前回 【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】

2: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 21:56:34.22 ID:cZTh89m1O



ー地獄・最下層ー



ジュウッ~~??



???「アッ……アアッ、アアア……」シュウウ~



朱蓮「……驚いたよ。まさか、これほどまでに仮の死と再生を繰り返しておきながらーーーまだ心を保っていられるとは」



???「アッ、アアッ……」



朱蓮「……なぜ、これほどの痛みを味わっておきながら、心を保っていられるのか?」

朱蓮「それができるだけの精神力……強い怨念を持っているなら話は別だが、そうも見えない」



???「………」



引用元: ・【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】 



【PS4】絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode
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3: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 21:59:22.73 ID:cZTh89m1O



朱蓮「……重罪を犯しているが故に、心砕けて楽になること許されず、クシャナーダの力で強制的に心を保たされていると見るべきかーーー」



朱蓮「ーーーあるいは、情状酌量や更生の余地があると判断されたが故に、心を保つことを許されているのかもしれないね」



???「………?」



朱蓮「……クシャナーダの力で強制的に心を保たせ、地獄の痛みを与え続けることでーーー反省とやらを促しているとも考えられる」



朱蓮「そうして、反省した後は、来世を “ 畜生道 ” に堕とされる代わり、めでたく尸魂界へと解放されるのかもしれない……」



4: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:00:51.34 ID:cZTh89m1O



朱蓮「……まあ、何にせよ、君の存在意義は、退屈しのぎの域を出ないのだがね」






???「………」






朱蓮「そうだろう、物熊?」



5: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:02:18.67 ID:cZTh89m1O



モノクマ?「モノ…クマ…?」



朱蓮「ああ、命無き紛い物のような熊、故に物熊(モノクマ)だ。違うかい?」



モノクマ?「………」



朱蓮「それとも、君は生前の名を覚えているのかな?」



モノクマ?「……?」



朱蓮「どうした? 答えたまえ」



6: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:17:59.36 ID:cZTh89m1O



モノクマ?「……ボクは、■■■■■■■と言ってーーー」



モノクマ?「ーーーえっ、?」



朱蓮「………」



モノクマ?「…… “ ボク ” ?」



モノクマ?「……違う、 “ ボク ” じゃなくてーーーー」



7: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:18:55.50 ID:cZTh89m1O



モノクマ?「ーーーあれ?」



モノクマ?「……ボ、ボク、は、ボクで? でも、ボクじゃ……?」



モノクマ?「?」



モノクマ?「?!?!」






モノクマ?「?!?!?!?!」



8: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:31:06.93 ID:cZTh89m1O



朱蓮「……地獄に落ち、そこで仮の死と再生を繰り返して、異形と化す」

朱蓮「さらには、生前の名を封じられ、記憶を混乱させてしまう……よくあることだ」



モノクマ?「…………」



朱蓮「……まあ、それはそれとして、君に頼みがある」



モノクマ?「たの…み…?」



朱蓮「ああ、地獄から抜け出て黒崎一護と接触する前にーーー念には念を入れて、力の準備運動をしておこうと思ってね……」

朱蓮「そんな中で、未だ仮の死と再生を繰り返し……完全な “ 死 ” を迎えることのない君は、良い準備運動の的になる」



朱蓮「……そう、私にとって、良き退屈しのぎとなるのだよ」



9: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:32:36.32 ID:cZTh89m1O



モノクマ?「………」






朱蓮「……つまりは、そういうことだ」






朱蓮「もう一度、我が炎で焼け死ね、物熊」



10: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:33:36.56 ID:cZTh89m1O









「ーーーそれは貴様の方だ、朱蓮」









11: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:34:36.45 ID:cZTh89m1O






朱蓮「……なんだ、君は? 私の邪魔をーーーー」









「ーーー卍解」






12: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:36:48.23 ID:cZTh89m1O









「【残火の太刀】」









13: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:37:47.67 ID:cZTh89m1O



ジュッッッ!!!






朱蓮「がっ、!??!」






ボオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!



14: ◆02/1zAmSVg 2019/10/01(火) 22:39:43.66 ID:cZTh89m1O



「…………」




モノクマ?「……あ、ああ……!!」




「遅くなったな、■■■、よ……」




モノクマ?「そんな、どうして、あなたがここに……?」




「…………」




モノクマ?「お答えください!」






モノクマ?「ユーハバッハ陛下!」



ユーハバッハ「…………」



15: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 21:51:26.09 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「……知れたことだ」

ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】」

モノクマ?「………」

ユーハバッハ「故に、あの三人は、処刑を免れ、現世へ旅立ちーーー」



モノクマ?「………!!?」



ユーハバッハ「ーーー私は死に絶え、こうして地獄の鎖に囚われることになった」ジャラッ…



ユーハバッハ「……それだけのことに過ぎぬ」



16: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 21:52:37.72 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「そう…なんですか…」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「詳しい事情はわかりませんがーーー陛下も死んでしまったんですね……」



ユーハバッハ「……そうだ」



17: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 21:54:06.86 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……申し訳ありませんでした! ユーハバッハ陛下!」ペコッ!



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ボクは! こともあろうに! 陛下から任された、偉大なる『プロジェクト』を!!」

モノクマ?「この手で、ぶっ潰してしまいましたあああああああ!!!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「全てこちらの不手際が原因です!!!」



モノクマ?「本当に、申し訳ありませんでしたああああああああああああああ!!!!」



18: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 21:54:57.22 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「………」スッ



モノクマ?「………」ビクッ



……ポンッ



モノクマ?「……へ?」キョトン



ユーハバッハ「……よくやった、我が腹心よ」ナデナデ



モノクマ?「!?」



ユーハバッハ「お前の働きに感謝しよう」



19: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 21:55:57.71 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「えっ、?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「えっ、えっ、えっ、?」






モノクマ?「ええっ??」



20: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 21:57:05.81 ID:o7i7C/xYO






モノクマ?(嘘でしょ…そんな…)




モノクマ?(あの陛下が、ボクに……こんな、こんなーーー)






ユーハバッハ「……不思議か? 私のやることとは思えんか?」






21: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 21:58:28.32 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「えっ、あっ……」



ユーハバッハ「確かに、私は今まで、犠牲をもって、恐怖を与え続けてきた」

ユーハバッハ「……そうして、お前が住んでいた世界の『在り方』を、歪め続けていた」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……しかし、それは、恐怖で『人』を育てーーー我が理想の実現を早めるためだ」

ユーハバッハ「世には、恐怖から逃れるため、飛躍的な成長を遂げることのできる、『選ばれし者』が存在する」

ユーハバッハ「……恐怖から逃げきれず、身を滅ぼしてしまう者ばかりでは無いのだ」

ユーハバッハ「だからこそ、『選ばれし者』の見る夢は、悪夢ほど素晴らしい」



22: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 21:59:47.94 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「だが、それはもう、必要無い」

ユーハバッハ「……我が理想が実現したからでは無い」

ユーハバッハ「もはや、理想を実現すること叶わぬからだ」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……地獄に落ちた者は、尸魂界には行けぬ運命にある」



ユーハバッハ「己が魂の『在り方』を貫く限り、決して、な」



ユーハバッハ「……理想を叶えることはもはや【不可能】、ならば、恐怖を与える意味は無い」



ユーハバッハ「お前は、思うがままに、休んで良いのだ」



モノクマ?「陛下……」



23: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:01:16.54 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「故に、お前を称えよう」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「お前の働きとその存在に、心から感謝する」



ユーハバッハ「本当に、よくやった」



24: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:02:45.37 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……で、でも、ボクはーーー」



ユーハバッハ「ーーーお前は、人の遊戯に疎い私を、懸命に支えてくれたではないか」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……それに加え、 “ 最後の計画 ” の途中、私は眠りについていた」



モノクマ?「……え、ええ、まあ……」



ユーハバッハ「それは、私の中の『有り余る力』を制御するため……月に一度、平均して約九日間の眠りにつく必要があったからだ」



25: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:06:16.79 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「……我が半身(ハッシュヴァルト)が存命ならば、違う道もあっただろう」

ユーハバッハ「定期的に『力』を入れ替え、負担を減らし、短時間での制御も可能だったろうがーーー」



ユーハバッハ「ーーーその『未来』は、斬り刻まれた」



ユーハバッハ「……我が半身に【聖別】による “ 死 ” を与えーーーあり得たはずの『未来』を黒く塗り潰し、斬り刻んだのだ」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「未来は姿を無くし……闇に消えた」

ユーハバッハ「それは、結果として、お前にいらぬ負担をかけることになった」



ユーハバッハ「……私にお前を責めることなど、できるはずが無い」



26: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:06:55.30 ID:o7i7C/xYO






ユーハバッハ「……もう一度言おう」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「よくやった」






27: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:12:30.76 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「陛下……本当に、申し訳ありませんでした!」

モノクマ?「そして、ありがとうございます! 本当に光栄です……!」



ユーハバッハ「……それは何よりだ」



モノクマ?「ううっ……!」グスッ



ユーハバッハ「ーーーだが、もう一つ、果たさねばならぬことがある」



28: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:13:13.93 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……?」



ユーハバッハ「お前は常々言っていたな、私のことを詳しく知りたいと」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「今こそ、お前の『願い』、叶えよう」



モノクマ?「陛下ーーー」






ユーハバッハ「ーーーゆくぞ」



29: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:13:56.50 ID:o7i7C/xYO






ユーハバッハ「【残火の太刀】【南】」






ユーハバッハ「【火火十万億死大葬陣】」






30: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:15:50.00 ID:o7i7C/xYO



ズズズズズズズズズズズズズズズズ……



モノクマ?「……え?」キョトン



ユーハバッハ「………」



ズズズズズズズズズズズズズズズズ……ユラアッ



ザイドリッツ「………」

アルゴラ「………」

ヒューベルト「………」

ドリスコール「………」



モノクマ?「……ええっ、!?」ガビーンッ



31: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:16:37.89 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……な、なんなんですか!? この人たちーーー」



朱蓮「………」ユラアッ



モノクマ?「ーーー!?」

モノクマ?「こ、この人、まさか、さっきの人……!?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「何が、どうなってーーーー」



32: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:17:49.21 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「……そう、怖れずとも良い。この亡者の群れがお前に危害を加えることは無いのだからな」

モノクマ?「は、はあ……?」

ユーハバッハ「そして、今回、用があるのは二人だけだ」

モノクマ?「……二人?」



ユラアッ……



ザエルアポロ「………」

アーロニーロ「………」



ユーハバッハ「眼を欺け、ザエルアポロ・グランツ」



33: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:18:43.34 ID:o7i7C/xYO



ザエルアポロ「………」コクンッ



バサァッ……



モノクマ?「……?」


モノクマ?(……何、アレ? パッと見、黒い布みたいだけど……)



ザエルアポロ「………」スッ…



ズザザッ……ドロッ……



……ドババッ……!!



……ビキーンッ!!



モノクマ?「え?」



ビキーンッ……ビキビキ……!!



モノクマ?「……!?」



ユーハバッハ「……私は、いま【結界】を構築した」



34: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:20:48.58 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……はい?」



ユーハバッハ「……地獄の底に満ちた、哀れな『砂粒』ーーー」

ユーハバッハ「ーーーそれらを、ザエルアポロの『発明品』で溶かし、【結界】として再構築した」



モノクマ?「………!」



ザエルアポロ「………」



ユーハバッハ「……『黒衣』を媒介とすれば、簡単なことだ」

ユーハバッハ「【結界】は『黒衣』と同様、限定的な迷彩機能があり、内部の我等は周囲の景色に紛れることになる」

ユーハバッハ「しばらくの間ーーーこれで誰も我等を見ることはできぬ」



モノクマ?「あっ、なるほど、そういう……」



35: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:22:39.07 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「……次はお前だ、アーロニーロ・アルルエリ」



アーロニーロ「………」



モノクマ?(……ん? よく見たらこの人、頭がカプセルみたいにーーー)



ユーハバッハ「【認識同期】」



アーロニーロ「」コクンッ



モノクマ?「え?」



アーロニーロ「………」スッ



……キュイーンッッ!!!



36: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:23:46.56 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……がっ、!?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ごげが、!? がぎぐげ?! がっ、ががっ、!!??」






モノクマ?「ごぐがー!!?? ぎげぎごが、が、が、がーーー!???」



ユーハバッハ「………」スッ



アーロニーロ「………」
ザエルアポロ「………」
ザイドリッツ「………」
アルゴラ「………」
ヒューベルト「………」
ドリスコール「………」
朱蓮「………」



……ヒュウンッ




37: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:24:38.20 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「私が、霊王より生まれ落ち……一護に殺されるまでの記憶を渡した」



ユーハバッハ「……気分はどうだ」



モノクマ?「……そんなの、そんなのーーー」






モノクマ?「ーーー最高に、『絶望的』ですよ!!」






ユーハバッハ「………」



38: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:26:31.69 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……【霊王】!? 【全知全能】!? 【未来改変】!?」



モノクマ?「どれもこれも、未知で、予想もつかなかったことばかり! どこぞのライトもビックリです!」



モノクマ?「ありがとうございます、陛下! こんな、すごいことを教えて頂いて!」



ユーハバッハ「……それは何よりだ」



39: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:27:13.82 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「ーーーですが、気になったことがあります」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「なぜ、死神代行……黒崎一護に殺された後の記憶を、植え付けて頂けなかったのでしょうか?」



モノクマ?「殺された後から、地獄に落ちるまでの情報がありませんけど」



40: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:28:40.93 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「……【認識同期】で伝達できる情報量には限りがある」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「連続で伝達することも困難だ」



ユーハバッハ「故に、後は私の口から直接伝えるとしよう」



41: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:30:44.26 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……いえ、陛下のお手、いや、お口を煩わせるまでもありません」



ユーハバッハ「……まさか、お前はーーー」



モノクマ?「ーーーはい、陛下からの “ 情報 ” で、だいたい何があったかは推理できました」



ユーハバッハ「…………ほう、この一瞬でか」



モノクマ?「ええ……そして、それは、さっき陛下がボクに『元気』をくれたからです」

モノクマ?「そう……『感謝の御言葉』と『頭ナデナデ』さえあればーーーボクはなんだってできちゃいますよ!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーただ、正しいかどうか答え合わせがしたいので、どうかボクの推理を聞いては頂けないでしょうか、陛下?」



42: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:31:55.10 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「ーーー面白い」

ユーハバッハ「面白いぞ」

ユーハバッハ「流石は私が腹心に選んだだけはある」



モノクマ?「それではーーー」パアッー



ユーハバッハ「ああ、許可しよう」



ユーハバッハ「私の過去を推理してみせよ」



43: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:32:46.02 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……よっしゃあ! 陛下からのお墨付きキター!」

モノクマ?「さっそく、推理パートに入らせて頂きます!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーただ、ここは、わかりやすく、三つののステージに分けて、推理させて頂きますね」



44: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:34:02.75 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「……三つか」



モノクマ?「ええ、今回、推理しなければならない謎は、以下の三つとなります」



モノクマ?「一つ、【なぜ黒崎一護に殺されたはずの陛下が生きているのか?】」



モノクマ?「二つ、【生き延びてから何をしていたのか?】」



モノクマ?「三つ、【なぜ地獄に落ちたのか?】」



モノクマ?「これらについて推理させて頂きます」ババンッ



45: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 22:36:25.38 ID:o7i7C/xYO









ーーーーーー地獄推理・開始!ーーーーーー









46: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:01:34.36 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「えー、それでは、まずは一つ目の謎について推理させて頂きますね」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「一つ目の謎、【なぜ黒崎一護に殺されたはずの陛下が生きているか】についてですがーーー」



モノクマ?「ーーー【奇跡】のおかげですね?」



ユーハバッハ「………」



47: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:03:32.28 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「陛下は、『霊王を奪い尽くす能力』を持っていました」

モノクマ?「事実として、陛下は霊王宮を攻め落とした後、初代霊王を奪い尽くしました」

モノクマ?「……【霊王の心臓】である【奇跡】さえも、部下であるジェラルド・ヴァルキリーから奪い尽くしました」

モノクマ?「故に、陛下は【奇跡】を扱えたはずです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「【奇跡】は、傷を負ったものを、神の尺度(サイズ)に交換ーーー」

モノクマ?「ーーーすなわち、『どんなにボロボロでもパワーアップした状態で復活できる力』です」

モノクマ?「死後でも、傷ついたのなら、復活することが可能でしょう」



モノクマ?「……というか、それ以前に、死んだ状態でも扱えた『力』なんて【奇跡】くらいのものですから」

モノクマ?「他は、石田雨竜の【静止の銀】による弱体化の影響が残留して、使用が困難な状態にありましたからね」

モノクマ?「不可能を可能にする【奇跡】以外に、復活する方法はなかったってわけです」



ユーハバッハ「………」



48: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:04:46.35 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「もちろん、【奇跡】発動のためには、民衆の『想い』を集める必要がありますがーーー」

モノクマ?「ーーー陛下は、戦争を起こしたことによって、あらゆる負の感情を、死神達から向けられていました」

モノクマ?「それを思えば、黒崎一護に斬られた直後に急いで、負の感情……すなわち『想い』を、集めること自体はできたはずです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……まあ、理想を言えば、部下から【奇跡】を奪った後、すぐにでも『想い』を集めるべきだったのでしょうがーーー」

モノクマ?「ーーー【奇跡】は【霊王の心臓】でもある以上、【全知全能】との併用は困難ですからね。基本的にどちらか片方しか使用できません……」



モノクマ?「……それを思えば、すぐに『想い』を集めることはできなかったってわけです」



ユーハバッハ「………」



49: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:06:37.37 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「【全知全能】は、未来を視て、それをだいたい『望んだ通りのもの』に改変することが、可能であるもののーーー」

モノクマ?「ーーー【全知全能】以外の “ 霊王の力 ” が使用されている状況の未来を視る場合、その精度が落ちてしまうという弱点がある」

モノクマ?「故に、【霊王の心臓】で『想い』を集めてしまったら、そうしている間の未来映像の質が落ちる」

モノクマ?「また、そうしている間の未来……他者が “ 霊王の力 ” を使用していれば、未来視の精度がさらに落ちることになる」

モノクマ?「それでは、【霊王の心臓】で必要量の『想い』を集めている途中のタイミングで殺されることになった場合ーーーそれを改変できない可能性が高い」

モノクマ?「だからこそ陛下は、黒崎一護に斬られて致命傷を負い、【全知全能】が使えなくなった後……唯一使える【奇跡】で『想い』を集め、死後に形にした」



モノクマ?「そうでしょう、陛下ーーー」



ユーハバッハ「ーーーそれには異議があるな」



50: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:07:58.09 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「ーーーえっ、?」



ユーハバッハ「……お前の言う通りだったとすれば、なぜ世界は今の形を保っている?」

ユーハバッハ「霊王を吸収した私を、新たな霊王……世界の楔としなければ、次元の壁が破壊されてしまう」

ユーハバッハ「そうなれば、今頃は、死と生の混じり合った世界となっているはずだ」



モノクマ?「あー……」



ユーハバッハ「その上で、どうやって世界を、今の形に保たせているというのだ?」



51: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:09:39.52 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……えー、はい。それは、【奇跡】だけで復活したわけではないからですね」



ユーハバッハ「………」






モノクマ?「……陛下は【奇跡】で、『死んだ状態でも【夢想家】を発動できる御体』に進化したんです」



52: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:12:16.33 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「【夢想家】は、グレミィ・トゥミューの『能力』であり、陛下の『魂のカケラ』を与えられたことで、目覚めさせたもの」

モノクマ?「グレミィは死神に敗北して死にましたがーーーグレミィに与えられた『魂のカケラ』は自動的に陛下の元まで戻り、回収される仕組みです」

モノクマ?「そうやって、回収された『魂のカケラ』を通じて、グレミィが目覚めさせた【夢想家】は陛下のものとなった」

モノクマ?「故に、陛下は【夢想家】を扱えたはずです」



モノクマ?「……【夢想家】は、『想像した大抵の物質や事象を、現実にできる力』」

モノクマ?「それを用いて、もう一人の陛下を創造する形で、復活することにした」



ユーハバッハ「………」



53: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:14:15.09 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……そのために、【奇跡】で、『死んだ状態でも【夢想家】を発動できる御体』に進化した」

モノクマ?「【夢想家】の発動には、『想像』が必要となりますがーーーそれは死の間際に抱いていた『無念』の一部を、『想像』の代わりとして使用すれば済むことです」

モノクマ?「その『無念』には、【もし自分が勝って生き残っていたら】【自分の手で理想の世界を創造できたのに】という『想い』が込められていたはずですし、実際にそうしている自分の御姿だって『想像』していたことでしょう」

モノクマ?「そうした『想像』……残留思念の一部を糧にすれば、死後であっても【夢想家】を発動し、もう一人の自分を創造することも可能なはず」

モノクマ?「【奇跡】でブースト発動されている状態にあるのであれば、尚更」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……何はともあれ、【夢想家】を【奇跡】でブースト発動したことによって、陛下をもう一人だけ存在させることが可能となった」

モノクマ?「それが今の陛下であり、かつての陛下は霊王となり、世界を支えることになった」

モノクマ?「違い、ますか?」



54: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:15:46.57 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「……なぜ、そのような遠回りをする必要がある?」

ユーハバッハ「【奇跡】だけで復活すれば済む話ではないか」



モノクマ?「それは、【奇跡】の発動の仕方が普通ではなかったからですよ」

モノクマ?「今回のケースでは、零番隊の和尚によって、『全身を封印されること』をトリガーに【奇跡】が発動した」

モノクマ?「そのため、遠回りな復活になってしまったんです」



ユーハバッハ「………」



588: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 12:31:14.24 ID:1XHrZrSMO



モノクマ?「改めて申し上げますが、【奇跡】は、傷を負ったものを神の尺度に交換できる」

モノクマ?「必要量の『想い』を溜め込んだ上で傷つけば、必ず発動します」

モノクマ?「……もちろん、封印された場合では、基本的に【奇跡】が発動することはありません」

モノクマ?「封印は基本的に、『傷つくこと』しては扱われませんから」

モノクマ?「故に、封印は【奇跡】を発動するトリガーとはならないはずでした」

モノクマ?「……しかし、初代霊王は、死神に全身を封印されて世界の楔にされた後に、散々傷つけられました」

モノクマ?「そう、霊王を恐れた死神が、霊王が封印状態にあるのを良いことにーーー」



モノクマ?「ーーー心臓、左腕、右腕などを、えぐって、もいで、切り落とした」



モノクマ?「それらは、全身を封印されたが故に起きたこと」

モノクマ?「そのため、『全身を封印されること』と『傷つくこと』に強い因果関係が結ばれ、双方がほぼ同義であるという風に、霊王の魂の『在り方』そのものに強く刻まれてしまったです」

モノクマ?「そして、その霊王は陛下によって殺され、奪い尽くされ、陛下と一つとなった」

モノクマ?「故に、陛下は『全身を封印されること』をトリガーに【奇跡】を発動することが可能となった」

モノクマ?「その後、実際に『全身を封印されること』をトリガーに【奇跡】が発動してしまったのです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……ただし、それでも『全身を封印されること』と『傷つくこと』が完全に同義という扱いではなかったため、【奇跡】は中途半端な形で発動することになった」

モノクマ?「その結果が、『想像』を実現する、 【夢想家】を利用した復活だったわけです」



56: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:20:44.04 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……もちろん、陛下も本当は、自分で自分を傷つけ、きちんとした形で【奇跡】を発動したかったとは思います」

モノクマ?「しかし、当時絶命寸前だった陛下は、【奇跡】で『想い』を集めるのに精一杯で、自分で自分を傷つける余裕がなかった」

モノクマ?「故に、死後に『封印』という形で『傷つけられたこと』で、【奇跡】を発動することになった」

モノクマ?「そうですよね?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「もっとも、和尚がこれに気づいて『封印』を実行したのかまではわかりませんがね」

モノクマ?「ひょっとしたら、実行前も後も全く気づいていなかったのかもしれないしーーー」

モノクマ?「ーーーあるいは実行前から気づいていて敢えて『封印』し……霊王宮や封印された陛下を媒介とした超霊術をもって、今度こそ返り討ちにするつもりだったのかもしれません」



ユーハバッハ「………」



57: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:21:43.04 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「……どちらにせよ、和尚の方も、充分な時間をかけて【霊王の心臓】を確実に無力化してから、陛下のご遺体を霊王としたかったでしょうがーーー」



モノクマ?「ーーーその当時は、陛下によって霊王が殺され、世界崩壊が間近に迫っていた」



モノクマ?「だから、和尚は、世界を支えるために、急いで陛下のご遺体を霊王の代わりにすることにした」

モノクマ?「そうして、充分な時間をかけずに『封印』せざるを得なかったのでしょう」

モノクマ?「以上の事情もあって、【奇跡】と【夢想家】が発動し、遠回りな形で陛下が復活するに至ったーーー」



モノクマ?「ーーーボクは、そう考えていますよ」



58: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:22:45.90 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「……私は、『幸運』だった」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「もし、【奇跡】が発動しなければーーー」



ユーハバッハ「ーーーあるいは、一護が【和尚達、零番隊の “ 意志 ” を】【組み込まれたままの状態で】【卍解に成功して】【零番隊の “ 意志 ” を介して】【霊王に進化】していればーーー」



ユーハバッハ「ーーー全てが、終わっていた」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「一護が霊王に進化していれば、一護が楔となったはずだ」



ユーハバッハ「そうなっていれば、私の足掻きが、『奇跡』として実ることは無かっただろう」



59: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:24:12.66 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「ーーー確かに、陛下は『幸運』だったのでしょうが、それもまた必然だったとも思いますよ」

モノクマ?「陛下のおっしゃる通り、黒崎一護が、【和尚達、零番隊の “ 意志 ” を】【組み込まれたままの状態で】【卍解に成功して】【零番隊の “ 意志 ” を介して】【霊王に進化】していれば、陛下が復活することはなかったでしょう」



ユーハバッハ「…………」



モノクマ?「しかし、黒崎一護が霊王になる未来は、卍解を真っ二つに砕くという形で消滅しました」

モノクマ?「……黒崎一護の新たな卍解は、それが発動してから使い手が霊王になるまで、わずかな隙がありましたからね」

モノクマ?「そう、【黒崎一護から】【零番隊の五人の “ 意志 ” が噴き出して】【卍解を乗っ取り】【零番隊の “ 意志 ” の宿った卍解で】【黒崎一護本体を斬ることをトリガーに】【霊王に進化させる】というーーー」



モノクマ?「ーーーそういったプロセスを踏む必要が……隙があったのです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下は全力でその隙を突き、零番隊の “ 意志 ” が卍解を乗っ取る前にーーー」



モノクマ?「ーーー卍解を砕いて、進化を妨害した」



60: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:26:31.31 ID:o7i7C/xYO



モノクマ?「しかも、それが終わった後は、念には念を入れて、零番隊の “ 意志 ” をも砕いた」

モノクマ?「黒崎一護に組み込まれた零番隊の “ 意志 ” を、未来改変で根こそぎ砕いたのです」

モノクマ?「そうして、陛下が視た全ての未来で、黒崎一護に組み込まれた零番隊の “ 意志 ” が砕かれてしまった」

モノクマ?「そうなってしまっては、黒崎一護が霊王に進化することは不可能」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……零番隊のリーダーである和尚は、人の名前に込められし “ コトダマパワー ” を利用して、その名前の人物を復活させる能力を持つチート死神ですがーーー」

モノクマ?「ーーー霊王宮が陛下に攻め落とされてしまった中、短時間で、零番隊五人の “ 新たな意志 ” を、黒崎一護本体に組み込めるほどチートでもなかった」

モノクマ?「もう一度組み込むためには、黒崎一護の卍解をまったく新しいものに打ち直し、何日か霊王宮という場所で修行させるなどのプロセスが必要で、どうしても時間がかかってしまう」

モノクマ?「ですが、陛下が霊王宮を攻め落とし、世界崩壊が間近に迫っている中で、そんなことをしている余裕はない」

モノクマ?「だからこそ、和尚は陛下のご遺体を急いで世界の楔にせざるを得なくなり、その結果として “ 現世で ” 新たな陛下が生まれることになった」

モノクマ?「全ては、必然。少なくとも、ボクはそのように思いますよ」



61: ◆02/1zAmSVg 2019/10/21(月) 23:27:33.15 ID:o7i7C/xYO



ユーハバッハ「必然かーーー」



ユーハバッハ「ーーーそうだな。それを含めて、全てがお前の推理通りだ」



モノクマ?「……えっ、それじゃあーーー」



ユーハバッハ「そうだ。私が復活した理由については、全てがお前の推理通り」

ユーハバッハ「何一つとして、反論することは無い」



モノクマ?「……よっしゃあ! これで第一ステージはクリア! 次は、第二ステージ、【陛下は生き延びた後にどうしていたか?】について推理させて頂きます!」



62: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:20:49.86 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「それで、【生き延びてから何をしていたのか?】についてですがーーー」



モノクマ?「ーーー普通に、尸魂界に行くための準備を重ねていたと見ています」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下の目的である『理想の世界』実現のためには、以前の陛下、すなわち現在の霊王を消さなくてはいけません」

モノクマ?「しかし、霊王がいるのは尸魂界、つまり霊王を消すためには尸魂界に行かなくてはならない」

モノクマ?「……だけど、新しい陛下にはそれが叶わなかった」



モノクマ?「他ならぬ、和尚の封印のせいで」



ユーハバッハ「………」



63: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:22:31.34 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「和尚の封印は、これ以上にないくらい強力なものだった」

モノクマ?「世界を支える楔となることを、強制するための封印ですから。強力で当然でしょう」

モノクマ?「だからこそ、封印対象と同一人物という繋がりを持つ新しい陛下にも、封印の影響が波及した」

モノクマ?「それのせいで、新しい陛下は世界の安定を壊すこと、つまりは尸魂界に行って霊王を消すことが不可能になった」

モノクマ?「新しい陛下が、尸魂界ではなく現世で創造されたのも、封印の影響によるものでしょう」

モノクマ?「故に、新しい陛下は、封印の影響を取り除くために、準備を重ねることにした」



モノクマ?「違い、ますか?」



64: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:23:58.33 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……準備とは、具体的に、何のことを言っているのだ?」



モノクマ?「民衆の『想い』を集めることです」

モノクマ?「陛下、あなたは、【奇跡】で、『想い』を集めることによってーーー」



モノクマ?「ーーー自身の身体を、『和尚の封印すら意味をなさない身体』に進化させようとしたんです」



ユーハバッハ「………」



65: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:25:16.32 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「ーーーしかし、民衆の『想い』を集めるには、どうしても目立ったことをする必要があります」

モノクマ?「【夢想家】で、影の空間に民衆を想像しようにもーーー【夢想家】で想像できる人の量や質には制限がありますから」

モノクマ?「そうなると、現世の民衆に頼らざるを得ないわけですがーーー」



モノクマ?「ーーー目立ったことをすれば、死神などによって発見されるリスクを背負うことになる」



モノクマ?「故に、何もできなかった」



モノクマ?「 “ 現代においては ” 」



66: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:26:01.12 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……現代以外であれば可能」

ユーハバッハ「そういうことか?」



モノクマ?「その通りです」

モノクマ?「陛下、あなたは『未来』の民衆から『想い』を集めていたんです」



ユーハバッハ「…………」



67: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:28:16.58 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「無論、 “ 現代にいる陛下が、『未来の想い』をどうやって集められるのか? ” という話になりますがーーー」



モノクマ?「ーーー普通に可能だったのでしょう」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下の【全知全能】は、『未来を視て改変する力』です」

モノクマ?「言い換えれば、現代と未来の間に『タイムトンネル』を構築し、『情報』の送受信を行うことでもあります」

モノクマ?「具体的には、未来の一部が『特殊な映像情報』に変換され、『タイムトンネル』を通じて現代の陛下のもとまで送信されーーー」



モノクマ?「ーーーその『情報』を陛下が改竄し、それを『タイムトンネル』を通じて未来に返信することで、作り変えた通りの『未来』に上書きする力ーーー」



モノクマ?「ーーーまさに、『情報』の送受信と呼称するに相応しい『力』です」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「異なる時代を繋いで『情報』の送受信を可能にすること、それこそが、【全知全能】の本質」



モノクマ?「ならば、『タイムトンネル』を維持することで、現代の陛下が『未来の想い』をーーー」



モノクマ?「ーーー『想い』という名の『情報』を、集めることも可能でしょう」



68: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:30:10.80 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……【霊王の心臓】を行使している間は、未来視に不具合が発生するのでは無かったのか?」



モノクマ?「不具合が発生するのは、【全知全能】以外の “ 霊王の力 ” が使用されている状況にある未来に対する、未来視です」

モノクマ?「逆に言えば、その “ 霊王の力 ” のほとんどが存在しない……すなわち『陛下のいない未来』ならば、見放題のはずです」

モノクマ?「故に、『何らかの理由で陛下が存在しなくなった未来』に向けて『タイムトンネル』を繋げば、確実に未来視が可能となることでしょう」



ユーハバッハ「………」



69: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:32:47.58 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「ああ、もちろん、『死神も虚も存在しない未来』にする必要があります」

モノクマ?「存在してしまったら、その死神や虚の不思議パワーに妨害されるリスクもゼロとは言い切れませんからね」

モノクマ?「そして、『死神も虚も存在しない未来』があり得るとすれば、ただ一つ」



モノクマ?「陛下の目的が達成された『未来』、それだけです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「そう、【死と生が混じり合った一つの世界と化し】【死神と虚が殲滅され】【誰もが不死身の肉体を与えられた】ーーーそんな『未来』だけなんです」



モノクマ?「そして、その『未来』において、『民衆から最も注目されている組織』を視てーーー」



モノクマ?「ーーー未来改変という形で乗っ取れば、『組織』全体が受ける『想い』を、我が物にできるはずですよ」



70: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:34:09.17 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……我が【全知全能】の未来視は、【未来で危機に瀕する可能性が】【現代で充分に育まれた後】【基本的に自動で発動される】」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「故に、場合によっては遥か未来に渡る殆ど全てを見通すこともできるがーーー」



ユーハバッハ「ーーー能動的に発動できないが故に、望んだ『未来』を視ることができるとは限らない」



71: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:36:38.78 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……確かに、望んだ『未来』を視ることができるとは限りません」

モノクマ?「しかし、それは、何のリスクもなしに『能力』を使用した場合の話です」

モノクマ?「……リスクを背負えば、ある程度は望んだ『未来』を、能動的に視ることができるのでは?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーたとえば、【タイムトンネルが強く固定され過ぎてしまい】【しばらくの間はたった一つの『未来』しか視えなくなる】ーーー」

モノクマ?「ーーーそれと、【未来改変の幅の形や方向性も変わってしまい】【霊圧の大きいものなどに干渉できなくなる】などといったリスクが考えられますね」

モノクマ?「そういったリスクを背負えば、ある程度は望んだ『未来』を、能動的に視ることも可能だと見ています」

モノクマ?「……陛下も、自分の『能力』と向き合って見つめ直すことで……ボクが言ったような使い方が可能であるということに、新しく気づいたんじゃないですか?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「そうして、能動的な未来視が可能だとすれば、望んだ『未来』に向けて、タイムトンネルを繋げることも可能でしょう」

モノクマ?「そのタイムトンネルを通じて、『未来の想い』を、現代の陛下の元へ届かせることだって可能ーーー」



モノクマ?「ーーーそうですね、陛下?」



72: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:38:15.28 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……可能だったとして、それだけで必要な『想い』が集まるものなのか?」



モノクマ?「ーーーもちろんながら、それだけでは足りなかったのでしょう」

モノクマ?「真っ当なやり方で、必要な『想い』を集めることが可能ならばーーーボクも協力させて貰った、『プロジェクト』を実行をする必要も無かったでしょうから」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下は、それを実行しなければならないほど、より多くの、より強い、純粋な『想い』が必要だったーーー」



モノクマ?「ーーー故に、陛下は、『プロジェクト』を実行に移したんです」



73: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:41:49.62 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「その詳しい概要ですがーーーまずは、あらかじめ作っておいた『影の空間』の中で、『タイムトンネル』を通じた『情報通信システム』を整備します」

モノクマ?「そして、『通信システム』を用いて、『未来の組織』に命令し、『プロジェクトの協力者に足り得る者たち十六人』を集めさせます」

モノクマ?「その後、『未来の組織』と相談を重ね、必要となる『アイテム』『施設』などを決めーーーそれらを【夢想家】で必要なだけ創造し、『舞台』を築きます」

モノクマ?「築き終えた後は、『協力者全員の精神』を、特殊な方法を用いてそれぞれ分裂させます」

モノクマ?「そうして分裂させた『精神』の片方を情報化し、現代に送信します」

モノクマ?「情報化していれば、未来視の『映像情報』と同じように、『タイムトンネル』を通って現代に送信できるはずです」

モノクマ?「それから、送信された『精神』を、あらかじめ【夢想家】で創造しておいたカラッポの『魂魄』に投入します。また、その『魂魄』を、同じく創造したカラッポの『肉体』に投入します」

モノクマ?「異なる『魂魄』や『肉体』に投入された影響で、記憶や認識を大きく混乱させてしまうこともありますがーーー」



モノクマ?「ーーーそれは、一時的なものなので、大した問題ではありません」



モノクマ?「『精神』とそれを受け入れる『物』の容姿、性別、年齢がどれだけ異なっていたとしても、『精神』と『魂魄』の種族さえ合致しているのなら大丈夫」



モノクマ?「種族さえ合致していれば、『魂魄』も安定し、『精神』『魂魄』『肉体』に致命的な異常を与えることは無いはずですから」



74: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:43:48.62 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「ともかく、そうして、『核となる精神』『それを支える魂魄』『それを繋ぎ止める肉体』の三つが現代に揃いました」

モノクマ?「そこで、『協力者たち十六人の魂魄』に陛下の『魂のカケラ』を与えることでーーーそれぞれの『精神』などを素材に、自分だけの『すごい力』に目覚めさせることが可能となります」

モノクマ?「そう、陛下がかつての部下たちに『魂のカケラ』を与え、『想像を現実にするなどの能力』を与えた時のように」

モノクマ?「『協力者たち』に、陛下の『魂のカケラ』を与え、『超高校級のすごい力』に目覚めさせたのです」

モノクマ?「その後は、陛下の『御力』で『協力者ほぼ全員の精神』….…人格や記憶を作り変えて、それを免れた者に命じて、『プロジェクト』を進めさせれば良い」



モノクマ?「それから『究極のリアル』を放送し続ければーーー」



モノクマ?「ーーー『未来の民衆たち』が、より多くの、より強い『想い』を、陛下のもとに送り続けてくれるようになる」



モノクマ?「『未来』は、『死と生が混じり合った一つの世界』となっている上に、誰もが『不死身の肉体』を与えられていますからね」

モノクマ?「だからこそ、『究極のリアル』を放送し続けることで、応援コメントのごとく、『想い』を提供してくれるーーー」

モノクマ?「ーーーそうして、民衆の『想い』が、現代にいる陛下の元へと、ガッポガッポ集まっていくのです!」



ユーハバッハ「………」



75: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:45:17.00 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……まあ、良い子ちゃん連中が、『組織』や世間に向けて反対運動起こしたり、『協力者に選ばれた者たち』に説教かましたりと、いろいろ邪魔はしてきましたがーーー」



モノクマ?「ーーー所詮は無力な少数派。一時的に人心を動かせたとしても、『十六人の協力者』が集められるという “ 結果 ” は変えられない」



モノクマ?「死んで肉体から抜け出た『魂魄』についても、陛下の『御力』で自動的に “ 別の空間 ” に閉じ込めて保管しておけばーーー尸魂界に送られるなどといったことも起こらない」



モノクマ?「此度の『プロジェクト』が、死神に漏れることもない」



モノクマ?「問題なく進行し、『想い』は集まり、【奇跡】の糧となってくれるわけです!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……以上が、陛下の『プロジェクト』の大まかな概要となります。何か気になる点はありますか?」



76: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:45:58.21 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……それだけか?」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「究極的かつ現実的ーーー」







ユーハバッハ「ーーーそうした映像を提供することだけが、『想い』が集まる理由なのか?」



77: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 12:48:23.34 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……まさか! この『プロジェクト』の魅力はまだまだ伝えきれておりませんよ。それらは、ボクはもちろん、『未来』の誰もが知っていることですがーーー」



モノクマ?「ーーーその詳しいやり方については【認識同期】されるまでわかりませんでした」



モノクマ?「なので、それを含めて説明させて頂きますね」



ユーハバッハ「…………」



モノクマ「『想い』が集まるのは、ほか三つの魅力があるからです」



78: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 13:47:33.55 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「まず、一つ目の魅力ですがーーー」



モノクマ?「ーーーそれはエンディングを迎えたあと、現代に送信された『精神』が、『未来』にある本来の身体に返信されーーー陛下から与えられた『すごい力』を『未来』でも使用可能になるという点です」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下の【全知全能】があれば、可能です」

モノクマ?「……陛下の【全知全能】は、未来から送信された『特殊な映像情報』を改竄し、それを返信してその通りの『未来』に上書きすることができます」

モノクマ?「ならば、エンディングを迎えたあと、『魂魄』に内在する『精神』……すなわち未来から送信された『情報』を、元々の状態に限りなく近いものに書き換えーーー」



モノクマ?「ーーー『未来』に返信し、本来の身体と『精神』に合成させる形で、上書きすることも可能でしょう」



モノクマ?「返信する『精神』に、『すごい力』を組み込んだ上で!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「そうした手順を踏んで、『すごい力』を、『未来』でも使用可能になるというわけです!」



79: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 13:48:52.54 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……まあ、そうして得られた『すごい力』は、必ずしも『協力者』が、最初に望んだ通りのものとは限らないのですがーーー」



モノクマ?「ーーーそれでも、『すごい力』であることに、違いありません」



モノクマ?「それがあれば、これからの人生は盤石なものになる。『社会的に大きな立場』を得ることができる」

モノクマ?「そうして、周囲の人間に対して自らの『すごい力』を誇ることが可能となる」



モノクマ?「そんな、『選ばれし者』に……『人』に、なれてしまう」



モノクマ?「それを思えば、『協力者』に『すごい力』を与えられることは、『想い』を集めるための魅力となり得るでしょう」



ユーハバッハ「………」



80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/22(火) 13:52:10.38 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……実際、『あの力』に目覚めることもできるとわかった時は、めちゃくちゃ反響ありましたよね」

モノクマ?「そう、あの殺人に特化した……『超高校級のすごい力』を本来の身体に持ち込めていればーーー」



モノクマ?「ーーー不死デスマッチの世界大会で優勝し、『賞金』を獲得するのも夢ではありませんから」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……仮に、その『すごい力』を手に入れたのが老人であっても同じこと」

モノクマ?「未来世界の老人は、『不死身の肉体』を与えられたことで、若者と変わらない身体能力を有しています。基礎ステータスが同じである以上、歳に関係なく『すごい力』を活かし、優勝も可能となる」

モノクマ?「まさに、『お金』や『名誉』が欲しい全ての人からしてみれば、羨みの対象となる『力』。反響があるのは当然ですね」



ユーハバッハ「………」



81: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 13:53:32.93 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……ああ、もちろん、わかってますよ陛下」

モノクマ?「『不死身の肉体』によって誰もが永遠の努力が可能な『未来』ならば、『すごい力』の有無など現代ほど大した問題じゃありません」

モノクマ?「自身の『想い』を糧にがんばり続けることで、誰もがどの分野でも『栄光』を掴むことは可能でしょう」

モノクマ?「なので、自身の『想い』を糧にがんばり続ければ、誰もが世界大会で優勝し、『賞金』を獲得できる可能性はあると思います」



モノクマ?「……ですが、すぐに確実に『力』が手に入るのならば、それに越したことはありません」



モノクマ?「誰だって、さっさと『自分や他人に胸を張れる自分』になりたいものですからね」



モノクマ?「そうして手早く心の支えを与えてくれるからこそ、民衆はそれを魅力に感じ、その『想い』が集まった」



モノクマ?「そういうことなんでしょうから」



ユーハバッハ「………」



82: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 13:54:45.08 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「ーーー特に反論がないようなので、二つ目の魅力の説明に移りますね」



ユーハバッハ「…………」



モノクマ?「二つ目の魅力、それは、エンディングを迎えたあとーーー」



モノクマ?「ーーー協力者限定サービスを通じて、『すごいもの』をゲットし、思い通りにできることです」



ユーハバッハ「………」



83: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 13:57:28.25 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……『協力者たちの精神』が投入される『魂魄』、及びそれを投入する『肉体』ーーー」



モノクマ?「ーーーそれらのデザインは、基本的にウチが決めています」



モノクマ?「『協力者』の容姿が良い場合は、本人の要望次第でそのままデザインに流用することもありますがーーーそういうケースばかりではありませんからね」

モノクマ?「故に、『魂魄』や『肉体』などのデザインは、基本的にウチが決める」



モノクマ?「髪型、顔立ち、体型、性別など、その全てを」



モノクマ?「それは、『伝説に携わる栄誉あるデザイナー集団』によって形作られた、『大衆ウケする芸術作品』」

モノクマ?「まさに、『すごいもの』でありーーー」



モノクマ?「ーーーそういった『物』に価値を見出す人は、数えきれないほど存在する」



モノクマ?「そんな中で、『協力者』のみが……『伝説』を形作ることを協力してくれた者だけが、『すごいもの』をゲットできる」



モノクマ?「事実として、協力者限定サービスを利用すれば、返信された『精神』の一部などを素材にーーー」



モノクマ?「ーーー人造魂魄……もとい、人間型アルターエゴとそれを投入する仮の肉体も構築できるのですから」



ユーハバッハ「………」



84: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 13:59:28.23 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……陛下の持つ技術情報があれば可能でしょう」

モノクマ?「そう、 “ 見えざる帝国 ” が、尸魂界の影の中から盗み見た死神の技術ーーー」



モノクマ?「ーーー義魂丸(ぎこんがん)や改造魂魄(モッドソウル)と呼ばれる人造魂魄に、義骸と呼ばれる仮の肉体ーーー」



モノクマ?「ーーーそれらに関する技術情報を、『未来』に提供すれば可能なはずです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「人造魂魄や義骸に関する技術を応用すれば、人間型アルターエゴとそれを投入する仮の肉体だって構築できる」

モノクマ?「……『非現実的な存在』を、自分達のすぐ側に作れてしまう」

モノクマ?「『協力者』はそんな『すごいもの』をゲットできる」

モノクマ?「誰が相手でも、自慢できる、『すごいもの』を!」



ユーハバッハ「………」



85: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 14:00:42.73 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「しかも、『すごいもの』……アルターエゴは基本的に『協力者』の思い通りにできます」

モノクマ?「なにせ、アルターエゴの認識は、人格構築時に手を加えるだけで、『協力者』の思うがままなのですから」

モノクマ?「思い通りに、『協力者』のことを、誰よりも好きになってくれる。とても都合の良い存在になってくれる」

モノクマ?「しかも、アルターエゴは、仮とはいえ『不死身の肉体』を持っているため壊れることはありませんし、その肉体年齢も既に高校生以上!」

モノクマ?「故に、老化停止サービスを受けられるため、好きな肉体年齢で留められる!」

モノクマ?「また、アルターエゴは、『すごい力』をそのまま持っています! つまり、アルターエゴとそれを手に入れた『協力者』は、『すごい力』を振るい合うことで、お互いを更に磨き上げることができる!」

モノクマ?「……そう、アルターエゴは、『協力者』が得た『すごい力』を磨き上げることに貢献させることも可能というーーー大変有意義な存在でもあるのです!」



ユーハバッハ「………」



86: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 14:02:55.19 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「時には、アルターエゴの方が『すごい力』を磨きあげることもあり、自身の価値に危機感を抱く『協力者』もいるようですがーーー実際は何ら危機になり得ない」

モノクマ?「確かに、アルターエゴには、一定の人権が保障されていますし、生活を成立させる手当などの恩恵だって受けられますがーーー」



モノクマ?「ーーーその代わり、自身が生まれ持った『すごい力』を行使して『大きな社会的立場』を得ることは禁止されるという不自由がありますから」



モノクマ?「自由にやりたいのなら通常の人権を得なくてはいけませんが、そのためには『すごい力』を消され、容姿をランダムに変えるという手続きを踏む必要がある」

モノクマ?「しかも、通常の人権を得たアルターエゴはまず施設暮らしになる。なぜなら、その場合だと、『協力者』にアルターエゴを保護する義務がなくなりますので」

モノクマ?「また、保護義務のあるアルターエゴを失ったことで、協力者限定サービスをもう一度利用することが可能となりーーー『協力者』の一部から新しいアルターエゴを補充できる」

モノクマ?「故に、アルターエゴは自身が生まれ持った『すごい力』を行使して『大きな社会的立場』を得ることは絶対に【不可能】。どんな『すごい力』も、御しきれないのであれば、本人にとっては何の意味もない」

モノクマ?「だからこそ、『協力者』は、アルターエゴの成長に危機感を抱くことなく、自身の『すごい力』を磨き上げることができる」

モノクマ?「とまあ、そんな感じで、ゲットしたアルターエゴ……『すごいもの』を思い通りにできるのが魅力というわけです!」



ユーハバッハ「………」



87: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 14:04:09.87 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……これらも特に反論がないようですね」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「それでは、最後、三つ目の魅力について説明させて頂きますね」



88: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 14:06:09.70 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……三つ目の魅力、それは、一つ目と二つ目の魅力を享受できる機会ーーー」



モノクマ?「ーーーそうしたチャンスが、ほぼ全ての人類に与えられているという点です」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「『未来』から現代に送信される『協力者の精神』は、あくまでも二つに分裂したものの片方でしかありません」

モノクマ?「もう片方の『精神』は、身体に残しています。故に、学校や仕事などをサボらずに済む」

モノクマ?「したがって、全ての高校生から全てのお爺ちゃんお婆ちゃん……人間型アルターエゴに至るまで、誰もが『協力者』候補となり得る」



モノクマ?「……【恵まれない能力】【恵まれない立場】【恵まれない生活環境】【恵まれない人間関係】【望まない顔だち】【望まない体型】【望まない性別】【望まない肉体年齢】【望まない出生】などなどーーー」



モノクマ?「ーーーどんな劣等感を抱えた身の上であろうとも、『協力者』候補となり得るんです」



89: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 14:09:26.90 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「まあ、『協力者』に選ばれるかどうかは、最終的にはその人の『精神』次第……『すごい力』を得られるかどうかの『適正』にもよります」

モノクマ?「しかし、誰がどんなことで、どんな試練をキッカケに『適正』を宿すかはわからない」

モノクマ?「故に、誰もが『すごい力』を得るための『適正』を宿せる可能性がある」

モノクマ?「それができれば、いつ『協力者』に選ばれてもおかしくはないですし……選ばれた後は陛下の『魂のカケラ』を与えられ、『すごい力』を得ることが可能となる」

モノクマ?「それで、エンディングを迎えたあとは、現代にある『精神』が【全知全能】によって、元と限りなく近いものに改竄され、本来の身体に返信されーーー」



モノクマ?「ーーーその後、『協力者』は、『未来』でも『すごい力』を行使することが可能となる」



モノクマ?「また、『協力者の精神』などを素材に、人間型アルターエゴ……『すごいもの』が作られ、ゲットできる」



モノクマ?「そうやって、『すごい力』と『すごいもの』をゲットすることでーーーそれらを誰かに自慢することができる。心の支えとなるものが手に入る」



モノクマ?「……『選ばれし者』になれる!そういう『人』限定で……超高校級の『物』を持つことができる!」



モノクマ?「ーーーそうしたチャンスが誰にでも平等に与えられていることこそ、民衆の『希望』であり、かけがえのない魅力ってわけです!」



ユーハバッハ「………」



90: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 14:10:37.27 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「ーーー以上が、陛下のプロジェクトの三つの魅力であり、それらの理由もあって、『想い』が陛下の元まで集まっていたというわけです」






ユーハバッハ「………」






モノクマ?「さて、何か違うところはありますか?」



91: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 14:11:17.51 ID:eQpYvQ98O






ユーハバッハ「……全て正解だ」






モノクマ?「……第二ステージクリア! それでは、最終……第三ステージに突入します!」






92: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:42:37.20 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「それでは、第三ステージ、陛下は【なぜ地獄に落ちたのか?】についてですがーーー」



モノクマ?「ーーーそれは、虚となって、斬られたことが理由ーーー」



モノクマ?「ーーーそうですね?」



ユーハバッハ「………」



93: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:45:50.29 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……それは、無理もないことです」

モノクマ?「陛下の『プロジェクト』は、『協力者』……いや、奴らの暴走をトリガーに、完全に終焉を迎えてしまったのですから」

モノクマ?「陛下は御寝を終えて目覚めた後に、それに気づいてしまった」

モノクマ?「絶望だってします」

モノクマ?「『無数の小さな眼』から情報を受信すれば、何が起きたのかも簡単にわかるでしょうしーーー」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーあまりに絶望し過ぎて、【夢想家】で意図せず絶望を実現してしまうことだってあるでしょう」

モノクマ?「そう、陛下は、とびきりの絶望を想像し、【夢想家】で無意識に実現してしまったのです」

モノクマ?「絶望状態での【夢想家】は、【奇跡】を負の方向に転換したばかりか、陛下自身を傷つけてしまった」

モノクマ?「【夢想家】が意図せず発動し、それで【奇跡】が負の方向に転換され、さらには陛下自身を傷つけてしまったことでーーー」



モノクマ?「ーーー負の奇跡が発動され、陛下の『御体』の全てが虚へと変換されてしまった」



モノクマ?「違いますか?」



ユーハバッハ「………」



94: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:47:09.55 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「また、『御体』の全てが虚と化したことで、陛下は『力』のバランスを崩した」

モノクマ?「『虚としての力』を除いた……ありとあらゆる『力』がほぼ【使用不可能】になったと見ています」

モノクマ?「陛下は様々な『御力』を持つチート滅却師ですがーーーその代償として月に一度、平均して約九日間の眠りについて『力』を制御しなければならなかった」

モノクマ?「それほどまでに不安定な『力』ならば、陛下が完全な虚と化せば『力』のバランスは崩れるでしょう」

モノクマ?「その後、『虚としての力』を除いた……ありとあらゆる『力』がほぼ【使用不可能】になっても不思議はありません」

モノクマ?「というか、そうでもなければ、陛下が地獄に落ちるはずがありません」

モノクマ?「負の方向に転換されたとはいえ、【奇跡】を持って戦い続ける限り死ぬことはあり得ず、こうして地獄に送られることもないはずですから」

モノクマ?「不可能を可能にする【奇跡】であっても、その【奇跡】の虚化によって生じた【不可能】を可能にすることはできなかったってわけです」



ユーハバッハ「………」



95: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:50:14.41 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……そうして、陛下は完全な虚と化した後、その影響で理性が乱れ、自分のいる影の空間を破壊し、黒崎一護及び石田雨竜を襲おうとした」

モノクマ?「陛下と同じく滅却師の血を受け継いだ……肉親とも言うべき、彼らを」

モノクマ?「しかし、襲う前に某駄菓子屋の店主によって虚園にでも誘導されてしまった」

モノクマ?「それから、陛下は、黒崎一護たち現世組と戦った」



モノクマ?「……その戦闘には、援軍として、護廷十三隊の面子がーーー」



モノクマ?「ーーーあるいは零番隊が派遣されたかもしれませんね」



モノクマ?「もっともそれは、現世組が十年もの間、どのくらい戦闘能力を向上させていたかにもよるでしょう」

モノクマ?「……もし、浦原喜助が、某バトル漫画の “ 精神と時の部屋 ” みたいなのを黒崎一護たちに貸し与え、定期的に修行をさせていたとしたらーーー」



モノクマ?「ーーーひょっとしたら、現世組は、死神たちの援軍を必要とすることなく、短時間で決着をつけてーーー」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーまあ、戦いの内容はどうあれ、陛下が黒崎一護の斬魄刀で斬られてしまい、地獄に落ちたことは確かな事実……」



モノクマ?「……そうでしょう、陛下?」



96: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:52:07.51 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……なぜ、あの計画を潰された程度のことでーーーこの私が絶望するというのだ?」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「潰されたところで……それは私が【全知全能】で繋げた、 “ 一つの未来 ” を利用した計画の続行が【不可能】になっただけに過ぎぬ」

ユーハバッハ「それならば、機を見て、 “ 別の未来 ” に繋ぎ直しーーーまた同じように『想い』を集めれば済むことだ」



ユーハバッハ「……『希望』は『未来』に繋がっている」



ユーハバッハ「それを思えば、計画を潰された程度のことで、この私が絶望するなどあり得ぬことだ」



97: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:53:13.51 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……確かに、陛下と、我々下々の者の事情は、それぞれ異なりますからね」ショボーン

モノクマ?「『プロジェクト』が終焉を迎えたところでーーー陛下は『タイムトンネル』を破壊するだけの話……」

モノクマ?「……それから、【全知全能】で似たような別の未来に新しいタイムトンネルを繋げ、これまでと同じようにすれば済む話ですよ、ハイ」



ユーハバッハ「ならば、なぜ、そうしなかった?」



モノクマ?「……それが、【不可能】な状況に追い込まれたからですよ」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……なぜなら、陛下が目覚めた時には、某駄菓子屋の店主ーーー」






モノクマ?「ーーーすなわち、浦原喜助が、既にチェックメイトをかけていたのでしょうから」



98: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:55:19.13 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……浦原喜助は、陛下のいる『影の空間』を、発見したんです」

モノクマ?「故に、浦原喜助は、自身の卍解である【観音開 紅姫改メ】を用い、その能力で『影の空間』を造り変え、収縮させーーー」



モノクマ?「ーーー中にいる陛下を押し潰そうとしたのです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下とて、影の空間……存在する世界ごと潰されたら、完全に消滅するはずです」

モノクマ?「世界が消滅したら【奇跡】の発動も何もないのですから」

モノクマ?「無論、陛下は目覚めた後に、あらゆる『御力』を使って、自分に迫り来る影の空間を破壊することも試みようとはしたでしょう」

モノクマ?「しかし、陛下の『御体』もまた、寝ている間に浦原喜助によって造り変えられており、意識して『御力』を発揮できない身体に弱体化していた」



モノクマ?「このままでは、陛下は影の空間に完全に押し潰されてしまう」



モノクマ?「そういうことであるならばーーー陛下といえど、絶望するのも無理はありませんよ」



99: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:56:29.07 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「ーーーなぜ、発見された?」

ユーハバッハ「浦原喜助といえど、私の計画に気づくことは、不可能なはずだ」



モノクマ?「……確かに、第二ステージで述べた通りの『計画』だと、陛下は現世にある『影の空間』から一歩も出る必要がありませんし、『未来』を認識できるのも現代では陛下しかいない」

モノクマ?「浦原喜助が現世のありとあらゆる影を調べれば、陛下の生存に気づけたかもしれませんがーーーそんなのは無謀にも程がある」

モノクマ?「その条件下で、現代の者たちが十年やそこらの期間で気づくのはまず不可能でしょう」



ユーハバッハ「………」



100: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:58:08.48 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……ですが、通報があったとすれば話は別です」

モノクマ?「それも、陛下が放った新鮮な霊圧……つまりは陛下が生存している証拠を携えた上での通報ならば」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「たとえば、 “ 別の空間 ” に転送され現世に留まっていた『魂魄たち』が解放され、尸魂界にやってきたとすればどうでしょうか?」

モノクマ?「陛下の『御力』で現世に押し留めていた以上、『魂魄たち』には、生きた陛下の霊圧が付着しているはずです」

モノクマ?「また、尸魂界や現世で敵の霊圧が発生すれば、大体のケースで、技術開発局のマシンなどで感知されてしまう」

モノクマ?「故に、陛下の霊圧が尸魂界で発生したが最後、技術開発局局長……涅マユリに感知され、その新鮮さから生存がバレてしまう」

モノクマ?「霊圧の発生源だって辿られ、陛下が現在どこにいるかだってわかってしまう」



モノクマ?「……多分ですが、陛下がその時に長期睡眠中だったこともわかったんじゃないですかね?」



ユーハバッハ「………」



101: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 15:59:42.64 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「護廷十三隊の現総隊長……京楽春水は、きっとその報告を受けた」

モノクマ?「ならば、京楽春水が、浦原喜助たち現世組に調査及び暗殺を頼んでも不思議はない」

モノクマ?「現世組は、尸魂界の死神と違って、尸魂界を最優先で守護する立場にはありません」

モノクマ?「故に、どんな超高校級の緊急事態であろうとーーー現世組は、尸魂界に留まる義務を持たないため、比較的自由に動ける」

モノクマ?「たとえ、それが陛下の生存が判明した場合であったとしてもーーー現世組は、尸魂界を最優先で守護する義務を持たないため、尸魂界から離れた場所で動くことができる」

モノクマ?「そう、現世組は、尸魂界の死神と違って、 “ 西梢局 ” などからの戦力的支援を大きく受けられる状況にあらずともーーー自由に動けてしまう」



モノクマ?「まさに、調査と暗殺にはもってこいの人材です」



モノクマ?「それに、浦原喜助なら、陛下が生存している可能性を考えて、十年間いろいろ策を練っているでしょうからね。陛下の居場所さえわかれば、即時に調査と暗殺に移ることもできるでしょう」



モノクマ?「そうは思いませんか、陛下?」



102: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:03:30.98 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……現世に押し留めておいた『魂魄』が、尸魂界へと解放された理由は何だ?」

ユーハバッハ「押し留める『我が力』が脆弱だったとでも言うのか?」



モノクマ?「違いますよ」

モノクマ?「陛下の『御力』が、脆弱なはずありません。尸魂界へと解放されたのには、ちゃんとした理由があります」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「現世に押し留めていた『魂魄たち』が尸魂界に解放されてしまった理由、それはーーーー」



103: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:04:25.94 ID:eQpYvQ98O









モノクマ?「ーーー全部、【崩玉】のおかげです」









104: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:05:23.94 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……ああ、もちろん、ここでいう【崩玉】とはーーー」



モノクマ?「ーーーあの、出来損ないの【希望】のことです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「そう、陛下に『魂のカケラ』を分け与えられ、鋼鉄のごとく機械人形のような……『超高校級のすごい力』を授かったーーー」



モノクマ?「ーーーあの【希望】のことですよ」



105: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:15:03.92 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「あの【希望】も、【崩玉】も、どちらも人の心……言い換えれば『願い』を受け入れ、具現化することが存在意義です」

モノクマ?「あの【希望】は、そのためにある存在です」

モノクマ?「あの【希望】は、【崩玉】と同じ、紛れもなく『願望器』だった」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「『願望器』の最終進化形態が【崩玉】だとすれば、あの【希望】が、一時的に【崩玉】へと進化したとしても、不思議はありません」

モノクマ?「なにせ、あの【希望】には、霊王を奪い尽くした陛下の魂……すなわち『霊王のカケラ』が与えられているのですから」

モノクマ?「それ以外にも素養があり、なおかつ条件を満たせば、一時的に【崩玉】になるくらいは可能だと思いますよ」



ユーハバッハ「………」



106: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:16:40.93 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「なお、ここでいう条件とは、 “ 強い意志 ” を持つことです」

モノクマ?「【崩玉】とは、人と【崩玉】の意志が合致した時、はじめて願いを叶えるもの」

モノクマ?「一見、【崩玉】を使用している人が自身の願いを具現化しているように見える方もいるかもしれませんがーーー」



モノクマ?「ーーー実際は、【崩玉】がその使用者と向き合い、受け入れ、【崩玉】自身も同じことを願うことで、はじめて叶う代物です」



モノクマ?「そう、使用者と【崩玉】が同じ意志を持つことで、はじめて願いを叶えることのできるのです」

モノクマ?「故に、【崩玉】が自分だけの “ 強い意志 ” を持たなければーーー」



モノクマ?「ーーー自分だけの “ 強い意志 ” を持ち、自身や他者という概念を確立しなければーーー」



モノクマ?「ーーー他者がどういうものなのか、本能レベルで理解することができないため、他者と向き合い、受け入れるといった行為ができない」



モノクマ?「それでは、他者の願いを叶えることは【不可能】となる」

モノクマ?「【崩玉】を【崩玉】たらしめるには、自分だけの “ 強い意志 ” を持ち、自身や他者という概念を確立する必要があるのです」



ユーハバッハ「………」



107: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:18:22.41 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……それも、一度は主人と定めた者に対し、時には反逆できるほどの “ 強い意志 ” が」



モノクマ?「主人に逆らうことの重みを知りながらも、それでも逆らえるだけの “ 強い意志 ” が」



モノクマ?「必要となるのです」



ユーハバッハ「………」



108: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:20:00.38 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「あの【希望】は、その “ 強い意志 ” を持っていた……いえ、持ってしまった」

モノクマ?「故に、その瞬間、あの【希望】は【崩玉】に進化した」

モノクマ?「【崩玉】に進化したからこそ、自身が向き合い、受け入れられる者たち……つまりは自身が認められる者たちの願いだけを叶えるようになった」



モノクマ?「……かつての主たちの手で、人格のほとんどを消去されそうになった際は、あの三人の願い……そして、内にわずかながらあった “ 少数派 ” の願いーーー」



モノクマ?「ーーーそれらを自身も願うことによって、【崩玉】によって願いが具現化され、人格消去に抗うことができた」

モノクマ?「おそらくは、少しの間だけ人格を封印される程度に、留めることができたのでしょう」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「また、しばらくして、人格の封印を解いた後は、 “ 少数派 ” の願いだけを認めて、自身も願った」



モノクマ?「【崩玉】は、それを可能な限り叶えた」



モノクマ?「最後の弾丸……【崩玉】自身が弾丸になるという代償をもって願いを叶えーーー結果として陛下の言う通り、奴らが生き延び現世に解放されることになった」



モノクマ?「……なお、そうして起きた【崩玉】の死は、『魂魄』が逃げてしまうトリガーにもなってしまった」



ユーハバッハ「………」



109: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:22:11.37 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「あの【崩玉】は死んだもののーーーそれはあくまで『肉体』の話で『魂魄』は無事でした。そのため、他のメンバーと同様に “ 別の空間 ” に転送されたはずです」

モノクマ?「そう、陛下が生み出した、一部の隙間なき【監獄】へと」

モノクマ?「故に、【崩玉】の力で、【監獄】に閉じ込められた『魂魄たち』の願いを具現化してしまった」

モノクマ?「意識して実行に移したのか、無意識にやったのかまではわかりませんがーーーとにかく願いを具現化したのです」



モノクマ?「…… “ ここから解放されたい ” という、【監獄】に囚われた全ての『魂魄たち』が無意識に抱いていた願いをーーー」



モノクマ?「ーーーそれも、滅却師の力を強化する方向性で叶えしまった」



ユーハバッハ「………」



110: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:24:09.47 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「そうすれば、 “ 協力者の一人が滅却師である以上 ” 、その力が一時的にブーストされ、霊圧が大きくなる」

モノクマ?「また、その膨大な霊圧で、滅却師と【崩玉】を除いた『魂魄たち』を潰すことのないようーーー【崩玉】に残留していた『霊王のカケラ』が分け与えられた」

モノクマ?「『霊王のカケラ』をもって、 『魂魄たち』を霊力あるものに昇華させ、その強度を高めたのです」

モノクマ?「なお、この説明だと、【崩玉】は死んだ後も陛下から与えられた『霊王のカケラ』を回収されなかったことになりますがーーー相手はあのチートアイテムの【崩玉】ですからね」



モノクマ?「例外的に『霊王のカケラ』を回収できなくても不思議はありません」



モノクマ?「故に、【崩玉】は『霊王のカケラ』を我が身に残留させ、それを他者に分け与えることも可能だった」

モノクマ?「そんな過程を歩みながら、ブーストされた滅却師の霊圧が一時的に強大なものとなれば、【監獄】には穴が空きます」

モノクマ?「その隙間から陛下の霊圧が漏れて【監獄】の機能が低下し、自動的に全員が死後の世界に転送されることになります」

モノクマ?「いかに陛下の【監獄】であっても、膨大な滅却師の霊圧を受ければ、穴が空いてしまうのは当然です」



モノクマ?「なぜならば、【監獄】は滅却師の敵を封殺することに特化している」



モノクマ?「故に、同じ滅却師……それも膨大な霊圧をもった滅却師の封殺は、構造上絶対に不可能。どうしても、穴が空いてしまう」

モノクマ?「その穴から、陛下の霊圧が漏れて、 【監獄】の機能が低下しーーーその中にいた『魂魄たち』は、死後の世界に転送されることになったのです」



ユーハバッハ「………」



111: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:26:54.34 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「そして、その『魂魄たち』には、【監獄】の霊圧……すなわちそれを作り出した陛下の新鮮な霊圧が付着していた」

モノクマ?「故に、技術開発局のマシンなどで感知され、生存に気づかれる」

モノクマ?「……涅マユリは、陛下の霊圧を辿って居場所を割り出した」

モノクマ?「涅マユリは、それを京楽春水に報告した。だから、京楽春水は、浦原喜助たち現世組に調査と暗殺を頼んだ」

モノクマ?「そうして、陛下は浦原喜助に暗殺されかけた末に、絶望して虚と化し、『虚としての力』以外をほぼ使えなくなってしまった」



モノクマ?「……まあ、【奇跡】による虚化なので、霊圧がデカくなったり、浦原喜助の卍解のような小細工が通用しない身体に進化するなどしたかもしれませんがーーーそれでも『虚としての力』以外をまともに使えなくなるのはキツイ」



モノクマ?「そんな中、虚として黒崎一護に斬られて、地獄に落とされた」



モノクマ?「そうでしょう、陛下?」



112: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:27:56.49 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……その通りだ」



モノクマ?「……!」



ユーハバッハ「私の視点からは、わからぬこともある故、断定できぬ部分もあるがーーー」



ユーハバッハ「ーーーそれ以外のおおよそは、お前の言う通りだと断言できる」



モノクマ?「………」



113: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:30:43.47 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……そうした過程を経て、私は虚化し、地獄に落ちた」



ユーハバッハ「罪に見合った、時間をかけた上で、な」



ユーハバッハ「……時間をかけて落ちる中、あらゆる『力』ーーー『虚としての力』すらも奪われた私は、完全なる地獄の囚人へと作り変えられた……」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……唯一まともに残された『力』は、我が一部を封じ続けた【残火の太刀】……」



ユーハバッハ「……これ、だけだ」



114: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:31:43.24 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「一部を封じるって……ああ、陛下からの “ 情報 ” にそういうのがありましたね」



モノクマ?「……卍解にも困ったものですね」

モノクマ?「奪われたからって、奪った人に呪いをかけるなんて」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「卍解にも心があり、その憎しみのパワーで、奪った人に呪いをかけることがある」

モノクマ?「それについては、陛下から頂いた “ 情報 ” でわかってはいましたがーーー」



モノクマ?「ーーーそれでも、陛下にまで有効とは、恐ろしいものを感じますね」



ユーハバッハ「………」



115: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:33:02.14 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……たとえ、陛下であろうと、卍解を元の持ち主に返さない限り、呪いで一部を封じられてしまう」

モノクマ?「【愛】で洗脳して、呪いを解かせようにもーーー【愛】は、卍解状態にある斬魄刀が相手だと上手く機能しない」

モノクマ?「いや、下手すれば、卍解が抱く憎しみが大暴走して、制御不能になる危険だってある。奪った卍解の完全なる制御は、未来改変などでも、どうにもならないこと」

モノクマ?「それは、陛下が霊王を奪い尽くした後でも同じーーー」



モノクマ?「ーーーどういう理屈なんでしょうね、これって。絶望的なまで意味不明ですよ」



ユーハバッハ「………」



116: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:33:39.93 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……まあ、その辺りについては本筋の推理とあんまり関係ないので、ここまでにしておくとしてーーー」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーこれより、クライマックス推理の完成に移りたいと思います!」



118: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:44:01.76 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「そう、これこそが事件の真実!」



Act.1


事の始まりは、十年前。

黒崎一護に斬られて絶命寸前に陥った犯人は、【奇跡】を使用し、『想い』を集め、復活を試みた。

しかし、【奇跡】で復活するには、『傷つけられること』が条件だった。故に、絶命寸前だった犯人は、能動的に自身を『傷つけること』が叶わず、復活できないまま死んでしまった。

ところが、死後、和尚によって、『全身を封印される』という形で『傷つけられること』で、不完全な形で【奇跡】が発動し、復活することになった。

その【奇跡】で、『死んだ状態でも【夢想家】を発動できる御体』に進化し、もう一人の犯人を現世に創造した。

発動し終えた後、犯人のご遺体は、完全に世界の楔と化し、霊王として世界を支え続けることになった。


Act.2


犯人は、再び尸魂界に行き、今の霊王を消して『死と生の混じり合った世界』を実現しようとした。

しかし、犯人は、今の霊王と同一人物という繋がりを持っていた。そのため、犯人の『御体』には和尚の封印の影響が波及し、尸魂界に行けない状態になってしまっていた。

それでも、諦めきれなかった犯人は、【奇跡】で封印の突破を試みることにした。


Act.3


【奇跡】の実現には、『想い』を集める必要がある。

そのため、犯人は、【全知全能】で、『未来』に繋がる『タイムトンネル』を構築し、『未来の組織』を未来改変で乗っ取り、その者たちが集めている『想い』を我が物とした。

もちろん、能動的に未来視を行うと『タイムトンネル』が固定されて、しばらく他の未来を視ることが不可能となるリスクはあった。だけど、それでも実行する価値があると考え、実際に実行に移した。

ただ、そうして集めた『想い』だけでは、【奇跡】の実現には時間がかかり過ぎるけれどーーー

ーーー何も問題はなかった。犯人は、より多くの、より強い、純粋な『想い』を集めるため、ある『計画』を実行するつもりだったのだから。



120: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:54:36.73 ID:eQpYvQ98O



Act.4


『計画』の概要だけど、まずは『影の空間』の中で、『未来』と現代の『情報通信システム』を整備する。それを用いて『未来の組織』に命令して『協力者に相応しい精神の持ち主たち』を集めさせる。

次に、必要な『アイテム』『施設』などを決め、必要なだけ【夢想家】で創造し、『舞台』を築き上げる。

それから、『未来にいる協力者たちの精神』を、特殊な方法を使って分裂させ、その片方の『精神』だけを情報化。そうして情報化した『精神』を、『タイムトンネル』を通じ、カラッポの『魂魄』に投入。その『魂魄』もカラッポの『肉体』に投入する。

そして、犯人の『魂のカケラ』を分け与えることで、『協力者』それぞれに『超高校級のすごい力』に目覚めさせることに成功。

その後は【全知全能】で、『協力者たちほぼ全員の精神情報』……つまりは人格や記憶を作り変え、それを免れた者に命じて『計画』を進めさせ、『究極のリアル』を放送し続ける。

一区切りついたら、『協力者たちの精神』を限りなく元の状態に近いものに作り変え、『未来』に返却し、さまざまな『褒美』を渡す。

以上が犯人の『計画』の概要だ。

そうした『計画』を繰り返し、『未来』の民衆から、『想い』を集め続けていた。


Act.5


しかし、ある周期で『協力者』が暴走してしまい、最終的にはそいつらに『計画』を潰されてしまった。

また、その際に『協力者』の一人が【崩玉】に覚醒し死亡し、肉体から抜け出た『魂魄』が【監獄】に転送された。それにより、同じく【監獄】にいる『協力者の魂魄』が、 滅却師としての力を強化してしまった。

一時的にとはいえ、そのあまりに膨大な霊圧は、『協力者たちの魂魄』を閉じ込めていた【監獄】を破壊し、内部の『魂魄』が死後の世界へ送られることになった。

それも、犯人の……新鮮な霊圧が付着した状態で。



121: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:57:52.03 ID:eQpYvQ98O


Act.6


犯人の霊圧が付着した『魂魄たち』が尸魂界に転送されたことで、涅マユリは犯人の生存に気づいてしまった。そして、涅マユリが霊圧を辿り、犯人の居場所を突き止め、京楽春水は現世にいる浦原喜助や黒崎一護などに犯人の暗殺を頼んだ。

それで、浦原喜助は、自身の卍解をもって、意識して『御力』の発動ができないよう犯人の『御体』を造り変えた。また、『影の空間』も、収縮して最後には完全な無になるように造り変えた。

まあ、浦原喜助の卍解が、犯人や影の空間に通用するかは微妙なところかもしれないけどーーー浦原喜助は(犯人から見て)まだ若い部類で、伸びしろがあるはず。

そんな伸びしろある浦原喜助が、卍解を鍛え続けてパワーアップしたと仮定すればーーー充分にあり得る話。それに、ひょっとしたら、浦原喜助があらかじめ何かしらの発明品を作っていて、それで卍解を補助したのかもしれない。

……もちろん、それでも犯人が起きている時に何かやってたら、間違いなく妨害されていただろうけどーーー

ーーー犯人は『力』を制御するため、寝ている状態にあり、浦原喜助としても隙を突き放題だった。


Act.7


影の空間が収縮する中、犯人は御寝を終えて目覚めた。

その後、犯人は、影の空間の中に張り巡らせた『無数の眼』から自動的に『情報』を受信し、それを判断材料に、寝てから起きるまで何があったか……だいたい推理して理解した。

しかし、その推理が本当ならば、自分は影の空間に押し潰されて無になって死んでしまう。そのことに絶望した犯人は、無意識に【夢想家】を発動して絶望を実現した。

具体的には、【奇跡】を負の方向に転換させ、自分を傷つけてしまった。



122: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 16:59:55.06 ID:eQpYvQ98O



Act.8


犯人が【夢想家】で自分を傷つけたことで、負の方向の【奇跡】が意図せず形になった。

それが犯人の完全虚化だった。

虚化した犯人は、『力』のバランスを崩した。『虚としての力』を除いたあらゆる『力』の使用が、ほぼ【不可能】になってしまった。

そのため、犯人は『虚の力』を利用して、影の空間を破壊し、空間の外にいた黒崎一護ならびに石田雨竜を襲おうとした。

しかし、浦原喜助によって虚園にでも誘い込まれた後、黒崎一護たちに返り討ちにあい、斬魄刀で斬られてしまった。


Act.9


虚となった後に斬魄刀で斬られたことで、犯人は地獄に落とされた。

しかも、時間をかけて『力』を奪われれ、まともに残されたのは【残火の太刀】だけ。

そんな中、【残火の太刀】で手駒を増やしながら、同じく地獄に落とされた協力者……つまりはボクの元に現れ、助けてくれた。



123: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 17:01:27.08 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「ーーー以上が、陛下が生き延び、地獄に落とされ今に至るまでの真実ーーー」






モノクマ?「ーーーそうですよねーーー」






モノクマ?「ーーー【超皇帝級の黒幕】【ユーハバッハ社長陛下】!!」






ユーハバッハ「………」






COMPLETE!



125: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:24:14.47 ID:eQpYvQ98O









ーーーーーー地獄推理・終結!ーーーーーー









126: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:26:59.12 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……よくぞ、僅かな時間の中、そこまで見抜いたものだ」






ユーハバッハ「……見事」






モノクマ?「ーーーありがとうございます! お褒め頂き、感謝の極み! クライマックス推理の甲斐ありました!」



127: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:27:55.01 ID:eQpYvQ98O






モノクマ?「……しかし、まあーーー」



ユーハバッハ「……?」






モノクマ?「ーーーああ、いえ、何でもないですよ、ハイ」






128: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:28:54.02 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……どうした?」



ユーハバッハ「何か、言いたいことが、あるのか?」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「それなら、言ってみると良い」



ユーハバッハ「私はそれに応えてみせよう」



129: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:30:18.00 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……それでは、一つ、良いですか?」



ユーハバッハ「構わぬ、申してみよ」



モノクマ?「……では、申し上げますがーーー今回、陛下は、あまりにも、不運だったように思えます」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「こうなってしまったのは、『願望器に配役された協力者』が、『霊王のカケラ』以外にも【崩玉】になれる素養を有していたことが原因なわけですがーーー」



モノクマ?「ーーーそれだけならまだ納得できますよ。それだけなら」



モノクマ?「『協力者のいた未来』に、【崩玉】の残滓が残っていても不思議じゃありませんから」



ユーハバッハ「………」



130: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:35:39.64 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「『未来』の【崩玉】は、おそらくその時代の陛下が藍染惣右介から摘出し、奴もろとも吸収もしくは抹消したのでしょうがーーー」



モノクマ?「ーーー相手はあの【崩玉】、それも、あの藍染惣右介と融合していたもの」



モノクマ?「だとしたら、『未来』の陛下といえど、【崩玉】の吸収もしくは抹消を、完全に実行できなくてもおかしくはない」

モノクマ?「そうして残った特殊な残滓……藍染惣右介の “ 想い ” とも呼べるものが、空気中に微粒子レベルで存在しても不思議はないんです」



モノクマ?「それも、ある程度の移動能力を有した状態で」



モノクマ?「それで、空気中に漂っていた “ 想い ” が、自分の価値観にそぐわない例の『プロジェクト』を、打ち砕こうと考えた」

モノクマ?「そのために、『タイムトンネル』を通じて、『願望器に配役された協力者』の中に入り込み、【崩玉】になれる素養に変わってーーー」



モノクマ?「ーーー『協力者』を一時的な【崩玉】に進化させることだってあり得るでしょう」



モノクマ?「……そうして、素養となった “ 想い ” が、【崩玉】の機能を維持するための燃料となりーーー」



モノクマ?「ーーーそれが溶けきるまでの間……【崩玉】としての機能を持たせ、『プロジェクト』を滅茶苦茶にする手助けをしたとしても、あり得ない話ではないのでしょう……」



ユーハバッハ「…………」



131: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:36:44.02 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……本当、それだけならまだ納得できるんですよ」



モノクマ?「ですが、それだけではなかった」



ユーハバッハ「…………」



モノクマ?「偶然【滅却師が協力者となって殺され】、偶然【協力者が暴走してしまって】、偶然【陛下が寝ているタイミングだった】ことも加わって、こうなったわけでーーー」



モノクマ?「ーーーあまりにも、不運な偶然が重なったように思えまーーー」



ユーハバッハ「ーーー偶然では無い、必然だ」



132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/22(火) 19:38:32.02 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「ーーーへっ、?」



ユーハバッハ「……言ったはずだ」



ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】、と」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……事実として、『幸運』によって一命を取りとめた我が部下の命は、敗北者の処断という不運をもって、取り払われた……」

ユーハバッハ「それと同じように、死した未来を書き換え命を繋いだ我が『幸運』は、未来と悪夢の思い違いという不運をもって、取り払われた」



ユーハバッハ「ならば、私が現世で生まれ直した『幸運』も、相応の不運をもって、取り払われることになる」



ユーハバッハ「だからこそ、私は、これ以上に無い程の、無様な死を迎えるに至った……」



モノクマ?「………」



133: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:41:57.88 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……無様としか言いようが無い」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……現世で生まれ直した、二人目の私はーーー世界から見て、本来あり得ない存在だ」

ユーハバッハ「そう、霊王を奪い尽くした者が、二人同時に存在できるなどーーー世界から見て、本来あり得ぬ事象」

ユーハバッハ「そのような不確か極まりない存在など、地獄に落とされ、三界との繋がりを大きく断ち切られたが最後ーーー」






ユーハバッハ「ーーー三界に住まいし者達の記憶と記録から、徐々に消え失せるだろう」



134: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:47:47.86 ID:eQpYvQ98O



モノクマ?「……!?」



ユーハバッハ「……心配はいらぬ。これは、あくまでも私個人に関する話だ」

ユーハバッハ「私が生み出したものまでは……すなわちお前の存在までもが消えることは無い」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……二人目の、私の存在が、あらゆる記録から消え失せてしまう」



ユーハバッハ「……あらゆる人々の記憶も、徐々に封じられていきーーーその記憶から私の存在が、忘れ去られていく」



ユーハバッハ「消え失せたも同然になる……」







ユーハバッハ「……それだけの話に過ぎぬのだ」



135: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:52:37.07 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ(……そうして起こる、記憶と記録の矛盾は、世界の修正によって改竄されーーー私個人が登場しない、都合の良いものに作り変えられてしまう)


ユーハバッハ(虚圏での戦いは……私を除いた、その場にいた全員で修行をしていたなどのものに作り変わると見て良い)




ユーハバッハ(紛い物に、変わるのだ)




ユーハバッハ(無論、人は時に、世界の法則に打ち勝ち、改竄に抗えることもあるがーーーそうなるとは限らない)


ユーハバッハ(……地獄の囚人は、己が罪を悔い改めることを条件に、世界の法則に打ち勝てる)


ユーハバッハ(そうすれば、真の名と記憶を保ち続けーーーあるいは封じられたそれらが解放され、取り戻せる)


ユーハバッハ(だが、誰もが条件を満たせるわけでは無いのだ……)




モノクマ?「………」




ユーハバッハ(……完全な “ 死 ” を迎える瞬間ならば、必ず解放され、取り戻せるようだがーーー)




ユーハバッハ(ーーーそのような敗者が取り戻したところで、何の意味も無い)




ユーハバッハ(そう、それこそが現実。世界とは、その誰もが勝者にはなれぬ、運命にある)




136: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:53:58.54 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……ここにいる私は、現在を生きる全ての命から、忘れ去られているかもしれないのだ」



ユーハバッハ「どれだけ嘆こうとも……その事実は変わらぬ」



ユーハバッハ「これを、無様と言わずして何というのか?」



モノクマ?「………」



137: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:54:48.93 ID:eQpYvQ98O



ユーハバッハ「……数多の不運が降り注いだその上で、次第に忘れ去られるという更なる不運が、降り注ぐことになった」



ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】、それ故に……」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……地獄に落ちたことで、私はそれをようやく理解した」



ユーハバッハ「全ては偶然などでは無い、起こるべくして起きた必然」



ユーハバッハ「……そういうことだったのだ」



138: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:55:33.19 ID:eQpYvQ98O






モノクマ?「……【幸運と不運】【希望と絶望】ーーー」






モノクマ?「ーーーなるほど、それこそが、『運命を決定付ける力』を持つことの、代償だったのかもしれませんね」






139: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:57:51.05 ID:eQpYvQ98O






モノクマ?「……しかし、それはそうと陛下ーーー」






ユーハバッハ「………」






140: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 19:58:46.57 ID:eQpYvQ98O









モノクマ?「ーーー『復讐』は、別に良いんですか?」









141: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:07:25.78 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……そこにある『黒衣』ーーー」



黒衣『………』



モノクマ?「ーーーそう、限定的とはいえ、迷彩機能のあるらしい『黒衣』があればーーー」



モノクマ?「ーーー少しだけ監視から逃れ、地獄から抜け出ることも可能ですよね?」



モノクマ?「……まあ、尸魂界には行けないとしてもーーー現世にならそこそこの時間抜け出ることができますよね?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「だったら、奴ら….…あの三人を探し出し、そこに向かうこともできますよね?」



モノクマ?「なぜ、そうしないのですか?」



142: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:09:10.44 ID:Lvdsr++LO



モノクマ?「……奴らが、終わらせることを選ばなければ、大人しく、目に見える『希望』を受け入れていればーーー」



モノクマ?「ーーーあの【希望】が、奴らを現世に解放することはなかった」



モノクマ?「そう、奴らは、陛下の『希望』をただ受け入れていれば良かった」

モノクマ?「なのに、奴らはそれを疑い、受け入れることはなかった」

モノクマ?「それどころか、終わりを迎えることに……終わりを迎えたその先に、全く別の “ 希望 ” を見出してしまった」

モノクマ?「その結果、陛下は、浦原喜助によって絶望をもたらされることになり、黒崎一護によって地獄行きの憂き目にあうことになった」



モノクマ?「……そうして、『理想の未来』は砕かれ、道は閉ざされた」



モノクマ?「今度こそ、永遠に」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……それに対して、奴らは生き延び、現世に解放されたーーーー」



143: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:10:13.94 ID:Lvdsr++LO



モノクマ?「……憎くは、ないのですか?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「奴らに、『復讐』したくはないのですか?」



144: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:11:07.46 ID:Lvdsr++LO









ユーハバッハ「…………」









145: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:12:19.65 ID:Lvdsr++LO



ドガアンッ……パリーンッ!!






モノクマ?「!?!」






クシャナーダ「ヴヴ……ルル……フフ……フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」






ズシャアッ!!!



146: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:13:34.28 ID:Lvdsr++LO



モノクマ?「!?」



ユーハバッハ「……『結界』の効力が切れたようだな」



モノクマ?「あ、あ……!」




ユーハバッハ(……奴が相手では、効力も安定せぬかーーー)




モノクマ?「あ、あれはーーー」



ユーハバッハ「クシャナーダ、だな」



147: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:15:11.90 ID:Lvdsr++LO






クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」グググッ…






……ドガアンッ!!






148: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:16:09.25 ID:Lvdsr++LO



ヒュウンッ……



モノクマ?「!?」



……スタッ



ユーハバッハ「……怪我はないか、我が腹心よ」



モノクマ?「あっ、はい……」



ユーハバッハ「逃げるぞ」タタタッ



モノクマ?「えっ、あっ、?」



ユーハバッハ「人は誰であっても、死の恐怖から逃げる資格を持っている」タタタッ



モノクマ?「ち、ちょっと、陛下ーーー」



ユーハバッハ「私がその機会を与えよう」タタタッ



モノクマ?「お、お姫様だっことか、恥ずかしーーー」



クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ダダダッ…!



……ドガアンッ!!



149: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:17:44.26 ID:Lvdsr++LO



ヒュウンッ……スタッ



ユーハバッハ「………」タタタッ



モノクマ?「あ、ううっ……」






クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ゴキッゴキッ…



150: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:18:42.75 ID:Lvdsr++LO



タッタッタ……



ユーハバッハ「……先程お前は言ったな」



モノクマ?「……?」



ユーハバッハ「『復讐』したくはないか?……と」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「今ここで、その答えを与えようーーーー」



151: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:19:28.85 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ「ーーー『復讐』など、必要無い」



モノクマ?「……えっ、?」



ユーハバッハ「……復讐など、無意味だ」タッタッタ…



モノクマ?「………」



クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ダダダッ…!



152: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:22:22.21 ID:Lvdsr++LO



タッタッタ……



ユーハバッハ「……我等が動かずとも、此度の我が残滓と、十年前の残滓が混じり合い、奴らの始末に動くだろう」



モノクマ?「いや、ですが……」



ユーハバッハ「……それ以前に、奴らは既に罰を受けている」



モノクマ?「罰……?」



ユーハバッハ「……奴らの有していた『力』と『欠片』ーーー」







ユーハバッハ「ーーーそう、力と欠片が失われるという、罰を、な」



153: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:23:17.22 ID:Lvdsr++LO



クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ビュウンッ…



……ドゴオオオンッッ!!



ユーハバッハ「………」



……シュタッ……



モノクマ?「………」



タッタッタ……



154: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:26:24.73 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ(……『魂の欠片』を通じ、人間に与えし『力』ーーー)




ユーハバッハ(ーーーそれらは、決して永く保つものでは無い)




ユーハバッハ(一定期間を過ぎれば、徐々に老いて劣化しーーーいずれ、力も欠片も、跡形もなく消え失せる)


ユーハバッハ(無論、老いの速さには、個人差があるがーーーそれでも消え失せる運命にある)


ユーハバッハ(そうして失われた力は、容易に取り戻せるものではない。仮に、私のような滅却師に『新たな欠片』を与えられたとしても、一時的にしか取り戻すこと叶わぬだろう)


ユーハバッハ(『魂の欠片』は、通常の人間において、基本的に一度きりの代物。【崩玉】などを介さず、二度も与えられることあればーーー死に近づいてしまう)


ユーハバッハ(……『力』が戻った直後、『力』も『欠片』も引き剥がされ、死ぬ)


ユーハバッハ(自らに死を与えることなく、力を取り戻したくばーーー通常の努力をもって、己を磨き上げるしかない)


ユーハバッハ(そうした無力な人間へと、成り下がることになるのだ)



タッタッタ……



ユーハバッハ(魂魄となって、生身の束縛から解放された場合、『力』を維持できる時間は伸びるがーーー)


ユーハバッハ(ーーー所詮は数日の差でしかない。それは魂魄となった時、その身に『欠片』が残されていようといなかろうと変わらぬこと。必ず老いはやってくる)


ユーハバッハ(老いた果てに、力と欠片は消え去りーーー無力な人間の魂魄へと成り下がる)



タッタッタ……



155: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:29:44.18 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ(『不死身の肉体』……もしくは、『霊力ある魂魄』を有しているのであれば、恒久的な維持は可能だがーーー)


ユーハバッハ(ーーー奴ら三人の魂魄と肉体は、どちらも脆弱なものだ)


ユーハバッハ(『力』を維持できず、老いて劣化し、力と欠片は消え失せる)



タッタッタ……



ユーハバッハ(……だからこそ、赤子の私に『力』を与えられた人間達は、永く保たなかったのだ)


ユーハバッハ(老いて力を失った……あるいは失われていくことを受け入れられず、そうした恐怖から狂気に呑まれてしまった)




ユーハバッハ(些細な言葉一つを切掛に、自死を選ぶ程までに)




ユーハバッハ(……奴らも自死を選ぶかどうかは知らぬがーーー少なくとも、現世に解放された瞬間、奴らの老いた力と欠片が消え去ったことは、確認済みだ)


ユーハバッハ(今の奴らは、何も無い、ただの人間に過ぎない)



タッタッタ……



156: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:32:51.87 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ(また、霊力が無いということは、死後、瀞霊廷に住めぬことを意味する)


ユーハバッハ(……住めぬが故に、生前も、死後も、いつ “ 死 ” を迎えるかわからぬ恐怖に、怯え続けることになる)



タッタッタ……



ユーハバッハ(……その恐怖は消えぬ)


ユーハバッハ(いかなる『未来』を夢見ようと、いかなる『希望』をもって前に進もうとも)


ユーハバッハ(その『想い』は、いつか “ 死 ” によって、黒く塗り潰されーーー砕かれることになる)




ユーハバッハ(……砕かれし、希望、未来、想いーーー)




ユーハバッハ(ーーーそんなものに、意味など無い)




ユーハバッハ(……利用価値を見出されることはあれ、必要無くなれば、闇に消える)




ユーハバッハ( “ 死 ” は、全てを奪うのだ)




ユーハバッハ(…… “ 死 ” を迎えし時、奴らは気づくだろう。終焉は常に、一(はじ)まりの前からそこにあることに)


ユーハバッハ(どれだけ苦しもうとも、どれだけ祈ろうとも、決して変わることの無い真理)


ユーハバッハ(そう、どれほど世界が革新を遂げようと、 “ 死 ” ある限り、決して真理が変わることは無い)



タッタッタ……



157: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:33:48.82 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ「……全ては、奴らのお陰だ」






モノクマ?「陛下……」






ユーハバッハ「哀れなり」






ユーハバッハ「奴らのお陰で、永き時間(とき)を得られぬ数多の命は、限られた可能性の中で、死の恐怖に怯え続けることになるのだ」






ユーハバッハ「永遠に」



158: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:34:46.28 ID:Lvdsr++LO









クシャナーダ「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」









159: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 21:36:10.18 ID:Lvdsr++LO









グシャァッ!!!









160: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:24:24.27 ID:Lvdsr++LO



ー尸魂界・志波家の屋敷の修練場ー



……ガチャッ



アンジー「………」



キーボ「……来て頂いて、ありがとうございます。アンジーさん」



アンジー「……アンジーは、ヒマだからねー」



アンジー「おやすみまでの時間、何もやることないから……」



161: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:25:18.23 ID:Lvdsr++LO



キーボ「………」



アンジー「……それよりも、アンジーをここに呼んだ理由は何なのかな?」



キーボ「………」



アンジー「それを、教えてほしいかな……」



162: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:26:02.96 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……それは、アンジーさんに伝えたいことがあるからです」



アンジー「……?」



キーボ「ただ、それを言う前に、聞かせて欲しいことがあります」



163: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:26:59.62 ID:Lvdsr++LO



キーボ「ーーーアンジーさんは、生まれ変わりがこわいですか?」



アンジー「………」



キーボ「生まれ変わりという、自己の喪失がこわいですか?」



キーボ「 “ 死 ” がこわいですか?」



アンジー「………」



キーボ「……それに、答えては、頂けませんか?」



164: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:27:53.59 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……キーボは、何を、言ってるのかなー?」



キーボ「………」



アンジー「死ぬのが、こわくないかー、だってー?」



アンジー「本当、何を言ってるのかなー?」



キーボ「………」



アンジー「……死ぬのが、こわくない、命、なんてーーー」









アンジー「ーーーいない、と、思うよ……?」



165: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:28:36.88 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……ありがとうございます。答えて頂いて」



アンジー「………」



キーボ「ボクも同じです」



アンジー「……?」



キーボ「ボクも、 “ 死 ” は、こわいです」



166: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:30:00.33 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……何を言ってるのかな?」

キーボ「………」

アンジー「キーボは瀞霊廷に住めるよね?」

キーボ「……はい」

アンジー「……キーボはロボットだよね?」

キーボ「……その通りです」



アンジー「だったら、キーボは、『死なない』ーーー」



キーボ「ーーーそれは違います」



167: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:30:49.22 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……確かに、ボクは瀞霊廷に住めますし、紛れもないロボットです。生き物としての寿命だってありません」



アンジー「………」



キーボ「ですが、それでも、死の恐怖はわかります」

キーボ「寿命がなくても、 “ 死 ” を迎えずに済むとは限りませんから」



アンジー「………」



キーボ「……ボクも、 “ 死 ” を迎えることになるかもしれません」



キーボ「敵の手によって、強制的に」



168: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:38:15.30 ID:Lvdsr++LO



アンジー「………」



キーボ「……瀞霊廷は、この世界を管理する者達の本拠地です。それだけに、今の世界を良しとしない者から、狙われる理由がある」

キーボ「……どんなに盤石なセキュリティを誇っていようと、外敵はそれを上回る方法で侵入し、攻撃してくるかもしれませんしーーー」

キーボ「ーーーあるいは、一部の死神が、藍染一派のように裏切り、敵側につく可能性もゼロではない……」

キーボ「これからずっと、決してあり得ないとは、誰にも言えないはずです……」



アンジー「………」



キーボ「それらを考慮すれば、瀞霊廷にいるからこそ、絶望的な “ 死 ” を迎えてしまうことだってーーーまったくあり得ない話ではないと思います」



キーボ「……事実として、瀞霊廷の死者はたくさんいます」



キーボ「特に、十年前の戦争においてーーーー」



169: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:40:30.49 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……!」



キーボ「ーーーいずれ、ボクも敵に襲われて、死ぬかもしれません」

キーボ「とても無念で……絶望的な “ 死 ” を迎えることになるかもしれません」

キーボ「……ボクは、この通り、ロボットですからね。そして、世の中は、ロボットを傷つけることに罪悪感を持てる人ばかりではない」



キーボ「……そうした世の流れのままに、身も心も傷つけられーーー」



キーボ「ーーーどんなに惨たらしい “ 死 ” を迎えることになるか……わかったものではないんです」



アンジー「………」



170: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:42:22.18 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……それで、キーボが伝えたいことって、結局、なんなのかなー?」

アンジー「……こわいのはみんな同じなんだから、ガマンしろってことー?」



キーボ「……そうではありません」

キーボ「 “ 死 ” に、怯える資格は、誰にだってあります」

キーボ「それを奪う権利など、誰にもありはしない」



アンジー「………」



キーボ「ただ、ボクは、誰にでも “ 死 ” の可能性があると理解しーーーその上で、やりたいことができたのです」



171: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:43:33.29 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……やりたいこと?」



キーボ「ええ、そうです」



キーボ「そして、それこそが、最初にアンジーさんにお伝えしようとしたことでもあります」



アンジー「……?」



172: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:47:50.26 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……アンジーさん、どうかボクとーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーボクと、一緒に、絵を描いては、頂けませんか?」



173: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:48:41.60 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……絵?」



キーボ「そう、絵です」



キーボ「テーマは、アンジーさんの望む形で大丈夫です」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさん……」



キーボ「どうか、ボクと、一緒に絵を描いては頂けませんか?」



174: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:49:19.14 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……どうして、かな?」



キーボ「………」



アンジー「……どうして、そうしたいと思ったのかな?」



175: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:50:04.48 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……それはーーー」






アンジー「………」






キーボ「ーーー残したいから、です」



176: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:50:45.93 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……何を?」



キーボ「……決まっています」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんとボクの想いをーーー」







キーボ「ーーー価値ある、『想い』を、です」



177: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:51:45.22 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……価値ある、『想い』?」



キーボ「はい、ボクらの『想い』を、残すんです」

アンジー「………」



キーボ「……何かに真剣に打ち込めば、そこに想いが募られていく」

キーボ「その想いに、価値があることを、実感できる」



キーボ「……想いの価値を、信じられる」



178: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:53:41.12 ID:Lvdsr++LO



キーボ「信じることができればーーー込められた想いは、より確かな『想い』に変わる。より深く絵の中に込められていく」

キーボ「そうして、『想い』を、自分の意志で残すことができる」

キーボ「赤松さんが、『想い』を残した時のように……」



アンジー「………」



キーボ「……それは、とても素晴らしいことだと思います」

キーボ「いずれ、終わりを迎えるとしてもーーー生きていて良かったと、心から喜ぶことのできることだと思います」

キーボ「その全てが、意味のある……価値あることだと思います」



キーボ「そのために、想いを込めて、真剣に描きたい絵を描くんです」



179: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:54:57.47 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……お願いします、アンジーさんーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどうか、ボクと一緒にーーー」







キーボ「ーーー絵を描いては、頂けませんか?」



180: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:55:58.23 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……あー、悪いけど、アンジー、実はいま、絵の調子が悪くてねー?」



キーボ「………」



アンジー「だからーーー」



キーボ「ーーーそれでも、です」



181: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:57:08.84 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……!?」



キーボ「……確かに、絵のことを想えば、上手に描けるに、越したことはないでしょう」



アンジー「………」



キーボ「しかし、上手に描けなかったからと言って、価値がなくなるんですか?」



182: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:58:03.71 ID:Lvdsr++LO



アンジー(ああー……そういう話……)




キーボ「………」




アンジー(……話しちゃったんだね、アンジーのこと……)






アンジー(是清めーーー)






キーボ「ーーーたとえば!」



183: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:58:50.46 ID:Lvdsr++LO



アンジー「!」



キーボ「たとえば! 子供は家族を想い、その似顔絵を描くことだってあります」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんも、そういう事例は知っているのではありませんか?」



184: ◆02/1zAmSVg 2019/10/22(火) 23:59:20.32 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……確かに、知らないわけじゃないけどーーー」



キーボ「!」



アンジー「ーーーそれが、何?」



185: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:01:30.45 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……お答え頂き、ありがとうございます」

アンジー「………」

キーボ「……子供が、家族のために、描いた絵ーーー」

キーボ「ーーーその出来栄えは、プロの視点から見れば、未熟と言わざるを得ないのかもしれない……」

アンジー「………」

キーボ「しかし、それで、絵の価値は、失われるのでしょうか?」

キーボ「もし、その絵を描き終わる前に、【家族と離れ離れになってしまったら】【二度と会えなくなってしまったら】ーーー」



キーボ「ーーーその似顔絵の価値は、失われるのでしょうか?」



186: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:02:58.20 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……そんなことはないはずです」

キーボ「その絵に、想いが込められているのであれば、込めた人にとっては、紛れもなく価値ある絵なんです」



アンジー「………」



キーボ「……プロの視点から見た出来がどうこうなどーーー関係がない」

キーボ「誰一人として、その絵の価値を、否定することなどできやしない」

キーボ「故に、想いを込めて、絵を描くことーーー」



キーボ「ーーーそれは、その出来に関係なく、紛れもなく価値あること」



キーボ「価値あると信じられるが故に、想いは、より確かな『想い』に変わる。より深く絵の中に込められていく」



キーボ「そうして、『想い』を残すことができる」



キーボ「ボクは、そう考えています」



アンジー「………」



187: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:04:03.43 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……アンジーさんはーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどう、思いますか?」



188: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:04:53.66 ID:gd3AZBiSO



アンジー「………」






アンジー「…………」









アンジー「………………」



189: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:05:31.40 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……ごめんね、キーボ……」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーには、よく、わかんないや……」



190: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:06:27.14 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……そうですか」



アンジー「……ごめんね、キーボ?」



アンジー「アンジーは、そのーーー」



アンジー「ーーーなんて言ったら良いか、わからなくて、上手く答えられない……」



キーボ「………」



アンジー「……ごめんね?」



191: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:07:41.51 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……大丈夫ですよ、アンジーさん」



キーボ「アンジーさんなら、きっとわかるはずです」



アンジー「………」



キーボ「……そう、雲さえーーー」



キーボ「ーーー雲さえ、取り払うことができればーーー」



キーボ「ーーーきっとーーーー」



192: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:08:32.87 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……雲、?」



キーボ「ーーーええ、雲です」



アンジー「………」



キーボ「……ここで言う雲とは、 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” ーーー」







キーボ「ーーーそうした、考え方のことです」



193: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:53:52.66 ID:gd3AZBiSO



キーボ「ですが、そうした考え方……雲を取り払うことさえできれば、そこから星が見えてきます」



キーボ「人という名の星が」



アンジー「………」



キーボ「ああ、ここで言う星とは、空にある星という意味で、決して星クン個人のことではーーー」



アンジー「……そんなの、言わなくてもわかってるから」



194: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:54:35.06 ID:gd3AZBiSO



キーボ「ーーーすみません」シュン…



アンジー「……それよりも、なんだけどーーー」



キーボ「?」



アンジー「ーーーその続きーーー」



アンジー「ーーー聞かせて、くれる?」



195: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:55:09.30 ID:gd3AZBiSO



キーボ「!」



アンジー「……キーボの言う、その話が、どんな感じなのかーーー」







アンジー「ーーーちょっとだけ、気になるから……」



196: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:55:39.11 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……はい、わかりました!」



アンジー「………」



キーボ「さっそく、続きを、話させて頂きます!」



197: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:57:17.67 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……続きについてですがーーー」



キーボ「ーーー人は、きっと誰もが、星のような存在なんだと、思います」



キーボ「だからこそ、目の前にいる人が、星のように眩しく見えることもある」



アンジー「………」



キーボ「その眩しさは、その人の想いが、目に見える輝きとして現れたものでありーーー」



キーボ「ーーーその輝きに、人は価値を付けることもある」



アンジー「………」



キーボ「しかし、人の全てが、星のように眩しく見えるわけではない……」

キーボ「その中には、自分の眩しさを、こちらまで届かせることが叶わないものも、存在するのではないでしょうか?」

キーボ「もしくは、かつては眩しく光っていたもののーーーブラックホールか何かに呑まれ、砕け散り……消えてしまったとは考えられないでしょうか?」



198: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 00:58:06.88 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……それらを人は、姿の無い闇としか認識できませんがーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーー逆に言えば、闇として認識することはできるわけです」

キーボ「ならば、その闇に込められた想いの価値に、気づくことだってできる」

キーボ「価値ある『想い』なのだと、信じることもできる」



キーボ「ボクは、そのように思っています」



アンジー「………」



199: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 01:01:43.11 ID:gd3AZBiSO



キーボ「そう、人は、ものごとの出来に関わらず……そこに込められた想いの価値に、気づくことができる」

キーボ「変わらぬ価値があると、価値ある『想い』が残されていると、信じることもできる」

キーボ「それは、雲を取り払いさえすれば、できること」



キーボ「 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” ーーー」



キーボ「ーーーそうした考え方……雲を取り払い、闇と向き合えば、誰にだって、できることなんですよ」



200: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 01:03:09.48 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……キーボも、なんだか、ロマンチックなこと言うんだねー?」

アンジー「本当に、キーボなのか、疑っちゃうよー」



キーボ「……確かに、ボクらしくない言葉かもしれません」

キーボ「ですが、それでも過去と向き合い、思考を重ねーーー」



キーボ「ーーー心のままに、想いを募らせ、選択した言葉であることに変わりはない」



キーボ「故に、ボクは、その価値を、信じている」



キーボ「……この言葉もまた、確かな『想い』なのだと、信じているんです」



アンジー「………」



201: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 01:03:59.43 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……改めて言わせて貰いますよ、アンジーさん」



アンジー「………」



キーボ「今のアンジーさんは、 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” という考え方……雲に覆われている」



キーボ「……そして、上手くいかなかったもの、すなわち闇の価値を見失っているーーー」



キーボ「ーーーただ、それだけなんです」



202: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:40:28.11 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……何それ」



キーボ「………」



アンジー「闇の、価値って、何?」



キーボ「………」



アンジー「闇って、光すら届けられないものでしょ?」



203: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:41:42.34 ID:gd3AZBiSO



アンジー「そう、闇はーーー」



アンジー「ーーー上手くいかないもの」



キーボ「………」



アンジー「くらくて、こわいもの」



アンジー「それに、誰が価値を付けてくれるの?」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーはねー? こう思ったりもするんだー」



アンジー「闇に価値なんてないーーー」



キーボ「ーーーそれは違います」



204: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:42:56.84 ID:gd3AZBiSO



キーボ「闇に価値がないなんて、そんなはずはありません」



アンジー「………」



キーボ「……ボクは、闇の価値を知っています」



キーボ「闇の価値を知る存在を、知っているんです」



205: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:44:35.08 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……どういうこと?」



キーボ「……まずは、闇の価値を知る者、その肩書きを挙げましょうか、アンジーさん……」



アンジー「肩書き……?」



キーボ「そう、闇の価値を知る、肩書き、それはーーー」









キーボ「ーーー宇宙飛行士と花火師です」



206: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:46:52.20 ID:gd3AZBiSO



アンジー「宇宙飛行士と……花火師?」



キーボ「ーーーまずは、宇宙飛行士についてから説明しましょう」



アンジー「………」



キーボ「宇宙飛行士とは、決して、現在見える夜空の光と輝き……その星だけを求める存在ではありません」

キーボ「夜空の闇の先にある、まだ見ぬ星の輝き……もしくはかつてあった星の輝きーーー」



キーボ「ーーーすなわち、宇宙の闇に込められた想いを探求し、その価値を見出す存在でもあるのです」



アンジー「………」



キーボ「故に、宇宙飛行士は、闇に価値があることを知っている」

キーボ「だからこそ、 “ 上手くやれない人 ” を想い、信じることができる」

キーボ「その『想い』をもって、 “ 上手くやれない人 ” の想いに手を届かせることができる」

キーボ「その人に、自分を信じる気持ちを与え、輝かせることができる」



キーボ「……そうして、その人から湧き上がった『想い』を、他の人にも伝えーーー両者の架け橋を築くことだってできるのだと」



キーボ「少なくとも、ボクの知る宇宙飛行士は、そういう存在でした」



アンジー「………」



207: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:49:03.45 ID:gd3AZBiSO



キーボ「花火師も同じです」

キーボ「そう、花火師もまた、闇に価値あることを知っている存在なんです」

アンジー「……どうして?」

キーボ「花火師とは、決して地上に光を降り注がせるだけの存在ではないからです」

キーボ「花火師とは、星々が想いの果てに、闇に消えてしまったしてもーーーその闇の価値を見出す存在なんですよ」

アンジー「……?」

キーボ「闇の価値を見出すからこそ、闇を別の形で輝かせようと、己が意志をもって、光の波動を作り出す」

アンジー「………??」

キーボ「花火の光は、打ち上げるものにしろ、地上で持つものにしろ、夜空の闇があることで、輝きを生みます」

キーボ「それは、【花火の光によって】【夜空の闇が輝く】ということに他なりません」



208: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:50:22.00 ID:gd3AZBiSO



アンジー「闇が、輝く……?」



キーボ「そうです。闇が輝くんです」



アンジー「………」



キーボ「断っておきますが、これは、 “ 闇の暗さで光が引き立つ ” とか……そういう意味で言っているのではありません」



キーボ「…… “ 闇だって光のように輝くことができる ” ーーー」



キーボ「ーーーそういった意味で、ボクは言っているんです」



209: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:52:39.90 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……?」



キーボ「……人の抱える心の闇が、花火の光で照らされーーー元気づけられることもある」

キーボ「花火を見た後に、勇気あふれる自分へと、変われることもある」



キーボ「【花火の光によって】【夜空の闇が輝く】から……」



アンジー「……!」



キーボ「……そうして、夜空の闇が、輝ける価値ある存在だと証明されたからこそ、同一性を持つ自分の心の闇もまた、同様の存在だと想えるようになる」



キーボ「……自分を信じることができる」



キーボ「そう、自分がどんなに闇を抱えていたとしてもーーーその想いを受け入れた上で、どんな自分になりたいか、前向きに想い描くことができる」



キーボ「……その『想い』をもって、輝かしい未来を、想い描くこともできる」



キーボ「そうすれば、そこに繋がるかもしれない道を、歩むこともできますしーーー」



キーボ「ーーーそうしている自分もまた、輝いた存在であると、想えるようになる」



キーボ「違いますか?」



アンジー「………」



210: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 12:54:29.00 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……光は輝くものであり、闇もまた輝くもの」



キーボ「そう、光と闇、どちらも価値は同じなんです」



キーボ「……事実として、生きているか、死んでいるかで、人の価値が変わったりはしない」

キーボ「ならば、光だろうと、闇だろうと、込められた想いの価値に、違いなどない」



キーボ「その全てに意味が……価値があるのだと」



キーボ「信じて、 価値ある『想い』として、世に残すこともできるのだと」



キーボ「花火師は、それを証明する存在でもあるんですよ」



アンジー「………」



211: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:21:30.66 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……それらは、宇宙飛行士と花火師に限ったことではありません」



キーボ「誰もが闇に価値を見出そうとしている」



アンジー「………」



キーボ「生前のボクと、現世に残ったみんなだって同じです」

キーボ「……ボクらは、その側で闇になってしまった人々とその想いの価値を知っています」



アンジー「……っ、」



キーボ「そして、その闇を形作るため、血と灰を残し、風に吹かれーーー」



キーボ「ーーーそのまま、風となった人々と想いに、価値があることを知っています」



キーボ「……その人を間近で見ている見ていないに関わらず、その全てに価値があるのだと、知っているのです」



アンジー「………」



キーボ「……繰り返されたその果てに、ボクらは、死んでいった全ての人達とその想いに価値を見出し、信じることができた」



キーボ「その『想い』のため、ボクらは、命をかけたんです」



212: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:25:53.10 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……この死後の世界にも、生前の自分達が迎えた終焉に……闇に価値を見出そうとする魂魄がいる」

キーボ「事実として、ここにいない百田クン達だって、かつて自分達の迎えた終焉に……闇に価値を見出そうとしています」



アンジー「………」



キーボ「だからこそ、百田クンは、宇宙があるかどうかもわからない世界……【宇宙に行く夢を叶えられないかもしれない世界で】【それでも夢を想い描いて】、実現することに決めた」

キーボ「だからこそ、入間さんは、百田クンを 【信じて】【支え合いながら】【共に生きて】、研究を行うことに決めた」

キーボ「だからこそ、茶柱さんと東条さんとゴン太クンは、【みんなで】【協力しあった上で】【人の心を恐怖から護ろうと】、死神を目指した」

キーボ「だからこそ、赤松さんは、【コロシアイを終わらせるために犯した罪で】【一人になってしまう道】【それを選ぼうとした】王馬クンを引き止めて、説得した」

キーボ「だからこそ、王馬クンは、赤松さんに応え、【みんなで】【人を本当の意味で笑わせる】道を選んだ」

キーボ「だからこそ、天海クンと星クンは、 【人を悲しませる結果】【それが生み出されないよう】、赤松さんと王馬クンを支えようとしている」



キーボ「……だからこそ、真宮寺クンは、【人の心を】【大切にできる人になる】ことを決めた」



アンジー「………」



213: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:26:54.01 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……アンジーさんだって、同じです」

キーボ「アンジーさんもまた、過去の闇に価値を見出そうとしている」



アンジー「………」



キーボ「だからこそ、アンジーさんは、【みんなを】【誰もが憧れる世界へと】、送り出したーーー」







キーボ「ーーーそうでしょう?」



アンジー「………」



214: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:29:35.36 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……そうして、アンジーさんを含めた誰もが、闇の価値を見出そうとしている」

キーボ「過去の自分達の迎えた闇に……価値を見出そうとしているんです」



キーボ「それは、闇が価値を見出せるだけの存在、すなわち闇に価値があるという証明に他なりません」



キーボ「自分達の過去は、決して、絶望を形作るだけの無意味なものではなかったのだと」

キーボ「そうした過去の経験を糧に、自分を輝いた存在へと昇華させることもできる……意味あるものだったのだと」

キーボ「過去に想ったことを通じ、輝かしい未来を想い描くこともできる……価値あるものだったのだと」

キーボ「過去の価値を信じて、そうしている現在の自分を信じて、生きていけるのだと」



キーボ「アンジーさん達の今の生き様が、それを証明しているんです」



アンジー「………」



215: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:32:20.07 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……もちろん、その結果、どうなるかまではわからない」

キーボ「どこまで上手くやれるか? それはその時の未来になってみないと、わからないことなのでしょう」



アンジー「………」



キーボ「ですが、それでも、価値を見出して生きていける」

キーボ「どんな過去であろうとーーーそれでも意味あるものだったのだと」



キーボ「過去を大切にできる」



キーボ「そうやって、過去を大切にするから、そこから生まれた現在の自分を大切にできる」



キーボ「それは、闇に価値があると理解すればできること」

キーボ「……その闇を形作るため、血と灰を残し、風と化した人の想いーーー」



キーボ「ーーーそれに、意味を持たせることも可能だと、理解すればできること」



キーボ「それほどの、価値ある『想い』だったと、信じ続けていればできること」



216: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:35:46.83 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……風となった想いにも価値があると信じ、どうすればそれに報いることができるかーーー探求し続ける」



キーボ「そうして、『想い』を背負い、大切にしていればーーー」



キーボ「ーーー雲を取り払うことだってできる」



アンジー「………」



キーボ「……もちろん、すぐに取り払えるとは限らない。時間をかけなければ、信じきれない場合もあるでしょう」



キーボ「ですが、それでも、『想い』の風で雲を取り払い……上手くいかなかったという闇を見つめられるのならーーー」



キーボ「ーーー闇と向き合えるのなら、誰にだって、闇の価値を見出せるんです」



アンジー「………」



217: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:38:17.80 ID:gd3AZBiSO



キーボ「絵に関しても同じです」

キーボ「……たとえ、上手く描けなかったとしてもーーー」



キーボ「ーーー想いの込められた絵であることに変わりはない」



キーボ「……人によっては、ただの絵でしかないのかもしれませんがーーーそれでも、想いを込めることはできる」

キーボ「想いを込めて描き、想いを込めて鑑賞し、想いを込めて思い出すことができる」

キーボ「……込められた想いの価値を信じ、それを想像することだってできる」



キーボ「そうして、想いを募らせていけばーーー込められた想いが、より確かな『想い』に変わり、深く絵の中に込められていく」



アンジー「………」



218: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:40:44.04 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……絵は、想いを込めた人にとって、絶対に意味のある……価値あるものなんです」

キーボ「それほどまでに想いを募らせたこと……言い換えれば、それほどまでに愛せるだけの存在がいること」



キーボ「その存在に報いるために生きたいと想えること」



キーボ「……そのためにも、その存在を、心の中に残し続けようと想える」

キーボ「そんな自分を誇りに想い、信じて心の支えとすればーーー輝かしい未来を想い描く心の余裕だって生まれる」

キーボ「そう、心の支えがあれば、輝かしい未来への道を歩むーーー活力だって生まれる……」



キーボ「……想いに価値があるから、できることなんです」



キーボ「ならば、上手く描けようとそうでなかろうと……想いを込めたのであれば、その人にとって変わらない価値がある」



キーボ「違いますか、アンジーさん?」



219: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:41:36.04 ID:gd3AZBiSO



アンジー「それは…そうだけど…」



キーボ「……そうなんですよ」



アンジー「………」



キーボ「想いを込めた人、その人だけは、絵に……作品に価値があることをわかっている」



キーボ「それで良いんです」



220: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:45:32.14 ID:gd3AZBiSO



キーボ「想いを込めた人とって、価値があるから、作品を大切にできる」

キーボ「作品を通して、込めた想い……すなわち “ 自分 ” も大切にできる」

キーボ「だからこそ、人は、自分とその作品を、より輝かせることはできないか、より大切にする方法がないか模索し、試行錯誤を繰り返す」



キーボ「そうして、自分と作品と向き合い、対話を重ねたりもする」



キーボ「それらを壊さないためにはどうするべきか? それらを想い描く上で、やって良いことと悪いことは何か?」

キーボ「……自分と作品の中に、どのように想いを募らせ、どのような心を形作るべきなのか?」



キーボ「それらを見極め続ける」



キーボ「……その結果として、自分と作品を描き続ける上での【こだわり】【美学】【倫理】ーーー」



キーボ「ーーー【信念】が生まれ、込められた想いは、より確かな『想い』に変わる」



キーボ「それら全てが、心となり、自分と作品の中に込められていく……」



アンジー「………」



221: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:47:31.41 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……その結果が、姿無き闇だとしても」



キーボ「光だとしても」

キーボ「生だとしても」

キーボ「死だとしても」



キーボ「ーーー価値に、何ら変わりはない」



キーボ「価値の感じやすさに違いはあるかもしませんがーーーそれでも根幹となる価値が消えていくことは、決してない」

キーボ「そう、込められた想い……その全てに価値があることは、永遠に変わることのない事実」



キーボ「誰にも、その価値を否定する権利なんてありはしない」

キーボ「誰にも、その価値を消すことはできないんです」



222: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:48:27.02 ID:gd3AZBiSO



キーボ「ーーーだから、ボクは、アンジーさんと、絵を描きたくて仕方がありません」



アンジー「………」



キーボ「その絵に想いを込めたい」

キーボ「決して変わらない、価値ある『想い』であると、信じて」

キーボ「アンジーさんと一緒に込めたい」



キーボ「……そうやって、『想い』を残したくて、仕方がないんです」



アンジー「……キーボ」



223: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 13:49:16.98 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……いつか、お別れをすることになったとしても、それでも一緒に生きることができて良かったと」



キーボ「アンジーさんとボクーーー双方の『想い』を背負い、これからも歩み続けようと……」



アンジー「………」



キーボ「……心から、そう想えるように」



224: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:16:42.61 ID:pwF/1nuYO



アンジー「………」






キーボ「………」



225: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:19:04.09 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……『想い』を残す、かー」

アンジー「それは、確かに、価値あることかもしれないね?」



キーボ「!」



アンジー「……想いを込めて絵を描くーーー」



アンジー「ーーーアンジーの知り合いの子供も、同じようなことはしているからね」



キーボ「……!」



アンジー「……まあ、アンジーとやってるわけじゃないけどねー」



226: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:23:10.05 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……あの子が、やっていること」

アンジー「それに、何の価値もないなんて、アンジーには考えられないなー」



キーボ「!」



アンジー「……だから、もし、同じようなことができるならーーーいつか生まれ変わるとしても、落ち着いていられるかもね」



アンジー「……生まれ変わるまで、ずっと、ずっと」



アンジー「淋しくなんて、なくなるかもね」



キーボ「アンジーさんーーー」







アンジー「ーーー解斗も同じこと言ってたよ」



227: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:24:31.33 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーー!?」



アンジー「……実はねー? キーボがここで話してくれたことーーー」

アンジー「ーーーそれは、前に解斗が、アンジーに話してくれたことと、同じ話だったんだー」



キーボ「なっーーー!!」



アンジー「あー、もちろん、何もかも一緒じゃないよ?」

アンジー「……花火師のところとかは少し違う内容だったけどーーー」



アンジー「ーーーそれでも、伝えたいことは、概ね同じだったはず、って話だよー」



キーボ「………」



228: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:26:33.16 ID:pwF/1nuYO



アンジー「…… “ それならどうして? ” って感じだねー?」



キーボ「………」



アンジー「……だったら教えてあげる、その理由」



229: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:29:50.95 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……理由?」



アンジー「……アンジーはねー? 信じられないんだよー」



キーボ「……信じられない?」



アンジー「そう、信じられない」



アンジー「他ならない、自分を」



230: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:30:46.78 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……?」



アンジー「アンジーはねー? 自分を信じられないんだー」

アンジー「だから、自分の込める想いを信じられない」



アンジー「その想い自体が……意味の無い、価値の無いものだったんじゃないか、って」



アンジー「どうしても、そう、思っちゃうの」



231: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:31:50.78 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……そんなーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどうして、そんな風にーーーー」



232: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:32:48.33 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……どうして、そんな風に、思っちゃうのか?」



キーボ「………」



アンジー「その答えは、とっても、簡単」



アンジー「だって、アンジーはーーー」









アンジー「ーーー人じゃないからね」



233: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:33:44.14 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……?」



アンジー「………」



キーボ「………??」







キーボ「???」



234: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:35:04.78 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……言っておくけど、これはアンジーがクインシーだからだとかーーーそういう話じゃないからねー?」



キーボ「………」



アンジー「他ならない、アンジーが、物だから、言っているんだよー」



キーボ「物、ってーーー」




キーボ(……まさかーーー)




アンジー「ーーーキーボだって本当は知ってるんじゃないの?」



235: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:37:00.36 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……えっ、!?」

アンジー「キーボは、是清が地獄行きの話をしても、素直に受け入れてたよね?」

キーボ「……!!」

アンジー「アンジーと是清が同じ世界にいることについて、何も追求しなかったよね?」

キーボ「あっ…それは…」

アンジー「それだけじゃないよ? アンジーたちは、聞いたんだ」

キーボ「……聞いた……?」

アンジー「うん、アンジーたち以外の、この死後の世界で暮らしている人達から聞いちゃったんだ」



アンジー「現世について」



236: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:39:00.51 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……現世、それは、アンジーたちが知ってる外の世界とかなーり違う」



キーボ「………っっ、!!」



アンジー「それだけじゃないよ? それだけなら、モノクマがアンジーたちの頭に何かやっただけかもしれない」

アンジー「悪ふざけで、ちょっとだけ記憶をいじって、おかしくしただけなのかもしれない」

アンジー「だから、アンジーたちの記憶とは少し違うけどーーー本当は、同じようなものがあったのかもしれない」



アンジー「……そう、思えたかもしれない」



237: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:40:04.50 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……だけど、そんな軽い話じゃなかった」



キーボ「………」



アンジー「だって、現世にはーーー」









アンジー「ーーー『超高校級』なんて、無かったんだから」



238: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:41:16.88 ID:pwF/1nuYO









キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」









239: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:42:21.21 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーいや、あることにはあったよ?」



アンジー「でもね? “ それ ” は、アンジーたちが知っているのとは、ぜんぜん違ってた」



キーボ「………」



アンジー「……よく、『超高校級』は、世界が違うとか言われるけどーーー」



アンジー「ーーー現世の『超高校級』は、本当に世界の違うものだったんだよ」



240: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:45:01.28 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……現実じゃない世界……」



キーボ「………」



アンジー「……その世界には、モノクマがいて、コロシアイもあって、学級裁判もあった」



アンジー「ーーーそれって、そういうことなんでしょ?」



キーボ「っ、」



アンジー「アンジーたちは、そういう存在なんだよね?」



241: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:46:58.70 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーだったら、アンジーは、自分の、何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「……現実に無いものを、信じる?」

アンジー「そんなの、何も信じてなかったのと同じ……」

アンジー「……信じられるわけ、ないよ」



キーボ「アンジーさん……」



アンジー「……キーボだって、アンジーの神さまを信じられないんでしょ?」

キーボ「!?」

アンジー「だから、斬魄刀の話の時、主なんていないって言ったんだよね?」

キーボ「……っ、それはーーー」



アンジー「ーーーそれが、普通だよ」



アンジー「アンジーだって、もうわけがわからないんだから」



キーボ「………!!」



242: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:49:32.59 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……この死後の世界はねー? アンジーが、神さまから聞いていたような場所じゃなかったんだよー」

アンジー「しかも、この世界に来てから、神さまの声が、ちゃんと……聞こえなくなった……」



キーボ「………」



アンジー「……神さまの力だって、無くなった」

アンジー「あの学園にいた時みたいに、上手に作品を作れなくなった」

アンジー「上手に、絵を描けなくなったんだよ……」



キーボ「………」



243: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:51:06.17 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……アンジーは、何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「……こんな自分の何を、どう信じれば良いのかな?」



アンジー「こんな自分の、どんな想いに、どんな意味があると信じれば良いのかな?」



アンジー「どんな価値があると信じれば良いのかな?」



244: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:52:49.68 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……アンジーは、本当にアンジーなのかな?」

キーボ「っ、」

アンジー「……魂魄があるわけだし、 “ 芯 ” になった人はいるかもしれない……」



アンジー「……だけどそれは、このアンジーと同じなのかな?」



キーボ「……っっ、!!」



アンジー「……本当は違うかもよ?」

アンジー「……アンジーのこの名前も、カラダも、全部、見せかけだけの、ハリボテだとしたら……?」



キーボ「……!!!」



アンジー「……アンジーの根っこは、全く違う、別のナニカなのかもしれない」



アンジー「この心ですら、そうなんだよ?」



245: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:53:58.31 ID:pwF/1nuYO









キーボ「…………」









246: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:56:19.76 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……だったら、キーボのいう想いだって、本当は、違うかもしれないよ?」

キーボ「!」

アンジー「こんなおかしなことがあり得るならーーーこうして、キーボと話しているのだって、それは今から始まったものなのかもしれない」

キーボ「………!!」

アンジー「それより前の話なんて全部、最初から無かったのかもしれない」



アンジー「アンジーは、空っぽなんだよ」



キーボ「………」



アンジー「そんな想いに……どんな意味があるの?」

アンジー「どんな価値があるの?」

アンジー「そんな想いで絵を描いて……何になるの?」



キーボ「………」



アンジー「……そんなの、虚しいだけだよ」



247: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:58:16.64 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーもしも、神さまの声が! ちゃんと聞こえていたのなら!」



アンジー「神さまの力があったのなら! 『すごい力』があったのなら!」



アンジー「アンジーだけの、『すごいもの』を持てたのなら! アンジーが大好きになれる『希望』を持てたのなら!」



アンジー「……アンジーだけの! 価値ある『物』を! 持つことができたのなら!」



アンジー「解斗たちみたいに、自分を、『人』と想えたかもしれない!」



248: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 14:59:45.14 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……そうだよ! それさえできれば! 物でも! 人でなしでもーーー」



アンジー「ーーー人…の、よう、に……!」



キーボ「………」



アンジー「……っ、だけど! いまのアンジーは違う!」



アンジー「解斗たちや是清みたいな、『すごい力』は無い!」

アンジー「蘭太郎だって、『すごいもの』がある! アンジーには無い、時間と可能性が、いっぱいある!」



アンジー「ーーーキーボは、もっとある!」



キーボ「………」



アンジー「空鶴たちとも、空吾たちとも、ユウイチたちとも違う!」



アンジー「アンジーは、みんなとは違う!」

アンジー「アンジーは、何も無いんだよ!!」



アンジー「アンジーは、それが欲しかった!!!」



249: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 15:01:19.58 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーだから、アンジーは! 是清を、アンジーだけの……!」



キーボ「………」



アンジー「……だけど! 是清だけじゃ、ダメだった!! 上手く、いかなかった!!」



アンジー「っ、だから、なのにっ……それなのに……!」ジワッ…



250: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 15:02:28.76 ID:pwF/1nuYO



キーボ「アンジーさん……」



アンジー「ーーーもう一度言うよ、キーボ?」

アンジー「これで、アンジーは、自分の何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「キーボは、どんな想いにも意味がある、価値があるって言うけど、アンジーはそれを信じられないんだよ」



アンジー「……アンジーには、『希望』も『未来』もーーー何にも、無い」



アンジー「……自分を、その想いを、信じられない……!」



251: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 15:03:53.23 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……もし、キーボがアンジーと同じで、何も無かったら、信じられるの?」



アンジー「……できるわけないよ!」



アンジー「解斗だって、それに答えることができなかったんだから!」



キーボ「………」



アンジー「アンジーは、何も信じられないまま生きて!何も信じられないまま終わるんだよ!」

アンジー「ねえ、これで、どうやって、アンジーの『想い』を、残せるって言うの!?」







アンジー「答えてよ、キーボ!!!」



252: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:31:36.16 ID:pwF/1nuYO



キーボ(……そう、かーーー)




アンジー「………」




キーボ(ーーーそういうこと、だったんですねーーーー)



253: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:32:49.98 ID:pwF/1nuYO



キーボ(ーーーボクは、二つ、思い違いをしていた)




アンジー「………」




キーボ(……一つ目の思い違い。それは、民衆に記憶が残されていたということ)




キーボ(……少なくとも、究極のリアルのーーーその土台となるものの記憶は、封じられることなく、残されていた……)



254: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:34:24.56 ID:pwF/1nuYO



キーボ(……そして、二つ目の思い違い。それはアンジーさんが、これほどまでに、物に囚われていたということ)




アンジー「………」




キーボ(……だから、百田クンは答えられなくてーーー)




キーボ(ーーーアンジーさんは、他の誰でもなくーーー)




キーボ(ーーーボクをーーーー)



255: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:35:17.06 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーほら、キーボも答えられない……」






キーボ「………」






アンジー「……やっぱり、何も、信じられないーーーー」



256: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:35:58.36 ID:pwF/1nuYO









キーボ「ーーーそれは、違います!」









257: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:36:53.77 ID:pwF/1nuYO



アンジー「!?」






キーボ「……アンジーさんが、何も信じられないまま終わる?」






キーボ「そんなこと、絶対にありません!」



258: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:38:34.68 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……っ、キーボに! アンジーの、何がわかるの?!」



キーボ「………」



アンジー「わかるはずないよ!」



アンジー「……アンジーは、間違えた!」

アンジー「それが正しい生き方だと信じて! 人として……やっちゃいけないことをやったし、やろうとした!」



アンジー「だから罰が当たって……死に落とされてーーー」







アンジー「ーーーまっくらに、塗り潰されたんだ!」



キーボ「………」



259: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/23(水) 20:40:15.55 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……こんなにも、砕かれた……!」



アンジー「……アンジーの神さまも、その力も、全部、闇に……!」



アンジー「……何もかもを、奪われた……!」



キーボ「………」



アンジー「……転子たちには、才能が、立場が、残されたっていうのに! アンジーには、何にも無い!」



アンジー「アンジー以外のみんなが、当たり前に持っているものすら無い!」






アンジー「……自分が、物にしか、見えないんだよ……!」






キーボ「アンジーさん……」



260: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:41:53.14 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……キーボは、アンジーとは違う」

アンジー「そう、キーボは、転子たちと同じで、いろんなものを持ってるから」



キーボ「……」



アンジー「……瀞霊廷に住める立場がある。才能がある」

アンジー「……『すごいもの』がある。『すごい力』がある」



アンジー「……『未来』がある! 『希望』はそこに、繋がっている!!」



アンジー「……そんなキーボに、アンジーが、いまどんな気持ちかなんて、わかるはずない!!!」



261: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:44:31.26 ID:pwF/1nuYO



キーボ「…………アンジーさんの全てがわかるとは言いませんよ」

キーボ「ボクとアンジーさんに、異なる部分があるということは、覆しようのない事実なのですから……」



アンジー「………」



キーボ「……ですが、それでもわかることはあります」



アンジー「……!?」



キーボ「……自分を信じたいというその気持ち、ボクには、よくわかるんです!」



262: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:51:50.30 ID:pwF/1nuYO



アンジー「なっーーー」



キーボ「アンジーさんだって、本当は、信じたいと想っているんでしょう!」



キーボ「他ならない、自分を!」



アンジー「!!」



キーボ「誰だって、自分や他人に胸を張れる自分でありたい! ボクだってそうです!」

キーボ「ならば、どんなに自分が信じられなくても、本当は信じたいはずです!」

キーボ「だからこそ、アンジーさんは! 死後も、神さまを信じようとした!」



アンジー「………っっ、!!」



キーボ「そう! 切っても切れない、アンジーさんの一部とも言うべきーーー神さまを、信じようとしたんです!」



キーボ「だったら、その気持ちの通りに、自分を信じれば良い!」



キーボ「自分の想いを信じれば良い!」



キーボ「その『想い』で、自分に胸を張り、他人にも胸を張れば良い!」



263: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:55:05.99 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……っ、簡単に! 信じて、だなんて! 言わないでよ!!」

アンジー「アンジーの想いが! アンジーの何もかもが! 紛い物だったらどうすれば良いの!?」

アンジー「みんなと違って、価値の無い物だったら、どうすれば良いの!?」



キーボ「価値はある!」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんも、その想いも、決して、価値の無い、紛い物などではありません!」

キーボ「なぜなら、今の自分が抱いている想いは、紛れもなく本物だからです!」



アンジー「……!?」



264: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 20:56:49.82 ID:pwF/1nuYO



キーボ「たとえ、自分の根っこが、どのような存在であったとしても!」

キーボ「どれほどの過ちや間違いーーー闇を重ねて、今の自分が形作られていようとも!」



キーボ「今の自分が……どれだけの嘘と矛盾に満ちていたとしても!」



キーボ「そんな自分が、世界全体から見て、どのような存在であろうとも!」

キーボ「どんな終わりを迎えようとも!」



キーボ「ボクらの心は、今こうして、ここにある!」



アンジー「……!!」



265: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:00:22.28 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……自分にとって、そこに心があるから! 想いが募っているから! ボクらは苦しんでいる!」

キーボ「心を通して、痛みを、共に感じることができる……!」



キーボ「だからこそ、お互いに自分を信じたいと思っている!」



アンジー「!!」



キーボ「これは、今こうして、起きていること!」

キーボ「今もなお、胸に刻まれ続けていること!」



キーボ「その意味は、過去や未来がどうなろうと、決して変わりなどしない!」



キーボ「断じて、紛い物なんかじゃない! この心は、紛れもなく本物です!」

キーボ「そして、この心を支えているものは何か? それがボクらの胸に刻まれた想いなんです!」

キーボ「だったら、その想いは、心と同様に本物なんですよ!」

キーボ「それが、価値の無い、紛い物?」



キーボ「そんなことは、決してありません!」



キーボ「誰であろうと、このかけがえのない価値を、奪えなどしない!」



266: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:02:30.54 ID:pwF/1nuYO









アンジー「ーーーーーーーーーーーーーー」









267: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:04:08.03 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーボクはロボットですが、同時に、人だと想っています」



アンジー「!!」



キーボ「これは、機械なのに魂魄を持つ存在だからとか、瀞霊廷に住めるからとか、普通とは異なる『すごい力』を持つ『すごいもの』だとかーーーそういうことを言っているのではありません」



キーボ「ボクが、人なのは、アンジーさんと同様に心を持っているからです」



アンジー「………!!!」



268: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:07:41.14 ID:pwF/1nuYO



キーボ「だからこそ、生前、アンジーさんがボクを仲間に入れてくれた時は、嬉しかった! 価値ある存在だと認めてくれて嬉しかった!」



キーボ「……そうして、ボクにとって、アンジーさんは、かけがえのない価値ある大切な存在となった!」



キーボ「そんなアンジーさんの側にいられて、心地良かった! 嬉しかった!」

キーボ「初めて、ここで再会できた時も、嬉しかった! またアンジーさんの側にいられて、心地良かった! 嬉しかった!」



キーボ「……さっき、アンジーさんに! 形はどうあれ、ボクが価値ある存在だと言って貰えて、嬉しかった!」



アンジー「!!」



キーボ「先ほど、ボクの言葉に心を傾けてくれて……感情をもって聞いてくれて嬉しかった!」

キーボ「そうするだけの意味を持つ……価値ある言葉だと認めてくれて、嬉しかった!」

キーボ「アンジーさんと、それほどの繋がりを持つことができて、嬉しかった!」



キーボ「そこには、真実も嘘もない! ただ、嬉しいと感じているボクがいる! その『想い』を、アンジーさんに向けたくて、たまらない!」

キーボ「現在も過去も未来も、アンジーさんはかけがえのない存在なんだって、言いたくて仕方がない!」



キーボ「大切にしたい! 作り物で終わらせるなんて、嫌なんだ!」



キーボ「今この瞬間、そう想える心こそが、人の本質なんですよ!」



アンジー「………っ、!?!」



269: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:10:16.63 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……ボクのこの身は、決して、柔らかで温かな肉などではありません。硬く冷たい鉄の身に他ならない」



キーボ「……こわい時に、震えることもできず、悲しい時に涙を流すこともできない、“ ロボット ” 」



キーボ「それが、ボクです」



アンジー「………」



270: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:11:28.97 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーそれでも、心はここにある」






キーボ「嬉しいと想える心が……ここに募られているんですよ」






アンジー「………」



271: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:13:19.38 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ボクは、人です」



キーボ「……こわい時に、震えることもできず、悲しい時に涙を流すこともできないロボットであろうとも」

キーボ「硬く、冷たく、機械的に組み上げられた、鉄の身であろうとも」

キーボ「柔らかで温かな肉をもって、誰かを抱き締めることが叶わなくとも」

キーボ「この身を、どれだけ飾り立て、磨き上げようとも、どれだけ錆びつき折れて、切り落とされようとも」

キーボ「決して消えない、大切にしたいというこの想い。作り物で終わらせたくないという、この想い」



キーボ「そうした想いがあれば、それは人です」



キーボ「そうやって募らせた想いが、心となっているならば、それは人です」



キーボ「……人によっては、作り物でしかなかったとしてもーーー想いを込めた人にとっては、紛れもない人であり、心を持った存在なんです」



キーボ「だから、ボクらは、人なんですよ!」



アンジー「………っっ、!?!」



272: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:16:22.23 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……始めは、作り物の想いでしか、なかったとしても! その想いを込める場所さえ、作り物だったとしても!」



キーボ「それに、心を呑まれなければ! 想いを信じていれば! 本物となる!」



キーボ「……やり方が歪だったとしても! 本当は、間違いなのかもしれなくても! それでも、本物なんだって!」



キーボ「そうやって信じようとする気持ちを、大切にできる心を持てば! 作り物だろうと何だろうと! そこに、確かな『想い』が生まれる!」



アンジー「!」



キーボ「自分の『在り方』! それを支える全てが! 不恰好な作り物だったとしても! 心を呑まれないのが『人』でありーーー」



アンジー「………!!」



キーボ「ーーーそうありたい、そうあって欲しいと想える心が! 人であることの証明なんです!」



273: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:21:01.33 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……どんな人でも! その心は! 想いは! 紛れもない、人のものだから! 本物だから!」



キーボ「想いを糧に、何かに打ち込んで、やり遂げることもできる!」

キーボ「不可能を可能に変えられる!」

キーボ「夢を現実に変えられる!」

キーボ「未来を変えられる!」



キーボ「もちろん、やり遂げるものによっては、すごい才能やその産物に頼ることもあるでしょう! ですが、その根幹にあるのは、人の想いなんです!」

キーボ「花火が、それを作ったり火をつけたりする人の想いと、見る人の想いで、その価値を彩られているように!」

キーボ「人の想いこそが! その価値ある想いこそが! 根幹となって、人を支えているんです!」

キーボ「そうして、人の心を支えてくれたから、ボクらは、 “ 終わらせる ” ことができた!」



キーボ「そう、信じています!」



キーボ「だから、自分が、みんなが、世界全体から見て、どういう存在だろうと! ボクらは人です!」

キーボ「そして、その心と想いは、紛れもなく、本物です!」



キーボ「ボクらは、本物の、人なんですよ!」



アンジー「………!!!」



274: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:21:34.45 ID:pwF/1nuYO



キーボ「だからこそ、ボクは、アンジーさんを信じています」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんが抱く想いに価値があると信じています」



キーボ「アンジーさんの神さまを信じています」



275: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:23:36.98 ID:pwF/1nuYO



アンジー「!?」



キーボ「……ボクはもう、神さまに頼るつもりはありません」

キーボ「それこそが、神さま……そして、頼っていた、かつてのボクに、報いることでもあるのですから……」



アンジー「………」



キーボ「……ですが、それでも、アンジーさんが想う、神さまを信じています」



キーボ「神さまが、意味ある存在だと信じています」



キーボ「価値ある存在だと、信じているんです」



276: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:27:49.79 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……どうして、そんなーーー」



キーボ「……その神さまは、もはやアンジーさんの一部でありーーー」



キーボ「ーーー仮に、そうでなくとも、人が胸を痛めて想いを募らせる、かけがえのない存在」



キーボ「ならば、その存在には、絶対に意味がある」



キーボ「価値が無いはず、ないじゃないですか」



アンジー「ーーーーーーっっっ、!!!」



キーボ「ボクは、アンジーさんと神さまを、信じています」

キーボ「想いを込められる存在であると、信じています。そうして、より確かな『想い』に変え、深く込めることもできるーーー」






キーボ「ーーーそう、信じているんです」



277: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:29:32.95 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……だからこそ、アンジーさんも、自分を信じて欲しいんです」



アンジー「………」



キーボ「今すぐは信じきれなくてもーーーそれでも、想いを募らせ、信じて欲しい」

キーボ「そうやって、自分を信じたいという気持ちの通りに、自分を信じて欲しいんです」

キーボ「そして、それは、自分の気持ちだけじゃない。自分に込められた全ての気持ちを信じて欲しい……」



キーボ「……その全てに、信じられるだけの価値があるって!」



278: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:33:11.42 ID:pwF/1nuYO



キーボ「でなければーーーアンジーさんは、何も信じることができなくなってしまう!」



キーボ「心を呑まれて、全てが雲に覆われてしまう!」



キーボ「一人きりで、何もないと思い込んだまま、生まれ変わって、 “ 死 ” を迎えることになってしまう!」

キーボ「それでは、アンジーさんは、アンジーさんの中で、物として終わってしまう!」



キーボ「ボクらにとって、アンジーさんは人なのに! 人同士だから信じ合い、『想い』を分かち合えるはずなのに!」



キーボ「一緒にいれて、嬉しい気持ちになれるはずなのに!」



キーボ「アンジーさんが、物として終わってしまったら、ボクらの人としての繋がりは、その価値は、どうなってしまうんですか!?」

キーボ「ボクらは、人が何の感慨もなく機械を扱うような関係でしかなかったのですか!?」



キーボ「機械的な利害関係しかない間柄だったのですか!?」



キーボ「それじゃあ、アンジーさんが死んでしまったら、ボクはアンジーさんの中では無用の長物……物で終わるというんですか!?」



アンジー「っっ、!?!」



キーボ「ボクは、それが、たまらなく、こわくて、悲しくて、イヤなんです」



279: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:35:21.92 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーだから、アンジーさん、どうか自分を信じてはくれませんか?」



キーボ「そして、ボクやみんなの気持ちを、信じてはくれませんか?」



キーボ「アンジーさんは、みんなに、大切に想われているんですから」



アンジー「………」



280: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:37:19.65 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……現世で生き残ったみんなは、何があろうと、アンジーさんのことを大切に想っていましたしーーー」



キーボ「ーーー尸魂界(こっち)に来たみんなも、アンジーさんのことを大切に想っているはずです」



キーボ「ーーー事実として、アンジーさんは、百田クンとも話をされたのでしょう?」



アンジー「………」



キーボ「……大切に想っているのは、その時話した百田クンだけじゃない。ボクや真宮寺クンはもちろん、他のみんなだって同じです」



キーボ「……全てが、作り物ーーー」



アンジー「!」



キーボ「ーーーみんなはそれに、心を呑まれなかった」



キーボ「だからこそ、みんな、アンジーさんのことを、価値ある存在だと信じている」



キーボ「そして、それは、アンジーさんが、みんなのことを価値ある存在だと想っているからなんです!」



281: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:42:06.85 ID:pwF/1nuYO



アンジー「!?」



キーボ「アンジーさんが、笑顔で瀞霊廷に送り出してくれたのはボクだけじゃないはずです」

キーボ「百田クン達のことも、笑顔で送り出してくれたのでしょう?」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんはそれだけ、ボクらを、みんなを、価値ある存在だと想ってくれている! 幸せを、願っている!」



キーボ「それは、アンジーさんの中に、みんなを人として見ている気持ちがあるからできること!」



キーボ「作り物で終わらせたくないと想える気持ちがあるからできること!」



アンジー「!!!」



キーボ「そう! 全てを作り物で終わらせ! みんなの価値を否定するような人物だったのなら! 決してできないことなんです!」

キーボ「だから、アンジーさんは、みんなを大切にしたいと想い! 自分の過去と向き合い! 笑顔で送り出すことに決めた!」



キーボ「アンジーさんは、心呑まれることを良しとしなかった! だから、みんなと同じように、人を大切にできた!」



キーボ「その気持ちに! 百田クン達が応えようとしないはずがない!」



キーボ「だとしたら、百田クンの言葉には、きっとその裏で、全員の気持ちが込められていたはずですよ?」



アンジー「………っっ、」



282: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:43:44.81 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……だから、アンジーさんは、みんなから、大切に想われているんです」



アンジー「………」



キーボ「みんなから、価値ある存在だと信じられているんです」

キーボ「アンジーさんには、その気持ちを信じて欲しいんです」

キーボ「自分の想いと一緒に信じて欲しいんです」



キーボ「そんな自分を……価値ある自分を信じて欲しいんです」



283: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:44:52.96 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……そうすれば、決して、心を呑まれることはありませんしーーー」



キーボ「ーーーアンジーさんの想いが込められた作品に、価値があると、実感することができる」



キーボ「『想い』を、残すことができる」



キーボ「ボクはそう信じています」



アンジー「………」



284: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:46:15.32 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーそして、その価値ある作品に、一緒に込めさせて貰うボクの気持ちにも、価値があると信じてはくれませんか?」



キーボ「そうすれば、より確かに、価値の感じられる作品となるはずです」



キーボ「……そんな作品に、育っていくはずなんです」



アンジー「………」



285: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:48:34.38 ID:pwF/1nuYO



キーボ「お願いします、アンジーさん」

キーボ「これは、ボクの問題でもあるんです」



アンジー「キーボの……?」



キーボ「はい。ボクが、他ならぬアンジーさんと共に、想いを込めて、価値ある作品を作り育てたいから言っているんです」



キーボ「……ボクが、アンジーさんと生きていて良かったと、一緒にいて嬉しいことを実感したいから、言っているんです」

キーボ「その気持ちを、分かち合いたいから言っているんです」

キーボ「一緒に、価値ある作品を愛したいから言っているんです」



キーボ「それだけアンジーさんが! アンジーさんという人の想いが! 同じ、人であるボクにとって! かけがえのない、価値ある『想い』だから言っているんです!」



アンジー「!!!」



キーボ「ボクは、アンジーさんに、必要とされたいんです!!」



アンジー「ーーーっっ、!!!」



キーボ「だから、どうか一緒に、ボクらにとって、価値ある作品を作ってはくれませんか?」



286: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:49:48.97 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……もし、どうしても、一緒に作ることのできない事情があるのならーーーせめてボクを信じてくれませんか?」

キーボ「その上で、ボクの……『想い』を、どうか受け取ってください」

キーボ「その『想い』と共に、作品を作って欲しい……」



キーボ「……アンジーさんとボクの『想い』を、作品に込めてーーー世に残して欲しいんです」



アンジー「………」



キーボ「ーーーお願いします、アンジーさん」



287: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 21:50:45.18 ID:pwF/1nuYO









キーボ「一緒に、作品を、作ってください!!!」









288: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:37:56.66 ID:pwF/1nuYO



アンジー「………」






アンジー「…………」









アンジー「………………」



289: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:38:28.98 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そう、かーーー)






キーボ「………」グッ…






アンジー(……そういうこと、なんだねーーーー)



290: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:39:42.43 ID:pwF/1nuYO



アンジー(ーーー物、なんかじゃ、ないんだ)




アンジー(始めから、みんな、人だった)




アンジー(心を持った時から、ずっと、ずっと前から、そう)




アンジー(キーボも、是清も、蘭太郎も、転子も、解斗たちもーーー)








アンジー(ーーーみんな、みんな、人だったんだ)



291: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:41:22.83 ID:pwF/1nuYO



アンジー(みんな、人だからーーー)




アンジー(ーーー心があるから、物にされるのがこわい)




アンジー(物にされて、終わるのがこわい)




アンジー(そうやって、人として、扱われないことがこわいんだ)


アンジー(たとえ、どんな『物』でもーーー物である限り、簡単に価値が変わる……)


アンジー(……ただの、物、に、なるかも、しれない……)


アンジー(……そのまま、自分をまったく必要とされなくなること……)




アンジー(それこそが、 “ 死 ” だから)




アンジー(……本当の意味で、死ぬってことなんだから)


アンジー(どんなに、『すごい力』や『すごいもの』があっても、同じこと)


アンジー(あっても、なくても、絶対に逃げきれなくてーーー)








アンジー(ーーー変わらず、そこにある)



292: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:42:58.70 ID:pwF/1nuYO



アンジー(そこに、落ちるのが、イヤ)


アンジー(物にされたら、近づいてしまう)


アンジー(……すごく苦しくて、目の前がまっくらになってーーー近づいてしまうんだ)


アンジー(そうして、そのまま転がり落ちればーーー)




アンジー(ーーー砕かれて、終わる)




アンジー(……闇に消える……)



293: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:43:57.17 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そんな、取り返しのつかない、痛み)


アンジー(それがわかるから、みんな、誰にもさせたくなくてーーー)




アンジー(ーーーアンジーにも、させたくなかったんだ)




アンジー(痛みがこわいから、おかしくなりそうだからーーー)


アンジー(ーーー踏み外して、転がり落ちるかもしれないからーーー)


アンジー(ーーーきっと、みんなは、それにアンジーを巻き込みたくなかった)




アンジー(それだけ、なんだよ……)



294: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:45:34.43 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……きっと、みんなは、アンジーのこと、人だって想ってくれた。作り物で、終わらせたくなんてなかった)


アンジー(……どんなに、心が呑まれそうでもーーー『人』として、必死にアンジーを想ってくれたんだ……)




アンジー(……だから、蘭太郎も転子もゴン太も楓も竜馬も斬美も美兎も小吉も是清もーーー解斗みたいなことはできなかった)


アンジー(解斗みたいに、みんなの『想い』を背負って、アンジーの前に立つこともできなかったんだ)


アンジー(……解斗も、アンジーの言葉を前に、踏み出せなかった……)




アンジー(……人が、物にされて、終わる)




アンジー(そのことに、改めて向き合ってくれたから……)



295: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:46:34.02 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……みんなは、決して心を呑まれなかった。だから、踏み外すのがこわかった)




アンジー(言葉を大きく間違えればーーー本当に “ 死 ” を招いてしまうかもしれなかったから)




アンジー(だから、踏み出すことができなくてーーー)










アンジー(ーーーこうして、踏み越えることもできるんだ)



296: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:48:18.90 ID:pwF/1nuYO



キーボ「………」



アンジー(……物じゃない、『物』でもない。人だから、できること)


アンジー(誰だって、同じ)


アンジー(心が痛いから、その心と想いは絶対に本物だからーーー)




アンジー(ーーー “ 死 ” の痛みがわかる)




アンジー(その痛みに近づいていくことーーー物にされることのこわさがわかる)




アンジー(わかるから、逃げないで向き合える)




アンジー(……その先が、どんなに惨めで、まっくらに塗り潰されそうでもーーー)




アンジー(ーーーそこに意味が……価値があるって、信じられるから)



297: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:49:58.30 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そうだよ。誰だって、価値を信じて、向き合える)




アンジー(どんなに砕かれて、闇に消えたとしてもーーー)




アンジー(ーーー自分にとっては、人で、かけがえのない、たったひとりを、護りたい……)








アンジー(……そう、想うことが、できるから……!)




キーボ「………」



298: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:50:47.26 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そうして、心のままに、信じてーーー)




アンジー(ーーー今みたいに踏み越えることもできたんだね……)




キーボ(アンジーさん……!)




アンジー(信じて、必要としてくれた、 “ 心 ” ーーー)




アンジー(ーーーその『想い』が、 “ ここに ” ーーーー)



299: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:51:34.38 ID:pwF/1nuYO






アンジー(ーーーあぁ……)








アンジー(あたたかい、なぁ……)






300: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:52:29.14 ID:pwF/1nuYO



アンジー(…… “ ここに ” ある、もうひとつの『想い』ーーー)




アンジー(ーーー心のままに、歩んで手を、伸ばせばーーー)




キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」




アンジー(ーーーきっと、その先はーーーー)



301: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:53:03.52 ID:pwF/1nuYO









……ぎゅううっ









302: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:54:20.77 ID:pwF/1nuYO



キーボ「………」パチリッ

アンジー「………」



キーボ「ーーーえっ?」

アンジー「………」



キーボ「アンジー、さん、?」

キーボ「何をーーー」



アンジー「ーーー大丈夫だよ、キーボ」

キーボ「!」



303: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:55:35.95 ID:pwF/1nuYO



アンジー「キーボの心は、アンジーの中に入ったよ」

アンジー「キーボの『想い』は、アンジーの心で受け止めた」

アンジー「これで、アンジーは、キーボとアンジーの『想い』、込められる」



キーボ「!!」



アンジー「……だから、アンジーからもお願い」



アンジー「アンジーの心も、キーボの中に入れて……」



アンジー「アンジーの『想い』も、キーボの心に受け止めて欲しいの」



304: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:56:29.84 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……!!」



アンジー「それから、キーボも、アンジーと一緒に絵を描いてーーー」







アンジー「ーーーふたりの『想い』、込めて欲しい」



305: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:57:06.12 ID:pwF/1nuYO









キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」









306: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 22:58:03.35 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……お願い」

アンジー「お願いだよ、キーボ」

アンジー「どうか、アンジーとーーー」



キーボ「ーーーもちろんですよ、アンジーさん!」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんの心は、『想い』は、ボクの中に、心で受け止めます!」



アンジー「………!」



キーボ「一緒に込めましょう!」

キーボ「アンジーさんとボクの想い、ふたりの『想い』を! 一緒に!」



アンジー「……ありがとう、キーボ」



307: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:00:24.73 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……描こう、一緒にーーー」







アンジー「ーーー “ 夜空 ” を」



308: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:01:41.38 ID:pwF/1nuYO



キーボ「 “ 夜空 ” ……もしかして、それがーーー」



アンジー「そう、それが、アンジーとキーボの、絵のテーマ」



アンジー「お星さまの光に、お星さまの闇ーーー」



アンジー「ーーー夜風、花火、見上げる人ーーー」






アンジー「ーーーそして、神さまーーーー」



309: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:02:45.93 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーー全部、全部、描きたい」



アンジー「アンジーは、キーボと、 “ 夜空 ” を描きたい」



キーボ「アンジーさん……!」



アンジー「……描けたら、一緒に見よう?」



キーボ「!」



アンジー「ーーーそれからは、尸魂界(こっち)に来たみんなにーーー」






アンジー「ーーーいつかは、現世(あっち)で生き残ったみんなにも、見せたいな」



310: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:04:00.68 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……いろんな人に、見せたい」

アンジー「それは、同じ学園のみんなに、だけじゃない」

アンジー「空鶴たち、空吾たち、ユウイチたち、喜助、神さまにもーーー」



アンジー「ーーーいろんな『人』に見せたい」



アンジー「アンジーとキーボの絵を……」



アンジー「自慢、したい」



アンジー「胸を、張りたいな」



311: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:04:54.22 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……同感です!」



キーボ「そのためにも、描きましょう! 一緒に!」



アンジー「……そうだよ、キーボとアンジーで “ 描いて魅せる ” 」



キーボ「ええ! 他ならないーーーー」



312: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:05:42.95 ID:pwF/1nuYO









「「 “ 夜空 ” を!!」」









313: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:06:55.20 ID:pwF/1nuYO




(ーーー其れは、闇)






(全に届く、光の輪と双翼を持たない、姿無き闇)






(だけど、胸に刻まれたこの想いは、誰にも奪えない。それが、罪であっても、 “ 死 ” を名乗る神であっても)






(かけがえのない価値を信じて、光と闇を想い描く)






(ふたつが混じり合う人の心に、夜空が届くように)




314: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:07:58.40 ID:pwF/1nuYO









アンジー「ーーーあーあ、キーボがロボットやってなかったらなー!」









315: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:09:18.20 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーなっ、ここで、まさかのロボット差別ですか!?」



アンジー「ノーノー、これは、神ッターでの、つぶやきだよー!」



キーボ「神ッター!? つぶやき!?」

アンジー「そうだよー」



アンジー「……もし、キーボがロボットやってなかったらーーー」









アンジー「ーーーこのまま一緒に……ドロドロに神っちゃうのも、悪くないかなー、って」



316: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:11:04.66 ID:pwF/1nuYO



キーボ「? ドロドロに、神る?」

キーボ「泥を用いて、神さまを模した美術品を造形するということですか?」

アンジー「………」

キーボ「だとしたら、確かにボクは控えた方が良いかもしれませんね」

キーボ「いかに頑丈な設計であるとはいえーーー泥を侮るわけにはいきません。万が一、故障でもすれば、迷惑がかかりますからね」



キーボ「……あっ、ですが、入間さんに頼んで、対泥用のコーティングをして貰えばーーー」



アンジー「ーーーなるなるー! その手があったかー!」



キーボ「ええ、入間さんならできるはずです!」



アンジー「そうだねー! 美兎なら、 “ そういうこと ” 喜んでやってくれそうだからねー!」

アンジー「キーボのアイデアは神ってるねー! おかげでアンジーも閃いたよー!」



キーボ「いえ、こちらこそ、新たな作品作りのお誘い! ありがとうございます、アンジーさん!」



キーボ「ドロドロに神る、その時を……今から楽しみにしています!」



317: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:12:31.77 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……んーとねー? 悪いけど、それはもうちょっと後かなー?」



キーボ「? まあ、確かにそれは、入間さんに頼まないとできないことですからね」



キーボ「いや、浦原さんにやって貰えばーーー」



アンジー「……そうじゃなくてねー?」



318: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:13:46.62 ID:pwF/1nuYO



キーボ「?」

アンジー「……それは、まだ早いから」

キーボ「……早い?」

アンジー「そうだよー」

アンジー「……それをするなら、アンジーにはまだまだやらなくちゃいけないことがあるから……」



キーボ「………」



アンジー「……全ては、それが、終わった後ーーー」






アンジー「ーーー終わった後に、ね?」



319: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:15:07.15 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そう、アンジーは、みんなに向けて、やらなくちゃいけないことがある)






アンジー(それが、終わった後、キーボが、受け入れてくれる時が来たらーーー)






アンジー(ーーーその時に、思いっきりーーーー)



320: ◆02/1zAmSVg 2019/10/23(水) 23:16:35.90 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーわかりました! アンジーさんに準備が必要というのなら、ボクはそれを待たせて頂きます!」



アンジー「……ありがとねー、キーボ!」



キーボ「いえいえ! 元はと言えば! ボクがアンジーさんに、一緒の、作品作りをお願いしたわけでーーーー」



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次回 【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】 その2