2: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:10:16.24 ID:rDtBqjKZ0
海が好きだ。

泳ぐのが好きなわけではないのだけれど、波の音を聞きながら、海岸から揺らめく蒼を眺めていると、心に溜まった淀みがなんとなく流されていくような心地になれた。

だから、放課後はいつもこの海岸で、陽が沈む海を眺めていた。

ただ、今日はそれでも少し収まりが付かないほど、私は疲れていた。

引用元: ・【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 



THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! きゅん・きゅん・まっくす
歌:一ノ瀬志希、乙倉悠貴、椎名法子、前川みく、棟方愛海
日本コロムビア (2019-04-17)
売り上げランキング: 259
3: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:12:57.23 ID:rDtBqjKZ0
奏「今日はなんか...いろんなこと、ありすぎたな...」
 「結局高校生活も、ただの遊びなのかしら...」


今日もまた、私は、自分がなんなのかわからないまま、ごちゃまぜの感情が洗い流されるのをただただ待っていた

そんな状態だったからかしら

4: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:13:29.63 ID:rDtBqjKZ0
???「ちょっと、そこの君!」


あの人に目をつけられて、そして...


???「アイドル、やってみないか?」

新しい道、アイドルとしての道を踏み出すことになったのは

5: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:13:59.80 ID:rDtBqjKZ0
プロローグ [Budding Fate]

6: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:14:29.99 ID:rDtBqjKZ0
奏「...あなた、誰?サングラスに深くかぶった帽子...正直すごく怪しいのだけど」

???「おっと、すまないね名乗りもせずに。俺、こういうものでね。」

そう言うと男は一枚の紙を差し出してきた

奏「あら、名刺?プロデューサー...あなたが?」

P「兼社長のPだ。よろしく。」

7: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:15:07.51 ID:rDtBqjKZ0
社長?
もう一度名刺をよく見ると確かにそこには、[811プロダクション社長兼プロデューサー]と書かれていた
目の前の男は、とても社長なんて大それた肩書を背負っているようには見えないけれど

8: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:15:40.29 ID:rDtBqjKZ0
奏「ふーん...私をアイドルに...? 冗談でしょう? そういう人、多いのよね」

以前にも街中でアイドルにならないかと声をかけてきた人はいたけど、誰も彼もが私を本気で求めてるようには見えなかった
きっと、この男も同じだろうし、いつも通り適当にあしらおう、そう思った
でも...

9: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:16:20.79 ID:rDtBqjKZ0
P「本気だ、それに今もっと本気になった」

奏「え?」

思いの外真剣な顔で返してきたので、少し戸惑ってしまう

P「君をスカウトする人多いんだろう? なら他の奴に持ってかれる前に絶対ここでスカウトしておかないとな」

奏「ふーん...本気、なのね」

10: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:16:47.07 ID:rDtBqjKZ0
正直、その言葉を信じれたわけじゃない。
でもその時の私はヤケになっていたから、少しだけ確かめたくなった。
目の前のこの男が、どれだけ私を欲しているのかを

11: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:17:36.25 ID:rDtBqjKZ0

奏「じゃあ...今、ここでキスしてくれる? そうしたら、なってもいいよ?」

P「わかった」

奏「えっ?」

即答!?

12: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:19:54.45 ID:rDtBqjKZ0
P「キスすればなってくれるんだな?」

奏「...ふふっ、まさか乗ってくるなんて。あなた、本気なのね。それとも、満更でもなかった?」

P「そりゃあ、初対面の子とキスするのは抵抗あるけど。君がアイドルになってくれるんなら、いくらでもやってやるさ」

奏「...ふふふっ!」

P「ちょっ、なんで笑うんだよ」

奏「だってあなた、すっごく顔赤いんだもの!」

13: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:20:28.37 ID:rDtBqjKZ0
奏「ふふっ...!いいよ、そこまで本気なら付き合ってあげる。」

P「ホントか!?」

奏「ええ、よろしくね。私のプロデューサーさん?」

14: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:21:21.24 ID:rDtBqjKZ0
P「いよっしゃああああ!...つっても、今日は遅い時間だからまた明日、名刺に書いてある住所の場所まで来てくれ。そこで詳しい話をしよう。」

奏「分かったわ、それじゃあまた明日」

P「じゃあな!...えっと」

奏「速水 奏。すぐそこの○○高校の学生よ」

P「そうか、じゃあまた明日な速水!...ん?」

奏「奏でいいわ、それじゃ、また明日ね」

15: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:21:52.43 ID:rDtBqjKZ0
こうして、私はアイドルの道へと連れ出された

明日は、このつまらない日常から少し抜け出せる、そんな予感を感じながら...

16: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:22:28.92 ID:rDtBqjKZ0
P「高校生だったんだ...OLかと思った...」

17: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 06:25:02.96 ID:rDtBqjKZ0
プロローグが終了したところで今回はここまで
8割ほどは既に原稿が書きあがっているので残り2割を書きつつ合間合間に投稿していきます

次回更新は3月22日の夜の予定...ですがもしかしたら23日以降になるかも

18: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 22:57:31.46 ID:rDtBqjKZ0
今更ながら間違えてRの方でスレ立てしていた事に気づきました
ですがどっちみち後でちょっとブラックな描写があるのでとりあえずこのまま行こうと思います

では、続きを投下していきます

19: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 22:58:56.87 ID:rDtBqjKZ0
次の日の放課後、私はすぐにもらった名刺に書かれたビルへと向かった
そこには、811と分かりやすい看板がでかでかと掲げられた4階建てのビル、そしてその扉の前には

P「来たか奏!」

昨日の男、そして、これから私のプロデューサーになる男が待っていた

「ようこそ!我が811(ハッピー)プロへ!」

20: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 22:59:24.83 ID:rDtBqjKZ0
Chapter1 「Welcome to Happy Production!」

21: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:00:59.94 ID:rDtBqjKZ0
奏「4階建てのビル丸ごと一つ...意外と大きい事務所ね...いや、むしろ芸能事務所としては小さいほうなのかしら?」

P「まー全体的に見たら小さいほうかな。でも、建物だけは設立三か月にしてはでかい事務所だと思うよ。」

奏「設立三か月!?」


聞いたことのない名前とは思ったけど、まさかそんなに新しいプロダクションだったなんて...

22: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:02:01.67 ID:rDtBqjKZ0
P「それに場所はでかいんだけど、実は所属アイドルが君を含めて二人しかいないから、かなり部屋が無駄になってるのさ」

ということはプロデューサー含めても3人...確かに場所を持て余すわね...

奏「丸ごと買い取るんじゃなくて、ワンフロアだけとかにすればよかったんじゃない?」

P「あとあと人も増えるかなーと思ったから思い切って丸々買い取ったんだよ。まあ立ち話もなんだし、入って入って」

言われるがままビルの中に入り、プロデューサーの案内通りに進み、事務室と書かれた扉を開けた。

23: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:03:32.29 ID:rDtBqjKZ0
???「Pさんおかえりー」


事務室に入ると、ソファに座っていた女性が和菓子のようなものをつまみながら私達を出迎えてくれた。
この子がもう一人のアイドルかしら?
確かに、人の目を引き付けそうな綺麗な白い肌をしていて、スタイルもいい。
アイドルと言われても不思議ではない容姿ね

24: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:07:40.25 ID:rDtBqjKZ0
P「ただいま周子、この子がウチの新しいアイドルだ。」

奏「はじめまして、速水 奏よ。」

周子「よろしく奏ちゃん」
  「それにしても、Pさんすっごい●●r...別嬪さん連れてきたねー」

今●●●って言いかけなかったかしらこの人

25: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:08:20.72 ID:rDtBqjKZ0
P「ちなみに高校生だぞ」

周子「マジで!?年下!?」

奏「あら?そう見えない?」

周子「いやOLかと思ってたわ...っとと、あたしの自己紹介がまだだったね」

26: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:09:37.41 ID:rDtBqjKZ0
周子「あたしは塩見 周子。ここのアイドル兼事務員やってまーす。」

奏「アイドル兼...事務員?」

周子「いやーあたし実家から追い出されちゃってさー、なけなしの貯金で東京来たはいいけど、お金がなくなる前に住むとこと仕事見つけないと家に強制送還されてお見合いさせられるとこだったんだよ。」
  「そんな感じでいやーどうしたもんかなーってすぐそこの公園で黄昏てたら、Pさんがあたしをスカウトしてきたんだ。」
  「んで、住むとこもPさんの住んでるアパートの部屋が空いてるから大家さんに口きいてやるって言われてこりゃラッキー!って思ったんだけど...」

27: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:10:20.43 ID:rDtBqjKZ0
P「まだ設立したばっかですぐに生活できるほどのギャラ貰える仕事なんて用意できなかったからな。そこでどうせ人手も足りないしってことで」

周子「アイドルのついでに事務員として雇ってもらったってわけ!いやー仕事少なくて楽な割に給料高い仕事見つかってホントラッキーだったわ。」

P「まあ周子は絶対アイドルの素質あるって思ったから、こりゃ初期投資してでも確保するしかないって思ったのさ。」
 「ていうか、仕事が少ないのは今のだけだからな! 多分...」

28: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:11:18.32 ID:rDtBqjKZ0
奏「実家から追い出されたって...大変だったのね。これからよろしくね、塩見さん」

周子「周子でいいよー。 こちらこそよろしく!」

P「んじゃ顔合わせも済んだところで、まずは奏のポテンシャルを見ておきたい」
 「レッスン場へ案内するからそこで一通りテストを受けてくれ」

奏「わかったわ」

29: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:13:22.13 ID:rDtBqjKZ0
周子「あ、あたしも見たい見たいー!」

P「もちろん、周子も見ててやってくれ。経験者なら、何かアドバイスとかできるかもしれないしな」

奏「お手柔らかにお願いするわね、先輩」

周子「まっ、あたしも先輩ってほど経験ないんだけどさ。でもまあ、任せとき!」

30: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:14:06.25 ID:rDtBqjKZ0
=====レッスン場======

奏「ふぅん、ここがアイドルのレッスン場なんだ...意外とシンプルなのね」

案内されたレッスン場は、壁の一面が鏡張りになっていることを除けば、大した装飾もない普通の部屋だった
もっとカメラとか音響とかの機材でいっぱいになってるのかと思ってたけど

周子「まあ余ってた部屋を適当に改造しただけだからね」

P「んじゃ一通り見ていくか、周子、サポートを頼む」

周子「りょうかーい」

31: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:15:11.65 ID:rDtBqjKZ0
奏「はぁ...はぁ...」

先導してくれる周子に合わせて一通りやってみたけど...

奏「どうだった?ご感想は?」

P 周子「「すげぇ!」」

奏「あらそう?全部見様見真似だったのだけど」

32: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:16:04.05 ID:rDtBqjKZ0
周子「奏ちゃん本当に初めて?正直素人とは思えんかったけど」

P「ボーカル、ダンス、ヴィジュアル、すべてに置いて初心者とは思えないポテンシャルだったが...」

奏「...昔から、たいていの事は出来てたのよ。だからこそ、今までずっと悩んできたの」
 「何でもできるということは、何者でもないということ、自分が一体何のかわからないから、何を目指して生きるべきなのか分からなかった、でも...」

33: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:16:48.52 ID:rDtBqjKZ0
想像以上に過酷だったレッスンに必死に打ち込んでいる内に、私はどんどんその行為に夢中になっていって、心が晴れやかになっていくのを感じていた

奏「久々に、すがすがしい気分になれたわ、きっと今まで、雑念ってものに惑わされ過ぎていたのかも。」
 「とりあえず、アイドルというものに興味がわいてきたことは事実ね」

34: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:18:02.75 ID:rDtBqjKZ0
P「そっか。レッスン、楽しんでくれたようでなによりだ」

周子「ウチの社訓は、『全力で楽しむ!』だからね。楽しんでやるのが一番!」

奏「社訓が、楽しむ...?」


社訓ってもっとお堅い言葉が並んでるものな気がするけど...

35: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:18:45.12 ID:rDtBqjKZ0
P「ああ、アイドルってのは人に夢を魅せて楽しませる仕事だ、でも、そのアイドル自身が楽しんでパフォーマンス出来なきゃ観客は満足できない」
 「だからこそ、どんなときでもアイドルという仕事を楽しむ!それがこのプロダクションのポリシーなのさ」

奏「そう...なら私が全力で楽しめるよう、これからよろしくねプロデューサーさん?」

P「もちろん!全力でサポートさせてもらうよ」
 「まあ、とりあえず今日のところは一端ここでお開きにして、明日から早速一緒に頑張っていこうな」

36: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:19:37.90 ID:rDtBqjKZ0
奏「あら、今日はもういいの?」

P「テスト程度とはいえ、初めてにはキツかっただろ?今日はもう帰って休んだほうがいい」

周子「それに多分...アレもあるしね」

奏「アレ....? まあそうね...確かに、もう一度やれって言われたら最後まで持たないかも」
 「お言葉に甘えて、早めに休ませてもらうとするわ」

37: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:20:16.94 ID:rDtBqjKZ0
周子「じゃああたしも、お疲れさまー!」

P「いやお前はまだ事務仕事残ってるから残れ」

周子「えー! あたしだって早めに帰らせてくれてもいいじゃん!」

P「ちゃんとアイドル活動とは別で給料払ってんだからその分は仕事してもらわなきゃ困る!」

周子「うぐ...確かに高いお給料を貰ってるからそれを言われると言い返せない...しょうがないなぁ、また明日ね奏ちゃん」

奏「ええ、また明日」

38: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:20:45.24 ID:rDtBqjKZ0
こうして、私のアイドル人生の初日は無事終わった
帰り路を歩きながら、レッスンの時の感覚を思い返す
くだらない雑念から解き放たれたあの時の感覚...

「ようやく、見つけれたかも。」

ずっと探していた、心の空白を埋めてくれるもの...

39: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:21:31.78 ID:rDtBqjKZ0
奏母「あら、お帰り奏...どうしたの!?すっごく辛そうにしてるけど、何があったの!?」

奏「いや、その...き、筋肉痛...」

訂正、無事ではなかった....

40: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:22:55.57 ID:rDtBqjKZ0
次の日


P「さて、奏という大型新人も加わったところで、いよいよ我がプロダクションも本格始動しようと思う」

周子「おー!ついにあたしも、雑誌モデル以外の仕事ができるの?」

P「そうなる予定だ、でもその為にまず達成しなきゃいけないことがある」

奏「達成しなきゃいけない事?」

41: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:23:53.93 ID:rDtBqjKZ0
P「お前らにはまず、アイドルランクをEランクに上げてもらう」


奏 周子「「アイドルランク?」」

P「ああそっか、まずそこから説明しないとな」
 「アイドルランクってのはアイドルランク協会、通称『IR』っていろんなテレビ局の重鎮達が集まる組織が決めてるアイドルの格付けだ」
 「F~Sまでの七段階まであって、このランクがそのアイドルのおおまかな人気度を表すわけだ」
 「んで、お前らみたいな新人アイドルは自動的にFランクが割り当てられてるんだが、このランクをEに上げてもらう」

42: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:24:27.90 ID:rDtBqjKZ0
周子「ふーん ランク付けとか、意外と俗っぽいねーアイドル業界」

奏「ただランクをつけてるってわけじゃないんじゃない? 格を表すだけだったら、そんな大層な組織を作る必要がないもの」

P「鋭いな奏。実はアイドルランクは人気を表す目印の目的の他に、オーディションの応募条件にも使われているんだ」

周子「このオーディションはランクがどれぐらいないと受けられませーん的な?」

P「まあそんな感じだ」

43: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:25:05.02 ID:rDtBqjKZ0
奏「それで、ランクを上げるにはどうすればいいの?」

P「基本的にはファンの数だな、ファンの総数が規定以上になるとランクが上がる」

周子「じゃあ、地道にお仕事がんばってファン増やすとしましょうか」

44: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:26:05.66 ID:rDtBqjKZ0
P「まあそれも一つの手なんだが...今回お前らには特急券を手にしてもらう」

奏 周子「「特急券?」」

P「ランクアップの条件にはファンの数の他に、協会推薦ってのがある」
 「IRに『このアイドルは同ランクの他のアイドルとはもう格が違うな』って思わせれば、IR協会からランクアップの通知が来る」
 
奏「でも、私達みたいな新人が協会の目に留まる機会なんてあるの?」

P「時期に恵まれてな、ちょうど2週間後、あるオーディションが行われる、お前らにはそのオーディションの合格を目指してほしい」
 「それに合格できれば、まず間違いなく業界の目に留まるはずだ」

奏「そのオーディションって?」

45: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/22(金) 23:27:28.48 ID:rDtBqjKZ0
P「城ケ崎美嘉のライブのバックダンサー、それを決めるLIVEバトルオーディションだ!」

to be continued...

51: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:11:26.69 ID:zUpeftek0
Chapter2 「First Step」

52: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:12:14.58 ID:zUpeftek0
周子「城ケ崎美嘉って今話題のあの!?」

奏「城ケ崎美嘉...」

モデルからアイドルへ転向し、今話題沸騰中のカリスマギャル
最近よくテレビで取り上げられているし、学校でも毎日のように休み時間にクラスメイトが話題にしてるのが耳に入るくらい今人気のアイドル
まだアイドル業界に疎い私でも知っているレベルのあのアイドルの、バックダンサーを?

53: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:12:59.88 ID:zUpeftek0
奏「でもそのオーディション、私達受けられるの?今人気のアイドルなんだから、それ相応のランクが必要なんじゃない?」

P「いや、このオーディションはむしろ低ランク...Eランク以下が条件のオーディションなんだ」

周子「なんで?」

54: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:14:31.27 ID:zUpeftek0
P「バックダンサーのオーディションはメインのアイドルのランクより低いランクが条件になることが多いんだよ。」
 「下手に同等以上の実力のアイドルがバックダンサーになるとそっちにメインが食われることがあるからな」
 「城ケ崎美嘉のランクはDランク...だからEランクより下で探そうってわけさ」

奏「なるほど...」

55: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:14:59.54 ID:zUpeftek0
周子「まって、もう一個質問!」

P「LIVEバトルについてか?」

周子「そうそれ!さらっと流すところだったけど初耳だよ、なにそれ?」

P「オーディションによっては、複数のアイドルに同時にパフォーマンスで競わせて審査するんだ、それがLIVEバトル」

56: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:15:31.36 ID:zUpeftek0
競わせる...つまり

奏「審査員の目の奪い合いってことね」

P「そういうこと、本番に近い状況で競争させることで、より深く参加者の実力を見極めるって事さ」
 「パフォーマンスの完成度だけじゃなく、プレッシャー耐性、順応力の高さとかな」
 「そういうわけで、お前らにはこれから二週間、オーディションに向けてのレッスンに集中してもらう」

57: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:16:51.96 ID:zUpeftek0
周子「うわぁ、いきなりキツいの来たなぁ...」

P「無理言ってるつもりはないぞ、無茶振りはしてるけど」
 「実際、奏と周子の才能は既にその辺の駆け出しを優に超えてる、しっかり準備すれば一つ上のEランクアイドルとも渡り合えるだろう」

奏「あら、そこまで期待して貰えてるなら、少し燃えてくるわね」

周子「まっ、あたしも拾ってもらった恩あるし、できる限り頑張るよ」
  「最近事務仕事ばっかだったしねー、たまには体動かさないと」

58: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:18:05.53 ID:zUpeftek0
P「やる気になってくれたようで何よりだ。それじゃあ早速レッスンといこう」
 「今日はちゃんとトレーナーさんも呼んであるしな」

奏「あら?今日はプロデューサーさんがやるんじゃないの?」

P「昨日はテスト程度だから俺がやったけど、別に俺トレーナー資格持ってるわけじゃないしな」

周子「いつもは青木さんってトレーナーがレッスンしてくれてるんよ。Pさんの知り合いなんだって」

P「あっちも忙しい身だから、ウチに専属ってわけにはいかないんだけどな。今日は都合が合ったから、もうレッスン場で待機してもらってる」

奏「じゃあ、あんまり待たせるのも悪いし、早くいきましょうか」

59: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:19:15.43 ID:zUpeftek0
==================レッスン場====================

....まあ、なんだかんだでちょっと舐めていたのかもしれない
昨日も出来てたし、今回もそつなくこなせるだろうと、そう思っていたのだけど...

ベテトレ「速水!足が動いていないぞ!まだバテていい時間じゃない!」
「塩見!喉からじゃない、腹から声をだせ!」
「二人とももう一度やり直しだ!いくぞ!1、2、3!」


昨日のは本当にただのテストだったのね...
帰るときにはきっと鉄塊になってるわ、私...

60: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:20:41.95 ID:zUpeftek0
ベテトレ「今から10分休憩だ、10分後にもう一度最初から通すぞ」

周子「あ、青木さん...なんか今日めちゃくちゃキツくない...?」

ベテトレ「当然だ、二週間でLIVEバトルに勝てるようにするんだ。普通より激しいレッスンになるに決まっているだろう」
    「Pが言ってたように二人とも確かに素質はあるが、経験と体力が圧倒的に足りてない!よって二週間以内に最低限の基礎を身に着けてもらう!」    
    「今のうちに水分をとっておけ!次の休憩まで長いからな」

奏「み、水を飲める体力じゃないんだけど...」

周子「さ、最低限、これが、最低限...」




ベテトレ「10分経った!もう一度始めるぞ!」

周子「えぇっ!もう!?」

奏「あ、あと10分もらえないかしら...」

61: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:21:43.17 ID:zUpeftek0
~~~数時間後~~~

ベテトレ「今日のところはここまでだ、解散!」

お、終わった...
やっぱり、身体動かせないわ...

62: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:22:34.50 ID:zUpeftek0
P「お疲れ~....うっわーこりゃひっでぇ」

周子「Pさ~ん、聞いてないよこんなん...」

P「動かなくなるまでしごかれたのか、なるほどねぇ...お前ら、青木さんに気にいられたみたいだな」

奏「き、気にいられた...?」

P「あの人、期待してるアイドル程厳しくするんだよ、実際、さっき話した時お前らの事べた褒めしてたぞ」

63: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:23:30.80 ID:zUpeftek0
べた褒め?
レッスン中は罵倒されてた記憶しかないのだけど...

P「まだ駆け出しで体力は足りてないが、二人とも伸びしろがとんでもないってさ」
 「初日からここまで耐えられたの初めてだって、なんか喜んでたよ」

64: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:24:06.09 ID:zUpeftek0
周子「青木さんが喜んでるとこ...想像できないんだけど」

P「ホントだって、ほら、饅頭買ってきてやったから糖分補給しな」

周子「いや、プロデューサー、今饅頭とか食べる気力ないから...」

奏「右に同じよ...」

というか、今必要なのは水分と塩分ではないかしら?
饅頭なんて食べたら私達絶対干からびると思うのだけど...

P「...タクシー読んでやるから、今日はもう帰りな...」

65: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:25:21.23 ID:zUpeftek0
そして...



ベテトレ「足が体に追いついてないぞ!もう一度だ!」
    

「振付が適当すぎる!ロボットじゃないんだからもっと緩急をつけろ!」
    

「違う!もっと観客に目を向けろ!俯いて踊る馬鹿がいるか!」


地獄のようなレッスンは続き、ついにオーディション前日...

66: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:25:48.54 ID:zUpeftek0

周子「ハートはデコらず伝えるの~♪」
奏「本当の私をみてね~♪」

奏 周子「見てて~♪」



ベテトレ「よしっ!合格だ!」

67: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:26:43.22 ID:zUpeftek0
奏「!」

周子「つ、ついに...やったー!」

P「よくやったなお前ら!」

ベテトレ「ああ、正直想像以上だ。もうレッスンのあと動けなくなることもなくなったしな」

68: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:27:33.62 ID:zUpeftek0
つ、ついにやり遂げたのね...
慣れたとはいえ、まだ疲れが半端じゃない...けど

奏「今までにない高揚を感じるわ...ここまで本気になったの、生きてて初めてよ...」

ベテトレ「だがまだ終わりじゃないぞ、明日の本番、いい報告が聞けるよう期待している」

周子「そ、そっか まだ本番があったね...あたしたち、合格できるかなぁ」

69: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:28:29.94 ID:zUpeftek0
P「じゃあお前ら、明日の合格の為に今からいいところに連れてってやる。レッスンをやり切ったご褒美ついでにな」

奏「いいところ?」

P「ああ、これだ」

そういってプロデューサーさんは鞄からひらひらと紙きれを取りだして、私たちに差し出した
これ、チケットかしら....えっ!?

70: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:29:02.77 ID:zUpeftek0
奏「プロデューサーさん、これって!」

周子「城ケ崎美嘉のライブチケットじゃん!?」

P「今日のこのライブが、きっと明日のお前らの武器になる。」
 「だからお前らちゃんと見とけよ、アイドルってのが、どういう存在なのかを」

71: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:30:05.10 ID:zUpeftek0
==================ライブハウス=============================

中へ入ると、既にライブハウスの中はほとんど満員状態
プロデューサー曰くこれでもまだ小さいハコらしいけど、それでも2000人はいるらしい

奏「これだけの人間がたった一人の人間に合う為に集まっているのね...」

周子「ほんと、不思議な状況だね。何が皆をここまで駆り立てるんやろ」

P「見ればわかるさ。ほら、始まるぞ」

72: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:30:32.18 ID:zUpeftek0
会場が暗転し、どこからか音楽がが流れ始めた
それと同時に観客達もどよめきだす
そしてスポットライトが『彼女』に当たった途端、そのどよめきは

73: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:31:15.06 ID:zUpeftek0
???「みんなー!今日は集まってくれてありがとー★」


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
ミカアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



まるで台風のようなエネルギーの塊へと変貌した

74: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:31:48.62 ID:zUpeftek0
奏「なんて迫力...」

周子「凄い...なんかもう、凄いとしか言えない...」

75: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:32:25.36 ID:zUpeftek0
今ここにいる人間全員の聴覚は、彼女の歌に囚われてしまっていた
彼女がステップを踏むたびに、心が高鳴りだした
誰しもが、彼女から目を離せなくなっていた

今この会場は、全て城ケ崎美嘉という『アイドル』に支配されていた

76: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:32:52.35 ID:zUpeftek0




      奏 周子(これが、アイドル.....!!)

77: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:33:33.68 ID:zUpeftek0
Pさんもおっかない人やわぁ、狙ったのかはわかんないけど



別に本当にアイドルになんてなれなくても、事務員の仕事でぬくぬく過ごせればいいやって思ってたけど
ちょっとした恩返し程度のつもりとはいえ、あんだけキツいレッスンやり遂げてみて
あたしでもこんだけやり遂げられるんやなぁって少しだけ自分に自信が着いて
もしかしたら明日のオーディションで人生変わるのかもかもなぁって小さな希望も抱いて
その上でこんなもの見せられたら



ちょっと本気でアイドル目指したいって、思っちゃうやんなぁ?

78: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:34:04.18 ID:zUpeftek0
美嘉「皆ありがとー★今日はサイッコーに楽しかったよ!」
  「来週のライブも絶対見に来てねー★」


奏 周子「..........」

P「あれが今を駆けるアイドル...お前らは、どう思った?」

79: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:34:40.06 ID:zUpeftek0
奏 周子「..........」

P「ど、どうした二人とも黙りこんで...生きてるか?」

周子「奏ちゃん、多分あたしたち今、おんなじこと考えてるよね」

奏「えぇ、きっと...ねぇPさん」

P「なんだ?」

80: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/23(土) 21:35:40.47 ID:zUpeftek0
奏「見てて、明日私達、必ず勝つわ...そして」

奏 周子「「絶対、アイドルになる!」」




to be continued...

84: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:46:31.08 ID:XlWhQm4m0
朝七時、その時間に鳴るはずのアラームがよりも早く私はベッドを抜け出した
念のため予定より早い時間にセットしたはずなのに、遅刻するのがが不安だったのかしら?

それとも...





我慢できないくらいに、楽しみだったからかな?

85: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:48:07.81 ID:XlWhQm4m0
事務所に向かうと、そこでは既に周子とプロデューサーさんが待っていた

周子「奏ちゃんも早起きしちゃったん?」

奏「ええ、よっぽど今日が待ち遠しかったみたい」

周子「あたしもそんな感じかな。軽く事件だよ、あたしが早起きって」

P「時間に余裕を持つのはいいことさ、遅刻するよりはな」



プロデューサーさんの車に乗り込み、会場へと向かう

今日、この世界にまた新しいアイドルが生まれた


私と周子、そして私達二人のユニット

その名も...

86: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:48:35.29 ID:XlWhQm4m0



P「行くぞ、811プロ初のアイドルユニット」
 「『デュアルフルムーン』の初陣だ!」

87: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:49:16.28 ID:XlWhQm4m0



            Chapter3 「Big Eater」





88: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:51:03.48 ID:XlWhQm4m0
ユニットの名前が決まったのは、昨日の城ケ崎美嘉のライブが終わった後の事
事務所に戻って明日のスケジュールについて確認していた時の事だった

P「今日は解散の前に一つ、決めておかなければならないことがある」

周子「なに?」

P「お前らは明日、二人一組のアイドルユニットとしてオーディションに参加することになる」
 「つまり、ユニット名が必要なんだ」

周子「あぁ、ユニット名かー」
  「適当に『かなしゅー』とかじゃダメなん?」

奏「流石にそんなに適当じゃあ...ねぇ?」

89: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:52:23.79 ID:XlWhQm4m0
P「もちろんダメだぞ」

周子「なんで?結構語呂もいいと思うんだけど」
  「ユニット名ってそんな重要なん?」

P「ユニット名ってのは審査員の目に一番最初に入るものだ。それがいかにも適当な名前だったらその時点で印象悪くなる」
 「ジャージ着た人とスーツ着た人、どっちがパッと見で信用できそうかっていったら断然後者だろ?そういうことだよ」

周子「なるほどねぇ、じゃあちゃんと考えないとだめかぁ」

奏「Pさんは何か案ある?」

P「...『かな&しゅーこ』?」

奏「却下よ」

周子「てか、それほとんどあたしのパクリやん!?」

90: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:55:05.25 ID:XlWhQm4m0
P「だっていいのが全然思いつかねぇんだもん!俺昔からこういうの苦手だし!」」

周子「プロデューサーなんだからそこは頑張ってよ!」

P「いやーそういわれても...そうだ!奏はなんかあるか?」

奏「そうねぇ....」

確かに、急に言われてパッと思い付くようなものではない
でもこの二人に任せたらとんでもない名前になりそうだし...

91: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:56:29.06 ID:XlWhQm4m0
奏「そういえばさっきのライブを見て思ったのだけど、アイドルってまるで満月みたいよね」

周子「どういうこと?」

奏「さっきのライブハウス、暗かったし、人もいっぱいいたでしょ?でも、そんな状況でも、彼女はその場にいる人々全ての心を狂ったように燃え上がらせた」
 「きっとアイドルって、そういう存在なんだと思う。地球のどんな場所、どんな暗い夜の中でも人々の目を、思考を奪って支配する、満月のような存在」
 「そして、私もそういうアイドルに、満月のようなアイドルになりたいって、そう思った。」

 「だから...そうね、私と周子、二つの満月...」

92: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:57:05.05 ID:XlWhQm4m0
           




           『デュアルフルムーン』、なんてどうかしら?




93: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 16:58:32.63 ID:XlWhQm4m0
周子「いやー無事に決まって良かったねーほんと」

P「ああ、これなら審査員に悪い印象を与えることもないだろう」

奏「ええ、『かなしゅー』よりはいいと思うわ」

P「そうだな、ホントに何考えてたんだろうな周子」

周子「いや、Pさんは人のこと言えないでしょ!」

P「あー聞こえませーん!...まぁ結局、どんなにいいユニット名でも中身が伴ってなきゃ合格はできない」
 「お前ら、準備は大丈夫か?」

奏「準備か...そうね、心の準備は...やっぱりまだ緊張はある、かな?」


初めてのオーディションだもの、嫌でも緊張はして、心臓はバクバクと高鳴る...


94: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:00:38.64 ID:XlWhQm4m0
でも、恐怖はない


周子「大丈夫だよ奏ちゃん」
  「だって、あたしには奏ちゃんがいるし、奏ちゃんにはあたしがついてるし!」
  「それに、Pさんもちゃんと見ててくれるでしょ?」



そう、私達は一人じゃない

一人でレッスンを続けたわけでも、一人で戦いに挑むわけでもない





スカウトされる前、あの頃の、『普通の女の子』の速水奏には無かったもの

でも、今の『アイドル』の速水奏には、それがある


同じ道を、一緒に歩いてくれる仲間が
そして、私達を導いてくれる人が

95: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:01:48.18 ID:XlWhQm4m0
奏「一緒にレッスンをした周子と、素人の私たちに技術を叩き込んでくれたトレーナーさん
 「そして、この道へ導いてくれたプロデューサーさん」
 「一人じゃないって分かってる、だから、怖いものなんてないわ」

 「覚悟は、とうに出来てる」

P「...そうか」
 「それなら、期待してる。」

周子「じゃあ、期待に答えられたらご褒美ってことで、今日のご飯奢ってよ。お寿司食とかべたい気分なんだ」

P「いいぞ、合格出来たらそれくらい奢ってやる」










周子「回らないやつね」

P「回転寿司です」

周子「ケチー!」

96: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:03:30.54 ID:XlWhQm4m0
=========================オーディション会場===================================


周子「ここが会場...」

奏「思ったより普通の場所ね」

向かった先は、城ケ崎美嘉の所属している事務所、061プロダクションのあるビルの一室


奏「一応ライブするなら、何かしらステージでもあるのかと思ったけど」

P「流石にオーディションでそこまで予算かかる用意はしないだろ。061プロもそんなに大きい事務所ではないからな」

奏「あら、意外ね。あんな凄いアイドルがいるんだから大きな事務所かと思ってたのだけど」

P「逆に言えばあの子ぐらいしかパッとしたのが居ないっていうか...」

97: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:05:33.88 ID:XlWhQm4m0
周子「控室、思ったより人少ないね。てか、少なすぎない?」

確かに、私達含めても控室のアイドルは5人...あまりにも少ない
っていうかあの3人ずっと固まってるから多分ユニットよね?
ということは...

奏「ねぇ...もしかして私達含めて2ユニットしかいなくない?」

周子「いやまさか...だって、合格したらあの城ケ崎美嘉と踊れるんだよ!?」
  「あたし達だいぶ早く着いたし、皆まだ来てないだけとかじゃ?」

P「いや...それがそのまさからしい...」

奏 周子「ええっ!?」

な、何故?
あれだけの人気アイドルなんだから、もっと、それこそ数十人以上応募者がきてもおかしくないはず...

98: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:08:45.60 ID:XlWhQm4m0
P「『なんか少ないけどもしかして会場間違えてます?』ってさっき運営の人に聞いてみたんだけどさ」



運営(『間違えてませんよ、ただ...キャンセルが続出しまして』)



P「だってさ」

奏「キャンセルですって?」

周子「そりゃまたなんで?」

P「一週間くらい前まではやっぱ応募多かったんだけど、あのユニット...」
 「『ゴーイング娘』が応募した途端、皆キャンセルしちまったんだと」

奏「ゴーイング娘?」

周子「どっかで聞いたことがあるような...」

P「ゴーイング娘はEランクの中でもここ最近特に人気なユニット」
 「...おそらく、今一番Dランクに近いEランクユニットだ」

奏「そんな...」

つまり、私達より一つ上のランクの中でもトップクラスって事?
そんな相手とこれから戦うの...?

99: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:10:16.83 ID:XlWhQm4m0
P「勝てるのかって?」

奏「え?」

P「いや、今の聞いてビビったかなって」

奏「...いいえ」
 「負けるかもしれない、確かに、少しそう思った。」

 「でも...それ以上に、"勝ちたい"」

周子「そやねぇ...確かに手ごわい相手だけど、それでも勝ちたいって気持ちに変わりはないかな」
  「どんな相手でも、奏ちゃんと一緒に、ちゃんとアイドルになりたいもん。だから、負けるつもりはないかな」

P「...なんだ、お前ら、しっかり仕上がってたみたいだな。安心したよ」
 「じゃあ本番に備えて、お前らに今回の作戦とちょっとしたおまじないを教えとく」

奏「おまじない?」

P「なんだかんだ初めてのオーディションで緊張は嫌でもしてるだろ?それを解すおまじないだ」

100: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:11:40.79 ID:XlWhQm4m0
P「なあに簡単な話さ、我が社の社訓を思い出したまえ」

奏 周子「!」

P「人間、心に余裕がないときは何事もうまくいかないもんだ」
 「だから、こういう逆境の時こそ楽しむ心を忘れるな」

 「それさえ忘れなければ、きっとどんな時だって、最高の自分になれるはずさ...」

101: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:13:35.22 ID:XlWhQm4m0
周子「奏ちゃん」

奏「なぁに?」

周子「今日は、最高に楽しい日になるね。きっと」

奏「ふふっ...そうね」


ううん、"きっと"なんて曖昧じゃない。
今日は最高の一日だって、そう確信してる


周子「じゃあ、行こうか、奏ちゃん」

奏「えぇ、行きましょ、周子」



いつもテキトーに流れてぬくぬく生きるのがしゅーこちゃんの信条だけど
今日は、ちょっと真剣になるとしましょか!

102: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 17:19:15.56 ID:XlWhQm4m0
一端ここまででー、続きはまた夜に
なんでかなしゅーは公式で二人だけのユニットがないんや...フレしゅーとかなフレはあるのに


なお、扱いが悪くなりそうな登場人物は特にストーリー的に重要な立場じゃない限りは原作のアイドルを使わず今回のゴーイング娘の様に適当なオリキャラをその時その時で突っ込んでいこうと思います


104: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 22:50:12.05 ID:XlWhQm4m0
オリキャラは基本その時だけの使いきりなので多分大丈夫...のはず

それでは、Chapter3続き投下していきます

105: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 22:52:03.05 ID:XlWhQm4m0
Dに最も近いEランクアイドル

なんて世間では言われてるみたいだが、実はゴーイング娘の人気は何も全部実力ってわけじゃあねぇ
いろんなとこに金ばら撒いてゴリ押した"ハリボテ"ではある。
だがそれで十分だ、世間様からの評判を得るにはな

バカな民衆はマスコミや周りの評価に合わせて物事を評価する。
だからちょっとTV局やら出版社に金回して、いかにも人気アイドルっぽい宣伝をしてもらえば実力が伴わなくたって評価してくれる
ライバルになりそうな他の事務所のEランク共も、事務所のお偉いさんとちょっと「お話」すれば向こうが勝手にキャンセルしてくれる
Fランクのザコ共に至っては、ゴーイング娘の「看板」にビビってハナから逃げ出す
まあそりゃそうだ、負けるとわかってるオーディションを受けに来る奴はいない


そのはずだったんだが...まったく頭のおかしなな奴等もいたもんだ


106: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 22:53:01.88 ID:XlWhQm4m0
ド新人のFランクの癖して、我が社に歯向かおうなんて。
しかも聞けばまだ出来て3か月そこらの底辺事務所だっていうじゃねえか
そんな底辺が、資金力もコネも圧倒的に上のウチと相手になると本気で思ってんのかねぇ

...あれが向こうのプロデューサーか
どんな頭のイカれた奴か、ちょっと確かめてみるとするかねぇ



ゴーイング娘P(以下ゴP)「よぉ、あんたが811プロのプロデューサーか?」

P「そうですが...そういう貴方はゴーイング娘のプロデューサーですか?」

ゴP「そうだよ、これからお前らが敗北する相手さ」

P「まだ始まってすらいませんが?」

107: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 22:54:52.19 ID:XlWhQm4m0
ゴP「いーやもう終わってんの、ポッと出の事務所のポッと出アイドルが、俺たちに勝てるわけないだろうが」
  「それにしてもあのデュアルフルムーンとかいうユニットも可哀想だねぇ」
  「あんたみたいな頭のおかしいプロデューサーのせいで初めてのオーディションで無様に負けるんだから」

P「それは、あの子達の実力を甘く見過ぎですよ」

ゴP「実力ゥ?そんなもん意味ねぇよ」
  「所詮芸能界なんて金とコネ、それさえあればどんな女でもトップに押し上げられるのさ」
  「逆に、それがないお前らはこの先どうやったって売れない。分かるか?」

P「...なるほど、だからか」

ゴP「あぁ?」

108: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 22:58:11.10 ID:XlWhQm4m0
P「だからあんたのとこのアイドル、全然楽しそうじゃなかったんだなって」
 「さっき控室で見てた時、あの子達別に緊張してるようには見えなかったのに、なーんか表情暗いって思ってたんだよ」
 「そうやって事務所のゴリ押しと不正で売り出されてるのが分かってるから、折角アイドルとして活躍出来てるのに楽しめてないんだ」

ゴP「ハッ!何を言うかと思えば」
  「楽しみなんて必要ねえんだよ!アイドルは商品、ただ会社の為に売れることがプロダクションにとってのアイドルの存在価値なんだからな」

P「ハアァーーーー.......」

 「あんた、全然わかってねえな」

ゴP「なんだ、負け惜しみか?」

109: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:00:07.86 ID:XlWhQm4m0
      



          P「今日食われるのはあんた達って事だよ」





110: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:02:29.59 ID:XlWhQm4m0
ゴP「なんだと?」

P「あんたは分かってねえんだ、本当の『アイドル』ってもんが」
 「まあ審査を見てみろよ、そしたらわかるさ」




...こいつはとんだ馬鹿野郎だな
まぁいい、せいぜいイキっとけ底辺プロデューサー

111: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:07:03.47 ID:XlWhQm4m0
ライブバトルの審査は3回に分けて行われる
そして1回の審査が終わるごとに、その審査での得点を表す星が3科目5個づつ、計15の割り振りわけられ、その結果が公表される
この結果を踏まえて、審査終了ごとに作戦を考えて次の審査に臨むのがライブバトルの定石だ

そしてちょうど第一審査の結果が発表された
まぁこの結果を見ればあの底辺も力の差ってのを思い知るだろう

...そのはずだった

112: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:07:51.05 ID:XlWhQm4m0
ゴP「ど、どういうことだ!」

相手は底辺プロの底辺アイドルユニット一組

その上こっちより人数も少ないというどう考えても舐めてるとしか思えないやつらだ

なのに!



114: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:12:15.74 ID:XlWhQm4m0


    ゴーイング娘  デュアルフルムーン 
Da    ☆×2     ☆×3 

Vi    ☆×1     ☆×4 

Vo    ☆×2     ☆×3 
           
現在合計 ☆×5     ☆×10


ゴP「何故だ!?なぜ負けてる!?」

113: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:09:23.02 ID:XlWhQm4m0
P「おー、やるじゃんあいつら」

ゴP「クソッ、何やってんだあいつらは」

P「折角インターバルなんだしちゃんと指示出しに行ったらどうだ?」
 「第2、第3審査の結果次第では、まだ覆せるかもしれないぞ?」

ゴP「...チッ!」

言われるまでもなく、審査会場のゴーイング娘の元へ向かう


ゴP「おいてめぇら!何ヘマやらかしてんだ!」

ゴーイング娘1「ひっ!ぷ、プロデューサー...」

ゴーイング娘2「ごめんなさい...油断してました...」

ゴP「油断!?相手はFランクのド新人だぞ!?油断したって勝てる相手だろうが!」

ゴーイング娘3「で、でも...」

ゴP「...まぁいい、なら次の審査は本気でやれ」
  「あんな底辺共に負けたら...分かってるな?」

ゴ3「わ、分かりました」



これだけ釘を刺しとけば次は勝つだろう
ちょっとはやるみたいだが、奴らはどうせド新人
いくらゴリ押しで売り出されてるこいつらでも、素人に負けるほど安い実力じゃない



115: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:13:45.60 ID:XlWhQm4m0
P「なんか穏やかじゃない指示だったな」

ゴP「うるせぇ、そういうお前は行かなくていいのか?」

P「もう話してきたよ、く○寿司とかっ○寿司どっちがいいか」

ゴP「何の指示だ!?」

しかもどっちみち回転寿司じゃねぇか!?

P「今日勝ったら奢る約束してんだよ」

ゴP「...今のうちにいい気になってやがれ」
  「もう勝ったつもりみてぇだが、次の審査はこうはいかねぇぞ」

P「びっくらポンやりたいからく○寿司のほうがいいって」

ゴP「聞いてねぇよ!ていうか聞けよ!?」

116: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:15:43.10 ID:XlWhQm4m0
       第2審査結果

   ゴーイング娘  デュアルフルムーン
Da    ☆×0     ☆×5

Vi    ☆×2     ☆×3

Vo    ☆×1     ☆×4
          
現在合計 ☆×8     ☆×22


ゴP「はああああああああああああああ!?」

117: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:16:30.54 ID:XlWhQm4m0

どういうことだ!?
なんで、なんで!?

ゴP「Daの星が、全部取られてるッ!?」
  「何故だ!?てめぇ...一体どんな手を使いやがった!?」

P「あぁ?そんなの言わなくても分かるだろ?」

ゴP「ッ!」

そうだ、こいつの言う通り原因は分かってる
審査の途中、ゴ2がステップを踏み外しやがったのだ
それを皮切りにダンスはめちゃくちゃ、他のアピールも乱れた
その結果がこれだ。

118: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:19:01.35 ID:XlWhQm4m0
P「...いや、なんかちゃんとわかってなさそうだから教えてやる」
 「原因はあんただよ、あんた」

ゴP「あぁ?どういう意味だ?」

P「人は心が追い詰められてるときは何やったって失敗する」
 「格下に負けて焦ってる状況であんな怒鳴りつけたら、そりゃあうまくいかなくなるさ」

ゴP「舐めた口ききやがって...!!」

P「俺にキレるよりさっさとフォローに行ってやれよ、じゃないと次はDaの星どころじゃすまさねぇぞ?」

ゴP「...チッ!」



ふざけんな!俺のせいだと!
どう考えてもあいつらがあんなザコ共相手に腑抜けてるのが悪いんだろ!

再び釘を刺しに行くため、あいつらのところへ向かう

119: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:19:35.50 ID:XlWhQm4m0
ゴP「てめぇらぁ...なんだあのアピールは」

ゴ2「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

ゴ3「許して下さい...お願いします」

ゴP「うるせぇ!ごめんで済むわけねぇだろ!」

ゴ1「やめてよ!二人をいじめないで!」

ゴP「あぁ!生意気いうんじゃねぇ小娘!」



商品風情が舐めやがって...
このクソガキ、一遍痛い目見ねぇと分かんねえのか!?

120: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:20:40.71 ID:XlWhQm4m0
???「やめなよ」

ゴP「あぁ?」



周子「あんたがそうやって追い詰めるから、さっきからそっちの子達、全然上手くいってないじゃん」

奏「貴方、最低ね、自分の無能を棚上げして、女の子に手を上げようとするなんて」

ゴP「てめぇら...811プロの...」

周子「あたし達折角の初オーディションなんだから、楽しくやりたいんだよ」
  「だから、あんたはさっさと消えてくんない?邪魔なんだよね、あたしたちにとっても、ゴーイング娘にとっても」

ゴP「クソ、このガキッ!」

121: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:22:13.21 ID:XlWhQm4m0
P「おっとストップだ。相手のアイドルに手出したら反則負けだぞ?」

ゴP「てめぇ、放せ!」

P「あんたがおとなしく外野に引っ込んだらな」
「ほら、あんまりしつこいから審査員もめちゃくちゃ睨んでるぞ?」

ゴP「...クソッ!」

流石に暴れて反則負けにしたとなっちゃ首が危ういか...



P「ほら、さっさと戻るぞ。お前らは第3審査も頑張れよ」

奏「えぇ、任せて」

周子「じゃあねープロデューサーさん」

122: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:24:33.17 ID:XlWhQm4m0
やっといなくなったわあの男
プロデューサーって、ああいうのもいるのね...

ゴ1「あ、あの...」
ゴ2「ありがとうございます...」

周子「いーよ気にしなくて、あたし達もムカついてたからさ」

ゴ3「でも...助けてもらいましたし...」

奏「うーん...じゃあこうしましょ」
 「次の審査、あんな男の事は一端忘れて、このオーディションを精一杯楽しんでみてくれない?」

123: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:26:19.34 ID:XlWhQm4m0
ゴ1「楽しむ...?」

奏「そうよ、楽しんでちょうだい」
 「だって相手も楽しんでくれないと、私達も楽しくないもの」
 「それに、今を駆ける先輩アイドルの本気のパフォーマンスを、私達も見てみたいわ」

周子「心に余裕がないときはなんでも失敗するんだって」
  「だから、一端気持ちリセットして、このオーディションを思いっきり楽しんでみようよ!」

ゴ2「オーディションを...」

ゴ3「楽しむ...」




ゴ1「...わかりました!」

124: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:28:09.77 ID:XlWhQm4m0
周子「よし!じゃあ次の審査、期待してるからね、先輩!」

ゴ1「はい!私達の本気、見せます!」
  「そして次の星全部貰って、逆転しますから!」


あら...これは敵に塩を送り過ぎちゃったかしら?
でも...




奏 周子(こっちのほうが楽しい(わね!)(よねぇ!))

125: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:29:32.31 ID:XlWhQm4m0
流石、Eランクトップクラスのユニットね

ダンスもヴィジュアルも歌も、さっきまでとは比べ物にならないくらい力強い!
努力と経験に裏打ちされた、大迫力のアピールだわ!


審査員の目も、ゴーイング娘のパフォーマンスにどんどん惹かれていってる
このままだと、ホントに逆転されてしまうかも...

126: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:31:09.15 ID:XlWhQm4m0
だけど!



奏 (だからって、負ける気はない)

周子(こんな所じゃ、まだ終われない)



奏&周子(私(あたし)達は今日、アイドルになるんだから!!)

127: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:33:47.92 ID:XlWhQm4m0
奏(思い出せ、昨日のライブを)

周子(思い出せ、あの感動を)

このアピールに乗せて爆発させろ、私達の覚悟を!

アイドルになるって決めた、その覚悟を!


      

     奏&周子(これが、私達の全力!!!)

128: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:35:46.64 ID:XlWhQm4m0
 最終結果

   ゴーイング娘  デュアルフルムーン
Da    ☆×3     ☆×2

Vi    ☆×2     ☆×3

Vo    ☆×2     ☆×3
          
現在合計 ☆×15 ☆×30

129: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:36:51.81 ID:XlWhQm4m0
=============く○寿司===============

P「では、初オーディション合格を祝って!」

奏 周子「乾杯!」



周子「なんか湯のみで乾杯するって違和感あるわぁ」

P「しょうがねぇだろ、回転寿司なんだから」

130: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:39:48.03 ID:XlWhQm4m0
オーディションに合格した私達は、約束通りプロデューサーさんの奢りで回転寿司に来ていた



奏「それにしても、第3審査のゴーイング娘は素晴らしかったわ。最初からあの勢いでこられたら危なかったかも」

周子「終わった後もすごかったよ!あのアホデューサーに『私達、プロダクション辞めます!』って」

P「あのプロデューサー、会社に絞られるだろうなぁ」
 「人気上昇中のユニット逃がしちまったんだから、最悪首切られるかも」

奏「自業自得よ」


周子「ゴーイング娘、また会えるといいね」

P「アイドル続けてれば、きっとまたぶつかることもあるだろうさ」

131: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:41:45.11 ID:XlWhQm4m0
P「それにしても...マジで美味いな、久々にこんなうまいもの食った気がする」

奏「いや確かに美味しいことは美味しいけど、回転寿司でそこまで?普段何食べてるのよ」

周子「そういえばあたし、こうやって奢ってもらう時以外のPさんがカ○リーメイトと10秒チャージ以外食べてるとこ見たことないんだけど」

P「まあ普段そればっか食ってるからな、食事の時間もったいないし」

奏「いや、もっとちゃんと栄養取りなさいよ。いつか倒れるわよ?」

P「今度からそうするよ...それにしてもホント美味いな....」

132: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:44:07.36 ID:XlWhQm4m0
そうやって今日の事を振り返っていると、急に誰かに声をかけられた


???「貴方たちが『デュアルフルムーン』?」

奏「誰....って!」

周子「えっ!嘘!なんでこんなとこに!?」


私達に話しかけてきた人の名は...





美嘉「オーディション合格おめでとう★」

私達が来週バックダンサーとして出演するライブのメイン、『城ケ崎美嘉』!

133: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:48:54.66 ID:XlWhQm4m0
奏「貴方...城ケ崎さん?」

美嘉「美嘉でいいよ、あたしも奏って呼ぶねっ★」
  「さっき事務所でバックダンサーのオーディションが凄い白熱してたって聞いてね、その時近くのく○寿司に行くらしいって聞いたの」
  「だから、会いに来ちゃった!」

P「それでわざわざ会いにに来てくれたんですね。いやぁ光栄です城ケ崎さん!」

美嘉「だから美嘉でいいし、敬語じゃなくてもいいよ。堅苦しいの苦手だし」
  「それにしても...確かに二人とも凄い才能を感じる。あたしもうかうかしてると抜かれちゃいそうだな」

P「そんな、まだまだですよ。奏も周子も、熱くなりすぎて最後ステップ間違えてたし」

奏&周子「「えっ、ばれてたの!?」」

P「あったり前だろ。まぁ楽しんでるのは伝わってきたけどな」

134: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:53:13.82 ID:XlWhQm4m0
美嘉「でも見てみたかったな、二人のオーディション」

奏「ちゃんと来週、あなたのライブで見せてあげるわよ。ねっ?周子」

周子「もちろん!美嘉ちゃんも楽しみにしときやー」

美嘉「...うん、楽しみにしてるね★」
  「来週のあたしのライブも楽しんでくれると嬉しいな、それじゃ今度はライブ会場でね!」

周子「お寿司食べていったら?Pさんの奢りだよ?」

P「おい」

美嘉「いやーあたし明日早いから早く帰って休まないと、それじゃまたねー★」

周子「ばいばーい!」

奏「また来週逢いましょう」





...そうか、私達、あの美嘉と一緒に踊れるんだ...!

来週のライブが待ち遠しいわね!

135: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:57:08.31 ID:XlWhQm4m0
周子「か、奏ちゃん、まだやるの?」

奏「ええ、当たるまでやるわよ」

P「か、奏、俺もうそろそろきついんだけど...」

奏「もう少し頑張ってね、私も周子ももう食べられないから」

P「はやく...早く当たってくれびっ○らポン....」




だが、現実は非常だった

皿のカウンターが100を数えた頃、ついにプロデューサーがダウン

最後の望みをかけた一投は、"はずれ"の文字を虚しく踊らせるだけだった...

P(びっ○らポンって天井ねぇのか...?)

136: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/24(日) 23:58:21.30 ID:XlWhQm4m0
美嘉「楽しむ...か」
  「最後にお仕事が楽しいって思ったの、いつだっけ...?」
   
でも.....




美嘉「あたしがやらなきゃいけないんだから、頑張るしかないよね....」

137: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 00:00:29.41 ID:GtmaGAy20
『811プロから謎の超新星あらわる!?その名も『デュアルフルムーン』!』

『城ケ崎美嘉のライブに出演した811プロの新人アイドルユニット』
『彼女達は全くの新人でありながら、Eランク最大手ユニットゴーイング娘を下しバックダンサーの座を勝ち取り...』

『またこのライブで注目を集めたことから、デビューからわずか3日でEランクに昇格し...』



138: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 00:01:12.40 ID:GtmaGAy20
ビルのモニターはさっきからずっとこのニュースばかり


アイドル...811プロか...


アメリカに飽きて、日本に帰ってきてからも中々退屈な日常ばかりだったけど



???「アイドルか...どんな香りがするんだろ」


これは、ちょっと追及してみないとね❤




to be continued....

139: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 00:03:25.12 ID:GtmaGAy20
Chapter3終了したところで今日はここまで―

続きはまた明日の夜で!




アメリカ帰りの謎の少女...一体何ノ瀬志希なんだ....

140: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 00:59:42.84 ID:GtmaGAy20
プロローグ~Chapter3までの補足及びあらすじ(長いですが読まなくても特に問題はないです)

・プロローグ「Budding Fate」
P、奏をスカウト。ていうかデレステのメモリアルコミュ1そのまんま
なので特に語ることはなし。サブタイの意味は「芽生え始めた運命」

『速水 奏』
何かがあったらしく海で黄昏ていたが、この時悩んでた理由について公式の情報が少なすぎるので何があったのかはわからない
でも特にストーリーにその理由が絡むことはないので多分このssでは語られない

『P』
奏達のプロデューサー
と同時に811プロを設立し自ら社長の座についている
グラサンと深くかぶった帽子がトレードマークらしい

・Chapter1「Welcome to Happy Production!」
周子初登場、このssにおいてはアイドルだけじゃなく事務員も兼ねている
そして奏は筋肉痛。サブタイの意味はそのまんま「ようこそ811プロへ!」

『塩見周子』
奏より先に事務所に所属していたアイドル...兼事務員
正直事務員周子ってのがやりたかったというだけで811プロダクションが設立したばっかの事務所という設定になった
今は事務所近くのアパートに住んでいるが、部屋はPの隣らしい

『811プロダクション』
Pが設立した出来たてほやほやの芸能事務所
811の読みは「ハッピー」
外観は765プロを一回り大きくしてたるき亭の部分も事務所になっている感じ、レッスンルームもちゃんとある
しかし人数に対して建物が大きすぎて、使って無い部屋が多い

Chapter2「First Step」
このssにおいてのアイドルランクの解釈とか、オーディションのルールの説明回
ついでにベテトレさん登場、準レギュラーです
そしてベテトレさんの厳しいレッスンを乗り越えた奏と周子は、美嘉のライブを見て一層アイドルになるという決意を固めるのであった
やっぱ美嘉はすげぇよ...
サブタイの意味は「最初の一歩」、文字通りこのオーディションは811プロにとって最初の一歩なのだ


『ベテラントレーナー(青木さん)』
本名は公式設定より「青木 聖」
専属トレーナーではないのでレッスンの時はいつもいる訳ではないらしい
だがほぼ素人同然だった周子と奏を二週間で成長させる辺り、トレーナーとしての実力はとても高い

『城ケ崎 美嘉』
811プロではなく061プロ所属の先輩アイドル
設定を考えていた当初から、美嘉は先輩のカリスマアイドルと設定が決まっていた
今の奏と周子目標であり、憧れの存在でもある
書いてる側としては★を使うタイミングがよくわからないがどうすればいいんだろうか

Chapter3「Big Eater」
遂に迎えた初オーディション
協会推薦の説得力を上げるために相手は他の新人たちが逃げ出すレベルの格上に設定されたが、相手のPが無能だったおかげで結構あっさり勝ててしまった
あと奏さん、びっ○らポン20連敗(1回5皿なので100皿で20回)天井があるのかは知りません
サブタイの意味は「大物喰らい」、Fランクの新人が初オーディションでEランクの上位を倒すのはこの世界でも異例の出来事
その甲斐あってか奏と周子は無事協会推薦枠でEランクにランクアップした模様

『ゴP』
最初の敵ということでクッソ典型的な小悪党
担当が事務所の力で人気を出したのを良いことに天狗になっていたが、プロデューサーとしての実力は無い
オーディション終了後めでたく解雇、もう出ない

『ゴーイング娘』
こんなかませ役に原作アイドル当てたら担当Pに殺されかねないので急遽用意されたオリキャラ
その人気には事務所のゴリ押しによる面もあったが、彼女達のアイドルへかけた夢は本物だろう、ただプロデューサーが悪かった
最後に周子が再登場フラグを立てていたが、悲しい事にもう二度と出番はない

『???』
一体誰の事か全くわからない...ッ!

141: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:07:06.60 ID:GtmaGAy20
今からChapter4投下開始します

142: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:10:12.16 ID:GtmaGAy20
私達がEランクに上がってから一週間とちょっと
プロデューサーさんの見立て通り突如現れた超新星アイドルとして私と周子は業界の目に留まったらしく、多くの仕事が舞い込んできた

私はモデルやドラマのエキストラ、周子は食レポとかのローカル番組の仕事をメインにこなしている
そして時には、またあの時のように二人そろって先輩アイドルのライブのゲストやバックダンサーを務めたり...
アイドルになる前では考えられなかった様な忙しくも充実した日々を過ごしている

そんな日々を送っていたある朝、私達はPさんに、「プロダクションの今後の方針について話したいことがある」と呼び出された

143: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:11:39.40 ID:GtmaGAy20
P「本題に入る前にまずは二人にお礼を言っておく」
 「お前達のがんばりのおかげで、我が事務所は業界にも認知され始めて、かなり仕事が回るようになってきた」
 「ありがとな、奏、周子」

奏「私もプロデューサーに感謝してるわ、約束通り退屈な日常から私を連れだしてくれたこと」

周子「まあその分忙しくなっちゃったけどね、アイドルだけじゃなくて事務仕事もさ」

P「そういう意味でもホントに周子には感謝してるよ、ありがとな」

周子「いえいえ、どういたしまして♪」

P「んで本題なんだが、無事Eランクに上がって波に乗ってきてる今こそ、次の我が社の目標を発表したいと思う」

144: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:12:50.18 ID:GtmaGAy20
次の目標...それってやっぱり...



奏「Dランク昇格かしら?」

周子「まぁ、順当にいけばそうなるよねー」

P「残念、外れ」

奏「えっ?」

周子「でも、それ以外なんかある?注目浴びたとはいえまだEランクだし、そんな大きな番組のオーディションには出られないでしょ?」

P「いやまぁ、昇格も勿論目指したいんだけど...もう一つやっておきたいことがある」

奏「やっておきたいこと?」

145: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:13:41.23 ID:GtmaGAy20
           



              P「新しいアイドルのスカウトだ」





146: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:14:07.28 ID:GtmaGAy20
           




             Chapter4 「Come on New Stars!」





147: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:15:21.14 ID:GtmaGAy20
周子「新しい子雇うの?」

P「ああ、ウチも軌道に乗って、多少新規のアイドルを育てる余裕も出てきた」
 「やっぱり人の数は手札の数、いろんなタイプの子がいた方がより多くの仕事の依頼が来るようになるからな」
 「逆に人数が少ないと、事務所のイメージが硬くなりすぎて仕事の内容も偏って来る」
 「実際、ウチは周子と奏のクールっぽい雰囲気のイメージが強くなりすぎてきてて、既に方向性が偏り始めてるんだ」

148: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:17:51.18 ID:GtmaGAy20
確かに、最近似たような仕事が多いような気もしてきてたけど、成程ね


奏「どんな子を探すつもりなの?」

P「そうだなぁ...やっぱりつり合いを取るために、キュートで、元気なアッパータイプの娘が欲しいところなんだよな」
 「というわけで、しばらく俺はスカウトと営業に専念することになると思うから、あまりお前らの仕事に同伴は出来なくなると思う」
 
奏「大丈夫よ、私も最近は仕事慣れてきたし」

周子「あたしも自分の事は自分でなんとかできるから大丈夫だよー」

P「そうか?じゃあ今日のスケジュールを確認するぞ」

150: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:21:23.94 ID:GtmaGAy20
P「まず奏は11時からファッション雑誌のモデルが一つ、午後は周子と一緒にレッスンだ」
 「んで周子は奏が帰ってくるまで溜まってる事務仕事を頼む」
 「俺はテレビ局へ売り込みと、新人アイドルのスカウト」

奏「分かったわ、場所は渋谷の○△ビル前で合ってる?」

P「ちゃんと合ってるぞ、確かに慣れてきたみたいだな」

周子「しゅーこちゃんも了解でーす。書類とか溜まってたし、ちょっと片付けないとやばいよね」

P「電話番も頼むぞ、仕事の依頼の電話とかあるかもしれないからな」
 「分かんないことがあったら俺に連絡してくれ」

周子「はーい」




新しい目標を胸に、今日も811プロの一日が始まった

151: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:23:17.39 ID:GtmaGAy20
今日の撮影内容は女子高生の放課後がテーマ
確かもう一人一緒に撮影をするアイドルがいたはずだけど...



美嘉「あれっ、奏?」

奏「美嘉!久しぶりね」

美嘉「久しぶり!今日の共演者って奏だったんだね!」
  「一緒にライブしたの、一か月くらい前だっけ?」

奏「その位になるかしらね」

美嘉「そっかー、もうそんな経ったのかぁ」
  「最近ちょくちょく奏と周子ちゃんの話聞くよ?今期待されてる超新星だって★」

152: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:24:35.15 ID:GtmaGAy20
奏「超新星か...まだまだ駆け出しだけどね」

美嘉「いやー実際凄いよ、デビューからすぐこんな話題になることなかなかないよ?」

奏「そうなの?でも、私はまだここで満足する気はないわ。早く美嘉に追いつきたいしね」

美嘉「あたしに?」

奏「そうよ、美嘉はあたしたちの憧れだもの」
 「私はステージに立つ貴方の魅力に惹かれたからこそ、本気でアイドルになりたいと思ったんだから」

美嘉「そうなの!?嬉しいなぁ...」
  「じゃあ、あたしも奏ちゃんの憧れであれるようにもっと頑張らないとねっ★」

奏「えぇ、お互い頑張りましょ?」

153: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:26:29.63 ID:GtmaGAy20
「はいオッケーでーす!お疲れさまでした」

奏&美嘉「「お疲れさまでした!」」



監督「いやー今日はありがとう二人とも!想像以上にいい絵が撮れたよ!」

監督さんは興奮した様子でそう私達に告げた
私自身も、今日の撮影は会心の出来だったと思う
カメラを持っている人が今どういう画を欲しがっているか、雑誌を読む人の印象に残るにはどうすればいいか
今日ははそれが、手に取るように分かった

でも、今日私がここまで集中できたのはやっぱり...

154: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:27:51.46 ID:GtmaGAy20
奏「今日の撮影、隣に美嘉がいたからすごく集中できたわ。ありがとう、美嘉」

美嘉「私も奏ちゃんと一緒だからすっごく楽しかったよ!」
  「最近調子悪かったんだけど、奏ちゃんと会えて久々にいい仕事ができた気がする。ありがとねっ★」
  「あたしは次の仕事があるけど、奏ちゃんはこれからどうするの?」

奏「これから事務所に戻ってレッスンよ」
 「注目されてきたとはいえ、まだまだ経験不足だからもっと基礎を固めておかなきゃね」

美嘉「そっか、じゃあまたいつかね!」
  「またあたしのライブ見に来てねー★お客さんとしても共演としても大歓迎だから!」

奏「ええ、また会いましょ」

今日は美嘉にも会えたし撮影も上手く言って、本当にいい仕事だったわ
この高揚感、レッスンにぶつけに行かなくてはね!

155: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:31:37.37 ID:GtmaGAy20
美嘉「...奏ちゃん、頑張ってるなぁ」
  「あたしが、憧れかぁ...」

でも、今のあたしは、あの子の期待に応えられるのかなぁ...

今日は久々に奏ちゃんのおかげで楽しい仕事だったけど、最近お仕事を楽しく感じることがすごく減った
ここのところずっとランク昇格のチャンスもないし...



美嘉「いつも、今日くらい楽しく仕事できればいいんだけど...」
  「最近休んだの、いつだったっけ...?」

美嘉「あぁ...疲れたなぁ」








でも、パパにママ、莉嘉の為に、あたしは休んでなんかいられない

156: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:32:12.69 ID:GtmaGAy20
美嘉「...へこたれてなんて、いられないよね!」

よし行こう、次の現場に!

157: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:34:05.59 ID:GtmaGAy20
???「あれ?なんか落ちてる?何かのカード?」
   「よっと...カードは拾った!」
   「何のカードだろ?遊○王かな?ヴァ○スかな?どれどれ~...」
   

   「『芸能事務所 811プロダクション』...?」

158: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:35:25.80 ID:GtmaGAy20
P「ただいまぁ~.....」


レッスンが終わり、周子と一緒にプロデューサーさんが買い置きしていた饅頭をつまんでいると、営業に出てたプロデューサーさんが戻ってきた

だけど...


周子「Pさんどしたん?めっちゃ死んだ顔してるけど」

奏「営業が上手くいかなかったのかしら?」

P「いや、営業のほうは上手くいったんだ、何件か仕事もらえたよ」

周子「じゃあ良かったじゃん、なんでそんな凹んでるの?」

159: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:37:16.00 ID:GtmaGAy20
P「スカウトの方がな...全然ダメだった...」
 「街中でよさそうな子に片っ端から声かけても全部興味ないって断られるし、挙句の果てにお回りさんに職質されるし...」
「街中がダメなら養成所ならどうだって思って行ってみたんだけど、ティンとくる子は軒並み条件の良い大きいプロダクションからも声がかかっててさ」
 「ちょっと話題になったとはいえまだまだ小さいウチを選んでくれる子はいなかったよ...」

周子「あー...」


確かに、アイドル戦国時代なんて言われてる時代だもの
プロダクション同士の競争率も高いでしょうね...

160: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:38:04.26 ID:GtmaGAy20
P「ちくしょう...なんかいきなりアイドル志望の美少女が事務所に乗り込んでこねぇかなぁ...」

奏「そんな都合のいい話があるわけ...」



161: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:38:33.23 ID:GtmaGAy20
その時だった




???「たのもー!」

事務所の扉が勢いよく開き、知らない声が響く

162: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:39:31.54 ID:GtmaGAy20
???「ごきげんうるわしるぶぷれー?アイドルになりに来ました!面接お願いしまーす!」

P「 採 用 ! !」

???「ワーオ!秒速合格!フレちゃん選手、世界新記録更新だよー!」




周子「....あったね、都合の良い話...」

奏「奇跡って起こるものなのね....」

163: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:41:24.29 ID:GtmaGAy20
そう、彼女こそ811プロの3人目のアイドル

そのアイドルの名前は...




フレデリカ「てなわけで、たった今ここのアイドルになっちゃった、宮本フレデリカだよー!」
     「皆よろしくねー!」

164: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:42:38.67 ID:GtmaGAy20
速水奏のウワサ

・やたら年齢を間違えられるらしい


165: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:44:08.14 ID:GtmaGAy20
フレデリカ「自己紹介しまーす!」
     「あたし、宮本フレデリカでーす!歳は19で、今は短大でデザインのお勉強をしてまーす!呼びにくかったらフレちゃんでいいよー♪」

周子「変わった名前だね、ハーフ?」

フレデリカ「そうだよー、パパが日本人で、ママがフランス人のハーフなんだ♪」
     「でもアタシ、フランス語全然喋れないの!てへぺろ♪」

周子「フランスかー、どおりで可愛い見た目してると思ったわ」
  「んじゃアタシたちも自己紹介、あたしは塩見周子で、こっちは」

奏「速水奏よ。よろしく、でいいのかしら?811プロのアイドルになりに来たのよね?」

フレデリカ「そうだよー!これからよろしくねー♪」

166: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:45:16.20 ID:GtmaGAy20
周子「なんで811プロ選んだん?Pさんのスカウト?」

P「いや、見覚えがないな。こんな美人スカウトしたっけか...?」

フレデリカ「フレちゃんも覚えてないよー、初対面だからね♪」

奏「えっ、じゃあどうして?」



所属してる私が言うのもなんだけれど、アイドル志望なら今時811プロよりも条件が良いプロダクションは山ほどある
その中からわざわざウチを選ぶ理由って、一体...?

167: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:46:44.37 ID:GtmaGAy20
フレデリカ「ん~......ついカッとなってやったって感じかな?」

奏「カッとなって?」

周子「なんか志望動機っていうより、犯行動機だねー」

フレデリカ「そう、話は1時間前のフレちゃんに遡る...」
     「きまぐれに街を歩いていた宮本フレデリカは道端に怪しげな紙が落ちてるのを目撃したの」
     「そしてそれを拾ってみたら...なんと!名刺だったんだー!」


フレデリカはそう言いながらポケットから一枚の名刺を取り出した


P「ああ!?それ俺の名刺だ!」

周子「きっとスカウトしてるときに落としたんやねー」

168: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:51:23.77 ID:GtmaGAy20
フレデリカ「それで名刺を見てみたらここの住所が書いてあってね、思ったより近い場所だったし、これもきっと何かの運命!てな感じで、乗り込んじゃった♪」
     「それに、アイドルって皆を笑顔にする仕事でしょ?だったら、折角ママから貰った自慢のルックス、活かさない手はないよね!」

P「ああもちろん!そのルックス、アイドルにすっごく向いてるぞ!」
 「ぜひ、ぜひウチのプロダクションでアイドルになってくれ!」

周子「ちょっ!Pさんはしゃぎすぎ!」
  「急に大声出されるとびっくりするじゃん、Pさんの声よく響くんだから」

P「す、すまん」

奏「少し落ち着きなさい、はしゃぎたくなる気持ちは分からないでもないけど」



何せ本当にアイドル志望の子が飛び込んできて、しかも飛び込んできた子はぱっちり開いた瞳とフランス由来のキュートなルックスの持ち主
そして性格も望んでいた元気でアッパーときた

そんな奇跡が本当に起こったんだから、まあ子供のようにはしゃぐのも無理はない

169: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:52:58.08 ID:GtmaGAy20
フレ「それでそれでー?結局あたしアイドルになれるのー?」

P「もちろん大歓迎さ!なぁ?」

周子「意義なーし!」

奏「私もないわ。これからよろしくね、フレデリカ」

フレデリカ「やったー!よろしくねーみんな!」

P「よし!じゃあ歓迎会もかねて今日は俺が夕飯奢ってやる!」




周子「マジで!?今焼き肉奢ってくれるって言った!?」

P「言ってない、ファミレスとかで...」

フレデリカ「わーい!焼き肉屋なら近くにいいところ知ってるよー!パフェが美味しいんだってー♪」

P「いや肉じゃねえのかよ、ていうかマジで焼肉なの?4人分?」 
  
奏「あら、歓迎会なんだから豪勢にやらないと、ねっ?」

P「アッハイ...」

奏「ふふっ、ごちそうさま❤」

周フレ「「ゴチになりまーす!」」

170: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:54:51.39 ID:GtmaGAy20
その後向かった焼肉屋は実はちょっと高級な店だったらしい
値段を見て、やっぱり私達も少し払ったほうがいいのではと3人でこっそり話し合っていたのだけれど...


P「なんだ、思ったより安いじゃん。拍子抜けだわ」

と、結局プロデューサーさんさんが全部払ってしまった



プロデューサーさん、なんか金銭感覚おかしくない?

事務所、まだそこまで儲けが出てるわけではないと思うのだけれど...

171: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:56:30.98 ID:GtmaGAy20
次の日、フレちゃんの初レッスンが行われた
...だけど



ベテトレ「おい宮本ッ!ダンスを勝手にアレンジするんじゃない!」

フレデリカ「んー?じゃあこっちのほうがいいかな~?」
     「タンタンターンでクルっとしてキメッ♪」

ベテトレ「違う!そもそも手本通りにやれと言っているんだ!」

フレデリカ「お手本通りねー、わかったよ!」

ベテトレ「まったく...もう一度いくぞ!ハイ、ワン、ツー、ワン、ツー、ワンツースリーで」

フレデリカ「キメデリカ!」ビシィ!

ベテトレ「だから違うッ!!!」




まあ所謂、「問題児」ね...

172: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:57:17.93 ID:GtmaGAy20
さっきからずっと彼女はトレーナーさんの指示に反して勝手にアレンジを加えては怒られるのを繰り返してる

ボーカルレッスンではフレデリカソングなる鼻歌を急にに差し込んだり、ダンスも所々で変なキメポーズを取ったり...

気まぐれな野良猫を見てる気分だわ



でも...


周子「不思議だねぇ」

奏「えぇ、あんなにめちゃくちゃなのに、何故かイラつかない...むしろ心地よいというか...」

173: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/25(月) 23:58:51.29 ID:GtmaGAy20
P「ただむちゃくちゃなパフォーマンスをしてるわけでは無いってことだろうな」
 「きっと、自分と自分を見る人がどうすれば楽しくなれるか、それを頭の中で常に考えてるんだろう」
 「無意識なのかわざとやってるかは分からないが、どっちにしろアイドルとして大事なことをちゃんとわかってるって事だな」

周子「そうやねぇ、実際青木さんもなんだかんだツッコミ続けてるだけで本気で止めに入ってないしね」

P「そうだな、あの人本気でキレると正座させて一時間くらい説教するもんな...」

奏「そうなの?...というか、まるで経験したような口ぶりだけど」

周子「奏ちゃんが来る前に一度ね...あれはもう二度と経験したくないよ...」

奏「あら、そう...」



周子がここまで怯える程の光景...
ちょっと見てみたかったわね...

174: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:00:00.74 ID:n3qMAkef0
P「それにしても、型に嵌らない独特なテンションにあのアドリブ力...」
 「これ...あの仕事ピッタリなんじゃないか...?」

周子「どしたんPさん?」

P「ちょっと出かけてくる、お前らは引き続きレッスン受けててくれな」

周子「?...まあいいや、行ってらっしゃーい」

P「ああ、行ってくる」


175: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:00:47.40 ID:n3qMAkef0
トゥルルルルルルルルル....

P「...どうも!811プロのPと申します」
 「はい、昨日伺った例のお仕事の件なのですが...まだ見つかってない?よかった!」
 「実は、どうしても見てほしい映像があるのですが...はい、今すぐそちらに向かわせていただきます」

176: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:01:21.78 ID:n3qMAkef0
P「ただいまー」

奏「お帰りなさい、プロデューサーさん」

周子「それで、どこ行ってたの?」

P「ちょっとばかし心当たりのあった所にフレデリカの売り込みをな...そしてその結果!」
 「なんと!フレデリカの初仕事を頂きました!」

フレデリカ「ホント!?」

周子「やるじゃんPさん!」

177: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:02:11.58 ID:n3qMAkef0
奏「それで、その仕事って?」

P「ローカルだが、ある芸人コンビと一緒のグルメ番組だ」

周子「えっ、いきなりテレビ!?」

フレデリカ「ワーオ!最初からクライマックスだよ!」

奏「でも、テレビ番組の出演って普通まずオーディションがあるんじゃ...?」


ローカルとはいえ、テレビ出演というのはアイドルにとって名前を売るための最も大きな手段

だからこそ、出演するためには多くのアイドルが参加する倍率の高いオーディションを受ける必要があるはずなのだけれど...

178: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:03:42.42 ID:n3qMAkef0
P「この前周子が○○局のローカル番組に出演しただろ?その時のディレクターさんがウチの事務所の事をえらい気にいってくれたみたいでな」
 「今度もウチのアイドルを使いたいって新しい番組の話をされたんだけれど、奏と周子のイメージが番組に合わないからって結局見送りになってたんだよ」

周子「あ~前言ってた仕事の偏りって、こういう事か...」

P「でも、今日のフレデリカのレッスンを見て、この子のイメージなら合うんじゃないかって録画してたレッスン映像を持ちこんでみたんだ」
 「そしたら見事ディレクターさんの心を掴めてな、是非この子を使わせてほしいって言ってもらえたのさ」

奏「成程、人の数は手札の数って事ね」
 「手札が多ければ多いほど、取れる選択肢は広くなる...」

P「そういう事だ」


一人の仕事が他の人の仕事につながり、また他の人へとつながっていく...
確かに、プロデューサーさんの言葉は正しかったみたいね

179: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:04:22.33 ID:n3qMAkef0
フレデリカ「やったー!ありがとプロデューサーさん!周子ちゃん!」

周子「えっ?あたしも?」

フレデリカ「だって、アタシにこの仕事来たのって周子ちゃんが前にお仕事を頑張ってくれたからでしょ?」
     「だから、フレちゃんのテレビデビューは、周子ちゃんのおかげでもあるのだー!」

P「ああ、お前のおかげだ周子」

奏「お手柄ね、周子」

周子「いやーなんか照れるなあ...」

180: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:06:29.68 ID:n3qMAkef0
P「というわけだ、明後日撮影だから頑張れよフレデリカ!」

フレデリカ「うん!フレちゃんにおまかせビシソワーズ!」

周子「明後日って、あたしたちはどっちもお仕事だったよね?」

P「ああ、二人ともドラマのエキストラと雑誌インタビューがある」
 「そして俺はフレデリカの初仕事に同伴だ。流石に初めての仕事にはついててやらんとな」

奏「ええ、二人とも頑張ってきてね?」

フレデリカ「うん!フレちゃん頑張る!」

P「期待してるぞ、フレデリカ」

181: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:09:40.36 ID:n3qMAkef0
フンフンフフーン、フレデリカー♪


えへへ、分かっちゃった?そうなの、すっごく良いことがあったんだ!

ななな、なんと!アタシ今度テレビに出てくるのー!

同じ事務所の皆が頑張ってくれたから、アタシにもお仕事が来たんだー!



奏ちゃんにしゅーこちゃん、それにプロデューサー

いい友達がいっぱい出来てアタシすっごくご機嫌なの!

ママも、明後日はテレビでフレちゃんが立派にアイドルやってるとこ、絶対見てねー!



あれ?でも明後日収録だけど放送するのは明後日じゃないんだっけ?
まあいいや!楽しみだなー♪

182: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:10:43.32 ID:n3qMAkef0
~~~~当日、撮影現場~~~~


P「それでは、今日はよろしくお願いします」

フレデリカ「よろしくお願しるぶぷれー♪」

ディレクター(以下D表記)「こちらこそ、よろしく頼むよ」

183: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:13:07.09 ID:n3qMAkef0
D「それにしても、塩見さんといい宮本君といい、君は一体どこからこんな逸材を拾ってくるんだい?」
 「先日出来たばかりの事務所では人脈も資金も厳しいだろう?何かコツでもあるのかね?」

P「いやいや、コツなんてないですよ、ただ運が良かっただけです。」
 「この子も、つい先日色々な偶然が重なってウチに乗り込んでくれただけで、私がやったことなどなにもありません。」
 「それより、彼女にスタッフの皆さんへ挨拶をさせておきたいのですが」

184: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:14:23.74 ID:n3qMAkef0
D「挨拶?」

フレデリカ「うん!だって今日の撮影の為にこんなに人が集まってくれてるんだもん!」
     「よろしくーとか、ありがとーとか、しるぶぷれーとか、挨拶はしっかりしておきたいんだー♪」

D「成程、いい心がけだ!スタッフもこんな美人に声をかけられたら士気も上がるだろう」
 「案内するよ、着いてきなさい」

フレデリカ「はーい!行ってくるねプロデューサー♪」

P「ああ、張り切って行ってこい!」

185: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:17:12.42 ID:n3qMAkef0
P「さて、俺は一応今日の流れを確認しておくかな...」


???「ねぇねぇ、キミ」

P「ん?俺か?」

???「そうそう、キミだよ」
   「キミイイ匂いするねー、一体ナニモノ?」

P「ただのしがないプロデューサーだよ。ほら、名刺どうぞ」

???「ふむふむ...芸能事務所811プロダクションプロデューサー兼社長...」
   「へー、じゃあさっきの子ってアイドルなんだー!おもしろそー!」

P「そうだよ、あの子これからめちゃくちゃ売れる予定だから、今のうちにファンになっとくのをお勧めする」
 「ていうか、君は一体...?」

???「あたし?あたしはねぇ」




志希「一ノ瀬志希、ふつーのjkだよ。志希ちゃんってよんでねー♪」



to be continued...

186: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 00:26:24.56 ID:n3qMAkef0
次回予告!

突如地球に襲来した謎の生物、「UEKI」

地球に降り立ったUEKIは、人類を滅ぼし地球をわがものとすべく東京都心に大量のスギ花粉テロをぶちまける!
もはや人類に未来はないと誰もが諦めたその時、一人の少女がUEKIと心を通わせた!


フレデリカ「オー!メルシージュテームしるぶぷれー?」


そして少女は、UEKIの地球侵略に隠されたさらなる陰謀を知ることになる!
果たしてその陰謀とは!?


志希「正解は...じゃじゃん!一ノ瀬志希でーす!」



次回!Chapter5 「Golden Perfume」

志希フレ「「次回もお楽しみに!」」






なお、本編は予告と一部異なる場合がございます



189: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 22:45:41.63 ID:n3qMAkef0
Chapter5投下していきます


190: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 22:49:50.52 ID:n3qMAkef0
最近見つけた『アイドル』っていう面白そうな観察対象
あたしはそれを追及するためにアイドルになるきっかけを探していた

ビルのモニターであの二人を見てから数日経ったお昼時、あたしの鼻が何かを嗅ぎ取った
その匂いを辿ってみると、なにやら撮影器具っぽいのを持った人が慌ただしく何かを準備する現場を見つけた
でも、この面白そうな匂いはこの人達の物じゃない。更にそのちょっと奥で話しているスーツのサラリーマンと金髪の女の子へと続いていた

あれはもしかして...にゃははー♪

191: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 22:51:41.12 ID:n3qMAkef0
スーツの人のほうが一人になったタイミングを見計らってあたしは声をかけた


志希「ねぇねぇ、キミ」

P「ん?俺か?」


あたしの呼びかけに振り返るこの人が、さっきの匂いの出どころであることを改めて確認する


志希 「そうそう、キミだよ」
   「イイ匂いするねーキミ、ナニモノ?」

P「ただのしがないプロデューサーだよ」
 「ほい、名刺」

192: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 22:52:55.33 ID:n3qMAkef0
志希 「ふむふむ...芸能事務所811プロダクションプロデューサー兼社長...」
   「へー、じゃあさっきの子、アイドルなんだー!おもしろそー!」

一応知らないふりをしておいたけど、あたしはさっきの匂いでさっきの子がアイドルであることもこの人がそのプロデューサーであることも察していた
しかも、あの時モニター越しにあたしの興味を引いた811プロときてる。

これを逃す手はないよね~♪

193: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 22:54:13.01 ID:n3qMAkef0
志希「ところでキミ、いい匂いしてるって事はお仕事たのしーんでしょ?」

P 「あーうん...まあ楽しいかな」

志希「じゃあさじゃあさ、アタシにもアイドル教えて教えて~♪面白いことならあたしもできると思うな!」

P「おっ!アイドル志望か!?いいぞいいぞ、大歓迎だ!」


おっと、意外とあっさり。というか全然疑ってないねこれ
まああたしとしては好都合なんだけど、この人詐欺とかに簡単に引っかかるタイプじゃないかな~?


P「じゃあとりあえずこの撮影終わるまで待っててくれるか?終わったら事務所に連れて...」

志希「どうしたの?」

P「いや、なんか現場のほうが騒がしいなって...ちょっと見てくるわ」

志希「ならあたしもいくよ。アイドルの仕事がどんなものか見てみたいしさ」

P「分かった、でもあまり離れないでね」

194: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 22:57:23.63 ID:n3qMAkef0
P「あの、どうかしましたか?」

D「ああP君、大変なことになった!」
 「今日のメインの予定だった891プロの芸人が、急な病気で来れなくなってしまったんだ」

P「えぇっ!?じゃあ撮影は延期...?」

D「いや、そうもいかないんだ」
 「実は今日紹介する商品の目玉に、明日の放送から3日間の期間限定スイーツがあってね...」

P「3日間限定!?じゃあ編集の時間も考えたら今日を逃すと間に合わないじゃないですか!」

D「ああ、だからフレデリカ君一人でもやってもらうしかない。あらかじめ用意された台本と流れをごっそり変更することになるが...」

P「それはいくらアドリブ力の高いフレデリカでも厳しいですね、初仕事ですし...」
 「誰かウチから芸人さんの代役を...いや、奏も周子も今日は一日別の仕事か...」

D「本当に困ったことになった。何かいいい手はないものか....」

195: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 22:58:32.25 ID:n3qMAkef0
D「...ところで、さっきから宮本君と話しているあの子は誰だい?君にくっついて来ていたが」

P「えっ?...志希!?いつの間に!?」
 「すいません、すぐに引っ込むよう言いにいきま...Dさん」

D「なんだい?」

P「こんな事態になってしまったのはもうしょうがない。嘆いても結果は変わりません」
 「それならいっそ、博打に出てみません?」

D「博打?」

P「ええ、ちょうどいい代役が見つかったことですし、ね?」

196: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 22:59:25.64 ID:n3qMAkef0
プロデューサーにくっついて現場に潜り込んでみたら、さっきのアイドルの子をはっけ~ん!

プロデューサーの話長くなりそうだし、ちょっと話しかけてこよ~と♪



志希「Bonjour,Comment tu t'appells?」

フレデリカ「オー!メルシージュテームしるぶぷれー?」


....?

あれ?何か聞き間違えたかな?

197: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:01:49.57 ID:n3qMAkef0
フレデリカ「ごめんねー、アタシフランス語全然喋れないの♪」

志希「なーんだ!日本語ペラペラじゃん♪」

フレデリカ「そうだよー!フレちゃんはメイドインジャパンなの!生まれはパリなんだけどね♪」

志希「パリか~あたし昔エッフェル塔見に行ったことあるよ、もう10年以上前だけど」

フレデリカ「ホント!?それならアタシもまだフランスにいた頃かもしれないなー」

志希「じゃああたしたち、昔あったこともあるかもしれないねー」

フレデリカ「なんか運命感じちゃうね!そんなフレちゃんの運命の相手のあなたの名前はなーんだ?」

志希「正解は...じゃじゃん!一ノ瀬志希でーす!」

フレデリカ「ワーオ!いい名前♪」

志希「ちなみにフレちゃんの名前は?」

フレデリカ「宮本フレデリカだよー!よろしくね♪」

志希「よろしくね、フレちゃん♪」

198: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:03:13.17 ID:n3qMAkef0
志希「フレちゃんこれから番組の撮影なんでしょ?頑張ってね!」

フレデリカ「うーん、でももしかしたら中止になっちゃうかもしれないんだー」

志希「えっ...なんで『いや、このまま続行するよ』」

P「ちょうどいい代役が見つかったからな、このまま撮影を続行することになった」
 「Dさん、この子はこっそり仕事を見学しに来てたウチのアイドルです。どうでしょうか?」

D「うむ、ルックスはばっちり。それに宮本さんとも波長が合うようだ。任せてみよう」



...!

まさか代役って!?

199: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:04:32.50 ID:n3qMAkef0
志希「なるほどねー、所属して数分でお仕事獲得かー。面白いねーキミ!」

フレデリカ「えっ!志希ちゃんとお仕事できるの?やったー!」
     「ていうか、志希ちゃんも811プロのアイドルだったんだねー!もしかして、ウチの秘密兵器ってやつ?」

P「ああ、ついさっきウチに入ってきた最新兵器さ」

志希「でもいいのかにゃー?アイドルなり立てほやほやのあたしを使っちゃって?」

P「俺は無茶振りはしても無理なことは言わないぞ」
 「お前たち二人が組めば不可能じゃないと思うから賭ける。それだけさ」

D「私もどうせ没にするくらいなら、君たちに賭けてみたい。先ほどの君たちを見て、そう思えたからな」

P「大丈夫、責任は俺たちがとるさ。だから二人とも折角のテレビ撮影、楽しんでおいで」

フレデリカ「うん!志希ちゃんと一緒なら大丈夫!ねっ、志希ちゃん!」

志希「うん!一緒にがんばろフレちゃん!」

200: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:07:22.21 ID:n3qMAkef0
P「じゃあ、撮影中にカメラさん達が使うサインを確認しておくぞ。」

志希フレ「「サイン?」」

P「収録中にスタッフの声が入るとマズイだろ?基本はカンペでやるけどどうしても手が空かずに書いてる暇がない時もあるからな。そういうときに使うハンドサインだ」
 「これは話を続けてOKのサインで、これは目線を向けて欲しいときのサインで....」

201: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:08:06.97 ID:n3qMAkef0
カメラマン「ではカウント入りまーす!3、2、1、スタート!」




志希「始まりました、宮本さん。この度はお世話になります。一緒に頑張りましょう。」

フレデリカ「一ノ瀬さん、こちらこそよろしくお願いします。楽しみましょう。」

志希「わーい!楽しもうねー!」

フレデリカ「イエーイ!」

202: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:08:47.12 ID:n3qMAkef0
志希「それでそれでー、今日のフレちゃんはどんなフレちゃんなの~?」

フレデリカ「今日はねー、この町の人気のスイーツを紹介する新人アイドルフレデリカなんだよー♪」

志希「わぁ奇遇ー!あたしもとれたてピチピチのアイドルとして、気になる香りをリサーチするんだー♪」

フレデリカ「すごーい!こんなに気が合うなんてアタシ達、まるで双子だねー♪」
     「てなわけで、この番組は仲良し双子アイドルのあたし達が!」

志希「素敵なスイーツを画面の前のキミたちの視覚野にお届けするよー!よろしくねー!」

フレデリカ「よーし!じゃあ志希ちゃん、早速お店を探すよー!」

志希「はーい!探し物は志希ちゃんのギフテッドなお鼻におまかせー!」
  「ハスハス...あっちからいい匂いがするー!」

フレデリカ「すごーい!名探偵志希ちゃんだね!」

志希「じっちゃんの名にかけて!ってやつだね♪」
  「それじゃあ気になるあの香りを目指してレッツゴー!」

203: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:09:56.61 ID:n3qMAkef0
P「とりあえず出だしは大丈夫そうですね」

D「ああ、開幕のあの挨拶は驚いたが、中々どうして引き込まれる」
 「そしてフワフワとした会話のようで、その中にきっちり今日の趣旨をしっかり盛り込んでいる」
 「もしかして、君が会話の内容を指示したのかい?」

P「いいえ、あれは彼女たちの完全なアドリブです」

D「なんと!」
 
P「もしかしたらあの子達には、最初から台本なんて必要なかったのかもしれませんね」
 「だってあの子達、めちゃくちゃプレッシャーかかる状況のはずなのに、しっかり笑って楽しめてますもの」

D「確かに、彼女たちならこの状況を変えてくれるかもしれない」
 「頼むよ二人とも、どうか撮影を成功させてくれ...!」

204: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:11:13.64 ID:n3qMAkef0
志希「フレちゃんあれ見てー!変な看板!」

フレデリカ「すごーい!たい焼きが空泳いでるよー!」

志希「毎日毎日僕らは鉄板の~♪上で焼かれていやになっちゃうよ♪」

フレデリカ「ところがどっこい!なんとここのたい焼き、鉄板使わないで作ってるんだってー!」

志希「なにそれー!どんな化学反応なんだろ?あたしすっごく興味あるー!」
  「というわけでー...おじさーん!ここのたい焼きってどうやって作ってるのー!?」

鯛焼き屋「おう、ウチのたい焼きはな....」

205: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:12:58.32 ID:n3qMAkef0
鯛焼き屋「......てな感じで作った記事でアイスを包んでるんだ。つまり、鯛焼きならぬ鯛冷やしってワケ!」
    「というわけでお一つもってけ!」

志希「わーい!ありがとー!」

フレデリカ「おじさん、メルシー♪」

鯛焼き屋「ところでそっちのお嬢ちゃん、よくあんな昔の歌知ってたな。俺がまだ若い頃に流行ったんだよ、懐かしいなぁ」

志希「昔ママが歌ってたんだー♪」
  「ママ、たい焼きがすごく好きだったからよく買ってきてくれて、その時によく歌ってくれたんだー!」

フレデリカ「志希ちゃんのママは、歌が大好きだったんだね!」

鯛焼き屋「なるほどねぇ、お嬢ちゃんにとっても思い出の歌ってワケか」

志希「『も』ってことはおじさんも?」

鯛焼き屋「ああ、俺も昔この歌を聞いてね.....」


206: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:14:09.09 ID:n3qMAkef0
D「よし!店主との会話も上手く弾ませているな」
 「というか一ノ瀬君、とても歌が上手いね!本当に新人か!?」

P「これは嬉しい誤算ですね。想像以上にいい拾いものをしました」

D「P君、君にはもしかして幸運の女神でもついているのかい?」

P「...ええ、そうかもしれません」

207: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:15:12.84 ID:n3qMAkef0
その後も、あたしとフレちゃんの撮影は順調に進み、最後の目玉スイーツの紹介に入っていた

クレープ屋「えーというわけでですね、この『漢のスーパーバニラヨーグルトクレープ』は明後日から3日間限定で...」



これで撮影は無事終了、その場の誰もがそう確信した






その時だった

208: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:16:36.03 ID:n3qMAkef0
あたしの鼻があの『匂い』を嗅ぎつけた

今まで何度も嗅いだことのある『匂い』

それを嗅ぎ取るのはいつも、あたしにとって都合の悪いとき
あたしに敵意を向ける人間から発せられる匂いだった








___ヤバいッ!?

209: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:18:37.77 ID:n3qMAkef0
DQN1「オイオイお前らよぉ?誰の許可取ってこんなとこで撮影なんてしてんだ?」

DQN2「ここは俺たちの縄張りなんだよ、クソ邪魔だからさっさと失せろや!」

クレープ屋「な、なんですか貴方たちは!」

DQN1「なんだテメェ...?俺たちになんか文句あんのか!?」

クレープ屋「ひっ....」






まずいね、これ...


このままこの男たちを放置すれば収録は台無しだし、かといって追っ払うことも...
一応持っておいたあの薬を...ダメだ、追い払うどころじゃすまないグロテスクな光景をお茶の間に届けることになっちゃう
それにそもそも、こんなとこカメラに入っちゃったらもうどの道修正効かないんじゃ...

...もうっ!こんな時に限ってあたしの頭は役に立たないんだから!





....えっ?


志希「フレちゃん....?」

210: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:19:30.92 ID:n3qMAkef0
P「しまった!」

D「な、なんだあいつらは!何で撮影場所に入ってこれたんだ!?ちゃんと撮影の邪魔が入らないように見張りがいたはず...」

P「兎に角止めないと!」




D「...いや待て!」

P「なんでですか!?今すぐ止めないと撮影が!」

D「分からん!だが宮本君が何かサインを出している!」

P「サイン?あれは...OK?それに目線要求?」
 「大丈夫だから見てろ...って事か?」

D「宮本君、一体何を....?」

211: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:20:21.40 ID:n3qMAkef0



大丈夫だよプロデューサー、アタシにお任せ!

だってアタシは、皆を笑顔にする為にアイドルになったんだから♪

もちろん、ここにいるみーんなを、ねっ!

212: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:21:45.32 ID:n3qMAkef0
フレデリカ「ではここで!今最も熱いパリジャンで賞のお二方に~...じゃじゃーん!こちらのクレープをプレゼント!」

DQN2「ああ?なんだお前?てかパリジャンってなんだ?」

DQN1「よくわかんねぇけど、なんかカッコイイ響きだな」
    「...いやいや!流されねえぞ!そもそもココは俺たちの縄張りなんだから...」

フレデリカ「なら許可を取れば大丈夫なんだよね?じゃあダイジョーブ!これを食べたら絶対許可を出したくなるから♪」

DQN1「ああ!?わけわかんねぇこと言ってんじゃ『ガレット・デ・ロワー!』フゴッ!」

DQN2「おいてめぇなにして『カリソン・デラーックス!』ぐおっ!」

213: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:22:22.55 ID:n3qMAkef0
DQN1「もぐもぐ...」

DQN2「これは...」









DQN1&2「「美味いッ!!!」」

214: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:23:24.83 ID:n3qMAkef0
DQN1「口に入れた瞬間ヨーグルトの酸味とバニラアイスの甘み、それにブルーベリーソースが絶妙にマッチして酸味と甘みが互いの魅力を高め合っているッ!」

DQN2「それにこのとてももちもちとした生地が噛むたびに食欲を掻き立てる!まさかこの生地、米粉!?」

クレープ屋「あっ、はい!その通りでございます」


DQN1&2(クソッ...こんなの、こんなの!)








DQN1&2「認めるしかぁ...ないじゃないですかー!!」

215: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:25:30.40 ID:n3qMAkef0
フレデリカ「やったー大成功!やったね志希ちゃん!クレープ屋さん!」

志希「えっ、あぁうん!やったね!」

フレデリカ「じゃあ最後にしっかりこのクレープを紹介しないとね!」
     「てなわけで!反抗期のお子さんも、ぎっくり腰のおじいちゃんも、彼女にフラれたそこのあなたも!」
     「食べたらたちまちみーんなハッピー!『漢のスーパーヨーグルトクレープ』は明後日から3日間限定で発売するよー!」
     「これは並ぶしかないよね志希ちゃん!」

志希「うん!寝ぼすけなあたしも早起き朝一で駆けこまなきゃね!」

216: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:26:24.42 ID:n3qMAkef0
フレデリカ「じゃあ最後に!今日の撮影でお世話になった皆の為に、一曲歌っちゃおうか!」

志希「じゃああたし、アレがいい!」

フレデリカ「アタシもー!じゃあ志希ちゃん、クレープ屋さん、それに撮影に協力してくれたパリジャンのお二人にスタッフさん達も♪皆準備はいーかなー!」

スタッフ一同「えっ?」

DQN1&2&クレープ屋「「「俺(私)たちも?」」」

フレデリカ「もちろん!みんなで歌った方が楽しいもん!」
     「ねっ?志希ちゃん」

志希「そうだね、みんなで楽しく歌っちゃおう!」
  「というわけでこの番組を作り上げた皆で歌っちゃうよー!『およげ!たいやきくん』!」

217: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:27:03.15 ID:n3qMAkef0
すごいよフレちゃん!

撮影の邪魔しに来た人まで仲間に引き込んで、スタッフ一同も巻き込んで大合唱!

こんな光景、あたし全然知らなかった!すごい!

こんなに分からなくて興味が尽きない事なんて今まで無かった!








これが...これがアイドルなんだ!

218: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:28:35.99 ID:n3qMAkef0
D「いやー素晴らしい!キミたちのおかげで無事撮影は成功だ!」


撮影が終了した後、Dさんはすぐ私達の所に来て私達を称賛してくれた


フレデリカ「えへへー!ありがとー!」

P「ああ、二人ともよくやってくれた、特に最後よく持ち直した!」

志希「うん、あの時のフレちゃんは凄かったよ」
  「それに比べて、あたしはどうすればいいのか分かんなくて役に立てなくて...ごめんなさい」

219: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:29:09.40 ID:n3qMAkef0
フレデリカ「ううん、そんなことないよ!」

P「ああ、寧ろとても役に立ってくれたぞ志希は」

志希「えっ?」


あたしが、役に立った?


...でもあたし、何にもできてない
むしろ危うく撮影を失敗させるところだったのに...

220: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:31:01.30 ID:n3qMAkef0
フレデリカ「アタシ、ホントは今日一人で撮影することになったって聞いて、ほんとーに心細くて、それに初めての仕事出すっごく緊張しててどうしよー!ってなってたの」
     「でも、そんなとき志希ちゃんが駆けつけてくれて、ずっと隣で一緒にお仕事してくれたから、不安な気持ちぜーんぶ吹っ飛んじゃった!」
     「...きっと、あたし一人じゃお仕事、大失敗しちゃってたと思う。だから」

     


     「ありがとう志希ちゃん、これからもアタシと一緒にお仕事して欲しいな!」




志希「フレちゃん...!」

D「そうだ、君たちはこれからもっと活躍するだろう!」
 「またいつか、アイドルとして大きく成長した君たちを撮らせて欲しい!頼めるかな?」

志希「...分かった!任せて!」

P「よしっ、じゃあ改めて」
 「811プロへようこそ、志希!」

志希「こっとこそ!あたし、アイドルの全部を追及するから!」
  「だから、もっといっぱいアイドルの楽しさを教えてね、プロデューサー!」

221: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:32:19.23 ID:n3qMAkef0
DQN1「あの~....」

D「おや、君たちは...」



あれは...さっきの不良たち?

もうあの匂いはしないけど...大丈夫かな?

また何か吹っ掛けに来たのか、と一応警戒したあたしだったけど...







DQN2「その....」

DQN1&2「本当にすみませんでしたアァー!!!!!」


一同『えっ?』

222: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:33:13.04 ID:n3qMAkef0
DQN1「俺たち、この撮影を潰すよう金でやとわれて、それでこんなことをしてしまって」

DQN2「俺たちマジでバカでした!本当にすいません!」

DQN1「お詫びに、俺たちにできることなら何でもします!ホントに!」






...この人達、さっきとはまるで別人だ

嘘をついてるようには見えないし...本当にフレちゃんによって改心させられちゃったの?

ていうか、『金で雇われた』ってことは...

223: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:34:22.86 ID:n3qMAkef0
P「『なんでも』、かぁ...言ったな?」

DQN1「ハイ!覚悟はできてます!」







P「じゃあ...この二人のファンになってやってくれ」

DQN1「えっ?」

P「この子達、これからトップアイドルになる予定なんだけど、その為にはファンの応援が必要不可欠だからな。」
 「キミたちがファン第一号になって、二人のアイドル活動をさせてやってほしい」
 「お前らも、それでいいよな?」

フレデリカ「もちろん!」

志希「応援よろしくねー!」

D「まあ結果的に大成功に収まったからね、私からも咎めるつもりはないよ」

DQN1&2「あ、あ...」







      「ありがとうございますーーーーーー!!!!!!!!!」

224: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:36:19.97 ID:n3qMAkef0
DQN1「俺、二人の出る番組全部見ます!」

DQN2「俺も、イベントとかあったら絶対駆けつけます!」

P「ありがとう。じゃあその思いに答えられるように、こっちも頑張らないとな」





P「...ところで、君たちを雇ったっていう人っていったい?」



そう、お金で雇われたって事はあたしたちを嵌めようとした黒幕がいるって事に他ならない
一体誰が、何のために....?

225: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:37:30.15 ID:n3qMAkef0
DQN「それは...あっ!あいつです!」

スタッフ?「!!」

D「彼は...見張り役の!」

見張り「チッ!」

P「あっ、待て!」


逃げ出す見張りをプロデューサーが追いかける


見張り「誰が待つかっての!」





走りながら見張りは懐から何かを取り出した

あれは...っ!

226: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:39:24.22 ID:n3qMAkef0
志希「プロデューサー!避けて!」

P「何っ!?...うおっナイフ!?」

見張り「へっ、あばよ!」

P「しまった!クソッ!」



プロデューサーは間一髪避けれたけど、その隙に見張りは瞬く間に走り去っていってしまった...

227: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:40:45.44 ID:n3qMAkef0
D「逃げられてしまったね...」

フレデリカ「プロデューサー大丈夫!?」

P「ああ、なんとか間一髪で避けれたよ。ありがとう志希」

志希「よかった、怪我とかないみたいだね」

P「ああ、だがあの野郎、今度見つけたら絶対とっ捕まえて...『トゥルルルル!!!』なんだ、電話?」
 「もしもし、ああ周子?奏も一緒か、どうした?」







周子に奏...?
それって確か、あのモニターに出てたアイドル!?

228: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:41:52.09 ID:n3qMAkef0
P「フレデリカの撮影?大成功、いや超成功だよ!撮影を成功させただけじゃなくてな!」
 「祝勝会?ああ、いいぞ...わかった、じゃあ駅の近くのサ○ゼな。予約とっといてくれ」
 「ああ、違う違う、5人で取ってくれ。何故か?まあ後でわかるさ、それじゃあ宜しく」ピッ

フレデリカ「なになにー何の話?」

P「周子と奏が初仕事成功記念に祝勝会しようってさ、喜べ!俺の奢りだ!」
 「さっきの事はひとまず忘れて、楽しむとしよう!」

フレデリカ「わーい!ゴチになります!」

志希「5人で予約ってことはあたしも行っていいの?」

P「勿論だ!あいつら驚かせてやろうぜ!」
 「早速行くぞ!ついてこい!」

フレ志希「「ハーイ!」」

229: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:43:24.71 ID:n3qMAkef0
...でも、まだ気になる謎があたしの頭の中には残っていた





       




         あの見張りの人はなぜ『全くの新人であるあたし達を狙った』んだろう?






230: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:44:21.21 ID:n3qMAkef0
そもそもフレちゃんは今日の番組がアイドルとしての初顔出しの無名アイドル
あたしに至っては本当にたまたま居合わせただけのイレギュラーだ


そんな新人を、こんな最初から潰しにかかる理由って一体何?
アタシ達じゃなくて、この番組か、もしくはこのテレビ局が狙い?
それとも、スタッフの誰かを...?







...まあ今は情報が足りないし、プロデューサの言う通り一端忘れて楽しむとするかにゃー

サ○ゼならきっとピザもタバスコもあるよね❤

231: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:45:46.98 ID:n3qMAkef0
P「というわけで、仕事の成功と新しく入ってきた超新星にー!」

全員「かんぱーい!!」




周子「いやーそれにしてもびっくりだねー。まさかフレちゃんの初仕事中に新しい子がスカウトされるなんて」

志希「改めまして、一ノ瀬志希だよ。アメリカ帰りのふつーのjkです!よろしくー!」

奏「ええ、よろしく志希」

周子「アメリカ帰りってどゆこと?」

志希「小学生の時にダッドを追ってアメリカに住んでたんだー。んでそっちで飛び級して大学まで行ってたんだけど、つまんなくなったから日本へ帰ってきて高校生やってるんだー」

232: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:47:06.09 ID:n3qMAkef0
周子「へー、飛び級って事はもしかしてめちゃくちゃ頭いいの?」

志希「多分ねー、ギフテッドって言われてたし」

奏「ギフテッド...先天的に高度な知的能力を持つ人の事だったかしら?」

周子「なにそれすごい!」

P「志希は向こうの大学ではなんの勉強を?」

志希「ケミカルだよー!日本語的には、ばけがくってやつね」

P「ばけがく...化学反応...補修...うっ頭が...」
 「この話はやめようか(真顔)」

フレデリカ「なんかトラウマを刺激しちゃったみたいだね~♪」

周子「いや自分で聞いたんじゃん...」

233: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:48:21.56 ID:n3qMAkef0
周子「そうだ、あたしと奏ちゃんの紹介まだだったね」

志希「知ってるよー、デュアルフルムーンでしょ?」

奏「あら、知ってたのね」

志希「結構前にすっごい報道されてたからねー...それにしても」

周子「えっなに...ちょっとちょっと、近いよ志希ちゃん」

志希「やっぱ二人ともいい匂いするねー♪流石モニター越しであたしにアイドルに興味をもたせただけはあるね!」

奏「私達が?」

志希「そうだよー、日本に帰ってきてからあたしが初めて興味をもったのが奏ちゃんとしゅーこちゃんだったんだ♪」
  「だからあたしはデュアルフルムーンのファンなんだよー!サインちょうだーい!」

奏「そうだったの...ふふっ、間近でファンですって言われると恥ずかしいけど、やっぱり嬉しいわね」

周子「そうだねー、応援してくれる人がいるってのは、やっぱ励みになるわ」

234: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:49:23.78 ID:n3qMAkef0
フレデリカ「あたし達も今日ファンができたんだよ!すっごく嬉しかった!」

P「これからもっと増えていくさ、番組も高視聴率間違いなしだろうしな」
 「奏と周子も、うかうかしてられないぞ?」

奏「そうね、もたもたしてるとあっという間に追い抜かれちゃいそう」

周子「あたしたちも、そろそろDランク昇格を目指さないとね、美嘉ちゃんにも追いつきたいし」

P「そのころには美嘉も昇格してるかもしれないけどな」

周子「そうしたら、また追いつくまで追いかけるよ」

奏「ええ、また一緒にライブしたいものね」

P「よしっ、人数も増えたことだし、今後は皆ランク昇格を目指して頑張ろう!」

全員『オー!!』

235: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:50:46.36 ID:n3qMAkef0
周子「....ところで志希ちゃん、その真っ赤なピザ、なに?」

志希「志希ちゃん特性タバスコピザだよー。美味しいよ?」

周子「いやそりゃ流石に「ホント!?一切れちょうだい!」フレちゃん!?」

フレデリカ「パクッ!......................................」

奏「...フレデリカ?大丈夫?」









フレデリカ「」チーン

周子「フ、フレちゃああああああああああああああん!!!!!」

P「み、水ー!水を誰か早く―!」

志希「にゃははーー♪...美味しいんだけどなぁ」

236: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:51:39.52 ID:n3qMAkef0
塩見周子のウワサ

・クリームたい焼きを買ってきたPと戦争になったらしい


237: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:52:59.95 ID:n3qMAkef0
その後、あの番組はローカル番組としては屈指の視聴率をたたき出し、志希とフレデリカは一気に注目を浴びすぐにEランクへ昇格した

私と周子も負けずにそれまで以上に仕事に打ち込んだ結果、ついにDランクに昇格!

そしてそれに呼応するかのように志希とフレデリカも目覚ましい成長を遂げている

私達がお互いに高め合うことで事務所も活気づいてきたと、プロデューサーも喜んでいたわ


でも、アイドルの階段はまだ始まったばかり、まだまだ満足できないわ

これからもプロデュースよろしくね?プロデューサーさん!

238: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:54:04.58 ID:n3qMAkef0
莉嘉「お姉ちゃん、大丈夫?」

美嘉「大丈夫だよ、急にどうしたのさ?」

莉嘉「だって、お姉ちゃん最近ほとんど休めてないし、辛そうだし...」

美嘉「大丈夫だって!あたし体力はあるし!」

莉嘉「でも!」

美嘉「それに、あたしが家族を守らないといけないんだから、あたしがやらなきゃいけないんだから...」
  「安心して!莉嘉は絶対あたしが守るから」


  「...あっ!そろそろ行かなきゃ!じゃあね莉嘉、ちゃんと宿題やりなさいよ?」

莉嘉「うん、行ってらっしゃい...」

239: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/26(火) 23:54:49.95 ID:n3qMAkef0
莉嘉「お姉ちゃん...やっぱり大丈夫には見えないよ...」

莉嘉「あたしじゃ、お姉ちゃんの力にはなれないの....?」

莉嘉「なら誰か、誰でもいいから...お願い...」








お姉ちゃんを...助けて!








to be continued....

240: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 00:03:36.91 ID:r2vXNL6c0
次回予告!

大変!ジョウガサキ王国のミカ姫が大魔王カナデに攫われちゃった!
しかもお弁当も忘れていっちゃった!このままじゃミカ姫がお昼抜きになっちゃう!

そんな事はさせないとミカ姫の妹、リカが立ち上がった!

リカ「お願い!案内して!あたしお姉ちゃんが家に忘れていったお弁当を届けなきゃいけないの!」

今、リカ姫頼れる仲間と一緒に、冒険の旅へ一歩踏み出した!

次回!

Chapter6 「Please help my sister!!」

リカ「次回もお楽しみに!」

ミカ「いや、絶対ウソ予告でしょコレ!?」






なお、本編は予告と一部内容が異なる場合がございます

241: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 00:05:12.46 ID:r2vXNL6c0
Chapter5が終了したとこで今回はここまででー

次回はまた明日の夜

ちょっとしたら前回と今回のあらすじまとめと補足も投下します

242: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 00:30:19.39 ID:r2vXNL6c0
Chapter4のあらすじ及び補足(長いですが別に読まなくても大丈夫です)

・Chapter4 「Come on New Stars!」
そりゃあCool属性二人だけだと来る仕事偏っちゃうよね
ということでPはアイドルの増員を決意!
あとなんか美嘉は疲れているらしい

フレデリカ「名刺は拾った」
そしてPのスカウト作戦は大失敗
そりゃあんちゃん、グラサンに帽子スタイルじゃ怪しいでしょ...
811プロ自体も話題になったとはいえ所属はEランクが二人だけだしもっといい事務所ありますよね...

フレデリカ「だから気に入った」ドン
P「 採 用 !」

ベテトレさんを怒らせたりしながらもなんやかんやでフレちゃん初仕事ゲット!
そして撮影現場に現れたもう一人の星の正体はっ!?
志希「志希ちゃんって呼んでねー♪」

『宮本 フレデリカ』
フランス人と日本人のハーフな小悪魔系アイドル
テキトーに見えて他人への気配りが上手なパリジェンヌである
彼女がPが落とした名刺を拾ったのは彼女の持つ幸運ゆえか、それともPの方が幸運だったのか...

『一ノ瀬 志希』
アメリカ帰りの帰国子女なギフテッドアイドル
街のモニターで見たデュアルフルムーンの姿に興味を持ちアイドルになるきっかけを探していた
匂いを嗅ぐことで探している人を嗅ぎ分けたりある程度人の感情を読み取れたりとやたらチートな嗅覚を持つ

「ディレクター(D)」
811プロを気にいりフレちゃんにテレビ番組の仕事を回した
割と便利なので多分また出る

243: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 00:50:57.40 ID:r2vXNL6c0
Chapte5のあらすじ及び補足(長いですが別にry)

・Chapter5 「Golden Perfume」
P、志希の申し出にあっさり乗る。P君詐欺とか気を付けてね
それよりフレちゃんと共演するはずだった番組のメインが急病で来れなくなった
延期も出来そうになく窮地に陥っていたがここでP、急遽数分前にスカウトした志希を代役として投入
途中でDQNによる妨害が入るもフレデリカのコミュ力&アドリブ力の高さで無事収録を成功させる
撮影後、改心したDQN達は雇い主が撮影現場に人が入ってこないように見張っていたスタッフであることを暴露
すぐにPが追いかけるも取り逃がしてしまう
そして志希は新人である自分たちが狙われたことに違和感を抱くのであった

志希フレF→E かなしゅーE→D
そして莉嘉は姉の様子が明らかにおかしいと気づき始めているようで...?

サブタイの意味は黄金の香り、金髪パリジェンヌのフレデリカとギフテッド香りのスペシャリスト志希によって作られた世界は、黄金の様に煌く香水の様

『DQN1&2』
イメージは漫画で見るようなリーゼントのチンピラ
だがフレデリカにより見事に改心してしまい、志希フレの大ファンになった
でもごめんね、多分もう出ないよ

『見張り?』
番組スタッフになりすましてDQN達を使い番組を妨害しようとした張本人
もし志希というイレギュラーがなければ彼の目論見は成功していたかもしれない
また逃げ足も速く、Pの追跡をいとも簡単に振切ってしまった
なぜ番組の妨害を使用としたのかは不明

なお、本物の見張りは後でトイレから簀巻きにされた状態で発見された模様

245: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:15:39.26 ID:r2vXNL6c0
23時ごろから投下する予定でしたが、Chapter6ちょっと長くなりすぎたので前後編に分けて一旦今から前編の方を投下します
後半は21時から23時あたりのどっかで投下開始予定です

246: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:17:42.10 ID:r2vXNL6c0
志希とフレデリカの番組放送から一か月


アイドルランクがDに上がった私と周子は今までより更に大きな仕事やオーディションを受けることができるようになった
雑誌では私の写真が見開き1ページ使って乗るようになったり、ローカルではなく全国区の番組に出たりと、Eランクの時より数段レベルの高い仕事も多くなってきた





プロデューサーさん曰く、Dランクはデビュー後のアイドルの一番最初の山場であるらしい。

仕事のレベルが格段に上がるここからどうプロデュースしていくかがそのアイドルの今後に強く関わるとか


それに、あれから志希とフレデリカもものすごい勢いで成長を遂げてきている

だからこそ、これからの仕事は更に気を引決めていかないと

ファンにも、事務所の皆、私を支えてくれている人達の為にもカッコ悪い姿は見せられない







それに、美嘉にも。

247: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:20:46.12 ID:r2vXNL6c0
1週間ほど前、美嘉のアイドルランクがCに上がった事が発表された

やっと追いつけたと思ったら、すぐに先に行かれて、私の心にはいろんな感情が生まれた

おいて行かれて悔しいとか寂しいとか、そう言うのももちろんあったけど、それ以上に「嬉しい」と思った

超えるべき目標であって、私がアイドルを志した「原点」である彼女がどんどんアイドルの階段を駆け上がっていくこと

そのことに私は、まるで自分の事のように嬉しくなった。


そしてその気持ちをみんなに話したら....





志希「奏ちゃんは美嘉ちゃんの大ファンなんだねー。あたしも、奏ちゃんと周子ちゃんがDランクに上がったときそんな感じだったもん!」



と志希に指摘された

248: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:22:20.95 ID:r2vXNL6c0
大ファン...そうね!自分の事じゃないのにこんなに嬉しくなれるんだもの!
きっとそれがアイドルを応援するファンというものなのね


私のファンも、私が昇格したときは志希と同じような気持ちを抱いてくれたのかしら?

なら私も、ファンを今の私のようにもっと喜ばせられるようにこの道を突き進まないとね

周子も同じ気持ちらしく、あの時の言葉通り再び追いつくために、普段ののんびりとした雰囲気からは想像できないほど真剣に、かつ楽しんで仕事をしてるみたい

私も、美嘉にまた追いつくために走り抜けなきゃ!

その思いを胸に、私は今日も『アイドル・速水奏』として仕事へと向かった








...ちなみに、件の志希はレッスンの休み時間中に失踪したらしく、プロデューサーさんが血眼になって捜索中らしい

249: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:24:28.52 ID:r2vXNL6c0
レッスン中の失踪は志希の習性みたいなもの

本人曰く、大抵の物事への興味が3分しか持続しないかららしい。
でもその興味が続いてる間は、事務所の中でも随一のセンスを見せつけてくる。いわゆる「天才型」というやつなのでしょうね。
失踪しても誰かが迎えに行けばおとなしく諦めるあたり、特別レッスンが嫌なわけじゃないと思う
だからこそトレーナーさんも普段は志希が失踪しても怒りはするけど、捜索はプロデューサーさんに任せてそのまま他の子のレッスンを続けていた






けど今日はトレーナーさんの機嫌がとても悪かったらしく

P「ヤバイ...このままじゃ青木さんが地球割るぞ....!!」

ってプロデューサーさんが焦っていたり、事務仕事をしてた周子が何かから逃げるように目の前の書類に向かっていたり...

私はそんなプロデューサーと周子の焦り具合を見て、戻ってきた時志希は無事で済むのか少し不安になった....

250: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:25:49.87 ID:r2vXNL6c0
今日の仕事は、いつも以上に気合を入れなくてはならない

何故なら...



奏「美嘉!久しぶりね」

美嘉「あっ奏、今日はよろしくね★」


久々の美嘉との共演、それに美嘉がCランクに上がってから初めて生の城ケ崎美嘉を間近で見られる日だから。


奏「まずはCランク昇格おめでとう!私も自分の事みたいに嬉しいわ」

美嘉「ありがとー★奏のほうも順調みたいじゃん」

奏「ええ、すぐにまた追いついて見せるわ、その為にも今日の仕事、お互い頑張りましょうね」

美嘉「.....うん!」

251: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:27:09.65 ID:r2vXNL6c0
レッスンから失踪して、とりあえず気ままに歩くこと数十分

街中であたしは面白そうな女の子を見つけた

ターゲットローック!と、なにやら地図とにらめっこしているその女の子にあたしは声をかける






志希「ねぇねぇキミ、イイ香りするねー!どうしたの?」

金髪の女の子「あっ、そこのお姉さん!この『ユニVSスタジオ』って場所分かりますか!?」

志希「ん~どれどれ~?」



このスタジオどっかで聞いたような...

あっ、この事務所今日の奏ちゃんの仕事先だ!
確かプロデューサーが昨日奏ちゃんに行き方を教えてたなー

えっと...確かあの交差点を曲がって...
よし、覚えてるね。

252: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:28:41.43 ID:r2vXNL6c0
志希「うん、ここなら分かるよ」

女の子「ほんと!?お願い!案内して!あたしお姉ちゃんが家に忘れていったお弁当を届けなきゃいけないの!」

なるほどねー
まああたしも次いでに奏ちゃんのお仕事見てみたくなったし、助けてあげようかな♪

志希「いいよー♪」

女の子「ほんと!?ありがとう!..ってお姉さんよく見たらどこかで見たような...というか志希ちゃんって...えっ!?
   「もしかしてお姉さんって、一ノ瀬志希!?」

253: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:29:50.90 ID:r2vXNL6c0
志希「おや、アタシのこと知ってるの?」

女の子「前にテレビのスイーツ特集でフレちゃんと一緒に出演してたの見たの!あれからあたしフレちゃんと志希ちゃんのファンなんだー!」

志希「へー、キミあたしのファンだったんだ!こんな所でファンと会うなんて、あたしもアイドルとして成長してきたって事かにゃー?」
  「っておっとっと、つい話し込んじゃったね。キミのお姉ちゃんがお腹を空かせないように、急いでお弁当届けに行こうか」

女の子「うん!案内よろしく!」

志希「はーい!志希ちゃんに着いておいでー...えーっと」
  「キミの名前聞いてなかったね。なんて呼べばいい?」

莉嘉「城ケ崎莉嘉だよ!莉嘉って呼んでね!」



えっ、城ケ崎?
それって...





志希「もしかしてお姉ちゃんの名前って、美嘉?」

莉嘉「うん!自慢のお姉ちゃんで、あたしの一番のアイドルなんだから!」





...これは、面白そうな香りがするね~♪

254: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:31:03.71 ID:r2vXNL6c0
P「あいつ...マジでどこ行きやがった...このままじゃ事務所が青木さんにぶっ壊されちまうぞ...」
 「あっ、すいませーん!この写真の子見かけませんでした?」

 「....あっちに小さい女の子と歩いていくのを見た?ホントですか!?ありがとうございます!」
 「さて、あっちは...もしかしてあいつ、奏の仕事見に行ったのか...?」

255: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:31:56.95 ID:r2vXNL6c0
私の分の撮影は無事終了し、いよいよメインの美嘉の撮影が始まった

今回の特集は「ギャル系ファッション特集」

美嘉の人気の影響で今女子高生の間でこういったコーデが流行っているらしく、その流行に乗っ取って練られた企画らしい

既に自分の分の撮影が終わった私達は帰っていいと言われたけど、私は美嘉から技術を学ぶため撮影を見学させてもらっている

それにしても、やっぱり美嘉は凄いわね

流石今をときめくカリスマギャル、カメラマンさんの要求すぐさま答え、今回のギャルコーデともマッチして普段以上に輝いてる








....けど、何故?

さっきから何かが引っかかる

スタッフさん達は気づいていないみたいだけど、私はずっと美嘉に小さな、だけど無視できない違和感を感じていた

256: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:34:15.57 ID:r2vXNL6c0
結局、その違和感の正体に気づかないうちに美嘉の撮影が終わった

奏「美嘉、お疲れさま」

美嘉「奏ちゃんもお疲れー、今日のあたしはどうだった?」

奏「流石美嘉ね、コーデも似合ってたしいつも以上に輝いて見えたわ」
 「でも...」

美嘉「?」

奏「美嘉、もしかして何かあった?」

美嘉「えっ、なんで?」

奏「いえ、なんかちょっとだけ違和感を感じたっていうか...」

美嘉「そうだった?でもあたしは元気だし大丈夫だよ★」


そう言って笑う美嘉からは、さっきの様な違和感は感じられない
杞憂、だったのかしら...?

257: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:35:02.61 ID:r2vXNL6c0
そんな時だった


莉嘉「あっ!お姉ちゃんいた!」

志希「やっほー奏ちゃん、失踪次いでに奏ちゃんに会いに来たよー」

美嘉「えっ!?莉嘉!?」

奏「あら志希じゃない、プロデューサーが貴方を探してるみたいよ」




志希が美嘉の妹を連れてやってきたのと




P「はぁはぁ...志希!やっと見つけたぞ...」




その志希を追ってプロデューサーさんがやってきたのは....

258: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:36:35.00 ID:r2vXNL6c0
莉嘉「お姉ちゃん、お弁当忘れてたよ。はい!」

美嘉「マジで?ありがとう莉嘉!お姉ちゃん危うくお昼抜きになるところだったよー」

奏「美嘉、こんなに可愛い妹がいたのね。お弁当を届けに来てくれるなんて、とってもいい子じゃない」

志希「莉嘉ちゃんっていうんだ♪あたしのファンなんだって!」

P「へぇ、良かったじゃないか!プライベートでもファンに会えるなんて」

美嘉「はは...まあでも、結構いたずらっ子なのが困りものなんだけどね...」


そう言いつつも莉嘉をみつめる美嘉の目は優しい








でも、その逆に莉嘉はとても不安そうな顔をしていた

259: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:38:15.47 ID:r2vXNL6c0
莉嘉「それで...今日はいつ帰るの?」

美嘉「今日は遅いし、多分終電逃しちゃうから今日は事務所に泊まっていくかも。明日も早いしね」

莉嘉「...お姉ちゃん、やっぱり最近働きすぎだよ」

美嘉「大丈夫だって、心配しないで」

莉嘉「でも!お姉ちゃんここ一か月くらいほとんど休んでないじゃん!」
  「流石にあたしだってわかるよ!こんなの絶対普通じゃない!」

奏「えっ?」

P「なんだと...?」









確かに美嘉はここ最近テレビや雑誌で見ない日はないほどの活躍をしてるけど、そんなに?
いくらなんでもそれじゃ体調を崩すと思うのだけど



もしかしてさっき感じた違和感は...

260: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:39:24.05 ID:r2vXNL6c0
志希「ハスハス...なるほどー」
  「過労死寸前の人がよくさせてる匂いがするよ、それに大分ストレスも溜まってるみたいだねー」

美嘉「匂いって...気のせいだよ。あたしは大丈夫だから、本当に心配しないで...」

奏「美嘉...でも!」

美嘉「ごめん!次の仕事行かなきゃだから先行くね!」

莉嘉「あっお姉ちゃん!」







そう言って、美嘉はスタジオから足早に立ち去った

残された莉嘉ちゃんは、更に表情を曇らせ、目に涙を浮かべている

261: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:40:40.80 ID:r2vXNL6c0
奏「莉嘉ちゃん...」

莉嘉「...ねぇ、奏ちゃん、志希ちゃん、それに二人のプロデューサーさん」
  「お姉ちゃんね、最近いつもアイドルなのに辛そうにしてて、でも...」

  

  「奏ちゃんや周子ちゃんとのお仕事の話だけは楽しそうに話してたの」
  「この前の志希ちゃんやフレちゃんの番組見た時も思った、きっと811プロのアイドルは、どんなに苦しんでる人でも笑顔にできるんだって!」
  「だから、お願い、お願い!」








 

             「お姉ちゃんを、助けてください!」








262: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:41:17.95 ID:r2vXNL6c0





             Chapter6 「Please help my sister!!」







263: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:44:15.77 ID:r2vXNL6c0
P「わかった!」


プロデューサーさんは、誰よりも早くそう答えた


莉嘉「ホント!?」

P「ああ!美嘉は今ままでウチのアイドルたちにとても良くしてくれていたし、そんな美嘉が苦しんでるって話を聞いたら流石に見過ごせない」

奏「ええ、美嘉のファンとしても見過ごせないわ」

志希「あたしはあんまり美嘉ちゃんとは関わり無かったけど、あたしのファンであるキミの頼みなら断れないにゃ~」

P「そうだ。美嘉のファンの為にも、そしてその美嘉のファンの中の一人としても、絶対に彼女を助けて見せる」


プロデューサーさんの言葉に心の中で激しく同意する
私達の為にも、美嘉と、美嘉を支える人達の為にも放っておくわけにはいかない

何より...莉嘉ちゃんの泣き顔をこれ以上見たくはないしね







莉嘉「みんな...ありがとう!」





その時、やっと私は莉嘉の笑顔を見ることができた
うん、やっぱりファンには笑顔でいてほしいものね

264: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:45:55.87 ID:r2vXNL6c0
P「というわけで、美嘉を助けるために彼女の情報が欲しい」
  
莉嘉「情報?例えば?」

P「何も美嘉も理由なしであんな無理な働き方をしたりはしないだろう、必ず何か理由があるはず」
 「何か心当たりがないか教えてくれないか?」

莉嘉「理由か...それはなんとなく分かるよ」

奏「その理由って?」

莉嘉「半年くらい前にパパが事故にあって動けなくなっちゃって、それを理由に会社をクビになっちゃったの」
  「その時からだよ、お姉ちゃんがあんな風になったのは」
  「多分、自分がパパの代わりに働いてあたし達家族を助けようとしてるんだと思う」
  「パパがクビになったときは、このままじゃ生活費も学費も出せなくなりそうってママもパパもずっと悩んでたし...」

P 「成程、家族の為か...」

265: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:47:06.40 ID:r2vXNL6c0
奏 「でも、それだと少しおかしくない?」
  「美嘉程のアイドルなら、あれ程根を詰めなくても不自由ない生活ができるくらい稼げると思うけど...」

志希「そうだねー、まだEランクのあたしやフレちゃんでも、普通に休みをもらえる上で日本の新卒の平均くらいのお給料もらえてるしね」

P「お前らは今話題性もあるから同じランクの平均よりちょっと高めだとは思うが...それにしたって不自然だな」
 「それに、いくらそういう目的があったってそんな無茶なスケジュール、絶対担当プロデューサーとか事務所が止めるはず」

莉嘉「じゃあ、お姉ちゃんのプロダクションはお姉ちゃんが無理してるの分かってて無視してるの!?」





事務所が無視している...どうかしら
美嘉はあの事務所の筆頭アイドル、だからこそ健康には一番気を使われるはず...

むしろ...

266: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:49:33.14 ID:r2vXNL6c0
奏「むしろ事務所に無理やり...って事もあるかもしれないわね」

莉嘉「そんな!?ヒドいよ!」

P「いや、その可能性も十分に考えられるが...それならそれでまだ疑問が残るな」

奏「どういうこと?」

志希「なんで別の事務所に移らないのかって事だよね?」

P「その通りだ志希」
 「今の事務所にそこまで苛め抜かれてるんならまず真っ先に移籍する手が重い浮かぶはずだ。実際、事務所と方針が合わずに移籍するアイドルの話はそこら中にある」
 「美嘉程のアイドルが手に入るってなら色んなプロダクションが今よりもいい条件で手を差し伸べるだろう、むしろウチで雇いたいくらいだ」
 「移籍したって今の過酷な状況を訴えれば、世間に無責任だって責められることもないだろうしな」

267: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:50:57.79 ID:r2vXNL6c0
奏「つまり、どうしても今の事務所を離れられない理由があるってこと?」

P「恐らく、な。莉嘉ちゃん、何か心当たりはあるか?」

莉嘉「うーん...ごめんなさい、お姉ちゃんの事務所の事はあんまり分からないや...」

P「そうか...大丈夫、気にしなくていいよ」



志希「じゃあ、調べてみるしかないねー」

莉嘉「調べる?何を?」

志希「美嘉ちゃんの事務所も~、美嘉ちゃん自身も」
  「どっちに原因があるのか分からないし、もしかしたら両方に理由があるのかもしれないからね。今の時点じゃとりあえず両方に探りを入れてみるしかないと思うよ」

P「そうだな、その辺調べ上げて助けるための作戦を考えよう」

268: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:54:26.27 ID:r2vXNL6c0
奏「調べると言ってもどうやって?」

P「そうだな...まあ兎に角美嘉の担当プロデューサーに接触するのが第一だな」
 「スケジュール管理をする立場なんだからまず間違いなく何か手がかりを握ってるはず」
 「そして美嘉自身にも探りを入れる、その為には...」

奏 「その為には美嘉にも、美嘉のプロダクションにももっと近づく必要がある」
  「...プロデューサーさん、頼みがあるんだけど」

P「なんだ?」

奏「私たちに、なるべく多く美嘉と共演できる仕事を取ってきてくれないかしら」
 「そうすれば私達が美嘉から何か聞き出せるかもしれないし、もしかしたら彼女のプロデューサーが仕事を見に来ることもあるかもしれない」

志希「確かに、美嘉ちゃん自身に近づくには一番手っ取り早いね」

P「分かった、お前たちのプロデューサーとして全力を尽くそう」
 「幸い...と言っていいのかは分からないけど、今なら美嘉と共演できる仕事は多そうだしな」
 「他の皆にも協力してもらおう。奏の仕事も終わったし、一旦事務所へ帰ろうか」

269: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:56:02.03 ID:r2vXNL6c0
莉嘉「811プロの事務所!?あたしも行ってみたい!あたしも連れてってよ!」

P「ああ、いいy....!!!!!ゴメン!今日はやっぱダメ!」

莉嘉「えー!」

奏「あら、別にいいんじゃない?」

志希「そうだよ、折角ならファンサービスしてあげようよ?」

P「俺がここに来たそもそもの目的を思い出したんだよ...」
 「今日はとにかくダメだ、連絡先教えとくから何かあったら連絡してくれ」

志希「?」

奏「....あー、そういうことね」

莉嘉「なんかよくわかんないけど...わかったよ」

志希「じゃあまたねー莉嘉ちゃん」

奏「またいつか会いましょう」

莉嘉「うん!またねー!」

270: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:56:47.85 ID:r2vXNL6c0
そして、事務所に帰ってきてようやく私達はプロデューサーさんの言葉の意味を知ることになる










ベテトレ「遅かったじゃないかぁ一ノ瀬...」

271: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 17:57:37.94 ID:r2vXNL6c0
P「手遅れだったか...」

志希「あの、トレーナーさんなんかすごい顔、ってか女の子がしちゃいけない顔してるよ...?」

ベテトレ「ああ...でも今はそんな些細なことどうでもいいじゃないか...なあ?」

P志希「「ヒィッ!!!」」

ベテトレ「どうやらお前には今日のレッスンは退屈みたいだったらしいからな...特別メニューを用意しておいた」

志希「あ、あのーあたし今日はもう帰「らせると思っているのか?」すいません受けますごめんなさい!」

奏「これが、本気でキレたトレーナーさん...」

周子(ガクガクブルブルガクガクブルブルガクガクブルブルブル.......)

フレデリカ「ワーオ、周子ちゃんマナーモードだねー」

272: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:00:13.09 ID:r2vXNL6c0
P「ま、まあまあ青木さん、今日のところは許してやってくれませんか?本人も反省して「何を言ってるんだ?」え?」

ベテトレ「お前にもお仕置きがあるに決まってるだろう?監督不行き届けってやつだよ」

P「そ、そんな!いくら昨日合コン失敗したからって横暴過ぎ...やべっ」

ベテトレ「ほう...P、どうやら本当に死にたいらしいな?」

P「あ、あの、マジですいませんでした、あの、命だけはその、ご勘弁をですね...?」

ベテトレ「ダメだ」



P「...なあ、お前ら、助けて」

フレデリカ「ごめーん今日見たいテレビがあるから帰るねー!バイバーイ♪」

奏「私も、借りてたDVD返しに行かなきゃいけないから...」

周子「Pさん、志希ちゃん...骨は拾ってあげるから」

P&志希「」












その後、3人で事務所を出たとたん後ろから二人の断末魔が上がった

周子「あたし、骨は拾うって言っちゃったけどさ...骨、残るかなぁ?」

明日また、会えるといいわね....

273: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:01:31.48 ID:r2vXNL6c0
ベテトレさんのウワサ

・一向に春が来ないらしい


274: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:02:41.69 ID:r2vXNL6c0
奏「そう言えば二人とも、この後時間ある?二人に話しておきたいことがあるの」

周子「えっ?まああるけど」

フレデリカ「アタシも大丈夫だよー♪」

周子「フレちゃん見たいテレビあるんじゃないの?」

フレデリカ「よく考えたらそうでもなかったから大丈夫だよー。それに、今は奏ちゃんとお話ししたいな♪」

奏「ありがとう二人とも、じゃあとりあえず場所を移しましょうか。この話、あまり人通りの多いところで話したいことではないし...」




こんな街中で話して道行く人に聞かれたら大変だし、何処かいい場所はあるかしら...

275: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:03:34.58 ID:r2vXNL6c0
周子「じゃあ、ウチ来る?ここから近いし誰かに聞かれるって事もないでしょ」

フレデリカ「周子ちゃんのお家かー!行きたい!」

奏「あら、じゃあお言葉に甘えて部屋、貸してもらおうかな」

周子「じゃあ次いでにご飯食べていきなよ。鍋でもやろう!夏だけど」

フレデリカ「さんせー!」

周子「じゃあ次いでに買い出し寄ってから行こうか」

奏「分かったわ、それじゃ行きましょ」

276: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:04:36.85 ID:r2vXNL6c0
周子の住むアパートの近くのスーパーで材料を買ってから、私達は周子の部屋へと向かった


周子「いらっしゃーい、しゅーこちゃんハウスへようこそ♪」

フレデリカ「わーい!しゅーこちゃんの匂いがするー!」

奏「意外と普通のアパートなのね」

周子「まあねー、でも一人で住むにはこれで十分だよ」
  「それより、お腹もすいたし早速お鍋の準備しましょか」

フレデリカ「じゃあアタシお野菜切ってくるねー!」

奏「私も手伝うわ」

周子「分かったー、じゃああたしはお鍋セッティングしてるね」
  「えーと砂糖とみりんとお醤油....しまった、お醤油切らしてたか」

奏「あら、じゃあ買ってきましょうか?」

周子「いや大丈夫、ちょっと待ってて」

奏「?」


そう言うと周子は鍵を持って外へ出ていった

277: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:05:58.21 ID:r2vXNL6c0
と思ったら1分ぐらいですぐ帰ってきた



周子「お醤油持ってきたよー」

奏「早くない!?」

フレデリカ「すごーい!周子ちゃんってもしかして錬金術師?」

周子「いや?隣のPさんの部屋から持ってきただけ」
  「実はこっそり大家さんに、『P君一人身だからもし体調崩したりしたら面倒見てあげて』って合鍵貰ってるんだよね」

奏「ああ、そう言えばPさんの部屋隣なんだっけ」

フレデリカ「でも、勝手に持ってきちゃってよかったの?」

周子「だいじょーぶだいじょーぶ、前にPさんも調味料とか無くなったら言えば分けてやるって言ってたし」
  「それにPさん、相変わらず料理あんましてないみたいだし。腐らせるより使っちゃったほうがいいでしょ」

奏「でもこれ普通に考えたら泥棒じゃ...まあいいか」



プロデューサーさん...ごめんね?

278: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:06:43.18 ID:r2vXNL6c0
周子「それで、話って何なの?」


煮えてきた鍋の中身をつつきながら、あたしは奏ちゃんに向き合う
多分、あんまり面白い話ではないはず


フレデリカ「お仕事で何か嫌なことあったの?帰ってきてからの奏ちゃん、ちょっと顔色悪いよー?」


フレちゃんの言う通り、事務所に戻ってきてからの奏ちゃんは、どことなくイライラしてる感じがする
お仕事に行ってる間に一体何があったんだろう?


奏「ええ、実はね...」

279: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:08:57.78 ID:r2vXNL6c0
周子「なにそれ!」


あの美嘉ちゃんが、そんなひどい目に合ってるっていうの!?


奏「ええ、でも美嘉を助けようにも何が原因で苦しんでるのが分からないと...」

周子「そんなの、美嘉ちゃんの事務所が悪いに決まってんじゃん!」
  「無理やりだろうと美嘉自身の意思だろうと、美嘉が苦しんでるのに何も対処しないなんてありえないでしょ!」

奏「私もそう思う、でもそれなら今の事務所を離れてさっさと別の事務所へ行くと思わないない?」

周子「それは...確かにそうか...」


あたしも美嘉ちゃんと同じ状況だったら多分移籍を考えるか、アイドルそのものをやめるか
とりあえずそこから離れることを考えるはず...










フレデリカ「なるほど―、つまり!探偵事務所811プロの出番って事だね!」

そんなことを考えていたらいつの間にかあたし達は探偵に転職してしまったらしい

280: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:10:35.35 ID:r2vXNL6c0
周子「まあでも、探偵みたいなことをやらなきゃってことだよね」

奏「そうよ、二人にも美嘉の事情を調べるのに協力してもらいたいの」

周子「分かった、あたしも仕事先とかで自分なりに調べてみるよ」

フレデリカ「名探偵フレちゃんにおまかせあれー♪」

奏「ありがとう、一応プロデューサーさんも情報を集めやすいよう美嘉と共演できる仕事を探してくれるみたいだし、その時は二人とも頼むわね」

フレデリカ「もしかして、あたしも美嘉ちゃんと一緒にお仕事できるのかな!?」

周子「まあそこはPさんのがんばり次第じゃない?今大人気の美嘉と一緒のお仕事なんて、数が多くても取るの大変だろうし」

フレデリカ「そっかー、じゃあプロデューサーがお仕事持ってこれるように応援しないと!」
     「アタシ、ずっと美嘉ちゃんとお仕事できたらいいなーって思ってたから!」

奏「あら、そうなの?」

フレデリカ「うん!だって奏ちゃんと周子ちゃんって美嘉ちゃんの大ファンなんでしょ?」
     「二人がファンになる様な人なんだから、きっとすっごく素敵なアイドルだよ!だからいつか一緒に仕事したいなって思ってたんだ♪」

281: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:12:59.62 ID:r2vXNL6c0
周子「...美嘉ちゃんはホントに凄いアイドルだよ」
  「何せ美嘉ちゃんはあたしと奏ちゃん、デュアルフルムーンのルーツだからね、あんなアイドルになりたい!ってずっと目標にしてきたんだ」



あの日のあのライブ、あれは正にあたしの人生をがらっと帰るほどの運命の出会いだった
あの時の美嘉の姿が、てきとー家出娘だったあたしに微かに、だけど確かに目指すべき目標を目標を作りだした


だからこそ...


周子「美嘉ちゃんの事、絶対助けようね」

奏「ええ、もちろんよ」

フレデリカ「それじゃ次の811プロの目標は」







「『美嘉ちゃん救出大作戦』で決定だね♪」

282: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 18:13:35.26 ID:r2vXNL6c0
一端ここまででー

284: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:11:00.62 ID:r2vXNL6c0
Chapter6の続き投下していきます

285: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:13:24.41 ID:r2vXNL6c0
宮本フレデリカのウワサ

・108の必殺技があるらしい


286: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:14:09.04 ID:r2vXNL6c0
周子の家で決起集会を行った翌日

志希「レッスン、タイセツ...オシゴト、タイセツ...」

P「青木さんは素敵な人ですあおきさんはすてきなひとですアオキサンハステキナヒトデス......」

奏「えぇ.......」







事務所では二つの死体が転がっていた.......

287: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:15:18.45 ID:r2vXNL6c0
P「あ、奏おはよう...」

志希「オハヨウゴザイマス」

周子「この二人今朝からずっとこんな調子なんだよ、なんか青木さんのお説教終わった後も徹夜だったらしいし」

奏「死んだ魚の目みたいなになってるわね...というか周子、今日はオフじゃなかった?」

周子「そうだったんだけど、なんか昨日のこと考えるとじっとしてられなくてさー。どうせ一人でオフでもやることないし、とりあえず事務所にきちゃった」

P「まあ実際、ちょうど人手が欲しかったところでな。今日の俺の仕事を手伝ってもらうことにした」

288: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:17:26.98 ID:r2vXNL6c0
奏「それで?美嘉との共演、取れそう?」

P「もちろん、早速今日の午後から取れたぞ」

奏「えっ、もう?」

P「今日の夕方美嘉のミニライブが行われるんだが、そのライブのバックダンサーが急病で欠けてしまったらしくてな」
 「そこで、前にもバックダンサーをやった経験がある奏か周子どっちかをゲストとして貸してくれないか、と美嘉の事務所から依頼があったから受けておいた」
 「急な話で事後承諾になっちまったが大丈夫か?」

奏「大丈夫よ。あれからももう一度美嘉と踊るためにってトレーニングは欠かしてないし」

289: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:18:10.80 ID:r2vXNL6c0
志希「あたしは今日はフレちゃんと雑誌の取材だよね?」

P「ああ、頼むから失踪するなよ?」

志希「それはどうかにゃ~...って言いたいところだけど、昨日の今日だし自重します...」

P「それならいい。フレデリカは別の仕事から直で現場に行くよう言ってあるからそろそろ志希も出発しな」

志希「はーい、身体バキバキだからタクシー使っていい?」

P「さっき呼んだ、てかもう来てるから早くいってこい」

志希「気が利くね~♪」

P「まあ、あんなの見てたら翌日絶対死ぬのだろうってのは分かってたからな...見てるだけでもキツかった...」

志希「昨日...レッスン...うっ頭が」

奏「ホントに何があったのよ...」

周子「できることなら知らないほうがいいよ、ホント...」

290: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:19:32.92 ID:r2vXNL6c0
周子「それで、あたしはどうすればいいの?Pさんの仕事手伝うんだよね?」

P「これからある所へ営業に向かうんだが、そのときちょいちょいと協力してほしいことがある。詳しくはその都度指示するから、とりあえず着いてきてくれ」

周子「はーい。何か準備とかいる?」

P「そうだな...とりあえず『塩見周子』だってばれない様に変装してほしい。衣装保管庫にいくつか使えそうなものがあるはずだ」

周子「そんな間に合わせで大丈夫なん?溢れるしゅーこちゃんオーラでばれちゃわない?」

P「髪適当なとこで結んで帽子深くかぶって眼鏡かけるだけでもだいぶ分からないもんだぞ。スーツとか学生服とか色々あったはずだからその辺着ればかなり雰囲気違って見えるはずだ」
 「それに、今勢いあるとはいえまだDランク、オーラがどうとか言うのはまだ早いな」

周子「厳しーねーPさん」

P「厳しい世界だからな、引き締めるところは引き締めないと」

291: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:20:26.56 ID:r2vXNL6c0
奏「じゃあ私も今夜のライブに向けて軽く『TOKIMEKIエスカレート』の練習をしておくわ」

P「ああ、13時にはライブハウスに向かってくれ。そこで向こうのプロデューサーから指示があるはずだ」

奏「あら、向こうのプロデューサーも来るの?」

P「そう聞いてる。だから奏」

奏「分かってるわ、探りを入れろって事ね」

P「ああ、だが無理はするなよ」

奏「ええ、そっちの仕事も頑張ってね」

292: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:21:58.42 ID:r2vXNL6c0
      ~~~昼下がり、どこかの高級料亭~~~

061社長(以下 社長)「成程...そのライブにウチの城ケ崎君を出演させてほしいと」

P「はい、是非ともお願いしたいのですが...」



全く、社長である私がこんな話に付き合わねばならないとは

まあ仕方ないといえば仕方ない、急な欠員のせいで061P君は今日のミニライブから手が離せないし、城ケ崎君以外のアイドルを担当している下っ端には判断が難しい案件だろう

これも我が社の名誉と金の為だと思って適当に聞き流すとするか

293: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:22:50.17 ID:r2vXNL6c0
P「我々はまだ設立したばかりで知名度も低くアイドルも経験の浅い新人ばかり、後ろ盾の少ない状況で大きなライブをするのは不安があります」
 「そこで、今大ブレイク中の城ケ崎さんをゲストに呼ぶことで少しでも注目を集めたいのです」

社長「うーむ、811プロには前にもお世話になったし協力してあげたいのは山々なんだがね...何分城ケ崎君も今忙しいからね」




嘘は言ってない、城ケ崎君は今我が社の為に全力で尽くしてもらっているからな

別に受けてもいいのだが、どうせ最近やっと最高ランクがDランクになった弱小プロじゃ大した報酬も払えないだろう

それっだったらもっと上のランクの仕事をやってもらった方がはるかに効率がいい

294: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:23:41.39 ID:r2vXNL6c0
P「勿論、無理を言っているのは承知しています」
 「ですので、ギャラはかなり上乗せしまして...これくらいでどうでしょう?」

社長「どれどれ...!?」


た、高い!
DランクどころかCランクでもほとんどないレベルの金額だぞ!?


社長「キミ、もしかして桁を間違えてないかい?」

P「いいえ、間違ってませんよ?このライブが成功すれば、奏はきっとさらに上のステージへたどり着けますからね。このくらいの先行投資は必要経費です」

295: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:26:03.61 ID:r2vXNL6c0
社長「成程...まあここまで熱意を持ってくれているならしょうがない。城ケ崎さんも速水君には仲良くさせてもらってるみたいだし、この仕事引き受けようじゃないか」

P「本当ですか!?ありがとうございます!では早速日程等の打ち合わせを...」トゥルルルルルル...
 「すいません、別の営業先から電話が...少し席を外させてもらいますね」

社長「ああ、構わないよ。職業柄仕方ないからね」

P「申し訳ありません、それでは...」


そう言って電話を片手に811プロのプロデューサーは席を立ち去った
最初は適当に断るつもりだったが、中々お得な話だったじゃないか
気分もいいし良い酒でも注文しようかと思った、その時だった

296: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:26:53.01 ID:r2vXNL6c0
???「あのー、さっきの話ちょっと聞いちゃったんですけど...もしかしておじさん、061プロの方ですか?」


一人の女が私の席に向かってきて話しかけてきた


社長「...?いかにも、私は061プロの社長だが?」

???「えっ!社長!?すごい!あたし超ラッキー!」



なんだこいつ、随分とテンションが高いな
制服姿だし、今時の女子高生というやつだろうか

297: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:28:34.75 ID:r2vXNL6c0
???「あっ、すいません一人ではしゃいじゃって」

佐東「あたし、佐東 円(さとう まどか)っていいます、アイドル志望の女の子だよ」

社長「そ、そうか。それで?君は何か私に用事が?」

佐東「実はあたし、061プロの美嘉ちゃんに憧れてて、いつか同じ事務所で仕事できたらいいなって思ってて」
  「というわけで、あたしを061プロに入れてください!」

社長「いや、というわけでと言われても...」






...でも確かにこの女、良く見るといいスタイルをしているな
肌も白く、顔もいい
...もしかして、すこぶる逸材なんじゃないか?




お?おお!?

今日はツイてるじゃないか!

298: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:30:50.18 ID:r2vXNL6c0
社長「いや...よく見たらなかなか見どころがありそうだね君」
  「そうだな...今日はまだ商談があるからダメだが、後日アポを取って事務所に来てくれ。その時は前向きに検討しよう」

佐東「ホント!?ありがとう社長さん!」

返事を聞いた途端、彼女は私に抱き着いてきた
あっ、いい匂いする...





...ってイカンイカン!811プロのプロデューサー君が戻ってきてしまう


社長「こらこら、離れなさい」

佐東「あっ、ごめんなさい...」

社長「いや、気にしなくていい。でもアイドルになったらこういった行動は控えるんだよ。スキャンダルにつながるからね」

佐東「はーい、じゃあまた今度会いに行くから、その時はよろしくお願いしまーす!」


そう言って彼女は去っていった

いやーしかしいい拾いものだったな

あの子なら城ケ崎君と一緒に我が社に莫大な利益をもたらしてくれるだろう...

299: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:31:30.24 ID:r2vXNL6c0
P「お待たせしました...なんか機嫌よさそうですね?」

社長「そう見えるかい?まあ、君がいい仕事を持ってきてくれたから機嫌はいいほうだね」

P「ありがとうございます。あっ、折角ですし何か飲まれます?お代は私が出しますので」

社長「おっ、いいねえ。じゃあ遠慮なく....」






割の良い仕事に貴重な人材、それにタダ酒とは今日は本当に運がいい日だ!
笑いが止まらないな!

300: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:32:18.27 ID:r2vXNL6c0
一ノ瀬志希のウワサ

・トレーナーさんが天敵らしい


301: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:33:14.53 ID:r2vXNL6c0
約束の時間、私は指定されたライブハウスへと向かった

奏「こんにちは、811プロの速水奏です」

061P「おお速水さん、急な話だったのによく来てくれました」
    「私は城ケ崎美嘉の担当プロデューサー、061Pと申します」

奏「貴方が美嘉の?ふーん...」


この人が美嘉のプロデューサー...
美嘉にあそこまでの激務をさせているからもっとゴーイング娘のプロデューサーの様なタイプかと思っていたけど、意外と丁寧な人ね


奏「それで、私はこれからどうすれば?」

061P「とりあえず,今からバックダンサーと一度『TOKIMEKIエスカレート』を流してもらいます」

奏「分かりました、それじゃ早速行きましょう」

302: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:34:19.66 ID:r2vXNL6c0
とりあえず同じバックダンサーの子達と一通りダンスを流してみた...のだけど







なんなのこの子達?まるでやる気を感じられない!


何故?この子達は美嘉と同じ事務所のアイドル達だったはず

それなら仲間として美嘉の足を引っ張る出来のものは見せられないはずでしょう!?


...考えても仕方ない、別の事務所の子なのに失礼かもしれないけど言わせてもらおう

303: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:35:52.57 ID:r2vXNL6c0
奏「貴方たち...ちょっといい?」

BD1「ん?なぁにゲストさん?」

奏「こういうこと言うのは失礼だと思うけど...貴方たち、やる気あるの?」

BD1「あ?なに?」

BD2「私達の出来が悪いって言うの?」

奏「出来は悪いわ、でも別にそれを責めたいわけじゃないの」
 「全力でやってそれなら別にいいわ。でも、貴方たちからライブに対するやる気を全く感じないのよ。そんな状態で本番に望んだら、間違いなく美嘉の足枷になるわよ」

BD1「はぁ?あんた随分生意気じゃない。今勢い乗ってるっつってもまだド新人でしょ?」

奏「新人の目で見てもダメだって分かるほどなのよ、これじゃ美嘉を見に来たファンにもばれるわよ」

BD1「あんた調子乗ってんじゃっ!」

BD3「ちょっと、流石にゲストに手を出しちゃまずいって!」

BD1「チッ...」

304: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:37:21.08 ID:r2vXNL6c0
BD2「...まあでも、やる気はないよねー」

奏「...それは何故かしら?」

BD2「だって、ただのラッキーで人気になってる奴の為に踊るのにやる気なんてあるわけないじゃん」

奏「ラッキー...?」

BD2「だってそうでしょ?あいつは偶々事務所の偉い人に気にいられたから事務所のゴリ押ししてもらってここまで人気盛ってもらえてるんだから」
   
BD3「まあ確かに、事務所もあいつを売るためにかなーり汚い手を使ったらしいじゃん。つまりあいつの人気は実力でもなんでもないってワケか」







奏「は?」

305: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:37:59.68 ID:r2vXNL6c0
美嘉の実力が、ただのラッキー...?

何を、何を言ってるのこの人達は...






美嘉が、ここまで来るのにどれだけの努力をしてきたかも知らないで
大切なものを守る為に、どんな気持ちでアイドルを続けているかも知らないで


どれだけの苦悩を重ねても、家族の為にに、ファンの為にステージに立つ
そんな城ケ崎美嘉という『アイドル』が、どれだけ輝かしいものかも知らないでっ!

306: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:38:37.78 ID:r2vXNL6c0
奏「哀れね...」


美嘉のライブの前に騒ぎを起こしてはまずい

沸騰している頭の中を、かろうじて理性で抑え込みそう呟いた

307: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:40:20.68 ID:r2vXNL6c0
BD2「なんですって?」

奏「自分たちが売れない理由を全部美嘉に押しつけて、自分に何が足りていないのかを考えようともしない。そんな貴方たちが、哀れだと言ったのよ」

BD1「あんた、言わせておけばぁ!」

BD3「ちょっ!気持ちは分かるけどやめなって!」

BD2「そうよ、あんたのせいで私達までクビになったらどうしてくれんの!」

BD3「そうだよ!あたし達お仕事もらうためにあそこまでしたのに、こんなしょーもない事で終わったら...」

BD1「何よ!そもそも....」


そうして、3人は私そっちのけで喧嘩をし始めた


でも、私の頭の中は既に他の事で一杯になっている

308: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:41:47.44 ID:r2vXNL6c0
BD1「ちょっとあんた1どこ行く気!?」

奏「美嘉に会いに行ってくるわ、貴方たちはそこで勝手に喧嘩しててちょうだい」

BD2「ちょっと!最終調整はどうすんのよ」

奏「私はもう準備できているわ、むしろ自分たちの心配をしなさい」
 「このままだと、大勢の前で無様をさらすことになるわよ」

BD2「ちょっとあんた!」

BD3「いいわ、ほっときましょ。確かにあいつのいうことも一理ある」
   「今日のライブでもし失敗したら今後お仕事もらえなくなるかもしれない。最低限だけでもやっておこう」

BD2「...チッ」



舌打ちを背に、私は部屋を出た
最低限...ねぇ?



奏「だから貴方たちは、『アイドル』になれないのよ...」





やはりここは、美嘉のいるべき所ではない
美嘉に話をしに行かなくちゃ...

309: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:42:52.33 ID:r2vXNL6c0
奏「でも、美嘉はどこに...『いやっ!何するの!』!?」


今の声...!
あっちは確か控室のある方向...いや、そんなことはどうでもいい!


奏「美嘉!」




今はただ、声の方向へ、美嘉を助けるために走らなければ!

310: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:45:13.90 ID:r2vXNL6c0
控室の扉にたどり着いた私は勢いよく扉を開け放つ

ゴォンと大きい音と一緒に私の目は美嘉と、美嘉に迫る061のプロデューサーを捉えていた


奏「美嘉!...貴方美嘉に何してるの!?」

061P「何って...ただのスキンシップですよ。ねぇ?」

奏「そんな訳!「いいの、奏」」

美嘉「大丈夫、ちょっとびっくりしちゃっただけだから、大丈夫だから...」

奏「美嘉...」


大丈夫だと笑って見せる美嘉の顔は、どう見ても大丈夫には見えない

311: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:46:44.17 ID:r2vXNL6c0
美嘉「それより、もうちょっとで本番始まるし準備しとこ?ファンの皆をがっかりさせたくないし」

061P「そうです、城ケ崎さんのライブが潰れるようなことになればお互い困るでしょう?」

奏「...分かったわ。でも」


そうして美嘉の耳に唇を近づけ、彼女にしか聞こえないように小声で話す


奏「...ライブが終わったら、外で話を聞くから」

美嘉「......」


コクリ、と美嘉は頷く






こんなの、絶対放ってはおけない
同じアイドルとして、そして、美嘉のファンとして!

312: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:47:27.14 ID:r2vXNL6c0
061P「...チッ」

313: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:48:10.59 ID:r2vXNL6c0
その後一応、ライブは滞りなく終了した

お客さんも満足していたし、ほとんどの人から見れば成功であったといえるだろう








....でも、美嘉にとってはそうじゃない
そして、私にとっても

314: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:49:15.40 ID:r2vXNL6c0
だって、美嘉自身がライブを楽しめていなかったから
流石にプロだから、美嘉もファンの前ではいつも通りの元気な姿を見せていた

でも、同じステージ立った私は気づいてしまった
笑顔で踊る美嘉の心が、苦痛に身悶え叫んでいることに
主役であるはずの美嘉が、全く楽しめていない事に


どれだけの人を魅了して、来た人を満足させて帰らせたとしても
会場にそれだけの熱をもたらした本人がライブを楽しめてないなら、絶対に成功だなんて言えない!

315: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:52:22.88 ID:r2vXNL6c0
~~~ライブハウス裏~~~


美嘉「奏...」

奏「おいで、美嘉。まずはお疲れさま」
 「そして...聞かせて、本当はあの時何があったの?」

美嘉「...疲れてたから、控室で仮眠を取ってたの。そしたらなんか違和感を感じて、目を覚ましたらプロデューサーが胸、触ってて」

奏「なっ、それってセクハラじゃない!ならどうしてあの時」

美嘉「言えないよ!だって、そしたら奏を巻きこんじゃう...」

奏「私は巻き込まれたってかまわないわよ!...ねぇ、どうしてこの事務所から離れないの?こんな所でひどい仕打ちを受けるくらいならいっそ811プロに来れば」

美嘉「ダメ!...そんなことしたら、事務所が絶対に811プロに報復する!」

奏「報復...ですって?」

美嘉「ウチの事務所、実は裏で仕事を取るためにかなり汚い事をやってるみたいで、邪魔な事務所やアイドルには嫌がらせして仕事が来ないように根回ししたり、引退に追い込まれたアイドルもいて...」
  「061プロは手段を選ばない、あたしが移籍したらきっとその事務所が被害を受ける!」
  「...ホントはこれを知ったとき、アイドルやめようとも思ったんだけど、その時パパの事故があって...」

奏「やめるにやめられない状況になってしまったって事ね...」

316: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:53:24.98 ID:r2vXNL6c0
美嘉「それに、あたしのことを応援してくれてるファンの事も、裏切りたくない...でも、でも、それが辛いの!」
  「最初は、アイドルやるの、すっごく楽しかったのに!お仕事も、ライブも、ちゃんと楽しめてたのに!」
  「少なかったファンもだんだん増えてきて、私を応援する声に、すっごく励まされてたのに!」




  「今は、その全部が苦しい!あんなに、あんなに楽しかったアイドルが、今は、すごく苦しいっ!!」

317: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:54:35.38 ID:r2vXNL6c0
奏「美嘉...」

美嘉「かな、で...」

泣き崩れる美嘉を、私は抱きしめる

奏「つらかったわね...苦しかったのね...それでも、頑張ってきたのよね...」
 「でも、大丈夫。私は、『私達』は、あなたの味方よ」
 「嫌がらせなんて苦じゃないわ。きっと、皆で乗り越えられるわ。だから...」









「困りますねぇ、美嘉に余計なことを吹きまれては」

318: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:56:56.47 ID:r2vXNL6c0
奏「ッ貴方は!」

061P「やめてくださいよ、もし美嘉がそんな甘い言葉に絆されて血迷った真似をしたらどうしてくれるんです」

奏「貴方が、貴方たちが美嘉を!」

061P「フン...おい美嘉」

美嘉「!」

061P「分かるよな?友達に手を出されたくなかったら今どうするべきか。まだ仕事は残ってる、こんな所で油を売ってる場合じゃないんだ」

美嘉「...はい」

奏「美嘉!?ダメよ!」

美嘉「いいの、奏ちゃん。やっぱり迷惑はかけたくない」
  「でも、ありがとう。奏ちゃんの優しさで、ちょっと元気になれたから」

061P「いい子だ、行くぞ美嘉。速水さんも今日はお疲れさまでした。せいぜいこれからも頑張ってください」

奏「私は...貴方を絶対に許さない、許さないから!!」

061P「...吠えてろ、ヒステリー女」

美嘉「っ...じゃあ、またね。奏....」




そうして、美嘉は行ってしまった

...もう少し待ってて美嘉、私達が絶対そこから助け出すから







莉嘉...貴方との約束、絶対に果たす!

319: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:58:12.71 ID:r2vXNL6c0
      =========事務所=========

奏「ただいま」

P「おう、お帰り」

フレデリカ「ライブどうだったー?」

奏「残念ながら失敗ね、主役が楽しめてなかったもの。」

志希「そっかー、そりゃ失敗だね...慰め会する?」

奏「大丈夫よ、それより話しておきたいことがあるわ」

P「奇遇だな」

周子「あたし達の方も色々収穫あったからさ、とりあえず情報交換しよう」

320: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 22:59:01.04 ID:r2vXNL6c0
フレデリカ「じゃあ今日の取材の帰りに買ってきたお菓子開けようよ!甘いもの食べながらのほうがお話しも盛り上がるよきっと♪」

奏「いや、あんまり盛り上げたい話では...」

志希「でもー、奏ちゃん今すっごくイライラしてるでしょ?一旦糖分補給してリラックスしよー?」

奏「それは...そうね、頂こうかしら」

周子「ムグムグ...もう食べてまーす」

奏「いつの間に!?」

P「まあ食べながらでいいから聞いてくれ、まずは...」

321: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 23:00:12.72 ID:r2vXNL6c0
奏「私がCDデビュー!?」

P「ああ!それに伴って2週間後、新曲お披露目ライブをやることになった」
 「喜べ!初めてのお前がメインのライブだぞ!」

周子「しかも811プロアイドル初めてのCDデビューだよ」

フレデリカ「すっごーい!流石ウチのエースだね♪」

奏「エースって...でも、ふふっ、ついに私もCDデビューか...胸が高鳴るわね」

322: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 23:01:25.82 ID:r2vXNL6c0
P「それでこのライブな...美嘉をゲストに呼ぼうと思うんだ」

奏「美嘉を?」

P「ああ、今回のライブはお前が抱いたアイドルの夢、その原点である美嘉...彼女と一緒に作り上げたいんだ」
 「奏もそうだろう?自分の晴れ姿、美嘉に見てもらいたくないか?」

奏「もちろんそうだけど...でも、今の美嘉をステージに立たせるのは...」

P「...何があったか聞かせてくれ」

323: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 23:02:51.93 ID:r2vXNL6c0
P「アイドルが苦しい...か」

奏「ええ...だから今の美嘉をステージに立たせたら、更に追い詰めることになってしまうと思う」

志希「今まで好きだったものがそうじゃなくなる...辛いよね」

もちろん、欲を言えば美嘉と一緒にライブをしたい
でも、その願いが彼女を傷つけてしまうなら...それはできない

P「...なら、美嘉のほうを先に解決しよう」

周子「そうだね、じゃあ早速明日実行する?早いほうがいいでしょ?」

奏「解決って...そんな簡単に?」

P「いつも言ってるだろ?俺は無茶振りはしても無理は言わないぞ」

周子「それに言ったでしょ?あたし達も収穫があったんだよ。とびきり大きな収穫が♪」

324: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 23:04:20.73 ID:r2vXNL6c0
061P「...というわけでして、これ以上余計なことをされる前に消しておいた方が無難かと」

社長「そうだね...よし、ならちょうどいい方法がある」

061P「というと?」

社長「実は今日、811プロの速水君のCDデビュー記念ライブに城ケ崎君をゲストにとの依頼があってね」

061P「なるほど...そのライブで」

社長「ああ、軽く『事故』を起こしてやればいい。不幸な事故を、あの時のように、ね」

061P「成程!そうしてライブを妨害して信用を失墜させつつ、ギャラはしっかりと頂く...と」

社長「ああ、無理してあれだけの報酬を払って結果は得られず...811プロもこれで終わりだ」

061P「流石です社長!」

325: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 23:05:01.20 ID:r2vXNL6c0
061P「...ところで、さっきからすっごい酒の匂いがしますけど...」

社長「いやなに、実は811プロの奢りで高い酒を飲んでね、気分がいいものだからかなり飲んでしまって」
  「向こうのプロデューサーも気が利いてね、酔い覚ましまでもってたものだからいつも以上に酒が進んだよ」

061P「そうなんですか?...残念です、もし欠員が出ていなければ私が商談に向かえたのに」

社長「なぁに、今回の件が片付いたら私が同じ店で奢ってやるさ」

061P「本当ですか!?ならきっちり『仕事』しないといけませんね」

社長「ああ、期待してるよ...」



社長「フフフフフ...アッハハハハハッハ!!!!」

326: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 23:08:01.92 ID:r2vXNL6c0
美嘉「そんな...今の話...!」

奏ちゃんのライブで、事故を起こす?

美嘉「どうしよう...このままじゃ奏が...







         「811プロが危ない!!」








to be continued...

327: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/27(水) 23:16:34.01 ID:r2vXNL6c0
次回予告!

かつてプロ音ゲーマーであった塩見周子だったが、ライバルに仕込まれた毒入り八つ橋により腱鞘炎になり音ゲの道から去っていった

しかし挫折から10年、謎の科学者Dr志希により腕をサイコガンに改造され、全国の強者が集まる音ゲの祭典、『シンデレラの音ゲ会』へと導かれる

一度諦めた夢をもう一度燃え上がらせ、彼女は再び戦場へと降り立った!


周子「じゃ、いっくよー!気分は太鼓の達人で!」

次回!
Chapter7「Reach for the moon」

周子「次回もお楽しみに...ってああ!フルコン逃した!」





なお、本編の内容は一部予告と異なる場合がございます

330: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 22:51:38.33 ID:IXQInzaJ0
Chapter7投下していきます

331: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 22:53:18.92 ID:IXQInzaJ0
   ~~~夜、奏の部屋~~~


奏「そろそろ寝ましょうか...」(トキメキドコマデモー)
 「あら?...美嘉からだわ。もしもし?」

美嘉「奏ちゃん、起きてる!?夜遅くゴメン!」

奏「起きてるわよ...それで、一体どうしたの?」

美嘉「大変なの!お願い!」
  「今度の奏のライブ、中止して!」

奏「えっ...なんで?」

美嘉「さっき社長とプロデューサーが、奏のライブで事故を起こすって計画してて...」
  「ゴメン、あたしのせいだ...あたしのせいで、奏のライブがめちゃくちゃに...」

332: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 22:55:06.26 ID:IXQInzaJ0
奏「落ち着いて美嘉、あなたのせいじゃない」
 「それに、折角教えてもらって悪いけど、ライブは中止しないわ」

美嘉「えっ?でもライブをやったら奏、どんな目に合うか分かんないよ!?」

奏「大丈夫よ。美嘉、今日は家に帰れそう?」

美嘉「えっ?うん...明日も早いけど、今夜は久しぶりに帰れそう」

奏「そう、ならちょうどいいわ。莉嘉に伝えておいて」
 「私達、ちゃんと貴方との約束を果たすわ。だからお姉ちゃんにに『お帰り』を言う準備をしておいてって」

美嘉「えっ....どういうこと?」

奏「明日になればわかるわ、それじゃあね」

美嘉「えっ、ちょっと!...切れちゃった」






一体なんなの....?

333: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 22:56:48.50 ID:IXQInzaJ0
翌日、今日もあたしは事務所へ向かっていた

最近、どんどん事務所への足取りが重くなっている
まるで、三途の川の向こうへ歩んでいくように....


それでもなんとか事務所へたどり着き、まるで地獄の門をくぐるようにして事務所の扉をくぐる

プロデューサーという名の悪魔の出迎えを受けて、いつも通りの日々が始まる...







そのはずだった

334: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 22:58:53.00 ID:IXQInzaJ0
奏「おはよう、美嘉」

美嘉「えっ!?」

P「俺たちもいるぞ」

周子「おはよー、美嘉ちゃん久しぶり!」

フレデリカ「わーい!本物の美嘉ちゃんだ!握手しよー!ぶんぶん!」

志希「ハスハス...ん~やっぱいい匂いだね♪相変わらず疲れてるみたいだけど」

美嘉「って周子ちゃん!?それに志希ちゃんとフレちゃん?」

335: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:01:29.60 ID:IXQInzaJ0
志希「あれっ?フレちゃんの事も知ってたんだ。初対面だよねフレちゃん?」

フレデリカ「そうだよー、でも嬉しいな!美嘉ちゃんアタシのこと知っててくれてありがとー!」

美嘉「莉嘉がファンらしくて、『志希ちゃんとフレちゃんすごいんだよ!』ってよく話してたから...」
  「...ってそうじゃなくて!なんで061プロにいるの!?」

P「ちょっと大事な商談にね。ちょうどいい、美嘉も着いてきな」

美嘉「えっ、ちょっとどういう」

周子「まあまあ、面白いもん見れるから着いておいでよ」

フレデリカ「お菓子もあるよー!はい!」

ぴょんぴょんとはしゃぎながらフレちゃんは私にカップケーキを押し付けてきた
包装的に市販のじゃないな、手作り?

336: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:05:54.62 ID:IXQInzaJ0
奏「じゃあ役者もそろったし、行きましょうかプロデューサーさん」

P「ああ...」








          「悪党どもに、クライマックスを突きつけてやろうぜ!!」








337: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:06:22.59 ID:IXQInzaJ0
             




             Chapter7『Reach for the moon』






338: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:08:03.75 ID:IXQInzaJ0
        =====061プロ、社長室=====



社長「それで、話とは一体何だね?」

P「昨日お話しした奏のライブの件で、少し変更点がございまして。それも重要な変更でしたのでご報告にと」

061P「ああ、ウチの美嘉がゲストで出演するというやつですね」



奏のライブ、確かにあたしがゲストで出るとは聞いてる...
でも、あのライブをやったら奏が...!

339: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:09:18.92 ID:IXQInzaJ0
P「実はそこに変更がありまして。あの後社内会議でそのことを報告したところ、折角初めての811プロ主催のライブなのでやはり他社の力を借りずに自分たちの力でライブを成功させたい!と反発がありまして。」

奏「会議の結果、今回他社からのゲストはなしとさせていただくことになったわ」

社長「それでは...美嘉君の出演はなしということに?それは困るねぇ」

061P「ええ、もうその仕事があること前提にスケジュールを組んでしまいましたし、そちらの勝手な都合でということでは...」

P「ええ、存じております。それに、我々としても奏のアイドルとしてのルーツである城ケ崎さんにはやはり出演してもらいたいということで...」


社長「?...つまりどういう事だ?城ケ崎君を起用するのかしないのか、どっちなんだい?」

周子「あー、ちょっとあんた達には難しかったかな?」

社長「何?」

P「出演は811プロからのみ、でも美嘉は起用する。つまり...」

340: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:10:20.78 ID:IXQInzaJ0





    P周子奏「美嘉を811プロに引き渡せってこと(だ!)(だよ!)(よ!)」




341: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:11:38.80 ID:IXQInzaJ0
美嘉「えっ!?えっ!?どういうこと!?」


話が急展開過ぎてついていけないんだけど!?


フレデリカ「美嘉ちゃん!お話長くなりそうだからお菓子食べてよっか!」

美嘉「いやそんなばあいj『オランジェーッと!』むぐ...」




...美味しい

っそうじゃなくて!

342: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:13:14.27 ID:IXQInzaJ0
社長「いやいや君ィ...そんなこと出来るわけないだろう」

061P「それにもし本当に移籍させるにしても、今回のライブの件の違約金も含めてしっかり請求しますよ。それこそ貴方たちの様な弱小プロでは払えないような金額をね」

P「はっ、良い感じに頭湧いてんねぇ」

奏「貴方たちに払うお金なんて一銭たりともあるわけないでしょ」

周子「というわけで、違約金も移籍金もぜーんぶタダでもらっていくよ」

社長「はあ!?お伽噺も大概にするんだな!」

343: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:13:41.29 ID:IXQInzaJ0
        




         P「お伽噺かどうかは...これを聞いてからにしてもらおうか」







344: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:14:21.32 ID:IXQInzaJ0
ピピーガガッ...


(061P「...というわけでして、これ以上余計なことをされる前に消しておいた方が無難かと」)
(社長「うむ、そうだね...よし、ならちょうどいい方法がある」)


(社長「実は今日、811プロの速水君のCDデビュー記念ライブに城ケ崎君をゲストにとの依頼があってね」)
(061P「なるほど...そのライブで」)
(社長「ああ、軽く『事故』を起こしてやればいい。不幸な事故を、あの時のように、ね」)





美嘉「えっ!?」

061P&社長「こ、これは!?」

345: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:16:24.59 ID:IXQInzaJ0
これ、昨日あたしが聞いた会話!?


P「おやおやー?随分物騒なお宝が入ってましたねー?」

社長「き、貴様!どうやってこの会話を!?」

P「社長さーん、ダメですよこの業界で隙をみせちゃあ。わるーい美人局に引っかかっちゃいますよ、ね?」

社長「美人局...まさか!?」

周子「おっ気づいた?じゃあネタばらしといきましょか♪」
  「どうも、『佐東円』改め、『塩見周子』でーす。アイドル兼事務員やってまーす!」

346: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:20:16.27 ID:IXQInzaJ0
社長「き、貴様は....」



【佐東(周子)「というわけで、あたしを061プロに入れてください!」】※Chapter6



社長「あの時のアイドル志望!?」

P「そう、最初から全部罠だったって事」

周子「抱き着いたときにコートのポケットに盗聴器突っ込ませてもらったよ。どう?スパイしゅーこちゃんの演技」

P「中々良かったぞ。今度女優の仕事持ってきてやるよ」

周子「マジ?やったー♪」

347: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:21:45.31 ID:IXQInzaJ0
奏「じゃあ次いでにもっと面白いもの聞かせてあげましょう。ねぇ、プロデューサーさん?」

社長「何!?」

061プロ「まだあるのか!?」

P「もちろん、こんなんじゃ終わりませんよ、ぽちっとな」

ピピーガガッ...




(P「つまり、美嘉を事務所にとどめるためにそんな手を?」)
(社長「そうだよ~ヒック城ケ崎君がアイドルを続けざるを得ないように彼女の父親が事故に合うようにプロデューサー君に細工をしてもらってねぇ」)






美嘉「えっ...!?」

061社長P「」

348: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:22:30.07 ID:IXQInzaJ0
事故に合うように細工...?
そんな、じゃあパパの事故は...!




(P「いやー勉強になりますわーそんな手法私じゃ思い付きませんわー」)
(社長「いやーふふふヒックまあ確かに、私ぐらい大物にならないとここまでのことはできないだろうねぇ」)
(社長「君もこの業界で成り上がりたいのなら手段を選んじゃダメだよぉ~?アイドルは商品なんだから、しっかりと『管理』してやらないとねぇ」)
(P「いやー流石です社長!よっ日本一!」)
(社長「そうだろうそうだろう!よし、もっと酒もってこーい!」)






P「いやーホントに勉強になりますわ~」
 「俺ならそんな惨い手、思い付きもしないし思い付いても絶対実行しねえよ腐れ外道」

349: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:24:13.83 ID:IXQInzaJ0
美嘉「ちょっと社長!今の話は本当なの!?」

061P「いや、その...」

社長「違うんだ、城ケ崎君...これは...」

P「あの時社長さんに飲ませた酔いざまし、実はウチのとあるギフテッドアイドルが作ったものでして、効果は抜群なんですが...効くまでに30分ほどタイムラグがありましてね」

志希「その間、べろんべろんになって聞かれた事なんでも答えちゃう上に、効果が切れて酔いがさめると酩酊状態の時の事は忘れちゃう副作用があるんだー♪」

周子「んでそれを飲んだあんたの会話を、Pさんに電話をかけた後ずっと通話状態にして後ろの席でご飯食べてた円ちゃん、つまりあたしが録音してたってワケ」

350: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:25:39.93 ID:IXQInzaJ0
061P「き、汚いぞ!」

奏「あら、貴方たちが言えた義理ではないでしょう?」
 「汚い腹で美嘉を弄んで、汚い手で美嘉の体に触れて、『アイドル』そのものを汚したんだもの。そんな汚れに汚れた貴方たちが、手段を選んでもらえ得ると思って?」


美嘉「...許さない!パパをあんな目に合わせて!警察に突き出して...」
  
P「待って、残念だけど美嘉のお父さんの事故に関しては時間がたちすぎてるし警察も事故として処理しちまった、有力な証拠は処分されてるだろう」
 「それにさっきの自白も、裁判で使えるかどうか怪しい。自白剤に盗聴...違法な手段なで手に入れた証拠だからな」

美嘉「そんな!」

351: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:26:52.77 ID:IXQInzaJ0
P「まあそれでも、これを週刊誌にでも持ってったら確実にこのおっさん共は破滅だろうがな」

社長P「くっ...」

P「それに、俺たちは警察じゃない。ただのプロデューサーとアイドルです。あれこれ騒ぎ立てて美嘉に変な噂がつくのもあまりよろしくない」
 「というわけで、商談といきましょうや社長さん」

社長「チッ...要求はなんだ!」

P「さっきから言ってるだろ?まずは美嘉を811プロに移籍させること」
 「そして、金輪際ウチの事務所とアイドルに手を出さない事。これが俺が提示する条件です」

社長「チッ...分かった、その要求を呑もう...」

P「賢い判断です。ではこちらの契約書を....」

352: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:27:29.81 ID:IXQInzaJ0
P「はい、では今をもって美嘉は811プロ所属のアイドルになりましたー!」

フレデリカ「わーい!ようこそ811プロへ!とりあえずハグしよー♪ぎゅー!」

志希 「これから一緒に頑張ろうね美嘉ちゃん!ハスハス!」

美嘉「ちょっ、ちょっとフレちゃん志希ちゃん....でも、ありがとう、これから宜しくね!」

061P「もういいだろう!さっさと出ていってくれ!」
    「美嘉、お前もだ!もう顔も見たくない!」

美嘉「こっちだって願い下げだよ!もう2度と来ないからね!行こ、みんな!」

353: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:28:59.95 ID:IXQInzaJ0



奏「待って」



354: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:29:53.87 ID:IXQInzaJ0
美嘉「えっ?」

奏「まだ商談は終わってないわよ?」

社長「なっ!そっちの要求はちゃんと飲んだじゃないか!」

周子「そりゃPさんの要求はね」

奏「まだ私たちの要求が残っているわ」

P「いやー、俺はこれくらいで勘弁してやろうと思ったんですけど...まだうちの事務員とエースが納得いってないみたいでね」

周子「それと美嘉ちゃんの要求もね」

美嘉「えっ、あたしも?」

奏「散々苦しめられたんだもの、今くらいハメ外しちゃってもいいんじゃない?」

061P「なっ、何を要求する気だ...?」

355: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:30:45.20 ID:IXQInzaJ0
奏「...プロデューサーさん...アイドルの暴力行為は、やっぱりNGよね?」

P「まあ、一発退場だろうな」

周子「でも、それを誰も見てなかったら、それは無かったのと同じだよね?」


....!
まさか!?

356: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:32:35.36 ID:IXQInzaJ0
P「...あー目にゴミが入ったーなにもみえないー!」

志希「あたしも薬品が目に入っちゃったー志希ちゃん失明中ー」

フレデリカ「フレちゃんはバルスを唱えた!....目が、目があああああああああ!!」

P「自爆してるじゃねえか」



美嘉「...そっかー、見えてないならしょうがないね」ゴゴゴゴゴ゙

奏「ええ、見えてないんだものね」ゴゴゴゴゴ゙

周子「あたし演技とはいえこんな奴に抱き着いたのちょっとイライラしててさー。青木さん直伝の男をオトす必殺技、役に立つ時が来たみたいだねぇ」ゴゴゴゴゴ゙

P「あぁ、『アレ』かぁ...あの人アイドルになんてもん教えてんだ....」

奏「もしもの時の護身術って事で前に教えてもらったのよ。それじゃあ...」

社長「や、やめろ....」

061P「来るな!...来ないでえ!」






周子「じゃ、いっくよー!気分は太鼓の達人で!」

357: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:33:25.49 ID:IXQInzaJ0
パチパチチパチドンパチパチカッパチパチパチパチパチィン!!!
フルコンボダドンッ!

358: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:34:58.92 ID:IXQInzaJ0
美嘉の事務所との『商談』を終えて私達は811プロに帰ってきた
新しいアイドル、それもとびきり大物が増えたんだもの、今後の方針を話さなくちゃね?


周子「あースッキリした!」

P「いやほんと、『アレ』は食らってるのが自分じゃなくてもトラウマが刺激される...うっぷ」

奏「あら?何も見ていなかったんでしょ?」

P「...よし!何もなかったな!」

フレデリカ「プロデューサー今記憶消したね」

P「ここはどこ?俺は誰?」

周子「いや消し過ぎでしょ」



志希「じゃあ忘れられた記憶が蘇る志希ちゃん特性ドラッグを投与しよっか、そーれ♪」

P「もごっ....!!!!!辛イィ!!」

志希「どう?刺激で記憶も蘇ってくるでしょ?」

P「いやこれっ、逆に全部ぶっ飛...ビイィィィ!」

359: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:36:05.29 ID:IXQInzaJ0
美嘉「...ぷっ、あははははは!」

奏「あら、美嘉がここまで大笑いしてるのは初めて見るわね」

美嘉「あははは、ゴメンゴメン!ツボに入っちゃってさ!」

奏「いいのよ、寧ろもっと笑ってちょうだい」
 「私達はあなたの、その曇りのない笑顔を見たかったのだから.....」

360: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:37:12.10 ID:IXQInzaJ0
周子「でも、美嘉ちゃんはまだスッキリしてないんじゃない?」

美嘉「えっ?」

周子「だって、美嘉ちゃんのお父さんの事故の犯人分かったのに、司法のお咎めなしじゃん?」

美嘉「それは...確かにムカつくけど、でも仕方ないよ。こうやって無事移籍で来ただけでも十分...」





P「いや何言ってんだ?あの事務所をあのまま野放しにするわけないだろ?」

美嘉「えっ?でも使える証拠がないって」

P「俺たちの手元にはな、でもこういうのは専門の人間に任せればいいんだよ」

美嘉「専門の人間?」

361: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:39:37.43 ID:IXQInzaJ0
P「いつもお世話になってるだろ?雑誌にテレビ...マスコミの力だよ。あいつらに流してやれば、あとは勝手に騒ぎ立ててくれるし、世論の影響で警察も再捜査に乗り出してくれるだろうしさ」
 
 「一応知り合いの警察官にもそれとなく話は流しておくから、きっと大丈夫さ」

周子「情報を垂れ流すって事?」

P「そういう事。もう美嘉の移籍が済んだ以上後はもうこっちのもんだよ。すぐにはやらないがな、奏のライブが無事終わるまでは握りっぱなしにしとくよ」

奏「あら、別にすぐ発表しちゃってもいいんじゃないの?」

P「破滅まで追い詰められた人間は何しでかすか分かったもんじゃない、ヤケを起こされてライブを邪魔されたらコトだ」

362: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:41:17.76 ID:IXQInzaJ0
美嘉「でも、契約破っちゃって大丈夫なの?あたしの移籍の代わりに黙ってるって話だったんでしょ?」

P「そんなもん向こうが潰れちまえば関係ないさ。それに俺は美嘉の移籍を要求しただけで、条件を飲んだら黙ってるなんて一言も言ってなーい♪」

周子「うわーずっこいなぁPさん」

P「向こうの社長も言ってただろ?手段を選ぶなってさ。だからこっちだって手段は選ばねえよ」

奏「そうね、あの人達は今まで散々美嘉を、そしてきっと他の事務所のアイドル達に酷いことをしてきたんだもの。しっかり法の裁きを受けてもらわないと」


美嘉「そっか....皆!今回は、本当にありがとう!」
 
奏「いいのよ...今までよく頑張ったわね、美嘉」





本当にお疲れさま、美嘉.....

363: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:42:22.86 ID:IXQInzaJ0
P「さて、じゃあ早速美嘉にこれからのスケジュールを伝えよう」

美嘉「...あっそうだ!今日もまだ何個か仕事が!」

P「それは俺が仕事先に頭下げてキャンセルさせてもらう。それよりも、今君にとって最も重要な仕事を託そう」

美嘉「えっ?」

P「今日はもう家に帰って、これから一週間ゆっくり休むこと」
 「今は身体を休めること、それが一番美嘉にとって必要なことだよ」

フレデリカ「お仕事ならピンチヒッターフレデリカに任せて!だから」

志希「莉嘉ちゃんにただいまって言ってあげて。莉嘉ちゃんが、あたし達のファンが笑ってくれれば、あたし達も嬉しいから」

奏「大丈夫よ、私達ももうあの時から大分アイドルとして成長してるもの。だから今はゆっくり休んで、ね?」

P「さっきタクシー呼んでおいたから、それで帰りな」





美嘉「...分かった、皆、ありがとねっ★」
  「でも、休ませてもらった分、奏ちゃんのライブは一緒に最高の物にするから、期待しててね!」

奏「ええ、待ってるわ。」

美嘉「じゃあみんな、またねっ!」

364: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:43:19.55 ID:IXQInzaJ0
       =======城ケ崎家===============

こんなに早く家に帰れたの、久しぶりだな

日曜日だし、莉嘉も家にいるかな?だとしたら、ちゃんと言わなきゃね



扉を開けると、どたどたと走る音と、とびきりの笑顔が、あたしを出迎えた








莉嘉「お姉ちゃん!お帰りなさいっ!」



....ただいま!

365: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:43:55.72 ID:IXQInzaJ0
社長「申し訳ございません!次のアイドルは必ず、それにまた『商品』もご用意しますので!どうか、どうかご慈悲を!」

  「そんな、待ってください!援助を受けられなければ、私は!(ガチャッ!)」

  「あ、ああ、そんな...うわあああああああああああああああ!!!!」

366: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:44:53.76 ID:IXQInzaJ0
城ケ崎美嘉のウワサ

・移籍前より笑顔が増えたらしい


367: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:45:42.14 ID:IXQInzaJ0
       ========一週間後============


ん~....いい朝!

一週間きっちりリフレッシュしたし、これからまた頑張らなきゃね!


美嘉「おはよー」

莉嘉「おはよ―お姉ちゃん!今日は811プロに行くんでしょ?」

美嘉「うん!アイドル城ケ崎美嘉、再始動★」

368: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:47:04.78 ID:IXQInzaJ0
莉嘉「...よかった!」

美嘉「えっ?」

莉嘉「前まで仕事行くとき辛そうだったけど、今日はすっごい楽しそうだもん!」

美嘉「...うん!今日からの仕事、すっごい楽しみ!」

莉嘉「あっ、それでね!さっきテレビで志希ちゃんとフレちゃんがDランクに上がったって宣伝してたんだ!」

美嘉「知ってる。昨日LINEで連絡来たよ」

莉嘉「えっ!お姉ちゃん志希ちゃんとフレちゃんのID持ってるの?いいなー!」

美嘉「そりゃあ仕事仲間だから持ってるよ。それより莉嘉、早く朝ご飯食べないとママに怒られるよ」

莉嘉「やばっ!いただきます!」

美嘉「あたしもいただききまーす!」

369: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:48:46.61 ID:IXQInzaJ0
『それでは次のニュースです』

あっ、ニュース始まった!
堅いニュースから今の流行が読み取れることもあるし、こういうのはちゃんとチェックしておかないと

370: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:49:22.96 ID:IXQInzaJ0




   『先日電撃移籍したことで話題となった人気アイドル城ケ崎美嘉さんの元所属事務所、061プロダクションが昨日、倒産していたことが発覚しました』






371: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:51:04.74 ID:IXQInzaJ0
美嘉莉嘉「「....えっ!?」」



『倒産についての詳しい理由はまだ判明していませんが、061プロダクションは所属アイドルへのセクハラ、パワハラや他の事務所への嫌がらせなど、数々の違法な営業をしていた疑いがかかっており...』
『また違法行為を先導していたと思われる社長の輪島 塁氏は現在行方がつかめず....』




あたしにとって衝撃的すぎる内容が、テロップとともにテレビの中で静かに歌っていた

372: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:52:18.91 ID:IXQInzaJ0
     ====811プロ====

美嘉「皆!今朝のニュース見た!?」


そう言って慌てた様子の美嘉が事務所に飛び込んできた

美嘉の慌てように今朝のニュース...間違いなく061プロ倒産のニュースね


奏「見たわ...一体なぜ...」

周子「プロデューサーさんもうばらしちゃったの?奏ちゃんのライブが終わるまで黙っとくんじゃ?」

P「...いや、俺はまだ情報を流してない」

373: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:53:54.63 ID:IXQInzaJ0
奏「プロデューサーさんが流したんじゃないじゃないとすると...一体どういう事?」

P「俺ら以外の誰かが061プロの情報を流したのか、それとも向こうが勝手に自爆したのか...でもそれにしたって気になることはある」

美嘉「気になること?」

P「倒産するのが早すぎる、社長の犯罪行為が発覚して逮捕されたとしても、代理の社長を立てるなりなんなりで資金があるうちは会社自体はなんとか誰かが存続させるはずだ。」
 「そもそも、社長は逮捕されたわけでなく行方不明ときたもんだ、それなのにわずか一週間で倒産...どうにも腑に落ちない」


そうか、会社の頭が消えてもそれまで稼いだ資金や人材が一瞬でなくなるわけじゃないものね
言われてみれば、確かに不自然かしら...

374: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:54:35.57 ID:IXQInzaJ0
周子「なるほど...分かるような分からんような...」

奏「でも、美嘉は大丈夫なの?少し前に061プロから移籍したばかりだし、なにか良くない噂をされたりするんじゃ」

フレデリカ「んー、その辺は大丈夫じゃないかな?」

志希「世間は結構美嘉ちゃんに同情的な感想が多いね、『辛い環境でよく耐えた!』とか『手を切って正解!曲がったことを許さない美嘉タンに惚れ直した!』とか『すげぇよミカは...』とか」

P「まあそんな感じで、美嘉に対して不当な貶めはなさげだし、そこは安心していいと思う」

奏「そう、ならいいけど...」

375: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:55:42.45 ID:IXQInzaJ0
周子「でも、考えようによっちゃラッキーじゃない?わざわざこっちが動くことなく勝手につぶれてくれたんだから」

P「まあ....そうだな。これでライブの準備に集中できるしこっちとしては有り難いんだが...一応皆警戒しておいてくれ」

全員「はーい」

周子「じゃあ面倒な話はここまでにして、今日もお仕事頑張るよみんな!」

P「ああ、久々だけど大丈夫か美嘉?」

美嘉「勿論!あたしは今を時めくカリスマアイドルだからね★」
  「それに...今なら、皆となら、久々にお仕事楽しめそうだしさ!」

P「そうか...なら良かった」
 「よしっ、じゃあ今日も811プロ、営業開始だ!」

376: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:56:32.51 ID:IXQInzaJ0
それから更に一週間後

とうとう、私のCD発売記念ライブの日がやってきた

ステージの裏から客席を覗くと、そこにはもの凄い人の塊が!




奏「すごい...こんなに沢山の人が...!」

P「だろ?ここにいる人間、皆お前の歌を聞きに来たんだ」

周子「大丈夫奏ちゃん?緊張してない?」

377: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:57:45.76 ID:IXQInzaJ0
緊張は...勿論している。自分が主役のライブは初めてだから...



...でも!



奏「大丈夫よ。ファンがこんなに私の為に集まってくれたんだもの、絶対に満足させて帰らせなきゃ!」

美嘉「安心して!後ろにはあたし達が着いてるから★」

志希「あたしも今すっごい興奮してるよ!奏ちゃんの仲間としても、1ファンとしても!」

378: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/28(木) 23:59:01.31 ID:IXQInzaJ0
フレデリカ「じゃあ、ステージに出る前に円陣組もうよ円陣!ファイトー!って♪」


フレデリカが手を伸ばすと、全員がそれに同調するように手を重ねる


P「じゃあ今日の主役の奏さん、なんか気の引き締まるお言葉をどうぞ!」

奏「そうね...皆、今日は初めての811プロ主催ライブよ」
 「だから...全力で楽しんで、ファンのみんなも楽しませて、今この世界で一番楽しい世界を作り上げるわよ!」

全員「うんっ!」

奏 「じゃあ行くわよ...811プロー!ファイト―!」








全員「オーーっ!!」

379: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:00:03.93 ID:/4fWADIj0
ああ!今あたし、すっごく楽しい!
それに...すごく嬉しい!

アイドルを嫌いにならくて済んだことが
アイドルは楽しいものなんだって思い出せたことが!

ありがとう、皆!!

奏、あたし全力で『アイドル』を楽しむから!

だから今日は...奏の最高の姿を、隣で見させてね!

380: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:01:22.51 ID:/4fWADIj0
美嘉、見ていて頂戴



あの時、満月のように輝いていた貴方を目指して、その輝く姿に必死に手を伸ばし続けて、ようやくここまで来たわ

だから今日は貴女にも、思わず手を伸ばしたくなる満月の様な私の姿、絶対に見せてあげるから!

381: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:03:33.61 ID:/4fWADIj0
(週刊!今アツいアイドル!今回は、811プロから流星のように現れた超新星!速水 奏さんにお越しいただきました!)
(先日CDデビューを果たしそのお披露目となった記念ライブでも会場のファンを大いに熱狂させたあのアイドルです!)
(また、発売されたCD「Hotel Moonside」はオリコンチャート4位を獲得しました!)
(これはDランクアイドルとしては異例の売り上げであり、この結果を評価されアイドルランクがCに昇格したとのことです!)





周子「やってるねー、この前の奏ちゃんの番組」


書類と格闘していた手を止め、テレビへと目を向ける

382: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:05:16.04 ID:/4fWADIj0
P「ああ、奏も今やメジャーアイドルの仲間入りだ、仕事もどんどん入ってきてる」

Pさんも番組が気になるのか、事務仕事をさぼり始めたあたしを咎めず、自分もテレビを眺め始めた

周子「あれからウチの事務所も怖いくらい上手く行ってるよね~」
  「美嘉ちゃんもあれからどんどん仕事に熱が入ってるし、志希ちゃんとフレちゃんも休養中の美嘉ちゃんの代役で出た仕事が評価されてDランクに昇格したし」
  「それにあたしのCDデビューも決まったし、向かうところ敵なしって感じ?」

P「まだまだこれからだよ、Cより上はもうメジャーアイドルの戦場、まだまだとんでもねえ奴等がわんさかいる」
 「それにこの業界、唐突に大型新人が現れたりするもんだ、気を引き締めていかないと足元救われるぞ?」

周子「勝って兜の緒を締めよってやつだね!でも、大丈夫だよ。てきとー娘だったあたしでも、みんなと一緒にここまで来れたんだからさ!」

383: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:07:18.06 ID:/4fWADIj0
でも、そう言えば何か忘れてることがあるような...あっ


周子「そういえば...結局061の社長はどこ行ったんだろうね。何か仕掛けてくるかもと警戒してたのも、結局杞憂だったし」

P「...まあ、会社もなくなって警察に追われる身さ、もう何もできることはないだろう」
 「そんなことより手を動かすぞ、明日はお前もロケなんだから、時間があるときに書類片付けとかないとな」

周子「はーい...いやぁ事務員とアイドルの二足のわらじは辛いねぇ」

P「その分給料も払ってるだろ?」

周子「まあね、それにこっちはこっちで楽しいよ。裏方がどういう仕事をしてるのかも知れてさ。何事も経験だよねー」

P「そうだな、この経験をしっかりアイドルの仕事に活かしていけよ?」

周子「はーい、しゅーこちゃん頑張りまーす」

P「でもいい加減長いことやって疲れたし、番組終わるまで休憩するか。お茶入れてくるよ」




周子「じゃあ戸棚の一番下の二重底になってるとこにあるお菓子も持ってきてー」

P「分かった...........なんで隠し場所を知ってる」

周子「前に志希ちゃんが匂いで見つけてた」

P「...今度から匂いが漏れないように保管するか........」

384: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:08:51.31 ID:/4fWADIj0
P「...............」









      ~~~~ライブの翌日、どこかの喫茶店~~~~~~
早苗「あっ!P君こっちこっち!」

P「どうも片桐さん、お元気そうで何よりです」

385: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:09:46.43 ID:/4fWADIj0
早苗「そっちは...うん、前よりは元気そうね」
  「奏ちゃんのライブ見に行ったわよ、なんか上手く言えないけど...すごかった!お姉さん年甲斐もなくはしゃいじゃったわよ」

P「ありがとうございます...で?わざわざ呼び出したんです。話ってそれだけじゃないでしょう?」

早苗「...本題に入るわ」






  「061プロの社長、昨日遺体で見つかったわ」

386: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:10:50.34 ID:/4fWADIj0
P「!?」

早苗「部屋から遺書が見つかったわ。会社もなくなり、ネットでも誹謗中傷ばかりで人生に絶望した、とかそんな内容の」
  「だから状況的に自殺だとは思うんだけど...ちょっときな臭いことがあってね」

P「きな臭いこと?」

早苗「上のお偉いさんから捜査を早めに切り上げろって圧力があったみたいなの」
  「正直私が見ても自殺としか言えない状況だったから捜査が切り上げられても不思議ではないんだけど...少し強引すぎな気がするのよね」

P「確かに...わざわざ圧力をかけるような状況でもありませんよね。遺書があったんならほっといても自殺で処理されるだろうに」

387: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:11:51.38 ID:/4fWADIj0
早苗「まあ、君が追ってるものとは関係ないかもしれないけど。一応伝えとくわ」

P「...いえ、ありがとうございます。お礼に一杯奢りますよ」

早苗「ほんと!?じゃあそこのお兄さん!とりあえず生中10本!」>カシコマリー!

P「ちょ、ちょっと!一杯って言ったでしょ!」

早苗「うん、だからいっぱい頼んだんじゃない」

P「そういう意味じゃねえよ!」

早苗「なによ、あたしの酒が飲めないっての?」

P「飲むって、俺明日も仕事...てかなんでまだ飲んでないのに出来上がった感じになってるんですか!?」

早苗「P君を待ってる間にに2杯飲んだからね!」

P「あんたこんな大事な話の前に飲んだんすか...」

388: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:12:37.12 ID:/4fWADIj0
P「まあ、言わないほうがいいのは確かだよな...」ボソッ

周子「ん?なんか言ったPさん?」

P「いや、何でもない。しょうがねえからあの秘蔵の饅頭も持ってきてやるよ...後でコッソリ食べようと思ってたのに...」

周子「やった♪」









to be continued...

389: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:19:44.51 ID:/4fWADIj0
次回予告!

Pとの取引によりついに事務所に自分のラボを用意してもらった志希

志希「事務所の空き部屋を一つ、実験室として貰ったんだー!」

周子「もしかして最近2階から時々異臭がするのって...」

新しいラボを手に入れてテンションが上がった志希は早速Pをモルモットとして実験を開始することに
特に意味のない投薬がPを襲う!

次回!

Chapter8 「Know Maiden,The Bigocean」

志希「次回もお楽しみに!」

Pだったもの「オダノジミニ...」

390: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 00:23:40.93 ID:/4fWADIj0
Chapter7終了したとこで今回はここまで―、今気づいたけど元ネタは『意味のない』じゃなくて『理由のない』でした...やっちまった...

これで物語の3分の1、第一部が終わりました
このペースならこのスレの間に完結...できるでしょうか?(不安)

次回はまた明日の夜、そして少し時間をおいてChapter6,7の補足及びあらすじを投下します

391: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 01:07:54.19 ID:/4fWADIj0
Chapter6と7のあらすじ及び解説(読まなくても問題はないです)

・Chapter6 「Please help my sister!!」
レッスンを抜け出し失踪した志希は美嘉の妹である少女、莉嘉と遭遇
面白そうな気配を感じ取った志希は、奏の仕事を見に行く次いでに莉嘉をスタジオまで案内することに
一方奏は共演している美嘉から何か妙な違和感を感じていた
そして撮影が終わった後、合流した奏と志希、そして志希を追ってきたPは莉嘉からその違和感の正体、美嘉が事務所に酷使され続けていること聞かされる
そして莉嘉の姉を助けてと欲しいという願いを叶えることを811プロは決意するのだった
しかし美嘉は811プロを潰そうと自分の事務所が暗躍していることを知ってしまい....?
サブタイの意味は 莉嘉「お姉ちゃんを助けて!」とそのまんま

『城ケ崎莉嘉』
おなじみ城ケ崎姉妹の妹の方、かわいい。
このssの世界線ではまだアイドルになっていないが、芸能界で活躍する姉を見て憧れは抱いているようだ
しかし、同時に無理な仕事をし続ける姉を心から心配していた
姉の方は一発変換出来るが莉嘉は何故か変換できないのが困りもの

『佐東 円』
唐突なオリキャラ....ではなく、変装した周子
Pと協力し061プロの社長から情報を抜き取った

・Chapter7『Reach for the moon』
重い足取りで自らが所属する事務所、061プロへ向かう美嘉
しかし入り口で彼女を待っていたのは811プロの面々だった
わけのわからないまま商談があるというPたちに連れられて社長室へ向かう
その商談の内容...それは811プロに美嘉を移籍させること
当然061の社長は要求をつっぱねるが、Pは061プロの悪事の証拠を掴んでいた
なんと、社長に近づいたアイドル候補生佐東 円の正体は周子だったのだ!(知ってた)
裁判の証拠には使えないが社長と061Pを破滅させるには十分であることを悟った社長は、渋々美嘉の移籍を認めた
だが当然061プロをこのままで終わらせておくはずもなく、奏のCD記念ライブが終わり次第情報をリーク...
する予定だったのだが、なぜかその前に061プロが倒産する
さらにPは知り合いの警察官、片桐早苗に061プロの社長が自殺したことを聞かされる
しかしアイドル達に余計なショックを与えてはいけないと、その事実をPは胸の中にしまい込むのだった...
サブタイの意味は『月に手を伸ばす』

『城ケ崎 美嘉』
今回で無事に811プロへの移籍に成功
設定を考えていた初期から先輩アイドルとして出すと決まっていたものの、設立したばっかの事務所で先輩として出すには違和感があったので別事務所から移籍させることになった

『061社長』
美嘉の所属していた事務所、061(ワルイ)プロダクションの社長
なんでこんなあからさまに悪徳企業っぽい名前の事務所にしたのか、まったくもって意味不明である
援助だのなんだの誰かと意味深な通話をしていたが、遺書を残して自殺してしまった

『061P』
美嘉を担当していたプロデューサー、美嘉だけでなく他のアイドルにもセクハラをしていた模様
061プロが倒産してからは行方不明

話が長くて今までの話を忘れてしまった場合には、ちょくちょく残してあるこのあらすじを読んでいただければ大まかな話の流れは思い出せるようになってると思います

392: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 01:10:45.81 ID:/4fWADIj0
※補足追加

『片桐 早苗』
みんなご存じ元婦警アイドルのあの人、
このssではまだ警察官で、所属も交通課ではないらしい
Pとは既知の仲のようだが...?
実は準レギュラーだがまともな再登場はまだ先の予定

393: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:13:16.68 ID:/4fWADIj0
遅くなりましたがChapter8投下していきます

394: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:15:00.98 ID:/4fWADIj0
眼前には無数のサイリウム
私を支えてくれてきたファンが作りだした、青く光る川の流れ

そして背中には、ずっと共に歩んできた仲間たち
これまでも、これからも一緒に階段を駆け上がっていく仲間たち



...うん!どう考えても無敵の布陣だよね!







周子「じゃあみんな、いっくよー!」
  「『青の一番星』!」

395: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:16:41.38 ID:/4fWADIj0
P「それじゃあ、周子のCDデビューとLIVE成功を記念してー!」

全員「かんぱーい!」


フレデリカ「湯のみで乾杯ってなんか新鮮ー」

周子「寿司屋だからねー、回る奴だけど」

P「いいだろ回転寿司、こっちのほうが雰囲気あってさ」

志希「あたしあんま日本にいる期間無かったから、むしろ回転寿司の方が新鮮かなー?」
  「ダッドが和食連れてってくれた時も、回らないとこばっかだったし」

396: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:20:09.81 ID:/4fWADIj0
奏「でもここに来ると思い出さない?私達の最初のオーディションの事」

周子「そういえば...あの時もく○寿司だったねー。確か美嘉ちゃんに初めてあったもその時だっけ」

美嘉「そうだったねー、あたしのライブバックダンサー決めるオーディションにデビュー前の新人アイドルが合格したって聞いて、気になって見に行ったんだった!」

奏「あの時は、こうして同じ事務所で仕事をするなんて思ってなかったわね」

フレデリカ「じゃあく○寿司が、デュアルフルムーンと美嘉ちゃんの運命の出会い!だね♪」

P「ほんとになぁ...その後落とした名刺がきっかけでフレデリカが、フレデリカの初仕事の最中に志希が」
 「そして右往曲折あって美嘉が加入して...まだ半年くらいだけど、短期間で本当によく濃いのが集まったもんだ」

美嘉「あたしの時はすごかったねー。しゅーこちゃんとプロデューサー、まるでスパイみたいだったし」

P「志希が自白剤を作ってくれたから思ってたより簡単に進んだよ。あの時は青木さんのシゴキのあとすぐ徹夜させて悪かったな」

志希「まあその分の報酬はしっかり貰ってるしね。気にしなくていいよ」

美嘉「報酬?」

志希「事務所の空き部屋を一つ、実験室として貰ったんだー!」

周子「もしかして最近2階から時々異臭がするのって...」

志希「さて、なんのことかなー?」

P「あげといてからなんだが、頼むから法を犯すようなことはやめてくれよ...?」

志希「流石にそんなヘマしたりはしないよ。前の自白剤もちゃんと合法な奴だから、一応」

P「ならいいんだが...」

397: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:21:20.43 ID:/4fWADIj0
周子「ていうか、ウチの事務所なんであんなに一杯衣装あったん?」
  「ステージ衣装っぽいやつの他にも学生服とか警察官とか、もはや衣装って言うよりコスプレっぽいのまで色々あったけど...もしかして、Pさんの趣味?」

P「んな訳ないだろ。昔度々知人がこれ着てみて、次はあれ着てって押し付けられてたんだよ」
 「んでプロダクションを立てた時に、もしかしたら役に立つかもって思って事務所に運び込んだんだが...まさか本当に役に立つ時が来るとはな」

美嘉「じゃあ、衣装をくれたその人に感謝しなくちゃね」

P「まぁ、な。ホントにあの人には頭が上がんねぇよ...」

398: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:22:32.67 ID:/4fWADIj0
周子「それにしても、この半年くらいで本当にいろんなことがあったよねー」




あたしがPさんにスカウトされてから半年

もう、そんなに経ったんだなぁ

あの時は、変な人に変な話を持ちかけられて、ちょっと面倒だなぁとか思ったもんだけど



(こんな深夜に公園で寝るなんて、どんな不良かと思えば....)

(.....折角可愛く生まれたんだ。どうせなら....)

(ダメだったらダメだったで、スパッとやめてもいいからさ...ちょっと試してみないか?)






もしあの時、Pさんに声をかけられなかったら...

399: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:24:58.71 ID:/4fWADIj0
周子「あたし、どうしてたんかなぁ」

美嘉「えっ?」

周子「いや...もしあたしがPさんにスカウトされてなかったら、今頃何してたのかなって」

志希「そういえばあたし、皆がどうやってアイドルになったか知らないなー。興味湧いてきた❤」

美嘉「それ、あたしも気になるな。周子ちゃんがアイドルになった理由」

周子「うーん...あたしはまあ、なり行きかな。実家追い出されてとりあえず東京来て、んでふらふらしてたとこをPさんにスカウトされたんだ」

P「そんでそのまま周子が811プロ初めてのアイドル、且つ初めての従業員になったわけだ」

周子「事務員の仕事のほうもお給料いいし、最悪アイドルとして目が出なくても大丈夫かなーって思ってたけど、まさかCランクまで登ってきちゃうとはねー」
  


そう、あたしのアイドルランクはちょっと前にCランク...メジャーアイドルの領域に足を踏み入れた

今日のCD記念ライブ打ち上げは、その昇進記念パーティも兼ねてる

400: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:26:56.67 ID:/4fWADIj0
周子「就職も進学も放り投げて家出ぬくぬくしてたあの時は、こんなの想像できなかったなぁ......人生って何があるか分からないね」

P「ああ...全くだ」

志希「そしてこれからも、まだまだアイドルって未知の世界♪研究のし甲斐があるねフレちゃん?」

フレデリカ「うん、ドクターイチノセとナースミヤモトで、一緒にアイドルの謎を解き明かそうね♪」

志希「うん、あたし達レイジーレイジーで、もっとアイドルの深淵にもぐっちゃおー!」

美嘉「そういえば今度二人はユニット組んでオーディションするんだっけ?」

P「ああ、今度開催される新人アイドル発掘の企画にな」

フレデリカ「そのオーディションに合格すると...なんと!」

志希「有名な作曲家がそのアイドルの為に曲を作ってくれるんだってー!♪」

P「だが報酬も注目も大きい分、倍率も非常に高くなるだろう。これに受かれば楽曲だけじゃなく、そのままランク昇格に直結するからな。参加条件のE,Dランクアイドルほとんどが乗り込んでくるかもしれない」
 「これまで以上に青木さんのレッスンがキツくなると思うから覚悟しとけ。...失踪するなよ?」

志希「えー...でもフレちゃんとレイジレイジーの活動するのは楽しいし、今回は大丈夫!」
  「それに...下も上も魑魅魍魎渦巻くアイドルがいっぱい集まるこのオーディションには、すっごい興味あるしね」

フレデリカ「アタシも、オーディションでどんな子に会えるのか楽しみ♪色んな子と仲良くなれるといいなー♪」

401: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:27:40.53 ID:/4fWADIj0
美嘉「あたし達もウカウカしてたら追い越されちゃうかも...頑張らないとね」

P「美嘉の言う通り、アイドル業界っていつどっから超新星が現れるかわかんねえからな」
 「周子と奏も、明日のオーディション、気を付けていけよ?ウチはなんだかんだ指名とかコネで来た仕事も多かったし、他のCランクアイドルよりオーディションを経験してないんだから」

周子「大丈夫だって、今のあたし達、向かうとこ敵なしじゃない?明日のオーディションだってかるーく決めて見せるよ。ねっ奏ちゃん...?」

P「だからそうやって油断してると.......聞いてるか周子?」

周子「いや、奏ちゃんが...」

402: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:28:19.84 ID:/4fWADIj0
P「奏?そう言えばさっきから全然喋らな...おいおいなんだその皿の量」

奏「くっ...流石に限界...でもこれだけ弾数があれば、きっと....」

美嘉「うわっ!奏ちゃん流石にこれは食べ過ぎじゃない!?顔色悪いし明らかに無理してるでしょ!」

奏「いいの...これくらいしないと、きっと、当たってくれないから....」

美嘉「当たるって一体...」

周子「...まさか奏ちゃん、びっ○らポンの為にそこまで...?」

P「びっ○らポンの何がお前をそこまで駆り立てるんだよ...」






しかし奏ちゃんの検討虚しく、結局何一つ当たらなかった...


奏「なんでよ...」

403: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:29:26.14 ID:/4fWADIj0
速水奏のウワサ

・びっく○ポンは宿敵らしい


404: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:30:54.93 ID:/4fWADIj0
突然だけど、ロトカ・ボルテラ方程式というものをみなさんはご存じだろうか
いや、引用したあたしも詳しいことは覚えてないんだけどさ.....まあ餌と捕食者は常に波打つように増減し続けて安定することはないって、そんな感じの話

...そう、ロトカ・ボルテラ方程式の様に、どんな勢いも決して上がり続ける事はない。
必ず、どこかで落ちるタイミングがある。
でもそんなの、方程式云々が無くたって18年も生きてきた間にとっくに気づいていた。
というか、そんな事は誰だって気づく常識の様なものなんだろう


でも、あたしは慢心していたのかもしれない

初めてのオーディションを突破してからずっとブレーキをかけてこなかったからか、あたしはそんな常識をすっかり忘れていた


破竹の勢いだって、竹を割った鉈が地面に落ちれば止まるのだということを

405: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:35:27.73 ID:/4fWADIj0
1位 トライアドプリムス ★×27 010プロ

2位 NO TITLE  ★×13 WESTプロ

3位 デュアルフルムーン ★×3  811プロ
       ・
       ・
       ・ 
       ・   

406: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:36:18.74 ID:/4fWADIj0




        Chapter8 「Know Maiden,The Bigocean 」




407: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:37:12.08 ID:/4fWADIj0
奏「...惨敗、だったわね」

周子「......」

P「...ッ、すまない!俺も、どう指示すればいいか分からなかった」


奏ちゃんの言う通り、Cランクに上がって初めてのオーディションで、あたし達は惨敗を喫した
オーディションを甘く見ていたわけじゃない。そのはず。
だけど、どこか楽観視していたのかもしれない


デュアルフルムーンは今まで負け知らずの無敗ユニット
だから今回だって、この勢いのままもっともっと突き進める。
...そういった、油断はあったのかもしれない


でも、今日の対戦相手を見て、あたしはまだまだ井の中の蛙だったことに気付いた

408: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:38:05.12 ID:/4fWADIj0
周子「トライアドプリムスは...正直、別次元だった」

奏「そうね...私達が取れた★は、まだ心に余裕をもてていた第一審査の3つだけ。その後は...」



第二審査...ううん、第一審査の途中から焦りを感じた私達は、その後調子を崩しまくり。
結局、最初の数分以降審査員の目があたしたちに向くことはなかった

409: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:40:55.41 ID:/4fWADIj0
P「010プロダクション...アイドル業界において最大手の一角の事務所...事務所内で選抜が行われるような厳しい環境だ。だからこそ、そこで育つアイドルは皆一線級の魅力を持つ...」
 「でも、010プロだけじゃない。2位のWESTプロのユニットも、トラプリには及ばずとも俺たちじゃ相手にならないほどの実力だった。トラプリに差をつけられようと、焦らず自分たちのペースを維持できていた。そしてきっとこのランクには...」

奏「これ程のレベルのアイドルが山のようにいるのでしょうね...」

周子「.....」

P「周子、あまり気を落とすな、まだまだこれから」

周子「分かってる、大丈夫だよPさん」
  「まだ一度負けただけ、まだアイドルそのものが終わったわけじゃないものね」

P「お、おう...大丈夫みたいだな」

奏「私も、今回のオーディションで自分の反省点が見えたわ。そこを直して、次はきっと勝つ」

P「よし、じゃあ事務所に戻って反省会しよう。荷物纏めとけ」





Pさんに言われた通り、帰り支度をしようとしたら....

410: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:41:35.05 ID:/4fWADIj0
???「P君、久しぶりですね」

P「えっ...貴方は!?」




 



P「...お久しぶりです、ちひろさん」

411: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:43:58.21 ID:/4fWADIj0
周子「Pさんの知り合い?」

P「まあな、010プロに再就職したとは聞いてたけど...もしかしてトラプリのプロデューサーに?」

ちひろ「いいえ、ただの事務員です。ただ今日はトラプリを担当しているプロデューサーが他の現場の対応で忙しくて、たまたま手が空いていた私が送迎をすることになったの」

P「そう、ですか.....」

ちひろ「早苗ちゃんから貴方が担当している子の話をちらっと聞いたわ、なかなか面白い子達じゃない」

P「ありがとうございます...それじゃ俺たちは反省会があるのでこれで。行くぞ、二人とも」

奏「あら、いいの?折角久しぶりに再会したんなら少しくらい話していっても」

P「いや、いい」

ちひろ「つれないですね...まあいいです。じゃあ帰る前に一つ、トラプリの皆から811プロに会いに行くなら伝えてほしいと一つ伝言を預かってます」
   「『次に会える時は、期待してる』って」

周子「!」

412: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:45:02.39 ID:/4fWADIj0
ちひろ「正直、今日は経験不足が目立ったけど、最初の数分の間は彼女たちも何か感じるものがあったようです。だから、これからに期待してるそうですよ?」

周子「そう...なんだ」

奏「なら、ありがとうって伝えておいて。きっと次は貴方たちをもっと楽しませられるよう、自分自身を鍛え上げていくわ」

ちひろ「分かりました、伝えておきますね。それじゃあ」

そう言って、ちひろさんは立ち去っていった

P「俺たちも行くぞ、ちゃんと宣言通り、次は勝てるように、な」

周子「...うん!」

413: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:46:05.59 ID:/4fWADIj0
今日、あたしはアイドル業界という海の広さを知った。








でも、まだ知ったのは広さだけ

井戸の中を飛び出したばかりの未熟なあたしは、まだ海の恐ろしさを知らなかった。

この大きな海に対して、自分がどれだけちっぽけな存在なのかを、あたしはまだ知らなかった



今にもあたしを飲み込まんとする荒波にどうやって抗えばいいのか、あたしは分からなかったんだ

414: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:46:47.60 ID:/4fWADIj0
周子「ん...朝?」

いつもの餡子の甘い匂いで、あたしは目が覚めた

家の和菓子屋の伝統の餡子、今朝もお父さんが仕込んでいるのだろう









.....いつもの、餡子?

415: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:49:09.54 ID:/4fWADIj0
周子「あれ、アパートは...あたし、なんでここに?」
  
周子母「こら周子!あんたいつまで寝てんの!早く起きて下りてらっしゃい!」

周子「お、お母さん、811プロは?なんであたし実家に、上京してアイドルやってたはずじゃ」

周子母「はあ?あんたがアイドル?まだ寝ぼけてるの?」
   「早く起きて朝ご飯食べちゃいなさいよ、お母さんお父さんの手伝いに行くから」




寝ぼけてる...あたしが?

周子「全部、全部夢だったの?そんな...いやだ...」





811プロの皆とのつながりも、アイドルとしての思い出も、ちゃんと胸に残ってるのに
それが全部、嘘だったたなんて。そんなの、そんなの!







周子「嫌ぁ!!」ガバッ

416: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:50:01.60 ID:/4fWADIj0
ベッドから飛び起きると、見慣れた壁に見慣れた天井に狭い部屋
あたしのアパートそのままの光景が広がっていた

周子「夢...そうか、あっちが夢...良かった」




でも、もしアイドルやめることになったら...
さっきまでの夢が、現実になってしまう...?





周子「勝たなきゃ...次は絶対....」

417: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:52:10.21 ID:/4fWADIj0
あたし達は経験不足を解消すべく、数日後すぐ別のオーディションへと参加した

前回、自分たちの実力がまだまだ足りていないということを知ったあたしたちは、今回のオーディションに向けてこの数日の間ずっと特訓に励んでいた

オーディションの内容から対策を練り、万全の状態でオーディションへと臨んだ

そのおかげか、デュアルフルムーンは第2審査を終えた時点で★15を獲得していた

2位の★11に大差を付けることはできていないけど、このまま順調に行けば1位を守り続けられるだろう




...でも、油断はしない

拮抗している以上、いつどこで抜き返されるかわからないし、最後まで集中して挑む
今度こそヘマはしない、絶対に負けない

そう、心に決めていたんだ

418: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:52:49.80 ID:/4fWADIj0
だから、なのかな

負けたくない、その一心で、『楽しむ』って事を忘れちゃってたのは

それで、あたしの心にはゆとりってもんがなくなっていた



だから、あんな事態を起こしてしまった

419: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:55:39.02 ID:/4fWADIj0
第三審査中盤に差し掛かる頃、あたし達のすぐ後ろ、2位に食らい付いていたユニットが急にペースを上げ始めた

ウソっ!?まだあんな底力が!?それともここまで隠してたっていうの!?

...ヤバイ、審査員の目が向こうに流れ始めた
このままじゃ...なんとか、なんとかしないと!

そう思い、あたしは少しでも印象を強くしようと少しづつ前へと進み始めた
このまま、何とか逃げ切る!その一心を抱えたまま、最後のアピールへと近づいた、その時








P「ッマズイ!?止まれ周子!」

周子「えっ!?」

奏「きゃっ!?」

周子「しまっ!うわぁ!?」




Pさんの制止する叫び声が聞こえた瞬間、前に出過ぎたあたしは奏ちゃんとぶつかり転倒してしまった

420: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:56:12.36 ID:/4fWADIj0
結局最後の最後で逆転され、あたし達は連敗を喫した

421: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:57:06.66 ID:/4fWADIj0
P「負けた...な」

奏「ごめんなさい周子...私、気づかなく『やめて』」

P「...しゅう『やめて!』」

周子「Pさん、奏ちゃん、気ぃ遣わないで正直に言って...」
  「今回の負けはあたしのせい...そうでしょ?」

P「ッ!」

奏「そんなことない...だから、」








P「勝てた、オーディションだった」

422: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/29(金) 23:59:50.48 ID:/4fWADIj0
奏「プロデューサーさん!?」


プロデューサーさん!?何言ってるの!?
これ以上周子の心を傷つけるつもり!?


P「周子、お前は最後勝ちを急いで一緒に奏が躍っていることが頭から抜けてただろ?2位の動向に気を取られ過ぎて焦って、十分なパフォーマンスができなくなっていた。」
 「正直なところ、最後の接触がなければ、あのまま逃げ切れた可能性は高い」

周子「ッ!!」

奏「プロデューサーさん!」





周子「!.....ごめん!」ダッ!

奏「あっ、待って周子!」





制止の声も虚しく、周子は走り去ってしまった

423: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 00:01:21.49 ID:PLP4FGKk0
奏「ッ!プロデューサーさん!なんであんな事言ったの!?」

P「...周子が、そう望んだだろ」

奏「でも!なんであんな責めるようなことっ『奏!』!?」

P「もし、逆だったら...お前が失敗した立場だったらって考えろ......」

奏「!」 






P「自分の失敗で仲間が負けて、自分が敗因だって痛いほど自覚しちまってるとき...そんな時に、足を引っ張ってしまったその本人に情けをかけられたら、どれだけ惨めな気持ちになるかを考えろ!」

424: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 00:03:40.15 ID:PLP4FGKk0
奏「それは...」



確かに、もし立場が逆で、私が足を引っ張ってしまった周子に慰められたら
...きっと、凄く申し訳なくなって、自分がもっと許せなくなるだろう



P「優しさと甘さは違うんだ...ただドンマイ、ドンマイと慰める為に言った言葉が、余計にそいつを追い詰める刃になることもあるんだよ...」

奏「でも、あれじゃフォローにもなってないわ!」

P「...分かってる、少し言葉を選ばなさ過ぎた。それに今日の周子のミスも、元はといえば俺のミスでもある」
 「だから...周子の事は、俺に任せろ。こんなとこで周子を終わらせりゃしないさ」

奏「...わかった、でももし周子がこのまま潰れるようなことがあったら....許さないから」

P「ああ...周子は、俺が責任もって必ず連れ戻す!」

425: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 00:05:53.36 ID:PLP4FGKk0
あのまましばらく必死走り続けた後、あたしは逃げるように自分の家へと帰ってきていた

家の隅で、ずっと動けず、蹲っていた


周子「グスッ...ヒック...あたしの...グスッ」
  「あたしの...せいで...奏ちゃん...」


今日の失敗が、頭から離れない

まるで動画サイトのループ再生のように、ずっと、ずっと、頭の中であの瞬間が再生され続けていた

18年の人生、かつて味わったことのない苦しみが、今私の中で回り巡っていた





そんな絶望の中、ドンドンと、煩く玄関のドアを叩く音が鳴り響いた

426: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 00:07:00.74 ID:PLP4FGKk0
P「周子、いるんだろ」






それは、確かに理解不能な苦しみに身もだえるあたしに差し伸べられた救いの声だったけど
その声の主と今、あたしは顔を合わせたくなかった......








to be continued...

427: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 00:12:05.67 ID:PLP4FGKk0
次回予告

これは、罰だろうか
今まで一度だって本気になって生きてこなかった、そんなどうしようもないあたしへの罰

なら......


周子「あたしアイドル、辞めるから」


ねぇ?そうすれば、文句ないでしょ?


次回
Chapter9 「Myself newly」

430: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:25:13.42 ID:PLP4FGKk0
周子「帰って、帰ってよ...今は一人にして」

P「そりゃできない相談だ。女の子が一人で蹲って泣いてるのを見過ごすわけにゃあいかない」

周子「やめてよ!今は...誰とも顔合わせたくない!合わせられないよ...」

P「じゃあ、扉越しでいい。お前が泣き止むまでここにいるから、ちょっと話そうぜ」

周子「うるさい!話すことなんてないよっ!」

P「そんなことないだろう、そんなに泣きじゃくって、何もないなんてことはない」

周子「ないったらないんだから!」

431: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:26:21.84 ID:PLP4FGKk0
P「じゃあ話してくれるまででここで待つ」

周子「やめてっ!帰って!なんであたしにそこまで構うのさ!」

P「俺がお前のプロデューサーだからだッ!」

周子「...じゃあ、あたしアイドル、辞めるから...それならもう、Pさんはあたしとは無関係でしょ?」








P「ダメだ」

432: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:28:45.67 ID:PLP4FGKk0
周子「えっ?」

P「お前がアイドルをやめるのは、俺が認めない」

周子「そんな、前と言ってることが違うじゃん!あの時はダメだったらスパッとやめていいって!」

P「...周子、俺はさ、自分がプロデュースする子には、『アイドル』になったことを後悔してほしくないんだ。どんな子でもいつかはアイドルを引退する日が来る。その時に、俺はお前たちに『アイドルやってて良かった』って言ってほしいんだ」
 
 「アイドルになったことを後悔しないために、結果的に辞めるしかないんならしょうがない。その時は俺も背中を押すさ。でも、今アイドルをやめたら周子、お前は絶対アイドルになったことを後悔するだろ?それを分かってて認めることは出来ない」

周子「後悔って、あたしは!」

P「なんだ?」

周子「...あたしは、怖いの。また失敗するのが、奏ちゃんや、皆の足を引っ張っちゃって、そのせいで負けるのが」
  「そうやって、オーディションに勝てなくなって、皆から見放されるのが、すごく怖い...!こんな恐ろしさ、今まで生きてて感じたことないよ...だから、そんな未来が来る前に、あたしはここで歩くのをやめるの」
  
P 「................」

周子「それに、アイドルだってなり行きで流されてやってただけで、本気でやりたいわけじゃない!そんな適当な奴と皆が一緒に仕事していいわけないじゃん!」
  「だから...こんなテキトーなあたしなんてほっといて、さっさと消えてよ!」
  「お願い...お願いだから...」

433: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:29:22.30 ID:PLP4FGKk0
   



              P「お前らしくねぇな」





434: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:30:15.40 ID:PLP4FGKk0
周子「...はぁ?」

P「負けるのが怖いとか、足引っ張るのが怖いとか、いつもの気まぐれ自由人な周子らしくないってんだよ」

周子「あたしらしく...ない?」

P「なあ周子、ちょっと外出て来いよ。あの時みたいに、そこの公園で星でも見ながら話そうぜ」
 「ていうか、出てこないんなら出てくるまでここに居座るぞ」

周子「P、さん...女の子の部屋の前に居座る男とか、それすっごい変態だよ.....」

P「そうだな、だから通報される前に早く出てきてくれ」

周子「...分かったよ」

435: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:31:11.08 ID:PLP4FGKk0
 ====公園====


Pさんと一緒に、あたしは公園のベンチに座って、Pさんが買ってきた缶コーヒーを口にしていた

P「懐かしいなぁ、あの時、お前このベンチで寝転がってたんだよな」

周子「そんなことも、あったね....」

436: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:32:33.78 ID:PLP4FGKk0
     ~~~半年前~~~



やばい...もう東京にいられるお金がない
お見合いが嫌で東京に逃げてきて一週間、もう貯金ほとんど使っちゃった
これからどうしよっかな...おとなしく帰って言われた通りお見合いする?


...結局、それが一番いいのかもしれない
そのまま流されて実家継いで、親に決められた人と適当に過ごすのも悪くはない選択肢なんだろう

437: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:34:15.89 ID:PLP4FGKk0
周子「でも、なんだかなぁ...」

そういう人生を生きる上で、あたしがあたしである意味はあるんだろうか?
生まれてから一度も本気になったことなんてなくて、ただ流れに身を任せてゆるーく生きて、ゆるーく死ぬ

なあなあの人生にふと嫌気が刺していた頃、『働かないんならお見合いしてウチ継いでくれ』って迫られて
別に実家が嫌いだったわけじゃないんだけど、知らない人と結婚前提に付き合うってのが気に食わなくて、つい親と喧嘩しちゃった
そうしたら『じゃあ本気出して自分の道探して来い!!』って追い出されて、とりあえず溜まってたお年玉とかバイト代をかき集めて東京へ来て...

でも、そう簡単に運命の出会いなんてあるはずもなく、やりたいことも見つからず普通に東京で遊んで過ごして一週間、とうとう宿代も厳しくなってきた
もう! 東京ってなにもかも高いもんばっかなんだから!

でも、お金ないから大人しく帰るって選択肢も取りたくないなあ...

438: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:35:12.68 ID:PLP4FGKk0
周子「バイト探してとりあえず延命...住所不定の家出娘なんて雇ってくれるとこないかぁ...」


所詮一人で生きる力のないあたしは、自由に生きることなんてできないんだろうか


周子「まあいいや、取り合えず今日はここで野宿して、また明日考えよう」


公園の硬いベンチに不満を抱きつつも、仕方ないと割り切って眠りに付こうとしたその時










???「若いくせにこんな深夜に公園で寝るなんて、どんな不良かと思えば....なかなか別嬪じゃないか」

あたしの眠りは、帽子とサングラスで顔を隠した不審者に妨げられた

439: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:37:36.40 ID:PLP4FGKk0
周子「んあ?お兄さん誰?」


正直すっごく怪しいし、こんな夜中に女の子に声かけるとかほぼ不審者でしょ
...でも、不思議と悪い人ではない...様な気はする


P「ああ、失礼。俺はこういうもんでね。ほれ、名刺だ」

周子「ん...芸能事務所811プロダクション、社長兼プロデューサーP?」

P「そうだ、しかもその名刺、作ってから初めて渡した1枚だ。大事にしてくれよ」

周子「ふーん...それで?お兄さんはこんなかよわい女の子なしゅーこちゃんに何の用なの?」

P「そりゃもちろん、スカウトさ。しゅーこちゃんって言ったか?」


 「アイドル、やってみないか?」

440: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:39:18.63 ID:PLP4FGKk0
周子「アイドル?」


アイドルって、あれやんな
テレビとかでよく見る、ステージとかで歌って踊るお人形さんみたいにキレ―な人達
それを、あたしが?


P「ああ、ウチこの前できたばっかの事務所で、まだ所属アイドル0人なんだ」

周子「それであたしにアイドルになって欲しいって事?」


アイドルかぁ
そこまで興味があるわけじゃないなぁ...


周子「別にあたしじゃなくてもいいんじゃない?」

P「そうはいかない、君からはアイドルの才能を感じるからな」

周子「才能?」

P「ああ、一目見て思ったよ」

周子「ふーん....」



なんか、ナンパっぽいセリフやなー...褒められて悪い気はしないんやけど...
食い扶持が向こうからやってきてくれたのは有り難いけど、でもなぁ...

441: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:40:10.62 ID:PLP4FGKk0
P「ところで...なんでこんなとこで寝てたんだ?家帰らないの?」

周子「家からは追い出されちゃったー。ホテル代もなくなっちゃったし、今日はここで野宿しよっかなぁて」

P「なっ!?家なし!?」

周子「そっ、だから悪いけどアイドルなんてやってる暇ないし、他をあたってちょーだいな」



折角声をかけてくれたお兄さんには申し訳ないけど、あたしみたいな遊び人にはアイドルなんて向いてない
そう思ってさっさと断ろうとした...のだけど

442: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:41:26.80 ID:PLP4FGKk0
P「...じゃあ、住むとこあればアイドルになってくれるか?」

周子「えっ?」

P「俺の今住んでるアパート、ちょうど隣の部屋の人が引っ越して空室になってんだよ。ウチでアイドルやってくれるんなら大家さんに紹介するし、頭金も肩代わりしてやるよ」

周子「....マジ?」


アイドルになれば、とりあえず住むとこが手に入る...?
めっちゃくちゃいい条件、だけど...

443: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:44:02.70 ID:PLP4FGKk0
周子「でも、アイドルって売れるまで収入安定しないし、そもそも売れるかわかんないでしょ?頭金肩代わりしてもらっても、収入なけりゃその後がなぁ...」

P「なら、ついでに事務員としても雇うよ。それならアイドルとして目が出てない時期も普通に生活するくらいはできるだろう」
 「ウチ今ホントに俺しかいないからさ。事務仕事が溜まりに溜まるわで、ちょうどそっちの方の人手も欲しかったところなんだよ」

周子「ホント?ちなみにお給料はどのくらい?ホントに生活費出せるくらい貰えるの?」


そう尋ねると、お兄さんはスマホで何やら計算を始めた


P「そうだな...東京の今の相場よくわかんないけど、大体こんなもんかな?」

周子「どれどれ...えっ!?高っ!?」


すごい...街で見たバイト募集の倍はあるじゃん!

444: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:45:21.62 ID:PLP4FGKk0
P「金の卵を捕まえるならこれくらいは必要経費さ。折角可愛く生まれたんだし、どうせならあの星みたいに一発綺麗に輝いてみたくないか?」

周子「星?こんな都会に星なんて...あっ」


お兄さんが指刺す先には、確かに一つだけ光る星があった


P「ああいうの、一番星って言うのかな?こんな都会でも見えるもんなんだなぁ」



ビルの青い光に負けずに一つだけきらきらと輝く星

そんな我儘な星を見てると、なんだか背中を押されてるみたいで
"もっと自分に挑戦して生きろ"って、発破をかけられてる感覚になった



『アイドル』かぁ
ちょっと試してみても、いいのかもしれないな......

445: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:46:38.23 ID:PLP4FGKk0
P「ダメだったらダメだったで、スパッとやめてもいいからさ...ちょっと試してみないか?」



住むとこ見つけて、お給金良くて、ワンチャンアイドルになれる、か...

ちょっと胡散臭いような気がするけど、これは...受けない手、ないな

一応ダメそうだったら辞めてもいいって言ってくれてるし、とりあえずの延命処置としてならこれ以上ウマい話もないだろう



周子「分かった、あたし、アイドルやってみるよ。よろしくねお兄さん。Pさんって名前であってたっけ?」

P「おう、君は...」

周子「塩見 周子。周子でいいよ、あたしもPさんって呼ぶからさ」

P「わかった、じゃあさっさとアパートの契約いくか。こんなとこで所属アイドルに寝てもらわれたら困るしな」

周子「了解!口利きよろしくね」

446: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:48:18.01 ID:PLP4FGKk0
~~~現在~~~~

周子「あの時はホントに、アイドルとして輝いてる今の自分が想像できなかったなぁ」

P「でも、今こうしてメジャーアイドルとして頑張ってる。それはもう夢物語じゃなくて、事実だ」

周子「うん。でもそんなの、たまたま上手くいってただけで...あたし、適当だから、本気でアイドルやってなかったから...」

447: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:49:59.70 ID:PLP4FGKk0
P「...ところで周子、これ見てくれないか?」

周子「なに?...カメラ?」

P「ああカメラだ、でも見てほしいのは中身の方」


中身の方...?
映像って事?


P「んじゃ、再生するぞ...ほれ」


Pさんがボタンを押すと同時に映像が流れ始める

これは...ウチのレッスン室?
レッスンしてるのは...志希ちゃんとフレちゃんだ。うわキツそー!二人とも息死んでんじゃん!
美嘉ちゃんも青木さんと協力して志希ちゃんとフレちゃんにアドバイスしてる。美嘉ちゃん、先生役似合ってるなぁ。あたしたちの中で一番経験豊富だろうし、適任なんやろなぁ





凄いなぁ、いつも以上に皆気合入ってる
皆本気で、次のオーディション狙いに行ってるんだ...

448: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:51:54.04 ID:PLP4FGKk0
しばらく見ていると、3人がレッスンを中断してカメラに近よってきた


美嘉『やっほー周子ちゃん★アタシ達のレッスン見てくれた?』

志希『見ての通りあたし達、今地獄の猛特訓で死んじゃいそうでーす...青木さんと美嘉ちゃん、すっごくキツいんだから』

フレデリカ『プロデューサーさんにも、このままじゃオーディション合格ははキビシー!って言われちゃった』

志希『でも、無理だとは言われなかったからさ...それならあたし達、周子ちゃんに追いつくために頑張らなきゃって思えるんだ』

フレデリカ『だから、周子ちゃんはこの先であたし達を待っててほしいな♪周子ちゃんと同じ目線で一緒に仕事するのが、今のアタシの目標だから!』

449: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:53:17.02 ID:PLP4FGKk0
美嘉『周子ちゃん、061プロの時、あたしは周子ちゃんに助けられたからさ...だからあたしも先輩アイドルとして、周子ちゃんの支えになってあげたい』
  『それに、奏ちゃんも』

美嘉ちゃんが奏ちゃんの名前を呼ぶと、カメラが死角にいたらしい奏ちゃんを映した
カメラに映った奏ちゃんは、他の皆と同じくらいレッスンに集中していた

奏ちゃんがカメラの方へ向き直る

奏『周子、私、またあなたが先走っちゃってもフォローできるよう...ううん、そんなアクシデントすらパフォーマンスに変えて見せるわ』
 『貴方がちゃんと安心して背中を預けられるよう頑張るから...だから、待ってて』
 『ほら、プロデューサーさん、貴方からも』

すると、カメラが奏ちゃんの手に渡されて、映像には今まで皆を撮影していたらしいPさんが映る

450: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:54:57.14 ID:PLP4FGKk0
P『周子、確かに今日の負けはお前の焦りから出たミスが敗因だ。でもあのミスも、元はといえば俺のせいだ』

周子「Pさん.....?」

P『俺は今までお前らを上に上にと押し上げることばかりで、お前らに経験を積ませるのを怠った。最初のオーディション以来、危ない橋を渡らせず、負ける経験ってのを積ませてこなかった。だから、いざ負けた時にそれを引きずらせてしまったんだな』
 『本当に、すまなかった。俺もプロデューサーとして成長することを誓う、だから』
 『俺に、もう一度、いや一度だけなんていわずに最後まで、『アイドル』の塩見周子の姿を見せてくれ』








待ってて...か
みんな、あたしが帰ってくるって信じてくれてるんだ...
こんなあたしの事も、信じてくれてるんだ...!

451: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:56:14.51 ID:PLP4FGKk0
周子「皆...」

P「なあ周子、さっきも部屋の前で話した時も思ったけどさ、本気でやってなかったってのはぶっちゃけ嘘だろ?」

周子「え?」

P「あのアパート防音しっかりしてないからさ。前にトラプリに負けて以来、ずっと聞こえてきてたよ」
 「お前が泣きじゃくる声も、事務所から帰ってきた後も必死に歌って練習してたことも」

周子「!!」

P「負けることが怖くなったのは、お前が本気でアイドルやってたからだよ」






あたしが...本気だった?

452: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:57:03.59 ID:PLP4FGKk0
P「周子、オーディションで負けた時、悲しいとか、申し訳ないとかの他に抱いたものがあったろ?それもあの時抱いた感情で一番大きいもの」
 「吐き出してみな。言葉にして吐き出せば、少しはスッキリするぞ」



あの時、抱いた感情...
そうだ、あの時、あたしの心をぐるぐると暴れ回ってたもの、あれは....







周子「くやし...かった」

453: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:58:33.10 ID:PLP4FGKk0
周子「初めてオーディションに負けて、自分がまだまだちっぽけな存在だったことに気付いて、自分なら出来ると思ってた自分が恥ずかしくって!でも!」
  
  「それ以上に、悔しかった!あの時もっとこうしておけばなんて事ばかり考えて、ああしとけば勝てたかもしれないって後悔して!」
  
  「生まれて初めて本気になって、その上で負ける側になって...それでようやく分かったんだ...!本気でやって負けたらすごい悔しいんだって、ようやく、分かったの...!」
  
  「あたし、本気でぶつかったのに!全然、全然届かなくてっ!それが、本当に悔しかった!」

454: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/30(土) 23:59:25.70 ID:PLP4FGKk0
P「そうか...でも大丈夫」
 「悔しいって思えたんなら...その心がある限り、お前はまだ戦えるさ...」

周子「P、さん.....あたし、あたし....!」


  








「あ、ああ....うあああああああああああああああああああん!!!!!」

455: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:00:18.18 ID:CV0nZ6Sa0
そうか、あたし、アイドルに本気になってたんだ


やっと、見つけられた....




あたしがあたしらしく生きるための、あたし自身の道を

456: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:02:34.86 ID:CV0nZ6Sa0
             




               Chapter9 「Myself newly」





457: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:03:34.06 ID:CV0nZ6Sa0
P「落ち着いたか?」

周子「うん...ありがと、Pさん」

P「いいんだよ、俺はお前のプロデューサーなんだから」

周子「ねぇ、Pさん。あたし決めたよ。あたし、本気でトップアイドルを目指す。あたしのペースであたしらしく、新しい『塩見 周子』に生まれ変わるから!」 
  「だから、ちゃんと傍で見てて。Pさんが選んだあたしが、どんな夜空でも輝ける一番星になる所を!」

458: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:05:39.72 ID:CV0nZ6Sa0
次の日からあたしは、本気でアイドル活動に励み始めた

レッスンにも集中して臨んで、色んなオーディションに応募した

もちろん全部に合格できたわけじゃく、負けた時はその都度本気で悔しくなった
でも、その日の内に反省点を考えて、克服できるように努力した

その間事務仕事を任せたPさんは


「だ、大丈夫...必要経費だから...」


と書類の闇にのまれそうになってたけど、あたしがオーディションで合格したときは一緒になって喜んで、落ちた時は一緒にどこがダメだったかを考察してくれた


奏ちゃん達ともお互い助けあって、自分たちの技術を高め合っていった


そんな仲間たちと過ごす忙しく大変な日々が、とても楽しかった!
アイドルになる前、本気になれることがなかったあの頃のあたしには無かったものが、今確かにここにあった

459: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:06:30.03 ID:CV0nZ6Sa0
そして今日、あたしはとある番組のレギュラーを決めるオーディションに参加している


あたしが受ける長寿のグルメ番組は、定期的にクビレースなるもので成績の悪い番組レギュラーが降板させられるのが特徴の番組
今回は、その開いたただ一つの枠を埋めるためのオーディション
これに合格すれば、あたしは遂にテレビ番組のレギュラーの座を手に入れることができる

でももちろん、そのハードルは高い
なにせ今回のオーディションにはあの時あたしと奏ちゃんが完敗したトライアドプリムス
その一角、北条加蓮ちゃんも参加していた

460: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:08:04.20 ID:CV0nZ6Sa0
加蓮「あっ!あんたもしかしてデュアルフルムーンの周子ちゃん?」

周子「おー久しぶり!あたしのこと覚えてくれてたんだね」

加蓮「前のオーディションで結構印象に残ってたからね、途中調子落ちちゃったみたいだけど」

周子「あはは...あの時は見苦しいとこ見せちゃったね」

加蓮「でも...期待通り、今日はあの時とは違うみたいじゃん?」

周子「もちろん!あれから色々自分の事見つめなおしたからね。だから」

加蓮「でも、あたしも本気でトップアイドル目指すからさ」




  「今日(も)は絶対、あたしが勝つよ」





周子「...じゃあ」

加蓮「本番で会おうね」

461: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:08:37.03 ID:CV0nZ6Sa0
今回はグルメ番組のオーディションだけど、形式はLIVEバトル形式で行われる

いつもこの手のオーディションの時は指示を出しについてきてくれるPさんは、別会場で行われてる志希ちゃんとフレちゃんのユニット、『レイジーレイジー』の大一番のほうへ行っているからいない

でも、大丈夫。今日まで積み重ねてきた経験と、一緒に過ごした仲間たちとの絆が、あたしの心を支えてくれている

だから今日も、いつも通り



周子「あたしらしく、本気で行くとしますか!」

462: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:12:56.79 ID:CV0nZ6Sa0
             第2審査結果
   塩見周子  北条加蓮  モブ子1  モブ子2 モブ子3 モブ子4
Da    ☆×2    ☆×1  ☆×1    ☆×1  ☆×0   ☆×0

Vi    ☆×1    ☆×3  ☆×1    ☆×0  ☆×0   ☆×0

Vo    ☆×2    ☆×2  ☆×0    ☆×0  ☆×0   ☆×1
          
現在合計 ☆×10    ☆×12  ☆×4    ☆×3  ☆×0   ☆×1





第2審査が終わった時点であたしは現在2位、加蓮ちゃんに☆2つ分リードされていて、ちょっとピンチかな
それに、次の審査次第では他の子達にも追い抜かれる可能性もある
なんとかダンスやボーカルでは食らいつけているけど、加蓮ちゃんのヴィジュアル演技は正直あたしとは別次元だ
なんとか☆を1個もぎ取るのが精いっぱい、ダンスやヴォーカルもあたしが抜きんでてるわけじゃない以上、このままだと勝つのは厳しいだろう

463: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:13:31.19 ID:CV0nZ6Sa0
さてどうすっかなっと考えていると、スマホの着信音が小さく鳴り響いた
確認してみると、事務所のLINEグループに一枚の写真がアップされていた

志希ちゃんとフレちゃんのVサイン
そして下のほうにはメッセージが書いてあった

『逆境の時ほど、楽しく笑え!』

464: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:14:02.96 ID:CV0nZ6Sa0
周子「...あはっ!粋なことしてくれるじゃん!」

そうだったそうだった!最初のオーディションの時もそんな事と言ってたね!

周子「しゅーこちゃんのしたことが、悩んだ顔なんてあたしらしくなかったね!」



あたしはあたしらしく、笑ってアイドルを全力で楽しむ!
それが一番大事なことなんだから!

465: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:15:37.79 ID:CV0nZ6Sa0
第3審査、やっぱり加蓮ちゃんのスキルは凄い
特にVi、ここに来て第1第2審査の時とは比べ物にならない程圧倒的なパフォーマンスだ、あたしの今の技術じゃあのレベルの物はちょっと無理かな


だから、Viの星はあげるね、加蓮ちゃん
その代わり....


周子(DaとVoは、もらっていくよ!)


あたしは、あたしのペースで、あたしらしいパフォーマンスを!


弾けろ!あの時誓った夢!本気しゅーこちゃんの魂!
あたし、本気でトップアイドル目指すんだから!こんなとこじゃ止まらないよ!
  



今日の一番星は、あたしだ!

466: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:17:29.68 ID:CV0nZ6Sa0
志希「プロデューサー、早く早く!」

フレデリカ「周子ちゃんのオーディション終わっちゃうよ?」

P「待て待て、走ったら危ないだろ...ここだ」

志希「見て!もう最後の最後みたいだよ!」

フレデリカ「ホント!?周子ちゃんはどれ...あっ...」







フレデリカ「綺麗...」

志希「凄い、今の、周子ちゃんだよね?」

P「当然だ、俺たちが周子を見間違えるはずないだろう?」

フレデリカ「周子ちゃん、まるでお星さまみたいで...すっごく綺麗だった」



P「周子...ホントに、お前をスカウトできてよかった...」

467: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:19:10.29 ID:CV0nZ6Sa0
     最終結果
   塩見周子  北条加蓮  
Da    ☆×5    ☆×0
 
Vi    ☆×0    ☆×5  

Vo    ☆×4    ☆×1 
          
最終合計 ☆×19    ☆×18

468: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:19:38.53 ID:CV0nZ6Sa0
周子「はぁ...はぁ...」

19対、18

あたしの方が、一つ、多い




...勝った

あたし、加蓮ちゃんに、勝てたんだ!

469: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:20:44.63 ID:CV0nZ6Sa0
周子「やった....やったー!!」

フレデリカ「周子ちゃん!」

志希「やったー!おめでと―周子ちゃん!」

周子「えっ、フレちゃんに志希ちゃん!?なんでここに?」

P「向こうのオーディションが終わった後、周子のオーディションを見に行きたいってゴネだしてな。急いで車飛ばしてきたんだ」

周子「そうなんだ...ありがとう。そして、おめでとう!二人も合格したんでしょ?」

志希「うん!すっごい白熱して、すっごい楽しかった!」

フレデリカ「それに、お友達もいっぱい出来たんだ!みんな凄い子ばっかりなんだよ!」

志希「これできっとあたし達もCランクになれる、周子ちゃんと肩を並べられるよ!」

P「それだけじゃない、美嘉と奏も、無事ドラマのオーディションに合格したらしい」
 「一話だけだがエキストラじゃなくて役名のあるちゃんとした役だ。皆、駒を一歩前に進めたな」

周子「そうか...でも志希ちゃん、フレちゃん」
  「あたし、もうちょっと先に行くからさ。もう少し、追いかけてきなよ!待ってるから!」

志希フレ「うん!」

470: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:21:13.71 ID:CV0nZ6Sa0
加蓮「あー、お取込み中のとこみたいだけどちょっといいかな?周子ちゃんに会いに来たんだけど」

P「あっ、どうぞどうぞ」

周子「加蓮ちゃん...あたし、ちゃんと加蓮ちゃん達の期待に応えられた?」

加蓮「うん...でも、これはこれでちょー悔しい!だからさ周子ちゃん」

  「次はあたしが、あたし達トライアドプリムスが勝つから、それまで待っててよ」

周子「...うん!」

加蓮「それじゃ、またどこかで!」

471: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:22:02.83 ID:CV0nZ6Sa0
P「大物に目をつけられちまったな、周子?」

周子「うん...だから加蓮ちゃんがあたしをちゃんと追いかけたくなるように、もっと頑張らなきゃね!」
  「...それと、Pさんにちゃんと言っておかなきゃいけないことがあるんだ」

P「なんだ?」



周子「Pさん!」






あたしをアイドルにしてくれて、本当にありがとう!  

472: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:23:02.55 ID:CV0nZ6Sa0
あれから2週間が経った

今あたし達は、事務所でレイジーレイジー昇格パーティをやっている

志希ちゃんとフレちゃんはユニット曲「クレイジークレイジー」のヒットを理由に、二人そろってCランクに昇格

奏ちゃんと美嘉ちゃんも、ドラマの出演やモデルの仕事なんかで着々とファンを増やしてるみたい。それに今度は、ドラマのメインキャラ選抜のオーディションにも出るらしい



そして、あたしは...

473: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:24:25.78 ID:CV0nZ6Sa0
P「では志希とフレデリカ、そして周子のランク昇格を記念してー!」

全員「かんぱーい!」




奏「3人とも、おめでとう」

美嘉「おめでとう!周子ちゃんにはとうとう追い抜かされちゃったね」

P「我がプロダクション初のアイドルが811プロ史上初!Bランクアイドルとなった!」
 「Bランクといえばもう一流!知らないほう人間の方が少ないアイドルだ!やっぱり俺の目に狂いはなかった!」

周子「いやーみんな、どうもありがとう!」

志希「あたし達も、この勢いに乗ってまたすぐ追いつくからさ!」

フレデリカ「勢い余ったアタシ達を抱きとめる準備して待っててね、周子ちゃん♪」

美嘉「あたしと奏ちゃんも、次のオーディション絶対合格して追いつくから!」

奏「ええ、だから期待していてちょうだい」


周子「みんな...うん!待ってるから!」

474: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:25:29.16 ID:CV0nZ6Sa0
P「それと、周子に今日はプレゼントがある」

周子「えっ?」

P「外に待たせてるから、会いに行ってやってくれ」

周子「会いに...?分かった」




言われた通り、あたしは(今日の主役なのに)事務所の外へと出た
そこであたしを待っていたのは...

475: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:27:27.97 ID:CV0nZ6Sa0
周子父「周子、久しぶりだな」

周子母「元気に...してたみたいね。良かった」

周子「二人とも....なんで!?」


半年前家出して以来、一度も連絡していなかった両親が、扉の前で待っていた

ずっと連絡をよこさなかったあたしを叱りに来たのだろうか、そう頭によぎった

476: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:28:13.26 ID:CV0nZ6Sa0
周子母「Pさんがね、ずっとあなたのことを教えてくれていたの」

周子父「周子...お前の晴れ姿、テレビで見たぞ。...自分のやりたいこと、ようやく見つけたみたいだな。」

周子母「お父さん、貴方の出てる番組全部録画しててね...本当に、立派になった」

周子父「...あー、一度しか言わないからよく聞けよ」


   「周子...お前は、俺たちの誇りだ...」





周子「....お父さん!お母さん!」


周子母「頑張ったわね、周子...」

周子父「ったく、泣き虫なとこまで似るんじゃねぇよ...」

477: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:29:41.88 ID:CV0nZ6Sa0
奏「パーティーも終わってしまったわね」

パーティーが終わった後、私はプロデューサーさんと二人で後片付けをしていた

P「すまんな奏、手伝わせちまって」

奏「いいのよ、周子は両親と積もる話があるみたいだし、他の3人は明日も朝から仕事だからね」
  「...ねえプロデューサーさん」

P「なんだ?」

奏「周子を見て、私もアイドルにもっと本気になろうと思えたの。アイドルになって、退屈だった日常に色がついて、心から信頼して、競い合える仲間も手に入れた」
 「だから...きっとトップアイドルになって、あなたに復讐するわ」

478: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:30:57.27 ID:CV0nZ6Sa0
奏「周子を見て、私もアイドルにもっと本気になろうと思えたの。アイドルになって、退屈だった日常に色がついて、心から信頼して、競い合える仲間も手に入れた」
 「だから...きっとトップアイドルになって、あなたに復讐するわ」

P「復讐?」

奏「そうよ。貴方にこの世界に引きずり込まれて、私の世界アイドル無しでは考えられない世界になってしまった」
 「だから、責任を取って私に魅了されてちょうだい、ね?」

P「...なら期待してる。いつか、トップアイドルの『速水 奏』を見せてくれ」

奏「ええ、待っていてちょうだい」
 「...ところで、折角自分の心を明かしたんだもの。プロデューサーさんにも一つ質問していい?」

P「いいぞ、何が聞きたい?」

奏「ずっと気になっていたんだけど...」

479: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:31:42.65 ID:CV0nZ6Sa0
奏「プロデューサーさんは、なんでプロデューサーになろうと思ったの?」

480: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:32:12.54 ID:CV0nZ6Sa0
そう問うと、プロデューサーはわずかに沈黙して、口を開いた





P「俺も、復讐....かな?」

481: ◆FuHrdA/9sY 2019/03/31(日) 00:36:06.33 ID:CV0nZ6Sa0
奏「えっ?」

復讐?私と同じく?
誰に...というか、私と同じ意味の復讐なの?




P「...なんてね。ほんとは、ただアイドルが好きだからってだけだよ。そんな心配そうな目で見るな」

奏「...もう!変なとこでからかわないで!」

P「ははっ!いつものお返しだよ!お前ら事あるごとに俺をからかってくるんだから」

奏「あら、偶にはからかいじゃなくしてもいいのよ?」

P「変な冗談言わないの。...あらかた片付いたし、そろそろ切り上げるか。事務所閉めるから、早く荷物纏めて外出てくれな」

奏「ええ、お疲れさま」

P「ああ、またな」





.....いつか、話してくれるのかしらね?







to be continued....