カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 前編

341: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/25(火) 23:30:44.84 ID:61R++ivL0
◆◆◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・レオン邸―

メイド「ようこそ、お越しくださいました」

カムイ「はい、すみません。こんな朝からお邪魔してしまって」

メイド「いいえ。レオン様も、カムイ様とお会いするのが楽しみだと仰っていましたから、これほど早く来ていただけて、とても喜んでいらっしゃいますよ」

カムイ「はい、ありがとうございます」

メイド「こちらの部屋です」

カムイ「案内してくださってありがとうございます」

メイド「はい、それでは」

 コンコン

カムイ「レオンさん、入りますね」

 ギィ

レオン「だから、出来る限り善処はする。するけど、立場にあった発言をしてほしい。君たちは捕虜、それを忘れないでくれないかな」

カザハナ「立場立場っていうけど、あたしとサクラは女の子なんだよ。少しはそこらへん融通利かせるのが、男ってものじゃない!」

レオン「……こんな手のかかる捕虜を取るくらいだったら、あの時周囲を確認しに行けばよかった。そうすれば、一般兵の面倒なんて見ずに済んだのに」

カザハナ「あんた、また人のこと名前で呼ばないんだね」

レオン「お前こそ、僕のことを名前で呼ばないくせに上から目線だね。誰のおかげで命が繋がってると思ってるんだろうね?」

引用元: ・カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 



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342: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/25(火) 23:43:38.24 ID:61R++ivL0
カザハナ「嫌なこと蒸し返すよね、ほんとこんなのが王子なんて暗夜も大したことないわ」

レオン「なんだと、もう一回言ってみなよ。立っていられないくらいに、僕の魔法をありったけぶつけてあげるから……、って、ね、姉さん!?」

カザハナ「へっ?」

カムイ「………来る時間を間違えたみたいですね。レオンさん、カザハナさんとお話があるようでしたら、少し時間を潰してきますが」

レオン「いや、つまらない話だから」

カザハナ「つ、つまらなくなんかない!」

カムイ「……カザハナさん。一体どうしたんですか。まだ部屋にいるべき時間ですよ?」

カザハナ「………。その……お風呂のことで……」

カムイ「お風呂……ですか?」

レオン「ああ、毎日入らせてほしいと言ってくる。捕虜を自宅に置いているという時点で、すでにいろいろと面倒があるっていうのに……」

カザハナ「だ、だって……。白夜にいた時は、毎日の習慣だったのに、ここでいきなりそれをやめてなんて、ちょっと納得いかない」

レオン「本来なら殺されていた身で、どうしてここまで横暴なんだよ……。それに毎日の入浴が平常化したら、実は脱出を考えていたとかそんなことになっても困る。君たちは大事な駒なんだから、少しは考えてほしいね」

カザハナ「むーっ!!! ケチ!」

カムイ「つまり、レオンさんとしては誰も見ていないことが不安なわけですよね?」

343: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/25(火) 23:55:01.08 ID:61R++ivL0
レオン「そうなるね」

カムイ「なら、簡単です。監視をつけましょう。それが簡単な解決方法です」

レオン「それができるならやってるよ。ただ人員が足りないし、捕虜がのびのびとお風呂に入っているところを監視させるなんて、それこそ三人の寿命を縮める行為になりかねない」

カザハナ「…あたしだって、知らない奴に監視なんかされたくないし」

カムイ「いや、双方知り合いですから何の問題もないじゃないですか……」

レオン「?」

カザハナ「?」

カムイ「……レオンさんが監視すればいいんですよ。ね、レオンさん」ニヤッ

レオン(なるほど、わかったよ姉さん)

レオン「……そうだね、それなら別に構わないよ」

カザハナ「なっ、何言ってんの!? 変態、変態じゃない!」

レオン(こうしておけば、さすがに無理に意見を押し通したりしないだろう。到底受け入れがたい内容が入れば、流石に引くはずだ)

カムイ「それなら、カザハナさんの願いも叶えられますし、レオンさんの監視の問題も解決すると思います」

レオン「まぁ、僕も譲歩出来てこれくらいかな。最低でも誰かしらの監視は必要だけど、こんなことに大事な臣下は使えないからね」

カザハナ「うっううっ……」

345: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 00:05:50.83 ID:K2rI3Nj80
レオン(よし、あと一歩だな。すでに牙城は崩れたみたいだし)

レオン「まぁ、見られたくない気持ちはわかるから、別に無理しなくていいよ。毎日じゃなければ別に問題はないし、僕としても時間の手間が外れて助かる」

カザハナ「…………」

レオン「ふん、まぁ、そう言うわけだから……、もう話は終りだよ」

カザハナ「わかったわよ―――」

レオン「最初からそうしてくれれば、よかったんだ。これからは―――」









カザハナ「その条件呑んであげる……」

レオン「だよね、賢明な判断―――え?」

カムイ「……え?」

カザハナ「その条件飲んであげるって言ってるの! いいもん、暗夜の王子は人のお風呂を監視するような変態だって、言いふらしてあげるから!」

レオン「ちょ、ちょっと待――」

カザハナ「大っ嫌い!」タタタタタタタタッ

 ガチャ バタン………

レオン「………」

カムイ「…………」

レオン「………」

カムイ「……レオンさん」

カムイ「姉さん………」

カムイ「すみませんでした。カザハナさん、結構負けず嫌いな方なんですね」

レオン「………良い教訓になったよ。もう、あいつと何かでもめたら、褒め倒すことにするから。あれは押して引いてじゃない、譲歩して向こうに罪悪感を持たせたほうが倒せる相手だ」

カムイ「………これが戦場だったら、死んでましたね」

レオン「なら、僕はまさに戦死してることになるよね……」

346: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 00:07:00.93 ID:K2rI3Nj80
>>341

白夜王国→×

暗夜王国→○

お恥ずかしい、凡ミスです。申し訳ない。

347: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 00:18:04.60 ID:K2rI3Nj80
◆◆◆◆◆◆

レオン「それで、僕に聞きたいことって何かな。姉さん」

カムイ「はい、レオンさんの言っていた暗夜で表面化している反乱についてです」

レオン「反乱のことね」

カムイ「はい、レオンさんはこの前のお父様の話で言っていました。武力事態は白夜を征服、支配することが可能なくらいにあると」

レオン「……そうだね。正直な話、反乱を押さえ込まなくても白夜に勝つことはできる。でも、被害は甚大になるのは間違いない。暗夜王国のことをよく思ってない周辺諸国、それに部族は数多いからね」

カムイ「話に上がった氷の部族もその一つですか?」

レオン「そうだね。父上がその気になれば集落はすぐに焼き払われることになる。今まではその力という凶器で反乱を抑えてきたけど……」

カムイ「力を示せば示すほど、反乱に加担する諸国が増える可能性がある……そう言うことですね?」

レオン「うん。今はまだ白夜と戦端を切っただけだから、その余波がまだ来てない。でも、白夜に暗夜側にありながら抵抗している国の情報は必ず入るはず。力を示して抑え込み続ければ、民衆の不満は大きな原動力になる。そこに白夜の手が入り込めば、暗夜は大多数の兵力を国の反乱鎮圧に充てることになる。そうなったら……」

348: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 00:28:39.41 ID:K2rI3Nj80
カムイ「前線が拡大して、各地に穴ができる……ということですね。気づけば前線を一つ、また一つと崩されて、最悪戦争に負けますね」

レオン「ほんと、姉さんは理解力があるよね。剣を振ってるよりも指揮を出してた方が……ごめん、また悪い癖だ……」

カムイ「レオンさん、何度も言っていますけど、気にしないでください」

レオン「無理だよ。気にしないと――、ううん、なんでもない」

カムイ「レオンさん?」

レオン「なんでもないって言ってるでしょ? 話は戻るけど、僕はそんな形で前線を崩された揚句、多くの無駄な犠牲が出ることを抑えたいと考えてる。だから反乱の鎮圧はできる限り、武力じゃない形で終わらせたい。もちろんその先にあるのは、暗夜の勝利だよ。暗夜が白夜に負けるなんてことは考えてないから、あの三人には悪いけど、白夜との戦争は僕たちが勝つ以外の道はない」

カムイ「そうですか」

レオン「姉さんは、どうしたいの?」

カムイ「そうですね。まずは、迫りつつある問題に対処することでしょうか?」

レオン「迫りつつある問題?」

カムイ「はい、お父様が何をお考えかはわかりませんが。多分、私に何かしらの任務を与えてくれるでしょう」

レオン「……」

349: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 00:40:01.63 ID:K2rI3Nj80
カムイ「先に言っておきますけど、私はレオンさん、力ではない方法で反乱を抑えるという考えに賛成です。それに武力で鎮圧してしまったら、サクラさんたちを助けた意味がなくなってしまいますから」

レオン「その言葉、信じてもいいんだよね」

カムイ「ええ、姉さんを信じてください」ピトッ

レオン「ね、姉さん。いきなりなにを……」

カムイ「久々にレオンさんの顔を触りたくなっただけですよ。ふふっ、やっぱりどこか可愛いですね」

レオン「男としてはなんだか複雑な気分になるよ」

カムイ「ええ、レオンさんは、鼻先が弱かったんですよね」

レオン「ぐっ……や、やめてよ姉さん」

カムイ「ふふっ、もう少しだけ触らせてください。レオンさんもこれから忙しくなるでしょうから……」

レオン「………捕虜のこと?」

カムイ「それもありますけど、私たちはお父様に色々と命令をもらうことになると思います。白夜の戦争が始まったことで、その頻度は増します。次に会えるのはいつかもわかりませんから」

レオン「………はぁ、わかったよ。もう少しだけだからね」

カムイ「はい、ありがとうございます……」



レオン(姉さん、姉さんの目が見えていたらと僕はよく思うんだよ。でも、その理由を姉さんが知ったら、僕のことをどう思うんだろう……)

350: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 00:49:56.46 ID:K2rI3Nj80
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン城―

カムイ「……お父様、カムイ、ただいた参りました」

ガロン「うむ、よくぞ来たカムイよ」

マクベス「カムイ王女、捕虜の件ですが。ガロン王様からの信頼を得たいがためとはいえ、面白ことをやってくれるものですな」

カムイ「それくらいしかできることが無かったものですから、今後は自身の力を示していくつもりです」

マクベス「いい心がけです。カムイ王女、期待していますよ」

ガロン「さて、カムイよ。お前を我が子と見越して一つ任せたいことがある」

カムイ「はい、お父様」

ガロン「先に聞いた氷の部族の話、覚えておるだろう?」

カムイ「レオンさんが言っていた、反乱を起こしている部族のことですね」

ガロン「ああ、その反乱の鎮圧、それをお前に任せたい」

カムイ「反乱の鎮圧ですね。わかりました」

ガロン「ああ、良い報告を期待しているぞ」
 
カムイ(……あっさりし過ぎている。兵士に制限を掛けたり、それ以外に何かしらの手が加えられると思っていましたが……)

ガロン「………どうした、すぐに準備を始めるがよい」

カムイ「はい、わかりました。準備を終え次第、部族の村へ向かいます」

カムイ(何かあると考えたほうがいいですが、一体……)

351: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 01:00:22.93 ID:K2rI3Nj80
◆◆◆◆◆◆

ガロン「そうか、カムイは氷の部族の村へと向かったか」

マクベス「はい、それでどういったことをしておられるのですかな?」

ガロン「何もしておらん。ただ、暗夜の王女が氷の部族の村に向かうと、氷の族長に伝えただけだ。そう、今にも反乱をおこそうとしている者たちにな」

マクベス(なるごど、あちらはカムイ王女を反乱を武力で抑えに来た者だとすでに決めつけているでしょうな。ふふっ、これは面白い)



マークス(父上、なぜそのようなことを……。なぜ、そんな挑発的な発言をするのですか。このままではカムイの身が危ない……)

マークス「どうするべきか……」

エリーゼ「マークスおにいちゃん、どうしたの? なんだかすっごく悩んでるみたいだけど?」

マークス「エリーゼ……。エリーゼ、ひとつ頼まれてくれないか」

エリーゼ「マークスおにいちゃんがあたしに頼みごとなんて……うん、あたしにできることだったら何でもやるよ!」

マークス「私は、父上の傍にいる必要がある。かわりにエリーゼ、カムイ元へと赴いてほしい」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、どこに行っちゃったの?」

マークス「氷の部族の村に向かったそうだ。だが、氷の族長はすでにカムイが訪れることを知っている……。待ち伏せされている可能性が高い……」

352: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 01:12:50.95 ID:K2rI3Nj80
エリーゼ「そ、そんな……」

マークス「だからこそだ、エリーゼ。カムイの力になって欲しい。出来れば私自身がいければよいのだが……」

エリーゼ「ううん、マークスおにいちゃん、あたし頑張るよ。だから、安心して!」

マークス「ああ、任せた」

エリーゼ「でも、カムイおねえちゃんはどこから向かったのかな?」

マークス「カムイのことだ、できる限り最短距離で到着できる道を選ぶだろう。だとすると天蓋の森を抜けている可能性が高い。あそこは目が見えるものでも、時間のかかる場所。それにカムイは仲間を連れて歩いている、どうにか追いつけるはずだ」

エリーゼ「うん、わかった。マークスおにいちゃん、カムイおねえちゃんのことは、あたしに任せて。きっと、無事に帰ってくるから!」

マークス「ああ、すまないが。頼んだぞ、エリーゼ」

エリーゼ「うん!」


◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都正門―

エリーゼ「うん、よし! 待っててね、カムイおねえちゃん」

???「エリーゼ!」

???「エリーゼ様!」

エリーゼ「え、二人ともどうしたの?」

???「どうしたのじゃない。エリーゼ、行くなら私も連れて行ってほしい。黙っていくなんて」

???「そうですよエリーゼ様。私は正義の味方である前に、エリーゼ様の臣下なのですから!」

エリーゼ「そうだね、ごめん。それじゃ、一緒に来てくれるよね、エルフィ、ハロルド!」

エルフィ「もちろんよ。私はエリーゼを守る盾だから、どんな危険も私が受け止めてみせるから」

ハロルド「もちろんです。さぁ、行きましょう!」

エリーゼ「うん、二人とも頑張ろうね!」

エリーゼ(カムイおねえちゃんに追いつければいいんだけど、頑張らなくちゃ!)



 第七章 前編 おわり

353: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 01:19:31.75 ID:K2rI3Nj80
 今日はここまでです。話的には、カムイが何をすべきなのかを考えるため、部族面前に暗夜の現状を理解するという話にした感じです。
 凡ミスすみませんでした。レオンさん、すでに白夜に家構えてるとか、おかしすぎました。

 次回戦闘でカムイと陣を組むキャラクターを決めたいと思います。

 ジョーカー  
 サイラス  
 リリス   
 モズメ   

 >>355 でお願いいたします



355: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/26(水) 01:27:07.15 ID:Xri+Cf8A0
乙です
ジョーカー

357: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 22:43:19.99 ID:K2rI3Nj80
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・天蓋の森『死霊の沼』―

 サガセ、カナラズコノモリヲトオルハズダ

カムイ「こんな森に誰か人がいるなんておかしいと思いましたが……そういうことですか」

ジョーカー「どうやら、すでに私たちが向かうことは知られていたと考えるのが自然ですね。見たところ、盗賊とは違うようですし、氷の部族の者たちと見て間違いはないかと」

カムイ「はい、出来ればまだこの森にいると思わせて、集落に向かうのが一番いいでしょう。向こうも、この森で私たちを探すのに手こずっているみたいですから………」

サイラス「なら、善は急げだ。あの一団を見送って、早く先に進もう」

モズメ「せやな、この森の中、嫌な感じで早く抜けたいわ」

リリス「白夜には、このような森は無い感じがしますからね」

モズメ「こんな場所、どんなに手をくわえても、良い野菜が育つところになると思えへんから」

サイラス「そうだな、白夜に比べて、暗夜は痩せた大地が多い。作物を作る条件が悪いところでもあるから」

ジョーカー「ないわけじゃないが、あり大抵の場所は貴族が牛耳っている場所が多い。暗夜王国らしいといえば暗夜王国らしいことだな」

モズメ「そうなんか、あまりいい話やないな」

 ミツケマシタ!

サイラス「! 感づかれたか?」

 コノサキニテ、アンヤノツカイトオモワレルモノタチヲハッケン ――サマガサキニムカワレマテイマス

 ヨシ、ワレワレモイクゾ、アンヤノツカイタチヲトラエルノダ!

358: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 22:55:44.89 ID:K2rI3Nj80
カムイ「……敵に動きがあったみたいですが、今の会話を聞く限り……」

サイラス「どうやら、俺達の他にこの森にいた人たちがいるみたいだな……」

モズメ「あたいらと勘違いされてるみたいや……」

リリス「カムイ様、どうします?」

カムイ「…………」

ジョーカー「カムイ様。どうなさいますか? このまま集落に向かえば見つかる確率は減りますが……」

カムイ「どちらにせよ、集落での戦いは避けられないものでしょう。なら、敵の手を先に確認するのも悪くありませんね」

ジョーカー「では………」

カムイ「皆さん反転します、その方々の援護に向かいます。ジョーカーさんは私と一緒に行動をお願いします」

ジョーカー「仰せのとおりに」

カムイ「モズメさんとサイラスさんで連携を、リリスさんは治療の準備がすぐにできるようしてください」

リリス「わかりました……」

カムイ「……それでは行きますよ、皆さん」

359: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 23:10:15.41 ID:K2rI3Nj80
◆◆◆◆◆◆

エルフィ「えいっ!」バシン

部族兵「ぐあああああっ」ドタンッ

ハロルド「くっ、まさかここで見つかることになるとは」

エルフィ「ハロルド、つべこべ言わないで戦って、エリーゼ様を守るのよ」

エリーゼ「ハロルド、エルフィごめん。あたしについて来たばっかりに……」

ハロルド「気になさらないでください。なにせ、私は正義の味方。エリーゼ様がカムイ様を心配して行ったことです。私はそれを全力でサポートするだけです」

エルフィ「そうよ、私たちはエリーゼ様を守るために、ここにいるんですから!」ドスッ

部族兵「ぐおおおっ」ドタッ

ハロルド「しかし、私たちが見つかったということは、カムイ様はまだ見つかっていないということでしょう」

エリーゼ「うん、そうだね。カムイおねえちゃん、無事に集落につけてるといいな……」

エルフィ「とりあえず、ここにいる人たちを全員眠らせてから、ゆっくり後を追いかけましょう」

部族兵「くっ、こいつら強い……」

???「あれ? カムイ様じゃない? もしかして、集落に向かわれてしまったのでしょうか?」

部族兵「くっ、はずれをつかまされたということですか。どうします?」

???「姉さんと約束したんです、絶対にここで止めてみせるって。気は進みませんけど、あの人たちを捕まえてカムイ様には王都に戻ってもらいます!」

部族兵「全員、一気に掛れ!」

 オオオオオオオオ!

360: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 23:22:08.35 ID:K2rI3Nj80
エルフィ「! 三方向からくる。ハロルド、エリーゼ様を守って」

ハロルド「エルフィくん! わかった、このハロルド、命に代えてもエリーゼ様をお守りする!」

エリーゼ「エルフィ!」

エルフィ「今こそ訓練の成果を見せる時よ」

 ガキン キイン

部族兵「くっ、なんだ攻撃が全く通らない!?」

エルフィ「軽いわ。今度はこっちの番!」

 ブンッ ドゴォ

部族兵「くっ、くそおお」ドタッ
部族兵「な、なぜ……」ドタッ

エリーゼ「エルフィ、すごい」

エルフィ「はぁはぁ……ぐっ、まだまだ!」

???「行きますよ。やあっ!」ヒュン

エルフィ「ぐっ……、鎧の隙間に……力が……」

部族兵「てやああああ!」

エルフィ「ああっ!」

ハロルド「エルフィくん!」

エリーゼ「エルフィ!」

エルフィ「……当たれえ!」

部族兵「ふっ、動きが鈍ればこちらの物だ」

???「ごめんなさい、でもこうするしかないんです!」ヒュン

エルフィ「……しまった!」ドサッ

部族兵「倒れた。今だ!」

エリーゼ「! エルフィ」

ハロルド「くっ、エリーゼ様。ここでお待ちください! 私がお相手する!」

エルフィ「……くっ、ごめんエリーゼ……私、もう……」

部族兵「くらえっ!」

ハロルド「間に合わない!」

エリーゼ「エルフィ!!!!!」

エルフィ「!!!!!」

 ドゴォ!!!


361: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 23:38:36.12 ID:K2rI3Nj80
エルフィ「…………」

エルフィ「………?」

エルフィ「……え?」

カムイ「倒れた相手に追い打ちとは、品性を疑いますよ」

部族兵「な、いきなり……」ドサッ

カムイ「さて、とりあえず攻撃をしようとしている気配を攻撃しましたが、こちらが味方でいいんでしょうか?」

ジョーカー「ええ、間違っていないと思います。はっ!」ヒュン

部族兵「ぐっ、新手だと!? 一体どこから現れた」

サイラス「まったく、倒れた相手一人に後続がぞろぞろとか、見てて情けなくなるね」

モズメ「あんた、大丈夫? リリスさん、こっちへ来てや」

リリス「はい、これでよくなると思います。……あれ、エリーゼ様!?」

エリーゼ「リ、リリス!? え、カムイおねえちゃん!?」

カムイ「追いかけてきた人というのはエリーゼさんだったんですか。もう、危ないことをしてはいけませんよ」

エリーゼ「ご、ごめんなさい……」

カムイ「そこの方、立てますか?」

エルフィ「え、ええ。ありがとう」

カムイ「すみません、遅れてしまいました。エリーゼさんの臣下の方ですね?」

エルフィ「はい、エルフィと言います。助けてくれてありがとう」

カムイ「はい、そちらの方も?」

ハロルド「私はハロルド、エルフィくんを助けてくれて感謝するよ」

362: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/26(水) 23:49:22.04 ID:K2rI3Nj80
エリーゼ「カムイおねえちゃん……」

カムイ「まったく、御転婆ですねエリーゼさんは。でも、無事でよかった」ダキッ

エリーゼ「怖かったよ。エルフィが死んじゃうかと思ったから……あたしのせいで……」

カムイ「怖い思いをさせてしまいましたね。でも大丈夫、ここからは私たちも一緒です」

サイラス「そういうことですから、エリーゼ様。安心してください」

エリーゼ「サイラス、うん!」

カムイ「それでは、どこの誰かわかりませんが。妹に色々としてくれたお返しをさせてもらいましょうか」



 ザッ ザッ



カムイ「………?」

カムイ(この気配………私の知っている人?)

ジョーカー「……? おいお前、これは一体何の冗談だ?」

フェリシア「……冗談なんかじゃありませんよ、ジョーカーさん」

リリス「フェリシアさん!? どうしてこんなところに」

カムイ「……フェリシアさん」

フェリシア「ふふっ、カムイ様。驚きました?」

カムイ「はい。何のためにいるかは聞く必要はないようですね」

フェリシア「カムイ様、王都に帰ってくれませんか」チャキッ

363: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 00:01:38.28 ID:5DgfEtrn0
ジョーカー「フェリシア、カムイ様に向かって何言ってやがる!」

フェリシア「だめです、私はここを通すわけにはいきません。氷の族長の娘として、通すわけにはいかないんです」

部族兵「……フェリシア様」

フェリシア「少しだけ待ってください。カムイ様、お願いですから帰って、私は戦いたくなんてありません。主君だからとかじゃないんです、私はカムイ様とこんな戦いをしたくないんです」

カムイ「フェリシアさん。あなたの部族の事情は察しますが。私の目的を勘違いしているのは……」

フェリシア「わかってます。カムイ様が戦うために来たわけじゃないことくらい。でも、みんなはそう思ってくれません。ここで帰ってもらう以外に、私たちはこの刃を抑えることはないんです。それに集落のみんなは、カムイ様たち捕らえて暗夜の交渉に使うつもりです。意味がないわかったら、殺されてしまいます」

カムイ「そうですか………。今の重大発言ですよ……」

フェリシア「………」

ジョーカー「はぁ、フェリシア。ノロマだとかそういう問題じゃない、お前は馬鹿だ。お前が仕えていたのはカムイ様だ。カムイ様に仕えることが俺たちの役割だ。そうだろ?」

フェリシア「それを選べたら良かったんですけど、ごめんなさい」

カムイ「なら、答えは一つですね。フェリシアさん、私にはちゃんとした役割があります。その役割を満たすことを私は約束したんです」

フェリシア「退くつもりは……ないんですよね」

カムイ「はい、そうです」ジャキッ

フェリシア「皆さん、もういいです。カムイ様を……いいえ、暗夜王国の王女を倒してください」

部落兵「はい、全員いくぞ!」

フェリシア「……ごめんなさい。私はやっぱり、ダメメイドです……」


364: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 00:11:07.91 ID:5DgfEtrn0
カムイ「ジョーカーさん。少し激しく動きますけど、サポートよろしくお願いします」

ジョーカー「はい、思う存分お動きください。このジョーカー、かならずサポート仕切ってみせます」

サイラス「モズメ、サポートに回る。決めてやれ!」

モズメ「わかったで、ていやっ!」

部族兵「ぐっ、しかし、浅い!」

ハロルド「はっはっは、こちらにもいるぞ!」

部族兵「ぐはっ……」ドサッ

エリーゼ「ライブ! えへへ、エルフィ、完全回復できたよ!」

エルフィ「ありがとう、エリーゼ様」

エリーゼ「うん、カムイおねえちゃんのために道を作ってあげて。何とかしてくれるはずだから」

エルフィ「ええ、助けてもらったお礼、ちゃんとしなくちゃいけないから」ガシィン

カムイ「エルフィさん、感謝します。ジョーカーさん行きますよ」

ジョーカー「はい。フェリシア、恨みは全くないが、カムイ様の命令通り止めさせてもらうぞ」

フェリシア「カムイ様……。だめ、しっかりしないと……。いきます! やあっ!」ヒュン

 カキィン

カムイ「ジョーカーさん!」

ジョーカー「喰らえっ!」ヒュン

フェリシア「んっ!」キィン

ジョーカー「本当に戦闘中の動きはいいんだが、あれでどうして紅茶を全部こぼしたりするんだ?」

カムイ「それがフェリシアさんらしさですよ。だから、こちらも本気で行かないと駄目ですね。さぁ、いきますよ! てやぁ!」

365: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 00:23:25.00 ID:5DgfEtrn0
フェリシア「えい! カムイ様、強いんですね」

カムイ「フェリシアさんも、中々やるじゃないですか」

フェリシア「私には、これしかありませんから!」

ジョーカー「ふっ、カムイ様に当てられると思うなよ」

フェリシア「……何回かやってればきっと当たります!」

カムイ「……そうですね。それじゃ、こういうのはどうですか」

 ゴソゴソ 

カムイ(さて、これを使ったらどうなるかはわかりませんが、フェリシアさんの意識を一瞬だけそらせるはず!)

カムイ「行きます」

 シュオオオオオン

ジョーカー「カムイ様!?」

フェリシア「なんですか、この光?」

カムイ(竜状態)「ウオオオオオオン」

ジョーカー「これは、カムイ様?」

フェリシア「か、カムイ様……なんですか」

カムイ(竜状態)「フェリシアさん、よそ見はよくないですよ」

フェリシア「!?」

カムイ(竜状態)「ジョーカーさん、今です」

ジョーカー「はい、ってわけだ。フェリシア、おとなしく反省しろ!」

フェリシア「しまっ……きゃああああああ」ドタドタン

部族兵「フェリシア様……!? な、なんだあれは………」

サイラス「カムイ、竜になれるのか?」

エリーゼ「え、あれが、カムイおねえちゃんなの?」

リリス「カムイ様……」

エルフィ「……きれいね」

ハロルド「ああ、不思議と目が追ってしまうような美しさだ」

366: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 00:34:48.74 ID:5DgfEtrn0
フェリシア「うっ、うう」

カムイ(竜状態)「………」ジーッ

フェリシア「ひぅぅぅ」

カムイ(竜状態)「フェリシアさん、まだ戦いますか?」

フェリシア「か、カムイ様………」

カムイ(竜状態)「…………お願いします。もうここまでにしてください」

フェリシア「みんなは……」

フェリシア(みんな、もう戦える状態じゃないんですね……。結局、私はどちらにいても役に立てないんですね……)

カムイ(竜状態)「……フェリシアさん」

フェリシア「どうすればよかったんでしょう。私はメイドとしての仕事もできないから、この戦う技術だけしかないんです。でも、これがカムイ様を倒すために使うのが嫌だったのに、結局こんなことになっちゃうんですね」

カムイ「………」

フェリシア「カムイ様、私は……」

 シュオオオオン

カムイ「まったく」ナデナデ

フェリシア「えっ、カムイ様?」

カムイ「悩んでいたら話してください、私はそんなに信用がないんですか?」

フェリシア「いえ、私のことでカムイ様に迷惑をかけたくなくて」

ジョーカー「その結果がこれだろうが」

フェリシア「ご、ごめんなさい」

カムイ「フェリシアさん。約束をしましょう」

フェリシア「約束、ですか?」

カムイ「ええ、私は集落の人を誰一人殺したりしません。もちろん、フローラさんのことも同じです、ちゃんと和解してみせます。だから、フェリシアさん、もう一度私のメイドとして仕えてくれませんか?」

367: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 00:46:02.88 ID:5DgfEtrn0
フェリシア「だ、だめです。一度、刃を向けた私がカムイ様にまた仕えるなんて……。それに……」

エルフィ「?」

フェリシア「あちらの方に、私は攻撃を加えたんです。そんな人の近くに私がいたら……」

カムイ「エルフィさん」

エルフィ「はい、なんでしょうか?」

カムイ「根に持ちますか?」

エルフィ「いいえ、特に」

フェリシア「だ、だって、あの時カムイ様が現われなかったら、あなたは……」

エルフィ「そうね、でもそれが戦場というものだから。私とあなたは今敵同士、だからその結果で私が死んでしまっても、それは仕方のないことだから」

フェリシア「………でも」

エルフィ「気にしないで、それに」スッ

フェリシア「え?」

エルフィ「あなたが仲間仲間になってくれるなら、私はあなたを守る盾にもなるわ。エリーゼ様を守る盾である私は、エリーゼ様を守ってくれるみんなを守る盾でありたいの」

フェリシア「な、なんで。なんでそんなに優しいんですか……私、許されないようなことしたのに」ポロポロポロ

エルフィ「大丈夫。あなたのしたことを、私は非難したりしないわ。あなたにはあなたの立場があって、その結果に攻撃が行われただけだもの」ギュッ

エルフィ「だから、あなたが行ったことで気に病む必要はないわ」

368: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 01:05:52.53 ID:5DgfEtrn0
エルフィ「あら、自己紹介してなかった。私はエルフィ、エリーゼ様に仕えてるわ」

フェリシア「私はフェリシアです。その、私は……」

カムイ「………」

フェリシア「私は、カムイ様に仕えるメイドです……」

エルフィ「ふふっ、そうなの。これからよろしくね、フェリシア」ギュッ

フェリシア「は、はいぃ……よろしくお願いします……」

エルフィ「ええ、よろしく」

フェリシア「………うう、ううっ」

エルフィ「どうしたの?」

フェリシア「ごめんなさい、攻撃しちゃってごめんなさいー」ポロポロポロポロ

エルフィ「だ、大丈夫よ。気にしてないわ」

フェリシア「うわあああん」ポロポロ




カムイ「氷の部族の皆さん。信じるかはお任せいたします」

部族兵たち「………」

カムイ「私は誰も殺したりしません。部族長さんもフローラさんも皆さんの大切な人たちもです。だから、すべてが終わるまで見ていてくれませんか……」

部族兵「……いいだろう。その提案、受けよう。確かにここにいる者たちは誰一人として命は失っていない。だが、もしも約束を破ったその時は……」

カムイ「はい、いかなる処罰も受けましょう」

部族兵「ああ、いい知らせを待っている」




カムイ「皆さん、話は付きました。そろそろ移動を――」

フェリシア「うえええええん」

ジョーカー「まったく泣きやまないな」

フェリシア「ふええええええん」ポロポロ

エルフィ「泣かないで……本当に大丈夫だから」アセアセ


「ごめんなさい、エルフィさん、ごめんなさいー」


第七章 おわり

369: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 01:10:28.17 ID:5DgfEtrn0
現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C→C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+

仲間たちの支援
 
 今回の戦闘でサイラスとモズメの支援がC+になりました。
 今回のイベントでカザハナとレオンの支援がC+になりました。
 今回のイベントでフェリシアとエルフィの支援がCになりました。

370: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 01:15:05.24 ID:5DgfEtrn0
 今回はここまでになります。個人的な話ですが、エルフィの支援はアサマとの支援が一番好きです。
 氷の部族に話が漏れていて、天蓋の森で戦う面という感じです。

 では、次回の始まりの際に話をしている組み合わせを決めます。

 カムイ
 ジョーカー
 サイラス
 モズメ
 リリス
 ハロルド
 エリーゼ
 エルフィ
 フェリシア

 こちらの中から二人選ぶ形になります。お時間のある方、参加していただけると幸いです。

 安価は>>373 と >>374で行います。

 同じキャラクターが被った場合は374以降の違うキャラクターで構成します。

 

373: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/27(木) 01:38:13.05 ID:5q2tV/aGo
回復役が4人もいる
エルフィ

374: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/27(木) 01:47:17.57 ID:alcJlo6K0
騎士の誓いだ

377: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 23:03:09.29 ID:5DgfEtrn0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村付近の洞窟―

カムイ「……さて、ここからどうしましょうか?」

ジョーカー「ええ、この吹雪の中を進むしかありませんが、こちらが寒さに疲弊したところを狙われる可能性もあります。かといって、この洞窟で燻っていても、氷の部族の反乱活動が終わるわけじゃありません」

カムイ「そうですね。私はフェリシアさんから話を聞いてきますので、皆さんは体を温めて待っていてください」

リリス「カムイ様、私も同伴しますね。ジョーカーさんも一緒に来てください、見知った顔がいてくれればフェリシアさんも落ち着いてくれるはずですから」

ジョーカー「わかったよ。たくっ、あいつも本当に手が掛るな」





エリーゼ「ううっ、寒い」

エルフィ「エリーゼ様、こちらを。この毛布をお使いください。薄いかもしれませんけど」

エリーゼ「ううん、ありがとうエルフィ……」ウトウト

エルフィ「エリーゼ様?」

エリーゼ「ごめんね、ちょっと眠くなっちゃったみたい。でも大丈夫、頑張って起きてるから」

エルフィ「エリーゼ様、よかったら――」

サイラス「眠っていていいんだぞ」

378: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 23:15:31.67 ID:5DgfEtrn0
エリーゼ「サイラス?」

サイラス「カムイが言ってただろ? 体を温めておけって、眠ればその分体も温まるし、体力だって回復できる」

エリーゼ「でも……」

エルフィ「その通りよ。エリーゼ様、今はゆっくり休んで」

エリーゼ「……エルフィ、一緒にいてくれる?」

エルフィ「ええ」

エリーゼ「ありがと、ごめんね。私ちょっとだけ休むから……すぅすぅ」

サイラス「城から俺たちを追いかけてきたんだよな」

エルフィ「ええ、最初は私たちに声もかけずに行こうとしてたから、少しだけ悲しかった」

サイラス「横。座っていいか?」

エルフィ「構わないわ」

サイラス「それじゃ、失礼する。まだちゃんとした自己紹介が済んでなかったな。俺はサイラス。新米の騎士だ」

エルフィ「私はエルフィ、エリーゼ様に仕えてる。よろしくね」

サイラス「ああ、よろしく頼む。それで話は戻るけど、どうして悲しいと思ったんだ」

エルフィ「エリーゼ様は、私たちよりもカムイ様を優先された。感じちゃいけないのかもしれないけど、そこに少しだけ思うことがあるのよ」

サイラス「……」

エルフィ「私はエリーゼ様を守るために王城兵になったから。どこに出るにしても何か言ってもらいたかった。昔からの親友だったから」

サイラス「そうか、エリーゼ様と昔からの親友なんだなエルフィは、なんだか俺に似てる気がする」

エルフィ「? 私は女だけど? 髪型だってぜんぜん違うわ」

379: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 23:27:29.62 ID:5DgfEtrn0
サイラス「ちがうちがう。どうして見た目で考えるんだ」

エルフィ「じゃあ、なに?」

サイラス「騎士になった理由もそうだけど、俺もカムイとは昔馴染みだ」

エルフィ「そうだったの」

サイラス「ああ、目が見えないカムイの手を引いていろいろな場所を歩いたものさ。今でも思い出せるくらいに、カムイと過ごした日々は俺の原動力といっても過言じゃないからな」

エルフィ「私もエリーゼ様と過して来た日のことを忘れることはないわ」

サイラス「そうだろう。今の俺があるのはカムイと出会ったからなのと同じようなものさ」

エルフィ「そうね……だから、少しだけ思ってしまうのかもしれないわ」

サイラス「エルフィ、エリーゼ様のこと信じているんだよな?」

エルフィ「ええ、信じているわ」

サイラス「なら、それで充分だと俺は思う。今、エルフィはカムイ様に少しだけ嫉妬してるだけだからな」

エルフィ「私が、嫉妬してる?」

サイラス「ああ、でもそれは自然なことさ。今まで一緒にいた親友が、誰かのために走って行ってしまうんだ。思わないことがないわけない」

エルフィ「……」

サイラス「でも、そうなってしまうくらいにエリーゼ様のことをエルフィは大切に思ってる。それはとても素晴らしいことだと俺は思う。だから、今はその少しだけ悔しいって思うのくらい仕方のないことさ」


380: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 23:36:08.26 ID:5DgfEtrn0
エルフィ「……ふふっ、どこかでエリーゼ様のことを私が一番わかっているって、思っていたのかもしれないわね。ありがとうサイラス」

サイラス「お礼なんていいさ。それに親友のために兵士になる道を選んだ奴が同じ仲間にいるのは、なんだか安心する」

エルフィ「そういうこと、だから似ているって……」

サイラス「まぁ、そうなるな。ただ……」

エルフィ「?」

サイラス「いや、なんでもない。俺は少し外を見てくるから、エルフィも体を冷やさないようにしとけよ」

エルフィ「ええ、ありがとう」

エリーゼ「う、ううん。エルフィ……」

エルフィ「エリーゼ様、いいえ、エリーゼ。安心してね、私が必ず守り切ってあげるから。私は、あなたを守るためにここにいるから……」ナデナデ

エリーゼ「うん……ありがとー」

エルフィ「ふふっ」






サイラス「………はぁ」

381: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 23:46:57.16 ID:5DgfEtrn0
カムイ「フェリシアさん。落ち着きましたか?」

フェリシア「は、はい。すみません、ここまで泣いてばっかりで」

ジョーカー「まったく、カムイ様の前で泣き続けてる時はどうしようかと思ったぞ。まぁ、落ち着いたようで何よりだ」

リリス「はい。落ち着いてくれてよかったです」

カムイ「それで、フェリシアさん。ここから村まではどう行けばよいのでしょうか? 吹雪の中でも到着するにはフェリシアさんの知識が必要です」

フェリシア「ええっ!? この吹雪の中を行こうって言うんですか。そんなの自殺行為ですよ」

リリス「でも、そうしないと村につけないじゃないですか」

ジョーカー「なにか方法があるんだったら今すぐ言え。それがお前のするべき最初の仕事だ」

カムイ「お二人とも、少し落ち着いてください。それで、フェリシアさん。何か方法はないんですか?」

フェリシア「あ、あります」

カムイ「あるんですか」

フェリシア「あるというよりも、私の故郷ですから。天気の移り変わりを読むことくらい、お安いご用です」

ジョーカー「そう言うことか、しかしちゃんと予測できるんだろうな。さすがに途中で道に迷うなんていうオチは御免だぞ」

フェリシア「そ、そんなことしません。カムイ様は私にチャンスをくれたんですから、それを棒に振ることはできません」

382: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/27(木) 23:56:44.15 ID:5DgfEtrn0
カムイ「フェリシアさん。ありがとうございます。それでは、導いてくれますか? 私たちをあなたの故郷に」

フェリシア「はい、任せてください。でも、私は戦いには参加できません、カムイ様の約束を見届けたいから、それでも……いいですか?」

カムイ「はい。ここまでしてもらったんです、フェリシアさんは見ていてください。必ず約束を果たして見せます」

フェリシア「はい、頑張ってください」

ジョーカー「はぁ、フェリシア。ここでの戦いが終わって城塞に戻ったら、一から作法を鍛えなおすからそのつもりでいろよ」

フェリシア「ええっ、なんでですか!?」

ジョーカー「一度、カムイ様を裏切ってるんだ。お前はまたカムイ様に仕え始めた当時に戻る、つまりもう一度作法の練習からやり直しに決まってるだろ」

フェリシア「そ、そんなぁ」

リリス「それじゃ厩舎の世話は私が教えますね」

フェリシア「り、リリスさんまで、ひどいですぅ」

カムイ「そうですね、では私はこれが無事に終わったら、あれをやりましょう」

フェリシア「え、カムイ様?」

カムイ「久々なので楽しみです。指をよくほぐしておかないといけませんね」

フェリシア「カムイ様? いったい何をするんですか?」

リリス「………」

ジョーカー「………」

383: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 00:06:39.77 ID:kSwHB2ue0

◆◆◆◆◆◆

フェリシア「………そろそろです」


 ビュオオオオオオオオ――

 ………

ジョーカー「驚いたな、本当に吹雪が止んだ」

モズメ「すごいわ。こんなに天気読めるなんて」

サイラス「さてと、で、どうするんだカムイ」

カムイ「特に策は考えていません。まっすぐ出会って、まっすぐ解決しましょう。正直、下手な小細工をする方がのちに遺恨を残す可能性がありますから」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたしも頑張るから」

カムイ「ええ、一緒にがんばりましょう」

エルフィ「うん、いっぱい食べたから。次の戦いが終わるまでは持つわ」

ハロルド「ううむ、私の食べ物がビスケット一つだけになってしまったが、なあに、私はこれだけでも十分頑張れる!」

リリス「ハロルドさん、私の持ってるこれをどうぞ」

ハロルド「むっ、いいのかね?」

リリス「はい、私はあまり前線に立てるわけじゃありませんから」

ハロルド「そうか、ではありがたく……うまい!」

リリス「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいです」

フェリシア「え、えっと、皆さん!」

一同「?」

フェリシア「あ、あの。姉さんを、村のみんなのこと、お願いします!」ペコッ

カムイ「ええ、任せてください。だから、フェリシアさんは見つからないように私たちを見ていてください。ちゃんと、どうにかしてみせますから。それじゃ、皆さん行きますよ、氷の部族の村へ」

384: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 00:18:47.18 ID:kSwHB2ue0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村『族長の家』―

クーリア「……目が見えないという先入観は捨てたほうがいい、そういうわけだな」

フローラ「ええ、父さん。私が暗夜で仕えていた方は、目が見えないことがハンデになりえない様な方です」

クーリア「それを知っていながらなぜフェリシアを向かわせたのだ……」

フローラ「フェリシアもその方に仕えていましたから。それに戦わせるために送ったわけじゃありません……。王女を説得して王都に戻ってもらうためです」

クーリア「……だが、森に向かった者たちは今だ帰っていない。吹雪が止むこの時間に戻ってくることになっていたはずなのにだ」

フローラ「ええ、つまりそう言うことでしょう……。私が甘かったのかもしれません」

クーリア「……くっ、従者であろうと暗夜に立て付くものには刃を下す、それが王女のやり方ということか」

フローラ「………」

クーリア「フローラ、遠慮は無用だ。村の者に伝えよ、全員で迎え撃つ準備をするようにと。出来れば捕らえ、暗夜王国との取引に利用する!」

フローラ「わかりました。父さん」

 ガチャ バタン

フローラ「カムイ様、あなたならフェリシアを手に掛けるなんてことしないことはわかっています。これは私のエゴ、フェリシアに生きていてもらいたいための私の勝手な考え。フェリシア、姉さんはこんなことしか考えられないのに、なんで一緒に帰るなんて考えたの」

385: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 00:32:54.23 ID:kSwHB2ue0


フェリシア『姉さん、姉さんが戻るなら私も一緒に戻ります! 大丈夫です、父さんを一緒に説得して、カムイ様を驚かせてあげましょう』

フローラ『……ええ、そうね。でも、父さんとの話は私に任せて。フェリシアはカムイ様に戻るよう伝えて。大丈夫、私が何とかしておくから』

フェリシア『姉さん……あ、あの』

フローラ『なに?』

フェリシア『ううん、なんでもないよ。私、カムイ様を説得してみせるね……。だから、姉さん、無茶はしないで。だって、姉さんがいなくなったら私悲しいから』

フローラ『大丈夫、そんなことになんてならないわ。安心して』




フローラ「ごめんなさい、フェリシア。私は……やっぱり氷の部族の人間で、心が冷たくて、とても暗夜が許せない人間なの。それをあなたは理解してたはずだから、カムイ様に私たちを止めるよう頼んでるかもしれない」

フローラ「でも、その思いに応えられない。私を止めに来たのが仕えてきた主君であっても変わらない。だって、部族に厳しくしてきた暗夜を私は許せない」チャキッ

 ガチャ バタン!

部族兵たち「フローラ様! フェリシア様たちが戻らないのです、もう吹雪も治まったというのに……」

フローラ「この時間になって戻らない、残念ですけど……最悪の結果を考えないといけません」

部族兵たち「そ、そんな……」
 
フローラ「みなさん、父さんからの指示を伝えます。暗夜からやってきた野蛮な者たちを一掃してください。王女だけはできれば生きて捕らえてください。暗夜との交渉材料に使います。私たちは間違っていません、それを見せつけましょう」

部族兵たち「フェリシア様の仇を討つぞ! オオオオオオオオオッ!」

386: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 00:41:50.98 ID:kSwHB2ue0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村周辺―

???「どうやら、吹雪が止まったみたいだね。これでどうにか部族の村まで進めそうだ」

???「やったの! これでどうにか追いつけるの!」

???「本当だよ。それにしてもカムイ様はすごいね、僕たちをマークス様が直々に送り出すくらいなんだから」

???「マークス様、とっても心配そうだったの。ピエリたちが駆けつけて、安心させてあげるの! ラズワルドも急ぐの!」

ラズワルド「そうだね。もうすでに部族の村に入って戦いになってるかもしれない。ピエリ、マークス様からの命令は覚えてるよね?」

ピエリ「誰も殺さないように戦うの」

ラズワルド「ピエリ大丈夫かい?」

ピエリ「大丈夫なの、ここに来るまでにノスフェラトゥをいっぱい、えいっ!したからしばらく大丈夫なの!」

ラズワルド「ははっ、それはよかったよ。それじゃ、急ごう。僕たちが加われば何とかなるはずだから」

ピエリ「そうなの。ラズワルドもピエリの馬に乗るの!」

ラズワルド「それじゃ、言葉に甘えさせてもらうね!」

ピエリ「それじゃ行くの! ちゃんと掴まってるの!」

ラズワルド「………」

ラズワルド(カムイ様、どうか僕たちが行くまで、無事でいてください……)


第八章 前編 おわり

387: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 00:44:09.53 ID:kSwHB2ue0
現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでサイラスとエルフィの支援がCになりました。

388: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 00:49:15.71 ID:kSwHB2ue0
今日はここまでになります。書いてて思ったけど、これ魔法使い無しで戦うことになるのか……

 次の戦闘でカムイと陣を組むキャラクターを決めます。お時間のある方、参加いただけると幸いです。

 サイラス
 ジョーカー
 リリス
 エルフィ
 エリーゼ
 ハロルド
 モズメ

 >>400
 
 また、戦闘での組み合わせを一組決めます。これも上記一覧のキャラになります

 >>402
>>403

 重複はその後のキャラクターで設定しますのでよろしくお願いいたします。

391: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/28(金) 01:18:25.43 ID:zA6izrcPo
さらばオーディン
エリーゼ

393: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/28(金) 06:50:22.90 ID:k6tj/Yj30
リリス

394: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/28(金) 07:04:56.10 ID:S9tdOs/p0

安価はエリーゼおなしゃす

397: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 23:08:39.22 ID:kSwHB2ue0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村―

カムイ「………ジョーカーさん」

ジョーカー「ええ、すでに多くが外に出ています。戦闘の準備もすでに終えているようです」

カムイ「モズメさん、これを」

モズメ「これは……弓やな」

カムイ「はい、弓を扱うことはできますか?」

モズメ「猟は得意分野やったからな。問題あらへんよ」

カムイ「なら安心ですね。すみませんが、私たちは離れて戦うことのできる人が今あまりいません。モズメさんにはできる限りの援護に回って欲しいんです。相手を釘づけにしてくれるだけで結構ですから」

モズメ「わかったで」

カムイ「それじゃ、まずは私が行きます。正直、話し合いで収まるとは思えませんけど」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたしも一緒に行くよ」

カムイ「エリーゼさん。ですが……」

エルフィ「エリーゼ様、それは危険すぎます」

カムイ「ううん、もしかしたらあたしとカムイおねえちゃんだけで行けば、話を聞いてもらえるかもしれない。フェリシアとの約束だってあるもん、だから……」

カムイ「戦闘になる可能性はとても高いです。それでもいいですか?」

エリーゼ「うん。元はといえば、あたしがフェリシアたちに見つかっちゃったから……。だから、あたしにできることをやりたいの」

398: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 23:20:08.79 ID:kSwHB2ue0
エルフィ「エリーゼ様………」

エリーゼ「エルフィ、大丈夫だから。心配しないで」

エルフィ「……カムイ様」

カムイ「なんでしょう?」

エルフィ「私がたどり着くまで、エリーゼ様のことをお願いします」

カムイ「はい」

サイラス「よし、俺たちは入口より離れた場所で待機する。だが、到着するのに時間が少し掛るはずだ。それまでは……」

カムイ「何とか生き残ってみせますよ。いや、逃げきってみせますと言ったほうがいいですね」

ハロルド「話には聞いていたが、カムイ様はなんとも緊張感がないというか、冷静な方なのだな」

ジョーカー「カムイ様は冷静で美しい、素晴らしい御方ですよ」

カムイ「美しいは余計ですよ。私は自身の顔を見たことがないんですから。さて、お話はここまでです。皆さん、もしもの時はお願いします」




エルフィ「………」

リリス「エルフィさん、大丈夫ですよ」

エルフィ「リリス?」

リリス「カムイ様は、必ずエリーゼさまを守ってくれます。だから、もしもの時は急いで二人の元に駆けつけましょう」

エルフィ「そうね。その場所までは私があなたを守るわ」

リリス「はい。私もエルフィさんを守ってみせますね」


399: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 23:29:57.89 ID:kSwHB2ue0
◆◆◆◆◆◆

フローラ「……来ましたね」

部族兵たち「………」ジャキッ



クーリア「ほう、わずか二人で来るとは、私たちに対してはそれだけで十分と?」

エリーゼ「ち、ちがうよ。あたしたちは、お話をしに来ただけ。本当にそれだけなの」

カムイ「はい。氷の部族の皆さんに話合いをするためにここまでやってきました」

クーリア「私の娘を一人殺したものが何を言う」

エリーゼ「あたしたちは……そんなことしてないよ! フェリシアも無事、だから……」

クーリア「なら、なぜあなた方とともにフェリシアがいない? 姿無き言葉に、私は動じたりしない」

エリーゼ「……そ、そんな」

カムイ「エリーゼさん、もういいです。こういう方に説明は無用です」

エリーゼ「で、でも……」

カムイ「それにこの場にフェリシアさんがいたとしても、信用はしないでしょう。大方、無理に言わされていると決めるでしょう」

クーリア「言いたいことをいウ方だ」

カムイ「あなたが、族長ですか。はじめまして、カムイといいます」

クーリア「そうか、あなたがカムイ王女ですか、なるほどフローラとフェリシアに聞いた通り、冷静な人物のようだ。その手で従者を殺しながら、身に何も感じないとは、まるで鬼ですね」

カムイ「そうですね。あなたにはそう見ているようですから、何も訂正するつもりはありません。あなたの見たいように私を見てくれて構いません」

フローラ「カムイ様、今の立場を理解しての発言、そう考えてよろしいのですね?」

400: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 23:40:24.01 ID:kSwHB2ue0
カムイ「フローラさん、あなたは氷の部族の方だったんですね」

フローラ「ええ、そうですカムイ様。そして、今は暗夜に刃を向ける者です」

カムイ「私の従者として活動していたのは……」

フローラ「カムイ様、あの城塞は牢獄なんですよ。私とフェリシアがあそこにいたのは、ただの人質としてだったんですから」

カムイ「人質ですか。ふふっ、そうなると反乱がおきている時点で、人質の意味はありませんね」

フローラ「ええ、そうかもしれません。だから私とフェリシアはここまで戻ってこれたんでしょう。そして、今日でそんな生活も終わりです」


フローラ「カムイ様、そしてエリーゼ様。あなた方を捕らえて、氷の部族は暗夜から独立させてもらいます。長きにわたる迫害を続けてきた暗夜に付いたあなたを、もう主君と呼ぶことはできません」

カムイ「……話し合いの余地はないということですね」

クーリア「暗夜の王女を捕らえるのです。まだ、二人の仲間がこの村に入ってくる前に」

エリーゼ「カムイおねえちゃん。ごめんね、やっぱりあたし……」

カムイ「いいえ。こうして話し合いをしようと一緒に来てくれたエリーゼさんが悪いわけありません。頭が固い人たちが悪いだけですから……」

カムイ(フェリシアさんを連れてこなくて正解でしたね。こんな風に話を聞いてくれない家族の姿など、見たくないに違いありませんから)

フローラ「それでは、皆さん。行きましょう」

部族兵「丸腰の王女と盲目の王女だけだ。すぐに捕まえてやる!」

クーリア「盲目とは思わないことです。いいですか、決して殺してはなりません。生きていなければ意味がないのですから」

カムイ「エリーゼさん、あの民家の影まで行けますか?」

エリーゼ「うん、まかせて。カムイおねえちゃん、乗って!」

401: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/28(金) 23:51:00.07 ID:kSwHB2ue0

サイラス「……! 動いた! みんな行くぞ!」

リリス「エルフィさん、乗ってください!」

エルフィ「ええ!」

ハロルド「ぐおっ、足が雪に取られて……」

モズメ「何やってるんや。こんなところで不運なところ見せつけんといてや」

ハロルド「出来れば私もこの不運から抜け出したいのだが」

モズメ「ならあたいの走った後を付いてくるんや。雪の硬い場所選んで通ったる」

ハロルド「すまない」

モズメ「気にせんでええよ。早くいかんと」

サイラス「リリスとエルフィはカムイとエリーゼ様の元に急いで行ってくれ。俺たちは、横から強襲する!」

リリス「わかりました! エルフィさん、少し揺れますよ!」

 ヒヒーン!!!!

エルフィ「……すごく早いわね」

リリス「これでも厩舎係ですから。馬を扱うのはお手の物なんです。それよりもエルフィさんは大丈夫ですか?」

エルフィ「あまり乗馬訓練はしたことないから……。少しだけ辛いわね」

リリス「も、持ちますか?」

エルフィ「持たせるわ。だから、早くエリーゼ様の元に」

リリス「はい、わかりました。速度あげますね!」

エルフィ「えっ、まだ上がるの!?」

リリス「行きますよ、エルフィさん!」

エルフィ「ちょ……揺れ……ううっ」

サイラス「なんだあれ、全く追いつける気がしないぞ」

402: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 00:00:47.18 ID:enCGDMe90

カムイ「さて、どうにか感覚把握で民家を理解できましたけど、ここから先はもうわかりませんね」

エリーゼ「どうするの? カムイおねえちゃん」

カムイ「決まっています。ここで数人倒してしまいしょう」

エリーゼ「やっぱりそうなるよね」

カムイ「多分左右から来ますから。ここは、エリーゼさん馬を下りてください」

エリーゼ「ええっ、大丈夫なの?」

カムイ「はい、それとこちらに……」



部族兵「よし、この民家の裏だ。一気に行くぞ!」

 ザザザッ

部族兵「!? どこに行った!?」
 
 サガセ、サガスンダ

部族兵「馬を置いて一体どこへ………」

 ハラ……ハラ……

部族兵「んっ、これは木の葉?」



カムイ「上からだと気配がとても探しやすいですね。それでは行きますか」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたし……」

カムイ「今はここにいてください。たぶん無傷では済みませんから、終わった直後に治療をお願いします」

エリーゼ「うん! 気を付けてね」

カムイ「わかっています。てやああああ!」

部族兵「ぐがぼ……」ドタッ

部族兵「なに!?」

カムイ「遅い、はぁ! せやっ!」

 ドサドサ

部族兵「くっ、だがこの人数なら!」

カムイ「まだまだ、これからですよ」

 シュオオオン

部族兵「!? な、なんだこれは!」

カムイ(竜状態)「驚いている暇はないですよ! せいやっ!」

部族兵「ぐおおあああああっ」ドタッ

エリーゼ「カムイおねえちゃん……すごい」

403: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 00:12:47.53 ID:enCGDMe90
部族兵「怯むな! 迎え撃つ、援護しろ!」

部族兵「わかりました。くらえっ!」

カムイ(竜状態)「ぐっ……魔法ですか。避けづらいものを使ってきますね」

部族兵「まだまだ、ここから続くぞ!」

 ザシュ 

カムイ(竜状態)「やりますね、でもこちらもまだまだ」

部族兵「いたぞ!」

エリーゼ「もう追いついてきちゃったの!? カムイおねえちゃん!」

カムイ(竜状態)「はさみうちにされましたか」

部族兵「化け物め。戻ってこなかった同胞をこれで殺したのだろう!?」

部族兵「一気に掛れば、どうにかなるはずだ!」

カムイ(竜状態)「……負けるわけにはいきません」

部族兵「俺たちも、負けるわけにはいかないんだよ! くらえ!」

カムイ(竜状態)「くっ、これはさすがに避け切れません!」


 ズバッ


エルフィ「てやあ!」

部族兵「な、なんだとぉ……」

リリス「カムイ様! お怪我はありませんか」

エルフィ「ふん、リリス。サポートをおねがい!」

リリス「はい!」

部族兵「くらええええええええ!」

エルフィ「ぐっ」

部族兵「もらった!」

リリス「させませんよ!」カキィン

エルフィ「いくわ! せやぁ!」

部族兵「ば、ばかなぁ!」



エルフィ「お腹すいちゃった……」

リリス「食いしん坊なんですね」

404: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 00:22:47.78 ID:enCGDMe90
エリーゼ「エルフィ!」

エルフィ「エリーゼ様、どうして木の上なんかに?」

カムイ「これくらいしか手立てがなかったので。すみません、近くに一緒にいてあげることが私はできませんでした」

エルフィ「いいの、守ってくれてありがとう。カムイ様とエリーゼ様はここでしばらく休んでいて、私とリリスでどうにかしてみせるから」

カムイ「いいんですか? まだ敵は……」

エルフィ「大丈夫です。みんな合流しましたから」




部族兵「あの民家の影に暗夜軍の増援も行った。一気に畳みかけ――」

サイラス「そうはさせない!」ザンッ

ジョーカー「そういうことだ!」ヒュン

部族兵「くそっ、新手か。魔法で攻撃を――ぐああああっ!」

モズメ「させへんよ。ハロルドさん、今がチャンスや」

ハロルド「ああ、感謝するよモズメくん! 喰らいたまえ、これが正義の力だ!」

部族兵「くっ、これでは民家に近づけ―――」

リリス「今です、動きが止まりました」

エルフィ「リリス、後方の奴らをどうにかするわ。回り込んで!」

リリス「はい! 行きますよ」

 ワー ワー ウシロカラダト!? グワアアアアアア

エリーゼ「みんなすごい。どんどん倒してる」

カムイ「ええ、これでどうにかなったというところでしょうね――」

エリーゼ「うん、これなら」

カムイ「第一陣は終りです。第二陣が来ますね」

エリーゼ「えっ……」

405: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 00:34:09.66 ID:enCGDMe90
フローラ「第一陣がやられたようです。では、父さん、行きましょう」

クーリア「ああ、捕らえるのはできたらにするべきだろう。殺すつもりで行く、いいなフローラ」

フローラ「ええ、父さん」




サイラス「くそっ、また新しいのが出てきたぞ。さすがに人数的に不利だな」

カムイ「はい、ですがやるしかありません。そうしない……んっ?」

カムイ(この音、馬? 入口の方角から何かが来ている?)

 パカラパカラッ

ピエリ「平原を抜けたの!」

ラズワルド「よし、もう戦闘は始まってるみたいだけど、カムイ様たちはどこだろう?」

エルフィ「新手!?」

エリーゼ「でも、あれって暗夜の装備だよ。もしかしたら――」

サイラス「増援か? でも一体誰が?」

カムイ「あなたたちは誰ですか?」

ピエリ「! ラズワルド、あそこなの!」

ラズワルド「ああ、カムイ様! やっと見つけましたよ」

 タタタタタタタッ

カムイ「えっと、あなた方は」

ラズワルド「はい、僕はラズワルド。マークス様からの命を受けて、カムイ様に加勢しに来たんだ」

ピエリ「ピエリはピエリっていうの。ラズワルドと同じマークス様の命でここに来たの!」

エリーゼ「マークスおにいちゃん、すっごく心配してたから。でも、あたしだけじゃやっぱり足りないって思われてたのかな……」

カムイ「いいえ、エリーゼさんがいて助かってますから。大丈夫ですよ」ナデナデ

エリーゼ「えへへ、カムイおねえちゃん、ありがとう!」

406: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 00:44:31.44 ID:enCGDMe90
カムイ「それで、ラズワルドさん。ピエリさん。来ていただいたばかりなのですが……」

ラズワルド「はい、誰も殺さないように、ですよね」

ピエリ「ピエリたちもマークス様からそう命令を受けてるの! だから心配しないでいいの! でもボコボコにするの!」

カムイ「マークス兄さん。手回しが早いんですね」

ピエリ「早くボコボコにしたいの!」

カムイ「ええ、一緒に彼らをボコボコにしましょう。話を聞いてくれない頭の固い人たちですから」

ピエリ「頭をえいっして、柔らかくしてあげるの! ピエリ、カムイ様といい友達になれる気がするの!」

ラズワルド「うん、それじゃ。僕たちもカムイ様の指揮下に入るから。指示をお願い」

カムイ「はい、それではみなさん。一気に攻めます、だけど殺さないでください。すごく難しい問題ですが、同時に力量の差を見せつけられます。相手の意思を完全に砕いてあげましょう」

ピエリ「一番乗りなの!」

ラズワルド「前に出すぎないようにね」

ピエリ「えいっ! それ!」

サイラス「ラズワルド、ピエリ! 俺はサイラス、援護に回るから前線は任せた!」

ピエリ「わかったの!」

部族兵「くっ、なんだこの力は。くそ、押し負けちまう! なっ、しまった横から!?」

ラズワルド「ごめんね」ザシュ

部族兵「ぐはぁ!」

ラズワルド「うん、いい感じ!」

部族兵「けっ、背中ががら空きだぜ!」

モズメ「あんたもや」

部族兵「ぐあっ」

エルフィ「吹っ飛んでて」ドガン

リリス「うわぁ、盾で殴られて結構吹っ飛んじゃいましたね」

エリーゼ「エルフィ、すごい!」

エルフィ「ふふっ」

407: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 00:54:09.36 ID:enCGDMe90
クーリア「……何故だ。なぜ。正義はこちらにある、こちらにあるはずなのになぜ、こんなにも……」

フローラ「父さん、私たち二人であの方たちを倒しきればいいことです」

クーリア「そうだな。すまない、族長である私が気弱になってしまっては」

フローラ「いいえ。ここが踏ん張りどころですから……」

フローラ(何が踏ん張りどころなのか、もうすでに戦況は私たちに不利な状態になっている。もう全体の八割が倒れた今、私たちが勝てる可能性なんて……)



エリーゼ「カムイおねえちゃん!」

カムイ「はい、ここまで運んでくれて、ありがとうございます」スタッ

クーリア「直々に始末をつけにきたというわけですか?」

フローラ「くっ父さんには……!」

 ヒュンッ キキィン


フローラ「………」

ジョーカー「お前の相手はこの俺だ」

フローラ「ジョーカー」

ジョーカー「主君に従者を切らせるわけにはいかない。たとえ刃を向けた奴だったとしてもな」

カムイ「ジョーカーさん、ありがとうございます。クーリアさん、あなた方の負けです」

クーリア「ふん、まだ終わってなどいない。あなたを捕らえれば、この反乱は実を結ぶ。氷の部族は晴れて呪縛から解放されるんです」

カムイ「よ迷い事ですね。私たちにこれほどやられたのに、お父様を手玉にとって戦えるなどと本当に思っているんですか?」

クーリア「やってみなければわからないこともある。その可能性を否定することはあなたの自由ですが、私たちはそれにかけているのです! リザイア!」

カムイ「話は聞かないということですね。なら、どこまでやれるか見せてもらいましょう」タタタタタタタッ

クーリア「待て!」

408: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 01:02:15.51 ID:enCGDMe90
フローラ「ジョーカー。何年ぶりかしら、こうして刃を交えるのは」

ジョーカー「最初はカムイ様に反抗的な態度をとったお前に喧嘩を売った時だったか。まぁ、そんなことどうでもいい。目を覚ませ、お前がいるべきはカムイ様の傍だ。ここじゃない」

フローラ「……私が城塞にいたのはただの人質として、カムイ様に忠誠なんて誓っていないわ」

ジョーカー「そうかい、ならどうして今まで逃げださなかったんだ? 今のお前を見ていると、すぐにでも逃げだしてそうに見えるが?」

フローラ「……それはね、ジョーカー。あなたがいたから……」

ジョーカー「ああ? 俺がいたから逃げなかった? 意味がわかんねえな」

フローラ「そうよね、あなたにはわからなくて当然だわ。同時に、それがとても悔しくてたまらない。そうね、私がカムイ様に刃向ったのは、もしかしたら……」

ジョーカー「御託はいい、さっさと武器を抜け。一から教育し直してやる。もちろん帰ったらジジイにも報告するからな」

フローラ「それは困りますね。ジュンターさんの作法の教えは、長くて辛いものですから」

ジョーカー「なら、さっさと帰ってこい!」ヒュンッ

フローラ「いくらジョーカーの頼みでも、それは受けられないわ!」

ジョーカー「くそ、姉妹揃って馬鹿じゃねえか。大馬鹿野郎だ」

409: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 01:11:21.06 ID:enCGDMe90
クーリア「くらえ」

カムイ「そんな攻撃じゃ当たりませんよ」タタタタタタッ

クーリア「くそっ、おちょくるつもりか。私たちの行為そのもの愚弄して、何が楽しい!」

カムイ「愚弄はしません。ですが、こんな私一人をどうにかできないのに、反乱が成功すると思っているその考えは浅はかですよ。あなたが考えているよりもお父様はとても冷酷な方なんですから」

クーリア「その血を引いているあなたも同じものだろう!」

カムイ「そうですね、多分間違っていませんでしょう。でも、それで私がここで倒される可能性が上がるわけじゃありません。それに、一人でよく追ってきましたね。私の仲間が待ち構えているかもしれないというのに」

クーリア「!!!?」ズサササ

クーリア「……!?」

クーリア(な、なぜ足を止めた!? 私は、反乱を、解放を求めて闘っているはずなのに、なぜ、なぜそんな言葉で足を止めた!?)

カムイ「結局、それくらいということです。フローラさんなら、私の言葉に耳を貸さず、私を捕らえることに執着していたでしょう」

クーリア「わ、私が。私が自分の命を優先したとでも!」

カムイ「私は何も言っていませんよ」

クーリア「くっ」

411: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 01:22:46.14 ID:enCGDMe90
カムイ「もう逃げるのも空きましたし、ここならいいでしょう」

クーリア「………何もない場所だと」

カムイ「ええ、あなたは魔法。私は剣、こんな遮蔽物のない空間、あなたのほうがとても有利です」

クーリア「……あなたという人は、どこまで人を」

カムイ「死にたくなければ、本気で来てください」

クーリア「……」ゾクッ

カムイ「行きます」

クーリア「うおおおおおおおおおっ!!!」



 ヒュンッ




クーリア「ぐっ、魔術書が!」

サイラス「よっと、これで武器はもう無いな」

モズメ「へへっ、やったで!」

ハロルド「素晴らしい腕前だぞ。モズメくん」

モズメ「いやや、照れるわ。カムイ様、言われたとおりやったで!」

カムイ「はい、ありがとうございます。さて、まだ戦いますか?」

クーリア「ぐっ、卑怯な手を使うとは」

カムイ「話し合いをしにきた私とエリーゼさんに刃を向けておきながら、それはないでしょう?」

クーリア「くっ、殺せばいい。もう私には何も残っていない」

カムイ「………」

クーリア「なぜだ、なぜとどめを刺さない」

カムイ「言ったでしょう。私は別にあなた方を殺すためにここまで来たわけじゃないんですから」

クーリア「な、なんだと、だ、だがフェリシアは……」

カムイ「フェリシアさんも、ほかの方々も無事です。エリーゼさんが言ったでしょう、無事だって。かってに盛り上がったのはあなた達ですから」

クーリア「……わ、私は」

カムイ「サイラスさん、ここは頼みます。私はジョーカーさんとフローラさんを」

サイラス「ああ、わかった!」

412: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 01:35:02.42 ID:enCGDMe90
フローラ「はぁ、はぁ、はぁ」

ジョーカー「はぁ、はぁ、はぁ。くそ、フェリシア程じゃないにしろ。やっぱり手こずるな」

フローラ「ジョーカー、私は負けるわけにはいかない。絶対に、絶対に」

ジョーカー「………」

フローラ「なによ、武器を取りなさい! まだ、戦いは………」

ジョーカー「いいや、もう戦いは終わったようだ」

フローラ「な、何を言って」

ジョーカー「おかえりなさいませ、カムイ様」

カムイ「ええ、遅くなりましたジョーカーさん。フローラさんあなたの父を拘束しました。それに、村の方々もすべて無力化済みです」

フローラ「………」

カムイ「闘いは終わりました。だから、その武器を納めてください」

フローラ「いやです」

ジョーカー「フローラてめえ、物わかりの悪い奴だな」

フローラ「暗夜王国のいいなりになるくらいなら、私死んだって構わない。そう考えているんですから」

カムイ「………フローラさん」ザッザッ

フローラ「カムイ様、それ以上近づかないでください!」

カムイ「………」ザッザッ

フローラ「来ないで!」ヒュンッ

カムイ「ぐっ………」ザッザッ

フローラ「どうして、どうして近づいてくるんですか!」

カムイ「フローラさんが私の大切な従者だからですよ。まだ、私はあなたを解雇なんてしていませんから」

フローラ「暗夜王国にとって抑止力になるからですよね。カムイ様は私を人質としてしか見てない。そうなんですよね」

カムイ「いいえ、わたしはあなたのことを信頼できる人だと思っていますよ。だからです」ダキッ

413: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 01:42:09.47 ID:enCGDMe90
フローラ「や、やめてください。私を、そんな優しく抱きしめないでください」

カムイ「なぜですか?」

フローラ「私は、私は今日死ぬつもりだったのに。心も体も、氷のようになってしまおうって思っていたのに……」

カムイ「それは無理な相談です。フローラさんには、いつもどおり優秀なメイドさんでいてほしいんですから。そんな氷のようになってもらっては困ります」

フローラ「放してくれないんですね……カムイ様」

カムイ「はい、まだまだ放してあげません。フェリシアさんもフローラさんのことを待っていますから。それに久々にあれもやりたいですし」

フローラ「え、えっとカムイ様。あのあれというのは……」

カムイ「とにかく、ここは私に任せてくれませんか? 悪いようには絶対にしません」

フローラ「……その言葉を、信用してもいいんですか?」

カムイ「はい、今はまだ早すぎただけなんです。だから私を信用してください」

フローラ「………本当に、カムイ様には敵いませんね」


「私の負けです。カムイ様……」


414: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 01:45:50.66 ID:enCGDMe90
 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C→C+
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+

仲間たちの支援
 
 今回の戦闘でリリスとエルフィの支援がCになりました。
 今回の戦闘でハロルドとモズメの支援がCになりました。
 今回の戦闘でジョーカーとフローラの支援がCになりました。
 今回の戦闘でピエリとラズワルドの支援がCになりました。

415: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 01:53:09.17 ID:enCGDMe90
今日はここまでです。このルートではハイタカさんは捕獲できないんだ、すまない。
 
 次回かその次で第八章が終わります。

 次の安価を決めます。

 氷の部族の村、族長の家で会話をしている組を二組決めたいと思います。
 お時間ありましたら、ご参加いただけると幸いです。

 サイラス
 ジョーカー
 リリス
 モズメ
 エルフィ
 エリーゼ
 ハロルド
 フェリシア
 フローラ

 キャラクターは上記からお願いします。

 一組目は >>417 >>418

 二組目は >>420 >>421

 になります。

417: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/29(土) 02:17:02.61 ID:vJT15XFO0
ハロルド参上だぁ!

418: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/29(土) 02:27:18.74 ID:PvEftSkG0
ジョーカーでおなしゃす!

420: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/29(土) 05:56:15.90 ID:4TheHAw4O
モズメ

421: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/29(土) 08:06:14.59 ID:DtVXHbx00
エルフィで!

423: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 23:07:22.52 ID:enCGDMe90
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村・族長の家―

エルフィ「お腹すいちゃった……でも、食事の準備ができるまで時間が掛るって言ってたわね。でも、がまんしなくちゃ」

エルフィ「……」きゅるぅぅぅ。

エルフィ「どうしよう、お腹が鳴ってしまうわ///」

モズメ「エルフィさん、どうかしたん?」

エルフィ「モズメ? なんでもないわ」

モズメ「でも、なんだ顔が赤いで?」

エルフィ「ほら、ここら辺は寒いから、その所為……」きゅるぅぅぅ。

モズメ「………」

エルフィ「……こ、これはその///」

モズメ「なんや、お腹すいとったんか」

エルフィ「その、いっぱい動いたから」

モズメ「そうやな、リリスさんと一緒にいっぱい動き回ってたから」

エルフィ「もう少ししたら夕食の時間だから、待ってようと思ってたんだけど……」

モズメ「みんなの前でお腹鳴らすなんてあかんで、エルフィさん女の子なんやから」

エルフィ「ならないようにできたらいいんだけど」

モズメ「これでええかな?」

エルフィ「え、これって。モズメの携帯食じゃ」

424: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 23:18:17.20 ID:enCGDMe90
モズメ「あたい、結構食べなくても持つ方なんよ。だから、今食べられないあたいの代わりにエルフィさんに食べてもらいたいんや」

エルフィ「モズメ……、ありがとう。それじゃあ、ありがたくいただくわ」ハムハム

モズメ「エルフィさん、戦ってる時かっこよかったわ。あたいはまだまだやからうらやましい」

エルフィ「かっこいいかどうかわからないけど、モズメだってよくやってたわ。最後にちゃんと敵を無力化してた、あの状況で魔術書だけを狙い打つなんて、そうそうできることじゃないわ」

モズメ「あれは、まぐれや。みんながいてくれたからできたことなんや。あたい一人やったら、たぶん」

エルフィ「モズメ。あれはまぐれなんかじゃない。モズメが行動して手に入れた結果だもの、そこを否定しちゃいけないわ」

モズメ「……そう言われても、実感が湧かないんや」

エルフィ「いいえ、すでに目に見える形であるわ」

モズメ「ど、どこにあるんや?」

エルフィ「周りを見て」

 ワー ワー ショッキハコッチニオイテクレ ハイハイ、マッタクカッテニカンチガイシテタダケカ クーリアサマモキズヒトツナカッタッテイウシ、オレタチモナンダカンダシンデナイシ、カンシャシナイトナ

425: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 23:27:07.78 ID:enCGDMe90
エルフィ「モズメがあの時、魔術書を狙い打てなかったら、まだこんな雰囲気じゃなかったはずよ。こうして、部族の皆が私たちを迎え入れてくれたのは、モズメの行動があったから。モズメの腕の良さはちゃんと証明されてるわ」

モズメ「………」

エルフィ「モズメのしたことは、この状況を後押しできた。今はそれでいいんじゃないかしら?」

モズメ「せやな……。あたい、役にたてるかわからへんかったから、エルフィさんの言葉で少し自信付いてきたんよ」

エルフィ「ふふっ、よかったわ」

モズメ「なぁ、エルフィさん。もしもまた悩んだりしたら、話聞いてもらってもええかな?」

エルフィ「いいわ。何か悩んだら話をして頂戴。私にできる限りで、答えるから」

モズメ「エルフィさん、ありがと」



『エルフィとモズメの支援がCになりました』

426: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 23:37:33.83 ID:enCGDMe90
◆◆◆◆◆◆

ジョーカー「ふむ、どうするか……」

ハロルド「ジョーカーくん、どうしたんだね。悩んでいるようだが」

ジョーカー「ハロルドか……」ササッ

ハロルド「なんで、自然と距離を取るのかね」

ジョーカー「出会ってばかりで申し訳ないが、お前の近くにいるとあまり良いことが起きない気がしてな」

ハロルド「ううっ、そう言われてしまってはぐぅの音も出ない。確かに、私はとてつもないほどに運が悪いのは確かだが……」

ジョーカー「そうか、ならできる限り近づかないでほしいな。カムイ様に用意する紅茶をこぼされたりしては大変だからな」

ハロルド「しかし、君が悩んでいることは見過ごせないな。どうしたんだね、このハロルドに聞かせたまえ!」

ジョーカー「……悩んでいることか。話したところで解決するものでもないと思うが?」

ハロルド「それはわからないぞ。もしかしたら、解決の糸口が見つかるかもしれない、私が協力する。まかせたまえ」

ジョーカー「あまり気乗りがしないが。親睦を深めるために大人数で楽しめる何かを頼まれた。できれば食事関連の事柄でだ」

ハロルド「食事は皆で楽しむものだろう」

427: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 23:46:56.21 ID:enCGDMe90
ジョーカー「俺が言っているのは、食事に遊びを織り交ぜたようなものの話だ」

ハロルド「うむ……。遊びかしかし食事に遊びを混ぜるというのは……」

ジョーカー「ああ、一歩間違えれば顰蹙を買うだろうな。カムイ様に任されてしまった手前、完璧にこなす必要がある」

ハロルド「私は食事で遊びは賛成できない。ただでさえ、私の食事は運に左右されることが多いのでな」

ジョーカー「?」

ハロルド「ミートサンドを頼んだら、ミートが入っていなかったり。焼き立てパンを買った直後に雨が降ったり、買出しの帰りに飛竜の群れが真上を飛行して糞を落とされたり。正直、食物に対してこう悲しい気持ちになる」

ジョーカー「なるほど、それがお前の言う俺に対するアドバイスということだな」

ハロルド「食事の見た目に遊び心を入れるのが一番いいはずだ。なに、ジョーカーくんは一流の執事だと聞く、きっとうまくいく」

ジョーカー「そうだな。うまく生かせないといけないな。ハロルド、ちょっとここで待っていろ」

ハロルド「むっ、なぜだ?」

ジョーカー「話を聞いてくれた礼に、ケーキでも作ってやる。ただ、手のかからないものだから、豪華なものは期待するなよ?」

ハロルド「なに、私のために用意してくれるのか!?」

ジョーカー「ああ、任せろ。お前にぴったりなものを用意してやるからな」ニヤニヤ

428: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 23:56:34.42 ID:enCGDMe90
ジョーカー「できたぞ。といっても、スポンジだけだがな」

ハロルド「流石というべきだな。しかし、これだけの量を食べてしまっては、夕食を食べられなくなってしまうぞ」

ジョーカー「全部食べろなんて言っていない。今から切ってやるから、選んで食べればいい」

ハロルド「そうだな。私は一切れだけで十分だ。他はみんなに分けてあげてくれ」

ジョーカー「そうか。よし、切り終わった。ほら、どこでもいいから食べるといい」

ハロルド「うむ、ではこの一切れをいただこう」

ジョーカー「……ハロルド、すごいな」

ハロルド「んぐっはむっ…なにがだ――」

ハロルド「!!!!!!!!」ダンダンダン!

ジョーカー「どうした、ハロルド! そんなにおいしいのか!」

ハロルド「じょ、ジョーカーくん! こ、これはなんだ。とても、とても苦いぞ!」

ジョーカー「ああ、お前の話を聞いて浮かんだアイデアを形にしてみた。一切れだけ苦くて体にいい薬草を中心に練りこんだ。運がものをいう遊び心を込めたデザートだ」

ハロルド「ぐっ……わ、私の話を聞いてどうしてこれができるのかね?」

429: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/29(土) 23:59:09.39 ID:enCGDMe90
ジョーカー「単純な話だ。お前の運の悪さを聞いたら、ちょっと試したくなった。本当にすごいな。十二等分した中の当たりを一発で引き入れるなんてな」

ハロルド「ぐほっ、ごほごほっ。な、何か飲み物をくれないか」

ジョーカー「ああ、今日の夕食に出すカムイ様の要望に力添えをしてくれたお礼に、二番目にうまい紅茶を淹れよう。これはしばらく、いい暇つぶしができそうだ」


『ジョーカーとハロルドの支援がCになりました』


432: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 14:59:00.75 ID:lxd7axcz0
◆◆◆◆◆◆
カムイ「………」

 コンコンコン

リリス「カムイ様、失礼いたします」

クーリア「………」

カムイ「クーリアさん。足を運んでいただいてありがとうございます」

クーリア「構いませんよ。村の者には誤解であったと説明した。それに、あなたたちが誰一人として命を奪わなかったこと、そして傷の手当てに全力を尽くしてくれたこと、それこそがこの状況を作り出したといってもいいのです。ありがとうございます」

カムイ「そういっていただけると、皆に命令を出した結果が報われたというものです。すみません、私たちのために部屋を貸していただいたこと、感謝いたします」

クーリア「頭をあげてください、すみませんが本題に入る前に私から一つ質問をよろしいか?」

カムイ「……なんでしょうか?」

クーリア「あなたは何を思って、私たちを生かしたのですか?」

カムイ「質問の意味がよくわからないのですが……」

クーリア「ガロン王の娘であるあなたにとってすれば、部族の反乱を抑える行為に工夫など要らないはずだ。私たちを皆殺しするだけでいい、それだけでも結果として受け取ってくれるでしょう。わざわざ話し合いをする必要もないはずでは?」

433: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 15:10:02.69 ID:lxd7axcz0
カムイ「誰も殺さないで反乱を鎮圧するほうが難しいらしいですから、結果の提示になります。それにできれば殺したくありませんでしたので、こういった形で終えることができて良かったです」

クーリア「あなた……いえ、カムイ殿。あなたは不思議な方のようだ」

カムイ「よく言われます。それでお呼びした理由なのですが」

クーリア「改めてお願いされなくとも大丈夫です。私たちの反乱に関しての話でしょう……」

カムイ「………」

クーリア「ここまで力の差を見せつけられ私たちは負けた。それに村の者たちに対する献身的な医療活動、そしてカムイ殿の言葉に止められてしまった私自身の不甲斐無さを思えば、私たちの反乱が浅はかだと言っていたことは間違いないのでしょう」

カムイ「ふむ……困りましたね」

クーリア「?」

カムイ「少しだけ勘違いをされているようです。反乱をやめることはすでにあの時に決まっていたと思っていましたから……クーリアさん、私はこれからのことについての話をするためにあなたを呼んだんです」

クーリア「……これからのこと?」

カムイ「リリスさん、星海へクーリアさんを招いていただけますか?」

リリス「……はい、わかりました。クーリア様、失礼いたしますね」



434: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 15:20:07.47 ID:lxd7axcz0
―星海・カムイのマイルーム―
クーリア「むっ! こ、ここは一体!?」

カムイ「ここはですね………」



クーリア「にわかに信じがたい話ですが、なぜそのような場所に私を………」

カムイ「他人には聞かれたくない話というのがあるからです。いわばクーリアさんと密約を交わしたい、だからお招きしました」

クーリア「……密約ですか?」

カムイ「はい、先ほどのあなた方を殺さなかった理由についての本当の答えを言わせていただきますと、あることを頼みたいからです」

クーリア「……聞きましょうか」

カムイ「はい、暗夜と白夜が戦争状態に突入した話は聞いていますね?」

クーリア「ええ、私たちの反乱の話など、今考えれば白夜との戦争突入の話題で掻き消えていたのかもしれませんが」

カムイ「それは仕方のないことです。話を戻します、今は国境間での小競り合いばかりで国全体を揺るがす形での戦闘は起きていません。ですが、いずれは無限渓谷を越えて暗夜は白夜に総攻撃を仕掛けることになります。その時、暗夜王国では大規模な兵士の徴用が始まるでしょう」

クーリア「………何が望みですか?」

435: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 15:29:49.72 ID:lxd7axcz0
カムイ「簡単です。クーリアさんたちはその話が持ち上がったとき、徴用に前向きに取り組んでほしいのです」

クーリア「暗夜の侵攻を手助けをしろというのですか?」

カムイ「……」

クーリア「………やはり、カムイ殿も暗夜の――」

カムイ「クーリアさん、人の話は最後まで聞くものですよ。まだ私は徴用に前向きに取り組んでほしいという話をしているだけです。暗夜の侵攻を手助けするようにとは一言も言っていません」

クーリア「?」

カムイ「クーリアさんにお頼みしたいのは、あるときある場所で、今日と同じように振舞ってもらうことなんです。ここにお呼びしたのはそのためなんですよ」

クーリア「………ふっ、あなたは本当にガロン王の娘なのですか?」

カムイ「お父様は育ての父ですから、それに育てられた私は娘で間違っていないのでしょう。これは自由意志です、クーリアさんが望まなければ、この話は全てお流れになりますし、このことで氷の部族の処遇に手を加えるつもりなどありません。どちらにせよ、私は氷の部族の自治が認められるように全力で働きかけます。この言葉に偽りはありません」

436: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 15:41:29.71 ID:lxd7axcz0
クーリア「………まったく、お人好しといいますか、本当に不思議な方だ」

クーリア「このまま話を進めては、私たちはカムイ殿に甘え続けるだけで自治を勝ち取っても意味はないでしょう」

カムイ「クーリアさん」

クーリア「あなたを改めて見ると思うのです、古くから伝わる勇者の話、暗闇に光を与える勇者の話を」

カムイ「勇者ですか? 私はそんな大それたものじゃありませんよ。私は唯、こうして人に条件を突きつけるだけの、姑息な存在なんですから」

クーリア「ふっ、そうなると私はその姑息な存在の話に乗っかってしまう愚かな男になってしまいますね。ですが、あなたの行動を伴った行いには信じる価値があります。もしかしたら、あなたは世界を変える勇者なのかもしれませんから」

カムイ「面と向かって言われると、少し恥ずかしいものですね」

クーリア「いいでしょう、その話確かに承りました。徴用の件、私たちは率先して事に当たりましょう。村の者たちへの説明は私がいずれしておきますので」

カムイ「はい、ありがとうございます。話は以上です………あっ、あと一つよろしいですか?」

クーリア「あと一つですか?」

カムイ「はい、すみませんが、顔を触らせてもらってもよろしいでしょうか?」

437: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 15:52:16.83 ID:lxd7axcz0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村・族長の家―
フローラ「………」

フローラ(真夜中になってから来るように言われましたが、いったい何の用事なのでしょうか?)

カムイ『フローラさん、今日真夜中になりましたら、私の部屋に来てもらえますか?』

フローラ(やはり、反乱のことでしょうね。従者をクビになるのか、でもあの時、カムイ様は私には従者でいてもらいたいというようなことを言ってましたし……)

フローラ「考えていても始まらないわ。結局、部屋で話を聞けば済むことなんだから」

フローラ「ここね ……? だれか先客がいる?」

 ―ひゃうっ、カ、カムイ様……そんな、だめですぅ

フローラ(!? こ、この声はフェリシア!?」

 ―何がダメなんですか。まだ触ってるだけですよ

フローラ(カ、カムイ様? もいるみたいですけど、なに何が起こっているの!?)

 ―やっぱりフェリシアさんの体はどこか冷えているんですね。触れるたびに体がゾクゾクします

 ―んんっ、か、カムイ様。そんなところ、触らないでください」

 ―久々なんですから、いっぱい触っちゃいます。それに、私に一度刃を向けてしまったんですから

  誰があなた達の主なのか、ちゃんと教えてあげないといけませんから。ふふっ
 
 ―はううううっ

438: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 16:03:47.80 ID:lxd7axcz0
フローラ「…………」

フローラ「………」ガクガクガクガク

フローラ(えっ、カムイ様にはそんな趣味があったということですか。た、たしかに男女拘らず、障る癖はありましたけど。あれは、人を理解するための行為だったはず、ま、まさかそんなことがあるわけ…三t年)

 ―ふふ、入口に触れただけで、そんな声をあげちゃうんですね……

 ―そ、そのこれは……

フローラ(入口? 入口ってなに?)

 ―大丈夫、あなたの弱点はちゃんと知ってますから。さぁ、いれますよ

 ―ふぁん、ひゃ、ひゃむひひゃま。んんーーッ

 ―ふふ、やっぱりここが弱いんですね。思った通りです。それにしてもはしたないですよ。私の指がベトベトになっちゃいました

フローラ(こ、これは、大変危険な気がします。今は逃げておきましょう)

 クルッ

リリス「……」ニコッ

 ガシッ

フローラ「リ、リリス」

リリス「はい、お待ちしておりましたフローラさん。中でカムイ様がお待ちですよ」

フローラ「いえ、あの、今中に入るのは、そのまずいと思うの」

リリス「どうしてですか?」

フローラ「だ、だって。カムイ様は何か用事があるみたいですし」

リリス「用事……ああっ、そう言うことですね」

フローラ「ええ、そういうことよ。だから私はここでしばらく」

リリス「はい、フローラさんも交じる予定だと、カムイ様は言っておられましたから、何も問題ありませんね!」

フローラ「………」

439: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 16:13:23.51 ID:lxd7axcz0
リリス「ささ、早く中へ」

フローラ「…嫌」

リリス「へっ?」

フローラ「私の操は私の決めた人にあげると決めているんです。カムイ様は確かに、確かに私の主ですが、そこまであげることはできません!」

リリス「あの、フローラさん?」

フローラ「わ、私にだってそれくらいの自由が許されてもいいじゃないですか。こんな、こんなことになるなら、私は……」

リリス「えっ、えっ、ちょっとフローラさん?」

フローラ「あそこで氷になってしまえばよかった……。こんな、救いようのない話があっていいんですか」

 ―フェリシアさん、少し失礼しますね

 ―ひゃ、ひゃあぃ

 ガチャ

カムイ「何時まで経っても入ってこないのでどうしたのかと思いましたよ、フローラさん」

フローラ「カ、カムイ、様………」

カムイ「? どうしたんですか。なんだかこの世の終わりのような雰囲気をまとっているみたいですけど」

フローラ「か、カムイ様。フェリシアに、何をしたんですか」

カムイ「え、はい、久々にあれをですね」

フローラ「わ、私の知らない間に妹に手を出していたっていうんですか!」

カムイ「確かに手を出してはいますね。現に触れていますし」

フローラ「!?」

フローラ(カムイ様右手、なんだか異様な光沢が、あの手に付いているのはなに!?)

リリス「カムイ様、指にフェリシアさんのがついてますよ?」

カムイ「ああ、そうでしたね。でも最中ですから、仕方無いですよ」

440: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 16:25:07.65 ID:lxd7axcz0
フローラ「………そ、そんな」

フエリシア「カムイ様~、どうしたんですか~、って姉さん?」

フローラ「フェリシア?」

フェリシア「ふえええ、どうしたんですか。なんで、泣きだしそうにしてるんですか?」

フローラ「あなたが、あなたがカムイ様に、カムイ様に何かされていたこと気付けなくて、ごめんね。私はあなたの姉なのに。気づいてあげられなくてごめんね……」

フェリシア「え、えっと……」

リリス「………! フェリシアさん、カムイ様はやさしくしてくれましたよね?」

フェリシア「はい」

フローラ「フェ、フェリシア? いったい何を言って」

フェリシア「カムイ様は私のこともう一度よく知りたいって言ってくれたんです。だから、私はカムイ様に触ってもらいたかったんです」

カムイ「できれば、二人とも同時にしてあげたかったんですけど」

フローラ「ふ、二人同時!?」

カムイ「はい、ですが、フェリシアさんにも明日仕事がありますから、待たせるわけにはいきません。だから先に始めていたんです。フェリシアさんの中、温かかったですよ」

フェリシア「カ、カムイ様。その、恥ずかしいですから、姉さんの前で言わないでくださいよぉ///」

フローラ「」

リリス(フローラさん、顔真っ青ですねぇ)

441: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 16:36:46.64 ID:lxd7axcz0
カムイ「というわけで、次はフローラさんの番ですよ。フェリシアさんはもう部屋に戻って………」

フェリシア「私も一緒にいます。その方が、姉さんが安心すると思いますから」

フローラ「フェ、フェリシア……」

フェリシア「大丈夫、カムイ様はやさしくしてくれますから。それに今のままの姉さんを一人きりにするなんてできないから、それに……」

フローラ「そ、それに?」

フェリシア「その、姉さんもやっぱり同じなのかって、その興味があるから。双子なら、その声あげちゃう場所も同じなのかなって……」

フローラ「」

カムイ「ささっ、中に入ってください。リリスさん、フローラさんは疲れてるみたいですから、ベッドまで運んでいただいても」

リリス「はい、フローラさん失礼しますね」

フローラ「」

 ドサッ

リリス(なんでしょうか、フローラさんから感じる儚い波動がすごいことになってます)

フェリシア「姉さん、体をお越さないと。私が支えるね」

フローラ「」

カムイ「ふぅ、さてと手も洗いました。お待たせしました、失礼しますねフローラさん」

フローラ「な、何をするんですか……」カタカタカカタ

カムイ「あ、はい。そうでしたね。呼ばれていきなりこれでは、確かに混乱するかもしれませんね」

フローラ「?」

カムイ「フローラさん。改めてのお願いなんですが……」

「顔を触らせてもらっても、よろしいですか?」

445: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/08/31(月) 23:52:28.91 ID:lxd7axcz0
フローラ「……えっ?」

カムイ「ですから、顔を触ってもいいですか?」

フローラ「……そ、それだけなんですか?」

カムイ「はい、そうですよ。さっきまでフェリシアさんの顔を触らせてもらっていたんです」

フェリシア「そうですよ姉さん。そんなおびえなくても大丈夫です、カムイ様はやさしく触ってくれるんですから」

フローラ「そ、そう。そうだったの……」

フローラ(よかった。カムイ様はフェリシアに手を出してしまったわけではないのね……。触られるくらいなら何の問題もないわ。私には顔の表面上の弱点はないはずですし……)

カムイ「それでフローラさん、触ってもいいんでしょうか?」

フローラ「そう悲しそうな顔をしないでください。すみません、カムイ様、私の早とちりだったようです。カムイ様、私の顔に触れてください。気にする必要はありませんから」

カムイ「そう言ってもらえると私もうれしいですよ。それじゃ、失礼しますね……」

フローラ(カムイ様の言っていたあれというのはこれのことだったんですね。もっとおかしなことをされると思っていましたけど、いつものことじゃないですか。たしかに、この頃は触ってもらっていませんでしたし、カムイ様の指は確かに気持ちいいですから……)

フローラ(でも、だとしたら、あの時カムイ様の右手の光沢は一体何だったんでしょうか? たしかリリスさんはフェリシアのと言っていましたけど……)

カムイ「それじゃ、触りますよ」

フローラ(……そもそもフェリシアが顔を触られてあんな声を上げたことなんてなかったはず……、なのにあんな声を上げてしまったということは……)

 ピトッ

フローラ「んんっ んんううっ!」

446: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 00:02:56.19 ID:DIBFgNZS0
フローラ(え……な、な、なんでこんな声が漏れてしまうの?)

フェリシア「姉さん、すごい声です///」

フローラ「カ、カムイ様、一体何を……」

カムイ「フローラさんとフェリシアさんは同じなんですね。こうやって入口を触るだけで……」

フローラ「ひゃんっ……いやぁ」

フローラ(カムイ様、カムイ様の指が私の唇に、触れて………触れるたびにムズムズして……)

フェリシア「やっぱり姉さんも私と同じなんですね。なんだかうれしいです」

フローラ「フェ、フェリシア……んあぁぁ」

カムイ「はじめて触った時には唇に触れてなかったから、気がつきませんでした。フローラさんとフェリシアさんの唇が、こんなに敏感だなんて……」

フローラ「いやっ、これい……じょう。か、カムイ様、こんなの初めてで……」

カムイ「大丈夫ですよ、フェリシアさんも初めてでそんな感じでしたから。恥ずかしくないですよ」

フェリシア「そうだよ、姉さん」

フローラ「ああっ、んっ……唇で感じるなんて、そんなこと……」

カムイ「唇でこれじゃ、中に触れたらどうなっちゃうんでしょうね?」

フローラ「な、中って……」

フェリシア「はわわ、姉さんの中にも入れちゃうんですか」

カムイ「当り前です。もっと、フローラさんの声を聞きたいですから、そう、いつものフローラさんからは想像できないような、そう言う声を」

リリス(とりあえず、双子の妹に拘束されながらなすがままにされているこの構図は、いろいろと危ないですねぇ)


447: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 00:15:18.98 ID:DIBFgNZS0
フローラ(唇の上で指が止まってる? 何をするのカムイ様)

カムイ「ふふっ、フェリシアさんの中に入れた指でフローラさんの中を探るというのは、なんだか背徳的なものを感じますね。さっきまでこの指に付いていたフェリシアさんのが中で交じり合うと思うと……」

リリス「カムイ様、さすがにそれ以上の発言は危険だと思います」

フェリシア「か、カムイ様。それはさすがに恥ずかしいですし、ちょっと気持ち悪いです」

カムイ「そうですか、すみません。でも、今からそれをすると考えると、こう責め立てたくなるんですよね」

フローラ「か、カムイ様」

カムイ「口をあけてください、フローラさん」

フローラ「あ、あー」

カムイ「はい、それじゃフローラさんの中に触れますよ」

フローラ「―――!!!!!」

フローラ(わ、私の口の中にカムイ様のゆ、指が……内頬をさわっ」

フローラ「ふおぉぉ、ほぉ、んおあ」

カムイ「温かいですよ、フローラさん。触れるたびに、フローラさんの体が振動してるのがわかります。フェリシアさんと全く同じ場所が一番気持ち良くなれる場所なんですよね?」

フローラ「んんっ、ひょひょんなほとぉ」

カムイ「そうですか、でも内頬に爪を立てれば……」

フローラ「んんんん!!!!!」

フローラ(なにこれ、内頬に爪が立って、これだけで気持ちいいなんて……。口の中を指で触られてるのに、どうしてこんなに気持ちが……)

カムイ「ふふっ、やっぱり一緒なんですね。でも、これ以上触るといけませんから、ここまでにしますね」

フローラ「ふぁ……んん」

カムイ「触らせてくれてありがとうございます。フローラさん」

448: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 00:23:53.73 ID:DIBFgNZS0
◆◆◆◆◆◆


フローラ「は、恥ずかしかったです。今後は唇には触れないでくださいね、カムイ様」

カムイ「それは……」

フローラ「わかりましたね?」

カムイ「……はい」

リリス「これはまじめに怒ってますね、フローラさん」

フェリシア「姉さんのあんな姿を見るなんて、思ってませんでした。その、なんだか私興奮してるみたいです」

リリス「すごく●●かったから仕方ありません。こんな方からの好意に気づいていないジョーカーさんって……」

フェリシア「? ジョーカーさんがどうかしたんですか?」

リリス「……ううん、なんでもないです」

フローラ「まったく、妹の前でこんなはしたない姿を見せてしまうなんて」

カムイ「いいじゃないですか。二人とも同じ場所が弱点だったんですから」

フローラ「それを知って得をするのはカムイ様だけでしょう? しばらくは顔を触らせませんから、そのつもりでお願いします」

カムイ「それは……あ、いいえ、なんでもないです」

フェリシア「でも、カムイ様。どうして私と姉さんの弱点が、口だってわかったんですか?」

フローラ「それは私も気になりました。それにカムイ様も唇に関しては気付いていなかったと言っていたじゃないですか。なのにどうやって?」

カムイ「それですか。正直確信はなかったのですが、その遺伝してるかもしれないと思いまして」

フローラ「?」

フェリシア「?」

リリス「………」

449: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 00:33:40.34 ID:DIBFgNZS0
~~~~~~~~~~~~~
クーリア『くっ、くふっ。そ、そこはあああぁ』

カムイ『クーリアさん、唇が弱いんですね。弱いんですね? 反乱も抑えられて、こうやって体の弱点までさらけ出されてどんな気持ちですか? 女性にこうやってなるがままにされるのはどんな気持ちなんですか?』

クーリア『こ、この程度の……うああ』

カムイ『いいですよ、身を捩ってるのがわかります。でも触っていいと言ったのはあなたなんですから、満足するまで触るのをやめませんから』

クーリア『やめろ、たのむ、このままでは……』

カムイ『このままでは、なんなんですか? その口で話してください、ふふっ、触れるたびに唇が震えてかわいらしいです』

クーリア『だ、だめだぁああ』

リリス『』
~~~~~~~~~~~~~
リリス「ホントウ、イデンッテコワイデスネ」

カムイ「さて、フェリシアさん。フローラさん、私の用事は以上です。部屋に戻ってゆっくり休んでください。明日はすぐにでも王都へ向かうことになりますから」

フローラ「……あの、カムイ様」

カムイ「はい、なんですか?」

フローラ「今日はカムイ様のお傍にいてもよいでしょうか?」

フェリシア「私もですぅ。あの、カムイ様、今日は一緒に眠ってもいいですか?」

カムイ「……どうしたんですか、突然?」

フローラ「突然呼び出しておいて顔を触るカムイ様に、突然と言われたくはありません」

450: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 00:45:04.39 ID:DIBFgNZS0
カムイ「そうですか……。わかりました」

フェリシア「カムイ様、ありがとうございます」

カムイ「リリスさんは、どうしますか? 一緒に寝ますか?」

リリス「さすがにそのベッドで四人は無理ですから、私は宛てられた部屋に戻ります。いろいろと面白いものも見れましたから」

カムイ「そうですか。今日はお疲れ様です、お休みなさい」

リリス「はい、カムイ様。フェリシアさんもフローラさんもおやすみなさい」

 ガチャ バタン

フローラ「では、カムイ様お手をこちらに。ベッドまでお連れいたします」

カムイ「はい、フローラさん」

フローラ「やっぱり、カムイ様の手はどこか温かいんですね」

カムイ「フローラさんが氷の部族の人だからそう感じるだけですよ」

フローラ「そんなことは……」

フェリシア「姉さん、ベッドの準備はOKです」

フローラ「ありがとう、フェリシア。それではカムイ様、お先にお布団へ」

カムイ「はい、ふふっ、こうしてもらうのはもう何年ぶりでしょうか。まだ私が小さかった頃にこうしてもらった気がします」

フェリシア「昔に戻ったみたいです。あの時のカムイ様は、まだこうやって空間把握になれてるわけじゃなかったから、私と姉さんで、よくベッドまでお連れすることが多かったから」

フローラ「でも立場的にいえば、昔に戻ったっていうのは間違いじゃないわ。私たちは、今日、一回カムイ様に刃を向けているんだから」

カムイ「いいえ、昔になんて戻っていませんよ。今になっただけです、過去は過去で今ではないんですから」

451: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 00:54:04.42 ID:DIBFgNZS0
フローラ「……カムイ様。もう一度、私とフェリシアを従者として受け入れてくれるのですね?」

カムイ「はい、むしろお願いするのはこちらですよ。フェリシアさん、フローラさん。もう一度、私の従者として共に歩んでくれますか?」

フローラ「はい、カムイ様」

フェリシア「私の主は、この先もカムイ様だけですから」

カムイ「ありがとうございます。それじゃ、一緒に寝ましょう、フローラさんは左で、フェリシアさんは右です。ふふっ、なんだか久しぶりで私もなんだかワクワクしてます」

フローラ「ふああ…、その、カムイ様……すみません」

フェリシア「ふあ~。ごめんなさいカムイ様、私とっても疲れてて」

カムイ「はい、ゆっくり休んでください。今日はお二人とも色々ありましたから……」

フローラ「正直に申し上げれば、さっきのお触りタイムが一番疲れることになった原因でもあるんですけどね」

カムイ「ふふっ、それじゃその疲れも早く眠って癒してしまいましょう。明日は私よりも早起きして起こしてくださいね?」

フローラ「はい、容赦なく起こさせていただきますね」

フェリシア「はい、起きなかったら冷たくしておこしちゃいますから」

カムイ「ええ、おねがいします」

フェリシア「はい、がんばりますね」

フローラ「任せてください。」

「では、おやすみなさい、カムイ様」


452: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 01:01:38.47 ID:DIBFgNZS0
カムイ(今回は何とかうまく行きました……)チラッ

フェリシア「すぅ……すぅ」

フローラ「すぅ……すぅ」

カムイ「眠っている姿もそっくりですね……」

カムイ(氷の部族の反乱は終わりを迎えましたが、まだ色々な問題があるんでしょう。正直、白夜の動きが一番気になります、サクラさんが捕虜となっている話を聞いたとしても、強硬派がいればそれを口実にこちらへと攻め込んでくる可能性が高いし、それによって一度攻勢を決める流れになれば、大規模な攻撃も行われるかもしれない)

カムイ(それに、私はどうやら取り返しのつかないことを考え始めているみたいですから。クーリアさんとの約束、それをお願いする時が来たとき、その時は……)

カムイ「……王都に戻ったら、一度レオンさん場所に行きましょう。サクラさんたちの様子も気になりますから」

カムイ(それに、いろいろとまだ情報がほしいところでもありますからね)

453: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 01:09:02.76 ID:DIBFgNZS0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城―

武将「いつまでも脅しに屈している場合ではない! それをリョウマ王子もわかっておられるはずだ!」

リョウマ「今はだめだ。サクラとその臣下が暗夜で人質になっている以上、迂闊な行動は最悪の結果を生むことになる」

武将「ならばどうする? サクラ様が処刑される日を待つだけでいいというのか? リョウマ王子、ここは暗夜に我々の戦う意思を見せつけるときなのです。それに、第一陣の攻撃が成功すれば、そのまま暗夜王国王都のウィンダムへの道も開けましょう。こうして、暗夜で活動するレジスタンスからの報告を待っているばかりでは、こちらの戦況が不利になるばかりです!」

リョウマ「……ことを仕損じるな。耐えるべく所は耐えるしかない。それを理解しろ」

武将「……」

リョウマ「話は以上か? なら、今日はここまでだ」


武将「くそっ、こうして白夜が蹂躙されるのを指をくわえ、怖れ戦き待つなど私にはできぬ!」

ハイタカ「将、どうされた?」

武将「むっ、ハイタカか? リョウマ王子は耐えろとばかりに仰る。しかし、このところ暗夜軍が無限渓谷を越えて前線に手を加えることが多くなってきた。これを見ているだけなど、もはや我慢の限界だ」

ハイタカ「………、将、私に一つ考えがございます」

454: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 01:19:41.36 ID:DIBFgNZS0
武将「む、なんだ?」

ハイタカ「はい、ここはひとつあの方に意見を打診してみてはよろしいかもしれません」

武将「あの方?」

ハイタカ「はい、あの方は今とても暗夜を憎んでおられます故、今はあまり軍議にも参加されていないと聞きます。それは妹君も暗夜に捉われた手前、心中をお察ししますが」

武将「……」

ハイタカ「しかし、あの方を慕っている方は多くおります。あの方の鶴の一声があれば、多くを動かすことができるやもしれません。それに、陸地を通らずとも、まだ道は残っているのですから」

武将「……なるほど、ハイタカの考え一理ある。あの方は確かに王族である。しかし、あの日以降はいつも獲物を求める眼ばかりしている。我々の話に耳を傾けてくれるやもしれん」

ハイタカ「はい、私はフウマ公国にこの件を打診してみます。海沿いでもっとも近くにあり、暗夜の上陸を防いでいるのはフウマ公国だけですから」

武将「うむ、わかった。私は部屋に戻りできる限りの要点をまとめた後、あの方に話を持ちかけてみよう。成功すれば、われわれが先立って暗夜に一太刀浴びせてみせる!」

ハイタカ「はい、では私も作業に入ります」

武将「うむ、任せたぞ」タタタタタタッ

ハイタカ「ふむ、武将のためにできる限りのことをこなすのも良いことだが、果たして吉と出るか凶とでるか……。さて、動くとするか」


 第八章 おわり

455: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 01:23:10.79 ID:DIBFgNZS0
 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア  →C
 フローラ   →C

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでハロルドとジョーカーの支援がCになりました。
 今回のイベントでエルフィとモズメの支援がCになりました。

456: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 01:38:40.09 ID:DIBFgNZS0
今日はここまでです。ハイタカさん、ごめん。

 ここからピエリ、ハロルド、ラズワルド、エルフィの顔をカムイが触るまでの間、本篇が動かない時間に入ります。

 この先の展開を安価で決めたいと思います。お時間のある方は、参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇

 まずはレオン邸に付いて行くキャラクターを決めます。
 
 付いて行くキャラクターはこの中から

 サイラス
 エリーゼ
 エルフィ
 ハロルド
 モズメ
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ピエリ
 ラズワルド

 安価番号は>>457 

◇◆◇◆◇

 次にレオン邸で話をしているキャラクターはこの中から

 サクラ
 カザハナ
 ツバキ

 安価番号は>>458

◇◆◇◆◇

 最後に話をしている組み合わせをこの中から

 カムイ
 サイラス
 エリーゼ
 エルフィ
 ハロルド
 モズメ
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ピエリ
 ラズワルド

 話をしているキャラ一人目は>>459 二人目は>>460

 すみませんが、よろしくお願いいたします。
 

457: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/01(火) 01:42:09.76 ID:UIZl6hFS0

ハロルド

458: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/01(火) 01:46:42.99 ID:PC7B6tkE0
乙!
サクラでおなしゃす

459: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/01(火) 02:08:34.00 ID:2ETul0d00

エルフィ

460: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/01(火) 02:12:37.76 ID:rXcX/XnDO
乙です
フローラさんでお願いします。

462: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 21:57:32.45 ID:DIBFgNZS0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・街道―
カムイ「すみません、ハロルドさん。私の用事に付き合わせてしまって」

ハロルド「いいんですよ。困った人を放っておけないのが私、ハロルドなのですから! しかし、レオン王子が捕虜の方たちの世話をしているというのは本当だったのですね。にわかには信じられませんが」

カムイ「はい、まぁこうなってしまったのは私が原因のようなものですから、ハロルドさんのお勧めのパン屋さんでお土産も買ってきましたし」

ハロルド「いやはや、いつもは買った直後に何かあったりするので、カムイ様に災難が伝染しないか冷や冷やしましたが、今日はとても運がいい日のようだ」

カムイ「ハロルドさんは面白い方ですね。まるで毎日不運なことばかりが起きているみたいな言い方ですよ」

ハロルド「まぁ、あまり運がいい方では……。んっ、前方から馬車が来ますね」

カムイ「そうですか、ちょっと横に寄りましょうか」

ハロルド「そうですね。ふむ、どうやらワインを運んでいるようですな。大きな樽がよく揺れて……」

 ガタンッ! バシャー

カムイ「ん、なんだかすごい音がしましたけど……樽が落ちたんでしょうか?」

ハロルド「…………はい、そのようですね」ビチャビチャ

カムイ「ん……ハロルドさん、いつの間にお酒を飲んだんですか?」

ハロルド「……いいえ、その……」

 ニイチャン、ダイジョウブカイ!?

ハロルド「はっはっは。大丈夫だ、そのワインで体がとてもベトついてしまっているが……」

カムイ「それは大変ですね、仕方ありませんレオンさんのお宅でお湯を借りましょう。私が頼んでみますから」

ハロルド「カムイ様。すまないがよろしくお願いするよ」

カムイ「はい、任せてください」

463: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 22:06:37.99 ID:DIBFgNZS0
―レオン邸―
レオン「姉さん、よく来てくれたね」

カムイ「いいえ、時間を作ってもらってありがとうございます。これ、お土産です。喜んでくれるといいんですが」

レオン「パンみたいだね。ありがとう。ところで、このワインまみれの人は?」

ハロルド「初めましてレオン王子、私はエリーゼ様の臣下ハロルド」

レオン「そう、君がエリーゼの……よろしく、あと王子は別につけなくてもいいから」

ハロルド「では、レオン様。このような格好で押しかけてしまって申し訳ない。こんなことになるとは思っていなかったもので」

カムイ「はい、私をここまで案内してくれたんですが、途中でワインを浴びてしまって」

レオン「酒場にでも寄って来たの?」

カムイ「いいえ、その、なんと話をすればいいのか。とりあえず、ハロルドさんは運が悪いということだけ伝えておきます」

ハロルド「カムイ様。ちゃんと説明した方が良いのではありませんか」

カムイ「ハロルドさんは気にしないでください。それで、レオンさんハロルドさんにお湯を貸していただけませんか?」

レオン「はぁ、せっかく来てもらったし、そんな格好で屋敷の中を歩くのも気が引けるだろうし、構わないよ」

ハロルド「レオン様、ありがとうございます」

レオン「大袈裟だよ、とりあえずこっちに付いて来て」

ハロルド「では……ううむ、このまま入っていいかどうか」

カムイ「ハロルドさん、靴を私がお持ちしますね」

レオン「……」ピクッ

464: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 22:15:09.21 ID:DIBFgNZS0
ハロルド「しかし、私の靴など持ってしまっては――」

カムイ「気にしないでください。それに今日は私の用事につき合っていただいたんですから、これくらい造作もないことですよ」

ハロルド「そ、そうですか。では、お言葉に甘えて……」

カムイ「ふふ、他に持ってもらいたいものがありましたら言ってください」

ハロルド「いや、これ以上は大丈夫。それに、ほかの物を持たせてしまったら、カムイ様もお酒で汚れて……オワッ!」

カムイ「あっ、ハロルドさん、あぶない」

 ドサッ

レオン「ちょ、姉さん、だいじょ……」

ハロルド「う、うーん。私としたことが、転んでしまうとは……」

カムイ「ハロルドさん、その、重たいです……」

ハロルド「……え? うわっ、こ、これは、不可抗――」

レオン「姉さん大丈夫!?」ドゴッ

ハロルド「ぬおぉぉぉ!!!!」ゴロゴロゴロ

カムイ「レオンさん? 今、ハロルドさんがとてつもない速度で転がっていったような気がしたのですが?」

レオン「なにそれ、僕は知らないよ。それよりも大丈夫、体痛めたりしてない?」

カムイ「はい、大丈夫ですよ。ハロルドさんも大丈夫ですか?」

ハロルド「え、ええ……」

カムイ「そうですか、それは良かった。あ、でも……」ビチャビチャ

ハロルド「ううむ、カムイ様もワイン塗れになってしまいましたね。私の不注意で申し訳ない」

465: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 22:20:19.32 ID:DIBFgNZS0
カムイ「そうですね……。でも、なんだか楽しいです。ハロルドさんといると、楽しいと感じられます」

ハロルド「そう言われても、とても複雑な心情になってしまうのですが……」

レオン「ハロルド、こっちだから、早く来い」

ハロルド「……なぜだ、なぜこのような敵意ある視線を私が向けられることに」

カムイ「レオンさん、私もお湯を御借りしても」

レオン「ああ、それよりも姉さんも姉さんだ、今度から注意してよ。ハロルド、君は一番奥の扉だから、間違えないように」

ハロルド「あ、はい」

カムイ「ふふっ、二人して怒られてしまいましたね」

ハロルド「……カムイ様、少しだけ疲れてしまいましたよ」

カムイ「そうですね、まずはお酒を落としてしまいましょう。それでは」

ハロルド「はい、それではまた」




466: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 22:31:04.81 ID:DIBFgNZS0
レオン「………」

サクラ「あ、あの……レオンさん?」

レオン「なんだいサクラ王女……。僕は少し機嫌が悪いんだ」

サクラ「えっ、姉様が来てくれるって、さっきまで……」

レオン「……」

サクラ「そ、そのごめんなさい」

レオン「……すまない。こんなことで機嫌を悪くするなんてどうかしてたよ。サクラ王女も姉さんと話をするのが楽しみなのに」

サクラ「いいえ、カザハナさんもツバキさんもレオンさんができる限りの事をしてくれて感謝してるって言ってましたから」

レオン「ふーん、廊下ですれ違った時、ツバキに言われることはあっても、あの一般兵からは言われたことないけどね」

サクラ「それはたぶんお風呂の件が」

レオン「……そうだよ、なんであそこで乗っかってくるんだ。ふつう、あんな条件を出されたら引き下がるはずなのに」

サクラ「ふふ、カザハナさんは少し頑固なところがありますから、ずっと昔から一緒にいてくれた幼馴染だからわかるんです」

レオン「そう。いいのかい、そんな身内の話を僕にしても。いずれサクラ王女たちのこと、僕が捨てるかもしれないんだよ?」

サクラ「いずれ、そうなる日が来るかもしれません。でも、ここで私たちを守ってくれてるレオンさんを、私たちは信じるしかありませんから」

レオン「………」

サクラ「だから、私はレオンさんともっと話がしたいです。もちろん、カザハナさんや、ツバキさんともよく話してくれると嬉しいんですけど」

レオン「……一般兵とは、話が通じるか全くわからないところだけどね」

サクラ「カザハナさんは素直になれないだけですから、それに監視って言っても扉の前で待機してるだけです」

レオン「さすがに入浴中の女性を直に監視するような趣味はないからね……。それに一般兵にそんなことしたら、いろいろと変な噂を流されかねない」

467: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 22:40:01.01 ID:DIBFgNZS0
サクラ(有言実行できないヘタレってカザハナさんが言ってたことは内緒にしておかないと)

レオン「それにしても、白夜にはサクラ王女と同じ名前の木があるって聞いたよ」

サクラ「はい、その。似てないかもしれませんけど、とってもきれいなんですよ。でも、その怖い話もあって」

レオン「へぇ、怖い話? 何それ、少し気になるけど」

サクラ「はい、その、サクラは薄い桃色の花なんですけど、その花が桃色な理由が、その……木の下に埋まっている死体の血を吸ってるからって言われてて」

レオン「へぇ、そんな話があるんだ。暗夜にもいろいろな怖い話があるけど、大抵の者は夜道に現れる化け物の類が多いかな……」

サクラ「化け物……ですか」

レオン「うん、まぁサクラ王女は怖い話が苦手みたいだから……」

サクラ「え、えーと」ソワソワ

レオン「………」

サクラ「そ、その、私……」ソワソワ

レオン(…なるほどね、サクラ王女はそういうタイプなわけか。ちょっと面白そうだね)

レオン「話をしたいのはやまやまだけど、今は昼間だから雰囲気でない。今度夜にでも話してあげるよ」

サクラ「よ、夜にですか?」

レオン「そう、まぁ、怖い話かどうかはわからないけどね。まぁ、楽しみにしててよ」

サクラ「は、はい。わかりました……」

468: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 22:51:14.62 ID:DIBFgNZS0
◆◆◆◆◆◆
カムイ「すみません、お待たせしてしまいましたか?」

サクラ「姉様」ダキッ

カムイ「ふふ、お久しぶりですサクラさん。レオンさんにひどいことされませんでしたか?」

レオン「ちょ、姉さん。いきなり何を言って」

サクラ「はい、レオンさんはとても優しくしてくれましたから、ツバキさんもカザハナさんも問題なく過ごせてます」

カムイ「そうですか。レオンさん、ありがとうございます」

レオン「先に人を疑っておいて言うことじゃないよね、それ。ふつうは順序が逆だよね?」

カムイ「細かいことは気にしないでください。あと、ハロルドさんはもう少し時間が掛るそうです。おかしいですね、同じような浴室だと聞いていたんですけど」

~~~~~~~~~
ハロルド「ううっ、なぜ水がこんな少ししか出てこないんだ?」

ハロルド「これではお酒の臭みを取るのに時間がかかってしまう……。やはり私は運がないのだな……」
~~~~~~~~~

レオン(まぁ、少し故障している部屋を進めたから当然か)

469: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 23:01:33.74 ID:DIBFgNZS0
レオン「それで、カムイ姉さん。僕に聞きたいことがあったんだよね」

カムイ「はい、まずは氷の部族の反乱の件、耳に入っているとは思いますが」

レオン「うん、さすがカムイ姉さんだね。犠牲も出さずに平定したんだから、その影響もあってかわからないけど、周りの決起に流されそうになっていた少数の部族が反乱を終息させているみたいだ」

カムイ「そうですか、結果的にいい方向に話が進んだみたいですね……」

サクラ「カムイ姉様、すごいです」

カムイ「サクラさん、あまり喜んでいいことじゃないんですよ? 反乱が終わりを迎えれば終わりを迎える程に、サクラさんたちの命も危なくなっていると言っていいんですから」

サクラ「でも、カムイ姉様が誰も犠牲を出さないでことを終えられたことは、すごくいいことですから」

カムイ「サクラさん……。今回は運が良かっただけですから、今後はそううまくいかないでしょう」

サクラ「………そうですよね」

レオン「サクラ王女の気持ちもわかるけど、これは戦争だ。それは忘れない方がいい」

サクラ「はい……」

カムイ「レオンさん、白夜の動きの情報などは入ってきているのでしょうか?」

サクラ「!」

レオン「そう言う話だと思ったよ……」

カムイ「………それで、どうなんですか?」

レオン「まぁ、サクラ王女に言っていいかわからないけど。白夜事態にこれといった動きはないよ。むしろ暗夜が白夜領への侵攻を強めてる状態と言ったほうがいいかな。といっても無限渓谷から入り込んだ少しの場所で小競り合いをしてる、そんな具合だよ」

470: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 23:17:29.92 ID:DIBFgNZS0
カムイ「そうですか、なら少しの間はサクラさんたちの安全は確保できそうですね」

レオン「そうだね。でも油断はできないよ。僕もできる限りサクラ王女たちが命を維持できるように努めるけど、たぶんそれほど猶予はない気がする」

カムイ「はい、サクラさん」

サクラ「カムイ姉様」

カムイ「白夜のみなさんのことを気にしているんですよね?」

サクラ「……はい、私がツバキさんとカザハナさんに頼まなければ、こんなことにならなかったのかもしれないって思ってしまうんです」

カムイ「そうですね。でも、もう過ぎてしまった物事をどうにかすることはできませんから」

サクラ「……」

カムイ「だから、サクラさん。私もできる限り頑張ってみます」

サクラ「カムイ姉様?」

カムイ「はい、サクラさんが無事に白夜に帰れるように、サクラさんが白夜に戻ってしたいことをできるように、頑張りますから。今はどうか耐えてくれませんか?」

サクラ「……はい。姉様」

レオン「はぁ、カムイ姉さんは甘いよね、本当に」

カムイ「レオンさんも結構甘いと思いますよ。さて、それでは私のお土産を食べてみましょう」

レオン「はいはい、今から切り分けてくるから。少しだけ待っていて」

サクラ「カムイ姉様、信じてます」

カムイ「はい……サクラさん」

471: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 23:26:20.36 ID:DIBFgNZS0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

エルフィ「え、えっと……」

フローラ「……」

 キラァーン

エルフィ「その、この食事の量は一体……」

フローラ「妹から聞きました。エルフィさんに怪我をさせてしまったと、そのこれで許してもらえるとは思えませんが……」

エルフィ「べ、別に気にしてないわ。それに、あの時は私たちは敵同士だったから、仕方無いことよ」

フローラ「……そう割り切られるものではないはずです。私もみなさんに刃を向けた身です、本当に申し訳ありませんでした」

エルフィ「……ふふっ、フェリシアさんにも同じこと言われたから、なんだかおかしいわ」

フローラ「エルフィ様?」

エルフィ「フローラさんが気にしていることはもっともかもしれないけど、そこまで背負い込む必要はないと思うわ」

フローラ「そ、そうでしょうか?」

エルフィ「ええ、それに。カムイ様はフローラさんを許してくれたんでしょう?」

フローラ「は、はい。こんな私を、もう一度従者として認めてくださいました」

エルフィ「なら、それでいいはずだから」

フローラ「エルフィさん……」

エルフィ「あの、とりあえずなんだけど、この料理はもらってもいいのかしら? その、見てたらお腹がすいてきちゃって」きゅるうううう

フローラ「はい、召し上がってください。ほしくなったらもっと言ってくださいね」

エルフィ「ありがと。それじゃ―――」



472: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 23:35:11.23 ID:DIBFgNZS0
フローラ「」

エルフィ「お、おかわり」

フローラ「どういうことですか、全く食材が追い付かないなんて」

エルフィ「はぁ、こんなにいっぱい食べられるなんて……フローラさんって料理が上手なんですね」

フローラ「あ、ありがとうございます」

フローラ(まったり返事を返していたら、おかわりに追いつけなくなってしまいます)

エルフィ「こんなにもらってばっかりじゃ悪いから、私もなにかお返ししたいけど……」

フローラ「いいえ、これは私が振舞ってるだけですから、おかえしなんて……」

エルフィ「食べ終わった食器、今から持って行くわ」

 ガシャン

フローラ「え?」

エルフィ「………こっちの食器を」

 ガシャシャン

フローラ「」

エルフィ「ごめんなさい」

フローラ「……エルフィさん。もしかしてわざとでしょうか?」

エルフィ「その、力加減ができなくて……」

フローラ「……フェリシアに任せていたら、食器の半分以上を割られていたかもしれませんね。私が担当してよかった」

エルフィ「でも、私、何かでちゃんと恩返しするから」

フローラ「その、お心遣いだけで私は大丈夫ですから……」

エルフィ「……大丈夫、力仕事だったら何でも言ってほしいわ。私、力にはとても自信があるから」

フローラ「………」

フローラ(ここでするべき力仕事、そんなものあったでしょうか……)

フローラ「そうですね、わかりました。少しだけ考えておきます」

エルフィ「ええ、まかせて」

フローラ(とても不安だわ)



473: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 23:42:51.55 ID:DIBFgNZS0
◆◆◆◆◆◆

カムイ「ただいま戻りました」

フェリシア「カムイ様、おかえりなさいませ」

ジョーカー「おかえりなさいませ、カムイ様。おや、着ていった服とは違うようですが?」

カムイ「はい、途中で汚れてしまいまして」

ジョーカー「そ、そんな。くっ、申し訳ありません。私が付いていればこんなことには………」

カムイ「いいんですよ、気にしないでください。ハロルドさんは先ほど帰られましたので……」

ジョーカー「ああ、そう言えば今エルフィがここにいますね。もう時間が時間ですので、宿泊される流れになっておりますが」

カムイ「そうなんですか……」

フェリシア「お部屋の方は私が準備しました! エルフィさんに恩返ししたかったので、がんばりました」

カムイ「はい、よかったですねフェリシアさん……そう言えば、まだエルフィさんの顔を私触っていませんでしたね。フェリシアさん、エルフィさんのお部屋まで私を連れて行ってくれますか?」

フェリシア「は、はい。そのジョーカーさん……」

ジョーカー「今日の訓練は終わりだから、もう好きにしていいぞ。明日はもっと早くからになるから覚悟しておけ。それではカムイ様、何かありましたらお呼びくださいませ」

カムイ「はい、お疲れ様です。ジョーカーさん」

474: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/01(火) 23:54:50.56 ID:DIBFgNZS0
エルフィ「………なんだか夢のような時間ね。いっぱい食べて、こうやってふかふかのベッドに横になって、いつもの兵舎だと想像できないくらいだわ」

 コンコン

エルフィ「……はい?」

カムイ「エルフィさん、私です。もうお休みになられていますか?」

エルフィ「カムイ様ですか、ちょっと待っててください」

 ガチャ

カムイ「こんばんは、少しお時間良いですか?」

エルフィ「ええ。すみません、こちらに泊めさせてもらって」

カムイ「いいですよ。それにこの前の反乱平定の件で、皆さんには報酬と休暇が与えられてますから、緊急招集がかからない限り、呼ばれることはありません。だからゆっくりして行ってください」

エルフィ「ありがとうございます。それで、カムイ様。私にご用事とは一体?」

カムイ「エルフィさん、あなたのお顔を触らせていただいてもいいですか?」

エルフィ「わたしの顔ですか?」

カムイ「はい、私は目が見えませんので、触れて人の顔を認識してます。私はエルフィさんのお顔を知りたいんです」

エルフィ「……私がまだここにいられるのは、あの時カムイ様が私を助けてくれたからです。だから……」

カムイ「……いいんですか?」

エルフィ「はい、気が済むまで、どうぞ」

カムイ「では……」ピトッ

475: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 00:04:43.06 ID:bTyTmL1f0
エルフィ「……んん」

カムイ「力持ちだって聞いていますけど、全然そんな感じはしないんですね。むしろ、なんだか華奢な感じがします」

エルフィ「私なんて、まだまだですから……」

カムイ「そうなんですか?」

エルフィ「まだまだです。もっともっと強くなってエリーゼ様を守るのが、私の使命だから。終わりなんてないんです」

カムイ「ふふっ、エルフィさんは目標を持っているんですね」サワサワッ

エルフィ「んくっ……」

エルフィ(今、なんだか気持よかった)

カムイ(首の横筋ですね……。ふふっ、楽しくなってきました)

カムイ「どんな訓練をしているんですか、私に教えてください」

エルフィ「そ、その、岩をも、もち、あげたり……はうん」

エルフィ(……///)

カムイ「それから?」

エルフィ「え、えっと……う、腕立もひゃっ……ひゃっかいくらい……」

カムイ「すごいですね。それなら力持ちなのも、納得です」

エルフィ「か、カムイ様。そ、そこはやめて……ん」

カムイ「どうしたんですか、なんだかとても力抜けてるみたいですよ? どうしてでしょうね?」

エルフィ「や、やめてくだ……」

エルフィ(首、首の横ラインに、カムイ様の指が、指が触れると度に力が、力が抜けちゃう……)

476: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 00:13:43.14 ID:bTyTmL1f0
カムイ「ふふっ、なんだか息が上がってきてますよ」

エルフィ「はぁ、はぁ、そ、そんなこと……ありません」

カムイ「そうですか、でも私の指がエルフィさんの汗で湿ってますよ……」

エルフィ「こ、これは……」

カムイ「ふふっ、エリーゼさんもこんな姿のエルフィさんを知りませんよね……。こんな姿を見たら、エリーゼさんどう思うんでしょうか?」

エルフィ「!!!!!! か、カムイ様」

カムイ「冗談ですよ、安心してください。だから、もっと私に感じさせてください。エルフィさんの女性らしい反応というやつを」

エルフィ「きゃうぅ、はぁ、だめ、そこ、弱い場所だから……」

カムイ「はい、ここがいいんですね」

エルフィ「あっ、んんっ」

カムイ「エルフィさん、髪を結んでるんですね……。失礼しますね」スッ ファサー

エルフィ「あっ」

カムイ「こんな髪を下ろした姿、あまり人には見せないんじゃないですか?」

エルフィ「え、エリーゼ様には……」

カムイ「そうなんですか、なら私は二人目になれたのかもしれませんね。いっぱい触らせてください」

エルフィ「カムイ様、んんううううぅう。もう、ゆるして……」

カムイ「はい、もう少しで終わりますから。待っていてくださいね」

エルフィ「はぁ、はぁ……」

エルフィ(くっ、くやしい、でも――)

477: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 00:24:22.25 ID:bTyTmL1f0
 スッ

エルフィ「……ふぇ?」

カムイ「エルフィさん、ありがとうございました」

エルフィ「あ、あの……」

カムイ「はい、もう終わりです。それとも、まだ触って欲しかったですか?」

エルフィ「いえ、その……もう大丈夫です。そのエリーゼ様には」

カムイ「言うわけないですよ。こんなことを誰かに言いふらすなんてもったいないですから」

エルフィ「もしもカムイ様が盲目ではなかったら、その頭を林檎みたいにしてたかもしれません」

カムイ「林檎みたいにとは?」

エルフィ「こう、ぎゅって」

カムイ「怖いですね。でも安心してください、私は目が見えませんから、そんなことをする必要はありません」

エルフィ「……目見えてるんですよね? 一回うなづいてくれれば、すぐにぎゅってしますから。安心してください、痛みは無いと思います」

カムイ「見えませんから、ぎゅってする必要はありませんよ」

エルフィ「………」

カムイ「……」ニコニコ

エルフィ「……わかりました。でも、今度顔を触らないでくださいね」

カムイ「それは……」

エルフィ「もしも破った時は―――ぎゅってします」

カムイ「あ、ハイ」


 休息時間 ―1― おわり

478: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 00:26:58.68 ID:bTyTmL1f0
 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド   →C
 エルフィ   →C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C→C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでサクラとレオンの支援がCになりました。
 今回のイベントでレオンとハロルドの支援がCになりました。
 今回のイベントでエルフィとフローラの支援がCになりました。

479: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 00:32:59.64 ID:bTyTmL1f0
今日はここまでです。長くてあと三回、短くまとめてあと二回くらいで休息時間が終わる感じです。ご了承をお願いいたします。
 ちょっと、テンポが崩れ気味で申し訳ないです。

 次の安価を決めたいと思いますので、参加いただけると幸いです。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 カムイが次に顔を触るキャラクター

 ラズワルド
 ピエリ
 ハロルド
 
 安価は>>480

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 レオンが監視することになる相手

 サクラ
 カザハナ
 ツバキ

 安価は>>481

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 どこかで話をしている組み合わせ

 カムイ
 サイラス
 エリーゼ
 エルフィ
 ハロルド
 モズメ
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ピエリ
 ラズワルド

 一人目は>>482
 二人目は>>483

 でお願いいたします。

480: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 00:44:21.79 ID:z3Q836CCo
ピエリ

481: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 00:47:19.17 ID:lgNxU/Db0
ツバキ

482: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 00:53:09.36 ID:LGv3TyTp0
青の踊りさん

483: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 00:57:09.05 ID:zCSi0poV0
実妹

490: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 22:49:07.46 ID:bTyTmL1f0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国のどこか―

ラズワルド「………やぁ」

リリス「………なんでしょうか、ラズワルドさん」

ラズワルド「いや、その、お茶でもどうかなって……」

リリス「無理に笑顔を貼り付けて声をかけなくてもいいんですよ?」

ラズワルド「うん、そうだね。話すのは初めて……ってことでいいのかな、リリス」

リリス「そうですね、そうかもしれません」

ラズワルド「……困ったな。こんなに可愛い子が僕の話を聞いてくれてるのに、気の利いた言葉を投げかけられる気がしないなんて……」

リリス「お世辞ありがとうございます。私は特に話すこともないので、これで失礼しますね」

ラズワルド「ちょ、ちょっと待ってよ。え、えっとそうだね。リリス、これから僕の知ってる洒落た喫茶店でお茶しようよ。それに知らない仲じゃないんだし」

リリス「それ、この前ほかの女性にも言ってましたよね? 軽い男は嫌われますよ?」

ラズワルド「そうだね、ほら女性を見るとすぐ声をかけたくなっちゃうからさ。こればっかりは仕方無いよ。うん」

リリス「悪びれる様子がないんですね。まったくといいますか、私がどういうものなのか、あなたは知っているはずですよ?」

491: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 22:58:49.56 ID:bTyTmL1f0
ラズワルド「……」

リリス「ですから、以降は私に話しかけなくてもいいですよ。無理に話しをして、仲間の輪に軋轢を作るのはカムイ様も望んでいないでしょうから…」

ラズワルド「リリスが何を言ってるのか、僕にはわからないかな」

リリス「え?」

ラズワルド「僕はリリスが可愛い女の子だったから声を掛けたんだ。ただそれだけ、根掘り葉掘り追求するために話しかけるなんてことはしないよ」

リリス「………」

ラズワルド「リリスはとてもかわいい女の子だから声をかけた、それだけだから。確かに僕にもやらなくちゃいけないことがある。どうにかできるかはわからないけど、僕たちを信じてくれた人のためにもね。でも、それの合間にリリスと仲良くなったって何か問題があるわけじゃない」

リリス「……はぁ、本当にどうかしてますね」

ラズワルド「だって、僕とリリスはこの前初めて会ったばかり、でしょ?」

リリス「そうでしたね。ふふ、それじゃこれからよろしくお願いしますね、ラズワルドさん」

ラズワルド「うん。それじゃ、もっと親睦を深めるためにお茶に行こうか!」

リリス「ふふっ、それはパスです」ニコッ

ラズワルド「えぇ………」

492: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 23:08:37.61 ID:bTyTmL1f0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・レオン邸・中庭―

レオン「せいっ! はっ!……やっぱりうまくいかない、どうしてだ」

ツバキ「………」

レオン「もう一度……!」

ツバキ「体の軸が少しぶれてる気がするよー」

レオン「!」

ツバキ「ははっ、それに俺が見てるのに全然気がつかないから、全然だめだねー。俺たちのことちゃんと監視してないといけない立場なんですから―」

レオン「ツバキか。別に何かしようって気でもないだろ? なら、僕だって僕なりに時間を使いたいんだ」

ツバキ「それもそうですねー。どうしたんですか、剣なんかもって」

レオン「僕だって剣くらい扱えるし、持ってちゃ変なのかい?」

ツバキ「そうなんですか? レオン王子はグラビティーマスターの異名を持つ、暗夜一の魔術師だから剣とかはあまり使わないと思ってたんですけどねー」

レオン「……それ白夜にまで広がってるのか、恥ずかしすぎる二つ名なんだけど」

ツバキ「そうですか? こう聞くたびに背筋がムズムズする感じがして、俺はとっても好きですよー」

レオン「それは僕のことをからかってるようにしか聞こえないんだけど……」

493: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 23:19:49.73 ID:bTyTmL1f0
ツバキ「そんなことないですよー。それにさっきの剣のふるまいよりも、魔術を使っているときのレオン王子のほうが、かっこいいですから。さすがはグラビティーマスター」

レオン「その呼び方はやめてくれ」

ツバキ「レオン王子は魔術師ですから、仕方無いですよー」

レオン「……剣の扱いをどうにかした方がいいかもしれないな。その二つ名で呼ばれるのはとても不愉快だ」

ツバキ「なら、まずは剣を持った時に重心がちゃんと中心に来るようにした方がいいですよー。今のままじゃ、ふらふら震えてて少し格好悪いですから」

レオン「余計な御世話だよ!」

ツバキ「そうですかー、でも姿勢は重要ですよ。特に戦いは基本をこなしてこそですから―。最初から独自でやるのは、レオン王子には合ってないって思いますよー」

レオン「……ぼくを本気で怒らせたいみたいだね……」

ツバキ「すみません、いろいろ言いすぎたみたいで。俺はこれで失礼しますねー」

 タタタタタタッ

レオン「くそ、捕虜に意見されるなんて……」

レオン(重心を体の真ん中にすればいいんだよな……べ、べつに言われたからじゃない。参考にするだけ……)

 ヒュン! ズアッ

レオン「……」

 ズバッ ブンッ

レオン「……動きやすいな、これ」

494: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 23:29:44.64 ID:bTyTmL1f0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・ピエリの屋敷―

カムイ「先日の件でピエリさんにお礼にと来たのですが。今は鍛錬中ですか」

メイド「はい、もうそろそろお帰りになられると思います。ここまで来ていただいたのに、申し訳ありません。館主様も今は出られておられますゆえ」

カムイ「いいんですよ。突然訪問したのは私ですから。マークス兄さん、ここまで付いて来ていただいたのに申し訳ありません」

マークス「なに、気にすることはない。それに、久々にお前と話せたのはうれしいことだ。氷の部族の件、無血で平定とは予想していなかったぞ」

カムイ「ふふ、マークス兄さんも色々と手をまわしてくれたじゃないですか。臣下の方たちを私に預けてくれたんですよね」

マークス「ああ、エリーゼにも頼んでしまった手前、やはり心配であったのでな」ナデナデ

カムイ「マークス兄さん。くすぐったいですよ、ふふ、大きな手でなんだかとても落ち着きます」

マークス「ふふ、どんな事情があろうとも、お前は私の妹だ。心配にもなるし、いつまでたっても可愛いものでもある。ラズワルドとピエリには、引き続きお前に随伴するように手続きを取ってある。存分に使ってやってくれ」

カムイ「はい、わかりました。二人とも大事に使わせてもらいますね、マークス兄さん」

マークス「ああ。すまないが私はそろそろ城へと戻る。ピエリがいると踏んでいたため、合間に出て来ただけだからな」

カムイ「はい、私はここでピエリさんをお待ちしますので。軍議の方、頑張って来てください」

マークス「ああ、それではな」

495: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 23:38:19.67 ID:bTyTmL1f0
ピエリ「あれ、カムイ様なの!」

カムイ「ピエリさんですか、お待ちしてました」

ピエリ「どうしたの? ここはピエリのお家なの、もしかしてお父様に用事なの?」

カムイ「いいえ、私が用事があったのはピエリさんのほうです。まずはこれを……」

ピエリ「おいしそうなお菓子なの!」

カムイ「先日のお礼です。ありがとうございます、ピエリさんたちが来てくれたおかげで、どうにか目標通りに事が進められました」

ピエリ「そう言ってもらえるとピエリとっても嬉しいの! 外で立ち話もなんだから、中に入ってお話するの!」

メイド「では、カムイ様。わたしはこれで」タタタタタタッ

カムイ「え? はい」

ピエリ「みんなすぐに行っちゃうの。やっぱり変なの」

カムイ(ピエリさんが帰ってきたのに、どうしてすぐにいなくなってしまうのでしょうか?)

ピエリ「それじゃカムイ様、ピエリに付いて来るの! ピエリの部屋まで案内してあげるの!」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

496: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 23:48:21.44 ID:bTyTmL1f0
カムイ(屋敷の中に入りましたが、あまり人の気配がありませんね……それに、どうしてでしょうか、少しばかり血の香りもします)

ピエリ「カムイ様、目が見えないの本当なの?」

カムイ「ええ、あまり人に見せるものではありませんから、見せることはできませんけど、ピエリさんが私の手を取ってくれてるので、助かります」

ピエリ「ピエリのお家だから、案内は任せてなの!」

 トタトタトタ

カムイ(ん、前方から誰か気ますね。まっすぐに歩いていないところをみると、何か持っているみたいですが……)

メイド「んしょっ」

カムイ(フローラさんやジョーカーさんと比べるというわけではありませんが、あまり動きがいいというわけではないみたいですね。慣れていないといえばいいでしょうか?)

メイド「あっ、ピエリ様」ペコリッ

カムイ(でも、ほかのメイドの方たちと違って、あいさつはしてくれるんですね)

ピエリ「……イライラするの」

メイド「?」

カムイ「ピエリさん?」

ピエリ「カムイ様、一緒にきれいになるの!」ジャキ

 ヒュッ

メイド「えっ?」

 カキンッ

ピエリ「……なんで邪魔するの」

カムイ「いえ、ピエリさんこそ何をしているんですか」

497: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/02(水) 23:58:22.99 ID:bTyTmL1f0
メイド「ひっ、ひいいいぃぃ」

ピエリ「カムイ様。ピエリの邪魔をしないでほしいの。その子、えいっ!ってしたいだけなの」

カムイ「要領が得られません。この方がスパイだったとか、そう言う事情なら別に構いませんが」

ピエリ「違うの、ただえいってしたいからするの。帰り血ドバドバ浴びて、カムイ様もピエリみたいに奇麗になるの」

カムイ「……冗談を言っているわけじゃないみたいですね」

メイド「ひぃ、た、たすけて」タタタタタタッ

ピエリ「逃がさないの!」

 ブンッ ガキンッ

カムイ「……ピエリさん。やめてください、こんな事をする意味はありませんよ」

ピエリ「……カムイ様。なんでピエリの邪魔するの。いくらカムイ様でも許さないの、八つ裂きにしたくなっちゃうの」

カムイ「なら試してみますか?」

ピエリ「……もしもカムイ様をえいっして死んじゃったら?」

カムイ「それは私が単純にピエリさんより弱かっただけですよ。気に病む必要なんてありません」

ピエリ「そうなの! なら遠慮しないの、ピエリ、カムイ様をえいっしていっぱい奇麗になるの!」ブンブンブンジャキッ

カムイ「私は別にピエリさんにえいっするつもりはないので……。それじゃ私がピエリさんの手から武器を落とせたら勝ちでいいですか?」

ピエリ「カムイ様、おかしいの!ピエリが武器を落としちゃうなんてありえないの、でも、カムイ様に武器が刺さっちゃって、手を放すことはあるかもなの」

カムイ「そうですか。それじゃ始めましょう」

ピエリ「そうなの。それじゃ行くの!」

498: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 00:09:49.01 ID:0BrU8icj0
~~~~~~~~~~~
ピエリ「これで、終わりなの!」

カムイ「そこです!」

 カキンッ ヒュンヒュンヒュンヒュン ザクッ

ピエリ「……ピエリの武器、飛んじゃった……。ふえ、ふええぇぇーーーん!」

カムイ「ふぅ、何とかなりました。ピエリさん、今度は大泣きですか?」

ピエリ「ピエリ、ピエリ負けた、負けちゃったの。びえぇぇぇーーーーん!」

カムイ「本当に困りましたね……」

ピエリ「ふえぇーーーーん!」

カムイ「ピエリさん、泣かないでください」ピトッ

ピエリ「ぐすっ……カムイ様、ピエリ、ピエリぃ……」

カムイ「ふふっ、涙で顔が汚れちゃってますよ。ふふ、言葉遣いと同じで、とても柔らかいんですね。ピエリさんは」

ピエリ「か、カムイ様。く、くすぐったいの……」

カムイ「ふふっ、ピエリさんは。私と勝負に負けたんですから、これくらい我慢してください」

ピエリ「ピエリ、カムイ様と勝負なんてしてないの。ただ、えいってしたいだけなの」

カムイ「そうですか。ピエリさんは素直なんですね。だから、もっと素直な反応を私に見せてください」ススッ

ピエリ「ぴ、ピエリ、なんだか気持ちいいの……」

カムイ(目を隠すくらいの前髪に反応してるんでしょうか?)サワサワ

500: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 00:19:08.31 ID:0BrU8icj0
ピエリ「あははっ、くすぐったいの」

カムイ(違いますね……。前髪に触れて出た声じゃないみたいです……つまり、間接的に触れた場所が、ピエリさんの弱点……もしかしてこの髪に隠れた……)

ピエリ「んくっ! か、カムイ様、そこ、なんかへんなの」

カムイ「そうですか、どこが変なんですか? 私に教えてください」

メイド(新入りのメイドが走って逃げて来たから何事かとおもって駆けつけましたが……。これは一体何事?)

ピエリ「ピエリ、なんだかおかしいの。さっきまでカムイ様のこと、えいってしたかったのに。今そんなこと全然思わないの。もっと触って欲しいって思うの」

カムイ「そうですか。そう言ってくれると嬉しいです。ピエリさんが一番感じるのは、ここですか?」

ピエリ「ひゃああああ。か、カムイ様、そこ、そこ、なんか声出ちゃうの! やめてなの!」ジタバタジタバタ

カムイ「ふふっ、やめません」

カムイ(隠れてる瞼が弱点ですね。ピエリさんの口調はどこか子供っぽいのに、気持ち良さそうにしてる時の声との差がすごくて、止められる気がしません)

ピエリ「ふええっ。やめてなの! ごめんなの、えいってしようとしてごめんなさいなの! もうさわっ、ふにゃぁ」

501: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 00:30:01.79 ID:0BrU8icj0
カムイ「ふふっ、なんだか猫みたいな声を上げてますよ」

ピエリ「これは、カムイ様が――、ひゃあん。やめてなの、変な声止まらないの」

カムイ「ピエリさん、顔が真っ赤になってるんですね。それに快感におぼれてるのが、わかりますよ?」

ピエリ「これ以上――あっ」チラッ

メイドたち「……あっ」

ピエリ「た、助けてなの……」フルフル

カムイ「ふふっ、なんだか皆さん見てるみたいですね。もっと見せつけてあげましょう? ピエリさんは人前で撫でられて甘い声を上げてしまう人間なんだって」

ピエリ「もう、えいってしないの。しないから助けてな――ひゃうんっ!」

カムイ「ふふっ、可愛かったですよ、ピエリさん」スッ

ピエリ「……あ、あ、カムイ様?」

カムイ「ふふっ、ピエリさん、顔を触らせてくれてありがとうございます。今さっきの言葉ちゃんと守ってくださいね。メイドさんたちにえいっしてはいけませんよ?」

ピエリ「……面白くないの」

カムイ「そうですか、やっぱり」

ピエリ「カムイ様のお顔、ピエリも触るの。それでお相子なの!」ガバッ ドサッ

カムイ「ピエリさん?」

ペタペタ

ピエリ「カムイ様の手、とっても温かかったの。だから、ピエリもお返しするの」

カムイ「そうですか。ふふっ、くすぐったいですよ」

ペタペタッ サワサワ

ピエリ「むーっ、カムイ様の弱点、全然わからないの……」

カムイ「ふふっ、見つけられるといいですね。私の弱点」

ピエリ「悔しいけど、カムイ様との決着はこれでいつかつけるの! それまでピエリがカムイ様を守るの!」

カムイ「はい、頼りにしてますよ。ピエリさん」

ピエリ「でも、カムイ様。またピエリに人前でこんなことしたら、本気のえいっしちゃうの! 返り血じゃ済ませないの、ボコボコにしてやるの!」

カムイ「……」

ピエリ「ピエリ本気なの」ニッコリ

カムイ「この頃は釘を刺されてばかりですね……」

502: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 00:44:00.59 ID:0BrU8icj0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城ー
ユキムラ「……おやおや、こんな夜分にどうかされましたか?」

武将「これはユキムラ様。少しばかり報告があったもので」

ユキムラ「そうですか」

武将「早く誰かが重い腰を上げてくれないか待っているのですが。ユキムラ様、早急に手を打たねば、白夜は圧されるばかりですぞ」

ユキムラ「そうですね。ですが、今はリョウマ様、タクミ様、ヒノカ様の考えを待つところです。必ずやいい考えを出してくれるでしょう」

武将「ははっ、期待しております。それでは失礼いたす。

武将「……いい考えなど待つことなどできぬ」

ハイタカ「武将……」

武将「首尾はどうだ、ハイタカ」

ハイタカ「接触を終えました。フウマ公国は我々の案を受け入れてくれるそうです。すでに船の手配も多くを済ませました」

武将「そうか、では私も動くことにする。今からその方にでも会って話をするつもりだ。ハイタカ、お主も同伴しろ」

ハイタカ「仰せのままに」


 コンコン

???「だれか?」

武将「夜分に失礼いたす……一つお話がある故、お時間をくださらぬか」

???「……わかった、入っていいぞ」





 休息時間 -2- おわり


503: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 00:46:25.60 ID:0BrU8icj0
 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C→C+
 ピエリ    →C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C→C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでリリスとラズワルドの支援がCになりました。
 今回のイベントでレオンとツバキの支援がCになりました。

504: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 00:54:23.77 ID:0BrU8icj0
 今日はここまでです。書き終えて気づいたけど、レオンを監視するキャラになっていた……。カムイの●●ハンド攻略は残り二人です。
 次の休憩終りに、全体的なキャラクター支援の状態を一覧にしようと思います。

 というわけで、次の安価を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 カムイが次に顔を触るキャラクター

 ラズワルド
 ハロルド
 
 安価は>>505

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 レオンが風呂を監視することになる相手

 サクラ
 カザハナ
 ツバキ

 安価は>>506

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 どこかで話をしている組み合わせ

 カムイ
 サイラス
 エリーゼ
 エルフィ
 ハロルド
 モズメ
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ピエリ
 ラズワルド

 一人目は>>507
 二人目は>>508

 でお願いいたします。

505: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/03(木) 01:07:39.76 ID:1RNA5K7v0

ハロルド

506: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/03(木) 01:12:18.48 ID:u95YV/Alo
サクラ

507: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/03(木) 01:13:35.45 ID:gUx4x1Js0
ハロルド参上だぁ!

508: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/03(木) 01:14:18.56 ID:tpubOPmx0
乙です
モズメ

511: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 23:16:48.62 ID:0BrU8icj0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・レオン邸―

レオン『………』ペラ…ペラ

サクラ「………」

サクラ(やっぱり、なんだか気になります。その扉の前で監視してるだけなのはわかってるんですけど……)

レオン『………』ペラ

サクラ(ううっ、逆にいるっていう証明がほしいです。そのレオンさんはそう言うことをする人じゃないって、わかってますけど、やっぱり男の人ですから……」

レオン『サクラ王女、どうかしたのかい?』

サクラ「えっ、な、なんですか!?」

レオン『いや、いつもならもうお湯の音が聞こえてるくらいなのに、今日は何も音がしないからね』

サクラ「いえ、その……」

レオン『大丈夫、絶対覗いたりしない。暗夜王国の第二王子として、当然のことだからね』

サクラ「その、レオンさんがそういったことしないってわかっているんですけど……、やっぱり」

レオン『まぁ、疑って当然か。でも、この監視は譲れない線だ。悪いけど……』

サクラ「はい、わかってます」

レオン『……はぁ、わかったよ。それじゃ、何か僕がしゃべるから。そうすれば、僕がここにいるってわかるでしょ? それに扉が開いたら僕の声だって聞こえ方が変わるはずだ』

サクラ「は、はい。でも、一人で何か喋ってるのってなんか……」

512: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 23:27:35.15 ID:0BrU8icj0
レオン『なら、サクラ王女が僕の話し相手になってよ。それなら僕も虚しくないしね』

サクラ「はい。ありがとうございます」

レオン『そう、それで、何を話そうか?』

サクラ「……レオンさんのこと、教えてくれませんか?」

レオン『僕のこと? 暗夜の第二王子だよ』

サクラ「違います、あの、好きなものってなにかあるんですか?」

レオン『好きなもの? そうだね……トマトが好きかな』

サクラ「トマトですか?」

レオン『白夜じゃ見ない食材なのかもしれないね。こう手のひらに収まるくらいの大きさで、真っ赤で酸味がある野菜だよ』

サクラ「そうなんですか、食べてみたいですね」
 
 バシャー

レオン『そう、サクラ王女も気にいると思うよ。スープに入れてもいいけど、僕は冷やして均等に切ったやつも好きだから。ただ、そのままは抵抗があるならやっぱりスープに入れて食べるのがお勧めだよ」

サクラ「ふふっ、なんだか面白いです。レオンさんのことだから、この前言ってた怖い話をするんじゃないかって思ってましたから」

レオン『ああ、それもあったね。でも、それはちゃんと真夜中に話したいね。サクラ王女、なんだかんだで怖い話が好きそうだから、直に反応を見てみたいからね』

サクラ「ううっ、その、私これでも怖い話、苦手なんですよ?」

513: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 23:39:36.07 ID:0BrU8icj0
レオン『みたいだね。この前のことからわかるから。でも気になって仕方がない、そうなんでしょ?』

サクラ「ううっ、レオンさんって少し意地悪です」

レオン『そうかもしれないね。でもサクラ王女が話をしてって頼んできたんだから』

サクラ「そ、そうですね。はい」

レオン『だから、怖い話はいずれ違うところでしてあげるよ。それまで楽しみに待っていて』

サクラ「……は、はい。わかりました……」

レオン『それじゃ、話はこれくらいでいいよね。出る時は、もう一度声を掛けてくれればいいから』

サクラ「……」

 ピチャン ピチャン

レオン『………』ペラ ペラ

サクラ「……」

サクラ(……お風呂、まだ半分も終わってないのに、無言になられると……)

サクラ「あ、あの……」

レオン『どうしたの?』

サクラ「な、なにか話してくれませんか///」

レオン『ん、もう終わるくらいの時間かと思ったんだけど……、もしかして僕に話を求めたのって』

サクラ「わーっ!! わーっ!! 違います、違います! 静かになった部屋の中で響く水の音とか、誰か後ろに立ってるんじゃないかとか、そう言うのが怖いとかそういうわけじゃないんです!」

レオン『そう、ごめんごめん』

レオン(なのに怖い話が気になるなんて、面白い人だな)

514: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/03(木) 23:49:02.02 ID:0BrU8icj0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞『中庭』―

モズメ「……えいっ!」

 カンッ

モズメ「うーん、もうちょっとどうにかせんと、あかんかもしれんな」

ハロルド「おや、モズメくんじゃないか。鍛錬の最中かね?」

モズメ「せやな。あたいもカムイ様の役に立ちたいんから、毎日頑張ってるんよ」

ハロルド「そうか、とても良い心がけだ。誰かのために頑張ることは素晴らしいことだからね」

モズメ「そういうハロルドさんは、なにしとるん? 今日はカムイ様は外に出とるから、帰ってくるのは夕方頃ってフェリシアさんが言ってた」

ハロルド「ははっ。なに、エルフィくんが、城塞で手伝いをしていると聞いてね。私もその手伝いを手伝いに来たとうわけさ」

モズメ「そうなんか、でも、何か手伝ってるようには見えんけど」

ハロルド「……そうだな」

モズメ「なんかあったん?」

ハロルド「うむ、ここに来るまでにいろいろとあってな。エルフィくんに来ない方が皆のためといわれてしまってね」

モズメ「エルフィさんも結構きついこと言うんやな」

ハロルド「はっはっは。まぁ、エルフィくんなりに私を気遣っての発言だろう。なにせ……」

 ヒューン ペチャ

モズメ「あっ、鳥の糞……」

ハロルド「……」

 ズボッ

モズメ「地面に穴がいきなり!? どうなっとるん?」

515: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 00:00:02.89 ID:84dMbMoc0
ハロルド「まぁ、こういうことだ。私はどうも、こういった出来事に会いやすい性質のようでね」

モズメ「不思議なもんや。あたいなら、人生にめげてまうやろな」

ハロルド「はっはっは、大丈夫だ。なにせ、私と一緒にいればできる限りの不運は私の元にやってくるからね」

モズメ「なんやそれ、言ってる意味わからんよ?」

ハロルド「モズメくん、用は考えかただよ。たしかに私はこうして不幸の身ではあるが、この不幸の身である私が起きるかもしれない悪いことを受けることで、誰かを守ることができるのだとすれば。それは素晴らしいことだ。まぁ、降りかかる災難の大きさ小さいことに越したことはないのだがね」

モズメ「……ハロルドさんはすごいんやな。あたいじゃ、そういう風に考えられへんよ」

ハロルド「なに、それほどでもないさ……」

モズメ「でも、ちゃんと体洗わんとあかんで、流石にその姿で歩き回るんは……」

ハロルド「そ、そうだな。モズメくんの言う通りだな」

モズメ「ふふっ、でもハロルドさんと話してあたい肩が軽くなった気がするんよ。せやな、用は考え方やからな」

ハロルド「そうさ。モズメくん、もしも鍛錬をするなら私にも声をかけてくれ、一緒に切磋琢磨し、カムイ様の役にたてるよう頑張ろう!」

モズメ「そうやな。それじゃ、言葉に甘えさせてもらうわ。よろしく、ハロルドさん」

ハロルド「任せたまえ!」



516: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 00:09:31.85 ID:84dMbMoc0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

リリス「カムイ様、本日はお疲れ様です」

カムイ「ええ、これでフリージアの件はすべて報告が終わりました。マクベスさんも反乱鎮圧で部族を潰さないことについては納得してくれたようですし」

リリス「はい、では私はこれから馬を戻しますので」

カムイ「はい、あとはよろしくお願いしますね」

 キャアアアアアアア

 ガシャン!

カムイ「…この声は、フェリシアさんですね。また転んでいるのでしょうか?」

リリス「フェリシアさんも懲りませんね」

カムイ「ふふ、そうですね。ちょっと様子を見てきましょう」


フェリシア「ごめんなさい、ごめんなさ~い!」

ハロルド「………いや、気にしないでいい。怪我などはないかね?」

フェリシア「は、はい。でも、ハロルドさん、さっきお湯を浴びたばかりなのに……」

ハロルド「……はっはっは。気にしないでくれたまえ、私は戻ってから――」

カムイ「ハロルドさん?」

ハロルド「おおっ、こんばんは、カムイ様」

カムイ「はい、こんばんは。今日は紅茶の香りがしますね。原因は……まぁ、フェリシアさんですよね」

フェリシア「す、すみません。その、バランスを崩してしまって……」

517: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 00:19:20.89 ID:84dMbMoc0

ハロルド「気にしなくていい。お湯を浴びれば済む話だ。それに、今日は一度お湯を借りていることもある、これ以上お世話になるのは……」

カムイ「お湯を使って行ってください、ハロルドさん」

ハロルド「し、しかし。すでに昼間使わせていただいている身でありますゆえ」

カムイ「気にしないでください。それに、ハロルドさんは私の仲間なんですから、こういう遠慮はしないでください」

ハロルド「そうですか、では、お湯の方、貸していただけますか?」

カムイ「はい。フェリシアさん、お湯の準備をお願いします」

フェリシア「は、はい!」タタタタタタタタッ

カムイ「……ところでハロルドさん。顔にも紅茶が掛っていたりするのでしょうか?」

ハロルド「まぁ、顔全体に掛ってしまったのでね。不幸中の幸いは、紅茶がぬるくなっていたことだよ」

カムイ「ふふっ、掛ったことは変わってないんですから……今、拭いてあげますね」ピトッ

ハロルド「あっ、カムイ様。手が汚れてしまいますよ」

カムイ「いいんですよ。それに、このまま歩かれても皆さん反応に困りますし、ハロルドさんも少し身なり正したほうがいいですから」

ハロルド「そ、そうですか。しかし、カムイ様の手を煩わせるのは……」

カムイ「いいえ、私がしたくてやってるんです。気にしないでください」サワサワ

ハロルド「んんっ? そ、そのカムイ様、なんだか手の動きが……」

カムイ「手の動きが……なにか?」サワサワ

518: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 00:30:10.75 ID:84dMbMoc0
カムイ(顔を全体的に触ってみましたけど、あまり反応がありませんね)

ハロルド「そ、その、なんだかくすぐったいのですが」

カムイ「すみません。今ハロルドさんの顔を調べながら、拭いてるので……」

ハロルド「し、調べるですか?」

カムイ「はい、ハロルドさん。とっても男らしい角張った顔の方なんですね。顎も二つに割れてるみたいですし」

ハロルド「ふははっ、くすぐったいですよ。カムイ様。しかし、そうでしたね。カムイ様は目が見えないお方でした」

カムイ「はい、ですからもう少し触ってもよろしいですか?」

ハロルド「はい、気の済むまでお触りください」

カムイ「ありがとうございます」

カムイ(顔は大方調べ終わってしまいましたね……となると……、この首筋のライン?)

ハロルド「首もお触りになるのですか」

カムイ「はい……」

カムイ(違いますね、となると……)

 スーッ ピタッ

カムイ「失礼しますね」

ハロルド「んおっ! いや、カムイ様、今の声はその……」

カムイ「どうしたんですか?」

 シュッシュ

ハロルド「くあっ、いえ、そのなんでもありません。……落ち着くんだハロルド。何も、何も起きていない。ただ、カムイ様が私の顔を覚えるために触っているだけ、それだけだ」

519: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 00:39:22.22 ID:84dMbMoc0
カムイ「そうですか? でも、ここに触れると、ハロルドさんから温かい息が漏れてくるのがわかりますよ」

ハロルド「こ、こふっ!」

カムイ(ふふ、まさか喉仏が弱点なんて、平面の中に突起したハロルドさんの弱点。正義の味方の弱点……。なんでしょう、このニュアンス、とても興奮してしまいます)

ハロルド「くあっ、か、カムイ様。そ、そこはー、そこはーーー!」

カムイ「駄目ですよ、ハロルドさん。正義の味方が、そんな声を出しては。正義の味方のハロルドさんは、平和を守るのが仕事なんですよね?」

ハロルド「そ、そうです。そうですがっ、くぅぅぅ」

カムイ「ふふっ、口から洩れる息が。まるで絞り出したみたいに苦しそうですよ? がんばれ、って応援したくなります」

 サワサワサワサワ

ハロルド「か、カムイ様。こ、こんなことはいけません!」

カムイ「がんばれ、がんばれ。ふふっ、ハロルドさん、どうですか? 気持ちいいですか?」

ハロルド「は、も、もう。やめ、やめてください! お、おねがいですから!」

カムイ「ふふっ……そうですね。そろそろ、フェリシアさんが戻ってきてしまうかもしれませんから……」スッ

520: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 00:48:25.56 ID:84dMbMoc0
ハロルド「はぁはぁはぁはぁ……」

カムイ「すみません、つい楽しくていっぱい触っちゃいました」

ハロルド「ううっ、まさかカムイ様にこのような趣味があったとは……。驚きが止まらない」

カムイ「ごめんなさい。ハロルドさんのこと、よく知りたかったんです」

ハロルド「そ、そうですか……」

カムイ「はい、しばらくはこんなことをはしませんから」

ハロルド「はい。そ、そのですね。気持ちはよかったです」

カムイ「はい、自信がありますから。それに、やっぱりハロルドさんといるとなんだか楽しいです」

ハロルド「はぁ、カムイ様。私を困らせないでいただきたいのですが……。まぁいいでしょう、それでは私はお湯を借りますので」

カムイ「はい、ゆっくりしてってください」

ハロルド「はい………」サワサワ

ハロルド(やはり、自分で触っても、何も感じないものだな……って、私は何を考えているんだ……)

ハロルド「しかし……カムイ様の指は柔らかくて気持ちが良かった……、いやっ、忘れろ。忘れるんだハロルド!)

521: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 00:59:05.95 ID:84dMbMoc0
◆◆◆◆◆◆
―カムイの部屋―

カムイ「…………」

リリス「カムイ様、失礼いたします」

カムイ「リリスさんですか、こんな夜分にどうかしましたか?」

リリス「いいえ。その、少し胸騒ぎがするんです」

カムイ「そうですか、ふふっ。面白いですね、私も少し胸騒ぎがします。こうして、みんなと過ごしていると、今、白夜と戦争をしているなんて全く思えませんから」

リリス「そうですね。カムイ様は、もう一度白夜の王国に行きたいと思っているんですか?」

カムイ「そうですね。願い叶うなら、もう一度行ってみたいかもしれませんね。もちろん、こんな無粋な物を持ってではなくてですけど」

リリス「……夜刀神という名前でしたか?」

カムイ「はい、世界を救うものが持つことのできる刀でしたか。私にそんなことができるなんて思えないんですけど」

リリス「いいえ、カムイ様は本当に世界を救うことのできる人かもしれませんよ」

カムイ「リリスさんもそんなことを言うんですか?」

リリス「私は、カムイ様を信じてますから」

カムイ「そうですか……」

リリス「カムイ様、あの……」

カムイ「リリスさん、今日は一人にさせていただけますか?」

リリス「はい、わかりました」

カムイ「すみません」

リリス「いいえ、それではおやすみなさいませ」

カムイ「おやすみなさい、リリスさん」


カムイ(この胸騒ぎが杞憂であってほしいとどこかで祈っている私がいます。でも、こうして肌に感じるほどに、私はよくないことが近づいているのを感じてしまうんですね。これも――)

カムイ「獣の本能が嗅ぎつけているのかもしれませんね……」

522: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 01:07:32.73 ID:84dMbMoc0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・フウマ公国―

???「すでに準備は整っていると聞いたが……」

ハイタカ「はい、先陣は我々が仕切りますゆえ」

???「そうか、すまない。死地へとお前たちを送ることになってしまう」

武将「いいえ、この身暗夜に一度刃を突き立てられれば、それだけでもこの命を掛ける価値があります。それに、こうして王族であるあなたが前に出てくれることで、他の方たちも重い腰を上げてくださる。待つだけの時間は終わったのです」

???「ああ、すまない。先制、頼んだぞ」

武将「仰せのままに」




武将「よし、あとは我々に宛がわれることになる人質のことだ」

ハイタカ「人質……ですか?」

武将「ああ、暗夜はサクラ王女を人質にしてきたのだ。こちらも、長年育ててきた暗夜の娘を人質に侵攻する」

ハイタカ「暗夜の娘? しかしこの行為に意味があるとは」

武将「ああ、意味などない。だが、白夜の中に暗夜の者がいるという不安を拭い去ることはできる。なに、これは独断での考えだが、だれも文句は言うまい。すでに、その人質は船に乗っている。まずは我々が進み先陣を切る!」

ハイタカ「わかりました、して、その人質とは?」




―――アクア王女だ―――





 休息時間 おわり


523: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 01:22:38.97 ID:84dMbMoc0
 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C+
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C→C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでレオンとサクラの支援がC+になりました。
 今回のイベントでハロルドとモズメの支援がC+になりました。

524: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 01:34:00.03 ID:84dMbMoc0
―男性の支援状況―
【サイラス】
 リリス   C
 モズメ   C+
 エルフィ  C

【レオン】
 サクラ   C+
 カザハナ  C+
 ツバキ   C
 ハロルド  C

【ハロルド】
 レオン   C
 モズメ   C+
 ジョーカー C

【ジョーカー】
 ハロルド  C
 フローラ  C

【ラズワルド】
 リリス   C
 ピエリ   C

【ツバキ】
 レオン   C

525: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 01:34:28.48 ID:84dMbMoc0
―女性の支援状況―
【リリス】
 サイラス  C
 ラズワルド C
 エルフィ  C
 モズメ   C

【モズメ】
 サイラス  C+
 リリス   C
 ハロルド  C+

【エルフィ】
 モズメ   C
 フェリシア C
 フローラ  C
 リリス   C

【エリーゼ】

【ピエリ】
 ラズワルド C

【フェリシア】
 エルフィ  C

【フローラ】
 エルフィ  C
 ジョーカー C

【カザハナ】
 レオン   C+
 
【サクラ】
 レオン   C+

531: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 19:39:08.49 ID:84dMbMoc0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・クラーケンシュタイン城『王の間』

ガロン「………」

カムイ「お父様、少し遅れてしまいました。申し訳ありません」

レオン「遅いよ、姉さん。もうみんな集まってるって言うのに」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、もしかして寝不足なのかな?」

カミラ「行ってくれれば、私が迎えに行ってあげるわ。そうね、今度から迎えに行くわ」

マークス「カムイ、少し気が緩んでいるようだな。しっかりするのだぞ」

カムイ「すみません、マークス兄さん」

ガロン「ふん、遅れたことを別に攻めるつもりはない。フリージアの件もある、結果を出せばいいそう言うものだ」

カムイ「ありがとうございます、お父様」

マークス「父上、私たちをお呼びしたわけとは?」

ガロン「うむ、白夜の軍が暗夜領へ侵攻した」

カムイ「!」

レオン「……」

ガロン「手薄となった海上より、暗夜領に入り込んできたようだ。現在、黒竜砦に身を置いている」

レオン(なんでだ、サクラ王女の身を考えれば、こんな強行的な手段を取るはずないのに……油断してたのは僕の方だって言うのか、クソ……)

カムイ(強硬派でしょう。サクラさんが捕虜となっている今、リョウマさんなどがこういったことを考えるとは思えませんからね。でも、こうなってしまってはサクラさんたちを捕虜としておく理由がなくなってしまうかもしれません。どうすれば……)

ガロン「無論、愚かな白夜の者は殺す以外にない。この暗夜に入り込んできたことを後悔させてやるほどにな」

532: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 19:50:34.86 ID:84dMbMoc0
レオン「父上、サクラ王女たちには未だ利用価値があります。この白夜の侵攻に啓発されて、捕虜を処理するのは――」

ガロン「レオン……勘違いしているようだな」

レオン「ぼ、僕は……」

カムイ「レオンさんの言う通りだと思います。捕虜はこちらにとって使うことのできる札です、それをこのような形で消費するのは……」

ガロン「カムイ、レオン。お前たちの意見に興味はない」

レオン「……しかし、父上!」

マークス「レオン、そこまでだ。父上申し訳ありません。弟の発言、お許しください」

ガロン「マークス、気にすることはない。それにわしにとって捕虜のことなど今はどうでもよいことだ」

レオン「え」

ガロン「レオン、お前が話を聞かずに口を先に出すとは珍しいものだな。白夜の物に唆されているのではあるまいな?」

レオン「……それはありえません。安心してください、父上」

ガロン「ふっ、ならばよい。わしが言っているのはこの暗夜に小さな策で侵攻してきた者たちへについてだ。そう、奴らの企みもろとも殺してくれる」

カムイ「企みですか?」

ガロン「白夜が侵攻は、すでに我が耳に入っていたこと。そうとも知らずに奴らは侵攻してきた。そして、その侵攻が見事に成功していると思い込んでいる頃だろう」

カムイ「彼らの目的は、その……」

エリーゼ「黒竜砦だよ、カムイおねえちゃん」

カムイ「はい、その黒竜砦の制圧、すでに達成されているのではないですか?」

533: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 20:01:47.38 ID:84dMbMoc0
ガロン「黒竜砦はわざと手薄にしておいたにすぎない。あの砦は白夜の軍には過ぎた物、あそこが重要な拠点であるとわしが考えていると思っているのは白夜の者たちだけだ。目下の問題は奴らの本当の狙いだ」

マークス「つまりこの侵攻は囮、そういうことですか」

ガロン「この侵攻はわれらの目を黒竜砦に縛り付けるために行われているにすぎない。奴らの本当の目的はノートルディア公国に陣を築くことにある」

カムイ「ノートルディア公国?」

レオン「………そうか、ノートルディア公国に陣を組んで、海上からの侵攻ルートの確立、これが白夜の狙いか」

カミラ「でも、どうしてそんなことがわかるのかしら?」

ガロン「単純なことだ、暗夜に白夜へ手を貸そうとする者がいるようにな」

カミラ「なるほど、そういうことね」

エリーゼ「え? どういうこと?」

カムイ「白夜にも暗夜に協力的な国がある、そう言うことですか」

カムイ(そうなると、白夜も一枚岩ではないということにもなりますね)

ガロン「その国よりもたらされた情報だ。信用する価値はある、先立って現れた白夜軍は黒竜砦へすぐさま向かった。われらの目が自分たちに引き寄せられているということを信じてな」

534: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 20:12:11.80 ID:84dMbMoc0
エリーゼ「でもおとうさま。今からノートルディアに向かっても間に合わないんじゃ……」

ガロン「言ったであろう、黒竜砦は手薄にしたと。すでに、マクベス率いる軍がノートルディアに待機しておる。白夜は主力が待つノートルディアで一戦交えるだろうが、すでに陣を組んだわれらの有利は動かぬ……」

カムイ「……どちらにせよ。黒竜砦に滞在する者たちは、すでに死ぬことを覚悟しているようですね」

マークス「捨て石なのだろう。そしてそれを理解もしているはずだ。まったく、敵ながら無茶苦茶なことをする」

レオン「正直、やる必要もない作戦だね。頭悪いよ」

ガロン「それほどの策しかないということだ。そして、唯一の本命もまた、こちらに知れている。白夜の企みをすべて崩し、その上でいずれ蹂躙してくれようぞ。カムイよ、お前に命令をくだす」

カムイ「はい、お父様」

ガロン「黒竜砦にいる白夜軍を殲滅し、港町ディアまでの街道を確保せよ。やつらの小さき策、そのすべてを握りつぶせ」

カムイ「はい、わかりました。お父様、準備ができ次第、黒竜砦の奪還、及び港町ディアへとの街道の確保の任に付きます」

ガロン「うむ、期待しておるぞ。カミラ、レオン、マークス……お前たちにも任を与える――」

538: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 21:47:57.99 ID:84dMbMoc0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

カミラ「お父様も意地悪ね。私たちもカムイに同伴させてくれてもいいのに」

カムイ「カミラ姉さん、そう言ってもらえるのはうれしいです。ですが、カミラ姉さんにもやるべきことがありますから」

カミラ「そうね。私にも与えられた仕事があるから、それを放り出すなんてことはできないわ。でも、やっぱり心配だわ」

カムイ「ふふっ、カミラ姉さんは私を放してくれませんね」

カミラ「ええ、二人でいる時はこうやってギュッとしていたいもの」ギュー

カムイ「カミラ姉さんは、白夜のこと、どう思っていますか?」

カミラ「あら、おかしな質問をするのね。カムイを困らせるなら、誰であろうと私は容赦しないわ。それが私にできるカムイへの愛情表現だもの」

カムイ「そうですか。そう言ってもらえるとなんだか照れてしまいます」

 コンコン

カムイ「はい」

ギュンター『カムイ様、お時間よろしいですかな?』

カムイ「はい、大丈夫ですよ」

ギュンター「失礼いたします。これはカミラさま、もしかしてお邪魔でしたかな」

カミラ「いいえ、そうでもないわ。そろそろ私も行かなくてはいけない時間だから。カムイ、こちらの仕事が終わったらすぐに向かってあげるから、楽しみに待っててね」

カムイ「はい、楽しみに待ってます」

カミラ「ええ、私もよ。それじゃ、またね」

カムイ「はい、カミラ姉さん」

539: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 21:56:16.70 ID:84dMbMoc0
カムイ「お待たせしました。ギュンターさん。そうでした、私がフリージアに向かっていた間など、城塞の警備をしてくれて、ありがとうございます」

ギュンター「いえいえ、これくらいのこと、気にしないでください」

カムイ「はい、それでお話とは?」

ギュンター「はい、此度私もカム様に同伴させていただくことになりましたゆえ、そのご挨拶にと」

カムイ「そうなんですか。改めて挨拶されるのはなんだか不思議な気持ちですけど、ギュンターさんがいてくれれば、心強いです」

ギュンター「フッ、ジョーカーやフェリシア、フローラはあまり喜んでくれそうにはありませんがな」

カムイ「……そうでした。フローラさんとフェリシアさんのことで一つお聞きしたかったことがあるんです」

ギュンター「といいますと?」

カムイ「ギュンターさん。フェリシアさんとフローラさんがフリージアに向かったのを知っていましたね?」

ギュンター「なんのことやら、私にはわからない話ですな」

カムイ「とぼけないでください。ギュンターさんほどの人が、二人の動きに気付かないわけないんですから」

ギュンター「久々に故郷へ帰りたくなることもありましょう。ただそれだけの話です」

540: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 22:06:23.60 ID:84dMbMoc0
カムイ「………もしも、私ではない誰かが、フリージアに向かっても止めなかったんですか?」

ギュンター「……」

カムイ「ふふっ、やっぱりギュンターさんはやさしい人ですね。ありがとうございます、私を信じてくれて」

ギュンター「……カムイ様はやはり優しい方です。本来なら私は処罰される身でしたでしょうに」

カムイ「何の話か私にはわかりませんね。ギュンターさんも、フェリシアさんも、フローラさんも、いつもどおりに城塞で過ごしていたのに処罰されるわけありませんよ」

ギュンター「はっはっは、確かに私もフェリシアたちも城塞にいたのに、処罰されるわけはありませんな」

カムイ「そういうことです。では、これからの戦い。よろしくお願いしますね。ギュンターさん」

ギュンター「はい、この老体にどこまで役目が務まるかは知りませぬが、可能な限りカムイ様を守る盾となりましょう」

カムイ「はい、でも、盾ではいけませんよ。私と一緒に戦う剣になってください。その方が、私はとてもうれしいですから」

ギュンター「わかりました。では、私はカムイ様と共に闘う剣となりましょう」

カムイ「はい、ありがとうございます、ギュンターさん」

541: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 22:18:11.08 ID:84dMbMoc0
ギュンター「私のお話は以上ですが、カムイ様。何か頼みごとなどはございますか?」

カムイ「頼みごとですか?」

ギュンター「はい、このところ。あまりカムイ様に仕えているとは言い難い状況でしたので、なにかお望みがあればなんでも致しますよ」

カムイ「気にしなくてもいいんですが、でもそうですね………」

ギュンター「些細なことでもよろしいのですぞ」

カムイ「では、久々に本を読んでいただけませんか?」

ギュンター「」ピクッ

カムイ「ギュンターさんが朗読してくれるのとても楽しみだったんです。ここ最近はいろいろあって頼めませんでしたし、ギュンターさん夜は雲隠れしてしまいますから」

ギュンター「そ、そのカムイ様。今日はすこぶる体調が……」

カムイ「どうぞ、こちらに座ってください」ポンポンッ

ギュンター「……その、カムイ様。ひとつお聞きしたいのですが、私が読むことになる本というのは……」

カムイ「えっと、待っててください。こうやって帯を触っていけば……ありました、これです」
 
<吐息、抱き寄せた先に>

ギュンター「」

カムイ「ギュンターさんが読んでくれない唯一の本でしたから、こうやって本の帯に突起を付けてすぐわかるようにしておいたんです。いつかギュンターさんに読んでもらおうって思ってましたから、とっても楽しみです」

ギュンター「あの、カムイ様、その本ですが……」

カムイ「なんでもいいっていいましたよね?」

542: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 22:26:31.51 ID:84dMbMoc0
ギュンター「ちなみにその本をお持ちになったのは……」

カムイ「たしか、エリーゼさんでした。今話題の本だからって渡されました」

ギュンター(エリーゼ様、一体何というものをカムイ様にお渡しになられているのか。たしかに恋愛小説の部類ではありますが……、これを朗読して聞かせるなど……いや、もしかしたら柔らかい表現が多いのかもしれませんな)

ギュンター「カムイ様、ちょっとその本を貸していただいてよろしいですかな?」

カムイ「はい、どうぞ」

ギュンター(うっ、なんといきなりこんな過激なシーンを!? しかも台詞がこれほどに、老体というよりも、これを朗読するのは――)

カムイ「ふふっ、ギュンターさんの声って渋くてかっこいいですから。とっても楽しみです」

ギュンター「……はぁ」

ギュンター(ここまで長く生きてきましたが、まさかこのような本を朗読することになるとは……)

ギュンター「わかりました。カムイ様に伝わるように朗読させていただきます」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

ギュンター「では―――」

543: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 22:38:56.83 ID:84dMbMoc0
◆◆◆◆◆◆
カムイ「………さて、明日の朝には黒竜砦に向かうことになるんでしょうね」

 コンコン

カムイ「はい?」

???「……」

カムイ「誰ですか?」

???「カムイ様、失礼するよ」

 ガチャ バタン

カムイ「その声……、ラズワルドさんですか?」

ラズワルド「うん、こんな夜遅くにごめんね」

カムイ「というよりも、どこから入られたんですか? この時間になったら門も閉まっているはずです」

ラズワルド「はは、正確には昼ごろからずっといたんだけどね。ここにいたけど、別の場所にいたって言うところかな?」

カムイ「……どういう意味でしょうか?」

ラズワルド「まぁ、気にしないで。僕はちょっと話があってここに来たんだ」

カムイ「話ですか?」

ラズワルド「うん、というよりか決意表明みたいなもの……かな」

カムイ「?」

ラズワルド「カムイ様、僕はカムイ様を、君のことを守りたいって考えています」

カムイ「突然どうしたんですか? 私とあなたが出会ったのはこの前なのに、そんなこと……」

ラズワルド「はい。驚かれても仕方ないと思うけど、僕はそう考えてるんです。なんだか、軽い言葉に聞こえちゃうかもしれないけど、それが僕の使命の一つみたいなものだから」

カムイ「使命……ですか?」

544: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 22:50:14.95 ID:84dMbMoc0

ラズワルド「うん。それだけ伝えたかったかったんだ、マークス様の命令だとかそう言うんじゃないってことだけ、それを伝えたかった」

カムイ「………」

ラズワルド「そ、その。難しい話じゃないんだ、ただそれだけで……あーっ、なんだろう言葉が出てこないや」

カムイ「ふふっ、ラウワルドさん。お顔を触らせてもらってもよろしいですか?」

ラズワルド「……はい」

カムイ「………」ペタッ

カムイ「……」

ラズワルド「…………」

ラズワルド(なんだろう、とても儚いものをこの人から感じてしまう。どうして、こんなに……触る手が暖かいのに、どこか)

カムイ「ラズワルドさん。一つ約束してくれませんか?」

ラズワルド「なんですか、カムイ様」

カムイ「私よりも、先に死なないと約束してくれませんか?」

ラズワルド「……僕が死んじゃったらカムイ様を守れませんから、その約束は守ってみせます」

カムイ「はい、ありがとうございます」スッ

ラズワルド「えっ、もうこれだけですか?」

カムイ「はい。ラズワルドさん、あなたの使命が叶うといいですね」

ラズワルド「はい、必ず叶えてみせます。だから、カムイ様のこと守らせてください、それが一番の近道だって思ってますから」

カムイ「はい、それでお帰りはどうしますか?」

ラズワルド「それは大丈夫です。リリスさんと話を付けてありますから」

カムイ「……そう言うことですか。わかりました、いずれその場所でお話しすることがあるでしょうから、その時にまたいろいろお話しましょう?」

ラズワルド「はい、明日は朝早いんですよね。ゆっくり休んでください。それでは」

 ガチャ  バタン


カムイ「………」

カムイ(リリスさんが星界に招いた人なんですね……。どういう目的かはわかりませんが、いずれまた話をする時になったら……)

カムイ「もう寝ましょう……」

カムイ(今はしばらくの戦いのことだけを考えていればいいんです)


第九章 前編 おわり


545: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 22:52:56.66 ID:84dMbMoc0
現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C→C+
 サイラス  C+
 マークス  C+
 ラズワルド  →C
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C→C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

546: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/04(金) 22:59:48.18 ID:84dMbMoc0
 今日はここまでです。カム子のほうがやっぱりしっくりくるのかな?

 戦闘時における、組み合わせの安価を取りたいと思います。参加いただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 カムイと陣を組むキャラクター

 ジョーカー 
 ギュンター 
 サイラス  
 ラズワルド
 ピエリ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 リリス
 モズメ
 フェリシア
 フローラ

 >>548 でおねがいします。

◇◆◇◆◇
 キャラクターで陣を組む組み合わせを二組

 >>548で選ばれたキャラクター以外

 一組目は >>549 >>550

 二組目は >>551 >>552

 キャラクターが被った場合は、下へと一段ずつスライドする形になります。
 

548: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/04(金) 23:23:10.09 ID:A1p/QpFB0
サイラスで

549: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/04(金) 23:23:58.52 ID:kZniQ+EAO
ピエリなの!

550: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/04(金) 23:41:29.44 ID:g7hR4LSq0
ジョーカー

551: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/04(金) 23:57:11.48 ID:A1NCth/U0
乙なの
エリーゼ

552: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/04(金) 23:57:36.22 ID:kZniQ+EAO
ハロルド

555: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/05(土) 23:11:32.65 ID:OPMINi100
◇◇◇◇◇◇
―暗夜王国・黒竜砦『右側の塔』

 ガチャ ガチャ

アクア「……さすがに鍵は掛けるわよね、信用されていないことはわかっていたけど、ここまでされると辛いわね」

アクア「……まさか、こんな形で暗夜に戻ることになるなんて思わなかったわ……。それも、まったく利用価値もない人質としてだなんてね……。戦争が始まったらどうなるかなんて、予想はしてたけど……

アクア「どちらにせよ、ここにいる白夜は自分たちがどうなるか理解してる。ここにいる人たちは死ぬためにここにきているのだから、私も結局死ぬことになるのでしょうね」

アクア「でも、もしも叶うのであればカムイ、あなたにもう一度……」

シモツキ(武将)『どうだ、いたか?』

白夜兵『シモツキ様。いいえ、今ハイタカ様が周囲を探索しておりますが………』

シモツキ『くそ、北から敵が迫っている。伏兵の危険性は無視できないが仕方がない。今すぐ陣を敷く、捜索はハイタカにまかせて、迎撃態勢を整える。お前も前線に向かえ!』

白夜兵『はい!』

アクア「なんだか騒がしいわね。外から聞こえているみたいだけど………そういえば、窓はあるのよね……」

 ガチャ ヒュオーーー

アクア「ロープも何もなしにここから降りても死ぬ高さじゃないけど……ただでは済まないわね。……ん? あれは……」

556: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/05(土) 23:22:35.02 ID:OPMINi100

ニュクス「煩わしいわね……。戦争が始まったとは聞いていたけど、まさか白夜の兵がこんな場所まで来てるなんて、迂闊だったわ。おまけに私を暗夜の兵と勘違いしているみたいだし、捕まったらどうなるものかわからないわね。それとも、ここが私の罪の行きつく果てということかしら?」

アクア「……ねぇ、あなた!」

ニュクス「っ!?」キョロキョロ

アクア「上よ、上」

ニュクス「……なに?」

アクア「いいえ、困っているみたいだから、声をかけたのよ。見たところ子供だから、もしかして迷子?」

ニュクス「……気安く話しかけないでほしいわね、お嬢ちゃん」

アクア「どう見ても私の方があなたより年上な気がするのだけど?」

ニュクス「人を見かけで判断しないで頂戴。年端も行かないような若造に子供扱いされたくないわ」

アクア「そう。それは別に困っていないっていう意思表示でいいのね」

ニュクス「そう言って――」

アクア「みんな、ここに――」

ニュクス「!?」

アクア「冗談よ。でも、もう少し大きな声を上げれば、誰かしら寄ってくるでしょうね?」

ニュクス「……あなた性格悪いわね」

557: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/05(土) 23:30:44.49 ID:OPMINi100
アクア「たくましいって言って欲しいわ。あなたに頼みたいことがあるの、いいかしら?」

ニュクス「はぁ、私に選択権は無いのに、頼みたいことって……」

アクア「そう。侵入者が――」

ニュクス「わかった、わかったわ! わかったから」

アクア「いい子ね。あとで飴をあげるわ」

ニュクス「これでもしもバラしてたら、化けて出てあげるから。女の恨みは恐ろしいのよ」

アクア「そう、楽しみだわ。ねぇ、頼みごとだけど、北から暗夜の一団が迫っているらしいの」

ニュクス「そう、それで私に何をしろって言うのかしら? その暗夜の一団にここのことを教えればいいのかしら?」

アクア「そうね。それも一つだけど、できればあなたにカムイという人に伝えてほしいことがあるの。出来れば、もう一度あなたに会いたかったって」

ニュクス「……それって」

アクア「どうせ、ここは長く持たないわ。誰もがわかっていることだもの、暗夜が攻撃を仕掛けてくれば、私は意味のない盾にされる。そして死ぬことになる。それに、暗夜の者たちも私のことを覚えているわけがないわ」

ニュクス「まるで、もともとは暗夜に住んでいたみたいな言い方ね」

558: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/05(土) 23:39:51.98 ID:OPMINi100
アクア「そうなるけど、もう関係のないことだから。私の名前はアクア、この名前はカムイに会ったときだけ言ってくれればいい。どうせ、ほかの人たちには感慨のない名前のはずだから」

ニュクス「……ニュクス」

アクア「え?」

ニュクス「私の名前よ」

アクア「ニュクス……聞いたことがあるけど……」

ニュクス「あなたの頼みに力を貸してあげる。そのカムイって人に、あなたの言葉ちゃんと届けるわ」

アクア「……ありがとう」

ニュクス「それじゃ。運がよかったら、また会いましょう」

 タタタタタタタッ

アクア「運がよかったらね……」



ニュクス(とは言ったけど、カムイの顔を私は知らないし……こんな口調で話しかけたら、確実に怪しまれるわね……)

ニュクス「……」

ニュクス(やりたくはないけど……、仕方無いわよね。その、約束してしまったんだから)

559: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/05(土) 23:50:39.76 ID:OPMINi100
◆◆◆◆◆◆
―黒竜砦・北の森林―

サイラス「さて、どうするか」

カムイ「私は地図が見えないので何とも言えませんが、黒竜砦というのはどういった場所なのですか?」

サイラス「内部構造はかなりシンプルだ。それゆえに、こちらの攻撃方法もかなり限定されるからな。相手が誘導に引っ掛かってくれればいいけど、全く動かないような相手だったら」

カムイ「というより、砦に陣を構えておきながら、こちらにのこのこやってくるとは思えませんけど」

サイラス「……考えてみればその通りだな。すまない」

エリーゼ「サイラスって、そう言うところ抜けてるよね。しっかりしてよ、もー」

サイラス「ううっ、頭が上がらないな。向こうの斥候が顔をよく出してるから、偵察情報なんて手に入るわけないしな……」

カムイ「……なにか情報でも手に入ればいいんですが……」

 ガサッ ガササッ

エリーゼ「!?」

カムイ「誰ですか!」

サイラス「まさか、白夜兵!?」 


 ガササササッ


ニュクス「………」

サイラス「えっ、こ、こども?」

エリーゼ「ど、どーしたのこんなところに……」

ニュクス「……だ、誰なの? にゅくすのこと、つかまえるの?」

ニュクス(くっ、すごく恥ずかしいわ)

560: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 00:01:03.75 ID:KjuQRzBo0
カムイ「私たちは暗夜軍の者です」

ニュクス「にゅ、にゅくすにひどいこと……しない?」

サイラス「こんなに怯えて……もしかしたら、白夜の兵に襲われたのかもしれない」

エリーゼ「絶対そうだよ。でも大丈夫、ひどいことなんてしないし、あたしたちが守ってあげるから! 白夜の人たちひどいよ。こんな小さい子を追いたてて、許せない!」

サイラス「まったくだな。もう大丈夫だぞ、無事でよかった」

カムイ「……」

ニュクス「あ、あのね。この先に、怖い人たちが……いっぱいいるの……。そこで追いかけられて、ここまで逃げて来たの……」

エリーゼ「やっぱり、黒竜砦に居座ってるんだね。もう、黒竜砦はもともと暗夜のものなのに!」

サイラス「そうか、よく抜けてこられたな。いや、子供だからかもしれないが、すまないけど、なにか見てないかな? そう、気になったこととかあったら何でもいいから」

ニュクス「あ、あのね……うんとね。ここに来る途中でね……塔の上から、にゅくすに声を掛けてきたおねえちゃんがいたの」

ニュクス(背筋が寒くなりそう……)

サイラス「おねえさん、誰かが捕らわれているのか……」

エリーゼ「ううっ、そうなると強行したら、その人が危なくなっちゃうよ」

カムイ「えっと、あの……サイラスさん、エリーゼさん、ちょっといいでしょうか?」

サイラス「ん、どうしたんだ?」

カムイ「あの、このそれなりに歳がいっていそうな人が、子供のように振舞っていることに、何か疑問を持たないんですか?」

ニュクス「」

561: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 00:12:46.98 ID:KjuQRzBo0
ニュクス(え、どういうことよ。私の見た目を見て、なんで子供と思わないわけ。こ、こんな恥ずかしい言い方してる私の心境をどうしてくれるのよ///)

サイラス「何を言ってるんだ、どう見てもこの子は」

カムイ「はい、確かに気配で体格は子供ほどだとわかるのですが、まったく年下に感じないといいますか。年長者特有の、なんといいますか。そんなものが漂っているんです。なんというか、その非常に胡散臭いんです」

ニュクス「にゅ、にゅくすのこと、おねえちゃんきらいなの?」ギュッ

エリーゼ「怖い思いをしてきた子にそんな言い方ないよ!」

ニュクス(危ないわ。この女、間違いなく私の内面を見抜いてる! ここで見抜かれたら、死にたくなるわ。早く用件だけ話して、アクアの言ってたカムイって人の場所を聞き出さないと」

サイラス「そうだぞ。いくらなんでも疑って良いことと悪いことがある」

エリーゼ「そうだよ!」

ニュクス(この二人は騙されてくれてるから、どうにかなりそう。はぁ、早くここから抜けて……)

エリーゼ「カムイおねえちゃん、いくらなんでも言っていいことと悪いことってあると思うよ!」

ニュクス「」

サイラス「カムイ、子供が助けを求めてきてるんだ。ここは信じて話を聞くべき――」

ニュクス「あ、あなた。カムイっていうの?」

562: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 00:22:46.62 ID:KjuQRzBo0
カムイ「あっ、そうです。ニュクスさんでしたか、あなたにはそのような声が似合うと思いますよ。違和感がなくなって、私としてはすっきりとした気分です」

サイラス「え?」

エリーゼ「?」

ニュクス「……ごめんなさい。その人の言うとおり、私は結構年の言ってる女よ。ごめんなさい、演技だとしても、後ろに隠れるような真似しちゃって」

エリーゼ「え……、どういうこと。あの、怖かったら」

ニュクス「別に怖くなんてないわ。全部芝居だもの……」

サイラス「それにしては、顔が結構赤いぞ」

ニュクス「……////」

カムイ「まぁ、恥ずかしいんでしょう。人前であんな演技をするのは。それで、カムイは確かに私です。いったい何の用でしょうか?」

ニュクス「さっきの話の続きよ。その塔にいた人からあなたに伝言を頼まれたのよ」

サイラス「? だれだ、カムイの知り合いがここの近くにいたのか?」

カムイ「いいえ、そんな知り合いはいないはずですが」

ニュクス「そう、だけど頼まれたから。あの子、自分が助かることはないと思っている見たいだったから、ちょっと叶えたくなったのよ」

カムイ「それで、その方は私に何と?」

ニュクス「『出来れば、もう一度あなたに会いたかった』、そう伝えるように頼まれたの」

563: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 00:30:05.00 ID:KjuQRzBo0
カムイ「相手のお名前、聞いてもいいですか」

ニュクス「アクア、そう言っていたわ」

サイラス「! アクアって、白夜王国にいたあの女性か?」

カムイ「……」

ニュクス「余計な御世話かもしれないけど、今なら白夜兵の少ない道を案内できるわ」

カムイ「……その口ぶりだと、私たちに力を貸してくれると言っているように聞こえますよ?」

ニュクス「そう言っているのよ。運が良かったら、また会いましょうと約束してしまったの。どうやら、あの子の運は良いもののようだから」

カムイ「そうですか」

サイラス「カムイ、信用していいのか?」

エリーゼ「そ、そうだよ。すごくあやしいよ」

カムイ「さっきまで、信用しろと言ってたのはエリーゼさんとサイラスさんだったじゃないですか」

サイラス「そ、それはそうだが」

カムイ「私はニュクスさんを信じますよ。あんな恥ずかしい演技を見せてもらったんです、信じる価値がありますよ」

ニュクス「……あなた、アクアって子と同じ感じがするのだけど?」

カムイ「気のせいですよ。私は私です、アクアさんはアクアさんですから。では、ニュクスさん、案内のほう、お願いできますか?」

ニュクス「ええ、付いて来なさい。あと、黒竜砦の状況、見た限りのことなら教えてあげるから、参考にして頂戴」

カムイ「はい、ありがとうございます」

エリーゼ「……なんか納得いかないよ」

サイラス「俺もだ。なんだろう、最初に信じた分、反動をもろに浴びてしまったような、そんな気持ちになるよ」

571: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 22:56:13.03 ID:KjuQRzBo0
◆◆◆◆◆◆
―黒竜砦近辺―

ニュクス「――以上が私の知っている情報よ。内部構造の方はあなたたちの人の方が詳しいから省くけど」

サイラス「これで情報はほとんど出そろったな。カムイ、どうする?」

カムイ「別動隊でアクアさんの救出を優先しましょう。正直、相手は意味ないと思っていますが、私としてはアクアさんに助かって欲しいので、人質として出されるのはとても困りますから」

サイラス「そうか。で、誰に右の塔へと行ってもらうか。それともカムイ自身で行くか?」

カムイ「いいえ、私はみなさんと敵の注意を引き付けます。それに、私の名前に過剰反応する方も少なからずいるはずですから、目を惹きつけることはできるでしょう」

サイラス「なるほどな。それじゃ、誰を向かわせる?」

カムイ「ニュクスさん、右の塔への道案内、引き受けてくれますよね?」

ニュクス「ええ、構わないわ」

カムイ「エリーゼさん、ハロルドさんとエルフィさんを連れて救出の任、お願いできますか?」

エリーゼ「うん、わかったよ、カムイおねえちゃん」

572: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 23:05:22.77 ID:KjuQRzBo0
ニュクス「大丈夫かしら?」

エリーゼ「だ、大丈夫だもん。それにハロルドとエルフィも付いてるから!」

ハロルド「ええ、任せてくださいエリーゼ様」

エルフィ「塔の中は狭いから、私が前衛に回るわ。ハロルドはエリーゼ様を守って。あと、ニュクスは私の隣で案内をお願い」

ニュクス「別に、私は……」

エルフィ「あなたも、そのアクアにもう一度会いたいのでしょう? なら私の後ろで待機して、大丈夫、どんな攻撃も全部受け止めてみせるから、あなたを傷つけさせたりしないわ」

ニュクス「そう、わかったわ。あなたの言葉、信じさせてもらうわね」

カムイ「すみません、別動隊故に少人数で行かせることになってしまって。私たちもできる限り敵の注意を引きますが……」

ニュクス「心配し過ぎよ。それとも、あなたは仲間のことを信用してないのかしら?」

カムイ「……ふふっ、そうですね。ニュクスさんの言う通りですね。頑張ってください」

エリーゼ「うん!」

カムイ「さぁ、それでは、始めますよ、皆さん」


「これより、黒竜砦の攻略を開始します」

573: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 23:15:30.85 ID:KjuQRzBo0
◇◆◇◆◇◆◇

白夜兵「……敵に動きは無いみたいだな。斥候もまだ帰ってきていないし、怖れをなして逃げたか?」

白夜兵「それはないはずだ。無駄口をたたいてないでちゃんと見張れ」

白夜兵「わかってる――」

 ヒュン  トスッ

白夜兵「て……」ドタン

白夜兵「ん、どうし――」

 ヒュン  トスッ

白夜兵「…がっ、い、いつの間……に」ドサッ

 テキシュウ! テキシュウダー!

白夜兵「シモツキ様! 敵襲です!」

シモツキ「なに!?」

白夜兵「すでに二人やられました。奴ら、斥候の目を逃れてすでに砦の前に至っていたようです」

シモツキ「そうか、すこし陣を下げろ。相手が入ってくるのを待って、一網打尽にする。ノコノコと入ってきた奴らを分断し、各個に狙え!」

白夜兵「はっ!」



モズメ「二人、やったで……」

カムイ「はい、辛いことさせてしまいましたね」

モズメ「ええんよ。あたいがやるしかないことやから」

ジョーカー「さて、ここからは少しの間、睨めっこですね。向こうが痺れを切らして出てくるとは……」

カムイ「そうですね。では大声で宣言でもさせてもらいましょうか」

カムイ「黒竜砦に居座る白夜の者達に告ぐ―――私はカムイ」




白夜兵「!? カムイ、あの裏切り者の!?」

白夜兵「くっ、裏切り我らを切り伏せて名をあげるつもりか……」

シモツキ「静まれ、まだ姿は見せていない。まだ確証はないのだから、うろたえるな」

白夜兵「……」

シモツキ「……しかし、まさか、ここで裏切り者の王女の名を聞くことになるとはな………アクア王女を連れてきたことがこんな形で役に立つとはな……」

白夜兵「シモツキ様」

シモツキ「アクア王女を連れて来い、有効な駒だ。ちゃんと使ってやらねばな」

574: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 23:25:39.94 ID:KjuQRzBo0
ニュクス「始まったみたいね……」

エルフィ「そうみたい……。それじゃ私たちも始めましょう」

ハロルド「うむ、ここがその扉で間違いないかな、ニュクスくん」

ニュクス「ええ」

エルフィ「それじゃ、いくわね」スッ

ニュクス「えっ?」

エルフィ「はあああああっ!」

 ドゴンッ

エリーゼ「エルフィ、すご~い!」

ニュクス「……ばれないように静かにするべきじゃないの!?」

エルフィ「大丈夫、すぐに上にいければ済むことだから。私が先陣を務めるから、いくわ」

 ガシャンガシャンガシャン

ニュクス「この石の階段を何の苦もなく、上って行くのね」

ハロルド「ああ、エルフィくんにはこんな階段を上がることなど、簡単なことだからね。さぁ、ニュクスくん、エリーゼ様。先へ、私は後ろを守ります」

エリーゼ「うん、ハロルドお願いね!」

白夜兵「何事だ!」

エルフィ「邪魔!」

 ドゴンッ

白夜兵「ぐへぇ!」ドタン

ニュクス「えげつないわね……あなた」

エルフィ「急ぎましょう。踊り場に出るわ」

白夜兵「おっ、戻ったか。一体何の騒――」

ハロルド「はああああ!」

白夜兵「ぐあっ、あ、暗夜兵……だ……と」ドサッ

ハロルド「他には誰もいないようだね。その、アクアくんがいるという部屋は?」

ニュクス「多分、この部屋よ」

575: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 23:36:50.68 ID:KjuQRzBo0
アクア「外にいた見張りの声が消えた?」

アクア(そう、もうここまで暗夜兵が来たってことね。もしかしたら、死ぬ前にカムイともう一度話せるかもしれないと思ったけど、儚い夢だったわね)
 
 ガチャガチャガチャ ドンドンドンッ

アクア「……うるさいわね。少し静かにしてくれないかしら。別に逃げるつもりもないわ」

ニュクス「えらく達観した物言いだけど、そんな若さで死ぬことはないわ」

アクア「……えっ?」

ニュクス「少し下がっていて。というか下がってないと確実に怪我するわよ」

エルフィ「開錠してる時間なんてないから、力技でどうにかするわ」

アクア「えっ、どういうこと」

ニュクス「言う通りにしなさい、アクア。そうじゃないと飛んできた扉の下敷きになって死ぬことになるわよ」

アクア「!? ど、どういうことかわからないんだけど?」

ニュクス「ああ、もう助かりたかったら、さっさと言う通りにしなさいって言ってるの!」

アクア「わかったわ………いいわよ?」

エリーゼ「エルフィ、やっちゃって!」

エルフィ「でやああああっ!」ガギン、ドゴォオン!

 ガンッ

アクア「!? 扉が吹き飛んで……」

ニュクス「はぁ、ここまで私をこき使ってくれて、ちょっとは労わって欲しいんだけど」

アクア「ニュクス、これは一体……」

576: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 23:46:58.92 ID:KjuQRzBo0
エルフィ「どう、アクアはいた?」

ニュクス「ええ、この人よ」

エリーゼ「うわっ、きれいな人だね。もう大丈夫、私たちアクアのこと助けに来たんだよ」

ハロルド「正義の使者ハロル――!?」

アクア「? えっと、なにか?」

ハロルド「いや、その。ううむ、他人の空似、ではないのか?」

アクア「?」

ハロルド「いえ、失礼。今はそのような話をしている場合ではありませんでしたな。私はハロルド、救出に参りました」

ニュクス「そういうことよ、アクア早くここを抜けましょう」

アクア「一体何をしたの? 私のことをどうやって助けるよう仕向けるなんて」

ニュクス「私も運が悪かったってことよ……。いや、運が良かったのかもしれないわね。こうして、もう一度生きてあなたに会えたんだから」

アクア「運が良いって……」

エリーゼ「あのね、カムイおねえちゃんが助けに行ってくれって言ってくれたんだよ!」

アクア「!?」

エルフィ「話をしてるところ悪いんだけど、そろそろ行きましょう」

アクア「ええ、それじゃカムイの元までエスコートしてくれるかしら?」

エリーゼ「うん、まかせて! こっちだよ」

アクア「それと、ありがとうニュクス。そのさっきのことだけど……」

ニュクス「別に構わないわ。それにまずはここを乗り越えてからにして頂戴。まだ、戦いは終わってないんだから」

アクア「そうね、わかったわ」

ニュクス「ええ、ありがとう。それじゃ、救出が終わったことをカムイに知らせないとね」

 ヒュオオオオオオオオ ボウウウウウ



 ドゴオオオオオオオオン!!!!!

577: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/06(日) 23:58:27.86 ID:KjuQRzBo0
シモツキ「な、一体何だ!?」

白夜兵「右の塔より火の手が上がっています」

シモツキ「なんだと、あそこには……アクア王女が。裏切り者に気を取られ過ぎたか、くそ……」

白夜兵「現在、アクア王女を連れに行った者も帰ってきておりません。このままでは、敵別動隊が内部に入り込んでくる可能性が」

シモツキ「くそっ、ハイタカは?」

白夜兵「ハイタカ様は伏兵の探査を終え、現在外回りに砦正門に向かっています」

シモツキ「全員武器を取れ、敵別動隊の動きをここで食い止める。待っていても奴らは入ってこないだろうが、ハイタカに任せておけば問題はない。別動隊を食い止め、ハイタカの背中を守る。白夜の侍魂を、暗夜の野蛮人どもに見せつけてやるんだ!」

 ジャキ ガチャ 


カムイ「すごい音ですね……」

サイラス「ああ、大きな音だ。さてと、それじゃ俺たちもそろそろ動こう。もうピエリとジョーカーは準備が出来ている」

カムイ「はい、わかりました。サイラスさん、背中は任せましたよ」

サイラス「ああ、任せてくれ」

カムイ「では、行きましょう。白夜の力がどれほどのものか、見せてもらいましょう!」

 タタタタタタタッ

578: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 00:08:43.38 ID:8duRV99z0
白夜兵「よし、痺れを切らして入ってきたぞ!」

白夜兵「よし、弓兵引け、生かす必要はない!」

 セイシャ ジュンビヨシ!

白夜兵「よし、今――」

 ドゴォン

白夜兵「!? 壁が」

ジョーカー「なに、カムイ様に攻撃しようとしてんだ屑ども」

ピエリ「カムイ様を攻撃する人は、殺しちゃうの!」

 ザシュ ザシュ

白夜兵「強襲だと、くっ、陣形を立て直――」

 ズシャ ポタポタタタタタ ブシュアアア

ピエリ「返り血、とってもきもちいいの!」

ジョーカー「刺した敵を俺に向けるな。服が汚れる」

ピエリ「ジョーカーもきれいになるの。血がドバドバ出ててとてもきれいで、きもちいいの!」

ジョーカー「はぁ、なんでこんな奴と一緒に行動しないといけないんだ。俺はカムイ様と一緒に行動したいのに」

ピエリ「血が出なくなったの。ピエリあたらしいの見つけるの!」

 ブン ビシャァ

白夜兵「怯むな、敵はたった二人。数で押せば――」

カムイ「懐ががら空きですよ」

 ズビシャ 

白夜兵「い、ぐあああああ」

サイラス「一回の襲撃で崩れるようじゃ、まだまだだな!」

白夜兵「くそっ、いつの間に入ってきて!――ぎゃあ」

カムイ「ピエリさん、ジョーカーさん、最高のタイミングでした。前衛に穴があきましたよ」

ジョーカー「ありがとうございます、カムイ様」

ピエリ「えへへ、褒められるとピエリもっと頑張っちゃうの!」

カムイ「ええ、もっと頼みます。このまま砦の中枢に……」

579: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 00:18:54.96 ID:8duRV99z0
シモツキ「来たか……」

エルフィ「ここが中枢ね。いっぱいいるみたいだけど……」

エリーゼ「あの人が指揮官かな? 早く倒して、ここを取り戻さないと」

ハロルド「しかし、右の塔はすでに使えるものではなくなってしまいましたが、大丈夫でしょうか?」

アクア「白夜が火を付けたということにすればいいわ。それで、すべて解決よ」

ニュクス「そうね。白夜が火を付けたんだから仕方のないことよ」

シモツキ「ふん、アクア王女。まさか我らに刃を向けるとはな。白夜で育った恩、それをこうした形で返すというのか?」

アクア「そうね、結果的にそうなることに間違いはないわ。どういい繕っても、私は私を助けに来てくれたこの人達に手を貸すことになるでしょうから」

シモツキ「ふん。結局、お前は暗夜の人間だということだ。その身に流れる暗夜の野蛮の血がその証。今思えば、要らない荷物だった」

ニュクス「人を荷物扱いなんて感心しないわね」

シモツキ「ふん、暗夜にはわかるまい。場所を奪われることの辛さなど、平和を奪われる辛さも、そのすべてがわからないからこそ、お前たちは戦争を仕掛けてきた。ちがうか!?」

エリーゼ「あたしたちだって、戦争がしたいわけじゃ……」

ハロルド「エリーゼ様、相手にそんなことを言っても意味はありません。それに、私たちが今やっていることは殺し合いなのですから」

エリーゼ「ハロルド……でも……」

ニュクス「エリーゼ、今は何を言っても相手が納得する答えなんてないわ。人を殺すのに納得できる答えなんて、存在しないように……ね」

580: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 00:33:40.77 ID:8duRV99z0
シモツキ「私はシモツキ。お前たちを殺し、暗夜に一矢報いるもの。どうせ、この先助かる道など私たちにありはしない。この命尽きるまで、暗夜軍を一人でも多く切り刻む。それが私、いや、ここにいる我々の使命だ」

エルフィ「………この数を受けきるのは一苦労だけど、守り切って見せるわ」

ハロルド「エリーゼ様を守るため、向かってくるものには容赦はできない。そして、そんな野蛮な願いをかなえるわけにはいかない。ここで、君たちには倒れてもらう以外にない」

エリーゼ「あたしにだって、守りたい人たちがいるから。だから」

アクア(でも、この数をどうにかするなんて、正直無理よ。押されてしまうわ、どうすれば……)

アクア(……あれは竜脈? そう、ここは太古の竜の亡骸で作られた砦、もしもあれに手が届けば……)

ニュクス「アクア、何か思いついたのかしら?」

アクア「ええ、でも、成功させるためには、移動しないといけない。かなり危険よ」

エルフィ「何か考えがあるならお願いします。受けきり続けるのにも、認めたくないけど限界があるから」

アクア「かなり、厳しいものになるけど、いいかしら?」

エルフィ「ええ、おねがい」

ニュクス「たくましいアクアが提案することだから、勝算はあると思っているわ」

アクア「たくましいって……もういいわ。私をあそこまで誘導してくれればいいわ。あとは、それでおわるから」

581: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 00:41:20.63 ID:8duRV99z0
 ドゴン!

カムイ「!」

ハイタカ「死ねぇ!」
 
 ヒュッ キン カキン

カムイ「まったく、こちらの作戦を真似しないでもらいたいですね」

ハイタカ「……このような欠陥があるとはな。先に調べておくべきことだった。そうすれば、もう少し多い人数で、お前を八つ裂きにできたのだがな」

カムイ「……」ジャキ

ハイタカ「私はハイタカ。裏切り者のカムイ王女、その首取らせてもらう」

サイラス「そうはいかない。ここで、カムイを失うわけにはいかないんでね」

ハイタカ「ふっ、暗夜の騎士に守られた、気分はお姫様ということか?」

カムイ「そうかもしれませんね。ところでハイタカさんでしたか、白夜の戦略というのは、こうも唐突な出来事に弱いのですか? わずか数名の奇襲で前線が崩壊してしまいましたよ?」

ハイタカ「ふっ、そう言われても仕方ないだろう。ここにいるのはただの捨て石。ほとんどの兵は勢いだけで付いて来た血の気の多い者たちばかりだ。正義など要らぬ、ただ暗夜を殺すためだけの刃を寄せ集めただけの軍勢なのだからな」

カムイ「死ぬための兵隊ですか。本当の狙いがバレテいるというのに、無駄なことをするんですね」

ハイタカ「本当の目的か、そんなものは私たちにはどうでもいいことだ。今は、お前という存在をこの槍で貫き殺す、それ以外に思うことなどないのでね。お前たちも、そうだろう?」

白夜兵「……裏切り者には死、それ以外はない」

カムイ「いいでしょう、殺せるものなら殺してください」

ハイタカ「その言葉に、甘えさせてもらう! くらぇぇぇぇぇぇ!」



582: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 00:50:27.94 ID:8duRV99z0
エルフィ「くっ、……はぁっ!」
 
 ザシュッ

白夜兵「ぐっ、まだだぁぁ!」

ハロルド「くらいたまえ!」ブンッ

白夜兵「甘い。暗夜の攻撃も大したことないな!」

ニュクス「やっぱり若いっていいわね。威勢が良くて過信しやすいから、倒しやすくて」

 ボォォォォォ

白夜兵「ひぎゃ、ぐぎゃがあああ、が、がらだがぁ、がらがだだああぼえ、ぼえるぅ……」ドサッ プスッ プスッ

シモツキ「あの先は袋小路だ、やつらはここの構造をあまり理解してないと思える。このままいけば、いずれ奴らの体に刃を突き立てられる。剣を振え、矢を射て!」

 ヒュン

エルフィ「くっ、流石に攻撃が激しくなって……」

エリーゼ「エルフィ、ライブ!」

ハロルド「くっ、エリーゼ様。あぶないっ!」カキン

エリーゼ「ひっ……は、ハロルド」

ハロルド「大丈夫ですか、エリーゼ様」

エリーゼ「うん、ありがとう」

アクア「みんな、ごめんなさ。もう少しだけ、がんばって」

ニュクス「わかっているわ。わかっているから、そこにたどり着けたらちゃんと頼むわよ」

アクア「ええ、任せて」

エルフィ「ハロルド、一気に道を作るから、同じように盾に!」

ハロルド「任せたまえ」

エルフィ「息を合わせて、すぐに出るわよ。1……2……3!」

583: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 01:00:49.15 ID:8duRV99z0
カムイ「くっ、やはり中々にやりますね。さっきの人たちとは……大違いです」

ハイタカ「………どうして、白夜を裏切った」

カムイ「理由を聞いてどうしますか? 意味なんてないでしょう?」

ハイタカ「意味など確かにない、だがあの方が私たちの案を受け入れたのは、カムイ王女、あなたの所為に他ならない」

カムイ「あの方……ですか」

ハイタカ「誰かを教えるつもりはない。だが、あの方がこのようなことに手を貸してくれたこと、その理由が釣り合うものであったのかどうか」

カムイ「ふっ、それを聞くためにここまで来たのですか? 御苦労なことです!」

ハイタカ「ぐっ!?」

カムイ「サイラスさん!」

サイラス「ああ、カムイに何を聞いているか知らないが。カムイは自分で選んでここに来た、それをお前に話す必要はない!」

 ガキィン

ハイタカ「そうだな。それは確かにその通りだ。だが、私にはそれを聞く義務があると思っている。このような兵を無駄にするとしか言いようのない、作戦の理由がどんなものであったのか、その理由を聞かずに、倒れることはできない!」

 バシィン

サイラス「くっ、態勢が!」

白夜兵「未だ、死に晒せ!」

ピエリ「そうはいかないの」

 キシッ ズビシャ

白夜兵「あ、ばかな……」

ピエリ「弱いの。弱いから殺したい放題なの!」

白夜兵「このアマがぁ!」

ジョーカー「はぁ、うるさいだけで脳がない。邪魔だ」

 ズシャァ プシャアアアアアァァァ

白夜兵「こふっ……ヒュ……ヒュー、ごががが」ベチャ

ハイタカ「ふっ、やはりこの程度、ということかもしれんな。なら、私くらいは一人屠って散るとしよう」

カムイ「できるものならですがね」

584: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 01:11:44.54 ID:8duRV99z0
シモツキ「くらええええええぇぇぇぇぇ!」

 ガギィィン! ゴドン

アクア「!?」

エルフィ「私は平気だから、今のうちに!」

アクア「わかったわ!」

ハロルド「くっ、これは持つかわからない。エルフィくん、大丈夫か」

エルフィ「こ、このぉ!」

 ガッ ブンッ

シモツキ「はぁ!」ドゴォン

エルフィ「ああああああっ!」

 ドサッ ドタンッ

エリーゼ「エルフィ!」

ニュクス「くっ、攻めて足止めくらい!」

 ボオォォォ

白夜兵「くそ、道が炎で!」

シモツキ「慌てるな。魔術の炎など、少しすれば消え去る。奴らはもう袋小路に入った。急ぐ必要など何もない、刀の血を拭いておけ、斬りやすいようにな」

エリーゼ「エルフィ、エルフィ!」

エルフィ「え、エリーゼ様。ううっ、大丈夫です。まだ、まだ戦えます」

エリーゼ「だ、駄目だよ。こんなに怪我してるのに、もう戦わないで。本当に死んじゃう」

エルフィ「でも、私が」

ハロルド「エリーゼ様の言う通りだ。エルフィくん、君はもうボロボロになっている。ここからは私がすべてを受け止める」

エルフィ「そんな斧で、どうにかできるわけないわ」

ハロルド「やってみなければわからないさ。それにエリーゼ様が心配されている。エリーゼ様は笑顔の似合う御方、曇った表情にしたままなど私のポリシーっが許さないのだよ」

エリーゼ「ハロルド……ありがとう」

ハロルド「はっはっは。さぁ、白夜の者たち掛ってきなさい! 私がすべてを受けきって―――」

アクア「盛り上がってるところで悪いのだけど、もう終わるわ」

アクア(この竜脈を起動させれば……いや。もう選んでいられないわ、私はこの人達を守ると決めたんだから。この選択に、後悔なんてしない)

アクア「竜脈よ。私に応えて……」

 シュオン! シュウィン 


585: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 01:21:32.21 ID:8duRV99z0
ハイタカ「ふんっ、どうだぁ!」

カムイ「まだまだです。はぁあああ!」

 ザシュン

ハイタカ「ぐおおぉ……ま、まだああああ!」

 ブンッ ブンッ

ハイタカ「お前の、お前の答えを聞くまで、私は、私はああああ!」
 
 キン キィン ガシィン

カムイ「……ハイタカさん」

ハイタカ「……これで、終わり――」

カムイ「はい、もう終わりです」

 ザシュンッ

ハイタカ「……!」

 ポタ ポタタタ

カムイ「ハイタカさん、あなたの聞きたかったこと、それの答えを聞かせてあげます」

ハイタカ「な、なに……こふっ……」

カムイ「私があんたに付いた理由ですよ。でも、それを聞いてもあなたの心は晴れることはないです」

ハイタカ「それを、決めるのは……」

カムイ「そうですね、あなたです。ですから教えてあげます。私はただ、考え続ける私でいたいから、こっちに来たんです」

ハイタカ「な、なにをいって」

カムイ「私の答えは以上です。安らかに眠ってください」

 ズシャン

ハイタカ「は、ははははっ、なんと、無念……だ…」

 ガシャン カランカラン ドサッ

カムイ「……」

サイラス「カムイ、大丈夫か!?」

カムイ「ええ、私は。急いでニュクスたちに合流を……」


 ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

カムイ「!?」

サイラス「奥から聞こえたぞ、まさか」

586: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 01:32:35.71 ID:8duRV99z0
白夜兵「ウギャアアアアア、アツイ、ハダが、ハダガアアアア」

白夜兵「テガテガァアアアア。ギャアアアアアアア、ヒャハハハハハ、オデガオデガドゲデェエエエ」

シモツキ「酸の雨だと!? いったい何が、ぐおぉあああああああ」

 ウギャアアアアアアアアア

ハロルド「な、なんだこの光景は……」

ニュクス「……酷いわね」

エリーゼ「え、な、何が起きて」

エルフィ「エリーゼ様、見てはいけないわ」

 トケル! カラダガカラダガアアアアアアア

アクア(黒竜の酸を人が受けたらどうなるのかくらい予想がつく。それをもろに浴びた人を襲う痛みも、恐怖も、全部理解してるつもりよ)

シモツキ「グオオアアアアオオ、ユヅザン! グオオオオオオオ!!!!!」

 ベチャ ベチャ

ハロルド「こちらに向かってくるようだぞ」

ニュクス「すごい精神力ね。でも……」

シモツキ?「ハァ……ハァ……ハァ、オマエラヲギリギザンデ………ガルゥ………」

 ドサッ シュウウウウウウウウウウ……

ハロルド「うっ……」

ニュクス「こんな姿になると……悲惨なものね」

シモツキ?「…………」

アクア「………酸の雨がやんだわね」

587: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 01:41:59.71 ID:8duRV99z0
サイラス「何があったんだ。これは」

ジョーカー「さすがに、こんな死体はあまり見たことはないな。それこの臭い、とてもじゃないが嗅いでいられる物じゃない」

ピエリ「すごっく臭くて、目も痛くて、びええーーーーーん。ここにいるの嫌なの!」

カムイ「……先ほど、竜脈が使われたような気配がありましたが、それと関係あるんでしょうね」

 タタタタタタタタッ

サイラス「誰だ!?」



ハロルド「サイラスくん、私だ! ハロルドだ!」

カムイ「ハロルドさん! 皆さん無事ですか?」

ニュクス「ええ、無事よ。でも、エルフィの怪我が深刻だから、早く手当てをしてあげて頂戴」

カムイ「エルフィさん、大丈夫ですか」

エルフィ「カムイ様、はい、大丈夫――っ」

エリーゼ「エルフィ、しゃべらないで。全然傷が塞がってないんだから」

カムイ「そうですよ。今は無理をしないでください、みんなを守ってくれてありがとうございます」

カムイ(あとはアクアさんだけですけど……)

 ヒタッ ヒタッ

カムイ「!」

アクア「………」

カムイ「……」

アクア「カムイ……なのね?」

カムイ「アクアさん」ダキッ

アクア「! どうしたのカムイ」

カムイ「無事で良かったです。そして、また会えてうれしいです」

アクア「……ええ」


「私もまた会えてうれしいわ」


第九章 おわり

588: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 01:45:21.78 ID:8duRV99z0
現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C+
 サイラス  C+→B
 マークス  C+
 ラズワルド C
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

仲間の支援レベル

 今回のイベントでアクアとニュクスの支援がCになりました。
 今回の戦闘でハロルドとエリーゼの支援がCになりました。
 今回の戦闘でジョーカーとピエリの支援がCになりました。

589: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/07(月) 01:57:54.07 ID:8duRV99z0
今日はここまでです。
 シモツキは私が初めて手に入れた捕虜で、捕まえたのはこの黒竜砦でしたね、あのくるくる回っているあの侍さんです。今では内の主戦力の一人で剣聖してます。今後、気に入ってるモブを出したりすると思うので、ご了承をよろしくお願いしたします。
  

 安価を取りたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 次に話をしているキャラクターの組み合わせ。
 
 二組でお願いします。

 ジョーカー 
 ギュンター 
 サイラス  
 ラズワルド
 ピエリ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 リリス
 モズメ
 フェリシア
 フローラ
 ニュクス

 一組目は >>591 >>592

 二組目は >>593 >>594

 キャラが重なった場合は下にスライドします。

591: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/07(月) 02:01:15.01 ID:LNuI5bKX0
アクア

592: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/07(月) 02:02:36.99 ID:tGg+SV7co
ラズワルド

593: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/07(月) 02:05:04.81 ID:iAuRDrwA0
エリーゼ

594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/07(月) 02:06:27.41 ID:8mHR3YkSO
カムイで

601: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 12:33:24.69 ID:dnm/58DH0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・港町ディア『宿舎』―

カムイ「そうですか、ウィンダムから増援が来てくれるのですね」

ギュンター「はい、明日の昼頃となるようです。丸一日ほど、休みができたことになりますな」

カムイ「そうですね、黒竜砦の件もありますが、ここまで休みなく進んで来て、皆さん疲れていることでしょう」

ギュンター「ですな。気を張り過ぎても良いことはないでしょうし、ここはひとつ」

カムイ「はい、ウィンダムからの増援到着まではみなさんに自由にするように伝えてください。休息できる時にしておかないといけませんから」

ギュンター「わかりました。それと、カムイ様もお休みになられるようにお願いします」

カムイ「ふふっ、わかってますよ。今日は一日、休みですから、ギュンターさんも気軽に過してください」

ギュンター「そうさせていただきます。それでは」

 ガチャ バタン

カムイ「さて、とは言ったもののやることもありませんし……。そうですね」

「とりあえず寝ましょう」

カムイ「すぅ………すぅ……」

602: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 12:36:32.75 ID:dnm/58DH0
???「―――」

???「―――」

???「―――?」

???「―――」

エリーゼ「ううっ、気になる」

???「あれ、エリーゼ様?」

エリーゼ「きゃあっ!」

ラズワルド「どうしたんですか、そんな浮気現場を調査してるみたいに、こそこそと」

エリーゼ「ラズワルド、もう脅かさないでよ!」

ラズワルド「ごめんね。でも、エリーゼ様が周囲の注目を浴びてるのに気付かず、ずっと何かを覗き込んでるみたいだったから。それに一人で歩くなんて危ないですよ。白夜が狙っているのはノートルダム公国ですけど、もしかしたらこっちに忍びこんでる者がいるかもしれないから」

エリーゼ「ご、ごめんなさい。そうだ、だったらラズワルドも調査に協力してよ!」

ラズワルド「調査?」

エリーゼ「そう! ほらあの二人」

ラズワルド「二人?」

ニュクス「――」

アクア「――」

603: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 12:38:49.56 ID:dnm/58DH0
ラズワルド「ニュクスとあれは、アクアですか?」

エリーゼ「うん。カムイおねえちゃんはあまり紹介してくれなかったし。アクアはあのあとすぐに倒れちゃって、ニュクスはあの見た目であたしよりも年上だって言うし」

ラズワルド「ああ、確かにそんなこと言ってましたね。まったくそうは見えないけど」

エリーゼ「だから、今日は自由時間だから話をしようって思ったんだけど、お話しようと思ってた二人が一緒に出かけてて……」

ラズワルド「で、見つけたのはいいけど二人の物静かな雰囲気の中に入り込むのが難しいって感じたわけだね」

エリーゼ「二人の間に入っても、あたしじゃ話が合う気がしなくて……。だからラズワルド、協力して」

ラズワルド「お安いご用ですよ。といっても、すでに喫茶店でのんびりしてるから、いつもの口説き文句は使えないし。喫茶店にいる相手に、僕の知ってる喫茶店なんて言ったら、それだけでぎくしゃくしてしまう気がする」

エリーゼ「うーん、じゃあラズワルドがいつもやってるあれで颯爽と登場すればいいんじゃないかな」

ラズワルド「いつもやってるあれ? なんのことだろう?」

エリーゼ「ほら、ルンルンルン♪って」

ラズワルド「……え、エリーゼ様。そ、そのステップをどこで/////」

エリーゼ「この前、黒竜砦のあと街道で少し休んだ時に森の中でやってたでしょ! あれ踊りなんだよね。踊りながら話しかければ、二人とも笑ってくれるはずだよ」

ラズワルド「それ、僕が笑われること前提じゃないですか。見られただけでも恥ずかしいのに、人前で踊りながら二人に話しかけるなんて……」

エリーゼ「女の人にモテてるラズワルドなら大丈夫だよ!」

ラズワルド「え、えっとですね。エリーゼ様、あれは――」

604: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 12:41:49.76 ID:dnm/58DH0
ニュクス「少し煩わしいわね。あそこにいる人たち」

アクア「いいじゃない、今は休息時間なんだから、好きにさせましょう?」

ニュクス「アクアがそう言うならそれで構わないわ。でも、あのお嬢ちゃんのことを思ってあげるなら、自分のことを少しは伝えるべきじゃないかしら?」

アクア「そうかもね。それと、私の昔話にニュクスも興味があるんでしょう?」

ニュクス「それはそうよ。命を掛けて守った相手がどういう人なのか、少しは気になるものだから。当たり触りない部分だけでも教えてくれればいいわ。あとは特に聞くこともないでしょうから」

アクア「あっさりしているのね。もっと聞いてくるのかと思った」

ニュクス「話したくないことの一つや二つあるわ。私がそうであるようにね、だからそれすらも話したくないことなら…」

アクア「いいえ、別に構わないわ。ありがとう」

ニュクス「それじゃ、あそこにいるのも呼びましょう。そろそろ騒ぎ過ぎでギャラリーが付き始めているわ」

アクア「……」

エリーゼ「ええっ、ラズワルド、全然モテないの!?」

ラズワルド「そ、そんな大声で言うことないじゃないですか!」

エリーゼ「だ、だってあんなに女の人に声を掛けてるのに!」

ラズワルド「あれは、僕が一方的に声を掛けてるだけで」

 カルイオトコッテ…… アノコモモシカシテコエヲカケラレテルンジャ 

ニュクス「早く仲間に入れてあげないと、ラズワルドがどこかへ連れてかれてしまうかもしれないし」

アクア「そうね」ガタッ

605: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 12:45:01.28 ID:dnm/58DH0
エリーゼ「って、こんなこと言い合ってる場合じゃないよ。二人は……」

アクア「あら、二人してどうしたの?」

エリーゼ「わわっ、アクア!」

ラズワルド「あ、アクア。そのこれは、えっと」

アクア「仲がよさそうだけど、もしかしてデートか何かかしら?」

ラズワルド「え、そ、そう見えますか///」

エリーゼ「ちがうよ、あたしたちアクアとニュクスのこと――!!! えっとね、ちがうの。そう、避難訓練してたの、ラズワルドは追いかけてくる炎の役なんだ」

ラズワルド「え、ちょっとエリーゼ様?」

エリーゼ(いいから、踊って、炎みたいに踊って!)

ラズワルド「……ボウボウボウ、ボウボウボウ////」

アクア「そう、避難訓練もいいけど、よかったらそこで一緒にお茶でもどう? ニュクスと一緒だけど」

ラズワルド「え、ほんと?」

アクア「はぁ、エリーゼよりもあなたが先に目を光らせるのはやめて頂戴。それで、どうかしら?」

エリーゼ「い、いいの? あたし、その、子供だよ。難しい話とか、そんなのできない」

アクア「難しい話なんてしないわ。それに私もエリーゼと一度話をしたかったの、だから」

エリーゼ「ほ、本当?」

アクア「ええ、それに一度私のことについて話しておかないといけないことがあると思ったから」

606: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 12:50:54.57 ID:dnm/58DH0
エリーゼ「……アクア、うれしい! いっぱいお話ししよっ!」

ラズワルド「よかったね、エリーゼ様」

エリーゼ「うん。ラズワルドもありがとう」

ラズワルド「困ったな。僕がしたことなんて踊りくらいなんだけど……でも、そのおかげでこんなに可愛い女の子たちとお茶ができるんだから、運がいいや」

エリーゼ「えへへ、それでアクア、あたしに話したいことって何?」

アクア「ええ、それはね―――私が一応王女であったことと」

ラズワルド「そうだったんですか。すみません、アクア様」

アクア「別に呼び捨てでもいいわよ?」

ラズワルド「いえ、これは騎士としての線引きみたいなものなので、今からはアクア様と呼ばせていただきますね」

エリーゼ「ラズワルドは律義すぎるよ。でも王女だったんだ、あたしと同じだね!」

アクア「それと、元々は暗夜に住んでいたという話もね」

エリーゼ「えっ、それってどういうこと?」

アクア「それは、あの席で話してあげる。さぁ、行きましょう、ニュクスも待っているわ」

エリーゼ「うんっ!」


607: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 12:54:12.30 ID:dnm/58DH0
ハイタカとカムイの会話のあんたは、どう見ても暗夜の打ち間違えです。本当にありがとうございました(すみませんでした)。

昨日は疲れで倒れてました。更新できなくてすみません。時々こんなことになったりします、すまねえ。

ピエリ×リリスと本篇はいつもの時間くらいにやります。

609: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 23:00:19.94 ID:dnm/58DH0
◆◆◆◆◆◆
フェリシア「う~ん、足りないですぅ」

リリス「フェリシアさん、どうかしたんですか?」

フェリシア「あ、リリスさん。その、ライブの数が人数分ないみたいで……」

リリス「ああ、結構使いましたからね」

フェリシア「その、私が使いすぎちゃったのかなって。エルフィさん、とっても傷ついてましたから」

リリス「ふふっ、すぐに駆けつけましたからね、フェリシアさん。エルフィさんも、いっぱい掛けられて困惑してましたし」

フェリシア「は、はい。でもここで足りなくなったちゃったのは……」

リリス「では私が買いに行ってきますよ。ちょっと用事もありますから」

フェリシア「ありがとうございます。エルフィさん、誰か付いてないと……」

 エルフィさん、いきなり運動を始めようとしないでください。まだ体の内部まで傷が治ってるわけじゃないんですから

 でも、毎日の特訓は欠かせないわ。大丈夫、これくらいなら……

 駄目です、今日は安静にしてください。話を聞かないようなら凍らせますよ?

リリス「フローラさんも大変ですね。でも、なんだかんだで二人ともエルフィさんが心配なんですね」

フェリシア「はい、まだ私はエルフィさんに恩を返し終わっていませんから。リリスさん、買い物よろしくおねがいしますね」

リリス「はい。任せてください」

 ガチャ バタン

610: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 23:12:24.56 ID:dnm/58DH0
ピエリ「あっ、リリスなの!」

リリス「ピエリさん」

ピエリ「どこかにお出かけのなの?」

リリス「はい、これから調度品などの買出しに出ようと思ってます。今日は一日お休みですから、今のうちに買い物も済ませてしまおうと思って」

ピエリ「買い物! 買い物なの! それじゃ、ピエリも付いてくの」

リリス「ピエリさんもですか?」

ピエリ「そうなの。町の洋服屋さん覗きたいの!」

リリス「わかりました、すぐに出かけられますか?」

ピエリ「なの! ピエリはいつでも準備オッケーなの!」

リリス「はい、わかりました」



―港町ディア『大通り』―

ピエリ「リリスは何買うの?」

リリス「そうですね……回復用のライブを余分に買っておこうと思います。前回よく使いましたから」

ピエリ「エルフィ、とっても血だらけだったの。でも、どこかきれいだったの! ピエリもいっぱい返り血浴びて、いっぱい奇麗になりたいの」

リリス「血ですか、私はそうは思わないんですけど。でも、カムイ様の前に立ちはだかる人がそうなるのは仕方のないことですね」

ピエリ「リリスも魔法じゃなくて、剣持つといいの。カムイ様を守るのなら魔法よりも剣なの。剣で刺すと楽しいの!」

リリス「ふふっ、楽しいかどうかはわかりませんけど……。そうですね、私はこの手に何かを持って人を殺したことはないんですから」

ピエリ「リリス、どうしたの?」

リリス「ピエリさんは今までどれくらいの人を殺してきたんですか?」

ピエリ「わからないの、従者も敵もいっぱい殺してきたの。いっぱい殺せば褒めてもらえるから、いっぱいいっぱい殺したの。もう数えることもないくらい殺したの」

リリス「そうですか。いっぱい殺してるんですね」

ピエリ「でも、不思議なの!」

リリス「何がですか?」

ピエリ「リリス、ピエリの話を聞いても全然不思議そうな顔しないの。みんなピエリの話を聞くと、なんか怖い顔するのがほとんどなの」

611: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 23:23:57.49 ID:dnm/58DH0
リリス「そうなんですか」

ピエリ「よくわからないの。ピエリはやりたいことだけやってるの。やりたいからやってるの。みんなだって同じなの。でも、こう言うとみんなそれは違うっていうの」

リリス「私はピエリさんの言っていることがわからないわけじゃないですよ」

ピエリ「そうなの?」

リリス「はい、でも、時々我慢しなくちゃいけないことがあるんです」

ピエリ「……ピエリ我慢苦手なの。この前、従者をえいってやろうとしたら、カムイ様に止められたの」

リリス「カムイ様らしいですね。もしかして変なことされませんでした?」

ピエリ「顔いっぱい触られたの。あと従者にえいっしないって約束させられたの。だから黒竜砦は楽しかったの!」

リリス「ふふっ、ピエリさんもカムイ様に弱点をいっぱい触られちゃったんですね」

ピエリ「リリス、笑わないの!」

リリス「ごめんなさい、でも約束は守らないといけませんよ。口に出してしまった約束、相手にちゃんと届いてますから」

ピエリ「リリスも約束、何かしてるの?」

リリス「はい、とても大切な約束を一つしてます。そのためだったら、私はこの命を掛けても構わないって思ってるんです」

ピエリ「ピエリは殺して命を守るの。リリスの言い方は命を捨ててるの。それは馬鹿だと思うの」

リリス「はい、そうですね。私は馬鹿なんです。でも、馬鹿な私がした約束だけは私が守らないといけない近いですから」

612: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 23:25:44.39 ID:dnm/58DH0
近い→×

誓い→○

613: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 23:37:18.21 ID:dnm/58DH0
ピエリ「リリス馬鹿なの。でも、ピエリのこと怖い顔で見ないから好きなの」

リリス「そう言ってもらえると嬉しいです。でも、我慢だけはしてくださいね。そうしないと、みんなに迷惑かけちゃいますから」

ピエリ「がんばるの。あっ、道具屋さんなの」

リリス「本当ですね。それじゃ、買い物を済ませたら、ピエリさんの行きたいお店に行きましょう。あまり洋服を扱ってるお店にはいったことがないから、ちょっと楽しみなんです」

ピエリ「わかったの。可愛いものいっぱいある洋服屋さん見つけていっぱい入るの! リリスに似合うリボン買ってあげるの!」

リリス「わ、私にですか……、似合うでしょうか?」

ピエリ「ピエリに任せてなの! リリスといるととっても楽しいの」

リリス「……私もピエリさんと一緒にいるの、とても楽しいです。早く買い物済ませてきちゃいますね」

ピエリ「リリス、とってもいい子なの。でも、このままじゃいつか死んじゃうって言ってるの……どうすればいいの?」

614: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 23:46:35.64 ID:dnm/58DH0
◆◆◆◆◆◆
―港町ディア『宿舎』―

カムイ「思ったよりも眠ってしまっていたんでしょうか。もう夜だとフェリシアさんが言っていましたね」

カムイ(黒竜砦の戦いが終わってここに増援が来れば、次は私たちもノートルディア公国に向かうことになるんでしょうか? それとも……増援をここにおいてウィンダムに戻ることになるのでしょうか)

カムイ「……こればかりは命令を待つしかなさそうですね」

エリーゼ「あっ、カムイおねえちゃん」

カムイ「あれ、エリーゼさん。どうしたんですか、もう夜だというじゃないですか?」

エリーゼ「あ、あのね。アクアおねえちゃんがいないの」

カムイ「アクアさんがですか? それと、アクアおねえちゃんとは?」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、ひどいよ。アクアおねえちゃんが元々暗夜の王女だってこと、どうして教えてくれなかったの?」

カムイ「ああ、すみません。戦闘の直後でそこまで頭が回ってなかったんです。でも、エリーゼさん、自分から話を聞きに行ってくれたんですね。本来なら私が説明すべきことだったんですが」

エリーゼ「もう、それはいいよ。それよりも、カムイおねえちゃんもアクアおねえちゃんを探して、宿舎にはいないみたいだから。あたしは今日話した場所にハロルドたちと一緒に行ってくるから」

 タタタタタタタタタッ

カムイ「わかりました……といっても、町の構造がわからないことにはどこにいこうにも……」


615: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/08(火) 23:54:02.22 ID:dnm/58DH0
ニュクス「ちょっといいかしら?」

カムイ「ニュクスさん? すみません、ちょっと用事があって」

ニュクス「そう、ちょっと手伝ってほしいことがあったんだけど」

カムイ「手伝ってほしいことですか?」

ニュクス「ええ、あなたが探してる人のことでね」

カムイ「……アクアさんのことでですか?」

ニュクス「そうよ。あの子、黒竜砦でやったことを、少し引きずってるみたいだから……」

カムイ「アクアさんがしたこと――」

ニュクス「あそこであの子はあなたを選んで、人を、白夜の人間を殺したのよ。わからないわけじゃないでしょ?」

カムイ「……」

ニュクス「残念だけど、私がそのことを言ってもアクアはちゃんとした言葉を返してくれないわ。アクアはあなたのことを気にしてた、だから」

カムイ「それ以上は大丈夫です。いる場所はわかっているんですよね?」

ニュクス「ええ、ついて来て」


―船着場―

ニュクス「あそこの影よ。ずっと座り込んでいるわ」

カムイ「そうですか。ありがとうございます、ここからは私だけで行きますから。ニュクスさんは戻ってもらって大丈夫ですよ」

ニュクス「ええ、さすがに覗き見する趣味はないからそうさせてもらうわ。頑張りなさい」

カムイ「何をがんばるのかはよくわかりませんけど。できることはしますね」

616: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 00:06:02.31 ID:RFC7+EeG0
アクア「………」

アクア(私は白夜の人間を殺したのよね……。ミコトの歌う平和に憧れているなんて言いながら、結局対話を拒否して……。シモツキやハイタカも私がもっと動くことが出来たら……)

アクア「今さら後悔しても、仕方無いのに」

カムイ「後悔しているんですか?」

アクア「! か、カムイ」

カムイ「はい、エリーゼさんが探してましたよ。アクアおねえちゃんがいないと」

アクア「ふふっ、私が元々暗夜の王女だって言ったら、お姉ちゃんと呼んでくれたの。あの子の出生は白夜にいる時に聞いただけだったから、こうして会えるなんて思ってもいなかったわ」

カムイ「そうですか」

アクア「こうやって、得られたうれしいことを述べてしまうのは……認めたくないことから目をそむけているからかもしれないわね」

カムイ「アクアさん」

アクア「いいの、私が決めたことだから。私はカムイたちのことを選んだの、だから白夜の人間を殺した。ただそれだけよ」

カムイ「失礼しますね」

 ギュッ

アクア「………」

カムイ「やっぱり手が震えてます。ほんと、あの時と逆ですね」

アクア「あの時?」

カムイ「はい、あの日。炎の広場で襲撃が起きたアの日、私は考えることをやめてしまうかもしれないほどに心が揺れていました。そこをアクアさんに支えてもらったんです」

アクア「あれは私の力じゃないわ。それにあの後、あなたは考え続ける道を選んだじゃない。それはあなたが決めたこと。私は――」

カムイ「助言をしただけ……ですよね?」

617: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 00:17:20.66 ID:RFC7+EeG0
アクア「……」

カムイ「まずはお礼を言わせてください。アクアさん、あなたのおかげで私は仲間を失わずに済みました。あなたがことを行ってくれなければ、アクアさんも含めて死んでいたかもしれませんから」

アクア「……ええ」

カムイ「アクアさん。あなたがここに来てしまったのは、間違いなく私の所為です。あの日、すべてが変わってしまったんですから。過去は何も変わりません。そして、アクアさんが手を下して殺してしまった白夜の人たちが帰ってくることもありません」

アクア「っ!」

カムイ「でも、アクアさん。それを思って涙を流すことは罪じゃないんです。泣いていいんです」

アクア「カムイ、………」

カムイ「ごめんなさい。本当ならアクアさんがこんなことをしないように、私たちが動くべきだったんです。それを……」

アクア「いいの。あれは、あれは私が、私が決めてやったことだから……。でも、ごめんなさい。今だけは、私は、私のした罪に、その重さにまけてもいいかしら?」

カムイ「はい、今は私が支えますから。罪の重さで沈まないように、私が支えてあげます。だから、今だけは気を張らないでください」

アクア「カムイ……ありがとう――ううっ」

618: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 00:28:48.05 ID:RFC7+EeG0
アクア「……ごめんなさい。弱い姿を見せてしまって」

カムイ「いいんですよ。これでお相子ですから」

アクア「ふふっ、あの時のことを全部清算されちゃったわね。でも、私はあなたに信用されてるって思ってもいいのかしら?」

カムイ「はい。アクアさんはもう仲間ですから。でも、この先をどうするかはアクアさん次第ですよ」

アクア「えっ?」

カムイ「アクアさん、この先白夜の人たちと戦うことが増えるでしょうし、それは避けられません。私はこの戦いに無理やりあなたを引きこむつもりはありません」

アクア「………」

カムイ「あなたが望むのなら、ウィンダムで過ごせる場所を作ってみせます。そこで、戦争が終わるのを待っていてください」

アクア「……カムイ」

カムイ「気に障るようなことを言っているのはわかっています、ですが、無理に戦う必要はありません」

アクア「……」

カムイ「辛いのであれば、ここで降りてもいいんです。それを誰も責めたりしませんし、責める権利もありません」

アクア「……そう」

カムイ「はい。ただ、一緒に戦ってくれるというのなら、私と一緒に手を汚してくれますか?」

アクア「……手を取るとは言わないのね」

カムイ「奇麗事ではないからです。この手が血で見えなくなるまで、戦いは終わりませんから。そんな手になってくれるというなら、共に行きましょう」

アクア「ふふっ、人に争いで白夜と争うこと、奇麗事じゃないことを言われて、普通ならここで逃げだすわよ」

カムイ「はい、アクアさんにはストレートに言ったほうがいいと思ったので」

アクア「ほんと、温度差が激しいわ」

619: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 00:45:27.67 ID:RFC7+EeG0
アクア「でも……」

 ガシッ

アクア「答えは決まっているの。私はあなたの答えを知りたいから、隣でその答えを見つめさせてもらうわ」

カムイ「そうですか。いつかそれが見つかるといいですね」

アクア「あなたが見つけるのよ。私が見つけるんじゃないわ」

カムイ「そうでしたね。さて、そろそろ戻りましょうか。エリーゼさんが町にまで出てますから、早く戻って安心させてあげましょう」

アクア「そうね。カムイ手を取ってあげるわ」

カムイ「私が言う前に誘われてしまいましたね」

アクア「行ってくると思ったから、先回りさせてもらったわ」

カムイ「はい、では私を連れて行ってくれますか」

アクア「ええ、任せてちょうだい」

カムイ「はい、頼りにしてますよ。アクアさん」

620: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 00:54:42.32 ID:RFC7+EeG0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・レオン邸―

レオン「そう、カムイ姉さんは港町ディアまでの街道を確保したんだね」

ゾーラ「はい、これで白夜の策も失敗に終わるでしょうな。この動き、ガロン王様もお喜びになることでしょう」

レオン「ところで、いつもは衛兵にことを知らさせるのに、なんでゾーラがやってきたんだ?」

ゾーラ「おやおや、心当たりがないと?」

レオン「ああ、そういうことか。それはない、間違っても白夜の奴らに唆されたりなんてことはね」

ゾーラ「そうですか、ならよろしいんです。私もこんなことでレオン様を疑いたくわありませんが……これも命令ですので」

レオン「そう、気にかけてもらえて僕は幸せ者かもね。父上に伝えてほしい。何も心配はいらないと」

ゾーラ「その言葉、確かにお伝えいたしますゆえ。それでは、私はこれにて……」

 ガチャ バタン

レオン「ゾーラめ、そんなことを思ってもいないくせに……父上からの命令っていうのもこじつけに決まってる。くそ、気分が悪い」

???『あ、あの、レオンさん』

レオン「ああ、ごめん……入ってきていいよ」

サクラ「はい、失礼します」

カザハナ「邪魔するわね」

ツバキ「うん、失礼するよー」

621: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 01:02:29.14 ID:RFC7+EeG0
レオン「三人とも、そこに掛けて。すでに耳にしてることだとは思うけど」

サクラ「白夜王国が侵攻してきたんですよね?」

カザハナ「ほんと、信じられない。サクラが捕らわれてるのに、なんでそんなことできるのかな」

レオン「ああ、それは……カザハナの言う通りだね」

カザハナ「あ、あんた。名前……」

レオン「別にもういいだろう。名前を呼ばないでギクシャクするのも面倒だからね、カザハナは呼びたいように呼んでくれていいから」

カザハナ「……な、なんか調子が狂うんだけど」

レオン「まぁ、僕も少し違和感があるけどね」

ツバキ「それで、俺たちはどうなるのかなーって、気になってるんですよね」

レオン「うん、そのことについてだけど。今のところ処罰の話は上がってないよ。というよりも、父上は君たちに興味がないみたいだから」

カザハナ「……なにそれ」

レオン「どうやら、父上は君たちを使う気がないってことだよ。この白夜の一件が終わるまでは安全って考えて問題ない」

ツバキ「喜んでいいのかよくわからない話だねー。逆になんだか不安になるよ」

622: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 01:13:24.14 ID:RFC7+EeG0
レオン「まぁ、その理由がわからないわけでもないんだ。今回ことを起こしているのは強硬派のようだからね。強硬派に誰か権力者でも交じってない限り、この白夜の侵攻作戦は失敗に終わるはずだからね」

カザハナ「権力者?」

レオン「白夜の王族って言ったほうがいいかな。リョウマ王子、タクミ王子、ヒノカ王女。この誰かが手を引いてたら少し違うだろうけど、それでも難しいだろうね」

サクラ「どうして、そんなことがいえるんですか?」

レオン「ん、奴らの目的がノートルディア公国に陣を置くことだというのは、こっちに漏れてるからだよ。すでにノートルディア公国に暗夜は陣を敷いてる。陣を敷いた場所を落とそうとしたら、最低でも二倍以上の戦力が必要だ。しかも海上から攻めるとなると、沖での戦いを終えてから陸に上がらなくてはいけない、それに一日で陸に着かなければ、仕切り直しだからね」

カザハナ「ないそれ、卑怯じゃない。どうして、そんな話が入り込んできてるのよ」

レオン「白夜にも暗夜に協力する国があるってことだよ」

ツバキ「暗夜で白夜に協力する国があるから不思議じゃないね」

サクラ「あの、レオンさん」

レオン「なんだい、サクラ王女?」

サクラ「もしも、もしも。兄様や姉様がこの侵攻に加担していたら……どうなるんですか?」

623: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 01:26:01.28 ID:RFC7+EeG0
レオン「その可能性はあまり考えていないんだ。というよりも、普通はこんなことは行わない、兵を犠牲にすること前提の作戦なんて到底容認できないからね」

カザハナ「兵を犠牲にしないってこと?」

レオン「当り前だよ。僕がカザハナの指揮官だったとしたら、こんな作戦には送り出さない。出来る限り注意をそらすために敵陣に突撃するだけの作戦なんてやる価値もない。だったら、違う形で注意を逸らすよ」

カザハナ「な、なんであたしの名前出すのよ!」

レオン「ああ、別にいいでしょ? 減るものじゃないし」

カザハナ「そ、それはそうだけど……」

ツバキ「まぁ、カザハナの名前が出たことは置いておいて、サクラ様の質問の答え、聞かせてもらえないかな」

レオン「……権力者がかかわるってことは、横のつながりすべてを巻き込むことになる。こんな強行作戦でも、これが行われるとされたら、その成功率をあげるか、それを見越して何か策を立てる。なにせ、もう盤面が動いてるから、ここで何もせずに待っていることはできない。僕だってそうする。でも、今回は敵の最初の目的がわかってるから、そこを抑えてどうにか食い止められるはずだ。そうすれば、白夜の侵攻も治まって、僕は反乱の平定ができる」

カザハナ「……終わったら結局……」

レオン「さぁね、でも僕も頑張るつもりだよ。なんだかんだサクラ王女たちとはこうして過ごしてきたんだから、できれば白夜に君たちを返したいって考えてる」

サクラ「い、いいんですか。そんなことを言って」

レオン「もちろん、交渉の材料としてだけどね」

カザハナ「一瞬でも喜びかけて、損したわ」

ツバキ「まぁ、そう言ってもらえたほうがなんだか安心できるよ。それじゃレオン王子、しばらくの間はよろしくね」

レオン「ああ、問題を起こさないんだったら別に構わないよ」

サクラ「あ、あの」

レオン「サクラ王女?」

サクラ「ありがとうございます。レオンさん、本当に優しいんですね」

レオン「……そんなことない////」

ツバキ「あー、顔赤くなってますよ」

レオン「う、うるさい!」

624: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 01:31:02.10 ID:RFC7+EeG0
◇◇◇◇◇◇
―暗夜王国南海域―
???「いやはや、一時はどうなることかと思いましたが、うまくいくものですね」

???「夜明けまでまだ時間がある。私、寝てるね……」

???「はいはい。それにしても、こんなことになってしまうとは、人生わからないものです。しかし、暗夜軍の方々が待っていると思うと、あまり気乗りがしませんねぇ」

???「気乗りなんてもともない。でも仕方無い……」

???「そうですねぇ。仕方のないことです、私たちのやるべきことは決まっていますから、お互い頑張って生き残りましょう、なんといっても」

「今日は多く人が死にますからねぇ」

第十章 前編 おわり

625: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 01:32:35.34 ID:RFC7+EeG0
現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C+
 サイラス  B
 マークス  C+
 ラズワルド C
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C+
 アクア   C+→B
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C
 ニュクス  C

仲間の支援レベル

 今回のイベントでアクアとニュクスの支援がCになりました。
 今回のイベントでラズワルドとエリーゼの支援がCになりました。
 今回のイベントでピエリとリリスの支援がCになりました。
 今回のイベントでエルフィとフェリシアの支援がC+になりました。
 今回のイベントでエルフィとフローラの支援がC+になりました。

626: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 01:45:00.44 ID:RFC7+EeG0
今日はここまでです。アクアさんのヒロイン力をあげたい


 安価を取りたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
次の戦闘でカムイが付くことになるチームを決めます。

  チーム城塞【ギュンター・ジョーカー・フローラ】
  チーム受壁【エルフィ・サイラス・ハロルド・フェリシア】
  チーム砲台【ニュクス・モズメ・エリーゼ・アクア】
  チーム遊撃【ピエリ・ラズワルド・リリス】
  
 次の戦闘でカムイが付くことになるチームを決めます。

 >>628 でおねがいします。

◇◆◇◆◇






634: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/09(水) 07:14:07.19 ID:QFAP4Zx40
チーム砲台

637: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 22:28:00.81 ID:RFC7+EeG0
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・港町ディア―

ニュクス「……あら、やっぱり隊長っていうのは朝が早いものなの?」

カムイ「いいえ、今日は珍しく目が覚めてしまっただけですよ。ニュクスさんは朝早いんですね」

ニュクス「ええ。朝は静かで好きなの」

カムイ「そうですか。それと昨日はありがとうございます、アクアさんと色々と話ができました」

ニュクス「礼なんていらないわ。私がしたかっただけ、それだけよ」

 ガチャ

モズメ「カムイ様、もう起きてたんか? 今日は早いんやなぁ」

カムイ「モズメさん、おはようございます。まだ眠っていてもよかったんですよ。増援の到着は昼頃のはずですから」

モズメ「んや、いつもの習慣みたいなもんやから。っていっても今は畑もあらへんし、のんびり町でもふらついてくるんよ」

カムイ「わかりました、気を付けて」

モズメ「そんな危険なことなんてあるわけないのに、カムイ様は心配し過ぎや」

カムイ「そうですね」

モズメ「はぁ、海ってのはこんなに広いんやなぁ。陸地ばっかり見て育ってきたから、なんか感激してまう」

モズメ「この先にノートルディア公国があるんか」

ニュクス「そうね……」

モズメ「もう戦いが始まっとるのかもしれへんな……」

638: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 22:40:12.67 ID:RFC7+EeG0
カンカンカンカン カンカンカンカン

カムイ「ん、何の音でしょうか?」

モズメ「何かの祭りの音?」

ニュクス「……あまり景気がいい音にはまったく聞こえないのは、私の気のせいかしらね?」

カムイ「………モズメさん、皆さんを起こしてください。大至急です!」

モズメ「え、わ、わかったで!」

カムイ「ニュクスさんもお願いします」

ニュクス「仕方無いわね。わかったわ、あなたはどうするの?」

カムイ「私は音のなった方角に向かいます。ニュクスさんの言うとおり、とても嫌な予感がするんです」

 タタタタタタタッ

カンカンカンカンカンカンッ!

暗夜兵士「戻って来てもどうにもならない、あいつらにはしばらく耐えるように合図を送れ! くそっ、すべての新船はノートルディアに出ているというのに!」

カムイ「あの、何があったんですか?」

暗夜兵士「ん、誰だお前は、ここは……」

カムイ「私は暗夜王国王女カムイ、こういえばわかりますね?」

暗夜兵士「こ、これは、とんだ非礼を」

カムイ「そんなことはいいんです。それより何があったんですか。この鐘の音は初めて聞きますけど、あまり喜ばしい知らせではない様な気がします」


639: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 22:52:04.79 ID:RFC7+EeG0
暗夜兵士「はい、日の出より、海上を哨戒していた軍の船が謎の船団を発見し、すぐさま戦闘に、現在すでに二隻を沈められ残り一隻が応戦している状態になっています」

カムイ「………その謎の船団ですけど」

暗夜兵士「はい、間違いなく白夜の船団だそうです。推定数は五隻」

カムイ「白夜の船団、接触までのおおよその時間は?」

暗夜兵士「このままでは持って三十分もありません。ど、どうすれば」

カムイ「ここの指揮官は?」

暗夜兵士「ノートルディア公国での防衛線に出ております。引き継いだものは哨戒へ出て……」

カムイ「そうですか」

暗夜兵士「くそ、なんでこんな場所に船団がやってくるんだ、いくならノートルディアに行ってくれよ。ここには兵力なんてそんないないんだ。襲われたらひとたまりもない」

カムイ「悲観している暇はありませんよ。だれか代役を立てないと、指揮が伝わらず数分でこの町は落ちてしまいますよ」

暗夜兵士「そ、そんなこと言われたって、決められるわけないだろ! そもそも、こんな防衛の指揮なんて誰も取りたがらない。負けが見えているじゃないか!」



カムイ「なら、私がやりましょう」

640: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 23:03:02.17 ID:RFC7+EeG0
暗夜兵士「えっ」

カムイ「そのかわり、私の命令には絶対に従ってもらいます。それでもよろしければ、この町のすべての責任を私が負いましょう」

暗夜兵士「……ああ、ああわかった。わかったから、早く対策を考えてくれ!」

カムイ「わかりました。今応戦を続けている船は、まだ移動することは可能ですか?」

暗夜兵士「あ、ああ。まだ何とかなるはずだ。伝令を飛ばしたのはさっきだから、あと数分で戻ってくるとは思う」

カムイ「わかりました。それでは、すぐに戻ってきますから、その伝令の方が戻ってきていたら、ここに待たせてください。あと、私が指揮をとることを他の人に伝えてください。わかりましたね?」

暗夜兵士「わ、わかった」

カムイ「はい、頼みましたよ」


◆◆◆◆◆◆

ジョーカー「してやられた、そう考えていいでしょうね、これは」

ギュンター「そのようだな。黒竜砦の囮は我々にノートルディア公国防衛に信憑性を与えるための布石、そして白夜の本当の狙いは、この港街ディアの制圧にあったということですな」

エリーゼ「そ、そんな。ど、どうするのカムイおねえちゃん」

カムイ「どうするもこうするも、町を守る以外に選択肢はありません。運が良いのは、町の中心に入るために港を経由しなければならないっていう、この構造ですね。これで、敵の流入口を一つに狭めることができます」

サイラス「ああ、港は大型船が停泊できる場所が三つ、小型船は二つ。防衛用におかれた弓砲台が二つに魔道砲台が一つある。それぞれの道は最終的に表通りに入り込む大広場につながっている構造だ」


641: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 23:14:48.07 ID:RFC7+EeG0
カムイ「まずは市民の避難からです。ギュンターさん、ジョーカーさん、フェリシアさんは住民の方々の誘導をお願いします。時間があまりありませんから、新しい指示が入らない限り、大通り入口に陣取って通ろうとする白夜兵を始末してください」

ジョーカー「仰せの通りに」

ギュンター「わかりました」

フローラ「はい、カムイ様

カムイ「次にピエリさん、ラズワルドさん、リリスさんは三人で遊撃についてもらいます。出来る限りでいいです。漏れた敵を各個撃破、団体に出会っても絶対に戦わないでください。必ず団体を各個にして見せますから」

ピエリ「わかったの。ラズワルド、リリス、すぐに行くの!」

リリス「ぴ、ピエリさん、引っ張らないでください。ちゃんと歩きますから!」

ラズワルド「わかったよ。カムイ様

カムイ「次に右側の一本道、ここは水路もあってここ以外に通れる要素がありません。ですから、ここをエルフィさんとサイラスさん。そしてハロルドさんにフェリシアさんの四人で固めてください」

エルフィ「わかったわ」

サイラス「ああ、ここの道は絶対に通さないさ」

ハロルド「うむ、まかせたまえ!」

フェリシア「はわわ、が、がんばります!」

 

642: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 23:24:07.28 ID:RFC7+EeG0
アクア「それで、私たちはどうするの?」

カムイ「はい、中央通りにある固定砲台、これらを使って敵を釘付け、または分隊の分散を図ります。敵が中央に入り込んできたとしても、私には竜の体があります、どうにか足止めの壁くらいにはなれるはずですから」

アクア「でも―――」

カムイ「贅沢は言っていられません。それにここを落とされたら、ウィンダムにいるサクラさんたちの命が危ないんです」

アクア「……そう、サクラはまだ生きているのね」

カムイ「はい、どちらにせよ白夜の好きなようにはさせません。本日の増援到着は昼頃ですが、すでに馬を走らせて増援部隊への連絡を行っています。出来る限り早く、こちらに到着してくれるはずです。それまで持たせられれば、私たちの勝ちです。皆さん、こんな無茶苦茶な戦いですが、ついて来ていただけますか?」

ニュクス「……無謀な作戦だけど、やるしかないじゃない」

モズメ「せやな。ここで負けたらそれまでや、なら頑張ってどうにかするしかないで。カムイ様、あたい頑張るから」

エリーゼ「そうだよ、カムイおねえちゃん。絶対あたしたちが負けるわけないんだから、一緒にがんばろっ!」

一同「!」コクリ

カムイ「ありがとうございます。では、それぞれ持ち場についてください、ディア防衛戦を始めます!」

643: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 23:32:20.35 ID:RFC7+EeG0
カムイ「遅くなりました。状況はどうでしょうか?」

暗夜兵「すでに船員の半数が行動不能、残りもあらがっていますが時間の問題です……」

カムイ「わかりました、もう海上での防衛戦は意味がありません。至急、船をこちらに戻してください。あと一番左の船着き場に置く形にしていただけると助かります」

暗夜兵「な、なんでそんな指示を?」

カムイ「はい、その船は、再度使う見込みはありますか?」

暗夜兵「いえ、もうボロボロですからそれはないと………」

カムイ「それでしたら――――」

暗夜兵「しょ、正気ですか? そんなことを」

カムイ「隠れられる場所など与えたくないんですよ。いいですか、必ず船員を全員避難させて行ってください。これだけでも十分に敵の脅威を減らすことができるはずです」

暗夜兵「……わかりました。おい、至急船に伝達、第一船着き場に船を入れろ。船員はすぐに下船できる準備を整えておくようにとも伝えろ」

カムイ「ご協力感謝します。もう、この監視塔は利用できません、あなたも防衛に参加してください」

暗夜兵「は、はい。ほ、本当に勝てるんですよね?」

カムイ「正直、勝つのではなくて負けを少なくするような作戦ですから……。勝ちはあり得ません」

暗夜兵「……そ、そうですか」

カムイ「ただ、うまくいけば引き分けにはできます。だから、頑張りましょう」

644: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 23:42:42.83 ID:RFC7+EeG0
暗夜兵「よし、船が戻ってきたぞ! 早く第一船着き場に入れるんだ」

暗夜兵「白夜の船影確認、五。内三隻が侵攻中!」

暗夜兵「よし、合わせろ。よしよし、よぉおおし!」

 ドガサン

暗夜兵「よし、船から全員下りろ! 武器と大事なものだけでいい、死体はそのままでいい!」

 ワー ワー ワー

暗夜兵「船より全船員下船完了しました!」

暗夜兵「よし、全員火の準備! この船はもう使わない。火を放て!」

 ボウッ ボウッ ボウッ ボワワワワ
 
暗夜兵「よし、それくらいでいい。第一船着き場はこれにて放棄、第二、第三船着き場で敵を迎え撃つ!」


アクア「第一船着き場の船に火が付いたみたいよ」

カムイ「これで、第一船着き場に船は入れなくなりますし、入りこんだ白夜兵の隠れ蓑に使われることもなくなりましたね。実質、敵の機動隊は真ん中からこちらに進んでくるしかない状態になりました」

アクア「そう、そうやって相手の侵攻手段をこちらから減らしていくのね」

カムイ「ええ、まだまだ頑張ることが必要ですけど。まずは相手がどう出るか……モズメさん」

モズメ『なんや? 今、この砲台の設定でちょっと手こずっとるとこなんよ』

カムイ「敵の船影はどうなりましたか?」

モズメ『待ってな……。ひとつが進行を止めたらしいわ。でもの、残り二隻は以前進んで来とるで』


645: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/09(水) 23:52:32.24 ID:RFC7+EeG0
ニュクス「でも、一隻減らせたなら十分なことよ。これで敵の瞬間戦力が減るわ。砲台の設定終わったわ、いつでも使える」

エリーゼ「うん、ニュクスってすごいんだね。あたし全然わからなかったのに」

ニュクス「エリーゼにも使えるようにしてあるわ。あなた、魔法に関しては筋がよさそうだからね」

エリーゼ「ほ、ほんと?」

ニュクス「ええ、まぁやってみないと流石にわからないとは思うけどね。こっちの砲台はエリーゼと交代で運用するから、特殊な指示がある時は言ってちょうだい」

カムイ「はい、エリーゼさん。ニュクスさんと頑張ってください」

エリーゼ「う、うん。頑張るね」

モズメ「よし、こっちもできたで……。それにしても迫ってくる船って、怖いもんやな」

アクア「そうね、それにあっちは私たちを倒すつもりで来てるから」

カムイ「そうですね。だけどやすやすとやられてあげるつもりはありません。モズメさん、すみませんが指示に従って攻撃をしてもらっても構いませんか?」

モズメ「ええよ。まかせとき」

カムイ「はい、アクアさんはモズメさんの傍らでサポートをお願いします。私は地元の兵の方たちと一緒に、相手をねじ伏せます」


646: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/10(木) 00:02:55.16 ID:Axq1meLe0
―第二船着き場―

白夜兵「船着き場に入るぞ! 全員戦闘準備!」

 ジャキジャキ

???「はぁ、まさか主君より先に臣下である私たちが先とは、いやはや手が掛りますね」

暗夜兵「おらぁ、白夜の野郎どもが、さっさと掛ってこい!」

???「野蛮ですねぇ。でも、それも仕方のないこと、すぐにその野蛮さを取り除いてあげますね」

 シュオオオ

暗夜兵「へっ、な、なんだよこれ、体から力が抜けて」

白夜兵「邪魔だ!」ズシャ

 ギャアアアア

白夜兵「このまま、攻め入るぞ! 怯むことはない、我らに正義あり、この町を手にいれ暗夜への足掛かりとするのだ!」

 オオオオオオオッ!!!!


―第三船着き場―

???「はぁ……こんなに天気がいいのに面倒なことこの上ないけど、仕方無いよね」

暗夜兵「弓、構え――」

???「あっ、いた。えいっ」

 ヒュン  ドスッ

暗夜兵「かっ……えっああ」ドタ

???「遅いの。もう、見える前から構えてないと。みんな、射て」

 ヒュンヒュンヒュンヒュン 

 グアァア ギャアア モノカゲニカクレロ!

???「ああ、ちょっと少なかったかな。でも、これくらいでいいよね」




アサマ「さて、それでは主君が安心してこれるようにしませんとね」

セツナ「それじゃ、始めよう。みんな」



「侵攻開始」

657: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/10(木) 22:48:51.72 ID:Axq1meLe0
モズメ「いっぱい船から出てきたで」

カムイ「モズメさん、弓を持った方たちはどちらから来ますか?」

モズメ「第三船着き場(右の船の場所)の方からやな。兵隊さん押されとるから、このままじゃ、すぐになだれ込んでくるで」

カムイ「足止めします。モズメさん、敵弓兵の頭上に向けて撃ってください。出来ればタイミングは連続よりも一つだけ遅めで指示があるまで続けてください」

モズメ「えっ、連続で撃たへんの?」

カムイ「はい。機械的にお願いしますね」

モズメ「わかった、ほな始めるで」

 ガチャ キリキリキリ ガコン バシュッ!

 ヒューーーーーーン

白夜兵「上空から、矢が来ます!」

セツナ「とりあえず避けて、物影に……」

 グアッ! クッ

カムイ「兵士の皆さん、弓を構えてください。各々目に付いた敵に向けて、放て!」

 ヒュンヒュンヒュン

 ギャア! グオアアア!

モズメ「二射目いくで!」

 ヒューーーーーン

白夜弓兵「セツナ様、敵に穴をふさがれました」

セツナ「楽勝だと思ったのに、手ごわいね……」

658: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/10(木) 22:58:56.79 ID:Axq1meLe0
アサマ「おやおや、セツナさんは貧乏くじを引いてしまったようですね。では、私たちはこちらから行かせていただきましょうか」

 ボウッ ドワァン!

白夜鬼兵「ぐおっ、なんだこれは魔術!?」

ニュクス「そう簡単には通さないわよ」

エリーゼ「ニュクス、すごい。誰にも当てないで足止めするなんて」

ニュクス「………そうね」

ニュクス(手元が狂って外したなんて言えない状況ね…)

ニュクス「威嚇射撃よ、次からは当てるわ」

アサマ「なるほど、威嚇射撃ですか。慈愛があるといいますが。みなさんには通用しませんね」

白夜鬼兵「舐めやがって! この隙に距離を詰める、二手に別れて突き進むぞ!」

ニュクス「……」

エリーゼ「ニュクス、いっぱいくるよ!」

ニュクス「はぁ、こうなることくらいわかってたことだけど、それじゃ二射目いくわ」

 ボウッ ドワァン!

 グギャアアア グガアアア

ニュクス「二人かしら。簡単に通れるなんて思わないことね」

白夜鬼兵「たかが砲台一つで止められるとおもっ――」

 パカラ パカラ

ピエリ「死ぬの!」

 ザシュッ

白夜鬼兵「かはぁっ!」ポタポタポタ

 キサマァ! ブンッ

ピエリ「ミートシールドなの!」

 ドゴッ ブチィ

白夜鬼兵「くっ、同胞を盾に!?」

ピエリ「ラズワルド、今なの!」

ラズワルド「うん、まかせて!」

白夜鬼兵「!? このぉ!」

ラズワルド「はい、力だけじゃだめだよ!」ズシャァ

 ゴロン ゴロゴロゴロン

ラズワルド「よし。孤立は処理したよ。次の場所に向かわないと」

ピエリ「うん、こんな感じで孤立したのを、いっぱい殺していけばいいの! ピエリいっぱい殺せてとっても楽しいの!」

リリス「ううっ、結構速く動きまわるんですね。目が回りそうです」

659: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/10(木) 23:10:02.48 ID:Axq1meLe0
ピエリ「リリス、ピエリの後ろに乗っらないと置いてけぼりになるの。仕方ないの」

リリス「そ、そうですけど……」

ラズワルド「ピエリ、リリスのことを気に言ってるみたいだからね。一緒に行動できてうれしいみたいだよ」

リリス「私、戦闘向きじゃないんですよ。だから、少しは」

ピエリ「だから剣を持つの。カムイ様の命令守らないとだめなの!」

アサマ「遊撃も回っているんですか、砲台ばかりに気を取られていたらひどいことになりますね」

白夜鬼兵「小型の船で第三陣が来るようです」

アサマ「そうですか、あまり期待できそうにありませんね」

白夜鬼兵「?」

アサマ「どうやら、頭の回る方がまだいたようです。本当に、うまくいかないものですね」



エルフィ「来たわね」

白夜槍兵「いけ、あの橋を渡れば一気に広場に出られる!」

ハロルド「はっはっは、通すと思っているのかね!」

エルフィ「私が攻撃を受け止めるから、みんなで間接攻撃して。受けとめた後なら、嫌でも当たるわ」

サイラス「ああ、任せろ。だが危険になったら言ってくれ、すぐにでも場所を交代するからな」

フェリシア「怪我をしたら言ってください。きちんと直して見せますから」

白夜槍兵「たった一人で、抑え込めるとでもおもっているのかっ!」

 ブンブンブン ズシャ ガキンッ

エルフィ「今」

サイラス「ほんと、腋ががら空きだな」ザシュッ

白夜槍兵「がっ、くぅう」ボチャン

白夜槍兵「ひるむな、どうせ一人、畳みかけろ!」

 タタタタタタタタッ

ハロルド「フェリシアくん、横合いから行くぞ!」

フェリシア「は、はい。ごめんなさい、でもやられるわけにはいかないんです」

 ヒュン フオン

白夜槍兵「く、くそ、橋の上では隠れる場所も、くっ、だが、ここさえ抜けられれば」

エルフィ「通さないわ、絶対に。はああああっ!」

 ドゴォン! 

白夜槍兵「こふっ」ボチャン

660: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/10(木) 23:18:14.42 ID:Axq1meLe0
セツナ「……うん、感覚が掴めてきた。次に攻めよう」

白夜弓兵「はい。全員、タイミングを合わせて距離を詰める」

セツナ「速射限界はどんなものにもあるからね。機械の砲台なら、尚更、敵の弓兵が一瞬ひっ込んだら、その間に……」

カムイ「……弓兵の方々、次の一斉正射と同時に、一度矢がなくなったように装ってください」

暗夜弓兵「えっ、まだ矢はあります。このままでも……」

カムイ「いいえ、そろそろやっておいた方がいいですから。機械的な限界を向こうに勘違いさせるくらいには、時間は使いましたので。その代り、敵の矢は確実に飛んできますから、全員者陰には隠れてください」

暗夜弓兵「……了解。全員、もう一度の正射の後、物影に身を置くように!」

カムイ「モズメさん」

モズメ「わかったで、タイミングは?」

カムイ「次の正射とともに、発射感覚を限界まで上げてください」

モズメ「わかったで、アクアさん。矢の取り入れ、忙しくなるで」

アクア「わかったわ。私にはこれくらいしかできないもの、全力を尽くすわ」

モズメ「おおきに」

 セイシャ テー! 

セツナ「……矢が止んだね」

白夜弓兵「後続援護射撃!残りは前進、今の間は砲台も矢を放てない!」

 タタタタタタタッ

661: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/10(木) 23:28:55.89 ID:Axq1meLe0
白夜弓兵「よし、このまま」

 ガチャ キリキリキリ ガコン バシュッ!

白夜弓兵「えっ?」

セツナ「……やられた」

 ヒュンヒュンヒュン ザシュザシュザシュ

 オアアア イテエエエエエ コフッ コフー

モズメ「うわっ、ほとんど当たってもうた」

アクア「次の装填終わったわよ」

モズメ「わかったで」

カムイ「皆さん、再攻撃。弓、構え!」

暗夜弓兵「了解!」
 
 キリリリリリッ バシュッ!

 グアアアアアアア

白夜弓兵「くっ、セツナ様」

セツナ「悔しいね。こっちの考えなんてお見通しって言われてるみたい」

白夜弓兵「奇襲したというのに、どうしてここまで……」

セツナ「はぁ。攻めろって命令だったからやってみたけど、あんまりうまくいかないね」

白夜弓兵「セツナ様……」

セツナ「うん、このまま状況を維持して、もうそろそろ来るはずだから」



アサマ「これでは進撃の目処が立ちませんね。戦力を分散して同時に進行しているというのに、すべてに蓋をされてしまっているこの状態では」

白夜鬼兵「アサマ様………」

アサマ「そうですか。このような結果というのは情けないものですが、仕方ありませんね」

白夜鬼兵「はい……」

アサマ「もう、睨みあいも終わりのころ合いでしょう」

662: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/10(木) 23:40:51.22 ID:Axq1meLe0
カムイ「おかしいです。もう攻撃が弱まってきましたね」

モズメ「せやな。まだ全然、人数おるのに……」

アクア「……モズメ、あれを見て。あの船影」

モズメ「……あれ、三隻目やろ? けど、この港には入ってこれないで?」

アクア「船は入ってこれないわ。でも、これるものは来れるはずよ」

モズメ「?」

カムイ「モズメさん、何か見えませんか?」

モズメ「……なんやろ、変な黒い点みたいなもんが………」

 バサバサバサバサバサ

アクア「天馬隊!?」

カムイ「飛行戦力も追加ですか。さすがにこれは予想してませんでした」

モズメ「すごい量が来るで!」

カムイ「モズメさんは、地上の牽制を続けてください。兵士の皆さん、見ての通りですが敵の飛行戦力が来ます。翻弄されないようにしてください」



セツナ「これで、少しは楽になりそう……。少しは前に進まないと、怒られる……」

アサマ「さて、ではもう一度進撃を開始しましょう。みなさん、行きますよ」



白夜天馬兵「上空ならどこからでもいける。まず前線を狭める敵の主力を挫く!」

 バサバサバサバサバサ

暗夜兵「半分は地上部隊の釘づけを続けろ。残り半分は飛行戦力へ攻撃!」

白夜天馬兵「おそい!」
 
 ザシュ

カムイ「くっ、直に弓を狙いにきましたか」

暗夜兵「このぉ!」

 ヒュン ザシュッ ヒヒヒーン!

白夜天馬兵「ゴフッ」ボギッ

白夜天馬兵「弓を減らせ、セツナ様の部隊を攻撃距離まで押し上げるんだ!」

モズメ「カムイ様!」

アクア「くっ、砲台にも向かってきてるわね」

カムイ「モズメさん、ここは死守しますから、あと少しだけでも続けてください!」

663: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/10(木) 23:51:26.81 ID:Axq1meLe0
白夜天馬兵「邪魔をするな!」

カムイ「それはこちらのセリフです」ザシュッ

白夜天馬兵「―――っああああああ!!!!!」ブシャー

 ドタン


白夜天馬兵「こちらはあの砲台を狙うぞ!」

ニュクス「くっ、エリーゼ。砲台は任せたわ。私は外から来るのを相手するから」

エリーゼ「そ、そんな。あたしうまくできるか……」

ニュクス「やるのよ。やらなきゃだめ、少しでも食い止めるのが私たちの役目よ」

エリーゼ「……わ、わかった! ニュクスも頑張って!」

ニュクス「ええ、射程ならこちらが上よ」

 ボウッ ボワワワワワ

白夜天馬兵「ひっ、馬が、燃え、キャアアアアアアア」

 ボウ ボワアア

ニュクス「さぁ、次の焼き馬は誰かしら?」

白夜天馬兵「恐れることはない。私に続け!」

ニュクス「三人で来るのね、なら―――」

エリーゼ「えいっ!」
 
 ボゥ ドワァン!

白夜天馬兵「ぐっ、くそ。こちらを狙ってきたのか」

ニュクス「よそ見はだめよ」

白夜天馬兵「ぐぎゃあああああああ」

ニュクス「エリーゼ、助かったわ……ごめんなさい。私がすべきことなのに」

エリーゼ「ううん、ニュクスも無事でよかったよ。! 次来るみたいだよ」

ニュクス「ええ、わかってるわ」

ニュクス(敵の指揮が上がってるように感じるわね。ということは、まだ何かいるって考えたほうがよさそう)

664: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/11(金) 00:06:23.80 ID:XNZ8fB6I0
暗夜兵「くっ、押され始め――」

セツナ「見つけた」

 トスッ

暗夜兵「――っ――あ」

 ドサッ

暗夜兵「くっ、くそ。こんなの対処できない!」

カムイ(皆さんの指揮が下がってます。このままでは……)

モズメ「カムイ様! こっちの発射感覚完全に読まれてる! 進み始めとる!」

カムイ「くっ、仕方ありません。暗夜兵の皆さん、この前線から一つ下がります、大広場の入り口に陣取ります!」

暗夜兵「全員、ここは放棄して第二線まで下がるぞ。負傷兵は先に大通りへ運ぶんだ。残りの時間はこちらでどうにかする」

ピエリ「カムイ様、お手伝いするの!」

ラズワルド「この飛行戦力は予想できなかったけど。どうにか持ちこたえるしかないからね」

カムイ「すみません。相手の動きを抑えてください。モズメさん、弓兵への牽制はあと六回後に終わり、砲台の射出装置を破壊して中央広場へ向かってください」

モズメ「わかったで、アクアさん。後六回でこの砲台を放棄するで」

アクア「ええ……」

アクア(あれはアサマとセツナ……ということは、この船団を率いているのは……)

カムイ「くっ、てやぁ!」

アサマ「あれは、なるほど。そう言うことですか、それなら納得というものです。ここに彼女がいるというのは、そう言うことなのでしょう」

アサマ「では、簡単に倒れてもらえるように、使わせていただきましょうか」
 
「禍事罪穢」

665: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/11(金) 00:16:01.34 ID:XNZ8fB6I0
カムイ「!?」

 キンッ

ピエリ「! カムイ様」

リリス「カムイ様!」

ラズワルド「ピエリ、リリス、あぶないっ!」

 キキン

白夜鬼兵「………」

ピエリ「カムイ様と分断されちゃったの!」

リリス「カ、カムイ様……」

ラズワルド「どきなよ。僕たちの主がそこにいるんだ!」




カムイ(くっ、いきなり体が重くなって、いったいどうして……。感覚も……)

カムイ「こ、このままでは……」

白夜天馬兵「くらえ!」

カムイ「しまっ――――きゃあああああ」ドサッ ドタン!

モズメ「!? カムイ様!」

アクア「カムイ!」

白夜天馬兵「死ねえ!」

モズメ「させへんで!」

 ヒュンッ ドスッ

白夜天馬兵「ぐっ。くそ」ドサッ

モズメ「カムイ様、大丈夫?」

カムイ「は、はい。なんとか、ふふっ、格好悪いところ見せてしまいましたね」

アクア「カムイ、もう大丈夫。さぁ、早く広場に行きましょう。早くしないと私たちは孤立してしまうわ」

カムイ「す、すみません。ぐっ……」

アクア「モズメ。左肩を私は右肩を持つから」

モズメ「わかったで」

カムイ「早く、皆さんに防衛の指示を出さないと―――」



「そうはさせないぞ、カムイ」


666: ◆P2J2qxwRPm2A 2015/09/11(金) 00:25:22.37 ID:XNZ8fB6I0
アクア「!?」

 バサバサバサバサバサ タッ

アクア「やっぱり、あなたなのね」

「……」

カムイ「この気配は……」

「久しぶりだな。いや、やっと見つけたというべきかもしれないな。まさか、ここの防衛をしていたのがお前だとは思わなかったよ」

カムイ「…………」

「これも、私の信念が呼び寄せたんだ。お前を必ず白夜に連れて戻ると決めていたから。こうして、それが叶うと思うと私はとてもうれしい」

カムイ「……」

「ああ、お前さえ戻ってくれれば白夜はすべて元通りになる。また一緒に暮らそう、カムイ」

カムイ「あなたなんですね、ヒノカさん」

ヒノカ「ああ、お前を迎えに来たんだ。さぁ、姉さんと一緒に帰ろう」

「そう、家族の元にな」



次回 カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 後編