呪ってや……あっ」


グンッ

グルングルングルングルングルンッ







211: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 12:24:13.61 ID:QnLAatI+0
グリモールドプレイス 十二番地

ロン「痛い!ありがとう!あぁハニー!着地まで君は華麗だねヒンヒン!」

ハニー「……」

ロン「……ハニー、気にすることないよ。なんだいあいつ、豚のくせにまったく。あんな態度じゃいくら温厚さがうなぎのぼりな君でも暴言の一つだってはきたくなるってもんだよ。もちの僕で」

ハニー「……えぇ、そうね。腹が、たったんだもの……でも、さっきのは」

クリーチャー「……戻ってきた、血を裏切るガキどもが」

ロン「おっと、暗いもんでよく分からなかったけど……この声クリーチャーだな」

クリーチャー「戻ってきた。赤毛のクズども。父親が死にかけているというのは本当なのか?しかしフィニアス様が――」

シリウス「出て行け、クリーチャー!!!」

ハニー「っ、シリウス……!」

クリーチャー「――仰せのままに」

ロン「あのやろ、なんて目で僕のハニーを睨みやがる……やぁ、シリウス。昼間の格好のままでなんて、あー、粋だね」

シリウス「あー、いや、少し酒をひっかけていたらソファで眠ってしまってね――大丈夫だハニー、腹は出していない。君こそ元気にしていたか?うん?」

ハニー「……っ」

シリウス「……今はそんなはずはないな。アーサーが大怪我をしたと聞いた。それを、君が見たとも。辛かったな」

ハニー「っ、辛く、なんて……驚いて、少し、だけ、焦って……それに、あの腹黒、ダンブルドアに……怒っただけ。だから……頭なんて、撫でなくったって」

シリウス「強がりはいい。ロン、君も平気か?」

ロン「僕はハニーの一番の豚だぜ?ハニーが困ってるのに僕がうろたえてどうすんのさ。頭を撫でるのは結構、ハニーに両手を回してやってよ、マー髭だけど」

214: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 12:36:06.70 ID:QnLAatI+0
パッ

ドサドサドサッ!

ハニー「きゃぁ!?」

シリウス「おっと」

ロン「マーリンの髭!?って、あぁ。なんだ」

フレッド「おい、おい、おい、一体ぜんたい何がなんだってんだ!?親父が……あーっと」

ジョージ「いきなり呼び出されてわっけが分かんねぇ……おや、僕たちゃお邪魔のようで」

ジニー「パパが大怪我したっていうのは……ロン、自分の背中の上でおねぇさまが誰かと抱き合うのを耐えるなんて、あなたってほんと」

ハニー「~っ!?ちが、違うわよ、あなたたちがいきなり、降ってきたから!あー、ロンが驚いたせいで、その、~~っ!シリウス!!お酒臭いわよ、もう!!!」

シリウス「はっはっは、そういうことにしてあげよう。あー、すまないね。君に冬も会えないのかと悲観にくれていたんだ。思わぬクリスマス・プレゼントとなってありがたい話だ、アーサーには悪いが」

ハニー「っ、そんなの、他に用意し、っ、いいから、離して!もう!」

フレッド「おや、おや、おや、いいのかい女王様。僕らは構わないぜ、いないものとして思ってもらっても」

ジョージ「事情はこっちの君の豚の方から聞いておくからさ、ごゆっくりしていてもらって結構なんだぜ?」

ジニー「ヒンヒン」

ロン「ヒンヒン」

ジニー「! ぱ、パパが大きな蛇に襲われたのをおねぇさまが予見したの!?おねぇさまステキ!あっ、そっちはごゆっくり」

ハニー「ちゃんと、私に話させなさい!ちょ、っと、っっ、ニヤニヤしないの!!!」

218: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 12:52:29.78 ID:QnLAatI+0
フレッド「大怪我、大出血、意識不明の大重症ってなぁ……」

ジョージ「あー、でもほら、病院に運ばれたんだろ?なぁ?」

ジニー「すぐに行きましょ!あっ、おねぇさまはここで、どうぞ。シリウス、マントか何か貸してくれる?パジャマのままだと寒いわ――」

シリウス「待ちなさい、まだ動いてはいけない。聖マンゴにすっ飛んでいくわけにはいけないんだ」

フレッド「そんじゃ歩いていこうか。それなら止められる道理はないだろ」

ジョージ「いいか、襲われたっていうのは僕らの親父なんだ。行かないと」

シリウス「アーサーが襲われたことをどうやって君たちが知りえたと説明するつもりだ?え?」

フレッジョ「「家族の勘さ」」

シリウス「……あー、私には縁がないから完全に否定はできないが、ダメだ。ダンブルドアは秘匿したが、ハニーからの情報だと知られる可能性だってある。そういうハニーの情報を魔法省がどう解釈するか、分かるかい?」

ジニー「そんなの、飛躍しすぎだわ。だって、おねぇさま以外からだって、誰かに教えてもらったって言えば……」

シリウス「誰か?いいか、君たちのお父さんは騎士団の任務中に襲われたんだ――君たちが迂闊な行動をとれば、騎士団そのものの崩壊を招く」

フレッド「騎士団なんてクソ爆弾くらえだ!」

ジョージ「それに豚団だろ今は!まったく!」

シリウス「君たちのお父さんはその騎士、あぁ、豚団のために命をかけたんだ!その尊さが分かるか、覚悟が分かるか!自分の子供達がそれを台無しにして喜ぶと思うのか?え?あぁ、だから君たちは団に入れないんだ。全く分かっていない、命をかけるというのがどういうことか――」

フレッド「あぁ、あぁ、ご大層に講釈たれるのは簡単だろうよ!だってここに閉じこもってる分にはご自分の首はかかってないもんな!豚たちの嫉妬以外!」

ジョージ「ご大層な台詞を吐くならまずは腕で閉じ込めてる我らが女王様をだしてやってからにしたらどうかな!その画じゃ締まるもんも締まらないだろ!」

シリウス「いや寒いと言うから」

ロン「言ったのジニーだけどね髭」

ハニー「いいっ、から、真面目に話しをしてあげて、シリ、もう、本当にお酒のにおい、ひどいわ!あとでお洗濯しっかりするんだから」

シリウス「何を言う、私はいつだって大真面目だ。におい、そうだな。君のにおいなら大歓迎だ、私は鼻がいい」

ロン「痛い!ありがとうございます!ヒンヒン!」

222: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 13:12:15.20 ID:QnLAatI+0
シリウス「とにかく、辛いのは分かる。今はモリーからの連絡を待つんだ」

フレッド「……」

ジョージ「……」

ジニー「……」

シリウス「あと、私がここに閉じこもって、という件だが……そうだな、アーサーは私なんかよりとてもとても立派だ。彼を誇るならば、我慢してほしい。いいな?」

フレッド「……そんな真面目な顔しないでくれよ、蕁麻疹がでるから」

ジョージ「……煽って悪かったよ、はーいはい。分かったよ、待つさ」

ハニー「シリウス……あなただって立派だわ?」

シリウス「……あぁ、ありがとう。君にそう言ってもらえれば私は他に何もいらない。が、腹ごなしは必要だな……冷えるし、バタービールでも飲んで待とう」

ロン「クリーチャー呼ぶかい?」

シリウス「いいや、あいつはさっきおっぱらったし、私は出来るだけ頼らないようにしてる。探し物をするときは別だがね。なにせあいつが奪っていることが多いからな……『アクシオ、バタービール』さぁ、飲みなさい」

ジニー「ありがとう……パパ、大丈夫よね?」

シリウス「聖マンゴは素晴らしい医療施設だ。外傷なんて、彼らにとっては取るに足らないさ」

ロン「ハニーの前にいる全ての人類くらいね。あぁハニー、君って素晴らしいよ本当。君が知らせてくれたおかげでパパは助かるんだ」

ハニー「えぇ……でも」

ロン「蛇がどこの誰とかはどうでもいいよ、うん。誰か、なんてね」

ハニー「……あなたって」



228: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 15:12:57.80 ID:QnLAatI+0
チクタクチクタクチクタク

ハニー「……」

ハニー「(ロンはあぁ言ったけれど……私は、わたしは確かに蛇そのものになってたわ)」

ハニー「……」

ハニー「(ただでさえ可愛い蛇だもの……このわたしがなったとなればかなりの、って、それはどうでもいいの)」

ハニー「(……落ち着きなさい。私には牙なんてない。蛇の言葉は分かっても、蛇に変身できるようになった覚えはないわ)」

ハニー「(私が蛇に、なんて……馬鹿げてる)」

ハニー「(でも、そうだとしたら……どうしてあの人はあんな反応をしたの?まるで最初から、私がどういう風に見ていたか分かっていたかのように)」

ハニー「(あの人……あの腹黒の、ダンブルドアは)」

ハニー「(……それに)」

ハニー「(腹が立ってた、そうよ、悲しかったわけじゃ……腹が立っていたとはいったって、私、本気であの人のこと……呪ってやる、って)」

ハニー「(……一体何が起きているの? 私 わたしは、どうなっているっていうの)」

ハニー「……」

ボタボタボタボタボタ

ロン「ハニー、ハニー、考え事してるとこ悪いね、君のバタービールが頭にかかるなんて滅茶苦茶光栄だけどさ、このままじゃ君の服にまでかかっちまうからあぶぶぶぶぶぶぶぶヒンヒン」

シリウス「眠たいかねハニー? そろそろ連絡がきてもいいころだとは思うのだが――!」

ボッ! フィピィ~♪ パサッ

ハニー「! 赤豚、の……鳴き声と、羽、だけ?」

シリウス「あ、赤豚? フォークスからの配達だ。これは……モリーの筆跡だ。さぁ」

フレッド「ありがとさん……『お父さんはまだ生きています』……あぁ、ママ。そりゃなんとも不安を吹き飛ばす心強いお言葉だこって」

ジニー「『母さんはこれから聖マンゴに向かうところです。じっとしてなさい、できるだけ早く知らせます』ですって……」

ジョージ「あぁ、ハニー。この間の夏に君がどれだけいらだって不安だったかよーく気持ちが分かったぜ。なんとまぁ、歯がゆいもんだ」

ハニー「……お母様も慎重なのよ、分かってあげて」

ロン「ヒンヒン!」

229: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 15:22:43.17 ID:QnLAatI+0
シリウス「アーサーの無事は知れただろう?どうだ君たち、上へ行って休んでは。夏使っていた部屋はそのままにしてあるが――あぁ、いや。愚問だったな」

フレッド「お世話様。待たせてもらうよ、お袋がここに来るまで」

ジョージ「そのままってことは放っておかれっぱなしなんだろ?」

ジニー「この椅子の上で寝てるのと寝心地に変わりはなさそうだわ」

ロン「言うねジニー。僕も、もちのロンで。ハニー、君は――うん、愚問だったねごめんよハニー!」

ハニー「当たり前だわ。お母様の口から直接聞くまで、ゆっくり寝てなんていられないわよ」

シリウス「君は優しいな、知っていたが。フォークスの羽は君が持っているといい、君の髪に合うだろう」

ハニー「っ、それは、この私だもの。どんなものだって似合うに決まってるわ、むしろ物の方が合わせるに決まってる、そうでしょ?」

ロン「そりゃそうさ、だって世の装飾品は全て君のために存在してるようなもんだもんな。ヒンヒン」

ハニー「その通りよ。フォークス……ダンブルドアの不死鳥の、羽」

ハニー「……あたたかいわ」

ロン「あぁハニー、それはひょっとしてシリウスのコートに包まれてるからってことも関係してるんじゃ痛い!ありがとう!ヒンヒン!」

230: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 15:48:49.87 ID:QnLAatI+0
明け方

ガチャッ

モリー「……あら、久しぶりにここが賑やかなようね」

フレッド「賑やかしの僕らがいるからね」

ロン「ママ!パパは……」

モリー「大丈夫ですよ。お父様は眠っています」

……

モリー「……普通に、普通に寝てるという意味で!今はビルが看てくれているわ。あとで皆で面会に行きましょう」

ジョージ「……はーっ、よかった、はは」

ジニー「ママ……あぁ、ママ。本当に良かったわ!」

モリー「えぇ、ジニー。ほら、ジョージも来なさい。心細かったでしょう、えぇ」

ロン「ママの万力じゃ細くもなるだろうな、ははは、ふーっ……よかったよかった」

シリウス「よし、それじゃ、朝食だ!朝食、っと!クリーチャー、はどうでもいい。私が用意しよう、えーっと?七人分……少し待っていてくれ、捕まえてくるから」

ロン「出来ればネズミ料理以外にしてもらえるかいマーリンの髭!?」

ハニー「シリウス、私、手伝うわ。ここじゃ私、他にやれることも……」

モリー「あぁ、ハニー。あなたも座ってなさいな?あぁ、あなたはとっても、あなたのおかげでアーサーは助かったんだもの」

ハニー「っ、お母様、そんな……私、抱きしめられるようなこと、なんて」

モリー「いいえ。アーサーはあのままだったら何時間も発見されずに、朝には冷たくなっていたわ。あなたのおかげで命が助かったし、それにダンブルドアにアーサーがあんな場所で何をしていたか言い繕う時間も与えたの。全部あなたのおかげよ、ハニー」

ハニー「……」

モリー「シリウス、あなたも。子供達を一晩中見ていてくれてありがとう」

シリウス「なに、礼には及ばない。私もたまには役に立つところを見せないと君に、今度こそ呆れられてしまうからな。そうだろう?」

モリー「ふふっ、そうでしょうとも。あぁ、入院中はもしかしたら全員ここに留まることになるわ――聖マンゴに近いし、それに、魔法省の目を逃れる必要がまた出来てしまったんですもの」

シリウス「どうぞどうぞ、丁度退屈していたところで――アーサーの傷はクリスマスまで長引きそうかね!?え!?」

モリー「あー、そうなるとおも――」

シリウス「大勢の方が楽しいよ!あぁ!そうだとも!!!ワン、いや、うん!!!よしっ!!!よしっ!!!!!ちょっと待っていてくれ、今大きい鳥の料理をする準備をしてこよう!!!」

ロン「それまさかバックビークの頭とかじゃないだろうねやめなよマーリンの髭!!!」

ハニー「……ねぇ、シリウス。あー、料理に使う食材は私が持ってくるわ。だから……少し手伝って?食糧庫に」

シリウス「……あぁ、構わないよ。みんなはここにいてくれ、ハニーは私をご所望だからね」

ツカッツカッツカッツカッ

モリー「……聖夜にはまだ早いわ!!!」

ロン「……伸び耳は!?」

フレッド「もちのお前だロニー坊や!さぁ行け!二人の会話を聞き取るんだ!」

ジョージ「……あっ!シリウスめあのやろ、『邪魔避け呪文』かけてやがる!」

ジニー「邪魔よけてなにをするの!!!おねえさまになにをするのヒンヒン(怒)」

236: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 16:18:56.95 ID:QnLAatI+0
食糧庫

シリウス「それで、ハニー。話とはなんだ?」

ハニー「……私、そんなこと」

シリウス「君の後見人を舐めてはいけない。いつもはズケズケとなんでも言ってくるくせに、何か重大なことを私だけに話したい時の君のお父さんそっくりだった。いいや、そうでなくとも分かるがね」

ハニー「……アーサーおじさまが、襲われた時の事なのだけれど」

シリウス「あぁ、聞かせてもらえればありがたい。私も詳しく把握していないんだ」

ハニー「……私、わたし、それを。蛇の中から見ていたの」

シリウス「……」

ハニー「……まるで自分の意思で動いてるかのようで。それで、おじさまがいて……わたしが、アーサーおじさまを襲って」

シリウス「そのことは、ダンブルドアには?」

ハニー「話したわ。でも、何も答えてはくれなかったの……もう随分前から、何も話してくれないけれど」

シリウス「何か本当に心配するべきことならば、その場で君に教えるはずだ。ダンブルドアは私達に君を任せておけば大丈夫、と判断して――」

ハニー「それは、あなたに会えたのは嬉しいけれど――違う、ちがうの、シリウス、それだけじゃないの!わたし……あの人を、呪いたくなって」

シリウス「あぁ、騎士団員の全員が一度はあのジジイ呪うぞこんちくしょうと思うものだ、うん」

ハニー「そういうことじゃなくて! わたし、本気で……そういう冗談なんかじゃなくって」

シリウス「……」

ハニー「また自分が、蛇になったような感覚になって……本当に、ダンブルドアを、滅ぼしてやりたいって、気持ちで一杯に……わたし」

シリウス「……」

ハニー「わたし、頭が……おかしくなったのかしら」

シリウス「幻を見たことが尾を引いていたのだろう。それだけだ。大丈夫、君はおかしくなんかない」

ハニー「幻、って……そんなんじゃ、ないったら……」

シリウス「君はショックを受けているんだ。襲撃を目撃したことを自分のせいにして、自分を責めている、そのせいで、そう感じたと勘違いしているのだろう。さっきモリーが言ったことは聞いたかい?アーサーは君のおかげで助かったのだ」

ハニー「……」

シリウス「ここには君を責めようとしている者は誰もいない。もちろん、そんな者がいれば私が全力で守るがね。ハニー、朝食をとったらしっかり休むんだ。いいね?そうすれば少しは整理できるだろう」

ハニー「……それは、命令?」

シリウス「いいや。お願いだ。君の家族から」

ハニー「……そ。分かったわ……じゃぁ、私からも」

シリウス「なんだね?」

ハニー「……気分よく抱きとめられたいから、お風呂にはいってきてほしいわ」

シリウス「はっは、そうだな。鼻の先までしっかり綺麗にしておくとしよう」

238: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 16:55:09.45 ID:QnLAatI+0


ハニー「……みんなは休んでいるのかしら」

ハニー「……シリウスにはあぁ返事したけれど……とても、眠れなかったわ」

ハニー「眠ったら……また自分が蛇になって。今度はここにいるみんなを、襲ってしまうんじゃないか、って」

ハニー「そう考えたら、とても……眠ってなんて」

ハニー「……」

コンコンッ

ハニー「……入らせてあげるわ」

ガチャッ

ロン「ヒンヒン!やぁハニー!僕のハニー!よく休めたかい?ママが、昼食にしてみんなで聖マンゴに行こう、ってさ!」

ハニー「えぇ、当然じゃない。私だもの。そう、すぐに行くわ」

ロン「そりゃよかった!あぁ、それとねハニー!」

ハニー「なぁに?」

ロン「地下鉄ってのはよく眠れるらしいからそこでしっかり休みなさい、大丈夫、マッド-アイが付き添いだから、って、シリウスから」

ハニー「……」

ロン「なんのことやらさっぱりだね!君の寝入りのよさを奴さん知らないと見えるよ!ま!僕ことハニーの豚兼枕な僕はいつでもどこでも君が寝るなら見守るけどね!ヒンヒン!」

ハニー「……そうさせてあげるわ。まったく……みんなして予想通り、そういうわけ?」

ロン「ああ、君って分かりやすいしね痛い!ありがとう!!」

239: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 17:15:57.53 ID:QnLAatI+0
地下鉄

ゴウンゴウンゴウン

トンクス「ハニー、あなたのとこの血筋に『予見者』がいるんじゃないのかな」

ハニー「さぁ、知らないわ……それに、なんだかあの先生と同じくされたようでイヤね、それ」

トンクス「あぁ、あのジャラジャラ昆虫ね。ごめんごめん。うーん、そっか。それに厳密には予見とも違うよね。どういう理屈なんだろ」

マッド-アイ「トンクス、静かにせんか!誰に聞かれておるかわからんのだぞ!」

トンクス「はーい、はい。でも平気だよ、うん。改札をスッと通れるかどうかで魔法使いがいないか大体分かったし」

フレッド「親父に聞いてはいたけどなんだいありゃ、たまげたなぁ」

ジョージ「中に入ってる妖精だかは四六時中紙食ってんだろうなぁ」

ロン「僕みたいな見上げたヤギなんだろうな、うん。もちのロンで」

ハニー「変なところでアナログなのかなんなのか分からないわねあなたたち……ほんと、魔法使いがマグル社会で過ごすのは難しいのね」

ジニー「マッド-アイってば、ただでさえ山高帽が目立つのに自分を足止めした駅員に杖向けそうになるんだもの……」

トンクス「ほんとだよ。今日はショッキングピンクの髪な私より目立つってどういうこと?」

マッド-アイ「えぇいうるさい!マグルが操られとるかもしらんだろうが!油断大敵!」

トンクス「いや今はあなたのがうるさいって」

ハニー「……この電車で、どのあたりまで行くの?」

トンクス「ロンドンの中心よ。また魔法を使うわけにはいかないからこんな手段でごめんね。でもさ、まーた箒で飛んでったりなんかしたら、今度こそみーんな凍え死んじゃうでしょ?」

ムーディ「 鍛え方が足りん、まったく」

トンクス「そうだねマッド-アイ。あなたにとっては飛ぶより切符を買う方が難儀だったようですけど!」

ハニー「喧嘩はやめて、えぇ、そのつもりがなくっても」

241: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 17:29:48.38 ID:QnLAatI+0
ロンドン中心街

ガヤガヤガヤガヤガヤ

ホーーホーーフォーイ、メーリー・クリスマース!

ザワザワザワザワ

ハニー「……クリスマスムード一色ね」

ロン「昔ママに連れられていったけど、この時期のダイアゴンもこんな感じだよ。どこも似たようなもんなんだなぁ」

トンクス「クリスマスのプレゼントに飾りつけにお料理のお買い物、ってね。ねぇ、みんなは今年あそこで年を越すんでしょ?だったらパーティとか――」

ムーディ「無駄口叩いとらんでさっさと歩け!止まるな!死ぬぞ!油断大敵」

フレッド「おいおいそんな物騒なこと言う菜よな、マッド-アイ。ここは前線か何かじゃないんだからさ」

ジョージ「買い物戦線真っ只中ではあるだろうけどな。なぁ、僕らのグッズもすこし商売してみれば……」

ジニー「ママに言いつけるわよ」

ハニー「聖マンゴは、こんな人通りの多いところにあるというの?」

ムーディ「あぁ、そうだ。ダイアゴンにはもう十分な土地はなかったし、魔法省のように地下につくるわけにはいかん。不衛生だからな。結局、この街にあるビルをなんとか手に入れたのだ」

トンクス「なんだったかな。そう、病気の魔法使いが出入りしても人ごみに紛れちゃうから、って理屈で。ま、龍痘の酷いのなんかだったら隠しようがないだろうけど」

ハニー「……慎重な割りに雑なところがあるわよね、魔法界」

ロン「君のキメ細やかな肌とは雲泥の差だね、うん。もちのロンで……あっ!ハニー色の建物だ!ありがたや!」

ムーディ「目ざといなアーサーの息子。そう、あれがそうだ」

ハニー「……あれ、って……時代遅れの、デパート?」

ロン「ハニー色のくせになんで古ぼけてんだよまったく!マーリンの髭!」

242: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 17:45:40.90 ID:QnLAatI+0
フレッド「ふーん……古ぼけたガラスのショーウィンドウ、丸裸のマネキン」

ジョージ「どうみても、ただいま営業していません、って感じだね、こりゃ」

ジニー「『改装中』の札がかかってるわ」

ハニー「何年も改装中なのでしょうね、それはもう……目立たないようにっていう処置なんでしょうけれど、悪目立ちって言葉知らないのかしら、魔法省って」

トンクス「それ思うよ、うん。さーてと、みんな揃ってるね?迷子になった子はいない?」

ムーディ「お前がついてこれているんだ、一目瞭然だろう」

トンクス「うるっさいなぁ……よし、っと。ハーーーァッ」

ロン「ガラス曇らせて、何するんだい?ハニーに前衛アートで賛美歌でも書くの?」

トンクス「それはそれはパンクでいいだろうけどね……オホン。こんちわ。アーサー・ウィーズリーに面会に来たんだけど」

マネキン「イェー」

トンクス「うん、ノリがいい受付で助かったよ。さ、フレッジョ、先に入って」

フレッド「あいよ」

ジョージ「お先に」

スルッ

ハニー「……ガラスの中に、二人が消えて行ったわ」

ムーディ「今更驚くこともないだろうが。お前は毎年どうやってホグワーツ特急に乗ってる?え?」

ハニー「……それは、こんなデパートに一瞥をくれる暇な人もいないのでしょうけれど。いくらなんでも人が消えて誰も騒がないなんて、ありえるの?」

ムーディ「マグルはな、見えないものでなくとも見なかったことにする奴らばかりなのだ」

トンクス「それでもわざわざ騒ぎ立てるやつをなんと呼ぶか知りたい?『変わり者のオカルト野郎』って笑われるのが関の山なんだよ、うん」

ハニー「……うまいこと出来てるのね」

243: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 18:08:54.34 ID:QnLAatI+0
聖マンゴ疾患病院 ホール

モリー「あら、ハニー!こっちよ!トンクス、マッド-アイ。何事もなく到着してよかったわ」

ハニー「ハァイ、お母様……ここが、聖マンゴ」

ボンッ!
 ピーーーーーーーーーッシューーーーーーーッ
チャカポコチャカポコ

ハニー「……病院なのに、騒がしいのね。えーっと……症状が」

ロン「何せ魔法傷害のほとんどをここで看るっていうからね、君の愛みたいに分け隔てなくってところかな」

フレッド「おいみろよ、あのおっさん耳から湯気でてるぜ。人間ヤカンにでもなっちまったみたいだ」

ジョージ「あっちのむさっ苦しい魔法戦士なんて、頭から鈴の音色響かせてやがる。参考になるなぁ」

モリー「何のかは聞きたくもないわよお前たち。さぁ、いらっしゃい。受付をして、お父様に会いにいかないと」

ハニー「随分と並んでるわね……壁に標語なんかのポスターが貼ってあるのはマグルの病院と一緒だわ。『鍋が不潔じゃ、薬も毒よ』私が作ればどんな薬だろうと極上でしょうけれどね」

ロン「違いないね、飲み干すよ。『無許可の解毒剤は無解毒剤』 スネイプの作った、の間違いじゃないかな」

ハニー「そうね……あら……ディリス・ダーウェント。そう、ここにかかってたのね」

ディリス『……こんにちは、ハニー・ポッター』

ロン「聖マンゴの癒者から、ホグワーツの校長になったんだってさ。天使の君が女神になるようなもんか」

ハニー「もうなっているでしょ、違う?」

ロン「違いないよハニー!天使の段階なんてとっくに過ぎっちまってるよね!」

魔法使い「なんだって?なぁ、そこの君。この症状を克服したのならどうやったあ教えてくれないか?何せこの子ときたら今朝からこの翼で飛び回ってばかりで――アイタッ!」

ハニー「……魔法ってスゴイ」

ロン「娘さんに弟子いりさせてください!もちの僕で!!!!!」

244: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 18:24:46.89 ID:QnLAatI+0
魔法使い「私は別に――馬鹿にしてるわけじゃないんですよ!あいたっ!ただ――この靴のせいっ、で!馬鹿げたジグ・ダンスを踊り続けてしまう、だけで!あぁ――なんとか、してください!」

受付「その靴のせいで文字認識に異常が出てるわけじゃないでしょうね?案内板を見る!!あなたの場合は『呪文性傷害』!五階!次!」

魔法使い「プレデリック・ボードに会いたいんじゃが……」

受付「49号室。でも話せるかは責任持てませんよ。まだ随分と錯乱してらして、自分を急須だと思い込んだままですから。お茶を一杯してみたらどうです、コポコポ言うと思いますけど。次!」

魔法使い「あの、娘が飛び回って――」

受付「はいはいよかったね!まるで天使だ!そう思ってテメェで呪文かけたんだろこのボケ!五階!次!」


ハニー「……荒らんでるわねぇ」

ロン「忙しいだろうからね、うん」


魔法使い「ケツに大きなできものがね、できまして、デュフh」

受付「おい守衛こいつ引きずりだせ!ちっくしょう!なんでクリスマス時期のこんな日に変態の相手しないといけないのよ!誰か恋の病に伝染つしてくれよ!!次!!!!」


ハニー「……私怨だったようだわ」

ロン「君の豚になれば余計なこと考えなくて済むのになぁ」

モリー「こんにちは。夫のアーサー・ウィーズリーが、今朝別の病棟に移ったと思うのですが――」

受付「あぁ、アーサー・ウィーズリー……二階、右側二番目のドア。ダイ・ルウェリン病棟よ」

モリー「ありがとう」

受付「ところで、付き添いで来てたイケメンは――」

フレッド「ざーんねんおねぇさん、奴さんにはいい人がいるもんでね」

ジョージ「精々お仕事とあつーいデートでもしてなよ。そんじゃぁね」

受付「……お前ら全員黒斑病になれ!!」

ムーディ「なんだ!?宣戦布告か!いい度胸だ!こい!!!!」

トンクス「マッド-アイ、マッド-アイ、相手にしてたら名前に泥がつくからやめなよ、まったくもう」

246: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 18:46:16.45 ID:QnLAatI+0
『危険な野郎 ダイ・ルウェリン記念病棟――重篤な噛み傷』

トンクス「担当医師ヒポクラテス・スメスウィック、研修医オーガスタス・パイ。うん、ここで間違いないみたい」

ムーディ「よし。まずはわしが突撃する。わしが返り討ちにあったらお前たちはここを急いで――」

トンクス「だからこんなとこが落とされてたらどうしようもないでしょうが!マッド-アイは黙る! 先にあなたたちだけで見舞ってよ、大勢おしかけても迷惑だし。最初は家族で過ごすべきだわ」

ハニー「そうね、そうするべきよ。だから……」

モリー「そうなったら、ハニーも一緒に来てもらわないと。ねぇハニー、遠慮なんてしないで頂戴。アーサーもあなたにお礼を言いたいの」

ハニー「……そうさせてあげるわ」

ガチャッ

アーサー「うーむ、折角マグルの街のど真ん中にいるのに何もできないのはもったいな――やぁ、みんな!」

フレッド「怪我ないかい、パパ!」

ジョージ「けがないかい、けが!」

アーサー「あるともさ!怪我も毛も!髪の話はやめよう!うん! ビルとは入れ違いになったな。今しがた仕事に戻ったところだ。あとでそっちに寄るはずだがね」

モリー「気分はどうなの、アーサー?」

アーサー「上々さ。包帯さえとれれれば帰れるんだが……」

ジニー「? じゃぁ取ってしまえばいいのに」

アーサー「あぁ、そうなるとドバッと出血するものでね。みんなを驚かせるわけにはいかない」

ロン「うっわぁ……まだ酷いってことかい?マーリンの髭」

アーサー「そういうわけでなく、あの蛇の牙には傷口がふさがらないようにする特殊な毒があったらしい。でも、なーに、死ぬ事はない。血液補充薬をたまに飲んで、あとは先生が解毒剤を見つけるのを待つだけだ。これだけで済んだのは――ハニー、こっちに」

ハニー「……」

アーサー「ありがとう、君のおかげだ。私は助かったし、それに狙われた物――」

モリー「アーサー!」

アーサー「あー、っと。つまり、HAHAHA。とにかく無事だった。本当にありがとう」

ハニー「……お父様が良かったのなら、喜ばしいことだわ」

ロン「君の存在くらいね」

ハニー「えぇ、そうね。世界の祝福ね」

アーサー「あぁ、拝めてよかったよ。今日と言う日に、みんなと一緒にね」

247: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 19:07:24.10 ID:QnLAatI+0
アーサー「私なんて軽いものさ。あそこの老婆の傷なんて酷いにおいを放ってる上に、原因不明だ。おそらく非合法のものを扱ったに違いない」

ロン「ハグリッドのトモダチかな」

アーサー「あっちの人も、もっとだ。狼人間に噛まれたんだ――可哀想に」

ハニー「……狼人間?」

モリー「まぁ……ねぇ、アーサー。一般病棟で大丈夫なんです?だって――」

アーサー「満月まではあと二週間もある。平気だよ、それに、私達の近くにだって一人いるじゃないか」

モリー「あぁ――そうよね、ごめんなさい私ったら」

アーサー「そう、今の魔法界の医療技術ならほとんど普通の生活を送れる。あの人も癒者や、それに私がそう説得したんだがね」

ジニー「なんて言ったの?」

アーサー「黙れ、噛み付いてやるぞ、だとさ」

モリー「ちょっと待ってらしてね、あなた。フレッジョ、ジニーの目を。ロン、ハニーの目を覆っていなさい」

フレッジョ「「あいよ、マム」」

ロン「もちのロンさ」

アーサー「モリー、落ち着いて。彼も悲観的になっているだけさ、いずれ分かるよ、うん」

248: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 19:21:17.66 ID:QnLAatI+0
フレッド「ふーん。確かにそういうのに比べりゃパパのなんてかるーいもんだよな」

アーサー「そうだろう?いや、怪我はあるがね、けがは」

ジョージ「ふーん、そんで?パパはその取るにたらない怪我をどこで負ったって?」

アーサー「あぁ、そりゃもう魔法し――」

モリー「フレッジョ!聞き出そうとしない!!アーサー!」

アーサー「おぉっと!はっはっは、お前たち、いい魔法警察部隊になれるよ」

モリー「行き着く先はご厄介になる方な気がして心配ですけどね、母さんは!お前たち、あんまりしつっこく聞くんじゃありませんよ!いいですね!」

フレッド「でもさ、おふくろ。僕たち普通に過ごしてて大蛇に襲われるなんてことないぜ?気になるだろ」

ハニー「そうかしら」

ロン「そりゃハニー、君って普通じゃないからね。美しさって意味で」

ジョージ「さっきいいかけてたろ?何狙ってたのさ、その蛇ってのは。さぁゲロっちまえよ、楽になるぜ」

モリー「お父様を追い詰めるんじゃありません!」

ジニー「パパはその何かを護衛してたんでしょう?そういう任務の時だった、って聞いたわ」

アーサー「あー、そのだね」

フレッド「そういやハニー、君、あの人が復活した日でかい蛇がいたって言わなかったか?え?」

ジョージ「その蛇ってのが親父を襲ったんじゃないか?そうだ、蛇といやぁ『例のあの人』だ!」

ロン「あー、それで、パパ。その守ってたのって、もしかして『武器』なのかい?夏に言ってたやつ?」

モリー「お黙り!そんな質問をするならぶっ飛ばして、不慮の事故であちらの魔法使いにぶつけますからね!?」

狼人間青年「……!?」

アーサー「モリー、まずは君から少し休憩してきたらどうだ」

249: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 19:31:23.49 ID:QnLAatI+0
廊下

フレッド「結局僕らおんだされちまったな」

ジョージ「まったく、家族にお優しいよな」

ジニー「渋ったってことは、正解だったのかしら……パパが守ってたのは、あの、『武器』?」

フレッド「さーぁね、是非は俺達と入れ違いで中に入ってった彼らから教えてもらおうじゃないか」

ジョージ「聖マンゴの連中が、扉にきちんと『邪魔避け呪文』をかけてるかどうか、看てやろうぜ」

ロン「今度は伸び耳が役に立つといいよな」

ハニー「今度は……? でも……いいのかしら」

フレッド「とれよ、ハニー。君は親父の命を救った。盗聴する権利があるとすりゃ君だよ」

ジョージ「っていう建前のもと君が動いてくれれば僕らはその恩恵にあずかれるんだがね」

ハニー「……正直な人は好きよ、ふふっ。貸して」

フレッド「その意気だぜ。さぁ、いけっ!僕らの伸び耳!」

ジョージ「願わくばマッド-アイが見ていませんように!」

ザーーッ、ザーーーーーッ

トンクス『――くまなく探したけど、蛇はどこにもいなかったらしいよ――』

ハニー「!すごい、トンクスの声がすぐそこで話されてるみたいに!」

フレッド「そうともハニー、そういうや君これ使うの初めてだっけ?」

ジョージ「これぞ我らが自慢の逸品『伸び耳』にござーい、ってね!」

ハニー「……どのくらい遠くまでいけるのかしら、これ!」

ロン「あぁハニー、残念だけどハニーホグワーツからロンドンまでは無理だと思うね僕ぁロンドンっていうかぶっちゃけるとグリモ痛い!ありがとう!ヒンヒン!」

251: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 19:48:50.60 ID:QnLAatI+0
トンクス『あなたを襲ったあと、蛇は消えちゃったんじゃないかな――でもさ、『例のあの人』もまさか、蛇が中に入るなんて期待してないよね?』


フレッド「やったぜ、ビンゴだ!あの蛇は『あの人』のものみたいだ!」

ジョージ「君が例の場所でみた巨大な蛇ってやつだろ、ハニー!え!?」

ハニー「えぇ……あいつのじゃなきゃ可愛い、あの子、だったのね」

フレッジョニー「「「!?」」」

ロン「聞き流してくれていいぜ、うん、マーリンの髭で」


ムーディ『わしの考えでは、蛇を送ったのはあくまで偵察のつもりだったのだろう。今までは全くの不首尾で終わっておるのだろうが?さすれば、奴はこう思ったに違いない。もう一度、立ち向かうべきものをしかと見ておこう、とな』

アーサー『私がいなければ、あの周辺をもっと探っていたのだろうね……ある意味では、私があそこにいたのは幸運だったわけだ』

モリー『幸運なものですか!ハニーがどれだけ怯えていたか――でも、ねぇ、私、こんなことは思いたくわないのだけど。ダンブルドアはどうも、ハニーにこんなことが起こるのを――待ち構えていた、そう思わない?』


ハニー「……」


ムーディ『む。まっこと、そうだろうな。ポッターは何かおかしい、それはわしら全員が知っておる。知っておかねばならん』

ロン「殴りこんでいいかな」

ジニー「後につづくわ」

フレッド「黙ってろよな、二頭とも!」

ジョージ「弟妹の墓を作るのは御免だ」


モリー『でも――今朝お話したときは、ダンブルドアは。ハニーを心配しているようにも見えたんです。一体、どちらがあの人の――』

ムーディ『無論、心配もしておろう。ポッターは蛇の『内側』から事を見ている、これが何を意味するか分かるか?え?』



ムーディ『もしも、『例のあの人』がポッターに取り憑いておるのなら――』

ハニー「っ!!   あ……」

フレッド「……」

ジョージ「……」

ジニー「……」

ハニー「……私、わた……っ!」

ロン「ハニー!あっ、ちょ、なんだよ耳が絡まって、こんちく、マーリンの――」

バターーーン!!

ムーディ「何の騒ぎだ!!!敵か!!!!!!殺すぞ死ねぇええええええ!!!!」

ロン「うわちがやめ髭ぇえええええ!!ハニーーーーーー!ヒンヒン!ヒーーーーーン!!」



ハニー「っはぁ、はぁ……あぁ……やっぱ、り」

ハニー「私は……わたしは、あいつに」

ハニー「あいつがわたしに、やらせたんだわ。全部……っ、わたし、が」

ハニー「ヴォルデモートが……わたしに、乗り移って……」

ハニー「っ、ぅっ、っ……!」



「HAHAHA!あれ?あそこで泣いてるバンビーナがいるような……しくよろするべきかな!ねぇ!」

癒者「はいはい、まずはお薬のみましょうね、ギルデ――」

260: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 20:45:44.15 ID:QnLAatI+0
グリモールド・プレイス 十二番地

シリウス「お帰り。アーサーはどうだった……ハニー?」

ハニー「……えぇ、元気そうだったわ。ごめんなさい、わたし、人ごみに酔ってしまって……お夕食の前に少し、休ませてもらうわね」

シリウス「……そうか。ゆっくりしなさい、私はみんなとクリスマスの飾りつけの相談をしよう。君も後で来るといい、きっと楽しいぞ?」

ハニー「……えぇ、出来れば」

バタンっ

シリウス「……何があった」

モリー「さぁ……帰りの地下鉄からずぅっとあの調子で……何か酷い怪我人でも見たのかしら。あの子は、優しいから」

ロン「……そりゃ、ハニーは天におわすなんとかより慈悲深いけどね」

ジニー「……」

フレッド「……」

ジョージ「……」

モリー「……お前たち、何か軽口たたきなさいな……明日は大雪、いいえ、冬だしきっと真夏日ね、その分じゃ」

263: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 20:57:10.67 ID:QnLAatI+0
ハニー「……今回は一人部屋にしておいてもらって、良かったわ」

ハニー「一人になれる……そうよ」

ハニー「……わたしみたいなのは、一人でいないと」

ハニー「……みんなは心も体も、ヴォルデモートに汚されてない清潔で無垢な優しい人たち」

ハニー「なのに、わたしはどう……?あいつに乗っ取られて……蛇そのものに、なって」

ハニー「……穢れてるわ。汚された……みんなと、食卓を囲むことなんて――」

ハニー「っ、っっぅ」

ハニー「……あいつが求めた『武器』は……わたし、だったとしたら?」

ハニー「……そうよ、そうすれば……辻褄があうわ。わたしはあの腹黒、っ、ダンブルドアの近くにいるし……お父様お襲ったように、ダンブルドアの寝首を、かける」

ハニー「だから、みんなわたしの、護衛を……わたしをあいつらから守る、じゃない……あいつらの力にさせないように、って」

ハニー「わたしの中にいる……あいつと、結びつかせて……あぁ」


白豚「ピィ~ヒン!」

ハニー「っ!?白豚……どうしてここ……あぁ、トランクが……わたし達があちらに行ってる間に、届いたのね……」

白豚「……ピピーィヒン?」

パッ、シューッ

ハニー「っ、近寄らないで!!!!」

バシンッ!

白豚「ピィッ!ヒンヒン!ヒンヒン!ハァハァ!」

ハニー「近寄っちゃ、ダメ……わたし、っ、友達の、あなたまで……っ、どこかに行って!さぁ!」

ガチャッ

ハニー「早く!どこか、遠くに……消えて!見たくも、っ、見たくも、ないわ!この、豚!」

白豚「……ピィー、ヒーン」

パサッ シューーッ……

ハニー「……っ、ぅっ、」

ハニー「……どこかで、いい人、に……飼われて、ね……ヘドウィグ」




パリーン!ケェーーーーーッ!!

ウワアアア!?せっかく美味しいケーキ買ってきたのにーーーー!!!!

265: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 21:12:30.28 ID:QnLAatI+0
ハニー「っ、ぐすっ……」

ハニー「……何、してるの。わたし……そう、よ。追い出すのは、ヘドウィグじゃ、ないわ」

ハニー「……今なら、荷物も全部ここにある。大事なもの、全部……本当に大事なものは下の階、と、今頃スキーをしているでしょうけれど」

ハニー「……わたしが、出て行かなきゃ。そうしないと……みんなみんな、危険だわ」

ガタゴトッ、ゴロゴロゴロゴロ

ハニー「……今この瞬間にも、わたしはあいつにこの組織の情報を漏らしているようなものじゃない……早く、いかなきゃ」

ハニー「でも……行くって言っても、どこへ……ホグワーツは、ダメよ。城のみんなや……ダンブルドアが」

ハニー「……」

ハニー「……覚悟を、きめなさい。わたし。ちっぽけで、弱い、わたし」

ハニー「そのくらいのことは、しなきゃ……自分を、魔法界から切り離さなくっちゃ」

ハニー「……プリペッド通りに。純粋なマグルを、わざわざ乗り移ってまで手をかける意味も、ないでしょ……」

ハニー「さぁ……」

ガチャッ……


『逃げるのか?』

ハニー「っ、違う!わたし、私は――誰?」

『ここだ、ここ。少し戻って壁を見てみろ、この高貴な姿が目にはいるだろう』

ハニー「……あぁ。ここにかけられていた、のね……フィニアス」

フィニアス『小娘に呼び捨てられる覚えはない。それで?私の考え違いかね。グリフィンドール寮に属するということは、君は勇敢である、そう判断されたはずだが?』

ハニー「……だから、逃げてなんか」

フィニアス『そうだ、そうだな。君のそれは逃げではない。どうやら私の見たところ、君は私の寮の方が合っていたようだ。我らスリザリン生は勇敢だ、しかし、愚かではない。我らは選択できるのならば、常に自分自身を救う確かな道を選ぶ。あぁ、そうとも』

ハニー「っ、一緒にしないで!サラザールとも違うあなたたちの勝手なスリザリン像と!」

フィニアス『……ふーむ?』

ハニー「私は、自分を救うんじゃないわ。ふざけないで――あなたの、話なんて」

フィニアス『――あぁ、なるほど。なるほど、っく、君は――あぁ、君は愚かだな。私の寮にはいらん。そう!君はこう言いたいのだろう!わたしは尻尾を巻いて逃げるのではなく――気高い自己犠牲精神のもと、ここから立ち去るのだ、と!』

フィニアス『なんともはや。クソ食らえだ』

ハニー「……」

269: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 21:39:45.37 ID:QnLAatI+0
フィニアス『自己犠牲だの人のためだのくだらん。全て自分のための行動のくせにそうやって押し付けがましく言い方をかえるクソみたいな考えは、私は一切切り捨てる』

ハニー「……いいたいことはそれだけ?それじゃ、私は行かせてもらうわ。私の生き方は、あなたのご趣味にはあわないようだもの」

フィニアス『あぁご勝手に、と私個人としては言いたいがね。ダンブルドアからの言伝だ』

ハニー「……ダンブルドアから!?」

フィニアス『あぁ。動くでない』

ハニー「っ、今は一歩も動いてないじゃない!さぁ、教えて頂戴!あの人は私、わたしになんて――!」

フィニアス『今伝えただろうが、愚か者。ダンブルドアは君に『動くでない』と言っている」

ハニー「……は?他に、他には!?他になにか、わたしに――指示でなくてもいい!お願いじゃなくてもいい!何か、いまのわたしに、言うことがあるんじゃ――」

フィニアス『だから、伝えたとおりだ。ダンブルドアはただ一言、君にここから動くなと言っている。グリフィンドール生は言葉の意味から教えんといかんのか?』

ハニー「……な……なによ、それ……なによ、それ!!!わたし、わたしはこの十二時間の間に、っ、恐いことと安心と、また恐いことを突きつけられてるのよ!?なのに、なのに!!あの人は、まだわたしに何も話そうとしないっていうの!?!?」

フィニアス『ホグワーツ校の校長に、君のような小娘にかまっている時間はない』

ハニー「あなたは口を挟まないで!あなたに何が分かるの!知ってる、知っているわ!あなたは――ホグワーツでいっちばん、人望がない酷い校長だった、って!!だから――」

フィニアス『ほう、それで、だからなんだと言うのだね。私の校長としての仕事ぶりが、君が私に口答えする正等な理由になるというのかね。生前の私のことを何も知らず、ただあの私ひいてはこの家全体を憎んでいるのあろう愚か者の言葉でしか私のことを知らない君が、さぁ、言ってみろ。今この瞬間の話題と、私の生前の評価に何の関係がある』

ハニー「っ……あなたが、あなたがうるさい、から!」

フィニアス『これは驚きだ、君は耳という器官が正しく機能しているか一度聖マンゴにいって看て貰うといい。先ほどまで声を荒げていたのは誰だ。ヒステリックに喚きたててとんちんかんな糾弾をし始めたのは誰だ?』

ハニー「うるさい、うるさいわ!あなたも、ダンブルドアも!!わたしに何があったってどうでもいいんでしょう!あなたたちで全てかたずける!だからわたしは大人しく、とじこもって、何も言わず!!!!!ちっぽけな脳味噌で何も考えず待っていろ、って!!!そう言いたいんでしょう!?」

フィニアス『これだから子供は嫌いだ。自分が世界の中心だと思い込む。君は悲劇のヒロインか?え?多感なお年頃、言っていろ。ただ単に自分だけが可愛くて自分だけが苦しいのだと勘違いしているだけだろう』

フィニアス『私が教師をしていることが身震いするほど嫌いだったのは君のような生徒のせいだ。自分が正しく他の意見を聞かない。鼻持ちならない思い上がりで自ら破滅を招くくせにいざとなったら助けてと教えを乞う。それに見合った尊敬や敬意は示さない――あぁ、そうだ』

ハニー「っ、ぅぅっ」

フィニアス『泣けば済むと思っているその態度もだ。クソ食らえ』

282: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 22:01:44.78 ID:QnLAatI+0
ハニー「っ!泣いて、ない!泣かない、わ、っ」

フィニアス『それはありがたい。シミでもつけられては大変なのでな。そう、君は考えが足りない。自分のことで頭が一杯なのだろう、自分とみんな、オトモダチのためにというなんとも頭が幸せそうな言葉でな』

ハニー「……」

フィニアス『ホグワーツの校長が、自らの企て全てを明かさないのはたぶんれっきとした理由があるのだろう、何故そう思えないのだ』

フィニアス『不当な扱いを受けていると感じている暇があるのならば、これまでダンブルドアの命令を聞いていて一度も危害が及ばなかったことを考えもしなかったのか?』

ハニー「……吸魂鬼、は」

フィニアス『結果君は無事で退学も逃れた。尽力したダンブルドアの姿は君は間近で見ていたはずではないのか?優しい声をかけられなかったら自分をどうでもいいと思っている証拠か?』

フィニアス『言っておくが、ウィゼンガモット大法廷に証人として立つことは並大抵の魔法使いなら逃げ出したいほど大変なことだ。図太い神経をお持ちの君のような若者はなんとも思わんのだろうがな』

ハニー「……」

フィニアス「そうだろうな、君は結局他の若い連中と同様、自分だけが考える頭を持っているのだ、そう信じ込んでいるのだろう。自分だけが危険を予知できて、賢く、他のものが鈍くさく感じてしかたないのだろう。分かりたくもない、驕る人間の思考など理解する価値もない』

ハニー「……」

フィニアス『闇の帝王の企てを理解できるのは自分だけだ、と思わないことだ。むしろ、君は先にあげた馬鹿げた思考のせいで迷走に迷走を重ねている。足を止めて、『動くでない』。これが物理的なことだけだと思っているのならグリフィンドールは見下げ果てた愚か者の集まる寮となるだろう』

ハニー「……じゃぁ、あいつ、ヴォルデモートが何か企んでいることは、確かなのね?」

フィニアス『そんなことを言った覚えはない。さぁ、私は去ろう。高貴な私の時間を思春期の悩みなどに費やすほど無駄なことはない』

ハニー「えぇ、っ、帰ればいいわ――勝手に。ダンブルドアに伝えなさいよ……『何も教えないでくれてありがとう!』って!」

フィニアス『あぁ、そのように』

スッ

ハニー「……」

ハニー「っ……」

ドサッ

ハニー「っ、っっぅ、じゃぁ……どうしろ、って……言うのよ」

ハニー「……ダンブルドアの、ばかぁ……」

284: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 22:24:56.02 ID:QnLAatI+0
翌日

コンコンコンッ

ハニー「……」

 ロン「あぁハニー!昨日の夕食も今朝も何も食べてないだろ!?そのままだとお腹と背中の髭がマーリンしちまうよ!」

ハニー「……」

 ロン「……ここにママ特製のサンドウィッチ置いておくからさ!気が向いたら食べてよ!大丈夫、ピーナツバターは入ってないさ!もちのロンでね!」

ハニー「……」

 ロン「それじゃ……あのさ、ハニー。ここまで聞こえるだろ?あー、君の大事な人の」


 シリウス「~♪世のヒッポグリフよ忘れるな クリスマスは――♪」


 ロン「ノリノリな替え歌で飾り付けするほど、君がここにいるのが楽しくて仕方ないんだ。僕も、みんなもさ」

ハニー「……」

 ロン「だから 言わせてもらうよ 馬鹿な考えはやめて、出てきてくれたら――」

バンッ!!!

 ロン「……おぉっと。今日の枕が僕じゃなくて良かった……君から受ける折檻なんてただのご褒美だけどさ。それじゃ……またあとで」

トンッ、トンッ、トン……

ハニー「……知ったような口……そうよ、ロンは、いつもそうだわ」

ハニー「そうよ……みんなが楽しいのは、わたしがいないおかげよ……ほら、フレッドとジョージも、笑ってるわ。昨日はあんなに、無言で……難しい顔、だったのに」

ハニー「……みんなのために、わたしは……ここで、この部屋で」

鳥豚「……ゲェーヒン」

ハニー「……わたしが蛇になりそうになっても、あなたならすぐ、逃げられるわよね?それか、表に飛び立てる?」

鳥豚「……ゲェー、ヒンヒン」

ハニー「……ありがと。本当は、一人でいればいいんでしょうけれど……それも、寂しいのよ」

ハニー「……自分勝手ね、わたし。あの肖像画の、言う通りだわ……嫌な子だわ……わたし、って」





バーーーーーーーンッ!!!!

「ご本人様であろうと、私の大切な人を卑下するのはやめていただるかしら!」

ハニー「!?」

ロン「いやほらまってよほらここは穏便にさあのもうちょっとうわこわ鬼ーだこれハーマイとれた鬼ーだよこれはマー髭」

ハーマイオニー「鬼で結構!!!!さぁ、ハニー!来なさい!!」

ハニー「なっ、ハーマイ、オニー?なんで、ここに」

ハーマイオニー「なんでもいいわ!とりあえず一ついえるのは、今日の私は怖いわよ!!!色々!!!!」

ロン「あー……城に置き去りにされたこととか含めて……鬼だ、鬼だよ今日のハーマイオニーは……もちの髭で」

287: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 22:37:53.91 ID:QnLAatI+0
ハニー寝室

ハーマイオニー「パパとママには、今年は大事なテストの年だからやっぱり残る事にした、って伝えておいたわ。これで新学期まで私もここにいれるわね」

ロン「スタートは遅れたけ、や、なんでもないです、なんでも髭です」

ハニー「……どうして」

ハーマイオニー「そんなの決まってるわ。あなたと一緒にいたいから、よ。ハニー。他に何があるというの?」

ハニー「……」

ジニー「ここにいるみんながそう思ってるわ、おねぇさま。本当よ?」

ハニー「……嘘よ。だって」

ハーマイオニー「あら。嘘も何も、あなたは聖マンゴから帰ってから、ずーっとみんなを避けていたんでしょう?何故そういえるの?」

ハニー「……そんな風にハーマイオニーと話していたのね」

ジニー「だって、おねぇさま。本当のことだわ……おねぇさまと半日目が合わないだけで、私とロンは半死半生よ」

ロン「三途の川を三度はみたよ」

ハニー「目を合わせないの、は――あなたたちでしょ」

ハーマイオニー「だから、ハニー。ずーっと隠れてたのなら合わせようがないんじゃない?違う?」

ハニー「……」

ロン「……髭」

ハーマイオニー「えぇ、ハニーに背中に座ってもらえなくて調子が出ないのは分かったからあなた黙ってて」

ロン「……この四年ですっかり普通に座る事に違和感が」

ハーマイオニー「聖マンゴにかかることをお勧めするわ」

290: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 22:53:27.73 ID:QnLAatI+0
ハーマイオニー「ねぇ、ハニー。全然分かってもらえない、って顔をするのはやめて。私たち少なくとも分かろうとしてるわ。『伸び耳』で聞いた情報のことを、さっき教えてもらったのだけど……」

ハニー「……えぇ、みんなで噂してたのでしょ、私のことを話してたのね。なれっこだわ、じゃぁ、私は、いないほうが」

ハーマイオニー「言っておきますけど、拗ねても可愛いだけよ。私たちを怒らせて出て行かせようったって、そうはいかないわ。あー癒される」

ジニー「おねぇさま可愛い。ねぇ、おねぇさま。私たち、おねぇさま“と”話したかったの」

ハニー「一体何を?私は何もないわ、あなたたち豚に……聞きたいことなんて、なにも」

ジニー「あら……それは、おねぇさまにしてはとっても――おバカさんね」

ハニー「っ!今、なんて――」

ジニー「だって――おねぇさま。私は、『例のあの人』にとりつかれていたところを、あなたに助けてもらったんだもの。今あなたを悩ませていることに答えられるのは、きっと、豚広しといえども私だけだわ。そうでしょ?」

ハニー「……あっ」

ジニー「……」

ハニー「……私……わたし……その。忘れて、いたわ」

ジニー「しおらしいおねぇさまマジ可愛い」

ハーマイオニー「あとちょっと頑張って」

ジニー「それは、おねぇさま。すこーしお幸せすぎね……私たち豚は、いつだってあなたの力になるのに。ね……は……ハニー」

ハニー「……ジニー、こっちに」

ジニー「? えぇ――わっ!?あ、ああああああのおねぇさ」

ハニー「ハニー、でいいわ。ジニー……ありがとう。あなた、すっかり……いい女になったのね。いつまでも私をおねぇさまって呼んでいてはいけないわ」

ジニー「そんなぁあでもおねぇさまからの命令ならそうするのは豚の摂理というか当たり前のもちの兄なんだけどあぁ、そんな恐れ多いこといいえ抱きしめられてる今の状況で十分おそれおおいのだけどあぁハニー!ヒンヒン!ヒン!私たち、あぁ、私のハニー!ヒンヒーーーン!」

ロン「……ジニー、●●から……女豚に昇格、っと」

ハーマイオニー「それは果たして上がってるのかしら、地位」

295: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 23:11:53.54 ID:QnLAatI+0
ハニー「それで……あいつに乗っ取られるのはどういう感じなの、ジニー」

ジニー「えぇ、は、ハニー……あー、おね、オホン。あなた、自分のやったことを全部思い出せる?つまり、何をしていたのか思い出せない空白期間があるか、ってこと」

ハニー「……いいえ。寝ている時以外、一度も」

ジニー「そう。それじゃ、あの人があなたに取り憑いたとは考えられないと思う。私、あの事件の時は日に何度も、自分がそこで何をしていたのか覚えがないのに、気がついたらおかしな場所にいて、日が暮れていたりしたもの」

ハニー「……でも、私がみた蛇と、お父様の夢は――」

ハーマイオニー「……そうだわ、ハニー。あなたは前にも同じようなものを見たじゃない。先学期――ヴォルデモートが何を考えているか突然理解できたことがあったでしょう?」

ハニー「あれは、今度のとは違うわ。私は蛇の中にいて、私自身が蛇だったんだもの! ヴォルデモートが、私を……アーサーおじさまを襲ったっていう、ロンドンに連れて行ったとしたら――?」

ハーマイオニー「だとしたら私は『ホグワーツの歴史』を暖炉にくべなくちゃいけないわ」

ロン「そりゃ、文学的損失だこって」

ハーマイオニー「文学違うわよあれは。いい?何度だって言いますけど、学校内では『姿くらまし』も『姿あらわし』もできないわ。それにね、あなたは一瞬だってベッドから離れてないわ……だって、ほら、あの日はあんな後で、ほら、あー、明け方近くまで……それに、あー、あなたがいなかったらすぐ分かるくらい、その」

ジニー「何で私二人と同じ寝室じゃないのかしら」

ハーマイオニー「学年が違うからよ」

ロン「なんで僕って女の子じゃないんだろ」

ハーマイオニー「神様の高プレーよそれは」

ロン「マーリンの髭……あとさ、箒とかなんとかで飛ばしたって線もないと思うよ。僕ぁハニーが叫びだした瞬間から窓から飛び降りたけど、怪しい影なんてなかったしね」

ハニー「……そう……全部、全部理屈に通ってるわ。それじゃ、私は……わたしは、『武器』なんかじゃない?」

ロン「そ、そんなとこまで考え込んでたんだ……あったりまえのもちのロンだよハニー。いや、君の存在は三国も傾けそうなくらいだとは思うけどね、美貌で」

ハニー「わたしは……汚れてない?」

ジニー「汚れてるのはこの屋敷だけで十分だわ、お、ヒン、ハニー」

ハニー「……わたし、穢れて――きゃぁ!?」

ハーマイオニー「えぇ、ハニー。そうね。そろそろ我慢の限界だから言わせてもらうわ――あなたはとっても綺麗で素敵よ。一緒に、確かめましょうか……」

ハニー「あっ、ちょ、っと。ハーマイオニー、そんなの、許さ……あぁ――」

ロン「つづけて!!!!!!!!」

ジニー「どうぞ!!!!!!!!ヒンヒン!!!」

303: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/05(日) 23:31:21.02 ID:QnLAatI+0
ハニー「……厨房が、見違えてるわ」

シリウス「おっ、来たな不機嫌お姫様。どうだい、バックビークはいい話し相手になったかな?え?」

ハニー「……そうでもなかったわ。元気づけてはくれたけれどね。シリウス……信じて待っててくれたの?」

シリウス「何かあると高いところに篭るのはお父さんと同じだな、君は。あぁ、君と君の友人達を信じていた。だから私の方は君が目一杯ここでの休暇を楽しめるよう専念した、というわけさ」

フレッド「僕らもな、我らが女王様!この飾りを見てみなよ、洒落てるだろ?」

ジョージ「赤毛の獅子が蛇を追い掛け回して退治しっちまうのさ!僕らの手製」

ハニー「……あなたたちも」

フレッド「いやぁ、僕らは口を開けば軽口しか出ないからね。どうやりゃ君を元気付けられるか考えてたのさ」

ジョージ「その回答が半日もかかってやっとこれなんて、僕らのスポンサー様の君には頭が上がらないけどさ」

ハニー「……いいえ、とってもステキだわ。ありがとう」

モリー「ステキなのは飾りだけじゃないわよ、ハニー!さっ!みんな揃ったんですから豪勢なお夕食にしなくっちゃ!」

ロン「わーぉ、ママってば身内以外が多くなると力入れるんだもんな!まぁハニーがいれば僕に取ってはなんだってご馳走なんだけどね!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、いい椅子に座れて私も機嫌がいいわ、ロン。出来る豚ね」フーッ

ロン「ヒンヒン!!!!!」

ジニー「あぁ、おね、ヒンヒン、ハニー!あなたに食べさせてもらえる権利なて光栄すぎるわ!いいのかしら!私今夜寝れないわ!」

ハニー「えぇ、それだけのことをしてくれたんですもの。当然よ、ジニー……出来る、いい豚ですもの」

ハーマイオニー「……寝れないのは私もだと思うと今からゲンナリだわ……トランクも普通にハニーの寝室に運ばれているし」

ハニー「あら、それも当然だわ。しっかり、お礼をしなくっちゃね。そうでしょ?」

白豚「ピィーヒンヒン」

ハニー「……ごめんね、ヘドウィグ。また一緒にいてくれる?」

ヘドウィグ「ピィー?ヒンヒン!ヒン!」

ロン「なんのことやら、でも、もちのロンさ!だってさ、ハニー!」

ハニー「えぇ、そうよね。当たり前、よね……あぁ、私……わたし、なんてバカだったんだろう」

ハニー「こんなに素敵な人たちに囲まれてるのに……プリペッド通りに行こう、なんて」

ハニー「……みんな、ありがと」

モリー「それじゃ、グラスをもって。いいわね、じゃぁ家主のシリウス、音頭を」

シリウス「あー、オホン。痛ましい事故で思わぬ形で集まることになったわけだが――とにかく、冬休暇おめでとう!一緒に!そう!一緒に楽しもう!ハニーに、かんぱーーーい!」

かんぱーーーーい!

ヒンヒン、ヒーーーーーン!

316: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/07(火) 21:52:06.67 ID:pYkqxctl0
クリスマス

ハニー「……まぁ」

ロン「あぁハニー!メリー・クリスマス!うん、厨房入るなり目に入った飾りつけの数々を見る君の表情を見られただけで今年のクリスマスも最高だよ僕は!君のご尊顔が最高なのはいつだってどこだって同じだけどね!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、年中無休でね。メリー・クリスマス」

ロン「ハーマイオニーも、あー、立ててよかったね。メリー・クリスマス」

ハーマイオニー「なんとかね、何のことかしら……メリー・クリスマス」

ハニー「いいイブだったわ、今年も。それで飾りつけだけれど……シリウスったら、夜通しで仕上げたのね」

ハーマイオニー「昨日まででも随分と豪華だったのに、本当、すっかり別の屋敷に来たようだわ……これ、飾りじゃなくて本物の雪みたい」

ロン「あの張り切りようは豚もびっくりだよ、うん。ハニーの前で張り切るのは人体の構造に組み込まれてる動作だけどさ」

ハニー「遺伝子レベルで、そうね……っ、シリウス!」

シリウス「メリー・クリスマス。どうだい、クリスマス仕様の飾りつけは」

ハニー「メリー・クリスマス……ええ、素敵だわ。廊下に飾られた屋敷しもべ妖精の生首にまで赤い帽子と白い髭がつけられていたのは、そうね、笑ってしまったけれど」

ロン「あぁ、そうだねハニー!君の笑い声ってたまに『キャァッ!』ってなるんだよね!知ってるよ僕ぁ!何せ僕って君の」

ハニー「ロン」

ロン「なんだいハニー!ヒンヒン!」

ハニー「雪だるまならぬ雪豚が欲しいところだけれど、どうせならただ雪で作ったものより雪を纏った豚の方が見てみたいわ」

319: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/07(火) 22:17:10.53 ID:pYkqxctl0
モリー「メリー・クリスマス!ロン、風邪をひいてもしりませんよ」

ロン「本望さっ!ヒンヒン!寒くなんてマーリンの髭だよ!」

ハーマイオニー「隠し切れてないわ」

シリウス「その雪は溶けない呪文かかってるからいつまでも冷たいぞ、ロン。ところで、どうだった。今年のクリスマス・プレゼントは。大収穫か?」

ハニー「当然ね、この私だもの。リーマスからは、『実践的防衛術と闇の魔術に対するその使用法』って本をもらったわ」

ハーマイオニー「動くイラスト入りでためになったわね……ためになるといえば!ロン、私からの『宿題計画表』は受け取った?」

ロン「そりゃプレゼントの山に隠されてりゃ手をつけないわけにはいかないよ。なんだいありゃ、僕にとっちゃ呪いの手紙みたいのもんさ、マーリンの髭」

ハーマイオニー「……あなたが少しでも計画的に宿題をこなして練習に力を注げれば、と思ったのよ!

ロン「えっ、あー、そりゃどうも……」

ハーマイオニー「もう!あなたこそなによ、あの香水!香水は、私、あー、色々好みが……!」

ロン「……そりゃ悪かったね!へぇ、それはそれはこだわりがおありなんだろうねこのにおいは!ハニーの香りすりゃ光栄だろうに!なんだい!?大人なビッキーにでも選んでもらったってのかい!?マー髭!!」

ハーマイオニー「ビッキーって呼ばないで!!!!」

ロン「本人も喜んでただろうるさいな!!!」


ハニー「……ハーマイオニーが今日つけてるの、ロンからの香水なのよ」

シリウス「ほう、どうりでいつもと違うと思った」

モリー「ロン……選んだはいいけど確かめていなかったのね、まったくじれったい」

ハニー「そうよね……クシュンッ。?」

シリウス「風邪かい、ハニー?そんな寒い格好をしているからだ、まったく。ほら」

ハニー「っ、あ、ありがとう。あの、シリウス。もしかしてこれが、あなたから……?」

シリウス「あー、違う違う。こんな私の着古したものなんてほしくないだろう、君も」

ハニー「そうでもないわ」

シリウス「? 変わってるな……で、私から君へのプレゼントだがね。直接渡したいから置いておかなかったんだ。晩餐のあと、いいかい?」

ハニー「っ、眠くてしかたないでしょうけれど、いいわ、そうしてあげる! あの、私、わたしも、その……」

シリウス「? なんだね」

ハニー「~~っ、なんでも、ないわ!その時に、えぇ。その時までには……勇気が出ていると、思うもの」

モリー「……まったくじれったい!!!」


325: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/07(火) 22:38:32.88 ID:pYkqxctl0
フレッド「おーやおや、クリスマスってのは家族の日なんじゃないのかねぇ」

ジョージ「そう言うなよ相棒、将来的には家族になるような輩なんだからさ」

モリー「メリー・クリスマス、フレッド、ジョージ。お前たち、『惚れ薬』的なものは作っていないの?プティングにしこんでやろうかしら、まったく」

フレッド「そのうち商品として扱っとくよおふくろ。ところで今年もセーターをありがとさん」

ジョージ「でもイニシャルはいらないって言ってるのに。間違えったりしないのにさ、僕らは」

グレッフォ「「グレッドとフォージさ」」

モリー「はいはいドヤ顔でありがとう。さっ、お前たち。それに微笑ましい人たちも。早く朝食にしてしまいますよ。今日はお父様のお見舞いに行きますからね」

ハニー「微笑ましい、って!?それは、私をみたら、その、頬が釣りあがるのは自然現象でしょうけれどねっ!えぇ!」

ロン「もちの僕さ。あー、そっか。パパんとこか……待ってくれよ、ママ!そんじゃクリスマス・ランチはどうなるんだい!?」

モリー「晩餐に回しますから心配しないの。なんです、ロン!お父様よりクリスマス・プティングの方が大事だって言うんですか!?」

ハニー「家族を大事にしない豚は嫌いよ?」

ロン「とんでもないよ!とんでも!ヒンヒン!パパに会えないくらいなら僕ぁ年明けまで絶食したほうがましだね!うん!」

ハーマイオニー「ハニーに嫌われるくらいなら、の間違いでしょあなた、もう……おじさまの傷、よくなったかしら」

モリー「毒をなんとかする魔法薬はみつかったから、あとは安静にしておけば、と言ってたわ。今日にも退院じゃなかしら……」

シリウス「モリー、提案だがね。ある本に『アニマル・セラピー』というものがあるとあったんだ。これは、読んで字の如く動物と触れ合うことで――」

ハーマイオニー「それは心のご病気の方に効くのよシリウス、どうにかしてここから出られないか画策しないで」

シリウス「……他にやることもないので本ばかり読んでいたんだ。トンクスが選んでくる本は面白いぞ」

ロン「マーチン・ミグズとか?」

シリウス「いや、一番笑ったのは『マグルでも分かる!賢い犬の飼い方』だな。間違いばかりだった」

リーマス「それは君が賢くないからではないのか」

シリウス「いきなりやってきてなんだ君はうるさいな」

328: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/07(火) 22:54:41.70 ID:pYkqxctl0
ハニー「リーマス!メリー・クリスマス!」

リーマス「やぁ、メリー・クリスマス。アーサーのところに行く護衛で来たんだが……ここはすっかり見違えたね。クリーチャーが重い腰をあげたのかい?」

シリウス「あのおいぼれには何も頼まない。私がやったのさ、客人を完璧に迎えるためにな」

リーマス「客人の部分にたった一人の名前でルビが見えるがね」

ハーマイオニー「そういえば、そのクリーチャーはどうしたの?私、彼にもプレゼントを渡そうとしたんだけど……」

ロン「お掃除計画表とかかい?」

ハーマイオニー「それならあなたの口から掃除させるわ。キルトよ、彼の寝室が少しでも明るくなればと思って」

シリウス「巣穴の間違いだろう? いなかったのかい、あいつは」

ハーマイオニー「そんな言い方をするならもっといい部屋をあてがってあげて頂戴!もう! えぇ、そこの納戸に姿はなかったわ」

シリウス「そうか。まぁ、上の階でコソコソしているんだろうさ」

フレッド「そういや最近見かけないな」

ジョージ「ここに来た晩っきり、かな」

ハニー「……シリウスが厨房から追い出したきり、ね」

シリウス「その程度でへこたれるとは思わないが、もしかすれば母のブルマにでもすがり付いて篭ってるのかもしれないな。そのまま乾燥用戸棚で干からびていれば、それはそれはいいクリスマス・プレゼントだ」

ハーマイオニー「シリウス!!!」

リーマス「言葉がすぎるよ、パッドフット。ハニーも聞いているんだ」

シリウス「おっと。すまないね、ハニー。ほんの冗談だ」

ハニー「……えぇ、分かってるわ……でも、シリウス。私たちがお父様のところに行っている間、クリーチャーのこと探していてくれる?お願いだから」

シリウス「はっは。ハニー、だから冗談だと言ったろう?君は素直だな」

ハニー「っ、頭は、なでなくて、いいから!もう!嫌な予感がするの、って、もう!!  そこ!ニヤニヤしないの!!!」

333: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/07(火) 23:06:14.26 ID:pYkqxctl0
聖マンゴ疾患病院 受付

ジニー「私が寝坊している間にそんなおね、ハニーの愛らしい姿が見れただなんて。なんてこと……!」

ハニー「私が愛らしいのは四六時中でしょう?ちがう?」

ジニー「あぁそうだったわおね、ハニー!私のおハニー!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「上品な言い方みたいになってるわ馴れて早く……クリスマスだっていうのに、病院は盛況ね」

ロン「むしろなんだかこないだより込み合ってるよな。ハニーの信望者はこんなもんじゃないけど」


魔女「鼻のあぁ(穴)に詰っはみはん(蜜柑)が、とれないんれすけども――」

受付「家庭内のいざこざ?ねぇねぇ家庭内のいざこざ?ざまぁみさらせ!!テメェで三人目だ!呪文性損傷!五階!メリー・クリスマス!!!次!」


フレッド「あーのヒステリー女、また患者にあたりちらしてら」

ジョージ「あの分じゃ昨日のイブの夜も仕事だったんだろうな」

モリー「お可哀想に。それで、リーマス?昨日の護衛任務はどうでした? トンクスと!二人での!」

リーマス「? あぁ、変わりなかったよ。強いて言えば、トンクスが少し元気がなかったな……マッド-アイ、何か知っているかい?」

ムーディ「……貴様がとんでもない鈍感者だというくらいだな」

リーマス「?」

ハニー「……トンクス」

ハーマイオニー「……今日の晩餐に顔を出したら慰めてあげましょう」

336: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/07(火) 23:26:51.90 ID:pYkqxctl0
病室

アーサー「あぁ……や、やぁみんな。メリー・クリスマス」

モリー「メリー・クリスマス。あなた、お加減はいかが?」

アーサー「あぁ、とってもいいさ!うん!」

ビル「あぁ、違いないね、パパ。っく、っふふ。やぁ、みんな。メリー・クリスマス。ジニー、またでかくなったな」

ジニー「メリー・クリスマス!うん、今にビルを追い抜いてあげるわ!」

ビル「そりゃいい、変な虫がつかなくてすむかもな」

フレッド「メリクリビル兄ぃ。残念だけどその心配するには遅すぎたぜ、一年ほどさ」

ジョージ「それよりデラクール嬢を放っておいていいのかい?え?クリスマスなのに」

ビル「おいなんだよそれ詳しく……ああ、フラーか。安心しろよ、昨日は放っておくどころかつきっきりだったからな」

モリー「ビル!どういうことです!?母さん聞いてませんよ!?!?」

ビル「おっと、つまり、仕事で一緒だったって意味さ、うん、大意はね」

ハニー「私のお友達と仲が良いようで助かるわ、ビル。リーマスにも見習って欲しいくらい」

リーマス「……ハニー、期待を裏切ってすまないんだが、私の体質ではグリンゴッツに務めることは」

ハニー「そういう意味じゃなくって」

モリー「どこもかしこも!まったく……あら?あなた、包帯を替えるのは明日じゃありませんでした?」

アーサー「あー、そうだ、ハニー!素晴らしいプレゼントをありがとう!ねじ回しに、銅線!これがあれば――」

モリー「何を作るおつもりかも気になりますけど、アーサー。こちらを向きなさい。向かせますよ」

アーサー「……いや、うん。なんでも……あの」

モリー「……」

アーサー「母さん、母さんや。その顔はやめよう、うん。あの、子供たちが見てるから、ほら、怯えてはいけない」

ロン「安心してよ、パパ。ハーマイオニーで慣れてるからさ」

ハーマイオニー「……」

ロン「!?ま、ママが増えた!?マーリンの髭!」

338: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/07(火) 23:40:03.29 ID:pYkqxctl0
アーサー「あー、つまりだね。心配しないでくれ、その、研修医のオーガスタスが少し思いついたんだ、その――大変興味深い、補助医療を」

モリー「……」

アーサー「それは、つまり……旧来のマグル医療ではあるんだが……実に効果的であると認められていて……縫合、と呼ばれるものなんだが――」

モリー「あなたのおっしゃりたいのは、つまり。せっかく治る兆しがみえた傷に、マグル療法でバカなことをやってみた、そういうわけ?」

アーサー「モリー、モリーや、モリウォブル、落ち着きなさい。ほら、マグル出身のハーマイオニーもいるんだ、そんな風に言っては、ほら」

ハーマイオニー「気にしないわ、おじさん」

アーサー「そ、そうかい?それは、その、よかった。いや、うん、よくはないが、あのだね。たしかに、真に遺憾ながらこの手の傷には効果がなかったが――」

モリー「つ ま り ?」

アーサー「あー――ぬ、縫い合わせることは、できず、その……」

モリー「弄繰り回した結果酷い出血をして、包帯を変えなくてはいけない羽目になった!なんて、言うのではないでしょうね!?アーサー、わたしは自分の夫がそこまでおバカさんだとは――――」


リーマス「……おや、あれがアーサーの言っていた青年かな――私は少し彼と話をしてくるよ」

ビル「うん、そうしてやってほしいな。僕は、少しのどが渇いたしお茶にでも行って来よう。お前たちは?」

フレッド「おふくろが誰かを怒鳴るのは気分いいけどさ、まったく」

ジョージ「親父の面子のためにそうしようか、世話のかかる両親だ」

ハニー「あなたたちだけには言われたくないと思うわ、それ」


342: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/07(火) 23:57:50.47 ID:pYkqxctl0
ジニー「パパらしいわ、ほんとにもう。傷を縫い合わせる、だなんて!」

ロン「ほんとだよな、破れたテディベアじゃあるまいし。蜘蛛とかで」

ハーマイオニー「でもね、魔法の傷以外では上手くいくのよ?」

ハニー「……」

ハーマイオニー「きっと、出血毒以外にもなにか特殊な毒があったのね。糸を溶かしてしまうもの、とか。限定的だけど……ハニー?」

ハニー「やっぱりどう考えても、クリーチャーがいなくなったのはあの晩だわ……『出て行け』ってシリウスが言ってから」

ロン「おぉっと……ハニー、おーい」

ハニー「……服をあげるような真似はしていない、けれど、ドビーの時のようにやろうと思えばいつだって屋敷しもべ妖精は……仕えてる家の外に出ることだって、できるはず」

ジニー「おね、ハニー?あの、そっちはまだ五階よ!?ハニー!?おハニー!?」

ハーマイオニー「だからそれ……あー」

ロン「考え事モードに入っちゃったねありゃ……ビル、フレッドジョージ、先行っててくれよ」

フレッド「任された。お前たちの分までしっかりとお茶を飲んでおいてやろう」

ジョージ「ハニーの豚やら何やらはせいぜい姫様の強がりを呑んでてやりなよ」

ロン「ハニー以外が豚って言うなよ!」

344: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 00:21:23.28 ID:vbiGWYVM0
ハニー「……とにかく、クリーチャー本人に――?ここ、どこかしら」

ロン「やぁハニーお帰り。ここは五階『呪文性損傷』の病棟だね!ヒンヒン!」

ハニー「あら……なぁに?この私をちゃんと先導できなかったというの?出来ない豚ね、もう」

ハーマイオニー「八つ当たりはよしなさいよ、もう。さぁ、三人に追いつき――嘘でしょう?」

「HAHAHAHA!」

ジニー「? どうしたの、ハーマ――なにこの声……えぇっ!?」

「HAHAHAHAHAHA!」

ロン「……あのドアのガラスにへばりついてる、ライラック色の部屋着……金髪に、腹立つくらい白い歯……おいおい、なんてこった」

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」

ハニー「……ロック、ハート!?」

ガチャッ

ロックハート「こんにちは!!やぁやぁこんにちは!!可愛いバンビーナちゃんたち!こんにちは!」

ロックハート「私に会いにきたんでしょう?知ってますよ!HAHAHAHA!何せ私ですからねっ!サインをあげましょう!」

ハーマイオニー「あっ、あー、あの――こん」

ロックハート「サインがほしいんでしょう!知ってますよ!何せ私に合った人はみなそう言いますからね!」

ロン「……あー、っと。おい、この――」

ロックハート「サイン!そう!私はしくよろにサインが上手いんです!もう続け字を書けるようになりましたからねっ」

ロックハート「何せ私は――誰だっけ。まぁ、よろしい!私が私である理由!それは鏡をみればしくよろですよね!えぇそうですとも!イケメンの存在理由なんてそれだけで、しくよろだよね」パチンッミ☆



ロン「……久々に言っていいかい。 ウゼェエエエエエ髭エエエエエEEEEEEEEeeeeeeeeeee!!!」

ジニー「……まっっったく変わってないわね」

ハーマイオニー「さ、最後は少し大人しくなっていたように、思ったのだけど」

ハニー「……治療で中途半端に戻ってしまったのかも、しれないわ」

ロックハート「HAHAHAHAHAHAHAHAHA!はーーーっHAHAHAHAHAHAHA……おや?君は――」

ハニー「……ハァイ、ロックハートせんせ」

ロックハート「どこかで、会って……せんせい?」

ハニー「えぇ、少しだけだけれど。あなたは私たちの先生をしていたのよ」

ロックハート「……」

ロックハート「なるほどっ!!!分かりましたよ、あなたたちの知っていることは全て私が教えたにちがいしくよろありませんねっ!何せ僕は……イケメンだからねっ!」パチンッ☆

ロン「うるせぇヒンヒン言ってろこんにゃろう!ヒンヒン!ヒン!!!」

ロックハート「……うん?な、んだ……頭が」

ロン「!よし、一時はよく分からなくてもヒンヒン言ってただけあるな!お前もやっぱり豚の――」

ロックハート「すまないね君、私はイケメンだから……可愛いバンビーナ以外の君みたいなもてないフェイスが近づくと……頭痛がするんだ。あっちでしくよろしてくれるかい?サインはあげよう、ティッシュとかでいいかな?」

ロン「……再入院させるぞこんにゃろう!!!マーリンの髭!!!!!!」

348: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 00:41:33.16 ID:vbiGWYVM0
ロックハートの病室

癒者「よかったわね、ギルデロイ!クリスマスにこんなに、お客様が来てくれるなんて!」

ロックハート「HAHAHAHAHA!僕だからね、このくらいはしくよろだよねっ」

癒者「キャー!ギルデロイカッコイーーーーーー!」

ロン「あー、あの、僕たち別にこいつに会いに……や、なんでもありません」

ジニー「……あんないい顔で言われたら否定できないわ」

ロックハート「写真は足りるかな?この子達にサインをあげてたんだ!ブロマイドをたっくさん用意しなくっちゃ」

癒者「キャーー!ギルデロイシンセツシンノカタマリーー!えぇ、えぇ、その前にギルデロイ。お昼食の後の薬を飲みましょう。はいどうぞ……ギルデロイのファンなの?え?」

ハーマイオニー「あー……そんなようなもの、です」

ロン「君は頷いちまっていいと思うよ、力いっぱいね」

癒者「ありがたいわ。二、三年前までこの人はとっっても有名だったんだけど、入院してから一度も『家族』が現れないの。こういう症状はこの人のことを知ってる人が近くにいるのが一番なのに……」

ハニー「……」

癒者「でもね、サインをしたがるでしょう?これはきっと昔の記憶が段々と戻っている証拠だと私たちは考えているんですよ。あぁ、もっといてもまったく構わないのだけどね!可愛いギルデロイ坊や!」

ロックハート「ぷはっ!うん?なんだって?僕がイケメン?HAHAHAHAHA!言われなくともしくよろですよ!僕だからね!」

癒者「キャーー!ギルデロイキダイノイケメーーーン!はいはい、あとでサインを頂戴な。あなたたち、ここでギルデロイとお話していてくださる?私はクリスマス・プレゼントを配りきってしまわないと――さぁ、さぁ、プレデリック。鉢植えに、素敵なカレンダーが届いたわよ」

ハニー「……せん、あー……ロックハートさん?」

ロックハート「なんです、バンビーナちゃん!あぁ、君たちへのサインはあとにしくよろしてくれるかな?僕は先にファンレターのお返事をかかないといけませんからね!」

ロン「ファンレター、だって?」

ロックハート「えぇ、えぇ!私のとこにはたっくさん、ほぅら、こんなにお手紙が届くんですよ!なんでだかさっぱりだけど。きっと僕がイケメンだからなんだろうね――ふふっ、グラディス・ガージョンには続け字でサインをあげよう」

ジニー「……物好きもいたものね」

ロン「おい、ハーマイオニー。まさかビッキーへの一大長編に隠れてこいつにも出してやしないだろうな」

ハーマイオニー「……ここは長期入院病棟みたいね。おじさまの病室より随分と私物が多いわ」

ロン「おい」

351: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 00:56:11.16 ID:vbiGWYVM0
ハニー「さっきの癒者、この人には家族が現れない、って言ってたわ」

ロン「そりゃ、こいつの恥ずかしい数々が全くの嘘八百だったってばれっちまってるからね」

ハニー「そういうことじゃなくって……そうだとしても、この人の知人が一人も出てこないのは、おかしいでしょう?」

ハーマイオニー「……言われてみれば、あの、あー、この人が一番有名だった時も」

ロン「君がとち狂ってた時期がなんだって?」

ハーマイオニー「うるさいわ。ほら、あんなに生い立ちも、あー、捏造していたのに……この人の過去を暴露する人、誰もいなかったわ」

ジニー「……うそ臭い、とはみーんな思ってたけど、そういえばそうね」

ハニー「……ねぇ、ロックハートさん?」

ロックハート「HAHAHAHAHA!なんです?そうですね、僕のサインが欲しいのはもっともですがすこーしだけお待ちなさいバンビーナちゃん!すぐに素敵なサインをあげますからね!」パチンッミ☆

ハニー「……」

ハニー「家族や友達も、全部。捨てたの?」

ロックハート「……?」

ハニー「……有名になるためにどんな努力だってしてきた、って、あなた言ってたわね……あの時は聞き流していたけれど」

ハニー「……そうなの? 得意な、自分が唯一誇れる『忘却術』で――」

ロックハート「……」

ハニー「自分のことを知っている人の中から……本当の自分を消したの?そこまで、して――」

ロックハート「バンビーナちゃん、どうしたんです!?HAHAHAHAHAHAHA!僕の前にいるときは笑顔でなくっちゃ!しくよろじゃない!まーったくしくよろじゃありませんよそんな顔は!せっかく僕には負けるけどいいお顔をしているっていうのに!」

ロン「ふざけてるところじゃないけどふざけんな」

355: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 01:18:50.85 ID:vbiGWYVM0
ハニー「……無理そうね。今のこの人に聞いたって」

ハニー「……きっと戻りかけているっていうのは、本当だわ。でも、もしも戻ったときに」

ハニー「……自分のした取り返しのつかないことや、今の世の中で自分がどう思われてるか、本能的に感じてるんでしょうね」

ハニー「だから、戻らない。戻りたいと思ってない」

ハニー「……」

ハニー「そんなことは、許されないわ」

ハーマイオニー「……ハニー?」

ハニー「ハーマイオニー、鞄を見せて」

ハーマイオニー「……嫌だって言ったら?」

ハニー「全力で口を塞いでその間にロンに取らせるわ」

ハーマイオニー「……分かった、分かったわよ。はい」

ドサドサッ、ドサッ

ロン「うわっ、なんだいこれ。おいおいハーマイオニー、なんだか嫌に馬鹿でかい、学校で使うような鞄を持ってるなって思ったら……なんだよこの量の本は」

ジニー「それにこれ……ロックハートの本?」

ハーマイオニー「……あー、実は偶然、この人がここに入院してる、って知ってしまって」

ロン「そりゃ随分前からなんだろうね。それで?」

ハーマイオニー「……機会が、その、あれば。記憶が戻る手助けに、って。渡そうと思って」

ハニー「いい読みだわ。ここの人たちは、刺激が強すぎるからまだ読ませていないみたい。さすが私のハーマイオニーね……さぁ、ロックハート」

ロックハート「HAHAHA!なんだい、しくよろな僕に贈り物かい!?愛から何から受け付けましょう!」パチンッミ☆

ハニー「えぇ、これを。この私から、かつて少しでも豚だったあなたにメリー・クリスマスよ」

ロックハート「HAHAHAHAHA!随分と大きい色紙で――あれ?これ――わた、し?」

ハニー「そう、あなたよ。かつてのあなた……行きましょう、みんな」

ロックハート「これは――私、僕は、一体――どうしてこんなことを?だって僕は――僕は、なんだ?」

ハニー「さぁ。それを聞くのも、教えてあげるのも――今のあなたになんか、してやらないわ」

ハニー「ギルデロイ。自分が何者かしっかり思い出したら、私にヒンヒン鳴かせてあげる。じゃあね」

ガチャッ

バタンッ





癒者「さぁさ、可愛い坊や!あら、お友達は――ぎ、ギルデロイ!?それ……」

ギルデロイ「……」

ペラッ、ペラッ

癒者「……こんなに集中して、何かをするなんて、まぁ……」

ギルデロイ「――僕は――私は――」

ペラッ、ペラッ

ギルデロイ「こんなことを――どんな、ことを――?」

ギルデロイ「そんな訳は――だって、僕――」

ギルデロイ「僕は――誰なんだろう。私は――誰?」

ペラッ ペラッ
 ペラッ……


359: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 01:40:28.82 ID:vbiGWYVM0
廊下

ジニー「いいのかしら、癒者のことわりなくあんな――あっ!おね、ハニーのやったことに意見なんてしないけど!ヒンヒン!」

ハニー「いいのよ正直に言って。そうね――あんまりよくは、ないと思うわ」

ロン「そんなことないよハニー!君のやることはぜーんぶ正解だよ!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「あー、自分でやろうと思っておいてなんだけど――あの状態のあの人に渡すべきでは、なかったようにも思うわ」

ハニー「それでも、あんな風に自分から逃げるなんて卑怯よ。ただでさえ――自分を随分と裏切ってるでしょうに」

ロン「そうだねハニー。君は自分のしたいように生きてるからね、うん――慈悲深いなぁ、君は」

ハニー「感銘を受けたかしら?」

ロン「受けっぱなしだよそんなの、もちの――アイタッ!マーリンの髭!」

ネビル「イタッ!ご、ごめんなさい!あの僕前をみてなか……あっ!?」

ロン「あー、いいよ気にするなよ。僕の方こそ後ろ向きで歩いてて角を……あれっ!?ネビル!ネビルじゃないか!さっすが君は豚の中の漢だね!偶然をも引き寄せてハニーのとこに馳せ参ずるなんて!」

ハニー「……っ、ハァイネビル!それじゃ、私たち急いでるから――」

老婆「おやおや、ネビル。お友達かえ……おう、おう!これはこれは」

ネビル「……僕の、ばあちゃんだよ。あの、ばあちゃん。こっちは……」

ネビル祖母「紹介は結構!もちろん存じてますよ、ハニー・ポッターさん。ネビルはあなたのことを大変褒めていましてね。さぁ、握手を」

ハニー「えぇ、光栄ですわ。っ、力がお強いのね、ミセス・ロングボトム」

ネビル「……」

ネビル祖母「そえに、あなたがたはウィーズリー家の?えぇ、えぇ、ご両親を存じています。立派なお二人、それはもう立派な」

ロン「そりゃどうも。えーっと、二人も喜びます」

ジニー「は、はじめまして。うわっ、ほんと、力強いわ」

ネビル祖母「それに、あなたがハーマイオニー・グレンジャーだということも。何度もネビルが授業で行き詰っているのを助けてくれたそうで」

ハーマイオニー「友達ですから、当然です、ミセス」

ネビル祖母「えぇ、えぇ。いいお友達に恵まれたようでよかった。この子はいい子で、だけどもどうにも才能がなく――そこにいる父親からはすこしも受け継ぎませんでした」

ネビル「……」

ロン「そこ、って……えっ!?ネビル、君のお父さんってここにいるのかい!?」

ハニー「ロン、私猛烈にのどが渇いたからスニジェット速で六階から――」

ネビル祖母「なんたることです?ネビル、お前は両親のことをお友達に話していないのですか?えっ?」

ネビル「……ううん。うん、話して、ないよ……ばあちゃん」

ハニー「あー……ミセス?私たち、別に――」

ネビル祖母「大方お前は、あのハニー・ポッターの前でそのようなことを話すのは恥ずかしいと思ったのでしょう。何を恥じることがあるのです!いいですか、ネビル!お前は二人を誇りに思うべきです!あの二人が――」

ハニー「ミセス!!」

ネビル祖母「『例のあの人』の配下に拷問され、正気を失ったことを!」

ジニー「……」

ハーマイオニー「……」

ロン「……」

ハニー「……」

ネビル「…………僕は恥ずかしくなんて、思ってないよ。ばあちゃん」

362: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 01:55:24.82 ID:vbiGWYVM0
ネビル祖母「当たり前です。私の息子と嫁は、お前の両親はとても優秀でした」

ネビル「……」

ネビル祖母「二人とも『闇払い』だったのですよ。魔法使いの間では、非常な尊敬を集めていて」

ハニー「……」

ネビル祖母「えぇ、えぇ。ミス・ポッター。あなたのご両親に負けないほど。それはもう二人とも才能豊か――おや」

ネビル「……っ」

ギィィィッ……

ネビル祖母「あぁ、アリス……どうしたのかえ?外に出てはいけないだろう?」

アリス「――――」

ネビル祖母「またこけたかえ?それに、髪も――あぁ、また。さぁネビル、なんでもいいから、受け取っておあげ」

ネビル「うん。ママ、今日は何をくれるの?」

アリス「――――」

ポトッ

ネビル「うわぁ――『ドルーブルの風船ガム』だ!僕、これ、大好き――ありがとう、ママ」

アリス「――――♪」

フラッ、フラ、フラッ

ネビル祖母「病室に行くのかえ?どれ、私たちもついて行ってやらないと。みなさん、また。ネビル、その紙クズはどこかに捨てておしまい、もう今までの分でお前の部屋の壁紙が貼れるほどでしょう」

ネビル「うん、ばあちゃん――っ」

ジニー「……」

ハーマイオニー「……」

ロン「……」

ハニー「……ネビル」

ネビル「……っははは。あのさ、笑っていいんだよ。ママったら、おっかしいだろ。だけどね、僕の――僕は本当に、二人が誇らしいんだ。自慢の家族だよ――」

ハニー「っ、ネビル……!」

ネビル「ごめんよ、ハニー!  その腕、とっても嬉しい。だけどさ」



ネビル「僕、二人に会う時は絶対に笑顔でいるって決めてるんだ。泣いた跡なんて、見せられ、ないよ。それじゃ……メリー・クリスマス」


バタンッ


366: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 02:06:29.83 ID:vbiGWYVM0
ハニー「……」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ジニー「……知らな、ぐすっ。知らなかったわ」

ロン「僕もさ。一度だって……当たり前だけど」

ハーマイオニー「私も……」

ハニー「……私は、知ってたわ。ずっと、黙っていたけれど」

ロン「あぁ、何せ君だからね――ネビルのことを思って、僕らには言わないでいてくれたんだろ?」

ハニー「……先学期、昔の裁判の記憶を見た時に。ベラトリクス・レストレンジたちは、二人に『磔の呪い』を使った、って」

ハーマイオニー「あぁ――だから、だからネビルは、あの時」

ハニー「……このことは、もうネビルに話さないわ。いいわね」

ジニー「うん。その方がいいと思う……自然に接するわ」

ロン「もちのロンさ。ほんと、ネビルって――漢だよな。豚、じゃなくっても」

ハーマイオニー「……レストレンジ。あの人、ヴォルデモート、は――ほんっとに」

ハニー「……えぇ。こんな日にあいつの事なんて考えたくないけれど……いつか絶対、お辞儀――跪かせてやるんだから。ヴォルデモート……!」




ブォオオオオオオ!ブォォォオオオオオオオオ!!


ロン「……披露してやがる。こっちのタイミングもばっちりでほんっと、ネビル!君は漢だね、漢!豚の中で!」

382: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 18:08:11.42 ID:vbiGWYVM0
グリモールド・プレイス

モリー「それじゃ、みんな改めて。メリー・クリスマス!」

メリー・クリスマス!

トンクス「七面鳥食べないと、クリスマスを過ごした気分になれないよね。いやー、ありつけてよかった!」

ハニー「お昼間は任務で忙しかったのかしら、トンクス?」

トンクス「ん、まぁね……あー!いやいや!うん、ちょこーっと魔法省のお仕事でドタバタしただけだよ!ほんとほんと、うん!任務?あっはっは、なにがなんやら!はっ、ふっ、へっ!だわ!」

リーマス「昨日は調子が悪かったようだが、トンクス。今日にまで支障がでているのなら、少し休んだほうがいいよ」

トンクス「あ、ありがとう。どの口が言うんだこんにゃろうとは思うけど」

リーマス「?」

ロン「ハーマイオニー、君、食事の時くらい本から手ぇ離せないのかい?え?三度の飯より、どころか食べてても読むなんて、君こそヤギを目指せるんじゃないのかな、まったく」

ハーマイオニー「ハニーがくれた『新数霊術理論』の本、本当にためになるのよ。寝る間だって惜しむわ」

ハニー「そう、それは光栄だけれど、残念ね……」

ハーマイオニー「撤回。やっぱり寝る時は読まないことにします、えぇ」

ジニー「どうせ寝れないのでしょうけどね!いいなぁ!ヒンヒン!」

ロン「そう言うなよジニー、僕らはハニーからもらったトナカイ用のベルだけで十分じゃぁないか。首輪につけられるんだぜ?あぁハニー!君の鈴を転がしたような素晴らしい声にはまけるけど精一杯リンリン鳴らすよ!リンヒン!」

ハニー「えぇ、そうね。サンタの方が引っ張りたくなるくらい立派に勤め上げなさい」

フレッド「聖夜が過ぎても我らが女王様の豚共は変わらないよな、まったくさ」

ジョージ「変わらないというか変わる気がないからなぁ。今に新年だってのに」

シリウス「新年……そうか。君達は年が明ければすぐ……いや、いや!何のことだか!とにかく今日はめでたい日だ、うん!私にとってはこんなに楽しいクリスマスは十何年ぶりだ!楽しくやろう!」

ハニー「……シリウス。えぇ、そうよね。皆で集まれて、本当に良かったわ」

モリー「ほんと、シリウス。あなたには今回お世話になりっぱなしだったわ。さ、ワインをもう一杯!」

シリウス「いいのかい?いやいや、私は、そうだな。ここの家主としての責任を――」



ガチャッ

「おやおや――どうやらようやく、何か少しでも役にたてて舞い上がっているところでしたかな、なるほど。どうりで我輩が屋敷に入っても気づかぬわけだ」

ハニー「! この声!」

シリウス「……君に招待状を送った覚えはない。スネイプ、何の用だ」

スネイプ「我輩とて、出来れば訪れたくはない。ブラック、賢い番犬でも飼えばどうですかな――そうすれば貴様も戯れる相手ができよう」

384: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 18:26:35.78 ID:vbiGWYVM0
シリウス「嫌味と吐き気がするような声しか口から出せないなら、帰ってもらおうか」

スネイプ「我輩とて用事を済ませて少しでも早く立ち去りたいと思っている。無駄につっかかり時間を浪費させているのはそちらだろう」

リーマス「二人とも、落ち着いて。やぁ、セブルス。用事というのは、私の薬のことかな?今月分は確かに受け取ったはずだと思うけどね。君からのふくろう便で」

スネイプ「そうではない……ふくろうと言えば、我輩がここに入る時と同じく、このふくろうがこれを運んで着ましたぞ。誰宛とは書かれていないが――様子を見るに、送り返されてきたようですな」

モリー「あっ……それ、は……」

フレッド「おんや?これってママが僕らに送ったプレゼントの包み紙とおんなじ……おいまさか」

ジョージ「……ママが、パースの野郎に、って。送ったセーターだ……あいつ、開けてもいねぇ」

モリー「……カードは。何か、カードくらい……あぁ」

ジニー「ママ……あの、石頭!」

ロン「よく言ったぜジニー。パーシーめ、あんにゃろ。パパの容態一つ聞きやしないのか……」

フレッド「まったく、やってくれるぜあの堅物め……なぁママ、気にすんなよ」

ジョージ「そうそう、あいつなんてばかでっかいネズミのクソの山さ、ほんと」

モリー「うぅっ、ぅぅ……パーシー……パーシー……!」

リーマス「……モリー、大丈夫だ。パーシーもいつか気づく、きっとだ」

トンクス「そ、そうだよ!その時目一杯、セーターどころか全身分おしつけてやろっ!ねっ!私、手伝うからさ!」

シリウス「……それで、スネイプ。お前はせっかくのお祝いムードを台無しにしにきた、そういうことか?え?まさにお前らしい役回りだな」

スネイプ「違うと言っている。ポッター、我輩は君に用事があってここに来た」

ハニー「……私?」

ハーマイオニー「わざわざ、先生が休暇中に……まさか!ハニーのレポートが『T』を……って、ロンじゃあるまいし、ありえないわね」

ロン「うっさいなマー髭」

388: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 18:46:56.38 ID:vbiGWYVM0
シリウス「冗談はよせ。君が、この子に?なんだ?逆さづりにする呪いでもプレゼントしようというのか?」

スネイプ「貴様らじゃあるまいし、そんな趣味の悪い事はせん。黙っていろ」

ハニー「?」

シリウス「あー、君は知らなくていい。だったら何だと言うんだ、答えてもらうぞ。まさかお前、この子に――」

スネイプ「ダンブルドアのご命令だ」

シリウス「……」

スネイプ「なるほど、最初からこれだけ伝えればよかったのですかな。ダンブルドアの命ともなれば、いくら、あー?ここの主たる君にも指図はできまい。よろしいかな?ブラック殿?」

シリウス「……いいだろう。さぁ、話すといい。そうしたらさっさと――」

スネイプ「悪いがおおっぴらにおいそれと話すことではない。あちらの部屋を使ってもいいでしょうな。ポッター、来い――」

シリウス「この家で命令するのはやめてもらうか、君もご存知の通り今はここは私の家なのでね!」

スネイプ「……」

シリウス「……」

リーマス「……何をグダグダと。さぁ、ハニー。セブルスについて行きなさい」

ハニー「えぇ、そうしてあげるわ。あー……スネイプ、先生。それじゃ――」

シリウス「私も一緒に聞くぞ、いいな?」

スネイプ「……ダンブルドアは我輩にポッターと話すようにと」

シリウス「それにダンブルドアはよーく知っている、私はこの子の後見人だ。私が聞いていたとして、利益以外は何も生じない。それに、犯罪を未然に防ぐ結果になるかもしれないしな。ヤドリギに変な気を起こした●●三十路が何をしでかすか」

スネイプ「黙れブラック。犯罪だと?貴様はこれまでのご自分の行動を省みるということを少しはしてみればどうだ、我輩はダンブルドアから聞いているぞなんだ貴様はいや違うあれはリリーではないがなんなんだ貴様違うあれはリリーではあれはリリーではないのだあれは――」

シリウス「おぉっとスニベリー、なんだって?今ご自分のことを棚どころか屋根裏部屋までぶち上げる音が聞こえたが、それはどういう意味か左腕におありのカッコイイ(笑)タトゥーを見ながらもう一回――」

リーマス「ハニー、少しだけ待てるかい。さぁ三十路ども、僕の服をサンタクロース色に染めてくれる覚悟はあるんだろうね」

392: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 19:03:49.36 ID:vbiGWYVM0
空き部屋

スネイプ「……」

シリウス「……」

ハニー「……えぇっと。こんなに長いテーブルの端と端だと、話しづらいのではないかしら」

シリウス「いいや、ハニー。こいつと私にとっては適当な距離だ」

スネイプ「まだ足りん。間にさらに三メートルの箒を挟んでいたとしても足りませんな」

シリウス「あぁ、君の口がまだ臭うしな、たまには同意してやろう」

ハニー「……まだ続けるようなら、リーマスを」

スネイプ「それには及ばん。座るんだ、ポッター」

シリウス「命令するなと言っている。ハニー、さぁ。私の隣にかけなさい」

ハニー「えぇ、そうしてあげるわ」

スネイプ「……随分と甘やかしておいでのようだ。いや、と言うよりはあなたは少しでもその子に関わっていたいのですかな?」

シリウス「何を言い出すかと思えば。当然だ、私はこの子の後見人で、それに家族なのだから」

スネイプ「なるほど、なるほど。そうすることで、騎士団にとってなんの役に立っていないという負い目から逃げようというわけだ。尻尾を巻いて――」

ハニー「シリウスの侮辱を続けるつもりなら、私、すぐに寝室に引き上げるわよ。それで、フィニアスに『スネイプ教授は伝言一つこなせなかったとダンブルドアへ伝えなさい』って、言ってあげるけれど」

スネイプ「……」

ハニー「シリウスも、早く終わってしまったほうがいいでしょう?用件を伝えて、先生」

スネイプ「……反抗的な態度と目にグリフィンドールから」

ハニー「お生憎様、いまは学期中じゃないわよこの●●教師!」

スネイプ「黙れ!」

シリウス「ハニー!ど、●●なんてそんな言葉どこで覚えた!?」

スネイプ「貴様もさっき言っていただろう黙れ!!」

393: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 19:29:56.70 ID:vbiGWYVM0
スネイプ「……用件に移っていいですかな」

ハニー「さっきから私はそう言っているのだけれど」

スネイプ「そうでもなかろうが、これだから……ゴホン。ポッター、校長は来学期に君が『閉心術』を学ぶことをお望みだ」

ハニー「……閉、なんですって?」

スネイプ「……ふんっ、学業が少し優秀とはいえ、所詮は学生でしたかな?ポッター、閉 心 術、だ。繰り返せ、へーい、しーん――」

シリウス「一年生の時からドップリベタベタな誰かさんの違って極めて健やかなハニーはまだ聞き覚えがなくて当然だろう。君はそれでも教師か?え?」

スネイプ「……我輩は見聞を深めさせようと思ったまでだ」

ハニー「『閉心術』、はい、覚えたわ。続けて頂戴……それは、どういうものなの、先生」

スネイプ「外部からの侵入に対して心を防衛する魔法だ。ほとんど知られていない分野ではあるが、非常に役にたつ」

ハニー「……外部からの、侵入……ダンブルドアが、それを私が身につけるべきと、判断したの?」

スネイプ「そうだ。一週間に一度の個人授業となる。他の生徒にも教師にも誰にも、何をしているのかは言わないように。特にドローレス・アンブリッジには」

ハニー「……それは、当然だわ。えぇ、そうしましょう。それで、個人授業をするのは、やっぱり……ダンブル――」

スネイプ「我輩だ」

ハニー「…………はっ?」

スネイプ「我輩がその個人授業を受け持つ。毎週月曜夕方六時、よいな?」

シリウス「待て、どうしてダンブルドアが教えない!?よりによって、よりによってどうして君が!」

スネイプ「我輩とてやりたいわけではない。これは校長の特権だろう――喜ばしくもない仕事を我々に押し付ける、というのは」

シリウス「……あぁ、まぁ、うん。一世紀に一度は君の言うことに同意してやろう――それでもだ!君が……ハニーだって、嫌だろう!?え!?」

ハニー「……それはもう、私が何をしたというの、と、思うけれど……これは」

スネイプ「ダンブルドアの決定だ」

ハニー「……」

シリウス「……あの人は一体何を考えてるんだ!!!!こんなことが、許されるなら!私をグリフィンドールの番犬につける案だって通していいだろう!!!」

ハニー「! え、餌は毎日、手づくりするわ!」

スネイプ「茶番が始まるならばそろそろ失礼させてもらいましょうかな」

398: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 20:02:13.30 ID:vbiGWYVM0
シリウス「……待て」

スネイプ「何だ。我輩は君と違って非常に忙しい。すでにかなりの時間を浪費している。手短にお願いしよう」

シリウス「ならば要点だけ伝える。もしも君が『閉心術』の授業を悪用して、この子を辛い目にあわせたら。私が黙っていないぞ。いいな」

ハニー「……」

スネイプ「泣かせるねぇ。しかし、君もお気づきの通り。ポッターは父親そっくりだ、そうだろう?」

シリウス「君の中ではそうなのだろうな。何が言いたい」

スネイプ「つまり、こやつの傲慢さときたら。我輩が少し心をつついたところで、どうにも――」

バンッッ!!!!

ハニー「っ!シリウス!!」

シリウス「それは宣戦布告と受け取るぞ。貴様は今、私のハニーに向かって『危害を加える』と言ったんだ」

スネイプ「おや、おや、おや。監獄に収容され畜生の姿になって長いと、どうやら人の言葉まで分からなくなってくるようだ。我輩は一言もそんなことは申していませんが?」

シリウス「警告したはずだぞ、スニベルス」

ハニー「シリウス、シリウス、止まって!ダメ!杖を、下ろして!」

シリウス「ダンブルドアが貴様は改心したと思っていようが、知ったことじゃない。私の方がよくわかっている――貴様がどれだけ下衆で、どれだけ見下げ果てるべき人間か――」

スネイプ「そう思うならばダンブルドアに直接進言してみてはどうだ?それとも、なにかね。母親の家に六ヶ月も引きこもる畜生、おっと、失礼、人間の言葉は真剣にとりあう価値もないと思っておいでなのか」

シリウス「仲良しのルシウス・マルフォイの様子はどうだ?え?さぞかし喜んでいるだろう、自分の尻尾をふる体の良い駒がホグワーツにいるのだから」

スネイプ「尻尾を振る、そういえば君はこのことくらいは連絡を受けていますかな? 学期始めに君が遠足に出かけた様子をルシウス・マルフォイが目撃し、正体に気づいたと――ブラック、よくやったな?うまい考えだ」

シリウス「何が言いたい、ネチネチと腹の立つ奴だ」

スネイプ「つまり、これで君は完全に隠れ家からでなくてよくなったわけだ。完璧な口実だ、誰も君を責める者はいない。たとえ何もせずビクビクとここに閉じこもっていても――」

スパァーーーーーーーーーーーン!!

シリウス「……」

スネイプ「」

ドサッ

ハニー「……シリウスがどれだけここにいるのが、苦しいか!何も知らないくせに!!!!!何も!!!!この、この――!!!!」

シリウス「ハニー、ストップ。待ってくれ、うん、気持ちはありがたい。でもスニベリーはほら、ビンタですでにのびて、待つんだ!杖、杖を下ろすんだハニー!ストーーーーーーップ!!」



リーマス「……なんて状況だい、これは」

399: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 20:15:02.73 ID:vbiGWYVM0
ハニー「ふーーっ、ふーーっ、あの、ふーっ、●●!!」

シリウス「よしよし、うん、あいつは酷いやつだ。うん」

リーマス「……ハニーのことは頼んだよ?私は、セブルスをどこか空いている寝室に運んでくるからね」

シリウス「外にでも放っておけ、そんなやつ」

リーマス「凍死するよ、何月だと思っているんだ。『モビリコーパス、体よ浮け』」

スネイプ「」フワーッ

ハニー「その、ままっ!大気圏外にでも飛んでいってしまえばいいわ!」

リーマス「焼死するよ、ハニー。落ち着いたらモリーのクリスマス・プティングを食べに来なさい。またあとで」

バタンッ

ハニー「なによ、スネイプ、あいつ……!シリウス!よく我慢できたわね!」

シリウス「いやまぁ、それまでは君が私とあいつの間に立っていた上に、沸騰する寸前で君が奴にノーモーションビンタをしてくれたものだからね。我慢というか、必然というか」

ハニー「信じられないわ!人の事を、あそこまでコケにできるなんて!」

シリウス「あー……まぁ、私も事前に煽りすぎていたという点が少なからずある。さぁ、ハニー。落ち着きなさい。深呼吸だ」

ハニー「ふーっ、ふーっ、えぇ。そう、そうしてあげる……ふーぅ」

シリウス「……」

ハニー「……」

シリウス「……」



ハニー「!? わ、わたし、ど、どうしてシリウスの膝に座っているの!?!?!?」

シリウス「あぁ、ははっ。ようやくそこに気がついたかい。それはもう、大分前からさ」

412: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 22:04:04.99 ID:vbiGWYVM0
シリウス「君は考えこむと回りが見えなくなるな。うん、そのあたりはそっくりだ」

ハニー「何故だかよく言われるけれど、っ、そうよ、集中力はあるもの、私。それ以外のあらゆる力だって味方しているけれど」

シリウス「はっは、違いない。さて、ハニー。折角だから、ここで済ませてしまおうか」

ハニー「!? な、何を!?あの、待って。少し、気持ちの――」

シリウス「? プレゼントの交換、という話だが。二人きりにな今が丁度良いとは思わないか?」

ハニー「……そう、ね!っ!痛い!」

シリウス「どうしたね、テーブルを蹴って。っとと、あまり暴れると落ちてしまうだろう?」

ハニー「っ、それなら、普通に!」

シリウス「いいじゃないか。私のためにあのスネイプに向かって反抗してくれた、そうだな。ご褒美だよ」

ハニー「……っ、そうね。今日は、クリスマスだものね」

シリウス「あぁ、家族の日だ――君には十四年も、一人にさせてしまったが」

ハニー「……ここ数年は、そうでもなかったわ。それに、これからは」

シリウス「あぁ、私が毎年祝おう。なんならツリーの上の星になってもいい、シリウスだけにな」

ハニー「いやよ。星になるなんて……冗談でも」

シリウス「あぁ、ははっ。君は素直だな、ハニー」

418: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 22:19:39.76 ID:vbiGWYVM0
シリウス「それで、プレゼントだがね。本当は、リーマスと同じく本にしようと思ったんだ」

ハニー「あのとってもためになる本のように?」

シリウス「あぁ。だが、結果的に……さっきのスニ、オホン、スネイプの提案を聞くと、これにして良かったようだ」

ハニー「?どういうことかしら。痴漢撃退スプレーとか?」

シリウス「それはよく分からないが……必要なら後日トンクスに買ってきてもらおうか?」

ハニー「なんでもないわ」

シリウス「そうか。おっと、少し腰を浮かしてくれるかい、ハニー。このあたり……」

ハニー「んっ……ちょ、っと。シリ、どこ触って、っ!」

シリウス「?ポケットだが……あぁ、あったあった。ハニー、これを。メリー・クリスマス」

ハニー「っ、密着した状態であんまり……これ、って」

シリウス「包装が雑なことは目を瞑ってほしい。何せ、あー……私の持ち物だったのでね」

ハニー「っ、あなたの! もらってしまって、いいの?」

シリウス「ああ、当然だ。それは同じものがあるし――まぁ、そういう物なのだが」

ハニー「!つまり、つまり!お揃い、と、いうこと!?」

シリウス「あー、そうなる、のかな?日頃から身につけるものではないがね」

ハニー「ううん、十分だわ!シリウス、あり、ありがとう……開けていい?」

シリウス「あー、それなのだがね。部屋に戻ってからにしてほしい」

ハニー「?どうして?」

シリウス「実を言えば、それを君に渡す事は……リーマスから反対されてるんだ」

ハニー「……?」

シリウス「ハニー。私が渡したそれは――もしもスネイプが君になにかした時、私に連絡をとれる手段となるだろう」

ハニー「!!」

シリウス「どうだ、スゴイだろう? もしもあいつに何かされたら、それで私を呼んでくれていい。すぐに駆けつけよう」

ハニー「……」

シリウス「いやぁ、我ながら妙案だ。それにタイミングもよかった、うん。いいかい、ハニー。私が必要になったら、使いなさい。いいね?」

ハニー「……えぇ、シリウス」

ハニー「……ありがとうっ、大事にするわ!」




ハニー「……(これを、使っては――いけないわ)」

ハニー「(私のせいで――シリウスを、危険な目にあわせるなんて。ダメよ――絶対に、ダメ)」

ハニー「(これは――大事に、飾っておきましょう)」

422: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 22:33:30.76 ID:vbiGWYVM0
ハニー「素敵なプレゼントを、ありがとう……あなたからもらったものはいつも、大事に使ってるわ」

シリウス「あぁ、ありがとう。しかし、なんだい。ファイアボルトはしばらくお役御免だそうだね?」

ハニー「っ……ごめんなさい」

シリウス「いやいや、いや。責めてなんていない。むしろ私は君が誇らしい……リリーを侮辱されて?」

ハニー「……あんなことをするべきじゃなかったわ」

シリウス「いいや。君はまだ十五だ……誰しもそのくらいの時は、感情任せになるものさ」

ハニー「っ、私、子供ではないわ!」

シリウス「ははっ、そうだな。たった二年で――君は随分と女の子らしくなった」

ハニー「だ、か、ら!子、ではないったら!もう!」

シリウス「あぁ……そうだな。君はリリーよりもずっとずっと可愛い。あいつは、たまにがさつだったから」

ハニー「っ!と、当然、あの、たとえママだって、私と、あの!わたしと比べるなんて……!」

シリウス「……君はリリーではない。ジェームズ、でもない。そうだ……君は君だ、ハニー」

ハニー「……いわれなくても、そのつもりだわ。なぁに、シリウス……私、自身。そうね……うん。ねぇ、目を瞑ってくれる?」

シリウス「あぁ――これでいいかな」

ハニー「えぇ……少し、待ってね」

シリウス「あぁ」

ハニー「……すー、はーっ」

シリウス「……」

ハニー「……っ」




ジャラッ

シリウス「……?」

ハニー「目、開けて」

シリウス「あぁ……これは?」

ハニー「ロケットよ……あのね、その……中身は……あっ!ま、待っ――」

カチッ

シリウス「! 君の――写真?」

ハニー「~~っ、約束、したじゃない。いつかちゃんと、写りのいいものをあなたに、って!」

427: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 22:56:09.61 ID:vbiGWYVM0
ハニー「私の……わたしの、お友達の一人、いいえ、一匹なのかしら……ロケットを昔持っていた、って話を聞いたの」

シリウス「……」

ハニー「その人は……今は、もう離れ離れになってしまったけれど……ロケットの中に込めた大事な人たちの思い出を、持ち歩くことで忘れなかった、って」

シリウス「……」

ハニー「あ、あなたがわたし、私を忘れることはないでしょうけれど! あなたにも、持っていてほしいわ」

シリウス「……」

ハニー「シリウス。私の――わたしの大事な家族」

ハニー「ううん」

ハニー「わたしの、大切――だい、す」

ハニー「……!?」

ハニー「(わたし、今、な、なんて言おうと――でも、あぁ)」

ハニー「(シリウス、近い――!そんな)」

ハニー「(何か、何か、言わない、と……!)」

シリウス「――ハ」

ハニー「や、ヤドリギ!」

シリウス「……うん?」

ハニー「あの、そこのヤドリギは――シリウスが飾ったの?」

シリウス「あぁ、そうだ。身内ばかりなのでムードもなにも、と思ったが――」

ハニー「……!?あっ、あの、あーっ!」

シリウス「……あー、ハニー?気になるなら、離れて――」

ハニー「!ううん!あの、わたし!し、シリウスなら――いいわ!」

シリウス「……」

ハニー「あっ……いい、って、いうのは……その」

シリウス「……」

ハニー「……」

スッ

ハニー「――ぁ」





ガタンッ!!!!

シリウス「!?」 バッ!

ハニー「きゃぁ!?」ババッ!

クリーチャー「旦那様、旦那様。メリー・クリスマス、にございます……クリーチャーめは、クリスマスのしたくを一つもお手伝いできず至極申し訳ないと――」

シリウス「クリーーーーーチャーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ハニー「っ、あの、シリウス!めり、メリー・クリスマス!おやすみなさい!!」

ガチャッ! バタバタバタバタバタッ

シリウス「――クゥウゥウウウウウリィイイイイイイイチャアアアアアアアアア!!!!」

クリーチャー「なんにございましょう、旦那様。ブラック家のご当主として、このクリーチャーめにご命令を?」

シリウス「そんなものは今すぐ投げ捨ててやる!!!貴様の存在ごと!!!貴様、あああああああああああああ!」

クリーチャー「――左様にございますか。よーく、分かり申し上げました」

434: ◆GPcj7MxBSM 2013/05/08(水) 23:14:45.78 ID:vbiGWYVM0
ハニー、ハーマイオニーの寝室

バタバタバタバタバタバタバタッ

ハニー「~~~っ!!っ!!っ!!!」

ハーマイオニー「……あー、ハニー?シリウスと、何が――えぇ、聞こえてないのね。分かるわ、うん。あなたが枕に顔をうずめて、足をバタバタさせる音で、大騒動ですものね」

ハニー「~~~っ(言い逃げ!!!!この、私、がっ!!!言い逃げ、なんて!!!!)」

ハーマイオニー「……何か唸ってるわ」

ハニー「(なんてこと!なんて!あぁ、シリウス、シリウス、突然あんなこと言って!私が、不真面目な、そうよ!あばずれだって、思われたらどうしよう!!)」

ハニー「(ヤドリギで、いい、なんて……!!!!チョウ……チョウの)」

ハニー「チョウのせいよ!!!チョウのせいよ!!!!」

ハーマイオニー「……よく分からないけど、あなた自身の問題だと思うわ……あぁ、終わったと思ったらまた枕に戻るのね」

ハニー「(チョウが、よくわからないまま、あんなこと言うから……!混乱して!!)」

ハニー「(あんな、こと――でも)」

ハニー「(あぁ、あぁ――どうしよう、どう、しよう――)」

ハニー「(何か言わなくっちゃ、って!苦し紛れに、なって!それで、それに――少し前までの気持ちが、本当なら)」

ハニー「(セドリックって……あの時!!!!)」

ハニー「何が友達よあの人!!!!!!!!!」

ハーマイオニー「……あー、あなたにとっての全人類が?」

ハニー「何が一緒に掴みましょうよわたし!!!!!!」

ハーマイオニー「……話が見えないわ、さっきからだけど」

ハニー「(でも……ってことは、わたし――どうしよう、わたし、本当に)」

ハニー「……シリウスの顔、見れない」

ハーマイオニー「……二年前に気づくべき想いに、ようやく、よーーーーーうやく気づいたのね、ハニー」





シリウス「……」

リーマス「酷い激昂だったね。君があれほど怒ってるのをみたのは、そうだな――おっと、最近だった。ワームテールを追い詰めていたとき、以来か」

シリウス「……」

リーマス「でも結局、君はクリーチャーに救われたんじゃないのかい?ねぇ、パッドフット――あのまま、君はどうするつもりだった?」

シリウス「……」

リーマス「ハニーは気づいたようだ、自分の気持ちに。さぁ、君は――応える用意が、断る覚悟が、あったのか……」

シリウス「バカを言うな、ムーニー。そんなこと、決まっている」




シリウス「私は……私が!!僕があの日!!あの子の両親を、殺したんだぞ!?そんなあの子に……僕が、どうやって!!!!」

リーマス「……十五年前に捨て置くべき想いが、未だに残っていると見えるね。パッドフット」



次回 ハニー・ポッター「誰一人だって、欠けさせないわ」 後編