1: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/04/20(土) 21:31:46.83 ID:i7U08jAQ0



比叡「……」ドキドキ

金剛「……」ソワソワ

間宮「……」モグモグ



間宮「ッ!」クワッ

比叡「!!」




引用元: 【艦これ】 カレーを食べさせたい比叡vs逃げる雪風 



2: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/04/20(土) 21:45:19.85 ID:i7U08jAQ0



間宮「71点です!」

比叡「や……」



比叡「やった~!お姉さま、やりましたぁ~ッ!」

比叡「私の作ったカレーが、ついに70点を越えましたよ!」

比叡「長きに渡った日々の努力が、ついに実を結びましたぁ~っ!」

金剛「イエース!比叡の71点は過去最高のスコアネー!」

金剛「こんなにも頑張り屋さんな妹が居て、私もベリー誇らしいヨー!」

比叡「お姉さま~!」ギュ

金剛「比叡~!」ギュ




3: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/04/20(土) 21:48:48.40 ID:i7U08jAQ0



比叡「あ……あの!間宮さんも、私の修行に付き合って下さって……」

比叡「本当に、ありがとうございました!」

間宮「うふふ、そんな……お礼なんて」

間宮「ここまで熱心にお勉強に励んでくれた生徒も、あの伊良湖ちゃん以来で……」

間宮「私もなんだか、嬉しくなっちゃいましたから♪」

比叡「間宮さ~ん!」ウルッ


間宮「ふふふ。これまでに私がお教えした、料理のさしすせそ……」

間宮「それから、素材(市販のルー)の味に手を加えないということ」

間宮「そして、ローリエは野菜の代わりにならないということ」

間宮「これらの鉄則をしっかりと守って、これからもがんばってくださいね」ニコ

比叡「はいっ!」グッ




4: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/04/20(土) 21:55:30.72 ID:i7U08jAQ0



金剛「そもそも、比叡はもっと料理の腕に自信を持たなきゃノーデースっ」

比叡「お姉さま……」

金剛「だって、比叡は“御召艦”に選ばれた回数が……」

金剛「皆の中でもイチバン多かったからネー!」

比叡「え……」


比叡「そ、そうだったんですかお姉さま」

比叡「私って、そんなに凄い艦だったのですか?」

金剛「え……えぇぇぇ!?」

金剛「い、今まで知らなかったノー!?」

比叡「はぁ」


……
…………
………………



5: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/04/20(土) 22:03:05.14 ID:i7U08jAQ0



――戦史資料室前


金剛「たしかに艦娘化したとき、私たちは大戦時の記憶が一度はリセットされマース」

金剛「ケド、それでも比叡はもう少し、自分のヒストリーをしっかり思い出す努力をしておくべきだと思うネー」ハァ

比叡「ご、ごめんなさい……」



雪風「……」ペラッ

時津風「……」ジッ

天津風「……」ペラ



金剛「普通はあの子たちのように、自分が過去にどんな位置づけをされて、どんな戦いをしたのか」

金剛「そして、自分がどのようなラストを迎えたのか……艦娘たる者、それを知っておくことは常識デース」

比叡「うぅ……」




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/04/20(土) 22:07:58.35 ID:i7U08jAQ0



金剛「比叡のように、未来に向かってひたむきな姿勢は私も好きヨ」

金剛「それに、アナタは本当の意味で何も知らないというわけでもありまセーン」

金剛「ケド……だからといってお勉強をサボタージュするのは、ノーなんだから!」

比叡「面目ありません……」シュン



金剛「……とまぁ、お説教はこのくらいにして」コホン

比叡「?」

金剛「あの子たちのお勉強が終わったら、ぜひ比叡のカレーを振舞ってあげるといいネー!」

金剛「集中してお腹ペコペコでショウから、きっと喜んでもらえるヨー!」ニコッ

比叡「お姉さまぁ……」



比叡「はいっ!」ニコッ


……
…………
………………


9: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 05:07:17.01 ID:lgllWmy1O


雪風「……」トボトボ



金剛「どうやら終わったみたいデース!」

比叡「そのようですね!」



比叡「カレーの温め直しは良し、一升分のご飯もバッチリ!」

比叡「比叡カレー(笑)だなんて、メディアの印象操作には負けません!」

比叡「気合い!入れて!誘いますッ!」



10: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 05:21:05.55 ID:lgllWmy1O




比叡「雪風ーっ!!」

雪風「きゃっ!?」バサッ

比叡「お勉強、お疲れさま!」

比叡「実はこれからお姉さまたちと一緒に、カレーでお昼を取る所なんだけどっ」

比叡「雪風と、あとの二人も是非食べにきてくれると嬉しいなーって……」

雪風「あ……あわ、あわわっ」

比叡「思っちゃったりして……」

比叡「?」


11: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 05:35:15.33 ID:lgllWmy1O


雪風「比叡さん……」

雪風「ご、ごめんなさぁ~いっ!」ダッ

比叡「え……えぇぇぇ!?」ガーン


タッタッタッ……


比叡「逃げられた……」

比叡「……」


比叡「ま、待って~ッ!!」ダッ

比叡「逃げないでぇ!」

比叡「せめて、一口だけでも~っ!!」


タッタッタッ……



12: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 05:38:06.36 ID:lgllWmy1O



金剛「……」ジーッ

金剛「比叡、これもひとつの試練ネー」フフッ

金剛「一度植えついたイメージというのは、やはりそうそう覆らないという……ン?」



金剛「この本は……さっき雪風が持っていたものデース?」

金剛「……」

金剛「……アー、これは……」



13: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 05:43:47.20 ID:lgllWmy1O


タッタッタッ

雪風「うわぁ~ん……!」



比叡「はぁっ、はぁっ」

比叡「さすがは奇跡の駆逐艦……足の早さは……伊達じゃ……っ」

比叡「でもっ、私だってお姉さま譲りの高速性では……!」

比叡「負けないんだからぁぁっ!」


……
…………
………………



14: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 05:53:19.53 ID:lgllWmy1O


――執務室前



グラーフ・ツェッペリン「うぅむ……」ウロウロ



響「……彼女、さっきからずっと執務室の周囲をうろうろしているね」

暁「悩みのひとつやふたつ、レディならあって当然よっ」

暁「そっとしておきましょう!」

響「……うん」



グラーフ「ぐぬぬ……」ウロウロ



15: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 06:02:47.38 ID:lgllWmy1O



グラーフ(今朝は迂闊だった……)

グラーフ(これもすべて、この国の……春の陽気が悪いのだ!)

グラーフ(このぽかぽかで、得も言えぬ空気のせいでっ)

グラーフ(よりにもよって本人の前で、“アトミラールもいい……”などと漏らしてしまうなど!)

グラーフ(私は一体、どのような顔をしてアトミラールに会えばよいのだ……)ガクッ



グラーフ(……だめだ、一先ず冷静にならねば)

グラーフ(大切なのは……そうだ、話題だ)

グラーフ(先の失態を塗り替えるような、話の種を……!)



16: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 06:07:27.62 ID:lgllWmy1O


タッタッタッ……


雪風「はぁ、はぁ……ひゃっ!」

グラーフ「む、おっと……」ヒョイ

雪風「よ、避けてくれて、ありがとうございますっ」


タッタッタッ……


グラーフ「な、なんだ今のは……?」クルッ


ガンッ!


比叡「ひえぇ~!」 バタッ

グラーフ「!?」

グラーフ「わ、私のカタパルトに額を……っ」オロオロ



17: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 06:12:08.80 ID:lgllWmy1O


グラーフ「す、すまない……ヒエイ」

グラーフ「怪我はないか……?」

比叡「いえっ、こちらこそぶつかっちゃって!」

比叡「ごめんなさい、ごめんなさいっ!」ペコペコ

グラーフ「そ、そんなに謝らないでくれ……」


グラーフ「……そうだ。二人ともあんなに急いで、一体何があった?」

比叡「そ……そうだった!私、雪風を追いかけなきゃ!」

グラーフ(ふむ、急ぎの様子だな……あまり詮索はしない方がよかろう)



38: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 21:16:14.15 ID:KTmYaS1nO
グラーフ「ヒエイ、邪魔をしてしまったようだな」

グラーフ「この償いはいつか必ず」ペコ

比叡「つ、償いだなんてそんな!」


比叡「……そうだ!」

比叡「もしよかったらあなたも、食堂までカレーを食べに来てください!」

グラーフ「カレー?」

比叡「私が作ったカレーなんです!たくさんあるので遠慮はいりませんよ!」ニコ

比叡「それではっ!」


タッタッタッ……


グラーフ「……ふふっ」

グラーフ「まるで、嵐のように去っていったな」



19: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 06:16:56.66 ID:lgllWmy1O


グラーフ「それにしても……ふむ、カレーか」

グラーフ「私の祖国でもカレー粉を用いた料理はあるが」

グラーフ「この国ではたしかシチウのように煮込んで、ライスと共に食すのだったな」

グラーフ「なんでも、日本の海軍食で多様される形態であり、また家庭の味としても普及しているとか」


グラーフ「家庭の……味……」


26: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 12:44:36.97 ID:SfFdQhKBO


グラーフ「……話題逸らしには丁度いい」

グラーフ「アトミラールも誘い、共に席につくべきか?」

グラーフ「ちょうど昼食の時間でもあるし」

グラーフ「アトミラールの味の好みを確かめることもできれば、いつかは私が……ハッ!」



グラーフ(わ、私は一体何を考えているのだ!)カァーッ


……
…………
………………



27: ここからが続きです ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 12:46:19.57 ID:SfFdQhKBO


――鎮守府場内 遊歩道


雪風「はぁっ、はぁっ」

雪風 「どうしましょう、どうすれば……!」

雪風「うぅ……こうなっては、仕方ありませんねっ」


ヨジヨジ……


比叡「!」

比叡「うっそぉ……あの子、とうとう木にまで登りはじめた……」

比叡「……長らく木登りなんてしてなかったけど! 」

比叡「こうなったら私も!いきますッ!」


ヨジ ヨジ



28: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 12:54:41.09 ID:SfFdQhKBO


山城「……」スタ スタ

扶桑「……」スタ スタ



山城「……姉様」

扶桑「どうしたの、山城……?」



山城「桜並木……花びらも散って、すっかり緑を湛えていますね……」

扶桑「えぇ……そうね……」



29: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 13:05:42.57 ID:SfFdQhKBO


山城「不幸だわ……」

山城「せっかくこうして、姉様と花見をする時間を作ったのに……」

山城「まさかその前夜に、記録的大雨が降ってくるなんて……」ガクッ



扶桑「あらあら……不幸だなんて」

扶桑「そんなことはないわ、山城……」フフッ

扶桑「たとえ桜の花は散っていたとしても」

扶桑「あなたとこうして無事に、穏やかなひとときを過ごすことができるだけで……私はとても幸せ」

山城「姉様……」



30: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 13:16:33.60 ID:SfFdQhKBO


扶桑「……山城、あまり道の脇を歩かない方がいいわ」

扶桑「昨夜の雨で、とても滑りやすくなっているみたいだから……」

山城「は、はい……ありがとうございま」スッ


バキッ

「ひえぇ――――――――ッ」



扶桑・山城「!?」



31: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 13:19:00.41 ID:SfFdQhKBO


ガシッ


山城「はぁ、はぁ……!」

比叡「山城さん!?」

比叡「……う、受け止めてくれて……」ドキドキ

比叡「ありがとう……ございます……!」ドキドキ

扶桑「あら……あなたは比叡……」


扶桑「桜の木の上で、一体何を……?」

比叡「それは……話せば長くなるというか、なんというか……あははっ」


山城「重いぃぃはやくおりてぇぇぇ!」



32: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 13:20:27.34 ID:SfFdQhKBO


比叡「はぁ~、助かりました!」

比叡「ところで雪風は……!?」キョロキョロ


比叡「あぁ、あんなところに!」

扶桑「まぁ……木から木へ、あんなに器用に」

扶桑「まるで、お猿さんね」フフッ

山城「……」


山城 (お猿さんというより……モモンガじゃ……)ボソッ





33: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 13:21:58.66 ID:SfFdQhKBO


比叡「比叡は行きます!本当にありがとうございました!」

比叡「お礼といってはなんですが、食堂に私の作ったカレーがありますのでっ」

比叡「よかったら召し上がってください!それでは!」ダッ

扶桑「はい……お気をつけて」

山城「もう、転んで落ちないようにね」


タッタッタッ……


山城「……姉様」

山城「比叡のカレーって……たしか……」ゲッソリ

扶桑「山城……人の好意をそのように言っては……」チラッ

扶桑「あら?」



34: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/21(日) 13:23:19.99 ID:SfFdQhKBO


扶桑「山城、見て……」ヒョイ

山城「姉様?」

扶桑「これ、比叡と一緒に落ちてきた桜の枝よ」

扶桑「残った桜の花が、一本の枝にこんなにも……」

山城「……」



山城「……えぇ、とても綺麗です!」ニコッ

扶桑「私たちだけの、満開の桜ね」ニコ


……
…………
………………


39: ここからが続きです ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 21:23:43.41 ID:KTmYaS1nO



――鎮守府 埠頭


ザザーン…… ザザーン……



比叡「か、完全に見失っちゃった……」ガクッ


比叡「雪風、どこ行っちゃったのかなぁ~」

比叡「……」

比叡「はぁ……」



比叡「私のカレーって、そんなに嫌なのかなぁ」グスッ



40: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 21:38:20.19 ID:KTmYaS1nO


比叡「……はっ!」

比叡「だめだめ、こんなところで心折れてちゃ!」


比叡「間宮さんも、金剛お姉様も……」

比叡「あんなに褒めてくれたカレーですもの!」

比叡「絶対、美味しいに決まってますッ!」

比叡「もう……後には引きませんッ」グッ




41: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 21:50:06.22 ID:KTmYaS1nO



――埠頭 廃灯台


ギィ……バタン


雪風「はぁ……」

雪風 (ここなら、しばらく見つかることはないと思います)


雪風「……」

雪風「……ぐすっ」




42: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 22:14:02.18 ID:KTmYaS1nO





雪風「本当は……逃げたくなんか、ありません……」


雪風「比叡さんに……ちゃんと……」


雪風「謝りたい、のに……」ポロ…ポロ…





43: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 22:18:32.88 ID:KTmYaS1nO



「……誰?」

雪風「ひゃっ……!?」



ギィ……バタン



島風「な~んだ、雪風かぁ」ピョン

雪風「島風……さん?」

雪風「」ゴシゴシ




44: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 22:26:22.03 ID:KTmYaS1nO



島風「むぅ~」プク-

島風「この灯台はね、しまかぜの秘密の場所だったんだよー」

島風「それなのに、私より早くにここに来てる子がいるなんて……」

島風「ちょっとびっくりしちゃった!」

雪風「ご、ごめんなさいっ」

雪風「すぐにでていきますから!」

島風「あーううん、別にいいのっ」


島風「そんなことより、雪風も上に登ろうよ!」

雪風「上、ですか?」

島風「ほら、きてきて!はやくはーやーくー!」

雪風「??」




45: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 22:53:45.43 ID:KTmYaS1nO



――廃灯台 頂部


ザザーン…… ザザーン……


雪風「わぁ……!」

島風「どう?ここ、海の眺めがとってもいいでしょ~!」ピョン ピョン

雪風「はい!雪風、とても気に入りました!」

島風「でしょでしょー!」




46: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 23:03:06.33 ID:KTmYaS1nO



島風「しまかぜはね、いつもは走ってばっかりだけどー!」

島風「たまに、じっとしながら考えごとをしたい時もあるの」



島風「そんな時……わたしはいつも一人でここに来るんだけど」

島風「もしかして、雪風もそんな気分?」

雪風「……」

雪風「じつは……」


……
…………
………………



島風「……そっかー、じゃあ」

島風「雪風も本で、自分の昔のことを知っちゃったんだ」

雪風「はい…」

島風「それで比叡から逃げてきちゃったんだね」




47: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 23:22:50.48 ID:KTmYaS1nO



雪風「……昔の比叡さんを、最後に魚雷で沈めちゃったのは……」

雪風「実は、雪風だったかもしれないんです」

島風「……」

雪風「だから、ちゃんと比叡さんに謝らないといけないのに……雪風は……」


島風「……そっかー……」

島風「まぁ、あのできごとは事情も事情だし……」

島風「しまかぜは、雪風が悪いだなんて全然思わないよ!」


島風「……でも比叡に嫌われちゃったらって思うと、苦しくて仕方ないんだよね」

雪風「……」コク




48: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 23:45:37.41 ID:KTmYaS1nO



雪風「……あのっ」

雪風「……島風さんは、どんな考えごとを?」

島風「わたしー?」

島風「わたしはー……うん、雪風とは真逆のパターンだね~」


島風「本をいくら読んでも、活躍の話とか……ほとんどなかったの!」

島風「せっかく速く……とっても速く作ってもらったのに、戦争では全然役に立てなかったんだって!」


島風「だから、しまかぜは時々ね」

島風「こんなわたしが、過去にすごい戦いを経験してきた皆と一緒にいて、本当にいいの?」

島風「……って思っちゃうことがあるのっ」

雪風「……」




49: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/22(月) 23:55:25.10 ID:KTmYaS1nO



雪風「雪風は、島風さんがいなくなっちゃったら……とてもかなしいです!」

島風「!」


島風「……ほ、ほんと?」

雪風「はい!」

雪風「だって、島風さんは皆の前では明るくて、いつも元気をくれます!」

島風「……っ」テレテレ


雪風「それに、一緒に戦ってる時の島風さんは……」

雪風「装備も速さもすごくて、とっても頼りになりますから!」

島風「むぅ~……それはこっちの台詞だよー!」




50: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 00:08:42.31 ID:FUyHuSngO



島風「しまかぜは知ってるよ!」

島風「雪風は皆と同じ機関で動いてるのに、わたしと同じくらい速い動きができるって!」


雪風「うぅ……でも、島風さんには最新の電探がありますよね!」

雪風「霧の中でも目が見えるなんて、尊敬しちゃいます!」


島風「そ、そんなこと言ったら、雪風にだって スゴい対空レーダーが備わってるもん!」

島風「対空機銃もたくさん持ってるし、なんだかずるーい!」


雪風「でもでも、島風さんには皆よりいい無線まわりが!」

雪風「遠くでもしれぇとお話できるなんて、うらやましいです!」


島風「それじゃあ、雪風には――――」

雪風「島風さんには――――」


……
…………
………………



51: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 00:21:03.98 ID:FUyHuSngO



島風「雪風には、すっご~い幸運が!」

雪風「島風さんには、すごい速さがっ!」


島風「はぁ……はぁ……」

雪風「はぁ……はぁ……」

島風「…………ぷっ」


「「あははははっ!」」


島風「何この言い合い!意味わかんなーい!」クスクス

雪風「なんだかよくわかりませんけど、熱中しちゃいました!」


島風「ふふふ……あー、おかしい!」

島風「二人でいっぱい笑っちゃったぁ」

雪風「でも……なんだかとても、楽しかったです!」




52: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 00:25:47.02 ID:FUyHuSngO



島風「……」

雪風「……」

島風「……ねぇ、雪風」

雪風「はい、なんでしょう?」



島風「やっぱりね、比叡にちゃんと……謝ろ?」

雪風「!」




53: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 00:32:38.95 ID:FUyHuSngO



島風「たしかに、許してもらえるかは分からないよ」

島風「それが怖いのも、よーくわかるもん!」

雪風「……」コク


島風「でも……わたし達には、すごい所がこんなにたくさんある」

島風「雪風が昔、守れなかった比叡もね」

島風「今度は守れるように……なってるかもしれないじゃん!」

雪風「……!」




60: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:09:38.75 ID:s7fI1ZsrO


島風「しまかぜはね、雪風のおかげで……」

島風「悔しい思いをした過去のことは、これから取り返せる気がしたの!」


島風「だから、雪風も昔のことを乗り越えて、次に進まなきゃ」

島風「そうじゃないと、その“今度”すらやってこなくなっちゃうよっ!」


雪風「島風……さん……」


……
…………
………………



61: ここからが続きです ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:10:48.55 ID:s7fI1ZsrO



――食堂


わいわい ガヤガヤ


山城「あぁ……本当に比叡のカレーを食べにやってきてしまったわ……」

山城「姉様と綺麗な桜が見られて、せっかく幸せな気持ちだったのに……」

扶桑「もう……山城ったら、頂く前からそんな失礼なことを言うなんて」

扶桑「せっかくお誘い頂いたのに……めっ」

山城「!」


山城 (姉様の“めっ”が聞けるなんて……なんて幸せ!)キラキラ




62: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:29:15.90 ID:s7fI1ZsrO



天津風「雪風、おっそいじゃない……もう夕食時よ?」

時津風「あぅ~お腹すいた~……」

時津風「あ、でもでも……はうぅ……」

天津風「……まぁ、言いたいことはなんとなく分かるけど……」


天津風「ま、案外悪いようにはならないんじゃない?」

天津風「だって、雪風が来るんだし」

時津風「……そかそか、それもそうだね~」




63: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:35:04.40 ID:s7fI1ZsrO



暁「こ、こんなのレディーの扱いじゃないわ!」

暁「たまたま執務室の近くにいたってだけで、連れてくるなんて……」

響「響は知ってるよ」

響「司令官は道連れがほしかったのさ」

暁「うぅ……電と雷はあの場にいなくてラッキーね」


ガチャ


電「あ、二人とも見つけたのですっ」

雷「あら、カレーのにおい!誰が作ったの?」

暁・響「あっ」




64: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:38:56.30 ID:s7fI1ZsrO



グラーフ「重ねて言うがアトミラール、私は決して……」

グラーフ「貴官のカレーに対する嗜好を知りたくて、此度の哨戒(食事)に誘ったのではない」

提督「ワタシハ カゴノナカノトリ…」ガタガタ

グラーフ「だが、貴官がどうしてもと申すのであれば、此方も要望を聞き入れる用意はできている」

提督「ハハヨ ワガスクイヲモトメル コエヲ…」ガタガタ

グラーフ「私はビスマルクとは違い、料理の心得もあるのだからな」フフン

提督「アァ…ウチュウガ ウチュウガワタシノナカニ…!」ガタガタ

グラーフ「ふふっ……アトミラールともあろう者が、いったい何に怯えているのだ?」




65: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:47:03.79 ID:s7fI1ZsrO



グツグツ


金剛「シィット!お邪魔虫のドイツ艦が、提督の隣にィ!」ギリギリ

金剛「あぅ……鍋の火から離れられないのが悔しすぎるネー……」


金剛「それにしても……何故かは知りまセンが、とても大所帯になってきてるデース!」

金剛「比叡も雪風、いったい何処へ行ってしまったんデショ?」

金剛「雪風が落としたブックを見るに、今ごろは……」

金剛「……」

金剛「……デモ」クスッ



金剛「あの二人ならきっと、大丈夫デース!」ニコ


……
…………
………………



66: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:48:44.41 ID:s7fI1ZsrO



――鎮守府 埠頭


比叡「はぁ……はぁ……!」

比叡「大変、もうすぐ夜になっちゃう!」

比叡「雪風~!どこに隠れてるの~っ!?」



「おーい!こっちこっち~!」



比叡「!」

比叡「この声……島風がいるの!?」




67: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:50:10.25 ID:s7fI1ZsrO




島風「もぉ~!見つけるのおっそ~い!」プンプン

雪風「……っ」モジモジ



比叡「雪風!」

比叡「よかったぁ……やっと見つけられた……!」


……
…………
………………



68: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:51:07.43 ID:s7fI1ZsrO



雪風「雪風は……本当は、謝らなきゃいけなかったんです」

雪風「でも、いざ比叡さんを前にしたら、怖くなっちゃって……」

雪風「……」グッ

雪風「比叡さん、本当に……ごめんなさい!」



比叡「……そっか」

比叡「そうだったんだね」


比叡 (雪風、カレーのことで逃げてたんじゃなかったんだ)

比叡 (私の最期のことを……気にしてくれてたんだ……) ニコ



69: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:52:19.14 ID:s7fI1ZsrO



島風「……ねぇ比叡、雪風もこうして謝ってるしさー!」

島風「ね、許してあげて?しまかぜからもお願いだよー!」

雪風「……」フルフル

比叡「えぇ!?も、もちろん!」

比叡「そんなの、許すに決まって……はっ」ピコーン



比叡「……うぅん、比叡はちょっぴり怒っちゃったぞぉ~(棒)」

島風「そんなぁ~!」

雪風「うぅ…… 」シュン




70: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:55:34.27 ID:s7fI1ZsrO



比叡「ふふん、ただし……」

比叡「今から言うお願いを、二人がちゃんと聞いてくれたら許してあげます!」

雪風「!」

雪風「そ、それはなんでしょう?」

雪風「雪風、なんでもします!」

島風「わたしもするの?」

島風「いいよ、なんでも言って!」




71: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:57:40.14 ID:s7fI1ZsrO




比叡「それは……」

比叡「私の作ったカレーを食べて、感想を聞かせてくれること!」

比叡「笑顔でッ!!」ニコ



島風「!」ガーン

雪風「ふぇ?」





72: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 19:58:52.52 ID:s7fI1ZsrO



こうして……比叡のカレーは無事、皆に振る舞われることとなった。


「ちゃんとS&○のカレーの味がします!」

「ご飯はべちゃべちゃだけど、思ってたよりカレーは普通ー!」


――等といった高い評価の数々は、食堂に居合わせた大勢のギャラリーの知るところとなり

比叡は御召艦としての誇りを取り戻す……大いなる一歩を踏み出したのであったとさ


―――――完




73: ◆9l/Fpc6Qck 2019/04/23(火) 20:00:06.33 ID:s7fI1ZsrO
艦これ六周年、おめでとう!

ここまで楽しく書かせて頂き、ありがとうございました。