前回 千歌「ポケットモンスターAqours!」 その7

873 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:14:08.48 ID:Q+x1d3Jo0

■Chapter063 『希の試し』 





──セキレイシティ。 


海未「さて……私たちは一足先に、持ち場につくことにしましょうか」 

ことり「うん!」 

真姫「そうね……」 

希「ん……三人とも結果を見届けなくて大丈夫なん? 教え子やないの?」 

海未「問題ありません」 

真姫「そうね」 

ことり「うん、だって……」 

海未「千歌は勝ちます」 
真姫「梨子が負けるはずないし」 
ことり「曜ちゃんは絶対勝ってくれるから!」 

希「……ずいぶん信頼しとるんやね」 


さて……お手並み拝見と行こうか。 





    *    *    * 





──流星山。 


千歌「ルカリオ!! “りゅうのはどう”!!」 
 「グゥァ!!!!」 

 「フーディン!!!!」 

フーディンがスプーンを曲げると、それにならうように波導が曲がって逸らされる。 


千歌「また、逸らされた……!!」 


遠距離攻撃じゃやっぱり分が悪い、 

なら距離を詰める!! 


千歌「“しんそく”!!」 
 「グワァ!!!」 


ルカリオが飛び出す。 

素早く回り込み、 

後ろから──!! 

だが、 


 「グ、ゥ……!!!」 


フーディンに触れる直前で、動きが止まる。 

874 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:15:38.74 ID:Q+x1d3Jo0

千歌「く……! “かなしばり”にされた……!」 

 「フーディン!!!!」 

 「グォァ!!!!」 


そのまま、“サイコキネシス”で吹っ飛ばされる。 


千歌「く、くそぉ……」 


近距離もダメ……。 

そもそもレベル差がありすぎる。 

正攻法じゃダメだ。 

考えろ……。 


千歌「……そもそも、一対一で戦う縛りとかないじゃん!」 


地上からでダメなら、空から! 


千歌「行け、ムクホーク!!」 


空へとボールを放る。 


 「ピィィイイイ!!!!」 

千歌「ムクホーク、“エアスラッシュ”!! ルカリオ、“ボーンラッシュ”!!」 
 「ピィィ!!!」「グァ!!!!」 


後方と、上空から同時に攻撃、 


千歌「どうだ!!」 

 「フーディン!!!!」 


だが、“エアスラッシュ”は軌道を曲げられ、 

“ボーンラッシュ”はスプーンで受け止められる。 

いや、受け止めたと言うことは触れること自体は全然不可能じゃないということだ。 


千歌「それがわかれば十分!! ムクホーク、“すてみタックル”!!」 
 「ピィィイイイ!!!!」 


飛び出すムクホーク、それと同時に、 

 「グゥォ……!!!!」 

 「フーディン!!!!」 

ルカリオが再び吹っ飛ばされる、 

ムクホークは、 

 「フーディン!!!!!」 

フーディンが片手を前に差し出して、サイコパワーで止められる。 


千歌「ルカリオ!! “バレットパンチ”!!」 
875 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:16:30.80 ID:Q+x1d3Jo0

畳み掛けるしかない……!! 

 「フーディン!!!!」 

が、フーディンを中心に辺りがなんだか『不思議な感じになる』 

すると、“バレットパンチ”はフーディンに届くことなく止まってしまう。 


千歌「な、なにこれぇー!!!?」 


図鑑の表示を確認すると、“サイコフィールド”と表示されている。 

どうやら、先制攻撃を防ぐフィールドを作る技らしい。 

フーディン、トレーナーの指示なしで頭良すぎじゃない!? 

完璧に予測されてる。 

予測……予測……。 


千歌「予測できない攻撃……? それだ!! ムクホーク!!」 
 「ピィイ!!!」 


ムクホークに指示を飛ばし、全力で戦場から離脱させる。 

──その際、一瞬自分の元に寄らせて、一個手持ちのボールを持たせる。 


千歌「お願いね!」 
 「ピィィ!!!」 


ムクホークはソレを持って、流星山を滑空しながら、降りていく。 


千歌「さあ、しばらく持久戦だよ!! ルカリオ、“はっけい”!!」 
 「グゥァ!!!!」 


ルカリオが攻撃を差し込む。 

 「フーディン!!!!」 

だがやはり打撃が届く直前で止められる。 


千歌「そっから、波導を流し込め!! “はどうだん”!!」 
 「グァ!!!!」 

 「フーディン!!?」 
至近距離で遠距離攻撃を打ってくるのはさすがに予想外だったようで、フーディンにやっと攻撃が直撃する。 

 「フーディン……!!!」 

だけど、さすがに一発じゃ沈まない。 


千歌「ルカリオ!! “ブレイズキック”!!」 
 「グァ!!!」 


身を捻って畳み掛ける、炎の蹴撃。 

 「フーディ!!!!」 

だが、今度は受け止めずにすぐさま念動力で吹っ飛ばされる。 

吹っ飛ばされながらも、ルカリオは受け身をとって、また飛び出す。 


千歌「まだまだぁ!!」 


こうなったら、根比べだ──!! 



876 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:19:06.69 ID:Q+x1d3Jo0


    *    *    * 




──クリスタルケイヴ。 


 「フィーー!!!!」 

梨子「メガニウム! “しぜんのちから”!!」 
 「ガニュー!!!」 


岩が地面からせり出し、エーフィの“サイケこうせん”を防ぐ。 


梨子「“はっぱカッター”!!」 


隙をついて、攻撃をするが、 

 「フィー!!!」 

念力によって、軌道を捻じ曲げられて、攻撃は届かない。 


梨子「やっぱり、直線的な攻撃じゃダメだ……!!」 


狙い撃ちにされないように、ケイヴ内をメガニウムと走りながら考える。 

攻撃の手を増やす? 

いや、直線的な攻撃のままだったら、たぶん結果は変わらない。 

希さんとのジム戦のようにブラフを混ぜる? 

いや、これもたぶん大した効果はないだろう。 

希さんのように、私の思考を直接読んでるわけじゃない。 

見てから対応できるくらいレベルも高いし、戦闘勘がいいんだ。 

速度で攻める? 

しかし、すでに“サイコフィールド”を展開されて、先制技は防がれる。 

攻め手がことごとく封じられている。 


梨子「せめて、夜なら……!!」 


“あさのひざし”で回復するエーフィ相手なら、夜の方がやりやすいが……。 

夜まで待ってる余裕はもちろんない。 

洞窟内なら、暗い……と思いきや、クリスタルケイヴは透明な湖底がすぐ上にあるせいで、日が差し込んでくる。 

せっかくの洞窟なのに、エーフィに対して地の利が取れていない。 


梨子「地の利……?」 


ふと、頭の中にアイディアが過ぎる。 

それ、ありなのかな……? ……いや、これは普通の試合とは違う。あくまで勝ちを取りに行くことが重要なんだ。 

試してみる価値はある。 


梨子「お願い! ピジョット!」 


私はピジョットを繰り出し、作戦を遂行する準備を始める── 


877 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:20:05.59 ID:Q+x1d3Jo0


    *    *    * 





──スタービーチ。 


 「オーベム」 

曜「ラプラス!! 回避ぃ!!」 
 「キュウー!!!」 


13番水道でのオーベムとの海上戦は、まるで艦隊戦のような様相になっていた。 

オーベムの腕から打ち出される、“サイケこうせん”、“シグナルビーム”をラプラスに乗ったまま避けながら、 

出来た隙に、 


曜「カメックス! “ハイドロポンプ”!!」 
 「ガメー!!!!」 


傍らで泳ぐカメックスが水砲を撃ち込む。 

攻撃はオーベムを掠りこそするものの、 

 「オーベム」 

海上を常に浮遊しながら、移動するオーベムは思った以上に素早い。 

直撃しそうな攻撃は、サイコパワーで捻じ曲げて、ダメージを最小限に抑えられてしまう。 

 「オーベム」 


曜「また撃ってきた!! 回避、回避ぃ!!」 
 「キュウー!!!!」 


ただ、繰り返していて気付いたことがある。 

オーベムは私が乗ってるラプラスしか狙ってこない。 

旗艦を沈めれば勝ちだと言うことを知ってるわけだ。 

ただ、逆に言うなら見晴らしのいい海の上、お互い旋回しながら、打ち合うだけなら、相手側の標的が絞られているのは避けやすいということでもある。 


曜「どうにか、タマタマだけでも撃ち抜けないかな……」 


タマタマはオーベムの肩に乗っている。 

さすがに海をぷかぷか浮いてるわけじゃない。 

逆に言うなら、相手側の旗艦はタマタマなわけで……。 


曜「ダメだ、戦闘が膠着してる……!!」 


のんびりしてる暇はないんだ……!! 


曜「ダダリン!!」 


私は海中にダダリンを繰り出す。 

とにかく、打開策をひねり出さなきゃ……! 


曜「“アンカーショット”!!!」 


878 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:21:17.62 ID:Q+x1d3Jo0


    *    *    * 



──音ノ木。 


 「ランクルッ」 


ランクルスが拳を握り込むと、 

──バツン、と音を立てて近くの空間が握りつぶされる。 


善子「ヤミカラス!! もっと速くっ!!」 
 「カァカァ!!!!」 


あんな力技に直撃したら、羽根をもがれて、ジ・エンド。 

こんな高所で飛行手段失ったら即死よ、即死!? 

私はヤミカラスに掴まりながら、音ノ木の周りをぐるぐると周りながら上昇していく。 

そんなことを考えている間にも、 

──バツン! 


善子「きゃぁっ!?」 


すぐ近くで握りつぶされた空間が破裂音をあげる。 


善子「くっ……ムウマ!!」 
 「ムマァ!!」 


私は逃げながらもムウマをボールから出す。 


善子「“シャドーボール”!!」 
 「ムマァー!!!」 


ムウマから放たれる影の弾で攻撃するも、 


 「ランクル」 

ランクルスが拳を握りこむような動作をすると、“シャドーボール”ごと空間を押し潰して消滅させてしまった。 

レベルが違いすぎる。 


善子「あの腕、どうにかなんないの!?」 


私はヒントを求めて図鑑を開く。 

 『ランクルス ぞうふくポケモン 高さ:1.0m 重さ:20.1kg 
  発揮した サイコパワーを 使い 特殊な 液体で 
  作られた 腕を 操り 敵を 砕く。 その力は 凄まじく 
  握力だけで 岩をも 握りつぶす。 高い 知能を 持つ。』 


善子「直接食らったら、それこそヤバイじゃない……!」 


逃げるだけで精一杯なのに、近接戦もリスクが大きい。 

──バツン!! 


 「カァ!?」 
善子「っ!?」 


今度の攻撃はさっきよりも更にヤミカラスの付近を掠める。 
879 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:22:44.15 ID:Q+x1d3Jo0

善子「攻撃の精度があがってきてる……!?」 


このままじゃ、追いつかれるのも時間の問題だ。 

……もう覚悟を決めるしかない。 


善子「ゲッコウガ!!」 
 「ゲッコッ!!!!」 


ゲッコウガを繰り出し、 


善子「“みずあそび”!!!」 
 「ゲコッ!!!」 


私は秘策の遂行を開始した。 





    *    *    * 





──太陽の花畑。 


 「ムシャァーーーー」 


ムシャーナが声をあげると、花畑を掻き分けながら、空気の刃が飛んでくる。 


花丸「ず、ずらぁー!?」 
 「キマッ」 


キマワリと伏せって、“ソニックブーム”をギリギリ避ける。 


花丸「キマワリ!! “ソーラービーム”!!」 
 「キマァーー」 


撃ち出した“ソーラービーム”は動きの鈍いムシャーナに直撃はするものの……。 


 「ムシャァ」 

ムシャーナは余裕の表情。まるでダメージが通らない。 


花丸「あ、相手が硬過ぎるずら……!」 


レベル差が如実に出ている。 

──ただ、実はこの戦いにおいて重要なのはそこじゃない。 

ヒントはちゃんと出してくれていた。 


花丸「そろそろのはずずら……」 


花たちに囲まれて視界の悪い戦場の中、 


 「ゴンーーーー!!!!」 

花丸「!!」 


あるお願いごとをして、別行動をしていたゴンベの鳴き声が響く、 
880 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:23:41.83 ID:Q+x1d3Jo0

花丸「あっちずら!! フワライド!!」 
 「プワァー!!!」 


声を聞いて、マルはフワライドに飛び乗った──。 





    *    *    * 





──クリスタルケイヴ。 


梨子「ピジョット!! “ぼうふう”!!」 
 「ピジョットォォ!!!!!」 


ピジョットが自慢の翼を大きく羽ばたかせて、洞窟内に“ぼうふう”を吹き荒らさせる。 


 「フィーー…!!」 


この強風にさすがのエーフィも動きを止める。 


梨子「チェリム! メガニウム! “はなふぶき”!!」 
 「チェリリ!!!」「ガニュゥー!!!」 


そして、その風に乗せて、舞い狂う“はなふぶき”。 


 「フィーーーー!!!!」 


エーフィはサイコエネルギーを自分の周囲に展開し、風と花びらを押しのける。 

思った以上のダメージの通りはない。 

でも、これで十分だ、 


梨子「メブキジカ!!」 
 「ブルル!!!!」 


繰り出したメブキジカが飛び出す。 


 「フィ!!!」 


エーフィは花びらに隠れて接近するメブキジカに辛うじて気付きこそしたようだが、 

もうこの距離じゃ、防御は間に合わない──!! 


梨子「その花びらは攻撃じゃなくて目晦ましよ! メブキジカ!! “すてみタックル”!!」 
 「ブルルル!!!!!!」 


地を蹴って、猛烈なスピードで突っ込むメブキジカは、 

 「ブルル!!!!」 

そのまま、エーフィのサイコパワーで作ったバリアを角を立てて突き破り、 

 「フィーーー!!!!」 

エーフィに攻撃を炸裂させた。 


梨子「よしっ!!」 


だが、エーフィは── 
881 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:25:03.20 ID:Q+x1d3Jo0

梨子「!」 


サイコパワーで自分に浮力を与え、身軽になったところを受身を取って、ダメージを最小限に抑えてしまった。 

 「フィー…」 

やっぱり、場数が違う……。 

──ただ。 


梨子「この勝負、私の勝ちよ」 

 「フィ?」 


吹き荒ぶ花びらの向こうで啖呵を切る私に、エーフィが首を傾げた。 

徐々に、花びらの切れ間から、洞窟の岩肌が── 


 「フィ!?」 


──見えなかった。 

辺りは気づくと、光る小さなキノコが天井に、壁に、地面に、そこかしこに生えていた。 

そして、そのキノコたちは、ぽふぽふと絶え間なく、光る胞子を吐き出している。 

 「フィ…!!!」 

エーフィが急に膝を折った。 


梨子「……眠いでしょ?」 
 「チェリリ」 


チェリムが私の頭の上で跳びはねている。 

こうでもしないと私も寝ちゃうし。 


 「フィー……!!!」 

梨子「ここ、クリスタルケイブはあちこちにネマシュとマシェードが生息してて、ちょっと通路に入ると、この“キノコのほうし”でいっぱいなのよ」 


確かにさっきの“はなふぶき”は目晦ましだ。 

だけど、メブキジカの攻撃を当てるための、じゃない。 


梨子「さっきの“ぼうふう”と“はなふぶき”は、風で洞窟中にこの胞子をばら撒くためよ!」 
 「チェリリ!!!」 

梨子「そして、私のポケモンは予め仕込んでおいた“なやみのタネ”で眠らない……!!」 

 「フィーーー……」 


エーフィはしばらく粘ってはいたものの、 


 「フィー……zzz」 


最終的には──コテンと倒れて、すやすやと寝息を立て始めた。 


梨子「……か、勝った……。ふぁ……」 


思わず口から欠伸が漏れる。 

いけないいけない、私は頭を振る。 


梨子「……まだ、やることがある……」 
 「チェリ」「ガニュゥ~」「ピジョッ」「ブルル」 
882 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:26:32.34 ID:Q+x1d3Jo0

皆が寄り添ってくる。 


梨子「あはは……私も皆みたいに、“なやみのタネ”で“ふみん”になれればよかったんだけど……」 


さすがにポケモンに使う技を人間の私に向けても同じ効果は得られない。 

皆の力を借りながら、エーフィの寝ている方へと、ちょっとずつ前進し。 


梨子「……」 


足元にいるエーフィに視線を落とした。 


梨子「……タマタマ」 

 「タ、タマタマ」 


そこには、寝息を立てるエーフィの影で、タマタマが困った顔をしていた。 

……そう、この戦いはバッジを手に入れて、初めて勝敗が決定するんだ。 

私はタマタマに手を伸ばして、 


梨子「……バッジ、貰うね」 


タマタマが自身の殻の割れ目に、刺していたバッジを取った。 


梨子「ふぁ……ねむ……」 


眠い目を擦りながら、 

全身を先ほど感じた“テレポート”の浮遊感に包まれるのを感じた──。 


梨子「……勝ちました、真姫さん──」 


私は柄にもなく拳を握り締めて。 

再びセキレイシティへとワープするのだった。 





    *    *    * 





──音ノ木。 


 「ゲコガァ!!!」 


ゲッコウガが水を撒きながら、樹をほぼ垂直に登っていく。 

私は水気を纏った空気の中を、ヤミカラスと共に螺旋状に音ノ木を上昇していく。 


善子「ヤミカラス!! 全速力で飛びなさい!!」 
 「カァーーー!!!!」 


指示と共に加速すると、視界の端にあった音ノ木の大きな葉が高速で流れていく。 

 「ランクルッ!!」 

そして、私たちの加速に合わせるようにランクルスも移動速度を増して追ってくる。 
883 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:28:16.29 ID:Q+x1d3Jo0

善子「ヤミカラス!! もっと速く!!」 
 「カァカァーー!!!!」 


私は──白い息を吐きながら、ヤミカラスに指示を出す。 

そう、白い息だ。 

この真冬に吐くような白い吐息は、すぐに透明になって空気の中に掻き消えて行く。 

──いい感じに温度が下がってきた。 


善子「……っ もっと、加速しなさい……!!」 
 「カァーー!!!!」 


何故私の吐く息が白いのか……体感温度と言うモノを知っているだろうか? 

同じ気温でも風が強い日は寒く感じる、アレのことだ。ただアレは寒く感じる、というだけではなく、実際に温度が低くなる。 

風速が1m増すごとに体感温度はだいたい1℃下がると言われている。 

高所なため、そもそも風はそこそこ強いのだが、それに加えて受ける風の速さはこちらが素早く動けば動くほど、相対的に速くなって行く。 

ヤミカラスのような小~中型の鳥ポケモンの飛行速度はおおよそ時速59km程度、風速に換算したら16.4m──つまり、今私たちは通常よりも16℃低い温度の中で飛行しているということだ。 

そもそも、高い場所での戦闘。10℃にも満たないこのバトルフィールドだ。確実に氷点下である。 

そして、ゲッコウガが“みずあそび”でフィールドに撒き続ける、水分は── 


善子「……っ……」 


速く飛べば飛ぶほど、私たちの体表に霜を降ろし、そして凍りつき始めていた。 

……でも、それは同じスピードで追ってきているランクルスも同じだ。 

 「ランクル…!!」 

ランクルスの目を引く黄緑の体表も、パキパキと凍りつき始めている。 


善子「速度を下げれば、逃げられる。速度を上げたら、凍りつく……! これが堕天使式、絶氷地獄よ!!」 
 「カァーー!!!」 

 「ランクルッ…!!!」 


ランクルスはあくまで速度をあげながら、私たちを追いかけてくる。 

ジムリーダーから詳細な指示が出来ないバトルである以上、最初からそういう風に指示を受けているんだろう。 

なら、それはそれでいい。 


 「ランクル…!!」 


ランクルスが再び私たちを攻撃しようと、拳を握り締めようとする、が。 

大きな腕部は次第に凍り始め、うまく握りこめないのがわかる。 


善子「やっぱり……!!」 


エスパータイプのポケモンはその場に突っ立ったまま、念動力で敵を理不尽に倒していくイメージがあるが、そんなことはない。 

それぞれに固有のコンセントレーションを高める、“めいそう”の方法があり、そのルーティーンをこなさないと能力を十分に発揮出来ないのだ。 

ユンゲラーがスプーンをかざすように、サーナイトが主人を想って祈るように、エーフィはその特徴的な二股の尻尾を立て耳を動かす。 

そして、現在進行形で戦っているランクルスのサイコパワーを発揮するためのルーティーンは── 


善子「その大きな拳を握りこむことでしょ!!」 

 「ランクル……ッ!!!!」 
884 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:29:54.34 ID:Q+x1d3Jo0

あの威圧的な大きな拳は、ランクルスのサイコパワーの象徴。 

その動作に付随して、任意の空間を握りつぶしていたが、その発動条件はあくまであの腕が動けばこそだ。 


 「カァカァ…!!!!」 
善子「ヤミカラス……!! もうちょっと、頑張って……っ!!」 


手持ちに向かって激励の言葉を叫ぶと、吐き出された白い呼気の代わりに、氷点下の空気が肺に飛び込んで来て胸が痛くなる。 


善子「……っ……」 


根競べ。相手が凍りつくのが先か、こっちが力尽きるのが先が── 

──だが、 

 「ラン──」 

この根競べ以前に、 

──バキバキバキ、という音と共に、 


善子「……!? う、うそ……!?」 


根本的にパワーが違いすぎることを思い知らされる。 


 「──ランクル……!!!!」 


腕に纏わりついていた、氷ごとランクルスは圧倒的な握力で押し潰していた。 


善子「ヤミカラ──」 


──バツン! 

空間の弾ける音が、ヤミカラスの羽先の方から聞こえてきた、と思った瞬間。 


善子「……!!?」 


自分の進行方向が前斜め上から、下の方へベクトルが変わって、落下の感覚に包まれる。 


善子「きゃあああああああああああ!!?!?」 


勢いがついたまま、私は音ノ木の大きな葉っぱの上に投げ出される。 


善子「っ……!!!」 


葉の上を転がりながら、全身を押し付けて、どうにか止まる。 

……どうにか、中空に投げ出されるのだけは避けられたようだ。 


善子「……はっ……はっ……!!」 


心臓が落下の恐怖に爆音を立てているが、今はまだ止まってる場合じゃない。 

動揺する脳を理性で黙らせて、周囲を見回す。 


 「カ、カァ……」 


ヤミカラスは少し離れた葉っぱの上で気絶していた。落ちてなくてよかった……。 

でも、これで飛行手段は絶たれた。 

そして、背後を振り返ると── 
885 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:30:50.92 ID:Q+x1d3Jo0

 「──ランクル」 


ランクルスが、文字通り眼前に迫っていた。 


善子「ひ!?」 


大きな腕が伸びてきて、 

私の胸部辺りを鷲掴みにして持ち上げる。 


 「ランクル……!!!」 

善子「ぐ……!!」 


ランクルスが腕に力を込めると、胸部が圧迫される。 


善子「は、はなし……なさい……!!」 

 「ランクル……!!!!」 


徐々に徐々に強くなる、握力。 


善子「ぐ……ぅ……!!」 


このままじゃ、握りつぶされる。 

……いや。 


善子「あんた……っ……!! 握りつぶす気……ない、でしょ……!!」 

 「ランクル……ッ」 


考えてみれば、当たり前だ。 

命を奪うことが目的ではない。 

これは試しなのだ。 

私たちに勝利条件が提示されてるのと同様に、彼にも希さんから予め指示されているであろう勝利条件がある。 

それは、恐らく。 


善子「私に……『参った』って、言わせる、ことでしょ……!」 

 「ランクル」 


相手の戦意を喪失させ、今後の戦いに参加する資格がないことを自覚させることだ。 

つまり── 


善子「ま……ヨハネは、絶対降参なんて、しない……けどね……!!」 

 「ランクル!!!!」 


私の言葉を聞いて、ランクルスの握力が更に込められる。 


善子「が、ぁぁ!!?!?」 


ミシミシと、肋骨が軋む。 

痛みで降参を促している。 

一瞬ふっと力が緩み、 


 「ランクル……」 
886 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:32:32.29 ID:Q+x1d3Jo0

緑の液体の中から、本体が私に視線を送ってくる。 

『これで懲りたか?』とでも言わんばかりに、 


善子「……降参なんて、しないわ……!!」 

 「ランクル……」 

善子「──がぁ、ぁぁ!!!」 


今度はさっきよりも強い力で握りこまれる。 

──激痛。 


善子「……っ゛……」 


意識が一瞬飛びかけた。 


 「ランクル!!!」 

善子「……ぁ、あぁ゛あ!!!!」 


──痛い。 

痛い、痛い、 


善子「が、ぁ……は……はっ……」 


再度弱められる握力。 

恐らく、こうして強弱をつけることでじわじわと恐怖を与えてるのだろう。 

拷問を熟知してるなんて、知能が高いとはよく言ったものだ。 


善子「は、はは……」 


思わず笑いが零れた。 


善子「あんたも……バカね」 

 「ランクル…?」 

善子「腕の一本でもへし折って……さっさと行動不能にしたら、こんな戦闘一瞬で終わるのに……それはあんたの独断じゃ出来ない、のよね……」 


ある程度独断で動いているこのポケモンは、恐らく希さんから怪我をさせるな。降参させろ。というざっくりとした指示を受けているのだ。 


善子「そんな甘っちょろい、指示に、従って……この、戦いは、覚悟を試す、戦いなのよ……?」 

 「ランクル」 

善子「怪我の一つや、二つ……覚悟せずに、この場に居るわけ、ないのに……」 


私は腕を伸ばして、ランクルスの腕部に爪を立てる。 

ムニリと不思議な感触がした。 


善子「そして……バカは私も……」 

 「…ランク?」 

善子「……ついこの間出会った子、助けに行くために……こんな痛い想い、して……」 


ルビィのことは正直、会ってから数時間話した程度のことしかわからない。 

思い入れがあるのかと言われると、他の場所で戦っている子たちに比べると薄いとは思う。 
887 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:34:20.81 ID:Q+x1d3Jo0

善子「……まぁ……しょうが、ないわよね……」 


それでも、私は── 

ルビィの言葉を思い出す。 


ルビィ『──ありがとう、ヨハネちゃん──』 


あの子は私を“ヨハネ”と呼んだ。 


善子「リトルデーモンを助けるのは……堕天使である私の使命なんだから……!」 


理由は、それだけで十分だ。 


善子「そして……」 

 「ランクル…」 

善子「一番のバカはあんたよ、ランクルス」 

 「ランクル…??」 

善子「こんな、見え透いた時間稼ぎに付き合ってくれて……ありがとね!!」 


──直後、 

ランクルスの足元から、火柱が上がる。 

 「ランクッ!?!!?!?」 

炎は私ごと巻き込んで、どんどん勢いを増す。 


善子「──最初から、私がただ逃げ回ってたんだと思ってたの?」 

 「ランクル!?!?」 


ランクルスは炎に驚いたのか──それとも、私の言葉に驚いたのか、 

一瞬腕の力が弱まる。 

その瞬間、全身に力を込めて、私は拘束から脱出し、大きな葉っぱの上を転がる。 


善子「音ノ木を登ってる最中、葉っぱの裏にボールを投げてたのよ。気づかなかったかもしれないけどね」 


音を立てて燃え上がる火柱は、分厚い葉っぱを下から貫くように飛び出している。 

そして、その裏には── 


 「ランプルゥゥ!!!!」 
善子「ランプラー!!! そのまま、燃やし尽くしなさい!! “ほのおのうず”!!!!」 

 「ランクルゥ!?!?!?」 

善子「最初っから、動きも速い、パワーもある相手と面向かって勝てるなんて思ってなかったからね」 

 「ランクルゥゥ!!!!!」 


燃え盛る青い炎熱の中から、ランクルスが大きな拳を握り締める。 

──だが、先ほどのように空間が握りつぶされることはなかった。 


 「ランクル!?!??!?」 

善子「……その技も見飽きたわ。同じ技をずっと見てて、対策してないわけないじゃない」 


やっと効いて来た。飛びながら逃げる最中にずっと仕込んでいた技。 
888 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:37:22.75 ID:Q+x1d3Jo0

善子「ヤミカラスとムウマの“うらみ”のお陰でとっくにパワーポイントが残ってないわよ。というか、そもそも疑問に思わなかったの?」 


私は鼻を鳴らして、得意気に語る。 


善子「──なんで、私たちもろとも、凍るような技選択をしてたのかってこと」 

 「ランクル!?!?!?」 


別にただ凍らせたいだけなら、ゲッコウガで直接ランクルスに向かってみずタイプの技を撃てばよかった話だ。 


善子「最初から、掴まったフリして、死角から炎で炙るつもりだったのよ。だから、一緒に炎に巻き込まれても、身体が凍ってればあんたの腕から逃げるくらいの時間は稼げる」 


差し詰め、火の中に飛び込むときにバケツの水を被るみたいな感じかしらね。……それでも多少の火傷はしたけど……。 

まあでも、 


善子「“ほのおのうず”で拘束、自慢の遠距離技はヤミカラスとムウマが身を賭して封じた。これで、チェックよ」 

 「ランクルゥ!!!!!」 


ランクルスが腕を伸ばして、どうにか拘束を逃れようとするが、 

その背後から、 

大樹を走る影、 


善子「そして、これでチェックメイト!!」 
 「ゲコガァ!!!!!」 


ランクルスの背後から、炎熱ごと切り裂く、不意の一撃。 


善子「“つじぎり”!!!」 

 「ゲッコガァッ!!!!!!!」 

 「ランクッッ!!!!」 


ゲッコウガに背後から袈裟薙ぎに切り裂かれ、 

 「ランク、ル……」 

ランクルスは崩れ落ちたのだった。 


善子「……はぁ……ど、どうにか、勝った……」 


気が抜けて、思わずへたり込む。 


 「ゲコガ…」 
善子「あはは、ありがとゲッコウガ……大丈夫よ」 


私は心配するゲッコウガを制しながら、倒れたランクルスに目を配る。 

気絶しサイコパワーを失ったランクルスは、念動力で維持していた、緑色の体液を保てず、中の本体が転がっている状態だった。 

そして、その近くに……。 


 「タ、タマタマ…」 


ずっと体液の中に入って一緒に移動していた、タマタマの姿。 


善子「ん、しょっと……」 


私は立ち上がる。 
889 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:38:22.66 ID:Q+x1d3Jo0

 「ムマァー」 
 「カァ…」 


ムウマが口に咥えて戦闘不能のヤミカラスを運んでくる。 


善子「ありがと、ムウマ」 


私はムウマ、ヤミカラス、ランプラー、ゲッコウガをボールに戻した後、 


善子「バッジ、貰うわよ」 


タマタマが持っていた、バッジを受け取った。 

それと同時に、先ほどと同様の“テレポート”の感覚に包まれたのだった。 





    *    *    * 





──流星山。 


 「グゥァ!?」 
千歌「ルカリオ!?」 


流星山の頂上では、依然ルカリオとフーディンの殴り合いが続いていた……んだけど、 


 「グ、ゥ……!!」 


攻撃をしては、吹き飛ばされの繰り返し。幾度も続けているうちにルカリオの限界はもう近かった。 

もう少し……もう少しだけ、時間を稼げば……。 

そのとき──ドン……ドン……ドン…… 


千歌「! きた!」 


……と、断続的に爆発音のようなものが遠くから響いてくる。 


千歌「ルカリオ!」 
 「グゥォ!!!」 


私の合図で、ルカリオはその場で片足を立てて構える。 

待ちの構えだ。 

その間も断続的な音は続いている。 


 「フーディン……」 


攻め手をやめたところを見て、フーディンがこっちに構えてくるが、 


千歌「フーディン、こっちよりも上を注意した方がいいよ!」 
890 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:39:50.94 ID:Q+x1d3Jo0

私は忠告する。 

直後、フーディンの頭上に影が差す。 

 「フーディ…!!?」 

そこにあったのは──燃え盛る岩塊だった。 

 「フーディン!!!」 

フーディンは咄嗟に念動力を使って、その岩を中空で静止させる。 

その一方で、 


千歌「ルカリオ! 来るよ!」 
 「グゥォ!!!」 


燃え盛る、岩塊を“ブレイズキック”で蹴り砕く。 

 「フーディ…?」 

フーディンは訝しげな顔をしている。 

何故自分で仕掛けたであろう攻撃を防いでいるのかとでも言いたげだ。 

その間も次々に岩が降り注いでくる。 


千歌「……あはは、この攻撃ね。チカたちにもどこに来るのかわからないんだ」 

 「フーディ……!?」 


フーディンと共に再び空を仰ぐと、 

──空が落ちてくる火炎岩塊で埋め尽くされていた。 


千歌「さすがにこの数はルカリオだけじゃ捌ききれない……ルガルガン! しいたけ!」 
 「ワォン!!」「ワフッ!」 


しいたけはすかさず地面掘り始め、ルガルガンとルカリオは頭上の岩を迎撃する。 

 「フーディン!!!」 

フーディンも次々と落下してくる岩を止めている。 


千歌「ここ、流星山はね。私たちが修行した場所。師匠に教えられながら、山の麓でたくさんの岩を割り砕いた。お陰で山の麓には詰みあがるほど岩の塊があってね」 


フーディンとまともに戦っていても、攻撃を読まれてしまう。 

でも、私すらどこに飛んでくかわからない攻撃だったら、読むことはできない。 


千歌「北の麓に飛んでった、ムクホークにはバクフーンのボールを持たせてた! そのバクフーンの“ふんか”で打ち出した岩が無差別に降って来てる!」 

 「…フディ!!!」 

千歌「さあ、どっちが岩を捌ききれるかの勝負だよ!!」 


私は両手を使って、 


千歌「撃ち抜け!!」 


ルカリオとルガルガンに指示を出す。 

岩が最も割れやすい一点を目掛けて、 

そんななかで、 

 「…フー」 

フーディンは口の端を釣り上げた。笑っている。 
891 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:40:48.89 ID:Q+x1d3Jo0

千歌「……これくらい余裕ってことかな?」 

 「フーディン」 


フーディンは済ました顔で、降って来る岩次々と止める。 

もう10個以上の岩塊がフーディンの頭上を浮遊している。 

そして、余裕をかますように、 

 「フー」 

片手をフリーにして3本の指を立ててみせる。 


千歌「……30はいけるってこと?」 

 「フー……」 


私の問いにフーディンは首を振る。 


千歌「片手で30個?」 

 「フー」 


フーディンは再び口の端を釣り上げる。 


千歌「そっか」 


私は再び、二匹への指示をしながら岩を割り砕く。 

フーディンは次々と襲い掛かる、岩を止め──止め……。 

その数、20……。 

30……。 


もうフーディンの頭上は岩に多い尽くされて空が見えない。 

空中で静止した岩がドームのようにフーディンの頭上を覆い隠している。 


千歌「……私たちが修行中に壊した岩の数ね」 


40……。 


千歌「正確な数は覚えてないんだけど……」 


50……。 


 「フーディ……ッ!?」 


千歌「たぶん、50個以上はあったんだよね」 

 「フ、フーディ……!!」 


フーディンが凌ぎきるまで、あと少しという顔をした。 


千歌「それを──綺麗に3つに砕いてたんだ」 


つまり──150個だ。 


 「フーディ……!?」 
892 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:42:30.01 ID:Q+x1d3Jo0

もう空が見えないので、岩の数は全くわからないけど、 

恐らく、宣言していた60個を超えたであろう辺りで、 

フーディンの頭上の浮遊する岩のドームの上から、 

重いものが激しくぶつかる音が聞こえてくる。 

 「フー……!!!!!」 

瞬間、岩のドームが僅かに沈む。 

その音は、断続的に聞こえ続ける。 

 「フーディ……!!!!」 

音がする度に、ドームはどんどん沈みフーディンの頭上に覆いかぶさるように高度を下げる。 

それと呼応するかのように、フーディンが顔を真っ赤にして、スプーンを握り締める。 


千歌「ニシシ……♪ 私たちの努力の勝利だね♪」 
 「ワォッ」 


私が言うと同時にしいたけがシャツの裾を引っ張る。“あなをほる”で避難用の穴が完成したことを告げていた。 

私が手持ちを連れて穴に入っていく中、 


 「フーディィィィイイイイン!!!!!!!!」 


フーディンの雄叫びが山中に響き渡った──。 





    *    *    * 





千歌「……さて、と」 


ひょっこりと穴から顔を出して。 

岩だらけになった流星山の頂上を見る。 


千歌「……やりすぎたかな……?」 


後で師匠に叱られるかも……。……ま、まあ、細かいことは後で考えよう。 


 「ピィイイイイイ!!!!!」 


頭上ではムクホークが旋回している。 

 「バクフッ!!!」 

そして、一足先に戻ってきたバクフーンが山盛りになった岩のドームを割り砕いているところだった。 


千歌「ルガルガン、“ドリルライナー”!」 
 「ワォン!!!」 


バクフーンを手伝うように、ルガルガンが身を捻り、全身をドリルのようにして、岩を削岩して潜っていく。 

程なくして、 

刳り貫いた穴から、一匹のポケモンを引きずりだした。 

 「……フー……」 

さっきまで私たちが戦っていたポケモン──フーディンが目を回して気絶していた。 
893 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:43:09.45 ID:Q+x1d3Jo0

千歌「えっへへ……皆、勝ったね!」 
 「バクフ」「ピィィ」「グゥァ」「ワォン」「ワフッ」 


そして、フーディンを引き摺りだした穴の中から、更にもう一匹のポケモンが飛び出してくる。 

 「タ、タマタマ……」 


千歌「あ! タマタマ見つけた! こっちおいで~」 


タマタマはフーディンが戦闘不能になったのを確認して、こっちに跳ねてくる。 


千歌「うん! じゃあ、帰ろっか! セキレイシティまで、お願いね!」 

 「タマタマ」 


こうしてフーディンとの激闘に制した私は、手持ちの皆と共にセキレイシティへと舞い戻るのでした。 





    *    *    * 


894 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:44:31.08 ID:Q+x1d3Jo0


──セキレイシティ。 


希「……む、戻ってくるね」 


浮遊感が消えると同時に── 

視界にセキレイシティが現われる。 


千歌「──と、わわっ!」 
善子「──ヨハネ、帰還!」 
梨子「──よ、っと」 

千歌「! 梨子ちゃん、善子ちゃん!」 


私が降り立つと同時に、横には二人の姿。 


梨子「千歌ちゃん……! 勝ったんだね!」 

善子「一番乗りかと思ったけど……同時か。ま、いいけど。……ってか、ヨハネだからね?」 


嬉しそうに駆け寄ってくる梨子ちゃんと、肩を竦める善子ちゃん。 


ダイヤ「……いえ、貴方達は一番ではありませんわ」 


そんな私たちにダイヤさんが声を掛けてくる。 


善子「え?」 

鞠莉「あなたたちが戻ってくるずっと前に、勝負を終わらせた人がいマース」 


そういう鞠莉さんの隣には、 


花丸「皆、お疲れ様ずら」 
 「ゴン」 


花丸ちゃんがゴンベと一緒にパンを頬張りながら、待っているところだった。 


善子「え、うそ!? マジで……?」 

千歌「花丸ちゃんすごーい!? あの強敵を一番乗りで……!?」 

希「……これで4人クリア。あと一人やね」 


希さんはそんな風に言う。 


梨子「……と、言うことは最後の一人は……」 

千歌「曜ちゃんだ……!」 


──私たち4人が希さんの試しに合格する中、曜ちゃんだけが未だにここセキレイシティに戻ってきて居ませんでした。 


895 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:46:33.35 ID:Q+x1d3Jo0


>レポート 

 ここまでの ぼうけんを 
 レポートに きろくしますか? 

 ポケモンレポートに かこんでいます 
 でんげんを きらないでください... 


【セキレイシティ】【13番水道】 
 口================= 口 
  ||.  |⊂⊃                 _回../|| 
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  || 
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   || 
  ||.  | |       回 __| |__/ :     || 
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     || 
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     || 
  ||.  | |.      | |           |     || 
  ||.  | |____| |____    /      || 
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  || 
  ||.  | |      | |  _.    /      :   || 
  ||.  回     . |_回o |     |        :   || 
  ||.  | |          ̄    |.       :  || 
  ||.  | |        .__    \      :  || 
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  || 
  ||.  |___回○__.回_  _|‥●‥:  || 
  ||.      /.         回 .|     回  || 
  ||.   _/       o‥| |  |        || 
  ||.  /             | |  |        || 
  ||./              o回/         || 
 口=================口 
896 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/10(金) 15:47:12.95 ID:Q+x1d3Jo0

 主人公 千歌 
 手持ち バクフーン♂ Lv.51  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき 
      トリミアン♀ Lv.46 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする 
      ムクホーク♂ Lv.50 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき 
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい 
      ルカリオ♂ Lv.51 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:136匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 梨子 
 手持ち メガニウム♀ Lv.48 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり 
      チェリム♀ Lv.46 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい 
      ピジョット♀ Lv.46 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん 
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      メブキジカ♂ Lv.45 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん 
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:107匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 曜 
 手持ち カメックス♀ Lv.45 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい 
      ラプラス♀ Lv.43 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき 
      ホエルコ♀ Lv.39 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい 
      ダダリン Lv.43 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん 
      ゴーリキー♂ Lv.40 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん 
      タマンタ♀ Lv.37 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:137匹 捕まえた数:20匹 コンテストポイント:48pt 

 主人公 善子 
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.47 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい 
      ヤミカラス♀ Lv.48 特性:いたずらごころ 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい 
      ムウマ♀ Lv.44 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき 
      ランプラー♀ Lv.49 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない 
      ユキワラシ♀ Lv.40 特性:せいしんりょく 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい 
      アブソル♂ Lv.54 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:119匹 捕まえた数:48匹 

 主人公 花丸 
 手持ち ドダイトス♂ Lv.33 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい 
       ゴンベ♂ Lv.32 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき 
      デンリュウ♂ Lv.32 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい 
      キマワリ♂ Lv.31 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき 
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい 
      ウリムー♂ Lv.38 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき 

      アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい 
      アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき 
      ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:91匹 捕まえた数:36匹 


 千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸は 
 レポートを しっかり かきのこした! 

...To be continued. 



897 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:18:09.90 ID:XqTkDbxP0

■Chapter064 『覚悟と勇気』 【SIDE You】 





──これはかっこよさ部門に挑戦する前、ことりさんとカメールの育成をしているときのことだった。 


ことり「モクロー! “リーフブレード”!」 
 「ホホー」 


ことりさんが指示を出すと、モクローが弾丸のように飛んでくる。 

それは余りに速くて、 


 「カ、カメー!!?」 
曜「!? カ、カメール!?」 


気付くとカメールが吹っ飛ばされている。 


曜「大丈夫!? カメール!?」 
 「カメ!!」 

ことり「…………」 

曜「よし……! 反撃を──」 

ことり「……一旦ストップ、休憩しよっか」 

曜「え?」 


ことりさんはバトルを中断して、私の元へと歩いてくる。 


曜「私……なんかダメだった?」 

ことり「うーんと……前から気にはなってたんだけど……」 

曜「?」 

ことり「……ちょっと、ごめんね」 

曜「え?」 

ことり「モクロー」 


ことりさんがモクローを呼ぶと、 

 「ホホッ」 

フィールドの定位置で待っていたモクローがこっちに飛んでくる、 

──私の方に向かって一直線に。 


曜「わわ!?」 


思わず、びっくりして身を引く。 


曜「び、びっくりした……」 

ことり「……やっぱり、曜ちゃん」 

曜「?」 

ことり「ポケモンやポケモンの攻撃が目の前に近付いてくると……目をつぶる癖があるね」 

曜「え!?」 

ことり「すごく離れてれば大丈夫だけど……バトルフィールドの中心線ぐらいの距離から、自分側に向かってくるポケモンや攻撃に対して咄嗟に目をつぶる癖があるみたい」 
898 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:22:17.23 ID:XqTkDbxP0

全然、気付いていなかった。 

ことりさんは少し迷っていたけど、言い辛そうにしながら、私に聞いてきた。 


ことり「……もしかして、バトル……怖い?」 

曜「……!」 


言われて少しだけギクリとした。 


曜「えっと……」 

ことり「……ごめんね、曜ちゃん。曜ちゃんがバトル苦手だって知らなかったから……カメールの育成ももうちょっと別の方法で──」 

曜「ま、待って!!」 


勝手に話を進めてしまう、ことりさんを思わず止める。 


曜「だ、大丈夫! バトル出来るから……!!」 

ことり「……でも」 

曜「……大丈夫。それに……」 

ことり「……それに?」 

曜「いつまで経っても、戦えないままじゃ居られないし……」 


そこまで意識して避けてたわけではなかった、けど……。 

私はドヒドイデとの戦闘以来、まともなバトルをした覚えがなかった。 

15番水道では、ダダリンは私を標的にしてなかったし、ゴーリキーとのバトルもポケモンバトルと言うよりはほぼ綱引きみたいなものだった。 


ことり「曜ちゃん……コンテストの道に進むなら、無理にバトルをする必要はないんだよ?」 

曜「それは……」 

ことり「むしろ、バトルがどうしても苦手って言う理由でコーディネーターになる人もいっぱいいる。曜ちゃんがバトルが怖いなら、それはそれであって、悪いことじゃないんだよ……?」 

曜「…………」 

ことり「……それでも、曜ちゃんは“バトル”の訓練を続ける?」 


……この訓練はあくまで、カメールのレベル上げだ。 

レベルを上げるだけならバトルに拘らなくてもいろいろと方法がある。 

走りこみとか、そういうトレーニングでも、時間は掛かるけど確実に経験値は積める。そういう代替方法もあると、ことりさんは言いたいんだと思う。 


曜「……私は……私もちゃんとバトル出来るようになりたい」 

ことり「……どうして?」 

曜「あんまり強くはなれないかもしれないけど……私は──」 





── 
──── 
────── 
──────── 





──13番水道。 
899 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:24:34.64 ID:XqTkDbxP0

曜「ラプラス!!! 回避して!!!」 
 「キュゥーー!!!!!」 


大きく旋回しながら、オーベムの“チャージビーム”を回避する。 


曜「ダダリン! “アンカーショット”!!」 


指示をしてから数テンポ遅れて、海中からダダリンの錨が飛び出してくる。 

だが……。 


 「オーベベム」 

曜「く……また避けられた……!」 


大振りなアンカーは海上をホバリングしながら、移動するオーベムには全く当たる気配がない。 


曜「カメックス! “ハイドロポンプ”!!」 
 「ガメーー!!!!」 


傍らを泳ぐカメックスが、背中を海上から出して、水砲を発射するが、 

 「オベベベーム」 

これも外れ。 

むしろ最初は掠っていた攻撃を逸らす形での防御だったのに、もはや完全に回避されている。時間を経るほどに命中精度はどんどん悪くなっている。 

相手がこっちの攻撃に慣れてしまったんだ。 


曜「く……そ、それなら……」 
 「キュゥー」 


ラプラスを前進させる、距離が遠すぎて、見てから回避が出来てしまうのが原因なんだ。 

それなら、近付けば。 

──なのに。 

 「オベベベーム」 

オーベムが腕を上げて、攻撃姿勢を取った瞬間、 


曜「……っ!!」 


身体が固まってしまう。 

 「ガメーー!!!!」 

私に向かって飛んできた、“チャージビーム”と“シグナルビーム”をカメックスが咄嗟に水砲で撃ち落す。 


曜「あ……ご、ごめん、カメックス……!」 
 「キュゥ…」 


そんな私の様子を見て、ラプラスは再びオーベムから距離を取る。 

こんなことの繰り返しだ。 


曜「……っ」 


ことりさんと訓練したのに、 

ゴーストポケモンたちの退治のときは少しはマシだったのに。 

明らかに自分より強い相手がこっちに攻撃を向けてきていると思うと、身体が固まってしまう。 


曜「私……っ」 
900 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:26:00.84 ID:XqTkDbxP0

あのときの光景が、振り払えない。 

不気味に笑う、ドヒドイデの顔が、 

次の瞬間には手持ちが皆やられていて、 

私も為す術がなくて、 


曜「私は……」 


そのとき、頭に直接声が響く。 


希『他の4人は突破したよ。キミは随分戦闘が膠着しとるようやけど』 

曜「……!」 

希『……元より、時間が無限にある戦いやないのは、わかっとるよね?』 


……戦わなきゃ。 


曜「私は…………!!」 

 『曜ちゃん!!』 

曜「……!!」 


聞き覚えのある声がした。大好きな幼馴染の声だ。 


曜「千歌ちゃん……!」 

千歌『頑張って曜ちゃん……!! 待ってるから……!!』 


先に勝利した千歌ちゃんが、希さんを通して激励のメッセージをくれてるんだ。 

……負けるか、負けるもんか。 


曜「……私だって、千歌ちゃんと……千歌ちゃんと一緒に戦うんだ……!! 戦えるんだ……!!」 


私だって、千歌ちゃんと一緒にポケモン図鑑と最初のポケモンを貰った、ポケモントレーナーなんだ……!! 


曜「ラプラス!! 全速前進ッ!!」 
 「キュウーーー!!!!!」 

 「オベベム」 


オーベムが攻撃体勢を取る。 

身が反射的に竦む。 

でも、歯を食いしばる。拳を握りこんで。 

気合いで目を見開く。 


曜「いっけぇーーー!!!!!」 


私は前進するんだ、前に、前に進むんだ……!! 

そして、そんな私たちに向かって、オーベムから“チャージビーム”が発射された── 





    *    *    * 


901 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:28:23.89 ID:XqTkDbxP0


──音がしなかった。 

でも、この空間は、知ってる。 

また、海の中だった。 


 「キュゥ……」 


“チャージビーム”の直撃を受けて、ラプラスが水中を力なく漂っている。 

結局……結局、ダメだった。 

私は、また……この海で、負けるんだ。 

……私には、戦う力が──足りなかった。 

──悔しい……。 

あのとき──ドヒドイデと戦ったときから、何も変わらない。 

悔しくて、涙が止まらなかったのに、 

結局、何も変わらない。 

私は……。 

…………。 


 『じゃあ、やめる?』 


心の中で、声がした。 

千歌ちゃん? 

……いや、この声は……。 


 『今回は運が悪かったけど、その勇気は大切なものだから。誇って良いと、私は思うよ』 

 『……明らかに格上だってわかってても、ずっとポケモンたちに指示を出し続けていたのを私は見てたから』 


あのときの言葉が、想起された。 

果南ちゃんの言葉が── 


 果南『曜、やめる?』 


……嫌だ。 


 果南『ここで……やめる?』 


……嫌だ。 

私だけ、私だけ戦えないなんて──嫌だ。 

私が諦めちゃ──ダメだ!! 

ここで諦めたら、あのとき以下だ── 


私は、海中で姿勢を整え、ボールを放った──。 





    *    *    * 





 「ガメーー!!!!!」 
902 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:29:59.76 ID:XqTkDbxP0

海上ではカメックスが独断で戦闘を続けていた。 


曜「ごめんっ!!! カメックス!!!」 
 「ボォーーーー」 


ホエルコに掴まって、顔を出す。 


曜「ホエルコ!! 行くよ!!」 
 「ボォーーー」 


ホエルコの“なみのり”でオーベムに向かって前進する。 

 「オベベーム」 

オーベムがこちらの腕を向ける。 


曜「……っ!!」 


怖い。自分の本能がそう言うけど、 


曜「カメックスッ!! 撃ち落せ!!」 
 「ガメーーー!!!!」 


発射された、“チャージビーム”が私たちに当たる前に撃ち落す。 

 「オベベベベーム」 

次の攻撃── 


曜「ホエルコ!! 取り舵!!」 
 「ボォーーー」 


ホエルコと共に攻撃を避けながら前進する。 

相手の攻撃をちゃんと見るんだ、 

右の避けるのか、左に避けるのか、撃ち落すのか、 

私が判断するんだ、 

だって、私は……私がこのポケモンたちの── 


曜「──トレーナーだから!!」 
 「ボォォーーーー!!!!!」 


攻撃を掻い潜ったホエルコが──跳ねる。 


曜「“とびはねる”!!!」 
 「ボォオーーーー」 


全身のパワーを使って、海上から……空へと、一気に急上昇し、 

放物線の最高点に到達して、 

今度はオーベムの方へ向かって落下を始める。 

私が信じて、皆と一緒に戦うって決めたから……!! 


曜「行こうーーー!! ホエルコ──うぅん!!!」 
 「ボォォ────」 


ホエルコの身体が光に包まれて、一気に大きく膨らんでいく。 


曜「ホエルオー!!!!!」 
 「──ボオォォオォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!」 
903 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:34:20.52 ID:XqTkDbxP0

ホエルオーが雄叫びをあげる。 

その“プレッシャー”が、圧力が、 

 「オベベベベム」 

オーベムの攻撃を一瞬躊躇させた、 

全ポケモンの中で最も大きな体躯で、 


曜「“ヘビーボンバー”ァアアアアァァーーーーーー!!!!!!」 


オーベムを海に向かって──押し潰した。 





    *    *    * 





希「……決着がついたみたいやね」 

千歌「!」 


希さんがそういうとほぼ同時に、 


曜「──わわっ!?」 


私の身体は、セキレイシティに投げ出されていた。 


千歌「曜ちゃんっ!!」 

曜「わわわっ!?」 


間髪居れず、千歌ちゃんが抱きついてくる。急だったので支えきれずに尻餅をつく。 


曜「ち、千歌ちゃん……私、海で戦ってたから濡れてる……」 

千歌「ドヒドイデのこと、果南ちゃんから聞いた……」 

曜「……!」 

千歌「……怖い想い、したんだね」 

曜「……ううん、もう大丈夫」 


私は──手に入れたバッジを掲げて見せた。 


千歌「……!」 

曜「私も……戦えるよ、千歌ちゃん」 

千歌「……うん!」 

果南「吹っ切れたみたいだね」 

曜「果南ちゃん……!」 


千歌ちゃんに抱きつかれて尻餅をついてる状態の私の元に果南ちゃんが近付いてくる。 


曜「……ありがとう、果南ちゃん」 

果南「お礼されるようなことは特にしてないけど……曜が前に進めたなら何よりだよ」 


果南ちゃんはそう言って頭を撫でてくる。 
904 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:37:06.39 ID:XqTkDbxP0

果南「ついでに千歌も」 

千歌「わわ!?」 


二人してぐりぐりと頭を撫でられる。 


千歌「か、果南ちゃんくすぐったい……!」 

果南「お、ここか~? うりうり~」 

曜「あはは、なんか懐かしいなこの感じ」 

希「……コホン。そろそろ、いいかな?」 


希さんが、じゃれる私たちを見て咳払いをした。 


果南「あーはいはい了解」 


果南ちゃんは、そう言って立ち上がる。 


希「善子ちゃん、梨子ちゃん、千歌ちゃん、花丸ちゃん……そして、曜ちゃん」 


希さんは私たちの顔を順に見る。 


希「全員、合格やね」 


希「キミたちが手に入れた、その“フォーチュンバッジ”は持ってるだけで、ポケモンの特攻を上昇させる能力がある。お守り代わりに持って行くとええよ」 

千歌「はい!」 

希「まさか全員突破してくるとは思ってなかったけど……勇気も、知恵も、覚悟も、力も、確かに戦いの場に赴くだけの資格があると、認めざるを得ないね」 

善子「ちょっと待って、参考までに聞いておきたいんだけど」 

希「?」 

善子「ずら丸はどうやって、突破したの……? どう考えても、この中で一番強いとは思えないんだけど……」 

花丸「ずら!? 善子ちゃん、それは失礼ずら!!」 

善子「善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!!」 

希「ああ、花丸ちゃんはクリアの条件を一番理解してただけだと思うよ」 

梨子「クリアの条件って、確か……」 

千歌「条件? 相手を倒せばいいんじゃないの?」 

花丸「そうじゃないずら。この戦闘の勝利条件は『タマタマの持ってるバッジを手に入れる』ことずら」 

梨子「! ……やっぱり、そうだったんだ」 

千歌「……? どゆこと」 

希「花丸ちゃんは、ウチの手持ちはほぼ無視していなしてただけ、花畑の中に隠れてるタマタマをゴンベの“かぎわける”で見つけたあと……」 

花丸「フワライドの“トリック”でバッジを手に入れたずら」 

曜「……あ、そっか」 

善子「え!? それありなの!?」 

希「必ずしも、目の前の敵を倒すことが正解とは限らない。ましてや、これは奪還任務の前哨戦やからね。そこに気付けるかの知恵も試してたんよ」 

千歌「……?? どゆこと??」 

梨子「あ、えっとね……必ずしも敵を倒さなくても、バッジさえ手に入れられれば実は勝利条件が達成されててね……」 


ここまで話しても意味が理解出来ていない千歌ちゃんに、梨子ちゃんが説明を始める。 
905 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:39:35.30 ID:XqTkDbxP0

善子「……アレ、その知恵試しに失敗してるわよ?」 

曜「あはは……」 

希「……ま、まあ、単純に勝負に勝つのも一つの解決法ではあるからね」 


希さんは苦笑して、肩を竦めた。 


希「ただ、くれぐれも無茶はしちゃダメやからね? あとは健闘を祈るよ。それじゃウチはヒナギクに戻るよ。ほなね」 


それだけ言うと、“テレポート”してヒナギクシティに戻っていってしまった。 


善子「……なんか、最後は意外とあっさりだったわね」 

曜「認めてくれた……ってことでいいんだよね?」 

善子「たぶんね……」 


──かくして、私たち5人は希さんの試しを突破し、戦いの場に臨みます。 





    *    *    * 





鞠莉「皆、図鑑を貸してもらえる?」 

千歌「図鑑ですか?」 

善子「まさか、決戦に向けて、図鑑のパワーアップを……!!」 

鞠莉「Yes.」 

善子「え、マジで?」 

鞠莉「とはいっても……音声通話機能をつけるだけだけど」 

曜「ポケギアじゃダメなんですか?」 

鞠莉「そうしたいのはヤマヤマなんだけどネ……相手の本拠地なだけあって、妨害電波で通信妨害してるみたいなのよね。まあ、当たり前っちゃ当たり前なんだけど……」 

梨子「……でも、それだと図鑑に音声通話機能があってもダメなんじゃ……」 

鞠莉「だから、図鑑間だけで使えるトランシーバー機能を搭載する。んでもって、中継局を連れて行ってもらうわ」 

花丸「中継局ずら??」 


そう言うと、鞠莉さんの背後から板状の何かが飛び出してくる。 


 「ロトトトトー、ボクが行くロトー」 

千歌「あ、ロトム!」 

善子「え、なんかこいつ喋ってるけど……?」 

鞠莉「このロトム図鑑なら、ある程度臨機応変に周波数も弄って妨害用の周波数を回避出来るはずよ。この子を中心にあなたたちの図鑑を繋ぐわ。すぐやっちゃうから、その間に皆出発の準備をしておきなさい」 

梨子「は、はい!」 

千歌「わかりました!」 


鞠莉さんに言われて、各々準備に取り掛かる。 





    *    *    * 


906 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:41:07.07 ID:XqTkDbxP0


ダイヤ「善子さん」 

善子「? 何?」 

ダイヤ「……その、お詫びがまだだったと思いまして」 

善子「……詫び? なんのこと?」 

ダイヤ「飛空挺では……取り乱して、申し訳ありませんでした」 

善子「……ああ、そのこと。……状況が状況だったし、仕方ないわよ。別に気にしてないわ」 

ダイヤ「……迷惑を掛けっぱなしで恐縮ですが……妹を──ルビィを、どうかよろしくお願いします」 

善子「任された。ルビィはちゃんと連れて帰ってくるから」 

ダイヤ「ありがとうございます。……それと、貴方の手持ちならこれが使えると思うので、お渡ししておきますわ」 


ダイヤはそう言って、4つの石を手渡してくる。 


善子「これは……」 

ダイヤ「“やみのいし”と“めざめいし”ですわ。使ってくださいませ」 

善子「……ん、ありがたく使わせて貰うわ」 

ダイヤ「……それと」 

善子「まだあるの?」 

ダイヤ「ケロマツの件、貴方には話さなくてはいけないことがありますので、絶対に戻ってくるように」 


……そういえば、ケロマツを一人抜け駆けで貰っていってしまったことを忘れていた。 

飛空挺で見たあのおっかない性格。もしかしたら、妹のルビィが旅立つとき、最初のポケモンの選択権が少なかったことを相当憤慨していたのかもしれない。 


善子「ぜ、善処するわ……」 

ダイヤ「ええ、くれぐれもお願い致しますわ」 





    *    *    * 





花丸「曜ちゃん」 

曜「ん、何?」 

花丸「曜ちゃんがゴーリキー持ってるって聞いて」 

曜「あ、うん。持ってるけど……」 

花丸「それなら、突入前に進化させちゃった方がいいかなって思って」 

曜「あー……えーっと、交換で進化するんだっけ?」 

花丸「うん。マルとの間で、二度交換すればカイリキーになるずら」 

曜「あ、なるほど……じゃ、お願いしようかな」 

花丸「了解ずら♪」 


──二人で交換を終えたところで……。 


果南「曜」 

曜「ん?」 


果南ちゃんが声を掛けてくる。 
907 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:42:32.38 ID:XqTkDbxP0

果南「これ、持って行って」 


そう言って果南ちゃんは少し変わった形をしたものを差し出してくる。 

本当に口で形状を説明するのは難しいんだけど……。裏側に口でくわえる部分を見つけてなんとなくピンと来る。 


曜「これ……もしかして、シュノーケル?」 

果南「うん、水中用の呼吸器。昔鞠莉に作ってもらったやつで、数回までならポケモンの“あわ”から酸素を取り込んで連続潜水が出来る特注品だよ」 

曜「え、いいの?」 

果南「いいよ。私はなくても結構な時間潜ってられるしね」 

曜「ありがとう……! 果南ちゃん!」 

果南「5人の中じゃ曜が一番水中戦に強いからね。水中戦になるようだったら、皆のことお願いね」 

曜「うん!」 


私は果南ちゃんの言葉に力強く頷いた。 





    *    *    * 





千歌「梨子ちゃん」 

梨子「ん?」 


準備をしていると、千歌ちゃんに声を掛けられる。 


千歌「梨子ちゃんも一緒に戦ってくれるなんて、心強いよ」 

梨子「ふふ、期待に沿えるように頑張ります♪」 

千歌「……梨子ちゃん、明るくなったね」 

梨子「そうかな……うぅん、そうかも」 

千歌「……聞いてもいい?」 

梨子「ん?」 

千歌「どうして、一緒に戦ってくれるの? 梨子ちゃんはそれこそ、危ない場所まで行って戦う理由なんて──むぐっ」 


そう言う千歌ちゃんの口を、人差し指で塞ぐ。 


梨子「……この地方を旅して、私いろんなキラキラを見つけたの」 

千歌「キラキラ……?」 

梨子「私ね、この地方を旅して、もっといろんな景色が見たい」 

千歌「……梨子ちゃん」 

梨子「私は確かにこの地方の人間じゃないけど……この地方のこと、大好きだから。一緒に守りたい。これじゃ理由にならないかな……?」 

千歌「うぅん!! そんなことない。ありがとう、梨子ちゃん!」 


千歌ちゃんが嬉しそうに抱きついてくる。 


梨子「わわ!? も、もう、千歌ちゃんったら……」 

千歌「えへへ~♪」 
908 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:43:28.86 ID:XqTkDbxP0

嬉しそうに笑う千歌ちゃんと抱き合いながら、 

ふと、視線をあげると、 


梨子「……あ」 

ことり「……!」 


ことりさんと目が合う。 

曜ちゃんの様子を見に来たところだったのかもしれない。 


千歌「梨子ちゃん……? ……あ、ことりさん」 

ことり「……梨子ちゃん」 


やや罰の悪そうに視線を泳がせることりさん。 

私は千歌ちゃんとの抱擁を中断し、ことりさんの前に歩いて行く。 


千歌「……あ、梨子ちゃん……」 

梨子「……ことりさん」 

ことり「…………」 


──私は、 


梨子「ありがとうございました」 


頭を下げた。 


ことり「……え……?」 


私が顔をあげると、ことりさんは心底驚いた顔をしていた。 


梨子「……あのとき、ことりさんにコテンパンにやられたお陰で……自分が何を見失ってたのか、気付く機会に出会えました」 

ことり「梨子ちゃん……」 


──そう、真姫さんの元で、ね。 


梨子「……私、あれからいろいろ考えて、旅をしてきました」 

ことり「……」 

梨子「私……少しは変われましたか……?」 

ことり「……うん、変わったよ」 

梨子「そっか、よかった……。ことりさん」 


私は一息吸ってから、ことりさんの目を真っ直ぐ見つめて。 


梨子「この戦いが終わったら……また私と、ジム戦をしてもらえますか?」 

ことり「……! うんっ、もちろん……!!」 

梨子「よかった……」 

ことり「もちろん……っ……ぐす……っ」 

梨子「!? ……なんでことりさんが泣くんですか……!?」 

ことり「ご、ごめん……梨子ちゃんのこと、傷つけちゃったって、ずっと思ってたから……もっといいやり方があったんじゃないかって、ずっと思ってたから……」 

梨子「ことりさん……」 
909 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:45:28.20 ID:XqTkDbxP0

ことりさんはごしごしと手で涙を拭ってから、 


ことり「ふぅ……ごめんね。……セキレイジムで待ってるから、ちゃんと戻って来るんだよ?」 

梨子「……はい!」 

ことり「……そのための戦う道具、梨子ちゃんに渡しておくね」 


ことりさんはそう言って、私の手に宝石のようなものを握らせる。 


梨子「……これって……」 


キラキラと輝く丸い宝石。もしかして……。 


千歌「それ……メガストーン!?」 

梨子「……!」 

ことり「ピジョットナイト。きっと、今の梨子ちゃんなら使いこなせると思うから」 

梨子「……ありがとうございますっ!! 絶対に戻ってきます!!」 

ことり「うんっ! 約束だよっ!」 


私はこうして、やっとことりさんと和解することと相成ったのだった。 






    *    *    * 





鞠莉「図鑑の調整は完了したわ。ロトム、後頼むからね」 
 「任せるロトー」 

鞠莉「皆、準備は出来た?」 

千歌「大丈夫!」 

曜「準備完了であります!」 

梨子「問題ないです!」 

善子「補給任務、完遂。いつでも出撃可能よ」 

花丸「皆、大丈夫ずら!」 

果南「飛空挺突入部隊は大丈夫そうだね」 


果南ちゃんの言葉に5人で顔を見合わせて頷きあう。 


ダイヤ「……今、海未さんから連絡がありました。ホシゾラ天文台の観測装置から、セキレイ東部に巨大なポケモンのエネルギー反応を検知したそうです」 

千歌「それって……!」 

鞠莉「恐らく……現在ちょうどセキレイの東側を飛行中の飛空挺から、パルキアを連れて、聖良が先行してるってところかしらね」 


言われて東の空を見ると、作戦会議中はローズ辺りに居た飛空挺がセキレイの東の空に見える。 
910 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:47:20.98 ID:XqTkDbxP0

ダイヤ「あと千歌さんへ伝言ですわ」 

千歌「ほぇ?」 

ダイヤ「くれぐれも、目的を見失わないように。とのことですわ」 

千歌「……うん、とりあえず今の目的はルビィちゃんを助けること、だよね」 

ダイヤ「ええ、よろしくお願いしますわ」 

果南「さて……じゃあ、私たちも向かおうか」 

鞠莉「Yes. 悪い研究者にはきつーいオキューをスエテあげないとネ!」 

千歌「……あ、あのー」 

鞠莉「? What? どうかしたの?」 

千歌「……ダイヤさんや果南ちゃんが強いってのはなんとなくわかるんですけど、鞠莉さんって……伝説のポケモンと戦えるほど強いんですか──」 

花丸「──千歌ちゃんっ!!!」 

千歌「わ!?」 


私の質問に、花丸ちゃんが喰い気味に吼えた。 


花丸「失礼ずら!! 鞠莉さんに謝るずら!!」 


肩をガクガクと揺すられる。 


千歌「え、あ、ちょ、ま、待って……!?」 

梨子「博士って、有名なトレーナーなの……?」 


梨子ちゃんが曜ちゃんと善子ちゃんに振るが、 


曜「え……私も詳しくなくて……」 

善子「……なんか、金髪の強いトレーナーがいるって噂は聞いたことあるけど」 

花丸「皆っ、失礼ずら!!」 

千歌「え、花丸ちゃんはなんでそんなボルテージ高い感じで怒ってるの……!?」 


私たちのやり取り見て、肩を竦めたダイヤさんが、 


ダイヤ「心配ありませんわ。鞠莉さんは確実に、今の貴方たちが束になっても勝てないくらいには強いですから」 

果南「ま、だろうね」 

鞠莉「ちょ、二人とも……大袈裟よ」 

善子「束になってもって……」 

花丸「当たり前ずら!! 鞠莉さんは、ポケモンリーグ大会優勝経験者ずらよ!?」 


……はい? 


千歌「え……? え?」 

梨子「リーグ大会……? ポケモンリーグ大会って4年に一回ある、あの……?」 

曜「え、ホントなの……?」 


三者三様、初めて知る情報に動揺を隠せない。 
911 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:49:15.61 ID:XqTkDbxP0

鞠莉「は、花丸も言い方がオーバーなのよ! あくまでわたしが優勝したのは、ルール別のリーグよ!」 

善子「……思い出した。6年前のリーグで6部門のうち半分を制覇した、金髪のトレーナーの特集記事を昔雑誌で見たことがあったわ」 

ダイヤ「鞠莉さんは前々回のリーグ大会において、トリプル、ローテーション、シューターの3部門で優勝していますわ」 

鞠莉「ダ、ダイヤ! 余計なこと言わなくていいの! 別にわたしの専門はバトルじゃないんだから……」 

果南「えー別にいいんじゃないの? 実際、私たちでもそのルールじゃ、歯が立たないんだし」 

鞠莉「果南まで!」 


なんか、思った以上にとんでもない人っぽい、けど……。 


千歌「そのルール……知らない」 

梨子「一応あるのは知ってるけど……カントーではあんまりないルールかな……」 

鞠莉「マイナールールだってわかってるから、あんまり言わないようにしてるのに……」 

花丸「……しかもシューターバトルに関しては、前回大会も出場して脅威のリーグ2連覇、加えて公式戦無敗ずら」 

鞠莉「は、花丸っ!」 

千歌「それって、どんなルール……?」 

鞠莉「あーもう……細かく言うといろいろあるんだけど……ざっくり言うと道具使用可能なルールかしらね」 

曜「リーグ2連覇ってめちゃくちゃすごいんじゃ……」 

鞠莉「マイナールールだからそもそも競技人口が少ないだけよ。と言うか、わたしの話はもういいでしょ!?」 

果南「照れることないのに」 

ダイヤ「そうですわ。誇るべき実績ですわよ」 

鞠莉「も、もう! わたしたちも行くわよ! のんびりしてる場合じゃないんだから!」 


鞠莉さんはプイっと顔を逸らして、歩き出してしまう。 


果南「あ、待ってよ鞠莉」 

ダイヤ「全く世界の命運を握るかもしれない戦いの前に、騒々しいですわね。……話の続きはまた戻ってきてから、ゆっくりお話しして差し上げますわ」 


ダイヤさんはそう言ってから、私たちの顔を順に確認して、 


ダイヤ「……全員、ちゃんと無事に戻ってきてくださいませね」 

千歌「もちろん! 行ってきます!」 
曜「ヨーソロー! 了解であります!」 
梨子「頑張ります! ダイヤさんたちも気をつけてください」 
善子「愚問ね……。ちゃんと、ルビィは連れ帰ってくるから」 
花丸「任せてずら! ……今度こそ、ルビィちゃんはオラが助けるずら」 


それぞれに決意を口にして、 

ボールを構え、 


千歌「ムクホーク! 行くよ!」 
 「ピイィィィィィ!!!!」 

梨子「ピジョット! お願いね!」 
 「ピジョットォ!!!!」 

善子「ヤミカラス、出撃するわよ!」 
 「カァカァ!!!」 

花丸「フワライド! 行くずら!」 
 「プワァ~~~」 


ルビィちゃん奪還作戦が開始した──。 


912 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:50:42.90 ID:XqTkDbxP0


>レポート 

 ここまでの ぼうけんを 
 レポートに きろくしますか? 

 ポケモンレポートに かこんでいます 
 でんげんを きらないでください... 


【セキレイシティ】 
 口================= 口 
  ||.  |⊂⊃                 _回../|| 
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  || 
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   || 
  ||.  | |       回 __| |__/ :     || 
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     || 
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     || 
  ||.  | |.      | |           |     || 
  ||.  | |____| |____    /      || 
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  || 
  ||.  | |      | |  _.    /      :   || 
  ||.  回     . |_回o |     |        :   || 
  ||.  | |          ̄    |.       :  || 
  ||.  | |        .__    \      :  || 
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  || 
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  || 
  ||.      /.         回 .|     回  || 
  ||.   _/       o‥| |  |        || 
  ||.  /             | |  |        || 
  ||./              o回/         || 
 口=================口 
913 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 00:51:22.88 ID:XqTkDbxP0

 主人公 千歌 
 手持ち バクフーン♂ Lv.51  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき 
      トリミアン♀ Lv.46 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする 
      ムクホーク♂ Lv.50 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき 
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい 
      ルカリオ♂ Lv.51 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:137匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 梨子 
 手持ち メガニウム♀ Lv.48 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり 
      チェリム♀ Lv.46 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい 
      ピジョット♀ Lv.46 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん 
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      メブキジカ♂ Lv.45 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん 
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:110匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 曜 
 手持ち カメックス♀ Lv.46 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい 
      ラプラス♀ Lv.44 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき 
      ホエルオー♀ Lv.41 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい 
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん 
      カイリキー♂ Lv.40 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん 
      タマンタ♀ Lv.37 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい 
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:142匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:48pt 

 主人公 善子 
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.47 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい 
      ヤミカラス♀ Lv.48 特性:いたずらごころ 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい 
      ムウマ♀ Lv.44 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき 
      ランプラー♀ Lv.49 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない 
      ユキワラシ♀ Lv.40 特性:せいしんりょく 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい 
      アブソル♂ Lv.54 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:121匹 捕まえた数:48匹 

 主人公 花丸 
 手持ち ドダイトス♂ Lv.33 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい 
       ゴンベ♂ Lv.32 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき 
      デンリュウ♂ Lv.32 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい 
      キマワリ♂ Lv.31 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき 
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい 
      ウリムー♂ Lv.38 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき 

      アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい 
      アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき 
      ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:95匹 捕まえた数:38匹 


 千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸は 
 レポートを しっかり かきのこした! 

...To be continued. 



914 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 02:49:42.03 ID:XqTkDbxP0

■Chapter065 『飛空挺セイントスノウ』 【SIDE Ruby】 





──ゴウンゴウン。 

大きな音がする。 


ルビィ「ん……ぅ……」 


ぼんやりと意識が覚醒してくる中で、 


理亞「ねえさま……本当にやるの?」 


理亞ちゃんの声が聴こえてくる。 


聖良「……本当に、とは?」 


そして、それに応える聖良さんの声。 


理亞「いや、その……クロサワ・ルビィは話せば協力してくれる可能性がある。ここまでしなくても……」 

聖良「……理亞、それではダメなんです」 

理亞「……?」 

聖良「輝石の覚醒には、クロサワの巫女自身が制御出来ないほどの感情の起伏が必要なんです」 

理亞「…………」 

聖良「……わかってください、理亞。私たちが目指す場所へ行くためには、必要なことなんです」 

理亞「……わかった」 

聖良「……ありがとう、理亞。幸い数日前のアジトでの戦闘の際、ディアンシーの宝石は離れている場所に居た私のモノも強く輝いていました。恐らく、ディアンシーが地方全体を見守っている限り、多少離れていても地方内であれば巫女の力が届くんだと思います」 


ぼやける視界の先で、聖良さんが真っ白い珠と、透明で鈍く輝く宝石を持っていた。 


聖良「なので、私は一足先にクロサワの祠に向かいます。条件を達成するためには、あの地で時空の神と空間の神を揃える必要がある」 

ルビィ「あの、地……って……? クロサワの祠で……なに、するの……?」 

理亞「! ルビィ……!」 

聖良「お目覚めですか……もう少し眠ってくれていた方がよかったんですが」 

ルビィ「……聖良、さん……こんなこと、やめてください……」 

聖良「……それでは理亞。この場は任せますよ。後で合流しましょう」 

理亞「……わかった」 


聖良さんは背を向けて歩き出そうとする。 


ルビィ「女王様が……悲しむ、から……やめて……」 

聖良「……カラマネロ、“さいみんじゅつ”」 
 「……カラマ」 

必死に説得するルビィに対して、聖良さんがポケモンに指示を出す。 

指示を受けた大きな触手を携えたポケモンがルビィの目の前で怪しく光る。 


ルビィ「……ぁ……ぅ……」 


すると、だんだん意識にモヤが掛かってきて、再び思考がぼんやりしてくる。 
915 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 02:52:18.41 ID:XqTkDbxP0

ルビィ「……ダ、メ……」 

聖良「……次、会うときは全てが終わった後です」 

ルビィ「────」 


ルビィの意識は、そこでプツリと落ちてしまった。 





    *    *    * 





──セキレイシティ上空。 


善子「全員、突入準備はいい!?」 


善子ちゃんの問いかけに、全員で頷く。 


千歌「行こう!」 
 「ピィィイ!!!!!」 

梨子「うん!」 
 「ピジョットォ!!!!」 


私の合図でムクホークとピジョットが力強く羽ばたく。 


曜「花丸ちゃん、ごめんね。一緒に乗せて貰っちゃって……私飛ぶ手段がないから」 

花丸「問題ないずら。フワライドは人を運ぶのが好きだし」 
 「プワァ~」 

善子「千歌とリリーに続くわよ!」 
 「カァーー!!!」 


私たちは、以前パルキアから逃げるために使った飛空挺の穴を目指して、前進する。 





    *    *    * 





──飛空挺。 


千歌「善子ちゃん!」 


先に穴から、飛び込んだ私は外の善子ちゃんに手を伸ばす。 


善子「あ、ありがと……」 

千歌「これで、全員乗り込んだね」 

花丸「これは……未来ずら」 


振り返ると、花丸ちゃんが飛空挺内の広い室内を見上げて驚いている。 

──ここは、前回突入したときに聖良さんと会話した部屋だ。 


善子「……前回あれだけ派手にぶっ壊したのに、この透明な壁はちゃんと修復してるのね」 

千歌「うん……そうだね」 
916 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 02:56:31.11 ID:XqTkDbxP0

あわよくば、壊れた部分から侵入出来るかもと思ってたけど……そう簡単にはいかない。 


花丸「これは……たぶん、ガラスみたいなただの透明な壁じゃなくて、ポケモンの技ずら」 

曜「ポケモンの技?」 

善子「そういえば、“リフレクター”やら“ひかりのかべ”を使った技術とか言ってたっけ……」 

梨子「確かに……普通のガラスとかとは質感が違う気はする……」 

花丸「ロトム、いるずら?」 

 「いるロトー」 


ロトムが善子ちゃんの背中辺りから飛び出す。 


善子「わ!? な、なんで、あんたそんなとこいんのよ!?」 

 「飛行中は風除けがないと危険ロト」 

善子「誰が風除けよ!?」 

花丸「ロトム、これが何かわかる?」 

 「ムムー。……恐らく、複数のポケモンのエネルギーで作られたエネルギー壁ロト」 

善子「じゃあ、これガラスとかアクリル板みたいなものじゃなくてエネルギー体ってこと?」 

 「そうロト」 

梨子「こんな芸当が出来そうなポケモンって言ったら……」 


梨子ちゃんが壁の向こうに目を凝らしていると、 


 「バリバリー」 


透明な壁を隔てた向こう側を一匹のポケモンが横切る。 


曜「! 今のバリヤード?」 

千歌「バリヤード……」 


私は図鑑を開いた。 


 『バリヤード バリアーポケモン 高さ:1.3m 重さ:54.5kg 
  人を信じ込ませるのが うまく 生まれつき パントマイムの 
  達人。 指から 放たれる 不思議な 波動が 空気を 
  固めて 本当の 壁を 作り出し どんな 攻撃も 跳ね返す。』 


梨子「バリヤードが何匹かのポケモンのエネルギーを使って壁を維持してるってこと?」 

 「たぶんそうロト」 

善子「何匹かってわかるの?」 

 「…詳しい数はわからないロト。ただ、1匹や2匹ではないロト」 

善子「……ふむ」 


善子ちゃんは顎に手を当てて考え込む。 


千歌「とりあえず、壊せるか試してみる? 5人のフルパワーなら、もしかしたら……」 

善子「……いや、たぶん無理だと思う。前にアブソルが散々“かわらわり”してたけど、傷一つ付かなかった。無駄に攻撃しても、いたずらに侵入を報せることになるだけだわ」 

梨子「“かわらわり”は防御壁を砕くための技だもんね……。それで、傷一つ付かないってなると、壊すってのは現実的じゃないかも」 

善子「……それこそ、パルキアに匹敵するパワーが出せるなら別だけど……」 

千歌「う……それは無理かも」 
917 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 02:58:07.33 ID:XqTkDbxP0

あの空間ごと引き裂くとんでもパワーは私たち5人で力を合わせても無理な気がする……。 


曜「なら、どうする……?」 

花丸「うーん……どっちにしろ、これだけ厳重に壁を作ってる以上、この先にルビィちゃんが居るのは確かずら」 

梨子「私もそう思うかな……この配置、完全にこの先には絶対侵入させないって意思を感じるし」 

善子「……ロトム」 

 「ロト?」 

善子「これ、複数のポケモンのエネルギーで出来てるって言ってたわよね」 

 「そうロトね」 

善子「そのエネルギーの源って、この近くにあるかわかる?」 

 「いやこの近くにはいないロト」 

梨子「? この壁を作ってるエネルギー源のポケモンは、ここには居ないってこと?」 

 「図鑑サーチをしてみても、この近くにバリヤード以外のポケモンはいないロト」 

善子「……ただ、バリヤードが走り回って壁を補強し続けてる以上、今もエネルギーは何処かから供給されてるはず……」 

花丸「この飛空挺内の他の場所に、エネルギー源になってるポケモンが居るってことずら?」 

善子「可能性は高いわ。それもリスクを分散させるために、複数の場所からエネルギーを供給してるんじゃないかしら」 

曜「! それなら、そのエネルギー源になってるポケモンを倒せば……!」 

善子「ええ、この壁を弱体化出来る」 

千歌「えっと……飛空挺のあっちこっちにいる、エネルギーを送ってるポケモンを倒せばいいってことだよね?」 

善子「そうなるわね。ただ、この広い飛空挺……端から順に皆で巡ってる時間はない」 

曜「手分けして……ってことだね」 

善子「相手の数がわからない以上、密に連絡を取り合いながらの方がいいわよね……。全員、敵のポケモンを見つけたら図鑑で報告しあいましょう」 

梨子「うん、わかった」 

花丸「ルビィちゃん……!! すぐ行くから、待っててね!」 

千歌「よし! 皆、いくよー!!」 

曜・梨子・善子・花丸「「「「了解!」」」」 


私たちは5人それぞれわかれて、飛空挺内を走り出した。 





    *    *    * 





善子「ロトム? あんたは私についてくるのね?」 

 「一番強そうな人についてくのが安心ロト」 

善子「……くっくっく、あんたわかってるじゃない」 


私はロトムに向かって、全員に指示を出す。 
918 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 02:59:23.82 ID:XqTkDbxP0

善子「この飛空挺は何層かにわかれてる。わざわざポケモンを分散させてるんだとしたら、いろんな層にいるって考えるのが自然だから、探索してる層があまり被らないようにしましょう」 

千歌『じゃあ、私は上にいく! なんか上の方にいそうだし!』 

曜『なら、私は最下層を目指してみるよ』 

花丸『中層はオラが行ってみるずら』 

梨子『えっと……ここからだと下の方が多いのかな……?』 

善子「たぶんそうね。私たちが最初に居た場所は中間よりはやや上側だったと思うわ」 

梨子『なら、私もある程度下層を目指すね』 

善子「任せるわ、リリー」 


通信を終えて、 


善子「なら、私は中層と上層の間くらいを探索した方がよさそうね。行くわよ、ロトム!」 

 「了解ロト」 


私たちは飛空挺内を駆ける。 





    *    *    * 





──飛空挺上層部に向かう千歌。 

上層部は天井が高い部屋が多くて、見通しがいい。 

その分── 


団員「バネブー、“サイケこうせん”」 

千歌「ルカリオ! 波導で捻じ曲げろ!」 
 「グゥワ!!!!」 


あっちこっちから攻撃が飛んでくる。 


千歌「バクフーン!! あそこ! “ひのこ”!!」 
 「バクフッ!!!!」 

 「ブーー!?」 


バクフーンが火球を飛ばして、撃退する。 

あんまり団員に手間取っている場合ではない。 

走りながら、移動の妨げになるようなら、狙って撃退する。 


千歌「とにかく、早くエネルギー源になってるポケモンを見つけなきゃ!!」 





    *    *    * 





── 一方、下層へ向かう曜。 


曜「階段、どこー!?」 
919 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:00:50.67 ID:XqTkDbxP0

さっきから走り回っているけど、下層に向かう階段があまり見つからない。 

こんなことなら最初の部屋に出来てる大きな割れ目から無理矢理したに飛び降りてしまった方がよかったかもしれない。 

そんなこんなで下への道を探し回っている中でも、 


団員「ヒトデマン、“スピードスター”!!」 


問答無用に攻撃が飛んでくる。 


曜「タマンタ! “バブルこうせん”!」 
 「タマー!!」 


攻撃を撃ち落しながら、走り回ってはいるけど……。 


曜「……これじゃ、時間が掛かりすぎる! カイリキー!!」 
 「リキーッ!!!!」 


カイリキーを出して、 


曜「真下に向かって、“からてチョップ”!!」 
 「リキッ!!!!!」 


4本の腕を通路に叩き付ける。 

カイリキーの“かいりき”によって、足元の鉄板がひしゃげる。 


曜「よし、いけそう! パンチで思いっきりぶっ壊せ!」 
 「リキ!!!!!!」 


カイリキーが高速で拳を床に叩き付ける。 

カイリキーは4本の腕を使って2秒間で1000発のパンチを繰り出すと言われている。 

打撃を連打された床板はひしゃげた後、下に向かって貫通する。 


曜「おっけー!! ここから下層に行こう、タマンタ!」 
 「タマ!!」 


私はカイリキーをボールに戻し、タマンタを頭上に掲げてグライダーの要領で下層へと降りていく──。 





    *    *    * 





──中層、花丸。 


花丸「“はっぱカッター”!!」 
 「ドダイ!!!」 


ドダイトスに乗って、敵をなぎ倒しながらマルたちは前進する。 

扉を見つけたら、 


花丸「“ウッドハンマー”!!!」 
 「ドダイ!!!!!!」 


ドダイトスの背中の樹で思いっ切り扉を吹っ飛ばす。 

部屋の中を軽く確認して……。 
920 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:01:44.14 ID:XqTkDbxP0

花丸「ここでもない……! 次行くずら!」 
 「ドダイ!!!!」 


再び走り出す。 

何度か続けているうちに── 


花丸「! この部屋……」 


明らかに今まで様相が違う部屋に辿り着く。 

そこにあったのは──砂浜だった。 


花丸「こんなところに砂浜……怪しいずら」 


ドダイトスに乗ったまま、部屋の内部へと踏み込み、図鑑に向かって話しかける。 


花丸「変な部屋を発見したずら」 


そして、返事を待つ。 

待つ……。 


花丸「……ずら?」 


返事がない。 


花丸「あ、あれ……? 通話繋がってない……?」 


図鑑を叩いてみる、と。 


善子『そういえばずら丸!』 

花丸「ずら!?」 


図鑑から善子ちゃんの声。 


善子『あんた図鑑の操作ちゃんとわかってる?』 

花丸「わ、なんか善子ちゃんと繋がったずら!」 

善子『……あんたは通話繋ぎっ放しにしておきなさい。一度切れたら次またいつ繋げられるかわかんないから』 

花丸「それよりも善子ちゃん! 変な部屋を見つけたずら!」 

善子『変な部屋? どんなの?』 

花丸「砂浜ずら」 

善子『砂浜……? 飛空挺の中に?』 

花丸「うん、砂浜に海ずら」 


もちろん、室内だから、砂浜から続く海はすぐに壁があって途切れてるけど……。 


善子『飛空挺の中でわざわざ自然環境の再現……ポケモンの飼育用の部屋って考えるのが普通よね』 

花丸「たぶん、そうだと思う」 


ドダイトスと砂浜を踏みしめていると── 

急に、ガクッと身体が揺れた。 
921 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:03:11.25 ID:XqTkDbxP0

花丸「ずら!?」 
 「ドダイ!!!!!」 





    *    *    * 





花丸『──ひ、引っ張られてるずら!?』 

善子「ずら丸!? 大丈夫!?」 

花丸『ドダイトス!! “ばかぢから”!! ──大丈夫! 敵から攻撃を受けてるみたいだけど……! 今攻撃してきてるのが倒すべきエネルギー源のポケモンなのかな!?』 

善子「可能性は高いわ! 倒せる!?」 

花丸『そのために来たずら!! 任せて!!』 

善子「わかった! 無茶するんじゃないわよ!! ロトム!! 全員に通話繋げて!!」 
 「ロト!!」 

善子「こちらヨハネ!! ずら丸が会敵!! 他の人も遭遇したら、連絡入れて!!」 


一方的に図鑑に向かって、声を張り上げる。 


梨子『ごめん、善子ちゃん。ちょっと通話切る……!』 

善子「は!? リリー!? なんかあったの!?」 


突然リリーから通信遮断の話を振られ、そのまま通話が切られてしまう。 


善子「ちょ、リリー! リリーったら!?」 

千歌『梨子ちゃん、どうかしたの!?』 

曜『もしかしたら……梨子ちゃんも敵と戦ってるんじゃ……』 

善子「……あんまり音を立てない方がいい状況だったとか……?」 
 「可能性はあるロト」 





    *    *    * 





──下層、梨子。 

半ば無理矢理通信を切って、物影に隠れる。 


梨子「メブキジカ……“ほごしょく”」 
 「…ブルル」 


出来る限り、艦内の背景に馴染むようにメブキジカが体色を変え、その影に身を潜める。 

私がどうして、こそこそ隠れてるかと言えば……。 


梨子「……」 


今物影から覗いている光景が原因だ。 


団員1「…………」 
団員2「…………」 
団員3「…………」 
922 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:04:40.61 ID:XqTkDbxP0

長蛇の列を作っている、薄紫の衣装を身に纏ったグレイブ団の団員たち、そしてその先には── 


 「スリーパ……」 


スリーパーが団員たちに順に“さいみんじゅつ”を掛けているところだった。 

……団員たちはああやって定期的にこの部屋で“さいみんじゅつ”を掛けて、催眠暗示を更新しているのかもしれない。 

それはそれとして……。気になるのはスリーパーの足元。 

何やら円盤のような装置の上に立っている。 


梨子「もしかして……あれがエネルギーの転送装置なのかも」 


“さいみんじゅつ”を掛ける以上、スリーパーはここから動けない。 

その際についでに“ゆめくい”で団員からエネルギーを補給、そのまま抽出して送り出してるなら効率がいい。 

……さて、それがわかったところでどうするか。 


梨子「……無闇に飛び出したら、あの団員達に掴まるよね」 


さすがに数が多すぎる。どうにか方法を考えないと……。 

私が思案していると、 

 「ブルル…」 

メブキジカに袖を引っ張られる。 


梨子「? メブキジカ?」 
 「ブルル」 


メブキジカは出口の方を、眼で差している。 


梨子「……もしかして、自分が囮になるって、言いたいの?」 
 「ブルル」 


メブキジカが頷く。 


梨子「……でも、それは」 
 「ブルル」 


メブキジカが顔を寄せてきて、私の頬を舐めた。 

──次の瞬間には、メブキジカは立ち上がり、通路側に向かって走り出した。 


梨子「!? メブキジカ!?」 

 「ブルル!!!!!」 


メブキジカは蹄で床を、ツノで壁を打ち鳴らしながら、部屋の出入り口に駆けて行く。 


団員1「侵入者、侵入者」 

団員2「追跡、排除」 


団員たちが単語だけで喋りながらわらわらとメブキジカを追いかけ始める。 


梨子「も、もう……!!」 
923 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:06:47.02 ID:XqTkDbxP0

メブキジカは本当に私のためにいつも無茶をしてくれる。 

こんなときでも……。 

もはや、こうなったらやるしかない。出来るだけ早くスリーパーを倒して、メブキジカを助けに戻る。 


梨子「すぐ助けに行くからね……!!」 


私は物影を飛び出す。 

 「スリーパ!?」 

突然現われた私に驚いたスリーパーの方へ、ボールを放る。 


梨子「メガニウム!! “マジカルリーフ”!!」 
 「ガニュー!!!!!」 


私はメガニウムと共に戦いへと駆り出した。 





    *    *    * 





──上層部、千歌。 

ひとしきり捜索を続けたところで、 


千歌「ここは……」 


部屋の奥側90度から、空が見える部屋に辿り着く。 

どうやら、飛空挺内の最上層部の端の部屋らしい。 


千歌「それにしても……随分広い部屋」 


この部屋は静かだ。さっきまでひっきりなしに襲いかかってきていた道中の団員たちが嘘のようだ。 

私は道中、迎撃で戦っていたバクフーンとルカリオをボールに戻す。 


 「──キィ」 

千歌「……え? 今なんか……」 


上方から甲高い声がして、視線を上にあげた瞬間、 


千歌「!?」 

 「キィィィィイイイイ!!!!!!!」 


どこかで見覚えのある影が、天頂から降って来ているところだった。 





    *    *    * 





──上層部、善子。 


善子「ここよ!!」 
924 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:07:53.37 ID:XqTkDbxP0

扉を思いっきり開け放つが── 


 「ハズレロト」 

善子「…………」 
 「これで20部屋ロト。さすがに運が悪すぎないかロト?」 

善子「うっさいわね! 私くじ運がないのよ……」 


こんなところで堕天使の本懐を発揮しなくてもいいのに……。 

私は中層部から上に向かう通路を虱潰しにしているはずなのに、一向にターゲットが居る場所を引き当てられずにいた。 


善子「とにかく……次よ、次!!」 


最上階でやや天井の高い通路に再び身を躍らせると── 


 「────ぁぁぁぁぁ……!!」 

善子「……ん?」 


何かが聞こえてくる。 


善子「……声……?」 
 「ロ、ロト!? よ、善子ちゃん!」 

善子「ヨハネよ!!」 


ロトムが前方を促す、釣られて視線を移すと、通路の向こう側の上方に影、 


善子「──って、あれって!?」 

 「キィィィイイイイィィィィィィィィ!!!!!!!!!」 

千歌「わああぁあぁぁぁぁぁ!!?!? や、やめてぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!!」 

善子「千歌!?」 


宙吊りで逆さまの状態の千歌がこっちに向かって飛んできている。 

そしてその千歌の脚を掴んで、高速で飛翔しているのは── 


善子「……!! あいつ!! オンバーン!!」 


いつか、音ノ木で会敵したオンバーンの姿だった。 

──これも運命ってことかしらね。 

私はボールを放る。 


善子「行くわよ、アブソル!!」 
 「ソルッ!!!」 

善子「“かまいたち”!!」 
 「ソルッ!!!!」 


アブソルが頭を振るうと、空気の刃がオンバーンに向かって飛んでいく。 


 「キィイィィィィィィ!!!!!!」 


だが、空刃はオンバーンが音波を発することによって相殺される、 

そして、その拍子に── 


千歌「──いっ!?」 
925 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:09:42.37 ID:XqTkDbxP0

攻撃に気を逸らされたオンバーンが千歌を放してしまう。 


善子「しまっ……!? 千歌っ!!」 

千歌「……っ!! しいたけ!!」 


千歌は咄嗟に地面に向かってボールを放る。 


 「ワフッ!!!」 

千歌「“コットンガード”ぉ!!!」 


床の上でしいたけがもこもこと膨れ上がり、 

千歌はその上にぼふっと墜落する。 


千歌「……た、助かった」 

善子「よ、よかった……」 
 「ヨハネちゃん!!!」 

 「キィィイィィィィィィィ!!!!!」 

善子「!?」 


ロトムの声で我に帰る、視線を戻すとオンバーンが今度は私の方に急襲を仕掛けてきていた。 


 「ソルッ!!!!」 


アブソルが、頭の刃でオンバーンの脚を受け止める。 


 「────キィ」 


オンバーンが私とアブソルに顔を向けた。 


善子「……!!」 


この技は見たことがある、 


善子「アブソルッ!!!!!」 
 「ロトッ!?」 


咄嗟にアブソルをボールに戻しながら、ロトムを引っつかみ、オンバーンの下を潜るように、スライディングで背後に、 

そのまま耳を塞いで、床に伏せる。 


 「ギィィイィイァァアァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」 

 「ギャーーーーロトーーーーー」 

善子「……っ!!!!」 


後方の通路もろとも消し飛ばす、“ばくおんぱ”が炸裂した。 


善子「…………ぐっ……」 


咄嗟に背後に回り、耳を塞いだため、ダメージこそあまりなかったものの、 

反響した音だけでも頭がガンガンする。 


 「キィィィ!!!!!!」 


すぐさま振り向いてくるオンバーン。 
926 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:11:46.62 ID:XqTkDbxP0

善子「……っ!!!」 


ボールに手を掛けた瞬間── 


千歌「“すてみタックル”!!!」 

 「──ピィィィイイィィィィィ!!!!!!」 

 「ギキィ!!?」 


千歌のムクホークが猛突進でオンバーンを吹っ飛ばす。 


善子「! 千歌っ!!」 

千歌「善子ちゃん! 大丈夫!?」 


千歌が向こう側から駆け寄ってくる。 


善子「え、ええ……咄嗟に耳塞いだから、なんとか」 

千歌「そっか……よかった……」 


千歌が安堵する中、 


 「キィィイイ!!!!」 


吹っ飛ばされたオンバーンが怒り狂って、ムクホークに組み付いてくる、が 


千歌「ムクホーク!! “インファイト”!!!」 

 「ピィィイイィィィ!!!!!」 


その組み付きを許さないとでも言わんばかりに、猛禽の脚や翼、嘴を使ってムクホークがオンバーンを攻撃し、反撃する。 


善子「ヤミカラス! ムウマ!」 
 「カァカァ」「ムマ!!」 

善子「いいじゃない、期せずしてだけど、音ノ木のときのリターンマッチよ!」 
 「カァカァ!!!」「ムマァ!!!!」 


私は“やみのいし”を二つ取り出す。 


善子「前ほど弱くはないわよ!! 千歌も、私も!! そして、手持ちたちも!!」 


二匹に石を近付けると、 

進化の光と共に、二匹が大きく立派な姿に── 


 「──カァーーー!!!!!」「──ムマァージ!!!!!!」 


善子「行くわよ!! ドンカラス!! ムウマージ!!」 
 「カァーーーー!!!!!」「ムマァーーージ!!!!!」 





    *    *    * 


927 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:13:32.71 ID:XqTkDbxP0


──下層部、梨子。 


 「ガニューー!!?」 

梨子「……くっ!!」 


“サイコキネシス”で吹き飛ばされるメガニウム。 

私はスリーパーとの戦闘に思った以上に苦戦を強いられていた。 


 「スリー、パー……」 


スリーパーは片足で立ち“ヨガのポーズ”をしながら、コンセントレーションを高めている。 

やはり、エスパータイプは攻防共に隙がない。 

クリスタルケイヴでのエーフィとの戦いのように、意表を突くしか……。 

幸いなのは……。 


 「チェリ」 


スリーパーの得意技の“さいみんじゅつ”は、こっちもお得意の“なやみのタネ”戦法で先手を打っている。 


梨子「チェリム! “はなふぶき”!!」 
 「チェリー」 


チェリムが“はなふぶき”を飛ばし、 


 「スリー、パー」 


スリーパーがそれをサイコパワーで止めたところに、 


梨子「メガニウム! “つるのムチ”!」 
 「ガニュゥー!!!」 


蔓を伸ばして、動きを止め── 


 「スリー、パ」 


ようとしたところ、スリーパーは飛んできた蔓を素手で掴み、 


梨子「嘘……!?」 


そのまま、自分側に思いっ切り引っ張ると、 


 「ガニュッ!?」 


メガニウムの体が浮く。 

そして、そのまま乱暴に後ろに放り投げる。 


 「ガニュゥーーーッ!!!!」 

梨子「メガニウム!?」 


そのまま、辺りの机や棚を吹き飛ばしながら、メガニウムが室内の奥の壁にたたきつけられる。 


 「ガ、ガニュゥ……!!!」 
928 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:14:53.20 ID:XqTkDbxP0

メガニウムはそれでも気合いで立ち上がるが……。 

不味い、“ヨガのポーズ”の効果で攻撃力もかなり上昇している。 

どうにか意表を── 


梨子「……?」 


そのとき、なんだか違和感がした。 

いや、違和感というか……。 

──音がした。 

──知ってる、音が。 

──懐かしい、音が。 


梨子「…………」 


私は、 


梨子「……チェリム!! “グラスフィールド”!!」 
 「チェリ」 


この戦いを勝ち抜く、一手を指す、 


梨子「メガニウム!! “すてみタックル”!!!」 

 「ガニュゥ!!!!!」 


メガニウムが、手前側に向かって走り出し、 


 「スリー…」 


スリーパーの横を通り過ぎた。 


 「…パー!?」 


次の瞬間、スリーパーの背後でメガニウムが仕掛けた“タネばくだん”が炸裂する。 


 「スリーパ!?!?」 


スリーパーが音に気を逸らされ、一瞬私たちから視界を外す。 

──メガニウムが私の方に迫ってくる。 

そして、背後からは── 

──小気味の良い、蹄の音が近づいて来る。 


梨子「──聞こえてたよっ!!」 

 「ブルルルルッ!!!!!」 

 「ガニュウ!!!!」 


私を間に挟んで、前からメガニウムが右側を、 

──後ろからメブキジカが左側をすれ違う、 


 「スリ!!?」 


やっと視線を戻したスリーパーは、先ほどまで居なかったメブキジカの出現に、驚きの目を見開いたのち、手を前に── 
929 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:16:11.11 ID:XqTkDbxP0

梨子「もう遅いよ……!!!」 

 「ブルルルルッ!!!!!!!」 


メブキジカは頭を下げ、自慢の角を突き出す。 


梨子「“ウッドホーン”!!!」 

 「ブルルルッ!!!!!!」 

 「スリー、パァ!!!!?」 


“グラスフィールド”により、威力が底上げされた“ウッドホーン”に突き飛ばされて、 


 「スリー、パー……」 


その勢いで背後の壁に叩き付けられ、スリーパーは静かになった。 

そして、背後では、 


 「ガニュー!!!!」 


メガニウムが戻ってきた団員たちを相手に暴れている。 


 「チェリッ」 


それに加勢をしようと、チェリムが飛び出す。 


 「ブルル」 


そして、前方から、スリーパーを仕留めたメブキジカが歩いてくる。 


 「ブルル」 
梨子「……うん。聞こえてくる足音だけで、わかったよ」 


メブキジカが伝えてきた、この不意の一手が、 

ずっと一緒に育ってきた、この子の大好きな足音だから、 


梨子「……さあ、メガニウムたちの加勢に行こう!!」 
 「ブルルッ!!!」 


私は踵を返して、メブキジカと団員たちの撃退に加勢しに行くのだった。 


930 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:17:49.04 ID:XqTkDbxP0


>レポート 

 ここまでの ぼうけんを 
 レポートに きろくしますか? 

 ポケモンレポートに かこんでいます 
 でんげんを きらないでください... 


【飛空挺セイントスノウ】 
 口================= 口 
  ||.  |⊂⊃                 _回../|| 
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  || 
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   || 
  ||.  | |       回 __| |__/ :     || 
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     || 
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     || 
  ||.  | |.      | |           |     || 
  ||.  | |____| |____    /      || 
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  || 
  ||.  | |      | |  _●   /     :   || 
  ||.  回     . |_回o |     |        :   || 
  ||.  | |          ̄    |.       :  || 
  ||.  | |        .__    \      :  || 
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  || 
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  || 
  ||.      /.         回 .|     回  || 
  ||.   _/       o‥| |  |        || 
  ||.  /             | |  |        || 
  ||./              o回/         || 
 口=================口 
931 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 03:18:48.01 ID:XqTkDbxP0

 主人公 千歌 
 手持ち バクフーン♂ Lv.52  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき 
      トリミアン♀ Lv.46 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする 
      ムクホーク♂ Lv.51 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき 
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい 
      ルカリオ♂ Lv.52 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:141匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 梨子 
 手持ち メガニウム♀ Lv.49 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり 
      チェリム♀ Lv.46 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい 
      ピジョット♀ Lv.46 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん 
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん 
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:116匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 曜 
 手持ち カメックス♀ Lv.46 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい 
      ラプラス♀ Lv.44 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき 
      ホエルオー♀ Lv.41 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい 
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん 
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん 
      タマンタ♀ Lv.38 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい 
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:145匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:48pt 

 主人公 善子 
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.47 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい 
      ドンカラス♀ Lv.48 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい 
      ムウマージ♀ Lv.44 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき 
      ランプラー♀ Lv.49 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない 
      ユキワラシ♀ Lv.40 特性:せいしんりょく 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい 
      アブソル♂ Lv.54 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:124匹 捕まえた数:50匹 

 主人公 花丸 
 手持ち ドダイトス♂ Lv.36 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい 
       ゴンベ♂ Lv.32 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき 
      デンリュウ♂ Lv.32 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい 
      キマワリ♂ Lv.31 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき 
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい 
      ウリムー♂ Lv.38 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき 

      アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい 
      アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき 
      ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:95匹 捕まえた数:38匹 


 千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸は 
 レポートを しっかり かきのこした! 

...To be continued. 



932 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:13:42.64 ID:XqTkDbxP0

■Chapter066 『飛空挺、リベンジマッチ』 





──中層、敵と遭遇した花丸。 


花丸「ドダイトス! “せいちょう”!」 
 「ドーダイ!!!!!」 


ドダイトスの大きな身体が更に大きくなり、マルたちを引き摺り込もうとするパワーに対抗する重量を確保する。 

そこで、やっとドダイトスの足に絡み付いているものを確認した。 


花丸「触手……!」 


水色の触手、これは前にも見たことがある……! 


花丸「ブルンゲルの触手ずら! やっぱり、あのときのブルンゲルもグレイブ団のポケモンだったんだ……!」 


そうだろうとは思っていたけど、再び相対して確信に変わる。 


花丸「でも、前のときとは違うずら! 今は綱引きでも負けないパワーがあるずら!」 
 「ドダイッ!!!!!」 


ドダイトスがマルの言葉に呼応するように、地面を踏み鳴らす。 

しかも、それだけじゃない。 


花丸「行くずら、デンリュウ!」 
 「リュゥ!!!」 

花丸「“10まんボルト”!!」 
 「リュゥゥーーー!!!!」 


デンリュウは触手に向かって放電攻撃をする。 


花丸「ドダイトスはじめんタイプだから、掴まれてる間でも巻き込まれて感電しないずら!」 


デンリュウの強力な電撃を食らって、触手が引っ込められる。 

──直後、 


 「ブルン…」 


──ザバァッと音を立てて、ブルンゲルが水中から飛び出してきた。 


花丸「出てきてくれるなら、こっちのものずら!!」 
 「ドダイッ!!!!」 


ドダイトスが前に踏み出す、 

──ダンッと地面を踏み切って、自分の背中に生えた巨大な樹木を振り下ろす、必殺技……!! 


花丸「“ウッドハンマー”!!!」 
 「ダイトスッ!!!!!」 

 「ゲルッ!?!?」 


上から思いっ切り、ぶっ叩かれたブルンゲルは水中に逆戻りし、 

数秒経った後、 
933 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:15:05.35 ID:XqTkDbxP0

 「ゲ、ル……」 


……プカァと、水中に浮いてきて伸びていた。 


花丸「やったずら! ドダイトス!」 
 「ドダイッ!!!」 

花丸「さて……あとは転送装置の確認ずらね」 


ブルンゲルがエネルギー源になっていたなら、恐らく装置は水中にあるはず……。 

ドダイトスから降りて、砂浜を歩いて水に近付く。 


花丸「……さて、どうやって確認しようかな……。マルの手持ちじゃ泳げないし……」 
 「ドダイ…」「リュー…」 

花丸「……ブルンゲルは倒せたし、一旦曜ちゃんと合流した方がいいのかな」 


マルは砂浜に背を向け、図鑑を開く。 

曜ちゃんに場所を伝えて、来てもらえば確認が出来る。 

マルは曜ちゃんと持ち場を入れ替えて── 


花丸「えーっと……あれ? また通話切れてるずら……えっと、曜ちゃんと通信……」 


マルは呑気にポチポチと図鑑を弄る。 

──こんなことをしてる場合じゃなかったと気付いたのは、この数秒後のこと、 

──ガクン。 

急に後ろ向きに体を引っ張られる力を感じた。 


花丸「──ずら!?」 


そのまま、為す術なくマルは“ピンク”の触手に絡み取られて、水の中に引き摺り込まれる。 

マルはそこでやっと思い出す、 

確かにあのブルンゲルは──……つがいだった。 





    *    *    * 





──上層、千歌、善子。 


善子「ムウマージ! “マジカルフレイム”!」 
 「ムマァージ!!!」 


ムウマージの周囲をぽっ、ぽっと炎が浮かび上がり、それを発射する。 


 「キィィィイイィィィィィ!!!!!」 


その炎を掻き消すように、オンバーンが“かぜおこし”で吹き飛ばす。 

だが、出来た隙に背後に回ったムクホークが、 


千歌「ムクホーク! “つばめがえし”!!」 
 「ピィィイィィィィ!!!!!」 
934 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:20:00.24 ID:XqTkDbxP0

翼を振り下ろす、 


 「キィィイイィイィィ!!!!!!」 


その翼に打ち合うように、オンバーンが翼で薙いだあと、 

──キィィィ、と言う音が微かに聞こえてくる。 


善子「……!! ドンカラス、“バークアウト”!!」 
 「カァーーーーー!!!!!!!」 


ドンカラスが咄嗟に威嚇するように声をあげる、 

その音にオンバーンが怯んだ隙に、 


千歌「ムクホーク! “みだれづき”!!」 
 「ピィピィィイィィ!!!!!」 


オンバーンの耳を狙う、 


 「ギキィ!!!!!!」 


オンバーンはその攻撃を嫌がって、後方の空中に飛び退る。 

そのまま、すぐに下を向いて、攻撃態勢に入ってくる。 


千歌「! ムクホーク、上昇!!」 

 「ピィィ!!!!」 


私はそれを見て、すぐさま前に駆け出して、ムクホークの脚を掴んで勢いよく上昇する。 


善子「っち……! ドンカラス、飛ぶわよ!!」 
 「カァカァーーー!!!!」 


私たちが咄嗟に飛び出し、高度を一気に上昇させたところで、オンバーンから下方に向かって、 


 「ギィィァアアァァァァァァ!!!!!!!!!」 


もはや爆発音に近い、鳴き声が発される。 


千歌「ぐぅぅぅ……!!」 


片方の耳を塞ぎながら、どうにか耐える。 


善子「……っ!!」 


善子ちゃんも同様に。 

……一方で、音の振動をまともに受けた、直下の通路は、そのあまりの爆音に通路の鉄板にところどころヒビが入っている。 


千歌「う、うるさいぃ……」 

善子「音技があると、こっちの動きが制限される……っ! やっぱどうにか“じごくづき”を叩き込まないと……!」 

千歌「でも、近付いてもオンバーン空に逃げちゃうし……!」 

善子「アブソルの攻撃は前に見てるからね……警戒してるんだと思うわ」 


善子ちゃんはさっきから、どうにかアブソルを使って狙ってはいるものの、すぐに上空に逃げられたのち、一方的に上から攻撃を浴びせられるため、今アブソルはボールに戻している。 

そんな話をしている間にも、 
935 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:22:07.30 ID:XqTkDbxP0

 「キィィィィィィィィ!!!!!!」 


オンバーンは溜めなしで金きり声を出す。 


千歌「あ、頭に響くー……!!」 

善子「ち、“ちょうおんぱ”……!! ……っく、ここは一旦引くっ!」 


善子ちゃんはそう言ってから、通路の私が連れてこられた方へと飛行する。 

私もそれにならって、追いかける。 


千歌「よ、善子ちゃんっ、私たち逃げてる場合じゃ……!!」 

善子「大丈夫よ、オンバーンは追ってくる」 

千歌「……?」 


言われて、背後を見ると、 


 「ギキィギキィ!!!!」 


確かにオンバーンは私たちを追ってきていた。 


善子「オンバーンはもともとこの先にいたんでしょ?」 

千歌「う、うん」 

善子「あいつもエネルギー源だって言うなら、そこにエネルギーの転送装置があるはずでしょ! 千歌と戦闘せずに連れ去ったのは、そこの装置を壊さないため遠ざけたんだって考えたら辻褄があうわ!」 

千歌「な、なるほど!」 


逆に言うなら、ここで追ってくる時点であのオンバーンはほぼ確実に私たちが倒すべき敵──エネルギー源のポケモンというわけで……あれ? 


千歌「よ、善子ちゃん!」 

善子「……千歌も気付いた!?」 

千歌「うん!」 


……それこそ、私たちの目的はオンバーンを倒すことじゃない。エネルギーの転送を止めればいいんだ、なら──。 


千歌「転送装置を壊せば、私たちの目的は達成される!」 

善子「そういうこと!!」 


──キィィィィ。 

再び背後から、“ばくおんぱ”のチャージ音が聴こえてくる。 


善子「ムウマージ!!」 


だけど、善子ちゃんが指示を出した瞬間、 

 「ムマァージ!!!」 

ムウマージがどこからともなく現われて、オンバーンの横っ面に突進をかます。 

 「ギキィッ!!!!」 

ムウマージの突進で無理矢理横を向かされたオンバーンの音波攻撃は通路の横側を吹き飛ばすだけに至る。 


千歌「ムウマージ! いつの間に……!」 
 「今のは“ゴーストダイブ”ロト」 


ロトムが横を浮遊しながら補足をしてくれる。 
936 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:23:55.35 ID:XqTkDbxP0

善子「って、あんた何処行ってたのよ!?」 
 「最初の“ばくおんぱ”で気絶してたロト。さっき起きたロト」 

善子「……言われてみれば、ロトムの断末魔みたいなの聴いたような」 
 「まだ、死んでないロト……。それより、梨子ちゃんから通信ロト」 

千歌「梨子ちゃんから!?」 


私たちは図鑑を取り出して、耳に当てる。 


梨子『こちら梨子! スリーパー撃破! エネルギー転送装置みたいなものも発見したよ!』 

善子「! ナイスよ、リリー!」 

梨子『私はこのまま、中下層部に他に装置がないか探すね!』 

善子「お願い! これで転送装置の存在も確証に変わった……! ずら丸と曜から連絡がないのは気になるけど……」 

千歌「心配だね……でも二人を信じよう、私たちはエネルギーの転送装置を……!」 
 「待って欲しいロトー」 

千歌「え、どうしたの? ロトム?」 
 「装置に直接アクセスして、電気信号を覚えれば、同じような装置の気配がわかるようになるはずロトー」 

千歌「そんなこと出来るの!?」 

善子「そういえば、ロトムは家電に住み着くゴーストポケモンだったわね……!」 


そういえば、最初に出会ったときに鞠莉さんがそんなことを言ってたかもしれない。 

家電……ではないけど、装置も電気を使って動く機械だろうし、ロトムが出来ると言ってるからには出来るんだろう。 


善子「ざっくりとでも数と場所がわかれば、その情報は大きいわ!」 

千歌「うん、そうだね! ロトム、お願いできる!?」 
 「任せてロトー」 


会話の最中、先ほどオンバーンに襲われた広い空間のある部屋に突入する。 


善子「……って扉とかなかったけど」 

千歌「あ、うん、オンバーンが“エアスラッシュ”で吹き飛ばしちゃって……」 

善子「……そこまでしてでも、千歌を部屋から排除したかったのね」 


善子ちゃんとのやり取りに割り込むように、 


 「キィィィィィィァァァァァァァ!!!!!!」 


通路側から鳴き声が響く。 


善子「……もう来たか……っ! ロトム!」 
 「ロト!?」 

善子「千歌と一緒に装置を探しなさい!」 

千歌「善子ちゃんは!?」 

善子「時間を稼ぐ! 空中戦なら、私の方が得意だし! 装置は見つけて信号をロトムに覚えさせたら、即破壊して!」 

千歌「わかった!! ロトム、行こう!!」 
 「了解ロト!!!」 


私は、ロトムと一緒に室内へ飛び出す。 

そして、背後の善子ちゃんは、 


善子「ランプラー、ユキワラシ!!」 
 「プラァ」「ユキッ」 
937 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:27:35.40 ID:XqTkDbxP0

更に追加でランプラーとユキワラシのボールを放り、飛び出した二匹にすかさず手に持った石を近付ける。 

二匹は進化の光に包まれたのち── 


 「──シャンディ……!!」「──ヒュゥゥ……ッ」 


新しい姿になって、善子ちゃんの傍らを浮遊している。 


善子「行くわよ、シャンデラ、ユキメノコ!! さぁ、来なさいオンバーン! 遊んであげるわ!!」 

 「キィィイィィィィィィ!!!!!!!!」 


私は装置を探し、善子ちゃんはオンバーンを迎え撃つ──。 





    *    *    * 





──最下層部、曜。 

床を貫通させながら、下へ向かってきた私たちは、 

その最中で奇妙な構造の部屋を見つけた。 


曜「これ……水槽かな……?」 
 「タマ?」 


目の前にはガラスが一面に張ってあり、その中には水が詰まっている。 

そして、何より不思議なのは、 

この水槽には下側にも口があるということだ、 

アルファベットのJの形を想像してもらうとわかりやすいかもしれない。 

Jの文字の右側が目の前にある縦長の水槽部分、 

左のちょこっと出ている低い出っ張りの位置に私たちは立っている。 


曜「……一つに繋がった水槽を二層に分けて管理するためにこんな形なのかな……」 


まあ、確かにこれだけ長いと、上からしか入口がなかったら大変ではあるけど……。 

とは言え、めちゃくちゃ怪しいのは事実。 

とりあえず潜ってみようかとゴーグルと果南ちゃんから貰った呼吸器を装着していたとき、 


曜「……?」 


ガラス張りの壁の先で、何かがゆっくりと降りてくる。 

ピンクの塊が……人のようなものを引っ張っている……? 

いや、あれは── 


曜「花丸ちゃん!? 助けなきゃ!!」 


私は反射に近いスピードで水槽へと飛び込んだ。 


938 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:29:34.76 ID:XqTkDbxP0


    *    *    * 





花丸「が、がぼぼっ……」 


花丸ちゃんを引き摺りこんで居るのは、♀のブルンゲル。 

以前15番水道でことりさんが撃退したやつだ。 

私はブルンゲルを一直線に指差す、その指で斜めに薙ぐようなジェスチャーをする。 


 「タマッ」 


──タマンタ、“エアスラッシュ”!! 


タマンタから放たれた斬撃が水中内を伝播しながら、花丸ちゃんに絡み付いている触手に直撃する。 


 「ブルン…」 


突然の下からの攻撃に驚いたのか、ブルンゲルの触手が花丸ちゃんから離れる。 


花丸「ぶくぶくぶく……」 


私はそのまま、泳いで近付いて、花丸ちゃんの腰辺りを腕を回して、そのまま私とタマンタが今さっき飛び込んだきた水槽の口へと、運んでいく──。 





    *    *    * 





花丸「……げほっ! ……げほっ!」 

曜「はぁ……はぁ……花丸ちゃん! 大丈夫!?」 


水槽の入水口から十分に距離を取ってから、花丸ちゃんを介抱する。 


花丸「だ、大丈夫……ずら……。……ありがと、曜ちゃん……助かった、ずら……」 


意識はハッキリしている。 

どうやら引き摺り込まれた直後だったようだ。 


花丸「もう、一匹……いるのを、忘れてた……ずら……」 

曜「もう一匹ってことは……」 

花丸「♂の方は上の階層で倒したずら……エネルギーの転送装置を、確認しようとしたところで……引き摺り込まれて……」 


肩で息をしながら、花丸ちゃんが状況を説明する。 


曜「なるほど……」 

花丸「……まだ、装置は確認出来てない、ずら……! なら、倒さなきゃ……!」 


花丸ちゃんは立ち上がって水槽の方に向かおうとするが、 
939 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:31:06.54 ID:XqTkDbxP0

曜「ま、待って! 花丸ちゃん!」 

花丸「……?」 

曜「冷静になって? 花丸ちゃん、水中で戦えるポケモン持ってないよね? ここで突っ込んでもまた同じ結果になるだけだよ?」 

花丸「ずら……」 

曜「引き摺り込まれたとき、手持ちは外に出してたの?」 

花丸「……う、うん。上の階層にドダイトスとデンリュウを置いてきちゃってるずら……」 

曜「それなら、一旦合流した方がいいよ。このままの状態は花丸ちゃんにとっても、花丸ちゃんの手持ちにとっても良くないし」 


ここは敵地である以上、自分の手持ちは自分の目の届くところに置いておかないと、何が起こるかわからない。 


曜「ブルンゲルは、私が倒すから」 

花丸「曜ちゃん……」 

曜「水中戦なら、誰よりも戦えるのは私だから、任せて!」 

花丸「……わ、わかったずら」 


花丸ちゃんは私の言葉を聞いて、冷静さを取り戻したようだ。 


花丸「ゴンベ! ウリムー!」 
 「ゴンッ」「ウリッ」 

花丸「“かぎわける”でドダイトスとデンリュウのニオイを探して!」 
 「ゴンッ!」「ブー」 


ゴンベとウリムーはくんくんと鼻を鳴らして、歩き出す。 


曜「よし……じゃあ、行って来るね」 


私は再びゴーグルと呼吸器を装着し、 

 「ガメ」「キュウ」 

水槽の着水口に、カメックスとラプラスを繰り出す。 


花丸「曜ちゃん……気をつけてね……!」 

曜「ん、花丸ちゃんも!」 


私は花丸ちゃんに敬礼したあと、水中へと飛び込んだ──。 





    *    *    * 





──さて、水の中で上下左右を見回す、 

すると、水槽の下の方からピンク色の物体が浮かんでくる。 

さっきのブルンゲルだ、 


 「キュウ」「ガメ」「タマ」 


私の周りにはラプラス、カメックス、タマンタの3匹。 

さすがにこの狭い空間でホエルオーは出せない。 

私はブルンゲルに向かって、腕を横向きに薙ぐジェスチャーをする。 
940 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:32:11.18 ID:XqTkDbxP0

 「キュウッ」 


ラプラス、“フリーズドライ”! 

ラプラスが前方に向かって、冷気の波動を発する。 

動きの鈍いブルンゲルは、 


 「ブル、ン」 


そのまま、冷気に掴まって、凍りはじめる。 

そこにすかさず、ジャブで打ち抜くようなジェスチャー。 


 「ガメー!!!」 


カメックス、“ハイドロポンプ”! 

カメックスから渾身の水砲が発射され、 


 「ブルンッ」 


ブルンゲルを吹っ飛ばした。 

……水中に引きずり込んでくることが厄介なだけで、ブルンゲル自体はそこまで強くなかったようだ。 

安心して、水上に戻ろうとした、そのとき、 


 「タマッ!!!!」 

曜「!?」 


タマンタが叫ぶ、 

タマンタは水中の微妙な動きをキャッチすることが出来る。 

そのタマンタが何か異常を報せていた。 

私は咄嗟にタマンタの体に掴まり、 


 「タマッ!!!」 


それを確認すると、タマンタは私を引っ張りながら、“こうそくいどう”で泳ぎ始める。 

直後── 


曜「……!!」 


私の居た場所を何か針のようなものが掠めた── 

いや、あれも見たことがある。 

──“ミサイルばり”。 

皆は……!? 

周囲を見回すと、 


 「キュウッ」「ガメッ」 
941 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:33:26.26 ID:XqTkDbxP0

ラプラスもカメックスも警戒態勢で、泳ぎまわっている。 

狙いを付けられないように、 

……どうやら、二匹とも戦う準備は十分のようだ。 

私は水底に目を向ける。 

かつて、スタービーチで私たちを苦しめたのと同じポケモンの姿が、そこにはあった。 


 「…ドイヒ」 


ドヒドイデ……! 

あのときは果南ちゃんが捕まえたから、あれは恐らく別の個体だろうけど……。 

私にとっては因縁のあるポケモン。 

カメックスに目を配る。 


 「ガメッ」 


カメックスが頷く。 

ラプラスに目を配る。 


 「キュウッ」 


ラプラスが頷く。 

私も、頷いた。 

今度こそ、勝とう、皆で……! 


 「ガメーッ!!!」「キュウッ!!!!」 


──前回同様辺りには気付けば既に“どくびし”が撒かれつつあった、 

私は腕を回内させながら、拳を前に突き出す。 


 「ガメーッ!!!!」 


それを見たカメックスが体を甲羅に収め、回転しながら飛び出した。 

──“こうそくスピン”! 

“どくびし”を蹴散らし、進む。 


 「ドイヒ…」 


そこに向かって、ドヒドイデは“とげキャノン”を撃ち出して来る。 

私は、拳を握ったまま突き出して、パッと手を開くジェスチャー。 


 「キュウッ!!!」 


ラプラスが周囲に小さな氷の塊を作り出して、発射する。 

──“こおりのつぶて”! 

氷は“トゲキャノン”を相殺し、カメックスを守る。 


 「……ドイヒ」 
942 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:34:56.92 ID:XqTkDbxP0

それを見たドヒドイデは、全身の触手を閉じて、ドーム状になってしまう。 

あれは……確か“トーチカ”だ。 

毒針を立てたまま、防御姿勢を取る技。 

私は、タマンタを促して、水底へと泳いでいく。 


 「ガメッ」「キュウッ」 


私たちが水底に降り立っても。 


 「……」 


ドヒドイデは“トーチカ”を開かない。 

防御してれば、それでこっちが折れるという算段なんだろう。 

……前までだったら、これだけで私たちには戦う術はなかっただろう。 

私は──メガイカリを右手で握り込む。 

眩い光と共に── 


 「ガーメッ……!!!」 


カメックスはメガカメックスへと姿を変える。 

これだけじゃない。 

私は──旅立ちのあの日にダイヤさんから貰った、“みずのジュエル”を取り出した。 

そして、メガカメックスの口に加えさせる。 

メガカメックスは水底に四肢を着き、 

三つの砲門全てをドヒドイデに向ける。 

水のエネルギーを充填を始める。 

──あのとき、私が始めて旅立った海で……私の大好きな海で、我が物顔で好き放題やっていたドヒドイデ。 

そんなドヒドイデに手も足も出ずに負け帰って、それ以降バトルが怖くなった。 

でも……今、この一撃でその過去とも、さよならだ。 

私は──私たちは、強くなった……!! 


 「ガーメッ!!!!」 


メガカメックスの口元にあった“みずのジュエル”が砕けて、みずタイプのエネルギーがカメックスに収束していく。 

特性“メガランチャー”により、最大まで威力を増した、最強の“みずのはどう”を── 


 「ガメーーーー!!!!!!!!」 


──発射した。 





    *    *    * 





──中層、花丸。 

ゴンベ、ウリムーの力を借りて、さっきの部屋まで戻ってきたマルは、 
943 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:37:10.36 ID:XqTkDbxP0

花丸「ドダイトス! デンリュウ!」 
 「ドダイッ!?」「リュゥーーーー!!」 

花丸「ごめんね……!! 心配したよね……!!」 


二匹の手持ちとやっと合流することが出来た。 

よし、この後は── 

次の行動を考えようとした、その瞬間、 

──全身が大きく揺れた。 

いや、床が傾いた……? 


花丸「な、なんずら……?」 





    *    *    * 





理亞「……ドヒドイデの水槽の底が吹き飛んで、水が飛空挺の外側部に流れ込んでる……?」 


コントロールルームのアラートを聞きながら、私は顔を顰める。 


理亞「外側部、これ以上水が流れていない部分に入り込まないように非常シャッターを下ろして。艦艇、ドヒドイデの水槽と逆側に注水して艦の傾斜復元。総重量が変わるわけじゃない、バランスさえ保てばすぐに飛行は安定する」 


手早く管理AIに指示を出す。 


理亞「……やってくれるじゃない」 





    *    *    * 





──下層部、梨子。 


梨子「──え、破壊?」 

千歌『うん、梨子ちゃん、倒したあとの装置は破壊とかしてないかなって』 

梨子「……完全に忘れてた」 


言われてみれば、壊してしまえば再利用される心配もないし、今回の目的に一番沿ってるのは間違いなく、装置そのものの完全破壊だ。 


梨子「ごめん……戻って壊してきた方がいいかな……?」 


今現在は襲ってきた団員たちをどうにか撃退し、下層部から中層部へと向かう道すがらだった。 


千歌『あ、ううん! 今現在装置が残ってるのかだけ確認したかっただけだから』 

梨子「どういうこと?」 

千歌『ロトムが今同じ装置の電気信号……? みたいなのを覚えてる真っ最中なんだけど、それで他の装置の場所とか数もサーチ出来るようになるって言ってたから』 

梨子「……なるほど」 


壊れている装置は確かにサーチ出来ない。 
944 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:47:04.04 ID:XqTkDbxP0

 『検索完了ロト!!』 

千歌『あ、サーチ終わったの?』 
 『終わったロトー』 


どうやら、今話していたそのサーチも、たった今終わったようだった。 


 『機能が停止してる装置が今ここ上層部にある1個、下層部に1個、中層部に1個。現在稼働中のものが中層部の艦尾側に1個あるロトー』 

千歌『え!? じゃあ生きてるのは残りは1個ってこと!?』 
 『加えて……今さっきまで似たようなエネルギー供給ルートが生きてた痕跡が最下層部に1個あったロト』 

梨子「全部で4個……私が倒したスリーパーの居た下層部。中層部は花丸ちゃんが向かった方向」 

千歌『上層部のは今私たちが抑えてるやつだよ!』 

梨子「最下層のは、たぶん曜ちゃんが破壊したってことよね……!!」 


さっき艦が揺れたのは、曜ちゃんが破壊した衝撃だったのかもしれない。 


千歌『皆すごい! ちゃんと各個撃破してる!!』 

梨子「なら、私はこのまま中層部の最後の一個を探すね!」 

千歌『わかった! 私もこれ破壊したら、そのままそっちに向かうから!』 


そこで千歌ちゃんとの通話が終了する。 

そのタイミングで丁度中層部に戻ってきた私は、 


花丸「──ずら!?」 

梨子「花丸ちゃん!?」 
945 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:48:04.26 ID:XqTkDbxP0

ちょうど、通路で花丸ちゃんと邂逅する。 


花丸「梨子ちゃん、助かったずら……!! 図鑑の通話がうまく使えなくて……」 

梨子「ええ!? え、えっと、とりあえず残りの装置はあと中層部にある一個だけみたい。花丸ちゃんは一個止めたんだよね?」 

花丸「あ、うん! さっき戦った部屋で、もう稼動してない装置を水中で見つけたずら!」 


水中……? 飛空挺で……? ……まあ、それはいいや。 


梨子「となると、本当に最後の一個が中層の艦尾側にあるだけってことね!!」 

花丸「あと一個ずら!? それなら、このまま……!!」 

梨子「……いや、花丸ちゃんはこのまま、艦首側に向かって!」 

花丸「ずら? 艦首側ってマルたちが最初に入ってきた方じゃ……」 

梨子「4個の装置を停止させた時点で、バリアの強度もだいぶ下がってきてると思うの」 

花丸「……確かに」 

梨子「私はこのまま最後の装置を探すけど、私たちの目的はそのあとの解除したバリアの先にある……だから、花丸ちゃんは先にそっちに向かって!」 

花丸「……! で、でも、マルでいいの?」 

梨子「……私は詳しい事情まではわからないけど……友達なんでしょ? ルビィちゃんって子」 

花丸「!」 

梨子「……友達、助けに行ってあげて?」 

花丸「……うん!」 

梨子「それじゃ、また後で!」 

花丸「うん! 梨子ちゃんも気を付けて!」 


花丸ちゃんと二手に分かれて、私は最後の装置を目指し、艦尾に向かって走り出した──。 


946 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:49:39.39 ID:XqTkDbxP0


>レポート 

 ここまでの ぼうけんを 
 レポートに きろくしますか? 

 ポケモンレポートに かこんでいます 
 でんげんを きらないでください... 


【飛空挺セイントスノウ】 
 口================= 口 
  ||.  |⊂⊃                 _回../|| 
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  || 
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   || 
  ||.  | |       回 __| |__/ :     || 
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     || 
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     || 
  ||.  | |.      | |           |     || 
  ||.  | |____| |____    /      || 
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  || 
  ||.  | |      | |  _.    /      :   || 
  ||.  回     . |_回o |     |        :   || 
  ||.  | |          ̄ ●  |.       :  || 
  ||.  | |        .__    \      :  || 
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  || 
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  || 
  ||.      /.         回 .|     回  || 
  ||.   _/       o‥| |  |        || 
  ||.  /             | |  |        || 
  ||./              o回/         || 
 口=================口 
947 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 11:50:23.48 ID:XqTkDbxP0

 主人公 千歌 
 手持ち バクフーン♂ Lv.52  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき 
      トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする 
      ムクホーク♂ Lv.52 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき 
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい 
      ルカリオ♂ Lv.52 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:143匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 梨子 
 手持ち メガニウム♀ Lv.49 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり 
      チェリム♀ Lv.46 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい 
      ピジョット♀ Lv.46 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん 
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん 
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:116匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 曜 
 手持ち カメックス♀ Lv.49 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい 
      ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき 
      ホエルオー♀ Lv.41 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい 
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん 
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん 
      タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい 
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:145匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:48pt 

 主人公 善子 
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.47 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい 
      ドンカラス♀ Lv.51 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい 
      ムウマージ♀ Lv.46 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき 
      シャンデラ♀ Lv.49 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない 
      ユキメノコ♀ Lv.40 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい 
      アブソル♂ Lv.54 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:126匹 捕まえた数:52匹 

 主人公 花丸 
 手持ち ドダイトス♂ Lv.38 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい 
       ゴンベ♂ Lv.33 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき 
      デンリュウ♂ Lv.34 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい 
      キマワリ♂ Lv.31 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき 
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい 
      ウリムー♂ Lv.38 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき 

      アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい 
      アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき 
      ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:96匹 捕まえた数:38匹 


 千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸は 
 レポートを しっかり かきのこした! 

...To be continued. 



948 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:20:33.49 ID:XqTkDbxP0

■Chapter067 『バリアの先へ……!』 





──上層部、善子。 


 「ギキィァァァァアァァァァ!!!!!!」 


前方からオンバーンが迫る、 

──キィィィィ……。 

オンバーンの耳から、また攻撃の予兆。 


善子「ドンカラス、シャンデラ! “ねっぷう”! ムウマージ、ユキメノコ! “こごえるかぜ”!」 
 「カァーーー!!!!!」「シャンディーーー」 「マァージッ!!!!!」「ヒュゥゥゥ……!!!」 


高温の風と、低温の風が絡みうねりながら、オンバーンに襲い掛かる。 


 「ギキィ!!!! ギキィィィィ!!!!!!」 


オンバーンは憎そうに金きり声をあげるが、耳の音は止まった。 


善子「なんとなく仕組みがわかってきたわ……!」 


“ばくおんぱ”を撃つ際に何故チャージタイムがあるのかずっと疑問だった。 

いや、正確にはあれだけの出力を出す以上、準備は必要だとは思うけど……。 

疑問だったのは、何故相手に悟られるような、攻撃の予兆があるのか、だ。 


善子「あれは、周囲の空気の状態をソナーで探ってる音だったのね……!」 


あれだけの高出力の音波攻撃だ、無闇矢鱈に撃っていたら反響音で自分自身へも大なり小なりダメージを受けてしまう。 

そこで役に立つのはあのソナーだ。音は気温によって微妙に伝わり方が変わる。 

だから、攻撃の直前に周囲の音の伝わり方を確認してから、いかに効果的に相手を攻撃し、同時に自分へのダメージが少ない方向や距離を探っているということだ。 

ましてや、この閉鎖空間。オンバーンにとっては、反響音による自傷のリスクは屋外よりも大きい。 

より慎重になってるはずだ。 

それなら、高温低温の風攻撃はかなり有効だ。 


善子「ユキメノコ、“れいとうビーム”! シャンデラ、“かえんほうしゃ”!」 
 「ヒュォォォォ……!!!!」 「シャンディーラッ!!!!!」 

 「ギキィッ!!!!!!」 


オンバーンは身を捻りながら、“れいとうビーム”を回避、 

翼を振るって、“ぼうふう”を起こし、“かえんほうしゃ”を風で掻き消す。 


善子「ムウマージ、“シャドーボール”!!」 
 「ムマァーージ!!!!!」 


その隙に次の攻撃を続け様に叩き込む。 

 「ギキィァ!!!!!」 

さすがにこの連撃は捌ききれず、直撃。 


善子「よし……!! いけるわ!!」 
949 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:21:23.27 ID:XqTkDbxP0

高温低温を織り交ぜながら、“ばくおんぱ”を妨害し、その隙に連撃を差し込む。 

この戦法なら押し切れる──!! 





    *    *    * 





千歌「ロトム、データは取れた?」 
 「完璧ロト」 


梨子ちゃんとの通話を終えて、私はロトムに確認を取った後、 


千歌「よし! ルカリオ!」 
 「グゥォ!!!!」 


ルカリオが両手から直接波導を流し込んで、装置を破壊する。 


 「……完全に機能停止したロト!!」 

千歌「よし……!! ムクホーク!!」 
 「ピィィィ!!!!!」 


ルカリオをボールに戻しながら、傍らで待っていたムクホークの脚に掴まり、飛び立つ。 

同時に図鑑を開いて。 


千歌「善子ちゃん! 装置破壊完了だよ!」 


善子ちゃんに通信をする。 


善子『OK!!』 

千歌「後は逃げるだけだね!」 





    *    *    * 





千歌『──後は逃げるだけだね!』 


千歌からの通話を聞きながら、 


善子「ドンカラス!! 撤退するわよ!」 


 「ギキィ…」 


こちらを睨んでくる、オンバーンから視線を外さないように後退する。 

完全に攻撃の対策を打たれて、苛立っているのか、オンバーンはその場に留まってホバリングしているだけだった。 

──いや……。 


善子「……おかしくない……?」 
950 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:22:49.71 ID:XqTkDbxP0

あれだけ、猛攻を続けていたオンバーンが何故急に大人しくなる……? 

急な温度差によって陽炎の揺らめく先にいるオンバーンに目を凝らす。 

すると──オンバーンの翼に、何かキラキラとした輝きのようなものが収束し始めていた。 


善子「……!? や、やばっ!? あれって、もしかして!!?」 

 「ギキィィィィィィィ!!!!!!!!」 


オンバーンが雄叫びと共に、高速でその場を飛び出した。 


善子「──“ゴッドバード”!!?」 


ひこうエネルギーを限界までチャージして、突進と共に放つひこうタイプ最強クラスの大技だ。 


善子「全員退避──」 


だが、指示も虚しく、 


善子「……っ!!」 


膨れ上がったエネルギーが通路側から溢れて、爆発を起こす。 

 「ムマァーージ!?!?」「シャンディ…!!!」「ヒュォォ…!?」 

手持ちたちが室内に向かって吹き飛ばされる。 


 「カァカァーーー!!!!!」 
善子「ドンカラス!! 気合いで持ちこたえなさいっ!!」 


私の掴まっているドンカラスも例外ではない。 

急なエネルギーの爆発の余波を受け、バランスを崩したドンカラスごと空中でぐるぐると回転している。 


善子「ドンカラスッ!!!!」 
 「カァーーー!!!!!」 


私が必死に叫ぶと、ドンカラスは羽を思いっ切り羽ばたかせ、どうにか姿勢を保とうとする。 

お陰で、徐々にブレる視界が元に戻って── 


 「ギキィ……!!!!!!」 

善子「……!!」 


──その視界に飛び込んできたのは、オンバーン。 

ヤバイ、この距離での追撃は、無理だ。捌ききれない。 

──キィィィィ…… 

“ばくおんぱ”の予兆音。 


千歌「──“ブレイブバード”ッ!!!」 
 「ピィィイィィィィィィ!!!!!!!」 

 「ギキィ!?」 

善子「!!」 


そんな窮地を救ってくれたのはまたしても千歌とムクホークだった。 

上から急降下で突撃して、オンバーンを下方に突き飛ばす。 
951 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:24:01.01 ID:XqTkDbxP0

善子「ありがと、千歌!! 助かった……!!」 

千歌「うん! 丁度真下にいるのが見えたから!」 


言われて、千歌が急降下してきた方向を見ると、天井に見える円柱状の鳥かごのような物体が煙を上げているのが見えた。 


善子「天井に作ってたのね……!」 

 「お陰で見つけるのに苦労したロト」 


ロトムが千歌の後ろの方から、うんざりしたような声音でそう言いながら飛んでくる。 

部屋に入ってしまえば、どこからでも装置は見渡せるが、先入観のせいでなかなか視界に入らない。良い設置場所かもと敵ながら褒めてしまいそうになる。 


 「ギキィィ……」 


声がして、下に目線を落とすと、オンバーンが体勢を立て直そうとしている。 


善子「タフすぎでしょ……!!」 


一体あのオンバーンは何度攻撃が直撃すれば倒れるんだろうか。 


善子「とにかく、装置を壊したならもう用はないわ! 逃げるわよ!」 

千歌「うん!」 


空中に浮かぶ、ムウマージ、シャンデラ、ユキメノコを回収しながら、千歌と二人で部屋から出ようとした、そのとき。 


 「キィ」 


眼下のオンバーンの様子がおかしいことに気付く。 

その視線は──天井の壊れた装置に注がれていた。 


 「キィ…」 


そして、そのまま流れるように私たちに視線を移してくる。 

そのオンバーンの視線に、 


千歌「──ひっ!?」 


千歌が声をあげた。 

私も背筋が凍った。 

そこにあったのは──禍々しい、殺意。 

脳が警鐘を鳴らしはじめた瞬間には、もう遅かった── 


────キィィィィィィン、 

善子「──ッ!!!!」 
952 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:25:04.84 ID:XqTkDbxP0

大きな衝撃が襲ってきたと思ったら、身体が跳ね上がる。 

中空を跳ね飛ばされながら、見えた天井が、壁が、ガラスが、 

次々と罅割れて行く。 

──“ばくおんぱ”だ。 

チャージはなかった。 

“げきりん”に触れたんだ。 

守るべき装置が壊されたことを認識して、 

もはや自分の身すら顧みず、全てを破壊する殺戮の音波で攻撃してきた。 


善子「────」 


直撃で耳がイカレた。 

音がしない。 

上部からは、天窓が割れて、ガラス片が降ってくる。 

──ふと、視界に千歌が映る。 


千歌「──!!」 


目が合った。 

千歌は片耳を押さえながら、苦しげな顔をして何かを叫んでいる。 

千歌も同じような状態なんだろう、 

なんか、思い出すわね。 

ドンカラスがバランスを崩している。 

私は落ちている。 

ムクホークに掴まった千歌が手を伸ばす。 

私の手を取ろうと、 

私は手を伸ばして── 

その手を払った。 


千歌「!?」 


千歌が驚いた顔をする。 

私は落下する。 

千歌の方を見て、口を開いた。 


善子「─、─、─、─、―」 


自分の声は聞こえない。きっと千歌にも聞こえていない。 

だけど、伝わる気がした。 

簡潔な5文字の言葉を発する口の形。 

『さ・き・に・い・け』 

私たちがここで二人とも倒れるわけにはいかない。あんたにはまだやることがある。 


千歌「……!!」 
953 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:26:42.13 ID:XqTkDbxP0

千歌は逡巡したが、 

すぐに意図を汲んでくれたのか、ムクホークに掴まったまま、飛び出す。 

その際、 


千歌「────!!!!」 


何かを言っていた。 

たぶん……『絶対助けに戻るから』とかでしょ。 

千歌ならたぶん、そう言うわ。 

──落下する私の肩を掴む、黒い影、 

遅いわよ、ドンカラス。 

やっと体勢を整えたのか、ドンカラスが私を掴んで、そのまま急降下する。 


 「────!!!」 


怒り狂っている眼下のオンバーンに向かって。 

お陰で直撃は貰ったが── 

決めるなら、今しかない。 

私はボールを放った。 


善子「──アブ──ルッ!!!」 


やっと戻り始めた聴覚で、途切れ途切れ聞こえる自分の声を聴きながら、 

天上からの一撃……! 


 「──ソルッ!!!!」 

 「────キィッ!!!!!」 


善子「──“じごくづき”ッ!!!」 


アブソルの頭の刃が、オンバーンに──炸裂した。 





    *    *    * 





千歌「──あー……あーー!!」 


通路をしばらく飛行して、段々耳の調子が戻ってくる。 


千歌「あー、あー……。よし……ちゃんと、聞こえる……!」 

 「全く死ぬかと思ったロト…」 


背中の方からロトムの声がした。 

手で板状の体を掴んで、自分の手前に持ってくる。 


千歌「ロトムも無事……?」 
 「集音マイクをオフにしたからどうにかなったロト」 

千歌「便利だね……」 
954 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:27:31.30 ID:XqTkDbxP0

それはともかく、ロトムが起きててくれてるのは幸いだ。 


千歌「最後の装置の場所、案内して!」 
 「了解ロト!!」 


大急ぎで倒して、善子ちゃんの元に戻らないと……!! 





    *    *    * 





──中層、梨子。 

船尾の部屋に辿り着いて。 

私は部屋の奥にあるエネルギー転送装置に鎮座したポケモンに目をやる。 


梨子「……随分と堂々としてるね」 

 「ヨノワ」 


そこにいたのは、ヨノワール。 

 『ヨノワール てづかみポケモン 高さ:2.2m 重さ:106.6kg 
  頭の アンテナで 霊界からの 電波を 受信。 
  弾力の ある 体の 中に 行き場のない 魂を 
  取り込んで あの世に 連れて行くと 言われている。』 

そしてヨノワールの周りには、 

 「ヨマワー」「ワルー」 

数匹のヨマワルが漂っている。 


梨子「……もしかして、あなたが今地方各地で大量発生してる、ゴーストポケモンの親玉?」 

 「ヨノワ…」 


その相槌は否定なのか、肯定なのか。 

ただ、一つハッキリしたのは、やはりゴーストポケモンたちもグレイブ団の手引きだったということだろうか。 


梨子「どちらにしろ……あなたは倒さないといけない……!」 


ボールを構える。 

すると、 


 「ヨノワー…」 

梨子「!」 


ヨノワールは自らエネルギー転送装置から離れ、私の方に進んでくる。 


梨子「……かかってこいってこと?」 

 「ヨノワー…」 
955 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:28:29.83 ID:XqTkDbxP0

私を倒して、また持ち場に戻るということだろう。 

大した自信……といいたいところだけど。 

あれだけ大規模な大量発生のボスなのだ。 

自分の強さに自信があってもおかしくない。 

でも、負けるわけにはいかない。 


梨子「行くよ! メガニウム!」 
 「ガニュウッ!!!!」 

メガニウムをボールから出す。 


梨子「メガニウム! “つるのムチ”!」 
 「ガニュウッ!!!!」 


蔓を伸ばして、叩き付けようとすると、 


 「ヨノワー」 


ヨノワールはそれを手で掴み、 

そのまま手が燃える。 


 「ガニュッ!?」 


握り締めた蔓はそのまま、焼き切れてしまう。 


梨子「“ほのおのパンチ”……! なら、“はなびらのまい”!!」 
 「ガッニュゥツ!!!!」 


花びらが舞い踊り、ヨノワールに襲い掛かるが、 


 「ヨノワー…!!!」 


ヨノワールの目が光ったと思ったら、花びらたちは急に軌道を変えて地面に叩き落される。 

──今度は“じゅうりょく”だ。 


梨子「……くっ」 


なら、次は── 

刹那、 


梨子「──がっ……!?」 


お腹に衝撃を受ける。 

恐る恐る、視線を下に下げると── 

眼下にある自分の影から伸びた拳が、私のお腹にめり込んでいた。 


梨子「が、げほっ、げほっ……!!」 

 「ガニュッ!!?」 


痛みに思わず蹲る。 


梨子「今の……っ……“シャドーパンチ”……っ」 
956 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:29:41.13 ID:XqTkDbxP0

正々堂々かと思いきや、当然のようにトレーナーを狙ってきた。 

いや、考えてみれば当たり前だ。向こうからしたらトレーナーを潰せばそれでいいのだ。 


 「ヨノワー……」 


ヨノワールの拳が再び身体を離れて、影に潜っていく。 

──不味い、次が来る……! 


梨子「メ、メガニウムッ! “フラッシュ”!!」 
 「ガニュゥッ!!!!」 


メガニウムがその場で閃光し、私の影を掻き消す。 

とにかく足元に影があったら攻撃し放題だ。 

対策を── 


 「ガニュッ!!?」 
梨子「!?」 


だが、拳はメガニウムを殴っていた。 


梨子「メガニウム……ッ!?」 


私が立ち上がろうとした瞬間。 


梨子「っ!?」 


脚を背後から何かに掴まれ、うつ伏せに転倒する。 

いや、何かなんてわかりきっている。 

ヨノワールの手で。 

右手でメガニウムを殴り倒し、“フラッシュ”を解除させ、再び出来た影から左手を出して私の脚を掴んでいる。 


梨子「……っ!!!」 


振り払おうと、逆の脚で蹴り飛ばすが── 

強い力で掴まれた手は、まるで離れない、 

──バチバチリ、 

爆ぜる火花の音、 

その音に血の気が引いた。 

拳の周りに稲妻が走る。 


梨子「──っ!!!」 


次の瞬間、全身に衝撃が走り、脳天まで突き抜ける。 


梨子「──あ……が……っ……!!?」 


──“かみなりパンチ”。 

全身を電気が駆け抜け、痺れて動けない。 


梨子「──あ……っ……あ……っ……!!」 
957 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:31:20.64 ID:XqTkDbxP0

どうにか他の手持ちを出すためにボールに手を伸ばそうとするが、 

全く身体が言うことを聞かない。 


 「ヨノワー…」 


蹲ったままの私の目の前に、いつの間にか浮遊してきたヨノワールが近付いてきて、 


 「ヨノワー…」 


お腹の口を開く。 


梨子「……っ……」 


もう、ダメだ。 

そう思った瞬間── 


千歌「“かえんぐるま”ァっ!!!!」 
 「バクフーンッ!!!!!!!」 

梨子「!!」 


炎を纏いながら回転する、バクフーンが天井をぶち抜いて、ヨノワールを吹っ飛ばした。 

そして、遅れて部屋の上部から、 


千歌「梨子ちゃん!! 大丈夫!?」 


千歌ちゃんが室内に降りてくる。 


梨子「ち、か……ちゃ……」 


 「ヨノワッ!!!」 


ヨノワールはすぐさま体勢を立て直して、千歌ちゃんの方に手を伸ばす、が。 


 「ガニュッ!!!!」 


注意の逸れたヨノワールの横っ面に、メガニウムが“アイアンテール”を叩き込んで吹っ飛ばす。 


 「ヨノワッ…!!!」 

千歌「バクフーン!! “かえんほうしゃ”!!」 
 「バクフーーーッ!!!!」 


そして、追撃の“かえんほうしゃ”。 

今のうちに……! 


梨子「メ、メガニウ、ム……! “アロマセラピー”……!」 
 「ガニュッ」 


メガニウムが近付いてきて、癒やしのフレグランスを私に振りまく。 

それでやっと、体の痺れが取れる。 


梨子「は……はっ……」 


本当にもうダメかと思った。 
958 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:34:45.22 ID:XqTkDbxP0

千歌「梨子ちゃんっ!」 

梨子「大丈夫……っ! ありがとう、千歌ちゃん……!! 助かった……!」 


二人並んで立つ、その先では、 


 「ヨノワー……」 


ヨノワールが恨めしそうにこっちに視線を向けている。 


千歌「梨子ちゃん! 倒すよ!!」 

梨子「うん!!」 


千歌ちゃんとの共同戦線。ヨノワールとの第二ラウンドが始まった──。 





    *    *    * 





──中層艦首、花丸。 

マルたちが最初に突入したバリアの部屋では、 


 「バリ、バリ!!!」 


バリヤードが盛大に焦っていた。 


花丸「ゴンベ!」 
 「ゴンッ!!!」 


マルはゴンベを繰り出して、 


花丸「“かわらわり”!!」 
 「ゴンッ!!!!!」 


ゴンベが拳に力を込めて、バリアを殴りつけると、 

──パキパキ、 

バリアにはいとも簡単にヒビが入り。 


 「バリリ!?!? バリリ!!?」 


焦るバリヤードを尻目に──ガラガラ、と音を立てて砕け散った。 


 「バ、バリーー!!!!」 


焦ったバリヤードが無鉄砲に飛び込んでくる。 


花丸「ゴンベ! “なしくずし”ずら!」 
 「ゴンッ!!!!」 


隙だらけのバリヤードのお腹に向かって、正中を捉えた拳を叩き込む。 


 「バ、バリィ……ッ」 


攻撃を食らって、よろけるバリヤードに、 
959 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:35:34.15 ID:XqTkDbxP0

花丸「“のしかかり”!!」 
 「ゴンッ」 


ゴンベが飛び掛るように追撃の“のしかかり”。 


 「バリ、ィッ」 


100kgを超えるゴンベに推し潰されて。 


 「バリィ……」 


バリヤードは気絶した。 


花丸「……待っててね、ルビィちゃん……!!」 


マルはゴンベと一緒に部屋の奥へと走り出した。 





    *    *    * 





ルビィ『ん……ぅ……』 


──目が覚めると、真っ暗な空間に居た。 


ルビィ『ここ……どこ……?』 


キョロキョロと辺りを見回す。 

すると、闇の中に赤い光が燈る。 

よく知っている、いつも一緒に居る宝石の光。 

──コランの光。 


ルビィ『……コラン!』 


コランは依然動かない。 

そんなコランに── 


 『……ヤミ』 

ルビィ『!』 


どこからともなく現われたヤミラミが手を掛ける。 


ルビィ『や、やめて!!』 


ルビィはヤミラミを止めようと、走り出そうとして── 


ルビィ『あ、あれ……!?』 


脚を動かせないことに気付く。 

自分の姿を見下ろしてみると、 

ルビィの身体は、闇の中に沈んでいた。 
960 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:36:35.13 ID:XqTkDbxP0

ルビィ『な、なに、これ……!!』 


腰の辺りまで、闇が纏わりついている。 

動けない。 


 『ヤミッ』 


ヤミラミが口を開く。 


ルビィ『や、やめてっ!!』 


──バキリ。 

コランの頭が噛み砕かれた。 


ルビィ『や、やめてぇ……っ!!!!』 


ルビィの叫びは……闇に呑まれて、消えて行く──。 





    *    *    * 





ルビィ「……やめ……て……」 

理亞「…………」 


眠っているルビィは泣きながら、『やめて、やめて』と繰り返している。 

カラマネロの“さいみんじゅつ”によって、感情を揺さぶられるものを見せられているんだろう。 

──これでいいの? 

私の中に生まれたのは、そんな疑問。 


理亞「……迷うな」 


私は頭を振る。 

私はねえさまの目的の為に、手段は選ばないって、決めたんだ。 

私をずっと守ってくれていた、ねえさまのために……ねえさまの力になるために。 


ルビィ「……コラ……ン……ッ」 

理亞「…………」 


ルビィが自らの手持ちのメレシーの名を呼ぶ。 

クリフでの戦闘以来、まるで動かなくなってしまったルビィのメレシー。 

そのメレシーは椅子に座らされたまま、“さいみんじゅつ”を受けているルビィの傍らで、今も沈黙している。 


理亞「……ご主人様、泣いてるわよ」 

 「────」 


意味もなく、声を掛けてしまう。 
961 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:37:13.22 ID:XqTkDbxP0

理亞「……あんたはそれでいいの?」 

 「────」 

理亞「……何やってんだろ、バカみたい……」 


私は肩を竦めた。 

それと同時に、部屋の出入り口の方から、大きな音がする。 


理亞「……来たか」 

花丸「──ルビィちゃん……!!」 
 「ゴンッ!!」 


私はボールを放りながら、前に歩み出る。 

 「マニュー……ッ」 


理亞「扉……壊さないでくれない?」 

花丸「理亞さん……!!」 


確か花丸とか言う名前だったか。 

彼女は私の背後にいるルビィの姿を認めると、 


花丸「!! ルビィちゃん……!!」 


ルビィの名を呼んだ。 


理亞「……巫女は今、夢を見てる最中。邪魔するな」 

花丸「……ルビィちゃん、今助けるから……!」 

理亞「マニューラ!!」 
 「マニュ!!!!」 

花丸「ゴンベッ!!!」 
 「ゴンッ!!!!」 


お互いのポケモンが飛び出した。 


962 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 12:38:45.37 ID:XqTkDbxP0


>レポート 

 ここまでの ぼうけんを 
 レポートに きろくしますか? 

 ポケモンレポートに かこんでいます 
 でんげんを きらないでください... 


【飛空挺セイントスノウ】 
 口================= 口 
  ||.  |⊂⊃                 _回../|| 
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  || 
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   || 
  ||.  | |       回 __| |__/ :     || 
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     || 
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     || 
  ||.  | |.      | |           |     || 
  ||.  | |____| |____    /      || 
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  || 
  ||.  | |      | |  _.    /      :   || 
  ||.  回     . |_回o |     |        :   || 
  ||.  | |          ̄    |.       :  || 
  ||.  | |        .__    \      :  || 
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|●__|.    :  || 
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  || 
  ||.      /.         回 .|     回  || 
  ||.   _/       o‥| |  |        || 
  ||.  /             | |  |        || 
  ||./              o回/         || 
 口=================口 

 主人公 千歌 
 手持ち バクフーン♂ Lv.53  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき 
      トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする 
      ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき 
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい 
      ルカリオ♂ Lv.52 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:145匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 梨子 
 手持ち メガニウム♀ Lv.49 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり 
      チェリム♀ Lv.46 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい 
      ピジョット♀ Lv.46 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん 
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん 
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:118匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 善子 
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.47 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい 
      ドンカラス♀ Lv.53 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい 
      ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき 
      シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない 
      ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい 
      アブソル♂ Lv.54 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:126匹 捕まえた数:52匹 

 主人公 花丸 
 手持ち ドダイトス♂ Lv.38 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい 
       ゴンベ♂ Lv.33 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき 
      デンリュウ♂ Lv.34 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい 
      キマワリ♂ Lv.31 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき 
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい 
      ウリムー♂ Lv.38 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき 

      アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい 
      アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき 
      ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:97匹 捕まえた数:38匹 


 千歌と 梨子と 善子と 花丸は 
 レポートを しっかり かきのこした! 

...To be continued. 



963 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:05:02.77 ID:XqTkDbxP0

■Chapter068 『決戦! パルキア!』 【SIDE Dia】 





──時は少し遡って……千歌さんたちがセキレイシティから飛び立った直後のこと。 

わたくしたち3人も、準備を終え、クロサワの入江へと飛行している真っ最中でした。 


果南「そういえば鞠莉」 

鞠莉「ん?」 


ビークインの下腹部を掴んでぶらさがっている果南さんが、同じくビークインの右腕に腰掛けている鞠莉さんに下から問い掛ける。 


果南「ロトム図鑑を千歌たちに預けたってことは、今鞠莉は図鑑持ってないってこと?」 

ダイヤ「そういえばそうですわね」 


わたくしはオドリドリに掴まったまま、二人の会話に加わる。 


ダイヤ「……ですが、ロトム図鑑と鞠莉さんの図鑑……形が全然違ったような……?」 

鞠莉「……あー、ロトムのボディはアローラモデルだから、別の機種だヨ。わたしは昔から使ってるカントーモデルの持ってるから」 


そう言って紫色のポケモン図鑑を取り出す。 


果南「あ、それそれ。なんか懐かしいな」 


果南さんは楽しそうに笑いながら、緑色の図鑑を取り出す。 


ダイヤ「全く……遊びに行くわけじゃないんですわよ?」 

果南「そう言いながら、ダイヤも図鑑出してるじゃん」 

ダイヤ「……こ、これは……まあ」 


わたくしも二人に釣られて、真っ赤な自分のポケモン図鑑を取り出していた。 


ダイヤ「またこうして……この3つの図鑑が集まって一緒に戦うことになるなんて……」 

果南「確かにすごい久しぶりかもしれないなぁ……」 


果南さんがしみじみと言う。 


鞠莉「……これだけ時間が経って、皆それぞれ成長したのに、なんで果南は未だにわたしのビークインに相乗りしてるのかしらねー……」 

果南「いやーなんか、ここが落ち着くというか」 

鞠莉「わたしが『飛行用に』って、あげたスワンナはどうしたのよ?」 

果南「……普段は連れてるけど、今回は決戦だから置いてきた。やっぱりバトル用のフルメンバーじゃないからね」 

鞠莉「ふーん……まあ、いいけど」 

果南「そういう鞠莉は大丈夫なの? ロトムが居ないけど」 

鞠莉「大丈夫よ、ロトムが抜けた穴には切り札を用意してきたから」 

果南「へぇ、そりゃ楽しみだ」 

ダイヤ「二人とも、いつまでも無駄話していないで。そろそろ入江に突入しますわよ」 

果南「了解」 

鞠莉「OK.」 
964 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:07:39.99 ID:XqTkDbxP0

全く……いつまで経っても緊張感がないのですから……。 

……いえ、緊張感がないのは雰囲気だけで、実際3人とも緊張はしているのですが。 

準備は入念にしてきたし、果南さんも普段旅をしている間は連れていない、戦闘用のフルメンバーをしっかり揃えてきているのは何よりの証拠。 

鞠莉さんに至っては彼女自身もフル装備です。左腕にはスナッチマシーン、右腕にはミラクルシューターを装備している。右耳に付けている貝殻をあしらったピアスは……鞠莉さん用に拵えたキーストーンですわね。 

鞠莉さんは今も移動しながら、簡易的な工具を使って、スナッチマシーンに調整を施している。 

ここにいる誰も使ったことがないアイテムである以上、ぶっつけ本番での使用に耐えうるのかは不安要素ではありますが……。 

そして、緊張しているのは、わたくしも── 

震える右手を握り込む。 

これはきっと武者震いですわ……。 


ダイヤ「果南さん! 鞠莉さん!」 

果南「ん?」 
鞠莉「なに? ダイヤ」 

ダイヤ「……絶対に勝ちますわよ……!」 

果南「もちろん」 
鞠莉「Yes!! そのつもりだヨ!」 


わたくしたちは入江内部に突入し、そのままわたくしが先導する形で突き進む。 

入江内の天井や壁には、いつもの輝きはほとんどない状態だった。 


鞠莉「Carbinkたち……ほとんどいないわね……」 
 (*Carbink=メレシーの英名) 

ダイヤ「恐らく強大なポケモンのエネルギーに驚いて隠れてしまったのでしょう……」 


逆に言うなら、報告通り、ここにパルキアが来ているということだ。 


ダイヤ「急ぎましょう……!」 





    *    *    * 





入江の陸に降り立って、洞窟内を3人で駆ける。 


鞠莉「ダイヤ、今どこに向かってるの!?」 

ダイヤ「祠ですわ」 

果南「祠?」 

ダイヤ「この洞窟の奥には、ディアンシー様を祀る祠があるのですわ」 

鞠莉「ナニソレ初耳なんだけど」 

ダイヤ「基本的にはクロサワの一族しか知りませんからね」 

果南「でも、聖良はそこに辿り着けてるのかな?」 

ダイヤ「これだけ大規模な計画を練っていた人物です。まさか入江内の調査を全くしていないとは考えにくいですわ」 

果南「ま、それは確かに……」 


3人で駆けていると、ある場所にメレシーたちが集まっているのを発見する。 
965 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:09:42.90 ID:XqTkDbxP0

果南「! あれって、もしかして……!」 

ダイヤ「あの辺りが祠への入口になっていますわ! メレシーたちが集まってきている……恐らく聖良さんは既に中に居ますわ!」 


恐らく“ゆうかん”な性格や“まじめ”な性格の個体のメレシーたちが集まって、周囲に侵入者の存在を報せているのでしょう。 

アーチ状に集まるメレシーたちの下を潜って、通路を抜けると──そこは開けた空間になっている。 


鞠莉「……この入江にこんな空間が」 


驚いたような口振りで、辺りを見渡す鞠莉さん。 

その天井の高い空間の奥には、七色の宝石で輝く祠が鎮座していた。 


果南「うわ、すご……さすがメレシーの女王様の祠……」 


そして、その祠の前には── 


聖良「……来ると思っていましたよ。皆さん」 


聖良さんの姿。 


ダイヤ「聖良さん。ここまで来てしまいましたわね」 


わたくしは一歩前に出る。 


ダイヤ「ここは聖域……貴方のような邪悪な考えを持った人間が、おいそれと踏み入っていい場所ではありませんわ。一応、忠告して差し上げます。即刻、立ち去りなさい」 

聖良「そう邪険にしてないでください。ここに辿り着くまで苦労したんですから」 


聖良さんはそう言って笑う。 


聖良「しかし、本当に入り組んだ洞窟ですね、ここは。理亞がクロバットのエコーロケーションで作ってくれた地図がなかったら、本当に辿り着けなかったかもしれません」 

ダイヤ「こちらとしては、辿り着かないでくれた方がよかったのですが……」 

聖良「すみません。こちらにも事情があるので」 

ダイヤ「……どのような事情かは、貴方を捕まえた後でたっぷり詰問して差し上げますわ」 


啖呵を切って、ボールを構える。 


聖良「……怖いですね。じゃあ、やってみてください。──出来るものならですが」 


聖良さんがボールを放る。 

そして、再び──伝説のポケモンが放たれた。 


 「バァル……」 


鞠莉「……パルキア……!」 

果南「いやぁ……嘘であって欲しかったんだけどな」 


パルキアは、なんとも言えない、禍々しい雰囲気でわたくしたちを見下ろしている。 


聖良「嘘ではありませんよ……! パルキア!!」 
 「バァル……!!!」 


パルキアが腕を振り上げる、あれは飛空挺でも見せられた技──!! 


果南「──ま、トレーナーの方の腕はそこまでじゃないみたいだけどね」 
966 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:10:47.33 ID:XqTkDbxP0

果南さんの言葉と共に、 


 「バァルッ……!!!!!」 


パルキアが姿勢を崩した。 

気付けばパルキアの足元には── 


果南「ニョロボン!! “ともえなげ”!!」 

 「ボンッ!!!!」 


パルキアの巨大な体躯の下に身体を滑り込ませたニョロボンの姿。 

全身を使ったフルパワーの投げ技が── 


 「ボンッ…!!!!」 

果南「……って言っても、相手がでかすぎる……! 体勢崩すのが限界か……!」 

ダイヤ「いえ、十分ですわ!!」 


──“あくうせつだん”を不発させただけで、お手柄だ。 

この隙は逃さない。 

地鳴りと共に──パルキアの足元が揺れる、 


 「バァル!!!!」 

 「ンネェーーーール!!!!!」 


飛び出すのは鋼鉄の蛇、 


ダイヤ「ハガネール!! “しめつける”!!」 
 「ンネェーーーール!!!!!」 


ハガネールがパルキアの身体に巻きつき、動きを封じる。 


ダイヤ「鞠莉さん!!」 

鞠莉「OK. 行くヨ、サーナイト! メガシンカ!!」 
 「サーナ」 


鞠莉さんの右耳のメガピアスと共鳴するように、サーナイトが光り輝く。 


 「──サーナ……!!!」 

鞠莉「“はかいこうせん”!!!!」 


メガシンカと共にメガサーナイトから、“はかいこうせん”が放たれる。 

強力な光線が直撃した、パルキアは、 


 「バァ、ルッ!!!!!!」 


後ろ向きに転倒し、祠に身体をぶつける。 

そのタイミングを見計らって、ハガネールが離れる。 
967 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:12:02.67 ID:XqTkDbxP0

聖良「……はははっ! 素晴らしいコンビネーションですね!」 

ダイヤ「貴方に勝ち目はありませんわ!! 潔く降参なさい!!」 

聖良「──流石に……“しらたま”無しというわけには行かないようですね……!!」 

ダイヤ「!?」 


聖良さんが真っ白に輝く宝石を取り出す。 

すると、宝石が光り輝き、 


 「バァァーーール!!!!!!」 


パルキアの周囲に青いリングのようなものが出現する。 


 「ボンッ!!!!」 

 「ネェール!!!!!」 


そのリングは衝撃を発生させ、近くにいたニョロボンとハガネールを吹き飛ばす。 


鞠莉「まさかアレ……“アクアリング”!?」 

果南「“アクアリング”はそういう技じゃないでしょ!?」 

ダイヤ「さすがに一筋縄ではいきませんか……!!」 


普通、回復技のはずの“アクアリング”もあまりの出力の高さに、衝撃波を発生させている。 

まさに規格外のポケモンのようだ。 


聖良「“ハイドロポンプ”……!!」 

 「バァーール!!!!!!」 


指示と共に“アクアリング”から、水塊が飛び出してくる。 


果南「ダイヤッ!!!」 

ダイヤ「わかってますわ!!!」 


果南さんと息を合わせて、次の手持ちを出す。 


ダイヤ「ミロカロス!!」 
果南「ギャラドス!!」 
 「ミロ…ッ!!!」「ギャシャァァーーー!!!!!」 

ダイヤ・果南「「“ハイドロポンプ”!!!」」 


二匹から同時に“ハイドロポンプ”が発射され、パルキアのモノと相殺する。 

攻撃が爆ぜ散り、霧散する水の影から、流れるようにギャラドスとミロカロスが飛び出し、パルキアに接近する 

“アクアリング”の周囲を泳ぐように滑りながら、二匹の龍がパルキアの周りを取り囲み、 

そのまま、尾を振るう── 


ダイヤ・果南「「“アクアテール”!!!」」 

 「ミロ!!!」「シャァァー!!!!!」 
968 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:13:26.90 ID:XqTkDbxP0

二匹が両サイドから、水のエネルギーを纏った尻尾を振るう──が、 

 「バァル……!!!」 

パルキアはそれを片手でそれぞれの尻尾を掴んで止める。 

そのまま、二匹を叩き付けようとするが、 


果南「“りゅうのいかり”!!」 
ダイヤ「“りゅうのいぶき”!!」 

 「ギャシャァァーッ!!!!!」「ミロッ!!!」 


二匹すぐさま、頭の方向をパルキアに向け、ドラゴンエネルギーを纏った炎を口から吹き出す。 

 「バァァッ!!!!!」 

一瞬、パルキアが怯んで手を放したところに── 


ダイヤ・果南「「“ドラゴンテール”!!!」」 


再び強力な尻尾での攻撃を叩き込む。 


 「バァル!!!!」 


だが、パルキアもそれでは倒れない。 

パルキアの周囲に、エネルギーで作った宝石が出現する──“パワージェム”だ。 

その瞬間咄嗟に、ギャラドスは身を引き、そこに滑り込むように前に出るミロカロス、 


ダイヤ「“ミラーコート”!!」 

 「ミロカァ……!!!!」 


発射された“パワージェムは”すぐさま反射され、 


 「バルゥッ!!!!」 


パルキアに襲い掛かる。 

そして、踊るように、ミロカロスが身を捻ってスペースを作ると、 


 「ギャシャァァーーーー!!!!!!」 


そこにギャラドスが飛び出してくる、 


果南「“ギガインパクト”!!!」 


そのまま、最大火力の攻撃を炸裂させる。 


 「バァァァーーール!!!!!!」 


再び、大きく仰け反る、パルキア、 


鞠莉「さぁ!! 次の大砲の準備、出来てるわよ!!! ポリゴンZ!!!!」 

 「──ピピ、ウィー──」 


ポリゴンZから、間髪いれずに発射されるのはまたしても必殺の攻撃、 


鞠莉「“はかいこうせん”!!!」 
969 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:15:18.44 ID:XqTkDbxP0

前方で突っ込んだギャラドスを巻き込みそうになるが、 

 「ミロ…!!!」 

ミロカロスがギャラドスに当たらないように、身をくねらせながら、“ミラーコート”で“はかいこうせん”を反射させる。 

軌道の読めない、“はかいこうせん”は── 


 「バァァァッ!!!!!!」 


パルキアの横っ腹辺りを直撃し、怯ませる。 


鞠莉「さっすが、果南のギャラドスとダイヤのミロカロスは息ピッタリだネ!」 

果南「元々お互いのポケモンだからね」 

ダイヤ「コイキング、ヒンバスだった頃が懐かしいですわね……!」 


わたくしのミロカロスは元は果南さんが釣り上げたヒンバス。果南さんのギャラドスは元はわたくしの家の庭池にいたコイキング。 

旅の途中で交換し、今ではお互いの水上戦のエースとなっている、わたくしと果南さんにとって、お互いがお互いの旧知の手持ち故に連携がとても取りやすい。 

──さて、攻撃に関しては圧倒出来ているようにも見えますが……。 


 「バァァァーール……!!!!」 


パルキアはまだ余裕がある。 


鞠莉「“アクアリング”の回復が早すぎる……!!」 

果南「というか……聖良の様子おかしくない……?」 


果南さんに言われて、聖良さんの方に顔を向けると、 


聖良「…………」 


聖良さんは目を瞑って静止していた。 


ダイヤ「指示を出していない……!?」 

鞠莉「……いや、あの“しらたま”を通して、“テレパシー”で指示してるんだと思う」 

果南「そんなことできんの!?」 

鞠莉「アレはある意味でパルキアの身体の一部のようなもの……逆にアレを使うには集中力が必要なんだと思うわ」 


わたくしたちの会話に、 


聖良「──さすがですね、鞠莉さん。素晴らしい考察と洞察だと思います」 


聖良さんが声をあげる。 


聖良「……やっと、コレの使い方がわかってきました……!」 


と、同時に聖良さんが口角を吊り上げた。 


鞠莉「……!? 二人とも伏せて!!」 

果南・ダイヤ「「!?」」 


鞠莉さんの声で、咄嗟に伏せる。 


 「バァァァーーー!!!!!!!」 
970 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:16:29.66 ID:XqTkDbxP0

と、同時にパルキアが雄叫びをあげ、 

──衝撃波を発生させた。 


 「ミロッ……!!!!」「ギャシャァァ!!?!?」 


ミロカロスとギャラドスはその衝撃で吹き飛ばされてしまう。 


聖良「ふふ……なるほど、こうすると指向性のある“ハイパーボイス”になるんですね」 

ダイヤ「……こう……?」 

鞠莉「た、たぶん、“テレパシー”で意思疎通してるから、通常じゃ出来ないような細かい技の出力の調整も出来るってことだと思う……!!」 

聖良「さぁ、行きますよパルキア!!」 
 「バァァァァァアァァッァァ!!!!!!!」 


今度は地面が激しく揺れ、あちこちの地面からエネルギーが噴出をはじめる。 


ダイヤ「こ、これは、“だいちのちから”ですか!?」 

果南「くっそ……!! ダイヤ、鞠莉、サポート頼むよ!! ラグラージ!!」 
 「ラァグ!!!!!」 


そう言って、果南さんがラグラージに乗って飛び出す。 


鞠莉「果南!?」 

果南「ラグラージ!! メガシンカ!!!」 
 「ラァーーグ!!!!!!」 


ラグラージが出るや否や、果南さんが左耳につけているメガピアスが光り輝く。それと同時にラグラージが光に包まれてメガシンカする。 

一方パルキアは飛び出してきた、ラグラージに向かって、 

 「バァーール!!!!!!!!!」 

身を捻って、尻尾を振るう。 

尻尾が通った場所から水のエネルギーが漏れ出し噴出しているあの技は── 


果南「“アクアテール”でしょ!! ぶん殴って止める!!!」 
 「ラァァァーーーグッ!!!!!!!!!!」 


宣言どおり、ラグラージが真正面から尻尾を殴りつける。 


ダイヤ「果南さん!!」 
鞠莉「果南!!!」 


パルキアの“アクアテール”はあまりの威力のせいか、尻尾が通ったあとの地面がめくれ上がるほどだ……が、 


果南「一発でダメなら──二発殴ればいいっ!!」 


ラグラージのすぐ傍で果南さんは指示を出す。 


果南「踏み込んで、殴れ!!!」 
 「ラアァァァァァグ!!!!!!!!」 

果南「足りないなら、もっと殴ればいいっ!!!!!」 


ラグラージが何度も踏み込みながら、何度も拳でぶん殴ると── 

次第にパルキアの尻尾の前進が止まる。 
971 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:17:58.26 ID:XqTkDbxP0

鞠莉「う、嘘……拮抗してる……!?」 

ダイヤ「メガシンカで強化された拳とは言え……なんて力任せな解決法なんでしょう……」 


すぐ近くで果南さんが、攻撃のうまく通る場所を、絶えず細かく指示し続けているというのはわかるが、あまりのパワープレイっぷりに、友人でありながらも呆気に取られてしまう。 


果南「鞠莉!!! ダイヤ!!! サポートしてって!!!!」 

ダイヤ・鞠莉「「……はっ」」 


前衛で叫ぶ果南さんの声に意識を戻される。 


ダイヤ「ジャローダ!!!」 
 「ジャロォーー!!!!」 


すぐさま、ジャローダを繰り出し、 


ダイヤ「“リーフストーム”!!!」 
 「ジャロォォォ!!!!!!」 


“リーフストーム”をパルキアの顔目掛けて発射する。 

一方、鞠莉さんは、 


鞠莉「マフォクシー! “おまじない”!」 
 「マフォォーーー」 


マフォクシーによる、敵からの攻撃が急所に当たらなくなる、サポート技を使う。 

怒涛の迫力で尻尾を薙ぐ、パルキア。 

それを拳の連打で拮抗させる、ラグラージ。 

少しでもパルキアの注意を逸らせるために撃っている、“リーフストーム”はパワー不足なのか効果が薄い……が、 


ダイヤ「“リーフストーム”!!」 
 「ジャロォォーー!!!!!」 


──二回。 


ダイヤ「“リーフストーム”!!」 
 「ジャロォォォォーーー!!!!!!」 


──三回と撃つたびに、威力を増す。 


果南「ナイスサポート……!! ダイヤ!!」 
 「ラァァァァグ!!!!!」 

 「バァァァァ!!!!!!!」 


何度も撃つうちに“リーフストーム”によるダメージが通り始める。 

──わたくしのジャローダの特性は“あまのじゃく”。 

本来連打すると威力の下がる“リーフストーム”は、逆にどんどん威力が跳ね上がっていく、特別仕様。 


ダイヤ「“リーフストーム”!!!」 
 「ジャァァァロォォォォォォーーー!!!!!!!」 

 「バァルッ!!!!!!!!」 


今度こそ、怯みを取った、 


果南「ぶっ飛ばせ!!! ラグラージ!!!!」 
 「ラァァァァグ!!!!!!!!」 
972 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:20:19.57 ID:XqTkDbxP0

ラグラージがその期を逃さず、全身全霊の拳を突き立てる。 

すると、パルキアは押し返され、体勢を崩す。 

その倒れたパルキアの上方には、気付けば大量の炎の弾が舞っていた。 


鞠莉「It's show time!!」 
 「マフォォー!!!」 


その炎はマフォクシーが手に持った木の棒を振るうと、一気にパルキアに向かって降り注ぎ、爆炎を立てる。 


鞠莉「“マジカルフレイム”のお味はいかが~?♪」 


その様子を見て、 


聖良「──く……」 


聖良さんが声をあげた。 


聖良「パルキア……次は……」 


そう言葉を発したところで、 


聖良「……な!? “テレパシー”が切れている……!?」 


驚きの声をあげた。 


鞠莉「いやぁーわたしも完全に見落としてたんだけどー」 


鞠莉さんがおどけたような口調で話し始める。 


鞠莉「よく考えてみれば、その“しらたま”もポケモンの“どうぐ”よね? 実はマフォクシーは“どうぐ”を使えなくする、魔法が使えるのよね~」 

聖良「……!! “マジックルーム”……!!」 

鞠莉「正解~♪ “マジックルーム”は空間内の全ての“どうぐ”の効果を無効化するわ!」 


ジャローダの遠距離攻撃、怯んだところをラグラージが近接攻撃で圧倒し、その隙にマフォクシーが相手のパワーの源を封じる。 


鞠莉「さ……これで、Checkmateだネ!!」 

聖良「……くっ」 

果南「パルキアはラグラージが押さえ込んだ。これで動けないよ」 

 「バァァァァァァ!!!!!!! バァァァァァァァル!!!!!!!!」 


パルキアは怒りの雄叫びをあげるが、体勢が崩れた状態をメガラグラージのパワーで押さえつけられたら、簡単には起き上がれない様子。 

わたくしと鞠莉さんは聖良さんの方へと歩いて行く。 


聖良「……警察にでも突き出しますか?」 

ダイヤ「……それは当たり前ですが、その前にやることがありますわ」 

鞠莉「パルキアを止めなさい。即刻、今すぐ」 

聖良「鞠莉さん、貴方がパルキアへの指示の方法を絶ったんですよ?」 

鞠莉「……あなた……状況わかってる? シメンソカですヨ?」 

聖良「……まだです、まだ私の計画は終わっていない」 

鞠莉「……同じ研究者のよしみよ。檻の中に入ったら、聞くだけ聞いてあげるわ」 
973 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:21:55.52 ID:XqTkDbxP0

鞠莉さんはそう言って、聖良さんが手に持っている“しらたま”を無理矢理取り上げて── 

──バチン!!! 


鞠莉「Auchi!?」 


その“しらたま”は、鞠莉さんが手に取った瞬間、音を立てて弾け跳び地面を転がる。 


ダイヤ「鞠莉さん!? 大丈夫ですか!?」 

鞠莉「つつ……大丈夫」 

聖良「ふふ……あくまでパルキアの“おや”は私です……。パルキアと“しらたま”は繋がっている。“おや”認識している人間の指令しか届かない故、今の貴方にはそれを使う権限はありませんよ」 

鞠莉「…………。……マフォクシー、“マジックルーム”を解いて」 
 「マフォ」 

ダイヤ「鞠莉さん!?」 

鞠莉「どっちにしろ、このままじゃ。技の効果が切れるまでオシモンドウ続けるハメになるだけだし。もし反撃してくるようなら、また改めて無効化すればいい」 

聖良「……賢明な判断ですね」 


そう言いながら、聖良さんは“しらたま”を拾い上げる。 


鞠莉「……その代わり、指示はわたしの言う通りにやりなさい。もし貴方やパルキアが変な行動をするようだったら……燃やすわよ」 
 「マフォク」 


マフォクシーは炎の木の棒を聖良さんの方へ向けている。 


聖良「それは脅しですか?」 

鞠莉「ええ、脅しよ」 

聖良「……わかりました、いいでしょう」 


やっと観念したようですわね……。 


鞠莉「まず、パルキアの所有権限を解除しなさい」 

聖良「……野生に逃がせということですね」 

鞠莉「そういうことよ」 

聖良「……わかりました」 

 「バァァル……」 

聖良「ですが……」 

鞠莉「……?」 

聖良「別れの挨拶くらい、させてもらえませんか?」 

鞠莉「……なに? 泣き落とし?」 

聖良「怪しい文言があったら好きに炙ってください。私は別に死にたがりではないので、その点は問題ないと思いますが……」 

鞠莉「……マフォクシー」 
 「マフォ」 


マフォクシーが聖良さんに炎の棒を更に近くに突きつける。 


鞠莉「……どうぞ、別れの挨拶、すれば?」 

聖良「……ありがとうございます」 


聖良さんは鞠莉さんの温情に謝礼を述べてから、話し始めた。 
974 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:22:57.61 ID:XqTkDbxP0

聖良「……パルキア、貴方が私の目の前に現われたとき、私は達成感で満たされました……。伝説のポケモンをこの手で呼び覚ますなんて、夢のようでした、ありがとうございます」 
 「バァ、ル……」 

鞠莉「……」 

聖良「これからは貴方は自由ですよ。自由に──」 


聖良「──自由に暴れて、壊してください」 


鞠莉「っ!!!! マフォクシー!!!!」 
 「マフォ!!!!!」 


鞠莉さんの指示でマフォクシーが炎を放つ、 

灼熱の炎は──地面を焼いた。 


鞠莉「……は?」 

ダイヤ「え?」 


──聖良さんが、消えた……? 


果南「え!? あれ!? パルキアは!?」 
 「ラグッ!!?」 


果南さんもすぐ傍に居た。 

いや、というか── 


ダイヤ「どうして、わたくしたち、聖域の入口に戻されて……!?」 


わたくしたちは、何故か場所を移動していた。 

焦って祠の方に目をやると、 


聖良「ははは……!!!」 
975 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:23:43.69 ID:XqTkDbxP0

聖良さんは祠の前に立っていた。 

まるで──これではまるで、 


ダイヤ「──位置関係が巻き戻っている……!?」 

聖良「……ルビィさんの救出……間に合わなかったみたいですね……!!」 


そう言う聖良さんの手の平の上には、 


ダイヤ「……!!」 


大きなダイヤモンドで出来た珠──“こんごうだま”が眩く光輝いている。 

そして、気付いたときには、そこに存在していた。 


 「ディァガァァァ……!!!!」 


果南「マジで……?」 

鞠莉「Oh, my god...」 

ダイヤ「そん、な……」 


大きな体躯の四足のポケモンが、 

胸部にダイヤモンドを煌かせた、伝説のポケモン── 


ダイヤ「……ディア、ルガ……」 

聖良「……さぁ、第二ラウンドと行きましょうか……!!」 


聖良さんはそう言って、嬉しそうに再び口角を吊り上げた──。 


976 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:25:52.80 ID:XqTkDbxP0


>レポート 

 ここまでの ぼうけんを 
 レポートに きろくしますか? 

 ポケモンレポートに かこんでいます 
 でんげんを きらないでください... 


【クロサワの入江】 
 口================= 口 
  ||.  |⊂⊃                 _回../|| 
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  || 
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   || 
  ||.  | |       回 __| |__/ :     || 
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     || 
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     || 
  ||.  | |.      | |           |     || 
  ||.  | |____| |____    /      || 
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  || 
  ||.  | |      | |  _.    /      :   || 
  ||.  回     . |_回o |     |        :   || 
  ||.  | |          ̄    |.       :  || 
  ||.  | |        .__    \      :  || 
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  || 
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  || 
  ||.      /.         回 .|     回  || 
  ||.   _/       o‥| |  |        || 
  ||.  /             | |  |        || 
  ||./             .●回/         || 
 口=================口 

 主人公 ダイヤ 
 手持ち ジャローダ♀ Lv.69  特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい 
      メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん 
      ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい 
      ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん 
      オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん 
      アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき 
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:266匹 捕まえた数:113匹 

 主人公 果南 
 手持ち ラグラージ♂ Lv.75 特性:しめりけ 性格:やんちゃ 個性:ちからがじまん 
      ニョロボン♂ Lv.71 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん 
      ギャラドス♀ Lv.74 特性:じしんかじょう 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい 
      ?????? ?? 特性:????? 性格:???? 個性:?????? 
      キングドラ♂ Lv.71 特性:スナイパー 性格:ひかえめ 個性:ぬけめがない 
      ?????? ?? 特性:????? 性格:???? 個性:?????? 
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:280匹 捕まえた数:137匹 

 主人公 鞠莉 
 手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり 
      ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき 
      サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい 
      ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい 
      ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき 
      ?????? ?? 特性:????? 性格:???? 個性:?????? 
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:467匹 捕まえた数:311匹 


 ダイヤと 果南と 鞠莉は 
 レポートを しっかり かきのこした! 

...To be continued. 



977 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:29:21.67 ID:XqTkDbxP0

■Chapter069 『──ルビィちゃん』 





──最上層部、善子。 


 「──ギィッ!!?」 


上空から、“じごくづき”の直撃を受け、オンバーンが声を詰まらせる。 


善子「アブソル!! “ダメおし”!!」 
 「ソルッ!!!」 

 「ギギャァ!!!?」 


間髪居れず、アブソルが追撃の“ずつき”をかます。 


 「ギキキキャッ!!!!!」 


これはたまらんと言わんばかりに、飛び立とうとするオンバーン。 


善子「逃がすか……!! “おいうち”!!」 
 「ソルッ!!!!」 


頭の刃を振るって、さらに追撃の衝撃波を飛ばす、 


 「ギギャァッ!!!」 


攻撃が直撃したオンバーンが地面を転がる、 


善子「はぁ……はぁ……!!」 


猛攻を掻い潜ってきて、完全に息があがっている。 

だけど、まだ休む暇はない。 


 「ギキィッ……!!!!」 


オンバーンが憎らしそうに鳴き声をあげながら、こちらを睨んでいる。 


善子「はぁ……は……っ……音技、当分使えないでしょ……」 

 「ギ、キャァッ!!!!!」 

善子「!!」 


オンバーンは掠れる声をあげながら、大口を開けて突っ込んでくる。 


 「ソルッ!!!!」 


飛んでもいない、床を走って近付いてくる。そんなオンバーンに攻撃をいれるのは、わけない。 

再び、アブソルの“じごくづき”がオンバーンの胸部を打つ。 


 「ギ、ギャァッ!!!!!」 


だが、オンバーンは止まらずに、アブソルに胴体に前歯を突きたてた。 

──“いかりのまえば”だ。 
978 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:30:27.81 ID:XqTkDbxP0

 「ソルッ!!!」 


だが、アブソルは頭の刃を振るって、“きりさく”。 


 「ギ、ギャァッ!!!」 


声をあげて、再び床を転がるオンバーン。 

だが、すぐに立ち上がり、その瞳にはユラリと紫に色の炎が揺れる──次の攻撃の予兆。 


善子「……大したものね」 

 「ギギャァッ!!!!!」 

善子「ここまで、追い詰められてもまるで諦めない。持ち場を守り、敵を倒す。その意志、その忠誠心、尊敬するわ」 

 「キィィ、ギ、キィィィ!!!!!」 

善子「確実に……今まで戦ったどんな敵よりも、あんたは強い。敵ながらアッパレよ」 


空を見上げる。 

オンバーンの最後の攻撃が、そこにはあった。 

大きな隕石が、こちらに向かって降ってきている。 

ドラゴンタイプ最強の大技──“りゅうせいぐん”だ。 


善子「まだ、こんな大技隠してたなんてね……ホントにアッパレよ」 
 「ソル」 

善子「そんなあんたに……敬意を評して、最強の技で倒す」 


私は上着のポケットに手をいれ、ママから貰ったロザリオを首に掛け、握り締めた。 

──メガロザリオの中心のキーストーンが光り輝く。 


善子「アブソル……!! ──メガシンカ!!!」 
 「ソルッ!!!!」 


アブソルのメガストーンとキーストーンが反応する。 

七色の光に包まれ── 


 「──ソォル……!!!!」 


アブソルの頭の刃は一回り大きくなり、全身の伸びた体毛はまるで羽のように、風にはためく。 


 「ギ、キィィィィ!!!!!!!!」 


上空から、“りゅうせいぐん”が迫る。 


善子「……これで、決着よ……!!」 
 「ソォルッ!!!!!」 


アブソルが刃を振るうと──今まで見たことのないような巨大な空気の刃が、 

私たちに向かって墜落してきた、“りゅうせいぐん”を真っ二つにして、 


 「ギ、キィィィ──」 


その後ろのいる、オンバーンごと、 

全てを斬り飛ばした──。 


979 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:31:20.24 ID:XqTkDbxP0


    *    *    * 





──中層、千歌、梨子。 


千歌「バクフーン!! “かえんほうしゃ”!!」 
梨子「メガニウム!! “リーフストーム”!!」 
 「バクフーーーッ!!!!!」「ガニューーーーーッ!!!!!!」 


二匹の攻撃がヨノワールに向かって、撃ち放たれる。 

メガニウムの草の嵐は、バクフーンの炎を風と葉っぱで何倍もの勢いに膨れ上がらせ、 


 「ヨノワッ!!!!!」 


ヨノワールを飲み込む。 


千歌「やった……!?」 

梨子「いや……まだ……!!」 

 「ヨノワ…!!!!」 


ヨノワールは攻撃を受けながらも、お腹の大口を開けて── 


千歌「攻撃を……食べてる……!?」 


巨大な炎の嵐を飲み込んでいた。 


 「ヨノワールはあのお腹から魂を取り込んで霊界に送ると云われてるロトー」 


どうやら、そうやって攻撃を無効化しているらしい……けど、 


 「ヨノ、ワー」 


ちょっと苦しそう。 


梨子「たぶん、大きなエネルギーはすぐには無効化できないんだと思う!」 

千歌「なるほど! なら、攻めるのみ!!」 


私たちが会話をしている隙に、 


 「ヨノワッ!!!!」 


ヨノワールが鳴き声をあげると共に、目が光る。 

その瞬間、 


千歌「──!?」 


全身を上から押さえつけられるような圧迫感が襲ってくる。 


梨子「か、体が……!! 重い……!!」 

千歌「……っ……た、立てない……っ!!」 
 「こ、これは“じゅうりょく”ロトー」 


とんでもないパワーの“じゅうりょく”で私と梨子ちゃんは膝を折る。 
980 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:32:15.76 ID:XqTkDbxP0

 「ヨノワー……」 


ヨノワールが不気味に目をギラつかせる。 


 「た、助けてロトー、動けないロトー」 
梨子「それは、こっちも……同じだって……っ!!」 

千歌「……くっそぉ……!!」 


膝を折ってるだけでは耐えられなくなり、二人して床に腕をついて四つん這い状態に、 


梨子「っ……!!」 

千歌「どんどん、“じゅうりょく”……強く、なってる……!!」 

 「バクフー……ッ」「ガニュッ……!!!」 


バクフーンとメガニウムも身動きが取れない。 

不味い、なんとかしなきゃ。 

でも、身体が言うことを利かない。 

そのとき、 


 「ロトー!!!! ひらめいたロトー!!!!」 


突然ロトムが叫ぶ。 


 「図鑑機能を強制呼び出しするロト!!!!」 


ロトムの台詞と共に、 


千歌「……?」──pipipipipipipipi!!!!!! 

梨子「な、なに……?」──pipipipipipipipi!!!!!! 


私と梨子ちゃんの図鑑が共鳴音を発し始める。 


 「ヨノワー……!!!!」 


そんな間にもヨノワールの“じゅうりょく”はどんどん強くなり、ついに腕も膝も立てていられず、這い蹲る姿勢になってしまう。 


梨子「図鑑、鳴らしてる、場合じゃ……!!」──pipipipipipipipi!!!!!! 

 「これは共鳴音ロト」 

千歌「……??」──pipipipipipipipi!!!!!! 

 「図鑑は三つ揃うと共鳴音を鳴らすロト」 

梨子「それは、知ってる……!!」──pipipipipipipipi!!!!!! 

 「ただ、近くに居る間何度も鳴ったら困るから、一度鳴ったら24時間、鳴らないようにロックがかかるロト」 

千歌「そのロックを、外した、って、こと……?」──pipipipipipipipi!!!!!! 

梨子「それに、なんの、意味が……っ……?」──pipipipipipipipi!!!!!! 

千歌「今は、それどころ、じゃ……あ、れ……?」──pipipipipipipipi!!!!!! 


そうだ、図鑑は“三つ揃う”と、鳴るんだ──ってことは!! 


梨子「……!! そっか!!」 
981 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:34:06.95 ID:XqTkDbxP0

梨子ちゃんも気付いた!! 

私は這い蹲ったまま、思いっ切り息を吸い込んで、 


千歌「──曜ちゃーーーーーーーん!!!!!!!! ここだよぉーーーーーーー!!!!!!!!!」 


力の限り叫んだ、 

次の瞬間、 


 「──“ハイドロポンプ”ッッッ!!!!!!」 

  「ヨノワッ!!!?」 


ヨノワールの足元から、床ごと貫く分厚い水の柱が撃ちあがり、ヨノワールを吹っ飛ばす。 

同時に、身体が──ふっと軽くなる。 


梨子「!! “じゅうりょく”が!!」 

千歌「元に戻った!!」 


そして、その数秒後に、 


曜「──千歌ちゃん!!!! 梨子ちゃん!!!!」──pipipipipipipipi!!!!!! 
 「ガメッ!!!!」 


曜ちゃんが水砲によって貫いた穴から、カメックスと一緒によじ登って来る。 

そして、その手にはけたたましい音を鳴らし続ける水色のポケモン図鑑。 

──ロトムは曜ちゃんの図鑑が近くにあることに気付き、曜ちゃんにも私たちがすぐ近くに居ることを気付いてもらうために、共鳴音の機能ロックを解除したんだ。 


千歌「曜ちゃん、助かったよぉ……!!」 

曜「うん!! 間に合ってよかった!!」 

 「ヨノワー!!!!!」 


感動の再会も束の間、ヨノワールが起き上がる。 


曜「あいつ、倒すんだよね!?」 

梨子「うん!」 

千歌「三人で!! あわせるよ!!」 

 「バクッ!!!」「ガニュッ!!!!」「ガメッ!!!!!」 


三人と三匹で同時に、ヨノワールに向かって、 


梨子「メガニウム!! “くさのちかい”!!」 
曜「カメックス!! “みずのちかい”!!」 
千歌「バクフーン!! “ほのおのちかい”!!」 
 「ガニュゥッ!!!!!」 「ガメェーーーッ!!!!!」 「バクフーーーーーーンッ!!!!!!!」 


三匹のエネルギーが床を伝いながら、ヨノワールの足元まで飛んでいき、 


 「ヨノワッ……!!!?」 


ヨノワールの真下に辿り着くと同時に、床から天井に向かって、竜巻のように巻き上がった。 


 「ガニュゥ!!!!」 

“くさのちかい”が草のエネルギーと共に大量の草木を巻き上げ、 
982 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:34:55.70 ID:XqTkDbxP0

 「ガメーーーッ!!!!!」 

“みずのちかい”が草に弾かれながら、交じり合うように巻き上がる、 


 「バクフーーーーーッ!!!!!!」 

“ほのおのちかい”が二つの誓いと絡み合うように、草を爆炎に、水を高熱の蒸気に変えながら巻き上がる。 

三位一体のコンビネーション技──!!! 


千歌・梨子・曜「「「いっけぇーーーーーー!!!!!」」」 


三つのエネルギーが完全に調和し、融合し、膨れ上がって── 


 「ヨノワーーーー!!!!!!!!」 


音を立てて、爆散した。 

そして、その爆発が晴れた先で── 


 「ヨノ、ワ……」 


ヨノワールが気絶していた。 


梨子「……は、はは……」 


梨子ちゃんがへたり込む、 


千歌「梨子ちゃん!?」 

梨子「ご、ごめん……ちょっと気が抜けて……」 

曜「大丈夫?」 


曜ちゃんが梨子ちゃんに手を差し伸べる。 


梨子「……うん」 


梨子ちゃんがその手を取って、立ち上がる。 

私は── 


千歌「曜ちゃん! 梨子ちゃん!」 

曜「わ!?」 
梨子「きゃ!?」 


そんな二人に抱きつく。 


千歌「勝ったよ!! 私たち!!」 

梨子「……ええ!!」 

曜「ヨーソロー!!」 


私たちは三人で勝利の喜びを分かち合うのだった。 





    *    *    * 


983 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:37:00.20 ID:XqTkDbxP0


──コントロールルーム、花丸。 


花丸「ゴンベ!! “すてみタックル”!!」 
 「ゴンッ!!!!」 


ゴンベが床を蹴って飛び出す。 


理亞「“れいとうパンチ”!!」 
 「マニュ!!!!」 


マニューラはそのゴンベを、氷の拳で迎え撃つ、 

──ガスン!! 

鈍い音を立ててかち合う二匹、 

お互い足を踏みしめて、競り合いになるが── 


理亞「凍れ……!」 


マニューラの冷気によって、ゴンベが──パキパキと、凍りつき始める。 


花丸「さすがに“こおり”対策はしてきたずら……!! ゴンベ!!」 
 「ゴンッ!!!」 


ゴンベは踏ん張りながらも、咄嗟に体毛からきのみを取り出して、すぐさま飲み込む。 

すると、ゴンベの身体の凍りがみるみる溶けていく。 


理亞「ナナシの実……!!」 


ゴンベの食べているナナシの実は、“こおり”の状態異常を回復するきのみ。 

戦闘の前に予め持たせたものだ。 

更に── 


花丸「“ゲップ”!!」 
 「ゴン、ゲェーーップ!!!!!」 

 「マニュ!!?」 


ゲップはきのみを食べた直後にだけ使える、どくタイプの技。 

急に目の前で浴びせかけられたマニューラが怯む。 


花丸「“ずつき”!!」 
 「ゴンッ!!!」 


そこに追い討ちの“ずつき”をかます。 


 「マニュッ!!?」 


マニューラは咄嗟に爪で防ぐが、勢いに負けて後ずさる、 


理亞「マニューラ!! 怯むな!! “れいとうビーム”!!」 
 「マニュ!!!」 


僅かに離れた距離から、冷凍光線を発射する。 


 「ゴンッ!!」 
984 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:37:53.29 ID:XqTkDbxP0

攻撃を正面から食らい、ゴンベは再び凍り始めるが── 


花丸「ゴンベ!! “からげんき”!!!」 
 「ゴンッ!!!!!」 


ゴンベは気合いで踏みしめて、そのまま“たいあたり”をぶちかます。 


 「マニュッ!?!?」 
理亞「……っち!」 


マニューラを突き飛ばし、距離を取ったところで── 


花丸「“リサイクル”ずら!」 
 「ゴンッ」 


ゴンベは再び、体毛の中からナナシの実を取り出し、飲み込む。 

先ほど同様、すぐに身体の凍りが解け始める。 


理亞「どんな構造になってんのよ……!」 

花丸「もう“こおり”は完全に対策済みずら!!」 

理亞「……なら、パワーでぶっ潰す……!! リングマッ!!」 
 「グマァ!!!!!!」 


理亞さんの手から放たれる次のボールからはリングマが飛び出し、 


理亞「“アームハンマー”!!!」 
 「グマァッッ!!!!!」 


振り下ろされる。 


花丸「ゴンベ、伏せるずら!!」 
 「ゴンッ!!!」 


ゴンベが伏せたところに、マルも次の手持ちのボールを投げ込む。 

──ガンッ。 

鈍い音と共に、リングマの拳を硬い殻で弾き返す。 


 「ドダイ……!!!」 

理亞「ドダイトス……!!」 


ドダイトスは“からにこもる”でリングマの攻撃を受け止めたあと、 

殻から頭を出す反動を利用して、攻撃── 


花丸「ドダイトス!! “アイアンヘッド”!!」 
 「ドダイッ!!!!」 

 「グゥマッ!!?」 


リングマの腹部に、鋼鉄の頭突きを炸裂させる。 

リングマを撃退し──たと思った矢先、 


 「グマァッ!!!!!」 

花丸「ずら!?」 
985 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:38:49.58 ID:XqTkDbxP0

リングマは震脚しながら、その場に留まり、 

腕を伸ばして── 


 「ドダイ!!?」 


ドダイトスの背中の樹を掴む。 


理亞「“かいりき”!!」 
 「グマァッ!!!!!」 


気合いの掛け声と共にリングマの腕の筋肉が隆起し、 


 「ド、ドダイッ!!?」 
花丸「ドダイトス!?」 


ドダイトスの300kgを超える巨体が持ち上げられてしまう、 


理亞「“なしくずし”!!」 
 「グマァッ!!!!」 


そのまま、下にいるゴンベ向かって── 


 「ゴ、ゴンッ!?!?!」 


ゴンベごと押し潰すように床に叩き付けられる。 


 「ゴンッ!!!!」 
 「ドダイッ!!!!」 
花丸「ゴンベ!!? ドダイトスッ!!!」 


超重量級の体重はゴンベのみならず、自重によってドダイトス自身にも大きなダメージを与え── 

ドダイトスの丈夫な殻にヒビが入ってしまう。 


 「ド、ドダイ……ッ」 

花丸「……ず、ずら」 


やっぱり……強い……! 

マルの実力じゃ……。 


 「──やめ……て……」 

花丸「!」 


理亞さんの後ろから聴こえてくる声。 

ルビィ「……やめ、て……やめて……よぉ……!!」 

花丸「ルビィちゃん……!」 


傍らに立つカラマネロが今も絶えずルビィちゃんに催眠暗示を送っている。 


花丸「ドダイトスッ!!」 
 「ドダイ……ッ」 

花丸「“あばれる”!!」 
 「ドーダイッ!!!!!」 


ドダイトスがその場で全身を振るって、暴れ始める。 
986 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:39:50.95 ID:XqTkDbxP0

 「グマッ!!?」 
理亞「……っ!! 悪あがきを……!」 


マルが諦めちゃだめだ……!! マルは、今度こそ……!! 


花丸「──ルビィちゃんを助けるんだ……!! キマワリ!!」 
 「キマァッ!!!!」 


キマワリをボールから放つ。 


花丸「“タネマシンガン”!!」 
 「キママママママママママッ!!!!!!!」 

理亞「……ちっ、マニューラ!」 

 「マニュッ……!!!」 


ゴンベに吹っ飛ばされていた、マニューラが体勢を整えて前線に戻ってくる。 


理亞「“みだれひっかき”!!」 
 「マニュマニュマニュ!!!!!」 


爪を高速で薙ぎながら、“タネマシンガン”を弾き落とす。 

マニューラの指示で、理亞さんの視線が防御に移った瞬間を見計らって── 


花丸「ドダイトス!! “ウッドハンマー”!!」 
 「ドダイッ!!!!!!!!」 


ドダイトスが“あばれる”状態のまま、横薙ぎに背中の樹を乱暴に振るう。 


理亞「っ!! リングマ!! 受け止めろ!!」 
 「グマァッ!!!!!」 


だが、対応してくる。 

リングマが、太い腕で再び樹を掴み受け止める。 


花丸「キマワリ!! “リーフストーム”!!」 
 「キマァッ!!!!」 


そこに再び、キマワリの後方からの攻撃。 


理亞「……っ! 鬱陶しい!! オニゴーリ!!」 
 「ゴォォーーーリ!!!!!」 

理亞「“ふぶき”!!」 
 「ゴォォォーーーリ!!!!!」 


理亞さんが放ったボールから飛び出したオニゴーリは、強力な“ふぶき”で、草の嵐ごと吹き飛ばし── 


 「キ、キマァッ……──!?」 


離れたところにいるキマワリごと、凍らせる。 


花丸「ず、ずらぁ……!!」 


冷気が一気に室内を覆い、マルの居る場所もフィールドごとどんどん凍り始め、足が取られる。 

でも……止まるわけにいかない……!! 

マルは次の手持ちを繰り出す。 
987 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:40:45.08 ID:XqTkDbxP0

花丸「ウリムー!!! “とっしん”!!」 
 「ウリッ!!!」 


ウリムーなら、凍ったフィールドでも足を取られない。 

そのまま、オニゴーリに突撃する。 


理亞「しつこいッ!! “かみつく”!!」 
 「ゴォォーーリ!!!!!」 


迎え撃つように、オニゴーリが顎を開き、 


 「ウリッ!!!!」 


牙でウリムーに噛み付く形で“とっしん”を受け止める。 


花丸「ウリムー!! “こらえる”ずら!!」 
 「ウリィィ…!!!」 

理亞「いつまで、続けるのよ……!!」 

花丸「ルビィちゃんを助けるまで……!!」 

理亞「お前じゃ私には勝てない!!」 

花丸「それでもずら!!!」 

理亞「……!! わかった、なら完膚なきまでに叩きのめすまで……!! “かみくだく”!!」 
 「ゴォォーーーリ!!!!!!」 


オニゴーリが思いっ切り顎を閉じようとする、 


花丸「ウリムーッ!!!!」 
 「ウリッ──」 


ウリムーの体が光る。 


理亞「!?」 


レベルを見て、最初からこの瞬間を見計らっていた。 

進化のタイミングを──!! 


花丸「イノムー!! “みだれづき”!!」 
 「──イノォッ!!!!!」 


今生えてきたばかりの立派な角をオニゴーリの上顎に内側から突き刺す。 


 「ゴォォーーーリッ」 


上顎を思いっ切り突き上げて、開いた口に、 


花丸「“どろばくだん”!!」 
 「イノォッ!!!!」 


追撃を叩き込む、 


 「ゴォーーリ!!?!!?」 

理亞「くそ……!! 次から次へと……!!」 
988 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:42:12.16 ID:XqTkDbxP0

マルが押してる……!! 

このまま、ルビィちゃんを──!! 

そう思った瞬間だった、 


ルビィ「ぁ、ぁ、ぁあぁぁぁ、ぁあああ!!!!」 


ルビィちゃんの方から苦しげな悲鳴のような声が上がる。 


花丸「ずらっ!!?」 

理亞「!!」 


次気付いたときには、 

──ジュウ、と音を立てて周囲の氷が一気に蒸発する。 


花丸「こ、これは……!? ルビィちゃん!!!」 

理亞「……!! 巫女の覚醒は間に合った……!!」 

花丸「巫女の覚醒……!!?」 


その言葉に一瞬驚いて、こちらの指示が遅れる。 


理亞「“メガトンキック”!!」 
 「グマァッ!!!!」 

 「ドダイッ」 


くさタイプのドダイトスが急な炎熱に驚き、出来た隙にリングマが蹴りを叩き込む。 

激烈な蹴りに再び巨体が浮き上がり、 


 「イノッ!?!?」 


イノムーを巻き込んだまま、 


花丸「ドダイトス!! イノムー!!」 


二匹は壁に激突する。 

やられた手持ちを目で追って、視線を外した瞬間、 


 「グマァッ!!!!」 


すぐ近くでリングマの鳴き声がして、すぐに視線を戻すが、 

間に合わない、 


花丸「──がっ……!!」 


リングマの手が伸びてきて、マルの首根っこを掴んで持ち上げる。 


花丸「……っ……!!」 

理亞「てこずらされた……でも、これでお前の負け」 

花丸「……ぐ……!!」 


リングマの腕を掴んでもがく、 

表情を歪めながら、マルは視線を前に──ルビィちゃんの居るほうに、 
989 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:43:16.10 ID:XqTkDbxP0

ルビィ「……ぁ、ぁぁぁあぁぁぁ!!!」 


ルビィちゃんは苦悶の表情を浮かべて、涙を流しながら、大量の熱を放射し続ける、 

その傍らではコランが真っ赤な光を発しながら、転がっている。 


花丸「ルビ、ィ……ちゃ、ん……!! マルが……い、ま助ける……ず、ら……!!」 


マルはリングマの腕を掴む。 

力を入れて退けようとするが──ビクともしない。 


理亞「ポケモンの筋力に人間が勝てるはずない」 

花丸「……ず、ら……」 

理亞「もう、決着はついた」 

花丸「まだ……っ……ずら……!!」 

理亞「なんで、そこまでする……?」 

花丸「マルは、ルビィちゃんの……友達、だから……!!」 

理亞「……お前も、ルビィも、雑魚なのにどうしてそこまで戦う?」 


理亞さんは私にそう問い掛けてくる。 


花丸「違う……ずら……!!」 

理亞「……違う……?」 

花丸「マルは、そうかも……しれないけど……っ……。……ルビィちゃん、は……強い、子……ずら」 

理亞「…………」 

花丸「ルビィちゃん、は……確かに、臆病、だけど……自分の、やりたいこと、は……自分で、決めて、守りたいものの、ためには……真っ直ぐ、で……!!」 


マルはリングマの腕に爪を立てる。 


花丸「……ねえさま、ねえさまって……! 全部、お姉さんの、せいにして、る……お前、なんか、より……何倍も、何百倍、も……!! ルビィちゃんは、強い……ずら……っ!!」 

理亞「……もういい、リングマ。締め落とせ」 
 「グマァッ!!!!」 

花丸「……がぁぁぁっ!!!」 


マルの首を掴む、リングマの手に力が籠められる。 


花丸「──ルビィ……ちゃ……」 


意識が薄らいでいく── 

飛びかけの意識の中、遠くで微かに声がする。 


ルビィ「──ぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ……!!!!」 


ルビィちゃんが、苦しんでる。 


ルビィ「──ぁっぃ、ょぉ……!!!」 


ルビィちゃんが、泣いている。 


ルビィ「──たす、けて……」 


ルビィちゃんが、助けを呼んでいる。 
990 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:44:36.87 ID:XqTkDbxP0

ルビィ「──おねぇ、ちゃん……たすけ、て……。……たすけ、て……──」 


……その言葉を最後に 

……意識が落ち── 


ルビィ「──はなまる、ちゃん……」 

花丸「──……!!!!!」 


──てる場合じゃない……!! 

ルビィちゃんが──呼んでる。マルのことを……!! 


花丸「ゴンベェッッッ!!!!!!!」 

 「ゴーーーーーーンッ!!!!!!!!」 


マルの叫びに呼応するように、ゴンベが雄叫びをあげて、立ち上がる。 


理亞「な!? ゴンベは戦闘不能だったはず!?」 
 「グマァッ!?」 


動揺する理亞さんに釣られたのか、リングマの腕の力が一瞬緩む、 

マルは確保された気道から、めいっぱい空気を吸い込んで、 


花丸「──ルビィちゃんをッ!!!!!!! 助けるずらあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」 


叫んだ── 


 「ゴォォーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!」 


ゴンベがルビィちゃんの方へ飛び出す。 


理亞「くっ!? カラマネロ!! “ばかぢから”!!!」 

 「カラマッ!!?!!??」 


理亞さんが咄嗟にルビィちゃんのすぐ傍にいるカラマネロに迎撃の指示を出すが、急だったため迎撃が間に合わず、ゴンベはそのまま体重を乗せて突っ込む、 


 「カラマッ!!!!!」 


だが、カラマネロはすぐに体勢を整え、ゴンベに飛び掛ってくる。 


 「カラマッ!!!!!」 
 「ゴンッ!!!!!!」 


二匹のポケモンが“ばかぢから”で組み合う。 


理亞「マニューラ、加勢を──!?」 


飛び出そうとする、理亞さんとマニューラの前に、 


 「ドダイ……ッ!!!!」 


ドダイトスが躍り出て、壁を作る。 


理亞「“とおせんぼう”……!?」 
991 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:45:32.62 ID:XqTkDbxP0

だが一方で、組み合うゴンベとカラマネロは、次第にカラマネロが優勢になっていく。 


理亞「無駄……!! カラマネロは“あまのじゃく”でどんどん“ばかぢから”の威力が上昇していく!! ゴンベのパワーじゃ勝ち目なんかない!!」 

花丸「ゴンベ……!!! 行くずらあぁぁぁ……!!!!」 

 「ゴンッ!!!!!」 


ゴンベが、マルの言葉に頷いた。 

と、同時に── 

どんどん押し返していく。 


 「カラマッ!!?!?」 

理亞「な!? パ、パワーが……!?」 


ゴンベの身体が内側から溢れでる輝きと共にどんどん大きく膨れていき── 


 「──カビ……ッ!!!!!」 


新しい姿で、全力のパワーを叩き付ける……!! 


花丸「“10まんばりき”!!!!!」 

 「カビッ!!!!!」 

 「カラマネッ!!!?!?」 


カラマネロをぶっ飛ばす。 


理亞「くそ!? リングマッ!! 早くそいつを──!!!?」 


突然大きく、床が傾き、 


 「グマッ!!?」 


バランスを崩したリングマがマルの首を離す。 


花丸「──げほっ、げほっ……!!」 


改めて気道が確保されて、膝をついたまま咳き込む。 


理亞「ま、まさかお前……!!」 


理亞さんが振り返ると、 


 「ドダイッ!!!!!!!」 


ドダイトスが背中の樹を揺すりながら、全身で地面を揺らしている。 

──これは“じしん”……!! 


理亞「飛空挺の中で“じしん”なんか使ったら墜落する……!!?」 

花丸「カビゴンッ!!!!!」 

理亞「!!?」 

花丸「“ギガインパクト”!!!!」 
 「カビッ!!!!!」 
992 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:46:10.14 ID:XqTkDbxP0

カビゴンが全体重を乗せた“ギガインパクト”を壁にぶち当てる。 


 『緊急事態発生、緊急事態発生、出力減少、高度低下』 


理亞「あんた──!!!」 


再び、振り返ろうとする理亞さんの横を── 


花丸「──ルビィちゃん!!」 

理亞「……!!」 


マルは走ってすり抜け、 


ルビィ「……たす……け、て……マル、ちゃ……」 

花丸「ルビィちゃん!!! オラはここにいるよ!!!」 


ルビィちゃんを抱きしめる。 


花丸「っ゛……!!!」 


ルビィちゃんの体は触っただけで火傷しそうなくらい熱かった。 

けど、マルはそんなことお構いなしに抱きしめる。 


花丸「もう、大丈夫だから……!!」 

ルビィ「ぁ……ぁ……」 


抱きしめて、声を掛けて、 


ルビィ「……ぁ……」 


──ぎゅっと……。 


花丸「ルビィちゃん……っ」 

ルビィ「……ぅゅ……」 


──そしたら…… 


ルビィ「──……はなまる……ちゃん……?」 


ルビィちゃんがゆっくりと目を開く。 


花丸「……うん……助けに来たよ……ルビィちゃん」 


すると、次第にルビィちゃんの体の熱が引いていくのがわかった。 


理亞「く……!!! 巫女を逃がすな……!!! マニューラ!!!」 


理亞さんがこっちにマニューラをけしかけようとした瞬間、 


 「マニュッ!!!?」 


マニューラは眩い太陽光線を浴びて、吹っ飛ばされる。 
993 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:47:04.77 ID:XqTkDbxP0

 「キマァッ!!!!!」 

理亞「キマワリッ!!?」 

 「イノッ!!!!!」 

 「グマァッッ!!!?!?」 


そして、イノムーがリングマを牙で横薙ぎに突き飛ばす。 


理亞「くっ……!?」 


 「ドダイッ」「キマッ」「イノムゥ」 

ドダイトスが、キマワリが、イノムーが、マルたちの元に駆け寄ってくる。 

マルは理亞さんを見据えて、 


花丸「ルビィちゃんは……返してもらうずら」 


言い放った。 


理亞「ふ……ざけるなぁ……!!!」 


理亞さんは叫ぶが、 

その間に── 


 「カビ……!!!!」 


カビゴンが割って入る。 


 「カビッ!!!」 

花丸「カビゴン……!」 

 「カビ」 


カビゴンはマルに何かを伝えるように鳴き声をあげる。 


花丸「……! お願い……!」 
 「カビッ」 


マルはカビゴンと頷きあう。 

カビゴンが前に向き直った直後、お腹が膨れ上がる。 


理亞「!? ま、まさか!! やめろ……ッ!!!?」 

花丸「カビゴンッ!!!!! ──“じばく”ずら!!!」 


──コントロールルーム内はカビゴンの最後の一撃によって、吹き飛ばされた。 





    *    *    * 


994 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:47:31.39 ID:XqTkDbxP0


 「プワァーーー」 


マルたちは爆発の勢いに乗じて飛空挺を飛び出し、フワライドに掴まって飛行する。 


ルビィ「花丸ちゃん……!!」 


ルビィちゃんが抱きついてくる。 


花丸「わわ、ルビィちゃん!! 危ないずら!!」 

ルビィ「花丸ちゃん……っ」 

花丸「……もう、大丈夫だよ。ルビィちゃん」 


マルはルビィちゃんを抱き返す。 


花丸「ほら……コランもいるよ」 

 「────」 


咄嗟に抱きかかえて、連れ出したコランをルビィちゃんに手渡す。 


ルビィ「……うん」 

花丸「それと……ルビィちゃんのボールと図鑑」 


預かっていた、ルビィちゃんの手持ちと図鑑を手渡して、 


花丸「ルビィちゃん……」 


再び抱きしめた。 


花丸「おかえりずら……」 

ルビィ「──ただいま……!」 


ルビィちゃん奪還作戦は──成功した、ずら……! 


995 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:48:28.52 ID:XqTkDbxP0


>レポート 

 ここまでの ぼうけんを 
 レポートに きろくしますか? 

 ポケモンレポートに かこんでいます 
 でんげんを きらないでください... 


【飛空挺セイントスノウ】 
 口================= 口 
  ||.  |⊂⊃                 _回../|| 
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  || 
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   || 
  ||.  | |       回 __| |__/ :     || 
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     || 
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     || 
  ||.  | |.      | |           |     || 
  ||.  | |____| |____    /      || 
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  || 
  ||.  | |      | |  _.    /      :   || 
  ||.  回     . |_回o |     |        :   || 
  ||.  | |          ̄    |.       :  || 
  ||.  | |        .__    \      :  || 
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  || 
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  || 
  ||.      /.         回 .|     回  || 
  ||.   _/       o●| |  |        || 
  ||.  /             | |  |        || 
  ||./              o回/         || 
 口=================口 
996 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/11(土) 13:49:15.30 ID:XqTkDbxP0

 主人公 千歌 
 手持ち バクフーン♂ Lv.53  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき 
      トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする 
      ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき 
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい 
      ルカリオ♂ Lv.52 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:146匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 梨子 
 手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり 
      チェリム♀ Lv.46 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい 
      ピジョット♀ Lv.46 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん 
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん 
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:119匹 捕まえた数:13匹 

 主人公 曜 
 手持ち カメックス♀ Lv.50 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい 
      ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき 
      ホエルオー♀ Lv.41 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい 
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん 
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん 
      タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい 
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:147匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:48pt 

 主人公 善子 
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.48 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい 
      ドンカラス♀ Lv.54 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい 
      ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき 
      シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない 
      ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい 
      アブソル♂ Lv.55 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:126匹 捕まえた数:52匹 

 主人公 花丸 
 手持ち ドダイトス♂ Lv.43 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい 
       カビゴン♂ Lv.40 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき 
      デンリュウ♂ Lv.34 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい 
      キマワリ♂ Lv.33 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき 
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい 
      イノムー♂ Lv.40 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき 
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:99匹 捕まえた数:40匹 

 主人公 ルビィ 
 手持ち アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい 
      メレシー Lv.35 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき 
      アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき 
      ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい 
      ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす 
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:82匹 捕まえた数:8匹 


 千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸と ルビィは 
 レポートを しっかり かきのこした! 

...To be continued. 



次回 千歌「ポケットモンスターAqours!」 Part2 その1