1: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)20:54:38 ID:xpV


―――6月30日、事務所


がちゃり


李衣菜「おはようございまーすっ」


加蓮「あ、李衣菜おはよっ。アーンド、誕生日おめでとう♪」

李衣菜「おはよー加蓮~。えへへ、ありがと!」

加蓮「ふふ、私が1番におめでとうって言えたよね?」

李衣菜「うん、両親以外ならそうかな?」

加蓮「よしっ。泰葉に勝った♪」

李衣菜「いやいやなんの勝負なの……あはは」

加蓮「じゃあプレゼントも1番だね。はい李衣菜、これあげる!」ピラッ

李衣菜「ん? え、なにこれ」

加蓮「なにって、見た通りレシートだよ。ケーキの材料買ったときのやつ」

李衣菜「は?」ペラ…

引用元: モバP「だりやすかれんの誕生日」 



THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 25 Happy New Yeah! 
歌:島村卯月(CV:大橋彩香)、渋谷凛(CV:福原綾香)、本田未央(CV:原紗友里)、佐藤心(CV::花守ゆみり)、三村かな子(CV:大坪由佳)
日本コロムビア (2019-01-23)
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2: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)20:55:55 ID:xpV
加蓮「もうね、泰葉となに買うか揉めて揉めて。どっちも譲んないから結局どれも買っちゃった♪」

李衣菜「……や、待って? 待って、意味が分からないんだけど……え、レシート? だけ? ケーキの、ケーキ自体は!?」

加蓮「ないけど?」

李衣菜「ないの!? なんで!?」

加蓮「だって……ねぇ?」

李衣菜「ねぇ、って言われても……! 聞いたことないよ誕生日プレゼントがレシートって!」

加蓮「びっくりだよね!」

李衣菜「私がね!?」

3: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)20:56:51 ID:xpV

がちゃ


P「賑やかだと思ったら。おはよう、李衣菜」

李衣菜「あっ、Pさんおはようございます! ちょっと聞いてくださいっ、加蓮が訳分かんないことばっかり言ってるんです!」

加蓮「Pさーん、李衣菜にちゃんとプレゼント渡せたよ。この通りすっごく驚いてるの!」

P「おー良かったなぁ。そうだ李衣菜、誕生日おめでとうな」ポフポフ

李衣菜「えへへありがとうございますPさん♪」


李衣菜「って違いますよ! なんでPさんも普通に納得してるんですか、レシートですよ! ただの紙っぺら!」ペラペラ!

4: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)20:57:57 ID:xpV
加蓮「サプライズ成功だね♪」

李衣菜「こんなサプライズいらないよ!」

加蓮「毎年似たような物をあげても芸がないでしょ? だから変化球を、って思って」

李衣菜「変化しすぎて大暴投だよ! せめて私に取れるもの投げてよね!」プンスカ

加蓮「もー、そんなに怒んないでよー♪」ムギュ

P「李衣菜でも大暴投って知ってるんだな」

李衣菜「そ、それくらい知ってますよっ。お父さんが野球観てるから……もうっ、加蓮放してっ!」ジタバタ

5: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)20:59:17 ID:xpV
P「あぁそうそう、野球と言えば。俺の贔屓のチームにも李衣菜と同じ誕生日の選手がいるんだよ」

加蓮「あー、言ってたねー。今年ブレイクしてたくさんホームラン打ってるんでしょ?」

P「そうなんだよ! いやぁ、それまで正直パッとしなかったんだけど……まさかの覚醒だよ、頼りになるんだ!」

李衣菜「へぇ……なんだか意外かもです。Pさんもスポーツ見るんですね?」

P「あはは、ここじゃ話題にしないだけだよ。所長とはよく話してるけどな」

加蓮「Pさんも男の子ってことだね。ちょっと興奮気味でかわいいかも♪」

6: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:00:12 ID:xpV
P「お、男にかわいいはないだろ……」

李衣菜「あはは♪ でも私も会ってみたいですね、その誕生日が同じって選手に!」

加蓮「あ、それいいんじゃない? Pさんもお仕事で堂々と選手とお話できるかもよ?」

P「そ、そこはちゃんと線引きするよ……。はしゃぎ出したらみんなが止めてくれ」

加蓮「ふふ、はーいっ♪ ってことで、来年の誕生日の予定は埋まった李衣菜!」


李衣菜「まだ今年の誕生日については話済んでないからね?」

加蓮「あ、やっぱりダメ?」

7: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:01:31 ID:xpV
李衣菜「ダメっていうか、ほんとに驚いてるんだよ。加蓮も泰葉も、こういう……自分で言うのもなんだけど、誕生日とかの記念日に悪ふざけなんてしないから」

加蓮「う……」

李衣菜「こんなレシート1枚なんて、普通に考えて変だもん。だからなにか事情があるのかなって」

加蓮「うぅ……!」

李衣菜「例えばだけど、実際にケーキ作ってたら失敗しちゃって材料を無駄にしちゃったとか。それだったら怒る理由なんてないよ、気持ちはすっごく嬉しいから♪」ニパッ

加蓮「……泰葉ぁぁぁぁあっ! 早く来てぇぇぇぇえ! 李衣菜の優しさで消滅しちゃうぅぅぅうぁぁぁぁああああ!!」ゴロゴロゴローッ

李衣菜「ほんとに変だー!? Pさーん!!」

P「……もはや毒だな、李衣菜のこういうところって……」

8: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:02:34 ID:xpV

かちゃっ


泰葉「おはようございま――」


加蓮「ああああああ」ボッフボッフボッフ

李衣菜「ソファー壊れちゃうよー! やめて加蓮~!」


泰葉「す……って。なんですかこれ?」

P「お、泰葉。おはよう、遅かったな」

泰葉「おはようございますPさん……はい、これを慎重に運ぼうと思っていたらゆっくりになってしまって」ガサッ

P「おっ……おおっ。結構大きいな。李衣菜も喜ぶぞ」

泰葉「えへへ。加蓮と張り切っちゃいました♪」

9: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:03:44 ID:xpV
加蓮「ああっ、おはよ泰葉! アンタどこで道草食ってたのっ? その間に私、李衣菜の笑顔に魂抜かれちゃったんだけど!」

李衣菜「また訳分かんないこと言い始めた……お、おはよう泰葉」

泰葉「おはよう2人とも。ふふ、私も李衣菜に魂抜かれたいな?」

李衣菜「いやそこは乗っからなくていいから……」

加蓮「と、ともかく例のヤツ渡して。私は役目果たしたからねっ」

泰葉「そうだね、じゃあ第二段階……李衣菜、お誕生日おめでとう。はい、これ……加蓮と一緒に作ったんだよ。チョコレートケーキ♪」

李衣菜「えっ……ええっ!? ま、待って、失敗したんじゃなかったの?」

10: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:04:39 ID:xpV
泰葉「? ううん、失敗はしてないけれど……。加蓮、作戦と違うことしたの?」

加蓮「ちゃんとレシート渡して『プレゼントだよ~』ってやったよ! なのに李衣菜がぁ……!」

李衣菜「ケーキ作りに失敗しちゃったから、おふざけでお茶を濁そうとしたのかなぁって……」

泰葉「……あっ」

P「まぁ要は李衣菜に正面から攻略されたんだよ、加蓮は」

泰葉「またですか……はぁ、うふふっ。李衣菜らしくて好きですけどね」

李衣菜「え、ええっ?」

加蓮「慣れたつもりだったけどやっぱり無理……!」

11: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:05:45 ID:xpV
P「流れ的には、先に加蓮ががっかりサプライズしたあとに泰葉が来て本命を……って話だったんだけどな」

泰葉「肝心の私が遅れちゃって……。加蓮が犠牲になっただけで済んだけど」

加蓮「犠牲ってアンタね……!」

李衣菜「あ、あはは……私の勘違いだったんだ。ごめんね加蓮、早とちりしちゃって」

加蓮「いーわよ別にっ。……ほら、開けていいよ? 一生懸命作ったんだから」

泰葉「うん。李衣菜のために、ね?」

李衣菜「へへ、うんっ!」

12: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:06:34 ID:xpV

ぱこっ


李衣菜「わぁっ……!」

泰葉「これが本当のサプライズ♪」

加蓮「李衣菜っ、」

P「誕生日……」

「「「おめでとう!」」」


――ウッヒョー!

13: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:07:44 ID:xpV
李衣菜「――ぁんまいっ。甘すぎる、口の中が生クリームに支配されるっ……!」

泰葉「ふふふっ、息が甘いよ李衣菜♪」

加蓮「これでもかってくらい甘くしたからねっ♪」

P「お、俺は一切れで十分だな……美味しいけどコーヒー飲みたい」

李衣菜「私一人じゃ食べ切れないよっ、2人も食べて食べて!」

加蓮「ダメダメ、李衣菜優先だから♪ あーんっ」

泰葉「私も♪ はい李衣菜、あーんっ」

李衣菜「ダブルあーん!? ちょ、無理だって、そもそも私はロックなアイドルでこーいう甘々~な感じは似合わないけどでも美味しいよそれは間違いなぁ――んむんむんむおいひぃ♪♪」

14: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:09:58 ID:xpV
李衣菜「――んむっ……っはぁ、食べたぁ……♪ うあー、お腹溜まったよぉ。美味しかった、ごちそうさまぁ」ケフー

泰葉「良かった♪ 李衣菜の喜んでくれる顔が見たくて作ったの……ふふふ、大成功ね♪」

加蓮「ほら、まだクリームついてるよ? まったくもう……かわいいんだから、李衣菜ったら♪」

李衣菜「えへへ……♪ ……ぅぷ、食べ過ぎたかも……」

泰葉「それじゃ最後の仕上げだね」

李衣菜「へっ?」

15: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:11:00 ID:xpV
加蓮「Pさーん、コーヒー飲んでないでこっちこっち!」

P「ズズ……っん、ん? なんだ?」

泰葉「Pさんの協力が不可欠ですから。はい、李衣菜と向き合って座って……」

李衣菜「え、ちょ、ちょっと」

P「まだなにかするのか?」

加蓮「するよー。するっていうか、Pさんが李衣菜にあーんってしてあげるの♪」

李衣菜「ん!?」

泰葉「やっぱりお誕生日には良い思いをしてもらわないと♪」

16: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:11:47 ID:xpV
P「なんだ、それだけか。よし分かった」

李衣菜「いや分かったって! 理解が早すぎですPさんっ!」

P「おおう、息がチョコレートだな李衣菜」

李衣菜「んむぐっ、か、かがにゃいれくだひゃい!!」モゴモゴ

加蓮「あはははっ♪ 急に乙女~♪」

李衣菜「か、加蓮に言われたくないよっ! ほ、ほんとにあーんされなきゃダメなの泰葉ぁ!?」

泰葉「されたくないの? せっかくのお誕生日なんだから李衣菜もわがまま言っていいんだよ?」

李衣菜「うぐっ……!」

17: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:12:40 ID:xpV
加蓮「ほーら、されたいんじゃん。Pさん、容赦なく張り切ってどうぞ♪」

P「見られながらだとさすがに恥ずかしいな。……はい、李衣菜。口開けて」

李衣菜「はやっ、Pさん早いですって……!」

泰葉「ふふ♪」

加蓮「じーっ♪」

李衣菜「な、なんの罰ゲームなのこれ!? こんなのロックじゃない――ぁむぅ」

18: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:13:56 ID:xpV
P「ん、美味いか?」

李衣菜「…………ぁい。美味しい、です」モグモグ…

P「なら良かった。まぁ2人が作ったケーキだしな、誰が食べさせても一緒――」

李衣菜「いえ、一緒じゃないですよ……Pさんに食べさせてもらったの、一層美味しいっていうか……その」

P「……もう一口、食べるか?」

李衣菜「! た、食べ……ます。の、残すのはロックじゃないなぁって思うのでっ。それだけですよっ?」

P「ふふ、ああ。……ほら、あーん」

李衣菜「あー……んっ。……んふふっ♪」テレテレ


加蓮(やらせておいてアレだけど無性に腹立つ)

泰葉(分かる)

19: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:14:37 ID:xpV


―――


泰葉「――はい、では今年の李衣菜さん爆誕祭は終了ということでお開きにしましょう」

加蓮「そうですね。速やかに撤収しましょう」

李衣菜「ど、どうしてそんなに塩対応になってるの……?」

泰葉「いいもん……次の誕生日は私だから……」

加蓮「李衣菜より良い思いするもん……絶対……」

P「ああいうことさせる癖にこうなるんだから3人とも不思議だよな」

20: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:15:27 ID:xpV
加蓮「Pさんが私たちを同時に幸せにすれば済む話なんだよ?」

泰葉「です。いっぱい幸せにしてくださいね?」

P「そ、そう言われてもな……」

李衣菜「――えへへっ。じゃあ私も2人を幸せにしてあげるよ!」

「「!?」」

P(おっ、出たな)

21: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:17:59 ID:xpV
李衣菜「今日のこともそうだけど、思えば普段から2人にはお世話になってるもんね。幸せには幸せをお返ししないと!」

泰葉「…………」

李衣菜「どうしようかな? って言ってもご飯作るくらいしかできないからなぁ……。私、大好きな2人のためならなんだってするよ。だから……これからもずっとずっとよろしくね!」

加蓮「…………」

李衣菜「あっ、Pさんにもいっぱい恩返ししなきゃ! アイドルとして育ててもらってるんだし、それ以上に……へへっ♪」

P「いや、俺はいいんだ。李衣菜が……3人がそばに居てくれるならさ」

李衣菜「えへ……ま、それは私たちでまとめてお返ししますから♪ ね、2人とも」クルッ

泰葉「…………」

加蓮「…………」

李衣菜「……あれ?」

22: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:19:25 ID:xpV

がちゃーっ


ちひろ「おはようございます~♪ 李衣菜ちゃんお誕生日おめでとう~! プレゼント選んできましたよ~♪」

ちひろ「って、あれ??」


ごろごろごろごろ

ぼっふぼっふぼっふぼっふ


ちひろ「泰葉ちゃんが床を転がり加蓮ちゃんがソファーで飛び跳ねてる……一体何が」


李衣菜「と、止まって~! なんでいつも突然おかしくなるの2人とも~~~!!」

P「ああコーヒー美味い……。魂いつ戻って来るかな」ズズ…



おわり

23: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:19:55 ID:xpV
続いて泰葉編いきます

24: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:20:57 ID:xpV


―――7月16日、海水浴場


ブロロン ブロロン…

キキッ


がちゃ


李衣菜「――おお……」ザッ

李衣菜「おおお……!」タタタッ

李衣菜「おおおお~!」キラキラ…!


李衣菜「海だ~!!」ウッヒョー!

25: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:22:15 ID:xpV
加蓮「よいしょっ、と――うわ、あっつーい! 日差し強っ、空青っ、雲白っ!」

泰葉「海水浴日和だね。晴れて良かった♪」


李衣菜「2人とも早く来なよーっ、海だよ海~っ!」ブンブン


加蓮「んもう、さっきまで人の肩枕にして寝てたくせに……。急がなくても海は逃げないでしょー!」

泰葉「ふふ、そのままCMにできそう」

加蓮「よだれ跡と寝癖がなかったらね……」

26: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:23:08 ID:xpV
P「ふいー、着いた着いた。早めに出て良かったな」ノビーッ

加蓮「運転お疲れさま、Pさん」

泰葉「ありがとうございます、忙しいのに海に連れてきてもらって……」

P「いやいや、今日はめいっぱい楽しんでくれ。せっかくの泰葉の誕生日だ
だしな!」

泰葉「はい♪ 最高のプレゼントです、ふふふっ♪」

加蓮「改めておめでと泰葉♪ って、アレほっといたら迷子になっちゃうから回収してくるね」


アオイソラ! シロイクモ! ウッヒョー!

27: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:24:13 ID:xpV

―――


P「よっと。荷物はこれで全部かな……クーラーボックス、パラソル、ビーチチェア……」ゴトゴト…

泰葉「よくこれだけ海水浴グッズがありましたね、事務所に」

P「何故か倉庫にあったんだよ。謎だな」

泰葉「あ、私も持ちます」


加蓮「今日の目的は?」グニー

李衣菜「ひゃ、ひゃい。やひゅはのたんじょーびゅいわいれしゅ」

加蓮「よろしい。じゃあ脇目も振らず飛び出していった感想を6文字で」グニー

李衣菜「ごめんなはい!」

加蓮「よろしい」

28: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:25:32 ID:xpV
李衣菜「わ、私も持ちまふPさん」ジンジン…

P「大丈夫か?」

李衣菜「あはは……はい。主役の泰葉を置いてっちゃったのは悪かったですし。ってことで私も手伝いますよー」

P「じゃあパラソル持ってくれ、重そうなのは俺が持ってくから」

李衣菜「はーいっ」


泰葉「ああ、李衣菜のほっぺが赤く……。少しやりすぎだよ、加蓮?」

加蓮「いーのいーの。泰葉の誕生日なのに1人で盛り上がる方が悪いんだから」

泰葉「ふふ、もう。……ありがとう、私のために」

加蓮「んー? 今更気にしないでよ、私だって海水浴なんてお仕事以外で初めてだもん」

29: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:27:30 ID:xpV
泰葉「うん、私も初めて……友達と海水浴だなんて。だから嬉しいな」

加蓮「あれ、生まれ長崎でしょ? 小さい頃とかは?」

泰葉「うーん……幼稚園に通っていた頃に、家族で近所の浜辺には行った……と思うんだけどね。それ以来になるのかな」

加蓮「ふぅん……そっか。それじゃ今日は一緒に初めての海、楽しもう♪」

泰葉「ええ♪ 加蓮が泳げるようになるまで付き合うね」

加蓮「ってそれはいいから! 一応浮けるしっ!」

泰葉「うふふ、冗談♪」

加蓮「もうっ」


李衣菜「2人とも早く~っ!」

P「遊ぶ時間なくなっちゃうぞ~!」


加蓮「あっ、はーい! ほらっ、行くよ泰葉!」

泰葉「うん!」

30: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:28:56 ID:xpV

―――ビーチ


加蓮「ほらほら李衣菜! 早く膨らませて!」

李衣菜「な、なんで私が加蓮の浮き輪なんかぁ!」シュコココココ

加蓮「ダイエットダイエット! 2週間前にケーキたくさん食べてお腹ぽっこりだったじゃん、原因は私と泰葉だけど」

李衣菜「あの後ちゃんと死ぬ気で痩せたからね! お仕事あったし!」シュコココココ!


P「っだぁ! 暑い!! 準備だけで汗だくだ」グテッ

泰葉「お疲れさまです、Pさん。扇いであげますね」パタパタ

31: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:30:33 ID:xpV
P「ああ、ありがとう……っと、準備してる間に着替えてきたんだな。よく似合ってるよ、泰葉」

泰葉「あっ……えへへ。ありがとうございます……♪ 2人に選んでもらったんです、この水着。……初めての、オフの水着です」

P「うん。泰葉に似合う、可愛らしい桜色の水着だな」

泰葉「ご、強引に決められたんですよ? 確かにピンクは好きだけど……さすがに全身は勇気が入りました。Pさんに褒めてもらえて嬉しいです♪」

32: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:31:31 ID:xpV
P「色以外は李衣菜や加蓮とお揃いなんだな」

泰葉「です。どうせならお揃いにしよう、って。……はぁ、2人ともスタイル良いなぁ……」

P「あー……、泰葉もまだまだこれからだよ」

泰葉「あ、セクハラですよ?」

P「そういう意図はないから!」

泰葉「ふふ♪」


加蓮「よしよし、いい感じにぱんぱんだね。褒めてつかわそう李衣菜くん♪」

李衣菜「へひぃ、はひぃ~……!」グッタリ

33: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:33:13 ID:xpV
加蓮「――さあ! 準備はできた、2人とも?」

泰葉「うん、ウォータープルーフの日焼け止めもばっちり」

加蓮「ほんとは日焼けしてみたいけどそこは我慢っ」

李衣菜「そのルックスとプロポーションで浮き輪装備ってすごくアンバランスだね」

加蓮「お黙りっ。そんなのはどうでもいいの、海が私たちを呼んでるよっ!」

李衣菜「というか、来たときはあんなに私のこと責めたのに……加蓮、なんだかテンション上がってない?」

加蓮「…………Pさ~ん! Pさんも早く着替えてきてよ、泳ごうっ?」トテテテッ

泰葉「加蓮も初めてなんだって、海水浴」クスッ

李衣菜「んもう……。しょうがないんだから」

34: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:34:15 ID:xpV
P「あーごめん、俺はここで荷物番してないとならないから。3人で行っておいで」

加蓮「ええーっ。せっかくの海だよ? 泳がないと損だよ~」

P「そう言ってもな……みんなのスマホや財布だってあるし」

泰葉「うーん……それなら仕方ない、ですね。残念ですけど……」

李衣菜「あ、じゃあ写真だけでも撮ろうよ。泰葉の誕生日祝いに1枚♪」

加蓮「いいね♪ じゃあほら、Pさん立って? 一緒に写ろっ」

P「う」

35: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:35:20 ID:xpV
李衣菜「? どうしたんですか?」

P「いやー……それが準備で疲れちゃって。立つのもちょっとしんどい……」

加蓮「えー、それ普通に体力無さすぎだよPさん。ちょっとだけだから頑張って!」

泰葉「あ……そっか、Pさんずっと運転してくれてたもの。想像以上に疲れてたんですね?」

李衣菜「そ、そういえばそうだったね……すみません、Pさん」

P「いや、俺こそごめんな。3人でいっぱい思い出作ってくれ」

加蓮「むー、残念。……って、連れてきてもらっといてこんなこと言えないね。ありがとねPさん」

36: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:36:42 ID:xpV
李衣菜「それじゃ私たちで撮ろっか!」

加蓮「おっけー。泰葉、自撮りの練習してるんでしょ? お手並み拝見♪」

泰葉「が、頑張るね。Pさん、私たちのスマホを……」

P「ああ、はい。撮れたらあとで見せてくれな」

泰葉「はいっ♪」


李衣菜「う、浮き輪が激しく邪魔なんだけど……」

加蓮「私の命綱が邪魔とかひどーいっ」

泰葉「ほら2人とも、もっと寄って……はい、ちーず♪」

37: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:37:29 ID:xpV

きゃっきゃ うふふっ

パシャ パシャッ


P(……もう慣れたつもりだったけど、さすがに日焼け止め塗り合ってる水着の女の子たちを間近で見るのは刺激強かったな……これじゃ立てん)

泰葉「Pさーんっ、ピースしてください♪」

P「お、おー。いえーい」

泰葉「ふふっ、いい笑顔ですっ♪」パシャッ

38: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:38:56 ID:xpV
泰葉「――お待たせ、Pさんにスマホ渡してきたよ」

李衣菜「うん、ありがと。……やっぱりPさんとも海遊びしたかったなぁ」

加蓮「ねー。Pさんの水着姿、密かに期待してたのに」

泰葉「ふふ、今のあのラフな格好もなかなか珍しいけれど。……まぁ、Pさんも男の子だから。ふふふっ♪」

「「へっ??」」

泰葉「ううん、なんでも。さ、行きましょう――海へっ!」

39: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:40:00 ID:xpV

―――浅瀬


李衣菜「――ぷはっ! 泰葉、結構泳ぐの速いね!」チャプチャプ

泰葉「コポ? コポー、コポーポ、コー」プカプカ

李衣菜「しゅ、シュノーケル着けたままじゃなに言ってるか分かんないよ」

泰葉「ぷは。ふふ、これ面白いよ♪」

李衣菜「びっくりするほど似合ってるね、それ……」

泰葉「コポー♪」


加蓮「ま、まってー! 波で押し戻されて全然進まないんだけど~!」パチャパチャッ ザザーン…

40: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:41:29 ID:xpV

―――少し沖


加蓮「ちょ、ちょっと? どこまで沖に出るの? もう足つかないんですけど」プーカプーカ…

李衣菜「ん? とりあえず……あっ、あそこに飛び出てる岩まで!」

加蓮「えっどれ……って遠っ!? まだ半分くらいの距離だよ!?」

李衣菜「大丈夫大丈夫、加蓮の浮き輪に掴まってれば楽勝だって♪」

加蓮「私が怖いの! ああああなんか漂ってる!! 黒い真ん丸の何かが私たちの周りをぐるぐr」

泰葉「ぷあっ! コポー!」ザバァッ

加蓮「ってアンタかーい!!」バチャーン

李衣菜「海藻取り過ぎだよ!? 海女さんじゃないんだから!」

41: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:43:00 ID:xpV

―――沖の岩


加蓮「ああ……海岸があんなに遠い。遭難しちゃったよぉ……助けてPさぁん」グスン

泰葉「浜が見えてるなら大丈夫だよ。また帰りもお願いね、豪華客船カレン号♪」

加蓮「泳げてたら浮き輪叩きつけて1人で帰るとこだよっ! この誕生日女っ、このっ」パチャッパチャッ

泰葉「わぷっ、ふふふ♪」

李衣菜「ちょうど3人で座れるねぇここ。はー……ギラギラの太陽、青空と入道雲……それに波の音♪ ロックだ~♪」

加蓮「も~2人とも自由すぎっ! Pさぁーんっ! 助けに来てぇ~っ!」


P「!」

P「( ´∀`)ノシ」


李衣菜「あ、手ぇ振ってる」

泰葉「コポー♪」フリフリ

加蓮「帰らせてぇ~……!」

42: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:44:17 ID:xpV

―――戻って浜辺


泰葉「――ふう。遠泳楽しかった♪」

李衣菜「大冒険だったね!」

P「おかえり。随分楽しんでたな」

泰葉「はいっ。なんでもお願いしてみるものですね♪」

加蓮「生きてるぅぅ! 私生きてるよPさぁぁん!」

泰葉「正直加蓮が1番楽しんでたと思うよ?」

李衣菜「右に同じく♪」

加蓮「鬼! 悪魔ぁ!」

P「ははは♪」

43: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:46:01 ID:xpV

―――お昼ご飯


泰葉「海の家……!」キラキラ

李衣菜「焼きそば、カツ丼、カレーライス……定番のメニューだねー。どれにしよっか?」

加蓮「…………」ムスッ

李衣菜「か、加蓮そんな怒んないで。ごめんってば、泰葉のお願いだったんだし……ねっ?」

加蓮「……はぁ、もー。ずるいよねぇ誕生日。なんでも許してあげちゃいそうになるんだから……。私も誕生日、わがまま言いまくるからね?」

李衣菜「あはは、うん。お姫様の言うとおりにするね」

加蓮「柄じゃないよ、お姫様なんか♪ どっちかって言うと女王様だからねっ」

李衣菜「へへ、確かに♪ って泰葉は?」


泰葉「め、め、メロンパン味のアイス……!? おじさん、これを4つ……いえ、5つください!」


加蓮「スイッチ入ってる……」

李衣菜「ご飯だって言ってるのに……」

44: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:47:25 ID:xpV
泰葉「わ、私は主張します。あまりお腹に溜まるものを食べると、今は水着なのでお腹が膨れてしまいます。なので」

加蓮「Pさんのお昼ご飯も頼まれてるんだからだーめ! 男の人がアイス1つで満足するわけないでしょ!」

泰葉「だ、だから5つ。Pさんと私が1.5で、加蓮と李衣菜が1つずつ……」

加蓮「ナチュラルに自分も1.5個分食べようとしてるし……。とにかくダメ、せめて帰りでしょデザートは」

泰葉「で、でも……」

李衣菜「はいはい、焼きそば買ってきたよ~。Pさん用と、私たちで分ける用の2つね。あとポテトと……メロンパンアイスも。これも3人で分ければ丁度いいよ!」

「「李衣菜お姉ちゃん!!」」

李衣菜「もー、そういうのよしてよ♪」

45: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:49:37 ID:xpV

―――午後


P「焼きそばうめぇ」モグモグ

加蓮「いいよねぇ、こういうとこの食べ物。大雑把な味でさ」

P「だな。……いいのか、休んでて?」

加蓮「うん。さすがに慣れない泳ぎは疲れちゃったから」

P「そっか。それにしても良かったよ、喧嘩になってなくて」

加蓮「ふふっ、まぁね。譲り合うよりやりたいことは全部やろうね、って決めてるの。遊んでても、もちろんアイドルでもね」

P「欲張りなのはいいことだよ」

加蓮「ふふ。それとわがままなの、私たち♪」

46: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:50:39 ID:xpV
泰葉「――李衣菜、そこはもっと削って。……ああ違う、その15cm右……そう、そこ。……うーんちょっと削りすぎ……。ああ、もう私がやるからお水汲んできて」

李衣菜「ま、またぁ!? 砂のお城作りってこんなに過酷だったっけ……!?」

泰葉「はやく」

李衣菜「……はぃ……。女王様の言うとおりにぃ……」グスン


P「……あれ、やりたくないだけだろ加蓮」

加蓮「やりたいって思える要素ひとっつもないでしょ……。多分泰葉が今日1番やりたかったことだと思うけど、砂のお城……」

47: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:51:53 ID:xpV
泰葉「李衣菜、ゆっくりゆっくり水をかけて。崩れないように、でもしっかりと砂が湿るように」

李衣菜「む、難しすぎる……!」チョロ チョロ…ザバ


ぐしゃ……


泰葉「あっ! ……あぁ……」

李衣菜「あっご、ごめんっ! せっかく外壁作ったのにっ!」

泰葉「……ふふふっ。これも醍醐味だね。また作り直せばいいの、崩れたら」

李衣菜「泰葉……うん、完成まで付き合うよ!」

泰葉「ええ、それはもちろん♪」

李衣菜「うっ……! よ、余計なこと言ったかな……」

48: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:53:23 ID:xpV
加蓮「あはっ、李衣菜ったら墓穴掘ってる♪」

P「李衣菜はすぐ人に甘くなるからなぁ。あの調子じゃ暗くなるまで完成しないだろ」

加蓮「だね。もう日も傾いてきたね……いつかの南の島でやったグラビア撮影のときみたい」

P「ああ、あったな。随分昔のことみたいに感じるよ」

加蓮「今日はオフだけどね。すっごく楽しかったよ。また来たいな」

P「何度でも連れてくるよ。仕事でも遊びでも」

加蓮「うんっ、よろしくね♪ ……あ、そだ。海は海なんだけどさ……」

49: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:54:24 ID:xpV
加蓮「――――」

P「――、――」


李衣菜「……ねぇ、泰葉?」ザック ザック

泰葉「ん……なに? そっち出来た?」ペタ ペタ…

李衣菜「あ、ううん。それとは話違うんだけど……また海水浴来たいね、って思って」

泰葉「うん……そうね。1日遊んではしゃいで……最高の誕生日にしてもらったもの」

李衣菜「へへ、良かった。……それでさ、来年は……長崎の海に行かない?」

泰葉「え……?」

50: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:55:59 ID:xpV
李衣菜「車から降りたあと、加蓮と話してたみたいだけど……生まれたところの海、小さいときしか行ってないんでしょ? なら行こうよ。一緒に」

泰葉「き、聞こえてたの? ……いいの? 遠いよ……?」

李衣菜「泰葉が行きたいなら、私は……私も、加蓮もPさんも。どこへだってついていくよ♪」

泰葉「っ……」

李衣菜「どうかな。長崎の海岸にもこうやってお城作るの、ロックだと思うんだけど!」

泰葉「……そう、だね。すごくロックだと思う……えへへっ。嬉しい……一緒に行きましょう。約束♪」

李衣菜「うん、約束っ♪」


加蓮「……李衣菜のアレが発動した気がする」ジトッ

P「あいつ、さり気なく会話聞いてるからな……。天然なくせして気配りできるというか……」

加蓮「ほんとずるいオンナだよね……あのおバカったら」クスクス…

51: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:57:28 ID:xpV

―――

――




―――帰り、車内


ブロロン…

李衣菜「すぴー……」

加蓮「くぅ……くぅ……」


P「……電池切れたみたいに寝てるな」

泰葉「たくさん遊びましたからね、ふふっ……♪」

P「午前中は加蓮をビート板代わりにして、午後は李衣菜を城作りのアシスタントにしてたもんな?」

泰葉「あぅ。えへへ……わがまま言い過ぎちゃいました」

P「いいさ、誕生日だから」

泰葉「そうですね……誕生日ですから。年に1度の、私の生まれた日……」

52: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:58:49 ID:xpV
P「また来よう、来年」

泰葉「はい。……李衣菜が言っていたんですけど、今度は長崎へ行こうって。故郷の海辺に砂のお城を建てようって……♪」

P「ああ……いいな。今度はちひろさんと所長も連れて行こう」

泰葉「ふふ、それじゃ社員旅行ですね」

P「身内みたいなもんだろ。ご両親にもみんなで挨拶しないとな」

泰葉「そ、それは恥ずかしいです……!」

53: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)21:59:55 ID:xpV
P「いやー、来年が楽しみだ」

泰葉「も、も~……。同じ挨拶なら、私はPさんのご家族にお会いしたいですっ。というかどこの出身か私たちにも教えてください、いい加減!」

P「お、俺の生まれとかどうでもいいだろ!?」

泰葉「よくありませんよ! 将来そちらに移住げほんごほんっ」

P「聞かなかったことにするからな?」

泰葉「い、今のは口が滑りました。けどっ、せめてどういったところなのかくらいは知りたいですっ」

54: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:01:20 ID:xpV
P「や、えーと……まぁ、いいんだけどさ……」

泰葉「……今後ろはぐっすりです。聞いてるのは私だけですから……ふふふ」

P「いいよ、分かった……誕生日のわがままくらい聞くよ」

泰葉「やった♪」

P「そうだな……まず、俺の故郷は海に面してないんだよ。だから今日は俺も久々の海だったんだ」

泰葉「え、そうだったんですか。内陸出身とは……ちなみに泳げますか?」

P「もちろん。子供の頃は川で散々泳いだよ」

泰葉「あ、加蓮が聞いたら悔しがりますね……♪」

55: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:03:04 ID:xpV
P「あはは、かもな。で、ずっと山に囲まれててさ……山の尾根が連なって360度――」

泰葉「わぁ、見てみたいです――♪」


李衣菜「…………」

加蓮「…………」

李衣菜(起きる?)ヒソヒソ

加蓮(んーん。いいよ、せっかく楽しそうだし)ヒソヒソ

李衣菜(だね。正直1人バケツリレーで腕しんどいからまだもうちょっと寝てたい……)

加蓮(同じく……。私もバタ足しすぎて超ヤバい……)

李衣菜(まぁ、今日は泰葉の誕生日だもんね……♪)

加蓮(ふふ、うん……♪)


泰葉「Pさん。これからも思い出、たくさん作りましょうね♪」



おわり

56: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:03:27 ID:xpV
最後に加蓮編いきます

57: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:04:37 ID:xpV


―――9月5日、泰葉のお家


加蓮「――2人とも早くっ。花火が私たちを待ってるよ~♪」


李衣菜「待つのは加蓮でしょ~。んもー、子供じゃないんだから」

加蓮「ほら、忘れ物ない? バケツにチャッカマンに肝心の花火ちゃんっ♪」

泰葉「ちゃんと用意してあるよ。ふふっ、加蓮たらお散歩に行きたがってる元気なワンちゃんみたい♪」

加蓮「なんでもいいからはーやーく~♪」グイグイ

李衣菜「り、リードちょうだいリード!」

58: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:05:56 ID:xpV

――てくてく……


加蓮「ふっふーん、ふんふーん♪」


李衣菜「はぁ……。今日は朝から一段とテンション高いね、加蓮」

泰葉「誕生日だもの。Pさんにいっぱい甘えてたからタガが外れたのかも」

李衣菜「間違いなく頭にお花咲いてるね……」

泰葉「今の加蓮を昔のあの子に見せたら悶え転がりそう……♪」クスクス

李衣菜「あはは、それ絶対面白いやつだよ♪」

59: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:07:06 ID:xpV
加蓮「んー? なに後ろでこそこそ話してるの?」クルッ

李衣菜「ううん、なんでもない♪」

泰葉「ふふふ、秘密♪」

加蓮「あ、そうやってノケモノにするんだ? 誕生日の私をハブるんだ~? ひどいなー、泣いちゃうかも私♪」

泰葉「いえいえ、今日の主役をノケモノだなんて」

李衣菜「笑顔で泣いちゃう~なんて言ったって全然説得力ないよ」

加蓮「ふふ♪ 今日の女王様はすっごくご機嫌なのっ。悪口言われても許しちゃうくらいね!」

60: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:08:27 ID:xpV
泰葉「本当になにもないよ? 今日の加蓮はいつも以上にかわいいねってだけ。ね?」

李衣菜「ねー。むしろ褒めてるんだよ!」

加蓮「なんかそれ逆に怪しいんですけど~。ほんとに褒めてくれたの~? うりっ♪」ギュッ

泰葉「あぅ……! ほ、ほんとだよ? 暗いから離れて、前向いて歩かないと危ないからっ!」ヨロヨロ

加蓮「やーだ♪ 1歩1歩踏みしめて歩くの得意じゃん泰葉♪」ムギュ

泰葉「それは比喩だから! た、助けて李衣菜っ」

李衣菜「いやー荷物持ちで良かった~♪ 公園こっちだよね? 私は先に行ってるから~♪」テクテク

泰葉「ま、待って~!」

加蓮「ゆっくり月明かりのお散歩デートしようよやーすは~♪」

61: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:09:54 ID:xpV

―――モヨリ公園


加蓮「――着いた! 今日のメインステージ♪」

泰葉「うぅ……道行く人に何度も見られちゃった……」


李衣菜「遅いよ~。花火の準備もうできてるよっ」

加蓮「お待たせ李衣菜っ。もうね、泰葉が放してくれなくて♪」

泰葉「加蓮が、でしょ……! 李衣菜も本当に置いていくなんてひどいよ……」

李衣菜「あ、あはは。バケツに水汲んだりロウソク立てたりしなきゃだったからさ」

加蓮「あっ、空き缶にロウソク立てたんだ。頭いい♪」

泰葉「……李衣菜にしては頭が回ったね」

李衣菜「ご、ごめんて」

62: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:11:08 ID:xpV
加蓮「風で倒れたりしない?」

李衣菜「うん、缶に重しの小石入れたからね」

加蓮「へぇ~……ますます頭いいね、今日の李衣菜。誰の受け売り?」

李衣菜「……お父さんです。花火やるんだって言ったら教えてくれて……」

泰葉「でしょうね。李衣菜にこんな知恵があるとは思えないから」

李衣菜「ねぇさすがにひどい!」

加蓮「ふふっ。泰葉、私もごめんってば♪」

泰葉「……も~……。恥ずかしかったんだから。李衣菜もありがとう、準備しておいてくれて」

李衣菜「こ、今度は置いてかないから……!」

63: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:12:37 ID:xpV
泰葉「――さぁ。これより手持ち花火、開封の儀を執り行いたいと思います」

李衣菜「やんややんや~!」

加蓮「これで私もまた1歩大人に近づくんだ……!」

李衣菜「年々子供っぽくなってる気がするけど」

加蓮「それはほら、私って甘ったれだから♪」

李衣菜「ついに開き直り始めた……」

泰葉「やっぱり昔の加蓮に今の様子を見せたら大変なことになりそうね」

加蓮「多分発作起こして果てるんじゃない? ふふふっ♪」

64: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:13:45 ID:xpV
李衣菜「自分で言うなら世話ないよ」

加蓮「ほんとにねー。どっかの誰かさんたちと一緒にいたらこうなっちゃったんだから仕方ないでしょ?」

泰葉「そうね……こんな能天気な子と一緒にいたらね」

李衣菜「真面目なフリしてとぼけてる子と一緒にいたらねぇ?」

泰葉「私はいつでも真面目だよ? 2人は頼りないもの、真面目にならなきゃ」

李衣菜「私だって能天気じゃないし? 誰か1人でもしっかりしてなきゃねー」

加蓮「あははっ♪ そーいうとこだってば……もー、ほんと大好き♪」

65: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:14:55 ID:xpV
李衣菜「ってほら、すぐ脱線しちゃう。やっぱり年長の私がしっかりしないと……」


加蓮「早く開けて開けてー。私こういう花火初めてだからよく分かんないけど」ガサガサ

泰葉「実は私も初めてだったり……このまま火をつけるのかな。……えい」チリチリ…


しゅーーーっぱちぱちぱちぱちっ


泰葉「…………!!」キラキラ…!

加蓮「わぁ~! 綺麗綺麗、素敵 
~♪ 私も私も――」チリチリ


しゅうううううっ


加蓮「きゃー♪♪」

泰葉「きゃー♪」


李衣菜「か、勝手に始めちゃったよ……。んもう、やっぱり子供っぽいよね……ふふふっ」

66: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:16:34 ID:xpV

――しゅうううう……


加蓮「はぁ……もう綺麗すぎてため息しか出ない……」シュウウウウ…

泰葉「うん……♪」パチパチ…

李衣菜「久しぶりにやったなぁ、花火」シュワァァァ…

加蓮「……2人と一緒だと、本当にいろんなことができるね。ありがとう」

泰葉「…………。それは私も、ね。私の誕生日のときは大きくなって初めて海水浴に行けたから」

李衣菜「……ん。私もあんなに甘ったるいケーキ初めて食べたよ。3人でいると毎年……どころか、毎日飽きないよね」

67: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:17:44 ID:xpV
加蓮「誕生日だけでも色々思い出すね……。李衣菜がまるまる太っちゃって体重3倍になって戻らなくなったり……」

李衣菜「……なってないね? 気合で1週間で戻したし体重3倍とか3桁行っちゃってるね?」

加蓮「泰葉の作った砂のお城がツイッターに晒されて特定されて、連日抗議の電話が鳴り響いたり……」

泰葉「……ツイッターで話題にはなってたけど特定までされてないよ? というかどうしてそれだけで抗議されなきゃいけないの?」

加蓮「あるぇ~? そうだったっけ?♪」

68: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:18:59 ID:xpV
李衣菜「真面目な話かと思ったら……」

泰葉「やっぱりお花咲いてる……」

加蓮「あは、誕生日に湿っぽい話するわけないじゃん♪ そういうのは今日はのーさんきゅーだからっ」

泰葉「もう……。はい、次の花火」

加蓮「ありがとー♪」チリチリ…シュワワワ

李衣菜「お、それもいい色だね。……思い出したけど、泰葉の作ったお城すごかったね。帰ってニュース観てたら『海水浴場にシンデレラ城!』ってやってたんだもん」

加蓮「ほんとほんと。『あれ、見たことある……って今日行ったとこじゃん!?』みたいな」

泰葉「え、えへへ。お恥ずかしい限りです……」

69: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:20:20 ID:xpV
加蓮「身バレしなかったのが不思議だよね~」

李衣菜「バレたらバレたで面白かったかもだけどね♪」

泰葉「……来年はもっとディテールを凝った作品にしよう。映像で見るとまだまだ未熟……!」

加蓮「出た、凝り性……」

李衣菜「ま、またあの無限バケツリレーしなきゃいけないのかな……」

加蓮「頑張ってネ♪」

李衣菜「今度こそ手伝ってね!?」

泰葉「ふふ、来年が楽しみ♪」シュウウウ…

70: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:22:18 ID:xpV
李衣菜「よ、よし。来年は海で花火やろう。お城よりも!」

泰葉「や。お城も作るの。そうだ、お城に花火を立てましょう♪」

加蓮「本格的に夢の国に対抗してくの? ……絶対面白いじゃん♪」

李衣菜「相手が大きすぎるよ!」

泰葉「大丈夫。私のコネがあればある程度……」

李衣菜「それもある意味怖いんだけど……!?」

71: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:23:17 ID:xpV
加蓮「いっつも思うけど、泰葉のコネって毎回謎だよね……。芸歴長いってすごい」

泰葉「それに頼りすぎるのは良くないけれどね。……まぁ、あなたたちに悪いことが降りかかりそうになったら――本気を出すけど」ジュッ…

加蓮「……おかしいね、まだ9月なのに寒気しちゃった」

李衣菜「か、風邪かもね。あっためてあげるよ……」ギュ…

加蓮「泰葉が敵じゃなくて良かった……!」プルプル…

泰葉「ふふ♪ ……あ、花火、これで最後だよ。これは……線香花火、かな」

72: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:24:25 ID:xpV
李衣菜「あ、あー……そうだね。やっぱりシメは線香花火だよ、うん」

加蓮「そういうものなの?」

李衣菜「まぁね、今までのとはまた違う感じの……控えめで優しい光と音がいいんだよ」

泰葉「うん、やってみましょう。ロウソクもだいぶ短くなったね」

加蓮「もうおしまいかぁ……あっという間だったかも」

李衣菜「だね。……はい、加蓮。泰葉も……1人1つね」

73: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:25:56 ID:xpV

――パチパチパチ…


李衣菜「…………」パチチッ…

泰葉「…………」パチパチッ…

加蓮「……1番好きかも。この花火」パチチチッ…

李衣菜「そう? じゃあまた来年やろうね」

加蓮「うん。……とっても嬉しかった、今日。何度も言うけどありがとね」

李衣菜「いいよ、そんなの。ケーキ作ってもらったし」

泰葉「私は海に連れて行ってもらったから。ね」

加蓮「……ふふ♪ 持ちつ持たれつ、ってことかな。また1年、よろしくねっ」

74: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:27:38 ID:xpV
李衣菜「へへ、よろしく♪ って、なんだか加蓮の誕生日だと毎年総括みたいになるね」

泰葉「そういえばそうかも。まだあと4ヶ月くらいあるのにね」

加蓮「所詮は昔の人が決めたカレンダーだよ。私たちは私たちの基準で生きるの!」

李衣菜「おおっ、ロックだ!」

加蓮「ふふん♪」

泰葉「もう、勝手なことばかり言って……♪」

加蓮「勝手で上等、いっぱい勝手に……わがままに生きようよ。人様にあんまり迷惑かけない程度にね♪」

75: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:28:45 ID:xpV
李衣菜「かっこよく決まったね♪ ってことで……泰葉っ」

泰葉「あ、うん。今だね、確かに」クスッ

加蓮「ん? なに、どしたの――あ」


ぽとっ……


加蓮「花火消えちゃった……ぽとって落ちるんだね、線香花火って――」


李衣菜「加蓮、」

泰葉「生まれてきてくれて――」

「「ありがとうっ!」」


加蓮「――――」

76: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:30:08 ID:xpV
加蓮「…………」

李衣菜「やー、完璧なタイミングだったね……花火もふっと消えちゃって」

泰葉「く、暗い……火花で慣れちゃって見えない、李衣菜どこ……?」フラフラ…モニュ

李衣菜「なあぁ、そこはダメだって泰葉!」

加蓮「……から……」

李衣菜「あ、加蓮は大丈夫? って……」


加蓮「――だがら゛しめ゛っぽ゛いの゛イヤっで言ったじゃん゛ん゛ん……!」ポロポロ…

77: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:32:03 ID:xpV
李衣菜「あーあはは、やっぱりそうなっちゃったかーって危ないっ!? 真っ暗だから抱きつかないで2人ともっ! ちょ、揉むのはほんとやめて~!」

泰葉「なんてこと、どう考えても海へ行ったときより成長してる……!」

加蓮「ぅぐぐ、ぐすっ……おっきくしてやる、おっきくしてやるぅ……! 女王様を泣かしたバツなんだからぁっ!」


加蓮「このこのっ、ついでに泰葉もこのこのこのっ!」モニュモニュモニュ

泰葉「やっ、やぁぁぁあっ!?」

李衣菜「なにこれっ、なんだこれー!?」

加蓮「ぐしゅっ、このぉっ――アンタたちこそ生まれてきてくれてありがとうねっ! バカりーな、アホやすはっ!」



おわり

78: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:33:53 ID:xpV

―――次の日、事務所


李衣菜「」ズゥゥゥン…

泰葉「」ズズゥゥン…


P「……いや、なにがあった」

加蓮「花火でちょっと洋服焦がしちゃったの、2人して。ふふっ、人を泣かせるからだよーだっ♪」

79: ◆5F5enKB7wjS6 2019/01/19(土)22:34:40 ID:xpV
おしまい

前作から1年以上空いてしまったけど元気です