1: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:28:55.72 ID:Cl+vD4s5o
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2: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:34:33.01 ID:Cl+vD4s5o
【 陽炎 】
『 波浪警報はハローじゃない 』
くるくると傘を回す雪風に、真実を告げられないままでいる。
『 台風一過は一家じゃない 』
いそいそとカッパを着込む時津風に、未だ言えないままでいる。
駄目なお姉ちゃんを、許してほしい。
陽炎はまだまだ未熟です。
黒潮「陽炎」
不知火「陽炎」
陽炎「無理無理無理。とにかく無理」
黒潮「だって言わんと」
不知火「恥をかくのは雪風達です」
陽炎「だから無理!梅雨の時だって、大変な騒ぎになったじゃない!」
黒潮「あー……倍雨前線」トオイメ
不知火「あながち間違いじゃないのがまた……」トオイメ
陽炎「もうちょっと大きくなったら、絶対言うから!ね!ね!」
3: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:36:55.10 ID:Cl+vD4s5o
【 不知火 】
五月雨「きゃああぁぁーーーっ!」ドンガラガッシャーンッ!
提督「だ、大丈夫かい」
五月雨「ううぅ~、ご、ごめんなさ~い」
陽炎「あいかわらず派手に転んでいるわね」
黒潮「ホンマ、ドジっ子ちゃんやな~」
不知火「転ぶ度にパンツが見えるので、司令も目のやり場に困っています」
陽炎「転ぶといえば、ウチの浦風や磯風もよく躓いてるわよね」
不知火「浜風もですね。しっかり者なのに意外です」
陽炎「五月雨は単なるおっちょこちょいなんだけど……」
不知火「浜風たちの場合は、何かが邪魔で足元がよく見えていないみたいです」
黒潮「何かって?」
浦風「そろそろ演習の時間じゃのぉ」ボイン ボイン
浜風「ええ、急いで行きましょう」バイン バイン
磯風「おおっと、危ない。段差があるな」ボヨン ボヨン
谷風「おいおい、大丈夫かい。気を付けなよぉ」
陽炎「……」
黒潮「……」
不知火「……くっ」
4: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:38:45.33 ID:Cl+vD4s5o
【 黒潮 】
季節は夏。
黒潮「親潮、親潮!大変や」
親潮「どうしたのですか」
黒潮「大変なんやて!雪見だいふくがな、売ってるんや!」
親潮「はい?」
黒潮「はい?やないで!雪見だいふくや」
親潮「あー……はい」
黒潮「普通はな、冬にしか売ってないねん」
親潮「はあ」
黒潮「それがな、さっきテレビ観てたら夏も売るって!テレビで!」
親潮「そ、そうですか」
黒潮「でな、でな、ウチ行ってきてん。コンビニに、雪見だいふく買いに」
親潮「はあ」
黒潮「そしたらな、売ってないねん!雪見だいふく」
親潮「えっ、そうなんですか」
5: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:40:23.61 ID:Cl+vD4s5o
黒潮「ウチ、テレビ観てすぐ行ったのにないねん!売り切れて、そんなんおかしいやん」
親潮「はあ」
黒潮「どっかのデブが買い占めしてんねん!絶対そうや」
親潮「また入荷されますよ」
黒潮「待てへん~!もう、ウチむっちゃ走って行ったのに」
親潮「もしかして、まだ入荷してないのでは」
黒潮「えっ」
親潮「田舎ですし、少し遅れているのかもしれません」
黒潮「そう……かも」
親潮「だとしたら、まだチャンスはありますよ」
黒潮「そうや、そうや、絶対そうや」
黒潮「おかしいな思ってん、ウチ走って行ったのに全然残ってないもん、そんな訳ないもん」
親潮「きっとそうですよ、多分これからじゃんじゃん入荷されます」
黒潮「せやな、田舎やし仕方ないな」
黒潮「そうや!入ったらすぐ買えるようウチ待っとこ!お店で待っとこ」
親潮「きっと買えますよ」
黒潮「ウチ、ようさん買ってくるから一緒に食べよな」
親潮「はい、必ず」
黒潮「ウチ行ってくる!待っててな、親潮」
親潮「はい!」
6: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:41:44.48 ID:Cl+vD4s5o
◇◇◇
初風「黒潮が行方不明?」
天津風「えっ、ウソでしょ?まだ帰ってないの」
舞風「夜の点呼にもいないんだよ」
萩風「もうすぐ門限なのに」
野分「何かあったのでは……」
不知火「どうしましょう、司令に報告に」
陽炎「その必要はないわ」
嵐「陽炎」
陽炎「時が来たのよ」
谷風「えっ」
陽炎「大人の階段を上る時がね」
不知火「!」
天津風「!」
7: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:43:00.08 ID:Cl+vD4s5o
陽炎「いつまでも子供だと思っていたけど……知らない間にシンデレラになっていたのね」
不知火「黒潮がまさかそんな」
陽炎「ただのデブじゃなかったのよ」
陽炎「きっと今ごろ王子様と……」
嵐「ええぇーー?」
陽炎「おそらく朝帰りになるわ」
萩風「朝帰り!」
秋雲「いやー、しかし黒潮がねー」
初風「先を越されちゃったわね」
磯風「相手は誰だろうか」
谷風「そりゃ提督じゃね」
秋雲「いや、分からないよ」
秋雲「意外と年下とか」
浜風「年下!」
陽炎「ありえるわね。あの子、ああ見えて意外とリードするタイプだし」
雪風「は、はわわ」
舞風「黒潮が大人に、大人に」
8: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:44:18.70 ID:Cl+vD4s5o
陽炎「これは大々的にお祝いしなきゃね」
野分「まだ分からないじゃないですか」
野分「そっとしておくべきでは」
陽炎「何言ってんのよ、別にやましい事じゃないわ」
萩風「飾り付けしましょう」
嵐「俺、クラッカー買ってくる」
磯風「よし、私はケーキを焼こう」
天津風「彼氏と朝帰りなんて、陽炎型どころか駆逐艦でも初めてじゃない」
秋雲「黒潮やるねぇ~」
浦風「流石は黒潮じゃ」
浜風「黒潮はやっぱりその、大人に」
陽炎「そんなの決まってるじゃない!男と女が二人っきりで一晩中よ」
雪風「はわわ~ ///」
時津風「すごいよ、すごいよ」
親潮「……」
親潮(どうしましょう……)
親潮(大変な事になっています)
9: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:45:36.06 ID:Cl+vD4s5o
親潮「あの、まだそうと決まった訳では」
陽炎「親潮」
親潮「はい」
陽炎「心配なのは分かるけど、あの子を信じましょ」
陽炎「あの子が選んだ人ならきっと大丈夫よ」
陽炎「もちろん、黒潮を泣かすような事があれば私達が黙っていないわ」
親潮「あ、はい」
陽炎「さあ、派手にお出迎えするわよ~」
雪風「雪風はピアニカを吹きます!」
舞風「舞風はダンスを踊るよ!」
陽炎「うんうん、いいわね。盛大にやりましょう」
親潮(黒潮さん、早く帰ってきて……)
10: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:46:39.28 ID:Cl+vD4s5o
【 親潮 】
毎日黒潮に付き合って、テレビで野球を観るのが日課。
贔屓のチームは知ってるが、ルールはよく分かってない。
龍驤「よっしゃ、先頭出た!」
黒潮「ここは走らせるやろ」
浦風「いいや、手堅くバントじゃけ」
親潮「これは……チャンスなんですね」
11: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:47:54.78 ID:Cl+vD4s5o
◇
龍驤「采配が見ものやなー」
黒潮「見とき、絶対走らすから」
親潮「えっと、ベンチにいる人が監督なんですよね」
黒潮「そうや、司令はんや」
浦風「こっから作戦指示しとるんよ」
親潮「この人はクリスチャンなんですか」
龍驤「は?」
浦風「は?」
黒潮「えっ、何で?」
親潮「さっきから何度も胸で十字を切ってますし」
龍驤「は?」
浦風「は?」
親潮「信心深いのも結構ですが、指揮官が神頼みというのは頂けませんね」
浦風「クリスチャンって……」
龍驤「あっはっは、キミおもろいなー」
黒潮「あーもう、可愛いなー親潮はー」ダキッ
親潮「えっ、えっ?!? ///」
龍驤「ええんやで、そのままのキミでいてや」ニカッ
12: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:50:02.80 ID:Cl+vD4s5o
【 初風 】
明石「出来ました!自動追尾式防雨装置、傘太郎です」
初風「何よそれ」
明石「簡単に言うと、全自動の傘ですね」
初風「傘?」
明石「ドローンを改造して作りました。頭上で展開して雨を防ぎます」
初風「へえ~」
傘太郎「カサタロウ デス」
初風「喋った!」
明石「人工知能搭載です。お利口さんですよ」
明石「自ら考え最適行動を選択する、自律型のロボットなんです」
初風「島風の連装砲みたいなもの?」
明石「そうです!……と、いっても戦ったりは出来ません。あくまで傘代わりですから」
初風「ふ~ん」
13: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:51:12.87 ID:Cl+vD4s5o
◇◇◇
数日後。
初風「雨ね。早速使ってみるわ」
初風「頼むわよ、傘太郎」
傘太郎「マカセロ」ブーン
初風「すごいわ、全然濡れない」
初風「音も静かだし、これはいいわね」
傘太郎「ドンナモンダイ」ドヤ
◇
初風「さて、用事も済んだし帰りますか」
初風「まだ降ってるわね」
初風「帰りもよろしくね、傘太郎」
傘太郎「……」シーン
初風「あれ?」
傘太郎「ウゴケマセン」
初風「はあ?」
傘太郎「コショウチュウ デス」
初風「何よそれ、さっきまで動いてたじゃない!」
傘太郎「……」シーン
14: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:52:41.53 ID:Cl+vD4s5o
提督「やあ、初風」
初風「あ……提督」
提督「偶然だね、今帰りかい」
初風「え、ええ」
傘太郎「コショウチュウ!コショウチュウ!」(大声)
初風「ちょ、ちょっと」
提督「ん?傘が壊れたのかな」
提督「じゃあ、入れてあげるから一緒に帰ろう」
初風「は、はあっ?そ、そんな事」
提督「いいからほら、遠慮しないで」スッ
初風「あ…… ///」
提督「そんなに離れてると濡れちゃうよ」グイッ
初風「う、うん」ギュッ
初風「ぬ、濡れるの嫌だから、腕組んであげるわ」
初風「し、仕方なくなんだからね、仕方なくよ ///」
提督「ああ、しっかり捕まっててね」ニコ
提督「さあ、帰ろう」
初風「…… ///」
傘太郎「……」(ガンバレ ゴシュジンサマ)
16: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:56:52.98 ID:Cl+vD4s5o
【 雪風 】
ポケットの中には、今も
あの森で一緒に拾った、特別などんぐり。
暁「トトロなんていないわよ」
電「見た事ないです」
雪風「トトロさんはいますっ!」
雷「じゃあ見せてよ」
雷「会った事あるんでしょ」
雪風「うぅ……」
響「あれはお伽話なんだよ」
17: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:58:18.30 ID:Cl+vD4s5o
子供の頃に一度、トトロに会った事がある。
光溢れる森の中。
藪を掻き分け進んだ先で、開けた広場に突き当たる。
草のベッドでスヤスヤ眠る、小山のような毛むくじゃら。
寝ぼけまなこでこちらを見ると、挨拶代わりの大あくび。
名前を尋ねた訳ではないが、いつしか自然と知っていた。
そのヘンないきものが、トトロなのだと確かに分かる。
18: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 00:59:42.93 ID:Cl+vD4s5o
お腹のトランポリンで弾んだり、カラフルな傘で空を飛んだり。
一緒に拾ったどんぐりに、落ち葉で作った髪飾り。
歌って遊んで日が暮れて、猫バスが迎えにやって来る。
フカフカのシートに身を沈め、窓から外を覗き見る。
空には まんまるお月様。
出発進行の声を聞き、夜へと進んだその瞬間────
「ウチの子をォオ!どこに連れてこうってのよッ!!」
鬼の形相の陽炎が、闇を切り裂き飛んで来た。
19: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:01:14.14 ID:Cl+vD4s5o
消える世界。 変わる景色。
光の森は砕け散り、土砂降りの雨が海を打つ。
「雪風!しっかりして下さい!雪風!」
朦朧とした意識の中で、微かに不知火の声を聞く。
千切れる程に掴んだ腕を、陽炎は決して離さない。
「龍田が道を作るから、怪我人を抱えて今すぐ逃げろ!」
空を裂く衝撃音。 海を割る爆裂音。
叩きつける雨の中、怒号と悲鳴が入り混じる。
「心配すんな、後から必ず追いかける」
「でも……っ!でも……!」
「いいから行けっ!命令だ!行けっ!!」
殺意と硝煙に空は汚れ、鮮血と絶望に海は濁り。
軽巡二人の最期の声を、無様に逃げる背中で聞いた。
「────全速、撤退! 撤退!!」
雨が、強く降っていた。
20: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:02:54.68 ID:Cl+vD4s5o
◇◇◇
空の泣くこんな日は、あの光の森を思い出す。
あのヘンないきものは、今もそこにいるのだろうか。
いつかまた会えるだろうか
もう会う事はないのだろうか
それは雪風には分からない。
あれは、遠い日の夢であるのだろうか。
お伽の国の、作り話であるのだろうか。
雪風は空を見る。 降りしきる雨を見る。
手のひらに転がる、一粒の堅果を見る。
そうではない。 そうではない。
嘘つきではないのだと、あの日のどんぐりが教えてくれる。
21: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:03:56.31 ID:Cl+vD4s5o
遠い過日
幼い記憶
海で生まれ、港で暮らす雪風は
森を見た事など一度もない。
22: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:06:50.14 ID:Cl+vD4s5o
【 天津風 】
スターバックスコーヒー。通称スタバ。
複雑な注文システムで利用者を悩ませる現代のファイアウォール。
田舎者は近付いただけで死ぬ。
天津風「はい、買ってきたわよ」
陽炎「悪いわね」
不知火「流石は天津風です」
天津風「何で自分で買わないのよ」
親潮「絶対無理です」
黒潮「ウチらにはハードル高いわ」
長波「やれやれ、陽炎型はだらしねぇな」
不知火「む、長波」
長波「そんなにいて注文出来るのは天津風だけか」
陽炎「馬鹿にしないでよ、他にもいるわよ」
◇
谷風「姉ちゃん、アイスコーヒー五つ」
谷風「あのソフトクリーム乗ったやつな」
谷風「ふらぺちーの?おう、適当に頼まぁ」
谷風「こまけぇこたぁいいんだよ」ニカー
陽炎「どうよ」
長波「うわ、谷風つよい」
23: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:08:55.87 ID:Cl+vD4s5o
【 時津風 】
時津風「あー、お腹空いたなぁ」グー
時津風「お菓子買うお金もないや」
時津風「無駄遣いしなきゃよかったよ……」
時津風「ご飯まだかなぁ……」トボトボ
吹雪「あ、時津風ちゃん、お芋食べる?」
時津風「お芋っ!?」
吹雪「うん、ふかし芋。沢山あるよ」
時津風「食べる食べる!やったー!」
24: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:10:03.58 ID:Cl+vD4s5o
◇
時津風「美味しい、美味しい」モシャモシャ
吹雪「バターを溶かしても美味しいよ」
時津風「そうなの?やってみる!」
吹雪「ホントは焼き芋が最高なんだけどね」
吹雪「今日は雨降っちゃったからさー」
時津風「ふかし芋、美味しいよ」
吹雪「ふふ、まだまだあるからいっぱい食べてね」
時津風「うんっ!」ニコー
25: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:11:33.09 ID:Cl+vD4s5o
時津風「美味しい、美味しい」プフー
吹雪「あ…… ///」プッ
時津風「あっ、おならしちゃった」
吹雪「えっ、あっ」
時津風「てへへ、ごめんなさーい」
吹雪「も、もうっ、仕方ないなー、時津風ちゃんは ///」
時津風「あっ、また」ポフッ
吹雪「お芋を食べると出ちゃうよね」
時津風「あはは、おならマンだよー」ププー
時津風「うわ、くしゃーい。おならくしゃいよー」キャッキャッ
吹雪「あははっ」ププッ
提督「あー、ちょっといいかな」ドアガチャバタン
提督「雨漏りしてるみたいだから点検に……」スタスタ
吹雪「きゃあああぁああーーーっ!?!」
吹雪「は、入ってきちゃダメ!!」ドガァッ!
提督「ごふぅッ!?」ズサーッ
吹雪「司令官のバカバカ!●●●!」
吹雪「あっちに行って下さい!」バタン!
提督「……」チーン
26: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:13:05.25 ID:Cl+vD4s5o
【 浦風 】
雪風「でーんでーん、むーしむーし♪」
時津風「かーたつむりー♪」
浦風「懐かしい歌じゃのぉ」
浜風「かたつむりって、雨になると出てきますね」
浦風「普段はどこにおるんかのぉ」
浜風「謎ですね」
◇
雪風「見て見てー」
時津風「たくさん捕れたよー」
浦風「随分よーけおるな」
浜風「こんなに集めてどうするんですかね」
浦風「戦わせるとか?」
浜風「戦わないでしょう」
浦風「じゃあ、レースかな」
浜風「日が暮れますね」
27: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:14:27.46 ID:Cl+vD4s5o
◇
浜風「こんなに沢山、どうするんですか」
雪風「磯風にね、あげるの」
浦風「磯風?」
時津風「たくさん集めてくれってね、頼まれたんだよ」
浜風「磯風にですか?」
浦風「アイツ、こういうの苦手な筈じゃろ……」
浜風「何に使うつもりでしょう」
浦風「う~ん……? あ、テストさんじゃ」
浜風「リシュリューさんもいますね」
浦風「フランス艦はおしゃれさんじゃのぅ」
浜風「磯風と何か話してますね」
コマンダン・テスト「ボンジュール エスカルゴ オイシイ」
リシュリュー「フレンチ エスカルゴ サイコー」
磯風「メルシー エスカルゴ トレビヤ-ン」
浦風「何だか猛烈に嫌な予感がしてきたのぅ」
浜風「奇遇ですね、私もです」
28: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:18:59.86 ID:Cl+vD4s5o
【 磯風 】
磯風「どいてくれ、厨房に入れない」
初風「駄目よ。今は浦風と浜風が使ってるんだから」
磯風「私も手伝いたい」
初風「パーティー用の料理なんだから大変なの」
初風「慣れてないアンタがいちゃ邪魔になるわ」
磯風「むう……」
初風「あの二人に任せておけば大丈夫だから」
初風「アンタは別の事で頑張りなさい」
初風「掃除とか、部屋の飾り付けとかあるでしょ」
磯風「くっ……」
29: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:19:48.56 ID:Cl+vD4s5o
◇
舞風「磯風かわいそう」
野分「仕方ありません」
野分「お祝いの席で死傷者を出す訳には」
舞風「そうだけどさ~」
野分「初風が憎まれ役をかってくれているのです」
野分「無駄にしてはいけません」
舞風「うん……そうだね」
30: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:21:02.45 ID:Cl+vD4s5o
◇◇◇ 陽炎 改二 おめでとうパーティー ◇◇◇
秋雲「それじゃあ乾杯ー!」パンパカパーン!
野分「おめでとう陽炎」
舞風「陽炎おめでとう~」
陽炎「みんなありがとう」
不知火「流石は陽炎です」
陽炎「ありがとう。アンタもすぐよ」
嵐「いや~、立派になったなぁ」
萩風「ねえねえ、改二ってどんな感じ?」
陽炎「すごいわよ、力がどんどん溢れ出る感じ」
陽炎「これなら誰にも負けないわ」
舞風「へぇ~、すごーい」
浦風「さあさあ、美味しいの作ったけえね」
浜風「みんなたくさん食べてください」
時津風「わあ~、すごいごちそう」
雪風「すっごく、すっごく美味しいです」
谷風「あれ?そういえば磯風は」
初風「姿が見えないわね」
秋雲「どこに行ったんだろ」
31: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:22:25.71 ID:Cl+vD4s5o
◇
磯風「みんな、待たせたな」ドアガチャバターン!
磯風「お祝いのケーキを焼いてきたぞ」
初風「」
親潮「」
天津風「」
浦風「お前……どしたんや、これ」
磯風「さっき厨房で作ってきた」
磯風「急いで作ったから形は変だが、味はバッチリだ」
浦風「どう思う」ヒソヒソ
浜風「絶対ウソです」ボソボソ
32: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:23:38.50 ID:Cl+vD4s5o
◇
磯風「綺麗に切り分けて……さあ、陽炎食べてくれ」
陽炎「ありがとう磯風、いただくわ」
不知火「えっ?ちょっ、陽炎」
黒潮「アカンて、これ絶対死ぬやつやん」ヒソヒソ
陽炎「大丈夫、改二だから。心配しないで」ボソボソ
不知火「陽炎……」
陽炎「ケーキ大好きなの、嬉しいわ」
磯風「ちょっと形が崩れてしまったんだが」
陽炎「全然平気よ。いただきます」
浦風「……」ハラハラ
浜風「……」ドキドキ
陽炎「……」モグモグ
陽炎「……美味しい」
初風「えっ」
親潮「えっ」
天津風「嘘!?」
陽炎「とっても美味しいわ」
磯風「ほ、本当か」
33: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:25:35.31 ID:Cl+vD4s5o
陽炎「これならいくらでも食べられそう」パクパク
磯風「そ、そうか!そうか!良かった」
磯風「よし、それじゃあみんなにも……」
陽炎「磯風、これ全部食べていいかしら」
磯風「え?全部」
磯風「いや、しかしみんなの分が……」
陽炎「いいでしょう?今日は私が主役なんだから」
磯風「う、う~ん……」
黒潮「ええやん磯風」
親潮「私達は今度でいいですよ 」
不知火「今日は陽炎に譲りましょう」
磯風「ま、まあ、みんながそういうなら」
陽炎「ありがと☆」
陽炎「あー美味し、あー美味し」パクパク
嵐「すごい勢いで食べてるな」
萩風「本当に全部食べる勢いだよ」
34: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:26:54.63 ID:Cl+vD4s5o
◇
満潮「ちょっと?厨房使ったの誰よ!」ドアガチャバターン!
満潮「メチャクチャ散らかってるじゃない」ギャース!
磯風「ああ、すまない、私だ。すぐ戻る」
磯風「すまない、ちょっと片付けをするからパーティーは抜けさせてもらう」
谷風「えー?後でいいじゃん」
磯風「そういう訳にもいくまい」
浜風「私も手伝います」
磯風「いや、一人で大丈夫だ。散らかしたのは私だからな」
磯風「みんなはこのまま楽しんでくれ」
磯風「じゃあ、また」
陽炎「ありがとう磯風。おかげでいい記念になったわ」
磯風「あ、ああ、おめでとう陽炎 ///」
35: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:28:31.82 ID:Cl+vD4s5o
◇
陽炎「……行った?」
不知火「行きました」
陽炎「戻って来てないわね?」
不知火「大丈夫です」
陽炎「そう……」フラッ
不知火「えっ」
陽炎「……」バターン!
不知火「ちょっ!?陽炎!」
黒潮「アカン!ぶっ倒れた!」
舞風「我慢してたんだ!やっぱり我慢してたんだ!」
嵐「ヤバい!心臓が止まってる」
初風「舞風、明石さん呼んできて!野分はAEDを、大至急!」
天津風「不知火は人工呼吸をお願いっ!」
不知火「ぬいっ!? ///」
天津風「恥ずかしがってる場合じゃないでしょ、早く!」
不知火「ぬ、ぬいぃ…… ///」モジモジ
谷風「ヤバい!窓に死神来てる!カラスも、群れで!」
天津風「雪風!撃ちなさい!追っ払うのよ!!」
ワーワー キャーキャー オルゥアーッ! ドガーン! ガシャーン!
36: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:30:24.01 ID:Cl+vD4s5o
◇◇◇
満潮「何、ニヤニヤしてんのよ」
磯風「ん?いや別に」
満潮「いいからさっさと片付けなさい」
磯風「満潮は別に手伝わなくていいんだぞ」
満潮「いいわよ、あんた一人じゃ大変でしょ」
満潮「まったく、どうやったらこんなに散らかるのよ」
磯風「ははは、スマンスマン」
満潮「……で、何かいい事あったの」
磯風「む?分かるか」
満潮「そんだけニヤニヤしてたらね」
磯風「ニヤニヤなどしてないが……」
磯風「満潮、私は決めたぞ」
満潮「決めた?何を」
磯風「私は将来、料理人になる!」
満潮「はぁ?」
磯風「美味しい料理をたくさんふるまい、みんなを笑顔にするんだ」
磯風「どうだ、素敵な事だろう」
満潮「アンタねぇ……」
満潮「夢見てないでさっさと片付けなさいよ!」
磯風「よーし、やるぞー!」
37: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:32:11.42 ID:Cl+vD4s5o
【 浜風 】
リベッチオ「秋雲ってさ、夕雲型なの」
秋雲「え?違うよ。陽炎型だよ」
リベッチオ「でも、制服とか名前とか」
秋雲「あー、そうだね。よく間違われるよ」
秋雲「まあ、半分夕雲型みたいなものだしね」
リベッチオ「ハーフなの」
秋雲「んー、ハーフじゃなくて」
リベッチオ「ハーフじゃなくて?」
秋雲「ダブルだよ」
リベッチオ「ダブルなの!」
秋雲「陽炎型も夕雲型も、両方姉妹なんだよ」
リベッチオ「へー、すっごーい」
秋雲「ふふん、特別なのだよ」
38: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:35:35.16 ID:Cl+vD4s5o
リベッチオ「じゃあ夕雲型でも末っ子なの」
秋雲「いや、夕雲型だとお姉ちゃんになるね」
リベッチオ「お姉ちゃんなんだー」
秋雲「そうそう、偉いんだよ」ヒョイパク
長波「あ、こら!それアタシの」
秋雲「お姉ちゃんは偉いのだよ」モグモグ
長波「何言ってんだよ、アタシの方がお姉ちゃんだよ」
秋雲「だって秋雲の方が胸おっきいし」
長波「はあ?アタシの方がデカいだろ」
リベッチオ「え?●●●●で決まるの」
秋雲「そうだよ」
長波「当たり前じゃん」
リベッチオ「ふえぇ~、そうなんだー」
風雲「何バカな事言ってんのよ」
長波「よう、妹」
秋雲「末っ子ちゃんかな?」
風雲「はああぁぁあ?」
浜風「秋雲、お風呂空きましたよ」ドアガチャバタン
長波「長女キター!」
秋雲「大姉さまキター!」
リベッチオ「おっきいお姉ちゃんキター!」
風雲「わたしは!着やせするタイプ、だから!」
39: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:38:05.26 ID:Cl+vD4s5o
【 谷風 】
出掛ける支度をしていると、めざとく谷風がやって来た。
清霜から話を聞き付けて、慌ててここに来たようだ。
谷風「ちゃんこ屋に行くんだって?谷風も連れてっておくれよぅ」
生粋の江戸っ子である谷風にとって、ちゃんこ鍋は欠かせぬソウルフードなのだと言う。
那智(お前のソウルフードは、ちゃんこ鍋ではなくてお菓子だろう)
那智は心の中でそう思ったが、口に出すのは止めておいた。
那智「別に構わんが、退屈だぞ」
谷風「がってんだー!」パアアァ!
”生粋の江戸っ子”という言葉の意味を、那智は百回くらい教えたが。
大阪生まれ広島育ちの谷風は、大きく「うん!」と答えるだけで、最後まで理解を示さなかった。
武蔵「フッ、随分待たせたようだな」
果たして約束の時間になると、のそり、と武蔵がやって来た。
足元にはいつものように、清霜が纏わりついて離れない。
那智「いや、時間通りだ」
清霜「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
40: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:39:09.78 ID:Cl+vD4s5o
◇◇◇
那智「ちゃんこ鍋を四人前、塩で頼む」
武蔵「あと、ビールを瓶で。グラスはふたつ」
店主「あいよ」
清霜「お鍋、楽しみだね」
谷風「どすこーい、どすこーい」
店主「鍋が煮えるまで小鉢をどうぞ」コトッ
那智「おお、ありがたい」
店主「鶏皮と胡瓜の酢の物に、岩国蓮根のキンピラです」
武蔵「これはビールに合うな」
清霜「わーい、キンピラ大好き」
41: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:39:50.86 ID:Cl+vD4s5o
那智「この岩国蓮根というのは少し変わっていてな」
那智「他の蓮根より穴が一つ多いんだ」
谷風「へー」
清霜「穴が多いと何か違うの?」
那智「穴が多い分、普通のより向こう側が良く見えるだろう?」
谷風「うん」
那智「先を良く見通せる、つまり見通しが良いという縁起物なんだ」
清霜「なるほどー」
谷風「岩国すげー」
42: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:40:54.18 ID:Cl+vD4s5o
清霜「岩国ってどこにあるの?」
武蔵「何だ、知らんのか。長門が泣くぞ」
清霜「長門さん……?あーっ!山口だ!」
谷風「ばっか、お前そんな事も知らねぇのかよ」
清霜「むー!何だよ、なら谷風は知ってるの?」
谷風「あったぼうよ、岩国が山口だなんて子供でも知ってらあ!」
清霜「むむむー!じゃあ山口ってどこにあるの!?」 つ 地図
谷風「……」
清霜「どこさ」
谷風「……ココカナ?」
那智「そこは淡路島だ」
武蔵「淡路島だな」
店主「淡路島ですね」
谷風「お、おう…… ///」
清霜「淡路島じゃんかよー!」
谷風「ば、ばっかおめえ、昔はここが山口だったんだよ!」
武蔵「やれやれ……長門が泣くぞ」
43: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:41:52.79 ID:Cl+vD4s5o
◇
谷風「肉団子うめー」
清霜「巾着も美味しい!お餅が入ってるよ」
那智「うむ、やはり冬は鍋だな」
武蔵「お前ら野菜も食べろ」
那智「谷風、ポン酢を取ってくれ」
谷風「あいよっ!」サッ
清霜「ねぇ、ポン酢のポンって何?」
谷風「あぁ?そりゃおめぇ、ポンだよ」
清霜「だからポンって何」
谷風「……」
清霜「何さ」
谷風「ポンポコポンだよ」
清霜「ポンポコポンなの!?」
谷風「あと、ポンポコリンもあるよ」
清霜「ポンポコリンまで!?何だか楽しそう」
谷風「料理ってのは楽しいもんさぁ。みんなを笑顔にするんだからな」
清霜「なるほどー」
那智「うむ。すごくいい事を言ってるが、全然違うからな」
44: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:43:10.19 ID:Cl+vD4s5o
◇
清霜「お肉美味しいね」
谷風「すげー柔らかいよな」
那智「ちゃんこ鍋には大抵鶏肉が使ってあるだろう。これには理由がある」
武蔵「ほう」
那智「ちゃんこが元々、力士の料理というのは知ってるな」
清霜「うん」
那智「相撲では手をつく事を嫌うんだ。負けに繋がるからな」
谷風「うんうん」
那智「だから牛や豚など四つん這いの動物は避けて、二本足の鳥を食べるんだ」
武蔵「ほう、なるほど」
清霜「谷風知ってた」
谷風「あったぼうよ!こちとら江戸っ子でい」
谷風「ウチで作る時には肉なんか使わねえぜ!マグロやサンマが入ってらあ!」
那智「ちなみに『 手も足も出ない 』に繋がるから、本来は魚貝類も使わない」
清霜「使わないじゃんかー!」
谷風「お、おう…… ///」
45: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:44:16.27 ID:Cl+vD4s5o
◇
那智「寝たか」
武蔵「ああ」
那智「まだ〆が残っているんだがな」
武蔵「まあ、よく食べたほうさ」
那智「しかしすごい恰好だな」
那智「服は脱ぐわ腹は出すわ、やりたい放題だ」
武蔵「鍋は暑いからな、仕方あるまい」
那智「知ってるか?こういうのをヘソ天と呼ぶらしい」
武蔵「ヘソテン?」
那智「腹を出して、仰向けに熟睡する事だ」
武蔵「ほう」
那智「究極にリラックスしてる状態だからな、呼んだくらいでは全く起きん」
武蔵「そんなのよく知っているな」
那智「……足柄がよくやっているんだ。泥酔で」
武蔵「お前の妹は本当にフリーダムだな」
46: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:45:08.50 ID:Cl+vD4s5o
◇
武蔵「さて、そろそろ〆だが」
那智「うどんにするか雑炊にするか」
武蔵「それなんだが……チャンポン麺はどうだろう」
那智「チャンポン?鍋にか」
武蔵「九州では一般的なんだ」
那智「お前のウチだけだろう」
武蔵「いやいや、旨いから。騙されたと思って」
那智「ふむ……」
◇
那智「……旨いな」モグモグ
武蔵「だろう?」ニヤリ
47: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:51:10.49 ID:Cl+vD4s5o
【 野分 】
野分「●●学校っ!?」ガタッ!
陽炎「そう、林間学校」
野分「いっ、いきなり何を言い出すんですか」
陽炎「いきなりじゃないわよ、恒例よ」
野分「恒例?!?」
陽炎「アンタ今回が初めてよね」
陽炎「週末だから準備しといて」
野分「ちょっ、ちょっと待って下さい!●●学校ですよね」
陽炎「林間学校よ」
野分「何でそんなに落ち着いてるんですか」
陽炎「だって慣れてるもの」
野分「慣れてるっ!?」
陽炎「何回も行ってるし」
野分「何回もっ!?」
48: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:52:16.70 ID:Cl+vD4s5o
野分「そ、そんなの、まるで●●じゃないですか……」ハッ!
野分(そういえば風の噂で聞いた事があります)
野分(艦隊には毎日毎日●●●しい事ばかり考えている、変態みたいな艦娘がいると……!)
野分(てっきり時雨か春雨あたりだと思っていたらまさか)
陽炎「あー、楽しみね林間学校」
野分(まさか、ウチの長女だったなんて!!)ガーン!
49: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:53:29.28 ID:Cl+vD4s5o
野分「嫌です、野分は行きたくありません」
陽炎「何でよ」
野分「何でって、そんなの当たり前じゃないですか」
陽炎「まあアンタはインドア派だし、あんまりこういう所には行かないわよね」
野分「そうです!その通りです!」
陽炎「楽しいのに」
野分「楽しくありません!」
陽炎「意外と野分みたいな大人しい子がハマったりするんだけどね」
野分「ハマりません!ハメさせません!」
陽炎「嵐と萩風も行くのよ」
野分「えっ!?」
陽炎「二人とも乗り気だったわ」
野分「そんなバカな!絶対嘘です」
陽炎「こんなので嘘ついてどーすんのよ」
野分「う……た、確かに」
50: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:54:37.85 ID:Cl+vD4s5o
野分「ほ、ホントに本当ですか」
野分「萩風はともかく、あの嵐が?」
陽炎「嵐の方がノリノリだったわよ」
野分「ファッ?」
陽炎「待ちきれねぇぜ!とか言ってたわ」
陽炎「むしろ萩風の方が最初は渋ってたわね」
野分「えっ」
陽炎「まあ、色々と汚れるしね」
野分「やっぱり!汚されるんじゃないですか!」
陽炎「そりゃ林間なんだから、ちょっとは汚れるわよ」
野分「ちょっとじゃないですよね!?ちょっと違いますよね!?」
陽炎「でもまあ、結局二人とも行く事になったし」
野分「ええぇー……?」
陽炎「以前から興味はあったみたいよ」
野分「そ、そりゃ興味なら野分も……」ゴニョゴニョ
51: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:55:48.97 ID:Cl+vD4s5o
野分「分かりました、野分も行きます」
陽炎「そう、良かった」
野分「あの二人だけを悲しい目に遭わす訳にはいきません」
野分「辛い時も苦しい時も、これからはずっと一緒だと約束したのです」
野分「けど、舞風だけは」
野分「野分はどうなっても構いません、しかし舞風だけは汚さないでほしいのです」
陽炎「舞風なら、もう行ったわよ」
野分「ファッ!?」
陽炎「アンタが着任する前に何回も」
野分「ふおおおおーーッ!?」
野分「そ、そんな……既に舞風を泣かせたと言うのですか」
陽炎「いやあの子、メチャメチャ喜んでたけど?」
野分「」
陽炎「あー楽しかった!次も絶対連れて行ってね!とか言ってたし」
野分「」(気絶)
52: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:57:19.22 ID:Cl+vD4s5o
陽炎「まあ不安なのは分かるけど」
野分「むしろ不安しかないのですが」
陽炎「初めての時はみんなそうよ」
野分「分かりました。野分も覚悟を決めましょう」
野分「で、どこのホテルなんですか」
陽炎「ホテル?」
野分「泊まる場所です」
陽炎「何言ってんのよ、外よ外」
野分「外っ!?野外なのですか」
陽炎「アンタ、林間学校を何だと思ってんのよ」
野分「そ、そういうものなのですか」
陽炎「当たり前じゃない」
野分「ちょっと待って下さい」
野分「●●●が野外で露出で●●とか、ハード過ぎます」
陽炎「だから、みんなそうなんだってば」
野分「シャワーはどうするんですか?お風呂は」
陽炎「一日くらい別にいいでしょ」
野分「だって汗とか」
陽炎「そういう、普段出来ない体験をする為に行くのよ」
野分「ちょっと上級者向けすぎませんか……」
53: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:58:17.75 ID:Cl+vD4s5o
野分「それで……その、お相手は」
陽炎「相手?」
野分「男の人です」
陽炎「男? ああ、司令よ」
野分「司令ですか!」
陽炎「決まってるじゃない」
野分「そ、そうですか……」
野分「し、司令なら、まあ…… ///」モジモジ
野分「ほ、他の人は」
陽炎「いないわよ、そんなの」
野分「えっ」
陽炎「男の人は司令だけよ」
野分「え……?一人でどうやって……」ハッ!
54: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 01:59:38.44 ID:Cl+vD4s5o
野分(もしかして●●学校というのは)
野分(男の人が野分をくるくるするのではなく、野分たちが、司令を、くるくる……?)
野分(そうか!そうだったんですね!)
野分(それならみんなが乗り気なのも納得がいきます!)
野分(よかった!怖くて野蛮な男の人達はいないんですね!)
野分(……けれど)
野分「男の人は司令だけなんですよね」
野分「一人で大丈夫でしょうか。体力的にも厳しいのでは」
陽炎「アンタねぇ……司令を何だと思ってんのよ」
陽炎「優しくても、男で大人な現役の軍人よ」
陽炎「私たちなんて何人いたって平気に決まってるじゃない」
野分「そ、そうなんですか」
陽炎「経験も豊富だし、頼りになるんだから」
野分「では、心配はいりませんね」
陽炎「大丈夫よ。しっかり楽しんできなさい」
野分「はい!●●学校、楽しみです!」ニコー
55: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 02:01:19.66 ID:Cl+vD4s5o
【 嵐 】
提督「紫陽花(アジサイ)が雨に映えるね」
嵐「あれは白露型の花壇だな」
提督「へえ」
嵐「村雨や海風が手入れしてるよ」
提督「そうなんだ」
嵐「こっちのアサガオは朝潮型」
嵐「チューリップは夕雲型だな」
提督「陽炎型は?」
嵐「ウチは向日葵だよ」
提督「ひまわりかー」
嵐「雪風がどうしてもって聞かなくてさ」
提督「なるほどー……ん?」
提督「あそこの花壇は花が咲いてないね。葉っぱばかりだ」
嵐「あー……あそこはアレだ、秋月型」
提督「あー……」
嵐「その奥の、蔓ばっかりのが吹雪型」
提督「花壇って何だろう(哲学)」
嵐「あいつらはガチだ」
56: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 02:08:07.50 ID:Cl+vD4s5o
【 萩風 】
提督「二人とも、おつかれ」
萩風「あっ、司令。お疲れ様です」
提督「今からお昼ごはんかな」
萩風「はい、モスバーガーです」
提督「萩風がジャンクフードなんて珍しいね」
萩風「えへへ、たまにはいいですよね」
嵐「でも、ちょっと高いんだよなぁ」
提督「モスは美味しいよね」
萩風「今日のは菜摘みバーガーです」
嵐「こっちはきんぴらライスバーガー」
提督「へー、変わったハンバーガーだね」
萩風「普通のより、ずっとヘルシーなんですよ」
嵐「味も結構イケるしな」
萩風「ドリンクはもちろん爽健美茶」
嵐「俺は新発売のほうじ茶ラテ」
アイオワ「……」ピキピキ
57: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 02:09:32.32 ID:Cl+vD4s5o
アイオワ「NOOOOォォーーー!!」ドガーン!ガシャーン!
磯風「アイオワがキレたぞー」
アイオワ「ふざけんじゃないデース!」
谷風「ヤバい!テーブルひっくり返してる」
提督「だ、誰かビッグマック持ってきて」
アイオワ「オラオラーッ!」ガシャーン!バキャーン!
浜風「買ってきました」サッ
提督「よし、これで」
提督「ほらアイオワ、ビッグマックだぞ、お前の大好きなマックだぞ」
提督「おっきいポテトも付いてるぞ!」
アイオワ「!!」
提督「よしよし、コーラもあるぞ。Lサイズだ」
アイオワ「…………」
アイオワ「ビッグじゃなーいッ!!」ガシャアーンッ!
アイオワ「Lサイズじゃなーいッ!!」ガシャーンッ!
アイオワ「なめんなゴルァアアアーーッ!!」ドカーン!ドガーン!
提督「長門ー!助けて!アイオワ止めてー!!」
58: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 02:11:08.91 ID:Cl+vD4s5o
【 舞風 】
雪風「わーい、麻婆ー!麻婆ー!」キャッキャッ
春雨「麻婆春雨じゃないよ」
時津風「天津飯!天津飯!」ワーイワーイ
天津風「はいはい、チャオズチャオズ」
黒潮「名前をからかっちゃアカンで」
時津風「えへへー」
舞風「名前が食べ物と同じなんて珍しいよね」
陽炎「そうでもないわよ」
陽炎「萩風はおはぎだし、不知火なんてそのままよ」
舞風「え?不知火って食べ物あるの」
陽炎「あら、知らないかしら。ポンカンっていう柑橘類よ」
舞風「へー」
黒潮「あとはハヤシライスとか。艦娘やないけど」
59: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 02:12:32.96 ID:Cl+vD4s5o
提督「ハヤシライスってのはね、林さんが考えた料理なんだ」
提督「林さんのライスで、ハヤシライス」
舞風「えー?」
雪風「嘘だー」
時津風「じゃあ、森さんが作ってたらモリライスなの」
提督「そうなるね」
時津風「嘘だー」
黒潮「ちなみにオムライスを作ったのは小村さんやで」
雪風「えっ」
黒潮「小村さんのライスで、オムライス」
雪風「嘘だー」
時津風「料理に人の名前なんかつく訳ないよ。変だよ」
提督「いや、珍しくないんだって」
提督「竜田揚げなんか考えたの龍田だよ」
舞風「えー?」
春雨「竜田って、あの龍田さん!?」
提督「今のじゃないよ。艦船時代のね」
雪風「そんなの嘘だー」
時津風「絶対嘘だよー」
提督「いやいやホントだって」
60: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 02:13:58.84 ID:Cl+vD4s5o
【 秋雲 】
好奇心は猫を殺し、退屈は人を殺す。
散々続いた長雨のせいで狭い部屋に軟禁状態の姉達が、やさぐれて死んでいた。
談話室や資料室から適当に見繕った雑誌を差し出すと動き出した。
軒下に築かれたスズメバチの巣に思いっきり硬球を叩き込み、怒れる蜂の軍勢に総攻撃を受けた嵐の気持ちを、少しだけ理解する。
オイテケー オイテケー ミシュランオイテケー
オイテケー ワタシセブンティーン ズルイワタシモー
こんな状況でも、コンプティークは人気がない。
61: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 02:16:15.61 ID:Cl+vD4s5o
◇◇◇
陽炎「しかしすごい天気ね」 神通ファースト写真集
不知火「雨も風も尋常じゃないです」 ねこのきもち
黒潮「こんなに大型な台風も珍しいなぁ」 ミシュランガイド大阪
親潮「かなり危険ですね、気を付けないと」 ことりっぷマガジン
初風「雷もメチャクチャに鳴ってるわね」 Seventeen
雪風「うぅ~、外に出たいです」 どうぶつ図鑑
天津風「何言ってんの、死んじゃうわよ」 CanCam
時津風「だって身体が鈍っちゃうよ~」 のりもの図鑑
神通「では演習をしましょう」
浦風「えっ」 広島アスリートマガジン
神通「悪天候下での対応訓練です」
磯風「えっ」 きょうの料理ビギナーズ
神通「この天候ですし、確かに若干危険ではありますが」
浜風「えっ?若干?」 オレンジページCooking
神通「それだけやる気があれば大丈夫ですね」
谷風「えっ?やる気?」 ディアゴスティーニ 週刊 江戸
神通「いい緊張感を持って臨めそうです」
野分「ちょっ、ちょっと待ってください」 BE-PAL
神通「こういった状況に直面する機会も、今後数多くあるでしょうし」
嵐「し、死んじゃうぜ?絶対、マジで」 園芸ガイド
神通「同じ事です。訓練で生き抜けなければ、実戦で死ぬだけです」
萩風「神通さん、冷静に。落ち着きましょう」 Veggy
神通「それでは演習場に……いえ、どうせなら近海まで出てみましょうか」
舞風「むむむ、無理だよぉ。こんなの本当に死んじゃうよー」 DANCE STYLE
神通「さあ、参りましょう」
秋雲「いやいやいや、マズいって、マジヤバイって!」 コンプティーク
神通「……聞こえました、か」
全員「イエッサアァアアーーーッッ!!」(恐慌)
62: ◆36RVFTz/1g 2019/01/28(月) 02:17:31.41 ID:Cl+vD4s5o
以上です。
読んでくれた人ありがとう。
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