天国に一番近い勇者~heaven cannot wait~ 前編

447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 21:52:19.91 ID:zMs6GVqAO
勇者「ふわぁ~あ……天童、おはよう……」

天童「おっ、ようやく起きたかっ! 今日も一日、頑張ろうぜっ!」


ーー俺の名は勇者。そして、隣にいるコイツの名は天童


勇者「なぁ、天童……? ようやく、魔王城が見えてきたな……?」

天童「あぁ、まだ豆粒みてぇにしか見えねぇけどな……あそこが、魔王城だ……」


ーーダメ人間だった俺は、神様から与えられた命題をクリアしながら、ここまでやってきた


勇者「……」

天童「おい……? 何、ボケっとしてんだ? まだ、寝ぼけてんのか?」


ーー命題はクリア出来ないと命を失ってしまう、厳しい物だけれども、周りの仲間に助けられ……俺は真人間に近づいている


勇者「……あそこで、終わりなんだね?」

天童「……あぁ、あそこがこの旅の終点だ」


ーー残る命題は二つ……後少しなんだ……俺が真人間になるのも……そして、この旅も

引用元: ・天国に一番近い勇者~heaven cannot wait~ 



448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 22:02:00.33 ID:zMs6GVqAO
天童「ところでよぉ? 勇者?」

勇者「……ん? どうしたの?」

天童「おめぇ、まだ寝ぼけてんのか?」

勇者「えっ……? なんで、そんな事言うの?」

天童「いや、額に張り付いてる、ソレ見てみろよ? 何でそんな所に張り付いてるんだよ、ソレ?」

勇者「……そういや、なんか視界が悪いと思ってたんだよ。 俺の顔に、何ついてんだろ?」ピラッ

天童「……」

勇者「ん……? 封筒……? って、コレ命題じゃねぇかっ!?」

天童「来てんだよ、来てんだよぉ! もう、とっくに命題は来てんだよぉっ!」ニヤニヤ

勇者「ねぇ、俺ずっとコレつけて喋ってたの!? 最初のやりとりさぁ……!? 改めて見るとすげぇ、格好悪くない!?」

天童「細けぇ事は気にすんじゃねぇよっ! よしっ! 早速見てみようぜっ!」

勇者「も~う……もう少しだってのに……俺、いつも決まんねぇんだよなぁ……」ガサゴソ

449: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 22:05:11.38 ID:zMs6GVqAO





勇者
X月X日 午後10時までに

他人を改心させないと即・死亡!





450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 22:13:16.58 ID:zMs6GVqAO
天童「ふ~む……『他人を改心させないと即・死亡』か……」

勇者「他人を……改心させる……?」

天童「今、午前7時だから後15時間……だな……?」

勇者「たった、15時間でよぉ……? 他人を改心させるなんて、ちょっと無理があるんじゃね?」

天童「……確かに、この命題はおめぇは難易度が高ぇかもしれねぇな?」

勇者「……えっ?」

天童「だけど……残りの命題は後二つなんだし……この命題も、しょうがねぇなぁ……」

勇者「おいおいっ! ちょっと待てよちょっと待てよっ!」

天童「……あぁ? どうした?」

勇者「なんで、おめぇがそんなにネガティブなんだよ! いつもみたいなに背中押してくれよっ!」

天童「……あのな、勇者?」

勇者「?」

452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 22:19:44.99 ID:zMs6GVqAO
天童「……改心って何かわかるか?」

勇者「そんなの、俺にだってわかるよ!」

天童「文字通り……心を……改めるって事だ」

勇者「だから、知ってるっての! おめぇは国語の先生かっ!」

天童「今まで、お前はよぉ……?」

勇者「……ん?」

天童「今までの命題で……誰かに助けられて……ここまで成長して……心を改めて変わってきたんだ。なっ?」

勇者「……うん」

天童「……つまり、おめぇは改心させられる立場だったってワケだ?」

勇者「……」

天童「そんな、おめぇがよぉ? 今度は誰かの心を改めさせないといけない……つまり、改心させる立場に回るって事だ?」

勇者「……なるほど」

天童「おい、勇者? この命題……甘く見てると、痛い目に合うぞ?」

勇者「……」

453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 22:27:13.06 ID:zMs6GVqAO
勇者「……まぁ、でもさ?」

天童「……ん?」

勇者「こうやって、命題が来たって事は……これにも、何か意味があるって事なんだろ?」

天童「……そうだ」

勇者「俺は確かに……今まで、皆がいたからこそ、変われた……改心させられる立場だった……」

天童「……」

勇者「だけどさ? この命題にも、意味があるんだったら……やってみるしかないよ? 今度が俺が改心させる立場に回ってみせる」

天童「……」

勇者「皆が俺の力になってくれたみたいに……俺だって、誰かの力になってみせるよ!」

天童「……なんだよ、わかってんじゃねぇか、おめぇ?」ニヤニヤ

勇者「今、自分に出来る事をやるしかない……だろ?」

天童「そうだっ! その意気なら大丈夫だっ! なんだ、成長してるじゃねぇか、おめぇっ!」

454: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/06/28(土) 22:35:31.44 ID:zMs6GVqAO
勇者「じゃあ、天童……? 早速、命題をやろうか?」

天童「……ん?」

勇者「……天童?」キリッ

天童「あぁ? 何だよ、急に真面目な顔しやがって……気持ち悪ぃよ……」

勇者「……ちゃんとしよう? なっ? しっかり生きよう?」

天童「……はぁ!?」

勇者「おめぇはよぉ……? いつもいつも、魔物と戦う時とかさぁ? 一番後ろで見てるだけじゃん?」

天童「な、何言ってるんだよ!? そんな事ねぇよっ!?」

勇者「それじゃあ、ダメだよ? なっ? 男なんだからさぁ? ちゃんと戦おうよ?」

天童「俺はよぉ!? 天使だから、ノーカンだよ、ノーカンっ! 勇者のおめぇが戦えばいいだけの話じゃねぇか!?」

勇者「あっ……! それと、昼飯っ……! これも言いたかったんだよ!」

天童「……あぁ?」

勇者「お前、いつもいつもさぁ……? 変な物頼むじゃん? 昼飯ぐらい普通のランチ定食とか頼もうよ? 俺、仲間として恥ずかしいんだからさ?」

天童「食いたいもん食って何が悪いんだよっ! 昼からガッツリ食ったっていいじゃねぇかよぉ!」

455: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 22:43:45.31 ID:zMs6GVqAO
勇者「それと、さ……?」

天童「なんだよ! まだ、あんのかよっ!」

勇者「おめぇは、命題が来てんのにさ……? な~んで、ネガティブな事、言っちゃうのかな? 今日に限って!」

天童「……あぁ?」

勇者「おめぇはさぁ? 俺のサポートが仕事なんだろ? だったら、俺の上げるような事、言えよ? なんで、ネガティブな事言って、俺のやる気を下げるような事、言うのかねぇ……」

天童「う、うるせぇなっ……! たまにはそういう事だって言うよっ……!」

勇者「おめぇは、そんなんだから、ダメ天使なんだよ……なっ、改心しようぜ? 天童?」

天童「俺を改心させてどうすんだよっ! 俺は、天使だからノーカンだよっ! ノーカンっ!」

勇者「……はは、冗談だって冗談。 でも、こっちの立場って気持ちいいもんがあるね?」クスクス

天童「……俺の立場とるんじゃねぇよ」

勇者「でもさぁ? おめぇ、どうしたんだ? 今日はネガティブな事を言ってよぉ……? いつもウザいくらいにポジティブなのによぉ?」

457: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 22:53:40.04 ID:zMs6GVqAO
天童「カァ~! 『親の心子知らず』とはこの事だなっ! カァ~! 悲しかぁ~! 悲しかぁ~! もう、たまらんっ! たまらんっ!」

勇者「……おめぇは俺の親じゃねぇよ?」

天童「あのなぁ……勇者……? 残りの命題は後、二つだけどよぉ? 命題が終わっても、おめぇには人生が残ってるだろ?」

勇者「うん、そうだね……俺は命題クリアして、生きる価値のある人間になるんだから……」

天童「その時にはよぉ……? 俺は、もういねぇんだぜ……?」

勇者「……えっ?」

天童「だからよぉ? その時にもおめぇがちゃ~んとひとり立ち出来るようになれるか……ちょっと、意地悪な事言っただけなのによぉ……?」

勇者「……ちょっと待ってよ。ど、どういう事だよ?」

天童「それをさぁ……? どうして、そういう風に受け取っちゃうかねぇ? カァ~! おじさん悲しかぁ~!」


「あっ! 勇者さん、天童さんっ! おはようございますっ!」


天童「おっ! 女僧侶ちゃん、おっはようっ! いやぁ~! 今日もいい朝だねっ!」

女僧侶「そうですね! 魔王城も、うっすらと見えて来ましたね!」


勇者(そういや……アイツが全部の命題終わったらどうするかなんて……俺、考えてなかった……)

458: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 23:02:17.12 ID:zMs6GVqAO
天童「お~い! 勇者ァ! おい、勇者ァ!」

勇者「……」

天童「おい、コラっ! バカ息子っ! 聞いてんのかっ!」

勇者「あっ、天童……? どうした……?」

天童「女僧侶ちゃん、起きたみたいだらよぉ? 女僧侶ちゃんで命題クリアしちまおうぜ?」

勇者「……ん?」

天童「だからよぉ……? 女僧侶ちゃんを改心させて……もう、とっとと命題クリアしちまおう!」

勇者「おめぇ……何言ってんだ……? 女僧侶ちゃんなんか、改心させる所ないだろ……?」

天童「なんか、あるだろ? 女僧侶ちゃんだって、人間なんだから、悪い所の一つぐらいよぉ?」

勇者「女僧侶ちゃんにはねぇよ……そんな所なんて……」

天童「いや~、一つぐらいあるんじゃねぇか? テント畳むの遅い所とか……?」

勇者「……もう、テキパキ出来るようになってるよ?」


女僧侶「よいしょ……よいしょ……」テキパキ


天童「……おっ、本当だ?」

勇者「……なっ?」

459: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 23:14:14.22 ID:zMs6GVqAO
天童「……あっ! じゃあ、酒癖悪い所は? 酒癖悪い所とか、注意してあげればいいんじゃない?」

勇者「あのなぁ……? 天童……?」

天童「……ん?」

勇者「そりゃ、女僧侶ちゃんにだって、悪い所の一つや二つぐらいはあるよ? だけど、女僧侶ちゃんのいい所はそれ以上に……数えきれない程、あるじゃねぇかっ!」

天童「お、おぅ……」

勇者「俺はなぁ? そういう酒癖も悪い所も……全て含めて、女僧侶ちゃんが好きなんだよっ! 命題の意味はそういう事じゃねぇだろがっ!」

天童「なぁ~んだ……おめぇ、わかってるじゃん……でもよぉ? それは俺に言うんじゃなくて、女僧侶ちゃんに直接言ってやれよ?」

勇者「……ん?」

天童「いやぁ……いつまでたってもよぉ? おめぇが女僧侶ちゃんに気持ち伝えないから……俺も心配だったんだよ……」

勇者「……前回、やろうとしたんだけどね?」イライラ

天童「でもよぉ? それだけ、言えるんだったら、大丈夫だな! いや~、これで俺の心残りも一つ消えたな! よかったよかった!」

勇者「な、なぁ……? お前さぁ……?」

天童「……ん?」

勇者「お前……俺の命題が全て終わったら……その後……」


女僧侶「勇者さ~ん! 天童さ~んっ! テント畳み終わって、出発準備できましたよ~!」


天童「おっ、勇者? 準備出来たみてぇだぞ? そろそろ出発しようぜ?」

勇者「えっ……? あっ、うん……」

460: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 23:21:16.79 ID:zMs6GVqAO
ーーーーー


天童「8時か……街についたのはいいけどよぉ……?」

勇者「な、なんだか……随分寂れた街だねぇ……?」

女僧侶「魔王城の……こんなに近くにあるんですもの……心が痛いです……」

天童「まぁ、よぉ? 俺達が魔王討伐したらよぉ? この街だって、救われるだろ! なっ、勇者?」

勇者「そうだね……」


「きゃあっ~! 泥棒っ! 泥棒よっ! 誰か捕まえて~!」


天童「……ん?」

勇者「……泥棒?」

461: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 23:28:12.87 ID:zMs6GVqAO
男盗賊「……」ダッ

女僧侶「勇者さんっ! 泥棒がこっちに走ってきますよっ!」


勇者「よしっ! 俺達で捕まえようっ! いくぞっ!」

男盗賊「……くっ!」

勇者「うおおっ! たああっ!」

男盗賊「くそっ! 邪魔だっ! どけっ!」バキッ

勇者「くっ……こいつ……早いっ……! だけど、俺だってっ……!」バキッ

男盗賊「……ぐっ! てめぇ、この野郎っ!」

勇者「もう、観念しろっ! お前はもう……えっ……?」

男盗賊「お前……? 勇者……?」

勇者「お前……もしかして、男盗賊か……?」

462: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 23:33:58.26 ID:zMs6GVqAO
「このこそ泥がっ! お待ちなさいっ!」


男盗賊「や、やべぇ……! 来やがったっ……!」

勇者「お、おいっ……! 待てよっ! 何で、お前……こんな事……!」アセアセ

男盗賊「くそっ……! 邪魔だっ! どけっ!」バキッ

勇者「……ぐっ!」


「この泥棒がっ! お待ちなさいっ!」


男盗賊「うるせぇっ! 待てと言われて待つ盗賊がいるかよっ! じゃあな、ババァっ!」ダッ


天童「おい、勇者ァ! 何してやがんだよ! 命題クリアするチャンスだったってのに、みすみす逃がしやがってよぉ?」

勇者「なんで……なんで、あいつがこんな事してるんだ……?」

天童「……ん?」

463: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 23:43:02.57 ID:zMs6GVqAO
天童「……アイツ、おめぇの知り合いか?」

勇者「う、うん……小さい頃……よく遊んだ、幼馴染……俺が引き篭もりになってから、疎遠になっちゃったけど……」

天童「おめぇよぉ? 友達は選ぼうぜ? なんで、泥棒なんかと友達なんだよ、おめぇ?」

勇者「ち、違うっ……! あいつ、いい奴なんだよっ……!」アセアセ

天童「……あぁ?」

勇者「おめぇらは、わかんねぇかも知らねぇけどさぁ!? 俺、あいつと仲良かったから、わかるんだっ! あいつはいい奴なんだよっ!」

天童「……」

勇者「本当だってっ! 信じてくれよっ!」

天童「……じゃあ、なんでそんな奴が、こそ泥みてぇな真似してんだ?」

勇者「そ、それは……わかんないけど……」

天童「……」

勇者「何か……理由があるんだと……思う……」

天童「……」

勇者「本当だって! あいつ、本当はいい奴なんだよ! 信じてくれよ! 俺の友達だった奴なんだよ!」

464: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/28(土) 23:47:01.89 ID:zMs6GVqAO
天童「まぁ、よぉ……?」

勇者「?」

天童「おめぇがそこまで言うんだったら、それでいいんじゃねぇの?」

勇者「……えっ?」

天童「あの泥棒、とっ捕まえてよぉ? 改心させたら、命題クリアじゃねぇか?」

勇者「……うん」

天童「俺も手伝ってやるからよぉ……今からあのこそ泥を……」

勇者「な、なぁ……? 天童……?」

天童「……ん?」

勇者「今回はさぁ……? 一人でやらせてみてくれねぇかな……?」

天童「……あぁ?」

466: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 00:06:40.91 ID:suKAiA5cO
勇者「俺もさぁ……? 改心させられる立場の時……お前らだけじゃなくて……他の人にも色々言われた……」

天童「……」

勇者「……でも、その言葉って、実は凄く辛かったんだ」

天童「……」

勇者「引き篭もりをやめろ……社会に出ろ……言ってくれてる事は間違いなく、正しい事だったんだけどさ?」

天童「……」

勇者「俺が引き篭もった理由まで……踏み込んできてくれる人は誰もいなかった……何処か、上っ面の綺麗事を言われてるような気がしてた……」

天童「……」

勇者「でも、言ってる事は正しいから、やらなきゃいけないと思った……だけど、どういう風に動いていいのかまではわからなかった……」

天童「……」

勇者「それで……俺、どんどん塞ぎ込んで……どんどん動けなくなってさ……?」

天童「……」

勇者「……でも、そこに天使のおっさんが現れたんだ」

天童「……勇者」

468: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/06/29(日) 00:13:23.22 ID:suKAiA5cO
勇者「そいつはさぁ……? ズガズガと俺の心の中まで強引に入ってくる、図々しい奴だったよ」

天童「……」

勇者「でも、そいつはっ……! ダメな俺が頑張れば、まるで自分のようの事に褒めてくれたっ……!」

天童「……」

勇者「俺と真っ正面から向き合って……塞ぎ込んでた俺を、まるで自分の事のように考えてくれたっ……!」

天童「……」

勇者「他の人がかけてくれない、俺が本当に欲しかった言葉を……いっぱいいっぱい言ってくれたんだっ!」

天童「……勇者」

勇者「俺が変われた理由は、お前や女僧侶ちゃんが、言葉だけじゃなくて……心まで、踏み込んできてくれたからなんだ!」

469: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 00:20:00.75 ID:suKAiA5cO
勇者「神様がこういう命題を送ってきたって事はさぁ……?」

天童「……」

勇者「……きっと、あいつの心の中に入り込めるのは、俺だけなんだと思う」

天童「……そうかもな」

勇者「人間、辛い時……どう、向き合って欲しいか……誰に向き合って欲しいか……そして、そこからどう行動すればいいか……」

天童「あぁ」

勇者「……俺は、お前に教えてもらった」

天童「そうだっ……!」

勇者「だから……あいつの天使には、俺がならなきゃいけない……今度はお前が教える番なんだって……神様は言ってるんだと思うんだ」

470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 00:29:02.27 ID:suKAiA5cO
勇者「天童、女僧侶ちゃん……ごめん……! 今日は俺、一人で行動させてくれっ!」

天童「……大丈夫か?」

勇者「やらなくちゃいけないっ……! 俺が二人にいっぱい、教えてもらったんだからっ!」

女僧侶「私は神の教えで……説得する事しかできないと思います……」

勇者「……」

女僧侶「あの方が、勇者さんの幼馴染なのなら、彼に一番届くのは……きっと、勇者さんの言葉でしょう……」

勇者「……うんっ!」

女僧侶「だから……勇者さんが救ってあげて下さい……」

勇者「我儘聞いてくれてありがとう……」

天童「まっ、おめぇも散々改心させられた立場だからな! どういう風に言えば改心させられるかなんて、おめぇが一番よくわかってるだろっ!」

勇者「あぁ……今度は俺が……自分が学んできた事を、伝える番だっ……!」

天童「よっしゃっ! 勇者ァ! じゃあ、早くあのコソ泥追っかけてこいやっ! 見失っちまうぞ!」

勇者「わかったっ! 追いかけてくるよっ!」ダッ

471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 00:29:37.69 ID:suKAiA5cO
今日はここまで

473: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 22:14:16.83 ID:suKAiA5cO
天童「……行ったか」

女僧侶「そうですね。上手くいくと……いいですね……」

天童「……アレ? そういえばさぁ?」

女僧侶「天童さん、どうしたんですか?」

天童「あのコソ泥、勇者の幼馴染って事は、女僧侶ちゃんの幼馴染でもあるんじゃねぇの? 女僧侶ちゃん、あいつの事、知らねぇの?」

女僧侶「う、う~ん……そういえば……見た事もあるような気もしますが……」

天童「……しますが?」

女僧侶「やっぱり、勇者さんにも男同士の付き合い……みたいなのがあるんじゃないんですかね……? 私はあの方と接した事はありません」

天童「男同士の付き合いって言ってもよぉ? 成長する前のあいつは女々しい奴だったぜ? そんなのあるのか?」

女僧侶「う~ん……わかりません……」

474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 22:22:08.79 ID:suKAiA5cO
女僧侶「……それよりも、天童さん?」

天童「?」

女僧侶「あの方の事は勇者さんに任せて、私達も今自分に出来る事をしましょうよ?」

天童「……ん?」

女僧侶「ほら? 道具屋の方が、困ってるようですし……」


「あたた……転んじまったよ……くそぉ、逃げられちまったか……」


天童「……なるほどね」

女僧侶「それに……商品だって、あんなに散らばってます。私達はこっちをなんとかしましょうよ? ねっ?」

天童「あぁ、そうだなっ! おい、ばばぁ! おめぇ、大丈夫か!?」


「ん……? あんたらは……?」


天童「俺達はよぉ? 冒険者の勇者御一行だっ! あのコソ泥はよぉ? 俺達が絶対、改心させてやるから、まぁ大船に乗ったつもりでいときんしゃんっ!」

女僧侶「さぁさぁ、先ずは傷の手当てをしましょう……」

475: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 22:31:16.87 ID:suKAiA5cO
ーーーーー


勇者「はぁ……はぁ……」

勇者「くそっ……! あいつ……何処に行ったんだ……」キョロキョロ

勇者「まだ、そんなに遠くまで逃げてないはずだっ……きっと、まだ近くにいるはずだからっ……」

勇者「……ん?」


男盗賊「はぁっ……はぁっ……」ゼエゼエ


勇者「……いたっ! あそこだっ!」

勇者「よし、後はあいつを説得して……ん、待てよ……?」

勇者「……」

勇者「説得……どういう風にすればいいんだ……それって……」

勇者「……」

勇者「俺は……あの時、どういう風に説得されたかったんだろう……? 引き篭もってた時、心の底でどんな言葉を求めてたんだろう……?」

勇者「多分、その言葉俺をが……あいつに言ってやらないと……あの時と同じように、届かないんだろうな……」

476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 22:39:26.90 ID:suKAiA5cO
男盗賊「よし……これだけ盗めば……しばらくは食っていけるな……」

勇者「おいおいっ! 男盗賊? 久しぶりなのに、素っ気ない態度じゃねぇか?」

男盗賊「!」

勇者「お前、やっぱり、足早いんだな? いや~、俺もここまで追いかけてくるの疲れたよ……」

男盗賊「……勇者!」

勇者「なぁなぁ? 今日は何、盗んだんだ? 見せてくれよ?」

男盗賊「……」

勇者「おいおい……隠す事はねぇじゃん……いつもみたいにさぁ……? 盗んだ物、見せてくれよ?」

男盗賊「……やめろっ! これに触るなっ!」

勇者「なんでだよ……お前、いつもかっぱらった●●本、見せてくれたじゃねぇかよぉ? 今回はなんだ? 洋モノなのか?」

男盗賊「……」


勇者(俺は……変わらない態度で接してほしかった……!)

477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 22:48:21.50 ID:suKAiA5cO
勇者「でも、おめぇさぁ? かっぱらってきたのはいいけど……金置いてきたのか?」

男盗賊「……あぁ?」

勇者「おめぇはさぁ……? 未成年で販売して貰えないから、いつもいつも、●●本かっぱらってたじゃん?」

男盗賊「……」

勇者「でもよぉ? おめぇ、ちゃんと盗んだ分の代金は、いつも店に置いていてたじゃねぇかよ? おめぇ、今回はソレ、忘れてねぇか?」

男盗賊「……お前、いつの話してんだよ」

勇者「おめぇがそうやって、ポリシー持って盗みしてたからさぁ? 俺は安心して●教育の勉強が出来たってワケだ! なっ?」

男盗賊「……お前には、こんな姿見られたくなかったな」

勇者「金置いていかなかったら、本物の泥棒じゃねぇか!? なっ? 今から、バレねぇように金払いに行こうぜ?」

男盗賊「……」

勇者「俺も盗んだ物でなんか、●教育の勉強したくねぇからよぉ? で……盗んだ●●本、早く見せてくれよ? なっ?」

479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 22:57:22.80 ID:suKAiA5cO
男盗賊「……懐かしいな。いつも、お前と二人で悪さばかりしてたな」

勇者「おめぇと付き合うのは、姉ちゃんと母ちゃんにこっ酷く叱られたたけどな!」

男盗賊「あの頃から……俺は悪党だったのかな……」

勇者「いやいや、そんな事はねぇよ? 父ちゃんは理解してくれててたよ?」

男盗賊「……お父さんが?」

勇者「あぁ、父ちゃんだってよぉ? そういうのに、興味を持つのは健全な男の証拠だって、言ってた言ってた」

男盗賊「……そうか」

勇者「お前達がゲイじゃなくてよかったって、笑ってたよ! 金を置いてきてるなら、いいじゃねぇかって言ってくれてた!」

男盗賊「勇者さん……あなたが魔王を倒したはずなのに……こんな世界になってしまうなんて……」

勇者「だからよぉ? 今から、金払いに行こうぜ? 俺だって、天国の父ちゃんに怒られたくないからさ?」

480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 23:03:59.96 ID:suKAiA5cO
男盗賊「……勇者?」

勇者「ん、どうした? 金払いに行くの?」

男盗賊「俺だって……あの頃に戻りたい……でも、もう無理なんだ……」

勇者「……はぁ?」

男盗賊「俺はもう……本当の悪党になってしまったんだ……」

勇者「何、言ってんだ? おめぇ、変なもんでも食ったか?」

男盗賊「もう、俺の事は放っておいてくれっ!」ダッ

勇者「お、おいっ! 待てよっ! 逃げんじゃねぇよっ!」ダッ


男盗賊「……お、追ってくるんじゃねぇよっ!」

勇者「うるせっ! おめぇは放っておけるかってのっ!」

男盗賊「く、くそっ……! こうなりゃ……振り切ってやるっ……!」ダダッ

勇者「あっ! くそっ、スピード上げやがった! ……でも、こっちだって、命がかかってるんだから、逃がしてたまるかよっ!」ダダッ

481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 23:15:50.39 ID:suKAiA5cO
ーーーーー


街長「そうか……君達は魔王城に向かうのか……」

女僧侶「はいっ!」

天童「まぁ俺達、勇者御一行様が魔王討伐して、この街も救ってやるから、もう少しの辛抱だぜおっさんっ!」

街長「期待しておくよ。しかし、この辺りの魔物は気性が荒い……気をつけてくれよ?」

女僧侶「大丈夫ですっ!」

天童「皆で力を合わせりゃ、なんとかなるって! あんたらだって、そうやって毎日必死に生きてるんだろ? なっ?」

街長「そうだ……君達に魔物以外でも、気をつけてもらいたい事がある」

女僧侶「……何ですか?」

天童「勿体ぶらずに言えよ、おっさん!」

街長「最近……各地の街を荒らしては移動を続けている盗賊団がいるのだが……どうやら、その盗賊団がこの付近にいるらしい」

女僧侶「……盗賊団?」

天童「……あいつ、一人で盗みやってるワケじゃねぇのか」

482: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 23:22:08.26 ID:suKAiA5cO
街長「盗賊団の名は『暴走天使(ミッドナイトエンジェル)』……10名程の大部隊な盗賊団だ……」

女僧侶「ミッドナイト……エンジェル……?」

天童「うわっ、 厨二臭っ! 何、そのネーミング!? 暴走族じゃねぇんだからよぉ?」

街長「名前は厨二臭いが……実力は本物らしい……先程、この街も襲われたよ……」

女僧侶「……」

天童「……あの野郎。少ない物資を皆分け合って協力している街なのによぉ」

街長「まぁ、君達も彼らに身ぐるみを剥がされないように、気をつけてくれ」

483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 23:28:52.10 ID:suKAiA5cO
天童「……ったく、10名程の盗賊団だってよ?」

女僧侶「……勇者さん、大丈夫でしょうか?」

天童「改心させねぇといけねぇ人数増えちまったじゃねぇか……大丈夫かねぇ……?」

女僧侶「……私達も手伝います?」

天童「状況が悪化してきたからなぁ……? 俺達も手助けしねぇといけねぇのかねぇ?」

女僧侶「あっ……でも、勇者さん……何処に行ったんでしょうか……?」

天童「個人行動許すべきじゃなかったかもなぁ~? まぁ、とりあえずは、ここで待とうか?」

女僧侶「……えっ?」

天童「もう、そろそろあいつも腹が減って戻ってくるだろ?」グゥー

女僧侶「……天童さん、それ自分の事、言ってません?」

天童「バ、バカ~ンっ! 昼になったらよぉ? 誰だって、腹は減るぜ?」

484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/29(日) 23:35:52.32 ID:suKAiA5cO
ーーーーー


勇者「……くそっ! 見失なったかっ!」

勇者「あいつ、足早ぇな……そんないいもん、盗みなんかに使わねぇで、別の事に使えよ……」

勇者「くそぉ……やっぱり、俺一人じゃ無理なのかなぁ……」

勇者「……」

勇者「……でも、天童や女僧侶ちゃん一人で俺に向かい合ってくれて、俺を変えてくれたしなぁ」

勇者「……」

勇者「出来ない事なんてないよ……簡単に諦めちゃダメだよなぁ……」

勇者「う~ん……」グゥー

勇者「くそぉ……腹減ってきたなぁ……とりあえず、一度街に戻って……二人に相談してみるか……」

488: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 22:07:25.94 ID:waPUUsfJO





PM1:00

タイムリミットまで後、9時間






489: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/06/30(月) 22:14:15.45 ID:waPUUsfJO
勇者「……」トボトボ

天童「お~! 勇者、戻ってきたか! 大丈夫だったか?」

勇者「う~ん……途中で逃げられて……見失っちゃったよ……」

天童「おめぇは、何やってんだよぉ……って、言いてぇ所だけどよ……?」

勇者「……ん?」

天童「おめぇが想像してるより、ややこしい事になってると思うぜ? あのコソ泥はよぉ? 見失って正解かもな?」

勇者「えっ……? それって、どういう事……?」

天童「まぁ、詳しい事はよぉ? 飯を食いながらでも話そうぜ? おじさん、お腹減ってもう動けな~い」

勇者「そ、そうだね……もう1時だし、話は酒場でご飯食べながらでもしようか?」

490: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 22:23:10.60 ID:waPUUsfJO
酒場の主人「へい、らっしゃい。注文は何にするんだい?」

勇者「じゃあ、俺はA定食で……女僧侶ちゃんはどうする?」

女僧侶「私はB定食にします。天童さんは?」

天童「俺はよぉ? この海鮮鍋ってのにするよっ!」

勇者「……何で鍋なの? 何で、昼から鍋食うの?」

天童「メニューにあるからじゃねぇかよぉ!?」

勇者「昼だよ? まだ、お昼だよ? おめぇ、今日は一段とおかしいもん、頼んでるぞ?」

天童「うるせぇなっ! 食いたいもん食って何が悪いんだよぉ!?」ギャーギャー

勇者「おめぇのそういう所が恥ずかしいんだよぉ! なっ? 天童君、改心しよう? 改心しましょうよ!?」ギャーギャー


主人「A定食と、B定食と、海鮮鍋だな……今から作るから、少し待ってくれ」

491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 22:30:23.75 ID:waPUUsfJO
勇者「……で、天童?」

天童「……ん、どうした?」

勇者「あいつが、ややこしい事になってる……って、どういう事?」

天童「あぁ……あの、コソ泥……盗賊団に入ってるらしいんだよ……」

勇者「盗賊団……?」

天童「10名程の大部隊の盗賊団らしいよ……街を荒らして……転々としてるらしいぞ?」

勇者「なんで……なんで、あいつ盗賊団なんかに入ったんだろ……?」

天童「盗賊団の名前は……『暴走天使(ミッドナイトエンジェル)』だってよ? どう思うよ?」

勇者「うわっ! 何で、そんな厨二臭い暴走族みてぇな所に入るんだよ!? センス悪ぃな、アイツ!」

天童「なっ、なっ? おめぇもやっぱり、そう思うよな!? ネーミングセンスねぇよな!?」

492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 22:36:50.16 ID:waPUUsfJO
女僧侶「天童さん……問題点はそこじゃありませんよ……」

天童「あぁ、そうだったそうだった! なぁ、勇者? おめぇ一人で大丈夫か?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「いくら……あの方が勇者さんの幼馴染だからと言っても……」

天童「……相手は10人もいるんだぜ?」

勇者「そ、それは……」

女僧侶「……私達も協力しましょうか?」

天童「10人も改心させるなんてよぉ……? いくら、おめぇが成長してるからって、ちょっと無謀じゃねぇか?」

勇者「う~ん……そもそも、何であいつ、盗賊団になんか入ったんだろ……? なんか、理由がありそうなんだけどなぁ……?」


主人「へいっ! A定食と、B定食と、海鮮鍋、おまちっ!」

493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 22:43:50.27 ID:waPUUsfJO
勇者「あっ、ありがとうございますっ!」

女僧侶「美味しそうですね」

天童「でもさ? ちょっと量が少なくね? 俺はも~っとガッツリ食いてぇなっ!」

勇者「……昼からガッツリ食うな。昼からよぉ?」


主人「……悪ぃな、兄ちゃん達」

勇者「……ん?」

主人「これだけ、魔王城が近いとよ……? やっぱり、食材だって簡単には仕入れる事が出来ねぇんだよ」

女僧侶「そうですよね……」

主人「世界が平和だった時は、もっといい物出してたんだぜ!? うちの店は『美味しいB級グルメ店』なんて、雑誌にも乗った事があるんだぜ?」

天童「……B級じゃダメじゃねぇかよ」

494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 22:53:30.75 ID:waPUUsfJO
主人「兄ちゃん達がよぉ? 魔王倒して、世界が平和になったらよぉ? 最高のB級グルメを食わせてやるから、頑張ってくれよな!」

勇者「あはは、期待してますよ」

主人「……ったく、しかし魔王だけじゃなくて、バカな盗賊団も現れたときたもんだ」

勇者「……えっ?」

主人「この街はよぉ? 少ない物資を皆分け合って、頑張ってるってのに……どうして、それを奪っていくかねぇ!?」

勇者「……」

主人「同じ人間のはずなのによぉ? どうして、平気で他人を傷つける事が出来るんだよ! 本当、ゴミクズみてぇな奴だよっ!」

勇者(……ゴミクズ)

主人「兄ちゃんも盗賊団に襲われないように気をつけてくれよ? 世界を救う為に頑張ってる人間がよぉ? バカなゴミクズに邪魔されるなんて、俺そういうの嫌だからよぉ!?」

勇者「は、はい……」

495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 22:59:51.21 ID:waPUUsfJO
勇者「……」

天童「……どうした、勇者?」

勇者「……」

天童「おい、勇者! 聞いてんのか!? どうしたんだよ、ボケっとしてよぉ?」

勇者「……なぁ、天童?」

天童「……ん?」

勇者「おめぇもさぁ……? アイツの事、ゴミクズだと思う……?」

天童「……」

勇者「やっぱり……こうやって、他人を傷つけてるって……ゴミクズがする事だと思う……?」

天童「う~ん……おめぇの幼馴染だからなぁ……あまり、キツい事は言いたくねぇんだけどなぁ……」

勇者「……えっ?」

天童「ゴミクズがどうかはわかんねぇけどよぉ……? やっぱり、ダメ人間だとは思うぜぇ?」

勇者「ダメ人間かぁ……」

天童「……だから、こうやって命題が来たんじゃねぇか? そうだろ?」

496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 23:06:13.52 ID:waPUUsfJO
勇者「……ねぇ、女僧侶ちゃんはどう思う?」

女僧侶「私も……あの方の事を全て理解してるわけではありませんが……」

勇者「……うん」

女僧侶「やっぱり、間違った道を歩んでいると思います……」

勇者「……」

女僧侶「それが、勇者さんの知り合いだったら……救ってあげるべきなんじゃないですかね……?」

勇者「……そうだよね」

女僧侶「午後からは、私達も協力しますから……頑張りましょうよ、勇者さん!」

勇者「……」

天童「相手は10人いるらしいからな! まぁ、俺も協力してやるよ!」

497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 23:15:06.29 ID:waPUUsfJO
勇者「う~ん……気持ちは嬉しいんだけどさぁ……?」

女僧侶「?」

勇者「やっぱり……俺、一人でやってみる……」

天童「おいおい! 相手は10人いるんだぞ!? おめぇ、一人で出来るのかよ!?」

勇者「いや、違う……天童、そこじゃないんだ……」

天童「……あぁ?」

勇者「いや、なんて言ったらいいのかな……俺が、引き篭もってる時にさ? 俺を外に出そうと頑張ってくれた人達がいるんだよ……」

天童「……ほぅ」

勇者「母ちゃんの知り合いとか……姉ちゃんの知り合いとか……色んな人が俺を外に出そうとしてくれてたんだ」

天童「……」

勇者「でも……俺、その人達の言葉で、立ち上がる事が出来なかった……」

498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 23:25:18.07 ID:waPUUsfJO
勇者「やっぱり、姉ちゃんの弟だから……何とかしてあげよう……とかさ?」

女僧侶「……」

勇者「世間的に恥ずかしい事だから……何とかしてあげよう……みたいな気持ちを感じてたのかもしれない……」

天童「……」

勇者「なんか……二人の協力はそれと同じような事なんじゃないかって……俺、自分がそうだったから、思うんだよ」

女僧侶「……勇者さん」

勇者「俺があの時、本当に欲しかったのは、居場所のないダメな自分の存在全てを受け入れて人だったのかもしれない……」

天童「……そうか」

勇者「やっぱり、二人じゃ無理だよ……あいつに一番近いのは俺だもん……仲の良さだけじゃなくて、環境もさ?」

499: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 23:36:08.08 ID:waPUUsfJO
女僧侶「勇者さん、あの方と、どういった関係だったんですか?」

勇者「あぁ、アイツ? アイツは俺の●●の師匠だよ?」

天童「……●●の師匠? なんだ、そりゃ?」

勇者「いや、アイツ、いつも●●本盗んでさぁ? 俺にも見せてくれた、いい奴なんだよ」

女僧侶「いつの話ですか……? そんな、若い時から盗みをしてたんですか?」

勇者「いやいや、盗んでない盗んでない! 販売して貰えなかったから、そういう手段で、手に入れてただけでさ? その分の代金はいつも店に置いてきてたよ?」

天童「だったら、問題はねぇな。 いい奴じゃねぇか! 思春期に●●本恵んでくれる奴に悪い奴なんているワケねぇよ!」

勇者「なっ、そうだろ? だから、そういう、手癖の悪さみたいなのにさ……目をつけられて、盗賊団なんかに誘われたんじゃねぇかな? あいつは」

女僧侶「そういう問題ではありませんっ! 勇者さん、ダメですよ! そんな本、盗んじゃ!」

勇者「だから、盗んでないって……あいつ、いつも金は置いてきてたんだから。 あれは正しい●教育の勉強だって!」

500: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 23:46:32.64 ID:waPUUsfJO
女僧侶「も~う……男の人そういう所って、私理解できませんっ!」プイッ

勇者「なんで、女の人ってこういう態度なんだろ……? 天童はわかるよな?」

天童「あぁ、俺はわかるよ! 思春期の●●本なんて、男のロマンだろ! 昔は河原によく、ビニ本探しに行ったもんだぜ!」

女僧侶「……天童さんまで」

勇者「だからさぁ? あいつの悪い所を探すのは簡単だけど、いい所を探せるは、付き合いの長い、俺ぐらいしかわからないと思うんだよね?」

天童「そんな事ねぇぞ! 俺は、そこそこ理解したぜ!」

女僧侶「も~う……本当、男の人って……」

勇者「だからさ? やっぱり、俺一人にやらせてよ? これは俺が一人でやらなくちゃいけない事だと思うからさ?」

天童「まぁ、あいつの心を動かせるのは、お前が適任だと思うけどよぉ? 盗賊団には気をつけろよ? 10人いるらしいからよ?」

501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 23:55:01.92 ID:waPUUsfJO
天童「ところでよぉ、勇者?」

勇者「……ん、どうしたの?」

天童「長話してたら、もう3時だ。後、7時間しか残ってねぇぞ?」

勇者「えっ? もう3時っ!? 大変じゃん!」アセアセ

天童「う~ん……デザートは何にしようかぁ……プリンにしようかな……あっ、御手洗団子なんてのもあるのか!」

勇者「おいおいっ! メニューなんて呑気に眺めてる場合じゃねぇだろっ! 出るぞっ! 店から出るぞっ!」

天童「あれ? デザート食う為に、3時まで時間潰してたんじゃないの、勇者君?」

勇者「おめぇはよぉ!? 時間ねぇのはおめぇが一番よく知ってんだろがっ! 俺を殺す気か! このダメ天使っ!」

天童「冗談だよ、冗談っ! そんなに怒らなくてもいいじゃねぇか!」

502: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 00:02:09.35 ID:tkBeZhSZO
勇者「あっ……すいませんっ! それじゃあ、お会計ここに置いておきます……」

主人「……お、おう」

女僧侶「美味しかったです。必ず、また来ますね?」

天童「次に来るのは、魔王倒した後だからよぉ? 超A級のB級グルメ食わしてくれよなっ!」

勇者「Aだか、Bだか……もう、わけわかんねぇよ……あっ、それじゃあ、ご馳走様でした~」

主人「……」


天童「でもよぉ? それ言うなら、最高級のB級グルメってのも、ワケわかんねぇぜ?」

勇者「絶対に八割型成功する自信がある……とかもね?」

天童「おめぇがいかにも、使いそうな言葉じゃねぇかソレ! って事は、おめぇはB級勇者って事か?」ヤイヤイ

勇者「俺はB級じゃねぇってのっ! おめぇこそB級天使だろがっ!」ヤイヤイ


主人「……」

506: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 22:00:59.00 ID:tkBeZhSZO
ーーーーー


勇者「じゃあ、俺……今から、あいつを改心させてくるよ!」

天童「それはいいけどよぉ……? おめぇ、逃げられたんだよな? 何処に逃げられたかはわかってんのか?」

勇者「……えっ?」

天童「あぁ? 何だ? おめぇ、闇雲に探そうとしてたのか? 後、7時間しかねぇんだぞ?」

勇者「う、う~ん……あいつ、何処ににげたんだろう……」

天童「カァ~! 情けなかぁ~! もう、たまらぁ~ん! たまらぁ~んっ!」

勇者「でも……やっぱり、ここで立ち止まってるよりかは……わからなくても探すしかないよ……」

天童「まぁ、そうだけどよぉ……?」


女僧侶「……あの~、勇者さん?」

勇者「……ん? どうしたの、女僧侶ちゃん?」

507: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 22:07:59.12 ID:tkBeZhSZO
女僧侶「残りの9人の盗賊団は、何処にいるんでしょうね?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「ほら、私達が見かけたのは勇者さんの幼馴染の方だけですし……盗賊団の仲間は今、何をしているんでしょう?」

天童「そういえば、そうだな……だから、多分……仲間と合流しに行ったんじゃねぇか?」

女僧侶「だから……その仲間を見つければ、きっとあの方もそこに……」

勇者「なるほど……盗賊団のアジトを探せば……きっとアイツはそこにいるんだな……」

天童「こんな、魔王城の近くでよぉ? 危険な魔物がいる場所での隠れ家なんて、ある程度は絞られてくるんじゃねぇか?」

勇者「うん、そうだね!」

508: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 22:13:58.70 ID:tkBeZhSZO
天童「なぁ、勇者? でもよぉ?」

勇者「……ん?」

天童「おめぇの友達のコソ泥、なんで個人行動で盗みなんかしてたんだろ?」

勇者「……えっ?」

天童「仲間がいるんだったらよぉ? 皆で協力して、盗みをすればいいじゃねぇか。まぁ、ダメな事なんだけどね!」

勇者「そういやそうだな……こんな危険な大陸で、わざわざ個人行動する事ないよな……10人も人数がいるんだったら……」

天童「……なんかさぁ? おめぇの友達、いいように利用されてるんじゃねぇか?」

勇者「う~ん……そうかもしれない……」

天童「まっ、捕まえたら全部わかる事だなっ! それじゃあ、皆で行動始めましょうかっ!」

勇者「いやっ……天童、今回は俺一人で……」アセアセ

509: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 22:20:42.77 ID:tkBeZhSZO
天童「……そんな事はわかってんだよ、バーカっ!」

勇者「……えっ?」

天童「そいつの説得はよぉ? おめぇ、一人にやってもらうよ。おめぇ一人によぉ」

勇者「……」

天童「おめぇが、自分が受けた優しさを……今度は誰かに伝えたいんだろ? この命題はそういう意味だと思うんだろ?」

勇者「う、うん……」

天童「でもよぉ? 居場所がわからねぇんだったら、伝えようがねぇじゃねぇかっ!? だから、アジトは皆で探すんだよ!」

勇者「……そうだね」

天童「アジトに乗り込むのはおめぇ一人でやればいいよ。 俺も、女僧侶ちゃんも……おめぇの事、信じてるからよぉ?」

勇者「ありがとう……」

天童「まっ、とにかく今は情報収集だ! この辺で、盗賊団が隠れれそうな場所、手分けして探してみようぜ!」

勇者「うん、わかったっ!」

510: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 22:22:24.17 ID:tkBeZhSZO





PM5:00

タイムリミットまで後、5時間





511: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 22:35:52.98 ID:tkBeZhSZO
天童「おい勇者、どうだったよ? あのコソ泥は見つかったか?」

勇者「う~ん、ダメだった……街の外でキャンプができそうな場所、色々と探してみたんだけどね……」

天童「街の外にはいなかったか……街の中にもいなかったぜ……」

勇者「……そうなんだ」

天童「あぁ、路地裏とかよぉ……? 土管の中とか探してみたけど、全く手がかりなしだぜ……」

勇者「……おめぇさぁ? 猫探してるんじゃねぇんだぞ?」

天童「やっぱり、マタタビ持って探した方がよかったかな? あっ、それとも魚かな!? じゃあ、今から酒場に行って、お魚譲ってもらおうか?」

勇者「おめぇは、ちゃんとやれよっ! これ、街の中だろ!? 盗賊団、絶対街の中にいるだろ!?」

天童「勇者君、冗談だよ冗談っ! 街の中もちゃんと探したって!」

勇者「……おめぇはもう、信じない。女僧侶ちゃんが情報なしだったら、街の中を探す」

天童「だから、冗談だって! ちゃんと探したってば! おめぇの命もかかってるんだからよぉ!?」

512: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 22:42:18.38 ID:tkBeZhSZO
女僧侶「あっ、勇者さ~んっ!」

勇者「あっ、女僧侶ちゃん、何か情報はあった?」

女僧侶「いえ、私も天童さんと街の中を探したんですけど……そもそも、この街……10人も隠れれるような場所ありませんでした……」

勇者「女僧侶ちゃんがそういうなら、間違いはなさそうだな……じゃあ、やっぱり街の外なのかな……?」


天童「あっ、勇者君酷いっ! おじさんだって、ちゃんと探したのにっ!」

勇者「……おめぇの事はもう信じないって言ったもん」


女僧侶「あの~、勇者さん……ですからね……?」

勇者「……ん?」

女僧侶「私は、10人隠れれそうな場所がこの近辺にないか……街の人達に話を聞いてたんですよ」

勇者「ほう……それで、何か手がかりはあった……?」

513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 22:54:52.01 ID:tkBeZhSZO
女僧侶「そしたら、ですね? この街から北に行った所に、森があるらしいんですけど……」

勇者「あ~、そこは俺、探しに行ったけど、いなかったよ?」

女僧侶「その森の中に、洞窟があるんですって?」

勇者「えっ……? 洞窟……? そんなの、あったかな……?」

女僧侶「街の人達、その洞窟は魔物が寄り付かない神聖な洞窟だって言ってました」

勇者「魔物が寄り付かないんだったら……アジトにはぴったりじゃないか、それ!」

女僧侶「だから……盗賊団はそこいるんじゃありませんかね?」

勇者「きっと、そこだっ……! あいつはそこにいるんだっ……!」


天童「ねぇねぇ、勇者君……見逃してるじゃん……君、洞窟見逃してるじゃん……なのに、何でおじさんに偉そうに言うのかね?」

514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 23:01:31.81 ID:tkBeZhSZO
勇者「よしっ! じゃあ、今から俺、そこに行ってくるよ!」

女僧侶「……はい」

勇者「二人は……街で、魔王城に乗り込む為の準備をすすめておいてくれ」

天童「おいおい、勇者……待てよ、ちょっと待てよ……」

勇者「……ん?」

天童「……おめぇよぉ? 俺と二人で薬草取りに行った時の事、忘れてねぇか?」

勇者「……えっ?」

天童「あの時はよぉ? 本当は女僧侶ちゃんがいたら、楽勝だったんだ! それを、おめぇが一人で背負い混んで、死にかけちまったんだよなぁ?」

勇者「そ、そうだった……」

天童「今回もよぉ? 似たような事になってんじゃねぇのか? おめぇ、一人で行って大丈夫なのか?」

勇者「……」

天童「俺と女僧侶ちゃんは……おめぇの一言で……いつでも動くんだぜ?」

515: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 23:09:53.54 ID:tkBeZhSZO
勇者「天童……女僧侶ちゃん……」

女僧侶「……」

天童「……」

勇者「正直、不安はあるよ……何か、予想外のトラブルが起きるかもしれない……盗賊団の強さだってわからない……」

女僧侶「……」

天童「……」

勇者「それに……俺の言葉だけで、あいつの心を動かせるかどうかもわからない……二人がいた方がいいかもしれない……」

女僧侶「……」

天童「……」

勇者「でもさぁ? 二人はそういう事を考えずに、俺に向き合ってくれたじゃん!?」

女僧侶「……はい」

天童「……おう」

勇者「俺があの時、欲しかったのはそれだったんだよ! 真っ正面から俺と向き合ってくれて! ダメな人間でも、仲間と認めてくれる人達が!」

516: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 23:19:27.38 ID:tkBeZhSZO
勇者「……俺、やっぱりまだダメ人間だからさぁ?」

女僧侶「……」

勇者「二人が一緒にいてくれたら……言葉に詰まった時……何を言っていいかわからない時……二人に頼っちゃうと思う……」

天童「……」

勇者「でも……そんな言葉じゃ、あいつにはきっと届かない……自分がそうだったから……わかる……」

女僧侶「……」

勇者「……きっとあいつも、俺にその言葉を言ってもらえるのを待っているんだ思う」

天童「……なんでそう思うんだ?」

勇者「昔の話をした時……あいつ、ちょっと寂しそうな目をしたんだ……」

517: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/01(火) 23:28:22.32 ID:tkBeZhSZO
勇者「きっとあいつだって……昔みたいに戻りたいんだよ……でも、戻れない理由が何かあるんだよ……」

天童「おめぇは随分、あのコソ泥を信用してるみてぇだな?」

勇者「だって、友達だったもん……俺が信じてあげなきゃさ……」

天童「……まっ、人の心を動かすのは、言葉よりも、そういった感情の方が大切なのかもしれねぇな!」

勇者「……うん」

天童「まぁ、おめぇに一つアドバイスしておいてやるよ?」

勇者「……えっ?」

天童「言葉に詰まったら……自分の事を思い出せ」

勇者「……」

天童「自分がどうして変われたか……誰の、どんな言葉で心が動いたか……それと、同じ事をしたらいいんだよ」

勇者「……あぁっ! やってみる!」

天童「おめぇはよぉ? いつもいつも、死んだ目してたのに、本当変わったな! よしっ、今のお前だったら大丈夫だっ! 一人で行ってこいやっ!」

勇者「うんっ……! それじゃあ、行ってくるよっ……!」ダッ

521: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 22:34:19.58 ID:PHB8+ZLyO
天童「救われる立場の人間だった奴がよぉ……? 他人を救おうなんて、人間変われるもんなんだな……」

女僧侶「ええ……でも、そうやって人と人は繋がって生きていくんだと思います……」

天童「……おっ? 女僧侶ちゃん、いい事言うじゃねぇか!? こりゃ、メモしておかないといかんばいっ!」

女僧侶「……えっ?」

天童「え~っと、何々……人と人は繋がって生きていくっと……」メモメモ

女僧侶「ちょ、ちょっとっ……! やめて下さいよっ……! 恥ずかしいです……」アセアセ

天童「その言葉を天童から聞いた勇者君はっと……幼馴染を改心させる為、洞窟へ向かうのであった、と……よし! これで、完成だなっ!」

女僧侶「……天童さん?」

天童「よ~し! じゃあ、俺の名言もメモした事だし、俺達は魔王城に殴り込みに行く準備をすすめておくかっ!」

女僧侶「……天童さんが言った言葉でしたっけ? ソレ?」

天童「細けぇ事は気にしちゃいかんばいっ! よしっ、じゃあ武器屋にでも行くか!」

522: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 22:49:50.99 ID:PHB8+ZLyO
武器屋ーー


道具屋の娘「いらっしゃいませっ! 装備をお求めですか?」

女僧侶「えぇ、我々はこれから魔王城へと向かうので……何か良い物があったら、譲って頂きたいのですが……」

娘「えっ……? 魔王城に向かう? だったら、最高級の装備を出さなきゃ……」ガサゴソ

天童「おいおい……あんたらにもよぉ? この大陸で生きていく為の護衛手段みてぇなのが必要だろ?」

娘「……えっ?」

女僧侶「我々は……余り物で十分です……何か、ありませんかね……?」

娘「でも……貴方達は魔王城に行くんですよね……? だったら、最高級の装備をお売りしないと……」

天童「いい装備はよぉ? あんたらが使って、食材取りに行くのにでも使えばいいじゃねぇか! この街には最高級B級グルメ店があるんだしよぉ?」

娘「なんか……気を使っていただいたみたいで申し訳ありませんね……貴方達に渡せる物が少なくて……」

523: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/02(水) 22:57:31.75 ID:PHB8+ZLyO
天童「いえ、そんな事はありません……それに、貴方にはもう沢山の物を頂きました……」

娘「えっ? いや、まだ何もお売りしてませんけど……何ですか、それ?」

天童「それは……その、豊満な●●●●……です……」


娘「……えっ?」ボインッ

女僧侶「……天童さん?」


天童「いや~、あんた、胸でかいねぇ!? それ何カップ? Dカップか? Dカップだろ?」

娘「……Fカップです」

天童「あらっ! Fカップだとさ!? こりゃ、いい目の保養になったばいっ!」

娘「……」

天童「俺のやる気もグングンと立ち上がってくるじゃありませんかっ! あっ、変な意味じゃなくてね?」

524: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:02:45.41 ID:PHB8+ZLyO
女僧侶「……天童さんっ!」

天童「ん? どうしたの、女僧侶ちゃん?」

女僧侶「あなたは何の話をしてるんですか!?」

天童「あぁ、●●●●の話だよ。 女僧侶ちゃんも、大きくするコツとかこの人に聞いてみれば?」

女僧侶「だから、そういう事じゃなくて……!」

天童「やっぱり、アレか? 牛乳とか沢山飲んだのかな? 牛乳は健康にいいからね!」

女僧侶「……天童さんっ!」イライラ

天童「やっぱりね……胸が大きいのは浪漫だよね……おじさん、そう思う」

525: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:11:37.15 ID:PHB8+ZLyO
女僧侶「も~う……男の人って、どうしてこんなに●●●なんでしょう……」

天童「そんな事ねぇよ? これが普通だよ、普通」

女僧侶「勇者さんだって……●●●ですし……」

天童「まぁ、あいつはちっとムッツリ君だな」

女僧侶「幼馴染の男盗賊さんと、小さい頃に●●●な本、盗んでたんでしょう……?」

天童「まぁ、でも……男としちゃ、気持ちはわかるもんだぜ?」

女僧侶「男同士の友情って、そういう物なんですかねぇ?」

天童「そういうもんだと思うよ? ●●●●のデカさ比べ合いしたりさぁ? 男ってのはバカな事して、友情作っていくんだよ」

女僧侶「……もう、この話やめません? 天童さん、武器買いましょうよ?」

天童「おっ、それもそうだな! それじゃあ、ボ  の姉ちゃん! なんか、余り物の武器見せてくれやっ!」


娘「えっ……? あっ……はい……」

526: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:14:29.11 ID:PHB8+ZLyO





PM7:00

タイムリミットまで後、3時間





527: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:18:42.60 ID:PHB8+ZLyO
勇者「はぁっ……はぁっ……」

勇者「……」

勇者「やっと、見つけた……こんな所に入口があったのか……わかりにくいよ、本当に……」

勇者「でも、この付近には魔物はいないし……アジトにするならここしかないよな……」

勇者「きっと、あいつはここにいる……それで、きっと俺の助けを待ってるはずなんだっ……!」

勇者「……」

勇者「よしっ! 乗り込むぞっ!」

528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:22:01.01 ID:PHB8+ZLyO
勇者「……よしっ!」ジリッ

「侵入者だっ! 侵入者が来たぞっ!」

勇者「……何!?」

「弓だっ! 弓を撃つんだっ! 殺せっ!」

勇者「やばいっ……! もう、バレたのかっ!」


ヒュンッ


勇者「うおおっ! 危ねっ! 撃ってきやがったっ!」

529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:26:15.74 ID:PHB8+ZLyO
「撃てっ! 撃つんだっ!」


勇者「相手は何人だ……? 1……2……3人か……?」


ヒュンッ


勇者「……おっと!」

「くそっ! 外れたか!」

勇者(……何処から撃ってきてるんだ? 発射してくるポイントを探さないと)キョロキョロ


ヒュンッ


勇者「……見つけたっ! そこの岩陰に隠れているなっ!」

530: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:31:04.22 ID:PHB8+ZLyO
勇者「そこに隠れているなっ! くらえっ!」

「!」

勇者「うおおおぉ!」ダッ

「う、うわあぁ……!」

勇者「くらえっ! って、えっ……?」ピタッ

子供「うぅ……うぅ……」ガタガタ

勇者「……子供? どうして子供がこんな所に?」

子供「来るな……来るなぁ……」

勇者「あいつ、子供を利用して……何か、企んでいるのか……?」

531: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:36:21.33 ID:PHB8+ZLyO
「逃げろっ! ジローっ!」


ヒュンッ


勇者「……うおっと!」

子供「ここは俺が何とかするっ! だからお前も逃げるんだっ!」

勇者「……あそこにも、子供?」

子供「おいっ! 何やってる、サブローっ! お前もあいつを撃つんだっ!」


ヒュンッ


勇者「う、うおっと……!」

子供「あぁ! 俺達、暴走天使(ミッドナイトエンジェル)の力を見せてやろうぜ! イチローっ!」

勇者「……どうなってるんだ? 子供ばかりじゃないか、この盗賊団は」

532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:41:17.71 ID:PHB8+ZLyO
ヒュンッ


勇者「お、おいっ! 待てよっ!」

「撃てっ! 撃つんだっ!」

勇者「やめろっ! 俺は君達を捕まえにきたんじゃないっ!」


ヒュンッ


勇者「う、うおっ……! やめろっ! 俺の話を聞けっ!」

「くそっ! あいつ素早いぞ!」

「でも、俺達が何とかしないと……」

勇者「俺は、男盗賊って奴と話をしに来ただけだっ!」


ヒュンッ


勇者「うおっ……! くそっ! お前ら、俺の話を聞けよ!」

533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:46:59.87 ID:PHB8+ZLyO
勇者「くそっ……! こうなりゃ、力づくで……」ギリッ

子供「くっ……! あいつ、剣を構えるやがったぞっ! 構えろっ! 来るぞっ!」

勇者「峰打ちだっ……! 少し痛むが、許してくれっ……!」ダッ

子供「来たっ……! 俺の所に来たっ! 皆、助けてくれっ……!」

勇者「うおおおぉぉっ!」

子供「う、うわあぁっ!」ビクッ


ピタッ


勇者「……くそっ!」

子供「と、止まった……?」

534: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:52:25.36 ID:PHB8+ZLyO
勇者「……なんで、こうなるんだよ」

子供「……えっ?」

勇者「こんな力づくでさ……? 相手を押し付けるような事してさ……?」

子供「……」

勇者「これじゃあ、俺の事……無理矢理外に出そうとした大人と同じじゃねぇかよ……」

子供「……」

勇者「言葉が出ないからって……諦めちゃダメだ……天童や女僧侶ちゃんは、それでも俺と向き合ってくれたんだから……」

子供「……何、ブツブツ言ってんだ、コイツ?」

勇者「俺が望んでいた物……俺が望んでいた事……それは……」


コロン


子供「……えっ?」

535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/02(水) 23:56:11.92 ID:PHB8+ZLyO
勇者「子供達、聞いてくれ! 俺は君達に危害を加えるつもりはないっ!」

「……」

勇者「その証拠に……今、俺は剣を捨てた! そこから、見えるだろ!?」

「……アイツ、何やってんだ?」

勇者「俺は君達の仲間の、男盗賊という奴に話があるだけだ!」

「で、でも……剣を捨てたって事は……」

勇者「この奥にアイツはいるんだろ? 悪いが通してもらいたいっ!」

「……あぁ、大チャンスだよなぁ?」

勇者「……ん?」

538: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 21:13:11.96 ID:eJJw2LGkO
「撃てっ! 撃つんだっ! 相手は丸腰だぞっ!」

「おうっ!」

勇者「やめろっ! 俺は君達に危害を加えるつもりなんてないんだっ!」


ヒュン、ヒュン


勇者「う、うおっ……!」

「くそっ……! あいつ、なんて素早い奴だっ……」

「くそっ……! でも、男盗賊さんは怪我してるんだ……俺達がここでなんとかしないと……」

勇者「……えっ? アイツ、怪我してるのか? どういう事だ!?」

539: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/03(木) 21:20:27.61 ID:eJJw2LGkO
勇者「おい、 子供達! それはどういう事なんだっ!?」


ヒュン、ヒュン


勇者「やめろっ! 撃つなっ! 俺の話を聞けっ!」


ヒュン、ヒュン


勇者「だから、やめろって言ってんだろがっ! 俺はアイツが悪い事をしているから、説得しに来ただけなんだっ!」

子供「……男盗賊さんは、悪い人なんかじゃねぇよ」

勇者「……何?」

子供「居場所のない……俺達の面倒を見てくれる、天使みてぇな人なんだ、あの人は……」

勇者「……どういう意味だ?」

子供「おめぇらみてぇな奴らばかりだから、俺達の居場所がなくなって、あの人が苦労するんだよっ! くそっ! くらいやがれっ!」


ヒュン


勇者「やめろっ! 頼むから、俺の話を聞いてくれっ!」

540: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 21:21:53.99 ID:eJJw2LGkO





PM8:00

タイムリミットまで後、2時間






541: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 21:29:24.96 ID:eJJw2LGkO
天童「勇者のヤツ、大丈夫かねぇ……?」

女僧侶「……信じましょうよ。勇者さんって、いつも前向きで一生懸命ですもん。きっと大丈夫です」

天童「まぁ、女僧侶ちゃんがそういうなら……俺も信じてやってもいいかな……?」

女僧侶「えぇ、信じましょう」ニコッ

天童「じゃあ、帰ってきたあいつがすぐにでも休めるように、俺達は宿屋の受付でもいくか?」

女僧侶「えぇ、そうしましょうか」


「おい、お前達……動くな、そこで止まれ……」

天童「……ん?」

女僧侶「……ん?」

街長「……動くな。動くじゃないぞ、お前達」

542: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 21:33:42.30 ID:eJJw2LGkO
天童「何だよ、街長のおっさんじゃねぇか? 怖い顔してどうしたんだ?」

街長「……」

女僧侶「あの……街長さん……?」

街長「お前達には騙されたよ……完全にな……」

天童「騙す……? 何、言ってんだよ、街長さんよぉ……?」

街長「おいっ! お前達っ!」

女僧侶「……ん?」


ゾロゾロ……ゾロゾロ……


街人「……」

街人「……」

街人「……」

543: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 21:40:24.36 ID:eJJw2LGkO
女僧侶「皆さんどうしたんですか……?」アセアセ

天童「おいおいっ! お前ら、そんな武器持って、包囲してどういうつもりなんだよオイっ!」


街長「演技はもうよい……お前達……暴走天使(ミッドナイトエンジェル)の者だな……?」

女僧侶「……えっ?」

天童「おいおいっ! 俺達はそんな厨二臭ぇ暴走族になんか入らねぇよ! 何、言ってんだよ! 街長さんよぉ!?」

街長「……酒場の主人と、道具屋の娘がお前達が盗賊団の頭と仲間という情報を聞いたそうだが?」

女僧侶「……えっ?」

天童「……んっ?」

544: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 21:49:55.49 ID:eJJw2LGkO
街長「……そうだな? 酒場の主人よ?」

主人「はい、街長……こいつらはあの盗賊団の仲間です。私の店で話しているのを聞きました」

天童「ちょっと待て、ちょっと待てっ! 俺達はあんたの店でちゃんと金払ったじゃねぇか! 盗賊団なんかじゃねぇよ!」

街長「だが、盗賊団とは仲間なんだろう?」

主人「確か、幼馴染……とか、言っていたような気がします……」

天童「おいおいっ! 確かに、幼馴染ってのは合ってるけどよぉ! 仲間じゃねぇよっ! 仲間じゃ!」

街長「……」

主人「……」

天童「なんで、そんな目で見るんだよぉ! 俺達は盗みなんかしてねぇよっ!」


娘「そ、そんな事ないですっ……!」

天童「……ん?」

545: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 21:55:57.59 ID:eJJw2LGkO
娘「この人達……私のお店の前で、●●●な本を盗んでいるって話をしたましたっ……!」

街長「……●●本?」

天童「あぁ、それはよぉ? 若気の至りってヤツじゃねぇのか? ホラ、思春期だったら、皆●●本ぐらい盗むじゃん?」

娘「……」

街長「……ボロが出たな? 自分で盗みを認めるじゃないか?」

天童「えっ……? あっ、こりゃ違うよっ! 昔の話だって、昔の話っ!」

娘「あの、街長……それに、この人……」モジモジ

街長「……どうした?」

天童「なんだよ、まだあんのかよ……?」

娘「あの、この人……私の事、いやらしい目で見てたんですよ……」

街長「……どういう事だ?」

546: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 22:06:17.48 ID:eJJw2LGkO
娘「あの……私の胸をジロジロと舐めるように見てて……」

街長「……」

天童「いや、見るでしょ!? それだけのボ  が目の前にあったら、普通見ちゃうでしょ!?」

娘「 大きいね……揉ませてよ……なんて、いやらしい事も言われました……」

街長「……何?」

天童「待てっ! 言ってねぇぞ! 流石の俺も、そこまでは言わねぇよっ!」

娘「このままじゃ私、この人に●されちゃいますっ……! この人、目が怖いですもんっ! 悪党の目をしてますもんっ!」

街長「……」

天童「……お嬢様ちゃん、よく見なよ? ほら、僕の目はこんなに澄んでるんだよ? これは天使の目だよ、きっと」キラキラ


娘「……いやらしい」

街長「……汚れている」

女僧侶「無理矢理、善人の目に見せようとしている……って、感じがしますかね……?」


天童「うわっ! 女僧侶ちゃんまで! 皆、酷かぁ~!」

547: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 22:17:18.03 ID:eJJw2LGkO
街長「よし、お前らっ! こいつらを捕らえろっ! 我々の街を守るんだっ!」


「はっ!」 「縛れっ! 縄でこいつらを縛るんだっ!」

天童「おいっ! やめろよ、お前らっ! お前ら、勘違いしてるってばっ!」

女僧侶「痛っ……やめ……やめて下さい……話を聞いて下さいっ……!」


主人「……街長?」

街長「……どうした?」

主人「もう一人……仲間がいました。話の内容からするに、どうやらそいつが主犯格だと……」

街長「おそらく、そいつは……この仲間合流する為に、この街戻ってるるだろう……」

主人「そうですね。宿屋の前で張ってれば、捕まえる事ができるでしょう。 流石にこんな場所に野宿が出来る場所なんてありませんからね……」

街長「この二人を人質として……そいつを捕らよう……そして、纏めて始末しよう」

主人「そうですね……あの二人を今、始末するのは簡単ですが……人質として役に立ってもらいましょうか」


天童「おいっ! おめぇら、まるで悪党みてぇな事言ってんぞ! だから、勘違いだって、これはよぉ!」モガモガ

548: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 22:29:16.01 ID:eJJw2LGkO
ーーーーー


勇者「……なぁ? もう、いいだろ? やめようよ?」

子供「……うるせっ! 俺が男盗賊さんを守るんだっ!」


ヒュン


勇者「……ほら? 当たらねぇよ、そんな矢なんて。 もう、通してくれよ。 俺に時間がねぇんだよ」

子供「……くそっ」

勇者「男盗賊は間違った事してるんだぞ? 俺はそれを説得しに行くだけだってば……」

子供「お前らはいつもそうだ……綺麗事ばかりだ……」

勇者「……えっ?」

子供「俺だって、そんな事はわかってるんだよ……男盗賊さんだって、わかってるはずなんだ……」

勇者「……」

子供「でも……親のいねぇ、俺達が生きるにはこうするしかねぇんだよっ……!」

勇者「……親がいない?」

549: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/03(木) 22:43:45.42 ID:eJJw2LGkO
子供「男盗賊さんはなぁ……? 俺達の親なんだよ……」

勇者「……」

子供「あの人が、親のいない俺達に、誰も教えてくれない生きる術を教えてくれたんだ……」

勇者「……これが、君達の生きる術なの?」

子供「そうだよ……男盗賊さんが……教えてくれたんだよ……」

勇者「……何でだよ。なんで、こんな事してるんだよ、アイツ」

子供「うるせぇっ! お前達の綺麗事はもういいんだよっ!」

勇者(親のいないこの子達を育てているのが……アイツなら……)

子供「くそっ! 次こそは必ず命中させてやるぞっ! 覚悟しろっ!」

勇者(この子達を改心させるべきなのは、俺じゃないっ……! だから……だからっ……!)

555: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 22:08:25.56 ID:KV5Bw9lQO
子供「うおおっ! 次こそは必ず命中させてやるっ!」

勇者「えっと……ええっと……レオリオ? ……お眠り……ああっ! 違う違うっ……」

子供「誰も助けてなんかくれないんだ……自分達の居場所は、自分達で奪い取らなくちゃいけないんだっ……!」

勇者「レム睡眠……? ムレムレ ……? ああっ、違う違うっ! そうじゃないっ!」

子供「男盗賊さんが、そうやって教えてくれたんだっ……! うおおっ! くらえっ!」


勇者「『レムオル』?」ピカーッ

556: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 22:16:11.81 ID:KV5Bw9lQO
子供「くそっ! また、よけられたかっ!」

子供「……ん?」キョロキョロ

子供「おいっ! 何処だっ! 何処にいやがるっ!」

子供「くそっ……! 何処かの岩陰にあいつ、隠れやがったなっ……!」

子供「だけど……俺がここで見張ってれば……皆の所にはいけないんだから……」


勇者(……違う。もう、君の後ろにいるよ)

子供「ここは通さないぞ……絶対に通さないぞっ……!」

勇者(どうやら、この呪文は姿を消す事が出来る呪文だったらしいな……これで、この子達を傷つけずにアイツの所に行けるぞ……)

子供「俺が一番大きいんだっ……! 俺だって、男盗賊さんみたいに皆を守るんだっ……!」

勇者(君も、必ず改心させてみせるから……だから、今は少し待っててくれっ!)ダッ

559: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 22:25:51.94 ID:KV5Bw9lQO
ーーーーー


天童「……ったく、臭ぇ倉庫に閉じ込めやがってよぉ! あいつらは何を考えてるんだよ!」

女僧侶「どうやら……何か誤解しているようですね……」

天童「ねぇ、この場所隠し扉とかないの?」

女僧侶「……隠し扉?」

天童「ほらほら、床のスイッチ踏んだらさぁ? 壁が開いて、何処かの隠し扉が開くとか……普通、そういうのあるじゃん?」

女僧侶「……普通の倉庫には、そういう物はないと思いますよ?」

天童「なんだよ! お約束がわかってねぇよなぁ!」

女僧侶「それに……隠し扉があったとしても……こんな縄で縛られている状況では……」

天童「女僧侶ちゃん、ポケットにさぁ? ハサミとかライターとか入ってないの? ほら、映画とかでよくあるじゃん?」

女僧侶「……残念ながら、持っていません」

天童「ちくしょう……このままじゃ、盗賊団と間違えられて殺されちまうぞ? あ~んな、ダサい暴走族に間違えられたままなんて、おじさん嫌だなぁ!」

561: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 22:33:17.19 ID:KV5Bw9lQO
女僧侶「……大丈夫ですよ」

天童「……ん?」

女僧侶「きっと……勇者さんが、なんとかしてくれます……」

天童「……あいつも盗賊団の仲間だと思われるけどなぁ?」

女僧侶「大丈夫です……だって、勇者さん、いつもいつもこんなピンチを乗り越えてきたじゃないですか?」

天童「……」

女僧侶「今回だってきっと、大丈夫です。 だって、ただの勘違いなんですし……」

天童「……まぁね?」

女僧侶「盗賊団の方は勇者さんの幼馴染なんですから……きっと、改心させる事だって出来ますよ」

天童「……まぁ、俺もそう思うけどよぉ?」

女僧侶「だから……勇者さんを信じて待ちましょうよ? ねっ?」ニコッ

天童「……アイツだって成長してるんだし、そんな事はわかってんだけどよぉ? おじさん、ちょっとタイムリミットが心配なんだよねぇ?」

女僧侶「……タイムリミット?」

天童「あっ……! なんでもないっ! こっちの話ですわっ!」アセアセ

女僧侶「?」

562: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 22:38:27.41 ID:KV5Bw9lQO
ーーーーー


勇者「……」


「シローお兄ちゃん……お腹減った……」

「我慢しろ、ゴロー。 お前より、小さいロクローだって、皆の為に我慢してるんだぞ?」

「……うん」

「じゃあ、今日も勉強始めようか! 男盗賊さん、魔道書も貰ってきたみたいだしな!」

「うんっ! 僕も頑張って、男盗賊さんみたいに強くなるっ!」


勇者(……この子達も、親を亡くした子達なのかな)

563: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 22:47:34.54 ID:KV5Bw9lQO
「あのねあのね! 僕、呪文使えるようになったんだっ!」

「ははっ! そんな弱い呪文じゃ、男盗賊さんにはまだまだだぞ?」

「そんな事ないよっ! 悪い奴がここに来たら、僕がこの呪文でやっつけてやるんだからっ!」


勇者「!」


「そういうのは……イチロー兄ちゃん達に任せておきなさい。お前はまだ、小さいだろ? それに、泣き虫じゃないかお前」

「そんな事ないよっ! 僕だって、皆の為に戦うんだったら、怖くないよっ! 僕だって、もう出来るよっ!」

「ははっ! お前、男盗賊さんに似てきたな? じゃあ、お前が早く一人前になれるように、今日も勉強しようかっ!」


勇者(正しいと思う……正しい事してると思うよ……だけど、違う……)


「僕も魔法覚えたいっ!」

「おっ? ロクローも頑張るじゃないか! じゃあ、皆で勉強しようかっ!」

「うんっ!」


勇者(君達も……必ず正しい道を歩めるようにしてみせるからっ……!)ダッ

564: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 22:48:29.47 ID:KV5Bw9lQO





PM9:00

タイムリミットまで後、1時間






565: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/04(金) 22:55:23.67 ID:KV5Bw9lQO
勇者「……」


「うぇ~ん……シチローお兄ちゃん……」

「どうしたの?」

「あのね……ハチローと鬼ごっこしてたら、こけて擦りむいちゃったの……」

「バカだな、キュウローはっ! 何してるんだよ!」


勇者(腕に……傷を負ってるな……あの子……)


「だから……お薬ちょうだい……」

「このお薬は、男盗賊さんに使わないといけないのはわかってるだろ? そんな擦り傷ぐらい、我慢しろよ!」

「……う、うん」

「男盗賊さんが、魔物に襲われて、怪我して戻って来たの見ただろ!?」


勇者「!」

566: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 23:01:39.12 ID:KV5Bw9lQO
「お前、その泣き虫な所、直した方がいいぞ?」

「……僕、泣き虫じゃないもん」

「俺達は一番小さいんだけど……いつまでも、男盗賊さんやお兄ちゃん達に甘えてられないんだぞ?」

「……うん」

「悪い奴が来たら……自分達で戦わないといけないんだ……男盗賊さんはいつもそう言ってるだろ?」

「……うん」


勇者(大丈夫……君達も……必ず……)


「お前、そんな泣き虫だったら、戦いなんて出来ないぞ!?」

「大丈夫……僕だって、悪い奴が来たら……戦ってみせる……」

「よしっ! じゃあ、そんな擦り傷ぐらい、我慢しようっ! なっ?」

「うんっ!」


勇者(これで……9人……あいつはこの奥にいるんだな……)

567: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 23:08:39.83 ID:KV5Bw9lQO
男盗賊「くそっ! らしくねぇな……ヘマしちまった……」

男盗賊「物を奪ってきたのはいいけど……森で魔物に襲われるなんて、ついてねぇなぁ……」

男盗賊「くそっ……痛ぇ……痛ぇよぉ……」

男盗賊「イチロー達に見張ってもらってるけど……やっぱり、あいつらだけじゃ心配だよ……」

男盗賊「あいつらはまだ、小さいんだから……俺が行かないと……」ググッ

男盗賊「う、うおっ……!」

男盗賊「くそっ……! 待ってろよ……俺が……必ずお前らを一人前にしてやるからよぉ……」ヨロヨロ


「……動くなよ、傷が開くぞ」


男盗賊「……誰だ?」

勇者「……大人しく寝とけよ。お前、怪我してんだからよぉ」スーッ

男盗賊「勇者っ……! お前、どうしてここにっ……!」

568: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 23:14:10.84 ID:KV5Bw9lQO
男盗賊「お前っ……! どうやって、ここに入ってきた……?」

勇者「……」

男盗賊「お前っ……! まさか、皆と戦って、俺をここまで追って来たのか!?」

勇者「……」

男盗賊「お前とは幼馴染だけどよぉ……? あいつらを傷つける奴は……お前でも許さねぇぞっ!」グッ

勇者「……」

男盗賊「……ぐっ! う、うおっ!」

勇者「……動くなって、傷が開くからさ?」

男盗賊「く、くそっ……」

勇者「安心しろよ……子供達には手を出してねぇよ……」

男盗賊「……えっ?」

勇者「魔法で……透明になって侵入してきただけだよ……お前に会いたくてな?」

男盗賊「……」

569: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 23:18:43.05 ID:KV5Bw9lQO
勇者「……座れよ? あの頃みたいにさ? お話しようぜ?」

男盗賊「……お説教のつもりか?」

勇者「……そうじゃねぇよ。 10年振りぐらいなのに、何でそんな事言うんだよ、お前」

男盗賊「……」

勇者「あの頃みたいに……地べたに座って……バカな話、二人でしようぜ?」ペタッ

男盗賊「……」

勇者「……何やってんだよ? ほら、早く座れよ」

男盗賊「……」

勇者「……おめぇ、そんなにかったりぃ奴だったか? ホレ、早く座れっての!

男盗賊「……」ペタッ

勇者「そうそう、それでいいんだよ」

男盗賊「……」

570: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 23:28:51.52 ID:KV5Bw9lQO
勇者「……なぁ? この十年間、何した?」

男盗賊「……はぁ?」

勇者「いやぁ……おめぇも、こっちの大陸に来てたんだな? おめぇ、見た時、ビックリしたよ」

男盗賊「……説教しに来たんじゃねぇのか? 何のつもりだ?」

勇者「おめぇ、つれねぇな? なぁ~んで、そんな事言うのかね? 十年振りぐらいなんだぞっ!? もっとテンション上げろよ!?」

男盗賊「……」

勇者「……じゃあ、俺の話からしようか?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「いや~、実はね……俺、ついこの間まで引き篭もったままだったんだよ……」

男盗賊「……」

勇者「そんな俺が……こんな魔王城の近くまでやってきてるんだぜ? 興味わかねぇのか、おめぇ?」

男盗賊「……」

勇者「だから、なんでつれねぇんだよ、お前……まぁ、じゃあ、勝手に話すよ……」

571: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 23:30:02.35 ID:KV5Bw9lQO





PM9:30

タイムリミットまで後、30分






572: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 23:40:09.89 ID:KV5Bw9lQO
勇者「……まぁ、なりゆきで始まったような旅だけどさぁ? 人間、やれば出来るんだね? 俺も、ここまでやれるとは思わなかったよ!」

男盗賊「そうか……引き篭もってたお前が……凄いな、お前……」

勇者「そんな事ねぇよ! お前だって、凄ぇじゃねぇか!」

男盗賊「……えっ?」

勇者「お前……あの子供達、育ててるんだろ?」

男盗賊「……」

勇者「あの子達……両親、いないんだろ……?」

男盗賊「あぁ、あいつらの親は……皆、魔物に殺され……あいつらは孤児なんだ……」

勇者「そんな奴らの親代わりになってやるなんて……お前、凄いよ……」

男盗賊「……」

勇者「お前……やっぱり、俺の親友だよ……」

男盗賊「……えっ?」

勇者「……でもよぉ? 親友だからこそ、一つ言わせてくれねぇか?」

男盗賊「……あぁ?」

573: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 23:46:53.58 ID:KV5Bw9lQO
勇者「お前……あの子達、育てる為に……盗みしてるんだろ……?」

男盗賊「……」

勇者「それでいいのかよ? お前、本当はこんな事したくねぇんじゃねぇのか?」

男盗賊「……」

勇者「物は盗むけど、代金は払う……それがおめぇのポリシーだったじゃん!? お前今、自分の中のルールを破ってねぇか?」

男盗賊「……なんだよ」

勇者「お前……あの子達を育てるのはいいけどさぁ……? それだったら……」

男盗賊「黙れっ!」

勇者「!」ビクッ

男盗賊「……結局、説教かよ。そんなのわかってるんだよ。わかってる上で……こうやって、生きてるんだよ……」

勇者「待てよ……! 俺は説教なんてするつもりじゃ……」アセアセ

男盗賊「綺麗ぬかしてんじゃねぇよっ! これが現実なんだよっ! こうするしかねぇんだよっ!」

勇者「!」

579: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 21:46:01.11 ID:4CQ+HIoeO
男盗賊「最初は皆、そう言うんだよ……最初はな……」

勇者「……」

男盗賊「だけど、現実はそうじゃない。こんな世界じゃ、皆自分が生きていくだけで精一杯なんだ」

勇者「……」

男盗賊「誰があいつらの面倒を見てくれる……? 誰があいつらが生きる為の金を出してくれるっていうんだ……?」

勇者「そ、それは……」

男盗賊「一番上のイチローは10歳……一番下のキュウローは4つだ……」

勇者「……」

男盗賊「あいつらが、一人前になるまで何年かかると思ってるんだ? 5年か……? 10年か……?」

勇者「……」

男盗賊「勇者……? 綺麗事だけじゃなぁ……世の中生きていけねぇんだよ?」

勇者「違う……違うよっ……! きっと、そんな事はないっ……!」

580: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 21:56:14.23 ID:4CQ+HIoeO
男盗賊「何で、俺達がこんな場所にいると思う? 何で、魔王城の間近で子供引き連れて旅なんかしてると思う……?」

勇者「……えっ?」

男盗賊「俺達は追いやられてんだよ……?」

勇者「……」

男盗賊「俺だって、探したよ……何年も何年も、あいつらの面倒を見てくれる人間を探したよっ……!」

勇者「……」

男盗賊「数えきれない程、頭も下げた……数えきれない程、魔物討伐だってしたっ……!」

勇者「……」

男盗賊「だけどなぁ……? そいつらは、10年育てる事の重みを感じ出すと……どいつもこいつも……掌を返し始めるんだ」

勇者「……」

男盗賊「居場所を探してたら……こんな所まで辿り着いちまったよ……どうするよ、魔王討伐でもするのか? あいつら連れてよぉ!?」

勇者「……そ、それは」

男盗賊「居場所がねぇんだったらよぉ! 自分達で作るしかねぇだろっ! 持ってる人間から少しずつ奪いとってよぉ!?」

581: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/05(土) 22:06:15.77 ID:4CQ+HIoeO
勇者「じゃあ、お前は……後10年、続けるつもりなのかよ……?」

男盗賊「……あぁ?」

勇者「あの子供達が一人前になるまでの時間……後10年……こうやって、盗みを続けるのか……?」

男盗賊「……他に方法が何がある?」

勇者「……それは、俺にはよくわからないけど」アセアセ

男盗賊「勇者……もう説教はいいよ……そんな言葉、散々言われたよ……俺はわかった上でやってるんだよ」

勇者「でも……でもっ……!」

男盗賊「綺麗事はもういいって言ってんだよっ! 俺達の居場所なんて、どうせ何処にもねぇんだよっ!」

勇者「……違うっ!」

男盗賊「どうせ、綺麗事ばかり言って現実に直面した時には逃げる連中しかいねぇんだっ! 今までだってそうだった! これからだって、どうせそうだっ!」

勇者「簡単にどうせどうせ言って諦めてんじゃねぇよっ!」

男盗賊「!」

582: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 22:17:34.00 ID:4CQ+HIoeO
勇者「なぁ、男盗賊……? 俺、お前の事、親友と思ってるから言わせてくれよ……」

男盗賊「……なんだよ」

勇者「お前さぁ……? 立派だよ……凄く立派な事してると思うよ……」

男盗賊「……」

勇者「親のいない子供を育てるって事は……凄く立派な事をしてると思う……それは、世界を変える事より、立派な事かもしれない……」

男盗賊「……」

勇者「お前は……あの子達にとって、天使ような存在だと思うよ……?」

男盗賊「天使……?」

勇者「……でもさぁ? お前、言えねぇだろ? 胸張って言えねぇだろ?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「自分は今……親のいない子供達の親代わりになって……毎日毎日、子供達の為に、一生懸命頑張ってますって……胸張って、言えねぇだろ?」

男盗賊「……生きる為には、仕方ねぇじゃねぇか」

勇者「教える立場のお前がそうだったら……あの子達、どうなるよ……? あの子達が一人前になった時、胸張ってお前に育てられたって言えると思うか!?」

男盗賊「うるせぇ! お前に何がわかるんだっ!」

勇者「俺だから、わかるんだよぉ! 親のいない子供の気持ちは、俺が一番よく知ってるんだよっ!」

男盗賊「!?」

583: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 22:27:22.09 ID:4CQ+HIoeO
勇者「……俺の父ちゃん、魔王討伐で死んじゃったじゃん?」

男盗賊「……」

勇者「母さんは姉ちゃんにつきっきりだったし……姉ちゃんは、そのせいで出来損ないの俺の事、見放してさぁ……?」

男盗賊「そうだった……お前……」

勇者「だから……父親から学ぶべき事って……俺、何にも教わってねぇんだ……」

男盗賊「……」

勇者「父ちゃんが、何を望んでいるのか……俺に、どうなって欲しいのか……何もわからなかった……」

男盗賊「……」

勇者「そのせいで俺、引き篭もっちゃって……どんどん、周りとの繋がりも切れていって……」

男盗賊「……」

勇者「……そのうち、俺の周りには誰もいなくなった」

男盗賊「……勇者」

勇者「……でも! そこにある日、天使のおっさんが現れたんだ!」

男盗賊「……天使?」

584: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 22:35:52.25 ID:4CQ+HIoeO
勇者「そいつは腐ってた俺に……正しく生きる方法を教えてくれたんだっ……!」

男盗賊「正しく……生きる……?」

勇者「俺の親代わりになって……! 俺の友人代わりになって……! 胸張って生きる為の方法を、いっぱい教えてくれたっ!」

男盗賊「胸を張って……生きる……?」

勇者「あいつが正しい事を教えてくれたから……勇者の息子なんて、とても口する事が出来なかった俺がさ?」

男盗賊「……」

勇者「今、勇者の息子だって胸張って、言えるようになったんだよっ!」

男盗賊「……」

勇者「親代わりの人間がさぁ……? 正しい事教えてくれなきゃ、子供は胸を張って生きれねぇよ?」

男盗賊「……だけど」

勇者「お前が間違った道進んでたら、あの子達どうなるんだよ!? なぁ!?」

男盗賊「わかってる……わかってる……だけど……」

585: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 22:45:28.02 ID:4CQ+HIoeO
勇者「そりゃ……お前の全てを理解して……受け入れるのは難しい事だと思う……」

男盗賊「……」

勇者「俺だって、そうだった……誰にも理解されなかった……綺麗事言って、引き篭もりをやめさせようとしてるんだな……なんて、ずっと思ってた」

男盗賊「……」

勇者「……でも、何処かに必ず居場所はあるんだよ?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「俺に向き合って、手を差し伸べてくれる人間は……実はすぐ近くにいたし……旅している最中にも大勢いたんだ……」

男盗賊「……」

勇者「間違ってたのは……一人で背追い込んで……誰も助けてくれないなんて思って……諦めてた俺の方だったんだよ……」

男盗賊「……勇者」

勇者「お前だって、今辛いんだろ!? 本当は誰かの助けが欲しいんじゃねぇのかよ!?」

男盗賊「!」

勇者「だったらよぉ! 諦めて……腐らずに……周りに甘えようぜっ! きっと、受け入れてくれる人は何処かに必ずいるんだからよぉ!」

586: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 23:01:49.94 ID:4CQ+HIoeO
男盗賊「そんな奴が、こんな大陸にいるわけ……」

勇者「じゃあ、どうすんだよっ! このまま、盗み続けて……そんな方法で子供達を育てるのかよ!?」

男盗賊「……それは」

勇者「子供も盗賊団の仲間だと思われて……一人前になった時、あの子達はどうすんだよ!? 居場所はあるのかよ!?」

男盗賊「くそっ……! だけど、それしか方法は……」

勇者「お前の人生それでいいのかよ!?」

男盗賊「!」

勇者「正しい事してるのに……間違った事をして……胸、張って言える事なのに……胸、張って言えなくて……」

男盗賊「……」

勇者「居場所なんて、絶対何処かにあるんだよ……見つけようぜ? 一緒によぉ?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「お前の為にも……子供の為にも……そして、俺の為にも……」

男盗賊「……勇者?」

勇者「今のお前、見てるの辛ぇよ……街に行こうぜ? それで、お前達を受け入れて貰えるよう頼んでみようぜ?」

男盗賊「だけど、俺はあの街から……」

勇者「そうやって、ネガティブに考えるなよ! 子供の為に盗みしたんだろ!? だったら、わかるよ! 絶対、わかってくれるよ!」

男盗賊「……」

勇者「頭なら俺が下げるっ! 金だって払うっ! 最後の最後まで諦めんなよっ! 少ない希望だからって……最初から何もしねぇのはよくねぇよっ!」

男盗賊「……」

587: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 23:12:10.12 ID:4CQ+HIoeO
子供「……うぅ」グスッ

男盗賊「イチロー……お前、今の話……聞いてたのか……?」

勇者「ど、どうしてここに……」

子供「そいつが消えて……男盗賊さんの所に行ってたら危ないと思って……戻ってきた……」

男盗賊「……お前」

勇者「……」

子供「俺、気づいてた……この中で……一番年上だから……気づいてた……」

男盗賊「……」

勇者「……」

子供「自分達が……悪い事をしている……男盗賊さんが、俺達を育てる為に……仕方がなく悪い事をしてるって気づいてた……」

男盗賊「……お前」

588: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 23:24:20.91 ID:4CQ+HIoeO
子供「だけど……言えなかった……言葉にして……男盗賊さんも俺達を捨ててしまう事が怖かった……」

男盗賊「そんな事はねぇ……俺はお前達をっ……!」

子供「俺……もう、一人前だから、大丈夫だよ……?」

男盗賊「……えっ?」

子供「俺は……胸張って、男盗賊さんに育てられたって言うからさぁ……?」

男盗賊「……」

子供「あいつらは……もっと、違う方法で面倒見てやってよ……」

男盗賊「ふざけんじゃねぇっ……! それじゃあ、まるでお前を捨てるみてぇじゃねぇかっ……!」

子供「だって……男盗賊さんの辛い顔を見てるの……俺も辛いもん……」

男盗賊「だからって、お前がそうする事はねぇだろがっ! お前の居場所はあるよっ! 俺が作ってやるからっ!」


勇者(必ず……皆の居場所を作るんだ……)

589: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 23:26:43.01 ID:4CQ+HIoeO





PM9:55

タイムリミットまで後、5分






590: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 23:32:04.80 ID:4CQ+HIoeO
酒場の主人「街長、来ましたっ! 盗賊団ですっ! 盗賊団が現れましたっ!」

街長「よし、人質を連れてこい……それから、奴らを包囲して……」

主人「ちょっと待って下さい、街長っ! あの盗賊団……少し、変ですよ……」

街長「……どういう事じゃ?」

主人「いやっ……そのっ……それが……」


ゾロゾロ……ゾロゾロ……


勇者「……おい、歩けるか? 大丈夫か?」

男盗賊「あぁ……大丈夫だ……」ヨロヨロ

子供達「……」


街長「なんだ、あの盗賊団は……子供ばかりじゃないか……」

591: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 23:41:27.63 ID:4CQ+HIoeO
勇者「あの……街長さん……話だけでも聞いてもらってもいいですか……?」アセアセ

街長「……」

勇者「悪い事をしましたが……事情があるんですよっ……! お願いしますっ! 話だけでも聞いて下さいっ……!」

街長「……」

勇者「盗んだ物の代金は、僕が支払いますっ……! だから……だから、話だけでも聞いて下さいっ……!」

街長「……そんなに子供を引き連れて、どういうつもりじゃ?」

勇者「あのっ……それはっ……!」

街長「……お前が、この盗賊団の頭じゃな?」ギロリ


男盗賊「……」

街長「相当、訳ありみたいだな? 話を聞かせてみろ? 興味があるわ」

男盗賊「……えっ?」

街長「盗賊団とは、もっとゴツい男の集まりだと思っておったわ。 なんで、こんなに子供ばかりなんじゃ?」

男盗賊「そ、それは……」

592: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/05(土) 23:51:05.62 ID:4CQ+HIoeO
ーーーーー


男盗賊「……と、いう訳なのです」

勇者「こいつにも、理由があったんですっ! 街長さんっ! 理解してやって下さいっ!」

街長「……ふん、感心せんな」

男盗賊「……なんだと、この野郎?」ワナワナ

勇者「街長さんっ! 違うんですっ!」

街長「こんな世界じゃ……皆、自分事だけで精一杯じゃろう……」

男盗賊「……あんたは、綺麗事は言わねぇみてぇだな?」

勇者「そんな事ねぇよっ! きっと……わかってくれるよ……!」

街長「お前達が……他の街から、迫害されたのも、当然じゃろう……9人の子供の面倒を見れる人間なんて……こんな世界にはおらんは……」

男盗賊「……くそっ!」

勇者「街長さんっ!」

街長「……だが、それは一人で背追い込もうとするから、そうなるのではないか? 今のお前みたいにな?」

男盗賊「……えっ?」


593: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 00:05:38.71 ID:vyIa5TqaO
街長「この街は、魔王城が近い……物資もとれん……気性の荒い魔物だに襲われる事だってある……」

勇者「……」

街長「だが、我々はそれを皆で協力して……それぞれがそれぞれを助け合って……こうやって生きているのだ……」

男盗賊「……」

街長「一人で背負い込むより、皆で助け合う……うちの街の連中は、こんな街だからこそ……誰よりもその大切さを理解しておる……」

勇者「……街長さん」

街長「こんな街まで辿り着いたのは、幸か不幸か……ただ、我々は受け入れるぞ?」

男盗賊「……えっ?」

街長「物資も少ない……危険な街だがね……? お前が心を改め……この街で皆で協力し合えるのなら……子供の10人や20人くらい、構わんよ」

595: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/06(日) 00:19:41.27 ID:vyIa5TqaO
勇者「街長さんっ……! お願いしますっ……!」ベタッ

街長「……やめんか、土下座なんて。みっともない」

勇者「おいっ……! 男盗賊っ……! おめぇも、土下座ぐらいしろよっ! お前ら、受け入れてもらえるんだぞっ!」


男盗賊「あっ……あぁっ……! 街長さんっ! お願いしますっ!」ベタッ

街長「だから、やめろって……お前の子供達も見てるんだから……」

男盗賊「俺、自分の周りに……助けてくれる人なんていないと思って……一人で背追い込んで……盗みもして……」

街長「もういいから……子供の前でみっともねぇ事、すんなってのっ! お前、親じゃねぇか!」

男盗賊「これから、心を改め……こいつらが俺に育てられたと胸を張って言えるようになりますから……お願いしますっ!」

街長「いい親になりてぇんだったら、土下座はやめろっての! 自分の親が土下座してるって、もの凄く見たくない光景だよ? ねぇ、ねぇ?」

596: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 00:27:44.30 ID:vyIa5TqaO
街長「お前、大丈夫なの……? 親として大丈夫か、おい」

男盗賊「……す、すいません」アセアセ

街長「でも、9人も子供いると大変じゃろ? 寝床とかだけも大変じゃん? 今晩どうするつもりだったの?

男盗賊「あっ……それは、洞窟で過ごそうかと……」

街長「……えっ? 洞窟って、あの毒蛇のいる洞窟?」


男盗賊「……えっ?」

勇者「……えっ?」

街長「この辺の洞窟って……あの洞窟だけだろ? あの、毒蛇のせいで、魔物が寄り付かなくなった、あの洞窟だろ?」

男盗賊「……あそこ、毒蛇いたのかよ」

勇者「あの、街長さん……僕は神聖な洞窟って聞いたような気がするんですけど……」

598: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 00:35:40.59 ID:vyIa5TqaO
街長「昼は神聖なんだよ、昼はね?」

勇者「……は、はぁ」

街長「でも、夜行性の蛇だから、夜になると、神聖じゃなくなるんだよ。夜になるとね……」

勇者「それ……ネーミングなんとかならなかったんですかね……? 神聖ってそういう事じゃないでしょ……」

街長「うちの街の連中はそれでわかってるからいいんだよ。丁度今頃、暴れてるんじゃね? お前ら、間一髪だったな!?」

勇者「……」

街長「まったく……親なんだったらさ……? もっと気をつけた方がいいと思うぜ?」


女僧侶「……ほら、天童さん? 和やかに話してますよ? 勘違い、とけたみたいでよかったじゃないですか?」

天童「よしっ! はい、カァ~ット! 10時ジャストだっ! それはそうと、この縄、もう外してくれてもいいんじゃねぇか、オイっ!」モガモガ

599: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 00:43:54.87 ID:vyIa5TqaO
翌日ーーー


男盗賊「……世話になったな」

勇者「気にすんなよ? 親友じゃねぇか」

男盗賊「お前……本当に魔王城に行くのか……?」

勇者「あぁ、俺も……お前の力になりたいしさ?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「あの子達の居場所がさ……? 一時の物じゃなくて……永遠の物にしなくちゃいけないだろ?」

男盗賊「……あぁ」

勇者「だから、俺が魔王を倒して……平和な世界を必ず作ってみせるからっ!」

男盗賊「……お前は簡単に言うんだな」クスクス

勇者「子供、9人育てるよりは簡単だろっ! 俺、絶対できないもん、そんな事!」

男盗賊「俺も……一人だったら、いつかは出来なくなってたよ……」

600: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 00:53:16.65 ID:vyIa5TqaO
男盗賊「俺も……怪我が治ったら、必ず合流するよ」

勇者「いいよいいよ……お前は、あの子達のそばにいておいてやれよ」

男盗賊「いや……俺も胸張って生きたいからさ……?」

勇者「……えっ?」

男盗賊「散々、生きる為に悪事を繰り返してきたんだ……あいつらに教えるのは、そういう事じゃない……」

勇者「……」

男盗賊「正しい事をしている親の背中を見て……子供ってのは、育っていくんだよ……お前が教えてくれたじゃねぇか?」

勇者「……でもよぉ? 大丈夫か? 相手は魔王だぜ?」

男盗賊「お前と一緒なら、大丈夫だよ。 だって俺達、親友だろ?」

勇者「気持ちはありがたいけどなぁ……」

男盗賊「平和な世界を作る事が……今まで俺が奪ってきた人に対する罪滅ぼしさ……」

勇者「俺がやるからっ! それは俺がやるから、お前はあの子達のそばにいてやれっての!」

男盗賊「……いや、必ず合流する」

勇者「も~う……頑固だなぁ……」

601: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 00:59:05.77 ID:vyIa5TqaO
ーーーーー


天童「おう、勇者! 幼馴染との別れは済んだか!?」

勇者「う~ん……あいつ、魔王城に来るとか言ってたけど、大丈夫かなぁ……?」

天童「まっ、それだけよぉ? おめぇの言葉が響いたんじゃねぇか? 何、言ったか俺はわかんねぇけどよぉ?」

勇者「……そうかもね」

天童「『正義感』……クリアだな……」メモメモ

勇者「……うん」

天童「ところでよぉ……? 勇者、気づいてるか……?」

勇者「……ん?」

天童「おめぇ、ここまで命題9つクリアしたんだぜ?」

勇者「う、うん……」

天童「という事は……次がラストだっ! そして、おめぇも真人間だよ、おいっ!」

勇者「な、なぁ……天童……?」

天童「……ん、 どうした? 次がラストなんだから、もうちょっと喜んでもいいんじゃねぇの?」

602: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 01:03:46.83 ID:vyIa5TqaO
勇者「俺の……命題が全部終わったらさ……?」

天童「……ん?」

勇者「……おめぇ、その後どうするんだ?」

天童「あぁ、天界に帰るよ」

勇者「……えっ!?」

天童「天界帰って……レポート纏めなきゃいけねぇだろ……で、このレポートがまた面倒臭ぇんだよ……神様、細けぇからさぁ……?」

勇者「天界に……帰る……」

天童「まっ、俺もそろそろ天界に帰る準備しとかねぇとなぁ……」

勇者「……準備?」

天童「あぁ、荷物纏めてよぉ? 天界に帰る準備だよ、準備」

603: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 01:11:43.44 ID:vyIa5TqaO
勇者「……おめぇ、手ぶらで来たんだから、持って帰るもんなんてねぇだり?」

天童「……あるぜ?」

勇者「……何だよ?」

天童「お前との思い出」キリッ

勇者「……えっ?」

天童「カァ~! かっこいい、俺っ! もう一回言おうっ! お前との……思い出……」

勇者「……」

天童「カァ~、やっぱ、俺ハンサム……これメモしとこ……」

勇者「……」

天童「え~、俺は……ハンサム……ナウでヤングなハンサム……っと……」メモメモ

勇者「……バカじゃねぇのか!?」

天童「なぁ~んで、そんなに怒ってるんだよ、勇者君……あっ、もしかして、おじさんと別れるのが寂しいのかぁ~?」ニヤニヤ

勇者「……」

天童「……ん? どうしたの?」

勇者「そ、そんな訳ねぇだろっ! くだらねぇ事、言ってねぇで、早く魔王城行くぞっ! もう、そこだろがっ!」ズガズガ

天童「お、おう……なんて迫力だ……あいつ、気合入ってやがるなぁ……」


勇者(天童と……お別れ……?)

604: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/06(日) 01:12:41.83 ID:vyIa5TqaO
第九話 「改心させないと死ぬ!」

ーー完

次回最終回

621: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 21:08:44.80 ID:7ihTUDt7O
魔王城ーー


女僧侶「ここが……魔王城……」

天童「カァ~、でっけぇ建物だなぁ……やっぱり、親玉ってのはいい所に住んでんだな? なっ?」

勇者「……父さん、俺もここまで来たよ」

女僧侶「ここにいる……魔王を倒せば……」

天童「……あぁ」

勇者「……世界は、変わるんだ」


ーー天国に一番近い勇者 最終話

622: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 21:14:04.97 ID:7ihTUDt7O
ヒラヒラ


勇者「……ん?」

天童「どうした、勇者? おめぇ、ひょっとしてビビってんじゃねぇだろな!?」

勇者「いや……違うよ、天童……ほら、上見てみろよ?」

天童「あぁん? 上?」

勇者「何か……空から降ってきた……」

天童「なんだ、ありゃ……? ゴミか……? 鳥か……? それとも、スーパーマンかっ!?」

勇者「いや、違うよ……アレ、封筒みてぇな形してるぞ……?」

天童「封筒……? あっ……! って、事はっ!」

623: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 21:18:45.26 ID:7ihTUDt7O
ヒラヒラ


天童「おい、勇者っ! 来たぞ来たぞっ!」

勇者「う、うん……」

天童「あれが……おめぇの最後の命題だっ!」

勇者「うんっ……! よ、よっとっ……!」パシッ

天童「さぁ、これが……おめぇが真人間になる為の最後の試練だっ!」

勇者「最後……か……」

天童「さぁ! 今回はなんて書いてあるんだっ! 勇者っ! 中を見てみろっ!」

勇者「う、うん……」ガサゴソ

624: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 21:22:16.66 ID:7ihTUDt7O





勇者
X月X日 午後5時までに

天童にさよならが言えなかったら即・死亡!






625: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 21:25:50.91 ID:7ihTUDt7O
勇者「えっ……? 天童に……さよならが言えなかったら……即・死亡……?」

天童「……」

勇者「……」

天童「今……午後2時だ……」

勇者「……後3時間だ」

天童「……」

勇者「……」

天童「よしっ! もう、ここでクリアしよう」

勇者「……えっ?」

626: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 21:30:34.42 ID:7ihTUDt7O
天童「今から、魔王城に乗り込むんだ。 そんな中、余計な事考えてる暇なんてねぇだろ?」

勇者「……」

天童「だから……今、ここで命題をクリアして……後は、魔王を倒す事に集中しよう。なっ?」

勇者「……」

天童「だから……勇者……?」

勇者「……ん?」

天童「言えよ……『さよなら』を……」

勇者「!」

天童「これで、おめぇの命題もおしまいだ」

勇者「……」

627: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 21:35:55.45 ID:7ihTUDt7O
天童「……どうした?」

勇者「……」

天童「……あっ! ひょっとしてお前、俺と別れるの嫌なの?」ニヤニヤ

勇者「!」

天童「いつもいつも、バカだのダメ天使だの言ってたのによぉ~? やぁ~っぱり、俺と別れるのが寂しいんだ? ねぇねぇ?」

勇者「……」

天童「なぁ~んだよ、勇者君にも可愛い所、あるじゃ……」

勇者「違ぇよっ! バーーーーカっ!」

天童「……ぬ?」

勇者「あのなぁ……? 天童……?」

天童「……何だよ」

628: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 21:44:09.35 ID:7ihTUDt7O
勇者「今から、魔王城に乗り込むんだぞ? おめぇ、そこん所わかってんのか?」

天童「わかってるよ……だから、命題をクリアして……」

勇者「あのなぁ……? 天童……?」

天童「……ぬ?」

勇者「おめぇみてぇな、ダメ天使でもなぁ? 戦闘になったら、いつもいつも後方で隠れてるような奴でもなぁ?」

天童「……俺は隠れてなんかねぇよっ! いつも頑張ってるじゃねぇか!」

勇者「一応は……戦力なの?」

天童「一応って何だよぉ!? 勇者君は失礼だなぁ?」

勇者「今から、魔王城に乗り込むんだぞ? その前に、戦力減らす事するなんて……そ~んな事は、出来ませんよ」

天童「……まっ、そうかもな」

勇者「後、3時間もあるんだろ? 3時間? だったら、後3時間……おめぇには徹底的に働いてもらわねぇとなっ!」

天童「勇者君……君の気持ちはよくわかった……だけど、一つだけ言いたい事がある……」

勇者「あぁ? 何だよ……?」

629: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:00:00.69 ID:7ihTUDt7O
天童「あのね……? おじさん、今日……下痢気味なんだ……?」

勇者「……はぁ?」

天童「あっ! それとね、熱もあるの! 熱も!」

勇者「……なぁ~に、言ってんだよ」

天童「え~っとね……39度ぐらいかなぁ……? いや、こりゃ40度越えてるねっ!」

勇者「……おめぇ、さっきまで、ピンピンしてたじゃねぇか」

天童「だからねぇ~? 今日、おじさん、ちょっと戦えそうに……」

勇者「はいはい、わかったわかった……それじゃあ、魔王城に行きましょうか……」グイグイ

天童「おい、勇者ァ! 病人、引っ張るんじゃねぇよっ! 俺、今日おたふく風邪なんだぞ!? おめぇ、うつっちまうぞ!?」

勇者「おめぇはさぁ……? そういう所を直そう。なっ? おめぇもダメ天使のままじゃよくねぇよ。なっ?」グイグイ

630: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:03:12.16 ID:7ihTUDt7O
天童「魔王城なんておっかねぇよっ! 俺、怖ぇよ! 勘弁してくれよ~」

勇者「俺だって怖ぇよ……だけど……やるしかねぇじゃねぇか!」

天童「早く命題クリアしろよっ! おめぇがクリアしたら、俺は天界に帰れるんだからよぉ!」

勇者「はいはい、魔王を倒したら……言ってあげますから……それまで、おめぇも頑張って下さい……ほれ、行くぞ?」

天童「ったく……じゃあ俺も最後まで付き合ってやるかっ! でもよぉ、勇者? 命題忘れんじゃねぇぞ? 後3時間だからよぉ?」

勇者「はいはい……わかってます、わかってますって……」


勇者(ふざけんなよ……出来るワケねぇだろ……こんな命題……)ワナワナ

631: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:15:39.45 ID:7ihTUDt7O
ーーーーー


「敵襲だっ! 敵襲だぞっ!」


女僧侶「……くっ!」

天童「おいおいっ! いきなり囲まれちまったぞっ! いくらなんでも、真正面から、乗り込みすぎなんじゃねぇの?」

勇者「くそっ! 流石、魔王城だ……数が多いな……」


ゾロゾロ……ゾロゾロ……


女僧侶「大丈夫ですっ……! きっと……きっと、上手くいきますよっ!」

天童「一人、ノルマ10匹って所だっ! 勇者ァ! おめぇはその倍の20匹倒しやがれっ! いくぞっ!」

勇者「あぁっ! 20匹でも、30匹でもやってやるよっ! 俺だって、ここまでやってきたんだからっ!」


「来たぞっ! 相手はガキ二人と、おっさん一人だが、容赦はするなっ!」

632: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:21:06.59 ID:7ihTUDt7O
女僧侶「たあっ!」バキッ

魔物「……ガッ!」


天童「よいしょ~っ! どっこいしょ~っとっ!」ガスッ

魔物「……グッ」


勇者「うらぁっ!」ズバッ

魔物「こ、こいつ……! 早っ……!」

勇者(父さん……父さんが成し遂げれなかった事……俺が代わりに……!)

魔物「くっ……! こいつ……!」

勇者「くらえっ!」


ズシャッ


魔物「……ガ、ガガッ」

633: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:28:07.02 ID:7ihTUDt7O
魔物「くそっ……! 固まれっ……! 人数ではこっちが優っているんだっ……!」

勇者「……」

魔物「体制を整え、こいつらを迎え討つぞっ!」

勇者「よしっ……! いい具合に固まってくれたな……」

魔物「……えっ?」

勇者「纏めて倒してやるっ……! うおおっ! くらえっ!」

魔物「な、なんだっ! 何かヤバいぞっ! 皆、散るんだっ! 散れっ!」

勇者「もう、遅いっ! くらえっ! ギガデインっ!」

魔物「!?」


ドーンッ


魔物「グガガガガッ……」

634: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:34:13.87 ID:7ihTUDt7O
天童「カァ~、あいつ調子いいねぇ……俺も頑張ってるのによぉ……? よっと……」バキッ

魔物「……ガッ」

天童「これで……7匹目っと……ほら、俺頑張ってるじゃん……ん……?」


女僧侶「勇者さんっ! 魔物の動きを封じましたっ! だから、お願いしますっ!」

勇者「よしっ! 女僧侶ちゃん、ありがとう! うおおっ!」ダッ

女僧侶「勇者さんっ!」

勇者「うおおっ……! 23……! 24……! 25……!」


天童「……7匹でも凄い事なんだよ? ねぇねぇ? 7匹でも凄いのに、あ~やって、25匹とかやってたら、俺の見せ場ねぇじゃん?」

635: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:41:25.01 ID:7ihTUDt7O
ーーーーー


魔王「……鼠が暴れているようだが?」

「はっ……! しかし、相手は三名……恐るるに足る事はありません……」

魔王「……そうかな?」

「……?」

魔王「奴は、この私に土をつけた……あの男と同じ技を使っていたようだが……?」

「……あの稲妻の技ですか」

魔王「勇者に息子がいるとの情報も、入っておる……おそらく、奴がそうだろう……」

「……」

魔王「……私が行くしかないな」

636: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:46:39.16 ID:7ihTUDt7O
「お待ち下さいっ! 魔王様っ!」

魔王「……どうした?」

「魔王様は、まだ不完全ですっ! 今は……世界を支配する為……力を蓄えて下さいっ!」

魔王「私が……人に負ける……と、でも……?」

「魔王様は……二度……負けました……」

魔王「……」

「一度は神に……そして……もう、一度は……人に……です……」

魔王「……」

637: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 22:55:53.71 ID:7ihTUDt7O
「神との戦いで、力を使い……そして、人に破れ……」

魔王「……」

「そして……人との戦いで、また力を使い……」

魔王「……」

「あなたも……あの愚かな、神のようになりたいのですか!?」

魔王「神……か……」

「私が行きます……私が行って……奴らを始末しましょう……例え、それがあの勇者の息子だとしても……」

魔王「……」

「魔王様は今は、力を蓄えて下さいっ……! 世界を支配するだけの力をっ……!」

638: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 23:02:57.98 ID:7ihTUDt7O
ーーーーー


女僧侶「はぁ……はぁ……」

天童「カァ~、疲れた……おい、勇者? 俺、15匹倒したぞ? 今度は嘘じゃねぇからな!」

勇者「おっ……? おめぇ、今日は役に立ってくれるじゃねぇか? ナイスナイス」

女僧侶「勇者さんは何匹、倒したんですか?」

天童「あっ! 女僧侶ちゃん、聞かなくていいっ! 聞かなくていいからっ!」

勇者「俺は……途中から、数えてないけど……40ぐらいじゃねぇ?」

女僧侶「勇者さん、凄いですっ!」

天童「……聞かなくていいって言ったのによぉ」

勇者「でも、女僧侶ちゃんのサポートがあったからこそだよ! だから、俺と女僧侶ちゃんで20・20ぐらいじゃないの?」

女僧侶「ふふ、ありがとうございます」クスクス

天童「……なぁ~んか、おじさん今日つまんないなぁ~! ねぇ、帰ってオセロとかしない? オセロとかして楽しく遊ぼうよぉ!」

639: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 23:14:12.30 ID:7ihTUDt7O
「……流石、勇者だな。やるじゃないか」


天童「……ん?」

勇者「こいつ……今までの奴らをとは気配が違うぞっ……! 皆、気をつけろっ!」

魔人「自己紹介をさせて頂こう……自分を殺す相手の名ぐらいは知っておきたいだろう……? 私は火の魔人……」

天童「ヒノマ・ジンさん……? あんた、変わった名前してるねぇ……どういう字、書くの?」

勇者「『日野間仁』とか、そういう感じじゃね? 俺は『火の魔人』だと、思うけど」

魔人「ふん、とぼけた奴らだ……だが、油断はせんっ……! 私の能力はっ!」


ゴオオォォォ


天童「うおおっ! 熱っ! 熱っ!」

勇者「な、なんだこいつ……辺り一面、炎の海に……!」

魔人「私は炎を自由自在に操る力を持つ! いくぞっ! 貴様らを消し炭にしてくれるわっ!」

644: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:09:35.09 ID:Ek5z7brfO
天童「魔人だか、魔王だか知らねぇけどよぉ……? こっちには時間がねぇんだっ! 勇者ァ! とっとと片付けるぞっ!」

勇者「あぁっ! わかってるよ、天童っ! いくぞっ!」

魔人「……フン」


天童「うおおっ! くらぇっ!」

勇者「おらぁっ!」

魔人「甘いぞっ! 小僧共っ!」


ヒュンッ


天童「……何っ!?」

勇者「こいつ……早いっ……!?」

魔人「後ろだっ! くらえっ! うおおぉぉっ!」

645: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:15:01.30 ID:Ek5z7brfO
魔人「先ずは……おっさん……貴様らだっ! くらえっ! うおおぉぉっ!」

天童「……えっ?」

魔人「うおおぉぉっ! くらええぇぇ!」ドゴォッ

天童「ぐっ……ああっ……!」


勇者「天童っ!?」

魔人「……他人の心配などしてる暇はないぞっ!」ヒュンッ

勇者「えっ……! こいつ……いつの間に……」

魔人「次は……勇者っ! 貴様だっ!」ドゴォッ

勇者「ガッ……! ぐ、ぐはっ……!」

646: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/08(火) 22:21:23.52 ID:Ek5z7brfO
女僧侶「勇者さんっ! 私が魔法で動きを止めますっ……! だから……その隙に……」

勇者「う、うぅ……わかった……」

女僧侶「んっ……いきますよっ……」


魔人「そう安々と呪文詠唱など、させてたまるかぁっ!」

女僧侶「えっ……?」

魔人「うおおっ! 燃え盛る火炎よっ! あの女を焼き尽くすせっ!」ゴオォォォッ

女僧侶「えっ……!? 火が……こっちに……」

魔人「うおおぉぉっ! くらええぇぇ!」

女僧侶「きゃあぁっ!」

647: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:27:33.01 ID:Ek5z7brfO
勇者「女僧侶ちゃんっ!?」

女僧侶「うっ……ううっ……」

勇者「女僧侶ちゃん、しっかりしろっ!」


魔人「……警告は二度目だぞ? 勇者の小僧?」ヒュンッ

勇者「えっ……?」

魔人「他人の心配をしてる場合ではないと言っただろう……? なぁ?」

勇者「し、しまったっ……!」

魔人「うおおっ! くらえっ!」ドゴオォォッ

勇者「ぐ、ぐはっ……」

648: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:33:57.14 ID:Ek5z7brfO
魔人「まだ死なぬか……なかなかタフだな……? 小僧……?」

勇者「へへ……頑丈さには自信があるんでね……」プルプル

魔人「その根性だけは褒めてやろう……」

勇者「へへ……どうも……」

魔人「……だがっ!」ヒュンッ

勇者「!」

魔人「根性だけでは、どうにもならんぞっ! くらえっ!」ドゴオォッ

勇者「う、うわああぁぁっ!」

魔人「どうした!? 勇者!? そんな物か、貴様の力はっ!?」


勇者「く、くそっ……」チラッ

天童「こいつ……強ぇ……」

649: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:39:10.88 ID:Ek5z7brfO
勇者「うおおぉっ!」

魔人「……ぬ?」

勇者「くらえっ! ギガデインっ!」


ドゴーンッ


魔人「甘いわっ! 燃え盛る火炎よ……火の鳥の姿を借りて焼き尽くせっ!」


ゴオォォォッ


勇者「……何っ!?」

魔人「どちらの魔法が強いか……力比べといこうじゃないか……勇者の小僧よ?」ニヤリ

勇者「く、くそっ……!」

650: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:43:48.64 ID:Ek5z7brfO
勇者「う、うおおぉぉっ……!」

魔人「どうしたどうしたっ!? 勇者の力とは、この程度の物かっ!?」

勇者「や、やばいっ……こいつ……!」

魔人「どうしたっ!? もう、終わりかっ!? ならば、このまま焼き尽くしてくれるっ!」

勇者「!」

魔人「うおおぉぉっ! 消し炭となれっ! 勇者ァっ!」


ゴオォォォッ


勇者「!?」

651: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:48:19.92 ID:Ek5z7brfO
勇者「うっ……ううっ……」

魔人「……フン」

勇者「……くそっ!」プルプル

魔人「さぁ……心の臓を取り出し……止めとするか……なぁ? 勇者よ?」

勇者「……くっ」

魔人「くたばれっ! これで、貴様もっ……!」

勇者「……天童っ! 今だっ!」

魔人「……何っ!?」


天童「うおおぉっ! 今日は俺、いい所なしだからよぉ! 背後から、てめぇを襲って、大活躍してやるぜぇっ!」ブンッ

652: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:52:32.48 ID:Ek5z7brfO
魔人「……フン」ヒュンッ

天童「何っ!? 消えたっ……!?」

魔人「……わかってるんだよ? そんな事は」

天童「……えっ?」

魔人「甘いわっ!」ドゴオォッ

天童「ぐ、ぐわぁっ!」


魔人「そして……お前もだっ……!」ヒュンッ

女僧侶「!?」

魔人「くらええぇぇ! うおおぉぉっ!」ドゴオォッ

女僧侶「き、きゃああぁっ!」


勇者「天童っ……! 女僧侶ちゃんっ……!」

653: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 22:58:53.01 ID:Ek5z7brfO
魔人「勇者のお前が……強力な魔法で、私の注意を引き……」

勇者「……くっ」

魔人「そして、仲間に背後から攻撃させる……なかなか、いい作戦じゃないか!? なぁ!?」

勇者「くそっ……! こいつ……!」

魔人「だがっ……! そのような安い作戦など、私には通用せんぞっ! なぁ!? なぁ!?」

勇者「くそっ……こ、こいつ……」


女僧侶「勇者さんっ……天童さんっ……ど、どうしましょう……!」

天童「諦めんじゃねぇっ! こっちが人数で優ってる事には変わりねぇんだっ! とにかく……やるしかねぇよっ!」


魔人「……ほう」

654: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 23:03:51.00 ID:Ek5z7brfO
魔人「では……こんな呪文はいかがかな……?」

天童「……ん?」

魔人「燃え盛る火炎よ……人の姿を借りて我を守る幻の兵士となりたまえっ……!」ブツブツ

女僧侶「な、何かしようとしてますよ……!」

魔人「はあぁっ!」


ゴオォォォォッ


兵士「……」

兵士「……」

兵士「……」


天童「な、なんだこりゃっ……!」

女僧侶「炎の……兵士……!?」

655: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 23:08:08.52 ID:Ek5z7brfO
魔人「行けっ! 炎の兵よっ! お前達は、その雑魚を片付けろっ!」


兵士「オ、オオオォォォっ……!」

天童「うおっ! 熱っ! 熱ィってのっ!」

兵士「オオオオ……オオォォっ……!」

女僧侶「きゃあっ……!」


勇者「天童っ! 女僧侶ちゃんっ!」

魔人「これで、人数もこっちの方が優ったな……?」

勇者「やばいっ……! 二人を助けないと……!」

656: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 23:13:51.93 ID:Ek5z7brfO
魔人「学習しないな、貴様は……これで警告は……三度目だ……」ヒュンッ

勇者「し、しまった……!」

魔人「……死ねぇっ! 勇者よっ!」


ドゴオォッ


魔人「……ぬ?」

勇者「お、おっと……」ヨロヨロ

魔人「ほ~う……防御したのか……やるじゃないか……?」

勇者「ようやく……目が慣れてきたみたいだな……学習してないワケじゃねぇよ……」

魔人「流石、勇者……といった所か……」

657: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 23:17:58.86 ID:Ek5z7brfO
魔人「……だがしかしっ!」ヒュンッ

勇者「!?」

魔人「はぁっ! だぁっ! たぁっ!」

勇者「ぐっ……! くっ……!」

魔人「どうしたどうしたっ! 防戦一方だぞ、勇者ァ!」

勇者「くっ……くそっ……!」

魔人「……ふんっ!」ヒュンッ

勇者「し、しまったっ……!」

魔人「後ろだっ! 勇者ァ!」ドゴォッ

勇者「ぐ、ぐあぁっ……!」

658: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 23:25:57.43 ID:Ek5z7brfO
勇者「う、ううっ……」

魔人「……大人しく寝ていろ。そうすれば楽に殺してやる」

勇者「くそっ……」ムクッ

魔人「……何故、立ち上がる? 馬鹿なのか? 無駄だという事がわからんのか?」

勇者「へへ……世の中に無駄な事なんかねぇんだよ……こうやって、立ち上がってれば……そのうちなんとかなるさ……」ヨロヨロ

魔人「……愚かな」

勇者「へへ……諦めて……たまるかよっ……!」

魔人「……フンっ!」ヒュンッ

勇者「!」

魔人「……うおおぉっ!」ドゴォッ

勇者「ぐ、ぐはぁっ……!」バタッ

659: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 23:32:55.58 ID:Ek5z7brfO
勇者「……ううっ」

魔人「……ふん」

勇者「く、くそっ……」ムクッ

魔人「もう、寝てろ……しつこい奴は好かん……」

勇者「諦めて……たまるかよっ……!」ヨロヨロ

魔人「……何が貴様をそこまで動かすんだ?」

勇者「……」

魔人「復讐か……? 父親の復讐が、貴様を動かしているのか?」

勇者「……」

魔人「……」

勇者「へへ……そんなんじゃねぇよ……」

魔人「……じゃあ、何が貴様をそこまで動かす?」

勇者「それは……」チラッ

魔人「……」チラッ

660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 23:36:15.51 ID:Ek5z7brfO
兵士「オオオオォォっ……!」

天童「く、くそぉっ……!」

兵士「オオオオ……オオオオっ……!」

女僧侶「くっ……!」

兵士「オオオオォォっ……!」

天童「ここまで来たんだっ! こんな奴らに負けてたまっかよっ!」

兵士「オオオオ……オオオオっ……!

女僧侶「えぇっ! 後少しなんですっ……! 後少しっ……!」

661: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/08(火) 23:54:12.59 ID:Ek5z7brfO
勇者「皆が……教えてくれたんだ……」

魔人「……」

勇者「今……自分に出来る事を一生懸命するんだって……」

魔人「……」

勇者「前向きな想いが……自分を変えて……それから周りを変えていく事に繋がるんだ……」

魔人「……」

勇者「復讐なんて事は……父さんは望んでないよ……」

魔人「それが……お前達人間の信じる……神の教えか……?」

勇者「神様かどうかはわかんないけど……天使はそう、教えてくれたよ……」

魔人「愚かな神らしい考えだ……邪魔な人間など全て始末して……我らだけの世界を作ればいいものを……」

勇者「だから……俺がここで……諦めるわけにはいかないんだっ……!」

魔人「ふん、面白いっ……! ならば、貴様が二度と立ち上がれぬよう、焼き尽くしてくれるっ!」

666: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/09(水) 23:10:11.74 ID:GDiRvnRTO
勇者「いくぞっ! 魔人野郎っ!」

魔人「かかってこいっ! 勇者の小僧よっ!」

勇者「うおおぉっ! 父さんっ……! 俺に力を貸してくれっ……!」

魔人「燃え盛る火炎よ……火の鳥の姿を借りて全てを焼き尽くせ……」ブツブツ


勇者「うおおぉぉっ! ギガデインっ!」


ドゴーンッ


魔人「うおおぉぉっ! 死ねっ! 勇者よっ!」


ゴオォォォッ

667: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/09(水) 23:15:52.40 ID:GDiRvnRTO
勇者「……ぐっ!」

魔人「……ふんっ!」

勇者「く、くそっ……! やっぱり……こいつの魔法……桁違いの威力だっ……!」

魔人「フン……このまま押しきってやるっ……うおおぉぉっ!」

勇者「くっ……! くそっ……! 負けて……たまるかよっ……!」

魔人「諦めろ、勇者の小僧よ……貴様達は……ここで終わりだっ!」

勇者「諦めて……たまるもんかっ……! 絶対……絶対に諦めるもんかっ……!」

魔人「うおおぉぉっ! 押しきってやるっ!」

勇者「!」

魔人「行けっ! 火の鳥よっ! 奴を焼き尽くせっ!」


ゴオォォォッ


勇者「ぐっ……! うおおぉぉっ! レムオルっ!」

668: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/09(水) 23:26:23.05 ID:GDiRvnRTO
魔人「はあぁっ!」


ドゴーンッ


魔人「……」

魔人「フン、骨すら残らなかったか……愚かな小僧だ……」

魔人「……後は、あの二人の始末だけだな?」チラッ

魔人「しかし、あの男……もしかして奴は……」


「……今度はお前が隙を見せたなっ!」

魔人「……何っ!?」

勇者「うおおっ! くらえっ!」ザクッ

魔人「……ぐっ!」ヨロッ

勇者「おめぇの相手は俺だよ……他の奴見てる暇なんてあるのかよ……? なぁ、あんた自分で言ってたよなぁ?」

魔人「くっ……! 貴様……焼け死んだはずでは……」

勇者「へへ……直撃はくらっちまったけどよぉ……俺、姿を消す魔法も使えるんだよね……?」

魔人「く、くそっ……!」

勇者「おかげで一発、おめぇに深ぇの入れれたぞっ! 今度はこっちの番だっ! 行くぞっ!」

669: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/09(水) 23:34:09.28 ID:GDiRvnRTO
魔人「ぐっ……! 確かに……貴様の不意打ちで、傷を追ってしまったが……」

勇者「うおおぉっ! ぐっ……! だぁっ!」

魔人「お前もっ……! 満身創痍ではないかっ! 動きが鈍いぞっ!」

勇者「く、くそっ……! うおおぉぉっ! だぁっ!」

魔人「甘いっ……! 甘いわっ……! 動きが見えるっ! 貴様の攻撃が見えるぞっ!」

勇者「後少しっ……! 後少しなんだっ……! 諦めてたまるかよっ……!」

魔人「私に挑むのは10年早かったようだなっ! うおおぉぉっ! とどめだ、勇者っ! くらえっ!」ブンッ

勇者「!」


ガスッ

670: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/09(水) 23:41:20.98 ID:GDiRvnRTO
魔人「う、うおっ……」ヨロッ

天童「勇者……? おめぇ、成長したじゃねぇか……?」

魔人「……貴様っ!?」

天童「おめぇのおかげで……ようやく不意打ちが入れられたよ……やぁ~っと、見せ場がやってきたよ……」

魔人「このっ……! 鼠がちょこまかと……! くそっ! くらえっ!」ブンッ


バキッ


魔人「ぐ、ぐっ……!」ヨロヨロ

女僧侶「後、少しなんです……本当に……後、少し……」

魔人「ぐっ……! 貴様らっ……!」

女僧侶「勇者さんっ! 追い込みましたよっ! 後一息ですっ! お願いしますっ!」

魔人「……ぬ?」

671: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/09(水) 23:49:38.92 ID:GDiRvnRTO
バチバチ……バチバチ……


魔人「こ、これは……? さっきの小僧の魔法がまだ残っているのか……?」

勇者「さっきの魔法は……あんたを攻撃する為に使ったんじゃない……ソレ作る為に使ったんだ……」

魔人「雷が……まるで結界のように私を包んで……まさかっ……!?」

勇者「俺だけじゃ困難な道のりだった……あんたをそこに押し込んで、動きを止める事なんて、出来なかったよ……」

魔人「まずいっ……! この場にいるのはっ……! 非常にまずいぞっ……!?」

勇者「皆で作ったチャンス……だから……だから、これは外してたまるかよっ! うおおぉぉっ! くらえっ!」ダッ

魔人「!」

勇者「だあぁぁっ! ギガスラッシュ!」


ズバーンッ


魔人「ガ、ガアアァァァ!」バタッ

672: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/09(水) 23:55:43.70 ID:GDiRvnRTO
女僧侶「勇者さんっ!」

天童「よしっ! やったかっ!?」

勇者「……あぁ、完全に決まった」


魔人「ガッ……グッ……まだだ……まだ終わらんぞ……」

勇者「もう、いいっ! 勝負はついたはずだっ!」

魔人「燃え盛る炎の兵士達よ……私はもうよい……だから魔王様を守る為動くのだ……」ブルブル

勇者「いい加減にしろっ!」

魔人「戦え……炎の兵士よ……魔王軍に……栄光を……」


兵士「オオオオォォっ!」

兵士「オオオオォォっ!」

兵士「オオオオォォっ!」

673: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 00:00:44.58 ID:G+/EjMfPO
天童「くそっ! 勇者っ! 炎の兵士が襲ってきてるぞっ!」

「……オオオオォォっ!」

勇者「くそっ! 数が多いっ! とにかく、こいつらを始末するぞっ!」

「オオオオ……オオオオォォ……」

天童「今度は何だ? 一人ノルマ5匹か? でもよぉ? こいつらも、強ぇから油断するなよっ!」

「オオオオォォっ!」

勇者「ああっ! わかってる! 皆、頑張るんだっ……!」

「オオオオ……オオオオォォ……」


魔人「ぐっ……! まだだ……まだ、私は終わらんぞ……」ブルブル

674: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 00:08:52.48 ID:G+/EjMfPO
魔人「全ての始まりの炎よ……私の残りの命も……魂も全て捧げましょう……」

勇者「うおおっ! だぁっ! たぁっ!」

魔人「人間共に……永遠の呪いを……私の最後の願いですっ……!」

天童「ったく……今日はハードな一日だなっ! どっこいしょ~とっ!」

魔人「これが……私の最後の魔法だっ……! くらえっ! 勇者よっ!」

女僧侶「勇者さんっ! 何か……何かしようとしてますよっ……!?」

魔人「燃え盛る火炎よ……愚かな人間共に永遠の呪いを……そして我ら魔王軍に繁栄をっ……! はああっ!」

勇者「!」

675: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/10(木) 00:15:23.64 ID:G+/EjMfPO
パカッ


勇者「……ん?」

天童「何だこりゃ? 床に穴が開いて……?」


女僧侶「勇者さん、危ないっ! 落とし穴ですっ!」


勇者「えっ……? って、うわああぁぁっ!」ヒューッ

天童「うおおぉぉっ! やべぇっ! やべぇぞ勇者っ!」ヒューッ


魔人「くっ、一人逃したか……だが、これで貴様達はもう魔王様の元にはたどり着けん……これが、私の最後の魔法だ……」ガクッ


勇者「うわああっ! 落ちる……! 落ちるぞっ!?」

天童「何で、最後の魔法が落とし穴なんだよぉ! 火を使え! 火をっ! って、うわああっ!」

676: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 00:20:18.62 ID:G+/EjMfPO
女僧侶「勇者さんっ! 天童さんっ!」

兵士「……オオオオォォ」

女僧侶「……えっ?」

兵士「オオオオォォっ! オオオオっ!」

女僧侶「きゃぁっ……!」

兵士「……オオオオォォ」

女僧侶「こ、この兵士……主が倒れたのに……まだ、生きてる……」

兵士「オオオオォォっ……!」

女僧侶「くっ……! 数が多いっ…… ! とても、私一人では……!」

兵士「オオオオォォっ!」

女僧侶「と、とにかく勇者さん達を探しましょうっ! こんな場所一人なんて、危険すぎますっ……!」

679: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:06:47.19 ID:G+/EjMfPO





PM3:00

タイムリミットまで後、2時間






680: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:15:25.53 ID:G+/EjMfPO
勇者「おおっ……おおっ……! いでっ……!」ビターンッ

天童「うおおぉ……うおおっ……!」

勇者「むぎゅっ!」

天童「おおっ、勇者! おめぇは身を挺して俺を守ってくれたのかっ! なかなかやるじゃねぇかっ!」

勇者「何で俺の上に落ちてくんだよ、おめぇはよぉっ! どけよっ! 重てぇよっ!」

天童「おめぇは細けぇ男だな! いいじゃねぇか、ちょっとぐらいよぉ?」

勇者「あ~、痛てて……くそっ……随分と落下しちまったみてぇだけど……ここ、何処だ……?」

天童「う~ん……地下……かねぇ……?」キョロキョロ

681: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:22:46.10 ID:G+/EjMfPO
勇者「……あれ?」

天童「ん? どうした、勇者?」

勇者「女僧侶ちゃんが……いないぞ……?」

天童「ありゃ、そういえば……落ちてくる最中に、何かに引っかかってんじゃねぇの……?」

勇者「もしかしてよぉ……? あいつの落とし穴に落ちたのは……俺達だけで……」

天童「お、おい……まさかっ……!」

勇者「女僧侶ちゃんは、まだ上にいるんじゃねぇのか!?」

天童「やべぇぞっ! 上にはあの炎の兵士もまだ大量にいやがったぞ!?」

勇者「このままじゃ、女僧侶ちゃんが危険だっ! 早く助けにいかないとっ!」

天童「でもよぉ? どうやって戻るんだよ? おめぇ、道分かるのかよ? ここ、地下だぞ!?」

勇者「落ちて来たんだから、上に登ればいいだけの話じゃねぇかっ! 階段だよ! とにかく、上に登る階段を探すんだよ!」

682: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:29:21.99 ID:G+/EjMfPO
「いたぞっ! 侵入者だっ!」

「殺せっ! 殺すんだっ!」


勇者「……ん?」

天童「あぁ……?」


ゾロゾロ……ゾロゾロ……


勇者「おいおい……また魔物だよ……どんだけいるんだよここはよぉ……?」

天童「まっ、魔王城なんだから……当然と言っちゃ当然だよね……?」

勇者「くそっ……早く女僧侶ちゃんと合流しないといけないってのに……」

天童「しょうがねぇっ! 邪魔なこいつらをぶっ飛ばして、とっとと女僧侶ちゃん合流するぞっ! 行くぞ、勇者ァ!」

勇者「あぁ! 行くぞっ! 天童っ!」

683: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:33:56.75 ID:G+/EjMfPO
ーーーーー


女僧侶「はぁっ……! はぁっ……!」

女僧侶「……」

女僧侶「な、なんとか……振り切りましたかね……?」

女僧侶「早く……早く、勇者さんと合流しないと……」


「……こいつが命知らずの侵入者か? まだ、餓鬼ではないか」

女僧侶「だ、誰ですかっ……!」

「……火の魔人を倒したようだな? だが、我々は奴とは違うぞ?」

684: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:43:08.29 ID:G+/EjMfPO
水の魔人「私は水の魔人っ! 能力は水を自由自在に操る力だっ!」

女僧侶「!」

雷の魔人「そして、私が雷の魔人っ! 能力は雷を自由自在に操る力だっ!」

女僧侶「そ、そんなっ……!」

風の魔人「そして、私が風の魔人っ! 能力は風を自由自在に操る力だっ!」

女僧侶「まだ三人も……いるなんて……」


水の魔人「フン……火の魔人を倒したぐらいでいい気になるなよ……?」

雷の魔人「奴は魔人四天王の中でも最弱……魔人四天王の面汚しよ……」

風の魔人「我ら三人こそが真の魔人……魔人三獣士よっ!」


女僧侶「魔人……三獣士……?」

685: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:48:42.81 ID:G+/EjMfPO
水の魔人「さぁ……? 小娘よ……覚悟はいいか……?」

女僧侶「くっ……!」

雷の魔人「安心しろ……苦しむ間もなく……殺してやる……」

女僧侶「くっ……勇者さん……」

風の魔人「我ら魔人の力を……思い知らせてやるわっ!」

女僧侶「まずい……これは……まずいですっ……!」アセアセ


水の魔人「いくぞっ!」

雷の魔人「うるあぁぁっ!」

風の魔人「これで貴様も……終わりだぁっ!」


女僧侶「!」

686: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:54:33.48 ID:G+/EjMfPO
ーーーーー


勇者「……うおおっ!」バキッ

魔物「……ガッ」

勇者「言えっ! 上への階段は何処にあるんだっ! 言えっ!」

魔物「ふふふ……教えてやっても、いいが……もう、無駄な事だ……」

勇者「……どういう意味だ?」

魔物「魔人三獣士様が……直々に動いて下さったのだよ……」

勇者「魔人三獣士……? さっきみたいな奴がまだ、三人もいるのかっ……!?」

魔物「おそらく……お前の仲間はもう……手遅れだろう……」

勇者「そんなワケないだろうっ! 言えっ! そいつらの居場所を言うんだっ!」

魔物「グフフ……」

687: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 21:59:33.53 ID:G+/EjMfPO
天童「お~いっ! 勇者っ! こっちだっ! どうやら、上への道はこっちみたいだぞっ!」

勇者「天童っ……!」

天童「早く、女僧侶ちゃんと合流しようぜ? 女僧侶ちゃんいないと、やっぱり仕事量増えちゃうね?」

勇者「あぁっ! 早く行こうっ! このままじゃ……女僧侶ちゃんが……」アセアセ

天童「……ん? どうしたの勇者君? 何でそんなに焦ってるの?」

勇者「なんか……さっきみたいな、奴が……後、三人いるらしいんだよ……?」

天童「はぁ!? 後、三人もいるのかよ!? どういう事だよっ!?」

688: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 22:13:35.13 ID:G+/EjMfPO
勇者「だから……早く、女僧侶ちゃん助けに行かないと……」

天童「おいおい、待てよっ! さっきの戦いで、おめぇももうボロボロじゃねぇか! 後三人も戦えるのかよ!?」

勇者「……くっ」

天童「それに……その後には魔王も待ってるんだぜ? おめぇ、今日ちょっと無茶しすぎじゃねぇか!?」

勇者「くそっ……甘くみすぎてた……魔王城なんだから……もっと準備を念入りにするべきだった……」

天童「なんかよぉ? さっきの奴みてぇによぉ? 炎の兵士を生み出す……みてぇな都合のいい魔法覚えてねぇの?」

勇者「そんなもんがあったら、とっくに使ってるよっ! とにかく急ごうっ! 女僧侶ちゃんが危険だっ!」


天童(こりゃ、こいつが今までクリアしてきた命題が……偶然だったのか……本物だったのか……試される時が来たみてぇだな……)


天童(ただの偶然でクリアしたもんなら……この窮地は凌げねぇだろうな……さぁ、どうなるか……?)

689: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 22:17:58.85 ID:G+/EjMfPO
ーーーーー


水の魔人「……しぶといな」

女僧侶「くっ……」

雷の魔人「ちっぽけな人間の何処に……このような力があるのだ……」

女僧侶「諦めません……諦めませんよ……絶対に……!」

風の魔人「……もうよい、とどめにしましょう」

女僧侶「くっ……! 勇者さんっ……!」


水の魔人「うおおおっ!」

雷の魔人「死ねっ! 小娘よっ!」

風の魔人「我ら魔人三獣士の力を思いしれっ!」


女僧侶「!」

690: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 22:23:58.66 ID:G+/EjMfPO
水の魔人「……ぬ?」

雷の魔人「……何?」

風の魔人「我々の攻撃を……避けただと……?」


女僧侶「えっ……?」


「……三獣士だか、三バカトリオだか、知らねぇけどよぉ~?」


水の魔人「なるほど……他にも仲間がいたようだな……」

雷の魔人「我々の攻撃から、あの小娘を抱え……寸前で避けたというワケか……」

風の魔人「なかなか出来る奴のようだな……」


男戦士「俺の部下に手ぇ出すとはいい根性してるじゃねぇかっ! てめぇら、覚悟は出来てるんだろなっ!?」

691: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 22:34:02.11 ID:G+/EjMfPO
女僧侶「男戦士さんっ!」

男戦士「よぉ、 一年生? 久しぶりだな?」

女僧侶「どうしてここに……!?」

男戦士「おめぇらが頑張ってるって、噂聞いてよぉ? ちっと様子見に来ようと思ったら……まさか、魔王城に乗り込んでるとはなぁ?」

女僧侶「助けに来てくださったんですね!?」

男戦士「俺だけじゃねぇみてぇだぞ……? なぁ~んか、おめぇらの知り合いって奴……いっぱい来てるぞ?」

女僧侶「……えっ?」


女商人「女僧侶さんっ! 大丈夫ですかっ! 今、手当をしますっ! 動かないで下さいっ!」

女僧侶「女商人さんっ!?」

女商人「私は女僧侶さんの手当をしますので……皆さんは、奴らの相手をお願いしますっ!」

女僧侶「……皆さん?」

693: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 22:40:54.94 ID:G+/EjMfPO
男賢者「やぁ、女僧侶ちゃん? 久しぶりだね?」ニコッ

男魔法使い「それじゃあ、私達は……あの青い奴を相手にしようか……?」


女僧侶「男賢者さんっ! 男魔法使いさんっ!


女勇者「約束通り、怪我治して助けに来たわよ? 間一髪って所だったみたいね?」

男盗賊「じゃあ、怪我人コンビは仲良く黄色い奴という事で……お姉さん、よろしくお願いします……」


女僧侶「勇者さんのお姉さんっ! 男盗賊さんもっ!」


男武道家「……という事は、僕と男戦士君で緑の奴って事だね? いやぁ~、男戦士君、久しぶりだねぇ? よろしくね?」

男戦士「こいつとかよ……俺がババ引いちまったよ……」


女僧侶「男武道家さんまでっ!」

694: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 22:47:36.24 ID:G+/EjMfPO
水の魔人「ひー……ふー……みー……8人か……」

雷の魔人「ふん……雑魚が何匹集まろうと、我ら魔人三獣士の敵ではないわっ!」

風の魔人「ちっぽけな人間は……我らに支配されるだけの存在だという事を……その身を持って思い知らせてくれるっ!」


水の魔人「……いくぞっ! お前達っ!」

雷の魔人「人間よっ! 我ら力を思いしれっ!」

風の魔人「うおおぉぉっ!」

701: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 22:29:04.39 ID:ob7ZmQKkO
男賢者「くらえっ! 僕の魔力を見せてやるっ!」

水の魔人「……フン」

男賢者「正しい力の使い方……力を見せるのは……今、この瞬間だっ! うおおぉぉっ!」

水の魔人「バカめっ! 貴様ら魔導師の弱点は、その呪文詠唱の時だっ!」

男賢者「うおおぉぉっ! フルチャージだっ……!」ギリギリ

水の魔人「そう安々と撃たせてたまるものかっ! 隙だらけだぞっ! 死ねぇっ!」ドヒューンッ

男賢者「!」


カキンッ


水の魔人「……何っ!? 弾かれただと!? どういう事だ?」

男魔法使い「……あのねぇ、君? 魔導師の弱点が、呪文詠唱のタイムラグにあるなんて、重々承知だよ?」

水の魔人「……貴様っ!?」

男魔法使い「伊達に歳とってるワケじゃないよ、私は? それをカバーする方法なんて、いくらでもあるよ?」

702: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/11(金) 22:41:05.14 ID:ob7ZmQKkO
水の魔人「くそっ……! すでに結界魔法を張っていたかっ……!」

男魔法使い「うちの息子は私に似て優秀だからね。 攻撃は彼、一人にやってもらう事にしてるの」

水の魔人「……くっ!」

男魔法使い「そして、その弱点を補うのが……親である、私の仕事……ウチの方針です」

水の魔人「ならばっ……! 直接、奴を叩いてやるっ! うおおぉぉっ!」

男魔法使い「おっと! そうはさせないよっ!」

水の魔人「……ぬ?」

男魔法使い「私だって、一応攻撃魔法は使えるんだよ? はぁっ! たぁっ!」


ヒュンヒュン……ヒュンヒュン……


水の魔人「くっ……! これは……! 魔力の矢が大量に……」

男魔法使い「どう? 威力は弱いけど、出が早い優れた魔法でしょ? 男賢者にはいつもバカにされちゃうんだけどね?」

水の魔人「くっ……! くそぉ! 鬱陶しいぞ、人間風情がぁっ!」

703: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 22:49:39.54 ID:ob7ZmQKkO
男魔法使い「鬱陶しくて結構です。これが私の仕事ですから」

水の魔人「くっ……! くそっ……!」ギロリ

男魔法使い「おっと……私を睨んでくれるのはありがたい事だねぇ?」

水の魔人「……何?」

男魔法使い「だって、さ……? ほら?」


男賢者「……よしっ! 魔力が溜まったぞっ!」

水の魔人「し、しまったっ……!」

男賢者「うおおぉぉっ! くらええぇぇっ!」


ドヒューンッ


水の魔人「う、うわああぁぁっ!」


男賢者「父さんっ! やりましたよっ! とどめに合体魔法を撃ちましょうっ!」

男魔法使い「…… 力は私に合わせてね? 私、君の力ついていけないからさ?」

704: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:00:03.64 ID:ob7ZmQKkO
雷の魔人「おらっ! うらぁっ! くらえっ!」

男盗賊「おっと……よっ……ほっ……」

雷の魔人「くそっ! すばしっこい奴め……」

男盗賊「こっちはよぉ? ガキの頃から、●●本盗んで毎日道具屋のおっさんと鬼ごっこしてたんだよ!?」

雷の魔人「うおおっ! くらえっ! おらっ!」

男盗賊「そんな、遅ぇ攻撃なんて擦りもしねぇよっ! ほらほら? 魔法でも撃ってこいよ、バーカっ!」

雷の魔人「ならば望み通り、魔法で貴様を始末してやるとしよう……うおおぉぉっ! くらえっ!」


ズドーンッ


男盗賊「う、うおっ……! あ、危ねぇっ……」アセアセ

雷の魔人「貴様、魔法攻撃には慣れていなみたいだな……次の攻撃……避けれるかな……?」

男盗賊「確かに……道具屋のおっさんは魔法攻撃使わなかったからなぁ……でも、姉さんっ! 雷は出来ましたよっ!」

雷の魔人「……ぬ?」

705: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:08:26.42 ID:ob7ZmQKkO
女勇者「悪ガキ小僧だった癖に……あんた、やるようになったじゃない……?」

男盗賊「へへ……ありがとうございます……じゃあ、後は任せますんで……」

女勇者「ええ……私も、あの子や父さんに負けてられないから……」


雷の魔人「次は女か……?」

女勇者「……ありがとね?」

雷の魔人「……はぁ?」

女勇者「私……まだ、雷の魔法が使えないから……貴方に作ってもらわないと、出来そうにないから……」


バチバチ……バチバチ……


女勇者「この雷を切り裂くのが……勇者一族の必殺技よ?」

雷の魔人「!」

706: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:14:15.17 ID:ob7ZmQKkO
女勇者「はああぁぁぁっ!」

雷の魔人「し、しまったっ……! こいつら……最初から、私の魔法を利用する気で……」

女勇者「父さん……いつかは、私一人できるようになってみせるからっ!」

雷の魔人「……ぐっ!」

女勇者「今はまだ未完成だけど……お願いっ! 私に力を貸してっ!」

雷の魔人「!」

女勇者「はああぁぁっ! ギガスラッシュ!」


ズバーンッ


雷の魔人「……ぐ、ぐぐっ」


女勇者「よしっ! とどめよっ! 悪ガキ小僧、あんたも手伝いなさいっ!」

男盗賊「もう、悪ガキって歳でもねぇんですけどね……俺、もう足洗いましたしさぁ……?」

707: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:20:28.55 ID:ob7ZmQKkO
男武道家「ほっ! たっ! とっ!」

風の魔人「……ぬんっ! 甘いわっ!」

男武道家「……くっ!」

風の魔人「うおおっ! だぁっ! たぁっ!」

男武道家「う、うおっと……君、凄いねぇ……? 強いねぇ……?」

風の魔人「ふん……人間風情に褒められても、嬉しくないわ……」

男武道家「……ねぇねぇ? ちょっと、話があるんだけどさ? 聞いてくれない?」ヒソヒソ

風の魔人「戦いの最中に小声でどうした? まさか、我ら魔王軍に寝返りたいのか、貴様?」

男武道家「……あのねあのね? ちょっとさぁ? 『イナカモン』って言って見てくれないかな? お願いっ!」ヒソヒソ

風の魔人「……イナカモン? なんだ、それは?」


男戦士「……あぁ?」ギロリ


風の魔人「……ぬ?」

男武道家「よしっ!」

708: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:29:02.66 ID:ob7ZmQKkO
男戦士「おい……おめぇ……今、俺の事イナカモンってバカにしただろ?」ワナワナ

風の魔人「えっ……えっ……?」

男戦士「言ったよな? 確かに聞こえたぞ、おいっ! おめぇ、俺の事イナカモンってバカにしただろ?」

風の魔人「ま、待て……! ど、どういう事だ……」

男戦士「俺の事田舎者ってバカにするヤツはよぉ~、例え魔物でも魔王でも許さんよぉ~!」シクシク

風の魔人「待てっ……! 私には何のことやら……」

男戦士「栃木はよぉ~! 田舎なんかじゃねぇよぉ~! うおおおぉぉぉっ!」シクシク

風の魔人「待てっ! 落ち着けっ! 話をしようっ! 話せばわかるっ!」

709: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:38:18.35 ID:ob7ZmQKkO
男戦士「うおぉぉ! うるぁっ! おらぁっ!」ガシガシ

風の魔人「ぐっ……こいつ、早っ……! ぐっ……!」

男戦士「なんで皆、俺の事田舎者ってバカにするんだよぉ~、俺は田舎者なんかじゃねぇよぉ~!」シクシク

風の魔人「ぐっ……! ガッ……! くそっ……!」

男戦士「だいたいよぉ~? この魔王城だって、結構な田舎じゃねぇかよぉ~? なんで、そんな奴が俺の事田舎者ってバカにするんだよぉ~?」シクシク

風の魔人「ぐっ……ぐっ……! こいつ、強いっ……!」

男戦士「てめぇの事、棚にあげて俺の事バカにしてんじゃねぇぞっ! うおおおぉぉっ!」

風の魔人「!」


ズバーンッ


男武道家「いや~、彼と組むと楽出来るからいいねぇっ! あのイナカモン、使えるなぁ~!」ニヤニヤ

男戦士「栃木の事バカにしてんじゃねぇぞゴルァッ! とどめだ、くらえっ!」

710: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:46:08.44 ID:ob7ZmQKkO
女僧侶「皆、凄い……私も何かサポートしないと……」

女商人「女僧侶さんっ! だったら、この魔法薬を使ってみて下さいっ!」

女僧侶「……これは?」

女商人「いい商品が手に入ったんですよ! 一時的にですが……魔力を増強させる事が出来るそうですっ!」

女僧侶「!」

女商人「私は皆さんに助けられたから……こんなに、いい商品を仕入れる事が出来ましたっ! だから、今度は私が皆さんを助ける番ですっ!」

女僧侶「女商人さん……」

女商人「女僧侶さんっ! これを使って下さいっ!」

女僧侶「わかりましたっ……! ありがたく使わせて頂きますっ……!」

711: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:49:41.51 ID:ob7ZmQKkO
女僧侶「……こ、これは」

女商人「あ、あれ……? ひょっとして……また、ダメな商品だったのでしょうか……?」

女僧侶「い、いえ……違います……その逆です……」

女商人「……逆?」

女僧侶「身体中から……魔力が溢れてくる……これなら……これならっ!」

女商人「!」

女僧侶「よしっ! 私だって……はああぁぁっ!」

712: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:53:07.37 ID:ob7ZmQKkO
女僧侶「たああぁっ!」


水の魔人「……ぐっ! 何っ!?」

雷の魔人「くっ……動けんっ……!」

風の魔人「あの女っ……! 我々三人の動きを完全に封じているぞっ……!」


女僧侶「皆さんっ! 奴らの動きは完全に封じましたっ!」

女商人「今ですっ! とどめをお願いしますっ!」


水の魔人「!」

雷の魔人「!」

風の魔人「!」

713: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 00:03:53.48 ID:GHa75fupO
男賢者「うおおおぉぉっ! 父さん、行きますよっ!」

男魔法使い「あぁ! 私達の力を見せてやろうっ! いくよっ!」


水の魔人「!」


女勇者「悪ガキ小僧っ! あんたも手伝いなさいっ! いくわよっ!」

男盗賊「 俺だって胸張れる人生歩みたいから……やってやりますよっ! いきますっ!」


雷の魔人「!」


男戦士「だから、俺は田舎者じゃねぇって言ってんだろがぁ~! うおおおぉぉっ!」

男武道家「美味しい所は僕も参加しよう……美味しい所は……たああぁぁっ!」


風の魔人「!」


女商人「やったっ! 皆さんの攻撃で……やりましたよっ! 女僧侶さんっ!」

女僧侶「皆さん……本当に……本当に……ありがとうございますっ……!」

718: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 21:09:10.01 ID:GHa75fupO
ーーーーー


女僧侶「皆さんのおかげで、魔人三獣士を倒す事が出来ましたっ! 本当にありがとうございますっ!」

男戦士「なぁ~に、お前らが先陣切って乗り込んでくれたおかげで、俺達もここまで来れたんだ。 気にすんなや」

女勇者「……ところで、女僧侶ちゃん?」

女僧侶「?」

男戦士「おめぇら、人数が足りないんじゃねぇか?」

女勇者「そうよ……あの子……勇者はどうしたの? それに、天童さんも」

女僧侶「あっ、そうだっ! 実は勇者さんと天童さん……落とし穴に落ちて……はぐれてしまったんですっ!」

男戦士「なぁ~にをやってるんだ……あいつらは……」

女勇者「落とし穴って……昔からあの子、抜けてる所あるのよね……なんで、こんな時にそんなヘマしちゃうのかしら……」

719: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 21:18:50.19 ID:GHa75fupO
男戦士「まぁ、あいつらはもう放っておくか……下手に探して……こっちまで、迷子になるってのはゴメンだしね……」

女勇者「そうですね。先程のような強さを持った魔物は、おそらくもういないでしょうし……」

女僧侶「……えっ?」

男戦士「まっ……一応、俺達が進んだ場所がわかるように、道標でも壁に掘っておいてやるか……」ガリガリ

女勇者「うちの弟が本当に……御迷惑をかけます……」

女僧侶「ちょっと……ちょっと、男戦士さん……? 女勇者さん?」

男戦士「え~っと……早く合流しろバカ……皆待ってるぞ……男戦士っと……」ガリガリ

女勇者「お姉ちゃんに……恥をかかせないで……(笑)……っと……」ガリガリ

女僧侶「勇者さんの事、探しに行かないんですかっ!?」

720: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 21:33:35.73 ID:GHa75fupO
男戦士「心配するなって、あいつはきっと大丈夫だよ。あいつは大丈夫」

女勇者「私の誇りの弟だもの。こんな所で死ぬような子じゃないわ、あの子は」

女僧侶「……えっ?」

男戦士「あいつは根性あるからよぉ? きっと、今頃戻ってくる為に走り回ってんだろ」

女勇者「女僧侶ちゃんも、そう思うんじゃないの?」

女僧侶「……はい。勇者さんは、きっと大丈夫だと思います」

男戦士「それよりも……今から魔王と戦うんだ、俺達は……さっきの騒動を知った雑魚達に、守りを固められる方が厄介だ……」

女勇者「このチャンス……絶対に逃してはいけない……だから、私達は魔王の元に行きましょう?」

女僧侶「……」

男戦士「……大丈夫だよ、必ずアイツは来るって。もう一年生じゃねぇんだ」

女勇者「あの子ならきっとやってくれるわよ……信じましょう? 女僧侶ちゃん?」

女僧侶「……わかりました。 勇者さん、必ず戻って来て下さいっ!」


男戦士「よしっ! 皆、魔王がいるのはおそらく、この先だっ! 雑魚に守りを固められる前に、こっちから乗り込むぞっ!」

721: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 21:38:21.70 ID:GHa75fupO
ーーーーー


魔王「……魔人四天王がやられたか」

魔王「兵は怖気づき……士気も下がっておる……困ったものだ……」

魔王「……」

魔王「やはり……私自らが動かねばならぬようだな……」

魔王「……」


ギイィィィッ


魔王「……来たか。人間よ」

722: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 21:45:20.47 ID:GHa75fupO
男戦士「……お前が大将か?」

女勇者「父さんっ……!」

男賢者「とても強い……邪悪な力を感じますっ……! 皆さん、気をつけて下さいっ……!」

男魔法使い「……あぁ、油断大敵だね、こりゃ」

男盗賊「おめぇのせいでよぉ! 家族を失った人間が沢山生まれたんだっ!」

女商人「苦しんでいる人……悲しんでいる人……そんな人をもう、二度と出さない為にもっ……!」

男武道家「これだけ人数がいれば、誰かがやってくれるでしょ。 うん、誰かが。 僕じゃない誰かが」


魔王「さぁ! 人間よっ! かかってこいっ! この魔王……三度土はちけられんぞっ!」


女僧侶「勇者さんっ……! 待ってますっ……! 私、待ってますからっ……!」

723: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 21:49:19.82 ID:GHa75fupO
ーーーーー


勇者「……ん? なんだこりゃ?」

天童「ん、勇者? どうしたんだ?」

勇者「お、おいっ! 天童見ろよっ!? そこに、魔人の死体三つが転がってるぜ!?」

天童「お、おぉっ! これが噂の魔人三獣士って奴かっ!」

勇者「女僧侶ちゃんが一人で倒したのかな、コレ……?」

天童「う~ん……どうなんだろね……? ん……?」

勇者「……ん、天童? どうしたんだ?」

天童「おい、勇者……この壁に掘られてる文字、読んでみろよ……?」

724: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 22:00:40.53 ID:GHa75fupO
勇者「『このラクガキを見て後ろを振り返った時、お前は死ぬ』とか書いてるんじゃねぇだろなぁ? 怖ぇよ、おい」

天童「バカっ! おめぇは何のアニメの話をしてるんだっ! この物語には不細工な黒人と生意気な犬は登場してねぇだろがっ!」

勇者「え~っと……ん、何だコレ? 早く合流しろバカ……皆待ってるぞ……?」

天童「……」

勇者「……男戦士!?」

天童「男戦士さんが書いたんだっ! 男戦士さん来てくれたんだよっ! それに、こっちにもあるぞっ!?」

勇者「お姉ちゃんに恥をかかせないで(笑)……これは、姉ちゃんだっ! 姉ちゃんも来てくれたのかっ!」

天童「まだあるぞっ! 勇者っ!」

勇者「男賢者……男魔法使い……男盗賊……女商人……う~ん、最後のは字が汚くて、何て書いてあるかわかんねぇや……」

天童「皆、来てくれたんだよっ! 皆がよぉっ!」

725: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 22:05:24.64 ID:GHa75fupO
勇者「……という事は!」

天童「あぁっ!」

勇者「この書いてある、道標の先に……皆や女僧侶ちゃんがいるって事かっ!」

天童「そうだっ! 皆、助けに来てくれたんだよっ!」

勇者「皆……皆っ……!」

天童「よしっ! 勇者っ! 早く皆と合流するぞっ! 道標の方に進むんだっ!」

勇者「あぁっ!」

天童「これだけ人数がいるんだっ! もう、魔王なんて怖くねぇだろ!? なぁ!?」

勇者「あぁっ! そうだねっ! 行こうっ! 天童っ!」

726: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 22:11:09.24 ID:GHa75fupO
ーーーーー


勇者「この大きな扉……」

天童「あぁ、この扉だけ雰囲気が違うな……おそらく、魔王がいるのはこの先だっ……!」

勇者「魔王……」

天童「勇者ァ! ビビってんじゃねぇぞっ! 中ではもう、皆がドンパチやってるんだからよぉっ!」

勇者「ビビってなんかないよ……これで……これで、終わりなんだからっ……!」

天童「よしっ! じゃあ、途中参加だけど、いい所見せる為に俺達も暴れまくろうぜっ! 行くぞ、勇者ァ!」

勇者「あぁっ! 行くぞっ! 天童っ!」


ギイイィィッ

727: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 22:15:07.68 ID:GHa75fupO
勇者「皆っ!」


男戦士「うっ……くっ……」

女勇者「ううっ……」

男賢者「く、くっ……」

男魔法使い「くそっ……」

男盗賊「や、やべぇ……」

女商人「……こいつ」

男武道家「……強い」

女僧侶「勇者……さんっ……!」


勇者「……えっ?」

魔王「来たか……勇者の息子よ……お前もその仲間と同じようにしてやろう……」

728: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 22:16:59.05 ID:GHa75fupO





PM4:00

タイムリミットまで後、1時間






732: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 22:06:32.71 ID:6Kgn58vJO
魔王「さぁ……剣を抜け、勇者よ……貴様とは一対一の戦いをしてみるのも悪くないだろう……」

勇者「……えっ?」

魔王「私は一度、貴様の父親に土をつけられた……だが、その父親も私自らの手によって、葬り去ったがね……」

勇者「……ぐっ!」

魔王「これで……勇者と呼ばれる者とは一勝一敗というわけだ……」

勇者「……」

魔王「お前の仲間はもう虫の息だ……父親の復讐の為……一人でかかってくるがよい……勇者よ……」

勇者「……」

魔王「そして、私は貴様を葬り去り、魔王としての威厳を取り戻してくれるわっ!」

733: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 22:14:53.89 ID:6Kgn58vJO
天童「おいっ! 勇者ァ! バカ正直に挑発に乗るんじゃねぇぞっ!」

魔王「……ぬ?」

天童「こんだけ人数がいるんだっ! わざわざタイマン勝負なんてする必要はねぇよ! 皆で袋にしちまえばいいんだよっ!」

魔王「……その、死にかけの連中と共にか?」

天童「これが人間のやり方なんだよっ! 魔王さんよぉっ! 一人じゃできない事は……皆で力を合わせてやればいいんだよぉっ!」

魔王「……臆病者め。 父親は勇者に一人でこの魔王に向かって来たというのにな」

天童「なんとでも言えっ! こんにゃろっ! 皆っ! コイツを袋にしちまおうぜっ!」

魔王「では……その死にかけの連中から、始末してみようとするかな……?」


勇者「待てっ!」

734: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 22:21:42.55 ID:6Kgn58vJO
勇者「一対一でやってやるよ……だから……皆には手を出すな……」

魔王「……ほう」


天童「おいっ! 勇者ァ! 相手は魔王なんだぞっ! 皆で協力してよぉ……!」

勇者「……なぁ、天童?」

天童「……あぁ?」

勇者「皆はもう……無理だよ……」

天童「……」

勇者「ほら……? 皆、もうボロボロじゃないか? 俺達が来る前に……皆はもう、頑張ったんだよ」

天童「そうだけどよぉ……!」

勇者「ここが……俺の人生の集大成なんじゃないかな……?」

天童「……あぁ?」

735: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/13(日) 22:31:50.16 ID:6Kgn58vJO
勇者「俺が何もしてなかった時……皆は、ずっと頑張ってたんだ……」

天童「……」

勇者「それは、今日だけの事じゃない……今までも……ずっとずっと、そうだったんだ……」

天童「……」

勇者「だけど、俺はその遅れて来た分を取り戻す為に……頑張ってきた……」

天童「……」

勇者「だから今日も……同じように、遅れてきた分を取り戻さなきゃいけない……皆に、もう甘えてられないよ」

天童「……勇者」

勇者「大丈夫だってっ! おめぇがさぁ? そんなしみったれた顔するなって! 調子狂うじゃねぇかっ!」

天童「!」

勇者「今まで……俺はやってこれたんだ……だから、今回だって……! 相手が魔王だろうと、やってみせるよ俺はっ!」

天童「勇者っ……!」

勇者「天童は皆の手当をしてくれ……」

天童「チッ……わかったよ……」


勇者「俺は……奴を倒すっ……!」

天童「おいっ! 勇者ァ! 絶対っ……! 勝てよっ!」

736: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 22:40:30.89 ID:6Kgn58vJO
勇者「うおおぉぉっ! 行くぞっ! 魔王っ!」

魔王「来いっ! 勇者よっ!」

勇者「だああぁぁっ!」

魔王「うおおおぉぉっ!」


ガシッ


勇者「うっ……くっ、くっ……!」

魔王「ほ~う……? お前は先程までの雑魚とは違うようだな……?」

勇者「そんな事ねぇよ……俺と皆は……何も変わらねぇよっ……!」

魔王「だがっ……! この魔王に挑むにはまだ、早かったようだなっ!? うおおおぉぉっ!」

勇者「……ぐっ!」

魔王「くらえっ! 勇者よっ!」

勇者「!」


ドゴォォッ

737: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 22:44:26.75 ID:6Kgn58vJO
勇者「……ぐ、ぐぐっ!」

天童「勇者っ! 油断してんじゃねぇっ!」

勇者「……えっ?」

天童「上だっ! 上から来てんぞっ!」

勇者「し、しまった……!」


魔王「うおおおぉぉっ! くらええぇぇっ!」ドゴォォッ

勇者「う、うおっ……危ねっ……」ヨロヨロ

魔王「甘いっ……! 逃すかっ!」

勇者「何っ!?」

魔王「くらええぇぇっ!」

勇者「!」


ドゴオオォォ

738: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 22:51:15.42 ID:6Kgn58vJO
勇者「ぐっ……! くそっ!」

魔王「はああぁぁっ!」

勇者「こいつ……一撃一撃が重いっ……! それに……早いっ!」

魔王「くらえっ!」

勇者「!」

魔王「吹き飛べっ! 勇者よっ! うおおおぉぉっ!」


ドゴオオォォ


勇者「ぐ、ぐわああぁぁっっ!」

魔王「まだだっ! まだ、眠るには早いぞっ! 勇者っ!」ダッ


天童「やばいっ! このままじゃ、壁に叩きつけられちまうっ! それに、魔王も追って来てるぞっ! 勇者ァ!」

739: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:00:08.95 ID:6Kgn58vJO
勇者「だけどっ……! お前に吹き飛ばされたおかげで魔法を使うチャンスが出来たぞっ! 魔王っ!」

魔王「ほ~う……吹き飛ばされながらも、呪文詠唱をするというわけか……」

勇者「……うおおおぉぉっ!」

魔王「だが……出来るかな? ほら、もう壁に叩きつけられるぞ? その前に呪文詠唱が出来るかな?」

勇者「やってやるよっ……! うおおおぉぉっ! ギガデイン!」


ドゴーンッ


勇者「……がっ!」ビターンッ

740: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:03:44.91 ID:6Kgn58vJO
天童「おい、勇者っ! 大丈夫かっ!?」

勇者「へへ……一発、いいの入れれたんだから……これくらいの痛み……なんともねぇよ……」ヨロヨロ

天童「無茶してんじゃねぇよっ……!」

勇者「大丈夫だってこれくらい……ん……?」

天童「あれ、勇者? どうした……?」


魔王「……これが、お前の攻撃か?」

勇者「嘘……だろ……?」

天童「アイツ……効いてねぇっ……!」

741: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:06:47.04 ID:6Kgn58vJO
魔王「お前の父は……もう少し、まともな術だった気がするが……」

勇者「くっ……! ま、まだだっ……!」

魔王「……ん?」

勇者「あの雷を切り裂けば……!」ダッ

魔王「……」

勇者「うおおおぉぉっ! ギガスラッシュ!」


ズバーンッ


勇者「ど、どうだっ……!? 今度こそは……!」

742: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:11:41.79 ID:6Kgn58vJO
魔王「……お前は、何がしたいのだ?」

勇者「ま、まただっ……! こいつ……効いてねぇっ……!」

魔王「まさか……それで本気というワケじゃあるまいだろうな……?」

勇者「く、くそっ……! ど、どうなってるんだ!」

魔王「本気でかかってこいと言っておるのだっ! あまり、私を怒らせるなよっ! 勇者ァっ!」

勇者「く、くそっ……! うおおおぉぉっ!」

743: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:15:16.05 ID:6Kgn58vJO
勇者「うおっ!」

魔王「……」

勇者「だぁっ!」

魔王「……」

勇者「うっ……! く、くそっ……!」

魔王「……どうした?」

勇者「くっ……! 諦めて……たまるかよっ……! うおおぉぉっ!」

魔王「こんな物か……やはり……私が負けたのは……」

勇者「くそっ! くそっ! 負けてたまるかよっ! うおおおぉぉっ!」

魔王「……もういいっ!」バキッ

勇者「……ぐ、ぐああぁっ!」

744: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:20:26.08 ID:6Kgn58vJO
勇者「く、くそっ……!」

魔王「もういい……」

勇者「……うっ!」

魔王「所詮、人間風情と言った所か……これで、とどめにしてやる……」

勇者「!」

魔王「……死ねっ!」


天童「うおおおぉぉっ!」

勇者「天童っ!?」

天童「背後がお留守ですよ、魔王さ~んっ! くらいやがれっ!」バキッ

745: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:27:38.71 ID:6Kgn58vJO
天童「俺の事を忘れちゃいけねぇよっ! 俺の事をよぉっ! おらぁっ!」

勇者「て、天童……」

天童「タイマン勝負って決めたのは、おめぇら二人だろ? 俺はそんな事、聞いちゃいねぇなぁ……ほれほれっ!」バキッ

勇者「お、おいっ! 天童……!」

天童「うるせぇっ! 勇者ァ! バカな意地張ってんじゃねぇよっ! おめぇ、情けなくて見てられねぇよっ! おらぁっ!」

勇者「い、いや……天童……そうじゃなくて……」

天童「おらおらっ! 天童100連打だっ! はい、ご~ぉっ! ろ~くっ! ん……?」


魔王「……」


天童「あ、あれ……? ひょっとして……全然効いてないのかしら……?」

勇者「おめぇが助けにきてくれたのは、凄ぇありがたいんだけどさぁ……? おめぇ、ちっとヤバくねぇか?」

746: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:33:39.80 ID:6Kgn58vJO
魔王「……そんなものか?」

天童「えっ……いやぁ……後、90発ぐらいあるんですけどねぇ……」アセアセ

魔王「私は、それほど暇ではない……ふんっ!」バキッ

天童「!」


勇者「おいっ! 天童っ! 大丈夫かっ!」

天童「ううっ……く、くそっ……!」

勇者「おいっ! 一対一の勝負って言っただろがっ! こいつに手を出してるんじゃねぇよっ!」

魔王「……割り込んできたのはコイツの方じゃないか」

勇者「うるせぇっ! くらえっ!」

747: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:40:19.35 ID:6Kgn58vJO
勇者「うるああぁぁっ!」

魔王「……ふんっ!」

勇者「くそっ……! 負けて……負けてたまるかよっ……!」

魔王「……うおおおぉぉっ!」ドゴオオォォ

勇者「ぐ、ぐはあっ……! くそっ……! うおおぉぉっ!」

魔王「……しつこいな」

勇者「くそっ……! くそっ……! なんで……なんで効かねぇんだっ……!」

魔王「うおおおぉぉっ!」

勇者「!」


ドゴオオォォ

748: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 23:41:36.32 ID:6Kgn58vJO





PM4:30

タイムリミットまで後、30分






753: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 22:28:36.66 ID:ToiY0OZuO
勇者「ぐっ……! うわああぁぁっ!」

男戦士「……勇者ァっ! 危ねぇっ! 壁に叩きつけられちまうぞっ!」ガシッ

勇者「……えっ!?」

男戦士「はぁっ……はぁっ……くそっ、大丈夫か? 勇者?」

勇者「男戦士さんっ! 男戦士さんこそ、大丈夫なんですか!?」

男戦士「あぁ……おめぇのおかげで、休憩出来たからよぉ……ここからは……俺達も手伝うぜ……」

勇者「……えっ?」


男武道家「よしっ! 皆っ! 僕達も行くぞっ!」

男盗賊「わかってますよっ……! 皆の力を合わせて……あいつを倒すんだっ……!」

女勇者「勇者……お姉ちゃんも……頑張るからね……? あんたも……まだ、倒れちゃダメよ……?」


魔王「……ふん」

754: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 22:34:10.30 ID:ToiY0OZuO
男賢者「僕達は……後方から……魔法で支援しますっ……! 父さんっ……! 行きますよっ……!」

男魔法使い「あぁっ! わかってるよっ……! 男賢者っ……!」


勇者「皆っ……! 皆、傷ついてるはずなのに……」


女商人「勇者さんと、天童さんは一度、引いて下さいっ!」

女僧侶「私達が、治療しますっ! さぁ、早くっ!」


勇者「女僧侶ちゃん……」

天童「女商人さん……」

755: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/14(月) 22:40:42.99 ID:ToiY0OZuO
男戦士「次は俺達だっ! くらえっ! 魔王っ!」

魔王「……ふん」

男武道家「これだけの人数で攻撃したら……いくら魔王といえども……だあぁっ!」

魔王「ゴミが集まった所で……世界を支配する私になどは効かぬわ……」

男盗賊「そんなもん、やってみなくちゃわかんねぇだろがっ! うおおぉぉっ!」

魔王「……ふん」

女勇者「はああぁぁっ! 喰らいなさいっ!」

魔王「甘いっ! 甘いわっ! うおおおぉぉぉっ!」


男戦士「!」

男武道家「!」

男盗賊「!」

女勇者「!」


魔王「纏めて死ねえぇっ! 虫ケラ共っ!」スギャーンッ

756: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 22:44:02.65 ID:ToiY0OZuO
男戦士「……う、うわあぁぁっ!」

男武道家「……ぐっ!」

男盗賊「……くそっ!」

女勇者「まだよ……皆……諦めちゃいけないわ……」


魔王「……ふん」


男賢者「うおおおぉぉっ! 今だっ! 父さん、行きますよ……!」

男魔法使い「あぁっ! 私達の合体魔法で……くらえっ……!」


ゴオオォォッ


魔王「……うおおぉぉっ!」

757: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 22:48:51.18 ID:ToiY0OZuO
男賢者「あ、あいつ……」

男魔法使い「我々の合体魔法を……受けとめているよ……」

魔王「……これが、合体魔法だと? 魔王も舐められたものだな」

男賢者「くっ……!」

男魔法使い「こ、こいつ……!」

魔王「うおおおぉぉっ! こんなもの……弾き返してくれるわっ……!」

男賢者「……何っ!」

男魔法使い「やばいっ……! 早く、結界魔法を……」

魔王「させるかっ! 自らの魔法で死ねぇっ! だああぁぁっ!」

男賢者「!」

男魔法使い「!」


ゴオオォォッ


勇者「……く、くそっ!」

758: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 22:53:13.37 ID:ToiY0OZuO
男賢者「……ぐっ」

男魔法使い「うっ……ううっ……」

魔王「ふん……愚かな……」


勇者「くそっ! 女僧侶ちゃんっ! 女商人さんっ! 俺達の回復はもういいからっ!」

女僧侶「……えっ?」

天童「皆の回復をしてやってくれっ! 俺達はもう大丈夫だっ!」

女商人「で、でも……お二人はまだ、ダメージが……」


勇者「皆のダメージの方が深刻だよっ! 今は……動ける人間が動かなきゃ……!」

天童「こん中じゃ、俺達がまだ一番軽傷ばいっ! 勇者ァ! 行くぞっ!」

759: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:02:46.49 ID:ToiY0OZuO
勇者「魔王っ! 選手交代だっ! 次は俺達の番だっ!」

魔王「……勇者よ?」

勇者「何だよ……?」

魔王「お前にプライドはないのか……?」

勇者「……あぁ?」

魔王「私との一対一の勝負は何処に行ったんだ……?」

勇者「……そんなもん、知らねぇよ。 それに、俺にプライドなんて最初からねぇよ」

魔王「……何?」

勇者「皆で協力する事の……何が悪いんだよ? 一人一人の力は弱くても……こうやって協力してればよぉ……?」

魔王「……」

勇者「それは大きな力に変わるだろっ! お前を倒すだけのなぁ! うおおおぉぉっ!」

魔王「……虫ケラが力を合わせた所で、この魔王には勝てんわっ! うおおおぉぉっ!」

760: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:09:51.95 ID:ToiY0OZuO
勇者「うらああぁぁっ!」

魔王「……ふんっ!」

勇者「くそっ……! くそっ……! うおおぉぉっ!」

魔王「人間ごときに力では……この私には勝てんわっ!」

勇者「父さんに一度負けた癖によぉ……? 偉そうに言ってんじゃねぇぞっ! うおおぉぉっ!」

魔王「……甘いっ! うおおぉぉっ!」ドゴオォォッ

勇者「……ぐわあぁぁ!」

魔王「……勇者よ? 勘違いしているようだから、一つ言っておこう」

勇者「……あぁ?」

魔王「今日の貴様達を見て……確信をした……私は貴様の父に負けたのではない……」

勇者「……何、言ってんだ?」

魔王「貴様の父がこの私に勝てたのは……『禁呪』を使ったからだ……私は人間に負けたのではない……『禁呪』に負けたのだ……」

勇者「……禁呪?」

761: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:22:30.10 ID:ToiY0OZuO
魔王「まぁ、お前の父は……使いこなす事が出来ず……私を完全に倒す事は出来なかったようだがね……」

勇者「……」

魔王「愚かな人間共には使いこなす事ができん……古の魔法だ……」

勇者「……だったらよぉ?」

魔王「……ん?」

勇者「俺がその魔法使いこなせれば……おめぇ、倒せる可能性があるって事だな?」

魔王「出来るのか……? お前に出来るのか……? 勇者よ……?」

勇者「やってやるよっ……! うおおおぉぉっ!」

763: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:30:38.94 ID:ToiY0OZuO
天童「勇者っ! 落ち着けっ! 挑発に乗るんじゃねぇっ!」

勇者「天童!? なんで、止めるんだよっ!」

天童「その魔法だけは使っちゃいけねぇんだっ! おめぇには無理だよっ!」

勇者「無理無理って、勝手に決めてるんじゃねぇよっ! やってみなくちゃわかんねぇじゃねぇかっ!」

天童「いいから、落ち着けっ! まだ、15分あるっ!」

勇者「……ん?」

天童「おめぇ、さっき言ってたじゃねぇかよ……小さな力でも……皆で協力すれば大きな力になるって……」

勇者「……」

天童「おめぇ一人で、そんな大きな力を使う事はねぇよ! 皆で協力すればいいじゃねぇかっ!」

勇者「……でも」

天童「『でも』じゃねぇっ! とにかく地道にコツコツやるしかねぇんだっ! わかったなっ!?」

勇者「……なんで、そんなに止めるんだよぉ?」

天童「余計な事言ってるんじゃねぇっ! いいから、今は皆で力を合わせて戦うんだっ! 行くぞっ!」

勇者「……くそっ、わかったよ」

764: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:33:53.71 ID:ToiY0OZuO
天童「うおおおぉぉっ! 行くぞっ!」

魔王「……ふんっ!」

天童「くそっ! 何やってるんだ、勇者ァ! おめぇも手伝えっ!」


勇者「う、うん……わかった……うおおおぉぉっ!」

魔王「……ふんっ!」

勇者「く、くそっ……!」


魔王「うおおおぉぉっ! くらえっ!」


天童「!」

勇者「!」


ドゴオォォッ

765: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:37:24.01 ID:ToiY0OZuO
勇者「ぐっ……」

天童「く、くそっ……」


魔王「……ふん」


男戦士「はぁっ……はぁっ……おい、お前らは下がれ……」

男武道家「次は僕達が行くよ……下がって回復してもらいなよ……」


勇者「二人共……もうボロボロじゃないですか……!?」


男戦士「……おめぇらよりかはマシだよ。 行くぞ、男武道家よぉ!」

男武道家「あぁ……必ず……奴を倒してみせるっ……!」

766: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:42:26.49 ID:ToiY0OZuO
男戦士「うおおおぉぉっ! くらえっ!」

男武道家「だあぁっ!」

魔王「甘いわっ! うおおおぉぉっ!」

男戦士「ぐっ……!

男武道家「うっ……ううっ……」


男盗賊「二人は下がって下さいっ! 姉さんっ! 行きましょうっ!」

女勇者「行くわよっ! たああぁぁっ!」

魔王「……ふん」

767: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:45:31.94 ID:ToiY0OZuO
魔王「うおおおぉぉっ!」

男盗賊「!」

女勇者「!」


勇者「男盗賊っ……! 姉ちゃんっ……!」


男賢者「父さん……僕達も行きましょう……!」

男魔法使い「あぁ……! やってやるよっ! うおおおぉぉっ!」


魔王「何度やっても同じだぁっ! 弾き返してくれるっ!」


男賢者「!」

男魔法使い「!」


勇者「くそっ……! くそっ……! 皆……皆……!」

768: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:48:58.03 ID:ToiY0OZuO
男戦士「……くそっ」

男武道家「う、うぅ……」

男盗賊「ちくしょう……」

女勇者「くっ……勝てない……」

男賢者「……こいつ」

男魔法使い「……なんて奴だ」


魔王「……ふん、そろそろ纏めて始末してやるか」


勇者「うおおぉぉっ! させてたまるかああぁっ!」


女商人「……勇者さんっ!?」

女僧侶「ダメですっ……! 勇者さん、まだ回復が不十分ですっ!」

769: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:52:01.20 ID:ToiY0OZuO
勇者「うおおおぉぉっ!」

魔王「はぁっ!」

勇者「……ぐっ!」

魔王「何度やっても同じ事よっ!」

勇者「くそっ……! 負けて……負けてたまるかよっ……!」

魔王「うおおおぉぉっ!」

勇者「!」

魔王「はああぁぁぁっ!」ドゴオオォォッ

勇者「ぐっ……くそっ……こうなったら……」

770: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:55:28.12 ID:ToiY0OZuO
魔王「さぁ……とどめだ……」

勇者(まだ……まだ、勝てる可能性はある……)

魔王「……纏めて死ぬがいい」

勇者(今までだって……なんとかやってきたんだ……)

魔王「うおおおぉぉっ!」

勇者(だから……今回だって……きっとっ……!)


ゴオオォォォッ


勇者「うおおおぉぉっ!」

771: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 00:06:15.70 ID:pHhkpEZLO
男戦士「……ぐっ」

男武道家「……くそっ!」


勇者「えっと……ええっと……マダムヤン?……ダマテン……ああっ! 違う違うっ……」


男盗賊「……くそっ!」

女勇者「まだよ……まだ諦めないっ……!」


勇者「黙れって……? マダムヤン……? ああっ、違う違うっ! そうじゃないっ!」


男賢者「……父さんっ!」

男魔法使い「あぁっ……! わかってるよっ!」


勇者「……」

魔王「うおおおぉぉっ! 死ねええぇぇっ!」

勇者「……ちくしょうっ! なんで、何にも出てこねぇんだよぉっ!」


ゴオオォォォッ


勇者「いつもは出てくるのによぉっ! 何で、こんな大事な時に出てこねぇんだよぉっ!」

773: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 00:07:34.38 ID:pHhkpEZLO





PM4:55

タイムリミットまで後、5分






774: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/15(火) 00:08:29.94 ID:pHhkpEZLO
今日はここまで

777: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 21:35:06.40 ID:pHhkpEZLO
女勇者「くっ……! 結界魔法っ!」

男賢者「父さんっ! 皆を守りましょうっ!」

男魔法使い「あぁっ! わかってるよ! 男賢者っ!」


ゴオオォォッ


勇者「くそっ……! くそっ……! いつもは出来るじゃねぇかよっ……! なんで、今日に限って出来ねぇんだ……」

天童「お、おい……」

勇者「諦めちゃダメだっ……いつもは出来るんだから……今回だって……きっと……きっとっ……!」

天童「……勇者」

勇者「これが最後のチャンスだっ……! まだ、魔法はわからないけど……一か八かっ……!」

天童「おいっ! 勇者っ!」

778: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 21:40:56.84 ID:pHhkpEZLO
勇者「……もうちょっとだったのにね? ごめんね……天童……」

女僧侶「勇者さんっ!」

勇者「俺……皆から色々教えてもらった……助けてもらった……」ブルブル

男戦士「……勇者」

勇者「だから、今度は俺が皆を助ける番です……」

男盗賊「勇者ァっ! やめろっ! お前一人で無理する事はねぇよっ! 俺も手伝うから……」

勇者「来るなぁっ!」

男武道家「……勇者君」

勇者「奴に勝つには……これしか方法がないんだ……これしか……だから……俺、行くよ……」ブルブル

779: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 21:46:22.87 ID:pHhkpEZLO
勇者「……女僧侶ちゃん?」

女僧侶「……勇者さん」

勇者「あの時、言い逃した言葉……今、言うよ……」

女僧侶「……えっ?」

勇者「俺……女僧侶ちゃんの事……」ブルブル

女僧侶「……」

勇者「……」

女僧侶「……」

勇者「大好きだ」

女僧侶「勇者さん……」

勇者「……」

女僧侶「……」

勇者「男賢者さん……女僧侶ちゃんの事……よろしくお願いします」ペコッ


男賢者「勇者君……君は……命をかけて……その禁呪とやらを使うつもりなのか……」

勇者「……はい」

780: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 21:50:58.11 ID:pHhkpEZLO
女僧侶「勇者さん、ダメです! 行かないで下さいっ!」

勇者「……」

女僧侶「勇者さんっ! 私も……私も……」グスッ

勇者「……」

女僧侶「大好きなんですっ! だから……行かないで下さいっ……!」ボロボロ

勇者「……ありがとう」

女僧侶「勇者さんっ!」

勇者「父さんだって……命をかけて世界の平和を守ったんだ……だから、俺だって……」

女僧侶「ダメですっ! 勇者さんっ!」

勇者「……さよなら」

781: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 21:56:56.71 ID:pHhkpEZLO
天童「勇者、待てっ!」

勇者「何だよ、天童……」

天童「勇者……もうお前は、一人で大丈夫だ……」

勇者「何、言ってんだよ、なぁ?」

天童「お前が今、使おうとしている魔法は……人間なんかには、とても使えねぇシロモノなんだよ……」

勇者「そんなもん、やってみなくちゃ、わかんねぇじゃねぇか!」

天童「無理だよ……その魔法は……神様だって使いこなす事が出来なかったんだ……」

勇者「……えっ?」

天童「昔……お前達が産まれる……ずっと前の話だ……神様はあの魔王との戦いでよぉ……? 世界を守る為……その魔法を使っちまったんだ……」

勇者「……神様が?」

782: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:06:44.64 ID:pHhkpEZLO
天童「自分の命や……魂さえも、魔力に魔力に変えて……相手にぶつける呪文だ……」

勇者「……」

天童「神様も……そして、あの魔王も……お互い、その呪文を使っちまったんだ……」

勇者「……魔王も?」

天童「あいつは、復活する為の余力を残してたみたいだけどよぉ……? 神様は奴に勝つ為に……ほとんどその力の全てを使っちまったんだ……」

勇者「……」

天童「……だから、神様は力を失くしちまったんだ」

勇者「……」

天童「そして……魔王が復活して……おめぇの父ちゃんも……同じ事繰り返したんだ……」

勇者「……父さん」

天童「おめぇの父ちゃんは、ギリギリ生き残るだけの力を残してたみたいだけどよぉ……?」

勇者「……」

天童「やっぱり……神様と違って魔王に深手を負わせる事は出来なかったみてぇだな……数年で魔王は復活しちまったってわけだ……」

勇者「……」

783: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:13:26.48 ID:pHhkpEZLO
天童「そして……自分の寿命さえも殆ど使いきったおめぇの父ちゃんは……復活した魔王に……」

勇者「くっ……! 父さん……」

天童「こんな呪文、人間が使っちゃいけねぇんだよっ!」

勇者「で、でも……」

天童「おめぇ、ここまで生き残びてきたのによぉ? その呪文使って、おめぇも同じようになっちゃいけねぇよっ!」

勇者「でもっ…… ! 奴を倒すにはこうするしかっ……!」

天童「……だから、俺がいるんだろ? なぁ、勇者ァ?」

勇者「……えっ?」

天童「俺は……世界の平和を守る為の……最後の切り札ってワケだ……なぁ、勇者?」

勇者「お、おい……まさか……」

天童「来るなぁっ!」

784: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:17:13.09 ID:pHhkpEZLO
勇者「お前……もしかして……天童……?」

天童「……」

勇者「……」

天童「……勇者」

勇者「……」

天童「早く『さよなら』って言ってくれ」

勇者「!」

天童「……言ってくれっ!」

勇者「……」

天童「……」

勇者「嫌だ……嫌だよ……」

天童「……」

勇者「絶対に嫌だ……嫌だっ……!」ボロボロ

天童「……」

785: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:21:53.83 ID:pHhkpEZLO
勇者「天童といなきゃヤダっ……!」ボロボロ

天童「……」

勇者「なぁ? 俺とずっと一緒にいてくれよ? なぁ?」

天童「お前がグズグズ言ってどうすんだよ!」

勇者「!」ビクッ

天童「皆の命は……お前の一言にかかってるんだよっ!」

勇者「……でも」

天童「……勇者」

勇者「……俺、一人じゃなにも出来ないもんっ!」ボロボロ

天童「……」

勇者「……」

天童「お前……周り見てみろ……?」

勇者「……えっ?」

786: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:24:53.16 ID:pHhkpEZLO
男戦士「……くっ」

男武道家「……ううっ」

男盗賊「……ぐっ」

女勇者「うっ……くっ……」

男賢者「ぐぐっ……」

男魔法使い「……う、ううっ」

女商人「……勇者さん」

女僧侶「勇者さん……天童さん……」


勇者「……」

天童「皆、お前の仲間だ」

787: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:29:48.75 ID:pHhkpEZLO
天童「俺と出会った頃……一人ぼっちだったお前に……今はこんなに仲間がいる」

勇者「皆……」

天童「俺もお前と始めて会った時、なんで俺がこんなダメな奴の面倒見なきゃいけねぇんだと思ったよ」

勇者「……」

天童「絶対、コイツはダメだって! そう、思ったよ!」

勇者「う、うん……」

天童「……だけど、お前やるじゃねぇか? えぇ?」

勇者「天童……」

788: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:34:38.07 ID:pHhkpEZLO
天童「何度もダメだと思った時、あったけど……なんだかんだ言いながら、結構底力見せてきたじゃねぇか!」

勇者「う、うん……」ボロボロ

天童「皆、お前が命がけで色んな事を学んできたから……俺も皆もお前についてきたんだよっ!」

勇者「ううっ……うんっ……!」

天童「……だから」

勇者「ううっ……うっ……」ボロボロ

天童「最後まで生き残れ!」

勇者「ぐっ……! ううっ……」

天童「……なっ?」

勇者「……うんっ!」ボロボロ

789: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:39:29.52 ID:pHhkpEZLO
天童「そして、お前が学んだ一つ一つの事を……絶対、忘れるな!」

勇者「ううっ……」ボロボロ

天童「忘れるなよぉ!?」

勇者「ううっ……」

天童「心に刻み込めっ!」

勇者「うんっ……うんっ……!」ボロボロ

天童「……カァ~、格好よかぁ~、俺っ!」

勇者「ううっ……」

天童「さぁ、言えっ! 最後の命題だっ!」

勇者「……」コクリ

790: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:42:27.09 ID:pHhkpEZLO
勇者「天童……」ボロボロ

天童「……」

勇者「うっ……ううっ……」

天童「……」

勇者「ぐっ……ううっ……」

天童「……」

勇者「……」

天童「……」

勇者「……さよなら」ボロボロ

天童「……」

勇者「……」

天童「……よしっ!」

勇者「……」

天童「……言えたじゃねぇか?」ボロボロ

791: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:47:09.56 ID:pHhkpEZLO
天童「後一分だ……」

勇者「……天童?」

天童「じゃあな!」ニヤリ

勇者「!」


天童「それじゃあ、皆さんっ! 私が禁呪を使って魔王に突っ込みますっ!」

女僧侶「天童さんっ……!」

天童「おそらく、この城は崩れる事になると思いますっ! 皆さんはそいつを連れて、避難して下さいっ!」

女商人「天童さんっ……!」


天童「皆さんっ! お世話になりましたっ!」ペコッ

792: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 22:52:38.19 ID:pHhkpEZLO
男武道家「勇者君……ここは天童さんに任せて、避難するよ……!」

勇者「でも……でもっ……!」

男戦士「天童さんの気持ち無駄にする気かっ! 勇者ァ! 行くぞっ!」グイッ

勇者「天童っ!? 天童~!」


天童「皆さん! 勇者の事はよろしゅう頼んどきますっ!」

勇者「ううっ……天童っ! 天童~!」

天童「勇者ァっ!」

勇者「!」

天童「バイバ~イっ!」

勇者「!」

天童「俺……結構お前の事、好きだったぜ!」ボロボロ

勇者「天童っ! 天童~っ!」ボロボロ

793: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:02:37.45 ID:pHhkpEZLO
天童「……18秒前か」

魔王「……仲間に被害が及ばぬよう、逃がしたか」

天童「うおおおぉぉっ!」ピカーッ

魔王「あの魔法を使える奴がまだいたとはな……だが、そんな貧弱な魔力では私は倒せんぞっ!」

天童「やってみなくちゃ、わかんねぇだろっ! うおおおぉぉっ!」

魔王「……ふん、愚かな」

天童「神様ああぁっ! あんたの最後の力を貸してくれええぇぇっ!」ピカーッ

魔王「何っ……!? こいつの魔力が……どんどん増幅しているぞ……!?」

天童「来たぞ来たぞっ……! よしっ! これで、てめぇも道連れだっ!」ニヤリ

魔王「!」

天童「いくぞっ!『マダンテ』!」



ドゴオオォォォッ

794: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:07:15.24 ID:pHhkpEZLO
ーーーーー


勇者「!」

女僧侶「見て下さいっ! 魔王城が崩れていきますよっ!?」

女勇者「天童さん……やったのね……?」

男賢者「えぇ……魔王の邪悪な気が薄れていくのが感じられます……」

男魔法使い「これで……終わったんだね……」

女商人「……えぇ」

男戦士「終わりだな……」

男盗賊「俺達だけじゃ……無理な戦いだった……」

男武道家「あぁ……天童さんのおかげだ……」


勇者「……天童」

796: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:09:18.29 ID:pHhkpEZLO
勇者「天童……ありがとう……」


勇者「天童……さよなら……」


勇者「ううっ……うっ……」グスッ


勇者「俺……代わりに言うね……?」


勇者「……」


勇者「よし……カット……」グスッ

797: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:15:26.75 ID:pHhkpEZLO
そしてーー


女僧侶「魔王倒した宴だからって……こんなに豪勢な食事だなんて、やりすぎじゃないですかね?」

男賢者「男武道家さんの奢りらしいよ? まぁ、遠慮せずいただこうよ?」

男盗賊「俺も酒飲みてぇんだけどなぁ……? あっちの、大人の席行けねぇかな?」

女僧侶「あっ! 男盗賊さん! 私達は未成年なんだから、お酒はダメですよ?」

男賢者「……カクテルぐらいだったらいいんじゃないの? ねぇ、男盗賊君?」

男盗賊「いや、俺は日本酒が……って、勇者、どうした? おめぇ、全然食ってねぇじゃねぇかよ?」


勇者「……えっ?」

798: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:20:49.74 ID:pHhkpEZLO
男盗賊「おめぇが魔王倒したおかげでよぉ? こんな豪勢な飯奢ってもらえてるんだから……」

男賢者「そうだよ。 勇者君がそんなに遠慮してたら、僕達が意地汚い奴だと思われちゃうじゃないか」クスクス

女僧侶「……勇者さん、どうしたんですか?」


勇者「いや、この飯……天童にも食わせたかったなぁ……って、思ってさ……?」


男盗賊「……」

男賢者「……」

女僧侶「……」


勇者「あいつのおかげで……魔王倒せたってのに……あいつに食わせてやれないのがさ……」

799: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:23:07.10 ID:pHhkpEZLO
男盗賊「……なぁ、勇者?」

男賢者「勇者君……」

女僧侶「勇者さん……」


勇者「……」


男盗賊「……おめぇ、何言ってんだ?」

男賢者「天童……? 誰ですか、その人……?」

女僧侶「勇者さんの知り合いの方ですか?」


勇者「……えっ?」

800: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:30:52.05 ID:pHhkpEZLO
勇者「ちょ、ちょっと待てよ、皆……! 何、言ってるんだよ……!」アセアセ

男盗賊「何、言ってるかわかんねぇのはおめぇだよ?」

勇者「天童だよ! 天童っ! あの昔の二枚目みたいな顔して……古臭ぁ~いリアクションばっかりしてたおっさんだよっ!」

男賢者「……勇者君、誰の事言ってるですかね? 僕の父さんの事ですか?」

勇者「何、言ってるんだよ、皆っ! 魔王倒したのだって、天童じゃねぇかっ!?」

女僧侶「……何、言ってるんです勇者さん? 勇者さんが、お父さんから受け継いだ必殺技で倒したんじゃないですか?」

勇者「……えっ?」


男盗賊「そうだよ……おめぇが一人でやってくれたんじゃねぇか?」

男賢者「勇者君、一人で魔王に立ち向かってさ……? いやぁ……僕、尊敬しちゃうなぁ」

女僧侶「勇者さん、とても素敵でしたよ」クスクス

801: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:36:58.64 ID:pHhkpEZLO
勇者「ちょっと待てよっ! 皆、何言ってるんだよっ!?」

男賢者「何、言ってるかわからないのは勇者君ですよ? 天童……? 誰ですか、それ?」

勇者「ダメ人間の俺をここまで成長させてくれた、天童だよっ! 俺が旅始めたのだって、天童が誘って……」

女僧侶「何、言ってるんですか? 勇者さんが、修行中の身の私を、二人で魔物討伐に行かないかって、誘ってくれたんじゃないですか?」

勇者「えっ……? 違うよ……天童と女僧侶ちゃんが二人で俺を……」アセアセ

男盗賊「おめぇ、魔王と戦ってる時に頭でも打ったか……? それとも、また昔の妄想癖が炸裂してるのか?」

勇者「……えっ?」

802: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:44:02.57 ID:pHhkpEZLO
男賢者「妄想癖……? なんですか、それ……?」

男盗賊「いやぁ~、こいつ、昔から……自分で考えた物語を、人に聞かせるのが好きなんだけどよぉ~?」

女僧侶「二人でよくしましたよね? 勇者さん?」ニコッ

男盗賊「こいつ、たまぁ~に、その空想の世界と現実がごっちゃになっちまう事があるんだよ? なぁ?」

勇者「……えっ?」

男盗賊「ほら、よく言ってたじゃん? 金髪彼女と付き合ってるだとか……Eカップの女とHしただとか……」

男賢者「あらら……そんな妄想癖が……」

男盗賊「おめぇ、たまにごっちゃになって、わけわかんねぇ事になってたよな? 今回もそうなんじゃねぇの?」

勇者「……えっ?」

男盗賊「な~んかさぁ? その、天童……? って人、自分の中で作って、妄想してたんじゃねぇだろなぁ?」

勇者「天童は……俺の妄想……?」

803: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:49:06.82 ID:pHhkpEZLO
男盗賊「まぁ、でも……こいつの話って、凄ぇ面白えからよぉ? その、天童って人の話を、聞かせてくれよ?」

女僧侶「あっ、私も聞きたいです」

男賢者「もし、その話が素晴らしければ、僕が小説にしましょう。 聞かせて下さいよ、勇者君?」


勇者「……ふざけるな」ワナワナ


男盗賊「……ん?」

女僧侶「……ん?」

男賢者「……ん?」


勇者「天童は妄想なんかじゃねぇっ! お前ら、何言ってるかわかんねぇよっ! もういいっ!」ダッ


男盗賊「お、おいっ! 勇者っ!」

女僧侶「どうしたんですかっ!?」

男賢者「天童……そんな人、知りませんけどねぇ……」

804: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 23:55:56.53 ID:pHhkpEZLO
勇者「男戦士さんっ! 男武道家さんっ!」

男戦士「お~うっ! なんだ~、勇者~? おめぇにまだ酒は早いぞ~?」

男武道家「まぁ、一杯ぐらいいいじゃない? ほらほら、勇者君も飲みなよ~?」

勇者「二人は天童の事、覚えてますよねっ!? ねぇっ!?」

男戦士「……あん? 天童?」

男武道家「……誰だそれ?」

勇者「ほらっ! 東の道の支援物資貰いに行く時に……俺と天童で……」

男戦士「おいおい……何、言ってやがる……あれは、お前が一人でやらせてくれって、俺に頼み込んだんじゃねぇか……」

男武道家「いや~、勇者君が必死に頼み込んだから、僕も馬を譲ったんだよ? ねぇねぇ、感謝してくれてる~?」

勇者「俺が……一人で……?」

男戦士「ったく……何、言ってるんだよ、おめぇはよぉ?」

男武道家「それより……おじさん達のお酒に付き合いなさぁ~いっ!」

勇者「……くそっ!」ダッ

805: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 00:00:44.10 ID:Ys2FV0cTO
勇者「女商人さんっ!」

女商人「あっ、勇者さん、どうしたんですか?」

勇者「女商人さんは天童の事、覚えてますよねぇ!?」

女商人「えっ……? 天童……?」

勇者「ほらっ! 赤い木の実を……俺と天童と女商人さんの三人で取りにいったじゃないですか!?」

女商人「あれは、勇者さんと二人で行きましたよね? 女僧侶さんは二日酔いで、倒れてたようですし……」

勇者「二人じゃなくて、もう一人いたじゃないですかっ!」

女商人「二人で行ったじゃないですか……? 勇者さん、何言ってるんですか……?」

勇者「くそっ……! くそっ……! 皆、どうなってるんだっ……!」

女商人「?」

勇者「あっ! そうだっ!」ダッ

女商人「あれ? 勇者さん、どこに行くんですか?」

806: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/16(水) 00:04:37.29 ID:Ys2FV0cTO
部屋ーーー


勇者「確か……確か……女商人さんか貰った鞄の中に……」

勇者「命題の封筒と……あいつの名刺を入れてたはずだっ……!」

勇者「よ、よしっ……!」ガサゴソ

勇者「これじゃない……これでもないっ……!」

勇者「くそっ……! 何処だっ……! 確かにこの中に入れてたハズなのよぉっ!」ガサゴソ

勇者「くそっ……! ないっ……ないっ……!」


勇者「なんで、全部なくなってるんだよっ! なんでだよぉっ!」

807: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 00:07:36.37 ID:Ys2FV0cTO
勇者「……」

勇者「……俺の妄想?」

勇者「……」

勇者「俺は初めから、まともな人間で……何かやらなくちゃいけないって思った時に……」

勇者「……」

勇者「天童という存在を、作り出して……自分を鼓舞していたのか……?」

勇者「……」

勇者「違うっ……! 違うっ……! 天童は妄想なんかじゃないっ……!」フルフル


勇者「天童はいたんだよぉっ!」

808: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 00:08:31.71 ID:Ys2FV0cTO
最終話 「決戦!魔王城!」

ーー完

819: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 20:56:34.64 ID:Ys2FV0cTO
勇者「……zzZ」

勇者「……zzZ」

勇者「!」パチッ

勇者「……7時か」

勇者「……腹、減ったな。そろそろ起きようかな?」

勇者「……」

勇者「……いいや。後、一時間だけ」ゴロゴロ

820: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:04:22.44 ID:Ys2FV0cTO
女僧侶「コラっ! 勇者さんっ! もう7時ですよっ!」

勇者「う、う~ん……お願い……後、1時間だけ……」

女僧侶「今日は、お昼から男盗賊さんと男賢者さんと一緒に、支援物資運びに行くんでしょ!」

勇者「う~ん……昨日、その打ち合わせで遅かったんだよ……」

女僧侶「ほらっ! もう、朝御飯できてますよっ! 起きて下さいっ!」

勇者「後一時間……後一時間だけ……お願い……」

女僧侶「も~う……勇者さん、魔王倒してから、ちょっとぐうたらしすぎじゃないですかねぇ……?」

勇者「だって……世界に平和は戻ったんだよ……? まだ、眠いよ……」

女僧侶「まだ、多くの街には傷跡が残ってるんです! だから、私達がしっかりしないと!」

勇者「わかってるけど……お願いっ! 後、一時間だけ寝かせてっ!」

女僧侶「も~う……勇者さんの人生それでいいんですかっ!?」

勇者「!」

821: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:09:33.36 ID:Ys2FV0cTO
勇者「……」ムクッ

女僧侶「……ん?」

勇者「そうだよな……そうだよ……これじゃあ、ダメだよ……」

女僧侶「あれ? 勇者さん、起きます?」

勇者「まだ、俺にはやる事が山積みなんだ……こんな所で止まってたら、アイツに怒られちゃうよ……」

女僧侶「……あれ? 急にやる気になって、どうしたんですか? 勇者さん?」

勇者「いやぁ……懐かしい言葉を聞いたような気がしてね……?」

女僧侶「……はぁ?」

勇者「よしっ! じゃあ、顔洗ってくるよっ! 朝御飯食べたら、皆と合流しようか!」

女僧侶「?」

822: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:16:36.23 ID:Ys2FV0cTO
ーーーーー


男賢者「勇者君……早いよ……まだ、8時だよ……?」

男盗賊「出発は昼って言ったじゃねぇか? 朝だぞ? まだ、朝だっての」

勇者「何言ってんだ! あっちの大陸には朝飯もまともに食えねぇような人達が沢山いるんだぞ?」

男賢者「……まぁ」

男盗賊「……そうだけどさ」

勇者「だったらよぉ! 俺達が一刻も早く、この支援物資を届けてやろうぜ! 足踏みしてる時間なんてねぇんだよっ!」

男賢者「そうだね。 勇者君の言う通りだね」

男盗賊「まぁ……俺も、子供達にまともな飯食わせてやりてぇしな……」

勇者「そうだっ! その通りだっ! おめぇら、わかってるじゃねぇかっ!」


「わかってねぇなぁっ! おめぇはよぉっ!」


勇者「……ん? 何だあれ?」

823: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:19:31.14 ID:Ys2FV0cTO
男賢者「……男の子が絡まれてるみたいだね?」

男盗賊「なんだよ、あのおっさん……」

女僧侶「ど、どうしましょう……止めに行きましょうか……」アセアセ

男賢者「そうだね! 男盗賊君、行こうっ!」

男盗賊「おいっ! 勇者ァ! おめぇも来やがれっ!」

女僧侶「……勇者さん? 何してるんですか?」


勇者「……」

824: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:27:51.54 ID:Ys2FV0cTO
「だからよぉ? 確かに魔王は倒されたけどよぉ? まだ、世の中にはやらなきゃいけない事が沢山あるじゃねぇか!」

「……俺がやらなくても、誰かがやるもん」

「おめぇが、そういう考え方だからなぁ! こうやって、神様がおめぇを選んだんだよぉ!」

「……何、言ってるのあんた?」

「バ、バカっ……! おめぇ、あのメッセージ見ただろ? カップラーメンや、チラシに書いていた『お前の人生それでいいのか』ってメッセージをよぉっ!」

「……何、それ?」

「カァ~! なんで、どいつもこいつも気づかねぇんだよっ! この導入部分がねぇ、毎回長いんだよっ! 毎回よぉ!」

「?」

「まぁ、でもよぉ……? そんなおめぇでも、『コレ』見たら信じるだろ……」

「?」

「いいか? おめぇに与えられた命題はコレだっ!」


勇者「!」

825: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:33:32.78 ID:Ys2FV0cTO
男賢者「あれ……? あの人……?」

男盗賊「何処かで見た事があるような気がするなぁ……?」

女僧侶「あれ? 二人もそう思います? 私も、あの人……何処かで見た事あるような気がするんですよねぇ……」


勇者「はははっ……! 何だよアイツっ……! はははははっ……!」ゲラゲラ


男賢者「……ん?」

男盗賊「どうした?」

女僧侶「……勇者さん?」


勇者「アイツ、生きてのかよっ……! そうだよなぁ……そうだよ……だって、アイツ……天使だもん。簡単に死ぬワケねぇよ……!」

827: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:41:07.98 ID:0k6YSPmxO
勇者「……そっか。アイツ、新しい仕事決まったんだ」

女僧侶「あ、あの……勇者さん、知り合いなんですか? あの人と?」

勇者「あぁ、昔……ちょっとね……?」

女僧侶「だったら、勇者さん、止めて下さいよ!? 男の子が絡まれているんですよ?」

勇者「いやいや……大丈夫大丈夫……あの人、悪い人じゃないからさ……?」

女僧侶「……えっ?」

勇者「それに……あいつはきっと……あの男の子にとっても必要な人だからさ……?」

女僧侶「?」

勇者「俺が首突っ込んで、邪魔しちゃいけないよ。基本的に導入部分が長いからね……導入部分が……」

女僧侶「……勇者さん、何言ってるんですか?」

829: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:47:10.25 ID:0k6YSPmxO
勇者「よしっ! じゃあ、俺達も出発するかっ!」

女僧侶「えっ!?」

勇者「天童も頑張ってるんだし……俺も負けてられないからね……!」

男賢者「……あの男の子は、どうするんですか?」

勇者「大丈夫だって! 俺が首突っ込むと、あの子の為にはならないもん」

男盗賊「……はぁ?」

勇者「じゃあ、皆! 今日も一日頑張ろうっ! じゃあ、出発~!」


女僧侶「えっ……? えっ……? 出発して……いいんですかね……?」

男賢者「まぁ、でも……僕もあの人、悪い人じゃない気がするから……」

男盗賊「大丈夫かな……? って、お~いっ! 勇者、待ってくれよっ!」

830: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 21:53:23.56 ID:0k6YSPmxO
天童「……ったく、頑張ってるじゃねぇか、アイツ」


天童「もう……一人前だよ、おめぇはよぉ……」


天童「……勇者」


天童「お前の人生それでいいんだ!」


天童「……ん?」


天童「って、おいっ! おいっ! さっきのガキは何処に行ったんだっ! いねぇぞっ!?」アタフタ


天童「おいっ! おいっ! 逃げてんじゃねぇよっ! おめぇ、本当に死んじまうんだよっ!」

「なんだよ、おめぇ……ついて来んなよ、気持ち悪ぃっ!」

天童「うるせぇっ! こっちはおめぇでパート2やれって神様に言われてんだよっ! 逃げんじゃねぇよっ!」

831: 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy 2014/07/16(水) 21:55:00.40 ID:0k6YSPmxO
天国に一番近い勇者~heaven cannot wait~

ーー完