2: 伊丹 2019/05/18(土) 00:03:49.19 ID:6MEEYwG40
~765プロ事務所~

美咲「あれ?Pさんおかえりなさい。今日は遅いですね」

P 「美咲さん。おつかれさまです。美咲さんこそ、もう10時ですよ?ウップ…」

美咲「私は衣装仕上げをしてて…。もう帰るところでした。それより打ち上げですか?」

P  「ええ…。春香たちが出演していたドラマのスタッフ打ち上げで。アイドルたちは一次会で帰しましたが、
二次会でカラオケに…」
美咲「お酒のあとのカラオケは喉によくないですよー?声が20歳くらい老けて聴こえます…」

P   「監督がノリノリで…。アイドルのPならアイドルの曲も振り付け付きで完コピだろ!って
ファンタジスタカーニバルを絶叫しながら踊らされて……」

美咲「それはお気の毒で…お水持ってきますね?」

P  「ありがとうございます…。明日は朝早く群馬まで1泊2日の出張なんで、今日は事務所の仮眠室に
泊まっていきま…ウップ。こんなことだろうと出張の準備をしておいて良かった…」

引用元: 【ミリオン】志保「Pさん、ヒゲはやしたんですか!?」 



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3: 伊丹 2019/05/18(土) 00:04:46.43 ID:6MEEYwG40
亜美ガチャッ「おっす!にいちゃーん!おっかれちゃーん!」

P 「おっ、亜美か?こんな時間だぞ。レッスンか?」

亜美「そうそう!本番近いからねー!他の子は帰っちゃったけどぉ、
亜美はわっすれ物ー!事務所空いてて、チョー助かったよーん!」

P  「もう遅いから、送っていく…って、車は出せないな…。帰りはタクシーだな。
美咲さん、手配をおねがいできますか?」

美咲「はい。お呼びしますねー。」

4: 伊丹 2019/05/18(土) 00:05:57.52 ID:6MEEYwG40

亜美「ところで兄ちゃん兄ちゃん、ひどい有様だね?。特に声が社長みたいになってるよー。打ち上げ?」

P 「ああ…やりたい放題させられたよ。」

亜美「ふーん…(ニヤリ)そういや、こないだのCMのお仕事でもらった新製品の試供品のぉ、
制汗スプレーあるよーん!汗ベッターな兄ちゃんに吹いたげるねーん!」ブシュ-

P  「うわっ…いきなり何を……って気持ちいいなぁ…香りもいいし、火照った顔がスーっとするなぁ。」

亜美「クスクス…でしょでしょー!大サービスでぇ?、もーっと吹いたげるにー!」ブシャーーーー
「あ、もうタクシー来たっぽい!にいちゃん!じゃあまたにーん!トトト…」

P  「あ、気をつけてな亜美! ん?亜美が制汗スプレーの試供品?」  
「……あー、ためだ。頭が働かない。」
「美咲さんもありがとうございました。事務所の戸締まりはやっておきますので。」
美咲「お願いしますね。ではPさん、お休みなさーい!」トトト
P  「お疲れ様です! …さて、喉も痛いしシャワーは明日にして戸締まりを確認したらもう寝よう…」

5: 伊丹 2019/05/18(土) 00:06:41.30 ID:6MEEYwG40
~翌朝~


ピピピ…ピピピ…

P 「…む。モサッ もう朝か…って喉痛い…昨日むちゃしたからなぁ。…そうか事務所か…。
シャワー浴びて出張準備だ…モサッ」

~シャワー室~

P 「事務所にシャワー室があって助かった…っと(服ヌギー)モサッ
  …んーさっきから顔のあたりがモサモサでチクチクするなぁ……」(鏡チラッ


キャアアアアアアアアアーーーー!!!!!!


6: 伊丹 2019/05/18(土) 00:07:19.76 ID:6MEEYwG40
社長「い、いま音無くんと事務所前を掃除していたが、この世のものとは思えない声が…
…っと君かね……って、どうしたんだねそれは…!!」

小鳥「なにかあったんですか……って、Pさん!
……こ、これは…」


「「ヒゲ……!?」」

7: 伊丹 2019/05/18(土) 00:08:10.16 ID:6MEEYwG40
P  「なるほど、昨晩、亜美に噴射されたスプレーは制汗スプレーではなく…」

真美「育毛スプレーだったわけダネ!モッサリ兄ちゃん!」

P 「ああああ!!どうするんだ!こんなモサモサのヒゲで!」
「しかも…毛根が強力に根を張ってて剃るに剃れないぞ!!」

恵 「『強制育毛!モーコンハナサナーイ』だって!超強力なやつで、1日1プッシュで様子を見て使用してくださいって…」

P  「おかしいと思ったんだが、制汗スプレーの仕事は真美で、育毛剤のPR映像の仕事は亜美だったか……!
俺としたことが…酒は怖い!」

真美「でもでも、兄ちゃんみたく、つけすぎる人がおおいみたいで、亜美がメーカー指定の脱毛剤も
もらってるらしいけど…」

P  「亜美は律子たちと1泊2日のバラエティーのロケ収録だ……。くっ…帰ったらプリン没収だ…!」

可憐「プ、Pさん、声もいつもと違って低いし…目の下のクマも…ここのところ無理も続いていたようですし、
お休みしては…?」

8: 伊丹 2019/05/18(土) 00:09:15.01 ID:6MEEYwG40
P  「ありがとう…可憐。でも、今回の撮影はあの娘にとってもチャンスなんだ。」
「あとの仕事に続くように関係各所に挨拶しておきたいんだ!
でも…」

恵 「そのヒゲじゃぁ、悪印象っしょー! ……それにしても……にゃはは!!!そのヒゲ…!!」

可憐「め、恵ちゃん…!笑ったら失礼……チラッ……プッ!!!」

社長「はははは!君ぃ!意外と似合うじゃないのか!?はははは!」

美咲「笑いどころじゃないですよぅ!みなさん!Pさんこんな姿じゃ……チラッ……プッ………
お仕事に行けないじゃないですかぁ!」

P  「もう好きにしてください…」

社長 「はー愉快愉快……っと、うおっほん!たしかに、このむさ苦しいヒゲでは
先方にも失礼に当たる。おなじビジネスマンとしてこれでは君を送り出すわけにいかん。……ならば!」

小鳥「逆に考えると、むさ苦しくないヒゲにすれば良いわけですね!社長!」

社長「そうだ音無くん!幸い、今いるこのメンバーで役者は揃っていると思うがね……!」

P  「……?どういうことでしょう?(オロオロ」

9: 伊丹 2019/05/18(土) 00:10:34.68 ID:6MEEYwG40
1時間後…


小鳥「Pさーん!お着替えはまだですかぁー?」

P  「も、もうちょっと……これ、すごくいいスーツですが……!いいんですか社長!」

社長「なぁーに、私の若いときのスーツをとっておいてよかった…!昔はどこも売り手買い手で、
それを着てよく黒井とアイドルの営業へ……」

小鳥「社長の話は後でききます!さて、スーツの仕立て直しは美咲ちゃんに!」

美咲「これくらいはお茶の子再々ですー!」

小鳥「ヒゲの剪定は恵ちゃんに!」

恵 「根っこはチョー強力でハサミ通んなかったけど、毛先は通ったかんねぇ!」

小鳥「仕上げのデオドラントは可憐ちゃんに…!」

可憐「お、大人で落ち着く雰囲気のウッディ系と、爽やかなシプレ系のフレグランスを調合した
香水を作りました……ど、どうでしょう?」

小鳥「さぁ、結果は……?」

P  「できました。開けますねー(低音)」


ザッ!

10: 伊丹 2019/05/18(土) 00:11:49.14 ID:6MEEYwG40

~東京駅 新幹線 車内~


志保「今日は駅で待ち合わせって話だったけど、
Pさん、遅くなるから新幹線の指定席で座って待っててくれって……」

志保「まったく。もう少ししっかりしてもらわないと…。そもそも今回も私ひとりでいいっていってたのに…」


???「やぁ、またせたね、志保?」

志保「本当です。Pさん。チラッ もうちょっと大人のよゆ……(あんぐり)」


P  「やぁ、悪かったな。事情があって。」
出張2人きりだけど、よろしく頼むな?(低音」

志保「…えっあ、その、はい。(混乱」

11: 伊丹 2019/05/18(土) 00:12:53.65 ID:6MEEYwG40
志保「えっ プ、Pさん?」

P  「ん?どうした志保?」

志保「あ、いえ…確認しただけです。なんでもありません。
……その声、どうしたんです?あとそれも。」

P  「あぁ、喉を傷めてな。ヒゲは…生やした……じゃないな。生やされた。」

志保「……生やされた?まぁ、よくわかりませんが…」

P  「変かな?(低音」

志保「えっ…? んー、ジッ……」

P  「…?」

志保(口ひげとあごひげがキレイに整えられてて…髪は整髪剤でまとめられてて…
体格に合ったすらっとしたクラシックスーツ…なんだかいい匂いもするし、
声すごい低いし…目元のクマも渋さに一役してて…)
志保……ポッ「まぁまぁじゃないですか?///」

P  「そうか!よかったよ!(ニコッ」

志保「////~(やかんの鳴く音)」

12: 伊丹 2019/05/18(土) 00:14:29.41 ID:6MEEYwG40
~新幹線にて移動中~

P 「さて、今回の撮影だが…」

志保「旅行代理店のパンフレットの撮影…でしたか。」

P  「そうだ。群馬の草津温泉だな。写真の使われるパンフレットは5カ国語に翻訳されて、
海外の系列店にも置かれる予定だから、発行部数が相当多くなる。
代理店側の関係者も来るみたいだから、うまくやれば、今後の仕事につなげるチャンスになる!」

志保「そうですね。いろいろな衣装での撮影するようですね。私服、浴衣…これは…湯もみ服…ですか?」

P  「ああ、草津の湯は熱いからな。昔は女性陣が長い板を使って湯を混ぜる(揉んで)
適温に調整してたんだな。湯もみ服はその伝統的な衣装だ。」
「 今ではショーのように実演されてて、観光客に人気なんだよ。」

志保「……へー、詳しいですね。調べてたんですね。ちょっと…見直しました。」

P  「付け焼き刃だけどな!志保は演技に造詣が深いからわかるだろうけど、
歴史的な背景を知っていたほうがリアルな撮影になるだろ?(ニコッ」

志保「……っ/// プイッ そっ、そうですか。ありがとうございます。」

P  「ところで、今回は入浴シーンの撮影もあるそうだが…いけそうか?」

志保「えっ?はい。大丈夫ですが。温泉の撮影なら定番ですよね。何かありましたか?」
P  「いや大丈夫なら、いいんだ。」
(年頃の娘だからちょっとは恥じらうかと思ってたけど、こういうところはドライだよな!)

13: 伊丹 2019/05/18(土) 00:15:33.66 ID:6MEEYwG40
~群馬県 草津温泉~


P 「新幹線と電車を乗り継いで3時間!やっと来たなぁ!しかしすごい湯気と匂いだな!」

志保「本当に…。建物も全体的にモダンで…。この湯畑…ですか?この温泉の滝のような。」

P  「ああ。源泉の高い草津の湯は源泉から湯を木桶に流して、外気に触れさせて湯を冷ましたり、
桶の中の湯の花を取ったりするみたいだな。しかし、実物はすごいな!」

志保「ふふっそうですね(見た目や声は渋くなったけど、やっぱりいつものPさんね…)」

P  「おっ、撮影班も準備できたみたいだ。撮影開始だな!」

志保「はい。わかりました。始めは湯もみ体験ですね。」

14: 伊丹 2019/05/18(土) 00:17:10.47 ID:6MEEYwG40
~湯もみ体験 撮影後~


P 「志保、お疲れ様!すごかったな湯もみ!チョイナーチョイナー!って板動かして!」

志保「Pさん、楽しそうですね……湯もみ板って結構重たくて、唄も歌いながらなので…」

P 「おっと…すまない。あんまり見事だったもんで。体はつらくはないか? 」ズイッ

志保「いっ、いえ/// 大丈夫ですから!近いです!」

P 「それなら良かった。カメラマンさんも、"志保さんの楽しそうな1枚が撮れました"っていってたぞ!」

志保「そうですか…心なしかあまり嬉しくない一言ですね…」

P  「次は私服に着替えてモダンな街中の散策シーンの撮影だ。」

15: 伊丹 2019/05/18(土) 00:18:26.05 ID:6MEEYwG40
~草津温泉 街なかでの撮影~

志保「平日とはいえ、人通りがすごく多いですね。」

P  「そうだな。瓦屋根の老舗旅館が連なる通路はレトロで雰囲気があって、写真映えするな!」

志保「街のそこここに小さな湯船がある小屋があって…共同浴場っていうんですか?」

P  「そうだな。例外はあるらしいが、基本的には地元の人が優先だ。」
「湯船も大きくはないし、そんなところに観光客が大挙してきたら大変だからな…。」

志保「…ところでPさん。あそこのおまんじゅう屋さん…」

P 「ああ。人が店先を通るたびにタダでまんじゅうと熱いお茶を配ってるな。」

志保「そんなことをして、お店に儲けはあるんでしょうか?」

P 「ほら、よく見てごらん志保。まんじゅうは釣りで、本命は茶の入ったあの湯呑だ。」
「湯呑は店内に返すことになってて、もらったら最後、店内に入らないといけない仕組みだ。」
「巧みな戦術を感じるな…。」
「撮影班の何人かは箱入りを買わされてたな。安いしおいしいし、土産にいいんだが。」

志保「でも、前を通るたびに強引におまんじゅうを渡すなんて…私はちょっと…。」

P 「ははは。そういう押し売りも旅情と割り切れたら立派な旅人なのかもな!」

16: 伊丹 2019/05/18(土) 00:19:43.52 ID:6MEEYwG40

志保「でも、通るたびにおまんじゅうが貰えるなんて……ふふっ。可奈が喜びそう。」

P  「ははは。可奈なら、この間は撮影の合間に入ったカフェでパンケーキ5枚重ねをたいらげてたぞ
……って、あ…」

志保 ジトー…「P。あんまり可奈を甘やかさないでください。あの子、太りやすい体質なんですから。」
「またいつかみたいに衣装が入らなくなりますよ?」

P 「うっ…そ、そうだったな…気をつけるよ。(墓穴を掘った…)」

志保「まったく……ふふっ。でも、あの子なら、一度に2個も3個ももらっちゃうかも?」

P  「ははは。確かにな!」 パシャッ
「さぁ、次は今日泊まる、老舗旅館で浴衣に着替えて撮影だ。
「着替えと化粧直しをメイクさんにしてもらってくれ。」

17: 伊丹 2019/05/18(土) 00:21:39.51 ID:6MEEYwG40

~メイク室~

志保「~♪」

メイク 「北沢さん、なんだかご機嫌ですねーパタパタ…ところで、北沢さん!あのお付の男性!」

志保「え?ああ、Pさんのことですか?」

メイク 「そう!渋くてカッコいいですよねー!高級スーツもピシッと着こなして!」
「あんな人にずっと付いてもらえるなんて、北沢さん、お姫さまみたいで羨ましいなぁ!」ヌリヌリ

志保「へ、へぇー……そ、そうでもないですよ?/// 遅刻もたまにするし、すぐ約束忘れるし!」
「前なんか、自作した絵本を読んでくれ、なんて言い出したこともあったんですよ!/// 
「変です。あの人。」

メイク 「男の人はちょっとスキがあったほうがグッと来ますよー!」
「 ……ところで、Pさんって、恋人とかいるんですかー?」

志保「え?どうしてです?」

メイク 「わたし今婚活してて?! Pさんって優しそうだし、あんな高級スーツ着こなしたり…
「収入ありそうじゃないですかー!だから~、今フリーなら、あたしでも~……なんて!!」


志保 「………」ムスッ

18: 伊丹 2019/05/18(土) 00:23:13.96 ID:6MEEYwG40

~旅館 志保の部屋~

志保「はぁ…(わたし、なんであの時メイクさんにPさんは将来を誓いあった恋人がいる、
なんて言っちゃったんだろう…)
(それが気になってミスを連発…入浴シーン撮影は明日になっちゃった…)

コンコン

P  「俺だ。志保。」
志保「Pさん?」 ガチャ

19: 伊丹 2019/05/18(土) 00:25:08.54 ID:6MEEYwG40

P  「今日はお疲れ。なんか元気がなさそうだったから、ちょっと様子を、な。」

志保「はい…。どうぞ。…喉、良くならないですね?お茶、入れますね。」

P  「ありがとう。もらうよ。薬も飲んでるし、のど飴も舐めてるんだけどなぁははは…」
  「お、ノート広げて、勉強中だったかな?」

志保「はい。アイドルの仕事で授業を休みがちですから。」
「日頃から復習や課題はしっかりやって、基礎を固めておかないと。」
「ただ今日は、あまり集中は出来ていませんでしたが…。」

P  「そんなことないさ。未来や翼なんか筆記用具すら持ってこない時があるんだから
意欲があるだけ、立派なもんだ。」

志保 …///「 別に、普通のことです」プイ

P  「はは……。 ところで、志保は、もう進路は決めてるのか?」

20: 伊丹 2019/05/18(土) 00:26:37.40 ID:6MEEYwG40

志保「え?進路ですか…?」

P  「志保は中2だったな。そろそろ進路の話も出てきてるのか気になって。…答えたくなければいいけど。」

志保「…いえ。母とも相談してますが、うちは学費の都合もあるので、近所の公立高校を考えています。」

P  「……行ってみたい学校や、かわいい制服の私立の学校は興味はないのか?」

志保「私は別に。特にこだわりないので。……学費で学校を選ぶのはいけませんか?」

P  「いや、志保がいいならそれでいいけど。」
「……おせっかいかもしれないけど、今後もし、行きたい学校や、やってみたいことができたら
お金のことはワキにおいて、親御さんに相談したほうがいいぞ?」

志保「…ふふ!」

P  「…? なにか変なこと言ったか?」


21: 伊丹 2019/05/18(土) 00:28:22.40 ID:6MEEYwG40


志保「…いえ。Pさん、母と同じことを言うので。」
「もしお父さんがいてくれたら、こんな風に進路相談してたのかなって。」

P 「俺がお父さん!?たしかに今はこんな格好だけど、俺はまだ…」

志保「分かってます。ただ、その姿を見るとどうしても連想してしまって……。
Pさんがお父さん……ふふっ!おかしい!///」


P  「……色々言いたいが、まぁ元気は出てるようだからよし!」

「ところで温泉は入ったか?このあとは40分間、お風呂を貸し切りにしてもらったから。
俺はもう入ったから、ゆっくり入って来るといいよ。」

22: 伊丹 2019/05/18(土) 00:30:34.83 ID:6MEEYwG40
~旅館の温泉~

カポーン

志保「あつっ!やっぱり湯温が熱めだ…。よくかけ湯して肌に馴染ませて……ふぅー…気持ちいい…。」

(Pさんと話してたらなんだかもやもやも晴れてきたし…明日はしっかりやれそう!)
(でも、わたし、メイクさんになんであんなこと言ったのか…)
(収入や見た目だけを判断材料にされたから…?)
(いや、違う。私はPさんを…誰かに取られるのが……)

 カアア~ ///っっっ!!!ボゴボゴボゴボゴ


P 「お、志保!温泉あがりか?

志保 ボーーー。「あ、はい。おはようございます。Pさんは?」

P  「・・・? 俺は今まで旅行代理店関係者の人と卓球大会だったんだ。」

志保「そうですかそれはそれは…メガウツロ- もう寝ますおはようございます…」フラフラ~

P  「ん?志保?ふらついてるぞ!言動もおかしいし、大丈夫か?部屋まで送るぞ!」

23: 伊丹 2019/05/18(土) 00:32:39.09 ID:6MEEYwG40
~志保の部屋~


志保「すいません…Pさん…」

P  「いいから。気にするな。草津の湯は熱めだが…完全な湯あたりだな。」
「水飲んで横になって。うちわで仰いでやるから…」パタパタ

志保「……Pさん…」

P  「ん、どうした?」

志保「浴衣、渋くて似合ってます。」

P  「えっ?あぁ、ありがとうな。志保も似合ってるぞ!」

志保「……Pさん…」

P  「なんだい?」

志保「今日は…すいませんでした。」

P  「……撮影のことか?気にするな。今はゆっくり休んでな。志保が落ち着くまでここにいるからな?」

志保「……Pさん…」

P 「クスッ …なんだい?お嬢さん?」

志保「絵本を…読んでくれませんか?」

P  「絵本?持ってきてるのか?

志保「机のノートの下に…。弟に、せがまれて…内容の予習で…」

P 「…分かった。今持ってくるな。」


24: 伊丹 2019/05/18(土) 00:34:15.24 ID:6MEEYwG40

P  「えっと、『おきゃく おことわり?』外国の翻訳絵本だな」

志保「はい。お願いします…」

P  「分かった。ん、ん。

(志保の絵本は、森の奥に住む大柄のクマが、誰も自分を訪ねてこないことに腹を立てて、
家の前に"おきゃくおことわり"の張り紙を張る。その張り紙を見たネズミが、
あれやこれやと手を尽くしクマの家に何度となく現れ、クマの淹れる美味しいお茶をせびる。
でも最後はクマは頑なだった心をほぐし、素直になってネズミと友達になる…。)

P  「~でした。おしまい。…すごくいい話だったな。」
「 大人が読んでも…素直になることの大切さを考えさせられるな。」

志保「そうですね。内容はとてもいいです。」
「でもPさんは声はいいのにセリフの抑揚の付け方がヘタですね?
あと緩急の付け方も全然です。それじゃ、ちいさな子は寝ちゃいますよ?」

P  「うっ…。すまない。」

志保「ふふっ…いえ。もっと精進してください?」

P  「ははは。そうだな。」 

25: 伊丹 2019/05/18(土) 00:36:22.78 ID:6MEEYwG40
P 「…それはそうと、だいぶ顔色が良くなったな?」

志保「そうですね。おかげさまで。こんな時間まで付き合わせてしまってすいませんでした。もう大丈夫です。」

P 「そうか?うん。よかった。じゃあ、俺はこれで…」

志保「待ってください。……その、さっき、落ち着くまで、いてくれると言ってくれましたよね?」
「私、寝付きはいい方だと思うので…その、10分程でいいので……私が寝るまで、手を…握って…ん…///」

P  「そうか。うん。それで志保が落ち着くなら。」 ギュッ

志保「あ、Pさんの手、ちょっと冷たい…」

P  「ごめん。離そうか?」

志保「いえ。気持ちいい…。 ふふっ、Pさんの手、働いてる男の手って感じですね?ちょっと素敵かも?」

P 「おいおい。茶化すなよ…。」

志保「はい… じゃあPさん…おやすみなさい。」

P  「おやすみ。志保。」
志保(絵本を読んでくれ、なんて、今の私…普通じゃない…。)
(でも昔、同じようなことを誰かにせがんだような……すっかり忘れてた。あの感覚。)
(誰だったかな?ダメだ。眠い。寝てしまおう…)

26: 伊丹 2019/05/18(土) 00:37:42.57 ID:6MEEYwG40

志保 スー…スー…

P (ほんとにすぐ寝た。寝てるときは年相応なあどけなさだな。)

(絵本の内容にあてられたのか、俺の今の見た目だからなのか、最後だけは素直になって…くれたのかな?)

(・・・彼女はつねに避けられないリアルと戦ってる。他人に距離を保って接してしまうのも、
そういうリアルと戦うための彼女なりの処世術なのかもしれない。)

(そんな彼女に今日は少しだけ寄り添えた…かな。
この格好になったのも、そう悪いことばかりじゃなかったかな!)

27: 伊丹 2019/05/18(土) 00:40:07.89 ID:6MEEYwG40

~翌朝~

コンコン

P  「おはよう、志保。俺だ。起きてるか?」

ガチャ

志保「Pさん。おはようございます。」

P  「おはよう。顔色は良さそうだな。その、今日は…」

志保「昨晩撮れなかった、入浴シーンの撮影ですね?大丈夫です。いけます。
昨日はちょっと深湯しすぎただけですから。」

P 「本当か?なら30分後に予定通り貸し切りにしてもらうから。」
「…無理そうなら、ちゃんと言うんだぞ?」
志保「はい。分かっています。用意しておきます。 
…ところでPさん、喉もちょっと良くなってきてますか?」

P  「違和感はまだあるけど、言われてみれば喉に引っかかる感じはなくなってきたかな?
あとは亜美の脱毛剤さえあれば…っ!」

28: 伊丹 2019/05/18(土) 00:42:23.65 ID:6MEEYwG40

~入浴シーン撮影後~


P 「入浴シーンの撮影お疲れさま!早朝の日の出と合わせた、朝靄の中の撮影は雰囲気が出て、
カメラマンさんも昨日撮れなくてよかったかも、と絶賛だったな!」

志保「そうですね。ところで、温泉の件、ありがとうございました。
まさか、撮影用に温泉の湯温を下げてくれていたなんて…」


P  「宿の人に事前に交渉して、源泉を止めてもらって、撮影までに湯もみして下げておいたんだ。
昨日、志保が言っていたように、湯もみって結構な力仕事だな!朝からいい運動になったよ」

志保「そんなにしてくれたんですね…。私は別に、源泉のままでも…」

P  「前、カフェでココアを飲んだときに、猫舌で暑いのは苦手だって言っていただろ?」
「昨日のこともあるし、風呂もそうなのかなって。余計なことをしたのなら、すまなかったな?」

志保「あ…いえ。すごく、その、助かりました。私も、リラックスして撮影できました。」

P  「あとは、朝の観光客が少ないうちの、朝の街なかでの撮影だな。」
「最後の撮影だ。ひと踏ん張り、頑張ろう!」

志保「はい!Pさん!」

29: 伊丹 2019/05/18(土) 00:43:56.24 ID:6MEEYwG40

~撮影から3日後、事務所にて~


P (あれから3日経った。予定外のこともあったが、先方は写真の出来に満足しているようだった!)
(撮影から事務所に帰ると、律子にこってり絞られている亜美が、泣きながら助けを求めてきたが…)
(無視して脱毛剤を手に入れ、俺からヒゲはなくなった。)


恵 「Pのヒゲ、あたしの力作だったのに、すぐ無くしちゃうんだもん!
出来たときテンション上がって写メ撮るの忘れたしー。」

可憐「わ、私も、あのおヒゲ、お似合いだったと…おもいます。あと、匂いも…♪」

P 「たしかに、ちょっともったいなかった気もするけどな。ただ、あんなハリガネみたいなヒゲじゃ、
手入れも難しいしな。生やすにしても今度は自然に生やすさ。」

志保「…P。ちょっといいですか?スケジュールの件でお話が。」

P  「ん? ……あー!忘れてた!いま行くな!」

志保「はぁ……昨日言ったばかりじゃないですか。もう忘れたんですか?」
P  「う…。面目ない…。」

30: 伊丹 2019/05/18(土) 00:46:08.13 ID:6MEEYwG40
(あれから志保とはこんな感じだ。年の割に落ち着いた、真面目ですこし距離を感じる、いつもの志保だ。)
(あの夜、絵本の朗読をせがんだ弱々しい少女は、もういない。)


P 「…わかった。その日は弟さんの迎えだったな。スケジュール調整しておくよ。」

志保「はぁ…Pさん、お願いしますよ? 忘れてると思って確認しておいてよかった。

ピロリン♪

P  「お、志保! この前の撮影の写真が、カメラマンさんから送ってきたぞ。見るか?」

志保「…! はい。是非。」

P  「ほら、湯もみの写真。衣装がよく似合ってるだろ?」

志保「そうですね。あれだけ湯けむりが上がってたのに、こんなにキレイに撮れてる…。」

P  「ほら、夜の湯畑のライトアップも!」
「……ん?これだけタイトルがついてる。」

"最高の一枚が撮れました" 

だと。どれ…

31: 伊丹 2019/05/18(土) 00:48:01.76 ID:6MEEYwG40

志保「これは…初日でおまんじゅう屋さんのまえでPさんと話してるところですね。」

P  「そうだな。確かによく撮れてる……この志保、笑顔がすごく自然じゃないか?」

志保「……」

P  「たしかに、これまでの写真は大人びて落ち着いた志保らしい写真ばかりだ。でもこれは…」

志保「……カアア…///」

P  「確かに、すごくよく撮れてるな!」

「だが、残念だがヒゲ面の俺がバッチリ写り込んでるから、パンフレットには使えないな…。」

志保「……Pさん。」

P  「ん?どうした、志保。」

志保「その…もし差し支えなければ、この写真、私にも頂けませんか?」

P  「え?いいけど、でも記念になら、俺の写ってない他の写真でも…」

志保「いえ。これがいいんです。今、送っていただけませんか?お願いします。」ズイッ

P  「わ、わかったよ。志保のケータイに送っておくな?ポチー
(有無を言わさぬ雰囲気に飲まれてそれ以上は聞けなかったな…)

32: 伊丹 2019/05/18(土) 00:49:41.70 ID:6MEEYwG40

志保「ん、受信しました。ありがとうございます。
…そうだ。Pさん。このまえのこと…事務所のみんなには内緒でお願いします。」

P  「この前のことって、志保がミス連発して撮影が押した件とか、
志保が湯あたりしたり、
俺がそれの看病したりとかか?」

志保「っ/// そうです!この間のこと全部です!もしも言ったら…このヒゲのPさんの写真、
みんなに一斉送信ですからね?」


P  「それは困るな…! わかったよ。約束する。」

志保「分かればいいんです。」

志保 ……


33: 伊丹 2019/05/18(土) 00:50:57.18 ID:6MEEYwG40


一瞬考えるような間をおいたあと、志保は、ズイッと俺のそばに近づき、俺の耳元に手を当て… 



ふたりだけの秘密ですよ? ""お父さん?""



そういたずらにささやいた少女は、上気した顔を隠すようにすぐに後ろを向いてしまう。
チラリと見えたその唇は、薄く笑んでいるように見えたーー