7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:03:28.06 ID:Llft9dLRO
大学を卒業した私は、ちゃんとした仕事も見つからず、 
バイトをしながらだらだらと毎日を過ごしていた 

和「唯、またバイト首になったって本当?」 

唯「うん……」 

和「どうして? 凄くうまくいっていたのに」 

唯「私、またドジしちゃって……」 

和「そう、まあ仕方ないね……」 

唯「ごめんね和ちゃん」 


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:06:16.81 ID:Llft9dLRO
和「また新しいバイト見つけておくから」 

唯「ごめんね、いつも迷惑ばっかりかけて……」 

和「いいよ、全然。気にしないで」 

和ちゃんはこんな私でも面倒を見てくれる 
今もお金を借りっぱなしだ 
早く返さないといけない 

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:12:36.62 ID:Llft9dLRO
和「それはそうと、最近軽音部の皆とは会った?」 

唯「ううん、皆忙しいみたいだし。最近はメールもしてないなぁ……」 

和「そう……。あ、そういえば澪さんの書いた小説、今度映画化するらしいよ」 
唯「え、ホント!?」 


軽音部の皆とは、今ではほとんど連絡をとっていない 
澪ちゃんは小説家としてデビューして、大ブレイク中だ 
あずにゃんはまだバンド活動をしているらしい 
ムギちゃんはどこかの社長になったという噂を聞いた 
律ちゃんは……分かんない 
でも皆頑張ってるのに、私は何をしているんだろう…… 

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:14:16.46 ID:Llft9dLRO
和「今朝ニュースでやってたよ 」 

唯「ウソぉ~、全然知らなかった……」 

和「澪さん恥ずかしがり屋だから、きっと黙っていたのね」 

唯「そっかぁ……。すごいなぁ、澪ちゃんは。どんどん夢に向かって進んでいって……」 

和「…………」 

唯「私なんか、バイトさえ上手くいってないし……」 
和「そんなことないよ、唯だって……!」 

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:15:36.72 ID:Llft9dLRO
唯「ありがとう、和ちゃん。私、そろそろ行くね」 

和「うん……あ、唯!」 

唯「なあに?」 

和「次はきっと上手くいくよ。だから、気にしちゃダメ」 

唯「和ちゃん……。私、次こそはもっと頑張るね……!」 

和「頑張れ。ファイト、唯!」 

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:17:54.99 ID:Llft9dLRO
唯「(とは言ったものの、早いとこバイト見つけないとヤバいなぁ……)」 

唯「(今月もあと3000円で過ごさなきゃ駄目だし……)」 

唯「(和ちゃんにばっかり、頼ってはいられない!)」 

テクテク……ピタッ 

唯「ん?」 

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:20:10.46 ID:Llft9dLRO
唯「この本は……」 

映画化決定!! 
今、最も話題の恋愛小説 
「恋の方程式」著:秋山澪 

唯「ホントだ、映画化するんだぁ」 

唯「活字は苦手だから、読んでなかったけど……」 

ペラペラ 

唯「(結構面白そうかも……)」 

ぐぅ~ 
唯「…………」 

―――――――――――――――――― 

定員「ありがとうございました~」 

唯「結局買ってしまった……トホホ」 

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:23:36.89 ID:Llft9dLRO
ガチャ。 

唯「ただいまぁ、あずにゃん、帰ったよ~」 

唯「あずにゃん?」 

キョロキョロ 

猫「ぅにゃあ~」 

唯「おぉう、いたいた。よしよし、よしよし」 

猫「ぅにゃぁ~」 
カリカリ 

唯「え、おやつ? はいはい、ちょっと待ってね」 

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:31:20.04 ID:Llft9dLRO
カチャカチャ 

唯「ほい、あずにゃん」 

猫「ぅんにゃあ~」 

ピッ 
「――それでは、次のニュースです。 
本日未明、都内の楽器店で何者かにより大量の楽器が盗まれるという事件が発生しました。 
警察では、先日に引き続き、同一犯の犯行とみて調査を進めている模様です 
」 

唯「うわ、楽器ドロボーだって……大変だねぇ、あずにゃん」 

猫「うんにゃあ」 

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:34:25.54 ID:Llft9dLRO
唯「はぁ~今日も疲れたぁ~」 

ゴロゴロ 

唯「あーだる……」 

ガサゴソ 

唯「うわ、改めて見ると結構分厚いなぁ、この本……」 

唯「とりあえず読んでみよう」 

ペラペラ 

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:46:26.52 ID:Llft9dLRO
でも続く 

~2時間後~ 

女「ごめんなさい、男君。私、もう行くから」 

女「さようなら……」 

男「女っ!!」 

男「……あのときの約束は嘘だったのか!? ずっと二人でいようって……」 

女「……男君」 

唯(ドキドキ) 

ぐぅ~ 

唯「はっ! もうこんな時間だ!! お腹減ったよぅ……」 

唯(続き気になるけど、先にご飯を食べよう) 

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:49:46.58 ID:Llft9dLRO
唯「ええっと、冷蔵庫には……」 

ガチャ 

唯「ロクなものがないよぉ。今日もカップラーメンか……」 

唯(なんか、憂が留学してから、ほぼ毎日カップラーメン食べてる気が……) 

唯「憂のご飯が食べたい……」 

テクテク……ツルッ 
バシャァ! 
唯「あっつぅぅーーーーー!!!」 


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:53:05.75 ID:Llft9dLRO
ジャー 

唯「うう、貴重な食料が……」 

唯「でも良かったぁ、火傷しなくて」 

唯「夕御飯、買いに行かなきゃ……」 

唯(そうだ、ついでに憂への手紙も出してこよう) 

ガチャ 

唯「うわぁ、お外真っ暗」 
―――――――――――――――――― 

店員「ーっとぉござーしたぁ」 
唯(でもやっぱり買うのはカップ麺なのね……) 

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 00:59:48.01 ID:Llft9dLRO
ガヤガヤ 

唯「ん?」 

唯(なんだか騒がしいなぁ) 

「おい、何かあっちでライヴやってるらしいぜ」 

「マジ? てか有名なバンド?」 

「分からん。とりあえず行ってみよう」 

唯(路上ライヴ?) 

唯(なんだろう。私も付いていってみようかな) 


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 01:12:34.02 ID:Llft9dLRO
唯「うわぁ、すごい人……」 

「――え~皆さん、本日は夜遅くにお騒がせして、本当にすみませんでした」 

唯(あれ、この声どこかで……) 

「――次が最後の曲です。」 

「――聞いて下さい『恋の方程式』」 

唯(あそこで喋ってるのって……) 

唯(あずにゃん!?) 

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 01:24:01.63 ID:Llft9dLRO
ワアアアアアァァァァァァァ!!!!! 
パチパチパチパチ 

梓「ありがとうございましたぁーーーー!!」 

唯「あずにゃんだ……あずにゃんだ……」 

唯「すいません、ちょっとどいて……!」 

唯(もっと近くで……) 

唯(ああもう、邪魔だってば!) 

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 01:25:30.90 ID:Llft9dLRO
唯「ステージ裏にはどうやって回るんだろう……あ」 
関係者以外立ち入り禁止 

唯「ここ、入っていいのかな……」 

唯「私、知り合いだし入ってもいいよね……?」 

ガチャ……キィィ 

唯「すいません、失礼しまーす」 

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 01:29:38.60 ID:Llft9dLRO
唯「真っ暗……誰もいない……?」 

唯「……すみませーん(ボソ」 

ドンッ! 

唯「キャアッ」 
男「イツツ……」 

唯「あ、ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか……?」 
男「いえ、こちらこそ……ってあれ、唯さん!?」 

唯「えっ……聡君?」 

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 01:36:56.39 ID:Llft9dLRO
聡「何やってんすか、こんな夜遅くに?危ないですよ」 

唯「聡君こそ……こんな所で何やってるの?」 

聡「え、いや俺は別に……」 

唯「ギターなんか背負って」 

聡「いや、その……そうだ、ちょっと梓さんに会いにいこうと思って!」 

唯「ここにはいないみたいだよ?」 

聡「え、あ、そうみたいですね!」 

唯「怪しい……」 


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 01:43:45.53 ID:Llft9dLRO
唯「というか、聡君って、あずにゃんと話したことあるの?」 

聡「えっと、何度か会ったことはあります。姉ちゃん経由で」 

唯「ふーん……それで、そのギターは?」 

聡「あ、これは……」 

ガヤガヤ 

唯「あ、あれ、あずにゃん達だ。戻ってきたのかな?」 

聡「ヤベッ」ダッ 

唯「あ、ちょ、ちょっと待って!」 

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 01:49:57.22 ID:Llft9dLRO
唯「待ってってば!」ダッ 
聡「付いてこないで下さいよ!!」 

唯「なんで付いてっちゃ駄目なの!?」 

聡「……ハァハァ。しつこいですね、唯さん」 

唯「ハァハァ。だ、だって、聡君なんか変なんだもん!もしかして……」 

唯「……もしかして、そのギターって盗んできたんじゃないの?」 

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 01:55:51.35 ID:Llft9dLRO
聡「え、いやその……」 

唯「ほら、やっぱり!」 

聡「ち、違いますよ!! 
ハァハァ、……ここまで来たら大丈夫かな……」 

唯「聡君がそんなに悪い子だったなんて……。 
大人しくしなさい、お姉ちゃんに引き渡してあげるから」 

聡「ち、違うんです!……実は、俺がギター盗まれたんすよ!!」 

唯「……はい?」 

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:01:55.09 ID:Llft9dLRO
聡「ほら、最近楽器が盗まれる事件が多発してるじゃないですか?」 

唯「そう、あれも聡君が犯人だったのね……」 

聡「違いますってば! 俺も盗まれた被害者なんですよ!!」 

唯「盗まれた? 誰に?」 

聡「決まってます。梓さんのグループですよ!」 

唯「あずにゃんが……?」 

聡「梓さんのグループは、裏では有名な窃盗犯なんです。 
あちこちから楽器を盗んでは、安い値で売りさばいて……」 

唯「うっそだぁ」 

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:09:49.99 ID:Llft9dLRO
聡「ホントですって! 
俺も今日こっそり取り返しに来たんですよ、会場のスタッフに変装して!」 

唯「それでそんな変なジャンパー着てたの? 
……とにかく、信じられないなぁ」 

聡「信じて下さいよぉ!」 

唯「ところで、このまま行くと私の家だよ?」 

聡「あ、そ、そうなんですか。 ……ていうか近いですね」 

唯「安アパートだけどね。良かったら上がってく?」 

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:13:53.42 ID:Llft9dLRO
聡「え、いいんですか?」 
唯「どうぞ、まあ汚いけど。ただいまぁ、あずにゃん」 

聡「お、お邪魔しま~す……っておわっ!」 

スリスリ 

猫「ぅにゃぁ~」 

唯「こら、あずにゃん。驚かしたら駄目でしょ」 

聡「……この猫、あずにゃんって名前ですか?」 

唯「ううん、違うよ」 

唯「あずさ2号っていうの」 
聡「…………」 

聡(勝手に人の名前を付けるのはどうなんだ……) 

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:15:39.19 ID:Llft9dLRO
唯「その辺適当に座って」 

聡「あ、どうも」 

猫「うにゃぁ~」 
スリスリ 

唯「うふふ、聡君あずにゃんに好かれてるみたいだね」 

聡「ハ、ハハッ……」 

唯「ちょっと待ってね、お腹空いたでしょう?」 

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:18:15.37 ID:Llft9dLRO
唯「はい、どうぞ」 

聡「あ、どうも(って、カップ麺かよ……)」 

唯「たーんと召し上がれ♪」 

聡「いただきます」 

ズルズル 

唯「そういえば、聡君って、住んでるのこの辺?」 

聡「もぐもぐ」 

聡「いえ、実は……」 

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:20:56.01 ID:Llft9dLRO
唯「えぇ、アパート追い出されたぁ!?」 

聡「はい、それで最近はネカフェで寝泊まりしてます」 

唯「そ、そうなんだ……大変だねぇ。そういえば、りっちゃんは?」 

聡「姉ちゃんとはあまり連絡取ってないんで」 

聡「あ、ごちそうさまです」 

唯「いえいえ」 


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:28:06.23 ID:Llft9dLRO
唯「ところで、このギターなんだけど……」 

聡「俺のです。うちに帰ったら写真もあるんで、それが証拠ですよ」 

唯「え、じゃあ、ほんとに聡君のなの!?」 

聡「ホントです。梓さんたちが窃盗グループってこともホントです」 

唯「うそ……でもそんなの信じられないよぉ」 

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:33:27.77 ID:Llft9dLRO
聡「最近梓さんと会ったことは?」 

唯「ううん、もうずっと。最後に会ったのは5年前くらいかなぁ……」 

聡「5年もあれば人は変わりますよ。 
唯さんも気を付けた方がいいっす、例えそれが親しい友人でもね」 

唯「あずにゃんはそんな悪い事しないよ……」 

聡「さあ、どうだか。 
……じゃ、俺はそろそろ失礼しますね」 


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:38:45.98 ID:Llft9dLRO
唯「ってあれ、聡君、帰るとこあるの?」 

聡「いえ、とりあえずネカフェにでも行こうかと」 

唯「なんだ、一晩くらいなら泊めてあげてもいいよ?」 

聡「え!? い、いや、悪いですって!」 

唯「別に遠慮しなくてもいいよ? 優が昔使ってた部屋が空いてるし」 

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:40:49.95 ID:Llft9dLRO
唯「ってあれ、聡君、帰るとこあるの?」 

聡「いえ、とりあえずネカフェにでも行こうかと」 

唯「なんだ、一晩くらいなら泊めてあげてもいいよ?」 

聡「え!? い、いや、悪いですって!」 

唯「別に遠慮しなくてもいいよ? 
憂が昔使ってた部屋も空いてるし」 

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:49:02.53 ID:Llft9dLRO
唯「それに、万が一何かあったらりっちゃん呼ぶから大丈夫だよ」 

聡「そ、そうですか? それなら、お言葉に甘えて……」 

唯「よし、じゃあそうと決まれば、憂の部屋に案内するね!」 

―――――――――――――――――――――――― 
聡「うわぁ、綺麗な部屋ですね……」 

唯「ここだけはよく掃除してるの。他は汚いけどね」 
唯「あ、そこの押し入れに毛布入ってるから。 
シャワー浴びるならお先にどうぞ、私リビングにいら」 

聡「は、はい。すいません」 

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 02:56:56.66 ID:Llft9dLRO
聡(先にシャワー使っていいのか……? 
ええっと、毛布は……) 

キョロキョロ 

聡「あっ」 

聡(あれは、唯さんと憂さんの写真だ) 

聡(二人とも相当仲良かったらしいから、唯さんも一人で寂しのかな……) 

聡(それにしても、憂さんはどうして唯さんを独りぼっちにして留学する事に決めたんだ……?) 

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:02:23.23 ID:Llft9dLRO
唯(聡君、もうお風呂に入ったかなぁ) 

唯「あれ」 

唯(このギター、聡君が部屋に持っていき忘れたのか) 

唯「懐かしいなあ……」 

いつからだろう、私がギー太に触れなくなったのは。 

唯「高校卒業してしばらくは続けたよね……」 

いつのまにか、押し入れに入れっぱなしにして。 

唯「指の先、ぷにぷにだよぉ……」 

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:11:40.58 ID:Llft9dLRO
いつのまにか、軽音部の皆とも連絡を取らなくなって。 

唯「ちょっと触って見てもいいよね?」 

皆が新しい仕事を見つけてる間、私は憂に頼ってばっかりで。 

唯「よいしょっ。あー、これだよ。この重量感」 

終いには憂が留学して、今度は和ちゃんも頼って。 

唯「ええと、ピックは、と……あ、あったあった」 

意味も無く毎日をだらだら過ごして。 
何をやってるんだろう、私は。 

唯「せーの、 

ジャラァァァァーーン 



違う 

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:16:09.08 ID:Llft9dLRO
唯「違う」 

唯「っかしいなぁ……」 

唯「あ、そうだ。チューニング忘れてた」 

ジャーン、ジャーン 

唯「えっと、こんな感じでオッケーだよね」 

唯「それじゃ、改めて。 
いきます」 


ジャラアアアァァァァァン 
唯「……違う」 


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:20:14.59 ID:Llft9dLRO
唯「……なんだろう」 

何かが、変だ 
何かが、おかしい 

唯「そうだ、ギー太!」ダッ 

ガラッ 
唯「ええっと、どこだっけ……ここじゃないし……あ、あった」 

唯「よいしょっ」 

ギー太「…………」 

唯「あ、あの……久しぶりです」 

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:23:27.45 ID:Llft9dLRO
唯「ごめんね、一人ぼっちにさせて」 

ギー太「…………」 

唯「……本当にごめんなさい」 

ギー太「…………」 

唯「あの……もう一度私と歌ってくれませんか?」 

ギー太「…………」 

唯「お願いします、この通りっ!」 


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:26:21.22 ID:Llft9dLRO
唯「ほんとに、ギー太に触れるの久しぶりだよ……」 
唯「……それでわ、失礼します」 

唯「せーの、 

ジャラアアアアァァァァァァァァァァン! 

唯「これだっ!」 


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:33:53.08 ID:Llft9dLRO
唯「そうそう、こんな感じだよ! 
……聡君のギター、何か音が変だもん」 

唯(あれ、でも何が変なんだろう……?) 

唯「見た目は普通だし……もしかして中? 
……ちょっと手を入れてみよう 
失礼しまーす……」 

ゴソゴソ 

唯「ん、何かある……なんだろ。 
何かがテープでくっつけてある?……んしょ」 

ベリッ 

唯「…………」 

唯「なに、コレ」 

透明なビニール袋がいくつかと、 
中に、白い粉がたくさん入っている。 

唯「ひょっとして、ヤバいものじゃ……」 

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:43:24.57 ID:Llft9dLRO
聡「唯さーん、上がりましたよ!」 

唯「あ、ささささ聡君! 早かったね!」 

聡「そうですか? 結構ゆっくりしたつもりなんですが…… 
ところで、何してたんですか?」 

唯「あ、う、うん。何かギター見たら懐かしくなってきて……。 
ちょっと触らせてもらっちゃった。 
ま、マズかったかな?」 

聡「あ、全然いいっすよ。 
唯さん最近ギターやってないんですか?」 

唯「うん、大学入ってからは、あんまり……ここ最近は、全く」 

聡「そうですか……姉ちゃんが、唯さんはギター上手だって言ってましたよ」 

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 03:57:16.67 ID:Llft9dLRO
唯「ホントに……? でも、やっぱり弾いてないとダメだよ。 
もう、全然」 

聡「……また始めてみたらどうです?」 

唯「えっ?」 

聡「唯さんなら、またすぐに上手くなりますよ」 

唯「……そうかな?」 

聡「そうっすよ。プロだって余裕っす」 

唯「うん……エヘヘ、ありがとう、聡君。 
私、またギター始めてみようかな……」 

聡「……あ、久々に笑いましたね。 
やっぱ唯さんは笑ってないとダメっすよ! 
笑ってないと唯さんじゃないです」 

唯「そうかな……? でも確かに久々に笑った気がする、ありがとう。 
それじゃ、私はお風呂入ってくるね」 

聡「あ、俺はもう寝ます。お休みなさい 

唯「うん、お休みー」 

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 13:44:56.52 ID:Llft9dLRO

唯「ふ~、いいお湯だった……」 

唯「聡君、もう寝たのかなぁ?」 

唯(久々にギター触ったからかな、昔を思い出すよ……) 

唯「私もそろそろ寝よう……と、その前にギター片付けておかなきゃ」 

唯「あれ」 

ギターケースが、二つ 

唯「どっちがどっちのケースだっけ……?」 

唯「……まあいいや、適当に入れちゃおー」 

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 13:50:15.65 ID:Llft9dLRO
ユサユサ 
唯「う~ん、ムニャムニャ……」 
憂「お姉ちゃん、起きなよ」 

ユサユサ 

憂「朝だよ、お姉ちゃん」 

唯「あと5分……」 

憂「もう、遅刻しちゃうよお姉ちゃん」 

唯「う~ん……」 

憂「ほら、お姉ちゃん」 

お姉ちゃん 

ガバァッ 
唯「憂!?」 

唯「なんだ、夢か……」 

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 13:56:08.14 ID:Llft9dLRO
唯(昨日は結局、またギー太と遊んで夜更かししちゃった……) 

唯「うぅ……眠い……」 

唯「ん?」 

唯さんへ 
昨日はありがとうございました 
今日は午前中バイトがあるので、今から行ってきます 
また何かあったら、下の番号に連絡下さい 
***-**** 

あと、コンビニで朝飯買ってきたので良かったらどうぞ 

唯「聡君、ナイスすぎるよぉ……」 


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 14:00:46.02 ID:Llft9dLRO
もぐもぐ 

唯「それにしても、昨日は色々あってびっくりしたなぁ……」 

唯「あずにゃんが悪い子だなんて、まだ信じられないけど」 

唯「やっぱり放っておけないよね……」 

唯「そうだ、あずにゃんにメールしてみよう!」 

唯「最後にメールしたのはずっと前だけど、まだアドレス変わってないよね……?」 

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 14:03:13.80 ID:Llft9dLRO
唯「ええと、何て打とう……」 

久し振り、あずにゃん! 
唯だよぉ~(絵文字) 
最近、バンドの調子はどう?? 
ところで、ちょっと会って話したい事があるんだけど、 
時間とれないかなぁ~?(絵文字) 
お返事待ってま~す(絵文字) 

唯「これで大丈夫かなぁ……?」 

唯「ええぃ、送信しちゃえ!」 
ピッ 

送信中 

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 14:11:56.51 ID:Llft9dLRO
唯「……よし、送れた」 

唯「あとは、返事が返ってくればいいんだけど……」 
―――――――――――――――――――― 

聡「はぁ、やっとバイト終わった……」 

新着メール 一件 

聡「お、メール来てる」 

聡「誰だろう」 

From 姉貴 
ヤッホー聡、元気ぃ? 
ちょっと近くまで来たから、今からそっち寄るね 
じゃあよろしく 

聡「ね、姉ちゃん!?」 

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 14:23:20.63 ID:Llft9dLRO
最近ずっと連絡無いし、心配したんだぞ! 
今アパート入れないから、外で待ってて 
すぐ行く 

ピッ 
送信中 

聡「一体どこをほっつき歩いてたんだ、姉ちゃんは……」 

―――――――――――――――――――― 

受信中 

唯「き、きた!」 

From あずにゃん 
唯先輩ですか!? お久しぶりです!(絵文字) 
私はまだバンド続けてますよ、昨日も実はライブだったんです!(笑)(絵文字) 
今日はちょっと忙しいんですけど・・・5時くらいなら少しだけ空いてます 

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 14:30:54.99 ID:Llft9dLRO
唯「え、マジ!?」 

ホントに!? 
じゃあ5時に○○駅のスタバで待ち合わせしない?? 
送信中 

唯「まさかこんなすぐに会えるとは……」 

受信中 

From あずにゃん 
オッケー(絵文字)ですよ! 
でわまた後で(絵文字) 

唯「ど、どうしよう。おめかしして行かなくちゃ……!」 

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 14:37:09.02 ID:Llft9dLRO
聡「えっと、どこにいるんだ……」 

律「おーい! こっち、こっち!」 

聡「あ、ね、姉ちゃん!」 
律「よっ、久々」 

聡「姉ちゃん……。髪、伸びたね」 

律「ん~、まあな。立ち話も何だしさ、とりあえずどっかの店入ろうぜ」 


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 14:44:20.92 ID:Llft9dLRO
―――――――――――――――――――― 
聡「姉ちゃん、最近どうしてたんだ? 母さんも全然連絡来ないって言ってたぞ」 

律「ん~、まあ色々あってさ。聡は? ちゃんと大学行ってんの? 

聡「行ってるよ。今日は日曜だから休みだけど」 

律「ふ~ん、そっか。頑張ってんだな」 

聡「姉ちゃん、うちには寄らないの……?」 

律「うーん、今からちょいと用事あるんだよね……」 

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 14:54:46.26 ID:Llft9dLRO
聡「まあ、無理にとは言わないけどさ」 

律「時間あったらな……おい、携帯鳴ってるよ」 

ブーブー 

聡「メール……誰からだろ」 

From 
あずにゃんと連絡取れたよ~! 
5時からスタバで待ち合です(絵文字) 

聡「……唯さんだ」 

律「唯ぃ? なんで唯から? お前唯とメールしてたの?」 

聡「いや、こっちも色々あってさ……」 

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:01:26.42 ID:Llft9dLRO
律「で、何て?」 

聡「……姉ちゃん、今何時?」 

律「今? 四時半だけど」 
聡「ごめん、ちょっと行ってくる」ガタッ 

律「あ、おい!」 

聡「そうだ、姉ちゃん! 今日の夜は?」 

律「いや、私も今から用事ある」 

聡「そっか、じゃあまた何かあったら連絡してくれ」 

律「え?あ、うん……」 

聡「それじゃあ」ダッ 

律「…………」 

律(何だったんだ、あいつは……) 

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:10:24.28 ID:Llft9dLRO
―――――――――――――――――――――――― 
唯「あずにゃん、遅いなぁ……」 

唯「もう40分も遅刻だよ……」 

唯「コーヒーも、三杯目だし」 

唯「昔は、遅刻するのはいつも私の方だったのに……」 

―――――――――――――――――――――――― 
キョロキョロ 

聡「あ、いたいた。唯さーん!!」 

唯「あ、聡君! 来てくれたんだぁ」 

聡「ええ、念のため。唯さんに何かあったら困りますから」 

唯「えっ……/// べ、別に心配しなくて大丈夫だよぉ……」 

90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:14:48.82 ID:Llft9dLRO
聡「にしても、遅いですねぇ……」 

唯「うん……もしかして私、嫌われてんのかな…… 
?」 

聡「いやいや、それは無いですって! 
今スゲー忙しいみたいですし、またなんか急用が入ったんじゃないですか?」 

唯「そうなのかなぁ。メールくらいくれてもいいのに」 

聡「……とりあえず、これ以上待つのもアレですし、一旦帰りませんか?」 

唯「うん、そだね……」 

91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:20:50.31 ID:Llft9dLRO
テクテク 

聡「梓さんたちって、この前出したシングルが結構売れてて、今注目されてるんすよ」 

唯「そうなんだぁ……私全然知らなかったよ」 

聡「まあ、メジャーデビューしたばっかりですし」 

唯「あずにゃん、高校卒業してからもずっとギター続けてたんだろうなぁ……あれ?」 

聡「どうしたんすか?」 

ガヤガヤ 

唯「なんか辺りが騒がしくない?」 

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:24:39.14 ID:Llft9dLRO
聡「確かに……何かあったんでしょうか?」 

ガヤガヤ 

ピーポーピーポー 

唯「あ、今救急車が通ったよね? 聞こえた?」 

聡「はい、聞こえました。事故かなんかっすかね?」 

唯「さあ……もうちょっと近付いてみよう」 

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:30:14.08 ID:Llft9dLRO
唯「ねぇ、こっちって私のマンションの方向だよね」 

聡「……そうっすね」 

唯「あ、見て! あそこ、煙が上がってる!」 

聡「あ、ホントだ……」 

ガヤガヤ 

――おい、あっちで火事があったらしいぞ 
――うわ、すごい煙! 
――救急車通ってたけど、怪我人出たのかな? 

唯「なんか嫌な予感が……」 

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:35:01.21 ID:Llft9dLRO
近付いてみると、案の定、 
燃えてるのは私の住んでるマンションだった。 

唯「…………」 

――すいません、どいて下さい! 
――怪我人がいるんです。どいて下さい! 

男「君、関係者の方かね?」 

聡「あ、いや俺は……違います。彼女が……」 

唯「ボー」 

聡「ゆ、唯さん、しっかり!」 

唯「あ、あずにゃんが……それと、ギー太……」 

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:45:48.01 ID:Llft9dLRO
男1「こら、君! 危ないからどいてなさい!」 

唯「あずにゃん、ギー太……」ダッ 

聡「ちょっと、唯さん!」 
ダッ 

聡「無理ですって、危険だから下がっていましょう!」 

唯「で、でも……!」 

男1「君、ここの関係者? ご家族は?」 

唯「あ、あの、中に猫が一匹……」 

男1「猫……おい、さっきの奴どこいったぁ!?」 

男2「先輩、どうしたんすか?」 

男1「ほら、さっき黒い猫保護しただろ? あれどこやった?」 

男2「ちゃんといますよ、ホラ、ここに」 

猫「ぅにゃぁ~ん」 

唯「あ、あずにゃん!!」 

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 15:55:48.03 ID:Llft9dLRO
唯「よ、良かったぁ……ポロポロ」 

猫「にゃぁ~」スリスリ 

唯「で、でも、まだギー太が中に……!」 

男1「まだ中に人がいるんですか!?」 

唯「あ、いや、その、ギ、ギターが……」 

男1「ギター?」 

男2「ひょっとして、これですか……?」 

唯「ギ、ギー太ぁ!」 

そこには、見るも無惨に焼けただれたギー太の姿があった。 
形は元が想像できないくらい変形して、色は真っ黒こげだった。 

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 16:00:18.61 ID:Llft9dLRO
唯「そ、そんな……せっかくまた、仲直りしたのに……」 

唯「もう一度歌おうって、約束したのに……うぅ……」 

聡「唯さん……」 

唯「……許さない」 

聡「…………」 

唯「私はギー太をこんな風にした犯人を絶対に許さなあ!!」 

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 16:14:01.60 ID:Llft9dLRO
唯「聡君!!」 

聡「は、はい?」 

唯「良かったら、私を手伝ってほしいの。その、一人で出来ることは限界があるから……」 

聡「……もちろん、いいですよ。乗り掛かった船ですし」 

唯「……ありがとう!」 

唯「それから……」 

こんな時に、頼りになる人が一人。 

プルルルル……プルルルル 

唯「もしもし!?」 

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 16:16:07.82 ID:Llft9dLRO
―――――――――――――――――――― 
澪「もしもし……あれ、唯? 久しぶり、うん。どうしたの……え?」 

澪「えぇぇ!? アパートが燃えたぁ? うん、うん。あ、ちょっと待って」 

澪「あ、いいよ……」 

カキカキ 

澪「オッケー、メモした。……あ、全然いいよ、私の家に泊めるくらい! うん、それじゃあ、また後で」 
ツーツー 

澪「唯……久々に電話がきたと思ったら、一体どうしたっていうんだ……?」 


109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 19:28:07.37 ID:Llft9dLRO


聡「今の電話……澪さん?」 

唯「うん、今日これから泊めてもらうことになったから……聡君も、オッケーだって」 

聡「俺も!? いいんですか?」 

唯「うん、とりあえず澪ちゃんの家に向かおう」 

ブーブー 

唯「あ、メール……」 

受信中 

From あずにゃん 
すみません、先輩!m(__)m(絵文字) 
ちょっと急用ができてしまって、行けなくなって・・・ 
メール出すのも遅れてしまって、本当にごめんなさい(絵文字) 
会うのはまた今度ということで・・・ 

唯「そんなの信用できないよ、あずにゃん……」 

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 19:43:08.47 ID:Llft9dLRO
澪ちゃんの家は、私の家から電車で30分ほど離れたところにある 
実は私も行くのは初めてだ 

電車内で、私は聡君とはほとんど会話せず、 
窓の外をボーっと眺めて過ごしていた 


――――――――――――――――――――― 
聡「澪さんとは、どこで待ち合わせですか?」 

唯「えっと、駅の北口って言ってた」 

聡「北口……こっちですね、行きましょう」 

唯「うん」 

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 19:48:33.02 ID:Llft9dLRO
澪「唯、聡ー! こっちこっち!」 

唯「澪ちゃん!」 

ガシッ 

唯「会いたかったよぅ、澪ちゃん……」 

澪「久しぶりだなぁ、唯……ナデナデ 
あとついでに聡も」 

聡「……お久しぶりです、澪さん」 

澪「車こっち停めてあるから、二人ともおいで」 

112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 19:53:10.75 ID:Llft9dLRO
唯「ねぇ、澪ちゃんってどんな所に住んでるんだっけ……?」 

澪「ん? 普通のマンションだよ。最近は仕事場で寝ることも多いけど」 

唯「え、小説とかって家で書くんじゃないの?」 

澪「う~ん、私の場合はそっちの方が書きやすいから」 

澪「あ、こっちこっち」 

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:01:48.94 ID:Llft9dLRO
澪「どうぞ、乗って乗って」 

唯「おぉ、左ハンドルだ……」 

聡「うわ、すげぇ……」 

唯「ね、ねぇ聡君? これって凄い高い車じゃなかったっけ?(ボソボソ」 

聡「フェラーリっすよ、唯さん……」 

唯「ふぇらーり?」 

聡「めちゃくちゃ高いっす」 

澪「遠慮しなくていいぞ、さあ乗って乗って」 

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:07:42.54 ID:Llft9dLRO
聡「澪さんの家は、駅からどれくらいなんですか?」 

澪「10分くらいかなぁ……まあすぐ着くよ」 

唯「あ~あ、いいなぁ、澪ちゃん。運転できて~」 

澪「唯、免許取ってないのか?」 

唯「うん、だってめんどくさいじゃん。試験とかさぁ」 

澪「車あると便利だぞ? 私は、電車はもう人が多すぎてウンザリだ」 

唯「私も免許取ろうかなぁ……」 

117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:12:15.40 ID:Llft9dLRO
―――――――――――――――――――― 
澪「ほら、着いたぞ」 

聡「……でけぇ」 

唯「ポカーン」 

聡「何階立てっすか、これ?」 

澪「さあ、数えたことないから分からないな。 
あ、エレベーターはこっちだ」 

唯「な、なんかおっきいホテルみたいだね」 

澪「うん、まあ似たようなものだな。レストランも付いてるし」 

118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:21:39.48 ID:Llft9dLRO
澪「あ。ここ、ここ」 

501号室 

唯「……名前とか書いてないの?」 

澪「うん、女の一人暮らしだしね」 

聡「しかし、どう見てもホテルだなぁ」 

澪「どうぞ、入って」 

ガチャ 

澪「あ、靴は履いたままでいいから」 

唯「ひ、ひっろぉぉぉーーーーい!!!! 

聡「パネェwww」 

澪「そ、そうかな?」 


120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:29:59.69 ID:Llft9dLRO
唯「みてみてぇ~、ベッドふかふかだよぉ~」 

ボスン、ボスン 

澪「あ、こらこら」 

ジャー 

聡「うぉ、景色やべぇ!」 
澪「あ、カーテンは後で閉めておいてくれ」 

唯「冷蔵庫ちぇ~っく!うぉぉ、お酒いっぱい! 
澪ちゃんってお酒とか飲むの??」 

澪「まあまあかな。あんまり飲むとほら、アレだから」 

聡「液晶でかすぎwww何インチっすかwwww」 

澪「あぁ~、それはもらいものだよ」 

ピッ 

唯「なんか●●●な番組やってるかな?」 

澪「もう、皆落ち着けってば!」 

121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:36:45.82 ID:Llft9dLRO
澪「……落ち着いた?」 

唯「ふぅ、とりあえず一件落着だねぇ……」 

聡「まだ何もやってませんよ」 

澪「それじゃ、まずは何が起こったのか話してくれるか?」 

唯「うん、実はかくかくしかじかで……」 

―――――――――――――――――――― 

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:43:44.32 ID:Llft9dLRO
澪「えぇ、じゃあ梓たちが窃盗犯のグループだっていうのか!?」 

唯「うん、そうらしいの……」 

聡「あぁ、それは確かな情報っすよ。 
まあ梓さん本人が関わってるとは限らないですけど」 

澪「ふ~ん、それでアパートが燃えたっていうのは?」 

唯「それが私、あずにゃんと会う約束をしてたんだけど……」 

聡「唯さんが梓さんを待っている間に、何者かがアパートに火を付けたんですよ」 

124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:49:53.74 ID:Llft9dLRO
唯「結局あずにゃんは来なかったし……」 

唯「それで、あずにゃんは危うく死ぬところで、ギー太は丸焦げになったんだよ!!」 

澪「……はぁ? なんで梓が死にかけるんだ?」 

唯「あ、あずにゃんっていうのは、この子」 

ガサゴソ 

猫「にゃあ~」 
スリスリ 

澪「うぉ、……可愛いな。梓って名前なのか?」 

唯「ううん、あずさ2号(ry」 


126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:00:07.06 ID:Llft9dLRO
澪「あ、でもさ、話を戻すけど。 
それって変じゃないか?」 

唯「変って、何が?」 

澪「だって、もし仮にアパートを燃やした犯人が梓たちならさ、 
どうやってアパートの場所を突き止めたんだ?」 

唯「あ、それは……」 

澪「それに、動機もよく分からない。 
いくつも盗んだ楽器のうち一つを奪い返されたからって、 
わざわざ防火したりするかなぁ~?」 

唯「そ、それは……」 

聡「きっと、アレっすよ、奴等はねちっこいんです。 
奪ったものは、必ず我が物にする、みたいな!」 

澪「う~ん、そうかなぁ……」 

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:06:57.49 ID:Llft9dLRO
聡「ほら、唯さんも。 
何か身分を特定できる物とか、持ってなかったんですか?」 

唯「身分を特定…………あぁっ!!」 

澪「ど、どうしたんだ……?」 

唯「手紙……」 

澪「手紙?」 

唯「うん、憂への手紙」 

澪「それがどうかしたのか?」 

唯「私のアパートの住所が書いてある」 

聡「そ、それっすよ!! きっとそれを見つけて、奴等は……」 

唯「おかしいなぁ、出したと思ったんだけど……」 

澪「なるほど、じゃあ場所の方は説明がつくのか……」 

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:21:07.10 ID:Llft9dLRO
澪「それで、唯はこれからどうするつもりなんだ?」 

唯「うん……やっぱり、あずにゃん達が悪い事してるなら、なんとかしなくちゃって」 

唯「それに、防火のことも……」 

澪「そうだな……まあとりあえず、今日はゆっくり休もうか。 
疲れただろ?」 

唯「もうへとへと……」 

聡「俺もくたくたっす」 

澪「うん。じゃあ、部屋案内するから」 

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:25:04.96 ID:Llft9dLRO
唯「あ、そうだ。澪ちゃん!」 

澪「ん、なんだ?」 

唯(あの白い粉のこと、言った方がいいのかな……?) 

澪「どうしたんだ、唯?」 
唯「あ、あの……」 

唯(でも、これ以上話をややこしくするのもアレだし……) 

唯「ううん、やっぱり何でもない」 

澪「そっか、じゃあ行こう」 

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:29:39.70 ID:Llft9dLRO
澪「唯はこっち、聡はこっちな」 

聡(いくつ部屋があるんだ……?) 

澪「あと、トイレはそこ。 
鍵はちゃんとかけるように……特に聡!」 

聡「分かってますってば」 
澪「じゃあ、そろそろ夕飯にしようか」 

133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:35:27.08 ID:Llft9dLRO
唯「澪ちゃん、いっつも夕飯とかどうしてるの?」 

澪「う~ん、出前とか頼むこともあるけど……結構自分で作ることが多いよ」 

唯「え、じゃあ、今日はー?」 

澪「うん、私が何か作ろうかな」 

唯「やったあぁ、澪ちゃんの手作りぃ!!」 

聡「澪さんの手料理とか……ゴクリ」 

152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 22:45:38.69 ID:Llft9dLRO


澪「それじゃあ、すぐできるから、二人ともリビングで待っててくれ」 

唯「りょ~かい、行こう、聡君」 

ギュッ 

聡「あ……は、はい!」 

―――――――――――――――――――― 
唯「テレビ付けよっと」 

ピッ 

唯「おぉー、大画面、大迫力……」 

聡「あ、唯さん。そこの新聞取ってくれませんか?」 

唯「ほい」 

聡「何かいい番組やってないかな……あれ?」 

153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 22:49:42.54 ID:Llft9dLRO
聡「これって……唯さん、ちょっと」 

唯「うん?」 

聡「これ、見て下さい」 

唯「どこ?」 

聡「ほら、ここ」 

唯「Nyan☆Nyans?」 

聡「そうです、これ梓さんのバンドの名前ですよ!」 

154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 22:53:41.85 ID:Llft9dLRO
大人気 
Nyan☆Nyans新曲披露 

唯「ええ、あずにゃんテレビに出るの!?」 

聡「そうみたいですね。 
もう少ししたら始まりますよ」 

唯「すっご~い、あずにゃん!これって初めてじゃないの?」 

聡「多分……俺は見たことないですし、TV初登場じゃないですか?」 

唯(ワクワク) 

155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 22:58:50.32 ID:Llft9dLRO
澪「皆、できたぞ~」 

聡「はやっ! ……これは、ハンバーグですか?」 

澪「うん、実は二人が来る前にもう準備してたんだ」 

唯「うわぁ、おいしいそう!! 澪ちゃんって、ホント何でもできるよね~!」 

澪「ありがとう。でも、そんな事ないよ、ホントは……」 

聡「マジうまそうっす。いただいていいっすか?」 

澪「うん、どうぞ」 


159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:04:56.42 ID:Llft9dLRO
モグモグ 

唯「……おいしい!!」 

聡「うま!! マジくそうまいっす!!」 

澪「そ、そうかな?」 

唯「私も料理できるようになりたいなぁ~」 

澪「憂ちゃんに習えばいいじゃない?」 

唯「憂は今、留学中で家にいないから……」 

澪「あ、そ、そうだったな。ごめん」 

聡「唯さん、澪さん、そろそろ始まりますよー」 


161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:10:34.82 ID:Llft9dLRO
澪「ん、何が?」 

唯「あ、忘れてた。澪ちゃん、今からあずにゃんがテレビに出るんだよ!」 

澪「え……ホントに?」 

唯「ホント、ホント!」 

聡「あ、これ梓さんですよ!!」 

――それでは、続いてのアーティストは…… 
――Nyan☆Nyansの皆さんです! 

ワアアアアァァァァァァ!!!!!! 
パチパチパチパチ 

――皆さん、初登場ということですけど 
――はい、とっても緊張してます! 

澪「ホントに梓がしゃべってるよ……」 

聡「すげぇなぁ」 

唯「あずにゃん可愛い~!!」 

162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:16:55.33 ID:Llft9dLRO
――何でも皆さんは、近日公開の映画「恋の方程式」の主題歌を歌っているそうで 
――はい、この映画は、私にとって、とても大切な映画で……。登場人物の気持ちを歌にして作曲しました。 

唯「……って、ええぇ!! この映画って、澪ちゃんが書いたやつじゃないの!?」 

澪「うん、実は……///」 

唯「あずにゃん達のデビューシングルって、この映画の主題歌なんだぁ……」 

163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:21:00.51 ID:Llft9dLRO
聡「あ、俺読みましたよ、その小説!」 

澪「え? も、もう、恥ずかしいからやめてよ……//」 

聡「いやぁ、まさか最後に○○が××になるとは……」 

唯「ちょっと聡君、私まだ読んでないんだからネタバレしないでよ!!」 

聡「あ、す、すんません!」 

澪「おい、歌始まるぞ」 

165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:27:45.00 ID:Llft9dLRO
ジャンジャン~ジャジャジャ~♪ 
梓「ずぅっと仲良しだぁたのに~♪」 


唯「う、上手い……!」 

澪「歌上手くなったなぁ~、梓は」 

聡「演奏も上手っすね……」 

唯「あずにゃん、ギター桁外れに上手くなってるよ……」 

澪「ベースもなかなかだぞ」 

聡「ドラムもいいっすね~」 

166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:32:42.28 ID:Llft9dLRO
唯「てゆ~か、皆可愛い!」 

澪「だな」 

聡「そうっすねぇ」 

唯「聡君は、この中だとどの子がタイプ?」 

聡「えぇ!? えっと……」 

唯「やっぱりあずにゃん?」 

聡「いや、その……」 

澪「あの長髪の子なんか、特に可愛いと思うぞ」 

聡「どれですか?」 

167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:36:04.62 ID:Llft9dLRO
澪「ほら、ドラムの……」 

聡「あぁ、あの子か…………いや、アレは無いっすね」 

澪「そうかぁ?? 一番可愛いと思うんだけど……」 

聡「う~ん、なんか違うっていうか……」 

澪「じゃあ唯は?」 

唯「う~ん、私はやっぱりあずにゃんかなぁ~」 

168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:40:28.85 ID:Llft9dLRO
聡「あ、終わりましたね」 

唯「ハッ……あずにゃん見てたら歌全然聞いてなかったよぉ~!」 

澪「おい」 

聡「でも、いい曲でしたよ。あの小説にぴったりな感じの」 

澪「うん、いい感じだ」 

唯「原作者が言うんだから間違いなしだよね~」 

澪「はは、そうだな……」 


170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:45:09.66 ID:Llft9dLRO
唯「料理もおいしかったし、こんなに幸せなの久しぶりだよ~」 

澪「そう言われると作ったかいがあるな」 

唯「私、片付け手伝っちゃうよ!」 

澪「おっ、サンキュー」 

唯「でもその前に、ちょっと休憩~」 

ゴローン 

澪「やれやれ……じゃ、私も休憩~」 


172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 23:48:41.11 ID:Llft9dLRO
唯「ねぇ、そう言えばさぁ、澪ちゃん……」 

ゴロゴロ 

澪「んー?」 

唯「澪ちゃんってさぁ……」 

澪「なんだ?」 

唯「最近りっちゃんとは――」 

「唯さんっ!!!!!!」 


179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 01:15:12.86 ID:9EWpw1EsO
連投規制くらってた 
日付変わると取れるのか…… 


唯「ほ、ほぇ!? どうしたの、聡君?」 

聡「すみません間違えました。 
澪さん!!俺も片付け手伝いますよ!」 

澪「え、そうか? ありがとう」 

聡「だからとっととやっちゃいましょう! 
――あ、唯さんは大丈夫です! 
俺が唯さんの分までやっておきますから」 

唯「え、で、でも悪いよぉ……」 

聡「大丈夫ですって、唯さん今日は疲れてるみたいですし、ゆっくりしてて下さい」 

唯「そ、そう? じゃあお言葉に甘えて……」 

180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 01:22:05.03 ID:9EWpw1EsO
――――――――――――――――――― 
コンコン 

唯「はぁーい、どうぞ」 

聡「あ、失礼します……」 

唯「どうしたの、聡君? 
……もしかして眠れないのカナ?」 

聡「いやいや、違いますよ! 
……あの、さっきの事ですけど」 

唯「さっき?」 

聡「唯さん、お願いします 
澪さんの前で姉ちゃんの話出すの、やめてほしいんです」 

唯「…………」 

唯「なんで?」 

183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 01:28:21.14 ID:9EWpw1EsO
聡「すみません、色々あって……話すと長くなるんです」 

唯「もしかして……二人がケンカしてるとか?」 

聡「ケンカ……まあ、そんな感じすかね。 
ずいぶんと長いケンカですけど……」 

唯「長いって……いつから!?」 

聡「大学に入ってちょっとしてからです。 
多分、それ以来ずっと会ってないかと……」 

唯「…………」 


185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 01:36:19.66 ID:9EWpw1EsO
唯「そんな……二人とも、メールだといつも通りだったのに……」 

聡「唯さんに対しては、そうだと思います。 
――姉ちゃんの前でも、澪さんの話題はしないようにしてるんですよ」 

唯「……それで、一体何があったの、二人に?」 

聡「……すみません。二人のこと、俺が勝手にペラペラ喋る訳にはいかないんで」 

唯「で、でも、気になるよ……」 

聡「多分……唯さんには、姉ちゃんか澪さんがその内話してくれると思います」 

187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 01:42:47.56 ID:9EWpw1EsO
聡「だから、それまでは、二人の事そっとしておいてくれませんか……?」 

唯「……分かった。分かったよ……でも……」 

唯「二人とも、また仲直りできるよね?」 

聡「……分かりません」 

聡「分かりませんけど、あるいは……」 

唯さんなら 
唯さんなら、ひょっとして…… 

唯「なぁに?」 

聡「……いえ、なんでもないっす」 


189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 01:48:24.18 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――――― 
唯「はぁ~、疲れたな……」 

唯「…………」 

唯(澪ちゃん、もうずっとりっちゃんと会ってないのか……) 

唯(なんだか……) 

唯「なんだか、凄くショックだよ……」 

憂が出ていった時よりも、 
ギー太が燃えたときよりも 

唯「ダメージ、大きいなぁ……」 

194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 01:53:31.93 ID:9EWpw1EsO
唯「……なんとかしなくちゃ」 

唯「なんとかしなくちゃ、いけない」 

唯「私が、二人の仲を元通りにするんだ……」 

唯「それから、あずにゃんも……!」 

唯(……でも、とりあえず今日は眠いからもう寝ようかな) 

唯「ふぁぁ~ぁ」 

195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 01:59:08.12 ID:9EWpw1EsO
唯「えっと、毛布は、と……」 

キョロキョロ 

唯「どこだ……」 

唯「こっちだっけ?」 

――毛布はこっちに入ってるからな 
――それと、ここは普段私が寝てる部屋だから、 
――あんまり汚しちゃダメだぞ? 

唯「そういえば…… 
ここ、澪ちゃんが普段使ってる部屋なんだ……」 

唯「それにしては、あんまり物が置いてないけど」 


199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 02:05:02.04 ID:9EWpw1EsO
唯「この部屋は寝る時だけで、 
普段はまた別の部屋を使ってるんだっけ……」 

唯「今日澪ちゃんが寝てるのは、多分もう一つの部屋なんだろうなぁ」 

唯「ふ~ん……」 

唯「…………」 

カラカラカラ 

唯「ちょっと引き出しを、開けてみたり」 

200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 02:11:16.51 ID:9EWpw1EsO
唯「あ、何か入ってる」 

唯「……何だろう、ノート?」 

私のこころの日記 
秋山 澪 

唯「うッ……プクク」 

唯「タイトルまで付けちゃって……クク」 

唯「ちょっとだけ……見てもいいよね?」 

唯「ちょっとだけ、ちょっとだけだから……」 

唯「どれどれ」 

ペラペラ 

204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 02:20:50.99 ID:9EWpw1EsO
○月×日 

明日は××でサイン会の日だ 
初めてのサイン会だから、凄く緊張する 
私なんかのために、皆来てくれるのかな……? 
……ヤバい、もうすでに緊張してきた 
あ~もういいや、こういう時は、寝ちゃおー×3 


唯「……この辺は最近かな」 

唯「所々に書いてあるメモのは、小説のネタっぽい……?」 

唯「澪ちゃんのことだから、もっと変わったことが書いてあるかと思ったけど 
……案外普通だなぁ」 

208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 02:37:52.78 ID:9EWpw1EsO
唯「毎日付けてる訳じゃないみたいだけど 
……これ、何年分あるのかな?」 

唯「もっと昔のを見てみよう」 


△月□日 
今日は、久しぶりに実家に戻ってきた 
こっちに戻ってくるのは、本当に久しぶり 
ちょっと高校を覗いてみたり、通学路をぶらついてみたり 
昔の事を、思い出す 

軽音部で皆と演奏した時の事とか 
卒業式が終わった後、皆で演奏した事とか 

その後、突然唯が泣き出しちゃって 
そしたら他の皆もつられて泣き出して 
私も大泣きしたんだよね…… 


唯「あったなぁ~、そんな事……」 

209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 02:57:20.45 ID:9EWpw1EsO
唯「でも、あの状況じゃ泣くでしょ、普通……」 

唯「……今思えば、皆、泣くのを必死に我慢してたのかな……」 

唯「まだ続きがあるな」 

ペラ 

軽音部の時の思い出は、私にとって一番大切なものだ 
皆、今どうしているんだろう…… 
梓はまだバンドやっているらしいけど 
唯とか、ムギとか、それから、■とか 

唯「……なにこれ。黒く、塗り潰されてれる……」 

あの頃は、楽しかった 
今は……あんまり楽しくない 
どれだけ仕事がうまくいっても、 
どれだけお金が入ってきても 
なんでこんな事になってしまったんだろうか 
私が■を■■せず、■■したせいだろうか? 
私があの時■■していれば状況は変わったんだろうか? 

分からない 
分からないけど、私は…… 

コン、コン 
「唯ー?」 

212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 03:01:46.44 ID:9EWpw1EsO
唯「や、やば……」バッ 

澪「唯、開けるぞ―?」 

唯「みみみみ澪ちゃん、ちょっと待って!!」 

澪「?」 

唯「あ、いいよ! どうぞ!」 

ガチャ 

215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 03:04:56.95 ID:9EWpw1EsO
澪「唯、何してたんだ?」 

唯「ち、ちょっと体操を……」あたふた 

澪「ふ~ん、健康的だな」 

唯「健康には普段から気を使っておかないと、いざという時に困るしね!」 

澪「まあ、そうだな」 

唯「と、ところで澪ちゃんこそ、どうしたの?」 


218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 03:11:55.52 ID:9EWpw1EsO
澪「いや、寝る前にトイレに行こうと思ったら 
電気付いてるのが見えたからさ、 
まだ起きてるのかなーって」 

唯「ああ、うん。私もそろそろ寝ようと思ってたんだけど……」 

ガサゴソ 

唯「これ」 

澪「あ、それは……」 

唯「澪ちゃんの書いた小説、読んでたらこんな時間になっちゃってさ……」 

澪「唯、持ってたのか。……もう、読むなら私のいない所で読んでくれよ?」 

唯「エヘヘー///」 

220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 03:17:34.63 ID:9EWpw1EsO
澪「それじゃ、私もいい加減寝るとするか……」 

唯「私も寝よう、お休みー」 

澪「うん、お休み」 

唯「あ、そうだ、その前にトイレ……」 

―――――――――――――――――――― 
唯「確か、突き当たりを右に……」 

唯「あった、ここか……あれ?」 

唯(リビングから明かりがもれてる……) 

唯(澪ちゃんは部屋に戻ったし……聡君?) 

223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 03:25:08.74 ID:9EWpw1EsO
チラッ 

唯(こんな時間に一体何してるんだろ?) 

ガサゴソ 

唯(なにかを、探してる……?) 

唯(あ、やば、こっち来る……!) 

スタスタ 

聡「チッ、やっぱし無いか……」 

ガチャ、ギィー 

唯「…………」 

唯「…………ふぅ、何とかバレずにすんだかな」 

唯「ちょうどいい場所に観葉植物があって良かった……」 

224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 03:29:53.05 ID:9EWpw1EsO
唯(それにしても、何をコソコソやってたんだろ……?) 

唯(まあ、私も人のことは言えないけど) 

唯(もしかしたら、何か落とし物をして、それを探してたのかな……?) 

唯(……こんな夜遅くに探さなくてもいいのに) 

唯(それか、よっぽど大切なものとか……?) 

唯「まあいいや。今度こそ、トイレに行って早く寝よう」 

238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 09:47:37.99 ID:9EWpw1EsO
翌朝 

澪「そう言えば昨日ネットで調べたんだけど、Nyan☆Nyans次のライブ3日後だって」 

モグモグ……ゴクン 

聡「どこであるんですか?」 

澪「都内の遊園地」 

唯「……遊園地? ライブハウスとかじゃなくて?」 

聡「奉仕活動みたいなモンじゃないすか?」 

唯「ふーん。あ、聡君ソースとって」 

聡「はい……って唯さん、ソース派なんすか?」 

唯「え、聡君は醤油? 信じらんな~い!」 

聡「いや、日本なら普通醤油(ry」 

ワイワイキャッキャッ 

澪「……ふ~ん」 

239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:00:11.50 ID:9EWpw1EsO
唯「じゃあ、そこに行ったらあずにゃんに会えるって事かぁ」 

聡「そうだ、俺考えたんすけど……直接現場を押さえるってのはどうですか?」 

澪「盗む現場を……?」 

聡「そうです、それなら向こうも弁解の余地がないでしょう?」 

澪「まあ、それができるなら、それでいいけど」 

唯「じゃあ、囮作戦とかは?」 

聡「あ、それいいですね!」 

澪「わざとギターが盗まれる状況を作り出すってことか?」 

唯「盗まれるギターには何か共通点とかないの?」 

澪「共通点……」 

240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:06:48.92 ID:9EWpw1EsO
澪「そう、それもちょっと調べたんだけど……」 

聡「もう調べたんすか!?」 

澪「うん……でも、盗む場所、盗まれる人もバラバラで…… 
共通点といえば、盗まれるギターは全て中古って事しか分からなかったな」 

唯「全部、中古……? 普通そういうのって、絶対新品の方がいいよね?」 

澪「うん、そうだな。……でも盗まれるのは中古ばっかりみたいだ」 

241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:12:44.19 ID:9EWpw1EsO
唯「よく分かんないな~」 

澪「だな」 

聡「……ところで澪さん、今日のご予定は?」 

澪「今日は、もうちょっとしたら仕事場に行かなくちゃいけないんだ……二人は?」 

唯「私、バイト首になったから暇」 

聡「俺、大学サボタージュ」 

242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:21:28.51 ID:9EWpw1EsO
澪「つまり二人とも暇、ってことか」 

聡「まあ、そういう事っすね」 

澪「だったら……」 

澪「二人でこの辺、ブラブラしてきたらどう?」 

唯「ぶらぶら?」 

澪「こっち来るのって初めてだろ? この辺、結構面白い所あるんだ。二人でちょっと歩いてみたら?」 

唯「わ、私はいいけど///……聡君は?」 

聡「いいっすね、行きましょうよ」 

244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:28:25.57 ID:9EWpw1EsO
澪「決定だな、じゃあ私はもう少ししたら出るよ」 

唯「澪ちゃん、何かオススメの行く所ってある?」 

澪「そうだな、服を見る場所とか結構あるけど……あとは大きな映画館とか、水族館とか」 

澪「……まあ色々あるよ」 

唯「分かった、ありがと」 

澪「まあその、あれだ、唯……頑張れよ!」 

唯「? うん、まあ適当にぶらぶらして来るね」 

245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:38:16.25 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――― 
唯「というコトで私たちは今、ショッピングモールにやってきていま~す!」 

聡「唯さん。ジュース買って来ましたよ~」 

唯「ご苦労。それじゃ、次はあっちへ行ってみようか」 

聡「えぇ、まだ服見るんですか!?」 

唯「当然。せっかく澪ちゃんからお小遣いもらったんだもん。きちんと使いきらなきゃ」 

聡「むしろ残しておいた方が(ry」 

247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:43:23.63 ID:9EWpw1EsO
唯「ほら、次行くよ、次」 

ガシッ 

聡「ま、待って下さいってば」 

ドンッ 

唯「キャッ」 

唯「……あ、す、すみません!! 大丈夫ですか?」 

女「いえ、こちらこそ……」 

聡「どうしたんですか、唯さん?」 

唯「あ、いや……なんでもないよ」 

唯(綺麗な人だったな……) 

唯(あれ、でもあの顔、どこかで……?) 

248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:54:46.83 ID:9EWpw1EsO
女「ふ~ん、何か良い雰囲気じゃん……」 

―――――――――――――――――――― 
唯「次にぃ、私たちはぁ、水族館にやってきましたぁ!」 

唯「お魚がたくさんです」 

聡「唯さん、あっちにスゲーでかいサメがいますよ!」 

唯「……うぉ、ほんとだ! あんなのに捕まったらお仕舞いだよぉ~」 

聡「唯さんならひと口で食い殺されますね」 

唯「ちょっと、やめてよ~!」 

249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 10:59:55.96 ID:9EWpw1EsO
聡「あ、あっちでイルカショーやってますよ!」 

唯「は、早いって聡君……」 

聡「ほら、行ってみましょう!」 

ガシッ 

唯「あっ、ちょっと……///」 

―――――――――――――――――――― 
チラチラ 

女「おいおい、何だよ、手なんか繋いじゃってさぁ…… 
お前はそういうキャラじゃないだろ!」 

250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 11:11:36.39 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――― 
唯「今私たちがいるのわぁ、ショッピング街の8階にあるぅ、超巨大映画館です!」 

聡「毎回やるんですか、それ」 

唯「何か面白い映画は~と……あ!」 

聡「何かやってます?」 

唯「澪ちゃんの映画、今日公開だって!」 

聡「マジっすか? 唯さんもう原作読み終わったんでしたっけ……?」 

唯「まだだけど……これはもう、見るしかないでしょう!」 


252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 11:18:10.36 ID:9EWpw1EsO
唯「じゃあ、早速チケット買いに行こう」 

聡「多分、人めちゃくちゃ多いですよ、これは……」 

唯「ほんとだ、うわぁ……座れるかなぁ?」 

―――――――――――――――――――― 
女「映画、か……」 

女「あいつらが見に行ったのは……」 

女「…………」 

女「……外で、待っておくか」 

253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 11:24:13.70 ID:9EWpw1EsO
唯「それにしても、すごい人気だねぇ……」 

聡「あ、そろそろ始まりますよ」 

唯「あ、待って。私トイレに行ってくる」 

聡「荷物俺が見ておきますよ」 

唯「ホント? じゃあ、宜しく」ダッ 

聡「…………チャンス」 

255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 11:30:04.37 ID:9EWpw1EsO
聡「鞄を探る機会は中々無かったからな……」 

聡「早いとこ見つけて……」 

ガサゴソ 

聡「どこだ……無い」 

ガサゴソ 

聡「無い……無いぞ……ああもうクソッ、一体どこに隠したんだ……」 

聡(これだけ探して無いってことは、どこか別の場所に隠してあるのか……?) 
聡(ダメだ、どっちみち、まだこの女の元を離れる訳にはいかないな……) 

256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 11:35:31.19 ID:9EWpw1EsO
唯「聡くぅ~ん、もう始まった~?」 

聡(あ、ヤベッ)バッ 

聡「いや、まだっすよ……あと5分くらいですね」 

唯「私まだオチ見てないから、楽しみぃ~!」 

聡「いやあぁ~、面白いっすよ。最後は超どんでん返しが……」 

唯「あ、もう、だから喋らないでってば!」 

257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 11:41:23.74 ID:9EWpw1EsO
ブーーー 

聡「お、始まりましたね……」 

唯「わくわく」 

聡「CMなげぇ……」 

―――――――――――――――――――― 
女「始まったかな……。映画が終わるまで、あと2時間かぁ……」 

女「仕方ねぇ、買い物でもして時間潰すか」 


261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 12:07:56.66 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――― 
唯「いやぁ、しかし……面白かったぁ~!!」 

聡「原作派の俺としても楽しめました」 

唯「でもまさか最後、主人公が■■せずに■■するなんて……」 

唯「何だか納得がいかないなぁ……」 

聡「もしも唯さんが同じ立場だったなら、どうします?」 

唯「私だったら■■するかも……」 

聡「直接本人に言ってみたらどうです?w」 

唯「え、だ、ダメだよそんなの~(笑)」 

263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 12:19:13.60 ID:9EWpw1EsO
聡「……これから、どうします?」 

唯「そうだなぁ……ちょっと公園を散歩しない?」 

聡「分かりました。だったら、あそこへ行きましょう」 

―――――――――――――――――――― 
聡「ここの公園、今日行く途中に気付いたんですけど、凄い綺麗だな~って」 

唯「本当だ……」 

テクテク 

唯「……あのさぁ」 

聡「…………」 

唯「……私さ、あの時あずにゃんのライブで聡君と会う前はね、 
……毎日が本当に退屈で退屈で、うんざりしてたの……」 

聡「……まあ俺も似たようなもんっすよ」 

264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 12:26:06.48 ID:9EWpw1EsO
唯「聡君は、まだ大学生だし……」 

唯「私の年齢なら、もう結婚してる人とかもたくさんいると思うんだ……」 

聡「……唯さんは、まだ早いんじゃないっすか?」 

唯「そうかな……でも、やっぱり皆を見てると、きちんと仕事してたり、家庭を持ってたり……」 

聡「…………」 

唯「私なんか、バイトもうまくいかず、親からの仕送りで過ごしてさ……友達にも頼りっぱなしで……」 

聡「…………」 

聡「それは……」 

唯「でもね!!」 

265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 12:33:23.06 ID:9EWpw1EsO
唯「今は、違うの」 

聡「…………」 

唯「聡君と会って、あずにゃんと会って……」 

唯「ギー太が燃えちゃったりしたけど、それから、澪ちゃんとも会って……」 

唯「私、思ったの」 

唯「私にもできることがある、って」 

唯「それに気付かせてくれたのは、聡君のおかげだから……」 

唯「だから、ありがとう」 

聡「……いや、俺は別に……何もして無いっすよ」 

266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 12:38:21.04 ID:9EWpw1EsO
唯「ねぇ、手ぇ繋いでもいい……?」 

聡「はい……」 

ギュウ 

唯「それと……」 

唯「もう一つ」 

唯「目、つぶって」 

―――――――――――――――――――― 

女「はぁはぁ、どこ行ったんだ、あいつら……!」 

女「くそ、こっちか……!?」 

女「あ、いた!!」 

女「なんかヤバいことになってるぞ……!!」ダッ 

268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 13:07:20.22 ID:9EWpw1EsO
女「くそ、間に合え……!!」 

唯「ん~……」 

女(まず、左手で奴を押し退け、そのまま同時に川へ突き落とす! 一秒もかからないさ!) 

女「今だッ!!!」 

ドンッ 

聡「え?」 

バッシャア!! 

唯「ちゅっ」 

女「あれ?」 

269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 13:14:59.97 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――― 
聡「……ふぇーっくしょい!!」 

唯「あの、聡君……大丈夫?」 

聡「大丈夫じゃないです……ズビ」 

唯「あ、はい、ティッシュ」 

聡「しかし、何だったんすかね、あれ……?」 

唯「さ、さぁ?」 

聡「俺は、唯さんに突き落とされたのかと思いましたよ」 

唯「わ、私なんか……」 

唯(見ず知らずの他人にキスしてしまったとは言えない……) 

270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 13:27:36.01 ID:9EWpw1EsO
唯「と、とにかく、風邪ひく前に帰ろう?」 

聡「もうひきかけですけど……」 

唯「ま、まあ……戻ったら澪ちゃんが、温かい飲み物を用意してくれるよ!」 

聡「そうっすね……」 


―――――――――――――――――――― 
女(な、何をやってるんだ、私は……) 

女(まさか唯にキスされる事になるとは……) 

女(でも、なんとか間に合って良かったぁ) 

283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 17:28:23.83 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――― 
ガチャ 

唯「ただいまぁ……澪ちゃん?」 

聡「う~さぶぃ……」 

唯「澪ちゃん、帰ったよ~」 

聡「まだ仕事中っすかね?」 

唯「そうみたい……」 

聡「もう少ししたら帰ってくるんじゃないすか?」 

唯「うん……勝手にいじって悪いけど、タオル貸してもらおう」 

284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 17:33:44.55 ID:9EWpw1EsO
唯「とりあえず、聡君はシャワーでも浴びてきたら?」 

聡「……そうします」 

唯「ええっと、着替えあるかなぁ……」 

唯「とりあえず、濡れた物は洗濯機に入れて……」 

唯「あ、このバスローブ使えそう♪」 

ブーブー 

唯「メール……誰からだろう?」 

287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 17:48:46.41 ID:9EWpw1EsO
新着メール:一件 

From 澪ちゃん 
事件だ、唯! 
つい先程、ショッピングモールの楽器店でギターが1本盗まれたらしい 
私はたまたま近くにいたんだが、 
唯もこっちに向かってほしい 
タクシー代は後で私が払う 

唯「よし、来たっ!」 

ドン、ドン 

唯「聡君、聡君」 

聡「うぉ、どうしたんすか、唯さん!?」 

唯「楽器ドロ出たって、今から向かうよ!」 

聡「え、今から!? ふ、服が……」 

唯「大丈夫、ここにバスローブがあるから!」 

聡「え、それで外出ろって事ですか!?」 

唯「うん、聡君なら多分似合うと思うよ」 

聡「絶対嫌です!!」 

288 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 17:55:26.16 ID:9EWpw1EsO
唯「大丈夫だって~、ほら、ここに置いとくよ?」 

聡「もっと他に着る物あるでしょう!」 

唯「だって、ジーンズは履けないだろうし……スカートとか?」 

聡「余計嫌です」 

聡「仕方ないですね、さっきの濡れた服でいいんで……」 

唯「洗濯機の中だよ?」 

唯「あ、もうタクシー読んだから」 

290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 18:01:31.11 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――― 
聡「結局これか……」 

唯「似合ってるよ、聡君」 

聡「そういう問題じゃなくてですね」 

唯「あ、すみません。こちらの住所までお願いします」 

唯「まあ、ここまできたんだから諦めなさい」 

聡「……下、何も履いてないんですけど」 

唯「…………」 


294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 19:15:28.15 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――― 
聡「着きましたよ」 

唯「……澪ちゃーん?」 

ダッ 

澪「唯、早かったな」 

唯「うん!それで、犯人は見つかったの……?」 

澪「いや、それが……」 

―――――――――――――――――――― 
唯「えぇ、澪ちゃん犯人見たの!?」 

澪「ああ、途中まで追いかけたんだが、見失って……」 

聡「顔は見たんですか?」 

澪「いや、後ろ姿だけ……でも、梓じゃなかったのは確かだ」 

唯「違う人……グループの他の人かな?」 

澪「……多分、ね」 

295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 19:25:41.65 ID:9EWpw1EsO
唯「でも良かった、あずにゃんじゃなくて……」 

澪「うん、そうだな。一旦戻ろうか」 

聡「何だ、繰る意味なかったじゃん……やれやれ」 

澪「聡……何だその格好?」 

―――――――――――――――――――― 
澪「あはは、じゃあそのまま川に突っ込んだんだ」 

聡「笑い事じゃないっすよ……」 

唯「そうだよ!私もびっくりしたんだから」 

澪「どこかの誰かが、二人がイチャついてるの見て、イライラしたんじゃないか?」 

唯「べ、別にイチャついてた訳じゃなよ……」 

聡「川に突き落とさなくてもいいかと」 


299 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 20:07:48.82 ID:9EWpw1EsO
澪「洗濯物が乾くまでの辛抱だ。 
それと温かい物作ってやるから」 

聡「はぁ……お願いします」 

澪「それじゃ、車こっちに停めてあるから 

―――――――――――――――――― 
唯「じゃあ結局分かったことは、 
今回楽器を盗んだのはあずにゃんじゃない、ってことだけかぁ~」 

澪「うーん、それともう一つ気になる事があってな」 

聡「気になること?」 

澪「……あの店長、どうも被害届を出すのが嫌だったみたいなんだ」 

唯「え、自分のところの楽器を盗まれたのに?」 

澪「うん、どうも出すのを渋ってさ…… 
別に一つ盗まれたくらい、いいですって」 

唯「……変なの、ねぇ、聡君?」 

聡「店長が面倒に絡まれたくなかっただけじゃないっすか?」 

300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 20:19:52.89 ID:9EWpw1EsO
澪「確かにまあ、そうかもしれないな…… 
ほら、着いたぞ」 

―――――――――――――――――――― 
一方その頃 

梓「ああ、もう、遅い!!」 

キーボード「まあまあ、その内帰ってくるわよ」 

梓「だって、明後日までに新曲の練習しておかないと……」 

ギター「大丈夫でしょ。この前合わせたときはバッチリだったじゃん」 

梓「そうだけど、やっぱり不安……」 

キーボード「梓ちゃん、心配性ねぇ……」 

バンッ! 

ベース「ごめん、今帰ったよ」 

ドラム「わりぃ、わりぃ、遅れて」 

302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 20:37:59.23 ID:9EWpw1EsO
梓「もう、何やってたんですか、二人とも!」 

ベース「わ、私じゃないよ、こいつが!」 

ドラム「あ~わりぃ、ちょっとヤボ用が……」 

梓「はぁ、またですか…… 
まあいいです、早く練習しましょう」 

ドラム「え~、帰ったばっかりなのにー」 

梓「うるさい、つべこべ言わずに練習するです!」 

303 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 20:40:27.18 ID:9EWpw1EsO
―――――――――――――――――――― 
コンコン 

女「どうぞ」 

男「失礼します」 

ガチャ 

男「社長、今週発表されたシングルのオリコンチャートの集計結果が届きましたので」 

ズズッ……カチャ 

女「うん、それで?」 

男「Nyan☆Nyansが初登場一位にランクインしております」 

女「そう……」 

女「まあ、当然よ」 

女「なんたって……これからのJ-POP界を支える、期待の新人アーティストなんだから」 

304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 20:54:55.03 ID:9EWpw1EsO
男「ところで社長、今度のライブには社長ご自身も参加されるそうで?」 

女「ええ……なんたってビッグイベントですもの、私が行かなくてどうするの?」 

女「それに、Nyan☆Nyansの名を世界に知らしめるいい機会だわ」 

男「……何か、ご計画なさっているのですか?」 

女「色々と……そうね、ちょっとしたハプニングとか、あるといいかも……」 

男「……まあほどほどにして下さいよ、社長」 

310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:16:28.22 ID:9EWpw1EsO
唯「はぁ、やっぱり我が家が一番だなぁ~」 

ゴロゴロ 

澪「唯、くつろぎすぎ」 

聡「まだ昨日来たばっかりじゃないですか」 

唯「ふかふかのソファー、大きなテレビ、美味しい料理……」 

唯「まるで竜宮城だよぉ~」 

聡「確かに居心地の良さはヤバいっすよね……」 

311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:24:14.15 ID:9EWpw1EsO
澪「唯、先お風呂入ってきたら?」 

唯「うん、聡君は~?」 

聡「あ~俺はさっきシャワー浴びたんでいいっす」 

唯「そっか、じゃあ私から入って来よ~っと」 

―――――――――――――――――――― 
唯「ふぅぃ~いいお湯だった……」 

唯「長風呂しすぎて、ちょっぴりのぼせちゃった……」 

唯「えぇ~と、部屋はどっちだっけ……」 

312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:27:57.01 ID:9EWpw1EsO
唯「それにしても、沢山部屋があるなぁ」 

唯「え~っと、こっちは……」 

唯「あれ、違ったかな……?」 

唯「ここはなんだろう」 

ガチャ 

唯(暗くてよく見えない……) 

唯「電気、電気……」 

ピッ 

唯「…………」 

唯「す、すごい……」 

315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:32:23.78 ID:9EWpw1EsO
そこには、いくつかのベースや音源機器など、 
様々な音楽関係の器具がそろっていた 

唯「ってコトは、澪ちゃんはまだベースを続けてたんだ……」 

唯「へぇ~……」 

唯(じゃあ、もしかして、昔使ってたベースもあるのかな……?) 

316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:35:08.50 ID:9EWpw1EsO
唯「どれどれ……」 

ガサゴソ 

唯「これじゃなくて……これでもないし……」 

唯「あれ、おかしいなぁ……」 

唯(もしかして、自分の部屋に置いてるのかな……?) 

唯(後で澪ちゃんに聞いてみよう) 

317 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:39:02.26 ID:9EWpw1EsO
――――――――――――――――――― 
唯「はぁ、今日も美味しかった~」 

カチャ 

聡「ご馳走様でした」 

澪「お粗末様でした」 

唯「今日こそは私がお片付け手伝うよ~」 

澪「ありがと、じゃあ唯は皿を拭くの手伝ってくれるか?」 

唯「はぁ~い♪」 

318 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:42:09.39 ID:9EWpw1EsO
カチャカチャ 

澪「…………」 

カチャカチャ 

唯「…………」 

唯「ねぇ、澪ちゃん」 

カチャン 

澪「なんだ?」 

唯「……澪ちゃんって、まだベース続けてるの?」 

澪「あ~……たまに気晴らし程度に、な」 

澪「別にバンド組んでるって訳じゃないよ」 

319 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:48:13.20 ID:9EWpw1EsO
唯「ふ~ん、そうなんだ……」 

カチャカチャ 

唯「そう言えばさっき、お風呂上がりにさぁ、部屋間違えちゃって……」 

唯「楽器を置いてある部屋に入っちゃった」 

カチャカチャ 

澪「ん、そうなの? まあ、慣れてないと分かりにくいからな……」 

唯「……澪ちゃんはいっつもあそこでベース弾いてるの?」 

澪「そうだよ」 

唯「……部屋で弾いたりとかは?」 

澪「いや、ないな」 

320 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:53:54.34 ID:9EWpw1EsO
唯「そっかぁ……」 

カチャカチャ 

唯「……ところで澪ちゃん、昔使ってたベースは?」 
カチャカチャ 

ピタッ 

澪「……なんで?」 

唯「あ、いや、チラッと見たら、置いてないなぁ~って」 

唯「……もしかして、古くなったから……」 

唯「捨てちゃったとか!?」 

澪「捨てるもんか!!!」 

321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 22:58:52.67 ID:9EWpw1EsO
澪「あ、いやその、ほら……あれは皆との思い出が詰まった物だし……」 

澪「……そんな簡単に、捨てたりはしないよ」 

唯「そそそそそうだよねっ!! あはは、ごご、ごめん、ごめん……」 

澪「…………」 

澪「……あれ、無くしちゃったんだ」 

唯「……無くした?」 

322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/01(日) 23:12:59.53 ID:9EWpw1EsO
澪「……うん、大学入るちょっと前に、ね 

唯「ど、どうして?」 

澪「誰かが盗っていっちゃったみたい……」 

唯「そ、そうなんだ……」 

澪「だから、アレはもう無い。……残念だけどね」 

唯「そぉかぁ……でも、私もギー太燃えちゃったから、一緒だね!」 

澪「…………」 

澪「……あはは、そうだなぁ」 

唯「でしょ? うふふ」 

澪「――それじゃ、この話はお仕舞い。あとは私がやっておくから」 

澪「唯も早く寝るんだぞ~?」 

唯「りょうか~い!」 

332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 01:09:29.21 ID:gel4iuf2O
―――――――――――――――――――― 
ボスン 

唯「ふぅ~い、ベッドふかふか……」 

唯「…………」 

唯「今日も色々あったなぁ」 

唯「……しかし、澪ちゃんベースなくしちゃったのか~」 

唯「あ、なくしたというより、盗まれちゃったんだっけ……?」 

唯「盗まれた、ねぇ……」 

唯(……もしかして、それって楽器ドロと何か関係があるんじゃ……?) 

333 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 01:15:10.15 ID:gel4iuf2O
唯(でも、澪ちゃんが盗まれたのは、大学に入るちょっと前の事だって言ってたっけ……) 

唯(楽器ドロは一体いつから続いてるんだろう……?) 

唯「う~ん……」 

唯「……あ、そうだ!」 

唯(今までに分かった事を、ちょっとノートに整理してみよう) 

唯(ええっと、ノート持ってたっけ……) 

334 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 01:26:16.87 ID:gel4iuf2O
唯「あ、あったあった」 

唯(時系列順がいいかな?) 

唯「とりあえず、箇条書きにして……」 


〈これまでに分かったこと〉 

・澪ちゃんのベースが盗まれた(大学前) 
・澪ちゃんとりっちゃんは、けんか中? 
・あずにゃんのバンドが物を盗んでいるらしい(聡君いわく) 
・私のアパートが燃やされた 
・聡君のギターに、白い粉 
・昨日の楽器ドロは、あずにゃんではない 
・楽器の店長は被害届出すのをしぶってた? 


唯「う~ん、こんなもんかなぁ……」 

335 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 01:31:03.43 ID:gel4iuf2O
唯「よし、これを眺めて……!」 

唯「…………」 

ぷしゅ~ 

唯「何も分からないよぉ……」 

唯「やっぱり、ダメかぁ」 

じぃー 

唯「…………」 

唯「あれ、そう言えば……」 

唯「あの白い粉って、どこにやったっけ?」 


337 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 01:40:38.95 ID:gel4iuf2O
唯「確か、あれは……」 

唯(ギターいじってる時に、聡君が現れて……) 

唯(ポケットの中にとっさに隠したんだ) 

唯(それから、寝る前にポケットから出して、自分の部屋の机の上に置いて……) 

唯「その後、どうしたっけ……」 

唯(あずにゃんからメールがあって、急いで準備して外に出て……) 

唯「あっ……」 

唯「燃えたんだ……」 

唯「アパートと、ギー太と一緒に……」 

唯「あちゃぁ~、あれから何か分かるかもしれなかったのに……」 

唯(もう、私のバカバカ!) 

357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 13:38:39.17 ID:gel4iuf2O
唯(う~ダメだ、やっぱり今日は早く寝よう) 

唯(……また明日に備えて) 


ライブ当日まで 
あと 3日 


――――――――――――――――――― 

ザアァーーーー 

唯「今日は一日雨、かぁ」 

唯「皆出かけちゃったし、退屈だなぁ……」 

―すいません、唯さん 
―今日は用事があるので、夕方には帰ってきます 

―ごめん、唯 
―今日も仕事場に行かなくちゃならないから 

唯「……テレビでも見て過ごそうかな」 


358 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 13:47:13.42 ID:gel4iuf2O
ブーブー 

唯「あ、メール……」 

唯(誰からだろう?) 

受信中 

From 和ちゃん 
ちょっと唯、アパートが家事になったって本当!? 
唯のアパートに行ったら、立入禁止になってるし…… 
ケガとかないの? 大丈夫? 
それと、今どこにいるのか教えて! 


唯「しまった、和ちゃんに連絡するの忘れてたよ……」 


362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 14:00:42.79 ID:gel4iuf2O
ごめん、和ちゃん!(絵文字) 
色々あって、今澪ちゃんの所にいるの 
これからそっちに行ってもいい? 

送信中 


唯「和ちゃんには、きちんと説明しておかないと……」 

ブーブー 

受信中 

唯「はやっ」 

From 
空いてるから、事情をきちんと私に説明しなさい 


唯「り、ょ、う、か、い……っと、送信」 

唯「……よし、そうと決まれば、早く和ちゃんの所へ向かおう!」 

363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 14:13:59.14 ID:gel4iuf2O
――――――――――――――――――― 
ピンポーン 

ガチャ 

和「……唯、久々。入って」 

唯「お邪魔しま~す」 


――――――――――――――――――― 
――――――――――― 
和「もう、そんな事なら早く私に言えばいいのに!!」 

唯「ごご、ごめん……」 

和「泊める事くらい、いつでもしてあげるのに……」 

唯「で、でもでも……和ちゃんにはいっつも頼ってばっかだし…… 
それに和ちゃんのうち、あんまり広くないから、泊めてもらうの悪いかなって……」 

和「はぁ……」 


和「まあいいわ。とにかく唯が無事で良かった」 

365 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 14:24:28.81 ID:gel4iuf2O
和「それで、いつまで澪のうちにいるの?」 

唯「えっと……とりあえず、ライブが終わるまでは……」 

和「……そう」 

和「まあ、何かあったら、また私に連絡してね」 

唯「うん、分かった。次はちゃんと連絡するよ」 

和「じゃあ私、ちょっとお茶入れてくるね」ガタッ 

366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 14:32:40.96 ID:gel4iuf2O
唯(それにしても、和ちゃんのうちに来るの、久しぶりだなぁ……) 

唯(全然変わってないけど) 

キョロキョロ 

唯「あっ……」 

唯「卒アルはっけ~ん」 

唯「どれどれ……」 

カチャ 

和「はい、どうぞ」 

唯「お、ありがと~」 

和「何やってるの?」 

唯「卒アルが置いてあったから……ちょっと見てもいい?」 

和「どうぞ」 

367 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 14:37:26.07 ID:gel4iuf2O
和「そう言えば唯、卒業アルバムは……?」 

唯「うん、燃えちゃった」 

和「そう……」 

ペラ 

唯「あ、みてみて~和ちゃんがいるよ!」 

和「そりゃあいるわよ」 

唯「……和ちゃんってぇ~、もしかして写真うつり悪いタイプ?」 

和「どういう意味だ」 


370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 14:46:55.27 ID:gel4iuf2O
唯「あ、部活紹介」 

唯「けいおん部は、と……」 

唯「あったあった」 

唯「…………」 

唯「う~ん、まあ普通かな!」 

和「いやいや、すごく浮いてると思うよ」 

唯「やっぱり猫耳を付けて写るべきだったんだ……」 
唯「まさか、さわちゃんの言う事が正しかったなんて……」 

和「確実に間違ってるから、それ」 

371 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 14:59:54.99 ID:gel4iuf2O
唯「もしくは、全員ナース服で……」 

和「もはや何のアルバムか分からない」 

唯「ところで和ちゃんの生徒会は地味だね」 

和「それが普通だっ!」 


――――――――――――――――――― 
唯「はぁ~、美味しかったぁ、ご馳走様」 

和「唯、これからの予定は?」 

唯「う~ん、とりあえず一旦帰ってぇ……」 

唯「あ、そう言えばさぁ、……和ちゃん」 

和「何?」 


378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 16:23:16.06 ID:gel4iuf2O
唯「和ちゃんって最近、澪ちゃんと合う機会とかあった? 

和「澪と? いや、最近は会ってないよ」 

唯「そっか……」 

唯「いつから会ってないの?」 

和「う~ん、大学入るちょっと前くらいからかなぁ」 
和「ほら、澪って大学凄く遠いところに行ったでしょ?」 

379 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 16:33:16.69 ID:gel4iuf2O
唯「え、そうだっけ?」 

和「知らないの?」 

和「確か○○大学の文学部だったと思うんだけど……」 

唯「そんな遠く!?」 

和「だから、なかなか合う機会も無いし」 

唯「そりゃあ会えないよね……」 

和「実は私も、それを知ったのはずっと後なんだ」 

和「……てっきり、律と同じ大学に行くとばかり思ってたんだけど」 

380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 16:38:49.99 ID:gel4iuf2O
ピクッ 

唯「……その辺、詳しく」 

和「え? いや、だから、律と同じ大学に行くのかと……」 

唯「なんでそう思ったの?」 

和「? だってあの二人、仲良しじゃん。 
それに、澪がそこへ行くって言ってたから」 

唯「澪ちゃんはその大学に行くって言ってたの?」 

和「うん、私はそう聞いてたから……」 

和「だから、後で別の大学に行ったって聞いて、びっくりした」 

381 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 16:44:31.08 ID:gel4iuf2O
唯「ふむふむ、なるほど……」 

唯「それで、大学が変わった理由については何か知ってる?」 

和「えっと、確か、親の都合がどうとか…… 
ゴメン、あんまり詳しくは分からない」 

唯「そっかぁ……分かった。参考になったよ」 

和「参考って……何の?」 

唯「あ、いや、大したことじゃないから」 

唯「……それより和ちゃん、今日はご馳走様でした」 

和「あれ、唯、もう行くの?」 

唯「うん、あんまり長居したら悪いし」 

和「もっとゆっくりしていけばいいのに」 

383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 16:53:30.70 ID:gel4iuf2O
唯「ううん、帰ってやることもあるし……」 

和「そう……あ、ちょっと待って」 

唯「?」 

和「これ、お菓子作ったから……良かったら後で皆と食べて」 

唯「和ちゃん……何から何まで……」 

唯「ありがとう」 

和「ううん……それじゃ、またね」 

唯「うん、また」 


――――――――――――――――――― 

ザアァーーーーーー 

唯「ふぅい~、結構長居しちゃったなぁ……」 

唯「でも雨はまだ、止んでないかぁ……」 

唯(そうだ、帰りにCDショップに寄ろうと思ってたんだ) 


385 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 17:01:36.07 ID:gel4iuf2O
――――――――――――――――――― 

唯「えっとぉ……た、ち、つ、て、と……な、に……」 

唯「Nyan☆Nyans……あったあった」 

唯「やっぱり、こういうのはCDで聞かないとね」 

――――――――――――――――――― 

店員「ありがとうございましたー」 

唯「よし、早くか~えろうっと」 

唯「えっと、傘、傘……」 

唯「……あれ、無い」 

キョロキョロ 

唯「あれ……? 

唯「うそぉ……、盗られた……?」 

唯(今CD買ったから、お金持ってないのに……) 

386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 17:07:22.37 ID:gel4iuf2O
唯(和ちゃんのうちに戻って……) 

唯(……いや、ダメだ、距離的に余計濡れちゃう) 

唯(……このどしゃ降りの中を、歩いて帰るのか) 

唯「……風邪ひいちゃうよぉ」 

唯(でも、仕方ないよね……) 

唯(とりあえず、和ちゃんにもらったお菓子が濡れないようにして……) 

387 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 17:13:03.19 ID:gel4iuf2O
唯「ふぇ~くしゅん!」 

唯「はぁ、さぶぅ……」 

ぶるぶる 

唯(あともう少しで、駅だ……) 

唯(やっぱり澪ちゃんに向かえにきてもらった方が良かったかな……) 

唯(でも、まだ仕事中だろうし……) 

唯「…………はぁ」 

唯「……あれ?」 

唯「あそこにいるのは……」 

389 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 17:18:17.15 ID:gel4iuf2O
唯「……聡君だぁ!」 

ダッ 

唯「お~い! 聡く……」 

唯「…………」 


―うん、あはは、それでさぁ 
―えぇ、ウソ、マジでぇ!? 


唯「…………」 

唯「……誰、あの女の子」 

391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 17:25:03.93 ID:gel4iuf2O
―そうそう、すげぇ面白かったんだよ 
―え~、私も見た~い! 
―今度一緒に見に行こうぜ 
―やったぁ、私、楽しみにしておくね! 


唯「…………」 

唯「……そっか」 

唯「……そうだよね」 

唯「…………」 

唯「そりゃあ彼女の一人や二人、いるさ!」 

唯「……いや、二人いたらマズイけど」 

唯「…………」 

唯「…………帰ろ」 

392 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 17:31:04.91 ID:gel4iuf2O
トボトボ 

唯「服、びしょ濡れだ……」 

唯「帰ったら、着替えないと……」 

ドンッ 

唯「いたっ」 

男「……チッ。オイ、どこ見て歩いてんだよ」 

唯「あ、す、すいません……!」 

唯(……自分からぶつかってきた癖に) 

唯「…………あぁ!」 

唯「…………」 

唯「和ちゃんに作ってもらったお菓子……」 

唯「和ちゃんが、せっかく一生懸命作ってくれたのに……」 


394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 17:37:59.12 ID:gel4iuf2O
唯「…………グスッ」 

唯「うぅ……何やってんだろ、私……」 

唯「……ヒグッ……一人で勝手に盛り上がっちゃってさ……」 

唯「ホント、馬鹿みたい……」 

唯「…………」 

ザアァーーーーーー 


――――――――――――――――――― 
―――――――――― 
――――― 

403 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 20:10:41.35 ID:gel4iuf2O
ガチャン 

澪「あ、唯。ずいぶん遅かったな」 

澪「二人とも心配してたんだぞ?」 

唯「…………」 

スタスタ 

澪「唯……?」 

唯「…………」 

スタスタ 

澪「お、おい、唯……!」 

澪「お前……びしょ濡れじゃないか! 一体どうして――」 

唯「…………」 

唯「……ほっといて」 


405 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 20:16:59.60 ID:gel4iuf2O
聡「澪さーん、どうしたんすかー?」 

澪「あ、いや、唯が……」 

澪「あ、ちょ、ちょっと待てってば……」 

唯「…………」 

スタスタ 

ガチャン 

澪「…………」 

聡「…………澪さん?」 

澪「……しーっ」 

聡「?」 

澪「……そっとしておいてやろう」 

406 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 20:27:00.38 ID:gel4iuf2O
――――――――――――――――――― 

聡「しっかし、どうしたんすかねぇ、唯さん?」 

澪「さぁ、分からない……」 

澪「……でも」 

澪「でも今は……そっとしておいてあげた方がいい気がする」 



408 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 20:28:52.78 ID:gel4iuf2O
――――――――――――――――――― 

コン、コン 

聡「あの、唯さん?」 

唯「…………」 

聡「飯……冷えますよ?」 

唯「…………」 


――――――――――――――――――― 

コンコン 

澪「唯、起きてるか?」 

唯「…………」 

澪「……雑炊作ったんだけど、いらない?」 

唯「…………」 

唯「ごめん、今、食欲ない」 

410 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 20:34:36.29 ID:gel4iuf2O
――――――――――――――――――― 

唯(…………) 

唯(……なんだろう) 

唯(……なんだか頭が、ボーっとする) 

唯(…………) 

唯(……こんなんじゃ、ダメだな) 

唯(……こんな事で、いちいち落ち込んでたら) 

唯(……強くならなきゃ) 

唯(もっと、強く……) 



ライブ当日まで 
あと 2日 

413 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 20:47:35.85 ID:gel4iuf2O
翌朝 

コンコン 

澪「唯ー?」 

澪「唯、入るぞ?」 

ガチャン 

澪「……唯?」 

唯「…………」 

唯「……あ……澪ちゃん……」 

澪「唯……お前、顔赤いぞ……?」 

澪「……どうした?」 

唯「…………」 

唯「…………ん~っとねぇ……頭がボーっとするの……」 

414 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 20:50:45.45 ID:gel4iuf2O
澪「お前……!」 

澪「ちょっと失礼」 

ピタッ 

澪「……あつぅ!」 

澪「お前、熱があるじゃないか!!」 

唯「…………エヘヘ、ごめんね……」 

澪「何でもっと早く言わなかったんだ……」 

澪「待ってろ、すぐお絞りと体温計持ってくる」 

415 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 20:55:01.13 ID:gel4iuf2O
――――――――――――――――――― 

澪「……ほら」 

唯「……ありがと、澪ちゃん……」 

ピピッ 

澪「37度8分か……」 

澪「食欲は、ある?」 

唯「ううん……」 

唯「あ、でも飲み物が欲しいかも……」 

澪「分かった、ちょっと待ってろ」 

416 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 21:01:48.60 ID:gel4iuf2O
澪「起き上がれるか?」 

唯「……ちょっと厳しいかも……」 

澪「じゃあ、そのまま……」 

澪「……っと、こぼさないようにな」 

唯「……んぐんぐ」 

唯「つめ゙たい」 

澪「冷蔵庫に入れてたからな」 

417 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 21:09:05.13 ID:gel4iuf2O
澪「しかし、昨日の夜から何も食べてないんだよな?」 

唯「……コクコク」 

澪「やっぱり何か口に入れた方がいいな……」 

澪「…………」 

澪「よし、昨日の雑炊温めてくるか」 

ぐいっ 

唯「……ま゙って」 

唯「い゙かないで……」 

澪「だ、大丈夫だって……」 

澪「……すぐ、戻るから」 

418 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 21:15:21.82 ID:gel4iuf2O
――――――――――――――――――― 

澪「どう? ……うまいか?」 

唯「…………おいしい」 

澪「そっか、良かった……」 

唯「…………」 

唯「……ねぇ、澪ちゃん」 

澪「なんだ、唯?」 

唯「……昨日、夢を見たの」 

澪「夢? どんな?」 

唯「……あのねぇ、」 

唯「……けいおんの皆で……」 

唯「もう一度……集まって演奏する夢」 

澪「…………」 

419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 21:19:24.54 ID:gel4iuf2O
唯「もう、できないのかなぁ……?」 

澪「…………」 

唯「私、もう一度……皆と演奏したいな……」 

澪「…………」 

澪「…………むり……だよ……」 

唯「…………」 

唯「そっかぁ……そうだよねぇ……」 

唯「皆忙しいもんね……」 

澪「…………」 

420 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 21:24:34.75 ID:gel4iuf2O
唯「……ねぇ、澪ちゃん……」 

澪「…………」 

唯「……澪ちゃんって、どうしてそんなに強いの……?」 

澪「…………」 

唯「私なんか、ダメだよ……」 

唯「ちょっとした事で、すぐに落ち込んで……」 

唯「行き詰まって……」 

唯「…………」 

唯「どうしたら澪ちゃんみたく……そんなに強くなれるのかなぁって……」 

澪「…………」 

澪「…………強く、ないよ」 

421 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/02(月) 21:29:52.74 ID:gel4iuf2O
澪「強くなんか、ない」 

唯「…………」 

澪「……私きっと、唯よりも弱いよ」 

唯「……ウソだぁ」 

澪「ホントだよ!!」 

唯「例えば、どんな所が?」 

澪「…………」 

澪「じゃあ……」 

唯「…………」 

澪「……話してあげるよ」 


澪「私が友達を一人、なくした話」 


450 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 07:19:48.68 ID:xSSnDzAsO
――――――――――――――――――― 
―――――――――― 
――――― 

毎晩私の隣の部屋から、喧嘩する声が聞こえるようになったのは、私が大学に合格してからすぐ後の事だった 

私は毎日聞こえないフリをしていたけど、内心はもう駄目かな、と思っていた 
終わるのはもう時間の問題だ、と 

しばらく後、私の父親は全財産を持ち逃げして家を出た 

私は、大学に行くお金すらなくなったんだ 

そんな事はつゆ知らず、そいつは楽しげに私に話かけてくる 

大学に入ってからこうしよう、ああしよう、とか 

私はそれを聞くのが本当に辛かった 

493 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 21:24:06.73 ID:xSSnDzAsO
――――――――――――――――――― 

律「なぁ、澪。大学入ったら絶対軽音部に入ろうな!」 

律「それで、一緒に武道館へライブに行くんだ」 

澪「……あ、う……うん……もちろんだよ」 

律「なんだよ、元気ないなぁ……どうかしたのか?」 

澪「いや、何でもない……」 

律「んじゃ、練習しようぜ、練習! それまでに腕を磨かないとな」 

澪「はは……お前から練習しようなんて、珍しいな」 

澪「じゃあ私、家からベース持ってくるよ」 


495 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 21:31:37.90 ID:xSSnDzAsO
――――――――――――――――――― 

澪「…………」 

澪「…………うそ」 

家に帰った私が見たのは、 
あらゆる物を持っていかれて、もぬけの殻になった私の部屋だ 

母親が留守のうちに借金取りがやってきて、 
金目の物は全て持っていってしまったらしい 

……もちろん、ベースもだ 


497 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 21:36:29.99 ID:xSSnDzAsO
――――――――――――――――――― 

タッタッ 

律「おい、澪!」 

澪「…………」 

律「何で最近、練習に来ないんだ?」 

澪「……ごめん、忙しくてさ」 

律「なんだよ……」 

律「…………」 

律「ははぁ~ん、さては彼氏でもできたとかぁ?」 

澪「ちち、違うよぉ!」 

498 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 21:47:22.28 ID:xSSnDzAsO
ベースがなくなった 
大学に行く、お金もない 

そんなこと、恥ずかしくてあいつに言える訳なかった 

――――――――――――――――――― 

私と母親は借金取りから逃げるため、 
遠い実家へ帰ることになった 

もちろん、皆には黙ったまま 

親戚の何人かには、 
ずっと遠くの○○大学に転入する事になった、 
と嘘をついた 

499 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 21:56:11.07 ID:xSSnDzAsO
それからもあいつは、しつこく私に声かけてきた 


律「……なぁ、おい……練習しないと、腕なまっちゃうぜ?」 


律「ま、まあ家でやってるならいいんだけどさ」 


律「でもやっぱり皆と合わせないと駄目だな、ウン」 

律「ってことで、今日は練習に来いよ!」 


500 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 22:06:15.77 ID:xSSnDzAsO
私と母親が旅立つと決めた日 
その日にも、そいつは私の所にやってきて言った 


律「なぁ、ホントちょっとだけでいいからさぁ」 


律「顔見せるだけで」 


律「お菓子食って帰るだけでも!」 


律「……な、頼むよ?」 


律「このとーりっ!」 


502 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 22:13:01.72 ID:xSSnDzAsO
そいつが、あんまりにもしつこいから…… 

だから、私は言ってやった 


澪「ごめん、実は……」 

澪「ベース、無くしたんだ」 


律「無くしたぁ!?」 

律「……なんで?」 


澪「実は、落としちゃってさ」 


律「お、落としたって……どこで!?」 

503 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 22:19:50.37 ID:xSSnDzAsO
澪「…………」 


律「な、なぁ、どこで落としたんだよ……?」 


澪「…………」 


律「お、おい……」 


澪「…………」 


澪「――で」 


律「……えっ?」 


澪「△△山の道中の崖で」 


澪「山頂で弾こうと思って山登りしてたら……うっかり転んじゃってさ」 


嘘だ…… 

504 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 22:25:30.76 ID:xSSnDzAsO
澪「はは……」 


澪「あそこなら、探しに行くのは無理だなって……」 

澪「だから、諦めんだ」 


律「…………」 


澪「……そういう訳で、しばらく練習には行けない」 

律「…………」 


律「……そっか」 


506 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 22:35:12.98 ID:xSSnDzAsO
それから私は母親と一緒に電車に乗って、 
慣れ親しんだ土地を後にした 


でも心の中には、ずっとわだかまりが残ってた 


電車の窓に、ぽつ、ぽつと雨粒がこぼれ落ちてきて 


それがまるで私の涙を表しているようで、 


不安で不安で仕方がなかった 


……もしかしたら 


……もしかしたら、探しに行ったんじゃないだろうか 

ってさ 

507 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 22:43:02.10 ID:xSSnDzAsO
次第に雨はどしゃ降りになってきて…… 


……私は居ても立っても要られなくて 


でもどうしようもなくて 


私はただ、自分の愚かさと至らなさを憎んだ 


それからも、雨は止むことなく降り続けて、 


結局その日は一日中、太陽が私の前に顔を見せることはなかった 

509 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 22:52:51.14 ID:xSSnDzAsO
それから約一週間して 


私は、あいつが入院したという噂を聞いた 


「肺炎、だって」 


それを聞いたとき私は、 
驚いた……というよりむしろ、 

「やっぱりか……」と思った 


何故なら私は、本当は分かっていたから 

あんな事言ったらあいつ、絶対探しに行くって 

511 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 22:59:39.29 ID:xSSnDzAsO
だから、私はもうあいつには会えない 

会わす顔がない 

きっと私の顔なんか見たくない 

友達だなんて、思われていない 

きっと……そうだ 

あいつの前に顔を出すのは止めよう 

あいつの中のアルバムから、私の存在を消去しよう 

それで私の中のアルバムからも、あいつの存在を消去する 

これで、完成 

出来上がり。 

私は友達を一人、失った訳だ 

512 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:08:29.94 ID:xSSnDzAsO




(おんなじだ……) 




(この話、あの小説とそっくり……) 




(そうか……) 




(あの小説は、澪ちゃんの私小説だったんだ……) 





513 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:14:53.09 ID:xSSnDzAsO
それから、これは余談になるけど…… 


実家に帰った私は一人 

大学にも行かず、 

部屋にこもって小説を書き始めた 

するとその小説がたちまちヒットして、 

私のもとには見る見るうちにお金が入ってきた 


他にも、出す小説は次々に売れ始めて、 

終いには、ずっと遊んで暮らせるくらいのお金が手に入って、 

借金なんか余裕で返せました……とさ 


517 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:22:25.31 ID:xSSnDzAsO
――――――――――――――――――― 
―――――――――― 
――――― 
澪「これで、この話は、お仕舞い」 

澪「どう、面白かった?」 

唯「…………」 

唯「…………澪ぢゃん」 

唯「……ゔぅ…………」 

唯「たい゙へんだったんだねぇ、澪ちゃん…………グスン」 


澪「ま、まあな……」 

澪「でも、これで分かっただろう?」 

澪「私は全然強くないんだ、って」 

519 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:27:41.99 ID:xSSnDzAsO
唯「……ぞんなごとない…………」 


唯「……み゙おぢゃんは、十分戦っでたんだよ…………」 


唯「………自分の、中で……」 


澪「…………」 


澪「………唯…」 

524 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:36:02.12 ID:xSSnDzAsO
唯「…………だがら……」 

唯「………ぞの友達も゙、許じてくれるよ……」 


唯「ぎっと………」 


澪「…………」 


澪「私は……」 


――――――――――――――――――― 
―――――――――― 
――――― 

梓「……こんな時間まで、何やってるんですか?」 

スタスタ 

梓「……また、いつものアレですか?」 

ドラム「…………」 

ドラム「いや、別に……」 

528 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:42:46.30 ID:xSSnDzAsO
梓「……はぁ、ホントに飽きないですねぇ」 

ドラム「まあ、何か習慣になっちまったというか」 

梓「……ま、別にいいですけど」 

梓「ちゃんと練習もやって下さいね?」 

ドラム「分かってるってば」 


ガチャン 


ギター「……あ、なにやってんの?」 

ドラム「…………」 

ドラム「……ギターか?」 

ドラム「お前こそ、どうしたんだ、こんな時間に?」 


530 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:49:50.23 ID:xSSnDzAsO
ギター「うん、ちょっと人に会いに……」 

ドラム「外、すげぇ寒いぞ?」 

梓「上、何か着ていった方がいいですよ……?」 

ギター「大丈夫、すぐだから……」 


――――――――――――――――――― 

ヒュッーー。 

ギター「うわぁ、ほんとにさむぅい」 

ギター「はぁ~」 

ギター「息、真っ白……」 



ギター「………あっ…」 

ギター「……待った?」 


532 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:53:24.61 ID:xSSnDzAsO
聡「…………」 

聡「……別に、待ってねぇよ……」 


ギター「うふふ……久し振りね、君から会いに来てくれるなんて」 


聡「そうかな……」 

聡「まあ、そうかもな……」 


ギター「そうだよっ、」 

533 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/03(火) 23:56:55.94 ID:xSSnDzAsO
ギター「……っとぉ」 

ぎゅうっ 

聡「おい……」 


ギター「ふふふ……」 


ギター「………ねぇ」 


聡「…………」 


ギター「あれ、試してくれた?」 


聡「…………」 


聡「いや、まだだ……」 

535 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 00:00:10.12 ID:xSSnDzAsO
ギター「…………えぇっ!?」 


ギター「…………」 


ギター「…………試して、ないのぉ?」 


聡「…………」 


ギター「せっかく、感想聞こうと思ってたのに……」 

ギター「…………」 


ギター「……あれ、すごいんだよ?」 

536 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 00:10:11.53 ID:bYbnt0LKO
聡「………凄い?」 

ギター「うん、すごい」 


聡「……何がだ?」 

ギター「使ってみれば分かると思うけどぉ……」 


聡「…………」 


ギター「……行くことができるの」 


聡「…………」 


聡「行く? どこへ?」 


ギター「うっふふぅ……」 


ギター「天国ぅ!」 


聡「…………」 


583 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 19:02:31.15 ID:bYbnt0LKO
――――――――――――――――――― 

コンコン 

女「はぁい、どうぞ」 

ガチャ 


男「失礼します」 

男「……明日のご予定をお聞きするために伺いました」 

男「お嬢様は、いかがなさるおつもりでしょうか?」 


女「……う~ん」 

女「……そうねぇ、まずは仕事を片付けないといけないし……」 

女「……それから、」 

女「そう、明日の予定が書かれた資料はあるかしら?」 


男「はっ、ただいま」 


585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 19:14:08.55 ID:bYbnt0LKO
――――――――――――――――――― 

男「……ライブの時間帯の資料なら、こちらに」 

スッ 

女「ありがとう」 


PM 8:30 ********* 

9:00 ********* 

9:30 ********* 

10:00 Nyan☆Nyans 


女「22時、開始かぁ」 


女「……結構、時間あるわね」 


男「お嬢様、他のアーティストのライブは見に行かれないのですか?」 

588 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 19:29:06.19 ID:bYbnt0LKO
女「ええ、興味ないもの」 


男「左様でございますか」 

男「では、交通手段はいかがなさいますか?」 


女「……そうねぇ」 


女「車だと渋滞に巻き込まれるだろうし……」 

女「…………」 

女「……ヘリコプターなんてどうかしら?」 


男「…………」 

男「畏まりました」 


591 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 20:11:52.26 ID:bYbnt0LKO
――――――――――――――――――― 

澪「ゆーいー?」 

ガチャ 

澪「……唯、調子はどうだ?」 


唯「あ、お帰り澪ちゃん」 

唯「調子は……うん、大分良くなったよ。今は頭も痛くないし」 


澪「そっか。きっと風邪薬のおかげだな」 


唯「うん……」 


593 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 20:15:11.06 ID:bYbnt0LKO
唯「…………はぁ」 


澪「…………」 


唯「……それにしても私……こんなタイミングで風邪ひいちゃうなんて……」 


澪「……ひいちゃったものは仕方ないさ」 


唯「そうだけど……」 


唯「…………」 


唯「……なんか、前にもこんな事あったよね」 

594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 20:25:02.05 ID:bYbnt0LKO
澪「学祭の時のことか?」 


唯「うん……」 

唯「…………」 

唯「ゔぅ……私こんなのばっかりだ……」 


澪「ま、まあまあ……」 

澪「……あれだ、明日までによくなればいいじゃないか!」 


唯「……そうなるといいんだけど」 


596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 20:31:16.62 ID:bYbnt0LKO
澪「とにかく、今日は早く寝ること!」 


澪「……それから、ご飯もしっかり食べる!」 


澪「……そうすれば、きっと明日にはもっと良くなるよ」 


唯「…………」 

唯「……うん!」 

唯「それで……」 

唯「それで、もし万一良くならなかったら、風邪薬大量に飲むね!」 


澪「いや、それは駄目だ」 

598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 20:35:00.98 ID:bYbnt0LKO
唯「そうだ、澪ちゃん」 


澪「んー?」 


唯「私のバッグに、新しく買ったCD入ってない?」 


澪「えぇっと……」 


澪「……これか?」 


唯「うん、ありがと」 


唯「今日は、これ聞きながら寝るよ」 

599 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 20:43:58.75 ID:bYbnt0LKO
澪「それ、梓のバンドのやつ?」 


唯「うん」 

唯「……ちょっとギターのパートが気になっちゃって」 


澪「唯ならそれくらいすぐ弾けるんじゃないか?」 


唯「でも、ずっと触れてなかったし……」 


澪「そうか……まあとにかく、今日は早く寝ろよ?」 


唯「うん……お休み、澪ちゃん」 


澪「お休み」 

――――――――――――――――――― 

ライブ開始まで 
あと 24時間 

602 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 21:12:26.43 ID:bYbnt0LKO
――――――――――――――――――― 

AM 8:00 


梓「……ん゙ん……ふぁあ~……よく寝たぁ……」 

梓「……カーテン、カーテン……」 

ジャー 

梓「うわっ、まぶし……」 

今、私たちのバンドのメンバーは、 

遊園地の敷地内にある超巨大ホテルにいます 


梓「……顔洗ってこよ」 


604 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 21:22:43.30 ID:bYbnt0LKO
――――――――――――――――――― 

バシャアッ 

梓「……ふう、すっきりした」 


私たちのライブが行われるのは、 

このホテルの最上階にある特製会場 

収容人数は5000人、 

建設費は約2億円という代物だ 


梓「って、みんなまだ寝てるし……」 

605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 21:40:55.62 ID:bYbnt0LKO
梓「散歩でもして来ようかな……」 

――――――――――――――――――― 

ホテルの下の階は中心が吹き抜けになっていて、 

真ん中には大きな噴水が置いてある 


梓「それにしても広いなぁ、ここ……」 


梓「……迷子になりそう」 


ライブ開始は午後10時から 

遊園地を楽しむ時間は、十分にある 


梓「……でも、練習もしないと」 

606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 21:48:56.71 ID:bYbnt0LKO
――――――――――――――――――― 

梓「う~ん……」 

トコトコ 

梓「……あれ?」 


梓(噴水の横に座っているのは……ドラム?) 


ドラム「………」 


梓「……な~にやってるんですかっ?」 


ドラム「………ん?」 


ドラム「お、梓か……早いな」 

607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 21:53:43.17 ID:bYbnt0LKO
梓「ドラムこそ……てっきり、まだ寝てるのかと思ってました」 


ドラム「……なんだか早く眼が覚めちゃってさ」 


梓「あ……もしかして緊張してるんですか!?」 


ドラム「いやいやいや」 


梓「まあ、私が言うのもアレですけど」 


梓「……って先輩、それ、何ですか?」 

608 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 21:59:23.37 ID:bYbnt0LKO
ドラム「……ん? ああ、これ?」 

ドラム「いや、別に何でも……」 


梓「? 薬か何かですか?」 

梓「……ああ、風邪薬とか?」 


ドラム「ま、まあそんなところかな……」 


梓「もう、気を付けてくださいよ? ライブ前に風邪だなんて……」 


ドラム「……分かってる」 

609 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 22:06:21.37 ID:bYbnt0LKO
ドラム「そう言えば……いたな」 

梓「?」 

ドラム「昔……ライブ前に、風邪ひいた奴」 


梓「…………」 

梓「……ああ、いましたねぇ」 


ドラム「あの時は大変だったよな」 

梓「大変でしたね……」 


ドラム「最近会ってないけどさ」 

梓「私も……この前メールがあったんですけど、忙しくて会えなくて」 


ドラム「……そうか」 


611 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 22:13:56.17 ID:bYbnt0LKO
ドラム「…………」 

ドラム「……先、部屋に戻っとくよ」 


梓「……あ、はい」 


――――――――――――――――――― 

ガチャン 


ドラム「…………」 

ドラム(まさか梓に見られるとは……) 

ドラム(……あいつには、黙っておいた方がいいな) 

ドラム(……持ち歩くのもマズいし、ここに置いておこう) 



613 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 22:23:47.93 ID:bYbnt0LKO
――――――――――――――――――― 

ギター「ふん、ふん、フフン♪」 

ガチャン 


ギター「ただいまぁ」 

ギター「……ってあれ、誰もいないの……?」 


ギター「……なんだぁ、つまんない」 


ギター「……お風呂にでも入ろっかなぁ」 

614 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 22:31:30.51 ID:bYbnt0LKO
――――――――――――――――――― 

ジャアアアーーー 

キュッ 


ギター「はぁ、気持ちいい……」 


ぴちゃ、ぴちゃ 


ギター「あ、下着……」 


ギター「持ってくるの忘れちゃった……エヘ」 


ぴちゃ、ぴちゃ 


ギター「かばん、かばん……」 


ガサゴソ 


ギター「……あれ、ないなぁ」 

615 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 22:34:30.15 ID:bYbnt0LKO
ギター「……おかしいなぁ」 

ぴちゃ、ぴちゃ 


ギター「……替え持ってくるの、忘れたかなぁ……」 


ギター「……あ、そうだ!」 


ギター「ふふ、うふふ……」 


ギター「誰かのを勝手に借りちゃお~」 

616 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 22:38:37.41 ID:bYbnt0LKO
ギター「おや……」 


ギター「誰かなぁ、かばんを開けっ放しにしているのはぁ~?」 


ギター「梓ぁ?」 

ぴちゃ 

ギター「ベースぅ?」 

ぴちゃ 

ギター「キーワードぉ?」 
ぴちゃ 

ギター「それとも……」 


ギター「ドラムでしたぁ~」 



618 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 22:45:21.62 ID:bYbnt0LKO
ギター「どれどれ……」 


ギター「……お、あった、あった……」 


ギター「うふ、うふふ……」 


ギター「見かけによらず、可愛いぱんつぅ~クスクス」 


ギター「よし、じゃあ、か~りちゃおっと!」 


ギター「ちゃんと、かばん閉めてぇ……」 


ギター「…………」 


ギター「……あれ?」 

619 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/04(水) 22:51:51.89 ID:bYbnt0LKO
ギター「…………これ」 


ギター「私が聡にあげたやつ……?」 


ギター「……なんで?」 


ギター「この袋の形、それに番号……」 


ギター「……やっぱり、一緒だよね?」 


ギター「…………」 


ギター(聡が落としたのを、ドラムがたまたま拾ったのかな……?) 


ギター「まあいいや、これも私が預かっておこう」 


――――――――――――――――――― 

639 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 01:51:27.39 ID:8j6T4zJtO

――――――――――――――――――― 

AM 9:00 


ピピピピッ 


唯「う、ゔ~ん……」 


ピピピピッ 


唯「ん゙………」 


唯「…………」 


唯「朝………」 


641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 01:56:20.48 ID:8j6T4zJtO
聡「あ……唯さん、おはようございます」 


澪「唯、おはよう」 


唯「……二人ともおはよう」 


聡「風邪で熱が出たって聞いたんですけど……大丈夫ですか?」 


唯「……うん…」 


唯「昨日より頭は痛くないし……だいぶ良くなったよ」 


澪「唯、熱測ってみな」 

642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 02:02:04.46 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

ピピッ 

澪「36度9分か……かなり下がったな」 


澪「……喉が痛いとか、鼻がつまる、とかは?」 


唯「う~ん……ちょっと鼻がつまるけど、平気だよ」 


聡「走ったり騒いだりしなかったら、大丈夫なんじゃないっすか?」 


澪「そうだな……」 


澪「何か食べれそうか、唯?」 


643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 02:06:10.43 ID:8j6T4zJtO
唯「ヨーグルトとかなら……」 

澪「分かった、ついでに風邪薬も飲んどけ」 

唯「うん」 


――――――――――――――――――― 

聡「あ、唯さん、見て下さいよ、コレ」 


唯「なぁに?」 


聡「今日の朝刊の、この欄……ホラ、一面に載ってますよ」 


唯「どれ……」 

ペラ 

唯「……ホントだ、すごい!」 

645 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 02:21:07.86 ID:8j6T4zJtO
都内の□□遊園地で、音楽イベント開催中 

――昨日と今日にかけて、都内の遊園地で音楽に関する様々なイベントの催しが行われている 

――このイベントは、「音楽と科学」をテーマに新しい視点から人々に音楽と関わってもらう事を目標とした催しである 

――遊園地内には、本来のアトラクションに加え、新しくいくつかのパビリオンが設置されており、無料で体験することができる 

――最大の目玉は、午後8時過ぎから開催されるライブイベントであり、いくつかの有名アーティストが参加する予定だ 


唯「えぇ、こんな大きいイベントだったんだ……!」 

聡「どちらかというと万博っぽいですねぇ」 

646 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 02:28:33.03 ID:8j6T4zJtO
澪「聞いた話では、超大手レコード会社がスポンサーとして参加してるらしいぞ」 

モグモグ 

唯「へぇ~、そうなんだぁ」 

ペラ 

聡「そう言えば、さっきテレビでもやってましたよ」 


唯「え゙……?」 


唯「じゃあもしかして、ライブも実況中継されたりするのかな……?」 


聡「多分やるんじゃないっすか? テレビ欄にも書いてありましたし」 


唯「うわ、すごいなぁ~」 


648 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 02:33:38.38 ID:8j6T4zJtO
聡「……というか相当混みそうですね」 

澪「……だな」 


澪「皆の準備ができ次第、すぐにでかけることにしよう」 


唯「りょうか~い!」 


聡「俺もう準備できてますよ」 


澪「……実は、私も」 


唯「え゙……じ、じゃ、すぐに用意してくる!」 

652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 02:50:36.47 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

AM 11:00 


ワイワイ、ガヤガヤ 


唯「うわぁー!」 


唯「こ、こ、が、今日のライブ会場の遊園地かぁ!!!」 


バァーーーン! 


唯「すっごぉぉぉーーーーーーー」 


唯「ーーーく人が多くて中に入れない。」 


澪「…………」 


聡「…………」 

653 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 02:52:28.42 ID:8j6T4zJtO
唯「かれこれ一時間待ちですよ」 


澪「着いてからが長かったな」 


聡「DS持ってくれば良かった……」 


唯「早くしないとお昼になりそうです」 


655 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 03:00:21.40 ID:8j6T4zJtO
澪「まあ、ライブイベントは夜8時過ぎてからだしな」 

澪「……見てまわる時間は、たっぷりあるよ」 


唯「そうかなぁ?」 


聡「そうそう、本番は夜っすよ!」 


澪「そうだ、中に入ったら、早めに昼食取らないか?」 


唯「……澪ちゃんもうお腹減ったの?」 


澪「ち、違う違う。ちょっと時間ずらした方が空いてるかなーって」 


聡「あー、確かにそっちの方がいいかもしれませんね」 

656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 03:07:48.33 ID:8j6T4zJtO
聡「あ、進んできましたよ」 


澪「もうちょっとだな」 


唯「うぅ……」 


唯「もっと早く準備して出れば良かった……」 


澪「ほぉ~ら、置いてくぞ、唯?」 


唯「あ、ま、待って澪ちゃん……!」ダッ 

657 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 03:16:39.99 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

AM 11:20 


聡「しっかし……」 


聡「どこ行っても、人多いっすねぇ」 


澪「(モグモグ)そうだな」 


唯「早めにご飯食べて正解だったかもねぇ」 


聡「そうっすね……」 


澪「……さて、これからどうするか」 


聡「唯さんは、どっか行きたい所とかあります?」 

658 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 03:21:00.01 ID:8j6T4zJtO
唯「私?」 


唯「えっとぉ……」 

ガサゴソ 

唯「……ここ、行ってみたい」 


澪「『映像と音響の部屋』……?」 


唯「うん」 


聡「ここから結構近そうですね」 


澪「そうだな……よし、じゃあ行ってみるか」 

676 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 14:08:36.92 ID:8j6T4zJtO

――――――――――――――――――― 

AM 12:30 


――それでは、次のニュースをお伝えします 

――昨日から今日の夜にかけて、都内の□□遊園地で大規模な音楽イベントが開催中です 

――現地の女アナさん、聞こえますか~? 


女アナ「はーい!」 

女アナ「ただいま私は、遊園地内の中心部にある、パビリオンの前に来ていま~す!」 

女アナ「こちらのパビリオンは、『映像と音響の部屋』といって、新しい技術により『目で音を見ることができる』という代物ものです」 


女アナ「それでは、早速中に入ってみましょう!」 


678 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 14:22:12.97 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

女アナ「建物中は少し薄暗くなっておりますので、足元にはご注意下さい」 


女アナ「……うわぁ、広いですねぇ~」 


女性「……よっと」 


女アナ「……あ、ほら見て下さい!」 

女アナ「今、私の声が映像として目の前に映し出されています」 

女アナ「分かりますかぁ~?」 


女アナ「例えば、手を叩いてみますと……」 

パン、パン 

女アナ「ほら、すご~い!」 


女アナ「このように、建物内では音の波長と振動を機械がキャッチして、周りに設置された云々(略)」 


女アナ「それでは、中にいる人に早速インタビューしてみましょう!」 

679 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 14:31:11.97 ID:8j6T4zJtO
女アナ「今日は、どちらからおこしですか?」 

唯「……ふぇ!?」 

唯「あ、あの……△△から……」 


女アナ「あ、結構近いところに住んでいらっしゃるんですね~」 

女「そちらの彼はボーイフレンドですか?」 


聡「……は?」 


唯「あ、い、いえ違います!」 

唯「今日は、友達と3人で……」 


唯「ってあれ、澪ちゃ~ん?」 

聡「澪さんならあそこに……」 


唯「? 澪ちゃ~ん、こっちおいで!」 


澪「フルフル」 

680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 14:37:32.26 ID:8j6T4zJtO
女アナ「恥ずかしがり屋のお友達ですね~」 


女アナ「それでは、ありがとうございました」 


唯「は、はい!」 


――――――――――――――――――― 

唯「澪ちゃん、せっかくテレビに映るチャンスだったのに……」 


澪「……映らなくて、いい」 


聡「そうですよ、TVデビューするチャンスだったのに……」 


澪「絶対やだ!」 


683 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 14:46:46.99 ID:8j6T4zJtO
聡「じゃあ次はどこ行きます?」 

唯「う~ん、とぉ……」 


唯「どこかでちょっと休憩しない?」 

聡「そうっすね~、じゃあ喫茶店ぽい所に入りましょう」 

――――――――――――――――――― 

PM 01:30 


聡「結構歩くの疲れますね~」 


澪「唯、風邪の調子はどう?」 


唯「うん、今のところ、平気だよ」 


聡「まあゆっくりまわればいいっすよ、時間もあるし」 


695 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 15:20:42.49 ID:8j6T4zJtO
唯「梓ちゃんたち、もう着いたのかな?」 

澪「……ホテルにでも泊まったんじゃないか?」 

聡「多分、練習してるんすよ」 


唯「そうだね、大切なライブだもんね……」 

唯「…………」 


澪「……あ、そうだ!」 


聡「どうしたんですか?」 

澪「私、ちょっと用事があるの忘れてた……」 


澪「悪いけど、しばらく二人でまわってくれないか?」 

697 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 15:27:16.74 ID:8j6T4zJtO
聡「別にいいですけど、どこへ……?」 

澪「ごめん、すぐ戻るから」 

唯「……じゃあ戻るときはメールしてね?」 


澪「分かった、またメールする」ダッ 


唯「行っちゃった……」 


唯「…………」 


聡「…………」 


聡(……気まずい) 

――――――――――――――――――― 

澪(……せっかく来たんだから、二人きりにしてやらないとな……) 

澪(私は他のところを見てまわろう) 

698 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 15:35:03.43 ID:8j6T4zJtO
聡「あ、あの、唯さん……?」 


唯「……なぁに?」 


聡「俺たちも、どこか他の場所を見に行きましょうよ」 


唯「うん、そだねぇ……」 
――――――――――――――――――― 

ギター「ふんふふん、ふん♪」 

ギター「ちょっとコーヒーでも飲んで休憩しよ~っと」 

ギター「………ん?」 


ギター「……あれ、あそこにいるのは聡?」 

ギター「……それともう一人……女の子?」 


ギター「……へぇ、可愛い彼女がいるじゃない」 

ギター「…………」 

ギター「ふふ……ちょっとイタズラしたくなっちゃうなぁ……」 


700 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 15:42:48.82 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

PM 4:00 


ドラム「しかし、どこか見るっていってもなぁ……」 

ドラム「梓は練習するって言ってるし……」 


ドラム「ギターは相変わらずマイペースだし」 


ドラム「こんな所を一人でまわる事ほど寂しいことはないな……」 

ガサゴソ 

ドラム「えぇっと、パンフレットには……」 


ドラム「…………」 


ドラム「よし、ここに行ってみるか……」 


ドラム「『水と音の部屋』」 

702 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 15:48:18.92 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

澪「う~ん、しかし一人で見てまわるのは寂しいな……」 

澪「でもやっぱり、唯たちはしばらく二人きりにしてあげたいし……」 


澪「そうだ、パンフレット……」 

ガサゴソ 

澪「どこか面白そうなのは、と……」 


澪「…………」 


澪「『水と音の部屋』……これ、面白そうだな」 


澪「……よし、ここに行ってみるか!」 


706 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:01:29.41 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

PM 6:00 


唯「そう言えば、ここって普通のアトラクションとかもあるんだね……?」 

聡「ええ……昨日と今日はイベントがメインですけど、他もちゃんと活動してますよ」 

聡「ジェットコースターとか、お化け屋敷とか……ボートなんかもありますね」 

聡「……ところで唯さん、結構見てまわりましたけど、大丈夫ですか?」 

唯「あ、ちょっと休憩したいかも……」 

聡「じゃあどこかのベンチで休みましょう」 

――――――――――――――――――― 

ギター「どこ行くんだろ……?」 

ギター「あ、座った。……休憩かぁ」 

ギター「さぁて……あの女の子はどうしてあげよっかなぁ……」 

ギター「……あ、そうだぁ!」 

ギター「さっき手に入れたこれで……クスクス」 

708 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:10:06.06 ID:8j6T4zJtO
聡「あ、俺、飲み物買ってきます」 

唯「ありがとー」 

――――――――――――――――――― 

唯「……ふぅ、落ち着いたぁ」 

聡「じゃ、そろそろ行きます?」 

唯「うん、次はジェットコースター行ってみようよ!」 

聡「いいですね、行ってみましょう」 


――――――――――――――――――― 

ギター「例えば……」 

ギター「例えば、少量の摂取なら……まるで天国に行っちゃったような快感を得られてぇ……」 

ギター「……でも大量に飲んじゃうと、文字通り天国に逝っちゃう……」 

ギター「……うふふ、もしかしたら地獄かもしれないけど」 

ギター「……さて、問題はどうやって飲み物に混入させるか」 

709 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:20:57.74 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

澪「ここが、『水と音の部屋』かぁ……」 


澪「音楽を聞かせることで、美味しくなる水……」 

澪「音によって変化する氷の結晶……」 


澪「……ウソっぽ」 


ブルッ 

澪「し、しかし寒いなぁ……?」 


澪「……氷が溶けないようにするため、こんなに温度下げてるのか?」 

澪「早くまわって出ないと、凍えちまうぞ……」 


澪「……ん?」 


澪「あ、あれ? あそこにいるのって、もしかして……」 

710 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:24:17.89 ID:8j6T4zJtO
澪「…………確か」 


澪「確か、梓のバンドのドラムの人だっけ……?」 


澪「練習しなくていいのかな……?」 


チラッ 


ドラム「…………」 



澪「あ、やばっ、目が合った……」 

711 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:29:14.73 ID:8j6T4zJtO
プイッ 


澪「あ、あれ……?」 


スタ、スタ 


澪「あ、そっちは立入禁止区域……」 


ドラム「…………」 


澪「ま、また目が合った……」 


澪「…………私?」 


澪「………もしかして、付いて来いってこと……?」 

712 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:32:31.59 ID:8j6T4zJtO
ドラム「…………」 


澪「あ、ま、待って……!」 

ダッ 


ドラム「…………」 


ガチャン 


澪「…………」 


澪「……今、確か……ここに入っていったよね……?」 

713 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:37:03.15 ID:8j6T4zJtO
澪「あ、あのぉ……?」 


澪「うぅ、さむっ!」 

ガタガタ 

澪「なに、ここ……?」 


ガチャン 


ドラム「…………」 


ドラム「氷の保管庫さ、施設内で使用する」 


澪「…………」 


澪「あなた、何……?」 


澪「私に、何か用……?」 


715 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:44:24.59 ID:8j6T4zJtO
ドラム「…………」 


ドラム「…………何だよ」 

澪「…………」 


ドラム「私のこと、覚えてないのかよ……!」 


澪(……あれ、この声ってどこかで) 


ドラム「……ほら、こうすれば分かるだろ!」 


バサッ 


澪「カチューシャ……?」 

719 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:51:09.07 ID:8j6T4zJtO
澪「…………律…」 


律「…………久々。」 


澪「うそ…………」 


律「…………」 


澪「律……なんで……?」 

澪「……梓のバンドのドラムは、律だったのか……?」 


律「……そうだよ。」 


律「……聡に聞いて、とっくに知ってるかと思ったけど」 


澪「律………」 


澪「あ、あの、私……お前に話さないといけない事が……」 


律「……あのさぁ」 


785 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 21:14:45.90 ID:8j6T4zJtO
律「……ここ、どこか知ってる?」 


澪「……え?」 


澪「知ってるも何も……今お前が氷とかの保管庫だって言ったじゃないか……」 


律「……そ。マイナス5℃の保管場所」 


澪「……それがどうしたんだ?」 

澪「……それより私は、お前に話さなくちゃいけない事が…………!」 


律「……まあ待てよ」 


律「じゃあ、これは何だと思う?」 


ジャラ 


澪「…………」 

澪「………鍵?」 


796 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 21:23:08.42 ID:8j6T4zJtO
律「この時期にさ……」 


律「ここに閉じ込められたら、多分死ぬかな」 


澪「……お、おい……何を言って…………」 


澪「……あ、どこ行くんだよ!!」 


バタン 

ガチャ 


澪「おい、律……!!」ダッ 


ガチャガチャ 


澪「ど、どういうつもりだよ……!」 


804 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 21:26:21.14 ID:8j6T4zJtO
律「…………」 


ガチャガチャ 


澪「律ぅ………!」 


澪「た、頼む、戻って来てくれ……!」 


澪「私はまだ、お前に話したいことが…………」 


ガチャガチャ 


律「…………」 




律「さよなら、澪」 





815 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 21:36:49.55 ID:8j6T4zJtO

ジェットコースター搭乗口前 

――ご搭乗のお客様は、貴重品を持ってから、 

――お荷物をゲート横のカゴの中にお入れ下さい 


唯「聡君、携帯は?」 


聡「えっと……念のため、ポケットに」 


唯「じゃあ、私も持っていこ」 


唯「おサイフも持ったし……よし、準備万端」 


聡「それでは、乗りましょうか」 


――――――――――――――――――― 

ギター「あ、今飲み物置いたわね」 

ギター「しめしめ……チャ~ンス!」 

826 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 21:48:07.44 ID:8j6T4zJtO
ギター「あの子の鞄は一体どれかなぁ~?」 

ギター「ふふ……あった、あった」 

ギター「飲み物のフタを開けて、と……」 


カパッ 

サラサラ 

ギター「……10グラムで、天国行き~♪」 

サラサラ 

ギター「……20グラムで、天国逝き~♪」 

サラサラ 

ギター「……30グラムで、地獄逝き~♪」 

サラサラ 

ギター「……40グラム」 


ギター「……うぅ、可哀想に……これじゃあもう廃人か死人だね……」 

843 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 21:56:18.57 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

唯「すごかったね~、ジェットコースター!」 


聡「いや~俺、ああいう一回転する奴は苦手っす…………うぇ」 


唯「あはは、聡君、顔真っ青~」 


唯「あ……えっ~と、カバン、カバン」 


キョロキョロ 


唯「……あった、あった」 

聡「じゃ、下に降りましょうか」 

860 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 22:03:38.68 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

PM 8:30 


聡「だんだん暗くなってきましたね」 


唯「うん……ライブ、何時に行けば間に合うかなぁ?」 


聡「結構広いですからね……歩いて行こうと思ったら、40分くらいはかかるかと」 


唯「じゃあもう少しあるか……」 


唯「あ、私飲み物捨ててくるね」 


864 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 22:07:27.11 ID:8j6T4zJtO
聡「あれ……唯さん、それまだ残ってるんじゃないですか?」 


唯「あ、うん。でも冷えちゃったから……」 


聡「いらないんなら、俺がもらいますよ」 


ぱしっ 


唯「あ、ちょっと……!」 


聡「いただきま~す」 


892 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 22:16:30.93 ID:8j6T4zJtO
唯「ダメーーーー!!」 


聡「……へ?」 

唯「あ、いやその……それって何ていうか、間接キスっていうか……///」 


聡「あ、ああ、そうですね! すみません」 


唯「ううん……」 


唯「……それ、貸して」 


聡「? はい……」 


唯「…………」 


唯「んぐ、んぐ、んぐ……………ぷはぁ」 

ポイッ 

唯「じゃ、行こうか?」 


915 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 22:24:46.22 ID:8j6T4zJtO
唯「次、どこ行く……?」 

聡「そうっすね……」 


聡「ちょっと話たい事があるんで……こっち来てもらっていいすか? 


唯「……うん、いいよ」 


――――――――――――――――――― 

ギター「うふふ…………あははっ………クスクス」 


ギター「あ~あ、飲んじゃった、飲んじゃったぁ~!」 


ギター「可哀想に……あの子の将来、真っ暗だよぉ~!クスクス」 


936 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 22:32:54.60 ID:8j6T4zJtO
――――――――――――――――――― 

PM 8:45 


梓「遅い遅い遅い遅い遅い」 


ベース「あ、梓、落ち着けって……」 


梓「おっそぉーーーーい!!!」 


梓「もうっ、ギターも律先輩も何やってるんですか!!」 


キーボード「ま、まあまあ……そのうちきっと来るわよ」 


梓「遅すぎです!!」 


梓「ああ、もう……本番前にもう一度合わせたいのに……!」 


ベース「まあ、その内来るって」 

967 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 22:41:22.85 ID:8j6T4zJtO
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唯「さ、聡君、どこ行くの……?」 

スタスタ 

聡「……こっちです」 


唯「ま、待って……」 

はぁ、はぁ 

唯(……やば、ここに来て頭がフラフラしてきた……) 


聡「ほら、唯さんこっち……」 


唯(……聡君の言ってることも、よく聞こえないし……) 


ここですよ、唯さん 


やっぱり熱が上がってきたのかな…… 


どうしたんですか、唯さん? 


984 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 22:47:14.98 ID:8j6T4zJtO
唯「……はぁ、はぁ」 


聡「……ほら、あそこに観覧車が見えるでしょう?」 


唯「……ご、ごめん、頭がボーっとして……」 


聡「大丈夫ですか、唯さん?」 


聡(頭がボーっと? 熱が上がったのかな……?) 


聡(……どちらにせよ、これはチャンスかもしれない) 


次回 唯「あーだる……」 後編