2: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 21:31:56.50 ID:CXEhupYl0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タタンタタン・・・・・・  タタンタタン・・・・・・

寝ぼけた頭で振動を感じ取る。


遠く離れたどこかから響く音に合わせて振動が伝わってくる。。


自分は椅子か何かに座っているようだ。


??「ほら、凛。そろそろ起きろ・・・」


渋谷凛「ん......」


耳によくなじんだ声を聞き目を覚ます。

凛「あ、おはようプロデューサー、ごめん ちょっと寝てたみたい」


モバP「気にするな、体調を崩したりはしてないか?」

凛「大丈夫だよ、加蓮じゃないんだし、加蓮だってもう滅多に風邪なんてひいてないでしょ。心配しすぎだよ」

向かいに座っているのは自分たちのアイドル生活を影から日向からいつも支えてくれているプロデューサー。

彼が座っているのが幅の広い、安っぽく毛羽立ったクッションが付けられた座席であり、

自分もそれと全く同じデザインお椅子に座っている

隣には大きな窓、いや車窓というべきか

どうやら自分は電車のボックス席にプロデューサーと向かい合って座ったまま寝ていたらしい。

車窓の外は暗い


タタンタタン・・・  タタンタタン・・・


地下鉄だろうか、長いトンネルの中だろうか、イマイチ記憶がはっきりしない

引用元: 渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」 



3: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 21:34:07.40 ID:CXEhupYl0

凛「ところで私たちって今、仕事先に向かってるんだよね?」

P「そうだ。内容は覚えているか?」

凛「覚えてるよ。でも正直よくわからない内容だったから、説明が欲しいな」

凛「確か、晶葉が開発した、・・・なにかの装置とどこかの企業の技術のPRだったっけ?」

P「あぁ、合ってるよ。今から詳しい説明をしたいからその二人を起こしてくれないか?」

凛「?」

二人、と言われて凛は周りを見渡す、寝起きだったが大分頭がはっきりしてきた。

神谷奈緒「 z zZ」

北条加蓮「んん...」

凛「奈緒?加蓮?」

通路をはさんだ向かい側の席で、今まで気づかなかったが、凛のよく知るアイドルうちの二人が寝ていた。

P「三人の中じゃ最初に起きたのがお前だけでな。悪い気もするが起こしてやってくれ」

凛「う、うん わかった」

席を発ち、二人の肩を揺する。

凛「ほら、起きて二人共、」

加蓮「ん、・・・あれ凛?あれ、ここどこ?」

奈緒「Z・・・メ、メイド服が・・・」

凛「奈緒、メイドコレクションの仕事が夢に見るほど楽しかったのはわかったから起きて!」

奈緒「!? いやいやいや!べ、別に楽しくなんてっ!!・・・あれどこだここ?電車?」

凛「いまからプロデューサーが仕事の説明するから起きてこっち来て」

奈緒「凛? お、おう分かった」

加蓮「あ、プロデューサー、おはよ」

P「おはよう加蓮、奈緒。いまから説明しなきゃならんことがあるからちょっとこっちの席に来てくれないか」

加蓮「はーい」

4: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 22:30:35.42 ID:otEkbPo5O

トライアドプリムスの三人が揃って目を覚ましたところで通路の向こう、Pのいるボックス座席へ移る。


凛「(あれ?)」


凛はふと気づく。この車両、内装を見るにおそらく新幹線の類ではない、普通電車だ。

乗客は見たところ少ないようだが、その乗客らしきものが何やらおかしい


??「・・・・・・・・・」

?「・・・・・・・・・」

???「・・・・・・」

三人、

いや三つの”影”がいる

車両座席の最後列付近にゆらゆらと、

ちょうど人が座った時にできるような影が、影だけがゆらゆらと存在している。

凛「・・・・なにあれ・・・・・」

P「凛ー?説明はじめるぞー?」

凛「あ、うん分かった」


特に害もなさそうだし目の錯覚だろう。

凛は席に座った加蓮の隣に腰掛けた

5: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 22:32:43.81 ID:otEkbPo5O

??????????????????


「バーチャル世界体験?」

プロデューサーが最初に発した単語にまず奈緒が反応した。

奈緒「それってSFなんかで題材によく取り上げられてるアレか?」

P「ああ、そんな感じのやつだ」

奈緒「マジだとしたらすごいなそれ」

凛「そこ、ふたりで納得しないで」

加蓮「奈緒、アタシが貸りたアニメにもそんなのあった?」


P「まあまあ、じゃあ話すぞ。」

P「これからお前たちにはデータ上に作られたバーチャルの世界に行ってもらう。」

P「そこじゃあお前たちもデータ、それこそゲームキャラクターのような者として行動することになる」

7: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 22:36:40.84 ID:otEkbPo5O

凛「ふーん、分かった。頑張るよ」

加蓮「ちょ、凛、納得早すぎない!?」

奈緒「あたしはまだ技術の進歩具合に驚きを隠せない・・・いつの間に日本は始まってたんだよ・・・」

三者三様、かしましい反応をしたあと説明は続く。


・凛を含む、十数名のアイドルが仮想現実の空間に送られる

・仮想空間を運用するにあたっての技術面は池袋晶葉の発明が中心を占めている

・目的は今回の開発に協力した企業の技術力のPR

・そのために話題性を得やすい人物であるアイドルが今回の企画の参加者に選ばれた



奈緒「晶葉・・・いよいよなんでもアリになってきたな。ロボットが専門じゃなかったのかよ・・・」

P「いや?そのバーチャル空間ってのはロボットも無縁じゃないらしいぞ?」

加蓮「う?ん、ちょっと整理させて」

8: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 22:42:41.85 ID:otEkbPo5O
凛「・・・・・・・ねえプロデューサー」

だいたいそこまでを理解したところで大まかな状況を把握したらしい凛が質問する


凛「実際、その仮想空間?に行ったとして私たちは何をすればいいの?」


P「ああ・・・・・・・そのことも話さなきゃな」


奈緒「向こうでライブでもするのか?」

加蓮「デジタルデータになれば疲れなさそうだし、いつまでも踊ってられそう!」


自分たちの行き先は分かった。では次はそこで何をするのか。

プロデューサーはなんと説明しようか少しばかり迷った様子を見せた

が、結局、直截的な表現を用いることに決め、口を開いた。





P「模擬実戦だ。お前たちには仮想現実の中でちょっとした戦争ゲームをしてもらう」

9: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 22:56:00.94 ID:otEkbPo5O
画像ありがとうございます


凛「え」奈緒「は?」加蓮「なにそれ」


??????????????????


P「・・・つまりだな、仮想空間がどれくらい現実に近いものなのかをアピールするには歩き回ったりする他にも走る転ぶしゃがむとかのいろいろな動きができることを見せなきゃならないんだよ」


P「他にもオブジェクト、えっと空間内の物体が割れたり転がったりする時にどれだけリアルに近いのかも先方は見たいらしい」


P「要するに、だ。予測不能で不確定な事象が起きたときデジタルがどこまで対応できているのか見せてほしいってことだ。」


奈緒「わかったようなわからないような」

凛「だいたいわかるよ、要はそのバーチャル空間のテストプレイなんでしょ?」

加蓮「あ、今の凛の言葉でちょっとわかったかも」

奈緒「えっと・・・そういうことなのか?」

P「そういうことになるな。さすが凛だ。ただ戦争ゲームというのはバラエティの要素として考えてくれてもいい」

P「最近は芸能人同士でのガチ鬼ごっことかボール当てとかそういうのが流行りだろ?」

10: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 23:04:55.09 ID:otEkbPo5O
凛「わかった。頑張るよプロデューサー」

奈緒「・・・・・・特に危険ってわけじゃなさそうだし、こういうのちょっと憧れてたとこもあるし・・・いいぜ、やっても」

加蓮「アタシも参加するよ、そろそろプロデューサーからのアタシに対する病弱キャラのイメージもなくしたかったし」


そこまで聞くと凛は迷いなく即答し、二人もそれぞれの理由を持ちながら参加の意を表した。

P「ありがとうお前たち。」

三人を見渡す。自分が育ててきた三人が三人とも迷いないやる気をみなぎらせているのがわかる。

そして彼はおもむろに席から立ち上がった。


P「じゃあ俺はここで。一旦別のところに行かなきゃならんからあとは頼んだぞ?」



加蓮「あれ?プロデューサーが連れてってくれるんじゃないの?」

凛「それにまだ駅に着いてないし。どこ行くの?」

奈緒「そういえば・・・他に参加するアイドルも見当たらないな」



今現在その企業か、あるいは晶葉のラボにでも行く途中だと思っていた彼女らは当然それを疑問に思う。


P「何を言ってるんだ?」


だが彼の返答は実に単純明快だった。






P「ここはもう仮想現実の中だぞ?」

12: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 23:23:42.36 ID:otEkbPo5O


タタンタタン・・・  タタンタタン・・・



彼女たちは思い出す。


自分たちは今日電車になんて乗ってない

たしか移動は社用車だった

到着した先の大きなビルでさっきの内容とほぼ同じ説明を受けたのだ

そのあとこの仕事を受ける意志の有無を最終確認されると、


人がすっぽり入るようなカプセルのある部屋に案内されて・・・・・・



13: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 23:25:14.88 ID:otEkbPo5O
?????????????????

タタン・・・ タタン・・・・


奈緒「はー、この風景がデジタル?気づかなかったぜ」


加蓮「プロデューサも人が悪いね。タチの悪いドッキリみたい」


凛「・・・・・・じゃああの影みたいなのは何なんだろう」


なんとなく感じていた違和感の正体を理解し三人はひとまず自分たちが置かれた状況、

仮想現実空間の体感を確かめていた。といってもどうもわかりにくい。現実の感覚と比べて遜色がないのだ

加蓮「影?」

奈緒「あ、ほんとだ!なんだあれデジタルのバグか?」

凛「さっきからある、いや、いたんだよアレ」

座席のシート越しに後ろを見ると確かにいる。

座席に付いた姿の影法師のような何かが蜃気楼のようにゆらゆらと揺れているのだ。




????「あれは君たち以外のプレイヤーだよ」

14: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/03(月) 23:50:09.26 ID:otEkbPo5O
凛「!?」

奈緒「うおっ」

加蓮「今度は何?」


出し抜けに響く声

三人が声のする方に向けたところそこには一体のロボットがいる

どこかで見たことがあると思えばうさちゃんロボだった。

それが晶葉の声でしゃべっている


????「一応ゲームの対戦相手にもなるから、相手が誰かは極力伏せておこうと思ってね」

????「一時的に君たちからは見えないように設定しているだけで彼女らも私たちと同じ事務所のアイドルだし、彼女たちからは君たちの方が影法師に見えているさ」

晶葉(ロボ)「ああ、ちなみにこの姿はPの解説を引き継ぐために急遽作ったアバターだよ」



??「・・・・・・」

?「・・・・・・・・・」

???「・・・・・・」



奈緒「ってことはあたしたちは今ここにいる三人以外に誰が参加しているのかわからねえのか」

凛「じゃあなんで私たちはお互いが見えてるの?」

晶葉(ロボ)「ああ、それは彼の気遣いだよ。いきなり見知らぬ場所に一人だと混乱するだろうからその配慮ということで、三人づつで分けたグループメンバー以外は認識できないということにしてあるのさ」

16: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:00:27.21 ID:8P30W9NkO

加蓮「へー、じゃあアタシたち、そのかそう空間?でもこの三人で行動するの?」


晶葉(ロボ)「いや、あくまで説明会のために分けられただけだ。”向こう”では一人で行動するもよし、ほかのメンバーとユニットを組んでもよし、だ。」


凛「・・・・・・・・・」


影は相変わらずゆらゆらと揺れている。

逆にあの影からは自分たちが影に見えているらしい

あれはこっちを見ているのだろうか

こっちに話しかけているのだろうか



ピピッ


晶葉(ロボ)「!・・・・・・さて、別の車両に移動したPがどうやら参加するアイドル全員に説明を終えたらしい」


奈緒「プロデューサー?なんだ、別の車両にもまだアイドルがいるのか」



晶葉(ロボ)「ふむ、参加アイドル18名のローディングも終わった。」



晶葉(ロボ)「では頑張ってくれたまえ」


タタンタタン・・・ タタンタタン・・・


タタンタtttttttttttt.........


___ステージ"シティ"へのダウンロードを開始します___



?????????

17: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:04:14.14 ID:8P30W9NkO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

仮想現実空間 ”シティ”


チャプター
渋谷凛 


空は灰色

建物は天をつくほどに高い

無機質さが伝わってくるような都会の風景が視界いっぱいに広がっている


凛「ふーん、これが全部作り物なんだ」


何かのビルとビルの隙間で凛は一人つぶやく

それに対する返答はない

ここに来る前の電車、今思えばあれはデジタルとしての自分をここへ送り込むまでの「ロード画面」のようなものだったのかもしれない。

奈緒に借りたゲームにも大抵待ち時間にそういうのがあった。


凛「Now loading...だったっけ」


とにかく、そこで晶葉(もしかしたら晶葉の真似をした人工知能だったのかもしれない)が言っていたように最初からあの三人で行動するわけではなさそうだ。

だから今ここには凛しかいない。奈緒や加蓮はまたどこかにランダムに送られたのだろう

凛「(それより気になるのは・・・模擬戦闘だよね、見たところ私にはなんの武器もないんだけど)」



ザザザザ  ザザザザ

ガガガガ

晶葉(?)「あー、マイクのテスト中...テスト中...ん゛んっ!仮想空間内のアイドル諸君!聞こえているかね!私だ!」

18: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:05:23.88 ID:8P30W9NkO

晶葉(?)「この放送は現在空間全域に一律に放送されている。君たちに大事なことを伝えなければならんからね」



晶葉(?)「では模擬戦闘のルール説明を開始する!」



凛「!」


空の上から響くような、雷とも台風とも似ても似つかない雑音が轟いた後さっきも聞いた晶葉のものらしい声が届いた。

それに反応して空を見上げたのはもちろん凛だけではないだろう。


???????????????

奈緒「うおっ!?」


??????????????

加蓮「うるさいなぁ...もう」


??????????????


??「・・・・・・・・・」


?????????????


?「・・・・・・・・・なんでこんなことに・・・プロデューサーめ・・・」


?????????????


????「・・・・・・・・・・むむっ!」


?????????????


? ?「・・・・・・・・・・・・うふ」


?????????????

?????

???

?

19: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:07:04.13 ID:8P30W9NkO

晶葉(?)「・・・今現在この空間で自分の意志で活動しているのはアイドル18名」


「キュート6名、クール6名、パッション6名となっている」


「君たちは『プレイヤー』だ。自分たちで考え自分たちで動く」 


「模擬戦闘、というからにはこの18名で争うのもありなのだがそれだと無駄に長引くか特になんの面白みもなくすぐに決着がつくかのどっちかだという意見もあってな」




「相手を用意した。私は便宜上『ボット』と名付けている」





「プログラムに則り君たちに戦闘を仕掛けてくるロボットだ」


「このボットたちの討伐数を競うという形で君たちには模擬戦闘に参加してもらいたい」

20: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:15:31.91 ID:8P30W9NkO

「そうそう、武器の件だが」



「君たちにはそれぞれに『能力』を授けてある」


「一部の者には想像がつくんじゃないか?超能力とか特殊能力、漫画や映画の世界の産物だよ」


「この空間内のどこかに設置している『アクセサリー』『衣装』の類のなかから自分に適合するものを身につければそれが使えるようになっているよ」


「無論、剣や銃の類の通常武器もあるからそっちを集めることを優先してもらっても構わない」


「場合によってはボットがそれらのキーアイテムを持っていることもあるから能力が欲しいなら戦闘には積極的に参加するといい」


「ほかにも伝えたいことはあるがこれだけ知っておけばゲームは始められるな」

21: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:16:32.85 ID:8P30W9NkO
?????????

凛「晶葉・・・ノリノリだね。いつもよりおしゃべりになってる」


凛「じゃあ、そろそろ動こうかな」


ビルの間から歩いて抜け出す

能力、そんなことを言われても精々手からビームが出るくらいしか想像がつかないけど


凛「(まず通常武器とかいうのから集めてみようかな。能力が使えるアイテムは多分だけど簡単には見つからない気がする)」


未だに空から鳴り響く晶葉の声を一応耳に入れながら早歩きで誰もいない歩道を進む。


凛「(それにボット、私たちの敵。これにも注意する必要があるのかな)」


曲がり角を右に曲がる。


警戒して早歩きから普通の速度に落として、だが


そこで晶葉の声が途切れた

22: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:19:02.24 ID:8P30W9NkO
連絡事項は終わったのか?


いや違う、


凛の耳が、頭が、音を認識しそこねたのだ


あまりに動転したため



晶葉(?)「まずはチュートリアルだ」


晶葉(?)「君たち専用のボットを用意した。練習がてら戦ってみてくれ」





凛(ボット)「・・・・・・・・・」






曲がり角を曲がった先


そこに自分がいた


そこに渋谷凛がいた

23: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:28:04.81 ID:8P30W9NkO

制服もカーディガンも、スカートも

長い髪も、耳に付いたピアスのデザインも

全く同じ


唯一違う点をあげるなら胸元に小さなバッチのようなものがついていることか、

そのバッチはかすかに赤く光っており、よく見ると「bot」と刻まれているのがわかった

赤色

警戒色

危険を告げる色


晶葉「そうそう、多分言わなくてもいずれ気づいたと思うが、君たちには初期値100%でスタミナが与えられている」


晶葉「それが0になったらゲームオーバーだから気をつけてくれ」

凛「・・・・・・」

ゴクリとつばを飲み込む。その感覚もまるで現実じみている

そうだ言っていたじゃないか

仮想だと、ゲームだと

だったらこんな展開だって予想できたじゃないか

凛(ボット)「・・・・・・・・・」


___ゲーム開始3分経過____


渋谷凛VS渋谷凛(ボット)

及び

他17名のアイドルの練習用ボットとの対戦


___開始

24: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:45:39.37 ID:8P30W9NkO
凛「・・・・・・」


さて、自分には武器がない

それとも拳でも武器になるのだろうか


警戒心を解かぬままそこまで思考したところで相手、ボットが動いた

ボットの凛がこちを見据えたま一気に駆け出す

凛(ボット)「・・・・・・」


凛「!」


そのままボットは右手を平手の形にすると振りかぶる

いわゆるビンタ、女子らしい攻撃とは言える


凛ははじかれたように横っ飛びに避けた

ビンタ一つに大げさとも言えるがダンスのレッスンは何度もしてきたが戦闘訓練など受けたことのない凛に戦闘時の無駄のない動作を期待するのは無理な話だ。むしろよけられただけで大したものだろう


凛「ハァ・・・・・・ハァ・・・」

警戒していたとはいえいきなりだったため疲れとは別で呼吸が乱れる


凛「(ボットっていっても身体能力は普通、というか私と同じだよね)」


凛「(それに今ので手足が武器になることの証明にもなった。私にも反撃はできる!)」

25: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:50:27.52 ID:8P30W9NkO
凛(ボット)「・・・・・・」


ボットが駆け出す

オーバーな避け動作で開いた二人の距離を詰めてくる


凛「(この攻撃は避ける。その間に乱れた息を整えて、反撃する!)」


様子見、回避、攻撃。

一瞬の思考でボット相手に簡易的に戦略をたてる


凛はすでに完璧に落ち着いていた


凛(ボット)「・・・・・・・」


ボットの左手がまたビンタを構える


凛「(来る!!)」

凛「(避ける!!)」


二つの人影が交差する

26: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:51:45.49 ID:8P30W9NkO


凛(ボット)「ふーん、アンタが私の敵(エネミー)?」






凛「」









ドゴォ!!



作戦変更

交差する瞬間、ボットの腹に凛の渾身の膝蹴りが入った

27: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:57:35.71 ID:8P30W9NkO

クリーンヒットしたのか凛のボットはその場で崩れ落ちたように倒れる


凛(ボット)「・・・・・!・・・?・・・・!?」


凛「・・・・・・まさか機械のプログラムにまでそのネタでいじられるなんてね・・・」


凛「あれはある意味私の黒歴史だよ・・・」


ダメージエフェクトでもあるのか、倒れたまま震えて動かないのボットのすぐそばに凛が立つ

ボットはプログラムの指示通り戦闘続行のために状況を把握しようとする

そのためにまずボットは頭を持ち上げ地面から凛を見上げた


28: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 01:59:11.66 ID:8P30W9NkO





凛「・・・・・・じゃあ、残していこうか、私の足跡」



ボットの視界の中で、凛は力いっぱい利き足を振り上げていた。

見まごうことなき攻撃の、かかと落としか踏みつけの態勢である。





___そして_____





ゲーム開始5分経過


渋谷凛(ボット)消失

30: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 02:05:38.46 ID:8P30W9NkO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
佐久間まゆ



知ってますよ


まゆは知ってますよ


まゆはプロデューサーさんのことなら何でも知ってますよぉ


「・・・!・・・!・・・!!!」


あのよくわからない電車の中で、


まゆたちに説明してくれたゲームの内容


そしてこの企画の概要







聞いた瞬間、ピンときましたよぉ

31: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 02:07:24.88 ID:8P30W9NkO
「・・・!・・・!・・・!!・・・」


たしか一週間ほど前


プロデューサーさんの散らかった机の上を少しでも整理しようとした時でしたかねぇ


この件について書かれたらしい書類がたまたま、本当に偶然目に付いたんです


多分映画やマンガでしか目にしないような単語に気づいたせいでしょうねぇ


内容はほとんどわかりませんでした


でもプロデューサーさんがこんな難しいことにまゆたちのために取り組んでくれていると思うと


うふふ

33: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 02:10:14.83 ID:8P30W9NkO

まゆがその書類と関連資料から読み取れたことは少しだけ


プロデューサーさんが今回の企画のために半年以上前からあちこちで打ち合わせをしてきたこと


プロデューサーさんが専門家の意見を聞くために忙しい中、独学で専門用語などの知識をつけてようと努力していたこと


晶葉ちゃんの研究にも深夜まで付き合って、プロデューサーさんは眠る暇さえない日があったこと

34: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 02:12:12.17 ID:8P30W9NkO

まゆはプロデューサーさんのそういうところが・・・


「!!!・・・・・・・・・・・・」



佐久間まゆ「あらぁ?」


「        」





36: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 02:13:41.82 ID:8P30W9NkO

佐久間まゆは両手に込めていた力を緩めた


ゴトリ


彼女の足元に何かが落ちる



まゆ「うふふ、練習用、でしたっけ?だからスタミナは最初から少なめだったのかしらぁ?」



佐久間まゆ(ボット)「     」



まゆの足元にはまゆが今倒したばかりのボットが転がっていた


その姿はまゆと言うまでもなく瓜二つ


だがそれももう動かないままに霧のように消えた

37: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 02:14:41.16 ID:8P30W9NkO

その跡にはリボンが一本だけ残っている



そのリボンは生地が裂けかけ、使い物にはならなさそうだ

38: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 02:22:17.18 ID:8P30W9NkO




なにせ、ついさっきまで





まゆがボットの首に巻きつけ
後ろから全力で引っ張り上げながら
首を絞めるのに使っていたのだから

39: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/04(火) 02:27:54.53 ID:8P30W9NkO

まゆ「うふふ、ほかのボットはこう簡単にはいかなさそうですし・・・武器でも探しに行きましょう」


待っていてくださいねぇプロデューサーさん



プロデューサーさんの努力を無駄になんて、絶対させませんから



この仕事、まゆが必ず成功させて見せますからぁ♪





ゲーム開始5分経過


佐久間まゆ(ボット)消失


47: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:24:13.85 ID:9dMtgoC4O
投下します



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
神谷奈緒



ロボットの奇行はプログラマーの趣味から生じる



いつだったか、雑談の中でふと晶葉が口にしていたことを思い出した。


ここは駐車場

比較的背の高くない、3、4階建ての建物ばかりが集まったその狭い隙間を利用したスペースである


十台ほど車が入ればそれでいっぱいだろう。今は三台ほどしか車も停められていない。

その内の一台、よく見るタイプのバンを開けようとしたが普通に鍵がかかっていた。


確か念の為に二台目も調べようとした時に晶葉のスピーチが始まったっけ


それが終わるか終わらないかのあたりで誰かが近づいてくる足音がして

気づけばボットとの戦闘が始まりやがった

48: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:27:19.02 ID:9dMtgoC4O

奈緒は駐車場で向かい合っている相手を改めて観察する


神谷奈緒(ボット)「なんだよ、来ないんだったらあたしから行くぞ?」


自分で言うのもなんだが妙に太い眉も広がりがちなクセのある髪も目つきもそっくりだ

アイドルをやっているんだからそりゃ写真や映像を通して自分を見ることもあるが

そういうフィルター抜きで自分を(少なくとも自分と同一の姿かたちを)見るなんて一生に一度あるかないか、いや普通はないだろう


奈緒「(いや、どっちにせよ今は機械を通して見てるのと同じだったっけ。・・・どうもこれがゲームだってのが信じられねえ)」


奈緒「(いや、それはどうでもいい、置いとけ)」


奈緒(ボット)「おーい、いいのかー?」

49: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:32:03.08 ID:9dMtgoC4O

そう言うとボットは手に持っていた武器らしき物でクイッと奈緒の方を指した。

武器らしきもの、見たところハリセンにしか見えないが武器なのだろう


奈緒「(それも装備かよ、ハズレにも程があんだろ!というツッコミも置いとこう)」


奈緒(ボット)「とうっ!」

ボットが動いた
向かい合う形で開いていた十メートルほどの距離はぐんぐん短くなる

自分ソックリのロボットが武器を片手に狭ってくる、狂気じみた光景だ。

奈緒「!やっべ」

奈緒「(こっちもなんか武器になるものは・・・!!)」

そのロボットが足を踏み出すたびに風で髪がなびく

丈の短いスカートがひらひらとはためき、

ガーターベルトに包まれた足の太ももがチラチラ見えている


そして衣服の全体にあしらわれたフリルがひらひらと_______

50: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:33:15.71 ID:9dMtgoC4O



奈緒「だからなんでお前メイドコスなんだよおおおおおおおおおお!!!?」




もうツッコミを我慢できない、

普段着の奈緒の前に現れた彼女のボットはメイドの仕事の時の衣装を着ていた

ハリセンを持って

奈緒(ボット)(メイド服)(ハリセン装備)「え、いや!す、好きで着てるんじゃないからな!!仕事だから仕方なく・・・・・・!!」

奈緒「やかましいわ!」

51: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:34:53.76 ID:9dMtgoC4O


ロボットの奇行はプログラマーの趣味から生じる

この場合は悪趣味だった


幸いだったのは

このあと奈緒は苦戦しながらもなんとかボットを下し、

そのメイド姿をほかのプレイヤーには見られずに済んだことか



ゲーム開始6分経過

神谷奈緒(ボット)消失

52: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 00:36:42.68 ID:9dMtgoC4O

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
双葉杏


例えば手足は武器としてカウントされていること

例えば練習用ボットは通常のボットよりも弱く設定されていること

例えば・・・


プレイヤーにとってこの世界はまだまだ未知の要素が多い

現実に似せているからといってそのまま現実と同一には出来ていないのだから


だからプレイヤーには不測の事態に備えていかに武器や情報を集められるかが重要となる


武器の方を集めに行動を開始したアイドルは多い

情報を集めようとしているアイドルもいる


だが、

少なくとも現段階で仮想現実空間に関する重要な情報をいくつも手に入れることに成功したのは双葉杏だけだった

53: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:38:48.36 ID:9dMtgoC4O
さっきの書き込みはトリをつけ忘れましたが1です



双葉杏「へー、めんどくさそー」


双葉杏(ボット)「うん、割と冗談抜きで杏たち何しに来たんだろって感じ」


杏(ボット)「練習用だからって、ほかのプレイヤーに攻撃してもダメージがカウントされないんだよね、なのに杏たちは二、三回攻撃されただけでスタミナが0になっちゃうし」


きまぐれロボット、否、ぐうたらロボットとオリジナルの杏は戦闘を放棄していた

55: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:40:46.02 ID:9dMtgoC4O

杏「そういや練習用ボットってことは普通のボットもいるんだよね?そっちの方にも杏そっくりなのがいるわけ?」


杏(ボット)「うんにゃ、通常ボットの方はプレイヤーとして参加できなかったアイドルをモデルにしたロボットだよ、」

「杏が知ってる範囲じゃ仁奈と何人かのちっちゃい子が通常ボットだったっけ」


杏「へー、逆に言えば仁奈を見つけてもボット一択だからプレイヤーかどうか判断する必要はないってことかー、どうでもいいけど」


小さな公園、自然と遊具の割合が半々ぐらいのそこにあったベンチの上に二人、正確には一人と一体は横たわっている

二つ並んだベンチに一人一つずつ、小さい体は特に苦もなく寝っ転がることができていた。

56: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:41:56.89 ID:9dMtgoC4O

杏「あー、そーいや硬いベンチに寝てるのに背中とか後頭部が痛くならないね、ははっ、だいはっけーん

仮想現実ではどこでも快適に寝られるー」

杏(ボット)「わーい、やったね杏ちゃーん、だいはっけんじゃん、ぱちぱちー」

杏「やー、どーもどーもー」

杏(ボット)「ぱちぱちー」

杏「やーやー・・・」


ゲーム開始3分経過

双葉杏VS双葉杏(ボット)

開始延期




杏「じゃあ、杏ちょっと寝るね」

杏(ボット)「うんわかった、何時間かしたら起こせばいい?」

杏「できれば起こさないでくれるとありがたい」

杏(ボット)「んー、じゃあはいこれ」

杏「あれ、これって」

いよいよ持って模擬戦闘中にはありえない、居眠りが行われようとしていたとき、

ふとボットが杏に手渡したものがあった。

57: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:44:09.97 ID:9dMtgoC4O
画像ありがとうございます


それはところどころ綿のはみ出たぬいぐるみ、現実世界で杏が居眠りのおともにしていた兎のぬいぐるみだった。

ちなみにこのぬいぐるみと胸元の赤く光るバッジだけがボットとオリジナルを区別できる点で、それ以外は性格も含めて鏡写しの姿となっている。

杏(ボット)「杏としても何もしないわけにはいかないしー、ってことでこのぬいぐるみ上げるよ」

杏「なんかわるいねー、ちょうど枕が欲しかったとこだしありがたくもらっとくよ」


寝転がった状態から頭だけ回し、となりのベンチからぬいぐるみを引き寄せる



 ピロン



杏「うん?」

杏(ボット)「あれ?」

58: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:45:29.01 ID:9dMtgoC4O

オリジナルの杏にぬいぐるみが渡った瞬間、軽快な電子音が鳴った

杏「なんか着信音みたいな音がでたんだけど」

杏(ボット)「うーん・・・わかんないけど多分、今のが杏が能力ゲットのためのアイテムだったんじゃないかな?」

特定のアイテムを手に入れると能力が使用可能になる。

杏愛用のぬいぐるみを模したこのアイテムがまさにそれだったらしい

杏「あ、杏を騙したなぁっ!?適当にだらだらしようとした杏を、戦場に駆り立てるために!!」

杏「杏は・・・杏はただ、争いのない、誰もが笑って過ごせる平和な世界を求めていただけなのにいーーー!」

ベンチの上に寝っ転がったままジタバタと足を振り回す。

右手に掴まれたままのぬいぐるみがプロペラのようにくるくる回っていた


杏(ボット)「あー、なんかごめん杏も知らなかった。でも能力って直接武器になるものだけじゃないらしいから実戦で使えるかはわからないよ?」

59: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:47:55.71 ID:9dMtgoC4O

杏(ボット)「練習用ボットは能力がないからわかんないけど、この世界では能力ってランダムに決定するらしいし、」

杏(ボット)「それに、逆に強力な能力があったほうがコソコソせずに済んで楽じゃないの?」

杏「むー・・・」

ロボットなりに励ましてくれているようなそうでないような

杏は少しだけ頭を使って考えてみる


ゲームオーバー

おそらく現実に帰還することになる

プロデューサーが空いた時間に仕事詰め込んでくる

なんでもいいけど飴食べたい


杏「・・・・・・・・・・」

60: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:49:26.47 ID:9dMtgoC4O

杏「ゲームオーバーはまずいね・・・どうせダラダラするんだったらこの仮想空間でいいや。ここなら少なくともプロデューサーに叩き起こされることはないし」

杏(ボット)「でしょー、ってことで能力次第じゃこっちで時間いっぱいまでのんびりできるかもよ」

杏「そうだね。決めたぞ!!杏はこの仮想空間とやらで誰にも邪魔されない週休八日を満喫してやるぞー!」


杏(ボット)「がんばれー・・・」

力強い宣誓ではあったが姿勢は相変わらず横に倒れたまま

仮想現実空間でさえだらける

全18名のプレイヤー中、圧倒的早さで『能力』という大きなアドバンテージを得たにもかかわらずその目標は呆れるほど彼女らしいものだった。

それだけの強さの個性の持ち主ということか


杏「ところで杏の能力って何?」

杏(ボット)「しらなーい」

杏「え」

ゲーム開始4分経過
双葉杏 能力獲得

61: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:51:29.23 ID:9dMtgoC4O

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
三好紗南


ゲーム開始3分経過
三好紗南(ボット)消失



三好紗南「自分を倒せってのはチュートリアルとしてはどーなんだろ」


紗南「こう、ザコモンスターみたいなの相手にして、ハンドガン的な初期装備でバンバンバンって感じ?」


紗南「うーん、この仮想現実での模擬戦闘、バトルゲームだとしてもFPSなのか格ゲーなのか見極めなくちゃね」


ゲーム慣れしているというのもあるのか割と簡単に、特にこれといった抵抗を感じることもなく自分のボットを倒した紗南は今車道を歩いていた

本物の都心をイメージしてか車線の多い広い道路を我が物顔で一人闊歩している。

無論車が来ることはないし危険はないはずだ。

63: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:54:40.38 ID:9dMtgoC4O

紗南「FPSならどっちかというと基本的な武器をたくさん集めた方がありがたいし、格ゲー風なら能力?とかのほうが使い物になるんじゃないかな」


ゲームバランス


このゲームを見極めるにはそれを構成する要素から判断するしかない


例えば手に入るアイテムが大したことないものばかりの時


これはつまり通常武器というのがあくまでおまけで、能力バトルこそが真骨頂ということになる。


逆にひとつ所有するだけで戦況が大きく揺れ動くような、そんなアイテムばかりだったならこれは戦闘というより戦争のゲームと考えられる


どこにあるかもわからない能力開花アイテムを探すより弾丸の補給が重視される展開が続くだろう。



紗南「まずは・・・何でもいいから武器を見て判断するしかないね!」

64: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:56:08.61 ID:9dMtgoC4O

思い立ったら行動は早い。紗南は車道から歩道に移るとそのまま歩道脇のビルに踏み込む。

どうもこの世界は現実に準拠しているためか、建物や施設の種類がわかりにくい

武器屋の入口に矢印のアイコンが浮かんでいたりはしないのだ


だから紗南はまず変に迷うことなく、目についた建物に適当に入ることにした


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ビル内部 1階


紗南が入ったビルは外見からは判断できなかったがオフィスビルらしく

入口からなかにかけて広いホールとなっており、奥にはエレベーターが二基稼働していた

紗南「わー、よくできてるねー!、天井たっかーい!」

大理石らしき光沢を放つホールの地面をカツカツと踏み鳴らしながら大声を出しても誰も咎める者はいない。

65: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:57:53.28 ID:9dMtgoC4O

やはりこのビルも無人だった。受付すら誰もいない

紗南はまずエレベーターに乗ってみることにした

エレベーターのボタン上、フロア案内盤に何気なく目を通す。

ニ階より上のフロアについても服飾、書籍、フードコート・・・などと丁寧に書き込まれており、改めてこの仮想空間の作り込み、クオリティの高さを思い知らされる






紗南「あー!!6階にゲームセンターあるじゃん!!」


だが紗南はそれについてはどうでも良かったらしい


一階に停まっていたエレベーターに乗り込むと「6」を必要以上に強く押した


~~~~~~~~~~~~

66: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 00:59:04.98 ID:9dMtgoC4O
~~~~~~~~~~~

ビル内部 6階



エレベーターの扉が開くとその先には独特の空間が広がっていた。

極彩色のパーツで作られた巨大なプラスチックの箱が所狭しと並び

それぞれの機械が勝手な音楽を流しては、チカチカと画面からビビットトーンの光を放ち続けている

そこにもやはり人はいない。


紗南「わーいゲームだゲームだ!!」


さすがはゲーム好きというべきかエレベーターの戸が開ききるのを待つ間もなくフロアに踏み込む

しかしすかさず手近な筐体に飛びついたところで重要なことに気づいた





紗南「・・・・・・あたしお金もメダルも持ってないじゃん・・・ゲーム出来ないよこれじゃ・・・」




現在絶賛バーチャルゲームをプレイ中とは思えないセリフである

67: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:01:36.22 ID:9dMtgoC4O
たしかにこの仮想空間に転送されたとき自分は何も所持していなかったし、ボットを倒した時もなんのアイテムもなかった。


紗南「むうう・・・・・・敵キャラ倒したんだからマニーの一つでも落としてくれたらよかったのにー」


筐体のゲーム画面は何の反応も返さない。

それでも未練が断てないのか紗南はゲームコーナーないの機械の間を周りを物色しながら巡ることにした

この手のゲームなら道に大金が割と頻繁に落ちてたりするものだ。

もちろん紗南もそこまで本気でそんなことを思っていたわけじゃない。

紗南「!・・・・・・あれは!」

そんな紗南の視界に入ったのは壁際に寄せられた小さい椅子

ゲーセンだと休憩中の客がよく利用していそうなあれだ


その上にポツンとゲーム機が置かれていた


68: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:03:28.02 ID:9dMtgoC4O

ポータブル型のそれはもちろんコインやメダルの類は必要としていないもので、バッテリーとカセットさえあれば遊べるものだ


再三繰り返すが誰もいないこのフロアにそんな忘れ物などありえない。

紗南「ってことは、これはわざと置かれてたアイテムだよねっ!」

ひょいっと手に取る。カラーはあまり目にしない明るいオレンジのポータブルゲーム機

形状は自分がいままで使ったことのあるものと酷似していたのですぐ手に馴染んだ



紗南「さて、スイッチオン♪」









ピロン




ゲーム開始9分経過

三好紗南 能力獲得



~~~~~~~~~~~~~~

69: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:04:36.14 ID:9dMtgoC4O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

???


よく見えてます


よく見ています


数キロ先までよく観察できます


千里眼でも得たかのようですよ


だが見ているだけが私の仕事じゃない


探し 戦い 倒す



それが私を動かすプログラム



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

70: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:07:35.97 ID:9dMtgoC4O
~~~~~~~~~~~~~~~~
ビル内部 6階 


紗南「!? なに今の効果音・・・」


紗南は思わず周りを見渡した

すわ敵とエンカウントかと腰をかがめ筐体の影に隠れる

しかし彼女自身にも何から隠れているのかはわかっていない



 ブンッ

 ウィーーーーン......


またも何らかの音が紗南の耳に届いた、

しかしこっちの音はさっきと違い簡単に音の出処がつかめた


紗南「あ、ゲーム機動いてる・・・そういやなんのソフトが入ってたんだろ?」


紗南の手の中でゲーム機が稼働音を立てていた


紗南「・・・・・・・・・・」

71: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:08:53.91 ID:9dMtgoC4O
やがて何らかのゲームが開始されるはずだ

だが一向にゲームタイトルや制作会社のロゴが表示されない

しかし壊れているのではないらしく画面は暗くなったり明るくなったりしながらゲーム機は起動準備を進めている




ブウン......


画面に何かが表示された


紗南「?」











→『サーチ』
 
 『コントロール』

72: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:10:27.95 ID:9dMtgoC4O

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
???


肩にかけていた武器を下ろす


装填された弾丸の数は把握しています


これが私にとっての初弾です


持ち運びに向かない長い銃身を体を使ってなんとか安定させる


これはスナイパーライフル


離れた敵を狙い撃つ武器です


大丈夫です


敵はよく見えてます


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

73: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:11:39.00 ID:9dMtgoC4O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

紗南「サーチ? なに?ニューゲームとかじゃなくて?」


このゲームが始まってからわからない事続きだ

ゲームが得意のはずの自分が随分と翻弄されている


表示されたのは何かの選択画面

だがゲームを開始するためのボタンとはあまり思えない字面だ


紗南「まあクソゲーだったらそれもまた良し!ポチッとな!」


親指に力を込めるとボタンは容易く押され、

画面が再度変化する


74: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:12:40.65 ID:9dMtgoC4O
____________________


・・・・・・サーチモード・・・・・・


ゲーム機本体をアイドルに向けてください

____________________



紗南「サーチモード? アイドルに、向ける?」


ゲームは始まらない

選択画面の次は指示画面だった

しかも目的が読めないままに指示されている

75: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:14:16.09 ID:9dMtgoC4O

紗南「・・・アイドルってあたしもそうだし・・・あたしに向けてみたらいいのかな?」


紗南は手の中のゲーム機をくるりと反転させた。

自分から見てゲーム画面が上下逆になる向きであり、機械本体上部、ソフト取り出し口が自分に向けられている



紗南「・・・あ、動いたっ!」


天地が逆さまの画面に新たな変化が訪れた。紗南の推測はあっていたらしい

アイドルの紗南にゲーム機が反応を示した。



プンッ

_________________



・・・しばらくお待ちください・・・


_________________

76: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:16:44.73 ID:9dMtgoC4O
_________________



・・・・・・・・・・・・・・・・・



_________________



_________________

name: 三好紗南

category: プレイヤー

skill: 
ゲーム機型アイテムを用いてプレイヤ
ー及びボットの調査、干渉が可能。た
だし一度に扱えるデータは一つだけに
限られる
_________________

77: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:19:34.03 ID:9dMtgoC4O

紗南「あー!!」

ここまでくれば今までの謎は消えたも同然だった。


紗南「なーるほどね。これでほかのアイドルのことが知れるんだ!!」

紗南「このカテゴリ、プレイヤーっていうのはボットとの区別かな」

紗南「で、スキル!!多分能力のことだね、ってことはこのゲーム機があたしにとってのキーアイテムだったんだね!」

ってことはさしずめさっきの変な効果音は能力ゲットのお知らせだったのかな?

と、付け足して一人納得の喜びを噛み締めた

紗南「よっしゃー!早くも能力ゲットー!!この調子なら楽勝だね!」


まるで勲章のようにゲーム機を天に向けて掲げる

78: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:21:21.99 ID:9dMtgoC4O
さぁ次はどう動く?

紗南のゲーム脳は高速回転をはじめる


_周りを見渡せる高所からサーチする?

_そのためにはまずはサーチの出来る範囲を調べなくては

_ボットを探す?いやここは敵より味方を探そう!

_ボットに気づかれないように能力データを手に入れるのもいい

_そういえばまだプレイヤーを全員把握していなかった、でもこの能力があれば余裕だね!


プンッ

________________



・・・・・・・・・・・・・・・・


________________


ゲーム機を持ち上げたことで照準がずれ、紗南のデータを表示していた画面が消えた

79: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:23:36.15 ID:9dMtgoC4O

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
???

敵はこちらに気づいてません

それもよく見えてます

引き金に指をかける


敵の命はすでにこの指の上に乗せられているも同然です


それでも気づきません


こっちが見えていませんから

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

80: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:25:30.52 ID:9dMtgoC4O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ゲーム機上部は偶然その階の窓の方を向いていた


紗南の能力の化身たるそれは自動的にアイドルのデータをキャッチする



~~~~~~~~~~~~~~

81: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:28:11.15 ID:9dMtgoC4O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あれじゃあダメです。自分が倒されたことさえ自覚できないまま終わるでしょう

つい駆け寄ってあの言葉を言ってあげたくなります












まあまあ、メガネどうぞ




標的がよく見えますよ___


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

82: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:29:25.46 ID:9dMtgoC4O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

___________________

name: 上条春菜

category: ボット

skill:
メガネを通してスコープのように遠
方を詳細に視認可能。副次的効果と
して遠距離攻撃の命中精度が飛躍的
に上昇する
____________________

83: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 01:31:28.11 ID:9dMtgoC4O



窓ガラスを突き破り、




ゲーム筐体同士の狭い隙間をくぐり抜け




音速を超えた弾丸が




紗南に飛来する








ゲーム開始11分経過
三好紗南VS上条春菜(ボット)

 開始

89: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 12:20:50.31 ID:2uQHVhhFO
チャプター
北条加蓮


リボルバー


いわゆる六連回転銃


現実世界ではまず本物をお目にかかることなんてない武器だ


だが仮想空間の中では偽物が本物以上の力を持つこともある


北条加蓮は今その偽物の脅威にさらされていた



北条加蓮(ボット)「ほらほら!早いとこアタシを倒さないとみんなから出遅れちゃうよ?」

90: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 12:22:52.96 ID:2uQHVhhFO
銃声、銃声、発砲音

やはりこのボットもまた他と同様(奈緒除く)オリジナルの加蓮と同じ姿をしている

違いはやはり胸元のバッジ、

それと利き手である右手に構えられたリボルバー

女子らしい細くしなやかな腕が黒々として硬質な銃を片手で支えている


彩られたネイルの鮮やかさが引金の無骨な鉄色と対比していた

加蓮「ちょ、いきなり銃とか!いくらゲームでもやりすぎでしょ!」

仮想空間だからか、あるいは彼女がボットだからか、発砲により生じる反動をものともせず連射を続けている

加蓮は並べく広い道を選んで逃げ回るしかない、狭い裏路地何かに入り込んでしまったら後ろから狙い撃ちだ


無意味に赤、青と色を変える信号をぬけ、車一つない車道を横断する


ビシッ!

たった今加蓮が駆け抜けたばかりのアスファルトを銃弾がえぐった



ゲーム開始5分経過

北条加蓮VS北条加蓮(ボット)

 継続中

91: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 12:25:03.77 ID:2uQHVhhFO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
高層ビル街


逃げ回っているうちに周りの風景が変わっていた

最初加蓮が気づいたとき、周りの建物は雑居ビルが中心で空も近く感じた

だが今はどうやら都市の中心に近づいたらしく周りのビルがどれも大きく高い

ビルが大きい分、周りの道は広くなるが小道が減るため追っ手を撒くにはやや難しい


そして加蓮はついに追い詰められた


加蓮「はぁ・・・はぁ・・・」


街路樹の一部、茂みに尻餅を付くように加蓮が倒れている


ジャラッ

カシャン カシャン カシャン カシャン


打ち尽くした弾丸を捨て、悠々と銃弾を装填し直しながら

ボットがオリジナルにゆっくり歩み寄る

92: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 12:25:57.08 ID:2uQHVhhFO

加蓮「(なにこれ・・・デジタルなのにスゴい疲れるんだけど・・・)」


加蓮(ボット)「・・・チュートリアルだからって甘く見ないでよね、アタシだって一応はあんたたちプレイヤーを倒すために作られたんだから」


加蓮「ピ、ピストル持ってる奴を甘く見るわけ無いでしょ・・・」


だが模擬戦闘と聞いてもいまいちピンと来なかったし気軽にゲームの一種だととらえていたのは事実だ

まさかこんなに早くリタイヤすることになるなんて

ボットがまっすぐ銃を構える、そういえばずっと片腕だけで支えていた。疲れないのだろうか


キキキキ.......


引き金を絞るのに連動して撃鉄がゆっくりと振りかぶられる

あの撃鉄が弾丸の尻を叩くとき、加蓮の眉間に穴があくのだろう

93: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 12:26:55.36 ID:2uQHVhhFO

加蓮(ボット)「それじゃ。」




パン






衝撃

~~~~~~~~~~~~~

96: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 20:36:49.22 ID:2uQHVhhFO
~~~~~~~~~~~~~~

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・あれ?」


眉間に銃弾の衝撃を受けたにもかかわらず死んでない

いや仮想空間に死ぬことはないのだが、ゲームオーバーらしきアクションがないのだ

思わず閉じていた目を開ける


銃口、ネイル、腕、そして自分にそっくりな誰か


目を閉じる前と風景が変わっていない


加蓮「生きてる?」


加蓮(ボット)「ふふっ、あははははっ!!なんちゃってー!」

97: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 20:37:50.37 ID:2uQHVhhFO

目の前で自分が可笑しそうに笑っている


加蓮「え?・・・なに?見逃してくれるの?」


状況が把握できない。死んだと思ったら生きていて、それを笑われている


加蓮(ボット)「チュートリアルって言ったでしょ!」

 「アタシたちはその練習用ボットだから、プレイヤーに攻撃は出来てもダメージは与えられないの!」


それを知っているのはプレイヤーの中では今のところ双葉杏くらいだった。加蓮が知らないのも無理はない

加蓮「・・・・・・・はあ!?なにそれ!?アタシ逃げ損じゃないの!」

加蓮(ボット)「やーい、引っかかったー♪」

疲れも忘れて加蓮が立ち上がる。

自分のロボにコケにされた気分だ

加蓮「じゃあなんでアンタあんなにガツガツ攻撃してきたのよ!」

98: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 20:39:47.62 ID:2uQHVhhFO

加蓮(ボット)「そりゃ、アタシだって折角作られたのにすぐ退場なんてつまらないじゃない?」

あっけからんとしてボットが言う。正直これがプログラムされた人格とは思えない

加蓮「なによそれ、・・・もう、初っ端から神経使わせないでよ」

加蓮は一度立ち上がりはしたものの、意気消沈してまた倒れ込みたくなった


加蓮(ボット)「あはは・・・あとはあたしからオリジナルへの励ましも込めて、かな?」


加蓮「励まし?」


加蓮(ボット)「そ!・・・・・・折角アタシのモデルなんだから、どうせならこのゲーム、全力でやって欲しくてね」


励まし、そういえば何度も銃撃された割には最後の一発まで自分に当たることはなかった。

そのせいで練習用ボットの「設定」にも気づけなかったが、

逆に言えばこの十分に満たない時間に加蓮の頭からはこのゲームに対する楽観視、のようなものがすっかり消えていた

99: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 20:41:25.90 ID:2uQHVhhFO

加蓮(ボット)「プレイヤーは18名しかいないのは知ってるでしょ?アンタは選ばれたんだから頑張らなきゃ」

ボットがこっちに手を差し出す

加蓮「・・・はは、こっちは別に怠けるつもりなんてなかったし、」

加蓮はそれを掴んで起き上がった

加蓮(ボット)「どう?アタシの殺る気満々の演技、楽しんでくれた?」


加蓮「・・・とんだチュートリアルよ、ほんと」


加蓮(ボット)「まーた『努力とか根性とか気合とかそーゆーのキャラじゃないんだよね?』なんて言ったら怒るからね。やるからには勝ってよ?」


加蓮「わかった、この空間に来れなかった人たちの分も、アタシのそっくりさんの分も頑張るよ」



加蓮(ボット)「・・・・・・じゃ、そういうことで!えっとじゃあこれ上げるね」


ボットが右手に構えたリボルバーをひょいっと持ち上げる

100: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 20:45:05.54 ID:2uQHVhhFO

加蓮「ありがと、あーどうせソレもらうんだったら無駄に弾撃たせるんじゃなかったな」


加蓮(ボット)「ごめんね?、ストックも使ったからもうこれ6発しか残ってないや」


加蓮「いいよ、まずは自分でここらへん探索して弾丸さがすし、じゃあ頂戴」


加蓮はこの世界の攻略にあたって武器調達という行動目標を立てる

まずはボットから受け取るところから始めよう


加蓮(ボット)「・・・・・・・・うーん、その事なんだけど」


加蓮「?」

101: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 20:47:13.17 ID:2uQHVhhFO

加蓮(ボット)「ボットの持ち物を受け取る時って」


リボルバーの引き金に指をかける


加蓮(ボット)「ボットが消えないといけないんだよね」



加蓮「・・・・・・え?」


銃を頭の高さに持ち上げる



加蓮(ボット)「・・・やるからにはちゃんと期待には応えてよ?」


銃口を自分のこめかみに当てる


自分のオリジナルが驚いた表情でこっちを見ている



加蓮(ボット)「ってことで、餞別代わりに、もう一発もらっていくね」

引き金を絞る







ゲーム開始10分経過
北条加蓮(ボット)消失
~~~~~~~~~~

102: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 21:48:01.35 ID:2uQHVhhFO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
小関麗奈


全プレイヤー中最も早く能力を獲得した双葉杏

全プレイヤー中最もこのゲームに真剣な北条加蓮

全プレイヤー中最もこの企画の成功を望む佐久間まゆ



小関麗奈「・・・・・・納得いかないわ!」



そしてこの少女、小関麗奈もまた全プレイヤー中で、ある最速記録を打ち立てていた。



麗奈「・・・・・・・・なんだか、このアタシが馬鹿にされたような気がするのよ!」



それはチュートリアルのクリアタイム

麗奈は全プレイヤー中最も早くに練習用ボットを撃破していたのだ

103: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/05(水) 22:10:05.29 ID:2uQHVhhFO
その割に彼女の表情は浮かない、誰も周りにいないから誰に怒りをぶつけていいのかわからない、そういう顔だ


それもこれも自分ソックリのボットが悪い


ゲーム開始地点、自分は商店街のようなところにいた。

それで晶葉からの大音量のスピーチを聞き流しながらシャッターで閉じられた店を何件か横切りながら散策を開始したところでやつが現れたのだ


思い返すたびになんだか複雑である

最後にもういっかいさっきの光景を回想する。もしかしたらなにかの間違いだったかもしれないし。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
回想

麗奈「ふーん、よくできてるじゃない・・・」


バッ!!


麗奈「!?」

小関麗奈(ボット)「アーッハッハッハッハ!!隙アリよオリジナル!!喰らいなさい!!レイナサマスペシャルバズーカ!!」

ボフッ!

麗奈(ボット)「な!?失敗ですって!?デジタルで!?晶葉のヤツ!このアタシを騙し」


ボンッ!!!!

麗奈(ボット)「ご、誤爆・・・」

ドサッ

シュウウウウ.........


麗奈「えっ」


ゲーム開始3分経過

小関麗奈(ボット)消失

麗奈「えっ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
回想終了

107: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:15:27.87 ID:ca0kvRtDO

麗奈「ムッキーーーーー!!!間違いないわ!!これアタシが失敗続きの小悪党みたいじゃない!!!」



その場で地団駄を踏む。

鏡映しの姿だった分、まるで自分の失敗を見せつけられたようだった

ちなみにボットは現れた場所で倒れたあと役たたずのバズーカを残して霧が晴れるように消えていった


しばらく地面に鬱憤を晴らしたあと麗奈はとりあえずやることがないので探索をはじめた。

シャッターの居並ぶ店の列を駆け抜けていく


麗奈「あっ!!アンタ!」


??「・・・おや」

108: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:19:25.93 ID:ca0kvRtDO

画像ありがとうございます

麗奈は前方に人影を見つけ、その人影も声でこちらに気づいたらしく顔をこっちに向けた

その人影は商店街の出口に当たる、店の途切れたあたりに身を隠し、そのむこう、市街地を覗いているようだった。


麗奈「アンタ!ボットじゃないでしょうね!!」


彼我の距離5mほどで麗奈は足に急ブレーキをかけると相手を牽制した


??「落ち着いてください麗奈、私にはボットであることを示すバッジがついてないでしょう?私はプレイヤーであります!」

109: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:20:35.88 ID:ca0kvRtDO

麗奈「バッジ?なによそれ」


??「どうやらボット専用の装備らしく、それを見ればプレイヤーとの区別がつくそうなのであります」



麗奈「はん! ア、アタシは自分のボットなんて瞬殺したのよ!だ、だからそんなの見る暇なんてなかったわ!!」

??「ほう!それは凄い!麗奈は戦闘のセンスもあったのですね」

麗奈「・・・ふふん、ま、まあね!アタシにかかれば余裕よ!で、アンタはどうだったのよ亜季」


大和亜季「私でありますか?私はついさっきようやく倒したところであります」


ゲーム開始6分経過

大和亜希(ボット)消失

110: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:22:07.39 ID:ca0kvRtDO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
商店街

麗奈「で、あんたは何をコソコソしているわけよ・・・」

亜季「麗奈、もう少し声を抑えてください・・・」

亜季「実はこの商店街をもう少し調べてみようと思いまして、周りに敵のボットが近づいてきていないか確認しているところだったのであります・・・」

麗奈「調べる?でもここほとんどシャッターしまってるだけよ・・・?」

現在麗奈は亜季と一緒に壁に張り付くように立って声を潜めてしゃべっている

一応、亜季の姿勢に合わせたのである。下手に騒いでボットが来てもこちらは丸腰なのだから

亜季「いえ、麗奈は気づいてないようですがいくつかの店のシャッターは鍵が掛かっていなかったのであります・・・」

麗奈「じゃあその時点で調べに入ったらいいじゃないの・・・」

亜季「・・・そう思ったところでチュートリアルが始まり、自分のボットと戦う羽目になったのであります」

麗奈「あー、それで倒したはいいけど物音に誰かが寄って来てないか確かめてたってわけね」

亜季「察しがよくて助かるであります麗奈」

111: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:24:04.27 ID:ca0kvRtDO

ヒソヒソ話の間も亜季の目線は遠くをにらみ警戒を怠らない

さすがサバゲーを趣味にしているだけある、この手の模擬実戦などお手の物なのだろう


麗奈「・・・・・・・・・」


亜季「ふむ・・・特に敵影は見当たらないでありますな、では私は探索作業に移らせてもらうであります」


亜季「そういえば麗奈はこの後どうされますか?」


麗奈「・・・・・・・・・アタシもついていくわ」

亜季「おお!・・・それはありがたい!やはりこういう場所では集団が基本でありますからな!」

麗奈「ま、まあアンタはこういうの得意そうだし?精々アタシが利用してあげるわ!!アーッハッハッハ!!」

そういう下心のようなものは普通口に出さないものなのだが、

麗奈は悪党ぶる割にはこういうところが素直だった。

112: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:25:38.03 ID:ca0kvRtDO

亜季「ふふっ、ではこれで我々はバディでありますな!」

麗奈「いやアイドルなんだからそこはコンビかユニットでしょ!?」

亜季「むむむ・・・そうでありますか」

麗奈「そうに決まってんじゃないの、これだから」


ポン
______________

 小関麗奈  100/100

『ユニットを組む』
______________


ポン
______________

 大和亜季  100/100

『ユニットを組む』
______________



麗奈「わっ!?」

亜季「!?」


何の前触れもなく目の前に四角いボード、まるで空中に浮かぶ電光掲示板のようなものが現れた

思わず麗奈の喉から声が飛び出す

亜季も一瞬虚を突かれたが、こっちはすぐに気を取り直した

113: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:27:11.69 ID:ca0kvRtDO

そのボードはなんの支柱もないにもかかわらず蝶か風船のように空中に停止している

こういう非現実な現象に驚いてしまうあたり、未だにここがなんでもアリの仮想空間だとしっかり理解できていなかったのだろう

麗奈「なによこれ?アタシの名前と・・・何かの点数かしら?」

亜季「それにこのユニットを組む、の文字、どうやらタッチパネルのようでありますな。押してみましょうか?」

麗奈「これ触っちゃっていいの!?罠かもしれないわよ?」


亜季「いえ、この近くに敵影は確認できませんでした、おそらくこれはこのゲームの機能なのでしょう」

亜季「・・・・・・もしかしたら麗奈が口にした『ユニット』の単語がキーだったかもしれませんな」

二人のちょうど目の高さのところをふわふわと漂う謎の物体について亜季が推測を述べる

114: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:31:14.13 ID:ca0kvRtDO
麗奈「・・・じゃあこれを使えばアンタと正式なユニットになるわけね。」

麗奈が睨めどもボードは答えない。ただ彼女の視界に浮いているだけだ


亜季「・・・もし不安であればコレは捨て置いても良いのでは?別にこんなものなくとも行動を共にすることに支障は出ないでしょう」

麗奈「いいわよ!いずれ世界を征服することになるこのアタシが!よくわからない、なんて理由で逃げ出すわけには行かないわ!!」


目の前のボードのパネルに親指を強く押し付けると『ユニットを組む』の文字が点滅した

表示が変わる
___________

 小関麗奈 100/100

『 O K 』
___________

二人で黙って麗奈のボードを眺める

静寂

麗奈「・・・・・・・・・・・・・・」


麗奈「・・・ふ、ふん!ほら見なさい亜季!何も起きないわ!」

どうやら危険なものではなかったらしい

115: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:33:17.34 ID:ca0kvRtDO
亜季「ふふ、麗奈の剛毅果断、しかと見届けたであります」


続いて亜季も同様にパネル部分を軽くつつくようにタッチした


_____________

 大和亜季 100/100

『 O K 』
_____________


ポン


_____________

 小関麗奈 200/200

ユニットメンバー
・大和亜季 

_____________


_____________

 大和亜季 200/200

ユニットメンバー
・小関麗奈

_____________

116: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:34:41.11 ID:ca0kvRtDO
麗奈「今度は何?アタシのに亜季の名前が入ってるわよ?」

亜季「こちらも同様に麗奈の名が刻まれたであります。それに横の数字が増えたでありますな」


ふたりがそれぞれのパネルを押したあとボードの表面が揺らめいたと思った瞬間、表示が変わっていた。

麗奈「これは、亜季が仲間になったってことよね?で、この増えた数字は何かしら?」

亜季「・・・・・・おそらくスタミナ、でしょうな・・・」

麗奈「スタミナ?」

亜季「確かここに来てすぐ、晶葉のスピーチ内容にあったであります、我々には初期値100%でスタミナが与えられており、0でゲームオーバーだと」


麗奈「ああ、アレね。じゃ、ラッキーじゃない、アタシたちはそのスタミナが倍になったんだから!」

亜季「その通りでありますな!ユニットを組んだ特典でありましょうか?」

117: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:36:53.55 ID:ca0kvRtDO
麗奈「そうに決まってるわ! アーッハッハ!このラッキーをレイナサマに感謝なさい!!」

どうなるかと思われたゲームにも光明が差してきたのを感じる

麗奈はいつもの、憎たらしくも憎めない笑みでビシッと亜季に手を差し出す

麗奈「頼んだわよ!レイナサマのためにしっかり働きなさい!亜季!」

亜季「素直じゃないでありますなぁ・・・」

亜季は差し出された手をしっかり握り返した。


小関麗奈 大和亜希


全プレイヤー中最も早くユニットを結成したアイドルである



ゲーム開始11分経過

小関麗奈 大和亜希 ユニット結成


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

118: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:38:24.00 ID:ca0kvRtDO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
大和亜季 小関麗奈

商店街のある店の中



ガララララ・・・


亜季「ほらこの通り、空いているであります」

麗奈「ホントね、じゃあ武器でも探すわよ」


二人は閉じられたシャッターのうちの一つを開けると中へ踏み込んだ


亜季が見つけた鍵のかかっていないシャッターの一つであり、調査対象だ。

だがその一件目に入ってみて二人は若干、落胆の色を顔に表す


中の物を引き払ったのか、そもそもこの仮想空間内ではそこまで作りこまれてなかったのか、目に付く範囲では何もなかった。

コンクリートの打ちっぱなしの冷たい壁と地面があるだけである。

麗奈「・・・これはハズレね、次行きましょ亜季」

亜季「いえ、この商店は二階建て、奥にはまだ何かあるかもしれませんよ」

119: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:39:31.20 ID:ca0kvRtDO

亜季が示したとおり、照明のない薄暗い店内の奥にはうっすらと階段らしきシルエットがあった


麗奈「でもかなり暗いわよ?ここ電気つくの?」

亜季「いえ、電気は点けません、シャッターも閉めましょう。もしボットが来たら我々の侵入の痕跡を追ってくるかもしれません」

麗奈「手探りで進むってこと?」

亜季「大丈夫であります。ここはそれほど広くはありませんし、迷子になるような場所ではないでしょう」

麗奈「それもそうね、それに二階には窓もあったし、亜季、行きましょ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

120: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:41:18.79 ID:ca0kvRtDO
~~~~~~~~~~~~~~~~~

二階

二階に上がった二人はまたも、だだっ広いだけの空間に着いた

壁や仕切りのたぐいもなく、二回の隅から隅まで見とおせる間取りだ

よく考えたら柱すらも見当たらない。

ただ一階との違いといえば二階は空っぽではなかったということか


麗奈「・・・なにこれ、段ボール箱だらけじゃない」

亜季「ふむまるで物置のようですな。麗奈、ここは二手に分かれて調べましょうか」

二階の特徴、それは床を埋め尽くさんばかりのダンボール箱の数だった

すでに足の踏み場もなくなりそうで、床が多々見なのかフローリングなのかもよく見ないとわからない

もしかしてこの建物の持ち主は引っ越してきたところだったのだろうか

麗奈「(いやよく考えたら仮想現実に引越しなんてないわね)」

121: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:42:20.14 ID:ca0kvRtDO

亜季「では私は奥の方の箱から開けていきますので、麗奈は向こう、窓際近くに積まれたものから順に開けていってください」

麗奈「!ええ、わかったわ、任せなさい!」


かくして分担で探索作業が始まった

といっても互いの姿が目視で確認できる程度にしか離れていないが

122: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:44:06.24 ID:ca0kvRtDO
麗奈「これは・・・空っぽ、これも空っぽ・・・」



亜季「これは、ふむ・・・振っても中から音はしませんな、空と・・・」


亜季「これも空、これも空・・・これも多分空っと」



麗奈「開けた箱はむこうに投げ飛げとばしてやるわ!」



亜季「これは、、少し重たいですな。開けてみましょう」



亜季「こっちはまたハズレですかー・・・」


麗奈「あら、これは・・・なんかの弾丸ね、銃がないと意味がないじゃない、銃もどっかにあるわよね」

123: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:45:36.27 ID:ca0kvRtDO

各々が与えられた場所で手の付けられるところから箱を開けていく



亜季「これは・・・ハンドガン!ですが見たことない型のものですな、」



亜季「こっちのはまたハズレ・・・」




麗奈「これは、また銃弾なの?でもこの弾えらくでかいわね、ショットガンとかグレネードとかそのへんの弾かしら?」



亜季「むむ、空箱が偏りましたな、ちょっとむこうにどけて、と」




亜季「ふーむ、これも空っぽですな」



ちらほらと武器らしきアイテムは手に入るが銃弾だけであったり小さいハンドガン一丁だったりと成果は芳しくない。



麗奈「・・・?なにかしら、箱に下敷きにされた箱が・・・」

124: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:47:18.28 ID:ca0kvRtDO
積まれた箱をいくつも動かしているうちに、それらにうもれていた少し細長い箱を見つけた

麗奈はその端をつかみ思いっきり引っ張った

だがそんなに力を入れずともその箱の上に乗っていたダンボール箱はどれも空だったようで、意外と簡単に引っこ抜けた



麗奈「うわっ!!」



むしろ余計に力んだ反動で麗奈のほうがすっ転んでしまった



亜季「麗奈?大丈夫でありますか!?」



亜季「!?」



離れたところで作業をしていた亜季が振り返る



麗奈はその上半身が箱の山にうもれていた。怪我はないようだ

125: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:48:39.30 ID:ca0kvRtDO
麗奈「・・・問題ないわ!ちょっと転んだだけ・・・」

ここで麗奈は自分の手が硬い感触のものに触れていることに気づいた


麗奈「・・・・・・?」


起き上がるより前に手に掴んだそれを引き寄せる


ハンドガンなんてものじゃない、詳しい名称は分からないが確かショットガンがこんな形状だったはず!!



麗奈「!!」



ずしりと手に重い戦力の塊、ゲーム攻略への大きな一歩、麗奈は仮想とはいえ本物に近い銃を手にし気分が高揚するのを感じた


ガバッ!!


箱の山から飛び起きる



麗奈「やったわ見なさい亜季!!ショットガンよ!!」



13歳の身にはやや重すぎるそれを両手で胸元に抱えながら叫ぶ

126: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:52:40.71 ID:ca0kvRtDO

亜季「おおっ!!本当でありますか!」


亜季「やりましたね!」


ミリタリーオタクの亜季もそれにすかさず反応した



麗奈も満面の笑みで亜季の方に駆け寄る



では作業の休憩がてら手に入れたアイテムでも確認しようか、そうなりそうな流れだった

127: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:54:05.26 ID:ca0kvRtDO

だが




もっと大事なことがある





無視してはいけないことだ





麗奈も亜季も





この状況をまるで物語のように天から眺めている人物がいたとしたら、その人も





「それ」を無視してはいけなかった






見過ごしてはいけなかった

128: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:57:24.70 ID:ca0kvRtDO

麗奈の声に応じて作業を中断して互いに向き合う


亜季「おおっ!ショットガンですな、少し手にとって見せてもらって構いませんか?」



亜季「しかしえらく大型のものなのですね」



気付け


誰か


麗奈「あれ?亜季」


亜季「?」


亜季「なんでありますか?」
















麗奈「なんでアンタ二人いるの?」


気付いた


~~~~~~~~~~~~~~~

129: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 00:59:37.01 ID:ca0kvRtDO
~~~~~~~~~~~

亜季「!!?!??!?」


亜季「・・・・・・・・・・」


ダンボールに満ちた部屋、それぞれ部屋の端から互いに向き合っている


”三人”が互いに互いを見ている



麗奈「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!亜季!!あんた自分のボットは倒したんじゃないの!!」


亜季「た、確かに倒しました!!私の軍隊式格闘術は本物であります!!」


麗奈「う、うるさいわね!偽物は黙ってなさい!!」


亜季「そ、そんな!?」


窓際に麗奈

その反対側の壁際に亜季


その間、部屋の中央付近でもダンボール箱の中身を調べている亜季がいた



しかしそのどちらも胸元に赤く光るバッジがついてないのだ

130: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 01:02:21.77 ID:ca0kvRtDO

同じ人間がいるにはこの仮想空間に限っては練習用ボットしかありえない


麗奈「あー、もう!!なんなのよ」

頭をかきむしる、二人の亜季は全く同じ姿

バッジもない、まるで矛盾している、バグでも起きたのか?

三人は互いを見張るようにその場に立ったまま動けない

亜季「麗奈!私が本物です!!」

亜季「いや何を言う!私の方こそ!!!」

焦りを含んだ大声が余計に場の混乱を加速させる

どうして気づかなかったのか、全員が自分の手元にばかり集中していたからだ

131: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 01:04:42.19 ID:ca0kvRtDO


そこで二人の亜季のうちの一人が思いついたように声を上げた


亜季「!!そうだ麗奈!!これを見てください!!」


麗奈「なによ!!変なもんだったら撃つわよ!!」


亜季「ユニットであります!!」


麗奈「!!ユニット!?」


ポン


二枚のボードが空中に浮かんだ


_____________

 小関麗奈 200/200

ユニットメンバー
・大和亜季 

_____________


_____________

 大和亜季 200/200

ユニットメンバー
・小関麗奈

_____________

132: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 01:06:02.14 ID:ca0kvRtDO

そのボードは二人の目の高さ、それぞれ二人のすぐそばで浮いている


つまり

亜季「これでわかってもらえましたか?」


麗奈「う、うん・・・ごめん、怒鳴って、あんたが本物ね」


亜季「いえ、こちらも取り乱し、対応が遅れましたのでおあいこです



亜季?「・・・・・・・・・・」


麗奈「で、アンタは誰よ?」

亜季「いつの間に我々に紛れ込んでいたでありますか・・・!」

133: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 01:07:23.73 ID:ca0kvRtDO

壁際から、作業をすすめながら移動し、部屋の中央を探っていた亜季と

窓際でショットガンを見つけた麗奈が


壁際にいた亜季を睨む




亜季?「・・・・・・・・・・・・・・・」

134: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 01:09:04.52 ID:ca0kvRtDO

亜季?「・・・まーさか、こんな早くユニット組んでるのがいるなんて思うわけないじゃん」


亜季?「ごめんごめーん ちょっとしたイタズラのつもりだったんだよ」


亜季?「でも仕方ないでしょ、ほらーなんだっけ?こういう言葉があるでしょ」

















塩見周子(ボット)「あやかし狐は人を化かすって♪」


ゲーム開始18分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

開始
??????????

140: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 21:57:40.70 ID:Sdg86TG6O


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛


他人の家の引き出しは下から開けろ

深夜の建物は屋上から侵入せよ


時間の無駄を省くために必要な泥棒の基礎的なスキルに確かそういうのがあると聞いたことがある


たしか早苗さんから聞いたっけ

141: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 21:58:24.14 ID:Sdg86TG6O

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
片桐早苗「例えばタンスの引き出しの一番上の段を開けるとするでしょ?」

早苗「で、そこを物色したあとその一つ下の段を調べようとすると上の段が邪魔になるから逐一閉めなきゃダメよね?」

早苗「開けて閉めて開けて閉めて・・・これすっごい時間の無駄。空き巣のプロは下から順にパッパと開けていく、そしたら引き出しの上に邪魔になるものはないし」

早苗「で、盗るもの盗ったら開いた引き出しはまとめて押し込む!・・・ほら閉める動作は一回で済んじゃった。」


早苗「建物の場合は単に一階から壁をよじ登るよりも屋上から一つ下の階のベランダやテラスに飛び移るほうが簡単ってだけの話。」



早苗「あとは・・・上の階の部屋から順番に盗みに入っていけば、全部の部屋を見たあとに一階からすぐ逃げられるってことかな?」



早苗「んー、でも・・・ひとつの建物の全部屋をさらうような肝の据わった泥棒なんか滅多にいなかったわよ?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

143: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 21:59:34.45 ID:Sdg86TG6O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
都市中心付近 ある巨大ビル 一階


そんな記憶を思い出しながら、

凛は見たところ、ここらで一番大きく高いビルに入るとまずは最上階を目指すことにした

エレベーターのパネル盤に大量に並んだボタンの中で(24)と書かれたボタンを押す

ボタンの中で24が一番大きな数字だ

移動する密室の中で凛は自分の取るべき行動を整理する


凛「(自分のボットを倒して以降、今のところほかのボットには接触していない。)」

凛「(というか接触自体を私の方から避けている)」

凛「(私が掴んだ情報といえばボットはバッジをつけていること、あと通常武器の銃は既に誰かが使い始めていること)」

144: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:00:28.78 ID:Sdg86TG6O

凛「(かなり離れた場所からだけど何度も銃声を聞いた、・・・パン、パンっていう短いのと、ターン・・・って感じの、多分遠距離狙撃の銃声かな)」


凛「(多分私は出遅れている。みんなはもう武器を手に戦い始めてるんだ。)」

凛「(それに能力。それも気になる、もう誰か手に入れたのかな)」





凛「(だからまずはこの建物を上から下まで調べ尽くす。こんなに大きいならきっといい武器が見つかる・・・はず)」




ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンン・・・


凛を入れた巨大な機械の箱の上昇がとまった。

目的の階に到着したのだろう。


下準備も含めて、凛の孤独な戦いが始まる、

145: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:01:19.80 ID:Sdg86TG6O

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
同ビル 一階


???「・・・・・・24階、ですか」

???「では私たちはその一つ下の23階に行き、階段で24階にこっそり上がります」


???「凛さんには悪いですが、私たちにも目的というものがあります」



???「皆さん、行きますよ。凛さんがまだ丸腰のうちに」


泥棒は上から物色を始め、

強盗は下から追いかけてくる


一階からは逃げられても


空でも飛べなければ屋上から逃げる術はない


渋谷凛、彼女の戦いは背水の陣から始められた


~~~~~~~~~~~~~~~

146: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:02:16.03 ID:Sdg86TG6O
~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒


町外れ 高台


本人たちは知る由もないが奈緒が転送されたのは凛のいる、都市の中心からは少し離れていた


奈緒「ふう、ようやく、着いたか・・・」


周りにあったのは駐車場や鍵のかかった住宅ばかり、挙句メイド服の自分を倒したあとはボットからなんの接触もなし

都市の喧騒というのが仮想空間にもあるのかは知らないが、自分の周りは静かすぎた。

戦闘が起きないのはいいことかもしれないが、だからと言って武器も手に入れられずにフラフラとはしてられない

147: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:03:29.18 ID:Sdg86TG6O

奈緒「ここは周りより標高が高そうだな、遠くがよく見渡せる。」

奈緒はしかし変に都心に向かうより高所を目指した

彼女が今歩いているのは山沿いの道路である

眼下には背の低い建物が居並び、遠くには背の高いビルが見える

奈緒「・・・ここら辺かな」


アスファルトで舗装された勾配の急な道路を登っていく


奈緒「拓海がツーリングで来てる山とかがこういう感じの道なんだろうな・・・歩きはキツい」


どうせ車なんて来ないが、ガードレール付近を歩く。

左手には都市風景、ただしガードレールの向こうは小さな崖、足を滑らせると登るのがめんどくさそうだ


奈緒「・・・・・・ん?」

148: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:04:24.36 ID:Sdg86TG6O

歩きながら遠くの街を何気なく観察する。

その視界の中の街に人影が見えた。だれかの背中だ




奈緒「・・・・・・加蓮?」



幸運なことに高低差はあれど、距離としては100mほどしか離れていない。


だから見覚えのある髪色、髪型、服装にも気づけた


あの変な電車の中で自分の隣に座っていた人間だ。


正直なところ仮に誰かと会ってもそれがボットだったらどうしようかと不安だったが

加蓮は自分と同じプレイヤーだ。

チュートリアルもそろそろ終わっただろうし、加蓮もおそらく練習用ボットは倒しただろう

149: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:05:17.81 ID:Sdg86TG6O

奈緒「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!」


奈緒「かれーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!」


最初に見つけた相手が味方だったことに喜びを隠さず大きく呼びかける

めぼしい目印を見つけたら山を降りて向かおうとしていたが、自分はラッキーだった

意外と近くに加蓮を見つけられた。


奈緒「こっちだぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

150: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:06:18.98 ID:Sdg86TG6O

声よ届けとばかりに叫ぶ。仮想空間なら喉も傷めない

それに都会にはあるまじき静寂なのだ、これだけ声を上げればなにか聞こえるだろう




加蓮「         」ン?


加蓮「         」キョロキョロ



その証拠に離れた位置の加蓮もなにかに反応したように周りを見渡している

ここからは遠くて見えないが右手に何か持っているらしく、それを構え直していた

ただ、何かの声が聞こえるがその出処がわからないらしい。こっちには気づいていない

151: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:07:28.94 ID:Sdg86TG6O

奈緒「やべっ、まずこっちを向かせねえとな」


やっと誰かとコンタクトできそうなんだ。この機会を逃したら広い都会ステージで迷子になってしまう


奈緒「・・・・・・すうぅーーーー......」



奈緒はもっと大声で呼びかけるため肺いっぱいに息を吸った


奈緒「(もっと大きな声で!!いくぞ!!)」



奈緒「かぁーーーーーーーーー!!!れぇーーーー


奈緒「      」


奈緒「      」


奈緒「    !?」

152: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:08:38.90 ID:Sdg86TG6O

奈緒の声が出ない


声が出ない


音が出ない



喉は震えている、舌は動いている、歯に自分の吐いた息があたっている


だが自分の耳に自分の声が聞こえていない


まさか自分の耳がおかしくなったのか!?


奈緒「   !? !? !? 」



慌てて両手で耳に触れる、

なんともない、

ゴソゴソと ガサガサと

自分の指が耳朶とぶつかる音が聞こえている

耳ではない、声だ、やはり声が出ていなかった


奈緒「      」

153: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:10:00.88 ID:Sdg86TG6O

奈緒「       ぷはっ!!」


奈緒「戻った!? なんだ今の!?」








????「......奈緒さんの声、...混乱、そして恐怖の音、です」



奈緒「うえっ!!?」



????「......すいません、怖がらせてしまいましたね,,,」


????「...でも...仲間を呼ばれると困るので......少しだけ...先程のあなたの声をいただきました」


????「驚き、安堵、期待、......そして大きな喜び、...あまりに暖かく、安心できる旋律に...奪うのを躊躇いそうになりました......」


奈緒「声を・・・奪う?」



いつの間にか奈緒の後ろ、道路を挟んだ反対側に彼女はいた。

155: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:11:58.11 ID:Sdg86TG6O

敵、と表現するには穏やかな雰囲気をまとわせすぎている


しかし、スラリと伸びた細身の長身には、あの赤いバッジがつけられていた



????「......積極的に危害を加えるつもりは...私にはありません...」



????「......ただ、貴方たちにユニットを組ませるわけにはいかない......」









梅木音葉(ボット)「......それだけは...阻止させてもらいます......全力で」



ゲーム開始20分経過

神谷奈緒VS梅木音葉(ボット)

開始


~~~~~~~~~~~~~~~~

156: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:13:11.93 ID:Sdg86TG6O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
三好紗南


あたしのゲーム機は赤外線の受信機能みたいに、上の方についた端末みたいなパーツをアイドルに向けるとデータを受信し始めるみたい


もし一人のアイドルに向けている途中に、別のアイドルに端末を向けると一人目のデータより二人目、つまり最新のデータの方を優先して受信するらしい


で、あとは次のアイドルのデータを受信するまで画面はそのまま最後に受信したデータを表示し続ける

157: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:14:06.95 ID:Sdg86TG6O
___________________

name: 上条春菜

category: ボット

skill:
メガネを通してスコープのように遠
方を詳細に視認可能。副次的効果と
して遠距離攻撃の命中精度が飛躍的
に上昇する
____________________

159: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:15:25.66 ID:Sdg86TG6O

あたしの手元から離れて地面を滑っていったゲーム機に映った情報にはそうあった


遠距離攻撃


これって狙撃・・・だよね





あたしは今、フロア中に設置された筐体の一つに体を隠している




左腕がビリビリしてる、


ずっと正座した後に足がこんな感じになったっけ


あれの百倍くらい

160: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:16:46.92 ID:Sdg86TG6O

ゲームの画面が切り替わった瞬間、


近くにボットが隠れてたのかと思って背後を振り向いた


そのせいで体が動いたからかな?


弾丸 見えなかったけど、たぶんそう


なにかすごく早いものがあたしの頬を掠って左腕の肉付きの薄い二の腕を貫いた


ゲーム機は無事だったけど飛んでいった


あたしは隠れた


その後にターーーンって発砲音が聞こえてきたんだ


だから狙撃ってわかった

161: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:17:59.51 ID:Sdg86TG6O


窓ガラスは、というかこのビルは壁面が一面ガラス張りだった


だから外からはこのビルの中は外から丸見えなんだ


いや、普通ガラスの反射があるんだろうけど


それでも弾を当ててきたんだし、ガラスの反射なんかでターゲットを見失ったりはしないのかも


それに分かる


もしも、今隠れている筐体からあたしが出ようとしたら次は頭を狙われる

162: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:18:48.65 ID:Sdg86TG6O

だって分かるもん


今あたしを狙ってる相手、


ゲーム機によれば春菜さんのボットらしいけど


その視線が分かる


背後には誰もいなかった


でも遠く離れた場所からは狙われていた


その視線を今更感じてる


背の小さいあたしにとっては十分大きかった筐体


今、あたしの命を守るバリケードとしてはとっても小さく感じた

163: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:20:08.71 ID:Sdg86TG6O
ゲームだからかな、腕はしびれるけど痛くはない








でもあたし、今ものすごく怖がってる


_____________

 三好紗南+ 80/100 
 

_____________



ゲーム開始15分経過

三好紗南VS上条春菜(ボット)

膠着状態継続中


~~~~~~~~~~~~~~~

164: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/06(木) 22:21:33.18 ID:Sdg86TG6O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
小日向美穂






やあ!



ぼくのなまえはプロデューサーくん!





なまえからは想像できないかもしれないけどくまさんだよ!


よろしくね!



170: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:43:06.60 ID:TGu3gT3iO


このなまえはとっても気に入ってるんだ!



だってぼくのご主人タマの美穂ちゃんがつけてくれたんだもん!



ビルの窓ガラスにはふわふわの白いくまがうつっているよ



ぼくのこのやわっこいからだをギュっとだきしめると美穂ちゃんはよく眠れるんだって!


171: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:44:12.00 ID:TGu3gT3iO

それにしても一体ここはどこなんだろう?


まわりにはとっても大きいビルばっかりだよ


ぼくの体は小さいからビルの一番てっぺんをみようとおもっても上を見ていくうちに転んじゃうんだ...




やっぱり戻ったほうがいいのかな?



だめだよ!


いちどしゅっぱつしたからには何もせずに帰るのはダメ!




美穂ちゃんのおともだちがいるところまでぜったいにたどり着いてみせるんだ!

172: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:46:07.66 ID:TGu3gT3iO

きをとりなおして



しゅっぱつしんこう!



うーん、でもこのぬいぐるみの足は歩きにくいなぁ・・・



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ビル街



ぽっふ ぽっふ ぽっふ


このあしおとはぼくが自分でかんがえたんだよ



綿の詰まっただけの体じゃあしおとなんかしないからね



美穂ちゃんのおともだち、仁奈ちゃんって子がきぐるみをで歩くとこんな音がするんだ



ちょっとまねさせてもらったけどゆるしてね


173: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:47:53.24 ID:TGu3gT3iO
・・・!・・・・「・・・・」・!・・・




おや? 誰かの声がするよ?



あっちのほうだ!



美穂ちゃんのおともだちだったらいいな!



ぽっふ ぽっふ ぽっふ!!




やっと着いたよ!




このほそい道の先から声がきこえたんだよね?




こーんにーちはー♪



プロデューサーくんでーす

174: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:48:53.35 ID:TGu3gT3iO
















まゆ「・・・うふふ・・・・・・・・・・・・これで倒したボットは三体、いえ三人目、ですかねぇ・・・」


まゆ「そういえば・・・チュートリアルの分は・・・・・・含めるのかしらぁ・・・?」




ほうちょうもってなにしてるのまゆちゃん

175: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:49:49.66 ID:TGu3gT3iO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
美穂の独白



小日向美穂「(お昼寝から覚めたと思ったら目の前に自分がいた)」


美穂「(私のボット?とかいうらしいんだけど、その子は私と戦わないといけないらしい)」


美穂「(すごく申し訳なかったけど、それが役目らしいので私はなるべく痛くないようにあの子を叩いた)」


美穂「(私ソックリのあの子は、『それじゃだめだよ でもやっぱり私のオリジナルだね』と言って消えていった)」


美穂「(そのあと、私が寝ていたのが病院みたいな施設の屋上だったらしくて、下に降りる途中、ある病室ベッドに置かれていたあるものに気づいた)」


美穂「(プロデューサーくん、お見舞いの品みたいに、ベッドの上に置かれていた)」


美穂「(おもわずギュっとしたら、えっと・・・そう、ぴろん?ぴこん?・・・・・・そんな音がしたんだ)」

176: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:51:23.06 ID:TGu3gT3iO





美穂「(そしたら私はいつの間にかプロデューサーくんに”なっていた”)」






美穂「(吸い込まれたみたいな感覚がしたあと、私の体も視界もあの白くてふわふわのプロデューサーくんになっていた)」


美穂「(よくわからなかったけど、いろいろ試してみたら元に戻れた。でも折角だから着ぐるみみたいな気分を満喫することにしたんだ)」






美穂「(ついでに、家でこっそり書き溜めてた『もしもプロデューサーくんが喋ったら言って欲しい言葉リスト』も実行してみた)」


美穂「(すごく楽しかったから、そのままのキャラで散歩に出たんだ___)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

177: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:52:52.42 ID:TGu3gT3iO

美穂(プロデューサーくん)「・・・・・・」



まゆ「・・・・・・・・・あら、ぬいぐるみ・・・?」


私はその場で倒れたまま動かなかった


たしか・・・オモチャたちが主人公の映画では、人間に見つかるとこうやって動かないふりをするんだよね

ホントはまゆちゃんに話しかけたかったけど何故かそれを思いとどまってしまった

まゆちゃんはリボンやヒラヒラした服がとっても似合う優しくていい子

しかも家庭的な面もすごい、だから調理道具を持って台所に立つ姿もサマになっていた

バレンタインチョコを作った時、チョコを切るために包丁の使い方も何度も教えてもらったなぁ......





その包丁が、今まゆちゃんの右手に逆手に持たれている

まゆちゃん、そんな持ち方は危ないよ?

178: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:53:56.14 ID:TGu3gT3iO

まゆ「・・・このデザインは・・・美穂さんのものと似てますねぇ・・・」





まゆ「・・・・・・・・・・・・・・・確か”プロデューサーくん”でしたっけぇ?」





まゆ「・・・・・・素敵な名前ですねぇ・・・うふ」



逆手にもたれた包丁と反対の手には、なんだろ?ビルの間は暗くてよく見えないけど黒っぽい何かを握ってた


まゆちゃんはその手の黒っぽいのを服の、体の周りを覆うように巻かれているデザインのリボンの間に挟んだ


なんだか西部劇とかでガンマンがピストルをああいう風に腰に巻いたベルトにしまってたなぁ・・・


そんなことしたら服が歪んじゃうんじゃないかなぁ?

179: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 00:55:17.34 ID:TGu3gT3iO

まゆ「美穂さんがプレイヤーかボットかは、まゆは知らないですけど・・・もしプレイヤーなら、プレゼントするのも・・・まぁ悪くないですかねぇ」


まゆ「・・・もしかしたらこれが美穂さんのキーアイテムの可能性もあるわけですし、能力を使える人は多いほうがいいでしょう・・・」


キーアイテム? 能力? 

なんのことだろ・・・

もしかしてこのくまさんモードのことかな?


まゆちゃんは自分の考えを整理してたみたいに独り言を喋ったあと、こっちに歩いてきた


シルエットになっていたまゆちゃんが徐々に明るい部分に踏み込んでくる

180: saga 2014/03/07(金) 00:56:34.90 ID:TGu3gT3iO

まゆ「・・・・・・もしそうじゃなくても、







  お腹をかっさばいて、中の綿をくり抜いて、弾のマガジンケースにもできますしぃ・・・」



美穂(プロデューサーくん)「ひっ!?」





まゆちゃんの可愛らしい服


リボンが巻かれた可愛い服










その全てのリボンの部分に数え切れないほどの包丁やナイフ、そしてピストルが挟み込まれていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

188: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 11:57:02.48 ID:sXM4qrm0O


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
北条加蓮


アタシを励ましてくれたのはアイドル活動に真剣になり始めた頃のアタシだ

あの子はやるからには期待に応えろと言った

あの子はアタシに武器を託した

たった5発の銃弾しかないけど

それすらも『少しだけ手助けしてやるからあとは自分でやれ』って背中を押されたような気がした


晶葉のロボット、ハイスペックすぎでしょ


人のために働くロボじゃなく、人を、アタシを働かせるロボだなんてね


加蓮「・・・やってやるわよ」



~~~~

189: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 11:57:57.11 ID:sXM4qrm0O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

と言ったものの誰とも会わない

地図がないので現在地もわからないアタシはいつの間にか随分閑散とした住宅街にいた

最初見た大きなビルは、二階建て、三階建ての家屋に取って代わられている



そんな中を右手に拳銃をぶら下げながら歩いているアタシ



女子高生アイドル!!昼下がりの住宅街で突然の発砲!!



なんてね、奈緒がやってたゲームだと人の家のタンスを漁ってアイテムをゲットするんだっけ?


仮想空間だとしても常識的な考えが先行してどうもそれには思い切りがつかない


凛だったらこういうときでもさっと頭を切り替えて、家だろうとビルだろうと土足で上がり込みそうだけどね



奈緒は、どうだろ、奈緒はゲーム好きだからねぇ・・・

190: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 11:58:46.31 ID:sXM4qrm0O

・・・凛も奈緒も電車の中であって以来声も聞いてないや



!!...ぇーーー...  ...っーーー!


そんなことを考えてたからかな


風の音?違う、声がアタシの耳に届いた


加蓮「!!」


首を回す、周りを見渡す

こういう時どうするかわからないけど

警戒態勢としていつでも走り出せるように腰を落とした

192: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 11:59:50.33 ID:sXM4qrm0O

.......................



何も聞こえない、誰の声だったの?どこかで聞いた覚えがある、


そもそもこの仮想空間にいるのはウチのアイドルなんだから耳に覚えがあって当然か



加蓮「・・・・・・・・・・・・・・・」


親指、小指、薬指、中指の順に力を込める


最後に引き金にかかった人差し指を少しだけ力ませた


銃はある 残弾は五発のみ 

だけどアタシの中の殺る気は満タンだった

193: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 12:01:15.55 ID:sXM4qrm0O
........................


...オン


.......オン






音が変わった?





......ブオン






ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンン!!!!!!





???「 オラァアアアアアア!! 喧嘩上等だコラァアアアッ!!!」



視界の端、アタシのすぐ真横から大型バイクが突っ込んできた


そこには住宅街の壁しかなかったはずなのに、


至近距離から獰猛な機械の塊が突っ込んできた


加蓮「・・・ッ!!?」




向井拓海(ボット)「特攻!、特攻!!、特攻だァッ!!!」

194: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 12:02:08.56 ID:sXM4qrm0O


振り向いたけど間に合わない、


アクセルを握りこんだ右手と逆、


拓海さんの左手に握られた木刀が背中に叩き込まれた




ゲーム開始21分経過

北条加蓮VS向井拓海(ボット)

開始



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

195: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 12:03:16.97 ID:sXM4qrm0O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~


_____________

 北条加蓮 90/100


_____________



バイクの加速を上乗せされたその打撃はアタシを吹っ飛ばした


加蓮「!!いったぁ・・・い」


アスファルトの地面に投げ出され、手足をすりむいた


と思ったが、見た感じ怪我はしてないし血も出ていない


ぶたれた背中も静電気が走った時みたいにしびれているけど骨が折れたとかそんな感じじゃない


やっぱこれゲームなんだ、少し安心する






これなら殺れる


196: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 12:04:33.14 ID:sXM4qrm0O

オオオオオオン


痛みに呻くこともなく、


すぐに態勢を立て直すとバイクの排気音のする方に体ごとリボルバーを向けた




なのに、


加蓮「あれ?」



そこには誰もいな



拓海(ボット)「こっちだよォ!!」



あたしが銃を向けたのとはかなりずれた角度、

右手の銃をのばした先を迂回したように拓海さんが飛び出してきた












それも、壁の中から





・・・・・・は?

197: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 12:05:49.77 ID:sXM4qrm0O

いやちょっと待って


アタシは、不安定な姿勢で右手を伸ばしていて


拓海さんは壁から、そんなアタシの真正面に突っ込んできてる


木刀が馬上槍のようにこっちを向いていて____



拓海(ボット)「フっっっっっっ飛べやぁ!!」


加蓮「!!」


咄嗟に銃を追いかけるように右手側に体を飛び退かせる



ダンスのレッスンで似たようなステップがあったおかげでスムーズにできた


飛び退く瞬間、アタシの足のすぐ横を風が吹き抜けた



拓海(ボット)「チッ!!」


そのまま拓海さんはサメやイルカが海に飛び込むみたいに壁の中に潜るように消えた


もちろん壁にヒビなんて入ってないし、どこかに隠し扉があるようにも見えない

198: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 12:06:59.42 ID:sXM4qrm0O


...オンオンオンオン...!!



さっきまで静かだった住宅街に排気音が響き渡る


なのに姿は見えない、

まるで深夜に、どこか遠くの高速道路で暴走族が走ってたときのよう

やたらうるさいのに姿が見えない存在


加蓮「もー!なんなのよ!バイクに乗るなら公道を走りなさいよ!!」


ブオン!!


拓海(ボット)「コレがアタシの能力なんだからしょうがねーだろ!!」


さっきと別の壁から拓海さんが飛び出す 木刀を横薙ぎに振るってきた 首を狙ってる


さっきと違って態勢は万全だったのでしゃがみつつ反対に転がり避けられた


振り向くと、壁に消えていく拓海さんの背中が見えた

199: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 12:08:12.09 ID:sXM4qrm0O

つい拳銃を向けたくなるが、壁の中だと多分弾ははじかれる

そうじゃないかもしれないけど、試して失敗したら5発の弾が無駄になる



拓海(ボット)「バイクで事故る奴ってのはよォ...アタシのオリジナルの知り合いにもいたさ...」


排気音に重なって拓海さんの声が聞こえる


拓海(ボット)「知ってるのは、峠道や魔のS字カーブの攻略に失敗した奴が大抵だが・・・」

 「そいつらの怪我は地面やガードレールに体をぶつけたり擦ったりしてできるもんが大概なんだ」


拓海(ボット)「だが、バイク乗り全員がそんな遊びをしてるわけじゃあねぇ...」


拓海(ボット)「バイク事故ってのは、普通に考えりゃ壁や電柱、車にぶつかってできるもんだ」


加蓮「・・・・・・・・・?」

200: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/07(金) 12:09:25.49 ID:sXM4qrm0O

ブオオオオオオオオオオオン!!!


タイヤだけ!?


壁から出たタイヤがアタシの頭よりずっと上から飛び込んできてる!!


違う!


加蓮「!?!?」


拓海はタイヤの前輪を高く持ち上げ、


馬が前足を天高く振り上げていななくように


排気音を撒き散らし、ウィリー状態で加蓮めがけて特攻した



拓海(ボット)「アタシの能力は『絶対にバイクで事故らねえ』 だ、」



「アタシのバイクは!!!邪魔するモノ全てをすり抜ける!!!覚えとけぇ!!!」




ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!




~~~~~~~~~~~~

204: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:05:18.98 ID:A/lLpWklO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

加蓮「はぁっ・・・はぁっ・・・」



拓海(ボット)「安心しな!!アタシも一人のバイク乗りだ、バイクで人をはねるなんてマネは絶対にしねえ・・・」


拓海(ボット)「直接お前を仕留めんのはこの木刀だけだ!!」


これが、能力


アタシの体の痺れはもう消えている

でも緊張と、どこから攻撃が来るかわからない焦りで足が震えてる

ゲームのくせにこんなとこはリアルだ


加蓮「・・・・・・ふうっ!!」


ブオオオオオオオン!!


拓海(ボット)「ラァッ!!」


排気音と共に木刀が突き出される

なるべく体力を浪費しないように最小限の動きで避けることに成功した

205: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:07:02.61 ID:A/lLpWklO

この短時間で加蓮はダンスのステップを応用した身軽な動きを習得しようとしている


真剣になった加蓮の本気の集中力の賜物だ



加蓮「(拓海さんがどこから出てくるかはわからない。バイクの排気音でわかるはずなのに・・・)」


加蓮「(・・・たぶん、この住宅街のいろんな壁や地面に反響しているんだ、ただ突っ込むだけじゃない、拓海さんは計算して動いてる)」


加蓮「(しかも、この場から逃げようにもあっちはバイク、後ろから殴られるだけね・・・)」


この特攻、一見無謀に見えて、予測や防御を巧妙に防いでいる


加蓮「(予測は無理、でも勝目はある)」



206: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:08:02.63 ID:A/lLpWklO

オンオンオンオンオン・・・


加蓮がいるのは住宅街の真っ直ぐな一本道


二枚の壁が加蓮を挟むように平行にまっすぐ伸びている


加蓮「(・・・・・・・・・よしっ)」


加蓮は一度深く息を吸うと一方の壁に向き合う


その行為は同時にもう片方の壁には完全に背中を晒すことになっているにもかかわらず、だ


ブオンブオン・・・


加蓮「(確率は二分の一!!)」


加蓮「(どれだけ計算しようと、拓海さんが出てくる壁は二面だけ)」


加蓮「(だったらその一面だけに集中する!)」

207: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:08:58.70 ID:A/lLpWklO

加蓮「(もちろん壁一つといっても壁のどこから出てくるかはわからない・・・でも壁に真っ向から向き合っていれば、視界に入った瞬間、反射神経で対応できるはず!!)」


加蓮「(いや、反応してみせる!!)」



ブオンブオンブオンブオンブオオン!!


向井拓海との衝突は近い


加蓮は拓海が出現するのは二枚の壁の内一枚だけと言った


それは正しい


だがこれはモグラ叩きではない


拓海はモグラの穴という”点” ではなく壁という”面”で攻撃の選択肢を選ぶことができるのだ

208: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:11:40.77 ID:A/lLpWklO

これは壁一つからでも加蓮に向かって180度のうちの何処か一つの方向から攻め込めることを意味している


壁二枚で 180+180=360度


加蓮は二枚の壁だから二分の一と考えた。一面ならどこから来ても対応できると、


だが、その一面だけをまっすぐ見つめるという構え


それはつまり加蓮は360もある角度のうちの一つだけを選んだということ


 1/2 ではなく 1/360 に全てを懸ける

 
残りの弾丸も賭ける

狙いはバイクではなく本体、向井拓海


ブオオオオオオオオオオオン!!

209: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:13:05.91 ID:A/lLpWklO


加蓮「(・・・・・・来い来い来い来い!!!)」


両手で銃を構える

伸ばした腕先の銃の、引き金に指をかけた



ブオン!!!!!!!!!!!!


タイヤが

ハンドルが

エンジンが

そして向井拓海が


加蓮の眼前、真正面に飛び込んできた



拓海(ボット)「ッはァ!?!!??なんで...」



加蓮「来た!!!!!!」


360分の1の確率は当てた

次は銃弾を当てる



パン

210: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:14:10.31 ID:A/lLpWklO


ビギナーズラック


初めての射撃だったが、弾はまっすぐ飛んでいった


そして











加蓮の銃弾は見事、拓海の頭部を貫いた



胴体のような大きな部分ならともかく、頭のような小さい部位、


それもバイクで高速移動中のそれに当てるなんて芸当はそう出来ることではなかっただろう



~~~~~~~~~~~~~~~

211: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:15:58.30 ID:A/lLpWklO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

拓海(ボット)「          」


拓海(ボット)「          」








拓海(ボット)「      バカが...」


拓海(ボット)「アタシは壁に潜ってたんだぞ?」






拓海(ボット)「・・・アタシの能力はバイクだけじゃなねぇ・・・アタシ自身にもかかってるんだよ」


アタシとバイクの走りの邪魔する奴は

壁でも電柱でも車でも落石でもたとえ銃弾だろうと


アタシにすらぶつかることは出来ねえ!!!!!!
_____________

 向井拓海+ 100/100


_____________

_____________

 北条加蓮  90/100 


_____________

ゲーム開始25分経過

北条加蓮VS向井拓海(ボット)

戦闘続行
~~~~~~~~~~~~~

213: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:23:55.45 ID:A/lLpWklO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
神谷奈緒


あたしはハリセンを構える


正直、武器としてどうかと思ったがないよりマシかと思ってボットが遺したのを持ってきていたんだ


音葉さんは実に優雅な足取りであたしに向かって数歩進むと、道路の中ほどで止まった


奈緒「ち、近づいてくんじゃねえ!」


音葉(ボット)「恐怖、焦燥、迷い、...そして打算?」


音葉(ボット)「......どうしてそんな細長い音が入っているのでしょうか......」


奈緒「・・・・・・・・・」




音葉(ボット)「なるほど......私が近づいてくるのは恐ろしい...けれど近づけば...そのハリセンの攻撃が当て易くなる......そう考えてます...ね?」

214: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:24:59.08 ID:A/lLpWklO

奈緒「・・・う」


あたしは別に何も話してない。なのに音葉さん、のボットはあたしからなにか読み取ったらしい

あたしの考えが読まれていた。

本気で攻撃が効くとは思ってないけど、だから何もできないと思わせるのはまずい。


音葉(ボット)「...私の役目は...あなたの足とあなたの音を止めておくこと...」


奈緒「なんだよ役目って・・・ボットは戦うんじゃねえのかよ?」


さっきから感じていた違和感を疑問にする。音葉さんはどうにもあたしとエンカウントしたにも関わらず戦いに積極的じゃない。

晶葉が言うにはあたしたちの敵らしいが、それにしてはどうにも噛み合わない

215: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:26:10.99 ID:A/lLpWklO

音葉(ボット)「......疑問、不可解の...音ですか、音の色に濁りがない、純粋な疑問...ということは本当にわからないのですね......」

音葉さんは困ったような、悲しむような、よくわからない顔をした、この人はオリジナルからしてどうにも独特な性格だから感情が読みにくい・・・


音葉(ボット)「音楽と一緒です...小さな音を重ねていけば......やがて音の連なりが旋律になるように...」


音葉(ボット)「...私たちボットはプレイヤーを倒すために、...一つずつ布石を積み重ねていくのです...」


奈緒「(どういうことだ?・・・これじゃあまるで・・・)」


手の中のハリセンがさらに頼りなくなった気がする

状況が全く読めない

音葉さんはそこであたしに向けていた視線をほんの少しだけ別のものに向けた


音葉(ボット)「...一つ目の布石......ほら、もう...加蓮さんは...あなたからは...見えないところに行ってしまいましたよ?」


奈緒「はぁっ!!?」

216: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:27:35.64 ID:A/lLpWklO

しまった!!あたしは加蓮を呼んでるところだった!!


こうやって加蓮が離れていくまで無駄に膠着状態を長引かせるのが目的だったんだ!!


あたしは振り返る、背後にはガードレール、その向こうに仮想の街並みが広がっていた


視界中に広がる灰色の建物の群れの中から加蓮の小さいシルエットを探す









加蓮「    」


あ、いた!!


なんだ、あたしを騙そうとし

音葉(ボット)「油断しましたね...」

217: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:29:00.09 ID:A/lLpWklO

肩の上に手が置かれた。誰の手?

音葉さんの手に決まってんだろ

あたしが振り向いた隙に音葉さんは背後に迫っていた

なんの音も気配もなく!!


音葉(ボット)「...私の足音を...取り除きました.....」


ハリセンを振りかぶる

振り向きながら攻撃を加えてやる!!



音葉(ボット)「先ほどのあなたの声.......お返しします」






無音






だが、音葉さんが掴んでた方の肩に爆発したような衝撃が走り

あたしの攻撃は失敗した



______________

 神谷奈緒  95/100

______________

______________

 梅木音葉+ 100/100  


______________

218: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:29:57.23 ID:A/lLpWklO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

奈緒「な、な・・・!?」


音葉さんは動いていない、あたしだけが肩を思いっきり殴られたみたいに吹き飛ばされた


肩がえぐれたりはしてないが、精神の安定はガタガタだ


ガードレールの向こうに落っこちそうになったので慌てて態勢を整え、音葉さんから離れる


奈緒「ば、爆弾なんか使うのかよ?!」


音葉(ボット)「...先ほどよりも色濃い疑問の音、...いろいろ混ざりすぎて濁っています...」

音葉さんは相変わらずよくわからないことを言いながらあたしを見ている、

いや、本当にあたしを見ているのか?

さっきからあたしの音がどうとかしか言ってないぞ?

219: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:31:21.30 ID:A/lLpWklO

音葉(ボット)「...その濁った色は...見ていてあまり気持ちのいいものでは.....ありません...


奈緒「お、おう・・・」


音葉(ボット)「だから、あなたの疑問はここで晴らしておきましょう......」


そう言うと音葉さんは右の手のひらをあたしに見せつけるようにゆっくり開いた


奈緒「・・・?」


なんの変哲もない手のひらだ、白くて綺麗だとは思うけど・・・


奈緒「!?」


その手のひらから、湧き出すように煙のようなものが立ち登ってきた

よくある手品のようにモクモクと、音葉さんの顔が半分隠れた

一瞬、手のひらにタバコでも隠してたのかと思ったがそういう煙じゃない

黒と紫を混ぜたような、それをベースに赤や緑をぶちまけたような

幼児がクレヨンで適当になぞって描いた絵のような不気味な色合いだ

220: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:32:34.31 ID:A/lLpWklO

音葉(ボット)「これが......あなたがずっと吐いていた声の色...疑問、焦燥、恐怖、敵対.....様々な音の集合体です...」




音葉さんは手のひらをピッと横に払う。

その動きだけで、あたしの声?らしい煙は水蒸気や霧のように空中に掻き消えた


音葉(ボット)「...晶葉さんが言うには、...私の能力は『エフェクトのオブジェクト化』......」


「私には音がただの現象ではなく色や形を伴う物体として見えています...」



「そしてこの能力は、私にしか認識できないその物体を顕現させる...」


221: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:33:42.41 ID:A/lLpWklO

奈緒「・・・そ、それがどうした!!」

奈緒にとっては正直よくわからない話だ。

だが今起きていることがわからないということは、今から起こることもわからないということ

だから虚勢を張る。音葉にかかればすぐに看破されるということも忘れて


音葉(ボット)「...疑問の音色は薄れても、混乱は消えませんか...」


音葉(ボット)「...ここまで......彼女の旋律を...乱し続けたのに」










音葉(ボット)「(...それでも対抗心、不屈の色味が...まだ消えていない...)」

222: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:34:57.48 ID:A/lLpWklO

仕方ない、こうなることも予想していた


彼女だって伊達や酔狂でアイドルを続けているのではない


逆境や不遇に容易く折れるような心根ではないのは分かっていた



音葉(ボット)「奈緒さん」


奈緒「な、なんだ!!?」


音葉(ボット)「あなたの......どんなに濁って乱れても...その中で決して消えない根気強い旋律......素晴らしいです」


奈緒「お、おう・・・・・・?」


音葉(ボット)「私程度の足止めでは...きっとあなたは諦めないでしょう...」














音葉(ボット)「だから今から私は...力の限りを尽くして...あなたのスタミナを削ることにしました...」

223: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:36:38.16 ID:A/lLpWklO

音葉(ボット)「...まずは先ほど除いた...私の足音を...」


音葉の手の中に、鋭く尖った氷柱のようなものが突如現れる

その色は緑、切っ先は奈緒に向けられている



叫び声を爆弾に換え、


足音を鋭利な刃物に換える。


サウンドエフェクトを物理オブジェクトに変換する


予測不能にして万の用途を持つ能力が奈緒に牙を向いた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

224: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:37:43.64 ID:A/lLpWklO
~~~~~~~~~~~~~~~~

褒められたと思ったら、

音葉さんが殺る気になっていた

何を言ってるかわからないと思うがあたしもわからない



奈緒「おりゃああっ!!」


ハリセンを上段から振り下ろす。

弱くともダメージゼロってわけじゃないだろ!!


幸い、音葉さんの持ってる刃物?能力で生み出したらしいそれは、果物ナイフ程度の大きさしかない

あたしのハリセンは一応本格的なものだから、大きさだけは一丁前だ。リーチだけは勝ってる

225: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:39:02.27 ID:A/lLpWklO

パン!!


音葉さんはナイフを持つ手とは逆の手でハリセンを受ける

少しでもダメージに加算されればいいけど

あたしはハリセンで牽制しながら音葉さんから細かく動いて一定の距離を置き続ける

接近戦ではナイフにはかなわないからな


パン!!

パァン!!


一箇所にとどまらず常にバックステップやサイドステップを繰り返しているため

戦いながら大声で加蓮に叫ぶこともできない

それにもしそう出来たとしてもまたあの爆弾をぶつけられるだけだ


とにかく何か状況を動かすものを



音葉(ボット)「これがあなたの武器が奏でた音...敵意、不屈、奮起...攻撃色の音...!」

226: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:40:42.19 ID:A/lLpWklO

今度は音葉さんの方から距離をとった。

一足飛び、あたしからバックステップでしりぞく

同時にナイフとは逆の手でサイドスローであたしに何かを投げつける


奈緒「っ!!」


咄嗟にハリセンで打ち返そうとする


こっちに飛んできたものを見る




まるでそれは黄色いイガ栗のようだった


鋭い刺が球体の周りをぐるっと覆ったような外見のものが3つ

227: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:42:05.18 ID:A/lLpWklO

3つは打ち返せない、避けるしか・・・




パパパァンッッッ!!!




もし効果音があればそんな音が鳴っただろう


その3つのイガ栗は無音で爆発するといくつもの刺を炸裂させた


奈緒「うぁっ!!なんだこれぇ!!?」


反射的に腕で顔と目元を守る

あたしの体に爪楊枝のようなものが何本も刺さった感触がした

感触、だが痛みではない、そこまで効いてないのか?

228: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:44:34.51 ID:A/lLpWklO

音葉(ボット)「...音から”目を逸らしては”いけません...」





顔にかかった腕の隙間から音葉さんが見える


音葉さんの周りには楕円形の、平べったい板


強いて言うなら靴のサイズを調整するのに使う”中敷き”のようなモノが浮いていた


赤色のものと水色のもの二種類、数はざっと見て十ほど


音葉(ボット)「戦意と焦燥...私とあなた...二人分の足音...ハーモニーですね」

229: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:46:51.33 ID:A/lLpWklO


ナイフが指揮棒のように振られる


その動きを合図に、ロケットのように飛んでくる


たくさんのフリスビーを同時に投げつけられるとこんな風になるんだろうな


奈緒「って、あいててて!!いてっ!!」


フリスビーじゃねえわこれ!!

足音というだけあってまるで透明人間に連続で蹴り入れられてる気分だわ!

こんなのどうしろってんだ!?

______________

 神谷奈緒  84/100



______________

______________

 梅木音葉+ 98/100  



______________




ゲーム開始24分経過

神谷奈緒VS梅木音葉(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~

230: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:48:25.95 ID:A/lLpWklO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
現実世界

チャプター
池袋晶葉&一ノ瀬志希





一ノ瀬志希「晶葉ちゃーん、現代人が生み出した素晴らしい発明品、三つまで言える?」







晶葉「火薬、羅針盤、活版印刷だが」



志希「いやそんな古い時代のじゃなくて、げ・ん・だ・い人だよ現代人」


晶葉「さぁ、現代で考えるとなると難しいな,,,今の時代、ちょっとしたことでもメディアがまるで世紀の発見のように面白おかしく書き立ててしまうからな」


志希「じゃあ知りたい?知りたいよね?」

231: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:49:48.41 ID:A/lLpWklO

晶葉「・・・なんなんだ?答えがあるなら教えてくれ」


志希「んーでわでわっ!!今から!志希にゃんの!スバラスバラシランキング(現代版)、はっぴょうするよー♪」


晶葉「待て君、そのタイトルから察するにそれ君の独断じゃないか?」

232: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:51:00.35 ID:A/lLpWklO

志希「スバラランキング3位! なんとなんと携帯電話!みんなも納得の第3位だね!」


晶葉「なんだ、意外と普通じゃないか、ランキング入りの理由は?」


志希「携帯電話は大抵の人が一日に何度も触るから、手汗の匂いがいい感じに染み付いてるよ!以上!」


晶葉「やはりか貴様」


志希「スバランキング2位!タートルネック!」


晶葉「あ、もういい大体わかった」


志希「ただでさえ体臭の染み付きやすい衣類において、首元の匂いまでも吸収することもできるよ!ハイテクだねぇ」


晶葉「服飾メーカーの開発部に謝ってくるといい」

233: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:52:08.26 ID:A/lLpWklO


志希「ではいよいよ1位の発表だよー♪」


晶葉「私は今忙しいから後にしてくれないか?」



志希「スパンキング1位!!」



晶葉「それは略しすぎな上に誤解を招く単語だからやめろォ!!」


志希「むぅ・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~

234: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:53:30.61 ID:A/lLpWklO
~~~~~~~~~~~~~~~~


志希「・・・で、どうなの晶葉ちゃん? あたしは画面に流れる数字を見てるだけじゃなーんにも分かんないんだけど」


そう言って志希はだらしなく着崩した制服と白衣を存分に乱しながら地面に転がった


晶葉は彼女に目もくれず目の前に並んだ画面を眺めては、時折キーボードになにかのコマンドを打ち込んでいる

235: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:54:28.48 ID:A/lLpWklO

彼女たちがいるのは高い天井と広い床をもつ大きな部屋

ただ壁中を太いコードやケーブルが数千匹の蛇のようにのたくり、壁の模様すら見えなくなっている


しかも明かりとなるのが晶葉の見つめる画面のみなので周りが異常に薄暗く、


加えてあちこちに置かれた機材が与える圧迫感から、その部屋はとても狭く感じられた

236: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:56:27.77 ID:A/lLpWklO


晶葉「こっちの仮想空間は至って順調だよ、今で丁度稼働から30分だ、何の問題も起きてない」


晶葉「仮想空間に置かれたボットもこっちが送り込んだプレイヤーと楽しくやってるよ」



晶葉「___”Chihiro”の方も問題なく動いている。」



志希「きらりちゃん風にいうなら、ばっちし☆って感じ?」


晶葉「・・・まあ、そうだな、だが君にも働いてもらうぞ」



晶葉「例え天才とよばれようと所詮私は機械の畑の住人だからな・・・人体については私は君より一段落ちる」



志希「任せてよ、私はプロデューサーといい匂いがするアイドル達のそばにいるためならなんだって出来るんだから♪」

237: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:58:00.03 ID:A/lLpWklO

ゴロゴロと転がっていた志希が転がりに弾みをつけて一気に起き上がるとてくてくと歩き出す


向かうは部屋の壁際、

コードとケーブルの海から顔をのぞかせるいくつもの卵型のカプセルがある場所

暗い部屋の中で近くで見ると仄かに青く光っているのがわかる。

そのカプセルの個数は全部で18

今現在、仮想現実に送られているアイドルの人数と同じ18だ


志希「・・・・・・・・・・・・」

238: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 01:59:21.59 ID:A/lLpWklO

カプセルの一つに近づくと横に取り付けられた画面に表示されるメーターを注意深く”観察”する

カプセルの蓋は厚いガラスで、薄暗くて個人の判別はできないが誰かが入っているのがわかる

その中にペンライトの光を当て、そこで眠っている人間も”観察”する

志希「ふむふむ・・・顔色はいまのとこ全員良好、と、体臭にも悪い変化はないね」


晶葉「体臭などわかるのか?私はそれをほとんど密閉式に作ったんだが」


志希「・・・ん、わかるよ?はい、オッケイ目立った悪影響は無し、後で一回精密検査するけどね」



晶葉「わかった、また頼む・・・しかしどうもこの生身の人間をデジタルに送るシステム、というのは好きになれん」


画面を飽きることなく眺めながら晶葉はつぶやいた

239: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 02:00:47.87 ID:A/lLpWklO


志希「んー?なんで?楽しそうじゃん、私はどうも適性がなかったみたいだけど」


アイドル達の健康観察を終えた志希は晶葉の隣に腰を下ろした


複数ある画面の中には見知った顔が何人も映っている


だが他のいくつかの画面に流れているのは英数字の羅列ばかりで志希にはちんぷんかんぷんだ


晶葉「深い理由はない、私は今回の企画、どちらかというとプレイヤーよりボットの方に肩入れしているというだけだ」


晶葉「基本となる思考アルゴリズムに、アイドル達の性格をインプットすることでロボットたちに千差万別の個性を与える」

 「私はそういうボットたちの安住の地をイメージしてこの仮想空間をデザインしていたんだがね・・・」

 「そこに外部から人間にコントロールされた存在を送り込むのがどうも、腑に落ちなくてな・・・」

志希「?・・・あたしは、ボットたちが生身の人間の思考に触れるのはいい刺激だと思うけどな?」

240: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 02:02:26.24 ID:A/lLpWklO

晶葉「まぁ、そうかもしれんな・・・」

志希「ふーーん・・・あたしは今まで興味がないことや気に入らないことは全部ほっぽってきたけど、晶葉ちゃんはそういうのないの?」

晶葉「ふん、ばか言え・・・この件は助手が私のことを信頼して任せてくれているんだ、放棄してたまるものか」

志希「にゃーん!晶葉ちゃん、かわいいーハスハス♪」

晶葉「こらっ・・・!抱きつくな匂いを嗅ぐな頬ずりするな!!」

241: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 02:03:44.26 ID:A/lLpWklO

狭くて広い部屋で二人の白衣がもぞもぞと絡まり合う


prrrrrrrrrrrrrrrr


晶葉「ん、志希、電話が鳴ってるぞ?」

志希「あたしのじゃないよ?そもそもあたしよく失踪するからケータイは携帯しないし」

晶葉「・・・助手からの連絡はどうする気だ君は・・・」

prrrrrrrrrrrrrrrr

晶葉「なんだ、私のか、この仕事用のケータイ番号を知っているのは助手だけだったな」


ピッ!


晶葉「もしもし池袋だが」


志希「ねぇねぇ、もしかしてプロデューサー?あたしも後でかわってよ」

242: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 02:04:53.33 ID:A/lLpWklO


「...・....、........。..・...・.....」



晶葉「? もしもし?助手か?」



「・・。・・・。・・。。.....」



晶葉「聞こえないぞ。それにノイズもひどい、はっきり話したまえ」



「,・・,,,・,,,,,,,”,,,,,,・。、・。」



晶葉「・・・ふざけているなら、もう切るぞ」


「・・・・・......・・・・」



「・....・。......」














「...............あきは?.............」

243: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 02:05:46.94 ID:A/lLpWklO

プツン


ツーッ ツーッ ツー


晶葉「もしもし?助手か?おい!何があった!」

志希「落ち着いて晶葉ちゃん、電話をかけ返すんだよ」

晶葉「う、うむ・・・」


なにやら不審な電話、それもおそらく自分を知っている人物から


晶葉はこっちからかけようと着信履歴を開く

だが

晶葉「うん?」

244: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 02:06:57.99 ID:A/lLpWklO
_________________________________

  すべて/不在着信   編集


tfPnvsoE/ifevvszerRs490o 今日

    助手       月曜日

    助手       土曜日

    助手       金曜日

__________________________________


晶葉「・・・なんだこれは」

志希「?」

245: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 02:07:53.84 ID:A/lLpWklO

バグった連絡先からのいたずら電話


多少の不気味さは残ったものの目の前の件をおろそかにはできない


結局、電話番号が追跡できなかったためこの出来事の対処は無視された



これが晶葉と志希にとって最大の失敗だったことを知るにはまだ時間がかかる

246: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 02:09:04.46 ID:A/lLpWklO


こうして小さな歪みはその発生を見逃された



その歪みが大きくなり


やがてアイドル、ボット、仮想と現実両方を巻き込むことになる





ゲーム開始45分経過

???? 能力獲得


~~~~~~~~~~~~~~~~

257: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:22:24.08 ID:gIT5gsC3O

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
白坂小梅



......こっちかな...



寝室の窓から外を眺める。

そこから見える景色の中に誰かがいる、ということはない


これで目に付く限りの部屋は調べたし、鍵のjかかった部屋もなかったから見落としはないはずだ


じゃあ一体これはなんだろう


白坂小梅「な、なん...だろ...?」

258: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:23:27.81 ID:gIT5gsC3O

居間に戻る道を進む

小梅が転送されたのはどこかの屋敷

古き良き古風な家屋は、上に低くて横に広い。探検するだけでも大仕事だ

都会の中程に存在しているということは富裕層の持ち物なのだろうか

小梅は、今自分が一体何を探しているのかもわからない


小梅「どこ...?」


小梅はそれでも探し続ける

どこからか聞こえてくる声の主を

259: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:25:17.11 ID:gIT5gsC3O

きっかけは自分のボットを倒した後だ、

自前の長袖を振り回して何度か叩いているとそれで倒せた

ちゅーとりある、というものだったらしくその弱さは仕様だったのかもしれない、と小梅は思った

倒れた自分ソックリの死体を眺めていたとき、それはどこからか聞こえた

いや、もしかしたらずっと聞こえていたのを聞き逃していたのかもしれない


それは独特のうねりをもった音、声だった。


一定のリズムを持たず、しかし常にどこからか響いている。少なくとも楽器の立てる音ではない


もしかしたら小梅のその予想は外れているかもしれないが、とにかく聞こえている

260: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:26:14.11 ID:gIT5gsC3O

くしゃみの音いやもしかしたら深呼吸するだけでかき消されてしまうような小さな声


小梅「......気に...なる」


心霊スポットをめぐることを趣味としている小梅にすればどこからともしれず響く声などどうってことはない

気になるのはその出処だ、

どの部屋に向かっても声は近づきもせず、遠のきもしない、もしかしたら自分のすぐ後ろにいるのでは?

と思って振り向けど誰もいない

そう、誰もいない


小梅「...あの子も...い、いない...」

261: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:52:42.60 ID:gIT5gsC3O

あの子、詳細不明の小梅の友人

小梅からすればいつもそばにいた長年のパートナーに近い存在だったため

その不在の方がかなり応えた

小梅「...仮想じゃなくて...現実の方の私のそばに...い、いるのかな...?」


あの子の安否を気にかけてはいるが、

仮想現実という剣呑の地に送り込まれている小梅も本来ならいろいろ心配されるはずの身だ


小梅「............あ、」

262: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:54:04.87 ID:gIT5gsC3O


小梅「......また、聞こえ...た」



小梅は周りを見回す

日本家屋の廊下はシンプルでそれでいて採光なども計算されているため歩くには十分すぎる明るさだ


しかし小梅は今、昏い森の中を今にも切れそうな蜘蛛の糸をたぐり寄せながら歩いているような気分だった

そして声がまた聞こえる














??「ふふーーーーーーん!!カワイイボクが来ましたよ!!」


ガラガラガラ!!!


???「さ、さっちゃん......ちょ、ちょっとし、静かにしたほうが...」


小梅「!?」



ゲーム開始10分経過

報告事項なし

~~~~~~~~~~~~~~~

263: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:55:12.63 ID:gIT5gsC3O
~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
北条加蓮


確かに命中していた

なのにアタシの銃弾は拓海さんを通り抜けていった

糠に釘、暖簾に腕押し、まるでホログラムに触れないように

拓海さんは銃弾なんてなかったみたいにそのままこっちに突っ込んできた


アタシの真正面から


加蓮「そん、な...!」


拓海(ボット)「おらよォ!!」


でも拓海さんはギリギリのハンドルさばきでアタシのすぐ横を通り抜けた


さっき言ってたようにバイクではねる、という攻撃手段は取らないらしい


いや、通り抜けちゃうのか

264: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:56:17.79 ID:gIT5gsC3O

加蓮「じゃあ、どうして___}


ギャギャギャギャギャ!!


私の背中を音が叩いた気がした。

一瞬、攻撃が失敗したことに放心していたアタシは振り返る


拓海(ボット)「アブねぇだろ!!気ィつけろォ!!」


拓海さんはアタシのすぐ後ろでバイクを反転させていた

バイクから降ろした足を軸に、その場で車体をドリフトさせるように方向転換する動き

バイクの後輪が地面を削るように砂煙を上げている

ブオンブオンブオン!!

ギャリギャリギャリ!!


拓海(ボット)「うらァ!!」


加蓮「ぐっ!?」


脇腹に硬質の武器がめり込む

その場に膝をつきそうになったアタシを横目に、

拓海さんは半回転した車体を発進させ壁の中に戻っていった。


_____________

 向井拓海+ 100/100


_____________

_____________

 北条加蓮  83/100 


_____________

265: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:57:19.56 ID:gIT5gsC3O
~~~~~~~~~~~~~~

残弾4発


どうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしよう


アタシの唯一の攻撃手段が通じない


ブオオオオオンンンン!!!


どの方向から聞こえてくるかわからない爆音が不安を煽る


右足がしびれてきた


頭もクラクラする、緊張しすぎで集中力が切れかけてるのかな・・・


拳銃を握る手にも力が入らない、でも手放さない



ブオン!!


一際身近に拓海さんが放つ排気音が轟いた

266: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:58:16.90 ID:gIT5gsC3O


攻撃ができなくとも攻撃はよけられる


死角から来たであろう攻撃をオーバーな横っ飛びで避ける


背後から来たバイク相手に最小限の回避動作なんて難易度が高いからね


木刀が髪を掠めた



あれ、



さっきも少しだけ思ったけど、どうして木刀はアタシに当たるの?


ぶつかるものは透けるんじゃないの?



・・・・・・壁から出た時だけ木刀にかけた能力を解除している・・・ってことだよね




そういうふうに疑問はすぐに解けた。

何か重要なヒントを得た気になったけどそうでもなかったみたい

267: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 13:59:42.46 ID:gIT5gsC3O

加蓮「(こうなったら・・・逃げる!!)」


アタシはあっさり戦闘放棄を決意する

障害物を完全無視する二輪車を相手にこの狭い道に沿ってアタシがどこまで逃げ切れるのか甚だ謎だが


加蓮「(大丈夫、逃げ切る・・・もう、病弱だったアタシじゃない、アタシのボットには悪いけど、ここは戦略的撤退だと思ってよ)」


ブオンブオオオン!!!


アタシは拓海さんが壁から出てくる前に少しでも早く駆け出そうと足を踏み出す


ピリッと右足がしびれた


加蓮「(今だっ!!!)」



スタートダッシュを踏み切る

右足のしびれだけがまだ消えない



拓海(ボット)「あん!?てめェ、逃げやがんのか!!?」


ブオンオンオオオオオオオオオオオオン!!!


拓海さんの驚いた声が聞こえ、一気にバイクの音が追いかけてきた


拓海(ボット)「待てやこらああああああああああ!!!」


加蓮「ハァ・・・ハァ・・・ま、待たなくても追いつけるでしょうが!!」

268: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:01:39.46 ID:gIT5gsC3O

拓海(ボット)「るっせぇ!!こっちがお前を撥ね飛ばさねえようにしてるからって舐めんてじゃねぇぞ!!」

アイドルとして鍛えたといっても徒競走が早いわけじゃない。

持久力は付いたからマラソンなら出来るかもしれないけど

今やってるのは速さ比べだ、しかもこっちはまだ右足がしびれてる

後ろから迫りくるバイクに轢かれでもしたらおしまい_______












うん? あれ?






極度の緊張と急な運動で

酸素の不足した脳は

アタシにとんでもないことを考えつかせた

ゲーム開始26分経過

北条加蓮VS向井拓海(ボット)

戦闘続行?
~~~~~~~~~~~~~~~

269: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:02:29.10 ID:gIT5gsC3O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
仮想空間内

チャプター
二宮飛鳥(ボット)&八神マキノ(ボット)&橘ありす(ボット)



_ゲーム開始7分経過_




ザザ_ーーザザ・・・ザー...




ボクは右手の薬指だけを少し上に向ける



 ザザー・・・そ・・・あ・・・___だよ...



頭の中に響く、ノイズだらけの音になんとか判別できる音が入ってきた

270: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:04:40.76 ID:gIT5gsC3O

ボクは左手首を15度ほど外側に回し、次は10度内側に回す


角度を小さくしながらこれを繰り返してチューニングを行う、


この能力は微調整が命だ、それ次第で武器にもお荷物にもなりうる





___仮想空間なら警察も早苗さんもいない?・・・・・・ハッ!?閃いた!!___




いまのは愛海さんの声かな?


ボットなのかプレイヤーなのか判断はつかないけど元気そうでなによりだよ

271: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:05:24.96 ID:gIT5gsC3O

広げていた指をたたみ、握りこぶしを作った


気を取り直してさっきまでとは違う方向に手のひらを開く



ザザザザザザザザ...ザザザザザザザザザザザザザザザ



やれやれ、また最初からチューニングしなくては__


???「そこの貴方......すこし時間はあるかしら...?」


おや、どうやら来客のようだ


~~~~~~~~~~~~~~~~

272: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:06:44.25 ID:gIT5gsC3O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

_ゲーム開始6分経過_



......なんということでしょう


私が子供だからでしょうか。


晶葉さんは何を考えて私の能力をこのようなモノにしたのでしょう


戦うのがボットのはずです。私の能力では戦えません

この手のゲームでは私のような小さい体をフォローするような
強力な能力が与えられるのがセオリーでしょう

ゲームバランスがむちゃくちゃです、クソゲーです

273: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:08:30.57 ID:gIT5gsC3O

腕に抱えたタブレットに目を落とす


タブレットの画面は、このままでは私がプレイヤーと遭遇してしまうことを示していた


慌てて近くの路地に身を潜めます


「...........」


気配を殺す、息を止める、あ、息はしてませんでしたね


やがて近づいてきた足音は私に気づくこともなく通り過ぎていきました


「............」


また戦えなかった。また隠れてしまった


逃げるためにしか使えない能力


これでは私は、一体何のために作られたのでしょう___



???「そう...貴方もまた戦闘向きではない能力の持ち主なのね...」



タブレットには何の反応もない

なのに確かに声がした


~~~~~~~~~~~~~

274: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:09:39.54 ID:gIT5gsC3O
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

_ゲーム開始2分経過_


度し難いな...


模擬戦闘と銘打っておいて私に与えられた能力が”これ”とは...


いえ、見ようによっては諜報活動を趣味とする私をとても良く表しているし


論理的に考えれば諜報に使うのが目的でしょう。


ただ、そうだとするならもう少し操作性と自由度がないと...


...まったくもって論理性を欠いているわ


まだいろいろ未知と不確定要素の多い能力だけど、


できることはあるはずよ。スマートに行きましょう


まずは味方を増やすところからね


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

275: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:11:36.07 ID:gIT5gsC3O
~~~~~~~~~~~~~~~~

_ゲーム開始20分経過_



八神マキノ(ボット)「___戻ったわ」


二宮飛鳥(ボット)「やあ、お帰り ”スカウト”は順調かい?」


マキノ(ボット)「二人、声をかけることができたボットはそれだけよ」

マキノ(ボット)「他に四人ほど声をかけようとしたけれど、私が跳んだ時にはもうどこかに移動してしまったみたい」

276: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:12:40.88 ID:gIT5gsC3O

飛鳥(ボット)「”跳ぶ”ね...面白い表現だよ。これで橘さんが残していったメモの場所は全て見たのかな」

マキノ(ボット)「ええ、そうね。橘さんが帰ってきたら彼女の能力をもう一度使ってもらいましょう」


飛鳥(ボット)「橘さんをね...」


マキノ(ボット)「ええ、橘さんをよ...」












橘ありす(ボット)「...ただいま戻りました」

飛鳥(ボット)「おかえり、ありす」

マキノ(ボット)「おかえりなさい、ありすさん」

277: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:13:35.13 ID:gIT5gsC3O


ありす(ボット)「あの...橘って呼んでくださいと言いましたよね?」


飛鳥(ボット)「ボクの気が向いたときは、そう呼ぶのもいいかもしれないね」

マキノ(ボット)「使いどきの問題ね、四文字の『たちばな』より三文字の『ありす』の方が会話において時間短縮になるのは論理的に自明なことよ」


ありす(ボット)「......」

278: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 14:15:05.98 ID:gIT5gsC3O


飛鳥(ボット)「ところで首尾はどうだった?ボクの能力、《十指回路》じゃ、傍受できる声は一人分だけだし」

      「マキノさんの《0と1の蜃気楼》は追跡には向かないからね」

ありす(ボット)「ええ、問題ありませんでした」

飛鳥(ボット)「ふふ、やはり、《ドットガーデン》を持つありすに任せたのは正解だったね」


マキノ(ボット)「(今更だけど度し難いセンスね...)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

281: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 17:28:50.78 ID:gIT5gsC3O
ちょっと間が空きましたが投下





ありす(ボット)「奈緒さんには音葉さん、加蓮さんには拓海さんに向かってもらいました。少なくともこれで二人は分断出来たでしょう」


ありす(ボット)「凛さんは今、晴さんと舞さんが見張っています。」


ありす(ボット)「今のところ凛さんはトライアドの二人からは離れた場所にいますが、だからといって別のアイドルとユニットを組む可能性もありますし、注意ですね」


ありす(ボット)「念のため、このあと私も”ダメ押し”をするために凛さんの所へ向かわせてもらいます」

282: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 17:30:14.79 ID:gIT5gsC3O

飛鳥(ボット)「頼もしいね、ありすが自分の能力にコンプレックスを持っていた頃が懐かしいよ。ボクらの中じゃ一番有用なのにさ」


マキノ(ボット)「貴方こそ自分の能力を卑下してるわよ?」


マキノ(ボット)「ところでありすさん、貴方はどうやってそのダメ押しを実行するつもり?」


ありす(ボット)「この二つのアイテムを使わせてもらいます」


ありすは上着のポケットから四角い箱と丸い紙を取り出した。

箱の方は上質な素材でできているらしく、高級感のある光沢を放っている

それと対になるかのように丸い紙はシワだらけの、和紙のような薄いくて脆い外見だった


一見、妙な組み合わせの何の共通点もない二つ、実際この二つに共通点はない


一つはボットのためのアイテムで、

一つはプレイヤーのためのアイテムなのだ。

283: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 17:31:41.74 ID:gIT5gsC3O

飛鳥(ボット)「なるほど、それを持ち出すのか...だが分かっているかい? もし凛さんにソレが渡るようなことがあればボクたちは一気にピンチ、全滅もありうるんだよ?」


マキノ(ボット)「大げさに言い過ぎよ、論理性を欠いている。しかしそれくらいのリスクがあるのもまた事実ね」




ありす(ボット)「だからこの二つです。私は一人では戦いません」




静寂



マキノ(ボット)「...ええ、わかったわ。あなたを仲間に加えたのは私、論理的でない言葉だけど...信頼させてもらうわ」


飛鳥(ボット)「面白くなってきたね。じゃあ、おさらいしようか。今回のボクらの行動と目的を」


飛鳥がシニカルに笑いながら重要な確認事項の復唱を促す


その両手はよく見ると細かく動いている


まるでラジオのツマミを回したりアンテナの角度を調整するように

284: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 17:38:31.07 ID:kmnNLiBnO


ありす(ボット)「私は凛さんをほかのアイドルから孤立させ、そして『あの場所』から引き離します」





マキノ(ボット)「私は奈緒さんと音葉さんの戦いを監視、加蓮さんとの合流の阻止。私の能力の性質上、干渉するのは難しいけれど」





飛鳥(ボット)「ボクは見ての通り現在進行中で、拓海さんと加蓮さんの戦いを傍受しているから、それを引き続き行わせてもらうよ」

285: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 17:40:53.51 ID:kmnNLiBnO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

トライアドプリムス

三和音の第一級


渋谷凛、北条加蓮、神谷奈緒

この三人が揃ったとき何が起こるのか

ボットのボクにはわからない。

ボットのボクがオリジナルから少しだけ引き継いだ記憶

ボットの性格や能力を決める一因として晶葉さんが組み込んだもの

その中のトライアドプリムスの活躍を見る限りこのユニットは無視してはいけないのは自明だろう


マキノ(ボット)「では、行ってくるわ...」


そう言うとマキノさんは何の予備動作もなくその場から消えた


素早く動いた、というわけじゃない。

これがボクが命名した彼女の能力《0と1の蜃気楼》

286: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 17:42:30.11 ID:kmnNLiBnO

簡単に言うとこの仮想空間内で、彼女が設定した地点にワープする力

ただし制約が多いのが難点だとマキノさんは零してたっけ

確か、ワープした地点からは動けないし、

モノにも触れない、次のワープのためにはワープ前の地点

(つまり今のボクらの拠点)に戻らなきゃいけないとか



だからまるで幽体離脱した気分だとか言ってたね

どれだけ遠くに跳んで行っても目が覚めると元の場所にいる、と



ありす(ボット)「それでは私も失礼します」


ありすは歩いて扉から出て行った。一人だとプレイヤーにあったとき彼女の力ではひとたまりもないだろう


だが彼女の能力《ドットガーデン》(もちろんボクが名付けた)にかかれば

ありすはタブレットを通して自分周囲数百メートルに存在するボットとプレイヤーの位置を知ることができる

だからプレイヤーとの接触を未然に防ぐことも、逆に尾行することもできるし

どこかに潜んでいるボットの位置を特定し接触、そして仲間に誘うこともできる。


まあ実際にボットのいるところまで跳ぶのはマキノさんの役目だったけど

287: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 17:43:34.97 ID:kmnNLiBnO


ボクは部屋に一人になった。

だが静寂じゃあ、ない。




ザザザ......あぁ...!...なんだ...!!・・ザザ




ボクの能力《十指回路》端的に言ってこの世界で一、二を争う地味な能力かもしれない



両腕と体の一部がラジオの部品になっている。それだけの能力



確かにボクのオリジナルの趣味はラジオを聴くことだったけど

能力にこう反映するとは予想外だったよ

晶葉さんなりのジョークだと思っておいた方が良いのかな?


まぁとにかくボクの腕や指が仮想空間を飛び交う音声情報をキャッチして


ボクはそれを聴くことができる、ただ情報が錯綜しているからチューニングが大変かな


はっきり言って盗聴するだけだ

288: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/08(土) 17:45:30.16 ID:kmnNLiBnO

マキノさんもありすもボクも能力を用いた戦闘力はゼロに等しい


こういうのを戦力外っていうんだろ?


だけどボクらの力は戦力を集めることができた。

作戦行動を円滑に進められた。


作戦、ね。


飛鳥(ボット)「トライアドプリムス......君たちはこの仮想の中で三人が揃わないままに力を発揮できるのかな?」



ゲーム開始21分経過

『トライアドプリムス分断作戦』進行中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

数時間後に「チャプター渋谷凛」投下します

290: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:21:00.32 ID:o1670e+1O
~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛

私の乗ったエレベータがビルの最上階に辿り着いた

屋上直通じゃなかったけど、あとで見てみるのもいいかもしれない


凛「わあ......」


廊下のガラス越し、その遥か下にミニチュアサイズの街が広がっていた

フロアはオフィスの事務を行うところらしく、

廊下の反対側にはたくさんの広い部屋が並んでいて、そのどの部屋にも事務机が目一杯詰め込まれていた

さぞかし大企業なのだろう、あ、いや仮想空間だけどさ

291: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:21:52.22 ID:o1670e+1O

凛「こんな真面目そうなとこじゃ武器なんてないかも...」


いかにも表沙汰にはできないようなことをやってそうなスジ者の消費者金融事務所みたいな建物ならドスとかチャカも出てきたりして


凛「いやだから仮想だってばここ・・・」

私は廊下の突き当たり、「第1会議室」と書かれた部屋の鉄製の重たい扉を押し開けた

鍵がかかってなかったので思ったよりも軽い力で開けられた気もする。


まず目に入るのは円卓

今まで見たのより広い部屋の真ん中にでんと居座っている。

小型車ならその上に駐車してしまえそうなサイズはむしろ非現実的で、

こんな大きな机で会議を行うなんて・・・会議に一体何人の人間を呼ぶつもりなんだろう


凛「・・・・・・・・・・・・」

凛「・・・・・・・・・よし」


私はその円卓に添えつけられた高級感あふれる椅子に足をかけると円卓の上に飛び乗った

292: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:23:41.00 ID:o1670e+1O

コツ、コツ、コツ、コツ


硬い素材で出来ている円卓は私の足元でよく響く足音を立てている


天井がさっきより私の頭に近づいている


凛「・・・・・・・・・・・・」

部屋の中央を占める巨大な机の、その中心に立って周りを見渡す

机の上に乗ることなんてまぁ無い、

掃除中に蛍光灯を磨くとき脚立がわりにするくらいだろう


私が立っている机の周囲を黒革の椅子が取り囲んでいる


照明はつけていないけど、この会議室は窓が全面ガラス張りなので外からの日光で十分明るい


凛「・・・なんの映画だったっけ・・・大企業の会議室に殴り込んで、こうやって会議机の上に仁王立ちしてたよね」


残念ながら今の私を椅子から見上げるギャラリーはいないけど、というかスカートで仁王立ちはちょっと・・・

293: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:41:12.61 ID:cpv+o4lCO

凛「ふーん・・・」


ちょっとあまり日常ではとらない非常識な行動に舞い上がった気がするけど

これでこの広い部屋全体を俯瞰的に観察できた。

会議に使うスクリーンとプロジェクター、


部屋の隅にはウォーターサーバーと観葉植物


あと壁際に付いてるのは照明のスイッチかな


部屋のサイズは規格外とはいえ、作りはシンプルだったみたいで、めぼしいものは何もなかった


奈緒に借りたゲームだと建物の最上階一番奥の部屋には強い武器があったんだけどなぁ


凛「しかたない、事務机のほうを一つ一つ虱潰しに調べていこうかな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

294: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:42:57.30 ID:cpv+o4lCO
~~~~~~~~~~

結城晴(ボット)「おい、凛姉さんあっち行ったぞ、早く追いかけないと」


福山舞(ボット)「ちょ、ちょっと待ってくださいぃ・・・」


晴(ボット)「報告に行ったありすが戻ってくるまで見張っとくのが仕事だろ、急げ」


舞(ボット)「で、でもこの状態、重いよー・・・」


晴(ボット)「仕方ないだろ、下手に近づくと凛姉さんに匂いでバレそうだし」


舞(ボット)「に、匂い?」


~~~~~~~~~~~~~~~

295: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:44:17.79 ID:cpv+o4lCO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

会議室のすぐ隣の部屋はやはり事務机の村だった。

机と机の間の幅が人一人通れるかなってくらい

この窮屈さは学校の教室を思いだすかな


とにかく入口近くの机から物色を開始する


凛「・・・産業スパイか会社空き巣にでもなった気分」


机の上はパソコンと何本かのペンが置かれているだけで、書類らしきものは無い

296: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:46:43.03 ID:cpv+o4lCO

引き出しはどれも鍵がかかってなかったけど何も入ってないものばかりだった。

ひとつの机を調べたらすぐ隣の全く同じデザインの机をあさり始める


すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、隣、隣、隣隣隣


全く同じデザイン、全く同じデザイン、全く同じデザイン

なんの変化もないまま同じ作業をし続けていると自分が機械になったような気がする


凛「(機械になった、といえばボットたちも機械なんだよね)」

自分はまだ自分ソックリのボットの他には会ってない、というより戦闘を避けてるため会わないようにしていた



ボットたちはどこから来たんだろう、そして倒されたボットたちは何処へ行くんだろう


バタン!!


凛「・・・ふう」


引き出しを強く押し込むと意外と大きな音がした

297: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:48:09.80 ID:cpv+o4lCO

ただでさえなれない場所にいるんだ、こんなことばかりしていたら気が滅入ってしまう


凛は引き出しの開け閉めばかりしていた腕を気分転換がてらブンブンと回してストレッチする

仮想空間でのストレッチに意味があるのかはよくわからないが、少しすっきりした


凛「んーっ・・・ぷはっ、なんにもないや数撃ちゃ当たると思ったのに」


このまま隣の部屋も調べていったとして、そこでも何もなければ全ての階を調べなければいけないのだろうか



24階建てのビルの中で使われている全ての椅子と机の数を考えて答えなさい



まるでフェルミ推定の問題だ。

凛「先は長いね・・・それとも次のアプローチに行くべきかな」

ふと目をやると街の風景が目に入る。

この事務室も壁がそのままガラス張りになっているので非常に見晴らしがいい

ここは24階だから高所恐怖症の人からしたら最悪の職場だろうけどね

298: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:48:56.49 ID:cpv+o4lCO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
舞(ボット)「こ、ここ怖いよぉ・・・」


晴(ボット)「下さえ見なきゃなんとかなんだろ、我慢しろ」


舞(ボット)「で、でも・・・」


晴(ボット)「いいから見張れ、もし凛姉さんが『あの場所』に気づいたら、ぜってーヤバいことになる」


舞(ボット)「そ、そうならないようにするんだよね・・・?だったらもう行ってもいいんじゃ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

300: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:50:11.84 ID:cpv+o4lCO
~~~~~~~~~~~~~~~~~

仮想と現実の違いを見失いそうになる。

なにせここまで作りこまれた摩天楼を見せられてるんだから

窓の外は現実の風景となんら変わりない都会、ただ見慣れないデザインの建物もあるけど


凛「・・・奈緒や加蓮とも見たかったな、まだ昼だけど」

そういえばこの世界に夜はあるのだろうか。


ガラスの壁に手をつく、視界いっぱいの青い空と灰色のビル群


視線を遠くにやるにつれてビルの高さがだんだん低くなって、小さな建物が密集している部分に目が止まった

301: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:51:48.64 ID:cpv+o4lCO

凛「でもこんなに広いのにアイドルとそのボットしかいないんだよね、アイドルがいるならプロデューサーがいてもいいと思うんだけど」


ガラスの向こうへ目を凝らす、ほかのアイドルが見えないだろうか___






バン!!!!!!!!!!!!








凛「!!!???」





私の視界は妨げられた。



”ガラスの向こう”から私の眼前に飛んできたサッカーボールによって


~~~~~~~~~~~~~~

302: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:53:02.77 ID:cpv+o4lCO
~~~~~~~~~~~~~~

そのボールは、勿論ガラスを突き破ってこっちに来ることはなく、

ガラスの壁にはじかれると下に落ちていった


凛「な、なに!!?」


私は無傷だったけど反射的にがラスから離れていた。


しかしあまりの不可解な現象にガラスに近寄ってしまう


どんな脚力を持った人間ならビルの24階のガラスにサッカーボールをぶつけられるの?



凛「・・・・・・・・・」


壁ガラスにすり足で近寄る、充分近づいたら頭だけを突き出して下を覗き込んだ


この遥か下、地上にいる誰かを確認するために

303: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:54:32.61 ID:cpv+o4lCO



 凛姉さん、うーっす





晴(ボット)「・・・・・・」





ガラスを隔てているので聞こえなかったけど、晴のボットは多分そんなことを言っていたんだと思う



その近くにいるのは舞のボットだ。二人共よく似合う普段着だったが、あの赤いバッジだけが浮いていた




私がいるのが地上24階





晴と舞は地上23階にいた。





ビルの壁に突き刺した一輪車を足場にして



地面は二人の足元の遥か下

304: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:55:27.66 ID:cpv+o4lCO


晴(ボット)「・・・・・・」



晴がまた何か言ってる、でもガラスで聞こえない



そして不安定な足場の上で、

それでも晴は見事、手に持ったサッカーボールをシュートした



バリィィイイイン!!!



丈夫なはずのガラスが、小さい子供が蹴ったボールの前に砕け散る


ああ、


だからここは仮想空間なんだってば


現実じゃあないし、現実的でもないことが当たり前な



ゲーム開始27分経過

渋谷凛VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)

開始

~~~~~~~~~~

305: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:56:31.75 ID:cpv+o4lCO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

走る走る

急ぐ急ぐ

タブレットのチェックは忘れずに

橘ありすは走っていた。

思った以上に早めの行動が決定してしまったのだ


ありす(ボット)「・・・こんなに早く・・・!!」


タブレットにはいくつもの丸が表示されている

これが地図上でアイドルやボットの位置をモニターしているのだ。

まるでGPSを搭載したマップのように一人一人の動きをつぶさにリアルタイムでありすに教えてくれる


その中で、いま二つの青い丸と一つの赤い丸が重なるように映されている


二つの青丸は晴と舞のボット、赤丸は間違いなく渋谷凛だろう


おそらく戦闘が始まっている。予定より早い

306: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:57:27.58 ID:cpv+o4lCO

ありすたちの最初の計画は丸腰でビルの最上階に向かった彼女を追い詰め、倒すことだった。



ただ重要な問題があった。


『あの場所』のことである


八神マキノは自身の能力を用いて凛の踏み込んだビルの屋上にワープし、


そこから見える風景を調べ、そして確信を得た。



このビルからは『あの場所』が丸見えなのだ



『あの場所』にもしもボット以外のアイドルが入ることがあれば...



こうして対凛の当初の作戦は成功の利益よりも失敗のリスクが格段に高まることとなった


これが一度ありすが拠点に戻った理由である。

307: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 00:58:50.89 ID:cpv+o4lCO


倒せなくてもいいから凛の気を引くことができれば...


凛が『あの場所』を見落しさえすれば、それで良し、


それだけで、ボットはまた一つ勝利への布石を置くことができる



??「・・・ありすちゃーん、大丈夫?」



どこからか声がする、ありすはそれが味方からの声だと知っている。


なにせ他ならぬ自分が仲間に誘ったのだから。


ありすは走る

だが、その前には時計を持った兎はいない

彼女は誰かについていくのではなく自分の意志で前に進んでいた





ゲーム開始30分経過

渋谷凛VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)

継続中

橘ありす(ボット)&?? 参戦準備中


~~~~~~~~~~~~~~

308: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:00:04.04 ID:cpv+o4lCO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
渋谷凛


綺麗に並んだ机の列に飛び込む


その向こう側に転がり込むと同時に事務机に備え付けられたパソコンが弾き飛ばされたのが見えた


晴(ボット)「凛ねーさーん、サッカーしよーぜー」


凛「手加減してくれるならいいけ、どっ!!」


その場から助走抜きで駆けだす、近くの椅子を自分の盾みたいにするのも忘れない


その盾も爆発したみたいに跳ね上げられた。


晴(ボット)「えー、オレこれでも手加減してるんだけどな」



ギュルン!!



そんな音がしたので走りながら背後に目をやる。


サッカーボールはまるで透明人間が蹴り飛ばしたように晴の足元に戻っていった


それがさも当然のように晴は足元にボールを確保する

309: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:01:26.04 ID:cpv+o4lCO

凛と晴の距離は3メートルと少し


晴(ボット)「能力だかなんだか知らねーけど、オレが蹴るとボールが戻ってくるんだよ」

 「これじゃ一人でPKも出来やしねぇ、だから凛姉さんが蹴り返してくれよ」


 ドゴンッッッッ!!!


晴の足がボールを蹴り飛ばす、子供らしい小さい足からは想像もつかない轟音をあげ、


唸りを上げて凛に来襲した


凛「(蹴ったボールが戻る?多分それだけじゃない、それだけならこのシュートの威力は絶対におかしい___)」

310: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:03:24.77 ID:cpv+o4lCO

体を回転させる、ボールは凛の脇腹の横を通過していった


凛「今っ!!」


晴へ向けて駆け出す


凛がよけたことでボールはずっと後ろの壁まで飛んでいく



晴と凛が机の列にはさまれた一本道で一直線になっていたからだ







凛の計画通りに

311: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:06:56.29 ID:cpv+o4lCO

これで凛がボールを避けることができればボールには障害物がない、

そのまま壁にぶつかるまで止まらない


凛は見抜いていた。


晴のボールが戻るのはボールの動きが完全に停止してからだと


パソコンの画面にめり込み、椅子を破壊し、そうして運動エネルギーを失った後にしか能力発動しない


これは当て推量だ。もしかしたら違うのかもしれない


だが現に今、晴と凛の間にあの凶弾と化したボールはない!!!!



ジャリッ!!


事務机の一つ、割れたパソコン、その破片を手に取る

材質はプラスチックだが、角は充分尖っている


彼我の距離、2メートル

312: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:08:00.80 ID:cpv+o4lCO


晴(ボット)「!!」


舞(ボット)「あわわ、は、晴ちゃん!?逃げて!」


離れた位置で見ていた舞が慌てたように叫ぶ、


晴の武器のボールはこの部屋の反対側、ずっと向こうの壁にぶつかるまで戻ってこない




凛「ふっ!!!」




相手はボット、これはゲーム、傷つけられても傷が残ったりはしない

一度やると決めた凛に躊躇はない、ただ覚悟があるのみ





メシャ



そして


凛の背中を戻ってきたサッカーボールが撃ち抜いた

313: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:09:01.74 ID:cpv+o4lCO

敗因は実に簡単


彼女は「ボールが晴の足元に戻る」と「異常なシュートの威力」を別々の能力と考えていた


だから「戻る」方だけにしか対処を講じず、「威力」は避ければなんとかなると思ってしまったのだ


だが晶葉が明言しなかったことだが能力はボット一人につき一つしかない


晴の能力ももちろん一つ






この二つの現象は『たった一つの能力』によって起こされている

___________

 渋谷凛 93/100


___________

___________

 結城晴+ 100/100


___________

___________

 福山舞+ 100/100



___________

314: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:10:45.12 ID:cpv+o4lCO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

凛「がっ、は・・・!!??」


肺を後ろから強く押され、呼吸が止まる


凛は地面に倒れ伏した


晴(ボット)「大丈夫か凛姉さん?なんでボールじゃなくてオレの方に来るんだよ、サッカーだってば」


晴(ボット)「あーもう、オレの能力、”設定”の変え方がわかんねーんだよなー・・・」


凛「(・・・・・・・?)」



晴が凛から離れていく、そしてまた3mほど離れた位置で足を止める


舞(ボット)「晴ちゃん!今なら凛お姉ちゃん倒せるんじゃないですか!?」


晴(ボット)「あ?確か、ありすは倒すのは二の次って言ってたんじゃなかったっけ?」


晴(ボット)「それにサッカーでラフプレーはヤだぜ?そういうのは他の姉ちゃんに任せる」

315: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:11:46.56 ID:cpv+o4lCO
よくわからないが晴から追撃の気配がない、というかこれは


凛「ハァッ、 ハァッ...私が、立つのを、待ってるんだね......」


体の芯にしびれが走っている、深呼吸ができない


凛「フェア、プレーは、・・・私も好きだ、よ」


それでも凛は立つ




凛「さぁ晴、...始めようか、二人サッカー」


次はその能力の謎、解いてみせる











ありす(ボット)「そこまでです、凛さん」


ゲーム開始33分経過

渋谷凛

VS

結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 


開始


~~~~~~~~~~~~~~~~~

316: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:12:47.45 ID:cpv+o4lCO
~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
一ノ瀬志希



晶葉ちゃんがトイレに行ってる隙に適当にキーボードを叩いてたら

仮想現実内の音声再生がオンになっちゃったよ、

志希にゃん直し方分かんなーい

にゃはっ♪

みんなの声が一斉にスピーカーから流れ出すからよく聞き取れないや、

それにどうやら録音されたメディアも同時再生されてるから

話の時間軸もバラバラだし収拾つかにゃーい


~~~~~~~~~~~~~~~~

317: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 01:14:39.90 ID:cpv+o4lCO
~~~~~~~~~~~~~


ありす(ボット)「凛さん!!??こ、ここ何階だと思ってるんですかっ!!???」

__


加蓮「____言ったよね?アンタ確かに言ったよね?」

  _______



奈緒「・・・・・・・・・天使?」


_____


音葉(ボット)「_________なんて、美しい____」


   _______


周子(ボット)「もしかして知らないの?...ユニットを組むことのデメリット」


____________


杏「違うから!!違うから!!もうホント違うから!!こっちがボット!!あっちが本物だから!!」


    ____________




晶葉「志希・・・・・・何勝手に触ってるんだ?」


ゲーム開始40分経過

一ノ瀬志希VS池袋晶葉

お説教 開始
~~~~~~~~~~~~~~

326: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 18:17:16.41 ID:x1p/DvuOO


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
星輝子


えっと...

何から話したらいいかな...フヒ


目が覚めたら、で、電車で寝てた...


あ、そこは...うめちゃんも一緒なんだね、そ、そうでした...フヒヒ


そのあと、親友から...よくわからないこと、いっぱい説明されて


わ、、私の隣にいた、さ、紗南ちゃんと裕子さんが、はしゃいでて



げ、ゲーム?とかなんとか...紗南ちゃんに詳しく解説してもらったんだけど...


そういえば、さっちゃんは...電車の中でま、まゆさんと美穂さんと一緒だったんだって...


うめちゃんは?......ほ、ほほう 亜季さんと



もう一人は......へ、へえ...な、なるほど



こ、これでぷ、ぷれいや??は...わ、私たちを含めて九人まで分かったんだね


フヒヒヒ...

327: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 18:22:06.86 ID:x1p/DvuOO

そのあとは...いつの間にかこの世界にいて、


なんとかボットは倒したんだけど...


わ、私はしばらく...机の下にいたんだ


...机の隅のほうのキノコを...採ったら、変な音がしたんだよね、フヒ


え、さっちゃん、なに?...ん、能力?


で、でも慌てて机から這い出して、そのあと外...歩いてたら、さっちゃんと会って


さっちゃんに連れらて...あてずっぽに進んで


いまに、至ります、ハイ...


フヒヒ

~~~~~~~~~~~~~~~~~

328: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 18:23:58.08 ID:x1p/DvuOO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
屋敷


小梅「さ、さっちゃん、しょーちゃん...あ、会いたかった...!」


星輝子「こ、こっちも...だぜ、...フヒヒう、ういやつめ...」


輿水幸子「ふふーん!もっとカワイイボクとの再会を喜んでもいいんですよ?」


三人は広い屋敷の居間で、広い仮想世界での再会の喜びを分かち合っていた


幸子「しかし、小梅さんも無用心ですね!玄関の鍵を開けておくなんて!カワイイボクと輝子さんだから良かったものの、ボットの人たちが来たらどうするんですか!」


それを言うなら模擬戦闘中でありながら輝子を連れてあちこちを丸腰で歩き回っていた幸子も相当無用心なのだが

しかし実際、彼女たちはボットにもあっていない

幸子というだけあって幸運だったのかとも思えるが、事情を知る者はそうは思わない


この段階で既にボットたちは蠢いていた


牙を研いでいた


仲間を集め、拠点を作り、...布石を置く準備を続けていた


そういうわけで奇跡的にできた間隙を縫って二人はここにいる

329: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 18:25:09.83 ID:x1p/DvuOO

輝子「と、ところで、この家、屋敷?大きいけど...なにかなかったの?」


小梅「そ、そういうのは...まだ調べてない...」

声の出処を探ったりはしたけど

幸子「なるほど!では手始めにこの屋敷から調べ尽くしちゃいましょう!」

幸子「それと!あとで是非とも小梅さんにお聞かせしたい話もありますので!」

小梅「は、話?」

輝子「うん、私と幸子から.......は、話」

小梅「...?」

幸子「さあさあ!まずは手分けして屋敷探検ですよ!」


ゲーム開始7分時点

星輝子(ボット)消失


ゲーム開始13分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

330: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 18:26:36.25 ID:x1p/DvuOO

自分で言うのも悲しいが細っこい頼りない手のひらで銃を包む

もっと重いものかと思ったら意外と軽かった。ゲームの仕様だろうか

輝子「や、やったぜ...」

今、小梅は敷地内にあった蔵?のような場所を調べ、幸子は屋敷内を自分と逆方向に調べ進んでいるはずだ

二人も既になにか見つけているかもしれない

さて、この調子でもっと見つけてやろう


自分はもうぼっちじゃない、みんなと一緒に何だってやってやろう


輝子「...フヒヒ♪ボッチジャナイコー...ホシショウコー...」


拳銃ひとつだけの発見だったが、

これが友達の助けになると思えば嬉しくもなる

星輝子はそういう少女だった


輝子「フヒヒ...ヒャッハァ!!ドンドンいくぜぇ!!」


拳銃を振り回すようにシャウトしながら次の隣の部屋に荒々しく突入する


そして




輝子「ッハァハハ?、ハアアアアアアアアア!??!?!??」





白坂小梅が死んでいた


~~~~~~~~~~~~~~~~

331: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 18:30:14.60 ID:x1p/DvuOO
ミス
330と329の間にこれいれてください


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
輝子は屋敷内を探索していた。

屋敷の奥に続く細い通路をぺたぺたと裸足で歩いていく

彼女といい幸子といいコレが仮想空間であるにもかかわらず未だに玄関で靴を脱ぐ習慣が残っていた

襖を開ける中に入る、タンスを漁る、クローゼットを開ける、押入れも開ける
ついでに急須の蓋も開ける

しかし大抵はからっぽだったし急須にいたっては茶葉すらなかった

輝子「フヒゥ...」

まぁ部屋はやたらあるのだ、次の部屋に武器があるかもしれないし

輝子はのんびりと次の襖を開ける、ようやく変化らしきものが訪れた

輝子「あ、これ...?」

輝子の目の前に広がっているのはこじんまりとした和室、
畳と障子がある部屋、といえばほとんど特徴が伝わってしまうシンプルな部屋だ

ただし畳のど真ん中に黒色の銃身をテラテラと光らせた拳銃が落ちてなければの話だが

輝子「まさか...ピストルとは...」

333: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:00:57.65 ID:x1p/DvuOO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~



輝子「フヒっ...フヒゥ...えぐっ、ぐすっ」


幸子「よしよし...とってもビックリしたんですよね?もう大丈夫ですからね?カワイイボクがいますからね?」


小梅「あう...ご、ごめん、ね?...い、言い忘れてて...はうぅ」


ところ変わって居間に戻った三人


景気づいたところをド肝を抜かれ、涙ぐんだ輝子を幸子が慰め、小梅が謝っている


意気揚々としていた輝子を驚かせたもの


それはとある人物だった

いや

人物だったもの、だった

390: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 02:45:51.53 ID:O5am0rASO
幸子「そもそもどうして、アレは消えてないんです?」

小梅「え?消えるもの、なの?そ、そういうもの、だと思って,,,ほ、放置してた...」

それは白坂小梅の”ボット”

彼女のボットは倒されても未だこの世界にとどまり続けていた

どうしようもなかったので小梅はそれを放置していたのだが

その死体を輝子が見しまった、というのが事の顛末だ

さっきまで一緒にいた人間が死体になって転がっていたらそれは驚く

それに小梅以外の認識としてはボットは倒れたら霧のように消える、というものだったのだ普通本物が死んでいると思うだろう

幸子「ふむ...消えない死体、ですか,,,現実なら消えた方が驚きですが、仮想では逆、まるであべこべですね」

334: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:02:23.80 ID:x1p/DvuOO

小梅「よ、よくわからない...けど、ご、ごめんね?しょーちゃん...」


輝子「...うん、ぐすっ...うめちゃんが...い、いなくなっちゃうかと思った...」


幸子「何を言ってるんですか輝子さん!カワイイボクがいるのにそんな事させるわけないでしょう!!」


幸子「それより輝子さん、貴方には小梅さんに教えなければならないことがあるでしょう?」


場をまとめ、幸子が話を次に進めた

小梅「?さ、さっきも言ってたけど...なに?」



幸子「なんと輝子さんは!すでに能力を身につけているのです!!」



輝子「ふ、フヒ、ど、ども」

335: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:11:30.06 ID:x1p/DvuOO

照れたように輝子が頭をかく、

ややサイズの大きく、着崩されたTシャツの中に無造作に手を入れる

そのあと中に入れていたらしきものを取り出した

それは手の中に収まるサイズのキノコ、

小梅にはその種類まではわからないがたしか事務所で輝子が飼育していたものの中に似たようなものがあった気がする


輝子「これ、触ったら、なんか能力、使えるようになった、よ?」


小梅「そ、そうなんだ...すごい...!」

幸子「輝子さんはなかなか幸先のいいスタートでしょう?」


小梅「ど、どんなことができるの?」


輝子「フヒ、こんなこと...」

336: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:13:05.22 ID:x1p/DvuOO

輝子が手のひらを叩く


ぺちっ!


広い部屋に小さな音が鳴る


ぽとっ


叩かれた手のひらが開かれるとそこから何かが落っこちた


小梅「ち、ちっちゃい、キノコ...?」


幸子「どうです?僕には及びませんがカワイイでしょう?」


三人が見つめる先、そこに輝子の手のひらから発生したのは小さいキノコ

単三電池くらいのサイズ。

もうひとつの特徴といえばキノコでありながら根らしきものが見当たらないこと

そして


ミニキノコ「?」


チョコチョコチョコ...


小梅「!?」

337: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:14:14.89 ID:x1p/DvuOO

ミニキノコ「!」


チョコン


ミニキノコ「fff」

その小さなキノコは小さな足のようなものを生やすといきなり走り始めた

そのあと部屋の隅に行くと満足したようにそこに座り込んでしまう


小梅「な、なにこれ?」

輝子「あ、あるくキノコ」

幸子「カワイイでしょう!」

輝子「じ、自分でジ...ジメジメしたところを探して移動する、よ?」

小梅「か、かわいい、ね...!」


幸子「まぁ、使い道はあるのかどうか微妙ですけどね」


輝子「フヒッ!?」


ぺちぺちっ!


ミニキノコ2「?」

ミニキノコ3「?」


幸子「お、怒らないでくださいよ!?本気で言いたわけじゃありませんって!」

338: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:19:45.65 ID:x1p/DvuOO
そして新たに現れた小さなきのこ人形が部屋の隅に行き、

根が生えたようにじっとし始めたのを確認すると幸子は小梅に向き合った

幸子「で、ものは相談なんですけど小梅さん、これからの予定などありますか?」

小梅「な、ない...」

輝子「だったら、うめちゃんも、ついてこない?ほ、他に仲間、探してたんだ」

小梅「ど、どこに?」

幸子「そりゃあもちろん、輝子さんが能力発動のキーアイテムを手に入れた場所ですよ!!」

339: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:21:06.56 ID:x1p/DvuOO
幸子「おそらくなにか収穫があるはずですからね!!」


小梅「そ、そうなの?で、でも...もしかしたら、しょーちゃんの分しかないかも...」



柳の下にいつも泥鰌はいない


たまたま輝子にとって有用なアイテムがあったからといって、

次に行った時にも良いアイテムが手に入るわけではない

むしろこの広い街の一箇所にアイテムが密集している方が不自然だろう


幸子「確かにその可能性もあります。ですが...」

小梅「...?」

輝子「フヒヒ...」

340: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:23:07.06 ID:x1p/DvuOO

幸子は小梅に耳打ちする、

別に他に聞いている者は輝子しかいない上、

そもそもこの情報の出処は輝子なのでそんなにこっそり話す必要はないのだが

内緒話はすぐに済んだ、幸子が小梅の耳元から離れる

幸子「...と、いうわけです」

小梅「...!ほ、ほんとう...!?」

輝子「フヒヒ、ほんと、だよ」

小梅「わ、私も、行く...!」


その情報が小梅の興味を引いたらしい

小梅は乗り気になった


幸子「ええ、それでは全員揃って『あの場所』に出発しましょう!」


幸子「ボクたちは今から一蓮托生のユニットです!!!」

341: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:24:27.42 ID:x1p/DvuOO

このあと紆余曲折の末、

拳銃以外の武器も見繕うことができた三人は屋敷を離れた

幸運にも早いうちに仲間を見つけることに成功した三人

その表情は誰もが明るいものだった


ゲーム開始22分経過

星輝子 輿水幸子 白坂小梅

ユニット結成


______________

 星輝子+ 300/300


______________

______________

 輿水幸子  300/300


______________
______________

 白坂小梅  300/300


______________

342: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 19:29:38.55 ID:x1p/DvuOO











この数分の後、


巨大な暴力が小さな三人を蹂躙する

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



数時間後に続き投下します

345: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 20:31:29.63 ID:x1p/DvuOO
~~~~~~~~~~~~~~~~~
高層ビル24階


結城晴のボットとしての能力

子供の足ではありえない威力のシュート

そして蹴り飛ばしたボールが足元に戻る


晶葉は晴に与えた能力を『サッカーボールの最終到達距離を設定することができる能力』
と定義している

346: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 20:32:34.38 ID:x1p/DvuOO

例えば晴のシュートによりボールが20メートル先まで飛んでいくとする

ここで晴が能力により到達距離を10メートル、と設定するとボールは同じ力で蹴ろうと10メートルで止まる

例え100メートル先まで飛ぶ力で蹴っても10メートルでピタリと止まる

しかし晴の能力の真髄は
その余った飛距離をボールの速度、威力にあてがえるところにある

本来なら20メートル飛ぶはずの威力を10メートルで留める

その代わり残りの10メートルの分、威力が上乗せされる

現実のサッカーではありえないテクニックである。

強い威力であればあるほどボールが遠くまで届くのがサッカーの現実だ

だが仮想空間内の晴にかかれば距離が短く、近いほどシュートは強さを凝縮される

飛距離100メートル分の威力を30メートルに 

30メートル分の威力を20メートルに 

20メートル分の威力を10メートルに 

さて、 

もしここで晴がボールの到達飛距離の設定値を 

”限りなくゼロ” 

にしたとき何が起こるのか 

晶葉もそのケースについてはシュミレーションを欠かしていた

347: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 20:35:01.37 ID:x1p/DvuOO

20メートルか30メートルか、晴の脚力がどの程度かはしらないが

そのシュートの威力が0メートルにどんどん圧縮されていくとき何が起こるのか


答え、

能力の飛距離制御を超えてボールが飛んでいくが最終的に0メートル近くの地点に戻る


それは例えるなら短いゴム紐で手首に結びつけられた野球ボールを強く投げたとき

ゴム紐がその限界ギリギリまで引き伸ばされたあと、一気にボールを引き戻す動きに似ている


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

349: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 20:35:49.48 ID:x1p/DvuOO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

晴(ボット)「・・・・・・・・・」



晴(ボット)「・・・・・・お、来たか、ありす」


舞(ボット)「あ!ありすちゃん!」


凛「・・・・・・・・・なんなの」


ありす(ボット)「・・・晴さん、舞さん、・・・お疲れ様です」


部屋の反対側、凛から離れた場所、部屋の入り口、そこにありすが立っている


胸元にはボットであることをあらわすバッジ、手にはありすとセットでよく見かけたタブレット


どれだけ急いできたのか、息を切らせているようにも見える、ボットのはずなのに

350: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 20:36:39.00 ID:x1p/DvuOO


凛「(どうしてこんなにたくさんのボットが・・・尾行されてた?)」



割れたガラスのそばには晴と舞、広い部屋の唯一の出入り口にはありす


凛の包囲網が完成していた


凛「・・・ふうん、三対一なら倒せると思ってるんだ。舐められたもんだね」


晴(ボット)「・・・・・・あ?」


舞(ボット)「・・・・・・うー...」


ありす(ボット)「まさか、そんなわけ無いでしょう」

351: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 20:38:07.28 ID:x1p/DvuOO

相手が子供だからと甘く見ないのは凛のアイドルとしての姿勢であるが、

その姿勢はこの空間でも遺憾なく表出している

ありすのほうもそんな凛に対し、まるで不遜な態度を崩さない


ありす(ボット)「(凛さんはこっちを見ている・・・『あの場所』に気づいた様子はありませんね)」

ありす(ボット)「(あとは外の景色を見させないように誘導しながらこの建物の外に出す)」

上着の中に意識を向ける、

四角い箱と丸い紙がちゃんとあることを確かめる

まずは箱から使う


戦闘力ゼロのボット

ありすの戦いが始まる
~~~~~~~~~

353: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 20:45:31.66 ID:x1p/DvuOO
~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛


私が取り急ぎ対処しなくちゃいけないのは晴のボール攻撃

予想とは違ったけどなにか種があるはず。

でも私には武器がない、さっきの破片もどこかに落とした


舞は不安そうにこっちを見ているだけ、なぜか一輪車に跨ったままその場に立っている、すごいバランス神経だ



ありす(ボット)「私たちは」



ありすが口を開く、何かの覚悟を決めたような表情だ





ありす(ボット)「今から全力で逃げます」

354: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 21:08:34.47 ID:x1p/DvuOO


凛「?・・・私は今丸腰だから、そっちからいなくなってくれるなら歓迎だよ」


何を言うかと思ったら、わざわざ現れての逃走宣言

その意図が読めない


凛「もしかして、舞と晴をかばう気?・・・私に倒されたりしないように」


ありす(ボット)「凛さんはプレイヤーで私たちはボット。戦わないという選択肢はないはずですが」

凛「それは最終目標かな、でも私はまだ武器を調達中だよ?それでも来ないつもり?」

多分こっちが丸腰なことはバレている。

なのにこの発言、ますます読めない

391: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 02:49:13.19 ID:O5am0rASO
ありす(ボット)「追いかけても来ないつもりですか」


凛「・・・その言葉を聞けば、ついていくこと自体が罠だってくらいは分かるよ」


ありすは確かめるように一言ずつ話していく


ありす(ボット)「そうですか」


ありす(ボット)「ではそう出来ないようにしましょう」


ありすは懐から黒い箱を取り出した。


ちょっとだけ高級感のある光沢が特徴的な____




・・・・・・う、そ・・・なんであるの・・・?

355: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 21:10:29.37 ID:x1p/DvuOO


ありす(ボット)「これが何か分かりますか?」

ありすが箱の蓋を開ける

カコンッ

と小気味いい音を立てて箱は開いた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「___お疲れ様!お前たちのおかげでイベントは大成功だったぞ」

「俺から三人にお祝いだ。まず奈緒は髪飾りだな、可愛いデザインだろ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす(ボット)「箱の外見は忘れても中身を見れば思い出すんじゃないですか?」


ありすが箱の中身をこっちに向ける

356: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 21:11:45.27 ID:x1p/DvuOO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「次に加蓮、」

「加蓮の趣味はネイルだったろ?だからはいこれ、加蓮に似合う色だと思ってな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす(ボット)「分かりますよね?」


箱の大きさの割に中に入ってるモノは小さい、

蒼色の、小石ほどの大きさの装飾品

357: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 21:16:08.79 ID:x1p/DvuOO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「最後に凛、」

「前にお前、高校入学祝いに自分で買ったやつをそろそろ替えたいって言ってたろ?」

「だから、凛にはこれだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす(ボット)「あなたのピアスです」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「新しいピアス、凛のイメージに合うデザインのはずだ」

「きっと似合うよ、プロデューサーの俺が言うんだから間違いないさ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ありす(ボット)「そしてあなたのキーアイテムです」

358: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/09(日) 21:17:49.22 ID:x1p/DvuOO

ピアス・・・私がプロデューサーにもらったのと同じ・・・!!




ピアスのブランド名が刻まれた箱が閉じられる


ありす(ボット)「さて、では私たちはこれを持って逃げますので」



ありす(ボット)「凛さんは、引き続き武器でも探してたらいいんじゃないですか?」



これは戦闘ではない

だが、ありすにとっての戦いだった



ゲーム開始34分経過

渋谷凛

VS

結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 


ボット側の戦闘放棄により続行不可能

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

360: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:28:04.24 ID:7QrDuTEgO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

凛が駆ける、


晴への警戒も、舞への懸念もかなぐり捨てて


ただ入口近く、ありすのもとへ疾駆する


晴(ボット)「っと!!」

無防備な凛の背中に晴がシュートを放つ


凛にそれを気にかけることはできていない


サッカーボールは大砲から放たれた鉄球のような轟音をたて凛を追う



もう少しで追いつく



晴(ボット)「あ」



もう少しで凛の脊髄にクリーヒットしそうなところでボールは急停止した

361: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:29:08.78 ID:7QrDuTEgO

晴の能力が裏目に出たのだ、

最終到達地点は、ほぼゼロメートル

凛にの背中に触れるどころか掠ることさえなくボールは役目を終えたとばかりに晴のもとへ帰還する


晴(ボット)「ぁんだよもう!!どうやったらこの能力、設定変えられんだよ!!」


凛は皮肉にも晴の能力を攻略していた。


蹴り飛ばせるが近づかなければ当たらない。

ボールという、遠距離攻撃のための道具に生じてしまった矛盾


結果的に凛はそれを突いていた



凛「・・・!!かえ、せっ!!」


__それは私がプロデューサーからもらったものだ!



凛の手がありすのもとに伸びる

362: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:31:16.47 ID:7QrDuTEgO



ありす(ボット)「舞さん」


舞(ボット)「はーい!わかりました!」



ありすはおもむろにピアスの入った箱を天井に向けて思い切り放り投げる


軽い箱は一直線に天井に飛んで行き___




天井に張り付いていた舞がそれをキャッチした




凛「な・・・」

ありす(ボット)「晴さん、逃げますよ」

晴(ボット)「へーいへい」

舞(ボット)「わーい、私の出番だー!」

363: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:32:25.33 ID:7QrDuTEgO

逃走という名の追いかけっこ

追いかけっこという名の罠


凛「・・・逃がさないよ」

凛は廊下を駆けていく三人を追いかける




その背後、ガラスの向こうにある『あの場所』が凛の記憶に残ることはなかった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

364: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:34:04.72 ID:7QrDuTEgO
~~~~~~~~~

舞(ボット)「凛さん、ちゃんとついてきてるね!」

晴(ボット)「凛姉さんはこーゆーとき冷静だとおもったんだけどなー」

ありす(ボット)「キーアイテムがかかっているんですし、当然の反応でしょう」

福山舞の能力
『一輪車でどこへでも行ける』

彼女の一輪車は重力を無視しどこでも地面として進むことができる


天井であろうと壁であろうと彼女の一輪車はそこに垂直に張り付くことができる


晴と舞が、凛に気づかれずに窓の外にいることができたのも23階で降りた二人が、舞の能力で外壁沿いを移動できたからである

凛は一輪車が壁に刺さっているように錯覚したようだが


その舞も今は地面を走っていた、走っている二人よりもやや前を先行して、手に箱を持っている

365: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:35:30.68 ID:7QrDuTEgO

ありす(ボット)「さて、やはり私たちの足では追いつかれるのも時間の問題ですね」

晴(ボット)「エレベーターってどこだよおい!?」

舞(ボット)「え、エレベーターは開け閉めしてるあいだに追いつかれるよぉ!?」

振り返らなくとも凛が今にも追いつきそうなのがわかる


「待てー!」とか「待ちやがれー!」といったお約束のセリフもなしに無言で追いかけてくる様は流石クールアイドルといったところか


ありす(ボット)「エレベーターはこの階で止まっているはずですが、階段を使います」

ありす(ボット)「晴さん、足止めを!」

晴(ボット)「あぁ?わかった、よ!」

晴が振り向きざまにボールを蹴り抜く

そう狭くない廊下、牽制の意味も込めたボールが背後の凛を急襲する

366: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:37:29.66 ID:7QrDuTEgO

凛「そんなの!もう喰らわないよ!」


凛はサッカーボールに拳を向ける

そんなことすれば規格外の威力を持つボールに腕が砕かれてしまうかもしれないのに

だが凛はその手にボールペンを握っていた


舞(ボット)「あ、凛お姉ちゃん何か持ってる!?」

真正面からボールペンを突き刺す

厚くて丈夫な生地でできたボールはそれでは傷つかない

だが軌道は逸れた

凛「っぐ・・・!」

反動で凛も押し返される、

凛にずらされた球は凛の斜め後方に飛んでいく

だがこのままではボールは凛の背中目掛けて戻ってくるだろう




廊下のガラスにぶつからなければ

367: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:39:21.21 ID:7QrDuTEgO

晴(ボット)「げ!マジかよ!」

ガラスに穴を開け、ボールが外へ飛び出した

ガラスを突き破り本来ならそのまま下に落ちていくはずのボールはしかし晴のもとへ戻る


だが、一度ガラスを突き破り外へ出たボールは一直線にしか晴を目指せない

その一直線上にはヒビの入ったガラス窓



ガッシャアアアン!!


ボールは、穴を開けて飛び出たガラス窓にUターンでもう一度穴を開けた

その破片の向かう先は



凛「___お返しだよ、晴」



ありす(ボット)「んな!?」

晴(ボット)「ちょ、」

舞(ボット)「きゃあああああ!!!」



凛に容赦はない

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

368: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:41:01.17 ID:7QrDuTEgO

ガラスのシャワーから逃げるように階段の昇降口に飛び込む

階段が渦巻き状に下まで続いている、

ここで一気に引き離す

ありす(ボット)「晴さん!舞さんに掴まって!!!」

晴(ボット)「わかった!」

そう指示するとありすも晴にならって舞の細い肩を掴んだ


舞(ボット)「行くよ!」


舞の一輪車は階段の手すりに張り付くとそれを飛び越えた

三人を乗せたまま宙を浮く


そのまま一つ下の階の手すりに着地した、


またそこから下に飛びおりる、

重力を一部無視しているため飛び移っているようにも見えた

369: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:42:05.23 ID:7QrDuTEgO

凛「・・・やるね」


階段の手すりだけを足場に次々と下に飛び降りていく一輪車を

それでも凛は追いかける。

一段飛ばし二段飛ばし、階段を跳ねるように下っていく

だが場所は階段

ぐるぐると回りながら降りていくのと
ほぼ垂直に落ちるように降りていくのでは

一階に到達する早さが違いすぎる




晴(ボット)「ま、撒いたか!?」

ありす(ボット)「いえ、撒くのではダメですこちらを追いかけさせないと」

晴(ボット)「つってもよぉ、狙ってやったのかは知らねえけど凛さんヤバすぎだろ!!?ガラスとか!」

舞(ボット)「うう、怖かったよぉ・・・あと二人とも重いぃ・・・」

ありす(ボット)「一度、途中の階でおりましょう。凛さんの出方を伺わないと」

370: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:43:56.32 ID:7QrDuTEgO


ありすはそう言うと、今も自分たちを追いかけようと、しかし少しずつ引き離されているはずの凛がいる上方を見上げる


ガンッ! ゴンッ!

ガゴンッ! ガッ!

ガンガン ゴン!ゴン 

ゴキャ! ベキ!

ガンッ! ゴンッ!

ガゴンッ! ガッ!

ガンガン ゴン!ゴン 

ゴキャ! ベキ!

ガンッ! ゴンッ!

ガゴンッ! ガッ!

ガンガン ゴン!ゴン 

ゴキャ! ベキ!


ありす(ボット)「・・・・・・・・・え?」


晴(ボット)「おい、なんだよこの音?」

371: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:45:11.46 ID:7QrDuTEgO

凛に容赦はない



渦巻き螺旋階段の、中心の吹き抜けを

何かが落ちてくる

階段入口に設置された非常時のための道具


真っ赤な色の筒


まさしく自由落下の速さで

落ちるように移動する三人に






いくつもの消化器が

階段の柵にぶつかり方向転換しながら襲いかかった



373: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:50:22.76 ID:7QrDuTEgO

ありす(ボット)「舞さん!この階で降ります!晴さん!一輪車から下りますよ!」

晴(ボット)「お、おう!」

舞(ボット)「わわわ!?」


間一髪

手すりから転げ落ちた三人の後ろをけたたましい衝突音を立てながら消化器が落下していった


舞(ボット)「ひえぇ・・・」

ありす(ボット)「晴さん・・・ボールはまだ持ってますか?」

晴(ボット)「あ、ああ、あるぜ、・・・・ガラスの粉みたいなの付いてるけど」

ありす(ボット)「予定を早めます、追いつかれないギリギリの距離ではこっちの身が保たないでしょう」

舞(ボット)「ってことは私、またあれやるの?」

晴(ボット)「ヤッバ、凛姉さん追いつくぞ!」

上から聞こえるカンカンという階段板を踏み鳴らす音から逃げ出すように

三人はそのフロアの一つの部屋に飛び込んだ
~~~~~~~~~~~~~~~~

374: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:52:32.01 ID:7QrDuTEgO
~~~~~~~~~~~~

凛「・・・・・・・・・」

やりすぎたかな

いくら相手がボット、機械でも少し熱くなりすぎた

見た目と中身がほとんど身内のアイドルそっくりなだけに余計にそう思う

落ち着け、そもそも向こうは私をおびき寄せる気満々なんだ

追いかけているうちに後ろから足元を救われかねない

私はあの三人が入ったとあたりをつけた階に入る

19F

なんだ、それだけしか降りてないのか

消化器投げ込んだのは一応正解だったかな

375: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:53:52.56 ID:7QrDuTEgO

舞(ボット)「・・・」

ありす(ボット)「・・・」

晴(ボット)「・・・」


廊下から見える位置に三人はいた

あの大きな窓ガラスに背中をつけるようにこっちを向いている

ここもやはり机が多い



ありす(ボット)「凛さん、次は何を投げてきても無駄ですよ」



わざわざその一言だけを言うために待ってたの?

やはりここでムキになってついて行くのは罠か

と思ったていたのに


晴(ボット)「オーバーヘッドシュート!」


晴が足を頭より高く振り上げるようにしてボールを自分の後方に蹴り飛ばす


三人の背後のガラスに大穴があく


その破片が降り注ぐ前に


三人はその穴から飛び降りた


ここは地上19階

376: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:56:42.08 ID:7QrDuTEgO

凛「・・・!!」


あまりに不条理すぎる、こっちを誘導していたはずがこんな・・・


ガラスの破片を避けながら慌てて穴を覗き込む、ガラス張りのビルの外壁を見下ろす

地上までのあまりの高さに目眩がする


凛「完全に私から逃げ切る気、だね」


私がそう言って睨んだ先で、


舞の一輪車が壁に垂直に走っていた

落ちてる、という訳ではなさそう

舞の小さい体に晴とありすが必死な様子でしがみついてる


凛「たしかにこれじゃあ何を落としても無理そうだね」


その一輪車はガラスの壁を滑るようにジグザグに走っている

これじゃ何を落としても当たらないだろう

377: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 00:58:03.55 ID:7QrDuTEgO

たしか舞は学校で一番一輪車に乗るのが上手なんだっけ

事務所でプロデューサーにそんなことを言っていたのを思い出す

舞が方向を変えるたび、しがみついた二人が振り落とされそうになっている、非常に危うい


凛「・・・すごい勇気だね、こんな高いとこで、」


でも、まだ詰めが甘い

年上を舐めないほうがいいよ


私は即座に次の行動に移る


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

378: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 01:00:51.54 ID:7QrDuTEgO
~~~~~~~~~~~~~~~~~
高層ビル地上15階ほどの高さ


舞(ボット)「ひええ高い重い怖いぃい・・・」

ありす(ボット)「もう少しですから、途中でガラスを割って侵入しましょう」

晴(ボット)「おいこんなとこじゃボールなんて蹴れねえぞ!?」


ありす(ボット)「さっきはそうやって入ってたじゃありませんか」

晴(ボット)「あれは壁に止まってたからだよ!!こんなフラフラな一輪車の上で立てるか!!」

379: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 01:02:58.76 ID:7QrDuTEgO


カクカクとZ字をなぞるように動く舞さんの一輪車と舞さんに命綱のつもりでつかまりながら周囲に目をやる

非現実的な風景

地上の道路がはるか下方にあり、背の低い建物の屋上が見える

空を飛んでいると錯覚しそうだが、下手すれば落下してしまう


パラパラ


上階から小さな破片が自由落下し、外壁のガラスにぶつかり音を鳴らした


カラカラ


ありす(ボット)「まさかまた、なにか落としてきたのでしょうか?」

晴(ボット)「え、おいマジかよ、舞避けろ!」


事務机が

ガラスを突き破って私たちめがけて落ちてきた

太陽の逆光のせいでそのシルエットになった姿はまるで四角い隕石だ。

自由落下の方が一輪車よりも速い、このままでは___

380: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 01:04:16.43 ID:7QrDuTEgO


ありす(ボット)「舞さん、落ち着いて左に曲がってください」

晴(ボット)「また落ちてくんのかよぉ!?」

舞(ボット)「は、はいい!!」


キュッと一輪車のタイヤとガラスが擦れて方向転換する


これで机は軌道を変えた私たちに掠る事もなく落ちていくはずです


階段の時と違ってここは広いのですから避けるのは舞さんには簡単でしょう


しかし凛さんにそれがわからないとは思えないのですが・・・


机が無残にも私たちの横を落下していく

381: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 01:05:07.05 ID:7QrDuTEgO




凛「おまたせ」













落下してきた机、それを足場に凛さんが立っていた

382: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/10(月) 01:06:33.98 ID:7QrDuTEgO


リスクを顧みず机と一緒に19階から落ちてきたんだ

凛さんは自分にも容赦がなさすぎる





ゲーム開始37分経過

渋谷凛

VS

結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 

場所 空中

延長戦開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~

397: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:36:35.10 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
諸星きらり



___PちゃんPちゃん!!そのかそーげんじつって杏ちゃんも一緒かにぃ?___



___ははは、きらりはいつでも平常運転だな、大丈夫、杏もプレイヤーとして参加してる、この先にいるはずだよ___



___あいつはあいつで仮想空間でもグータラしてそうだからなお前がちゃんと杏を動かしてやれ____



___おっすおっす☆___




にょわー...

いないにぃ...

398: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:38:32.65 ID:xRNK2smNO


きらり、いっぱい歩き回ったのに。杏ちゃん見つからないにぃ

むぅー、Pちゃんのばかぁ...杏ちゃんいないよ...

でもPちゃんが嘘つくはずないにぃ

でもでも、この街、なんだかしーんって感じで、きらり、ちょっぴりさみしぃにぃ

もしかしたらきらりしかいないのかも...

きらり、ないちゃいそう




???「あれっ?きらりさんじゃないですか!!」


諸星きらり「に?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~

399: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:40:03.55 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~


堀裕子「なるほど、杏さんを探していたのですね」

きらり「うん...でも今のところ、きらりのそっくりさんと裕子ちゃんにしか会えてないにぃ」

裕子「ふむ、確かにこの街は広いですからね、杏さんのような小柄な子を見つけるのは難しいでしょう」

きらり「やっぱり、そうかにい...」


大通りから離れたところにあるベンチに裕子ときらりは腰掛けていた

寂しそうに体を縮こまらせているきらりの顔を裕子が伺っている

一応、仲のいい人間と遭遇できたことで幾分か安心したようだが、懸念は消えない


裕子「分かりました!きらりさんもやはりこの状況にまいっているようですね!そんなきらりさんは見ていたくありません!」

突然ベンチから跳ねるように裕子が立ちあがった、その瞳には決意の色が見える

400: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:41:33.85 ID:xRNK2smNO

裕子「僭越ながらサイキックアイドル堀裕子!きらりさんを見事笑顔にしてみせましょう!」

きらり「?裕子ちゃん...何するの?」


裕子「いいですかきらりさん、アイドルの本分とはなんですか?」

きらり「むぇ?えっと...きらりにとってはファンのみんなとPちゃんに幸せを届けることだにぃ」


裕子「そう!アイドルがどのような道筋を選ぼうとも、最終的にみんなに与えるものは幸せ、...そして笑顔です」


裕子「そしてサイキッカーの超能力もまた人々を笑顔にするためのもの...これがどういうことかわかりますか?」


きらり「んー、わかんないにぃ...」

裕子「ふふふ、では教えてあげましょう」


裕子はそう言うと踊りだすようにきらりの前に立った、

何故か腰に左手を当て右手をまるで天を指差すように上げている

妙なポーズだ

401: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:43:05.76 ID:xRNK2smNO



裕子「つまり!サイキッカーでありながらアイドル、サイキックアイドルの私は誰かに届ける笑顔も二倍なんですっ!!」



天に向けていた右手の指が二本になった、ピースサインである。



きらり「そうなの?」

裕子「そうです!ピースサイン!ダブルでドン!!」


裕子「ダブル笑顔です!!」


きらり「ダブル笑顔?」

裕子「はい!ダブルでドン!!」


402: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:44:40.67 ID:xRNK2smNO

裕子は、何の意味があったのかは知らないが天に向けていたピースをビシっときらりに向けた

二本指では何を指差しているのか意味不明である


きらり「だ、だぶるでどん...?」


裕子「もっと大きな声で!エブリデイセイッ!!」


それはエビバディセイ(everybody say)の間違いだ


きらり「だぶるでどん...!」


裕子「もっともっと!はいっ!ご唱和ください!ダブルでドン!」


きらり「だぶるでどん!」

403: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:46:01.42 ID:xRNK2smNO

裕子「もっともっとぉ!ダブルでぇえ...!」


きらり「どん!!」


裕子「ダブルで!?」


きらり「どーーーん!」


裕子「いいですよぉ!じゃあ準備はいいですか!!」


きらり「に!!」



裕子「ダブルでーーーーーーー!!?」

きらり「どーーーーーーーーーーん!!!っだ、にょわーーーーーー☆!!!」


裕子「イエーーーーーーーー!!!」


きらり「にょわーーーーーーーーー!!!」


裕子「さいきっくダブル笑顔!!!」


きらり「にょわにょわだぶるぴーすだにぃ!!!」


404: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:47:58.17 ID:xRNK2smNO









裕子「・・・・・・・・・・」

きらり「・・・・・・・・・・」






405: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:49:44.66 ID:xRNK2smNO







裕子「...矯めてからの、ぼえええええええええええ!!!!!!」


きらり「...一回休んでからの、にょわーーーーーーーーー!!!!!!」






406: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:52:26.97 ID:xRNK2smNO

いつの間にか二人でスタンディングオベーションもかくやという騒ぎに突入していた

まるでその場でどちらがどれだけダイナミックなバンザイを披露できるか競っているかのように

手を振り上げ声を張り上げ飛び跳ねている。パッションアイドルの本領発揮だ


ちなみに落ち込んでいる時は、大きな声を出すのは意外と気分転換になるそうだ

もちろん裕子はそんな知識は持ってない


~~~~~~~~~~~~~~~~

407: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:54:24.36 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

裕子「・・・とまあ、では本題に移りましょう、杏さんの居場所、私の超能力で見事当ててみせます!」

きらり「ほんと!?裕子ちゃん!」


裕子「ええそうです、サイキックウソツカナイ!」

きらり「すっごいにぃ!!」


裕子「さて、こういう時はダウンジングを使うのですが、あいにく今はスプーンしか持っていません」

あるていどの本調子を取り戻し元気になったきらりをベンチに座りなおさせ、

裕子は思案するようにきらりの前をゆっくり歩く


裕子「ここは、あれですね。サイキック棒倒しを使いましょう」

きらり「?・・・にょわ」

408: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:56:11.59 ID:xRNK2smNO

裕子は手近にあった棒に目をつける


裕子「棒を倒した方向に進むだけ、一見ただの運試しに見えます。」

裕子「で、す、が!!!私のサイキックパワーを注入することで、その棒は百発百中のレーダーとなるのですっ!!」

きらり「すっすごいにょわ!それで杏ちゃんを探して欲しいにぃ!!」

裕子「ふふふお見せしましょう、サイキック棒倒し」


裕子はその棒の近くに立った

裕子「むんっ!」

棒倒しの構えを取る、棒倒し用の裕子オリジナルの構えだ

きらり「むむむ、ごくり...」


裕子は、既に地面に立っていたその棒に狙いを定めた

409: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 00:58:45.61 ID:xRNK2smNO


裕子「・・・・・・私のボットが落としたスプーンを拾うことにより得た私の新、超能力・・・」



裕子「今見せてあげましょう!!!」


きらり「!!!」


裕子が動いた














裕子「さいきーーーーーーっく力技!!!!!!」



地面に立っていた棒を狙う、



410: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:00:55.84 ID:xRNK2smNO

本来なら夜間、あたりを照らす照明であるはずの電灯

現実であれば丈夫で太い鉄で出来ていたであろうそれは埋め込まれていた地面との接点を切り離され無残に傾いていく

裕子の、なんの変哲もない細い手から放たれた手刀が原因で



ズズゥウウンンン・・・...



鉄柱の電灯が鈍重な音を立てて地面に倒れ伏した


裕子「さぁ、行くのですきらりさん!杏さんはきっとこの先にいます!」

411: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:06:12.01 ID:xRNK2smNO


きらり「裕子ちゃんすごいにぃ!じゃあきらり行ってくるにょわ!」

裕子の手刀が電灯を根元から斬り倒した

倒れた電灯のランプが指す方向には建物同士の隙間、裏路地がある


裕子「それでは頑張って!サイキックピースです!!」


きらり「にょわ!バイバイだにぃ裕子ちゃん」


裕子「ええ、さようなら!!」


すっかり元気いっぱい、ハピハピ状態のきらりが一直線に走り去っていく

裕子はその背が見えなくなるまで手を振っていた。

412: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:08:06.49 ID:xRNK2smNO


裕子「・・・・・・・・・・・・・・・」


裕子「あれ!?・・・私また一人ですか!?」


裕子「サイキック孤独キャラ!!」



ビシッ!!



機能を失った電灯と、変なポーズを決めた裕子だけが後には残されていた



ゲーム開始21分経過

諸星きらり 堀裕子

ユニット結成失敗
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

413: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:12:03.46 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
北条加蓮


こんな話を聞いた

たしかそう、あれはヘレンさんから聞いたんだっけ

割と考えさせられる部分があったのと、ヘレンさんにしてはそこそこ真面目な話題だったので記憶に残っていた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
過去 現実 事務所


ヘレン「これはそう、私が海の向こうの国を渡り歩いていた頃の話」


ヘレン「とある小悪党、コンビニ強盗で捕まった青年の話よ」



???

414: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:14:21.41 ID:xRNK2smNO

ヘレン「彼はある暑い夏の日、空になった財布を懐に、頭を抱えていたそうよ」


ヘレン「照りつけるアスファルト。炎天下の空の下、クーラーの効いた場所を探してさまよっていたのよ」


ヘレン「彼にはどうしてもその時お金が必要だった。詳しい理由は知らないわ」


ヘレン「しかし職もない、友人もいない、女もいない彼は相当追い詰められてついに強盗を思いついたの」


ヘレン「でも狙いをつけた一件のコンビニを前にして、彼は強盗を一度は諦めたの。良心の呵責、失敗のリスク、そもそも成功するのか逡巡したのね」


ヘレン「ただ、そのまま何もせず立ち去ったところで彼に明日はないわ。」


ヘレン「・・・彼はとりあえず様子見と称してそのコンビニでボールペンを一本と一番安いアイスを一本買ったの」

415: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:16:12.58 ID:xRNK2smNO

ヘレン「次の金策を考えながらコンビニを離れた彼は、食べ終えたアイスが『当たり』だったのに気づいたわ」


ヘレン「彼は二十代前半だったそうだけど、とにかく彼の二十年以上の人生でアイスが当たったのはそれが初めてだったらしいわ」


ヘレン「彼は強盗計画を迷った直後という奇妙なタイミングで自分の身に起きた奇跡をこう捉えたの」









ヘレン「神が自分の背中を押している」



416: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:19:58.44 ID:xRNK2smNO


ヘレン「___こうして彼は先程のコンビニへ引き返すとボールペンを武器にコンビニ強盗を決行、その5分後、店員2人に取り押さえられたわ」



ヘレン「落ち着きなさい加蓮、私の世界レベルの話はここで終わりはしないわ」



ヘレン「彼はアイスの当たり棒を神からのGOサインと考えたわけだけど、もしかしたら逆に強盗をやめたことが正しい選択だったと神が伝えてくれたとも取れるわ」


ヘレン「彼は降って湧いた幸運を結果的にドブに捨ててしまったのね」


ヘレン「・・・ちなみに世界レベルの私は神の存在なんて信じていないわよ?」

417: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:22:19.61 ID:xRNK2smNO

ヘレン「これは海の向こうでの話だったわけだけど、私たちの日常にもアイスの当たり棒でなくとも、運不運、ラッキーアンラッキーの絡んだ要素は起きるわね?」


ヘレン「誤解を招く言い方かもしれないけど、個人が生涯出会う幸運や不幸の量と質はどうしようもないの」


ヘレン「それこそ神のような存在が好き勝手に決めているのかもしれないわね」





ヘレン「___でも、そんな不幸や幸運に出くわした私達が、その後何を考えどうするかは私達にしか決められないわ」



ヘレン「つまり、そういうこと」


418: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:23:38.52 ID:xRNK2smNO









ヘレン「え?私がなぜそんな小さなコンビニ強盗事件について詳しいかって?」

ヘレン「私、強盗が起きたとき丁度レジで商品の精算をしてもらっているところだったのよ」




ヘレン「そう、ファ○チキのね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

421: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:26:37.07 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

仮想現実



加蓮「(ファ○チキって、日本じゃん)」



やばい、よく考えたら海の向こうの要素が何一つないエピソードだった


ブオオオオオオオオオンンン!!!


後ろに迫った排気音がアタシを記憶から仮想の現実に引き戻す



さて、反撃しましょうか。

でもアタシの予想は外れているかもしれない、この攻略法は完全に思いつき、それを裏付けるヒントが少なすぎる

証拠もなしに犯人が逮捕できないのと同じ、

アタシの推測が合ってるかを教えてくれる”何か”がないとアタシは動けない

だってこれ失敗したらアタシ終わっちゃうし

422: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:29:22.64 ID:xRNK2smNO


拓海(ボット)「待てこらァ!!!」


加蓮「!!!?」


ほぼ耳元で怒鳴られたようにアタシは錯覚した。

つい反射的に振り返って拳銃を向けてしまう、拓海さんには効かないのに

また弾を無駄にしてしまう、もう四発しかないのに

右足がしびれる


拓海(ボット)「邪魔だァ!!」


かなり近くに迫っていた拓海さんがアタシに向けて振り払った木刀が、

拓海さんに向けていたアタシの右手を叩きのける


加蓮「いたっ!」



走ってる最中に振り返ったアタシは右手を強く払われバランスを崩す

423: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:30:46.41 ID:xRNK2smNO



___あ。


右手にしっかり握っていたはずの拳銃をさっきの攻撃で落としてしまった


慌てて拾おうにも右腕は振り払われ、左腕からでは遠い



拳銃は重力に引かれ自由落下する

まっすぐまっすぐ地面に鉛直に吸い込まれていく


拓海さんのバイクが普通より大きく見える。

だってもう既に木刀が届く距離だしね



アタシの唯一の武器

424: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:32:58.88 ID:xRNK2smNO


ボットの役目だろうと真剣に取り組み、挙句プレイヤーのアタシを焚きつけたあいつが

最後にアタシに託した武器

たった四発の弾丸と一緒に落ちていく


まっすぐ


横薙ぎに払われた右手では地面に落ちる前にキャッチはできない



__ああ、ごめんね



__でも、ありがとう



__これで







__この勝負、アタシが勝ったわ

425: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:44:54.68 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

拓海(ボット)「!?」


反射的に振り返ってしまったアタシは

次は意図的に拓海さんに突っ込んだ


フロントタイヤにぶつからないように、ハンドルに前から手をかけ跳び箱のように飛び越える

バイクのハンドルを越えればそこには本体、拓海さんがいる

驚愕に染まった顔が間近に見える


426: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:46:25.71 ID:xRNK2smNO

最初、どうして木刀だけがアタシの体に攻撃を加えられるのか謎だった


バイクが地面以外のアタシを含めて何もかもを透けてしまうから木刀で攻撃する、確かに筋は通る


でも木刀も一緒に壁に潜るならどうして木刀は透けないの?


アタシはこれは壁から出ている間だけ木刀の能力を解いている、と推理した


でも違った、これはアタシの勝手な誤解だった



加蓮「___拓海さん」


あんたの体とバイクは


壁でも電柱でも車でも落石でもたとえ銃弾だろうと


ぶつからないんだよね?

427: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:48:09.20 ID:xRNK2smNO



加蓮「でも、______人間にはぶつかるんだよね?」


拓海「!!?」


拓海さんの、今までで一番驚いた表情



加蓮「____言ったよね?アンタ確かに言ったよね?」




___安心しな!!アタシも一人のバイク乗りだ、バイクで”人をはねるなんてマネは絶対にしねえ”・・・___



___るっせぇ!!こっちがお前を”撥ね飛ばさねえようにしてる”からって舐めんてじゃねぇぞ!!___



428: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:49:47.66 ID:xRNK2smNO


壁でも電柱でも車でも落石でもたとえ銃弾だろうと

拓海さんのバイクはぶつからないけど



人間は撥ねてしまう


能力の制限というか例外かな?



それにさっきの拳銃

アタシの手から離れてまっすぐ落ちた拳銃


ありえないありえないありえない


拳銃を持っていた右手がほぼ真横に振り払われているのに


その”手の中にあった拳銃だけが下に落ちる”わけがない、


少なからず軌道は横にずれるはずだ

429: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:51:59.84 ID:xRNK2smNO


つまりこれから察せられることは一つ


木刀の能力は解けていない

木刀は

アタシの右手の拳銃を透けて

アタシの右手だけを叩いた


木刀は、右手だけ叩いたけど拳銃には触れてもいない


そりゃ、拳銃だけ鉛直に自由落下するわけだ


つまり拓海さんの能力は『人間以外にはぶつからない』


全速力で走るバイク、そこに乗った拓海さんにほぼ空中で掴みかかった


ほら、さわれるじゃない

430: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:53:59.22 ID:xRNK2smNO

それにダメ押しのヒント

”アタシの右足のしびれ”

これは最初のアタシの射撃のあとにできた傷だ

あのとき拓海さんはアタシに銃弾を当てられてもそれを無効化し、

アタシに追撃を加えてきた

アタシのほぼ真後ろでバイクを半回転させて方向を無理やり変え、木刀を振るった


多分そのときだ、

拓海さんが無理やりその場で動かしたバイクのタイヤがアタシの足をかすっていた

つまりバイクはやはり人間にはぶつかる。人間ははねてしまう

アタシは自分の残り少ない弾が効かなかったことに動揺してたからね、気づくのが遅れた

431: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:55:22.10 ID:xRNK2smNO

さて、答え合わせは終了っと


アタシのラッキーはさっきの一つ、

拓海さんが出てくる壁を当てたときだけ

次のアタシの行動は神サマなんかには決められない

432: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:57:52.68 ID:xRNK2smNO


加蓮「どおりゃああああああああああああああああああああ!!!」


拓海(ボット)「くっそおおお!!」


バランスを崩してアタシと拓海さんはバイクから振り落とされた


地面に叩きつけられる、

でもアタシは拓海さんが下敷きになったおかげでダメージはなし

というか拓海さんの胸部のクッションすごすぎでしょ、何なのこの柔らかさ。

どおりで愛海ちゃんが執着するわけだ


拓海(ボット)「ゲホッ!かれ、ん・・・なんてことしやがる・・・」

アタシの下で拓海さんが苦しそうに呻く、背中を強く打ったのかな


幸い拳銃は遠くには飛ばされなかったから、手の届くところにあった


右手に握りなおす

この拳銃の落下が最後のヒントになった

433: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 01:59:24.06 ID:xRNK2smNO



背後で壁にバイクが衝突する音が聞こえた


加蓮「やっぱり、バイクから降りたら能力使えないんだね、拓海さん」


銃口はその体を透けることなく拓海さんの胸の間に収まった


拓海(ボット)「はは、こんなとこでおわりかよ・・・」



諦めたように拓海さんは薄く笑った



アタシのリボルバーは残弾4発

434: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:01:08.41 ID:xRNK2smNO








加蓮「___頭はさっき狙ったから___次は心臓でいいよね?」




パン




アタシのリボルバーは残弾3発





ゲーム開始27分経過

向井拓海(ボット)消失


~~~~~~~~~~~~~~

435: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:06:57.15 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~~~
『あの場所』


そこは、

八神マキノを始めとした非戦闘系能力のアイドルが中心となって作られた組織、

二宮飛鳥命名《戦力外たちの宴》の本拠地に選ばれた場所であり


彼女たちがたどり着く少し前、星輝子がたまたま最初に転送され、

そして能力を得た場所でもあった


都会の中心から少しだけ離れた場所に位置するその建物は

外見は三階か四階建てほどの高さしかない至って妙なところのないテナントビルだ


____得体の知れないその中で、集められたボットたちが蠢く


~~~~~~~~~~~~~~

436: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:08:44.83 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~

島村卯月(ボット)「はじめまして!!私たち!」


本田未央(ボット)「ニュージェネレーション!!」


佐城雪美(ボット)「...ばーじょん...2...」


卯月(ボット)「ですっ♪」



古賀小春(ボット)「わ?!ぱちぱちです?!」

市原仁奈(ボット)「ぱちぱちでやがりますよ!」

水野翠(ボット)「え、えっと...拍手をすればいいんですか?」

437: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:10:06.32 ID:xRNK2smNO

ソファに座った三人のアイドル

そこより少しだけ高い台座の上にも三人のアイドルがいた

おあえつら向きにキュート、クール、パッションの三人組だ



未央(ボット)「ふっふっふ、・・・何故かしぶりんだけプレイヤーとして参加しちゃったからね、仕方ないね!」

卯月(ボット)「私たち新生ニュージェネで凛ちゃんを倒します!頑張ります!」

雪美(ボット)「......よく...わからないけど...がんばる」


未央(ボット)「じゃあまず何から考えよっか?」

卯月(ボット)「はい!島村卯月頑張ります!」

438: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:11:56.60 ID:xRNK2smNO

雪美(ボット)「...はい...」

雪美が挙手した

未央(ボット)「むむっ! ゆきみんから意見が出ました!どうぞ!」

雪美(ボット)「...ボット...プレイヤー...どうやって...決まってる...の?」

未央(ボット)「ふむ、いい質問だね!私も知りたかったんだよ!」

卯月(ボット)「未央ちゃんも知らないの!?」

雪美(ボット)「...うづきは...しってる...?」

卯月(ボット)「・・・・・・島村卯月、勉強頑張ってきます!」

未央(ボット)「全滅かーいっ!!」



卯月(ボット)「えへへ!私たち!」

卯月未央(ボット)「新生ニュージェネレーション!!」

雪美(ボット)「......だにゃん...」

439: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:14:05.93 ID:xRNK2smNO

小春(ボット)「雪美ちゃん可愛いです?猫さんです?」

仁奈(ボット)「なんと!仁奈も猫の気持ちになれやがりますよ!」

翠(ボット)「ほほう、漫才が最近のアイドルユニットの主流なんですか...」


『あの場所』で、

和気藹々とした雰囲気の中で遊ぶアイドルのボットたち

だが彼女たちはただここで遊んでいるのではない


この六人は、考えられうる最も論理的な思考の末、

こと拠点防衛においては最強だと判断され選び抜かれた者たちだった

440: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:18:36.65 ID:xRNK2smNO



小春(ボット)「でもどうして小春たちのオリジナルはプレイヤーになれなかったのですかぁ?」

仁奈(ボット)「たしかに、不思議でごぜーますね」

翠(ボット)「たしか、晶葉さんは個人の適性と言ってましたね」

未央(ボット)「適性?」

卯月(ボット)「相性ってことですか?」

翠(ボット)「はい、まず私たちのオリジナルが晶葉さんによって脳の人格データをスキャンされ、仮想空間内で本人が精神を保ってられないと判断されれば、そのスキャンされたデータは本人代わりのボットに個性を与えるために使用されるそうです」

卯月(ボット)「ボットの個性ですか!!ということは私たちって個性の塊なんですね!」

雪美(ボット)「...うづき...うれしそう...」

441: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:20:44.97 ID:xRNK2smNO


と、ここで


ニャー

ニャー

ニャー


雪美の手元のアイテムからそんな音がする

未央(ボット)「あれ、ゆきみん電話なってるよ?」

雪美(ボット)「...うん...黒猫電話...」


雪見の膝の上には黒いダイヤル式の電話が乗っている

これの呼び鈴が彼女の飼い猫の鳴き声に似ているらしいので

飛鳥は雪美の能力をシンプルに《黒猫電話》と名づけていた

黒猫と黒電話のあわせた造語

442: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:23:04.62 ID:xRNK2smNO

この能力は定義が曖昧なため扱いづらいのだが、場合によっては強力な能力である

簡単に言うと『不吉なことがあれば能力の持ち主に伝える』

黒猫は不吉の象徴と考えられることもあるがその訪れを先んじて伝えてくれるこの能力は雪美の、

そして雪美の近くにいる人間にとっては不吉の間逆だろう

翠(ボット)「もしかしたらこの場所に何かが近づいてきているのかもしれませんね」

仁奈(ボット)「何が来ても怖くねーですよ!」

小春(ボット)「私とヒョウくんも頑張ります?」

卯月(ボット)「雪美ちゃん!で、どんなメッセージがきたの?」

雪美(ボット)「...今...聴いてみる」

雪美は受話器を手にとった

443: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 02:25:46.37 ID:xRNK2smNO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ERROR!!

仮想現実空間運営用自律ボット

CHIHIROより池袋晶葉へ


以下、二点のエラーが観測されました。早急な対処をお願いします


1、ボット「白坂小梅」がスタミナが0になったにもかかわらず消失が確認されていません

2、仮想空間稼働21分15秒から22分03秒までの48秒間、

 プレイヤー「緒方智絵里」およびプレイヤー「佐久間まゆ」の行動履歴がありません

 48秒の間、この仮想空間上のすべての領域から存在がロストしていました


仮想空間稼働30分経過


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ボットは蠢く

プレイヤーもさらに蠢く


ゲーム開始30分経過

『あの場所』報告事項なし

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453: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 20:04:21.28 ID:CNgNj18+0

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チャプター
輿水幸子

ボクらの行軍は思った以上に順調です

そもそもこのゲーム?模擬戦闘とかプロデューサーさんは言ってましたけど随分楽勝じゃないですか!!

まあたしかに?いきなりボクが現れた時には随分驚かされましたけど?

いまここにこうしてボクが2本の足で立てていることから、ボクのカワイさがもはや強さにもつながることが証明できたでしょう!


幸子「しかし、輝子さん、一度しか来たことがない道なのに迷う様子がないですね」

前を歩く輝子さんに声をかけると、ボクらの先頭を歩いていた輝子さんが少しだけ顔をこちらに向けます

輝子「...さっちゃんにあ、会ったのも...うめちゃんに会ったの、も...『あの場所』から...そ、そんなにはなれて、ないから...」

幸子「なるほど、そもそもボクらの足じゃあそれほど遠くにも移動できませんしね!」

輝子「それに...き、キノコをさ、探しに...山に入るとき、け、獣道とかに入ることもある...から、迷わないように...周りの景色とか...よく覚えておくようにしてる」

輝子「み、道を、覚えるのは...得意」

小梅「しょ、しょーちゃん、すごい...!」

幸子「ほう!それはすごいじゃないですか!」

輝子「そ、それほどでもない...フヒヒ、二人も、すぐできる、よ?」

輝子「......一度、よ、山の夜道に迷って...し、死にかければ、嫌でもできるように...フヒヒヒヒヒヒ」

幸子「・・・」

小梅「や、山の夜道・・・楽しそう・・・!」

454: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 20:05:06.21 ID:CNgNj18+0

目的地である『あの場所』を知っている輝子さんを前に据え、その僅か後ろをついていってるのがボクと小梅さんです


さて、ボクらの興味関心を引いて止まない『あの場所』ですが、その前に持ち物チェックと行きましょうか

ほとんど着の身着のままでここに転送されてきたボクらは小梅さんのいた屋敷でなかなか役に立ちそうなものを見つけたのです


【ハンドガン×3丁】

この手のゲームではなかなか基本的な装備ですね

最初輝子さんが見つけてきた時にはびっくりしましたがゲームっぽさを演出するにはいいアイテムでしょう

弾丸はそれぞれ8発、替えの弾、マガジンの類はありませんでした

【猟銃×1丁】

小梅さん曰く、この手の屋敷のお約束?だそうです。まぁ確かに日本には猟銃を所有している方は普通にいますからね

しかし、そのあとホラー映画の紹介が始まりかけたのはどうしてだったんでしょうか・・・

こちらは銃弾が4発しかなかった上、一度に装填できるのが2発まで、

さらに銃身が長いせいでボクらが使おうと思ったら二人以上で支えることになりそうです

若干使いにくいですね


【栄養ドリンク×2】

おそらく回復アイテムだとは思うのですが栄養とスタミナに関係性はあるのでしょうか?

そういえばこれと似たようなモノが事務所の冷蔵庫にも入ってましたね。

ふーむ、現実の方で結構有名なドリンクがモデルなんでしょうか?


【アクセサリー(?)】

ネックレスだとは思うんですが、何の模様もない変な板が二枚ほど鎖に付けられただけの無骨なデザインです

男の人だとこういうのがカッコイイんでしょうか?

455: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 20:06:01.15 ID:CNgNj18+0

ボクたちは一人一丁ずつハンドガンを持ち、栄養ドリンクは小梅さんと輝子さんのポッケ、猟銃はボクが背中に担いでいます

ゲーム内で重さがほとんど設定されてないようなので、たまに地面を引きずりますが運ぶのは苦ではありません

アクセサリーはもしかしたらだれかのキーアイテムの可能性もあるのでボクのスカートのポッケに入れっぱなしです

もし似合いそうなら二人に付けておいても良かったのですが、

小梅さんと輝子さんにはもっと似合う装飾品というのがあるのに適当に拾ったモノなど付けさせられません!

やがて下り斜面の頂上にたどり着きました。

ほかの場所よりやや標高が高いのでしょうか、道路の続くずっと先に並ぶ建物を見下ろしている気分になりました

この道路は傾斜が急なので下からボクたちのところに来るのは大変そうですね


輝子「あれ...あそこ...」

ペったペったと裸足に直接はいていた靴を地面にこすりながら歩いていた輝子さんが立ち止まります

向けた視線は斜面を降りたずっと向こうの一点、あの建物


幸子「・・・なるほど、遠目でもすぐにわかりますね」


小梅「た、確かに...あ、『あの場所』...だね」


外見は何の変哲のない建物

だがそれはこの世界にあってはならない、のかもしれない

少なくとも未知と驚愕に溢れたこの街において『あの場所』の異質さは拭えません

だってボクらはよく知っている、あの建物を

456: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 20:06:56.93 ID:CNgNj18+0



「「「・・・事務所・・・」」」




ボクらが最もよく知るアイドルプロダクション、ボクらの夢の発着点

その事務所のあるビルでした






カリカリカリカリカリカリカリ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

457: ◆ecZBoTY/6E 2014/03/11(火) 20:33:41.11 ID:CNgNj18+0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


カリカリカリカリカリカリカリカリ


仁奈(ボット)「どーでごぜーますか!7の革命でごぜーますよ!」

小春(ボット)「そんな~、私の2が使えないです~」

雪美(ボット)「......革命...返し...」



カリカリカリカリカリカリカリカリ



未央(ボット)「おっ!」


卯月(ボット)「どうしたの?」


カリカリカリカリカリカリ


翠(ボット)「これって、未央さんの能力の...反応してますね」


卯月(ボット)「つまり、誰かここに近づいて来てるってこと?」


未央(ボット)「・・・そうなるね・・・!」


三人は机の上を囲んでその上に置かれたものを見つめている


それは、机の表面を引っ掻くように細かく振動しながら望まぬ来襲を未央たちに伝えている


カリカリカリカリカリカリカリカリ


次回 渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」 中編