前回 剣士「冒険学校…!」

2 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:52:23 /NyOcknA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 冒険学校 教室 】

ガヤガヤ…

剣士「あーあ、修学旅行…何かあっという間だったな」

武道家「もうちょっとゆっくりしたかったよなー」

魔道士「今度は卒業したら、乙女格闘家さんとか魔術賢者さんとか誘って行こうよ♪」

僧侶「あ、いいかもしれないね」


剣士「卒業旅行か…。また幼エルフに挨拶でもしにいくかぁ?」

魔道士「大百足と出会わなければね…」

剣士「んなもん、俺らがぶっ飛ばすっつーの!」 


冒険図鑑―野外で生活するために (Do!図鑑シリーズ)
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3 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:53:22 /NyOcknA
 
…ガラッ!

冒険先生「エルフなどと聞こえたが…何をぶっ飛ばすだって?」


剣士「あ、あはは…やだなぁ冒険先生♪武道家のことですよ♪」

武道家「あぁ…?」

剣士「お…?」


冒険先生「また、正座するか?」


剣士「…俺たち仲良し!」ガシッ

武道家「阿吽の呼吸だぜ!」ガシッ


冒険先生「よろしい、席についてくれ」

魔道士(バカ…) 


4 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:54:21 /NyOcknA
 
…ストンッ


冒険先生「今日の授業は、最初だけ少し内容を変える。軍より通達が入ったんだ」

ザワ…ガヤガヤ

生徒たち「軍て…中央軍か?」

生徒たち「面倒くさい内容とかじゃないだろうな…」


冒険先生「あー、そんな堅いものじゃない。魔獣の段階付けが追加されたんだ」

魔道士「魔獣の段階付け…?」

冒険先生「そうだ。今までは"魔獣"という言葉だけだったが、昨日、中央軍本部会議でランク付けが行われてな」

魔道士「段階…ランク付け…ですか?」 


5 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:55:56 /NyOcknA
 
冒険先生「ほぼ、現在確認されている魔獣に対して、人への害や強さを考慮したものだ」

冒険先生「下級、上級の魔獣に加え、一定以上の知性を持つ魔獣を"魔物"と定めた」


剣士「魔物ねぇ…、どんなのが魔物になったんだ?」


冒険先生「知性が高いといえども、人のようなものはいない」

冒険先生「代表でいえば、遺跡に住みつく巨大化した魔獣を"魔物"としている」


剣士「人間みたく高い知性を持つ魔獣とかっつーのは存在してないの?」


冒険先生「少なくとも、今まで確認はされていない」

冒険先生「ただの動物や植物が魔力を蓄え、自立したモノもあるが、基本的に下級魔獣に分類される」


剣士「去年の魔石洞窟の時は、下級魔獣ばっかだったってことか。へっ、しょぼいな」

冒険先生「最初から上級と戦わせるか、バカもの!」

剣士「うひっ!」 


6 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:56:59 /NyOcknA
 
冒険先生「さて、本来の授業に戻るぞ」

冒険先生「まずは教科書の72ページ開いてくれー」


剣士「魔物ねぇ…」

魔道士「…?」


………
…… 


7 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:57:43 /NyOcknA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 放課後 帰路 】


ザッザッザッ…


魔道士「今日は大戦士先生と稽古しないの?」

剣士「なんか、少戦士のことで用事あるから、今日はナシ」

魔道士「じゃあ私の部屋で、魔法の勉強する?」


剣士「ん~…」

剣士「ちょっと、やめとく」


魔道士「!」

魔道士「そ、そっか…」 


8 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:58:25 /NyOcknA
 
剣士「その代わり、ちょっと付き合えよ」

魔道士「え?」

剣士「ちょっと町に行きたくてさ、一緒にいかないか?」

魔道士「うん、いく♪」

剣士「本屋で欲しいものが出来たんだよ」

魔道士「け、剣士が本…?」

剣士「…何か問題でも」


魔道士「い、いいえ?」アハハ

剣士「…」 


9 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:58:59 /NyOcknA
 
タッタッタッ…

少戦士「魔道士さ~ん」フリフリ

魔道士「あ、やっほー」


少戦士「ふぅ、遠くから見えたものだから…」

魔道士「あはは、そっか」

少戦士「はい…」テレッ

剣士「…」


魔道士「大戦士先生は、用事って言ってたもんね。今日は一人で自宅に戻るの?」

少戦士「そうですね、そうなります」

魔道士「そっか、気を付けてね」

少戦士「は、はいっ!」 


10 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 16:59:39 /NyOcknA
 
剣士「…」

剣士「さて、魔道士。日が暮れる前に急いで行こうぜ」

スタスタ…


魔道士「そ、そんな急がなくても」

剣士「夕方だし、さっさと行った方がいいだろ!」

魔道士「そ、そりゃそうだけど…」


少戦士「…剣士さんと魔道士さんて付き合ってるんですか?」


魔道士「えっ!?そ、それはー…」チラッ

剣士「…」 


11 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:00:58 /NyOcknA
 
少戦士「どうなんでしょう?」

剣士「か、関係ないだろ。さっさと帰れ」シッシ

魔道士「…」


少戦士「いいじゃないですか、気になるんですもん」

剣士「付き合ってた所で、お前には関係ないだろ?」

少戦士「…どうでしょうか」

剣士「あぁん?」

少戦士「…魔道士さん、優しくて可愛らしい方ですよね」


魔道士「!」


少戦士「お姉さんとして、接してくれて…」

剣士「…」 


12 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:01:39 /NyOcknA
 
少戦士「あ…。と、とりあえず今日は帰ります!また!」

タタタタタッ…!

魔道士「あ、ちょっと少戦士!」ダッ


…ガシッ!


魔道士「きゃっ!…剣士?」

剣士「今日の予定は、俺とだろ。アイツは気にするなって、俺と付き合う事考えてくれよ」

魔道士「わ、わかってるけど…」

剣士「…じゃあ行こうぜ」

グイッ…!

魔道士「わっ…!剣士、早いよ!」 


13 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:02:15 /NyOcknA
 
スタスタスタ…

剣士(く、くっそ…)

剣士(んだっつーの…)


…………
………
… 


14 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:04:08 /NyOcknA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 北西町 本屋の休憩所 】

剣士「…うし、買えた買えた!」

剣士「はぁー…付き合ってくれてありがとよ。飲み物買ってきた」

…コトンッ

魔道士「うん、ありがと」

剣士「この本屋に、ほしい本が売ってて良かったぜ」

魔道士「…まさか剣士が、魔獣解析書と遺跡歴史本買うなんて」クスッ

剣士「悪いですか!」

魔道士「あはは、意外すぎるよ。何で急に?」 


15 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:04:58 /NyOcknA
 
剣士「この間、大百足と戦った時に大戦士兄みたく知識が欲しいと思った」

剣士「遺跡本があれば魔獣の情報あるし、どんなのが魔物に分類されてるか分かるっつーかさ」

剣士「今日の授業受けて、そういう思いがもっと強くなったっつーか…な?」


魔道士「確かにそうだね。偉い偉い♪」ニコッ

剣士「……ありがと」


魔道士「…何か素っ気ないね。さっきから少し変だよ?」

剣士「う、うっせぇな別にいいだろ」

魔道士「あ、何その言い方~」

剣士「いいだろ別に!」

魔道士「剣士…変なの」

剣士「…」 


16 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:06:07 /NyOcknA
 
魔道士「じゃ、戻る?」

剣士「…」

魔道士「…どうしたの?」


剣士「あ、いや何でもない。じゃあ行くかー…」

剣士「って…!?」ハッ


…グイッ!

魔道士「えっ?」

剣士「か、隠れろ!」

タタタッ…クルッ


剣士「…あぶねぇあぶねぇ」

魔道士「き、急にどうしたの?」 


17 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:06:55 /NyOcknA
 
剣士「そこの角から覗いてみ。ガラスのところ」

魔道士「ん~…?」チラッ


武道家「…」

乙女格闘家「…」


魔道士「あっ、武道家と乙女格闘家さん!」

剣士「…二人で放課後に稽古じゃなかったのかよ」

魔道士「稽古した帰りなんじゃないかな?」

剣士「あ、そ、そうか…」

魔道士「でも確かに、あの二人は私らとはあまり会いたくないかもね…」

剣士「武道家は恥ずかしがるし、邪魔しちゃわりーしな」 


18 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:07:59 /NyOcknA
 
???「…あれー?二人とも、珍しいとこいるね?」

???「本当だ…」


剣士「あん?」

魔道士「…あっ」


僧侶「どうしたの、本屋にいるなんて」

魔術賢者「剣士…似合わない…」


剣士「…お前らこそ、何でここに」ヒクッ 


19 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:09:27 /NyOcknA
 
魔術賢者「…一緒に、魔法書を見に来た」

僧侶「武道家くんたちみたく、魔術師同士、二人で高め合えば僕らももっと強くなるかなーって」


剣士「仲のいいことで…」

僧侶「そ、そんなんじゃないよ!」

剣士「へいへい」


魔道士(…本当に今日の剣士、どうしたんだろ…)

魔術賢者「…」 


20 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:10:23 /NyOcknA
 
剣士「…とりあえず、俺らは帰るよ」

僧侶「うん、気を付けてね。僕らは武具店もちょっと寄ってくから」

剣士「はいよ」

僧侶「ばいばーい」

魔術賢者「また…ね」

トコトコトコトコ…

……


剣士「…」

魔道士「じゃ、帰ろうか?」 


21 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:11:31 /NyOcknA
 
剣士「…そうだな」

魔道士「でもさ、魔術賢者さんと僧侶も仲良くなったねー」

剣士「全くだ。びっくりしたぞ」

魔道士「本当にお付き合いしちゃったりして」アハハ

剣士「僧侶も意外に気が強いところあるし、割とあるかもなぁ」

魔道士「そうなんだよね~…」


剣士「…」

剣士(…わかってるよ。いつの間にか、本気になってたことくらい)

剣士(何を求めてるわけじゃないけよ…、こういう気持ちってどうしたらいいんだ?)

剣士(武道家に聞くのは絶対に嫌だしなぁ…、ふざけてる風にしか言葉を発せないんだよな俺って…)

剣士(確かに周りから見たら、そうなんだろうが…。ハッキリしねーっつーか…)ハァ 


22 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:12:12 /NyOcknA
 
魔道士「…」

魔道士「…剣士!私らもどっかで買い物とかして帰ろうよ♪」


剣士「ん?あ、お…おう…」

魔道士「…それっ」

…ギュッ

剣士「おっ…」

魔道士「ほら、今度は私が手ぇ握って連れてくから!」


剣士「…」
 
剣士「お、お前にだけは先に越されるわけにはいかねえなぁ。俺がお前を引っ張ってやるよ!」 


23 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:13:52 /NyOcknA
 
グイッ…!

魔道士「あ、こらー!」

剣士「はっはっは!」

タッタッタッタッ…!


剣士(とりあえず、今の俺は…きっとこれが楽しいんだな…!)


…………
………
… 


24 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:15:48 /NyOcknA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
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・・・・
・・・
・・
・ 


25 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:16:51 /NyOcknA
 
そして、わずかばかりの時間が流れた…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【  2か月後 教室 】

ガヤガヤ…

剣士「ふわぁ…おはよ…」


武道家「おう」

魔道士「おっはよー♪」

乙女格闘家「おはよ!」

僧侶「おはよっ」

魔術賢者「おはよ…」 


26 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:17:55 /NyOcknA
 
剣士「やれやれ、朝からにぎやかだな」

僧侶「楽しくていいと思うよ」

剣士「ま、確かにそうだな」


魔道士「剣士、そういや話…聞いた?」

剣士「何の?」

魔道士「ずーっと前、食堂で剣士にケンカ売ってきた1年生のこと覚えてる?」

剣士「あ?」

魔道士「ほら、三流騎士を吹っ飛ばした人」


剣士「あ…あ~!」

剣士「オウケンシとかっていう?」


魔道士「豪剣士…」 


27 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:19:15 /NyOcknA
 
剣士「あ、豪剣士ね。そいつがどうした?」

魔道士「あの後輩、私らがやった実践演習と同じ内容のやつで、私らに匹敵するタイム叩きだしたんだって」

剣士「…まじで?」

魔道士「だから凄い話題になってるみたい」

剣士「いかにタイムが早かろうが、実力は俺のほうが上だ」フンッ

魔道士「うんっ」


…ガラッ

冒険先生「ほらほら、雑談は終わりだ。全員、席に戻れー」


乙女格闘家「あっ、はーいっ」

魔術賢者「…」

ガヤガヤ…ガタガタッ…! 


28 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:19:54 /NyOcknA
 
冒険先生「よし、全員席に着いたな」

冒険先生「さぁて…いよいよ10月も目前に迫ってきたわけだが」

冒険先生「君たちが入学して早くも1年半を迎えようとしている!」


剣士「時がたつのは早いことで」

冒険先生「全くだな。その早く訪れた1年半目に、公表していなかった実践演習予定を今から発表する」

剣士「…何?」


冒険先生「これは2年生のある時期になったら発表する、学校特別の演習でな」

冒険先生「予定には組み込まれていなかったが、"行う当日"で発表をする、毎年恒例のものだ」

冒険先生「去年の魔石洞窟の探索と同じように、成績に大きく関係する実習だからな」


剣士「ま…まじか!?」キラキラ 


29 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:20:51 /NyOcknA
 
ガヤガヤ…!!

生徒たち「ま、まさかこのタイミングでかよ!」

生徒たち「またバトルロイヤルだったら嫌だなぁ…」

生徒たち「何するんだよ…」


冒険先生「安心しろ。今年はパーティ別に、"本物の依頼"を受けてもらう」


生徒たち「!」


冒険先生「その依頼をどこまで達成できたか、遂行度によって評価を行う」

冒険先生「それぞれのパーティに合う依頼は用意済みだ」 


30 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:21:42 /NyOcknA
 
剣士「まじか…まじかぁぁ!」グッ

魔道士「本当の依頼って…。しかも今日ってことは、今からでしょ!?」

武道家「余裕だな、いかなる依頼でもかかってくるがいい!」フハハ

僧侶「僕だって、ずっと努力してきたんだ、その成果くらいみせてやる!」


冒険先生「その通り。クエストの遂行日は全員共通で今日から開始だ。パーティによっては船を使う場合もある」

冒険先生「遊びじゃないんだから、しっかりしろよ。依頼人にどのように動いて貰ったかはしっかり報告してもらう」

冒険先生「今から配る用紙に、パーティで行うクエストの詳細が記載してあるから、しっかり読むように!」


全員「はい!」


冒険先生「では、まずは剣士のパーティからだ。…ほれ」ペラッ 


31 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:22:19 /NyOcknA
 
剣士「おう、どれどれ」カサッ

…ペラッ

剣士「…」

剣士「…こ、これは…!」


魔道士「何?どれどれ」

武道家「どんなのだ?」

僧侶「遠くないといいなぁ」 


32 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/05(火) 17:23:10 /NyOcknA
 
カサカサ…ペラッ

剣士「…」

魔道士「…」

武道家「…」

僧侶「…」


3人「……えっ?」


剣士「こ、これなの…本当に…?冒険せん…せい……?」

冒険先生「当然だ」ニコッ

………
…… 


40 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:08:36 vvSHlBqY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【 北西町から離れにある 屋敷 】


…ザボォン、ザボォン…


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

僧侶「…」


屋敷主人「ほら、早く探してくれ。ドブの中に金貨を落としちまったんだよ」

屋敷主人「価値のあるコインなんだから、どうしても見つけたくてな!」ガハハ! 


41 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:09:09 vvSHlBqY
 
剣士「…わかってるっつーの!」

屋敷主人「ん~?」


魔道士「こら、剣士…!敬語使ってよ、減点されちゃうでしょ…!」ボソボソ

剣士「あ、あぁそうか…。くそっ、なんでこんな依頼なんだよ…!」ボソボソ


屋敷主人「…何か言ったか?」

剣士「へ、へへ。何でもない…ッスよ、主人さん」ニタッ

屋敷主人「…態度の悪い生徒だな。減点申請するぞ?」

剣士「ちょ、それだけは勘弁をしてくれ…ッス!」

ザボザボザボ…!!


屋敷主人「げっ、わ…分かったからドブに浸かった身体でこっち来るな!!おい!!」 


42 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:09:41 vvSHlBqY
 
剣士「あ…。へ、へい」

屋敷主人「ったく…、俺は3階で寝てるからな!見つかったら言えよ!」

剣士「…」

屋敷主人「適当な生徒寄越しやがって…」ブツブツ

ザッザッザッザッ……

…………


剣士「…」

剣士「…この、くそったれが!!」


僧侶「け、剣士くんそんな大声で…、聞こえちゃうよ」 


43 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:10:16 vvSHlBqY
 
武道家「…面倒なのは分かる。だが、やらねばならぬぞ剣士」

剣士「あぁ!?」

武道家「くくく…。俺だって面倒なのは一緒だ。だが、秘策がある。ココは俺に任せろ剣士」

剣士「…あん?」

武道家「実はな、乙女格闘家との試行錯誤で新たな技を生み出したんだ」ニヤリ

剣士「あぁ?乙女格闘家とプロレスごっこで子供を生み出し」


武道家「掌底波ぁぁっ!」

魔道士「雷撃魔法!!」 


44 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:11:04 vvSHlBqY
 
ドゴォンッ!!ビリビリビリッ…!!

剣士「」

ザボォンッ…ブクブク…


僧侶「け、剣士くんが泥に沈んでいくーー!?し、死んじゃうよ!!」


武道家「まぁアホは放っとけ。お前らだけでもきちんと聞いてくれ」

武道家「実は、新たな技として"闘気"を溜めた拳を使い、」

武道家「ゼロ距離で相手の体に直接打ち込むという技術を会得した」


魔道士「え、それってオリジナルの技ってこと?」

武道家「まだまだ荒削りで未完成だが、意外と強いんだこれが」 


45 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:11:38 vvSHlBqY
 
僧侶「えっ、凄い…!そしたら、武道家くんがその技の始祖ってことになるんじゃないかな?」

武道家「そうなる…か?」

僧侶「そうだよ!で、その技の名前は?」

武道家「…衝撃波」


魔道士「そのまんま」

僧侶「もっとひねろうよ」


武道家「うるせー!技なんてそんなもんでいいんだよ!」

武道家「じゃあ何だ、ウルトラインパクトとか、闘牙衝撃掌とかつけるか!?」


僧侶「し、衝撃掌のほうがカッコイイんじゃないかなぁ」

魔道士「闘牙はナシね。くどいから」 


46 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:12:29 vvSHlBqY
 
武道家「な、なんだお前ら!もう、衝撃波でいいっつーのっ!!」


魔道士「それで…、その衝撃波がどうしたの?」

僧侶「今は敵もいないし、使うようなところでも…」


武道家「く…くくく…」

武道家「いいか、よく聞け。これはその名の通り、衝撃波を打ち込む技なわけだ」

武道家「と、いうことは。…この重い泥に攻撃を与えると?」


僧侶「ドブさらいをせずとも、ドブを全部吹き飛ばせる…?」

武道家「その通りだ!そっちのほうが探すのも早いだろうしな!」

僧侶「じゃ、じゃあ僕らは一回あがってるよ。危ないから下がろう、魔道士さん」

ザボザボザボ… 


47 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:13:00 vvSHlBqY
 
武道家「おっしゃ!闘気…!」パァッ

グググッ…!


魔道士「あ、待って!その前に剣士がそこで浮かんでてー…」

僧侶「あっ、そうだ武道家くん!一旦技を止めてー…」


武道家「衝撃波ぁぁぁあっ!!」ブワッ…!!

ザザ…ザッバァァンッ!!!

剣士「」

クルクルクル…ヒュウウウッ…ドシャアッ!! 


48 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:13:34 vvSHlBqY
 
魔道士「あ…」

武道家「あっ」

僧侶「あ…」


…………
………
… 


49 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:14:08 vvSHlBqY
 
………
……………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ソヨソヨ…

剣士「…」

剣士「…」

剣士「…んにゃ?」パチッ


魔道士「あ、気が付いた?」


剣士「…あ、あれ…何だっけ…」

剣士「何で俺は…魔道士にひざまくらされている?」 


50 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:14:50 vvSHlBqY
 
魔道士「わ、私と武道家に吹き飛ばされて…」

魔道士「最後に武道家の新技食らって完全ノックアウト…」


剣士「…」

魔道士「で、でも珍しいね。剣士があれしきでダウンしちゃうなんて…あはは…」

剣士「まぁ、疲れてたしな。最近は夜中まで本読んだりしてっから」

魔道士「あ、前に買った本?」

剣士「そっ。ゆっくりだけどよ、頭使う夜更かしだと次の日どうも眠くてな」

魔道士「それって、稽古とかで身体動かす夜更かしする方なら、眠くないってこと?」

剣士「普通そうだろ?」

魔道士「普通…逆」 


51 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:15:25 vvSHlBqY
 
剣士「…そうか?」

魔道士「…そう」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「は…はは…、そうか…」

魔道士「そうだよ」クスッ


剣士「はぁ…」

魔道士「…」 


52 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:15:55 vvSHlBqY
 
剣士「…そういや、俺の体の泥とか落ちてるけどどうした?それにあいつらは?」


魔道士「私が水魔法とかで洗い流しといたの」
 
魔道士「他の二人は、無事に金貨見つけたから、依頼主さんに渡して、お茶してるとこみたい」


剣士「お前はいかなかったのか?」

魔道士「そ、それはえーと…、あの屋敷の人苦手だし、こうして外でゆったりしてたほうがいいかなって思って」

剣士「…ははーん、俺の為か?お?」

魔道士「ち、違うから!」

剣士「…なんだ、そうか。違うのか」


魔道士「…あ、えっと…その…」

剣士「…そうなんだろ?」チラッ 


53 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:16:31 vvSHlBqY
 
魔道士「…」

魔道士「そ、そうだよ!わかってるんでしょ、もう!」


剣士「わりぃ、分かってた」ハハ

魔道士「もー…」

剣士「…」

魔道士「それに、いつまで私の膝に寝てるのかなー?」


剣士「…」

剣士「…」

剣士「もう、しばらく」 


54 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:17:08 vvSHlBqY
 
魔道士「…え?」

剣士「あ、ダメだった?」

魔道士「い、いいけど。ちょっと予想外な答えだったから」

剣士「予想外?」

魔道士「剣士のことだから、"悪い!"とかっていってどけたりするかなーって」

剣士「…」

魔道士「…?」


剣士「最近さー、本とか読んだりしてて、いろんな人の話とかを知るようになったんだ」

魔道士「う、うん?」

剣士「偉人とかさ、立派なことやったり…歴史に名前を残した人間は、自分に素直な人間が多い気がしてさ」

魔道士「うん」 


55 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:17:47 vvSHlBqY
 
剣士「まぁ、俺も欲望にゃ素直なほうだろ?」

魔道士「うん」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「…やっぱり何でもない」プイッ

魔道士「え、ちょっと」

剣士「…気にすんな」

魔道士「そこまで話して、途中でやめるってダメでしょ!気になるじゃない!」

剣士「い、いや…」

魔道士「はーなーしーて」ズイッ

剣士「ち、近いぞ…」 


56 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:18:18 vvSHlBqY
 
魔道士「きちんと話してくれるまで、こうしててやる!」

剣士「…ぐっ」

魔道士「さぁ、話すのだ剣士くん♪」


剣士「……、だから…!」

魔道士「ん~?」

剣士「よ…、欲望にゃ素直ってことで…」

魔道士「だから~?」

剣士「…す、好きな魔道士の膝でこうしていたかっただけだっつーの!!」

魔道士「!」

剣士「そういうことだ、それ以外ない!わかったか!」 


57 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:18:48 vvSHlBqY
 
魔道士「えへへ、よく言えました!」

剣士「…子供か、俺は!」

魔道士「子供じゃん!」

剣士「うっせ!」

魔道士「えへへ…そっかぁ」


…サァァァッ、ソヨソヨ…


魔道士「そっかぁ、うん…。好き、かぁ…」

剣士「…悪いかよ。つーか散々出会った時から言ってたじゃねえか」

魔道士「最初のはおふざけでしょ?」

剣士「可愛いって思ったのは本当だぜ?」 


58 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:19:20 vvSHlBqY
 
魔道士「むっ…」

剣士「それにな…ふざけてないと本音がいえねえんだよ」

魔道士「…」

剣士「意外とふざけながらも、本気で物事言ってる男って多いぜ」

魔道士「…そうなの?」

剣士「たぶん、そうだ」


魔道士「じゃあ…えーと…」コホンッ

剣士「…ん?」

魔道士「私もふざけてみよっかな」

剣士「あん?」 


59 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:20:35 vvSHlBqY
 
魔道士「私も剣士のこと好きだぜー!」

剣士「お…」


魔道士「…」

魔道士「…あははっ。本当にふざけてると、すんなり言えちゃうね」


剣士「…」 


60 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:21:18 vvSHlBqY
 
魔道士「…えへへっ」

剣士「な…魔道士」

魔道士「なぁに?」

剣士「今の言葉は…。ふざけた本気なのか?冗談なのか?」
 
魔道士「…どうだと思う?」

剣士「俺と…一緒の気持ちだと思う」

魔道士「…」

剣士「…」


魔道士「剣士が思ってる通りだと思う♪」

剣士「…」 


61 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:21:51 vvSHlBqY
 
魔道士「あ…。ご、ごめん。こういうのはきちんと言わないといけないよね」

剣士「いや、俺らにゃこんくらいで合ってるのかもしれねーぞ」

魔道士「…ふふっ、そうかもね」

剣士「まぁ…、分かってたけどさ。改めてお互い顔合わせてこんな言葉言うと…少し恥ずかしいな」

魔道士「…うん」


剣士「…」

魔道士「…」


剣士「…だけど」ボソッ

魔道士「?」

剣士「やっぱり男として、正面に立って言わないといけない気はする」

魔道士「えっ?」 


62 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:22:24 vvSHlBqY
 
…ムクッ!

剣士「…ごほんっ!」

魔道士「!」


剣士「ま…、魔道士。いいか?」

魔道士「…」コクン


剣士「改めて俺はお前が…好きだ」

魔道士「…!」

剣士「仲間じゃなくてさ…。俺自身として」

魔道士「…」

剣士「こんな俺だけどよ、付き合ってくれないか…?」

魔道士「…」

剣士「…」 


63 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:22:56 vvSHlBqY
  
魔道士「…」

魔道士「…こ、この…」ブルッ


剣士「ん…」


魔道士「この…、バカァッ!!」

…ベシッ!!


剣士「あだっ!」

魔道士「きちんと言うなら、もっと早く言ってよ!」

剣士「な…」


魔道士「乙女格闘家さんと武道家とか、近くで見てきて…」

魔道士「私と剣士より出会ったのは遅かったのに…その…」

魔道士「す、少し悔しかったっていうか…さみしかったっていうか…!」 


64 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:23:28 vvSHlBqY
 
剣士「…」

魔道士「もう…!それに、こんな場所で言うなんて…剣士らしいっていうかさ…」グスッ

剣士「な、泣いて…」

魔道士「あ…」ポロポロ

剣士「どどど、どうしたんだ?泣くなって!ちょっ!やっぱりこんなタイミングでダメだったな!?」バッ

魔道士「あはは…、剣士、本当に涙に弱いんだね」ゴシゴシ

剣士「ぐっ…!」


魔道士「分かんないけど、ただ泣いちゃっただけだから…大丈夫」

剣士「…」

…グイッ!

魔道士「きゃっ…」

ギュウッ…! 


65 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:24:21 vvSHlBqY
 
魔道士「!」

剣士「すまん…。何にせよ、俺のせいだろ」

魔道士「剣士…、こんなところで恥ずかしいよ…。武道家たちだって窓から見てるかもしんないし…」

剣士「抱きしめたくなったから抱きしめた」

魔道士「…うぅ」


剣士「だけど、これで心置きなくこうしていいんだろ?」

魔道士「そ、そうだけどぉ…」

剣士「じゃ、気持ち伝えてから初めての事なんだから…いいだろ」

魔道士「そんな事言われたら…、何も…言えないよ」

剣士「恥ずかしくて、嫌か?」

魔道士「…嫌なら吹き飛ばすもん」

剣士「くく…俺の彼女は強気だな」

魔道士「か…彼女って…!」 


66 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:25:01 vvSHlBqY
 
剣士「あれ?そうじゃないのか?」


魔道士「あ…、あう…」

魔道士「うんっ……ですっ」ニコッ


剣士「!」

剣士「…お、おう…」


魔道士「どうしたの?」

剣士「…今の顔、すっげぇ可愛かったと…」

魔道士「!」

剣士「…そんだけ」

魔道士「も、もう…!」

剣士「ははっ」 


67 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:25:32 vvSHlBqY
 
ビュッ…ビュウウッ…!!

魔道士「きゃっ…、凄い風…」

剣士「…」

魔道士「秋になっていくのかな。風はだんだんと冷たくなってくね」

剣士「…寒いのか?」

魔道士「さっきまで泥水に浸かってたし、少しだけね」

剣士「じゃあ…こうとか!」


ギュウウッ…!


魔道士「にゃ…!」

剣士「にゃって」

魔道士「つ、ついでちゃったの!」

剣士「何でよ」 


68 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:26:07 vvSHlBqY
 
魔道士「う~…!」

剣士「あ、やべ…」

魔道士「どうしたの?」

剣士「ニヤニヤが止まらない」

魔道士「…変態」

剣士「あぐっ」グサッ


魔道士「…な~んて。私も顔が緩んでるもん…えへっ」

剣士「こ…このやろー!」

サワッ…サワサワッ!コチョコチョッ

魔道士「ちょっ!あははっ!くすぐったいってば!」

剣士「あぁん?」 


69 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:26:48 vvSHlBqY
 
魔道士「も~!この!」

剣士「やべ、反撃される前に逃げないと!」

魔道士「あ、逃げちゃうんだー?」


剣士「…!」

剣士「に、逃げねえよ!もうしばらくだけ、このままがいいかな…」


魔道士「うん…私も、そっちのほうがいい…」

剣士「…」

魔道士「…」


…………
…… 


70 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:27:22 vvSHlBqY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッ…

武道家「…おーい、色々終わったぞ。ちゃんと依頼完了のサインも貰ってきた」

僧侶「気難しすぎる人で、やっと評価もらえたよ…」


剣士「うっす、ご苦労さん。結構時間かかったな」

魔道士「ご苦労様~。本当に遅かったね?」


僧侶「う、うーん…。本当はサインもすんなりいくはずだったんだけど…」

武道家「…遅かったとか文句言うなよ。お前らのせいなんだぜ」


剣士「あ?」

魔道士「え?」 


71 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:27:54 vvSHlBqY
 
武道家「いや、何でもない」

僧侶「それより学校に戻って報告しようよ。依頼終わっちゃったしね」

魔道士「そうだね。じゃ、行こっか」

剣士「おうよ」

ザッザッ……


武道家「…剣士」ボソボソ

剣士「あん?」

武道家「お前らが、庭であんな事してっから依頼主が怒ったんだっつーの」

剣士「なっ…!」 


72 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:28:26 vvSHlBqY
 
武道家「あのな、窓から丸見えだったし。声聞こえなかったが、結ばれたってことでいいのか?」ボソボソ

剣士「ん…ま、まぁ」


武道家「そうじゃなかったら、あんなことしてねーもんな」

武道家「前々から付き合ってたよーなもんだったが、お互いの気持ち伝えられたなら良かったな」


剣士「お前、ずっと見てたのかよ」

武道家「見えるところでイチャつくのはバカだぜ」

剣士「うっせ!」

武道家「その点、俺はなぁ…」

剣士「…」


武道家「…あ」ハッ

剣士「バーカ」 


73 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:28:58 vvSHlBqY
 
武道家「…あ?」

剣士「…お?」
 
武道家「やんのかオラァ!?」

剣士「かかってこいコラァ!!」


僧侶「ま、また始まったよ…」

魔道士「はぁ~…」


武道家「俺の新技で貴様を葬り去ってやろう!」スゥゥ

剣士「神の休息を得し我が肉体の前に、その程度では傷一つ付かぬ!」スゥゥ

武道家「…はぁぁ!」

剣士「ふぉぉお!」 


74 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:29:29 vvSHlBqY
 
魔道士「ったく、二人ともいい加減にー…」


武道家「衝撃…っ!」ドクッ

武道家「…がっ!?」ドクンッ!

武道家「ご…、ごほっ!?げほげほっ!」


剣士「…ん?」

僧侶「武道家くん?」


武道家「ごほごほごほッ!!ゲホッ!」

剣士「どうした?」

武道家「げふっ…!はぁ…」

剣士「また風邪か?」

武道家「寒い時期にドブん中に長時間入ってりゃあな…」ゲホゲホッ

剣士「貧弱め」

武道家「殺すぞ!」 


75 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:29:59 vvSHlBqY
 
魔道士「はいはい、いい加減にしてってば!」

魔道士「剣士も落ち着く!武道家は風邪ひいてるなら寮戻って休む!いい!?」


剣士「…はい」

武道家「…はい」


僧侶「…これこそ、剣士くんパーティって感じだね…」アハハ…

僧侶「僕がサインを届けるから、三人は寮に戻ってていいよ。ちょっと学校で用事あるしね」

僧侶(剣士くんと魔道士さんは二人っきりに。武道家くんはお休みだね)


…………
………
… 


76 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:30:31 vvSHlBqY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数十分後 冒険学校 2年生教室 】


僧侶「はい、冒険先生。こちらが依頼完了のサインになります」

…パサッ

冒険先生「い…、いくらなんでも早くないか?」

僧侶「え?」

冒険先生「そもそも移動だけで2日以上潰れるはずなんだがな…」

僧侶「で、ですが…」

冒険先生「まさかインチキをやったとか…」

僧侶「そんなわけ!そもそも街の外にある屋敷なんか、移動に1時間かかりませんよ!?」 


77 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:31:06 vvSHlBqY
 
冒険先生「そ、そうか」

冒険先生「…」

冒険先生「…って、今なんと言った?」


僧侶「え?」

冒険先生「…ちょっと、依頼書を確認するぞ」

僧侶「…」


冒険先生「…」

パサッ、ペラペラ…


僧侶「…」

冒険先生「…あ゛っ」

僧侶「…冒険先生?」 


78 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:31:37 vvSHlBqY
 
冒険先生「ま…間違えた…」

僧侶「えっ」

冒険先生「これ、お前らの依頼じゃない…。違うパーティのだ…」

僧侶「ま、間違えたんですか!?」


冒険先生「やってしまった…。本当なら船で移動して依頼をこなすのはお前たちだったんだよ…」

僧侶「え、えぇぇ…」

冒険先生「…評価は最大にしておくよ。悪かった」

僧侶「ぼ、僕はいいですけど、剣士くんらには黙っててくださいね…。何するか分かりませんし…」

冒険先生「し、しかしなぁ」

僧侶「また学校抜け出して、勝手に依頼受けに行ったりしますよ…?」

冒険先生「そうだよな…。黙っておくよ…」

僧侶「あはは…」 


79 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:32:13 vvSHlBqY
 
冒険先生「やれやれ…。すまないことをしたな…」

僧侶「…そういえば冒険先生、他の人が戻るまで僕らは何をしていれば…」

冒険先生「あーそうか。他のパーティは往復で1週間近くかかるところもあるからなぁ」

僧侶「ちょっとした春休みみたいな感じになりそうですね」

冒険先生「んーむ…」

僧侶「何か別の依頼とか、演習があれば剣士くんたちは飛びつくと思うんですけど」


冒険先生「演習か…んー…」

冒険先生「…」

冒険先生「…あっ、あぁ~」ポンッ

冒険先生「そうか。ふむ…それでいいか…」


僧侶「何かありましたか?」 


80 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:33:33 vvSHlBqY
 
冒険先生「…剣士らに、明後日の15時に学校の校庭に来るように伝えてくれ」

冒険先生「あいつらなら、そういう内容に対して優秀だろうしな」


僧侶「…?」


冒険先生「他の空いた2、3日は休みにするしかあるまい」

冒険先生「まぁとりあえず、それだけ伝えてくれればいい。詳細は明日教えるからな」

冒険先生「なぁに、後輩にとってもいい刺激になるはずだ」


僧侶「は、はぁ…」

僧侶(剣士くんたちが優秀な成績を収められそうなモノで、後輩にもいい刺激…ってことは…)

………
…… 


81 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:34:06 vvSHlBqY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・ 


82 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:34:45 vvSHlBqY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2日後 冒険学校 校庭 】

ザワザワ…

大戦士「さて、1年生諸君。今日の武闘演習だが…」

大戦士「今日はゲストが来てくれた。割と有名な面子で知ってるはずだ」


剣士「…そういうことね」

魔道士「は、恥ずかしい…」

僧侶「こんな事なら余計なことを…言わなければ…」

武道家「何が始まるんだ」


1年生たち「おぉ…剣士先輩たちだ!」

1年生たち「この学校きって以来の凄い人たちなんだろ…?」

豪剣士「…」 


83 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:35:16 vvSHlBqY
 
大戦士「静かに。そんな尊敬するような先輩ではないぞ」

剣士「おい、大戦士兄」


大戦士「冗談だ。さて、今日の演習の中に…この剣士と武道家の二人と全員の前で戦ってもらう人はいるかな?」

大戦士「全員というわけにはいかないが、先輩の動きを見て、自分の実力と照らし合わせてみるといいかもしれないな」


剣士「…誰でもかかってくるがいい」

武道家「…相手をしてやろうぞ」

僧侶「僕らは剣士くんと武道家君がやりすぎないように見る係でーす…」

魔道士「私らにしか出来ないと思うしね…」


大戦士「さて、二人に挑みたいやつは誰かいるかー?」 


84 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:35:53 vvSHlBqY
 
…ビシッ

豪剣士「…俺以外いないだろ。剣士先輩、頼むぜ」


1年生たち「お、やっぱりな。豪剣士以外いないよなぁ」

1年生たち「お前なら少しはやれるかもな!」


剣士「お前か…いいぜ」クイッ


大戦士「じゃあもう一人、武道家とやるやつはいるかー?」

…ビシッ

少戦士「師匠、僕しかいないでしょ!」

大戦士「…言うと思ったよ」


僧侶「あれ?」

魔道士「し、少戦士?何で1年生の演習に…?」 


85 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:36:38 vvSHlBqY
 
少戦士「あ、僕は…」

大戦士「年齢が年齢でな、ちょっと制限にも引っかかり、今の2年生のお楽しみには参加を遠慮させてもらったんだ」

少戦士「そうなんです。本当は行きたかったのに…」

大戦士「お前は1年生の年齢のほうに近いし、何より結構仲良くしてるじゃないか」

少戦士「そ、それはそうですけども…」


武道家「何だそうなのか?全然知らなかったぞ」

少戦士「剣士さんたちとは同級生扱いですけど、飛び級でしたから…」

武道家「1年も2年とも仲がいいとは、複雑だな」

少戦士「別に留年してるわけじゃないんで、いいんですけどね」

武道家「まぁそれもそうか」 


86 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:37:11 vvSHlBqY
 
剣士「…うだうだ言ってねえで、さっさとやろうぜ!」


大戦士「ん…。はぁ、全くお前は…」

大戦士「じゃあ模擬武器は用意してあるから、選んだら試合を開始するぞ」


剣士「ほいよ」

武道家「ういっす」

豪剣士「はい」

少戦士「わかりました」

タッタッタッタッ…カチャカチャ… 


87 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:37:45 vvSHlBqY
 
剣士「さぁて、初めての手合わせだな」

豪剣士「ずっと願ってましたから」


武道家「何だかんだで、今日まで再戦してなかったな。どれくらい強くなったかな?」

少戦士「…武道家さん、驚かせますよ」


僧侶「…どんな試合になるのかな」

魔道士「私は、予想はついてるよ」

僧侶「予想?」

魔道士「うん」

僧侶「…僕も何気に同じかも」

魔道士「でしょっ」 


88 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:38:28 vvSHlBqY
 
大戦士「…では、武器を構え!」


剣士「…」チャキッ

豪剣士「…」チャキンッ


武道家「…」スッ

少戦士「…」スッ


大戦士「試合…」スゥッ

大戦士「はじめぇっ!!!」バッ 


89 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:39:10 vvSHlBqY
 
豪剣士「先攻をいただく!大ざ…」ブッ…

剣士「せいやぁっ!!」ブォンッ!!!

豪剣士「!!」


少戦士「閃光打げ…!」ビュッ…

武道家「衝撃波ぁぁっ!!」バスッ!!!

少戦士「えっ!」


…ガキィィンッ!!!グボォッッ!!!


1年生たち「あぁっ!」

大戦士「ふっ…」

魔道士「…うん!」

僧侶「そりゃそうだよね」 


90 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:39:54 vvSHlBqY
 
ズザザザァ…ドシャアッ…!!

豪剣士「が…っ!」ズキンッ

少戦士「な…、何…が…!」ビリビリッ


剣士「ん~…。やっぱり構えからの動作がまだまだ遅すぎるな。大戦士兄にもう少しで追いつきそうなのに」

武道家「俺のもまだまだ威力が浅すぎる。気力を打ち込む感覚をもっと研ぎ澄まさないといかんな」


1年生たち「あ、あの二人が…」

1年生たち「一瞬でやられ…た…?」

1年生たち「ウソだろ…?これがあの剣士先輩と武道家先輩…」 


91 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:40:47 vvSHlBqY
 
ムクッ…

豪剣士「ま、待ってくれ…!まだ、俺はやれる…!」ググッ

少戦士「僕だって…!」ググッ


大戦士「勝負ありだ、二人とも。ダウンした時点の隙で、真剣勝負なら殺されていたんだぞ?」


豪剣士「…ッ!」

少戦士「ぼ、僕も頑張ってきたのに…!こんな一瞬で…!」グスッ


剣士「…二人とも、別に弱いわけじゃないだろ?むしろ強いほうだと思うぜ」

武道家「そうとも。気を落とすことはない」 


92 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:42:31 vvSHlBqY
 
豪剣士「そ、そういう言葉を…!」

少戦士「そういう言葉は、凄く痛いです…」

剣士「あぁ?」ギロッ

武道家「なんだと…?」ギロッ


僧侶「ちょっ!」

魔道士「ふ、二人とも!どうして怒ってるの…」


ザッザッザッザッ…グイッ!

剣士「…お前、俺らが強いっていってるのを、ウソだっつうのか?」

武道家「俺らがウソついてるように見えるのかよ」 


93 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:43:04 vvSHlBqY
 
僧侶「剣士くん、武道家くん…」

魔道士「あ…」

大戦士「くく…」


豪剣士「ど、どういう…」

少戦士「意味ですか…?」


剣士「俺らはお前らの先輩だ。強くて当然なんだ」

武道家「それに、剣士も俺も、もっと吹き飛ばすつもりでやっていたんだがな」

剣士「その通り。だが、お前らはそのクリーンヒットから自然と抜けた」

武道家「その時点で、二人の実力は高いってわかってる」

剣士「俺らも1年前は、お前らと同じくらいだったと思うぞ」

武道家「経験の差っつーのが、お前らはどれほどデカイか知ってるだろうが?」 


94 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:43:43 vvSHlBqY
 
豪剣士「…」

少戦士「…」


剣士「だから、情けの言葉じゃねえし」

武道家「本音で言ってるだけだ。俺らはいつも…」


剣士&武道家「戦いにゃ本気で生きてるからな!」


剣士「だぁっはっはっはっは!」

武道家「うわぁっはっはっはっは!」 


95 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:44:34 vvSHlBqY
 
1年生たち「…!」

1年生たち「か…かっこいい…」

1年生たち「剣士先輩…凄い。私、彼女に立候補しちゃおうかな…」

1年生たち「えぇ!じゃあ私は武道家先輩がいいなぁ♪」

ザワザワ…ワイワイ…!


魔道士「むっ…」ガタッ

僧侶「ま、魔道士さん落ち着いて…」


剣士「…1年生の女子諸君。今、誰か俺と仲良くしたいといったかな?」ビシッ

1年生女子「は、はい!」


魔道士「…」ピクピク

僧侶「剣士くん、刺激しないでよぉ!!」 


96 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:45:23 vvSHlBqY
 
剣士「…残念だな」

1年生女子「…え?」

魔道士「!」


剣士「…」

…グイッ!

魔道士「きゃっ…!」

剣士「この魔道士が、俺の彼女なんだ!可愛いだろ!」ビシッ

魔道士「っ!!」


1年生たち「剣士先輩の彼女!?」

1年生たち「いいなぁ、あんな風に言われてみたい…」

1年生たち「剣士先輩、かっこいい…」 


97 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:46:05 vvSHlBqY
 
剣士「俺は、この魔道士のコトが大好きなんだ…。残念ながらあきらめてくれ…」

剣士「…なー?お前も俺のこと大好きでー…」


魔道士「…」

剣士「…」

魔道士「…」

剣士「…ん?」

魔道士「…」ニコッ


パァァァァアッ…!!ピカッッ……!!!


…………
………
… 


98 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:47:11 vvSHlBqY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――その日、冒険学校の周辺には轟音が鳴り響いた。

町に住む人々はまるで花火のようだったと語っている。


その強大なエネルギーに飲み込まれた1年生の生徒たちは、

魔道士のことを"爆炎の魔女"と伝説に残すことを決める。


大惨事になるかと思われた事件だったが、奇跡的に一人の死傷者も出なかった。

…その裏に、僧侶の素早い聖魔法のフォローがあったのだ。

1年生たちは魔道士と同じように、僧侶を"奇跡の聖魔使い"として崇めるようになる。


魔道士「こら」

僧侶「は、恥ずかしいって…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 


99 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/07(木) 21:47:41 vvSHlBqY
 
………
……………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして2週間後 北西町 】

ザッザッザッ…

僧侶「…お待たせ!」

魔術賢者「…別に待ってないから大丈夫」

僧侶「そ、そっか。今日は休日だし、1日ゆっくりできるね」

魔術賢者「うん…」

僧侶「じゃあえっと、今日は新作が出てないか本屋にでもいく?」

魔術賢者「…」コクン 



111 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:22:29 IUlVOZIA
 
トコトコ…

僧侶「~♪」

魔術賢者「…」

僧侶「ふんふーん♪」

魔術賢者「…」


トコトコ…

魔術賢者「…なぁ」

僧侶「なに?」


魔術賢者「もうすぐ、学校も卒業になるが…」

魔術賢者「僧侶は将来的に、どうするか決めたのか…?」 


112 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:23:06 IUlVOZIA
 
僧侶「…将来?」

魔術賢者「私は、冒険者になりたいと思っているが…そうもいかないかもしれない…」

僧侶「…え?ど、どうしたの急に」


魔術賢者「猛雪山のふもとの町…」

魔術賢者「"雪降町"には中央軍の支部があるのを知っているか…?」


僧侶「うん、それは知ってるけど」

魔術賢者「私は、雪降町の出身なんだが…親が軍人で、そのコネで軍へ入らないかと連絡が来たんだ…」

僧侶「!」

魔術賢者「…迷っている」

僧侶「…」 


113 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:24:12 IUlVOZIA
 
魔術賢者「地元で、軍へ入れるのなら苦労もしない…。給料は安定しているし、冒険学校の知識も生かせる…」

僧侶「確かに、そうだけど…」

魔術賢者「だけど、僕は少し思っていたことがある…」

僧侶「何?」


魔術賢者「このまま、剣士…魔道士…武道家、乙女格闘家、僕、僧侶…」

魔術賢者「これで将来をともにするかもしれない…と」


僧侶「…」

魔術賢者「きっと、剣士や武道家は一緒に冒険しようって言ってくれると…そう思う…」

僧侶「うん」

魔術賢者「…僧侶は、やっぱりそっちのほうがいいと思っているか…?」 


114 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:24:55 IUlVOZIA
 
僧侶「…」

僧侶「…えっとね、実は…さ」


魔術賢者「うん…」

僧侶「僕自身、冒険者になれるか決め兼ねてたんだ…よね。本音を言うと」

魔術賢者「…僧侶が?」


僧侶「みんなを目の前で見てきて、どう考えても僕は剣士くんたちみたいな前に出れる人間じゃないし」

僧侶「…どちらかといえば、今までの知識を生かして人の為になることをしてもいいかなって考え始めてた」


魔術賢者「その知識を…剣士たちのためにという考えには、ならないのか…?」

僧侶「そ、それはもちろんそうだけど…」


魔術賢者「前、修学旅行の時も僧侶は…"人の為になること"と言っていたな…」

魔術賢者「もしかすると…、僧侶の中で将来的にやりたいものが…少しずつ見えてきてるんじゃないのか…?」 


115 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:25:40 IUlVOZIA
 
僧侶「うっ…」

魔術賢者「図星…か」


僧侶「…うん。冒険者も悪くないし、元々それが目的で学校に入ったけど」

僧侶「生活をしているうちに、ちょっとずつやりたいことが見えてきたんだ」


魔術賢者「…そのやりたいことって?」

僧侶「えっと…教会に入ろうかなって」

魔術賢者「ほう…」


僧侶「治療院で働くのも考えたけど、今の教会では治療院の役割のうえに孤児院やら色々やってるでしょ?」

僧侶「お金は入らないし、慈善団体でやってるようなものだけど、それは人の為になると思うんだ」


魔術賢者「うん…。確かに、教会の存在は庶民の味方…」 


116 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:26:37 IUlVOZIA
 
僧侶「だから、教会で働くのも悪くないかなって」

僧侶「中央都市の郊外で、もうすぐ募集が始まるらしいし…卒業時期にも合うし…」


魔術賢者「…そうか」

僧侶「…うん」

魔術賢者「いいんじゃないか…。立派なことだと思う…」

僧侶「そう…なんだけど…」

魔術賢者「?」

僧侶「やっぱり、寂しくなるし迷ってる」

魔術賢者「まぁ…そうだろうな…。僕も僧侶がいなくなると…寂しいと…思う」

僧侶「あはは…」 


117 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:28:14 IUlVOZIA
 
魔術賢者「…ふふ、少し僕にも僧侶の考えが移ってしまったのかもしれないな…」

僧侶「え?」

魔術賢者「実は…僧侶が、人の為にと思って教会に関する勉強をしていたのは…知っていた…」

僧侶「!」


魔術賢者「僕も興味が出て…調べた…」

魔術賢者「人の為になる事が…、どれほど素晴らしいことか…知ることができた」

魔術賢者「だから…、支部だろうと中央軍で働くことは…世のため人のためになる…。」

魔術賢者「そう思ったら、軍への誘いをすぐに断ることが出来なかった…」


僧侶「…」

魔術賢者「…」 


118 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:28:48 IUlVOZIA
 
僧侶「…魔術賢者さんが、もし支部へ入隊するというなら僕は教会へ行こうと思う」

魔術賢者「!」

僧侶「…君は、どっちにしたいと思う?」

魔術賢者「…ずるい質問だな」

僧侶「…」


魔術賢者「じゃあ…僕もこうする…。僧侶が教会へ行くというなら、僕は支部へ行こう」

魔術賢者「…どうする?」


僧侶「…」

魔術賢者「…」 


119 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:29:22 IUlVOZIA
 
僧侶「…魔術賢者さんは、人のためになることへ夢を持ったんだよね」

魔術賢者「一応、そうなるな…」

僧侶「…その夢を壊すことは、僕にはできない」

魔術賢者「…」

僧侶「君がそれを夢というのなら、僕は教会へ行くよ」


魔術賢者「…」

魔術賢者「…何も、言えないな」


僧侶「…」

魔術賢者「時間はあるとは思うけど…わかった。君がそういうなら、僕も心を決めるよ」

僧侶「…うん」

魔術賢者「…」 


120 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:30:03 IUlVOZIA
 
タッ…タタタタタッ!!!

???「…魔術賢者ちゃ~んっ!」バッ!

魔術賢者「ん…」

…ダキッ!!ズザザザァ!!ドォンッ!!


僧侶「ま、魔術賢者さぁん!?」


トコトコ…

武道家「あーあー…。邪魔するなっつったのに…」

僧侶「武道家くん!?ってことは…」チラッ


魔術賢者「苦しい…乙女格闘家…」ギリギリッ

乙女格闘家「偶然!ここで会うなんて!」 


121 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:30:39 IUlVOZIA
 
武道家「お前らもデートかなんか?」

僧侶「…え、えっと…。武道家くんたちはデートなんだ?」

武道家「…あっ。ま、まぁな」

僧侶「うわ…、少しずつだけど表にグイグイ出すようになってきたね…気持ち」

武道家「うっせ!」


トコトコ…

魔道士「やっほー。遠くから見てて声かけるか迷ったけど、乙女格闘家さんが突っ込んだから来ちゃった」

剣士「よっ」 


122 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:31:28 IUlVOZIA
 
僧侶「剣士くん、魔道士さん」

武道家「ようっ」

乙女格闘家「魔道士ちゃん、やっほー」

魔術賢者「乙女格闘家…しま…ってる…」ギリギリッ


剣士「何だ、休日なのに結局一緒のメンツだな」

魔道士「このまま皆で遊びに行っちゃう?」

乙女格闘家「さんせい!」

武道家「いいぜ、新しい店がオープンしたらしいしそこ行ってみるか?」 


123 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:31:59 IUlVOZIA
 
僧侶「…」

魔術賢者「…」

僧侶「この話は、また今度だね」

魔術賢者「…うん」


武道家「…何の話だ?」

乙女格闘家「なになに!?」

僧侶「な、何でもないよ!」

武道家「教えてもらおうかなー?」

僧侶「ひ、秘密だってばー!」

ギャーギャー!!ワイワイ…!

………
…… 


124 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:32:35 IUlVOZIA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・ 


125 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:33:05 IUlVOZIA
 
………
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1か月後 教室 放課後 】


剣士「ふわぁ~…」

魔道士「おっきなあくび」


武道家「今日の授業も終わったか」

乙女格闘家「最近、1日が早いよねー」


僧侶「何だかんだでもう10月なんだね。あと4、5か月くらいで卒業だよ」

魔術賢者「そろそろ…本格的に進路…、考えないと…ね」 


126 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:33:42 IUlVOZIA
 
剣士「進路か…」

魔道士「そうだよね。いつまでも生徒じゃないんだから」

剣士「あっという間だった気もするが、何だかんだで実力はついているんだろうな」

魔道士「きっとそうだと思う。1年生のころの魔石の洞窟は、今なら余裕でクリアできそう」

剣士「…もともと余裕じゃなかったか?」

魔道士「剣士と武道家だけはね…」


武道家「それにしても、本当に俺らは冒険者になれんのかね」

乙女格闘家「冒険者っていう職業がどうなのかは分からないけど、依頼を受けて生活くらいなら出来そうかな?」

武道家「魔物だのなんだの、とりあえず倒せば金入るんだろ?」

乙女格闘家「極論的にはそうかもしれないけどー…」 


127 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:34:28 IUlVOZIA
 
僧侶「…」

僧侶「ぼ、僕は冒険者になるかちょっと迷ってる」


剣士「!」

武道家「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」

魔術賢者「…」


剣士「…どうしたんだ?今まで冒険者になるために頑張ってきたんだろ?」

僧侶「そ、それはそうなんだけどさ…」

剣士「…?」 


128 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:35:02 IUlVOZIA
 
僧侶「その…、僕には無理かなって…」

剣士「お、おいおい。いつか話してくれただろ…。お前の親のように立派な支援として冒険者に…」

僧侶「支援者っていうかさ…、僕は人の為に尽くせる人になりたいって考えのほうが強いんだと思う」

剣士「…!」


僧侶「じ、自虐になっちゃうんだけど…」

僧侶「僕は目立つほうじゃなかったし、何より裏方に回るほうが得意かなって」

僧侶「剣士くんや武道家くんのように、常に前進の考えはどうしても持てなくて…」

僧侶「冒険者たるもの、前を向かず歩いてどうするっていう話も聞くしさ…」


剣士「…待て。なぁ僧侶…俺の気持ちもいっていいか?」

僧侶「う、うん」


剣士「この4人のまま……いや」

剣士「乙女格闘家と魔術賢者も…この6人で、一緒に冒険していきたいと思っていた」

剣士「すっげー楽しいし、ずっと一緒でいたいと思うんだ。お前は…そう思わないのか?」 


129 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:36:11 IUlVOZIA
 
僧侶「…!」

魔術賢者「…」


剣士「…どうなんだ」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

魔術賢者「…」


僧侶「……っ」

僧侶「そ…そりゃあそう思うよ。剣士くんたちと一緒に世界を走れたら、どれだけ楽しいだろうって」


剣士「じゃあ…!」 


130 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:37:07 IUlVOZIA
 
僧侶「で、でもっ!」

剣士「!」

僧侶「さっき武道家くんが話をした"本当に冒険者になれるのか"って聞いた時…みんなはどう思った?」


剣士「そりゃ…、何とかなるって思ったさ。いや、その為に俺はココへ来たんだから」

魔道士「ちょっと恥ずかしいけど、剣士と一緒ならって…」

武道家「俺も剣士と同じで、冒険者になるためにココへ来たが本心だけどな」

乙女格闘家「私は武道家と一緒ならって。魔道士ちゃんと一緒の気持ち」

魔術賢者「…」


僧侶「…」

僧侶「僕は、この道が少しの不安がよぎったって言うか…何ていうか…わかんないけど…!」

僧侶「…ここまで来て、情けない話だけど…」 


131 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:38:40 IUlVOZIA
 
剣士「お前、だったら俺らが引っ張ってー…!」

僧侶「…うん。きっと剣士君ならそういうと思った」

剣士「むっ…」ピクッ

僧侶「だけどさ、剣士くんたちの言葉でも…心があまり動かないかもしれない…」

剣士「どうして…」


武道家「…」

武道家「…僧侶」ハァ 


132 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:39:18 IUlVOZIA
 
僧侶「…?」


武道家「それじゃ剣士にケンカ売ってるだけだぜ」

武道家「正直に言えよ…お前、何か違う道を見つけたんだろう?」

武道家「言葉が浮かばないなら、お前が思うことをきちんと言ったほうがいい」


僧侶「!」


武道家「2年も付き合ってきたんだ。お前の態度で本音くらいわかるさ」

武道家「剣士は気づいてても、お前をどうしても冒険者の道にいれたいらしいがな」ククク 


133 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:40:17 IUlVOZIA
  
僧侶「け、剣士くん…」

剣士「…」

武道家「…剣士、全員が一緒の道っつーわけにゃいかんだろ。お前だってわかってるんだろ」

剣士「…」


武道家「俺だって、みんなで一緒で戦いたいし、ずっと一緒にいてぇよ」

武道家「…だけどな、剣士。それは素直な気持ちの前に、ただのワガママってやつだ」


剣士「う…うっせぇよ!!」

武道家「…」

剣士「うっせぇ…」 


134 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:41:02 IUlVOZIA
 
僧侶「剣士くん…」

剣士「…あんだよ」

僧侶「僕の本当の歩きたい道、聞いてくれる…かな」


剣士「…」

剣士「言えよ…」


僧侶「…ありがとう」

剣士「…」 


135 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:41:42 IUlVOZIA
 
魔道士「私も気になるよ。僧侶の言う、冒険者以外の道って一体なに…?」

魔術賢者「僕は…何回か聞いてる…」


僧侶「うん。僕はさ…"教会"で働きたいんだ」


剣士「き…」

武道家「教会っ!?」

魔道士「祈祷とか、孤児院とか…そういうところの?」

乙女格闘家「な、なんでまた…」


僧侶「あと治療院とかも関わってるし、冒険者の休憩所とかもしてるから…」

僧侶「間接的にだけど、冒険者に関わってるかなって」 


136 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:42:18 IUlVOZIA
 
武道家「だけど、教会って大変らしいじゃないか」

武道家「慈善団体のようなものだし、生活だって…」


僧侶「生活を気にしてたら、人を救う仕事なんて出来ないと思う」

僧侶「冒険者だって、そうでしょ?」


武道家「た、確かにそうだが…」

僧侶「…僕は、それがやりたいと思った。これは…僕自身が決めた事だから…」

武道家「僧侶…」


剣士「……あーあ、アホらしいわ!!」

魔道士「ち、ちょっと!剣士!」

剣士「先に帰ってるわ。勝手に教会でもどこでもすりゃーいーじゃん」ガタッ


僧侶「け、剣士くん…」 


137 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:43:07 IUlVOZIA
 
剣士「…」

カツカツカツ…、ガラッ!バタンッ!


僧侶「わ、悪いことしちゃったかな…」シュンッ

武道家「お前は悪くねー。こんな状況で、よく言ってくれたよ」

僧侶「…」

魔術賢者「うん…。僧侶、えらい…」

僧侶「え、偉いって…」


魔道士「剣士…」


武道家「あいつはさ、ずっと一緒にいれると思ってたんだろう」

武道家「だからこそ、真剣に向き合った僧侶の気持ちも分かってる」

武道家「だけど、ああいう態度しか取れない奴だから…」 


138 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:43:51 IUlVOZIA
 
僧侶「で、でも…」

武道家「大丈夫だっつーの。あいつも認めてるって」

僧侶「…」

武道家「どうしたらいいか分かんないだけだ。今まで通り、剣士は剣士に戻るから大丈夫だ。心配すんな」

僧侶「うん…」


魔道士「…私、剣士追いかけてくる」

武道家「それがいいかもな」

魔道士「うん。またね、みんなっ」ダッ

タタタタッ…ガラッ、バタンッ!


武道家「…んじゃ、俺らも帰ろうかね。僧侶、気にしすぎるなよ?」

僧侶「うん…」 


139 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:44:32 IUlVOZIA
 
乙女格闘家「じゃ、私も武道家と一緒に帰るね。じゃあね、また明日」

僧侶「また明日」

トコトコトコ…ガラッ、バタンッ!


僧侶「…」

僧侶「…」

僧侶「…はぁ」


魔術賢者「…僧侶、大丈夫?」

僧侶「魔術賢者…」

魔術賢者「僧侶…立派だった」

僧侶「…」 


140 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:45:58 IUlVOZIA
 
魔術賢者「…でも、僧侶がそうなら…」

僧侶「…」

魔術賢者「僧侶がそうなら…"私"は……」

僧侶「うん…。わかってる…」

魔術賢者「…」

僧侶「…」


ガタガタ…ガラッ!

魔術賢者「ん…」

僧侶「…誰か戻ってきたの?」 


141 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:46:47 IUlVOZIA
 
冒険先生「…っと、何だ二人とも。残ってたのか」


僧侶「ぼ、冒険先生!す、すぐに帰ります!」

魔術賢者「うん…、帰ろう…」

トコトコ…


冒険先生「…」

冒険先生「僧侶、ちょっといいか」


僧侶「は、はい」


冒険先生「剣士の奴がな、さっき廊下を走ってったんだが…」

冒険先生「お前に謝る言葉はなんだのと、ぶつぶつ言いながらどっかへ走って行ったぞ」


僧侶「!」 


142 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:47:23 IUlVOZIA
 
冒険先生「…色々あると思うが、俺はそういう事に関して極力、干渉はしないようにしている」

冒険先生「だが、この時期からはこういった事もあるだろう」

冒険先生「うまく言えないが、お前らなら何があっても大丈夫だと思っているよ」


僧侶「冒険先生…」

魔術賢者「…」


冒険先生「ほら、明日も早いんだ。早く寮へ戻ることだな」


僧侶「あ、はいっ。また明日です!」

魔術賢者「失礼します…」


…………
…… 


143 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:48:00 IUlVOZIA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タッタッタッタッ…


魔道士「け、剣士待ってよ~!」

剣士「!」

魔道士「はぁ…はぁ…。やっと追いついた…」

剣士「…」 


144 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:48:41 IUlVOZIA
 
魔道士「剣士ったら、あんな言い方して…」

剣士「…うっせ」

魔道士「でも、気持ちは凄い分かるよ」

剣士「…」

魔道士「一緒に帰ろうよ」

剣士「おう…」


トコトコ…


魔道士「…」

剣士「…」 


145 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:49:25 IUlVOZIA
 
魔道士「…剣士」

剣士「なんだ」

魔道士「怒らないでね…」

剣士「…」


魔道士「剣士は、みんながバラバラになるのが許せなかったんだよね」

剣士「…」

魔道士「私だって一緒の気持ち。ううん、みんな一緒の気持ちだと思う」

剣士「…」

魔道士「でも、それが絶対じゃなかった事くらい…剣士にもわかってるんでしょ?」

剣士「…」

魔道士「剣士の心の底じゃ、もう僧侶の道を認めてるんだよね」

剣士「…」 


146 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:49:56 IUlVOZIA
 
魔道士「剣士のことだから、どうやって謝ろうか…必死に考えたりしてたんでしょ?」

剣士「なっ…」

魔道士「図星。やっぱりね…、そうだと思った」

剣士「くそっ…。感情に身を任せちまうのはどうも治らないみたいでな」

魔道士「確かに悪いところだけど…、良さでもあると思う」

剣士「良さ?」


魔道士「剣士がどれだけ仲間を想っていたか…凄い伝わってきたもん」

剣士「…」

魔道士「だけど、仲間を想うなら…僧侶の選らんだ道も態度で向き合って…」

剣士「分かってるよ!分かってるっつーの…!」 


147 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:51:09 IUlVOZIA
 
魔道士「…あっ!ご、ゴメンね。こ、こんな風に言うつもりじゃなかったんだけど…」

剣士「いいよ。僧侶の心配もだけど、どうせ俺のことも心配して来てくれたんだろ」

魔道士「…当たり前だよ」


剣士「…」

剣士「寂しいなぁ。」ボソッ


魔道士「剣士…」

剣士「分かってても、寂しい」

魔道士「みんな、一緒だったもんね」

剣士「出会いは別れの始まりって言葉が…響く」

魔道士「…」 


148 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:52:25 IUlVOZIA
 
魔道士「確かに卒業と同時に離れ離れになっちゃうかもしれない」

魔道士「だけど…剣士パーティは、剣士パーティ!仲間は仲間!そう思ってるよ!」

剣士「…」

魔道士「ずっと友達!みんな…ずーっと大事な仲間なの!」

剣士「…っ」


魔道士「…でしょ?」ニコッ

剣士「あ…あぁ。そうだよな…。きっと…そうだよな」 


149 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:54:02 IUlVOZIA
 
魔道士「それに私も、剣士とずっと一緒の道を歩んでいくつもりだからねっ♪」

剣士「魔道士…」


魔道士「きっと周りから見たら、子供の会話なのかもしんないけど…」

魔道士「私はそう思ってる。何があっても、一緒にいれたらって」


剣士「…俺だってそう思ってる」

魔道士「…うん」

剣士「ずっと一緒にいような」

魔道士「…」クスッ


剣士「…何がおかしい」

魔道士「えへっ…。そ、そうやって面向かって言われると恥ずかしいなって…」 


150 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:55:07 IUlVOZIA
 
剣士「…素直ってことで」

魔道士「剣士が本気で素直すぎると、私が恥ずかしい…」

剣士「恥ずかしかるのも、可愛いと思うぞ?」

魔道士「…ううっ」


剣士「魔道士、もっとくっついて歩こうぜ」グイッ

魔道士「あっ…」ギュッ


剣士「…」

剣士「な…ちょっと話は変わるが、少し前まで思ってたことなんだが…」


魔道士「…なぁに?」

剣士「俺は魔道士を好きな気持ちは隠してても、楽しくしてたし、そのままでいいと思ってた」

魔道士「…」

剣士「お互い、少しでも好きって気持ちが分かってるなら、自然の成り行きのままでもいいってさ」 


151 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:55:38 IUlVOZIA
 
魔道士「…うん」

剣士「だけど本を読み始めて、考えが変わって。今まで以上に、色々と素直になろうと思った」

魔道士「あの時だね…」

剣士「打ち明けて良かったと思う。俺…、やっぱりあのままじゃ満足できなかったと思ってる」

魔道士「…うんっ」


剣士「お前と出会えてよかった。ありがとな」

魔道士「ううん…、私こそ」

剣士「…」ニコッ


…………
…… 


152 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:56:17 IUlVOZIA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコ…

乙女格闘家「…」

武道家「…」

乙女格闘家「…武道家、無理してたね。頑張ったね、偉い偉い」

武道家「…わかった?」

乙女格闘家「剣士に感謝してることまで!」

武道家「お、おいおい…。本当に全部お見通しなのかよ」


乙女格闘家「私を誰だと思ってる!」

武道家「…だな」 


153 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:57:20 IUlVOZIA
 
乙女格闘家「気持ち、すっごい分かるよ」

武道家「剣士がああ言わなけりゃ、俺が文句言って外へ出てっただろうよ」

乙女格闘家「そしたら多分、剣士が武道家と一緒のことを言ってたよね」

武道家「絶対そうだろうな」ハハッ

乙女格闘家「剣士と武道家は仲いいんだなぁ…。私以上に厚い関係かも?羨ましい…なーんて」

武道家「おいおい、それとこれは違うだろ。お前と剣士への想いは違うぞ?」


…ギュッ

乙女格闘家「ありがと♪」

武道家「…剣士はなんつうか…、兄弟っつーか…。もう、そんなんじゃ言えない関係だと思う」

乙女格闘家「そういえば、二人とも兄弟はいないんだっけ?」

武道家「そうだな」 


154 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:57:58 IUlVOZIA
 
乙女格闘家「そっかぁ。だから兄弟以上に…お互いがお互いを認め合ってるとかなのかなー」

武道家「難しいけど、そんな感じじゃねえか?」

乙女格闘家「そっか~…」

武道家「…」


カァ…カァ…

乙女格闘家「夕焼けが綺麗~」

武道家「毎日、一緒に見てる景色じゃん」

乙女格闘家「…ダメだなぁ、そこは"お前のほうがきれいだよ"とかさ!」

武道家「あぁ…」

乙女格闘家「薄い反応だなぁっ!」 


155 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:58:42 IUlVOZIA
 
武道家「だって、当然のこと言ったって嬉しくないかなと」

武道家「まぁ、綺麗以上に可愛いとか思ったりしてっけども」


乙女格闘家「にうっ…」

武道家「…何だ、にうって」

乙女格闘家「嬉しくてつい」アハハ

武道家「へいへい」

乙女格闘家「へへー武道家!大好き!」

武道家「俺もだよ」


…………
………
… 


156 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/09(土) 20:59:19 IUlVOZIA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・
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・・
・ 



162 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:14:39 5QC3RD1I
 
……
…………
………………

そして、さらに時間は流れる。

ふと気が付けば…3月を迎えていた。

つまり…剣士ら2年生が卒業する日である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3月(卒業式) 2年生教室 】


剣士「…もう、卒業か」

魔道士「あんな言い合った日から、あっという間だったね」

武道家「言い合った日っつーかさ、学校始まってからあっという間だったぜ」

乙女格闘家「うん…。もう学校生活も終わりなんだね」

僧侶「気がつけば…早かったね」

魔術賢者「早かった…」 


163 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/10(日) 20:15:44 F64Sg2Fs
まあ1時間で追いつける量だったね 


164 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:15:45 5QC3RD1I
 
僧侶「剣士くん。僕は…僕の道のままって決めているよ」

剣士「分かってる。お互い、頑張ろうな」

僧侶「うん!」

剣士「その…なんだ。本当に悪かったなあの時は…」

僧侶「…次の日にお互い謝ったでしょ。もう気にしないようにしようよ」

剣士「だな。ありがとよ」

僧侶「…」ニコッ


武道家「つーかさ、この後の卒業式終わったらそれぞれの希望毎にバラバラだろ?」

武道家「実質…、これが僧侶といられる最後の時間ってことになるのか」 


165 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:16:28 5QC3RD1I
 
僧侶「そ、そうだね…」

魔術賢者「それに関してなんだけど…ちょっといいかな…」

武道家「どうした?」

乙女格闘家「あ、もしかして僧侶くんと一緒に着いていくとかー!?」


魔術賢者「ち、違う。言いそびれてたけど…」

魔術賢者「実は私…、中央軍に勤める事になった…」


武道家「…はい?」

乙女格闘家「え?」

剣士「…中央軍に?」

魔道士「勤めるって…!」


魔術賢者「私の親が…猛雪山の支部で働いてる人で…」

魔術賢者「言い方悪いけど…、コネでその支部で軍人として働くことに…」 


166 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:17:06 5QC3RD1I
 
僧侶「…僕は知ってたよ」

魔術賢者「うん…」


乙女格闘家「な、何で急にまた…」

魔術賢者「僧侶が離れるというなら…、私の決心もついた…」


乙女格闘家「…二人とも、バラバラになっちゃうよ?」

魔術賢者「仕方ない…。寂しいけど…」

乙女格闘家「哀しいよ…」

魔術賢者「…何で、乙女格闘家が…哀しんでくれる…?」

乙女格闘家「何でって…」グスッ

魔術賢者「…っ」 


167 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:17:55 5QC3RD1I
 
剣士「…みんな、それぞれの道で頑張るんだな」

武道家「乙女格闘家、こいつらの決めた事だろう。簡単に変えられる事じゃない…」

乙女格闘家「うん…」

魔道士「そっか。仕方ないよね…」


…ガラッ

豪剣士「失礼します」

少戦士「失礼します」


剣士「…お、二人とも」 


168 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:18:36 5QC3RD1I
 
豪剣士「卒業、おめでとうございます。一応ご挨拶に」

少戦士「おめでとうございます、みなさん」


剣士「皆さんって…、少戦士は一緒に卒業じゃないのか?」


少戦士「前もでしたが、年齢制限が引っかかったり…大戦士師匠がここに残るので…」
 
少戦士「僕はこのままもう1年だけいないといけないんです」


剣士「そうだったのか…。少戦士、楽しかったぜ」

少戦士「はい…、ありがとうございます」ペコッ
 
 
豪剣士「そういえば剣士先輩、大戦士先生が校庭に来てくれと」

剣士「…大戦士兄が?」 


169 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:20:08 5QC3RD1I
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 校 庭 】

タッタッタッ…

剣士「大戦士兄~、何か用か?」

大戦士「お、来たか」


ワイワイ…

武道家「どうしたどうした、戦うのか?」

魔道士「最後の決戦みたいな…」

僧侶「また校庭が爆発するんじゃ…」ガクガク

魔術賢者「それ…魔道士…」

乙女格闘家「あははっ、魔道士の魔法は本当にすごいよね!」

魔道士「…ほ、ほめられてるのかな…?」 


170 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:20:45 5QC3RD1I
 
大戦士「だ…団体さんだな」

剣士「で、どうしたんだよ。もうすぐ卒業式始まっちまうぞ?」

大戦士「なぁに、ちょっとね」

剣士「…?」


大戦士「1年前の記録を調べたんだけど、剣士は武装大佐と戦っただけで…」

大戦士「学校の冒険者の身体測定には正式記録として参加してないみたいじゃないか」


剣士「あぁ、そうだったな」

大戦士「そこで、卒業前に折角だから記録をとってもらおうかと」

剣士「…はぁ?」

大戦士「本当はこれ問題なんだよね。中央軍政府に出す資料として、正式な記録残さないといけないから」 


171 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:21:23 5QC3RD1I
 
剣士「…武装のオッサン、忘れてたってことか?」

大戦士「あの人、戦いばっかでそういうところ疎かったりするからなぁ」アハハ

剣士「はぁ…仕方ねぇな。で、何するんだ?」

大戦士「簡単なことさ、50メートル走を測るだけだよ」

剣士「…まじで?」

大戦士「だからすぐ終わるって。ほら、早く準備して」

剣士「仕方ねぇなぁ…」

トコトコ…


大戦士「魔法でも使って、早く走るかい?それも許可されてるけどね」

剣士「んなことしねぇよ。己の足のみで思いっきり走ってやる」

大戦士「そかそか。んじゃいくぞー…」スッ 


172 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:22:05 5QC3RD1I
 
…ググッ

剣士「…」

大戦士「…ドンッ!」バッ!


ダッ…、ダダダダダダッ!!!ビュウッ…!!


魔道士「うわ、はっや」

武道家「あの野郎、俺より早いんじゃないのか」

乙女格闘家「でもあれ、1年生の記録として残るんでしょ?」

僧侶「大戦士先生も緩い人だからなぁ…、仕方ないね…」

魔術賢者「一生…残る記録になりそう…」 


173 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:22:40 5QC3RD1I
 
ダダダダダッ!…ズザザァ…!!

大戦士「…っし!測定終了!」バッ!


剣士「っしゃあ!3秒きってたろ!?」

大戦士「残念、4.5秒」

剣士「おっそ!ウソつくなって!」

大戦士「測る道具の調子が悪くてね。っていうか…わざと4.5秒にしといたんだよ」

剣士「ああん?」

大戦士「あまり早いと、公的記録には残せないだろ…。本当に1年生の記録か怪しまれるって」

剣士「あぁ確かに…」


大戦士「それでも、この学校の最速なんだからいいってことで!」

剣士「しゃあねえな…」 


174 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:23:41 5QC3RD1I
 
大戦士「それじゃ…剣士の記録…と。学校記録、報告記録…」カキカキ


剣士「…」

剣士「…待てっ!大戦士兄!」


大戦士「ん?」

剣士「せめてかっこよく、学校記録のほうには"伝説剣士"とかっつー名前で登録しといてくれ」ハハハ!


魔道士「だっさ」

乙女格闘家「ださっ」

僧侶「ださい…」

魔術賢者「ださ…い…」 


175 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:24:50 5QC3RD1I
 
大戦士「…いいなそれ!かっこいいじゃないか!」

武道家「俺も伝説武道家にしとけばよかったぁぁ!くそっ!」

剣士「うはははは!」


魔道士「…」

僧侶「…」

乙女格闘家「…」

魔術賢者「…」 


176 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:25:24 5QC3RD1I
 
僧侶「じ…、じゃあ卒業式に行こうよ。また遅刻したら冒険先生に怒られちゃうから!」

魔術賢者「そう…だな…」

剣士「最終日まで怒られるのは俺ららしくねえか?」

武道家「まぁ確かに」

魔道士「バカなこといってないで早くいくよ!」

乙女格闘家「いそごっ!」


剣士「んむ…行くか!」

タッタッタッタッタッ…

…………

………

… 


177 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:25:54 5QC3RD1I
 

………

…………
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 会 場 】


冒険先生「…諸君。今まで、よく頑張ってくれたな」

冒険先生「言葉は悪いが、今まで以上に大変な生徒たちだったと思う」

冒険先生「だが、それ以上に誇らしい生徒でもある」

冒険先生「君たちが、大いに活躍することを願って…別れの挨拶とする」


全員「…」


冒険先生「そして…死なないでくれ。それだけだ」
 
 
全員「…」 


178 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:26:32 5QC3RD1I
 
冒険先生「あっという間に過ぎ去った時間だったかもしれない」

冒険先生「だが、その全ては力となり、明日への生きる道となってくれるはずだ」

冒険先生「この学校から、大いに羽ばたいていけ!」
 
冒険先生「それでは…2年間っ!!ご苦労であったっ!!!」


全員「ありがとうございましたあっ!!!」

………

………

剣士「…なんつーシンプルな挨拶。測定のほうが長かった」

武道家「冒険先生らしいぜ」

剣士「それじゃ…これからどうするんだ?」

魔道士「冒険者希望者は、最初の依頼を紹介して貰えるから冒険先生のところ行くんだよ」


僧侶「…僕は、聖魔先生のところだね。今日中に、色々しないといけないらしくて…」

僧侶「そのまますぐに、中央都市行きの馬車に乗るんだって…。これでさよなら…だね」 


179 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:27:07 5QC3RD1I
 
剣士「なぁに、会いに行くさ」

僧侶「うん。楽しみにしてるからね」

剣士「おう!」


魔術賢者「僕は…、もうすぐ出る馬車で…北方大陸の猛雪山のふもとの雪降町へ行くから…」

魔術賢者「また…会おうね…」


乙女格闘家「…必ず!」

僧侶「もちろん!」


魔術賢者「…」コクン 


180 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:28:04 5QC3RD1I
 
僧侶「それじゃみんな…」

魔術賢者「ありがとう…。またね…」


剣士「…おう!」

武道家「またな!」

魔道士「僧侶、魔術賢者さん…また会おうね!」

乙女格闘家「二人とも、元気でねー!!」


タッタッタッタッタッ……


剣士「…」

剣士「…いっちまったか」


武道家「あまり長くいすぎると、別れもつらくなるしな」 


181 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:28:59 5QC3RD1I
 
剣士「だけど、すぐに会えるっしょ。俺らにかかれば、世界なんざ狭い狭い!」

武道家「だぁっはっはっは!そうだな!」

魔道士「ふふっ」

乙女格闘家「頼もしいじゃん♪」


トコトコ…ポンッ

剣士「あん?」クルッ

…グニッ

剣士「ほ…頬に指…。なんつう古典的な技を…。こんな事するのはー…」

大戦士「…よっ」

剣士「大戦士兄だよなー」

大戦士「みんな、改めて卒業おめでとう」

剣士「うむ」 


182 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:29:43 5QC3RD1I
 
大戦士「君らは勿論、冒険者志望なんだろう?」


剣士「…まあな!」 
 
武道家「それ以外あるわけねーな!」

魔道士「そうですっ!」

乙女格闘家「頑張っちゃうよ~!」


大戦士「…自由気ままのパーティとして活躍していくつもりかな?」


剣士「まぁその辺は…。たぶん…そうかも」

武道家「大体の依頼はこなせそうだし、生活自体も不自由しなそうだしな」


大戦士「ふむ…」 


183 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:30:18 5QC3RD1I
 
剣士「…大戦士兄、何かしたのか?」

大戦士「いや何、君たちが良ければなのだが…」

剣士「…?」

大戦士「実はな…」


…………
………
… 


184 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:31:07 5QC3RD1I
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 寮への帰路 】

ザッザッザッ…


剣士「…まさかだった」

武道家「いきなりだったな」

魔道士「中央軍の本部への入隊を薦めるって…」

乙女格闘家「軍人って道は考えてなかったにゃ…」 


185 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:31:52 5QC3RD1I
 
剣士「…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大戦士「…君たちがよければ、中央軍へ4人で入隊を紹介するが、どうだろうか」

剣士「えっ?」


大戦士「もちろん、俺の顔を利かせ、君らに不自由のない待遇をするつもりだ」

大戦士「一般冒険者と同じように自由に動いてもらいつつ、軍事のクエストも受諾できるように出来る」

大戦士「俺がしてきたような、大隊や中隊に交わる軍事任務ではなく、4人で自由に動けるようにして貰える」

大戦士「悪い話じゃないと思うんだが、どうだ?」


剣士「つまり、一般冒険者の扱いで、中央軍所属者のみの専用任務も受けられると?」

大戦士「そういうことだよ。君たちの実力なら、すぐにでも入れるはずだしね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「中央軍か…」

魔道士「どうするの剣士?」 


186 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:32:36 5QC3RD1I
 
剣士「確かに色々と便利そうだし、大戦士兄の顔も利くって魅力はでかいんだけどなー」ウーン

武道家「乗り気じゃないのか」 
 
剣士「堅いの、俺に向いてるか?」

武道家「向いてないな」

剣士「だろ?」


魔道士「やっぱり断るの?」

剣士「…正直言えば。お前らはどう思う?」

魔道士「私はどっちでもいいと思うけど…、剣士の赴くままにって感じかな」

剣士「お前らは?」


武道家「俺は自由気ままがいいと思ってるぜ」

乙女格闘家「私も武道家にさんせー!」 


187 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:33:32 5QC3RD1I
 
剣士「…じゃあ、大戦士兄には悪いが断ろうぜ」

武道家「そうだな。やっぱり俺らは、少しでも縛られるの好きじゃねーしな!」

剣士「そうそう。俺らは俺らだけで、世界に名を残す人間になってやろうぜ!はっはっは!」

武道家「お、いいねぇ。まずは上位やら危険指定種された魔物でも倒しにいくか!?」

剣士「いいね!やってやるぜっ!!」

ワイワイ…!


乙女格闘家「…魔道士ちゃん、これからもよろしくね♪」

魔道士「うん。こちらこそ」 


188 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:35:05 5QC3RD1I
 
剣士「まずは卒業記念に、大きな町で遊んだりしちゃうか!?」

武道家「いいねぇ!もしかしたら色々と楽しい場所もあるかもな!?」

剣士「そうだな、ぐふふ…」

武道家「ぐふふ…」


乙女格闘家「あの二人、あまり調子に乗るようなら私らで制裁加えないとね…」ゴゴッ

魔道士「賛成…」ゴゴゴッ 


189 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:35:42 5QC3RD1I
 
剣士「…」ゾクッ

武道家「…」ゾクッ

…クルッ


魔道士「二人とも…」ニコッ

乙女格闘家「これからも、よろしくね」ニコッ


剣士「は…」

武道家「はい…」 


190 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:36:31 5QC3RD1I
 
剣士「…」

剣士「あっ!つーかさ、冒険先生に最初の依頼もらいに行くの忘れた!」


武道家「…まぁいいじゃん。最初から色々見つけるほうが、俺らっぽくね?」


剣士「あ、それもそうか。じゃ、まずはどこいく!?海を渡るか、大陸を横断するか!」

剣士「それとも本当にいきなり上位種探すか!」


武道家「俺らは…風のままに、だろ!」

剣士「だな!はっ~はっはっはっはっ!」

魔道士「…やれやれ」

乙女格闘家「楽しみになってきた♪」


剣士「うしっ!それじゃみんな!」パァンッ! 


191 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:37:04 5QC3RD1I
 
魔道士「うん!」

武道家「おうっ!」

乙女格闘家「うんっ!」


剣士「……冒険へ、出発だ!!」


………
……
… 


192 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:37:50 5QC3RD1I
 
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・・・
・・
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193 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:38:23 5QC3RD1I
 
――――北西冒険学校。

その日、若き冒険者たちは世界へと羽ばたいた。

待ち受ける未来は、光か闇か。

壮大な物語はまだ始まったばかりである―――― 


194 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:39:09 5QC3RD1I
・・
・・・
・・・・
・・・・・・
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195 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:39:49 5QC3RD1I
 
……そして。

春。夏。秋。冬。

幾度の季節が巡り、歳月は流れた。


その月日の中、世界にわずかばかりの変化があった。

冒険の礎を築きし、冒険者の先人たちがいよいよ休息の時期を迎えたのだ。

言わば、引退である。


…そう、つまり。

"若き冒険者たち"が光を浴びる時が来たということだ―――…! 


196 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:40:49 5QC3RD1I
 
【 to be continued....! 】 


197 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:41:55 5QC3RD1I
 
--------------------------
◆ 次回 -第三章- 予告 ◆
-------------------------

――――移り変わる時代

管理長「…時代は変わりました。もう、強き冒険者はいないのです」

魔術賢者「そんな…」

管理長「世代交代という今、まさに冒険氷河期ともいえる時代でしょう」

魔術賢者「…」


――――だが、その世界に刺す一筋の光

管理長「あぁ、しかし。この時代にも…成果を上げている面子はおりました」

魔術賢者「…そうなのですか?」

管理長「…はい。男二人と女二人のやかましいパーティと聞いています」ハハッ

魔術賢者「まさか…!」 


198 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:44:38 5QC3RD1I
 
――――そんな最中、事件は起きる

武装中将「…また、か」

中佐「今度ばかりは、解決せねばならないでしょうね…」

元帥「直接の指揮は私が執ろう」

武装中将「嫌な予感がしてならん…」



――――そして、再びあの男も立ち上がる

大戦士「…また俺がやるんですって?」

武装中将「この時代…お前くらいしか頼める者がいないのだ…」

大戦士「…仕方ないことなのか」 


199 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/10(日) 20:45:53 5QC3RD1I
 
――――その未来は光か闇か…

それを決めるのは、やはり若き冒険者たちだった…


魔道士「…行こうか」

武道家「…だな」

乙女格闘家「…準備いいよ!」

剣士「さぁ…!俺たちの出番だ!」



【 go to next stage 】 



213 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:34:42 Fh9nr8No

<あの日から4年後…>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 中央軍 依頼一般公開所 】


ザワザワ…ガヤガヤ…


受付嬢「続いての方、どうぞ」

傭兵「失礼する。以前、山奥村の討伐依頼を完了してー…」

受付嬢「では、今回の受諾できるクエストのまとめはこちらに…」

ガヤガヤ……ワイワイ…


トコトコ……

…ストンッ

冒険者A「かーっ!相変わらず混んでるな~!」

冒険者A「待合室の椅子に座るのも一苦労だっつうの」ハァ 


214 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:35:13 Fh9nr8No
 
…ポンッ
 
冒険者B「よっ」

冒険者A「おぉっ!久しぶりじゃん!最近調子どうよ?」

冒険者B「全然。まともに依頼もなくてどうするべきか迷ってた」ハァ


冒険者A「だよな…。だから軍事依頼の一般公開に皆集中しちまうんだが」

冒険者B「町村とかの個人依頼を受けるのにも、ある程度有名じゃないと断られちまうし」

冒険者A「俺らみたいな下位冒険者にとったら、軍の一般受付がなかったら廃業だよ」

冒険者B「そろそろ店でも出してさ…まともに働いたほうがいいのかねぇ」

冒険者Aお、「おいおい!強くなって一攫千金の夢を諦めないって言ってたのはどこのどいつだ?」 


215 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:35:46 Fh9nr8No
 
冒険者B「あまりケガもしたくねぇんだよ…」

冒険者B「実はもうすぐ結婚することになってさ…。子供も生まれるし…」


冒険者A「…こ、子供!?結婚!?お前…本当かよ!」

冒険者B「たまにお前とは一緒にクエストやってたけど、それも無理になるかもなぁ」

冒険者A「はぁ…。そう聞くと、冒険者稼業は俺らみたいなのは現実直視が本当にいてぇよ……」


冒険者B「だな…」

冒険者B「…」

冒険者B「…あっ。そういや、この話知ってるか?」


冒険者A「何の話だ?」 


216 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:36:26 Fh9nr8No
 
冒険者B「最近、男2人と女2人の4人組パーティが、物凄い勢いで高難易度の依頼をこなしてるらしい」

冒険者A「…何だそりゃ」

冒険者B「軍へのスカウトも断って、あくまでも一般冒険者として立ち回ってるとかなんとか」

冒険者A「お…おいおい、軍へ入れば給金も出るし、勿体ない話だ」

冒険者B「…そういう断ってるから、俺らみたいな冒険者らの憧れの的で、噂になってんじゃないの?」

冒険者A「あ~、納得」


冒険者B「一体どんな奴らなんだろうな」

冒険者A「俺も、そんな風に噂になってみてぇなぁ」 


217 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:37:09 Fh9nr8No
 
冒険者B「…はぁ」

冒険者A「…ふぅ」


ガチャッ…ギィィ…

コツコツ…


冒険者B「…お?」ハッ

冒険者A「どうした?」

冒険者B「…今、ココに入ってきた子…見ろよ…!」クイッ

冒険者A「今はいってきた子?」チラッ


コツ…コツコツコツ…

コツコツ…ピタッ


???「…」 


218 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:37:48 Fh9nr8No
 
…ザワッ!ガヤガヤ…!

冒険者たち「…お、おい見ろよ。何だあの女…」

傭兵たち「うわ…、あんな子と付き合ってみてぇ…」

冒険者たち「え、可愛っ…!でも、あの服装ってまさか…」

傭兵たち「中央軍の…軍人……しかも尉官じゃないか!?」


スッ…ペラッ

魔術賢者「受付さん…中央軍所属の魔術賢者少尉だ…。これが、証明書…ね」 


219 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:38:23 Fh9nr8No
 
That's where 
  the story begins!
―――――――――
【剣士「冒険物語!」】
―――――――――
Don't miss it! 


220 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:38:56 Fh9nr8No
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

受付嬢「は、はい。魔術賢者様ですね…」

受付嬢(うひゃあ~…!綺麗なヒト…。これで軍人さんとか…反則だよ…!)


魔術賢者「…どうした?」

受付嬢「あっ…。ご、ごめんなさい!えと…!ご、ご用事は何でしょうか!」

魔術賢者「…北方大陸の雪降町支部から派遣されてきた。ここの管理長に話は通ってるはず…」

受付嬢「わ、わかりました。今、お呼びしてきます!」ガタッ

魔術賢者「よろしく…」

タッタッタッタッタッ… 


221 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:39:29 Fh9nr8No
 
魔術賢者(学校を卒業し…、支部に入隊してから今年でもう4年になるのか…。時が立つのは早い…)

…キョロキョロ

魔術賢者(それにしても、中央本部の依頼受付所は初めて来たが…、なかなか綺麗なところだな…)

…パサッ

魔術賢者(む…。乙女格闘家に言われて以来、髪の毛も伸ばしたものの…やっぱり少し邪魔だ…)


トコトコトコ…ボスンッ!

男傭兵「よー、姉ちゃん」ニタニタ

魔術賢者「…む、何か用か。急に肩を組むとは…、馴れ馴れしいな…」

男傭兵「本当にアンタ、軍人さんなのか?可愛いじゃねえか」

魔術賢者「…中央軍北方大陸、猛雪山支部に勤めてるが」

男傭兵「へぇ、本当なのか。驚いたぜ。まぁいいや…このあと俺と遊ばないかい?」

魔術賢者「折角の誘いだが…、このあと仕事があるのでな…」


男傭兵「…夜のお遊びに付き合ってほしーってことなんだけどなぁ?夜にゃ暇だろ?」ニヤニヤ

魔術賢者「ふむ…。夜は休息を取らねば持たない身だからな…。お断りするよ…」 


222 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:40:04 Fh9nr8No
 
男傭兵「つれない事言うなって~。へへっ」ソッ

…サワッ

魔術賢者「!」

男傭兵「いいだろ?」

魔術賢者「…私は、あまりそういう事は好きではないのでな」パァッ!

男傭兵「へっ?」

ゴッ…ボォンッ!!!

男傭兵「がっ…!」ブスブス…

…ドサッ!


魔術賢者「それに…、男としての話なら…君のようなのはタイプじゃない」

魔術賢者「…と言えばいいのか?そういうセリフは私にはよく分からん…」 


223 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:40:53 Fh9nr8No
 
ザワザワ…!

冒険者たち「…やっぱ可愛くても、軍人さんだわアレ」

傭兵たち「容赦ねぇな…」


魔術賢者(やれやれ…、どこに行っても絡まれる。髪の毛を伸ばしたのは失敗だったか…?)


トコトコ…

受付嬢「あ、あのっ。お待たせしました、ここの管理長さんです」

管理長「どうも」ペコッ


魔術賢者「あっ…よろしく…」 


224 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:41:28 Fh9nr8No
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 応 接 間 】

ギィ…

管理長「わざわざ遠い所をお越しいただき、有難うございました」

魔術賢者「いえ…」


管理長「改めてご紹介させていただきます」

管理長「中央軍本部、一般依頼受付所の管理を任せて貰っております豪闘少佐です」

管理長「気軽に、管理長とお呼びください」


魔術賢者「私は中央軍、北方大陸猛雪山区、雪降町支部の魔術賢者少尉です」 


225 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:42:03 Fh9nr8No
 
管理長「ご丁寧にありがとうございます」

魔術賢者「…こちらこそ」

管理長「それで、本題になりますが。一般依頼へのご用事ですよね?」


魔術賢者「そうですね…」

魔術賢者「簡単に説明させていただくと、実は大型のアイスタイガーが登山区付近で確認されました…」


管理長「ほう」


魔術賢者「ですが、お恥ずかしい話…私たちの支部は面子も少なく…」

魔術賢者「一般に切り替えて募集しようと思いまして…」


管理長「もちろん構いませんよ。ただ…」

魔術賢者「ただ…?」 


226 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:42:36 Fh9nr8No
 
管理長「有能な冒険者は最近、ほとんど限られてきましてね」

管理長「何というかその…、アイスタイガーに対抗できる冒険者がいるかどうか…」


魔術賢者「そこまで冒険者の質は落ちているのですか…?」


管理長「冒険者の世代といいますか、一昔前は熟練者らがゴロゴロしておりました」

管理長「有名なのでいえば、軍の中では軍に所属する前の"武装中将"や…"大戦士少佐"などですね」


魔術賢者「!」


管理長「大戦士少佐は若くして退役しましたが、彼の世代も現役としては、そろそろ限界」

管理長「そして彼らがいなくなり始める今、今度は一つ、二つ下の世代が主軸となる」

管理長「つまり貴方から、貴方の少し年上の世代がメインとなっていくということです」

管理長「世代交代時期にあたる今日この頃、難易度の高い依頼を受けられる面子も少なくて…」 


227 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:43:35 Fh9nr8No
 
魔術賢者「…どの世代にも、飛び抜けた冒険者等はいるものだと…思っていましたが…」

管理長「いや~…10年前くらいを黄金期とするなら、今は氷河期でしょうね」

魔術賢者「では、アイスタイガーを倒せる面子もそうそういないと…」

管理長「そうなんです…。更に大型のアイスタイガーは仮にも上位危険種ですし、それが数体となるとやはり…」

魔術賢者「…」


管理長「一応、この中央でも募集は出しておきますが…。時間がかかると思います」

管理長「自分の身は自分で守るってわけじゃないですが、出来るだけ支部の中で何とかできると嬉しいですね…」


魔術賢者「…受け止めておきます」

管理長「力になれそうになくて申し訳ありません」

魔術賢者「いえ、お話を聞いてくださっただけ…嬉しく思います…」ペコッ

管理長「…」ペコッ 


228 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:44:15 Fh9nr8No
 
魔術賢者「お忙しい時間の中、わざわざお話を聞いていただき、有難うございました…」

魔術賢者「それでは、これで失礼致します…」ガタッ

カツカツカツ…


管理長「…」

管理長「…あぁ、そういえば」


魔術賢者「…はい」クルッ

管理長「こんな入れ替わりの時期に、ガンガンと成果をあげている面子はいましたね」

魔術賢者「…そうなのですか」


管理長「男二人、女二人のやかましいパーティでやってるとか言ってましたか…」

管理長「結構、この中央一般受付けの場所でも、冒険者同士の話題で出てるみたいですよ」


魔術賢者「!」 


229 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:45:06 Fh9nr8No
 
管理長「うちにも1回だけ来た事あるらしいんですよね。自分は留守でしたから、会えなかったんですが」


魔術賢者「その人たちの…名前は…」

管理長「えーと、何と言ったかな…。確か…けん…」


…ドゴォォンッ!!!


魔術賢者「!?」

管理長「!?」

魔術賢者「爆発音…下からですか」

管理長「…何でしょうか。ちょっと見に行きましょう!」


………
…… 


230 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:46:20 Fh9nr8No
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 一般受付 待合室 】


タッタッタッタッタッ…!

管理長「おーい、今の音はなんだ!?」

受付嬢「あっ…。か、管理長…」グスッ

管理長「ど、どうした!?」

受付嬢「あの…、男傭兵さんのうちの一人が…私に色々してきて…」ブルッ

管理長「…そこに倒れてるやつか」

…グデンッ

男傭兵「」


魔術賢者「また…さっきのやつか…」ハァ 


231 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:47:10 Fh9nr8No
 
受付嬢「そ…それでその…。一般依頼受付に来ていたパーティの方々に助けていただいて…」

管理長「その人たちはどこに…?」


受付嬢「依頼の受諾経歴や成果歴がとても高い方々だったので…」

受付嬢「今のうちでは、相応の渡せる依頼がなくて…」

受付嬢「それを知ったら、出ていきました……」


管理長「…そうか。お礼の一つくらい言いたかったんだが。もうこの男傭兵は出入り禁止だな」ハァ

管理長「他の一般依頼のところにも、コイツの詳細は渡しておかんとなぁ」ブツブツ


魔術賢者(…そんな人らだったら、うちの支部の問題も何とかしてくれたかも…) 


232 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:47:46 Fh9nr8No
 
ザワ…ザワザワ…

魔術賢者(ん…?)


冒険者たち「なぁ、さっきの受付のねーちゃん助けた人らってさ…、まさか……」

冒険者たち「…そうかもしれん。だって4人だったし、メンバーもぴったりだったじゃないか」

冒険者たち「今を時めく、あの男女のパーティってやつだったんじゃねーの?」


魔術賢者(…!)

魔術賢者(もしかして、もしかすると…)ダッ!

タタタタタッ…、ガチャッ…バタンッ!!


管理長「あっ…魔術賢者さん…?」 


233 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:48:19 Fh9nr8No
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻…中央都市の一角の家… 】


ガチャッ…!

神官(僧侶)「これでもう、大丈夫でしょう」


街人「娘を助けていただき、本当にありがとうございました…」

神官「いえ…。これで失礼します」ペコッ

街人「…」ペコッ


…バタンッ! 


234 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:49:23 Fh9nr8No
 
神官(…ふぅ!今日のお仕事終わり。今日もまた、人の為に尽くせたぞ)

神官(教会に勤めて4年…、何だかんだで僕のしたいことをやれてるって感じだね)

神官(何より、お礼の言葉とか…あの笑顔を見るのが何より嬉しい)


トコトコ…


神官(…でも)

神官(…)

神官(時々、寂しくもなる。もし僕が、当時のみんなといっしょだったら…)

神官(今どこで、僕は何をしていたんだろう。どんな生活を送っていたんだろうって)

神官(それに何より…当時…魔術賢者さんとか…。僕だって…男だったから…) 


235 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:49:53 Fh9nr8No
 
神官(……)

神官(男だったからっていうのは、おかしいな)

神官(今も僕は男だってのー!!それに僕には……。もうっ、しっかりしないとな!)


ドタドタ…ガシャアンッ!!


神官(…って、何の音!?)クルッ


タタタタタッ…!!

盗賊「くそ、路地裏か…どんどん狭くなりやがる!ヘマやって見つかるとは!」


神官「と、盗賊!?」


盗賊「む…!?」 


236 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:50:26 Fh9nr8No
 
タタタタタッ…チャキンッ!

盗賊「そこをどけぇぇ!邪魔だ、殺すぞこらぁ!!」クワッ!

神官「わわっ…!」

盗賊「どけコラァッ!!」

神官「ごめんなさいぃ!」

盗賊「そこに立ってると、邪魔だっつってんだろ!」

神官「ひぃぃっ!」


盗賊「くっそ面倒くせぇ!神父一人くらい殺して通る!!」ブンッ!!

神官「…なーんて。こんな神父の恰好してるけど、実は戦えるんだよ」ニコッ

盗賊「あん!?」

…ガシッ!ギュルンッ!!

盗賊「むおっ!?」 


237 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:50:57 Fh9nr8No
 
…ドシャアッ!!

盗賊「がっ…!」

神官「人を見かけで判断しちゃダメだってば。神の教えだよ」フフッ

盗賊「…て、てめ…」

神官「牢屋に入れてもらうから、寝ててね」ブンッ!

…バキィッ!!

盗賊「…っ」ガクッ


神官「…よしっ」

神官「警備隊、軍に届ける仕事は増えちゃったけど、街の平和を守る為だし仕方ないね」 


238 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:51:34 Fh9nr8No
 
ガサッ…!

神官(…!)ピクッ

ダッ…ダダダダッ!!

神官(えっ、まだ足音!?もしかして仲間がいたの!?)ハッ


ズザザザァ…!!

???A「この野郎、狭い路地逃げ込みやがって!」

???B「こっちだったな!」


神官(あ、仲間じゃないっぽい?警備隊の人かな?)


???D「…って、あの盗人、あそこで誰かに抑えられて倒れてない?」

???C「あっ、本当だ!あの恰好…神父さんかにゃ?」
 
???A「あ、すんませーんっす!その人、盗人なんすよ!」 


239 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:52:27 Fh9nr8No
 
神官「あぁ、分かってますよ!今から、中央軍の警備隊に引き渡そうと…!」


???A「あっ、そうっすか!ならいいんです、ご協力あざっす!」

???B「神父のくせに、随分と強い人もいたもんだな」

???D「この近くの教会の人なのかな?」

???C「そうなんじゃないかなー?っていうかあの人…どこかで見たことあるよーな…」


神官「…」

4人「…」ジー

神官「…」

4人「…」ジー

神官「……そ、そんな所で立ち止まって…どうしましたぁ~!?」

4人「…」ジー 


240 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:53:01 Fh9nr8No
 
神官「…?」

4人「…あ~っ!!」ハッ

神官「!?」


???A「お前…僧侶か!?」

???B「絶対僧侶だよな!?」

???C「僧侶ぉっ!!私だよ、分かるでしょ!?」

???D「僧侶くんだっ!私のこと覚えてくれてるかなー!」


神官「路地裏は日が薄くて、よく見えないんだけど…」ゴシゴシ

神官「何で僕の旧称を…」

神官「…」

神官「ん~…?」ジー 


241 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:53:39 Fh9nr8No

???A「おいおい、冒険学校の仲間を忘れたのか?」

???B「神父ってのは、忘れやすい生き物なんじゃないか」

???C「えぇ~…。僧侶、本当に私たちのこと忘れたの?」

???D「こうなったら、私の拳で思い出させるしかないね!」


神官「……あっ!?」

神官「えっ!?ま、まさか……!」

神官「け…、剣士くん!?武道家くん!!魔道士さん、乙女格闘家さんっ!?!?」 


242 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:54:15 Fh9nr8No
 
剣士「…僧侶!!」

武道家「僧侶!」

魔道士「僧侶っ!」

乙女格闘家「僧侶くーん!」


神官「み…みんなっ!?」


ダダダダッ…ダキッ!!

剣士「いやっほぉぉぉお!!思い出したか!!久々じゃねえか、どうしたんだこんな所で!!」

武道家「お前、その恰好…本当に神父っつーか…教会の偉い人にでもなったのか!?」

魔道士「うわっ凄い!しかも背伸びてるし…!」

乙女格闘家「昔よりよっぽど男っぽくなった気がする♪」 


243 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:54:48 Fh9nr8No
 
神官「ぼ、僕は今は神官で…!」


剣士「なーにが神官だ!はっはっは、何だどうしてここにいるんだよマジで!」バンバン!!

神官「いたた…!それは教会の仕事でさ…」


武道家「神官っつーことは、色々話あるんだろ?聞かせろよ、俺らの話も聞かせてやるから」

神官「あっ、ぜひ聞きたいかも!」


魔道士「背ぇ伸びたねぇ…、成長期だったのかな?」

神官「あはは…そうかな?」


乙女格闘家「筋肉ついた?」ペラッ

神官「わっ、めくらないでよ!」 


244 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:55:24 Fh9nr8No
 
ワイワイ…!!ガヤガヤ…!!

剣士「はははー!何だ、すげぇ今日はいい日じゃんか!」

武道家「まさかこんな所で会えるなんてなぁ!」

魔道士「逃げ足だけは早い盗人だったけど、出会わせてくれたのは感謝しないとね」アハハ

乙女格闘家「でも、盗人逮捕はお金になるから許すまじ!」

神官(みんな…、変わってないなぁ…!)クスッ


ガツッ…!!ガランガランッ!! 


245 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:55:58 Fh9nr8No
 
神官「うわっ、後ろのほうでまた物音?」クルッ

剣士「ん?」クルッ

武道家「何だ?」クルッ

魔道士「まーた盗人さんでも現れた?」クルッ

乙女格闘家「むー?」クルッ


ズザザァ…!!

魔術賢者「はぁ…はぁ…」ゼェゼェ

魔術賢者「やっと…追いついた…!」 


246 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/16(土) 22:56:52 Fh9nr8No
 
剣士「あん…?」

武道家「ん…またどっかで見たことあるよーな…」

魔道士「えっ…。み、見たことあるっていうか…凄いキレイになってるけど…」

乙女格闘家「も、もしかして…?」

神官「魔術賢者…さん…!?」


魔術賢者「やっぱり…!みんな…久しぶり…!」


…………
………
… 


253 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:23:00 pbcI1Gnk
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 酒場 】

剣士「では再会を祝してー…」

全員「かんぱいっ!!」

…カァンッ!! 
 
 
グビグビグビ…ッ!!

剣士「ぷはぁ~!」

武道家「うめぇっ!」 


254 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:23:31 pbcI1Gnk
 
魔道士「それにしても、僧侶…じゃなかった。神官と魔術賢者さん久しぶりだね!」

神官「本当に偶然だったよね~」

魔術賢者「うん…、みんなが中央にいるとは思わなかった…」

乙女格闘家「本当に魔術賢者ちゃんキレイになったなぁ…」
 
サワサワ…

魔術賢者「乙女格闘家に言われて…、髪の毛伸ばした…」

乙女格闘家「うんうん、そっちのほうがすっごい可愛くて、似合ってるよ!」 


神官「剣士くんたちは、今も冒険者として頑張ってるんでしょ?」

剣士「まぁな。それなりに名前も売れてるみたいだぜ」

魔術賢者「うん…。今日も中央軍のところで…話聞いた…」 


255 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:24:06 pbcI1Gnk
 
乙女格闘家「…」

乙女格闘家「ねぇねぇ、話割り込むけどさ。神官と魔術賢者ちゃん!」

乙女格闘家「これって偶然っていう名前の運命だよね!?」


神官「?」

魔術賢者「?」


乙女格闘家「だーかーらー…!」

乙女格闘家「こんな再会、きっと愛につながるんだって!」キラキラ


神官「あ…」

魔術賢者「あぁ…」 


256 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:25:15 pbcI1Gnk
 
剣士「はは、確かに運命っぽいか?」

武道家「今の二人の恋愛事情ってどうなってんの?」

魔道士「あ、それ少し気になる!」

乙女格闘家「実は、こっそり二人だけで会ってたとか!?」


神官「…」チラッ

魔術賢者「…」チラッ


乙女格闘家「…」キラキラ


神官「…残念だけど、僕には同居してる婚約者がいるんだ」

魔術賢者「私は、2年前に同じ支部の人間と入籍して…」 


257 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:25:49 pbcI1Gnk
 
乙女格闘家「えっ!?」

剣士「そ、そうなのか!?」

武道家「待て待て、結婚してる…のか?」

魔道士「神官にも婚約者!?」


神官「うん。僕は、3年前に見習い神官だった時に救った女性に告白されて…」

神官「北方大陸の雪降町の出身者で…。じ…実はその…」

神官「魔術賢者さんと被ったり……とかじゃないや!何でもない!」


魔術賢者「…私は、流されたまま…結婚した感じだ」

魔術賢者「けれど幸せといえば、幸せだ…。優しい人だから…」 


258 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:26:21 pbcI1Gnk
 
乙女格闘家「そ…そうだったんだ…」

剣士「少し残念な気もするけど、二人が幸せだって思ってるなら別にいいな」

武道家「あたりまえだ。当人らが幸せならいいだろ」

魔道士「うん、そうだよ」


神官「確か、魔術賢者さんは今も猛雪山の支部で働いてるんだよね?」

魔術賢者「うむ…。そうだが…」

神官「僕の奥さん、子供が生まれたら故郷で育てたいっていってるんだ」

魔術賢者「へぇ…」

神官「もしそうなったら、仲良くしてあげたら嬉しいな」

魔術賢者「もちろん…」ニコッ 


259 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:26:56 pbcI1Gnk
 
剣士「お前らの嫁さんは、一般人なのか?冒険者とかじゃなくて」


神官「恥ずかしいけど、元冒険者。女性の戦士さんだったんだ」

魔術賢者「うちは…支部の中だから…軍人。剣術使いだったな…」


魔道士「へぇ~!じゃあ子供が生まれたら…僧侶と戦士、魔法師と剣術使いの子供かぁ」

武道家「なんか将来、でっけぇ事やりそうな感じ」

剣士「すげぇな、冒険者のハイブリッドじゃん」

武道家「しかし、一歩先の大人になったって感じだな二人とも」ハァ


…ダキッ!!ギュ~!

乙女格闘家「武道家ぁ、私はいつでもオッケー!」

魔道士「わ、私だって…」ボソボソ 


260 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:27:36 pbcI1Gnk
 
武道家「だぁ~!確かに子供とか、色々あるけど…まだまだ安住じゃなくて!」

剣士「そうそう、もうちょっと世界を駆け巡って、色々楽しみてぇっつーの!」

神官「なんだ、みんな婚約者みたいなもんなんじゃない」

魔術賢者「みんな…大人…」

乙女格闘家「そりゃねー♪」

魔道士「う、うん」


神官「剣士くんたちは、どんな生活送ってきたのか聞かせてよ」


剣士「…俺らの生活か」

武道家「何だっけ、卒業後の1年目はそんな苦労しなかったな」

魔道士「うん。あの時は比較的、簡単な依頼ばかり受けられたし、初心者ってことで救済多かったし」

乙女格闘家「その代わり、大儲けっていうほどじゃなかったけどねー」 


261 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:28:14 pbcI1Gnk
 
神官「初心者…救済?」


魔道士「冒険者として、成果を上げれてない人は基本的に初心者扱いなの」

剣士「そう。だから軍の一般依頼では、優先的に簡単かつ報酬のいいクエストとかぼんぼん発注されてな」

乙女格闘家「宿に宿泊するお金とかは困らなかったねー」

武道家「1年目終える頃には、依頼の失敗率ゼロで、より上位の依頼を軍から受諾できるようにもなった」


魔術賢者「2年目は…?」


剣士「2年目は1年目より更に楽だった印象だ」

武道家「下位依頼、やや難易度の高い依頼をこなして成果をあげて…」

魔道士「結果的にいうと、1年目より2年目のほうが金銭的に余裕が出来たってかんじ」

乙女格闘家「そうだったねー。だけど…去年は…」 


262 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:28:53 pbcI1Gnk
 
神官「去年は…?」


武道家「まさに氷河期だ…。下位依頼は初心者じゃなくなったから受けれず、軍の一般受諾は基本的に受けられねーし…」

乙女格闘家「かといって上位依頼は成果が足らず受けられず…」

剣士「2、3か月で宿代に貯めた金が消えてさぁ…」ハァ

魔道士「細い依頼受け続けて、3年目の10月頃にようやく大きい遺跡調査のクエスト受諾して、成果あげて…」


魔術賢者「今年へ繋いだ…と」


剣士「そういうことだ!」

武道家「今年からはデカイ依頼も受諾可能になったから、大体の場所立ち入りできるし」

魔道士「やっと冒険者として、一人前になったかなーってかんじだよね」

乙女格闘家「目指せ、一攫千金!とか!」 


263 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:29:30 pbcI1Gnk
 
神官「へぇ~…。いいなぁ、たのし…」ハッ

神官(…楽しそう。なんて言葉…!)

神官(…ッ)


剣士「…」

剣士「…僧侶、飲めよ。今日は酒の席だぞ」ドンッ!


神官「剣士くん…」

剣士「飲まなきゃ損!おら、食え!飲めぇ!!」

神官「…うんっ!」


………
… 


264 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:31:37 pbcI1Gnk
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3時間後 】 

…ゴトンッ!

剣士「もう…飲めねぇ…」ゲフッ

魔道士「あーあー…。だから飲みすぎだって…」


武道家「酒はちびちび嗜むもんだぞ」グビッ

乙女格闘家「剣士くんはいっつもダウンしちゃうよねー」


魔術賢者「はは…。えと、店員さん…焼き鳥ください…」バッ

神官「魔術賢者さん、まだ食べるの!?」

魔術賢者「軍人は…身体が資本っ」キラッ

神官「…食べ放題でよかった」 


265 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:32:09 pbcI1Gnk
 
武道家「はっはっは……」

武道家「…」

武道家「…ッ!」ビクンッ


神官「…」ピクッ


武道家「おっ…と。俺もちょっと酔ったかな。夜風にでも当たってくるわ」ガタッ

乙女格闘家「あ、じゃあ私も」

武道家「い、いや。お前はいいよ。いつものことだし、剣士の介抱手伝ってやっててくれ」

乙女格闘家「もー、また?」

武道家「魔道士一人じゃ大変だろ…」

乙女格闘家「それもそっか。わかった」


武道家「お、おう」フラッ… 


266 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/18(月) 22:35:29 pbcI1Gnk
 
トコトコ…、ガチャッ!ギィィ…バタン


神官「…」

神官(今のはもしかして…)

神官「…みんな、僕もちょっと外に行って来る」ダッ

タタタタタッ…ガチャッ、バタンッ!


魔道士「あ…行ってらっしゃい?」

魔術賢者「神官も…酔ったのかな…」

乙女格闘家「さぁ…?」


………
… 




275 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:30:28 5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 酒場の外 】

フラフラ…

武道家「げ…げほっ!げほげほげほっ!」

武道家「う゛っ…」

武道家「ごほごほごほっ!おえっ…!」

武道家「がっ…はぁ…、はぁ…!!」


武道家「…っ」


武道家「…ごほっ!?ごほごほっ!!」

…ベチャッ! 


276 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:31:04 5DHux946
 
武道家「はぁはぁ…!ちっ…!」

ズリズリ…ストンッ

武道家「げほっ…!ま、参ったな…」


トコ…トコトコ…

武道家「…誰だ!」バッ

神官「僕だよ…武道家くん」

武道家「そ、僧侶!」

神官「…見てたよ」

武道家「あぁ?ちょっと酔っただけだっつーの」 


277 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:31:37 5DHux946
 
神官「…酔っただけの人間が、血なんか吐くとは思えないよ」

武道家「…」

…ドロッ


神官「思えば、武道家くんは学生の時からそんな兆候はあったよね…」

武道家「なぁに、風邪だっての」ハハッ


神官「…違う。今の僕は、君のような人を大勢相手にしてきたんだ」

神官「分かるんだ…。君がさっき、席で少し心臓を抑えたこと…喉を軽く掻いたこと…」

神官「まさかとは思った。けど、今の血で確信した…」 


278 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:32:13 5DHux946
 
武道家「…何だっていうんだ?神官サン」

神官「君は…、君の体は!数年前から病に蝕まれてる!それも、重病だ…!」

武道家「ははっ…何言ってるんだか」

神官「…何を言ってるんだか、じゃないよ!他の人は知ってるの!?」

武道家「…さぁな」

神官「だめだ、この事はみんなに教えないとー…!」


武道家「…やめろっ!!!」カッ


神官「!」ビクッ

武道家「迷惑かけたくねぇんだ…。頼む…」


神官「…」

神官「そ…そういう事じゃないでしょっ!!」 


279 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:32:47 5DHux946
 
武道家「お…」


神官「そう隠してるほうが迷惑なんだよ!!パーティでしょ!?仲間でしょ!?」

神官「乙女格闘家さんだって、武道家くんと一緒に幸せになろうって思ってるのに!!」

神官「剣士くんだって、魔道士さんだって…、仲間に隠し事しないって…あの日言ったじゃないか!!」


武道家「あの日…。魔石洞窟の時か…」

神官「そうだよ!ダメだよ…、武道家くん…。それじゃ…」

武道家「…」

神官「…」


武道家「…分かってるよ。だけど、血を吐くくらいで死にはしないだろ?」

神官「…本当にそう思ってるの?自分の身体のことだから…分かってると思うけど…」 


280 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:33:44 5DHux946
 
武道家「…」

神官「武道家くん、ちょっと失礼するよ」

トコトコ…グイッ

武道家「お、おい何を…」


神官「…」ボソッ

…パァァッ!!


武道家「なんじゃこの光…?」

神官「黙って。君の身体を簡単に調べてるから」

武道家「…」 


281 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:34:15 5DHux946
 
神官「…」

神官「…」

神官「…ッ!」ゾクッ


武道家「…どうだ」

神官「…」

武道家「…どうなんだよ」

神官「武道家くん…」

武道家「あん?」


神官「この事はみんなに内緒にはする。だけど、2か月…いや、1か月に1度」

神官「この区域にあるうちの教会に来てほしい。絶対に」 


282 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:34:52 5DHux946
 
武道家「…1か月に1度とは、世界を駆け巡る俺らにとっては厳しいな」

神官「そうじゃなかったら、みんなに教える」

武道家「お、おいおい…。何でそんな真剣なんだよ」

神官「ダメだ。それだけは譲れないよ」ギロッ


武道家(…!)

武道家(くく…なんつー眼光するようになったんだ…)


神官「武道家くんっ!聞いてるの!?」

武道家「……わかったわかった!わかったよ!」

神官「!」 


283 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:35:23 5DHux946
 
武道家「わかった。極力、来るようにはする」

武道家「だからこのことは、内緒にしといてくれよ?」


神官「…絶対だよ」

武道家「あぁ、分かったよ」

神官「…」

武道家「それじゃあさっさと皆の所に戻れ。俺はもう少し夜風にあたるからな」シッシ

神官「…うん」クルッ


タッタッタッタッタッ… 


284 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:36:09 5DHux946
  
神官(…)

神官(…ぶ、武道家くんを蝕んでるのは…まさかとは思うけど…魔力枯渇症じゃ…!)

神官(普通は回復するはずの魔力が、徐々に回復量が少なくなっていく奇病…)

神官(…ッ)

神官(それが本当なら、冒険者としては致命的すぎる病…)

神官(…いや、冒険者云々以前に……。武道家くんっ…!)


………
…… 


285 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:37:12 5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数分後 酒場 】

ガチャッ…

武道家「ふぃ~…、ただいま」

乙女格闘家「おっかえりぃ♪」


神官「…」


武道家「まだ剣士倒れてるんかよ」

剣士「」グデンッ

魔道士「はぁ…」 


286 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:37:54 5DHux946
 
魔術賢者「じゃあそろそろ…お開きかな…」

乙女格闘家「そうだねー、時間もいい感じだし」

魔道士「みんなで久々に会えて、楽しかったよ♪」

武道家「今度からみんなでこうして集まるのも悪くないかもな」

神官「…そうだね」


剣士「…」

剣士「…」ムクッ

剣士「今度は、少戦士やら大戦士兄やら、みんなも呼ぼうぜ」


武道家「起きてるなら最初から起きろよ」

魔道士「…。それにしても、他の人たちは何してるんだろうね」

剣士「ん~…大戦士兄とか冒険先生とかは、今も先生してんじゃねえの?」 


287 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:39:19 5DHux946
 
武道家「今度、我らが母校にでも遊びに行ってみるか?」

剣士「おっ!面白そうじゃん!」

魔道士「成長した私たちを見せないとね!」

乙女格闘家「にゃはは…、魔道士ちゃんは色々成長したもんね」ペラッ

魔道士「きゃーっ!」


魔術賢者「はは…。さて…私は近くの宿で泊まって…、明朝の馬車で帰るよ…」


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「魔術賢者ちゃん、折角だから僧侶くんも一緒に泊めちゃったらー?」プクク


神官「ちょっと!」 


288 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:39:50 5DHux946
 
魔術賢者「あ…、いや…それはさすがに…」

神官「乙女格闘家さん、相変わらずだなもう!!」

乙女格闘家「やー」アハハ


剣士「ま、とりあえず…お疲れ!付近の教会にいるってわかったし、度々遊びに来るわ」

神官「うんっ」


剣士「ほんじゃ、俺らも宿に行きますかぁ?」

魔道士「だね。でもさぁ、私たちも受諾してるクエストないし…。休み続きになりそうだから、早く次の依頼探さないと」

剣士「そうなんだよなぁ…」ポリポリ 


289 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:40:27 5DHux946
 
魔術賢者「…」
 
魔術賢者「…あっ」


乙女格闘家「どしたの?」

魔術賢者「その…。もし暇なら…4人に頼みたいことが…」


乙女格闘家「うにゅ?」

魔道士「私たちに…」

武道家「頼みごと?」

剣士「何だ?」


魔術賢者「その…、報酬金はそこまで高く出せないんだけど…」

…………
………
… 


290 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:41:00 5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・ 


291 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:41:41 5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3日後 猛雪山 】


ビュオォォォオオッ!!!ゴォォォッ…!!!!


剣士「へ…へっくしょおおい!!」

魔道士「わっ!」

剣士「あー…少し寒いかな。それとも誰かが噂してるのか…」ズズッ

魔道士「少し寒いって、こんな猛吹雪の中のセリフじゃないんだけどぉお」ガタガタ


武道家「だらしないやつめ!」ズルズル

乙女格闘家「鼻水すすりながら言っても、威張れないよ」 


292 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:42:18 5DHux946
 
剣士「だぁっはっは!おめぇだって寒がりじゃねえか!」

武道家「あんだと…?やるか…おっ?」

剣士「あぁ…?」

武道家「おぉ…?」


魔道士「こんな時くらい、落ちつきなさい!」

魔道士「うぅぅ、魔術賢者ちゃんの頼みだし、断れなかったけど…」

魔道士「こんな猛吹雪、聞いてない~!!」


剣士「アイスタイガー自体の討伐は楽なんだろうけどなー」

武道家「んーむ…」

乙女格闘家「山に入ってからしばらくするけど、一向に討伐対象出てこないねー?」 


293 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:42:57 5DHux946
 
魔道士「せめて、少しだけ吹雪が収まってくれた後に出てくれたらうれしいんだけどなぁ」

乙女格闘家「にゃはは…。前が見えないと、感覚だけで相手を捕まえないといけないからなぁ…」

魔道士「あっちはこういう時に身をひそめて襲ってくるの得意なはずだから、神経が磨り減るし…」


剣士「はっはっは、いくら強い相手だろうが余裕だ」

武道家「ほう?なら一発で沈められるというのだな?」

剣士「お前の拳より先に、俺の大剣が切り裂くね」

武道家「あぁ…?なら、どっちが先に倒せるか勝負するか!?」 


294 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:43:33 5DHux946
 
剣士「…いいぞ!負けたほうは、ふもとにあった町の、酒場の奢りな!」

武道家「望むところだオラァ!」

魔道士「だから二人とも…」

乙女格闘家「私も乗ったぁー!」キャハッ

魔道士「」


…ザッザッ!

アイスタイガー『グルルッ…!!』


魔道士「って、出たぁぁっ!?!?」 


295 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:44:12 5DHux946
 
剣士「酒の飲み放題に、料理付きだからな!」

武道家「おうよ、一番高いところでいいな!?」

乙女格闘家「私は武道家のお助けだからね!」

剣士「ずりぃぞ、おい!」


アイスタイガー『ガウッ!グルル…』


魔道士「さ、三人ともそれどころじゃないから!!いるからぁぁ!そこ!!」


アイスタイガー『…ガァァッ!!』ダッ!!

…ダダダダダッ!!!


魔道士「き、来たぁぁっ!!えぇいもう!大火炎…!」パァァッ 


296 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:44:44 5DHux946
 
…チャキッ!

剣士「せいやぁぁあっ!!」

武道家「衝撃波ぁぁっ!!」

乙女格闘家「闘気連だぁぁんっ!!」

ゴッ…ゴォォォォッ!ドドドド…!ドゴォォンッ!!!


アイスタイガー『…ッ』フラッ

ヨロヨロッ…、ズズゥン…


魔道士「…」

………
……
… 


297 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:45:55 5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 ふもとの酒場 】

ワイワイ、ガヤガヤ…!


グビッ…、グビグビグビッ……!!

剣士「ふぃー!!」プハァッ

魔道士「何はともあれ、お疲れ様。最近飲んでばっかりの気もするけど」

武道家「アイスタイガーなんざ、相手にすらならなかったな」

乙女格闘家「魔術賢者ちゃんの話じゃ、アレを倒せない冒険者が大半って言ってたけど」

剣士「あれくらい一太刀でぶっ殺せるっつーのな」 


298 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:46:27 5DHux946
 
武道家「あぁ、全くだ」

乙女格闘家「私たちが強いだけかもよー?」

剣士「まぁ俺らが強いのは当然だし」

魔道士「剣士と武道家がずば抜けすぎてるんだってば」


剣士「はっはっは、そんなに褒めるなって!お前らだって経験を経て成長してー…」

剣士「…」

剣士「…成長」

剣士「……そうか。あれから4、5年近くになるのか…」ボソッ


魔道士「ん?」

剣士「いや…うーん」

魔道士「…どうしたの?」

剣士「んーむ…。あのさ皆、話変わるけどちょっといいか?」 


299 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:47:00 5DHux946
 
魔道士「うん?」

武道家「面倒な話はナシな」

乙女格闘家「剣士のそういう切り込む話は、いつも面倒な事に巻き込まれてきたからねっ」


剣士「お前ら…。いや何だ、前々から思ってたが、そろそろ行ってもいいんじゃないかなと考えてんだ」

魔道士「行ってもいい?」

武道家「どこにだ?」

 
剣士「…」

剣士「その…エルフ族の"西海岸村"」 


300 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:47:47 5DHux946
 
魔道士「!」

武道家「!」

乙女格闘家「!」


武道家「西海岸村って…幼エルフのか?」

乙女格闘家「あー、私がいない時にいったところだね。何で急にまた?」

 
剣士「俺らが村訪れてから、もう結構たつだろ?」

剣士「きちんとこうして自立したわけだし、武器も大事に使ってるって見せたくないか?」


魔道士「…確かに、気持ちは分かるけど」

武道家「未だにエルフ族との友好関係は確立されたわけじゃねーんだぞ?」

剣士「だけどよ、俺らは歓迎されたじゃん」

武道家「…」

剣士「三人はやっぱり…反対か?」 


301 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:49:07 5DHux946
 
乙女格闘家「私はどんな場所か分からないから、みんなに従うよ」

魔道士「剣士がどうしてもっていうなら、いいけど…」


武道家「…」

武道家「…俺は反対だな」


剣士「…どうしてだよ」


武道家「確かに、あの時の村のみんななら歓迎してくれると思う」

武道家「だが、ありゃ鍛治長がいたからだろ。あれから何年たったと思う?」

武道家「言葉が悪いが鍛治長がもし…いなくなってたら?」

武道家「あの時の職人のエルフが次の長なんじゃないのか?」


剣士「あ…」

武道家「…な?」

剣士「んーむ…」 


302 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:50:01 5DHux946
 
魔道士「そ、そう言われると…。剣士、残念だけど諦めたほうがいいと思う」

剣士「そっかぁ…。だよなぁ…。武器をもらったとはいえ、俺らをよく見てなかったし…村に入れないかもか…」

武道家「当時はバカみてぇに突っ走ったけど、もう俺らにゃ自立してる以上責任もある」

乙女格闘家「うん…」

剣士「仕方ねぇ、諦めるか…」ハァ


トコトコ…ボスンッ!!!チャリンッ!

剣士「ぬおっ!?」

魔術賢者「みんな、ご苦労様…。これ、今回の報酬…。袋に詰めてきた…」

剣士「目の前にいきなり置くんじゃねー!びっくりしただろ!」

魔術賢者「あ、ごめん…」


乙女格闘家「やー、魔術賢者ちゃーん!」ダキッ!

魔術賢者「お、乙女格闘家…苦しい……」ギリギリ 


303 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:50:57 5DHux946
 
武道家「…魔術賢者、俺らが報酬受け取るの明日だぜ?」

剣士「まだ正式に依頼完了の報告してないんだが」

魔術賢者「失敗なんかすると思ってなかったから…。出発した後にすぐ完了報告しといた…」

武道家「あぁ、そういうことか」

乙女格闘家「…信じられてるってうれしいよー!」

ギュウウッ…ギリギリ…

魔術賢者「お、乙女格闘家…しまってる…」ゲホッ


剣士「まぁなんだ、ありがとよ。とりあえず頂戴しておくぜ」

魔術賢者「うん…。あ、それとさ…」

剣士「何だ?」 


304 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:51:32 5DHux946
 
魔術賢者「少し聞こえたんだけど…。エルフ族の村へ行きたいのか…?」

剣士「ん、んむ…」

魔術賢者「なら、現状を知ってる人が…中央軍本部にいるから、話を出来るようにするか…?」

剣士「い、いや…それは…」

魔術賢者「…きっと、みんな知ってる人のはず…」

剣士「知ってる人?」


魔術賢者「武装先生…。今は武装中将…」


剣士「!」

武道家「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」 


305 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:52:16 5DHux946
 
魔術賢者「武装中将…、今もエルフ族との関係を保つため色々してるから…」

剣士「れ、連絡がつくのか!?」ガタッ!

魔術賢者「うちの支部長が、武装中将と顔見知りで…」

剣士「…!」

魔術賢者「まぁ…、私の旦那なんだけど…」テレッ


剣士「!!」

魔道士「う、うっそー!」

武道家「す…すげぇ人を旦那さんにしたな…」

乙女格闘家「すっごーい!!」


魔術賢者「だから…もしよければという話で…」 


306 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:52:49 5DHux946
 
剣士「お願いする!…と、言いたいが」

剣士「…みんなはどうだろうか。俺は話でも聞きたいと思ってるんだけど…」チラッ


武道家「んーむ…。まぁ、話は聞くだけ聞けるなら…」

魔道士「そうだね」

乙女格闘家「みんなが話を聞くなら、それに従うだけかな~」

剣士「…ありがとよ!魔術賢者、そういうわけだ。頼めるか?」


魔術賢者「うんっ…わかった…」

魔術賢者「…任された」ニコッ


乙女格闘家「!」

乙女格闘家「…」ブルッ
 
乙女格闘家「…かわいい~!」 


307 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:53:25 5DHux946
 
…ピョーンッ…!!

魔術賢者「…!」


…ドスーン!!ガシャアンッ!!


剣士「おおう…」

武道家「乙女格闘家…」

魔道士「楽しそうで、何より…」


………
…… 


308 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/20(水) 20:53:57 5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・ 



315 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:09:07 GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 雪降町の宿 】

モゾモゾ…

剣士「…んにゃ」パチッ


魔道士「あ…起きた?」ニコッ

剣士「ん…。おはよ」

魔道士「うん、おはようっ。もう朝だよ」

剣士「…またずっと寝顔見てたのかよ。起こせよ」フワァ

魔道士「へへっ♪」 


316 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:10:13 GuDZ9hnA
 
剣士「飽きずに俺のアホ面見て楽しいか?」

魔道士「日課かな?」

剣士「日課って」

魔道士「だって…こういう稼業だと朝に顔を見れる事が何より安心するっていうか…」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「ま、その通りだな。俺も朝、魔道士の顔見ると安心するわ」

魔道士「うん♪」 


317 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:10:51 GuDZ9hnA
 
剣士「さて、歯でも磨いて……と。今は何時だ?」

魔道士「もう8時だよ」

剣士「武道家たちもそろそろ起きただろうし、準備してロビーで珈琲でも飲んでようぜ」

魔道士「だねっ」


………
… 


318 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:11:52 GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿のロビー 】

ガヤガヤ…!ワイワイ…!!


剣士「…」グビッ

魔道士「ん~…朝のコーヒーは美味しいっ」クピッ

剣士「…」

ガヤガヤ…!

剣士「…な、なぁ魔道士」

魔道士「なに?」

剣士「…なんか…昨日より人増えてないか?」

ワイワイ…

魔道士「…確かにそうかも」 


319 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:12:35 GuDZ9hnA
 
剣士「どうしたんかね。恰好は冒険者っぽくはないが…」

魔道士「どっちかっていうと家族連れっぽいし、旅行者か何かじゃない?」

剣士「突然こんなに旅行者が…」

…コツンッ

剣士「いてっ!誰だこら!」クルッ


武道家「…よっ。それは俺らのおかげだぜ、たぶん」

乙女格闘家「だねー」

剣士「…あん?」


魔道士「あ…武道家、乙女格闘家!おはよ~」

乙女格闘家「おっはよー♪」 


320 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:13:39 GuDZ9hnA
 
剣士「…俺らのおかげだ?」


武道家「俺らが大型のアイスタイガーぶっとばしたから、登山可能区域が大幅に解除されたんだよ」

武道家「それで、近辺に宿とってた旅行者やら情報を仕入れた面子が雪降町に集まってきたんだ」

武道家「北方大陸の山奥とはいえ、ここは登山者にとっちゃ割と有名な場所らしいからな」


剣士「…なるほど」

魔道士「そういうことね」


…ボーン!ボーン!


魔道士「っと、もう9時か…」

武道家「中央行きの特急馬車って9時30分だっけか?そろそろ行ったほうがいいんじゃないか」

剣士「あ~…そうだな」 


321 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:14:54 GuDZ9hnA
 
…スクッ

剣士「そんじゃ、行きますかぁ」

武道家「途中で食料品か何か買っておこう。酒とかも買うか?」

剣士「…馬車で酒って、余計に酔いそうな気がすんだけど」

武道家「葡萄酒とか飲みたくないか?」

剣士「…買おう!」


魔道士「飲むのはいいけど、馬車で倒れたり、吐かないでよ。他のお客さんもいるんだから」

魔道士「っていうか、剣士は見境なくなるから飲んじゃダメ」


乙女格闘家「うん。剣士は、飲んじゃだめ」

剣士「何でだよ!」

武道家「そうだな、やっぱり剣士はダメだ」 


322 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:15:48 GuDZ9hnA
 
剣士「ぜ…ぜってぇ飲んでやるからな!!」

武道家「やれやれ…」

剣士「何がやれやれだっつーの!」

魔道士「はぁ…」

乙女格闘家「もー…」


コツコツコツ…

魔術賢者「や…みんな、おはよう。まだ町にいてよかった…」


剣士「…あれ、魔術賢者じゃん」

武道家「よっ…どうした?」

乙女格闘家「…おっはよー!」

魔道士「おはよう、魔術賢者さん。どうしたの?」 


323 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:16:37 GuDZ9hnA
 
ゴソゴソ…ペラッ

魔術賢者「うん…えっと、これ…」スッ

剣士「…何じゃこの封筒」ペラッ


魔術賢者「それ…紹介状。それがあれば、中央軍本部に入れると思う…」

魔術賢者「旦那に話をしたら…これを渡せばきっと大丈夫って…」


剣士「…わざわざ書いてくれたのか。すまないな」

魔術賢者「ううん…別にいい…」ニコッ


乙女格闘家「…」ウズッ

武道家「ここは酒場じゃないし、他の人の目があるから抑えなさい」ガシッ

乙女格闘家「わ、わかってるってばー!」 


324 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:17:22 GuDZ9hnA
 
魔術賢者「みんな、9時30分ので中央に行くんでしょ…?本当にお世話になった…ありがとう…」

剣士「気にするなっつーの。当然のことしたまでだ」

武道家「報酬は貰ってるし、こっちとしては紹介状まで貰ったし万々歳だぜ」

乙女格闘家「うんうん、魔術賢者ちゃんありがとっ!」

魔道士「色々助かるよ」


魔術賢者「…うん、こちらこそ」ニコッ


乙女格闘家「!」ビクンッ

乙女格闘家「…武道家」


武道家「あ?」

乙女格闘家「…しばらく会えないかもしれないし、公衆の面前とか関係ないよね」

武道家「…」ピクッ 


325 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:17:58 GuDZ9hnA
 
魔道士「あ…」

武道家「いかん!魔術賢者、逃げろ!」

魔術賢者「…え?」

乙女格闘家「…」ニタァ

…ッピョーン!!

魔術賢者「…!」ビクッ


…ガシャアアンッ!!ズザザザッ…ギュウウッ!!


魔術賢者「」 


326 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:18:38 GuDZ9hnA
 
武道家「…」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「……あの愛の表現を、お前は受け止め続けているんだな。凄いぜ」ポンッ

武道家「はは…だろ?」

 
…………
……
… 


327 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:19:10 GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・ 


328 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:20:14 GuDZ9hnA
 
改めて魔術賢者に別れを告げた4人は、中央へと戻っていった。

何事もなく中央都市へと到着後、

剣士一行は武装先生へ再会するために中央軍本部のドアを叩く――。 


329 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:20:57 GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3日後・中央都市 中央軍本部 】


軍兵A「…」

軍兵B「…」

ゴォォ…!ヒュウウッ…!!


剣士「ここが武装のオッサンのいる中央軍本部か…」

剣士「依頼受付じゃなくて本部の方は初めて来たがー…」

ゴォォォ……

武道家「何だこの雰囲気…」

魔道士「門番みたいな人たちも、全然微動だにしないで立ってるし…」

乙女格闘家「紹介状は貰ったけど、正面から入っていい感じじゃないね…」 


330 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:21:34 GuDZ9hnA
 
剣士「…勇気一発だろうが!」ダッ!

武道家「あっ、おい!」

ダダダダッ…!

剣士「すいませーん!!」


軍兵A「…何か用でしょうか」

剣士「武装中将に会わせてくれ!」

軍兵A「…は?」

剣士「だから、武装中将に…」


魔道士「こ、このバカっ!」グイッ!

剣士「むぐむぐ…!」 


331 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:22:08 GuDZ9hnA
 
軍兵A「…いたずらか何かですか?」

武道家「あ…。い、いや…」

魔道士「ち、違うんです!えっと…猛雪山支部の支部長から紹介状を!」バッ!

…ペラッ

軍兵A「紹介状?」ジロッ

軍兵A「…」

軍兵A「…ふむ。おい、ちょっと」ボソボソ


軍兵B「ん?」

軍兵A「これは……、…だろ?」ペラッ

軍兵B「あぁ……、…だな」コクン 


332 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:22:41 GuDZ9hnA
 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


軍兵A「…失礼しました。こちらの紹介状、確かに。少々お待ちいただけますでしょうか」

軍兵A「お伝えするのにお時間がかかりますので…」


剣士「すぐに呼べないのか?」

軍兵A「…武装中将殿は非常に忙しい方です。紹介状を預かってもお会いになることは少ないのです」

剣士「ならさ、"冒険学校の剣士"が来たって教えてやってくれよ」

軍兵A「は…?」

剣士「それで全部通るはずだから!」 


333 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:23:17 GuDZ9hnA
 
軍兵A「は…はぁ」

剣士「よろしく!じゃあ中に入って待ってるよ」

軍兵A「ど、どうぞ…」

剣士「ういっす」


武道家「むちゃくちゃな…」

魔道士「本当に会ってくれるのかな、武装先生」

乙女格闘家「久々だねー」


………
… 


334 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:23:50 GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 待 合 室 】


コチ…コチ…コチ…


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「…遅くね?」 


335 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:24:44 GuDZ9hnA
 
武道家「もう20分か…。会えないなら会えないでいいんだがな…」

剣士「そんな上司に話通すのって時間かかるもんなのかよ」

魔道士「あのね、ここが世界政府の心臓部の中央軍本部だって分かってる?」

乙女格闘家「そのトップを担ううちの1人を呼び出してるんだよー」


剣士「…なるほど、確かにそりゃ色々あるかもしれん」

魔道士「やっぱり分かってなかった。っていうか説明しても分かってないでしょ…」ハァ

剣士「だけど俺の中じゃ、国を支える人っていうよりも…先生のままだぜオッサンは」

魔道士「うーん、確かにイメージが沸かないけど…」

剣士「もしさ…オッサンがあの時のなままの男なら、会った瞬間にタイマン挑んだりしてみるか」ポキポキッ

魔道士「その瞬間、私の魔法で燃やすからね」

剣士「絶対にやめときます」 


336 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:26:27 GuDZ9hnA
 
…コンコンッ

剣士「!」

武道家「来たのか?」

魔道士「あ…。ど、どうぞー?」

乙女格闘家「…」


ガチャッ、ギィィ…

軍兵A「…こちらです。どうぞ」ビシッ!

コツ…コツ…コツ… 


337 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:27:15 GuDZ9hnA
 
剣士「…!」

魔道士「あっ…」

武道家「おぉ…」

乙女格闘家「わぁ…」


コツ…コツ…ピタッ


武装中将「…」

武装中将「よく来たな、時代を飾るパーティの諸君」ニカッ


剣士「…オッサン!!」

武道家「武装サン…」

魔道士「お久しぶりです…」

乙女格闘家「武装先生…」 


338 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:27:50 GuDZ9hnA
 
武装中将「…久しぶりだな、お前たち」


剣士「オッサン…」

武装中将「…剣士、お前の話は聞いてるぞ。立派な冒険者になったじゃないか」

剣士「…ったりめぇだ!」


武道家「久しぶりっすね…」

武装中将「武道家だったな。久しぶりだ、独自の技を開発したと聞いているぞ?」

武道家「衝撃波のことですか…。そんな話まで…あざす!」


魔道士「武装先生っ…」

武装中将「魔道士…。あの時の涙は、今も忘れてないぞ。女性らしい女性になったな」

魔道士「…っ」


乙女格闘家「わ、私は…」

武装中将「黒髪格闘家…、もとい乙女格闘家か。女性らしさは隠しきれてなかったのを覚えてるぞ」

乙女格闘家「まだ目立ってなかった時なのに、ばれてたんですか…にゃはは…」 


339 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:28:23 GuDZ9hnA
 
武装中将「はははっ!…何にせよ、全員、立派になったものだな」

武装中将「俺の立派になったものといえば、シワと白髪くらいだ!」


剣士「なぁに、まだまだ現役だろって!オッサンがよけりゃ、これから実力をー…」

魔道士「…」パァッ!

剣士「…こ、今度、実力を見せてやるよ!」


武装中将「はっはっは!楽しみにしておくぞ!」


剣士「はは…」

武道家「…で、剣士。そんなことより本題だろ」

剣士「あ、あぁ。そうそう、オッサン…紹介状にもあったと思うけど…」

武装中将「ふむ…そうだったな」

………
… 


340 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:28:54 GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…っつーわけで、学生時代に会ったエルフたちに、もう1度会いに行きたいんだ」

武装中将「なるほどな。それで俺を訪ねたわけだ」

剣士「情勢も詳しくねーし、軍の許可もあったほうが何かと有利かとも考えたけどさ」

武装中将「…冒険者たるもの、世界の情報を知らなくてどうする」

…ピンッ

剣士「いてっ!…へへっ」


武道家「で、どうなんすかね。今もやっぱり危険すか?」 


341 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:29:38 GuDZ9hnA
 
武装中将「んー、難しい問題だな」

武道家「難しい?」


武装中将「お前たちが学生だった時よりは、格段に友好関係は築かれつつある」

武装中将「思ったよりも、若い世代のエルフたちは人間に対して恨みを持ってはいないようなのだ」


剣士「あぁ…言ってたな」

魔道士「あの時のメイドエルフさんとかかぁ…」


武装中将「だが、少なからず恨みがあるエルフは確認されている」

武装中将「その時と村が同じとは言い切れぬし、"大丈夫だ"とは決して言えるものではない」


剣士「"エルフ族の西海岸村"は西海岸街支部から近いけど、定期に監査する区域とかじゃないのか?」

武装中将「お前の住む村が、常に他のやつから監視されてたら気持ちいいか?」

剣士「あ~…。そ、そっか…」 


342 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:30:29 GuDZ9hnA
 
武装中将「…」

武装中将「仕方ない。西海岸街の支部に連絡をとって現状を見てもらうか?」


剣士「いいのか!?」


武装中将「成果をあげてるパーティの願いだ、これくらいは聞くに決まってるだろう」

武装中将「ま、何より"教え子"として今も思っているがな」ハハハ


剣士「…ありがとよ、オッサン!」

魔道士「お手数かけます」ペコッ

武道家「どーもっす」

乙女格闘家「ありがとーございます」 


343 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:31:22 GuDZ9hnA
 
武装中将「…」

武装中将「…ん」ピクッ

武装中将「…いや、ちょっと待てよ。この時期は確か…」


剣士「…どうしたんだ?」

武装中将「今年はあれから3年目の7月…。そうか、もしかしたら…」ブツブツ

剣士「…オッサン?」

武装中将「あ、いや…」

剣士「いやって事はないっしょ」


武装中将「…」

武装中将「ま、そのうち知ることだし先に教えておいてもいいのか…」 


344 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:31:56 GuDZ9hnA
 
剣士「そのうち知ることって?」


武装中将「…決して口外せぬと約束できるか?」ジロッ

剣士「な、なんだよ急に」

武装中将「この話は現状、まだ公に出来ない事情がある話なのだ」

剣士「…」


魔道士「そ、それを聞いたら余計なことに巻き込まれちゃうとかあります?」

武装中将「そういうのはないだろう。だが、歴史的な話なので少しな…」

魔道士「歴史…ですか?」 


345 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:32:42 GuDZ9hnA
 
武装中将「まぁ何にせよ、説明せねば納得せぬだろうし、話をしてやる」

武装中将「だがこの話は、まだ知る人ぞ知る話。絶対にしゃべるんじゃないぞ」


剣士「…わ、わかった」

武道家「おう…」

魔道士「はいっ」

乙女格闘家「わ、わかりましたっ」


武装中将「恐らくだが、今の時期、西方大陸にいる一部のエルフ族や町村ごとの年配者は留守にしているはずだ」

武装中将「お前たちの言う西海岸村は確か、長老が留守のはず…。今行くのは少しオススメしないぞ」


剣士「…留守?」 


346 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:34:34 GuDZ9hnA
 
武装中将「うむ。これは少し入り組んだ話なのだが、お前たちはエルフ族に関してどう教えられてきた?」


剣士「どうって…」

魔道士「西方大陸に住み、魔力の濃い血が流れ、特殊な鍛治技術をもっていて…」

武道家「彼らの歴史は謎に包まれ、その美しい容姿から人間に非道をされてきた」

乙女格闘家「近年、ようやく彼らを守る規律が出来て、昔ほど奴隷狩りや山賊紛いの事件は起こりにくくなっている」

剣士「…だったな」


武装中将「うむ、よく勉強しているな」

武装中将「だがそれは、大きな間違いがある。いや、社会的には正解なのだが…」


剣士「…あん?」

魔道士「間違い…ですか?」 


347 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:35:46 GuDZ9hnA
 
武装中将「その情報は、中央軍…」

武装中将「つまり、世界政府がエルフ族をより守るために出した情報操作とでもいうべきか」


剣士「ど、どういうことだ?」


武装中将「実はエルフ族はもともと、"東方大陸側"に住む民族なんだ」

武装中将「今も、東方大陸側には軍が警備、閉鎖にあたった区間の中にエルフ族の町村がある」


剣士「…は?」


武装中将「この世界には、東方、西方、南方、北方、中央の5つの大陸が存在しているのは知っているな?」

武装中将「そのうち、東方、西方、北方大陸は中央を挟むようにして、陸続きとなっている」

武装中将「元々東方の民族だったエルフ族は、前々の世代より非道をされてきた」

武装中将「彼らエルフ族の一部は、その非道より逃れるために東方大陸側より西方大陸側へと逃げたのだ」


剣士「そ、そんなの初耳だぞ…」

武道家「そんなの隠ぺいして、意味あるのか?」 


348 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:36:34 GuDZ9hnA
 
武装中将「東方大陸にエルフ族がいないという事が認知されていれば、それで充分だ。意味は分かるだろう」

武装中将「東方側のエルフ族は、非道を受ける可能性は低くなり、民族としては血を残しやすくなる」

武装中将「だが…これも人間の勝手な非道になっているんだろうな」

武装中将「言い方を変えれば、西方のエルフ族には犠牲になってもらい、東側に住むエルフ族を守るということなのだから」


剣士「なっ…」

武装中将「無論、そんなことはさせないように俺らがいるわけだぞ?」

剣士「そ、その"西方を犠牲にする"っていうのはオッサンが決めたことなのか!?」

武装中将「そんなワケないだろう。これは俺の前の世代、当時軍に所属していた前任者たちのもとで決まったことだ」

剣士「でもオッサンはそれに従っているんだろ!?」

武装中将「従わねばならないということだ」

剣士「オッサンも所詮、犠牲にしていいって思ってるから動かないんだろ!?」 


349 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:37:30 GuDZ9hnA
 
武装中将「…そう、思うか?」

剣士「ぬ…」

武装中将「…軍従者として大きい声では言えないが、俺は反対だ」

剣士「!」


武装中将「だが、世界で今まで隠してきた事を俺一人で反対したところで、どうこうできる問題ではないんだ」

武装中将「それは…分かるだろう」


剣士「わ、分かるけど…!オッサンともあろう人が!」

魔道士「剣士、落ち着いて。武装先生は悪くないんだから…」

剣士「そ、それは分かってるけどよ…」 


350 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:39:52 GuDZ9hnA
 
武道家「なぁ武装さん、ちょっといいか?」

武装中将「なんだ?」

武道家「さっき、西方のエルフ族の一部が東方へ行くって言ったのは、東方にいるエルフ族に会うためか?」


武装中将「あぁ…」

武装中将「それもあるだろうが、彼らのしきたりの一つとして、東方へ行かねばならぬ理由があるのだ」


武道家「しきたり?理由?」


武装中将「彼らは、東方大陸にある"太陽の祭壇"というものを崇めている」

武装中将「それがどんな理由かはハッキリしないが、その祭壇に祈るため、エルフ族らが西方から東方へと向かうんだ」

武装中将「特に、お前らの言う鍛冶長は長老。よりそのような伝わりを大事にするだろう」

武装中将「"月は東に日は西に"。これがエルフ族に伝わる、1つの言葉らしいが」


武道家「へぇ…面白い言葉だな」

武道家「でもさ、西方に住むやつらは、当時の面子は東方へ戻りたいっては考えなかったのかねぇ」

武道家「それのせいで、今住む西方の面子は迷惑被ってるっつーのに…」 


351 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:40:37 GuDZ9hnA
 
武装中将「それこそ、彼らは同胞を大事にする種族」

武装中将「東方のエルフ族に迷惑がかからぬように、戻るべき集団移民はしないのだろう」


剣士「…」


武装中将「かなり難しい話だが、これは中央政府…世界が関すること」

武装中将「剣士の気持ちも充分にわかるが、色々な問題が重なっていて安易なものではないという事を分かってくれ」


剣士「…分かるしか、ないんだよな」

武装中将「ありがとう」


剣士「…」

剣士「…そんな重要な話、俺らにしてよかったのか」 


352 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:41:55 GuDZ9hnA
 
武装中将「気にするな」

武装中将「俺は若き世代が知らぬことを、作らないべきではないと思っている」

武装中将「だが、時代が変わるまで口外出来ないことなのだ」


剣士「…」

剣士「わかった。もちろん誰も言わねぇよ。オッサンが言う"時代が変わる時"まで」


武装中将「…」ニカッ

剣士「…」

武装中将「お前は正義感が強いというか、本当にもっともっとでかくなる男だと思うぞ」

剣士「…べ、別に」プイッ 


353 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:42:30 GuDZ9hnA
 
魔道士「でも、エルフ族が東方側の出身だったなんでちっとも知らなかった…。勉強が無駄になった気分」

乙女格闘家「国とか世界政府が行う、情報操作ってここまで強力なものなんだねー」


武装中将「何が正解ともいえぬが、時代がそうなってしまった…」

武装中将「改善はいずれ、必ず…だ。彼らに本当の平和が訪れるその日まで」


武道家「東方出身のエルフ族に、太陽の祭壇か…」

剣士「何にせよ、鍛治長がいないんじゃ西海岸村に行っても意味ねぇな。今回はやめておくか…」

武装中将「…そうだな、そればかりは仕方なかろう」

武道家「えーと…。ちっとだけ、気になったことがあるんだけど」

武装中将「何だ?」 


354 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:43:01 GuDZ9hnA
 
武道家「話し戻すんだけどさ」
 
武道家「俺らは、西方大陸が魔法の生まれし所と聞いてたんだが、それもウソなのか?」

武道家「西方大陸は魔力濃度が高く、エルフ族との関連性や、魔力の謎を解き明かすため研究が進んでるとか…」

武道家「そう聞いてた気がするんだが」


武装中将「一般教養で習う分野だな」

武装中将「これに関しては謎が多く、実は、東方大陸のその"太陽の祭壇"と呼ばれる付近も魔力濃度が高い」

武装中将「研究者たちの仮説のひとつに、西方大陸の魔力濃度の上昇に関して、」

武装中将「実は西方大陸に移り住んだエルフ族の影響ではないかといわれている」


僧侶「エルフ族たちの影響で、西方大陸の魔力濃度が上昇…ですか?」


武装中将「エルフ族の体内に宿す魔力は、触れた物、造りしモノに魔力を付与させてしまうほど強力だ」

武装中将「エルフ族が全体的に散りばめられていれば、全体的な濃度は上がるだろう」


武道家「なるほどなぁ…」 


355 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:43:38 GuDZ9hnA
 
魔道士「あ…武装先生。じゃあ私も気になったことが…」

魔道士「5、6年前くらいにあった大地震と魔力濃度の上昇についての謎は解けたんですか?」


武装中将「そんなことまで知っていたのか」

武装中将「あれから何度か調査をしたが、魔力濃度は減少し、今は安定している」

武装中将「西方大陸の大地震と魔力濃度の関連性については謎のままだ」


魔道士「あれから時間が立つのに、まだ解明されてないんですね」

武装中将「地震後にエルフ族の神隠しと、超濃度は謎が多すぎてな…」 


356 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:44:39 GuDZ9hnA
 
剣士「…」

剣士「…いつまで難しい話してんだよ!!」


武道家「…少し気になんね?」

乙女格闘家「冒険者たるもの、知識を得ていて損はなし!」

魔道士「そうだよ。知らないって罪になるってよく言うし…」

剣士「…バカで悪かったな!!」


武装中将「はっはっはっ」
 

剣士「もういいっつーの!さっさと、これからの行動決めようぜ!」


魔道士「難しい話してると、すぐそれなんだから…」

魔道士「行動って言っても中央じゃ仕事はないし、馬車で遠征して、山沿いの魔獣討伐の依頼でも行くしかないよ」


剣士「金になることせにゃ、どうにもならんしな。そうするか」

魔道士「うん、それでいいと思う」 


357 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:45:27 GuDZ9hnA
 
武装中将「…」

武装中将「…あぁ、そうだった。話に割り込むが、ひとつ情報を」

武装中将「来月、つまり8月に入れば、東方側に遠征しているエルフ族たちも西方側にも戻るはずだ」

武装中将「それ以後に訪ねてこい。その時は、もう1度ここへ来れば、改めて情報を調べてやろう」


剣士「おうっ、有難う」

武装中将「お、いっぱしにお礼を言えるようになったか?」

剣士「何歳だと思ってるのよ、俺」

武装中将「はは、そうか」 


358 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:46:10 GuDZ9hnA
 
武道家「んじゃ、遠征も決まった事だし行くならさっさとー…」ドクンッ

武道家「いっ……!!」ズキッ!!

武道家「げほっ!ごほっ!」


武装中将「!」


剣士「…まだ風邪ひいてんの?」

武道家「げほげほっ…!が、学生の時から妙に身体弱くなったのかもな、ははは…」

剣士「一度、治療院とか僧侶…じゃなかった、神官のやつに見て貰ったらどうだ?」

武道家「あ、あぁ考えとくよ」


乙女格闘家「最近、咳がひどいよね……。武道家に何かあったらやだよ?」

武道家「分かってるって。大丈夫大丈夫」ハハハ

乙女格闘家「それならいいんだけど…」

武道家「それよりさっさと行こうぜ!」

乙女格闘家「う、うん…」 


359 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:47:15 GuDZ9hnA
 
剣士「んじゃ、オッサンありがとうな。また来るよ」

武道家「ありがとさん」

魔道士「有難うございました」

乙女格闘家「ありがとうございました~♪」

武装中将「う、うむ。気を付けてな…」

剣士「ういっす!」

ガチャッ…


武装中将「…」

武装中将「…やはり、待て。ちょっと武道家だけ残って、それ以外は外で待っててくれるか?」


剣士「武道家だけ?」 


360 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:47:56 GuDZ9hnA
 
武装中将「…ちょっとな。その…新技のことで話がある…うむ」

武道家「…」

剣士「…」


魔道士「…わかりました」

乙女格闘家「はいっ」


………
…… 


361 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:48:31 GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

武装中将「…で。その咳はいつからだ」

武道家「もう5年になるかな」

武装中将「本当に学生時代からか。咳以外に、痛みはあるのか」

武道家「胸が少しだけ…」


武装中将「ふむ。…さっきの他の奴らの反応。お前自身、病のことは言っていないな」


武道家(うっ…)

武道家「や、病なんて、そんな大それたことじゃ」ハハッ


武装中将「…気づいていないのか?」 


362 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:49:03 GuDZ9hnA
 
武道家「この間久々に再会した僧侶に、すげー顔で月一で会いに来いとは言われたけど…」

武道家「それ以外は聞いてないし、大丈夫なんじゃないのかなと」


武装中将「…優しさか。それも辛くはなるんだがな」

武道家「どういうことだ?」

武装中将「お前は今…、魔法を使うことは出来るか?」

武道家「ま、魔法?」

武装中将「魔法だ」


武道家「元々苦手だし、闘気くらいしか」

武装中将「…どんな生き物でも、魔力は宿っている。失敗してもいい、何か簡単な魔法を使ってみろ」

武道家「う、うーん…」 


363 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:49:35 GuDZ9hnA
 
武装中将「…」

武道家「じゃあ指先にだけ…小火炎魔法っ」パァッ

…ポウッ!ジジッ…ジジジッ…


武装中将「…」

武道家「…もう、いいか?」ポォォ

武装中将「待て」

武道家「…?」ポォォ

武装中将「…」


武道家「…」ポォォ

武装中将「…」 


364 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:50:22 GuDZ9hnA
 
…ユラッ

武道家「ん…」

武装中将「…」

武道家「…」ドクンッ

武装中将「…」


武道家「いっつ…!」ドクンッ!!

武道家「げほっ!ごほごほっ…!!」プシュンッ


武装中将「…やはりか」

武道家「も、もともと魔力は少ないほうだろうし、軽い魔力枯渇を早めに起こしただけだっつーの…」 


365 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:51:19 GuDZ9hnA
 
武装中将「…」スクッ

カツカツカツ…、ガサッ!ゴソゴソゴソ…


武道家「な、何してる?」

武装中将「…ほれ。これを受け取れ」ポイッ

武道家「なんじゃこりゃ?」ガシッ

武装中将「その袋の中に入ってるものを取り出してみろ」

武道家「ん…」

ゴソゴソ…パァァッ!

武道家「お、おぉ…?あったけぇ…!なんか力が湧いてくる感じだぞ…。何だこれ?」


武装中将「…それは非常に強力な魔力を持つ魔石。"純気魔石"と呼ばれるモノ」

武装中将「持つと膨大な魔力が溢れ、触れた人間は魔力酔いないし、気絶を起こすレベルの代物だ」


武道家「!」 


366 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:52:13 GuDZ9hnA
 
武装中将「だから普段は、その魔力を漏らさぬ加工された袋にしまってある」

武道家「お、おいおい…そんな危ないもんを俺に…」


武装中将「…」

武装中将「…気づかぬか」


武道家「何が?」

武装中将「…俺は正直、触れていなくても袋から出された時点で、多少気分が悪い」


武道家「…」

武道家「…あっ」ピクッ


武装中将「…わかったか」

武道家「ど、どうして俺は倒れない?いや、むしろ心地いいっつーか…」 


367 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/23(土) 21:53:36 GuDZ9hnA
 
武装中将「…その魔石は、膨大な魔力を宿す以外、ちょっと特殊な効力を持つ」

武装中将「実は治療院が扱う利点があり、貴重な存在の石なのだ」


武道家「…こんなものが?何に使うんだ?」

武道家「あ、分かったぞ!?魔力の量がどれくらいか調べられるんだろ!」


武装中将「それは近いが…少し違う。これは近年発見された効果で…」

武装中将「"魔力枯渇症"の確認に扱われるわけなのだがー……」


武道家「魔力…枯渇症…?」


…………
………
… 



377 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:43:42 hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 外 】

…ザッ

武道家「…ただいま」

魔道士「あ、お帰りなさい」

乙女格闘家「おっかえりー♪」

剣士「お帰り。新技とか言ってたが、何の用事だったんだ?」


武道家「あ、えーと…」

武道家「なんかその、新技がどんなもんか見せてくれと…」 


378 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:45:49 hdO4x83w
  
乙女格闘家「さーっすが武道家!武装先生にも認められちゃった?」

武道家「はは、いや…うん…」

剣士(…?)

武道家「…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

武道家「魔力枯渇症?」

武装中将「魔力が身体から失われていく奇病だ。今のお前は、間違いなくソレだろう」

武道家「う、失われるって…。どういうことだよ!」

武装中将「そのままの意味だ。体内から魔力が失われ、やがて……」

武道家「ま、待ってくれよ!治療方法は?」

武装中将「治療方法は残念ながら、存在していない…」

武道家「…へ?」

武装中将「一旦、その神官のもとへ行くんだ。すぐに。手遅れになる前に…」

武道家「なっ…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 


379 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:47:11 hdO4x83w
 
武道家「…」

武道家「な、なぁ。今日はちょっと、先にみんなで一回宿に戻っててくれないか」

武道家「用事ができちゃってさ、あとですぐ行くから」


剣士「…用事だ?」

武道家「武装さんに、その技を他の人に見せてほしいってお願いされて…な。その…うん」

剣士「そうか」


乙女格闘家「じゃあ、私も!」

武道家「あ、えーと…。ぐ、軍の許可がいる場所だから、他の人は入れないんだってよ」

乙女格闘家「えぇ~…」ショボン

武道家「あ~…。じゃ、じゃあ終わったら後で二人で遊ぼうぜ。な?」

乙女格闘家「わかった♪」 


380 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:47:45 hdO4x83w
 
魔道士「じゃあ、私たちはこの間泊まった宿の部屋で待ってるね」

魔道士「宿の人に言えば、部屋に案内してくれると思うから」


武道家「おう、頼んだ」

武道家「…」


剣士「おい…お前顔色悪いぞ。大丈夫か?」

武道家「あたりまえだろ」

剣士「わかった。んじゃ、部屋で待ってるぞ」

武道家「…おう」


………
…… 


381 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:49:01 hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 郊外にある教会 】


武道家「…ってわけだ」

神官「そう。聞いたんだね」

武道家「…正直に言ってくれ。俺はどうなる?」


神官「…」

神官(……武装先生がそう言ったということは…やっぱり…)ギリッ

神官(武装先生がそう真実を伝えたなら、僕は友達として…)

神官「…」ゴクッ

神官「…うん」

神官「武装先生の言った通り、君は魔力枯渇症の可能性が…高いと思う」 


382 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:52:48 hdO4x83w
 
武道家「!」

神官「そ、それと…」ブルッ

武道家「…何だ」

神官「し…知るのが少し…、遅すぎたと思う…」

武道家「…どういうことか言ってくれるか」


神官「こ…この病は治療方法が確立されていないから、特殊な魔力を持つ道具で魔力の維持をするしかないんだ」

神官「とはいえ、これは治療方法じゃない。あくまで症状の緩和はで、本人の負担を和らげるだけ…」

神官「和らげるだけとはいえ、武道家くんは元々魔力が少ない体質だから、もっと早く何か治療をするべきだった…!」


武道家「…抜けてくのは分かった」

武道家「だけど、抜ける魔力を、その色々な魔力の道具で維持すら出来ないのか?」 


383 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:53:24 hdO4x83w
 
神官「簡単にいえばこの病は、体内の魔力タンクが壊れて徐々に衰弱していく病なんだよ」

神官「どんなに魔力を回復させようとしても、タンクが壊れてたら一時的な維持は出来るけど…」

神官「いずれタンクは壊れ、魔力は完全に失われる」


武道家「つ、つまり俺は…」


神官「…どのくらいのペースで魔力の減少が発生しているか分からないから何ともいえないけど」

神官「もし5年前から症状が始まっていたとしたら…」


武道家「したら…?」ゴクッ 


384 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:53:59 hdO4x83w
 
神官「武道家くんが血を吐いていたり、胸に負担がかかるのは…末期症状」

神官「もともと体力がある武道家くんだから立っていられるけど、普通の人だったら寝たきり生活だと思う」

神官「だ、だから…っ」


武道家「…だから、どうなるんだって!俺はいつまでこうしていられる!?冒険できる!?」

神官「普通の人の基準だけど、武道家くんと同じ症状の人の余命は…」

武道家「よ…余命…は……」


神官「"1年"」 


385 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:54:33 hdO4x83w
  
武道家「…!!」

神官「~…っ」

武道家「お、おい…ウソだろ?」

神官「う、ウソだったら、どんなに良かったか…」ブルッ

武道家「え、待てよ。俺まだこんなに元気だぜ?学生のころ…いや、それ以上に走り続けられるし!」

神官「…」


武道家「え…?お、俺…1年後に死ぬのか?」

神官「し、死ぬなんて!1年後とか限らないよ!個人差はあるし!」

武道家「個人差…。つまり、死ぬのは確定ってことなんだな…」

神官「…あっ」ハッ 


386 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:55:08 hdO4x83w
 
武道家「…」

神官「…っ」

武道家「そ、そうか。そうなんだな…」


神官「き、きっと…何か方法があるかもしれない!」

神官「明日には治療方法が見つかるかもしれないんだから!」


武道家「…っ」


神官「…奇病はこの世に沢山ある。僕も、そういう人たちを相手にしてきた」

神官「も、もちろん…武道家くんが侵されている病の人たちの相手も…したことはあるんだよ!」


武道家「その人たちは、どうなった…?」

神官「…そ、それは」

武道家「正直に言ってくれ。頼む」

神官「……もう、この世にはいない。余命1年と宣告した人も、半年すらもたなかった…」 


387 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:55:44 hdO4x83w
 
武道家「…半年、か」


神官「1か月に1度来てほしいといったのは、病を緩和する魔力維持用の魔石の装備の確保に時間が掛かるのと」

神官「どのくらいのペースで減少しているか改めて調べるつもりだったからだよ」

神官「改めて、本当に武道家くんが魔力枯渇症なら…わずかでも魔力の減少を捉えることは出来るから」

神官「それと…、その過程で治療方法が確保されるかもしれないと思ったのは本当で…!」


武道家「…」

武道家「……そうか。俺、死ぬのか」


神官「…だ、だから!そんな武道家くんが落ち込まずとも…!」

武道家「…」

神官「ぶ、武道家くん…!」ブルッ 


388 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:56:23 hdO4x83w
 
武道家「…」

武道家「…」

武道家「…ぷっ」

武道家「は…はははははっ!」


神官「ぶ、武道家くん…?」


武道家「…おいおい。お前、どんだけ情緒不安定なんだよ」ハハッ

神官「えっ?」


武道家「さっきから冷静に回答したり、感情的になったり」

武道家「お前がそんなんじゃ、俺が感情だせねーじゃねーか」ハハハッ 


389 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:56:58 hdO4x83w
 
神官「う…っ」ガタガタ


武道家「…」

武道家「僧侶、ありがとな」


神官「…え?」

武道家「手がずっと震えてるぜ?俺の事、きちんと思ってくれてるんだろ…ありがとな」

神官「…っ!」ブルブル

武道家「そんなお前が震えてちゃ、感情は出せないわ、当の本人は笑っちまうっつーの」ハハハ


神官「…仕事だから。平静を装うのが普通だから…」

神官「だけど…、君はやっぱり大切な友達で、仲間で…。感情が抑えきれなくなるし…!」


武道家「…」 


390 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:57:34 hdO4x83w
 
神官「…な、何で武道家くんがこんなことに……!」

武道家「なぁに、神様ってのは、うまぁく人を作るっていうのは本当だってことさ」

神官「ど、どういう意味…?」


武道家「考えてみろ、俺のような強さを持って生まれてきた事は、まさに天運だ」バッ!

武道家「だが、やっぱり人は平等らしいな。短命にして、バランスをとってきたということだな!」

武道家「ただそれだけだ。うはははっ!は~っはっはっはっはっ!」


神官「武道家くん…っ」 


391 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:59:11 hdO4x83w
 
武道家「ただ、それだけだ。それに…絶対に俺は死ぬといえるか?」

神官「…絶対なんて言葉、この世にはないと思ってる」

武道家「だろ?何とかなったりするかもしれんぞ」

神官「…」

武道家「話聞いてくれて、色々教えてくれてありがとうな」

神官「…僕も、全力で治療方法を探すから!」

武道家「おうよ、楽しみにしてるぜ」ニカッ


神官「…」

神官「あ…そうだ。武道家くん」


武道家「んむ?」 


392 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 19:59:59 hdO4x83w
 
神官「えっとさ…。この袋、持ってってよ」クルッ

ゴソゴソ…スッ

武道家「…これは?」パシッ

神官「"純気魔石"の欠片が入ってる」

武道家「…確か、魔力枯渇症の確認に使うやつだっけ」

神官「うん。だけど、この大きさでも袋から出したら周囲に魔力発しちゃうから、袋からは出しちゃダメ」

武道家「持ってて意味あるのか?」

神官「…小さな欠片だけでも、魔力枯渇症の人にとっては気分が安らぐみたいだから」

武道家「あぁ…そうか。ありがとな!」

神官「うんっ」


武道家「んじゃ…そろそろ皆も心配するし、宿に戻るかー…」

…ミシ…

武道家「ん…?」 


393 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:00:39 hdO4x83w
 
ミシミシ…

ガタ……ガタガタ…!!

武道家「お…」

神官「地震…かな」


ガタガタ……ガタッ……


武道家「…」

神官「…」
 

ガタッ……シーン…


武道家「…収まったか」

神官「最近、微震だけど地震が多いような気がするんだよね…」 


394 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:01:20 hdO4x83w
 
武道家「ふむ…」

神官「治療最中に来ると最悪だし、孤児院で子供預かってるとすぐ泣いちゃうし」

武道家「はは、立派に仕事してるなお前は」

神官「へへっ、そりゃね」

武道家「んじゃ…俺は宿に戻るよ。本当にありがとな」

神官「うん。また…」


武道家(結構時間かかっちまったな…)

武道家(怪しまれないためにも、買い物でもしとくか。酒でも買えば剣士も浮かれるだろうし)ハハッ


…………
……
… 


395 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:02:22 hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 宿 】

ガチャッ…ギィィ…

武道家「…ういっす!」


剣士「お、来たか」

乙女格闘家「おっかえりー!」

魔道士「お帰りなさい」


武道家「なんだ3人で集まってたのか」

乙女格闘家「うん」 


396 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:02:57 hdO4x83w
 
魔道士「で、どうだったの?」

武道家「何が?」

魔道士「何がって……」


武道家「…」

武道家「…あ、あぁ!」


魔道士「?」

武道家「いや、もう大喝采!そんな素晴らしい技、よく開発しましたって!」

乙女格闘家「すごーい!」

剣士「…」


武道家「ま、まぁそんなもんだ!そ…それより3人で集まって何してたんだよ」

剣士「んむ…。これからどうするかって話をしてた」 


397 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:03:45 hdO4x83w
 
武道家「…さっき武装さんと一緒にいた時、魔道士が山沿いで依頼を探すって言ってなかったか?」

剣士「そうなんだけどよ、ほら…装備とかも使い込んできたし、新調もしてぇなと」

武道家「中央都市にいるんだ、その辺で買えるだろ」


剣士「俺や武道家、魔道士の武器はアレだが…」

剣士「乙女格闘家は使い込んでるとすぐ金属疲労で壊れちまうだろ?」

剣士「それに、俺らは防具がそこまでいいもんじゃないし…これからの事を考えると買い込むのは有りかなと」


乙女格闘家「…ご迷惑おかけします」

武道家「迷惑じゃねーっつーの」コツンッ

乙女格闘家「あうっ」 


398 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:04:26 hdO4x83w
 
剣士「ま…そういうことだから色々話してたわけ」

武道家「なるほどな」

剣士「…と。そういう前に、お前のその荷物はなんだ」

武道家「ん?」ガサッ

剣士「すげー袋持って来たようだが…?」


武道家「あー…。ほ、ほら、軍に見せたら推奨金出たんだよ!だから食料とかお酒とか買ってきたんだよ!」

武道家(やっぱり反応しやがった。話そらしてくれると助かるぜ)


魔道士「武道家のおごり?珍しい!」

武道家「珍しいってなんだ、珍しいって」 


399 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/25(月) 20:04:30 3HjrNXzs
④ 


400 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:05:35 hdO4x83w
 
剣士「…じゃ!昼間過ぎだけど、早速ー…」ガタッ!

魔道士「早い!」

乙女格闘家「早い!」

武道家「早い!」

剣士「…はい」


武道家「やれやれ、お前はそんなに酒好きだったか?」

武道家(さすが剣士、俺の考えを裏切らない奴だ……ははっ)


剣士「…いや何だ、飲みたい気分かと思ってな」

武道家「誰がだよ。お前が飲みたいだけだろ」


剣士「そ、それはだな…」

剣士「……いや、いい。何でもない」


武道家「…?」 


401 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:07:29 hdO4x83w
 
…バンッ!

魔道士「と、に、か、く!今は今後の予定とか、色々決めてから!」

剣士「へーい」

乙女格闘家「節操ないな、剣士!」

剣士「なにおう!?」


武道家「はは…」

武道家「んじゃ、俺も話し合いに参加しますかねーっと」


…………
………
… 


402 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:08:03 hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 中央都市 宿のテラス 】
 
ホー…ホー…

…カランッ

剣士「…」グビッ

剣士「…ふぅ。結局色々やったせいで時間がたっちまった」

剣士「みんなでワイワイ飲みたかったんだがな…」


コツコツコツ…

剣士「ん…」


…ポンッ

武道家「よっ、お待たせ」 


403 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:08:39 hdO4x83w
 
剣士「…乙女格闘家は?」

武道家「寝たよ。昼間の会議で頭使ったーとかって言って即ダウンしてた」

剣士「あいつ、そんなに考えてたっけ」

武道家「くくく…その言葉、伝えてやろうか?」

剣士「やめてくれ、ぶっ飛ばされる」

武道家「ははは!魔道士は来ないのか?」

剣士「あいつも最近疲れてたからなぁ。すぐ寝ちまったよ」

武道家「…だろうな」


剣士「ふん。それよりほら、ウィスキー飲むか?」スッ

武道家「おう、ありがとよ」カランッ 


404 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:09:25 hdO4x83w
 
…グビッ

武道家「…む」

剣士「ん?」

武道家「少しきついぞ…この酒」プハッ

剣士「はは、そりゃよかった。酔いたい気分じゃないかなーと思ってたっつっただろ」

武道家「昼間の言葉は俺のことだったのか。…よくわかったな」

剣士「そりゃ分かるさ。何年一緒にいると思ってる」


武道家「…」

武道家「なぁ、剣士」


剣士「あん?」

武道家「お前にだけは、話しておかないといけないと思うんだ」

剣士「…病気のことか?」

武道家「どうしてそれを!?」 


405 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:09:59 hdO4x83w
 
剣士「ばーか、だからさ…何年いると思ってるんだよ。昼間は僧侶の所にでも行ったんだろ?」

武道家「…筒抜けか。そりゃそうか」フッ

剣士「で、酷い病なのか」

武道家「…正直に話そうと思う」

剣士「おう」


武道家「俺の病気は魔力枯渇症っつって、魔力が失われる奇病だと」

武道家「余命は…1年ないし半年程度だそうだ」


剣士「…」

武道家「…」

剣士「ふん…1年な」

武道家「…驚かないのか?」 


406 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:10:54 hdO4x83w
 
剣士「お前が病じゃ死ぬと思ってねーよ。何せ、お前は"武道家"だろ?」

武道家「くっ…くははっ!確かにな!」

剣士「…今、お前の身体に起きてる異変は咳くらいなんだろ?」

武道家「以前からだったが、咳の間隔が短くなってきた。心臓の痛みと…後は吐血くらいだぜ」

剣士「はっはっは!笑わせるじゃねえか!立派な病人だぜそれは!」

武道家「くくくっ、どうする?俺が重病人だってよ」


剣士「くく…ははははっ!」

武道家「ははははっ!」


剣士「ははっ…」

武道家「ふっ…」 


407 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:11:48 hdO4x83w
 
剣士「…」

剣士「……っ」ギリッ!!

剣士「…ば、バカ野郎っ……!」


武道家「…」

剣士「…これからだろ。これからだっただろうが…!」ギリッ

武道家「…悪いな」

剣士「…ッ」

武道家「…」


剣士「…じめてだ」

武道家「…ん?」

剣士「これほど、時間がたつのを止めてほしいと思ったのは初めてだ…!」

武道家「…」 


408 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:12:27 hdO4x83w
 
剣士「…で。これからどうするつもりなんだ」

武道家「まだ乙女格闘家たちには黙っていようと思う」

剣士「いつ話をする」

武道家「…わからん。もし、その時が来たらのほうがいいだろうとは思う」

剣士「突然倒れられたら、それこそ哀しむんじゃないのか」

武道家「…俺の少しのわがままくらい聞いてくれよ」

剣士「あん?」


武道家「俺はこの、今のパーティが大好きなんだ」

武道家「俺のせいで、このパーティの冒険をやめたくない。命が燃え尽きるまでさ」 


409 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:13:16 hdO4x83w
 
剣士「…」

武道家「…」

剣士「…そうか」


武道家「あぁ…」

武道家「……げほっ、げほげほっ!」


剣士「…」

武道家「ゴホゴホゴホッ!!ゴホッ!!」


剣士「…武道家」

武道家「ぜぇ…ぜぇ…!…な、なんだ?」

剣士「お前の命がどうとかは、考えたくねぇ。だが、このことはしっかり話すべき相手がいるだろ?」

武道家「乙女格闘家か?だからそれはさっき…」

剣士「ちげぇよ」 


410 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:13:48 hdO4x83w
 
武道家「じゃあ誰だ?」

剣士「…お前の親だよ」

武道家「!」

剣士「お前の親父と、母親には伝えるべきじゃないのか」

武道家「…」


剣士「しばらく顔出しもしてねぇし、色々とある前に顔くらい見せてやろうぜ」

武道家「…俺は言いたくない。もしそうなったら、お前が冒険の途中でそうなったと伝えてくれないか」

剣士「…それでいいのか?」

武道家「あぁ。それが俺らしい最期だと思ってる」

剣士「それがお前の望みなら、俺はきいてやるさ」

武道家「…ありがとよ」 


411 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:14:20 hdO4x83w
 
ホウ…ホウ…サワサワサワ……


剣士「……草木がなびく音。夜も更けてきた…か」

武道家「この雰囲気には、酒がよく似合うぜ」グビッ

剣士「はは、全くだ。さて、もう一杯ー…」


ミシ…
 
 
剣士「ん…」


ミシミシミシ…グラッ…


剣士「…何だ?」


…グラグラグラグラ!!ミシミシッ…!!

ゴォオオオッ…!!! 


412 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:14:52 hdO4x83w
 
武道家「…地震か!?」

剣士「地鳴りも…!結構でかいぞ!」

ゴォォォッ!!グラグラグラグラッ!!…ガチャンッ!!


剣士「あらら…高かったボトルが…。とにかく一回部屋に戻ろうぜ!」ダッ

武道家「そうだな、あとで合流しよう!」ダッ!


タッタッタッタッ…

……

… 


413 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:15:36 hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガチャッ!


魔道士「あ、剣士!」

剣士「なんかすげぇ揺れだぞ!一回外に出よう!」

魔道士「う、うんっ!」

グラグラグラッ…!!!


剣士「ほら手ぇ貸せ、急ぐぞ!武道家らも外に出てるはずだ!」グイッ

魔道士「うんっ」

タタタタッ…

…… 


414 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:17:14 hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿 の 外 】


タタタタッ…ガヤガヤ…!!

剣士「うおっ、すげぇ人だかり」

魔道士「みんな外に逃げてきたんだね…武道家たちは?」

剣士「えーと…」キョロキョロ


武道家「おーい、こっちだ!」

乙女格闘家「あっ、剣士たち!おーい!」フリフリ


剣士「この人ごみの中でも目立つ奴らだ…恥ずかしい奴らめ!」

魔道士「きっとその言葉は、私らに対しても浮かんでると思うよ…」 


415 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:17:46 hdO4x83w
 
タッタッタッタッ…

武道家「ふぅ、無事で何より。すげぇ揺れだったな」

剣士「こんなでけぇ地震なんか久しぶりだ」

魔道士「みんな驚いて逃げてきたんだね」

ザワザワ…ガヤガヤ…!!

乙女格闘家「何にせよ、みんなが無事ならよかったよー」


…ウー!!ウー!!


剣士「うるさっ!?…今度は何の音だっつーの!」


魔道士「これは中央軍の緊急招集音…かな。中央軍が、緊急配備されてるんだと思う」

魔道士「凄い地震だったし、何かあったのかも」 


416 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/25(月) 20:18:22 hdO4x83w
 
剣士「…」

剣士「一応、中央軍の一般依頼受付所に行ってみるか?」


武道家「そうだな。何かあった時に動ける面子がいたほうが軍も楽だろうし」

剣士「人助けになるかもしれねーしな、行こう!」

魔道士「うん」

乙女格闘家「だねっ」


…………
…… 




424 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:19:30 p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 一般依頼受付所 】 


ザワザワ…ガヤガヤ…!!  


剣士「うへっ…夜中なのにココもすげぇ人だぜ…」

魔道士「一緒の考えの人とか、依頼の発布されるかとお金儲けになると考える人たちもいるんだと思う」

剣士「ちょっとこれじゃ中にも入れねぇな…」

魔道士「どうする?」


武道家「何か依頼があるなら受付所で動きあるだろうし、少し待機してみてもいいんじゃないか」

乙女格闘家「そうだねー。もう少ししたら動くかもしれないし」 


425 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:20:25 p1nH3sk6
 
剣士「なぁ…ここが震源地じゃなかったら、もっとでかい地震のところがあったってことだろ?」

魔道士「…たぶんね」

剣士「だとしたら、被害がものすげーんじゃ…」

魔道士「うん…。そんな事がないように考えたいけど…」

剣士「…」


サッ…サササッ


武道家「…あ?」ピクッ

剣士「どうした」

武道家「今、受付所の裏から軍人さんたちが出てったのが遠目だが見えたぞ」

剣士「中央軍が?」

武道家「中央軍の依頼受付所だし珍しいことじゃないが、随分急いでたような…」

剣士「…追いかけてみるか」

武道家「受付所のほうでも何かあるかもしれねーんだぞ?」
 
剣士「どうせこの人だかりじゃ前も詰まって動けねーよ。脇道にそれて追いかけてみようぜ」ウズッ 


426 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:21:09 p1nH3sk6
 
武道家「…仕方ねぇな」

魔道士「はぁ、いっつもそうなんだから」

乙女格闘家「仕方ないね」


剣士「じゃ、行くぞ」


タッタッタッタッ…

…… 


427 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:21:59 p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 路地の一角 】


タタタッ…コソッ

剣士「…っと、止まれ」バッ

武道家「どうした。いたか?」

剣士「…軍人さんらが集まってる。中心にいるのはお偉いさんか?」

武道家「えーと…」ジー


魔道士「…」ジー

魔道士「……あっ!?」ハッ

魔道士「あ、あの真ん中の人…!あの人ってあの時の人じゃない…!?」


乙女格闘家「あの時…?私は見たことないよー?」

武道家「俺もだな」 


428 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:22:39 p1nH3sk6
 
魔道士「たぶん、武道家と乙女格闘家は知らないと思う」

魔道士「剣士、ほら!学生の時に、私たちに道を尋ねてきた大戦士先生の部下だったっていう…!」


剣士「……あぁ!」

魔道士「中央少尉!」

剣士「中央少尉!」


魔道士「だけど、今のあの服についてるバッジは…大尉のだね。昇格したんだ」

剣士「…お、静かに。何か話そうとしてんぞ」

魔道士「私らに気付かないでしゃべるって、昇格しても昔と変わってないね…」


ザザザザッ…ビシッ!!

軍人たち「召集致しました!」

中央大尉「ご苦労。中央軍本部より、緊急招集と情報が入った。今から共有するから良く聞いてくれ」

軍人たち「はっ!」ビシッ! 


429 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:23:44 p1nH3sk6
 
中央大尉「震源地は東方大陸。震域は中央を含め、大陸全土で確認された」

中央大尉「まだ詳しい被害情報等は入っていないが、我々はその救出隊へ組み込まれる可能性が高い」

軍人たち「はっ!」ビシッ


中央大尉「詳細は本部にある転移装置を使用し、東方支部へ到着後に武装中将より指揮を受ける予定だ」

中央大尉「既に中央軍本部には各地より集まった軍人らが待機している」

中央大尉「混乱を避けるため、出来る限りー…」


…ボソボソ

剣士「聞いたか?東方側が震源地だってよ…。転移装置って"扉"のことだよな」

魔道士「うん。東方側って、今は鍛治長さんたちが行ってるんだよね…」

武道家「前の地震は、エルフ族の村の直下だったんだろ?今回も、東方側のエルフ族の村直下とかじゃねえのか…」

乙女格闘家「うーん、どうなんだろ…」 


430 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:24:39 p1nH3sk6
 
剣士「…つったって、俺ら軍人じゃねぇし干渉できねぇし…」

魔道士「こればっかりはどうしようもないよね」

武道家「…エルフ族の住む場所での地震は二度目…少し不安になるな。無事だといいんだが、鍛治長サンら」

乙女格闘家「神隠しだっけ?あの時みたいな事なかったらいいんだけど…」


剣士「…ま、大丈夫だろ。武装のオッサンも指揮するみたいだし」

剣士「俺らはとりあえず、一般受付のほうで少し待機してたほうがよさそうか」


魔道士「うんっ。武装先生がいるんだし、大丈夫だよ」

…………
……
… 


431 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:25:30 p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻 中央軍本部 】

…ドンッ!!

武装中将「…一体どうなっている!震源地付近の東方支部にまだ連絡はつかないのか!」

武装中将「緊急隊も準備したというのに、転移装置も動作停止とは!」


大魔術中佐「落ち着いてください。今、うちの配下が取り急ぎ転移装置の復旧を行っております」

拳闘家少佐「加えて、うちの直属の者も小隊で向かわせました。明日の明朝には東方側の情報は把握できます」


武装中将「…槍士大将殿、元帥殿は何をしているんだ!」

武装中将「被害の確認もできず、支部側の最後の連絡は"甚大な被害"のみ!」

武装中将「ただでさえエルフ族が多く住んでいる地区だというのにー…」 


432 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:26:36 p1nH3sk6
 
大魔術中佐「…まさかこのタイミングで転移装置が停止するとは」

拳闘家少佐「転移装置に利用している魔力に何らかの問題が?」

大魔術中佐「今までこのような事はなかったので、問題の特定からさせていますが…」

武装中将「くそっ…!」


拳闘家少佐「もしかしたら、東方側の支部の面子も中央へ向かっているかもしれません」

拳闘家少佐「…とにかく落ち着かなければ」


武装中将「…分かっているが。くそっ…!」


…ガチャッ!

元帥「…みなのもの、ご苦労」 


433 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:27:53 p1nH3sk6
 
武装中将「元帥殿!」バッ!

元帥「時間帯のせいもあるが、今いる幹部はたったこれだけか…」


武装中将「…」

拳闘家少佐「…」

大魔術中佐「…」


元帥「槍士大将のやつは、本部へ集まった面子を指揮をしているのでここへは来ない」

元帥「人数は少ないが、このまま会議を始めようと思う」


武装中将「…会議といえども、現地の東方支部と連絡がつかなければどうにもなりません」

武装中将「一刻も早く、東方支部と連絡をつけるべきです!」 


434 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:28:51 p1nH3sk6
 
元帥「それについては既にに拳闘家少佐と大魔術中佐が行っているはずだろう」

元帥「連絡がすぐにつかないのは仕方ないことだが、今出来るのはそれだけだ…」


武装中将「…し、しかし!転移装置は停止し、少佐の隊は明日の明朝以降など!」

武装中将「どうにかならないものか……!」


…ガチャガチャッ、バタンッ!!!

軍人「し…失礼いたします!」


拳闘家少佐「何だ…確認もせず入るとは、何をしている!」


軍人「っ!」ビクッ

軍人「緊急だったもので、申し訳ありません!たった今、転移装置が作動致しました!」


武装中将「本当か!」 


435 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:29:35 p1nH3sk6
 
軍人「そ、それでその…、大変失礼とは存じますが、震源地付近にある東方支部の一名をこちらに!」スッ

拳闘家少佐「…連れてきたのか。貴様、たかだか離れ支部の軍人など、話を聞いて伝えるだけでよいものを!」

軍人「も、申し訳ございません!!ですが!!」

拳闘家少佐「言い訳は無用!貴様、いかなる場合であろうが軍人たるものー…」


武装中将「…落ち着け少佐。彼だって分かっているはず」

武装中将「規律…それを犯してまで連れてきたという事は尋常ではない事態」

武装中将「いいぞ、入らせろ」


軍人「…有難うございます!」

軍人「おい、入れ!」


拳闘家少佐「…武装中将殿は甘すぎる」 


436 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:30:39 p1nH3sk6
 
ガチャッ、ギィィ…
 
…ヨロッ、ポタッ、ポタッ…

東方軍人「ぐっ…うっ…」


拳闘家少佐「!」

大魔術中佐「!」

元帥「!」

武装中将「…どうしたんだ、その傷は」


東方軍人「し、失礼致します。自分は東方大陸…祭壇町支部の…」

武装中将「挨拶はいい。重要な部分だけ伝えろ」 


437 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:31:52 p1nH3sk6
 
東方軍人「は…はいっ…!地震後、支部より町へ倒壊した建物もあり…救出隊を編成…!」

東方軍人「その救出隊により、エルフ族…一部住民らの消失を確認…!」


武装中将「何だと…!?」


東方軍人「…その村の調査中に…、周辺から町へ"魔獣の集団"が出現…」フラッ

東方軍人「やがて編成隊は魔獣と衝突……。我が支部は援軍を出撃、再び魔獣らと交戦……っ」

東方軍人「その直後、人体への影響はなかったものの…魔力濃度の急上昇を確認しました…」

東方軍人「現在、前線付近の東方支部は、甚大な被害が…。至急、応援を……」


武装中将「!」

拳闘家少佐「!」

大魔術中佐「!」

元帥「!」


東方軍人「あ゛っ…」

フラッ…ドシャアッ…… 


438 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:32:33 p1nH3sk6
 
武装中将「…」

拳闘家少佐「今の話…本当だと思いますか?」

大魔術中佐「事実、彼のケガも酷いですしね。これはちょっと…」


元帥「…」

元帥「とりあえず、その男は治療室へ。今の言葉が本当なら、今すぐ転移装置を使って援軍を送る」

元帥「町のエルフ族の消失が本当なら、あの時の事件と同じ。今回こそは問題を突き止めねばならん」


武装中将「そうですね。大魔術中佐、部下に転移装置の安定を確認をしてくれ」

武装中将「その後、拳闘家少佐は小隊に魔力調査を行うメンバーを隊に加え、救助も視野に入れて向かってくれるか」


拳闘家少佐「小隊でよろしいのですか?」 


439 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:33:05 p1nH3sk6
 
武装中将「先遣隊として、まずは向こう側の状態の確認等をしてほしい。準備を頼むぞ」


拳闘家少佐「はっ!」ビシッ

大魔術中佐「承知致しました」ビシッ

ガチャッ、タッタッタッタッ…

………

…… 


440 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:33:48 p1nH3sk6
 
……

…………
 
元帥「…」

元帥「さて、少し厄介なことになったな」


武装中将「…こういう時、自分が若ければ前線へと進んで立ったのですが」

元帥「ワシらはもう歳だ。あとは若い者たちの時代だよ」

武装中将「はは…」

元帥「こんな時、彼がいれば"俺がやる"と言って率先して向かったんだろうな」

武装中将「彼とは?」

元帥「…大戦士くんだよ」

武装中将「あぁ…」


元帥「彼もまた、歳といえば歳だ。だが、彼ほど強い男はワシは知らぬ」

武装中将「…そうですね」 


441 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:34:20 p1nH3sk6
 
元帥「さて、ワシらも出ねば若い軍人らに文句も言われるぞ。槍士大将に代わって指揮へ出よう」スクッ

武装中将「今回のコトは、一般に情報を出しますか?」


元帥「いや、そう問題を大きくしなくてもよかろう。過去に似たような事案はあったものの、問題とはならなかった」

元帥「あの時と違うのは、魔獣が現れたということ。地震に触発されて出現したものとは思うが…」


武装中将「元帥殿が大きな問題にしないというならよろしいのですけども…」

元帥「…どうした。珍しく不安か?」

武装中将「いえ、同じ事件が月日を経て起こるとは…。どことなく胸騒ぎがするだけです」


元帥「…お主の予感は当たるからな。あまり悪い予感は出さないでくれよ」

武装中将「はは、思いすぎかもしれませんしね」

元帥「うむ…。そう考えたほうがよい。何にせよ、最悪の事態は想定すべきだと思うがな」 


442 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:34:52 p1nH3sk6
 
武装中将(…)

武装中将(あの東方支部の軍人の話が本当なら、あの神隠し事件の再来で間違いはない)

武装中将(すると、魔力濃度の上昇で転移装置に支障が出るほどの魔力があったということか?)

武装中将(だが、前回はなかった魔獣の集団の出現か…)

武装中将(支部とはいえ、手練れの軍人がキズだらけにされるものだろうか)

武装中将(少佐の先遣隊による支部の状態の確認をせねば何も言えぬが、この胸騒ぎは……)


………
… 


443 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:35:25 p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 治 療 室 】

…ガシャアンッ!!

治療員「…おい、早く縛りつけろ!暴れてては治療もできん!麻酔が何故きかん!」

アシスタント「ですが、暴れすぎてて…!」


東方軍人「が、がぁぁっ!は、離せ!ダメだ、まだ伝えるべきことが…!」

治療員「はいはい、幹部連さんたちは忙しくなるんだ、あとで話を聞いてやるから」

東方軍人「ち、違う…!これは大事なことで…!」


治療員「…仕方ない。数週間堕ちるかもしれんが、劇薬の麻酔を直接投与するぞ」スッ

…ブスッ

東方軍人「!」

ドサッ…

東方軍人「…」スヤッ 


444 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:35:59 p1nH3sk6
 
治療員「…ったく、重病なのに暴れるなっつーの。さて、治療を始めるぞ」

アシスタント「はい」

カチャカチャ…


東方軍人(ダメだ…。寝てしまっては…)

東方軍人(あの軍勢は…)

東方軍人(あの…魔獣たちは…ち…せい…を…)

…………
………
… 


445 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:36:33 p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・ 


446 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:37:42 p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 早朝 】

元帥「…」

槍士大将「…」

武装中将「…」

大魔術中佐「…」


…コチコチ


元帥「少佐の先遣隊を出発させてから5時間にもなるか」 


447 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:38:34 p1nH3sk6
 
槍士大将「未だに戻らないとは…」

武装中将「彼らの隊に何かあった…ということか」

元帥「その可能性は否定できぬな…」

槍士大将「すぐにでも第二隊を送るべきとは思いますよ」

元帥「だが、状況も分からず送るには…少し気が重くなる」


武装中将「少佐程の男が、その辺の魔獣にやられるとは思いません」

武装中将「上位種の魔物とぶつかったか、何か起きたか…」


元帥「実力を持っても、対処できない相手…か」

元帥「下の者に向かわせるには、少々危険だな」 


448 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:39:40 p1nH3sk6
 
槍士大将「自分が参りましょうか」

元帥「いや、ダメだ」

槍士大将「…なぜです?」


元帥「ここにいる面子は、基本的に動かすわけにはいかん」

元帥「何かあった時、指揮をとれる人材は失えん」


大魔術中佐「…今ここにはいないようですが、聖大佐や少将はどこへ?」

元帥「彼らは他の支部で前線指揮中だ。あっちはあっちで大変なようでな」

大魔術中佐「なるほど…」

元帥「世代交代時期とはいえ、層が薄いものだ…。これほど人材が乏しいとは」

大魔術中佐「…」 


449 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:41:24 p1nH3sk6
 
槍士大将「…自分や元帥殿、武装中将殿は指揮を中心にするとして」

槍士大将「魔術中佐は転移装置や、今後何かあった時の為の知能的立場、会議の中心となり…か。」

槍士大将「…確かに、どうにもなりませんな」

槍士大将「尉官以下では今回の問題は任せられませんね」

槍士大将「…この状況ですし、犬死の可能性がある。それは可哀想でしょうから」


元帥「…無駄に犠牲を出すことはできん」

武装中将「…」

槍士大将「…」

大魔術中佐「…」 


450 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:42:02 p1nH3sk6
 
武装中将「…」

武装中将「では…一つ提案があるのですが」


元帥「…何だ?」


武装中将「中央軍として、恥ずるべき行為とはなるでしょう」

武装中将「ですが、その軍への侮辱を承知のうえで、もっとも改善の策になりえると思います」


元帥「ふむ…言ってみるがいい」


………
…… 


451 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:42:36 p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 一般依頼受付所 】


…ザワザワ、ガヤガヤ


剣士「ふわぁ~…」

魔道士「夜が明けたのに、いまだに凄い人の数」

武道家「ここぞとばかりに、仕事があるかもと集まってるんだろう」

乙女格闘家「これじゃ、簡単な依頼すら受けられないなぁ…」 


452 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:43:59 p1nH3sk6
 
剣士「いつまでも俺らもここにいても、どうしようもねーし…」

魔道士「でも、馬車って動いてるのかな。あまりに大きい災害だと、移動制限かかるんじゃなかったっけか」

剣士「えっ、まじで?」

魔道士「うん。前、嵐が来た時も移動制限で田舎町に2週間滞在したでしょ」

剣士「あー…そうだったな」


武道家「だけど、ここにいても仕方ねーのは事実だぞ」

乙女格闘家「馬車が止まってるなら歩きでもいいけど、他の国境とか越えられるかな?」

武道家「んー…」

乙女格闘家「あまりに被害が大きかったら、他国の国境のゲートも閉まっちゃってるかもしれないよね?」 


453 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:45:43 p1nH3sk6
 
剣士「…とりあえず、人が多すぎるとうるせーし、宿に戻って計画練らないか」

武道家「賛成。ここにいるよりはマシだ」

魔道士「うん、そうしよう」

乙女格闘家「さんせー…」

 
剣士「…さて、じゃあ宿に戻ろうぜ」

魔道士「だね」

武道家「…昨晩は少し待機してたし、眠気がひどい。少し寝てから話し合いな…」フワァ

乙女格闘家「…ぎゅーっと添い寝しよっか!」

武道家「い、いや…」 


454 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:47:20 p1nH3sk6
 
タタッ…タタタタタッ…!!ダダダダッ!!

???「…おぉぉいっ!!」

ダダダダダッ……!!


剣士「ん…」

武道家「なんか後方がやけにうるせえな」

魔道士「何だろ?疲れてるし、朝から騒がしいのやめてほしいんだけど…」

乙女格闘家「ここに缶詰状態で頭おかしくなった人じゃないかな」


???「…見つけたぞ!!剣士っっ!!」


剣士「あぁん?俺の名前…?」クルッ


???「ラリアットォォォウッッ!!!!!」

…ビュオッ!!!

剣士「…へ?」 


455 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:49:20 p1nH3sk6
 
…ゴシャアッ!!!

剣士「ぬあああっ!?」バキィッ!!

ズザザ…ドシャアッ…!!


魔道士「け、剣士!?」

武道家「おーおー、吹き飛んだなぁ」

乙女格闘家「っていうか、何で剣士がラリアットされたの」


…ムクッ

剣士「…っ!」

剣士「いてぇな…この野郎!!誰だコラァッ!!」クワッ 


456 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/27(水) 20:49:52 p1nH3sk6
 
???「おぉ、怖いな。立派な冒険者になってるって話は聞いてたが…」

???「すっかり大人になった感じじゃないか」


剣士「…あぁ?」

???「…ちと髪の伸びたし、少しばかり老けたから分からないか?」
 
剣士「…」

???「…おいおい、本当に分からないのか。兄と呼んだ男を忘れるなんて、酷い話じゃない」


剣士「…あに?あに、兄…」

剣士「…」

剣士「…えっ」ピクッ

剣士「まさか…!だ、大戦士兄っ!?」


大戦士「…正解♪」ニカッ 


 


464 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:30:23 96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くのカフェ 】


大戦士「お姉さん、コーヒーね」

店員「かしこまりました、少々お待ちください」ペコッ

タッタッタッタッ…


剣士「大戦士兄、本当に久しぶりじゃん!どうして中央にいるんだよ!」

魔道士「…お久しぶりです」

武道家「久しぶりっすね、大戦士サン」

乙女格闘家「おひさです!」 


465 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:31:15 96dfo0UE
 
大戦士「…いやー今朝方さ、急に武装大佐…じゃないや、武装中将に呼ばれてさ」

大戦士「今日は学校のイベント日だったんだけど、休んでこっちに来たんだよ」

大戦士「中央本部の転移装置が安定してないらしくてね、ここの受付所に飛ばされたんだ」

大戦士「そして外に出てみれば、人ごみの中から抜け出ようとした君たちの姿を見つけたわけ」ハハハ


剣士「武装中将に呼ばれたって、オッサンが大戦士兄をわざわざ?」

大戦士「あの人が俺を呼ぶなんて、よっぽど何かあったのかねぇ」

剣士「…昨日の地震のことじゃないのか」

大戦士「恐らくね。冒険学校付近も凄い揺れたよ」

剣士「…」

大戦士「それよか、君たちの噂は聞いてるぞ。"黄金世代の卵"って言われてるらしいじゃないか」

剣士「…卵?」

大戦士「何だ、知らないのか?」 


466 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:31:49 96dfo0UE
 
剣士「…魔道士、聞いたことある?」

魔道士「全然」

武道家「美味そうってことなのかね」

乙女格闘家「私、きっと美味しいよ~♪でも、食べていいのは武道家だ、け」キャー

武道家「…」


大戦士「そういうことじゃなくてだな」

大戦士「俺や、武装中将が活躍していた時代を"黄金期"ないし"黄金時代"と呼んでいるんだ」

大戦士「名だたる冒険者や、実力が高い人らが多く、かつ中央軍として世界統治を安定させていたからだ」


剣士「ふーん。自慢か。それで?」 


467 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:32:26 96dfo0UE
 
大戦士「…」

大戦士「この数年で、その黄金時代を築いたメンバーは俺を含め…冒険者としては引退の時期だ」

大戦士「そして、下の世代である君たちの時代となった」

大戦士「だが、どうにもこうにも実力の長けた者らはいなかった」

大戦士「そんな中、この短期間でメキメキと成果をあげ、実力も高い若い先鋭パーティが現れたわけだ!」


剣士「…それがもしかして」

魔道士「私たち…?」


大戦士「その通り。君たちは、自分らが噂になっていることくらいは知っているだろうが」

大戦士「俺らや中央軍、引退せし熟練者らからは"黄金世代の卵"と呼ばれているんだよ」


武道家「おぉ…」

乙女格闘家「かっこいー!!」キラキラ 


468 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:33:06 96dfo0UE
 
大戦士「そーいうこと。ま、これからもがんばってくれたまへ、若き冒険者よ」ニカッ

剣士「へへっ」


武道家「…そういえば、大戦士さん」

大戦士「うん?」

武道家「少戦士とかはどうなったんだ?次の年らへんに卒業できたんだろ?」


大戦士「あー…次の年に卒業してね」
 
大戦士「今は確か豪剣士と二人、ペアで冒険者として世界を駆け巡ってるよ」


剣士「同業者、ライバルになったってわけだな」ニヤッ


大戦士「君たちほど名前も売れてないし、これからに期待って感じかな」

大戦士「依頼紹介は俺が直接出来るわけでもなし、チビチビと小さな依頼をこなして生活してるらしいけどね」 


469 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:33:38 96dfo0UE
 
武道家「師匠なんだから、もっと色々と手をかけりゃいいのに」

大戦士「彼らも君たちみたく、自由でいたい!と言うだろうし、最初から手をかけるつもりはなかったかな」

武道家「あ~なるほど」


大戦士「…あっ、そうそう!豪剣士くんといえばさ…」

大戦士「豪剣士くんは、尊敬できる剣士みたくなるために、スマートな名前がいいとかで…」

大戦士「"剣豪"って名前にしてたね」
 

剣士「え゛っ」

魔道士「うわぁ…愛されてるね」

剣士「嫌だっつーの!!」

武道家「…」

乙女格闘家「剣豪と、剣士の愛…おえっ」

剣士「変な想像してんじゃねえ!」 


470 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:34:17 96dfo0UE
 
大戦士「あっはっはっは、君たちは全然変わってないな」

剣士「そうそう変わるかっつーの」

大戦士「うん、君らはそのままでよろしい」

剣士「当然だ」フン


トコトコ…

店員「…お待たせ致しました。ご注文のコーヒーをお持ちしました」


大戦士「おっ、ありがと…」

カタッ…カタカタカタ…

大戦士「…」ピクッ 


471 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:35:01 96dfo0UE
 
カタカタカタ…ガタガタガタガタッ!!グラグラグラッ!!!

ゴォォォォオッ!!


剣士「ちっ、また地震か!」

魔道士「大きいよ!」

武道家「…乙女格闘家、もっとこっちにこい!」

乙女格闘家「う、うんっ!」


グラグラッ…!!

店員「きゃああっ!」パッ

大戦士「…いかん、コーヒーが!危ない!」バッ

…パリパリンッ!!バシャッ!!

店員「あっ!」 


472 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:35:37 96dfo0UE
 
グラグラグラ…ミシミシッ…

ミシッ…ミシ………


剣士「ふぅ…収まったか。大丈夫だったか魔道士」

魔道士「うん…」

武道家「乙女格闘家も、大丈夫だな」

乙女格闘家「うん」


剣士「大戦士兄は…、って!」


ジュウウッ…

大戦士「あっちぃ~!熱々コーヒーもろに被っちゃったよ!」ハハッ

店員「あ…あう…」ブルブル 


473 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:36:27 96dfo0UE
 
大戦士「大丈夫かい?抱きしめて悪かったね、嫌だっただろうこんなオジサンで」ハハ

店員「わ、私…コーヒーを…!やけどが…!」

大戦士「あぁ、これでも俺は元冒険者でさ、こんなのぬるま湯みたいなもんだし、大丈夫だから安心してくれ」ニカッ

店員「で、でも…」


大戦士「いやー、丁度浴びるほどコーヒー飲みたかったんだよな!」

大戦士「ついつい自分から本当に浴びに行っちゃったよ」ハハハ


店員「…っ」


剣士「お姉さん、本当にこの人は大丈夫だから安心して」

武道家「そうそう。火炎で燃やされても、平気な人だから大丈夫」

大戦士「あのね君たち…」


店員「ご、ごめんなさいっ!」 


474 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:37:19 96dfo0UE
 
大戦士「だから、謝らなくてもいいさ。それより、カップの破片が危ないから動かないで」バッ

店員「…」

大戦士「よいしょっと。今拾うから待ってくれよ」スッ

チャリ…チャリッ…


大戦士「おら、剣士たちも見てないで手伝う。冒険者たるもの、人の役に立ってこそだ」

剣士「わ、分かってるっつーの!」

魔道士「はいっ」

武道家「なんかこういう教え、久々だな」

乙女格闘家「学校に戻ったみたいだね」ヘヘッ 


475 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:38:17 96dfo0UE
 
店員「…」

大戦士「…」

チャリチャリ…パラパラ…


大戦士「…よしっと。これで大丈夫」

店員「…有難うございました…本当に…」

大戦士「なになに!君のような可愛らしい娘さんにケガがないなら、何より」ニコッ

店員「…は、はいっ」カァッ

タッタッタッタッタッ…


大戦士「お、おいちょっと!せめて破片のごみくらいはもってってー…」 


476 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:38:49 96dfo0UE
 
剣士「…」

剣士「だ、大戦士兄の男らしさを見た気がした」


魔道士「あんな感じなことばっかりやってきたのかなぁ…」

武道家「罪な男ってやつじゃねえか…」

乙女格闘家「恋に年齢は関係ない…か。完全に堕ちたね、あの店員のお姉さん…」


大戦士「うおっし!コーヒーも満足するほど飲んだし…」

大戦士「そんじゃ久々に、中央軍本部に行きますかぁ!」バッ!


………
……
… 


477 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:39:24 96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 】


武装中将「…で、なぜこの子らがいるのかな?」ピクピク


剣士「…へへ」

魔道士「…」

武道家「…ふふ」

乙女格闘家「…」


大戦士「ははは、未来を担う子たちにも、ぜひ情報を教えてやってくれないかなと」


…ゴツンッ!!! 


478 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:41:29 96dfo0UE
 
大戦士「」プシュー

武装中将「お前は幾つまで、そのままなのだ!」


大戦士「ぶ、武装中将殿!しかし私が呼ばれるということは相当な事態」

大戦士「いずれ、この若き冒険者たちにも及ぶ事だと思い、先鋭達である彼らを連れてきたのです」


武装中将「例えそうだとしても、元軍人であるお前がそういう事をするでない!」

大戦士「…そ、そんな面倒臭いことばっかだから軍を辞めたんでしょーが!」

武装中将「はぁ…。あのまま続けていれば世界を担う男になる逸材だったというのに…」

大戦士「そういうのはパスですよ。所詮、俺には似合わない舞台でしたから」

武装中将「…似合う、似合わないの問題ではないだろう」

大戦士「いいんですよ、俺は自由で。なーんて」ハハ


剣士「二人のやり取り始めて見たが、なんかなぁ」ボソボソ

魔道士「…だね」ボソボソ 


479 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:42:11 96dfo0UE
 
武装中将「全く…」

大戦士「…で、本題にいきましょうよ。割と真面目に、由々しき事態なのでしょう?」

武装中将「…確かにそうなのだが」チラッ

大戦士「そんなに剣士たちがいると話辛いのですか?」

武装中将「彼らの性格を知ってるからな…絶対に首を突っ込む案件だ」


剣士「…酷い言われようだな。俺らが規律を乱しかねないみてーじゃねーか!」

武装中将「…乱すだろ?」

剣士「はい」

武装中将「…げんこつ食らうか?」

剣士「いいえ」


大戦士「はっはっは!」

…ゴツンッ!! 


480 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:42:41 96dfo0UE
 
大戦士「」プシュー


武装中将「ったく…仕方ない。時間もないし、剣士たちは聞くだけにしておけよ」

武装中将「大戦士の言う通りではないが、下手をすれば世界を巻き込まれん事態になっているのだ」


剣士「世界が巻き込まれる事態?」

武装中将「昨日教えた、東方に住むエルフ族の話は覚えているだろう」

剣士「あぁ。西方ではなく、本当はエルフは東方に住んでたってやつな」


大戦士「なんだ、そういう事まで教えてるなら気にせず機密情報もどんどん…」

…ゴツンッ!!!ゴツゴツンッ!!

大戦士「」プシュウ… 


481 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:43:30 96dfo0UE
 
武装中将「…ごほんっ」

武装中将「今回の震源地は、東方大陸の中心部。太陽の祭壇町付近、つまりエルフ族の町が震源地だ」


大戦士「…!」ピクッ


剣士「!」

魔道士「エルフ族の…」

武道家「…やっぱり、そうだったのか」

乙女格闘家「だ、大丈夫なんですか?」


武装中将「うむ。実は昨晩、その支部から転移装置で連絡が入ってな…」


………
……
… 


482 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:44:12 96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大戦士「…なるほど。再び住民の消失と、魔獣の集団ですか」


武装中将「…その後、先遣隊として少佐の隊を向かわせたが未だに連絡が入らない」

武装中将「その為、一刻も早く次の小隊を派遣する予定となっている」

武装中将「…俺が自ら行くのも考えたが、指揮をとれる人間がいなくなるのは困るといわれてな」


大戦士「確かに、今の軍の状況で武装中将殿含む、幹部を失うのは痛手でしょう」


武装中将「拳闘家少佐から早めに連絡が入ればいいのだが、どうにもこうにも帰還せず…。」

武装中将「先遣隊が戻らない以上、安易に動くのは得策ではない。だが、情報が必要だ…」

武装中将「先ほども言ったが、今後の為に情報を掴むため小隊派遣を一刻も早くせねばならん」 


483 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:44:50 96dfo0UE
 
剣士「エルフのジイチャン…そんな場所で大丈夫なのかよ…」

武道家「剣士の飲み会の席の一言が、こんな状況を知ってしまう事になってしまうとは…」

魔道士「別に剣士が起こしたわけじゃないでしょ、そんな言い方やめてよ…」

武道家「わ、わりぃ…」


大戦士「それで俺が呼ばれた理由は?ま、大体分かりますけどね」

武装中将「…小隊に入ってほしいんだ」

大戦士「やっぱりね」ハァ


武装中将「軍を退役した身で、このような事を頼むのは申し訳ないと思っている」

武装中将「だが、頼める人材がいない。…今の軍はあまりにも弱すぎるんだ」 


484 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:45:24 96dfo0UE
 
大戦士「武装中将殿が歳をとったといっても、中将殿の世代や俺の世代でも充分に戦えるメンバーはいるでしょう」

大戦士「そういった、いわゆる黄金世代の引退した人たちを呼び戻せばいいんじゃないですかね」


武装中将「…最悪、その…呼び戻すことも考えている」

大戦士「!」

武装中将「まだ情報が錯綜しているが、今回は何かが変だと思うんだ」

大戦士「…本気ですね。貴方がそんな考えまで持っているとは」


武装中将「何にせよ、拳闘家少佐の先遣隊ないし、これから送る小隊で情報を固めたい」

武装中将「それまでは大隊を送るにも…無駄になる可能性がある以上、大きな動きは出来ないのは分かるだろう」 


485 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:45:54 96dfo0UE
 
大戦士「…」

大戦士「…その小隊は、俺が指揮して着いてきますか?」

大戦士「当時ならまだしも、今の若い世代が俺のことを知っているとは到底思えない」


武装中将「お前は有名人だぞ?こう言うのはなんだが、お前の名だけで着いてくるはずだ」

大戦士「もう退役して10年以上ですよ?」

武装中将「未だに大戦士は伝説として残っている」

大戦士「…」

武装中将「…行ってくれないか。頼む」

大戦士「やれやれ。軍も都合がいいですね、結局は俺は小隊のお守りってわけでしょう?」

武装中将「言い方は悪いが、それは認めざるを得ない…」

大戦士「はぁ…」 


486 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:46:36 96dfo0UE
 
武装中将「どうだろう…。頼めないか」


大戦士「…」

大戦士「…では、武器は俺が現役時代に使ってた軽剣を用意してください」

大戦士「あと、俺に従うよう、しっかり若いメンバーにも伝えること」

大戦士「過去の栄光を振りかざして指揮をしても、現場でついてくる人間はいません」

大戦士「現役の中将である貴方から一言を頂ければ、まぁ何とかついてくるでしょう」


武装中将「!」

大戦士「ただ、本当に役に立つかは分からないですよ」

武装中将「…やってくれるだけ、有難い。有難う」

大戦士「いいですよ。世界の危機になるかもしれないというなら、動ける面子が動くしかないでしょう」

武装中将「…」 


487 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:47:14 96dfo0UE
 
剣士「大戦士兄…」

大戦士「剣士たちは、まだ動く時じゃない。残念だけど、もうしばらく待機しててくれるかな」

剣士「…わ、わかってるっつーの!」

大戦士「…バカに素直だな」


魔道士「どんなバカでも、こういう空気は読めるということです」

剣士「うっせっ!」


武装中将「ははは、では早速準備をさせよう」

武装中将「剣士たちは、一度自分たちの宿へ戻るといい」

武装中将「中央を離れるなら、東部側には向かわないことだ」

武装中将「祭壇町付近だけでなく、その周囲の閉鎖区域を拡大する強化を進めているからな」 


488 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:47:53 96dfo0UE
 
剣士「…わかった。とりあえず俺らは俺らのままで生活するよ」

剣士「だけど、必要な事があったら呼んでくれ。これでも俺ら強いんだぜ?」ハハッ


魔道士「…うん、だねっ!」

武道家「そうだな。喜んで戦うぜ」

乙女格闘家「任せて!」


大戦士「あぁ…。分かってるよ」

武装中将「はは、お前らのような若き冒険者がいて嬉しく思うぞ」

大戦士「武装中将殿、これが俺の教え子であり、弟子ですよ。頼もしいでしょう?」ククッ

武装中将「未来を担う冒険者たち…か」

大戦士「…ふっ」

………
……
… 


489 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:48:27 96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市の一角 】

トコトコ…

剣士「はぁ~…大戦士兄、大丈夫かねえ」

武道家「大丈夫だろ。殺しても死なないような人だし」

魔道士「私、ちょっと今回の事態がどうなっていくか少し不安だな…」

乙女格闘家「こんなこと聞いたことないもんね。本当に私たちに飛び火してきそう」


剣士「なぁに、武装のオッサンと大戦士兄で何とかなるだろ」

剣士「最強の戦士に、最強の指揮官だろ?」


魔道士「…ふふっ、そうだよね」 


490 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:49:33 96dfo0UE
 
武道家「もし俺らが中央軍にいたら、大戦士さんと一緒に東方へ行ったのかもしれないな」

剣士「あー…」

武道家「ま、今は関係ないか。俺らは俺らの生活の心配しようぜ」

剣士「そうだな…東方側閉鎖するっつってたし、今度は南にでも行くか?」


魔道士「そういえば…北、東、西はいったけどまだ南って行ったことないね」

剣士「船も使って、砂漠地帯とかっつーのでも見に行くか!?」

魔道士「うん、それでもいいよ。過酷な場所って聞いたけど、私らで受諾できるクエストあるかもしれないし」

剣士「よっしゃ、決まったら早速今日から出発しようぜ!」


武道家「砂漠か…。水持ってかないといけないのかね」

乙女格闘家「食料いっぱい買わないとねー。船も出てるか分からないし、調べながらいかないと」 


491 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:50:06 96dfo0UE
 
剣士「んまぁ、とりあえず南方大陸行きの船着き場まで行くか」

武道家「港周辺にも食料店はあるだろうし、そこで計画のことを改めて話し合うってのもいいかもしれん」

剣士「そうだな、じゃあ早速出発しようぜ!行くぞぉ~っ!」ダッ!

武道家「おっ、待てコラ!!」ダッ!


魔道士「あっ!ち、ちょっと待ってよ!」ダッ

乙女格闘家「まだ中央の宿に荷物置きっぱなしでしょー!」ダッ


タッタッタッタッタッ…………

…………

……

… 


492 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:50:47 96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 転移装置前 】

バチバチッ…!


大戦士「それでは、行ってまいります」

武装中将「…うむ」

大戦士「えぇ、任せてください」


小隊軍人たち「…」ビシッ!


大戦士「どんな状況かは分からないが、俺がお前たちを守ると誓う」

大戦士「ただ、過去にない事である以上、相応の覚悟は…しておいてくれ」


小隊軍人たち「はっ!」ビシッ! 


493 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:51:42 96dfo0UE
 
武装中将「では、武運を祈る。あまり先走りすぎた無茶はするんじゃないぞ」

大戦士「な~に、ちゃっちゃと俺らでも解決して戻ってきますよ」

武装中将「…本当にそうなりそうだがな」

大戦士「では…」ビシッ!

武装中将「…」ビシッ!


大戦士「これより東方支部、祭壇町へと突入する!」

大戦士「到着後、各自軽率な行動をとらず、小隊長である俺か、副隊長の"中央大尉"に従うように!」


…ビシッ

中央大尉「…また貴方と組むことになるとは思いませんでした」

中央大尉「久々に、あなたが隊長として活躍するところを見せて頂きますよ」


大戦士「…はっはっは、楽しみにしておけ!それじゃあ出発する!」

大戦士「小隊、前進っ!」 


494 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:52:30 96dfo0UE
  
小隊軍人たち「はっ!!」ビシッ!

ザッ…ザッザッザッザッ…!!

大戦士「…」

中央大尉「…」

小隊「…」
 
 
バチッ…、バチバチバチッ!!ギュウウウウンッ!!

ギュウウッ…!!

ウゥゥン…

……

… 


495 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:53:30 96dfo0UE
 
武装中将「…」

武装中将「…頼んだぞ、大戦士」


バチ…バチバチバチ…!!ボォンッ!!!プシュー…!


武装中将「むっ…?」


タタタタッ…!!

軍人「…ぶ、武装中将殿!失礼致します!」

軍人「武装中将殿、魔法転移装置に何らかの異常…停止した模様!」 


496 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:54:45 96dfo0UE
 
武装中将「…なんだと!」

軍人「すぐに大魔術中佐殿をお呼びし、原因の調査をいたします!」

武装中将「大戦士たちが向かったばかりなのだぞ!急げ!」

軍人「は、はいっ!」

タタタタッ…!!


武装中将「…ッ」

武装中将「大戦士っ……!」


…………
………
… 


497 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:55:30 96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 東方大陸 祭壇町(エルフ族の町) 】


バチッ…バチバチバチッ!!

…ギュウウウンッ!!!バシュウンッ…!


……スタッ…!


大戦士「うしっ!…無事に到着したか」

中央大尉「そのようですね。さて…全員隊列を組め!」

小隊軍人たち「はっ!」 


498 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:56:19 96dfo0UE
 
…バチバチ…バチィッ!!ボォンッ!!

プシュウ…!!


大戦士「…ん?」

中央大尉「何の音でしょう?」


タタタッ…!

小隊軍人「…報告致します!転移装置が、停止した模様です!」


中央大尉「何?」

大戦士「は…はは。しょっぱなから嫌なことだな…」

中央大尉「どうしましょうか。魔術師らに復旧をさせますか?」

大戦士「復旧は向こう側に任せよう。転移装置の原動力である巨大魔石は本部にあるわけだし」

中央大尉「分かりました」 


499 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:57:05 96dfo0UE
 
大戦士「それよか、見ろ。この支部の惨状はどうしたんだ……」


ゴォォォォ…!


中央大尉「随分と…荒れていますね。地震があったとはいえ、割れたガラス等も放置されているとは…」

大戦士「ここの支部はそれなりの人数はいるはずだし、本部の少佐が来ているはずだろう。なのに人の気配もないぞ?」

中央大尉「確かに、待機部隊がいてもいいはずなのですが」

大戦士「と、すると…ここに待機できない事態が起きたか…?」

中央大尉「とりあえず町に出てみましょう。エルフ族の民が消失したと聞きますし」


大戦士「そうだな。確か大広間から抜けられるはずだ」

大戦士「そこの角を曲がったところだったはずだ。全員進むぞ!」

ギシッ…!ギシギシ…

大戦士(木造の歩く音って不気味で好きじゃないんだがな…)

ギシギシ…… 


500 : ◆qqtckwRIh. :2014/08/29(金) 22:58:19 96dfo0UE
 
大戦士「…」

中央大尉「…」

小隊「…」

ギシギシ…!ギシギシ…ギシ…


大戦士「…」

大戦士「…」

大戦士「…むっ?」


モワッ…


中央大尉「うっ…」

中央大尉「何ですか…そこの角から流れ出てるこの霧のようなモヤは…」 


次回 剣士「冒険物語…!」 その2