歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」 前編

317: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:40:18 ID:5cc4H.Jw
────学園生活8日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

モノっちー『それから、今日は全校集会があります。オマエら、午前10時に体育館に集まってください』

プツン


歩夢(全校集会……前回のことを考えると、イヤな予感しかしない。でも……)

歩夢「行かなきゃいけないんだろうな……」ハァ

引用元: ・歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」 



318: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:40:50 ID:5cc4H.Jw
────体育館

モノっちー「うけけけけけ……ちゃーんとみんな揃ってるネ」

かすみ「何を始めるつもりなんですか~?」

モノっちー「いやいや、大したことじゃないよ。オマエらが団結なんて醜いことをしようとしているから、“アレ”をやろうと思ってね」

曜「アレ、ってまさか……」

モノっちー「お待ちかね、動機発表ターイム! どんどんぱふぱふ~」

鞠莉「わー……」ボウヨミー

モノっちー「ちょっとオマエら、ノリが悪いよ! セイウチハートが傷ついたよ!」

319: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:41:47 ID:5cc4H.Jw
ダイヤ「ですが、私たちはもうあなたには屈しません」

モノっちー「おろろ? どうしたの黒澤さん。妹さんの死体はとっくに片づけたけど……お別れは済ませた?」

ダイヤ「っ……あなたが何を言おうと、もう殺し合いなんて起こさない……そう言っているのです」

モノっちー「ふーん……正義感気取りだネ。昨日までのワタクシとは違いますって感じ!」

モノっちー「でもホントにいいのかな~?」



モノっちー「卒業した人には“一つだけ願いを叶える権利をあげる”のにさ」

320: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:42:26 ID:5cc4H.Jw
歩夢「……」

モノっちー「そう、前回はオマエらの不安を煽る動機だったからネ。今回はご褒美をあげることにしたのです!」

モノっちー「殺害を実行した人は、ボクに願いを言ってください! 学級裁判で投票を乗り切ることが出来れば、卒業する時にそれを叶えてあげましょう」

果林「随分と安いエサで釣って来たのね」

モノっちー「うけけけけけ……安いエサだとしても、広範囲にばら撒けばサビキ釣りのごとく掛かる人が増えるんだよ」

モノっちー「死んだ人を蘇らせたい、あの人と仲直りをしたい、どうしようもないコンプレックスを治したい……」

モノっちー「コロシアイを終わらせたい、でもいいんだよ?」

せつ菜「なっ……!?」

321: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:43:01 ID:5cc4H.Jw
モノっちー「本当だよ? コロシアイを終わらせたいって願いでも問題ありません」

モノっちー「その場合、クロが卒業したあと、残ったシロたちもオシオキすることなくこの学園から出してあげるよ」

エマ「でも……それは学級裁判が起きないといけないんですよね」

彼方「ってことは~……殺し合いを終わらせるためにも……」

モノっちー「誰か1人は必ず殺されなきゃいけないのですよ」

千歌「そんな……!」

モノっちー「じゃあ、そういうワケだから……せいぜい頑張ることだネ! うけけけけけ……」

「「……」」

歩夢(コロシアイを終わらせるためには、誰かが犠牲にならなきゃいけない)

歩夢(そうじゃなくても、強い願いを持った人が行動に出るかも知れない)

歩夢(何とも言えない空気の中、私たちはひとまず解散することになった)

322: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:43:46 ID:5cc4H.Jw
────食堂

千歌「はい、これでアガリ!」

せつ菜「ぬおおおおおお……もう1回、もう1回です!」

曜「あはは……ん?」

花丸「どうかしたずら?」

曜「いや、何だろう……何か忘れていたような気がするんだけど……やっぱりいいや」

歩夢「あ、せつ菜ちゃんここにいた」

エマ「お邪魔しま~す」

323: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:44:18 ID:5cc4H.Jw
せつ菜「あゆむぅ……」ダキッ

歩夢「わわっ、どうしたのせつ菜ちゃん」

せつ菜「千歌さんたちにUNOで全然勝てないんです……どうすればいいんでしょう」

千歌「せつ菜ちゃん、最初は調子良かったんだけどねー」

歩夢「ああー……アドバイスが欲しいなら、あげるけど……」

せつ菜「うぐぅ……言った手前なのですが、アドバイスまで行くと負けた気分です……」

エマ「ふふっ、大丈夫だよせつ菜ちゃん。私がなんとかしてあげる」

せつ菜「エマさんが?」

エマ「とりあえず飲み物入れてくるから、みんなはカードを配ってて」

花丸「分かったずら」

324: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:45:06 ID:5cc4H.Jw
~数分後~

せつ菜「アガリです! やった、勝てました!」

歩夢「早っ!?」

曜「せつ菜ちゃん、同じ数字のカード多すぎじゃない!?」

エマ「ふふっ。あ、アガリ♪」

花丸「ずらっ!?」


~数十分後~

せつ菜「連戦連勝です!」

千歌「悔しい……こうなったら、ゲームを変えよう! 渡辺軍曹!」

曜「はっ! 私の部屋から持ってきたすごろくであります!」

花丸「今度は負けないずら!」

325: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:45:54 ID:5cc4H.Jw
~1時間後~

せつ菜「ゴールです!」

千歌「何故だ、何故勝てない……」

曜「ズルとかしてないよね……?」

せつ菜「してませんよ!?」

花丸「でもこれは、イカサマを疑うレベルずら。それこそ、幸運でもなけりゃ……あっ」

エマ「ふふっ」

歩夢「もしかして、エマちゃんが……?」

326: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:46:56 ID:5cc4H.Jw
エマ「うん。ちょっとだけ私の運を分けてあげたんだ」

花丸「そういえば、エマさんは超高校級の幸運だったずら……」

エマ「私ね、故郷のスイスでは8人兄妹だったんだ」

千歌「8人!?」

エマ「弟や妹たちとよく遊んだりするんだけど、昔からこういうゲームは必ず勝つから、つまんないって言われちゃってね」

エマ「でも、ある日気付いたの。私の運は、誰かに分けることが出来るんだって」

エマ「だから、みんなの運を均等にして、正々堂々勝負したり」

エマ「兄妹の誰かに大事なイベントがあったら、上手く行きますようにって大きく運を分けたり」

エマ「誰かが病気になっちゃったら、早く治りますようにって……」

327: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:48:03 ID:5cc4H.Jw
歩夢「いいお姉さんなんだね」

エマ「そんな、いいお姉さんだなんて。私はただ、平和に暮らせればよかったんだ」

エマ「私が虹ヶ咲学園に選ばれた時は、家族みんながお祝いしてくれて……それなのに、こんなことに巻き込まれて、弟や妹は……」

歩夢(そっか。以前モノっちーが出した映像、エマちゃんのそれには……)

果林「あ、いたいた。歩夢ちゃんたち、ちょっと話があるんだけど」

エマ「っ……と、ごめんね、こんな話しちゃって。私、そろそろお部屋に戻るね」

曜「あっ、エマ、ちゃん……」

果林「……何かあったの?」

せつ菜「いや、そういうワケではないんですけど……」

果林「……そう。単刀直入に聞きたいんだけど、今後、見張りって必要かしら?」

328: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:48:34 ID:5cc4H.Jw
歩夢「見張り……ですか」

果林「見張りってね、言い換えれば誰かを疑うってことなの。信じることが出来ないから、見張りをつける……そう思わないかしら」

千歌「確かに……それじゃあ団結とは言えないかも」

果林「それに……」チラッ

せつ菜「……分かっています」

果林「ならいいの。だから、ここ数日うやむやになっていた見張りを改めて廃止するかどうか、みんなの意見を聞きたいの」

曜「こういう言い方をされちゃ、ね……」

歩夢「うーん……」
───
──

329: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:49:07 ID:5cc4H.Jw
キーンコーンカーンコーン

モノっちー『えー、夜10時になりました。ただいまより夜時間になります』

モノっちー『まもなく、食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となります』

モノっちー『それでは皆さん、おやすみなさい』

プツン

歩夢(散々悩んだ末、私たちが出した結論は廃止だった。ある意味では、安全を放棄する愚策かもしれないけれど……)

歩夢「安全と信用って、両立出来ないのかな……」

330: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:49:38 ID:5cc4H.Jw
~モノっちー劇場~

ある青年が、本屋で万引きをしたんだ。

でも、万引きを終えた後で、防犯カメラに映っているかも知れない……そう思ったんだよ。

実はそのお店には防犯カメラなんて設置されていなかったんだけどネ。

けれども、怖くなった青年は、店に放火をしたんだ。

結果、近隣住民から通報されて放火の罪で逮捕されるワケなんだけど、青年は心の底から思ったんだ。

良かった、万引きはバレていないからセーフだ、って。

めでたしめでたし。

331: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:50:13 ID:5cc4H.Jw
────学園生活9日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

歩夢(いつの間にか、もうすぐここに来てから10日経つ)

歩夢(よく考えてみたら、警察はどうしているのだろう?)

歩夢(私たちが10日近く行方不明になっていることが知られれば、警察が動き始めてもおかしくはない筈だ)

歩夢(助けが来ると信じて、私は食堂に向かった)

332: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:50:47 ID:5cc4H.Jw
────食堂

千歌「ごちそうさま! 今日も美味しかったよ彼方ちゃん!」

彼方「ふふん。そう言ってくれると、起きて頑張った甲斐がある」フンス

梨子「でも、本当にいいの? 食事係、全部代わってくれるなんて……」

彼方「彼方ちゃんの半分はお料理、もう半分は遥ちゃん、そして残りは睡眠で出来ているのです!」

璃奈「ハルカちゃん(・v・)?」

歩夢(そういえば、動機ビデオの時にも『ハルカちゃん』という名前が出ていたっけ)

彼方「近江遥、私の大切な妹だよ~」

ダイヤ「あなたにも、妹がいたのですね」

彼方「そうだよ~。寝ぼすけな私のお世話をしてくれたり、私の作ったご飯を美味しく食べてくれたり、可愛いんだよね~」

彼方「この料理も、遥ちゃんに喜んでもらうために腕を磨いたんだよ~」

歩夢「妹想いなんですね」

彼方「それほどでも~」

333: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:51:33 ID:5cc4H.Jw
せつ菜「……今度、卵焼きの作り方を教えて貰ってもいいでしょうか」

果林「私もお願いしていいかしら」

彼方「んー……じゃあ、明日の朝食はみんなで作ろっか」

千歌「いいね! これこそ団結って感じだよ!」

鞠莉「かすみ? ヘンな調味料入れたりしたらダメよ?」

かすみ「……先に言わないでもらえますか」

愛「じゃあさ、団結ついでなんだけど……今日のお昼、みんなで泳がない?」

花丸「お風呂で泳ぐのはマナー違反ずら」

愛「お風呂じゃないよプールだよ! 競泳会を今日、ええかいってね!」

一同「「……」」

愛「……あれ?」

334: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:52:10 ID:5cc4H.Jw
────プール

千歌「泳ぐぞーっ!」ドボーン

愛「うおおおおおおおおおっ!」ドボーン

果南「こら千歌と愛! ちゃんと準備運動しなきゃダメでしょ!」

果林「元気すぎるのも考え物ね」

歩夢(愛ちゃんの駄洒落に空気が凍ったりしたけれど、なんやかんやでみんなプールに来ていた)

歩夢(……やっぱり、欠席者はいるけれど)

せつ菜「しずくさんと彼方さん、今回も来ませんでしたね」

歩夢「うん。今回は鞠莉さんはいるし……」

璃奈「……何(・v・)?」

歩夢「璃奈ちゃんもいるけど」

335: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:52:50 ID:5cc4H.Jw
せつ菜「でも、なんで男子更衣室を使ったんですか?」

璃奈「顔見られるの恥ずかしいし……でも、私だってみんなと仲良くしたいから(>_<。)」

璃奈「それに、男子更衣室を使っても問題ないんでs──」

愛「遅いぞりなりー、泳ぐよ!」グイッ

璃奈「え、あ、うわあああっ(?□!)」

タースーケーテー

せつ菜「……璃奈ちゃんボード、大丈夫なのでしょうか」

歩夢「防水加工らしいし……大丈夫なんじゃないかな?」

336: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:53:23 ID:5cc4H.Jw
~2時間後~

曜「負けたーっ!」

愛「愛さんの勝ち~!」

曜「うーん……水泳は得意だった筈なんだけどなあ。しばらく泳いでなかったから体が鈍ったのかも」

鞠莉「鈍ったってレベルじゃないと思うけど?」

璃奈「明らかに水泳が苦手な人の動き……だった(・v・)」

かすみ「そういえば璃奈さんって、水泳が得意な人に変装すれば泳ぎが早くなったりするんですか~?」

璃奈「……しないよ。私が真似られるのは声と顔だけだって(`∧´)」

ダイヤ「皆さん、そろそろ上がりましょうか」

エマ「彼方ちゃんが夕食を作って待っているみたいだよ」

花丸「今日も楽しみずら」

337: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:54:30 ID:5cc4H.Jw
────夜、図書室

歩夢「彼方さんも、行きたかったって言うくらいなら来ればよかったのに」

花丸「でも、男子更衣室に入ろうとした彼方ちゃんを璃奈ちゃんが見てたずらよ?」

果林「もしかしたら……ね。それより、鞠莉ちゃんとエマちゃんはまだなのかしら」

花丸「エマさんはともかくマルたちを集めた本人が遅刻とは……」

鞠莉「最初からいるわよ?」

歩夢「うわっ!? か、隠れてたんですか!?」

鞠莉「ちょっとしたsurpriseよ♪ それにしても、この部屋暑くないかしら」

花丸「オラはこのくらいでもいいけど……確かにちょっと暑いずら」

鞠莉「んー……まあいっか」

ガラッ

エマ「ごめんなさい、遅れました!」

果林「全員ね。それじゃ、始めましょうか……と言いたいところだけど」

338: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:55:09 ID:5cc4H.Jw
鞠莉「何かしら?」

果林「あの件でしょう? なんであの場所で話をしなかったのかしら」

鞠莉「だって、モノっちーは最初から気づいていたもの」

エマ「えっ……?」

鞠莉「昨日作業している時にね、彼がやって来たのよ」

鞠莉「そのPCは、最初からオマエらに渡すつもりのヒントだったって。嘘は書いてないから安心しろ……ってことらしいわ」

歩夢「じゃあ、この中には……」

鞠莉「ええ、そうね」ピッ

歩夢(鞠莉さんは、PCの電源を入れる)

花丸「おお……これがぱそこん……」

歩夢(デスクトップにはアイコンが1つしかなく、中にあったのは3つのファイルだった)

339: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:55:45 ID:5cc4H.Jw
鞠莉「これだけやって片方が多少見れるようになったくらい。いくら何でもパスワードロック掛けすぎで骨が折れるわ」プンスカ

歩夢「虹ヶ咲学園・極秘プロジェクト……?」

『虹ヶ咲学園は、更なる才能の獲得・育成に努めるべく、新たなプロジェクトに着手した』

歩夢(この一文から始まるレポートは、過去、虹ヶ咲学園が超高校級の才能を研究し続けて来たもののようだ)

歩夢(超高校級の医者や超高校級の弓道部など、本人の知識と技術を極めるもの)

歩夢(或いは、超高校級の占い師や、エマちゃんと同じく超高校級の幸運のように半ばオカルトじみたもの)

『そして、そ●らの才能を△繧ソべく、今回の喧望鐔�計画は� 鐚醐執鐚�……』

歩夢(そこで、読める文章はストップしていた)

340: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:56:22 ID:5cc4H.Jw
鞠莉「もう少し頑張れば、修復出来そうな気がするんだけど……」

果林「ヒント、という割には随分と意地悪なことをするのね」

エマ「それより、残りの2つのファイルが気になるんだけど」

花丸「【持ち出し厳禁】と……」

歩夢「【虹ヶ咲学園生徒プロフィール】!? それって……」

歩夢(もしかしたら、忘れてしまった私と千歌ちゃんの才能もそこに……?)

歩夢「鞠莉さん。プロフィールのファイルって、開くのにどのくらい掛かりそうですか?」

鞠莉「分からないわ。少し触った感触だと、【虹ヶ咲学園・新プロジェクト】よりは時間が掛かりそうだけど」

鞠莉「でも、歩夢と千歌っちにとっては死活問題よね。分かった、頑張ってみるわ」

341: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:57:00 ID:5cc4H.Jw
果林「それにしても鞠莉ちゃん、あなたプログラムも出来たのね」

エマ「私には何が起きているのかさっぱりです……」

花丸「オラも……」

鞠莉「まあ、将来は小原グループを担うことになるワケだからね。このくらいは出来なきゃ、小原家の恥よ」

果林「流石、超高校級の令嬢は言うことがちが──」

ガラッ

しずく「あっ……」

歩夢「しずくちゃん?」

歩夢(不意に開かれた、図書室の扉)

歩夢(そこに現れたしずくちゃんは、何かのファイルを持っていた)

342: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:57:35 ID:5cc4H.Jw
しずく「あ、えっと……」

しずく「し、失礼しました!」ダッ

エマ「待って、しずくちゃん!」ダッ

果林「ちょっと、走ると危ないわよ!」

歩夢(何が起きたのか分からないけれど、ひとまずしずくちゃんとエマちゃんを追おうとして──)


バツン!


歩夢「えっ……!?」

歩夢(もっと、意味の分からないことが起きた)

343: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:58:11 ID:5cc4H.Jw
鞠莉「停電!?」

果林「慌てないで、みんな今いる場所から動かない方が……」

花丸「うわあああっ!?」ドテーン

歩夢「花丸ちゃん、大丈夫!?」

花丸「大丈ぶっ!?」ゴチーン

鞠莉「大丈夫じゃなさそうね……」

歩夢(突然の出来事に慌てる私たち)

パッ

歩夢(けれども、ものの1分足らずで停電は収まった)

344: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:58:57 ID:5cc4H.Jw
歩夢「ふーっ……」

花丸「痛いずら……」

果林「転んでテーブルに頭を打ったのね……よしよし」

タッタッタッ

エマ「みんな、大丈夫!?」

鞠莉「マルが頭を打ったけど、それだけよ。それより、そっちは?」

エマ「……」フルフル

モノっちー「まったく、停電とはねえ」

歩夢「……何。こんな時にまで構ってられないんだけど」

モノっちー「別に~? それよりオマエら、もう10時だよ、夜時間だよ! とっとと寝ろ!」

果林「……そうしましょうか」

345: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 01:59:30 ID:5cc4H.Jw
────歩夢の部屋

歩夢「酷い目に遭った……」

歩夢(まさか学校で停電なんて。滅多に経験できるものじゃないけれど、二度と経験したくない)

歩夢(それにしても、虹ヶ咲学園生徒プロフィール、か……)

歩夢(私は一体、どんな人だったんだろう……)

346: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 02:00:05 ID:5cc4H.Jw
────学園生活10日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

モノっちー『そうそう。何とは言わないけれど、ボクは悲しいです。何とは言わないけどネ!』

プツン

歩夢「……?」

347: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 02:00:44 ID:5cc4H.Jw
────食堂

歩夢「おはよー……あれ、朝食は?」

かすみ「確か、彼方先輩と一緒に作るって話でしたけど」

歩夢「あ、そうだった……」

歩夢(けれども、その彼方ちゃんがいないから朝食会が始まらない……ってことみたいだ)

梨子「あの……今、彼方ちゃんの部屋に行ってきたんだけど……」

千歌「いないんだよ、彼方ちゃんが!」

歩夢「……!?」

歩夢(私の中で、最悪の答えが導かれていく)

歩夢(今この場に1人だけいない彼方ちゃん。さっきのモノっちーのアナウンス……)

ダッ!

歩夢(同じ最悪の答えを出したみんなが、一斉に食堂を後にする)

348: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 02:01:24 ID:5cc4H.Jw
歩夢「どこ……?」

歩夢(個室にはいない。トイレにも、いつの間にか開いていたトラッシュルームにも、大浴場にも……ということは、校舎!)

歩夢(1階の教室、購買、保健室……)

「きゃああああああああああああああっ!?」



ピンポンパンポーン

349: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 02:02:08 ID:5cc4H.Jw


モノっちー『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開きます』

モノっちー『オマエら、死体発見現場の2-B教室にお集まりください!』

プツン

350: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 02:02:45 ID:5cc4H.Jw
────校舎2階、2-B

悲鳴をあげるせつ菜ちゃん、茫然と立ち尽くす千歌ちゃん。

次々と集まって来るみんなの視線は、一点に注がれている。

351: ◆8TImjtGSKs 2018/02/12(月) 02:03:39 ID:5cc4H.Jw


窓際の席で眠る彼女は、首にロープを巻かれ、何故かスクール水着姿で。

それは、二度と目を覚ますことのない《超高校級の眠り姫》近江彼方の死体だった。

355: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:41:05 ID:FS2FtxC.

      Chapter2

Spiteful Trapper  非日常編

356: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:42:02 ID:FS2FtxC.
歩夢「なに、これ……」

歩夢(もし、これが夢だとしたら……睡眠第一の彼方ちゃんに笑われそうな悪夢だ)

歩夢(もし、現実なのだとしたら……)

歩夢(どうして……彼方ちゃんは息をしてないの?)

モノっちー「うけけけけけ……酷い顔だよネ、全く」

歩夢「!」

モノっちー「他人のエゴで己の人生を突然終わらされたことを心底憎んでいるような……そんな顔だよネ!」

花丸「さっきの放送……学級裁判がまた行われる、ってことは」

モノっちー「ええ勿論! 前回同様、近江彼方さんはオマエらの中の誰かに殺されました!」

357: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:42:39 ID:FS2FtxC.
しずく「そんな……っ!」

歩夢(彼方ちゃんは、ただ眠っているだけのように見えた)

歩夢(少しすれば、うーんと伸びをして起き上がりそうに……そう、見えた)

歩夢(けれども。首に掛かっていたロープと、何かに襲われたように見開かれた両目)

歩夢(そして『殺された』とモノっちーに告げられて……嫌でも、彼女が死んでしまったことを受け入れてしまった)

ダイヤ「また……あれをやらなくてはいけないのですか」

モノっちー「そゆこと~! というわけでちゃっちゃと始めちゃいましょう、ザ・モノっちーファイル2~!」

モノっちー「これを配るから、捜査頑張ってネ! 後ほど学級裁判でお会いしましょう!」

エマ「イヤです……あんな酷いこと……」

花丸「でも、やらなきゃみんな死んじゃうずら……」

鞠莉「それに……なんで彼方が殺されたのか……それをハッキリしないワケにもいかないでしょう」

せつ菜「それは、そうですけど……」

歩夢「とにかく、みんなで生き残るためにも……始めなきゃ!」

358: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:43:44 ID:FS2FtxC.
捜査開始!

歩夢(……まずは、モノっちーファイルを確認しておこう)

『被害者は超高校級の眠り姫、近江彼方。死体発見現場は校舎2階、2-B教室』

『死亡推定時刻は昨夜22:00前後、発見時刻は翌7:30頃』

『被害者は首をロープで絞められており、体内からは毒物が検出されている』

歩夢(ロープはともかく、毒……?)

せつ菜「酷い……これじゃあまるで、2回殺したも同然じゃないですか」

かすみ「てっきりクロは『殺し合いを終わらせたい』から彼方先輩を殺したのかと思いましたけど~……」

果南「この分だと、そうじゃないのかもね……」

歩夢「……」

《モノっちーファイル2》のコトダマを入手しました。

359: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:44:20 ID:FS2FtxC.
花丸「……ずら?」

歩夢「どうしたの、花丸ちゃん」

花丸「前回、検死をしてくれた彼方ちゃんが死んじゃったから、マルがやろうとしたんだ。現物を見た経験はないけど、一応推理作家だから……」

花丸「そうしたら、机の中にこんなものが……」

歩夢「未解決事件・ケース“タカマガハラ”……?」

かすみ「あーっ! それ、一時期ニュースを騒がせていた通り魔じゃないですか!」

歩夢「かすみちゃん、知ってるの?」

かすみ「知ってるも何も……そのファイルを見た方が早いと思いますよ? あ、かすみんは捜査に戻るので、失礼しま~す♪」タッタッタッ

せつ菜「まさか……彼方さんは、その通り魔に殺されたんじゃ……」

歩夢「それはまだ……分からないけど……」ペラリ

360: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:44:56 ID:FS2FtxC.
歩夢「……」

歩夢(私の手が止まったのは、殺害現場の写真ばかりが集められたページ)

歩夢(タカマガハラという名の通り魔に殺された被害者たちの名前も一緒に載っていた)

歩夢(佐藤美香(23)、松本純子(17)、西本唯(30)、桜坂小百合(28)……)

せつ菜「桜坂……って!」

歩夢「うん。しずくちゃんと同じ苗字……だね」

歩夢(被害者はいずれも、2種類以上の外傷を受けている。撲殺されてから首を絞められたり、絞殺されてからナイフを刺されたり、ロープを巻かれてから池に沈められたり)

歩夢(共通しているのは、どの事件にもロープによる絞殺が出てくること。そして、現場には『タカマガハラ』と何かしらの方法で文字が残されていること)

歩夢(それによって、その通り魔が『タカマガハラ』という名前で呼ばれていること……)

せつ菜「……なんだか気分が悪くなってきました。ごめんなさい、お手洗いに行ってきます」

歩夢「うん、いってらっしゃい」

歩夢「……」ペラリ

361: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:45:47 ID:FS2FtxC.
歩夢(次のページに載っていた内容は、タカマガハラに関する週刊誌のコピーだった)

『一連の犯行は、いずれも平日夜、または休日に行われている』

『平日昼間には決して事件が起きないことから、犯人は学生なのでは? との推測がなされている』

『タカマガハラに刃物で襲われた人物曰く、抵抗した際相手の顔に大きな傷を負わせたという』

『暗がりでよく分からなかったが、タカマガハラの目は真っ赤に染まっていた』

歩夢(……よくある『ゴシップ記事』と言われるものだ。イマイチ信憑性に欠ける)

歩夢(仮にこれが真実だとしても……だから、何なんだろう)

歩夢(まさか、その通り魔が私たちの中にいる?)

歩夢(ありえないよ。確かに今回の事件、タカマガハラの手口に似ている気はするけれど、みんな顔に傷なんて──)

璃奈「……私の顔になにかついてる(・v・)?」

歩夢「い、いやそんなつもりは……」

歩夢(……ない、よね?)

362: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:46:48 ID:FS2FtxC.
歩夢(最後のページには、小さな新聞記事の切り抜きが載っていた)

【劇団さかみち団員、襲われる 通り魔の犯行か】

『8月21日午後20時頃、全国を駆け回る人気劇団・さかみちの団員たちが、静岡公演のために宿泊していたホテル近辺の路地で何者かに襲われた』

『劇団の若手スターとして活躍している桜坂しずくさん(16)などが重症を負ったが、全員命に別状はない』

『また、犯人と思しき人物は同日16時頃にも近辺に出没しており、その際近江遥さん(16)ほかが頭を打つなどの軽症を負った』

『いずれも現場にはロープが落ちていたことから、警察は通り魔・タカマガハラが事件に関与している可能性を視野に入れて捜査を進めている』

歩夢「……」

歩夢(この新聞に載ってる名前って……)


彼方『近江遥、私の大切な妹だよ~』


歩夢(それに、しずくちゃんの名前も……?)

歩夢「このファイルは……このくらいかな」

《タカマガハラ事件ファイル》《新聞記事》のコトダマを入手しました。

363: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:48:07 ID:FS2FtxC.
花丸「何か分かったずら?」

歩夢「……うん、後で読んでおくといいかも。花丸ちゃんの方はどう?」

花丸「専門的なことはまだ分からないけど……明らかに気になることはあったよ」

花丸「彼方ちゃん、火傷の跡がいっぱいあったんだ。背中と、右足首と、両足の裏……」

歩夢「火傷……?」

花丸「いつ付いたものなのかは分からないけど、もしかしたら、彼方ちゃんがお風呂やプールに来なかった理由ってこれなのかも……」

歩夢「確かに……そういうの、あんまり見られたくないってのは分かるかも……」

花丸「グロテスクだからあんまり見ない方がいいずら」

歩夢「うん、そうするね」

《火傷の跡》のコトダマを入手しました。

364: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:48:45 ID:FS2FtxC.
千歌「ねえ歩夢ちゃん。これって何だろ?」

歩夢「台車……みたいだね」

千歌「そうなんだけど……この前教室を調べた時はこんなのなかったんだよね」

歩夢「台車があるってことは……何かをここまで運んだのかな?」

千歌「どうなんだろ。運ぶ物があるとしたら……彼方ちゃんくらいだよね」

歩夢「うん……」

歩夢(彼方ちゃんの死体は……何処かからここまで運ばれた?)

歩夢(水着だったし……後でプールとか調べた方がいいかも)

《台車》のコトダマを入手しました。

365: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:49:33 ID:FS2FtxC.
せつ菜「戻りました、歩むっ!?」コケッ

歩夢「大丈夫、せつ菜ちゃん!?」

せつ菜「何かに躓いたみたいですが……アイロン?」

歩夢「なんで教室に……しかも、電源入ってる!?」

せつ菜「や、火傷しなくて助かりました……」

エマ「ここにもあったんだ、アイロン」

歩夢「エマちゃん、何か知ってるの?」

エマ「いや……教室の前にもあったし、電源がついてたから、誰かが触れちゃったら危ないなって」

歩夢「エマちゃん、他のアイロンはどこにあったの?」

エマ「えっと……そこと、あそこです」

ttps://i.imgur.com/9t8ypiL.jpg

せつ菜「全く……誰かのイタズラだとしても、度が過ぎますよ」

エマ「でも、怪我がなくて良かったよ」

《アイロン》のコトダマを入手しました。

366: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:50:19 ID:FS2FtxC.
せつ菜「気を取り直して……次はどこに行きましょうか?」

歩夢「えっと……とりあえず、調べたいところがあるんだけど」


────プール

果南「プールの中は何もないよー」ザパァッ

せつ菜「なんで泳いでるんですか……」

曜「そういえば、更衣室には彼方ちゃんの着替えなかったね」

果南「部屋に置いてるんじゃないかな?」

歩夢「まさか……水着のまま校舎に来るってことはないと思うけど」

せつ菜「あ、昨日彼方さんを見かけた時はいつもの私服でしたよ?」

歩夢「せつ菜ちゃん、彼方ちゃんを見たの?」

せつ菜「ええ。昨日の夜、食堂で千歌さんたちとゲームをしてたんですけど……」

367: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:51:30 ID:FS2FtxC.
~昨晩、20時半頃~

せつ菜『ぐぬぬぬぬ……この前は勝てたんですけど』

千歌『へっへーん。私だってまだまだ負けないよ!』

せつ菜『……あ、エマさん!』

エマ『?』

千歌『あ、ずるい! またおまじないしようとしてる!』

璃奈『……おまじない(・v・)?』

かすみ『エマ先輩、誰かを幸運にするおまじないが出来るらしいんですよ~』

愛『へぇー。そのおまじないがあれば、全然窓のないこの学校でも外が見れるのかな』

千歌『なんでそうなるの?』

愛『雲海を見れる私は、幸運かい? ってことだよ!』アッハッハ

『『……』』

368: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:52:01 ID:FS2FtxC.
エマ『大丈夫だよ。全員の運を同じくらいにすることも出来るから』

かすみ『つまり、戦略とイカサマをすればかすみんでも1位に……』

愛『エマっち、かっすんだけそのおまじない掛けなくていいよ』

璃奈『むしろ、物凄く不運にするのも……(・v・)』

エマ『まあまあ。同じくらいと言ってもムラがあるから……』

エマ『ヴェルデパワー、注入! は~い、ぷしゅっ!』

せつ菜『ちゃんと掛け声があるんですね』

エマ『うん。以前、誰かに教わった筈なんだけど……よく覚えてなくて』

愛『おおー、なんかスピリチュアルなパワーが貰えた気がする!』

千歌『じゃあ、改めて人生ゲームで勝負! 誰が本当の幸運かを今度こそ決めるよ!』

璃奈『エマちゃんも一緒にどう(・v・)?』

エマ『あ、ごめん。私、ちょっと用事があるから……また今度ね!』タッタッタッ

369: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:52:41 ID:FS2FtxC.
~数分後~

彼方『おおー、やってるねぇ』

千歌『やってるよー。彼方ちゃんもやる?』

彼方『んー……やりたいのは山々だけど、彼方ちゃんは泳ぎたい気分なのだ』

せつ菜『い、今からですか!?』

彼方『ぷか~って浮かんでるの、気持ちいいんだよね~。あ、大丈夫だよ? ちゃんと夜時間までには上がるからさ』

モノっちー『ちゃんとプールの中にも時計があるからネ! しっかり見ないと校則違反でオシオキだよ!』

璃奈『……出た(`∧´)』

モノっちー『ま、プールサイドは10時を過ぎてもセーフだけどネ。寝るのはダメだけど』タッタッタッ

愛『ほんっと、モノっちーって神出鬼没だよね』

彼方『とりあえずー、ここの厨房ってスポーツドリンク置いてたっけ?』

かすみ『でしたら、かすみんが取って来てあげますよ~』タッタッタッ

せつ菜『……』ハッ

せつ菜『まさか、かすみさん何かヘンな物を入れる気じゃ……私も取って来ます!』

370: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:53:39 ID:FS2FtxC.
せつ菜「とまあ、こんな感じで……彼方さんに飲み物を渡して、私たちは夜時間になるまでゲームに白熱してました」

歩夢「じゃあやっぱり、彼方ちゃんはプールに来てたんだね」

《せつ菜の証言》のコトダマを入手しました。

果南「じゃあ、結局着替えはどこにあったの?」

果林「男子更衣室よ。今見て来たわ」

曜「えっ」


────男子更衣室

歩夢「ホントだ……ロッカーに服が入ってる」

果林「足元、気を付けた方がいいわよ。飲み物がこぼれて水たまりになっちゃってるから」

せつ菜「ホントですね……」

ttps://i.imgur.com/lZVBLbo.jpg

曜「ってことは、彼方ちゃんはここに間違いなく来てたんだね。でも、なんで男子更衣室に……?」

果南「男女分けられてるけど、別にどっちを使ってもいいってモノっちーは言ってたよ」

371: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:54:10 ID:FS2FtxC.
果林「水たまり以外、気になるところはあまりないかしらね。物置の水着は全部女モノだったけど……」

果林「あ、強いて言えば。ランニングマシーンが1個動きっぱなしだったのよね。もう切っちゃったけど」

歩夢「ランニングマシーンが?」

果林「ええ。そっちの……ベンチに近い方のだけど。スイッチを押すとそれっきり動き続けるタイプだったみたいね」

せつ菜「ということは、彼方さんは運動もしていたのでしょうか……?」

歩夢「あんまり……想像つかないね」

《更衣室の水たまり》《ランニングマシーン》のコトダマを入手しました。

歩夢「他は……どこ調べればいいかな?」

せつ菜「今朝、トラッシュルームのシャッターが開いていましたから……そこに行ってみるとか?」

372: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:54:44 ID:FS2FtxC.
────トラッシュルーム

ダイヤ「……」

歩夢「ダイヤさんも来ていたんですね」

ダイヤ「ええ。何かないかと思いましたが……これは手掛かりなのでしょうか?」スッ

果南「ダイヤ、これ何?」

歩夢「何かの……ケーブル?」

せつ菜「ほとんど焼けちゃって、ところどころ中が見えちゃってますね……」

ダイヤ「焼却炉の前に落ちていたものですから、犯人が何かを処分し損ねたものかも知れませんね」

《焼け落ちたケーブル》のコトダマを入手しました。

373: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:55:47 ID:FS2FtxC.
ダイヤ「それと……歩夢さん。少しこっちに来て頂けますか」ヒソヒソ

歩夢「え、何ですか?」ヒソヒソ

ダイヤ「昨日の夜、ここ数日の間に溜まってしまった洗濯物をランドリーで洗っていたのですが……」ヒソヒソ

ダイヤ「その時、果南さんの姿を見たのです」

ダイヤ「夜時間のアナウンスが流れ、1、2分程でした。何かに怯えたような顔で……校舎の方から走って来ました」ヒソヒソ

果南「……?」

ダイヤ「一応、本人がすぐ近くにいるのでこうして話すことになったのですが……手掛かりになるでしょうか?」ヒソヒソ

歩夢「ど、どうでしょう……」

《ダイヤの証言》のコトダマを入手しました。

歩夢「ここにはもう何もなさそうだけど……あと調べなきゃいけないところって……?」

ダイヤ「でしたら、理科室に行ってみるのは如何でしょう。今回の事件には毒薬が使われているようですから……」

374: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:56:29 ID:FS2FtxC.
────理科室

愛「ここはなーんもナシ。毒の瓶とかそういうの、一個も見つからなかったよ!」

璃奈「……準備室にも、なかった(・v・)」

歩夢「でも、モノっちーファイルには毒物が出てきてるんだよね……」

せつ菜「保健室にもそのような物はなかったみたいですし……犯人はどこで毒を入手したのでしょう?」

愛「一応、薬品の棚を見たな、しとく?」

璃奈「まさか、食材を組み合わせて化学反応で毒を作ったとか……(・v・)」

せつ菜「とりあえず、棚を見ておきましょうか」

愛「おーい! 愛さんのギャグを無視しないでくれよーぅ」

歩夢(……結局、薬品棚は以前私たちが調べた時から、何も変化がなかった)

《理科準備室の薬品棚》のコトダマを入手しました。

375: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:57:48 ID:FS2FtxC.
────校舎2階廊下

鞠莉「……なるほど、そういうことね」

モノっちー「全く、ボクはボクで色々忙しいんだから無暗に呼び出さないでよ」トテトテトテ

歩夢「鞠莉さん、モノっちーと何を話してたんですか?」

鞠莉「ああ、歩夢にせつ菜。校則違反者が出た時のお話についてよ」

せつ菜「なんで校則違反が?」

鞠莉「既に聞いてるかも知れないけど、校則違反があった時は、学園中にサイレンが鳴り響くらしいのよ」

鞠莉「その上で、モノっちーによる処刑が行われるみたいね。一応、校則を読み返しているんだけど……」

《校則》《校則違反者への処遇》のコトダマを入手しました。

せつ菜「でも、昨日はそんなサイレン聞こえませんでしたね」

鞠莉「んー……それについてなのよね、問題は。ちょっと来てもらえるかし──」

376: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:58:20 ID:FS2FtxC.
ピンポンパンポーン

モノっちー『あー、色々面倒なこともあって疲れちゃった』

モノっちー『というわけで、捜査終了でーす。オマエら、校舎1階にある赤い門の前にお集まりくださーい』

モノっちー『締め切りだよー。学級裁判だよー』

プツン

377: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:59:01 ID:FS2FtxC.
鞠莉「終わっちゃったわね。別に行けない距離じゃないけど、モノっちーに何言われるか分からないし……要点だけ話しておくわ」

歩夢「それで、問題ってなんですか?」

鞠莉「校舎の1階にね、隠し部屋みたいなのがあったのよ」

せつ菜「か、隠し部屋!?」

鞠莉「場所はMAPを見れば検討がつくと思うわ。その部屋がとんでもない場所に繋がっていたし、部屋にはとんでもない物があったんだけど……」

鞠莉「なんだか、しっくり来ないのよね。昨日の停電と関係あるかなって思ってたんだけど……」

せつ菜「停電? そんなものがあったんですか?」

歩夢「うん、10時頃にあったよ。その後、モノっちーに『もう寝ろ!』って怒られたけど」

せつ菜「私は食堂にいましたけど……全然知りませんでした」

鞠莉「……とにかく、急ぎましょうか」

《校舎1階の隠し部屋》《停電騒動》のコトダマを入手しました。

378: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 20:59:54 ID:FS2FtxC.
────赤い門の前

梨子「えーっと……これで15人」

歩夢「まだ来てないのは……千歌ちゃんだけ?」

梨子「みたいね。あ、そうそう、2人にも渡しておかないと。一応、昨日10時頃のみんなのアリバイをまとめておいたの」スッ

ttps://i.imgur.com/vRofAt7.jpg

梨子「一緒にいた人たちはひと纏めだけど、なるべく全員に聞いて回っていたから……間違いない?」

せつ菜「間違いありません」

歩夢「……」

梨子「歩夢ちゃん?」

歩夢「う、うん。大丈夫」

歩夢「……」

《昨晩のアリバイ》のコトダマを入手しました。

379: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:00:29 ID:FS2FtxC.
タッタッタッ

千歌「ごめんごめん、遅くなった!」

ダイヤ「全く、遅刻ですわよ!」

千歌「だって、教室でずっと考え事してたらいきなりエアコンが点いたんだもん! ビックリしちゃってさ」

歩夢「エアコンが?」

千歌「それで、壁についてる操作パネルみたいな物を調べたら……8時半に電源が入るようになってたんだ」

かすみ「今って何時でしたっけ、しずくさん♪」

しずく「な、なんで私に……えっと、8時、35分ですけど……」

果南「それから5分も何してたの?」

千歌「隣の教室のエアコンも気になっちゃって。そしたら、こっちも8時半に電源が入ってたよ」

鞠莉「タイマーは8時半……? じゃあ推測は外れてる……」ブツブツ

《教室のエアコン》のコトダマを入手しました。

380: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:01:15 ID:FS2FtxC.
モノっちー『全く、校長のアナウンスが入ったら集まるのは常識でしょ!』

モノっちー『次からは罰則与えるかもよ? というわけでオマエら、正面のエレベーターに乗ってちょうだいな!』

プツン

千歌「じゃ、行こっか!」

果林「遅刻した人が言うセリフじゃないわね、全く……」

曜「でも今回、犯人を見つけてもいいのかなあ……」

璃奈「犯人の願いがコロシアイを終わらせることだったら、それを止めることになっちゃうかも……(>_<。)」

愛「大丈夫大丈夫♪ 投票するしないの自由くらいはあるっしょ」

しずく「……」

エマ「とにかく、行くしかない、よね……」

かすみ「~♪」

381: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:01:50 ID:FS2FtxC.
歩夢(そして、私たち全員を乗せたエレベーターは地下へと降りて行く)

歩夢(みんな、無言。息苦しくて、呼吸が本当に止まりそうで……)

歩夢(……やがて、エレベーターは停まるべき場所に停止した)

382: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:02:57 ID:FS2FtxC.
────地下???階、裁判場

モノっちー「いらっしゃーい! どう? 裁判場を模様替えしてみたんだ!」

せつ菜「星空模様の壁紙……ですか」

モノっちー「近江さんはどこか不思議な雰囲気があったからね~」ゲラゲラゲラ

ダイヤ「そんなところにこだわらなくたっていいです。サ……善子さんや彼方さんの遺影といい、相変わらず酷い趣味をしていますわね」

モノっちー「ツレないなあ。誉め言葉以外の感想は認めないんだけど?」

モノっちー「まあいいでしょう。オマエら、自分の席に移動しちゃってください!」

383: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:03:31 ID:FS2FtxC.
歩夢(始まる。2回目の学級裁判が、始まる……)

歩夢(《超高校級の眠り姫》近江彼方ちゃん……)

歩夢(普段から寝ていて、協調性も欠けているように見えたけど……。それでも彼女は、起きている時はなるべく一緒にいようとした)

歩夢(妹想いで、料理も出来て……最初の学級裁判では、ルビィちゃんの検死にも一役買ってくれた)

歩夢(そんな彼方ちゃんを殺した人が……私たちの中にいる?)

歩夢(モノっちーは『コロシアイを終わらせるためには誰かを殺さないといけない』なんて言っていた)

歩夢(仮にその言葉に乗せられたのだとしても……やっぱり、殺人なんて間違ってる!)

歩夢(私たちが生き残るために……真相を見つけるしかないんだ)

歩夢(嘘と真実が交錯する、この“学級裁判”で──!)

384: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:04:42 ID:FS2FtxC.
~学級裁判準備~
超高校級の眠り姫、近江彼方が殺された。
背後にチラつくモノっちーの動機と、通り魔『タカマガハラ』の影。
果たして、この謎を解き明かした先に見えてくる真実とは──?

コトダマリスト
《モノっちーファイル2》被害者は近江彼方。死亡推定時刻は昨夜22時前後、発見は翌朝7時半頃。
首をロープで絞められており、体内からは毒物が検出されている。

《タカマガハラ事件ファイル》
通り魔“タカマガハラ”に関する資料。被害者はいずれも2度に渡って殺されており、そのうちの片方は必ず絞殺。
現場には何かしらの形でタカマガハラの文字が残されているという。

《新聞記事》
劇団さかみちが通り魔によって襲撃された事件。
この事件で、桜坂しずくが重症を、近江遥が軽症を負っている。

《火傷の跡》
彼方の身体には、背中、右足首、両足の裏に火傷の跡があった。いつついたものかは不明。

《台車》
2-B教室の隅に置かれていたもの。以前はこの部屋になかったらしい。

《アイロン》
2-B教室の3か所に電源が入った状態で放置されていた。
ttps://i.imgur.com/9t8ypiL.jpgを参照。

385: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:05:24 ID:FS2FtxC.
《せつ菜の証言》
昨日、彼方はプールに行く前に食堂を訪れていた。
その際、スポーツドリンクを受け取っている。

《更衣室の水たまり》
ttps://i.imgur.com/lZVBLbo.jpgを参照。
すぐ横に口の開いたペットボトルが落ちている。

《ランニングマシーン》
上記画像、上側のランニングマシーンの電源が入りっぱなしだった。

《焼け落ちたケーブル》
トラッシュルームに落ちていたもの。何のケーブルかは不明。

《ダイヤの証言》
夜時間のアナウンスが流れた1、2分後、ダイヤは校舎の方から走って戻って来た果南を目撃している。

《理科準備室の薬品棚》
毒薬は見つかっておらず、そもそも最初に歩夢たちが見た時から変化はない。

《校則》
電子生徒手帳で確認出来るもの。まとめは後述。

《校則違反者への処遇》
校則違反を犯した者が出た際、学園中にサイレンが鳴り響く。
その後モノっちーによる処刑が行われる。

386: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:05:58 ID:FS2FtxC.
《校舎1階の隠し部屋》
鞠莉が見つけたもの。とんでもない場所に繋がっており、とんでもない物があったらしいが……?

《停電騒動》
昨晩、歩夢たちが経験したもの。
食堂にいたせつ菜は経験していなかった。

《昨晩のアリバイ》
https://i.imgur.com/vRofAt7.jpgを参照。
梨子がみんなに聞いて回ったもの。

《教室のエアコン》
2-A、2-B教室のエアコンは、8時半に電源が入るようにタイマーが設定されていた。

387: ◆8TImjtGSKs 2018/02/22(木) 21:06:55 ID:FS2FtxC.
~校則~
1.生徒たちはこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。

2.夜10時から朝7時までを”夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

3.就寝は学生寮に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。

4.虹ヶ咲学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

5.学園長ことモノっちーへの暴力を禁じます。また、監視カメラの破壊を禁じます。

6.仲間の誰かを殺したクロは”卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

7.生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に生徒全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。

8.学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、クロだけが処刑されます。

9.学級裁判で正しいクロを指摘出来なかった場合はクロだけが卒業となり、残りの生徒は全員処刑です。

10.夜時間のプールの遊泳は禁止とします。

※なお、校則は順次増えて行く場合があります。

390: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:04:00 ID:HsnCpEbo

 学 級 裁 判 
  開   廷!

391: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:05:18 ID:HsnCpEbo
モノっちー「まずは学級裁判の簡単な説明を行いましょう」

モノっちー「学級裁判では“誰がクロか”を議論し、最終的に投票で全てを決定します」

モノっちー「正しいクロをオマエらの過半数が指摘出来れば、クロだけがオシオキ」

モノっちー「不正解だった場合は、クロは卒業、残ったシロは全員オシオキです!」

モノっちー「ちなみに、ちゃんと誰かに投票してネ。投票を放棄した人もオシオキだからネ?」

モノっちー「それじゃあ朝から謎解きタイム、行ってみよーう!」

千歌「私は今回の犯人、誰なのか分かってるよ!」

曜「本当なの!?」

果林「じゃあ、まずはその話から聞かせてもらおうかしら」

千歌「へっへーん。名探偵チカッチの名推理なのだ!」

392: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:06:06 ID:HsnCpEbo
【ノンストップ議論 開始!】
[|タカマガハラ事件ファイル>
[|新聞記事>
[|停電騒動>

千歌「今回の犯人は、殺人鬼タカマガハラだよ!」

千歌「彼方ちゃんの首は【ロープで絞められていた】んだ!」

エマ「……本当に通り魔の仕業なの?」

千歌「勿論! 【タカマガハラの手口と同じ】だし、間違いないよ!」

鞠莉「じゃあ千歌っちには、そのタカマガハラが誰なのかも分かってるの?」

千歌「えっと、それは……」

花丸「資料によると【赤い目をしていた】らしいずら」

千歌「そうそう赤い目だよ赤い目……かすみちゃんだね!」

かすみ「なんでそうなるんですか!」

犯人は本当に通り魔……? 気になることは山積みだけど……順番に整理していこっか。

393: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:06:46 ID:HsnCpEbo
[|タカマガハラ事件ファイル>→【タカマガハラの手口と同じ】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「確かに、彼方ちゃんの殺され方はタカマガハラの手口と似てるかも知れない」

歩夢「でも、犯人は必ず“タカマガハラ”と現場に文字を残していたんだ」

千歌「あれ、そうなの?」

せつ菜「事件ファイルに書いてありました。その文字がキッカケで、タカマガハラって名前が定着したそうです」

ダイヤ「では、歩夢さんは通り魔が犯人ではないと思っているのですね?」

歩夢「うん。根拠は他にもあるけど──」

果南「その考えは浅いよ!」

反論!

果南「いいや、通り魔は学園の中にいたんだ。私たち以外に、誰かが潜んでいたんだよ」

歩夢「誰かって?」

果南「勿論、タカマガハラに決まってる!」

394: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:07:30 ID:HsnCpEbo
【反論ショーダウン 開始!】
[|モノっちーファイル2>
[|火傷の跡>
[|理科準備室の薬品棚>

果南「私たち以外に人がいる可能性。歩夢はそれを見逃してる」

果南「そもそも彼方は私たちの中の誰かじゃなくて、学園に潜んでたタカマガハラに襲われたんだよ」

果南「だから犯人はタカマガハラで決まり。これ以上議論することなんてどこにもないよ!」


─発展─
でも、文字は現場に残されてなかった
   通り魔の手口に似せた、別の誰かの犯行かも知れない!


果南「だったら、タカマガハラ事件ファイルそのものが現場に残された文字だよ」

果南「あれって【机の中に入ってた】んでしょ!?」

果南「首を絞められて、毒を口の中に入れられて」

果南「タカマガハラと同じ、【2度にわたって殺された】んだ!」

通り魔にこだわる人がいてもおかしくはない……けど、議論を進めるためにも、前提を変えなきゃ!

395: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:08:06 ID:HsnCpEbo
[|火傷の跡>→【2度にわたって殺された】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「2度じゃないよ。彼方ちゃんの外傷は、3つあったんだ!」

果南「3つ……?」

エマ「モノっちーファイルには、ロープと毒しか出てこなかったよ?」

歩夢「彼方ちゃんの身体には、何か所か火傷の跡があったんだ」

花丸「背中、右足首、両足裏……確かに、火傷だったずら」

愛「けどさー。かなちゃんってしずくと同じで、プールとか大浴場とかに参加しなかったっしょ? それって火傷を見られたくなかったからじゃないの?」

歩夢「……火傷がどこか1か所だけだったなら、そう考えるのが自然かもね」

梨子「もしその中に、今回の事件で負った火傷が混ざっていたとしたら……」

396: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:09:02 ID:HsnCpEbo
璃奈「ロープ、毒、火傷。1つ多くなるね(・v・)」

歩夢「タカマガハラの被害者の外傷はどれも2種類。けど彼方ちゃんの外傷は3つ……」

曜「じゃあ、犯人はタカマガハラの手口を真似た別人の可能性があるってこと!?」

歩夢「うん。だから“犯人がタカマガハラ”って考えは、一旦置いた方がいいと思うんだ」

果南「っ……」

果南「……分かったよ、そうする」

かすみ「それじゃあ……次は何から話しましょっか」

かすみ「ねぇ、天王寺璃奈さん?」

璃奈「……え(・v・)?」

愛「ちょっと、なんでりなりーがそこで出てくるの?」

かすみ「蒸し返すようで悪いですけど、さっきの千歌さんの話で思ったんですよね~」

かすみ「タカマガハラは赤い目だった……だとしたら、素顔を晒していない璃奈さんがそうである可能性はありませんか?」

397: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:09:41 ID:HsnCpEbo
璃奈「……ないよ。私の目は赤じゃないし(`∧´)」

かすみ「だったらそのボードを取ってくださいよ。それまでは信用出来ません」

璃奈「……それは、出来ない(>_<。)」

かすみ「無理じゃないです。かすみんだって、みんなを疑いたくないんですよ~」

かすみ「だからこうやって、1人1人可能性を潰しているんじゃないですか。ほら、さっさとボードを取ってください」

愛「やめなよ。りなりーが顔を見せられないのと今回の事件は全く関係ないよ」

かすみ「……はぁ? じゃあ愛先輩は、璃奈さんが殺人鬼の可能性は絶対にないと言い切れるんですか?」

愛「言い切るよ」

かすみ「……」ハァ

かすみ「信じるって……これは学級裁判なんですよ? 疑ってナンボじゃないですか、愛先輩」

歩夢「待ってかすみちゃん。私も、璃奈ちゃんは犯人じゃないと思う」

かすみ「何か根拠はあるんですか、歩夢先輩。それとも、正義感に目覚めたりでもしたんですか~?」

歩夢「だって、モノっちーファイルによれば、彼方ちゃんが死んだのは昨日の午後10時頃なんだよ?」

歩夢(そうだ。その時間は……)

【コトダマ一覧より選択しろ!】

398: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:10:56 ID:HsnCpEbo
→【昨晩のアリバイ】

歩夢「梨子ちゃん。みんなに昨日の10時頃、どこにいたかを聞いて回ってたよね?」

梨子「う、うん」

歩夢「だったらかすみちゃんも知ってる筈だよ。昨日は10時まで、食堂でゲームをしてたんでしょ?」

愛「……言われてみれば! 確かに、10時の放送が鳴って、みんなで食堂を出た!」

歩夢「その時のメンバー、覚えてる?」

愛「えーっと……」

かすみ「愛先輩、千歌先輩、かすみん、せつ菜先輩、それから璃奈さんです」

かすみ「つまり、食堂にいた人たちには彼方先輩を殺せないと。はいはい、璃奈さんには彼方先輩を殺せないってことですよね」

ダイヤ「では、彼女の容疑は晴れますね」

愛「良かったじゃんりなりー! 歩夢と愛さんのお陰だね!」

璃奈「……愛ちゃんは何もしてない(`∧´)」

かすみ「まあいいです。かすみんも璃奈さんがクロだとは最初から思っていませんし」

かすみ「単に璃奈さんのボードを剥いでやりたかっただけです。それに本命は……おっと、今のは独り言なので気にしないでください」

399: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:11:42 ID:HsnCpEbo
千歌「ということはさ。食堂にいなかった人たちの中に犯人がいるってこと?」

花丸「その可能性は高いずら。けど図書室組も外していいと思うよ。ね、鞠莉ちゃん?」

鞠莉「……そうね。みんな一緒に、私の調べ物に付き合ってもらっていたから」

エマ「あ、途中でしずくちゃんが顔を見せたよ。10時になる少し前……だったよね?」

しずく「……」コクリ

千歌「じゃあ、食堂にも図書室にも居なかったのは……曜ちゃんと梨子ちゃん、果南ちゃん、それにダイヤさんだね」

せつ菜「4人の中に、犯人が……?」

曜「ちょ、ちょっと待ってよ! 私は犯人じゃないよ!?」

果南「私だって、彼方を殺してなんかいない!」

ダイヤ「生憎、私も犯人ではありません」

梨子「わ、私も!」

愛「あーもう、順番に喋って!」

400: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:12:26 ID:HsnCpEbo
【ノンストップ議論 開始!】
[|せつ菜の証言>
[|ダイヤの証言>
[|停電騒動>

千歌「ダイヤさんから右回りに!」

ダイヤ「私は【ランドリーにいました】。洗濯が全て終わった時には10時を少し回っていましたが、すぐに部屋に戻りました」

ダイヤ「ですので、私は彼方さんを殺してなどいません」

曜「私は【自分の個室にいたよ】。食堂組に混ざろうかとも思ったけど、何だか気が進まなくて……」

曜「アリバイは……ないけどさ」

梨子「私は【部屋で絵を描いてて】、そのまま寝ちゃったわ。アリバイがあるとは言えないけどね」

果南「わ、【私だってずっと部屋にいた】よ!」

せつ菜「見事に全員、犯人ではない宣言ですね」

花丸「しかも揃ってアリバイがないずら」

昨晩の4人の行動……1人だけ、あの手掛かりと矛盾するよね。

401: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:13:11 ID:HsnCpEbo
[|ダイヤの証言>→【私だってずっと部屋にいた】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「どれもアリバイ証明にはならない。けど、1人だけ明らかに嘘をついた人がいる……」

歩夢「そうだよね、果南さん」

果南「……なんで、そうなるのかな」

歩夢「昨日の10時過ぎ、校舎の方から走って来た果南さんを見た人がいるんだよ。ですよね、ダイヤさん?」

ダイヤ「ええ。夜時間のアナウンスが鳴って少しした後でしたから、10時過ぎなのは間違いありません」

果南「っ、ダイヤが嘘を吐いてる可能性だってあるでしょ?」

ダイヤ「嘘ではありません。この目で確かに、何かに怯えているような果南さんをしっかり見ました」

402: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:13:58 ID:HsnCpEbo
エマ「怯えている……?」

梨子「もしかして、事件に関する何かを見てしまったとか?」

かすみ「もっと言えば、自分が彼方先輩を殺してしまったから……だったり」クスクス

果南「ち、違う! 私は彼方を殺してなんかいないってば!」

せつ菜「でも、話してくれないと議論が進みません。このままだと果南さんを疑うことになってしまいます」

千歌「果南ちゃん……」

果南「……怖かった」

歩夢「え……?」

果南「昨日、私は夜時間になるまで男子更衣室にいたんだけど……」

璃奈「なんで、男子更衣室(・v・)?」

果南「トレーニングだよ。器具は男子更衣室にしかなかったからね」

403: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:14:48 ID:HsnCpEbo
彼方『ふいー。あれ、いたんだ』

果南『うん。ここに来てから本格的なトレーニングが出来てなかったからね』

彼方『頑張るね~。超高校級のダイバーさんは、やっぱり体力とか要るのかな?』

果南『まあね。どう、彼方も一緒に走る?』ピッ

彼方『いやー、遠慮しておくよ。私はインドア派だし、スポドリ飲んで体育会系の気分を味わうくらいが丁度いいのさ』

果南『あ……そういえば、飲み物持ってくるの忘れちゃったな』

彼方『ん、まだ口つけてないけど……飲む?』

果南『いや、部屋に置いてあるから大丈夫だよ』

彼方『そう? じゃあ飲んじゃうけど──』


バツン!


果南『ひぃぃぃぃぃっ!?』

404: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:16:29 ID:HsnCpEbo
果南「急な停電でビックリしちゃってさ……けど、それだけじゃなかったんだよ。だって、停電が直ったと思ったら……」


果南『うぅぅぅ……』ブルブル

果南『……あれ? 電気、ついた』ホッ

果南『ごめんね彼方、見苦しいところ、見せ、ちゃ……』

ドサッ

果南『────!?』


鞠莉「彼方が、倒れた……!?」

果南「死んでいたかは分からないけど……。今から思えば、あの時に殺されたんだと思う」

花丸「それで、ビックリして逃げた……ということずらか」

せつ菜「犯人の姿……見てないんですか?」

果南「見てない。停電が明けてもしばらく目も耳も塞いでたし……それに、しょうがないじゃん。お化けに殺されたんでしょ!?」

かすみ「……は?」

果南「通り魔じゃなけりゃ、そうとしか考えられないじゃん!」

405: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:17:43 ID:HsnCpEbo
【ノンストップ議論、開始!】
[|台車>
[|アイロン>
[|焼け落ちたケーブル>

果南「通り魔が犯人じゃないなら、彼方を殺したのはお化け……じゃないの?」

かすみ「幽霊なんているワケないじゃないですか~」

果南「暗くて周りが見えない中で彼方を殺したんだよ!? それに、彼方の死体だって何故か教室で見つかったし……」

しずく「やっぱり、その時点では彼方さんはまだ生きていて……《教室でトドメを刺された》……のではないでしょうか」

果林「だとしたらどうして教室に? 学生寮まで来ればみんな居るじゃない」

曜「単純に彼方ちゃんを殺した《犯人が死体を運んだ》んじゃないの?」

せつ菜「ですが、本当にお化けがいるなら……」

花丸「幽霊に憑かれた彼方ちゃんが、《ひとりでに教室まで歩き出した》ずら……」

果南「ひゃぁぁぁぁぁぁ!?」

エマ「怖いの、ダメなんだね……」

歩夢(殺害現場と死体発見現場の違い……その答えは、あの手掛かりが握っている筈だよね)

406: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:18:40 ID:HsnCpEbo
[|台車>→《犯人が死体を運んだ》

歩夢「それに賛成だよ!」

Break!

歩夢「彼方ちゃんの死体は移動させられていたんだよ。多分、教室の隅にあった台車を使ったんだと思う」

果南「台車……そんなもの、あったんだ」

千歌「そうそう。2階が開放された時、私は教室の探索をしてたんだけど……その時は置いてなかったんだよね」

果林「じゃあ犯人は、停電が起きた間に彼方ちゃんを殺して、果南ちゃんが更衣室を去った後で、死体を運んだってことなのね」

鞠莉「死体を運ぶだけなら、夜時間中にでも出来たと思うわよ」

エマ「それじゃあ犯人は、どこかにずっと隠れてたってこと?」

歩夢「多分……ね。停電が起きていた間に彼方ちゃんを殺して、そのあと果南ちゃんに見つからないようにする必要があったから……」

407: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:19:56 ID:HsnCpEbo
花丸「あの時犯人も更衣室に居たってことなのかな……?」

愛「プールか更衣室か、その辺りだろうね。んで、その後は一旦プールに隠れればいいワケだ」

璃奈「……夜時間はプールに入れないって話じゃなかったっけ(・v・)?」

愛「プールに入れなくても、プールサイドに立ち入りは……どうなの、モノっちー?」

モノっちー「うん、敷地に入る分にはOKだネ」

愛「ほらね」

せつ菜「そうなると、怪しくなるのは……」

千歌「図書室に居た人たち、食堂に居た私たち、ダイヤさんと果南ちゃんが外れるから……」

歩夢「やっぱり、曜ちゃんと梨子ちゃんの2人が怪しいってことに──」

かすみ「練り込みが足りていませんよ~?」

反論!

かすみ「ま~だ気づかないんですか? 停電が起きたっていっても、精々1分程度なんですよね?」

歩夢「それが……どうかしたの?」

かすみ「おバカな先輩たちに教えてあげますよ。残酷な真実ってヤツです……」ニィ

408: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:21:30 ID:HsnCpEbo
【反論ショーダウン 開始!】
[|アイロン>
[|理科準備室の薬品棚>
[|教室のエアコン>

かすみ「停電は1分程度。その間に彼方先輩をどうやって殺すんでしょう?」

かすみ「ロープで絞め殺すにしたって、幾ら何でも無理があると思いませんか?」

かすみ「そもそも、クロは本当にそこに居たんでしょうかね?」


─発展─
居たから彼方ちゃんは殺されたんだよ?
    かすみちゃん、何が言いたいの?
        もしかして、何か知ってるの?


かすみ「毒殺……」

かすみ「刃物を使わずに1分足らずで人を殺すなら、それしかありません」

かすみ「【停電中に誰かが毒薬を飲ませた】んですよ」

かすみ「モノっちーファイルにも書いてましたよね?」

毒薬……本当に、そんなものはあったのかな?

409: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:22:17 ID:HsnCpEbo
[|理科準備室の薬品棚>→【停電中に誰かが毒薬を飲ませた】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「確かに、彼方ちゃんの体内からは毒物が検出されている……」

歩夢「でもそれって、毒薬なのかな? だって、保健室にも理科準備室にも、そんなものはなかったんだよ?」

かすみ「……」

果林「そういえば、歩夢ちゃんは理科準備室も調べていたのよね」

せつ菜「私も一緒でした。毒薬やその類が一切なかったのは、しっかり確認しています!」

千歌「あれ? じゃあモノっちーファイルが嘘ってこと?」

モノっちー「失敬な! ボクは嘘なんて書かないよ!」

ダイヤ「毒薬ではなく、何か毒になる物を作ったということでしょうか……?」

かすみ「……」クックックッ

かすみ「あっははははははははははははは!」

歩夢「か……かすみ、ちゃん?」

410: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:23:42 ID:HsnCpEbo

かすみ「先輩たち、この前の事件から何も学んでいないんですね」

411: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:24:47 ID:HsnCpEbo
しずく「やっぱり……何か知ってるんですね」

かすみ「ええ、知ってます知ってます。歩夢先輩の考えが間違いだってこともです♪」

歩夢「私の考えが……間違い?」

かすみ「よーく思い出してください。理科準備室に毒薬は本当になかったんですか?」

せつ菜「それはなかったとさっき……」

かすみ「あったんですよ。それを持ち出せた人が1人だけいたことも……知ってる筈ですよ?」

歩夢「……っ」ゾクッ

歩夢(ダメ……凄く、嫌な予感がする)

かすみ「答えてくださいよ~。歩夢先輩たちよりも先に、理科準備室に足を運んでいた人って……誰なんでしょうね?」

歩夢(答えは分かっているのに……どうして?)

【怪しい人物を指名しろ!】

412: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:26:19 ID:HsnCpEbo
→中須かすみ

歩夢「かすみちゃん、だよね」


かすみ『げっ』

せつ菜『……先に来てたんですね』

かすみ『ええ。2人も2階の探索ですか~?』


歩夢「私とせつ菜ちゃんが理科室に入ろうとした時、扉から出て来た……」

歩夢「それって、奥の理科準備室に行っていたんじゃないかな……?」

かすみ「わー、大正解です♪」パチパチパチ

かすみ「皆さんが校舎探索を始めるより早く、かすみんは理科準備室に向かっていたのです。そこで見つけた毒薬を、持ち帰ったというワケですよ♪」

曜「じゃあ、犯人はかすみちゃんで決まりじゃん。用意した毒薬を飲ませたんでしょ?」

かすみ「早とちりしないでくださいよ~。私が現場に行けなかったことは、歩夢先輩が証明してくれたじゃないですか」

曜「っ……」

果林「あくまであなたは、犯人じゃないって言い張るワケね? だったら、どうして毒薬の話題を持ち出したのかしら」

413: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:27:09 ID:HsnCpEbo
かすみ「全くもう、先輩たちは急ぎすぎです。順を追って説明させてください」

かすみ「かすみん、実はある物に毒薬を仕掛けていたんですよ~♪ 何か分かりますか?」

かすみ「ヒントは~……彼方先輩が口にした物、です」

歩夢「っ……」

歩夢(何となく、分かっちゃった……)

歩夢(かすみちゃんの目的、それって……)

かすみ「……」ニッコリ

【閃きアナグラム、開始!】

ポ ン コ ツ ー ム ド ク ス リ ガ (ダミー有)

414: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:28:08 ID:HsnCpEbo
→スポーツドリンク

歩夢「スポーツ、ドリンク……」

歩夢「スポーツドリンクを飲んだ彼方ちゃんが、中に入っていた毒で死んだ……」

かすみ「正解です♪ いやー、危なかったですね果南先輩。危うく先輩も死ぬところでしたよ?」

果南「それが……どうかしたっていうのさ」

ダイヤ「今のままだと、犯人はかすみさんであることは変わりませんわよ?」

かすみ「それが変わるんですよ~。歩夢先輩に次の質問です」

歩夢(分かる……どんな質問が来るのか……)

かすみ「彼方先輩が食堂に来た時、スポーツドリンクを渡したのはかすみんじゃないんですよ~」

かすみ「というか、渡そうとしたところである人に遮られちゃったんですけど……」

歩夢(嫌だ……答えたくない……)

かすみ「それって、誰なんでしょうね?」

歩夢「……」

【怪しい人物を指名しろ!】

415: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:29:04 ID:HsnCpEbo
→優木せつ菜

せつ菜「私です。かすみさんが何かイタズラをするんじゃないかと思ったので……」

せつ菜「確かに、彼方さんにスポーツドリンクを渡しました。でも、それがどうかしたんですか?」

歩夢(違う……違うんだよ……)

千歌「結局、毒を仕掛けたかすみちゃんが犯人だって話だよね? せつ菜ちゃんを経由したところで……」

かすみ「変わるんですよ」

千歌「ほえ?」

かすみ「だってこれは、“犯人”を当てるゲームじゃありません」

かすみ「“クロ”を当てるゲームなんですから」

せつ菜「……?」

416: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:30:04 ID:HsnCpEbo
かすみ「前回の学級裁判で、モノっちーはこう言いました」


モノっちー『ちなみに学級裁判において、議論する内容の終着点は“最後にトドメを刺した人物が誰か”になります』

モノっちー『たとえ殺意がなくとも、引き金を引いた人間がクロになってしまうのですよ』


かすみ「つまり、この事件のクロは……」

かすみ「毒入りスポーツドリンクを渡した優木せつ菜先輩で決まりなんです」

せつ菜「……」

せつ菜「……え!?」

417: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:30:58 ID:HsnCpEbo
せつ菜「ちょ、ちょっと待ってください! どうして私が彼方さんを殺さなきゃならないんですか!?」

かすみ「だから、殺す理由がなくても殺したんですって」

かすみ「というワケで、今回の事件のクロはせつ菜先輩です。モノっちー、投票タイムに移って──」

鞠莉「Wait! かすみ、あなたがこんなことをする理由は何かしら?」

かすみ「?」

鞠莉「こんなことをしても、あなたがこの学校から出られるワケじゃない……あなたにメリットがあるとは思えないわ」

かすみ「だって、メリットなんて要りませんし」

鞠莉「……っ」

しずく「で、でも、犯人にしたいなら……もっといい人……いましたよね?」

かすみ「おっと、しずくさん自らそれを言いますか」

梨子「えっと……どういうこと?」

歩夢(しずくちゃんがあんなことを言う理由……それって……)

【コトダマ一覧より選択しろ!】

418: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:31:38 ID:HsnCpEbo
→【新聞記事】

歩夢「タカマガハラ事件ファイルに付いてた……新聞記事のことだよね」

しずく「……」

花丸「そういえばそうだったずら。タカマガハラの被害を受けた人の中には、しずくちゃんと彼方ちゃんの妹、遥ちゃん……」

花丸「それから、しずくちゃんのお母さんらしい名前もあったずら」

果林「確かに、前回のように何か動機があるとしたら、しずくちゃんを事件に関わらせるのが手っ取り早いわね」

かすみ「あー……そのことですか。ぶっちゃけ、オマケです」

しずく「オマケ、って……!」

かすみ「連続で似たような動機だと、モノっちーもつまらないでしょう? 現に私がつまらないと感じたワケですし」

かすみ「だから、タカマガハラの存在をにおわせておきながら少しも関わっていない! そんな事件を起こしたかったんですよ」

かすみ「そのために、わざわざ死体を教室まで運んで、ロープを首に巻いてあげたんです。少し疲れましたよ~」

梨子「酷い……人の命を何だと思って……」

419: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:32:28 ID:HsnCpEbo
かすみ「それより。もう投票に進んじゃってもいいんじゃないですか?」

千歌「まだあるよ!」

かすみ「どうしたんですか? 聞いてあげますよ、千歌先輩」

千歌「ちょっと気になったんだ。どうして、果南ちゃんが死体を見つけた段階でアナウンスが鳴らなかったのかなって」

果南「そういえば……!」

千歌「死体が発見されました~って放送、あれが流れたのって、私とせつ菜ちゃんが教室に入った時だったんだ」

璃奈「ルビィちゃんが殺された時は、何人かでルビィちゃんのお部屋を見に行ってた……(>_<。)」

愛「もしかして、アナウンスが鳴るためには何か条件があるってこと?」

ダイヤ「どうなのですか、モノっちー」

420: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:33:15 ID:HsnCpEbo
モノっちー「あー……そこに気付いちゃった? んもう、デリケートな話だから触れないようにしてたんだけど……」

モノっちー「死体発見アナウンスってのはネ、推理の材料に使っていいものじゃないのさ」

モノっちー「あくまで、校正に学級裁判を起こすために流すものであって……」

愛「そんなことはいいからさ。条件はなんなの、条件は」

モノっちー「“3人以上の人間が死体を発見すること”だよ。オッケー?」

愛「さーんきゅ!」

エマ「確か、アナウンスが流れるまでに死体を発見したのって……」

璃奈「最初に果南ちゃん。次が……かすみちゃん(>_<。)?」

かすみ「確かに、死体を移動させた私は、ある意味第2発見者でしょうね」

曜「次が、千歌ちゃんとせつ菜ちゃん……」

花丸「4人……」

かすみ「これじゃあ、手掛かりにはなりませんね~」プククク

421: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:33:51 ID:HsnCpEbo
歩夢「ね、ねえ! どっちが先に発見したのか……覚えてないの!?」

せつ菜「そ、そんなこと急に言われても……」

ダイヤ「“3人”に犯人を含む場合と含まない場合……どちらにしても、発見者が4人である以上、判断材料にはなりませんわ……」

歩夢「そんな……このままじゃ、せつ菜ちゃんが……」

せつ菜「……」

かすみ「……♪」

歩夢(嫌だ……このまま、せつ菜ちゃんが犯人だなんて)

歩夢(何か……何かないの!?)

歩夢(この状況を打ち破る、手掛かり……)

422: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:34:46 ID:HsnCpEbo

 学 級 裁 判 
   中  断

423: ◆8TImjtGSKs 2018/04/13(金) 01:35:36 ID:HsnCpEbo
~モノっちー劇場 番外編~

彼方「といっても……モノっちーはここにいないけどね~」

善子「じゃあこの場は何なのよ」

ルビィ「犠牲者の集い……なのかな?」

彼方「多分そうだと思うよ~。それにしても、ドッキドキの展開になって来たね」

善子「アイツ……拘束でもしておかないと大変なことになるんじゃないかしら」

彼方「既に大変なことになってるからね~……」zzz

善子「寝てる!?」

ルビィ「『犯人がハッキリしたら起こして』って書いてるよ」

善子「今までのは全部寝言だったの!?」

425: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:23:03 ID:7xP8eyyw

 学 級 裁 判
   再  開

426: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:23:46 ID:7xP8eyyw
エマ「えっと……とりあえず、今まで出た情報をまとめてみると……」

曜「通り魔“タカマガハラ”の仕業のように見えた彼方ちゃん殺しは、実は通り魔なんて関係ないもので」

果林「実際は、かすみちゃんが“誰かを殺人犯に仕立て上げる”ために起こされた悪意まみれの殺人」

鞠莉「かすみは犯人にならず、毒入りスポーツドリンクを彼方に渡した人物が犯人になってしまう……」

かすみ「その罠に引っかかったのが、せつ菜先輩だったってワケです♪」

せつ菜「……」

ダイヤ「一応、筋は通っていますわね」

かすみ「さっさと投票に移っちゃいませんか? かすみん、朝ご飯をまだ食べてなくてお腹ペコペコなんですよ~」

花丸「まだずら! まだ話し合いの余地はある……筈」

璃奈「まだって言っても、これ以上話しても結論は……(>_<。)」

花丸「いや……可能性は、ゼロじゃないずら」

427: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:24:44 ID:7xP8eyyw
【ノンストップ議論 開始!】
[|モノっちーファイル2>
[|理科準備室の薬品棚>
[|昨晩の停電騒動>

花丸「《せつ菜さんが犯人》と決まったワケじゃないずら!」

せつ菜「……それは、本当ですか?」

かすみ「この期に及んでまだ何かあるんですか」

しずく「悔しいですが、かすみちゃんの言う通り……」

かすみ「彼方先輩はせつ菜先輩に【毒殺】された……」

かすみ「これは揺るぎない事実なんですよ~?」

せつ菜「私は……」

愛「ねえマルっち、もうやめにしようよ。これ以上はせっつんが……」

花丸「大丈夫……ずら」

歩夢(私はせつ菜ちゃんを信じてる……そのための突破口は……)

428: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:26:06 ID:7xP8eyyw
[|モノっちーファイル2>→【毒殺】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「やっと見つけた……ありがとう、花丸ちゃん」

花丸「どういたしましてずら。歩夢さんも、分かったみたいずらね」

千歌「???」

果南「さっぱり分からないんだけど……」

歩夢「モノっちーファイルに書かれていなくて、この議論の中でまだハッキリしてない事……それを思い出して欲しいんだ」

ダイヤ「ハッキリしてない……?」

歩夢(それは……)

【死亡推定時刻】
【死因】
【死体発見現場】
【殺害現場】

正しい選択肢を選べ!

429: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:27:03 ID:7xP8eyyw
→【死因】

歩夢「死因だよ……モノっちーファイルには、彼方ちゃんの“死因が書いてなかった”んだ!」


『被害者は超高校級の眠り姫、近江彼方。死体発見現場は校舎2階、2-B教室』

『死亡推定時刻は昨夜22:00前後、発見時刻は翌7:30頃』

『被害者は首をロープで絞められており、体内からは毒物が検出されている』


果林「あら、言われてみれば確かに書いてないわね」

歩夢「幾つも外傷があって、それら全部が通り魔の仕業じゃないって分かる」

歩夢「その上でかすみちゃんの話が出て来れば、誰もが毒殺だって思い込むよね?」

歩夢「でも実際は書かれてない。モノっちーはこういうことに関して嘘を吐かない……」

歩夢「だったらまだ、せつ菜ちゃんが犯人じゃない可能性も残されている筈だよ!」

せつ菜「……!」

果南「うーん……確かに、そうなんだけどさ……」

430: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:27:40 ID:7xP8eyyw
果南「実際、彼方が停電中に殺されたのは変わらないしねえ……」

ダイヤ「その問題が解決していませんでしたわね……」

千歌「せつ菜ちゃん以外に怪しい人……思い浮かばないや」

かすみ「結局、歩夢先輩の独りよがりですよ」

果林「そうかしら? 私は歩夢ちゃんの意見に賛同するけど」

璃奈「……私は、信じられない(>_<。)」

曜「このままかすみちゃんのペースも悔しいし、私は話し合いを続けたい!」

エマ「うーん……みんなの意見が真っ二つになっちゃったね」

鞠莉「綺麗に割れたわね。どうやって決めたもかしら……」


モノっちー「謎は、全て解ける!」

\待った!/

431: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:28:43 ID:7xP8eyyw
モノっちー「意見が真っ二つ……綺麗に割れた?」

モノっちー「確かに聞きました……これはアレの出番ですネ!」ポチッ

歩夢(モノっちーがスイッチを押すと、裁判場の両サイドにあるカーテンが開く……)

歩夢(そこには、向かい合うような形で、2列の議席……)

かすみ「随分としょっぱいんですね~。もっとこう、変形する裁判場! みたいなのをかすみんは期待していたんですけど」

モノっちー「あったら面白かったんだけど、生憎そこまでは用意出来なかったからネ」

モノっちー「というワケで、それぞれ席に着いてちょうだいな。両者揃ったら、議論開始っ!」

歩夢(せつ菜ちゃんは犯人じゃない。それを証明するために……)

歩夢(ここで、負けるワケにはいかない!)

432: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:30:02 ID:7xP8eyyw

        意
        見
        対
        立

       
【優木せつ菜に投票するか?】
  【議論スクラム 開始!】


[|投票する!> V S <投票しない!|]
  松浦果南    上原歩夢
 黒澤ダイヤ    エマ・ヴェルデ
  高海千歌    小原鞠莉
  桜内梨子    渡辺曜
 天王寺璃奈    国木田花丸
   宮下愛    桜坂しずく
 中須かすみ    朝香果林
          優木せつ菜

相手の主張を対応するこちらの【主張】で撃ち返せ!

433: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:33:27 ID:7xP8eyyw
果南「私は彼方が死ぬ現場を見てるんだよ?」

ダイヤ「せつ菜さん以外に怪しい人物は、もう居ませんわ」

千歌「けど、もう事件の謎はハッキリしちゃったし……」

梨子「かすみちゃんの話は、かなり筋が通っていると思うけど……」

璃奈「毒薬が使われたのはハッキリしてる……(`∧´)」

愛「かすみの罠に掛かった……悔しいけど、それが真実じゃないの?」

かすみ「だからそれは歩夢先輩たちの独りよがりなんですってば~」

VS

歩夢「【独りよがり】なんかじゃない! 私は真実を見つけるんだ!」

エマ「【彼方】ちゃんがスポーツドリンクを飲む瞬間は見てないんだよね?」

鞠莉「まだ停電に関する【謎】が残っているわよ」

曜「【筋】が通っているだけで、証拠はないよね?」

花丸「彼方ちゃんが死んだ後に【毒薬】を飲ませた可能性だってあるずら!」

しずく「かすみさんがまだ何かを隠している【怪しい人物】……そう思えてならないんです」

果林「もっと話し合えば、違った【真実】が見えて来るかもしれないわ」

434: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:34:35 ID:7xP8eyyw
果南「私は【彼方】が死ぬ現場を見てるんだよ?」 エマちゃん!
エマ「【彼方】ちゃんがスポーツドリンクを飲む瞬間は見てないんだよね?」
Break!
 
ダイヤ「せつ菜さん以外に【怪しい人物】は、もう居ませんわ」 しずくちゃん!
しずく「かすみさんがまだ何かを隠している【怪しい人物】……そう思えてならないんです」
Break!

千歌「けど、もう事件の【謎】はハッキリしちゃったし……」 鞠莉さん!
鞠莉「まだ停電に関する【謎】が残っているわよ」
Break!

梨子「かすみちゃんの話は、かなり【筋】が通っていると思うけど……」 曜ちゃん!
曜「【筋】が通っているだけで、証拠はないよね?」
Break!

璃奈「【毒薬】が使われたのはハッキリしてる……(`∧´)」 花丸ちゃん!
花丸「彼方ちゃんが死んだ後に【毒薬】を飲ませた可能性だってあるずら!」
Break!

愛「かすみの罠に掛かった……悔しいけど、それが【真実】じゃないの?」 果林さん!
果林「もっと話し合えば、違った【真実】が見えて来るかもしれないわ」
Break!

かすみ「だからそれは歩夢先輩たちの【独りよがり】なんですってば~」 私が!
歩夢「【独りよがり】なんかじゃない! 私は真実を見つけるんだ!」
Break!

435: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:35:29 ID:7xP8eyyw

「「「「「「「これが私たちの答えだ!」」」」」」」

        全   論   破
          All Break!

436: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:36:11 ID:7xP8eyyw
歩夢「やっぱり、全ての謎が明らかになってない以上、せつ菜ちゃんが犯人だって決めつけるのは早いと思う」

千歌「うーん……分かった。もう一度考えてみよう!」

愛「仕方ないかぁ。命、かかっちゃってるし」

せつ菜「……ありがとう、ございます」

ダイヤ「ですが、そうなると彼方さんの本当の死因は何なのでしょう?」

エマ「今のままじゃ、手掛かりがないよね……」

鞠莉「だったら、別の観点から攻めてみればいいんじゃないかしら」

しずく「別の観点?」

鞠莉「停電について話し合うの。今回の事件とはとても無関係とは思えないからね」

かすみ「みんなで力を合わせて、ってやつですね」

果林「かすみちゃんはその“みんな”に入って欲しくないけどね」

437: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:36:54 ID:7xP8eyyw
【ノンストップ議論 開始!】
[|アイロン>
[|停電騒動>
[|教室のエアコン>

鞠莉「まずはあの停電が起きたキッカケだけど……」

曜「電気の使い過ぎで、ブレーカーが落ちたんじゃないかな?」

果林「或いは、ブレーカーに細工か……」

かすみ「そもそも、ブレーカーがどこにあるかなんて【知りません】よ」

しずく「前回の事件のように電化製品……例えば【エアコンでタイマー仕掛け】にすれば、狙った時間にブレーカーを落とせますね」

ダイヤ「そもそも……本当に停電は事件と【関係がある】のでしょうか」

花丸「電化製品周りはよく分からないずら……」

かすみ「せつ菜先輩も考えてくださいよ~」

せつ菜「あなたにだけは言われたくありません!」

歩夢(停電の原因……それを、突き止めないとね)

438: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:38:13 ID:7xP8eyyw
[|教室のエアコン>→【エアコンでタイマー仕掛け】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「停電が計画的なら、タイマー仕掛けを考えるのは自然……。でも、少なくともエアコンが引き金になったとは考えにくいんだよ」

しずく「ですが、千歌さんは捜査中勝手にエアコンが点いたと言っていたような……あれ、8時半?」

歩夢「そうなんだよ。8時半じゃ、電力消費にはなっても、10時に電気を落とすことは出来ないんだ」

せつ菜「だとしたら、犯人が教室に居て、アイロンの電源を入れたのではありませんか!?」

果林「それだと、停電が起きてる間に更衣室には向かって、彼方ちゃんを殺すのは難しいわね」

せつ菜「そこは……ほら、懐中電灯を使うとか」

エマ「それはないよ! 停電が起きた時、私としずくちゃんは図書室の外に出たけど、明かりなんて見なかったよ?」

しずく「間違い、ありません。私はまっすぐ部屋に帰りましたし、誰にも会っていませんが……」

エマ「私も、そのあとすぐ図書室に戻っちゃったからね。停電が明けた時にはしずくちゃんの姿はなかったけど……」

439: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:39:03 ID:7xP8eyyw
かすみ「全く……困った先輩たちですねえ。このままだと私まで死にかねないので、もう一つ白状しちゃいましょうか」

曜「やっぱり、まだ何か隠していたんだね」

かすみ「停電の原因を作ったのもかすみんです。アイロンのスイッチを入れて、エアコンのタイマーもセットしました」

かすみ「それが、昨日の夕方くらいのことです。元々、停電に関してはただのイタズラ目的でした」

果南「イタズラ目的……?」

かすみ「ええ。歩夢先輩たちが夜に図書室で集まるって話を耳にしたので……ちょっと驚かせようかなと」

果林「そのイタズラが、どうして彼方ちゃん殺しに発展したのかしらね」

かすみ「そこはあとのお楽しみってことでお願いしますよ、果林先輩」

梨子「ちょっと待って。アイロンもエアコンも夕方に準備していたなら、どうして夜10時に停電が起きたの!?」

歩夢(かすみちゃんが10時に停電を起こした方法……)

歩夢(10時……夜の、10時……)

歩夢(もしかして……?)

【閃きアナグラム 開始!】
ナ ウ ち の モ ア っ ー ノ ン ス (ダミー無)

440: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:40:30 ID:7xP8eyyw
→モノっちーのアナウンス

歩夢「そうだ、モノっちーのアナウンス!」

千歌「えっ?」

歩夢「毎朝7時と毎晩10時に鳴る定時アナウンスだよ! 確か、ほとんどの部屋と廊下にモニターとスピーカーがあった筈!」

梨子「そっか……アナウンスが鳴って、一斉にそれらの電源が入ったら……」

ダイヤ「アイロンやエアコンで電力消費量が大きくなっていたところにトドメが刺され、ブレーカーが落ちて停電、という寸法ですか……」

歩夢「よく考えたら……図書室にいた私たちは、夜10時のアナウンスを聞いていなかったんだよ!」

鞠莉「もしかしたら、モノっちーに電力の限界は聞いていたかも知れないわね」

モノっちー「どきぃっ!?」

かすみ「どきぃっ!?」

果林「……これは、図星ってことでいいのかしらね」

441: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:41:13 ID:7xP8eyyw
璃奈「そもそも、学校がそれだけで停電しちゃっていいの(・v・)?」

モノっちー「あのネ。補足するような形になっちゃうけど、2階にはプールがあるんだよ」

モノっちー「水の管理だとか、そういったことに手を回してるもんだから、2階はかなりの電力を消費するんだ」

モノっちー「そんなワケで、電力負担を調整するために、各フロアそれぞれが別々の電源を使っているんだよ」

鞠莉「なるほどね……。そういうことだったの」

エマ「何か分かったの?」

鞠莉「ちょっとね。私が捜査中に見つけた“アレ”の謎が、何となく解けたのよ」

かすみ「アレって何ですか~?」

千歌「鞠莉ちゃん、前回もそんなこと言ってたよね。隠してないで私たちにも教えてよー!」

歩夢(鞠莉さんが見つけたもの……? それってもしかして……)

【コトダマ一覧より選択】

442: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:41:50 ID:7xP8eyyw
→【校舎1階の隠し部屋】

歩夢「校舎1階にあったっていう、隠し部屋のこと……だよね」

鞠莉「Yes!」

愛「か、隠し部屋!?」

せつ菜「そう言えば、捜査中にそんな話をしていましたね。何やら、とんでもない発見だったそうですが……」

千歌「ねえねえ、どんな発見だったの!」

鞠莉「歩夢が言ったように、隠し部屋があったのは校舎の1階。廊下の壁が、一箇所だけどんでん返しになっていてね」

鞠莉「大体こんな感じよ。広さは教室とほぼ同じってところかしら」

https://i.imgur.com/DXQDA9w.jpg

せつ菜「ちょっと待ってください! これ、ここ(裁判場)のエレベーターホールに繋がってないですか!?」

鞠莉「ええ、けど一旦置いておきましょう。今回の事件と大きく関わっている可能性があるのはそこじゃないわ」

ダイヤ「どういうことなのです?」

鞠莉「あの部屋ね、ブレーカーがあったのよ」

443: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:42:57 ID:7xP8eyyw
曜「ブレーカー!?」

果林「つまりあの停電は、モノっちー以外の誰かがブレーカーを上げたことで直った……って言いたいのね?」

かすみ「でも、それが今回の事件とどう関係あるんですか~?」

鞠莉「突拍子もない可能性だけどね……彼方の死因に関係しているとしたら、どうかしら」

しずく「死因に……!?」

エマ「あ、あり得ないよ! どうやってブレーカーで彼方ちゃんを殺すの!?」

歩夢(ブレーカーが、彼方ちゃんの死因に関係している……?)

歩夢(だとしたら、彼方ちゃんの本当の死因って……)

【毒殺】
【感電死】
【絞殺】
【溺死】

正しい選択肢を選べ!

444: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:43:28 ID:7xP8eyyw
→【感電死】

歩夢「感電死……」

せつ菜「え……?」

歩夢(でも、そんなことが狙って出来るの……?)

歩夢(いや……まさか……)

歩夢「感電死だよ! 電気に関連するとしたら、それしかない!」

愛「いやいや、ブレーカーを上げただけで感電は無理があるっしょ!」

璃奈「幾らなんでも厳しくない(・v・)?」

鞠莉「間違っていたら謝るわ。けど、可能性がある以上、是非を明らかにするためにも……」

花丸「話し合ってみる必要が……あるずら」

445: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:44:11 ID:7xP8eyyw
【ノンストップ議論 開始!】
[|アイロン>
[|更衣室の水たまり>
[|教室のエアコン>

エマ「感電死なんてあり得ないよ!」

曜「仮にそうだとして……感電するような仕掛けがあったの?」

果南「更衣室には何もなかったよ。彼方が死ぬような【仕掛けなんてどこにも】……」

千歌「タンス……じゃない。ええっと……スイッチを入れると電気が流れる機械!」

かすみ「もしかして《スタンガン》のことですか~?」

千歌「そうそれ! スタンガンを使って感電死させたとかは?」

ダイヤ「いえ……スタンガンの電流で人間は死なないと聞いたことがありますが」

せつ菜「初耳ですよそんな話!?」

歩夢(感電死は不可能じゃない……けど、本当にこんなことって……?)

446: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:45:47 ID:7xP8eyyw
[|更衣室の水たまり>→【仕掛けなんてどこにも】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「更衣室に残っていた水たまり……あそこに電気が流れたら、感電死は起こり得るかも知れない!」

花丸「もしかして……!」

梨子「何か分かったの?」

花丸「マル、ずっと考えてたの。彼方ちゃんの身体にあった3つの火傷、背中と右足首の裏はともかく……両足の裏を火傷するって、何があったんだろうって」

ダイヤ「では、まさか!」

花丸「水たまりに流れた電気が、それを踏んでいた両足を通して、感電した……」

曜「じゃあ、あの火傷は……」

歩夢「その時に出来たもの、ってことになる──」

エマ「È diverso!」

反論!

447: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:47:06 ID:7xP8eyyw
歩夢「……え?」

エマ「ごめん。『それは違うよ』って意味だよ」

エマ「違うよ……歩夢ちゃんたちの推理は、間違ってる!」

【反論ショーダウン 開始!】
[|更衣室の水たまり>
[|校則>
[|校則違反者への処遇>

エマ「そもそも、彼方ちゃんが感電死って前提自体が違うんだよ!」

エマ「前提が違う以上、この話を続ける意味なんてない!」

エマ「さっきから言ってるのに、なんで分からないの!」

─発展─
前提が違うってどういうこと?
    他に死因があったりするの?

エマ「校則違反だよ!」

エマ「【個室以外で居眠りしてはいけない】って校則があったよね!?」

エマ「彼方ちゃんはプールで寝てしまって、それで【モノっちーに殺された】んだよ!」

歩夢(校則違反で死んだ……? そんなこと、本当にあるのかな?)

448: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:47:57 ID:7xP8eyyw
[|校則違反者への処遇>→【モノっちーに殺された】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「ううん……彼方ちゃんが校則違反で死んだとは考えられない」

エマ「どうして……?」

歩夢「校則違反者への処刑を実行する時は、まず、学園中にサイレンが鳴り響くらしいんだよ」

エマ「そんなの……昨日、2階は停電してたんだから、そこにサイレンが鳴らなかったのかも──」

歩夢「でも、学生寮にいたみんなもそんなサイレンは聞いてないんだよね!?」

エマ「っ……!?」

449: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:48:38 ID:7xP8eyyw
ダイヤ「ええ……確かに、サイレンは聞いていません」

かすみ「というか、停電していた2階でもうっすら聞こえるんじゃないですか?」

歩夢「……だから、モノっちーに殺されたとは考えられないんだ」

エマ「……」

鞠莉「じゃあ改めて、水たまりの話に関する議論を再開させましょうか」

果南「そもそも、水たまりに電気を通すって話がよく分からないんだけど」

鞠莉「あら。果南の話の中に、その手掛かりが十分あったと思うけど?」

果南「え?」


彼方『頑張るね~。超高校級のダイバーさんは、やっぱり体力とか要るのかな?』

果南『まあね。どう、彼方も一緒に走る?』ピッ


せつ菜「この話に手掛かりが……?」

450: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:50:04 ID:7xP8eyyw
鞠莉「果南。あなた、あの時ランニングマシーンの電源を入れたのよね?」

果南「う、うん……」

歩夢「だとしたらおかしいよ。私たちが更衣室を調べた時って、ランニングマシーンの電源が入ってたんだよ!?」

曜「おかしいところなんてないんじゃない? スイッチを入れておけば、ずっと動き続けるタイプなんでしょ?」

曜「じゃあ停電が直った時に、もう一度電源が入ったんじゃ……。現に、エアコンがそうみたいだし」

果林「いえ、それだと妙ね。捜査の時に電源が入ってたランニングマシーンは“一つだけ”だもの」

ダイヤ「果南さんが使っていた方と彼方さんに走らせる方。スイッチを入れっぱなしなら、どちらも点いていないとおかしい、ということですわね?」

せつ菜「ですが、どうしてそんなことが起きたのでしょう?」

歩夢「考えられるとしたら……」

【コトダマ一覧より選択】

451: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:51:07 ID:7xP8eyyw
→【焼け落ちたケーブル】

歩夢「トラッシュルームで見つけた、焼けたケーブル……」

歩夢「あれって、そのランニングマシーンの電源ケーブルなんじゃないかな?」

璃奈「処分されていたってことは……重要な証拠(>_<。)?」

かすみ「恐らく、アレは不良品だったんだと思います」

かすみ「本来電源ケーブルって、電気を通さないためにビニールか何かに包まれているじゃないですか」

かすみ「でも、もしそのケーブルが不良品だとしたら。しかも、そこに水たまりがあって、その上に人がいたら……」

https://i.imgur.com/oyA6M0h.jpg

花丸「停電が直ったら、そこにいた人は感電する……」

かすみ「これについては、処分含めてかすみんがやったワケじゃありませんよ? 流石に、感電死なんて考えもしませんでしたから」

ダイヤ「ほとんど、かすみさんの手のひらの上で転がされている気がしますわね」

千歌「な、なんて恐ろしいトリック……」ゴクリ

452: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:52:26 ID:7xP8eyyw
鞠莉「いえ。トリックというよりは……事故と言った方がいいかもね」

鞠莉「恐らく彼方は、停電に驚いてスポーツドリンクを落としたのでしょう」

鞠莉「飲む直前だったってことは、口は開いてる。つまり、床にこぼれた……」

梨子「そんな……それじゃあ、ブレーカーを上げた人が感電死させたことになって……!」

モノっちー「そうですネ! 近江さんを殺した、犯人ということになりますネ!」

愛「ね、ねぇ……愛さん、それだったら議論したくないよ。そいつは善意で行動したのに、どうして人殺しにならなきゃいけないのさ!」

ダイヤ「ですが……やらなくてはいけません」

果林「鞠莉ちゃん。ブレーカーを上げた人が誰なのか……手掛かりはなかったの?」

鞠莉「ないわよ」

せつ菜「じゃあ、当てずっぽうで犯人を当てるしかないのですか!?」

鞠莉「早とちりしないで頂戴。そもそも私が見つけたブレーカーは、“校舎1階の電源だけ”なんだから」

453: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:53:01 ID:7xP8eyyw
しずく「……え?」

鞠莉「ほら、モノっちーも言ってたでしょ?」


モノっちー『水の管理だとか、そういったことに手を回してるもんだから、2階はかなりの電力を消費するんだ』

モノっちー『そんなワケで、電力負担を調整するために、各フロアそれぞれが別々の電源を使っているんだよ』


鞠莉「さて、ここで考えて欲しいんだけど……」

鞠莉「校舎1階の隠し部屋に、校舎1階のブレーカーがあった」

鞠莉「彼方が死んだ男子更衣室は、校舎2階……」

梨子「2階のブレーカーは、2階の隠し部屋にある……ってこと?」

鞠莉「Yes!」

454: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:53:51 ID:7xP8eyyw
愛「そ、そんなの分かりっこないじゃん! 1階に隠し部屋があることすら知らなかった私たちが、2階の隠し部屋なんて……」

歩夢「いや……分かるかも知れない」

愛「……マジで?」

歩夢「鞠莉さん、言ってたよね。隠し部屋は教室くらいの広さだったって」

鞠莉「ええ、そうね」

歩夢「だとしたら……何となく、分かる気がするんだ」

歩夢「1階の隠し部屋が、ああいう隠され方をしていたのなら……」

【スポットセレクト 開始!】

https://i.imgur.com/KIEAhB9.jpg

隠し部屋はどこにあった?

455: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:54:28 ID:7xP8eyyw
https://i.imgur.com/xwzuYfw.jpg

歩夢「ここだよ。今考えられる可能性は、それしかない」

千歌「図書室の……すぐ近く?」

鞠莉「可能性としては十分高いでしょうね。2階が開放された時、私たちは色んな部屋をくまなく調べた」

鞠莉「そこで隠し部屋が見つからなかったということは、廊下に隠されている可能性が高い……」

果林「なるほど? だから、この地図にある空白のスペースが、その部屋だってワケね」

歩夢「そうなんだよ。だとしたら……停電を復旧させたのが誰なのか、検討がついちゃうんだ」

せつ菜「えっ……!?」

曜「分かった、ってこと?」

歩夢(校舎2階の隠し部屋は、図書室のすぐ前にあった)

歩夢(停電が起きた時、善意でブレーカーを上げることが出来た人……)

歩夢(それは……)

【怪しい人物を指名しろ!】

456: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:56:10 ID:7xP8eyyw
→エマ・ヴェルデ

歩夢「エマちゃん……あなたなんじゃないかな?」

エマ「……」

かすみ「へぇ。エマ先輩が犯人だったんですね」

歩夢「昨日の夜、私は鞠莉さん、果林さん、花丸ちゃん、エマちゃんと5人で図書室にいた」

歩夢「色々とお話をしている途中で、しずくちゃんが来た。今思えば、あれが10時ちょっと前」

歩夢「私たちがいることに驚いたしずくちゃんが、慌てて図書室を出て行って、それを追いかけたのがエマちゃんだった」

歩夢「停電が起きたのがその直後。だとしたら、ブレーカーを上げることが出来た人は……」

果林「慌てていたしずくちゃんにその発想があるとは考えられない。だから、エマちゃんしかいないってワケね……」

457: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:57:07 ID:7xP8eyyw
エマ「……」

かすみ「どうなんですか~? 何か反論は──」

しずく「ま、待ってください! それだけで、エマちゃんを疑う理由にはなりません!」

しずく「隠し部屋だって、本当はそこになかったのかも知れないじゃないですか!」

しずく「彼方さんが感電死だって、証拠がないじゃないですか!」

エマ「しずくちゃん……」

歩夢「違うよ……。感電死だってことは証明されたし、隠し部屋だって……」

しずく「さっきのせつ菜さんの話と同じです! 手掛かりを都合よく並べて、筋が通っているだけの間違った推理をでっち上げただけじゃないですか!」

しずく「ランニングマシーンの電源を入れた果南さんだって……いえ、私だって疑われるべきなんです!」

しずく「果林さんはさっき慌てていたと言ってましたけど、本当にそうだったんでしょうか!?」

しずく「私が犯人なんです! 私がブレーカーを上げたんです!」

しずく「それでもエマちゃんが犯人だって言うなら、根拠を出してください!」

458: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:57:40 ID:7xP8eyyw
エマ「……っ」

歩夢(エマちゃんが犯人になる根拠……)


モノっちー『殺害を実行した人は、ボクに願いを言ってください! 学級裁判で投票を乗り切ることが出来れば、卒業する時にそれを叶えてあげましょう』


歩夢(今だったら、分かる……)


モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

モノっちー『そうそう。何とは言わないけれど、ボクは悲しいです。何とは言わないけどネ!』


歩夢(それをぶつけるしか、ない……!)

しずく「このままじゃ、私は納得出来ません!」

459: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:58:48 ID:7xP8eyyw
【理論武装 開始!】

しずく「エマちゃんは犯人じゃない!」

しずく「こんな推理、納得出来ません!」

しずく「カーテンコールにはまだ早いです!」

しずく「証拠を出してください!」

しずく「果南さんや私だって疑われるべきじゃないんですか!?」

しずく「そもそも、私が犯人なんです!」

しずく「こんな幕切れ、認められるワケないじゃないですか!」


しずく「【エマちゃんが犯人だっていう根拠を出してください!】」

      △:訪れた
□:図書室に      〇:昨晩
      ×:モノっちー

460: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 22:59:31 ID:7xP8eyyw
→〇□△×  [|昨晩図書室に訪れたモノっちー>

歩夢「これで……終わりだよ!」

Break!!!

歩夢「停電騒動のあと……図書室にモノっちーが来たんだ」

歩夢「あの時は単に、停電でアナウンス出来なかった10時の時報を伝えに来たのかって思ってたけど……」


モノっちー『殺害を実行した人は、ボクに願いを言ってください! 学級裁判で投票を乗り切ることが出来れば、卒業する時にそれを叶えてあげましょう』


歩夢「本当は、彼方ちゃんを殺してしまったエマちゃんに、動機となる願いを聞きに来たんじゃないかな……?」

しずく「そんな、荒唐無稽すぎます……!」

歩夢「そもそも今回の事件は、事件というより事故のようなものだった。つまり“自分が犯人になっていたことに気付いていない”んだよ」

しずく「でも事故だっていう証拠は……」

461: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:00:21 ID:7xP8eyyw
歩夢「今朝のモノっちーのアナウンスだよ」

しずく「え……?」


モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

モノっちー『そうそう。何とは言わないけれど、ボクは悲しいです。何とは言わないけどネ!』


歩夢「自分が犯人になったことにも気付かないまま、折角モノっちーが用意した動機を無駄にした」

歩夢「それを踏まえての、あのアナウンスってことじゃないかな?」

しずく「っ……それでも!」

果林「そもそも、しずくちゃんは犯人じゃないって、既に言ってるしねえ」

しずく「……!?」

462: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:01:01 ID:7xP8eyyw
エマ『それはないよ! 停電が起きた時、私としずくちゃんは図書室の外に出たけど、明かりなんて見なかったよ?』

しずく『間違い、ありません。私はまっすぐ部屋に帰りましたし、誰にも会ってませんけど……』

エマ『私も、そのあとすぐ図書室に戻っちゃったからね。停電が明けた時にはしずくちゃんの姿はなかったけど……』


果林「まっすぐ部屋に帰った、のよね?」

しずく「あ、あれは私の嘘で……えっと……」

歩夢「私だって、エマちゃんを疑いたくない。けど、ここからは信じるしかないんだ」

歩夢「エマちゃん、本当のことを教えてくれないかな……?」

エマ「……」

しずく「エマちゃん……」




エマ「もう、いいよ」

463: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:01:41 ID:7xP8eyyw
しずく「……」

しずく「……エマ、ちゃん?」

エマ「しずくちゃん……もう、いいんだよ……」

エマ「もう、やめて……」

果林「じゃあ、ブレーカーを上げた張本人だって、認めるのね」

エマ「……うん。隠し部屋のことをずっと黙っていたこともね」

しずく「そんな……」

エマ「歩夢ちゃん……最後に、この事件を最初から振り返って欲しいんだ」

エマ「しずくちゃんも、きっと納得してくれるから……」

歩夢「わ……分かった。やってみるよ」

464: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:02:36 ID:7xP8eyyw
【クライマックス推理】
ACT.1
今回の事件……いや、事故の発端は昨日の夕方。
図書室に集まる予定だった私たちへのイタズラ目的で、かすみちゃんは校舎2階を停電させる計画を立てたんだ。
エアコンが8時半に点くようタイマーをセット、2階の教室に電源の入ったアイロンを設置。
あとは、夜10時のアナウンスで停電が起こる……そんな計画だった。
けど……かすみちゃんの計画は、これだけじゃ終わらなかったんだ。

ACT.2
夜、食堂でせつ菜ちゃんたちがゲームをしていたところに、彼方ちゃんが訪れる。
プールで泳いだあとに飲みたいからと、スポーツドリンクを取りに来たんだ。
そこでかすみちゃんは……どういう心変わりがあったのか分からないけど、洒落にならないイタズラを実行に移した。
彼方ちゃんを殺し、せつ菜ちゃんをクロにさせる、恐ろしい計画……。
毒入りスポーツドリンクをせつ菜ちゃんに渡させて、それを彼方ちゃんに飲ませるという、悪意に満ちた罠だったんだ!

ACT.3
そうとも知らない彼方ちゃんはプールでひとしきり泳いだあと、更衣室に戻る。
背中と右足首、火傷の跡を気にする彼女は男子更衣室を使っていたけど、そこにはトレーニングに励む果南ちゃんの姿があった。
この時、果南ちゃんが入れたランニングマシーンのスイッチが彼方ちゃんの命を奪うことになるなんて……誰も、恐らくかすみちゃんでさえ予想していなかっただろうね。

465: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:04:53 ID:7xP8eyyw
ACT.4
午後10時、モノっちーの時報アナウンスが鳴ると同時に、学園中全てのモニターとスピーカーに電源が入る。
そして、使用電力の限界を迎えた校舎2階はブレーカーが落ちて停電した。
更衣室組と図書室組、2階にいた人たちはパニック状態になった……。
その中で、ある行動を取った人がいた。
それが、今回の事故で“最後の引き金”を引いてしまった人物……。

ACT.5
その人は、図書室を出てすぐにある隠し部屋へと向かった。
そこに2階のブレーカーがあることを知っていたからだよ。
善意から彼女の上げたブレーカーは……思いもよらぬ仕掛けを発動させてしまうんだ。
更衣室にいた彼方ちゃんは、停電の拍子に持っていたスポーツドリンクを落として、床に水たまりが出来てしまう。
すぐ近くにあったランニングマシーンの電源ケーブルが不良品だったことなんて、夢にも思わなかっただろうね。
停電が明け、スイッチを押したままだったランニングマシーンに電源が入り……彼女は感電死した。
スポーツドリンクはよく電気を通すし、ましてプールあがり……感電しやすい条件が揃っていたんだよ。

ACT.6
停電の最中に殺されたと思い込んだ果南ちゃんは、現場から逃走。
その後……更衣室を訪れたかすみちゃんが、ある偽装工作を行った。
前もって理科準備室から持ち出していた毒薬を死体の口に入れ、殺人鬼タカマガハラの手口に状況を似せた。
最初から、かすみちゃんによって仕組まれていた、今回の事件……。
けど彼女は……今回の犯人にならないんだ。

466: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:05:34 ID:7xP8eyyw
歩夢「犯人になってしまうのは……その才能を持ちながら、皮肉にも不運な事故を引き起こしてしまった人物」

歩夢「それが……あなたなんだね」

歩夢「超高校級の幸運……エマ・ヴェルデちゃん……」

    COMPLETE!!!

467: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:07:13 ID:7xP8eyyw
歩夢「これが……彼方ちゃんの死の真相……」

しずく「……」

エマ「ごめんね、しずくちゃん。折角かばってくれたのに……」

モノっちー「どうやら、議論の結論が出たみたいですネ? それでは皆さん、お待ちかねの投票タ──」

愛「ちょっと待って」

モノっちー「──んぐっ!?」

歩夢「愛ちゃん……どうしたの?」

愛「モノっちーの動機は、まだ有効なのかな」

千歌「……どういうこと?」

468: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:08:41 ID:7xP8eyyw
愛「確かに、エマちーは取り返しのつかないことをしたのかも知れない」

愛「けどさ、違う人に投票するっていう手もあるっしょ?」

璃奈「エマさんは……願い事をモノっちーに伝えてない筈だよ(・v・)?」

愛「だったら今すぐにでも“コロシアイを終わらせたい”って願って、エマちー以外に投票する」

愛「そうすれば、クロだけじゃなくて、私たちもこんな学園から出られる……筈じゃないかな?」

ダイヤ「どうなのですか、モノっちー」

モノっちー「うけけけけけ……確かに、面白い提案だと思うよ」

モノっちー「でも残念、願い事はもう失効してます! だって既に……叶っちゃってるみたいだしネ」

千歌「そんな……」

愛「畜生……じゃあ、マジでエマちーに投票するしかないのかよ……」

歩夢(……?)

歩夢(願い事が既に、叶っている……?)

469: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:09:17 ID:7xP8eyyw
モノっちー「もういいよネ? じゃあ、お待ちかねの投票タイムに移ります!」

モノっちー「皆さん、お手元のスイッチで投票しちゃってください!」

モノっちー「ああそうそう。ちゃんと誰かに投票してネ? 投票を放棄した人も……オシオキだからさ」

しずく「……」

エマ「ごめんね、しずくちゃん……」

歩夢(エマ・ヴェルデの名前が貼ってあるシール。その上にあるスイッチを押す……)

歩夢「……あれ?」

せつ菜「どうかしたんですか、歩夢」

歩夢「いや……何でもない」

歩夢(シールに、うっすらだけど剥がしたような跡が……)

歩夢(気のせい……?)

470: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:10:31 ID:7xP8eyyw
モノっちー「投票が終わったみたいですネ。さあ、クロとなるのは誰なのか、その答えは正解なのか不正解なのか!」

曜「ちょっと待って、モノっちー!」

モノっちー「んもう。さっきからこのパターンばっかりだなあ。待ったが多すぎるゲームを作ったら、殺されるんだよ?」

モノっちー「大体、投票は終わってるの! あとは開票速報を待つだけなの! 今さら変更なんて出来ないよ!」

曜「さっき、鞠莉ちゃんの話を聞いて……疑問に思ったの」

曜「隠し部屋が、ここ(裁判場)のエレベーターホールに繋がってるって話……」

曜「結局、関係ないからってことでスルーしたけど……誰かが、その通路を通ってここまで来たとしたら……」

曜「実際……エマちゃんとかすみちゃんの名前シールに、剥がしたような跡があるんだよ」

璃奈「……えっ(?□!)」

花丸「ど、どういうことずらぁ!?」

471: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:11:14 ID:7xP8eyyw
鞠莉「誰かが投票スイッチに細工をした。しかも、入れ替わっていた名前はエマとかすみ……」

鞠莉「迂闊だったわ……。エマ、あなた最初から知ってたんじゃないの?」

エマ「……」

果南「えっと……どういうこと?」

歩夢「かすみちゃんは、ケーブルの処分はしてないって言ってた……。もしかしたら、それをやったのが……」

せつ菜「エマさん、ということですか……!?」

しずく「嘘……」

鞠莉「ついでに、死体発見アナウンスについてもよ。モノっちーは“3人以上の人間が死体を発見すること”を条件にあげていたけど……」

鞠莉「今回の事件の犯人はその『3人』の中に“含まれていなかった”んじゃないかしら」

モノっちー「ぎくっ」

鞠莉「だろうと思ったわ。確かに、彼女が自分のやったことに気付いて、証拠を処分しようと動くなら……あのアナウンスは邪魔になりかねない」

梨子「果南ちゃんとかすみちゃんで、既に2人が死体を見ていたから……」

472: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:17:46 ID:7xP8eyyw
かすみ「どうなんですか、エマ先輩。このままだと、先輩を除いて全滅ですよ?」

千歌「えっ!? なんでそうなるの!?」

ダイヤ「私たちが押したのはエマさんのスイッチではなく、かすみさんのスイッチだからです」

エマ「……」

せつ菜「モノっちー、今すぐ投票のやり直しを……」

モノっちー「あーあー聞こえなーい聞こえなーい。というわけで、投票結果の発表と参りましょーう!」

エマ「違う……私は……」

しずく「エマ……ちゃん?」

モノっちー「投票の結果、クロとなるのは誰なのか? その答えは正解なのか、不正解なのか~!?」

エマ「私、は……」

歩夢(焦る私たちを他所に、モノっちーは投票結果を画面に映し出す……)

473: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:19:11 ID:7xP8eyyw


   VOTE

エマ エマ エマ
   GUILTY



エマ「……」

エマ「……え?」



 学 級 裁 判 
   閉  廷

474: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:20:40 ID:7xP8eyyw
モノっちー「ひゃっほーう! 2連続正解だぁ!」

モノっちー「《超高校級の眠り姫》近江彼方さんを殺し、裁判場に細工をした不届き者は……」

モノっちー「《超高校級の幸運》エマ・ヴェルデさんなのでしたー!」

エマ「…………」

歩夢「どういう……こと?」

璃奈「かすみちゃんじゃ……ない(?□!)」

梨子「モノっちーも、最初から細工のことには気づいていた……ってことかしら」

モノっちー「まあネ。ここにも監視カメラは仕掛けてあるし……青ざめた顔した彼女が夜中に侵入して来たことも、全部お見通しだったよ」

花丸「じゃあ……自分が殺してしまった、ってことも知ってたずら……?」

エマ「……全部」

しずく「え……?」

エマ「全部……かすみちゃんが、悪いのに……!」

475: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:21:27 ID:7xP8eyyw
────昨晩0時頃、学生寮廊下

エマ『んー……なんだか眠れないや』

トテトテトテ

エマ『……?』

かすみ『……あれ、エマ先輩じゃないですか』

エマ『かすみちゃんも、眠れないの?』

かすみ『んー……ある意味、そうですね。予想を大きく裏切ってくれる超高校級の皆さんには、尊敬の念を抱かずには居られません♪』

エマ『……どういうこと?』

かすみ『まさか感で……おっと、今のは独り言です。じきに分かりますよ、先輩』

エマ『……よく分からないけど、おやすみ』

かすみ『はーい。おやすみなさ~い』ガチャリ

エマ『……』

476: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:22:02 ID:7xP8eyyw
果南「夜時間に、かすみと会ってた……?」

かすみ「あー、そういえばそんなこともありましたっけ」

エマ「何だか嫌な予感がして……校舎を見て回ったの。そうしたら……」

果林「彼方ちゃんの死体を見つけた、ってワケね」

エマ「すぐにみんなを呼ぼうって思った。けど、少し考えて……気付いちゃった」

エマ「元々悪いのはかすみちゃん。でも、最後に引き金を引いたのは私……」

歩夢「だから、電源コードを処分したんだね……」

エマ「……うん。燃え残っちゃったのは、慌ててたから、だと思う」

かすみ「だからって、裁判場に細工までしなくったっていいじゃないですか~。そこまでして死にたくないんですか?」

エマ「死にたくないに決まってるよ!」

477: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:23:08 ID:7xP8eyyw
エマ「停電が起きた時、図書室から悲鳴が聞こえてきて、何とかしなきゃって思った!」

エマ「廊下を走ってたしずくちゃんが、転んだら危ないって思った!」

エマ「ブレーカーがどこにあるかを知ってるのは私だけ! 私にしか出来ないって思った!」

エマ「私は、みんなを助けたくて行動したのに……」

エマ「なんで彼方ちゃんが死んでるの!? なんで私が殺されなきゃいけないの!?」

エマ「なんで、こんな、理不尽なこと……」

モノっちー「まあ、理不尽なゲームだからね。多少のことは受け入れて貰わないと」

ダイヤ「今は黙っててくださる?」

モノっちー「いやいや、そうも行かないよ。ボクだって、そろそろアレをやりたくて仕方がないんだ」

愛「……まさか!」

モノっちー「うん、そのまさか。オシオキだよ」

モノっちー「オマエらだって、投票そのものを誤認させて全滅を狙った人の話なんてもう聞きたくないでしょ?」

478: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:23:41 ID:7xP8eyyw
バッ

しずく「やらせない……!」

エマ「しずく、ちゃん……?」

しずく「エマちゃんが彼方ちゃんを殺したとか、全滅させようとしたとか、そんなことはもういいんです……!」

しずく「エマちゃんは怯えていた私のことを、ずっと想っていてくれた。みんなの為を思っていた」

しずく「そんな優しい人が、殺されていい筈ありません……!」

かすみ「だったら、優しかった津島先輩たちも殺されるべきではありませんでしたよね~」

モノっちー「オシオキの邪魔をするなら、オマエも校則違反扱いにしてオシオキだよ?」

しずく「っ、それでも……!」

エマ「ダメだよ、しずくちゃん」

479: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:24:23 ID:7xP8eyyw
しずく「……」

エマ「いいんだよ、もう……」

しずく「諦めるん……ですか……?」

しずく「あんなに、死にたくなかったのに……どうして諦めるんですか……っ」

しずく「エマちゃんは、何も悪くないのに……!」

エマ「いいんだよ……。モノっちーの言う通り、願い事は叶ったから……」

しずく「え……?」

モノっちー「さて、茶番もいいところで……」

モノっちー「今回は《超高校級の幸運》エマ・ヴェルデさんのために、スペシャルなオシオキを用意しました!」

エマ「しずくちゃん、みんな……本当にごめんね」

モノっちー「それでは張り切って行きましょう! オシオキターイム!」

エマ「ようやく、仲直り出来たのになぁ……」

480: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:25:41 ID:7xP8eyyw

     GAME OVER
ヴェルデさんがクロにきまりました。
   おしおきをかいしします。

481: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:27:23 ID:7xP8eyyw
前回のクロ同様、首輪で薄暗い部屋に連れ去られたエマ・ヴェルデ。

これまた前回同様、磔にされた彼女。前回と違うことがあるとすれば。

背後に大きな壁があることと、その壁に十字架のポーズで磔にされていること。



〈Crisi dei capelli rossi(赤髪危機一髪)〉
《超高校級の幸運 エマ・ヴェルデ処刑執行》

482: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:28:27 ID:7xP8eyyw
磔にされたエマの前に、帽子を被り、クロスボウを持ったモノっちーが立っています。

彼(?)が放った赤い色の矢は、まっすぐエマの身体に……当たることはありません。

軌道が逸れて、右腕の下に当たったようです。これには思わず彼女も冷や汗。

モノっちーは、再び矢を放ちます。

2本、3本、4本……。

しかし、どれもエマには当たりません。

ギリギリ当たらないものもあれば、大きく軌道が逸れたものも。

幸運なことに、彼女にはかすり傷ひとつつきません。

幸運な彼女の奥歯は、ガチガチと歪な音を鳴らします。

業を煮やしたモノっちーは、機関銃のようなものに大量の矢をセットしました。

赤い軌跡を描いて放たれる幾多もの矢。

それらはすべて真正面にいるエマに向けられている筈なのに、1本たりと命中しません。

483: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:29:20 ID:7xP8eyyw
ぜぇ、ぜぇと息を切らせるモノっちー。

赤い矢が大量に刺さった壁は、当然ながら真っ赤に染まります。

しかし、その中央、磔にされたエマだけは赤く染まらず。

さながら、彼女の故郷であるスイスの国旗のようでした。

当の本人は、目玉があちらこちらに泳いでいるようです。

そんな彼女が最後に捉えたのは、ゼロ距離でクロスボウを構えたモノっちー。

トスン。

確実に脳天に当てると、彼女を磔にしていた壁が突然動き出します。

ぴょーん! と、大きな図体に見合わぬ跳ね方をした壁は数秒で落下し、バラバラに砕け散りました。

仕事を終えたモノっちーは一息。

手元に置いてあったリンゴをかじろうとして……ふと、思い出しました。

これは元々彼女の頭上に置くものだったのではないか、と。

……まあ、いっか。

そんな表情を浮かべながら、結局ティータイムに入るのでした。

484: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:30:07 ID:7xP8eyyw
しずく「エマ、ちゃん……」

千歌「……っ」

果南「……」

モノっちー「うけけけけけ……精々、安らかに眠ることだネ……」

歩夢「……」

歩夢(終わった……)

歩夢(2度目の事件、2度目の処刑)

歩夢(改めて……この学園では、人の命がどれだけ軽く扱われるのかと実感する)

かすみ「あーあ、これじゃまるで葬式パーティーじゃないですか。皆さん、超高校級のお顔が台無しですよ~?」

ダイヤ「相変わらず、人を苛立たせることには長けていますわね」

かすみ「ふふん♪ それじゃ、かすみんは一足先に帰らせてもらいますよ~。いい加減朝ご飯を食べないといけませんから」タッタッタッ

歩夢(言うだけ言って……かすみちゃんは足早に裁判場から姿を消した)

歩夢(後に残された私たちは……文字通り、お葬式のようだった)

485: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:31:08 ID:7xP8eyyw
しずく「……私。左腕が、肩から上にあがらないんです」

花丸「……ずら?」

しずく「最初に気付いたのは、この学園に来てすぐでした。その時はまだ、原因が何なのかよく分かっていなかったんです」

しずく「けど、あの日……図書室で例のファイルを見かけた時……」


しずく『未解決事件・ケース“タカマガハラ”……?』

しずく『……』

エマ『しずくちゃん、どうかしたの?』

しずく『い、いえ、何でも……』


しずく「読んではいけない。頭のどこかで、分かっていました。けど、私はその指を止められなくて……」

486: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:31:45 ID:7xP8eyyw
【劇団さかみち団員、襲われる 通り魔の犯行か】

『8月21日午後20時頃、全国を駆け回る人気劇団・さかみちの団員たちが、静岡公演のために宿泊していたホテル近辺の路地で何者かに襲われた』

『劇団の若手スターとして活躍している桜坂しずくさん(16)などが重症を負ったが、全員命に別状はない』

『また、犯人と思しき人物は同日16時頃にも近辺に出没しており、その際近江遥さん(16)ほかが頭を打つなどの軽症を負った』

『いずれも現場にはロープが落ちていたことから、警察は通り魔・タカマガハラが事件に関与している可能性を視野に入れて捜査を進めている』

しずく(何、これ……)

しずく『……っ!』ダッ!

エマ『え、しずくちゃん!?』

しずく(通り魔……重症……!?)

しずく(分からない……何も、分からないよ……)

487: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:32:36 ID:7xP8eyyw
しずく「お部屋に戻ってすぐ、シャワールームに入りました」

しずく「その時、ようやく気付いたんです……」

歩夢(そう言うと、しずくちゃんは突然上着を脱いで行く……)

モノっちー「なになに、そういうショーでも始まるのかな!?」

果林「あなたは黙ってて」

歩夢(彼女が私たちに見せた、その背中は……)

しずく「……ひどい、傷ですよね」

曜「背中を……ナナメに……」

歩夢(服を着直し、彼女は再び説明を始めた)

しずく「原因は、すぐに分かりました。腕が上がらないのはこれなんだって」

しずく「笑っちゃいますよね。お陰で、この学園を出ても大好きな演劇に支障が出ちゃいます」

しずく「でも私は、何も覚えていないんです」

梨子「覚えていない?」

488: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:33:12 ID:7xP8eyyw
しずく「そもそも私は、劇団さかみちの一員として静岡に行ったことはまだないんです」

しずく「それなのに……私は、静岡に行ったことになっていて」

しずく「いつの間にか通り魔に襲われていて、いつの間にか左腕が上がらなくなっていて」

しずく「どうして……こんなことになっているんですか」

しずく「どうして、私はっ! 自分の身に降りかかった不幸を何も覚えていないんですかっ!!!」

しずく「こんなっ……大好きなことが出来なくなるような、大きな傷なのにっ……!」

せつ菜「しずく、さん……」

千歌「だから……しずくちゃんは部屋に閉じこもってたんだね」

千歌「怖くて、怖くて……何もかも、信じられなくなってたんだね」

しずく「……」コクリ

489: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:34:17 ID:7xP8eyyw
しずく「でも……エマちゃんには、悪いことをしちゃいました」

しずく「図書室で調べ物をしている私に、届かない位置にある本を取ってくれたりと、親切にしてくれたんです」

しずく「それなのに、私は……」

しずく「だからせめて、庇ってあげたかったんです」

歩夢「それで、あの反論……」

しずく「エマちゃん、言ってくれたんです。慣れないことが多くて、失敗も多いかも知れないけど……これからもよろしくね、って」

しずく「でも、私はっ……!」

愛「……願い事は叶ってた、って、そういうことだったんだね」

しずく「えっ……?」

490: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:34:49 ID:7xP8eyyw
愛「エマちーは、しずくと仲直りしたいってずっと悩んでた」

愛「でも、二人がそうやってお互いを想うことが出来たってことはさ」

愛「きっと、出来てたんだよ。仲直り(>v<)」

璃奈「ちょっと、璃奈ちゃんボード勝手に取らないで(>_<。)!」

愛「ごめんごめん。とにかく……今は前を向いて行けばいいんだよ」

愛「折角仲直り出来たのに……お友達に示しがつかないっしょ?」

しずく「……」

しずく「……そう、ですね」

しずく「ありがとうございます……」

491: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:35:22 ID:7xP8eyyw
グ~~~

曜「……」

曜「ごめん……私のお腹の虫、みたいだね」

しずく「……」プッ

しずく「……ふふっ」

曜「ちょっと、笑わないでよー!」

歩夢(こうして……2回目の学級裁判は幕を閉じた)

歩夢(失った物は大きい。この学園生活の終わりも、まだまだ姿を見せない)

歩夢(けれど……一歩ずつ、先に進んでいる)

歩夢(みんなで力を合わせれば……きっと、大丈夫)

鞠莉「歩夢……時間のある時に、私の個室に来てくれるかしら」

歩夢(……幾つかの、不安を除いて)

492: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:35:55 ID:7xP8eyyw
かすみ「あーやだやだ。協力って、かすみんが一番嫌いな言葉なんですよ」

かすみ「力を合わせたところで、どうにもならないものはどうにもならないんです」

かすみ「だったら、私は……」

かすみ「……」

かすみ「ま、ゆっくり考えますか。今日は甘い物が食べたい気分です♪」

493: ◆8TImjtGSKs 2018/05/06(日) 23:36:26 ID:7xP8eyyw
Chapter2 END

https://i.imgur.com/2E4DkKE.png

To be continued……


プレゼント“切れたミサンガ”を獲得しました。

496: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 21:59:47 ID:v5I.QDzw
────歩夢の個室

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『えー、夜10時になりました。ただいまより夜時間になります』

モノっちー『まもなく、食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となります』

モノっちー『それでは皆さん、おやすみなさい』

プツン

歩夢「……」

歩夢「なんで……私と千歌ちゃん、だけ……」

歩夢(2度目の学級裁判を終えて、その日の夜)


鞠莉『歩夢……時間のある時に、私の個室に来てくれるかしら』


歩夢(私の脳裏には、鞠莉さんの話がこびりついていた)

497: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:00:43 ID:v5I.QDzw
────夕方、鞠莉の部屋

鞠莉『まずはお疲れさま、歩夢。あなた、超高校級の探偵を名乗ってもいいんじゃないかしら?』

歩夢『そんな、私なんて……』

鞠莉『ケンソンしなくたっていいのよ。さて、本題だけど……単刀直入に言うわ』

鞠莉『あなたと千歌っち、プロフィールがない』

歩夢『えっ……?』

鞠莉『昨日話したでしょう? 例の【虹ヶ咲学園生徒プロフィール】の話よ』

歩夢『あの、そうじゃなくて……』

鞠莉『苦労したのよ? 先に解析出来そうなロックを後回しにして、難しい方から手をつけたんだから』

歩夢『いや、だから……』

鞠莉『分かってるわ。どうして2人の分がないのか、でしょ?』

498: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:02:03 ID:v5I.QDzw
鞠莉『プロフィールがないというよりは、削除された、と言った方が正しいわね』

歩夢『削除……消されたってことですか?』

鞠莉『ええ。あなたたちのページは、入力データが消去された痕跡があるのよ』

歩夢『なんで、そんなこと……』

鞠莉『2人が才能を思い出せないこと、もしくは……他に消されたページと関係があるかも知れないわね』

歩夢『?』

鞠莉『意図的に消されたと思われるプロフィールは、あなたたちを含めて10人近く』

鞠莉『それら全てに共通しているのは、私たちと同じ“虹ヶ咲学園14期生から16期生までのデータ”だってことよ』

歩夢『……』

499: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:03:38 ID:v5I.QDzw
鞠莉『わざわざ削除したってことは、モノっちーにとって知られたくない秘密があるってことなんじゃないかしら』

歩夢『なんで……私の才能が……知られたくない秘密なんですか……』

鞠莉『【持ち出し厳禁】のファイルを確認しないことには、何とも言えないわ』

鞠莉『幸い、【虹ヶ咲学園生徒プロフィール】よりは組まれてるプロテクトが楽だからね。頑張るわ』

歩夢『……』

鞠莉『それと、今回の彼方の事件に関してなんだけど──』


歩夢(……そこから先、鞠莉さんが何を言っていたのかは、ほとんど覚えていない)

歩夢(“分からない点が残っている”……覚えているのは、そのフレーズだけ)

歩夢(何が、分からないんだろう。あんな悲しい事件のことは、あまり思い出したくないのに)

歩夢(ただでさえ、分からないことがいっぱいなのに)

歩夢(これ以上、“分からない”を増やされても……)

歩夢「……」

歩夢「……おやすみなさい」

500: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:04:41 ID:v5I.QDzw

     Chapter3

キリングフレンド (非)日常編

501: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:05:27 ID:v5I.QDzw
────学園生活11日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

モノっちー『なお、本日より新たに校則を追加しました。オマエら、後で電子生徒手帳を確認しておくように!』

プツン


~校則~

11.電源管理等の関係上、隠し部屋への侵入を禁止します(これに伴い、隠し部屋への扉を施錠させて頂きました)。

12.鍵の掛かった扉の破壊、こじ開け等を禁じます。ただし捜査に必要な場合はこの限りではありません。

502: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:06:54 ID:v5I.QDzw
────食堂

愛「それっぽいこと言ってるけどさ~。絶対、裁判場に侵入されないために追加したんだって、アレ!」

ダイヤ「やはり、愛さんもそう考えますか」

愛「まあね。あ、おはよー歩夢、せっつん」

歩夢「うん、おはよう」

せつ菜「例の……新しい校則の話ですか」

ダイヤ「ええ、まあ」

歩夢(あんなことがあって起きてからまだ一夜しか経っていないけれど、それでも人間はお腹が減る生き物)

歩夢(朝食を食べながらの雑談は、11、12番目の校則に関する話題で持ち切りだった)

歩夢(彼方ちゃんの死、エマちゃんの取った行動。モノっちーが校則を追加した背景は、間違いなくそこにある)

歩夢(ただその議題を話すのは、当然食堂にいた面々に限った話で……)

503: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:08:08 ID:v5I.QDzw
せつ菜「そういえば、果南さんたちの姿が見えませんが?」

璃奈「言われてみれば、そうだね(・v・)」

歩夢(この場にいない人は……というより、いる人を数えた方が早い)

歩夢(私とせつ菜ちゃん、ダイヤさん、愛ちゃん、璃奈ちゃん、梨子ちゃん)

歩夢(残りのみんなは……まだ顔を見せていない)

ダイヤ「恐らく……」

梨子「一応、止めたんだけど……仕方ないわよね」

歩夢「?」

愛「そういや、さっき曜とかがかすみの部屋に入ってったけど……」

歩夢(みんながいない原因は……すぐに分かった)

504: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:10:09 ID:v5I.QDzw
────かすみの個室

かすみ「カンベンしてくださいよ~。かすみん、これから朝御飯を食べる予定だったんですから」

果南「だったら、トレイに入れて持ってくるよ」

かすみ「手足を縛られた状態でどうやって食べろっていうんですか~」

曜「知らない。自分で考えて」

かすみ「食べさせてくれないんですか~? 例えば~……果林先輩とか」

果林「それはどういう意味かしら」

かすみ「果林先輩、曜先輩たちを抑えようとはしてくれていたじゃないですか。それに、その手の人たちには需要あるらしいですよ~?」

果林「……私はあなたの母親になったつもりはないわ。大体、乱暴はよしなさいとは言ったけれど、あなたの処遇については考える必要があるのよ」

かすみ「リーダー気取りは大変なんですね」

果林「……」

505: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:11:00 ID:v5I.QDzw
歩夢「ちょっと……これ、どういうこと?」

花丸「見ての通りずら」

しずく「かすみさんを縛って、部屋に閉じ込めておく……みたいです」

果南「彼方やエマが死んだのだって、元を辿ればかすみが原因みたいなものでしょ?」

せつ菜「でも、ここまでしなくても……」

花丸「かすみちゃんは……オラたちを『せつ菜ちゃん犯人説』に誘導しようとしていた。もしかしたら、オラたちもみんなオシオキされていたのかも知れないずら」

歩夢「だからって……」

千歌「ルビィちゃんの時と、昨日ので2回。放っておくと、また何をやるか分からない……んだよね、曜ちゃん」

曜「うん。ごめんね、千歌ちゃん。こうするしかないから……」

千歌「ううん、いいよ。乱暴は嫌いだけど……仕方ないよね」

歩夢「……」

506: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:12:05 ID:v5I.QDzw
────校舎2階、3階へ続く階段前

千歌「やっぱり……開いてるね、シャッター」

歩夢(あのあと、私たちは食堂で今後のことを話し合った)

歩夢(かすみちゃんの処遇は……ひとまず、代替案が見つかるまでああしておくらしい)

歩夢(そして……その議論に鞠莉さんは出席していなかった)

歩夢(相変わらず、例のPCと睨めっこしているのだという)

せつ菜「先に行ってますよ、歩夢」

歩夢「……うん」

千歌「歩夢ちゃん、具合悪いの?」

歩夢「ううん、そうじゃないんだけどね……」

千歌「?」

歩夢(大丈夫、だよね)

歩夢「行こっか」

歩夢(言い聞かせながら、私たちは階段を上って行った)

507: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:14:45 ID:v5I.QDzw
────校舎3階

歩夢「今度の教室は……」

https://i.imgur.com/kSyxb2Q.jpg

https://i.imgur.com/CVnUq9M.jpg

千歌「教室に美術室、被服室と衣装倉庫、職員室とその隣が学園長室」

歩夢「長い廊下を渡って、音楽室……」

千歌「梨子ちゃんが喜びそうな部屋がいっぱいだね。美術室とか音楽室とか!」

歩夢「うん。それに、職員室と学園長室……」


鞠莉『ええ。あなたたちのページは、入力データが消去された痕跡があるのよ』

鞠莉『2人が才能を思い出せないこと、もしくは……他に消されたページと関係があるかも知れないわね』


歩夢(もしかしたら……)

千歌「歩夢ちゃん?」

歩夢「……なんでもない。行こ、千歌ちゃん」

508: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:16:25 ID:v5I.QDzw
────美術室

千歌「おおー……凄いね。絵とか彫刻とか、いっぱい飾ってる」

歩夢「その割には……絵の具とかキャンパスとか彫刻刀とか、そういうのがあんまりないような?」

愛「ああ、それなら……多分、1階の倉庫に揃ってたんじゃない?」

璃奈「実際、この前梨子さんは倉庫から画材を持ってきてたみたいだし(・v・)」

歩夢(言われてみれば……画材が全部美術室に置いていたら、ダイヤさんたちの絵は描けなかったのかも知れない)

愛「画材はどこに? あそこの倉庫に! なんてね」

「「……」」

千歌「……ねえ、この部屋って冷房掛かってたっけ?」

歩夢「さ、さぁ……?」

歩夢(寒さから逃げるように、私たちは美術室を後にした)

歩夢(愛ちゃん、口を尖らせていたような気がするけど……あれはキツいよ!)

509: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:17:24 ID:v5I.QDzw
────被服室

せつ菜「凄いです歩夢! 隣の衣装倉庫に、いっぱいアイドル衣装がありました!」

歩夢(被服室に入るなり、目を輝かせたせつ菜ちゃんが話しかけて来た)

せつ菜「これはかの有名なニチアサアイドルアニメの衣装で、初めて登場した時のエピソードは──」

歩夢(これはマズい。せつ菜ちゃん……いつぞやかのかすみちゃんみたいに、だいぶ『スイッチ』入ってる気がする)

果林「衣装だけじゃないわ。初心者でも少し教えれば衣服が作れるようなミシンや、アイロン……かなり充実した設備ね」

???「アイドル衣装以外にも、色んな服があったし……」

???「こーんなのもあったよ!」

歩夢「……えっ!?」

歩夢(衣装倉庫からのっしのっしと歩いてきたのは、大きなモノっちー……じゃなくて)

千歌「曜ちゃん! 何してるの?」

うちっちー(曜)「えへへ……いつか着てみたかったんだよね、これ!」

歩夢(うちっちーの着ぐるみを来た、曜ちゃんだった)

510: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:18:41 ID:v5I.QDzw
千歌「凄いね、こんなのもあるんだ……」

曜「ちなみに、初代うちっちーの着ぐるみもあったよ!」

歩夢「初代うちっちー?」

千歌「んーとね……そもそもうちっちーって、沼津のマスコットキャラクターなんだ」

曜「最初は人っぽい造形だったんだけど、後から今の丸っこい着ぐるみにデザインが変更されたんだよ」

モノっちー「そうそう。パイセンにはお世話になってたよネ」

千歌「……うえぇ」

果林「……相変わらず、出て来る時は急ね」

モノっちー「いやぁ。本家サマのグッズは沼津に行けばいっぱい買えるからネ。ボクもいつかはあそこに並ぶのが夢だよ」

歩夢(言うだけ言って……いつものように、モノっちーは姿を消した)

千歌「うーん……なんだか、大好きなものを汚された気分だよ」

曜「うん、私も同感」

511: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:20:27 ID:v5I.QDzw
果林「ところで歩夢ちゃんたち……ファッションに興味はないかしら?」

歩夢「?」

千歌「そういえば、果林ちゃんって超高校級のコーディネーターだったね」

果林「ええ。流行や雰囲気、体格、その日の気分やイベント。それらに合わせて、みんなの衣服を整えていくっていうのは、結構楽しいものよ」

せつ菜「分かります分かります! 今日などんな衣装でステージに立とうとか、どんな格好でお客さんたちを喜ばせようとか、悩みすぎて時間が足りないくらいです!」

果林「せつ菜ちゃんの場合はちょっと違うけれど……でも、本質は一緒ね」

果林「人は外見だけじゃないとは言うけれど、その人を表す判断材料の一つであることは間違いないわ。いつも誰に見られても恥ずかしくない恰好でいる、これって結構難しいのよ」

果林「その点、璃奈ちゃんはある意味では凄いと思うわ。顔を見せられないことを逆手に取って、小柄な体格と合わせて一つのキャラクターを作り上げてるんだもの」

果林「……っと、ごめんなさい、話しすぎちゃったわ。ちなみに、衣装作りもある程度は出来るから、何か必要だったら言ってね」

歩夢(果林さんのファッションコーディネート……凄く気になるけれど、今は3階の探索を優先することにした)

歩夢(ちなみに、曜ちゃんとせつ菜ちゃんは果林さんに連れられて衣装倉庫に行った)

千歌「多分……着せ替えのお人形さんコースだね」

512: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:23:03 ID:v5I.QDzw
────職員室

歩夢(職員室……本来ならば、先生たちがデスクワークに励みながら、学生たちの今後を話し合ったりする場所)

歩夢(けれど……)

花丸「誰もいないずら……」

ダイヤ「全く……この学園はどうなっているんですの!?」

歩夢(頼れる教員の姿はどこにもなく、コピー機や、ずらりと並んだ教員デスク……)

歩夢(そして、花丸ちゃんとダイヤさんがいるだけだった)

花丸「机や棚なんかは一通り調べたけど、何も入ってなかったよ」

ダイヤ「それに、相変わらず窓には鉄板……そんなに、私たちを外に出したくないのですか」

モノっちー「もしかしたら……外の世界が見せられない理由があったりして」

千歌「また出た……」

花丸「……外を見せられないって、どういうこと?」

モノっちー「……どういうことなんだっけ? まあいいや」

ダイヤ「ちょっと、お待ちなさ──おや?」

513: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:24:15 ID:v5I.QDzw
歩夢「どうかしたんですか?」

ダイヤ「写真……ですわね」

千歌「モノっちーが落としていったのかな?」

花丸「こ、これって……!」

歩夢(私たちは、一枚の写真をじぃっと見つめる)

歩夢(そこに写っていたのは……)

ダイヤ「彼方さんと……」

千歌「エマちゃん、だよね」

歩夢(その写真の季節は、夏なのだろうか。2人が仲良くかき氷を食べている姿が写っていた)

歩夢(何故、この学園で初めて出会った筈の2人が? ……というより、疑問はそこだけじゃない)

花丸「なんで……“窓に鉄板がない”ずら?」

歩夢(写真は、どう見ても学校の教室を写している。けれど、その教室の窓からは青空が広がっていて……)

514: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:28:55 ID:v5I.QDzw
歩夢(いつ撮った? 誰が撮った? どこで撮った? 何故撮った……はちょっと違う)

歩夢(浮かんだ大量の疑問符は……不意に、そして強制的にかき消されることになる)

モノっちー「あっ、見たな!」ヒョイ

ダイヤ「なっ……」

モノっちー「いやぁ、落とし物したかも知れないって戻って来て正解だったよ」

モノっちー「ほら、よくあるよネ。ちゃんと鍵かけたかな、ガスの元栓閉めたかなって心配になって、何度も家に戻るヤツ」

モノっちー「大体は大変なことになんてなる筈ないから、心配しなくたっていいんだけどネ」

モノっちー「見ろよ、このしがらみに囚われていない、幸せそうな青春の顔を!」

千歌「この写真、何か知ってるの?」

モノっちー「秘書がやりました!」

ダイヤ「……は?」

歩夢(意味不明なことを叫んで、モノっちーは足早に消えて行った)

歩夢(……勿論、写真はひったくられた)

515: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:30:49 ID:v5I.QDzw
────学園長室前

ガチャガチャガチャ!

千歌「……開かないね」

果南「鍵が掛かってるみたいだよ。頑張れば破れそうだけど……校則がね」

歩夢「そういえば……ここに来る途中にもあったね、大きな扉」

果南「廊下の真ん中にあった扉でしょ? あれも開かないし……もしかしたら、外に繋がってるのかな?」

千歌「えっ……それじゃあ、3階から飛び降りることになっちゃうの!?」

果南「倉庫にロープがあるから、心配しなくていいよ」

千歌「うーん……」

果南「シャッターは下りてるけど、4階に続く階段もあるし……この学園、どこまで続くんだろうね」

歩夢「……」

歩夢(入れない学園長室、か)

516: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:31:39 ID:v5I.QDzw
────音楽室

歩夢(音楽室というより、大ホールと呼ぶに相応しいその部屋では……)

歩夢(綺麗な旋律と歌声が、完全防音の中を反響していた)

梨子「~♪」

しずく「~♪」

歩夢(グランドピアノを鳴らす梨子ちゃんは、今まで見られなかったピアニストとしての才能を遺憾なく発揮していて)

歩夢(舞台に立って歌うしずくちゃんは、そこだけスポットライトを独占しているよう……)

歩夢(まるでこのホールは、2人のためにあるのではないか……そう、錯覚するほどだった)

千歌「すごいね、2人とも」ヒソヒソ

歩夢「……うん」

歩夢(音楽室を調べることも忘れて、ひとしきりプチミュージカルを鑑賞した私たち)

歩夢(抜かりなく調査済だったことを梨子ちゃんたちから聞かされ、4人で食堂に戻ることとなった)

517: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:32:32 ID:v5I.QDzw
────歩夢の個室

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『えー、夜10時になりました。ただいまより夜時間に──』

歩夢「ふーっ……」

歩夢(ぼふん。倒れ込むように、ベッドにダイブ)

歩夢(結局、今回の探索でも、外への出口は見つからなかった)

歩夢(相変わらず窓には鉄板。一体、いつになったらお日様を拝めるのだろう)

歩夢(……その頃には、私たちはどうなっているのだろう)

歩夢(例の写真についても、誰もが「分からない」としか答えるほかなかった)

歩夢(そして。新しい校則のせいで調べられてはいないけれど)

https://i.imgur.com/n0lOfmg.jpg

歩夢(多分、3階の隠し部屋はここだろう、という結論になった)

歩夢「教室大の広さ、か……」

歩夢(もしかして……消えた名簿と、関係があったりするのかな……?)

518: ◆8TImjtGSKs 2018/06/26(火) 22:33:36 ID:v5I.QDzw
~モノっちー劇場~

物語を構成する上で大事な要素の一つとして『フラグ』というものがあります。

生死や恋愛、勝ち負け……とにかく「こういう展開になったら、こんな結末になるんじゃないか?」と、受け手が簡単に勘づくものの総称ですネ。

ところが。そういったフラグが使い尽くされた結果、それを逆手に取った展開が喜ばれることもあります。

伝説の剣を手にする直前で、勇者が魔王に敗れたり。

あからさまに怪しい人物が、順当に犯人だったり。

いかにもな発言をしたキャラクターが、程なくして退場したり。

とはいえ。そういった『フラグ潰し』も主流になり、一周まわって王道の方がウケがいい、なんてこともあったりします。

そういったフラグ管理の循環は、もう何周目になるのでしょうネ。

世のクリエイターは何度、期待と裏切りを連鎖させたのでしょうネ。

……え? これは何かのフラグなのかって?

それはボクにも分からないよ。

521: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:26:16 ID:eRwJC8Yk
────学園生活12日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

歩夢(……また、この檻のような学園での1日が始まる)

歩夢(虹ヶ咲に入学する前、いわば春休みの不規則だった生活習慣が改善されつつあるのが……何とも皮肉だ)

522: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:27:53 ID:eRwJC8Yk
────昼頃、食堂

歩夢(いつものように、梨子ちゃんが作ってくれた食事をみんなで食べる)

歩夢(今日のお昼ご飯である海鮮丼が放つ独特の生臭さと、少しぎこちない雰囲気を漂わせながら……)

鞠莉「Good morning everyone!」

歩夢(朝からずっと続いていたムードをぶち壊したのは、場違いなくらい元気な……というより、深夜テンションの延長上にいる鞠莉さんだった)

ダイヤ「もうお昼です。朝食には手をつけなかったそうですね」

鞠莉「ごめんなさいね。徹夜明けで疲れてたのよ」

花丸「じゃあ、あの『ぷろぐらむ』っていうのは解析が終わったの?」

鞠莉「それが行き詰っちゃったのよ。しばらく目と頭を休めないと、脳みそがpanicよ」

千歌「鞠莉ちゃんでも、限界があるんだね……」

鞠莉「ある程度のラインまで解析されることは、向こうも想定済みだったみたいね。そこにたどり着いた途端に別のプログラムが起動して、身動きが取れなくなったのよ」

鞠莉「お陰でPCを強制シャットダウンさせる羽目になってね、再起動したら、解析はリセット。これまでの努力が大体パー」

鞠莉「まあ、職員室のコピー機で印刷はしてあるから、見たかったら言ってちょうだい」

523: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:28:54 ID:eRwJC8Yk
歩夢(ずぞぞぞぞ、とわざとらしい音を立てながら、鞠莉さんは紅茶を口にする)

ダイヤ「鞠莉さん、あなた──」

歩夢(我慢ならなかったダイヤさんが口を開いたのと同時に、彼女は私たちにある質問を投げかけた)

鞠莉「そういえば、あなたたちは何も覚えてないの? “虹ヶ咲学園に籍を置いていた”のに」

ダイヤ「……は?」

鞠莉「花丸たち1年生や、才能も思い出せない歩夢と千歌っちは仕方ないとして、2年生と3年生が“どんな高校生活を送っていたのか思い出せない”なんて……」

鞠莉「ヘンだと思わない?」

愛「……どゆこと?」

璃奈「私たちはみんな、年がバラバラだって話になったことがあったよね。それのことを言ってるんじゃないかな(・v・)?」

鞠莉「ええ。歩夢には話したけれど、生徒プロフィールまでは解析が出来ていたのよ」

524: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:30:28 ID:eRwJC8Yk
歩夢(鞠莉さんは、淡々と明かされた事実を披露し始める)

歩夢(私たち18人は、虹ヶ咲学園の14期生から16期生までとしての学籍があることになっていた)

歩夢(載っていたのは、全員のプロフィール……といっても、持っている才能、生年月日や血液型、アレルギー持ちか否か、といった簡易的なもの)

歩夢(血液型までは、電子生徒手帳にも載っていた情報だ。アレルギーに関しても本人が分かっている以上、特に気にすることではない)

歩夢(それらより気になるのは、私と千歌ちゃんを含めた10人近くの名簿データが消えていること。そもそも、消えたデータは誰の物なのかハッキリしていない)

鞠莉「ここまでが、解析で明らかになったこと。何を言いたいか、分かったかしら?」

花丸「……オラたちはみんな、虹ヶ咲学園の入学式に向かう途中で意識を失って、気が付いたら教室にいた」

花丸「それなのに、鞠莉さんたちは既に2、3年ここで学園生活を送ったことになっている……」

千歌「ちょっと待ってよ! それじゃあ、まるで私たちが……」

梨子「虹ヶ咲学園で過ごした記憶を、失ってる……!?」

愛「そ、そんなバカなことあるワケ……」

花丸「あるずら。根拠なら、いっぱい……」

愛「……は?」

525: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:31:39 ID:eRwJC8Yk
璃奈「しずくちゃんが大怪我を負ったことを覚えていないのは、ここで過ごしている間にあった『何か』を忘れているのかも……(>_<。)」

花丸「そもそも職員室で見つけたあの写真だって……普通に考えたら“彼方ちゃんとエマさんが一緒に学園生活を送っていた”ことの証明になる……」

モノっちー「まあ、それで正解だからネ」

愛「!?」

モノっちー「ぶっちゃけ、学年が違う段階で察して欲しかったんだけどネ。いつ気づくかず~っと待ってたんだよ」

モノっちー「というワケで、オマエらは虹ヶ咲学園で、1年から3年を過ごした仲間なのでしたー!」

モノっちー「例の写真も、その学生生活のワンシーンなんだよ。どう、楽しそうでしょ?」

歩夢「……」

モノっちー「どしたの? 折角、謎が一つ解けたっていうのにさ」

梨子「いや、だって……」

「「……」」

526: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:32:40 ID:eRwJC8Yk
モノっちー「絶望的だよネ。オマエらは、そのクラスメイト間で殺し合ってたんだからさ」

歩夢(そういう、ことだ)

歩夢(モノっちーの言葉を信じるなら、私たちはきっと、元の学園生活では友達だったのだろう)

歩夢(なのに、その記憶を失って、友達同士でコロシアイなんて……)

千歌「……こんなことをさせて、私たちをどうしたいの」

モノっちー「何度も言ってるじゃん、ボクはオマエらが絶望する顔を見たいんだって。うけけ、今のオマエらの表情は及第点だよ!」

ダイヤ「……虹ヶ咲学園に、何か恨みでも持っているのですか」

モノっちー「それはどうだろうネ。あると言えばあるし、ないと言えばない……」

モノっちー「まあ、然るべき時まで黙秘権を行使させてもらうよ。それまでに何人生き残ってるかな……うけけけけけ」

歩夢(神出鬼没。好きなだけ喋って、モノっちーは姿を消す)

歩夢(いつもどこに消えているのか……なんて疑問は、今回に限っては微塵も浮かばなかった)

527: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:33:40 ID:eRwJC8Yk
愛「……嘘、だよね。うん、嘘だ」ガタッ

愛「ご馳走様。……部屋、戻ってる」

璃奈「待って、愛ちゃん(?□!)!」

愛「ごめん……ちょっと、1人にさせて」

璃奈「……(?□!)」

ダイヤ「……無理もありません。動機ビデオか、それ以上にショッキングな話ですから」

千歌「どうしよう……この話、曜ちゃんたちにする……?」

鞠莉「正直、あまりオススメはしないわね。この話をキッカケに殺人が起きる可能性だってないとは言い切れないもの」

梨子「でも、愛ちゃんのことを話さないワケにもいかないし……」

鞠莉「Fmm……そういえば、他のみんなはどこに行ったのかしら?」

花丸「えっと……確か、曜ちゃんと果南ちゃんがプールで……」

千歌「しずくちゃんが、せつ菜ちゃんと果林さんに連れられて……多分、被服室かな?」

梨子「衣装がどうの、って話をしてたから、多分……」

鞠莉「……かすみは?」

ダイヤ「彼女は、自室で頭を冷やして貰うことになりました」

528: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:34:42 ID:eRwJC8Yk
鞠莉「そう……効果があるとは思えないけどね」

ダイヤ「ですが、何もしないよりはいい、というのが皆さんの判断です」

鞠莉「まあね。毒薬なんて危ない物をもち、だ、し……」

鞠莉「……っ」

歩夢(食事に手をつけようとして、鞠莉さんは寸前で手を止めた)

鞠莉「毒薬はどうなったの?」

花丸「えっ、と……」

鞠莉「もしかして、放置したまま?」

千歌「大丈夫だよ。かすみちゃんはしばらく、あの部屋から出てこないし……」

鞠莉「……」ダッ!

歩夢(血相を変えて、食堂を飛び出す鞠莉さん)

歩夢(彼女が向かった先は、勿論……)

529: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:35:30 ID:eRwJC8Yk
────かすみの部屋

かすみ「……」

鞠莉「何とか言ったらどうなの、かすみ」ガサゴソ

歩夢(目に飛び込んできたのは、引き出しやクローゼット、部屋の中を物色している鞠莉さんの姿)

歩夢「これは、何が……」

鞠莉「見つからないのよ、毒薬が」

歩夢「え……?」

鞠莉「まずいことになったわ。このままだと、私たちは全滅しかねない」

歩夢(毒薬、全滅。それらの熟語から、ただならぬ事態になっているのは確かだ)

歩夢(……けれど)

歩夢「ど、どういうことかちゃんと説明してください!」

鞠莉「……みんなを、食堂に集めてくれるかしら」

かすみ「かすみんは行かなくていいんですか~?」

鞠莉「あなたは信用出来ない」

530: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:36:14 ID:eRwJC8Yk

かすみ「……」

かすみ「……そうですか」

531: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:37:06 ID:eRwJC8Yk
────食堂

せつ菜「無自覚殺人!?」

鞠莉「ええ。一番警戒しなければならないのは、無差別に、そして無自覚に起きる殺人よ」

果南「話が全然見えないんだけど……どういうこと?」

果林「かすみちゃんが毒を持っていなかったってことは、既にかすみちゃんがどこかにやったか、誰かが奪った後ってことよ」

曜「誰かが奪ったなんて、そんな……」

ダイヤ「どちらにせよ、私たちは有るかどうかも分からない毒薬に怯える日々を過ごす羽目になります」

ダイヤ「例えば、厨房の食材。どれかに毒薬が仕掛けられていたとしたら、どうなりますか?」

歩夢「誰が死ぬか分からない状況が、出来上がる……」

鞠莉「それだけじゃないわ。以前、モノっちーはこう言っていた」


モノっちー『ちなみに学級裁判において、議論する内容の終着点は“最後にトドメを刺した人物が誰か”になります』

モノっちー『たとえ殺意がなくとも、引き金を引いた人間がクロになってしまうのですよ』

532: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:38:34 ID:eRwJC8Yk
鞠莉「このルールは見事に適用され、彼方とエマが犠牲になった」

しずく「……」

鞠莉「さっきの話にこのルールを当てはめると……もう、分かったかしら?」

花丸「“誰が毒入り料理を口にするか分からない。その上、誰がその料理を出してしまったのか、突き止めることはほぼ不可能”……」

鞠莉「ええ。もしそんな事態に陥ったら、ほとんど全滅と言っていいでしょうね」

梨子「そんな……」

果林「何か……対策はあるのよね? まさか、飲まず食わずで餓死しろなんてことはないでしょうし」

ダイヤ「幸いなことに、厨房には缶詰や菓子類といった保存食が用意されています。……種類は心もとないですが」

ダイヤ「しばらくの間は、それらで凌ぐしかないでしょうね」

鞠莉「いい? これは強制よ。誰か1人が命を落とす、だけで終わる話じゃないの」

璃奈「あとで……愛ちゃんにも、伝えておく(>_<。)」

ダイヤ「そうしてくれると、助かります」

533: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:39:41 ID:eRwJC8Yk
鞠莉「というわけで、ごめんなさいね、梨子。しばらくあなたの料理は食べられそうにないわ」

梨子「ううん、こんな状況だし……」

千歌「でも、やっぱりさ……」

千歌「また、みんなでご飯食べたり、お茶会したり……出来るようになるといいね」

千歌「曜ちゃんも、そう思うよね」

曜「……」

千歌「曜ちゃん?」

曜「え、あ……そうだね! 千歌ちゃんの言う通りであります!」

千歌「むー……話、聞いてなかったでしょ」

曜「ごめんごめん」

ダイヤ「……とりあえず、当面の方針は決まりましたわね」

鞠莉「一応、モノっちーにも交渉してみるわ。あまり期待は出来ないでしょうけど」

歩夢(こうして私たちの、毒薬という見えない影に怯える生活が幕を開けた)

歩夢(飲食物が何もない、というワケではないから、しばらくの我慢で済む……)

歩夢(そんな流れになって、この日は解散となった)

534: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:40:39 ID:eRwJC8Yk
────夜、プール

ザパァ

曜「……」ゼェ ゼェ

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『えー、夜10時になりました。ただいまより夜時間になります』

モノっちー『まもなく、食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となります』

モノっちー『それでは皆さん、おやすみなさい』

モノっちー『ああそうそう。オマエ、結構ギリギリだったからね。もう少しあがるのが遅れていたらサイレン鳴ってたからね』

プツン

曜「……」

535: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:41:30 ID:eRwJC8Yk
~モノっちー劇場~

世界三大〇〇、四天王、五人囃子……何かしら、数が決まっている事柄。

全て知ったら死ぬ、ともっぱら噂の『学校の七不思議』もその1つ。

ところで、学園を管理するボクはいつも思うんです。

何故『七つ』なんでしょうネ。

一説には『七』という数字は、人間が感知出来る数の限界だったから、とも言われているそうです。

八百屋だとか八百万の神だとか、嘘八百だとか。

『八』には数えきれないほど多い、という意味があるから……なんだそうな。

でもネ、それって『八』じゃなくて『八百』なんじゃない?

人間、意外と799までは認知出来るんじゃない?

やるじゃん、人間。

というワケで、ボクは今日も学園の七九九不思議を考えるのに忙しいんだ。

アイデアはいつでも募集しているよ。

536: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:42:22 ID:eRwJC8Yk
────学園生活13日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

537: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:43:19 ID:eRwJC8Yk
────食堂

せつ菜「今日はコンビーフですか……」モッシャモッシャ

璃奈「今となっては貴重なタンパク質だね……(・v・)」モグモグ

花丸「う~……やっぱりひもじいずら……」

果林「かすみちゃんと愛ちゃんにも届けて来るわね」

歩夢(未開封のペットボトルと缶詰を丁寧に洗って、口にする)

歩夢(空腹を訴える者がいれば、手が加えられていないことを念入りに確認したスナック菓子を提供する)

歩夢(ダイヤさんが言っていた通り、確実に安全な飲食物の種類は、極端に少ない)

歩夢(今までとは違った意味で、死と隣り合わせの生活)

歩夢(最悪の事態に陥らないために最善を尽くす心労)

歩夢(満足な食事が摂れないことによる栄養の偏り)

歩夢(ゆっくりと、そして確実に私たちの間に落とされる影)

歩夢(それらがハッキリと効果を表したのは……夕方のことだ)

538: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:44:32 ID:eRwJC8Yk
────保健室

ドタドタドタドタ

バン!

千歌「曜ちゃん!」

果林「シーッ。気を失っているから、静かに」

千歌「あ、ごめん……曜ちゃんが大怪我したって聞いたから……」

果南「プールで盛大にやらかしたみたいだね。正直、大人しくしてもらった方が都合がいいよ」

千歌「ちょっと……果南ちゃん、なんでそんな言い方なの!?」

果南「……」フン

千歌「果南ちゃんってば!」

歩夢「2人とも、落ち着いて……」

539: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:45:15 ID:eRwJC8Yk
歩夢(事の発端は、昨日。曜ちゃんと果南さんがプールに行っていた時のこと)

歩夢(数日前の水泳大会で上手く泳げなかった曜ちゃんは、果南さんに水泳のレッスンを受けていた)

歩夢(“海が第二の実家”と自称する果南さんに教われば、きっと『以前のように速く泳げる』と)

歩夢(けれど、いくらレッスンを受けても、曜ちゃんの泳力は満足できる領域に戻らなかった)

歩夢(それで焦った彼女は、夜時間ギリギリまで自主練をしていたのだ)

歩夢(そして、無理がたたり──今に至る)

果南「ここに来る前から、曜のことはダイバー仲間に聞いてたよ。超高校級の船乗りであると同時に、水泳選手にも劣らない泳力だって」

果南「広い海で活動する曜は、海難事故の現場に遭遇することも多かったんだ。事故現場での人命救助に役立っていたらしいよ」

梨子「だから、泳げなくなったことに焦っていた……」

果林「ここ最近、様子がおかしかったものね」

540: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:46:06 ID:eRwJC8Yk
歩夢(事の発端は、昨日。曜ちゃんと果南さんがプールに行っていた時のこと)

歩夢(数日前の水泳大会で上手く泳げなかった曜ちゃんは、果南さんに水泳のレッスンを受けていた)

歩夢(“海が第二の実家”と自称する果南さんに教われば、きっと『以前のように速く泳げる』と)

歩夢(けれど、いくらレッスンを受けても、曜ちゃんの泳力は満足できる領域に戻らなかった)

歩夢(それで焦った彼女は、夜時間ギリギリまで自主練をしていたのだ)

歩夢(そして、無理がたたり──今に至る)

果南「ここに来る前から、曜のことはダイバー仲間に聞いてたよ。超高校級の船乗りであると同時に、水泳選手にも劣らない泳力だって」

果南「広い海で活動する曜は、海難事故の現場に遭遇することも多かったんだ。事故現場での人命救助に役立っていたらしいよ」

梨子「だから、泳げなくなったことに焦っていた……」

果林「ここ最近、様子がおかしかったものね」

541: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:47:03 ID:eRwJC8Yk
千歌「……」

果林「とりあえず、応急処置は済ませたわ。出血が酷いようだったから、輸血もしておいたわ」

梨子「輸血パックまであるなんて、ちょっとした医療施設ね……」

果南「電子生徒手帳に血液型も載ってて助かったよ。とりあえず、曜が起きたら説教だね」

千歌「……私、ずっと曜ちゃんの傍にいる」

果林「無茶は言わないの。居眠りしてしまったら、校則に引っ掛かってしまうんだから」

モノっちー「そうだネ。事が事だしベッドで寝てるそいつはOKだけど、付き添いの居眠りは許されることじゃないよ」

千歌「何? 今は構ってる場合じゃないんだけど」

モノっちー「校則に関する案件が出たから、念押ししに来ただけだよ。それにしても、よりによって彼女がねえ……うけけけけけ」

歩夢「……行っちゃった」

果林「定期的に顔を出さないと死ぬ病気、かしらね……」

542: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:48:01 ID:eRwJC8Yk
千歌「……曜ちゃんの馬鹿」

千歌「泳げなくても、曜ちゃんは曜ちゃんだよ」

千歌「記憶をなくしても、超高校級じゃなくなっても……私はずっと、曜ちゃんの友達だよ」

歩夢「千歌ちゃん……」

果林「とりあえず、一旦食堂に行きましょうか。みんなに詳しく話す必要があるし」

543: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:48:52 ID:eRwJC8Yk
曜「────」

千歌「……また来るね、曜ちゃん」

歩夢(こうして、また無駄に一日が過ぎて行く)

歩夢(脱出の手掛かりも、私の才能も、毒の行方も。何もかも五里霧中のまま)

544: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:49:47 ID:eRwJC8Yk
~モノっちー劇場~

あらやだ。あの子たち、あんな過ごし方でどうにかなると本当に思ってるみたいですよ!

なんだって、それは本当かいハニー?

そうなのよ、困ったものよね~。

大丈夫さハニー、これを使えばナベにこびりついた頑固な汚れだってイチコロさ!

あら、流石ジョニーね!

545: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:50:55 ID:eRwJC8Yk
────学園生活14日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

モノっちー『オマエら、このあと10時から全校集会があります。体育館に集まってください!』

モノっちー『部屋に閉じこもっている人も閉じ込められている人も、全員揃わないと、揃ってオシオキだからネ。その辺注意するように!』

モノっちー『ああ、流石に気を失っている人は連れて来なくていいよ。そもそも話を聞きようがないしネ』

プツン

歩夢「全校集会……」

歩夢(また、動機の発表だろうか。ある意味、この極限状態そのものが動機になりかねないのに……)

546: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:51:56 ID:eRwJC8Yk
────体育館

愛「……」

かすみ「これじゃ、まるで連行されてるみたいじゃないですか」

果林「文句言わないの」

せつ菜「みんな、疲れきってますね……」

歩夢「仕方ないよ、こんな状況だし」

ダイヤ「さて。そろそろ時間ですわね」

鞠莉「鬼が出るやら、蛇が出るやら……」

モノっちー「残念、出て来るのはセイウチだよ! というワケで、保健室の子以外はみんな揃ってるネ」

果南「私たち、十分厳しい状況なんだよ。まさか、このタイミングで動機発表だなんて言わないよね」

モノっちー「そのまさか、動機発表に決まってますけど?」

歩夢(瞬間、周囲から「うげぇ……」といった雰囲気が流れてくる)

モノっちー「ボクは小原さんの交渉で考えました。今回は、毒薬騒動からオマエらを救うことも出来る、画期的な動機だよ!」

千歌「私たちを……救う?」

547: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:52:47 ID:eRwJC8Yk
モノっちー「ずばり! 明日の夕食会は、音楽室で行ないます!」

モノっちー「ある条件をクリア出来れば、ボクからご褒美をプレゼントします」

かすみ「既に怪しさ満点の話ですね」

璃奈「今は言ってる場合じゃない。それより、詳細は(・v・)?」

モノっちー「夕食会……明日の午後6時までに、事件が起きること。もしくは、その夕食会で、オマエらがボクを満足させるパフォーマンスを披露すること」

モノっちー「そのどちらかの条件を満たせば、毒薬がどうなったかを教えてあげましょう! ついでにカレーライスも振舞っちゃうよ」

モノっちー「勿論、カレーライスに毒やヘンな薬は入ってません。オマエら、ここしばらくロクな食事が出来てなかっただろうしネ」

せつ菜「それなら楽勝です! あのステージなら、あっという間に私の独壇場に出来ます!」

モノっちー「ああ、1人で盛り上がってるところ悪いんだけど……オマエの舞台を彩るためにも照明とか音響とか、ちゃんと演出も考えてよネ?」

モノっちー「それに1人じゃダメだよ。出し物は最低3つ、それぞれ違う人が担当するってのが条件だよ」

548: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:54:20 ID:eRwJC8Yk
鞠莉「なるほど。今回の動機のコンセプトは『団結』と言ったところかしらね?」

鞠莉「モノっちーを満足させるには、私たちが団結しなければならない」

鞠莉「その団結に異を唱える者が行動……殺人を起こしても、モノっちーにとっては万々歳」

モノっちー「まあ、そんなところだネ」

千歌「でも、大丈夫だよね? 梨子ちゃんとしずくちゃんもいるし……」

しずく「……分かっています。皆さんのため、一肌脱ぎましょう」

梨子「大勢の前でピアノを弾くのは久しぶりだけど……頑張らないとね」

モノっちー「どうやら、出演者は決まったみたいだネ。演目は自由だけど、才能を遺憾なく発揮してよネ?」

モノっちー「うけけけけけ……お友達同士の団結力と、超高校級と言われる連中の才能。楽しみにしているよ」

モノっちー「というワケで、今日の全校集会は終わり! 起立、礼、解散!」

549: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:55:50 ID:eRwJC8Yk
────食堂

千歌「……曜ちゃん、まだ寝てた」

果林「そっとしておきなさい。さて、出し物の話だけれど……」

鞠莉「出演者は決まり。となれば、残りのみんなで音響や照明を担当することになるわね」

梨子「あ……出来れば、誰かにピアノを運ぶのも、お願いしたいかなぁ。せつ菜ちゃんとしずくちゃん、ステージを幅広く使うだろうし」

しずく「1人で運ぶのは難しいでしょうね……補助キャスターがついているとはいえ、結構重そうです。3人くらい必要ですね」

果南「じゃあ、私と……ダイヤ、鞠莉。いいよね?」

ダイヤ「……承知しました」

鞠莉「OK♪ そうすると運ぶ時間を考えて、梨子の出番は最初か最後がいいけど……」

せつ菜「はい、はい! トップバッターは私がやりたいです! いいですよね梨子さん!?」

梨子「う、うん。いいけど……」

550: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:56:36 ID:eRwJC8Yk
歩夢「気合入ってるね、せつ菜ちゃん」

せつ菜「当たり前じゃないですか! こんな形だけど、ようやく私のスクールアイドルとしてのパフォーマンスを披露出来るんですから!」

せつ菜「皆さん、どんな曲がいいと思いますか!? やっぱり最初なので、テンションの上がる曲がいいでしょうか!?」

花丸「ど、どんな曲と言われても……」

千歌「あまりアイドルの曲って分からないし……」

璃奈「せつ菜ちゃんのオススメでいいんじゃないかな(・v・)?」

しずく「舞台裏の楽器倉庫に、色んな音源がありましたよ。多分、せつ菜さんのお気に入りも──」

せつ菜「分かりました、行って参ります!」バビューン!

果南「早っ!?」

歩夢「あはは……せつ菜ちゃん、昔からこんな感じだったから」

歩夢「幼稚園の頃、一緒に遊びに行った時だって……」

歩夢「……」

歩夢(……あれ?)

551: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:58:25 ID:eRwJC8Yk
千歌「どうかしたの?」

歩夢(……なんで、思い出せないんだろ)

歩夢(確か、せつ菜ちゃんとお母さんたちで、デパートに行った筈……)

歩夢(途中でアイドルショーをやってて……あれ?)

千歌「あーゆーむーちゃん?」

歩夢「あ、ううん、何でもないよ。それより、まだ決まってないのは照明と音響だっけ?」

ダイヤ「ですわね。機材の構造上、この役はアナウンスも兼ねることになりそうです」

愛「だったらさ~」

花丸「うーん……マルは機械類、苦手だし……」

愛「おーい」

璃奈「私、声あまり大きくないし……(>_<。)」

愛「愛さんを無視しないでおくれよーぅ……拗ねちゃうぞ?」

552: ◆8TImjtGSKs 2018/08/29(水) 23:59:28 ID:eRwJC8Yk
璃奈「……引き籠ってたクセに(`∧´)」

愛「悪かったって! この通りだから!」ピース

果林「笑顔でピースされても、どの通りなのかさっぱりね……」

璃奈「それより、もう具合は大丈夫なの(・v・)?」

愛「大丈夫! 愛さん完全……とはいかないけど、復活だよ」

愛「なんというか、せっつんに助けてもらった感じ……かな。底抜けに元気な姿見てたら、私も頑張らなきゃ、って思ってさ」

愛「というワケで、照明、音響その他諸々は愛さんに任せてくれたまえよ! 一度目は通したけど、あのくらいの機材ならチャチャっと使えるね」ビシッ

千歌「うん。愛ちゃんなら声も良く通るし、盛り上げるにはピッタリだよ!」

鞠莉「ええ、適任だと思うわ」

花丸「台本ならお任せずら♪」

愛「げっ。愛さん、自由に喋りたいんだけど……」

果林「進行役がしゃしゃり出てどうするのよ……」

璃奈「でも、良かった。愛ちゃんが元気になって」

梨子「この調子で、曜ちゃんも元気になってくれるといいわね」

553: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:01:01 ID:8PS0Mxyo
歩夢(こうして、私たちは解散となった)

歩夢(しずくちゃんたちは、リハーサルのために音楽室に向かったようだ)

歩夢(本番まで時間はないけれど、急ピッチで進めるのも十分楽しいようだ)

歩夢(暗かった雰囲気も、着実に良い方向に動いている)

歩夢「大丈夫……モノっちーの思惑通りには、絶対にさせない」

歩夢(……でも)

歩夢(あの日、せつ菜ちゃんと遊びに行った記憶)

歩夢(なんで……才能や学生生活だけじゃなくて“その日の出来事まで思い出せない”んだろう……?)

歩夢(何とも言えない不安は、私の中にこびりついていた)

554: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:02:12 ID:8PS0Mxyo
~モノっちー劇場~

『御』ってさ、便利な漢字だよネ。

これを付けておけば、多少の違和感こそあれど、大体の言葉は丁寧になるワケだし。

「おみおつけ」なんて、漢字で書いたら「御御御付」だよ。どんだけ丁寧にしたらいいんだ!

御モノっちー……なんとなく、おしとやかさが増したかな?

やっぱり、世界に必要なのは丁寧さなのかもネ。

御殺人、御処刑、御泥棒、御戦争、御不治の病……。

ギスギスした話題も、いっきにトゲが無くなるかと思ったけど……そうでもなさそうだよ。

というワケで、御覚悟!

555: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:03:22 ID:8PS0Mxyo
────学園生活15日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

歩夢(今日は……夕方から、音楽室で食事会)

歩夢(短いようで異様に長く感じた缶詰生活から、ようやく抜け出せる……)

歩夢(そう思うと、腹の虫が一斉にわめきだした)

556: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:04:37 ID:8PS0Mxyo
────食堂

せつ菜「~~~~♪」モグモグ

ダイヤ「せつ菜さん。楽しみなのは分かりますが、少々行儀が悪いです」

せつ菜「す、すいません」

せつ菜「……~♪」

花丸「早く夕方にならないかなー……」

しずく「梨子さん。あの場面のセリフ、やっぱりこうした方がいいでしょうか?」

梨子「えーと……」

愛「みんな、浮足立ってるね」

歩夢「うん。愛ちゃんも、楽しみでしょ?」

愛「え!? ま、まぁ……そうだね。愛さんも楽しみだよ!」

歩夢「……?」

557: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:05:33 ID:8PS0Mxyo
果南「そういえば、璃奈の姿が見えないけど……」

愛「あー……りなりー、昨日は舞台装置の手伝いしてたから。疲れて寝てるんじゃない?」

しずく「璃奈さんだけ、途中で切り上げていましたね」

愛「愛さんも足、軽くやっちゃったんだよね~……たはは」

果林「まったく……笑うことじゃないわよ。擦り傷で済んだから良かったけど」

梨子「ごめんね、手伝わせちゃって……」

鞠莉「そういえば。生徒名簿のコピー、誰か知らないかしら」

果南「生徒名簿のコピー?」

鞠莉「ええ。昨日、どこかに置き忘れたっぽいのよね」

鞠莉「まあ、知らないならいいわ。また職員室で印刷すればいいだけだし」

558: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:06:44 ID:8PS0Mxyo
鞠莉「それじゃ、また夕方会いましょう。お昼の缶詰、先に貰っておくわよ」

千歌「あ、それ……ミカンの缶詰! 私も狙ってたやつ!」

鞠莉「Sorry、早い者勝ちよ」

千歌「ぐぬぬぬぬぬ……」

歩夢「まあまあ。食事会が終わったら、普通のミカンも食べられるようになるよ」

千歌「それは……そうなんだけどさぁ」

果南「そういえば、まだ曜は寝てる?」

千歌「うん。さっきも見に行ったけど、まだ寝てた」

果林「そう……随分と、派手に打ったみたいね」

千歌「うん。曜ちゃん、夕方には来れるかなぁ……」

559: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:08:47 ID:8PS0Mxyo
────夕方、音楽室

果林「……いよいよね」

千歌「結局、曜ちゃんは来なさそうだね」

モノっちー「さてと。ボクはこの席で見させてもらうよ」

歩夢「……」

ブーーーーー

歩夢(開演のブザーが鳴る。すると、ステージの両脇からは白い煙が出て来た)

花丸「……火事?」

鞠莉「スモークね。これがないと、ステージの照明が観客席まで届かないらしいわ」

560: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:09:52 ID:8PS0Mxyo
愛『レディース&ジェントルマーン……って、ジェントルマンはどこにもいないね』

愛『今宵は、お集まり頂きましてありがとうございます。司会進行は私、宮下愛が務めさせて頂きます』

果南「だいぶ、様になってますね」

ダイヤ「お静かに」シー

愛『それじゃあ、まずはトップバッター。《超高校級のスクールアイドル》優木せつ菜のプチライブ!』

愛『曲は“ネガイゴトアンサンブル”! 私が大好きだった曲を、みんなも大好きになって欲しい、とのことです!』

愛『それじゃ、行ってみよーう!』

561: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:11:01 ID:8PS0Mxyo
歩夢(空間を裂くようなレーザー照明と薄赤色の照明。せつ菜ちゃんは、その中心でパフォーマンスを始めた)

せつ菜「きっとShooting Love Shooting Heart♪」

せつ菜「もっと高く高く♪」

モノっちー「Fooooo!」

歩夢(!?)

モノっちー「フッフーゥ↑」

歩夢(いつの間にか、モノっちーはサイリウムを両手に、いわゆる『コール』と呼ばれるものをしていた)

歩夢(つまり、十分ライブを楽しんでいる……筈)

せつ菜「今は小さなタマゴも いつか 高く高く 飛んでゆけるよね♪」

モノっちー「イエッタイガー!」

歩夢(……概ね、好評?)

562: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:13:07 ID:8PS0Mxyo
パチパチパチパチ

せつ菜「ありがとうございましたー!」

パチパチパチパチ


せつ菜「ふー……」

歩夢「お疲れ様、せつ菜ちゃん」

鞠莉「冷たい水、用意してるわよ」

せつ菜「ありがとうございます!」ゴクゴク

モノっちー「うんうん。やっぱり、ライブってのはこうでなきゃネ」

モノっちー「近頃は家虎がどうだ、改造サイリウムがどうだって騒がれてるけど。ここじゃあ外圧を気にする必要はないもの」

せつ菜「むー……厄介コール、本当はお断りなんですけどね」

せつ菜「モノっちーさん、外ではやらないでくださいよ?」

モノっちー「うけけけけけ。分かってるよ」

果林「2人が何を喋ってるのか……よく分からないわね」

歩夢「多分、アイドル関係だとは思うけど……」

563: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:14:46 ID:8PS0Mxyo
愛『さて、テンションがブチ上がったところで、次は《超高校級の演劇部》桜坂しずくによる歌劇!』

愛『本日はお時間の都合により1曲だけとなっていますが、その才能は遺憾なく発揮されることでしょう!』

愛『曲はモーツァルト作曲のオペラ“魔笛”より“夜の女王のアリア”』

愛『それでは、どうぞごゆっくり……』

歩夢(薄水色の照明とともに、しずくちゃんは姿を現した)

しずく「Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen──」

歩夢(いきなり、かなりの高音で始まった曲)

歩夢(聞いたことがある。この曲は音域がかなり高く、相当訓練を積んだ女性でないと、綺麗に音程が取れないらしい)

564: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:15:44 ID:8PS0Mxyo
歩夢(並の人間では、途中で喉を潰してしまう。特に顕著なのは、サビの部分だ)

しずく「meine Tochter nimmermehr. hahahahaha──」

歩夢(片腕が使えない代わりと言わんばかりに、ずば抜けた歌唱力で私たちを圧倒する)

しずく「──Rachegötter, hört der Mutter Schwur!」

パチパチパチパチ

しずく「……」

歩夢(やがて。荘厳なオーケストラと共に、その舞台は幕を閉じる)

歩夢(丁寧にお辞儀をして、しずくちゃんは舞台から降りて来た)

歩夢(入れ替わりに、果南さんたちが席を立つ。ピアノの搬入準備だ)

果林「お疲れ、しずくちゃん」

しずく「歌劇をやったのは久しぶりでしたが、充実感があります」

モノっちー「うけけけ……曲名を正確に言わなかったのは、わざとかな?」

果南「曲名?」

565: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:16:51 ID:8PS0Mxyo
花丸「確か、夜の女王のアリアって、魔笛に出てくる2曲のことを示していて……」

花丸「1曲目は“ああ、恐れおののかなくてもよいのです、わが子よ!”」

モノっちー「そして2曲目は“復讐の炎は地獄のように我が心に燃え”。まあ実際は、こっちの方が有名だから、“夜の女王のアリア”で十分通じるんだけどネ」

しずく「……ご存知でしたか」

モノっちー「まあネ。分かりやすく才能を発揮するにはもってこいの曲だし、概ね満足かな」

千歌「じゃあ、もしかして……」

モノっちー「それはどうかな。あとは、桜内さんだネ」

モノっちー「総合評価だからネ。ここで台無しになったら……どうなるかな」

愛『それじゃあ、最後は《超高校級の芸術家》桜内梨子によるピアノ演奏!』

愛『曲は、桜内梨子オリジナル“海に還るもの”』

愛『それではどうぞ、ごゆっくり──』

歩夢(ステージに、薄いピンクの照明が灯り、舞台袖から梨子ちゃんが姿を現す)

千歌「頑張れ、梨子ちゃん……」

歩夢(私も、“頑張れ”と心中で呟いた)

566: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:18:34 ID:8PS0Mxyo
梨子「……」スッ

梨子「~♪」

歩夢(優しいメロディーが、音楽室を包み込む)

歩夢(梨子ちゃんが滑らせる指から奏でられる音色が、自然と体の力を抜かせる)

歩夢(次第に、音が体に染み込んで来るような、不思議な感覚に囚われて……)

梨子「~♪」


モノっちー「……」

モノっちー「……うけけ」


歩夢(そして。曲がサビに入ろうかといったところで──)

567: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:19:27 ID:8PS0Mxyo


ドガッ!



歩夢(──不意に、それは終わりを告げた)

568: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:20:59 ID:8PS0Mxyo
歩夢「な……!?」

花丸「何の、音……!?」

果林「何か、“降って”こなかった!?」

歩夢(4つ目の出し物? いや、違う。出し物は3つだった筈だ)

歩夢(ステージの上では、梨子ちゃんが慌てた表情でグランドピアノに駆け寄っていた)

歩夢(そして)

梨子「ひっ……」

歩夢(小さな悲鳴。それを見て、私たちは一目散にステージへと駆ける)

569: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:22:15 ID:8PS0Mxyo
梨子「ひ、人が……、上、から……」

歩夢(ステージの上から降って来たモノは、人の形をしていた)

歩夢(人は、見慣れたボードを顔に着けていた)

歩夢(けれども背丈は、私たちの知っている“彼女”のものではない)

歩夢(何より。その人が着ている衣服は……)

歩夢「……」

歩夢(“璃奈ちゃんボード”を、そっと剥がす)

570: ◆8TImjtGSKs 2018/08/30(木) 00:26:03 ID:8PS0Mxyo


璃奈ちゃんボードの下にあったのは、患者服姿の

冷たくなった《超高校級の船乗り》渡辺曜の、死体……。

573: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:51:02 ID:rhNgBjp6

     Chapter3

キリングフレンド  非日常編

574: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:52:01 ID:rhNgBjp6
歩夢(それはさながら……空から降って来た絶望のようだった)

歩夢(その絶望は……コンサートの終わりを意味していた)

千歌「曜、ちゃん……?」

しずく「嘘、ですよね……」

愛「……」

果南「……っ」

歩夢(なんで、こうなってしまうんだろう)

歩夢(この夕食会が終われば、みんなで仲良くご飯を食べて)

歩夢(彼女もそのうち目を覚ます筈だって、信じてたのに)

歩夢「なんで……」


モノっちー「うけけ……例のアレ、やっちゃいますか。ちょっと席外すよん」

575: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:52:50 ID:rhNgBjp6
ピンポンパンポーン

モノっちー『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開きます』

モノっちー『オマエら、死体発見現場の音楽室にお集まりください!』

プツン


モノっちー「ほいっと、ただいま」

モノっちー「ほとんどここ(音楽室)にいるから、放送で流す必要もなかったんだけど……まあ、いない人もいるしネ」

モノっちー「さてと。カレーの準備をしながら、まだ来ていない人たちを待ちましょう」

576: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:53:38 ID:rhNgBjp6
~数分後~

モノっちー「……来ないネ」

鞠莉「いま居ないのは……かすみと璃奈ね」

せつ菜「あの……かすみさんって、まだお部屋で縛られているんじゃ……」

モノっちー「まったくもう、これじゃあカレーを振舞えないじゃないか!」

愛「じゃあ、愛さんが呼んで来るよ。もしかしたら……りなりーに何かあったのかも知れないから」

歩夢(愛ちゃんの手にあるのは、曜ちゃんの死体についていた“璃奈ちゃんボード”だった)

果林「なるべく早く戻って来るようにね」

愛「大丈夫だって。かすみは縛られたままなんでしょ? だったら連れて来るのは簡単だよ」

タッタッタッ……

577: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:54:54 ID:rhNgBjp6
愛「二人とも、部屋に居たよ」

璃奈「……(>_<。)」

かすみ「今度の被害者は……曜先輩みたいですね」

歩夢(……しばらくして、愛ちゃんは二人を連れて帰って来た)

モノっちー「さてと。じゃあ、全員が揃ったところで……」

モノっちー「ぱらぱぱっぱぱー! カレーライス~……と、モノっちーファイル3~!」

モノっちー「オマエら、これでしっかりと腹ごしらえして、万全の態勢で学級裁判に臨むように!」

モノっちー「あ、モノっちーファイルは食べ物じゃないからネ。『※食べられません』とか書いてないけど間違えないようにネ?」

花丸「流石にそこまで悪食じゃないずら……」

モノっちー「というワケで、ボクはこの辺で──」

鞠莉「待ちなさい」

モノっちー「ん?」

鞠莉「動機発表の時、言ったわよね。毒薬の行方も教える、と」

モノっちー「ああ……そもそもあの毒薬は、オマエらが心配するだけ無駄だったんだよ」

ダイヤ「どういう意味ですの?」

578: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:55:44 ID:rhNgBjp6

モノっちー「毒薬は毒薬だけど、飲食物に混ぜたところでまったく意味がないモノだからネ!」

579: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:56:33 ID:rhNgBjp6
せつ菜「……は?」

モノっちー「文字通りの意味だよ。それなのに、オマエらは意味のないクスリにビクビクして……あー面白かった」

モノっちー「というワケだから……特別に配膳も済ませたし、さっさと食って働け野郎共!」

歩夢「……」

歩夢(モノっちーに怒鳴られ、私たちは出された食事を胃袋に押し込んでいく)

歩夢(……モノっちー特製のカレーライスは、憎たらしいほど、が付くほどに美味しかった)

歩夢(なんの心配もなく食事が出来るということが、こんなにも有難いことだったなんて……)

歩夢「……ご馳走様でした」

歩夢(ゆっくりと……身体の底から活力が湧いてくるようだった)

歩夢(周りのみんなも、食べ終えたようだ)

歩夢(始めなきゃ……ね)

580: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:58:24 ID:rhNgBjp6
捜査開始!

歩夢「まずは……」

歩夢(モノっちーファイルを手に取り、情報を確認する)

『被害者となったのは超高校級の船乗り、渡辺曜。死体発見現場は校舎3階、音楽室』

『死亡推定時刻は昨晩18:00頃、発見は翌18:30頃、夕食会の最中』

『後頭部を強く打った形跡あり。左腕に針の跡が1か所あるが、それは輸血及び点滴のチューブを繋いだ際のもの』

『また、被害者の体内から毒物及び点滴以外の薬品類は一切検出されていない』

せつ菜「……一瞬、眠っている間に毒を盛られたかと思いましたが、そうではないみたいですね」

歩夢「そうみたいだね。今回も死因が書いてないのは気になるし……」

歩夢(それに、この死亡推定時刻って……)

《モノっちーファイル3》のコトダマを入手しました。

581: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:59:02 ID:rhNgBjp6
歩夢(次は……曜ちゃんの死体を調べよう)

歩夢「何か見つかった?」

花丸「……傷らしい傷は、後頭部だけだったずら」

鞠莉「死因が分からないから何とも言えないけれど……曜の死体で気になるのは2つね」

せつ菜「2つ?」

鞠莉「1つは患者服のヒモ。腰に巻いて結ぶ紐なんだけど……どういうワケか濡れているのよね」

歩夢(本当だ。少し乾いているけど……確かに湿っている)

花丸「もう1つは、曜ちゃんの顔。こっちも触ってみたら分かるよ」

せつ菜「肌色の……ファンデーションですかね?」

鞠莉「恐らくね。ただ、曜本人が化粧するとは考えにくいし……」

花丸「犯人は死化粧でもやろうとしたずら……?」

《患者服の紐》《ファンデーション》のコトダマを入手しました。

582: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 22:59:43 ID:rhNgBjp6
せつ菜「次は……キャットウォークを調べに行きませんか?」

歩夢「キャット……?」

せつ菜「ステージの上、あの照明器具がぶら下がっている場所のことです」

歩夢「なるほど……」


────舞台・キャットウォーク

歩夢「やっぱり……曜ちゃんはここから落とされたのかな」

せつ菜「だと思います。つまり、梨子さんがピアノを演奏している時、犯人はここにいたってことですよ!」

かすみ「だといいんですけどね~」

せつ菜「……何か見つけたんですか?」

かすみ「ずっとお部屋にいた私に分かる筈ないじゃないですか。あ、でもあそこに付いてた跡とロープは気になるかなーってくらいです」

かすみ「じゃ、かすみんはこの辺で失礼しまーす」

歩夢「あ、走ると危ないよー」

<ワカッテマース

583: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:01:00 ID:rhNgBjp6
歩夢(かすみちゃんの話が気になったので、照明器具を調べてみる)

歩夢「とはいえ、どれも少しばかり埃をかぶっている程度で……ん?」

歩夢(3列並んだ照明機のうち……音楽室の座席の方から見て、一番手前、その真ん中)

歩夢(まるで溝のように、不自然に埃の付いていない部分があった)

歩夢「しかも、ここの真下は……」

https://i.imgur.com/ex5QXZ6.jpg

https://i.imgur.com/MR6Cru2.jpg

歩夢「ちょうど、グランドピアノ……曜ちゃんの死体が落ちて来た場所……」

せつ菜「見つけましたよ、歩夢!」

歩夢「え?」

せつ菜「ロープの束です! 犯人はこれを使って、曜さんをこの照明器具にぶら下げていたんじゃないでしょうか?」

歩夢「……」

歩夢「確かに、そういう方法もあるかも……」

歩夢(ロープの両端は、切ったような痕跡は見当たらない……)

《照明機》《ロープの束》のコトダマを入手しました。

584: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:02:29 ID:rhNgBjp6
歩夢「ねえせつ菜ちゃん。ここに来る道って、あのハシゴしかないんだよね?」

せつ菜「ええ。危険だから、あまり来ないように……って話になっていましたよ」

歩夢「確か、ハシゴの下って……」


────舞台袖(上手側)

愛「うん。ちょうど、アタシが音響とか照明とか色々やってたところだね」

歩夢「やっぱり……」

せつ菜「ということは、夕食会の最中に誰かがここを通ったら、すぐに分かりますよね?」

愛「うん。ピアノを運び終えたダイヤっちたちはここを通ったけど……それ以外は誰も見なかったよ」

せつ菜「誰も、ですか」

愛「間違いないよー。せっつんはステージから直で降りてたし、しずくっちは下手側から出たからね」

愛「それに、あの3人もすぐにそこの扉から客席に戻ってたよ」

せつ菜「うーん……愛さんに見つからずに、キャットウォ-クから曜さんを落とす方法……」ブツブツ

歩夢「……」

《キャットウォークのハシゴ》《愛の証言》のコトダマを入手しました。

585: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:03:10 ID:rhNgBjp6
────舞台袖(下手側)

せつ菜「スモークが?」

梨子「うん。元々、せつ菜ちゃんの番だけじゃなくて、ショーが終わるまではもつ筈だったんだけど……」

しずく「どうやら、途中でスモークが切れてしまっていたようなんです」

歩夢(そう言って、しずくちゃんが差し出して来たのは、スモークを発生させる手作りの箱……らしいのだが)

歩夢「何も入ってないように見えるけど……」

しずく「いえ、それは全部気体になったんです。ドライアイスの煙を使っていましたから」

歩夢「ドライアイスって……あのドライアイス?」

梨子「うん。モノっちーに訊いたら、冷凍庫に保存してあることを教えてくれたから……」

しずく「それで、必要分を持ってきて、発砲スチロール製のこの箱に入れていたんです」

せつ菜「分量を間違えた、というワケではないんですよね」

しずく「それはありません! 劇団に入る前に、演出のお勉強もしましたから。量はキッカリ、出し物が終わるまでだった筈です」

歩夢(これも……手掛かりになるのかな?)

《ドライアイス》のコトダマを入手しました。

586: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:03:53 ID:rhNgBjp6
せつ菜「あと、調べないといけないところは……」

歩夢「それなら、話を聞いておきたい人が居るんだよね。まずは璃奈ちゃん、かな」


璃奈「……璃奈ちゃんボードについて(・v・)?」

歩夢「うん。璃奈ちゃんの付けてるそれって、複数あるのかなーって」

璃奈「ないよ、これはお手製(・v・)」

果林「昨日、夕食会の準備をしている時にもその話になったわね」

果林「確か、持ち方をちょっと工夫するだけで、前が見えるようになる……だったかしら」

璃奈「うん。ただ普通に持つだけじゃ、何も見えない。けど、実は紙にちょっとだけ穴が開いてる(・v・)」

璃奈「でも、この持ち方を知っているのは私だけ。だから、普通は視界を確保するのは無理(・v・)」

せつ菜「愛さん、土下座までして持ち方を教えて貰おうとしていましたけど……」

璃奈「いくら愛ちゃんでもこれだけはダメ! 璃奈ちゃんボード、大事なものなの(`∧´)!」

587: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:04:53 ID:rhNgBjp6
歩夢「でも、曜ちゃんの死体に被せられていたってことはさ……」

璃奈「うん、なくしちゃってた。昨日、お風呂に入ってる間に……(>_<。)」

歩夢「お風呂、って……」

璃奈「大浴場の方だよ。やっぱり、お部屋のシャワーだけだと不便だから……こっそり夜中に入ってるの(・v・)」

果林「じゃあ、犯人はそこを狙って、璃奈ちゃんボードを盗んだってことかしらね」

璃奈「かも知れない。脱衣所のカゴに入れてたから……(>_<。)」

璃奈「あ。でも、夜中に入ってること、誰にも言ってなかったよ(>_<。)」

せつ菜「……そもそも、何のために犯人はボードを盗んだのでしょう」

歩夢「それなんだよね……。どうせ、すぐに被害者が誰か分かっちゃうのに」

璃奈「そういえば。愛ちゃんが持ってきた璃奈ちゃんボード、裏に両面テープが付いてたんだけど……(>_<。)」

果林「曜ちゃんの顔に貼り付けていたんでしょうけど、何がしたかったのかさっぱり分からないわね」

《璃奈ちゃんボード》《璃奈の証言》のコトダマを入手しました。

588: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:05:27 ID:rhNgBjp6
歩夢(音楽室で調べられそうなことは、もうなさそうかな……)

歩夢「ねえ、千歌ちゃんがどこに行ったか知ってる?」

せつ菜「そういえば……いつの間にかいませんね」

果林「千歌ちゃんなら、音楽室を出てどこかに行ったわよ」

璃奈「探さないといけないね(・v・)」

歩夢「そっか……。じゃあ、先に保健室に行こっか」

せつ菜「ですね。何か手掛かりがあるかも知れませんし」

果林「私たちの方でも、千歌ちゃんを探しておこうかしら」

せつ菜「助かります!」

589: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:06:18 ID:rhNgBjp6
────保健室

歩夢(保健室にいたのは、ダイヤさんと果南さん。2人は、何かを話し込んでいたようだ)

ダイヤ「──では、その情報だけで犯人を特定するのは難しい、ということですか」

果南「……そうなるね」

歩夢「何の話をしていたんですか?」

果南「曜がここに運び込まれてから、誰が来たかって話だよ」

ダイヤ「千歌さんが何度かここを訪れたことだけはハッキリとしているのですが……」

果南「入院の面会とはワケが違うからね。いつでも自由に来れるから」

果南「……まあ、千歌なら何か知ってるかもしれないけど」

せつ菜「そうですか……」

ダイヤ「とはいえ、何も手掛かりがなかったというワケではありませんよ」

歩夢(そう言ってダイヤさんは、曜ちゃんが寝かされていたベッドの布団をめくった)

歩夢(そこにあったのは……)

590: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:07:13 ID:rhNgBjp6
歩夢「……!」

ダイヤ「AB型の輸血パックと点滴。これは、曜さんに繋いでいたものでしょう。血液型も曜さんと一致しているようですし」

ダイヤ「チューブが繋がったままだと音楽室に運ぶには邪魔になるから、ここで外した……概ね、そんなところでしょうね」

ダイヤ「ですが、問題はこちら」

せつ菜「これって、ハンマーですよね……」

ダイヤ「最初は、落ちて来た衝撃で曜が死んだと思ってたけどさ。多分、本当の凶器はこのハンマーなんだろうね」

果南「後頭部にしか傷がないのも、これで説明出来るからさ」

歩夢(確かに、モノっちーファイルの外傷の話はこれで納得が出来るけど……)

歩夢「それにしては……シーツもハンマーも、綺麗すぎないかなぁ……?」

せつ菜「洗ったり、取り換えたりしたのではないでしょうか」

歩夢「うーん……」

歩夢(何かが引っ掛かるんだよね……)

《輸血パックと点滴》《ハンマー》のコトダマを入手しました。

591: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:08:31 ID:rhNgBjp6
歩夢「あとは、千歌ちゃんを探すだけなんだけど……」


ピンポンパンポーン

モノっちー『は~いお待たせ、みんなのアイドルモノっちーだよ~ん』

モノっちー『今日は~、学級裁判をやろうと思うんですよ、てへ☆』

モノっちー『……うん、このキャラはやっぱり没だネ。テコ入れの道はまだまだ険しいネ』

モノっちー『というワケで、いつもの赤い門の前にお集まりください!』

モノっちー『うけけ……オマエらの知恵比べ、楽しみにしてるよ』

プツン


歩夢「そんな……このタイミングで……」

せつ菜「前回の捜査もそうでしたが、相変わらず狙ったようなタイミングで打ち切ってくれますね」

果南「まあまあ。千歌もどうせ来るんだし、話は後でもいいんじゃないかな」

果南「……多分、歩夢も同じことが気になっているんでしょ?」

ダイヤ「とにかく、あの場所に向かいましょう」

592: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:09:10 ID:rhNgBjp6
────赤い門の前

歩夢(アナウンスを聞いたみんなが、集まって来る)

梨子「……」

花丸「……」

璃奈「……(>_<。)」

鞠莉「……」

かすみ「……」

歩夢(誰も口を開かない。言うべき言葉を探り合っているような……そんな雰囲気だ)

千歌「……」

歩夢(そして。最後の1人、千歌ちゃんが姿を現したところで門が開き、エレベーターもその口を開ける)

593: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:09:46 ID:rhNgBjp6
歩夢「ねえ、千歌ちゃん……」

千歌「……」

果南「千歌、歩夢が呼んでるよ」

千歌「これだけは言わせて。“私は今朝、曜ちゃんがベッドで寝ているのを見た”。間違いなく、死んでなかった」

果南「……だよね。今朝、そんなやり取りをした記憶があるからさ」


果南『そういえば、まだ曜は寝てる?』

千歌『うん。さっきも見に行ったけど、まだ寝てた』


果南「いよいよ、モノっちーファイルも信用出来なくなって来たかもね……」

千歌「……」

《千歌の証言》のコトダマを入手しました。

594: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:10:21 ID:rhNgBjp6
花丸「3人とも、何やってるずらー!」

しずく「もうみんな乗ってますよー!」

果南「ごめんごめん、今行くよ」

歩夢「行こっか、千歌ちゃん」

千歌「……」

千歌「嘘つき」

歩夢「……え?」

千歌「……」

歩夢(それっきり、千歌ちゃんは一切口を開こうとせず)

歩夢(気まずい雰囲気のまま、私たちはエレベーターに乗り込み……)

歩夢(エレベーターは、降下を始めた)

595: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:11:22 ID:rhNgBjp6
歩夢(鉄の箱は、振動を繰り返しながら落ちてゆく)

歩夢(こんなことを、あと何回やらなければいけないんだろう)

歩夢(燦然と輝く絶望と真っ暗な希望が、頭の中で交錯する)

歩夢(希望も絶望もグチャグチャになって、腐った何かへと様相を変え……)

歩夢(……やがて、鉄の箱は動きを止めた)

596: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:12:22 ID:rhNgBjp6
────地下???階・裁判場

モノっちー「いらっしゃ~い! 模様替えはモノっちーちゃんにお任せ~!」

モノっちー「今回は海原をモチーフにした背景にしてみたんだよネ。照明もわざわざ青っぽい雰囲気にしてみたりさ!」

モノっちー「というワケでオマエら、心ゆくまで学級裁判を楽しんじゃって頂戴な!」

歩夢(モノっちーの掛け声で、みんな席につく)

歩夢(ぽつぽつと目立ち始めた空席を見ながら、覚悟を決める)

597: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:13:12 ID:rhNgBjp6
歩夢(これが3度目の、学級裁判……)

歩夢(《超高校級の船乗り》渡辺曜ちゃん……)

歩夢(彼女は、泳げなくなったことに悩んでいた)

歩夢(才能を活かして人命救助活動をする彼女だからこそ、だったのだろう)

歩夢(けれども、彼女は努力していた。泳力を取り戻そうとしていた)

歩夢(そんな彼女の努力を終わらせた犯人が……私たちの中にいる)

歩夢(私はその人を、許せない)

歩夢(友達を裏切った犯人を……きっと許せないだろう)

歩夢(だから、それを見つけ出す)

歩夢(希望と絶望が連鎖する、この“学級裁判”で──!)

598: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:14:01 ID:rhNgBjp6
~学級裁判準備~
衆人環視の中起きた事件は、夕食会を血塗られたパーティへと変えてしまった。
目撃証言と噛み合わない手掛かり、不鮮明な死因……。
謎だらけの事件を紐解き、隠された真実を明るみに晒せ!

コトダマリスト
《モノっちーファイル3》
被害者は渡辺曜。死亡推定時刻は昨晩18時頃、発見は夕食会の最中。
後頭部を強く打った形跡があり、輸血、点滴のチューブを繋いだ際の跡も見つかっている。
体内から毒物及び点滴以外の薬品類は一切検出されていない。

《患者服の紐》
被害者が着ていた患者服がはだけないよう、腰に巻いて結ぶもの。
何故か少し濡れていた。

《ファンデーション》
被害者の顔には、何故か肌色のファンデーションが塗られていた。

《照明機》
https://i.imgur.com/ex5QXZ6.jpg
https://i.imgur.com/MR6Cru2.jpg を参照。
何かの跡がついており、その真下は死体が落ちて来た場所である。

599: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:15:32 ID:rhNgBjp6
《ロープの束》
キャットウォークで見つかったもの。
両端に切ったような痕跡はない。

《キャットウォークのハシゴ》
舞台袖からキャットウォークに向かう、唯一の道。
ここを通る際には、舞台袖(上手側)を必ず通ることになる。

《愛の証言》
夕食会の最中、ずっと舞台袖(上手側)にいた愛。
途中、ピアノを運び終えたダイヤ、果南、鞠莉の3人がそこを通ったが、
3人ともすぐに客席に戻っており、それ以外の人は見ていないという。

《ドライアイス》
スモークとして使われていたもの。
しずく曰く3つの出し物すべてが終わるまでもつ筈だったが、何故か減っていた。

《璃奈ちゃんボード》
死体の顔に貼り付いていたもの。
璃奈がいつも付けていたものであり、唯一無二。
裏には両面テープがついていた。

《璃奈の証言》
璃奈はいつも、夜中にこっそり大浴場に入っている。
その際、脱衣所に置いていた璃奈ちゃんボードを何者かに盗まれた可能性が高いらしい。

600: ◆8TImjtGSKs 2018/09/14(金) 23:16:38 ID:rhNgBjp6
《輸血パックと点滴》
気を失っていた曜につけられていたもの。
至って普通の輸血パック(AB型)と、至って普通の点滴。
チューブに繋がった状態で、保健室に放置されていた。

《ハンマー》
保健室、曜が寝ていたベッドに落ちていた。
シーツ共々、綺麗なままだった。

《千歌の証言》
今朝、千歌は保健室で寝ている曜を目撃していた。
その時点でまだ息はあったという。

604: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:06:56 ID:nUU6goz6

 学 級 裁 判 
  開   廷!

605: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:08:10 ID:nUU6goz6
モノっちー「まずは学級裁判の簡単な説明を行いましょう」

モノっちー「学級裁判では“誰がクロか”を議論し、最終的に投票で全てを決定します」

モノっちー「正しいクロをオマエらの過半数が指摘出来れば、クロだけがオシオキ」

モノっちー「不正解だった場合は、クロは卒業、残ったシロは全員オシオキです!」

モノっちー「ちなみに、ちゃんと誰かに投票してネ。投票を放棄した人もオシオキだからネ?」

かすみ「今回の事件、かすみんはあんまり流れを把握出来てないんですよね~。ほら、ずっとお部屋でしたから」

かすみ「順を追って説明して欲しいんですけど……お願い出来ますか?」

鞠莉「あなたは場を引っ掻き回すだけでしょう」

かすみ「うーん……それを言われちゃうと痛いです。けど事件が起きた時、璃奈さんもそこには居なかったんですよねえ?」

かすみ「だったら、彼女のためにも説明は必要だと思うんですけど」

606: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:09:11 ID:nUU6goz6
ダイヤ「璃奈さんをダシにするのは感心できませんが……仕方ありませんわね」

せつ菜「こういうのは、ずっと観客席にいた人たちに説明して貰った方が分かりやすいかも知れません」

花丸「じゃあ、オラが説明するずら」

璃奈「……お願い(・v・)」

花丸「まずは、夕食会の出し物が決まったところから。出し物の順番は、せつ菜さん、しずくちゃん、梨子さんの順番だった」

果林「せつ菜ちゃんが小さなライブ、しずくちゃんが歌劇、梨子ちゃんがピアノだったわね」

花丸「それから、ピアノを運ぶ係として、ダイヤさん、鞠莉さん、果南さんの3人が。音響と照明、アナウンスは愛さんが担当することになったんだ」

かすみ「結構本格的だったみたいですね。かすみんも見たかったですよ~」

花丸「本番になって、せつ菜さんとしずくちゃんの催しは、何事もなく進行していった」

梨子「けれど、最後。私がピアノを弾いている最中に……何かが、グランドピアノめがけて落ちて来た」

璃奈「……それが、曜ちゃんだったんだね(>_<。)」

607: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:10:12 ID:nUU6goz6
果林「死体は患者服を着ていて、何故か、璃奈ちゃんボードを付けていた……」

愛「で、それをりなりーに届けるついでに、2人を呼びに行ったのがアタシだった」

花丸「……ここまでが、今回の事件の大雑把なまとめずら」

果南「曜が患者服だったのは、2日前、曜がプールで大怪我を負ったからだよ」

果南「気を失ったままだったから、保健室に寝かせていた……一応、補足」

かすみ「ありがとうございます、よく理解出来ました。ね、璃奈さん?」

璃奈「……ありがとう(・v・)」

しずく「うーん……考えれば考えるほど、今回も謎だらけな気がします」

鞠莉「謎が多いなら、順番に片づけて行けばいいだけ……そうでしょ、歩夢」

歩夢「え、あ、はい!」

歩夢(でも……実際、今回の事件は分からないことが多すぎる)

歩夢(それでも……やるしかないんだ!)

千歌「……」

608: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:11:11 ID:nUU6goz6
【ノンストップ議論 開始!】
[|モノっちーファイル3>
[|ファンデーション>
[|璃奈ちゃんボード>

かすみ「まずは前提の確認なんですけど~……」

かすみ「曜さんの死因は、少なくとも【落下の衝撃によるものではない】という話でいいですよね?」

璃奈「……なんでそうなるの(・v・)?」

果林「今回のモノっちーファイルにも【死因は書いていなかった】筈……よね」

愛「あれ? だったら【突き落とされて死んだ】可能性だってあるんじゃないの?」

梨子「死因不明……早速、大きな壁にぶち当たっちゃったわね」

せつ菜「【毒が関係していない】のは確かですから……ん~……?」

果南「ちょっとかすみ、収拾がつかなくなってるんだけど」

かすみ「私のせいにしないでください!」

歩夢(色んな可能性が考えられる死因……とりあえず、ないと言い切れる可能性からしらみ潰しにするしかなさそうだね)

609: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:12:10 ID:nUU6goz6
[|モノっちーファイル3>→【突き落とされて死んだ】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「待って愛ちゃん。突き落とされて死んだとは考えられないよ」

歩夢「曜ちゃんは……少なくとも、落ちてくるより前には殺されていたんだと思う」

愛「なんでそう言い切れるのさ」

歩夢「曜ちゃんの死亡推定時刻は昨日の18時。つまり、落ちて来た曜ちゃんは既に死体だったってことなんだよ」

愛「あれ、そうなの?」

花丸「モノっちーファイルに書いてあったずらよ」

かすみ「しっかりしてくださいよ愛先輩。モノっちーファイルは、一番ハッキリとしている手掛かりなんですから」

愛「……悪かったよぅ。そんなに責めなくってもいいじゃん」

610: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:13:28 ID:nUU6goz6
ダイヤ「ともかく、犯人の行動パターンはおおよそ2つといったところでしょう」

ダイヤ「昨日のうちに保健室に曜さんを殺し、音楽室まで運んだか。或いは目を覚まさない曜さんを運び、音楽室で殺したか」

ダイヤ「曜さんは重体でしたから、目を覚まして自分から行動した線は薄いと見ていいでしょう」

千歌「……あり得ない」

ダイヤ「千歌さん。あり得ないと言われましても、何があり得ないのでしょう」

千歌「やっぱり、曜ちゃんが死んだのは昨日なんかじゃないよ」

梨子「千歌ちゃん、その話はもう終わったことで」

千歌「終わってない」キッパリ

しずく「何か、根拠があるんですか?」

千歌「……」

かすみ「あーもう、議論が進まないじゃないですか!」

歩夢(千歌ちゃんが言いたいこと……やっぱり、アレのことだよね)

【コトダマ一覧より選択】

611: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:14:24 ID:nUU6goz6
→【千歌の証言】

歩夢「今の流れに水を差すんだけど……千歌ちゃんは今朝、曜ちゃんが保健室で寝ていたのを見たらしいんだ」

歩夢「しかも、その時点ではまだ生きていた……だよね、千歌ちゃん」

千歌「……」

果南「ちょっと。千歌が黙ったら話が進まないでしょ」

ダイヤ「千歌さん、この裁判が始まった時から虫の居所が悪そうですが……何かあったのですか?」

千歌「……」

梨子「ねえ、喋ってくれないと分からないよ!」

かすみ「どーせ、千歌先輩の嘘でしょう? 議論をかく乱させるための……あっ」

かすみ「もしかしたら、千歌先輩が曜先輩を殺した犯人だったりして」

愛「いやいや、それはないっしょ」

ダイヤ「千歌さんは曜さんと仲が良かった筈です。仲の良い人を殺すなんて……もう、考えたくありません」

612: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:15:32 ID:nUU6goz6
しずく「ですが、千歌さんの証言を信じられないのも確かです」

せつ菜「千歌さん以外に、今日保健室に足を運んだ人はいませんか?」

「「……」」

果林「いない、みたいね」

かすみ「というワケで、千歌先輩の証言は聞かなかったことにしましょう。歩夢先輩も、こんな人に付き合わせれて大変でしたね」

歩夢「え、あー……」

千歌「あるよ、1つだけ」

歩夢(……え?)

千歌「ずっと黙ってたけど……あるよ。私の証言と死亡推定時刻、そのどっちもが成り立っちゃうパターン」

梨子「いや……それは無理があるんじゃない? まさか、死んだ人間が生き返ったなんて言うつもりなの?」

花丸「もしくは、何らかの方法で死亡推定時刻を誤認させたか……」

モノっちー「推理小説でありがちな“部屋の温度をいじるとかで、死亡推定時刻を誤認させる方法は一切通用しない”とだけは言っておくよ」

モノっちー「ボクには監視カメラがあるんだ。死亡推定時刻なんて言い方をしてるけど、大体の殺害時刻だと思ってくれていいよ」

千歌「そんな面倒な方法じゃなくて……“私が見た曜ちゃんが偽物だった場合”だよ」

613: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:16:34 ID:nUU6goz6
しずく「曜さんが偽物……?」

鞠莉「あなたが見た曜は誰かの変装だった、ということでしょ?」

千歌「うん、そうだよ」

せつ菜「ですが、変装だなんてそんな──」ハッ

ダイヤ「その方法なら、矛盾が起きませんが……」

千歌「うん。あの人なら、それが簡単に出来る」

千歌「そうやって、私を騙したんだよね」

千歌「歩夢ちゃんも……もう、分かったよね」

歩夢(寝ている曜ちゃんに変装が出来た人……)

歩夢(それは……)

【怪しい人物を指名しろ!】

614: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:17:23 ID:nUU6goz6
→【天王寺璃奈】

歩夢「璃奈ちゃん……だよね」

璃奈「……(・v・)」

歩夢「《超高校級のディスガイザー》……変装師」

歩夢「前に言ってたよね。背は変えられないけれど、見聞きさえしていれば他人の顔と声を真似られる、って……」

歩夢(けど、本当に璃奈ちゃんが……?)

果林「今回の場合、ベッドに入って、ただ眠っている曜ちゃんを演じるだけだから……」

千歌「十分可能、だよね」

璃奈「……(・v・)」

かすみ「まさか、璃奈さんまでだんまりを使う気ですか~?」

梨子「このまま反論がないなら、決定になっちゃいそうけど……」

愛「ま、待ってよ! それだとおかしくない?」

璃奈「……愛ちゃん(・v・)?」

615: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:18:02 ID:nUU6goz6
愛「りなりーが犯人だったら、曜をキャットウォークから落とすタイミングがないじゃん! だってりなりーはずっと部屋にいたんだよ!?」

花丸「……言われてみれば、そうずらね」

鞠莉「実は私も、それが気になっていたのよね~。璃奈が音楽室に姿を現したのは事件発生後、愛が連れて来たから」

鞠莉「つまり。私たちの中で唯一曜に変装出来る彼女には、事件発生時に鉄壁のアリバイがあるのよ」

果南「殺害時刻の謎が解けたと思ったら、今度はアリバイの壁……」

かすみ「だったら、そこにトリックがあるのかも知れません」

愛「トリックって、どんなトリックなのさ」

かすみ「それはかすみんに言われても困りますよ~。曜先輩が落ちた瞬間を見たワケじゃないんですから」

歩夢「でも、ただ落とすだけじゃダメなんだ。キャットウォークに登るには、舞台袖上手側のハシゴを通る以外に方法がないし……」

愛「それに、アタシがずっと舞台袖にいた。途中でダイヤっち、果南、マリーの3人がそこを通ったけど、りなりーの姿は見てないよ」

616: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:18:59 ID:nUU6goz6
かすみ「本当ですか~? 璃奈さんを庇っている……とかはナシですよ?」

愛「庇ってるワケじゃないって! アタシは本当のことを言ってるだけだよ」

歩夢「確かに怪しいけど、愛ちゃんの話はやっぱり信じていいと思う。璃奈ちゃんが個室……少なくとも音楽室に居なかったのは確かだし」

梨子「けれども、この問題を解決しないことには、真相を解明出来ないのよね」

花丸「容疑者は1人、完璧なアリバイ……」

せつ菜「やはり、あのロープがトリックの肝ではないでしょうか」

果林「ロープ?」

せつ菜「キャットウォークに落ちていた物です。あれを使えば、アリバイを確保出来る……かも知れません」

617: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:19:50 ID:nUU6goz6
【ノンストップ議論 開始!】
[|ロープの束>
[|照明機>
[|愛の証言>

せつ菜「トリックに必要なのは、あのロープです」

千歌「それをどう使うの?」

せつ菜「犯人はまず、照明機に【曜さんの死体をくくりつけて】おいたんです」

せつ菜「その後、愛さんや私たちが来るより早くからキャットウォークに隠れていて……」

せつ菜「タイミングを見計らい【ロープを切って】曜さんを落としたのではないでしょうか」

せつ菜「そして、私たちが死体に気を取られている隙に、こっそり音楽室から抜け出すんです」

果南「そんなに上手く行くかなぁ……」

花丸「トリックとは、地道な作業の塊ずらよ」

しずく「ですが【最初からキャットウォークに潜んで】いれば、誰かに見つかることもありませんね」

璃奈「……(・v・)」

歩夢(せつ菜ちゃんの推理には、無理がある……。それを証明出来る証拠を、突きつけるんだ!)

618: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:20:28 ID:nUU6goz6
[|ロープの束>→【ロープを切って】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「ロープを切って落としたっていうのは……考えられないんじゃないかな」

せつ菜「どうしてですか?」

歩夢「あのロープの両端、どっちの断面も、先端は綺麗じゃなかったんだ」

歩夢「普通、何かでロープを切ったら、綺麗な切断面が出来上がる筈だよね?」

歩夢「それに隠れていたんだったら、わざわざロープで固定しておく理由もないと思うんだ。直接落とせばいい話だし……」

鞠莉「そもそも、犯人の目的がアリバイを確保することだとしたら、キャットウォークに上ったこと自体が不自然なのよ」

しずく「どうして不自然なんですか?」

鞠莉「死体が落ちた時……つまり、梨子の演奏中のアリバイが欲しいのなら、一緒に音楽室で演奏を聴いていればいい」

花丸「璃奈ちゃんが犯人だとしたら、誰にも姿を目撃されないまま犯行を行ったことになる。それは、犯人の心理を踏まえると矛盾していることになる……」

鞠莉「そういうことよ。合ってるわよね、歩夢」

歩夢(そ、そこまでは考えられていないよ……!)

619: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:21:18 ID:nUU6goz6
ダイヤ「では、犯人は璃奈さんではない。と言いたいのですね?」

鞠莉「ええ。けれど、今回の事件に一枚噛んでいるのは間違いないと思うわ」

千歌「……共犯者がいる、ってこと?」

鞠莉「f㎜……それも考えにくいのよねえ」

梨子「学級裁判のルールじゃ、ここから出られるのは誰かを殺した人だけだった筈……」

果南「共犯者って、それに含まれるの?」

モノっちー「含まれないよ。クロになるのは、殺人を実行した人ただ1人だネ」

鞠莉「でしょうね。つまり、誰かの殺害に協力を申し出たところで、卒業出来るというメリットはないのよ」

かすみ「ここから出ること以外にも、その人にとってはメリットがあったかも知れませんよ? 例えば、曜先輩が邪m──」

千歌「……かすみちゃん」

かすみ「じょ、冗談ですって千歌先輩! そんなに睨まないでくださいよ~」

620: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:23:15 ID:nUU6goz6
梨子「なんだか、議論が振り出しに戻っちゃったわね……」

しずく「手掛かりは結構出てきましたが、どれも矛盾するものばかりで……」

果林「そうかしら。可能性はまだあるわよ」

梨子「どんな可能性なの?」

果林「璃奈ちゃんにしか、曜ちゃんに変装することが出来ない。でも、璃奈ちゃんにはアリバイがある」

果林「だったら“曜ちゃんをキャットウォークから落としたのは別の誰かだった”可能性は十分あると思わないかしら」

ダイヤ「それは、共犯の話をしているのですか? だとしたら、既にその話は否定され──」

果林「……共犯なんて、優しい話じゃないわ。“利用した”のよ」

璃奈「利用……(・v・)?」

果林「璃奈ちゃんを騙して、曜ちゃんに変装させた」

果林「そして、璃奈ちゃんに完璧なアリバイがある間に、音楽室で死体を落とす。こうすれば、一見打ち破れない矛盾が出来上がるのよ」

果林「実際そうだったんじゃないかしら、愛ちゃん」

愛「……え?」

621: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:25:22 ID:nUU6goz6
果林「璃奈ちゃんと仲の良いあなたなら、彼女を騙して犯行のお手伝いをさせることは……可能よね」

愛「いやいやいやいや、なんでそうなるの!?」

歩夢「待って果林さん。愛ちゃんは、ずっと夕食会の進行役をやってた筈だよ?」

歩夢「それに、キャットウォークに上るにはあのハシゴしかなくて、愛ちゃんは誰も、みてな……」ハッ

果林「気づいたみたいね、歩夢ちゃんも」

かすみ「んー……つまりどういうことなんですか~?」

果林「何も私だって、仲がいいからって理由だけで疑っているワケじゃないわ」

果林「舞台袖を通った人は、ダイヤちゃんたち以外にはいない……それを証言したのは、愛ちゃんだったわね」

果林「けど、その“愛ちゃん自身がキャットウォークに行っていた”としたら、全ての辻褄が合うのよ」

千歌「時間は十分あるし、愛ちゃんなら誰かに見つかる心配もない……」

622: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:26:00 ID:nUU6goz6
愛「ちょ、ちょっと待ってよ。愛さん、本気で疑われてる?」

しずく「疑われてるというか……」

花丸「最重要容疑者ずら」

歩夢(今思い返せば……今朝の愛ちゃん、どこか様子がおかしかったんだ)


歩夢『うん。愛ちゃんも、楽しみでしょ?』

愛『え!? ま、まぁ……そうだね。愛さんも楽しみだよ!』

歩夢『……?』

果南『そういえば、璃奈の姿が見えないけど……』

愛『あー……りなりー、昨日は舞台装置の手伝いしてたから。疲れて寝てるんじゃない?』


歩夢(なんだろう。上手く言い表せないけれど、何かを隠しているような……)

623: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:26:39 ID:nUU6goz6
歩夢「ねえ。愛ちゃんが犯人じゃないなら、璃奈ちゃんには何も頼み事はしてないってことだよね?」

愛「し、してるワケないじゃん!」

璃奈「……(・v・)」

歩夢「だったら──」

ダイヤ「ぶっぶーーーーーですわ!!」

反論!

ダイヤ「皆さん、憶測で物を語り過ぎではありませんか?」

ダイヤ「愛さんが疑わしいことは確かです。しかし、璃奈さんとは仲が良かったのですよ?」

歩夢「で、でも……」

ダイヤ「それに、穴があるのです。あなたたちの推理には……!」

624: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:28:18 ID:nUU6goz6
【反論ショーダウン 開始!】
[|ファンデーション>
[|愛の証言>
[|璃奈の証言>

ダイヤ「愛さんが璃奈さんを利用した。まず、この前提に無理があるのです」

ダイヤ「保健室で寝ていた筈の曜さんに化けてもらう。この時点で、璃奈さんは不自然に思った筈です」

ダイヤ「計画としては、いささかリスクが大きすぎると思いますが」

─発展─
確かにリスキーだけど……
  それが実行された可能性は、ないと言い切れないよ

ダイヤ「一度までなら、何かしら誤魔化しの言い訳はあったでしょう」

ダイヤ「ですが、曜さんが亡くなったのは昨日の夕方」

ダイヤ「【定期的に訪れる千歌さん】の目を欺くためには……」

ダイヤ「昨日と今朝、璃奈さんに【二度のお願い】が必要になります」

ダイヤ「疑わしさが増すだけで、計画としては御粗末すぎるのですよ」

確かに、ダイヤさんの言い分は一理ある。でも、それを否定出来る証拠があった筈だ!

625: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:29:00 ID:nUU6goz6
[|璃奈の証言>→【二度のお願い】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「二度目のお願いは、必要ないんだ」

ダイヤ「まさか事前に頼んでおいたとでも?」

歩夢「ううん、その必要もない。璃奈ちゃんボードを夜中のうちに盗んでおけばいいことなんだ」

ダイヤ「……あのボードが?」

せつ菜「確か……夜中、大浴場に入っている間に、なくなっていたんですよね」

璃奈「……うん(・v・)」

歩夢「顔を見られるのが恥ずかしいから、璃奈ちゃんボードで顔を隠している。裏を返せば“璃奈ちゃんボードがなければ人前に出られない”んだ」

歩夢「けど、誰かに変装した状態なら璃奈ちゃんボードは使わない……現に、私たちはその光景を見ている筈だよ」

梨子「ルビィちゃんに化けた時……ね」

626: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:30:03 ID:nUU6goz6
歩夢「犯人はそこに付け込んだ。璃奈ちゃんボードを奪うことで、暗に“もう一度曜ちゃんに変装しろ”と脅しをかけたんだ」

歩夢「いや、もしかしたら……『もう一度やってくれたら、ボードは返す』くらいのやり取りはどこかであったかも知れない」

鞠莉「そうやって、他人を利用する……なるほど、考えたわねえ」

愛「……」

かすみ「ちょっと待ってください。いや、愛先輩が怪しいのは分かるんですけど……」

かすみ「もし璃奈さんがボードを2つ所持していたら、折角立てた計画が破綻しちゃいますよ?」

花丸「1つしかなかったと思うずらよ。死体が発見されて、愛さんが璃奈ちゃんとかすみちゃんを呼びに行く時に、ボードを持って行ったし……」

愛「それは……りなりーの物だし、ないと困るんじゃないかなーって、一応持って行っただけだよ」

かすみ「何にせよ、あんなもの簡単に作れそうじゃないですか。顔を隠せればいいんですから……」

歩夢「いや……そういうワケでもないんだ」

歩夢(かすみちゃんが知らない、璃奈ちゃんボードの秘密……)

【死体の顔に貼り付いていた】
【唯一無二】
【裏に両面テープが付いていた】

正しい選択肢を選べ!

627: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:31:04 ID:nUU6goz6
→【唯一無二】

歩夢「あのボードは一つしかないんだよね、璃奈ちゃん」

璃奈「……うん、お手製。よく見ないと分からないけど、璃奈ちゃんボード、穴が開いてる(・v・)」

璃奈「そうしないと、前が見えなくて危険だから……(>_<。)」

かすみ「あー、やっぱり前見えてるんですねアレ」

梨子「特別な持ち方をしないと前は見えないけれど、それを知っているのは璃奈ちゃんだけ。そんな話をしていたわ」

璃奈「視界を確保出来るように穴を開けるの、大変。予備は作っておきたいけど、なかなか手が伸びないの(>_<。)」

かすみ「なるほど、そういうことでしたか」

璃奈「でも……璃奈ちゃんボードを盗んだの、本当に愛ちゃんなの(>_<。)?」

愛「いや、えっと……」

璃奈「……昨日みたいに、私を利用するつもりだったの(>_<。)?」

歩夢(……えっ?)

628: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:32:00 ID:nUU6goz6
果南「昨日みたいに……って、まさか」

璃奈「愛ちゃんが犯人だなんて信じたくないけど……やっぱり、そうなんだね(>_<。)」

璃奈「バレちゃったから白状するよ。曜さんに変装していたのは私(>_<。)」

千歌「愛ちゃんに頼まれたから?」

璃奈「……うん、大体みんなが推理した通り。昨日、私は愛ちゃんにお願いされた(>_<。)」


愛『りなりー、ちょっと頼みがあるんだけどさ』

璃奈『……なに? 音楽室に戻って、明日の調整の続きをするんじゃなかったの(・v・)?』

愛『いやー……ちょっと、超高校級のディスガイザーさんの力を借りたいというか……』

璃奈『いいけど……誰に変装して欲しいの?』

愛『曜だよ。目を覚ましたはいいんだけど……なんか、プールに行きたいらしくてさ』

愛『それで、千歌ちーがお見舞いに来た時に何言われるか分からないから、何とかしたいんだって。曜に頼まれちゃってさ』

璃奈『……まあ、いいよ。いつまで(・v・)?』

愛『プールの校則があるし……夜時間になるまでだって』

629: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:33:01 ID:nUU6goz6
愛「……」

璃奈「……あの時は、別に変だとは思わなかった。保健室に行ったら、曜さんもいなかったし(・v・)」

璃奈「夜時間になって、こっそり大浴場に入って……問題は、その後だった(・v・)」

梨子「璃奈ちゃんボードが盗まれたのね」

璃奈「……うん。それに、お部屋に戻ったら、こんな紙が置いてたんだ(・v・)」スッ


『明日の朝、もう一度曜に変装しろ』


璃奈「どうすればいいか分からなかった。けど、璃奈ちゃんボードが見当たらないし、そのままじゃ出るに出られなかったから……(>_<。)」

ダイヤ「だから、紙に書かれていた要求を呑んだのですね」

璃奈「……うん(>_<。)」コクリ

《璃奈への手紙》のコトダマを入手しました。

鞠莉「まあ、仕方ないわよね。手紙の主がボードを奪った……そう考えるのが自然でしょうし」

630: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:34:33 ID:nUU6goz6
璃奈「そのあとは……途中で寝ちゃいそうになったから、こっそりお部屋に戻った(>_<。)」

璃奈「しばらくしたら、死体発見アナウンスが流れて……愛ちゃんが、ボードを持ってきた(>_<。)」

璃奈「かすみちゃんの部屋に寄ってから、音楽室に行って……あとは、みんなと一緒だった(>_<。)」

果南「ありがと、璃奈」

しずく「けど、これでハッキリしましたね……」

愛「……」

かすみ「愛先輩、そろそろゲロっちゃった方がいいんじゃないですか~?」

愛「……ない」

愛「知らない……あんな手紙、アタシ知らないよ……」

果林「璃奈ちゃんの証言と手紙がある以上、知らないじゃ通らないと思うけど?」

愛「本当だって! りなりーに頼み事をしたのは認めるけど……」

愛「手紙なんて出してないし、ボードを盗った覚えなんてないよ!」

631: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:35:50 ID:nUU6goz6
愛「……信じて貰えるとは思ってないよ。けど、アタシは罠に嵌められた」

千歌「その罠って、璃奈ちゃんに裏切られたこと?」

果林「今まで黙っていながら、自分に疑いが向けられると矛先を逸らすのね」

梨子「な、何もそこまで責めなくっても……」

鞠莉「でも、犯人かどうかは兎も角、璃奈に曜の変装を依頼したことは認めるのよね」

愛「だから、それは罠に嵌められたせいで……」

歩夢「だったら……その罠の中身を教えて欲しいんだ」

せつ菜「お願いします。何かの手掛かりが掴めるかも知れません」

璃奈「……(>_<。)」

愛「……分かったよ。昨日、夕食会の準備で愛さんたちは音楽室にいたんだ」

愛「ひと段落したところで、早めの夕食……缶詰を取りに、食堂に行ってさ」

愛「準備の続きまで時間があったから、適当にふらついてたんだけど……」

愛「……今思い返せば、何で保健室なんか行ったんだろうね」タハハ

632: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:37:05 ID:nUU6goz6
歩夢「保健室に行ったの?」

愛「うん。昨日の17時過ぎだったかな……ふらっと通りかかってね」

愛「そしたら……眠らされた。誰かに、薬を嗅がされたみたいなんだ」

かすみ「刑事ドラマなんかでよく見るやつですね。シロロヘルム……でしたっけ?」

花丸「クロロホルムのことを言ってるずら? 確かに推理小説でも使われるけど、本来あの使い方で眠らせるのは難しいよ」

モノっちー「ちなみに、そんなクロロホルムが推理小説でよく使われるようになったのは何故だと思う?」

モノっちー「19世紀半ば、イギリスのジェームズ・シンプソンという医師があの薬の効果に目をつけ、全身麻酔手術を成功させたんだ」

モノっちー「そして、彼はエディンバラ大学というイギリスの大学で教師をしていたんだけど……」

モノっちー「なんとビックリ! あのコナン・ドイルは、その人の講義を受けていたんだよネ」

花丸「だから、その講義がキッカケとなった可能性が高い。うん、有名な話ずらね」

梨子「普通は知らない話だと思うけど……」

633: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:38:08 ID:nUU6goz6
せつ菜「えっと……愛さん、続きを話して貰ってもいいですか?」

愛「……保健室で眠らされたところからだったね。起きたら、何故かベッドの下にいてさ」

愛「そんなこと知らずに起きようとしたもんだから……ほら、これ」

歩夢(そう言って、愛ちゃんは前髪をペロンとめくる)

鞠莉「あら、少し腫れてるわね」

愛「ゴチーンとね。で、ベッドの下から抜け出したら……曜がいなくなってた」

愛「輸血のチューブなんかは放置されてて……代わりに、ハンマーが置いてたんだ」

千歌「だったら、なんでその段階で曜ちゃんを探さなかったの」

愛「……私が犯人になっちゃったかも知れなかったから」

歩夢「犯人に……?」

愛「前回のエマちーの時だってそうだったじゃん! 何も悪いことしてないのに、ただ停電を復旧させただけで人殺し扱いされて……」

愛「アタシはそれが許せなかった。許せなかったけど……あの時、いざ自分がその立場に立たされたら、怖くなって……」

愛「もしかしたらって思って……でも、頭まわんなくて……」

634: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:39:28 ID:nUU6goz6
愛「だって、何がキッカケで犯人にされるか分からないし……」

愛「とにかく、誤魔化さなきゃって……慌てて保健室を出たら、りなりーの姿が……」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(必死に言い訳を連ねる愛ちゃんの声は、途中から泣きそうなものになっていて)

歩夢(というより、実際に泣いているのかも知れない。コロシアイ生活の中でも、元気を忘れなかった彼女が……)

歩夢(怖かったんだろう。私たちが記憶を奪われた学友だったこと、いきなり襲われたこと……)

歩夢(誰よりも友好的だったせいで、数多の負担が心のダムを崩壊させてしまったんだ)

果南「……話を続けたいところだけど、この様子じゃね」

愛「……」グスッ

果林「愛ちゃん、疑ったのは悪かったわ。だから、もう落ち着いて──」

愛「──」ウェッ

歩夢(愛ちゃんから、僅かに嗚咽が漏れる。もうしばらく掛かりそうだな、とみんなが思っていた──)

635: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:40:43 ID:nUU6goz6

愛「……っ!?」ゲホッ

歩夢(──彼女の口から、およそ人間が吐いていいレベルじゃない量の血が飛び出るまでは)

636: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:41:22 ID:nUU6goz6
璃奈「愛ちゃん(?□!)!?」

愛「な……ぁ……」

ダイヤ「どうしたのですか!?」

愛「……ぁ、れ……?」

歩夢(その顔から、血の気が引いて行く。ただ事ではない……のだけは確かだ)

愛「……」フラッ

バターン!

果林「ちょっと、しっかりしなさい!」

しずく「誰か、救急車を!」

かすみ「来るワケないじゃないですか!」

千歌「……」


ピンポンパンポーン

637: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:42:10 ID:nUU6goz6

モノっちー「死体が発見されました。一定の捜査時間の後、再び“学級裁判”を開きます」

638: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:42:53 ID:nUU6goz6
《超高校級の船乗り》渡辺曜を殺した犯人は誰なのか……謎だらけだった議論は、再び暗礁に乗り上げた。

最重要容疑者だった《超高校級のギャル》宮下愛の死をもって──

639: ◆8TImjtGSKs 2018/09/30(日) 20:44:34 ID:nUU6goz6

 学 級 裁 判 
   中  断


次回 歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」 後編