1: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:00:22 ID:35w
~事務所~
池袋晶葉「知っているとは思うが、音とは音波とも呼ばれるように、波の性質を持っている」
東郷あい「波の性質については私も習ったよ」
あい「たしか波の高さが音の大きさ、周波数が音の高低を表しているんだったかな?」
あい「周波数が高いほど文字通り高い音に聞こえて、逆もまた文字通り」
晶葉「その通り。ならば音とは空気を振動させて伝わるものである、と言うのも知っているだろう?」
あい「もちろんだとも」
晶葉「空気を振動させる・・・それはつまり波の持っているエネルギーを空気に伝えるということだ」
晶葉「さて、ここで着目すべきは周波数というパラメータだ」
あい「周波数。1秒間に波が何度振動しているのかを表す数値。単位はヘルツ・・・で合っているかな、先生?」
晶葉「実に模範的な解答だ、生徒君」
晶葉「では、問題だ」
引用元: ・池袋晶葉「逆循の音」
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2: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:02:25 ID:35w
晶葉「二人の人間が100メートル走をしたとしよう」
あい「・・・ふむ」
晶葉「一人は100メートルを100歩で駆け抜けた」
晶葉「もう一人は100メートルを1000歩で駆け抜けた」
あい「・・・んん?」
晶葉「タイムはどちらも同じだ」
晶葉「さて、100歩と1000歩。一体どちらが疲れるだろうね?」
あい「よ、よくわからない問題だが・・・それは1000歩だろう。引っ掛けやなぞなぞの類いでなければ、だが」
晶葉「正解だ。続いての問題」
晶葉「100メートルを1000歩で駆ける。このペースで今度はフルマラソンをしてもらおう」
晶葉「果たして、そんなペースで完走できるかな?」
あい「どんな体力自慢でもそれは厳しいな。無駄な消耗が大きすぎる」
あい「いったい1秒間に何度足を動かすことに・・・・・・」
あい「・・・なるほど、問題の意図がわかったよ」
あい「1秒間に何度足を動かすのか・・・これを周波数に置き換えて考えろ、ということか」
晶葉「そう、それが君の『なぜ高い音よりも低い音の方が遠くまで届くのか?』という疑問に対する答えだ」
3: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:05:04 ID:35w
あい「高い音は周波数も高い。1秒間に空気を振動させる回数が低い音よりも多い」
あい「当然その分エネルギーの消耗も大きい」
あい「ゆえにフルマラソンを完走するには至らず途中でリタイア」
あい「よって、高い音よりもエネルギーの消耗が少ない低い音の方が遠くまで届く、というわけか」
晶葉「ご名答だ。思っていたよりも単純な理屈だろう?」
あい「そうだね、言われてみれば実に単純なことだったよ」
あい「むしろなぜ今まで考えつかなかったのかとさえ思うよ」
あい「身近な具体例を出すことですんなり理解出来たということは・・・」
あい「私は今まで専門用語や数字の表面をなぞっていただけで、本質を見逃していた、と言うわけか・・・」
晶葉「ふむ、そうかもしれないな・・・だが、君はそれだけでは終わらなかった。そこが凄い」
晶葉「今回のように当たり前のことに疑問を持ち、その解決を求める。これは素晴らしいことだと私は思う」
あい「・・・そうかい?」
晶葉「ああ!かのニュートンも、リンゴが木から落ちるという当たり前のことに疑問を持ったのをきっかけに万有引力を発見したのだからな!」
あい「ほう、偉人のお墨付きと言うわけか。ならば少しは誇ることにしてみようかな」
4: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:08:55 ID:35w
あい「だが、しかし・・・参ったね」
あい「やはりこのあいだのライブで披露した演奏では、後ろの席の人達には私が想定していた音を届けられなかったということか・・・」
晶葉「サックスのソロ演奏をやったらしいな」
あい「あんな大きな会場で演奏するのはさすがに初めての経験でね。こんな問題があるとは思わなかったよ」
あい「まあ、それも原理がわかったので対策を立てられそうだ」
あい「君のおかげだよ。ありがとう」
晶葉「お役に立てて光栄だ」
ヴーン...ヴーン...
あい「すまない、電話だ。少し失礼するよ」
あい「もしもし?・・・ああ、そうか。やはりダメか」
あい「気にしないでくれ。無理を言ったのはこちらだからね」
あい「またの機会に頼むよ。では・・・」ピッ
晶葉「何かトラブルでも?」
あい「トラブル・・・というほどのものではないさ」
5: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:10:05 ID:35w
あい「今、練習しておきたい曲があるんだ。スタジオを借りて特訓しようかと思っていたのだが・・・」
あい「生憎、予約が一杯のようでね」
晶葉「事務所の防音室やトレーニングルームならどうだ?」
あい「参ったことにそちらも先客がいるんだよ」
あい「練習したい曲はアイドルとしてのものではなく、友人とのセッションのためというプライベートなものだから」
あい「あまり無理を言うわけにもいかない。さて、どうしたものか・・・」
晶葉「だったら私のラボに来ないか?防音はバッチリだぞ」
あい「本当かい?それはありがたい申し出だ」
あい「では、迷惑でなければお邪魔させてもらうとしようか」
晶葉「ああ、歓迎しよう!」
あい「そういえば君のラボを見るのは初めてだな」
あい「たくさんの発明品があるのだろう?楽しみだよ」
あい「ふふ・・・秘密基地を訪れる少年とはこんな気持ちなのかもしれないな、ワクワクしてきた」
晶葉「ははっ、あまりハードルを上げないでくれ」
晶葉「たしかに物珍しくはあると思うが、そこまで大袈裟なものではないさ」
6: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:12:24 ID:35w
~晶葉のラボ~
あい「1...2...3...4...」
ウサちゃんロボ(Drum)「~~♪」ズン...タタン...ズン...タタン...
ウサちゃんロボ(Bass)「~~♪」ベン...ベベーン...
あい「~~♪」パーーパラリラーーラー
晶葉「・・・」
・・・・・・
ウサちゃんロボ(Drum)「~~♪」ズン!タカタドン...ドン...ドン...
ウサちゃんロボ(Bass)「~~♪」ベン!ベベン...ベン...ベン...
あい「~~♪」パー!パリラパー...パー...パー...
ジャ~~~ン・・・
あい「ふう・・・こんなところか」
晶葉「ふむ・・・」
あい「助かったよ。おかげで満足のいく練習が出来た」
晶葉「お安いご用さ。事務所の一角をラボとして占有している身としては、こうして有効活用してくれた方が気が楽なくらいだよ」
7: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:13:18 ID:35w
あい「フフッ、そうか・・・」
あい「それにしてもまさかこんな可愛らしいバックバンドまで付いてくるとは思わなかったよ」
ウサちゃんロボs「ウサ!!」
晶葉「よく出来ているだろう?私との共演を想定して作った子達なんだ」
あい「素晴らしい完成度だよ。いつか私とも共演してくれるかな?」
ウサちゃんロボs「ウサ!!」
晶葉「任せておけ、だそうだ」
あい「ははっ、ありがとう。楽しみにしておくよ」
晶葉「ところで、今の曲はブルース・・・というジャンルかな?」
あい「そう、ブルースさ・・・せっかくの機会だ、感想を聞かせてもらえるかな?」
晶葉「ふむ・・・ふ~~~む・・・」
晶葉「率直な意見を言わせてもらうとな・・・その・・・少し言いにくいんだが・・・」
あい「遠慮はいらないよ、忌憚のない意見を聞かせてくれ」
晶葉「ならば・・・言わせてもらおうか」
8: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:14:14 ID:35w
晶葉「例えば、炎陣の曲なら『激しくて格好いい、テンションが上がる』」
晶葉「ポジティブパッションの曲なら『元気が湧いてきて前向きなれる』」
晶葉「蘭子の曲なら『幻想的で美しい』」
晶葉「・・・という風に具体的に言葉に出来るのだが・・・」
晶葉「さっきの曲はそういう言葉が出てこない・・・否、それを表現できる言葉を私は持っていない、と言った方が正確か」
あい「なるほど、それで唸っていたわけか」
あい「なに、具体的な言葉でなくてもいい。抽象的な表現で構わないさ」
晶葉「そうか・・・サックスの音は綺麗だと思う。演奏技術も素人でも分かるほど上手だ」
晶葉「だが、それ以外の部分を言葉にしようとすると途端に無口になってしまう」
晶葉「う~む・・・強いて言うなら、この曲は『何を伝えたいのか』がわからない・・・と言ったところか」
あい「ほう・・・なかなか良い感性をお持ちのようだ」
晶葉「・・・そうなのか?」
あい「ああ、そうさ」
9: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:15:22 ID:35w
あい「今の曲は、『人生はままならないものだ。ならば私はどうすれば良いのだろう?』という葛藤を表現したものなんだ」
あい「そして、その答えは出ないまま、曲は終わってしまう」
晶葉「答えは・・・出ないのか・・・?」
あい「ああ・・・君くらいの年齢だと、人生楽しい盛りだろう?」
あい「こういう葛藤が理解出来ないのも無理はないさ」
あい「むしろ『わからない』ということがわかるだけでも大したものだよ」
晶葉「ふむ・・・まるでブラックのコーヒーだな」
晶葉「大人たちは美味い美味いと飲んでいるが、子供の舌では苦くて何が美味いのかわからない・・・という感じだ」
あい「はっはっはっ、子供らしくて素敵な表現だね」
あい「そうそう、大人がコーヒーを美味いと感じるのには、ちゃんと理由があるんだよ」
あい「人間は大人になるにつれて、味覚が壊れていくんだ」
10: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:16:00 ID:35w
あい「苦味を感じる機能が衰えたがゆえにコーヒーの旨味を十分に味わうことができると言うわけさ」
あい「もちろん、個人差はあるがね」
晶葉「ほう・・・『大人になればわかる』というセリフにもちゃんと根拠があったのか」
あい「大人になるということは、同時に色々なところが壊れていくということ・・・」
あい「そうやって壊れてしまった痛みを紛らわせるために・・・」
あい「ブルースがあるのかもしれないね・・・」フゥ
晶葉(お・・・お・・・・・・)
晶葉(大人っぽい!!!)
晶葉(なんだ今の表情と仕草は!?)
晶葉(様になるなんてレベルじゃないぞ!!)
晶葉(同性が惚れるという噂も納得だな!!)
あい「おっと、辛気くさくなってしまったね。もう少し明るい話をしようか」
晶葉「う、うむ・・・」
11: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:18:02 ID:35w
あい「どうしたんだい?そんなに見つめられると照れるじゃないか」
晶葉「な、な、何でもないさ!」
あい「そうだ、君はピアノを弾けるんだったね?」
晶葉「あ、ああ、素人に毛が生えた程度の腕前だが・・・」
あい「そう謙遜することはない。どうだい、私とセッションしてみないか?」
晶葉「お誘いは嬉しいが、その・・・」
晶葉「ジャズやブルースは大人の音楽というイメージがあるだろう?」
晶葉「どうにも敷居が高く感じてしまって・・・」
あい「敷居が・・・高い?」
あい「フフッ・・・あっはっはっはっ!!」
12: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:19:48 ID:35w
晶葉「な、何もそんなに笑うことはないだろう!?」
あい「失礼、馬鹿にして笑ったわけじゃないんだ」
あい「まさか君の口からそんな言葉を聞くとは思わなくてね」
あい「私からすれば、ロボットを作るほうがよっぽど敷居が高いと思うよ」
晶葉「・・・」
あい「・・・」
晶葉「そうなのか!?」
あい「そうだとも」
晶葉「ふむ、たしかに一昔前はそうだったかもしれない」
晶葉「だが現在は簡単にロボットを自作出来るキットが販売されていたり」
晶葉「モーションプログラムの開発環境も以前よりずっと進化している。なんならスマートフォンでも出来るくらいだ」
晶葉「ロボットに触れる機会が増えた今なら決して敷居が高いなんてことは・・・」
あい「そう・・・ジャズやブルースも、それと同じことだよ」
13: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:21:04 ID:35w
あい「聞いてみて、触れてみて・・・」
あい「面白いと思ったなら、好きになったなら、今度は自分で演奏する、作曲する」
あい「そんな感じでいいのさ」
あい「ロボット製作と同様に、誰にでも門戸は開かれている」
あい「決して敷居が高いなんてことはないよ」
晶葉「なるほど・・・」
晶葉「よし!ならば早速やってみようか!」
晶葉「ウサちゃんロボよ!キーボードを用意してくれ!」
ウサちゃんロボ「ウサ!」
あい「フフッ、急に潔くなったじゃないか」
晶葉「考えてみれば単純なことだ」
晶葉「最初は懐疑的でも、実際にやってみたら面白かったということは何度もあった」
晶葉「だから、まずはやってみる」
晶葉「アイドル活動もそうだったしな!」
あい「それは私も同意するよ」
あい「逆循のコード進行も良いものだ」
14: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:22:25 ID:35w
あい「さて、まずは君の得意な曲を弾いてみようか」
あい「私がそれに合わせよう」
晶葉「そんなことも出来るのか!?」
あい「もちろんさ。アドリブは、むしろジャズの本領だからね」
晶葉「それは頼もしいな!」
晶葉「ではよろしくお願いします、先生!」
あい「おや?最初とは立場が逆になってしまったね」
あい「しかし・・・敬意を表してくれるのは嬉しいが、ここは堅苦しいのはなしにしよう」
あい「純粋に二人の音楽を楽しもうじゃないか」
晶葉「ふむ、ならばこういうのはどうだろう?」
晶葉「エスコートして頂けるかな、王子様?」
あい「任せてくれたまえ、お嬢さん」
おわり
15: 名無しさん@おーぷん 2019/02/01(金)22:24:45 ID:35w
以上。
自分はメロディックスピードゴシックデスメタル党なのでジャズやブルースのくだりは真に受けないでもらえるとありがたいです、はい。
ともあれ、池袋晶葉はやってみる可愛い、東郷あいはサックス奏者格好良い。
それだけ伝われば十分だ。
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