1: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:27:40 ID:eMb
(劇場控え室)
百合子「うーん、無いなあ。一体どこなんだろう・・・」

朋花「お疲れ様です。おや、何かあったのですか?」

紬「これは一体。随分と散らかっておりますが」

百合子「あ。ご、ごめんなさい。後でちゃんと片付けますから」

朋花「何かお探し物でも?」

百合子「ええ。実はちょっと、その」

引用元: 紬「この事件、私が解決してみせます!」【ミリマスSS】 



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2: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:29:43 ID:eMb
朋花「・・・なるほど。つまりプロデューサーさんにあるものを預けていたけれど、返してもらおうとやって来たらにむこうは外回りに出ていて留守だった、と」

百合子「はい」

紬「一体何を預けたのですか?」

百合子「ちょっとしたメモというか、覚え書きのようなものです。弱ったなあ、私は今日を逃したら次ここに来られるのは来週になっちゃうし」

朋花「プロデューサーさんに連絡すればよいのでは?」

百合子「もうしました。そしたらさっき、LI〇Eでこんな返信が来たんです」



P:あのメモか?それなら百合子の好きなブラッドベリ



紬「え。あの、これはどういう?」

百合子「分かりません、これ以降は返信も既読もついてなくて。だから、困ってるんです」

3: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:31:19 ID:eMb
朋花「ブラッドベリというのはたしか、百合子さんの好きな作家の方でしたよね。その本の中に挟んでいるということではないのですか?」

百合子「それぐらい勿論考えましたよ。置いてある本は全部カバーまで外して調べましたけど、ありませんでした」

紬「ふむ。これは、つまり・・・」

朋花「紬さん?」

百合子「あの~?」

紬「どうやらプロデューサーからの挑戦状ですね。いいでしょう、受けて立ちます」

百合子「ち、挑戦状!?なんですかそれ・・・はっ、まさか。実はプロデューサーさんの正体はとある特殊機関に所属するエージェントで、私をその組織の一員としてスカウトするためのテストとしてこのメッセに隠された本当の意味を」

紬「え。いや、あの」

朋花「落ち着いてください、百合子さん?」

百合子「あ、ごめんなさい。ついスイッチが入ってしまって」

4: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:33:24 ID:eMb
紬「コホン。皆さんもご承知のように、プロデューサーはとても言葉足らずなお人です。その安易な発言が原因で、思わぬ勘違いをしてしまった事は少なからずおありだと思います」

百合子(そうですか?)

朋花(まあ、もう少し聞いてあげましょう)

紬「ですがいくらプロデューサーといえども、預かった物の場所を伝えるという大切な要件を、不十分な言葉で済ますとは思えません。
おそらくですが、このメッセは七尾さんの性格に合わせた劇的な雰囲気を演出するために、わざとここで区切ったのでしょう」

百合子「なるほど、私がどう思われているかはさておき言ってることは分かるような」

紬「つまり。七尾さんのメモがどこにあるのかという事は、このメッセだけでも十分伝わるようになっているはずなのです」

百合子「もしかして、暗号・・・!」

紬「ええ。あるいは、ブラッドベリという名前にヒントが隠されているか」

朋花(百合子さんはともかく、紬さんも楽しそうですね~あの映画への出演以来、探偵ごっこにハマったという事でしょうか?)

5: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:36:30 ID:eMb
紬「失礼ながら、私はこの方を存じ上げません。一体どのような作家なのでしょう?」

百合子「はい!SFや幻想文学を中心に数多くの傑作を生み出した大作家です、その文章はとても幻想的で風景や心象描写の繊細さに大きな特徴があるんですが、
特に少年少女の機微を描いたものに定評があって、代表作の」

紬「ですから、落ち着いて下さい。そのように一気にまくしたてられましても」

百合子「す、すみません。トールキンと太宰とブラッドベリに関してはどうしても熱が入ってしまうんです。この前もプロデューサーさんに熱く語ってしまって」

紬「ふむ。という事は、プロデューサーはブラッドベリを知っているわけですね?」

百合子「そうですね。でもおかげで『ウは宇宙船のウ』は読んでくれたんですよ。あ、これはブラッドベリの代表的な短編集の一つなんですが」

朋花「変わった題名ですね~」

百合子「昔の訳ですから。原題だと本当は『R is for Rocket』なんですけどね」

紬「その題名だと正しくは『RはロケットのR』とでも訳すべきですね・・・他に、プロデューサーが読んだことのあるブラッドベリの本は無いのですか?」

百合子「多分これだけです。他にもおすすめはしたんですけど」

紬「となると、ヒントはその題名に隠されている可能性が高いですね。まずこの本棚のうちで、題名にRが入ったものを探してみましょうか」

6: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:45:23 ID:eMb
百合子「なるほど!ええっと、何かあるかな?」

朋花「まつりさんの持ってきた『究極超人あ~る』ぐらいでしょうか・・・何も入ってませんね」

百合子「違うのかなあ・・・そうだ、本だとは限らないんじゃ?ここにはCDやDVD、ゲームなんかも置いてありますし」

紬「いえ。それはないかと」

百合子「え、でもRの付くようなものはもう他にないですよ?」

紬「七尾さん、思い出してください。これは確かに挑戦状ですが一方であなたへの返事でもあるのです。という事はあなたにちなんでいて、しかもよく考えれば分かるような場所に隠しておくべきでしょう。
あまり難しくて答えが分からないようでは困るわけですから」

百合子「なるほど・・・すごいです紬さん、まるで本物の名探偵みたい」

紬「た、大したことでは。それに実際に見つけなくては意味がありません。何か、見落としていることがあるはずなのです」

百合子「邦題通りなのかも。『ウ』で始まる本なら何冊かありますよ、調べましょうか?」

紬「そうですね・・・いえ、少々お待ち下さい。先ほどの題名ですが、『R is for Rocket』で間違いないのですか?」

7: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:47:34 ID:eMb
百合子「はい、そうですけど」

紬「つまり、Rが二つ使われているわけですね?」

百合子「あ。もしかして・・・?」

朋花「何か、閃きましたか?」

紬「はい。七尾さんの好きな作家に一人、Rが二つ入る方がいるではありませんか。つまり・・・」

百合子「J・R・R・トールキン・・・!ちょうど昨日、志保に頼まれて『ほしをのんだかじや』を持ってきたんです。その時のやり取りをプロデューサーさんも見てたんですが、そこから思いついたんですね、きっと」

紬「いかにもプロデューサーの考えそうな事ですね。こじつけにもほどがありますが、七尾さんの好みを上手くおさえた悪くない謎だったといえるでしょう」

百合子「すごい、すごいですよ紬さん。それでは早速・・・あれ」

朋花「どうしましたか?」

8: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:50:09 ID:eMb
百合子「何も入ってません・・・」

紬「え、そんな・・・どこで間違ったん?」

百合子「やっぱりさっき言ったように、CDかDVDのケースの中なんじゃ?」

紬「いえ、これは七尾さん向けの謎なのです。となればやはり本を調べるべきかと。他の代表作で、プロデューサーが読んだことは無くても題名だけなら知っていそうな物だとか」


朋花「あの~。少々よろしいでしょうか?」


紬「天空橋さん。何か、思いついたのですか?」

朋花「いえ、ちょっとした疑問なのですが。そもそもこれは本当にクイズなのでしょうか?」

百合子「え?でもこんな中途半端なメッセなんですよ、そうとしか思えないじゃないですか」

9: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:51:40 ID:eMb
朋花「携帯電話でメールなりメッセなりを書き込む際に、作成中に誤って送信してしまうというミスはたまにあるものです。プロデューサーさんはそそっかしいですからね、そういう事をしないとは言い切れません。
そして、お仕事で今に到るまで携帯を見る事が出来ないという事もあり得るのではないでしょうか」

紬「そ、それは・・・ですが、もしそうならプロデューサーは一体どんな返信をするつもりだったのですか?ブラッドベリの本には何も入っていなかったと七尾さんがおっしゃっていたではありませんか」

朋花「そうですね~あくまでも憶測ですが、ブラッドベリそのものには意味がないとしたらどうでしょう」

紬「???」

朋花「つまりですね。ブラッドベリというのはただ単に場所を示しているだけであって、その中に何か謎が隠されているわけではないという事も考えられると思うのですが」

百合子「場所ですか?でも、ブラッドベリが置いてあるのは本棚ですし、本棚の向こうは壁で・・・」

朋花「その棚自体は調べたのですか?たとえば、棚の後ろ側とか」

百合子「・・・あ」

10: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:52:39 ID:eMb
百合子「あった、これだ!棚の後ろ側にテープで止めてある。もうプロデューサーさんったら、どうしてこんな所に」

朋花「ふふ。うっかり失くさないように絶対触れなくて、すぐに分かる場所に隠しておいたという事でしょうか」

紬「もう、なんなん。またしても見当違いだなんて・・・」

百合子「ま、まあまあ。ほら、推理そのものは筋が通ってたわけですし」

紬「つまり、うちの考える事はいつも出鱈目ばかりだと?」

百合子「あ。いや、そうではなくて。その」

朋花「紬さんの考えは正解であってもおかしくはなかったですよ。それが違っていたから、私が別の答えを探しただけの事です。
紬さんのように考えられないプロデューサーさんが悪いとも言えますね~」

紬「そ、それもそうかもしれませんね。あの方は思いつきだけで考えなしに実行する人ですから」

百合子(ものは言いようだなあ・・・)

百合子「とにかくこれでひと安心ですよ。このパスワードがないと、あのゲームにログイン出来なくなりますから」

朋花「・・・・・・はい?」

紬「ゲームの、パスワード・・・?」

11: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:53:28 ID:eMb
百合子「はい!今回のお仕事が終わるまでゲームは封印しようと思って、パスワードをいつもと違うものに変更したんです。で、それを書いたメモをプロデューサーさんに預かってもらってたんですけど」

紬「なんとまあ・・・」

朋花「そんなものの為に、わざわざ私達を振り回したのですか・・・?」

百合子「どうしましたか、二人共そんな怖い顔をして。あ、いやその・・・ごめんなさ~い!!」

12: ◆UEry/CPoDk 2019/02/07(木)15:55:42 ID:eMb
おしまい。お目汚し失礼致しました。

一応アイザック・アシモフの黒後家蜘蛛の会『指し示す指』が元ネタです。