武内P「泥酔、ですか」 前編

523: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:08:23.11 ID:OV68Ckl5o
書きます


武内P「恋愛映画を……克服したい、と?」

引用元: ・武内P「泥酔、ですか」 



THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! きゅん・きゅん・まっくす
歌:一ノ瀬志希、乙倉悠貴、椎名法子、前川みく、棟方愛海
日本コロムビア (2019-04-17)
売り上げランキング: 178
524: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:12:29.13 ID:OV68Ckl5o
奏「ええ、そうなの」

武内P「速水さんは、恋愛映画が苦手なのですか?」

奏「……見てて、恥ずかしくなるし」

武内P「それは……意外ですね」


奏「でも、演技のためならそうも言ってられないでしょう?」

奏「それに……プロデューサーさんとなら、悪くないかな、って」


武内P「そう、ですか……」

武内P「……それが、貴女にとって必要な事ならば――」

武内P「――協力、させて頂きます」

525: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:17:46.54 ID:OV68Ckl5o
奏「ふふっ、貴方ならそう言ってくれると思ってたわ」

武内P「いえ、プロデューサーとして当然の事です」

奏「実は、もう見る映画は……ホラ、用意して来てるの」

武内P「準備が良いですね」


奏「物静かな大人の男と、大人に憧れる少女の……」

奏「キスから始まって――キスで終わる、愛の物語」

奏「……ふふっ! ネタバレは、控えた方が良いかしら?」


武内P「……」

武内P「その……兎に角、映画を見てみましょう」

526: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:20:34.32 ID:OV68Ckl5o
  ・  ・  ・

武内P「――速水さん」

奏「ん……」

武内P「速水さん、起きてください」

奏「あら……私、寝ちゃってたの?」


武内P「……はい」

武内P「開始十分のキスシーンで、こう……顔を手で隠して」

武内P「はい……そのまま……」


奏「……ふふっ」

奏「起きてたわよ、寝てなんか無いわ」

527: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:23:23.24 ID:OV68Ckl5o
武内P「えっ? 今、寝ちゃってたの、と……」

奏「冗談に決まってるでしょう?」

武内P「……内容は、どういったものだったでしょうか?」

奏「もうっ、私を疑ってるの?」


奏「物静かな大人の男と、大人に憧れる少女の……」

奏「きっききキスから始まって――キスで終わる、愛の物語」

奏「……ふふっ! 合ってるでしょう?」


武内P「……」

武内P「あの……合っては、いますが……」

528: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:28:48.48 ID:OV68Ckl5o
武内P「……速水さん」

奏「あら、どうしたの?」

武内P「失礼ですが、映画を鑑賞中の様子を……撮影していました」

奏「ふぅん? そうなんだ」


奏「――それじゃあね、私はもう行くわ」

奏「ふふっ! さよならのキスはして貰えるのかな?」


武内P「いえ、それは出来ません」

武内P「――苦手克服のため、現状を正しく把握しましょう」

529: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:34:25.96 ID:OV68Ckl5o
武内P「速水さんは、本当に恋愛映画が苦手なようですね」

奏「う~ん……自分じゃ、よくわからないわ」

武内P「この映像を見て頂ければ、おわかりになるかと」

奏「それじゃあ、見せて貰おうかな」

武内P「はい」

ピッ!

  ・  ・  ・

奏『終わった? ねえ、キスシーン終わった?』

  ・  ・  ・

奏「……へぇ」

奏「最近のCGって、良く出来てるわね」

武内P「映像には、一切手を加えていません」

530: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:39:03.81 ID:OV68Ckl5o
奏「そんな筈ないでしょう? だって、記憶に無いもの」

武内P「……覚えていないのですか?」

奏「当たり前でしょう? 私、こんな事しないわ」

武内P「……」

  ・  ・  ・

武内P『は、速水さん? 見なくては、克服も何も……』

奏『ふふっ、確かに貴方の言う通りね……』

奏『……あっ、駄目! えっ、●●●! 駄目、●●●!』

  ・  ・  ・

奏「……●●●、って」

奏「今どき、そんな風に言ったりする?」

武内P「……言うようです」

531: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:45:46.02 ID:OV68Ckl5o
奏「もう……こんな、手の込んだ映像まで用意して」

武内P「いえ、素材そのままです」

奏「ふぅん……まだ、言い張るの?」

武内P「……」

  ・  ・  ・

奏『もう、終わったわよね? ねえ、終わった?』

武内P『……終わりました』

奏『……ふふっ! 案外、アッサリ――嘘つき!』

奏『もう! もうっ! ●●●! 馬鹿、●●●!』

  ・  ・  ・

奏「……」

武内P「……」


武内P・奏「……」

532: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:51:19.48 ID:OV68Ckl5o
奏「はぁ……貴方って、意地悪なのね」

武内P「えっ?」

奏「だって、そうでしょう?」

武内P「あの……何故、そう思われ――」

  ・  ・  ・

奏『もう騙されないわよ?』

奏『……この両手のヴェールが上がる時』

奏『それは――唇が触れ合う時だけ』

武内P『……』

奏『…………すぅ……すぅ……』…コテンッ

  ・  ・  ・

武内P「――何故、そう思われたのですか?」

奏「その前に、ちょっと映像を止めて」

533: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 21:57:31.68 ID:OV68Ckl5o
武内P「……止めました」

奏「もし、仮に。仮に、あの映像が本物だったとしてよ?」

武内P「はあ……」

奏「私、恋愛映画は苦手だって言ったわよね?」


奏「だったら――そういうシーンに差し掛かったら」

奏「終わっていそうなタイミングまで、注意を逸してくれないと」

奏「……でしょう?」


武内P「あの……速水さん?」

武内P「貴女は、その……映画のラブシーンが流れた時の、両親的な」

武内P「……そんな助けを私に期待していたのですか?」

534: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 22:04:46.66 ID:OV68Ckl5o
奏「はぁ……貴方には、期待してたんだけどな」

武内P「すみません……失望されるのは、釈然としません」

奏「何? もしかして、チャンスが欲しいのかしら」

武内P「いえ、それは……結構です」

奏「……」


奏「…………」…ウルッ!


武内P「……チャンスをください」


奏「……ふふっ! お願いされちゃ、仕方ないわね」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「ですが……泣き落としは、やめてください」

535: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 22:13:44.24 ID:OV68Ckl5o
  ・  ・  ・

奏「――ふぅ……見終わったわね」

武内P「……ええ、まあ」

奏「セクシーなシーンもあったし……とっても、大胆だったわ」

武内P「……はい、そうですね」


武内P「速水さん」

武内P「何故、映画をもう一本用意していたのですか?」

武内P「それも……ジャッキー・チェン主演の映画を」


奏「? 安心して見られるでしょう?」


武内P「……すみません」

武内P「私も、その……普通に楽しんでしまいました」

536: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 22:19:12.37 ID:OV68Ckl5o
武内P「最初のキスシーンに差し掛かり……」

奏「ええ、貴方が声をかけてくれたのよね」

武内P「その……うめき声を上げだしたので」

奏「うめき声? ふふっ、なぁにそれ?」

武内P「……」

ピッ!

  ・  ・  ・

奏『あっ……あーあー、うーううー!』

  ・  ・  ・

武内P「……」

ピッ!

奏「発声練習よ。アイドルには、重要でしょう?」

537: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 22:27:18.13 ID:OV68Ckl5o
武内P「その後、鞄からもう一枚のDVDを取り出し……」

奏「……こっちにしましょう、って貴方に渡した」

武内P「ケースを持って、バタバタしていただけでしたが……?」

奏「そうだったかしら? 覚えてないわ」


武内P「……」

ピッ!


奏「……」

ピッ!


奏「ふふっ、貴方ってとってもチャーミングね」

武内P「今、このタイミングで言う必要がありましたか?」

538: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 22:35:37.10 ID:OV68Ckl5o
武内P「しかし……本当に、恋愛映画が苦手なのですね」

奏「そうね……でも、これで少しは克服出来たかしら」

武内P「貴女が何をもってそう判断されたのか、まるでわかりません」

奏「あら、だってそうでしょう?」


奏「物静かな大人の男と、大人に憧れる少女の……」

奏「プロデューサーと、アイドルの物語」

奏「どんな物語になるかは……貴方次第」

奏「……ふふっ! なんて、ね」ニコッ!


武内P「速水さん……」

武内P「……良い、笑顔です」

539: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 22:42:32.10 ID:OV68Ckl5o
武内P「――ですが、一点だけ」

奏「? どうしたの?」

武内P「ジャッキー映画を見る時は、注意してください」

奏「あら、どうして?」


武内P「あの……速水さんは、ですね……」

武内P「アクションシーンに魅入っている時、その……」

武内P「……こう、口がパッカリと開いています」


奏「……ふふっ!」

奏「嫌ね、そんな筈無いでしょう?」

540: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 22:51:21.94 ID:OV68Ckl5o
武内P「……今後は、気をつけてください」

奏「閉じてるわ。キスする時の、瞼みたいにね」

武内P「……映像は、全て消去しておきます」

奏「あら、そう?」


武内P「この映像が、万が一世に出回ってしまったら……」

武内P「……貴女のイメージに、傷がついてしまいます」


奏「そんな私の姿を……貴方だけが、知ってるのね」

奏「もしかして、傷物にされちゃった?」

奏「ふふっ! この責任は、どう取ってくれるのかしら?」ニコリ!


武内P「映像を全て消去します」

武内P「そして……なるべく早く、忘れます」

541: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 23:03:41.40 ID:OV68Ckl5o
奏「さて……それじゃ、もう行こうかな」

武内P「はい、もう良い時間ですから」

奏「恋愛映画も、完全に克服出来たし」

武内P「いいえ、微塵も」


奏「そうそう……皆には、内緒にしておくわ」

奏「でないと、何を言われるかわからないもの」

奏「……二人だけの秘密、出来ちゃったわね」ニコッ!


武内P「ええ……そうして頂けると、助かります」

武内P「そして……これっきりにして貰えると、幸いです」

542: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/10(水) 23:27:56.70 ID:OV68Ckl5o
  ・  ・  ・

武内P「……成る程」

武内P「速水さんが、他人事の様に話題にし……」

武内P「……確認してみたら全員そうだった、と」


奏・美嘉・周子・志希・フレデリカ「……」…コクリ


武内P「ジャッキー映画のアクションシーンで――」

武内P「――皆さん、口がパッカリ開いていた、と」

武内P「それを克服したい、と……そういう事ですか」


奏・美嘉・周子・志希・フレデリカ「♪」ニコッ!


武内P「映画を見る時は……口は、閉じるものですからね」


奏・美嘉・周子・志希・フレデリカ「応援上映は?」


武内P「…………」

武内P「すみません、さすがに閉口してしまいました」



おわり

549: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 20:58:23.99 ID:afEElaFFo
書きます


北原伊織「芸能人の」今村耕平「客が来る?」

550: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:03:15.31 ID:afEElaFFo
奈々華「だから二人共……粗相の無いようにね?」


伊織「何を言ってるんですか奈々華さん!」

耕平「ええ、粗末なのはコイツのナニだけですよ」

伊織「粗相だっつってんだろ! それに見ろ、俺のご立派様を!」

耕平「どこが立派なんだ? 俺の目には、何も写っていないが」

伊織・耕平「……ハッハッハ!」


伊織・耕平「オラァァ!!」

ドグシャアッ!


千紗「服を着ろって言ってるのよ馬鹿共」

奈々華「あ、あはははは……」

551: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:11:40.37 ID:afEElaFFo
伊織「それにしても……本当に芸能人が来るんですね」

耕平「カヤ様が来るんだ、誰が来てもおかしくはないな」

伊織「お前の判断基準はそこなのか」

耕平「当然だろう! 俺は、あのLIVEの感動が忘れられん!」

伊織「そこまでか?」

耕平「ああ! カヤ様の歌声は、正に天上の調べ!」

伊織「お前は実際天井にポスターを貼ってるけどな」


奈々華「ふふっ! もうすぐ来るお客さんも、とっても歌が上手いのよ?」

奈々華「それに、とっても美人で……不思議な魅力がある人」


伊織「へぇ! そいつは楽しみですね!」

耕平「奈々華さんがそこまで言うなら……三次元とは言え、興味が出てきたな」


千紗「……とりあえず、さっさと服を着ないと叩き出すからね?」


https://www.youtube.com/watch?v=0PpTUtHtwt4


552: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:16:59.87 ID:afEElaFFo
  ・  ・  ・

伊織「しかし……ダイビングの客じゃないんだな」

耕平「確か、飲み友達と言っていたな」

伊織「……奈々華さんの飲み友達、か」

耕平「? どうした、伊織」

伊織「いや、‘あの’奈々華さんの飲み友達なんだぞ?」

耕平「それがどうした」


伊織「――俺達以上の力を持っている可能性が高い」


耕平「伊織……」

耕平「俺が言うのも何だが、さすがにもう中二病は卒業した方が良いぞ」


伊織「ちげえよ!」

伊織「俺達よりも酒が強いだろう、って言う意味だ!」

553: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:22:36.52 ID:afEElaFFo
耕平「いや……さすがにそれは無いだろう」

耕平「俺達も、もう随分とPaBで鍛えられたんだからな」

伊織「まあ……それはそうなんだが」

伊織「……なんだか、妙な胸騒ぎがするんだ」

耕平「!? おい、そういう事を言うのはやめろ!」

伊織「? なんでだ」

耕平「馬鹿が! そういった発言は『フラグ』と言ってだな――」


…ガチャッ


耕平「――ん?」

伊織「あっ、いらっしゃいま――」


武内P「あの……」


伊織・耕平「……!」

耕平「伊織キサマあああ!! お約束にも程があるだろうがああ!」

伊織「えっ!? 俺のせい!? 俺のせいなのか!?」

554: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:27:15.10 ID:afEElaFFo
武内P「すみません……」


伊織・耕平「ひいっ!?」

伊織「な、何だあの目は!? 強盗か!?」

耕平「そんな生易しいもんじゃない! あれは殺し屋だ!」

伊織「何っ!? 殺し屋だと!?」

耕平「声が低くて、よく聞き取れなかったが……」

伊織「……ああ、確かに言っていた!」


伊織・耕平「ただではすみません……とな……!」…ゴクリ!


武内P「……いえ、あの」

555: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:34:09.62 ID:afEElaFFo
武内P「……少々お尋ねしたいのですが」


伊織・耕平「っ……!」

伊織(お尋ね者……だと!?)

伊織(この現代社会で、賞金を懸けられてるってのか!?)

耕平「っ――!?」

耕平「……おい、伊織!」ボソボソ!

伊織「何だ!? こんな時に!」ボソボソ!

耕平「俺のセンサーが告げている……!」ボソボソ!

耕平「奴は、JKやJC達に囲まれた生活をしている……!」ボソボソ!

伊織「俺は、お前が謎のセンサーに絶対の自信を持っているのが気になる」ボソボソ!


耕平「――クソオオッ! なんて羨ましいんだああっ!」

…ガクッ!


伊織「チイッ! 耕平がやられたか! 相変わらず使えん奴め!」


武内P「あの、すみません……」

556: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:44:21.44 ID:afEElaFFo
武内P「――小手川奈々華さんは、ご在宅でしょうか?」


伊織「っ!?」

伊織「そうか……お前の狙いは、奈々華さんか」

伊織「――生憎だが、俺はお前には何も教える気は無い!」

耕平「い、伊織……!」

伊織「どうした耕平、復活が早いな」

耕平「……ああ! 今は、うかうか寝てられないからな!」

伊織「……その通りだ!」


伊織「――奈々華さんは、俺の姉のような存在!」

伊織「そんな人を危険に晒すわけにはいかない!」


耕平「――お願いします! 小さな女の子達に囲まれる秘訣を!」

ガバッ!

耕平「この通り土下座もします! 最大で、五枚まで出せます!」


伊織「……」

…グシャリ!

耕平「な、何だ!? 頭に重圧が……これが、プレッシャー!?」

557: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:45:00.29 ID:afEElaFFo
誤)>小手川

正)>古手川

558: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 21:52:21.69 ID:afEElaFFo
?「――あら? もしかして、お留守?」


伊織・耕平「!?」

伊織「この声……なんだか、聞いたことがあるな」

ぐりぐり…!

耕平「聞こえる……何故か、ららこたんの声が聞こえるぞ!」

伊織「ん? 後ろに、誰か……」


武内P「……少し、待って頂けますか」


?「……えっ?」

…ひょこっ

楓「――何か、あったんですか?」


武内P「いえ……」


伊織「……アイドルの、高垣楓?」

ぐしゃっ!

耕平「おぐうおっ!?」


武内P「……現在、進行中です」

559: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 22:05:08.00 ID:afEElaFFo
  ・  ・  ・

伊織・耕平「――すいませんでした!!」


千紗「全く……少し、買い出しで離れてる間に……!」

奈々華「ま、まあまあ千紗ちゃん」

千紗「でも……!」


伊織「ええい、千紗! お前に謝ってる訳じゃないんだぞ!?」

耕平「むしろ、古手川! お前からも言ってくれ!」

伊織「何をだ」

耕平「『魔法少女ららこ』実写化の暁には、是非母親役! 通称ままこ――」

伊織「千紗、こいつは許さなくていいぞ」

耕平「何っ!? 伊織キサマ、裏切るつもりか!?」

伊織「お前の野望の仲間になった覚えはない!」


楓「――ふふっ!」クスクスッ…!

楓「奈々華ちゃんの言ってた通り、楽しい子達ね……うふふっ!」ニコニコ!


伊織・耕平「……」

560: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 22:11:55.68 ID:afEElaFFo
伊織「その……本当に、すみませんでした」

耕平「本当に、尊敬しています」

武内P「いえ……慣れて、いますから」

伊織「誤解とは言え、色々言っちまって……」

耕平「靴まで舐めます」

武内P「本当に……お気になさらず」


伊織・耕平「……ありがとうございます!」

伊織「ほんの、短い間ですが――」

耕平「どうか、これから――」


伊織・耕平「――宜しくお願いします!」

伊織・耕平「[ピ――!]さんっ!」ニカッ!


武内P「待ってください!」

武内P「最終的に息はピッタリですが、その……」

武内P「……途中の会話の意味等、ほぼ違う内容では!?」

562: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 22:25:43.21 ID:afEElaFFo
奈々華「でも……どうして急に?」

楓「この近くの温泉で、撮影があって」

楓「それが予定よりも早く終わって、せっかくだから……って」ニコッ!

千紗「そういうのって、止められたりするんじゃ無いんですか?」

楓「ええ、明後日もお仕事があるから……止められちゃったの」

楓「――楓さんを温泉と飲み友達の近くに置いては帰れない、って」

奈々華「あはははは……」

楓「だから、他の子の付き添いで来てた、あの人に――」


伊織「殺し屋……Pさん」

耕平「同志……Pさん」

武内P「口に出ている……!」


千紗「……怖いの、見た目だけなんだ」

楓「えっ? 可愛いらしいと思うけど……」パチクリ!

奈々華「……楓さんって、変わってますよねぇ」

千紗「それ……お姉ちゃんが言う?」

563: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 22:41:23.89 ID:afEElaFFo
楓「……ふふっ! だから、帰りの心配はしなくて良いの」

奈々華「わぁ、それじゃあ……思いっきり飲めますね♪」ニコッ!

千紗「……どれだけ飲む気なの?」

楓「ふふっ! お猪口で、ちょこっとだけよ? うふふっ♪」ニコッ!

千紗「……本当は?」


楓・奈々華「ビールを、浴びーる程飲みまーす♪」ニコニコ!


千紗「はぁ……やっぱり」

千紗「でも、さすがにこの時間からは早いと思うけど」

楓「そうねぇ……せっかくだから、お散歩でもしようかしら」

奈々華「潜って行かないんですか?」

千紗「!」パッ!

楓「今回は、やめておこうかと思って」

千紗「……」プシュ~…


楓「ダイビングは、もう少しゆっくり出来る――良いタイミングで、ね♪」ニコッ!


千紗「……!」コクコク!

564: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 22:55:04.13 ID:afEElaFFo
  ・  ・  ・

伊織「はぁ……それにしても、高垣楓……さん、が来るなんて」

耕平「意外だったな、常識に疎いお前があの人を知っているとは」

伊織「お前に言われたくねえよ。っつーか、さすがに知ってるさ」

千紗「……あのプロデューサーさんも、何回か来てるよね?」

奈々華「ああ、千紗ちゃんはあんまりお話した事無かったっけ」

千紗「うん」

奈々華「そうねぇ……」


奈々華「……あの人、ちょっと困った所があるから」


伊織・耕平・千紗「困った所?」

伊織「それは、やっぱり……何人か殺してるって事ですか?」

耕平「馬鹿を言うな。幼女に囲まれている人が、そんな事をする筈がない」

千紗「あんた達、人を何だと思ってるの?」


奈々華「……とにかく!」

奈々華「あの人には、あんまり飲ませちゃ駄目よ?」


伊織・耕平「まあ……奈々華さんがそう言うなら」

千紗「……とりあえず、お料理の準備しちゃいましょ」

565: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 23:05:43.59 ID:afEElaFFo
  ・  ・  ・

伊織「……さて、そろそろ戻ってくる頃かな」

prrrr!prrrr!

伊織「ん? 電話……」

ピッ!


山本『――大変だ、北原!』


伊織「落ち着け、山本」

伊織「先輩達や梓さんの前にお前が出た事の方が大変だ」

山本『何を言ってる』

伊織「いや、こっちの話だ」

伊織「……それよりどうした?」


伊織「遂に、お前が一生童貞を卒業出来ない運命だと気付いたのか?」


山本『そんな運命なんか知るか!』

山本『もし仮に気付いたとしたら、その時点で運命を変えてみせる!』


伊織「言ってる台詞は格好いいな」

伊織「だが、今気づけていない時点で一生運命は変わらないと思うぞ」

566: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 23:11:00.79 ID:afEElaFFo
山本『良いから聞け、北原!』

伊織「何だよ、やけに興奮しやがって」

山本『俺は、いつもの様に天使を――マイ・エンジェルを探していたんだ』

伊織「……そ、そうか」

伊織(やはり……こいつに奈々華さんの存在を知られると危ないな)

伊織(主に、俺の命が)


山本『そこで……俺は、見つけちまったんだ』

山本『微笑みを浮かべながら、海辺を歩く――女神をな!』


伊織「っ!?」

伊織(これは……まずい!)

伊織(下手な事を言ったら、あの二人の事を誤解して……)

伊織(……最悪、スキャンダルって形になっちまう!)

567: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 23:15:09.53 ID:afEElaFFo
伊織「そ、そうか……女神か」

山本『聞いて驚くなよ? なんと、あの――』

伊織「待て、山本!」

山本『何故止める』

伊織「その女神は……お前が見つけた、女神なんだろう?」

山本『まあ……俺が見つけた、俺だけの女神だが』

伊織「お……おう」

伊織(お前だけのじゃねえよ、皆のアイドルだよ)


伊織「……俺達は、友達だろう?」

伊織「だから、女神の正体をお前だけが知ってても……気にしないさ!」


山本『北原、お前……へっ!』

山本『気持ち悪いこと言い出しやがって、何が狙いだ……なんて思ったが』

山本『――お言葉に、甘えさせて貰うぜ!』

568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 23:24:58.08 ID:afEElaFFo
山本『だが……女神の近くに、悪魔がいやがったんだ!』

伊織「……ほう」

山本『あの目は、確実に何人も殺してる目だ』

伊織「お……おう」

山本『……俺は無力だった! どうする事も、出来なかったんだ!』

伊織「山本……」

山本『北原……俺は、決めたよ』


伊織「何をだ」


山本『男ってのは、いつでも戦える状態じゃなきゃいけない』

山本『そうじゃなかった俺は……しっとりした』


伊織「しっとりって……まさか、お前!?」


山本『……ありがとな、話を聞いてくれて』

山本『今度会った時――履き心地、教えてやるよ』


伊織「馬鹿、よせ! この歳で、その装備は早すぎる!」

伊織「せめてお年寄りになってから……山本?」

伊織「山本おおおっ!!」

569: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/11(木) 23:38:27.55 ID:afEElaFFo
  ・  ・  ・

耕平「――どうした? 電話が盛り上がっていたようだが」

伊織「いや、馬鹿が明後日の方向へ行っただけだ」

耕平「ふむ、明日のその先へ行ってしまったか」

伊織「明日すらどうなるかわからないのに、困ったもんだ」


愛菜「……アンタ達、何の話してるの?」


伊織「おおっ、ケバ子も来てたのか!」

愛菜「ケバ子言うな」

耕平「先輩達も、もうすぐ来るみたいだぞ?」

愛菜「なんか、気合が入ってたけど……」

伊織「あの人達が飲み会に気合が入ってるのはいつもの事だろ?」

愛菜「ダイビングサークルとしてはどうなの、って感じだけどね……」


伊織・耕平「それがPaB(俺ら)の流儀だろ」


愛菜「あぁ……納得しちゃうあたり、毒されてるなあって感じる……!」

571: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:03:51.81 ID:Hv/97SoSo
  ・  ・  ・

楓・奈々華・梓「カンパーイ♪」

千紗・愛菜「か……乾杯」


楓「あら? どうしたの?」

愛菜「いっ、いえ! 何でもありません!」

梓「ははーん? 何、緊張してるの?」

愛菜「そ、そりゃしますよ!」

楓「ふふっ! そういう時は、お酒を飲めば良いんでーす♪」

愛菜「成る程……って、本人に言われても!」

奈々華「あはは、確かに……最初は私もそうだったなぁ」

梓「ちーちゃんも、最初は緊張した?」


千紗「いえ、それよりも……あれ……」


楓・奈々華・愛菜「ん?」

572: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:09:34.89 ID:Hv/97SoSo
時田「……ぐうっ!?」

がくっ!

寿「や、やはりお前でも無理だったか……!」

時田「ああ、俺も成長したと思ったんだが……やはり、強い!」


武内P「――いえ」

武内P「たまたま……調子が良かっただけですから」


時田「ふっ……さすがですね」

寿「そう言われちゃ、何も言えなくなっちまう……」

時田・寿「……ははっ!」ニカッ!


武内P「……良い、笑顔です」


伊織・耕平「――ちょっと待てぃ!!」

伊織「アンタら、何で野球拳でそんな爽やかな感じ出してるんだ!?」

573: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:14:55.22 ID:Hv/97SoSo
伊織「そもそも、アイドルが居るのに全裸になるか!?」

時田「何を言う。負けたら脱ぐのが野球拳だろう?」

寿「伊織、お前にも羞恥心というものがあるとは思わなかったぞ」

伊織「恥ずかしいのは、あんた達だよ!」

耕平「――待て、伊織。気が付かないのか?」

伊織「あん? 何にだよ」

耕平「……あの人の格好を見てみろ」


武内P「……」


伊織「……スーツの上下だな」

耕平「そんなものは見ればわかる!」

伊織「お前が見ろというから見たんだが」

耕平「違う! あの人は、野球拳をしたんだぞ!?」

伊織「……はっ!?」


武内P「……」


伊織「服が一枚も脱げていない……何故だ!?」

伊織「野球拳をしたのに、身だしなみがきっちりしている!」

耕平「まあ、一回も負けなかっただけなんだが」

574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:23:09.49 ID:Hv/97SoSo
時田「ほろ酔いのあの人は、野球拳が滅茶苦茶強くてなぁ」ブラーン!

寿「今回はいける気がしたんだが、気のせいだったようだ」ブラーン!

伊織「先輩達は負けなくても脱ぐでしょう」

時田・寿「ああ」

耕平「……」


耕平「――俺と、勝負をして貰いたい」


武内P「えっ?」


伊織「馬鹿な!? 今の話を聞いてなかったのか!?」

耕平「冷静に考えてみろ」

耕平「先輩達が野球拳でまるで歯が立たない相手に……勝ったら、どうなる?」

伊織「そりゃ……あの人が全裸になるだけだろ」

耕平「違う!」

  ・  ・  ・

武内P『くっ……! とても、野球拳が強いのですね……!』ブラーン!

耕平『ふっ……これも、ららこたんへの愛の力ですよ』


武内P『その、愛の力――私の担当する15歳以下のアイドルの方へ――』

武内P『――私に代わり、プロデューサーとして注いではみませんか?』


耕平『……良いだろう!』

耕平『今日から俺は――今村Pだ!』

  ・  ・  ・

耕平「……と、こうなる」

伊織「ならねえよ馬鹿!」

575: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:32:05.22 ID:Hv/97SoSo
耕平「魔法使いに、俺はなる!」

伊織「お前が言うと意味が違ってくる!」

耕平「ええい、やはり馬鹿では話にならん!」

伊織「お前は俺と会話をしてたか!?」


耕平「――さあ、勝負だ!」

耕平「俺の、真実の愛と……貴様の、アイドルへの愛!」

耕平「どちらが強いか、ハッキリさせようじゃないか!」


伊織「貴様って、お前失礼な……!」


武内P「……わかりました」

武内P「そう言われてしまっては……私も、引き下がれません」


耕平「それでこそ! 越えるべき壁は、高い方が良いと言うもの!」

耕平「――勝負だあああっ!!」


  ・  ・  ・


武内P「……」キッチリ!


耕平「くっ……惜しかった!」ブラーン!

伊織「ストレートで負けてんじゃねえか!!」

576: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:46:19.03 ID:Hv/97SoSo
時田「さて、伊織」

寿「後は頼んだぞ」

伊織「何の話ですか」

時田・寿「仇をとってくれ」

伊織「そうは言いますけど……正直、勝てる気は微塵も……」


耕平「……ううっ!?」

…がくっ!


伊織「どうした耕平。まさか、もう酔ったのか?」

耕平「き……気をつけろ、伊織……!」

伊織「何にだ」


時田「ちなみに、勝てなかったら‘こいつ’を一気だ」

…ちゃぽんっ

寿「一応言っておくが、不戦敗は‘こいつ’を一気だ」

…ちゃぽんっ


伊織「……」


時田「どうした? 早くしないと量が減ってしまう」

寿「こっちもだ。どんどん蒸発しちまってる」


伊織「ドチクショウ!!」

577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:53:44.89 ID:Hv/97SoSo
伊織「くっ……!」

伊織(裸になるのは全く問題無いが……)

伊織(……あんなもんを大量に飲んだら死んでしまう!)

伊織(かと言って、どうやったら勝てるって――)

伊織「――はっ!?」


伊織「――プロデューサーさん!」ニコッ!


武内P「? どうかしましたか?」


伊織「一回勝負する毎に――勝っても負けても、酒をお互い飲む」

伊織「……って言うのはどうですか?」

伊織「ほら、せっかく酒の席ですし!」ニコニコ!


武内P「そう、ですね……確かに、その通りです」

武内P「その方が盛り上がる、と……そう、思います」


伊織「おおっ、ノリが良いですね!」

伊織「それじゃあ、軽めのを一杯……はい、どうぞ!」ニコニコ!


武内P「ありがとうございます」


伊織「それじゃあ、カンパーイ!」

武内P「はい、カンパ――」


武内P「――ンゴフゥッ!?」

578: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:01:54.64 ID:Hv/97SoSo
武内P「こっ、これは……軽めでは……!?」

伊織「ははっ! やだなぁ――」


伊織「――軽めのジャブ、って事ですよ」ニヤァッ!

…トンッ

『スピリタス――アルコール度数96%』


武内P「くっ……!?」

伊織「ちなみに、今のは勝負事のじゃありませんよ」

伊織「勝っても負けても……ですから」

伊織「まあ、勝利の前祝いの酒、って所ですかね」


伊織「……ほろ酔いなら、野球拳が滅茶苦茶強い」

伊織「なら――泥酔してたら、どうなんですかねぇ~?」ニタァ~ッ!


時田「なるほど、考えたな」

寿「うむ、清々しいほどクズだな」


伊織「……すみません、プロデューサーさん」

伊織「この勝負、勝たせて貰いますよ!」


武内P「くっ……!?」



耕平「……ん?」

耕平「何か、忘れているような……」

579: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:12:00.63 ID:Hv/97SoSo
千紗「……ほっといて良いの?」

梓「良いんじゃない? 楽しそうだし」

愛菜「楽しそうと言うか、いつものノリと言うか……」


楓「あっ、このお刺身……とっても美味しい!」パアッ!

奈々華「はい、新鮮なのを選んできましたから」

楓「奈々華ちゃんは、良いお嫁さんになれそう」

奈々華「あ、あはは」

楓「はぁ……日本酒が、スルスルっといけちゃう♪」

奈々華「ふふっ、今日は飲みましょうね♪」


梓「……あっちを止めるか、こっちで飲むか」

梓「二人は、どっちが良い?」

千紗・愛菜「飲みます」

梓「あはは、だよねぇ!」

580: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:23:09.61 ID:Hv/97SoSo
愛菜「この前の女子会は、何かアレだったし!」

千紗「うん……まあ、確かに」

楓「女子会?」

奈々華「千紗ちゃんの部屋で、この四人で飲んだんです」

梓「大騒ぎも良いけど、たまには~、ってね」

楓「……でも、何かあったの?」

愛菜「その……」チラッ!

千紗「あのDVDは私のじゃないから!」

愛菜「う、うん……そうだね///」

千紗「違うからね!?」

梓「二人の胸のサイズについて語ったりねー」

千紗・愛菜「梓さん!?」

奈々華「……」ウンウン!


楓「……ふふっ!」

楓「お刺身だけじゃなく、ネタには困らなさそうね♪」ニコッ!

581: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:33:27.87 ID:Hv/97SoSo
  ・  ・  ・

千紗・愛菜「ううっ……」

…ぐで~っ!

梓「あらら、二人共もうダウン?」

愛菜「いや……かなり飲んだんで……」

千紗「あの二人のペースに乗せられて……」


楓「ん~っ♪ タイを食べた~い、うふふっ♪」ニコニコ!

奈々華「ふふふっ♪ どんどん飲みましょう♪」ニコニコ!


梓「駄目だよー、自分のペースを保たないと」

千紗・愛菜「はい……」

梓「そうじゃないと――」



武内P「……」

…ざんっ!



梓「――……気付いたら、上半身裸になってるから」

千紗・愛菜「いやいやいやいや!」

582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:38:51.23 ID:Hv/97SoSo
武内P「あの……」


梓「あちゃー……完全に酔っ払ってるみたいだねぇ」

千紗「えっ!? 素面に見えますけど!?」

愛菜「顔に出ないにも程がありません!?」


武内P「――アイドルに、興味はありませんか?」


千紗・愛菜「……はい?」

梓「あはは、やっぱりそうきたか」


武内P「こちらが名刺になります」

スッ…

『スピリタス――アルコール度数96%』


千紗・愛菜「意味がわからない!」


武内P「すみません、間違えました」

…ぐいっ!

武内P「ぷはぁっ……こちらが名刺になります」

スッ…


千紗「あ、梓さん!?」

愛菜「ど、どうすれば良いんですか!?」

梓「とりあえず、名刺受け取っておけば?」

583: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:49:57.08 ID:Hv/97SoSo
梓「この人、酔っ払うとすぐスカウトしてくるんだよねぇ」

千紗「……そうなんですね」

愛菜「ん? でも……」


武内P「申し訳ありません」

武内P「貴女をスカウトする事は、出来ません」


愛菜「……」

愛菜「いや、そこまでハッキリ言われると……」


武内P「貴女は――今、恋をしていますね?」


愛菜「へあっ!?///」


武内P「貴女の笑顔は、多くのファンの方に向けられるものではありません」

武内P「……見た目だけでなく、中身で判断してくれる男性」

武内P「そんな……身近な方に向けられる想いが、見て取れますから」


愛菜「な、何ば言いよっとね!?///」

梓「しかも、変に鋭いんだよねぇ」

千紗「愛菜?」

愛菜「違うからね!?/// この人の、勘違いやけん!///」

584: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:57:51.97 ID:Hv/97SoSo
千紗「でも、それじゃあ……私?」

武内P「はい」

千紗「いや……遠慮しておきます」

武内P「……」


武内P「貴女は――ダイビングが、お好きですか?」


千紗「はあ……好きですけど」


武内P「もしも、アイドルになったならば」

武内P「海外での撮影の機会もあると思います」

武内P「……当然、ダイビングを楽しむ時間も」


千紗「……」…ピクッ!


武内P「貴女がアイドルになれば、機会が増えます」

武内P「そう……ダイビングの楽しさを広く伝える事が可能になります」


千紗「……」…ピクピクッ!

千紗「……アイドル」ボソッ!


愛菜「ああっ、チョロい!」

梓「あっはっは!」

585: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 00:14:25.03 ID:PISwuEuro
奈々華「――うふふっ♪ 何の話ですか?」ニコニコ!


千紗「っ!?」

愛菜「千紗、正気に戻った!?」

千紗「……正直、危なかった」


武内P「はい」

武内P「妹さん――千紗さんをスカウトしていました」


梓「ちーちゃん、見てな」

梓「奈々華のあしらい方、イントラの勉強にもなるんじゃない?」

千紗「! 確かに」


武内P「貴女と――奈々華さんと、千紗さん」

武内P「姉妹での、ユニットデビューが目標です」


奈々華「まあ、そうなんですね」ニコニコ!

奈々華「でも、そのお話――」


武内P「今よりも、二人の時間が増えます」


奈々華「――詳しく聞かせてください」キリッ!


千紗「!?」

愛菜「いやあれ、完全に乗り気になってますよね!?」

梓「……あらら」

586: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 00:21:53.75 ID:PISwuEuro
千紗「でもほら、お店が……!」

武内P「ダイビングのシーズン中はスケジュールを調整します」

奈々華「お父さんは、どうやって説得したら?」

武内P「……」


武内P「――笑顔です」

武内P「お二人の輝く笑顔ならば……」

武内P「……お父様も、きっと納得される事でしょう」


奈々華「……確かに」チラッ!

千紗「いや、乗り気になられても……!」


武内P「――奈々華さん、千紗さん」

武内P「一歩、踏み出してみませんか?」

武内P「そこにはきっと――新しい世界――の海――……が」

武内P「……広がっています」


奈々華・千紗「……!」


愛菜「言い方が意味深!」

愛菜「どうするんですか!? あのままほっといたら……!」

梓「……まあ、そろそろ――」

587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 00:25:50.01 ID:PISwuEuro

…ペチリ!


武内P「……?」


楓「……」


武内P「……高垣さん?」

楓「はい、高垣楓です」

武内P「何か、御用でしょうか……?」

楓「はい、御用です」

武内P「……」


武内P「……すみません、高垣さん」

武内P「今、奈々華さんと千紗さんをスカウトしていまして……」


楓「……」


…ペチリ!


武内P「? あ、あの……?」

588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 00:36:43.74 ID:PISwuEuro
  ・  ・  ・

伊織「――はっ!?」

耕平「気がついたか、伊織」

伊織「俺は……何故、床で寝ていたんだ?」

時田「何回か勝ちはしたんだがなぁ」

寿「惜しかったな、伊織」


伊織「? 何の話ですか?」


耕平「そんな事も覚えていないのか」

伊織「まあ、大した問題じゃないだろう」

時田「記憶が飛んでいるのに、よく言い切れるな」

寿「馬鹿と大物は紙一重とは、こういう事なんだろうな」

伊織「ん? あれは……」



楓「……」

ペチペチ!

武内P「あの……奈々華さんと千紗さんをスカウトしたいのですが」

楓「……」

ペチペチペチペチ!

武内P「待ってください、何故無言で……あの、高垣さん?」



伊織「――何故、アイドルの高垣楓が此処に!?」


耕平・時田・寿「伊織、お前……」

589: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 00:48:05.88 ID:PISwuEuro
  ・  ・  ・

翌日


奈々華「――また、遊びに来てくださいね!」

楓「ふふっ! 今度はダイビングも、ね♪」ニコッ!

千紗「……!」コクコクコクコク!

梓「ちーちゃん、首大丈夫なのそれ?」

愛菜「でも、一緒にダイビングするの……楽しみです!」


時田「帰りは、気をつけてくださいね」

寿「まあ、大丈夫だとは思いますが……」

武内P「ご心配、ありがとうございます」

武内P「昨日は、少し飲みすぎてしまいましたが……」

耕平「……いや、少しって量じゃなかったと思うが」

伊織「」あの、本当にもう大丈夫なんですか?」


武内P「はい」

武内P「特製のスタミナドリンクを飲みましたから」

武内P「これを飲めば、強制的に大丈夫になります」


伊織「おい、なんか怖い事言ってるぞ」

耕平「合法と非合法の間な代物のようだな」

590: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 00:57:50.89 ID:PISwuEuro
武内P「それでは高垣さん、行きましょうか」

楓「……」

武内P「あの……何故、何も仰らないのでしょうか……?」

楓「高垣さんは、お休み中です」

武内P「ええ、スケジュールもそうなって……」

楓「……」

スタスタスタ…


武内P「……待ってください!」


楓「……」

…ピタッ!


武内P「車が停めてあるのは、そちらでは……」


楓「……」

スタスタスタスタ!


武内P「高垣さん!? あの、何処へ!?」

武内P「……高垣さん!?」

591: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 01:08:25.90 ID:PISwuEuro
愛菜「……ねえ、もしかしてなんだけど」

千紗「どうしたの?」

愛菜「いや、あの二人って……」

奈々華「う~ん……どうなのかしら?」

梓「そもそも、奈々華はそういうの疎いでしょ」



楓「……!」

タッタッタッタッ…

武内P「……!」



伊織「……まあ、なんだ」

伊織「お互い、苦労してるんだろうなと思う二人だったな」

伊織「だから、その分だけ――」



楓「――ふふっ♪」…クスッ!

タッタッタッタッ…

武内P「……」…クスッ!



伊織「――楽しいのかも知れないな」




おわり

593: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 14:34:30.23 ID:PISwuEuro
書きます


武内P「ジャンケン、ですか」

594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 14:38:43.71 ID:PISwuEuro
早苗「そっ! 買い出しジャンケン!」

瑞樹「宅飲みで部屋を使わせてもらってるのに……流石だわ」

楓「ふふっ! でも、その方が面白そうですね」

武内P「いえ、私が行ってきますので……」

早苗「あっ、なんなら……野球拳にする~?」ニヤリ


友紀「えっ、何々!? 野球の話ー!?」ペカー!


一同「……」

595: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 14:41:27.18 ID:PISwuEuro
菜々「友紀ちゃん……えっと、違いますよ?」

友紀「えっ? でも……野球って言ってた」

心「野球拳って言ったんだぞ☆ 落ち着け☆」

友紀「んっ? でも……野球って言ったよ?」

早苗「いや……確かに、言ったけどさぁ」


友紀「だよねー!? やっぱり、野球の話だよね!」ペカー!


一同「……」

596: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 14:44:34.45 ID:PISwuEuro
楓「ふふっ! 友紀ちゃんは、本当に野球が好きなのね」

友紀「うん! 好きー!」ペカー!

美優「だから……や、野球拳って言葉にも反応しちゃったのね」

友紀「するするぅー! だって、野球でしょー!?」ペカー!

武内P「あの……では、行ってきますね」


友紀「ちょおっと待ったー!」

友紀「買い出しに行きたいなら……あたしと野球拳で勝負だよ!」ペカー!


一同「……」

一同「!?」

597: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 14:47:30.05 ID:PISwuEuro
早苗「友紀ちゃん、何言ってんの!?」

友紀「? 野球の話だよ?」

瑞樹「野球拳で勝負って言ったわ」

友紀「? だって、野球ってついてるよね?」

武内P「姫川さん……冗談、ですよね?」


友紀「あっはっは! やだなー、もー!」ペカー!

友紀「……そうやって、あたしを油断させようとしてるね?」ニヤリ!


一同「……!」

一同(この子……本気で言ってる!)

598: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 14:52:30.10 ID:PISwuEuro
菜々「だだっ、駄目ですよそんな事しちゃ!」

友紀「いやいや、だって野球拳って……野球でしょ?」

心「野球の名前を冠したジャンケンだぞ☆ 全然野球じゃないから!」

友紀「もしかして、皆……あたしが負けると思ってる?」

美優「いや、その……だって、ジャンケンだし」


友紀「……ふっ――」

ググッ…

友紀「!」

…ピタッ!

友紀「――ふうっ!」

ヒュンッ!


一同「……」

一同(何故……投球モーションを……?)

599: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 14:55:18.15 ID:PISwuEuro
早苗「友紀ちゃん……今の、何?」

友紀「……見たでしょ?」

瑞樹「そりゃ見るわ」

友紀「今のを見たんなら……わかるよね?」

一同「……?」


友紀「声援よろしくぅ!」ペカー!

友紀「――さあ、勝負!」キリッ!


一同「……!?」

600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 14:58:37.75 ID:PISwuEuro
早苗「まあ……今日の友紀ちゃん、割と重ね着してるし」

武内P「か、片桐さん?」

瑞樹「そうね……買い出し、早く行って欲しいわ」

武内P「か、川島さん!?」


一同「……プレイボール!」

友紀「しゃいしゃいー!」ペカー!


武内P「……わかり、ました」

武内P「では……三球勝負で、お願いします」

601: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:02:21.16 ID:PISwuEuro
菜々「あっ! 三回なら……セーフですね!」

心「考えたな☆ 考えざるを得なかっただけかな?」

美優「三回勝負なら、きちんと決着も着きますね」

武内P「ええ、それに……」


友紀「へっへっへ! オッケー、三球勝負ね!」ペカー!

友紀「良いね良いね、燃えてきたよー!」ペカー!


武内P「……収集が、つきそうにありませんから」

一同「……あはは」

602: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:07:10.79 ID:PISwuEuro
一同「――や~きゅ~う~す~ぅるなら~♪」


友紀「――今、あたしの魂が燃え上がる!」

武内P「……はあ」


一同「こういう具合にしやしゃんせ~♪」


友紀「――44ソニック・オン・スマ――イルッ!」ニッコリ!

武内P「!……良い、笑顔です」


一同「アウト♪ セーフ♪ ヨヨイノヨイ♪」


友紀「!」・武内P「……」

グー・パー


一同「……」


友紀・武内P「……」

603: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:11:03.97 ID:PISwuEuro
友紀「へへっ……やるじゃん?」

…パサッ!

友紀「今のあたしは、バッターに対する気持ちでグーを放った」

友紀「……だけど、それが間違いだったね」

友紀「そっちは、バッターじゃなく……キャッチャーの気持ちだった」

友紀「そりゃ、剛速球を投げてもパーに吸い込まれるよ」


友紀「……でも! もうタネはわかった!」カッ!

友紀「これからの二球は、掠らせもしないよー!」ペカー!


早苗「えっ? 毎回こんなコメント挟まるの?」

瑞樹「早苗ちゃん、面倒臭がっちゃ駄目よ」

一同「……」

604: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:13:58.46 ID:PISwuEuro
一同「――や~きゅ~う~す~ぅるなら~♪」


友紀「――あたしは目指す、アイドルの星を!」

武内P「……はあ」


一同「こういう具合にしやしゃんせ~♪」


友紀「――いくよ! シンデレラボール一号――ッ!」ニッコリ!

武内P「!……良い、笑顔です」


一同「アウト♪ セーフ♪ ヨヨイノヨイ♪」


友紀「!」・武内P「……」

グー・パー


一同「……」


友紀・武内P「……」

605: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:21:23.63 ID:PISwuEuro
友紀「いやいや……大したものだよ」

…パサッ!

友紀「よく、あの一瞬でシンデレラボールの弱点を見抜いたね」

友紀「シンデレラボールは……球質が、軽い」

友紀「アイドルは体重が軽いから、仕方ない所ではあるけどさ」

友紀「……まさか、あんなに簡単にスタンドまで運ばれるとはだよ」


友紀「……でも! 次の球は違うよ!」カッ!

友紀「次の一球で、そのバットを粉々にするからね!」ペカー!


菜々「ば、バットを粉々って……え、ええっ!?///」

心「おーい、パイセン!? 何考えてるんだ!?」

一同「……」

606: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:22:55.73 ID:PISwuEuro
一同「――や~きゅ~う~す~ぅるなら~♪」


友紀「――女の魂、充電完了!」

武内P「……はあ」


一同「こういう具合にしやしゃんせ~♪」


友紀「――おおおっ! 女球――ッ!」ニッコリ!

武内P「!……良い、笑顔です」


一同「アウト♪ セーフ♪ ヨヨイノヨイ♪」


友紀「!」・武内P「……」

グー・パー


一同「……」


友紀・武内P「……」

607: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:28:45.99 ID:PISwuEuro
友紀「あっはっは……やるじゃん!」

…パサッ!

友紀「魂と魂のぶつかり合いを制したのは……そっちだったね」

友紀「……でも、知ってる?」

友紀「あたしは、試合の最後まで諦めないんだよね」

友紀「そうじゃないとさ、申し訳ないじゃん?」


友紀「……応援してくれる、ファンの皆に!」カッ!

友紀「そして何より――野球が好きな、自分にね!」ペカー!


楓「えっと……靴下を発掘した……うふふっ!」

美優「脱いでた靴下を履かせて、続行させるんですか……?」

一同「……」

608: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:34:18.08 ID:PISwuEuro
  ・  ・  ・

友紀「……あたし、野球好きだからぁー!」

…パサッ!

友紀「野球ってついてるから、野球拳もいけると思ってぇー!」

友紀「でもー! 延長しても、ボッコボコでぇー!」

友紀「……ぐやじぐっでぇー!」ウルッ!

友紀「……!」

…ごしごし!


友紀「……うっし! 泣き言は、もうやめ!」キリッ!

友紀「へへへっ、ここからが本当の勝負だよ!」ペカー!


武内P「待ってください! あの、タイムで!」

武内P「次に負けたら、下着が……待ってください!」

609: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:43:25.50 ID:PISwuEuro
友紀「やああだああっ! 勝負するのおおっ!」ピー!

武内P「姫川さん、落ち着いてください!」


早苗「――ねえ、キミ……逃げるの?」

瑞樹「――あり得ないわ。勝負するべきよ」

菜々「――お願いします! ナナからも、お願いします!」

心「――はぁ、全く……やってやれって☆ やれよ☆」

美優「――それが、野球が好きな友紀ちゃんのためです」

楓「――ふふっ! じゃけん、ジャンケンしましょうね? うふふっ♪」


友紀「皆……!」ジーン…!


武内P「……ほ」

武内P「ほだされている……!」

610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:50:39.35 ID:PISwuEuro
友紀「あたし……今、皆の魂を背負ってる!」ペカー!

友紀「具体的には、ランナーが六人出てる状態ね」

友紀「ダイヤモンド二個分、オッケー!」

友紀「つまり……勝ったら、一気に七得点!」

友紀「逆転満々塁の、サヨナラホームランになる!」


友紀「さあ……正々堂々、勝負!」キリッ!

一同「ファイトー!」

友紀「声援、ありがとー!」ペカー!


武内P「待ってください!」

武内P「正々堂々とは、一体……!?」

611: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 15:59:50.45 ID:PISwuEuro
  ・  ・  ・

友紀「あっはっははは! あはっはははは!」ケラケラ!

…パサッ!

友紀「勝てねー! ホンット勝てないね、あっははは!」ケラケラ!

友紀「連敗連敗、大連ぱ――いっ!」ケラケラ!

友紀「下着が見えるからって、目隠しもしてもらってさー!」ケラケラ!

友紀「何? 何その打法? 座頭市打法? あっははは!」ケラケラ!


友紀「ちくしょう……チクショオオオオ!」

友紀「もう、脱ぐものが何も無いよおおっ!」

友紀「あたし……あたし、もうプレイが出来ないよおおおっ!!」


武内P「わ、わかりましたから!」

武内P「あの……服を着て頂けますか!?」

612: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 16:06:00.47 ID:PISwuEuro
早苗「諦めちゃ駄目よ、友紀ちゃん!」グスッ!

友紀「早苗さん……」

瑞樹「わかるわ。伝わった、野球への愛が」グスッ!

友紀「瑞樹さん……」

菜々「ナナも……ナナも、ひっぐ……えぐうっ!」グスグスッ!

心「こらこらー☆ 泣いたら……泣い、ひーん!」グスグスッ!

美優「ごめんなさい……もっと、応援出来てれば……ううっ!」グスグスッ!

友紀「皆……」


友紀「ごめん……ごめん、皆……!」ウルッ!

友紀「あたし……勝てなかった……!」ウルウルッ!


武内P「あの……目隠しをしていて、見えないのですが!」

武内P「一体、何がどんな状況になっているのですか……!?」

613: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 16:15:01.68 ID:PISwuEuro
楓「……友紀ちゃん」グスッ!

友紀「こんな滅多打ちにされたら、一軍にはいられ――」


友紀「――はっ!?」


友紀「……あった」

一同「……友紀ちゃん?」

友紀「あった! あったよ! あたしには、まだ残されてた!」


友紀「一軍に居続けるためには……」

友紀「……怪我があったら、駄目だよね!」

友紀「そう――毛が!」ペカー!


武内P「……」

武内P「冗談、ですよね?」

614: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/13(土) 16:32:24.33 ID:PISwuEuro
  ・  ・  ・

武内P「……」


早苗「これ、ちゃんとメモのやつ買ってきてね」

瑞樹「友紀ちゃんのためなの。お願いね」

楓「ふふっ! 結局、薬局にも行く事に、うふふっ!」

菜々「まさか、全く勝てないとは思わなかったですよねぇ……」

心「勝負は時の運って言うしな☆ そういう時もあるある☆」

美優「外は寒いので、暖かい格好をして行った方が良いですね」


カチャリ…ひょこっ!

友紀「お酒も、忘れずにねっ!」ニコッ!

…パタンッ


武内P「……試合に勝って、勝負に負けた、と」

武内P「しかし、当初買ってくる予定だった物とは……」


武内P「点数差が、凄いことになってしまいましたね」



おわり

624: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:05:21.55 ID:3eR6Ke4go
書きます


凛「プロデューサーが家に泊まる」

625: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:09:58.94 ID:3eR6Ke4go
未央『えっ、そうなの?』

凛「うん。なんか、そういう話になって」

未央『どういう流れでそうなったのさ?』

凛「ほら、ちょっと家の――花屋の人手が足りないから、って……」

未央『休日だから、プロデューサーが手伝ってくれたんだよね?』

凛「うん」


凛「良いから、って言ったのに」

凛「――いつも助けられていますから」

凛「……って」


未央『何々ー?』

未央『しぶりん、なんか声が嬉しそうじゃーん!』

626: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:14:17.54 ID:3eR6Ke4go
凛「別に、そんなんじゃないから」

未央『はいはい! それで?』

凛「せっかくだから、夕食も一緒にー、ってなって……」

未央『しぶりんと、しぶりんパパママと……プロデューサーの?』

凛「うん、四人で」


凛「それで、プロデューサーとお父さんが盛り上がっちゃって……」

凛「ねえ、男同士で話すのってそんなに楽しいの?」

凛「途中から、私とお母さんが置いてきぼりだったんだけど」


未央『そんなもんだよ? 多分』

627: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:18:33.69 ID:3eR6Ke4go
凛「まあ、そんな感じで……かなりお酒飲んで」

未央『パパリンはプロデューサーを気に入ったんだね!』

凛「ぱ、パパリン?」

未央『ままま、それは置いといて!』

凛「……お母さんも、仕方ないわねぇって感じで笑っててさ」


凛「お父さんが――良かったら泊まっていってください」

凛「まだまだ話したりませんし、飲みたりませんから」

凛「……って、今も下で飲んでる」


未央『うわー……何の話してるんだろうねぇ』

628: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:22:56.48 ID:3eR6Ke4go
凛「とりあえず、客間にお布団敷いて寝るみたい」

未央『しぶりんのベッドで寝れば良いじゃん』

凛「良い訳ないでしょ」

未央『あっはは! そりゃそうか!』

凛「……もう」


凛「っと、もうこんな時間」

凛「あんまり喋ってるとハナコが眠れないし、切るね」

凛「――それじゃ、おやすみ」


未央『はいはーい、おやすみん!』

未央『ああっ、遂にしぶりんが大人の階段を登るのね!』


凛「ちょっと、未央!」

629: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:24:51.95 ID:3eR6Ke4go
  ・  ・  ・

凛「……」

…ごろん

凛「……」

…ごろんっ

凛「……」パチッ


凛「……全然、眠れない」


凛「……」

凛「……何なの?」

630: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:28:05.58 ID:3eR6Ke4go
凛「……」

凛(プロデューサー……もう、寝てるかな)

凛(……っていうか、何なの?)

凛(私のプロデューサーでしょ?)

凛(せっかくの機会なのに、お父さんとばっかり話して……)


凛(……ちょっと待って)


凛(‘せっかくの機会’って、何?)


凛「……」

…ごろんっ

631: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:30:47.02 ID:3eR6Ke4go
凛「……」

凛(今日のお礼も、ちゃんと言えなかったし……)

凛(いや……それは良いのかな?)

凛(――家での働きぶりも今後の参考になります)

凛(……なんて言ってたから)


凛「……」

…むくっ


凛(……一応)

凛(一応、お礼だけは……言っておこうかな)

632: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:35:48.73 ID:3eR6Ke4go
凛「……」

凛(いや、でも……この格好はどうなんだろ)

凛(シャツにハーパン……って、どうなの?)

凛(確か、卯月が見せたのってパジャマで……)

凛(……ピンクで、可愛いやつだったよね)


凛「……」


凛(それに比べて……って思われるのって、なんか癪)

凛(だけど、着替えるのも何だし……とりあえず、保留)

633: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:39:09.07 ID:3eR6Ke4go
凛「……」

凛「っ……///」

凛(……いや! いや、何考えてるの!?)

凛(未央が変な事言うから! あり得ないから!)

凛(そんなの、絶対に無い!)


凛「……」


凛(……っていうのも、何かモヤッとする)

凛(なんだか……そう、プライドの問題っていうか)

634: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:44:00.31 ID:3eR6Ke4go
凛「……」

…ごそごそっ

凛(うわっ……そうだった)

凛(白やピンク、せめて青とかなら……)

凛(……グレーって、ちょっと)


凛「……」


凛(全然! 全然、関係ないんだけど!)

凛(万が一! そう! 万が一の場合を考えてだから!)

635: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:47:49.89 ID:3eR6Ke4go
凛「……どうしよ」

凛(着替える?)

凛(いや、でも……)

凛(気合を入れた格好をするのも……変だよね)

凛(ダサいとか、子供っぽいと思われるのも……何か、イヤ)


凛「……」


凛(出来るだけ、自然で……)

凛(それでいて、大人っぽい寝る前の格好って……)

636: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:53:37.79 ID:3eR6Ke4go
  ・  ・  ・

客間・前


凛「……」

凛「――へくちっ!」

凛「うぅ……寒っ……」

凛(でも……これなら、大丈夫かな)


凛「うん」


凛(全裸だったら、自然だし大人っぽいと思う)


凛「……」


凛(…………ぜ)

凛(全然大丈夫じゃない! 駄目でしょ!? あり得なくない!?)

637: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 20:57:53.39 ID:3eR6Ke4go
凛「……!」

凛(何で!? どうしてこうなったの!)

凛(確かに、服装について触れられる事は無いけど!)

凛(は……早く!)

凛(早く、部屋に戻らないと――)


トン、トン、トン、トン――


凛「!?」


凛(誰か、下から上がってくる!?)

凛(ちょっと待って! ねえ、嘘でしょ!?)

638: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:00:51.24 ID:3eR6Ke4go
  ・  ・  ・

客間・中


凛「……!……!」


トタトタトタトタ…


凛「……!」

凛(気付かれなかった……よね!?)

凛(全裸で部屋の間に居たの、バレなかったよね!?)


凛「っ――!?」


武内P「……zzz」スヤァ…


凛「……!」ホッ…!

凛(良かった……寝てた……良かった……!)

639: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:05:59.62 ID:3eR6Ke4go
凛「……」

凛(咄嗟に中に入る時、電気が点いてなかったから……)

凛(だから、大丈夫だと思ったけど……本当に良かった……!)

凛(バレたら、絶対大変な事になってから……!)


武内P「……zzz」スヤァ…


凛「……」

凛(何だろ……この、何て言うか……)

凛(私が、これだけ焦ったのに、ぐっすり寝てるなんて……)

凛(……なんか、ちょっとモヤッとする)

640: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:10:31.07 ID:3eR6Ke4go
武内P「……zzz」スヤァ…


凛「……」

凛(……でも、今日は疲れたんだろうな)

凛(慣れない仕事を手伝ってくれて……それも、嫌な顔をせず)

凛(――重たいものは、自分が)

凛(なんて……私だって、時々やってる仕事なんだから)


武内P「……zzz」スヤァ…


凛「……」

凛(――ありがとう、プロデューサー)

凛(今日は、お疲れ様)


凛「――へくちっ!」

641: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:12:57.21 ID:3eR6Ke4go
凛「っ!?」

凛(まず――)


武内P「……zzz」スヤァ…


凛「……」

凛(――く、無かった)

凛(なんか……全然起きそうにない)


武内P「……zzz」スヤァ…


凛「……」

凛「…………」

642: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:16:01.90 ID:3eR6Ke4go
  ・  ・  ・

武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」

武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」


凛(――いや! これはさすがにまずいでしょ!)

凛(一緒の布団に入るなんて……それも、私裸だから!)

凛(無い! 有り得ない! この状況は何なの!?)


武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」


凛(……あったかい)

643: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:20:31.82 ID:3eR6Ke4go
武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」

…もぞもぞっ

武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」


凛(――ちょっと! 何考えてるの!?)

凛(どうせだったら腕枕……って、はあっ!?)

凛(プロデューサーが起きなかったから助かったけど!)


武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」


凛(……まあ、悪くないかな)

644: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:26:33.56 ID:3eR6Ke4go
武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」

…ぎゅっ

武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」


凛(――違うから! 別に、そんなんじゃないから!)

凛(くっついてないと、寒いから! そう、あったかい抱き枕!)

凛(しょうがないでしょ!? 私、何も着てないんだから!)


武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」


凛(……ふーん)

645: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:30:29.01 ID:3eR6Ke4go
武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」

ぎゅっ

武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」

すりすり…


武内P「……zzz」スヤァ…


凛「……」

凛(これは……朝まで起きそうになさそう)


武内P「……zzz」スヤァ…

凛「……」


凛「……zzz」スヤァ…

646: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:38:50.12 ID:3eR6Ke4go
  ・  ・  ・

翌日


未央「……ん? あれは……」

未央「ふっふっふ! 早速からかってあげますかー!」

タッタッタッタッ!


未央「おっはよー! しーぶりんっ!」


凛「未央?」キラキラッ!


未央「うおおおっ!? 何その輝き!?」


凛「ふふっ、輝き?」キラキラッ!

凛「どうしたの急にそんな事言いだして」キラキラッ!


未央「……!?」

647: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:44:54.74 ID:3eR6Ke4go
未央「えっ、しぶりん!? まさか……マジで!?」

凛「何が?」キラキラッ!

未央「大人の階段登る君はまだシンデレラさ!?」

凛「ちょっと、何言ってるの」キラキラッ!


未央「ねえ……昨日、何があったの!?」

未央「正直に言ってよ! ここだけの話! ねっ!?」

未央「プロデューサー、何してくれてんの!?」


凛「プロデューサー、ずっと寝てたよ」キラキラッ!


未央「……へっ? そうなの?」

648: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/14(日) 21:55:06.96 ID:3eR6Ke4go
  ・  ・  ・

武内P「――はい。特にこれと言って……何も無かったかと」

未央「……本当に?」

武内P「はい」

未央「……どうやら、嘘はついてないみたいだけど」


凛「ね? だから言ったでしょ?」キラキラッ!


未央「……あれ、どうして?」

武内P「さあ……私にも、わかりません」


凛「ふふっ! アンタ、私のプロデューサーでしょ?」キラキラッ!

凛「ちゃんと見ててよね」キラキラッ!


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「ですが……そう、ですね」

武内P「ハッキリと思い出せないのですが……今朝方――」



武内P「心臓が止まるような思いをした気がします」




おわり

655: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/15(月) 22:50:00.82 ID:LWtsUkSMo

「……」


 ――時は金なり、と言うだろう?


「……」


 そう言って笑った、今西部長の顔が思い出されました。
 部長は、プロジェクトクローネの活動もしばしば見に来るのです。
 美城常務が、美城専務になって……忙しくなったから、でしょうか。
 皆はそう言っているのですが、私は、どうも違う気がしています。


「……」


 膝の上に乗せた本の読んでいるページに指を挟み、そのまま本を閉じました。
 そして、美しい装丁のカバーだけをめくり、
そこに挟まっていた紙――紙幣をペラリと持ち上げて、眺めました。
 紙幣と言っても、日本円や、外国の紙幣ではありません。


「……」


 それは、部長が言うには……ジョークグッズ。
 片面には、プロダクションの外観が印刷され、
その逆の面には……紙幣らしく、人の顔が印刷されているのです。
 その人とは――シンデレラプロジェクトの、プロデューサーさん。


「……」


 この紙幣の事を……あの人は、知っているのでしょうか。
 いえ、もし知っていたとしても、
いつもの様に、右手を首筋にやって……困った顔をするのかも知れません。
 美波さんが言うのは、見た目と違って……本当に、怒らない方らしいので。


「……」


 失くしてしまった、栞の代わりに。
 そう言って渡されたのですが……少し、勿体無いという気がします。
 あまり詳しくは無いのですが、こういった物を作るのは手間がかかると思いますから。
 けれど、渡された理由を考えたら……栞として使うのが、正解なのでしょうね。


「……」


 折り曲がらないように、ゆっくりと。
 指を挟んでいたページの間に、紙幣を挟んで本を閉じました。
 もう、読むのは三回目の本なので、正確なページを把握する必要はありません。
 しかし、だからこそ、栞を挟んでどこまで読んだかをわかるようにしておくのが、
正しい本への向き合い方なのではないかと……。


「……」


 オータムフェスで、私が倒れてしまった時……。
 あの人は、途切れそうだった物語を繋ぎ、その先へと続けてくれました。
 そう考えると、あの人が描かれた紙幣を栞にするというのは、
私にとって、何か、特別な事のように……不思議と、感じられます。


「……」


 壁にかけられた時計を見ると、レッスンの時間が近づいていました。
 時は金なり……では、ありませんが、急がないと。
 慌てて行動すると、失敗をしてしまいますから。

656: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/15(月) 23:25:26.66 ID:LWtsUkSMo
  ・  ・  ・

「……」


 更衣室へ向かうため、エレベーターの前で待ちます。
 待っている間、ほんの少しだけ……手持ち無沙汰でしたので。
 持っていた本をめくり、挟まっていた紙幣を眺めました。
 1000P……というのは、この紙幣の通貨単位が、Pという事でしょうか……?


「……」


 それにしても……本当に、凝った作りになっています。
 流石に、ぼかしは入っていませんでしたが……それでも、よく出来ています。
 一体、どの様な状況で使う、ジョークグッズなのでしょうか。
 考えてみても、当然答えは出る筈も無く……すぐ、その思考を振り払いました。


「……」


 何故ならば、エレベーターの到着を告げる音が響いたからです。
 考え事をして乗り過ごした、等という失敗は……流石に、したくはありませんから。。
 開いていく、エレベーターのドア。
 そして、



「――おはよう、ございます」



 目が合って、かけられた低い声。


「っ!?」


 驚き、咄嗟に手に持っていた本を胸に抱き寄せました。
 もし、万が一……この本を取り落としてしまったら。
 そして、その拍子に挟んでいた紙幣が飛び出し、この人の目に留まってしまったら。
 私は、頭の中がその考えで満たされてしまい、
乗り込む筈だったエレベーターへと、歩を進める事を忘れてしまっていたのです。


「……あの」


 そんな私へと、再び低い声がかけられました。
 しかし、その声は先程よりもどこか控えめ……いえ、気遣っている様に感じました。
 本を胸に抱きながら、エレベーターの中に居るプロデューサーさんに、目を向けます。


「……あっ」


 開ボタンを押しながらなので、見えない右手。
 でなければ、あの右手はきっと首筋に添えられていたでしょう。
 ……そう思ったのには、理由があります。


「……」


 この人は――エレベーターを降りようとしている様に見えたからです。
 自分の容姿が、私を怖がらせていると……そう考えさせてしまった。


「っ……!」


 ――そんな事、無いのに。

657: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/15(月) 23:57:12.88 ID:LWtsUkSMo

「……どうぞ」


 思っていた通り、プロデューサーさんはエレベーターから降り、
右手だけを中に残して、開ボタンを押し続けています。
 ……こんな時に、なんと声をかければ良いのでしょうか。
 人と話すのも、目を合わせるのも苦手だというのが、
今回程問題だと思った事は有りません……。


「……!」


 ……けれど、せめて。
 せめて、誤解だけは解いておかなくてはいけない、
という思いが私の体を突き動かしました。


「――えっ?」


 本を左手で胸に抱き、


「……!」


 残った右手を前に出し、


「……!」


 プロデューサーさんの左腕を押したのです。
 半身になっていたので、左の肩越しに視線を向けられているのを感じます。
 当然、私は顔を上げられませんでした。
 本当に、合わせる顔が無かったからです。


「……!」


 それでも、プロデューサーさんはまるで動きませんでいた。
 戸惑っているでしょうが、そもそも体格がまるで違いますから。
 本の移動で重い物を持つのに慣れてはいますが、それとこれとは訳が違います。
 けれど、


「……」


 ほんの小さな……聞き逃してしまいそうだった、微かな空気の音。
 その音が何だったのか、私にはわかりませんでした。
 わかりませんでしたが、プロデューサーさんは、


「はい」


 と、一言だけ言って、エレベーターの中へと戻って行きました。
 それを見て安堵し、ホッと胸を撫で下ろしました。
 しかし、そのまま立ち尽くすばかりで居たら、先程の繰り返しになってしまいます。
 それは……避けなければいけません。


「……おはようございます」


 同じページを繰り返さないように。
 最初に言うべきだった言葉と共に、一歩前へと踏み出しました。


 

658: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 00:56:55.72 ID:hWdd6UE9o
  ・  ・  ・

「あの、それでは……」


 私の目的の階に、エレベーターが止まりました。
 ゆっくりと開いていくドアを視界の端に捉えながら、前髪の隙間から目を向けます。
 その視線は、今の私に出来うる限りの……途切れがちな、真っ直ぐなものです。


「はい。レッスン、頑張ってください」


 プロデューサーさんは……右手で開ボタンを押しながら、言いました。
 ほんの少し……人から見れば、他愛のない日常会話。
 けれど、私にとってはそうではない……前へと進んだと、実感出来る会話。
 その成果の一つが、こうやって激励の言葉をかけて頂けたという事です。


「――ありがとうございます」


 すれ違いざま……だったからでしょうか。
 本当に、自然と言葉が出て、目を合わせる事が出来たのです。
 ……しかし、何か失敗をしてしまったのかも知れません。
 少し、驚いたような表情を……されてしまいましたから。



「……良い、笑顔です」



 ……そんな私の考えは、閉じかけたドアの隙間から聞こえてきた低い声に、
完全に否定されてしまいました。
 私は、自ら出した答えが間違っていると言われ、下を向きました。
 ……この顔の熱さは、一体、どんな感情によるものなのでしょうか。
 そう思い、ふと顔を上げて視界の端に写ったのは、


「……えっ?」


 先程までとは、真逆の方向へと向かっていくのを示す、
エレベーターの現在位置を知らせるランプの光。


「えっ……?」


 果たして、その光は――私がエレベーターに乗った階で、止まりました。
 ……それが示す意味。
 そして、私がとった行動を思い返すと、
踏み出した一歩は大きかったのかも知れませんが……大きすぎた事に、気付きました。


「っ……!」


 呆然とする私の両手から、本が滑り落ちていきました。
 動揺をそのままに、しゃがんで本へと手を伸ばします。
 ページに折れは……良かった、無い。
 ああ、でも……次に会った時、なんと言えば……?


「……えっ?」


 本の状態を確認していたら、気付きました。
 挟んでいた筈の、あの紙幣が消えていた事に。
 今以外に落とすような場面はありませんでしたし、
周囲を探してみても……見つかりませんでした。



 思えば、あの紙幣が全てのきっかけだった様な気がします。
 良い事もあったにせよ、高くつきすぎでは無いでしょうか……。


おわり

662: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 21:52:51.00 ID:hWdd6UE9o
書きます


武内P「デート、ですか?」

663: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 21:57:07.00 ID:hWdd6UE9o
美嘉「次の曲のイメージが、そうなんだよねー」

武内P「成る程」

美嘉「それで、デートに関してイロイロ聞いてるってワケ★」

武内P「しかし、私の考えが参考になるでしょうか?」

美嘉「それは、聞いてみないとわかんないっしょ★」


莉嘉・みりあ「えっ? デートのお誘いじゃないの?」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「えっ?」

664: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 21:59:15.81 ID:hWdd6UE9o
美嘉「ちょっ、ちょっと!?/// 何言ってんの!?///」

莉嘉「えー? 聞くより、実際にデートした方が早くない?」

武内P「ですが、アイドルがデートと言うのは……」

みりあ「えー!? なんでなんで!?」


莉嘉・みりあ「デートくらい、良いんじゃないの?」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「えっ?」

665: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:01:31.98 ID:hWdd6UE9o
美嘉「いっ、良いワケ無いでしょ!?///」

莉嘉「でも、その方がイメージが掴めるよね?」

武内P「しかし、城ヶ崎さん自身のイメージが……」

みりあ「えー!? なんでなんで!?」


莉嘉・みりあ「カリスマJKアイドルだよ?」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「えっ?」

666: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:04:18.55 ID:hWdd6UE9o
美嘉「だ、だから……な、何?」

莉嘉「ギャル系だしー、オトナのデートとかアリでしょ☆」

武内P「確かに、そうかもしれませんが……」

みりあ「えー!? なんでなんで!?」


莉嘉・みりあ「なんで、デートしちゃいけないの?」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「えっ?」

667: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:08:36.96 ID:hWdd6UE9o
美嘉「そ、それは……さっきから言ってるでしょ!」

莉嘉「えー!? アタシ、全然わかんないよー!」

武内P「私は、彼女の担当ではありませんし……」

みりあ「えー!? なんでなんで!?」


莉嘉・みりあ「もしかして、嫌なの?」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「えっ?」

668: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:11:08.52 ID:hWdd6UE9o
美嘉「い、イヤとか……そういう問題じゃなくて!」

莉嘉「じゃあ、お姉ちゃんはデートしてもイイってコトだよね?」

武内P「嫌、というのとは……違う話と言いますか」

みりあ「えー!? なんでなんで!?」


莉嘉・みりあ「もしかして、好きなの?」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「えっ?」

669: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:16:39.57 ID:hWdd6UE9o
美嘉「そっ、そんなワケないじゃん!?///」

莉嘉「じゃあ、デートしてもヘーキでしょ☆」

武内P「いえ……平気ではありません」

みりあ「えー!? なんでなんで!?」


莉嘉「あくまでも、お仕事のためのデートでしょ?」

莉嘉「好きだったらヤバいカモだけどぉ~……年齢的にも?」


美嘉「いや、まあ……確かにそうだけど」


みりあ「ファンの人のためになるんだから、デートするべきだよ!」

みりあ「……あっ! プロデューサー、●●●な事考えたの……?///」


武内P「い、いえっ! そんな事は、決して!」

670: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:20:17.01 ID:hWdd6UE9o
莉嘉「ゼッタイ、デートした方がイイやつじゃん☆」

美嘉「えっ!? そ、そうなの……かな?」

みりあ「うんうん! プライベートじゃなく、ビジネスだよっ!」

武内P「ですが、誤解される場合も……」


莉嘉・みりあ「じゃあ、お家デートで良いんじゃない?」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「えっ?」

671: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:27:18.64 ID:hWdd6UE9o
莉嘉「誰にも見られなきゃ、誤解されないもんね☆」

美嘉「いっ……言ってるコトは、わかるケド!///」

みりあ「ねえねえ、他に何か問題ってあるかな?」

武内P「その……家への出入りの瞬間を捉えられる可能性も」


莉嘉「お父さんとお母さん、GWはラブラブ旅行行くんだよね」

莉嘉「だから、お家デートの場所は城ヶ崎家でオッケー☆」


武内P「な……成る程」


みりあ「出入りも、莉嘉ちゃんとみりあが一緒だから大丈夫~!」

みりあ「メンバーの家庭訪問って、アリバイ工作も出来るよ♪」


美嘉「ま……待って待って!?」

美嘉「なんか、ズンドコ話が進んでってるんだケド!?」

672: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:33:58.07 ID:hWdd6UE9o
武内P「で、ですがそういった状況でお邪魔するというのも……!」

莉嘉「Pくん」

武内P「な、何でしょうか?」


莉嘉「――アイドルの姉妹……それも、カリスマでチョー可愛い☆」

莉嘉「そんなアタシ達が、二人っきりで過ごすんだよ?」

莉嘉「……それって、ちょっとヤバくない?」

莉嘉「もしも何かあった時……どうするの?」

莉嘉「……Pくんは、守ってくれないの?」


武内P「っ……!?」

673: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:39:50.78 ID:hWdd6UE9o
美嘉「いや……二泊三日だし、そんな……」

みりあ「美嘉ちゃん」

美嘉「な、何?」


みりあ「別に、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」

みりあ「二人っきりじゃなく、莉嘉ちゃんもみりあも居るよ」

みりあ「だから、安心して家デートして良いんだよ」

みりあ「平気だよ、みりあを信じて? ねっ?」

みりあ「信じてくれるよね? ねえ、美嘉ちゃん……」


美嘉「っ……!?」

674: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:43:33.88 ID:hWdd6UE9o
莉嘉「ファンの人達のため、そして、アイドルのため」

武内P「……!」

みりあ「絶対、ゼーったいデートするべきなんだよ」

美嘉「……!」


莉嘉・みりあ「デートしないのは、逆に裏切りだよ!」


武内P・美嘉「!?」

武内P・美嘉「……!?」

675: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:48:53.01 ID:hWdd6UE9o
美嘉「あ、アタシが……ファンを裏切る……!?」

莉嘉「ギャルなら、デート位ヨユーでしないと!」

武内P「あ、アイドルのため……!?」

みりあ「うんうん! キラキラした……笑顔のためだよ!」


莉嘉・みりあ「お泊まり会――」

莉嘉・みりあ「……」

莉嘉・みりあ「――デート、するべきだよ!」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「えっ?」

676: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:52:10.21 ID:hWdd6UE9o
美嘉「ん? んっ? ちょっと待って……何て?」

莉嘉「デート、するべきだよ!」

武内P「あの……お泊まり会、とは?」

みりあ「お泊まり会は、皆でお泊りする会だよ?」


武内P・美嘉「……」


莉嘉・みりあ「……」


一同「……」

677: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 22:56:39.78 ID:hWdd6UE9o
美嘉「アンタ達……アタシをダシに使おうとしたね?」

莉嘉「……かっこいいシールが手に入ったから、つい」

武内P「城ヶ崎さんの家でお泊まり会、と……そう言う事ですか?」

みりあ「……えへへ、プロデューサーも居たら楽しいだろうなぁ、って」


莉嘉・みりあ「ダメ……?」


武内P・美嘉「……」

武内P・美嘉「はぁ……」

678: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 23:01:57.99 ID:hWdd6UE9o
美嘉「……もー! そういうコトなら正直に言いな!」

莉嘉「ゴメーン! どうやって誘おうか迷っててー!」

武内P「では、デートの話は……冗談だったのですね」

みりあ「えへへ! 二人共、ごめんね♪」


莉嘉・みりあ「お泊まり会、しよっ?」

莉嘉「チョーカッコイイシールあるから! 見せたげる!」

みりあ「あのねあのね、皆で晩ごはん作ったりしたいなー!」


武内P・美嘉「……」

679: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 23:06:24.42 ID:hWdd6UE9o
美嘉「……どうする? アタシは、別に良いと思うケド?」

武内P「城ヶ崎さん……?」

美嘉「それに、お泊まり会したら……デートの話も聞けるっしょ★」

武内P「……ええ、そうですね」


莉嘉・みりあ「~~っ!」パアッ!

莉嘉・みりあ「わーい! お泊まり会だー!」ニコニコ!


美嘉「ふふっ! そんなに喜ぶコト?」クスッ!

武内P「……良い、笑顔です」

680: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 23:10:49.03 ID:hWdd6UE9o
  ・  ・  ・

武内P「――と、言う訳で」

武内P「城ヶ崎さんの家で、お泊まり会をする事になりました」


ちひろ「騙されてますよプロデューサーさ――んっ!?」


武内P「えっ?」

武内P「騙されている……誰がですか?」


ちひろ「プロデューサーさんがですよ!」

ちひろ「それに、美嘉ちゃんもコロッと騙されてます!」

681: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 23:15:22.19 ID:hWdd6UE9o
ちひろ「ちゃっかり、お泊りの約束をしてますよ!?」

武内P「ですが、ただのお泊まり会なので……」

ちひろ「女の子しか居ない所に泊まるんですよ!?」

武内P「? はい」


武内P「眠くなるまで、お話や……ゲームをしよう、と」

武内P「……そう、言われました」


ちひろ「~~っ!?」

ちひろ「プロデューサーさん、ちょっと楽しみにしてませんか!?」

682: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 23:21:56.39 ID:hWdd6UE9o
ちひろ「最初に無理難題を出して、次に本命の話をする……!」

武内P「交渉術、ですね」

ちひろ「それに、まんまとやられちゃってますよ!?」

武内P「私が、ですか?」


武内P「…………」

武内P「……」


武内P「!?」


ちひろ「……気付いて貰えましたか」

683: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 23:25:19.71 ID:hWdd6UE9o
武内P「ど、どうすれば……良いのでしょうか……!?」

ちひろ「兎に角、謝ってキャンセルするしかありませんよ」

武内P「……!」

ちひろ「あの……どうかしたんですか?」


武内P「……いえ」

武内P「お泊まり会をしたい、という言葉を……」

武内P「……他にも、何件か頂いていて……はい」


ちひろ「……」

ちひろ「えっ?」

684: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 23:28:34.46 ID:hWdd6UE9o
ちひろ「あの……まさか」

武内P「……すみません」

ちひろ「……」

武内P「せ……千川さん?」


ちひろ「……今回の件は、とても難しい問題です」

ちひろ「それに、早急に対策を考えないといけません」

ちひろ「……良いですね?」


武内P「は……はい」

武内P「その……ご迷惑をおかけして、すみません……」

685: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/16(火) 23:34:14.87 ID:hWdd6UE9o
ちひろ「もうっ、本当にアイドルの子に甘いんですから!」

武内P「……返す言葉もありません」

ちひろ「とにかく、話し合いましょう」

武内P「はい……お手数をおかけします」


ちひろ「そうですね……」

ちひろ「外に漏れるとまずい話なので……」

ちひろ「今日の仕事が終わったら――」

ちひろ「――私の家で、緊急対策会議をしましょう」


武内P「千川さん……!」

武内P「……ありがとう、ございます」ペコリ!


ちひろ「……良いんですよ、プロデューサーさん」


ちひろ「本当に……気にしないでください♪」ニコッ!




おわり

691: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 21:48:16.84 ID:M9m6cHObo
書きます


武内P「忍として成長したい、ですか」

692: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 21:51:15.19 ID:M9m6cHObo
あやめ「いかにも! そのためにお力をお借りしたく、ニンッ!」

武内P「あの……何故、私に?」

あやめ「ははは、またまたご冗談を!」

武内P「えっ?」


あやめ「忍とは、闇に生き……闇に死す定め」

あやめ「つまり――闇について、よく知る必要があるという事!」

あやめ「そこで、貴方の担当アイドルが闇を抱えていると聞いt」


武内P「待ってください」

693: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 21:54:24.42 ID:M9m6cHObo
あやめ「? どうしましたか?」

武内P「私の担当アイドルの方は、闇を抱えていはいません」

あやめ「ニンとッ!?」

武内P「ですから、お力にはなれないと思います」


あやめ「手に入れた情報に、誤りが……?」

あやめ「情報によれば――幸せの四葉の君」

あやめ「その方が、闇を抱えていると聞いt」


武内P「待ってください」

694: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 21:57:24.88 ID:M9m6cHObo
あやめ「? どうしましたか?」

武内P「その情報は、どこから?」

あやめ「! では、やはり……!」

武内P「浜口さん、お答えいただけますか?」


あやめ「ふっ、それは言えません!」

あやめ「たとえ、どんな責め苦を受けようとも、決して!」

あやめ「……はっ!?/// まさか、いやらs」


武内P「待ってください」

695: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:01:38.79 ID:M9m6cHObo
あやめ「……兎に角、情報は確かなようですね!」

武内P「……他言無用で、お願いします」

あやめ「御意! お力をお貸し頂く訳ですからね!」

武内P「……わかり、ました」


あやめ「――それでは、早速!」

あやめ「幸せの四葉の君に、お話を伺いたく思います!」

あやめ「その方は、一体いずこに?」


武内P「待ってください」

696: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:07:37.59 ID:M9m6cHObo
あやめ「? どうしましたか?」

武内P「その闇は、気軽に触れていいものではありません」

あやめ「覚悟は、決めて参りました!」

武内P「……」


あやめ「何よりも――同じ事務所に所属する忍同士!」

あやめ「――あやめは、アイドルとして!」

あやめ「――幸せの四葉の君の抱える闇は……アイドルを守る者として!」

あやめ「分かり合えない道理が、ありましょうか!?」


武内P「……」

武内P「待ってください?」

697: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:10:11.45 ID:M9m6cHObo
あやめ「? どうしましたか?」

武内P「緒方さ……幸せの四葉の君が抱える、闇」

あやめ「えっ? 今、名前を……」

武内P「彼女が抱える闇とは、お抱えの忍という意味ではありません」


あやめ「に、ニンとっ!?」

あやめ「ならば……闇とは、一体!?」


武内P「それは、その……」

武内P「……」

武内P「プライベートな話ですから……はい」

698: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:14:02.59 ID:M9m6cHObo
あやめ「話すことは出来ない、と?」

武内P「はい」

あやめ「そう……ですか」

武内P「すみません」


あやめ「――フッ!」


ヒュッ――


武内P「吹き矢!?」

武内P「――プロデュース・二指真空把!」


パシッ! ヒュッ――


――プスッ!

あやめ「あうっ!?」

699: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:19:24.47 ID:M9m6cHObo
武内P「あの……何故、突然吹き矢を?」

あやめ「素直に喋るようになる秘伝の薬が塗ってあるからです。はっ!?」

武内P「……だと、思いました」

あやめ「くっ……こちらの手を利用するとは、中々の手練!」


あやめ「このままでは、闇を学んでより忍として成長し!」

あやめ「忍ドルとして、プロデューサー殿に認めていただき!」

あやめ「胸に秘めたる恋を叶えるためのうおおおおおっ!?///」


武内P「……」

武内P「成る程」

700: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:27:10.29 ID:M9m6cHObo
あやめ「うふぃー!? 効果が抜群すぎます!」

武内P「……良い、機会です」

あやめ「き、汚い! 忍者を利用するなんて、汚い!」

武内P「担当プロデューサーに、恋をされているのですか?」


あやめ「ちゅき! いっぱいちゅき!」

あやめ「……いやあの、お慕いしていると言いますか!?///」

あやめ「恋と憧れの合体忍術でニャンニャンニンニンうふぃいいいい!?///」


武内P「……」

武内P「成る程」

701: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:35:28.22 ID:M9m6cHObo
武内P「……今回の件は、担当Pに報告させて頂きます」

あやめ「お、おおっ、お待ちください!///」ブンブン!

ババババババ!

武内P「……あの、その手の動きは?」


あやめ「後生です! 何卒、プロデューサー殿には!」

…巳、未、申、亥、午、寅ァ!

あやめ「――火遁・豪火球の術!」

ゴォウッ!


武内P「!? 熱い!」

武内P「あの……あの、今何を!?」

702: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:43:38.26 ID:M9m6cHObo
あやめ「チャクラを練って印を結び、術を発動させました」

武内P「そんな、サラリと言われましても!?」

あやめ「あやめ的には、これは忍者ではなく……NINJAなので、はい」

武内P「そ、そう……ですか」


あやめ「――お願いします! 何卒!」

あやめ「あやめは、恋に関しては今だ未熟!」

あやめ「――いつの間にか、傍に居なくてはならない存在になるまで!」

あやめ「どうか! お見逃しください!」


武内P「…………」

武内P「……」


武内P「ええ、勿論です」

703: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:50:42.83 ID:M9m6cHObo
武内P「ですが……約束して、頂けますか?」

あやめ「約束?」

武内P「貴女の担当プロデューサーへの想いは、口外しませんので……」

あやめ「……これ以上、幸せの四葉の君の詮索はするな、と?」


あやめ「……承知しました」

あやめ「しかし、あやめは忍としての修練は怠りませんよ!」

あやめ「――他にも、仁奈ちゃんが闇を抱えているらしいので!」

あやめ「仁奈ちゃんに話を聞きます、ニンニン!」


武内P「待ってください!」

704: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 22:58:15.83 ID:M9m6cHObo
あやめ「? どうしましたか?」

武内P「浜口さんは……忍らしい、忍ですね」

あやめ「えっ!? わたくし、忍らしいですか!?」パアッ!

武内P「はい」


武内P「こう……天井裏に潜んで、ですね」

武内P「槍で、一突きにされるタイプの……そんな忍です」


あやめ「わあっ! 呻き声だけで、姿が見えないやつですね!」

あやめ「……」

あやめ「何故!?」

705: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 23:05:09.82 ID:M9m6cHObo
武内P「兎に角……市原さんに聞くのも、やめておきましょう」

あやめ「えっ!? 何故ですか!?」

武内P「それは、その……ですね……!」

あやめ「教えてください! 何故、駄目なんですか!?」


武内P「あの……りゅ――」

武内P「――……流派、が」

武内P「浜口さんとは……流派が違うからです」


あやめ「……」


武内P「……!」

706: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 23:08:32.04 ID:M9m6cHObo
あやめ「流派が、違う?」

武内P「え、ええ……そういった感じです」

あやめ「……成る程」

武内P「……!」


あやめ「――それならば、致し方ありませんね!」

あやめ「忍法とは、本来ならば門外不出!」

あやめ「同じ城に潜むとは言え、手の内は全て晒せませんから!」


武内P「……!」

武内P「はい! おわかり頂けて、良かったです!」

707: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 23:16:25.30 ID:M9m6cHObo
あやめ「それならそうと、言って頂ければ!」

武内P「え、ええ……そうですね」

あやめ「しかし……それでは、成長のきっかけが……」

武内P「っ……!」


武内P「は……浜口さんは、大丈夫です!」

武内P「名匠の鍛え上げた刀剣の放つ、美しい輝き――」

武内P「――それにも似た、担当プロデューサーへの恋」

武内P「その、刀の様に美しい恋を……心に忍ばせています」

武内P「……それは、忍として」

武内P「いえ、くノ一として必要なものを既に持ち合わせている、と」

武内P「……そう、思います」


あやめ「……え」

あやめ「えー?///」

708: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 23:21:13.28 ID:M9m6cHObo
あやめ「本当に、そう思いますか?///」

武内P「はい」

あやめ「……」スッ…

武内P「吹き矢は、やめてください」


武内P「ですが、注意してください」

武内P「先程、浜口さんが仰っていた様に……」

武内P「――忍ならば、手の内は全て晒してはいけません」


あやめ「! この恋心がプロデューサー殿に知られたら……」

あやめ「……」

あやめ「あっ、考えただけで恥ずかしいので、無しで!///」

709: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/17(水) 23:35:11.68 ID:M9m6cHObo
あやめ「恋心を胸に秘め……機が熟すのを待つ、ですね?」

武内P「はい、そういう事になります」

あやめ「ニンニン! あやめ、精進します!」ニコッ!

武内P「……良い、笑顔です」


あやめ「プロデューサー殿の食事に仕込んでいる、恋の秘薬!」

あやめ「それが効果を発揮するまで……」

あやめ「わたくし、忍ドルとして、成長していきます!」


武内P「……秘薬?」


あやめ「はい! 恋は――戀!」

あやめ「糸繰りの術を用いて言質を取ります、ニンッ!」


武内P「忍とは言え、手段は選んでください!」



おわり

720: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/18(木) 22:39:07.50 ID:HgJr7bveo

「……!」


 唇を噛み締め震えながら歩く彼女に、今は寄り添う事しか出来なかった。
 彼女は、屋外でのLIVE終了後に……腹痛を訴えた。
 同ユニット内のメンバーの方の、露出多め、という言葉。
 彼女もそれに賛成し、ヘソ出しの衣装に身を包み、お腹を冷やしてしまったのだ。


「……頑張ってください」


 ゆっくりと歩く、小さな姿。
 LIVEの時、ステージの上で見せた天真爛漫な笑顔は見る影もない。
 爽やかさとは程遠い、額に浮かんだ脂汗。
 苦痛が、まだ幼い彼女を苦しめているのが、わかる。


「うんっ……!」


 私の言葉に反応し、彼女はこちらを見て……微笑んだ。


「っ……!」


 踏みしめられた花が、それでも太陽へと向けて咲く様な。
 暗い闇が支配するトンネルの先には、必ず光が待つと信じているかの様な。
 そんな……良い、笑顔。
 思わず締め付けられた胸の痛みに耐え、力強く頷く。


「……!」


 スタッフ用の仮設トイレまでは、あともう少し。
 そう、ほんの10メートル程度で……視界には、映っている。
 駆け足になれば、すぐにでも届き得る距離だ。
 だが、その駆け足という行為が……最速の行動こそが、最悪の結果を生んでしまうのだ。


「もう、少しですから……!」


 それ程までに、彼女の腹……いや、お腹には限界が来ていた。
 確認はしていないが、この痛がり方から察するに、
LIVEの最中から既に彼女は痛みを感じていたのかも知れない。



「えへへ……頑張る……!」



 しかし、ファンの方の笑顔のため。
 アイドルとして、最高のパフォーマンスだけを魅せるため。
 彼女は、笑顔の力――パワー・オブ・スマイルでもって、
痛みを忘れ去り、置き去りにしていたのだろう。


「……!」


 その代償が、今の彼女の状態だ。
 当然、私に何か出来ることはないかと問うてみた。
 しかし、返ってきたのは、首を横に振る動作。


 ――えへへ……安心したら、出ちゃうよ。


「頑張ってください……!」


 そう言われ、慌てて彼女から離れた時、思った。
 私に触れられると安心して頂ける事を喜べば良いのか、
爆破スイッチのような扱いをされて寂しく思えば良いのか、どちらだろう……と。

723: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/18(木) 23:08:04.66 ID:HgJr7bveo

「もう……ちょっと……!」


 目尻に涙を浮かべながら、
一歩と呼ぶには短すぎる距離を靴を地面に擦りながらの移動。
 足が接地する時の衝撃すら、彼女にとっては拷問なのだろう。
 見事なすり足……此処が、武道館です。


「はい……もう、少しです……!」


 まだ、幼い。
 まだ、子供。


「……!」


 ……彼女の事をそう考えていたのだが、改めなくてはならない。


「もう……ちょっと、ぉ……!」


 履いているのはガラスの靴ではなく、動物のぬいぐるみがあしらえてあるポップなスニーカー。
 纏っている衣装はドレスではなく、カラフルなヘソ出しのステージ衣装。


「はぁ……っ、はぁ……!」


 だが、彼女は紛れもなく――シンデレラだ。
 諦めず、自分の足でここまで辿り着いた事に、私は感動すら覚えていた。


「っ……!」


 ――どうぞ、ビニール袋です。


 ――お姉ちゃんなんだから、ちゃんとトイレでする。


 そんな、仮設テント内での会話が思い起こされ、不意に涙がこみ上げてきた。
 私は、慌てて眉間に力を込め、意志の力でそれを断ち切った。
 彼女が、泣き言すら言わずに居るのに、担当プロデューサーの私が涙すべきではない。
 輝く笑顔のお姫様に相応しいのは、涙ではないのだ。


「ついたぁ……!」


 小さな手が、仮設トイレのドアにかかった――



 ――……が、



「あ、今出まーす★」



 待ち受けていたのは、あまりにも無慈悲な現実だった。


「……」


 はい……今、出ました。


「……」


 彼女の顔からは全ての感情が消え去り……ただ、無が存在していた。

725: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/18(木) 23:36:53.97 ID:HgJr7bveo
  ・  ・  ・

「……」


 ――女の子がトイレ使うのに、近くに居るとか有り得ない!


「……」


 そう言われて、私は今、仮設トイレから少し離れた位置に居る。
 彼女からしてみれば、当然の言葉だったのは、わかる。
 しかし、あの時の状況を考えれば、
平時と同じ対応をする事が正しいとは言えなかった。
 だが、


「……」


 ――えへへ、心配してついてきてくれたんだよね?


「……」


 彼女は、そう言って……笑ったのだ。
 手を後ろで組み、上半身を前に倒し、上目遣いで。
 傍から見れば、とても可愛らしい仕草だろう。
 しかし、悲しい真実は……そうではないのだ。


 後ろで組んでいるように見える両手は、尻を必死に抑えている。


 上半身は倒したのではなく、直立するのすら困難なだけ。


 上目遣いな瞳の奥にあるのは――……優しさ。


「……」


 漏らしてしまった事を悟られまい、と。
 気付かれてしまっては絶対に駄目だ、と。
 崩れ落ちそうになる城壁を必死に支え、守ろうとしたのだ。
 だから、私は……大人しく、あの場を離れるしかなかった。


「……」


 あの仮設トイレの中で、何が起きているのだろう。
 その……大をしている、というのはわかってはいます……はい。
 汚れてしまっただろう下着や、数々の問題。
 そして、あのドアが開いた時に……何と、声をかけるべきなのか。


「……」


 スーツの右ポケットに手を入れ、中に入っていたビニール袋をクシャリと潰す。
 その時――


「っ!」


 ――仮設トイレのドアが、開いた。
 中から顔を覗かせた彼女は、少し辺りを見回し……私の姿を捉えると、


「えっ?」


 ちょいちょい、と。
 近くに来るよう、手招きしてみせた。

726: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 00:10:33.83 ID:+K3HxB/9o
  ・  ・  ・

「……ごめんね、プロデューサー」


 申し訳なさそうに、眉をハの字にして彼女は謝ってきた。


「いえ、謝る必要はありません」


 しゃがみこんで、目線の高さを合わせて。
 彼女の目を真っ直ぐに見据え、言う。


「でも……」


 いつも元気いっぱいの彼女の顔が、曇っている。
 理由は恐らく、私の左手が掴んでいるビニール袋の中身のせいだろう。
 しかし、なればこそ、その雲は晴らさなくてはならない。
 私の心は今、彼女という太陽のおかげで、青く澄み渡っているのだから。


「私は、貴女のプロデューサーですから」


 私は、あまり感情が顔に出る方ではない。
 だが、今の私は、自然と微笑んでいる事だろう。
 私の想いが伝わって欲しい、と……そう、思います。


「……えへへ」


 照れくさそうな、こそばゆそうな……そんな、笑顔。
 彼女の輝きを封じ込めていた分厚い雲は、少しは晴れた様だ。
 ……本当に、良かった。



「――ありがと、プロデューサー」



 不意に回された、彼女の両腕。
 右の首筋に触れた感触は、恐らく顔だが……一体、どの部分だろうか。
 そして、私がそれに反応する暇もなく、彼女は離れ、


「えへへっ♪」


 とても……良い、笑顔を見せてくれた。
 その笑顔のまま、彼女は元気よく、仲間の待つ場所へと戻っていった。


「……」


 ――お腹が痛くなってしまうかも知れないから。
 ――妹がオムツを着けている感じを知るために買っていたから。


 万が一の場合に備えて……彼女は――オムツを履いていたのだ!


 子供と言うのは、いつの間にか成長しているものだ。
 あの歳でオムツを履くのを成長とするかは、この際置いておこう。
 ですが、彼女は……その……立派です、間違いなく。


 ……この先も、私の行く道には困難が待ち受けているかも知れない。
 しかし、時には奇跡が起きる事も有ると知れただけで、頑張れます。





おわり

735: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 21:53:36.66 ID:+K3HxB/9o
>>730
書きます


武内P「魔法を使えるのは、皆さんです」

736: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 21:58:03.46 ID:+K3HxB/9o
卯月「それって……笑顔の魔法、ですか?」

武内P「はい」

卯月「ふふっ! 笑顔だけは、自信があります♪」ニコッ!

武内P「……良い、笑顔です」

凛「笑顔の魔法、ねぇ……」


武内P「勿論、他にもありますが……」

武内P「その使用は、こちらで制限させて頂いています」


凛・卯月「……」

凛・卯月「えっ?」

737: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:02:56.16 ID:+K3HxB/9o
卯月「あのー……冗談、ですよね?」

武内P「冗談?」

凛「待って。ねえ、本気で言ってるの?」

武内P「はい」


武内P「丁度、総選挙の時期なのでお話しておきますが……」

武内P「第三回、そして、第五回シンデレラガールのお二人」

武内P「渋谷さんと島村さんは、笑顔以外の魔法も使えます」


凛・卯月「……」

凛・卯月「はいっ!?」

738: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:07:12.42 ID:+K3HxB/9o
卯月「えっと、それって……他の皆もですか?」

武内P「ええ、勿論」

凛「ちょっと! テキトーな事言ってるでしょ?」

武内P「えっ?」


武内P「十時さんがいくら服を脱いでも、大事に至らない……」

武内P「……その光景を何度か目撃しています、よね?」


凛・卯月「……」

凛・卯月「あれ、魔法!?」

739: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:10:01.56 ID:+K3HxB/9o
卯月「じゃ、じゃあ! 蘭子ちゃんの魔法は!?」

武内P「お二人同様、制限させて頂いています」

凛「じゃあ、クローネの周子も使えるって事!?」

武内P「はい。担当外なので、詳細はわかりませんが」


武内P「……あの」

武内P「そこまで、驚くような事でしょうか?」


卯月「驚きますよ!?」

凛「これに驚かなかったら、何に驚けば良いの!?」

740: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:14:06.82 ID:+K3HxB/9o
卯月「あわわ……ど、どうしましょう凛ちゃん!?」

凛「どう、って聞かれても……!?」

武内P「心配しなくても、大丈夫です」

凛・卯月「どこが!?」


武内P「私が、貴女達の担当プロデューサーでいる限り」

武内P「せめて、高校を卒業するまでは……」

武内P「……魔法の使用制限を解除するつもりは、ありませんから」ニコリ


凛・卯月「笑顔……」…ホワッ

卯月「……って、そんなに優しく微笑まれても!」

凛「ねえ! こっちとしては、安心出来ないんだけど!?」

741: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:19:51.05 ID:+K3HxB/9o
凛「そもそも、私の使える魔法って何!?」

武内P「いえ、それは……」

凛「ちゃんと説明して! でなきゃ、笑顔になんてなれない!」

武内P「っ!?……わかりました」


武内P「渋谷さんの魔法は――」

武内P「――敵の技を何らかの方法で覚え、自ら使用出来る様になる」

武内P「――所謂、青魔法と系統が似た魔法で……」


卯月「ええっ!? 凛ちゃん、そんな凄い魔法が使えるんですか!?」


凛「凄いとか凄くないとか、そういう問題じゃないから!」

凛「そもそも、敵って何!? 意味がわからないんだけど!?」

742: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:24:55.63 ID:+K3HxB/9o
武内P「いえ、あくまでも似た系統の魔法です」

凛「だから何なの!?」

武内P「渋谷さん、安心して下さい」

凛「……何に?」


武内P「渋谷さんが使える魔法――蒼魔法は」

武内P「敵ではなく……仲間から覚える、と」

武内P「……そういった違いがあります」


卯月「えっと……仲間と同じ事が出来るようになる、って事ですか?」

凛「あれ……なんか、そんなに特別な魔法じゃない……よね?」

743: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:29:39.39 ID:+K3HxB/9o
卯月「えっ? そうですか?」

凛「うん。ほら、そういうのって普段もやってるでしょ」

卯月「普段って……あっ、そういう事ですか!」

凛「うん」


凛「仲間の良い所を見て、それを覚える」

凛「歌だったり、ダンスだったり……笑顔だったり」

凛「……ふふっ、そういう事でしょ?」ニコッ!


武内P「いえ、違います」


凛「ふざけないでよ! 今の私の笑顔、返して!」

卯月「いっ、良い笑顔でした! 一刀両断でしたけど、良い笑顔でしたよ!?」

744: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:33:09.81 ID:+K3HxB/9o
凛「じゃあ、蒼魔法って何なの!?」

武内P「その……青魔法は、主に特技を覚えます」

卯月「特技……歌とか、ダンスとかですか?」

武内P「ええ、そうなりますね」


武内P「ですが――蒼魔法は、違います」

武内P「蒼魔法がラーニング出来るのは――」

武内P「――主に、趣味です」


凛「……ふーん」

凛「馬鹿にしてるでしょ!? ねえ、ちょっと!」

卯月「凛ちゃん、落ち着いて下さい! 凛ちゃん!」

745: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:39:44.68 ID:+K3HxB/9o
凛「何なのその魔法!? むしろ、魔法なの!?」

武内P「ええ、とても強力な魔法です」

卯月「その……趣味を共有する、みたいな感じですか?」

武内P「はい、その通りです」


武内P「……渋谷さん、大丈夫です」

武内P「絶対に、蒼魔法の制限は……はい」

武内P「――私を信じて下さい」


凛「…………」

卯月「り、凛ちゃん? 何か言って下さい、怖いですから!」

746: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:43:26.99 ID:+K3HxB/9o
凛「……信じられない」

武内P「えっ?」

凛「蒼魔法なんて、信じないから!」

武内P「っ!? 待ってください!」


武内P「蒼魔法を信じないというのは、自分を信じない事と同じです!」

武内P「それでは……笑顔が!」

武内P「笑顔の魔法までも、力を失ってしまいます!」


凛「だって、しょうがないでしょ!?」

凛「魔法が使えると思ったら……趣味を覚えるだけなんて!」

凛「そんな魔法なんかじゃ、笑顔になんてなれない!」


卯月「あれっ!? 凛ちゃん!?」

卯月「怒ってた理由って、それですか!?」

748: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:47:35.39 ID:+K3HxB/9o
武内P「し、しかし……本当に強力で……!」

凛「っ!」ギロッ!

武内P「っ!?」ビクッ!

凛「……解除して」

武内P「えっ?」


凛「そんなに言うんだったら、蒼魔法の制限を解除して!」

凛「アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」

凛「ちゃんと見てれば、少しの間なら平気じゃないの!?」


武内P「っ……!?」


卯月「プロデューサーさんっ!」

卯月「ちょっと気になるので……私からも、お願いします!」


武内P「渋谷さん、島村さん……」

武内P「……わかり、ました」

749: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:52:38.51 ID:+K3HxB/9o
武内P「ですが、制限無しの蒼魔法は……まだ、早いと思います」

武内P「なので、危険だと判断した場合……すぐに、制限を戻します」

凛「……わかってる」


凛「――信じてるから、プロデューサーを」


武内P「渋谷さん……」

武内P「……心の準備は、よろしいですか?」


凛「……うん」


卯月「凛ちゃん、頑張って下さい!」ワクワク!


武内P「……制限――解除」

750: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 22:55:25.93 ID:+K3HxB/9o
凛「……別に、特に変わった感じはしないかな」

…ひょいっ

卯月「あれ? 鞄を持って……何処へ行くんですか?」

凛「どこって……そんなの、決まってるでしょ?」


凛「――プロデューサーの、机の下」

凛「じゃないと、没頭出来ないから」


卯月「何言ってるんですか凛ちゃん!?」

武内P「これは……まだ、危険が無い方の趣味ですね」

卯月「どこがですか!?」

751: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:02:18.47 ID:+K3HxB/9o
凛「それじゃ、ちょっと中に入れさせて貰うよ」

…もぞもぞっ


卯月「机の下って言う事は……仲が良いから、乃々ちゃん?」

卯月「そこで、ポエム作りを――じゃなくって!」

卯月「行動が、おかしくなってませんか!?」


武内P「ええ、それはある程度想定していました」

武内P「渋谷さんの年齢は、趣味に熱中しがちですから……」

武内P「加えて、とりあえず色々と手を出してみる場合も」

武内P「……なので、まだ早いと判断していたのです」


凛「……ふーん、これがプロデューサーの机の下、ね」

凛「まあ、悪くないかな」

752: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:07:02.00 ID:+K3HxB/9o
凛「確か、鞄に……」

…ごそごそっ


卯月「多分、ノートを取り出そうとしてる……んですよね」

武内P「いえ、それはまだわかりません」

卯月「えっ? でも、ポエムをノートに書くのが……」

武内P「それは、森久保さんの趣味の場合です」

卯月「へっ? だけど、机の下に入るのなんて……」


凛「――あった」ニコッ!

凛「キノコの山」


卯月「!?」

武内P「星輝子さん、ですね」

753: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:11:07.00 ID:+K3HxB/9o
卯月「えっと、趣味は確か……キノコ栽培?」

武内P「はい、そうですね」

卯月「でも、あれ……キノコの山ですよね?」

武内P「栽培出来るキノコはありませんし、渋谷さんはチョコレートが好きですから……」


凛「……箱を開けて準備良し、と」

凛「ふふっ! それじゃあ行くよ――」

凛「――蒼い風が、駆け抜けるように!」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

卯月「このまま見守るんですか!?」

754: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:13:56.23 ID:+K3HxB/9o
武内P「まだ、危険ではありませんから」

卯月「確かに、そうかも知れませんけど……」


凛「……ふっ! はっ!」

カチッ! カチッ!


卯月「あの……あれ、何してるんですか?」

武内P「ご存知ありませんか?」


凛「……ふーん」

…ピタッ!

凛「これは、楽しめそうだね」


武内P「キノコフェンシングです」

卯月「どうして知ってると思ったんですか!?」

755: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:19:10.89 ID:+K3HxB/9o
卯月「キノコフェンシングって、何なんですか!?」

武内P「キノコ同士で戦いごっこをし、勝敗を決する遊びです」

卯月「狂気しか感じませんよ!」

武内P「! 見て下さい、決着が着きました――」


凛「……それじゃ、始めようか」クスッ!

凛「仕方ないよね、負けた方がメスキノコになるってルールだし」

凛「……暴れたら、承知しないから」ニコッ!

凛「チョコ……レー……トォ――ッ!」


卯月「制限! 早く、制限を戻してあげて下さい!」

武内P「えっ? しかし、いい笑顔で……」

卯月「良いから、早く! 私が笑顔になれなくなっちゃいますから!」

756: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:26:46.87 ID:+K3HxB/9o
武内P「!? 島村さんが、笑顔になれなく……!?」

卯月「そうです! だから!」

武内P「……わかりました」

卯月「お願いします!」


凛「ふーん、チョコとは裏腹に、正直なビスケットだね」

凛「でも、いつまでも我慢出来るものじゃないでしょ」

カチッ! カチッ!

凛「一歩、踏み出してみれば」

凛「そこにはきっと、新しい世界が広がってるから――!」

カチッ! カチッ!


武内P「島村さんの笑顔は、私を助けてくれました」

武内P「貴女の、その輝く様な笑顔を……もう二度と失いたk」

卯月「早く――っ! 早あああ――くっ!」

757: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:36:27.61 ID:+K3HxB/9o
  ・  ・  ・

武内P「――私が制限をかけていた理由が……わかって頂けましたか?」

卯月「……はい、よくわかりました」

武内P「島村さん、わかっていただけて幸いです」

卯月「……」

武内P「……渋谷さん」


武内P「貴女の蒼魔法が、とても強力だとわか」


凛「――話しかけないでって言ってるでしょ!?」


武内P「……」

卯月「まだ、その……机の下で、そっとしておいてあげて下さい」

758: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:41:32.08 ID:+K3HxB/9o
武内P「もう少し、成長すれば……」

武内P「他の方の趣味に、あそこまで影響されなくなるでしょう」

卯月「よ……良かったです!」

武内P「そう、ですね……」


武内P「……自分が、あまり興味の無いものでも」

武内P「適度に、他の方の趣味も楽しめるようになり――」

武内P「――お互い、とても楽しい時間が送れる」

武内P「……そんな魔法の使い方が出来るようになる、と」

武内P「……そう、思います」


卯月「すっ……素敵ですね!」


凛「……もう、変にフォローしなくて良いから……!」

759: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:44:13.19 ID:+K3HxB/9o
武内P「そう、ですね……良い機会なのかも知れません」

卯月「へっ?」

武内P「島村さんも、試しに制限を解除してみますか?」

卯月「えっ!?」


凛「――卯月」

凛「私達……友達でしょ?」


卯月「……」

卯月「ええっ!?」

760: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:49:58.19 ID:+K3HxB/9o
卯月「わっ、私は大丈夫です! やめておきます!」

凛「卯月」ニコッ!

卯月「え、笑顔の魔法ですね!」ニコッ!

凛「卯月?」ニコッ!

卯月「はいっ! 島村卯月、笑顔の魔法を頑張ります!」ニコッ!


武内P「島村さんの魔法は……はい、普通ですね」

武内P「特に、驚きは無いでしょうが……」

武内P「……どう、されますか?」


凛・卯月「……」

凛・卯月「普通って、何!?」

761: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/19(金) 23:54:23.65 ID:+K3HxB/9o
卯月「私、普通に魔法が使えるんですか!?」

凛「納得いかない! どうして!?」

卯月「凛ちゃん!?」

武内P「島村さん、どうされますか?」


武内P「島村さんが使えるのは――恋の魔法ですが」


卯月「制限を解除してください」

凛「ずるくない!? ねえ、この差は何なの!?」

762: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 00:04:42.07 ID:aArvLcoCo
卯月「ち、ちなみに! どんな感じなんでしょうか!?」

武内P「そう、ですね……」


武内P「誰とでも仲良く……それこそ、異性ともです」

武内P「そして、笑顔の魔法と併せて――」

武内P「――あれ? この子は自分が好きなんじゃないか?」

武内P「……と、そう相手に思わせる」

武内P「――そんな魔法ですね」ニコリ


卯月「…………」

凛「その……卯月、なんかごめん」


武内P「試しに、魔法の制限を解除してみますか?」


卯月「…………」


武内P「……沈黙、ですか?」




おわり

772: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:09:32.72 ID:aArvLcoCo
書きます


武内P「お嫁さんにしたい有名人アワード、ですか?」

773: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:14:38.24 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! アイドル部門の一位を目指しますよー!」

大人組「シンデレラガール総選挙は……?」

武内P「確かに、前回のシンデレラガールに選ばれましたが……」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「シンデレラガールになっても――」

菜々「――結婚できる訳ではないんです」


大人組「……」

大人組「!?」

ざわっ…!

武内P「いえ、あの……それはそうだと思いますが」

774: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:17:23.95 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! 皆さんは、そう思ってませんでしたよね?」

大人組「……!」

武内P「えっ? 皆さんは……結婚出来る、と?」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「シンデレラガールになると――」

菜々「――むしろ、結婚から遠のきます」


大人組「……」

大人組「!!?」

ざわっ…!

武内P「み、皆さん……あの、表情が強張り過ぎでは……!?」

775: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:23:09.21 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! 意外でしたかー?」

大人組「……!」

武内P「シンデレラガールは、そういったものでは……」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「これからも、ずっと――」

菜々「――アイドルとして輝く姿を見ていきたい」

菜々「……ですって!」ヤレヤレ!


大人組「……」

しんっ……

武内P「それは……担当プロデューサーの言葉ですか?」

776: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:26:52.51 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! すっごく嬉しかったです!」

大人組「……」…コクリ

武内P「そ、そう……ですよ、ね……?」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「いぃつぅまでぇええええええっ!?」

菜々「今まで! 一緒に! 頑張ってきて!」

菜々「やっと! シンデレラガールに! なって!」

菜々「いぃつぅまでぇええええええっ!?」


大人組「……!」

…ごくりっ!

武内P「あ、安部さん!? 落ち着いて下さい、安部さん!?」

777: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:32:29.59 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! なーんちゃって、冗談ですよ~♪」ニコッ!

大人組「……!」ホッ!

武内P「い、い……良い、演技です……!」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「……中学時代、仲が良かった友達」

菜々「今度……子供が幼稚園に入るんですって」


心「ノースウィーティー! ノースウィーティー!」

大人組「……!」ガタガタ…!

武内P「えっ!? い、良い話では!?」

778: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:39:24.12 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! シンデレラガールは、大忙しです♪」ニコッ!

大人組「……!」…ゴクリ!

武内P「え、ええ……メディアへの露出も増え、新曲もありますから」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「シンデレラは、魔法がかかってお城に行って……」

菜々「……魔法が解けても、王子様が迎えに来てくれるんです」

菜々「一方、シンデレラガールはぁ~?」

菜々「仕事が忙しくなってぇ、ビジホに一人で泊まったしまぁ~す!」ドヤー!


大人組「……」

大人組「……!」ギロッ!

武内P「な、何故私が睨まれているのですか!?」

779: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:47:10.23 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! ナナは17歳なので、まだ平気ですけどね!」ニコッ!

大人組「……」

武内P「……そう、ですね」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「憧れていたお姫様――シンデレラは……」

菜々「優雅な暮らしじゃなく、馬車馬の様に働いてたんですねぇ」

菜々「――あっ! これお伽噺じゃなく、ナナの話でしたー!」

菜々「第七代目シンデレラガールの、ナナの話でしたー! いえーい!」ビシッ!


大人組「……」ズーン…

武内P「み、皆さん? あの……え、笑顔です」

781: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 21:53:49.03 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! ほらほら、笑顔ですよ笑顔ー!」ニコッ!

大人組「……」

武内P「そ、その通りです!」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「笑う門には、福来たる」

菜々「……まあ、今のこの感じは、正直言うとですね?」

菜々「なんかもうおかしくて笑っちゃいますよ、プークスクス!」ケラケラ!


大人組「……」ズーン…

大人組「……ぐすっ!」ウルッ!

武内P「っ!?」

782: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 22:00:29.93 ID:aArvLcoCo
武内P「――た、高垣さん!」

楓「はい?」

武内P「高垣さんからも、何かおっしゃって下さい!」

楓「私が、ですか?」パチクリ!


楓「ええ、と……今は、仕事が恋人のようなものですし」

楓「だから、ファンの人と一緒に階段を登っていきたいんです」

楓「一緒に――笑顔で!」ニコッ!


大人組「……!」パアッ!

武内P「……良い、笑顔です……!」

783: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 22:09:34.42 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! とっても良いお話ですね~!」

大人組「っ……!」

武内P「皆さん! 頑張って、耐えて下さい!」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「階段を登って、登って、登り続けて……」

菜々「……いつまでも、階段は終わらないんです」

菜々「屋上に着くと思うでしょう? 着かないんです」

菜々「見えるのは、そう……窓から見える青空だけ……」


大人組「……」ズーン…

楓「窓から外は見える……窓際族?」

武内P「高垣さんは、お酒を楽しんでいてください」

784: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 22:16:53.37 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! だ・れ・に・し・よ・う・か・な~♪」

大人組「!?」

武内P「あの、その指差しは……何が目的なのですか!?」

菜々「ピピッ、ウサミン星からアドバイスを受信しましたよー♪」


早苗「セクシー・チェ――ンジッ!」

早苗「――セクシー・チェンジとは!」

早苗「あたしがピンチに陥った時、美優ちゃんに代わって貰う必殺技!」


美優「え゙っ!?」


菜々「了解しました! チェンジオッケーでーす!」


美優「ええっ!?」

武内P「三船さん……頑張って下さい!」

785: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 22:27:08.63 ID:aArvLcoCo
菜々「担当プロデューサーさんと、仲が良いですね?」

美優「えっ!? ええ、と……はい」

菜々「キャハッ! ぶっちゃけ、良い感じですよね?」

美優「ええっ!?/// その……は、はい///」


菜々「……今の、その想い」

菜々「大人になってからの、少女時代にも感じた甘酸っぱい感情」

菜々「……しっかり胸にしまって、大事にしてくださいね」フッ…


美優「しまわないといけないんですか!?」


大人組「……!」ゴクリ…!

武内P「もう……もう、この話はやめませんか!?」

786: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 22:34:43.17 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! だ・れ・に・し・よ・う・か・な~♪」

大人組「!!?」

武内P「待ってください! これ以上の犠牲者は!」

菜々「ピピッ、ウサミン星からアドバイスを受信しましたよー♪」


瑞樹「わからないわ」

瑞樹「いやもう、本当にわからないわ……ええ、わからない」

瑞樹「わかる?」


心「えっ?」


菜々「チュクシュイーン! AH~♪ 全速力で♪」


心「うっそだろ!? マジ!?」

武内P「……笑顔です!」

787: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 22:46:53.82 ID:aArvLcoCo
菜々「担当プロデューサーさんに、グイグイいってますね?」

心「う……うっす☆ はぁとは、いつでもスウィーティー☆」

菜々「キャハッ! ナナ達、魔法少女ですもんね♪」

心「そうだぞ☆ 菜々パイセン、ネガんなネガんなー☆……やめて?」


菜々「これからも、一緒に頑張りましょうねっ!」ニコッ!


心「……!」

心「モチのロンだってー☆ はぁと達は、みんなのアイドル☆」

心「でもでも、責任を取ってくれる人は決まってるぞ☆」


菜々「これからも、一緒に頑張りましょうねっ!」ニコッ!


心「……こらこらー☆」

心「その台詞さっきも聞いたぞ……こらこらー☆」


一同「……」

788: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 22:56:06.33 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! シンデレラガールって、ゴール感があるんです!」

大人組「……」

武内P「は、はい! なので、そこへ向かって……!」

菜々「ピピッ、ウサミン電波を送信ーっ♪」


菜々「でも、ゴールしても終わりじゃないんです」

菜々「頑張って、登って……辿り着いて」

菜々「ゴールした後にも、カチカチ回し続けるんですよ」

菜々「……職業アイドルの、人生ゲームって」


大人組「……」

大人組「……」ジッ…

武内P「そ、そんな目で見られましても……!?」

790: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 23:04:40.08 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ! だから、お嫁さんにしたい有名人アワードです!」

大人組「……!」

菜々「そこでぇ! アイドル部門でぇ! 一位を取ってぇ!」

大人組「……!」ウンウン!


菜々「さすがに! さぁっすがに、結婚を意識して貰ってぇ!」


大人組「はい!」


菜々「さーて、ここでクエスチョン!」

菜々「どうしたら良いんでしょうね!」

菜々「わっかんないです! ナナ、もーお手上げですよ!」


大人組「……」

武内P「……」

791: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 23:16:20.17 ID:aArvLcoCo
菜々「キャハッ!……わかりますか?」

大人組「……」

武内P「えっ!?」

菜々「ピピッ、ウサミン星から電波を送信ーっ♪」


菜々「シンデレラガールには、なりました」

菜々「でも、お嫁さんには……なれる気がしないんですよ」

菜々「……むしろ、シンデレラガールになってから」

菜々「担当のプロデューサーさん、他の子の方を気にかけるように……」


大人組「……」


武内P「……」

792: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 23:23:50.30 ID:aArvLcoCo
武内P「それは……信頼です」

菜々「信頼?」

武内P「はい」

菜々「本当ですか? 放置少女と間違えてませんか?」


武内P「……それまで、一緒に歩いてきた道のり」

武内P「時に躓き、挫けそうになっても……頑張ってきた」

武内P「その経験を共有しているからこそ、信頼しているのです」

武内P「そう……『ガールズ・イン・ザ・フロンティア』の歌詞にもあります」


武内P「自分の足で歩けシンデレラ、と」


菜々「蘭子ちゃん、凛ちゃん、卯月ちゃんに伝えて良いですか?」


武内P「土下座で許して頂けますか?」

793: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 23:31:09.61 ID:aArvLcoCo
  ・  ・  ・

ちひろ「――プロデューサーさん」

武内P「……」

ちひろ「あの、プロデューサーさん」

武内P「っ!? す、すみません……何でしょうか?」

ちひろ「どうしたんですか? 朝から様子が変ですけど……」

武内P「ああ、いえ……」


武内P「シンデレラプロジェクトのメンバーを……」

武内P「……十代で固めると、そう判断した」

武内P「あの時の自分は間違っていなかった、と」

武内P「……そう、考えていました」


ちひろ「……はい?」

794: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 23:35:24.84 ID:aArvLcoCo
武内P「いえ……お気になさらず」

ちひろ「はあ……?」

武内P「それよりも、何かありましたか?」

ちひろ「ああ、いえ――」


ちひろ「――お嫁さんにしたい有名人アワードのアイドル部門」

ちひろ「……ふふっ!」

ちひろ「皆、やる気になってるみたいですよ?」


武内P「……」

武内P「えっ?」

795: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/20(土) 23:42:53.67 ID:aArvLcoCo
武内P「あの……何故、でしょうか?」

ちひろ「う~ん……」


ちひろ「……346プロのプロデューサーさんは」

ちひろ「時たま、思わせぶりな態度を取るからじゃないですか?」


武内P「そう、なのですか?」

ちひろ「ええ、困ったことに」

武内P「成る程……私も、気をつけるようにします」

ちひろ「ええ、そうしてくださると助かります」


武内P「――千川さん、ありがとうございます」

武内P「貴女が居て本当に良かった、と」

武内P「……そう、いつも思っています」


ちひろ「……私の話、聞いてました?」




おわり

809: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/21(日) 22:43:52.59 ID:Amg4rqXZo

「新規部門の立ち上げ……ねぇ」


 右手を首筋にやって、廊下を歩きながら呟いた。
 アイツめ、やってくれるじゃないか。
 気心の知れた仲ではあるにせよ、もう少し伝え方というのも考えて欲しいね。
 おかげで今は、煙草が吸いたくって仕方が無い。


「……」


 我らが346プロダクションは、老舗の芸能プロダクションだ。
 俳優や歌手等も多く所属し、テレビや映画に限らず、
映像のコンテンツに関する企画も幅広く行っている。
 社内に撮影施設もあり……まあ、非常に儲かっている会社さ。


「……」


 業界内にも多く、そして、太いパイプを持ち、
それらのほぼ全てがうまく機能している。
 モデル部門では、雑誌の表紙やCMに出演する新人も出てきた。
 あの子は、きっと金の卵ってやつだろう。


「……っとと」


 いけないいけない、思考が脇道にそれてしまった。
 私も、歳を取ったという事かねぇ。
 どうも、真っ直ぐに目的地に向かうのが下手になってしまったよ。
 ま、喫煙室には真っ直ぐに向かえる……っと、コーヒーを買っていこうか。


「……」


 廊下を曲がって、談話スペースへと向かう。
 あそこの自販機じゃないと、甘いカフェオレは売ってないんだ。
 いつもはブラック派だが、今日はちょいとばかり事情が違う。
 なにせ、考え事をするからには脳に糖分を送らないといけないからね。


「……」


 アイツと古くから付き合いのある社員が、部屋に呼ばれて。
 会議の予定は無かっただろうと気を抜いていたら、これだ。


「……」



 ――我々の求める、アイドルの理想像。



「……」


 奴は、本当にやってくれたよ。
 まさか、あの言葉を言うためにこの会社を大きくしてきたんじゃないか、
なんて錯覚すらしそうになったんだから。
 だが、わかってしまうんだよ……残念ながらね。


「……」


 この男は、思いつきで物を言っている、ってね。
 そして、我々は――346プロダクションは、それを実現するだけの力がある。
 嫌らしいのは、付き合いの古い面子の中でも、
こういう時にストッパーとなる奴を呼び出さなかった事だね、間違いない。

810: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/21(日) 23:12:06.28 ID:Amg4rqXZo
  ・  ・  ・

「よっこいせ、っと」


 自販機の取り出し口から、缶コーヒーを取り出す。
 こういう時に掛け声を言ってしまうのは歳をとった証拠だって?
 ははは、馬鹿を言っちゃいけない。
 証拠が無くても見ればわかるってものだろう?


「……」


 ひんやりと冷たい缶を軽く弄び、喫煙室へと向かう。
 長年親しんできたあの部屋と、もうすぐお別れになってしまう。
 喫煙者の減少や、昨今の禁煙の流れに乗って……と言うことらしい。
 時代の流れというのは、本当に厳しいものだ。


「……」


 あの部屋の壁紙は、もう煙草のヤニ汚れが取れなくなってしまっている。
 張り替えたのは、コスト削減という名目で随分と前だったかな。
 ……寂しいねぇ。
 実に、寂しい。


「……」


 気合で勝ち取った喫煙スペースの設置まで、お世話になるよ。


「おっ」


 喫煙室のドアを開けると、中には誰も居なかった。
 これは、一人でゆっくり考えろという神様の思し召しかな。
 中に入って、ドアを閉める。
 この部屋に染み付いた臭いは、非喫煙者の人からすればたまったものじゃないだろうしね。


「……」


 嫁に言われて、子供に言われて、健康のために。
 そう言って、数多くの仲間がこの部屋に通わなくなっていった。
 それは、喜ぶべきことであり、私も祝福の言葉を投げつけてやったよ。
 胸のポケットから煙草の箱を取り出し、
クンとフィルター越しに香りを楽しんでから口に咥え、火をつける。


「はぁ……」


 意識していなかった緊張が、紫煙と共に口から出て、消えていく。
 ニコチンが、たるんだ脳細胞を締め上げ、思考をはっきりさせる。


「ふぅ……」


 呼ばれた面子は、多様性に富んでいた。
 真面目で頑固一徹な奴も居れば、飄々として掴みどころのない奴も居る。
 嫁さんに尻に敷かれていたり、すぐに孫の話をしだす奴だって居る。
 要するに、バラエティーに富んでいる、ってやつさ。



「……部長、ねぇ」



 ――お前がやるだろう?


 なんて目で、部屋に居る全員が見てくるんだから、敵わないね。

811: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/21(日) 23:43:12.85 ID:Amg4rqXZo

「ふぅ~っ……」


 深く吸い込んだ煙をゆっくりと吐き出し――


 ――さあ、考えよう。


「……」


 我々には、これまで芸能界で食ってきたノウハウがある。
 アイドル事業に参入するのも、それほど難しい話ではないだろう。
 むしろ、業界からは非常に注目を集めるだろうね。
 何せ、346プロダクションが立ち上げるアイドル部門、なのだから。


「……」


 城は、ある。
 それも、大きく……これ以上を望むのは欲張りだろう、と言える程の美しい城が。
 レールも敷ける……いや、この場合は、階段と言うべきかな。
 それも、立派なものを用意するだけの自信がある。


「……」


 しかし、人が居ない。
 お姫様――シンデレラどころか、それを導く魔法使いも居ない。
 魔法使いは年寄りの場合が多いが、それだけじゃあ駄目だ。
 年寄りでは思いつかないような、出来ないような熱量が欲しいのだから。


「……」


 やるからには――「新しい」アイドルのカタチ。
 それを求めなければ、346プロダクションが参入する意味がない。
 だって、そうだろう?
 普通のアイドル事務所には出来ない事が、我々ならば出来るんだ。


「……」


 集めるならば、優秀な人材を。
 情熱に溢れた、若者を。


「……いやはや、色々と大変だなぁ」


 落ちかけていた煙草の灰をトンッと灰皿に落とし、
少しぬるくなってしまった缶コーヒーのプルタブを開ける。
 ……うん、甘い。
 甘い物というのは、時たまこうやって口にするとどうしてこんなに美味いのか。


「……」


 アイドルは、スカウトとオーディションで……だな。
 オーディションを任せられるのは……あちゃあ。
 早い段階で、アイツを説得しなきゃあいけないのか。
 新しい事には消極的だが、人を見る目は確かだからねぇ。


「……はっは!」


 ああ、もう。
 年寄りの胸をこんなに踊らせるんじゃあないよ。
 これはもう、高い酒を奢って貰わなきゃ割に合わない。
 娘に睨まれるからとしぶるだろうが、知った事じゃあないね!

812: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/22(月) 00:36:34.89 ID:FF8m/BLBo
  ・  ・  ・

「……」


 我が、346プロダクションのアイドル部門の目標。
 それは、多くのプロジェクトを同時に動かす事によって、
才能のあるアイドル達に活躍の場を提供する事だ。


「……」


 だが、まずは……まだ見つかっていない才能のあるアイドルが、
城へ来たいと思うようにしなくてはならない。
 そのための仕掛けは、我ながら上手く行っていると思う。


「……」


 地方局出身の元女子アナの子に、自分はカワイイと自信に溢れた子。
 読者モデルだった子や、九州から出てきた私服がユニークな子。
 同年代の女子に支持されているギャルの子に、とても元気なラグビーが好きな子。
 現役の女子大生で少しばかり暑がりな子に、突然やってきたモデル部門の子。


「うんうん」


 なんとも、バラエティーに富んだ面子じゃあないか。
 これからも、もっと個性溢れる子達が集まってくるだろう。
 ……何故、言い切れるかって?


「……」


 それは、私の前でまだ緊張が解けない彼らが――プロデューサーだからさ。


「……」


 誰も彼も情熱に溢れ、理想を目指している。
 良いね。
 若者は、こうでなくっちゃあいけない。
 一人一人の顔を見て、頷く。



「私が、アイドル事業部部長の今西だ」



 まだ言い慣れない、自己紹介。
 だが、言い終わった後にニヤリと笑う。
 それを見たプロデューサー達が、口の端を釣り上げた。
 そうだ、緊張なんてしている暇は、君たちには無いよ。


「これから一緒に、楽しんでいこうじゃあないか」



 346プロダクション、アイドル部門が設立され、始動した。
 今後、一体どんなお姫様達が城へと来るのかは、まだわからない。
 だが、この事業は必ず成功させてみせるさ。


 酔った勢いで、失敗したら禁煙してやる、なんてアイツに言ってしまったんだから!




おわり

821: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/22(月) 22:19:59.82 ID:FF8m/BLBo

「あの……こ、この会場は……なに……?」


 お母さんから、ホラー映画の試写会みたいなものって言われてて。
 でも、スクリーンなんて、どこにもなくって。
 むしろ、見られているのは……私の方。
 名前を呼ばれたから返事をして、質問してみたけど、声がうまく出せない。


「私、よく知らないまま、来たんですけど……」


 だけど、何か言わなくちゃいけないと思って、必死に喋る。
 喋れば喋るほど、私を見る視線は――どうしよう――というものに変わっていく。
 いつも向けられる、この目。
 皆には見えないお友達の事をちょっとでも話した時の目。


「……」


 眼鏡をかけたおじいちゃんも、右手を首筋にやって困ってる。
 それに、横に座ってた綺麗な女の子達も、チラチラとこっちを見てる。


 ――どうして此処に居るんだ。


 ……そんな風に思ってるんだろう、って……ハッキリわかる。


「う、うう……」


 パーカーの袖を握りしめて、俯いた。
 前髪で、私の顔が全部隠れれば良いのに、なんて思いながら。
 今日は、とっても楽しくなると思ったのに。
 もう……もう、嫌だよ……!



「アイドルのオーディションです」



 低い声が、響いた。
 大きい声じゃないんだけど、静かだったから……ハッキリ聞こえた。


「あ、アイドル……?」


 思ってもみなかった……なんて、事は無くて。
 もしかしたらそうなんじゃないか、とは薄々気付いてた。
 だって、前に質問されてた子が、とってもキラキラした答えを返してたから。
 だけど、


「ど、ど、どうして私がそんなところに……」


 絶対に、私には向いてない。
 まず、明るい場所が苦手。
 お母さん、外に出た方がいいって言ってたけど……。
 でも……だからって、


「と、突然アイドルのオーディションなんて……」


 ……今だって、怖くてたまらないのに。


「う、うう、ううう……」


 喉から勝手に声が出て、涙も出てきた。
 ゾンビがこの場に居たら、今すぐに食べて欲しい……勿論、私を。

822: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/22(月) 22:39:03.30 ID:FF8m/BLBo

 だけど、



「なにか話してください」



 また、低い声が響いた。
 私が泣いていると思って、少しざわついた部屋。
 それでも聞こえたのは、真っ直ぐ私へと向けられてたから。


「しゃ、喋れない……」


 その低い声の男の人は、皆に見られていた。
 だから、さっきよりもちょっと楽になって……そう、言えた。
 あ、あ……相手は大人の人だから、今のじゃ駄目……だよね。
 け……敬語、使わなきゃ……!


「喋れないん……です」


 きっと、怒られると思った。
 話して下さいって言われたのに、出来ないって言ったんだもん。
 でも、男の人は全然表情を変えなかった。
 まるで……ゾンビみたいに。



「それは、何故ですか?」



 な、何故?
 どうしてって、それは……。


「人と話すの……とっても、苦手だから……」


 普段でも、誰かと話すのは苦手のなのに。
 今みたいに、知らない人と話すのは……もっと無理。



「成る程……そう、ですか」



 そう言って、男の人は手元の紙に何かを書き込んだ。
 多分、私が今言ったことをメモしたんだと……思う。
 ……それが、当然の事みたいに。
 だから、わかった。


 ――この人は、アイドルのオーディションをしてるんだ。


 ……って。
 だけど、私はどうしたら良いのか、全然わからない。
 でも……この人なら、



「なにを話したら……いいですか?」



 こうやって聞いたら、ちゃんと答えてくれると思った。
 いつもみたいに……苦笑いして、終わったりなんかしないで。

823: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/22(月) 23:03:11.48 ID:FF8m/BLBo

「わ、私、明るくなくて……無口だし……」


 そんな私は、何を喋れば良いですか?


「その……」


 ……アイドルのオーディションだって、わかってるけど。


「かわいいことなんて、なにも……」


 私がそう言うと、


「……」


 男の人は少しだけ考えて、



「では、趣味の話を」



 表情を変えずに、言った。
 ……趣味?
 私の話じゃなくって……いいんだ?
 ……それなら、出来るかも。



「えっと……ほ、ホラー映画が好き……です!」



 それから私は、ホラー映画の中でも、特にゾンビが出てくる映画が好きな事。
 ゾンビは、ノロノロ歩いて、襲ってきて、可愛いと思っている事。
 あと……パニックものが、最高な事も!
 今まで、ほとんど話した事の無い――



「怖いけど、ゾンビはかわいくて……ふふ、ふふふふ……!」



 ――私の話をした。
 その間も、男の人は私の事をずっと見ていた。



「……良い、笑顔です」



 えっ?
 あの……今、何か言いましたか?
 でも、気のせいだったかも知れない。
 だって……う、うん……気のせいだよ……。


「ありがとうございました」
「は……はい」


 ほんの少し、もうちょっとだけ。
 お喋りしたかっ――


 ――……あ……喋れてた。

824: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/22(月) 23:38:16.61 ID:FF8m/BLBo
  ・  ・  ・

「――かわいいから合格!」


 オーディションが終わったのに、私だけ残れって言われて。
 そうしたら、眼鏡をかけたおじいさんが、ニコニコと笑いながら、そう言った。


「か、かわいいって……」


 何を言ってるんだろうと、他の人達も見てみる。
 表情は、同じ。
 皆、ニコニコと笑ってた……一人だけ、笑ってなかったけど。


「……ゾンビじゃなくて?」


 私がそう言ったら、


「君がだよ。さすがに、ゾンビを合格にするのは難しいからね」


 私が?


「か……かわいくない……ですよ……! かわいくないです……!」


 そ、それに……合格?
 合格、って……え、えええ……。


「新作のホラー映画かなにかですか……?」


 いきなりゾンビ化……じゃなくて、アイドル化なんて。
 パニックになりそうになった私は、あの人を見た。
 ゾンビみたいに、表情が変わらなくて。
 今も真っ直ぐに私を見ている、あの人を。


「ホラー映画の出演を希望される……という事でしょうか?」


 え、えええ……!?
 私が、ホラー映画に出られるの……!?


「た、食べられる方も……た、食べる方でも……!」


 そんなの、思ってもみなかった!
 ……と、立ち上がりかけた私に、眼鏡のおじいちゃんは苦笑いしながら、言った。
 声の低い男の人は、あんまり人と話すのが得意な方じゃない、って。


「そ、そう……なんだ……」


 でも――


「えへへ……い、一緒……だね」



 ――この日、私はアイドルになった。
 アイドルは、やりたかったわけじゃなかった。
 でも……電話をして、お喋りをする練習を一緒にしよう……って。
 そう約束したから、生きてる間は頑張ろうって思えた。





おわり

831: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 21:51:50.48 ID:kQ6cl/f5o
書きます


武内P「投票券、ですか?」

832: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 21:54:26.62 ID:kQ6cl/f5o
ちひろ「はい、プロデューサーさんの分です」

武内P「あの……何故、私に?」

ちひろ「あれ? 聞いてなかったんですか?」

武内P「えっ?」


ちひろ「プロデューサーには、投票券が配られるようになったんです」

ちひろ「ログインボーナスだけですけど、一日一枚ずつ♪」


武内P「……」

武内P「!?」

833: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 21:58:28.69 ID:kQ6cl/f5o
武内P「それは、皆さんご存知なのでしょうか!?」

ちひろ「えっ? 皆さん、って……」

武内P「アイドルの方達です!」

ちひろ「えっ?」


ちひろ「当然、知ってますけど……」

ちひろ「……それが、どうかしましたか?」


武内P「……」

武内P「!?」

834: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:03:18.38 ID:kQ6cl/f5o
武内P「な……何枚、ですか!?」

ちひろ「えっ?」

武内P「投票券は、何枚頂けるのでしょうか!?」

ちひろ「えっ? ええっ、と……」


ちひろ「投票期間は、4月16日~5月14日だから……」

ちひろ「――全部で、29枚も手に入りますよ♪」ニコッ!


武内P「……に」

武内P「29枚……ですか……!?」

835: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:06:38.24 ID:kQ6cl/f5o
武内P「その……頂ける枚数は、増減しますか!?」

ちひろ「えっ? 増えも減りもしませんけど……?」

武内P「と、投票をしたかどうかは、確認出来ますか!?」

ちひろ「えっ?」


ちひろ「きちんと全ての投票券を使用したか――」

ちひろ「――PCで入力し、確認するみたいですよ?」


武内P「……!?」

武内P「そんな……まさか……!?」

836: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:09:43.44 ID:kQ6cl/f5o
武内P「わ……私は、どうしたら……!?」

ちひろ「あの、プロデューサーさん?」

武内P「29枚……!? か、考えなくては……!」

ちひろ「あの、何かお困りですか?」


武内P「最悪の場合になりますが……」

武内P「――シンデレラガールが、決まる頃」

武内P「私は――既に、この世に居ないかも知れません」


ちひろ「……」

ちひろ「えっ!?」

837: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:12:34.85 ID:kQ6cl/f5o
ちひろ「ど、どういう事ですか!?」

武内P「……今まで、ありがとうございました」

ちひろ「一人で諦めてないで、訳を話して下さい!」

武内P「……」


武内P「……29枚の、投票券」

武内P「この枚数は、どう投票しようと……角が立つからです」


ちひろ「……あの」

ちひろ「ぶつけたら死んじゃうほどの角、立ちますか?」

838: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:15:52.72 ID:kQ6cl/f5o
武内P「……千川さんは、どう投票されますか?」

ちひろ「私が、プロデューサーさんの立場だったら……って事ですよね?」

武内P「はい」

ちひろ「そうですね……」


ちひろ「……プロデューサーさん♪」ニコッ!

ちひろ「引き継ぎは、しっかりやってくださいね!」


武内P「…………」

武内P「……」


武内P「はい」

839: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:20:31.74 ID:kQ6cl/f5o
  ・  ・  ・

武内P「……」


武内P「……」

武内P(プロジェクトメンバーの方)

武内P(そして、メンバーの方達と関わりのあったアイドルの方)

武内P(その方達に……一人、一枚ずつ)

武内P(……一見、角が立ちそうに無い投票方法)


武内P「……プロジェクトメンバーの方から、不満が出るだろう」

武内P「直接担当していた私達と差がないのか、と」

武内P「……そう、思われるでしょうね」

840: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:24:10.61 ID:kQ6cl/f5o
武内P「……」


武内P「……そして」

武内P(プロジェクトメンバーの方に、二枚ずつ)

武内P(加えて、初期からお世話になった城ヶ崎さんに残りの一枚を)

武内P(……これも、一見角が立ちそうに無い投票方法)


武内P「……城ヶ崎さんには投票したのに、何故?」


武内P「……」

武内P「そう言われたら……何も、言えなくなってしまう」

841: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:26:54.61 ID:kQ6cl/f5o
武内P「……」


武内P「……あえて」

武内P(誰か一人に、全ての投票券を使用する)

武内P(……いや、この考えは捨てよう)

武内P(……色々と、角が立つ上に)


武内P「諦めたら、そこでログイン終了だ……」


武内P「っ……!」

武内P「もう……ストレスが、胃に……!」

842: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:32:33.96 ID:kQ6cl/f5o
武内P「……なるべく」

武内P(なるべく……公平に)

武内P(不満が、一番少なくなる方法……)

武内P(贔屓感を出さず、皆さんが幸せになれる方法……)


武内P「……そんな投票方法は、あるのだろうか」


武内P「だが……考えなくてはならない」

武内P「皆さんの笑顔を……見続けていくために……!」

843: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:35:33.63 ID:kQ6cl/f5o
  ・  ・  ・

武内P「――と、考え続けて一週間が経ちました」

ちひろ「そ、そうですか……」

武内P「はい」

ちひろ「あの……今日のログインボーナスの、投票券です」

武内P「ありがとうございます」


武内P「今の所、誰にも投票せずに居るのですが……」

武内P「……紛失してしまった場合は、どうなりますか?」


ちひろ「……再発行されます」


武内P「はい、そうだろうと思いました」

844: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:39:49.27 ID:kQ6cl/f5o
ちひろ「投票に関して、何か皆に聞かれましたか?」

武内P「いいえ、何も」

ちひろ「えっ!? なんだか、意外ですね……」

武内P「ええ、ただ……」


武内P「皆さん――とても、優しくしてくださいます」

武内P「キラキラした、良い笑顔で」

武内P「そうですね……通常の三倍の輝き、ですね」


ちひろ「……」

ちひろ「それは……その、良かったですね……」

845: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:44:57.92 ID:kQ6cl/f5o
ちひろ「優しく、って……」

武内P「はい」

ちひろ「……想像してなかったアプローチですね」

武内P「そう、ですね……」


武内P「皆さん、私がどう投票をするか迷っている、と」

武内P「……そう、察してくれているのでしょう」


ちひろ「だから、気遣ってくれてるって事ですか?」


武内P「ええ、恐らく」

武内P「ですが……これだけ優しくされたら、投票しないわけには、と」

武内P「……そう、思ってしまいました」


ちひろ「……」

846: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:50:44.07 ID:kQ6cl/f5o
ちひろ「……プロデューサーさん!」

武内P「千川さん?」

ちひろ「大切なのは、貴方が誰に投票したいか、です!」

武内P「っ!」


ちひろ「プロデューサーさんが知ってる、うちの子達は――」

ちひろ「――義務感や心遣いで投票されて、喜びますか?」

ちひろ「それで、良い笑顔をする子達ですか?」


武内P「……!」

847: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 22:58:03.74 ID:kQ6cl/f5o
武内P「いえ……そんな事は、決して!」

ちひろ「ふふっ♪ そうですよね!」

武内P「はい……!」

ちひろ「それじゃあ、プロデューサーさんは誰に投票するんですか?」


武内P「――誰にも投票しません」

武内P「専務に掛け合って、この制度を即刻中止して頂きます」


ちひろ「……」

ちひろ「ちょっと懐かしい言葉になりますけど……」

ちひろ「……忖度、極まってますね」

848: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 23:06:07.56 ID:kQ6cl/f5o
  ・  ・  ・

武内P「――と、言う訳ですので……即刻、中止してください」

専務「ふむ……君も、そう言うのか」

武内P「えっ?」

専務「なに、同じ意見を――」


専務「――君以外の、全ての者からもされてな」

専務「今後、投票券の配布はしない」

専務「……君は、それで満足か?」


武内P「……!」

武内P「専務……私は、貴女を憎いと思ったことは一度もありません……!」


専務「何故、それを今言う?」

849: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 23:12:53.53 ID:kQ6cl/f5o
専務「明日、正式に通達されるだろう」

武内P「……ありがとうございます!」ペコリ!

専務「だが……残念がっている者も、中には居た」

武内P「えっ!?」


専務「担当外のアイドルに――」

専務「――君の担当するアイドルの、三村かな子君」

専務「彼女に全て投票していたのが、担当したアイドルに知られた者が居る」

専務「確か、さく」


武内P「専務」

武内P「明けない夜は、ありません」

武内P「例え夜だとしても、きっと紅く輝く星が彼を照らすことでしょう」


専務「……ふむ」

850: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 23:17:08.88 ID:kQ6cl/f5o
  ・  ・  ・

ちひろ「……今日のログインボーナスの――」

武内P「……!」…ゴクリ!

ちひろ「――スタミナドリンクです♪」

武内P「!」


武内P「……千川さん」

…ガクッ!

武内P「ありがとう……ございます……!」

スッ…


ちひろ「ぷ、プロデューサーさん!?」

ちひろ「どうして跪いてるんですか!?」

851: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 23:20:22.71 ID:kQ6cl/f5o
武内P「す、すみません……あまりの喜びに、つい」

ちひろ「……ふふっ! 投票券は、ありませんよ?」

武内P「ええ、大丈夫です」

ちひろ「……ふふっ♪」ニコッ!


武内P「……ん?」

武内P「この、社内メールは……」

武内P「……」

武内P「っ!?」


ちひろ「……プロデューサーさん?」

852: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 23:25:58.92 ID:kQ6cl/f5o
ちひろ「あの……何が、書いてあったんですか?」

武内P「……ご覧になりますか?」

ちひろ「良いんですか?」

武内P「ええ……大丈夫です」


ちひろ「――本日より、投票券の配布は中止」

ちひろ「――既に投票したものに関してはリセットされ……」


ちひろ「……再配布?」


ちひろ「第八回目、という事もあり――」


ちひろ「――配布済みの投票券は、有効なものとする……!?」


武内P「……」

853: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 23:32:19.17 ID:kQ6cl/f5o
武内P「今、手元にある投票券は――8枚です」

ちひろ「……!?」

武内P「貴女ならば、この意味がわかるかと思います」

ちひろ「……はい」


武内P「――立つ予定の角が、鋭くなりました」

武内P「千川さん」

武内P「私は、どうしたら良いのでしょうか?」


ちひろ「……すみません」

ちひろ「私には……何も、言えません」

854: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/23(火) 23:39:15.47 ID:kQ6cl/f5o
武内P「忖度などと……言っている場合では、ありませんね」

ちひろ「……プロデューサーさん」

武内P「今回の件は、良かれと思ってやった事なのでしょう」

ちひろ「あの……ぷっ、プロデューサーさん!?」

武内P「ですが――」


武内P「――私達に投票権を与えないでくれ、と」

…ガタッ!


武内P「――どうしても角が立ってしまうだろう、と」

ゆらり…


武内P「……そう、専務に言ってこようと思います」

ずんっ…ずんっ…!



ちひろ「っ!?」ビクッ!



武内P「心を鬼にして」





おわり

860: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 21:23:49.07 ID:74LoEOXMo
書きます


武内P「島村さんの家でパーティー、ですか?」

861: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 21:26:44.01 ID:74LoEOXMo
卯月「は、はいっ! お誕生日パーティーです!」ソワソワ!

武内P「成る程。では、当日は早めに帰れるように……」

卯月「えっ!?」

武内P「えっ?」


卯月「プロデューサーさん、来てくれるんですか!?」パアッ!


武内P「……えっ?」


未央「しまむー、今から誘うんじゃなかったっけ?」

凛「うん。完全に早とちりしてるね」

862: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 21:30:01.11 ID:74LoEOXMo
卯月「あっ!? も、もしかして……!」

武内P「し、島村さん?」

卯月「な、何でも! 何でもありません!」ブンブン!

武内P「はぁ……?」


卯月「サプライズゲストなんですもんね!」ニコッ!

卯月「……あっ、言っちゃった!」ガビーン!

卯月「ご、ごめんなさい! 何でも無いです!」ニマニマ!


武内P「……えっ?」


未央「しぶりんや。私としては、もうちょっと見てたい」

凛「卯月の表情がコロコロ変わって……ふふっ、可愛いしね」

863: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 21:34:18.47 ID:74LoEOXMo
卯月「えへ……えへへへっ♪」ニコニコ!

武内P「あの……島村さん?」

卯月「はいっ♪ 島村卯月、頑張ります♪」ニコッ!

武内P「……」


武内P「その日は、収録時間が遅くなる予定の――」

武内P「――新田さんの仕事が、入っていまして」


卯月「はいっ♪」

卯月「……」

卯月「っ!?」ガツンッ!


未央「……あちゃ~、仕事だったかー」

凛「期待してた分……衝撃が、遅れて来たみたい」

864: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 21:37:24.15 ID:74LoEOXMo
卯月「あ、あはは……そうなんですね……」

武内P「……ええ」

卯月「だったら、一緒に付いてて上げないとですもんね!」ニコッ!

武内P「……はい」


卯月「お仕事、頑張って下さいっ♪」ニコッ!

卯月「わ……私も、頑張ります……」

卯月「頑張って、頑張って、笑顔で……誕生日頑張ります……」

卯月「あ、あれ? 頑張らなくても誕生日はくるから……あれ……?」


武内P「し、島村さん!?」


未央「よし、助けに行こう」

凛「うん、ちょっとまずそう」

865: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 21:41:32.21 ID:74LoEOXMo
未央「はいはーい! ちょっとごめんね!」

武内P「ほ、本田さん?」

凛「良いから、私達に任せて」

武内P「渋谷さん……お、お願いします……」


未央「しまむー、落ち込むこと無いって! 大丈夫だから!」

凛「卯月。今度の17歳の誕生日は、何回目?」


卯月「えっ? ええ、と……」

卯月「……」

卯月「ごっ、ごめんね二人共! 心配かけちゃって……!」ペコペコ!


未央・凛「気にしないで良いよ」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

866: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 21:47:15.48 ID:74LoEOXMo
未央「でもさ……プロデューサー、何とかならないの?」

武内P「えっ?」

凛「美波の収録って、絶対に付いていかなきゃ駄目なの?」

卯月「み、未央ちゃん!? 凛ちゃん!?」


武内P「絶対……という訳では、ありませんが」

武内P「新田さんは、まだ未成年ですし……」


卯月・未央・凛「……」


武内P「――収録終了後に軽く食事に、と」

武内P「……そう、言われていまして」


卯月・未央・凛「……」

卯月・未央・凛「えっ?」

867: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 21:53:00.32 ID:74LoEOXMo
未央「ま、待って待って!? どういう事!?」ワクワク!

武内P「えっ? そのままの意味ですが……」

凛「ふざけないでよ!! アンタ、私のぷるぅおおおあああ!!?」ギロォッ!

武内P「渋谷さん!? 何故、急にアクセル全開に!?」

卯月「え、えと……あ、あはは……」ヘラッ…


卯月「そ、それは……楽しみですね♪」ニコッ!


未央・凛「!?」

未央(しまむー……この状況で、笑顔に!?)

凛(う、卯月……どうして笑ってられるの!?)


武内P「はい、とても」ニコリ!


卯月・未央・凛「笑顔!?」

868: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:02:22.52 ID:74LoEOXMo
未央「えっ!? そんなに楽しみなの!?」

武内P「ええ……恥ずかしながら」

凛「恥ずかしい事をさせるのが、そんなに楽しみなわけ!?」

武内P「あの……意味が、よく」

卯月「はっ……ふ、む……」ワナワナ…!


卯月「――む~ね~キュンで、はにかんで♪」ニゴォッ!

卯月「右手を振ぅった~け~れど~~♪」ピクピク!

パシパシパシパシ!


武内P「っ!? 島村さん!?」

武内P「何故、高速で左胸を叩いているのですか!?」


未央「ギブ!? ギブアップって事なの、しまむー!?」

凛「待って! きっとあれ、心臓マッサージも兼ねてるから!」

869: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:07:52.10 ID:74LoEOXMo
未央「しまむー! とりあえず、歌うのやめよう!?」

卯月「チャ~ンス~を~追い越し~た青春~の道~♪」ギギ…ギ…!

凛「卯月! アイドルがしちゃいけない顔してるから!」


卯月「――む~ね~キュンで、はにかんで♪」ニコッ!


未央・凛「! 持ち直した!」


卯月「――かっ、カヒューッ! ヒューッ!」グチャァッ!


未央・凛「息ができないくらい!?」


武内P「島村さん!? 一体、どうしたのですか!?」

870: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:13:12.15 ID:74LoEOXMo
  ・  ・  ・

卯月「うぅ……ん……!」


未央「……とりあえず、寝かせておこうか」

凛「……うん、そうした方が良いかも」

未央「いやー、しまむーの体がくの字に曲がってたよね」

凛「私と未央のダブルボディー、綺麗に決まったからね」


武内P「……本田さん、渋谷さん」

武内P「――暴力は、いけません」キリッ!


未央・凛「……何て?」ギロッ!


武内P「……」

武内P「今日は少し寒いので、毛布をかけておきましょう」

871: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:16:16.30 ID:74LoEOXMo
未央「まあ……しまむーの気持ちもわからないでもない」

武内P「えっ?」

凛「だって、卯月の誕生日パーティーより……その……」

未央「みなみんとの、デー」

凛「美波と食事に行くのが、楽しみなんでしょ」

未央「……まあ、仕事の後だけどね」

武内P「……その、ですね」


武内P「――美味しいハンバーグのお店を知っている、と」

武内P「……そう、仰っていまして」


未央・凛「……」

未央・凛「はい?」

872: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:22:31.04 ID:74LoEOXMo
未央「ハンバーグ?」

武内P「はい。上にかかっている、トマトソースが絶品らしく」

凛「それだけ?」

武内P「いいえ。その上に、なんと……チーズまで」

未央・凛「……」


武内P「――ハンバーグを切った時に出る、肉汁」

武内P「それをトマトソースと絡め、チーズと一緒に」

武内P「……深夜になりますので、新田さんは遠慮するとの事ですが」

武内P「一口だけ分けてくれれば十分だ、と」

武内P「……そう、言っていました」


未央・凛「…………」

未央・凛「……」


未央・凛「だから何!!?」

873: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:29:21.69 ID:74LoEOXMo
未央「誕生日パーティーより、ハンバーグ優先って事!?」

武内P「えっ?」

凛「ちゃんと説明して! でなきゃ、納得出来ない!」

武内P「……」


武内P「――笑顔です」


未央「……おっけー、みなみんにLINE入れといた」

凛「何て送ったの?」

未央「……ほら、こんな感じで」

凛「うん……ハンバーグは今度にする、って言ってるね」


武内P「!?」

874: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:36:37.53 ID:74LoEOXMo
未央「さて……仕事も、一人で平気って言ってるし」

武内P「待ってください! 新田さんに、何と!?」

凛「プロデューサーは知らなくていいから」

武内P「いえ、しかし……!?」


未央「予定が空いたんだからさ……わかるよね?」

凛「あのさ……全部言わなきゃ、わからない?」

未央・凛「ねえ、プロデューサー?」


武内P「っ……!?」

875: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:41:01.81 ID:74LoEOXMo
武内P「いえ……ですが……!」


卯月「……――ハンバーグ」

…むくっ


武内P・未央・凛「!?」


卯月「ハンバーグには……自信があります」

卯月「……頑張ります! 頑張ります! 頑張ります! 」

卯月「島村卯月、一生懸命頑張ります! ハンバーグ!」


未央「しまむーが得意なの、ロールキャベツだよね!?」


卯月「――ママのお手伝い、頑張ります!!」


凛「……あー、そう言えば得意って言ってたね」

876: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:47:24.95 ID:74LoEOXMo
卯月「だから……プロデューサーさん!」

武内P「島村さん……」

卯月「私のお誕生日パーティー、来て下さい!」

武内P「……ですが、しかし」


卯月「ハンバーグの上に、黄身がトロッとした目玉焼きものせます!」


武内P「――笑顔です」

武内P「貴女の誕生日パーティーに、私が出席して……」

武内P「……笑顔になれるのでしたら、喜んで」ニコリ!


卯月「~~っ! はいっ♪」ニコッ!


未央・凛「……」

未央・凛(良い笑顔なんだけど……なんか……なんか!)

877: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 22:55:17.51 ID:74LoEOXMo
卯月「……えへへっ♪」ニコニコ!

未央「良かったじゃん、しまむー!」

凛「誕生日パーティー、楽しみだね」

卯月「未央ちゃん、凛ちゃん……はいっ♪」ニコッ!

武内P「あの……場所は、どこの予定なのでしょうか?」


卯月「私の家です♪」ニコッ!

卯月「プロデューサーさんも誘う、って言ってあって……ですね///」モジモジ!

卯月「ママも、パパも――ベレッタちゃんも!」

卯月「とっても楽しみ、って言ってます♪」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」


未央・凛「……」

未央・凛(……ベレッタちゃん?)

878: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 23:04:58.38 ID:74LoEOXMo
未央「ねえ……しまむーって何か飼ってたっけ?」ヒソヒソ

凛「いや……それは無いと思うけど」ヒソヒソ

未央「盛り上がってるし……携帯で一応調べてみようか」ヒソヒソ

凛「そうだね。卯月、凄く幸せそうだし」ヒソヒソ


卯月「ママも、プロデューサーさんが来るならおめかししないと、って!」

武内P「そう……なのですか?」

卯月「パパも、ベレッタちゃんをピカピカにしておかないと、って!」

武内P「はあ……」


未央・凛「……」

未央・凛「ベレッタ社――イタリアの大手銃器メーカー」ボソッ

未央・凛「……」

未央・凛「ベレッタちゃん!?」

879: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 23:10:49.70 ID:74LoEOXMo
未央「しまむー!? その……ベレッタちゃんって生き物!?」

卯月「えっ? 違いますよ?」

凛「卯月! ベレッタちゃんって……ねえ、ちょっと!?」

卯月「はい?」キョトン


卯月「あっ、そうだ!」

卯月「パパが、‘おいしそうな’ひき肉を用意する、って言ってました!」

卯月「だから……ハンバーグ、楽しみにしててくださいね♪」ニコッ!


武内P「それは……はい、楽しみですね」ニコリ


未央・凛「ストップストップ!」

未央・凛「ちょっと、二人共その笑顔スト――ップ!」

880: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 23:17:32.33 ID:74LoEOXMo
  ・  ・  ・

卯月「はぁ……」

未央「も、もー! 元気だしなよ、しまむー!」

凛「そ、そうだよ卯月! せっかくの誕生日なんだから!」

卯月「……はい、そうですね!」ニコッ!


卯月「やっぱり……先に約束してたのは、美波ちゃんですし」

卯月「17歳の誕生日は、また来年もありますから♪」ニコッ!

卯月「来年は、誕生日パーティーに来て貰えるように……」

卯月「……島村卯月、頑張ります♪」ニコッ!


未央・凛「……」

未央・凛「うん、そうだね!」

881: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/24(水) 23:28:21.95 ID:74LoEOXMo
未央「……でも、危なかったよね」

凛「……うん、色々と」

未央「みなみんと食事って、別に二人きりじゃなかったみたいだもんね」

凛「まあ……よく考えてみれば、そうかな……って」


卯月「未央ちゃ~ん、凛ちゃ~ん!」

卯月「どうかしたんですか~?」


未央「ごめんごめん、しまむー!」

凛「すぐ追いつくから!」


未央・凛「……まあ、時計の針は止まってるけど」



おわり

887: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 20:58:46.51 ID:AA+m6EZ1o
書きます


武内P「胸が……小さくなった?」

888: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:01:37.25 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「そうなのよ! 緊急事態なの!」

楓「あの……どうしたら良いと思いますか?」

武内P「……そう、言われましても」


武内P「お二人とも、変わりない様に見えますが……」


瑞樹・楓「……」


武内P「……」

武内P「あの……川島さん? 高垣さん……?」

889: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:04:13.42 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「ねえ、楓ちゃん。今の聞いた?」

楓「ふふっ! 胸に関する旨……うふふっ!」

武内P「いえ、あの……」


瑞樹・楓「●●●」


武内P「!?」


武内P「ま、待ってください!」

武内P「確かに、先程の発言は……ん、んんん!」

武内P「……すみませんでした……!」

890: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:07:19.82 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「もうっ、ふざけてる場合じゃないわ」

楓「そうですね、急がなきゃいけないのに……」

武内P「すみません……事情が、よく」


瑞樹「今日の朝、起きたら――」

楓「――早苗さんの胸が、小さくなってたんです」


武内P「…………」

武内P「……」


武内P「はあ、そうですか」

891: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:11:46.17 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「……ねえ君、信じてないでしょ?」

楓「くすん……とても、悲しいです」

武内P「っ!? す、すみません……!」

瑞樹「どう見ても鳴き真似じゃないの」


瑞樹「とにかく、本当の事だわ」

楓「早苗さんの胸……誰かに、盗まれてしまったんでしょうか?」

瑞樹「あっ! 早苗ちゃんが検挙した犯人が、恨みで!?」


武内P「……あの」

武内P「何故、私にそれを……?」

892: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:14:54.21 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「実際に見ないと、信じないつもりね」

楓「部屋の外で、呼ばれるのを待ってるんです」

武内P「あの……何故、私に!?」


瑞樹・楓「――どうぞ!」


ガチャッ!


武内P「っ――!?」


武内P「……いえ、あの」

武内P「誰も……居ませんが……?」

893: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:16:53.27 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「……最低だわ」

楓「……!」

バシバシ!

武内P「たっ、痛っ……えっ? あの……」


瑞樹「そこに居るじゃない、早苗ちゃん」

瑞樹「はぁ……男って、本当に胸ばっかり見てるのね」


武内P「えっ!?」

楓「……!」

バシバシ!

武内P「えっ!?……えっ!?」

894: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:20:40.31 ID:AA+m6EZ1o
武内P「あの……ドッキリか何か、ですか?」

瑞樹「早苗ちゃん、何かアイドルっぽい事やって」

武内P「……川島さん。私は、仕事中なので――」


早苗「バキューン!」ニコッ!


武内P「――っ!?」

武内P「い、一瞬見えて……消えた!?」

楓「……!」

バシバシ!

武内P「あ、あの……どうして、叩かれているのですか……!?」

896: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:25:56.90 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「叩かれて当然だわ」

武内P「えっ? すみません……何故、ですか?」

楓「その話、お受け出来ません」

武内P「私と話をして頂けますか?」


早苗「タイホしちゃうぞ!」ニコッ!


武内P「っ!?」

武内P「また、消えた……!?」

897: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:32:49.21 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「でも、これでわかったでしょう?」

武内P「あの……一瞬のことなので、よく」

楓「早苗さん、もう少し眺めなアイドルらしい事を……」


ぎゅっ!

武内P「っ!? う、おおっ!? 手に何かが!?」

早苗「あたしよ」

武内P「あの……どなたd」

早苗「あたしよ」

ぎゅううっ!

武内P「っ!? 手が! 手が!」


瑞樹「凄い握手会だわ」

楓「ふふっ! 握手は、好手……うふふっ!」

898: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:37:38.65 ID:AA+m6EZ1o
武内P「お、お願いします……どうか、手を!」

早苗「手を?」

ぎゅううっ!

武内P「は、離して下さい!」

早苗「あたしの胸が小さくなったら、なんで見えなくなるのよ?」ニコッ!

ぎゅううっ!

武内P「っ……!?」


武内P「そのお話は、後ほど……!」

武内P「アイドルの方と手をつなぐのは、その……いけません……!」


早苗「……」

早苗「え、そっち?」

899: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:43:38.00 ID:AA+m6EZ1o
  ・  ・  ・

瑞樹「……っぷふっ! に、似合うわ……!」ピクピク…!

楓「あの、一緒に写真を撮っても良いですか?」ニコニコ!


早苗「駄目に決まってるでしょ!?」

早苗「――よりによって、とときら学園のスモック!?」


武内P「……その」

武内P「とても……その、はい……似合っています」


早苗「そうね! あたし、童顔だもんねぇ!?」


瑞樹「っふうっ!? あ、あはっ、あはははは!」ケラケラ!

楓「一枚だけ。お願いします、一枚だけで良いですから」ニコニコ!

900: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:49:05.96 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「に、似合うわ! あはっははは!」ケラケラ!

早苗「もうヤケクソよ! セクシーでしょ!?」ウッフン!

楓「は~い♪ 撮りま~す♪」ニコニコ!


楓・早苗「♪」ニコッ!

…パシャッ!


早苗「――だから! 撮らないでって言ったわよね!?」


武内P「……良い、笑顔でした」

瑞樹「カメラを向けられたら笑顔になるあたり、アイドルよねぇ」

901: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 21:54:50.68 ID:AA+m6EZ1o
早苗「もう……どうしてこんな事に……!?」

武内P「朝起きたら、‘そう’なっていた……と?」

早苗「そうよ! 寝て起きたら、‘こう’なってたの!」

武内P「……前日の夜に、何か変わったことは?」


早苗「別に、何もしてないわよ!」

早苗「瑞樹ちゃんの家で、皆で飲んでて……!」

早苗「酔った勢いで、痩せるクリームを胸に塗って……!」

早苗「……変わった事なんて、別に何もしてないったら!」


武内P「…………」

武内P「……」


武内P「あの」

902: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:00:01.16 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「待って、早苗ちゃん」

武内P「! 川島さん……」

早苗「な、何よ? そんな顔して……」

瑞樹「……」


瑞樹「私が買い出しに行ってる間、そんな事してたの!?」

瑞樹「あのクリーム、高かったのよ!?」


武内P「!? 待ってください!」


早苗「楓ちゃん以外は全員使ったわ!」

楓「私は……これ以上痩せたらダンスが」

早苗「……はぁ~、羨ましいわ~」


武内P「お願いします! どうか、話を!」

903: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:06:18.88 ID:AA+m6EZ1o
武内P「塗ったという、痩せるクリームが原因では!?」

瑞樹「あり得ないわ」

武内P「えっ?」

瑞樹「……あのねぇ」


瑞樹「痩せるクリームだって、そんなに効果は無いわよ」

瑞樹「注意書きには――」

瑞樹「――効果には個人差があります」

瑞樹「――体に異常を感じた場合、すぐお近くの医師に相談を」

瑞樹「……って書いてあるけど、ねぇ?」


早苗・楓「うんうん」コクコク!


武内P「待ってください!」

武内P「あの……これは、異常では!?」

904: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:13:28.58 ID:AA+m6EZ1o
楓「――プロデューサーは、アイドルの事を知っている」

武内P「高垣さん?」

楓「だから、心当たりは無いかと思って……」

武内P「あの、クリーム……高垣さん?」


楓「早苗さんは、アイドルの仲間であり――」

楓「――大事な、お友達です」

楓「確かに、今の早苗さんは可愛らしいけれど……」

楓「……あら?」

楓「――可愛い、かはいい、ですか? 置いておいて」

楓「……う~ん、イマイチ」


早苗「あの……もうちょっと深刻になれない?」

武内P・瑞樹「……」

905: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:21:27.17 ID:AA+m6EZ1o
楓「ふふっ! 深刻な申告は、深呼吸をしてから……うふふっ!」


瑞樹「……駄目だわ。羽みたいに軽く見てる」

早苗「もう……どうすれば良いのよ……!」

武内P「医師の方へ相談してみては?」

早苗「医者に? どうしてよ!」

武内P「えっ!? どうしてと、言われましても……」


早苗「豊胸手術でもすれば良い、って言うの!?」

早苗「タイホするわよ!? タイホ!」


武内P「ち、違います!」

武内P「皮膚科に! いや……皮膚科……!?」

武内P「とにかく、医師の方にご相談を!」

906: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:28:21.28 ID:AA+m6EZ1o
早苗「セクシー……すぎるから!」

早苗「――あたし、もう少し胸が小さくても良いわー」

早苗「なんて言ってた昨日のあたしをタイホしたいわよ!」カーッ!


瑞樹「勝手に使ったから、とりあえず窃盗罪だわ」


早苗「このままじゃ、アイドルなんて続けられない……!」ブンブン!


瑞樹「聞きなさいよ」

瑞樹「っていうか、本当に楓ちゃん以外全員使ったの?」


早苗「――また、婦警に!」

早苗「合法ロリータ・キューティーポリスになるしかないじゃない!」


武内P「……少し、乗り気ですね」

瑞樹「……前向きだわ。で、どうなの楓ちゃん?」

楓「すみません……焼酎が美味しくて、覚えていなくて……」

907: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:38:30.71 ID:AA+m6EZ1o
武内P「……片桐さん」

早苗「何よ!?」

武内P「アイドルは、今のままでも続けられます」

早苗「いい加減な事言わないで!」


武内P「笑顔です」


早苗・瑞樹「はっ?」


武内P「片桐さんの笑顔の輝きは、何一つ変わっていません」

武内P「貴女が笑顔になった時は――」

武内P「――とときら学園のスモックを着ていなくても」

武内P「私にも、貴女の姿が確認でき」

楓「……!」

バシッ!

武内P「ったぃ……すみません」

908: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:42:21.31 ID:AA+m6EZ1o
瑞樹「そうね……彼の言う通りだわ」

早苗「瑞樹ちゃん……」

楓「早苗さん、一緒に――笑顔で!」

早苗「楓ちゃん……」


早苗「二人とも……!」ウルッ!


瑞樹「今の気持ち、わかるわ」

楓「はい。けれど……」

早苗「……ええ、そうね!」


早苗・瑞樹・楓「ふふっ♪」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

909: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:47:03.44 ID:AA+m6EZ1o
  ・  ・  ・

ちひろ「あ、あの……それで!?」

武内P「痩せるクリームの効果は一時的なものだったらしく……」

ちひろ「えっ!?」


武内P「ご自宅に帰り、やけ酒をして寝たら――」

武内P「――元に、戻っていたそうです」


ちひろ「どうして、一時的なものなんですか!?」


武内P「? 千川さん?」

ちひろ「……なんでもありません」

武内P「……?」

910: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 22:52:32.19 ID:AA+m6EZ1o
武内P「ですが……とても役に立つ情報でした」

ちひろ「えっ?」

武内P「一時的にせよ、効果があるようですので」

ちひろ「……ああ」


ガチャッ!

かな子「――おはようございます♪」ニコッ!

かな子「プロデューサーさん、ちひろさん♪」ニコニコ!

かな子「良いクリームがあるから、って……」ニコニコ!

かな子「えへへ、どんなクリームなんだろう~♪」ニコニコニコニコッ!


ちひろ「……なるほど」

武内P「……」

911: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/25(木) 23:00:26.76 ID:AA+m6EZ1o
武内P「三村さんに、是非試していただきたいクリームが」

スッ…

かな子「わぁ~! ステキな容れ物ですね~♪」ニコニコ!

武内P「これは、痩せるクリームです」

かな子「……えっ?」


武内P「効果に個人差があるようですが、試してみて下さい」

武内P「……もうすぐ、LIVEがあります」

武内P「今は、お腹が……その……大きく……はい」


かな子「えっ、と……」

かな子「あれ? 痩せるクリーム……?」

かな子「――食べるクリームじゃ、ないんですか!?」


武内P「はい」

武内P「ですが、万が一にでも効果が得られた場合――」



武内P「美味しいから、大丈夫です」




おわり

913: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 21:51:29.85 ID:R+ERJxi7o
書きます


武内P「私の挨拶がおかしい……と?」

914: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 21:56:04.93 ID:R+ERJxi7o
美嘉・奏「そう、おかしい」

武内P「すみません……自分では、よく」

美嘉・奏「……本気で言ってる?」

武内P「はい……言っています」

奏「どうやら……本気で言ってるみたいね」

美嘉「これは……ちょっと、聞き込みが必要じゃない?」

武内P「あの、聞き込みとは……?」


美嘉・奏「……」

スタスタスタスタ…


武内P「……行ってしまった」

915: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:01:31.83 ID:R+ERJxi7o
  ・  ・  ・

美嘉「――と、言うワケで!」

奏「――何か、知ってるんじゃない?」


周子「んー……」

周子「……いや、何の話?」


美嘉「アイツの挨拶、おかしいんだって!」

奏「きっと、特別な事情があるに違いないわ……」


美嘉・奏「……フレちゃんと挨拶する時、手を振ってるのは!」


周子「あー……あれかー……」

916: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:05:46.15 ID:R+ERJxi7o
美嘉「! やっぱり、何か知ってるんだ!?」

奏「ふふっ、読みが当たってたみたいね」

周子「まあ、知ってるけど……」


周子「二人は、知ってどうするつもりー?」


美嘉・奏「…………」

美嘉・奏「…………別に?」


周子「……」

周子「そっかー、なんとなく、って感じかぁ」

917: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:11:19.36 ID:R+ERJxi7o
周子「ま、良いよ。教えたげる」

美嘉・奏「!」

周子「それで、何から聞きたいの?」

美嘉・奏「どうして、手を振るようになったか」


周子「見返りは?」ニヤリ


美嘉「歴史の話になるケドさ、京都で池田屋事件ってのがあったよね★」

奏「新選組が襲撃した事件……今度は、何処が襲撃されるのかしらね?」


周子「……そうきたかぁ」

918: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:15:24.83 ID:R+ERJxi7o
周子「ま、大した事じゃないから良いか」

美嘉・奏「!」

周子「丁度、二週間くらい前の事だね」

美嘉・奏「一体……何が?」


周子「フレちゃんって、挨拶する時いつも笑いかけてくるよね?」

周子「そんな感じで、あの人にも笑いかけたんだよねー」


美嘉・奏「……それだけ?」


周子「いやいや、それだけじゃないって」

周子「もう、ひたっすら手を振り続けたんだわ」


美嘉・奏「……」

美嘉・奏「はい?」

919: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:19:08.41 ID:R+ERJxi7o
周子「こんな感じで――」ニコッ!

ひらひらひらひらひらひら…

周子「――ず~っと……さ」ニコニコ!

ひらひらひらひらひらひら…


美嘉「いやいや、ちょっと待って?」

奏「ねえ、本当にそれだけなの?」


周子「それだけだよー」

周子「右手が限界に来て、途中から左手にしてたけどね」


美嘉・奏「……」

美嘉「右手は限界を迎えたの!?」

奏「何が、フレデリカをそこまで……!?」

920: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:24:08.90 ID:R+ERJxi7o
周子「理由は……なんとなくじゃない?」

美嘉「……有り得るのが困る!」

周子「あれだけされたら、手を振り返すしかないよねぇ」

奏「……観念して、って事なのかな?」

周子「ま、そういう事」


周子「参考になった?」


美嘉・奏「まあ……なった」


周子「そっかそっか、役に立てて良かったよー」

周子(あたしも一緒にやってて――)

周子(――手を振ったら振り返してくれるのは、黙ってた方が良さそうだね)

921: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:31:49.58 ID:R+ERJxi7o
  ・  ・  ・

美嘉「手を振り続けたら、振り返してくるようになる……ね」

奏「思ってたより、簡単な方法だったわね」

美嘉「ちなみに……奏は、どうして?」

奏「手を振り返して欲しいか、って?」

美嘉「うん」


美嘉「ちなみにアタシは、なんか面白くない、って言うか?」

美嘉「付き合いが長いのに、アレ? 何ソレ? 的な?」

美嘉「……じゃ、なくってぇ!」

美嘉「……」

美嘉「なんとなくってカンジ★」ビシッ!


奏「美嘉、別に聞いてないんだけど」

922: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:38:40.00 ID:R+ERJxi7o
美嘉「アタシのコトはどーだってイイじゃん!」

奏「まあ、私は……興味があるから、かな?」

美嘉「……興味?」

奏「そう、興味」


奏「ほら、だってカレってチャーミングじゃない」

奏「それでいて、手強い所がムキにさせてくれるの」

奏「そんなカレが、ちょっと照れくさそうに手を振ったりしたら……」

奏「……――チャーメスト」

奏「チャーム、チャーマー、チャーメスト……でしょう?」


美嘉「奏って、英語苦手だったっけ?」

923: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:44:07.37 ID:R+ERJxi7o
美嘉「まっ……ここに隠れておいてアイツが来たら――」

奏「――順番に挨拶する、って所かしら?」

美嘉「どっちが先に行く?」

奏「それじゃあ、先は譲るわ」

美嘉「ん? どうして?」

奏「後から追いかける方が、燃えるじゃない?」



武内P「……」



美嘉・奏「!」

美嘉・奏「来た……!」

924: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:48:43.74 ID:R+ERJxi7o
武内P「……」


美嘉「――おはよっ★」ニコッ!

ひらひらっ


武内P「城ヶ崎さん……」


美嘉「ンフフッ★」ニコニコ!

ひらひらひらひら…


武内P「――おはよう、ございます」

武内P「今日の城ヶ崎さんの笑顔は……」

武内P「……いつにもまして、輝いていますね」ニコリ


美嘉「…………」

…ひらっ

925: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:54:11.24 ID:R+ERJxi7o
  ・  ・  ・

美嘉「――いつにもまして、輝いていますね」ニコリ

美嘉「って……も――っ!★★★★★★」ニパー!

美嘉「ねねね! 見てた? ねえ、見てた?」ニマニマ!

美嘉「こんな朝から、急に褒めるとかさー★」ニヤニヤ!


奏「ええ、見てたわ」


美嘉「……うはーっ!/// ハッズ――イ!///」テレテレ!

美嘉「いつにもまして……ってさ」

美嘉「いつも見てるってコトじゃん!/// えーっ!///」ヤンヤンッ!


奏「ええ、見てられないわ」

926: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 22:58:52.09 ID:R+ERJxi7o
奏「美嘉、とりあえず落ち着いて」

美嘉「奏にもぉ、お・す・そ・わ・け★」ニコッ!

奏「……おすそわけ?★」

奏「っ!?」

美嘉「そっ★ カリスマ、似合うじゃーん★」

奏「……ちょっと、本当にやめて」

美嘉「ゴメンゴメンゴ★」テヘペロ!


奏「美嘉、貴女……目的を忘れてない?」


美嘉「……目的?」

美嘉「……」

美嘉「――はっ!?」

927: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 23:04:01.26 ID:R+ERJxi7o
美嘉「……け、結果オーライじゃ?」

奏「無いわよね?」

美嘉「……無いよね、うん」

奏「はぁ……どうして貴女って……」


奏「――良いわ。そこで見てなさい」

奏「手を振ったら、振り返して貰う……なんて事は言わないわ」

奏「私、速水奏の――リーダー的な」

奏「リーダー的、朝の挨拶のやり取りを見せてあげる」


美嘉「リーダー的、って……」

美嘉「……何をして、何を返させるつもりなの……?」

928: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 23:12:50.72 ID:R+ERJxi7o
  ・  ・  ・

武内P「……」


奏「――おはよう、今日もチャーミングね」ニコッ!


武内P「速水さん」

武内P「おはよう、ございます」


奏「――んっ ♡」ニコッ!

Chu ♡


武内P「……いや、あの……えっ?」



美嘉「……!?」

美嘉(リーダー!? 投げキッスは無理だって!)

美嘉(むしろ、なんで返してくると思ったの!?)

929: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 23:18:46.36 ID:R+ERJxi7o
奏「……んっ ♡んっ ♡」ニコッ!

Chu ♡Chu ♡


武内P「……は、速水さん?」


奏「んっ ♡んんっ ♡んっ ♡ん~っ ♡んっ ♡んっ ♡んっ ♡ん~っ ♡んっ ♡」ニコニコッ!

Kiss ♡me ♡chu ♡chu ♡chu ♡chu ♡chu ♡chu ♡lip ♡


武内P「り……リズムに乗られましても……!?」


奏「……!///」

スタスタスタスタスタスタ!


武内P「……」




美嘉「……だよねー」

930: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 23:25:12.38 ID:R+ERJxi7o
  ・  ・  ・

奏「……話が違うじゃない」

奏「ちょっと手をこう、唇に当ててから振るだけでしょう?」

奏「なのに……どうして返してこないのかしら」

奏「……もしかして、勘違いしてたのかな」


美嘉「ねえ、返されても困らない?」


奏「私、カレにとってどうでも良い存在だったのかしら」

奏「……ふふっ、だとしたら笑っちゃうわ」

奏「それなのに、あんなに必死になって……」

奏「……本当、馬鹿みたいね」


美嘉「まあ、それは本当じゃない?」

931: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 23:39:52.64 ID:R+ERJxi7o
美嘉「まあ……アタシはこのままでも十分かな」

奏「へぇ?……私、案外諦めの悪い女なの」

美嘉「アレ、諦める諦めない以前だった気がするんだけど……」

奏「そう? 続けてれば、観念するんじゃないかしら」

美嘉「それじゃあ……まあ、そういう事で」

奏「……なんだか、納得がいってなさそうね」


美嘉・奏「……はぁ」


美嘉「……とりあえず、レッスン行こうか」

奏「……そうね、そうしましょ」

932: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/26(金) 23:57:49.39 ID:R+ERJxi7o
  ・  ・  ・

武内P「私の挨拶がおかしい、と」

武内P「……そう、言われました」

武内P「確かに、考えてみれば一部の方に対して……」

武内P「……やむを得なく、手を振っていました」

武内P「ですが――」


志希「だったら、あたしのヨーキューはノープロブレ~ム!」

志希「ハグしてキス位、フツーだってー!」

志希「おかしい方が楽しいけれど、挨拶はフツーで良いよん♪」ニコッ!


武内P「――それは、あまりにアメリカンすぎます!」


志希「もしかして、やらしいコト考えてる~?」ニマニマ!

志希「にゃははははは♪」



武内P「……本当に、とんだご挨拶ですね」




おわり

939: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 05:34:56.69 ID:oKo23ZNDO
ありす「欲情……するんですね」スリスリ


武内P「それが……私たちに笑顔をもたらすなら」




ありす「あぅっ! っあ、くっ……う――、うぁ゛ァッ!!」

940: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 14:58:04.10 ID:OgbER7HMo
書きます


武内P「格闘技、ですか」

941: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:00:58.45 ID:OgbER7HMo
拓海「ああ、アタシは強くなりてえんだ」

武内P「……頑張って下さい」

早苗「それはつまり、応援するって事よね?」

武内P「……あの」


拓海「っつー事はよぉ! 相手、してくれんだよな?」

早苗「君なら、訓練相手に丁度良さそうだと思ったのよ!」


武内P「……」

武内P「その話、お受けできません」

942: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:03:54.01 ID:OgbER7HMo
拓海「あぁん!? 断るっつーのか!?」

武内P「はい、申し訳ありませんが……」

早苗「どうしてよ? 別に、それ位良いじゃないの」

武内P「……」


拓海「アンタ相手なら、遠慮する必要はねぇからな!」ニカッ!

早苗「体も大きいし、頑丈そうだし……ねっ? お願い♪」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「……」

武内P「ですが、お受けできません」

943: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:08:12.18 ID:OgbER7HMo
  ・  ・  ・

レッスンルーム


早苗「――良い? あたしの指示には、ちゃんと従うのよ!」

拓海「はいはい、わーってるよ」

早苗「返事は一回!」

拓海「っ~~はいっ!……これで良いんだろ、これで!」


早苗「今日の特訓は、実戦を想定してやるわ」

拓海「だから、シャツにショーパンの普段着なんだろ」


武内P「……」

武内P「……何故、こんな事に」

944: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:10:49.78 ID:OgbER7HMo
早苗「とか何とか言って、ちゃんと準備してくれたじゃないの」

拓海「おぉ! こんなでかいマットレスあったんだな!」

武内P「これは……アクションシーンの練習に使うものです」

早苗・拓海「へー!」

武内P「万が一にでも、怪我があってはいけませんから」


拓海「上等だよ! アタシが怪我なんかするワケねえだろ?」ニヤリ!

早苗「油断は禁物よ。これ、強くなるための条件の一つね」


武内P「……」

武内P(本当に……怪我をしたく、ありませんから)

945: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:13:01.79 ID:OgbER7HMo
拓海「アンタは着替えなくて良いのか?」

武内P「えっ?」

早苗「スーツは男の戦闘服……って事でしょうね」

武内P「えっ?」


拓海「チッ! だったらアタシも、特攻服で来るんだったぜ!」

早苗「激しい訓練になるけど、頑張りましょ!」


武内P「!?」

武内P「そ……そこまで激しい訓練をするのですか!?」

946: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:20:28.18 ID:OgbER7HMo
早苗「あたしが今日教えるのは――テクニック!」

拓海「喧嘩だけじゃあ身につかねえ技術……だな」

早苗「勿論! これを喧嘩に使うのは禁止よ!」

拓海「わかってる! 何度言わせんだって!」


拓海「アタシは、最強――テッペン目指してるだけだ!」

早苗「拓海ちゃんの炎に、技という水が合わされば……」


拓海・早苗「すなわち、最強!」ニカッ!


武内P「待ってください!」

武内P「その相手をする私は、無事でいられますか!?」

947: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:27:39.68 ID:OgbER7HMo
早苗「あたしに稽古をつけて欲しい、な~んて珍しいと思ったら……」

拓海「有香の奴……また、強くなってやがったからな」

早苗「同年代にライバルが居るって良いわよねぇ」

拓海「早苗……さん! が、たまに練習相手してるからだろ!」


拓海「……まぁ良い、とっととおっぱじめようぜ!」

早苗「ビデオで撮影して、後で確認するから存分にやんなさい!」


武内P「……」

武内P「待ってください! あまりに本格的すぎます!」

948: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:31:15.16 ID:OgbER7HMo
早苗「それじゃあ、まずは――」

早苗「――右手で、掴みかかろうとして!」


武内P「は……はぁ」

スッ―


早苗「拓海ちゃん! その右手を掴んで――」


拓海「おうよ!」

ガシッ!


早苗「引き込むようにして、グラウンドに持ち込む!」


拓海「おっしゃあ!」

グイッ!

武内P「っ!?」


―ズダンッ!

949: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:35:11.25 ID:OgbER7HMo
武内P「っ……あ、あの! 大丈夫ですか!?」

拓海「早苗さんよ! こっからどうすんだ!?」


早苗「今は、相手が上になってるわよね!」

早苗「つまり、もの凄く不利な状態なの!」


武内P「……」

武内P「っ!? す、すみませ――」


早苗「だから、両足で相手の胴体を挟む!」

早苗「しっかりホールドして、マウントを取られないように――」

早苗「――ガードポジションを取るのよ!」


拓海「っらぁ! こうか!」

ガシィッ!

武内P「っぐ!?」

950: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:41:39.87 ID:OgbER7HMo
早苗「……一見、不利に見えるその体勢」

早苗「――でも!」

早苗「そこからの展開次第では一気に勝ちに持ち込めるわ!」


拓海「チッ! やっぱりデケエな!」

拓海「挟んだ足が、安定しねえ!」


早苗「腰の動きで、位置を調整するのよ!」


拓海「腰の動き?……こうか?」

……クイッ、クイッ

拓海「こうだな! へへっ、コツが掴めてきたぜ!」

クイッ、クイッ!


早苗「良いわね! すっごく良い感じよ!」


武内P「…………」

武内P「待ってください! これは、いけません!」

951: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:46:14.04 ID:OgbER7HMo
武内P「この体勢は、その……い、一度離れ――」

ぐっ…!

拓海「う、おっ……!?」


早苗「逃しちゃ駄目よ! 打撃がくるから!」

早苗「両手で、相手の服を掴んで――」


拓海「!」

ガシッ!

武内P「!?」


早苗「自分の方に、引き寄せなさい!」


拓海「オラァァ!」

グイッ!

武内P「――っ!?」

武内P「い……いけません! いけません!」

952: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:52:10.17 ID:OgbER7HMo
早苗「その距離になれば、打撃の威力はほとんど出ないわ!」

早苗「その状態から、さらに足で相手の胴体をシメる!」


拓海「っしゃあ!」

ガシィッ!

武内P「待ってください! 待ってください!」

グイグイッ!


早苗「暴れられても、さっきみたいに腰を動かして対応!」

早苗「相手の動きに、しっかり合わせるの!」


拓海「こうか! へへっ、こうだろ! オラァ!」

クイッ! クイッ! クイ~ッ! ククイッ!

武内P「お願いします! もう、勘弁してください!」

953: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 15:56:28.30 ID:OgbER7HMo
早苗「――見てみなさい! 相手の表情を!」


拓海「相手の表情……?」

武内P「っ……!///」

拓海「顔が真っ赤になってやがんぞ!?」


早苗「顔が近いから、よくわかるわよね!」

早苗「それ、胴体をしめられて苦しんでるのよ!」


武内P「ち、違います!/// これは……!///」

拓海「あぁん!? だったらもっと……シメてやんよ!」

ガシィッ! グイッ! グイグイッ! グイ~ッ!

武内P「う……お、おおっ……!?///」


早苗「あれ……? なんか、変な感じが……」

早苗「……」

早苗「ま、気のせいよね!」

954: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 16:03:34.70 ID:OgbER7HMo
武内P「……!///」

武内P(落ち着け……!)

武内P(これは、あくまでも格闘技の訓練……!)

武内P(ならば、今の私にできることは――)


武内P「――南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……!」


拓海「はっは! 念仏を唱えだしたぜ、オイ!」

拓海「こりゃあ、相当キテるって事だよなぁ!」

グイッ! グイッ! グインッ!

武内P「南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経!」


早苗「――今よっ!」

早苗「相手に隙が出来た今、上と下を入れ替えるの!」


拓海「っしゃあ!」

ガバッ!

武内P「なむっ!?」


―ズダンッ!

956: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 16:09:13.64 ID:OgbER7HMo
早苗「さあ! ここからが本番よ!」


武内P「つっ……つ……!」

拓海「おいおい、大丈夫か?」

武内P「え、ええ……」


早苗「マウントポジションを取った――」

早苗「――拓海ちゃんが上を取った、今からが!」

早苗「逆襲のチャンス! キメるわよ!」


拓海「――お楽しみは、これからだろ?」ニンマリ!

武内P「……」


武内P「……!?///」

957: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 16:14:59.84 ID:OgbER7HMo
武内P「ど、どいてください!/// 向井さん!///」

グンッ! グンッ!

拓海「っ!? ブリッジで、アタシを跳ね除けようと……!?」

ヨロッ…


早苗「足腰の力で、バランスを取りながら耐えるの!」

早苗「両手で、相手の上半身を抑え込むのも有効よ!」


拓海「――こうかっ!」

ガシィッ!

武内P「本当に!/// この体勢はいけませんから!///」

グンッ! グンッ! グゥンッ!

拓海「くっ、ふうっ!? 下になってるってのに、ヤベえ!」


早苗「うん……? やっぱり、変な感じが……」

早苗「……」

早苗「ま、気のせいよね!」

958: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 16:21:19.11 ID:OgbER7HMo
拓海「このっ……! アタシを舐めんじゃねえぞ!」

グインッ! グッ! グイ~ッ!

武内P「そういう問題ではなく!///」

グンッ! グンッ! グゥンッ!

拓海「くっ、オラッ! ヘヘッ、慣れてきたぜぇ!……オラッ!」

ドスンッ!

武内P「ふ、ぐっ!?」


早苗「上手い!」

早苗「タイミングよく相手の腰を地面に叩き落として――」

早苗「――完全に、主導権を握ったわ!」


拓海「……っつー事で、観念しろ?」ニヤリ!

クイッ! クイッ!

武内P「……!?///」

960: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 16:27:28.15 ID:OgbER7HMo
  ・  ・  ・

ガチャッ!

有香「――押忍!」

有香「ここで特訓をしていると聞いて――」



拓海「オラオラァ! もうヘバったのかぁ!」

クイッ! クイッ!

武内P「待ってください!/// 待ってください!///」

早苗「拓海ちゃん、すっごく良い感じよ!」

拓海「ヘッ! アタシは、特攻隊長向井拓海だぜ!」

クイッ! ククイッ! クインッ!

拓海「炎も水も――」


拓海「熱くってたまらねえ! それに、大洪水だぜ!」



有香「……!?///」

バタンッ!

962: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 16:34:03.06 ID:OgbER7HMo
  ・  ・  ・

武内P「……」ゲッソリ

拓海「ふぅ~っ! いい汗かいちまったぜ!」ツヤツヤ!

武内P「……」ゲッソリ

拓海「……ありがとな、付き合ってもらってよ」キラキラ!

武内P「……はい」ゲッソリ

拓海「だが……これでアタシは、最強に近づいたな!」ニコニコ!


拓海「それでよ……なんだ……」ソワソワ!

拓海「……また、相手して貰っても良いか?///」チラッ!


武内P「……待ってください」ゲッソリ

武内P「今は……その、何も考えられません」ゲッソリ

963: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/27(土) 16:42:03.37 ID:OgbER7HMo
  ・  ・  ・

有香「……いや、きっと勘違いです!」

有香「あれも、何かの修行に違いありません!」

有香「……ん、あれは――」



早苗「――それじゃ、これからビデオの確認よ!」

拓海「――おう! 楽しみでしょうがねえぜ!」

早苗「あら! 随分とやる気じゃない!」

拓海「当然だろ! テクニックってやつを身に着けんだから!」



有香「~~っ!///」



拓海「そのためには、道具も上手く使いこなさねえと、な」



有香「ハイレベルすぎてついていけません、押忍!!///」




おわり

973: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:18:54.51 ID:Wh1KEvtWo
書きます


武内P「値切り交渉、ですか?」

974: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:21:30.98 ID:Wh1KEvtWo
早苗「そうよ! せっかくの海外ロケなんだし!」

武内P「はあ……」

拓海「チッ! 値切りなんて面倒だろ!」

早苗「何言ってんのよ、拓海ちゃん!」


早苗「相手に言われるがまま物を買ってご覧なさい!」

早苗「あっ、という間にお金が無くなっちゃうんだから!」


拓海「……そりゃあ、あんまり面白くねえな」

武内P「……」

975: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:24:42.66 ID:Wh1KEvtWo
早苗「でしょう? だから、値切りは重要なの!」

武内P「そういった交渉が出来るお店は、限られていますが」

早苗「そっ! だから、君に着いてきて貰ったんじゃない」

拓海「まあ、確かに――」


武内P「……」


通行人A「……」チラッ

通行人B「……」チラッ


拓海「――アンタの見た目なら、海外でも舐められねえみたいだ」

武内P「……」

976: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:28:14.24 ID:Wh1KEvtWo
早苗「か弱い女の子二人で歩き回るのは危ないしねぇ」

拓海「あぁ!? か弱いだぁ!?」

早苗「何? 何か言いたげだけど?」

拓海「当たり前だろ!」


拓海「か弱いも、女の子二人ってのも間違っt」

早苗「――何? 何か言いたげだけど?」


拓海「……チッ! 何でもねえよ!」

武内P「……」

977: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:33:50.99 ID:Wh1KEvtWo
早苗「とにかく! ちゃ~んと値切り交渉をして、上手に買い物をする!」

早苗「……それとも~、特攻隊長が買い物一つ怖がるのかしら?」

拓海「んなワケあるか! 値切り上等だよ、コラァ!」

早苗「よーし、その意気よ!」


武内P「あの……すみません」

武内P「大事な話があると、仰っていたのは?」


早苗「? 嘘よ?」


武内P「……そう、ですか」

978: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:38:43.25 ID:Wh1KEvtWo
早苗「それじゃ、まずはあたしがお手本を見せるわね」

拓海「ヘッ! お手並み拝見といこうじゃねえか!」

早苗「よ~く見てなさい。目を離したら――タイホしちゃうわよ」

武内P「……大丈夫です、帰りませんから」


早苗「拓海ちゃん、彼をちゃんと見張っててね」

早苗「じゃないと、自分達で荷物を持って帰る羽目になるんだから」


拓海「早苗さん……マジで容赦ねえな」

武内P「……わかっては、いました」

979: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:45:22.38 ID:Wh1KEvtWo
  ・  ・  ・

武内P「……あの店に、決めたようですね」

拓海「服やアクセまで……色々ある店だな」

武内P「……では、見学しましょう」

拓海「おう、そうだな」



早苗「ワーオ! イッツ、キュート!」パアッ!

早苗「ハウマッチ、イズイット?」ニコッ!

むぎゅっ!


店員「OH……!///」



拓海「うおいっ!? いきなり胸を寄せて見せたぞ!?」

武内P「そ……そう、ですね」

980: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:53:17.87 ID:Wh1KEvtWo
武内P「――ですが、重要なのは……笑顔です」

拓海「あぁ?」ギロッ!

武内P「笑顔で、好印象を相手に与えています」

拓海「……」



店員「50 dollars」


早苗「オーノォー!」ガーン!

ゆさゆさっ!

早苗「イッツマッチトゥーエクスペンシブ!」イヤイヤン!

ゆっさゆっさ!



拓海「胸だろ!? なあオイ、重要なのは笑顔じゃねえよなぁ!?」

武内P「…………すみません」

981: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 22:58:59.19 ID:Wh1KEvtWo
武内P「し、しかし! やはり、笑顔が!」

拓海「アタシは嫌だからな!? あれをやんのはよ!」

武内P「わ、私に言われましても……」

拓海「っ……!」



早苗「ディスカウント! ディスカウント、プリーズ!」キャルンッ!

ゆさっ!

店員「O……OK!///」デレデレ!

早苗「ワーオ! サンキュー♪ サァンキュー♪」ニコニコッ!

ゆさゆさっ!


武内P「…………良い、笑顔です」

拓海「ひねり出すように言ってんじゃねえぞコラァ!」

982: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:03:36.26 ID:Wh1KEvtWo
  ・  ・  ・

武内P・拓海「……」


どっさり!


早苗「ふふっ! ま、ざっとこんな所よ!」

早苗「あのお店の男の子、チラチラ見てると思ってたのよねー!」

早苗「お姉さんのセクシーが、海を渡っちゃったみたいな?」


武内P「確かに……凄い量ですね」

拓海「わかってんのか? アンタが持って帰るんだぞ?」

武内P「……はい」

983: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:10:36.40 ID:Wh1KEvtWo
早苗「でも、良い買い物したわ~!」

武内P「ちなみに……全部で、おいくらだったのでしょうか?」

早苗「さあ? いくらだったかしら?」

拓海「……はっ?」


早苗「もう、持ってる現金分は買えるだけ買おうと思って」

早苗「カードもあるしー、後で引き落とせば良いしー?」

早苗「だけど……結構な赤字になったんじゃないかしら」

早苗「……本当、セクシーって罪ね」フッ…


武内P「……あの」

拓海「アンタ、鬼か!?」

984: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:16:12.50 ID:Wh1KEvtWo
早苗「鬼じゃないわよ、セクシーよ」

拓海「メシは食って帰るとか言ってただろ!?」

早苗「言ったわよ?」チラッ

武内P「……えっ?」


早苗「――さあ、次は拓海ちゃんの番よ!」

早苗「今のを参考に、上手に値切って買い物してくるの!」


武内P「待ってください!」

武内P「何故、先程私の方を見たのですか!?」

拓海「今のを参考に!?」

拓海「アタシに、あんま真似をしろってのか!?」

985: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:22:01.21 ID:Wh1KEvtWo
早苗「大丈夫よー! 発音なんて、割とテキトーで通じるから!」ケラケラ!

拓海「言葉の心配をしてんじゃねえんだよ!」

早苗「? じゃあ、何が不満なのよ」

拓海「あんなみっともねえ真似が出来るか!」


早苗「ビビってんの?」


拓海「泥須火運斗上等だコルァァ!」


早苗「そうよ! その意気!」

武内P「あの、片桐さん!? まさか、私に奢れと!?」

986: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:28:50.06 ID:Wh1KEvtWo
拓海「でもなぁ! やるからには、アタシ流だ!」

早苗「はっ?」

拓海「アタシの熱い魂で、没汰苦離を燃やし尽くしてやんよ!」

早苗「……ふっ、面白い事言うじゃない」


早苗「――それじゃあ、見せて貰うわ!」

早苗「拓海ちゃん流の値切り交渉術を!」


拓海「――おぉよ、見とけ!」

拓海「仏恥義理の泥須火運斗で、火の車にしてやんよ!」


武内P「待ってください! 店員の方は、既に半泣きで……」

武内P「私も、気を抜くと彼と同じ表情をしてしまいそうです!」

987: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:35:09.77 ID:Wh1KEvtWo
早苗「……やっぱり、骨のある子は良いわね!」

武内P「あの、はい……片桐さん?」

武内P「遠慮しましたが……片桐さんが奢る、という話だった筈では……」

早苗「しっ! 拓海ちゃんが、店員くんに話しかけるわ!」

武内P「……」



拓海「――おう」

拓海「ちょっと、色々と見せて貰うぜ」


店員「イ……イラッシャィマセー!」

店員「トテモ、イイモノ、イッパイアルヨー!」



早苗「あの子、日本語出来たんじゃないの!」

武内P「……あるある、ですね」

988: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:42:20.67 ID:Wh1KEvtWo
  ・  ・  ・

拓海「今日は駄目な日で……もう店じまいするから、って」

武内P「……はい」

拓海「お姉さんに似合うだろうから、って」

武内P「……そう、ですね」


拓海「貰った」

…キランッ!


早苗「ざっっっけんじゃないわよ!」

早苗「はぁ!? なんじゃそら!」

989: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:47:36.79 ID:Wh1KEvtWo
早苗「何々? どういう事?」

拓海「いや……このアクセ、マブいじゃねえか、って」

早苗「そうね、うん。ステキなブレスレットね、はいはい」

拓海「あの店員が作ったらしく……その……」

早苗「へー! そうなんだー!」


拓海「……スイマセンした!」ペコリ!


早苗「ねえ、なんであたし謝られてるの?」

早苗「あはは、ちょっとやだもー! なんで? ねえ?」

武内P「わ、私に聞かれましても……!?」

990: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/28(日) 23:54:27.88 ID:Wh1KEvtWo
拓海「……スイマセンした!」ペコリ!

早苗「わかんないわかんない、なんで謝るの?」

武内P「ですから、どうして私に……!?」

早苗「……とりあえず」


早苗「値切り交渉成功……」

早苗「……って事で、良いわね?」


拓海「本当……スイマセンした!」ペコリ!


早苗「だから! なんでガチ謝りしてんのよ!」

早苗「顔上げないと[バキューン]するわよ!?」

武内P「片桐さん! 海外とは言え、公衆の面前ですから!」

991: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/29(月) 00:07:26.32 ID:WkjcBmcko
  ・  ・  ・

早苗「んぐっ、んぐっ……プハーッ!」

武内P「片桐さん、もうその位で……」

早苗「はぁん!? まだまだこれからでしょ!?」

拓海「クソッ……逃げ遅れた……!」

武内P「……笑顔です」


早苗「――あ、もしもし?」

早苗「LINEで送った店で飲んでるから来てよ!」


拓海「ああ言ってるが……アンタ、奢る気か?」

武内P「……あまり、高額にはならなさそうですから」


武内P「笑顔のためならば――安いものです」


拓海「なんつーか……本当、バーゲンだな」




おわり

992: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/29(月) 00:11:23.87 ID:WkjcBmcko
bargain /バーゲン

1.安売り、格安品、お買い得品、特売品、掘り出し物
2.駆け引き、取引、(売買)契約

他動
1.〔値段を〕交渉で決める
2.予測する