2: シティごりら 2019/01/18(金) 21:40:06 ID:aCH4t2KI
私が覚えているのはその女の子は綺麗な紫色の目で星を見ていたこと。

その瞳に私を映して星を指差しながら綺麗な優しい声で話していたこと。

そんな純粋だけど不器用で意地っ張りな女の子。

私はその女の子と1つだけ約束をしたこと。

その時、お星さまの下で結んだとっても大切な忘れてはいけない約束、そしてその時間。

これはそんな私とその女の子との不思議な不思議な物語。

引用元: ことり「不器用な女の子の不思議な質屋さん」 



3: シティごりら 2019/01/18(金) 21:40:44 ID:aCH4t2KI
ーー


穂乃果「やっと授業終わったー!」

海未「穂乃果はほとんど寝てましたよね」

海未ちゃんはいつも通り少し呆れている。

穂乃果「だって授業が難しいんだもん!」

海未「いつも寝てるからわからなくなるのですよ!ことりからも穂乃果に言ってください」

ことり「う~ん、明日はちゃんと頑張ろうね穂乃果ちゃん♪」

海未「はぁ、ことりは穂乃果に甘すぎますよ」

海未ちゃんはため息をいつものようにつく。

4: シティごりら 2019/01/18(金) 21:42:21 ID:aCH4t2KI
穂乃果「ねえ今日はカラオケに行こうよ!」

海未「またですか。少しは授業の予習復習をやったり家の手伝いをしたりしたらどうですか?」

穂乃果「あー、あー、何も聞こえない」

穂乃果ちゃんはそう言いながら耳を塞いで何も聞こえないフリをした。

ことり「私はちょっと最近お金がなくなってきちゃってちょっと行けないかな‥」

穂乃果「えー、ことりちゃん今日ダメなのー」

ことり「うん、ごめんね穂乃果ちゃん」

わかりやすく穂乃果ちゃんは肩を落とす。

5: シティごりら 2019/01/18(金) 21:43:05 ID:aCH4t2KI
海未「ことりもお金が無いですし最近ずっと遊んでいたんですから今日はしっかり勉強をしましょう」

私は嫌がる穂乃果ちゃんと少し厳しくしている海未ちゃんのやりとりを見ながら笑う。

穂乃果「でもことりちゃんが金欠になるなんて珍しいね。」

ことり「実はこの前いい感じの布の生地を見つけちゃって、それを買ったらおこづかいがなくなっちゃったの」

海未「ことりらしい理由ですね」

穂乃果「そうなんだ。お洋服を作ったらまた私達にみせてね」

6: シティごりら 2019/01/18(金) 21:44:01 ID:aCH4t2KI
ことり「うん♪また海未ちゃんに着てほしいな~♪」

海未「ほどほどにお願いしますことり‥」

海未ちゃんは少し恥ずかしそうな、そして諦めも見える顔していた。

たまに私が趣味で服を一から作ってその作ったものを海未ちゃんや穂乃果ちゃんを着せ替え人形のように着させるのが楽しみだった。

穂乃果ちゃんは楽しそうにいつも着てたけど海未ちゃんはいつも恥ずかしそうに顔を赤らめていた。

ことり「だからお金をけっこう使っちゃったから少し貯めなきゃ‥」

穂乃果「ことりちゃんバイトとかしてみたらどう?」

7: シティごりら 2019/01/18(金) 21:44:39 ID:aCH4t2KI
海未「ことりなら接客業とか良さそうですよね」

ことり「う~んでもバイトしちゃうと穂乃果ちゃんと海未ちゃんと一緒にいる時間が減っちゃいそうだし‥」

穂乃果「そんなこと思ってくれるなんてことりちゃん大好き!」

海未「ほ、穂乃果」

穂乃果ちゃんは私に抱きついてきてそれを海未ちゃんは少し慌てながら見ている。

海未「でもそしたら地道に貯めてくしかないですね」

ことり「うん、そうするしかないよね」

その時、穂乃果ちゃんは何か突然閃いたかのように声を出した。

8: シティごりら 2019/01/18(金) 21:45:56 ID:aCH4t2KI
穂乃果「あっ!そういえばこんな噂を聞いたんだけど知ってる?」

ことり「うわさ?」

海未「なんですかそれは?」

穂乃果「それはね‥



穂乃果ちゃんが言うにはその噂というのは放課後の音楽室で何でも取り扱う質屋さんが開かれているというもの。

もちろん買取も行ってるし買い取ったものを売ってもいるというもの。

その質屋さんを開いているのは1人の女の子であるというもの。

9: シティごりら 2019/01/18(金) 21:46:48 ID:aCH4t2KI
穂乃果「それでね普通のそういう質屋さんと大きく違うところが1つあるらしいの」

海未「大きく違うところ、ですか?」

穂乃果「うん。それはね普通じゃありえないような不思議な力を持った道具を取り扱ってたりあとは‥」

ことり「あとは?」

穂乃果「記憶や感情、思いといった人の心みたいなものを取り扱ってるらしいんだよ」

穂乃果「もちろん普通の物も取り扱ってるらしいけど‥」

穂乃果ちゃんの話はとても信じられない漫画やアニメのような不思議な話だった。

10: シティごりら 2019/01/18(金) 21:47:35 ID:aCH4t2KI
海未「不思議な力を持った道具や人の心を取り扱うですか‥。一体どういうことなんでしょうか」

ことり「うん、不思議なことだよね」

穂乃果「そこでもしことりちゃんが何か売れたりする物があったら売ってみたらいいんじゃないかな?」

ことり「う~ん何か売れるような物あるかな?」

私が売るとしたらなんだろう?今まで着てたり作ったりした洋服とかかな?それともぬいぐるみとか?

不思議な力を持った道具?は持っていないし。

穂乃果「噂がほんとなら楽しい思い出とかなら高く売れそうじゃない?」

11: シティごりら 2019/01/18(金) 21:48:28 ID:aCH4t2KI
ことり「思い出か~」

海未「また穂乃果は適当なことを言って」

海未「実際にそんなことが現実的にありえるのかもまだわからないのですよ」

たしかにありえないことだと思う。でも本当だとして私のこれまでの楽しい思い出を売ってしまうのは少し嫌な感じがした。

穂乃果「そうだ!これから実際に音楽室へ行ってみない?」

海未「すみません。私は今日弓道部があるので‥」

穂乃果「そっか。ことりちゃんは?」

ことり「私は今日特に予定ないから大丈夫だよ♪」

12: シティごりら 2019/01/18(金) 21:49:28 ID:aCH4t2KI
穂乃果「じゃあことりちゃんと一緒に行ってみるね」

海未「わかりました。では私は弓道部に行きますが後で実際にどうだったか教えてくださいね」

海未「ではまた明日」

海未ちゃんはそういって微笑んで弓道部に向かって行った。

穂乃果「じゃあことりちゃん私達も行こっか」

ことり「うんそうだね」

2人で教室を出て音楽室に向かおうとした。その瞬間、穂乃果ちゃんのケータイが鳴った。

13: シティごりら 2019/01/18(金) 21:50:25 ID:aCH4t2KI
穂乃果「なんだろう?」

穂乃果ちゃんはケータイを見ると同時に「あぁ!」と言うと私の方を申し訳なさそうに見た。

穂乃果「ごめん!今お母さんからメールが来て今日これからお店手伝って欲しいってきたから帰らなきゃ」

ことり「そっかぁ、それじゃあ仕方ないね。ちょっと気になるから私だけで行ってみようかな‥」

穂乃果「本当にごめんねことりちゃん。じゃあ私は行くね」

穂乃果ちゃんはバイバイと私の方に手を振ると下駄箱の方へ走りだした。

14: シティごりら 2019/01/18(金) 21:51:27 ID:aCH4t2KI
私は1人になって部活をやってる生徒の声が聞こえる廊下から静かに音楽室の方へとゆっくり歩き始めた。

音楽室へ向かいながら怖い人だったり少し変わっているような人じゃなかったらいいなというような期待を持つ。

音楽室の前に着くと私は少し立ち止まって深呼吸をする。私はさっきの期待をしながらドアに手をかけておそるおそるドアを引くと小さく声を出した。

ことり「あの~‥」

中から返事は帰ってこない。さっきよりももう少し大きな声をもう一度出す。

ことり「ごめんなさ~い。誰かいますか‥」

「なにか用でもあるの?」

ことり「ひゃい!」

突然後ろから声をかけられて私は変な声を出した。

15: シティごりら 2019/01/18(金) 21:52:11 ID:aCH4t2KI
「ヴェェ、そ、そんな驚かなくてもいいじゃない」

ことり「ご、ごめんね。ちょっと驚いちゃって」

「そう、それでこの時間にここに来たってことは私に何か用があるんでしょ」

そう素っ気なく言うとその女の子は音楽室に入っていきピアノの前の椅子に座った。

前にどこかでこの女の子と会ったような‥。

ことり「うんちょっと聞きたいことがあって‥、あなたは‥」

私は話しながらその女の子の方へ顔を向ける。

16: シティごりら 2019/01/18(金) 21:53:15 ID:aCH4t2KI
ピアノの前に腰掛ける女の子と目が合う。その目はつり目で瞳は綺麗な紫色だった。

瞬間的に私の中にその子の記憶を思い出した。

ことり「‥真姫ちゃん?」

その女の子は私の言葉を聞いた瞬間、目を見開いたがまたすぐに元の様子に戻った。

真姫「‥なんで私の名前を知ってるの?」

ことり「やっぱり真姫ちゃんなんだ!私だよ!小さい頃、一緒に遊んでたことりだよ!南ことり!」

17: シティごりら 2019/01/18(金) 21:55:04 ID:aCH4t2KI
私はこんなところで出会う驚きと興奮が隠せなかった。しかしそんな私とは対照的に真姫ちゃんは落ち着いていた。

真姫「‥‥っ、ことり‥」

真姫「ごめんなさい覚えていないし、わからないわ」

ことり「!」

ことり「昔よく遊んでたよね。真姫ちゃんも私のこと、ことりお姉ちゃんって呼んでて‥、本当に覚えてないの?」

真姫「‥わからないわ。ごめんなさい南さん」

ことり「でもあんなに昔」

真姫「覚えてないって言ってるでしょ!」

声を荒げて真姫ちゃんは言った。さっきまでのおちついていた真姫ちゃんとは正反対のようだった。

18: シティごりら 2019/01/18(金) 21:55:47 ID:aCH4t2KI
真姫「‥ごめんなさい」

ことり「ううん。‥大丈夫だよ」

そこまで真姫ちゃんに強く言われることはショックだった。

けど正直そう思われていも仕方ないと思っていた。私はあの時、真姫ちゃんから逃げたから‥。

少し私たちが落ち着くのを待ってから私は口を開いた。

ことり「今日はね放課後の音楽室の噂を聞いてここに来たんだ。あの噂の人って真姫ちゃんなの?」

真姫「‥‥ええ、多分何でも取り扱っている質屋さんって噂でしょ。そうよ。何か売りに来たの?」

19: シティごりら 2019/01/18(金) 21:56:38 ID:aCH4t2KI
ことり「今日は売りに来たわけじゃないんだけど‥」

真姫「そう、おおかた噂が本当か疑わしいから確かめに来たってことでしょ」

真姫ちゃんは少し冷たくそう言った。図星だった私は作り笑いをしながら無言で誤魔化した。

真姫「その黙った様子だと図星みたいね。いいわよ説明してあげるわ。こっちに着いてきて」

真姫ちゃんは立ち上がりピアノの奥にある扉を開けてその部屋の中に着いてくるように私を招いた。

部屋の中に入るとそこには棚や机に色々な物や道具が置いてあった。

20: シティごりら 2019/01/18(金) 21:57:27 ID:aCH4t2KI
ことり「すごい‥。学校にこんなところがあったんだ」

真姫「一応この部屋にある物や道具は全て売り物ってことで扱ってる。もちろん買取も行ってるわ」

ことり「そ、そうなんだ。色んなものがあるんだね」

確かに色々な物がこの部屋にはある。でも取り扱っているって噂の「人の心や思い出」があるのかどうかまではパッと見た感じからは分からなかった。

でもその部屋はどこか少し寂しい雰囲気ご感じられた。

ことり「ねえ真姫ちゃんあの‥」

噂のことを聞こうとした瞬間、扉の方から私達ではない声が聞こえた。

21: シティごりら 2019/01/18(金) 21:58:04 ID:aCH4t2KI
女子生徒「ごめんなさい、今大丈夫ですか?」

真姫「ええ、大丈夫よ。用件は何?」

その子はリボンの色からして1年生の女の子だった。

女子生徒「ここって、何でも買い取ってくれるんですよね?」

真姫「そういうことでやってるわ」

女子生徒「思い出も大丈夫ですか?」

ことり「!!」

真姫「大丈夫よ」

真姫ちゃんは当たり前のように言った。

22: シティごりら 2019/01/18(金) 21:58:41 ID:aCH4t2KI
女子生徒「それなら私の思い出を売りたいのでそれを買い取ってください」

真姫「いいわよ。買い取り金額はその思い出の内容によって変わるけどね」

真姫「内容を教えて」

真姫ちゃんがそういうとその女の子は売りたいという思い出を真姫ちゃんに語り出した。

その子の思い出は中学生の頃に仲のいい友達と旅行へ行った時の思い出だった。

一緒に観光名所をまわったことや美味しい食べ物をたべたこと。そして友達と色んな話をしたりしたことを真姫ちゃんがとても細かく聞いていた。

23: シティごりら 2019/01/18(金) 21:59:32 ID:aCH4t2KI
真姫「‥これくらいでいいかしら」

そう呟くと近くに置いてあったカバンから古い聴診器?を大事そうに取り出した。

真姫「それじゃあ買取金額だけど2万でいいかしら」

ことり「2万円‼︎」

真姫「なんであなたがそんなに驚いてるのよ」

ことり「ご、ごめんなさい」

2万円もの大金で思い出が取引されることと学校でそんなことがこれから行われることに驚いた。

24: シティごりら 2019/01/18(金) 22:00:20 ID:aCH4t2KI
真姫「じゃあこれからあなたの思い出を貰うその手順を説明するわね。」

女子生徒「‥はい」

真姫「私が今持ってるこの聴診器はね人の思い出や感情を抜き取ることや他の人に思い出や感情を与えられる不思議な道具なの」

真姫「その方法は私が身につけて診察で心音を聞くように思い出を抜き取る相手の胸に当てる。そして私たち2人で抜き取る思い出や感情を細かく一緒に想像するの」

真姫「今回、あなたが売る側だからその売る思い出をあなたが思い出せなくなったらそれで終わり。買取金を支払うわ」

女子生徒「わかりました」

真姫「じゃあはじめるわね」

そう言うと真姫ちゃんは聴診器を耳につけ、女の子の胸に当てて目をつむった。真姫ちゃんのその様子を見て女の子も目をつむった。

25: シティごりら 2019/01/18(金) 22:01:03 ID:aCH4t2KI
真姫「さっき話した思い出の内容をもう一度初めから想像して」

女子生徒「はい」

部屋に誰も居ないかのような静かな時間が流れていた。私は半信半疑だったけどその2人の不思議な雰囲気を見てるとなんだか信じちゃいそうになる気持ちになった。

多分10分ぐらい2人はそうしていた。真姫ちゃんはゆっくりと目を開けると無機質な声で「もういいわよ」と言った。

真姫「お疲れ様。これで一応買い取りは終わりよ。これが買い取り金の2万円ね」

女子生徒「はい」

女の子はお金を受け取ると金額を確認してカバンにいれた。

女子生徒「買い取ってくれてありがとうございます。じゃ私はこれで」

女の子がそう言って部屋から出て行くのを真姫ちゃんは少し冷たい、軽蔑しているような、なんともいえない目で見届けていた。

26: シティごりら 2019/01/18(金) 22:01:59 ID:aCH4t2KI
真姫「それで、南さんはどうするの?」

ことり「あ、う、うん、えっと今のってほんとうに思い出をとったの?」

真姫「ええ、本当よ。この聴診器は人の感情や思い出とかを人から人に移せる不思議な力があるの」

真姫「昔から私の家に伝わっていたっていう道具なの」

ことり「そんな道具があるんだ‥」

真姫「別に珍しいことじゃないわよ。他にもこういった不思議な道具はいくつかあるし持っている人も何人か知ってるわ」

そんな道具の存在にも少し驚いたけどそれを持っている人が他にもいることにもっと驚いた。

27: シティごりら 2019/01/18(金) 22:02:45 ID:aCH4t2KI
ことり「さっきの子の買い取った思い出は今はどこにあるの?」

真姫「この聴診器はあくまでその対象を移動させる力しかないわ。だからさっき取り出した思い出は今は私の中にあるの」

真姫「だからその思い出を思い出せば自分が体験したかのように感じることができるわ」

ことり「そうなんだ‥。あの‥あと、さっきあの子に渡してたお金は真姫ちゃんのお金なの?」

真姫「‥‥別にあなたに話す必要はないわ。南さんは私の親や兄弟ってわけでもないでしょ。私があなたにそこまで話す必要はあるかしら?」

真姫ちゃんは表情を変えずにそう言った。

ことり「そうだけど‥、でも‥」

真姫「南さんって思ったよりしつこいんですね」

28: シティごりら 2019/01/18(金) 22:03:25 ID:aCH4t2KI
ことり「だって私は真姫ちゃんのことが心配で‥」

そう言った瞬間、真姫ちゃんの表情が変わったのに気づいた。

軽い気持ちで今のセリフを言うべきではなかったと後悔した。

真姫「何が心配よ。私の気持ちがわかるわけでもないでしょ!」

真姫「もうあなたといた時の私じゃないの!私のこと何も分からないなら軽々しく心配してるとか言わないで!」

そう私に多分、真姫ちゃんは自分の本心を言い放った。

29: シティごりら 2019/01/18(金) 22:04:07 ID:aCH4t2KI
真姫「‥、っ、ごめんなさい。今日はもう帰って」

真姫ちゃんは激しい運動した後のように肩で息をする。

ことり「そうだよね、‥ごめんね」

私はドアの方へ向かいドアノブに手をかけた。

ことり「‥真姫ちゃん、ピアノはまだ弾いてるの?」

真姫「‥お願い。帰って」

ことり「うん、今日はごめんね‥」

真姫ちゃんは下を向いたまま何も言わなかった。

そのまま私は音楽室を出ると家に向かって歩き始めた。

夕日が沈みかけた学校は部活をやってる人の声が明るく、少し羨ましく聞こえた。

30: シティごりら 2019/01/18(金) 22:05:15 ID:aCH4t2KI
ーー


その日の夜、自宅


ことり「ねえお母さん。西木野真姫ちゃんって覚えてる?」

私は夜ご飯を食べながらお母さんに聞いてみた。お母さんなら真姫ちゃんのことを何か知っているかもしれないから‥‥。

理事長「‥ええ、覚えているわよ。今は音ノ木坂の1年生にいるわね。西木野さんがどうかしたの?」

ことり「真姫ちゃんが放課後の音楽室でやってることについてお母さん知ってるの?」

理事長「そう‥、西木野さんと会ったのね。全て知っているわよ。だって私が西木野さんにあの活動をやってみたらどうかって勧めたんですもの」

31: シティごりら 2019/01/18(金) 22:05:58 ID:aCH4t2KI
私は予想もしてなかったその返答に口を開けたまま何も言えなかった。お母さんはそんな私を見て微笑みながら話しを続けた。

理事長「ことりは西木野さん‥‥。真姫ちゃんが中学生の時に色々あったのは知ってるでしょ」

ことり「うん、覚えてるよ‥」

理事長「お母さんと真姫ちゃんのお母さんは音ノ木坂学院の同級生だったっていうのは前に話したし、それでことりと真姫ちゃんが小さい時はよくお互いの家に行ったりしていたでしょ」

ことり「‥覚えてる」

理事長「その頃はね2人が夢ややりたいことをみつけて元気に成長するのをお母さん達は願っていたの。でもね、あんなことが起きてしまった」

ことり「‥‥」

32: シティごりら 2019/01/18(金) 22:07:18 ID:aCH4t2KI
理事長「あれ以来真姫ちゃんはすっかり変わってしまったの。ことりも今日会ってみてそれは思ったんじゃないかしら?」

ことり「うん‥」

私は今日の出来事を思い出した。

理事長「そんな真姫ちゃんをみてお母さんは放っておけなかったの。だから音ノ木坂に来てこの活動をやってみたらどうかって提案してみたの」

理事長「最初は自暴自棄の感じだったわ。けど入学してしばらくやっていくうちに真姫ちゃんにも何か思うことがあったのかしら?今ではしっかりとやってくれているわ」

私は何も言えずお母さんの話しをただ聞いていた。

33: シティごりら 2019/01/18(金) 22:08:05 ID:aCH4t2KI
理事長「お母さんは真姫ちゃんにどんな形であれ自分の生きる目標を、希望や夢をたとえちっぽけなものでもみつけてほしい」

理事長「そう思って今の活動が何かそういったものをみつけるきっかけになればいいと思ってお母さんは真姫ちゃんに勧めているの」

理事長「きっとことりが今聞きたいのはこんなところかしら?」

ことり「うん、‥そうだったんだ」

お母さんは真姫ちゃんのことをしっかり考えていた。でも私はあの時のように真姫ちゃんを傷つけただっけだった。

理事長「ことり、お母さんが真姫ちゃんを音ノ木坂に来てあの活動をするようにと誘った理由はもう一つあるのよ」

ことり「?」

34: シティごりら 2019/01/18(金) 22:08:37 ID:aCH4t2KI
理事長「音ノ木坂にはたくさんの出会いがある。そして良くも悪くもその出会いが互いに影響を及ぼす場所なの。今日のあなたたちみたいに」

理事長「私は誰か真姫ちゃんを救ってくれる出会いがあると思って音ノ木坂学院を勧めた」

理事長「その出会いは今日のことりかもしれないし違うかもしれない。けどたとえ違うとしても私は一番大切なのは「思い」だと思うの」

理事長「きっと強い「思い」はどんなことがあろうと人を救う。だからことり、真姫ちゃんをお願いね」

ことり「お母さん‥」

理事長「長く話しちゃったわね。さあご飯食べちゃいましょう♪」

お母さんはまた優しい微笑みを見せていた。

理事長(ふう、やっぱりあの占いは意外と当たるのね‥)

35: シティごりら 2019/01/18(金) 22:09:28 ID:aCH4t2KI
ーー


まき「ことりおねえちゃん!まきちゃんあたらしいおうたをおぼえたの」

ことり「まきちゃんはすごいね。ことりにきかせてほしいな♪」

まき「うん!そうだことりおねえちゃんもいっしょにうたおうよ!」

ことり「えっ、いいの?」

まき「うん、いっしょにうたいたいからいいの!」

ことり「じゃあままたちにふたりでおうたきかせようよ♪」

まき「ままたちにきかせるー!」

ことり「いっしょにがんばろう♪」

まき「うん♪ことりおねえちゃんだいすき!」

36: シティごりら 2019/01/18(金) 22:10:19 ID:aCH4t2KI
ーー


部屋で昔のアルバムを久しぶりに引っ張り出して見ながら真姫ちゃんと遊んでいた時のことを思い出していた。

真姫ちゃんはほんとに変わっちゃったのかな?そんなことを思いながらぺージをめくるアルバムの私と真姫ちゃんはほとんど笑っていた。そんな時、ふと1枚の写真に目が止まった。

その写真は確かクリスマスパーティー真姫ちゃんの家でやってベランダで2人で星を見ていた時のものだった。

ベランダに2人で座りながら笑っているところを後ろから撮影した写真。2人の手は指切りげんまんをしているみたいに繋がれていた。

そっか私は忘れちゃっていたんだ‥。いや違うよね。あの時、自分にはなにもできなくて目を背けちゃったんだ。

今度こそ、今度こそ守らなきゃ。あの時、お星さまの下で2人で誓った約束を‥。

37: シティごりら 2019/01/18(金) 22:11:26 ID:aCH4t2KI
ーー


翌日昼休み

穂乃果「ことりちゃん、海未ちゃん!お昼たべよー!」

海未「ええ食べましょう」

ことり「あっ、ごめんね。今日はちょっと一緒に食べられないの」

海未「珍しいですね。何かあるのですか?」

ことり「うん、ちょっとね」

穂乃果「そっか、じゃあ明日は一緒に食べようよ!」

ことり「うん!」

私はカバンを持って足早に一年生の教室に向かった。

38: シティごりら 2019/01/18(金) 22:12:07 ID:aCH4t2KI





ことり「真姫ちゃん一緒にお昼食べよ♪」

真姫ちゃんはびっくりして目がまんまるになっていた。周りにいる1年生も2年生の私が来たことに驚いていた。

真姫「なんであなたがここにいるのよ!」

ことり「なんでって真姫ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べたいからここに来たんだよ♪」

海未ちゃんや穂乃果ちゃんといるいつもの感じでニコッて笑いながら言う。

真姫「っ‥」

真姫ちゃんは無言で立ち上がりそのまま乱暴にドアを開けるとどこかに行ってしまった。

ことり「やっぱ昨日の今日じゃまだまだだね」

花陽・凛「‥」

39: シティごりら 2019/01/18(金) 22:13:16 ID:aCH4t2KI
ーー


それから私はほとんど毎日お昼休みには真姫ちゃんのいる教室に、放課後は音楽室にも行った。けど真姫ちゃんは相変わらず私と関わろうとはしなかった。

昼休みに行った時の様子を見ていて気づいたことは真姫ちゃんは私だけでなくクラスの子ともあまり自分から関わろうとはしていないようだった。

休み時間とかの授業時間以外はいつも一人で音楽室にいるみたいだった。




ことり「真姫ちゃん今日こそ一緒にお昼食べよ♪」

私はまた今日も真姫ちゃんのいる教室のドアを開けて声を出した。でも今日は教室に真姫ちゃんの姿はなかった。

40: シティごりら 2019/01/18(金) 22:14:19 ID:aCH4t2KI
ことり「あれ?真姫ちゃん‥?」

花陽「西木野さんなら今日は早退しちゃったんです」

ことり「えっ、あっ、そうだったんだ。教えてくれてありがとう♪」

花陽「い、いえ」

凛「先輩はどうしていつも西木野さんのところに来るんですかー?西木野さんは嫌そうな態度をとってるのに?」

ことり「う~んそれは‥‥」

花陽・凛「それは?」

ことり「う~ん、ひ・み・つ♪」

凛「えーー、なんでにゃー?」

花陽「気になるよぉ」

私は2人の後輩にわざとらしく悪戯な笑顔を浮かべてみせた。

41: シティごりら 2019/01/18(金) 22:15:56 ID:aCH4t2KI
ことり「でも1つだけあるとしたらあれかな?」

花陽・凛「?」

ことり「私はことりお姉ちゃんだから♪」

2人の可愛らしい後輩はお互い意味がわからないって感じで顔を見合わせていた。

ことり「今日は教えてくれてありがとうね♪きっとまた明日も来るから」

花陽「は、はい」

ことり「そうだ2人とももし良かったらでいいんだけど真姫ちゃんと仲良くしてあげて。きっと真姫ちゃんは素直になれないだけだから」

凛「!!、わかったにゃー!」

ことり「ありがとうね。じゃあお邪魔しました♪」

最後に2人に笑いかけると私は自分の教室に戻って行った。




凛「凛たち西木野さんのこと何も知らなかったね」

花陽「うん。いい先輩と知り合いなんだね。ちょっと羨ましいかも」

42: シティごりら 2019/01/18(金) 22:16:49 ID:aCH4t2KI
ーー


数日後の昼休み


私は真姫ちゃんが教室にいなかったからこの前の後輩の子達に聞いて多分いるであろう音楽室に行った。

ことり「あっ、真姫ちゃんここに居たんだね♪一緒にお昼食べようよ♪」

真姫「嫌よ。自分の教室で食べればいいじゃない」

真姫ちゃんは苛立ちながら言う。

ことり「いやだよ、だって私は真姫ちゃんと一緒に食べたいんだもん。昔みたいに♪」

真姫「‥、覚えてないって何回も言ってるでしょ」

43: シティごりら 2019/01/18(金) 22:17:41 ID:aCH4t2KI
ことり「それに私は真姫ちゃんをこのまま1人きりにはしていられないから」

ことり「ずっと1人でいるのはつらいと思うの」

真姫「今日はやけに私のことを苛立たせようとするのね。ねえ、南さん私が早退した日にクラスの人と何か話したの?」

私は少し息を吸って真っ直ぐ見つめる。

ことり「うん♪真姫ちゃんとよかったら仲良くしてほしいって」

いつものように笑いかける。そんな私とは対照的な目の前の女の子。

真姫「なんでそんなことするの?私がそうしてほしいっていつ頼んだかしら?」

真姫ちゃんは静かに話す。

44: シティごりら 2019/01/18(金) 22:18:51 ID:aCH4t2KI
ことり「私は‥、真姫ちゃんの力になりたいの」

真姫「‥‥。今さらなに言ってるのよ。南さんの助けなんか求めていないわ」

ことり「真姫ちゃんがそう言っても私は力になることをやめないよ。もう、そう決めたんだもん」







真姫「そんなの信じられるわけないじゃない‥‥」

少しだけの空白な時間、手を強く握りながらボソッと真姫ちゃんは言った。

45: シティごりら 2019/01/18(金) 22:19:35 ID:aCH4t2KI
ことり「だから真姫ちゃん、私のことを信じてほしいの、おねがい」



真姫「‥うるさい」

ことり「真姫ちゃん?」

真姫「うるさい!もうやめてよ!」

真姫ちゃんが机をバンと叩く。

ことり「!!」

真姫「もう嫌なの!これ以上あなたと関わりたくない!」

ことり「‥‥」

冷静さを失っている真姫ちゃんを私はただまっすぐみつめる。

46: シティごりら 2019/01/18(金) 22:20:37 ID:aCH4t2KI
真姫「あの時と同じように私に何もしなければいいじゃない!これ以上私と関わらないで‥」

私は無言で首を振った。そんな私を見た真姫ちゃんは何か言いたそうだったけど何も言わずに音楽室を出て行こうとしてドアを開けた。

??「うわぁ!」

真姫「!!」

ことり「!!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「あはは‥」

海未「オホホ‥」

ことり「海未ちゃんも!」

2人がなぜいるのかは分からなかったが真姫ちゃんは2人を無視してそのまま出て行った。

47: シティごりら 2019/01/18(金) 22:21:30 ID:aCH4t2KI
穂乃果「今の子ににらまれちゃった‥」

海未「穂乃果が盗み聞きするからですよ」

穂乃果「人のせいにしないでよ!海未ちゃんだって気になるって言ったじゃん!」

ことり「まって!もしかして2人とも‥、真姫ちゃんとの話聞いてたの?」

穂乃果「え、え~と」

海未「それは~」

2人は分かりやすく目線を同じように泳がしていた。

ことり「2人とも」

私は顔をグイッと近づけた。

海未「すいません‥、聞いていました」

穂乃果「ごめんねことりちゃん」

48: シティごりら 2019/01/18(金) 22:23:04 ID:aCH4t2KI
ことり「ううん、大丈夫だよ。でもどうして?」

海未「それは‥」

穂乃果「ことりちゃん最近私たちと別々になることが多くてどうしたのかなって思ってたの。そしたらね‥」

海未「今日、さきほどの子に呼び出されていたところを目撃しまして、それで少し気になって後をつけてしまいました。そしたら‥」

ことり「さっきまでのやり取りを聞いちゃったってこと?」

ほのうみ「「うん・はい」」

ことり「そっか‥」

49: シティごりら 2019/01/18(金) 22:23:56 ID:aCH4t2KI
2人と話していたらさっきまで張っていた気が抜けた気がした。それと同時になんだか心細さ、ちょっとした不安が出てきた。

2人もきっとこんな気持ちだったのかな?

ことり「ねえ穂乃果ちゃん、海未ちゃん、私の話を聞いてくれる?」

ほのうみ「!!」

穂乃果「うん!」

50: シティごりら 2019/01/18(金) 22:25:02 ID:aCH4t2KI
ーー


私は真姫ちゃんとの小さな時の関係と放課後の音楽室で会った時からこれまでのことを話した。

2人ともとっても真剣に私の話を聞いてくれていた。それだけでも私は凄く嬉しい気持ちになっていた。

穂乃果「へ~あの噂は本当だったんだね」

海未「記憶や感情を取り引きできる聴診器ですか‥。他にもそういう道具を持っている人がいるってのも気になりますね」

ことり「うん」

穂乃果「でもうらやましいなぁ~。私にもそういう不思議な道具があったらいいのに」

海未「穂乃果にそういうものを持たせたら悪用しそうなのでダメです」

穂乃果「ええー、そんなことしないよ!」

海未「まあ、今はその話は置いておきましょう」

穂乃果ちゃんは納得いかない様子で後ろでちょっと不機嫌そうだった。

51: シティごりら 2019/01/18(金) 22:25:32 ID:aCH4t2KI
海未「ことりとその西木野さんとの関係は大体わかりました。でも1つだけ、先ほど西木野さんがことりに対して言っていた「あの時何もしなかった」っていうのはどういう事なのですか?」

ことり「それは‥」

海未「あ、その、言いたくなければいいのです」

穂乃果「また海未ちゃんがそういう余計なことを聞こうとするから」

海未「なっ!穂乃果に言われたくないです!」

あの時のことを聞かれるとは思っていなかったからちょっとびっくりした。

正直話すのをためらった。私1人のことじゃなくて真姫ちゃんにとても関係することで決して軽々しく話していい内容じゃないから。

でも今のままじゃ私はどうしたらいいのかわからない気持ちがあったし2人の力を借りたかった。

52: シティごりら 2019/01/18(金) 22:26:31 ID:aCH4t2KI
ことり「あのねこのことは他の人には言わないでね」

海未「そんな他言するはずがありません!」

穂乃果「絶対私もいわないよ!」

ことり「ありがとう、じゃあ話すね。真姫ちゃんは私達とは違って私立の小学校に行ったから一緒に遊ぶ機会は減っちゃったんだけどそれでも2、3ヶ月に1度くらいは会って遊んでたの」

ことり「小学校を卒業したらそのまま私立の中学校に進学したの。中学校に入ったら私も真姫ちゃんも色々忙しくて会わなくなったんだ」

ことり「それでもお母さんから色々真姫ちゃんのことは聞いていたの。少ないけど友達が出来たりピアノを練習して発表会に出たりしたって」

ことり「真姫ちゃんは真姫ちゃんでとても充実した生活をしてるんだなって思ってた」

ことり「‥‥でもあの事件が起きてしまった」

海未「何があったんですか?」

53: シティごりら 2019/01/18(金) 22:27:12 ID:aCH4t2KI
ことり「真姫ちゃんが中学2年生の夏の時にね、事故で真姫ちゃんのお父さんとお母さんが亡くなったの」

ことり「お母さんから聞いたけど、家族3人で旅行に行った時に車に突っ込まれたらしいの。奇跡的に真姫ちゃんは助かったけどお父さんとお母さんはそのまま‥」

海未「そんな‥」

穂乃果「‥‥」

ことり「私も最初は信じられなかった。でも一番悲しんで、落ち込んでいる真姫ちゃんを私が出来る限りで元気づけなきゃって思ったの。そしてお葬式の時に真姫ちゃんと会ったんだ」

海未「‥その時に何もしなかったってことですか?」

ことり「‥そうだね。でも少し違うの。正確には何も出来なかったんだ」

海未「どういうことですか?」

54: シティごりら 2019/01/18(金) 22:27:43 ID:aCH4t2KI
ことり「その時、私の中での真姫ちゃんは寂しがりやで私みたいにすぐに泣いちゃうような不器用な女の子で支えてあげなきゃいけないって思ってたの」

ことり「でもね、お葬式の時の真姫ちゃんは違った。私みたいにわんわん泣いているわけでもなくて塞ぎ込んでいるわけでもなかった」

ことり「何もなかったかのように周りに振舞っていたの、涙なんか一滴も流さなかった」

ことり「そんな真姫ちゃんを見たら何も出来なかった、何をすればいいのかわからなかった。私がやろうとしてることはただの偽善なんじゃないかって思っちゃった」

私は真姫ちゃんを昔のままだと思っていた。けどそんなはずはないそんな普通のことを私はその時、気づいてなかった。

ことり「私はそのまま真姫ちゃんには何か言うことも何かすることも出来ずに逃げたんだ」

ことり「これが私と真姫ちゃんの「あの時」の話だよ」

55: シティごりら 2019/01/18(金) 22:28:28 ID:aCH4t2KI
私が話し終わると2人はそれぞれの反応を示していた。

海未「そんなことがあったのですか‥。難しいですね‥」

海未ちゃんは眉間にしわをよせながら言う。

穂乃果「ことりちゃんはその時どうすれば良かったって思うの?」

穂乃果ちゃんが真剣な顔で私を見つめながら聞く。

ことり「私は‥」

穂乃果「いいよことりちゃん。私たちは全部受け止めるよ」

56: シティごりら 2019/01/18(金) 22:29:40 ID:aCH4t2KI
ことり「私は‥、正直どうすればいいかわからなかったの」

ことり「けど、けどね。ずっと、ずぅっと後悔してたの。あの時、ほんとは真姫ちゃんは凄く辛かったんじゃないのかなって!」

ことり「ただ‥、大切な頼れる人を失ってしまってどうすればいいかわからなかったのかなって!」

ことり「私が支えてあげるべきだったんじゃないのかって‥」

ことり「そう思うとね、自分が嫌になったの‥。あの時何も出来なかった真姫ちゃんとは違う弱虫な自分が‥、嫌になったの‥」

海未「ことり‥」

初めてかもしれなかった。ここまで自分の思いを他の人に吐き出したのは。どんなひどい顔をしてたのかな。

57: シティごりら 2019/01/18(金) 22:30:36 ID:aCH4t2KI
穂乃果「ねえことりちゃん。私ね今すごい嬉しいの。ことりちゃんが本当の気持ちをここまで話してくれたの初めてだから」

ことり「穂乃果ちゃん‥」

穂乃果「今、ことりちゃんが話してくれた中にきっと答えはあるよ!」

ことり「でも‥」

穂乃果「もしみつからなかったら私も一緒に答えを探すよ!」

海未「そうですよ。それにことりは何度も私たちを支えてくれました。私はそんなことりを弱虫とは思いません。むしろとても強いと思っています」

ことり「海未ちゃん‥」

58: シティごりら 2019/01/18(金) 22:31:10 ID:aCH4t2KI
穂乃果「それにさっきその西木野真姫ちゃん私達のこと見た時に気づいたけどあの子‥、泣いてたんだ」

ことり「真姫ちゃんが‥」

穂乃果「だからことりちゃんあの子の力になってあげて。ファイトだよ!」

海未「ことり!ファイトです!」

私の中にあった答え、それが2人の大切な友達のおかげで見えた気がした。

ことり「うん!」

私は涙を拭いて笑顔を2人に向けた。

穂乃果ちゃん、海未ちゃん、私決めたよ。あの不器用な女の子に私の答えを‥

59: シティごりら 2019/01/18(金) 22:31:50 ID:aCH4t2KI
ーー


数日後の放課後の音楽室




真姫(運命の「分岐点」か‥。それがこれから来るものなのかそれとも‥)

真姫「やっぱりあの人の占いなんて聞くべきじゃなかったわね」

そんな時、音楽室のドアが開いた。



真姫「この前言ったこと忘れたのかしら?それとも嫌がらせ?南さん」

ことり「今日はお客さんとして来たんだよ」

真姫「お客さん?」

私の予想外の行動に真姫ちゃんは目を丸くして驚いた。そのまま私は言葉を続ける。

60: シティごりら 2019/01/18(金) 22:33:04 ID:aCH4t2KI
ことり「買い取ってほしい思い出があるの。もう必要なくなっちゃったから。お客さんとして来る分にはいいでしょ」

真姫「‥いいわよ。こっちに来て」

少し腑に落ちない雰囲気を出しながらあの部屋に入って行き私もその後に続いて入って行く。

音楽準備室は前とはあまり変わっていなくて少し寂しい雰囲気も同じだった。私と真姫ちゃんはイスに座って向かい合った。

真姫「その必要ない買い取ってほしい思い出の内容を話して。どういう風にやればいいのかは前に来た人のを見ていたから分かるわよね」

ことり「うん、じゃあ話すね。これは私が小さい時の思い出だよ」

61: シティごりら 2019/01/18(金) 22:33:44 ID:aCH4t2KI
私はゆっくりとその大切な思い出を思い出しながら小さい子に読み聞かせるように話し始めた。

ことり「私が7歳、小学1年生の時の冬の出来ごと。私は昔から知り合いだった1人の女の子のお家にお母さんとクリスマスパーティーをしに一緒に行ったの」

ことり「その子のお家に着いたらその女の子は眩しいくらいの笑顔で迎えてくれた。そして一緒に手を繋ぎながらたくさんの美味しそうな料理が待ってる部屋に入ってみんなでご飯を食べた。」

ことり「クリスマスに相応しいとても美味しいご飯を。私とその女の子は食べるのに夢中でちょっとこぼしたりして叱られたりもしちゃったな」

真姫「‥‥。それで?」

ことり「うん、続けるね。それでご飯が終わったらお母さん達がケーキがあるっ言ってそれの準備があるから出てくるまで2人で遊んだんだ」

62: シティごりら 2019/01/18(金) 22:34:40 ID:aCH4t2KI
ことり「2人でサンタさんの絵を描いてプレゼント何が良いかなって話したりしたんだよ」

ことり「その子は今でもクリスマスにはサンタさんを楽しみに待っているのかな?」

真姫「‥さあどうかしら?」

ことり「あとその子のお家は広かったからかくれんぼもしたけど暴れすぎてまた怒られちゃったんだよね」

私は少し恥ずかしそうに笑う。

ことり「それで遊んでたらお母さん達にケーキが準備できたからって呼ばれて一緒にケーキを食べたんだ」

ことり「ケーキを食べてたら急に女の子に見せたいものがあるって言って私の手をとってベランダに向かったの」

ことり「流石に外は寒かったから上着をお母さんに着させてもらったけどね」

63: シティごりら 2019/01/18(金) 22:35:15 ID:aCH4t2KI
真姫「‥‥」

ことり「ベランダに座るとその女の子は夜空にある綺麗な星を指差して私に星を教えてくれた。私と一緒に見たくて一生懸命星のこと勉強したって言われてすごい嬉しかったの」

ことり「あんなに綺麗な星は今でも見たことはないんだ♪」

ことり「なぜか冬だから寒いはずなのにあの時は不思議と寒さを感じなかったの。そうやって2人で星を見ていたらその女の子は私にあるお話しをしてきたんだ」

ことり「その子はその次の年に小学校に入学するんだけどその子は私と違う私立の小学校に入学するって決まってたの」

ことり「それで知らない子の中に入ることと私と会えなくなるのが嫌だって」

真姫「っ‥‥」

ことり「私はこう答えたの。「大丈夫、あなたは優しくて素直な女の子だからきっと新しい友達はすぐ出来るし、私は会えなくなってもあなたのことが大好きだよ」って」

64: シティごりら 2019/01/18(金) 22:36:08 ID:aCH4t2KI
真姫「もういい‥」

ことり「それでもねその子は心配そうだったからお星様の下で1つの約束をした」

真姫「やめて‥」

ことり「その約束は‥‥、「その子に何があっても私は味方だよ‥、ことりお姉ちゃんが、真姫ちゃんを守る」それが約束」

ことり「絶対に、絶対に忘れてはいけなかった大切な約束」

真姫「!!」

真姫ちゃんは私のことをハッとした顔で見る。

65: シティごりら 2019/01/18(金) 22:36:40 ID:aCH4t2KI
ことり「真姫ちゃん、これが私の売りたい思い出。もう必要なくなってしまった私の大切な思い出だよ」

私は思い出を全て話し終わった。

真姫ちゃんは下を向いたままでほっぺに涙がこぼれてるようにも見える。

ことり「じゃあ買取を‥」

真姫「嫌よ‥、失いたくない‥」

真姫「なんで」

真姫ちゃんがそのままの状態で口を開く。

真姫「なんでよ‥。なんで今更なのよ」

ことり「真姫ちゃん‥」

66: シティごりら 2019/01/18(金) 22:37:32 ID:aCH4t2KI
真姫「その時、約束したのに‥、約束を破ったじゃない!あの時、私は苦しかったの!」

真姫「でもあなたとの約束があったから、ことりがいてくれると信じて頑張ったの!けどあの時‥、ことりは私のこと‥」

ことり「ごめんねずっと謝りたかったの。私は真姫ちゃんから逃げたから」

真姫ちゃんは涙を流しながら私に気持ちを正面からぶつけてくる。

真姫「それならどうして!もう私のことは放っておけばよかったじゃない!」

ことり「お姉ちゃんだから!」

真姫「!」

ことり「私は真姫ちゃんのお姉ちゃんのことりお姉ちゃんだから。真姫ちゃんを私が守るの!」

私は少し荒れた呼吸を整える。

67: シティごりら 2019/01/18(金) 22:38:23 ID:aCH4t2KI
ことり「ねえ真姫ちゃん。真姫ちゃんは誰よりも思い出や想いを大切にしているんじゃない?」

真姫「‥どうして?」

ことり「ここへあの1年生が思い出を売りに来た時、買い取った後に悲しそうな、怒っているような顔してた。それは大切な思い出を簡単に手放してしまうことに怒ったからじゃないの?」

ことり「そんな人のことを大切に思うことができるのが私の守る真姫ちゃんなの」

真姫「‥そんなの当たり前じゃない。思い出は人と人をつないでいた証拠。大切な宝物なのよ」

真姫「生きていれば思い出は増えていくけど、同じ思い出は二度と作れないの」

真姫「でも私のパパとママのはもういないのよ!もうパパとママの思い出は増えないの!消えてしまうだけなのよ、今あるものが突然消えてしまう怖さがわかるの? 」

真姫「怖いのよ‥」

68: シティごりら 2019/01/18(金) 22:39:59 ID:aCH4t2KI
真姫ちゃんボロボロと涙を流す。まるで今まで溜まっていた分を全て排出しているかのように。

真姫「もう嫌なの‥。また人と仲良くなって失った時にあんな気持ちになるくらいなら思い出も約束も何もいらないわよ‥」

真姫「期待もしたくない‥、もう傷つきたくない‥」

こんなに傷ついてしまった女の子との約束を私は破ってしまい守れなかった。

だからこそ、今度こそ‥。

私は真姫ちゃんに近づいて手を握った。私と違って少し冷たい壊れそうな手を。

真姫「ねえ、ことり‥‥。助けて‥」

69: シティごりら 2019/01/18(金) 22:40:40 ID:aCH4t2KI
私はそのまま正面から真姫ちゃんをギュッと抱きしめる。

ことり「もう大丈夫だよ真姫ちゃん。私がいるから、もういなくならないよ」

ことり「約束を守るよ」

真姫「‥ほんとうに?」

ことり「うん、私は真姫ちゃんから消えないし私から消させない。約束するよ」

涙をこぼす真姫ちゃんともう忘れないように、破ってしまわないように指切りげんまんをする。






真姫「ことり、お姉ちゃん‥」

70: シティごりら 2019/01/18(金) 22:41:22 ID:aCH4t2KI
約束を結ぶと不器用で意地っ張りだけど優しくて綺麗な女の子は小さな頃に戻ったかのように私の胸の中で声をあげて泣いた。

ことり「おかえり、真姫ちゃん」

私のほほを涙が伝う

やっと答えを出せた。

71: シティごりら 2019/01/18(金) 22:42:04 ID:aCH4t2KI
ーー


翌日 音楽室

真姫「で、なんでことりがまたいるのよ!」

ことり「もう真姫ちゃんことりお姉ちゃんでしょ♪」

真姫ちゃんは顔をトマトみたいに赤くする。

真姫「なっ!昨日のは‥、その‥」

ことり「昨日の真姫ちゃん可愛かったな~」

真姫「カラカワナイデ!!」

真姫「そんなことよりどうしているのかってことよ!」

ことり「実は‥、私が真姫ちゃんのお手伝いをするように正式に学校から命令されました!」

真姫「はぁ?」

72: シティごりら 2019/01/18(金) 22:42:50 ID:aCH4t2KI
ことり「だからこれから南ことりは真姫ちゃんのお手伝いをします!」

私はビシッと敬礼の真似をする。

真姫「そ、そんなの拒否するに決まってるでしょ」

ことり「残念ながら真姫ちゃんには拒否権はないよ。だって‥」

???「私がそのように決めたんですもの」

音楽室の扉が開いてこのことを決めた人がニコニコしながら入ってきた。

73: シティごりら 2019/01/18(金) 22:43:30 ID:aCH4t2KI
理事長「私の命令じゃただの学生は断れないわよね♪それに‥、この活動の活動費もまだ欲しいでしょ♪」

真姫「理事長‥、そういうことね」

真姫ちゃんは諦めたようにため息をつく。

理事長「うふふ、良かったわ。‥真姫ちゃんことりをよろしくね♪」

真姫「イミワカンナイ」

お母さんは真姫ちゃんの頭を優しく撫でる。真姫ちゃんは恥ずかしそうにほっぺを赤く膨らませながらプイとそっぽを向いた。

ことり「真姫ちゃんよろしくね!」

恥ずかしがってる真姫ちゃんに勢いで私も抱きついた。

74: シティごりら 2019/01/18(金) 22:44:25 ID:aCH4t2KI
真姫「こ、ことり!」

理事長「あらあら嫉妬しちゃうわね♪」

真姫「理事長も何言ってるんですか!」

ことり「真姫ちゃんの助手としてがんばります♪」

真姫「う、う、もうわかったわよ!その代わりちゃんと助手として働いてもらうわよ!」

ことり「わかってるよ~、ま~きちゃん♪」

真姫「わかってないでしょ!」

ことり「わかってるよ~♪」

真姫「分かってなーい!」

理事長(真姫ちゃんがまたこんな風に笑えるようになるなんて。ことり、ありがとうね)

これが私と真姫ちゃんの小さな約束から始まった物語。


おわり