1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/10(土) 23:56:08.20 ID:iHsAjecq0
唯「ここか~…」 

軽音部に入部することにした私、平沢唯は 
部室の前にまで来て、入部するかどうか迷っていました。 

唯「入るなんて言っちゃったけど、私楽器弾けないしなぁ…」 

唯「そもそも軽音部ってどんな人がいるんだろう?」 

唯「……」 

ポワンポワンポワーン… 

想像上の軽音部の人『ああん?辞めたいだとお!? 
              ただで辞められると思ってんのか!?KILL!!』 

ポワンポワンポワーン… 

唯「……」 

唯「あわわわわわ……」ガクブル 



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5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 00:06:30.64 ID:PKlMETUv0
「おいてめぇ!軽音部に何の用だ!?」 

唯「ひぃっ!?」 

「あ、お前もしかして入部希望の平沢唯じゃね?」 

唯「そ…そうですけど…」ガクブル 

「そうか、よく来たな!私は田井中律ってんだ、よろしくな!」ニカッ 

唯「よ、よろしくお願いします…」 

よかった…口調は荒いけどいい人そうだ 
これなら私もこの部で上手くやっていけるかも! 

律「まぁ立ち話もなんだ、早速中に入ってくれ」 

唯「はい!」 

がちゃ 

律「姉御ー!新入部員が来ましたぜ―!」 

「んだとぉ…?」ギロッ 

唯「ひぃっ!?」 

何あの人…眉毛ないし木刀持ってるしマスクしてるし… 
正直…怖いです 


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 00:13:08.47 ID:PKlMETUv0
「よく来たな新入部員…ちょっとこっちに面貸せや」 

唯「あわわわわ……」ガクブル 

律「おい平沢!姉御がお呼びだろうがッ!さっさと返事せんかい!」 

唯「ひぃっ!?」 

あわわわ……やっぱりこの人も怖い人だったんだ… 
どうやら私の予想は的中してたみたい… 

唯(怖いよぉ…助けて憂…和ちゃん…)ガクブル 

「…おい、あたいは気が短いんだ。さっさとしてくんねぇかなぁ?」 

律「す、すみません姉御!ほら平沢、早く姉御の前まで行け!」 

律「…姉御はキレるとヤバいんだ、下手したら…殺されるぜ」ボソッ 

唯「…!」 

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 00:25:21.75 ID:PKlMETUv0
「おらさっさと来いよ!死にてぇのか!?」 

唯「! い、今行きます!」 

唯(嫌だ嫌だ…私はまだ死にたくない…) 

「…やっと来やがったか、てめぇ…覚悟は出来てんだろうな?あぁ?」 

ああ…この人の言う覚悟って、絶対死に対する覚悟だよ… 
私は今日この場で死んじゃうんだ…短い人生だったな… 
もっと…生きていたかったな…… 

唯「うぅ…ううう……」ポロポロ 

澪「あぁ?何泣いてやがんだてめぇ」 

唯「だって…私は今から死んじゃうんですよね…?」ポロポロ 

「はぁ?馬鹿かてめぇは、どうして死ぬんだよ?」 

唯「だって、言ったじゃないですか…殺すって…覚悟しろって…」ポロポロ 

「んなもん冗談に決まってんだろ、あたいが言った覚悟ってのはだな、 
これからみっちり扱いてやるから覚悟しろって意味だよ」 

唯「扱く…?それって虐めるってことですよね…うわーん!」ポロポロ 

「んな訳ねぇだろうが!頭湧いてんじゃねぇのかてめぇ!」 

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 00:33:53.83 ID:PKlMETUv0
「まぁそろそろ挨拶といこうか。あたいは秋山澪、この部の部長だ」 

唯「…私は…平沢唯です…ぐすっ」 

澪「唯か、いい名前だな。よろしくな、唯」 

唯「…え?この手は何ですか?」 

澪「握手に決まってんだろ、さっさとてめぇも手出せよ」 

唯「は、はい!よろしくお願いします」ギュッ 

澪「おう、よろしくな」ギュッ 

よかった。最初は怖い人かと思ってたけど、かなり良い人そうだよ 
やっぱり人間見た目じゃないんだね、勉強になったなぁ… 

澪「それじゃ、今日から4人で頑張っていこうな」 

唯「4人?3人しかいないじゃないですか」 

律「実はもう一人いるんだよ、まだ来てないだけでさ」 

澪「ムギの野郎、どこで道草食ってやがる…」 

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 00:48:26.33 ID:PKlMETUv0
トントントン… 

律「お、噂をすれば来たみたいですぜ姉御」 

がちゃっ 

「御機嫌よう、愚民共」 

澪「やっと来やがったか、随分遅かったじゃねえか」 

「あなた達と違って、私はすごく忙しいのよ」 

律「おいてめぇ!姉御に向かってなんて口のきき方してんだ!」 

澪「落ちつけ律、こんな安い挑発に乗ってるようじゃ本物の女にはなれねぇぞ」 

律「でも…!」 

澪「あたいみたいになりたいんだろ?」 

律「姉御…」 

「ふん、愚民同士慣れ合ってるといいわ。すごく滑稽だもの」 

唯(…やっぱり入る部活を間違えたかな?) 


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 01:01:41.73 ID:PKlMETUv0
「あら?このみすぼらしい格好をした貧民は誰かしら?」 

唯「……」 

「ちょっと聞いてるの?あなたよ、あなた」 

唯「えっ?貧民って私のこと?」 

「そうよ、あなた以外に誰がいるの?まぁ彼女達も同じ様なものだけどね」 

律「ぐっ…我慢我慢…姉御みたくなるんだ…」 

唯「私は平沢唯です、あなたは?」 

「貧民に名乗る名前などないわ」プイッ 

…え?何この人? 
なんでこんなに偉そうなの? 

澪「こいつは琴吹紬、あたいらは『ムギ』って呼んでる」 

唯「そ、そうなんだ…よろしくねムギちゃん」 

紬「ちょっと、馴れ馴れしく呼ばないでくれない?名前が汚れるわ」 

唯「……」 

…ムカつく。すごいムカつく。 

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 01:14:26.71 ID:PKlMETUv0
澪「そういや唯はなんか楽器弾けるのかい?」 

唯「…あ」 

そういえばここは軽音部なんだっけ、すっかり忘れてた 
どうしよう…私何も楽器弾けないよ… 

澪「…その顔は」 

律「何も出来ないって顔だな…」 

唯「…はい、出来ません…」 

紬「あなた何をしに来たの?ポスターを見なかったのかしら?これだから貧民は…」 

澪「実はあたい達が求めてたのはギタリストだったんだよ」 

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 01:15:15.77 ID:PKlMETUv0
唯「そ、そうだったんですか…そうとは知らずに、軽々しく入部するなんて言ってごめんなさい…」 

…そうだ!これをダシにして辞めちゃおう! 
こんな変な人ばかりの部活になんて入部したくないし 

唯「…あの、私やっぱり入部するの辞めます」 

澪「ああん?辞めたいだとお!?」ギロッ 

唯「ひぃっ!?」 

澪「ただで辞めれると思ってんのか!?KILL!!」 

唯「あわわわわわ……」ガクブル 

…あれ?デジャブ…? 

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 01:23:40.03 ID:PKlMETUv0
唯「な、ならどうすればいいのでしょうか…?」ガクブル 

澪「簡単だ、辞めなきゃいいのよ」 

唯「で、でも私ギター弾けないですし…」 

澪「これから覚えりゃいい」 

唯「で、でもでも…」 

澪「ごたごたうっせーぞ糞アマ!そんなに辞めたきゃな…」 

シャキーン 

澪「今ここでケジメつけろ」 

唯「…あ、あの~…そのカッターを使ってどうしろと…?」 

澪「決まってんだろ、指を詰めるんだよ 
  族を抜けるんだ、当然その覚悟はあるんだよなぁ?ああん?」 

族?ここって軽音部だよね? 
私はいつから暴走族になんて入ったんだろう? 

澪「おらッ!さっさとしねぇかッ!」 

唯「…え?ガチですか?」 

律「姉御はな、規律と掟には人一倍厳しいんだよ 
  だから姉御がやるって言ったらそれはマジだぜ…」 

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 01:36:02.20 ID:PKlMETUv0
澪「てめぇ…自分で出来ないんなら、あたいがやってやるよ」 

唯「ちょ、ちょっと!机に手を押し付けないで下さい!」 

澪「それじゃ行くぞ…腹括れよ、相当痛いからな」 

唯「えっ?本当にやるんですか?冗談ですよね?」 

澪「……」 

あぁ…この目はマジだ… 
この人絶対、指詰めるの初めてじゃないよ…だってこんなに落ち着いてるんだもん… 
ていうかもうカッター振り上げてるし! 

唯「ま、待ってー!」 

澪「待たん、女に二言はない」 

唯「にゅ、入部します!だから指詰めないで!」 

澪「もう遅いわ、じゃあの」 

――ブンッ! 

唯「ぎゃああああああああああ!私の指がああああああああ!」 

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 01:43:48.55 ID:PKlMETUv0
唯「あああああ…私の指…私の指がぁ…!」ポロポロ 

澪「…くく…あははははっ!自分の指をよく見てみろよ!」 

唯「私の指がぁ…って、ちゃんとある…」 

澪「入部したいって言ってる奴の指を詰める奴がどこにいんだよ、馬鹿じゃねぇの?」 

いやいやいや… 
私が入部するって言わなかったら確実に詰めてたでしょ 

澪「とりあえずさっきの入部したいっての、あれ嘘じゃないよな? 
  もし嘘だってんなら、次は容赦なく…」キラーン 

唯「懐から刃物をちらつかせないで下さい…すごく怖いです…」 

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 01:57:04.56 ID:PKlMETUv0
澪「まぁそんな訳で、今日から新生軽音部の始まりだ!」 

律「やりましたね、姉御!」 

紬「私としては、このまま廃部になっても一向に構わなかったんだけどね」 

唯「廃部?」 

律「そう、平沢が入部しなかったら軽音部は部員不足で廃部になってたんだよ」 

唯「へぇ、そうだったんだ」 

なるほど 
だから澪さんはあんなに焦ってたんだな 

澪「じゃぁ明日から本格的に部活を始めると言うことで、今日は解散だ 
  あと唯は明日ちゃんとギター持ってこいよ」 

唯「え?私ギター持ってないよ?」 

澪「なら買えばいいじゃねえか」 

唯「そんな簡単に言わないで下さいよ…大体ギターって結構するんじゃ?」 

澪「大丈夫だ、30万もあればそこそこいいのが買える」 

唯「さ、30万!?無理無理!私そんなに持ってないもん!」 

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 02:07:58.53 ID:PKlMETUv0
律「ああん?てめぇやる気あんのか!? 
  金がねえならカツアゲするか、親の財布からくすねちまえばいいじゃねえか!」 

唯「だ、ダメだよそんなこと!出来っこないよ!」 

澪「そうだ律、やっていいことと悪いことがあるぞ」 

律「し、しかしですね姉御…このままじゃ部活できませんぜ?」 

澪「まあ待て、あたいにいい考えがある」 

唯「いい考え?」 

澪「そうだ、短時間でお金を稼ぐいい方法だ…」ニヤリ 

…なんですかその笑いは? 
とてもいい方法とは思えないんですけど… 


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 02:19:33.86 ID:PKlMETUv0
澪「ちょっと待ってな」 

ピッピッピ… 
プルルルル…プルルルル… 

澪「もしもし、あたいだ」 

澪「…あぁ、そうだ。今回もよろしく頼む」 

唯「…澪さん、誰と電話してるんだろう?」 

律「さぁな、姉御の人脈はかなり広いからな 
  いろんな所に顔が利くんだぜ」 

唯「へぇー(どうせ暴走族とかそっち系ばかりでしょ…)」 

澪「…ああ分かった、本人に聞いてみるよ 
  おい唯、お前煙草は吸うか?」 

唯「え?吸わないよ」 

澪「そうか、分かった。…もしもし、煙草は吸わないらしい 
  …ああそうだ。結構高く売れるんじゃないか?あいつの臓器」 

唯「…ん?臓器?」 

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 02:29:25.10 ID:PKlMETUv0
臓器…売る…これってもしかして… 
…いや、もしかしなくてもこれは… 

澪「ああ分かった、なら今から連れてくよ。それじゃ…」 

唯「ちょ、ちょっと待って下さい!臓器って何ですか?売るって何ですか?」 

澪「そのままの意味だ、それじゃ今から一緒に行くぞ」 

唯「い、嫌に決まってるじゃないですか!おかしいですよちょっと!」 

澪「ああん?おかしいだとぉ!?あたいはお前と軽音部の為を思ってやってるんだぞ!」 

え?なんで逆切れされてるの? 
それにほぼ9割くらい軽音部の為じゃん 

律「待って下さい姉御!流石に臓器はちょっと…」 

唯「律さん…」 

澪「…っち、なら金はどうすんだよ!?部活は!?」 

律「焦る気持ちも分かります!でもここはやっぱりカツアゲの方が…」 

澪「それは駄目だ、人道に反する」 

私にやろうとしていたことが人道に反していなかったとでも言うのだろうか? 

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 02:45:05.41 ID:PKlMETUv0
澪「なぁ唯、ここは臓器を…」 

律「いやいやカツアゲの方が…」 

澪「おい律、てめぇはいつからあたいに意見できる程偉くなったんだ?ああん?」 

律「いやいやしかしですね…」 

どうしてこの二人はもっと普通の方法を思いつかないんだろう? 
どっちも犯罪行為じゃないか 

紬「まったく、騒がしいったらないわね。これだから愚民は」 

律「んだと!?」 

紬「他人からお金を奪うことが恥ずかしい行為だと思わないの? 
  自分の臓器を売る、それこそ人道に反しているわ」 

澪「ならどうすればいいって言うんだい?」 

紬「はぁ…まったく、愚民は頭の中まで汚れているのね」 

バサッ 

紬「…ほら、拾いなさい。貴族の私が施してあげるわ」 

唯「これは…お金?」 

紬「そうよ、ざっと100万位あるわ。それでギターでもなんでも好きに買ってきなさい」 

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 02:56:38.27 ID:PKlMETUv0
唯「で、でもでも…こんなに受け取れないよ!」 

紬「いいから、あなたがギターを買わないと何も始まらないのよ 
  だからみんなの為と思って素直に受け取りなさい」 

唯「ムギちゃん…ありがとう、いつか絶対返すから!」 

紬「いいのよ、お金なんて腐るほど持ってるし」 

唯「それでも必ず返すよ、だってそれがムギちゃんの想いに答えるってことだから」 

紬「はいはい、まぁ好きになさいな」 

さっきまであんなに周りを馬鹿にしてたのに、急にみんなの為になんて言うなんて 
どうやら彼女は私が思っていたより、ずっと仲間思いの優しい人みたいだ 

唯「えへへ~♪」 

紬「…ちょっと、なに笑ってるの?その笑顔すごく不愉快なんだけど」 

唯「いやいや、ムギちゃんは仲間思いの優しい人だなぁって思ってさ♪」 

紬「なっ!?わわわ私が仲間思い!?そんな訳ないでしょこの貧民!」 

唯「えへへ♪私はわかってるよ~」 

紬「……うるさい、馬鹿///」 


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 03:05:20.15 ID:PKlMETUv0
澪「まぁとりあえずそれでギターが買えるな、良かった良かった!」 

律「一事はどうなることかと思いやしたけど、本当に良かったですね姉御!」 

唯「あはは…まあね…」 

私はギターが買えて良かったというより 
カツアゲや臓器を売らないで済んだことに対して喜びを感じたいけどね 

紬「早速そのお金で今日の帰りにでもギターを買ってきなさいな」 

唯「…あ、実はそのことなんだけど…」 

唯「ギターってどこに売ってるのかな…?」 

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 03:17:03.60 ID:PKlMETUv0
紬「まったく!どうして貴族の私が貧民のあなたの買い物に付き合わなくちゃいけないのかしら!?」 

唯「あはは、ごめんごめん。だって律さんと澪さんは 
  今日は別の族とやり合うから無理だっていうしさ、だからムギちゃんしかいなくて」 

紬「なら私はあの愚民共の代わりという訳ね、まったく失礼しちゃうわね」 

唯「そんなんじゃないよ、後ムギちゃんとゆっくりお話もしたかったしさ」 

紬「あらそう、私は別に話すことなんてないんだけど」 

唯「まったく素直じゃないなムギちゃんはー♪うりうりー」 

紬「! 触らないで!!」 

唯「!?」ビクッ 

紬「あ…ごめんなさい…それより早くギターをを買いましょう」 

唯「う、うん…」 

まさか触っただけでこんなに怒るなんて… 
少しふざけ過ぎたかな?後でちゃんと謝ろう… 

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 03:34:55.64 ID:PKlMETUv0
それからムギちゃんの助言もあって、何とか私は自分に合ったギターを買うことが出来た 
その間、ムギちゃんは私に目も合わせてくれず、当然必要以上のことは会話することもなかった 
その様子は、私から距離を置こうとしている様で、安易にムギちゃんに触れてしまった私は、許されざることをしてしまったんだと認識した 

こんな調子じゃ謝ることも出来ない 
でも、感謝と謝罪はちゃんとしなくちゃ… 
それがムギちゃんに対して、少しでも罪滅ぼしになると信じているから 

唯「…あの、ムギちゃん…」 

紬「…何かしら、あと気安く呼ばないでくれる?」 

唯「ごめん…」 

紬「はぁ…それで何?」 

唯「あの…今日は私の買い物に付き合ってくれてどうもありがとう 
  それと…さっきは本当にごめんなさい」 

紬「…いいのよ、私の方こそ悪かったわ。ごめんなさい」 

唯「え?それじゃ許してくれるの?」 

紬「許すも何も悪いのは私の方なのよ?あなたこそ許してくれるのかしら?」 

唯「と、当然だよ!…良かったぁ、ムギちゃんと仲直りできて…」 


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 03:50:25.83 ID:PKlMETUv0
唯「本当に良かったぁ…ぐすっ」 

紬「ちょっと、どうしてそこで泣くの?」 

唯「だってぇ…ムギちゃんに嫌われたらどうしようって思ったんだもん…」メソメソ 

紬「…ねぇあなた、私のことどう思ってるの?嫌な女だと思わないの?」 

唯「最初は確かにそう思ったけど…今は全然そんなこと思わないよ。 
  だって私わかったんだもん、ムギちゃんはいい人だって」 

紬「私が…いい人?」 

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 03:51:19.42 ID:PKlMETUv0
唯「うん、ムギちゃんはいい人だよ。なんだかんだ言っても私の買い物に付き合ってくれたし 
  みんなの為に、私にお金貸してくれたし」 

紬「…でもそれは今日だけかもしれない。明日からはまた嫌な女になっているかも知れないのよ? 
  それでも…それでも私がいい人だと思うの?」 

唯「思うよ」 

紬「また貧民って馬鹿にするかもしれないのよ?それでも思うの?」 

唯「思う」 

紬「…口でならいくらでも言えるわ。大体あなたと私は今日知り合ったばかりじゃない 
  なのにいい人だなんて…本当の私も知らないくせに…」 

唯「それでもいい人だと思う。私はそんなムギちゃんが大好きだよ」 

紬「…だい、すき…? 
  ……そう…大好きか…」 

紬「…ありがとう、唯ちゃん」 

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 04:05:35.99 ID:PKlMETUv0
ムギちゃんが私の名前を初めて読んでくれた 
私はなんだか嬉しくなって、満面の笑みで笑って見せた 
するとムギちゃんもぎこちなく、はにかんで笑った 

唯「えへへ♪ムギちゃんの笑顔可愛いなぁ♪」 

紬「そう、かな?私、人前で笑うのってこれが初めてかもしれない…」 

唯「えっ?今まで笑ったことなかったの?」 

紬「…うん。恥ずかしい話、今まで、私には友達と呼べる人がいなかったから」 

唯「そうなんだ…なら私がムギちゃんの友達1号だね♪」 

紬「えっ?私の友達になってくれるの…?」 

唯「当たり前だよ!」 

紬「友達…友達か…えへへ、嬉しいな♪」 

ムギちゃんはさっきとは違う、満面の笑みを私に見せてくれた 
だから私もその笑顔に、精一杯の笑顔で答えてみせた 

なんだろう、彼女とは親友になれそうな気がする 
彼女の笑顔を見ながら、私はそう思った 

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 04:25:42.09 ID:PKlMETUv0
紬「ねぇ唯ちゃん…」 

唯「なに、ムギちゃん」 

紬「もう少し、お話してもいいかしら?」 

唯「うん、私は最初からそのつもりだったしね」 

紬「ありがとう唯ちゃん、あのね…」 

ムギちゃんは自分のことを色々と語ってくれた 
家のこと、幼かった頃のこと、ずっと友達がほしかったこと、 
でも今まで素直になれなかったこと、とにかく色々なことを語ってくれた 

それらのことを、とても楽しそうに語るムギちゃんは、まるで子供みたいで 
誰かに話してしまいたいことを、今まで誰にも言えずにいたんだろうなと思った 

だから友達の私には、それらを全て聞いてあげる義務があるし 
同時に彼女のことが分かるので、とても楽しくもあり嬉しかった 

90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 15:11:02.81 ID:PKlMETUv0
どれだけ長い時間語り合ったのだろう 
気が付けば時計の針は9時を回っていた 

唯「あっ!もうこんな時間だ!」 

紬「あら大変、両親に叱られてしまうわ」 

唯「私も妹に叱られちゃうよ、残念だけど今日はもう解散だね」 

紬「ええそうね…」シュン 

唯「そんな残念そうな顔しないでよ、また明日会えるじゃん!」 

紬「…うん!」 

唯「へへ♪それじゃムギちゃん、また明日ね!」 

紬「ええ、また明日……唯ちゃん!」 

唯「ん?なーに?」 

紬「あの…今日はどうもありがとう、すごく楽しかったわ」 

唯「こちらこそありがとう、すごく楽しかったよ!それじゃまた明日!」 


紬「……ありがとう、か…いい言葉ね」 


93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 15:31:09.63 ID:PKlMETUv0
―平沢家 

唯「ただいまー」 

憂「…お帰りお姉ちゃん、随分遅かったね」 

うわ…この声はすごく怒ってるよ… 
憂は心配性だからなぁ…一言遅くなるって言っておけばよかったかな… 

憂「…ねぇお姉ちゃん、こんな時間まで何してたのかな?かな?」 

唯「あー…あのね、少し友達とお話しててさ、それで…」 

憂「なら一言遅くなるって言ってくれれば良かったじゃない! 
  今日はお姉ちゃんの大好物のマシュマロ鍋を作って待ってたんだよ!?」 

憂「でも見てよ、ほら!…もうすっかり冷めちゃったよ… 
  お姉ちゃんにアツアツの出来たてを食べてもらいたかったのに…」 

憂「…誰?ねえお姉ちゃん、そのお友達って誰? 
  お姉ちゃんに夜遊びを教える、そのいけないお友達って誰のことかな?」 

唯「え?同じ部活の子だけど…」 

憂「ふーん…そっか、なら私が教えてあげなくちゃだね… 
  お姉ちゃんをたぶらかすことが、どんなにいけないことかをさぁ…」シャキーン 

で、でたーッ!憂の愛包丁、唯我独尊ッッ!! 
これを出したってことは、相当頭にきてるって証拠だよ… 
ていうかなんでいつも持ち歩いてるの?お姉ちゃん怖いよ 


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 15:44:13.90 ID:PKlMETUv0
憂「それじゃお姉ちゃん、ちょっと出かけてくるね」 

唯「で、出かけるって何処にですか…?」 

憂「何処にって…それは、ねぇ…くすくす」 

それってつまりはムギちゃんを消しに行くってことじゃないですか 
あと包丁を持って笑わないで下さい、怖いです 

唯「ま、待ってー!お願いだから行かないでぇ!」 

憂「ダメだよお姉ちゃん、このままじゃお姉ちゃんの為にならないよ」 

唯「その方が私の為にならないよ! 
  大体、彼女は私の大切な友達なの!お願いだから考え直して!」 

憂「もう遅いよ、そいつを○○なくちゃ私の気は納まらない」 

○○って…女の子がそんな○○なんて言葉使っちゃダメだよ! 
しょうがない…こうなった憂を落ちつかせるには、いつものあれをやるしかないか… 

唯「うーいー」ギュゥ 

憂「わわわわっ!?お姉ちゃん!?///」 

唯「憂は可愛いね、いい子いい子」ナデナデ 

憂「あうぅ…お姉ちゃん恥ずかしいよぉ///」 

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 15:59:08.45 ID:PKlMETUv0
唯「ねぇ憂、私は憂が大好きだよ。だからいつまでも一緒にいたいなぁ」 

憂「…うん、私も同じだよ。いつまでも一緒にいたい」 

唯「なら考え直してよ、人殺しなんてしたら私に会えなくなっちゃうよ 
  憂はそれでいいの?」 

憂「! そんなの嫌だよ…」 

唯「なら馬鹿なこと考えないでさ、その包丁を離してよ」 

憂「う…でもでも……分かった、私お姉ちゃんの言う通りにする」 

唯「そっか、ありがとう憂」ナデナデ 

憂「えへへ…うん♪」 

唯「それじゃそろそろ晩御飯にしようか、私お腹ぺこぺこだよ」 

憂「あ、今準備するから少し待っててね!ふんふふ~ん♪」 

唯「……はぁ、何とか納まったみたい…」 

まったく面倒くさい妹だ… 
私の為を思ってくれるのは嬉しいんだけど、少し限度ってものがあるよね 
まぁ納まったんだから、今日はこれで良しとしよう 

それにしても、明日からとうとう本格的に部活が始まるのか 
みんなに迷惑をかけない為にも、後で少しでもギターの練習をしておいた方がいいかな 

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 16:06:22.08 ID:PKlMETUv0
―次の日 部室 

がちゃっ 

唯「こんにちわー」 

律「おう平沢、ギターは持ってきたか?」 

唯「うん!…ジャーン!これが私のmyギターです!」 

澪「ほう、ギブソンのレスポール・スタンダードか 
  お前なかなかいい趣味してるじゃねえか」 

唯「これは昨日、ムギちゃんに選んでもらって買ったんだ♪ね、ムギちゃん」 

紬「……」 

唯「あれ?ムギちゃん?」 

紬「…うるさいわねぇ、貧民風情が私に軽々しく話しかけないでくれる?」 

唯「…あれ?ムギさん…?」 


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 16:16:16.50 ID:PKlMETUv0
唯「あのムギちゃん…私達って友達、だよね…?」 

紬「はぁ?あなたと私が友達?貧民のあなたと貴族の私が釣り合うとでも思っているの? 
  まったく、身分をわきまえなさい」 

唯「……」 

…あれ?あれー? 
なんかいつものムギちゃんに戻ってるよ 
昨日のあれは何だったの?夢だったのかしら? 

律「何驚いた顔してんだよ、ムギはいつもこうじゃねえか」 

唯「…いや違うよ、だって昨日のムギちゃんは…」 

紬「! だ、黙りなさいと言っているでしょ!あなたの声すごく耳ざわりなのよ!」 

唯「ガーン…」 

あぁ…友達だと思っていたのに… 
親友になれると思っていたのに… 
どうやらそれは私の勝手な思い過ごしだったんですね… 

唯「ショック…」 

律「? なんだお前、相変らず変な奴だな」 

それをあなたに言われたくない 

106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 16:27:42.02 ID:PKlMETUv0
澪「どうでもいいけどよぉ、平沢、お前少しはギターの練習したのか?」 

唯「ガーン…ガーン…」 

律「おい平沢!姉御がお呼びだろ!シャキッとせんかいッ!」 

唯「ひぃっ!?」 

澪「まぁ落ちつけ律、そんな小さなことでいちいち腹を立てるな」 

律「で、ですがね姉御…」 

澪「あたいみたいな『いい女』になりたいんだろ? 
  なら少しは広い心を持て」 

律「姉御…有難いお言葉、恐れ入りやす!」 

澪「うむ」 

紬「はぁ、相変らず愚民共は頭の中まで愚民ね」 

唯「……」 

友達がいなくなってしまった今 
私はこの部に入部してしまったことを心の底から後悔していた 

…どうしよう、やっぱりうまくやっていけないかもしれない 

107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 16:40:35.72 ID:PKlMETUv0
そしてなんだかんだで部活が終わり 
私が帰り支度をしていた時 

澪「おい平沢」 

唯「え?何ですか?」 

澪「その…ほらよ、くれてやる」 

唯「? これは…ギターの本?それも新品の…」 

澪「そうだ、それを見ていっぱい練習しろ 
  …言っておくがこれはお前の為じゃない、部活の為にだからな」 

唯「姉御…」 

なんだかんだで、この人も素直じゃないだけなのかもしれない 
きっと時間をかければ、いつかは分かりあえる日が来るよね 

唯「ありがとうございます!私、精一杯がんばります!」 

澪「おう、せいぜい気張れや」 

律「姉御!そろそろ例の約束の時間ですぜ!」 

澪「おう、今行く。それじゃあな平沢」 

唯「あざーっす!」 


109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 16:46:53.00 ID:PKlMETUv0
よーし!澪さんの期待にこたえる為にも 
帰ったら早速練習するぞー! 

唯「ふんふふ~ん♪」 

紬「…あ、あの…唯ちゃん…」 

唯「ん?なーに、ムギちゃん……」 

…ん?唯ちゃん? 
今確かに名前で読んだよね? 
っていうことは… 

紬「あのね唯ちゃん…その、お話が…」 

唯「……」 

紬「…唯ちゃん?」 

唯「…よかった、夢じゃなかった…」 

紬「夢…?」 

唯「いやいや、何でもないよ!それで話って何かな?」 


112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 17:04:04.02 ID:PKlMETUv0
紬「あのね、さっきの態度についてなんだけど…本当にごめんなさい!」 

紬「私…人前で本当の自分を出すの、すごく恥ずかしいから…それで…」 

紬「…だから、本当にごめんなさい!」 

ああ、成る程 
昨日言っていた、また馬鹿にするかもの理由が分かった 

唯「別にそんなに謝らなくていいよ 
  それより私はムギちゃんに嫌われたのかと思っちゃったよ」 

紬「うぅ…ごめんなさい…」 

唯「だから謝らなくてもいいよ」 


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 17:07:29.82 ID:PKlMETUv0
紬「でも…私はこんなにも唯ちゃんを傷つけたんだよ? 
  もう、友達だって言う資格もないよね…」 

唯「そんなことないよ、それでも私はムギちゃんは大切な友達だと思ってるよ」 

紬「え…?本当に…?こんなに酷いことをしたのに…?」 

唯「うん、それに仲直りだってしたじゃん。だから友達」 

紬「…またみんなといる時に、馬鹿にするかもしれないのよ?それでも?」 

唯「ならまたその時に仲直りすればいいじゃん 
  友達っていうのはそういうものだと私は思うな」 

紬「唯ちゃん…ありがとう…ありがとう…! 
  私、唯ちゃんと友達になれて本当に良かった…!」ポロポロ 

唯「私もそう思ってるよ」ギュッ 

紬「唯ちゃん…唯ちゃぁん…!うわああん!」ポロポロ 

そうか、彼女は知らないんだ 
なら私がこれからいっぱい教えてあげよう 
友達が何なのかってことを 



170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 00:34:51.34 ID:MUVyBfpM0
軽音部に入部してから早2ヶ月 
最初は辞めたいとばかり思っていた私も、今では毎日が中々楽しいと思えるまでになりました 
いやー、慣れって怖いね 

律「てめぇ!絶対ゆるさねぇ!」 

澪「上等だ!ぶっ殺してやるよ!」 

和「あなた達!喧嘩は止めなさい!」 

律「うるせぇ!外野はすっこんでろ!」 

紬「まったく、愚民共はいつも騒がしいわね…」 

和「なんであなたはそんなに落ちついていられるの!?唯も何とか言って…」 

唯「あはは…毎日が楽しいなぁ…」 

和「唯!?現実に戻ってきてよ!」 

そもそも、何故、どうして彼女達が喧嘩しているのか 
それは遡ること1週間前… 

175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 00:48:48.14 ID:MUVyBfpM0
―1週間前 部室 

唯ふんふふ~ん♪」 

ジャカジャカーン 

澪「お、唯なかなかギターがうまくなったな」 

唯「えへへ♪なんたって澪さんからもらった本を見て毎日練習してるからね!」 

澪「へぇ、そりゃ頼もしいじゃねえか。あたいらもあんま、うかうかしてられないな」 

律「姉御は練習なんかしなくたってお上手ですぜ! 
  なんたって天才なんですからね!」 

澪「おう、言われんでもわかっとるわい」 

律「これはこれは…失礼いたしやした!」 

紬「何が天才よ、馬鹿みたい」 

律「んだとぉ!?姉御に向かってなんて口のきき方しやがる!」 

紬「本当のことを言ったまでよ、天才だからって練習をしないで上手くなれる訳ないでしょ 
  己の力を過信する前に、少しは練習したらどうかしら?」 

律「このアマ…!もう黙っちゃおけねぇ!ぶっ殺してやる!」 

澪「待ちな律…確かにムギの言う通り、練習は必要だ 
  …よし!一旦全員で合わせてみるとするか!」 


181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 01:05:53.21 ID:MUVyBfpM0

唯「みんなで合わせるんですか?」 

澪「そうだ、そういや唯は初めてだったな 
  みんなで一緒に演奏するのは楽しいぞ」 

律「そうだぞ、そりゃもうやみつきになるくらいに」 

唯「やみつき…楽しい…か…」 

それってどんなだろう… 
すごく、ワクワクするなぁ… 

唯「…早く演奏したいです!」 

紬「くす、まるで子供みたいね」 

澪「まぁいいじゃねえか、私達も最初はこうだったろ?」 

律「ですよね!姉御と初めて合わした時の感動、一生忘れられませんぜ!」 

紬「流石愚民共ね、それ以上の感動を味わったことがないからでしょ?」 

律「ああん?そう言うてめぇはどうなんだよ!?」 

188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 01:30:35.98 ID:MUVyBfpM0
紬「私?私は勿論………」 

律「? なんだぁ?急に黙りやがって」 

紬「……楽しかった、わよ…」 

唯澪律「………」 

紬「な、何よあなた達…文句でもあるの!?」 

澪「…こりゃ驚いた、まさかムギの口から楽しいなんて言葉が出てくるとはな…」 

律「明日大雨でも降るんじゃないですかね…?」 

紬「なっ!?う、うるさいわね!私だってたまにそう思うこともあるのよ!///」 

…私も正直驚いた。普段は私だけにしか、自分の本当の気持ちを表さないムギちゃんが 
まさかみんなの前で楽しいなんて言うなんて…ムギちゃん、なんだか変わったなぁ 

唯「えへへ♪」 

紬「あ、あなたは何笑ってるのよ?」 

唯「ん?ムギちゃん変わったなぁって思ってさ♪それがすごく嬉しいんだよ」 

紬「それは……あなたのお陰よ唯ちゃん、ありがとう…」ボソッ 

唯「ん?なんか言った?」 

紬「な、何でもないわよ!それより早く練習を始めましょう!」 

193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 01:51:18.80 ID:MUVyBfpM0
澪「それじゃ始めるぞ、律」 

律「はい姉御!…ワンツースリー!」 


初めて体験する、みんなと合わせた演奏 
それは音楽とは呼べない程、リズムもバラバラで音程も外れていたが 
それでも私には、どんな有名な音楽よりも素晴らしく思えた 

ああ、自分達で音を紡ぐのって、なんて楽しいんだろう 
これが軽音部、これが音楽、これがバンド演奏 
本当に素晴らしい、私はもっと、この感覚を味わいたい! 


ジャーン 

澪「…ふぅ、唯、初めてにしてはなかなか良かったじゃねえか」 

唯「……」 

澪「唯?」 

唯「…なんて言うか、言葉じゃ表しづらいんですけど…」 

唯「すごく、楽しかったです!私、この部に入部して良かったと思いました!」 

澪「…そうか、ありがとよ」ニコッ 

195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 02:05:07.27 ID:MUVyBfpM0

澪「しっかし久しぶりに演奏すると、やっぱり腕がなまってるなぁ」 

紬「だから言ったでしょ、練習は必要だって」 

澪「ああ、少しは唯を見習わなくちゃいけねぇな」 

律「何言ってんですか!?姉御がこんなぺーぺー見習う必要なんてないですよ!」 

唯「ぺーぺー…」 

まあ、見習われても困るのは事実だけど、あなたにぺーぺーとは言われたくない 
だって律さんのドラムは、素人の私でもわかるくらい、その…下手糞だったから 

律「…おい平沢、何だそのツラは?私のドラムが下手糞だったとでも言いたいのか、ああん?」 

ええ言いたいですよ 
でも言いません 

澪「…実際下手糞だったろ、唯は本当のことを思ったまでだ」 

律「…え?姉御?」 

250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 15:49:33.54 ID:MUVyBfpM0
律「私が下手糞だってどういうことですか!?」 

澪「言った通りの意味だよ、てめぇは下手糞だ律 
  どうせずっと練習サボってたんだろ?」 

律「た、確かにそうですけど…でもそれは姉御も同じじゃないんですかい!?」 

澪「あたいは家で時間のあいた時にちゃんと練習してたよ 
  何も喧嘩ばかりが全てじゃないからな」 

律「…喧嘩ばかりが全てじゃない?はは、姉御から喧嘩をとったら何が残るって言うんですかい?」 

澪「…なんだと?おい律、今のは聞き捨てならねぇな」 

律「はいはい…申し訳御座いませんねぇ…」 

澪「…てめぇ、誰に向かって口聞いてんのか分かってんのか?あぁ?」 

澪さんはそう言うと、律さんの胸倉を思いっきり掴んだ 
これはまずい…早く二人を止めなくちゃ 

唯「ちょ、ちょっと二人とも!喧嘩はダメだよ!」 

澪「うるせぇ唯!てめぇはすっこんでろ!」 

ひぃっ!?…なんていつもみたいに怯えてる場合じゃない! 

唯「…嫌です、すっこみません」 

澪「…なんだと?」 

252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 16:17:10.77 ID:MUVyBfpM0
唯「だって、同じ部員同士仲間みたいなものじゃないですか! 
  なのに仲間割れなんてダメです!」 

澪「唯…そうだよな、確かにそうだ」 

澪さんは律さんの胸倉をゆっくりと離した 
よかった…どうやら私の気持ちが伝わったみたい 

律「仲間…ねぇ…はははっ!そうか、仲間か…」 

唯「そうだよ、私達は仲間…」 

ドガッ! 

唯「あうっ!」 

一瞬何が起きたのか分からなかった 
私は床に尻もちをつき、鈍い痛みを放つ右頬をさする 

そうか、私は彼女に殴られたんだ 
少し遅れてそう理解できた 

律「馬鹿じゃねぇの?私はてめぇ等を仲間だなんて思ったこと一度もねえよ」 

床に尻もちをついた私を、彼女は鋭く冷めた目で見下した 

255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 16:32:02.03 ID:MUVyBfpM0
紬「唯ちゃん!大丈夫!?」 

慌てたムギちゃんが、私の顔を心配そうに覗き込んだ 
それに私は返事をする代わりに笑顔で答える 

紬「そう…よかった…」グスッ 

澪「律!!てめぇ…!!」 

澪さんは律さんの胸倉を再び掴んだ 
だがさっきとはまるで迫力が違う、澪さんは本気で怒っているんだ 

律「…離せよ」 

澪「仲間を殴るとはどういう了見だよ!あぁ!?」 

唯「あ、あの…喧嘩は…」 

ダメだ、うまく言葉が発せられない 
それは彼女達に恐怖を抱いているから?だとしたらなんて情けないんだろう 
ついさっき、彼女達のことを仲間だと言ったばかりなのに 

259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 16:58:36.88 ID:MUVyBfpM0
唯「うぅ…」ポロポロ 

自分の不甲斐なさに、思わず涙が零れた 
泣いている場合じゃないのに、喧嘩を止めなくちゃいけないのに 
しかし私がどんなにそう思っても、溢れる涙が留まることはなかった 

紬「! 唯ちゃん…」 

紬「…あなた達!いい加減にしなさい!!!」 

ムギちゃんが今までに聞いたこともない程の大きな声で、彼女達を叱り付けた 
その様子に彼女達を含め、私までもが驚き、同時に言葉を失った 

紬「まったく…あなた達は喧嘩のことしか頭にないの?」 

律「で、でもそれはこいつが最初に…!」 

紬「黙りなさい。元はと言えば、あなたがちゃんと練習していなかったのが悪いんでしょ 
  そのことを指摘されて怒るなんて、まだまだ子供ね」 

律「んだと!?」 

紬「あと唯ちゃんを見てみなさい、あなたが殴った所が腫れているでしょ 
  これに対して、何か唯ちゃんに言うことはないのかしら?」 

律「…ねぇよんなもん」 

紬「はぁ…謝ることも知らないなんて、あなたって本当、子供以下ね」 


262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 17:13:37.27 ID:MUVyBfpM0
律「…はいはい、どうせ私は子供以下ですよ」 

紬「あら、自覚してたのね」 

律「…ちっ、勝手に言ってろ」 

澪「おい律、何処に行きやがる?」 

律「帰るんだよ…こんな部もう2度とこねぇから、それじゃ」 

ガチャッ   

バタン 

澪「…たくあの馬鹿、何考えてんだよ… 
  …しょうがない、今日はあたい等も解散しよう」 

紬「そうね、そうしましょう」 

澪「じゃあ悪いがあたいは先に帰るわ…じゃあの」 



266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 17:22:39.13 ID:MUVyBfpM0
紬「…大丈夫唯ちゃん、立てる?頬は痛む?」 

唯「ムギちゃん…ありがとう、代わりに喧嘩を止めてくれて」 

紬「どういたしまして。でも、喧嘩を止めることは出来たけど…」 

唯「うん…」 

確かに喧嘩を止めることは出来た 
でも、結果彼女達の間にできた溝を埋めることは出来なかった 
律さんは本当にもう2度と部室に来ないんだろうか? 

そんなのは嫌だ、だって折角バンド演奏の楽しさに気づけたというのに 

唯「…どうにか仲直りさせたいね」 

紬「…そうね、でも今日は大人しく帰りましょう」 

唯「うん…」 


268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 17:37:53.12 ID:MUVyBfpM0
―帰り道 

私達は一言も話さずに、帰りの道を歩いていた 
いつもなら色々と話すこともあるのだが、今日ばかりは話す気になれなかった 

そして無言のまま、お互いの家へと続く分かれ道に差し掛かった時 
後方から私を呼ぶ声が聞こえた 

「唯ー!」 

唯「…あ、和ちゃん」 

和「今帰り?…ってどうしたのその頬!?」 

唯「あ…ちょっとね、えへへ」 

和「ちょっとね、じゃないでしょ!それって殴られた痕でしょ? 
  誰にやられたの!?」 

唯「だ、大丈夫だって!ちょっとぶつけただけだよ!」 

和「そんな訳ないでしょ!?正直に言いなさい!!」 

紬「…ねぇ、この騒がしい人は誰?」 

和「! まさかあなたが唯を…!許せない…!」 

紬「…は?」 

337 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 01:46:04.28 ID:cKzqL1FN0
和「でも言っちゃ悪いけど、軽音部って野蛮な所なのね 
  そんな部、唯には向かないわよ。早く辞めた方がいいんじゃない?」 

紬「! ダメよ!彼女は軽音部の大事なギタリストなの! 
  辞めるなんて許されないわ!」 

唯「大丈夫だよムギちゃん、私は辞めるつもりなんてない」 

紬「唯ちゃん…」 

…まぁ確かに野蛮で、前まで辞めたいとは思っていたのは事実だけど… 
それでも今は辞めたいなんて少しも思わない、むしろ軽音部が楽しいとまで思えてきている 

和「…ふーん、唯にも打ち込めるものができたのね 
  まぁ、それはいいことだわ」 

和「…でも、唯がまた傷つくようなことがあれば、私は許さないから 
  それだけは紬さんも覚えておいてね」 


341 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 02:02:59.02 ID:cKzqL1FN0
和「それじゃ私達はここで、さよなら紬さん」 

紬「あ…あの…!」 

和「? まだ何か?」 

紬「そ、それは…その…」モジモジ 

? ムギちゃんどうしたんだろう?何か言いたそうだな 
もしかして悩みごとかな?ならここは友達の私が一肌脱がなくちゃ! 

唯「…ムギちゃん、もしよかったら今から家に来ない?」 

和「!」 

紬「え…?いいの?」 

唯「うん!友達だもん、大歓迎だよ!」 

紬「…ふ、ふん!あなたがどうしてもと言うなら、お邪魔してあげてもいいけど!」 

唯「なら決まりだね、早速私の家に行こう!」 

ふふ♪ムギちゃんも相変らず素直じゃないなぁ 
和ちゃんがいなかったらきっと、喜んでついてくるんだろうな 
その姿が目に浮かぶよ 

和「ま、待ちなさい!…私もお邪魔させてもらうわ」 

唯紬「…え?」 

343 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 02:16:43.64 ID:cKzqL1FN0
―そして平沢家 

唯「ただいまー…」 

憂「お帰りお姉ちゃん。あ、和さんお久しぶりです」 

和「久しぶりね憂ちゃん、相変らず元気そうね」 

憂「はい♪…あれ?そちらの方は?」 

紬「初めまして、琴吹紬よ。あなたが唯ちゃんの妹? 
  姉妹揃って貧乏くさいのね。流石貧民だわ」 

憂「…は?」 

唯「!」 

なななな…なんてことを…! 
そうだ、彼女は知らないんだ、憂の恐ろしさを… 
憂を咎めるだけならまだしも、彼女は私をも咎めた… 
憂はそれを許すだろうか…? 

憂「…へぇ、お姉ちゃんが貧民ですか 
  ははは、そうですか…お姉ちゃんが貧民ねぇ…」シャキーン 

で、でたーッ!憂の愛包丁、唯我独尊ッッ!! 
これを出したってことは、憂は彼女を許さなかったってことだぁ~ッ! 


348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 02:28:25.94 ID:cKzqL1FN0
憂「紬さん…でしたっけ?ふふふ…地獄で後悔して下さい 
  私のお姉ちゃんを馬鹿にしたことをねぇ!」 

唯「わ、わー!待って憂!」 

憂「どいてお姉ちゃん、そいつ殺せない」 

殺すって… 
でも憂なら本気でやりかねない 

唯「ダメだよ!前にお姉ちゃんと約束したでしょ!?」 

憂「そんなの関係ないよ…私はこいつを『殺す』…」 

紬「あわわ……」ガクブル 

殺すを強調しないで下さい 
ムギちゃんが怖がってます 

唯「ダメ!彼女は私の大切な友達なの!…もし彼女を殺しでもしたら 
  …私は憂を絶対許さない、嫌いになってやる」 

憂「!!!???」 

351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 02:39:42.66 ID:cKzqL1FN0
憂「そ…そんな…」 

サクッ 

憂の手放した包丁が、床にサックリと突き刺さる 
…どんだけ切れ味いいんですか、その包丁 

憂「お、お願いお姉ちゃん…!私を嫌いにならないでぇ!」 

唯「なら馬鹿なことは考えないで、私の友達を殺すなんて絶対に許さないから」 

憂「…わかりました…お姉様の仰せの通りにします…」グスッ 

…お姉様?…まぁいいや 
これで憂も少しは懲りたでしょ 

唯「ごめんねムギちゃん、怖がらせて…」 

紬「あうう…」グスッ 

…これはいけない、涙目になってる 
どうやら相当怖がらせてしまったみたいだ 

とりあえず彼女を部屋まで連れて行こう 

355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 02:53:27.61 ID:cKzqL1FN0
―そして唯の部屋 

紬「まったく!あなたの妹は一体何なの!? 
  流石貧民ね!本当、失礼しちゃうわ!」 

唯「あはは…ごめんごめん…」 

あれから数十分後、ムギちゃんはいつもの憎まれ口を叩けるまでに、ようやく落ち着いたみたいだ 
妹があれだけ怖い思いをさせたんだ、私は黙ってそれを聞くしかない 

紬「まったく…!」プンプン 

唯「…そう言えばムギちゃん、何か私に話があるんじゃない?」 

紬「え…?そ、そんなものないわよ!」 

356 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 02:54:51.68 ID:cKzqL1FN0
唯「いいから、この部屋には私達しかいないんだからさ 
  何か思うことがあるなら話しちゃいなよ」 

その為に、私は彼女を自宅に招いたんだから 
二人っきりで話しやすいように、と 

紬「唯ちゃん……実はね…」 

唯「うんうん」 

和「実は何かしら?」 

紬「……え?」 

唯「…うわあああああ!?」 

和「な、何よ…?どうしてそんなに驚く訳?」 

359 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 03:04:38.20 ID:cKzqL1FN0

唯「の、和ちゃん…」 

いたんだ… 
そう口から出そうになったが、そこはぐっと堪えた 

和「? 私が何?」 

唯「な、なんでもないよ!あはは…」 

…しまった、和ちゃんがいたらムギちゃんの悩みごとが聞けないじゃないか 
私はこれほど幼馴染の彼女を邪魔に思ったことはない 

和「? まぁいいわ、それで話って何かしら?」 

紬「そ、それは…何でもないわ」プイ 

和「嘘おっしゃい、話があるから唯の家に来たんでしょ 
  なのにどうして友達の唯にも話せないの?」 

それはあなたがいるからですよ和ちゃん 
お願いだから空気読んでよ 

和「…あ、もしかして私がいるから話せないのかしら」 

その通りです 
ていうか、気がついてるなら帰ってよ和ちゃん 


362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 03:19:14.54 ID:cKzqL1FN0
唯「あ、あの和ちゃん…今日は悪いけど帰ってくれないかな? 
  どうやらムギちゃんは私と二人っきりで話がしたいみたいだしさ」 

和「嫌よ、だって唯の友達は私の友達でしょ? 
  なら私にも聞く義務があるわ」 

…え?何ですかその理屈 
何だか憂といい、和ちゃんといい、いろんな意味で面倒臭いなぁ… 

紬「…友達?」 

和「そう、あなたと私は友達よ紬さん」 

紬「…和さんはこんな私でも友達になってくれるの?」 

和「当たり前じゃない、なんたって唯の友達なんだから 
  だから私とあなたも友達よ」 

紬「友達……あの!私、琴吹紬っていいます! 
  みんなにはムギって呼ばれています!」 

和「そう、よろしくねムギちゃん」 

紬「…! はい!」 

…あれ?いつの間にか友達になってるよこの二人… 
まぁ、ムギちゃんに新しい友達が出来たのはいいことだけどさ… 

…あぁ、ムギちゃんが凄い笑顔で私にピースしてるよ 


366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 03:33:52.54 ID:cKzqL1FN0
和「それじゃ話を本題に戻しましょうか 
  ムギちゃんの話って言うのは一体何かしら?」 

紬「あ、あの…軽音部の二人を仲直りさせるのに、いい考えがあって…」 

唯「いい考え?」 

紬「うん…あの、もう少しで夏休みでしょ? 
  それで、合宿も兼ねてみんなで私の別荘に行かないかと思って…」 

唯和「…別荘?」 

紬「そう…そこで部員同士の団結力を高めるの… 
  そしてみんな仲良し、なんて思ったり…」 

紬「…ダメかな?」 

唯「……」 

…驚いた、まさかムギちゃんがみんなの為を思っていたなんて… 
本当にムギちゃんは変わったんだな…二か月前の彼女が、まるで嘘のようだ 

それに、これはムギちゃんの言う通り、部の団結力を高めるいいチャンスかもしれない 
ならこの機会を生かさない訳がない 

唯「…いいね!私は賛成だよ!」 

紬「ほ、本当!?…良かった…」 


368 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 03:42:47.48 ID:cKzqL1FN0
唯「それじゃ、早速明日にでもみんなに話してみよう!」 

紬「うん!…でも、みんな賛成してくれるかな?」 

唯「賛成してくれるよ、私が保証する」 

少なくとも澪さんは、そういう気持ちをちゃんと汲み取ってくれる人だ 
…まぁ、律さんはあれだけど、きっと来てくれる筈 

紬「…そうだよね、私達がみんなを信じなくちゃ!」 

彼女は本当に変わった 
今の彼女を澪さん達にも見せてあげたいなぁ 


和「…ふーん…軽音部の合宿ねぇ…」 


370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 03:55:50.57 ID:cKzqL1FN0
―そして次の日 部室 

澪「へぇ、合宿か!成る程、我が部の士気を高める為にもいいかもしれないな」 

唯「でしょ?ムギちゃんが提案したんだよ!」 

紬「ゆ、唯ちゃん…!」 

澪「ほぅ、あのムギがか!それに唯、お前いつの間にか名前で呼ばれるようになったんだな 
  成る程、ムギも大分変わったってことかい」 

紬「なっ!?私が変わったですって!?口を慎みなさいこの愚民!」 

澪「はははっ!そう照れるなって!」 

紬「て、照れてなんか…!///」 

澪「んん?その割には顔があけぇぞ?」 

紬「う、うるさいうるさい!///」 

…そう、これだよこれ。私が求めていた高校生活は。 
みんなが仲良しの、まさにこういうものだったんだ 
後はこの光景に、律さんが加わってくれれば完璧なんだけど… 

…そう言えば彼女は、本当にもう二度と部室に来ないのだろうか? 

373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 04:08:46.53 ID:cKzqL1FN0
―そして数時間後 

澪「……」 

紬「……」 

唯「…律さん、来ないね…」 

澪「…あの馬鹿、今日も必ず顔見せろって忠告しておいたんだが…」 

紬「…彼女、本当にもう二度と来ないのかしら…?」 

そんな…このままじゃムギちゃんの折角の計画が台無しになってしまうじゃないか 

…そんなこと、私がさせない! 

375 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 04:10:26.64 ID:cKzqL1FN0
澪「お、おい唯!何処に行くんだ!」 

唯「ちょっと律さんを探してくる!」 

紬「…探しても無駄よ、彼女はきっと既に帰ってしまっているわ」 

唯「そんなの探してみなくちゃわかんないじゃん! 
  このまま、ただ黙って待っているよりマシだよ!」 

折角、もう少しで手に入りそうな私の望んだ日常 
私はそれをただ黙って見過ごすつもりはない 
だから私は迎えに行かなくちゃ……彼女を 

がちゃっ 

澪「! 律…!」 

律「…よう」 

376 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 04:21:17.24 ID:cKzqL1FN0
唯「律さん…!良かった、本当にもう二度と部室に来ないのかと…」 

律「…期待させた様で悪いけど、忘れ物取りに来ただけだから」 

唯「え…?」 

律さんはそう言うと、自分がいつも座っていた机の中身をごそごそと漁った 
忘れ物を取りに来ただけって…それじゃ本当に軽音部を辞めるつもりなの? 

律「…お、あったあった。…それじゃ邪魔したな、さようなら」 

そう言い放った彼女は誰とも目を合わせず、黙ってドアの方へと歩いていく 
ここで律さんを止めなくちゃ…じゃないと、彼女にはもう二度と会えない気がする 

唯「まっ…!」 

澪「待ちやがれぇ!!!」 

378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/13(火) 04:34:58.31 ID:cKzqL1FN0
律「…何?」 

澪「…あのさ律、あたい等、夏休みに合宿しようと思ってるんだ」 

律「…それで?」 

澪「それでさ…お前もちゃんと来いよ、待ってるからさ」 

律「……」 

がちゃっ  

ばたん 

唯「…行っちゃった」 

紬「彼女は来るのかしら…?」 

澪「…あいつは来るよ…必ず」 

そう言うと、澪さんは悲しそうに顔を伏せた 
いつも強気な澪さんのこんな顔、初めて見た… 
もし律さんが来なかったら、その時はどうなってしまうのかな? 

…いや、馬鹿なことを考えるのは止めよう 
今は私も律さんを信じなくちゃ 

479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 01:06:10.60 ID:vnqLxLFB0
―そして一週間後 

私達はムギちゃんの別荘に行く為、駅で待ち合わせをしました 

ムギちゃんの話しによると、どうやら別荘は海が見える素敵な所らしいです 
今から楽しみだなぁ、ワクワクしちゃうよ 

…でも、 

唯「…りっちゃん来ないねぇ…」 

澪「……」 

紬「彼女はやっぱり、本当に…」 

澪「……」 

和「そろそろ時間でしょ?なら諦めた方がいいんじゃないかしら?」 

澪「…いいや、律は必ず来るさ。だがその前に…」 

澪「お前は誰だよ!?部員じゃねえだろうが!」 

和「私?私は真鍋和よ」 


485 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 01:18:14.90 ID:vnqLxLFB0
澪「…おい唯、これは一体どういうことだ? 
  何故部外者がここにいる?」 

唯「…ごめんなさい、どうしても和ちゃんが行きたいって、それで…」 

澪「おいおい…これは軽音部の絆を深める為の合宿なんだろ?」 

和「いいじゃない、私とも絆を深めましょうよ」 

紬「そうよ、彼女はとてもいい人よ」 

澪「知るかよ…まぁ今更追い返す訳にもいかねぇからな…」 

和「そういうことよ」 

澪「……」 

…うぜぇ 
澪さんは絶対そう思っているだろう 

和ちゃん…お願いだから、あまり余計なことはしないでね 


489 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 01:32:13.51 ID:vnqLxLFB0


―そして数分後 

紬「…そろそろ時間ね、残念だけど…」 

唯「…律さんは来なかったね」 

澪「……あの馬鹿…」 

澪さんは悔しそうな顔をして、地面を睨んだ 
当然だ、彼女は信じていた律さんに裏切られたんだから 

そんな彼女の様子を見た私達は、同じ様に顔を伏せた 

今や私達の心は、完全に沈んでしまっていた 

―ある一人を除いて 

和「何よあなた達、そんな辛気臭い顔しちゃってさ 
  折角の旅行なんだもの、もっと明るく行きましょうよ」 

お願いです、誰か彼女を黙らせて下さい… 

「そうだぜ、もっと明るく行こうや」 

唯澪紬「…え?」 

493 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 01:45:33.19 ID:vnqLxLFB0
聞き覚えのある声に、私達は一斉に顔を上げた 

そこにいたのは、私達が待ちに待った… 

澪「律!」 
唯「律さん!」 
紬「りっちゃん!」 

律「へへ…悪いな、待たせた」 

澪「この馬鹿野郎!本当に来ないかと思ったじゃねえか!」 

唯「そうだよ!みんな待ってたんだから!」 

紬「まったく、人に迷惑をかけることがどんなに最低なことか自覚しているのかしら?」 

律「…ああ、本当に悪かったよ唯、紬 
  …それと姉御、この度は本当に申し訳ございやせんでした!」 

澪「いいんだよ分かれば。…それとさ律、姉御って言うのはもう…」 

和「あなた達、そんなにのんびり話してる暇あるの?」 

497 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 02:06:20.30 ID:vnqLxLFB0
和ちゃんに言われて、私達は慌てて電車に乗り込んだ 
すると暑い外とは対照的に、中はひんやりとした空気で満たされていた 

唯「うわー、涼しいねぇ」 

紬「外とは大違いね」 

私達はなんてことのない会話をしながら、適当に座る席を探しそこに腰をかけた。 

唯「ふぅ、一息一息…」 

紬「ふふ、唯ちゃんはまるでお年寄りみたいね♪」 

律「なぁ紬、そういえば今から行く別荘ってどんなところなんだ?」 

唯「あれ?律さん知らないの?」 

律「おう、場所までは聞いてないからな」 

紬「言ってなかったかしら?…そうね」 

498 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 02:19:40.53 ID:vnqLxLFB0
紬「こんな感じかしら?」 

唯律「で、でけー!」 

澪「こりゃたまげたな…」 

和「これは…思っていた以上だわ」 

なんだかんだで別荘についた私達は、そのあまりの大きさに驚きを隠さずにいられませんでした 
その大きさと言ったら、私の家が6つ分くらいです。6つですよ6つ、約500坪?まぁ大体そんな感じです 

紬「ふふん、この別荘は全世界に約600件あるうちの、その中でも一番小さい別荘にすぎないわ」 

唯澪律和「600件!?」 

あぁ…流石お嬢様… 
やっぱり私達とは住む世界が違うんだね… 


501 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 02:34:45.77 ID:vnqLxLFB0
紬「まあ立ち話もなんだし、早速中に入りましょう」 

そういうとムギちゃんは玄関?っていうか門?を開け私達を家の中へと招き入れた 

そして別荘の中に入った私達は更に驚愕することになる 

唯「な、何これ…?」 

まず真っ先に目に飛び込んできたもの、それは動物の剥製だった 
鹿とかならテレビでもよく見るが、ここに並んでいるのは知らない動物ばかりのだ 
それも今にも動き出しそうな… 

紬「ああ、これはお父様の趣味なの」 

唯「へ、へぇ~そうなんだ…」 

紬「それより早く部屋に移動しましょう、斎藤!」 

斎藤「お呼びでしょうかお嬢様」 

唯「うわぁ!?誰!?」 

502 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 02:44:53.39 ID:vnqLxLFB0
紬「彼は斎藤、我が琴吹家に仕える執事よ」 

へぇ、ならメェ~って鳴くんだ 
おかしいね、どう見たって人間なのにね 

和「羊じゃないわ、執事よ」 

唯「ああそっか…ってなんで私の考えてることが分かったの?」 

和「何年あんたの幼馴染やってると思ってるのよ」 

幼馴染を何年もやってるくらいで、相手の考えって分かるものなのかな? 

! もしかして和ちゃんって…! 

和「超能力者じゃないわよ」 

唯「あはは、だよねぇ…って、ええっ!?」 

紬「そこ、何馬鹿やってるのよ。斎藤、彼女達を部屋まで案内して 
  荷物を置いたらここに集合よ」 


505 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 03:04:48.64 ID:vnqLxLFB0
斎藤「どうぞこの部屋をお使いください」 

唯「あ、ありがとうございます…」 

うわぁ…思っていた通り部屋も広いな… 
どれだけ広いかっていうと、私の部屋の6(ry 

斎藤「…平沢様」 

唯「は、はい!何でしょうか?」 

斉藤「…お嬢様とお友達になって頂いて、どうもありがとうございます」 

唯「そ、そんな滅相もない!」 

斉藤「高校に入ってあなたと出会ってから、お嬢様は本当にお変りになられました 
    あんなに生き生きしたお嬢様の顔を見れて、私は非常に嬉しく思います」 

唯「…そうですね、それは私も同じ気持ちです」 

斉藤「そうですか、出来ればこれからもお嬢様と仲良くして頂けたらと思います」 

唯「はい!勿論そのつもりです!」 

斉藤「…本当に、ありがとうございます。では私はこれで…失礼いたします」 

508 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 03:26:00.39 ID:vnqLxLFB0
唯「…よし、荷物も置いたし玄関に急ごう」 

…それにしても、ありがとうか…いい言葉だな、心が暖かくなる 
私も誰かにこの思いを伝えたい、まだ心が暖かいうちに 

唯「ありがとう…ありがとう♪」 

実は伝える相手はもう決まっていた 
この素晴らしい別荘に招待してくれた彼女、ムギちゃんにこの思いを伝えよう 

ムギちゃん、ありがとう…と、そう伝えるんだ 

唯「ふんふふ~ん♪」 

私は上機嫌で部屋を飛び出した 
それはこれから見ることのできる、彼女の最高の笑顔が頭に浮かぶから 

私の親友の、最高の笑顔が 

509 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 03:29:43.02 ID:vnqLxLFB0
唯「ムーギちゃん♪」 

紬「あら唯ちゃん、随分早かったのね 
  まだ誰も来てないわよ」 

唯「そうなんだ、えへへ♪」 

紬「? どうしたの?何かいいことでもあったの?」 

唯「うん♪あのねムギちゃん…」 



唯「ありがとう♪」 



511 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/14(水) 03:36:10.30 ID:vnqLxLFB0
                          _,...---、_________          ______ 
                           /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ    /           \ 
                          /,   i   .:..:.:.::.:.:.:.:.:.:ヽ\.   |   第二部 完  | 
                        /.:.::i.:.ニ/!.:.:.:.:.:.::ト、.:.:.:.:.:.:.:.::.ヽ.:ヽ ヽ、          ノ 
                          /.:.:.:::i.:ニ/ V.:.:.:.:.:| ヽ.:.:.:.:.:.::.:ハ.:::.ト、   ̄ ̄ノ´ ̄ ̄ ̄ 
                       /.:.:.:.:.:.:V   V\.:::!⌒ヽ.:.:.:..:.:.:i.}.:. :l `ー' 
                      ,'.:.:.:.:.:.:.:/  __ \!\!__  ヽ.:.::::i:リ.:.:: | 
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